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P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2
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810 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 21:34:19.64 ID:E6eoG1uYO
ー 月の地下渓谷 B7F ー
…バシャァッ!
千早「……っぷはぁ、はぁ……!」
千早「くっ……!」ガシッ
…ドサッ
千早「……なんとか……見つけることはできたわね」チラッ
月の女神「………」グッタリ
千早「死んでしまってるわけではないみたいだけど、意識をなくしているみたい」
千早「この子、泳げなかったのかしら……?」
千早(……私、なんで助けたんだろう。放っておいてもいいはずなのに)
千早(この子がアイドルに憧れているから? 私のことを友達と言ってくれたから?)
千早(それとも……)
千早「…………ゴク、ゴク」
千早「……ふぅ」
千早「いつまでも休んでいるわけにはいかない。先へ進まないと」
千早「………」チラッ
月の女神「………」グッタリ
千早「………」
千早(とどめを刺すなんてことはしないし、これ以上あなたを助けることもしない)
千早(……でも)
千早(今はとても心が軽いの。きっと、あなたが私に気づかせてくれたからね)
月の女神「……とっぷ……あいどる……」ムニャ
千早(……あなたの夢、叶うといいわね)
千早「…………さよなら、月の女神」クルッ
スタスタ…
月の女神「……チハ…ヤ……」ムニャ
811 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/09/10(日) 21:36:14.78 ID:E6eoG1uYO
ミス
>>810
は地下8階の間違いです
812 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 21:38:31.76 ID:E6eoG1uYO
ー 月の地下渓谷 B9F ー
美希「……はぁ、はぁ……」ヨロッ
暗黒魔道士「……まだ立ち上がるのか。本当にキミは負けず嫌いなんだね」
美希「違うの。負けたくないんじゃなくて、負けられないの」
美希「みんなでコトリに会いに行くのに、ミキひとり遅刻じゃカッコ悪いもん」
暗黒魔道士「………」
暗黒魔わ道士「……まあいい。どちらにしろキミは立っているのがやっとだろう?」
暗黒魔道士「今度こそ終わりだ」バッ
ゴオオオオッ!!
美希「!」
暗黒魔道士「もちろんキミがこれを避けても、ボクには次の一撃がある」
暗黒魔道士「ミキ、キミにはボクの連撃をやり過ごす体力は残っていまい」
美希「……やってみなきゃ、わからないの!」ザッ
暗黒魔道士「……いいだろう。さあ、行くよ」
暗黒魔道士「…………ファイガ」
ゴオオオオッ!!
813 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 21:40:38.38 ID:E6eoG1uYO
美希(たぶんアンコクさんが連続で使える魔法は3コか4コまでだよね……!)
タタタタ…
ドゴオオォォンッ!!
暗黒魔道士「…………ブリザガ」
コォォ…シャキーン!!
美希(これもなんとかやり過ごして…………っ!?)
美希(熱い……!? なにコレ……?)
美希「…………あっ」スッ
美希「さっき拾った石……?」
暗黒魔道士「…………トルネド」
ビュオオオッ…!!
美希「…………そっか。なんで今まで気付かなかったんだろ……!」
ビュウウウウッ!!
暗黒魔道士「…………よし、直撃したっ……!」
暗黒魔道士「ふふ……乱気流に捕らわれたキミは地面に叩きつけられて今度こそ終わりだ……!」
暗黒魔道士「ボクの…………勝ちだッ!」
「…………んーん、それは違うよ?」
暗黒魔道士「!?」
814 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 21:43:08.26 ID:E6eoG1uYO
暗黒魔道士「な、なぜボクのそばに!? 一体どうやってここまで……?」
美希「あずさに聞いたの。テレポは建物とかから脱出するだけじゃなくて、ちょっとした距離の移動にも使えるって」
暗黒魔道士「そ、それでこの暗闇の中をボクのところまで真っ直ぐ来たっていうのか……? いや、そういえばキミはボクの位置を把握していたんだったね……」
暗黒魔道士「だとしても、ならばなぜ今までテレポを使わなかった? 幾度となく危ない瞬間はあったはずだ」
美希「……アンコクさん、ユダンしすぎなの。ミキ、もうとっくに詠唱終わっちゃったよ?」
暗黒魔道士「…………え?」
美希「…………ホーリー!!」バッ
キラキラキラ…!!
暗黒魔道士「しまっ……!」
ズドドドドドドッ!!!
815 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 21:45:27.80 ID:E6eoG1uYO
暗黒魔道士「っ……ぐはっ……!」ヨロッ
暗黒魔道士「く、くそ……!」
美希「ふーん、やっぱりアンコクさんって魔法はスゴいけど、運動神経はあんまり良くないみたいだね」
美希「魔道士って大変だよねー」
暗黒魔道士「……はぁ、はぁ……!」
美希「さっきの質問だけど、テレポでの移動は大事な時だけにしようって思ってただけだよ。最初の方に使って対策を用意されたら厄介だし」
暗黒魔道士「それがキミの切り札ってわけか……。でも、ミキの言うとおりだ。テレポは考慮させてもらう……!」
美希「いいよ、べつに。たぶん、もうすぐ夜も明けると思うし」
暗黒魔道士「え?」
…パキッ!
暗黒魔道士「!!」
パリンッ…!
暗黒魔道士「ま、まさか……!?」
美希「……『これ』だったんだね。全ての原因は」スッ
暗黒魔道士「や、やめろ、『それ』が壊れてしまったらボクは……!」
…キラッ!
暗黒魔道士「う…あ……ひ、光が……!」
パァァァーー!!
816 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 21:51:15.91 ID:E6eoG1uYO
美希「っ……まぶしっ……!」
美希「………」
美希「………」
美希「……ふぅ。ようやく明るくなったの。もう何時間も夜みたいだったから、なんかすごくヘンなカンジ☆」
暗黒魔道士「うぅっ……! な、なぜ……なぜキミがそれを持っているんだ……? くそ、全て破壊されている……!」
美希「ここへ来る途中の階段でたまたま拾ったの」
美希「アンコクさんのパワーの源で、この階が真っ暗だった原因は、この石だったんだね」
暗黒魔道士「いつだ……いつ気づいた……?」
美希「気づいたのはついさっきだよ。アンコクさんが魔法を使う時にこの石が熱くなってて、『あれ? もしかして』って」
美希「ホントはもっと早く気づいてもよかったはずなんだけど、まさかこんな石が関係してるとは思わなくて」
美希「ねえ、この石ってなんなの?」
暗黒魔道士「………」
暗黒魔道士「……ダークマター。宇宙の欠片だ」
暗黒魔道士「ダークマターの漆黒の輝きはボクのような闇属性を持っている者のパワーを増幅させる。そして、ある程度の数を集めれば一時的に宇宙空間を作り出すこともできる」
暗黒魔道士「戦いの前にコトリ様からいくつか借りて、予めこの階をボクの戦い易いようにしておいたんだ。……キミたちを倒すためにね」
美希「ふーん……」
817 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 21:53:45.74 ID:E6eoG1uYO
暗黒魔道士「……悔しいけど、どうやらボクの負けみたいだ。こう光が多いと、ボクは満足に戦えないだろう」
美希「じゃあミキ、先に進んでもいい?」
暗黒魔道士「ああ……。好きにするといい」
美希「ありがとーなの!」ニコッ
美希「バイバイ、アンコクさん! なかなか強かったよ? あはっ☆」
スタスタ…
暗黒魔道士「………」
暗黒魔道士「………………ククク……」
暗黒魔道士「…………アスピル」
シュイィィィィンッ!!
美希「っ……ぁ……!?」ガクッ
818 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 21:56:40.14 ID:E6eoG1uYO
暗黒魔道士「ミキ。キミみたいに才能があるっていうのは一概に有利とは言えないのかもしれないね」
スタスタ…
美希「ううっ……!」
暗黒魔道士「何故なら、大抵の者は自分の才能に慢心して油断してしまうからだよ」
暗黒魔道士「その点、ボクのように才能の無い者は決して慢心したりしない。自分の底を知っているからね」
暗黒魔道士「用心深く敵を観察し、周到に罠を張り巡らせて、本当に勝てると思った時にしか戦いを仕掛けない」
暗黒魔道士「キミが魔道士で良かった。『アスピル』で魔力さえ吸い取ってしまえば無力なんだから」
美希「………」スッ
暗黒魔道士「……ブリザガ」
コォォ…シャキーン!!
美希「あぅ……!」
暗黒魔道士「エーテルを持っているんだね。だけど回復はさせないよ」
美希「む〜……」
暗黒魔道士「本当にキミはボクを驚かせてくれた。でも、これで本当に終わりだ。今この瞬間こそ……」
暗黒魔道士「天才が凡人に負ける瞬間だッ……!」ゴゴゴゴ
ビュオオオッ…!!
美希「………」
819 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 21:58:42.03 ID:E6eoG1uYO
美希「……もー、わかってないなー」スクッ
美希「言ったでしょ? ミキ、負けられないって」
暗黒魔道士「強がりはよすんだ。魔力を失った今度こそ、キミに成す術はないんだから……!」
暗黒魔道士「…………トルネド!」バッ
ビュオオオッ!!
美希「アンコクさんってさ、その風の魔法好きだよね」
暗黒魔道士「……ああ。トルネドはボクが最も得意とする魔法だからね」
ビュオオオッ!!
美希「でも、ザンネン。そんな風じゃ、ミキは怯まない」ザッ
暗黒魔道士「負け惜しみかい? ボクに負けるのが悔しいかい……!」
ゴオオオオオッ!!
美希「そうじゃないよ……!」ゴゴゴゴ
美希(たぶん、できる。だってミキ、一度見てるもん)
美希(お願い、力を貸してほしいのっ……!)
