P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2

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648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:34:46.40 ID:Cs5pkJBqO

亜美「うわぁ……もう亜美の魔法何発ブチ込んだかわかんないけど、しぶといなぁ」

真美「真美、まだ全然カツヤクしてないし、むしろ大歓迎だよ!」



金竜「……はぁ、はぁっ……」

金竜(……姉妹、か……)


『もしも亜美がピンチになったとしても、真美を盾にして亜美だけ生きのびるなんてことだけは……ゼッタイにしない。したくない!』

『亜美はカンタンにやられちゃったりしない強い子だもんモンねっ! 真美、信じてるもん!』



金竜(………)

金竜(我は、間違っていた……)

金竜(銀竜……)チラッ

 

銀竜「」カチコチーン



金竜(勝負とは非情なもの……。しかし……) 

金竜(お前を犠牲にして勝利したとしても、そこにはなんの意味も無いのだっ……!)

金竜(何故ならば……)



金竜「我らは、二人で共にあいどるになると誓い合ったのだからっ……!」

649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:37:30.94 ID:Cs5pkJBqO

真美「ん? なんか金ぴょん、おかしなこと言い出したよ?」

亜美「うーん、よくわかんないけど、金ぴょん銀ぴょんは亜美たちを倒してアイドルになりたいんだってさ」

真美「ふーん、変なのー。ピヨちゃんのオロシガネってヤツかな?」

亜美「たぶんねー。でも、金ぴょんには悪いけど、二人がアイドルになるのはさすがにムリがあるんじゃないかなぁ?」


金竜「出来る出来ないではない……。やるのだ」

金竜「それは、我ら兄弟の悲願なのだからな……!」



亜美・真美「!!」




亜美「……そっか。それは金ぴょんたちの『夢』なんだね」

真美「ひとの『夢』を笑うのは……失礼だよね」



金竜「………」

金竜(良き戦士たちに出会えた)

金竜(最愛の弟よ……我に力を……)



金竜「…………いざッ!!」




亜美・真美「……勝負じゃー!!」

650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:44:41.57 ID:Cs5pkJBqO

金竜「……稲妻よ!!」



ズガガガドゴォォォンッ!!



亜美「っ……あぶなっ!」

真美「亜美、へーき!?」

亜美「うん!」

真美「行くよ、亜美!」スッ

亜美「おっけー真美っ!」ギュッ



金竜「手を繋いだ……?」

金竜「そうか、それがお前たちの……」

金竜「撃ってみせよ! その力、この稲妻で砕いてみせよう!」バリバリッ



亜美・真美「はぁぁぁぁっ……!!!」ゴゴゴゴ



亜美(久しぶりだね、ふたりがけも)

真美(そだね。でも、きっと前とは威力もぜんぜん違うっぽいよ!)

亜美(うん! モチのロンだよ!)



亜美・真美「赦されざる者の頭上に、星砕け降り注げっ!!」




亜美・真美「…………メテオ!!!」




ヒュー… ヒューー… ヒュー…

ヒュー… ヒュー… 



金竜(封印されし魔法……! よもやこの魔法を使えるとは……)

金竜(我の稲妻だけでは防ぎきれぬ……。もはやこれまでか……!)




「ーー兄者ぁぁぁぁっ!!!」




金竜「!!」

651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:46:07.18 ID:Cs5pkJBqO

銀竜「我も助太刀するぞっ!!」

銀竜「ブレイズっ!!」

ゴオオオオッ!!


金竜「ぎっ、銀竜!? 生きていたのか!」

銀竜「兄者ひとりに辛い思いをさせてなるものかっ!」

金竜「銀竜……!」




真美「亜美、弟くんが復活しちゃったっぽいよ!?」

亜美「ぬぅ……死んだフリとはひきょーな!」

亜美「でも、亜美たちだって負けてらんないっしょ!」

真美「おうともさ!」



亜美・真美「うおおおおぉぉおおっ!!」




金竜・銀竜「おおおぉぉおおおおっ!!」





…ドッゴオオオオオン!!!



652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:48:25.62 ID:Cs5pkJBqO

亜美「………」

真美「………」




金竜「………」

銀竜「………」




金竜「ふふふ、残念だったな。お前たちのメテオは凌いだぞ!」

銀竜「我ら兄弟が力を合わせれば、不可能など無いのだっ!」




亜美「………」チラッ

真美「………」チラッ



亜美・真美「………………ふっふっふっふー!」



亜美「亜美たちのメテオを防いだくらいで調子に乗ってもらっちゃあ困りますなー」

真美「まったくですなー」



金竜「……なにっ? さっきのメテオはお前たちの最大の魔法ではなかったとでも言うつもりか!?」

銀竜「馬鹿な……メテオは現存する魔法の中で最強のはず!」

653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:51:21.56 ID:Cs5pkJBqO

亜美「残念だったね、金ぴょんに銀ぴょん……」

真美「真美たちアイドルは変身するたびに強くなる」

亜美「その変身を、亜美たちはあと2回残している……」

真美「これがどういうことかわかるかね?」



金竜「変身……だと……!?」

銀竜(いや……これは明らかなハッタリだ。いくらあいどるが未知の存在とはいえ、人間が変身するなど聞いたこともない)

銀竜(アミめ、またもや嘘でこちらの戦意を削ぐつもりか。ならばこちらもハッタリで逆に戦意を喪失させてやる……!)


銀竜「……残念だったな、小娘たちよ!」



銀竜「我なんかあと3回変身を残しているのだっ!!」バーン



亜美・真美「な、なんだってぇー!!?」ガビーン



金竜「な、なんだとー!!?」ガビーン





銀竜「兄者ェ……」

654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:54:17.18 ID:Cs5pkJBqO

銀竜「……と、とにかくだ!」

銀竜「二人揃えばもうお前たちを屠るのは容易い。覚悟せよ!」

金竜「我ら兄弟の絆こそ最強だと知れ!」



真美「んっふっふ〜♪」

真美「魔物のブンザイで真美たちにはむかうなど、身のほどをわきまえぬ者たちじゃ……!」

亜美「ふたたび生き返らぬよう、そなたたちのハラワタの中で息絶えるがよいっ!」



銀竜「ちょっと言っていることがよく分からぬが……」

金竜「尋常に勝負だっ!!」

655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 11:56:06.30 ID:Cs5pkJBqO
続きは今週末までに投下します
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 19:07:19.26 ID:hIpwTBAQO
今週末…明日か…兄弟姉妹対決いいねー燃えるから好きよ
657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 02:58:19.73 ID:IB7jvRG1O
もう来週に入ったが更新なかったな
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/04/09(日) 05:59:33.83 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B5F ー



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」



響「……!」タタッ

響「……はぁ、はぁっ……!」タタンッ



プリンプリンセス9(『王女の歌』によってパーティが始まってから、そろそろ一時間……)

プリンプリンセス10(あの方もずっと踊り続けてようやく息が切れはじめたようですわね)

プリンプリンセス11(さあ、終宴へのカウントダウンが始まりましたわ)

プリンプリンセス12(名も無き花が己の短い命を咲き誇るように、美しく舞い……美しく散ってくださいまし!)

659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:00:43.89 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」



響「ぜぇ、ぜぇ……」スタッ

響「はぁっ……うぁ……!」クルンッ



プリンプリンセス9(パーティが始まって約二時間……)

プリンプリンセス10(息は切れているものの、今だに動きに衰えが見られない……。まさかここまで踊り続けることができるとは思いませんでしたわ)

プリンプリンセス11(流石はあいどる……といったところでしょうか。ですが、あの方の命の火が確実に小さく弱くなってきているのは事実)

プリンプリンセス(うふふ……やがて訪れる最期の瞬間まで、その輝きを保っていられるでしょうか?)

660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:02:15.20 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」



響「はぁ、はぁっ……」タンッ スタッ

響「……ぅくっ……」タタンッ



プリンプリンセス9(パーティが始まって三時間……)

プリンプリンセス10(お、おかしい……。常人ならばとっくに力尽きている時間……)

プリンプリンセス11(なんなんですのいったい……? 人間とは思えない体力……)

プリンプリンセス12(……いえ、問題などありませんわ。いつまでも全力で踊り続けていられる者なんて、いるはずありませんもの……!)

661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:03:24.12 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」



響「………」タタッ クルッ

響「………」シュタタッ



プリンプリンセス9(…………すでに、四時間が経過している……)

プリンプリンセス10(こんなの、絶対にあり得ない……あり得るはずがない……!)

プリンプリンセス11(……息が……声が、かすれて……)

プリンプリンセス12(ま、まずいですわ……。歌が……)

662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:05:05.08 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」



響「………」キュッ キュッ

響「………」タンッ スタッ



プリンプリンセス9(…………)

プリンプリンセス10(…………)

プリンプリンセス11(…………)

プリンプリンセス12(…………)





プリンプリンセスたち(……ダメ……もう限界……! 声が持たない……っ!)






プリンプリンセス9「……っぷはぁ!」

プリンプリンセス10「はぁ、はぁ、はぁっ……!」

プリンプリンセス11「ぜぇ、ぜぇ……!」

プリンプリンセス12「……そ、そんな……私たちの歌に、耐えきるなんて……!」




響「………」

響「………」フラッ


…ドサッ



プリンプリンセス9「はぁ、はぁ……彼女も……」

プリンプリンセス10「限界だったようですわね……」

663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:15:05.02 ID:yKLskMaYO

響「……く、はぁ、はぁっ……!」ヨロッ




プリンプリンセス9「! ま、まだ立ち上がった……!?」

プリンプリンセス10「な、なんて生命力ですの……!」

プリンプリンセス11「あれだけのダンスをした後で……」

プリンプリンセス12「信じられない……!」



響「……はぁ、はぁっ……!」

響「へ……へへんっ……君たちとは……鍛え方が違うからなっ……!」



プリンプリンセス9「強がりがバレバレですわね……!」

プリンプリンセス10「明らかに立っているのがやっとではないですか……!」



響「はぁ、はぁ……そう言うプリ江たちだって、声がガラガラだぞ? もうあの歌、歌えないんじゃないのか……?」



プリンプリンセス11「くぅ……!」



響(……自分、わかってるんだ)

響(きっとプリ江たちの歌に耐えられたのは、プロデューサーがくれたネックレスのおかげだと思う)ギュッ

響(踊ってる間ずっとこのネックレスが小さく光ってて、「頑張れ」「負けるな」って自分を励ましてくれてるみたいだった)

響(ありがとね、プロデューサー。おかげで自分、まだなんとか戦えそうだぞ!)

