P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2

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433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 00:26:28.46 ID:qLn1JxLyO
ここまでです
妙に短いレスがあるのはスマホの操作に慣れず途中で書き込みしてしまってるせいです

ちなみにFFは2〜9までしか知らないです
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 01:04:07.57 ID:olHZQiE1O
]やろうずvita版なら場所によっては2000円あれば買えるし
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/27(火) 08:52:55.07 ID:Yq1GRc7QO
オッツオッツ、もう終わりかと思うと感慨深いな
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/02(日) 20:56:42.07 ID:aKjI7yjuO

律子「……ふぅ、ようやく壁を抜けたわね」

春香「ちょっとした広間に出たみたいですけど……」キョロキョロ

春香「先へ進む道が見当たりませんね。貴音さん、次もまた隠し通路ですか?」

貴音「はい。確か、そこの壁に……」スタスタ



貴音「!」



貴音「……はっ!」クルンッ

…スタッ

ーーズドオオオオンッ!!


春香「貴音さんっ!」

響「貴音! 大丈夫か!?」

貴音「……問題はありません」

貴音「しかし……」チラッ



ベヒーモス「……なかなかいい反応してるじゃないか。ま、今のはほんの挨拶代わりだけどね」ニヤリ

437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/02(日) 20:58:11.36 ID:aKjI7yjuO

律子「出たわね、親衛隊……!」チャキッ

律子「みんな、行くわよ!」

真「……待って」

律子「真……あんたまさか……」

真「……ここは、ボクが出る!」ザッ

律子「ダメよ! これ以上バラバラになったら……!」

真「自分でもわがまま言ってるっていうのは自覚してる」

真「でも、あいつとはこないだの決着を着けたいんだ」

真「……頼むよ、律子」

律子「真……」

伊織「……やらせてやりなさいよ。この戦闘バカには何を言っても無駄よ、きっと」

律子「………」

律子「……分かったわ。その代わり絶対に勝ちなさい、真!」

真「律子……! ありがとう!」パァァ

438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/02(日) 21:00:25.88 ID:aKjI7yjuO

律子「みんな、ここは真に任せて行きましょう!」

春香「はいっ!」

亜美「まさか亜美たちの最終兵器の出番がこんなに早いとは……」

真美「戦力ダウンは否めないケド……ちかたないね」

雪歩「ま、真ちゃんっ……!」

千早「……とはいえ、先へ進む道はあの魔物の後ろよ。どうする?」



ベヒーモス「あんたたちはこの先へ進みたいのかい?」

ベヒーモス「……ふふん、だったらアタイが『道』を作ってやろうか?」



千早「えっ?」



ベヒーモス「……そおらっ!!」ブンッ

ゴオオオォォオオッッ!!


真「! ……気を、飛ばした!?」


…ドゴオオオォォオオンッ!!



…ガラッ



春香「わわっ……あ、足場が……!?」ヨロッ

響「く、崩れるぞっ!」

雪歩「ひぃっ!」

やよい「はわわっ、こ、こわいです〜!」

伊織「やよい、私に捕まりなさい!」

千早「まさか、私たちを地面に叩きつけて殺す気なの……!?」

貴音「………」

美希「……あふぅ」

律子「みんな!」

亜美・真美「おちるううううぅぅーーーー!!」


ヒューーーー…


真「みんなーーーーッ!!」

439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:02:20.92 ID:aKjI7yjuO

真(みんな……)


ベヒーモス「……下に落ちた仲間たちが心配かい?」


真「………」


ベヒーモス「ま、この程度でやられちまうようじゃ、所詮はそこまでだったってことさ」


真「……!」グッ

真「気を飛ばすなんていつの間に覚えたんだい? この前戦った時は使ってなかったよね、確か」


ベヒーモス「あんたの真似をしてみただけさ。人間に出来てアタイに出来ないはずがないからね」


真(簡単に言うけど、素人があんなにすんなりと気を操るなんてまず無理だ)

真(……いい格闘センスを持っているんだろうな、きっと)


真「……ボクは、みんなを信じてる」

真「ボクの仲間たちは、きっと君の仲間たちを倒して小鳥さんの元へ辿り着くって」

真「だから、不安なんて何もない!」


ベヒーモス「……そうかい」

ベヒーモス(本当に一ミリの迷いも無い……いい表情だ)


ベヒーモス「……だったら、アタイも信じようじゃないか」

ベヒーモス「アタイの仲間たちはあんたの仲間たちに負けたりしないって」


真「!」

真「……へへっ!」


ベヒーモス「ふふっ……」


真「じゃあ、勝負だ。ボクの信念と君の信念、どちらの方が強いのか!」


ベヒーモス「ああ、望むところだ!」


真「はああああぁぁぁああっ!!」ゴゴゴ


ベヒーモス「うおおおおおおおっ!!」ゴゴゴ


ズドオオオオォォォオンッ!!

440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:05:50.80 ID:aKjI7yjuO
ー ミシディアの村 祈りの館 ー


翔太「ふーん、ここが祈りの館かぁ」キョロキョロ

高木「なんだか雰囲気のあるところだねぇ」

長老「微弱ながら魔力を巡らせておるでの。ここだけは魔物たちも破壊出来なかったようじゃ」

冬馬「………」

北斗(祈りの館……)

北斗(確かゲームでは、最終決戦に望むセシルたちのために仲間たちが集った場所だったはず)

北斗(そして、ゼロムスの力に屈しようとしていたセシルたちに、仲間たちは想いをパワーに換えて月にいる彼らの元に届けた)

北斗(ゲームとは違って今は俺たちしかいないけど、そんなことも言っていられないだろう)


北斗「それじゃあ、早速始めますか?」

長老「そうじゃの。少しでも強い祈りを届けられるよう、早めに始めた方が良いじゃろう」


黒井「………」



黒井(あの時……)

黒井(音無小鳥と戦ったあの時、ヤツは全力ではなかった)

黒井(もちろん私とて手の内を全て晒したわけではない)

黒井(……が、あの時の『アレ』は単なる分身。本体はもっと強大な力を持っていると思っていいだろう)

黒井(高槻やよいやその他の連中は、本当に音無小鳥に勝てるつもりでいるのか?)

黒井(……フン、叩いても叩いても雑草のように這い上がってくる連中だ。勝ち目が薄いことなど承知の上だろうな)

441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/02(日) 21:10:12.24 ID:aKjI7yjuO

黒井(『絆』とやらが信条の765プロが、仲間であった人間を倒す、か)

黒井(ゲームの世界とは、まったく不条理な世界だ)

黒井(……もちろん、私は高槻やよいなど関係なく、私自身のために音無小鳥を倒す)

黒井(しかし……私がすべき事は本当にそうなのか?)

黒井(私は、この世界で何をして来た?)

黒井(この世界で何を見て来た?)

黒井(私は……)




冬馬「なあ黒井のおっさん。これからお祈りとやらが始まるみたいだけど、あんたはどうするんだ?」

黒井「………」

冬馬「どうせおっさんはお祈りなんか興味ないだろ? 自由に行動してても構わないけど、あんまり遠くに行くなよな。迷子になられても困るからよ」

黒井「………」

黒井「お前たちの力だけで足りるとでも思っているのか?」

冬馬「え?」

黒井「王たるこの私の力無くして音無小鳥に勝てるはずがあるまい」

高木「黒井……」

黒井「いいか、決して765プロと力を合わせるのではない。あくまで力を貸してやるのだ」

冬馬「おっさん、じゃあ……」

黒井「おい、老人。やるならさっさと始めるぞ」

長老「幻獣王リヴァイアサンの力を借りられるとは、これ程心強いことはない」

長老「さ、皆、こっちじゃ」

スタスタ…



黒井(勘違いするなよ、765プロ。私はお前たちと馴れ合うつもりなどない)

黒井(今までどんなことがあろうともしぶとく生き残ってきたお前たちがこの状況をどう乗り越えてみせるのか)

黒井(ただそこに興味が湧いただけなのだ)

442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:14:48.21 ID:aKjI7yjuO

ー 月の地下中心核 ー


P「………」ソワソワ

小鳥「ズズッ……」

P「………」ソワソワ

小鳥「……ふぅ。お茶がおいしいわぁ」

P「………」ソワソワ

小鳥「………」


小鳥「プロデューサーさん、みんなのことが気になってるんですか?」

P「そりゃそうですよ。地下渓谷は最大のダンジョン。敵も強いですし」

P「みんなが負けるなんてことは思ってませんけど、痛い目にあったりしていないか心配で……」

小鳥「あのー、ここまで来て今さらだと思うんですけど……」

小鳥「今までだってみんなは辛い事をたくさん乗り越えて来たんですよね?」

小鳥「だったらあとはもう、信じるしかないと思いますよ?」

P「それは、そうですけど……」

小鳥「そんなに心配なら、見てみますか?」

P「見るって、何をです?」

小鳥「みんなの様子ですよ。みんなの姿を実際に見ればプロデューサーさんも少しは気持ちが落ち着くんじゃないですか?」

P「え? そんなこと出来るんですか?」

小鳥「うふふっ♪ 任せてくださいっ!」

小鳥「……えいっ!」バッ

パリッ…!


P「おお……! なんか壁にテレビみたいなのが現れた!」

小鳥「精神波を応用すればこのくらいわけありません!」ドヤッ

P「なんて言うか……もうなんでもアリですね」

小鳥「このくらいのハンデがあってもいいじゃないですかー! 私一人でみんなと戦うんですからー!」

P「……まあ、それもそうか」

小鳥「さてさて、それでは……」

小鳥「このリモコンをポチッとな」ポチッ


…ブゥン


P「あ、テレビが映った」


『……うぎゃあああああぁぁぁーー!!』


P「! あれは……響!?」

443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:20:39.15 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B5F ー


「…………ぅぁぁぁぁああああああーーーー!!」


クルンッ

スタッ

響「……っとと」ヨロッ

響「……ふぅ、なんとか着地成功だぞ……」

響「まさか地面を割られるなんて思ってもみなかったなー」

響「………」チラッ

響「ずいぶん下まで落とされちゃった……。もう真も魔物も見えないぞ」

響(真とあずささん、大丈夫かな。ちょっと心配だな……)

響「……ってダメダメ。自分がそんなに弱気でどうするんだ!」ブンブン

響「真もあずささんもきっと大丈夫。二人とも魔物なんかに負けないさー!」

響「……あ、そういえば他のみんなはどこへ行ったんだ?」キョロキョロ



響「おーーーい!! 貴音ぇーーー!!」

響「律子ぉーー!! 春香ぁーー!!」

響「どこにいるんだーーーー!!」



響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「うぅ……返事がない……。みんな違う場所に落ちちゃったのかなぁ……」


響(……ひとりぼっち、か)


響「……べ、別にさみしくなんかないもんねっ! 自分だって一人で戦えるってこと、魔物に教えてやるんだ!」

響「さあかかってこい、魔物ー! 完璧な自分が相手になるぞー!」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「……魔物すら出てくる気配がないぞ……」シュン


響「とりあえず、ピヨ子は一番下の階……地下12階で待ってるって言ってたっけ」

響「ここが何階なのか分からないけど、さすがにここから飛び降りるのは危険だな」

響「上に戻るわけにもいかないし、下に降りる階段を探すか」

響「もしかしたらもうみんなは下へ向かっているのかもしれないし」


響(……はぁ。さっきから自分、ひとり言ばっかりだぞ……)


トボトボ…

444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:24:12.95 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B3F ー


ズズ…



ズズズ…



ズズズズ…



…ザバァ!


雪歩「………」キョロキョロ

雪歩「ここにも誰もいない……」

雪歩「やっぱりみんな、もっと下の階に落ちちゃったのかなぁ」

雪歩(魔物さんに地面を破壊されて落ちる瞬間、私、咄嗟に横穴を掘って自分だけ逃げちゃったけど……)

雪歩(みんなを助ける余裕がなかったよ……)

雪歩「……きっと大丈夫だよね?」

雪歩「みんな、私なんかよりずっと強いもん」



雪歩「それより、これからどうしよう……」

雪歩「真ちゃんの助太刀に行くべきかな?」

雪歩「ここってたぶん、真ちゃんのいた階からそんなに離れていないと思うんだけど……」チラッ


雪歩「………」

雪歩「ううん、違う。真ちゃんはそんなこと望んでないよね」

雪歩「真ちゃんならきっと『ボクに構わず先に進んで』って言うはず」

雪歩「それに、みんなと約束したもん。どんなことがあっても中心核へ辿り着こうねって」

雪歩「ひとりは怖いけど、今はそんなこと言っていられないよ……!」

雪歩「私も、下を目指そうっ!」グッ



雪歩(……それにしても)

ザクッ ザクッ

雪歩(ここの地面って見たことない鉱石で出来てるんだよね。いったい何で出来てるんだろう?)

ザクッ ザクッ

雪歩(キラキラ輝いているから、宝石か何かなのかな?)

ザクッ ザクッ

雪歩(すっごく硬いけど、私にはククロさんに鍛えてもらったスコップがあるから大丈夫)

ザクッ ザクッ

雪歩(……なんだか掘ってるうちにテンション上がってきたかも。今ならこのまま小鳥さんのところまで掘れそうな気がするよ!)

ザクッ ザクッ



雪歩「よーし、どんどん掘っちゃいますぅ!」シャキーン

445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:25:40.99 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B4F 大部屋 ー


…ヒョコッ


亜美「むむむ……」チラッ


亜美「むむむむっ……」チラチラッ


亜美「……視界良好、敵影なし、っと」

亜美「……ふーむ」

亜美「ここに落ちてきたのはどーやら亜美ひとりっぽいね」

亜美「みんな大魔道士亜美とはぐれるなんてツイてないよねー」



亜美「っと、そーだ。今のうちに体力回復っと」ゴソゴソ

亜美「んく、んく……」

亜美「……ふぅ」

亜美(ま、こんな時のためにみんなでポーションとエーテル分けたし、なんとかなるよね?)