…パァァァーー!!
暗黒魔道士「! な、なんだ……? 魔法……?」
暗黒魔道士「そんなはずはない……! ミキはすでにケアルすら使えないはず……!」
820 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 22:02:02.94 ID:E6eoG1uYO
美希「ハニーにもらったネックレスが光って……」
美希「……うん、わかった。強く願うんだね……!」ギュッ
美希「力を貸してほしいの! ……シアちゃんっ……!」バッ
ビュオオオッ…!!
暗黒魔道士「!?」
暗黒魔道士「この風は一体どこから……!? ま、まさか……!?」
美希「そんな扇風機みたいな風、すずしいだけだって思うな!」
美希「ホントの風……ミキが教えてあげるのッ!」
美希「はあああああっ……!」
ビュオオオッ!!
美希「…………ミールストームッ!!」
ゴオオオオオオッ!!
暗黒魔道士「ば、バカな……!? これは魔物の技……!?」
暗黒魔道士「ぐっ……! ぼ、ボクの魔法が押されて……!」
ゴオオオオオオーーッ!!
暗黒魔道士「うわぁぁあああぁぁっ!!」
ドゴオオォォンッ…!!!
821 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 22:05:07.27 ID:E6eoG1uYO
暗黒魔道士「……ぐ…は……!」ヨロッ
暗黒魔道士「……はぁ、はぁ……! くそっ……」
暗黒魔道士「ぼ、ボクは……負けたのか……?」
暗黒魔道士「あんなに……周到に用意したというのに……」
美希「……はぁ、はぁ……」
美希「……まだ、やる?」
暗黒魔道士「………」
暗黒魔道士「正真正銘、ボクの負けだ……」
暗黒魔道士「ミキ、まさかこんな技を隠していたなんて……」
暗黒魔道士「ボクが勝てる要素なんて、最初から無かったようだね……。キミはボクと違って本当に天才だったんだ……」
美希「……それは違うよ。アンコクさんに勝つことができたのはミキだけの力じゃないもん」
美希「ミキね、貴音から聞いてたから知ってたの。アンコクさんがアスピルっていう魔法を使うこと」
美希「だから、事前に対策を考えることができたんだ」
美希「それに、この……ダークなんとかっていう石を見つけられたのは、春香が階段で転んでくれたおかげだし」
美希「テレポの使い方だって、あずさに教えてもらわなければ知らなかったの」
美希「最後の技もそう。ミキの大切なお姉ちゃんの力を借りて、やっとできたんだよ?」
美希「だから、これはミキひとりの勝利じゃないの」
暗黒魔道士「………」
822 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/09/10(日) 22:06:41.92 ID:E6eoG1uYO
美希「それとね? ミキ、天才って言われるのあんまり好きじゃないの。だってミキ、天才なんかじゃないし」
暗黒魔道士「……勝者ゆえの余裕にしか聞こえないよ、ミキ。キミがボクの力を上回っていたのは確かなんだ」
暗黒魔道士「妬ましい……。キミのその才能が、妬ましいよ……」
美希「才能がどうとか、ミキ的にはカンケーないって思うな。がんばらなきゃなーんにもできないし、がんばればなんだってできる」
美希「最後に笑うのは、たくさん努力した人なんじゃないかな?」
暗黒魔道士「………」
暗黒魔道士「…………ふふ。キミは本当に残酷だ……」
暗黒魔道士「まあいい……。キミたちはすぐに死ぬことになるんだから……」
暗黒魔道士「……コトリ様の手によってね……!」
美希「!」
暗黒魔道士「せいぜい束の間の勝利を喜ぶといい……」
スゥゥゥーー…
美希「…………消えちゃったの。あふぅ」
美希(……小鳥、ホントにノリノリなんだね)
美希(そういえば、死んだらどうなっちゃうのかな。前に貴音が死んじゃった時はミキが生き返らせたらしいけど、ミキ、その時のこと全然覚えてないし)
美希(ミキ、そーいう魔法使えるのかな……?)
823 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/10/21(土) 08:12:20.76 ID:udhaJQTNo
ほ
824 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/04(土) 10:51:39.87 ID:Ijlr45TlO
遅れてごめんなさい
待ってくれてる人はもういないかもですけど一応今日か明日の夜投下します
825 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/04(土) 14:15:42.83 ID:0g11BZLOo
ふざけんな居るっつーの!!
ずっと待ち続けてるっつーの!!
お疲れ様です、ご無理はなさらず
826 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/11/04(土) 20:16:17.22 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B10F ー
貴音「…………ふれあ!」バッ
ブゥゥゥゥン…
ババババババババッ!!
ドゴオオオオオンッ!!
ダークバハムート「……ククッ、効かぬわ」
ダークバハムート「……ふんっ」ブンッ
ザシュッ!!
貴音「っ……ぐぅ……!」ヨロッ
貴音「……けあるが」
シャララーン! キラキラキラ…!
ダークバハムート「……ほれ、早くせぬと後手に回るばかりだぞ?」シュンッ
貴音「! ……へいすと!」
カタカタ…シャキーン!
ダッ…!
貴音「……ふれあ!」バッ
ブゥゥゥゥン…
ババババババババッ!!
ドゴオオオオオオンッ!!
ダークバハムート「…………」バサッ
827 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:18:28.76 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「我に通常の魔法など通用せぬ。我を倒したくばメガフレアで来い、タカネ」
貴音「………」
貴音「……どうやらそのようですね。次からはそうすることにします」
ダークバハムート「お前のことだ、敢えてフレアを撃ってきたことに何か理由があるのだろう?」
貴音「はい。『ふれあ』と『めがふれあ』は何か共通項があるのではないか、と思ったのです」
貴音「わたくし自身はまだ『めがふれあ』を扱い慣れておりません故、参考になる部分があれば、と」
ダークバハムート「ふっ……頭の回る女よ。その様子だと、骨は掴めたようだな」
貴音「おかげさまで」ニコッ
貴音「めがふれあの太陽爆発のいめぇじが自分の中で固まってまいりました」
ダークバハムート「ククッ……!」
ダークバハムート(魔法を使う上で一番重要なのはイメージ。頭にイメージを思い浮かべ、それを魔力でもって展開していくことになる)
ダークバハムート(新しく習得した魔法を想像し発動するのは、普通ならばなかなか慣れぬものだ)
ダークバハムート(タカネほどの者にもなると覚えたての魔法であっても短い時間で自分のものにしてしまう、か)
ダークバハムート(だが……)
828 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:21:11.50 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「タカネよ、言っておくがお前は我に勝利する為の条件を一つクリアしたに過ぎぬ」
貴音「ええ、十分に存じております」
貴音(めがふれあをものにするのは、あくまで最低条件。それよりもその次の段階の方が厄介と言えましょう)
貴音(そう。武器の扱い方を理解したとしても、それを撃つ機会がなければ意味は無い)
貴音(如何にして隙を全く見せないばはむーと殿を欺き、隙を作るか……)
ダークバハムート「そういうことだ。自らを脅かす攻撃が来ると分かっていて、それをみすみす見逃す者などいない」
ダークバハムート「隙など見せぬ。全力で止めさせてもらうぞ……!」
貴音(やはり、心を読まれるというのは厄介ですね……。こちらが何をしようとしているのかが全て筒抜けなのですから)
貴音(いっそここは無心に……)
貴音(! ……いえ……)
ダークバハムート「む? どうした? 何か良い策を思い付いたのか?」
貴音「……ええ」ニコッ
貴音(これならば、或いは……!)
829 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:23:56.31 ID:Ijlr45TlO
貴音「………」
ダークバハムート(動かぬ……何を考えている……?)
貴音「………」
ダークバハムート(……タカネの心の声が聴こえぬ。いや、これは……)
貴音(……醤油、味噌、豚骨、塩……)
ダークバハムート「……?」
貴音(……葱、めんま、海苔、もやし、ちゃあしゅう、白菜、胡椒……っ!)ゴゴゴゴ
ダークバハムート(なんだこれは? 一体何の呪文なのだ……?)
貴音(……めんかたからめやさいだぶるにんにくあぶらましましッ!!)クワッ
ダークバハムート(意味は理解できぬ……が、何やらタカネから鬼気迫るものを感じるぞ……!)
貴音「……!」ダッ
タタタタ…
ダークバハムート(来るか……! しかし全く行動が読めぬ)
貴音「……れびてと」ポワッ
ビュィィンッ…
ダークバハムート「……上か!」タンッ
バサァッ…
830 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:26:04.36 ID:Ijlr45TlO
貴音「……はああああっ!」ゴゴゴゴ
ダークバハムート「莫迦め、遅いわ!」ブンッ
ーパシュンッ
ダークバハムート「分身……! 本物は……」キョロキョロ
貴音「下におりますよ、ばはむーと殿」
ダークバハムート「! ぬんっ!」ブンッ
貴音「……てれぽ」
…シュンッ
ダークバハムート「今度は瞬間移動……! 何処へ消えた……?」
貴音「……咄嗟に理解できない物事に直面した時、一瞬人間の頭は真っ白になり判断が鈍ってしまうといいます」
貴音「それは神である貴方も同じなのですね」
ダークバハムート「ちっ! また上に!」タンッ
貴音「……間一髪、詠唱が間に合いました」
貴音「…………めがふれあ」バッ
ダークバハムート「!」
ブゥゥゥゥン…
ババババババババッ!!!
ドッゴオオオォォォオオンッッ!!!
831 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:27:54.59 ID:Ijlr45TlO
貴音「……はぁ、はぁ……」
貴音「……手応え……有りっ……!」
ダークバハムート「…………ぐ……」
ダークバハムート「……ククク……!」
ダークバハムート「我に傷を付けるか、タカネよ……!」
貴音(深手を負わせるまでには至りませんでしたが、ようやく一撃)
貴音(戦いは、これからです!)
