P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2

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10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/25(金) 06:31:47.43 ID:gGZcrOZo0
雪歩おめでとう!!
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 23:00:42.93 ID:D7OA6XJDO
>>10
誕生日なら1日前だぞ?
12 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:26:29.90 ID:i5cmhxw/O
ー 魔導船 コクピット ー



キラキラキラ…



美希「すごーい! 星が、キラキラなのー……!」

響「ホントだ。きれいだなー……」

真美「真美たち、ホントのホントにうちゅーにいるんだねー……」

真「なんか、感動だなぁ!」

春香「これが、宇宙かぁ……」



やよい「うちゅーって、とってもしずかなところなんですね」

やよい「さっきから、わたしたちの声しか聞こえないですー」

伊織「当たり前じゃない。宇宙空間には音を伝える空気がないんだから」


やよい「えええっ!? 空気がないの!?」ガタッ


やよい「た、たいへんです! 空気がないとわたしたち、生きていられないですー!」アタフタ

雪歩「だ、大丈夫だよ、やよいちゃん。この船には空気があるみたいだから」

やよい「そ……そうなんですか? うー、よかったですー」ホッ

13 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:30:35.12 ID:i5cmhxw/O

やよい「でも、やっぱり音がないと、なんだかさみしいですよねー」

千早「そうね。ここまで無音だと、私でも落ち着かないわ」

貴音「……いえ、宇宙に全く音が無いわけではありません」

やよい「えっ? そーなんですか?」

貴音「宇宙に散りばめられた星々の中には、地球のように大気を持つものもあります」

貴音「ただわたくしたちに聞き取れないだけで、その星には確かに音が存在するのでしょう」

やよい「えっと??」

伊織「つまり、この広い宇宙を探せば、地球みたいな星があるかもしれないって事よ」

やよい「じゃあ、その星にもわたしたちみたいな人間がいるんですねっ!!」

貴音「わたくしたちとまったく同じとは限りませんが、何らかの生物が繁栄している星はあるでしょう」

貴音「そして、音が存在する星ならば、音楽があってもおかしくはありません」

貴音「その星ならではの、音楽が」

やよい「うっうー! ほかの星の歌とかもきいてみたいですー!」

伊織「そうね。もし歌を歌う宇宙人がいるなら、会ってみたい気もするわね」

貴音「見知らぬ星の、言葉の通じない方々とも、音楽という共通言語でわたくしたちは会話をする事ができるでしょう」

貴音「そう考えると、やはり音楽というものの偉大さを改めて感じられますね」

千早「………」フム





やよい「……ちい〜さな〜〜♪ ての〜ひらにこぼ〜れた〜♪ 」

やよい「ま〜んげつのっ♪ かけらに〜もすこしにた〜♪ 」

やよい「みじかいいのちぼくだけの〜たからもの〜っ♪ 」



春香「やよい、なんだかご機嫌だね?」

伊織「さっきの貴音の話を聞いて、遠くの星の人たちに歌を聴いてもらうんですって」

春香「……ふふっ♪ そっかぁ。やよいらしいなぁ」

千早「高槻さんの歌なら、きっと届くと思うわ」ニコニコ

14 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:34:51.62 ID:i5cmhxw/O

貴音「………」

貴音(わたくしたちは、少しずつ確実に、月へと近づいています)

貴音(もうすぐあの方との約束を果たせるというのに、何故こうも胸がざわつくのでしょうか)

貴音(……やはりわたくしは、後悔しているのですね)

貴音(浅はかだった、自分の行動を……)


「……かね。たーかーねっ!」


貴音「ひぅ!?」ビクッ


響「あ、ご、ごめん。驚かすつもりじゃなかったんだけど」

貴音「……響ですか。心臓が止まるかと思いました」ドキドキ

響「だから悪かったってばー」

響「それよりさ。月に着いたら、みんなが貴音にガイドして欲しいって!」

貴音「……がいど? わたくしが、ですか?」

響「うん! だって、月は貴音の故郷なんでしょ?」

貴音「………」

響「……あれ? もしかして、イヤだった?」

貴音「いえ、そのような事はありません。……そうですね、わたくしで良ければ、案内役を務めさせていただきます」

響「ホントか! ……おーいみんな! 貴音が月を案内してくれるってさー!」

春香「わぁ、やったぁ!」

雪歩「四条さんの案内……うふふふ」

伊織「ま、ガイドがいないと観光も楽しめないわよね」

真「ねえ貴音、月ってどんなところなの?」

美希「おにぎりとかある?」

やよい「あの、もやしはありますか?」

律子「こらこら、そんなにいっぺんに話しかけても貴音だって困るでしょう?」

律子「それに、遊びに行くわけじゃないんだから」

P「いいじゃないか、少しくらい。月に行くなんて、一生にあるかないかなんだからさ」

律子「って言っても、ゲームの世界の月ですけどね」

15 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:36:54.84 ID:i5cmhxw/O
あずさ「……そういえば、月には貴音ちゃんのお友達はいるの?」

貴音「………」

響「……貴音?」

貴音「……ええ。月の民自体が少数民族のようなので、知り合いは少ないですが」

あずさ「うふふ♪ 貴音ちゃんのお友達に会うの、楽しみねぇ」

貴音「………」



亜美「ねーねーお姫ちん、ハミングウェイにはもう会ったー?」

貴音「はみんぐうぇい……ええ、会いましたね。皆一様に同じ歌を口ずさんでいて、何やら楽しそうな方たちでした」

千早「…………歌?」ピクッ

真美「お? 千早お姉ちゃんが食いついた」

千早「四条さん。その、ハミングウェイというものについて是非詳しく聞かせて欲しいんですがっ」ズイッ

春香「ああ、千早ちゃんに火が点いちゃったよ」

貴音「ふふ……。そう焦らずとも、じきに会えます」

貴音「それに千早。あなたの歌声に敵う者など、そうはいません。安心してください」

千早「い、いえ、私は別にそういう意味で言ったつもりでは……」

真「歌の事になると、ホント千早は生き生きとするなぁ」



亜美「んじゃ、月に着いたらとりあえずハミーたちのところに行こっか?」

やよい「わあ、すっごく楽しみですー!」

律子「ちょっと、勝手に決めないの!」

P「まあまあ。一通り貴音の知り合いに会って行くのも悪くないさ」

律子「もう、プロデューサーは呑気なんだから……」

伊織「諦めなさい、律子。これは完全に月観光の流れよっ♪ 」

律子「……わかったわよもう」

律子「その代わり、羽目を外し過ぎない。月の民の人たちに迷惑をかけない」

律子「この二つは守る事。いい?」



アイドルたち「はーーい!!!」



貴音「………」

16 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:40:26.28 ID:i5cmhxw/O

律子「……さて、月に着くまでまだ時間がかかるみたいですけど、この後どうします?」

P「じゃあ、一旦解散にするか。見たところ船室はたくさんあるみたいだから、みんな適当に休むといいよ」

P「月に着いたら、またしばらく休むヒマはないかもしれないからな」

春香「あの、プロデューサーさん」

P「ん? どうした?」

春香「そろそろお腹空きませんか? 地球を出発してから、私たち何も食べてませんよ?」

P「あ、忘れてた。それじゃあ、誰か料理を……」

美希「はいっ! ミキがやるの!」バッ

P「美希……気持ちは嬉しいが、ひとりでやるつもりなのか?」

美希「うん!」

真「美希、いつになくやる気だね?」

美希「もちろんなの! これも、将来のタメに必要な事だもん!」

律子「でも、さすがに美希ひとりに任せるわけには……」

あずさ「あの〜、私も美希ちゃんと一緒にお料理してもいいですか〜?」

やよい「あ、それならわたしもお手伝いしますっ!」

律子「そうね。あずささんとやよいが一緒なら、心配いらないでしょう」

美希「あずさ、やよい、よろしくお願いしますなの」ペコリ

あずさ「頑張りましょう♪ 」

やよい「よろしくお願いしまーす!」ガルーン



P「それじゃ、料理ができるまで一旦解散だ」





貴音「………」スタスタ


響「……貴音、どこ行くんだ?」

貴音「少々散歩をして参ります。探さないでください」ペコリ

響「いや、そんな、家出じゃないんだから」


貴音「………」スタスタ


響「貴音……?」

17 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:45:13.74 ID:i5cmhxw/O
ー 魔導船 船室1 ー


亜美「ねえねえ真美。ヒマだし、魔導船の中をタンケンしてみない?」

真美「……亜美。真美はね、もうそーゆー子どもっぽい事は卒業したんだよ」

亜美「えっ?」

真美「真美は『お姉ちゃん』だかんね。いつまでも遊んでらんないのさっ!」

亜美「……どしたの? 真美、なんかヘンなもんでも食べた?」

真美「食べてないよ。あと、もうこれからは好き嫌いもなくす!」

真美「イタズラもやめるし、兄ちゃんやりっちゃんを困らせたりもしないんだ!」

亜美「うあうあ〜! 真美がおかしくなっちゃったよ〜!」

真美「んっふっふ〜♪ 亜美、困ってる事はない? お姉ちゃんになんでも言ってごらん?」

亜美「真美がヘンになって困ってる。あと、いっしょにタンケンしてくんない」

真美「ヘンじゃないもん! あと、タンケンなんて子どもっぽいからやんない!」

亜美「ぬぅ……このわからずやめっ! いいもんね! ひびきん誘うから!」

亜美「真美のバカっ!」

タタタ…


真美「亜美っ……」


ガチャ…バタン!


真美「行っちゃった……」



真美(……まあ、亜美はそーカンタンに甘えてくんないってわかってたよ)

真美(真美は『お姉ちゃん』に目覚めてまだまだ日があさいモンね。まずは姉経験値をかせがなくっちゃ!)

真美(そして……)

真美(いつか、亜美にめっちゃヒザまくらしてやるかんね……!)



真美(亜美、首輪を洗って待っているのだ……!)


真美「ふっふっふっふ……」

18 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:48:17.12 ID:i5cmhxw/O
ー 魔導船 船室2 ー


春香「……きーらいーなものでもーすきーになーりーたーい♪ 」シュッシュッ

春香「ふふんふーん♪ 」ポンポンポン


…コンコン


春香「……はーい、どうぞー」


ガチャ…


律子「春香、ちょっといい?」


春香「あ、律子さん」

律子「……何してたの?」

春香「はい、少し剣の手入れを」チャキッ

律子「はぁ……。見事にこの世界に染まってるわね」

律子「剣を手入れするアイドルなんて、聞いた事ないわよ……」

春香「そ、そうですよねぇ、あはは……」

律子「でも、これからの事を考えれば、それも必要な事なのよね。月は小鳥さんの庭のようなもの。魔物たちの攻撃も激しくなってくるでしょうから」

春香「……そう、ですね」



律子「あのね、春香……」

春香「はい?」

律子「………」

春香「? ……律子さん、どうかしたんですか?」

律子「その……」

律子「春香のお父さんって、どんな人だった?」

春香「お父さん……あ、もしかして、この世界でのお父さんの事ですか?」

律子「ええ」

春香「えーっと、そうですねぇ」

春香「明るくて、優しい人でしたね。ちょっとえっちなところもあるけど……」

律子「ふーん……」

春香「本当のお父さんじゃないのに、なんだか安心するんです。……えへへ♪ 不思議ですよね」

春香「あ、そういえばこの剣、お父さんが使ってたものなんですよっ!」チャキッ

律子「そう、なのね」

春香「……でも、どうして急に私のお父さんの事を聞いたりするんです?」

律子「えっと、まあ……やっぱり気になるもの」

律子「…………春香のお父さんは、私にとっての父でもあるみたいだし」

春香「そうなんですかぁ〜。律子さんにとっても……」



春香「………………え?」

19 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:51:43.47 ID:i5cmhxw/O

春香「あ、あの、律子さん? それってどういう意味ですか?」

律子「どういうって、そのままの意味よ」

律子「この世界での春香と私の父親は同じなの。つまり……」

律子「私とあなたは、姉妹って事になるわね」

春香「わ、私と律子さんが、姉妹……?」

律子「その様子だと、プロデューサーから何も聞かされてないみたいね。……私も、この事はついこの間知ったばかりなのよ」

春香「は、はぁ」

律子「ま、だからって今さら何が変わるってわけでもないし、これまで通りでよろしくね?」

春香「………」

律子「……春香?」

春香「……あ、あのっ」

春香「お姉ちゃんって呼んでも、いいですか!?」

律子「」



律子「いや……だから、姉妹っていうのはあくまでこの世界の設定の話であって」

春香「いいんです、この世界だけで」

春香「私、一人っ子だから、姉妹とか憧れるんですよね!」

春香「だから、律子さんさえ良かったら……お、お姉ちゃんって呼ばせてもらえないかなって……///」モジモジ

律子「………」

律子「……わ、わかったわよ。これまで姉らしい事なんて何ひとつできなかったし」

春香「わぁ! ありがとうございます、お姉ちゃん!」

律子「……///」

春香「えへへ……///」

律子(う〜……。これ、涼に呼ばれるのとはまた違って、何か新鮮な響きがあるから変な気持ちになるわね……)


律子「……って、これじゃまるで、私が春香にお姉ちゃんって呼ばせに来たみたいじゃない!?」

春香「え? 違うんですか? お姉ちゃん」

律子「違うわよ! 私はその、一応事実だけをあなたに伝えようと思って……」

春香「わざわざありがとうございます、お姉ちゃん!」

律子「ちょっと春香、連続で呼ぶのやめて。すっごい恥ずかしいから」

春香「え〜、いいじゃないですかぁ。せっかくの姉妹なんだから♪ 」

律子「はぁ……やっぱり言わなきゃ良かったわ……」

20 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 21:58:41.06 ID:i5cmhxw/O
ー 魔導船 コクピット ー


雪歩「……こう来たら」

雪歩「こう、返す」シュッ

雪歩「こっちから来たら……」

雪歩「こうっ!」シュッ


バキッ!


響「うぎゃっ!?」


雪歩「あっ」


雪歩「あわわわわ!」

響「雪歩……いいパンチだったぞ……」グッタリ

雪歩「ごっ、ごめんね響ちゃん! わ、私、別に当てるつもりじゃなくて……」

響「うん、わかってるさー。あいたたた……」サスサス

雪歩「うぅ、やっぱりこんなところでカウンターの練習なんてするんじゃなかったよぉ」

雪歩「響ちゃんを殴っちゃう私なんて……私なんて……」チャキッ

響「わあああ! 雪歩ダメ! ここ宇宙だから!」ガシッ

雪歩「そ、そうでしたぁ」

21 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 22:01:11.76 ID:i5cmhxw/O

響「……雪歩、ひとり?」キョロキョロ

雪歩「うん。みんなはきっとお部屋にいるんじゃないかなぁ」

響「………」

雪歩「響ちゃん、なんだか元気ないね。どうかしたの?」

響「貴音見なかった?」

雪歩「四条さん? ……見てないけど、いないの?」

響「散歩に行くって言ったっきり、どっかに行っちゃったんだ」

雪歩「そうなんだ」


亜美「……あ、ひびきん見っけ!」


響「亜美」

雪歩「亜美ちゃん」

亜美「お、ゆきぴょんもいっしょだったんだね」

響「亜美、貴音見なかった?」

亜美「お姫ちん? 見てないよー?」

響「そっか……」

亜美「なになに? ひびきん、もしかしてお姫ちんとケンカしたの?」

響「いや、そういうのじゃないんだ」

響「ただ、今日の貴音は様子がおかしい気がするんだよなー」

亜美「そーかな?」

響「うん。うまく言えないんだけど、いつもよりテンションが低いような……」

雪歩「そういえば、魔導船に乗り込んでからの四条さん、物思いにふける事が多い気がするよ」

亜美「んー、でもさ、お姫ちんっていっつもそんなカンジじゃない?」

雪歩「そうなんだけど、今日は特に表情が真剣っていうか、色っぽさが増してるっていうか」

雪歩「何か心配事があるのかなぁ……」

響「………」

亜美「………」

22 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2015/12/27(日) 22:04:01.76 ID:i5cmhxw/O

亜美「あ、もしかして……」

響「亜美、なんかわかったのか?」

亜美「ほら、この世界ではお姫ちんのふるさとは月って事になってるっしょ?」

雪歩「うん、そうみたいだね」

亜美「だから、ふるさとに帰れるから、ちょっとキンチョーしてるんじゃない?」

雪歩「うーん、それだけなのかなぁ……」

亜美「ヘーキヘーキ、心配ないって!」

雪歩「だといいけど……」



響「………」

響(たまに貴音がホームシックになったりするのは、自分も知ってる)

響(でも、それは現実世界での事だし、今回はそういうのとは違う気がするんだ)

響(何かもっと、深刻な事で悩んでるような……)

響(貴音……自分たちには話せない事なのか……?)

響(…………自分、貴音の力になりたいぞ)



亜美「それより2人とも、いっしょに魔導船の中タンケンしてみない?」

響「探検か。……そうだな。貴音は探さないでって言ってたけど、ちょっと心配だし」

雪歩「私は、遠慮しておこうかな」

亜美「ダメだよ! ゆきぴょんもいっしょに行くの!」ガシッ

雪歩「えっ? で、でも……」

亜美「モンク言うなら真美に言ってよね! 付き合い悪い真美がいけないんだから!」

響「よーし! じゃあ行くか!」

亜美「おー!」


スタスタ…


雪歩「ひぃーん! なんで私までー!」ズルズル

23 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2015/12/27(日) 22:07:57.05 ID:i5cmhxw/O
短いですがここまでです
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 02:50:23.97 ID:nzqSv7A2o
お疲れ様です
初期バンプ好きな高槻さんかわいい!
25 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:26:17.95 ID:CvdDjGBvO
ー 魔導船 船室3 ー


真「……9974……っ」グッ

真「……9975……っ」グッ


…ガチャ


真美「まーこちん♪ 」

真「あ、真美」

真「……よっと」スタッ

真「ふぅ。……どうしたの?」

真美「真美のヒザはいらんかえ?」

真「えっ? 意味がわからないんだけど……」

真美「んもう、まこちんはニブいですな〜。ヒザまくらですよ、ヒザまくら!」

真「膝枕? いや、ボク、まだトレーニングの途中だし……」

真美「そんなツレナイ事言わずにためしてみてよ〜。ソンはさせないよ〜?」

真「なんの勧誘だよそれ……」

真美「ほらほら早く〜」グイッ

真「あ、ちょ、ちょっと真美、引っ張らないでよ!」



真美「ねーねーどう? 真美のヒザまくら」ナデナデ

真「……うん、気持ちいいよ」

真美「まこちん、トレーニングで疲れてるんでしょ? 寝ちゃってもいーよ? 真美が起こしてあげるからさ」

真「うん……」

真(真美の太もも、柔らかくて、あったかくて、本当に眠くなっちゃうかも)

真(あー……なんか、落ち着くなぁ……)



真「zzz……」

真美「……まこちん?」

真美「………」

真美「んっふっふ〜♪ むぼーびな寝顔しちゃって……」ナデナデ

真美(……これで、ちょっとはお姉ちゃんに近づいた……かな?)

26 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:28:29.22 ID:CvdDjGBvO
ー 魔導船 船室4 ー


カン、カン、カン…


P「……ふぅ。このくらいの大きさでいいかな」

P「あとはこれに紐を通せば完成だな」


…コンコン


P「ん? 空いてるぞー」


…ガチャ


伊織「……お疲れ様」


P「お、伊織か。どうした?」

伊織「ちょっと話があるんだけど」

伊織「……って、何やってるのよ?」

P「あ、これか? 手持ち無沙汰だったから、少し工作をな」

伊織「ふーん……。ヒマなのねぇ、アンタも」

P「俺に出来る事なんて限られてるからな。まあ、ヒマ潰しも兼ねてるけど」

27 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:29:51.78 ID:CvdDjGBvO

P「……で、話ってなんだ?」

伊織「………」

伊織「アンタに、謝ろうと思って」

P「え? 俺、伊織に何かされたっけ?」

伊織「ほら、巨人に潜入した時の事よ」

伊織「あの時、私、ヒドい事言っちゃったじゃない。『アンタはお気楽でいいわね』なんて」

伊織「よく考えてみれば、アンタみたいに過保護なやつが、私たちがこんな事になってお気楽でいられるわけがないのよね」

伊織「あの時の私、ちょっといろいろあって……」

P「知ってるよ」

伊織「えっ……?」

P「俺の方こそ、伊織に謝らなきゃいけない」

P「ルビカンテの事、ひとりで悩んでいたんだよな。気づいてやれなくて、ごめん」ペコリ

伊織「ちょ、ちょっと、頭上げなさいよ。アンタは何も悪くないんだから」

伊織「私が思慮の浅い発言をしちゃったのが悪かったの!」

伊織「……それに」

伊織「赤い悪魔の事は、すでに決着が着いた事よ」

P「……うん。そうだったな」

28 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:31:50.97 ID:CvdDjGBvO

伊織「私、今では感謝してるの。……赤い悪魔に出会えた事に」

伊織「……ううん。この世界へ来れた事に」

P「伊織……」

伊織「この世界へ来て、いろんな人に会って、いろんな事を教わった」

伊織「それは、普段の生活の中じゃ気づけなかった事かもしれないわ」

伊織「だから、その……」

伊織「…………あ、ありがと。この世界へ連れて来てくれて」モジモジ

P「……うん」

P「伊織、いい顔になったなぁ」

伊織「ふ、ふんっ。私がいい顔なのは元からよ!」


…ポンッ


伊織「あっ……」

P「嬉しいよ。伊織がこんなに頼もしくなってくれて」ナデナデ

伊織「……///」

伊織「ま、まあ、今だけは頭を撫でる事を許してあげるわ……」

P「はいはい」ナデナデ

伊織「〜〜♪ 」

29 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:36:10.98 ID:CvdDjGBvO

…ガチャ


千早「プロデューサー、頼まれていた物を持ってきまし……」


P「……お、千早、早かったな」ナデナデ

伊織「んなっ!?」ビクッ


千早「……何をしているんですか?」ジト


伊織「ち、千早、違うのよこれは!!」

伊織「ちょっとアンタ、いつまで撫でてるのよっ!!」バッ

P「ええぇ……。嬉しそうにしてたじゃないか伊織……」

伊織「ば、バカっ! あ、アンタが撫でたいって言ったから撫でさせてあげたんじゃない!」

伊織「千早、勘違いしないでよ!?」

千早「え、ええ……」

千早(満更でもない表情だったのに取り繕おうとする水瀬さん、可愛い……)



千早「プロデューサー、どうぞ」スッ

P「お、ありがとな、千早」

伊織「……何よそれ。紐?」

千早「ええ。丈夫で細い紐を探してきてくれって、プロデューサーに頼まれて」

伊織「ふーん……」

P「この細かく砕いたクリスタルの欠片に、紐を通して……」スッ

P「クリスタルの首飾りの完成だ!」

千早「首飾り、ですか」

伊織「アンタはさっきからそれを作っていたわけなのね」

P「ああ。ちなみに、ちゃんと人数分あるぞ」

P「戦いはみんなに任せるしかない。だから、俺はせめてこういう形でみんなの力になれたらと思って」

千早「プロデューサー……」

伊織「それはいいけど、アンタ、モノづくりのセンスないわねぇ」

P「う、うるさいなぁ」

伊織「……ま、完成したら、ありがたく使わせてもらうわ。その首飾り」

伊織「アンタの気持ち、充分わかったから」

P「伊織……ありがとな」ニコッ

伊織「ふ、ふんっ」プイッ

千早「ふふっ」ニコッ

30 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:40:08.89 ID:CvdDjGBvO
ー 魔導船 厨房 ー


美希「それじゃあ2人とも、ご指導よろしくお願いしますなの☆」ペコリ

やよい「こちらこそよろしくお願いしまーす!」ペコリ

あずさ「うふふ♪ よろしくね〜」



美希「……で、まずはどうするの?」

あずさ「まずはお米を炊きましょうか」

美希「お米! さすがはあずさ、わかってるの!」

美希「……んー、でも、ここにはアレがないみたいだよ?」キョロキョロ

あずさ「あれって……もしかして炊飯器の事かしら?」

美希「そう、それ。ミキ、家で自分でお米炊いたりする時は、いつもそれを使ってるの」

あずさ「炊飯器がなくても、お鍋があれば大丈夫よ〜。洗ったお米とお水を入れて、ぐつぐつ煮ればいいの」

あずさ「ただ、火力が強すぎるとお米が焦げちゃうから、気をつけないといけないけど」

あずさ「炊飯器はボタンひとつで全部やってくれるから、便利よね〜」

美希「ふーん。炊飯器がないと、なんだか難しそうだねー」

あずさ「美希ちゃん、お米を研いでもらえる?」

美希「わかったの」



美希「おいしくなぁれなのー」ジャバジャバ

美希「ねえあずさ、これくらいでいい?」

あずさ「ええ。それじゃ、洗ったお米をこのお鍋に移してね」

美希「はいなの」ザバー

あずさ「それじゃ……」

あずさ「ファイア」ボッ

美希「あ、そっか。コンロがなくても魔法で火を起こせばいいんだね」

あずさ「そうよ〜。あとは私に任せて、美希ちゃんはやよいちゃんを手伝ってあげてね〜」ボォォ

美希「りょーかいなの!」

31 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:42:49.73 ID:CvdDjGBvO

美希「やよいー」

やよい「あ、美希さん! ちょっと手伝ってもらってもいーですか?」

美希「うん。ミキは何をすればいいの?」

やよい「スープを作ろうと思ってるので、お肉とお野菜を切ってもらえますか?」

やよい「お肉もお野菜もたくさんもらってきたので、どんどん切っちゃってください!」

美希「わかったの!」



美希「………」ザクザク

美希「……んー、なんかちゃんと切れてないカンジなの……」

やよい「美希さん。包丁を使う時は、左手はネコの手ですよ?」

美希「ネコの手?」

やよい「はい! こう、にゃんにゃんって」

やよい「ゆびを切らないようにするためです」

美希「そーなんだね」

やよい「あと、包丁を入れたら少し引いたほうが、ちゃんと食材が切れるかなーって」

美希「ふーん。さすがはやよいなの」

32 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:46:25.58 ID:CvdDjGBvO

美希「えっと、包丁を入れて」ザク

美希「少し引く」スッ

美希「……あ、ホントだ。ちゃんと切れてるの」

やよい「それじゃあお願いしますね」

やよい「わたしはスープのおダシを取っちゃいます」

やよい「おナベに水とトリガラを入れてー」ジャー

やよい「いふりとさん、お願いします!」


スゥーー…


イフリート「久しぶりだなヤヨイーー!! オレに任せろおお!!」

イフリート「うおおおお!!」ボオオ


やよい「はわわっ! ちょっと火が強いかも」

やよい(もう少し、小さくしないと……!)グッ


ボオオオォ!!


やよい(ど、どうしよう!? 火が小さくならないですー!)


やよい「こ、このままじゃスープが!」

やよい「えっと、えっと……」オロオロ



あずさ「ブリザガ!」

パリパリッ……シャキーン!

ジュゥゥ…

33 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:51:22.38 ID:CvdDjGBvO

やよい「……あ、あずささん!」

あずさ「危なかったわね〜。やよいちゃん、ケガはない?」

やよい「は、はい。でも、スープが……」チラ

あずさ「……大丈夫、スープはまだ使えると思うわ〜」

やよい「よ、よかったですー」

やよい「あの、すみません、あずささん」ペコリ

やよい「わたし、火を小さくしようとしたんですけど、よわくならなくて……」

やよい「いつもは、こんなことないんですけど……」

あずさ「………」

あずさ「もしかして、やよいちゃん……」

やよい「え?」

あずさ「ごめんなさい、なんでもないわ」



美希「2人とも、へーき? なんかすっごい燃えてたけど」

あずさ「ええ、大丈夫よ美希ちゃん。心配しないで」

やよい「うー……」ショボーン

あずさ「……さ、気を取り直して、続きをやりましょう?」ニコッ

やよい「は、はい……」

あずさ「お米の方は、あとは蒸らすだけだから、スープは私がやるわね」

あずさ「やよいちゃんは美希ちゃんと一緒に下ごしらえをお願いね?」

美希「やよい、失敗なんて気にする事ないの。一緒にガンバろ?」

やよい「あずささん、美希さん……」

やよい「わかりました。わたし、ガンバりますっ!」グッ



グツグツ…

あずさ(う〜ん……やよいちゃんが火加減を間違えるとは思えないわね〜)

あずさ(とすると、やっぱり考えられるのは〜)

あずさ(自分の力を抑えられなくなった……かしら)

あずさ(優しいやよいちゃんに、こんな強力な力が備わっているなんて)

あずさ(……少し、心配ね)

34 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:53:46.44 ID:CvdDjGBvO

あずさ「……それにしても美希ちゃん」メラメラ

あずさ「どうして急にお料理を覚えようって思ったの?」

美希「うん」ザクザク

美希「ミキね、トロイアでファンの人の結婚式を見てて、思ったの」

美希「ミキも、あんな風に幸せになりたいって」

美希「それで、きっとそのためには花嫁修行が必要かなって」

あずさ「まあ、そうだったのね〜」

やよい「美希さん、すごいです!」

美希「んーん。やよいやあずさの方が全然すごいの」

美希「だって、ミキはまだまだ花嫁としてはミジュクだもん。2人がいないと、お料理なんてまったくできないし……」

美希「でもミキ、ガンバるって決めたの! ミキもいつか、みんなに祝福されて、幸せになりたいから!」

あずさ「うふふ♪ 私で良ければ、美希ちゃんのお手伝いをさせてもらうわ〜」

やよい「わたしも、お役に立てるかわかりませんけど、ガンバりますっ!」グッ

美希「2人とも……ありがとうなの!」

35 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/08(金) 23:58:01.76 ID:CvdDjGBvO
ー 魔導船 船首 ー


貴音「………」


貴音「月が、あんなに紅く……」

貴音「あのような色になってしまったのも、やはり魔物のせいなのでしょうか?」

貴音「………」



貴音(……ばはむーと殿。わたくしはこれから、仲間たちと共に月へ向かいます)

貴音(貴方との約束通り、皆の力を合わせて小鳥嬢を……)



貴音「………」



貴音(ばはむーと殿。わたくしは、今でもあの時の事を悔やんでおります)

貴音(あの時わたくしが、軽はずみな気持ちで小鳥嬢に会おうなどと考えていなければ……)

貴音(わたくしが、己の力を過信していなければ……)

貴音(恐らくばはむーと殿は、犠牲にならずに済んだのでしょう)

貴音(あんなに良くしてくれた友を、わたくしの所為で……)



貴音(…………無力)

貴音(わたくしはなんと無力なのでしょうか)

貴音(そして、なんと心の弱い人間なのでしょうか)

貴音(長らく共に戦ってきた戦友を失った響は、今や悲しみを乗り越えて大きく成長しています)

貴音(それなのにわたくしは、未だ過去の過ちに囚われたまま)

貴音(今のこの気持ちのまま、小鳥嬢に会ったら……)



貴音(…………わたくしは、自分を抑えられるかどうか分かりません)ゴゴゴ




亜美(お姫ちん、やっと見つけたけど……)

響(あんなおっかない貴音、初めて見たぞ……)

雪歩(四条さん……)

36 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:03:01.60 ID:PFotBv2HO
ー 魔導船 食堂 ー


真「ズズッ……」

真「……うん、すごくおいしいよ! このスープ」

美希「ホント!? あは☆ ガンバったかいがあったの!」

雪歩「美希ちゃん、すごいなぁ。あずささんとやよいちゃんに手伝ってもらったとはいえ、初めてでこんなおいしいお料理作っちゃうんだもん……」

美希「ミキ、もっとガンバるよ! もっともっとガンバって、早くハニーのお嫁さんになるの!」

あずさ「うふふ♪ 愛の力ねぇ〜♪ 」



真美「むむむ……」

真美(ここへきてミキミキが花嫁シュギョーとか、真美、出遅れもいいとこっしょ〜)

真美(……でも、ダイジョーブ。まだあせる時間じゃないっぽいよ)

真美(真美が『お姉ちゃん』をキワめれば、きっと妹のミキミキにも、ひとりっ子のはるるんにも負けないもんねっ!)

真美(兄ちゃんのハートをゲットするのは、真美なんだから!)



春香「お姉ちゃん! はい、あーん」スッ

律子「は、春香、やめなさいよ恥ずかしいから……」

春香「えー? いいじゃないですか別に。なんてったって私たち、姉妹なんですから♪ 」

律子「もう……///」



千早「春香……」

響「いつの間に姉妹になったんだ? あの2人……」モグモグ

伊織「所詮ゲームの設定でしょ。まったく、いちゃつくなら他所行きなさいよね……」

37 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:06:08.87 ID:PFotBv2HO

やよい「はぁ……」

伊織「……やよい、どうかしたの? あんた、全然食べてないじゃない」

やよい「うー……わたし、お2人とお料理作る時に、失敗しちゃって……」

伊織「珍しいわね。やよいが料理で失敗するなんて」

伊織「でも、あんまり気にしないでいいと思うわよ? やよいは今までずっと私たちのために一生懸命に食事を作ってくれてたんだから」

伊織「ちょっと失敗したからって、誰もあんたを責めないわよ」

やよい「うん。……伊織ちゃん、ありがとう」

やよい「………」



美希「ハニー、ミキの作ったスープ、おいしい?」

P「うん、おいしいよ。ありがとな」

美希「あは☆ おかわりたくさんあるからね?」

P「うん」

P「……それより美希、貴音見なかったか?」

美希「貴音? 見てないけど、そういえばいないの」

亜美「あー、お姫ちんなら……」

亜美「ごはんだよーって呼んだんだけどさ、なんか、いらないって」

P「えっ!? 貴音が? ……う、ウソだろ!?」

雪歩「それが、ホントなんですぅ。四条さん、なんだかずっと上の空で、全然私たちの話も耳に入らないみたいで……」

響「……あんな貴音、初めて見たぞ」

38 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:08:28.80 ID:PFotBv2HO

真「あの貴音が食事を摂らないなんて、よっぽどだよね」

真美「うんうん。あんなに燃費悪いお姫ちんがゴハン抜いちゃったら、すぐにガス欠になっちゃうよ?」

伊織「確かにそうね。何かあったのかしら」

千早「四条さん、ひょっとして具合でも悪いのかしら……」

やよい「カゼでも引いちゃったんでしょーか……?」

春香「そういえば、今日の貴音さんはいつもと雰囲気が違ってた気がするなぁ」

あずさ「心配ねぇ……」



響「ねえプロデューサー。自分、貴音の事が心配なんだ。何か悩みがあるんじゃないかな」

P「………」

P「俺、ちょっと貴音のところへ行ってくるよ」ガタッ

響「ホント? じゃあ自分も……」

P「響は飯食っててくれよ。月に着いたら魔物との戦いになるかもしれないんだから、ちゃんと食べないと持たないぞ?」

響「でも……」

P「大丈夫だよ。もしかしたら貴音、ダイエットとかしてるのかもしれないし」

響「そうなのかなぁ……」

P「とりあえず、貴音の事は俺に任せてくれ」

響「うーん……ちょっと頼りないけど、わかった。プロデューサーに任せるさー」

P「ありがとう、響」

39 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:11:56.91 ID:PFotBv2HO
ー 魔導船 船首 ー


貴音「………」



P「……貴音、ここにいたのか」



貴音「あなた様……」

貴音「すみません。食事でしたら、わたくしは遠慮させていただきます」

P「そっか……」

貴音「………」



P「月が、大きいなぁ……」

貴音「……ええ。もう目と鼻の先。決戦の地は、すぐそこですね」

P「貴音。緊張してるか?」

貴音「緊張……いえ、そのような事はありません。寧ろ、月が近づくに連れ、魔力が高まっていくのを感じます」

P「そうか。それは頼もしいな」

貴音「………」

P「………」



貴音「あの、あなた様」

P「なんだ?」

貴音「わたくしは……」

貴音「その……」

貴音「………」

40 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:16:30.26 ID:PFotBv2HO

P「貴音の様子が変だって、みんな心配してたぞ? 響なんか特に」

P「何か、心配事があるんじゃないか?」

貴音「………」

P「……まあ、無理に話そうとしなくていい。貴音が話したくなったら話してくれればいいよ」

P「それまで、待ってるから」

貴音「あなた様……申し訳ありません」ペコリ

P「でも、忘れるなよ。貴音には、いつも仲間が側にいるって事を」

P「俺たちには、何者にも負けない強い絆があるんだ」

貴音「………」

P「……って、ホントはちゃんと貴音の話を聞いて、不安を取り除いてやれるのが一番なんだけどな」

貴音「いえ、あなた様や皆の気持ち、とても嬉しゅうございます」

貴音「それで、その……」モジモジ

貴音「少しだけ、あなた様の胸をお借りしても宜しいでしょうか……?」

P「えっ?」

貴音「………」ピトッ

P「貴音……」

貴音「……今だけ、今だけですので……」ギュッ

貴音「……うっ…………く……」

P「………」

P(こんなしおらしい貴音、初めて見たかもしれない)

P(……貴音だって、年頃の女の子だもんな)

P「………」ダキッ



貴音「うぅっ…………ぁ……!」


41 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:19:06.40 ID:PFotBv2HO
ーーーーーー

ーーー


貴音「………」

P「……少しは落ち着いたか?」ナデナデ

貴音「……はい」フキフキ

貴音「見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした……」

P「そんな事ない。誰だって泣きたい時くらいあるさ」

P「辛い時はさ、ちゃんと辛いって言ってほしい。周りをもっと頼ってほしい」

P「貴音は、そういうところをもっと直した方がいいと思うぞ?」

貴音「う……精進致しますが、これはわたくしの元々の性格ゆえ……」

P「……うん。まあ、簡単には直せないか」

貴音「あなた様……」

P「ん?」

貴音「お気遣い、ありがとうございます」

貴音「おかげさまで、気分が晴れました」

P「……そっか。役に立てて良かったよ」

貴音「しかし、落ち着いたら今度はお腹が減ってきました」グゥゥ

P「……はは。やっと普段の貴音に戻ったなぁ」ニコッ

P「じゃあ、みんなのところへ行こうか」スッ

貴音「はい、参りましょう」ニコッ

42 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:22:24.15 ID:PFotBv2HO
ー 魔導船 食堂 ー



アイドルたち「ごちそうさまでしたーー!!!」



貴音「なかなかに美味でした。あずさとやよいは言わずもがな、美希にも料理の素質があるのやも知れませんね」ニコッ

美希「ふっふーん! とーぜんなの!」ドヤッ

響「っていうか、結局、途中から来た貴音がほとんどひとりで食べてたぞ……」

真「まあまあ、いいじゃない。貴音も普段の調子に戻ったって事でさ!」

貴音「むっ」

貴音「見くびってもらっては困りますね、真。わたくしはまだまだ本調子ではありません」

貴音「わたくしが本気を出せば、この船の食糧など一瞬にして胃袋に収めてしまうでしょう」ビシッ

真「……あー、なんかボク、心配して損したかも」

美希「自慢する事じゃないって思うな……」

響「うーん……貴音が元に戻って喜ぶべきなのか……」

43 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/09(土) 00:30:56.66 ID:PFotBv2HO

P「えー、ちょっと聞いてくれ」

P「そろそろ月に到着するわけだけど、到着する前に、みんなに渡したいものがあるんだ」

春香「渡したいもの……なんですか? 一体」

P「ちょっと待ってくれ……」ゴソゴソ

P「……これだ」ジャラッ

雪歩「プロデューサー、それってもしかして、首飾り……ですか?」

P「うん。クリスタルを少し加工して作ったんだ」

亜美「兄ちゃん、そんなコトしてたんだー」

伊織「やっぱりアンタって、センスないわねぇ……」

P「うぐっ……ま、まあ、見た目は気にしないでくれよ。これは、お守りみたいなものなんだから」

真美「お守り? もしかしてヒッショーキガンってやつ?」

P「いや、どっちかっていうと安全第一の意味合いが強いかな。みんなでお揃いのお守りって、なんか心強いだろ?」

雪歩「安全第一……ふふっ♪ いい響きですぅ」

あずさ「みんなでお揃いなんて素敵ですね〜♪ 」

P「それに、みんなはもうわかってると思うけど、クリスタルは不思議な力を持っていて、とても重要なものなんだ」

真「……確かに。魔物たちは、クリスタルを使って巨人を地球に呼び寄せたんでしたよね?」

P「ああ。だから、何かご利益があればいいなぁと思ってな」

P(……それに、クリスタルは最後の戦いでも必要なものだし、な)




美希「ハニーの手づくりのプレゼント……これはもう、婚約指輪代わりって言っても過言ではないって思うな!」

響「美希だけじゃないぞ! 自分だってもらったんだからな!」

春香「でも、なんかいいよね! みんなでお揃いってさ!」

千早「ええ。心なしか、力が湧いてくるような気がするわ」

やよい「キラキラで、とってもキレイですねー!」

伊織「ま、見た目はともかく、あいつにしてはいい仕事したかしらね」



律子「…………あら、いつの間にか地表が迫ってるわね」

律子「みんな、準備して。そろそろ着陸よー」



アイドルたち「はーーい!!!」


44 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/01/09(土) 00:33:40.69 ID:PFotBv2HO
今回はここまでです
45 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 05:41:50.73 ID:J+iiiyjDO
もうまじのラストかと思うとあれだな…1スレ目が懐かしく感じる
46 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:14:43.17 ID:5tm1zcRzO
ー 月 ー


響「到着だぞー!」

亜美・真美「月だー!!」

やよい「うっうー! 月ですー!」

ワイワイキャッキャッ


律子「あんまりはしゃがないのよー。月の民の人たちの迷惑になるでしょー」

響・亜美・真美・やよい「はーい!!!」



美希「ふーん……」キョロキョロ

美希「月って、なーんにもないとこなんだね。ハニー?」

P「まあ、住んでる人自体少ないからなぁ」

美希「でもミキ、結構気に入っちゃった☆ ここ、すっごく静かで、快適にお昼寝できそうだし」

P「わかってると思うけど、今寝ちゃダメだぞ?」

美希「はーいなの」



貴音「………」

貴音(懐かしい匂いです。わたくしが居た時と、少しだけ雰囲気が違っているようですが)

貴音(ばはむーと殿。わたくしは再び戻って来ました)

貴音(貴方との約束を果たすためと、もう一つ。小鳥嬢の真意を問いただすために)

貴音(わたくしたちが迷わずに小鳥嬢に逢えるよう、どうかそのお力をお貸しください)


美希「……貴音、どうかしたの?」

貴音「美希……」

貴音「いえ、少々感慨に耽っていただけですよ」

美希「ふーん。里帰りってカンジ?」

貴音「ええ、そうですね」ニコッ

47 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:19:26.98 ID:5tm1zcRzO

春香「おーい、雪歩ー! 大丈夫だから降りて来なよー!」


雪歩「ほ、ホントに? 身体が破裂しちゃったりしない……?」ビクビク


春香「平気だってばー! ほら、みんなだって平気なんだからさー!」フリフリ


真「……さ、行こう、雪歩」スッ

雪歩「あ、ありがとう、真ちゃん」ギュッ



あずさ「……えーっと、こっちから降りればいいのかしら〜?」スタスタ

伊織「ちょっとあずさ! そっちじゃないわよ!」グイッ

あずさ「あら〜」ズルズル



千早「………」キョロキョロ


春香「……どうしたの? 千早ちゃん」

千早「春香。……さっき亜美が言ってたハミングウェイという人たちが、少し気になって……」

春香「ああ、歌を歌ってる人だったっけ? えへへ、実は私もちょっと気になってるんだー」

春香「ハミングウェイさんのところにも立ち寄るって言ってたから、楽しみだねっ!」ニコッ

千早「ええ」ニコッ




律子「……えー、というわけで」

律子「まずはハミングウェイって人たちのところへ立ち寄って、次に貴音の友達のところに向かうわ」

律子「そして、あの遠くの丘に見える大きな神殿」スッ

律子「あそこが、小鳥さんがいる地下渓谷への入口よ」

律子「最終的にはあの神殿を目指す事になります」

律子「……で、いいんですよね?」

P「ああ」

律子「何か質問ある人ー?」



アイドルたち「ないでーーす!!!」



律子「よし。じゃあ出発よ!」

律子「貴音、道案内よろしくね?」

貴音「承知しました。参りましょう」

スタスタ…

48 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:22:19.21 ID:5tm1zcRzO
ー 月の地下中心核 ー



小鳥「ーーーーはっ!?」ピクッ



クルーヤ「……どうしたんですか、コトリさん?」

小鳥「…………来た」

クルーヤ「え?」

小鳥「ついに……みんなが来たわ! この、月にッ!」

クルーヤ「そうですか」ニコッ

ダークバハムート「クク……漸くか」



小鳥「本当に、長かったわ…………ぐすん」

クルーヤ「コトリさん、ずっと楽しみにしてましたもんね」

クルーヤ「我慢して待ってた甲斐がありましたね?」

小鳥「はいっ♪ 」ニコッ

小鳥「うふふっ♪ みんな元気かなー? たくましくなってるのかなー?」ウズウズ

ダークバハムート「まるで久々に我が子に会う親のようだな」

小鳥「し、失礼な! 私、まだそんな歳じゃないですからねっ!」プンスカ

ダークバハムート「そ、そうか。済まぬ」

クルーヤ(言ったじゃないか、バハムート。妙齢の女性の前では年齢の話題は禁句だって……)

ダークバハムート(何故人間の女は若く見られたがるのだ。経験を重ねる事で見える物の方が多いというのに)

クルーヤ(女性はいつでも綺麗に見られたいものなんだよ。特に、近しい人には、ね)

ダークバハムート(我には理解出来ぬ思考だな)

49 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:26:15.53 ID:5tm1zcRzO

小鳥(はぁーあ……。やっとみんなと会えるっていうのに、もう物語も最終局面なのよねぇ)

小鳥(なんだかさみしいなぁ……)シュン

小鳥(……ううん、ダメよ小鳥。悲しい顔をしてちゃ!)ブンブン

小鳥(せっかくみんなと遊べるんだもの。しっかりとおもてなししなきゃね!)

小鳥(…………よしっ!)グッ


小鳥「みんな、いる?」


…ゾロゾロ


小鳥「女神ちゃん」

月の女神「はーいっ♪ コトリ様、私、ガンバるね!」

小鳥「レッドドラゴン君」

レッドドラゴン「うっしゃ! 待ってたぜ!」

小鳥「リルマーダーちゃん」

リルマーダー「オイラ、やってやるぞっ!」

小鳥「魔人兵君」

魔人兵「オレに任せてくださいっ!」

小鳥「プリンちゃん」

プリンプリンセス「パーティの時間ですわね!」

小鳥「暗黒魔道士君」

暗黒魔道士「……!」コクリ

小鳥「ブルードラゴンさん」

ブルードラゴン「……さて、老兵の出番か」

小鳥「金竜君」

金竜「力戦奮闘、我の力、振るう時ぞ!」

小鳥「銀竜君」

銀竜「あいどる、木っ端微塵にしてくれよう!」

小鳥「ベヒーモスちゃん、みんなの事をお願いね?」

ベヒーモス「了解だよ、コトリ様!」



小鳥「みんな、ここまでよくレッスンを頑張ってくれました」

小鳥「あなたたちはもう、どこに出しても恥ずかしくない、私の立派なアイドルよ!」

小鳥「さあ……みんなに挨拶していらっしゃい!」



ベヒーモス「気合い入れて行くよ! 野郎共!」

ベヒーモス「出撃ぃ!!」


魔物たち「うおおおおおぉぉおおっ!!!」


ドドドド…



小鳥「………」

小鳥(頑張ってね、みんな)

50 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:31:16.47 ID:5tm1zcRzO
ー 月 表面 ー


真「……せいっ!」ビュッ

バキィッ!

魔物1「」

響「ほぁたーっ!」ブンッ

ドガッ!

魔物2「」



真「ふぅ……」

真「ここまで来ると、魔物もそこそこ強いなぁ」

響「でも、その分自分たちも強くなったし、なんくるないさー!」

真「響、油断してるとやられちゃうかもよ?」

響「ふふーん! 自分だって今まで修羅場をくぐり抜けて来たんだ。簡単にやられたりしないぞ!」

響「モタモタしてると、自分が真の活躍も取っちゃうからね?」

真「あ、それはダメだよ! ボクだってこの間の巨人との戦いでは不完全燃焼だったんだから!」

響「じゃ、どっちが多く魔物を倒せるか、勝負する?」

真「お、いいね! 受けて立つよ!」


響「よぉーっし、いっくぞー!」タタタ

真「うおおおおっ!」タタタ

51 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:36:24.99 ID:5tm1zcRzO

春香「……ねえ。魔物、真と響ちゃんだけに任せてもいいのかなぁ?」

千早「あんなに元気なんですもの、心配いらないと思うわ」

やよい「真さんも響さんも、すっごく強いです!」

伊織「それに、こういう時こそあの体力バカ2人の出番じゃない」

春香「うーん……」

真美「だいじょーぶだよ、はるるん。まこちんとひびきんが疲れたら、真美とミキミキが回復してあげるからさっ」

美希「あふぅ……」

春香「うん、そうだね」

春香(……本当は、強くなった私をプロデューサーさんに見てもらいたいって気持ちもあるんだけどなぁ)



亜美「ねえ兄ちゃーん。亜美たちの出番はないのー?」

P「無いって事はないけど、今はあんな雑魚に無駄な魔力を使う事はないだろ」

P「エーテルの数も限られてるし、魔道士組は今はお休みだ」

亜美「でもさー、ヒマヒマだよー」

P「まあ、この先いやでも戦う事になるさ」

律子「この人数でいっぺんに戦っても仕方ないですからね」

P「ああ。それに、真と響がすごいやる気なんだよなぁ」

あずさ「頼もしいですね〜」

雪歩(私も、真ちゃんと一緒に戦いたかったなぁ……)


貴音「……さあ、参りましょう。はみんぐうぇいの住処はもうすぐです」

スタスタ…

52 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:40:04.10 ID:5tm1zcRzO
ー ハミングウェイ一族の住処 ー


ガチャ…


真「……ごめんくださーい!」

響「はいさーい!」



……シーーン



真「……あれっ?」

響「誰も……いないぞ?」



春香「どうしたの?」

真「いや、いないんだよ。誰一人」

春香「ホントだ……」キョロキョロ

やよい「どーしたんでしょう? お出かけしてるんですかねー?」

あずさ「迷子にでもなっているのかしら〜」

雪歩「も、もしかして、魔物にやられちゃったんじゃ……」

千早「そんな……」ガックリ

千早(楽しみにしてたのに……)



亜美「なぁんだ、ハミーいないのかぁ。つまんないのー」

真美「キタイしてたのになー」

亜美「ねー」

亜美「……あっ」

真美「ん? どしたの亜美」

亜美「真美、気安く話しかけないでよねっ。亜美、まだあの時のこと、怒ってるんだから!」

真美「えっ?」

53 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:42:32.44 ID:5tm1zcRzO


亜美「ほら、亜美といっしょにタンケンしてくんなかったじゃん!」

真美「だからー、それはあの時言ったっしょ? 真美はお姉ちゃんだから……」

亜美「お姉ちゃんだからなんなのさっ!」

真美「あ、亜美?」

亜美「今までの真美は、いつも亜美と遊んでくれたのに、急にオトナぶっちゃってさ! そんなのゼンゼン似合ってないかんね!」

真美「むっ!」

真美「亜美こそ、いーかげんそーゆー子どもっぽいのやめれば? わがままばっか言ってさ!」

亜美「なんだとー!」

真美「なにおー!」

ギャーギャー…

伊織「……こらこら、アンタたちは何ケンカしてんのよ。今はそんな場合じゃないでしょうが」

亜美「いおりん……。だって、真美が」

真美「亜美だってー」

伊織「いいから、今は少し大人しくしてなさい」

亜美・真美「……ふぇ〜い」



P「貴音、これはどういう事だ?」

貴音「確かに、わたくしが月を発つ前は、はみんぐうぇい殿たちがここにいたはずなのですが……」


律子「………」ジーッ

律子「……ねえ、この洞窟、よく見ると壁がボロボロじゃない? 床も所々穴が開いちゃってるし」

律子「これじゃまるで、ここで戦いがあったみたいな……」

貴音「!」

P「戦いって、まさか……」



「……待ちわびたよ、あいどるとやら」



貴音「っ……何者!?」クルッ

54 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:49:20.58 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「ふふ……」ヌッ



雪歩「ひいぃっ!?」ビクッ

春香「ま、魔物っ!?」

あずさ「あらあら……」

やよい「わ……お、大きいですー!」

律子「出たわね……」

美希「……zzz」




ベヒーモス「初めまして、だね。アタイは……」



亜美「そのひん曲がったツノ、シュミの悪い体の色(紫)……もしかして、ベヒーモス?」



ベヒーモス「へぇ、アタイを知っているのかい?」

ベヒーモス(初対面なのにいきなり趣味悪いって言われた……)



亜美「FFっていったら、やっぱベヒーモスっしょ〜」

亜美「いやー、亜美たちもとうとうここまで来たんだねぇ」

春香「亜美、知ってるの?」

亜美「ケッコー有名なモンスターだからね。なめてかかると、イタイ目みるっぽいよ!」

春香「そ、そっか……!」グッ

55 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:53:36.62 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「……なるほど、こちらの情報は筒抜け、か。まあいいさ、一応自己紹介しておくよ」

ベヒーモス「アタイはベヒーモス。……コトリ様の親衛隊の頭をやらせてもらってる」



アイドルたち「……っ!!?」



響「ピヨ子の……」

真「親衛隊……?」

律子「意外に早かったですね。小鳥さんの刺客がいつかは来るだろうとは思っていましたけど……」ヒソヒソ

P「ああ……」

P(さて、音無さんはどういう手を打ってきたのか……)




雪歩「あ、あの、その親衛隊さんが、私たちに何のご用なんでしょうかぁ……?」ビクビク

真「雪歩、聞くまでもないよ。きっとこいつは……」



ベヒーモス「あんたたちは、コトリ様を倒しに行くつもりなんだろう? だが、アタイたちはコトリ様を守る親衛隊だ」

ベヒーモス「あんたたちはアタイたちを倒さなけりゃ、コトリ様の元へは辿り着く事はできない」



雪歩「そ、そんなぁ……!」

真「……やっぱりか」



ベヒーモス「もし、あんたたちが勝てば、あんたたちはコトリ様に会えるだろう。でも、もしアタイたちが勝てば……」



雪歩「どっ、どうなるんですかぁ……?」ビクビク



ベヒーモス「アタイたちが、真のあいどるだ!」



真「…………えっ?」

伊織「ちょ、ちょっと! 意味わかんないんだけど!?」

56 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 22:58:05.07 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「……別に難しい事を言ったつもりはないんだけどね」



伊織「いや、だから……言葉の意味は理解できてるわよ! 意味わかんないのは、なんでアンタたち魔物がアイドルになるのかって事!」



ベヒーモス「おかしいかい? コトリ様は本気でアタイたちをあいどるにするつもりみたいだ」

ベヒーモス「アタイたちも、れっすんとやらをやっていくうちに、あいどるに興味が湧いてきてね」



亜美「あー……ピヨちゃん、きっとひとりでさみしかったんだろーね……」

伊織「だからって、ふざけすぎでしょうが」

響「……でも、あんなスタイルじゃアイドルに向いてないと思うけどなー」ボソッ



ベヒーモス「…………なん…だって?」ピクッ



響「あっ……い、いや、なんでもないさー!」



ベヒーモス「さっきから失礼な連中だね」

ベヒーモス「どうやら、死にたいらしい……!」ゴゴゴゴ



貴音「……ひとつ、質問があるのですが」



ベヒーモス「……なんだい?」



貴音「ここに、はみんぐうぇいという方たちがいたと思うのですが、会いませんでしたか?」



ベヒーモス「……ああ、あの貧弱な連中なら、喰ってやったよ」



貴音「なっ……!?」

57 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 23:01:28.43 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「コトリ様の指示なのさ。逆らう者は殺せと」



春香「そ、そんなっ!」

やよい「ひ、ひどいですー!」

千早(音無さん、そこまでするんですか……?)



ベヒーモス「……ああそうだ。そういえばこの近くには、もうひとつ家があったね。確か、ガキが2人ほど住んでいた……」



貴音「っ!?」



ベヒーモス「『別働隊』は、うまくやっているかねぇ……?」ニヤリ



貴音(駄目です……!)

貴音(その幼子らは、ばはむーと殿の忘れ形見……!)

貴音「……っ!」グッ



貴音「ぷろでゅうさぁ、律子嬢! 申し訳ありません、わたくしは行かねばなりませんっ!」ダッ

タタタタ…

律子「えっ!? ちょっと貴音!?」

P「お、おい貴音!」

58 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 23:04:36.64 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「そう簡単に行かせると思うかいっ!?」ダッ



貴音「むっ……!」


ドゴオッ!!

真「……ふんっ!!」ガシッ


貴音「真……!」



ベヒーモス「……ほう、アタイのタックルをまともに受け止めるとはね」ググッ



真「へへっ……! コケにされたままじゃいられないからねっ!」ググッ

真「……行きなよ、貴音。大切な人がいるんでしょ?」


貴音「……恩に着ます、真!」クルッ

タタタタ…



響「た、貴音、待ってよ! 自分も行くぞ!」タタタタ


律子「ちょ、ちょっと響まで!」


真美「ま……真美も行くっ!」

真美(姉として名を上げるチャ〜ンス!)

律子「えっ!?」

真美「だって、今のお姫ちん、なんか危なっかしーし、ひびきんだけじゃ心配だもん!」

やよい「真美、わたしも行くよっ!」グッ

やよい(……わたしも、だれかの役に立ちたいですっ!)

真美「やよいっち! ありがと!」

律子「ま、待ちなさい! 駄目よ! これ以上バラバラに行動したら……」

真美「りっちゃん! 今は言ってるバアイじゃないっしょ!?」

59 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 23:08:52.76 ID:5tm1zcRzO

P(もうひとつの家……多分、バハムートの住処の事だな)

P(あそこには、確かに子供が2人いたはずだ)

P(バハムートと親しくしていた貴音には、きっと見過ごせないよな……)

P(それに真美の言う通り、さっきの様子を鑑みるに、貴音は我を忘れてしまっている)

P(……よし)


P「雪歩、『アレ』はまだ持ってるか?」

雪歩「は、はい? アレ……?」

雪歩「あ……もしかして、これの事ですか?」スッ

P「ああ。ちょっと貸してくれ」ガシッ

P「真美っ!」


真美「えっ?」


P「これを持ってけ!」ヒュッ


真美「……おっと」パシッ

真美「これは…………
あ、そっか!」

真美「兄ちゃん、さんきゅ!」


P「真美、やよい……貴音と響を頼んだぞ!」


真美「りょーかいっ! んじゃ、行ってくるよん♪ 」

やよい「行ってきまーすっ!!」


タタタタ…



律子「プロデューサー、真美に何を渡したんです?」

P「連絡手段だ。大丈夫、あの子たちなら」

60 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 23:12:29.85 ID:5tm1zcRzO
ベヒーモス「泣かせるじゃないか。自分を犠牲にして、仲間たちを行かせるなんて」ググッ

ベヒーモス(こいつ、人間のクセに……!)



真「別に、犠牲になるつもりはないよ……!」ググッ

真(……すごい力だ)

真「せいっ!!」グイッ

…スタッ



ベヒーモス「………」

ベヒーモス(コトリ様の言う通りにこいつらを煽ってみたけど、単純なんだねぇ、あいどるって)

ベヒーモス(とりあえず、戦力を分散させる作戦は成功だ)

ベヒーモス(それにしてもあいつ、なかなかやるじゃないか)

ベヒーモス(ふふ、これは楽しくなってきたよ……!)



真「……それで、どうするの? まさか君ひとりでボクたちと闘り合うつもりじゃないよね?」


春香「っ……!」チャキッ

千早「………」チャキッ

雪歩「うぅっ……!」チャキッ

亜美「えっと、お姫ちんとひびきん、真美、やよいっちが行っちゃったから、こっちは……ひい、ふう……9人パーティかぁ」

亜美「さすがに負ける気がしないっしょー!」

伊織「さっさと終わらせるわよ!」チャキッ

美希「……zzz」

あずさ「プロデューサーさん、律子さん……」

P「とりあえず、目の前の敵を倒して貴音たちと合流しましょう」

あずさ「ええ、そうですね」

律子「もう、いきなりパーティを分裂させる羽目になるなんて……」

春香「大丈夫、貴音さんたちならきっと心配いりませんよ、お姉ちゃん!」

律子「春香……。そうね、今はあの子たちを信じるしかないわね」

61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/21(木) 23:14:38.39 ID:nF5cyq/DO
ナチュラルに律子をお姉ちゃん呼びするのが板に付いてるはるるん
62 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/01/21(木) 23:18:07.66 ID:5tm1zcRzO

ベヒーモス「さすがにアタイひとりであんたらの相手をするのはキツいかもね」

ベヒーモス「野郎共、出番だよっ!」



ゾロゾロ…

月の女神「……ふぅ、やっと出番だよ〜」

プリンプリンセス「待ちわびましたわっ」

レッドドラゴン「前置きが長げーよ、ったく……」

金竜「とっぷあいどるになるのは、我らである!」

銀竜「今こそ我らの絆を見せる時!」



春香「な、なんかたくさん出て来た!?」

真「……でも、数じゃまだこっちの方が多いのかぁ」

千早「相手が誰であろうと、倒すだけよ」

伊織「ええ、そうね」

雪歩「と、特訓の成果を見せますぅ!」

亜美「真美よりカツヤクしてやるんだもんねっ!」

あずさ「私も、張り切っちゃおうかしら〜」



律子「みんな、頼んだわよ!」



ベヒーモス「行くよ! 野郎共!」



アイドルたち「うあああぁぁあああっ!!!」



魔物たち「おおおぉぉぉおおおっ!!!」



ドドドド…!!

63 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/01/21(木) 23:23:15.78 ID:5tm1zcRzO
おそくなりました
ひさびさに投下しました完成の
目処はまだ立っていませんがラスダンが
ちょっと長くなりそうなよか


64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/21(木) 23:27:51.25 ID:nF5cyq/DO
お久しぶりですね
ひさびさでも楽しめます
めどこたってないのか…
ちゃんと更新してくれるだけでも嬉しい
んです!
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/30(土) 15:46:45.65 ID:TX82EAV4O
遂に月かぁ
完結まで頑張ってください
66 : ◆bjtPFp8neU [sage ]:2016/02/19(金) 20:58:29.57 ID:W8o4yBzFO
ー バハムートの住処 ー


男の子「……たあっ!」ビュッ

リルマーダー「へへん! 遅いぜっ!」ヒョイッ


リルマーダー「……そりゃっ!!」

ドゴオォ!!

男の子「ぐあ……!」ガクッ


女の子「っ……ケア」


魔人兵「……ほっ!」バキッ


女の子「あ……ぅ……!」ガクッ



男の子「はぁ、はぁ……くそっ……!」

女の子「うぅ……!」



リルマーダー「どうした? 手も足も出ないか? お前ら弱っちいなぁ!」

暗黒魔道士「………」

ブルードラゴン「……ふむ」


男の子「く、くそ……!」


魔人兵「子どもにしては良くやったよ。だけど、君たちじゃ相手にならないな」

魔人兵「さあ、諦めてオレたちと一緒に行くんだ」



男の子「だ、誰がお前たちの仲間になるかっ!」

女の子「あなたたちと一緒に行くくらいなら、死んだ方がマシだもんっ!」



魔人兵「君たちのご主人様だって待っているんだぞ?」

魔人兵(……なーんて言ってみたりして)



男の子「……!」

女の子「……!」

67 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/02/20(土) 20:05:27.46 ID:8cf2vR7YO

魔人兵「さっきも言ったけど、君たちのご主人様、バハムートは、既に闇へと堕ちた」

魔人兵「今はオレたちと同じ、コトリ様の配下なんだ」

魔人兵「君たちが来るのを待っていると思うよ。さあ……」スッ



女の子「そ、そんなぁ……」

男の子「……ふ、ふざけるなっ!」

男の子「バハムート様は、気高くて光に満ちあふれたお方だっ!」

男の子「お前たちみたいな魔物と一緒にいるわけなんか、ないんだっ!」グッ



魔人兵(……やれやれ、強情だなぁ)

魔人兵(ま、こうして遊んでれば、そのうちあいどるたちが来るよな)


ブルードラゴン「これ以上苦しめる事もない。楽にしてやるのが良かろう」

魔人兵「えっ?」

暗黒魔道士「っ……!」

リルマーダー「でも、殺しちゃいけないんだろ? コトリ様が言ってたぞ?」

ブルードラゴン「子供が苦しむ様は見るに耐えん。ワシが楽にしてやろう」

スゥゥー


魔人兵「お、おい、じいさん! 殺しちゃダメだって!」

68 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/02/20(土) 20:34:10.02 ID:8cf2vR7YO

ブルードラゴン「………」



男の子「く……!」チャキッ

女の子「っ……!」ギュッ



ブルードラゴン「……主らに問おう」

ブルードラゴン「真の……とは、何か?」


男の子「……は?」

女の子「な、何言ってるの……?」


ブルードラゴン「………」

ブルードラゴン「こんな幼子に答えを求めるという方が無理な話か」

ブルードラゴン「答えを持たぬのならば、もう用はない」

ブルードラゴン「ワシの吹雪で、永遠の眠りにつくといい」


ブワッ…


ビュオオォォ…!



男の子「うわっ!」バッ

女の子「シェルっ!」

ポワッ



ブルードラゴン「無駄じゃ。魔法などで防げるものではない」


コオオオォォ…!

男の子「く、くそぉ……か、体が……!」ガクガク

女の子「さ、寒いよぉ……!」ブルブル




「…………ふぁいが!!」




ボオオオォォオオ!!




ブルードラゴン「む……?」

69 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:38:21.95 ID:8cf2vR7YO

「……そこまでです! 物の怪共よ!」



男の子「その声……! まさか……?」ヨロッ

女の子「た……タカネちゃん……?」グッタリ




貴音「響、2人を頼みます!」

響「任せろっ!」ダッ

タタタタ…


響「2人とも、もう大丈夫だぞ!」ダキッ

男の子「お、お前は……?」

響「貴音の友達さー!」

女の子「そ、そうなん…だ……」



ブルードラゴン「………」

リルマーダー「なあ、あれってもしかして……」

魔人兵「ようやく到着か。ベヒーモスがうまくやってくれたみたいだ」

暗黒魔道士「………」




貴音「これ以上わたくしの大切な者たちを傷つける事は、許しませんっ……!」ゴゴゴゴ

響「貴音、自分も戦うぞ!」

貴音「響はその子らを頼みます!」

響「え? でも!」

70 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:44:18.40 ID:8cf2vR7YO

魔人兵「いやあ、探す手間が省けて良かったよ。オレたちはコトリ様の親衛」


貴音「さんだが!」

ズガガピシャァーン!!


魔人兵「ぐあっ!?」ビリビリ

魔人兵「ちょ、ちょっと待て! 話を聞いてくれって!」


貴音「問答無用! とるねど!」


ブオオォォ…!!


リルマーダー「うわっ……!」ヨロッ


暗黒魔道士「……トルネド」バッ


ブオオォォ…!!


貴音「っ! ……同じ魔法を!」ググッ


暗黒魔道士「……!」ググッ


ブルードラゴン「……後ろがガラ空きじゃのぅ」ブンッ


ドゴオッ!


貴音「ぐっ……ぁ……!」ヨロッ


響「貴音っ!!」


リルマーダー「さっきはよくもやったなー!」チャキッ

リルマーダー「くらえー!」


貴音「……すろう!」

カタカタ…シュルン


リルマーダー「きかねーよ! でえい!」ブンッ

ザシュッ!

貴音「う……っ!」



リルマーダー「……なんだあんまり強くねーな。期待はずれだぜ」



響「貴音、大丈夫か!? やっぱり自分も……」

貴音「……平気です!」グッ

響「でも、いくら貴音でも4対1じゃ分が悪いぞ! やっぱり自分も戦うよ!」

貴音「……いえ。それではわたくしの怒りが収まりません……」

響「た、貴音……」

響(まただ……。また、自分の知らない貴音になっちゃってる……)

響(自分、どうすればいいんだ……?)

71 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:48:28.28 ID:8cf2vR7YO

貴音「………」ザッ



ブルードラゴン「お主……ひとりでワシらと戦うつもりか」



貴音「……許せないのです」

貴音「地球だけでなく、月の民にまで手をかけるとは……」



ブルードラゴン「ならば、どうする?」



貴音「あなた方を、今ここで、わたくしの手で滅してくれましょう……!」



ブルードラゴン「ふむ……」

魔人兵「なんだか勘違いされてる気もするけど、まあいいか。あいどるのお手並み拝見ってところだな!」ジャキッ

リルマーダー「あんまり期待はしないけどなー」

暗黒魔道士「……っ」



貴音「……滅びゆく肉体に、暗黒神の名を刻め……」ゴゴゴゴ



魔人兵「……お?」

リルマーダー「な、なんだ?」

暗黒魔道士「!」

ブルードラゴン(この魔力……!)



貴音「始原の炎、甦らん! ……ふれあ!」バッ



ブゥゥン…

ババババババッ!!

ドゴオオォォオオン!!


72 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:51:31.88 ID:8cf2vR7YO

貴音「………」



響「……貴音っ!」

男の子「や、やったのか……?」

貴音「いえ。あの程度で倒せるとは思いません」

貴音「それに、あちらにも魔法の使い手がいるようでした。何か対策を打たれているかもしれません」

女の子「そんな、あんなにすごい魔力だったのに……」

貴音「ともかく、今のうちに二人は安全な場所へ……」

響「!」



リルマーダー「……うりゃあああっ!」ダッ



響「貴音、危ないっ!」バッ


ドガッ!!