亜美「……さってと!」スクッ

亜美「まずはこのフロアをさくっとタンサクしちゃおっかな。なーんかいいアイテムがありそうなフインキだし」

亜美「できれば魔物に出会う前に手に入れたいね!」

亜美「あと、みんなのことも早く救出したげないとね」

亜美「特に真美は亜美がいなくてさびしがってるだろーし」

亜美「………」


亜美「よーし! 亜美、出撃だよっ!」

タタタタ…

446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:29:20.05 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B4F 外部 ー


スタスタ…

真美「うーん……」

真美「やっぱ誰もいないかー」

真美「真美たちをバラバラにして戦力がダウンしたところをカッコゲキハ、というわけですな」

真美「敵さんもいろいろ考えてるねぇ」


真美「ふーむ」キョロキョロ

真美「それにしても真美、この地形なーんか見覚えがあるんだよねー」

真美「確か、この階にチョー貴重な武器があったよーな」

真美「……ん? あっちに階段がある」

スタスタ…



真美「!」



真美(やっぱそーだよ……!)

真美(階段があって、なんかミョーに広々としてて……)

真美(真美のキオクが確かなら……ここは地下ケーコクの地下4階!)

真美(てことは、ここにある武器は『アレ』だね)

真美(『アレ』が手に入れば確かに楽になる。けど、今は亜美が心配だな)

真美(亜美、さっきの戦いでじゃんじゃん魔法使ってたよね。あの調子だとすぐにMPなくなっちゃいそう)

真美(もし魔物と戦ってる最中にMPゼロになってエーテルも切れたら、ウチら魔道士にとってはチメーショーだもんね)

真美(……ん、待てよ? それならなおさら『アレ』が重要になってくるのか……)

真美(……うん。やっぱここはちょっとムリしてでも『アレ』を探すべきっぽいよ!)


真美「よーし! 真美、突撃だよっ!」

タタタタ…

447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/02(日) 21:33:06.69 ID:aKjI7yjuO
短いけどここまでです

vitaはマストソングスのために買ったんですが、今はマストソングスで手一杯で他のゲームがやれてません
鬼ムズすぎ
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/08(土) 04:03:18.12 ID:BhrJ70oBO
俺っちのは動かなくなったから修理に出すにも保険期間外で金取られるから放置してる
修理に出す余裕なんてない
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/12(水) 19:50:59.04 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


レッドドラゴン「おらあああああっ!!」


ズドドドドドドッ!!


あずさ「うふふ〜、こっちですよ〜」ヒョコッ


レッドドラゴン「ンにゃろ!!」


ドゴオオンッ!!


あずさ「は〜い、今度はこっちです〜」フリフリ


レッドドラゴン「こんのっ!!」


ドドドドドドッ!!


あずさ「ほらほら、頑張ってくださいね〜」ヒョコッ



レッドドラゴン「……はぁ、はぁ……」

レッドドラゴン「……おい、ゾンビ女! てめーやる気あんのかよ! さっきから逃げてばっかじゃねーか!」


あずさ「あらあら……」

あずさ「だって、あなたの攻撃は少しでも当たったら大変なんですもの」

あずさ「それに私、逃げないなんて一言も言ってませんよ〜?」


レッドドラゴン「それじゃ勝負になんねーだろが! てめーも攻撃して来いよ!」


あずさ「あら、よろしいんですか〜?」


レッドドラゴン「たりめーだ! 一方的なのは勝負って言わねーからな!」


あずさ「では、お言葉に甘えますね〜」ゴゴゴ


レッドドラゴン「!」

450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 19:58:23.27 ID:VsHkcvNIO

レッドドラゴン「……けっ、持ってやがるじゃねーか! こんな大層な魔力をよ!」


あずさ「……時は、来た」ゴゴゴ


レッドドラゴン「ビリビリ来やがる……! やっぱ勝負はこうじゃなきゃな!」


あずさ「赦されざる者の……」


あずさ「………」


あずさ「………」


あずさ「………」


レッドドラゴン「…………?」


あずさ「……え〜っと」


あずさ「すみません、詠唱、ど忘れしちゃいました〜」モジモジ


レッドドラゴン「ふざけんなアホぉ!!」


レッドドラゴン「てめーはオレ様を倒してコトリ様のところへ行くんだろーが! そんなんでどーすんだよ!」


あずさ「そ、そうですよね……」シュン


レッドドラゴン「……ったく、今のはてめーの決め技なんだろ? しっかり詠唱呪文思い出せよな!」


あずさ「な、なんとか頑張ってみますね〜?」


レッドドラゴン「ってわけで、戦いの続きやんぞ!」


あずさ「は〜い」


あずさ(……どうしちゃったのかしら、私。『あの時』はちゃんと使えたはずなのに)

あずさ(それに、貴音ちゃんのお家の図書室で『あれ』について書かれた本まで読んだのに……)

あずさ(『あれ』が使えないときっと勝てないわよねぇ)

あずさ(……あら? そもそも『あれ』ってなんていう名前の魔法だったかしら?)

あずさ(覚えていたはずなのに、思い出せない……)

あずさ(困ったわね〜)

451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:01:31.40 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B2F ー


真「はあああっ!」タタタ


真「せいっ!!」ドゴォ


ベヒーモス「……ふん、軽いねぇ」

ベヒーモス「うらあっ!!」ブンッ

ドガァン!!


真「うわっ!」

…スタッ



真「……ふー」コキッ


ベヒーモス「何を出し惜しみしてるんだい? そんなんじゃアタイに傷ひとつ付けられない。それはこないだの戦いで分かってもらえたと思ったがねぇ」


真「……うん、そうだね」


ベヒーモス「全力で来な! じゃないと面白くない」


真「いいの? 全力出したらきっとボクが勝っちゃうよ?」


ベヒーモス「口の減らないヤツだ。どっちが上か思い知らせてやるよ……!」ゴオオオ


真(気を……開放した!)

真(それも、無茶苦茶な量の気だ!)


ベヒーモス「うらああああっ!!」ブンッ


ゴオオオォォォ!!


真「……覇王……」バッ

真「……翔煌拳ッ!!」


ゴオオオォォォ!!


ベヒーモス「……くっ、押し返されるか!」


ドゴオオオオォォォオオンッ!!

452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:05:34.06 ID:VsHkcvNIO

ベヒーモス「ぐっ……ふふ、やるじゃないか」ニヤリ


真「気に関しては一応君よりボクの方がセンパイだからね。簡単には負けられないさ!」ニコッ


ベヒーモス「格上の余裕か。だが、いつまでその余裕が持つかねぇ?」バッ


真「!」


ベヒーモス「確か、こう……」ゴオオオ


真「えっ!? ま、まさか……!」


ベヒーモス「覇王……翔煌拳!!」


ゴオオオォォォ!!


真「う、ウソでしょ……?」


ドゴオオオオォォォオオンッ!!



真「……ぐっ……!」ヨロッ


ベヒーモス「どうだい? 自分の技を食らった感想は?」


真「……はは、いい気分ではないね」

真「驚いたよ。気を覚えたてで覇王翔煌拳を真似するなんてさ」


ベヒーモス「なに、今のはほんの余興だよ。勝負の決め手になりはしない」

ベヒーモス「最後の最後で勝敗を分けるのは……」


ベヒーモス「……圧倒的な、パワーだ……!」ゴゴゴ


真「……!」ゾクッ


真「……ごめん、君を見くびってた。ボクも全力で戦うよ」


ベヒーモス「ああ、そうした方がいい……」ゴゴゴ


ベヒーモス「あんたほどの人間を、アタイもみすみす殺したくはないからね……!」ゴゴゴ


真(うーん、ちょっと計算外……かな?)

453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:08:42.96 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


フワフワ…


伊織「……一時はどうなるかと思ったけど、助かったわ」

やよい「ありがとう、しるふちゃん!」


シルフ「私の主人にこんなところで落下死されても困りますからね〜」

シルフ「ま、落下の最中にとっさに私を喚び出したのは正解だったと思いますよ〜?」

シルフ「それでは、頑張ってくださいね〜」フリフリ

スゥゥーー…



…スタッ

伊織「やよい、ありがとね。アンタを守るつもりが逆に助けられちゃったわね」

やよい「ううん、わたしもうわー! ってなってて、なにがなんだかよくわかってなかったから」

伊織「……それにしても、ここは何階かしら」キョロキョロ

伊織「かなり下まで落ちてきたと思うんだけど……」

やよい「伊織ちゃん、ほかのみんなはどこへ行ったのかな?」

伊織「そうね。とりあえずみんなを探しましょうか」

やよい「うんっ!」

スタスタ…

454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:11:06.64 ID:VsHkcvNIO


伊織「みんなーーーー!!」

やよい「どこですかーーーーっ!!!」



伊織「……見つからないわね。他の階に落ちたのかしら」

やよい「うーん……」

伊織「とにかく、律子たちの無事を確かめないと」

やよい「………」

やよい「伊織ちゃん、見つからないならわたしたちだけでも先へ進んだほうがいいんじゃないかなーって」

伊織「やよい?」

やよい「あずささんも真さんも、わたしたちのためにまものさんとたたかってくれてるでしょ?」

やよい「それをむだにしないためにも、今は全力で進むことがたいせつだと思うんだ!」

やよい「きっと春香さんたちも小鳥さんのところへむかってるはずだよ!」

伊織「やよい……」

伊織「……ったく」ムニッ

やよい「い、いおりひゃん!?」

伊織「その様子だと、もう完全に迷いはないみたいね?」ムニムニ

やよい「うん! わらひひほいあいふまへおあひひっはっへへお……」

やよい「もー! ほっへあひいれひゃうよー!」プンスカ

伊織「にひひっ♪ これはアンタが私を心配させた罰よっ」

やよい「うー、伊織ちゃんがいじわるですー」

伊織「やっぱりやよいにはウジウジ悩んでる姿は似合わないわ」

やよい「……うん」

やよい「わたしも小鳥さんとちゃんとたたかって、みんなで元の世界にもどるってきめたんだ!」グッ

伊織「……お帰りなさい、やよい!」ニコッ

やよい「えへへっ、またせてごめんね、伊織ちゃん!」ニコッ


伊織「……さて、そうと決まればとっとと下に降りる階段を見つけましょ」

やよい「うんっ!」

455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:15:37.84 ID:VsHkcvNIO

スタスタ…

伊織「……ん、扉があるわね」

やよい「下にいくかいだんがあるといいねー」

伊織「ええ。……開けるわよ」


…ガチャ




リルマーダー「やっと来たかー! 待ちくたびれたぜ、ホントによー!」




伊織「……出たわね!」

やよい「あれってたしか、貴音さんのおともだちの家にいた……」


リルマーダー「オイラはずーっとここでお前らが来るのを待ってたんだ。楽しませてくれよな?」チャキッ


伊織「………」チャキッ

伊織「……ここは私が引き受けるわ。やよい、アンタは先へ進みなさい」

やよい「えっ?」

伊織「今のアンタなら一人でも大丈夫。だから行きなさい」

やよい「伊織ちゃん……」

やよい「うん、わかった!」


リルマーダー「せっかくの獲物を逃がすかよっ!」ダッ


伊織「……遅いっ!」ビュンッ

ガキィン!!


リルマーダー「このやろっ……!」ギリッ

456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:19:05.75 ID:VsHkcvNIO

リルマーダー「行かせないぞっ!」

ヒュンッ


やよい「はわわっ!」ピタッ


伊織「ムラサメ、やよいを護りなさい!」



…パキィン!!



やよい「伊織ちゃん、ありがとう!」

タタタタ…



伊織(……しっかりやるのよ、やよい)





リルマーダー「……ちぇっ、一人逃がしたかー」

リルマーダー「でも、お前らはコトリ様の元へ辿り着くことはできないんだぞ!」

リルマーダー「なんたって地下10階にはバハムート、地下11階にはクルーヤがいるからな!」


伊織(弱い犬ほど……ってヤツなのかしら。訊いてもいないのにベラベラしゃべってくれるわね)

伊織(ま、情報は有り難く受け取っておくけれどね)

伊織(それにしても、バハムートってのは貴音から聞いていたけど、クルーヤっていう名前は初めて聞いたわ)

伊織(そいつも私たちの敵ってことなのね)



リルマーダー「それにしてもお前、あの召喚士を先へ行かせたことを後悔すると思うぞ?」

伊織「は?」

リルマーダー「この下の地下7階はじいさんが守ってるんだ。きっとあいつ、じいさんに簡単にやられちまうだろうなー」


伊織「……聞き捨てならないわね。やよいがやられるですって? そんなことあるわけないじゃない!」

伊織「今のやよいに敵うヤツなんていないわ!」


リルマーダー「ふーん……ま、どっちでもいいけどよ」

リルマーダー「とりあえず……始めようぜ!」チャキッ


伊織「そうね。さっさと終わらせるわ!」チャキッ

457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:21:34.88 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B7F ー


テクテク…

やよい「………」


やよい「………」チラッ


魔物「グゴオォ!」


やよい「……しばさん」スッ


スゥゥーー…


シヴァ「……絶対零度」


コオオオ…パキィン!!