ダークバハムート「ククク……! ハァーッハッハッハ!!」
ダークバハムート「愉快だぞタカネ……!」
貴音「ばはむーと殿……?」
ダークバハムート「遂にお前はメガフレアを会得し、我に傷を付けるに至った」
ダークバハムート「これで漸く我らは対等になったのだ……!」
ダークバハムート「待っていたぞ、この時を!」ゴゴゴゴ
貴音「!」
貴音(ばはむーと殿の魔力が……恐ろしいほど膨れ上がっていく……!?)
832 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:29:59.92 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「お前に時間をやろう」
貴音「? どういう意味です?」
ダークバハムート「今から五つ数える。その間にお前が我を倒せなければ……」
ダークバハムート「今度は、我のターンだ……!」
貴音「………」
貴音(あの方は心から戦いを愉しんでいるように見受けられます。次は本気を出されることでしょう)
貴音(本気のめがふれあをまともに受ければ、恐らくわたくしの敗北は必死……)
貴音(ならば、こちらも全力を尽くさねば……!)
貴音「……はあああああっ……!」ゴゴゴゴ
833 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:32:41.17 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「さあ、足掻いてみせよ、気高き人間よ。神である我を討てる力を見せてみよ……!」
ダークバハムート「…………ひとつ」
貴音(考えるに、手数での勝負は恐らく悪手。ようやく慣れてきたとはいえ、めがふれあを何度も撃つのは流石に堪えます)
貴音(ならば……!)ゴゴゴゴ
ダークバハムート「……ほう、一撃に賭けるか。時間一杯を魔力の練成に使うつもりなのだな」
ダークバハムート「それもまた一興……!」
ダークバハムート「…………ふたつ」
貴音(まだ……これではまだ足りません……)
貴音(もっと……あの方に対抗し得る力を……!)ゴゴゴゴ
834 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:34:31.42 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「ククッ……! 恐るべき魔力……! 人の身でここまでの魔力を持つ者などそうはいまい……」
ダークバハムート「血が沸き立つぞ……!」
ダークバハムート「…………みっつ」
貴音(身体が熱い……。まるで太陽に焼かれる様な気分です……)
貴音(全てを焼き尽くす、原始の炎……)
貴音(今は焼かれてもいい……。それでばはむーと殿に勝てるのなら……! ばはむーと殿を救えるのならっ……!)ゴゴゴゴ
ジュワァァ…!!
ダークバハムート「! ……ふ、タカネの魔力で大気の温度が上昇しているか……」
ダークバハムート「もはやお前は、人を超える者よ!」
ダークバハムート「…………よっつ!」
貴音「………」
貴音「………」
貴音「………」
貴音「………………整いました……!」ゴゴゴゴ
貴音「貴方を討ち、その魂をお救いできるのならば、わたくしは鬼にでも悪魔にでもなりましょう……!」
貴音「…………全ての魔力を、この手にっ!!」
貴音「…………めがふれあ!!」バッ
ーーーーカッ!!
835 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:36:53.45 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B1F ー
真「おーーい! あずささーーん!!」
雪歩「どこですかーー!」
真「……うーん、見当たらないなぁ」
雪歩「隅から隅まで探してもいないってことは、これってもしかして……」
真「………」
雪歩「あ、あずささん、大丈夫かなぁ」
真「……雪歩、ちょっとついて来て!」
雪歩「? う、うん」
タタタタ…
雪歩「ここは……私たちが最初に来た場所?」
真「ボクたちってさ、クリスタルの力でここまで来ただろ? だからもう一回クリスタルを使えばあの館に戻ることもできるんじゃないかと思って」
真「……クリスタル、ボクたちをあの館へ帰してくれ!」スッ
…シーーン
雪歩「…………何も起こらないみたいだね」
真「ダメかぁ」
雪歩「あの時はみんながいたし、やっぱり私たちが全員揃わないとクリスタルの力を発揮できないんじゃないかな?」
真「どうやらそうみたいだ」
真「でも、そうなるとあずささんがあの館に戻った可能性はなくなったね」
雪歩「あ、そっか。真ちゃん頭いい!」
真「へへっ、まあね!」
836 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:39:59.69 ID:Ijlr45TlO
真「……状況を整理しようか」
真「まず、最初にあずささんをこの地下1階にひとり残してボクらは先に進んだ」
雪歩「それで、次は真ちゃんが地下2階に残って戦ったんだよね」
真「うん。でも、今こうして雪歩とは合流できた」
雪歩「私がいたのは真ちゃんのすぐ下の階みたいだったから、地下3階ってことになるのかな?」
真「そうだね。そして、雪歩はあの後他のみんなとは会ってないようだから、他のみんなは地下3階よりももっと下の階にいるってことになる」
雪歩「ここで戦ってたはずのあずささんも、きっとそうだよね……」
真「……だと思いたいんだけど、あの人はたまに物理法則とか無視するからなぁ」
雪歩「あ、あはは……」
真「とにかく、地下4階以降をしらみつぶしに探せばきっとみんなと合流できるはず。……いや、もしかしたらもう小鳥さんのところに誰かたどり着いているかも」
雪歩「それじゃ、私たちも……」
真「うん。先へ進もう」
スタスタ…
837 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:42:12.24 ID:Ijlr45TlO
真「……ところで雪歩。ずっと気になってたんだけど、アダマンアーマーはどうしたの?」
雪歩「えっと……魔物さんと戦ってる時に壊されちゃって……」
真「そうだったんだ……。でもすごいじゃないか。アダマンアーマーなしで魔物に立ち向かったってことなんでしょ?」
雪歩「……やっとね、分かったんだ。私もいつまでも臆病なままでいられない……って」
真「見つけたんだね、自分の大切なもの」
雪歩「うん。でも、きっと私ひとりじゃ手に入れられなかったかも。たくさんの人たちに支えられて、私は生きてるんだなあって」
真「……いい顔になったね、雪歩!」ニコッ
雪歩「そ、そんなことないよぅ……///」
真「でも、大切なものを見つけたのはボクだって同じだよ。ベヒーモスとの戦いで勝ち取った女子力で小鳥さんに勝負を挑むつもりさ!」
雪歩「う、うん、期待してるね」
…ドゴオオォォン…!!
雪歩「!」
雪歩「真ちゃん、今の……!」
真「……魔力がないボクでも分かったよ。とてつもない魔法だって」
雪歩「……急いだ方がいいのかも」
真「……だね!」
タタタタ…
838 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:44:14.77 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B11F ー
ヒュゥゥゥ…
ガラ…
貴音「……っ」ヨロッ
貴音「はぁ、はぁっ……」
貴音(……骨を掴んだとはいえ、全力のめがふれあは身体への負担が普通の魔法とまるで違う……)
貴音(やはり人の身には過ぎた魔法、ということなのでしょう……)
貴音「………」チラッ
貴音(地形がかなり変わってしまいましたか。太陽爆発を以てすれば、それも当然……)
貴音(破壊に於いて最強の威力を発揮する魔法……。さしずめ神の裁きといったところですか)
「…………違うな。神の裁きはこれからだ」
貴音「!!」
839 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:46:23.37 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「…………ククッ!」
貴音「ばはむーと殿……っ!」
ダークバハムート「よもやここまで使いこなすとはな……。流石に今のは効いたわ……!」
ダークバハムート「………………いつつ。時間だ……」
貴音「く……届きませんでしたか……!」ガクッ
ダークバハムート「……ククク、躰の奥底から湧き上がる……! この得体の知れぬ感情は何だ……?」ゴゴゴゴ
貴音(全力でも届かないとは……甘く考え過ぎていたようです……)
貴音(やはり人が神を超える理など、存在しない……!)
貴音(皆……申し訳ありません……。わたくしでは神に勝つことなど……)
ダークバハムート「さあ、悔い改めよ。我が力の前にひれ伏せ……!」
ダークバハムート「ーーーーメガフレア」
貴音「ーーっ!」
ーーーーカッ!!