響「うあ……!」ヨロッ

貴音「ひ、響っ!」ダキッ

貴音「このっ……!」ブンッ


リルマーダー「……おっと!」ヒョイッ



魔人兵「……火炎放射!」


ゴオオオオオオ!!


貴音「ぐっ……ぅ……!」ヨロッ

男の子「タカネ!」

女の子「タカネちゃんっ!」

73 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:54:41.65 ID:8cf2vR7YO

貴音「ひ、響……今、回復を……」スッ



暗黒魔道士「……アスピル」


シュイイィィン!


貴音「!? ……こ、これは……魔力が、吸い取られている……!」

貴音「このような魔法があるとは……!」ガクッ


魔人兵「残念だったね。君たちじゃオレたちには敵わないみたいだな」チャキッ

リルマーダー「オイラたちを甘く見すぎだぞ!」チャキッ

ブルードラゴン「さあ、ひと思いに楽にしてやろう」バッ



響「うぅ……」グッタリ

男の子「くそー!」

女の子「いやー!」

貴音「魔法が使えれば……!」



「…………右手にプロテス。左手にシェル」

「合わせて、ウォール!」

…パキーン!!


ガキィン!!


ブルードラゴン「何? 魔法の……壁じゃと!?」

74 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 20:57:28.94 ID:8cf2vR7YO

真美「せくしー美少女白魔道士真美、さんじょー!」シュタッ

真美「真美の目が社長くらい黒いウチは、お姫ちんとひびきんに手出しはさせないかんねっ!!」ビシッ



貴音「真美っ……!」



リルマーダー「……お? あいつもあいどるか?」

魔人兵「仲間を助けに来たのか……」

魔人兵(これが、コトリ様の言ってた『キズナ』ってやつかな?)

ブルードラゴン「あの娘……なかなかやりおる」



貴音「真美、危険です! 下がってください!」



真美「いや、どー考えてもキケンなのはお姫ちんたちの方っしょ。待ってて、今助けるからっ!」



魔人兵「って言っても、白魔道士君に何ができるっていうんだ? せいぜい味方のサポートくらいだろう?」



真美「んっふっふ〜♪ 甘い、甘すぎる! はるるんのお菓子より甘いよ!」

真美「……へい! やよいっち、かもーん!」

75 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:00:14.91 ID:8cf2vR7YO

やよい「うっうーーー!!」ピョコン

やよい「らむさん、しばさん、いふりとさん! 出てきてくださいっ!!」


スゥゥー…


イフリート「うおおおおおっ!!地獄の火炎んんんんぅ!!」

ゴオオオオ!!

シヴァ「……絶対零度!」

コォォ…パキィィィィン!!

ラムウ「裁きの雷!」

ズガガガガッ!!



魔人兵「召喚士! しかも、三体同時召喚だと!?」

リルマーダー「あ、あれはヤバそうだぞ!?」

ブルードラゴン(ほう……)

暗黒魔道士「シェル」スッ

ポワーン


ズドドドドオオオオン!!!




真美「……うひゃ〜! やるねーやよいっち!」

真美「一気に3体もしょーかんするなんてさ! けっこーダメージあたえたっぽいよ?」

やよい「えへへ、なんだかできそうな気がしたんだー」

やよい「……って、そんなこと言ってる場合じゃないよ、真美! 早く貴音さんと響さんを助けなきゃ!」

真美「おっと、そーだった!」

タタタタ…

76 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:05:31.76 ID:8cf2vR7YO

真美「……ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…


貴音「……すみません、やよい、真美」ペコリ

響「うぅ……助かったぞ」ムクッ

やよい「2人とも、ぶじでよかったですー!」

真美「まったく、ムチャしやがって……」



真美「……で、お姫ちんはその子たちを助けに来たって事なの?」

男の子「………」

女の子「………」

やよい「この子たちは、貴音さんのお友だちなんですね?」

貴音「……ええ。わたくしの大切な友人、ばはむーと殿の……家族です」

響(バハムートって確か、こないだ貴音が話してくれた……)


貴音「それよりも、今は話をしている場合ではありません。今のうちに、彼奴らに止めを刺さねば!」スクッ

やよい「えっ?」

真美「お、お姫ちん?」

響「待ってよ貴音! 一人じゃ危険だ!」

貴音「いえ、この戦いは、わたくしがやらねばならないのです」

貴音「月の民は、わたくしの同胞。同胞の借りは、わたくしが返します!」

やよい「た、貴音さん……」

真美「でも、さすがにあの魔物たちは強いよ? ここはみんなで力を合わせて……」

貴音「いえ、申し訳ありませんが」

響「…………貴音っ!!」ガシッ

貴音「っ……響……!」

77 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:10:04.15 ID:8cf2vR7YO

響「仲間を傷つけられて悔しい貴音の気持ちは、すっごくわかる」

響「でも、なんでも一人でやろうとしないで、自分たちの事ももっと頼って欲しいぞ!」

響「自分たち、仲間じゃないか!」

貴音「………」

やよい「……あの、貴音さん。わたしも、響さんと同じキモチかなーって」

真美「そーだよお姫ちん。お姫ちんがいなくなって、ひびきんは真っ先にあとを追いかけてったんだから」

真美「ひびきんのキモチ、ちゃんとわかったげてよ。あ、モチロン真美とやよいっちのキモチもね?」

貴音「………」

男の子「……あのさ、タカネ。オレたちの事を心配してるなら、平気だぞ?」

男の子「オレたち、ちゃんとタカネたちの邪魔にならないように、安全なところに隠れてるからさ」

女の子「タカネちゃん。バハムート様の手紙を思い出して? バハムート様は、みんなで力を合わせて欲しいって言ってたはずだよ?」


『……そしてもし、この月と、青き星に危機が訪れた時は、皆で力を合わせ立ち向かうのだ』


貴音(ばはむーと殿……)


貴音「…………そう、ですね。どうやらわたくしは、周りが見えていなかったようです」

貴音「申し訳ありません」ペコリ

響「うん、わかってくれたならいいさー!」ニコッ

やよい「みーんなでたたかいましょう!」

真美「そんじゃいっちょ、魔物たちをやっつけますかね!」

78 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:14:12.23 ID:8cf2vR7YO

貴音「待ってください、真美」

真美「え?」

貴音「先ほどのあの魔道士に気をつけてください。彼奴は、魔力を吸い取る魔法を使うようです」

真美「あー、それってきっと『アスピル』かな。真美たち魔道士にとってはやっかいな魔法だよねー」

やよい「えっと……そのまほう? からにげるには、どーすればいいんでしょう?」

貴音「ええ、問題はそこです。彼奴の魔法を封じる事ができれば良いのですが、恐らく『さいれす』の魔法は通用しないでしょう」

真美「だね。ここまで来たら、敵さんにはそこらへんのセコセコ魔法は効かないって思ったほーがいいっぽいよ」

貴音「あの魔道士をどうにかできれば良いのですが……」

やよい「うー……」

響「………」

響「……あのさ、みんな。ちょっと自分に考えがあるんだけど」

貴音「響……?」

響「みんな、ちょっと耳貸して」

79 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:18:02.46 ID:8cf2vR7YO
ーーーーーー

ーーー


真美「……いや、真美は別にいーけど、その作戦だとひびきんが……」

やよい「そ、そーですよ! 響さんがきけんです!」

響「この方法ならあの魔道士の事も気にしなくていいし、貴音も思う存分魔法を使える」

貴音「しかし、それでは響が……」

響「同胞の仇を取るんでしょ? 自分、貴音の力になりたいんだ!」

貴音「響……」




魔人兵「……あー効いた、今のは……」

リルマーダー「お前、なかなかやるじゃんか!」

暗黒魔道士「………」

ブルードラゴン「もっと力を見せてくれ。あいどるたちよ……」




響「……来るぞ! みんな、手はず通りに!」

真美「むー、やるしかないみたいだね」

やよい「響さん、ムチャはしないでくださいね!」

響「うん。もちろんさー!」

貴音「……恩に着ます、響」

80 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:21:50.22 ID:8cf2vR7YO

タタタタ…

響「はあああぁぁぁぁ!」

真美「おりゃーー!!」

やよい「うっうー!!」



リルマーダー「! ……三人来たぞ!」

魔人兵「あれ? 銀髪の子がいないみたいだ。何か企んでいるのかな」

リルマーダー「へへん! 浅知恵で勝てるほどオイラたちは甘くないぞっ!」

ブルードラゴン「三人のうち2人は魔道士。坊主、頼むぞ」

暗黒魔道士「……!」コクリ


暗黒魔道士「……アスピ」


響「させるかーっ!」ビュンッ

ドゴォッ!!

暗黒魔道士「っ!?」ヨロッ


魔人兵「お、速いな!」

魔人兵「火炎放射!」

ゴオオオォォオ!!

響「うわっ!」


リルマーダー「行っくぞーー!!」ダッ

リルマーダー「うりゃっ!」ブンッ

…ガキィン!

真美「真美もいるんだかんね!」

リルマーダー「白魔道士が肉弾戦? なめんなよ!」ブンッ

真美「おわぁ!?」ヒョイッ



やよい「うっうー! こっちですよー!」フリフリ

ブルードラゴン「ふむ」ブンッ

ドガァ!!

やよい「はわわっ!?」ヒョイ

やよい「あ、あぶなかったですー……」

81 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:23:54.64 ID:8cf2vR7YO

響「たあああっ!」ビュッ

魔人兵「……おっと!」ガキィ

魔人兵「君の狙いは暗黒魔道士か。そうはさせないぞ!」

響「自分のスピードについて来れるか?」ザッ

響「っさー!」ダッ

ビュンッ…

魔人兵「げ!? 速い!」

響「……はっ!」ブンッ

ドゴォッ!!

暗黒魔道士「っ……!」ヨロッ

響「よし! 魔法さえ使わせなければあいつは恐くないぞ!」




真美「へいへーい! こっちだよー!」フリフリ

やよい「こっちですよー!」フリフリ


リルマーダー「ちょこまか逃げ回りやがってー!」

ブルードラゴン「……おかしい」

リルマーダー「え?」

ブルードラゴン「あの娘らは白魔道士と召喚士じゃ。何故魔法を使わない……?」

リルマーダー「あ、そういえば……」

ブルードラゴン(それに、姿が見えない銀髪娘の動向も気になる)

ブルードラゴン「……まさか」





貴音「………」ゴゴゴゴ


貴音(ありがとうございます、響。貴女のお陰で、わたくしの本気が出せます……!)

82 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:28:18.32 ID:8cf2vR7YO

ブルードラゴン「皆、この3人は囮じゃ! ワシらの足止めをしているだけじゃ!」

魔人兵「……そうか! あの銀髪の子を止めないと!」

ブルードラゴン「ワシが行く! お主らは此奴らを!」ブワッ

リルマーダー「こっちは任せろ!」

魔人兵「じいさん、頼んだぞ!」



魔人兵「……さあ、そろそろ遊びは終わりにするか」ガコンッ


響「!」


魔人兵「いくら君が速いって言っても、レーザーの速度には追いつけないだろ?」

キュイイイン…!


響「………」ジリッ


魔人兵「発射!」

チュドドドドドドッ!!


響「っ……!」ダッ





貴音「………」ゴゴゴゴ



ブルードラゴン「……なかなかの魔力じゃのぅ」



貴音「!」



ブルードラゴン「どうやらそなたが本丸のようじゃな。遠慮なく潰させてもらうぞ!」ブンッ


…ガキィンッ!!


ブルードラゴン「……な!? また、魔法の壁だと……!?」



真美「んっふっふ〜♪ 真美の防御壁は、何者にもやぶれないのだー!」ドヤッ


ブルードラゴン「お主は……さっきの白魔道士! 何故ここに?」

83 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:30:51.35 ID:8cf2vR7YO

リルマーダー「……おりゃっ!」ブンッ

真美「あっ……!」

パシュンッ…


リルマーダー「え? 消えた……?」

リルマーダー「もしかして……」チラ


やよい「うぅ……」


リルマーダー「とりゃっ!!」ブンッ

やよい「あぅ……」

パシュンッ


リルマーダー「やっぱりだ。この2人、分身だったんだ!」

魔人兵「なるほど。だから魔法を使わなかったのか」



響「はぁ、はぁ……」

響「さっきのレーザー、危なかったぞ……」


魔人兵「すごい反射神経だな。さすがはあいどるってとこか」


響「それより、今さら分身に気づいても、もう遅いぞ!」

響「あの青いドラゴンは、貴音たちが倒してくれるからな!」

魔人兵「………」

魔人兵「まあ、じいさんなら問題ないよな」

リルマーダー「うん。……それより、お前一人でオイラたちに勝てるのか?」

暗黒魔道士「……!」グッ


響「………」

響(全員倒すのは無理だけど……)

響(なんとか、凌いでみせるさー!)グッ

84 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:33:07.07 ID:8cf2vR7YO

ブルードラゴン「……ふんぬ!」ブンッ

バキィン!!


真美「げっ、真美のウォールが……」


ブルードラゴン「ワシを見くびるでない。この程度の魔法壁、破るなど容易い」

ブルードラゴン「さあ、今度はこちらの番じゃ!」


やよい「……お母さん、おねがいしますっ!!」バッ

スゥゥー…

ミストドラゴン「……ミストブレス!」

シュオオオォォ…!


ブルードラゴン「! ……霧か!」

ブルードラゴン(聖属性の召喚魔法などワシに通用せぬが、これでは視界が……)



貴音「…………真美、やよい。ありがとうございました」

貴音「準備は、整いました!」

真美「お姫ちん!」

やよい「貴音さん!」



貴音「……時は来た」バッ

貴音「許されざる者達の頭上に、
星砕け降り注げ!」



貴音「……めてお!!」



ブルードラゴン「!」



……ヒュー …ヒュー

…ヒュー …ヒュー …ヒュー



ドゴゴゴゴゴゴゴゴオオン!!


85 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:36:11.42 ID:8cf2vR7YO

響「……く……はぁ、はぁ……!」ジリッ



魔人兵「……まったく、しぶといな。3人がかりでこれほどまで手を焼くとはね……」

リルマーダー「でもあいつ、逃げてばっかだぞ!」

暗黒魔道士「………」



響「……それでいいんだ」

響「自分が持ちこたえれば、真美と、やよいと……」

響「……貴音が、きっとなんとかしてくれるからな!」



魔人兵「………」

魔人兵(……ずいぶん仲間を信頼しているんだな。やっぱり、これがあいどるの強さの秘訣……なのか)



タタタタ…

貴音「……響っ!」

真美「ひびきん!」

やよい「響さんっ!」


響「みんな……!」



貴音「さあ、皆で戦いましょう!」

やよい「はい! がんばりますっ!」グッ

真美「真美たちは、ピヨちゃんに会いにいかなきゃいけないかんね!」



ブルードラゴン「…………待て」

86 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:43:30.96 ID:8cf2vR7YO

真美「うわ、しぶとい!」

貴音(最大の魔法、めておでも一発では倒せませんか……)



ブルードラゴン「……さっきのメテオはさすがに効いわ」

魔人兵「………」

魔人兵「そろそろ引き時だな」

リルマーダー「え? もう帰るのか!?」

暗黒魔道士「………」

魔人兵「元からそういう予定だったろ? コトリ様は、あいどるたちに挨拶してこいって言ってただけなんだから」

リルマーダー「まあ、確かにそうだけどよー」

ブルードラゴン「……そうじゃの」

ブルードラゴン(思わぬ収穫があった。あいどるには、ワシに幕を引くほどの力がある)



貴音「……逃げるのですか?」



魔人兵「そういうわけじゃないさ。君たちとは、必ず近いうちにまた戦う事になる」

魔人兵「地下渓谷で待ってる。そこで決着を着けよう」

魔人兵「………」クルッ

スタスタ…




やよい「……行っちゃいましたね」

貴音「できればこの場で決着を付けておきたかったのですが……」

真美「ひびきん、へーき?」

響「うん、なんとか……」



貴音(……小鳥嬢の親衛隊、ですか)

貴音(小鳥嬢の元へ辿り着く為には、避けては通れぬ道のようですね)

貴音(それに……)

貴音(わたくしは、まだまだ弱い……)

87 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:46:19.57 ID:8cf2vR7YO
ー ハミングウェイ一族の住処 ー



真「……うおおおおおっ!!」

ベヒーモス「うらあああああっ!!」

ドガアアァァン!!


ベヒーモス「ぐっ……!」ヨロッ



真「! ……チャンス!」

真「……はああぁぁああ!!」ゴオオ

真「覇王……翔吼拳ッ!!」バッ


ゴオオオオォォオオッ!!



ベヒーモス「なめんじゃ……」

ベヒーモス「ないよっ!!」ダッ

ドドドドッ!!


真「……げ! 真っ向から突っ込んで来た!?」


ベヒーモス「……うらぁ!!」

ドゴォッ!!

真「ぐあっ!!」


ドサッ



真「…………いてて……」スクッ

真「はは……なかなかやるね、君。まさか覇王翔吼拳をものともしないなんて」ニコッ


ベヒーモス「ふっ、あんたこそ、なかなかの技だったよ。アタイと互角に渡り合うなんておよそ人間とは思えないね!」ニヤリ

真「でも……ボク、負けないよ!」

ベヒーモス「ふん! それはアタイのセリフだ!」

88 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:49:31.80 ID:8cf2vR7YO

月の女神「あ〜、ベヒーモスちゃんいいなぁ〜! 私もそのカッコいい人と戦いた〜い!」

千早「……待ちなさい。あなたの相手は、私よ!」チャキッ

月の女神「んー……。まあ、仕方ないか」

月の女神「それじゃあ、楽しもうね♪ 」チャキッ


月の女神「えいっ!」ブンッ

千早「……ふっ!」ガキィン

月の女神「あいどるの実力、見せてね?」ググッ

千早「くっ……!」ギリッ

千早(この子、見かけによらずすごい力……!)

千早「っ……!」タンッ

…スタッ

月の女神「……えへっ♪ 逃がさないよ?」ダッ


千早(力では敵いそうもない。ならば……)

千早(速さで、かき乱す!)


千早「……水平ジャンプ!」タンッ

ビュンッ…


月の女神「……わっ、速い!?」

月の女神「っとと!」ガキィン

千早「っ……!?」ググッ

千早(受け止められた……? 水平ジャンプの速度に反応するなんて……!)

千早(それなら、槍の間合いを利用するっ!)


…ザッ


月の女神「あっ……」

千早「はっ!」ビュッ

月の女神「ひゃっ!」ヒョイッ


月の女神「む〜、剣対槍じゃ、ちょっとこっちが不利かもね」

月の女神「うんっ♪ あなた、なかなかいいね! もっともっと楽しもう?」チャキッ


千早「……私は別に、楽しむつもりはないわ!」チャキッ

89 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:52:51.98 ID:8cf2vR7YO

雪歩「えいっ! えいっ!」ザクザクッ


プリンプリンセス「うふふっ♪ 痛くも痒くもありませんわよ?」


雪歩「うぅ……効いてない……」

雪歩「それに、なんだかブヨブヨで気持ち悪いですぅ」


プリンプリンセス「今度はこちらの番ですわ!」

プリンプリンセス「さあ、私と一緒に踊りましょうっ♪ 」

プリンプリンセス「王女の歌!」

ラララ〜♪


雪歩「ひぃっ!?」ビクッ


プリンプリンセス「ラララ〜♪ 」


雪歩「っ……!」


雪歩「………」


雪歩「………………?」



プリンプリンセス「さあ、これでもうあなたは、自分の意思で身体を動かせない」

プリンプリンセス「生ける屍ですわよっ!」

プリンプリンセス「……って、あら?」


雪歩「あ、あの〜……私、なんともありませんけど……」


プリンプリンセス「そ、そんな馬鹿な!?」

プリンプリンセス「はっ!? あなた、その鎧まさか……」


雪歩「えっと……確か、『アダマンアーマー』っていう鎧だって、亜美ちゃんと真美ちゃんに教えてもらいましたぁ」


プリンプリンセス「」


雪歩「あ、あの、私、なんかダメだったんでしょうか……?」


プリンプリンセス「まさか、私の歌に対策をしているなんてっ……!」

プリンプリンセス「こうなったら、破れかぶれですわっ!」ダッ


雪歩「ひっ!?」ビクッ

雪歩「く、来るなら来いですぅ!」チャキッ

90 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:55:36.83 ID:8cf2vR7YO

レッドドラゴン「うりゃっ!」ブンッ

ドゴオォン!!


あずさ「……うふふ、こっちですよ〜?」ヒョコッ


レッドドラゴン「……ンのやろっ!」ブンッ

ドカァン!!


あずさ「……残念、ハズレでした〜♪ 」ヒョコッ


レッドドラゴン「ちっ……! 逃げ回ってばっかでラチがあかねえ!」

レッドドラゴン「こうなったら……くらえ、熱線っ!!」コォォ


あずさ「あらあら……」


ズドドドドドドッ!!


レッドドラゴン「うっし! 手応えありだぜ!」

レッドドラゴン「加減してやったからまだ息はあるだろーがな」

レッドドラゴン「さあ、出てきやがれ!」



あずさ「……今のは、ちょっとびっくりしちゃったわ〜」ボロッ



レッドドラゴン「どうだ、思い知ったか! 身体半分吹っ飛ばしてやったぜっ!」


あずさ「ええ、すごかったですね〜」

あずさ「でも……」


ニョキニョキッ


あずさ「私、再生できるんみたいなんです〜」ニコニコ


レッドドラゴン「」


レッドドラゴン(あいどるって、人間じゃねぇのかよ……)

91 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 21:59:44.38 ID:8cf2vR7YO

金竜「今まで我らは、千の人間を殺してきた……」

銀竜「我ら兄弟の姿を見て無事だった者は、いない!」

金竜「さあ、あいどるたちよ。念仏でも唱えるがいい!」


春香「せ、千人も……!」ゴクリ

亜美「んっふっふ〜♪ 」

亜美「亜美たちなんか、今まで一億万体の魔物を殺してきたんだもんね!」

春香「……えっ? そ、そうだっけ?」

亜美「亜美たちの姿を見て、今までブジだった魔物などいないのだー!」バーン!


金竜「なん…だと……?」

金竜「桁が、違いすぎる……!」ワナワナ

銀竜「……ま、待て兄者。ただのハッタリかもしれぬぞ? さすがに一億は数が多すぎる」

金竜「そ、そうか! 我らと同じく向こうもハッタリで相手の戦意を喪失させる作戦なのだな!」

金竜「ふはははは! 残念だったな! お前たちの策は破れたぞ!」ビシッ

銀竜「あ、兄者! ハッタリとバラしては作戦の意味がないぞ!」


春香「えっ? ハッタリだったの!?」

亜美(…………勝った!)グッ

92 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 22:02:35.80 ID:8cf2vR7YO

金竜「……ええい! こうなったら実力で黙らせてくれるっ!」

金竜「行くぞ、銀竜!」

銀竜「おうっ!」


亜美「来るよ、はるるん!」

春香「うんっ! 私に任せて!」チャキッ


春香「たあああああ!」タタタタ


銀竜「一直線に向かってくるとは……愚かなり!」ビュンッ


春香「……わわわっ!」ズルッ

ドンガラガッシャーン!


銀竜「……え?」


ザシュッ!!


銀竜「ぐはぁ!!」

金竜「銀竜!?」


春香「痛たた……」

亜美「よしっ! ナイスドンガラ!」

春香「うぅ……カッコよく行こうと思ったのにぃ……」ムクッ


銀竜「な、なんだ今の太刀は……? 在らぬところから斬られたぞ……?」

金竜「恐ろしや、あいどる!」



春香「き、気を取り直して……」

春香「……天海春香、行きますッ!」チャキッ

亜美「よーし、亜美もやったるぜー!」

93 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/02/20(土) 22:06:39.84 ID:8cf2vR7YO

ガキィン! キィン!

ドゴオォン! ドカァン!



伊織「………」


伊織「……ちょっとプロデューサー。美希はともかく、なんでこの伊織ちゃんが控えなのよ!?」

美希「……zzz」

P「あ、いや……別に控えってわけじゃないんだけど、こちらの人数の方が多いからな」

P「暇なら、今からでも誰かの助太刀に行くか?」

伊織「イヤよ! 2人がかりなんてダサい真似、できるわけないでしょ!」

P「そ、そうか。まあ、今は力を温存しておいてくれよ。伊織も美希も、ウチの重要な戦力だからさ」

伊織「……ったく、仕方ないわね」

伊織「はぁ……美希の呑気さが羨ましいわよ」チラ

美希「……むにゃ……」



律子「……あの子たち、ちゃんと魔物と戦えているみたいですね」

P「みんなもそれだけ成長したって事だよ。戦いを覚えたアイドルっていうのもどうかと思うけど」

律子「ええ…………でも、腑に落ちないんですよね」

P「? ……どういう事だ?」

律子「あの魔物たち、小鳥さんの親衛隊だって言ってましたよね?」

P「ああ、言ってたけど……」

伊織「……もしかして、小鳥の差し金にしてはうまく行きすぎてるって事?」

律子「ええ。考えすぎなのかもしれないけど、まだ何か裏があるんじゃないかって思うのよ」

伊織「……まあ、貴音がどこかへ行ってしまったのも、あの野獣みたいな魔物が貴音を誘導した、とも取れるわよね」

P「……確かにそうだな」

律子「いずれにしても、これ以上バラバラに行動するのは、できるだけ避けたいわね」

94 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/02/20(土) 22:15:14.17 ID:8cf2vR7YO
今日はここまでです
キャラいすぎてよくわからなくなってきた
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/20(土) 23:16:43.06 ID:iF/yTOiDO
乙、しゃーないさFFやし
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 16:02:59.06 ID:9OcqmFvEo
乙です
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/15(火) 06:19:42.95 ID:9ZPc0ShDO
まだかな
98 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/03/18(金) 22:37:47.01 ID:/YzkdG/dO

春香「……うわわわっ!」ダッ


ドゴオオン!!


銀竜「もらった!」

ビシュッ!!


春香「あぅっ!」

春香「……うぅ、痛たた」


金竜「逃げ足は一人前か。しかしそういつまでも逃げられるなどと思わない事だ」



春香「……よし、私、本気だす!」スッ

亜美「あ、はるるん、ひょっとしてそれは……」

春香「うん。ヤミちゃんのリボンだよ」キュッ

亜美「ほぅ、なんか変身っぽくていいねぇ」

春香(ヤミちゃん、力を貸して……!)


…パアアァァァァ!!



金竜「ぬ? なんだこの眩い光は……!」

銀竜「目が……!」


シュゥゥ…

春閣下「…………うふふ♪ 可愛がってあげるよっ♪ 」チャキッ


銀竜「あの娘、様子が変わったような……?」

金竜「よくはわからぬが、その程度で怯む我らではないっ!」

金竜「銀竜、行くぞ!」

銀竜「応っ!」

ビュウゥゥ…
99 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/03/18(金) 22:39:24.88 ID:/YzkdG/dO

亜美「来たよ! はるるん……じゃなくて、ヤミるんは金色の方をお願い! 亜美は銀色の方をやっつけるから!」

春閣下「……ちょっと、私に指図しないでよ。ガキのクセに」

亜美「えっ?」

春閣下「さて、と。今回はプロデューサーさんが見てる事だし……」チラ



P「春香……?」



春閣下「いいところ、見せなきゃねっ♪ 」チャキッ

春閣下「亜美、邪魔しないでよね!」

亜美「………」

亜美(……カンジ悪っ!)



金竜「ずええぇぇいっ!!」ブンッ


春閣下「ふん……」ヒョイッ


銀竜「馬鹿め! もらった!」ブンッ


バキィィ!!


春閣下「……ま、こんなもんだよね」ガシッ

春閣下「はっ!」ザシュッ


銀竜「ぐあ……!」

金竜「銀竜! ……貴様っ!」ブワッ


春閣下「無駄だよ!」ガキィン


金竜「ぬ……!」



金竜「く、この娘……!」

銀竜「先ほどとはまるで動きが違うぞ!」


亜美「ヤミるんつえ〜。これ、一人で倒しちゃうんじゃ……」

亜美(……あり? まさか亜美っていらない子?)


亜美「うあうあ〜! そんなんヤダよ〜!」

亜美「亜美だって、カツヤクするんだからぁ!」ダッ

タタタタ…
100 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/03/18(金) 22:43:52.83 ID:/YzkdG/dO

春閣下「……よーし、今度はこっちの番だよ!」チャキッ

春閣下「はあああぁぁああっ!!」

タタタタ…


銀竜「ええい、返り討ちにしてくれるっ!」


春閣下「たああぁぁーー!」

春閣下「……ぅわあああっ!?」ズルッ

ドンガラガッシャーン!!



銀竜「!」

銀竜「…………っ!」

銀竜「…………む? 攻撃が来ない……?」

銀竜「先ほどはあの妙な攻撃にやられたが、今度は不発だったか」


金竜「ぐはぁ!」


銀竜「あ、兄者ああっ!!」



春閣下「うぅ……こけちゃった……」



銀竜「おのれあいどる! 兄者の仇!」

銀竜「我が炎を食らえ……ブレイズ!!」

ゴオオオオォォオオ!!



春閣下「わわっ! ちょ、ちょっと待ってよ……」



亜美「ヤミるん、亜美にまかせて!」

亜美「ファイガ!」バッ

ゴオオオオォォオオ!!


銀竜「そのような魔法で我が炎に刃向かうとは、愚かな!」ググッ


亜美「んっふっふ〜……」ボッ

亜美「も一つオマケに、ファイガ!」ボッ

ゴオオオオォォオオ!!


亜美「アーンドもう一丁!」ボッ

ゴオオオオォォオオ!!


亜美「いっけーーーー!!」


銀竜「魔法を同時に三つだと!?」

銀竜「バカなぁっ!!」



ドッカアアアアァァン!!

101 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/03/18(金) 22:48:02.32 ID:/YzkdG/dO

春閣下(……へぇ、なかなかやるね、亜美)

春閣下(プロデューサーさんも見てる事だし、これは私も負けていられないね!)

春閣下「プロデューサーさん! 私、いいところ見せますからねっ!」チラ




美希「……うーん、ハニー……」ダキッ

P「こ、こら美希、今はみんなが戦ってるだろ。起きろ」ユサユサ

美希「……むにゃむにゃ……えへへ……」スリスリ

律子「まったく……マイペースにも程があるわね」

伊織「まあ、今は美希の出番はなさそうね」




春閣下「ちょっと、なによあれ!」

春閣下「なんでプロデューサーさんとイチャイチャしてんの、美希……!」ゴゴゴゴ


春閣下(……ああ、そっか。そうだったね)

春閣下(すっかり忘れてたよ。私が本当にやるべき事を)

春閣下(思い出させてくれてありがと、美希!)



金竜「ぬぅ……油断したわ」

金竜「あいどる……聞きしに勝る武勇よ!」

銀竜「しかし、我らも負けてはおれんっ!」



亜美「わ、もう復活しちゃったよ!」

亜美「ヤミるん、来るよ!」チラ



春閣下「美希……」

春閣下「プロデューサーさんは渡さないッ!!」ダッ

タタタタ…



亜美「え!? ちょ、ちょっとヤミるん、どこ行くのさーー!?」



金竜「行くぞ、銀竜!」

銀竜「応っ!」


ブワッ…


亜美「あああ、ま、待って! ちょっとタンマー!」
102 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 22:51:41.91 ID:/YzkdG/dO

P「こら美希、起きなさい!」ユサユサ

美希「……んん……あと2時間 ……」ムニャムニャ



春閣下「……プロデューサーさん、そんな役立たずは放っておきましょうよ」



P「……えっ、春香?」

伊織「春香、あんた亜美と一緒に戦ってたんじゃないの?」

春閣下「どうでもいいよ、そんなの」

律子「どうでもいいって……ちょっと春香、あなた何言ってるの?」

伊織(! ……この言動……)



春閣下「……プロデューサーさんは、誰にも渡さないッ!」バッ



春閣下「……さあ、プロデューサーさん。行きましょう」

P「お、おい春香、どうしたんだよ? 行くってどこへ?」

春閣下「えへっ♪ 誰にも邪魔されないで二人っきりになれるところ、ですよ?」グイッ

P「ちょ、ちょっと待て、おい!」

タタタタ…



律子「こら、春香! 戻りなさい!」

伊織「あのバカ……!」

律子「ど、どうなってるの? 春香ってあんな事する子じゃなかったわよね……?」

伊織「律子は確か知らなかったわよね。あの春香は……春香であって春香じゃないのよ」

律子「? ……どういう事?」

伊織「話してる時間が惜しいわ。私が連れ戻して来る!」グッ

美希「……待って、でこちゃん」ギュッ

伊織「美希? あんた、いつの間に起きて……?」

美希「ミキが追いかけるの」

美希「ねえ、いいでしょ? 律子…さん」

律子「………」

律子(伊織の言う通り、考えているヒマはないわね)

律子「……わかったわ。プロデューサーと春香の事はあなたに任せる。でも、無茶はしないでね?」

美希「うん。ありがとうなの!」

タタタタ…
103 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 22:58:48.86 ID:/YzkdG/dO


ガキィン! キィン!


…スタッ


月の女神「……ふぅ。強いね、あなた。ワクワクしちゃう♪ 」

千早(リーチでは私が有利だけど、あの子、腕力がすごくてこちらが押され気味……)

千早(何か、決め手が欲しいわね)




春閣下「あはははっ♪ 」タタタタ…

P「おい春香、戻れ! 今は戦闘中だぞ!」

春閣下「つれない事言わないでくださいよ、プロデューサーさん♪ 」




千早「え……?」

千早(あれは……春香? なぜプロデューサーを担いで走ってるのかしら)



美希「春香、待つの! ハニーを返して!」タタタタ…




千早「美希……」

千早(返してって……まさか)

千早(……今、春香は黒いリボンを着けていた)



月の女神「戦いの最中によそ見するなんて、ずいぶん余裕なんだね!」ブンッ

ドガァ!!


千早「きゃっ……!」ヨロッ


千早「……そ、そうだわ。今はよそ見をしている場合では……」チャキッ


千早(……黒いリボンを着けているという事は、今の春香はヤミさんが表に出てきている)

千早(ヤミさんは春香よりもずいぶんプロデューサーに固執していたようだった)
104 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:00:24.55 ID:/YzkdG/dO

千早「……はっ!」ビュンッ


月の女神「……ほいっと!」ガキィン


月の女神「えいっ!」ブンッ


千早「くっ……!」ヒョイッ


…スタッ


千早(それに、こう言ってはなんだけど……)

千早(彼女は、春香と違って仲間意識がまるでないような発言を繰り返していた)

千早(春香とプロデューサーが心配だわ。私も2人を追いかけたい……)




律子「………」

律子(千早の動きが急に鈍くなった……)

律子(春香が心配なのね)

律子(……確かに、美希一人に任せるのは酷かもしれないわ)

律子(かと言って、私が追いかけるワケにはいかない)

律子(またバラバラになってしまうけど……仕方ないか)

105 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:02:59.60 ID:/YzkdG/dO

月の女神「えいっ!」ブンッ


千早「くっ!」ガキィン


月の女神「……ねえ、あなた、最初よりも動きが鈍くなってない? 気のせいかなぁ」


千早「………」

千早(やはり相手にはわかってしまうものなのね……)


月の女神「もう、ちゃんと本気でやってくれなきゃ殺しちゃうよー?」



律子「……悪いけどあなたには千早は殺せないわ!」



月の女神「……え?」


千早「律子!」


律子「ここは私に任せて行きなさい。春香の事、気になってるんでしょう?」


千早「でも……」チラ



月の女神「ふーん、2対1って事かな? 楽しめれば別になんでもいいよ、私は」



律子「美希が追いかけて行ったけど、あの子一人じゃ不安だわ」

律子「千早。あなたが美希について行ってくれれば安心なんだけど」


千早「………」

千早「律子、ありがとう!」ダッ

タタタタ…


月の女神「あっ! 逃がさないよー!!」ブンッ


ガキィン!!


律子「ごめんなさいね。選手交代よ!」ググッ


月の女神「っ……!」ググッ

月の女神(この人……とっても強い!)


月の女神「いいよ……! たくさん遊ぼう!」ギラッ
106 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:05:29.23 ID:/YzkdG/dO

タタタタ…

美希「春香……じゃなくて、なんだっけあの子。名前忘れちゃった」

美希「とにかく、ハニーは絶対に返してもらうの!」

美希(それに……)

美希(『あの』春香の分身みたいな子、ミキの勘だときっと……)

美希(でも、もしそうだとしたら、春香はどうなるの……?)

美希(春香の気持ちは……)



美希「……!」グッ



タタタタ…

千早「…………美希!」



美希「……千早さん!? どうして?」

千早「私も一緒に行くわ」

美希「ありがとうなの。千早さんがいればとっても心強いの!」

千早「2人がどっちの方角へ行ったかはわかる?」

美希「うん。ハニーの気を追いかければカンタンなの」

千早「それじゃ、道案内お願いね。……急ぎましょう!」

美希「りょーかいなの!」

タタタタ…
107 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:07:01.16 ID:/YzkdG/dO
ー 巨大クレーター ー


春閣下「ふぅ……。ここまで来ればもう大丈夫かな」

春閣下「プロデューサーさん、すみません。勝手にこんな事しちゃって」

P「……なあ、今の春香はいつもと少し違うんだよな?」

春閣下「あ、もしかしてみんなから聞きました? 私の事」

P「うん。リボンを付ける事で闇と合体するんだよな、確か」

P(本来なら、試練の山で闇とは決別しているはずだが……)

P(優しい春香の事だ。きっと闇を切り捨てる事ができなかったんだろうな)

春閣下「はい、そうです」

春閣下「……でも嬉しいなぁ。こうして『私』としてプロデューサーさんにお会いするのは、これが初めてですから♪ 」ニコッ

P「初めて……そうか。一応そうなるのか」

春閣下「『私』は、今まで長い間ずーっと『わたし』の中にいました」

春閣下「『わたし』の中で、『わたし』がプロデューサーさんと楽しそうにお話しているのを、指を咥えて見ている事しかできませんでした」

春閣下「私は、ずっとあなたとこうしてお話したかった。あなたと触れ合いたかった」

春閣下「……『わたし』じゃなくて、『私』として」

春閣下「プロデューサーさんに、『私』を見てもらいたかった」

春閣下「……でも、やっとチャンスが巡って来たんです!」

P「………」

春閣下「……ねえ、プロデューサーさん。私、あなたが大好きです」

P「は、春香……」

春閣下「プロデューサーさんは、私の事好きですか?」

P「……『君』の事はまだよく知らない。だから、答えられないよ。……ごめん」

春閣下「そんなの、これから知ってもらえばいい事です! 時間はたくさんあるんですから!」

P「いや、そんな時間は……」



美希「そんな時間はないの!」

千早「ヤミさん、やっと追いついたわ!」



P「美希、千早……!」

春閣下「……あーあ。もう邪魔が入っちゃいましたね」
108 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:09:49.66 ID:/YzkdG/dO

春閣下「完璧に撒いたと思ったんだけどなー。よくここがわかったね?」


美希「そんなの、あなたには関係ないの」


春閣下「あはは、嫌われちゃってるんだね、私って」

春閣下「……それとも、『私』も『わたし』も両方嫌いなのかな? 美希は」


美希「……答える必要なんてないって思うな」


春閣下「ふふっ♪ ……まあ、私はどっちでもいいけどね。でも、『わたし』は、美希に嫌われてるとわかったら傷つくだろうなぁ」

春閣下「『わたし』は、美希の事も大好きだもんねー 」


美希「………」

美希「……そんな事より、早くみんなのところへ帰るの。ハニーも解放してあげて!」


春閣下「……いやだなぁ。はいそうですかって簡単に戻るわけないでしょ?」

春閣下「そんなの愚問ですよ、愚問!」


千早「今は遊んでいる場合ではないの。それはヤミさん、あなたもわかっているでしょう?」

千早「こうしている間もみんなが魔物たちと戦っている。早く私たちも戻らないと」


春閣下「……くどいよ。私は戻らない。ここでプロデューサーさんと2人っきりで過ごすんだもん!」


千早「……ヤミさん、あなたは春香の意思には逆らえないはず。春香がこんな事を許すはずがないわ」


春閣下「うん、そうだね。『私』は『わたし』には逆らえない。『わたし』がその気になれば、私はまた、深い深い意識の底に沈んじゃうだろうね」

春閣下「何もない、闇の底に」

P「………」

春閣下「ねえ、千早ちゃん、美希。なんで私がプロデューサーさんを連れて逃げたか、わかる?」


千早「それは……」

美希「ハニーの事、好きだから……なんでしょ?」

千早「……えっ?」


春閣下「………」
109 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:19:25.92 ID:Az1TjUeTO

美希「ミキ、気づいてたよ。あなたはミキたちには全然キョーミない」

美希「あなたがキョーミあるのは、ハニーだけだって」


春閣下「……あはははっ♪ さっすが美希。こういう事は目ざといなぁ!」


千早「ヤミさん。あなた、始めからプロデューサーだけを狙っていたの……?」


春閣下「うん、そうだよ。私の目的は最初からたったひとつだけ」

春閣下「プロデューサーさんとずっと二人っきりで過ごす事。……ただそれだけなんだよ」

春閣下「やっと二人きりになれたんだもん……私、この瞬間をずっと待ってたんだもんっ……!」ギュッ

P「は、春香……」


美希「春香もハニーの事が好きだもんね。あなたが春香の分身なら、好きな人が同じでもまったく不思議じゃないの」

美希「でも、さっき千早さんが言った通り、あなたは春香に逆らえないはずでしょ?」


春閣下「……それは、あくまで『私』と『わたし』の意見が食い違った時の話」

春閣下「もし、今の『わたし』が『私』と同じ気持ちだったとしたら……?」

春閣下「プロデューサーさんとずっと一緒にいたい。……みんなを捨ててでも」

春閣下「そう、『わたし』も望んでいるとしたら?」


千早「そんなの、あり得ない!」

千早「確かに、春香がプロデューサーに恋心を抱いているのは知っているわ」

千早「でも、だからと言って春香がみんなを見捨てるなんて事は、絶対にない!」


春閣下「言い切るねー千早ちゃん。さすが親友ってとこかな?」

春閣下「……でもね、考えてみて。『わたし』だってアイドルである前にひとりの女の子なんだよ?」

春閣下「女の子にとって恋する気持ちがどれだけ大切か。……二人ならわかるんじゃないかな?」

春閣下「美希はあえて言うまでもないし、千早ちゃんだって、密かにプロデューサーさんに尊敬以上の想いを抱いてる事、私知ってるんだよ?」


千早「そ、それはっ……///」
110 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:21:35.42 ID:Az1TjUeTO

春閣下「それでも私『たち』を連れ戻すつもりなら……」

春閣下「私『たち』の大切な想いを無視するっていうなら……ッ!」チャキッ



春閣下「……相手になるよ!」ゴゴゴゴ



千早「! ……すごい、殺気……!」

美希「春香……!」



P「やめろ! 味方同士で争う事ないだろ!?」

春閣下「ごめんなさい、プロデューサーさん。今は大人しくしていてくださいね?」スッ

…チュッ

…ボンッ!

P「!?」



千早「なっ……!?」

美希「ハニーに何をしたの!?」



春閣下「カエル状態を治すアイテムで『乙女のキッス』っていうものがあるんだけど、今のはそれの逆バージョン」

春閣下「あえて言うなら、『魔女のキッス』ってとこかな」

春閣下「まあ、二人に話してもわからないと思うけどね」

P「くそ……」

春閣下「プロデューサーさんにはべろちょろになってもらった。二人とも、これで心おきなく戦えるでしょ?」ニコッ


美希「……!」

千早「春香もプロデューサーも、返してもらうわ!」チャキッ


春閣下「ふふ、いいよ……」

春閣下「格の違いを見せつけてあげる!」
111 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:24:00.39 ID:Az1TjUeTO

千早「……はっ!」タンッ

ビュンッ…!


春閣下「……おっと!」ガキィン


千早「……ふっ!」クルンッ

千早「……や!」バキッ


春閣下「きゃっ!?」ヨロッ

春閣下「っと……」

春閣下「ふうん、腕を上げたね、千早ちゃん。ファブール城で戦った時とは比べものにならないほどいい動きだよ」


千早「………」


春閣下「でもね、千早ちゃんは絶対に私『たち』には勝てない!」

シュンッ…


千早「!? ……き、消えた!?」


春閣下「……後ろだよっ!」

ドガッ!!


千早「ぐっ……ぅ……!」ヨロッ



美希「……千早さんを傷つけたら許さないの!」ギリッ

…ビュンッ!


春閣下「ふふっ♪ 」ヒョイッ

春閣下「見えてるよ、美希! 後ろからなんて卑怯だね」チラ


美希「………」

美希(予感はしてたけど、ミキの矢、よけられちゃった)

美希(やっぱりあの子、強い……。このままじゃミキ、千早さんの足手まといになっちゃうかも)

美希「………」

美希(……ううん、ハニーを取り戻すためにガンバらなきゃ!)グッ



千早「くっ!」ブンッ


春閣下「遅いよっ♪ 」ヒョイッ

春閣下「えいっ!」ブンッ

ドゴォ!!

千早「っ……!」ヨロッ
112 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:25:57.18 ID:Az1TjUeTO

春閣下「確かに千早ちゃんは強くなった。でも、それは私『たち』も同じ」

春閣下「私『たち』の方が強い。……ううん、私『たち』の想いの方が強い。ただそれだけの事だよ」

春閣下「だから、悔しがる事なんてないんだよ!」ブンッ



美希「……ヘイスト!」

カタカタ…シャキーン!



千早「はっ!」タンッ

フワッ…


春閣下「くっ……逃げられた……」




美希「ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…

千早「……美希、助かったわ」

美希「あの子、強いの。2人で協力してやらなきゃ勝てないの」

千早「ええ。私が前に出るから、美希はサポートをお願い」

千早「必ず、春香とプロデューサーを取り戻しましょう」

美希「……うん、そうだね」




春閣下「そういえば美希は白魔道士だったね。……ちょっと厄介だなー」

P「春香、もうやめてくれ。今は仲間で争っている場合じゃないんだ!」

春閣下「……いいえ、それは無理です」

春閣下「これは、ある意味避けては通れない戦いですから」

P「避けては通れない戦い……? どういう意味だ?」

春閣下「私と美希、千早ちゃん。誰がプロデューサーさんに相応しいか。今、決着をつける時なんですよ」

P「な、何をバカな事を……」



春閣下「……さあ、美希。千早ちゃん。かかって来なよ!」

113 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:27:53.61 ID:Az1TjUeTO
ー ??? ー


春香「………」

春香「……やめて」

春香「やめてよ、ヤミちゃん……!」

春香「なんで、こんな事……!」


『なんでって……そんなの決まってるでしょ? 私はプロデューサーさんが大好きだから』

『私とプロデューサーさんの邪魔をする存在は全部敵だもん。敵は排除する。そんなの当たり前の事じゃない』


春香「違う! 千早ちゃんも美希も敵なんかじゃないよ!」

春香「大切な……大切な仲間だよ!」


『……まったく。そんなだから「わたし」はいつまでたってもプロデューサーさんを手に入れられないんだよ?』


春香「え……?」


『「わたし」だって知ってるよね? 美希のプロデューサーさんに対する圧倒的なアピール』

『美希だけじゃない。あずささんや貴音さん、真美もきっとプロデューサーさんの事……』

『……ううん、たぶん765プロの全員がプロデューサーさんに対して少なからずそういう感情を持ってる』

『このままじゃプロデューサーさんを他の誰かに取られちゃうかもしれないんだよ? それでもいいの?』


春香「と、取られるって……私は、ただ……」


『ただ……何? 今のままの中途半端な距離で満足できるの?』

『恋愛と仲間ごっこが両立できるとでも思った?』


春香「な、仲間ごっこだなんて、そんな!」

春香「い、今はこんな事してる場合じゃないから……!」


『いずれ決着を着けなきゃいけないんだったら、いつやろうと変わらないよ』

『私は、自分の手でプロデューサーさんを手に入れる。後悔はしたくないから』

『ずっと、何もない意識の底で、プロデューサーさんに声をかける事すらできなかった「私」が……』

『やっと手にしたチャンスだから!』

『大丈夫。「私」がプロデューサーさんを手に入れるっていう事は、「わたし」もプロデューサーさんを手に入れるのと同じだから』

『私たちの想い、「私」が必ず叶えるから……見てて!』


春香「ま、待ってヤミちゃん! ……ヤミちゃん!」

春香「………」

春香「声が、しなくなっちゃった……」
114 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:29:39.22 ID:Az1TjUeTO

春香(何もない意識の底……)


春香「『ここ』の事だよね、たぶん……」キョロキョロ


春香「………」

春香(……本当に何もない。何も見えない)

春香(暗いのか明るいのか、寒いのか暑いのかもわからない)

春香(ただ、わかる。見えないけど、ヤミちゃんが千早ちゃんや美希と戦っているのが、感じられる)

春香(前にヤミちゃんとここでお話した事があったよね、確か)

春香(そっか……)

春香(『ここ』は、私の意識の中なんだね……)



春香(この状況、どうにかしなきゃ)

春香(そのためには……考えるまでもない。ヤミちゃんを止めないと)

春香(でも……)

春香(ヤミちゃんは、ずっとこんなさみしいところにいたんだ)

春香(私には、プロデューサーさんやみんながいたけど、ヤミちゃんはずっとひとりぼっちだったんだ……)



春香(私の中の、闇)

春香(あの時私は、試練の山でヤミちゃんを切り捨てるべきだった……?)

春香(そうすれば、こんな事には……)


ーーいずれ決着を着けなきゃいけないんだったら、いつやろうと変わらないよ


ーー恋愛と仲間ごっこが両立できるとでも思った?


春香(……わからない)

春香(私は、どうすれば……)


春香(プロデューサーさん……)

115 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:33:35.37 ID:Az1TjUeTO
ー ハミングウェイ一族の住処 ー


金竜「はっ!」

ビシュッ!!

亜美「うわわっ!?」ヨロッ


銀竜「もらった!」ブワッ

バキィ!!

亜美「あぅっ!」

ドサッ



金竜「お前のパートナーはどこかへ消えてしまったみたいだな」

銀竜「だからといって手加減はせぬぞ」


亜美「うぬぅ……」

亜美(くそー、ヤミるんはどっか行っちゃったし、亜美だけ2対1とかおかしいっしょ……)

亜美(こんな時に真美がいれば、ふたりがけでドッカーンってやっつけられるのになぁ……)

亜美(……ううん、何があったんだか知んないけど、急にお姉ちゃんぶりだした真美なんかカンケーないもんね!)

亜美(こーなったら、亜美が一人で編み出したとっておきの技を使うしか……)


金竜「死ねえっ!」

ビュッ…


亜美「わあん! そんなヒマないっぽいよー!!」



伊織「……ムラサメ、亜美を護りなさい!!」ヒュッ


ガキィン!!



亜美「いおりん!?」


金竜「……新手か!」

銀竜「刀一本で我らの攻撃を防いだだと……?」



亜美(ムラサメって、確か……)
116 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:36:03.54 ID:Az1TjUeTO
ー 回想・トロイアの森 ー


伊織「…………はっ!」

ビュッ…ザシュッ!!

ズドオォ…ン


伊織「……イマイチね。もっと速く刀を振れるようにならないと」



真「……それだけ速ければ十分だと思うけどなぁ」



伊織「真……」

真「こんなところでひとりで修行? 相変わらず伊織はみんなの見えないところで頑張るよね」

伊織「べ、別にそんなんじゃないわよ」

真「今のが、居合……だっけ。ボク、初めて見たよ! すごいな、あんなに大きい樹が真っ二つだ」

伊織「それ、嫌味? あんたはひとりで巨大砲を破壊したくせによく言うわ、まったく」

真「ま、まあ、ボクの力と伊織の力はまた方向性が違うし……」

真「でも、伊織のその居合もずいぶん板についてきた感じじゃない?」

伊織「まだまだよ。こんな程度じゃこの妖刀マサムネの力を完璧に引き出せたとは言えないわ」

真「……そっか」ニコッ



伊織「……で、何か用なの?」

真「ああ、そうそう。すっかり忘れてたんだけど、伊織に渡したいものがあってね」

真「……はい、これ。伊織が使いなよ」チャキッ

伊織「あら、刀じゃない。どうしたのよそれ」

真「巨人を操ってた魔物を倒したら、くれたんだ。きっとお前たちの役に立つだろうって」

真「確か、妖刀ムラサメって言ってたかな? 妖刀っていうぐらいだから、きっとすごい刀なんじゃないかな?」

伊織「ふーん……」チャキッ

伊織「………」スッ

真「おお! カッコいい! すっごく様になってるよ伊織!」

伊織「にひひっ♪ 当たり前でしょ! このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんに扱えない刀なんてないわよっ♪ 」

伊織(……にしても、なんだか威圧感のない刀ねぇ。マサムネほどの迫力は感じないわ)

伊織(そんなに強い刀ってわけじゃないのかしら……?)

伊織(……ん?)

伊織「ねえ、真……」

真「どうしたの?」

伊織「この刀……刃が無いんだけど」

真「……え?」

117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/18(金) 23:39:45.67 ID:RdiKLreDO
??「光よ!」
118 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:41:06.44 ID:Az1TjUeTO
ーーーーーー

ーーー

伊織(……こういう事だったのね)

伊織(刃を持たない刀。つまり、攻撃には向かない)

伊織(ムラサメは……守りの刀!)



銀竜「だが、我ら兄弟のコンビネーションに敵うかな?」



伊織「……亜美、前衛は私に任せなさい」チャキッ

亜美「………」

伊織「……亜美?」

亜美(どいつもこいつも強くなりやがってよぅ……)

亜美(でも、亜美だってトックンしたんだかんねっ!)

亜美(……コンビーフだかなんだかしんないけど、亜美はそんなもんに負けない!)

亜美(ふたりがけが使えなくても……ううん、真美がいなくてもちゃんと戦えるってこと、ショーメーしたる!)

亜美「いおりん、援護して!」

タタタタ…

伊織「ちょ、ちょっと亜美、待ちなさい!」

タタタタ…
119 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:47:41.75 ID:Az1TjUeTO

月の女神「……えいっ!」ブンッ


律子「……ふっ!」

ガキィン!


月の女神「っ……!」ググッ


律子「……どうしたの? 千早と戦っていた時の余裕が見られないみたいだけど」ググッ


月の女神「……!」


律子「……はっ!」グイッ


月の女神「きゃあっ!」

ドサッ


律子「私を千早と同じに考えているのだとしたら、改めた方がいいわよ?」

律子「私は、千早のように甘くはないわ!」チャキッ


月の女神「………」

月の女神「…………ふふっ」


律子「?」


月の女神「あはははっ!」

月の女神「ワクワクするよ! 強いんだね、あいどるって!」

月の女神「もっと、もっと私に見せて。あなたの強さ!」チャキッ


律子(まだ力の差を認めてくれないのか……)

律子(プロデューサーや春香の事もあるし、早いところケリをつけないといけないわね)



律子「私たちにはやらなければならない事がある。あなたたちに構っている暇はないの」ゴゴゴ

ズズズ…!


月の女神「っ……!」ゾクッ

月の女神「な、何、これ……!?」



律子「悪いけど、少しだけ本気でいくわ!」チャキッ


律子「……暗黒剣ッ!!」バッ


ズゥゥゥ…ン…


ズババババババババッ!!!

120 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:52:01.77 ID:Az1TjUeTO
ベヒーモス「!」

ベヒーモス「この闘気は……!」



真「これは、律子の……」

真(すごい……。ボクと戦った時とは比べものにならないくらいに、強い暗黒剣……!)

真(へへっ……。ボクだって強くなったつもりだったんだけどなぁ)

真(さすがだよ、律子……)



ベヒーモス「……ちっ!」ダッ

ドドドド…



真「えっ? ちょっと、どこに行くんだよっ!?」ダッ

タタタタ…



ベヒーモス(あの暗黒騎士はヤバいね。……そろそろ引いておくか)





月の女神「っ……はぁっ、はぁ……!」ヨロッ


律子「分かってもらえたかしら? あなたは私には敵わない。大人しく引きなさい」


月の女神「そんなの、イヤだよ!」

月の女神「私は、あいどるになるんだもん! あいどるになって、たくさん歌を歌ったりして……」

月の女神「うっ……」ガクン


ベヒーモス「……っと」ダキッ

ベヒーモス「どうやらここまでみたいだね」


律子「……あら、やっと引いてくれるのね?」


ベヒーモス「ああ。あんたらの事は大体分かった。……次は負けないよ」


律子「次は……?」


ベヒーモス「コトリ様は月の地下に広がる渓谷の最下層にいる。……つまり、地下渓谷が決戦の地ってワケだ」

ベヒーモス「本当の決着は、そこで着けようじゃないか」


律子(……なるほどね)


ベヒーモス「野郎共! 一旦引くよ!!」


真「待て! 逃げるのか!!」

律子「いいわ、行かせましょう」

真「律子、でも!」

律子「忘れたの? こっちだって態勢を立て直さなきゃいけないのは同じなのよ」

律子「貴音たちとも合流しなければならないし、プロデューサーや春香たちの事もある」

真「……そうだったね、ごめん」
121 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/18(金) 23:56:38.14 ID:Az1TjUeTO
ーーーーーー

ーーー



あずさ「……ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…



真「ふぅ……あずささん、ありがとうございます」

あずさ「いいえ〜」

雪歩「なんとか、追い払いましたね……」

真「でも、春香とプロデューサーを追いかけて美希と千早が……」

伊織「貴音たちともはぐれたままだしね……」

亜美「………」

真「……亜美、どうかしたの?」

亜美「う、ううん、別に」

真「そう? 何かあったら言いなよ?」

亜美「うん、ありがとね、まこちん」

亜美(あの魔物たち、兄弟っていうだけあって息ぴったしだったなー……)

亜美(兄弟かぁ……)

亜美(……ふん。真美とはケンカ中だもんね。それに、真美がいなくてもいおりんと亜美でどうにかなったし!)

亜美(………)



あずさ「律子さん、これからどうしますか?」

律子「そうですね……」

律子「私たちだけでも、このまま本来の目的地へ向かいましょう」

真「えっ? でも……」

伊織「はぐれた他のみんなはどうする つもりよ?」

律子「大切なのは、体制を立て直す事よ」

律子「他のみんなを探すにしても、月に詳しい貴音がいない状態で下手に動くのは危険だわ」

律子「かと言って魔導船に戻るわけにはいかないし……」

律子「だったら、このまま予定通り進むのがベストだと思ったの」

あずさ「そうですね。迷子になってしまっても大変ですからね〜」

真「……わかった、律子の言う通りにするよ」

律子「ありがとう」

律子「ところで雪歩、確か真美にに連絡手段を渡したって言ってたわよね?」

雪歩「あ、はい。ちょっと待っててくださいね」


雪歩「ええと……みんな、聞こえるかなっ!?」


伊織「ゆ、雪歩?」
122 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/19(土) 00:00:15.10 ID:n9lL02cGO
ー バハムートの住処 ー


真美「ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…


真美「……はい、これでよし!」

真美「どんなケガでも真美にお任せだよ!」


女の子「ありがとう、マミちゃん!」

男の子「……あ、ありがとな」

真美「んっふっふ〜♪ このくらいお安いゴヨーだよ〜」

やよい「2人とも、おかゆ作ったから、ちゃんと食べてね?」

女の子「わあ、ご飯まで用意してもらえるなんて!」

男の子「ふーん。お前、気がきくんだな」

やよい「えへへっ♪ つらくても、ごはんをいっぱい食べればきっと元気が出るよ!」ニコッ

男の子「お、おう……///」



貴音「すみません、二人とも。助けに来るのが遅くなってしまって」

女の子「そ、そんな! 私はタカネちゃんにまた会えて嬉しかったよ!」

男の子「そうだよ! タカネ、ちゃんと約束を守ってくれたしな!」

貴音「そう言って頂けるとこちらも嬉しいですね」ニコッ

男の子「へへっ」

女の子「ふふっ♪ 」

貴音「この屋敷……ずっと二人で護っていたのですね……」

男の子「ああ。もうここにはいないけど、ここはバハムート様のお屋敷だからな」

女の子「うん。私たちとバハムート様の思い出がたくさんつまってるお屋敷だから」

貴音「二人とも……」

123 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/19(土) 00:04:10.90 ID:n9lL02cGO

響「ホントいい子たちだなー……」ジーン

やよい「子どもだけで生活してるなんて、えらいです!」

真美「でも、バハムートがいないのはイタいよねー。せっかくの最強の召喚獣なのに……」

響「最強の召喚獣? もしかして、黒井社長や高木社長よりも強いのか?」

やよい「でも、高木社長も黒井社長も、ばばーん!! ってかんじですっごく強かったよ?」

真美「んー、まぁそりゃ社長も黒ぴょんも強いけど」

真美「バハムートの一番の強みは、『強い上に属性がない』ってとこなんだよ」

やよい「ぞくせいがない?」

真美「そ。魔物の中には、火とか雷とか、属性のある攻撃を吸収しちゃうヤツがいるんだよー」

真美「そーゆー魔物と戦う時は、無属性の攻撃じゃないとダメージを与えらんないから、属性のない召喚獣ってキチョーなんだよね」

やよい「うー……火もかみなりもだめで、ぞくせいがないこうげきが……???」

響「やよい、大丈夫か?」

やよい「す、すみません、わたし、頭がこんがらがっちゃって……」

響(かわいい)



響「でもさ、真美。属性を吸収しちゃう魔物なんてそうそういないんでしょ?」

真美「うん。数えるくらいしかいないよ」

響「だったらなんくるないさー! やよいだってすごく強くなったもんな!」

やよい「はい! がんばります!」



真美(真美のキオクが正しければ、さっき戦った青いドラゴン……)

真美(あいつが確か全属性吸収だった気がするんだよね)

真美(あいつらとはまた戦う事になるって言ってたから、あの青いドラゴンと出会ったら気をつけないとだね)

真美(……あ、そういや無属性の召喚獣っていえば、あまとうたちと社長がいたじゃんね。すっかり忘れてたよ)

真美(あまとうたちにもこの先ガンバってもらわないとだねー)
124 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/19(土) 00:09:20.31 ID:n9lL02cGO
男の子「……ところでさ。オレたち、タカネに伝えなきゃいけない事があるんだ」

女の子「………」

貴音「伝えなければいけない事……。はて、何でしょうか」

男の子「さっき襲ってきた魔物が言ってたんだ」



男の子「…………バハムート様が、闇に堕ちたって」



貴音「!!」



貴音(ばはむーと殿が……闇に堕ちた……?)

貴音「つまり、どういう事なのですか!?」

男の子「ど、どういう事も何も、言葉の通りだよ。バハムート様は、コトリの手下になったらしいんだ」


貴音(小鳥嬢の手下に……つまり、わたくしたちの敵となった……?)