664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:23:00.00 ID:yKLskMaYO

プリンプリンセス9「……ならばもう一度!」

プリンプリンセス10「今度こそ私たちの歌で、貴女を倒してみせますわっ!」

プリンプリンセス11「いきますわよっ!」

プリンプリンセス12「王女の歌!」



響「……!」



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」





響「……はぁぁぁあああああっ!!」

タタタタ…




プリンプリンセス9「!?」

プリンプリンセス10「な、なぜ!? なぜ動けますの!?」






響「くらえ、ナンクル砲っ!!」バッ



…ドッゴオオオオオン!!!



プリンプリンセス9「」



プリンプリンセス10「くっ! 止めますわ!」ダッ



響「甘いぞ!!」バッ


…ドッゴオオオオオン!!!



プリンプリンセス10「」



プリンプリンセス11「くっ……!」

プリンプリンセス12「王女の歌が、効かない……!?」

665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:25:28.80 ID:yKLskMaYO


響「………」スッ



プリンプリンセス11「? それは……?」



響「服を小さくちぎって耳栓代わりにしたんだ。歌を聴かなければきっと操られることもないって思ったからな」



プリンプリンセス12「そこに気づくとは……」

プリンプリンセス11「なかなか頭も切れるようですわね」



響(いや、それくらい誰だって気づくと思うけどなー)



…ビーッ! ビーッ!



響「! またこの音か!」





プリンプリンセス13「うふふふ……」

プリンプリンセス14「あははは……」



プリンプリンセス11「王女の歌を防いだ程度ではこの包囲網を抜け出すことはできません!」

プリンプリンセス12「……さあ、パーティを続けましょうか」



響「くそ〜、また増えたー!」



響(このままだと倒してもまた増え続けるっぽいし、やっぱりあの警報みたいな音をどうにかするしかないのか……)

響(音はそう遠くない場所でしてるから、たぶんこの部屋のどこかに仕掛けてあると思うんだけどなー……)キョロキョロ

666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:28:57.91 ID:yKLskMaYO

プリンプリンセス11「うふふ、何か捜し物ですか?」



響「………」



プリンプリンセス12「どうやら『アラーム』の役割に気づいたようですわね」

プリンプリンセス13「そう、私たちの仲間は『アラーム』の音に呼び寄せられる」

プリンプリンセス14「貴女がいくら私たちを倒しても、永遠に」



響「え、永遠にって、そんなの無茶苦茶だぞ!」



プリンプリンセス11「うふふっ♪」

プリンプリンセス12「『アラーム』を探しても無駄ですわ。貴女には到底見つけられない場所に隠してありますもの」



響(……つまり自分が勝つには、プリ江たちの攻撃を掻い潜りつつ『アラーム』ってやつを探し出して破壊すること……)

響(体力的にしんどいけど、それをやらなきゃ先に進めないならやるしかないんだ)

響(……大丈夫、きっと……)



響「…………なんくるないさー!!」

タタタタ…



プリンプリンセス11「生命は追い詰められた時にこそ、より一層輝きを増す……」

プリンプリンセス12「その一瞬の美しさは、何ものにも替え難いものです」

プリンプリンセス13「私たちに見せてくださるのですね。あいどるの真の輝きを」

プリンプリンセス14「……さあ、一緒に踊りましょうっ!」

667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:32:23.64 ID:yKLskMaYO
やよい「」



冬馬「……高槻……?」



冬馬「おい、なんの冗談だよそれ……」



イフリート「ヤヨイぃぃぃーーっ!!! くそおおお!! 氷が溶けねえええええっ!!」

シヴァ「ヤヨイさん、返事を……返事をしてっ!!」

ラムウ「ワシらは……この子に何もしてやれぬのかっ……!」



冬馬「なんとか言えよ、高槻……。いつもみたいに『うっうー!』とか言ってみろよ……」



やよい「」



ミストドラゴン「ああ……ああ! ヤヨイ、私のかわいいヤヨイ……!」ダキッ

シルフ「起きなさい! ぐすっ……起きないと承知しませんよっ……!」ポロポロ



冬馬「……なんだよ、これ……」



やよい「」



翔太「生命をもたらしたる精霊よ、今一度我がもとに!」

翔太「……レイズ!」バッ

…キラリーン!


やよい「」


翔太「……な、なんで!?」

高木「なんと……いうことだ……! 私はなんのためにここにいるのだっ……!」ギリッ



冬馬「なんだよ、これは! ふざけんなッ!!」ガッ

北斗「くそっ……!」

翔太「やよいちゃん……!」



黒井「………」

668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 06:34:23.88 ID:yKLskMaYO
ミス
≫667から地下6階です
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:36:35.22 ID:yKLskMaYO

黒井(これが……)

黒井(これこそが、力無き者の末路……?)

黒井(……違う。高槻やよいは決して力を持っていなかったわけではなかった。むしろ強大過ぎる力を秘めていたはずだ)

黒井(事実、ヤツは従えた召喚獣を一度に全て喚び出すという荒業をやってのけた)

黒井(……が、あの化け物を諭すためあえて攻撃は加えず平和主義を貫き……)

黒井(……命を落とす結果になった)

黒井(765プロが掲げていた『絆』とやらは魔物には通用しなかった、ということか)

黒井(呆気ないものだな。高木が765プロにしがみついて作り上げたものが、こんなわけも分からない世界であっさり否定されることになるとは)




黒井(…………いや待てよ)

黒井(この世界で高槻やよいは私たち幻獣を喚び出し、度々仲間との絆を主張していた)

黒井(だが、私たち自身はどうだ?)

黒井(私たちは一人ひとりが高槻やよいに対して忠誠を誓っていたが、ただそれだけで、私たち召喚獣同士の横の繋がりなどは無かった)

黒井(……違う。私『たち』ではない)

黒井(私一人が、それを否定し続けていたのだ……)

黒井(おそらくそれでは駄目なのだろう。ヤツの目指したものは……本当の『絆』とやらは、まだ完成してはいない)

670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:39:54.12 ID:yKLskMaYO

黒井(私はここで何をしている……? 何をすべきなのだ……?)

黒井(私は……)チラッ



やよい「」



黒井(………)

黒井(ああ、そうか)

黒井(死んではいない)

黒井(お前はまだ、死んではいないのだな)




やよい「」



黒井(………………なあ、やよいちゃん)




…キラッ



671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:41:53.31 ID:yKLskMaYO

黒井「……高木」

高木「っ……な、なんだね?」ゴシゴシ

黒井「おかしいと思わないか?」

高木「おかしい? いったい何がおかしいというのだね?」

黒井「おい、冬馬、翔太、北斗!」

冬馬「……ざけんなよ! ちくしょうっ!」

翔太「やよいちゃん……うぅっ……!」

北斗「黒井社長、何か?」

黒井「確かお前たちはこのゲームに詳しかったな。お前たちに訊きたいことがある」

北斗「は、はい。でも今は……」

黒井「高槻やよいは本当に死んだのか?」

北斗「……え?」

高木「黒井? お前、何を……」

冬馬「おっさん、今はそんなこと言ってる場合じゃねえだろーが! 氷漬けにされちまった高槻を生き返らせる方法を考えるのが先だ!」

翔太「そうだよ黒ちゃん! やよいちゃんは僕の『レイズ』でも生き返らなかったんだよ? だから、きっと本当に……」

翔太「…………あれ?」

翔太「ねえ北斗君、FFのレイズって失敗はしないはずだよね?」

北斗「ああ、確かそうだったはず」

北斗「………………あっ」

672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:45:04.94 ID:yKLskMaYO

高木「伊集院君、どうしたんだね?」

北斗「レイズが効かなかったってことは、やよいちゃんは蘇生対象ではなかった……?」

翔太「つまり、やよいちゃんはまだ……」

北斗「死んでないってことだ……!」

黒井「……やはりか」

冬馬「お、おい翔太、北斗、それは本当なのか!?」

翔太「うん。ドラクエのザオラルと違って、FF4の蘇生魔法である『レイズ』は絶対に失敗しないんだよ」

北斗「失敗する場合があるとすれば、それは対象が『まだ生きている場合』だ。生きている者を蘇生しようとしても意味はないからな」

高木「じゃ、じゃあ、高槻君は生きているのだね!?」

翔太「うんっ!」

冬馬「マジかあああああっ……!」グスッ

高木「高槻君……! よかった……!」

黒井「安心するのはまだ早い。おそらく、私たちがこちらに顕現していられるのは高槻やよい次第なのだから」

黒井「そうだな、北斗」

北斗「詳しい理屈はわかりませんが、たぶん黒井社長の仰るとおりだと思います」

北斗「召喚士であるやよいちゃんの魔力が途切れてしまえば、彼女と契約を交わした幻獣である俺たちはきっとこの場所から消えてしまう」

北斗「そうなったらもう、俺たちがここでやよいちゃんを救うことは完全に出来なくなってしまいます」

高木「な、なるほど。時間はあまり無いというわけか……」

高木「それにしても高槻君、あんな状態になってまで私たちのために魔力を放出し続けているとは……」

冬馬「よし! 早いとこ高槻を助けてあのドラゴンを倒そうぜ!」



ラムウ「……その戦い、どうかワシらにも手伝わせてもらえぬか?」



冬馬「じいさん……」

673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:48:20.74 ID:yKLskMaYO

冬馬「でも、あんたの雷はヤツに通用しなかったじゃねぇか」

ラムウ「ワシら幻獣の魂は召喚士と共にある。今力を発揮せずして何が召喚獣じゃ……」

シヴァ「たとえ無駄だと分かっていても、ヤヨイさんのために力を使いたいの。お願い……!」

北斗「エンジェルちゃん……」

イフリート「トウマ!! 頼むっっ!!」

シルフ「私も、このままじゃマコトさんにあわせる顔がありません!」

ミストドラゴン「お願いしますっ……!」

冬馬「お前ら……」

冬馬「………」

冬馬「それを決めるのも号令をかけるのも、きっと俺の役目じゃねえ」

翔太「えっ、冬馬君……?」

冬馬「だってよ、そーいうのはトップの仕事だろ?」



冬馬「……な、黒井のおっさん!」



黒井「………」



高木「黒井、命令してくれ。高槻君を救うために、私たちの王として!」

674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:50:31.84 ID:yKLskMaYO

黒井「……私は、勘違いをしていた」

黒井「やよいちゃ……高槻やよいの願いとは、私たちとヤツとの絆だと思っていた」


黒井(私は……)