840 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:50:58.57 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B5F ー
ビューーン…
亜美「うわー! メッチャ楽チンだよこれー!」
真美「んっふっふ〜♪ レビテトとヘイストを同時にアレすればこんなカンジに武○術っぽくなるのだ!」
亜美「むー、白魔法もなかなかベンリなのが多くていいな〜」
真美「えー、でも黒魔法の方がハデっぽくてうらやましいけどな〜」
亜美「………」
真美「………」
亜美「……ま、どっちもどっちってカンジかね」
真美「そーだね。どっちにもいいトコロがあるっしょ」
真美「……それにしてもさ、さっきのすごい音」
亜美「うん。はげしすぎて思わず飛び起きちゃったよね」
真美「ずーっと下の方から聞こえたけど……誰かが戦ってるんだよね」
亜美「そーだと思う。それに亜美、なんとなく思うんだ。さっきの爆発、メガフレアなんじゃないかって」
真美「ってことは……お姫ちん?」
亜美「たぶん……」
841 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:55:18.26 ID:Ijlr45TlO
亜美「ねえ真美、お姫ちんはバハムートと仲良しなんだよね?」
真美「うん。バハムートの家の子たちとも仲良かったっぽいし」
亜美「お姫ちんが戦うとしたら、やっぱバハムートになるのかな……」
真美「………」
真美「……信じるしかないっしょ。あのお姫ちんが負けるなんて想像できないし」
亜美「ん……そーだよね」
真美「…………っと」キキーッ
亜美「おわっ……急に止まってどーしたのさ?」
真美「見て、亜美。この部屋だけメッチャボロボロになってる」スッ
亜美「……ホントだ。ここで戦いがあったのかな?」
真美「そーだと思う。誰かいるかもしんないし、見てみる?」
亜美「うん! 誰かいるといいね!」
真美「よーしっ、タンサク開始ー!」
842 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 20:59:20.01 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B10F ー
ヒュゥゥゥ…
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「タカネが二発、そして我が二発……」
ダークバハムート「ふむ……壁も階段も跡形も無く消え去ってしまった。これでは後からここへ来る者が不自由するやも知れぬな」
ダークバハムート「……まあ、その様なことはどうでも良いが」
ダークバハムート「………」チラッ
貴音「………」
貴音「…………ぅ……」ピクッ
ダークバハムート「………」
スタスタ
貴音「……く……!」
ダークバハムート「まだ息があるか……」
843 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:02:16.88 ID:Ijlr45TlO
貴音「……ぅ……はぁ……はぁ……」
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「生物というものは、世に生まれ落ちてから皆等しく死へと向かっている」
ダークバハムート「我とてその全ての生物の思考を把握しているわけではないが、命が潰える瞬間にその者の胸中を支配するのは多くの場合、恐怖なのだと理解している」
ダークバハムート「タカネよ。お前は死が怖いか?」
貴音「……怖い……。そう……ですね……」
貴音「死に対する恐怖よりも……今は……後悔の念の方が強いかもしれません……」
ダークバハムート「……そうか。仲間との誓いを果たせぬことへの後悔か」
貴音「……そ、それも……ありますが……」
貴音「……一番強いのは、ばはむーと殿……貴方の想いに……応えられなかった気持ちです……」
ダークバハムート「我の想いだと……?」
貴音「はい……。そんなお姿になられてまで案じていた世界を……わたくし自身の手で救えないことへの……貴方に託された願いを叶えることができないことへの……後悔です……」
ダークバハムート「……莫迦な。世界のことなど既に我の知ったことではない。我は今や闇に身を窶した身だぞ」
ダークバハムート「タカネよ、お前は思い違いをしている。我はお前と戦うことができればそれで満足なのだ。その他のことはどうでも良い。お前が居ればこそ、我の真に存在する意味があるのだ……!」
貴音「………」
貴音「……ふ、ふふっ……。その言葉……捉え方によってはまるで愛の囁き、ですね……」
ダークバハムート「……愛だと!? 戯言を!」
844 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:04:23.35 ID:Ijlr45TlO
貴音「わたくしが貴方の存在理由だと仰るのならば……わたくしを殺した後……貴方はどうなさるおつもりですか……?」
ダークバハムート「………」
貴音「……そもそも、神であられる貴方がたった一人の人間に執着するというのも不自然……うぐっ!」
ガシッ…!
ダークバハムート「……少々喋り過ぎだ」グッ
貴音「ぁ……!」グッタリ
ダークバハムート「知った風な口の聞き方だな、タカネよ。お前は我の心の声でも聴いたつもりか?」
ダークバハムート「大人しくすれば幾許かの時間を与えてやろうと思っていたが……。今すぐにでも死ぬか?」
ダークバハムート「我がほんの少し力を籠めればお前の頭と胴体は離ればなれになるぞ?」ググッ
貴音「ぅ……ぁ……!」
貴音(ここまで……のようですね……)
貴音(後悔は残りますが……ばはむーと殿の手によってわたくしの命が終わるのならば、それは因果応報というもの)
貴音(ばはむーと殿が闇に落ちたのは、わたくしの責任なのですから……)
貴音(魂を救って差し上げることができないのであれば、せめてその手に……)
貴音(………………いえ、それは駄目です……!)
貴音(わたくしがここで諦めてしまっては、あの子たちの想いを無碍にしてしまうことに……!)
貴音(あの幼子たちの健気な願いを……無駄になどどうして出来ましょうか……!)
845 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:07:38.22 ID:Ijlr45TlO
…ガシッ!
ダークバハムート「フン……どうした? やはり死が怖くなったか?」
貴音「ぐッ……!」ググッ
ダークバハムート「魔法でこそ比類無き強さを誇るお前も腕力は並の人間と変わらぬ。抵抗など無駄だと分からぬわけではあるまい?」
貴音「そ……れで……もっ……!」ググッ
貴音「おもい……だした……のです……!」
貴音「わた……くしは……しねない……っ!」
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「……死を受け容れたかと思えば今度は抗うか。何がお前をそうさせる? お前も所詮は生に醜く縋り付く凡百の人間と同じなのか……?」
貴音「……ぐ……ぅ……」
ギリッ…!
ダークバハムート「…………フン!」
ブンッ!
…ドサッ!
貴音「がっ……は……!」
846 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:10:12.52 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「タカネよ、お前は足掻く姿も美しい。だがその姿は何故か我を混乱させる」
ダークバハムート「だから……もう、死ね」スッ
貴音「……お、お待ち……ください……! 一つだけ、お訊きしたいことがあります……」
貴音「……なぜ……先ほど、わたくしの思考を読まれなかったのですか……?」
貴音「そうすれば……わたくしに問わずとも、生への執着の理由が簡単にお分かり頂けると思うのですが……」
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「死にゆく者は知る必要の無いことだ。我は邪神、冥土の土産すらも許さぬ」
ダークバハムート「ククク……! タカネよ、哭いてみせよ。お前の泣き顔が見てみたいぞ……!」
貴音「………」
貴音「……申し訳ありませんが」スッ
キラーン!
ダークバハムート「!!」
貴音「……けあるら!」
シャララーン! キラキラキラ…!
ダークバハムート「っ……愚かなっ!」ブンッ
ドゴオオオンッ!!
…スタッ
貴音「……はぁ、はぁ……!」
847 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:13:37.78 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「今の光はクリスタル……! 隠し持っていたのか……!」
貴音「……はい。欠片ですが」
ダークバハムート「クリスタルの輝きを目くらましに使うとはな」
ダークバハムート「闇属性の弱点を突いた、というわけか」
貴音「ばはむーと殿。冥土の土産は諦めることに致します」
貴音「それと、もしかしたらわたくしの泣き顔は貴方にお見せすることが出来ないかもしれません」
ダークバハムート「……ほう、強く出たな。相応の自信があるのだろうな?」
貴音「………」
貴音(はっきり言って策などありません。僅かに体力を回復出来たとはいえ、依然窮地は変わらず……)
貴音(ですが、気に掛かることが一つ)
ダークバハムート「ククッ! ならば行くぞ! 死んでおけば良かったと後悔させてやる!」
ブワッ…
貴音(残された魔力、大切に使わねば……!)
貴音「……てれぽ!」
シュンッ…
ダークバハムート「ぬ……! 逃げたか」
848 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:17:19.40 ID:Ijlr45TlO
貴音(………)
貴音(この位置ならば瓦礫のおかげでわたくしの姿がばはむーと殿の視界には入らない)
貴音(今のうちにめがふれあの詠唱を)
貴音「っ……!」ゴゴゴゴ
ダークバハムート「隠れても無駄だ。瓦礫ごと吹き飛ばしてくれるわっ!!」
ダークバハムート「……ぬんっ!!」ブンッ
ドゴオオオンッ!!
貴音「!」
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「……外したか」
ダークバハムート「何処だタカネ。何を考えている……?」
貴音(……やはり……)
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「面倒だ。全て破壊してやる」ゴゴゴゴ
…ザッ
貴音「それには及びません」スッ
ダークバハムート「……現れたな!」
貴音「…………めがふれあ!」
ダークバハムート「!」
ーーーカッ!!
ドゴオオオォォォオオンッッ!!!
849 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:19:35.02 ID:Ijlr45TlO
貴音「……く、はぁ、はぁ……!」ヨロッ
ダークバハムート「……ぐッ……!」ガクッ
貴音「……まだ稚拙ではあると……自覚はありますが、これでも幼き竜たちから受け継いだ力」
貴音「流石にばはむーと殿でも、三度めがふれあを受ければただでは済まないはずです」
ダークバハムート「……はぁ、はぁっ……! この我に、膝を着かせるとはなッ……!」
貴音「もちろん、これで決着とは思っておりません。ですが貴方もわたくしもお互いに手負い。ここからは五分の条件の戦いとなるはず……」
ダークバハムート「……どうやら……誤算だったようだな……。お前がここまで足掻くとは……クッ!」
ダークバハムート「……良かろう。ならば我も命を賭して戦おうぞ!」スッ
貴音「………」
ダークバハムート「………」
850 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:22:44.16 ID:Ijlr45TlO
貴音「………」
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「……いつまでそうして動かぬつもりだ。来ないのならば此方から行くぞ」
貴音「……わたくしが今、何を考えているかお分かりですか?」
ダークバハムート「…………何?」
貴音「いいえ、恐らく貴方は分からない。何故ならば……」
貴音「貴方は何らかの理由でわたくしの心を読めなくなっているのですから」
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「……フン、だから何だというのだ。お前の手の内など限られている。今さら心を聴くまでもないわ」
貴音「………」
貴音「これは推測で、何の確証もありませんが……」
貴音「ばはむーと殿。もしや貴方から『神としての力』が何らかの理由で失われつつあるのでは? 心を読めなくなったのもその兆候かと」
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「…………クククッ!」
ダークバハムート「先ほど言ったであろう? 我は既にお前の存在以外の事柄に興味などない!」
ダークバハムート「我自身にすら、な……!」ゴゴゴゴ
貴音「! ……これはっ……!?」
851 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:24:03.09 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「教えてやろう……。メガフレアの更に上を……!」
貴音(空気が……熱により膨張している!? 凄まじい魔力……!)
貴音(めがふれあは今からでは間に合わない。ならばせめて防御を!)