女の子「ごめんね、タカネちゃん。こんな事になって、私たちもなんて言えばいいか……」


貴音(……いえ、わたくしの思慮が浅はかだっただけで、今思えばこの可能性もあり得たはずなのですね)

貴音(……最悪の可能性ではありますが)

貴音(ばはむーと殿が生きていらっしゃった事は嬉しいですが……)

貴音(ばはむーと殿がわたくしたちの目の前に立ちはだかった時、わたくしは、ばはむーと殿と戦えるのでしょうか……)


男の子「……タカネ、タカネ!」

貴音「っ……は、はい」

貴音「すみません、少し動揺してしまって……」

女の子「……タカネちゃんは、悪くないよ」



男の子「バハムート様は……強い」

貴音「……そう、でしょうね」

女の子「……でも、バハムート様を越えなければ世界が救われないなら……」

貴音(ばはむーと殿を越えなければ、世界は救われない……)

貴音「ならば……戦いは、避けられない」

男の子「うん、その通りだ。きっとバハムート様も、世界が救われる事を望んでる」

貴音「………」

女の子「……タカネちゃん」

女の子「もし、タカネちゃんがバハムート様と戦う意志があるなら……」

貴音「……あるなら?」

男の子「オレたち、タカネの力になりたいんだ」

貴音「……どういう、事です?」
125 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/19(土) 00:14:46.32 ID:n9lL02cGO

『……みんな、聞こえるかな!?』


響「あれ、今、声が……」

やよい「今のって、雪歩さんの声ですよね?」

真美「あーゴメン、忘れてた。真美、ひそひ草持ってきたんだったよ」スッ

やよい「ひそひそー?」

響「あー、その草かー! 懐かしいなー」

やよい「マミ、どういうこと?」

真美「えーっと、つまり……」


『私たちはこれから、丘の上にある神殿を目指しますぅ』

『真美ちゃんたちも落ち着いたら来てくださいね。そこで落ち合いましょう』


真美「……ってゆー事なんだよ」

響「この草は不思議な草なんだ。遠く離れた雪歩の声を、この草に届けてくれるんだぞ!」

やよい「わあ、すごいですねー! はなれていてもお話ができるなんて!」

やよい「えーっと、しんでんってあそこに行けばいいんですよねっ!」スッ

真美「そだね! さあ、ついにラスダンだよ。みんな、しまってこー!」

やよい・響「おー!!」

126 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/03/19(土) 00:18:29.11 ID:n9lL02cGO

響「じゃ、そろそろ行くか?」

真美「そだね。あんましここに長居しても、りっちゃんたちを待たせちゃうかもしんないし」

やよい「貴音さんにも声をかけましょう!」

響「うん!」

響「おーい、貴音ー! そろそろ出発するぞー!」

貴音「すみません、皆は先に向かってください」

響「え? なんで?」

貴音「少し、用事が出来ました」

やよい「用事ってなんですか?」

貴音「………」

貴音「わがままを言って申し訳ないと思っています。しかし、今やらねばならない事なのです」

真美「お姫ちん……?」

貴音「さあ、響、やよい、真美。行ってください」

響「………」

響「わかった。行こう、みんな」

真美「……なんだかわかんないけど、あんましムチャしたらダメだよ?」

貴音「ええ」ニコッ

やよい「わたしたち、待ってますからね?」

貴音「はい、必ず追いつきます」





男の子「……行ったな」

貴音「……そうですね」

女の子「タカネちゃん、心の準備はいい?」

貴音「はい。……ばはむーと殿を越えねば小鳥嬢と会えないというのなら……」

貴音「わたくしは、必ず越えてみせます……!」

男の子「……よし」

女の子「私たちの想いも、タカネちゃんに託すよ!」



男の子・女の子「はああぁぁぁぁああああ!!」ゴゴゴゴ



貴音「! ……これは……まさか……!」

127 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/03/19(土) 00:21:13.11 ID:n9lL02cGO
つづく

余談……というか補足ですが、マサムネはアイテムとして使うとヘイスト、ムラサメはプロテスの効果があるそうです
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/19(土) 00:33:16.77 ID:qDSvVJdDO
なん…だと…知らんかった
129 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 08:24:03.34 ID:Gx17QCPmO
ー 月の地下中心核 ー


ベヒーモス「……帰ったよ、コトリ様!」


小鳥「お帰りなさーい♪ みんな、お疲れ様ー」

リルマーダー「オイラは疲れてねーけどな!」

小鳥「あら、元気ねぇ」

小鳥「それよりどうだった? あの子たちは」

リルマーダー「うーん、逃げてばっかりでまともに戦えなかったなー」

魔人兵「なんていうか、すごく速かったですね」

暗黒魔道士「………」コクコク

プリンプリンセス「無念にも、わたくしの歌が通用しませんでしたわ……」シュン

金竜「在らぬ所から斬撃が飛んでくるのだ」

銀竜「それに、魔法を同時に複数撃つ者もいたぞ」

レッドドラゴン「オレが闘り合ったヤツなんて、ゾンビだったぜ……」

ブルードラゴン「中には少し骨のある者もおるようじゃったの」

月の女神「……強かった。あんなに強い人、私、今まで見た事なかった」

ベヒーモス「ああ……強かったね」

小鳥「良かったぁ。ファーストコンタクトは上々ってとこかしらねー」

小鳥「それじゃ、みんなは時間まで少し休んでいてね。あの子たちが来るまでにはもう少しかかりそうだし」

魔物たち「はーい!!!」

ゾロゾロ…
130 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 08:26:55.58 ID:Gx17QCPmO

小鳥「……さて、私もみんなに挨拶して来ようかな」

ダークバハムート「コトリよ。挨拶と言っても、そなたはこの中心核に封印されている身。一体どのようにしてあいどるたちに会いに行くと言うのだ?」

クルーヤ「……もしかして、精神波ですか?」

小鳥「まあ、その応用ですね。この月の範囲内くらいなら、実体を持った念を飛ばす事もできそうなので」

ダークバハムート「なるほど、この月はそなたの庭も同然という事か」

クルーヤ「ホント便利な身体ですねー」

小鳥「実際に試すのは初めてなんですけどねー」

小鳥「………」ゴゴゴ

小鳥「一本でも人参……二足でもサンダル……」

小鳥「……三艘でも、ピヨット!!」カッ

ジュワッ…

モクモク…


??「……うふ♪ 成功ですね〜」


ダークバハムート「ほう……」

クルーヤ「本当に分身した……。すごいなぁ」

小鳥「まあ、ラスボスですからね」

小鳥「うーん、そうね。あなたの名前は……『コトリマインド』にしましょう♪ 」

コトリマインド「わあ、我ながらセンスある名前ね〜。あ、だったらもう一体分身を作ってコトリブレスとか……」

小鳥「そうしたいのはやまやまなんだけど、尺の問題もあるのよね〜」

コトリマインド「それじゃ仕方ないわねぇ。ちょっと残念だけど」

ダークバハムート「姿形だけでなく、中身もコトリそのままのようだな」

クルーヤ「うーん、そうみたいだね」

クルーヤ「……ところでコトリさん、これって詠唱の必要ありました?」

小鳥「あ、えーと……少しでも雰囲気を出そうかなーって……」

クルーヤ「やっぱり適当だったんですね……」
131 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 09:26:33.65 ID:Gx17QCPmO
ー 月の地下通路 ー


スタスタ…

真美「……けっきょく、バハムートの家からここまでの道すがら、魔物と戦いまくりんぐなんですケド……」

真美「うえー、早くどっかで休みたいよー」

やよい「真美、あと少しだからがんばろ?」

真美「やよいっち……」

やよい「はい、わたしのぽーしょん分けてあげるよ」スッ

真美「かたじけない……」ゴクゴク

真美「……ふー」

真美「……ねえやよいっち。前から聞きたかった事があるんだけどさ」

やよい「どうしたの? あらたまって」

真美「んーとね……ズバリ、究極の姉とは何?」

やよい「きゅうきょくの姉……?」

真美「うん。真美は究極でスーパーなお姉ちゃんを目指しているのだよ」エッヘン

真美「そんで、ウチで一番のお姉ちゃんといえばやよいっちでしょ? だから、真美もやよいっちにあやかりたいなーと」

やよい「そんな、わたしなんて全然だよー」

やよい「それに、お姉ちゃんって言ったら千早さんとかあずささんとか……あと、貴音さんにも妹さんがいるらしいし」

真美「いやー、千早お姉ちゃんはなんかスパルタっぽいし、あずさお姉ちゃんは天然さんだし……」

真美「お姫ちんにいたっては、学んでも実践できなそうだし……」

真美「やよいっちはさ、兄弟をまとめる上で気をつけてる事とかある?」

やよい「気をつけてること……うーん……」

やよい「……うーんと、えーっと……」

やよい「……うー……」

真美「ご、ゴメンね? そんなシンケンに悩まないでよー。コーガクのタメにって程度だから」
132 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 09:29:18.63 ID:Gx17QCPmO

真美「例えばさ、妹たちが悪いコトしたらちゃんとしかるとかさ?」

やよい「んー、悪いことはしかるのは大切だけど、あんまりやりすぎるのもよくないかなーって」

やよい「それよりも大切なのは、みんなで仲良くハッピーな気持ちでいれるってことだとわたしは思う」

真美「なるほど、みんなでハッピーかぁ。やよいっちらしいねー」

やよい「ちゃーんと愛を持って向き合えば、亜美も分かってくれるよ、きっと」

真美「へ?」

やよい「ケンカ、してるんでしょ? 亜美と。あんまり長引かせないで、すぐに仲直りしないとね」

真美「むー、ケンカっていうか……まあ、ケンカなのかな。やよいっちにはバレバレだったのね」

真美「……うん、ありがとね、やよいっち。真美、ちゃんと愛を持って亜美と向き合うよ」

やよい「うん!」ニコッ

真美「ところで……」チラ


響「………」
133 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 09:34:05.07 ID:Gx17QCPmO

真美「なーに一人でしんみりしてんの!」ダキッ

響「うひゃあっ!?」ビクッ

真美「いつまでお姫ちんのこと考えてんのさ、ひびきん」

真美「お姫ちんラヴなのは分かるけど、あんましお姫ちんのことばっか考えてるとそのうちお姫ちんになっちゃうよ?」

響「えっ……? そ、そんなワケないでしょ!」

響「……まあ、貴音の事を考えてたのは確かなんだけどなー」

真美「あ、やっぱり」

響「貴音は今、どんな気持ちなのかなって」

真美「お姫ちんの気持ち?」

やよい「ばはむーとさん……でしたよね。貴音さんのおともだちで、敵さんになっちゃったって……」

響「うん……」

響「ここのところ貴音の様子がおかしかったのは、もしかしたらそのバハムートってヤツが関係してるのかもって思ってさ」

真美「おやおやぁ? ひびきんひょっとしてヤキモチですかな?」

響「ち、違うぞ! 自分はただ、貴音がそこまで気にかけるってどんなヤツなのか気になって!」

やよい「もう、真美! からかっちゃダメだよ?」

真美「あはは、ごめんね」

真美「んでも、友達と戦うかぁ……。お姫ちんもつらいよね……」

響「大丈夫、貴音ならきっと何だって乗り越えられるさー。だって、貴音はすっごく強いもん」

やよい「そうです! 貴音さんはとってもたよりになります!」

真美「うん。お姫ちんに関しては心配いらないっしょ」

真美(っていうか、今ですら素でメテオとか使われてて真美たちの立場がないのに、これ以上強くなられたら真美たちの出番が……うーん)
134 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 09:39:14.75 ID:Gx17QCPmO

響「……でもさ、よく考えたら自分たちも友達と戦う事になるんだよね」

やよい「……えっ?」

響「ほら、プロデューサーが言ってたでしょ? ピヨ子を倒さないと元の世界に帰れないって」

やよい「そ、そうなんですか!?」ガーン

やよい「わたし、小鳥さんに会ったらこのゲームは終わりなんだとばっかり思ってましたー」

真美「やよいっち、やっぱりちゃんと分かってなかったんだね」

やよい「……あの、わたしたち、小鳥さんとたたかわないとダメなんですか……?」

響「……分からない」

やよい「……う?」

響「自分も正直まだよく分からないんだ。ピヨ子の考えも、どんな顔でピヨ子に会えばいいのかも」

響「ピヨ子の事だから、いつもの悪ふざけみたいなノリなのかもしれないし、でも、もしかしたら……」

真美「………」

やよい「………」

響「……って、なんだか暗くなっちゃったな。こんな顔してたら、律子たちが心配しちゃうかも」

やよい「うー、わたし、みなさんに心配かけちゃうのはいやです」

真美「だいじょーぶ、きっとなんとかなるよ!」

真美「ほら、よく言うっしょ? 信じる者は足元すくわれるって!」

響「いや、それ、信じる意味がないんじゃ……」

真美「とにかく、元気出して行こうよって事!」

響「うん……そうだな。ここで悩んでても答えは出そうにないし……」

響「よーし、じゃあ景気付けに、誰が一番にあの館までたどり着けるか競争だ!」ビシッ

やよい「うっうー! 負けませんよっ!」ピョン

真美「ちょ、ちょっと待った! ひびきんとやよいっちに勝てるわけないじゃんかー!」

響「行っくぞー!」ダッ

タタタタ…

やよい「真美、おいて行っちゃうよ!」ダッ

タタタタ…

真美「うわーん! 待ってよー!」

タタタタ…



真美(……ホントのホントにもうすぐピヨちゃんと戦うんだよね、真美たち)

真美(どんな顔で会えばいいのか、かぁ……)

真美(いつも通り楽しくってカンジにはいかないのかな)

真美(真美、暗いのはやだなー)
135 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 10:37:27.91 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 入口 ー


律子「……着いたわね。ここでいいのよね、亜美?」

亜美「うん。確かこの建物の奥にクリスタルルームがあって、そこから月の地下にワープするんだよー」

雪歩(月の地下、かぁ……)

真「へえ、月にもクリスタルがあるんだね」

律子「……ちょっと待って。まさかここへ来てまたクリスタルを集めなきゃいけないなんて事はないわよね?」

亜美「へーきだよ。ゲームでは月のクリスタルは最初からそろってたから集める必要なんてなかったよ?」

律子「そう……ならいいんだけど」

あずさ「ようやく小鳥さんに会えるのね〜」

伊織「そう簡単にはいかないわよ。その前に親衛隊とかいうヤツらが待ち伏せしてるって言ってたじゃない」

真「ボクらの邪魔をするっていうなら、倒して進むだけさ!」

雪歩「……あの、律子さん。とりあえず中へ入りませんか?」

律子「そうね。こうして入口でたむろしているわけにもいかないし」

律子「それじゃ、ちょっと声をかけてみましょうか」



律子「こんにちはーー! 誰かいますかーー!!」


シーーン…
136 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 10:40:02.36 ID:Gx17QCPmO

真「……返事がないね。留守なのかな?」

伊織「魔物たちにやられちゃったのかもしれないわね」

亜美「ハミングウェイの洞窟にも誰もいなかったし、もう月には人はいないのかなぁ……」

伊織「わからないけど、その可能性もあり得るわ」

あずさ「ん〜……」

あずさ「月の魔物さんたちには、小鳥さんが指示を出しているのよね?」

伊織「おそらくそうだろうけど、それがどうかしたの?」

あずさ「私、小鳥さんがそんなひどい事するとは思えないのよねぇ」

伊織「あずさ……」

あずさ「小鳥さんは誰かを殺したりするような人じゃない。それは伊織ちゃんも分かっているでしょう?」

伊織「……アンタ、自分が一回死んだ事忘れたの? あれはあのアホ事務員が律子を操ってやった事なのよ!?」ガシッ

真「ちょっと伊織……!」

律子「伊織……」

あずさ「……いいえ、伊織ちゃん」スッ

あずさ「あの時はね、律子さんを止めるために私がプロデューサーさんの忠告を無視してメテオを使ってしまったから……」

あずさ「正確には小鳥さんのせいじゃないのよ」

伊織「でも、その遠因を作ったのは小鳥でしょ!? 私、許せないわ!」

亜美「いおりん……」

真「まあまあ、少し落ち着こうよ」

雪歩「そ、そうだよ。とりあえず一息ついた方がいいと思いますぅ」

伊織「………」

律子「……止むを得ないわね。勝手に入らせてもらいましょう」
137 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 10:44:38.10 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 ー


…ギィ

律子「………」キョロキョロ

律子「……静かね。やっぱり誰もいないのかしら」

亜美「んじゃ、みんなが来るまで休ませてもらおーよ」

真「!」

真「……待って。多分、誰かがいる」

律子「えっ?」

亜美「マジで?」

真「正確にはわからないけど、なんとなく気配がするんだ」

あずさ「やっぱり、月の民さんは生きているのよ〜」

伊織「分からないわよ。魔物かもしれないじゃない」

律子「どちらにしても、油断しない方がいいわね」

スタスタ…




ガチャ…

律子「ここは……」キョロキョロ

律子「図書室かしら。本棚がたくさんあるわ」

あずさ「本当ですねぇ」

あずさ「あら……?」スッ

あずさ「これは……魔法の本ね」ペラペラ

あずさ「ファイアやブリザドにサンダー……あっちには白魔法の本もありますねぇ」

雪歩「………」ペラッ

雪歩「……こっちには、月の事、地球の事について書いてある本がたくさんありますぅ」

律子「……ふむ。何か情報を得るにはここは使えるかもね」

真「マンガとかは……あるわけないか」

伊織「アンタね……そんなの当たり前じゃない」

亜美「本とかはいいから、亜美は休みたいよー」

律子「……よし、それじゃここでみんなを待たせてもらいましょう」


ガタッ!


月の民「……魔物め! 成敗してくれるッス!」ブンッ


雪歩「ひっ!?」ビクッ
138 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 10:50:36.96 ID:Gx17QCPmO

真「……はっ!」ガシッ


月の民「は……速い……!?」


真「……あれ、人間……?」


月の民「え……魔物じゃない……?」



律子「……すみません、勝手にお邪魔してしまって」

月の民「いやぁ、こっちこそいきなり襲いかかってごめんなさいッス。自分、てっきりまた魔物かと……」

月の民「それで、あんたたちはいったい……?」

真「ボクたち、地球からやって来たんです」

月の民「ちきゅう? ……あ、もしかして青き星の事ッスか?」

月の民「あれ……? って事はもしかしてあんたたち、タカネ様の……」

亜美「亜美たちはお姫ちんの友達だよん」

月の民「おひめちん?」

律子「話がややこしくなるから亜美は少し黙ってて」

亜美「ぶー」

律子「私たちは貴音の友人で、魔導船で地球……じゃなかった、青き星から貴音と共に来たんです」

月の民「おお、そうだったんスね! ついにタカネ様が戻って来た! これで勝てるッス!」

月の民「それで、タカネ様はどこに?」

律子「それが、魔物と戦っている時にはぐれてしまって……」

律子「でも、ここを待ち合わせ場所にしているので、貴音もそのうちここへやって来ると思います」

月の民「そうッスか……」

月の民「っと、そうだ、申し遅れたッス。自分は月の民。この館でタカネ様に仕えている者ッス。よろしくッス!」ペコリ

律子「秋月律子です。よろしく」



月の民「ここは元々タカネ様の館なので、あんたたちの好きに使ってもらって構わないッス。光の戦士たちに協力するのは我々月の民の使命でもあるッスから」

律子「光の戦士……?」

月の民「世界が闇に侵された時、清らかな心を持つ、光に導かれた戦士たちが闇を晴らすだろう……」

月の民「この月に伝わる伝承ッス」

月の民「あんたたちは、光に選ばれし戦士たちなんス。タカネ様の友達なら間違いないッス!」

真「光の戦士かぁ……それっぽくなってきたなぁ」

月の民「あんたたちは、コトリを倒しに地下渓谷へ行くんスよね?」

律子「えっ? いや、まあ……」

伊織「……そうよ。私たちは、小鳥を倒しに行くつもり」

律子「伊織……」

月の民「この世界の事、どうかよろしくお願いするッス!」ペコリ
139 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 11:00:57.18 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 図書室 ー


亜美「うー、ミキミキじゃないけど、ちょっとつかれたかも〜」グデー

雪歩「律子さん、みんなが集まるまでは休んでいてもいいですよね?」

律子「そうね。何か行動を起こすにしても、みんな揃ってからの方がいいわね」

雪歩「亜美ちゃん、少し寝てなよ。私、後で起こしてあげるから」

亜美「ホント? 助かるよ〜……」ムニャムニャ

律子「みんな、少し休みましょ。幸いここにはベッドもあるみたいだし、自由に使っていいって言われてるしね」

真「ボクはいいよ。そんなに疲れてるってわけじゃないし」

律子「ダメよ。ちゃんと休みなさい。これから最後の戦いが控えているんだから。真、あなたはウチのエースなのよ?」

真「……ちぇ、ボクに勝ったクセに、エースだなんて言ってくれるなぁ」

律子「まったく……まだファブール城での事を根に持ってたのね。あの時は結局うやむやになったでしょう? だからノーカンよ」

真「ボクとしては納得いかないんだけど……分かったよ、律子の言う通り、ちゃんと休むよ」

律子「分かればよろしい」

律子「……さてと」スクッ

伊織「律子。アンタは休まないの?」

律子「ええ、ちょっとね」
140 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 11:03:43.19 ID:Gx17QCPmO

雪歩「………」ペラッ

雪歩「………」ペラッ

雪歩「……ふぅ」パタン

真「雪歩、何か面白い事でも書いてあった?」

雪歩「真ちゃん……」

雪歩「うん。小鳥さんについて少しだけ分かったかも」

雪歩「小鳥さんは月の民の一人で、大昔にすっごい悪い事をしちゃったっていう設定みたい」

雪歩「それで、今は他の月の民さんたちの力で月の地下深いところに封印されてるんだって」

真「そっか……だからボクたちに会いに来れないのかな」

雪歩「うん。小鳥さんはきっと、地下から動けないんじゃないかな」

真「……ま、どのみちボクたちから会いに行くから、問題はないけどね」

雪歩「……ねえ、真ちゃん?」

真「ん? なに?」

雪歩「私たち、あと少しで元の世界に帰れるんだよね?」

真「雪歩……」

真「もちろんだよ。みんな揃って小鳥さんに会いに行って、ゲームをクリアして終わりだ」

真「少しさみしい気もするけど、早く帰ってアイドル活動再開しないとね」

雪歩「そう……だよね。何も心配する事はないんだよね」

真「……さ、雪歩も少し休みなよ」

雪歩「うん……」


雪歩(……さっきの伊織ちゃんの言葉)

雪歩(方便かもしれないけど、伊織ちゃんは『小鳥さんを倒す』ってはっきりと言った)

雪歩(私たちは、どうすれば元の世界へ帰れるのかをプロデューサーから聞いてるけど……)

雪歩(やっぱり元の世界へ帰るためには、小鳥さんと戦わなくちゃならないのかな……)
141 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 11:05:45.65 ID:Gx17QCPmO

あずさ「………」ペラッ

あずさ「………」ペラッ

あずさ(……う〜ん、メテオって思ったよりもすごい魔法だったのね〜)

あずさ(やっぱり、あの時の私に使いこなすのは早かったのかしら〜)

あずさ(……でも、きっと小鳥さんは……)

伊織「……あずさ」

あずさ「伊織ちゃん? どうしたの? 律子さんの言う通り休める時に休んだ方が……」

伊織「私、やっぱり納得いかないわ」

あずさ「納得いかないって……もしかして、さっきの話かしら?」

伊織「ええ。……小鳥が直接手を下していないにしろ、あずさ、アンタが命を落とした事に小鳥が関係しているのは確かよ」

伊織「それについて、アンタはいったいどう考えているの?」

あずさ「……そうね……」パタン

あずさ「私も、少しは物語に貢献できたかなって」

伊織「……どういう事?」

あずさ「ほら、私ってかなり鈍臭いでしょう? でも、あの時は私なりに真剣にやったつもりなのよ」

あずさ「だから、私でもちゃんと役を演じられたかなって」

あずさ「うふふ、まさか死んでしまうとは思わなかったんだけど……」

伊織「役ってアンタ……」

あずさ「小鳥さんも、ちゃんと自分に与えられた役を演じているわ」

あずさ「だから、小鳥さんの為に、私もできる事は頑張るつもりよ?」

伊織「………」

伊織「アンタは……それでいいの?」

あずさ「……ええ。私は、こうしてみんなでいられれば幸せだから」

あずさ「伊織ちゃん、私の事を考えてくれてありがとう」ニコッ

伊織「……アンタの為じゃないわ。私自身が納得いかないってだけよ」

あずさ「それでも、嬉しかったわ♪ 」ダキッ

伊織「ちょ、あずさ、離しなさいよ!」

あずさ「伊織ちゃんはいつもみんなの事を考えてくれてるから、私、すごく感謝してるの」

伊織「そんなの……」

伊織(……あずさ、アンタの方が何倍もみんなの事を考えてるわよ)

伊織(損な役回りになってまで、小鳥の事を気遣えるなんて……)

伊織(……敵わないわね、やっぱり)
142 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 11:07:26.77 ID:Gx17QCPmO

律子「………」ペラッ

律子「………」ペラッ

律子「………」ペラッ


律子「………」パタン


律子「……ふぅ」


律子(光の戦士……)

律子(暗黒騎士である私が、この世界の闇を振り払う存在になれるのかしら……)

律子(そういうのは、あの子たちに任せておいた方がいいのかも)

律子(それよりも……)

律子(失われた魔法、メテオ……か)

律子(小鳥さんに言われて、あずささんに覚えてもらったけど……)

律子(あの魔法が無ければ、あずささんがあんな目に逢う事は無かったのかもしれない)

律子(私があずささんを行かせなければ……)

律子(………)

律子(小鳥さんと戦う事を、あの子たちはどう捉えているのかしら)

律子(最後の戦いは、みんなにとってきっと辛い戦いになるのは間違いないわ)

律子(何にせよ、私も今のままじゃいられない。あずささんだけに辛い思いをさせる訳にはいかない)


律子(私も覚えよう。……メテオを)
143 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 11:10:05.52 ID:Gx17QCPmO

亜美「……zzz」


ーー♪ …


ーー♪ …


亜美「……んん……」


ーー♪ …


ーー♪ …


亜美「……だれー……? うるさくて寝れないよー……」ムニャムニャ


ーー♪ …


亜美「………」ムクッ

亜美「もー……目が覚めちった」

亜美「みんなは……」キョロキョロ

真「……zzz」

雪歩「……zzz」

あずさ「……zzz」

伊織「……zzz」

亜美「……みんな寝ちゃってるね。起こさないでおこっと」

亜美「あれ、りっちゃんがいない? トイレかなぁ」

亜美「ま、いいや。亜美はさっき聴こえたメンヨーな歌声の主を探さないとね」

亜美「確か、2階の方から聴こえてきたよね」

スタスタ…
144 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 11:13:54.83 ID:Gx17QCPmO
ー 月・巨大クレーター ー


千早「はあああっ!」ブンッ

キィンッ!

春閣下「ふっ!」ガキィン

美希「えいっ!」ギリッ

ビュッ…

春閣下「ふふっ」ヒョイッ

春閣下「はっ!」ドゴッ

千早「っ……く!」ヨロッ

美希「千早さん!」ダッ

春閣下「回復はさせないよ!」チャキッ

美希「わっ!」

美希(……速いの!)

春閣下「ふっ!」ドゴッ

美希「う……」ヨロッ

ドサッ



春閣下「はぁーあ……ダメだよ二人とも。全然ダメ。私の動きに全然ついて来れてないじゃない」

春閣下「そんなんじゃプロデューサーさんは手に入れられないよー?」


千早「くっ……」ヨロッ

美希「ケアルラ!」

シャララーン! キラキラキラ…

美希「千早さん、へーき?」

美希「……ゴメンね。ケアルガが使えればいいんだけど……あの子の動きが速くて、詠唱してるスキを与えてくれないの」

千早「私なら大丈夫。美希こそ、あまり無理はしないで」

美希「二人がかりでもあの子を止められないなんて……とんだ誤算だったの」
145 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 11:15:50.76 ID:Gx17QCPmO

千早「……大丈夫、心配はいらないわ。勝機は必ずあるから」

美希「本当?」

千早「ここまで戦っていて分かったけれど、あの子はやっぱり春香だった」

美希「……どういう事なの?」

千早「ヤミさん自体は春香の別人格かもしれないけど、根本は春香と同じという事よ」

千早「そこを攻めれば、おそらく……」

千早「ここは窪みが多くて足場が悪いわ。ヤミさんを平地へおびき出しましょう」

美希「……何か作戦があるんだね? 分かったの。千早さんに任せるね!」



春閣下「相談は終わったかなー? もう攻撃しちゃっていーい?」



千早「行くわよ、美希」

美希「うん!」

タタタタ…



春閣下「……ってこらー! なんで逃げるのよー!? それじゃ勝負にならないでしょうがー!」プンスカ

春閣下「もー!」

タタタタ…


P(千早と美希、全然歯が立たないみたいだけど、どうするつもりだ?)

P(千早に何か策があるみたいだったが……)

P(二人とも……なんとか春香を頼むぞ……)
146 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 11:35:00.39 ID:Gx17QCPmO
ー 月・平地 ー


美希「……ねえ千早さん、とりあえず平らな場所に来たけど、これからどうすればいいの?」

千早「ここでヤミさんを迎え撃つわ」ザッ

美希「ここで? ……確かにさっきの穴ぼこだらけのところよりは動きやすいって思うけど、それはあの子にとっても同じ事じゃないの?」

千早「さっきも言った通り、ヤミさんは人格以外は春香本人と何も変わらないのよ」

千早「……おそらく、癖も」

美希「クセ? …………あ!」

千早「チャンスは必ず訪れる。この平地なら」

美希「さすが千早さんなの! 大好きな春香の事なら何でも分かっちゃうんだね?」

千早「そ、そういう訳じゃ……///」

美希「あは☆ 照れる千早さんもかわいいの♪ 」

千早「も、もう……こんな時にからかわないで」

千早「! ……来たわ!」



タタタタ…

春閣下「……待ちなさーーい!!」

春閣下「美希と千早ちゃんを倒して、私がプロデューサーさんに一番相応しいって事、証明するんだからー!」



千早「私が引きつける。美希は隙を突いてちょうだい」

美希「分かったの!」コクリ

千早「ヤミさん、望み通り相手になるわ!」

タタタタ…



春閣下「ふふっ、そう来なくっちゃ!」チャキッ

春閣下「……はっ!」ブンッ

千早「くっ……!」ダッ

ブワッ…

春閣下「えいっ!」ブンッ

千早「……ふっ!」ゴロン

…スタ

春閣下「また千早ちゃんが私を引きつけて、美希に隙を突かせる作戦?」

春閣下「それはさっき無駄だって教えてあげたはずなんだけどなー」

千早「……本当にそうかしら?」

春閣下「えっ……?」

千早「……こっちよ!」ダッ

タタタタ…
147 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 11:36:57.63 ID:Gx17QCPmO

春閣下「また逃げるつもり!? ズルいよ千早ちゃん!」

春閣下「逃がさないんだから!」

春閣下「……あっ」ズルッ

春閣下「うわわっ……!」

どんがらがっしゃーん!


千早「! ……美希、今よ!」


美希「了解なの!」ギリッ

美希「……えいっ!」

ビュッ…!

ドスッ!


春閣下「っ……ぐ……!」


千早「はっ!」タンッ

フワッ…


ヒュー…ドガッ!!


春閣下「あ……ぅ……」ヨロッ


…スタッ

千早「………」

美希「千早さん、やったの!」

千早「あなたが春香の分身である以上、何もないところで転ぶその癖はついて回るのよ」

千早「その隙を逃す私たちではないわ」



P(千早たち、うまく一矢を報いたみたいだが……多分それだけじゃ勝てないぞ)

P(闇春香は……強い)
148 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 11:41:02.05 ID:Gx17QCPmO

春閣下「……そっか、なるほどね。そう来たかぁ……」スクッ

春閣下「でも、まさかこれで勝ったつもりになってないよね?」


千早(……分かってる。ヤミさんには最大の技がまだ残っているもの)

千早(それをどうにかしないと、私たちに勝ち目はない……)



春閣下「なんだかんだ言って千早ちゃんも、ちゃーんと白黒付けるのがお望みみたいだし……」

春閣下「そんなに見たいなら見せてあげるよ、私のとっておきの技……!」チャキッ

春閣下「……!」ゴゴゴ



千早(……来る!)

千早(月の魔物ですら一撃で倒した暗黒剣。どうやって凌ぐか……)

美希「………」

美希「……千早さん、力を貸して」

千早「美希……?」

美希「あの子の技、なんていうか、すっごく禍々しいの」

千早「そうね。暗黒剣っていうぐらいだから……」

美希「ミキね、その暗黒に勝てるのは、きっとキラキラの光だって思うな」

千早「光……」

美希「ミキの全力のキラキラ魔法であの暗黒に対抗してみるの」

美希「だから千早さん、千早さんのキラキラも、ミキに貸して?」

千早「キラキラ……そうか、ホーリーね。分かったわ」


美希「……!」ゴゴゴ

千早(ホーリーランス……お願い、力を貸して……!)ゴゴゴ
149 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/04/16(土) 11:43:50.67 ID:Gx17QCPmO

春閣下「ホーリーか……」

春閣下「ふふ……二人のその光すら、私の闇に取り込んであげるよ!」

春閣下「そして、最後にプロデューサーさんの隣にいるのは……」

春閣下「絶対に、私なんだから!」



春閣下「……暗黒剣ッッ!!」

ズオオオォォオオ…!



美希「ハニーが誰を選ぶかなんてミキには分からない。でも、春香だけは……」

千早「……絶対に、返してもらうらわ!」



美希・千早「……ダブルホーリー!!!」

キラキラキラ…




…ゴゴゴゴゴゴ


ドゴオオォォオオオオン…!!


150 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 19:57:22.92 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 クリスタルルーム ー


律子「ーー!」ピクッ

律子「今何か、ものすごい力が……」

律子「美希と千早、大丈夫かしら……。みんなが集まったら何人かで捜索に出ないといけないわね」


律子「ひい、ふう、みい……」

律子「……全部で13個もあるのね、月のクリスタルは。台座が全て埋まっているって事は、数が揃ってるって事でいいのよね?」

律子「このクリスタルが月の地下へ連れて行ってくれるのかな」

律子「………」

律子(ついにここまで来た。色々あったけど、あとは最後の戦いを残すのみ)

律子(長かったような、短かったような……いや、長かったわね)

律子(……でも、最後の戦いの前に、一つだけやる事がある)

律子(それは、絶対に避けては通れない事)

律子(それを避けて最後の戦いに臨んだら、私たちはきっと……)

律子(……崩壊してしまうから)



「……たのもー!!」

「たのもーだぞ!!」

「たのもーですー!!」



律子「あら……ふふ、ようやく到着したみたいね」
151 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:01:42.27 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 ホール ー


月の民「……えーと、あんたたちもタカネ様の仲間ッスか?」

やよい「はい!」

響「もちろんだぞ!」

真美「ふっ……ヤツとは兄弟の盃を交わした仲なんだぜ……」

響「君は貴音の友達なの?」

月の民「はいッス。自分、タカネ様に仕えてる月の民ッス!」

響「そっか。よろしくなー!」

やよい「よろしくおねがいしまーす!」ガルーン

月の民「それにしても、肝心のタカネ様はまだ来ないんスかねー」

真美「あ、お姫ちんならたぶん後で来るよ。今はバハムートちんのとこでお話ししてるYo」

月の民「ああ……バハムート様のところッスか……」



律子「待ってたわよ、三人とも」



響「律子!」

やよい「律子さん!」

真美「りっちゃん、あのね、お姫ちんは……」

律子「ええ、聞いてたわ。ここは貴音のホームグラウンドなんだし、色々あるのね、きっと」

律子「それより、あなたたちも少し休みなさい。疲れたでしょう?」

真美「ふー、よーやく休めるよ〜」

やよい「律子さん、勝手に使ってだいじょーぶなんですか?」

律子「ええ。ここは貴音の家だそうだし」

響「そっか。じゃあ問題ないな!」



律子「……あの、月の民さん?」

月の民「はい、何ッスか?」

律子「月のクリスタルについて、少し訊きたい事があるんですけど」
152 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:05:04.06 ID:Gx17QCPmO
ー 月の大神殿 図書室 ー


雪歩「……ん……」

雪歩「……あれ……」ムクッ

雪歩「……そっか、私……」

雪歩(いつの間にか寝ちゃってたんだ。みんなも……)

響「……zzz」

やよい「……zzz」

真美「……zzz」

雪歩(あ……響ちゃんにやよいちゃん、真美ちゃんもいるみたい)

雪歩(良かったぁ、無事で)

雪歩(……あれ? でも、四条さんがいない……?)

雪歩(何かあったのかな。三人が起きたら訊いてみないと)

雪歩「あ、そうだ私……亜美ちゃんに起こしてあげるからって言って……」キョロキョロ

雪歩「ど、どうしよう、亜美ちゃんがいないよぅ!」

伊織「……もう、何かあったの……?」ムクッ

雪歩「あ、伊織ちゃん、ゴメンね、起こしちゃって」

伊織「それはいいけど、雪歩、今何か喚いてなかった?」

雪歩「それが、さっき起きたら亜美ちゃんがいなくて……」

伊織「どうせトイレとかじゃないの? 慌てる事じゃないわよ」

雪歩「……私、亜美ちゃんを探しに行かなきゃ!」グッ

伊織「そう。じゃ、私はもう少し寝させてもらうわ」ゴロン

雪歩「ま、待って伊織ちゃんっ!」ギュッ

伊織「な、何よ?」

雪歩「ひとりじゃ怖いからついて来てくれないかな……?」ウルウル

伊織「………………はぁ」
153 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:07:12.35 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 2F ー


スタスタ…

伊織「ったく、なんで私が……」

雪歩「ご、ゴメンね。でも、ひとりじゃどうしても怖くて……」ブルブル

伊織「仕方ないわねぇ……」


ーー♪ …


伊織「……ん? 今何か聞こえなかった?」

雪歩「ふぇっ!?」ビクッ


ーー♪ …


伊織「……ほら、また」

雪歩「た、確かに……」ビクビク


ーー♪ …


伊織「これは……歌?」

雪歩「ま、まさか……」

雪歩「志し半ばでこの世を去った吟遊詩人の幽霊とかなんじゃ……!」

伊織「ば、バカね、考えすぎよ。幽霊なんているはず……」

伊織「……あるわね。よく考えたらそういう世界だったわ、ここって」

雪歩「どうしよう伊織ちゃん! 亜美ちゃんが! 亜美ちゃんがっ!」ユサユサ

伊織「だ、大丈夫よ! あの亜美が幽霊なんかに遅れを取るわけがないわ」クラクラ

雪歩「で、でも!」

伊織「もう、いいから落ち着きなさい!」ギュッ

雪歩「ひぅっ!」ビクッ

伊織「雪歩。アンタは心配性すぎるのよ。ここまで戦い抜いてきた亜美が簡単にやられる訳ないでしょ?」

雪歩「うぅ……そ、そうだよね。亜美ちゃん、すごく強くなったもんね」

伊織「とにかく、歌はあの部屋から聴こえてくるみたいね」スッ



伊織「……いい、開けるわよ?」

雪歩「う……うんっ!」ゴクリ


…ガチャ
154 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:10:19.33 ID:Gx17QCPmO
ー 月の民の館 2F ゲストルーム ー


ハミングウェイ1「フンフフーン♪ 」

ハミングウェイ2「フンフフーン♪ 」

ハミングウェイ3「フンフフーン♪ 」

ハミングウェイ4「フンフフーン♪ 」

ハミングウェイ5「フンフフーン♪ 」

亜美「んっふっふ〜♪ 」

ハミングウェイ6「ンッフッフー♪ 」

ハミングウェイ7「ンッフッフー♪ 」

ハミングウェイ8「ンッフッフー♪ 」

ハミングウェイ9「ンッフッフー♪ 」

ハミングウェイ10「ンッフッフー♪ 」



伊織「」

雪歩「」



亜美「……あ、いおりんにゆきぴょん! おはー」
155 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:15:31.44 ID:Gx17QCPmO

伊織「……とりあえず、突っ込みたいところはたくさんあるけど……」


伊織「アンタは馴染みすぎよ! 一瞬このヘンテコなヤツらの一員かと思ったわよ!」ビシッ

亜美「おおう、さすがいおりん、ナイスツッコミ……」

伊織「いったい何やってたのよアンタは」

亜美「何って……ボーカルレッスン……かな?」

雪歩「うぅ、良かったぁ、亜美ちゃんが無事で……」

伊織「……まったく、幽霊の正体がこんなアホらしい集団だったなんて、ビクビクしてた自分がバカみたいよ」プンスカ

雪歩「あれ、でも……。この人たちって確か、親衛隊の魔物さんたちにやられちゃったはずじゃ……?」

伊織「あ……そういえばそう言ってたわね。まさか、本当に幽霊?」

ネミングウェイ「幽霊じゃないぞ。オレたちはちゃんと生きてる」

伊織「あら? ちゃんと話せるヤツもいたのね」

156 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:17:58.05 ID:Gx17QCPmO

亜美「このおっちゃんはネミングウェイって言って、人の名前を勝手に変えるのがお仕事なんだよー」

ネミングウェイ「おい、勝手には変えねーよ!」

伊織「どうでもいいわよ、そんな情報」

ネミングウェイ「お前冷たいな!?」

雪歩「ゴメンね亜美ちゃん、私、亜美ちゃんの事起こしてあげるって言ったのに……」

亜美「そんなのゼンゼン気にしないでよー。ゆきぴょんも疲れてたんだしさ!」

雪歩「亜美ちゃん……」

伊織「……さて、さっさと戻るわよ。あんまりバラバラになると律子が苦労するし」

亜美「そだねー」

ネミングウェイ「ちょ、ちょっと待てよ。あんたたち、もっと他に用事はないのか? 例えば、名前を変更するとか」

伊織「しないわよ」

雪歩「しないですぅ」

亜美「しないっぽいね」


ネミングウェイ「あ、ちょっと待」


バタン
157 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:21:50.17 ID:Gx17QCPmO
ー 月・平地 ー


春閣下「……はぁ、はぁっ……!」ヨロッ

春閣下「私に全力を出させるなんて、さすが美希と千早ちゃんだね……」

P「千早! 美希!」

春閣下「無駄ですよ、プロデューサーさん。私の全力の暗黒剣を受けて立ち上がる事なんて……」



美希「……はぁ、はぁ……」ヨロッ



春閣下「…………美希!」

P「美希! 良かった!」

春閣下「……しぶといね。白魔道士のクセにそんな体力があったなんて……」



美希「……千早さんのおかげなの。千早さんが、ミキをかばってくれたから……」

千早「………」グッタリ



春閣下「……そっか、千早ちゃんが……」

P「千早! ……美希、回復魔法でなんとかならないのか!?」



美希「ゴメンね、ハニー。さっきのホーリーで魔力を使い果たしちゃったの……」



P「そんな……。じゃあ、俺の身体の中に、べろちょろに回復アイテムが入ってるから、それで……!」

春閣下「ダメですよ。そんな事はさせられません」ギュッ

P「闇春香、もうやめてくれ! こんな事をしても、俺はお前に気持ちが動く事はない!」

春閣下「……さすがに今の言葉はグサリときましたね」

春閣下「でも、言ったじゃないですか。私になびかないなら、なびかせるまで」

春閣下「……どんなに時間をかけても」

P「……!」
158 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:28:23.07 ID:Gx17QCPmO

美希「無駄だよ、ハニー。その子はね、きっと恐れてるの」

美希「ミキたちがゲームをクリアして、元の世界へ帰っちゃうのを」



P「……それはどういう事だ?」



美希「ミキね、こんな春香、このゲームの世界へ来て初めて見たの。それって、『この春香はゲームの世界限定の存在』って事だよね?」

美希「だから、ミキたちが……春香が元の世界へ戻ったら、その子はきっと存在自体が消えちゃうと思うの」



春閣下「……そうだよ。だから、私は邪魔をする。『わたし』を元の世界へなんて帰らせないし、プロデューサーさんもずっと一緒!」

P「……そう、だったのか……」

春閣下「私の知らないところで勝手に生まれさせられて、勝手に誰かの影の存在にさせられて……」

春閣下「……勝手に、好きな人も決められて」

春閣下「私には、何一つ自由はなかった。自分で選んで手にしたものなんて、何一つなかったんだよ!」



美希「………」



春閣下「……だからね、恨む事にしたの。美希も、千早ちゃんも、みんなも……全てを」

春閣下「知ってる? 暗黒剣ってね、負の力で威力が増幅するんだよ?」



美希「!」



春閣下「全てを恨む私の感情は……暗黒剣を、さらに暗黒剣足らしめるッ!!」グッ


ズズズ…
159 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:34:03.20 ID:Gx17QCPmO

P「そんな……さらに威力が……!?」

春閣下「……これが、暗黒剣の最終形です。恨み、悲しみ、絶望……あらゆる負の感情が、私から溢れ出しているんです」ゴゴゴ

P「……!」

春閣下「さあ、どうする、美希? 今逃げ出せば、命だけは助かるかもよ?」ゴゴゴ



美希「……逃げるなんて選択肢は、今のミキにはないの」



春閣下「そっか。……じゃあ、死ぬといいよ!」チャキッ

P「美希っ!」



美希「死ぬ……?」

美希「そんな選択肢も、最初から持ち合わせてないのッ!」

美希「……!」グッ



春閣下「ただの非力な白魔道士のあなたが、空っぽの魔力で何をするつもり?」

春閣下「大人しく負けを認めなさい!」

P「やめろ!」

春閣下「……暗黒剣ッ!!」


ズオオオォォオオ…!!


美希(あの子の言う通り、ミキの魔力はもう空っぽだし、弓矢で暗黒剣を防げるわけがないの)

美希(……このままじゃ、ハニーも千早さんも……)

美希(……春香も救えない)

美希(あの時の力。あれさえあれば……)

美希(あの時、貴音ややよいを助けたっていう、あの力さえあれば……!)



美希(お願い、ミキに力を貸して欲しいのーー!)



パアアァーー!!



春閣下「……なに!? 光が……!」

P「美希!」

160 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:37:55.98 ID:Gx17QCPmO

シュウゥゥ…


覚醒美希「……虚栄の闇を払い……」スッ

覚醒美希「真実なる姿現せ……」ゴゴゴ



春閣下「……何、この魔力……!? 美希、もう魔力はゼロだったはずなのに……!?」

P「あれは、美希……なのか……?」



覚醒美希「……あるがままにッ!」カッ



覚醒美希「…………アルテマッ!!」



ゴオオオォォオ!!

キラキラキラ…!



春閣下「なんで!? なんで魔法が使えるのッ!?」

春閣下「……でも、私の暗黒剣が負ける訳がないッ!!」グッ


ズオオオォォオオ!!


覚醒美希「……ううん、あなたは負けるよ。だって、光は……」グッ

覚醒美希「……必ず、闇を照らし出すから!」


キラキラキラ…!!


春閣下「そんな……そんな光は、絶対に認めないッ!! 私の闇は……誰にも……!!」


ズオオオォォオオ!!



ズガアアアァァアアン…!!

161 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:41:38.53 ID:Gx17QCPmO

覚醒美希「……く……」ヨロッ

覚醒美希「……まさか、アルテマで相殺するのがやっとだなんて……」チラ


春閣下「………」


覚醒美希「それだけ根が深い闇……って事なんだね」

覚醒美希「……そうだ、ハニーは!」

タタタタ…


覚醒美希「ハニー、しっかりして!」

P「美希…か? 大丈夫、俺はダメージなんてないよ」

覚醒美希「あ……そっか。ハニーだけはこの世界に干渉されないんだっけ」

P「ああ。……それより千早は?」

覚醒美希「さっきケアルガをかけておいたからへーきだよ」

P「そうか……。あとは、春香か……」チラ


春閣下「………」


P「春香も変身したりしたからもう驚かないけど、お前、美希……なんだよな?」

覚醒美希「うん、そうだよ」

P「なんか髪が短くなってるし、雰囲気が大人っぽくなったな」

覚醒美希「えへへ、短い髪も似合うでしょ?」

P「……ああ、すごく似合ってる」

覚醒美希「『あの』春香は春香の別人格らしいけど、『この』ミキはミキと同一人格。言ってみれば夢を見てる状態ってカンジなの」

P「夢を?」

覚醒美希「うん。だから、元のミキに戻ったら、『この』ミキでの出来事はぜーんぶ覚えてないんだ」

P「そうなのか……」
162 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:45:55.55 ID:Gx17QCPmO

覚醒美希「ねえ、ハニー。どうせ覚えてないから、今言うね?」

P「ん?」

覚醒美希「あの子が言ってた事……春香や千早さん、美希にとって……ううん、765プロのみんなにとってハニーがとても大切な人って話だけど、あれはホントだよ」

P「………」

覚醒美希「それで、誰がハニーと結ばれるかでミキたちがケンカになっちゃうってあの子は言ってたけど……ミキは、そんな事ないって思うな」

P「え……?」

覚醒美希「765プロには仲間の幸せを祝福できない子なんていないし、みんながみんなの幸せを望む子ばかりなの」

P「……うん、美希の言う通りだ」

覚醒美希「だからね? ハニーは自分の気持ちに正直になって欲しいの。誰か一人しか選ばれなくても、そんな事でミキたちの絆は壊れたりしないし、ハニーが正直になってくれない方がミキたちにとっては悲しい事だから」

P「美希……」

覚醒美希「……本音は、ミキを選んで欲しいなって思ってるんだけどね」

P「………」

覚醒美希「忘れないで。ミキたちはずっとずっと、おばあちゃんになっても仲間だから。その絆は、何者にも壊せない……壊させない」

P「……ありがとう、美希」

覚醒美希「んーん。これでハニーの中のミキのシンショーもアップかな? あは☆」

P「ふふ、まったく……」

覚醒美希「!」

覚醒美希「……まだだったの!」キッ

P「え?」
163 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:52:25.48 ID:Gx17QCPmO

春閣下「……こんなの……認めない……!」ヨロッ

春閣下「私が……負けるなんて、あり得ない……ッ!」



P「闇春香……」

覚醒美希「さすがは春香なの。しぶとさは誰にも負けてないってカンジ」



春閣下「もう一度……今度こそ、美希、あなたを倒す! 完璧な暗黒剣で!」チャキッ



P「もうやめろ、闇春香!」



春閣下「やめません……! 私には、これしか道はないから……!」

春閣下「……暗黒剣ッ!!」


ズオオオオオ!!



覚醒美希「………」

覚醒美希「……ホーリー!」


キラキラキラ…

ドドドドドドドッ!!


春閣下「そ、そんな……! 私の暗黒剣がホーリーなんかに相殺されるなんて……!」


覚醒美希「気づいてないの? あなたの暗黒剣、さっきよりだいぶ威力が落ちてたの」


春閣下「くっ……!」

春閣下「それなら、勝つまで何度でもやってやる……!」



千早「……待って! ヤミさん、もうやめましょう!」
164 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 20:56:30.05 ID:Gx17QCPmO

覚醒美希「千早さん!?」

P「千早……もう平気なのか!?」

千早「はい。美希のおかげです」

覚醒美希「無理しちゃダメだよ、千早さん!」

千早「いいえ、私だけ寝ている訳にはいかないわ」

千早「……ヤミさん、あなたは春香がこの世界へ来てから、ずっと春香と一緒にいたのよね?」


春閣下「……急に何? 時間を稼いだって状況は何も変わらないよ」


千早「時間稼ぎではないわ。これは忠告よ」

千早「最初からずっと春香と一緒にいたあなたが、覚えていないはずがない。この世界へ来て一番最初に魔物と戦った時の、プロデューサーの言葉」


春閣下「……!」


覚醒美希「……何の事?」

P「……もしかして……」



千早「『春香の能力は、体力をだいぶ消費するから』という助言」

千早「あれだけ暗黒剣を何度も使ったんだもの。あなたはもう、立っているだけでやっとなはずよ」


春閣下「………」
165 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:00:27.67 ID:Gx17QCPmO

千早「これ以上暗黒剣を使ったら、春香の身体そのものが危ないわ」

覚醒美希「そうなの?」

P「……多分、千早の言う通りだ」


春閣下「…………ふふっ。千早ちゃんは物覚えがいいね」

春閣下「でも、千早ちゃんのおかげで分かったよ。……あなたたち二人に勝てる方法が」

春閣下「プロデューサーさんをこっちに渡して。そうしないと、私は暗黒剣を使う」チャキッ

春閣下「美希も千早ちゃんも、『わたし』の身体は大事でしょ?」


覚醒美希「そんな、ズルいの!」

P「闇春香が春香と一心同体である限り、こちらに勝ち目は無いのか……!」

千早「………」

千早「二人とも、諦めるのはまだ早いわ。今のこの状況をなんとかできる人物が、一人だけいる」


春閣下「何を言ってるの!? 今さら援軍でも呼ぶつもり? そんな時間はないし、『わたし』を人質に取っている以上、『私』の勝ちはもう揺るがないッ!」


覚醒美希「! ……そうだったね。千早さんの言う通り。今の今まですっかり忘れてたの」

P「そうだな。……ここは、彼女に頑張ってもらうしかない」

千早「はい。精一杯呼びかければ、必ず声は届くはずです」



春閣下「な、何をするつもりなの……!?」

166 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:02:51.55 ID:Gx17QCPmO
ー ??? ー


春香「………」

春香「………」

春香「…………何を考えてるんだろ、私。みんなと争うなんてあり得ないよ」

春香「そりゃ、プロデューサーさんの事を諦めるのは辛いけど……」

春香「うー、でもなー。ここまではっきりと好きになった人は初めてだし……」

春香「それに、き、キスもしちゃったし……あまつさえ、裸も見られちゃってるし……」

春香「……///」ボンッ

春香「……ああもう! 邪な想像が頭から離れなくなっちゃったよぅ!」ブンブン

春香「はぁ……」

春香「私がこうしている間にも、千早ちゃんと美希が戦ってくれてるっていうのに……」

春香「……ううん、二人だけじゃないよね。雪歩に真、真美、亜美……」

春香「あずささん、伊織、やよい、響ちゃん、貴音さん……」

春香「律子……お姉ちゃん」

春香「プロデューサーさんや高木社長、黒井社長、ジュピターさんたち」

春香「それから…………小鳥さん」

春香「みんなと、絶対に元の世界へ帰らなきゃ」

春香「私ひとりがこんなところでもたついているわけにはいかないよね!」グッ

春香「よーし、帰るぞー!」

春香「………」

春香「………」

春香「………」

春香「………」

春香「………」

春香「…………どうやってここから出ればいいんだろ?」
167 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:05:23.27 ID:Gx17QCPmO

春香「そもそも、出口ってあるのかなぁ」

春香「周りには何も見えないし……」

春香「ここでは私自身に実体がないみたいだしなぁ……」

春香「む〜……」


『………………か』


春香「……ん?」


『…………はる……』


春香「声が……!」


『…………はるか……!』


春香「私を……呼んでる……!」


『……春香、戻って来て!』


春香「この声は、千早ちゃん!」


『……春香、早く帰って来ないとハニーはもらっちゃうの!』


春香「美希……!」


『春香! 聞こえるか! 俺たちはお前を待ってる! お前のいるべき場所で、ずっと待っているぞ!』


春香「プロデューサーさんっ……!」

春香「戻らなきゃ! ……私の場所へ」

春香「私の、帰る場所へ!」


春香(何をどうすればいいのか分からないけど……)

春香(とにかく、声のする方へ)

春香(みんなの声のする方へ……!)
168 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:09:11.83 ID:Gx17QCPmO
ー 月・平地 ー


春閣下「……いやだ……やだ……!」ガシッ


P「どうしたんだ? 闇春香の様子が……」

覚醒美希「戻って来るよ、春香が」

千早「………」グッ

覚醒美希「……春香なら、絶対に戻って来る!」



春閣下「あ…ああ……!」フラッ



…パアアァァーー!!



P「光が……!」



闇春香「……はぁ、はぁ……!」ガクッ



P「……見たところ、何も変化はないみたいだけど……」

覚醒美希「ううん。よく見るとあの子、存在が薄くなってるカンジがするの」

千早「そう言われてみれば、確かに……」



「……千早ちゃん、美希。……プロデューサーさん」



三人「!!」



春香「天海春香、ただいま戻りましたっ!」
169 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:13:00.29 ID:Gx17QCPmO

千早「春香!」

覚醒美希「……もう、遅いの!」

P「待ってたぞ、春香!」

春香「えへへ……すみません、ご迷惑をおかけしちゃって」

千早「良かった……! 本当に、良かった……!」ダキッ

春香「千早ちゃん……」

覚醒美希「春香は千早さんにたくさん感謝しないとね。千早さんがいなかったら、春香はここへ帰って来れなかったかもしれないんだから」

春香「うん……そうだね」

春香「……って、あれ? 美希、髪が……!」

覚醒美希「もう、今はそんな事はどうでもいいの! まだだよ、春香。まだ全部終わったわけじゃないんだから」

春香「……分かってる」

千早「春香……」ギュッ

春香「大丈夫。ここは私に任せて」ニコッ
170 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:15:51.63 ID:Gx17QCPmO

闇春香「……あと少しだったのに……。もう少しで、プロデューサーさんが私『たち』のものになるはずだったのに……」

闇春香「なんで……? なんで邪魔するの……?」


春香「……こんな方法で誰かを自分のものにしても、その人の心は手に入れられないよ」


闇春香「それでもっ! ……『私』には、こうするしか方法はなかった……!」

闇春香「いずれ消えゆく存在である私には、手段なんて選んでる時間はなかった!」


春香「ヤミちゃん……」


闇春香「……そうだ。全ては『わたし』から始まったんだよね」


春香「……!」


闇春香「私がこんなに苦しいのは……私が生まれたのは……」

闇春香「『わたし』が、この世界へ来たから」


春香「………」


闇春香「私だって、何も恨みたくはなかった! 『わたし』みたいにみんなに囲まれて幸せでいたかった!」

闇春香「……でも、ダメだった。だって私は、闇だから」

闇春香「だったら、もう終わりにしよう」チャキッ


春香「!」


闇春香「闇は闇らしく、全てを憎んで恨んで、妬んで……!」

闇春香「『わたし』を殺して、『私』も死ぬ……!」ゴゴゴ



覚醒美希「あの子、また暗黒剣を使うつもりなの! あんな状態で使ったら……」

千早「……無事では済まないわね」

P「………」
171 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:21:17.12 ID:RWf558iQO
闇春香「ねえ、『わたし』? 『私』の想い、全部受け止めてくれる……?」


春香「………」


春香「……受け止めるよ。それが、私がヤミちゃんを苦しめた咎だって言うなら」

…カランッ



覚醒美希「春香、剣を捨てたの……!」

P「徒手空拳で暗黒剣を受け切るつもりか……!?」

千早「春香……!」ギュッ



春香「ヤミちゃん、私が暗黒剣を完全に受け切ったら、一つだけ約束してほしいんだ」


闇春香「そんな事は万に一つも無いと思うけど……いいよ。言ってみなよ」


春香「私があなたの暗黒剣を完全に受け切ったら、ヤミちゃんは……」

春香「……ちゃんと心からの笑顔を私たちに見せる事!」ビシッ


闇春香「…………は?」


春香「だって、暗黒剣は負の感情なんだよね? それを全部吐き出したら、ヤミちゃんはきっと楽になれるんじゃないかな?」

春香「楽になって心から笑うヤミちゃんを、私、見たいんだ!」ニコッ


闇春香「!」


春香「それに……」

春香「ヤミちゃんは私と同じ顔なんだから、きっと可愛いと思うよ? ……なーんて」


闇春香「ば……バカじゃないの!?」カァァ


春香「あ、今の表情、ちょっと可愛かった」


闇春香「っ……本気で殺すからね!」

闇春香「はあああああっ……!」

闇春香「……暗黒剣ッ!!」


ズオオオオオ……!


春香「! ……すごい……禍々しい闘気……! これが……ヤミちゃんの……!」


春香(私のせいで、こんな……ごめんね。辛い思いをたくさんさせて、ごめんね)

春香(……ちゃんと全て受け止めるよ、ヤミちゃん。だから……)



春香(……約束、絶対に忘れないでね……!)



ドゴオオオオオォォオオン…!!
172 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:26:27.01 ID:RWf558iQO

闇春香「っ……はぁ、はぁっ……!」ガクッ


千早「ヤミさん……もうほとんど力は残っていないはずなのに、すごい技だったわ……」

覚醒美希「それより、春香は?」

P「……あそこだ」



春香「………」



覚醒美希「春香! ……まさか……」

千早「……いいえ、春香は立つわ」

P「春香……!」



春香「っ……!」ピクッ



闇春香「まだ、息があるの……? 私の、全身全霊を込めたのに……」


春香「……約束…したからね……」ググッ

春香「みんなで……帰るって……!」ヨロッ


闇春香「く……!」


春香「それに……」

春香「見せてくれるって……言ったでしょ……?」

春香「ヤミちゃんの、笑顔を……!」ザッ


闇春香「……完敗、だね」


春香「……って言っても、私も立ってるのがやっとだけど……」フラフラ


闇春香「それは、想いの力だよ」

闇春香「『わたし』の想いの方が『私』よりも強かった。……ただ、それだけなんだよ」
173 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:29:28.70 ID:RWf558iQO

闇春香「あはは……笑うしかないね、もう」


春香「ふふ……やっと笑ってくれたね?」

春香「でも、もっといい笑顔ができるはずだよ」

春香「だって、私は知ってるもん。プロデューサーさんと二人っきりの時の、とっても幸せそうなヤミちゃんの表情を」


闇春香「………」



千早「春香っ!」

タタタタ…


千早「平気? 私に捕まって」ガシッ

覚醒美希「ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…


春香「ありがとう、千早ちゃん、美希」

P「まったく、無茶しやがって……」

春香「えへへ、すみません……」


闇春香「……羨ましかった」


春香「え……?」


闇春香「みんながいて、プロデューサーさんがいて……」

闇春香「全てを持っている『わたし』が、『私』は羨ましかった」

闇春香「でも、私は闇だから。『わたし』の影の存在だから」

闇春香「こんな私なんて、誰もいらないだろうから」


春香「そんな事……!」

千早「そんな事ないわ!」


闇春香「……千早…ちゃん……」
174 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:33:13.43 ID:RWf558iQO

千早「あなたのその力に、私たちはこれまでたくさん助けられてきた」

千早「私たちがここまで来れたのは、あなたの存在に依るところが大きいと私は思ってる」

覚醒美希「うーん、そだね。確かにバブイルの塔とかでもお世話になったらしいし」

千早「改めてお礼を言わせてもらうわ。……ありがとう、ヤミさん」

覚醒美希「ミキも一応言っておくね。ありがとうなの」

春香「私も、双子の姉妹ができたみたいで嬉しかったよ! だから、ありがとう!」


闇春香「みんな……」


P「闇春香。俺も君にはとても感謝してる。ここまで来れたのももちろんそうだけど、春香がここまで強くなれたのは、きっと君のおかげだから」

P「どういう想いで君がここまで戦ってきたにしろ、君はもう、立派な俺たちの仲間だ!」


闇春香「プロデューサー…さんっ……!」



闇春香「じゃあ、私とずっと一緒にいてくれますか!」


春香「や、ヤミちゃん!?」

覚醒美希「それはダメなの!」

P「……ごめん。それだけはできないんだ」


闇春香「……分かってますよ」

闇春香「でも、それでも……」ポロ

闇春香「みんなの言葉、すごく嬉しいっ……!」ポロポロ


覚醒美希「………」

千早「ヤミさん……」
175 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:36:31.31 ID:RWf558iQO

闇春香「うぅ……っ!」ウルッ


春香「ほらほら、ダメだよ泣いちゃ。可愛い顔が台無しだよ?」

覚醒美希「自分と同じ顔を可愛いって言う春香は、ちょっとあざといって思うな」

春香「い、今のはそんなつもりじゃないよぅ!」

千早「いえ、美希の言う通りかもしれないわね」

P「ああ、否定はできないな」

春香「もうっ! 千早ちゃんとプロデューサーさんまで!」プンスカ


闇春香「……ふふっ、あはははっ!」

闇春香「まったく、これが私の分身だなんてね?」ニコッ


春香「あ……ヤミちゃん可愛い! ね、みんなも見たよね? ヤミちゃんの笑顔!」

P「だから……」

覚醒美希「気持ちは分かるけど、言えば言うほどドツボにはまってる気がするの」

春香「う〜、そういうつもりじゃないのにぃ〜!」

千早「……よしよし」ナデナデ


闇春香「私からも……ありがとう」


春香「ヤミちゃん……」


闇春香「『わたし』の言った通りかもしれないね」

闇春香「さっきの暗黒剣で嫌な気持ちが全部出て行っちゃった感じがして、今はすごく気分がいいんだ」


春香「……そっか」ニコッ


闇春香「だから、ここでお別れだね」


春香「えっ……?」
176 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:40:28.67 ID:RWf558iQO

闇春香「私は、闇だから。嫌な気持ち、暗い気持ちが存在しないって事は、すでに私が存在する意味はないから」


春香「そんな……せっかく仲良くなれたのに……!」


闇春香「分かっててやってたんだと思ったけど……そうじゃなかったんだね」

闇春香「……とにかく」

闇春香「頑張ってね、春香。最後の戦いは、きっとあなたが思ってるよりも苦しい戦いになると思う」


春香「……えへへ、やっと名前で呼んでくれたね?」


闇春香「……もう、そんな事はいいでしょ? 今は最後の戦いに備えて……」


春香「うん、分かってるよ。どんなに辛くても、苦しくても、必ずみんなで乗り越えてみせる」

春香「だって私たち、アイドルだもん!」


闇春香「……良かった。それを聞いて安心したよ」ニコッ


春香「あっ、また笑顔になった! ねえみんな、見たよね?」

千早「……春香」

覚醒美希「……もう、行っちゃったみたいなの」

春香「えっ?」クルッ


春香「ヤミ…ちゃん……?」キョロキョロ


P「……きっと、笑顔で別れたかったのかもな」

P「暗黒騎士は今、ようやくその役目を全うしたんだよ」

春香「………」

春香「…………グスッ」



ーー頑張ってね。春香たちなら、きっと……



春香「……!」



春香(……さよなら、ヤミちゃん)


春香(もうひとりの、私)
177 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:46:59.52 ID:RWf558iQO
ー 月の民の館への道 ー


千早「……はっ!」

ヒュー…ドスッ!


魔物「」


千早「……ふぅ」

春香「千早ちゃんお疲れ様。回復してあげるね」

春香「……ケアルラ!」

シャララーン! キラキラキラ…

千早「……ありがとう、春香」

春香「ううん、私の方こそ千早ちゃんだけに戦わせてゴメンね?」

千早「何言ってるのよ。春香には美希を背負ってもらっているんだから、私が道を切り開くのは当然でしょう?」

春香「えへへ、そっか」

美希「……zzz」



千早「……美希、あの後ちゃんと元に戻ったわね」

春香「そうだねー。こっちに帰って来たら美希の髪が短くなっててびっくりしちゃったけど、何だったんだろう?」

美希「……zzz」

P「……よく分からないけど、夢を見ているのと同じ状態だったらしいぞ」

千早「夢……ですか?」

P「ああ。本人が言ってたから間違いないんじゃないかな」

P「春香の多重人格とは違う、とも言ってたな」

春香「じゃあ、あの時の美希も今のこの美希も、同一人物って事ですか?」

P「そういう事らしい」

P「でも美希、すごかったんだぞ? 闇春香の全力の暗黒剣と互角以上だったんだから」

春香「そうそう! なんかすごい魔法を使ってたし」

千早「……私は、結局あまり役に立てませんでしたね」

P「そんな事はない。あの時千早が身を呈して美希を庇ったから、活路が開けたんだよ」

春香「そうだよ! 千早ちゃん、カッコ良かったよ?」

千早「そう言ってもらえるとありがたいけど……」
178 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:50:55.17 ID:RWf558iQO

春香「…………あれ? そういえば、私たちってヤミちゃんにプロデューサーさんを好きな事、バラされちゃったよね……?」

千早「は、春香!」

春香「あっ……」

P「その話を今ぶり返すのか……」

春香「す、すみません……///」

P「いや、いいけどさ」

千早「……あの、プロデューサー!」

P「な、なんだ?」

千早「私は、プロデューサーの事を尊敬していますが、そ、その、他にやましい感情は抱いてないというか、特に男性として意識しているつもりはないというか!」

P「分かった、分かったから落ち着こうな」

春香「千早ちゃん……嘘がヘタだねぇ」

千早「というか、春香はなんでそんなに余裕があるの? 自分の気持ちをバラされたというのに」

春香「うーん……私も恥ずかしいけど、少しだけ肩の荷が降りた気もするかなぁ」

千早「なんて言うか、春香らしい、呑気な考え方ね」

春香「それにね? 正直、今はまだよく分からないなって思うんだ」

春香「どれだけ私たちがプロデューサーさんのことを好きでも、プロデューサーさんが誰を選ぶのかなんて分からない。もしかしたら私たちの中の誰も選ばれない可能性だってあるし」

千早「……確かに、それはそうね」

春香「もちろん、選ばれなかった時の事を考えると、私だって胸がキュッて締め付けられる思いになるよ?」

春香「でも、多分それはまだまだ先の事。今は、こうしてみんなでいられる時間を楽しみたいなって」

千早「……そうね。私も、今すぐにどうなりたいって思っているわけでもないし」

千早「きっと、765プロのみんなも同じ想いよね」

春香「うん、きっとそうだよ!」

P「……君たち、本人を目の前にしてよくそういう話ができるね」

春香「もう、プロデューサーさん、盗み聞きですかー?」

P「いや、さっきまで普通に会話してただろ……」

千早「ふふ、べろちょろだとどうも存在感が薄くなってしまいますね」

P「不本意だけどな」
179 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/04/16(土) 21:53:39.66 ID:RWf558iQO

P「あ、そういえば……さっきの春香のセリフと少しだけ関連するんだけどさ」

P「765プロで絆を一番大切に思っているのは、もしかしたら美希かもしれないな」

春香「美希が……ですか?」

P「『ミキたちはずっとずっと、おばあちゃんになっても仲間だよ。その絆は、何者にも壊せない……壊させない』ってさ」

千早「美希が、そんな事を……」

春香「美希……」

美希「……おにぎり……」ムニャムニャ

P「普段は飄々としてるところがあるけど、美希も胸の内に熱いものを持っているんだなって思ったよ」

春香「……美希が起きたら、助けに来てくれてありがとうって伝えなきゃ」

千早「それと、お疲れ様ともね」

美希「……zzz」


P「……さ、急ごう。きっとみんな待ってる」

春香・千早「はい!」

スタスタ…
180 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/04/16(土) 21:55:45.16 ID:RWf558iQO
次回へつづく

着々と終わりへ近づいているような、そうでもないような…
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/16(土) 22:04:01.24 ID:B2D85skDO
乙!コトリット(小鳥分身)がどこで出るのか気になる
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 19:39:24.31 ID:H8zI1sOwO
もうちょっとだけ続くんじゃよ?
ですねわかります。
183 : ◆bjtPFp8neU [saga sage]:2016/05/08(日) 18:58:59.87 ID:hf/TX9CKO
ー 月の民の館 図書室 ー


真「え? まだ到着していないメンバーの捜索に?」

律子「ええ。さすがにそろそろ合流しておかないと」

律子「現時点でこの館にいないのは、貴音、千早、美希、春香、そしてプロデューサーの五人。貴音はまあ、場所は分かっているだろうからいいとして」

伊織「問題は、春香とプロデューサーに、それを追いかけていった美希と千早ね」

伊織「あの時の春香はちょっと面倒な状態だったし、早めに回収しておくに越した事はないわね」

律子「そういう訳で、二、三人でひとっ走り迎えに行って来てもらいたいの」

真「それはいいけど、誰が行くの?」

あずさ「あら、それなら私が行きましょうか〜?」

律子「あ……えーと……」

真「いや……」

あずさ「……そうですよね、私じゃミイラ取りがミイラになるのが目に見えてますよね……」シュン

律子「そ、そういう意味じゃないんですけど……」

真「そ、そうですよあずささん! あずささんはホラ、みんなの面倒をみててもらいたいなって!」

184 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/05/08(日) 19:05:31.04 ID:hf/TX9CKO

伊織「……別にあずさでもいいんじゃないの? 一人で行くわけじゃないんでしょ?」

律子「それはまあ、そうだけど……」

伊織「だったら決まりね。捜索は私とあずさで行くわ」

真「伊織……?」

あずさ「あの、伊織ちゃん……自分で言うのもなんだけど、私と一緒でいいの?」

伊織「……あのね。仲間が心配だから探しに行く事の何が悪いっていうのよ」

伊織「そういう事でいいわよね、律子?」

律子「……ええ、いいわ」

伊織「さ、そうと決まったら出発しましょ」スクッ

あずさ「は〜い」

真「……待って。ボクも行くよ」

真「ちょうど今日の分のトレーニングも兼ねてさ」

あずさ「あらあら、真ちゃんがいれば頼りになるわね〜」

伊織「……ま、いいけど」

律子「頼んだわよ、あなたたち」

185 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/05/09(月) 06:31:27.39 ID:ATnSiA3eO
ー 月の民の館への道 ー


真「確か、千早たちはあっちの方へ向かったんだよね?」スッ

伊織「ええ。館とは逆の方向だから、合流するのに少し時間がかかるかもしれないわ」

真「大丈夫かな」

伊織「……何がよ?」

真「ほら、あの春香の分身みたいな子がプロデューサーをさらっていったじゃないか」

真「あの子、なんだかボクたちにあまり好意的じゃなかったみたいだからさ」

あずさ「……きっとなんとかしてくれるわ、千早ちゃんと美希ちゃんなら」

真「そう……ですよね」


魔物1「ガルル…!」

魔物2「ウガー!」

魔物3「グルギャァ!」


伊織「……っと、お客さんみたいね」

真「よし、ボクに任せて!」


真「……よっ!」ドゴッ


魔物1「」ドサッ


あずさ「あらまあ……一撃ねぇ」

真「まだ来ます!」


魔物2「ウガー!!」ブンッ


伊織「………」


真「伊織!」

あずさ「伊織ちゃんっ」


伊織「……心配いらないわ。もう行ったから」スチャ


魔物2「?! ……アェ……?」


スパ…ドサッ


魔物2「」


真「うわ……魔物が真っ二つだ……」

あずさ「伊織ちゃん、いつの間に? 全然分からなかったわ〜」

伊織「にひひっ♪ この伊織ちゃんの疾さには、誰もついて来る事なんでできないわよっ」
186 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/05/09(月) 06:34:43.40 ID:ATnSiA3eO

伊織「それはともかく、あと一体はあずさ、アンタの獲物よ」

あずさ「うふふ♪ 私も少しはいいところを見せないとね」


魔物3「グルギャァ!」ガバッ


あずさ「あらあら……」

あずさ「テレポ!」

…シュンッ


魔物3「グギャ?」キョロキョロ


伊織「あずさが、消えた……?」

真「確かあれは瞬間移動の魔法だったはず……」




あずさ「時を知る精霊よ……」スッ

あずさ「因果司る神の手から我を隠したまえ……」

あずさ「……ストップ!」バッ


ピキーン!