黒井「だが違う。高槻やよいの本当に望むものは、私たち幻獣同士の繋がりも含めての絆」

黒井「いや、ヤツはおそらく……あの魔物とすら繋がりを持とうとしていたのだ」


黒井(今、私のすべきことは……)


幻獣たち「………」










黒井「力を貸せ。お前たちと私とで、やよいちゃんを救うぞ!」









幻獣たち「……っ!」コクリ

675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:58:49.46 ID:yKLskMaYO
ブルードラゴン「何故じゃ……お前たちは何故消えぬ……?」

ブルードラゴン「あの少女は氷の棺で息絶えたはず……」

ブルードラゴン「お前たちはいったい……?」



冬馬「へっ! 高槻はあんな攻撃でくたばっちまうほどヤワじゃねーってことだぜ!」

翔太「ここからは、ボクたちの反撃だよ!」

北斗「ゲームの世界のルールだとか、そんなものはもうどうでもいい。俺たちは今、本当の絆で結ばれたんだから!」

黒井「覚悟はいいか、化け物め。さっきの様な遅れはとらんぞ!」



ブルードラゴン(絆……懐かしい言葉じゃ)

ブルードラゴン(懐かしく、そして悲しい言葉じゃ)

ブルードラゴン「…………ふ、ふふふ……」

ブルードラゴン「……そうか。ようやく時が来たのじゃな」

ブルードラゴン「殺してみせよ……」

ブルードラゴン「どうかワシを生の呪縛から解き放ってくれ……!」




冬馬「いくぜええぇぇぇっ!!」





黒井(……高木、そちらは任せたぞ!)


676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:00:35.69 ID:yKLskMaYO

ラムウ「氷漬けになっているヤヨイさんを、お主の斬鉄剣で氷ごと斬るじゃと……?」

高木「ああ。おそらくこれは、懸命にこの世界を生きてきた彼女に何もしてやれなかった、私がやるべきことだと思うのだ」

シヴァ「でも、そんなことをしたらヤヨイさんが!」

高木「安心したまえ。高槻君を傷付けないように上手くやってみせるよ」

イフリート「うおおおおおっ!! よくわかんねえけどヤヨイは助かるのかっ!!」

ミストドラゴン「……あの、私たちにも何か出来ることはないのでしょうか?」

高木「もちろんあるさ。これは私ひとりでは決して成功させることはできない」

高木「『必ず成功する』と君たちが信じてくれれば、きっと想いは届く」

高木「高槻君は、助かる……!」チャキッ

ラムウ「想いか…………そうじゃの」

シヴァ「信じる……ヤヨイさんは絶対に死なせない!」ギュッ

イフリート「ヤヨイぃぃぃぃいいいいいっっ!!」

ミストドラゴン(帰ってきて……。その愛くるしい笑顔を再び私たちに見せてください、ヤヨイ……!)

677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:01:38.36 ID:yKLskMaYO

高木「………」チャキッ

高木(鉄をも切り裂く剣か……)

高木(そんな技を大切なアイドルに対して使うのは私だって不安だ)

高木(だが、手品とはいつも人々を驚かせ、楽しませるためにある)

高木(それに……幻獣諸君の力をこうして感じることができる。私はひとりではない)

高木(そちらは任せたぞ、黒井!)




高木(……我が剣よ、願わくば正しき者を救う剣となれ……)




高木「ーーーー斬鉄剣!!」ブンッ




ーージャキィィィィンッ!!



678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:03:52.66 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


千早「……はっ!」ビュンッ


月の女神「おっと!」ヒョイッ

月の女神「えいっ!」ブンッ


千早「くっ!」

ガキィンッ!!


月の女神「うふっ♪」タンッ


…フワッ


千早「!」

千早(ジャンプ……!?)


月の女神「えーーーーいっ!!」ブンッ


千早「くっ……!」ダッ



ズドオオンッ!!



千早(……なんて威力……地面に大穴が……)

679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:04:58.31 ID:yKLskMaYO

月の女神「これくらいで驚いてちゃダメだよっ?」ダッ

タタタタ…


千早「!」

千早(盾を構えての突進!)

千早「……ふっ!」ヒョイッ


月の女神「……チハヤがよけるのは想定済みだよっ!」ピタッ

月の女神「でえぇぇいっ!!」ブンッ


ザシュッ!!

千早「う……!」ヨロッ


月の女神「えへへっ♪ チハヤのジャンプ、マネしてみたよ」

月の女神「どうかな?」



千早「くっ……」ポタッ

千早(あの子のジャンプに気を取られてしまった……)

千早(ジャンプは私の特技だったはずなのに……)



月の女神「楽しい……楽しいよチハヤ」

月の女神「もっともっと、いっぱい遊ぼう!」



千早「………」

680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:06:49.52 ID:yKLskMaYO

月の女神「まだまだいくよっ!」チャキッ

月の女神「やああぁぁああっ!」

タタタタ…



千早「………」チャキッ



千早(私は、バトルに興味なんて持ったことはなかった)

千早(今まで避けることのできない戦いはもちろんあったし、自分が強くなるのは、少しでもみんなの役に立てれば……って思ったから)



月の女神「えーーいっ!!」ブンッ

千早「くっ!」

ガキィンッ!!


千早(でも、なぜだろう)

千早(負けたくない。ただ純粋に、自分の方が強いということをこの子に知らしめたい)

千早(心のどこかでそう思っている自分を、否定できない)



千早「……はっ!」グイッ

月の女神「わっ……」ヨロッ


千早「…………くっ!」タンッ

…フワッ




千早(空中戦で負けるわけにはいかない)


千早(…………竜騎士として!)



月の女神「……いいよ、付き合ってあげる!」タンッ

…フワッ




千早「はああああぁぁああっ!!」ブンッ



ーーズザシュッ!!



…スタッ

681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:08:30.56 ID:yKLskMaYO

月の女神「………」

月の女神「……くぅ……」ヨロッ



千早「……はぁ、はぁ……」

千早(ようやく……あの子にダメージを与えることができた……)



月の女神「さすが空中では強いね、チハヤ……」

月の女神「私、驚いちゃった!」ニコッ



千早(ダメージを与えたとはいえ、あの子の強さは身を持って知っている。決して油断なんてできない)

千早(けれど……)


ドクン…


千早(この高揚感はなに?)

千早(私も、バトルを楽しいと思いはじめているというの……?)



月の女神「楽しいね、チハヤ!」ニコッ



千早「………」

千早(目的は変わらない。最初からひとつだけ)

千早(でも……)



千早「…………ええ、そうね」ニコッ



千早(……勝ちたい……あの子と正々堂々、勝負をして!)

682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:10:48.91 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


暗黒魔道士「……ファイガ」



ゴオオオオッ!!



美希(……3、2、1……!)

美希「っ……!」ダッ



暗黒魔道士「逃さない……サンダガ」



ズガガガピシャァーーン!!!



美希「…………こっち!」ダッ




暗黒魔道士「もっと逃げるといい……なす術もなく……」



美希「……はぁ、はぁ……」

美希(……えっと、今回のが10時と9時……)

美希(『タイミング』もバッチリつかんだの)

美希(……うん、やっぱりミキのカンはそんなにハズれてないって思うな)

683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:13:18.49 ID:yKLskMaYO

暗黒魔道士「それにしてもよくここまで生き残ったね。視界を奪われた状態で魔法をかわし続けるなんて……」

暗黒魔道士「しかも、ボクが魔法を放つたびに動きが良くなっている」

暗黒魔道士「君には本当に驚かされるよ」



美希「あは☆ ありがとーなの」



暗黒魔道士「でも……気づいているかい? ミキ」



美希「ん?」



暗黒魔道士「君はもう、すでに死の淵に立っているということを」



…ヒュオオォォ…



美希「この風の音……もしかして崖?」

美希(知らないうちに崖っぷちに追い込まれてた……? ちょっとヤバいカンジなの!)



暗黒「……トルネド」



ビュオオオオッ…!!




美希「っ……吹き飛ばされちゃうわけにはいかないのっ!」

美希「レビテト!」

ポワッ…



暗黒「終わりだ……ディスペル」

パシュンッ



美希「あっ…………」



ヒューー…




暗黒魔道士「……落ちたか」

684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:15:56.00 ID:yKLskMaYO

暗黒魔道士「なんだ、意外と呆気ない最期だったね、ミキ。天才の君らしくもない、間抜けな終わり方だ」

暗黒魔道士「でも、君が悪いんだよ。君が……」

暗黒魔道士「君がそんなにも……」

暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士「……ボクは……」



…キラッ!


ーーヒュンッ

ドスッ!!



暗黒魔道士「ぐっ……!?」

暗黒魔道士「な……なんだ、これは……? 矢だって……?」

暗黒魔道士「まさか……!」



ーーヒュンッ

ドスッ!!