魔物「」


やよい「……ごめんなさい、まものさん」ペコリ



やよい(あずささんも……)

やよい(真さんも……)

やよい(伊織ちゃんも……)

やよい(あと、ほかのみなさんも……)

やよい(わたしもふくめて、みんなひとつの大きな流れの中にいる気がします)

やよい(そしてその流れのまんなかには、きっと小鳥さんがいるはずですっ)

やよい(春香さん……。わたし、春香さんのことばのいみがやっとわかりました)

やよい(その流れにさからわないで、びゅーんってまっすぐすすめばいーんですよね?)

やよい(そーすれば、ぜんぶうまくいくんですよねっ!)


やよい「よーしっ、がんばるぞー!!」

458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:24:32.94 ID:VsHkcvNIO

テクテク…

やよい「……ここが〜ぼくの〜いるべきせんじょ〜♪」

やよい「かくごのかち〜を〜きめるばしょ〜♪」



やよい「……あっ、とびらがあります!」

やよい「もしかしたら、あの先に下におりるかいだんがあるかも!」



「……あるにはある。しかし、お主がそこへ辿り着くことは叶わんじゃろう」



やよい「はわっ!?」



スゥゥーー…

ブルードラゴン「……また会ったのう、小さき召喚士よ」


やよい「あ、あなたはこないだの……」

やよい「こんにちはっ!」ガルーン


ブルードラゴン「本音はあの銀髪と戦ってみたかったが……仕方あるまい」

ブルードラゴン「じゃが、このカードはハズレじゃ。ワシにとっても、お主にとってもな」


やよい「う?」キョトン


ブルードラゴン「なに、時期に分かる」


やよい「あのっ、ここを通してもらえませんかっ!」

やよい「わたし、小鳥さんのところに行かないといけないんですっ!」


ブルードラゴン「その前に、お主に問おう」


ブルードラゴン「真の『安らぎ』とは何か?」


やよい「…………えっ?」


459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:33:02.38 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B8F 西側 ー


「……春香。春香、大丈夫?」


春香「……う〜ん……プニョデューサーしゃん……」ムニャムニャ


「春香、起きて」


春香「……そんなにたくさん入りませんよぅ……」


「……もう。春香、起きなさい!」


春香「んっ……」

春香「う〜ん……」ムクッ

春香「……は……れ?」

千早「良かった。やっと起きたのね」ホッ

春香「千早ちゃん……? ここは……」キョロキョロ

千早「私たち、魔物に足場を崩されてここまで落ちてきたのよ。あなたは落ちている途中で気を失ってしまって……」

千早「でも、なんとか着地に成功したのは幸いだったわ」

春香「ああ、そっか。そういえばそうだったね」

春香「あれ? ……もしかして、千早ちゃんが私を助けてくれたの?」

千早「………」

千早「私、春香を守るのに精一杯で、他のみんなを気にしている余裕がなくて……」

春香「……ありがとう、千早ちゃん」

春香「きっと他のみんなも大丈夫だよ!」ニコッ

千早「春香……。ええ、そうね」ニコッ

460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:36:14.08 ID:VsHkcvNIO

春香「ここ、何階くらいなんだろうね? なんだかさっきいた階とはずいぶん雰囲気が違うような……」キョロキョロ

千早「そうね。体感的には地下7、8階といったところじゃないかしら」

春香「ええぇえっ!? 私たち、そんなに下まで落ちてきたの!?」

千早「勘だけど、おそらくそんなにズレてはいないと思う」

春香「はー……。千早ちゃんがいなかったら私、どうなっちゃってたんだろ……?」

春香「千早ちゃん、ホントにありがとうっ!」ダキッ

千早「え、ええ……///」



千早「……ともかく、先へ進みましょうか」

春香「そうだね」

千早「それじゃ、行きましょう」クルッ

スタスタ…


春香「あ、待って、千早ちゃん」

千早「……どうしたの? どこか痛む?」

春香「そうじゃないんだけど……」

春香「その……手、つないでもいいかな?」

千早「えっ……」

千早「そ、そんな……こんな時にそんなことをしている場合ではないと思うわ」カァァ

春香「それはそうかもしれないけど……」

春香「でも、千早ちゃんも分かってるでしょ?」

春香「私たち、この先ずっと一緒にはいられないかもしれない。いつ親衛隊が襲ってくるかも分からないし」

千早「………」

春香「少しの間だけでいいの。ねっ? お願い」

千早「……仕方ないわね」スッ

春香「えへへっ、さっすが千早ちゃん!」ギュッ

461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:44:04.28 ID:VsHkcvNIO

スタスタ…

千早「………」

春香「綺麗な景色だなぁ……」キョロキョロ

千早「………」

春香「ねえ千早ちゃん、なんだか宝石みたいだよね?」

千早「………」

春香「……千早ちゃん?」

千早「……ねえ春香、訊きたいことがあるの」

春香「うん、なぁに?」

千早「私、春香が時々分からなくなるわ」

春香「私が? なんで?」

千早「昨日は精神的に参っていたみんなを力強く励ましたかと思えば、今日は子どもみたいに甘えてくるなんて」


…ピタッ

千早「どっちが本当の春香なの?」

春香「千早ちゃん……」

春香「えへへっ♪ どっちもありのままの私だよ?」

千早「………」

春香「えっと……まあ、昨日みたいなカッコいいのはちょっと私には似合わないかもしれないけどさ」

千早「あ……ごめんなさい、別にそういうつもりで言ったわけでは……」

春香「うん、気にしてないから平気だよ」

462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:48:14.84 ID:VsHkcvNIO

春香「……私だっていろいろ思うことはあるし、もしかしたら今は、さっき千早ちゃんが言ってたみたいにこんな風に呑気にしてる場合じゃないのかもしれないけど」

春香「でも、これだけははっきりと言えるんだ」

春香「正義よりも正しいことよりも大事なものは、今私の目の前にあるって!」

千早「その言葉って、確か……」

春香「うん。試練の山でお父さんが私にくれた言葉」

春香「考えれば考えるほどいろんな解釈ができる言葉なんだけど……」

春香「でも、なんていうか、どことなく人間味に溢れた言葉だなぁって」

春香「えへへ、私のお気に入りの言葉なんだ♪」

千早「そう……」

千早(正義よりも正しいことよりも大事なもの……)

千早(そんなものがあるとしたら、ただ単にそれはその人のわがままね)

千早(他の全てを犠牲にしてもそれが大事だなんて、とても傲慢で自分勝手な考え方だわ)

千早(一般的な道徳からはかけ離れた思考だといえる)

千早(……でも、春香の言う通りかもしれない)

千早(だって、正しいことを頭で理解していてもつい自分の欲望に走ってしまうのが人間だから)

千早(……ん? 今、春香がわがままを押し通しても手に入れたいものって……)

千早(……もしかして、私?)

千早「……///」カァァ


春香「……あれ? 赤くなってどうしたの? 千早ちゃん」

千早「なっ、なんでもないわ。ほ、ほら、先を急ぎましょう!」グイッ

スタスタ…


春香「ち、千早ちゃん、引っ張らないで〜!」ズルズル


463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:50:34.71 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B8F 東側 ー


律子「………」

律子「………」

律子「………」

律子「………」

律子「………」

律子「………………はぁ」


律子「死ぬかと思った……」フワフワ



律子「助かったわ、貴音。レビテトがなかったらどうなってたか……想像したくもないわね」

貴音「ふふっ、礼には及びませんよ」モグモグ

律子「……で、訊きたいんだけど。なんでこのタイミングでお弁当食べてるの? 私たち死にかけたのよ?」

貴音「丁度お腹が空きましたので」モグモグ

律子「だからって落下しながら食べなくてもいいでしょうに……」



ヒューーーー…



律子「あら? また誰か落ちてくるわ。貴音、レビテトを」

貴音「……待ってください。何やら様子がおかしいですね」モグモグ



ヒューーーー…



律子「……なかなか落ちてこないわね」

貴音「あれは……」

貴音「おそらく、『すろう』の魔法で極限まで落下速度を緩めているのでしょう」

律子「なるほど、頭いいわね。誰かしら」



ヒューーーー…



………………



…………



……



…フワリ



美希「……zzz」



律子「」

貴音「おや、美希でしたか。なんとも優雅な登場ですね」ニコッ

464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/12(水) 20:52:17.33 ID:9nct6ngPO
美希にクスッときたやんけ
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:53:40.25 ID:VsHkcvNIO

律子「なんでこの子はこんな時でも緊張感がないのよもー!」

律子「こら美希、起きなさい!」ユサユサ

美希「……んっ……」ムクッ

美希「……あふぅ」

美希「あ、貴音に律子…さん、おはようなの」

貴音「おはようございます、美希。よく眠れましたか?」モグモグ

美希「うん! なかなかにカイテキな空の旅だったの。あは☆」

律子「なんで落下しながら眠れるのよ……」

美希「だって、落ちてる間タイクツだったし、ちょうどいいお昼寝タイムかなって」

貴音「ふふっ、時間を有効に使うのは、まこと大切なことですね」モグモグ

律子(もうやだ、この二人……)



律子「……ねえ、いつまで食べてるのよ。早く先へ行くわよ」

貴音「そう焦っても良い結果は出ませんよ、律子嬢。まずはしっかりとえねるぎぃを補給せねば、大事な時に力を出せません」モグモグ

美希「そーだよ。それにこのお弁当、ホントにおいしーの」モグモグ

美希「律子…さんも食べる?」

律子「私は遠慮しておくわ」

美希「むー、そんなこと言わないでなのー。はい、あーん」スッ

律子「いや、だから……」

貴音「律子嬢、他人の好意は素直に受け取るものですよ?」

律子「わ、分かったわよもう……」

律子「あーん……」



…ザッ

千早「…………律子?」

春香「お姉ちゃん、こんなところでお昼ですか?」



律子「」

466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:58:24.34 ID:VsHkcvNIO

律子「はっ、はるふぁにひはや!?」モグモグ

春香「お、お姉ちゃん、食べながらしゃべらない方が……」

律子「ほ、ほれほはへはあいふ……ごほっ、ごほっ!」

春香「あーほら、ゆっくり飲み込んでくださいね?」サスサス

律子「ご、ごめ……」

貴音「春香と千早も食べますか?」スッ

美希「おいしーよ?」

千早「い、いえ、私は……」

春香「あはは、貴音さんも美希もマイペースだなぁ……」



律子「…………えー、ゴホン」

律子「見苦しいところを見せたわね、二人とも」

春香「いえ、気にしないでください」

千早「こんな時でも余裕がある、というのはいいことだと思うわ」

律子「そ、それについてはノーコメントで」


律子「それで、春香と千早はここへ来るまでに誰かに会った?」

千早「いえ、会ってないわね」

春香「私たち、ここまでずっと二人っきりでした!」

律子「ちなみに、私たち三人もこの階へ落とされてから誰にも会ってないわ」

律子「つまり、私たち以外のメンバーは他の階に落とされた可能性が高いわね」

467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 21:01:22.55 ID:VsHkcvNIO

律子「……貴音、ここは地下8階でいいのよね?」

貴音「はい。この地下渓谷は、地下7階までと地下8階以降でがらりと雰囲気が変わります」

貴音「おそらく中心核が近いせいでしょう」

春香「千早ちゃんの言った通りだったね」

千早「ええ。でも、もうすでに半分以上進んだことになるのね」

美希「この調子なら、楽チンなカンジで小鳥のところまで行けるね!」

律子「いえ、おそらくそうはならないと思うわ」

律子「私たちをここまで落としたのは親衛隊のリーダー格よ? たぶん、何か狙いがあるんだと思う」

美希「狙いって?」

律子「これは、あくまで推論だけど」

律子「地下1階、地下2階とそれぞれ一体ずつ親衛隊の魔物がいたわよね?」

春香「はい。今はあずささんと真が戦ってくれてますね」

律子「親衛隊の魔物は10体。それにバハムートを加えて、敵は全部で11体」

千早「……もしかして、ひと階層ごとにそれぞれ魔物が?」

律子「その可能性が高いと思うわ」

律子「あの親衛隊のリーダーの目的は、私たちの戦力を分散させることだったんじゃないかと思うの」

律子「だから、私たちが固まって戦えないように階下へ落としてバラけさせた」

春香「じゃあ、あずささんと真以外の他のみんなも、もう親衛隊と戦っているんでしょうか?」

律子「今はまだ遭遇してない子もいるかもしれないけど、いずれ戦うことになるでしょうね」

律子「一応言っておくけど、他のみんなを助けに戻るっていう選択肢もあるわ」

律子「一対一よりは複数で当たった方が有利に戦えるでしょうし」

春香「……いえ、それでもやっぱり私たちのやることは変わりません」

春香「ただまっすぐに小鳥さんのところへ進むだけです!」

千早「ここまで来て今さら迷っても仕方がないものね」

美希「ミキも、今から戻るのはどうかと思うな。だって小鳥とハニーが待ってるんだもん!」

貴音「進みましょう、律子嬢」


律子(たとえ自分ひとりになっても先に進む覚悟はあるか……)

律子(なんて、今のこの子たちには愚問ね、きっと)


律子「……いい? 何がなんでも小鳥さんのところへ辿り着くわよ!」


四人「……はいっ!!!」


468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/12(水) 21:06:09.70 ID:VsHkcvNIO
ここまでです
亜美真美以外宝箱とか無視してますけど、仕様です
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/12(水) 21:12:58.79 ID:9nct6ngPO
小分けでゆっくり長く読めるのは嬉しい反面モヤモヤするから一気にガッと読みたいと思ってしまう

人間はワガママだね
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/15(土) 23:14:26.01 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B4F 外側 ー