魔物3「」ピタッ


伊織「へぇ……」

真(あれって確か……アガルトのお婆さんが使ってた魔法だっけ)

真(すごいなぁ。今さらだけど魔道士の戦いってまるで手品みたいだ)

あずさ「うふふ、成功して良かったわ〜」

伊織「どうでもいいけど、とどめは刺さないの?」

あずさ「動けないなら何もできないでしょう? 追い打ちをかけるような事はあんまりしたくないのよ」

真「ははっ、あずささんらしいや」

伊織「今回は雑魚だったからいいものの、あの親衛隊とかいうヤツらにはそんな甘い考えは通用しないわよ? きっと」

あずさ「……その時は、私もしっかりやらないとね」

真「さ、進みましょう!」

スタスタ…
187 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/05/09(月) 06:56:44.57 ID:ATnSiA3eO

スタスタ…

伊織「………」

真「………」

あずさ「………」


伊織「……そうだわ」ピタ

真「……どうしたんだよ、急に立ち止まって」

伊織「いい機会だから、アンタの考えも一応聞いておこうと思って」

真「何のこと?」

伊織「真。アンタは……小鳥と戦う事についてどう考えてる?」

あずさ「伊織ちゃん……」

真「………」

伊織「今までずっと有耶無耶だったけど、私たち、もうごまかしの効かないところまで来ているわ」

伊織「普通のゲームみたいにただ戦って倒してはい終わり。それじゃ済まない事なのよ」

真「……うん、そうだね」

伊織「その様子だと、何も考えていない訳じゃないみたいね」

真「まあ、ね」

伊織「……ま、アンタにはアンタの考えがあるのならそれでいいわ」

伊織「でも、肝心な時にウチのエースが日和って最悪の事態になるのは勘弁してよね?」

真「もう、伊織までエースだなんて……」

あずさ「真ちゃん。真ちゃんは誰が何と言おうと私たちのエースよ? だから、自信を持って?」

真「あずささん……ありがとうございます」

あずさ「もちろん、真ちゃんだけじゃなくて伊織ちゃんも、律子さんや春香ちゃんたちも……」

あずさ「み〜んなウチのエースだから、きっと心配はいらないわね〜」ニコニコ

伊織「エースの意味が無いじゃないのよ、それ……」

真「………」

真(もうごまかしの効かないところまで来てる、か。確かに伊織の言う通りだ)

真(もう少し……あと少しだけ時間がほしい。そうすれば、きっとボクも覚悟ができるから……)

真「………」グッ
188 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/05/09(月) 06:59:35.91 ID:ATnSiA3eO

スタスタ…

伊織「……それにしても遠いわね。私たちってもう月一周分くらいは歩いているんじゃないかしら」

伊織「ゴツゴツしててやたら足元は悪いし……」

真「自分から申し出た割にはやけに弱気だなぁ。らしくないじゃないか」

伊織「別にいいでしょ。仲間に弱い部分を見せる事を、私は悪い事だとは思わないわ」

真「……ふーん。変わったね、伊織」

伊織「成長したって言いなさいよね!」

真「はいはい」

あずさ「うふふ♪ 」



あずさ「……そうだわ。今は少しでも距離を稼いだ方がいいわよね?」

真「それはそうですね。春香たちを早く見つけるに越した事はないと思います」

あずさ「それじゃ、ここは私に任せてもらえないかしら?」

伊織「何か策があるっていうの?」

真「もしかして、さっきのテレポって魔法ですか?」

あずさ「ええ♪ 」ニコッ

伊織「確かに、瞬間移動なら大分時間を短縮できるでしょうけど……アンタ、大丈夫なの?」

あずさ「千早ちゃんたちが向かったあっちの方へ行けばいいのよね?」スッ

真「……あずささん、そっちは逆の方向です」

あずさ「あ、あら、私ったら……///」

伊織「……本当に大丈夫なの?」

あずさ「何となく大丈夫な気がするわ〜」

あずさ「さ、二人とも私に掴まって?」スッ

伊織・真(……うーん、不安……)

189 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 19:57:45.49 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 執務室 ー


月の民「……それで、クリスタルについて何を知りたいんスか?」

律子「まずは、クリスタルとは何なのか。何か不思議な力を秘めているっていうのは私も分かっているけど、詳しい事は何も知らないの」

律子「だから、あなたが知っている事を教えてもらえたらと思って」

月の民「分かったッス。他ならぬタカネ様のお友達の頼みならば断る道理は無いッスから」

律子「ありがとう。助かるわ」

月の民「じゃあ、まずは……」

月の民「前提として、クリスタルはこの世界に無くてはならないもの、という事を理解してくださいッス」

月の民「古い書物によれば、クリスタルが無いと世界は崩壊してしまうらしいッスから」

律子「重要なものだとは感じていたけど、そこまでなのね」

月の民「ええ。世界にとってクリスタルは、人間の身体でいえば心臓に当たる部分らしいッス」

月の民「で、クリスタルとは何かっていうと……」

律子「何かっていうと……?」

月の民「……実は、自分もよく分かってないッス……」

律子「……あ、そうですか……」

月の民「し、仕方ないんスよ!? 人間が生まれるずっと前から存在してるらしいし、文献にも詳しい事は何も書いて無いんスから!」

律子「はいはい、分かりましたから」
190 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:00:02.28 ID:/DBTa6rJO

月の民「その代わり、クリスタルにまつわる不思議な力が我々月の民の研究によって解明されつつあるんス」

律子「ふむ……詳しく」

月の民「リツコさんは、『精神波』ってご存知ッスか?」

律子「ええ、まあ。確か、強い思念をエネルギーに換えて離れた場所へ物理的に飛ばす技……だったわよね?」

月の民「概ね正解ッス。まあ、月の民なら知ってて当然ッスね」

律子「え? どういう事?」

月の民「リツコさんからは我々と同じ匂いがするッス。あなたはきっと青き星に移り住んだ月の民の子孫なんスね」

律子「ふーん……」

律子「……あ、もしかしてその、『青き星へ移り住んだ月の民』って、クルーヤっていう人じゃないかしら?」

月の民「よくその名前を知ってるッスね。確かにクルーヤさんは昔、魔導船で青き星へ渡ったッスけど」

律子「私、どうやら娘らしいんです。そのクルーヤっていう人の」

月の民「おお、そうだったんスか! 言われてみれば、確かに面影があるッスねー」
191 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:05:40.67 ID:/DBTa6rJO

月の民「……っと、話が逸れたので戻すッス」

月の民「ここまでの研究で、クリスタルに『あるもの』を注入する事で莫大なエネルギーが生まれる事が分かっているッス」

律子「莫大なエネルギー……」

月の民「エネルギーは様々な事に使えるッス。物理的に機械や物を動かす事も出来るし、魔道士の魔法力の様な目に見えない力を高めたりもできるッスよ」

律子(月の魔物たちが次元エレベータを動かしたのも、きっとそのエネルギーのおかげなのね)

律子「……それで、そのエネルギーを生み出すために必要な『あるもの』っていうのは?」

月の民「それが精神波ッス。『想いの力』と言い換えてもいいッスね」

月の民「クリスタルは、人の想いに応えてエネルギーを生み出す不思議な石。今のところ分かっているのはそこまでッス」

律子(……そういえば、魔導船の動力も想いの力だった。クリスタル……人の想い……か)


律子「じゃあ、例えばだけど、クリスタルの力で地下渓谷へ行く事は出来る?」

月の民「もちろん! クリスタルは万能選手ッスから、そんな事は簡単ッス」

月の民「強く願えば、必ず想いは届くはずッス!」

律子「強く願えば……ね。ありがとう、勉強になったわ」
192 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:07:51.25 ID:/DBTa6rJO

月の民「……あの、リツコさん?」

律子「何かしら?」

月の民「あなたも、光の戦士なんスよね?」

律子「……どういう意味ですか?」

月の民「気を悪くしないで欲しいんスけど、リツコさんからは負の力を感じるッス」

月の民「それは多分、リツコさんが暗黒騎士だからだと思うんスけど……」

律子「……安心して。私はもう、悪役は降りたから」

月の民「いえ、そうじゃなくて……」

律子「?」

月の民「コトリほどの邪悪に、闇の力は……」

月の民「……なんでもないッス。忘れてください」

律子「え、ええ……」

月の民「ガンバってくださいね! 自分、何も役に立てないッスけど、せめて皆さんのご無事を祈ってるッス!」

律子「いえ、私たちはもう充分あなたに助けられてますから」ニコッ
193 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:12:24.28 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 クリスタルルーム ー


律子(……精神波……想いの力……)

律子(とりあえず、クリスタルの仕組みはだいたい理解した。これで後は……)


キラーン!


律子(……後は、それぞれの覚悟を決めるだけ)

律子(小鳥さんと会ったら、おそらく戦う事になる)

律子(その戦いに中途半端な気持ちで臨んだら、きっと私たちは元の世界へは帰れない)

律子(あの子たちの背中を押してあげるのは、私の役目ね)

律子(でも、本当は戦う以外の方法があればそれが一番なのよね)

律子(それが見つかれば苦労はしないんだけど……)


律子「……さてと、そろそろ私もみんなのところへ戻らないと」


「……あら、それはちょっと待って貰えませんか? ……律子さん?」


律子「えっ……!?」クルッ

194 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:19:31.95 ID:/DBTa6rJO

コトリマインド「きゃー! 本当に律子さんだー! うわぁ、律子さんってスーツだけじゃなくて鎧も似合いますねぇ! うふふ、この分だと他のみんなに会うのも楽しみだわぁ♪ 」


律子「こ……小鳥さん!?」

律子「なんで? 地下渓谷からは出られないはずじゃ……?」


コトリマインド「もちろんそうですよ? ただし、本体は……ですけどね」ニコッ


律子「本体……? じゃあ、あなたは小鳥さんの分身か何かだとでも言うの?」


コトリマインド「ズバリ、その通りです! 私の事は、コトリマインドと呼んでくださいね?」


律子(これからみんなで乗り込もうって時に、なんてタイミング……)

律子(っていうか、あまりに普通過ぎてどう対応していいか分からない)

律子(……ひとまず、様子を見るしかないわね)


コトリマインド「そんなに恐い顔しないでくださいよぅ。せっかくこうして久々に対面できたっていうのに」


律子「あ……ごめんなさい。そうですね」


コトリマインド「でもまあ、それも仕方ないのかな。手紙でコンタクトを取ってはいましたけど、こうして会うのは、この世界では初めてですもんね?」
195 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:23:44.12 ID:/DBTa6rJO

律子(……そうだわ。私は小鳥さんの手足となり悪を演じていた)

律子(でも、今は違う。貴音によって自分を取り戻す事ができたから)

律子(言ってみれば、小鳥さんを裏切った形になる)

律子(その事を、小鳥さんはどう考えているの……?)


コトリマインド「……もう、いつまで黙っているんですか? なんか私が一方的に喋っててさみしいですよぉ〜」


律子(いつもの小鳥さん……のように見える。小鳥さんも悪を演じているだけなのかしら……)

律子(……とにかく、これは小鳥さんの真意を確かめるチャンスかもしれないわね)

律子(よし……)


律子「……あの、小鳥さん?」


コトリマインド「はい、なんです? 私の得意技ですか? 私の得意技はですねぇ……」


律子「そんな事は聞いてません。小鳥さん、あなたは何が目的なんですか?」


コトリマインド「………」
196 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:27:12.29 ID:/DBTa6rJO

律子「……話してくれませんか?」


コトリマインド「……話すも何も、前に律子さんに言ったはずですよ? 『みんなを楽しませる』のが私の目的だって」


律子「ごまかすのはやめてください! 小鳥さんだって知ってるんでしょう? 『私たちが元の世界へ帰る方法』を!」

律子「どうすればいいか、みんなで考えないと!」

律子「あの子たちは、苦労してここまで来ました。……あなたに会うために」

律子「みんな、小鳥さんの事が心配なんですよ!」


コトリマインド「……あーあ、律子さんには足りないみたいですね」


律子「……え?」


コトリマインド「私と本気で戦う『覚悟』が」


律子「っ……!」

197 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:29:24.60 ID:/DBTa6rJO

コトリマインド「もういいです。私、みんなと遊んできますから。いるんですよね? ここにみんなが」


律子「!」


律子(……ダメ、今小鳥さんをみんなのところへ行かせるわけにはいかない。だって、あの子たちもまだ覚悟ができてないもの……!)

律子(今の状態で小鳥さんをあの子たちに会わせるなんてできない)

律子(仕方ない、ここは私が食い止めるしか……!)


律子「……!」チャキッ


コトリマインド「……うふふ、やっとその気になってくれましたね? さあ、遊びましょう?」ゴゴゴ


律子「……言っておきますけど、私だって簡単にやられたりしませんからね」

律子「……はあああっ!」ダッ


コトリマインド「ああ……やっとここまで来たわ……! 長かった……本当に、長かった……!」

コトリマインド「楽しませてあげますよ、律子さんっ!」


…ガキィン!!

198 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:34:55.78 ID:/DBTa6rJO

律子「はあっ!」ブンッ

ザシュッ!!


コトリマインド「くぅ……!」


律子「……ファイガ!!」

ボオオォォオオオ!!


コトリマインド「熱っつ! 熱っつぅい!」ジタバタ


…スタッ

律子「………」


コトリマインド「ふーっ、ふーっ……あー熱かったぁ」

コトリマインド「ふふっ……なかなかやりますねぇ、律子さん。さすがゴルベーザ役ってところですかねー」


律子「まったく……よく言うわ」

律子「今の、全然効いてないんでしょう?」


コトリマインド「まったく効いてないって事はないですよ? ……ただ、私のHPは40000くらいありますからねぇ」

コトリマインド「今の律子さんの魔法と剣での攻撃、二つ合わせてもせいぜいダメージは1000程度ってところです。これがどういう事か分かります?」


律子「……つまり、今の攻撃を40回繰り返してやっと小鳥さんが倒れるかどうか、ってとこですか」


コトリマインド「正確にはちょっと違います。律子さんは私の反撃を考慮していないみたいですから」ニコッ


律子「!」


コトリマインド「今度は、こちらから行かせてもらいますね?」


律子「く……!」チャキッ


コトリマインド「うふふっ」ダッ

199 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:38:15.42 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 図書室 ー


真美「ふわぁ〜……」ノビッ

真美「ん〜……よく寝たな〜……」ゴシゴシ

やよい「真美おはよう。顔洗ってきたら? 寝ぐせもすごいよ?」

真美「あ、やよいっちセンパイおはー。うん、あとで行ってくるよー」

響「あれ……?」キョロキョロ

響「ねえ雪歩。ずいぶん人数が少ないみたいだけど、みんなどこに行ったんだ?」

雪歩「おはよう響ちゃん。えっとね、真ちゃんと伊織ちゃんとあずささんで春香ちゃんたちを迎えに行ったみたいだよ?」

亜美「亜美とゆきぴょんでお留守番だってさ。つまんないのー」

響「春香たちを迎えに行ったって……え? どういう事? 別々に行動してるのか?」

雪歩「……そっか、響ちゃんたちは知らないんだったね」

雪歩「こっちで何があったかを話すよ。だから、響ちゃんも教えてほしいな。四条さんがいない理由を」

響「……そーだったな。うん、わかったぞ」
200 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:41:32.91 ID:/DBTa6rJO
ーーーーーー

ーーー


雪歩「……そんな事があったんだね、四条さん……」

響「そっちもいろいろ大変だったみたいだな」

雪歩「春香ちゃんが、ちょっとね」

真美「はるるん、ついに殺意の波動に目覚めちゃったかぁ……」

亜美「ホントたいへんだったんだよ? ヤミるんは戦ってる亜美をひとり置いてどっか行っちゃうしさー」

真美「……亜美、ガンバったんだね」

亜美「……ふ、ふんっ! 亜美たちはケンカ中なんだかんね! 気安く話しかけないでよねっ!」

やよい「亜美? 仲良くしないと、めっ! だよ?」

真美「まあまあやよいっちセンパイ、ここは真美に任せて」
201 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:45:00.18 ID:/DBTa6rJO

真美「……亜美。真美ね、ちょっとの間だけど亜美がいなくてチョーさみしかったよ。だから、こーしてまたブジで会えて真美、うれしい!」ニコッ

亜美「!」

亜美「……っ」

真美「あの時はごめんね、亜美。真美、もー少し亜美のキモチ考えればよかったかも」

亜美「………」

亜美「…………も」

真美「うん?」

亜美「あ、亜美もまあ、ほんのちょびっとだけど、チョーさみしかった……かもね……///」

響「ほんのちょびっとだけ超さみしかったって、どういう意味なんだ……」

真美「えへへっ♪ 」ダキッ

亜美「わっ」

真美「んじゃ、仲直りねっ?」

亜美「むぅ……」

亜美「……ちかたないな。我々の任務にはどうやら君の力が必要なようだ。また、力を貸してくれるかね?」ニコッ

真美「オーケー、ボス!」ニコッ
202 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:49:00.19 ID:/DBTa6rJO

雪歩「良かったぁ、これで一件落着だね」ニコニコ

やよい「兄弟は仲良しが一番です!」ニコッ

響「うんうん、真美もなかなかお姉ちゃんらしくなってきたかもなー」

真美「んっふっふ〜、真美にはたよりになるセンパイがついてるかんねー」

亜美「センパイって?」

真美「モチロン、やよいっちセンパイに決まってるっしょ!」

やよい「えっ!? わ、わたし?」

響「なるほど、やよいなら納得だ」

やよい「あの、それよりも」

雪歩「どうかしたの? やよいちゃん」

やよい「さっきから律子さんがいないなーって」

雪歩「あ、そういえば……」

203 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 20:54:29.37 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 クリスタルルーム ー


コトリマインド「どっせーい!」

ドガッ!!


律子「……っく……ぅ……!」ヨロッ

律子(一撃一撃が重い……! 今まで戦ってきた魔物の比じゃないわ)


コトリマインド「ほらほら、のんびりしている暇はありませんよ? 律子さん」

ヒュッ…

ガキィン!!


律子「……っと!」ググッ


コトリマインド「わあ、いい反応♪ 」

コトリマインド「じゃあ、これはどうです?」ブゥン…


律子「……!」

律子(なんか……ヤバそう!)


コトリマインド「……フレア!」


ブゥン…


バババババババッ!!



律子「うあ……!」


…ドサッ!




コトリマインド「うーん、一方的過ぎるのも考えものよねぇ。やっぱりいくら律子さんが強くても、一人じゃ私には太刀打ちできないかぁ」


律子「……まったく……」ヨロッ


コトリマインド「あら……」


律子「本っ当に……こういう時は生き生きとしますね、あなたは……」ザッ


コトリマインド「生き生きするなって言う方が無理な話ですよぅ♪ だって私たち、ゲームの世界に来てるんですよ? こんな事、普通あり得ないです」

コトリマインド「せっかく不思議な体験をしてるんだから、楽しまないと♪ 」


律子「……行かせませんよ、みんなのところへは」キッ

律子「あなたは、私がここで食い止めるっ!」チャキッ


コトリマインド「……いい表情です、律子さん」

コトリマインド「さあ、もっと楽しみましょう!」

204 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 21:01:58.60 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 1F 廊下 ー


亜美「……おーい、りっちゃーーん!」

響「律子ぉーー! どこだーー!?」

やよい「律子さーーん!!」



真美「……りっちゃん、いないね」

響「どこ行ったんだ、律子……」

亜美「さっきまではいたんだけどね」

やよい「うー……ここってけっこう広いですし、もしかして迷子になっちゃったんでしょーか?」

雪歩「………」

雪歩「もっと奥に探しに行ってみよう。ひょっとしたら律子さん、私たちのために何かしてくれてるのかも」

響「……それ、律子ならあり得るかもね。今までも律子はいつも自分たちの影で頑張ってくれてたから」

真美「でも、ゆきぴょん。みんなを待ってなくていいの? 真美たちがいなかったら、あとから来たみんなが困っちゃうんじゃない?」

雪歩「あ、そっかぁ。うぅ、でも……」

やよい「あの、雪歩さん。二手にわかれたらどーですか? ここでみんなを待ってるチームと、律子さんをさがしに行くチームと」

雪歩「! ……そうだね、そうしよう」
205 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 21:05:31.77 ID:/DBTa6rJO

雪歩「じゃあ、私とやよいちゃんで律子さんを探しに行くから、響ちゃんは真美ちゃん、亜美ちゃんと一緒にここで待っててもらえるかな?」

響(ふーん……)

亜美「ええー? また亜美はお留守番なのー!?」

真美「亜美、しょーがないっしょ。今はゆきぴょんがイチバンお姉ちゃんなんだもん」

亜美「むぅ……」

響「亜美、雪歩の言うとおりにしよう。ここで揉めても話が進まないぞ」

亜美「……わかったよー」

雪歩「ごめんね、亜美ちゃん」



響「じゃあ、気をつけてな」

雪歩「うん。響ちゃんも、そっちはよろしくね?」

響「……へへ、今の雪歩、なんだか一味違うな!」ニコッ

雪歩「そ、そんなことないよぅ! 私なんか全然……///」

響「あ、そういうところはなかなか直らないんだな」

響「とにかく、律子のこと、よろしくな!」

雪歩「……うんっ」グッ
206 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 21:08:35.15 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 1F階段 ー


スタスタ…

雪歩「……やよいちゃん、ごめんね? 私なんかが勝手に決めちゃって……」

やよい「そんな、気にしないでください! わたし、雪歩さんといっしょに行動できてうれしいですから!」

雪歩「えへへ、そう言ってもらえると助かるよ」

やよい「それに、なんだか今日の雪歩さんは、とってもたのもしいです!」

雪歩「そ、そう、かな?」

やよい「はい!」ニコッ

雪歩「さっきはありがとう。やよいちゃんの助言がなかったら私、どうしていいか分からなかったかも」

やよい「えへへ、おやくに立ててよかったです!」

雪歩「……早く律子さんを見つけなきゃだね」

やよい「はい、ガンバりましょー!」

スタスタ…

207 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 21:12:21.71 ID:/DBTa6rJO
ー 月の民の館 図書室 ー


亜美「ぬぅ……」

亜美「ヒマヒマっしょ……」

響「まあまあ、こうやってみんなを待つのだって立派な仕事だぞ?」

亜美「そーかもしんないケドさー」


真美「……ねえひびきん。なんかさっきのゆきぴょんってオラオラってカンジだったよね?」

響「いや、オラオラって程じゃなかったと思うけど……」

響「……うん。でも、きっとさっき真美が言った通りだと思うぞ」

亜美「真美が言ったとおりって?」

響「今いるメンバーの中では雪歩が一番お姉さんでしょ? 雪歩なりに自分がしっかりしなきゃって思ったんじゃないか?」

亜美「ほーう」

真美「なるほど、ゆきぴょんもお姉ちゃんに目覚めた、と」

響「んー、真美のそれとは少し違うんじゃないか?」

響「でも、ああいう風にここ一番って時に自分を奮い立たせるのが雪歩なんだって自分は思う」

響「普段は大人しいから、そういうのが目立ち安いよね、雪歩って」

亜美「ひびきんって、何気にお姫ちんいがいの人のこともちゃんと見てるんだねー」

響「そんなの当たり前だぞ。みんな大切な仲間なんだから」

響(……雪歩が本当は強い子だっていうのは、あのダークエルフとかいう怪物と戦った時にもう分かってたからな)

響(成長したなぁ……雪歩。自分も負けていられないぞ!)

208 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 21:17:05.06 ID:/DBTa6rJO
ー ハミングウェイ一族の住処 ー


春香「……ふぅ、ようやく到着だね」

千早「結構な距離を移動してきたのね、私たち」

美希「……zzz」

P「二人ともお疲れ。すまないな、二人だけに苦労させて」

春香「いえ、気にしないでください」

千早「そうですよ。プロデューサーは私の胸でじっとしててくれればいいんです」ニコッ

P「もはやべろちょろでいる事に違和感を感じなくなってきたよ、俺自身」



千早「それにしても、なんだかとても静かね」

春香「そうだよねぇ。あれだけ大勢で激しい戦いをしてたっていうのに、変だよね……?」

P「もしかしてもう戦いは終わったのか?」

千早「その可能性もありますね」

春香「とにかく、中に入ってみようよ」

千早「そうね」

美希「……zzz」


…ガチャ


春香「ごめんくださーーい!!」


…シーーン

209 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 21:19:36.69 ID:/DBTa6rJO

春香「……やっぱり誰もいないみたい」キョロキョロ

春香(洞窟の中は……)

春香(生々しい戦いの傷跡がそこかしこに……)

春香(……ん? あれは……)

スタスタ…


千早「……プロデューサー、これからどうしますか?」

P「すでに戦いが終わってここから移動したとなると……みんなは貴音たちが向かったバハムートの家へ行ったか……」

P「それとも、俺たちを探してくれているのかもしれない」

P「……いやでも、律子がついてたからな。律子なら『自分たちだけでも一旦目的地へ向かった方が合理的だ』とか考えそうでもある」

千早「いずれにせよ、私たちもすぐに移動すべきですね」

P「ああ、そうだな」
210 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/09(月) 21:22:54.08 ID:/DBTa6rJO

春香(この壁の裂け目……これはたぶん、暗黒剣でできた亀裂だね。まだほんの微かに暗黒闘気が漂ってる)

春香(暗黒剣ってことは、これは律子さん……お姉ちゃんがやったんだ)

春香(すごい……私が暗黒騎士だった頃とは比べものにならない威力だよ、これ)

春香(ヤミちゃんの暗黒剣といい勝負……ううん、それ以上かも)

春香(でも、暗黒剣は自分の生命力を犠牲にして力に換える剣。その威力に比例して、刃が自分に返ってくる)

春香(無理してないかな、お姉ちゃん。……心配だな)


千早「……春香? どうかしたの?」


春香「……あ、ううん、ごめんね」

タタタタ


P「春香、疲れてるところ悪いが早速移動だ」

春香「はい、分かりました」

千早「では、どこへ向かいますか?」

P「そうだな、まずは……」



「……ったく、あずさに任せた私がバカだったわ。ここ、最初に魔物と戦った場所じゃないの」

「ご、ごめんなさい伊織ちゃん。私も何か役に立ちたくて……」

「まあまあ、終わった事はしょうがないだろ、伊織」



春香「……あれっ?」

千早「あそこにいるのは……」

P「みんな……!」
211 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/10(火) 01:00:27.01 ID:opVyiHeMO

春香「おーーい!!」フリフリ



真「えっ……?」

伊織「ちょっと……春香に千早、美希までいるじゃない!」

あずさ「まあ、良かったわ〜♪ 」



真「どうしたのさ? なんで春香たちがここにいるの?」

春香「なんでって……ヤミちゃんの事が解決したからみんなのところに戻って来たんだよ?」

伊織「…………あ」

千早「真たちこそ、どうしてここに?」

真「ボクたちは君たちを探しに来たんだけど、ちょっとトラブルがあって、でも結果オーライっていうか……」

千早「?」


伊織「よく考えてみれば当たり前の事よね」

伊織「私たちは春香たちとこの場所で別れた。でも春香たちとは合流地点を決めていなかったから、春香たちがここへ戻って来るのは当然よ」

真「あ、そうか! じゃあ、もしかしてボクたち、見当違いの場所を探そうとしてたって事?」

伊織「そうなるわね。あずさのファインプレーがなければ」

あずさ(……本当は、思ったところと別の場所に瞬間移動しちゃったのは黙っておいた方がいいかしら〜)

212 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/10(火) 01:04:27.69 ID:opVyiHeMO

春香「ねえ、ところで他のみんなはどこにいるのかな?」

伊織「アンタたちと貴音以外はすでに目的地……月の民の館へ到着してるわ」

千早「……なるほど、プロデューサーの考えは当たっていましたね」

P「……みたいだな」

P「わざわざ迎えに来てもらってありがとうな、三人とも」

伊織「……あら、アンタいたの?」

P「あ、えーと、一応……」

春香「みんな、ごめんね。私のせいで迷惑かけちゃって」

真「全然気にする事じゃないさ。春香にだって事情があったんだろ?」

春香「……うん」

あずさ「みんな、疲れてない? 回復しましょうか?」

千早「ありがとうございます、あずささん。でも、大丈夫です」

伊織「千早、ご苦労様。アンタに任せて正解だったみたいね」

千早「いえ……」チラ

美希「……zzz」

千早「今回の事は、美希の功績が大きいわ」

伊織「……そう」



伊織「とにかく、とっとと帰りましょ。みんなが待ってるわ」

春香「うんっ」

真「そうだね!」

あずさ「うふふ、みんなが揃ったらお祝いでもしたいわね〜」

千早「あずささん、それはさすがに呑気すぎるんじゃないでしょうか……」

美希「……いちごババロア……」ムニャムニャ

213 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/05/10(火) 01:10:15.84 ID:opVyiHeMO
つづく

展開が本家とかけ離れているのは仕様です
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/10(火) 02:39:21.58 ID:jkB3LocrO
面白いから大丈夫、次は早めに来てほしいな
続きが楽しみで仕方ない
215 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/05/29(日) 19:10:39.45 ID:KJBDXc7gO
ー 月の民の館 クリスタルルーム ー


…ドガッ!!


律子「っ……ぐぅ……!」ヨロッ


コトリマインド「はいっ!」ヒュッ


バキッ!!


律子「が……はっ……!」ガクッ


コトリマインド「どうしました? 律子さん。なんだか動きが鈍くなってきてません?」


律子「はぁ、はぁ……っ」

律子(……まずい。ここへきて暗黒剣を使った代償が響いてきてるわ)

律子(身体が思うように動かなくなってきた)

律子(こんなことなら、私も少し休んでおけばよかったかも……)


コトリマインド「みんなを呼んで来たらどうです? 私、ここで待ってますから」

コトリマインド「言いにくいんですけど……律子さん一人じゃ、ちょっと役不足みたいです」


律子「!」


コトリマインド「いいですか? 私はあくまで分身ですから、本体程の性能はありません」

コトリマインド「その私にここまで手こずっているようじゃ……ね?」


律子「………」
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/29(日) 20:56:53.37 ID:SHFd7fc+O
1レスで今日は終わり?
217 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/05/29(日) 22:23:59.76 ID:KJBDXc7gO
すみません、自分の携帯の回線の関係で日にちが空いた後の投下分は反映が遅れるようなので、とりあえずテストです。
これから投下します。
218 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/05/29(日) 22:29:24.67 ID:KJBDXc7gO

コトリマインド(……ここまで言われたら律子さんのプライド、ズタボロだろうなぁ)

コトリマインド(……でも)


律子「……分身だか本体だかなんて知ったことじゃないわ」

律子「ああもう、あったまきた! ちょっと本気で行かせてもらいますからね!」


コトリマインド(それでも、向かって来る。勝てないと分かってても)

コトリマインド(みんなのために体を張る律子さん……)

コトリマインド(濡れ……いえ、惚れちゃいますっ!)キュンキュン


律子「………」スチャ


コトリマインド「……ん? 剣を収めた……?」


律子「……時は、来た」バッ


コトリマインド「詠唱……?」


律子「赦されざる者の頭上に、星砕け振り注げ!」


コトリマインド「えっ……これってまさか……!」


律子「……メテオッ!!」



…ヒュー …ヒュー

ヒュー… ヒュー……ヒュー…



ドドドドドドドドドッ!!



コトリマインド「いだだだだだだっ!!」

219 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 22:34:04.38 ID:KJBDXc7gO

律子「はぁっ、はぁっ……」

律子「……どうです? 少しは効きました?」


コトリマインド「ううぅ……たんこぶがたくさんできちゃったよぅ……」ヒリヒリ


律子「はぁ!? たんこぶ!? う、ウソでしょ……?」

律子「メテオってもっとすごい魔法じゃなかったの……?」


コトリマインド「いえいえ、ちゃんと効いてますよ?今ので4000くらい持って行かれたかしら」


律子「はぁ、4000でたんこぶですか……」


コトリマインド「正直、驚きましたよ。本編でゴルベーザがメテオを使うのは最後の最後だったはず」

コトリマインド「律子さんは今、ゴルベーザを越えたかもしれません!」


律子「……あの、さっきから誰なんです? そのゴルベーザって」


コトリマインド「暗黒騎士ゴルベーザ。本編で主人公たちを苦しめる悪の親玉。だがその正体は……」

コトリマインド「主人公セシルの、実の兄」


律子「……!」
220 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 22:39:34.21 ID:KJBDXc7gO

コトリマインド「彼は、真の黒幕ゼムスに操られていただけに過ぎなかった」

コトリマインド「最終決戦間際でようやくゼムスの呪縛から解かれたゴルベーザは、セシルたちに加勢するも、それまで闇に手を染めていた彼にクリスタルが輝くはずもなく……」

コトリマインド「彼は、諸悪の根元ゼムスの真の姿を前に、呆気なく敗れてしまう……」

コトリマインド「律子さん、あなたがそのゴルベーザ役なんです」


律子「………」

律子「……つまり、私じゃ小鳥さんに勝てないと?」


コトリマインド「………」

コトリマインド「……私はともかく、本体には厳しいでしょうね」


律子(確かに、大体ここまで小鳥さんの言ったような展開だったわね)

律子(なるほど、私は主人公春香の影で報われない運命を辿るってわけなのね)

律子(損な役を引いてしまった自分のクジ運を呪うべきか……)

律子(……いえ)
221 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 22:44:07.16 ID:KJBDXc7gO

律子「……忠告ありがとうございます、小鳥さん」

律子「でも、それならなおさら私は引けない。あの子たちはまだまだ私がついてないと」


コトリマインド「律子さん……」


律子「それに、ゴルベーザだかサルベージだか知りませんけど、同じ道を辿ってたまるもんですか!」

律子「ゲームの筋書きなんかに、私は負けません!」


コトリマインド「ああ……」ゾクゾク

コトリマインド「美しい……美しいです、律子さん……!」




ーー散り際の命って、なぜこうも美しいんでしょう?




律子「……え?」




コトリマインド「右手にフレア……」ブゥン

コトリマインド「左手にフレア……」ブゥン


律子「魔法を同時に二つ……!?」

律子(だったらこっちも、今までで一番ダメージの通った攻撃で応戦するしかない!)

律子(覚えたての魔法を二度も使うのは不安だけど、私の魔力、どうか持って……!)


律子「……時は来た!」

律子「赦されざる者の頭上に、星砕け振り注げ!」


コトリマインド「うふふふふふふふふ!」


律子「メテオッ!!」


コトリマインド「メガフレア」


ゴゴゴゴゴゴ…


ーーカッーー!!

222 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 22:46:36.31 ID:KJBDXc7gO
ー 月の民の館 2F ー


ーードゴォ…ン


やよい「はわっ! い、今、ばくはつみたいな音が……」

雪歩「う、うん、確かに聞こえたね」

雪歩(律子さん、もしかして何かトラブルに巻き込まれた……?)

やよい「雪歩さん、今の音、下の方から聞こえました!」

雪歩「そうだね、地下で何かあったのかも!」

雪歩「……行こう、やよいちゃん!」スッ

やよい「はいっ!!」ギュッ

タタタタ…

223 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 22:50:30.23 ID:KJBDXc7gO
ー 月の民の館 図書室 ー


亜美「ねえ真美、今……」

真美「うん、真美にも聞こえたよ」

亜美「まさか、『何か』が攻めてきた……?」

真美「でも、それはおかしーよ。ピヨちゃんの手下は帰ったはずだし、ピヨちゃん自身も地下から動けないはずだし……」

亜美「………」

亜美「もし真美がピヨちゃんだったら、どーする? 亜美たちがすぐ近くにいるって分かったら」

真美「それは、んー……ガマンできなくてみんなに会いに行っちゃうかもね」

真美「…………あ」

亜美「………」

真美「………」

亜美「……確かラスボスの手前くらいにさ、敵として出てきたよね。ゼムスブレスとかゼムスマインドとか」

亜美「あれって確か、ゼムスの分身って設定じゃん?」

真美「亜美が言いたいコトはわかるけど、でも……」

響「……考え過ぎじゃないか? 亜美」

亜美「でも、相手はあのピヨちゃんだよ? ゼッタイなんかトリッキーなことしてくると思うよ」

真美「じゃあ、もし亜美の言うとおりだどしたら、今りっちゃんはピヨちゃんとタイマン中ってこと?」

真美「それってけっこーヤバくない?」
224 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 22:54:34.53 ID:KJBDXc7gO

響「律子の捜索は雪歩とやよいが向かってる。律子の事は二人に任せるしかないさー」

真美「ひびきん、ちょっとそれムセキニンっしょ。仲間だったらもうちょっと……」

響「仲間だから、だぞ」

真美「えっ?」

響「自分たちはここから動けない。雪歩に任されたからな。みんなが来るまで待っててって」

響「自分たちにできる事は、二人を信じて待つ事。二人なら、きっと大丈夫さー!」

真美「そっか……。うん、ひびきんの言う通りかもしんない。仲間だったらちゃんと信じないとダメだよね」

亜美「いやー、なかなかひびきんも成長しましたなー」

響「なんでそんな上から目線なんだ……」



響「ねえ二人とも、自分、ちょっとだけ用事があるから出てくる。ここを二人に任せてもいいか?」

亜美「え? なんで?」

真美「ここから動いちゃダメって言ったのはひびきんだよ?」

響「ごめん。でもすっごく大切な事なんだ」

響「貴音が戻って来た時に、絶対に必要になる事だから」

亜美「えっ……?」

響「頼むよ、二人とも」

亜美「まあ、ひびきんがそこまで言うなら……」

真美「真美たちは別にいーけど」

亜美「でも、あんましムチャなことはしちゃダメだよ?」

響「うん、分かってるぞ」
225 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 22:59:30.75 ID:KJBDXc7gO
ー 月の民の館 B1F ー


タタタタ…

雪歩「はぁっ、はぁっ……!」

雪歩(さっきの音……なんだったんだろう)

雪歩(月の民さんがお料理失敗しちゃったとか?)

雪歩(……ううん、そんなのじゃない、もっととても大きくて激しい音だった)

雪歩(まるで、ものすごい魔法同士がぶつかり合ったような……)

雪歩(でも、今は魔物さんたちもいないし、律子さんが危ない目に遭う事なんてないはずだよ……!)

雪歩(ないはず、なのに……)

雪歩(……なんでだろう。すごく嫌な予感がする)

雪歩(ダメだよね、私がそんな弱気じゃ。律子さんは無事。きっと無事でいてくれてる)

雪歩(だって、『そんな事』あり得ないもん)

雪歩(『あの人』は今、動けないはずだから……)


やよい「……あっ、雪歩さん見てください! ドアがあります!」スッ

雪歩「………」

雪歩「開けて……みようか」

やよい「はいっ! 律子さん、見つかるといいですね!」

雪歩「うん、そうだね」ニコッ

雪歩(大丈夫……大丈夫……)

雪歩(さっきの音は、律子さんが魔法の練習でもしてたんだよ)

雪歩(だから、きっと大丈夫……)


…ガチャ ギィ…

226 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:03:58.44 ID:KJBDXc7gO
ー 月の民の館 クリスタルルーム ー


コトリマインド「うふふ……」

コトリマインド「いらっしゃい。お久しぶりね、雪歩ちゃん、やよいちゃん」ニコッ


雪歩・やよい「!!」


雪歩「こ……小鳥さん、なんですか……?」

雪歩(どうして小鳥さんがここに……!?)

雪歩(地下で封印されてるはずじゃなかったの……?)


コトリマインド「ええ、そうよ」

コトリマインド「しばらく見ないうちに逞しくなったわねぇ、二人とも♪ 」


雪歩「は、はぁ……」

雪歩(ウソ……当たっちゃった……嫌な予感が……)


やよい「小鳥さんお久しぶりです! あの、お話してたいんですけど、わたしたち、律子さんをさがしてるんです!」

やよい「律子さんを見ませんでしたか?」


コトリマインド「ああ、律子さんなら……」

コトリマインド「ほら、あそこでお昼寝してるみたいね」スッ



律子「………」グッタリ



雪歩・やよい「律子さん!!」

タタタタ…
227 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:05:54.52 ID:KJBDXc7gO

やよい「律子さん、律子さん、しっかりしてください!」

律子「………」グッタリ

雪歩(ひどい怪我……)

雪歩(こんな怪我、ちょっと転んだとかそんなのじゃ絶対にできない。……まるで、誰かに痛めつけられたような……)

やよい「雪歩さん! ぽーしょん持ってますか!?」

雪歩(じゃあ、いったい誰がこんな事……?)

雪歩「………」

やよい「雪歩さんっ!!」

雪歩「ひゃうぅっ!?」ビクッ

やよい「お薬、持ってますか? 律子さんに飲ませてあげないと!」

雪歩「そ、そうだよね、うん! ちょっと待ってて」ゴソゴソ



コトリマインド(……二人だけかぁ。まあいいわ。雪歩ちゃんとやよいちゃんがどれだけ成長したのかも見てみたいし)ニコッ

コトリマインド(っていうか雪歩ちゃん、なんだかすごい重装備ねぇ。全身ガッチガチじゃない)
228 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:09:56.74 ID:KJBDXc7gO

律子「ゲホッ、ゴホッ……!」

やよい「り、律子さん、だいじょーぶですかっ!?」ギュッ

雪歩「律子さん!」

律子「や……やよいと……雪歩……? あんたたち、なんでここに……」

やよい「すぐにみんなのところに連れて行きます! 真美にかいふくしてもらいましょう!」


コトリマインド「……残念だけど、それは許可できないわねぇ」


雪歩「!」

やよい「? ……あの、律子さんのけががひどいんです。早く手当しないと……」


コトリマインド「ダメよ」


やよい「ど、どーしてですか?」


コトリマインド「どうしてって、そんなの決まっているでしょう?」

コトリマインド「律子さんに酷い事したの、私なんだから」ニヤリ


雪歩(や、やっぱり、小鳥さん……! どっ、どうしよう……)

やよい「な……なんでですか!? なんで、小鳥さんがこんなひどいこと……!」


コトリマインド「それは仕方ないわ。私たちは敵同士だもの。特に律子さんは私を裏切った罪も」


やよい「おかしいですっ!!」


コトリマインド「」ビクッ
229 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:13:02.65 ID:KJBDXc7gO

やよい「そんなの、ぜったいにおかしいです!」

やよい「だって、小鳥さんは……ぐすっ……いづも、やざじくでっ……!」ポロポロ

やよい「ごんなの、わだじ……しんじられないですっ……うぅっ!」グスッ

雪歩(やよいちゃん……)


コトリマインド(う……ちょっとコレ、罪悪感が振り切っちゃったわね……)

コトリマインド(でも今さらよ、小鳥。あなたは決めたはず。ラスボスはラスボスらしく……)

コトリマインド(諸悪の根元として、華麗にこの役を演じきってみせるって!)


コトリマインド「泣いたってダメよ、やよいちゃん。自分の身は自分で守らないとね?」

コトリマインド「そうしないと……」ブゥン


やよい「……こ、小鳥さん、何を……?」グスッ


コトリマインド「……フレア!」


ブゥゥゥン…


ババババババババッ!!


やよい「っ……!」

230 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:17:00.46 ID:KJBDXc7gO
コトリマインド「………」

コトリマインド(……もう、後には引けないわね)

コトリマインド(やよいちゃん、耐えてくれたかし……)


雪歩「……!」ジッ


コトリマインド(……ら?)


やよい「ゆ、雪歩さん……!」


コトリマインド「雪歩ちゃん……!」

コトリマインド(雪歩ちゃんがやよいちゃんの盾になった……?)

コトリマインド(でも雪歩ちゃんって確かギルバート役……吟遊詩人よね? 全キャラの中でもかなり弱い方だったはずだけど)

コトリマインド(……いえ、違う。あの鎧に何か秘密があるのね)

コトリマインド(きっと相当良い装備なんだわ)
231 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:19:57.10 ID:KJBDXc7gO

雪歩「……正直、どうしていいか分からないです」

雪歩「小鳥さんの事は大好きですし、こんな風に戦わなきゃいけないなんて、私、耐えられませんっ……!」


コトリマインド「雪歩ちゃん……」


雪歩「……でも、一番イヤなのは」

雪歩「ウジウジ悩んでいるだけで何もできないで、結局大切な人を守れない事ですぅっ!!」ガシャン


コトリマインド「!」ズキューン


やよい「……!」


コトリマインド(か……かっこ可愛い! これが雪歩ちゃん……?)

コトリマインド(すごい……すごいわ……!)ゾクゾク


雪歩「フレア……でしたっけ? さっきの魔法」

雪歩「ちょっと熱かったですけど、効きません。今の私には」ガシャ

雪歩「この『アダマンアーマー』がある限り、私にはどんな攻撃も通用しないんですぅ!」ガシャン


コトリマインド「そっかー、アダマンアーマーじゃしょうがないわねー」



コトリマインド「……って、ええええっ!!?」ガタッ
232 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:23:22.88 ID:KJBDXc7gO

コトリマインド「あ、アダマンアーマー!? ほ、本当に!? 都市伝説じゃなかったのアレって!?」


雪歩「は、はい、よく分かりませんけど、プロデューサーや真美ちゃん、亜美ちゃんに教えてもらったんです……」

雪歩「そういえば、すごいレアアイテムだって言ってましたね」


コトリマインド「レアアイテムもレアアイテム、超絶激レアアイテムよぅ!!」

コトリマインド「私なんてもう、プリンを何億匹屠ったか分からないわ」

コトリマインド「それでも、巡り会えなかった……。それだけ貴重なのよ、その鎧は」


雪歩「そ、そうなんですかぁ……」


コトリマインド「……でも、丁度いいハンデかもしれないわね」


雪歩「えっ?」


コトリマインド「律子さんですら私の相手にならなかった。あなたが全てを弾き返す最強の鎧を纏って、ようやく私と同じ土俵に立てるって言ってるのよ」


雪歩「っ……!」


コトリマインド「かかって来なさい。死にたくなければ、ね」


やよい「ゆ、雪歩さん!」

律子「ゆき…ほ……」

雪歩「………」

雪歩「わ、私が……みんなを守りますぅ!」


コトリマインド「いいわ……! 返り討ちにしてあげます!」


コトリマインド(……あれ、でももし本当に雪歩ちゃんにどんな攻撃も通じないなら、私詰んでるわよね……?)

コトリマインド(ま、ラスボスだしなんとかなるかしら)
233 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:26:24.93 ID:KJBDXc7gO
ー 月の民の館への道 ー


スタスタ…

春香「ごめんね、真。美希を背負ってもらっちゃって」

真「気にしないでよ。ボクもいいトレーニングになってるし」

美希「……zzz」

春香「そっか」

春香「うふふ、えへへ……」ニコニコ

伊織「何ヘラヘラ笑ってんのよ、気持ち悪いわねぇ」

春香「うぐっ……相変わらずだなぁ、伊織は」

伊織「なによ、悪い?」

春香「ううん、全然悪くないよ。……ただ、嬉しくって」

伊織「……は?」

春香「こうしてみんなでいつも通り変わらずにいられるってさ、当たり前なのかもしれないけど、すごく大事な事なんだなって」

春香「私、今回の事で学んだよ」

真「………」

千早「春香……」

あずさ「うふふ♪ 」

美希「……zzz」

伊織「いつも通り変わらずに、ねぇ。……もしかしたら、変わっちゃってる子もいるかもしれないわよ?」

伊織「いろいろあったもの、この世界へ来て」

春香「……そうだね。うん、そうかもしれない」

春香「でも、きっと肝心なところは何も変わらない。心の奥でみんな同じ想いを抱いてる」

春香「今はね、根拠もないけどそう信じられるんだ!」ニコッ

伊織「……!」ドキッ

伊織「……まったく、相変わらず能天気なんだから」
234 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:30:11.40 ID:KJBDXc7gO

P「ところで、他のみんなは元気なのか?」

真「はい、今のところ特にこれと言って大きな問題もないですし」

あずさ「そろそろ響ちゃんたちも起きた頃かしらねぇ。帰ったら賑やかになってそうね〜」

伊織「ホント、律子の苦労が目に浮かぶわ」

千早「ふふっ」

伊織「……ああそうそう、律子と言えば」

伊織「あいつ、いくら言っても休もうとしないのよ。アンタからも少し言ってやってちょうだい」

P「そうなのか。うん、分かったよ」

春香「………」



真「……ん、館が見えてきたね」

あずさ「ようやく到着ね〜」

伊織「アンタたち、館に着いたら少し休みなさいよ。疲れてるんでしょ?」

千早「ありがとう、水瀬さん」

春香「えへへ、やっぱり伊織は優しいな♪ 」

美希「……でこちゃん……」ムニャムニャ
235 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:35:29.57 ID:KJBDXc7gO
ー 月の民の館 図書室 ー


伊織「……みんな、帰ったわよ!」


亜美「あー! いおりんたちやっと帰ってきたー!」

真美「もー、こっちはタイヘンなんだよー!」


伊織「何かあったっていうの?」

P「っていうか、亜美と真美だけか? 他のみんなは?」

真美「それが、かくかくしかじかでーー」




真「ーー雪歩とやよいがいなくなった律子を探しに?」

真美「うん……」

千早「四条さんは?」

亜美「まだなんだよー」

伊織「……どうするのよ?」

P「そうだな……」

春香「………」

春香「……私、お姉ちゃんを探してくる!」スクッ

伊織「ちょっと待ちなさいよ! アンタ、律子がどこに行ったか分かってるわけ?」

春香「それは、分からないけど……」

春香「でも、お姉ちゃんに危険が迫っているかもしれないのに、私、見過ごせないよ!」

千早「春香、気持ちは分かるけど……」

P「………」

P「亜美、俺を元に戻してくれないか?」

亜美「えっ? いいけど……」

亜美「……トード!」


…ボンッ!
236 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:39:32.89 ID:KJBDXc7gO

P「もし本当に音無さんが相手だとしたら、律子だけでなくやよいと雪歩も心配だ」

P「音無さんの強さは未知数だからな」

P「でも、こっちにはジュピターの三人にもらった回復アイテムがまだ残ってる。律子を探しに行こう」

春香「プロデューサーさんっ……!」

P「大丈夫、俺が援護するよ」ニコッ

春香「あ、それは嬉しいんですけど……///」モジモジ



春香「…………その、服、着てくれませんか?」



P「…………あ、素っ裸だった」



伊織「……まったく、何もかも台無しよ」

真「はは、まあ、そういうところがプロデューサーって感じもするけどね」

P「す、すまん」ゴソゴソ
237 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:44:05.94 ID:KJBDXc7gO

P「……それで、誰が律子を探しに行くかなんだが……」

あずさ「あの、私も行ってもいいですか?」

千早「春香が行くなら私も行きます」

P(オールマイティのあずささんに前衛の千早か。結構バランスが取れているかもしれない)

P「うん、分かった」

P「あとは……」

伊織「……どうせ貴音を待ってる人間が必要なんでしょ? 船を山に登らせるわけにもいかないし、私が残ってあげるわよ」

真「ボクも残ります。小鳥さんに会ったらよろしくって伝えてください」

亜美「……ま、亜美たちもひびきんを待ってなきゃならないし」

真美「真美たちみんなでフルボッコじゃ、ピヨちゃんもカワイソーだしね!」

P(亜美と真美が残ってくれるなら、うまい具合に魔道士が別れるな)

P「すまないな、みんな。美希の事をよろしく頼む」

伊織「了解。文句のひとつでも言ってやりなさいよね。あのバカ事務員に」

P「ああ、わかった。……それじゃ、行こうか」

春香・あずさ・千早「はい!!」
238 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:47:59.62 ID:KJBDXc7gO
ー 月の民の館 クリスタルルーム ー


ヒュッ…!

ガキィン!!


やよい「雪歩さんっ!」


雪歩「……だ、大丈夫、ちょっとびっくりしちゃったけど、なんともないよ」

雪歩「やよいちゃんは律子さんをお願いね?」


やよい「うぅ、でも……!」

律子(すごいわね。小鳥さんのあの恐ろしく重い一撃をまったく通さないなんて)


雪歩(……うん、平気。怖いけど、この鎧が私を、みんなを守ってくれる……!)


コトリマインド(なんともない……かぁ。流石はアダマンアーマーね)

コトリマインド(でも、それじゃ面白くないわねー)



コトリマインド「……雪歩ちゃんが鉄壁なのは分かったわ。でも、守りに徹しているだけじゃ私は倒せないわよ?」


雪歩「わ、私は別に、小鳥さんを倒したいわけじゃないですから……」


やよい「雪歩さん……」

律子「雪歩……」
239 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:50:36.28 ID:KJBDXc7gO

コトリマインド「優しいのね、雪歩ちゃん。でも、その甘さは致命傷になりかねないわよ?」

コトリマインド「………」ブゥン


雪歩「えっ……?」


律子(あれは……!)

律子「逃げなさい雪歩! あれは危険だわ!」


雪歩「……いいえ、逃げませんっ!」グッ

雪歩(私が逃げたら、やよいちゃんと律子さんを守る人がいなくなっちゃいますから!)


やよい「………」

やよい「……!」グッ


コトリマインド「いくらアダマンアーマーといえど、無属性の、しかも召喚魔法最強の攻撃を完全に防ぐのは不可能、と私は見てるわ」

コトリマインド「……覚悟はいい?」


雪歩「うぅっ……!」ガシャン


コトリマインド「……メガフレア!!」



ブゥゥゥン…


ーーカッーー!


ドドドドドドドドドッ!!
240 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:53:24.47 ID:KJBDXc7gO

雪歩「うぅああああっ!?」


律子「ゆ、雪歩!?」


雪歩(身体が、熱い……! 溶けちゃいそうなぐらい熱いよ……!)

雪歩(……でも、ここで私が逃げたら……!)

雪歩「うぅっ……!!」グッ


コトリマインド「頑張るわね、雪歩ちゃん。でも、いつまで耐えられるかしら……?」ググッ


ゴオオオォォオオ!!


雪歩「ああああっ!」フラッ


やよい(ど、どうしよう!? このままじゃ雪歩さんが……!)

やよい(でも、小鳥さんをきずつけるなんてわたしには……!)


律子「……やよい」ギュッ

やよい「! ……律子さん」

律子「あの小鳥さんは、小鳥さんであって小鳥さんではない、偽物よ……」

律子「だから……雪歩に、力を貸してあげてちょうだい」

やよい「で、でも……」

律子「あの人を倒さなければ、本物の小鳥さんに会いに行くのは不可能なの。お願い……!」

やよい「うぅ……」

やよい「……わ、わかりましたっ!」
241 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/29(日) 23:58:27.49 ID:KJBDXc7gO

やよい「いふりとさん、出てきてくださいっ!」バッ


イフリート「……っしゃあああっ!! 地獄の火炎っっ!!」


ボオオォォオオ!!


コトリマインド「……む、火の召喚獣『イフリート』ね。でも、それで私のメガフレアに対抗しようなんて……」


やよい「……しるふちゃん! 出てきてくださいっ!」バッ


コトリマインド「…………え?」


スゥゥーー…


シルフ「……はぁ、やっとこさ私の出番ですか。待ちくたびれたんですよ〜?」

シルフ「……風の囁きっ!」


ブワッ…!


コトリマインド「召喚獣を……」


律子「同時に二体……!」
242 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/30(月) 00:01:02.17 ID:qk5HBLGYO

雪歩「や、やよい……ちゃん……」ヨロッ


やよい「火は、風を受けるとごぉーっ!! ってもっとはげしくもえるんです!」


ボオオオオォォオオ!!


コトリマインド「なるほど、考えたわね……!」

コトリマインド「でも、それくらいじゃあ私のメガフレアは押し返せないわよ?」


やよい「だったら……」

やよい「お母さん、しばさん、出てきてくださいっ!!」バッ


スゥゥーー…


ミストドラゴン「……ミストブレス!」


シュゥゥ…! キラキラキラ…!


シヴァ「……絶対零度」


コォォォ… パキィン!!


コトリマインド「っ!? 霧と氷で、身動きが取れない……!」


雪歩「……ぅあ……」ドサッ

律子「ゆ、雪歩!」ダキッ

律子「体温が上がり過ぎてる……! 早く回復しないと……!」

律子(……でも、今のやよいの攻撃で小鳥さんのメガフレアを止める事ができたみたい)

律子(やよい……強くなったわね)
243 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/30(月) 00:05:51.43 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド「……驚いたわね、立て続けに4体も召喚するなんて」

コトリマインド「やよいちゃん、いつからそんな事できるようになったの?」


やよい「えっと、わかりませんけど、なんとなくできそうな気がしたんです」


コトリマインド(複数同時召喚か。ちょっと厄介だなー。召喚魔法は一番攻撃力が高いのよねー)

コトリマインド(まあでも、どうせ私は分身だし、やよいちゃんの本当の強さをここで見極めるのもいいかもしれない)


やよい「小鳥さんのにせものさん、わたしが相手になりますっ!」ビシッ


コトリマインド「ふふふ、やよいちゃんひとりで大丈夫かしら……?」

ズズズ…



律子「! 小鳥さんの身体が消える……! やよい、気をつけて!」


やよい「は、はいっ!」


やよい「えっと、えっと……」キョロキョロ



コトリマインド「……後ろよ、やよいちゃん」

ヒュッ…


やよい「はわっ!」ダッ


コトリマインド「あら、うまく避けたわね。でも……」

ドゴォ!


やよい「あぅっ……!」ヨロッ


律子「や、やよい!」


やよい「うぅ……いたいです……」


コトリマインド「ふむ……」

244 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/30(月) 00:09:34.62 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド「4体召喚なんてやってみせた後にそれだけ動けるのはすごいと思うけど……」

コトリマインド「もともと召喚士は前衛で戦うタイプじゃないものね。近接戦闘に関しては話にならないわ。律子さんの足元にも及ばないわねぇ」

コトリマインド「召喚魔法さえ使われなければ、やよいちゃんは私の敵じゃない」

コトリマインド「あなたは、他の誰かに守られていないと自分の力が発揮できないのよ」


やよい「!」


コトリマインド「どうする? まだ戦う意思はある?」

コトリマインド「律子さんは怪我で動けないし、雪歩ちゃんも戦線離脱。やよいちゃんひとりで私に勝てるのかしら?」ニヤリ


律子(私の時もそうだったけど、小鳥さん、かなりこちらを煽ってくるわね。精神攻撃のつもりなのかしら……)

律子(……ん? 精神…攻撃……?)


やよい「こうさんなんてしません!」

やよい「だって、わたしがこうさんしちゃったら、小鳥さんの遊ぶ相手がいなくなっちゃいますから」


コトリマインド「へぇ……」


やよい「なんだか、今の小鳥さんは浩司みたいです」


コトリマインド「……えっ?」
245 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/30(月) 00:13:17.72 ID:qk5HBLGYO

やよい「うちの浩司も、さみしくなるとよくダダをこねるんです」

やよい「小鳥さん、この世界でずっとひとりぼっちでさみしかったんですねよね? だから、誰かにかまってもらいたかったんですねっ」

やよい「わたし、やっと分かりました!」


コトリマインド「あ、あの、やよいちゃん?」


やよい「だから……わたしでよかったら、相手になります!」


コトリマインド「え、えーっと……なんか誤解してないかしら?」


やよい「いえ、だいじょーぶです! わたし、よく弟の相手をしてますから、こうゆーのなれてるんです!」キリッ


コトリマインド「いや、確実に誤解してるみたいなんだけど……」

コトリマインド「……まあいいわ。とりあえず逃げないで戦ってくれるみたいだし」

コトリマインド「それじゃあ、遊びましょう!」


やよい「はいっ!」


やよい「……!」ゴゴゴ


コトリマインド「うふっ、召喚する隙なんてあげないわよ?」ダッ


ガラッ…


コトリマインド「きゃあっ!?」

ドサッ!


コトリマインド「いたた……。もう、なんでこんなところに落とし穴が空いてるのよぅ!」

コトリマインド「…………はっ!?」


雪歩「はぁ、はぁ……!」チャキッ

雪歩「やよいちゃん、あとはお願いっ……!」

ドサッ


コトリマインド「ゆ、雪歩ちゃんいつの間に!?」


やよい「雪歩さん、ありがとうございますっ!」


やよい「うっうーーーーーーー!!」パァァ



コトリマインド(さっきやよいちゃんと話しているわずかな隙に落とし穴を掘ったっていうの?)

コトリマインド(やられたわ……!)
246 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/30(月) 00:17:31.32 ID:qk5HBLGYO

スゥゥーー…


コトリマインド(次は何が来るの……? ラムウ? それともまたイフリート?)



「……クク、ようやく私の出番か! 待ちわびたぞ、高槻やよい!」

「……数少ない出番だ、私も微力を尽くそう」


コトリマインド「!!」



「……エンジェルちゃんたち、回復してあげるよ☆」

「……ケアルダ!」

シャララーン! キラキラキラ…


雪歩「あ……ありがとうございますぅ」


コトリマインド「ど……」

コトリマインド「どういう事ですか!? 私、こんなの聞いてないですよぅ!」

コトリマインド「高木社長に黒井社長、ジュピターのみんなまで!!」


高木「どうもこうもない。今起きている事が現実だよ、音無君」

黒井「フン、妙な事に巻き込まれたが、それももう終わりだな」

冬馬「あいつが765プロの事務員か?」

翔太「つまり、ラスボスってわけだね」

北斗「………」



コトリマインド「そ、そんな……社長たちまで私の敵だなんて……」ガクッ


律子「小鳥さん……」

冬馬「なんつーか、女をよってたかってってのは性に合わねーな……」

北斗「ああ、さすがにこの状況はな」

翔太「でも、あの人を倒さなきゃ元の世界に帰れないんだよね?」

高木「音無君、こんな事になって私もなんと言っていいかわからない。しかし、何か方法はきっとあるはずだ」


コトリマインド「……ステキですっ!!」


高木「……は?」
247 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/30(月) 00:21:08.24 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド「ステキ過ぎますよぅ、こんなの!」

コトリマインド「そりゃそうよね。私がこっちへ来ているんだもの、社長たちも呼ばれる可能性だって充分にあったのよね!」

コトリマインド「うふふ、まさか社長たちとも戦えるなんて! ああもう、私、嬉しくて嬉しくて……」


冬馬「な、なんだよあいつ、やる気満々かよ!」

北斗「思ったより逞しい人なんだなぁ」

律子「ったく、あの人はもう!」

高木「………」



黒井「御託はいい。さっさと始めるぞ」ゴゴゴ


コトリマインド「そうですねっ」

コトリマインド(……さっき伊集院君が回復魔法を使ってた。つまり、ジュピターは三人揃ってアスラ。そして高木社長は大っきな剣を腰に差してるから、多分オーディンね)

コトリマインド(って事は黒井社長は……)


高木「……黒井」

黒井「なんだ? まさか私の邪魔をするつもりか?」

高木「いや、そうではないんだが……」

黒井「元の世界へ戻るためにヤツを倒さねばならんのだろう? いい加減にお前も腹を括るんだな!」

高木「……そう、だな」



黒井「クク……!」

ザァァ…


雪歩「水が、黒井社長の周りに集まって……!」

律子「もしかして、津波……?」

やよい「あの、黒井社長、あんまりいたくしないであげてください!」


黒井「バカも休み休み言え! そんな器用な真似ができるか!」

黒井「覚悟はいいか、音無小鳥……! 私の津波の藻屑にしてやろう!」


コトリマインド(幻獣王、リヴァイアサン……! 相手にとって不足なし!)



黒井「……大海衝!!」


ザァァァァ…!!


コトリマインド「うふふふ……メガフレア!」


コォォ…



…ドッゴオオオオォォオオン!!!
248 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/30(月) 00:27:16.64 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド「………」


黒井「………」

黒井「……ち、相殺したか」


コトリマインド「さすがリヴァイアサン……いえ、黒井社長ですね! まだ本気を出してないとはいえ、私のメガフレアと相討ちなんて」


黒井「……フン」

高木「黒井、今のはわざとか?」

黒井「妙な勘ぐりをするんじゃない。私の大海衝とヤツの魔法が同程度の威力だったというだけだ。高槻やよいに言われたからといって私が手加減などするわけがなかろう!」

高木「ふふ、そうか」

高木「……さて、それでは次は私の番だな」スッ


コトリマインド「高木社長……」


高木「心中を察するよ、音無君。本当ならば私が君と代わってあげられれば良いのだが……」


コトリマインド「あら? もう勝ったおつもりなんですか? 勝負はまだ始まってもいませんよ?」


高木「………」


コトリマインド「それに、社長の剣は私には通用しません。残念ですけど、それがこのゲームのルールですから」


高木「……そうなのかね?」


コトリマインド「ええ。ボスキャラにはボス耐性っていうのが設定されていて、中ボスの私にはあなたの斬鉄剣……即死攻撃は効かないんです」


高木「そうか……それは困ったねぇ」


雪歩「ほ、本当に効かないんでしょうか? 社長、すっごく強そうなのに……」

律子「このゲーム関しては、今この場で小鳥さんが一番詳しいでしょうから、きっと小鳥さんの言う通りなんでしょうね」

やよい「社長……」ギュッ
249 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/30(月) 00:31:54.36 ID:qk5HBLGYO

高木「………」チャキッ


コトリマインド「無駄だと分かっていてもやるんですね? 社長、あなたはもう少し賢い方だと思っていました」


高木「……彼の話だと、このゲームのストーリーは展開が大きく変わってきているらしい」


コトリマインド「……えっ?」


高木「だったら変わるんじゃないかな? ……そのルールとやらも」

高木「悪く思わないでくれたまえ」スッ


高木「……斬鉄剣!」ビュンッ


…ズバァン!!



コトリマインド「……っ!」

コトリマインド「………」

コトリマインド「………」

コトリマインド「…………ほっ」

コトリマインド(社長が変な事言い出すから少しドキドキしちゃったわ)

コトリマインド(でも、なんともない。斬鉄剣はやっぱり不発だったわね)


冬馬「……おい、あの事務員、無傷だぜ」

翔太「そう……みたいだね」

北斗「高木社長も手加減したのか……?」
250 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/30(月) 00:36:39.08 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド「ふふっ、だから言ったでしょう? 社長の剣は私には効きませんって」

コトリマインド「今度はこちらの番ですね。覚悟してください!」

コトリマインド「……メガフレア!」



ーシーーン…ー



コトリマインド「……あれ? 」



雪歩「小鳥さんの魔法が発動しない……?」

やよい「どうしちゃったんでしょーか……?」

律子(まさか……そんな事があり得るの……?)

律子(でも、このタイミング、『そう』としか考えられない)

律子(もし本当にそうだとしたら……まるで手品ですね、社長)



コトリマインド「……メガフレア!」

コトリマインド「………」

コトリマインド「な……なんで!? なんで出ないのよぅ!」


高木「それはそうだろうね。私が斬ったのは……」



高木「…………君の、魔力だから」



コトリマインド「…………はい?」

251 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/30(月) 00:43:18.76 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド(魔力を、斬る? そんな技聞いた事ないわよ!)

コトリマインド(でも、現にメガフレアが発動出来なくなってる)

コトリマインド(全てのMPを奪われたわけではなさそうだけど……)

コトリマインド(やられた。まさか社長にそんな事が出来るなんて……)


黒井「フン、やはり自分の部下に傷は付けられないか。甘いな、高木よ」

高木「ああ。……そうかもしれないな」

高木「律子君、萩原君、高槻君。彼女を、よろしく頼んだよ」

黒井「音無小鳥、貴様の本体に伝えておけ。次は地獄を見せてやる、とな」

冬馬「高槻、負けんなよな!」

翔太「じゃあね〜」

北斗「チャオ☆」


やよい「みなさん、ありがとうございました!」


スゥゥーー…


雪歩「消えちゃいました……」

252 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/05/30(月) 00:46:01.76 ID:qk5HBLGYO

律子「とにかく、これで形成逆転ね。やよい、雪歩、行くわよ!」

雪歩「はいっ!」

やよい「は、はい……」ヨロッ

ドサッ

雪歩「や、やよいちゃん?」ダキッ

やよい「す、すみません……だいじょーぶです……」

律子「無理もないか。あれだけ立て続けに召喚魔法を使ったんだもの。やよいは休ませておくしかないわね」

律子「雪歩、やよいのことお願い」

雪歩「はい、わかりました!」


律子「……さて」チラ


コトリマインド「ふりだしに戻る、って感じですかね?」


律子「そんな事はないです」

律子「最初よりもあなたの体力は削れた上に、メガフレアを撃てる魔力はもう残っていない」

律子「対してこちらは私と雪歩の体力は回復した。やよいのおかげで私たちがかなり有利に立てましたよ」

律子(私ももうメテオを撃てる魔力は残ってないけど、充分だわ)


コトリマインド「それじゃ第二ラウンド、行きますか?」


律子「……望むところですっ!」グッ
253 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/05/30(月) 00:48:55.05 ID:qk5HBLGYO
つづく

オーディンは一番報われない召喚魔法だと思います
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 01:43:50.36 ID:b7HPuVPcO
せめて7みたいにグングニルの槍があれば違ったけど…
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 19:08:40.32 ID:uWK2Iu1J0
FF5のオーディン「あの、自分も持ってるんですけど」
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/28(火) 16:39:13.42 ID:/nHFV/hNO
FF5なぁ…うん…
257 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/06/30(木) 18:48:14.00 ID:A+/1OrpMO

律子「……と思ったけど、小鳥さん。第二ラウンドを始める前にもう一度聞かせてください」

律子「どうしても私たちは戦わなくてはならないんですか?」

やよい「!」

雪歩「………」


コトリマインド「………」


律子「雪歩も言ってましたけど、たとえゲームの世界とはいえ、自分の手で仲間を傷つけるのは正直心が痛みます」

律子「もしも戦う以外に元の世界へ帰れる方法があるなら、私はそれを試したい」

律子「これは私だけじゃなくて、多分みんなが考えている事なんです」


コトリマインド「………」

コトリマインド「そうですね。まあ、普通ならそういう考えになりますよね」

コトリマインド「でも、きっと無理です。私たちが元の世界へ帰る方法は、『このゲームをクリアすること』。つまり、ラスボスである私を倒すしか道はないんです」


律子「確かに、プロデューサーによればそういう話でしたけど、でも」


コトリマインド「律子さんちょっと待ってください」

コトリマインド「今気になったんですけど、プロデューサーさんって何の役なんですか? 味方キャラはアイドルの子たちで埋まってるし、他に重要なキャラはいなかったと思うんですけど」

コトリマインド「社長たちみたいに召喚獣だとしても、あと私が見ていない召喚獣はラムウだけ。……まさかラムウの役って事はないですよね?」
258 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 21:09:34.89 ID:A+/1OrpMO

律子「あー……」

やよい「あの、小鳥さん。プロデューサーはらむさんじゃないですよ?」


コトリマインド「じゃあ、いったい何の役なの? 彼もこの世界へは来ているのよね?」


律子「そういえば、小鳥さんには結局隠したままでしたね。実はプロデューサーは、べろちょろなんです」


コトリマインド「? ……べろ…なんです?」


律子「だからべろちょろですよ。ほら、やよいのポシェットの」


コトリマインド「あー、あのかえるの……」

コトリマインド「って待ってください。FF4にべろちょろなんて出てこないんですけど?」


律子「彼曰く、『自分は演じる役の無かったイレギュラー』らしいです」

律子「なんだか複雑な事情があったみたいですけど、私も詳しい話は知らなくて」

律子「とにかくプロデューサーはべろちょろで、普段は誰かの首にぶら下がってます」


コトリマインド「ええぇ……でもべろちょろって。ポシェットって。それじゃあ何にもできないじゃないですか?」


雪歩「あ、あの、一応亜美ちゃんの魔法で時々人間になったりはしてるんですけど……」


コトリマインド「魔法? いったい何の魔法で?」


律子「トード、でしたっけ。人間をカエルにしたり、カエルから人間に戻したりするアレです。亜美しか使えない魔法なんですけどね」


コトリマインド「………」

259 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 21:13:49.76 ID:A+/1OrpMO

コトリマインド(なんで私は今の今まで忘れていたんだろう、プロデューサーさんの事)

コトリマインド(そっか。プロデューサーさんはずっとみんなと行動していたのね)

コトリマインド(私がゼムス役だって事も、もう知っているわよね)

コトリマインド(どう思ったかな、私の事)

コトリマインド(調子に乗りすぎだろあの事務員、とか思われるてるのかなぁ……)

コトリマインド(はぁ〜あ……少しはっちゃけ過ぎちゃったかしら)

コトリマインド(……でも、これを利用しない手はないわ)

コトリマインド(私と刃を交えたとはいえ、今ひとつ煮え切らない律子さんたちの態度。それはおそらく、まだ私を倒す覚悟がちゃんとできてないから)

コトリマインド(それなら、みんなを焚きつけてあげなきゃね)

コトリマインド(イヤでも私と戦いたくなるように)


律子「あの、小鳥さん?」


コトリマインド「……ああ、ごめんなさい。少し考え事をしてました」

コトリマインド「さ、始めましょう、律子さん」スッ


律子「……どうしてもやらなければならないんですか?」


コトリマインド「道は、一つしかありませんよっ!」ダッ


律子「!」

260 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 21:19:10.25 ID:A+/1OrpMO

コトリマインド「えいっ!」ブンッ


律子「きゃっ!」ズサッ


律子「く……聞き入れてもらえませんか」


コトリマインド「私たちが戦う以外に道なんてありません。ですから律子さんも早く覚悟を決めてください!」


律子「………」

やよい「こ、小鳥さん……」

雪歩(覚悟……)


律子「……わかりました。私も本気を出す事にします」チャキッ


コトリマインド「あら、やっとその気になってくれましたか?」


律子「仲間にこんな事はしたくなかったけど……」ゴゴゴ


やよい「はわっ、律子さんのまわりになんだか黒いもやもやが出てきました!」

雪歩「あれって、春香ちゃんが暗黒騎士だった時と同じやつだ……!」


コトリマインド(……ようやく使う気になりましたか、暗黒剣)

コトリマインド(前にゾットの塔で私が律子さんを操って使った時はことごとく春香ちゃんに防がれちゃったけど、果たしてどの程度の威力なのかしら)


律子「……行きます! ……暗黒剣ッ!!」ブンッ


ズオオォォ…


コトリマインド(! ……これは……!)