暗黒魔道士「く……真っ直ぐにボクの方へ……!」

暗黒魔道士「完璧にこちらの位置を認識しているのか……バカな……!」



美希「……カンペキじゃないけど、だいたい捉えたの!」

美希「ミキ、アンコクさんがどこにいるか分かっちゃった☆」

685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:19:20.80 ID:yKLskMaYO

暗黒魔道士「ミキ……! 君は崖から落ちたはずじゃなかったのかい?」



美希「うん、ミキも『落ちちゃう〜』って思ったんだけど、なんとか必死に崖にしがみついて助かったの」



暗黒魔道士「なんて運のいい……」

暗黒魔道士「それじゃあもうひとつ質問だ。一体どうやってこの暗闇の中でボクの位置を特定した?」



美希「えーっとね、魔法が飛んで来る方向、詠唱から到達までの時間、その二つの情報からなんとなーく逆算しただけだよ?」



暗黒魔道士「……ふ、ふふ……無茶苦茶だね。ボクが絶えず移動しているかもしれないじゃないか」

暗黒魔道士「その可能性がある限り、魔法が飛んで来る方角から君が正確にこちらの位置を特定するのは不可能だ、絶対に」



美希「んー……その可能性はないって思うな」



暗黒魔道士「!」



美希「アンコクさんの魔法って、飛んで来る方向がだいたい同じだったの」

美希「今までに撃ってきた魔法全部がだよ?」

美希「それって、アンコクさんが同じ位置からずっと動いていないって断定するのに十分な情報なの」



暗黒魔道士「……!」

暗黒魔道士(簡単に言っているけれど、ミキにとって周りは暗闇……視界ゼロの状況だ)

暗黒魔道士(目印も何も無いそんな状況下で『自分も動きまわりながら飛んできた広範囲の魔法を利用して相手のいる方向、位置を特定する』なんて簡単に出来ることじゃない……)

暗黒魔道士(やはり、天才なのか……)

686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:22:09.87 ID:yKLskMaYO

美希「でもね? ミキ、不思議に思ったの」

美希「だってずっと同じ方から魔法が飛んで来たら、誰だってミキと同じように考えると思うの」

美希「そしたらアンコクさんのいる位置が遅かれ早かれバレちゃうの」

美希「きっと何か『動けない理由』があるんじゃないかな?」

美希「この階が真っ暗なのも、完全に自分の位置を特定されないための煙幕に利用してる……」

美希「……どう?」



暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士(完璧な回答ではないけれど……今までのやり取りでそこまで読むのか……)



暗黒魔道士「……前者については正解。ボクはとある理由から、今いる場所から大きく動くことはできない」

暗黒魔道士「でも、後者についてはハズレだ」



美希「ガーン! ショックなの……」

美希(単なる煙幕じゃないんだ……)

美希(じゃあやっぱり、この階が真っ暗なことと今いる場所から動けないこと。この二つはアンコクさんが何回も連続で魔法を使えるってことと関係してるんじゃないかな)

美希(……なんとなくカクシンに迫ってきたってカンジなの)

687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:24:10.00 ID:yKLskMaYO

美希「それじゃ……」

美希「……今度こそ、ミキの反撃なの!」スッ

美希(位置はわかった。あとは、きっかけを作って突撃するの!)



暗黒魔道士「弓矢か……さっきは不意を突かれたけど、最初から注意さえすれば問題ない」



美希「汚れなき天空の光よ、フジョウを照らし出せなの!」



暗黒「! 詠唱……!?」



美希「ホーリー……」ギリッ



美希「…………アロー!!」バッ


キラキラ…!

ヒュンッ…



…ドスッ!!




暗黒魔道士「ぐっ……!」

暗黒魔道士「武器に魔法の効果を……!? そんなことが出来るはずが……!」




美希「あは☆ カッコイイでしょ? ミキが考えた技だよっ!」

688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:26:14.26 ID:yKLskMaYO

美希(うまい具合に怯んでくれたの。このまま勢いに任せて……)

美希「……攻めるのっ!」ダッ

タタタタ…




暗黒魔道士「……ふふ、驚きはしたけれど、君の考えはお見通しだ」

暗黒魔道士「近寄らせないっ……トルネド」


…ビュオオオオッ!!



美希「……きゃっ!」ヨロッ

…ドサッ



暗黒魔道士「……サンダガ」

ズガガガピシャァーーンッ!!



美希「あぅ……!」

美希(ま、マズいの、早く回復しなきゃ次が来る!)




暗黒魔道士「……滅びゆく魂に、暗黒神の名を刻め……」



美希(う……間に合わな……)



暗黒魔道士「…………フレア」



ブゥゥーーーン…


ババババババッ!!


ズドオオオオオオンッ!!

689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:28:18.18 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


貴音「……ぶりざが!」バッ



コォォ…シャキィィィン!!



ダークバハムート「……遅い」ブンッ

ザシュッ!!


貴音「うっ……!」ヨロッ


ダークバハムート「……休んでいる暇など無いぞ?」ブンッ


貴音「く……!」ダッ


…シュンッ


ダークバハムート「……追いついたぞ」ブンッ


貴音「っ……ぷろてすっ!」


ズバッ!!



貴音「はぐ……ぅ……!」ヨロッ



ダークバハムート「……む、次で終わってしまうか? 加減が難しいな」

ダークバハムート「防いでみよ、タカネ」ダッ



貴音「…………ほーりー!」


ダークバハムート「!」



キラキラキラキラ…


ズドドドドドッ!!!

690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:29:55.63 ID:yKLskMaYO

ダークバハムート「……クク……そう来るか」

ダークバハムート「ホーリーを詠唱無しで放つとはな。並の魔道士では出来ない芸当だ。今のは少々驚いたわ」



貴音「……はぁ、はぁ……」

貴音「……残念ですが、大した効果はなかったようですね……」



ダークバハムート「ふむ……悪くはなかったのだがな」



貴音(闇に墜ちた身ということはホーリーならばよもや、と思いましたが……)

貴音(肉弾戦では敵うはずもない。魔法も効果が薄い)

貴音(わたくしがばはむーと殿に勝てる術は、果たしてあるのでしょうか)



ダークバハムート「ククッ……!」

ダークバハムート「惚けるつもりか? 我は気づいているぞ」


貴音「………」


ダークバハムート「タカネよ。お前からは懐かしい匂いがする。我がこの身に成る前に捨てた、竜族の匂いがな」


貴音「………」


ダークバハムート「覚えて来たのであろう?」



ダークバハムート「…………メガフレアを」



貴音「……現時点でのわたくしの切り札ゆえ、なるべく思考にも出さずにいましたが……」

貴音「やはり、全てお見通しなのですね」

691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:31:55.94 ID:yKLskMaYO

ダークバハムート「お前が切り札をむざむざ出し惜しみして負ける様な阿呆でないことぐらい、我は心得ておる」

ダークバハムート「見せてみよ。我が眷属から受け継いだ技を!」



貴音「……そうですね。それしか手段は無いようです」



貴音「………」ゴゴゴゴ



ダークバハムート「……ほう、流石の魔力よ」



貴音「……夜闇の翼の竜よ……」

貴音「怒れしば、我と共に……胸中に眠る星の火よ!」



貴音「…………めがふれあ」




…ゴゥーーン…



ズバババババババッ!!



ドゴオオオオォォオオオンッ…!!!

692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:33:39.64 ID:yKLskMaYO

貴音「………」

貴音「…………うっ」ガクッ

貴音「っ……はぁ、はぁ……」

貴音「実際に使用するのは二回目とはいえ、なかなか慣れませんね……。この技は体に大きな負担が……」


貴音(『めがふれあ』以外の魔法で決着をつけることができれば少しは小鳥嬢との戦いに余力を残せるかと考えていましたが、やはりそれは甘かったようです)

貴音(ばはむーと殿は未だ実力の半分も出されていないはず)

貴音(全身全霊を賭して戦わねば、決して勝利は無い……)




「……ククッ、その通りだ」



貴音「………」



ダークバハムート「我は嬉しいぞ、タカネ。お前を……この様に近くに感じられるとはな……!」

ダークバハムート「だが、まだだ。お前は漸く言葉を覚えたばかりの稚児に同じ」

ダークバハムート「我に列び立つには、この月と太陽ほど遠い」



貴音「切り札すらも届きませんか……。これは厳しい戦いになりそうです」


ダークバハムート「言葉の割には表情から闘志が消えておらぬな?」

ダークバハムート「心を読まずともそれくらい解るわ……!」



貴音「たとえ無謀な挑戦だとしても……諦めるわけにはまいりませんので」



ダークバハムート「良いぞ……! それでこそ我の認めた女よ」

693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:36:08.29 ID:yKLskMaYO

ダークバハムート「良きものを見せてもらった礼だ、受け取るがよい」

…ゴゴゴゴ



貴音「っ……!」ゾクッ


貴音(美希の魔力とも、先日の小鳥嬢の分身の魔力とも違う……)

貴音(全てを呑み込み焼き尽くさんとする、逃れることの出来ない太陽の爆発の如き魔力……!)




ダークバハムート「……耐えてみせよ、タカネ」




ダークバハムート「ーーメガフレア」



…ゴゴゴゴ



貴音(……これが……ばはむーと殿の……!)





ーーーーーーカッ!!



694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:38:07.14 ID:yKLskMaYO

貴音「………」

貴音「………」

貴音「…………ぅ……」



ダークバハムート「……ふむ、まだ息はあるな」



貴音(か、体が……焼けるように……)

貴音(『しぇる』を使いましたが、まさに焼け石に水でしたね……)



ダークバハムート「その状態でも魔法のひとつは使えるであろう?」

ダークバハムート「回復せよ。続けるぞ」



貴音「………」

貴音「……けあるが」

シャララーン! キラキラキラ…



貴音(片や児戯の如き稚拙な魔法、片や全てを照らす太陽の輝き……越えられぬ壁……)

貴音(ばはむーと殿にだめぇじは殆ど無いように見受けられます)

貴音(『本物と付け焼き刃の違い』……)

貴音(……ふふ、小鳥嬢の分身に向けて言った言葉がそのまま自分に返って来る思いです)



ダークバハムート「……絶望したか?」



貴音「……いえ」

貴音「たとえ越えられぬ壁であろうと、わたくしは進まねばなりません」

貴音「それが友と、この世界の人々との約束なのですから……!」



ダークバハムート「……ククッ!」

ダークバハムート「お前は降りることは出来ない」

ダークバハムート「世界など最早関係ない。これは我とお前との因縁だ」

ダークバハムート「さあ、もっと舞ってみせよ……!」



貴音「…………参るっ!!」

695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:41:58.38 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B11F ー


春香「やぁぁあああっ!!」ブンッ


キィンッ!!


律子「はぁぁぁああっ!!」ブンッ


ガキィンッ!!