真美「う〜む……」


真美「真美は今、高性能な真美レーダーによって、発見! おいしそうな宝箱 じゅるるんっ したわけなんだケド……」



魔物1「………」ウロウロ

魔物2「………」ウロウロ

魔物3「………」ウロウロ



真美「魔物が守ってるっぽいね」

真美「さすがレアアイテム、カンタンにはもらえないかぁ」

真美「ここは真美のチョー必殺技で一気に蹴散らしちゃうか……」

真美「でも、なるべくMPはオンゾンしておきたいし……」

真美「魔法を使わずに、みんなと違ってか弱い乙女の真美がいかにこのジョーキョーを突破するか」

真美「さて、どうしたもんかねぇ」

真美「………」

真美「………」

真美「………」

真美「………」

真美「手段がなくはないんだよねぇ……」

真美「なくはない……けど」

真美「気が進まないなぁ……」

真美「………」

真美「……ちかたない、レア武器、ひいてはかわいい妹のためだもん」

真美「真美、やるよ!」

真美「…………よしっ」

471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:17:36.81 ID:qM3Qz1F6O

真美「はいちゅうもーく!!」パンパン



魔物たち「!?」ビクッ



真美「ちょっとそこの宝箱の中身がほしいんだけど、いいかな?」



魔物1「ガアア!」

魔物2「グルル!」

魔物3「ゴアア!」



真美「うんうん、いい面構えだ。やはり私の目にくるいはなかったようだ」



魔物1「ガアアアッ!」ガバッ


真美「……とか言ってたらきたー!」


真美「こっちだよっ!」ダッ

タタタタ…


魔物2「グルルルッ!」ブンッ


真美「……おっと!」ヒョイッ


真美「たあああ!」タタタタ


魔物3「ゴアアアッ!」ブンッ


真美「なんのっ!」ヒョイッ


真美「……奪取!」

ガパッ


真美「おー、あったあった」スッ

真美「じゃじゃーん! 真美はレア武器を手に入れた!」

472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/15(土) 23:20:48.86 ID:qM3Qz1F6O

真美「さて……」チラッ



魔物1「ガアア……!」

魔物2「グルル……!」

魔物3「ゴアア……!」



真美(囲まれちゃった……)


真美「だがしかし、真美にはとっておきの切り札があるんだもんね!」

真美(ホンキで使いたくない切り札がね)


真美「くらえーー!!」






















真美「うえ〜〜ん! 魔物がいぢめるよ〜〜!」グスン



魔物たち「!!?」


473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:23:21.18 ID:qM3Qz1F6O
真美「うわぁ〜ん! 真美、まだなんも悪いことしてないのに〜!」チラッ



魔物たち「……!」オロオロ



真美「ぐすっ……魔物なんかひびきんのカドに頭ぶつけてゴーヤになっちゃえばいいんだぁ〜!」ソロ〜リ



魔物たち「………」ズーン



真美「そんでゴーヤチャンプルーとしておいしくいただかれちゃえばいいんだぁ〜!」ソロ〜リ



魔物たち「………」ズズズーン



真美「………」


真美「ってわけで、バイバイキーン!」

タタタタ…





真美「……ふぅ、ここまで来ればもうへーきかな」

真美「あーはずかしかった……///」

真美「誰が見てるわけでもないけど、何回やってもなれないね、『うそなき』は」

真美(もう使わないよーにしとこ。このままじゃ真美のMPじゃなくてSP(羞恥ポイント)がカラになっちゃうYo……)


真美「お待ちかねのレア武器も手に入ったことだし、先へ進むよ!」


真美「とつげきぃ〜!」

タタタタ…


474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:28:41.10 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B5F ー


響「えーっと……」キョロキョロ


響「ダメだ、この部屋にも下り階段はないみたいだ」

響「まだまだ他にたくさん部屋はあったし、地道に探すしかないかー」


…カチッ


響「…………ん? なんか踏んだ?」


ビーーッ!! ビーーッ!!


響「うぇっ!?」ビクッ

響「な、なになにこの音? なんなのさいったい!?」キョロキョロ



「……うふふっ、ようこそいらっしゃいました!」



響「えっ?」クルッ



プリンプリンセス「お会いできて光栄ですわ、あいどるさん!」


響「な……なんだこのなんともいえない物体は」


プリンプリンセス「まあ、ご挨拶ですわね」

プリンプリンセス「私はプリンプリンセス。コトリ様の親衛隊の一員にございます」


響「あ、そうだったんだ」


プリンプリンセス「残念ですが、貴女の足止めをさせて頂きますわっ!」


響(うーん……なんか迫力ないなぁ)

475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:30:53.95 ID:qM3Qz1F6O

プリンプリンセス「もしかして私を見くびっていらっしゃるのかしら? もしそうだとしたら考えを改めた方がよろしくてよ?」


響「あ、うん」

響(どう見ても強そうに見えないぞ。もしかしてハズレか?)



響「ま、自分もヒマってわけじゃないし、ジャマするっていうなら……」

ビュンッ…


プリンプリンセス「は、速い!」


響「悪いけど、速攻で終わらせるぞ」


プリンプリンセス「い、いつの間に背後に!?」


響「……っせい!!」ブンッ


…ポヨンッ


プリンプリンセス「あら? 今、何かしましたか?」


響「えっ、真直伝の正拳突きが効かない……!?」


プリンプリンセス「うふふっ、私に物理攻撃は効かなくてよ?」


…スタッ

響「……なるほど、ただのキモい物体ってわけじゃないんだな」


プリンプリンセス「見たところ貴女は魔道士ではないようですわね。さあ、どうするおつもりですの?」


響「確かに自分は魔法なんか使えない。でも残念だったな、プリ江」


プリンプリンセス「ぷ、プリ江!?」


響「自分、つい昨日すごい技を覚えたばっかりなんだぞ!」

響「さ、覚悟はいいか?」キュイィィン


プリンプリンセス「手が、光って……?」


響「くらえっ、ナンクル砲っ!!」バッ


…ドゴオオオオォォォオオンッ!!


476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:34:19.69 ID:qM3Qz1F6O

プリンプリンセス「な……なんですの、その身も蓋もない技は……」フラッ

プリンプリンセス「無念……ですわ……!」


…ドサッ



響「なーんだ、やっぱり見た目通り弱かったなー」

響「いや、もしかして自分が強くなりすぎたのかもな! なんたって自分、完璧だからな!」

響「よーし、この調子で親衛隊をどんどんやっつけるぞー!」



…カチッ



響「あっ、またなんか踏んだ」


ビーーッ!! ビーーッ!!


響「! また警報みたいな音だ!」

響「いったいどこで鳴ってるんだ……?」キョロキョロ



プリンプリンセスたち「うふふふふふ……」

ワラワラ…



響「………………えっ」



プリンプリンセスたち「さあ、私たちと一緒に踊りましょう!!!」



響「なんかたくさんいるけど……もしかしてこれ、自分ひとりで全部倒すのか?」


477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:38:07.87 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B3F ー


ザクッ ザクッ

雪歩「……ふぅ」

雪歩「ククロさんに鍛えてもらったスコップでもけっこうしんどいなぁ」

雪歩「やっぱりここの地層は相当硬いんだね」

雪歩「でも、頑張らなきゃ!」グッ

ザクッ ザクッ



「……おーーい!!」



雪歩「ふぇっ!?」ビクッ



「ダメじゃないか、こんなところに穴なんて掘ったら」

…グイッ



雪歩「ひゃうっ!?」


…ドサッ



魔人兵「まったく……。こんな穴なんて掘ったら危ないだろう?」


雪歩(ま、魔物さんに引っ張り上げられちゃいましたぁ……)


魔人兵「君はどこの所属の兵器だい?」


雪歩「えっ……」

雪歩(へ、兵器……?)


魔人兵「今はあいどるたちが攻めて来てるからみんなピリピリしているんだ。こんな穴なんて空けたら他の魔物が落ちてしまうかもしれないだろう?」


雪歩「あの、えっと……」


雪歩(……あ、そっか。私、今はこんな格好してるから、きっと魔物さんと間違えられちゃったんだね)

雪歩(このまま何も言わなければ、戦わないで済みそう……かな)

478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:41:09.54 ID:qM3Qz1F6O

魔人兵「さ、君も早く持ち場へ戻って」


雪歩「………」

雪歩(…………違う)


魔人兵「おや、どうしたんだ?」


雪歩「……そんなの、ダメですぅ」


魔人兵「え? 何がダメなんだい?」


雪歩「みんなが戦ってるのに、私だけ逃げるのは……イヤですぅっ!」チャキッ


魔人兵「……まさか、君……」


雪歩「こ、こここここを、通してくださいませんか?」ビクビク


魔人兵「……驚いた。君みたいなあいどるもいたんだね」

魔人兵「なんだか親近感の湧く姿なんだけど、仕方ない」

…ガコンッ!

魔人兵「……敵なら、排除させてもらうよ」


雪歩「ひぅっ!」


魔人兵「……発射!」

ビュイイイインッ!!


雪歩「ひぃぃーー!!」


ドゴオオオオンッ!!


479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:44:15.23 ID:qM3Qz1F6O

魔人兵「……さて、ビームじゃ大したダメージにはならないと思うけど」

魔人兵「どうかな……」



モクモク…



雪歩「……うぅ……」



魔人兵「……おや?」


雪歩「す、すみません、全然効かないですぅ」


魔人兵「……無傷、か。相当いい装甲を付けているみたいだね」

魔人兵「だが、オレの武器はビーム砲だけじゃない。君のその堅牢な守りを崩していみせようじゃないか」

ウィーン…ガシャン!


雪歩「っ……!」チャキッ


魔人兵(……武器を構えた? 随分頼りなさそうな武器だけど、いったいどんな武器なんだろう)

魔人兵「……発射!」

チュドドドドッ!!


ヒューー…

ドドドドドドッ!!


480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:45:58.49 ID:qM3Qz1F6O

魔人兵「よし、今度こそダメージがあっただろう」



モクモク…



魔人兵「……って、いない……?」キョロキョロ



ズズ…


…ザバァッ!


魔人兵「!」

魔人兵(いつの間に地中に……!)


雪歩「えいっ!」ブンッ

ガキィン!!


雪歩「うう……か、硬い……!」


魔人兵「なんだ、ただ殴打するだけの原始的な武器か。そんな武器じゃオレに傷一つ付けられないよ?」

魔人兵「……それっ!」ブンッ

ドゴォ!!


雪歩「あぅ……!」ヨロッ


雪歩「……い、痛くないですぅ!」ザッ


魔人兵「ふむ……」


魔人兵(この子……)


雪歩(この魔物さん……)


雪歩・魔人兵(とにかく硬い……!)



魔人兵「どうやらこの戦いは、どちらが相手の装甲を破ることができるかの争いになりそうだね」


雪歩「ま……負けませんですぅっ!」グッ



481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:50:26.59 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B4F 内部 ー


亜美「……ふーむ、扉がいっぱいあるね」

亜美「でも、確かこの階にアイテムがあるのはこの辺りじゃなかった気がするんだよねー」

亜美「もっと奥の方かな?」

スタスタ…



亜美「…………うん?」ピタッ

亜美「なんだろアレ。いっこだけメッチャゴージャスに飾りつけられた扉がある……」

タタタタ…



亜美「えっと……『あいどる御一行様歓迎! 宴会場はこちら。ご馳走あります』って書いてあるね」

亜美「……明らかにおかしいっしょコレ。亜美たちがカンゲイされてるワケないじゃん」

亜美「ゼッタイ魔物だよね、これ書いたの。あからさまなワナすぎるよ」

亜美「いくら亜美だってこんな子どもだましには引っかかんないんだかんねっ」

亜美「さーて、レアアイテムレアアイテムっと……」

スタスタ…




…ピタ

亜美(…………んでも、宴会ってぱーちーだよね)

亜美(ごちそーってことは、おいしい料理とかお菓子とか出てくるのかなぁ)

亜美(お菓子かぁ……)

亜美(よく考えたら亜美たち、この世界に来てからずっとお菓子食べてないよね)

亜美「………」

亜美「………」

亜美「………」

亜美「………………ゴクリ」

亜美「ちょっとだけ、チラッと中をのぞくだけならヘーキかな?」

482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:53:57.63 ID:qM3Qz1F6O

天使亜美『なに言ってんのさー。さっき自分でワナって言ってたじゃん! みすみす自分からワナにはまりに行くとかあり得ないっしょ!』

悪魔亜美『いやいや〜、先っちょだけならだいじょーぶかもよ? サッと行ってお菓子だけ取ってくればいーじゃん』

天使亜美『だーかーらー、ワナなんだからお菓子なんかあるワケないっしょ?』

悪魔亜美『……ホントだったらどーすんの?』

天使亜美『えっ……』

悪魔亜美『お菓子、ホントにあったらどーする? 可能性はゼロじゃないよね?』

天使亜美『し、しかしですな……』

悪魔亜美『せっかくのチャンスをのがすのですかな? 甘ーいお菓子、食べたくないの?』

天使亜美『……ゴクリ』

悪魔亜美『さあさあ』

天使亜美『………』

悪魔亜美『殿、ご決断を!』

天使亜美『…………ええい、お菓子に罪はない! 皆の者、出陣じゃあ!』

悪魔亜美『んっふっふ〜♪ お主、分かっておるのう!』



亜美「………」

亜美(……今、全亜美会議で可決されちゃったね)

亜美「いざ行かん! 甘ーいお菓子を求めて!」


…ガチャ


483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:57:17.81 ID:qM3Qz1F6O


金竜「…………馬鹿め、掛かりおったな!」



亜美「うあうあー! やっぱりワナだったー!」


金竜「食らえい!」

ビュンッ!!


亜美「おわあっ!?」ダッ


銀竜「破っ!」

ビュンッ!!

ドガッ!!