貴音「っ……!」ポゥ
ダークバハムート「何をしようと無駄だ。我の全てをお前に注ぐ」
ダークバハムート「受けよ。我の全力を!」
ゴオオオオオオオッ!!
貴音「くっ……!」ヨロッ
ダークバハムート「…………テラフレア」
ブゥゥゥン…
ーーーカッ!!
ズドオオオオォォォオオオオンッッ!!!
852 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:33:54.51 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B7F ー
スタスタ
響「………」
響(……うぅ、さっきから何回もすごいデカい音が聞こえてて、みんなのことが心配になるんだけど……)
響(今は、自分のことに集中しなきゃいけないよね)チラッ
伊織「………」グッタリ
響「伊織、あとちょっとガマンだぞ。ちゃんと自分が助けてあげるからね!」
響「それにしても……」キョロキョロ
響「すっごい水浸しだぞ、ここ。洪水でもあったのかなぁ……?」
響「この階でやよいが戦ってるって伊織が言ってたっけ」
響「やよい、無事だといいけど……」
響「……おーーーーい!! やよいーー!!」
響「いたら返事してーーーー!!」
響「………」
響「………」
響「………………やよい……」
響「やよいーーーーっ!!」
タタタタ
ーーースゥゥ…
響「!」ピタッ
「…………お主が探しているのはこの少女かの」
響「お前は、あの時の……!」
ブルードラゴン「………」
やよい「………」グッタリ
853 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:36:57.37 ID:Ijlr45TlO
響「やよいっ! ……やよいに何をしたんだっ!」
ブルードラゴン「敵意丸出しじゃのぅ。安心せい、ヤヨイは眠っているだけじゃ」
やよい「……zzZ」
響「えっ? そーなの?」
ブルードラゴン「この子は常人では考えられぬほどの魔力を放出した。それも長時間に渡ってな」
ブルードラゴン「この階層がほとんど水で埋め尽くされたのもこの子の魔力じゃよ」
響「うわ……すごいなやよい……」
ブルードラゴン「そして今は失った魔力を取り戻すために眠っているのじゃ」
響「そっか……良かった……」
響「でも、君は確かあの時襲ってきた親衛隊だよね? なんでやよいと一緒にいるの?」
ブルードラゴン「ワシはこの子と戦うことによって救いを得た。だからせめてこの子が眠っている間は魔物が襲って来ぬよう付き添っていただけじゃ」
響「そーだったのか! へへ、ありがと! やよいを守ってくれて!」
ブルードラゴン「……この子を連れて行くのか?」
響「うん。悪いけど自分たち、急いでるんだ」
854 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:39:20.64 ID:Ijlr45TlO
ブルードラゴン「しかしそなたは既に一人背負っている。眠っているこの子を連れて行けるのか?」
響「ふふん! 自分完璧だから、二人くらい背負っても全然余裕だぞ!」
ブルードラゴン「そうか。ならば連れて行くが良い」
響「ありがと!」
スタスタ
響「……よっと」
やよい「……zzZ」
伊織「………」グッタリ
響「おっとっと……」ヨロッ
ブルードラゴン「……やはり厳しいのではないかの?」
響「だ、大丈夫だぞ、これくらい!」
響(伊織もやよいも頑張ったんだ。自分だっていいとこ見せなきゃだもんね!)
響「……って」バシャッ
響「うぎゃー! ここって水浸しだから歩いて渡れないぞ〜!」
ブルードラゴン(面白き娘じゃの)
855 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:42:21.98 ID:Ijlr45TlO
ブルードラゴン「待っておれ。ワシが道を作ってやる」
響「えっ?」
ブオオオオオッ…!!
カチコチーン!
響「おおっ! 氷の道が出来た!」
響「助かったぞ! えっと……」
ブルードラゴン「? ……ワシの名前か? ワシはブルードラゴンじゃ」
響「ドラ左衛門、ありがとね!」ニコッ
ブルードラゴン「………」
856 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:46:39.25 ID:Ijlr45TlO
ブルードラゴン「……そうじゃ。ヤヨイが起きたら伝えておくれ。ワシもまた仲間と共に歩むことにした、と」
響「? 事情がよく分からないけど、分かった。さっきのお礼に頼まれてあげる!」
ブルードラゴン「……不思議じゃの、そなたらは。見ていると何故か温かい気持ちを思い出させてくれる」
響「そう……かな?」
響「んー……そうだなー。それは、自分たちがアイドルだからだと思うぞ」
響「アイドルってさ、みんなに笑顔と元気をあげるのが役目なんだ」
響「やよいはきっと、君に笑顔をあげたんだ。心があったかいのはそのせいじゃないかな?」
ブルードラゴン「笑顔……か。ふむ」
ブルードラゴン「……引き留めてすまなかったの。さあ、もう行くが良い」
響「うん。……さよなら!」
スタスタ
ブルードラゴン「………」
ブルードラゴン(……さらばじゃ、あいどる。ありがとう、太陽の如き慈愛の少女よ)
857 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:49:07.86 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「これが……我の全てだ、タカネよ」
ダークバハムート「我の……最後の技だ……」
ダークバハムート「テラフレアを受けて尚立っていることが出来たなら、お前は……」
ダークバハムート「……クッ……!」ヨロッ
…ザッ
貴音「………」
ダークバハムート「……クククッ!」ニヤリ
858 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/04(土) 21:51:28.48 ID:Ijlr45TlO
またやった
≫857から地下10階です
859 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:53:33.92 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「予感はあった。お前が欠片を持っていた時からな」
ダークバハムート「クリスタルの欠片がお前を護ったのだな」
貴音「………………はい」
ダークバハムート「クリスタルは想いを?ぐ石。お前を護りたいという強い願いがそれに籠められていた」
ダークバハムート「我にも聴こえたぞ。お前を護る声が」
ダークバハムート「そしてその声には聴き覚えがある」
ダークバハムート「願いの主は…………ぷろでゅうさぁであった」
貴音「………」
ダークバハムート「我の…………敗けだ」
…ドサッ
貴音「! ばはむーと殿!」
タタタタ
860 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 21:57:38.48 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「グハァッ……!」
貴音「ばはむーと殿……」
ダークバハムート「……先ほど言ったな。『我も命を賭して戦う』と」
ダークバハムート「テラフレアは生命を燃やす技……。それ故、後には何も残らぬ」
ダークバハムート「……後はただ、死を待つのみだ」
貴音「っ……!」
貴音「ばはむーと殿、わたくしは……!」
ダークバハムート「っ……ハァ、ハァ……」
ダークバハムート「無様な最期と嘲笑うか? 神と名乗った者がこの様な末路……」
ダークバハムート「……否。お前はそうは思わぬだろうな」
ダークバハムート「お前は心優しき女。我の様な成れの果てにすら慈悲を持つに違いない……」
貴音「違うのです!」
貴音「わたくしはずっと苛まれてきました。あの時、貴方を一人小鳥嬢の元へ残してしまったことに」
ダークバハムート「何を莫迦なことを。あれは我の判断だ。お前がまだコトリと戦うレベルに達していないと、そう判断しての行動だ」
ダークバハムート「お前に非があるわけがなかろう」
貴音「いいえ。『でじょん』なる魔法にて地上まで戻されたあの時、ばはむーと殿を助けに向かうこともわたくしには出来たのです」
貴音「それをしなかったのは、魔導船にて地球へ向かえる、仲間たちに会えると知って浮かれてしまったわたくしの心の弱さなのです」
ダークバハムート「……強情な女だ。それこそ我がお前に託した願いだ。重ねて言うが、お前に非があるはずもない」
貴音「……もちろん、心優しき貴方ならば、きっとそう言ってくださると分かっておりました」
貴音「だから、わたくしは無意識のうちにそれに甘えようとしたのです。貴方のその言葉で、わたくしは許されようと……!」
ダークバハムート「………」
861 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 22:03:20.59 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「……一つ、教えてやろう」
ダークバハムート「我が神としての力を失いつつあるというお前の推測は、正解だ。我は既に神の資格を失った」
ダークバハムート「何故だと思う?」
ダークバハムート「我が…………タカネ、お前を愛しいと強く想ってしまったからだ」
貴音「そう、ですか……。ばはむーと殿がわたくしを愛しいと……」
貴音「……………………え?」
貴音「なっ……///」カァァ
ダークバハムート「神は全てを平等に愛さねばならない。……だが、我はお前を……」
ダークバハムート「…………タカネ?」
貴音「おっ……お戯れを……! わ、わたくしは、そのっ……い、愛しいなどと急に言われましてもっ……///」
ダークバハムート(……愛い奴め)
862 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 22:06:27.28 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「……済まぬ。お前がそこまで初だとは思わなかった」
貴音「うぅ……その様な、あ、愛の言葉、言われたのは初めてです……」
ダークバハムート「ふ……」
ダークバハムート「……矢張り、我には後悔などない」
貴音「…………ばはむーと殿?」
ダークバハムート「お前は我がコトリに敗れ、闇へ堕ちたことに責任を感じている。或いは、神ですらなくなったことにも」
ダークバハムート「だが、それで良かったと我は考える」
ダークバハムート「何故なら、愛がこの様に素晴らしいものだと気づくことが出来たのだからな」
貴音「…………」
ダークバハムート「待つ時間は焦がれ、想いを馳せると寂しさと愛おしさの入り混じった何とも言えぬ気分になる」
ダークバハムート「だが、その辛さが会った時には天に昇る程の快楽へと昇華する」
ダークバハムート「本当に不思議な感情だ」
ダークバハムート「……それに気づかせてくれたのは、お前だ、タカネよ」
ダークバハムート「お前は我を救うことに固執していたようだが、それは全て無駄だったのだ」
ダークバハムート「何故ならば……我は最初にお前と出会った時点で既に救われていたのだからな」