ズドドドドドドーーン!!!

261 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 21:23:31.82 ID:A+/1OrpMO

律子「………」


やよい「り、律子さん、すごいです……!」

雪歩(こんなだったっけ……。春香ちゃんの使っていた暗黒剣はもっと普通の感じだったような……)

雪歩(律子さんの暗黒剣……なんだか、怖い)


律子(つい力が入っちゃったわ。本当はこんな事したくないのに)

律子(まあでも、今の小鳥さんならこのくらい耐えるんでしょうね)




コトリマインド「……いたたた……」ヨロッ

コトリマインド「さすがにききましたよ、今のは……」


律子「効いてくれないと困ります。私だってここまで魔物と戦って来たんですから」


コトリマインド「ふ、ふふふ……」

コトリマインド「やっぱり私に傷を付ける可能性があるのは、律子さんですね」

コトリマインド「さあ、次はこちらの番です」スッ


律子「………」チャキッ

律子(さて、次は何をしかけて来る?)

律子(社長が小鳥さんの魔力を奪ってくれたおかげでメガフレアはない。フレアなら耐える自信はある。近接戦闘も、伊集院北斗に体力を回復してもらったし、まあついていけない事はないと思う)

律子(大丈夫、私一人でもなんとかなりそうね)

262 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 21:28:48.17 ID:A+/1OrpMO

コトリマインド「……はっ!」ダッ


律子(まっすぐ来た!)


コトリマインド「ちぇすとぉ!」ブンッ


律子「ふっ!」ヒョイッ

律子(右ストレートはきっとフェイントで……)


コトリマインド「……はいっ!」クルンッ


律子(左上段後ろ回し蹴り! これを防いで反撃する!)


コトリマインド「……って考えているんでしょう?」ピタッ


律子「えっ?」


コトリマインド「……コンフュ」バッ


律子「あ……」ガクッ


やよい・雪歩「律子さんっ!!」


コトリマインド「うふっ♪ 接近戦は全部囮でしたー♪ 」

コトリマインド「いつまでも煮え切らない律子さん、ずるいですよ」

コトリマインド(私は、とっくに覚悟を決めたっていうのに……)

263 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 21:34:53.46 ID:A+/1OrpMO

やよい「律子さん、だいじょーぶですかっ!?」ガシッ

律子「ぅ…ぁ……!」

雪歩「何か様子が変だよ。さっきの小鳥さんの魔法のせいかも!」

律子「ぅう……!」

やよい「えっとえっと、それじゃなにかおくすりを……」ゴソゴソ

律子「……ぅあああぁぁっ!」ブンッ

ザシュッ!!

やよい「あうっ!?」ヨロッ

ドサッ!

雪歩「や、やよいちゃんっ!?」



コトリマインド「あら、一気に形成逆転ねぇ」



律子「ぅううう……!」チャキッ

雪歩(律子さん、正気を失っちゃったんだ……!)

雪歩「………」チラ

やよい「うぅ……」グッタリ

雪歩(やよいちゃんは負傷しちゃってる……)

雪歩(やよいちゃんを守りつつ、律子さんを元に戻さないと)

雪歩(私が、なんとかしなきゃ!)グッ

264 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 21:40:09.62 ID:A+/1OrpMO

律子「がああぁぁあっ!」ブンッ


ガキィン!

雪歩「うぅっ……!」ググッ

雪歩(すごい力……!)

律子「うあぁぁうっ!」ブンッ

バキッ!

雪歩「っ!?」

雪歩(……大丈夫、アダマンアーマーのおかげであんまり痛くない)


コトリマインド「……私がいるのを忘れちゃダメよー」ブンッ

ドゴォ!!


雪歩「うっ……!」ヨロッ


雪歩(……そ、そうだ、小鳥さんにも注意しなきゃいけないんだったよ……!)

雪歩(とにかく、小鳥さんの攻撃に耐えながら律子さんを……)チラ


律子「うぅ……!」クルッ

タタタタ…


雪歩「……あっ、律子さんがやよいちゃんの方に!」

265 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 21:44:19.51 ID:A+/1OrpMO

雪歩「り、律子さん待ってくださいぃ!」タタタ


律子「がああぁぁっ!」ブンッ



やよい「り、律子さん……!」



雪歩「やよいちゃんっ!」

雪歩(ま、間に合わないっ……!)



…ガキィン!!



やよい「…………えっ?」
266 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 21:50:32.14 ID:A+/1OrpMO

春香「っ……!」ギリッ


律子「ううぅぅ……!」ググッ



雪歩「……は、春香ちゃんっ!?」

やよい「春香さんっ!」


春香「やよい、雪歩、ごめんね、待たせちゃって! お姉ちゃんの事は私に任せて!」



雪歩「う、うん、ありがとう!」



コトリマインド「来たわね、春香ちゃんっ……!」

コトリマインド(……おいしいところを持ってくなー)



コトリマインド「雪歩ちゃん、これで私との戦いに集中できるわね?」

コトリマインド「こっちも楽しみましょう?」ダッ


雪歩「ううっ……!」チャキッ


コトリマインド「きえーーーっ!!」ブンッ


「ーーはっ!」


ガキィン!!


雪歩「!」

267 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 21:55:19.57 ID:A+/1OrpMO

千早「萩原さん、私も手伝うわ!」ググッ


雪歩「千早ちゃん!」



コトリマインド「……いらっしゃい千早ちゃん。お久しぶりね……!」ググッ

千早「……そうですね、音無さん。お変わり無いようで安心しました」ググッ

コトリマインド「なんだかずいぶん余裕なのね……?」

千早「別にそういうわけではありませんが……私は萩原さんのようにあなたと戦う事を躊躇したりはしません……!」

コトリマインド「!」

千早「…………はっ!」タンッ

…フワッ


コトリマインド「『ジャンプ』! 竜騎士の固有アビリティキターーーー!!」


千早「…………ふっ!」

ザシュッ!!


コトリマインド「ごはぁ!!」



…スタッ

千早「………」

千早「あの、音無さん。真面目にやってもらえませんか? 今の攻撃、避ける事くらいできましたよね?」ジト


コトリマインド「ぐふ……うふふふ……」

コトリマインド「ハンデよハンデ。千早ちゃんがいくら強くっても、一人じゃ私には敵わないでしょうし」

268 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 22:00:05.26 ID:A+/1OrpMO

千早「そうですね。私一人なら敵わないと思います。でも、もともと音無さんは萩原さんと戦っていたのでは?」


コトリマインド「それはそうだけど……」

コトリマインド「……あら? そういえば雪歩ちゃんは……?」キョロキョロ


ズズズ…


コトリマインド「……ん?」


ザバァッ!!


雪歩「小鳥さん、ごめんなさいっ!」ブンッ

バキィ!!


コトリマインド「うわらばっ!?」ヨロッ



雪歩「て、撤退ですぅ!」タタタタ



千早「萩原さん、大丈夫?」

雪歩「うん、アダマンアーマーのおかげでなんとか……」

雪歩「それよりありがとう千早ちゃん。律子さんが変な魔法にかかっちゃってどうしようって思ってたところだったんだぁ」

雪歩「あっ、そういえばやよいちゃんが律子さんに斬られて怪我しちゃって!」

千早「高槻さんなら心配いらないわ」チラ

269 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 22:04:08.02 ID:A+/1OrpMO

あずさ「ケアルガ〜」

シャララーン! キラキラキラ…

やよい「う……!」

P「やよい、大丈夫か!?」ゴソゴソ

P(最近全然使ってなかったけど、一応『いやしの杖』を持ってて良かったな)

P(ケアルガの回復量に比べたら微々たるものだけど)

P「それっ!」シャン

シャララーン! キラキラキラ…

やよい「……うぅ、あずささん、プロデューサー、ありがとうございます……」





雪歩「あずささん、プロデューサー!」

千早「さあ、私たちは小鳥さんを迎え撃ちましょう」

雪歩「う、うんっ!」チャキッ



コトリマインド(新たに合流したのは春香ちゃんに千早ちゃん、あずささんか……)

コトリマインド(ゲームには無いパーティ編成だけど、プロデューサーさんの考えかしら……)

コトリマインド(ともかく、今の私はプロデューサーさんを手に入れる事を考えないといけないわね)

コトリマインド(人数が増えてちょっと大変だけど、やるしかない)

コトリマインド「……さあ、行くわよ!」


千早「望むところです!」チャキッ

雪歩「っ……!」ギュッ

270 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 22:10:22.40 ID:A+/1OrpMO

律子「ぐぅっ!」ブンッ


春香「えいっ!」ガキィン

春香「やあっ!」グイッ


律子「う……!」ヨロッ


春香「お姉ちゃん……」

春香(意識がないみたい。まるでゾットの塔で戦った時みたいな……)

春香(……もう、あんな思いはしたくない!)グッ




P(律子はまた音無さんに操られてしまったのか? まるでさっきまでとは別人みたいだ……)

P「あずささん、律子にエスナをお願いできますか?」

あずさ「は〜い」

タタタタ…


あずさ「エスナ〜」

シャララーン!


律子「………」

律子「あああぁぁあっ!」ブンッ

春香「わあっ!」ガキィン


あずさ「ごめんなさい、ダメだったみたいです……」

P「エスナが効かない? そんな無茶苦茶な!」


春香「プロデューサーさん、私に任せてくれませんか?」


P「春香? ……どうするつもりなんだ?」


春香「私ならきっとお姉ちゃんを元に戻せると思うんです」

P「え……?」

春香「大丈夫です。『ヤミちゃんが千早ちゃんを元に戻した』のを、私は見てましたから!」

P「……分かった。律子の事は任せる。ただし無茶はするなよ!」

春香「はい!」

271 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 22:16:41.08 ID:A+/1OrpMO

コトリマインド(プロデューサーさん……)

コトリマインド(ついにお会いできましたね。こんな形ですけれど)

コトリマインド(私の計画にはあなたが必要です。一緒に来てもらいますよ!)


千早「はっ!」ビュンッ

コトリマインド「おっと!」ヒョイ

コトリマインド「えいっ!」ブンッ

千早「……ふっ!」ガキィン

コトリマインド「……強くなったわねぇ、千早ちゃん……!」グッ

千早「いえ、私なんてまだまだです。これまでいろんな人たちと戦ってきて、それを思い知らされました」ググッ

コトリマインド「真面目ねぇ……!」クルンッ

ドガッ!!

千早「くっ……!」ヨロッ


雪歩「千早ちゃん!」

雪歩「えいっ!」ブンッ

コトリマインド「ふふっ♪ 」ガキィン

雪歩「うぅ……!」ググッ

コトリマインド「まさかスコップで戦う吟遊詩人がいるなんて。雪歩ちゃんらしいわねー」

雪歩「………」



千早「萩原さん、避けてっ!」

千早「……ホーリーランス!」バッ


キラキラキラ…!


雪歩「!」

コトリマインド「千早ちゃん! 上手く自分の武器を使っているわね……!」



…ドゴゴゴゴオオォォオオンッ!!


272 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 22:21:55.71 ID:A+/1OrpMO
ー 月の民の館 1F 図書室 ー


真「……ふっ、……ふっ」ググッ

亜美「………」

真美「………」

伊織「………」

美希「……zzz」

真「……ふっ、……ふっ」ググッ

伊織「……うるさいわね」

真「……ただ待ってるだけじゃヒマだし、筋トレぐらいしたって別にいいだろ?」グッ

真「それに余計な事を考えずにすむし、身体動かすと気持ちいいよ?」グッ

伊織「考える事が脳筋のそれなのよねぇ」ヤレヤレ

真「うるさいなあ、ボクの事をバカにするのはいいけど、脳筋をバカにするのは伊織でも許さないぞ!」

伊織「意味わかんないわよ」

亜美「のーきんって言われた事には怒らないんだね」

真美「まこちんはかわいいなぁ」

真「なんでもいいよ、もう」

真「……ふっ、……ふっ」ググッ

273 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 22:28:06.87 ID:A+/1OrpMO

真美「……ねえ、もしも今りっちゃんとピヨちゃんが戦ってるとしたらさ」

亜美「うん」

真美「どっちが勝つのかな」

亜美「えっと、それは……」

真美「どっちかが勝ったら、どっちかは負けるんだよね?」

伊織「そんなの当たり前でしょ。勝者が二人なんてあり得ないわよ」

真美「じゃあその、負けた方って……どうなるのかな?」

亜美「………」

伊織「………」

美希「……zzz」

真「…………よっと」スタッ

真「真美、心配かもしれないけど、今は黙って待つしかないよ」

真美「でも……」

真「大丈夫、きっとなんくるないさっ!」キリッ

真美「……ふふっ」

亜美「まこちんぜんぜん似てなーい」

真「い、いいだろ別に!」カァァ

伊織「………」

274 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 22:32:57.85 ID:A+/1OrpMO

伊織「……はぁ、しょうがないわね。真、私も付き合うわ、筋トレに」

真「えっ?」

伊織「アンタの言う通り、じっとしてたら余計な事ばかり頭に浮かんでくるもの」

伊織「ほら亜美、真美。アンタたちもやるのよ!」

亜美「うぇぇえ〜!?」

真美「真美たちも〜!?」

真「へへ、わかったよ」ニコッ

真「じゃあまずは軽めに腕立て500回、いっとこうか!」


伊織・亜美・真美「」


美希「……zzz」

275 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 22:37:30.61 ID:A+/1OrpMO

伊織「ぐぐ、このっ……!」ググッ

亜美「ひぃ〜、キツイよ〜!」ググッ

真美「真美たちこんなことしてたら、プロレスラーみたいになっちゃうよ〜!」ググッ

真「だらしないなぁみんな。まだ200回もいってないじゃないか」

真「本当はこれを全部で20セット続けるんだけど、今日は5セットくらいにしておこうか?」ググッ

亜美「うあうあ〜、5セットでも2500回じゃん! そんなのゼッタイムリだよ〜!」ググッ

真「えっ、そう?」ググッ

真美「まこちんの鬼! 悪魔! モンク僧!」ググッ

伊織「……脳筋の、考えに、合わせた、私が、バカだったわ……!」ググッ

美希「……zzz」



ガタッ



真「……ん?」チラ




「…………ようやく、ここまで辿り着きまし…た……」

ドサッ



伊織「あ、アンタ……!」

276 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 22:43:29.61 ID:A+/1OrpMO

貴音「………」グッタリ


真・伊織「貴音っ!」タタタタ

亜美・真美「お姫ちんっ!!」タタタタ


真「どうしたんだよ? すごいボロボロじゃないか!」ダキッ

貴音「少々、修行を……」

亜美「しゅぎょー?」

貴音「はい。最後の決戦に向けてわたくし自身のぱわぁあっぷを図るため……」

貴音「それと、小さき者たちの尊い意思を継ぐために」

貴音「ぅ……」

真「た、貴音!?」

伊織「真美、頼むわよ」

真美「オッケー! ……ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…



貴音「……ふぅ、ありがとうございます、真美」

伊織「修行って、そんなに激しい修行だったわけ?」

貴音「そうですね。……ですが、これでわたくしも少しは皆の役に立てる様になったかと」

真「そんな事気にしなくても、今までだって貴音はすごい活躍だったじゃないか」

貴音「……いえ、小鳥嬢を侮ってはなりません」

貴音「恐らく小鳥嬢の力は、わたくしたちの総力を集結してやっと五分の戦いができるかどうか。各々の持てる力を今よりさらに高めるのは無駄ではないとわたくしは考えます」

伊織「……そういえば、私たちの中で小鳥と直接会った事があるのは貴音だけだったわね」

真「その貴音が言うんじゃ、きっとズレてない見立てなのかな」

277 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 22:48:36.77 ID:A+/1OrpMO

亜美「ねね、それよりやっとお姫ちんもとーちゃくしたんだし、亜美たちもみんなのトコに行かない?」

真美「だよね。もしかしたらホントにピヨちゃん来てるかもしんないし」

貴音「……ええ、どうやらその様ですね」ジッ

伊織「貴音、アンタ分かるの?」

貴音「すぐ近くに、小鳥嬢のものに限りなく近い邪悪な気配が一つ感じられます」

亜美「やっぱり!」

貴音「しかし、似てはいますが、恐らく小鳥嬢本人ではないでしょう。以前わたくしが対峙したものほど威圧感を感じません」

真「じゃあ、さっき亜美と真美が言ってたみたいに本当に小鳥さんの分身だったりするのかな」

貴音「分身ですか。……なるほど、そう例えるのが近いかもしれませんね」

真「……どうする?」チラ

伊織「そんなの決まってるじゃない。私たちも行って、小鳥に文句言ってやりましょ!」

亜美「よし、決まりだね!」

真美「そんじゃ行きますか!」

貴音「……待ってください」

亜美・真美「えっ?」

貴音「わたくし、実は大変お腹が空いております」キリッ

伊織・真・亜美・真美「ですよねー……」

美希「……zzz」

278 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/06/30(木) 22:54:38.84 ID:A+/1OrpMO


響「ふっふーん! そんな事だろうと思ってちゃんと用意しておいたぞ!」



真「響! 今までどこにいたのさ?」

響「完璧な自分は、今まで貴音のために食事を作ってたんだ!」ドヤッ

亜美「おお、そーだったんだね!」

真美「ひびきんかしこい!」

伊織「こんな状況で単独で動いてたのは問題だと思うけど、まあ結果オーライね」

響「さ、貴音。自分と月の民で作った特製料理だぞ!」スッ

貴音「響……恩に着ます……!」

ガツガツモグモグ…



真美「あ、そーいえばそろそろミキミキ起こしたほーがいいかな?」

亜美「そだね。もうけっこー長いこと寝てるし」

伊織「寝かせときなさいよ。美希は春香を救出するために大活躍だったみたいだし」

真美「んー、でも……」

伊織「多分必要な場面になったら自分で起きるんじゃないかしら。それに、運搬にはうってつけの脳筋がいるから心配はいらないわよ」チラ

真美「それもそっか」

真「なんか、かなりヒドイこと言われてる気がするなぁ。別にいいけどさ」

貴音「お待たせしました。それでは参りましょうか」フキフキ

伊織「食べ終わるの早すぎでしょうが!」ビシッ

貴音「伊織、今は一刻を争います。つっこみを入れている暇など無いかと」

伊織「なんで私が咎められなきゃいけないのよっ!」

響「よし、みんながいつもの調子に戻ったところで、行くか!」

亜美・真美・真「おー!!」

伊織「はぁ……」

279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/30(木) 22:56:35.95 ID:zbBAR37MO
おお…響がまるでリーダーみたいだ
280 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/06/30(木) 23:01:15.15 ID:A+/1OrpMO
とりあえずここまでです
思うように話が進まないのでこのスレで終わるかまた心配になってきました…
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/30(木) 23:03:52.78 ID:zbBAR37MO
一ヶ月に一回だから続きが気になって仕方ない
へーきへーきいざとなれば続・finalとでもすれば
282 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/07/03(日) 10:08:11.40 ID:5d0dgUrZO
ー トロイアの町 パブ『迷宮』 ー


高木「……『彼女』と戦った感想はどうだい?」

黒井「……お前はどうなんだ、高木よ」

高木「そうだな……」

高木「正直なところ、私はあれが彼女の全力だったとは思えない。まだ実力を隠している気がするよ」

黒井「同感だ。『あれ』はただの前座に過ぎんのだろうな。まるで手応えが感じられかった」

高木「その割には、お前も音無君の力に合わせて技を使っていたようだが?」

黒井「フン……」グビッ

高木「やはり手加減したのか」

黒井「お前に言われたくはないな。……何が『魔力を斬った』だ」

黒井「お前も彼女を傷付ける勇気が無かった。そうだろう?」

高木「………」グビッ


高木「私は不安でならないんだ。彼女たちが争う事が」

高木「なぜ、あんなに仲の良い彼女たちが争わなければならないのか」

黒井「今さらそんな事を考えているのか? 方法は一つしか無いのだろう? だったら進まねばなるまい」

黒井「後ろ向きな考えなど、お前には似合わんぞ」

高木「はっはっは! まさかお前に慰められるとは思わなかったよ」

黒井「っ……ば、バカも休み休み言え! なぜこの私がお前を慰めなければならない!?」

高木「いや、気持ちはありがたく受け取っておくよ、黒井」

黒井「取り消せ! 今すぐその言葉を取り消せ!」

ギャーギャー…



翔太「あの二人、なんだかんだ言って仲良しだよねぇ」

北斗「そうだな。見てて微笑ましいよ」

冬馬「あれが男の友情ってヤツなのか?」

翔太「あれ? 冬馬君ひょっとして『そっち』方面も興味あるの?」

冬馬「んなワケねーだろ!」ガタッ

翔太「わ、ちょっと! ゴメンって! 急に立ち上がらないでよー!」ヨロッ

北斗「二人とも、オレたち一心同体だって事忘れてないか?」フラッ

ギャーギャー…



マスター(うーん、どう見ても人間じゃないよなー、あのお客さんたち……)

283 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:13:03.30 ID:5d0dgUrZO
ー トロイアの城 受講室 ー


長老「……というわけで、火と水は相反し、風と土もまた然りじゃ」

長老「この属性の関係性は黒魔法の基礎となる。しっかりと頭に叩き込むようにな」


「はーい!!!」


生徒1「うあうあー、むずかしくてゼンゼン覚えらんないよー」


長老「!?」


生徒1「ねえねえおじいちゃん、こんなお勉強なんかよりさ、ジッセンで教えてくれたほーが早いって思うよ?」


長老「………」


生徒2「お、おい、あんまり先生を怒らせんなよ?」

生徒1「なんでー? 別に怒らせるつもりはないんだよー」

生徒2「あのな、先生はすごく偉い人なんだ。あの『あいどる大戦』で人類のピンチを退けた英雄の一人なんだぞ?」

生徒1「えっ? マジ!? うひゃー、おじいちゃんってすんごい人だったんだねー。私、見直しちゃったよ!」


長老「お主……」


生徒1「ん? なーに?」


長老「………」

長老「……いや、なんでもない。今日の講義はここまでじゃ」

284 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:15:18.95 ID:5d0dgUrZO
ー トロイア城 東の塔 屋上 ー


長老「…………ふぅ」

長老(ワシは何を期待したのじゃ)

長老(アミとマミはすでに月へと旅立ってしもうた。もう、会う事など叶わないというのに……)

長老(ワシに出来る事は、あの娘たちが残してくれたこの平和を守る事)

長老「ゴホッ、ゴホッ!」

長老(……残された時間は、あまり長くはないようじゃな)



「…………あら?」



ものまね士「おじいさんじゃないですか!?」

長老「そなたは……」

長老「久しいのう。元気でやっとるか?」

ものまね士「ええ、おかげさまで!」

285 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:17:28.14 ID:5d0dgUrZO

ものまね士「あの人もようやく仕事に慣れてきたみたいで、家に帰ってくると私たちに色んな話を聞かせてくれるんですよ?」

長老「ふふ……幸せそうで何よりじゃ」ニコッ

長老「…………ん? 私『たち』?」

ものまね士「えへへ、実は……」ナデナデ

長老「……まさか、やや子が出来たのか!?」

ものまね士「はい……///」

長老「なんとまあ……めでたいのう!」

ものまね士「えへへ、ありがとうございます!」

長老「……うん? でも、計算すると……」

ものまね士「や、ヤボな事は考えちゃダメですよっ!?」ガシッ

長老「ひゅ、ひゅまんはった……」



タタタ…



トロア「……はぁ、はぁ……やっぱりここにいた!」

286 :ID加速中の考えを見て考えが変わりましたお前ら糞ジャップ共を見てると哀れで仕方ないなww論破されたガキ共顔真っ赤ww :2016/07/03(日) 10:18:34.37 ID:1okdHemr0
ID自演中ホルホルして顔真っ赤wwwwww
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

   、_,,,, _,, -.'"           ` 、
 ミ三ミ三ミ三ミミ                ヽ_,
-==三ミ彡三ミミ     ,,=-==     ==、 iミ=-、_
_,,ンミミ三ミ三ミミ]  -彡-一 ー-、 r一 ーミ、|ミミ三ミ=-'
_, -==彡ミ彡ミミミ|  ン| ,=て)> (|ー| ,て)>、 ||三ミ彡==-'
_,彡彡三ミ三ミミレ'~ .|. '     |  ヽ   `  |ミ三彡三=-、
(_彡三ミ彡ミミミ'   ヽ、    ノ   \__ノiミ彡ミ三=ー  
ー-=二三ンーミミミ     `ー /(_r-、r-_)   .|彡ミ三=-、      ←カスジャップ
)(_ミ彡ミ| i' ヽヽミ       | : : : __ : :__: :i   .|彡ミ三=-、_
と彡ミ彡ミヽヽ<ヽミミ      |: ン=-ニ-ヽ、   .|彡ミ三==-
 彡ミ彡ミミヽ  ) `    、 .' <=ェェェェェン |    |彡ン=-=
 -==彡三ミ `ーヽ : : : : : :i: :  `ー--一''  : : ノミ三==''

日本が嫌われてるソースもID加速中が用意してくれてたぞwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

Top 10 List Of Most Hated Countries In The World 2015 (ガチで嫌われてる国 2015年版)
http://www.abcnewspoint.com/top-10-list-of-most-hated-countries-in-the-world-2015/

*1位 アメリカ
*2位 イスラエル
*3位 北朝鮮
*4位 ロシア
*5位 ドイツ
*6位 日本
*7位 メキシコ
*8位 イギリス
*9位 インド
10位 中国

その他省略

糞ジャップ共哀れwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
あれほど馬鹿にしていた韓国以下だと判明するとはなwwwwwwwwwwwwwwww
287 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:19:36.71 ID:5d0dgUrZO

ものまね士「あっ……」

長老「おお、トロア殿。お勤めご苦労じゃな」

トロア「これは長老殿、ご無沙汰しております」ペコリ

トロア「……と、今はそれどころでは無いのです」

トロア「ものまね士殿! そのような身重の体でこんなところまで来て! 子供に何かあったらどうするおつもりですかっ!?」

ものまね士「すっ、すみません、トロアさん。でも私、最近じゃ薪割りもさせてもらえないし、このままじゃ身体が鈍って仕方ないんですよぅ……」

トロア「出産とは、そういう心の緩みで失敗してしまうのですよ!?」

長老「トロア殿の言い分が正しいのう。さ、ものまね士殿、自宅に戻られた方が良いぞ」

トロア「最近魔物も大人しくなりつつあるとはいえ、まだまだ一人歩きは物騒です」

トロア「私が肩をお貸ししますから」スッ

ものまね士「うぅ、すみませんでした……」



…キラーン!



長老「…………む?」

ものまね士「何でしょう、あれ? 何かがこっちに向かって……」

トロア「ものまね士殿、私の後ろへ!」サッ


ヒュー…



ズドオオオォォン…!!



長老「……どうやら町の方へ落ちたようじゃな」

トロア「はい。何か胸騒ぎがします。姉上たちに知らせなければ!」

長老「その役目はワシが引き受けよう。トロア殿はものまね士殿を安全なところへ」

トロア「長老殿、どうかお気をつけて!」

長老「うむ」

288 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:23:30.23 ID:5d0dgUrZO
ー トロイアの町 広場 ー


「なんだ? すごい音がしたぞ?」

「見ろよ、でっかい穴が空いちまってる!」

「いったい何が空から落ちてきたんだ……?」

ザワザワ…



「……ぐ……痛たたた……」



カイナッツォ「……まったく、お前は着陸の仕方も知らんのか! 私をこんな目にあわせおって!」

スカルミリョーネ「……う、運動神経悪いのがいけな…い……」

カイナッツォ「なんだとっ!? ゾンビの分際で生意気な口を〜!」

バルバリシア「スカルの言う通りよ。あなた、最近太ったんじゃない?」

カイナッツォ「バルバリシア、お前まで!」



「まっ……魔物だぁ〜!」

「魔物が攻めて来たぞぉ〜!」

「なんで魔物が!? 英雄たちによって平和がもたらされたんじゃないのかっ!?」



ルビカンテ「……注目されているな」

バルバリシア「それはそうでしょう。こんな派手な登場をしたんだもの」

カイナッツォ「ルビカンテ、ちゃんと上手くいくのだろうな? お前が言い出した事なんだぞ!」

ルビカンテ「ああ、問題ない……はずだ」

カイナッツォ「なんだその煮え切らない言葉は!」

スカルミリョーネ「……向かって来る…ぞっ……!」

289 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:27:01.18 ID:5d0dgUrZO

「魔物め、成敗してくれるっ!」

「オレたちだって戦えるんだ!」

「この国は守るぞっ!」

「うおおおおぉぉお!!」

ドドドド…



バルバリシア「まったく、品の無い連中ねぇ……」

バルバリシア「ふーっ……」


ビュオオッ…!



「うわあああっ!!」


ドサドサッ!



「お、おい、自警団がやられちまったぞ……!」

「と、吐息が、突風になった……!?」

「クソ、魔物め……!」



「待ってくださいっ……!」



「あれは……」

「ユキコ様だ……!」

「うおおおおお! ユキコ様、どうか我々をお守りください!」



ユキコ「………」



バルバリシア「あら? あなた、私とやるつもり?」

バルバリシア(フライパン……? 妙なものを武器にするのね、人間って)



ユキコ「あの、私はあなたたちと戦うつもりはありません。でも、これ以上人々を傷付けるっていうなら……」

ユキコ「わ、私が相手になりますぅっ!」チャキッ

290 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:30:01.30 ID:5d0dgUrZO

バルバリシア「相手になるって……あなた、震えてるじゃない」

ルビカンテ「おい、バルバリシア」

バルバリシア「わかっているわよ」

バルバリシア「ただ、人間と接するのは久しぶりだから、楽しくってつい、ね」



ユキコ「ううっ……!」



長老「ユキコ殿っ!」



ユキコ「長老さん!」

長老「魔物か……」チラ

長老(嫌な予感は的中するものじゃの)




バルバリシア「……あの老人は少し厄介そうね」

カイナッツォ「あの程度の死に損ないに臆したのか? ならば私が……」

スカルミリョーネ「……そ、そういう予定じゃな…い……」ガシッ

カイナッツォ「ふんっ……」



長老「この様な人里に、お主ら魔物が何用じゃ?」



ルビカンテ「………」



長老「返答次第では……」ポワ…

長老(四人ともかなりの手練れのようじゃ。ワシ一人ではちとキツいが……)



ルビカンテ「待て、お前たちと闘り合うつもりはない」



長老「……ならば、何をしに来た?」



ルビカンテ「……話がしたい」

291 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:33:25.31 ID:5d0dgUrZO
ー トロイア城 謁見の間 ー


アン「……どうぞ、お掛けください」


ルビカンテ「ああ」

バルバリシア「なんだかセンスの無い部屋ねぇ」キョロキョロ


アン「我が国は宗教国家ですので、あまり俗的なものは」


バルバリシア「……ふーん、ま、いいけれどね」

カイナッツォ「クソ、私だけ椅子に座れん!」ジタバタ

スカルミリョーネ「……す、少し大人しくしてなさ…い……」


トロア「魔物め……!」チャキッ

ドゥ「待て、トロア。姉上に任せるんだ」

トロア「し、しかし……!」

ドゥ「先の戦いで姉上も成長なされた。それはお前も分かっているだろう?」

ドゥ「それに、ヤツらが望んでいるのは『話し合い』だ。ここで手を出してしまっては、こちらから喧嘩を吹っかけるようなものだぞ」

トロア「く……」スチャ

長老「………」

292 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:35:55.92 ID:5d0dgUrZO

アン「自己紹介が遅れました。私はこのトロイアの国の第一の神官、アンと申します」ペコリ


ルビカンテ「……火のルビカンテ。訳あって今は魔物たちを纏める立場にいる」


アン「そうですか、あなたが……」

アン「それで、話というのは?」


ルビカンテ「……停戦協定を結びたい」


アン「まあ……!」

ドゥ「……ほう」

長老「ふむ……」

トロア「騙されてはなりません、姉上! きっとヤツらは油断した隙に我々人間を滅ぼすつもりなのです!」

ドゥ「トロア!」


バルバリシア「……だ、そうよ?」

ルビカンテ「信じるも信じないもそちらの自由。我ら魔物は、これまでにお前たち人間を数えきれないほど殺してきたのだからな」


アン「………」

293 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:39:21.06 ID:5d0dgUrZO

ルビカンテ「だが、こちらにはもうお前たちと殺し合うつもりは無い。お前たちが望むなら、この星の全ての魔物たちに伝令しよう」

ルビカンテ「『今後一切人間を襲うな』と」


トロア「そのような言葉が信じられると思うのかっ!?」


カイナッツォ「あの人間め、こちらが下手に出てるというのに……!」

スカルミリョーネ「……お、落ち着…け……」

バルバリシア「単細胞ってやぁねぇ」

ルビカンテ「さっきも言ったはずだ。信じるも信じないもお前たちの勝手だ。だが……」



ルビカンテ「この話を断ると言うのならば……その先は分かっているな?」ギロッ



アン「っ……!」ゾクッ


トロア「おのれ、魔物! 本性を現したな!」チャキッ



バルバリシア「……どうやら交渉決裂になりそうね」

カイナッツォ「ふん、最初からこうなる事など分かっていたはずだぞ!」

スカルミリョーネ「……や、やはり、無理があっ…た……?」

ルビカンテ「………」



アン「………」

294 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:42:33.65 ID:5d0dgUrZO

『……私、本当は、あんたと戦いたくなんてなかったのよ!』


ルビカンテ「………」

ルビカンテ(憎しみの無い世界。イオリの望んだ世界をつくってやりたかったのだが……)

ルビカンテ「……止むを得ん、か」スクッ



「……待ちたまえ!」



ルビカンテ「…………ん?」



ミニ助「魔物の中にもなかなか話の分かる者がいるんだな!」バーン



ルビカンテ「小人……?」



アン「あ、あなたは……!」



「おいミニ助、勝手に出て行くなって!」

「ちょ、ちょっと押さないでくださいよぅ!」

ドサドサッ!



店主「痛ててて……」

ものまね士「うぅ……」



アン「店主さんにものまね士さんまで!」


店主「す、すまん、盗み聞きするつもりはなかったんだが……」

ものまね士「どうしても、気になっちゃって……」テヘヘ


トロア「まったく、あなたはまたこんな無茶な真似を!」

295 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:46:21.45 ID:5d0dgUrZO

ミニ助「……とにかく、その話、喜んで受け入れよう!」


アン「ちょ、ちょっと!?」

ドゥ「相変わらず自由だな、あの小人は……」

長老「………」


ものまね士「これで本当に平和になるならいいじゃないですか。私もミニ助さんの意見に賛成です」

店主「オレとしては複雑な気持ちもあるけど……」

店主「こんな世の中だ。人間も魔物も手を取り合って生きていくべきなんじゃないか?」


アン「し、しかし……」


ルビカンテ「………」



店主「それにさ、もしここにあいつらが……」

店主「ハルカたちがいたら、きっとミニ助と同じ事を言っていたと思うんだよな」

ものまね士「私も、そう思います!」


ルビカンテ「……お前、ハルカを知っているのか?」


店主「ああ。ハルカはオレたちの恩人で……」

店主「……大切な、仲間だ」


ルビカンテ(仲間……)

バルバリシア「へぇ、妙な繋がりがあるものねぇ」

カイナッツォ「またヤツか……」

スカルミリョーネ「……か、かなり有名…人……?」

296 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:51:29.14 ID:5d0dgUrZO

店主「……なあ、神官さん。オレは受けてもいい話だと思うぜ? そりゃ、すぐに仲直りってわけにはいかないかもしれないけどさ」

ものまね士「きっとハルカ様たちは、この星全ての生物が仲良くする事を望んでいたんじゃないでしょうか?」


アン「………」

ドゥ「姉上……」

トロア「姉上……!」


アン「………」

アン「……分かりました。お受けいたしましょう」


ルビカンテ「……そうか」

バルバリシア(ハルカ……ドジっ娘のクセに、なかなかやるじゃない)


トロア「姉上っ!」

アン「憎しみに囚われるのはもうやめましょう。これからは新しい世界が始まるのです」

アン「人間も魔物も、全てが平和に暮らす事のできる、新しい世界が」

トロア「………」


アン「先ほど店主さんも仰られていましたが、簡単にはいかないと思います」

アン「私たちは、血を流し過ぎました」


ルビカンテ「……こちらも、できる事はするつもりだ」


アン「ありがとうございます。それでは、友情の印に」スッ


ルビカンテ「?」

バルバリシア「シェイクハンドよ。知らないの?」

ルビカンテ「なんだそれは?」

カイナッツォ「まったく、これだから戦闘馬鹿は……」ヤレヤレ

スカルミリョーネ「……て、手と手を、握り合…う……」

ルビカンテ「妙な習慣があるのだな、人間とは」スッ


…ギュッ


297 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 10:56:12.64 ID:5d0dgUrZO

店主「へへ、まさか魔物と人間の握手が見られる日が来るとはな。さすがはハルカたちってとこだな!」

ものまね士「ホント、ハルカ様やミキさんにも見せたかったですね……」


バルバリシア「……ちょっとあなた、ミキとどういう関係なのかしら?」

ものまね士「あ、はい。ミキさんにはたくさんお世話しましたけど、同じくらいたくさんお世話になったんです」

ものまね士「うーん、言ってみれば私の妹のような存在ですかね?」

バルバリシア「聞き捨てならないわね。ミキは私の妹よ!」

ものまね士「はぁ!? なんであなたみたいなオバサンの妹なんですか!?」

ものまね士「ミキさんは私のかわいい妹なんですっ!」

バルバリシア「きぃーっ! 誰がオバサンですってぇ!?」

バルバリシア「あんたみたいな小娘には勿体無いわよ!」

ものまね士「そんな事ありませんから!」

ギャーギャー…!


店主「お、おいものまね士、少し落ち着けって!」オロオロ



ルビカンテ「……すまないな、見苦しいところを見せてしまって」

アン「いえ。……あれも一つの平和の形なのかもしれませんね」

ルビカンテ「平和の形、か……」



長老(……これで、この青き星の全ての命がここに団結した事になる)

長老(もちろん、すぐに平和が訪れるというわけでもないが)

長老(しかし、恐るべきはハルカの……)

長老(いや、あいどるたちのカリスマじゃの。まさか魔物まで味方につけてしまうとは)

長老(ハルカよ。この平和は紛れもなくお主らあいどるたちが勝ち取ってくれたものじゃ)

長老(お主らにはこの平和な世界を見届ける義務がある)

長老(絶対に、無事で帰って来るのじゃぞ……)


298 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/07/03(日) 21:43:31.09 ID:5d0dgUrZO
ー 月の民の館 B1F クリスタルルーム ー



律子「うあああっ!」ダッ


律子「があっ!」ブンッ


あずさ「テレポ」ヒュンッ


律子「……ぐ?」キョロキョロ


あずさ「うふふ、こっちですよ〜」フリフリ


律子「ぐうっ……!」チャキッ

律子「あああっ!」ダッ




春香「………」ジッ

春香(……すみません、あずささん。あと少しだけお姉ちゃんを引きつけておいてください)

春香(もう少しで、完成しますから)パリッ…



ーーーーーー

ーーー
299 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 21:48:37.46 ID:5d0dgUrZO
ー 回想 ー


あずさ「……じゃあ、私が律子さんを引きつければいいのね?」

春香「はい。お願いできますか?」

あずさ「ええ、もちろんよ。少しでも春香ちゃんの役に立てるなら、私も嬉しいわ」ニコッ

あずさ「それに、律子さんを元に戻せるのは春香ちゃんしかいないんでしょう?」

春香「正確には私だけってわけじゃなくて、月の民だけが使える技で元に戻すんです」

あずさ「その、精神波……という技を使うのね?」

春香「はい。ただ『私』が使うのは初めてだから、上手くできるかどうか……」

あずさ「信じてるわ、春香ちゃんの事」

春香「あずささん……」

あずさ「それじゃ、行って来るわね」フリフリ

タタタタ…


春香「………」

300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/03(日) 21:51:36.14 ID:BT8nKdJXO
春香ちゃんの拳に見えて精神波(物理)かと
301 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 21:52:50.49 ID:5d0dgUrZO
ーーーーーー

ーーー


春香「………」

春香(あずささんのためにも、失敗はできないよね!)

春香(精神を集中させて……)

春香(確か、ヤミちゃんが千早ちゃんに向かって使ってた時は……)


春香「……!」パリッ

春香「あ、出た……!」

春香「よし! ……あずささん、お姉ちゃんをこっちへ誘導してもらえますか!?」


あずさ「は〜い」

あずさ「さあ律子さん、春香ちゃんのところへ行きましょう?」


律子「うあああっ!」ブンッ


あずさ「きゃっ!」ヨロッ

あずさ「危なかったわ〜……」

あずさ「律子さん、言うことを聞いてもらえませんか〜?」


律子「………」チャキッ


あずさ「あら……?」


律子「ぅ……!」ゴゴゴゴ


あずさ「あらあら……」

あずさ(暗黒剣……だったかしら。律子さんはそれをやろうとしているのね)

あずさ(春香ちゃんややよいちゃんを守らないと)


律子「ああああっ!」ブンッ


あずさ「えいっ!」ダッ


春香「あずささんっ!」



ズオオォォ…


ドゴゴゴゴオオォォオンッ…!!

302 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 21:58:02.74 ID:5d0dgUrZO

あずさ「………」

あずさ「う……ん……」

あずさ「…………あら、私……」キョロキョロ


あずさ「! ……は、春香ちゃんっ!?」



春香「……はぁ、はぁっ……!」ダキッ

律子「………」グッタリ


あずさ「春香ちゃん、もしかして私を庇って……?」


春香「……えへへ、気にしないでください。私、暗黒剣には慣れてますから」ニコッ


あずさ「春香ちゃん……ごめんなさいね」

あずさ「そういえば、律子さんは?」


春香「大丈夫です。無事に精神波が成功しました!」ブイッ

あずさ「まあ、さすがは春香ちゃんね〜♪ 」


やよい「春香さん、あずささんっ!」タタタ


春香「やよい!」

あずさ「やよいちゃん」

やよい「すみませんでした! わたしもたたかいますっ!」グッ

春香「……うん、わかった!」

P「俺たちも小鳥さんのところへ行こう!」

春香「はいっ!」

あずさ「は〜い」

303 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 22:04:11.10 ID:5d0dgUrZO

雪歩「はぁっ、はぁっ……!」

千早「くっ……!」


コトリマインド「ふふ……。二人ともどうしたの? もう終わりかしら?」


千早(強い……。やはり、私と萩原さんだけでは音無さんには勝てないの……?)


雪歩(本当に私たちがやってることは正しいことなのかな……)

雪歩(みんなが傷付くのは嫌だけど、小鳥さんが傷付くのも嫌だよ……)


コトリマインド(……なーんて、ホントは私、結構追い詰められてたりして)

コトリマインド(雪歩ちゃんには攻撃はほとんど通らないみたいだし、千早ちゃんのジャンプもかなり厄介だし……)

コトリマインド(私のHPも残り12000ってところかしら)

コトリマインド(社長にMPを削られたのが痛かったわね。メガフレアさえ使えれば敵はいないんだけどなぁ)

コトリマインド(なんとか、プロデューサーさんを連れて帰りたいけど……)



…ザッ



春香「小鳥さん」

あずさ「お久しぶりです、小鳥さん」ニコッ

やよい「小鳥さん、悪いことはめっ! ですよ!」



コトリマインド「春香ちゃん、あずささん、やよいちゃん……」

コトリマインド(春香ちゃんたちがここにいるってことは、律子さんの洗脳はもう解けちゃったのね)

コトリマインド(メガフレア無しでこの人数を一度に相手するのは私でも辛い)

コトリマインド(一応手段が無いわけじゃないけど、『アレ』は最後の最後まで取っておきたいし)

コトリマインド(……どうしようかな)



P「……音無さん」



コトリマインド「!」

コトリマインド「……プロデューサーさん」

304 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 22:12:35.04 ID:5d0dgUrZO

コトリマインド「ご無沙汰してます、プロデューサーさん」ペコリ


千早「プロデューサー、危険です、下がっていてください!」

P「ありがとう、千早。でも大丈夫だ」スッ


P「ようやく、ここまで来れました。みんなで帰りましょう、元の世界へ」


コトリマインド「………」


P「みんな音無さんを心配していたんです。……さあ」


コトリマインド「プロデューサーさん、私はラスボスです」


P「………」


コトリマインド「私たちが元の世界へ帰るための条件、忘れたわけじゃありませんよね?」


P「それは……」


コトリマインド「みんなとっても逞しくなりましたね。これもプロデューサーさんのおかげかもしれません」


P「音無さん……?」


コトリマインド「そんなみんななら、きっと私を倒す事ができるはずです」


P「……!」


コトリマインド「プロデューサーさんには敢えて言うまでもないと思いますけど、『本体』は地下渓谷の最深部にいます」

コトリマインド「待ってます。みんなが私に会いに来るのを」クルッ

スタスタ…


P「お、音無さん、待ってください!」


コトリマインド(プロデューサーさんを連れて帰るのは無理そうね。ここは引きましょう)



…バタンッ!



「……待ちなさいよ、小鳥!」



コトリマインド「…………あら」クルッ

305 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 22:17:56.79 ID:5d0dgUrZO

伊織「逃がさないわよ!」


春香「伊織! みんな!」


真「ふぅ、ギリギリ間に合ったかな?」

美希「……zzz」

亜美「うわー、ホントにピヨちゃんだー!」

真美「ホントのホントに、ピヨちゃんがラスボスなんだね……」

響「ピヨ子……」

貴音「………」



コトリマインド「うふふ、これで全員集合ね」

コトリマインド(……うん、本格的に万事休すかな)




伊織「聞かせてもらうわ。なんでアンタがこんな事をしたのかを」


コトリマインド「………」

コトリマインド「それ、律子さんにも訊かれたわ」

コトリマインド「もう一度言うわね。『みんなを楽しませたい』からよ?」


一同「!?」


伊織「意味わかんないわよ! なんで私たちを楽しませるのが、このゲームの世界をめちゃくちゃにする事と繋がるのよ!?」


コトリマインド「伊織ちゃんはゲームとかやらないから、ピンと来ないかもしれないわね」

306 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 22:24:04.57 ID:5d0dgUrZO

コトリマインド「そうねぇ、亜美ちゃんや真美ちゃんなら分かってくれるかしら?」


亜美「……うん、まあ……」

真美「ピヨちゃんの言うこと、わからなくもないよ」

伊織「亜美、真美、アンタたち……!」

亜美「ちょ、ちょっと待ってよいおりん! さすがに亜美でもピヨちゃんのはやりすぎだって思うよ?」

真美「……でもね、真美たちは、ホントにゲームの世界で冒険したり、色んなことができて楽しかったって思うところもあるんだ」

真美「だから、ピヨちゃんのキモチがゼンゼンわかんないってわけじゃないんだよ」

P「真美……」


伊織「だからって、ゲームの世界の人たちの命を奪ったのは、許される事じゃないわ」

響「それに関しては、自分も同感だぞ」

真「………」


コトリマインド「……そう、ね」

コトリマインド(全員を相手にしたら、今の私には正真正銘確実に勝ち目は無い)

コトリマインド(引き時ね。プロデューサーさんが手に入らなかったのは痛かったけど)

307 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 22:30:11.95 ID:5d0dgUrZO

コトリマインド「残念だけどここまでね」スゥ…


千早「! ……音無さんの身体が、消えていく……!?」

伊織「待ちなさい! 逃げる気なの!?」


コトリマインド「みんなの力を確認するっていう目的は果たせたわ」

コトリマインド「さよなら、みんな。地下中心核で会いましょう」


スゥゥ…



「……待ってください」



コトリマインド「……ん?」ピタ



貴音「勝てないから逃げるのですか?」

響「た、貴音!?」



コトリマインド「………」



貴音「律子嬢ひとりならどうにかなった。しかし、わたくしたち全員が揃っては勝ちは望めない」

貴音「だから、尻尾を巻いて逃げるのですね?」



コトリマインド「………」ピクッ

308 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 22:35:22.54 ID:5d0dgUrZO

春香「貴音さん? ちょっと言い過ぎなんじゃないですか?」

貴音「そうでしょうか?」

貴音「春香。あなたは姉と慕う律子嬢を傷付けられて、黙っていられるのですか?」

春香「そ、それは……」

P(貴音……?)



貴音「小鳥嬢。わたくしと手合わせを願います」


コトリマインド「……貴音ちゃん一人で? ずいぶん余裕ね?」


貴音「ええ」

千早「四条さん、さすがに一人では危険なのでは?」

貴音「いえ」



貴音「今の小鳥嬢には、恐らくわたくしが負ける事はないでしょう」



一同「!?」



コトリマインド「……分かったわ」

コトリマインド「貴音ちゃんにとっては『あの時』の雪辱戦ってところなのかな?」

コトリマインド「そこまで言うなら、その提案に乗ってあげる」

309 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 22:40:03.51 ID:5d0dgUrZO

貴音「……やよい」

やよい「は、はいっ!」

貴音「えぇてるたぁぼはありますか?」

やよい「あ、はい。ちょっと待ってくださいね!」

やよい「えっと……」ゴソゴソ

やよい「はい、どうぞ!」スッ

貴音「ありがとうございます」

貴音「……小鳥嬢」


コトリマインド「えっ?」


…ヒュッ!


コトリマインド「……おっと」パシッ


貴音「飲んでください。どうやら今のあなたは魔力を消耗しているようですから」


コトリマインド「………」

コトリマインド「……舐められたものね、私も」ゴクゴク

コトリマインド(これでまたメガフレアを使えるようになる。もう私に隙は無いわ)

コトリマインド(残念だったわね、貴音ちゃん……!)

310 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 22:49:04.73 ID:5d0dgUrZO

真「貴音、本当に一人でやるつもりなの?」

貴音「心配はいりません。わたくしは必ず勝ちます」

雪歩「四条さん……」



コトリマインド「さあ、行くわよ、貴音ちゃん……!」ゴゴゴ



貴音「………」



雪歩「小鳥さん、メガフレアを使う気だ……!」

真「メガフレア?」

雪歩「私がさっき小鳥さんと戦ってた時に受けた魔法なんだけど、このアダマンアーマーでも防げなかったすごい魔法なんだよ……!」

真(貴音、本当に勝算はあるのかい……?)



コトリマインド「右手にフレア……」ブゥン

コトリマインド「左手にフレア……」ブゥン

コトリマインド「併せて、メガフレアーー!!」バッ



貴音「………」

311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/03(日) 22:50:13.83 ID:hlO9QPI3O
反射するのかな?
312 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 22:55:37.62 ID:5d0dgUrZO

響「貴音っ……!」

美希「大丈夫だよ、響。この勝負、きっと貴音の勝ちなの」

響「美希、いつの間に起きたんだ!?」



貴音「………」バッ

貴音「小鳥嬢、あなたに教えて差し上げます。本物と付け焼き刃の違いを」ゴゴゴ



貴音(……あの子たちの想いは、今、この胸に!)


貴音「……メガフレア」バッ



コトリマインド「!!」



ゴゥゥ…ン…


ババババババババッ!!


ドゴオオォォオオ…ン!!


313 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 23:03:12.64 ID:5d0dgUrZO

貴音「………」

貴音「…………く」ガクッ


響「貴音っ!」タタタ

やよい「貴音さんっ!」タタタ


響「大丈夫か!?」ガシッ

貴音「……すみません、大丈夫です。慣れない魔法を使ったので、その反動が少々大きかっただけです」

やよい「ぽーしょん、のんでください!」スッ

貴音「ありがとうございます、やよい」


あずさ「貴音ちゃん、すごかったわ……」

真「まさか同じ技であの小鳥さんに勝っちゃうなんてね」

貴音「いえ、決して同じではありません。小鳥嬢のそれは、ただの模倣ですから」

伊織「……それより、小鳥は?」

亜美「ピヨちゃんなら……」

真美「あそこだよ」スッ



コトリマインド「………」グッタリ



雪歩「こ、小鳥さん」

千早「……勝負はあったみたいね」

亜美「でも、ピヨちゃんへーきかな……」

真美「………」

真美「……真美、ピヨちゃん回復してくるっ!」ダッ

春香「待って、真美!」ガシッ

真美「はるるん! なんで止めるのさ!?」

春香「あれを見て」スッ

314 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 23:09:50.42 ID:5d0dgUrZO

シャララーン! キラキラキラ…

コトリマインド「……う」ピクッ

P「………」



真美「兄ちゃん!?」

真美(いやしの杖、持ってきたんだ……)



P「音無さん、立てますか?」スッ

コトリマインド「ぷ、プロデューサー…さん……」

コトリマインド「なぜ……?」

P「仲間が傷付いていたら助ける。当たり前の事じゃないですか」ニコッ

コトリマインド「わ、私は、みんなにヒドい事をしたんですよ? みんなだけじゃない、この世界の人たちにも……」

P「何があろうと、あなたが俺たちの仲間だって事は変わりませんよ」

コトリマインド「プロデューサーさんっ!」ブワッ

コトリマインド(私……もう死んでもいいかも……)

315 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/03(日) 23:19:13.45 ID:5d0dgUrZO

P「……貴音、すごかったぞ。まさかお前がメガフレアを使うとは思わなかったな」ニコッ


貴音「あなた様……?」


P「みんな、すまん」ペコリ


春香「プロデューサーさん、どうして謝ったりするんですか……?」



P「……俺、音無さんと一緒に行く事にした」



亜美「えっ!?」

真美「に、兄ちゃん……?」

伊織「……な、何考えてんのよアンタ!? 正気なの!?」



P「ああ、俺は正常だよ」

コトリマインド「プロデューサーさん……?」


響「プロデューサー、なんで……?」


P「音無さんを真の意味で救えるのは、俺しかいないと思ったんだ」


真「……それ、どういう意味なんですか?」

雪歩「真の意味って……」


P「今はまだ言えない。でも、必ず音無さんは俺が救ってみせる。だから安心してくれ」


千早「……本気なんですね?」


P「……ああ」コクリ


P「みんな。……地下中心核で待ってる。また会おう」

P「……さ、音無さん、行きましょう」ダキッ

小鳥「すみません、プロデューサーさん」


スタスタ…



春香「プロデューサーさん……」

千早「………」

美希(ハニー……)


316 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/07/03(日) 23:26:19.53 ID:5d0dgUrZO
ここまでです
ようやく終わりが見えてきたかも
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/03(日) 23:28:03.08 ID:X/r7tupnO
次はいつきてくれますか?乙
318 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/07/03(日) 23:36:35.47 ID:5d0dgUrZO
すみません
次回はだいぶ先になると思います
7月中には、としか言えません
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 00:11:00.89 ID:ofKF7ppLO
わかりました期待して待ってます
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/30(土) 00:41:09.92 ID:U2KwFw4WO
七月も明日で終わるぞ
321 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/07/30(土) 17:23:55.27 ID:cqJZ38jz0
ー 月の地下中心核 ー


小鳥「……お待ちしてました、プロデューサーさん!」

P「えっと……本物の音無さん、ですよね?」

小鳥「はいっ!」ニコッ



P(俺は月の民の館のクリスタルルームでみんなと別れ、音無さんの分身に導かれて月の地下中心核へとやってきた)

P(そこでようやく本物の音無さんと会うことができたわけだけど……)


小鳥「プロデューサーさん、どうかしましたか?」

P「ああ……いえ、なんでもないんです」


P(本物の音無さんは、クリスタルルームでのみんなとの戦いをここで『視て』いたらしい)

P(つまり、クリスタルルームに現れた音無さんの分身の行動も全て音無さん自身の意思だったわけだ)

P(やはり彼女は、最後までラスボスを演じきるつもりなんだ……)



小鳥「あのー、プロデューサーさん。本当にこちら側へ来ちゃって良かったんですか?」

P「今さら何を言ってるんですか。俺がそうしたいと思ったから来たんです」

P「それとも、もしかしてお邪魔でしたか?」

小鳥「お、お邪魔だなんてとんでもないっ! むしろ嬉しすぎて、私としてはひゃっほう! って感じなんですよぅ!」

P「………」

小鳥「あ……」

322 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 17:27:36.23 ID:cqJZ38jz0

小鳥「う、嬉しいって言ってもあれですよ? 私の事を心配してくれてプロデューサーさんは優しいなーと」

P「良かった」ニコッ

小鳥「!」ドキッ

P「あなたの事が心配だったのは本当です。でも今はそれだけじゃなくて……」

P「……音無さん」ズイッ

小鳥「え? はっ、はいっ!」ドキドキ

小鳥(ぷ、プロデューサーさん、どうしちゃったの!? ち、近いんですけど!?)

小鳥(……はっ! もしや、ここに来てまさかの音無小鳥メインヒロインフラグが!?)

P「………」スッ

小鳥(プロデューサーさんの手が私の頭を、だ、抱いて……!)

小鳥(…………南無三っ!)ギュッ



P「……っと、取れました」

小鳥「…………えっ?」

P「ほら、髪に糸くずが付いていたみたいですね」

小鳥「………」

小鳥「はぁぁぁぁぁぁ……」ガクッ

P「ど、どうしました!?」

小鳥「い、いえ、なんでもないんですっ」


小鳥(何の罰ゲームかしら、今のは)

323 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 17:30:18.92 ID:cqJZ38jz0
P「それにしても……ここが月の中心核ですか」キョロキョロ

小鳥「はい。今や私の家みたいなものなんですよ?」

P(月の中心核。ゲーム通りなら、確かここは地下12階に当たるはず)

P(床や柱、壁などは全部クリスタルのようにキラキラ輝く素材で出来ていて、とても神秘的な風景だ)

P(音無さんはここで生活してきたのか)

P(……ずっとひとりぼっちで、さみしくはなかったんだろうか)



クルーヤ「……コトリさん、お客さんですか?」



小鳥「あ、クルーヤさん!」

P「えっ……? く、クルーヤ……!?」

クルーヤ「おや、あなたは……。お久しぶりです。またお会いしましたね」ニコッ

P「な、なんであんたがここにいるんだ?」

クルーヤ「えーっと……まあ、いろいろありまして」

小鳥「あれ? プロデューサーさん、クルーヤさんとお知り合いなんですか?」

P「ええ、彼とは試練の山で一度」

小鳥「へぇ……」

小鳥(P×クルーヤか……アリかもしれないわね)

324 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 17:33:08.83 ID:cqJZ38jz0

クルーヤ「それにしても、まさかハルカの婚約者がコトリさんの知り合いだったとは、世の中って狭いものですねー」

小鳥「……うん? 今なんて?」

P「な、なんでもないですよ!」

クルーヤ「ああ、コトリさんには言ってませんでしたね。彼はハルカと未来を誓い合った仲なんです」

小鳥「ええぇぇええええっ!!?」ガタッ

小鳥「どういう事なんですかプロデューサーさん!! ついにハーレムから脱却しちゃうんですか!?」ユサユサ

P「だ、だから誤解ですって! クルーヤもある事ない事言うのはやめてくれ!」

クルーヤ「うーん、僕としては二人の仲は大賛成なんだけどなー」



クルーヤ「……と、ジョークはここまでにして」

クルーヤ「なぜあなたがここに? あなたはハルカたちと行動を共にしていたはずではなかったんですか?」

P「………」

P「こっちにもいろいろ事情があってな。ま、お互い様ってところだ」

クルーヤ「……なるほど、分かりました。これ以上は追求しません」

P「そうしてくれると助かる」




ダークバハムート「……ほう、このような僻地に来客とは、珍しい事もあるものだ」



小鳥「バハムートさん、ちょうど良いところに! 紹介しますね、こちら私の同僚のプロデューサーさんです!」

ダークバハムート「………」

ダークバハムート(なんだ、この人間は……? 否、人間ではないのか……?)