亜美「ぎゃんっ!」


ドサッ



銀竜「……本当にこの様な罠に掛かるとは、あいどるとは意外と阿呆なのだな」


亜美「うぅ……ヒドいよ! ひきょーものー!」


金竜「戦いとは常に非情なものである!」

銀竜「いや、兄者よ。先刻の戦いで騙された仕返しをしただけではないのか?」

金竜「こ、こら銀竜、その事をバラすでないっ!」アセアセ


亜美「あー、金ぴょん、あのことまだ根にもってたんだねー」


銀竜「兄者は単純だからな。すぐに騙されてしまうのだ」

金竜「ともかく、これで借りは返したぞ」


亜美「うん、わかったー」


金竜「……それでは、ここからは本物の宴を始めるとするか」ゴゴゴ


亜美「!」


銀竜「こんな幼子相手に二人がかりとは気が引けるが、お前の実力は既に知ってる」

銀竜「手加減はせぬぞっ!」ゴゴゴ 

484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:59:37.32 ID:qM3Qz1F6O

亜美「……ふーん、そっか」ザッ

亜美「金ぴょんも銀ぴょんも、そんなに亜美にやられたいんだねー……」

亜美「いいよ、やろっか」

亜美「コーカイさせてあげるよ、亜美にケンカ売ったコト!」バッ


金竜「あいどる、滅してくれる!」ボゥ

金竜「稲妻よ!」

ズガガピシャァァン!!


亜美「うわっ!」ヒョイッ


銀竜「ふんっ!」

ビュンッ!!

バシィン!!

亜美「ぐえっ!」ヨロッ



銀竜「……どうした、あいどるよ」

金竜「貴様の力、見せてみよ!」



亜美「……ちかたないなぁ」ザッ

亜美「右手にファイガ……」ボッ

亜美「左手にファイガ……」ボッ


銀竜「……来たな!」

金竜「その技は既に対策済みだ! 行くぞ銀竜!」

銀竜「応!」

スゥゥーー…


金竜「例え魔法を複数放とうと、距離を取れば直線軌道の魔法など避けることは容易い!」


亜美「……誰が直線軌道なんて言ったのさ?」ニヤリ


金竜「えっ」


亜美「 合 体 !!」

ボウッ!!


亜美「メッされるのは金ぴょんたちの方だよ!」

亜美「……鳳凰の羽ばたきひとつでねっ!」


銀竜「な、なんだこれは……!? 炎が鳥の形を成しているだと……!?」



亜美「くらえぃ! 鳳翼天翔ーーーーッ!!」



ゴオオオオォォオオッ!!


485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:11:58.04 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


スタスタ…

美希「ねえ、ミキ考えたんだけど」

律子「何を?」

美希「律子…さん、さっき『ひと階層ごとに魔物がいる』って言ったよね?」

律子「ええ。だからきっとこの階にも魔物がいると思うわ」

美希「ここが地下8階でしょ? だから、あと9、10、11……小鳥のところに着くまでに4体の魔物を倒せばいいってことだよね?」

律子「そうだけど、それがどうかしたの?」

美希「残りの魔物が4体でミキたちは5人いるから、ひとりずつ魔物の相手をしていけば、誰かひとりは小鳥のところまで行けるの!」

春香「確かに……美希の言う通りだね」

千早「それに、時間効率を考えるといい方法にも思えるわね」

貴音「………」

律子「本音を言えば、小鳥さんと戦うのはみんな揃ってからにしたい。でも、今の状況じゃそうも言っていられないかもしれないわね」



「……きほーんてきにはいっぽんぎーだけっど♪」

「ときとばあいでうっつっりーぎなっの
♪」



…ピタッ

律子「…………歌?」

春香「ねえ、今聴こえた歌って……」

美希「うん。『わたしはアイドル』なの」

律子「ってことは、他にもこの階に落ちてきた子がいるのかしら」

貴音「いえ、そうではないと思います」

千早「今の、ウチの誰とも違う声だったわ」

春香「じゃあ、いったい誰が歌ってるんだろう?」

美希「そんなの、魔物しかいないの」

律子「そりゃ、私たちじゃなかったら魔物でしょうけど」

律子「でも、なんで魔物がウチの歌を?」

貴音「小鳥嬢が教えた以外に考えられませんね」

貴音「何故彼女が魔物に歌を教えたのか、その理由は定かではありませんが」

律子「何か意図があるのかしら」

美希「小鳥、プロデューサーになりたかったのかな?」

律子「うーん……」

千早「………」

春香「……千早ちゃん、どうかしたの?」

千早「……もしかしたら私、さっきの歌声の主を知っているかもしれない」

春香「えっ?」

千早「行きましょうみんな。行けば分かるわ、きっと」

律子「……そうね。議論するよりも実際に見た方が早そう」

貴音「この地下8階からは最下層までほぼ一本道です。迷うこともないでしょう」

スタスタ…


486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:20:09.63 ID:YvXj+c6MO

月の女神「きっとわーたしがいちばんっ♪ でもあなーたーもそこそこかもっ♪」

月の女神「でもわったーしーとくーらべーるからっ♪ ちょっとぶ、がわーるいのよー♪」


千早(……やっぱりあの子だったのね)

春香「本当に魔物が歌ってる! しかも上手!」

律子「確かに、そこらへんの素人よりかは上手いかもね」

美希「でも、ミキたちの方がもっとかわいく歌えるよ?」

貴音「その前に、あいどるであるわたくしたちと魔物とを比べるのがそもそもの間違いだと思いますが」


月の女神「……待ってたよ、あいどるの人たち!」ニコッ


春香「わぁ……! なんか、魔物って思えないくらい可愛いなぁ」

律子「確かに、パッと見は魔物には見えないわね」

美希「ううん、そんなことないの。ミキたちの方がゼッタイかわいいの!」

貴音「あの、ですから魔物と張り合うのはどうかと……」

千早「………」


月の女神「一生懸命れっすんしたつもりなんだけど、やっぱり本物のあいどるの評価は厳しいなぁ……」


律子「一応訊いておくわ。ここを通してもらえないかしら?」


月の女神「えっとね、あなたは通っていいよ? あとリボンの人も。きっとおじさんが待ってると思うし」


律子「えっ、いいの? ダメもとで言っただけなのに」

春香「あの子、意外に平和主義なんでしょうかね?」

律子「こないだの戦いを見る限り、そうは思えないけど……」

律子「っていうかおじさんって誰?」

春香「さあ……?」


月の女神「あ、そうだ。そこの銀髪の人は、たぶん先生の相手の人だよね? だから早く行ってあげて?」


貴音「………」

貴音(先生、とはもしや……)


月の女神「そうだなぁ、私の相手は……」

月の女神「うん、やっぱりあなただね!」スッ


千早「………」

千早「……みんな、後で必ず追いつくわ」チャキッ

春香「千早ちゃんっ……!」

美希「千早さん……。千早さんなら、大丈夫だよね?」

千早「ええ、もちろんよ」



月の女神「へぇ、
自信たっぷりだねー。あれから腕を上げたのかな?」



千早「それは、あなた自身で確かめてみたら?」

487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:22:51.87 ID:YvXj+c6MO

律子「千早……」

貴音「千早、何があるか分かりません。用心してください」

千早「はい」

美希「ミキたち、先に行って待ってるの。遅刻しちゃダメだよ?」

千早「ええ」

春香「千早ちゃん……」

春香「私、千早ちゃんのことが大好きだよっ!!」

千早「ええ、ありが……えっ?」

貴音「なんと……」

美希「いきなりの告白なの」

律子「春香、そういうフラグっぽいことをこのタイミングで言わないのっ!」

春香「あっ……そ、そういうつもりじゃなかったんですけど……」

春香「でも、なんだか今言わなきゃいけないような気がして」

千早「……///」カァァ

美希「……あーあ、さっきまでキリッとしててカッコいい千早さんだったのに、春香のせいでふにゃふにゃの千早さんになっちゃったの」

春香「ご、ごめんね千早ちゃん」

千早「あ、あの、私は別に気にしてないから……じゃなくて、とても気にしてて春香の気持ちはすごく嬉しい……でもなくて……」

千早(ああ……ダメ……。頬が緩む……///)



月の女神「私、知ってるよ。そういうふうに女の子同士でイチャイチャするのって『ゆり』っていうんだよね?」

月の女神「えへへ、コトリ様から教えてもらったんだー!」



貴音「……だ、そうですが」

律子「あの人は……魔物にまで余計な情報を……!」ゴゴゴ

律子「とにかく千早、ここは任せたわ」

千早「え、ええ」

律子「みんな、行くわよ! ほら、春香も!」グイッ

春香「千早ちゃ〜ん! 離れててもずっと大好きだよ〜〜!!」ズルズル

律子「うるさいっ!」ビシッ




月の女神「……あなた、とっても愛されてるんだね?」



千早「そ……そうね」


488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:27:19.62 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B9Fへの階段 ー


ザッ ザッ

春香「……えーっと、次が地下9階段でしたっけ?」

貴音「ええ。この地下渓谷も残すは四分の一ですね」

春香「そっか、もうそんなに来たんですね。……早いなぁ」

美希「四分の一……かぁ」

春香「美希? どうかしたの?」

美希「あは☆ 早く小鳥に会いたいのー!」

律子「呑気ねぇ……。その前に親衛隊をおそらくあと三体は倒さなきゃいけないのよ?」

貴音「………」

美希「……分かってるの。でも、もう終わっちゃうんだね」

春香「美希……」

春香「……よしっ。みんな、気合い入れて行こうっ!」グッ

律子「それはいいけど春香、あんまりはしゃぐと転ぶわよ?」

春香「えへへっ♪ 大丈夫ですよ!」

春香「こう見えて私、この世界へ来てからまだ83回しか転んでないんですよっ?」

律子「えっと……それってすごいの?」

美希「いまいちピンとこないの」

貴音「わたくしたちがこの世界へ来て二ヶ月ほど経ったと仮定すると、だいたい一日一回強……ですか」

貴音「あまり変わり映えのない数字に思えますが」

春香「うぅ……元の世界よりも一日平均0.2回くらい少ないのに……。みんなヒドい……」

春香「と、とにかく頑張るぞー!」ズルッ

春香「ってうあーーーー!!」ゴロゴロ


…どんがらがっしゃーん!!


律子「……あーあ、言わんこっちゃない」

貴音「注意を受けて即転ぶとは、最早職人の領域ですね」

律子「あの子の体幹ってどうなってるのかしら。ホント謎だわ」

美希「……ねえ、それより貴音?」

貴音「どうしました、美希」

美希「次の階ってあんなに真っ暗なの?」スッ

貴音「真っ暗……?」チラッ

貴音「……ふむ、確かに真っ暗ですね」

貴音「以前は暗闇に包まれた階などなかったはずですが……」

律子「……嫌な予感がするわ。春香を追いかけましょう」

ザッ ザッ

489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:32:34.51 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


律子「何よこれ……? 本当に何も見えないじゃない!」キョロキョロ

美希「夜みたいに真っ暗だねー……。今までは普通に明るかったのに、なんで?」

貴音「親衛隊、とやらの仕業でしょうか」

律子「春香ーー!! どこーー!!」



「…………こ、ここにいますよ〜」



律子「っていっても、こう真っ暗じゃ全然位置が分からないわね」

律子「声を頼りにそっちへ向かうから、そこを動かないのよー?」



「わ、わかりました〜……」



スタスタ…





律子「……ふぅ、とりあえず無事で良かったわ」

春香「うぅ……面目ないです……」シュン

貴音「春香、どこか怪我は無いですか?」

春香「あ、ありがとうございます。でも平気ですっ」

律子「焦る気持ちも分かるけど、あなたはもう少し落ち着きなさい」

春香「はい……。足元には十分注意してるつもりだったんですけど、何かにつまづいちゃって」

律子「何かって、さっきの階段に何かが落ちてたの?」

春香「直接見てないから分かりませんけど、石か何かだと思います」

美希「それってもしかして、コレ?」スッ

春香「えーっと……ごめん美希。真っ暗でなんにも見えないや」

美希「あ、そっか」

美希「これ……ミキ、今石ころを持ってるんだけどね? 春香が転んだあとに落ちてたの」

律子「じゃあ、春香はそれにつまづいたのね」

律子「でも美希、なんで石ころなんか持ってきたのよ?」

美希「うん。見たことない石ころだったから持ってきたんだよ?」

美希「真っ黒でキレイで、アクセとかにしたらイイカンジかもって」

貴音「………」

貴音「……何やらその石からは面妖なえねるぎぃを感じます」

美希「え? そうなの?」

律子「貴音がそう言うなら、何か重要なアイテムだったりするのかしら」

貴音「わたくしでは判断出来ませんが、真美か亜美に見せれば何か分かるかもしれません」

美希「そっか。じゃあ、大事に持っていくことにするね?」ゴソゴソ

律子「春香のおかげで思わぬ収穫があったわね」

春香「うーん……素直に喜べないなぁ……」

490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:37:57.07 ID:YvXj+c6MO

春香「……それにしても、本当にどこを見ても真っ暗ですねー」キョロキョロ

律子「困ったわね、まさかこんな罠を仕掛けてくるなんて……。これじゃ親衛隊がどこにいるか分からないわ」

貴音「ふぁいあを灯り代わりに進みますか?」

律子「うーん、でも、いくらファイアとはいえずっと出しっぱなしじゃかなり魔力を消費しちゃうでしょ? なるべく万全の状態で戦いに臨まないと」

律子「特に貴音、あなたの相手は相当強いんでしょう?」

貴音「……はい」

美希「ねえ、とりあえず進もうよ」

春香「進むっていっても、前どころか自分の足すら見えないのに、どうやって?」

美希「んー……カン、かな?」

スタスタ…


律子「あっ、ちょっと美希、一人で勝手に……」


美希「大丈夫なの。みんなミキの声について来て!」スタスタ


春香「やっぱりすごいなぁ、美希は。こんな場面でも相変わらずっていうか」

貴音「美希の勘ならば信頼出来ます。ここは言う通りにした方が良いのでは?」

律子「……仕方ない、十分気をつけて進みましょう」

スタスタ…

491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:41:29.49 ID:YvXj+c6MO

美希「えーっと……」じーっ

美希「……こっち!」

スタスタ…



美希(……あと四分の一……)