貴音「その様な、勿体ないお言葉……!」
863 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 22:10:58.43 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「……もう一つ。お前はこの期に及んで隠しているつもりのようだが、敢えて言わせてもらおう」
ダークバハムート「お前は……お前たちは、この世界の人間ではないな?」
貴音「! 何故、それを……!」
ダークバハムート「分からいでか。偶に発するお前の奇妙な言動を考慮すれば容易に察知することが出来たぞ」
貴音「……すみません。何と説明すれば良いか分からなかったので……」
ダークバハムート「良い。我は滅びる運命だ。お前が本当は何処から来たのか。冥土の土産は持たずに逝こう」
ダークバハムート「それに恐らくは、我の測り知れぬ力が働いているのであろう。あのぷろでゅうさぁという男を見た時にそう思った」
貴音「………」
864 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 22:13:45.05 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「だが、お前が何者であろうと、理解を超えた存在であろうと、我の中に芽生えたこの感情は変わらぬ」
ダークバハムート「死ぬまでの僅かな時間、お前を愛することを許せ」
貴音「ばはむーと殿っ……」
ダークバハムート「……その様な悲しい顔をするな。戦っている時はああ言ったが、本心はお前の悲しむ顔など見たくはないのだ」
貴音「………」
貴音「……前言を撤回させて頂いても、よろしいでしょうか……」
ダークバハムート「……構わぬ」
貴音「貴方に泣き顔を見せないと言いましたが……」
貴音「どうやら……っ」ウルッ
ダークバハムート「………」
ダークバハムート「泣くな。……いや、存分に泣け。それで晴れるのならば」
貴音「っ……ひぐっ……!」ポロポロ
貴音「ううっ……!」
865 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/04(土) 22:18:30.54 ID:Ijlr45TlO
ダークバハムート「……ガハァッ!」
貴音「ば、ばはむーと殿っ!?」
ダークバハムート「……最期は近いようだな……」
貴音「ぅくっ……!」ポロポロ
ダークバハムート「タカネよ、頼みがある……」
貴音「は……はいっ……!」
ダークバハムート「最期は愛する女の腕の中で逝きたい……」
貴音「っ……わ……分かり……ました……」ダキッ
ダークバハムート「……ああ、温かいな……。お前はこんなにも温かいのだな……」
ダークバハムート「今この瞬間は……恐らく何ものにも勝る……」
貴音「うぅ……っ!」
ダークバハムート「……コトリに……会ったら……伝え…て…くれ……。お前との時間……悪く無かった……とな……」
貴音「は、はい……! 必ず……!」
ダークバハムート「それと……あの子たちに……済まぬ……と……」
貴音「ぐすっ……! はいっ……!」
ダークバハムート「た……タカネ……」
ダークバハムート「お……まえ……に……会え……て……」
ダークバハムート「し……あ……わせ……だ……っ……」
ダークバハムート「」ガクッ
貴音「っ……ぁ……!」
貴音「〜〜〜〜っ!!」ポロポロ
866 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/04(土) 22:21:27.07 ID:Ijlr45TlO
続きは明日の夜に
明日の投下後に次スレ移行します
次こそは最終スレになります(たぶん)
867 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/04(土) 22:22:39.76 ID:yMn3WB6cO
バハムート…貴方はやはり最期まで漢だった…
貴音ルート終わりと考えて残りは律子のみか?
あれ?春香と律子の二人で戦ってるんだっけ?
868 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/04(土) 22:24:18.88 ID:yMn3WB6cO
>>866
まあさすがにそうならないと本当にfinal詐欺に…
869 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/04(土) 23:58:32.00 ID:1lQZ4Rq3o
乙!
そういえばfinalってこのスレの前にもついてたんだっけ
今更そんなの気にしないで続きをまた待ってます!
870 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2017/11/05(日) 20:06:53.33 ID:f99GTpNXO
ー 月の地下渓谷 B11F ー
春香「やぁぁぁぁあああっ!!」タタタタ
春香「えいっ!!」ブンッ
ガキィンッ!!
クルーヤ「……よっ」ブンッ
春香「!」
ダッ
…スタッ
春香「………」チャキッ
クルーヤ「……これはどうかな?」ブンッ
春香「……えいっ!」
ガキィン!!
クルーヤ「それっ」ブンッ
春香「……やっ!」カキン
クルーヤ「!」
春香「たぁぁぁっ!」ビュッ
クルーヤ「うおっと!」ヒョイッ
クルーヤ「……ふふ、ハルカもあれからかなり経験を積んだみたいだね。あの時とは本当に別人のようだよ」ニコッ
春香「えへへっ♪ ありがとうございます! じゃあ、もうちょっと本気出してもいいですか?」
クルーヤ「ははっ、遠慮はいらないよ。持てる力全てでかかってくるといい!」
クルーヤ「お父さんが全て受け止めてあげるよ!」
871 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:08:49.61 ID:f99GTpNXO
春香「………」チラッ
春香(……お姉ちゃん……)
律子(? 春香……?)
春香「……よしっ!」グッ
春香「……行きますよ、お父さん!!」チャキッ
春香「大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならんっ!!」
春香「無双……稲妻突きッ!!」ブンッ
ズガガガッ!!!
クルーヤ「!」
ダッ
クルンッ…スタッ
春香「わぁ、流石はお父さん! 私の技なんて軽々とかわしちゃうんですね!」
クルーヤ「あ……ああ、うん。ハルカもなかなかやるじゃないか」
律子(軽々と……?)
律子(今のクルーヤさんの動き、少し違和感があった気がする)
律子(まるで、技を見てから受けるより躱すことを選択したような……)
872 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:10:07.59 ID:f99GTpNXO
春香「次ですよっ!!」
春香「死兆の星の七つの影の……経絡を絶つ!!」チャキッ
春香「北斗……骨砕打ッ!!」ブンッ
ズドドドドドドドッ!!!
クルーヤ「くっ……!」ダッ
春香「えーいっ!!!」ブンッ
ガキィンッ!!
クルーヤ「っ……!」
春香「これも止められちゃいますかぁ……。うまく使いこなせてる自信はあったんだけどなぁ」
クルーヤ「ま、まあね。はははっ」
律子(こうして春香の戦いぶりを見るのはずいぶん久しぶりのような気がするけど、なんだかあの子、技のキレがすごいことになってない?)
律子(気のせいかしら……)
873 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:11:52.62 ID:f99GTpNXO
春香「続けて行きます!!」
春香「鬼神の居りて乱るる心……されば人、かくも小さきものなり!」チャキッ
春香「乱命……割殺打ッ!!」ブンッ
ドガアアアンッッ!!
クルーヤ「くっ……!」
ズザザザザッ!
律子(クルーヤさんを吹き飛ばした……!?)
律子(本当にどうなってるの、あの子……)
クルーヤ「………」
春香「あっ……大丈夫ですか!? 私、ちょっとやり過ぎちゃったかも……」
クルーヤ「……大丈夫だよ」
クルーヤ(最初の無双稲妻突きでまさかとは思ったけど……今ので確信した)
クルーヤ(ハルカはすでに、ボクのレベルを超えている……!)
874 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:13:53.01 ID:f99GTpNXO
クルーヤ(でもなぜだ? 長い長い旅を経てハルカも成長したんだろう。それはわかる)
クルーヤ(けれど、彼女の中にはまだ闇がいるはず。闇の心を持っている限り、聖剣技を完璧にマスターすることはできない)
クルーヤ(だというのに、ハルカの剣気には微塵も闇が感じられない)
クルーヤ(まさか……)
クルーヤ「……ところでハルカ。君の闇は元気にしてるかい?」
春香「闇って……ああ、ヤミちゃんのことですね?」
春香「ヤミちゃんとはその、いろいろあってお別れしたんです。せっかく仲良くなれたのに残念でしたけど……」
クルーヤ「そうだったのか……」
クルーヤ(やはりそうか。つまり、ハルカは今や心身共に完全なる聖騎士だ。さらに、ボクの力を上回っている)
クルーヤ(少し予定とは違うけれど、今のハルカになら『あの技』を託せるかもしれない)
クルーヤ(ボクもまだ完全に使いこなせていない、最強最後のあの技を……!)
875 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:15:59.62 ID:f99GTpNXO
春香「最後の技は、とっておきですよ!」
春香「はぁぁぁああっ……!」ゴゴゴゴ
律子(! 春香、いつの間にこんな力を……!?)
クルーヤ「く……!」ズサ
クルーヤ(なんてこった……! ボクが娘の剣気のみに圧倒されているなんて……!)
春香「命脈は無情にして惜しむるべからず…………葬る!!」チャキッ
春香「不動……無明剣ッ!!」ブンッ
ズドオオオオオンッッ!!!
クルーヤ(まずい、これは躱すことも受け切ることもできない!)
クルーヤ(仕方ないか……!)
クルーヤ「はあああああっ!!」ゴゴゴゴ
クルーヤ「……せいっ!!」ブンッ
キラキラキラ…
春香「えっ……」
ドゴオオオオオオンッ!!!
春香「きゃあっ!!?」
ドガッ…!!
ドサッ
律子「は、春香っ!」
タタタタ…
876 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:18:18.69 ID:f99GTpNXO
律子「春香、しっかりして!」ダキッ
春香「うぅ……」グッタリ
クルーヤ「……しまった、つい力が入ってしまったか……」
律子「春香! 春香っ!」
春香「……へ、平気……です……えへへ……」
律子「平気なわけないじゃない! 血が……!」
春香「か……かすり傷ですよ、かすり傷……っ」
律子「と、とにかくポーションを!」ゴソゴソ
クルーヤ「……すまない。ボクはまだ、消えるわけにはいかないんだ」
クルーヤ「けど、これでリツコが立ち上がるしかなくなったね」
クルーヤ「さあ、君はどうする? リツコ」
律子「………」
律子(私は……私を呪うわ)
律子(大切な妹さえ助けてあげられない……)
律子(誰かを傷つける力は持っているくせに、大事なものを守る力を持っていないなんて……!)