ダークバハムート(コトリをも凌ぐでたらめな生命力。奇妙ないでたち。そしてこの我が思考すらも読めぬとは)

ダークバハムート(クク……コトリの知り合いか。ぷろでゅうさぁ……只者ではなさそうだ)

325 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 17:35:29.94 ID:cqJZ38jz0

P(これがバハムート……。貴音の友達……)

P(ここにいるって事は、敵……なんだろうな、きっと)

P(クルーヤの立ち位置もイマイチ分かりかねるが、きっとみんなの敵として立ちはだかるつもりだろう)

P(なぜ、あの子たちにはこうも試練が降りかかるのか)

P(だけど、俺はもう無力な自分を嘆くだけじゃない)

P(俺は見届けなければならない。この戦いの行く末を)



クルーヤ「さ、新しい仲間が増えたところで!」ドン

小鳥「親睦を深めましょうか!」ドン

P「もしかしてそれ、酒ですか?」

小鳥「はいっ」ニコッ

P「音無さん、みんなが頑張ってた時にまさかずっと酒飲んでいたんじゃないでしょうね?」

小鳥「そ、そんなわけないじゃないですかぁ! 今日はたまたまですよ、たまたま!」

P「本当かなぁ……」ジト

クルーヤ「ま、まあまあ、楽しく行きましょう、楽しくね?」

ダークバハムート「クク……ぷろでゅうさぁよ。そなたも用心しておいた方が良いぞ。この二人、酒を呑み出したら止まらぬからな」

P「はぁ……」

P(まあでも、どうやら音無さんは一人さみしくラスボスやってたってわけでもなさそうだ)

P(それが分かって良かったかもな)

326 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 17:37:55.73 ID:cqJZ38jz0
ー 月の民の館 1F 図書室 ー


…ガチャ


千早「………」


真「千早」

千早「真……」

真「律子の具合は?」

千早「ぐっすり眠っているわ。春香と真美がついていてくれているし、今は二人に任せましょう」

真「うん……そうだね」



貴音「離してください、響!」

響「ちょっと貴音、落ち着いてよ!」



千早「……何かあったの?」

真「うん、なんていうか……」

真「プロデューサーが小鳥さんと一緒にいなくなった事で、みんな少し混乱しちゃってるみたいでさ」

千早「そう……」



貴音「ぷろでゅうさぁはわたくしが助けねば! ばはむーと殿の二の舞にさせてなるものですか!」

響「だから、それには律子が起きるのを待ってからじゃないとダメだって!」

貴音「律子嬢の事は皆に任せます。わたくしは一人でも行かねばなりません!」

やよい「た、貴音さん……」オロオロ


伊織「……あーもう、うるさいわね! 静かにしなさいよ!」

貴音「………」

伊織「不安なのはみんな同じなのよ! それに、アンタ一人が行ってもどうにもならないでしょうが!」

貴音「……それでも」

貴音「それでもわたくしは、もうこれ以上犠牲者を増やしたくはないのですっ……!」ウルッ

貴音「ぷろでゅうさぁまで失ってしまったら、わたくしは……!」ガクッ

亜美「うぅ、お姫ちん……」グスッ

伊織「私だって……今すぐにでもあいつを助けに行きたいわよ……!」ウルッ

あずさ「伊織ちゃん……」

雪歩「みんな……!」グスッ



美希「………」

327 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:01:14.10 ID:cqJZ38jz0

美希「………」スクッ


真「……美希、どうしたの?」

美希「ミキ、ちょっと律子の様子見てくるね?」

真「え? でも、律子には春香と真美がついてるって千早が……」

美希「真クン、ミキだって白魔法使えるんだよ? 二人の足手まといにはならないって思うな」

真「そうだったね、ゴメン」

美希「真クンと千早さんは、みんなの事をお願い」

千早「美希……?」

美希「みーんな、ハニーがいなくなって心が弱くなっちゃってるカンジなの。だから、比較的冷静な真クンと千早さんがみんなをなだめてあげて?」

真「……別にボクも冷静ってわけじゃないんだけど、分かったよ」

千早「私にできるかどうか分からないけれど、やってみるわ」

美希「お願いね?」

スタスタ…



真「………」

真「ねえ、千早。美希はなんであんなに落ち着いているのかな」

真「失礼かもしれないけど、ボク、プロデューサーがいなくなって一番騒ぐのは美希だろうなって思ってた」

千早「………」

千早「私、この世界へ来てから比較的美希の近くにいる事が多かったのだけど」

千早「美希はこの世界へ来て、私たちの中で一番大きな成長をしたのかもしれない」

千早「あの子を見ていると、そう思えるのよ」

真「…………そっか」

真「じゃあ、ボクたちも負けていられないね」

千早「……そうね」

328 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:20:07.09 ID:cqJZ38jz0
ー 月の民の館 2F 寝室 ー


律子「……zzz」


春香(お姉ちゃん……)

真美「………」


春香(一人で小鳥さんを迎え撃って、勇敢に戦って……)

春香(でも、結局小鳥さんの魔法で操られてしまって、みんなに刃を向ける事になってしまった)

春香(辛いだろうな……)



真美「……りっちゃん、真美たちのために休まずにずっとガンバってくれてたんだよね、きっと」

春香「うん……」

真美「ピヨちゃんとの戦いだって、真美たちがあぶない目に合わないようにって……」

春香「……今は、ゆっくり休ませてあげよう」

真美「そーだよね……」



…ガチャ



真美「……あれ、ミキミキ?」


美希「律子の具合はどう?」

真美「ケガとかは真美たちの魔法で治したし、今はぐっすり眠ってるよ。つかれがたまってたのかもしんないね」

美希「……そっか」

329 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:22:36.75 ID:cqJZ38jz0

美希「………」

真美「………」

春香「………」


真美「……兄ちゃん、なんでピヨちゃんの方に行っちゃったのかな……?」

春香「………」

真美「まさか、兄ちゃんまで真美たちの敵になっちゃうってことじゃないよね?」

美希「ハニーはきっとそんなつもりじゃないと思うな」

真美「……じゃあ、どんなつもりだったの?」

美希「んー、そこまではミキも分からないの」

美希「でもね、ハニーが『任せろ』って言ったんだから、きっと正しいことだと思うの」

美希「ミキたちは、それを信じるべきじゃないかな?」

春香「………」

真美「でもさ、なんてゆーか……ここまで一緒だった兄ちゃんがいないのが、ちょびっとだけツラいってゆーか……」

美希「きっとみんなも真美とおんなじような気持ちだと思うの」

美希「不安で、さびしくって……それで、ちょっとだけイライラしてるカンジ?」

真美「………」

美希「だから、そんなみんなを元気付けるのは……」


美希「春香の役目だって、ミキ、思うな」


春香「えっ……?」

330 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:24:56.99 ID:cqJZ38jz0

春香(たまに……)


美希「今までだって春香は、ずっとずっとみんなを元気にしてきたでしょ?」


春香(分からなくなってしまう)


美希「辛くって、苦しくって、どうしようもなくて。今までそんな場面になるたびに、春香は誰よりも自分を奮い立たせて」


春香(目の前にいるこの子は、本当に私より年下なんだろうかって)


美希「そんな春香なら、きっと今のみんなを導くことができる」

美希「……でしょ?」ニコッ


春香(普段の態度は素っ気ないけど、ふとした時に思いがけない言葉をくれる)

春香(……不思議だよね、美希って)


春香「……うん、わかった。私、やってみるよ!」


美希「あは☆ さすがは春香なの」ニコッ

真美「ガンバって、はるるん! 真美たちのリーダーだってとこ、バシーっと見せちゃってよ!」

春香「う、うん、あんまりプレッシャーかけないでね?」



美希「……そーいえば春香」

春香「なに?」

美希「ミキ、この前春香のこと助けてあげたから、これで貸しひとつだよね?」

春香「……あ、うん。助けてくれてありがとね、美希。私、すごく嬉しかったよ」

美希「どーしよっかなー。何おごってもらおっかなー?」

春香「あ、あんまり高いものじゃなければ……」

美希「あっ、いいこと思いついたの! これを機に、春香がハニーから手を引くっていうのはどうかな?」

春香「……ええぇええっ!? だ、ダメだよそれは!」アセアセ

真美「いやー、ナイスアイディアだと思うよ、真美は」ウンウン

春香「ちょっと、真美までー!」

美希「真美もハニーのこと狙ってるみたいだけど、ミキ、ハニーだけはゼッタイに譲れないからね!」ビシッ

真美「ぬう……さすがは強敵(とも)よな……」

331 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:28:26.70 ID:cqJZ38jz0
ー 月の民の館 1F 図書室 ー


貴音「……そこをどいてください、伊織」


伊織「イヤよ。今のアンタを行かせられるわけないじゃない」

伊織「どうしても行くっていうなら……」



伊織「……私を倒してからにしなさい!」スッ



貴音「……!」


響「い、伊織……」

あずさ「……ちょっと落ち着きましょう、伊織ちゃんも貴音ちゃんも。焦って行動してもいいことなんてないと思うわ」

貴音「あずさ……」

貴音「なぜそのように落ち着いていられるのです? ぷろでゅうさぁが魔の手に落ちてしまったというのに」

亜美「ま、魔の手って……お姫ちん……」

貴音「彼女は律子嬢や雪歩、やよいを傷付けた。小鳥嬢を敵と見なすにはそれで充分では?」

貴音「それに、わたくしはこのげぇむを『そういった類のげぇむ』と認識しておりましたが」

あずさ「貴音ちゃん……」

貴音「……いいでしょう」



貴音「水瀬伊織……。あなたを倒して、わたくしはぷろでゅうさぁを助けに参ります!」ザッ



伊織「! ……小鳥の分身に勝ったからって調子に乗るんじゃないわよ……!」

伊織「アンタなんかに遅れは取らないわ!」


やよい「い、伊織ちゃんダメだよっ!」


伊織「いいえ、やよい。アンタは黙ってて」

伊織「頭に血が昇って周りが見えていないバカに、少しお灸を据えてあげなきゃ……!」スッ…

332 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:31:19.57 ID:cqJZ38jz0

貴音「……覚悟」バッ


伊織「……来なさい!」バッ



亜美「ちょ、ちょっと二人とも……!」

雪歩「こ、こんなのおかしいよぅ……!」



貴音「……!」ボゥッ…


伊織「……!」ゴゥッ…



真「ーー待ったっ!!」ザッ


貴音「!?」



千早「水瀬さんも、そこまでよ」スッ


伊織「…………ふん」




響「千早……真……」


伊織「いきなり飛び出して来るなんて、どういうつもりよ」


貴音「あなた方まで邪魔をするつもりですか。真、千早……」


真「こんなところで暴れちゃダメだよ、貴音も伊織も」



伊織「………」


貴音「………」



真「らしくないじゃないか、二人とも。こんな思慮の浅い行動をするなんて」

伊織「……うるさいわね。私は間違ってないわよ! そこのバカが勝手な行動をしようとしたから……!」

千早「今は、仲間うちで争っている場合ではないわ」

伊織「………」

真「貴音。プロデューサーが心配なのは分かるけど、一人で小鳥さんのところへ行くなんて無茶だ」

真「それは君自身だって分かってるはずだよ?」

貴音「しかし……!」

真「ボクだって、本当は今すぐにでもプロデューサーのところへ駆けつけたいって思ってる」

真「でも、プロデューサーは何か考えがあるような事を言ってたから……」

真「だから今は、それを信じるしかないと思うんだ」

貴音「………」

333 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:33:32.69 ID:cqJZ38jz0

貴音「くっ……」ガクッ

貴音「…………申し訳ありません。わたくしは過去の過ちに囚われ、ぷろでゅうさぁの意に背くような真似を……」

貴音「そればかりか、道を誤ったわたくしに手を差し伸べる友に、刃を向けてしまうとは……!」

伊織「………」

伊織「……私も悪かったわ」

伊織「ああでもしなきゃアンタは止まらないと思ったから」

貴音「申し訳ありません、伊織。全てはわたくしが……」

伊織「ううん、私も悪かったわ。……ごめんなさい」

真「どっちが悪いとかじゃないよ」

千早「ええ。二人のどちらの気持ちも分かるから……」

千早「……とにかく今は、みんなで律子が目を覚ますのを待ちましょう」

伊織「……そうね」

貴音「はい……」

やよい「えっと、えっと……これで伊織ちゃんも貴音さんも仲直り……ですよね?」

貴音「ええ」

やよい「うー、よかったですー」



響「はぁぁぁ……。何事もなくて良かったぞ……」

あずさ「真ちゃんと千早ちゃんのおかげね」

雪歩「でも、小鳥さんと戦わなきゃいけないっていう事実は変わらないんですよね……?」

亜美「だよね……」


一同「………」

334 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:37:36.86 ID:cqJZ38jz0

春香「……大丈夫だよ、みんな」

真美「………」

美希「………」



響「春香たち、いつの間に……」

真美「りっちゃんはぐっすり眠っちゃったから」

美希「ミキたちも、春香のありがたいお話を聞こうってことになったの」

春香「ちょ、ちょっとミキ、変な言い方しないでよぅ……」

響「ありがたいお話って、どういうことだ?」

春香「えっと……」チラ



春香「貴音さん」

貴音「……はい」

春香「なぜ、小鳥さんは私たちに対してヒドいことをするんでしょうか?」

貴音「何故……? それは、小鳥嬢がこのげぇむの真の黒幕だからではないのですか?」

春香「はい、私もそう思います。小鳥さんはこのゲームのラスボスです。だから、ラスボスになりきってくれているんだと思います」

貴音「……? そのような分かり切った事を訊いて何の意味が?」

春香「私、思うんです。私たちがここまで来れたのは、小鳥さんのおかげもあるんじゃないかな……って」


一同「……?」

335 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:40:30.50 ID:cqJZ38jz0

春香「今まで、本当に本当にいろんな事があったよね。嬉しい事も、悲しい事も」

春香「嬉しい事があるたびにみんなで笑って、悲しい事があるたびにみんなで泣いて……」

春香「そうして私たちは、ここまで来た」

春香「最近みんなの目を見てるとね、思うんだ。『ああ、すごく頼もしいな』って」

春香「それはたぶん、この世界でいろんな事を経験して一人ひとりが成長していってるからなんだよね」

春香「その成長は、もちろん本人の頑張りによるところが大きいって思うけど……」

春香「小鳥さんがラスボスの役をしっかり演じてくれているから……だから、私たちは強くなれたんじゃないかな?」


一同「………」



貴音「……しかし、それとこれとは話が別。小鳥嬢のした事は許される事ではありません」

伊織「私も同感よ。魔物との戦いで結果的に私たちは強くなったけど、あいつは仲間を平気で傷つけた。それは忘れてはならない事よ」

春香「………」

春香「……小鳥さんはさ、私たちに向かって何度か『みんなを楽しませるために』って言ってたよね?」

春香「それはきっと小鳥さんもプロデューサーさんと同じ気持ちって事なんじゃないかな?」

響「ピヨ子が、プロデューサーと同じ気持ち……?」

春香「みんな、思い出して。もともとこのゲームは、プロデューサーさんが『みんなで楽しめるように』って持ってきてくれたゲームだよ」

亜美「……そーいえばもうすっかり忘れてたけど、兄ちゃんが事務所にスーファミ持ってきたのが始まりだったんだよね」

春香「うん」

336 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:43:38.82 ID:cqJZ38jz0

春香「いきなりゲームの中に入っちゃって、最初は右も左も分からなくて」

春香「でも、みんなで頑張って進んで、いろんなお友達もできて」

やよい「わたし、しばさんやらむさんたちとおともだちになれて、とってもうれしかったです!」

春香「そう。苦労もたくさんしたけど、嬉しい事もたくさんあった。この世界で、ここにいるみんなと、そしてこの世界の人たちと一緒に笑い合えて、私もすっごく嬉しかった」

春香「……でも、もし配役が違ったら、どうなってたかな?」

真「配役が違うって……今の自分の役と最初から違ったらって事?」

春香「うん。もっと言うと、『小鳥さん以外の誰かがラスボス役になってたら』どうなってただろう?」

春香「みんなは、考えた事あるかな?」


一同「………」


春香「私は、もし自分がみんなと敵同士の役だったら悲しいし、きっとどうしていいか分からなくなっちゃうと思う」

春香「もしかしたら、自暴自棄になって大変な事をしちゃうかも」

伊織「………」

春香「でも、小鳥さんはそれを完璧に演じてくれてる」

春香「もちろん、あの人の事だから自分自身が楽しんでるっていう部分もあるかもしれないけど」

貴音「………」



春香「小鳥さんの『みんなを楽しませる』っていう言葉、私は信じてるよ」

春香「だって、小鳥さんはいつも私たちの事を心配してくれていて、いつも私たちの知らないところで頑張ってくれている人だから」

春香「そんな小鳥さんと、そしてここにいるみんなと、私はこのゲームを最後まで楽しみたい」

春香「最後まで笑って、笑顔でこの世界とお別れしたいんだ」

春香「……みんなはどう?」



一同「………」

337 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:48:21.32 ID:cqJZ38jz0

雪歩「…………あ、あのっ」

雪歩「私も、楽しみたい。魔物さんと戦ったりするのは恐いけど、私も、みんなともっと一緒にいたいって……そう、思う」

春香「雪歩……」



真「……そうだね」

真「元の世界に戻ったら、もうこんな不思議な体験は二度とできないんだよね」

真「それに、みんなには引かれちゃうかもしれないけど、ボク、小鳥さんと戦うのはちょっとだけ楽しみなんだ」

春香「真……」



亜美「……まこちんは相変わらずバトルマニアだねぇ」

亜美「でも、せっかくのゲームだし、ピヨちゃんもガンバってくれてることだし、亜美もまだまだカツヤクしたいし……」

亜美「モチロン亜美もみんなと一緒に行くよ!」

真美「だね。せっかく兄ちゃんが持ってきてくれたゲームなんだから、楽しんでやんないとだよねっ」

真美「あ、成長うんぬんに関しては真美も同感ってカンジだよ。みんなが強くなってるのを、真美もジッカンしてるよ!」

春香「亜美も真美も、たくましくなったよね」ニコッ



響「…………自分は」

春香「響ちゃん……」

響「自分、エン太郎とお別れする時、めちゃくちゃ悲しかった。ピヨ子はなんでこんなイジワルするんだろうって思った」

響「でも、春香の言う通りだ。もし自分がラスボス役だったとしたら、どうしていいか分かんなくてずっと泣いてたと思うぞ」

響「みんなと一緒だったから。自分にはみんながいるから。だから自分はあの時悲しみを乗り越えられたって思う」

響「……うん。今なら、ピヨ子は自分たちのためにラスボスを頑張ってくれてるんだって……」グスッ

響「だ、だから、自分もっ……!」ウルッ

春香「……うん、響ちゃんも一緒に行こう?」

338 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/30(土) 20:53:09.04 ID:cqJZ38jz0

千早「私も……」

千早「私も、みんなと一緒にいたい。たとえ残された時間はもう僅かだとしても、最後の瞬間まで、みんなと笑っていたい」

千早「……今なら、そう思える」

春香「千早ちゃん……!」

やよい「わたしたちだけじゃなくて、高木社長や黒井社長、じゅぴたーさんたちもいっしょですっ!」

春香「やよい……うん、そうだね!」

あずさ「……みんなが一緒なら、きっと何も恐いものはないわね」ニコッ

春香「はい、あずささん、もちろんです!」



伊織「…………はぁ。アンタの話はきれいごとなのよねぇ」

春香「えっ……」

伊織「アンタみたいに能天気な考え方ができる人間ばかりじゃないってことよ」

春香「うん…………そう、だよね」

伊織「……ま、でも、嫌いじゃないわ、そういうの。私も、小鳥に負けないくらいこの役を演じ切ってみせる!」

春香「伊織!」

伊織「春香。私たちはどこまでもアンタについて行くわ。だから、アンタは光になって私たちの道を照らしなさい!」

伊織「アンタが走り続ける限り、私たちもアンタの横を走るから」

春香「うん、任せてっ!」ガッ

春香「……っとっとと……うわあ!?」ヨロッ

ドンガラガッシャーン!!

339 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 13:06:07.67 ID:uFHmjAGF0

伊織「ったく、なんでこのタイミングで転ぶのよ……」

真「でも、春香らしいじゃないか」ニコッ

亜美「ですな。これがないとはるるんってカンジがしないよねー」

春香「うぅ……せっかくかっこ良く決めようと思ったのに……」



貴音「……春香」スッ

春香「あ、貴音さん。ありがとうございます!」ギュッ

貴音「過去の自分に囚われるのは、もうやめる事にしました。わたくしも、残りの時間を皆と笑って過ごしたい」

春香「貴音さん……」

貴音「……共に連れて行って頂けますか?」

春香「もちろんですっ!」ニコッ

貴音「ありがとうございます、春香」ニコッ



美希「うんうん、やっぱり春香に任せたミキの目に狂いはなかったの!」

春香「美希……」

春香「ありがとう、美希」

美希「ミキ、お礼を言われるようなこと、してないよ?」

春香「ううん、美希のおかげだよ。美希が私を頼ってくれたから……だから」

美希「春香。そーゆーのは、全部うまくいってからにするの」

春香「うん……そうだね」



美希(……でも、さっきの春香、ちょっとカッコよかったな)

美希(やっぱり春香がリーダーなんだなって思ったの)

美希(ミキのライバルで、親友で……大切な、仲間)

美希(負けないよ、春香。ミキ、春香よりもっともっとキラキラしてみせるからね!)

340 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 13:10:20.55 ID:uFHmjAGF0


律子「……良かったわよ、春香。今の演説」


春香「お姉ちゃん!」

亜美・真美「りっちゃん!!」

あずさ「律子さん、もういいんですか?」

律子「はい、ご迷惑をおかけしました」ペコリ

あずさ「いえ、そんな」

律子「………」


律子「みんな、もう覚悟は出来ているのね?」



伊織「何を今さら。覚悟なんてとうの昔にできてるわよっ」

貴音「ええ。もう、迷う事など何もありません」

あずさ「春香ちゃんに勇気を貰いましたからね〜」ニコッ

亜美「亜美のホンキ、ピヨちゃんに見せてあげるんだから!」

真美「そうそう、ピヨちゃんには真美たちを敵に回したことをコウカイしてもらわないとねー!」

真「どこまでやれるか分からないけど、ボクもやれるだけやってみるよ」

雪歩「わ、私も、足手まといにならないように頑張りますぅ!」

響「自分も、みんなと一緒に戦うぞ!」

やよい「最後まで、はりきって行きましょうっ!」

千早「私たちはもう大丈夫。……だって、最初から不安に思う必要などなかったのだから」

美希「律子…さんも、ミキたちと一緒だよ?」


律子「……ありがとう、美希」ニコッ


真「で、律子。どうする? さっそく小鳥さんのところへ乗り込むかい?」

律子「いいえ。あなたたちは戦いを終えたばかり。だから、今夜はしっかり休んで出発は明日にしましょう」

真「うん、分かった」

341 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 13:15:16.98 ID:uFHmjAGF0
ーーーーーー

ーーー



律子「……『音無さんを真の意味で救えるのは俺しかいない』? 本当にプロデューサーはそんな事を言ったの?」

春香「はい。きっとプロデューサーさんには何か考えがあるんだと思います」

律子「どういう意味なのかしら」

真美「んー、たとえば、兄ちゃんの持ってるいやしの杖でピヨちゃんがケガしたら治す、とか?」

律子「それはどうかしらね……。あの杖ってそこまでの回復力はないんでしょ?」

春香「そうですね。確か回復量はケアルより少し多いくらいだったかな?」

律子「いくらプロデューサーが無敵だからって、ケアルラにも満たない回復量じゃ追いつかないでしょう」

伊織「ま、こっちは13人もいるんだし、立て続けに攻撃したら確実に向こうの回復は間に合わないでしょうね」

真美「それもそっか」

千早「だったら、物理的にではなく精神的に音無さんを助けるという事かしら」

真「つまり……プロデューサーが小鳥さんの心の支えになるって事?」

千早「ええ」

千早「いくら音無さんがこの世界を楽しんでいるとはいえ、最終的には一対十三の戦いになる」

千早「その状況を見兼ねてプロデューサーは音無さんの心の支えになろうと決意した」

律子「……なるほど、あり得るわね」

律子「とにかく、プロデューサーや小鳥さんの真意が分かった以上、私たちも二人の期待に応えた戦いを見せないといけないわね」

春香「そうですねっ!」

342 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 13:19:27.62 ID:uFHmjAGF0

伊織「でも、小鳥の前に親衛隊とかいうヤツらが待ち構えてるわよ? その辺りはどうするのよ」

響「……強かったよね、あいつら」

雪歩「うぅ……怖いけど、やるしかないんだよね……」

律子「ああ、そこらへんはあまり心配していないわ」

伊織「えっ?」

律子「厄介ではある。けれど、あなたたちだって決して負けてない」

律子「この中の誰ひとり欠ける事なく小鳥さんのところへたどり着ける。私はそう確信しているの」

春香「お姉ちゃん……!」

真「へへっ、そう言われたらやるしかないよね!」

伊織「律子にしては珍しいわね。精神論に流されるなんて」

律子「あら、ちゃんとした論理的根拠が必要かしら? あなたたちは強い。それだけで証明にならない?」

伊織「……ぜんっぜん論理的じゃないわよ、それ」

あずさ「うふふっ♪ 」

亜美「まーまー、むずかしいコトはいいじゃん。ほら、よく『どんより正午』ってゆーっしょ?」

律子「論より証拠ね」

伊織「……そうね。やらなきゃ結果が出ないのは確かよね」

343 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 13:23:36.29 ID:uFHmjAGF0

貴音「律子嬢。一つだけお願いがあるのですが」

律子「どうしたの? 改まって」

貴音「親衛隊と共に、恐ろしく強い竜の神がわたくしたちの前に立ちはだかるでしょう」

貴音「その方の事は、わたくしに任せて頂きたいのです」

律子「竜の神……」

やよい「貴音さん、それって……」

響「もしかして、バハムートってヤツの事か?」

貴音「……はい」コクリ

律子「貴音の知り合いなの?」

貴音「……わたくしの越えねばならない、壁です」

律子「………」

律子「あなたにもいろいろ事情があるみたいね」

律子「本当は全員で当たった方が安全なんでしょうけど……」

律子「……わかったわ。そのバハムートっていう竜のことは貴音、あなたに任せるわ」

貴音「ありがとうございます」



千早「律子、そろそろ休んだ方がいいんじゃないかしら。明日ここを発つんでしょう?」

律子「そうね。じゃあ、とりあえずご飯にしましょうか」

やよい「はい! じゃあわたしが……」


真美「ーー待ったッ!!」


真美「ここは真美にまかせてもらおうか……!」ゴゴゴ



一同「…………えっ!?」


344 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 13:39:49.19 ID:uFHmjAGF0
ー 月の民の館 キッチン ー


伊織「…………で、なんで私まで巻き込まれなきゃいけないのよ」

真美「しょーがないじゃん。やよいっちやあずさお姉ちゃんはしょっちゅうゴハン作ってくれてるから頼みづらいし、お姫ちんは料理させたらキケンぽいし、亜美はしっちゃかめっちゃかにしそうだし……」

真美「火の魔法使える手頃な人がいおりんしかいなかったんだもん」

真美「あと、イガイに料理できそうなまこちん」

伊織「消去法で選ばれたのがイラッと来るわね……」

真「ねえ、早く作っちゃおうよ。きっとみんな待ってるよ?」

伊織「わかってるわよそんなこと。ていうかアンタ、料理なんかできるの?」

真「うーん、出来なくはないと思うけど……。ここには魚とかないんだよね」

真美「なんで魚?」

伊織「仕方ないわね、やっぱりここはこの伊織ちゃんが先導していくしかないみたいね」

真美「いよっ、さすがいおりん! 料理作らせたら『見た目はアレだけどすごくおいしい』って言われるだけあるねぇ!」

伊織「それ、褒めてないでしょ!?」

真「ねぇ、早くやろうよー。ボク、お腹ペコペコだよー」

伊織「うっさい! わかってるわよバカ!」

真「なんですぐにバカとか言うんだよ! 先にバカって言った方がバカなんだからね!」

伊織「じゃあ何度でも言ってあげるわよ! バカバカバカバカバカバカバカ……」

真「言い過ぎだよ!」

真美(人選ミスったね、こりゃ)

345 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 13:48:50.49 ID:uFHmjAGF0
ー 月の民の館 1F 図書室 ー


亜美「……で、真美さんや」

亜美「このぐちゃぐちゃの茶色いカタマリは何かね?」

真美「今は昔、まだこの世界に文明も発達していなかった頃……。人はそれをたまごやきと呼んでいたという……」

律子「つまり、卵焼きを作ろうとして失敗したわけね」

響「じゃあ、この……ええと、なんかいろいろ入ったちゃんこみたいなのはなんだ?」

真「おじや!」

響「ふ、ふーん……ずいぶん具沢山なんだな。具が大きすぎて煮物みたくなってるぞ……」

春香「で、でも、なんか個性的でおいしそうだよね! ほら、この肉野菜炒めとか」

伊織「それはカルパッチョよ」

春香「えっ?」

伊織「カルパッチョ」

春香「あ、うん……」

千早(大丈夫かしら)




律子「……まあ、とりあえず冷めないうちにいただきましょうか」



一同「いただきまーーす!!!」


346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/31(日) 13:49:34.59 ID:9IYDAl/0O
これクリアして現実に戻った場合、はるるんは癖でしばらく律子をお姉ちゃん呼びしそうだな

それにしても、いくら小鳥さんが強いとはいえ数の暴力だよな…
347 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 13:51:41.46 ID:uFHmjAGF0

春香「………」

雪歩「食べないの? 春香ちゃん」

春香「ゆ、雪歩こそ」

雪歩「えっと……うん、食べるよ。せっかく真ちゃんたちが作ってくれたんだもん」

雪歩「……あむっ」パクッ

雪歩「もぐもぐ……」

雪歩「あ……これ、結構おいしいかも」

春香「ホント? じゃあ私も……」パクッ

春香「…………ん、ホントだ。おいしい、このおじや!」

真「そ、そう? へへ、苦労して作った甲斐があったよ」



美希「もぐもぐ……」

美希「……あれ、このたまごやき、中に何か入ってる?」

真美「さすがはミキミキ、よくぞ気づいてくれたね!」

真美「このたまごやきの中には、さまざまなアイテムを入れてあるのだよ!」

響「アイテムって……ねえ、入れたのは食べられるモノなんだよね?」

真美「もちろんだよー。どくけしにー、乙女のキッスにー、うちでのこづちにー……」

響「……ちょっと待て。うちでのこづちって?」

真美「ああそうそう、そーいや月の民ぴょんに金のりんごとかソーマのしずくとかもらったから、それも入れてみたんだよー」

亜美「さすがは我が姉。空腹を満たすだけじゃなくて、ステータス異常に耐性をつけてさらにステータスアップも図ろうって作戦だね!」

真美「もっちろん! これぞ一石三鳥さくせんなのだ!」

美希「ふーん……なんか、新食感ってカンジなの」

響「大丈夫なのかなぁ……」

348 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 13:54:33.01 ID:uFHmjAGF0

千早「モグモグ……」

伊織「どう? おいしい?」

千早「……ええ、とてもおいしいわ。ちょっと見た目からは想像できない味だけど」

伊織「ぐっ……」

あずさ「うふふ、見た目なんて気にしなくても大丈夫よ〜? この冷しゃぶ、本当においしいから」

伊織「カルパッチョね」

あずさ「そ、そうだったわね〜」

やよい「えへへっ、見た目はかわってるけど、伊織ちゃんたちのお料理とってもおいしいよ!」

伊織「そ、そう?ありがと、やよい」



真美「うーん、みんなおいしいって言ってくれるんだけど、なんだかなー」

伊織「私たちじゃ力不足だったって事を認めるしかないみたいね……」

真「そうかな? おいしいって言ってくれてるんだから別にいいんじゃない?」

伊織「私が納得できないのよ。このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんの作る料理は、見た目も、味も、全てがパーフェクトでなければならないの!」

真「こだわるなぁ」

真美「んでも、マズイものができなくてよかったよね」

真「うん。やよいや響、あずささんの凄さが身に染みて分かったよ」

貴音「ふふ、真に重要なのはそこに込められた想い」モグモグ

貴音「相手を想って作ったものならば、どのような料理であろうとご馳走になり得ますよ」モグモグ

伊織「アンタ、ものを食べながらよくそんなセリフが言えるわね……」


349 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 13:58:43.65 ID:uFHmjAGF0
ーーーーーー

ーーー


律子「…………さて」

律子「食事もお風呂も終わってあとはもう寝るだけだけど、その前にもう一度みんなに確認しておきたいの」

春香「確認……ですか?」

律子「ええ」

律子「私たちは明日、地下渓谷に潜る。小鳥さんに会うために」

律子「夕食前のみんなの話を聞いてみんなの覚悟は分かったわ」

律子「でも、もう一度各々よく考えて欲しいの。小鳥さんと戦うっていう事の意味を」


一同「………」


律子「私からの話は以上よ。さ、ゆっくり休みましょう」



一同「はーーーい」


350 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 14:10:49.53 ID:uFHmjAGF0
ー 月の地下中心核 ー


P「ところで音無さん。最後の戦いについて何か考えているんですか?」

小鳥「え?」

P「ほら、音無さんには親衛隊がいるじゃないですか? その魔物たちをどう使うのかなーと」

小鳥「うふふ、気になります?」

P「もちろんですよ。まあ、直接戦うのは俺じゃなくてあの子たちなわけですけど」

小鳥「そうですねぇ……。ついに私のアイドルたちとプロデューサーさんのアイドルたちが戦う時が来たんですね……」

P「えっ? 音無さんのアイドル?」

小鳥「あっ……ええと、気にしないでください。深い意味はありませんので」


小鳥「私が考えたのは、よくあるパターンです。あの子たちそれぞれに持ち場を決めて、春香ちゃんたちを迎え撃ってもらうんですよ」

P「なるほど。確かにラスダンとかでよくあるパターンですね」

P「で、配置はもう決まっているんですか?」

小鳥「いえ、それはあの子たち自身に任せているので。今頃はみんなで話し合ってるんじゃないかなぁ」

P「ふーん……」

351 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 14:15:55.18 ID:uFHmjAGF0
ー 月の地下渓谷 B10F ー


クルーヤ「……というわけで、クジを用意しました。覚悟が決まった子から引いてね」


リルマーダー「よーしっ! んじゃまずはオイラが……」

レッドドラゴン「待て待て。ここは特攻隊長であるオレ様がだな」

リルマーダー「特攻隊長はオイラだかんな!」

レッドドラゴン「なんだとこのクソチビ!」

ベヒーモス「こらこらこら、ケンカするんじゃないよ」

プリンプリンセス「そうですわ。たかがクジ引きではありませんか」

月の女神「でも、これで誰がどの階を守るか決まるんだよね?」

レッドドラゴン「そうだぜ。だから重要なんだ。こーいうのは一番最初に引いた方がいい階をゲットできるに決まってんだよ」

プリンプリンセス「理解に苦しみますわねぇ……。所詮は運ではありませんか」

リルマーダー「運なんかじゃねーよ! 選ばれし者は、選ばれし運命を背負ってるんだ。このオレ様みたいにな!」

リルマーダー「だから一番にクジを引くのはこのオレ様だっ!」

ブルードラゴン「……いや、その理屈だとそなたはどの順番で引いても結果は変わらないはずなのではないか?」

リルマーダー「あっ……そっか」

金竜「しかし、地下1階を引き当てることが出来れば確実にあいどる共と戦えるのも事実。彼女たちは上から降りてくるのだからな」

銀竜「うむ。下の階へ行くほどあいどる共との遭遇率は下がるわけだな!」

レッドドラゴン「地下1階はオレ様が引き当ててやんぜ!」

リルマーダー「いいや、オイラだっ!」

金竜「否、我である!」

月の女神「うーん……だったら私も上の方の階がいいなぁ」

ワイワイガヤガヤ…



ベヒーモス「………」


352 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 14:18:11.85 ID:uFHmjAGF0

クルーヤ「クジを引く順番で揉めるとか、これじゃいつまで経ってもそれぞれの持ち場が決まらないなぁ……」

ベヒーモス「すまないね、クルーヤ。これでも親衛隊結成当初よりはケンカも減ったんだが……」

クルーヤ「うん。それは見ていてなんとなく分かるよ」ニコッ

ベヒーモス「……とはいえ、これじゃ話が進まないのも事実」チラ



レッドドラゴン「一番はオレ様だ!」

リルマーダー「いいやオイラだっ!」

金竜「いや我が!」

ギャーギャー…



ベヒーモス「……仕方ないね」


ベヒーモス「野郎共、静かにしないか!!」

ベヒーモス「ここはリーダー権限でアタイがクジを引く順番を決めさせてもらうよっ!」

リルマーダー「ちぇっ」

レッドドラゴン「マジかよ……」

月の女神「でもベヒーモスちゃん、どーやって順番を決めるの?」

ベヒーモス「五十音順だ」

レッドドラゴン「あ? なんだそれ?」

プリンプリンセス「読んで字の如く、ですわ。名前の頭文字が五十音順で早い方からクジを引いていくんですのよ?」

リルマーダー「じゃあ、一番は……」

魔人兵「あ行で始まる名前の人だから……」

ベヒーモス「一番手はお前だ、暗黒魔道士」

暗黒魔道士「……っ!」ビクッ


353 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/07/31(日) 14:21:20.60 ID:uFHmjAGF0

クルーヤ「…………で、みんなにクジを引いてもらったわけだけど」


レッドドラゴン「っしゃああああ!! 見たかこのヤロー! オレ様が地下1階だせっ!!」

リルマーダー「くそぅ……なんでオイラがこんなに深い階なんだよぅ……」

プリンプリンセス「わたくしの持ち場は地下5階ですわね。ちょうど良かったですわ!」

月の女神(私は地下7階かぁ……。誰か私のところまでたどり着いてくれるといいなぁ)

ブルードラゴン(これで後は時を待つのみ、か)

金竜「我が弟よ、地下4階とはなかなかではないか?」

銀竜「うむ。流石は兄者!」

魔人兵「とにかく、コトリ様のためにも頑張らないとな!」

暗黒魔道士「………」


ベヒーモス「これでそれぞれの守護階は決まった。あとはそれぞれがめいっぱい暴れるだけだ」

ベヒーモス「気合い入れな! 野郎共!!」


魔物たち「おおおーー!!!」



クルーヤ「ふふ、なんだかんだ言ってまとまってるよね、この子たち」


クルーヤ「さてと、僕もそろそろ自分の持ち場へ行かないと」

クルーヤ「ーーっ!」ピクッ



ダークバハムート「………」ゴゴゴ



クルーヤ(……おお恐)

クルーヤ(こっちも気合い入ってるなぁ。よっぽど嬉しいんだね、タカネちゃんと戦えることが)

クルーヤ(これは僕も負けていられないな)


354 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/07/31(日) 14:23:59.29 ID:uFHmjAGF0
ここまでです
次回はやっとラスダン突入…のはずです
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/31(日) 14:45:02.14 ID:xBnvoDkRO
乙ー次回は早めに来てくれるのをアイドル育成しながら待ってる
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 20:58:24.68 ID:PBS/ypTGO
まだか?もうすぐ一ヶ月やで
357 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/08/28(日) 17:42:57.39 ID:VRt3rZWL0
>>353で月の女神が「地下7階」と言ってますが地下8階の間違いです
358 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/08/28(日) 17:45:14.11 ID:VRt3rZWL0
ー トロイアの町 パブ『迷宮』 ー


黒井「…………なに? 月へ向かう手段がないだと?」

北斗「予想のつかない展開になっているのではっきりとは言えませんが、すでにやよいちゃんたちが魔導船で月へと渡ってしまっているので、それ以外に方法はないかと……」

高木「つまり、我々は置いてきぼりを食ってしまったのか」

黒井「……ちっ、765プロめ。この私をのけ者にしおって!」

翔太「まあまあ黒ちゃん、今さら言っても仕方ないでしょ。やよいちゃんが僕らを召喚してくれれば、やよいちゃんのために戦えるんだからさー」

黒井「そもそも、なぜ私が高槻やよいにいちいち呼び出されなければならないのだ! 私は召使いなどではないのだぞ!」

翔太「いや、もともとそーいう契約だったし、黒ちゃんも結構ノリノリで戦ってたじゃん……」

黒井「まったく、この世界は間違っている! 何もかも!」

高木「はは……まあ、ここは実際には存在するはずのない世界だからねぇ……」


冬馬「……見苦しいぜ、黒井のおっさん」


黒井「なに……!?」

冬馬「翔太の言う通り、俺たちは高槻と契約を交わしたんだ。ルールは守るのが大人だろ?」

冬馬「あんたは俺たちの王だ」

冬馬「王だったら王らしく、いつもみたいに余裕ぶって構えてればいいじゃねえか」

黒井「む……」

冬馬「それに、黒井のおっさんは高槻の最終兵器でもあるんだ。……切り札ってヤツだな」

冬馬「だからきっと高槻も出し惜しみなんてしないと思うぜ?」

黒井「………」

黒井「…………フン、分かったような口を聞きおって」

黒井「だがお前の言う事も一理ある。私に頼らなければ事務員一人も倒せない765プロめ、せいぜいこの王に泣きつくがいい!」

黒井「クックック……!」

359 : ◆bjtPFp8neU [sage saga]:2016/08/28(日) 17:49:25.96 ID:VRt3rZWL0

北斗(……冬馬。お前、なかなか黒井社長のコントロールが上手くなってきたな)

冬馬(まあな。伊達に長い時間を一緒にやって来てねーよ)

翔太(ま、御し易いのは冬馬君も同じだけどね〜)

冬馬(お前は一言余計だこのやろ)



「…………それは、本当ですか!?」



冬馬「…………あん?」チラッ



トロア「このような時勢にミシディアへ戻られるなど……。しかもお一人でなんて危険です!」

長老「世界を背負って戦うあの子らのために、この老いぼれのできることなど一つしかないからのぅ」

長老「……もう、決めたことじゃ。ワシは祈りの館へ入る」

トロア「し、しかし……!」



冬馬「……なんだあの爺さんは」

翔太「うーん……セリフから察するに、重要なキャラっぽい気もするよねー」

冬馬「まあ、俺たちにゃカンケーねぇか」

北斗「………」

冬馬「……おい北斗。どうかしたのか?」

北斗「……冬馬。俺たちのやるべきことが見つかったかもしれない」

冬馬「…………え?」

360 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 17:53:35.51 ID:VRt3rZWL0
ー ミシディアの村 ー


長老「……すまんの、二人とも。ジジイのわがままに付き合わせてしまって」

技師1「いえ、とんでもないです!」

技師2「飛空艇の操縦は我々の仕事ですから」

技師1「それに……」

技師1「オレたちも親方たちのことはずっと心配してました。気持ち的には長老さんと一緒です」

技師1「ですから、その……オレたちも共に祈ります!」

長老「気持ちは嬉しいが、そなたらにはそなたらの務めがある。そなたらはトロイアへ戻るんじゃ」

技師2「長老さん、しかし……!」

長老「祈りの館へ篭るとなれば、長い時間自由がきかないことになる」

長老「ファルコン号を動かすことの出来るそなたらがいなくなってしまっては、アン殿をはじめとするトロイアの人々に迷惑がかかってしまうじゃろう」

技師1「………」

長老「なに、ワシのことは心配するでない。それよりも、アン殿を手伝ってやってほしいんじゃ」

技師2「……分かりました。でも、定期的に様子は見に来ます」

技師1「あと、何か必要な物資があったら、なんなりと言ってください!」

長老「……ありがとう」ニコッ




ババババババ…


技師1「それでは長老殿、お体に気をつけて!」

技師2「また……来ます!」



長老「うむ」

361 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 17:58:43.33 ID:VRt3rZWL0

長老「……さて」クルッ


長老(村は相変わらずひどい光景じゃ。バロンの者が攻めて来た時とは比べものにならんほどの……)

長老(皆……すまんの。しばらく待たせてしまって)

長老(祈りの館へ入る前に、まずは形だけでも弔いを済まさねば)

スタスタ…



ザッ… ザッ…

長老「………」ザクッ




翔太「……ねえ、こっそりついて来たはいいけど、あのおじいさん、何かはじめちゃったみたいだよ?」

冬馬「穴掘ってるみたいだけど……いったいなんのために掘ってんだ?」

北斗「……きっと、死者の為の墓なんだろう」

冬馬「死者……?」

翔太「それってもしかして、魔物にやられちゃった人たちの?」

北斗「おそらくな」

高木「酷いものだ。村ひとつ丸ごと滅んでしまうとは」

黒井(……これが力無き者の末路、か。惨めだな)

黒井「………」

362 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:01:04.20 ID:VRt3rZWL0

黒井「……北斗、どうするつもりだ。あの老人を追うと言ったのはお前なのだぞ」

北斗「まずはあの人と接触しようと思ったのですが……。すみません、機会を逸したみたいです」

翔太「……確かに、今はちょっと声かけづらいよね」

黒井「……仕方がない、ほんの少しだけ時間をやろう」

翔太「えっ? 黒ちゃん本気?」

黒井「私とて鬼ではない。無様なあの老人に後悔する時間くらいはくれてやる」

北斗「社長……」

翔太「へぇ〜、黒ちゃんいいとこあるじゃん! 僕、見直しちゃったよ!」

黒井「……フン」プイッ

高木「ふふ……」ニコッ

高木「…………ん?」チラッ

冬馬「………」

高木「鬼ヶ島君、どうかしたのかい?」

冬馬「いや……」

冬馬「この村ってさ、こないだ会った月から来たっていう魔物に滅ぼされたんだよな?」

高木「……!」

冬馬「俺、あの時はとっさに魔物を助けちまったけどさ。……もしかしてこの世界の人間のためにならねー事をしたんじゃないかって……」

翔太「冬馬君……」

北斗「冬馬……」

黒井「………」

363 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:04:35.65 ID:VRt3rZWL0

黒井「だからなんだというのだ?」

冬馬「……黒井のおっさん……?」

黒井「いっとき魔物の味方をしてしまった。だから敵対関係にある人間とは接触できない」

黒井「……そう言いたいのか?」

冬馬「いや、そうは言わねえけど……。俺たちがした事は正しい事だったのか、って分からなくなっちまってよ」

黒井「くだらん。この世界にいちいち感情移入してどうする」

黒井「そんな事を考える暇があるなら、次に高槻やよいに召喚された時のために作戦でも考えておくのだな!」

冬馬「………」

高木「鬼ヶ島君。『正しい事』の定義なんて人の価値観次第だ。それこそ人の数だけ正義がある」

高木「誰かの正義と自分の正義が矛盾することは度々あるだろう」

高木「だが、我々はお互いに歩み寄ることができる。歩み寄り、価値観を近づけることができる」

高木「君の尊い価値観を理解してくれる者は、きっと現れるだろう」

冬馬「………」

黒井「……それはただの妥協だがな」

高木「む……」

翔太「もうっ! 黒ちゃんは一言余計だよー」

黒井「冬馬。私はお前のように後悔などしたりしない。後悔とは、弱者のすることだからな」

冬馬「………」

高木「鬼ヶ島君、君はまだ若い。悩む事もあるだろうが、悩んだ事は必ず君の力になる」

高木「だから、たくさん悩むといい」


黒井「高木、お前は何も分かっていない」ゴゴゴ

高木「分かっていないのはお前だ、黒井」ゴゴゴ


翔太「ちょ、ちょっと二人とも、こんなところでケンカはダメだってば!」



長老「……ワシの村で暴れんでくれんかのぅ。召喚獣たちよ」



黒井「!」

高木「!」

翔太「……ほ〜ら怒られた」

364 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:08:08.51 ID:VRt3rZWL0

長老「……幻獣が揃ってこんな廃村に何用じゃ?」

翔太「おじいさん、僕たちの事知ってるの?」

長老「もちろんじゃよ。アスラにオーディン、そして幻獣王リヴァイアサン」

長老「まさかこの様な豪華な面子に会う事になるとはな」

長老「お主ら、トロイアからずっとワシを追って来たのじゃろう?」

高木「おや、気づいておられたのか。なかなか鋭い勘をお持ちのようだ」

長老「ワシとて月の民の端くれ。気配を読む事ぐらいは出来る」

長老「じゃが、この村は見ての通りすでに滅んでおる。幻獣であるお前さんたちの求めるものなど何も無いと思うのじゃがのぅ」

冬馬「………」

黒井「……おい、北斗」

高木「ここは伊集院君の判断に任せるよ」

北斗「はい、分かりました」



北斗「……長老さん。俺たちも祈りの館へ入れてもらえませんか?」



長老「………」

長老「なぜ、お主らのような幻獣が? 詳しい話を聞かせてもらえるかの」

北斗「はい」

365 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:10:42.65 ID:VRt3rZWL0
ーーーーーー

ーーー


長老「……そうか。お主らもまた、ハルカたちの仲間じゃったのか」

北斗「はい。もう月へ行く手段はありませんが、あなたの力をお借りすれば俺たちの『想い』を彼女たちへ届ける事ができると思ったんです」

長老「ふむ……」

長老「お主らの気持ちは分かった。本当ならワシひとりで祈るつもりじゃったが……」

長老「こうしてここにお主らが訪れたのも、何かの縁じゃろう。共に来るがよい」

北斗「はい、ありがとうございます」

長老「少し待っていてくれ。すぐにやることを終わらせてくる」

スタスタ…



冬馬「……なあ、じいさん、待ってくれ」



長老「……ん?」クルッ



冬馬「何人分の墓を作るつもりか知らねえけど、あんたひとりじゃ大変だろ? 俺にも手伝わせてもらえないか?」



長老「………」

長老「不思議じゃな、お主は。幻獣が召喚士でもないワシの為に力を貸すなど」

長老「ありがとう。ならば、頼んでも良いかの?」

冬馬「おうっ!」

366 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:14:59.53 ID:VRt3rZWL0
ー 地下水脈 ー


カイナッツォ「……と、いうわけなのだ」

オクトマンモス「ふーん、人間と魔物が和解かぁ。オレの知らない間にいろいろあったんだなー」

カイナッツォ「今後人間を見かけても襲わぬようにな」

オクトマンモス「カイナッツォの旦那が言うんじゃ従わないわけにはいかねーな」

オクトマンモス「よし、ここいらの魔物にはオレから伝えておくぜ!」

カイナッツォ「うむ、さすがは私の部下。もの分かりが早くて助かる」

オクトマンモス「じゃあ、オレはまたダラダラと寝て過ごすからよ。じゃあな、旦那!」

ズズ…


カイナッツォ「……まったく、ぐうたらな奴だ」




ー アントリオンの巣 ー


アントリオン「……えっ、マジかよ! じゃあ、バトルとかもダメなのか?」

スカルミリョーネ「……だ、ダメ。人間を傷付けることにな…る……」

アントリオン「ちぇー。オレ様の唯一の楽しみだったのによー」

スカルミリョーネ「……ひ、ヒマな時にオレが相手になってやるか…ら……」

アントリオン「ホントだぞ! 絶対だかんな!?」

スカルミリョーネ「……ぞ、ゾンビ、嘘つかな…い……」

スカルミリョーネ「……ちゃ、ちゃんとみんなに知らせておくんだ…ぞ……?」

アントリオン「……了解」

アントリオン「ところでスカルミリョーネ様、砂漠の光、持ってくか?」

スカルミリョーネ「……い、いらな…い……」

367 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:17:03.98 ID:VRt3rZWL0
ー バロンの町 ー


マグ「バルバリシア様……!」

ドグ「お会いしとうございました……!」

ラグ「こうして再びその美しいお姿を拝見する事ができて、我らは感激にございますっ!」

バルバリシア「良かった、無事だったのね、三人とも」



バルバリシア「ところで、こんな場所でいったい何をしていたの?」

マグ「それが……。ゾットの塔の爆発から命からがら逃げ出したのは良かったのですが……」

ドグ「目が覚めると、見知らぬ土地に横たわっておりまして……」

ラグ「歩けど歩けど仲間の魔物や人間すらも見つからず、途方に暮れていたのです……」

バルバリシア「大変だったのねぇ、あなたたちも」

バルバリシア「ま、この町にもう人間はいないみたいだし、ここを根城にするのもいいんじゃないかしら?」

マグ「いえ、せっかくこうして再び出会えたのです。我らもバルバリシア様と共に行きます!」

バルバリシア「その前に、他の魔物たちに伝えてもらいたいのよ」

バルバリシア「もう人間と争う事はない、って」

ドグ「……それは、本当なのですか? ルビカンテ様ともあろうお方が人間と手を結ぶなど、にわかには信じられませぬ……」

バルバリシア「ひと昔前のあいつならそうだったかもね。でも、あいつは変わったわ」

ラグ「そうなのですか?」

バルバリシア「ええ。これからは魔物も人間も争いの無い、新しい時代が来るわよ」

バルバリシア「全てが終わったら、どこかいいところを見つけてみんなで暮らしましょう」

マグ「……分かりました。それを楽しみに、私たちは言いつけを果たして来るとします」

マグ「行くぞ、ドグ、ラグ!」

ドグ・ラグ「はっ!!」

タタタタ…



バルバリシア「……新しい時代、か」

バルバリシア「その前に、ミキたちに頑張ってもらわないとね」

バルバリシア「……さて、あいつはしっかりやっているかしら」

368 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:26:22.58 ID:VRt3rZWL0
ー バブイルの塔 1F ー


…ザッ

ルビカンテ「……酷い有様だな。崩れていないのが不思議なくらいだ」

ルビカンテ「ここももうアジトとしては使えまいな」

ルビカンテ(あれだけ激しい戦いがあった後だ。それも仕方ない、か)



「…………ルビカンテ様」



ルビカンテ「……生きていたか、ルゲイエよ」

ルゲイエボーグ「はっ。このルゲイエ、こうしてルビカンテ様に再びお会いできるのを待ちわびておりましたぞ!」

ルビカンテ「…………そうか」

ルビカンテ「このバブイルの魔物はどれだけ残っている?」

ルゲイエボーグ「数は半分程に減ってしまいましたが、戦力として使えそうな者もまだおりますじゃ」

ルゲイエボーグ「人間を攻めるのですかな?」

ルビカンテ「いや、人間とは和平を結んだ。もう憎しみ合う事もないだろう」

ルゲイエボーグ「なんと……」

ルビカンテ「残っている者たちに伝えてくれ。これからは平和に生きるのだと」

ルゲイエボーグ「それが、ルビカンテ様のお望みとあらば」

ルビカンテ「頼んだぞ」クルッ

スタスタ…

369 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:28:55.75 ID:VRt3rZWL0







ルゲイエボーグ(……なーんて素直に従うと思うなよ? この木偶がぁ!)


ルゲイエボーグ「……死ねぇ、ルビカンテっ!」ブンッ


…ザシュッ!!


ルビカンテ「! ……ルゲイエ、貴様……」


ルゲイエボーグ「お前さえいなければ、ワシは四天王になっていたんじゃあ!」

ドゴォ!! ズバァ!!

ルゲイエボーグ「お前のせいで、お前のせいでっ!!」

バキッ!! グシャァ!!


ルゲイエボーグ「っ……はぁ、はぁっ……」

ルゲイエボーグ「ど、どうじゃ、思い知ったか!」


ルビカンテ「………」

ルビカンテ「……やはり、お前だけは生かしておけんようだな」


ルゲイエボーグ「なっ……!? ワシの攻撃が効いてないだと……!?」


ルビカンテ「私利私欲の為にしか動かないお前は、弱い」

ルビカンテ「オレは本当の強さというものをあいどるたちから学んだ」

スタスタ…


ルゲイエボーグ「ひっ、く、来るなっ!」ズサッ


ルビカンテ「お前がイオリにした事を、今度はオレがお前にしてやろう」ポキポキッ



ルゲイエボーグ「お、お助けぇ〜〜!!」



ドカバキベキグシャ!!



ルゲイエボーグ「」



ルビカンテ「……地獄で反省するんだな、ルゲイエよ」

370 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:32:38.70 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館の外 ー


亜美「……ちぇすとぉ!!」

ゴオオオオォォ!!


ドサッ

魔物1「」


亜美「もいっちょ!!」

ゴオオオオオ!!


ドサッ

魔物2「」


亜美「ラストっ!!」

ゴオオオオォオオ!!


ドサッ

魔物3「」



亜美「…………ふぃ〜」



真美「おつかれ亜美ー。ほい、エーテル」スッ

亜美「さんきゅ、真美」

亜美「んく、んく……」

真美「なかなか板に付いてきたカンジじゃない? 亜美の『れんぞくま』も」

亜美「……いや、まだまだっしょ。亜美ひとりじゃ使える魔法は限られてるし、お姫ちんやミキミキの火力には届いてないよ、きっと」

亜美「それに連続じゃなくていちおー同時に出してるんだよ? 真美だって同じっしょ?」

真美「おっと、こりゃしっけい」

真美「でも、火力が足りないからなん個も同時に魔法出して撃ってるんだよね?」

真美「それでもまだあの二人にかなわないって、ツラいねー」

亜美「だって……ミキミキは最初っからホーリー使えたみたいだし、はるるん助けに行った時なんかはアルテマ使ったっぽいし……」

真美「ねー。それを聞いた時は真美もチョーびっくりしたよー」

亜美「お姫ちんはお姫ちんでいつの間にかメガフレアとか覚えてるし……」

亜美「もうね、くやしいを通り越して笑いが出てくるよね……」ズーン

真美「ま、まあホラ、あの二人はいろいろとキカクガイだからさ」

亜美「でもさー、ウチらの中でキッスイの黒魔道士は亜美だけなんだよ? やよいっちの火力にはかなわなくても、せめてミキミキやお姫ちんの火力には追いつきたいよー……」

亜美「……あーあ、亜美も二人みたいにすんごい魔法が使えるよーにならないかなぁ」

真美「たいへんだねぇ、黒魔道士も」



貴音「…………精が出ますね、亜美、真美。このような夜更けに」



亜美・真美「……お姫ちん?」

371 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:37:58.44 ID:VRt3rZWL0

亜美「どったの? こんな時間に」

真美「お姫ちんもしゅぎょー?」

貴音「いえ、そうではありません」

貴音「明日、わたくしたちは中心核を目指してここを発ちますが、その前にこの光景をしっかりと目に焼き付けておこうと思いまして」

亜美「この光景って、月の?」

貴音「ええ」

真美「そーいえばお姫ちんって、いっつも月を見てたよね」

貴音「わたくしにとって月とは、無くてはならないものですから」

真美「ふーん……」



貴音「……時に亜美」

亜美「……ほぇ?」

貴音「何やら自分の魔法の威力に自信が持てないようですね?」

亜美「…………まあ、ね」

亜美「てか、お姫ちんのせいでもあるんだよ?」

貴音「……なんと、そうでしたか。それは申し訳ない事をしてしまいました」

亜美「いや、マジにあやまらないでよ……。なんか自分がミジメに思えてきたよー……」

真美「亜美……」ナデナデ

貴音「………」

貴音「亜美。もう少し自分に自信をお持ちなさい」

亜美「えっ……」

貴音「わたくしが保証します。あなたのその力は決して誰にも引けを取ってはいません」

亜美「………」

亜美「うーん……お姫ちんが言うと、なーんかホントっぽく聞こえるんだよねぇ」

貴音「……はて? わたくしは真実を申し上げているつもりですが?」

亜美「……ホント、その自信はどこからくるんだろ」

貴音「ふふ……」ニコッ

372 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:42:00.27 ID:VRt3rZWL0

貴音「では、僭越ながら、わたくしから一つ助言を差し上げます」

貴音「亜美。あなたはわたくしや美希に魔力が劣っていると思い込んで焦っている……」

亜美「………」

貴音「ですが、それは大きな間違いです」

亜美「……え、なんで? だってお姫ちんもミキミキも、亜美が使えない魔法とか使えるじゃん」


貴音「……例え話をしましょう」

貴音「白魔道士である美希は『けあるが』や『へいすと』、『ほーりー』などが得意ですね」

亜美「あと、アルテマもね」ムスー

貴音「片や、同じ白魔道士の真美は『れびてと』や『ぷろてす』、『しぇる』、『ぶりんく』などを好んで使用します」

真美「……ん、そーいやミキミキってあんましサポート魔法使わないんだね」

貴音「ええ。全く使用しない、という訳でもないと思いますが、美希は回復や攻撃、真美は自身の強化や仲間のさぽーとが得意なのだと感じました」

真美「へー……真美、そんなのゼンゼン気にしてなかったよー」

亜美「……んじゃあ、他のみんなは?」

貴音「そうですね。あずさは特に『てれぽ』の魔法が得意なようです」

真美「あれは、得意ってゆーのかなぁ……」

貴音「わたくし自身は白黒併せて大体の魔法を使う事ができますが、それでもその中で得手不得手というものがあります」

貴音「『ぶりざど』系の魔法は得意ですが、『さんだぁ』系の魔法はあずさに、『ふぁいあ』系の魔法は亜美に威力で劣るでしょう」

亜美「えっ、そーなの?」

真美「知らなかった……。しょーげきのジジツってカンジ」

貴音「それに、『とーど』や『ぶれいく』の魔法を使えるのも亜美、あなただけです」

貴音「それ以外にも、あなたには魔法を同時に複数発動するという特技も持っています」

373 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:45:21.46 ID:VRt3rZWL0

真美「……あれ? なんか、お姫ちんの話を聞いてたら亜美がそこまでダメダメってカンジはしなくなってきたよ?」

貴音「魔法というものも一つの個性。使用者によってその力は様々な形に変化します」

貴音「つまり、わたくしにはわたくしの、美希には美希の……」

貴音「そして、亜美には亜美だけの戦い方というものが必ずあるはずなのです」

貴音「それはもちろん真美、あなたにも同じ事が言えるでしょう」

真美「………」

貴音「他人を真似するのではなく、あなた方にしか出来ない自分だけの戦い方を見出してください。二人の柔軟な発想力ならば、きっとそれを見つけることが出来ると信じていますよ」

亜美「………」

真美「お姫ちん……」


亜美(亜美だけの戦い方、かぁ……)

亜美(……そーだね。誰かのマネして強くなっても、きっとイミないよね)


亜美「……ありがとね、お姫ちん」

亜美「亜美、自分がどーすればいいかがなんとなくわかった気がするよ!」ニコッ

貴音「……共に精進致しましょう、亜美、真美」ニコッ

真美「うーむ……。さすがお姫ちんってカンジだね。カユいところに手が届くっていうか」

亜美「あ、そんじゃあお姫ちんはマゴの手ってコトだね!」

真美「おお、そーだね! マゴの手ちんだね!」

貴音「あ、あの……それは果たして褒め言葉なのでしょうか?」



真美「……っと、そうだ」

真美「そーいえば真美、ピヨちゃんと戦うに当たってお姫ちんに言っておかなきゃいけないことがあるんだった」

貴音「わたくしに……ですか?」

真美「うん。すっごく大切な話なんだよ」

貴音「……分かりました。拝聴致しましょう」

374 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:49:02.71 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館付近の丘 ー


真「…………せいっ!」バッ



…ドガアアァァアアン!!




雪歩「わぁ……山が一つなくなっちゃった……!」

雪歩「やっぱりすごいね、真ちゃん」


…スタッ

真「そんなことないさ。気の流れを上手く操ることができれば、こんなの誰にだってできるんだ」

真「特に、今までずっとボクの修行に付き合ってくれていた雪歩なら、もう気の流れっていうものを理解しているはずだよ?」

雪歩「で、でも私、まだよく分からなくて……」

真「……うーん」



真「……いいかい雪歩。気っていうのは誰だって自分の体の中に持っているものなんだ」

真「大切なのは、どうやってそれを外へ出してやるか」

雪歩「体の外へ……?」

真「うん。頭で考えるんじゃなくて、感じるんだ。自分の中に揺らいでいるエネルギーを解放するイメージを思い描くんだよ」

雪歩「自分の中の、エネルギー……」

真「そのエネルギーを……」ユラ…


真「…………拳に込めて、撃つッ!!」ブンッ


ドゴオオオオォォオン!!!



真「……まあ、雪歩にはアダマンアーマーと伝説のスコップがあるし、あんまり必要ないのかもしれないけどね」

雪歩「……ううん、そんなことないよ。真ちゃん、私に教えて!」

真「……へへ、分かったよ」ニコッ

真「ただ、明日にはもう出発だ。時間的に教えてあげられるのは簡単な事だけになっちゃうけど、それでもいいかな?」

雪歩「よ、よろしくお願いします、師匠!」

真「し、師匠?」

真「……ま、まぁいいや。それじゃ、もう一度ボクの動作をよーく見ててね?」スッ

雪歩「お、押忍っ!」

375 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:52:10.00 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館 1F 図書室 ー


やよい「………」

やよい「………」

やよい「………」

やよい「………」

やよい「………」



やよい「……………うー」



伊織「…………やよい、眠れないの?」


やよい「あ、伊織ちゃん……。ごめんね、起こしちゃった?」

伊織「ううん。ちょうど私も眠れなかったところよ」

やよい「そっかぁ……」

伊織「………」

やよい「………」

伊織「……考え事でもしてたの?」

やよい「……うん」

伊織「………」

やよい「………」

やよい「えっとね……」

やよい「ちょっと、小鳥さんのことを考えてたんだ」

伊織「…………そう」

やよい「わたし、あんまりよくわからないままここまできて、今までずーっとおかしいなー、なんでだろーって思ってたことがあって……」

やよい「でも、春香さんが『小鳥さんのおかげでわたしたちが成長できた』って言ったときに、思ったの」

やよい「小鳥さんは、やっぱり小鳥さんでいてくれたんだなーって」

伊織「………」

やよい「だから、わたしもちゃーんと小鳥さんにお礼をしなきゃって思って」

やよい「わたしも最後までしっかりわたしの役をえんじて、小鳥さんを……」

伊織「……やよい」

376 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:54:43.87 ID:VRt3rZWL0

伊織「アンタの決意は分かったわ。だから、無理しなくてもいいの」

やよい「えっ? わたし、ムリなんかしてないよ?」

伊織「嘘よ。……だったらなんでアンタは泣いているの?」

やよい「わ、わたしっ……こ、これは泣いてるんじゃなくて……!」ゴシゴシ

伊織「………」

伊織「……お願いよ、やよい」ダキッ

やよい「い、伊織ちゃん……?」

伊織「私の前では無理しないで。本当のあなたを見せて」

やよい「っ……ううっ……!」ポロポロ

やよい「伊織ちゃん……わたしっ……!」

やよい「ほんとうは、小鳥さんと戦いたくないよっ……!」ポロポロ

伊織「やよいっ……!」ギュッ

やよい「ほんとうは、ごわぐでっ……かなしくてっ……えぅ……!」ポロポロ

伊織「ええ……そうね……」ナデナデ


伊織(『自分の役を最後まで演じきる』。春香の言葉は確かに聞こえはいいけれど、小鳥との戦いをそういう風には考えられない子だってもちろんいる)

伊織(やよい……。アンタはどこまでも優しいから、割り切ることができないのね……)

伊織(でも、だからこそアンタは今より強くなれる。やよいなら、その優しさを強さに変えることだってできるわ)

伊織(乗り越えるのよ。……それはアンタが自分の力で越えなければならない、壁なんだから)



やよい「……ぅうううぅぅうううぁああん……!!」

377 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 18:57:46.78 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館 B1F クリスタルルーム ー


律子「………」



律子(春香のおかげで、あの子たちも小鳥さんと戦う覚悟を持つ事ができた)

律子(でも、それはきっとみんながいるから。自分は一人じゃないって思う気持ちから来るもの)

律子(地下渓谷ではどんな戦いになるか分からない)

律子(もし、一人になってしまった時。誰からも助けてもらえなくなった時)

律子(その時にこそ、あの子たちの真価が試される事になる)



律子(それにしても、プロデューサー殿の言葉が気になるわね)

律子(小鳥さんを真の意味で助ける……。心の支えになるっていうのは確かにそれっぽく聞こえるけど、イマイチしっくりこない)

律子(プロデューサー殿には何か別の思惑がある。……そう思えて仕方がないのよね)



美希「……あれ、律子…さん?」



律子「美希……」

律子「……眠れないの? 早く寝ないと明日に響くわよ?」

美希「えーっとね、寝すぎて寝れなくなっちゃったの」

律子「あのねぇ……。明日起きなかったら置いて行っちゃうわよ?」

美希「それはへーきなの。ミキ、こー見えて自分の睡眠時間はちゃーんと調整できるんだよ?」

律子「……本当に大丈夫なんでしょうねぇ?」

美希「あ、ヒドいの! 律子…さん、ミキのこと信じてないんだ」

律子「そういうわけじゃないけど……」

美希「………」

律子「………」


…キラーン!


美希「……キレイだね、クリスタルって。見てるとなんだか不思議な気持ちになってくるの」

律子「そうね……」

378 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:00:17.21 ID:VRt3rZWL0

律子「……美希、あなたに訊きたいことがあるんだけど」

美希「なーに?」

律子「その……プロデューサーがいなくなってさみしくないの?」

律子「あなたっていつもプロデューサーにベッタリだったし、どうしてそんなに落ち着いているのかなって気になってね」

美希「んー…………」



美希「じゃあ、律子…さんは?」

律子「えっ?」

美希「ハニーがいなくて、さみしい?」

律子「えっ…と……」

律子「……そりゃあ、誰にも相談せずにいきなりいなくなったのはどうかと思うけど……」

律子「まあ、どこにいるのかは分かっている訳だし、小鳥さんのお守をしてもらってると思えばいいし」

律子「……それに、彼には彼なりの考えがあるみたいだし」

美希「そう!」

美希「ハニーにはハニーの考えがあるんだよ」

美希「ミキも、ハニーがどうするつもりなのかまでは分からないけど」

美希「……でもね、『信じて』ってハニーが言った以上、ミキはそれを信じて、自分にできることをガンバるだけなの」

美希「だから、ミキもさみしがってるだけじゃダメって思ったんだよ?」

律子「………」

律子「強いわね、美希は」

美希「? ……別に特別なことじゃないと思うな」

律子「いいえ、特別よ」

律子「仲間の言葉を信じるのはとても大切な事だけど、簡単じゃないわ」

律子「心のどこかで不安を抱いてしまう。疑心暗鬼に陥ってしまう」

律子「ただ真っ直ぐにそれができるのは、美希、あなたが本当に純粋に強い人間だからよ」

美希「……ミキはよく分からないけど、律子…さんが言うなら、そうなのかな」


…キラーン!

379 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:02:59.58 ID:VRt3rZWL0

律子「……ねえ、美希。あなたは不安に感じない? 小鳥さんと戦うことを」

律子「春香はああ言ったけど、仲間と戦うというのはやっぱりそう簡単に割り切れる事じゃないわ」

律子「それに、小鳥さんはどうやら本当に本気みたいだし……」

美希「……あは☆ なんだかおかしいの」

律子「えっ……」

美希「これじゃ、いつもと逆だね」

律子「逆? ……どういう意味?」

美希「だっていつもは、分からない事をミキたちから質問することが多いのに、今日の律子…さん、ミキに質問してばっかりだよ?」

律子「あ…………」


律子(そうか…………そうだったのね)


美希「みんな、難しく考えすぎなの」

美希「小鳥と戦うことになったからって、別にミキたちのカンケイが変わっちゃうってわけじゃないでしょ?」


律子(質問ばかりするのは、不安の裏返し)

律子(みんなの事を心配しつつも、その実は……)


美希「戦って、小鳥を倒して、それで元の世界に帰って。でも、元の世界に帰っても小鳥は小鳥だし、ミキはミキだよ?」

美希「それはこの世界にいても同じだって思うな」


律子(私自身が一番、小鳥さんと戦う事に不安を……いえ、恐怖を抱いている)


美希「戦う過程で痛い思いや苦しい思いもするかもしれないけど、それはみんな同じなの」

美希「ミキ的には、全部終わって元の世界に戻ればまたみんなで楽しく過ごせるって思うなっ」ニコッ


律子「美希……」


律子(……ここがクリスタルルームだからそう思うのかしら)

律子(今は、目の前のこの子が眩しくて仕方ない)

380 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:05:13.47 ID:VRt3rZWL0

美希「えっと、こーいうのなんて言うんだっけ? 喉元過ぎれば……」

律子「……熱さ忘れる、ね」

美希「あは☆ さすが律子!」

律子「さん、でしょ?」

美希「むー……ごめんなさいなの」


律子(喉元過ぎれば……か)

律子(私は美希みたいには考えられない。でも、この子たちの強さには、本当に勇気をもらえるわ)

律子(私も、もっとしっかりしないとね)



美希「ミキね、地球の……ばろん、っていう国でみんなで集まった時に、誓ったの」

美希「ハニーと離ればなれになっても、もうゼッタイに弱音は吐かないって」

美希「だから、もう何があっても恐くないよ。どんな壁だってきっと乗り越えてみせる!」

律子「………」


律子「……はぁ……」

律子「やっぱり大物だわ、あんたは」

美希「そう?」

律子「さ、そろそろ戻りましょう。眠れないって言っても、横になって目を閉じてるだけでも体は休まるから」

美希「あ、じゃあじゃあ、今夜はミキと一緒に寝る?」

律子「そうね、たまにはそれもいいかもしれないわね」ニコッ

美希「えへへ、やったぁ!」

381 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:07:40.59 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館付近の洞窟 ー


響「……はっ!」ブンッ

ドゴッ!

ドサッ

魔物1「」


響「…………ふぅ」



響「……えーと、これで何体目だっけ。50体までは数えてたんだけどなー」

響「なんか、魔物を倒しすぎて気持ち悪くなってきたかも……」

響「でも、まだまだだぞ。こんなのじゃ全然足りない」

響(みんな、最初の頃に比べてすっごく強くなってる)

響(それぞれに得意な分野があって、それをちゃんと自分で理解してて)

響(今のみんななら、きっと魔物なんかに負けたりしないって確信できるぞ)



魔物2「グギャァー!」


響「………」

響「……たぁーーっ!」ブンッ

ドゴォ!

ドサッ

魔物2「」



響(……でも、じゃあ、自分は?)

響(体術では真に敵わないし、伊織や千早みたく得意な武器があるわけでもない)

響(それに、自分は魔法も使えない)

響(エン太郎もファル子もいない今の自分に、何がある? 何ができる?)

響(……みんなの足手まといにだけは、絶対になりたくないぞ)グッ



「……ーー♪ 」



響「……あれ、この声……」

382 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:09:39.30 ID:VRt3rZWL0

…ザッ

響「……千早?」


千早「……我那覇さん? どうしたの? こんな夜遅くに」

響「それはこっちのセリフだぞ。……こんなところで歌の練習?」

千早「なんだか落ち着かなくて。眠れないから、歌えば少しは気が楽になるかも、って思って」

響「そっか。やっぱり千早も落ち着かないのかー……」

千早「我那覇さんも眠れないの?」

響「自分は……」



響「自信が持てないんだ」

響「自分、真みたいに強くないし、魔法が使えるってわけでもないし……」

響「この先ちゃんとみんなについて行けるのかな……って」

千早「……珍しいわね。そんなに弱気な我那覇さんは初めて見たわ」

響「そりゃ、自分だって自信をなくすことくらいあるよ」

響「こないだ戦った親衛隊の魔物たちはすっごく強くて、自分は攻撃をよけることで精一杯でさ」

千早「………」

響「よく考えたら自分、今までみんなほど魔物と戦って来なかったんだ」

響「エン太郎やファル子、それにまど香。飛空艇のことだったら、誰にも負けない自信はあるつもりだけど……」

千早「……ええと、ごめんなさい。まど香って誰の事だったかしら?」

響「も〜、まど香は魔導船の名前だぞ。千早、忘れちゃったのか?」

千早(いつの間に決まったのかしら)

383 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:11:41.60 ID:VRt3rZWL0

千早「……まあ、それはともかく」

千早「我那覇さんは、魔物との戦いにおいて自分に秀でているものがないから悩んでいるのね?」

響「うん……」

千早「そうね……。だったら、発想を変えてみてはどうかしら」

響「発想を変えるって?」

千早「あなたの得意分野ーーつまり、飛空艇で戦うの」

響「えっ、でも、ファル子は地球に置いてきたし、まど香も今は近くにいないし……」

響「……エン太郎は、ずっとずっと遠くに行っちゃったし……」

千早「遠くにいるのなら、地球にいた頃みたいに呼びかけるのよ」

響「いや、宇宙を越えられるのはまど香だけだぞ?」

響「それに、エン太郎はもう……」

千早「………」



千早「……私ね、今だから言うけれど、最初はあなたとエン太郎の仲を疑っていたのよ」

千早「飛空艇なんてどれも同じじゃないか、たかが乗り物と人間が心を交わす事なんて本当に出来るのか、って」

響「ちょ、ちょっと千早、いきなり何を言い出すんだ?」

千早「……でも、あなたたちの絆は決して偽物なんかではなかった」

千早「エン太郎を操縦している時の我那覇さんは本当に楽しそうだったし、一度カイポではぐれてしまった時だって、エン太郎はちゃんとあなたの元へ戻って来た」

千早「それに……私はその場にいたわけじゃないけれど、最後の最後までエン太郎は命がけであなたを守り抜いた」

千早「その話を聞いた時、私、心の奥底が震えるような気持ちになったの」

響「………」

千早「だから、エン太郎がもうこの世にはいないとしても、遠く離ればなれになってしまったとしても……」

千早「きっと、心の深いところで我那覇さんと繋がっているんじゃないかしら」

千早「姿は見えなくても、遠い空で見守っていてくれている……」

千早「そう思う……いえ、そう信じたいの」

響「千早……」


千早(……なんて、まるで私自身に言い聞かせているみたい)

千早(なんだか自分が滑稽ね)


響「!」

千早「……我那覇さん、どうしたの?」

響「……魔物だ!」

384 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:16:34.37 ID:VRt3rZWL0

魔物3「グルル……!」



千早「……!」チャキッ

響「千早、ここは自分に任せて」

千早「でも……」

響「自分、試してみようと思うんだ。千早が言ったみたいに」

千早「えっ?」

響「行くぞっ!」ダッ

タタタタ…


魔物3「ガアア!」ブンッ


響「……っと」ヒョイッ

響「そんな攻撃、食らわないぞ!」


魔物3「グアアア!」ダッ


響「………」


響(千早の言う通りだ。自分には自分の得意分野がある)



響(……エン太郎)



響(お願い、力を貸してっ……!)