美希(ホントに、もうすぐ終わっちゃうんだね)

美希(ミキ的には、みんなと過ごせてとっても楽しかったの。なんだか夢みたいで……)

美希(こんなステキな夢なら、まだ覚めなくてもいいかな、なんて……)



春香「……待って、美希」


美希「……春香? どうしたの? コワくなっちゃった?」

春香「うん、正直怖いけど……でもそうじゃなくって」

春香「手、つないで行こう? そうすればみんな離ればなれにならなくてすむでしょう?」

美希「あ……」

春香「……ね?」

492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:44:28.86 ID:YvXj+c6MO

美希「………」

美希(春香は……)

春香「美希? どうしたの?」

美希(春香は、いつもミキの欲しい言葉をくれる)

春香「おーい、美希ってばー」

美希(いつもミキのしてほしいことをしてくれる)

美希「……うん、聞こえてるの。しょうがないから、つないであげてもいいよ?」

春香「えへへ、ありがとう、美希!」

美希「えっと、春香はここらへんにいるのかなー?」スッ

…ムニュッ

春香「ひゃあっ!? ちょ、ちょっと美希、どこ触ってるのよーう!!」モジモジ

美希「あは☆ ワザとなの」

春香「ワザとなの!?」



美希(……大好きだよ、春香。こちらこそいつもありがとうなの)



律子「……まったく、魔物がいつ襲ってくるかも分からない状況でよく騒げるわね、二人とも」

貴音「ふふっ、それもまた心強いことです」

春香「いや、今のは美希がヘンなとこ触るのがいけないんですよぅ……」



春香「……コホン。それじゃ、気をとりなおして……」


春香「……美希」スッ

美希「はいなの」ギュッ

美希「……貴音」スッ

貴音「ええ、ここに」ギュッ

貴音「……律子嬢」スッ

律子「はいはい」ギュッ

春香「……みんなちゃーんと手をつなぎましたね? それじゃ、改めて出発しましょう!」

493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:48:12.78 ID:YvXj+c6MO

スタスタ…

春香「……なんか、こうしてみんなで手をつないでると、小学校とか幼稚園に戻った気がしますね!」

律子「もう、恥ずかしいからそういうことは言わないの」

貴音「しかし、互いの姿が見えぬ暗闇の中でも、こうしていれば不安な気持ちなど何処かへ行ってしまいます」

貴音「流石は春香ですね」ニコッ

春香「そ、そんなことないですよぅ」

美希「……ううん、貴音の言う通りなの」

美希「この手の温かさが、みんながここにいるんだってちゃーんと教えてくれるから」

春香「美希……」

春香「人の温もりって、偉大だよね……」


美希「……また、みんなで会えるよね?」

美希「みんなバラバラになっちゃったけど、また笑って会えるよね?」

春香「……うん、もちろんだよ!」ニコッ

美希「……えへへっ」ニコッ



ヒュゥゥ…



律子(……ん?)

貴音(風……?)



ヒュゥゥゥ…



貴音(……いえ、これは……)

美希(何かがミキたちの方に向かってきてる……!)

494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:51:27.35 ID:YvXj+c6MO

美希「……シェルっ!」バッ

ポワ…

春香「えっ、な、何?」

律子「何か来るわ! みんな、衝撃に備えて!」



…ビュオオオオッ!!



春香「わああっ!?」ヨロッ

律子「春香っ!」

貴音「……ぶりざが」バッ


コオオォ…シャキィィンッ!!




貴音「………」

貴音「……逃げられてしまいましたか」

美希「でも貴音、惜しかったの」

律子「やっぱりこの暗闇でも私たちの位置は向こうに筒抜けなのね」

春香「そ、そうですね」

春香(魔物の攻撃だったんだね。全然分からなかったよ……)

春香(この三人、レベル高いよぉ……)



律子「この真っ暗闇の中、姿の見えない敵を相手に戦えっていうの……?」

美希「律子…さん、ここはミキがやるの」

律子「美希、でも……」

美希「さっきの子が言ってたよね。貴音も春香も律子…さんも、この先に待ってる相手がいるんでしょ?」

美希「だったら、ここはミキがやるしかないって思うな」

春香「美希……」

貴音「………」

495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 00:53:20.62 ID:ZZKuEnVgO
こうなるとやっぱクルーヤは律子が相手して春香が…
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:55:05.85 ID:YvXj+c6MO


…ビュオオオオッ!!



美希「! ……次の攻撃が来るの!」

美希「ミキが少しの間だけ辺りを照らすから、みんな走って!」

律子「分かったわ。……美希、気をつけて!」

美希「あはっ☆ ミキ、ホンキ出したらすごいんだよ?」

律子「……ええ、そうね!」ニコッ

貴音「美希、この階の魔物はおそらく魔道士です。魔力を吸い取る『あすぴる』という魔法には注意してください」

美希「魔力を吸い取る……? そういう魔法もあるんだね。わかった、気をつけるの」

春香「美希!」ギュッ

美希「春香、ありがとうなの。ミキ、春香にたくさん元気もらえたの!」

美希「春香のおかげで、ミキ、ガンバれるの!」ゴゴゴ



美希「……それじゃみんな、行くよ!」



美希「……ホーリー!!」バッ


キラキラキラ…


春香「……まぶしいっ!」

春香(……なんて言ってる場合じゃないよね! お姉ちゃんも貴音さんも視力はそんなに良くなかったはず)

春香(ここは私が道を見極めなきゃ!)

春香「えっと……」キョロキョロ


春香「…………見えた!」

春香「お姉ちゃん、貴音さん、こっちですっ!」

タタタタ…



美希「みんな……また後で会おうね……!」

497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 00:59:50.38 ID:YvXj+c6MO
ここまでです
次も早く来れたら…いいな
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 03:40:07.65 ID:loP07ALkO
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 05:22:47.59 ID:OoE/Sz7wO
おつ
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/28(金) 19:54:51.71 ID:lU/e7KMhO

美希「………」



美希「………………さて、と」


美希「ねえ、そこにいるんでしょ?」



「………」



美希「ミキが相手になるの。だからもうエンリョしなくてもいーよ?」



「………」



美希「……もー、ムシしちゃヤなの。人の話を聞かないのはイケナイんだよ? 律子が言ってたもん」



「……君は、怖くないの?」



美希「……あは☆ やっとしゃべってくれたの」

美希「あのね? ミキ、今すっごい震えてるんだよ? 真っ暗だからわからないかもしれないけど」



「その言葉は信じられないな」

「君はこの暗闇の中でもただ一人行動に迷いが無かった。とても暗闇に怯えているようには見えない」



美希「……えっとね、ミキがコワいのは真っ暗だからじゃないよ?」

美希「ミキが本当にコワいと思ってるのはーー」

501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 19:57:35.61 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B9F 階段 ー


ザッ ザッ

春香「……とうとう三人になっちゃいましたね」

律子「そうね。でも、ここまで来たらあとはもうとにかく突っ走るしかないわ」

貴音「ええ。……皆の為にも」

春香「そうですね!」グッ


貴音「……それより春香、気づいていましたか?」

春香「へっ? 何をですか?」

貴音「先ほどの美希の手、僅かに震えていました」

春香「………」

律子「美希の手が?」 

貴音「はい、四人で手を繋いだ時の事です。真っ暗でしたので表情までは分かりませんでしたが」

律子「うーん……でも、あの子に限って今さら怖気づいたってことはないでしょう?」

貴音「ええ、先ほどの美希の行動を鑑みるに、それはあり得ないと思います。戦いを恐れている者があの様に積極的に動けるとは思えません」

律子「じゃあ、美希はいったい何に怯えてるっていうの?」

春香「………」

502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:00:29.00 ID:lU/e7KMhO

春香「……美希が怖いと思っているのは、みんなに会えなくなる事なんじゃないかって思います」

律子「えっ?」

春香「このゲームが終わって元の世界へ帰ったら、私たちには忙しい日々が待ってますよね?」

春香「そうなるとまたみんなすれ違いの生活が始まって、今みたいに全員が一度に揃う事は難しくなってくる……」

春香「もしかしたら美希は、それを不安に思ったんじゃないかなって」

貴音「……なるほど、この世界での楽しかった記憶が美希の心に迷いを生じさせていると?」

春香「はい……」

春香「でもその気持ちは、私も少なからず持ってます」

春香「もしかしたら他のみんなも……貴音さんやお姉ちゃんもそういう風に思ったことがあるんじゃないですか?」

貴音「………」

律子「………」



律子「……でも、だからっていつまでも元の世界に帰らないわけにはいかないわ。あの子だってそれは分かっているはずよ?」


『……ミキ、春香にたくさん元気もらえたの!』


春香「………」

春香「……きっと大丈夫だと思います、美希なら」

春香「あの子は多分もう、自分で答えを見つけているから」

貴音「………」

律子「………」



律子「……ま、例え美希が駄々をこねたとしても首に縄付けてでも連れ帰るけどね」ニコッ

春香「あ、あはは……」

貴音「ふふっ、美希の膨れた顔が目に浮かぶようです」ニコッ

律子「……さて、進みましょう。早いところ最下層で化け物退治しないといけないし」

春香「お、お姉ちゃん……そんなこと言ったら小鳥さん、泣いちゃいますよ?」


スタスタ…



503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:03:56.36 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


美希(夢の世界はいつだってミキに優しいけど、いつまでも夢の中にばっかりいられないの)

美希(現実に戻ったらまたみんなとなかなか会えなくなっちゃうかもしれないけど、それでもみんなで目指したい、叶えたい夢があるから)


美希(だから、ミキはーー)



美希「……ゴメンなさいなの」

美希「ミキ、あなたのこと、倒すね?」



「……やっぱり思った通りだ」

「君はボクの一番嫌いなタイプ。才能に恵まれていて、大抵の事は苦労せずに出来てしまう」

「だからなんでも出来る自分に自信を持っているし、限られた事しか出来ない自分以外をどこか見下している」

「それは君の言動や行動によく顕れているよ」



美希「えー? ミキ、そんなにヤな子じゃないよ?」



「……教えてあげる。君という天才でも太刀打ちできないものがあるってことを」ゴゴゴ



美希「君じゃなくてミキなの」



「……えっ」



美希「ミキの名前は星井美希。ちゃーんと覚えてね?」



「ミキ……か。ボクは暗黒魔道士。名前の通り、暗闇でその真価を発揮する」

暗黒魔道士「ミキ。光の射さないこの闇の中で、君は満足に戦えるかい?」



美希「……わかんない。けど、ミキ、ガンバるの」

美希「みんなとの約束だから!」ゴゴゴ


504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:09:14.64 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


…ビュンッ!!

ガキィン!!

リルマーダー「……っとお!」

リルマーダー「へへ、軽いぜっ!」ブンッ

伊織「ちっ……!」ダッ


…スタッ

伊織「………」チャキッ



リルマーダー「オイラはリルマーダー。泣く子も黙るゴブリン族の王だ! 誰もオイラに勝てやしねえ!」


伊織「王……? アンタが?」


リルマーダー「なあなあ、お前はなんて名前なんだ? せっかくだから殺す前に名前くらい覚えておいてやるよ!」


伊織「……ふん、アンタなんかに名乗る名前はないわ」

伊織「だって……」ユラ…

…ビュンッ!


リルマーダー「!」


伊織「アンタはすぐにこの私にやられる事になるものねっ」チャキッ

リルマーダー(……こいつ、一瞬で距離を詰めて来やがった!)

伊織「はあっ!」ブンッ

ザシュッ!!

リルマーダー「ぐっ……!」ヨロッ

伊織「……ふっ!」ブンッ

リルマーダー「うおっと!」ヒョイッ

伊織「!」

伊織(二撃目は躱された……。まあまあやるようね)


伊織「なら、これはどうかしら?」ボゥッ


伊織「……火遁っ!!」バッ

ゴオオオオォォォオオ!!


リルマーダー「そんなのオイラにゃ効かねえぜっ!!」タタタ


リルマーダー「そりゃっ!!」ブンッ


伊織「!」


ザシュッ!!


伊織「……ち……!」ザッ

505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:12:43.30 ID:lU/e7KMhO

リルマーダー「お前、人間にしてはなかなかやるじゃねーか。オイラに傷をつけるなんてよ」

リルマーダー「けど、お前の攻撃は速さはあるみたいだけどパワーが足りないぞ? 一撃が軽いぜっ!」


伊織「………」

伊織「……そう。だったら受け止めてみなさい」スチャ


リルマーダー(刀を収めた……? 何をするつもりだ?)


伊織「………」ジリッ


リルマーダー(さっきみたいに忍術を使うつもりか?)


リルマーダー「……ま、いいや。来ないんだったらこっちから行ってやるっ!」ダッ


伊織「っ!」ピクッ


リルマーダー「食らえー!! サンダ……」


リルマーダー「……がふっ!?」ヨロッ


リルマーダー「ぐっ……な、なんで……? 今、何をしたんだ……?」


伊織「別に、普通に刀を振っただけよ?」


リルマーダー「ウソつけ! 今、お前動いてなかっただろ!」ビシッ


伊織「……ああ、アンタには見えてなかったのね。私の太刀が」

伊織「にひひっ♪ ちょっと速すぎちゃったかしら?」


リルマーダー(こいつ……!)