クルーヤ「よっ……と」


クルーヤ「……ふむふむ。いやー、二人とも良い戦士に育ったね」

クルーヤ「……はっ!」ブンッ



春香「わわっ!?」ヨロッ

律子「きゃっ!」ヨロッ



律子「く……二人がかりでもまるで歯が立たないなんて……」

春香「うぅ、さすがは私たちのお父さんですね……」



クルーヤ「………」

クルーヤ「……うーん、これじゃあちょーっと厳しいかなぁ」



春香「えっ」



クルーヤ「確かに君たちは立派に成長してくれた。そこは僕としてもとても嬉しく思う」

クルーヤ「でも、二人がかりで僕に敵わないようじゃ……」



律子「……小鳥さんの足元にも及ばない、ですか」



クルーヤ「うん、その通りだ」



春香「そんな、小鳥さんはもっともっと強いっていうんですか……?」



クルーヤ「もちろんだよ、ハルカ」

696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:45:02.03 ID:yKLskMaYO

クルーヤ「リツコ、ハルカ。君たちはどれほどの存在に挑もうとしているのかもう一度よく考えてほしい」

クルーヤ「君たちがコトリさんに負けてしまえば、はっきり言ってそれはこの世界の終わりと同義だ。全ての生命が終焉を迎えるだろう」

クルーヤ「そんな事態は絶対に避けねばならない」

クルーヤ「でも、もちろん大変な責任を君たちだけに押し付けているのはとっても心苦しく思ってる」

クルーヤ「だから父親として僕が君たちに出来ることはなるべくしてあげたい」



律子(この世界の終わり……)

律子(正直、あまり興味のない話だわ。この世界はあくまでフィクションの世界であり、本来私たちがいる世界ではない)

律子(地球では巨人を倒すために人々と協力もしたけれど、小鳥さんも含めてみんなで元の世界へ帰ることができさえすれば、私はあとのことはどうでもいいと思ってる)

律子(……そう、『ゲームの設定』なんてどうでもいいのよ)



律子「……私が小鳥さんに勝てないかどうかは、これを見てから判断してほしいですね」チャキッ

…ゴゴゴゴ



クルーヤ「!」



春香「お姉ちゃん、もしかして……」

律子「私は、私の大切なものだけを護れればいい。他には何も望んでいない」

律子「だから、肉親だっていうあなただって倒してみせる!」



クルーヤ「リツコ……」



律子「……くらいなさい、暗黒剣っ!!」ブンッ



ズゥゥゥン…



春香「! 暗黒騎士だった頃の私とは比べものにならないほどの暗黒闘気……!」

春香(……でも、その技は……)



…ズバババババババッ!!!


697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:47:59.19 ID:yKLskMaYO

クルーヤ「………」

クルーヤ「……凄まじい闘気だ、リツコ」



律子「ま、まさか……暗黒剣も通用しないの……!?」

春香(…………やっぱり、そうなんだ)

春香「お姉ちゃん、たぶんお父さんは聖騎士だから暗黒剣は効かないんだと思います」

春香「ゾットの塔で、私もそうだったから」

律子「そんな……」

律子(地力はもちろん、メテオも暗黒剣もこの人には通用しない)

律子(それじゃあ私が勝てる要素なんてないじゃない……!)

律子(私は、なんのためにここにいるのよ……!)

律子「…………くっ!」ガクッ



クルーヤ(……自分の強さに完全な自信を持っていたという風には見えなかったけど、僕との実力差に心が折れてしまった……かな)

クルーヤ(……ふーむ)

698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:50:24.24 ID:yKLskMaYO

春香「お姉ちゃん、大丈夫です! まだまだこれからですよ!」

律子「……いいのよ、春香。気を遣ってくれなくても」

律子「知らなかったわ。私ってこんなに弱かったのね……」

春香「そ、そんなことないですっ! お姉ちゃんは今までずっと私たちの面倒を見てくれてましたし、魔物との戦いだって……!」

律子「いいえ、違うのよ」

律子「気づいてしまったの。みんなはこの世界でとても頼もしく成長したけれど、私は……」

律子「私だけが、まったく成長していないって」

春香「お、お姉ちゃん……」



クルーヤ「………」

クルーヤ「単純な実力で言えば、光の戦士の中ではリツコが一番強いと思う」



律子「気休めはよして! 私は……」

律子「私には、誇れるのものが何もない……!」

春香「そ、そんなこと!」



クルーヤ「………」

699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:53:18.58 ID:yKLskMaYO

クルーヤ(……そう。これが暗黒騎士の暗黒騎士たる所以だ)

クルーヤ(闇の力を借りて戦う限り、常に負の感情が付きまとう)

クルーヤ(自分だけが成長していない、か)

クルーヤ(成長するには自力で殻を破るしかない)

クルーヤ(僕が『きっかけ』を与えてもいいけど、それで律子は自信を持ってコトリさんと戦えるだろうか?)

クルーヤ(かといって今のリツコに自分に打ち勝つ気力があるとは思えない)

クルーヤ(一応成長の手がかりはさっき伝えたけど、もしかしたら最悪の事態……律子の戦線離脱も考慮しなければならないかもしれないな)



春香「………」

春香「……っ!」グッ



春香「……わかりました。お姉ちゃんはそこで見ていてください」

春香「お父さんは私が倒しますから」ザッ

律子「は、春香……」

律子(私は……私はどうしたら……)







春香「……………………ヒント4」






律子「…………えっ」

700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:56:53.52 ID:yKLskMaYO

春香「律子さんは……」

春香「お父さんの娘であり、私が尊敬する、大好きなお姉ちゃんですっ!」ニコッ



律子「……!」



クルーヤ(ハルカ……『気づいた』んだね……)



クルーヤ「……ほうほう、今度はハルカが相手かぁ」

クルーヤ「さっきは二人がかりでも敵わなかったのに、君ひとりで大丈夫なのかい?」



春香「やってみなきゃ、わかりません!」



クルーヤ「うん、そうだね」ニコッ



クルーヤ「……さあおいで、ハルカ」チャキッ



春香「…………はいっ! 今度は『全力』で行かせてもらいますっ!!」チャキッ

春香「うぁぁぁあああああっ!!」

タタタタ…


701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 08:01:18.56 ID:yKLskMaYO
ここまでです
本当はやよい誕までにはと思ってたのに春香誕にすら間に合わない始末
遅れてすみません
>>633の言うとおりこのスレで終われないと思います…
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 08:10:46.24 ID:4GZLtGMtO
やっぱりか…まだ敵を倒してないし×11人分(春香と律子と亜美真美は一人分とカウント)だもんな
一人あたり10レスとしてもターン数でいえばそんなたってないもんなぁ
それに仮にこのタイミングで終わっても皆が合流して対ぴよちゃん編やるとしたらラストだからかなり使うし足りないよな
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 22:40:08.76 ID:6zACVjbkO
今日で一ヶ月か…
704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 04:56:13.72 ID:uZ6xIFx4O
二ヶ月までカウントダウン入ったぞまだか
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 19:32:14.67 ID:onZskDBLO
あと三日…
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 05:07:27.82 ID:YdG/Q6u3O
マジかよ…今日で2ヶ月だぞ
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 21:43:08.80 ID:UPkPqYF7O
>>1です
書き溜めたデータが消失してしまい、やり直してるところです
すみません、投下にはあと少し時間がかかりそうです
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 09:16:55.17 ID:+UdvjZUXO
もうすぐ月末なんだがまだなのか?
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/06(木) 02:37:43.76 ID:lzaJqrLiO
あと三日で一ヶ月たつんだがまだか?
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:43:14.33 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


リルマーダー「……そりゃっ!」ブンッ


ザシュッ!!


伊織「ぐっ……!」ヨロッ


リルマーダー「へへっ。どうしたイオリ? さっきと段違いに動きが鈍くなったんじゃねーか?」


伊織「よ……余計なお世話よ!」ブンッ


リルマーダー「ふんっ」ヒョイッ



伊織「……はぁ、はぁっ……」


リルマーダー「無理もねーぜ。お前はオイラの6倍サンダガを受けたんだからなっ」

リルマーダー「超電撃を受けたお前は身体が思うように動かないはずだ。むしろまだそれだけ動けるのは大したもんだぜ」


伊織「………」

伊織(ただの変態だと思ってたけど、とんだ策士だったわね……。自分の弱点をさらけ出してわざとそこを突かせるなんて……)

伊織(あいつの言うとおり、手足がちゃんと言うことを聞いてくれないんじゃ居合も使えない。雷迅を撃ってもカウンターを食らう)

伊織(状況は良くないわ)

伊織(どうする……?)


リルマーダー「けど、オイラは負けねえ。負けられねえんだよ」


伊織(見逃してくれるわけないわよね。何よりそんなのは私自身が許せないし……うーん……)


リルマーダー「オイラはさ、ずっとひとりだった」


伊織「……え?」



711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:45:51.58 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「小さい頃からゴブリン族の王として育てられてきたけど、ゴブリン族なんて魔物の中で最弱の種族だ。周りのヤツらからはずっと馬鹿にされ続けてきた」


伊織(なんなのコイツ、いきなり身の上話なんか始めちゃって)


リルマーダー「悔しかった。すげー腹が立った。オイラは王の器のはずなのに、周りは認めてくれないどころかよってたかってオイラをいじめた」


伊織「………」


リルマーダー「……だから、決めたんだ。絶対にオイラを馬鹿にしたヤツらをいつか見返してやるって」

リルマーダー「オイラという存在を、いやでも認めさせてやるって!」


伊織「……!」


リルマーダー「ひとりでたくさん修行して、強くなった。オイラは王だから、誰にも負けるわけにはいかないから」

リルマーダー「もちろんイオリ、お前にもな!」


伊織(……そうか、そうだったのね。コイツを見てるとなぜかイライラすると思ったら……)

伊織(似てるんだわ、コイツは。私に)

伊織(誰かに認めてもらいたい一心でがむしゃらに突き進んで、差し伸べられた手に気づくことができなくて)

伊織(でも、本当は……)


712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:49:42.35 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「楽しかったぜ、イオリ。オイラとまともにやり合った人間はお前が初めてだ」

リルマーダー「けどもう終わりだ。どっちが強いかはっきりさせてやるっ!」スッ


伊織「………」スクッ

伊織「……そうね。ここにもいい加減長居しすぎたわ。そろそろみんなを追いかけないと心配するでしょうし」

伊織「いい頃合いねっ……!」


リルマーダー「何言ってやがる。お前はここでオイラに負けるんだ!」


伊織「はぁぁあああっ……!」バリッ


リルマーダー「イオリ……? お前、バカなのか?」

リルマーダー「お前の雷迅の術はさっきオイラが倍にして返した。オイラに対して雷属性攻撃は無意味どころか自滅を招くだけだ」


伊織「ご忠告どうも。でもね、アンタが知ってる世界だけが全てじゃないってこと、教えてあげるわ!」バリバリッ


リルマーダー「……ガッカリだぜ。イオリはもっと頭のいいヤツだと思ってたのによ……」

リルマーダー(今降参すれば許してやったのによ……)

リルマーダー(そうすればイオリは命が助かって、それで……)

リルマーダー(……いや、何考えてんだオイラは。イオリは敵だぞ)



リルマーダー「……いいぜ。撃ってこいよ、イオリ! 望み通り返り討ちにしてやるっ!!」


713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:53:09.05 ID:GrUnCP8WO

伊織(あんまりスマートな方法とはいえないけど、思い付いちゃったんだからしょうがないわよね)


伊織「…………伊織ちゃん最大級の雷よ! 受けてみなさいっ!!」

伊織「雷迅ッッ!!」バッ


ズガガガピシャァーンッッ!!!