魔物3「グアアアッ!」ブンッ



千早「我那覇さんっ!」

385 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:17:34.01 ID:VRt3rZWL0

ゴオオ…



響「……これが、自分の戦い方だぁっ!!」

響「ナンクル砲っ!!」バッ


ズドオオオオンッ!!



千早「!」





…ドサッ

魔物3「」


響「…………よしっ!」



千早「我那覇さん、今のは?」

響「ナンクル砲は、飛空艇の砲撃。エン太郎の武器だったんだ」

響「きっと、天国からエン太郎が自分に力を貸してくれたんだ」

千早「そう……」

響「ありがとね、千早。千早のおかげで自分なりの戦い方を確立できたぞ!」

千早「いえ、お礼を言われることではないわ」

千早「その力は、きっと我那覇さんとエン太郎の絆の証だと思うから」

響「うん……そうだな!」



響(……ありがとう、エン太郎)

響(自分、頑張るからな。天国でちゃーんと見ててよねっ!)

386 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:19:09.71 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館 屋上 ー


キラキラ…


春香「はぁ……」

春香「宇宙ってホントにキレイだなぁ……」ボーッ

春香「数えきれないくらいたくさんの星が瞬いていて……」

春香「……ふふっ、まるでサイリウムみたい」


春香(……こうして悠然とした宇宙を見上げていると、なんだか不思議な気持ちになる)

春香(ゲームの世界へ飛ばされて、いろんな場所を旅して、慣れない武器を持って魔物と戦って)

春香(普通のアイドルだった私たちは、今まで知らなかったことを知ったり、考えもしなかったことについて考えさせられたり)


『……お前たちアイドルが、物語を紡ぐんだ』


春香「………」



春香(プロデューサーさん、私たちはしっかりできているんでしょうか?)

春香(この物語は、ちゃんとハッピーエンドへと向かっているんでしょうか?)

春香(演劇やドラマのお仕事みたいに……ううん、今までやってきたどのお仕事よりもリアルで、現実味に溢れていて)

春香(ここは本当ならあり得るはずのない世界だから、今まで起こったことは全部夢なんだよって言われても、信じられないかもしれません)

春香(私たちの向かう先には、いったい何が待っているんでしょうか……)



あずさ「…………春香ちゃん?」



春香「……あれっ? あずささん?」

あずさ「もしかして春香ちゃんも眠れないの?」

春香「えっと、はい。最後の戦いの前で、少し緊張してるのかもしれませんね」

あずさ「うふふ♪ その割にはずいぶん落ち着いて見えるわよ?」

春香「そ、そうですか?」

あずさ「ええ」ニコッ

あずさ「なんだか春香ちゃんがいつもよりも大人っぽく感じられるわ〜」

春香「そう、ですか……。えへへ、嬉しいなぁ」ニコッ

387 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:22:11.38 ID:VRt3rZWL0

あずさ「……綺麗な空ね」

春香「そうですねぇ……。家に持って帰りたいくらいです」

あずさ「もしもこの宇宙を家に持って帰ることができたら、プラネタリウムは必要なくなっちゃうわね〜」

春香「ふふっ、ホントですねっ!」

あずさ「………」

春香「………」



春香「……あの、あずささん?」

あずさ「……なぁに?」

春香「あずささんって、今は……腕とか再生したりとか、回復魔法が効かなかったりとか……」

春香「なんていうか、その……」

あずさ「えーっと、ゾンビっていうことかしら?」

春香「す、すみません、変な事言って」

あずさ「いいのよ、気にしないで? もうだいぶこの体にも慣れたし」

あずさ「スーさんが私のために分けてくれた命ですもの。私、とても大切に思っているのよ?」

春香「………」

春香「あずささん。私、あずささんに謝らないとです」

あずさ「あら、それはどうして?」

春香「今日、みんなの前で私は、自分の役を最後まで演じきりたいって言いました」

春香「でも、私たちの中で一番大変な役を与えられたのは、あずささんだったんですよね」

春香「それなのに私、あずささんの事も考えずに軽はずみな事を……」

あずさ「……そうねぇ」

あずさ「私も、まさか自分が死を体験するなんて思ってもみなかったけど……」

あずさ「うふふ。でも、これも貴重な体験よね?」

春香「……なんでそんなに軽く話せるんですか? あずささん、怖くなかったんですか……?」

あずさ「う〜ん……」

388 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:27:05.47 ID:VRt3rZWL0

あずさ「……少し前に、ドラマの撮影で知り合いになった役者の方がいてね」

春香「えっ……?」

あずさ「その方が仰っていたの。『自分には主人公を張る器はない。でも、脇役として主人公を引き立てることならできる。だから、自分は自分にしかできないやり方でドラマを良くしていきたい』って」

あずさ「その方の言葉を聞いて私、思ったのよ。ああ、そういう考え方もあるんだなぁ、って」

春香「あ、あの……?」

あずさ「私ね、今までお仕事で与えられた役に対して特に疑問を持ったりしたことはなかったんだけど、その方の言葉を聞いてから、少しだけ考え方が変わったわ」

あずさ「主人公だけが主人公じゃない、どんな脇役にだってちゃんとした意味があるって」

あずさ「それからは私、どんなお仕事でも楽しくって。……ううん、楽しくやらなきゃ損よねって思えるようになったのよ」

春香「あずささん……何の話を?」

あずさ「私が一度死んだことも、きっと物語を盛り上げる何かしらの意味があった」

あずさ「……物語を盛り上げるのは、役者の務めよ?」ニコッ

春香「あずさ…さん……」

389 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:28:13.34 ID:VRt3rZWL0

あずさ「さあ、春香ちゃん。終わった事は忘れて、今は前を向きましょう?」

あずさ「主人公の春香ちゃんが後ろを振り返っていては、物語が先に進まないわ」

あずさ「春香ちゃんには、この物語を終わらせる使命があるんだから」

春香「………」

あずさ「…………ねっ?」

春香「……はい、分かりました。私、もう絶対に後ろを向いたりしません!」グッ

あずさ「うふふ♪ それでこそ春香ちゃんよ」ニコッ



春香「あの……ちなみにあずささんって、スーさんのこと、ちょっと気になったりしてるんですか?」

あずさ「あらあら……」

あずさ「スーさんは私にとっていいお友達よ? でも、私の運命の人は別にいるのかなって思っているわ〜」

春香「で、ですよね。……あはは、私ったら何言ってるんだろ」

あずさ「うふふ、心配しなくても、春香ちゃんの大切な人を横取りなんかしないわよ〜?」

春香「えっ!? い、いやいや、何を言ってるんですか! プロデューサーさんの事は今は関係な……」

春香「…………あっ」

あずさ「春香ちゃんは本当に楽しいわね〜」ニコニコ

春香「も、もう! からかわないでくださいっ」カァァ

390 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:30:29.98 ID:VRt3rZWL0
ー 翌日 月の民の館 1F 図書室 ー


月の民「……もう、行かれるッスか」

貴音「ええ」

貴音「あなたには本当にお世話になりました。わたくしのいない間この館を守ってくださったり、快く皆を迎え入れていただいたり……」

貴音「それに、このようなお弁当まで頂いて……感謝してもし足りません」ズッシリ



響「……ていうか、貴音のお弁当だけ大きすぎだよね。自分たちの3倍くらいあるぞ」ヒソヒソ

春香「それは仕方ないんじゃないかな。月の民さんもさすがにもう貴音さんが食いしん坊だっていう事実に気づいてると思うし……」ヒソヒソ



月の民「自分、信じてるッス。タカネ様やみなさんがきっとこの世界に光をもたらしてくれるって」

月の民「だから……きっと、無事でまた……!」

貴音「……はい、約束します。誰も欠けることなく、無事に帰ってくると」ニコッ

月の民「タカネ様っ……!」ウルッ



貴音「……それで、相談なのですが、もう少しお弁当の量を増やしていただけないかと思うのですが……」

月の民「……えっ?」



律子「……感動の旅立ちのワンシーンが台無しね」

伊織「ま、予想はできたけどね」




貴音「……それでは、行って参ります」ペコリ

月の民「はい! 行ってらっしゃいッス! 自分、ここでみなさんのご無事を祈っているッス!」



貴音(……思えば、わたくしがこの世界へ来て途方に暮れていた時、最初に声を掛けてくれたのがこの方でした)

貴音(わたくしたちは、本当にたくさんの方の想いを託されています)

貴音(これは最早、わたくしたちだけの戦いではありません)

貴音(げぇむの世界を救う戦いでもあるのです)

391 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:33:29.93 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館 B1F クリスタルルーム ー


律子「……さて。みんな、準備はいい?」


響「いつでもいいぞ!」

春香「準備万端ですよ、準備万端!」

千早「行きましょう、律子。プロデューサーと音無さんが待っているわ」

律子「……よし」

律子「ここには、全部で13のクリスタルがある」チラッ

律子「各自クリスタルの前に立って、クリスタルに向かって祈るのよ」

律子「想いを受けたクリスタルは、きっと私たちに応えてくれるわ!」



アイドルたち「……はいっ!!!」



春香「えっと……」

春香(……お願いします、クリスタルさん。私たちをどうか地下渓谷へ連れて行ってくださいっ……!)

春香「っ……!」ギュッ


……



…………チカッ




春香「……わっ、プロデューサーさんにもらったクリスタルの首飾りが、光ってる……!」



…パァァーー!



真「……春香の前にあるクリスタルも赤く光った!」

貴音「まるで、クリスタルが首飾りの輝きに共鳴しているかのようですね……」

雪歩「プロデューサー、もしかしてこの事も想定してたのかな?」

伊織「もしそうだとしたら、あいつにしてはなかなかいい仕事したわね」

千早(……よし、私も……)



千早(私にできるのは、前に進む事だけ。みんなと同じ方向を向いて、ただ一つの結末へ向かって)

千早(そこへ辿り着く為に必要な道は、自分の力で切り開くっ……!)

千早「……っ!」グッ



…パァァーー!!

392 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:44:45.65 ID:VRt3rZWL0

亜美「おおぉ! 今度は千早お姉ちゃんのクリスタルが青く光ったよー!」

真美「やるね、二人とも!」

やよい「春香さんも千早さんもさすがですっ!」




亜美「真美、亜美たちもいくよっ!」

真美「りょーかいっ!」ビシッ


亜美(……いでよ、クリスタル!)

真美(そして、真美たちの願いをかなえたまえー!)



…パァァーー!!




伊織「………」

伊織(……さあ、このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんのために、しっかり輝きなさいっ!)



…パァァーー!!



伊織「……よしっ」

伊織「やよいは大丈夫かしら……」チラッ




やよい「……!」グッ


…パァァーー!!



伊織(……問題はないみたいね)

伊織(前に進むことができたのね、やよい)

393 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:46:56.68 ID:VRt3rZWL0

律子「赤、青、黄色、桃色に橙……」

律子「順調みたいね」



あずさ「律子さ〜ん♪ 」フリフリ


…パァァーー!!



雪歩「わ、私たちもなんとか……」


…パァァーー!!



真「準備できたよ!」


…パァァーー!!



律子「……これで9人分。あとは……」チラッ



貴音「モグモグ……」


…パァァーー!!



美希「……あふぅ」


…パァァーー!!



響「うぎゃー! 二人とも、大事な場面なんだからちゃんとやるさー!」


…パァァーー!!




律子「……これで12人。残りは私だけか」

律子「……よし!」グッ



律子(お願い、クリスタル。私たちを導いて……!)



……



…………



……シーーン



律子「あれっ……な、なんで?」

394 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:49:09.09 ID:VRt3rZWL0

真「律子のクリスタルだけ光らない……?」

響「なんでなんだ……?」

伊織「……とにかくもう一度よ、律子!」



律子「え、ええ!」

律子(クリスタル……私の願いを聞き届けてっ……!)

律子「……っ!」グッ



……



…………



……シーーン……



律子(……また、ダメ……。いったい何がいけないっていうの?)



雪歩「ど、どうしちゃったんでしょう……?」

あずさ「律子さん……」

やよい「ううっ……律子さん、がんばってくださいっ……!」グッ

美希「律子…さん、もう一回やってみるの!」



律子「………」コクリ

395 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:50:16.89 ID:VRt3rZWL0

律子(……こんなところで止まっている暇はないの。私たちには会わなければならない人がいる)

律子(お願いだから、言うことを聞いて……!)



……



…………



……シーーン……



千早「また……光らない? なぜ、律子のだけ……」

亜美「……ねえ、真美」

真美「うん……。もしかしたら、クリスタルはゲーム通り、暗黒騎士には使えないんじゃ……」

千早「そんな……。それじゃ、どうすればいいの?」

亜美「わかんない。でも、これって全部のクリスタルを光らせなきゃダメなんだよね?」

真美「もし、このままりっちゃんのだけ光らなかったら……」

千早(律子……)

春香「………」

396 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:53:19.99 ID:VRt3rZWL0

律子(私はやっぱり、小鳥さんの言っていた『ゴルベーザ』って人と同じ運命を辿るというの……?)

律子(それが私の運命だっていうなら私はどうなってもいい。でも、せめてあの子たちだけは……)


……ギュッ


律子「えっ……?」クルッ


春香「私も一緒です。一緒に祈りましょう、お姉ちゃん!」

律子「春香……」

律子「…………わかったわ!」



律子(お願いします……!)


律子・春香(私たちを、地下渓谷へ連れて行ってくださいっ……!)



……



…………



………………



……パァァーー!!



響「……やった! 緑色に光ったぞ!」

亜美「ナイスはるるん、さっすが妹!」

伊織「これで全員分よね?」

真美「うん。そしてたぶん、クリスタルの光が集まったところが……」チラッ



…………カッ!!



真「なんだ? 部屋の中央の床が……!」

貴音「ええ、一際激しく輝いております……!」

やよい「はわっ! まぶしーですー!!」ギュッ



パァァーーーーッ!!


397 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:55:53.15 ID:VRt3rZWL0

千早「……凄まじい光だったわね」

雪歩「うん……。私たちの光が、全部あの床に集まって……」

美希「色とりどりで、すっごくキラキラだったの!」

亜美「これで道ができたよ!」

真「道って……あの床が?」

亜美「あそこがワープゾーンになってるんだよー」

伊織「ってことは、あのワープを抜けた先が……」

あずさ「地下渓谷、ということなのね〜」

真美「あとは、勇気だけっぽいよ!」



律子「ありがとう、春香。あなたのおかげで道が開けたわ」

春香「いいえ、どういたしまして」ニコッ

律子「………」

春香「……お姉ちゃん、気にしてるんですか? クリスタルが輝かなかった事」

律子「……昨日、小鳥さんの分身に言われた事をちょっと思い出しちゃって……」

律子「今まで暗黒騎士として闇に手を染めていた私じゃ、やっぱりダメなのかもって……」

春香「そんなことありませんっ!」

春香「お姉ちゃんが何者だろうと、お姉ちゃんは私のお姉ちゃんです」

春香「それに、お姉ちゃんにはみんながついてます!」

春香「だから、不安に思う必要なんてないんです!」

律子「春香……」

律子「ふふっ。なんか、あなたにお姉ちゃんって呼ばれるのにも慣れてきたわね」

律子(まるで、本物の妹みたいな……)

律子(……って、ただのゲームの設定よ。深く考えちゃダメ、私)ブンブン

398 : ◆bjtPFp8neU [saga]:2016/08/28(日) 19:57:12.60 ID:VRt3rZWL0

律子「……それじゃ、先へ進みましょうか」

あずさ「あの〜、ちょっとだけ待ってもらえませんか〜?」

律子「あずささん……どうしたんです?」

あずさ「いえ、こういう時は、みんなの気持ちを一つにしてからの方がいいんじゃないかな〜って思って」

あずさ「……ねっ、春香ちゃん?」

春香「みんなの気持ちを……? あっ!」

真「そうだね。戦いの前にひとつ気合入れておくのもいいかもね!」

美希「あは☆ なんだかライブが始まる前みたいにわくわくするの!」

やよい「うっうー! わたしも、めらめら〜ってもえてきましたー!」

律子「それじゃ春香、号令かけてもらえる?」

春香「はいっ!」



…スッ



春香「ついにここまで来たね」

春香「……長い長い旅だった」

春香「でも、ここまで来たらあとはひたすら前に進むだけだよ」

春香「私たちの旅、私たちの手で決着をつけよう!」


一同「……!」コクリ




春香「いくよっ……!」スゥー




春香「765プローーーー!!」




春香「ファイトぉぉーーーーっ!!!」





一同「おおーーーーーーッッ!!!!」


399 : ◆bjtPFp8neU [sage]:2016/08/28(日) 20:00:36.73 ID:VRt3rZWL0
ここまでです
次回こそ本当にラスダン突入です
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 22:36:43.07 ID:ZSOF9AT/O
おつん、やっぱFFWは名作だってはっきりわかんだね
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/22(木) 13:16:31.39 ID:CTmoysOA0
402 :♯はるるん [sage saga]:2016/09/23(金) 01:17:20.40 ID:97jAJlAtO
ー 月の中心核 ー


P「……それで音無さん、バハムートが音無さんに味方しているっていうのは、まあ洗脳ってことで理解できるんですけど」

小鳥「ゴクゴク……」

P「クルーヤはなぜ音無さん側にいるんです? 彼はこのままだと自分の娘たちと戦うことになるんですよ?」

小鳥「……ぷはぁ!」

小鳥「も〜う、そんなのしりませんよぅ〜。しりたいんだったらほんにんにちょくせつきけばいいじゃないれすかぁ〜」ヒック

P「いや、本人に訊いても答えてくれなかったから……ってああもう、バッカスの酒のビンが倒れちゃってるじゃないですか」

P「まったく……」フキフキ

小鳥「……どーせわたしはわるものですよー」ゴクゴク


P(俺がここへ来てからというもの、飲んでいる音無さんしか見ていない気がする)

P(こんなんで本当にラスボスが務まるのだろうか。ちょっと不安だ)


小鳥「……ふぅ」

小鳥「プロデューサーさん、私を悪役にしておけばぜーんぶ丸く収まるって思ってるんでしょう?」

P「い、いや、そんなことは思っていませんよ。音無さん、飲み過ぎじゃないですか?」

小鳥「……ふんだ」
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 01:22:23.39 ID:97jAJlAtO
トリの付け方忘れた…
というか書き溜めはできているんですが新しいスマホが使いにくくて四苦八苦しています
もう残りはそんなにないのでトリップは付けずに行きます
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 01:35:09.78 ID:97jAJlAtO

…コトッ

小鳥「……わたしだって……」

小鳥「私だって、本当は正義の味方がやりたかったです」

P「えっ……」

小鳥「……ひっく」

小鳥「そりゃあ、私は聖人君子なんかじゃありませんよ?」

小鳥「朝起きて身体がダルかったりすれば『あー、仕事行くのしんどいなー』とか思いますし、たまーにアイドルのみんなの若さに嫉妬しちゃう時もありますし……」

小鳥「律子さんのお説教を無心で聞き流したり、なかなか有給をくれない社長にムカッとする時だってあります」

小鳥「でも私、こう言ったら驚かれるかもしれませんけど、みんなの事、本当はは大好きなんです」

P「………」

小鳥「私だってこんな役、イヤなんです」

小鳥「こんな風に……みんなを苦しめて……」ウルッ

小鳥「みんなを傷つけたりヒドいことしたりなんてもう、イヤなんですよぅっ!」

P「音無さん……」

小鳥「もう……やだ……」

小鳥「はやく、かえりたいよぅ……!」ポロポロ

P「音無さんっ……!」ダキッ

小鳥「ううっ……!」グスッ

小鳥「わたしをなまえでよんでくれないプロデューサーさんなんて……きらいですっ」プイッ

小鳥「……うぅぅううあああぁぁんっ……!」ポロポロ

405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 01:42:36.33 ID:97jAJlAtO

P(俺は……勘違いをしていた)

P(『音無さんならきっとラスボスをどこか楽しんでやっているんじゃないか』)

P(そう軽く考えていた)

P(でも、誰だってこんな嫌われ役よりは、仲間たちと手を取り合って光に満ちた道を進む方がいいに決まってる)

P(この人は、優しいから)

P(いつでもみんなを陰から支えてくれる、優しい人だから)

P(きっと、ずっと一人で抱え込んでいたんだろう)


P「……大丈夫、俺があなたの側にいます」ギュッ

小鳥「うええぇぇええっ……ううっ!」





小鳥「…………うぇっぷ」

P「………」

406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 01:45:24.74 ID:97jAJlAtO
ー 月の地下中心核 コトリの部屋 ー


小鳥「……zzz」

407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 01:55:19.63 ID:97jAJlAtO
ー 月の地下中心核 コトリの部屋 ー


小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……うーん……プロデューサーさ〜ん……」

小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……もう、違いますよぅ……。高木社長が攻めの方が絶対にステキですってばぁ……」ムニャムニャ

小鳥「……zzz」

小鳥「…………zzz」

小鳥「………………zzz」



小鳥「………………はっ!」ガバッ

小鳥「……あれ、私、どうしてたんだっけ……」

小鳥「えっと確か、あの子たちが自分の持ち場について、クルーヤさんやバハムートさんも行っちゃって……」

小鳥「それから……プロデューサーさんと二人きりで飲んで……」

小鳥「うぅ……頭がガンガンするわ……」

小鳥「水でも飲もうっと」スクッ



小鳥「…………あっ」



P「……zzz」

408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 02:07:09.84 ID:97jAJlAtO

小鳥(プロデューサーさんが私のベッドにもたれかかるようにして寝てる……)

小鳥(そういえば、自分でベッドに移動した記憶がないって事は、プロデューサーさんが私の事を運んでくれたのよね、きっと)

小鳥(飲んでいる時の記憶がさっぱり抜け落ちちゃってるけど、私、またプロデューサーさんにたくさん迷惑をかけちゃったのかなぁ)

小鳥(すみません、プロデューサーさん。迷惑かさるのはもうこれっきりにしますから)


P「……音無…さん……」


小鳥「ひょへっ!?」ビクッ

P「……だいじょうぶ……です……」

小鳥「えっ……」

P「……みんなまとめて……トップアイドル……音無さんも……」ムニャムニャ

小鳥「……なぁんだ、寝言ね。びっくりしたぁ……」

小鳥「ふふっ、プロデューサーさんったら私までトップアイドルにするつもりなのかしら」

P「……zzz」

小鳥(プロデューサーさんの寝顔、かわいいなぁ)


小鳥(私はともかく、みんなをトップアイドルにするには早く元の世界へ帰らないと)

小鳥(でも、その前にやる事がある)

小鳥(避けては通れない必須イベントがあるわ)

小鳥(さあ、小鳥。一世一代の大舞台よ!)

409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 18:47:40.86 ID:5Q4MvESvO
ー 月の地下渓谷  B1F ー


…ザッ

春香「……ここが、月の地下渓谷……」キョロキョロ

春香「広ーい……! しかもすごい眺め! ねえ見て、千早ちゃん!」

千早「……そうね。神秘的というか、不思議な雰囲気が漂っているわね」

真「なんか、言葉を忘れちゃうくらい絶景だなぁ!」

春香「ホントだよね!」

亜美「なんてったってラスダンだからねー。プログラマーの人とか、チョー気合い入れてグラフィック作ったんだよ、きっと!」

響「いや、それってゲームの中の話でしょ? 今自分たちがいるのは本当のゲームの世界なんだから、ゲームの世界の話をされても……」

響「……ってあれ? 亜美の言ってるのが合ってるのか? なんかよく分からなくなってきたぞ」

あずさ「でも、地下っていう割にはそれなりに明るいのねぇ。私、もっと真っ暗なのかと思っていたんだけど〜」

伊織「もしかして、この見たことない壁や地面が自発的に光っているのかしら」

律子「他に光源らしきものは見当たらないし、そうかもしれないわね。この調子なら暗闇で視界が遮られるってことはなさそう」



貴音「ここ、地下渓谷は、月に空いたとても巨大な空洞です。そこかしこに崖があり、最下層まではかなりの深さもあります」

貴音「誤って谷底へ落ちてしまわぬよう、用心して進むべきでしょう」

真美「ちなみに、いちばん下は地下12階だよー」

雪歩「そんなに深いんだ……」

美希「落ちたらきっとぺしゃんこなの」

やよい「うぅ、なるべく下を見ないようにしなきゃ……」

春香「やよい、頑張ろ!」

やよい「はいっ!」グッ

410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 18:55:36.59 ID:5Q4MvESvO

千早「地下12階……。そこで音無さんが私たちを待っているのね」

真美「そゆこと。長い長いダンジョンだから、回復アイテムとかセツヤクしていかないとだね!」

律子「真美の言う通りね。ジュピターの三人からもらったポーションやエーテルも、さっきみんなで分けたのが最後よ。大事に使っていきましょう」


アイドルたち「………」コクリ



春香「それじゃお姉ちゃん、出発しましょうか」

律子「ええ。貴音、先導お願いね?」

貴音「承知しました」




伊織「……雪歩、何してんのよ?」

雪歩「うん、ちょっと地質を確かめてるんだよ」

コツコツ

やよい「雪歩さーん、出発しますよー?」フリフリ

雪歩「あ、はーい」

タタタタ…

411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 19:10:21.45 ID:5Q4MvESvO

スタスタ…

貴音「…………む」



魔物たち「………」

ワラワラ…



真「……お、さっそくお出迎えだね」

千早「結構な数がいるみたい」

春香「やっぱり、簡単には進ませてくれないんだね」

伊織「魔物たちからすれば私たちは侵入者ってことになるもの、仕方ないわよ」

伊織「ま、私たちの相手になるかどうかは別としてね」チャキッ

響「よーしっ! 一番乗りは自分だぞっ!」ビュンッ

タタタタ…

亜美「むっ! 亜美も行くよっ!」ダッ

タタタタ…



響「とりゃーー!!」ブンッ

ドゴッ!!

…ドサッ

魔物1「」

響「こんなザコ、ナンクル砲を使うまでもないぞ! 次、かかって来るさー!」ビシッ




亜美「んっふっふ〜、亜美たちの前に立ちはだかるなんて10億万光年早いっぽいよ!」ゴゴゴ

亜美「右手にファイガ、左手にファイガ……!」ボゥッ

亜美「くらえーーっ!!」バッ

ゴオオオォォォオオッ!!

…ドサドサッ

魔物2「」

魔物3「」

亜美「……うむ、ぜっこーちょー!!」v



律子「みんな、二人に続くわよ!」

アイドルたち「はいっ!!!」

412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 19:24:28.86 ID:5Q4MvESvO

魔物4「ギギィ!」ガバッ

ガキィ!!

雪歩「っ……き、効かないですぅ!」チャキッ

雪歩「ごめんなさいっ!」ブンッ

ガコンッ!!

…ドサッ

魔物4「」

雪歩「……ふぅ」



魔物5「ウウゥウ……!」

魔物6「アアア……!」

伊織「………」チャキッ


ーーシャキィンッ! ズバシュッ!!


…ドサドサッ

魔物5「」

魔物6「」

伊織「………」スチャ

伊織「三下に用はないわ。私たちを止めたいのなら、もっと強いヤツを出しなさいっ!」



春香「……やぁぁぁぁっ!」タタタタ

春香「…………たぅあっ!?」ズルッ

ドンガラガッシャーン!!

ザクッ

魔物7「」

春香「……うぅ、いたたた……」

春香「……え、えーと、よしっ!」



魔物8「オアアアー!!」

真美「うあー! 真美んとこにきたー!」

真美(あんましMPのムダ使いはできないから、ザコ相手にホーリーとかはやめたほーがいいかな。真美の唯一の攻撃手段だけど)

真美(えーっと、そんじゃ……)

真美「……ポーキー!」バッ

…ボンッ

ブタ「フゴフゴ」

真美「……ふぃ〜、あぶないあぶない」

413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 19:39:51.86 ID:5Q4MvESvO

魔物9「ガアウ!」ブンッ

美希「……〜〜♪」ヒョイッ

魔物10「ウアウッ!」ブンッ

美希「……あは☆ 見えてるよ?」ヒョイッ

美希「ごめんね、ミキたちのジャマするなら容赦はしないの!」ギリッ

ヒュンヒュンッ!!

ドスドスッ!!

魔物9「」

魔物10「」

美希「ん〜、なんだか物足りないってカンジかな」



ヒューー…

千早「…………はっ!」

ーーザシュッ!!

…スタッ

千早「ふっ……!」ブォンッ

ズシャッ!!

…ドサドサッ

魔物11「」

魔物12「」

千早「……まだまだ出てくるわね」チラッ
 


あずさ「……コンフュ」


魔物13「ガア…ァ……?」

魔物13「ガアアアッ!!」ブンッ

ビシュッ!!

魔物14「ウ……!」

…ドサッ

魔物14「」


あずさ「本当に数が多いわね〜」

414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 19:58:19.32 ID:5Q4MvESvO

…ドガッ!! バキッ!!

ドサドサッ

魔物15「」

魔物16「」

真「……ふぅ」

真「ところで律子、ここを攻略するにあたって何か作戦はあるの?」ブンッ

ドゴォ!!

魔物17「ァ……」

ドサッ



律子「作戦? 特にこれといってないわよ?」ブンッ

ズバッ!!

…ドサッ

魔物18「」

律子「なるべくみんなで協力し合って下を目指す。何かトラブルがあったら各自臨機応変に対応ってところ……」チラッ

魔物19「……グアアッ!」ヌッ

律子「……かしらねっ!」ブンッ

ドスッ!!

魔物19「グ……!」

…ドサッ



真「そっか」

真「ま、こっちは完全にビジターだし、親衛隊の出方も分からないし、仕方ないのかな」

真「……せいっ!」ドゴォ

真「やぁっ!」バキィ

…ドサドサッ

魔物20「」

魔物21「」




亜美「……ねえ、見てよ真美。あの化け物ふたり」

真美「まるで呼吸をするように戦っているね」

亜美「りっちゃんとまこちんがラスボスじゃなくてホントよかったよねー」

真美「ねー。もしもあのふたりのどっちかがゼロムスだったら、真美が100人いても勝てる気がしないよー」

伊織「こら、亜美、真美。ぼさっとしてんじゃないの。次が来るわよ!」

亜美・真美「いえっさー!!」ビシッ



ドゴォン!! ドカァン!!

ドンガラガッシャーン!!

ギャーギャー…

415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 20:12:18.75 ID:5Q4MvESvO

貴音「……ぶりざら」

コォォ…パキィン!!

魔物22「」

貴音「………」チラッ



魔物たち「………」

ワラワラ…



貴音「はて……まるで数が減っている気がしませんね」

貴音(以前わたくしがばはむーと殿とここを訪れた時は、魔物の数もここまで多くはありませんでしたが……)

貴音(それだけ小鳥嬢も全力で来ている、ということでしょうか?)

貴音(しかし、これでは時間ばかり取られて一向に先へ進めませんね)


貴音「……律子嬢、このままでは消耗戦になってしまいます。魔物共を一挙に片付ける方法を考えねば」

律子「確かに、一体ずつ相手してたら日が暮れちゃうわね」

律子「亜美、真美、何かいい手はない?」

亜美「そりゃー魔物を一気にやっつけるっていったら……」

真美「ここはやよいっちセンパイの出番っしょ!」


やよい「うっうー!!」ピョコン


やよい「律子さん、わたしにまかせてくださいっ!!」

律子「そうか、やよいの召喚魔法なら……」

やよい「うー……!」ゴゴゴ



やよい「高木社長、おねがいしまーすっ!!」バッ


スゥーー…


416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/09/23(金) 20:22:31.39 ID:5Q4MvESvO

高木「……やあ、みんな頑張っているようだね」



律子「社長!」


高木「ここは私に任せたまえ」チャキッ


高木「…………斬鉄剣!」

ーーズパァンッ!!

…ドサドサドサッ



亜美「出たー! FF名物斬鉄剣!」

春香「あんなにたくさんいた魔物が、一瞬で……!」

伊織「社長もなかなかやるわね」

真美「でも、ゲームだとあんまり使うキカイはないんだよねー」



高木「とうとう音無君の近くまで辿り着いたのだね?」

律子「はい。ここまで来るのに時間はかかりましたが、もうあと少しです」

高木「……すまないね、君たちにばかり大変な思いをさせてしまって」

高木「私にはこれくらいしか出来ることはないが、声をかけてくれればいつでも力になるよ」

律子「ありがとうございます!」ペコリ

やよい「社長、ありがとうございましたー!!」ガルーン


高木「うむ。みんな、また元気な顔を見せてくれたまえよ!」


スゥゥーー…


417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/23(金) 20:32:16.13 ID:5Q4MvESvO

春香「……ふぅ、やっとひと段落ついたね」

千早「ええ。高槻さんのおかげよ」ニコッ

やよい「えへへっ、そんなことないですよー。社長のおかげですから!」

伊織「その社長を従えてるのがアンタなんだから、やよいはもっと胸を張っていいのよ?」

やよい「うー、そーなのかなー?」

雪歩(私、初めて見たけど、やよいちゃんに呼び出される社長ってなんかすごくシュールかも)

亜美「ねえ、これもうやよいっちって完全に社長より上だよね?」

真美「ってことは、やよいっち会長だね!」

亜美「やよいっち会長バンザーイ!!」

真美「バンザーイ!!」

律子「いや、そういう問題じゃないと思うけど」



律子「……ま、それはそれとして」

律子「みんな、進軍を再開しましょう」


アイドルたち「……はいっ!!!」


スタスタ…

418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 20:35:15.78 ID:5Q4MvESvO
諸事情で一気に投下できません
また明日投下します
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/23(金) 23:05:09.16 ID:7ZBSC/4FO
もうすぐ終わると考えたら寂しくなるな…
このSSいつくるかいつくるかワクワクしながら待ってるのが好きだったけどな
今度は]でやってほしいがそうなるとアーロンは社長か黒ちゃんしか合わないから無理だな
Wと違いラスボス「シン」以外にも隠しボスなどもいるし「ユウナレスカ」なんか合うやついないよな
]だとWより多いからそれこそ876とかミリオンとかも出さなきゃな…
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 22:21:05.04 ID:MBd2/upBO

スタスタ…

亜美「……ふぅ、ふぅ……」パタパタ

亜美「ちょびっと歩いただけなのに、なんでこんなにあついんだろ……」ダラダラ

真美「亜美、汗ふいてあげよっか? すんごいことになってるよ?」
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 22:34:44.69 ID:MBd2/upBO

亜美「うん……。でも、そーいう真美こそつゆだくってカンジだよ?」

真美「えっ、マジ?」

春香「……そういえば、なんだか気温が上がってるような気がするね」

千早「……そうね」

千早「亜美、真美。少し水分を取った方がいいと思うわ。……はい」スッ

亜美「ありがと〜千早お姉ちゃ〜ん」

真美「千早お姉ちゃんもちゃんと飲んでね?」

千早「ええ。……高槻さんもどうぞ」スッ

やよい「ありがとうございます、千早さん。でも、わたしはへっちゃらです!」

亜美「やよいっちは元気だねぇ」

律子「………」

422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 22:43:20.19 ID:MBd2/upBO

律子「みんな、平気?」

春香「私たちはなんとか大丈夫ですけど……」

真「亜美と真美が辛そうだね。あと響も」チラッ

亜美「あっぢ〜……しぬ〜……」ヨロヨロ

真美「さっきまでひんやりしててカイテキだったのに、なぜこんなことにぃ……」フラフラ

響「うぅ……ダメだー……。自分、頭がクラクラしてきたぞ……」フラフラ

伊織「なんでいきなりサウナみたいになってんのよ……。この近くに溶岩でも湧いてるわけ?」

貴音「いえ、溶岩などはなかったはずですが……」

雪歩「この暑さは異常だよね。進めば進むほどヒドくなってる気がしますぅ」

春香「そういう雪歩は平気なの? 一番暑そうな格好してると思うんだけど……」

雪歩「うん、私は特になんともないよ。アダマンアーマーが熱気も遮断してくれているみたい」

春香「ホントにすごいんだね、その鎧」





423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 22:53:57.73 ID:MBd2/upBO

美希「ん〜、あずさがひんやりしてて気持ちいーの〜♪」ピトッ

あずさ「あらあら、美希ちゃんったら〜」

律子「あ、そうか。今のあずささんは……」

あずさ「ええ。おかげさまで私はみんなのように暑さに苦しむ事はないですね〜」

あずさ「……それより律子さん。私、この先に魔物さんが待っているような気がするんです〜」

律子「魔物って……さっき社長に片付けてもらった魔物とは別にですか?」

あずさ「はい。……え〜っと……。あら、あの魔物さんたちは何ていったかしら〜」

律子「……もしかして、小鳥さんの親衛隊ですか?」

あずさ「はい、そうです。その親衛隊の方だと思いますよ〜?」

貴音「……なるほど、この異常な暑さはその魔物が原因、ということですか」

あずさ(私、なんとな〜くその魔物さんのこと知っている気がするのよね〜)

424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:08:33.88 ID:MBd2/upBO

スタスタ…

…ピタッ

律子「……広間に出たわね」



「……よう。待ってたぜ、あいどるども!」



律子「! ……出たわね!」

真「あいつは確か……こないだハミングウェイの住処で見たヤツだね」



レッドドラゴン「オレ様はコトリ様親衛隊の特攻隊長、レッドドラゴンだ!」

レッドドラゴン「さっそくでわりーが、お前らここで全員死んどくか?」メラメラ



春香「うわぁ、めちゃくちゃ燃えてるよ……」

亜美「うえぇ……あれじゃあついわけだよ〜」グッタリ

あずさ(あらあら、やっぱりそうだったのねぇ……)


律子「……私たちも黙ってやられるつもりはないわ」

律子「あなたが邪魔をするっていうなら、無理やり通らせてもらいます!」チャキッ

タタタタ…

春香「あっ、お姉ちゃん!」


律子「……はっ!」ブンッ

レッドドラゴン「うおっと!」ガキィン


響「律子、自分も手伝うぞ!」ダッ

響「くらえ、ナンクル砲っ!!」コォォ

…ドゴオオォンッ!!


レッドドラゴン「……ってーなてめえ!」

レッドドラゴン「熱線っ!!」ゴォォ


響「ふふーん、そんな攻撃よけ……」ガクッ

響「あっ……!」フラッ


あずさ「……響ちゃんっ!」ガバッ


ズドオオォォォン!!

425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:16:31.49 ID:MBd2/upBO

律子「あずささん、響!」



響「……うぅ、いたたた……」

響「ご、ごめんね、あずささん……」

あずさ「良かった……。響ちゃん、無事なのね?」ボロッ

響「あっ、あずささん、腕が……!」

あずさ「心配しないで? 私は再生できるから」ニコッ

…ニョキニョキッ

響「うげ……ホントに腕が生えてきたぞ……」



レッドドラゴン「出やがったな、ゾンビ女!」



あずさ「うふふ、またお会いしましたね〜」



千早「律子、私も戦うわ」チャキッ

春香「私も!」チャキッ

律子「……ええ」


あずさ「……待って、みんな」


律子「あずささん……?」

426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:25:36.18 ID:MBd2/upBO

あずさ「律子さん、みんなを連れて先へ進んでください」

律子「えっ、何言ってるんですか!」

あずさ「私はこの前あの魔物さんと戦ったので分かっているんですけど、さっきのあの攻撃、触れたものをみんな溶かしてしまうんです」

律子「!」

あずさ「……多分、この中であの攻撃に耐えられるのは、私しかいないと思います」

律子「で、でも……」

あずさ「お願いします、律子さん。私、みんなを危険な目に遭わせたくないんです」

律子「あずささん……」

春香「………」



『……物語を盛り上げるのは、役者の努めよ?』



春香「………」グッ


春香「行きましょう、お姉ちゃん!」

律子「春香……?」

春香「あずささんなら、きっと大丈夫です!」ニコッ

律子「………」

律子「……分かりました。その代わり絶対に無茶はしないでくださいね?」

あずさ「は〜い、任せてくださ〜い♪」

427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:32:05.25 ID:MBd2/upBO

亜美・真美「あずさお姉ちゃんっ……!」

真・響「あずささん!」

雪歩「あずささん……!」

貴音「あずさ……」

やよい「うぅ、あずささん……!」

美希「………」

千早「………」

伊織「……頼んだわよ、あずさ!」



あずさ「……ええ!」ニコッ

あずさ「………」チラッ


春香「………」コクリ


あずさ(……ありがとう、春香ちゃん)



律子「駆け抜けるわよ、みんな!」


タタタタ…

428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:38:03.68 ID:MBd2/upBO

レッドドラゴン「……獲物が一匹になっちまったか」


あずさ「あの〜、なんでみんなを行かせてくれたんですか?」

あずさ「あなたが本気を出したら、私たち、大変なことになっていたと思うんですけど〜」


レッドドラゴン「おう、まあな! オレ様にかかりゃお前らを全滅させるのは簡単だ」

レッドドラゴン「だがよ、仕方ねーんだ。これはリーダー命令だからな」

レッドドラゴン「『獲物はみんなで仲良く分けろ』ってな」


あずさ「まあ……」


レッドドラゴン「オレ様の熱線に耐えたのはあんたが初めてだからな」
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:43:33.74 ID:MBd2/upBO

レッドドラゴン「本音言うとリーダー命令なんて関係ねぇ。もう一度あんたと戦って決着をつけたかった」

レッドドラゴン「……ただそれだけだ」



あずさ「……それじゃ、私もしっかりしないといけませんね」


レッドドラゴン「本気で来いよな。オレ様も全力で行くからよ!」


レッドドラゴン「行くぜおらあああああっ!!」


あずさ「うふふ〜♪」


430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/24(土) 23:56:12.38 ID:MBd2/upBO
ー 月の地下渓谷 B2F ー


スタスタ…


律子「………」


春香「……お姉ちゃん、あずささんのこと、気になってるんですか?」

律子「………」

伊織「アンタまさか、あずさの言ったことが理解出来なかったわけじゃないわよね?」

律子「……あずささんの言う通り、あの熱線って攻撃は生身の身体にかすりでもしたら致命的なダメージになる」

律子「逆に言えば、生身の身体ではないあずささんはあのレッドドラゴンと相性がいいってこと」

律子「かなり合理的な判断だったと思うわ」

伊織「……何よ、ちゃんと分かってるじゃない」

伊織「あずさは犠牲になったんじゃない。あの場面で考えうる限りの最良の選択をしたのよ」

春香「だから、お姉ちゃんが気に病むことじゃありません」

律子「……ええ、それは分かっているんだけど……」


律子(やはり、こうなってしまったか)

律子(あの時ハミングウェイの洞窟で別れた響たちの話も総合すると、親衛隊の数は10体)

律子(それに貴音と因縁があるっていうバハムートとかいう竜も合わせて、敵は全部で11体)

律子(こちらが数で上回っているとはいえ。あの魔物たちは地球で戦った小鳥さんの四天王よりも強い)

律子(本当なら何人かずつでフォローし合いながら撃破していくのが理想だったんだけど……)

律子(でも、あずささんの判断は間違っていない。いえ、伊織の言う通り最良の判断だったと言える)

律子(……もう、信じるしかないわね)

431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/25(日) 00:07:19.85 ID:qLn1JxLyO

…ピタッ

律子「……あら? 行き止まり?」

千早「おかしいわね。ここまで分かれ道なんて無かったと思うけど……」

貴音「………」

スタスタ…


響「あ、どこ行くんだ貴音、そっちは壁しかないぞ?」


貴音「……いえ、一見なんの変哲もない壁ですが、実は不可視の通路があるのです」

貴音「確か、この辺りに……」ペタペタ

…ヌルッ

貴音「……ありました。ここの壁は通り抜けることが出来ます」

千早「壁の中に道があるのね」

響「なるほどな、隠し通路かー」

真美「お姫ちん、ダテにここに来るの二回目じゃないねぇ」 

貴音「この地下渓谷には、こういった目に見えない道が幾つか存在するようです」

貴音「わたくしも全てを把握しているわけではありませんので、亜美、真美、もし見落としがあったらふぉろーをお願いします」ペコリ

亜美・真美「りょーかい!!」

432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/25(日) 00:20:50.95 ID:qLn1JxLyO

スタスタ…

千早「……不思議な感じね。壁の中を通っているなんて」

春香「本当だねー。なんだか忍者になった気分だよ」

真「あ、そういえば伊織は使えたよね、壁抜けの術」

伊織「使えるけど、あれはダメよ。一度に抜けられる人数に限りがあるもの。……せいぜい4、5人が限度ってところね」

真「ふーん……便利なんだか不便なんだか微妙なところだね」 

亜美「まあ、FF4のパーティの最大人数はホントなら5人だから、ちかたないね」

響「そっか。自分たち、今はあずささんが抜けたけど、それでも12人パーティだもんなー。実際のゲームからするとだいぶ多いことになるのかー」

雪歩「……それも、プロデューサーのおかげだよね。本当なら物語の途中で脱落してたはずの私たちを助けてくれたんだもん」

亜美「……兄ちゃん、元気にやってるかなぁ」

やよい「だいじょーぶ、プロデューサーならきっと小鳥さんと仲良くやってるよ!」

亜美「あ、そっか。考えてみれば兄ちゃんって今、ピヨちゃんと『二人っきり』なんだね」


春香「………」ピクッ

美希「………」ピクッ

真美「………」ピクッ


真「……あれ、どうかしたの? 三人とも」


貴音「……律子嬢、少し先を急ぎましょう」

スタスタスタスタスタスタスタ…


律子「えっ……ちょ、ちょっと貴音?」

433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 00:26:28.46 ID:qLn1JxLyO
ここまでです
妙に短いレスがあるのはスマホの操作に慣れず途中で書き込みしてしまってるせいです

ちなみにFFは2〜9までしか知らないです
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/25(日) 01:04:07.57 ID:olHZQiE1O
]やろうずvita版なら場所によっては2000円あれば買えるし
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/27(火) 08:52:55.07 ID:Yq1GRc7QO
オッツオッツ、もう終わりかと思うと感慨深いな
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/02(日) 20:56:42.07 ID:aKjI7yjuO

律子「……ふぅ、ようやく壁を抜けたわね」

春香「ちょっとした広間に出たみたいですけど……」キョロキョロ

春香「先へ進む道が見当たりませんね。貴音さん、次もまた隠し通路ですか?」

貴音「はい。確か、そこの壁に……」スタスタ



貴音「!」



貴音「……はっ!」クルンッ

…スタッ

ーーズドオオオオンッ!!


春香「貴音さんっ!」

響「貴音! 大丈夫か!?」

貴音「……問題はありません」

貴音「しかし……」チラッ



ベヒーモス「……なかなかいい反応してるじゃないか。ま、今のはほんの挨拶代わりだけどね」ニヤリ

437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/02(日) 20:58:11.36 ID:aKjI7yjuO

律子「出たわね、親衛隊……!」チャキッ

律子「みんな、行くわよ!」

真「……待って」

律子「真……あんたまさか……」

真「……ここは、ボクが出る!」ザッ

律子「ダメよ! これ以上バラバラになったら……!」

真「自分でもわがまま言ってるっていうのは自覚してる」

真「でも、あいつとはこないだの決着を着けたいんだ」

真「……頼むよ、律子」

律子「真……」

伊織「……やらせてやりなさいよ。この戦闘バカには何を言っても無駄よ、きっと」

律子「………」

律子「……分かったわ。その代わり絶対に勝ちなさい、真!」

真「律子……! ありがとう!」パァァ

438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/02(日) 21:00:25.88 ID:aKjI7yjuO

律子「みんな、ここは真に任せて行きましょう!」

春香「はいっ!」

亜美「まさか亜美たちの最終兵器の出番がこんなに早いとは……」

真美「戦力ダウンは否めないケド……ちかたないね」

雪歩「ま、真ちゃんっ……!」

千早「……とはいえ、先へ進む道はあの魔物の後ろよ。どうする?」



ベヒーモス「あんたたちはこの先へ進みたいのかい?」

ベヒーモス「……ふふん、だったらアタイが『道』を作ってやろうか?」



千早「えっ?」



ベヒーモス「……そおらっ!!」ブンッ

ゴオオオォォオオッッ!!


真「! ……気を、飛ばした!?」


…ドゴオオオォォオオンッ!!



…ガラッ



春香「わわっ……あ、足場が……!?」ヨロッ

響「く、崩れるぞっ!」

雪歩「ひぃっ!」

やよい「はわわっ、こ、こわいです〜!」

伊織「やよい、私に捕まりなさい!」

千早「まさか、私たちを地面に叩きつけて殺す気なの……!?」

貴音「………」

美希「……あふぅ」

律子「みんな!」

亜美・真美「おちるううううぅぅーーーー!!」


ヒューーーー…


真「みんなーーーーッ!!」

439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:02:20.92 ID:aKjI7yjuO

真(みんな……)


ベヒーモス「……下に落ちた仲間たちが心配かい?」


真「………」


ベヒーモス「ま、この程度でやられちまうようじゃ、所詮はそこまでだったってことさ」


真「……!」グッ

真「気を飛ばすなんていつの間に覚えたんだい? この前戦った時は使ってなかったよね、確か」


ベヒーモス「あんたの真似をしてみただけさ。人間に出来てアタイに出来ないはずがないからね」


真(簡単に言うけど、素人があんなにすんなりと気を操るなんてまず無理だ)

真(……いい格闘センスを持っているんだろうな、きっと)


真「……ボクは、みんなを信じてる」

真「ボクの仲間たちは、きっと君の仲間たちを倒して小鳥さんの元へ辿り着くって」

真「だから、不安なんて何もない!」


ベヒーモス「……そうかい」

ベヒーモス(本当に一ミリの迷いも無い……いい表情だ)


ベヒーモス「……だったら、アタイも信じようじゃないか」

ベヒーモス「アタイの仲間たちはあんたの仲間たちに負けたりしないって」


真「!」

真「……へへっ!」


ベヒーモス「ふふっ……」


真「じゃあ、勝負だ。ボクの信念と君の信念、どちらの方が強いのか!」


ベヒーモス「ああ、望むところだ!」


真「はああああぁぁぁああっ!!」ゴゴゴ


ベヒーモス「うおおおおおおおっ!!」ゴゴゴ


ズドオオオオォォォオンッ!!

440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:05:50.80 ID:aKjI7yjuO
ー ミシディアの村 祈りの館 ー


翔太「ふーん、ここが祈りの館かぁ」キョロキョロ

高木「なんだか雰囲気のあるところだねぇ」

長老「微弱ながら魔力を巡らせておるでの。ここだけは魔物たちも破壊出来なかったようじゃ」

冬馬「………」

北斗(祈りの館……)

北斗(確かゲームでは、最終決戦に望むセシルたちのために仲間たちが集った場所だったはず)

北斗(そして、ゼロムスの力に屈しようとしていたセシルたちに、仲間たちは想いをパワーに換えて月にいる彼らの元に届けた)

北斗(ゲームとは違って今は俺たちしかいないけど、そんなことも言っていられないだろう)


北斗「それじゃあ、早速始めますか?」

長老「そうじゃの。少しでも強い祈りを届けられるよう、早めに始めた方が良いじゃろう」


黒井「………」



黒井(あの時……)

黒井(音無小鳥と戦ったあの時、ヤツは全力ではなかった)

黒井(もちろん私とて手の内を全て晒したわけではない)

黒井(……が、あの時の『アレ』は単なる分身。本体はもっと強大な力を持っていると思っていいだろう)

黒井(高槻やよいやその他の連中は、本当に音無小鳥に勝てるつもりでいるのか?)

黒井(……フン、叩いても叩いても雑草のように這い上がってくる連中だ。勝ち目が薄いことなど承知の上だろうな)

441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/02(日) 21:10:12.24 ID:aKjI7yjuO

黒井(『絆』とやらが信条の765プロが、仲間であった人間を倒す、か)

黒井(ゲームの世界とは、まったく不条理な世界だ)

黒井(……もちろん、私は高槻やよいなど関係なく、私自身のために音無小鳥を倒す)

黒井(しかし……私がすべき事は本当にそうなのか?)

黒井(私は、この世界で何をして来た?)

黒井(この世界で何を見て来た?)

黒井(私は……)




冬馬「なあ黒井のおっさん。これからお祈りとやらが始まるみたいだけど、あんたはどうするんだ?」

黒井「………」

冬馬「どうせおっさんはお祈りなんか興味ないだろ? 自由に行動してても構わないけど、あんまり遠くに行くなよな。迷子になられても困るからよ」

黒井「………」

黒井「お前たちの力だけで足りるとでも思っているのか?」

冬馬「え?」

黒井「王たるこの私の力無くして音無小鳥に勝てるはずがあるまい」

高木「黒井……」

黒井「いいか、決して765プロと力を合わせるのではない。あくまで力を貸してやるのだ」

冬馬「おっさん、じゃあ……」

黒井「おい、老人。やるならさっさと始めるぞ」

長老「幻獣王リヴァイアサンの力を借りられるとは、これ程心強いことはない」

長老「さ、皆、こっちじゃ」

スタスタ…



黒井(勘違いするなよ、765プロ。私はお前たちと馴れ合うつもりなどない)

黒井(今までどんなことがあろうともしぶとく生き残ってきたお前たちがこの状況をどう乗り越えてみせるのか)

黒井(ただそこに興味が湧いただけなのだ)

442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:14:48.21 ID:aKjI7yjuO

ー 月の地下中心核 ー


P「………」ソワソワ

小鳥「ズズッ……」

P「………」ソワソワ

小鳥「……ふぅ。お茶がおいしいわぁ」

P「………」ソワソワ

小鳥「………」


小鳥「プロデューサーさん、みんなのことが気になってるんですか?」

P「そりゃそうですよ。地下渓谷は最大のダンジョン。敵も強いですし」

P「みんなが負けるなんてことは思ってませんけど、痛い目にあったりしていないか心配で……」

小鳥「あのー、ここまで来て今さらだと思うんですけど……」

小鳥「今までだってみんなは辛い事をたくさん乗り越えて来たんですよね?」

小鳥「だったらあとはもう、信じるしかないと思いますよ?」

P「それは、そうですけど……」

小鳥「そんなに心配なら、見てみますか?」

P「見るって、何をです?」

小鳥「みんなの様子ですよ。みんなの姿を実際に見ればプロデューサーさんも少しは気持ちが落ち着くんじゃないですか?」

P「え? そんなこと出来るんですか?」

小鳥「うふふっ♪ 任せてくださいっ!」

小鳥「……えいっ!」バッ

パリッ…!


P「おお……! なんか壁にテレビみたいなのが現れた!」

小鳥「精神波を応用すればこのくらいわけありません!」ドヤッ

P「なんて言うか……もうなんでもアリですね」

小鳥「このくらいのハンデがあってもいいじゃないですかー! 私一人でみんなと戦うんですからー!」

P「……まあ、それもそうか」

小鳥「さてさて、それでは……」

小鳥「このリモコンをポチッとな」ポチッ


…ブゥン


P「あ、テレビが映った」


『……うぎゃあああああぁぁぁーー!!』


P「! あれは……響!?」

443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:20:39.15 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B5F ー


「…………ぅぁぁぁぁああああああーーーー!!」


クルンッ

スタッ

響「……っとと」ヨロッ

響「……ふぅ、なんとか着地成功だぞ……」

響「まさか地面を割られるなんて思ってもみなかったなー」

響「………」チラッ

響「ずいぶん下まで落とされちゃった……。もう真も魔物も見えないぞ」

響(真とあずささん、大丈夫かな。ちょっと心配だな……)

響「……ってダメダメ。自分がそんなに弱気でどうするんだ!」ブンブン

響「真もあずささんもきっと大丈夫。二人とも魔物なんかに負けないさー!」

響「……あ、そういえば他のみんなはどこへ行ったんだ?」キョロキョロ



響「おーーーい!! 貴音ぇーーー!!」

響「律子ぉーー!! 春香ぁーー!!」

響「どこにいるんだーーーー!!」



響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「うぅ……返事がない……。みんな違う場所に落ちちゃったのかなぁ……」


響(……ひとりぼっち、か)


響「……べ、別にさみしくなんかないもんねっ! 自分だって一人で戦えるってこと、魔物に教えてやるんだ!」

響「さあかかってこい、魔物ー! 完璧な自分が相手になるぞー!」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「……魔物すら出てくる気配がないぞ……」シュン


響「とりあえず、ピヨ子は一番下の階……地下12階で待ってるって言ってたっけ」

響「ここが何階なのか分からないけど、さすがにここから飛び降りるのは危険だな」

響「上に戻るわけにもいかないし、下に降りる階段を探すか」

響「もしかしたらもうみんなは下へ向かっているのかもしれないし」


響(……はぁ。さっきから自分、ひとり言ばっかりだぞ……)


トボトボ…

444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:24:12.95 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B3F ー


ズズ…



ズズズ…



ズズズズ…



…ザバァ!


雪歩「………」キョロキョロ

雪歩「ここにも誰もいない……」

雪歩「やっぱりみんな、もっと下の階に落ちちゃったのかなぁ」

雪歩(魔物さんに地面を破壊されて落ちる瞬間、私、咄嗟に横穴を掘って自分だけ逃げちゃったけど……)

雪歩(みんなを助ける余裕がなかったよ……)

雪歩「……きっと大丈夫だよね?」

雪歩「みんな、私なんかよりずっと強いもん」



雪歩「それより、これからどうしよう……」

雪歩「真ちゃんの助太刀に行くべきかな?」

雪歩「ここってたぶん、真ちゃんのいた階からそんなに離れていないと思うんだけど……」チラッ


雪歩「………」

雪歩「ううん、違う。真ちゃんはそんなこと望んでないよね」

雪歩「真ちゃんならきっと『ボクに構わず先に進んで』って言うはず」

雪歩「それに、みんなと約束したもん。どんなことがあっても中心核へ辿り着こうねって」

雪歩「ひとりは怖いけど、今はそんなこと言っていられないよ……!」

雪歩「私も、下を目指そうっ!」グッ



雪歩(……それにしても)

ザクッ ザクッ

雪歩(ここの地面って見たことない鉱石で出来てるんだよね。いったい何で出来てるんだろう?)

ザクッ ザクッ

雪歩(キラキラ輝いているから、宝石か何かなのかな?)

ザクッ ザクッ

雪歩(すっごく硬いけど、私にはククロさんに鍛えてもらったスコップがあるから大丈夫)

ザクッ ザクッ

雪歩(……なんだか掘ってるうちにテンション上がってきたかも。今ならこのまま小鳥さんのところまで掘れそうな気がするよ!)

ザクッ ザクッ



雪歩「よーし、どんどん掘っちゃいますぅ!」シャキーン

445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:25:40.99 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B4F 大部屋 ー


…ヒョコッ


亜美「むむむ……」チラッ


亜美「むむむむっ……」チラチラッ


亜美「……視界良好、敵影なし、っと」

亜美「……ふーむ」

亜美「ここに落ちてきたのはどーやら亜美ひとりっぽいね」

亜美「みんな大魔道士亜美とはぐれるなんてツイてないよねー」



亜美「っと、そーだ。今のうちに体力回復っと」ゴソゴソ

亜美「んく、んく……」

亜美「……ふぅ」

亜美(ま、こんな時のためにみんなでポーションとエーテル分けたし、なんとかなるよね?)



亜美「……さってと!」スクッ

亜美「まずはこのフロアをさくっとタンサクしちゃおっかな。なーんかいいアイテムがありそうなフインキだし」

亜美「できれば魔物に出会う前に手に入れたいね!」

亜美「あと、みんなのことも早く救出したげないとね」

亜美「特に真美は亜美がいなくてさびしがってるだろーし」

亜美「………」


亜美「よーし! 亜美、出撃だよっ!」

タタタタ…

446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/02(日) 21:29:20.05 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B4F 外部 ー


スタスタ…

真美「うーん……」

真美「やっぱ誰もいないかー」

真美「真美たちをバラバラにして戦力がダウンしたところをカッコゲキハ、というわけですな」

真美「敵さんもいろいろ考えてるねぇ」


真美「ふーむ」キョロキョロ

真美「それにしても真美、この地形なーんか見覚えがあるんだよねー」

真美「確か、この階にチョー貴重な武器があったよーな」

真美「……ん? あっちに階段がある」

スタスタ…



真美「!」



真美(やっぱそーだよ……!)

真美(階段があって、なんかミョーに広々としてて……)

真美(真美のキオクが確かなら……ここは地下ケーコクの地下4階!)

真美(てことは、ここにある武器は『アレ』だね)

真美(『アレ』が手に入れば確かに楽になる。けど、今は亜美が心配だな)

真美(亜美、さっきの戦いでじゃんじゃん魔法使ってたよね。あの調子だとすぐにMPなくなっちゃいそう)

真美(もし魔物と戦ってる最中にMPゼロになってエーテルも切れたら、ウチら魔道士にとってはチメーショーだもんね)

真美(……ん、待てよ? それならなおさら『アレ』が重要になってくるのか……)

真美(……うん。やっぱここはちょっとムリしてでも『アレ』を探すべきっぽいよ!)


真美「よーし! 真美、突撃だよっ!」

タタタタ…

447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/02(日) 21:33:06.69 ID:aKjI7yjuO
短いけどここまでです

vitaはマストソングスのために買ったんですが、今はマストソングスで手一杯で他のゲームがやれてません
鬼ムズすぎ
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/08(土) 04:03:18.12 ID:BhrJ70oBO
俺っちのは動かなくなったから修理に出すにも保険期間外で金取られるから放置してる
修理に出す余裕なんてない
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/12(水) 19:50:59.04 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


レッドドラゴン「おらあああああっ!!」


ズドドドドドドッ!!


あずさ「うふふ〜、こっちですよ〜」ヒョコッ


レッドドラゴン「ンにゃろ!!」


ドゴオオンッ!!


あずさ「は〜い、今度はこっちです〜」フリフリ


レッドドラゴン「こんのっ!!」


ドドドドドドッ!!


あずさ「ほらほら、頑張ってくださいね〜」ヒョコッ



レッドドラゴン「……はぁ、はぁ……」

レッドドラゴン「……おい、ゾンビ女! てめーやる気あんのかよ! さっきから逃げてばっかじゃねーか!」


あずさ「あらあら……」

あずさ「だって、あなたの攻撃は少しでも当たったら大変なんですもの」

あずさ「それに私、逃げないなんて一言も言ってませんよ〜?」


レッドドラゴン「それじゃ勝負になんねーだろが! てめーも攻撃して来いよ!」


あずさ「あら、よろしいんですか〜?」


レッドドラゴン「たりめーだ! 一方的なのは勝負って言わねーからな!」


あずさ「では、お言葉に甘えますね〜」ゴゴゴ


レッドドラゴン「!」

450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 19:58:23.27 ID:VsHkcvNIO

レッドドラゴン「……けっ、持ってやがるじゃねーか! こんな大層な魔力をよ!」


あずさ「……時は、来た」ゴゴゴ


レッドドラゴン「ビリビリ来やがる……! やっぱ勝負はこうじゃなきゃな!」


あずさ「赦されざる者の……」


あずさ「………」


あずさ「………」


あずさ「………」


レッドドラゴン「…………?」


あずさ「……え〜っと」


あずさ「すみません、詠唱、ど忘れしちゃいました〜」モジモジ


レッドドラゴン「ふざけんなアホぉ!!」


レッドドラゴン「てめーはオレ様を倒してコトリ様のところへ行くんだろーが! そんなんでどーすんだよ!」


あずさ「そ、そうですよね……」シュン


レッドドラゴン「……ったく、今のはてめーの決め技なんだろ? しっかり詠唱呪文思い出せよな!」


あずさ「な、なんとか頑張ってみますね〜?」


レッドドラゴン「ってわけで、戦いの続きやんぞ!」


あずさ「は〜い」


あずさ(……どうしちゃったのかしら、私。『あの時』はちゃんと使えたはずなのに)

あずさ(それに、貴音ちゃんのお家の図書室で『あれ』について書かれた本まで読んだのに……)

あずさ(『あれ』が使えないときっと勝てないわよねぇ)

あずさ(……あら? そもそも『あれ』ってなんていう名前の魔法だったかしら?)

あずさ(覚えていたはずなのに、思い出せない……)

あずさ(困ったわね〜)

451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:01:31.40 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B2F ー


真「はあああっ!」タタタ


真「せいっ!!」ドゴォ


ベヒーモス「……ふん、軽いねぇ」

ベヒーモス「うらあっ!!」ブンッ

ドガァン!!


真「うわっ!」

…スタッ



真「……ふー」コキッ


ベヒーモス「何を出し惜しみしてるんだい? そんなんじゃアタイに傷ひとつ付けられない。それはこないだの戦いで分かってもらえたと思ったがねぇ」


真「……うん、そうだね」


ベヒーモス「全力で来な! じゃないと面白くない」


真「いいの? 全力出したらきっとボクが勝っちゃうよ?」


ベヒーモス「口の減らないヤツだ。どっちが上か思い知らせてやるよ……!」ゴオオオ


真(気を……開放した!)

真(それも、無茶苦茶な量の気だ!)


ベヒーモス「うらああああっ!!」ブンッ


ゴオオオォォォ!!


真「……覇王……」バッ

真「……翔煌拳ッ!!」


ゴオオオォォォ!!


ベヒーモス「……くっ、押し返されるか!」


ドゴオオオオォォォオオンッ!!

452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:05:34.06 ID:VsHkcvNIO

ベヒーモス「ぐっ……ふふ、やるじゃないか」ニヤリ


真「気に関しては一応君よりボクの方がセンパイだからね。簡単には負けられないさ!」ニコッ


ベヒーモス「格上の余裕か。だが、いつまでその余裕が持つかねぇ?」バッ


真「!」


ベヒーモス「確か、こう……」ゴオオオ


真「えっ!? ま、まさか……!」


ベヒーモス「覇王……翔煌拳!!」


ゴオオオォォォ!!


真「う、ウソでしょ……?」


ドゴオオオオォォォオオンッ!!



真「……ぐっ……!」ヨロッ


ベヒーモス「どうだい? 自分の技を食らった感想は?」


真「……はは、いい気分ではないね」

真「驚いたよ。気を覚えたてで覇王翔煌拳を真似するなんてさ」


ベヒーモス「なに、今のはほんの余興だよ。勝負の決め手になりはしない」

ベヒーモス「最後の最後で勝敗を分けるのは……」


ベヒーモス「……圧倒的な、パワーだ……!」ゴゴゴ


真「……!」ゾクッ


真「……ごめん、君を見くびってた。ボクも全力で戦うよ」


ベヒーモス「ああ、そうした方がいい……」ゴゴゴ


ベヒーモス「あんたほどの人間を、アタイもみすみす殺したくはないからね……!」ゴゴゴ


真(うーん、ちょっと計算外……かな?)

453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:08:42.96 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


フワフワ…


伊織「……一時はどうなるかと思ったけど、助かったわ」

やよい「ありがとう、しるふちゃん!」


シルフ「私の主人にこんなところで落下死されても困りますからね〜」

シルフ「ま、落下の最中にとっさに私を喚び出したのは正解だったと思いますよ〜?」

シルフ「それでは、頑張ってくださいね〜」フリフリ

スゥゥーー…



…スタッ

伊織「やよい、ありがとね。アンタを守るつもりが逆に助けられちゃったわね」

やよい「ううん、わたしもうわー! ってなってて、なにがなんだかよくわかってなかったから」

伊織「……それにしても、ここは何階かしら」キョロキョロ

伊織「かなり下まで落ちてきたと思うんだけど……」

やよい「伊織ちゃん、ほかのみんなはどこへ行ったのかな?」

伊織「そうね。とりあえずみんなを探しましょうか」

やよい「うんっ!」

スタスタ…

454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:11:06.64 ID:VsHkcvNIO


伊織「みんなーーーー!!」

やよい「どこですかーーーーっ!!!」



伊織「……見つからないわね。他の階に落ちたのかしら」

やよい「うーん……」

伊織「とにかく、律子たちの無事を確かめないと」

やよい「………」

やよい「伊織ちゃん、見つからないならわたしたちだけでも先へ進んだほうがいいんじゃないかなーって」

伊織「やよい?」

やよい「あずささんも真さんも、わたしたちのためにまものさんとたたかってくれてるでしょ?」

やよい「それをむだにしないためにも、今は全力で進むことがたいせつだと思うんだ!」

やよい「きっと春香さんたちも小鳥さんのところへむかってるはずだよ!」

伊織「やよい……」

伊織「……ったく」ムニッ

やよい「い、いおりひゃん!?」

伊織「その様子だと、もう完全に迷いはないみたいね?」ムニムニ

やよい「うん! わらひひほいあいふまへおあひひっはっへへお……」

やよい「もー! ほっへあひいれひゃうよー!」プンスカ

伊織「にひひっ♪ これはアンタが私を心配させた罰よっ」

やよい「うー、伊織ちゃんがいじわるですー」

伊織「やっぱりやよいにはウジウジ悩んでる姿は似合わないわ」

やよい「……うん」

やよい「わたしも小鳥さんとちゃんとたたかって、みんなで元の世界にもどるってきめたんだ!」グッ

伊織「……お帰りなさい、やよい!」ニコッ

やよい「えへへっ、またせてごめんね、伊織ちゃん!」ニコッ


伊織「……さて、そうと決まればとっとと下に降りる階段を見つけましょ」

やよい「うんっ!」

455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:15:37.84 ID:VsHkcvNIO

スタスタ…

伊織「……ん、扉があるわね」

やよい「下にいくかいだんがあるといいねー」

伊織「ええ。……開けるわよ」


…ガチャ




リルマーダー「やっと来たかー! 待ちくたびれたぜ、ホントによー!」




伊織「……出たわね!」

やよい「あれってたしか、貴音さんのおともだちの家にいた……」


リルマーダー「オイラはずーっとここでお前らが来るのを待ってたんだ。楽しませてくれよな?」チャキッ


伊織「………」チャキッ

伊織「……ここは私が引き受けるわ。やよい、アンタは先へ進みなさい」

やよい「えっ?」

伊織「今のアンタなら一人でも大丈夫。だから行きなさい」

やよい「伊織ちゃん……」

やよい「うん、わかった!」


リルマーダー「せっかくの獲物を逃がすかよっ!」ダッ


伊織「……遅いっ!」ビュンッ

ガキィン!!