伊織「アンタを見てると、なぜかイラッとするのよね」


リルマーダー「………」

リルマーダー「……そうかよ。だったら……」



リルマーダー「全力で殺してやるよ、王の力でな……!」ゴゴゴ



伊織「………」チャキッ


506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:16:11.07 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B7F ー


ブルードラゴン「……さあ、答えを述べよ、小さき召喚士よ」ブォンッ


ブオオッ…!


やよい「はわわっ!」ダッ

ゴロン


ドゴオオンッ!!


やよい「わわ……じめんにあながあいちゃってますー!」


ブルードラゴン「……ふんっ!」ブォンッ


ドガアッ!!


やよい「あぅ……!」ヨロッ

やよい「っ……いふりとさんっ!」バッ


イフリート「……ぬおおおおっ!! 地獄の火炎んんうううっ!!」


ゴオオオオォォォオオ!!


ブルードラゴン「……炎などワシには効かぬ」


やよい「……らむさんっ!」バッ


ラムウ「……裁きの雷!」


ズガガガガドゴオオオオンッ!!


ブルードラゴン「……無駄じゃ、召喚士よ。お前の攻撃はワシには通じぬ」

ブルードラゴン「ふぬっ!」ブンッ


バキィッ!!


やよい「うあっ……!」

…ドサッ

やよい「……うぅ……いたいです……」ヨロッ

507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:19:35.33 ID:lU/e7KMhO

ブルードラゴン「そうじゃ。生に痛みはつきもの。生きている限り様々な苦しみに耐えなければならない」

ブルードラゴン「生きる苦しみ全てから開放するのは……」



ブルードラゴン「……………死、だ」



やよい「!」


ブルードラゴン「痛み、悩み、悲しみ、苦しみ……。あらゆる苦痛からの開放とは、即ち死ぬことなのじゃ」

ブルードラゴン「そう、真の安らぎとは、『死』」

ブルードラゴン「召喚士よ。お前はワシに安らぎをもたらす者か?」


やよい「あぅ……あ、あの、それってつまり……」


ブルードラゴン「……むんっ」ブンッ


やよい「! ……しばさんっ!」バッ


シヴァ「……永久氷壁」


コオオォ……シャキーーンッ!!


バキッ!!


ブルードラゴン「氷の壁……ワシに攻撃が通じないと知って召喚獣を防御に使ったか」

ブルードラゴン「おもしろき娘じゃ」



ブルードラゴン「既に理解したと思うが、ワシの身体は属性を跳ね除ける」

ブルードラゴン「そのような呪われた身体ゆえ、ワシは長く生きすぎた。家族も友も、全てを失ってなお、苦痛にさらされ続けておる」

ブルードラゴン「もう、疲れたのじゃ」

ブルードラゴン「……さあ、お前の手でワシを永遠の眠りへ就かせておくれ」


やよい「そ、そんなっ……!」


ブルードラゴン「……それが出来ぬと言うのならば、お前に用は無い」

ブルードラゴン「ワシがお前に永遠の安らぎを与えてやろう」ゴゴゴ


やよい「うぅ……」


やよい(ころすのも死んじゃうのもいやです……)

やよい(みんなでもとの世界にかえるって、やくそくしたもんっ)

やよい(でも、あのどらごんさんはころしてほしいって……)

やよい(……ど、どうしよう……!)

やよい(…………)

508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:26:49.46 ID:lU/e7KMhO

ブルードラゴン「ワシを殺すか、それともワシに殺されるか。お前の選択肢は二つに一つじゃ」

ブルー「……いや、お前の召喚魔法がワシに通じぬ限り、お前に死を逃れる術は無い」


やよい「………」

やよい「……っ!」グッ


やよい「うー……!」ゴゴゴ


ブルードラゴン「無駄と知っても抗うか……」

ブルードラゴン「悲しきことじゃ」ブンッ



やよい(火もかみなりもだめなら……)



やよい「うっうーーーー!!」バッ



…ガシッ!!



ブルードラゴン「……ぬ?」



冬馬「……高槻をいじめる奴は、俺が許さねぇ……!」ゴゴゴ



ブルードラゴン「!」



冬馬「くらいやがれ! 超究武神破斬ッッ!!」

ドゴゴゴゴゴゴッ!!



北斗「……例によって今回もただ殴ってるだけだな」

翔太「あれ? 冬馬君ってドラクエ派じゃなかったっけ?」

509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:29:56.27 ID:lU/e7KMhO

冬馬「見たか化け物! 俺たちがついてる限り高槻は無敵だぜっ!」ビシッ


北斗「やよいちゃん、回復してあげるよ。……ケアルダ!」

シャララーン! キラキラキラ…!


やよい「ありがとうございますっ!」



ブルードラゴン「……ぬぅ……無属性の召喚魔法か……。今のは効いたわ……」

ブルードラゴン「生に対する執着、これも生きものの性か……」


やよい「……あのっ!」

やよい「わたし、ころすのも死んじゃうのもりょうほういやですっ!」

やよい「それに、死んだら楽になるっていう考え方もなんかちがうと思います!」


ブルードラゴン「……お前は知らぬのだ。何も出来ずに家族が死んでゆくのを見届ける辛さを。傷つき倒れた仲間に何もしてやれぬ無力さを」

ブルードラゴン「……自分だけが生き残る、虚しさを」


やよい「えっと……」

やよい「それは、どらごんさんの言うとおりだと思います」

やよい「わたしの家族はまだまだ元気だし、仲間……みなさんもすごくやさしいですし……」



やよい「……でも!」

やよい「安らぎが死ぬことっていうのは、なんかちがうと思いますっ!」

やよい「安らぎって、もっともっと身近にあるものなんじゃないかなーって!」


ブルードラゴン「……ならば示してみせよ。お前の言う安らぎを……!」ゴゴゴ


やよい「はいっ、がんばりますっ!!」グッ


510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:39:27.72 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


…キィン!! ガキィン!!

バキッ!! ドガッ!!

ブワッ…



…スタッ

千早「………」


月の女神「……へぇ、さっきの言葉はウソじゃなかったんだね?」

月の女神「あなた、こないだ戦った時よりいい動きしてるよ!」


千早(確かに、身体が軽い……)

千早(不思議ね、何をしたっていうわけではないのに)

千早(私、いつもよりもリラックスしてる……)

千早(別れ際の春香の告白騒動があったからかしら)

千早(……春香には感謝しなきゃいけないわね)



千早「私は、みんなとの約束を果たさなければならない」

千早「……あなたを倒して、先へ進ませてもらうわ」チャキッ


月の女神「……じゃあ、私は……」



月の女神「教えてもらうよ。あいどるってなんなのかを!」チャキッ



千早「!」

511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:41:45.44 ID:lU/e7KMhO

月の女神「……はあっ!」ダッ


ガキィン!!


千早「くっ……!」ググッ

千早(相変わらずの腕力ね……。今にも押し返されそう)

千早(それに……)


月の女神「はっ!」タンッ

クルンッ

月の女神「……えいっ!」ブンッ


ザシュッ!!


千早「うっ……!」ヨロッ


月の女神「やっ!」ブンッ


キィンッ!!


千早「く……!」ギリッ


千早(なんて軽やかな動き……。まるで踊るような……)



月の女神「私は、あいどるになりたい」

月の女神「あいどるはキラキラ輝いていてとても楽しいものだって、コトリ様に教えてもらったから」

月の女神「……だから、あなたを倒して私があいどるになるッ!!」


千早「………」

千早(これも音無さんの作戦か何かなのかしら)

千早(魔物がアイドルになりたいだなんて……)

千早(……ううん、多分、人間も魔物も関係ない)

千早(何かに対して憧れる気持ちは、きっとみんなが持っているもの)

千早(でも、だからってこの子に付き合う必要はない。私には果たさなければならない約束があるのだから)


千早「悪いけど、あなたの願望には興味はない。無理やりにでも道を開けてもらうわ!」チャキッ


月の女神「えへっ、たくさん遊ぼう!!」チャキッ


512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:47:36.19 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


春香「……これは……!」ゾクッ


ビリッ…


春香(空気が震えてる……)

春香(この階全体にまんべんなく張り巡らされた殺気……)

春香(まるで、私たちを誘ってるみたい……)


春香「お姉ちゃん……」

律子「ええ……ものすごいわね、これは」

律子「さっきの階とは真逆ね。完全に私たちを挑発してるわ」

律子「……いえ、私たちじゃなくて……」チラッ

律子「この闘気の主は、貴音、あなたを待っているのね」

貴音「………」



春香「貴音さん……」

貴音「……覚悟は出来ております」

貴音「ですから、どうかわたくしの事は心配なさらずに」

春香「………」

春香「……それでも」ギュッ

貴音「春香……?」

春香「貴音さんがどんな想いで戦うのか、私には想像もつきません」

春香「だから、せめて……」

春香「私のパワーを貴音さんに分けてあげます。使ってくださいっ!」ギュッ

貴音「………」

春香「………」

貴音「………」

春香「………」

貴音「………」

貴音「……あの」

春香「あ、えっと、私……」

513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:50:40.54 ID:lU/e7KMhO

春香「こうして手を握れば、少しでも力を分けてあげられるかなー、なんて……」

春香「あ、あはは……。こんなの、気休めにもなりませんよね……」シュン

貴音「……いえ、ありがとうございます」

貴音「春香、あなたのぱわぁ、確かに貰い受けました」ニコッ

春香「貴音さん!」パァァ

律子「……そういう事なら、私のパワーもあなたに分けてあげなきゃね」ギュッ

貴音「律子嬢……」

律子「この殺気、ここまで出会ったどの魔物よりも確実に格上だわ」

律子「こんな時になんて言葉をかけたらいいのか分からないけど……」

律子「貴音、自分を信じて。あなたならきっと……」

貴音「………」



貴音「わたくしは本当に幸せ者です。こうして一生懸命わたくしの事を想ってくれる友がいるのですから」ニコッ



春香「貴音さん……!」

律子「……しっかりね、貴音!」



「…………よくぞここまで辿り着いた」



三人「!!」

514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:53:19.47 ID:lU/e7KMhO

…ザッ

ダークバハムート「光の戦士……いや、あいどるたちよ」



律子「あれが、バハムート……」

春香「貴音さんのお友達で……」

貴音「幻獣神……幻獣たちの頂点に立たれるお方です……!」



ダークバハムート「………」ゴゴゴ



貴音「律子嬢、春香、二人は先へ」

貴音「宜しいですね? ばはむーと殿」



ダークバハムート「無論だ。そこの二人にはこの先で試練が待っている」

ダークバハムート「行くがよい、娘たちよ」



春香「貴音さん……」

貴音「もう言葉は要りません。……さ、早く」

春香「……はいっ」コクリ

タタタタ…



…ピタッ

春香「あの、バハムートさん!」



ダークバハムート「……なんだ、娘よ」



春香「貴音さんのこと、よろしくお願いしますっ!」ペコリ

タタタタ…



ダークバハムート「ククッ……!」


515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:59:21.68 ID:lU/e7KMhO

ダークバハムート「さて……漸く二人きりになる事ができたな、タカネよ」

ダークバハムート「会いたかったぞ……!」


貴音「ばはむーと殿……」

貴音(わたくしもずっとお会いしとうございました)

貴音(……ですが、同時にお会いするのが怖くもありました)


貴音「……お久しぶりでございます」ペコリ


ダークバハムート「うむ。お前が変わらず健在で安心したぞ」


貴音「ありがとうございます」

貴音「ばはむーと殿は……」


貴音(……黒き闘気を纏った体躯、おぞましい程鋭く伸びた爪や牙、闇夜の如き漆黒の翼……)

貴音(あの頃の光に満ち溢れた眼差しはもうありません)

貴音(……ばはむーと殿は、大きく変わられてしまったようです)


ダークバハムート「……そう怯えるな。久々の再会なのだ、もっと嬉しそうな顔を見せよ」


貴音「っ……そう、ですね」

貴音「あの、ばはむーと殿」


ダークバハムート「……なんだ?」


貴音「もう、戻られるおつもりはないのですか?」


ダークバハムート「……要領の得ぬ問いだな。それは、我の住処へ、か?」

ダークバハムート「それとも、光に、か?」


貴音「……その両方です」


ダークバハムート「タカネ。まさかお前程の者が理解出来ぬ訳ではなかろう?」

ダークバハムート「『こう』なってしまっては、我の力を以ってしてももはや以前の身体には戻れぬ」

ダークバハムート「それに、単なる眷族の為にわざわざ住処へ戻ってやる義理もない」

ダークバハムート「答えは両方とも否だ」


貴音「………」

貴音(やはり、取り返しのつかないところまで来ていたのですね)

貴音(……戦うしか道は無いのでしょう)

516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 21:02:09.27 ID:lU/e7KMhO

ダークバハムート「それよりも、我の言いつけ通り青き星から光の戦士たちを連れて来たようだな」

ダークバハムート「よくやった。褒めてつかわす」


貴音「……何故、ですか?」


ダークバハムート「む? ……何故、とはどういう事だ?」


貴音「闇へ堕ちたご自分がいずれ光の戦士に倒されると分かっていて、何故わたくしを褒めてくださるのですか?」

貴音「わたくしには、ばはむーと殿の真意は測りかねます」


ダークバハムート「……随分と自信があるようだな。この我を倒すのはあくまで前提、という事か」


貴音「! ……す、すみません、過ぎた事を……」


ダークバハムート「ククッ……良い。それ程の気概が無ければ我を倒してコトリの元へは行けぬ」

ダークバハムート「……否。お前をコトリの元へなど行かせぬ」ゴゴゴ


貴音「!」

貴音(なんと、おぞましい闘気……!)