リルマーダー「……ぐっ!!」ヨロッ

リルマーダー「…………へへっ……い、いてーじゃねーか……」

リルマーダー「だがよ……」バリバリッ

リルマーダー「放った雷の威力が強ければ強いほど、より強い雷がお前を襲うことになるんだぜっ!」


伊織「はぁ、はぁ……」

伊織(赤い悪魔たちもそうだったけど、魔物がこんなに人間くさいなんて思ってもみなかったわよ)

伊織(でも、だからこそ私はあいつに……)


伊織「……っ!」ザッ


714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:55:00.58 ID:GrUnCP8WO

伊織(赤い悪魔……アンタは分が悪すぎる賭けだって笑うかしら?)

伊織(……いいえ、アンタならきっとこう言ってくれるわね)

伊織(『お前の信じた道を進め』……って!)

伊織(チャンスは一回。それ以上はたぶん私の体がもたない)

伊織(あいつに勝つには……)



伊織(………………あ私も、あいつの雷を利用するっ!)



伊織「来なさい、リルマーダー!!」



リルマーダー「うおおぉぉおっ!! ……2倍サンダガッ!!」


ズガガガピシャァーンッッ!!!



伊織「うぅっ……!!」ヨロッ


…ドサッ



715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 22:57:26.15 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「……はぁ、はぁ……」



伊織「………」グッタリ




リルマーダー「………」

リルマーダー「ちぇっ……」

リルマーダー「イオリ、お前なら……」

リルマーダー「ともだちになってやってもよかったのによ……!」グスッ




伊織「…………バカね……」ヨロッ



リルマーダー「!」



伊織「敵に涙を見せるなんて、アンタにはプライドってものがないワケ……?」ザッ



リルマーダー「イオリ……!」

リルマーダー「ち、ちげーよ! これはえっと……」ゴシゴシ



伊織「まだ……私のターンが終わってないわ……っ!」



リルマーダー「そんなものはねえ。お前はもう立つことすら…………」

リルマーダー「!!」

リルマーダー「なん……だと……!?」



伊織「スーパー忍者アイドル伊織ちゃんを、なめるんじゃないわよっ……!」バリバリッ…


716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:00:07.31 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「帯電……!? あいつ、オイラの技をパクりやがった……!」



伊織「敵の雷を受けてそのまま体に纏う……」バリバリッ

伊織「要は赤い悪魔が常に炎を纏っているのと同じ要領ってことよね。こんなの、伊織ちゃんにかかれば楽勝よっ!」バリバリッ



リルマーダー「イオリも倍返しってことかよ……! いい度胸じゃねーか! こうなったらどっちが先に倒れるか、根性比べだっ!」



伊織「………………はぁ。やっぱりアンタってひとつのことしか見えていないのね」

伊織「この伊織ちゃんがただの猿真似で終わるわけないじゃない!」



リルマーダー「ど、どういうことだ!」



伊織「………………この世で一番速いもの、なんだか分かる?」



リルマーダー「……あん?」



伊織「それは…………光よっ!」



ピカァァァーーーーーー!!



リルマーダー「うおっ!? まぶしっ! 急にイオリの胸元が光って……!」

リルマーダー「……あとでこも」ボソッ



伊織「うっさい!! おでこは光らないわよ!!」プンスカ


717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:01:59.94 ID:GrUnCP8WO

伊織「私が纏ったこの雷は私に光の速さを与えてくれるわ……!」


リルマーダー「バカ言ってんじゃねー! 光速で動くなんてそんなことできるわけないだろ! それにお前はもう動ける力なんて残ってねーはずだ!」


伊織「……だから『無理やり動かす』のよ……!」チャキッ

伊織(どんなに体がボロボロだって、人間の体は反射には逆らえない)

伊織(雷で脊髄反射を起こして、雷を纏った私はそのまま光の速度を手に入れる……)

伊織(いける……はず!)


…バチッ!


伊織「きゃっ……!」ビクンッ

伊織「ぐっ……!」フラッ


…ドサッ



リルマーダー「…………へ、へん! やっぱりムリだったじゃねーか!」



伊織「……ぅ……」

伊織「ざん……ねん……もう行った、わよ……」



リルマーダー「…………へ?」



…ブシュッ!!



リルマーダー「がっ……は……!」ヨロッ



…ドサッ


718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 23:06:03.52 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「……うぐ……ちくしょう……」グッタリ



伊織(まだ息はあるみたいだけど、あの状態じゃ反撃はできないでしょ)

伊織(……とりあえず任務完了ってところね)

伊織(私もさっきの無茶で体動かないけど……)

伊織(うぅ……身体中がまだビリビリするわ……)



リルマーダー「こんなのウソだ……オイラが負けるわけがねえっ……!」



伊織(…………ったく)

伊織「………」ゴソゴソ

伊織「ゴクッ……ゴクッ……」

伊織「…………ふぅ」

伊織「…………よしっ」スクッ

スタスタ


伊織「負けを認めなさい。アンタじゃこの伊織ちゃんには勝てないわ」


リルマーダー「ぐ……! オイラは……王なのにっ……!」


伊織「なんでアンタが私に勝てないかわかる?」


リルマーダー「え……?」


伊織「アンタはひとりだって……頼れるのは自分しかいないって思い込んでいるからよ」


719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:09:17.86 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「な……なに言ってんだよ。戦いにおいて頼れるのは自分の力だけだ。そんなの当たり前じゃねーか……」


伊織「………」

伊織「誰にもすがることなく自分ひとりで生きていこうとするアンタのそのプライドは立派だと思うわ」

伊織「私もね、昔はアンタと似たような考え方だった。でも気づいたの。ひとりで出来ることには限界がある。ひとりで強くなるには限界があるってね」


リルマーダー「そ、そんなことはねー! オイラは、ひとりだってここまでやってきた!」


伊織「強情なやつね、まったく……」

伊織「私がアンタにやられてピンチになっても立ち上がれたのは、このクリスタルのおかげなの」スッ


リルマーダー「クリスタル……? そういえばそれ、急に光り出したよな」


720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:11:41.86 ID:GrUnCP8WO

伊織「これは、ひとつのクリスタルから仲間で分け合ったもの。いわば仲間との絆の証」

伊織「このクリスタルの欠片が、私に力をくれた。みんなと分け合ったクリスタルが私を再び立ち上がらせてくれたの」

伊織「私には仲間がいる。でも、アンタはひとりで戦っていた。……それがこの戦いの勝敗を分けたのよ」


リルマーダー「……仲間……」


伊織「アンタも小鳥の部下なら耳にしてるんじゃない? 仲間との絆こそが本当の強さだって」

伊織(アイツなら……小鳥ならきっとそう言うはずよ。だってアイツは……)



リルマーダー「……けっ。そんなのもう忘れちまったぜ」


伊織「……ホント強情ね、まったく」



リルマーダー「……イオリ、次は負けねーぞ。次に戦う時はオイラ、もっともっと強くなってるからな!」


伊織「………」

伊織(『次』なんてきっとない。あってはならない)

伊織(けど……)



伊織「ま、せいぜい頑張りなさい。アンタが強くなるって言うなら、この伊織ちゃんはもっともーっと強くなってるんだからっ!」

伊織「……にひひっ♪」



リルマーダー「…………ちぇっ」


721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:17:00.51 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B5F ー


プリンプリンセス34「はあっ!!」ダッ


響「……よっ」ヒョイッ


プリンプリンセス35「えいっ!!」ダッ


響「……ほいっ」ヒョイッ



プリンプリンセス33「くっ、ちょこまかと……!」

プリンプリンセス34「相変わらずすばしっこいですわね……」

プリンプリンセス35「これだけ長い時間動きが衰えないなんて……」

プリンプリンセス36「貴女、本当に人間なんですの?」



響「失礼だなー、自分はちゃんと人間だぞ!」

響「それに、これくらいでへばってたら長時間のライブなんて到底持たないからね!」

響「アイドルは身体が資本! 常識さー!」


響(……とは言うものの、やっぱり倒しても倒してもプリ江たちはあとから湧いてくるなぁ。もう何匹倒したかわかんないぞ……)

響(ナンクル砲も無限に使えるわけじゃないし、早いとこアラームってやつを見つけ出して壊さないと)

響(でも、いったいどこに隠してあるんだ……? この部屋のどこかだってことは間違いないと思うんだけど……)キョロキョロ



プリンプリンセス33(うふふ、アラームをいくら探しても無駄ですわ。この部屋の壁の中に隠してあるのですから)

プリンプリンセス34(それも一つや二つではなく、無数のアラームが壁に埋まっているのです!)

プリンプリンセス35(いくら彼女が私たちの攻撃を躱し続けても、いずれ限界が来る……)

プリンプリンセス36(その時こそ本当にあいどるの最期ですわ……!)