律子(ああ、なんで私は…………っ!)
春香「……ダメ……ですよ、お姉ちゃん……」ギュッ
律子「は、春香……」
春香「お姉ちゃんには……怖い顔よりも、笑顔の方が似合うんですから……。えへへ……」
律子「っ……!」
877 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:20:45.89 ID:f99GTpNXO
律子(……そうよ、そうだった)
律子(自分を責めることなんて後からでもできる。春香を守りたいのなら、恨みに任せちゃだめ。思考を停止しちゃだめ!)
律子(考えなさい、律子! きっと打開策はあるはず!)
律子(何か……今の状況を変えるような策が……)
クルーヤ「何を考えているのかな? ボクを倒す算段か、それとも逃げる方法?」
クルーヤ「分かっていると思うけど、逃げるのは不可能だよ」
律子「ちょっと黙っててください!」
クルーヤ「あっ…………はい」シュン
律子(……そういえばクルーヤさんが言ってたっけ。ヒントがどうのって)
律子(確か、『メテオは封印されし魔法である』、『光あるところに闇あり。その逆もまた然り』、『天より降り注ぎし隕石、赦されざるものを討ち滅ぼす』……だったわね)
律子(あの人が私にヒントを出したタイミングを考えれば、これらはメテオを使いこなす為のヒントと捉えることができる)
律子(封印されし魔法……光あるところに闇あり……天より降り注ぎし隕石……)
律子(………)
律子(……これって、まさか……)
『……お父さんの娘であり、私が尊敬する大好きなお姉ちゃんですっ!』
律子(……あ……!)
878 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:22:43.67 ID:f99GTpNXO
律子(私はなんて馬鹿なの……)
律子(春香もクルーヤさんも、私に示してくれていたんだ。私が進むべき道を)
律子(ちゃんと二人の言葉に耳を傾けていれば、もっと早くこのことに気づいていたのに)
律子(……って、後悔しても仕方ないわね。今は私がやるべきことをやらなければ!)
律子「………」スクッ
春香「……お姉……ちゃん……?」
クルーヤ「……ようやく立ち上がってくれたか。そのまま心が折れてしまうかと思ったよ」
律子「……返す言葉もありませんね」
クルーヤ「ふふ。それで、答えは出たのかい? リツコ」
律子「……ええ、まあ」スッ
…カランッ
クルーヤ「! 剣を……捨てた……?」
879 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:24:42.66 ID:f99GTpNXO
春香「お姉ちゃん、なんで剣を……?」
律子「もっと早くに気づくべきだった。この戦いが始まった時に」
律子「……いいえ、もっと前に。トロイアの洞窟で春香、あなたと再会した時に」
春香「えっ……」
律子「もう迷わない。挫けない。後悔しない」
律子「私は……」
律子「私は、変わってみせるっ……!!」ゴゴゴゴ
クルーヤ「リツコ……!」
律子(私にもできるはず……! 私にもなれるはず……!)
律子(だって、あの子が私を信じてくれているんだもの……!)
律子(だから……!)
律子「私の中から出て行きなさい…………闇よ!!」
…パァァァーーーー!!!
律子「…………ケアルガ!!」
シャララーン! キラキラキラ…!
春香「!」
クルーヤ「…………大正解だよ、リツコ。100点満点だ」ニコッ
880 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:27:18.86 ID:f99GTpNXO
律子「できた……! 私にも、回復魔法が……!」
春香「お姉ちゃん……!」
律子「春香、大丈夫?」
春香「……えへへっ♪」ダキッ
律子「ちょ、ちょっと……!」
春香「私、信じてました。だから全然驚いてません。お姉ちゃんならきっと、自分の力で殻を破ることができるって!」
律子「良かった……!」ギュッ
クルーヤ「……癒やしの光は聖騎士の証。大切なものを守りたいという願いが、闇を打ち滅ぼした」
クルーヤ「おめでとうリツコ。これで君もボクたちと同じ、パラディンになったんだよ」ニコッ
律子「私が、パラディンに……」
律子「ありがとう春香。あなたのおかげよ」
春香「いいえ、そんなことないです。これはお姉ちゃんの実力です!」
春香「……あれ? でもケアルガ?」
春香「私、ケアルラしか使えないんですけど?」
クルーヤ「それはまあなんていうか、才能の差……かな?」
春香「うぅ……なんかショック……」ズーン
881 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:30:09.13 ID:f99GTpNXO
律子「……クルーヤさん。聞かせてもらえませんか?」
クルーヤ「うん? 何をだい?」
律子「あなたの本当の目的です」
律子「あなたはただ私たちの足止めをするためにここで待っていた、ってわけではないんでしょう?」
春香「あ、それ、私も気になってました」
クルーヤ「…………そうだね、わかったよ。今の君たちなら、きっと大丈夫だろう」
クルーヤ「ボクがここでハルカとリツコ待っていた理由は二つある」
クルーヤ「一つは、君たちがコトリさんと戦えるレベルかどうかを見極めるため」
春香「えっ……」ドキッ
律子「………」
クルーヤ「ははっ、二人ともそんな顔しなくてもいいよ。リツコは無事パラディンにジョブチェンジできたし、ハルカの素晴らしい実力も確認した」
クルーヤ「君たちは強い。身体も、心もね」
春香「良かったぁ……。お父さんに認めてもらえれば百人力ですね!」
律子「……ま、その言葉は素直に受け取っておきましょうか」
クルーヤ「そしてもう一つは、君たち二人にプレゼントを渡すためなんだ」
春香「プレゼント……ですか?」
律子「………」
律子(……クルーヤさん、自分でこの世の存在ではないって言ってたし、プレゼントというよりも形見のつもりなんじゃないかしら)
律子(そんな風に考えるのは野暮なのかもしれないけど)
882 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:32:45.81 ID:f99GTpNXO
クルーヤ「まずは、リツコ」
律子「はい」
クルーヤ「プレゼントだ。ボクの使っていた剣を君に託すよ」
律子「剣を? いいんですか?」
クルーヤ「リツコが使っていた剣は君が聖騎士になったことでその役目を終えたんだ。せっかくジョブチェンジしたっていうのに武器も持ってないんじゃ格好つかないないだろう?」
律子「………」
クルーヤ「遠慮なんかしなくていいさ。ボクにはもう必要のないものだからね」
律子「いえ、遠慮っていうか……これもまた罠なんじゃないかって疑っているんです」
クルーヤ「うっ……」
クルーヤ「あ……あはは、まあ最初に騙したのはちょっとした余興みたいなものだよ。……でも今回のは、正真正銘ボクの親心なんだ」
春香「お姉ちゃん、受け取ってあげてください。お父さんは悪意を持って人を騙すような人じゃないです。私が保障します!」
律子「……そうね、春香がそう言うなら、有り難く受け取っておくわ」スッ
クルーヤ「その剣の名は『エクスカリバー』。この世に二振りと無い聖剣だ」
律子「聖剣、エクスカリバー……」チャキッ
春香「わぁ、なんか私の『ライトブリンガー』とお揃いで姉妹って感じですねっ♪」チャキッ
クルーヤ「そうだね。光をもたらす剣に、王たる剣。どちらもこの世界に無くてはならない存在だ」
律子「ふむ……」スチャ
律子(エクスカリバーって円卓の騎士アーサー王の剣だったわよね、確か)
律子(うーん、猫に小判にならないようにしなきゃ)
883 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:35:20.78 ID:f99GTpNXO
律子「それで、春香にはどんな贈り物を?」
クルーヤ「うん。それなんだけど……」
クルーヤ「ハルカへのプレゼントは、少しだけ時間を必要とするものなんだ」
律子「時間がかかるもの……?」
春香「あの、お父さん。でも私たち、そんなに時間は……」
クルーヤ「わかってる。世界を救う戦いに水を差すような真似はボクもしたくはない。でもその大事な戦いにおいてきっと役に立つものだから、是非ハルカに受け取って欲しいんだよ」
春香「うーん……お父さんがそこまで言うなら……」
クルーヤ「……ん?」ピクッ
春香「? ……どうかしたんですか?」
クルーヤ「どうやらお客さんみたいだ。地下11階に足を踏み入れた者がいる」
律子「もしかして、アイドルの誰かが?」
クルーヤ「どうやらそうみたいだね」
春香「お姉ちゃん、合流しましょう!」
律子「ええ。小鳥さんのところへ向かう前に体勢を整えなきゃ」
クルーヤ「あ、言ってなかったけどボクたち三人が今いるのはもとの世界とは別次元なんだ。だからここへたどり着いた子がハルカやリツコと会うことはできない」
春香「へ? 別次元……?」
884 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:38:08.75 ID:f99GTpNXO
律子「……詳しい説明をお願いします」
クルーヤ「ほら、君たちがここへ来た時に言ってたろ? この階の出口が見つからない、いくら進んでもずっと同じ景色だって。あれはこの階の入り口に次元の歪みを作っておいたからなんだ。君たち二人は、それに気づかずに歪みへ迷い込んだ」
春香「次元のひずみ……ですか」
クルーヤ「そう。ボクたちが今いるこの場所は、言ってみれば次元と次元の隙間……次元の狭間ってところかな」
律子「……えーっと、要約すると親子水入らずになるための手の込んだ誘拐って感じですか。あなたは私と春香のことを待っていたんでしょう?」
クルーヤ「まあ、そういうことだね」
律子「でも、もしここへ最初にたどり着いたのが私たちじゃなかったらどうするつもりだったんですか?」
クルーヤ「その時は次元の歪みは開かずに、ここへ迷い込むこともない。君たち以外のあいどるは何事もなく地下11階を通り抜け、最深部の地下12階……コトリさんのところへ行っているだろうね」
律子「ふーん、よくできてるんですね」
春香「じゃあ、みんなとはまだ会えないんですか?」
クルーヤ「ボクとしても目的があるから、それを遂げるまでは我慢してもらいたい」
春香「そ、そうなんですか……」
律子「………」
律子「すみません、ちょっとお願いがあるんですけどいいですか?」
春香「……お姉ちゃん?」
885 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:41:03.98 ID:f99GTpNXO
ー 月の地下渓谷 B9F ー
「……起きて。ねえ、起きて」
美希「……ムニャ……」
「美希、起きて」
美希「んぁ……」
「起きなさい、美希」
美希「……ん……うん……」
美希「んん……」ムクッ
千早「……良かった、やっと起きたのね」
美希「あ、千早さん……。おはよ〜なの。……あふぅ」
千早「予想はしていたけれど、本当に寝ているとは思わなかったわ」
美希「ただ寝てたわけじゃないよ? 戦いが終わったからちょっぴり休憩してたの。ほら、魔力だって回復しなきゃでしょ?」
千早「それはそうだけど、こんなところで寝ていたら危ないと思うのが普通だと思うけど……」
美希「んー、それはたぶんへーきなの。ミキって結構運良いし」
千早「まあ……そうね。結果的に無事だったんだから良しとしましょうか」
886 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:44:41.37 ID:f99GTpNXO
美希「ねえ、千早さんがここにいるってことは……」
千早「ええ。上の階はなんとか通ることができたわ」
美希「さっすが千早さんなの!」
千早「美希の方も、もうカタはついているのよね?」
美希「うん。じゃなきゃさすがのミキも寝たりしないって思うな」
千早「それでも美希なら戦闘の最中に寝そうではあるけどね」
美希「む〜、ヒドいの!」
千早「春香や四条さん、律子は?」
美希「先に進んでもらったよ。たぶん、三人も今頃戦ってるところじゃないかな?」
千早「そう。じゃあ私たちも急がないと」
美希「あ、待って」
美希「……ケアルガ!」
シャララーン! キラキラキラ…!