ダークバハムート「お前は……永久に我のものになるのだ……!」

ゴオオオオッ!!


貴音(……戻ることなどできない)

貴音(散々後悔し、迷いもしましたが……)


貴音「わたくしは引きません、ばはむーと殿」スッ

貴音「貴方を倒し、その先の光を手に入れますっ……!」ゴゴゴ


ダークバハムート「……見せてみよ、お前の力!」


517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/28(金) 23:43:09.78 ID:Vq+5ACzLO
久々の寝落ちか?
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:00:22.66 ID:kgLR5JNJO
ー 月の地下渓谷 B11F ー


スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



春香「……誰もいませんね」

律子「……そうね」

519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:02:26.90 ID:kgLR5JNJO

スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



春香「……何も、起こりませんね」

律子「……そうね」

520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:04:11.75 ID:kgLR5JNJO

スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



…ピタッ

春香「………………」



春香「……………………おかしい!」


521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:13:49.15 ID:kgLR5JNJO

春香「絶対におかしいですよこれ! 進んでも進んでもずーーっと同じ景色だし、魔物なんてぜーんぜん出てこないし……」

春香「お姉ちゃん、私たちもしかして騙されてるんじゃないですか?」

律子「……あら、春香にしては察しがいいわね」

律子「貴音がいないから断言出来ないけれど、ここまで進んでも下り階段が見つからないのは、きっと罠なんでしょうね」

春香「や、やっぱり!」

春香「ど、どうしましょうお姉ちゃん!」

律子「うーん……さっきから考えてはいるんだけど、結局こういう場合って魔物を見つけないと進めないってパターンだと思うのよ」

春香「じゃあ、まずはこの階を守ってる魔物を探さないといけないんですね」

律子「ええ。でも……」チラッ

春香「……もう、結構進んできましたよね、私たち」

律子「そうね。ここまで進んでも何も無いとなると、このまま先へ進むべきか、いったん戻るべきか……」




「…………おおーーい!!」




春香「……えっ?」クルッ

律子「! あれは……」

522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:22:56.99 ID:kgLR5JNJO

タタタタ…


P「……はぁっ、はぁっ……!」

P「……よ、良かった、やっと知ってるやつに会えた……」


春香「プロデューサーさん!?」

律子「プロデューサー殿!」

春香「なんでここにプロデューサーさんが? 小鳥さんと一緒じゃなかったんですか?」

P「いやあ、中心核までの道で小鳥さんとはぐれてしまってな」

P「はは……面目ない」ポリポリ

春香「えっ、じゃあもしかして私たちが来るまでずっと迷ってたんですか?」

P「ああ。なぜかこの階には下へ降りる階段が見つからないんだよ。魔物の罠かもしれないんだ」

律子「丁度私たちもこれはきっと罠だ、って話をしていたところです」

P「そうだったのか」



P「それで、今は二人だけか? 他のみんなはどうしたんだ?」

春香「みんなは、親衛隊の魔物と戦ってくれています。だから私たちも早く先へ進まないと」

P「そうか……そうだな」

律子「ところで、プロデューサーはなんで私たちの後ろから現れたんです?」

律子「私たちが来るよりももっと前からこの階にいたんですよね?」

春香「あ……言われてみれば、私たち誰ともすれ違ってないのにおかしいですね」

春香「貴音さんの話だと、この階は一本道らしいですし……」
 
P「それは……」

523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:26:33.21 ID:kgLR5JNJO

P「うーん、口で説明するよりも実際に見た方が早いかもな」

P「春香、すまないがちょっとこの先へひとっ走り行ってきてくれないか?」

春香「先へ……ですか?」

P「うん。ずっとまっすぐ進んでくれればいいんだ」

春香「えっと……はい、分かりました」

春香「じゃあ、行ってきます!」

タタタタ…



律子「……なるほど、プロデューサーが何をやろうとしているのかがなんとなく分かりました」

P「そうか。流石は律子だな」

律子「また面倒くさそうな罠ですね」

P「俺ひとりじゃどうしていいか分からなくてな。二人が来てくれて助かったよ」

律子「ちなみに、この階を守っている魔物に心当たりは?」

P「すまん、分からないんだ」

律子「……ま、仕方ないですね」



タタタタ…



律子「……あ、来ましたね」

P「ああ」

524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:29:40.32 ID:kgLR5JNJO

春香「……はぁ、はぁっ……!」

春香「……あれっ? なんでここにプロデューサーさんとお姉ちゃんが……?」

P「俺たちはさっきからここを動いていない。春香は元の場所に戻ってきたんだよ」

春香「えっ? でも私、プロデューサーさんに言われた通りずーっとまっすぐ走ったつもりなんですけど……」

律子「春香、多分これはループする罠よ」

春香「ループ?」

律子「何らかの方法で空間が捻じ曲げられて、入り口と出口が繋がってしまっている」

律子「先へ進んだつもりでも、元の場所へ戻ってきてしまうようになっているんじゃないかしら」

春香「なるほど……だから今までも進んでも進んでもずっと同じ景色だったんですね!」

春香「でも、どうしましょう? これじゃ小鳥さんのところまで行けませんよ」

P「魔物を見つけさえすればなんとかなると思うんだけどなぁ……」

律子「………」

P「……仕方ない、どうすればいいか知恵を出し合おう」

春香「そうですね。三人で考えればきっと何か方法が見つかるはずです!」

P「……というわけで、律子、頼んだぞ」

律子「はい?」

春香「お姉ちゃんが頼りなんです!」ギュッ

律子「二人揃って丸投げとか、文殊の知恵はどこへ行ったんですか……」

律子「……まったく、仕方ないわねぇ」

525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:33:38.17 ID:kgLR5JNJO

律子「じゃあ、二人のお望み通り私の考えを話すけどいいかしら?」

P「もちろん!」

春香「もう何か思いついたんですか? さっすがお姉ちゃん!」

律子「まあ、考えって言っても魔物がどこにいるかについての考察だけなんだけどね」

P「充分だよ。いやあ、律子は頼りになるなあ!」

春香「それで、魔物はどこにいるんですか?」

律子「その前に……」

律子「春香、今までの会話で何か気づかない?」

春香「えっ? 何がです?」

律子「私たち三人のここまでの会話の中に、明らかにおかしい点があったわ」

春香「えっと……」

春香「……す、すみません、全然わかんないです……」

律子「あなたって結構鈍感なのねぇ。私は真っ先に気づいたっていうのに」

春香「もう、焦らさないでくださいよぅ!」

P「そうだぞ、律子。事態は一刻を争うんだ」

律子「……分かりました。じゃあ言いますけど……」





律子「……あなた、プロデューサーじゃありませんよね?」




P「えっ……?」
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:38:31.44 ID:kgLR5JNJO

春香「プロデューサーさんが、プロデューサーさんじゃない……?」

春香「ど、どういう事なんですか?」

律子「そのままの意味よ。そこにいる人はプロデューサーじゃない別の誰かってこと」

律子「もっと言うと、この階を守っている魔物じゃないかと思っているわ」

春香「ええっ!?」

春香「で、でも、どこからどう見てもプロデューサーさんだと思うんですけど……」チラッ

P「律子、今は冗談言ってる場合じゃないんだ。お前も分かっているだろ?」

律子「……ふーん、あくまでシラを切るつもりですか」

P「そもそも、何を根拠に俺を魔物だなんて言うんだよ?」

律子「根拠……根拠ねぇ……」

律子「もちろんあります。あなたがプロデューサーじゃないっていう根拠は」

律子「でないとこんなこと言い出したりしませんって」

P「………」

春香「……あの、お姉ちゃん。本物のプロデューサーさんじゃない根拠って何なんですか?」

律子「ええ、今から説明するわ」

律子「あなたがプロデューサーではないのではと思ったのは、会話の中に三つの違和感を感じたからです」

P「………」

527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:41:03.68 ID:kgLR5JNJO

律子「まず一つ目。あなたは小鳥さんとはぐれたって言ってましたけど、じゃあなんで小鳥さんは迎えに来ないんですか?」

P「それは……」

P「分からない。小鳥さんにも何か事情があったんじゃないか?」

律子「苦しい言い訳ですね。この地下渓谷は小鳥さんの庭のようなものらしいじゃないですか。それなのにあなたを迎えに来れない事情ってどんな事情なんでしょう?」

P「それが分からないからここにいるんじゃないか」

P「律子、お前はいつから仲間を疑ったりするようになったんだ?」

律子「………」

春香「あ、あの、二人ともケンカはダメですよ?」

律子「……ま、いいです。じゃあ二つ目の違和感」

律子「あなたは私たちよりも先にこの階の罠について知っていたみたいですけど、それはどうやって知ったんですか?」

P「? それは重要なことなのか?」

律子「重要です」

律子「この階の罠は、さっき判明した通り『無限ループの罠』です」

律子「でも、それって一人で気づけることですか?」

春香「どういうことですか?」

律子「私たちはさっき春香を使った実験でこの階の罠を知った」

律子「そして、その実験を提案したのはこの人。つまり、この人は私たちが来る前からこの階の罠を知っていたことになるわ」

春香「はい、そうなりますね」

P「………」

律子「でも、じゃあこの人はどうやって罠の内容に気づいたの?」

律子「さっきの実験みたいに先へ進む人とその場に留まる人に別れれば無限ループだと気づけるけど、果たして一人の時にその事実に気づくことができるかしら?」

春香「……確かに、一人だとさっきみたいな実験は出来ないし……」

P「そんなの簡単だよ。石か何かで壁に印を付けて、しばらく進んで同じ印が見つかれば無限ループしているってことだ。これくらいは誰でも思いつくことだと思うぞ?」

春香「あっ、なるほど」

律子「……ふむ」

528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:54:26.22 ID:kgLR5JNJO

律子「……じゃあ、三つ目の違和感です」

律子「今までの二つの違和感は、あなたが本物のプロデューサーではないのでは? という疑念を私に抱かせるにすぎない、言わば取っ掛かりのようなもの」

律子「証拠と言うには不十分です」

律子「……が、三つ目の違和感は、それだけであなたが別人であるという証拠になり得る確定的なものです」

P「………」

春香「……!」ゴクリ

律子「……プロデューサー殿、あなたは……」




律子「いつから小鳥さんのことを下の名前で呼ぶようになったんですか?」




P「えっ……?」

春香「あっ……」

春香「そうですよ! 確かにプロデューサーさんはいつも『音無さん』って呼んでます!」

春香「『小鳥さん』って名前で呼んでるのは、聞いたことないです」チラッ

P「………」

律子「あなた、誰ですか?」

P「………」

律子「魔物なんでしょう? 姿を現しなさい!」

P「………」



P「…………いやあ、参った。これは調査不足だったなぁ」


スゥーー…



「……大正解。ボクはプロデューサーさんじゃないよ」



春香「……あ、あなたは……!」


529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:56:06.03 ID:kgLR5JNJO

クルーヤ「……ハルカ、久しぶりだね。見違えたよ」ニコッ


春香「お父さんっ!」

律子「お父さん……?」

律子(じゃあ、この人が私の……)


クルーヤ「リツコ、見事だった。ボクの幻影を見破るなんて」

クルーヤ「とても賢く成長してくれたんだね。父親として鼻が高いよ!」ニコッ

律子「………」

クルーヤ「……それと、辛い思いをさせてすまない」

クルーヤ「君がコトリさんに操られて青き星を滅ぼそうとしていたのは知っていたんだ」

クルーヤ「でも、ボクはもうこの世の存在ではない。だから、世界に干渉して君を助けるわけにはいかなかった」

律子「………」

春香「お父さん……」

530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:58:31.80 ID:kgLR5JNJO

律子「終わったことはもういいです。私はこうして春香と共にここにいるんですから」

律子「あなたがこの世の存在ではないっていうのも、特に興味は無いですし」

春香「お、お姉ちゃん?」

クルーヤ「………」

律子「それより、この世界へ干渉するのが禁じられているっていうならなぜあなたはここにいるんです?」

律子「禁忌を犯してまで私たちの邪魔がしたかったっていうんですか?」

クルーヤ「………」

春香「お、お姉ちゃん、それはさすがに言いすぎじゃ?」

律子「……ごめんね、春香。この人はあなたにとっては父親かもしれないけど、私にとっては目的の邪魔をしようとしているただの敵でしかないわ」

春香「!」

クルーヤ「……はは、嫌われちゃったなぁ……」

クルーヤ「父親らしいことなんて何一つ出来なかったクセに今さらのこのこと君の前に現れるなんて、虫が良すぎるよな」

春香「お父さん、でもそれは」

律子「私たち、急いでいるんです。ここを通してもらえません?」チャキッ

クルーヤ「……ふむ」

春香「お姉ちゃん、ダメですっ! お父さんは敵じゃありません!」

律子「……いいえ」

律子「こうして私たちの前に立ちはだかっている以上、今まで出会ってきた魔物たちと同じ、排除すべき敵だわ」

春香「そ、そんな!」

クルーヤ「………」



クルーヤ「……自分のいる位置を知っておくのも大事なことだ。いいよ、かかっておいで、リツコ」ニコッ



律子「っ! ……はぁぁぁあああっ!!」

タタタタ…


春香「お姉ちゃんっ!!」


531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 07:59:47.51 ID:kgLR5JNJO
ここまでです
寝落ちしました
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 15:51:21.17 ID:l1trogsLO
ドンマイ
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