722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:19:14.24 ID:GrUnCP8WO

響「……ひとつ、質問いい?」


プリンプリンセス33「なんでしょう?」


響「ピヨ子はさ…………あ、えっと、小鳥はプリ江たちのこと、こき使ったりしてるの?」


プリンプリンセス34「? そのようなことはありませんが? コトリ様は私たちのことを大切に思ってくれていると信じています」


響「……そうなのか」


プリンプリンセス35「それと、コトリ様は私たちのことを『コトリ様のぷろでゅーすするあいどる』だと仰っていました」

プリンプリンセス36「だからこそ、貴女方と私たち、どちらが本物のあいどるか決着を着けねばなりません」


響「………」


プリンプリンセス33「貴女のダンスは本当に素晴らしい。けれど、私たちだって負けたくない!」

プリンプリンセス34「私たちをあいどるだと仰ってくれたコトリ様の思いに応えねばなりません!」

プリンプリンセス35「さあ、勝負を続けましょう、ヒビキ!」



響「………」

響「…………よし、決めた!」





響「この部屋ごと…………全部ふっとばす!!」





プリンプリンセスたち「…………えっ?」


723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:21:28.22 ID:GrUnCP8WO

響「プリ江たちの話を聞いて、ピヨ子が優しいピヨ子のままでいてくれて自分ホッとしたぞ」

キュィィィィン…!!


プリンプリンセス36「! エネルギーが彼女の手に集中していく……!」


響「それで、やっぱり早くピヨ子に会いたい、会って話をしたいって思ったんだ」

響「だから、悪いけどもうこの戦いは終わらせるっ!」


プリンプリンセス33「貴女の砲撃では私たちのうちひとりを倒すのが精一杯のはず! この部屋ごとなんて無理に決まってますわ!」


響「いや、方法がないわけじゃないぞ」

響(……ただ、本当ならあんまり使いたくなかった技なんだけどね)

響(エン太郎、ごめん。すっごくイメージの悪い技だけど、許してね……!)



響「はああああああっ……!!」



響「ナンクル……波動砲っ!!」バッ




ーーーーカッ!!



ドッゴオオオォォォオオォォオンッッ!!!




724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:25:07.20 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B2F ー



真「おおおおおおっ!!」タタタタ



ベヒーモス「おらあああああっ!!」ドドドド





ベヒーモス「身だしなみには細心の注意を払ってる!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


真「お風呂は一回二時間! 寝る前に笑顔の練習も忘れずにっ!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


ベヒーモス「女の子っぽい趣味だって持ってる!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


真「料理やカワイイぬいぐるみ集め!! 最近じゃ響に裁縫を習いはじめた!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


ベヒーモス「こんななりだけど、苦手なものだってあるんだ!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


真「ゴキブリとか大っきらいだし、お化けも怖い!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!





ベヒーモス「はあっ、はあっ……」


真「はあっ、はあっ……」


725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:26:31.50 ID:GrUnCP8WO

ベヒーモス「ふ、ふふっ……どうしたマコト。ずいぶん息が上がってきたじゃないか」


真「へ、へへ……そういう君だって攻撃が鈍ってきたんじゃないかい?」


ベヒーモス「ふふふ……」


真「へへっ……」


ベヒーモス「………」


真「………」





ベヒーモス「うおおおおおおっ!!」ダッ


真「うああああああっ!!」ダッ



ズガアアアァァアン…!!




726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:28:08.73 ID:GrUnCP8WO

ベヒーモス「見た目が凶暴そうだからって怖がるんじゃねぇぇぇええっ!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


真「ボクは好きで男の子っぽくなったわけじゃないんだあああっ!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


ベヒーモス「アタイだってカワイイ服やメイクに興味があるんだ! それを鼻で笑いやがってぇぇぇ!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


真「なにが真王子だ! ボクが憧れてるのはキャピキャピのお姫様なんだああああっ!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


ベヒーモス「アタイを……!」


真「ボクを……!」





真・ベヒーモス「もっと女の子扱いしやがれええぇぇぇええええっ!!!」





ドッカアアアアン…!!!




727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:30:34.88 ID:GrUnCP8WO

ベヒーモス「はあっ、はあっ……」


真「はあっ、はあっ……」


ベヒーモス「………」


真「………」




真「ベヒーモス……」

真「次の一撃が、たぶんボクたちの最後の別れになるだろう……」

真「互いに目指した女子力、いまだ消えずにこの心に焼き付いているよ……!」


ベヒーモス「……いいだろう。だったらあんたの女子力、砕いてみせよう……! この拳にアタイの女子力の全てを込めて!」


真「うおおおおおおっ……!!」ゴゴゴゴ


ベヒーモス「はああああああっ……!!」ゴゴゴゴ





ドゴオオオォォォオオオン……ッ!!!




728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:45:14.50 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B3F ー


ゴオオオオッ…!!


雪歩「……!」チャキッ

ブンッ!!


ズドオオオオンッ!!!



魔人兵(……参ったな。どの兵器も全てあのスコップ一本で弾かれてしまう)

魔人兵(それにあの子の堂々とした立ち振る舞い……。最初の頃の怯えた様子なんて見る影もない)

魔人兵(あらゆる兵器を備えているオレが、たった一本のスコップを持った少女に圧倒される……)




雪歩「はああああっ……!」チャキッ

雪歩「スコップ波!!」ブンッ

ズドオオオオオン!!


魔人兵「くっ……!」ジャキッ

魔人兵「……波動砲!!」コォォ

ドゴオオオオオオオオンッ!!!



雪歩「えいっ……!」ブンッ


ドカアアァァァアアンッ!!!




雪歩「………」チャキッ



魔人兵(大切な人たちの想いに応えたい、か)

魔人兵(……そうか、彼女の本当の武器は……)


729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:46:48.76 ID:GrUnCP8WO

雪歩「あの、時間稼ぎはもうやめにしましょう。私には果たさなきゃいけない約束がありますから」チャキッ



魔人兵「……その前に、君の名前を教えてくれないか?」


雪歩「………」

雪歩「雪歩。萩原雪歩です」


魔人兵「ユキホ。君のおかげでオレは大切なものに気づくことができた」

魔人兵「ありがとう」ニコッ


雪歩「私なんかをお手本にしてもためにならないと思いますけど……。でも、そう言ってもらえるのは素直に嬉しいですぅ」ニコッ




魔人兵「どんなに考えても、これしか思いつかなかった」


雪歩「?」


730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:48:01.38 ID:GrUnCP8WO

魔人兵「これで終わりだ。オレの生命をもって、君に勝利する!」

キィィィン…!!


雪歩(えっ? なんかすっごく光ってる……?)

雪歩(生命をもってって……ま、まさか……!?)


魔人兵「オレにだって大切なものはいる。そいつの想いに、オレは応えたいっ……!」


雪歩「死ぬつもりですか!? 死んだらなにもかもおしまいになっちゃいますぅ!」


魔人兵「終わりじゃない。思い出は残る。そういう報い方があってもいいんじゃないかって、オレは思うんだっ……!」ゴゴゴゴ


雪歩「や、やめ……!」


魔人兵「君を巻き込んで本当にすまないと思ってるが、これでも根は真面目なんでね」

魔人兵「与えられた仕事は……完遂しなければならない!」





魔人兵「さよならだ…………自爆!」



雪歩「!」



ーーーーカッ!!




731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:51:13.91 ID:GrUnCP8WO



ヒュゥゥ…



魔人兵「………」

魔人兵「…………」

魔人兵「………………どういうことだ……なぜオレは生きてる……?」



魔人兵「!?」



雪歩「……!」ギュッ

魔人兵「! ユキホ……!」

雪歩「死んで報いるなんて、そんなの認めませんっ!」ダキッ

魔人兵「オレの自爆を止めたのか……? どうやって……?」

雪歩「私のオーラであなたごと包みました。覚えたてだからとっても雑だと思いますけど……」

魔人兵(そういえば、なんだか温かいな。これがユキホのオーラとやらなのか……)


732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:53:13.16 ID:GrUnCP8WO

魔人兵「今の君なら、少なくともオレを助けずに全力で逃げればかすり傷程度で済んだはず。怪我を負ってまでなぜオレを助けた?」

雪歩「……あ、あなたの大切な人たちを、悲しませたくないから!」

魔人兵「!」

雪歩「残された方だって、辛いんですっ……ぐすっ……悲しい思いを、もう……誰にもしてほしくないっ……!」

魔人兵「………」

雪歩「ううっ……ひぐっ……」

魔人兵「オレの……負けだ」

雪歩「ぐすっ……」

魔人兵(他人のことにすら命をかける……これもまた、あいどるの強さなんだろうか)




…ゴゴゴゴ




魔人兵「……ん?」


733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:55:31.04 ID:GrUnCP8WO



ドゴオオオオンッ!!!




魔人兵「なんだ!? 天井が崩れる……!」

雪歩「えっ?」

魔人兵「ユキホ、オレの後ろに隠れているんだ!」スッ

雪歩「は、はいっ!」



ドカアアアアァァアアンッ!!!



ドサドサッ


真「…………はあ、はあっ……!」


ベヒーモス「…………はあ、はあっ……!」




雪歩「ま……真ちゃんっ!?」


魔人兵「ベヒーモス!」



ベヒーモス「凄まじい……女子力だった……マコト……。アンタが……女子力No.1だ……」フラッ

ドサッ


真「ベヒーモス……手強い女子力を持った相手だった……」



雪歩(えっ、どういう状況?)


734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:58:06.06 ID:GrUnCP8WO

雪歩「ま、真ちゃんっ!」

タタタタ

真「雪歩!? どうしてここに?」

雪歩「どうしてもなにも、真ちゃんたちの方が上から落ちてきたんだよ?」

真「えっ、そうだったの?」

雪歩「ともかく、無事で良かったっ……!」ダキッ

真「……うん、雪歩の方もね」ニコッ



魔人兵「………」ザッ



真「! 雪歩、下がって」スッ

雪歩「あ、大丈夫だよ真ちゃん。その魔物さんはもう、敵意はないみたいだから」

真「そうなんだ。じゃあ、雪歩の方も終わったんだね」



魔人兵「……いや、まだ終わってない」



雪歩「えっ?」



魔人兵「まだオレには、やり残したことがある」チラッ



ベヒーモス「………」グッタリ


735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:00:47.29 ID:pmiZAnOYO

雪歩「な、何をする気なんですか……?」



魔人兵「…………ベヒーモス!」



ベヒーモス「…………なんだ甲斐性無し、いたのか……」

ベヒーモス「その様子だとアンタも負けたのか。はっ、無様だね……」


魔人兵(オレは、ユキホに勇気というものを教わった。今がきっとその勇気を出す時なんだ……!)