美希「千早さん、少しだけ疲れた顔してたから。ロクに回復してないでしょ?」
千早「ありがとう、美希」
美希「んーん。最後の戦いはきっと今までで一番タイヘンな戦いになるから、少しでもいいコンディションでいなきゃ」
千早「本当に有り難いわね、白魔法は。大抵の怪我は治ってしまうんだから」
美希「……それでも、きっと治せないものもあるって思うな」
千早「え?」
美希「千早さん、あのね。もし最後の戦いで誰かが……」
美希「……ううん、ゴメンね。今のは忘れて」
千早「美希……?」
美希「さ、行こっ♪」ギュッ
千早「え、ええ」
887 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:48:27.48 ID:f99GTpNXO
ー 月の地下渓谷 B11F ー
貴音「………」スタスタ
貴音「………」
貴音「………………ぐすっ」
貴音「………」ゴシゴシ
貴音「…………ふむ」キョロキョロ
貴音「なんとも静かで面妖な場所です。魔物の気配すら感じ取ることができませんね」
貴音「律子嬢や春香は、既にここを抜けて小鳥嬢の元へ辿り着いているのでしょうか……?」
…ザッ
貴音「!」
「……あら、貴音だったのね」
貴音「律子嬢!?」
貴音「い、一体どこから現れたのですか? つい先ほどまで気配すら感じられなかったはずでしたのに……」
律子「ごめん。ちょっと異次元行ってたのよ」
貴音「はて……? 異次元……ですか?」
律子「まあ、ヤボ用があってね」
貴音「春香はどうしたのですか? それに、律子嬢の纏う雰囲気が以前とは全く違うような……」
律子「向かいながら話すわ。とりあえず進みましょう」
貴音「……分かりました」
スタスタ…
888 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:51:00.84 ID:f99GTpNXO
貴音「……なるほど、くるーやという方は律子嬢と春香の父君でしたか」
律子「ええ。どうやら彼は私たちにお土産を用意して待っててくれたみたい」
貴音「それで、春香は今もその異次元でくるーや殿から土産とやらを享受しているところなのですね?」
律子「そうよ。なんか時間かかりそうだったから、とりあえず私だけ抜けて来たってわけ」
律子「父親っていってもあくまで架空の世界の話だから、特に感慨が湧くってわけでもないんだけどね」
律子「まあでも……彼のおかげで私はパラディンになれたんだし、一応感謝はしているわ」
貴音「……ふふっ」ニコッ
律子「な、なによ?」
貴音「律子嬢から邪悪の気配が完全に絶たれたことが、わたくしは何より嬉しいのです。それに、何やらとてもすっきりとされている様子。もう、気持ちに一片の曇りも無いようですね?」
律子「……まあねー。あれだけネガってた自分が嘘みたいに、今はすごく気分が晴れてるのよね」
律子(クルーヤさん……か。なんか変わった人だったなぁ)
律子(ありがとう。…………行ってきます、お父さん)
889 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:54:51.45 ID:f99GTpNXO
律子「心配かけてごめんね、貴音」
貴音「いえ、良いのです」
律子「貴音の方も無事で良かったわ。その……大切な友達だったんでしょ?」
貴音「………」
貴音「わたくしは、あの方の魂を救うつもりで戦いに挑んだのですが……」
貴音「……結果、救われたのはわたくしの方でした」
律子「貴音……」
貴音「ばはむーと殿がわたくしにとってどの様な存在だったか。それは今考えてみても答えを出すことができません。……ですが、これだけは自信を持って言えます」
貴音「ばはむーと殿に出会うことが出来て、本当に良かった、と」
律子「そう……」
律子「ねえ貴音。あなた、前より綺麗になったんじゃない?」
貴音「なっ、何をいきなり……?」カァァ
律子「なんか雰囲気が少し大人びたっていうか……。ひょっとしてバハムートさんと何かあった?」
貴音「ななな何かとはどういう意味ですか!? わ、わたくしはやましい事は何も!」
律子「でも、貴音が大人っぽくなったっていうのは私の正直な感想よ?」
貴音「うぅ……ぱらでぃんになられた律子嬢はいけずです……」
律子「あははは! ごめんね、からかうわけじゃないのよ。ただ、春香の言った通りだったなーって」
貴音「春香の……?」
律子「ほら、ここへ来る前に春香がみんなの決意を固めるために言った言葉があったじゃない? 『小鳥さんがラスボス役を演じてくれたから私たちは強くなれた』って」
貴音「……なるほど、律子嬢の中で気持ちが吹っ切れたのも、わたくしに小さな変化があったのも、全ては小鳥嬢の思惑通り、ということですか」
律子「小鳥さんがそこまで考えてたかどうかは分からないし、クルーヤさんやバハムートさんはもしかしたら小鳥さんの思惑とは別に動いていたのかもしれない」
律子「でもね、今のこの状況は、小鳥さんがラスボスをやってくれてるからある状況なのよ」
律子「だから、そこだけは感謝しなきゃ、って」
貴音「……ええ、そうですね」
890 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2017/11/05(日) 20:57:54.46 ID:f99GTpNXO
律子「世界ってさ、勝手に回るものだって今まで思ってたけど、本当はそうじゃないのよね」
律子「この世界はもうゲームとは全く違う道に進んでる。それはきっと、私たちがゲームのキャラではなく、意思を持った一人の人間だから。私たちだけじゃない、この世界に生きる人たち全てがそう」
律子「もしもその全ての意思が絡み合って、それが素敵な物語を紡ぐんだとしたら……」
律子「そんな風に考えると、ちょっとロマンチックじゃない?」
律子「……なーんてね、ふふっ♪」ニコッ
貴音「………」
貴音「律子嬢、ぱらでぃんになられて少々可愛らしくなりましたか?」
律子「う、うるさいわね、私だってそういうこと考えたりする時もあるわよ」
貴音「ふふっ、先ほどの仕返しです」ニコッ
…ザッ
律子「………」
貴音「………」
律子「この階段を降りれば……」
貴音「……ええ」
律子「貴音、心の準備はいい?」
貴音「整っております。……いざ、参りましょう」
律子「よしっ! それじゃあいっちょ世界を救いに行ってきますか!」
スタスタ…
891 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/05(日) 20:59:49.24 ID:6GDhUoGSO
デ!デ!デ!デカマラ!
892 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/05(日) 21:00:00.93 ID:f99GTpNXO
ここまでです
次スレ立ててきます
893 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2017/11/05(日) 21:21:38.96 ID:f99GTpNXO
次スレP「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL3
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509884229/
894 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/01/22(水) 00:05:21.70 ID:yAUtt+Eh0
●
895 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[age]:2020/08/15(土) 21:53:38.87 ID:VM4qoLI3O
加藤純一(うんこちゃん) Youtubelive
PS4アーカイブス/ゲーム発掘枠
『8月ゲーム部』
(21:26〜放送開始)
://youtube.com/watch?v=RoQBo1Qf53Q&t=0s
896 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/05(火) 00:32:08.37 ID:sHZl9DEdo
あ
897 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[age]:2023/05/27(土) 15:36:15.59 ID:vx5D4UAlO
『なんかおもろいゲームをやる』
※ジャンル、ハード不問
雑談
(15:08〜開始)
https://www.twitch.tv/kato_junichi0817
925.76 KB
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