魔人兵「ベヒーモス……」


ベヒーモス「うるさいね……聞こえてるよ……」




魔人兵「……結婚しよう!」



ベヒーモス「えっ!?」


真「えっ?」

雪歩(ああ……もうわけがわからないですぅ……)


736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:02:07.56 ID:pmiZAnOYO

魔人兵「子供まで作っておきながら、君のことをずっとほったらかしだった。いい歳して仕事もなく、ずっと燻っていた自分に自信が持てなくて……君のこと、腹をくくることができないでいたんだ」

魔人兵「でも、もう決めた。待たせてすまない。絶対に幸せにする!」



ベヒーモス「…………バカ、遅すぎだよ……」グスッ

ベヒーモス「でも……アタイ、嬉しい!」ダキッ



真「いい話だなぁ……!」グスッ

雪歩「う、うん、そうなのかもね……」


737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:04:39.71 ID:pmiZAnOYO

真「……さて、と。ボクたちの勝ちってことでいいんだよね?」



魔人兵「ああ。オレたちの負けだ」

ベヒーモス「ふふっ♪ あんたたちは先へ進むがいいよ!」ニコニコ


雪歩「すっごい幸せそうだね」

真「ね」



ベヒーモス「あんたたちには、なんだか世話になっちまったね」

魔人兵「ありがとう。君たちがいなければオレたちはこうして寄り添うことはなかった」

真「ボクたちは何もしてないさ!」

雪歩(っていうかこんな展開、絶対に予想できないよね)



真「それじゃあボクたちは行くよ」

雪歩「えっと……末永くお幸せに?」


魔人兵「ああ。君たちの武運を祈っているよ」

ベヒーモス「マコト、あんたも早くいい人見つけなよ!」



真「よ、余計なお世話だよ!」


738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:07:36.62 ID:pmiZAnOYO

真「さて、ずいぶん時間食っちゃったから少し急ごう。体は平気かい? 雪歩」

雪歩「うん、大丈夫だけど……。真ちゃん、一度上に戻ってみない?」

真「えっ、何か忘れものでもしたの?」

雪歩「ううん、そうじゃないんだけど……。私、あずささんの様子を見に行った方がいいと思うんだ」

雪歩「あずささんはまだ私がいた階には来てないけど、もし地下1階で魔物さんに苦戦してるんだとしたら心配だし……」

雪歩「魔物さんを倒した後だとしても、それはそれでその後の行方が心配だし……」

真「あー…………なるほど」

真「確かにボクがいた地下2階にもまだ来てない……となると、あずささんはまだ地下1階にいる可能性が高いね」

真「よし、じゃあ地下1階に戻ろうか」

雪歩「うんっ」

タタタタ…


739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:10:39.52 ID:pmiZAnOYO

真「……ああーーっ!!」

雪歩「ひぅっ!?」ビクッ

雪歩「ど、どうかしたの? 真ちゃん」

真「いや、ベヒーモスのやつ、旦那さんどころか子供までいたんだなーと思って」

雪歩「あ、うん、そうみたいだね」

真「よくよく考えるとボク、なんだか試合に勝って勝負に負けたって気がする……」

雪歩「えっと、それってもしかして女子力がどうのっていう?」

真「ベヒーモスと決めたんだ。戦いに勝った方が女子力高いってことにしようってさ」

雪歩「ふ、ふーん。なんか変わった戦いだったんだね……」

真「あー! なんかモヤモヤするなぁ!」

雪歩(真ちゃんはこんなふうにちょっぴりズレてるところがとっても可愛いって思うんだけど……)

雪歩(自分じゃ気付かないんだろうなぁ……たぶん)

740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:13:31.38 ID:pmiZAnOYO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


伊織「……ふぅ。親衛隊も退けたし、早いところやよいのところに向かわないと」

フラフラ

伊織「……なんでかしら。心なしかうまく歩けないような気がするわ……」

フラフラ

伊織「……はぁ、はぁ……」

伊織「……あっ」ヨロッ

ドサッ



伊織「ぐぬぬ……! 手足が動いてくれない……!」ググッ

伊織「もう、どうなってんのよこれ! さっきポーションで回復したばっかりじゃない!」

伊織「私は……こんなところで地面に這いつくばっているわけにはいかないのよっ……!」

伊織「ぐぎぎぎ……! 動きなさいよ私の手足っ!!」ググッ



…ドッゴオオオォォォオオンッ!!!


741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:14:56.79 ID:pmiZAnOYO

伊織「きゃっ!? な、なによ今の爆発!?」キョロキョロ

伊織「……上?」チラッ



…ヒューーー



ドサッ



伊織「むぎゅ」




「…………ふー、下にクッションがあってなんとか怪我しないで済んだぞ……」


伊織「ちょ、ちょっとアンタなんなのよ! いきなり人の上に降ってくるなんて!」ジタバタ


「あっごめん! クッションじゃなくて人間だったのか、自分気付かなかったぞ」

「……って」 



伊織「アンタ……!」




響「……伊織!?」

伊織「……響!!」




742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:17:00.29 ID:pmiZAnOYO

響「伊織ぃぃぃ〜!!」ウルッ

響「良かった……無事だったんだね!」ダキッ

伊織「まあ、おかげさまでね。っていうかアンタ、すぐ上の階にいたのね」

響「うん。ちょうど今親衛隊を倒したところさー! もしかして伊織も?」

伊織「ええ、まあ……」

伊織「……ふぅ」

伊織(なんか、響の顔を見た途端に力が抜けちゃった……)

伊織(……あ……ちょっと……眠いかも……)

響「伊織? どうしたんだ伊織?」

伊織「響……ごめんなさい……。この下の階に……やよいが……」

響「えっ? 下にやよいがいるのか?」

伊織「アンタ……だけでも……やよい……を……」

ガクッ


響「伊織!? ちょっと伊織!」ガシッ

伊織「………」

響「起きて! 起きてよ伊織っ!!」



「……安心なさいな。その方は死んでしまったわけではありませんわ」


響「えっ?」


743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:21:24.20 ID:pmiZAnOYO


プリンプリンセス「はぁ、はぁ……」


響「プリ江! 生きてたのか!」


プリンプリンセス「ええ、まったくひどい目に遭いましたわ……」

プリンプリンセス「それよりも、そちらのおでこの方、危険かもしれませんわよ?」


響「危険ってどういうこと?」


プリンプリンセス「見たところ手足が麻痺しています。このまま麻痺が全身に回れば……」


響「ぜ、全身にまわったら、どうなるんだ?」


プリンプリンセス「命の保証はできませんわね」


響「そ、そんな! うぅ、でも自分は白魔法使えないし、回復するアイテムももう持ってないし……」

響「早く白魔法使える誰かのところに連れて行かないと……!」

744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:23:20.44 ID:pmiZAnOYO

響「伊織、すぐに治してあげるからな!」ダキッ

伊織「………」グッタリ


プリンプリンセス「お待ちなさいな。私はまだ貴女に負けたつもりはありませんわよ?」


響「!」

響(まずい、もう自分もナンクル砲を撃てるだけの体力が残ってないぞ……)

響(今襲ってこられたら……)


プリンプリンセス「貴女にやられていった仲間たちの仇、討たせてもらいます」

プリンプリンセス「貴女はその方を守りながら私と戦わねばならないのです!」


響「……!」

響(……伊織、ちょっと待っててね)スッ

伊織「………」



響「わかったぞ。どこからでもかかってこい」

響「自分はここから動かない。伊織には絶対に指一本触れさせないからなっ!」ビシッ



プリンプリンセス「………」



745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:27:52.82 ID:pmiZAnOYO

プリンプリンセス「…………ふふっ、冗談ですわ」



響「……えっ」



プリンプリンセス「確かに貴女は敵ではありますが、私が守護する地下5階を突破された以上、負けを認めます」

プリンプリンセス「ルールの無い勝負ほどつまらないものはありませんから」


響「プリ江……!」

響「ねえ、プリ江も自分たちと一緒に来ないか? みんないい子たちだからきっとすぐ仲良しになれるぞ!」


プリンプリンセス「勘違いしないでくださる? あくまで貴女は私の敵。馴れ合いなんて勘弁ですわ」

プリンプリンセス「それに、私が仕える主はコトリ様ただ一人……。主君の敵に降るなんて無様な真似をしたら、コトリ様にあわせる顔がありませんもの」


響「……へへ、そっか。なんかカッコいいな!」ニコッ


プリンプリンセス「先を急いだ方がよろしいのではなくて? そちらのおでこの方、手遅れになってしまいますわよ?」


響「あ、うん。じゃあ自分、もう行くね!」

響「よっ……と」

伊織「………」




響「プリ江ーー! 自分たちは敵同士かもしれないけど、もう友達だからなーー!!」フリフリ



プリンプリンセス「………」

プリンプリンセス「本当に、変わった方でしたわね……」


746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 01:07:53.12 ID:B9v77NChO
正直な話、オーラとかいらなかった思う…雪歩のスコップは最強の武器で攻撃弾くんだし
だったらオーラなんかじゃなく、雪歩の土木で鍛えた目と勘の鋭さで自爆装置の部分をピンポイントで破壊
それにより自爆を阻止っていう方がまだアイマスとFFクロスぽかったかなーって
オーラじゃまるでハンターハンターの念みたいでアイマスぽくもFFぽくもないなーっと感じた
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 23:43:12.55 ID:8Tz6gHKyO
ー 月の地下渓谷 B4F ー


亜美「くらえー! ファイガ×2!!」バッ


ゴオオオオッ…!!


金竜「その技はもはや見切った!」シュンッ

金竜「ふぬっ!!」ブンッ


ーパシュンッ


金竜「! 消えた!?」


亜美「んっふっふ……残像だ」キリッ


金竜「おのれ小癪なっ……!」


銀竜「隙ありっ!!」ブンッ


亜美「うわぁっ!?」


真美「真美を忘れてもらっちゃ困るよっ!」

真美「右手にプロテス……左手にシェル……」

真美「合わせて、ウォールっ!!」


ガキィンッ!!


銀竜「くっ……防御壁か!」


真美「亜美、カッコつけてる場合じゃないっしょ〜!」

亜美「だって言ってみたかったんだもん〜」


…シュルルッ! 

真美「おわぁっ!?」ヨロッ


金竜「ふっふっふ、捉えたぞ!」


ーパシュンッ


真美「んっふっふ……残像だ」キリッ


金竜「ぐっ……!」


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