リルマーダー「このやろっ……!」ギリッ

456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:19:05.75 ID:VsHkcvNIO

リルマーダー「行かせないぞっ!」

ヒュンッ


やよい「はわわっ!」ピタッ


伊織「ムラサメ、やよいを護りなさい!」



…パキィン!!



やよい「伊織ちゃん、ありがとう!」

タタタタ…



伊織(……しっかりやるのよ、やよい)





リルマーダー「……ちぇっ、一人逃がしたかー」

リルマーダー「でも、お前らはコトリ様の元へ辿り着くことはできないんだぞ!」

リルマーダー「なんたって地下10階にはバハムート、地下11階にはクルーヤがいるからな!」


伊織(弱い犬ほど……ってヤツなのかしら。訊いてもいないのにベラベラしゃべってくれるわね)

伊織(ま、情報は有り難く受け取っておくけれどね)

伊織(それにしても、バハムートってのは貴音から聞いていたけど、クルーヤっていう名前は初めて聞いたわ)

伊織(そいつも私たちの敵ってことなのね)



リルマーダー「それにしてもお前、あの召喚士を先へ行かせたことを後悔すると思うぞ?」

伊織「は?」

リルマーダー「この下の地下7階はじいさんが守ってるんだ。きっとあいつ、じいさんに簡単にやられちまうだろうなー」


伊織「……聞き捨てならないわね。やよいがやられるですって? そんなことあるわけないじゃない!」

伊織「今のやよいに敵うヤツなんていないわ!」


リルマーダー「ふーん……ま、どっちでもいいけどよ」

リルマーダー「とりあえず……始めようぜ!」チャキッ


伊織「そうね。さっさと終わらせるわ!」チャキッ

457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:21:34.88 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B7F ー


テクテク…

やよい「………」


やよい「………」チラッ


魔物「グゴオォ!」


やよい「……しばさん」スッ


スゥゥーー…


シヴァ「……絶対零度」


コオオオ…パキィン!!


魔物「」


やよい「……ごめんなさい、まものさん」ペコリ



やよい(あずささんも……)

やよい(真さんも……)

やよい(伊織ちゃんも……)

やよい(あと、ほかのみなさんも……)

やよい(わたしもふくめて、みんなひとつの大きな流れの中にいる気がします)

やよい(そしてその流れのまんなかには、きっと小鳥さんがいるはずですっ)

やよい(春香さん……。わたし、春香さんのことばのいみがやっとわかりました)

やよい(その流れにさからわないで、びゅーんってまっすぐすすめばいーんですよね?)

やよい(そーすれば、ぜんぶうまくいくんですよねっ!)


やよい「よーしっ、がんばるぞー!!」

458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:24:32.94 ID:VsHkcvNIO

テクテク…

やよい「……ここが〜ぼくの〜いるべきせんじょ〜♪」

やよい「かくごのかち〜を〜きめるばしょ〜♪」



やよい「……あっ、とびらがあります!」

やよい「もしかしたら、あの先に下におりるかいだんがあるかも!」



「……あるにはある。しかし、お主がそこへ辿り着くことは叶わんじゃろう」



やよい「はわっ!?」



スゥゥーー…

ブルードラゴン「……また会ったのう、小さき召喚士よ」


やよい「あ、あなたはこないだの……」

やよい「こんにちはっ!」ガルーン


ブルードラゴン「本音はあの銀髪と戦ってみたかったが……仕方あるまい」

ブルードラゴン「じゃが、このカードはハズレじゃ。ワシにとっても、お主にとってもな」


やよい「う?」キョトン


ブルードラゴン「なに、時期に分かる」


やよい「あのっ、ここを通してもらえませんかっ!」

やよい「わたし、小鳥さんのところに行かないといけないんですっ!」


ブルードラゴン「その前に、お主に問おう」


ブルードラゴン「真の『安らぎ』とは何か?」


やよい「…………えっ?」


459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:33:02.38 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B8F 西側 ー


「……春香。春香、大丈夫?」


春香「……う〜ん……プニョデューサーしゃん……」ムニャムニャ


「春香、起きて」


春香「……そんなにたくさん入りませんよぅ……」


「……もう。春香、起きなさい!」


春香「んっ……」

春香「う〜ん……」ムクッ

春香「……は……れ?」

千早「良かった。やっと起きたのね」ホッ

春香「千早ちゃん……? ここは……」キョロキョロ

千早「私たち、魔物に足場を崩されてここまで落ちてきたのよ。あなたは落ちている途中で気を失ってしまって……」

千早「でも、なんとか着地に成功したのは幸いだったわ」

春香「ああ、そっか。そういえばそうだったね」

春香「あれ? ……もしかして、千早ちゃんが私を助けてくれたの?」

千早「………」

千早「私、春香を守るのに精一杯で、他のみんなを気にしている余裕がなくて……」

春香「……ありがとう、千早ちゃん」

春香「きっと他のみんなも大丈夫だよ!」ニコッ

千早「春香……。ええ、そうね」ニコッ

460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:36:14.08 ID:VsHkcvNIO

春香「ここ、何階くらいなんだろうね? なんだかさっきいた階とはずいぶん雰囲気が違うような……」キョロキョロ

千早「そうね。体感的には地下7、8階といったところじゃないかしら」

春香「ええぇえっ!? 私たち、そんなに下まで落ちてきたの!?」

千早「勘だけど、おそらくそんなにズレてはいないと思う」

春香「はー……。千早ちゃんがいなかったら私、どうなっちゃってたんだろ……?」

春香「千早ちゃん、ホントにありがとうっ!」ダキッ

千早「え、ええ……///」



千早「……ともかく、先へ進みましょうか」

春香「そうだね」

千早「それじゃ、行きましょう」クルッ

スタスタ…


春香「あ、待って、千早ちゃん」

千早「……どうしたの? どこか痛む?」

春香「そうじゃないんだけど……」

春香「その……手、つないでもいいかな?」

千早「えっ……」

千早「そ、そんな……こんな時にそんなことをしている場合ではないと思うわ」カァァ

春香「それはそうかもしれないけど……」

春香「でも、千早ちゃんも分かってるでしょ?」

春香「私たち、この先ずっと一緒にはいられないかもしれない。いつ親衛隊が襲ってくるかも分からないし」

千早「………」

春香「少しの間だけでいいの。ねっ? お願い」

千早「……仕方ないわね」スッ

春香「えへへっ、さっすが千早ちゃん!」ギュッ

461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:44:04.28 ID:VsHkcvNIO

スタスタ…

千早「………」

春香「綺麗な景色だなぁ……」キョロキョロ

千早「………」

春香「ねえ千早ちゃん、なんだか宝石みたいだよね?」

千早「………」

春香「……千早ちゃん?」

千早「……ねえ春香、訊きたいことがあるの」

春香「うん、なぁに?」

千早「私、春香が時々分からなくなるわ」

春香「私が? なんで?」

千早「昨日は精神的に参っていたみんなを力強く励ましたかと思えば、今日は子どもみたいに甘えてくるなんて」


…ピタッ

千早「どっちが本当の春香なの?」

春香「千早ちゃん……」

春香「えへへっ♪ どっちもありのままの私だよ?」

千早「………」

春香「えっと……まあ、昨日みたいなカッコいいのはちょっと私には似合わないかもしれないけどさ」

千早「あ……ごめんなさい、別にそういうつもりで言ったわけでは……」

春香「うん、気にしてないから平気だよ」

462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:48:14.84 ID:VsHkcvNIO

春香「……私だっていろいろ思うことはあるし、もしかしたら今は、さっき千早ちゃんが言ってたみたいにこんな風に呑気にしてる場合じゃないのかもしれないけど」

春香「でも、これだけははっきりと言えるんだ」

春香「正義よりも正しいことよりも大事なものは、今私の目の前にあるって!」

千早「その言葉って、確か……」

春香「うん。試練の山でお父さんが私にくれた言葉」

春香「考えれば考えるほどいろんな解釈ができる言葉なんだけど……」

春香「でも、なんていうか、どことなく人間味に溢れた言葉だなぁって」

春香「えへへ、私のお気に入りの言葉なんだ♪」

千早「そう……」

千早(正義よりも正しいことよりも大事なもの……)

千早(そんなものがあるとしたら、ただ単にそれはその人のわがままね)

千早(他の全てを犠牲にしてもそれが大事だなんて、とても傲慢で自分勝手な考え方だわ)

千早(一般的な道徳からはかけ離れた思考だといえる)

千早(……でも、春香の言う通りかもしれない)

千早(だって、正しいことを頭で理解していてもつい自分の欲望に走ってしまうのが人間だから)

千早(……ん? 今、春香がわがままを押し通しても手に入れたいものって……)

千早(……もしかして、私?)

千早「……///」カァァ


春香「……あれ? 赤くなってどうしたの? 千早ちゃん」

千早「なっ、なんでもないわ。ほ、ほら、先を急ぎましょう!」グイッ

スタスタ…


春香「ち、千早ちゃん、引っ張らないで〜!」ズルズル


463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:50:34.71 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B8F 東側 ー


律子「………」

律子「………」

律子「………」

律子「………」

律子「………」

律子「………………はぁ」


律子「死ぬかと思った……」フワフワ



律子「助かったわ、貴音。レビテトがなかったらどうなってたか……想像したくもないわね」

貴音「ふふっ、礼には及びませんよ」モグモグ

律子「……で、訊きたいんだけど。なんでこのタイミングでお弁当食べてるの? 私たち死にかけたのよ?」

貴音「丁度お腹が空きましたので」モグモグ

律子「だからって落下しながら食べなくてもいいでしょうに……」



ヒューーーー…



律子「あら? また誰か落ちてくるわ。貴音、レビテトを」

貴音「……待ってください。何やら様子がおかしいですね」モグモグ



ヒューーーー…



律子「……なかなか落ちてこないわね」

貴音「あれは……」

貴音「おそらく、『すろう』の魔法で極限まで落下速度を緩めているのでしょう」

律子「なるほど、頭いいわね。誰かしら」



ヒューーーー…



………………



…………



……



…フワリ



美希「……zzz」



律子「」

貴音「おや、美希でしたか。なんとも優雅な登場ですね」ニコッ

464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/12(水) 20:52:17.33 ID:9nct6ngPO
美希にクスッときたやんけ
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:53:40.25 ID:VsHkcvNIO

律子「なんでこの子はこんな時でも緊張感がないのよもー!」

律子「こら美希、起きなさい!」ユサユサ

美希「……んっ……」ムクッ

美希「……あふぅ」

美希「あ、貴音に律子…さん、おはようなの」

貴音「おはようございます、美希。よく眠れましたか?」モグモグ

美希「うん! なかなかにカイテキな空の旅だったの。あは☆」

律子「なんで落下しながら眠れるのよ……」

美希「だって、落ちてる間タイクツだったし、ちょうどいいお昼寝タイムかなって」

貴音「ふふっ、時間を有効に使うのは、まこと大切なことですね」モグモグ

律子(もうやだ、この二人……)



律子「……ねえ、いつまで食べてるのよ。早く先へ行くわよ」

貴音「そう焦っても良い結果は出ませんよ、律子嬢。まずはしっかりとえねるぎぃを補給せねば、大事な時に力を出せません」モグモグ

美希「そーだよ。それにこのお弁当、ホントにおいしーの」モグモグ

美希「律子…さんも食べる?」

律子「私は遠慮しておくわ」

美希「むー、そんなこと言わないでなのー。はい、あーん」スッ

律子「いや、だから……」

貴音「律子嬢、他人の好意は素直に受け取るものですよ?」

律子「わ、分かったわよもう……」

律子「あーん……」



…ザッ

千早「…………律子?」

春香「お姉ちゃん、こんなところでお昼ですか?」



律子「」

466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 20:58:24.34 ID:VsHkcvNIO

律子「はっ、はるふぁにひはや!?」モグモグ

春香「お、お姉ちゃん、食べながらしゃべらない方が……」

律子「ほ、ほれほはへはあいふ……ごほっ、ごほっ!」

春香「あーほら、ゆっくり飲み込んでくださいね?」サスサス

律子「ご、ごめ……」

貴音「春香と千早も食べますか?」スッ

美希「おいしーよ?」

千早「い、いえ、私は……」

春香「あはは、貴音さんも美希もマイペースだなぁ……」



律子「…………えー、ゴホン」

律子「見苦しいところを見せたわね、二人とも」

春香「いえ、気にしないでください」

千早「こんな時でも余裕がある、というのはいいことだと思うわ」

律子「そ、それについてはノーコメントで」


律子「それで、春香と千早はここへ来るまでに誰かに会った?」

千早「いえ、会ってないわね」

春香「私たち、ここまでずっと二人っきりでした!」

律子「ちなみに、私たち三人もこの階へ落とされてから誰にも会ってないわ」

律子「つまり、私たち以外のメンバーは他の階に落とされた可能性が高いわね」

467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/12(水) 21:01:22.55 ID:VsHkcvNIO

律子「……貴音、ここは地下8階でいいのよね?」

貴音「はい。この地下渓谷は、地下7階までと地下8階以降でがらりと雰囲気が変わります」

貴音「おそらく中心核が近いせいでしょう」

春香「千早ちゃんの言った通りだったね」

千早「ええ。でも、もうすでに半分以上進んだことになるのね」

美希「この調子なら、楽チンなカンジで小鳥のところまで行けるね!」

律子「いえ、おそらくそうはならないと思うわ」

律子「私たちをここまで落としたのは親衛隊のリーダー格よ? たぶん、何か狙いがあるんだと思う」

美希「狙いって?」

律子「これは、あくまで推論だけど」

律子「地下1階、地下2階とそれぞれ一体ずつ親衛隊の魔物がいたわよね?」

春香「はい。今はあずささんと真が戦ってくれてますね」

律子「親衛隊の魔物は10体。それにバハムートを加えて、敵は全部で11体」

千早「……もしかして、ひと階層ごとにそれぞれ魔物が?」

律子「その可能性が高いと思うわ」

律子「あの親衛隊のリーダーの目的は、私たちの戦力を分散させることだったんじゃないかと思うの」

律子「だから、私たちが固まって戦えないように階下へ落としてバラけさせた」

春香「じゃあ、あずささんと真以外の他のみんなも、もう親衛隊と戦っているんでしょうか?」

律子「今はまだ遭遇してない子もいるかもしれないけど、いずれ戦うことになるでしょうね」

律子「一応言っておくけど、他のみんなを助けに戻るっていう選択肢もあるわ」

律子「一対一よりは複数で当たった方が有利に戦えるでしょうし」

春香「……いえ、それでもやっぱり私たちのやることは変わりません」

春香「ただまっすぐに小鳥さんのところへ進むだけです!」

千早「ここまで来て今さら迷っても仕方がないものね」

美希「ミキも、今から戻るのはどうかと思うな。だって小鳥とハニーが待ってるんだもん!」

貴音「進みましょう、律子嬢」


律子(たとえ自分ひとりになっても先に進む覚悟はあるか……)

律子(なんて、今のこの子たちには愚問ね、きっと)


律子「……いい? 何がなんでも小鳥さんのところへ辿り着くわよ!」


四人「……はいっ!!!」


468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/12(水) 21:06:09.70 ID:VsHkcvNIO
ここまでです
亜美真美以外宝箱とか無視してますけど、仕様です
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/12(水) 21:12:58.79 ID:9nct6ngPO
小分けでゆっくり長く読めるのは嬉しい反面モヤモヤするから一気にガッと読みたいと思ってしまう

人間はワガママだね
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/15(土) 23:14:26.01 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B4F 外側 ー


真美「う〜む……」


真美「真美は今、高性能な真美レーダーによって、発見! おいしそうな宝箱 じゅるるんっ したわけなんだケド……」



魔物1「………」ウロウロ

魔物2「………」ウロウロ

魔物3「………」ウロウロ



真美「魔物が守ってるっぽいね」

真美「さすがレアアイテム、カンタンにはもらえないかぁ」

真美「ここは真美のチョー必殺技で一気に蹴散らしちゃうか……」

真美「でも、なるべくMPはオンゾンしておきたいし……」

真美「魔法を使わずに、みんなと違ってか弱い乙女の真美がいかにこのジョーキョーを突破するか」

真美「さて、どうしたもんかねぇ」

真美「………」

真美「………」

真美「………」

真美「………」

真美「手段がなくはないんだよねぇ……」

真美「なくはない……けど」

真美「気が進まないなぁ……」

真美「………」

真美「……ちかたない、レア武器、ひいてはかわいい妹のためだもん」

真美「真美、やるよ!」

真美「…………よしっ」

471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:17:36.81 ID:qM3Qz1F6O

真美「はいちゅうもーく!!」パンパン



魔物たち「!?」ビクッ



真美「ちょっとそこの宝箱の中身がほしいんだけど、いいかな?」



魔物1「ガアア!」

魔物2「グルル!」

魔物3「ゴアア!」



真美「うんうん、いい面構えだ。やはり私の目にくるいはなかったようだ」



魔物1「ガアアアッ!」ガバッ


真美「……とか言ってたらきたー!」


真美「こっちだよっ!」ダッ

タタタタ…


魔物2「グルルルッ!」ブンッ


真美「……おっと!」ヒョイッ


真美「たあああ!」タタタタ


魔物3「ゴアアアッ!」ブンッ


真美「なんのっ!」ヒョイッ


真美「……奪取!」

ガパッ


真美「おー、あったあった」スッ

真美「じゃじゃーん! 真美はレア武器を手に入れた!」

472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/15(土) 23:20:48.86 ID:qM3Qz1F6O

真美「さて……」チラッ



魔物1「ガアア……!」

魔物2「グルル……!」

魔物3「ゴアア……!」



真美(囲まれちゃった……)


真美「だがしかし、真美にはとっておきの切り札があるんだもんね!」

真美(ホンキで使いたくない切り札がね)


真美「くらえーー!!」






















真美「うえ〜〜ん! 魔物がいぢめるよ〜〜!」グスン



魔物たち「!!?」


473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:23:21.18 ID:qM3Qz1F6O
真美「うわぁ〜ん! 真美、まだなんも悪いことしてないのに〜!」チラッ



魔物たち「……!」オロオロ



真美「ぐすっ……魔物なんかひびきんのカドに頭ぶつけてゴーヤになっちゃえばいいんだぁ〜!」ソロ〜リ



魔物たち「………」ズーン



真美「そんでゴーヤチャンプルーとしておいしくいただかれちゃえばいいんだぁ〜!」ソロ〜リ



魔物たち「………」ズズズーン



真美「………」


真美「ってわけで、バイバイキーン!」

タタタタ…





真美「……ふぅ、ここまで来ればもうへーきかな」

真美「あーはずかしかった……///」

真美「誰が見てるわけでもないけど、何回やってもなれないね、『うそなき』は」

真美(もう使わないよーにしとこ。このままじゃ真美のMPじゃなくてSP(羞恥ポイント)がカラになっちゃうYo……)


真美「お待ちかねのレア武器も手に入ったことだし、先へ進むよ!」


真美「とつげきぃ〜!」

タタタタ…


474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:28:41.10 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B5F ー


響「えーっと……」キョロキョロ


響「ダメだ、この部屋にも下り階段はないみたいだ」

響「まだまだ他にたくさん部屋はあったし、地道に探すしかないかー」


…カチッ


響「…………ん? なんか踏んだ?」


ビーーッ!! ビーーッ!!


響「うぇっ!?」ビクッ

響「な、なになにこの音? なんなのさいったい!?」キョロキョロ



「……うふふっ、ようこそいらっしゃいました!」



響「えっ?」クルッ



プリンプリンセス「お会いできて光栄ですわ、あいどるさん!」


響「な……なんだこのなんともいえない物体は」


プリンプリンセス「まあ、ご挨拶ですわね」

プリンプリンセス「私はプリンプリンセス。コトリ様の親衛隊の一員にございます」


響「あ、そうだったんだ」


プリンプリンセス「残念ですが、貴女の足止めをさせて頂きますわっ!」


響(うーん……なんか迫力ないなぁ)

475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:30:53.95 ID:qM3Qz1F6O

プリンプリンセス「もしかして私を見くびっていらっしゃるのかしら? もしそうだとしたら考えを改めた方がよろしくてよ?」


響「あ、うん」

響(どう見ても強そうに見えないぞ。もしかしてハズレか?)



響「ま、自分もヒマってわけじゃないし、ジャマするっていうなら……」

ビュンッ…


プリンプリンセス「は、速い!」


響「悪いけど、速攻で終わらせるぞ」


プリンプリンセス「い、いつの間に背後に!?」


響「……っせい!!」ブンッ


…ポヨンッ


プリンプリンセス「あら? 今、何かしましたか?」


響「えっ、真直伝の正拳突きが効かない……!?」


プリンプリンセス「うふふっ、私に物理攻撃は効かなくてよ?」


…スタッ

響「……なるほど、ただのキモい物体ってわけじゃないんだな」


プリンプリンセス「見たところ貴女は魔道士ではないようですわね。さあ、どうするおつもりですの?」


響「確かに自分は魔法なんか使えない。でも残念だったな、プリ江」


プリンプリンセス「ぷ、プリ江!?」


響「自分、つい昨日すごい技を覚えたばっかりなんだぞ!」

響「さ、覚悟はいいか?」キュイィィン


プリンプリンセス「手が、光って……?」


響「くらえっ、ナンクル砲っ!!」バッ


…ドゴオオオオォォォオオンッ!!


476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:34:19.69 ID:qM3Qz1F6O

プリンプリンセス「な……なんですの、その身も蓋もない技は……」フラッ

プリンプリンセス「無念……ですわ……!」


…ドサッ



響「なーんだ、やっぱり見た目通り弱かったなー」

響「いや、もしかして自分が強くなりすぎたのかもな! なんたって自分、完璧だからな!」

響「よーし、この調子で親衛隊をどんどんやっつけるぞー!」



…カチッ



響「あっ、またなんか踏んだ」


ビーーッ!! ビーーッ!!


響「! また警報みたいな音だ!」

響「いったいどこで鳴ってるんだ……?」キョロキョロ



プリンプリンセスたち「うふふふふふ……」

ワラワラ…



響「………………えっ」



プリンプリンセスたち「さあ、私たちと一緒に踊りましょう!!!」



響「なんかたくさんいるけど……もしかしてこれ、自分ひとりで全部倒すのか?」


477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:38:07.87 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B3F ー


ザクッ ザクッ

雪歩「……ふぅ」

雪歩「ククロさんに鍛えてもらったスコップでもけっこうしんどいなぁ」

雪歩「やっぱりここの地層は相当硬いんだね」

雪歩「でも、頑張らなきゃ!」グッ

ザクッ ザクッ



「……おーーい!!」



雪歩「ふぇっ!?」ビクッ



「ダメじゃないか、こんなところに穴なんて掘ったら」

…グイッ



雪歩「ひゃうっ!?」


…ドサッ



魔人兵「まったく……。こんな穴なんて掘ったら危ないだろう?」


雪歩(ま、魔物さんに引っ張り上げられちゃいましたぁ……)


魔人兵「君はどこの所属の兵器だい?」


雪歩「えっ……」

雪歩(へ、兵器……?)


魔人兵「今はあいどるたちが攻めて来てるからみんなピリピリしているんだ。こんな穴なんて空けたら他の魔物が落ちてしまうかもしれないだろう?」


雪歩「あの、えっと……」


雪歩(……あ、そっか。私、今はこんな格好してるから、きっと魔物さんと間違えられちゃったんだね)

雪歩(このまま何も言わなければ、戦わないで済みそう……かな)

478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:41:09.54 ID:qM3Qz1F6O

魔人兵「さ、君も早く持ち場へ戻って」


雪歩「………」

雪歩(…………違う)


魔人兵「おや、どうしたんだ?」


雪歩「……そんなの、ダメですぅ」


魔人兵「え? 何がダメなんだい?」


雪歩「みんなが戦ってるのに、私だけ逃げるのは……イヤですぅっ!」チャキッ


魔人兵「……まさか、君……」


雪歩「こ、こここここを、通してくださいませんか?」ビクビク


魔人兵「……驚いた。君みたいなあいどるもいたんだね」

魔人兵「なんだか親近感の湧く姿なんだけど、仕方ない」

…ガコンッ!

魔人兵「……敵なら、排除させてもらうよ」


雪歩「ひぅっ!」


魔人兵「……発射!」

ビュイイイインッ!!


雪歩「ひぃぃーー!!」


ドゴオオオオンッ!!


479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:44:15.23 ID:qM3Qz1F6O

魔人兵「……さて、ビームじゃ大したダメージにはならないと思うけど」

魔人兵「どうかな……」



モクモク…



雪歩「……うぅ……」



魔人兵「……おや?」


雪歩「す、すみません、全然効かないですぅ」


魔人兵「……無傷、か。相当いい装甲を付けているみたいだね」

魔人兵「だが、オレの武器はビーム砲だけじゃない。君のその堅牢な守りを崩していみせようじゃないか」

ウィーン…ガシャン!


雪歩「っ……!」チャキッ


魔人兵(……武器を構えた? 随分頼りなさそうな武器だけど、いったいどんな武器なんだろう)

魔人兵「……発射!」

チュドドドドッ!!


ヒューー…

ドドドドドドッ!!


480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:45:58.49 ID:qM3Qz1F6O

魔人兵「よし、今度こそダメージがあっただろう」



モクモク…



魔人兵「……って、いない……?」キョロキョロ



ズズ…


…ザバァッ!


魔人兵「!」

魔人兵(いつの間に地中に……!)


雪歩「えいっ!」ブンッ

ガキィン!!


雪歩「うう……か、硬い……!」


魔人兵「なんだ、ただ殴打するだけの原始的な武器か。そんな武器じゃオレに傷一つ付けられないよ?」

魔人兵「……それっ!」ブンッ

ドゴォ!!


雪歩「あぅ……!」ヨロッ


雪歩「……い、痛くないですぅ!」ザッ


魔人兵「ふむ……」


魔人兵(この子……)


雪歩(この魔物さん……)


雪歩・魔人兵(とにかく硬い……!)



魔人兵「どうやらこの戦いは、どちらが相手の装甲を破ることができるかの争いになりそうだね」


雪歩「ま……負けませんですぅっ!」グッ



481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:50:26.59 ID:qM3Qz1F6O
ー 月の地下渓谷 B4F 内部 ー


亜美「……ふーむ、扉がいっぱいあるね」

亜美「でも、確かこの階にアイテムがあるのはこの辺りじゃなかった気がするんだよねー」

亜美「もっと奥の方かな?」

スタスタ…



亜美「…………うん?」ピタッ

亜美「なんだろアレ。いっこだけメッチャゴージャスに飾りつけられた扉がある……」

タタタタ…



亜美「えっと……『あいどる御一行様歓迎! 宴会場はこちら。ご馳走あります』って書いてあるね」

亜美「……明らかにおかしいっしょコレ。亜美たちがカンゲイされてるワケないじゃん」

亜美「ゼッタイ魔物だよね、これ書いたの。あからさまなワナすぎるよ」

亜美「いくら亜美だってこんな子どもだましには引っかかんないんだかんねっ」

亜美「さーて、レアアイテムレアアイテムっと……」

スタスタ…




…ピタ

亜美(…………んでも、宴会ってぱーちーだよね)

亜美(ごちそーってことは、おいしい料理とかお菓子とか出てくるのかなぁ)

亜美(お菓子かぁ……)

亜美(よく考えたら亜美たち、この世界に来てからずっとお菓子食べてないよね)

亜美「………」

亜美「………」

亜美「………」

亜美「………………ゴクリ」

亜美「ちょっとだけ、チラッと中をのぞくだけならヘーキかな?」

482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:53:57.63 ID:qM3Qz1F6O

天使亜美『なに言ってんのさー。さっき自分でワナって言ってたじゃん! みすみす自分からワナにはまりに行くとかあり得ないっしょ!』

悪魔亜美『いやいや〜、先っちょだけならだいじょーぶかもよ? サッと行ってお菓子だけ取ってくればいーじゃん』

天使亜美『だーかーらー、ワナなんだからお菓子なんかあるワケないっしょ?』

悪魔亜美『……ホントだったらどーすんの?』

天使亜美『えっ……』

悪魔亜美『お菓子、ホントにあったらどーする? 可能性はゼロじゃないよね?』

天使亜美『し、しかしですな……』

悪魔亜美『せっかくのチャンスをのがすのですかな? 甘ーいお菓子、食べたくないの?』

天使亜美『……ゴクリ』

悪魔亜美『さあさあ』

天使亜美『………』

悪魔亜美『殿、ご決断を!』

天使亜美『…………ええい、お菓子に罪はない! 皆の者、出陣じゃあ!』

悪魔亜美『んっふっふ〜♪ お主、分かっておるのう!』



亜美「………」

亜美(……今、全亜美会議で可決されちゃったね)

亜美「いざ行かん! 甘ーいお菓子を求めて!」


…ガチャ


483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:57:17.81 ID:qM3Qz1F6O


金竜「…………馬鹿め、掛かりおったな!」



亜美「うあうあー! やっぱりワナだったー!」


金竜「食らえい!」

ビュンッ!!


亜美「おわあっ!?」ダッ


銀竜「破っ!」

ビュンッ!!

ドガッ!!


亜美「ぎゃんっ!」


ドサッ



銀竜「……本当にこの様な罠に掛かるとは、あいどるとは意外と阿呆なのだな」


亜美「うぅ……ヒドいよ! ひきょーものー!」


金竜「戦いとは常に非情なものである!」

銀竜「いや、兄者よ。先刻の戦いで騙された仕返しをしただけではないのか?」

金竜「こ、こら銀竜、その事をバラすでないっ!」アセアセ


亜美「あー、金ぴょん、あのことまだ根にもってたんだねー」


銀竜「兄者は単純だからな。すぐに騙されてしまうのだ」

金竜「ともかく、これで借りは返したぞ」


亜美「うん、わかったー」


金竜「……それでは、ここからは本物の宴を始めるとするか」ゴゴゴ


亜美「!」


銀竜「こんな幼子相手に二人がかりとは気が引けるが、お前の実力は既に知ってる」

銀竜「手加減はせぬぞっ!」ゴゴゴ 

484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/15(土) 23:59:37.32 ID:qM3Qz1F6O

亜美「……ふーん、そっか」ザッ

亜美「金ぴょんも銀ぴょんも、そんなに亜美にやられたいんだねー……」

亜美「いいよ、やろっか」

亜美「コーカイさせてあげるよ、亜美にケンカ売ったコト!」バッ


金竜「あいどる、滅してくれる!」ボゥ

金竜「稲妻よ!」

ズガガピシャァァン!!


亜美「うわっ!」ヒョイッ


銀竜「ふんっ!」

ビュンッ!!

バシィン!!

亜美「ぐえっ!」ヨロッ



銀竜「……どうした、あいどるよ」

金竜「貴様の力、見せてみよ!」



亜美「……ちかたないなぁ」ザッ

亜美「右手にファイガ……」ボッ

亜美「左手にファイガ……」ボッ


銀竜「……来たな!」

金竜「その技は既に対策済みだ! 行くぞ銀竜!」

銀竜「応!」

スゥゥーー…


金竜「例え魔法を複数放とうと、距離を取れば直線軌道の魔法など避けることは容易い!」


亜美「……誰が直線軌道なんて言ったのさ?」ニヤリ


金竜「えっ」


亜美「 合 体 !!」

ボウッ!!


亜美「メッされるのは金ぴょんたちの方だよ!」

亜美「……鳳凰の羽ばたきひとつでねっ!」


銀竜「な、なんだこれは……!? 炎が鳥の形を成しているだと……!?」



亜美「くらえぃ! 鳳翼天翔ーーーーッ!!」



ゴオオオオォォオオッ!!


485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:11:58.04 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


スタスタ…

美希「ねえ、ミキ考えたんだけど」

律子「何を?」

美希「律子…さん、さっき『ひと階層ごとに魔物がいる』って言ったよね?」

律子「ええ。だからきっとこの階にも魔物がいると思うわ」

美希「ここが地下8階でしょ? だから、あと9、10、11……小鳥のところに着くまでに4体の魔物を倒せばいいってことだよね?」

律子「そうだけど、それがどうかしたの?」

美希「残りの魔物が4体でミキたちは5人いるから、ひとりずつ魔物の相手をしていけば、誰かひとりは小鳥のところまで行けるの!」

春香「確かに……美希の言う通りだね」

千早「それに、時間効率を考えるといい方法にも思えるわね」

貴音「………」

律子「本音を言えば、小鳥さんと戦うのはみんな揃ってからにしたい。でも、今の状況じゃそうも言っていられないかもしれないわね」



「……きほーんてきにはいっぽんぎーだけっど♪」

「ときとばあいでうっつっりーぎなっの
♪」



…ピタッ

律子「…………歌?」

春香「ねえ、今聴こえた歌って……」

美希「うん。『わたしはアイドル』なの」

律子「ってことは、他にもこの階に落ちてきた子がいるのかしら」

貴音「いえ、そうではないと思います」

千早「今の、ウチの誰とも違う声だったわ」

春香「じゃあ、いったい誰が歌ってるんだろう?」

美希「そんなの、魔物しかいないの」

律子「そりゃ、私たちじゃなかったら魔物でしょうけど」

律子「でも、なんで魔物がウチの歌を?」

貴音「小鳥嬢が教えた以外に考えられませんね」

貴音「何故彼女が魔物に歌を教えたのか、その理由は定かではありませんが」

律子「何か意図があるのかしら」

美希「小鳥、プロデューサーになりたかったのかな?」

律子「うーん……」

千早「………」

春香「……千早ちゃん、どうかしたの?」

千早「……もしかしたら私、さっきの歌声の主を知っているかもしれない」

春香「えっ?」

千早「行きましょうみんな。行けば分かるわ、きっと」

律子「……そうね。議論するよりも実際に見た方が早そう」

貴音「この地下8階からは最下層までほぼ一本道です。迷うこともないでしょう」

スタスタ…


486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:20:09.63 ID:YvXj+c6MO

月の女神「きっとわーたしがいちばんっ♪ でもあなーたーもそこそこかもっ♪」

月の女神「でもわったーしーとくーらべーるからっ♪ ちょっとぶ、がわーるいのよー♪」


千早(……やっぱりあの子だったのね)

春香「本当に魔物が歌ってる! しかも上手!」

律子「確かに、そこらへんの素人よりかは上手いかもね」

美希「でも、ミキたちの方がもっとかわいく歌えるよ?」

貴音「その前に、あいどるであるわたくしたちと魔物とを比べるのがそもそもの間違いだと思いますが」


月の女神「……待ってたよ、あいどるの人たち!」ニコッ


春香「わぁ……! なんか、魔物って思えないくらい可愛いなぁ」

律子「確かに、パッと見は魔物には見えないわね」

美希「ううん、そんなことないの。ミキたちの方がゼッタイかわいいの!」

貴音「あの、ですから魔物と張り合うのはどうかと……」

千早「………」


月の女神「一生懸命れっすんしたつもりなんだけど、やっぱり本物のあいどるの評価は厳しいなぁ……」


律子「一応訊いておくわ。ここを通してもらえないかしら?」


月の女神「えっとね、あなたは通っていいよ? あとリボンの人も。きっとおじさんが待ってると思うし」


律子「えっ、いいの? ダメもとで言っただけなのに」

春香「あの子、意外に平和主義なんでしょうかね?」

律子「こないだの戦いを見る限り、そうは思えないけど……」

律子「っていうかおじさんって誰?」

春香「さあ……?」


月の女神「あ、そうだ。そこの銀髪の人は、たぶん先生の相手の人だよね? だから早く行ってあげて?」


貴音「………」

貴音(先生、とはもしや……)


月の女神「そうだなぁ、私の相手は……」

月の女神「うん、やっぱりあなただね!」スッ


千早「………」

千早「……みんな、後で必ず追いつくわ」チャキッ

春香「千早ちゃんっ……!」

美希「千早さん……。千早さんなら、大丈夫だよね?」

千早「ええ、もちろんよ」



月の女神「へぇ、
自信たっぷりだねー。あれから腕を上げたのかな?」



千早「それは、あなた自身で確かめてみたら?」

487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:22:51.87 ID:YvXj+c6MO

律子「千早……」

貴音「千早、何があるか分かりません。用心してください」

千早「はい」

美希「ミキたち、先に行って待ってるの。遅刻しちゃダメだよ?」

千早「ええ」

春香「千早ちゃん……」

春香「私、千早ちゃんのことが大好きだよっ!!」

千早「ええ、ありが……えっ?」

貴音「なんと……」

美希「いきなりの告白なの」

律子「春香、そういうフラグっぽいことをこのタイミングで言わないのっ!」

春香「あっ……そ、そういうつもりじゃなかったんですけど……」

春香「でも、なんだか今言わなきゃいけないような気がして」

千早「……///」カァァ

美希「……あーあ、さっきまでキリッとしててカッコいい千早さんだったのに、春香のせいでふにゃふにゃの千早さんになっちゃったの」

春香「ご、ごめんね千早ちゃん」

千早「あ、あの、私は別に気にしてないから……じゃなくて、とても気にしてて春香の気持ちはすごく嬉しい……でもなくて……」

千早(ああ……ダメ……。頬が緩む……///)



月の女神「私、知ってるよ。そういうふうに女の子同士でイチャイチャするのって『ゆり』っていうんだよね?」

月の女神「えへへ、コトリ様から教えてもらったんだー!」



貴音「……だ、そうですが」

律子「あの人は……魔物にまで余計な情報を……!」ゴゴゴ

律子「とにかく千早、ここは任せたわ」

千早「え、ええ」

律子「みんな、行くわよ! ほら、春香も!」グイッ

春香「千早ちゃ〜ん! 離れててもずっと大好きだよ〜〜!!」ズルズル

律子「うるさいっ!」ビシッ




月の女神「……あなた、とっても愛されてるんだね?」



千早「そ……そうね」


488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:27:19.62 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B9Fへの階段 ー


ザッ ザッ

春香「……えーっと、次が地下9階段でしたっけ?」

貴音「ええ。この地下渓谷も残すは四分の一ですね」

春香「そっか、もうそんなに来たんですね。……早いなぁ」

美希「四分の一……かぁ」

春香「美希? どうかしたの?」

美希「あは☆ 早く小鳥に会いたいのー!」

律子「呑気ねぇ……。その前に親衛隊をおそらくあと三体は倒さなきゃいけないのよ?」

貴音「………」

美希「……分かってるの。でも、もう終わっちゃうんだね」

春香「美希……」

春香「……よしっ。みんな、気合い入れて行こうっ!」グッ

律子「それはいいけど春香、あんまりはしゃぐと転ぶわよ?」

春香「えへへっ♪ 大丈夫ですよ!」

春香「こう見えて私、この世界へ来てからまだ83回しか転んでないんですよっ?」

律子「えっと……それってすごいの?」

美希「いまいちピンとこないの」

貴音「わたくしたちがこの世界へ来て二ヶ月ほど経ったと仮定すると、だいたい一日一回強……ですか」

貴音「あまり変わり映えのない数字に思えますが」

春香「うぅ……元の世界よりも一日平均0.2回くらい少ないのに……。みんなヒドい……」

春香「と、とにかく頑張るぞー!」ズルッ

春香「ってうあーーーー!!」ゴロゴロ


…どんがらがっしゃーん!!


律子「……あーあ、言わんこっちゃない」

貴音「注意を受けて即転ぶとは、最早職人の領域ですね」

律子「あの子の体幹ってどうなってるのかしら。ホント謎だわ」

美希「……ねえ、それより貴音?」

貴音「どうしました、美希」

美希「次の階ってあんなに真っ暗なの?」スッ

貴音「真っ暗……?」チラッ

貴音「……ふむ、確かに真っ暗ですね」

貴音「以前は暗闇に包まれた階などなかったはずですが……」

律子「……嫌な予感がするわ。春香を追いかけましょう」

ザッ ザッ

489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:32:34.51 ID:YvXj+c6MO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


律子「何よこれ……? 本当に何も見えないじゃない!」キョロキョロ

美希「夜みたいに真っ暗だねー……。今までは普通に明るかったのに、なんで?」

貴音「親衛隊、とやらの仕業でしょうか」

律子「春香ーー!! どこーー!!」



「…………こ、ここにいますよ〜」



律子「っていっても、こう真っ暗じゃ全然位置が分からないわね」

律子「声を頼りにそっちへ向かうから、そこを動かないのよー?」



「わ、わかりました〜……」



スタスタ…





律子「……ふぅ、とりあえず無事で良かったわ」

春香「うぅ……面目ないです……」シュン

貴音「春香、どこか怪我は無いですか?」

春香「あ、ありがとうございます。でも平気ですっ」

律子「焦る気持ちも分かるけど、あなたはもう少し落ち着きなさい」

春香「はい……。足元には十分注意してるつもりだったんですけど、何かにつまづいちゃって」

律子「何かって、さっきの階段に何かが落ちてたの?」

春香「直接見てないから分かりませんけど、石か何かだと思います」

美希「それってもしかして、コレ?」スッ

春香「えーっと……ごめん美希。真っ暗でなんにも見えないや」

美希「あ、そっか」

美希「これ……ミキ、今石ころを持ってるんだけどね? 春香が転んだあとに落ちてたの」

律子「じゃあ、春香はそれにつまづいたのね」

律子「でも美希、なんで石ころなんか持ってきたのよ?」

美希「うん。見たことない石ころだったから持ってきたんだよ?」

美希「真っ黒でキレイで、アクセとかにしたらイイカンジかもって」

貴音「………」

貴音「……何やらその石からは面妖なえねるぎぃを感じます」

美希「え? そうなの?」

律子「貴音がそう言うなら、何か重要なアイテムだったりするのかしら」

貴音「わたくしでは判断出来ませんが、真美か亜美に見せれば何か分かるかもしれません」

美希「そっか。じゃあ、大事に持っていくことにするね?」ゴソゴソ

律子「春香のおかげで思わぬ収穫があったわね」

春香「うーん……素直に喜べないなぁ……」

490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:37:57.07 ID:YvXj+c6MO

春香「……それにしても、本当にどこを見ても真っ暗ですねー」キョロキョロ

律子「困ったわね、まさかこんな罠を仕掛けてくるなんて……。これじゃ親衛隊がどこにいるか分からないわ」

貴音「ふぁいあを灯り代わりに進みますか?」

律子「うーん、でも、いくらファイアとはいえずっと出しっぱなしじゃかなり魔力を消費しちゃうでしょ? なるべく万全の状態で戦いに臨まないと」

律子「特に貴音、あなたの相手は相当強いんでしょう?」

貴音「……はい」

美希「ねえ、とりあえず進もうよ」

春香「進むっていっても、前どころか自分の足すら見えないのに、どうやって?」

美希「んー……カン、かな?」

スタスタ…


律子「あっ、ちょっと美希、一人で勝手に……」


美希「大丈夫なの。みんなミキの声について来て!」スタスタ


春香「やっぱりすごいなぁ、美希は。こんな場面でも相変わらずっていうか」

貴音「美希の勘ならば信頼出来ます。ここは言う通りにした方が良いのでは?」

律子「……仕方ない、十分気をつけて進みましょう」

スタスタ…

491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:41:29.49 ID:YvXj+c6MO

美希「えーっと……」じーっ

美希「……こっち!」

スタスタ…



美希(……あと四分の一……)

美希(ホントに、もうすぐ終わっちゃうんだね)

美希(ミキ的には、みんなと過ごせてとっても楽しかったの。なんだか夢みたいで……)

美希(こんなステキな夢なら、まだ覚めなくてもいいかな、なんて……)



春香「……待って、美希」


美希「……春香? どうしたの? コワくなっちゃった?」

春香「うん、正直怖いけど……でもそうじゃなくって」

春香「手、つないで行こう? そうすればみんな離ればなれにならなくてすむでしょう?」

美希「あ……」

春香「……ね?」

492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:44:28.86 ID:YvXj+c6MO

美希「………」

美希(春香は……)

春香「美希? どうしたの?」

美希(春香は、いつもミキの欲しい言葉をくれる)

春香「おーい、美希ってばー」

美希(いつもミキのしてほしいことをしてくれる)

美希「……うん、聞こえてるの。しょうがないから、つないであげてもいいよ?」

春香「えへへ、ありがとう、美希!」

美希「えっと、春香はここらへんにいるのかなー?」スッ

…ムニュッ

春香「ひゃあっ!? ちょ、ちょっと美希、どこ触ってるのよーう!!」モジモジ

美希「あは☆ ワザとなの」

春香「ワザとなの!?」



美希(……大好きだよ、春香。こちらこそいつもありがとうなの)



律子「……まったく、魔物がいつ襲ってくるかも分からない状況でよく騒げるわね、二人とも」

貴音「ふふっ、それもまた心強いことです」

春香「いや、今のは美希がヘンなとこ触るのがいけないんですよぅ……」



春香「……コホン。それじゃ、気をとりなおして……」


春香「……美希」スッ

美希「はいなの」ギュッ

美希「……貴音」スッ

貴音「ええ、ここに」ギュッ

貴音「……律子嬢」スッ

律子「はいはい」ギュッ

春香「……みんなちゃーんと手をつなぎましたね? それじゃ、改めて出発しましょう!」

493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:48:12.78 ID:YvXj+c6MO

スタスタ…

春香「……なんか、こうしてみんなで手をつないでると、小学校とか幼稚園に戻った気がしますね!」

律子「もう、恥ずかしいからそういうことは言わないの」

貴音「しかし、互いの姿が見えぬ暗闇の中でも、こうしていれば不安な気持ちなど何処かへ行ってしまいます」

貴音「流石は春香ですね」ニコッ

春香「そ、そんなことないですよぅ」

美希「……ううん、貴音の言う通りなの」

美希「この手の温かさが、みんながここにいるんだってちゃーんと教えてくれるから」

春香「美希……」

春香「人の温もりって、偉大だよね……」


美希「……また、みんなで会えるよね?」

美希「みんなバラバラになっちゃったけど、また笑って会えるよね?」

春香「……うん、もちろんだよ!」ニコッ

美希「……えへへっ」ニコッ



ヒュゥゥ…



律子(……ん?)

貴音(風……?)



ヒュゥゥゥ…



貴音(……いえ、これは……)

美希(何かがミキたちの方に向かってきてる……!)

494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:51:27.35 ID:YvXj+c6MO

美希「……シェルっ!」バッ

ポワ…

春香「えっ、な、何?」

律子「何か来るわ! みんな、衝撃に備えて!」



…ビュオオオオッ!!



春香「わああっ!?」ヨロッ

律子「春香っ!」

貴音「……ぶりざが」バッ


コオオォ…シャキィィンッ!!




貴音「………」

貴音「……逃げられてしまいましたか」

美希「でも貴音、惜しかったの」

律子「やっぱりこの暗闇でも私たちの位置は向こうに筒抜けなのね」

春香「そ、そうですね」

春香(魔物の攻撃だったんだね。全然分からなかったよ……)

春香(この三人、レベル高いよぉ……)



律子「この真っ暗闇の中、姿の見えない敵を相手に戦えっていうの……?」

美希「律子…さん、ここはミキがやるの」

律子「美希、でも……」

美希「さっきの子が言ってたよね。貴音も春香も律子…さんも、この先に待ってる相手がいるんでしょ?」

美希「だったら、ここはミキがやるしかないって思うな」

春香「美希……」

貴音「………」

495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 00:53:20.62 ID:ZZKuEnVgO
こうなるとやっぱクルーヤは律子が相手して春香が…
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/16(日) 00:55:05.85 ID:YvXj+c6MO


…ビュオオオオッ!!



美希「! ……次の攻撃が来るの!」

美希「ミキが少しの間だけ辺りを照らすから、みんな走って!」

律子「分かったわ。……美希、気をつけて!」

美希「あはっ☆ ミキ、ホンキ出したらすごいんだよ?」

律子「……ええ、そうね!」ニコッ

貴音「美希、この階の魔物はおそらく魔道士です。魔力を吸い取る『あすぴる』という魔法には注意してください」

美希「魔力を吸い取る……? そういう魔法もあるんだね。わかった、気をつけるの」

春香「美希!」ギュッ

美希「春香、ありがとうなの。ミキ、春香にたくさん元気もらえたの!」

美希「春香のおかげで、ミキ、ガンバれるの!」ゴゴゴ



美希「……それじゃみんな、行くよ!」



美希「……ホーリー!!」バッ


キラキラキラ…


春香「……まぶしいっ!」

春香(……なんて言ってる場合じゃないよね! お姉ちゃんも貴音さんも視力はそんなに良くなかったはず)

春香(ここは私が道を見極めなきゃ!)

春香「えっと……」キョロキョロ


春香「…………見えた!」

春香「お姉ちゃん、貴音さん、こっちですっ!」

タタタタ…



美希「みんな……また後で会おうね……!」

497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 00:59:50.38 ID:YvXj+c6MO
ここまでです
次も早く来れたら…いいな
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 03:40:07.65 ID:loP07ALkO
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/16(日) 05:22:47.59 ID:OoE/Sz7wO
おつ
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/28(金) 19:54:51.71 ID:lU/e7KMhO

美希「………」



美希「………………さて、と」


美希「ねえ、そこにいるんでしょ?」



「………」



美希「ミキが相手になるの。だからもうエンリョしなくてもいーよ?」



「………」



美希「……もー、ムシしちゃヤなの。人の話を聞かないのはイケナイんだよ? 律子が言ってたもん」



「……君は、怖くないの?」



美希「……あは☆ やっとしゃべってくれたの」

美希「あのね? ミキ、今すっごい震えてるんだよ? 真っ暗だからわからないかもしれないけど」



「その言葉は信じられないな」

「君はこの暗闇の中でもただ一人行動に迷いが無かった。とても暗闇に怯えているようには見えない」



美希「……えっとね、ミキがコワいのは真っ暗だからじゃないよ?」

美希「ミキが本当にコワいと思ってるのはーー」

501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 19:57:35.61 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B9F 階段 ー


ザッ ザッ

春香「……とうとう三人になっちゃいましたね」

律子「そうね。でも、ここまで来たらあとはもうとにかく突っ走るしかないわ」

貴音「ええ。……皆の為にも」

春香「そうですね!」グッ


貴音「……それより春香、気づいていましたか?」

春香「へっ? 何をですか?」

貴音「先ほどの美希の手、僅かに震えていました」

春香「………」

律子「美希の手が?」 

貴音「はい、四人で手を繋いだ時の事です。真っ暗でしたので表情までは分かりませんでしたが」

律子「うーん……でも、あの子に限って今さら怖気づいたってことはないでしょう?」

貴音「ええ、先ほどの美希の行動を鑑みるに、それはあり得ないと思います。戦いを恐れている者があの様に積極的に動けるとは思えません」

律子「じゃあ、美希はいったい何に怯えてるっていうの?」

春香「………」

502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:00:29.00 ID:lU/e7KMhO

春香「……美希が怖いと思っているのは、みんなに会えなくなる事なんじゃないかって思います」

律子「えっ?」

春香「このゲームが終わって元の世界へ帰ったら、私たちには忙しい日々が待ってますよね?」

春香「そうなるとまたみんなすれ違いの生活が始まって、今みたいに全員が一度に揃う事は難しくなってくる……」

春香「もしかしたら美希は、それを不安に思ったんじゃないかなって」

貴音「……なるほど、この世界での楽しかった記憶が美希の心に迷いを生じさせていると?」

春香「はい……」

春香「でもその気持ちは、私も少なからず持ってます」

春香「もしかしたら他のみんなも……貴音さんやお姉ちゃんもそういう風に思ったことがあるんじゃないですか?」

貴音「………」

律子「………」



律子「……でも、だからっていつまでも元の世界に帰らないわけにはいかないわ。あの子だってそれは分かっているはずよ?」


『……ミキ、春香にたくさん元気もらえたの!』


春香「………」

春香「……きっと大丈夫だと思います、美希なら」

春香「あの子は多分もう、自分で答えを見つけているから」

貴音「………」

律子「………」



律子「……ま、例え美希が駄々をこねたとしても首に縄付けてでも連れ帰るけどね」ニコッ

春香「あ、あはは……」

貴音「ふふっ、美希の膨れた顔が目に浮かぶようです」ニコッ

律子「……さて、進みましょう。早いところ最下層で化け物退治しないといけないし」

春香「お、お姉ちゃん……そんなこと言ったら小鳥さん、泣いちゃいますよ?」


スタスタ…



503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:03:56.36 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


美希(夢の世界はいつだってミキに優しいけど、いつまでも夢の中にばっかりいられないの)

美希(現実に戻ったらまたみんなとなかなか会えなくなっちゃうかもしれないけど、それでもみんなで目指したい、叶えたい夢があるから)


美希(だから、ミキはーー)



美希「……ゴメンなさいなの」

美希「ミキ、あなたのこと、倒すね?」



「……やっぱり思った通りだ」

「君はボクの一番嫌いなタイプ。才能に恵まれていて、大抵の事は苦労せずに出来てしまう」

「だからなんでも出来る自分に自信を持っているし、限られた事しか出来ない自分以外をどこか見下している」

「それは君の言動や行動によく顕れているよ」



美希「えー? ミキ、そんなにヤな子じゃないよ?」



「……教えてあげる。君という天才でも太刀打ちできないものがあるってことを」ゴゴゴ



美希「君じゃなくてミキなの」



「……えっ」



美希「ミキの名前は星井美希。ちゃーんと覚えてね?」



「ミキ……か。ボクは暗黒魔道士。名前の通り、暗闇でその真価を発揮する」

暗黒魔道士「ミキ。光の射さないこの闇の中で、君は満足に戦えるかい?」



美希「……わかんない。けど、ミキ、ガンバるの」

美希「みんなとの約束だから!」ゴゴゴ


504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:09:14.64 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


…ビュンッ!!

ガキィン!!

リルマーダー「……っとお!」

リルマーダー「へへ、軽いぜっ!」ブンッ

伊織「ちっ……!」ダッ


…スタッ

伊織「………」チャキッ



リルマーダー「オイラはリルマーダー。泣く子も黙るゴブリン族の王だ! 誰もオイラに勝てやしねえ!」


伊織「王……? アンタが?」


リルマーダー「なあなあ、お前はなんて名前なんだ? せっかくだから殺す前に名前くらい覚えておいてやるよ!」


伊織「……ふん、アンタなんかに名乗る名前はないわ」

伊織「だって……」ユラ…

…ビュンッ!


リルマーダー「!」


伊織「アンタはすぐにこの私にやられる事になるものねっ」チャキッ

リルマーダー(……こいつ、一瞬で距離を詰めて来やがった!)

伊織「はあっ!」ブンッ

ザシュッ!!

リルマーダー「ぐっ……!」ヨロッ

伊織「……ふっ!」ブンッ

リルマーダー「うおっと!」ヒョイッ

伊織「!」

伊織(二撃目は躱された……。まあまあやるようね)


伊織「なら、これはどうかしら?」ボゥッ


伊織「……火遁っ!!」バッ

ゴオオオオォォォオオ!!


リルマーダー「そんなのオイラにゃ効かねえぜっ!!」タタタ


リルマーダー「そりゃっ!!」ブンッ


伊織「!」


ザシュッ!!


伊織「……ち……!」ザッ

505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:12:43.30 ID:lU/e7KMhO

リルマーダー「お前、人間にしてはなかなかやるじゃねーか。オイラに傷をつけるなんてよ」

リルマーダー「けど、お前の攻撃は速さはあるみたいだけどパワーが足りないぞ? 一撃が軽いぜっ!」


伊織「………」

伊織「……そう。だったら受け止めてみなさい」スチャ


リルマーダー(刀を収めた……? 何をするつもりだ?)


伊織「………」ジリッ


リルマーダー(さっきみたいに忍術を使うつもりか?)


リルマーダー「……ま、いいや。来ないんだったらこっちから行ってやるっ!」ダッ


伊織「っ!」ピクッ


リルマーダー「食らえー!! サンダ……」


リルマーダー「……がふっ!?」ヨロッ


リルマーダー「ぐっ……な、なんで……? 今、何をしたんだ……?」


伊織「別に、普通に刀を振っただけよ?」


リルマーダー「ウソつけ! 今、お前動いてなかっただろ!」ビシッ


伊織「……ああ、アンタには見えてなかったのね。私の太刀が」

伊織「にひひっ♪ ちょっと速すぎちゃったかしら?」


リルマーダー(こいつ……!)


伊織「アンタを見てると、なぜかイラッとするのよね」


リルマーダー「………」

リルマーダー「……そうかよ。だったら……」



リルマーダー「全力で殺してやるよ、王の力でな……!」ゴゴゴ



伊織「………」チャキッ


506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:16:11.07 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B7F ー


ブルードラゴン「……さあ、答えを述べよ、小さき召喚士よ」ブォンッ


ブオオッ…!


やよい「はわわっ!」ダッ

ゴロン


ドゴオオンッ!!


やよい「わわ……じめんにあながあいちゃってますー!」


ブルードラゴン「……ふんっ!」ブォンッ


ドガアッ!!


やよい「あぅ……!」ヨロッ

やよい「っ……いふりとさんっ!」バッ


イフリート「……ぬおおおおっ!! 地獄の火炎んんうううっ!!」


ゴオオオオォォォオオ!!


ブルードラゴン「……炎などワシには効かぬ」


やよい「……らむさんっ!」バッ


ラムウ「……裁きの雷!」


ズガガガガドゴオオオオンッ!!


ブルードラゴン「……無駄じゃ、召喚士よ。お前の攻撃はワシには通じぬ」

ブルードラゴン「ふぬっ!」ブンッ


バキィッ!!


やよい「うあっ……!」

…ドサッ

やよい「……うぅ……いたいです……」ヨロッ

507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:19:35.33 ID:lU/e7KMhO

ブルードラゴン「そうじゃ。生に痛みはつきもの。生きている限り様々な苦しみに耐えなければならない」

ブルードラゴン「生きる苦しみ全てから開放するのは……」



ブルードラゴン「……………死、だ」



やよい「!」


ブルードラゴン「痛み、悩み、悲しみ、苦しみ……。あらゆる苦痛からの開放とは、即ち死ぬことなのじゃ」

ブルードラゴン「そう、真の安らぎとは、『死』」

ブルードラゴン「召喚士よ。お前はワシに安らぎをもたらす者か?」


やよい「あぅ……あ、あの、それってつまり……」


ブルードラゴン「……むんっ」ブンッ


やよい「! ……しばさんっ!」バッ


シヴァ「……永久氷壁」


コオオォ……シャキーーンッ!!


バキッ!!


ブルードラゴン「氷の壁……ワシに攻撃が通じないと知って召喚獣を防御に使ったか」

ブルードラゴン「おもしろき娘じゃ」



ブルードラゴン「既に理解したと思うが、ワシの身体は属性を跳ね除ける」

ブルードラゴン「そのような呪われた身体ゆえ、ワシは長く生きすぎた。家族も友も、全てを失ってなお、苦痛にさらされ続けておる」

ブルードラゴン「もう、疲れたのじゃ」

ブルードラゴン「……さあ、お前の手でワシを永遠の眠りへ就かせておくれ」


やよい「そ、そんなっ……!」


ブルードラゴン「……それが出来ぬと言うのならば、お前に用は無い」

ブルードラゴン「ワシがお前に永遠の安らぎを与えてやろう」ゴゴゴ


やよい「うぅ……」


やよい(ころすのも死んじゃうのもいやです……)

やよい(みんなでもとの世界にかえるって、やくそくしたもんっ)

やよい(でも、あのどらごんさんはころしてほしいって……)

やよい(……ど、どうしよう……!)

やよい(…………)

508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:26:49.46 ID:lU/e7KMhO

ブルードラゴン「ワシを殺すか、それともワシに殺されるか。お前の選択肢は二つに一つじゃ」

ブルー「……いや、お前の召喚魔法がワシに通じぬ限り、お前に死を逃れる術は無い」


やよい「………」

やよい「……っ!」グッ


やよい「うー……!」ゴゴゴ


ブルードラゴン「無駄と知っても抗うか……」

ブルードラゴン「悲しきことじゃ」ブンッ



やよい(火もかみなりもだめなら……)



やよい「うっうーーーー!!」バッ



…ガシッ!!



ブルードラゴン「……ぬ?」



冬馬「……高槻をいじめる奴は、俺が許さねぇ……!」ゴゴゴ



ブルードラゴン「!」



冬馬「くらいやがれ! 超究武神破斬ッッ!!」

ドゴゴゴゴゴゴッ!!



北斗「……例によって今回もただ殴ってるだけだな」

翔太「あれ? 冬馬君ってドラクエ派じゃなかったっけ?」

509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:29:56.27 ID:lU/e7KMhO

冬馬「見たか化け物! 俺たちがついてる限り高槻は無敵だぜっ!」ビシッ


北斗「やよいちゃん、回復してあげるよ。……ケアルダ!」

シャララーン! キラキラキラ…!


やよい「ありがとうございますっ!」



ブルードラゴン「……ぬぅ……無属性の召喚魔法か……。今のは効いたわ……」

ブルードラゴン「生に対する執着、これも生きものの性か……」


やよい「……あのっ!」

やよい「わたし、ころすのも死んじゃうのもりょうほういやですっ!」

やよい「それに、死んだら楽になるっていう考え方もなんかちがうと思います!」


ブルードラゴン「……お前は知らぬのだ。何も出来ずに家族が死んでゆくのを見届ける辛さを。傷つき倒れた仲間に何もしてやれぬ無力さを」

ブルードラゴン「……自分だけが生き残る、虚しさを」


やよい「えっと……」

やよい「それは、どらごんさんの言うとおりだと思います」

やよい「わたしの家族はまだまだ元気だし、仲間……みなさんもすごくやさしいですし……」



やよい「……でも!」

やよい「安らぎが死ぬことっていうのは、なんかちがうと思いますっ!」

やよい「安らぎって、もっともっと身近にあるものなんじゃないかなーって!」


ブルードラゴン「……ならば示してみせよ。お前の言う安らぎを……!」ゴゴゴ


やよい「はいっ、がんばりますっ!!」グッ


510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:39:27.72 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


…キィン!! ガキィン!!

バキッ!! ドガッ!!

ブワッ…



…スタッ

千早「………」


月の女神「……へぇ、さっきの言葉はウソじゃなかったんだね?」

月の女神「あなた、こないだ戦った時よりいい動きしてるよ!」


千早(確かに、身体が軽い……)

千早(不思議ね、何をしたっていうわけではないのに)

千早(私、いつもよりもリラックスしてる……)

千早(別れ際の春香の告白騒動があったからかしら)

千早(……春香には感謝しなきゃいけないわね)



千早「私は、みんなとの約束を果たさなければならない」

千早「……あなたを倒して、先へ進ませてもらうわ」チャキッ


月の女神「……じゃあ、私は……」



月の女神「教えてもらうよ。あいどるってなんなのかを!」チャキッ



千早「!」

511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:41:45.44 ID:lU/e7KMhO

月の女神「……はあっ!」ダッ


ガキィン!!


千早「くっ……!」ググッ

千早(相変わらずの腕力ね……。今にも押し返されそう)

千早(それに……)


月の女神「はっ!」タンッ

クルンッ

月の女神「……えいっ!」ブンッ


ザシュッ!!


千早「うっ……!」ヨロッ


月の女神「やっ!」ブンッ


キィンッ!!


千早「く……!」ギリッ


千早(なんて軽やかな動き……。まるで踊るような……)



月の女神「私は、あいどるになりたい」

月の女神「あいどるはキラキラ輝いていてとても楽しいものだって、コトリ様に教えてもらったから」

月の女神「……だから、あなたを倒して私があいどるになるッ!!」


千早「………」

千早(これも音無さんの作戦か何かなのかしら)

千早(魔物がアイドルになりたいだなんて……)

千早(……ううん、多分、人間も魔物も関係ない)

千早(何かに対して憧れる気持ちは、きっとみんなが持っているもの)

千早(でも、だからってこの子に付き合う必要はない。私には果たさなければならない約束があるのだから)


千早「悪いけど、あなたの願望には興味はない。無理やりにでも道を開けてもらうわ!」チャキッ


月の女神「えへっ、たくさん遊ぼう!!」チャキッ


512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:47:36.19 ID:lU/e7KMhO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


春香「……これは……!」ゾクッ


ビリッ…


春香(空気が震えてる……)

春香(この階全体にまんべんなく張り巡らされた殺気……)

春香(まるで、私たちを誘ってるみたい……)


春香「お姉ちゃん……」

律子「ええ……ものすごいわね、これは」

律子「さっきの階とは真逆ね。完全に私たちを挑発してるわ」

律子「……いえ、私たちじゃなくて……」チラッ

律子「この闘気の主は、貴音、あなたを待っているのね」

貴音「………」



春香「貴音さん……」

貴音「……覚悟は出来ております」

貴音「ですから、どうかわたくしの事は心配なさらずに」

春香「………」

春香「……それでも」ギュッ

貴音「春香……?」

春香「貴音さんがどんな想いで戦うのか、私には想像もつきません」

春香「だから、せめて……」

春香「私のパワーを貴音さんに分けてあげます。使ってくださいっ!」ギュッ

貴音「………」

春香「………」

貴音「………」

春香「………」

貴音「………」

貴音「……あの」

春香「あ、えっと、私……」

513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:50:40.54 ID:lU/e7KMhO

春香「こうして手を握れば、少しでも力を分けてあげられるかなー、なんて……」

春香「あ、あはは……。こんなの、気休めにもなりませんよね……」シュン

貴音「……いえ、ありがとうございます」

貴音「春香、あなたのぱわぁ、確かに貰い受けました」ニコッ

春香「貴音さん!」パァァ

律子「……そういう事なら、私のパワーもあなたに分けてあげなきゃね」ギュッ

貴音「律子嬢……」

律子「この殺気、ここまで出会ったどの魔物よりも確実に格上だわ」

律子「こんな時になんて言葉をかけたらいいのか分からないけど……」

律子「貴音、自分を信じて。あなたならきっと……」

貴音「………」



貴音「わたくしは本当に幸せ者です。こうして一生懸命わたくしの事を想ってくれる友がいるのですから」ニコッ



春香「貴音さん……!」

律子「……しっかりね、貴音!」



「…………よくぞここまで辿り着いた」



三人「!!」

514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:53:19.47 ID:lU/e7KMhO

…ザッ

ダークバハムート「光の戦士……いや、あいどるたちよ」



律子「あれが、バハムート……」

春香「貴音さんのお友達で……」

貴音「幻獣神……幻獣たちの頂点に立たれるお方です……!」



ダークバハムート「………」ゴゴゴ



貴音「律子嬢、春香、二人は先へ」

貴音「宜しいですね? ばはむーと殿」



ダークバハムート「無論だ。そこの二人にはこの先で試練が待っている」

ダークバハムート「行くがよい、娘たちよ」



春香「貴音さん……」

貴音「もう言葉は要りません。……さ、早く」

春香「……はいっ」コクリ

タタタタ…



…ピタッ

春香「あの、バハムートさん!」



ダークバハムート「……なんだ、娘よ」



春香「貴音さんのこと、よろしくお願いしますっ!」ペコリ

タタタタ…



ダークバハムート「ククッ……!」


515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 20:59:21.68 ID:lU/e7KMhO

ダークバハムート「さて……漸く二人きりになる事ができたな、タカネよ」

ダークバハムート「会いたかったぞ……!」


貴音「ばはむーと殿……」

貴音(わたくしもずっとお会いしとうございました)

貴音(……ですが、同時にお会いするのが怖くもありました)


貴音「……お久しぶりでございます」ペコリ


ダークバハムート「うむ。お前が変わらず健在で安心したぞ」


貴音「ありがとうございます」

貴音「ばはむーと殿は……」


貴音(……黒き闘気を纏った体躯、おぞましい程鋭く伸びた爪や牙、闇夜の如き漆黒の翼……)

貴音(あの頃の光に満ち溢れた眼差しはもうありません)

貴音(……ばはむーと殿は、大きく変わられてしまったようです)


ダークバハムート「……そう怯えるな。久々の再会なのだ、もっと嬉しそうな顔を見せよ」


貴音「っ……そう、ですね」

貴音「あの、ばはむーと殿」


ダークバハムート「……なんだ?」


貴音「もう、戻られるおつもりはないのですか?」


ダークバハムート「……要領の得ぬ問いだな。それは、我の住処へ、か?」

ダークバハムート「それとも、光に、か?」


貴音「……その両方です」


ダークバハムート「タカネ。まさかお前程の者が理解出来ぬ訳ではなかろう?」

ダークバハムート「『こう』なってしまっては、我の力を以ってしてももはや以前の身体には戻れぬ」

ダークバハムート「それに、単なる眷族の為にわざわざ住処へ戻ってやる義理もない」

ダークバハムート「答えは両方とも否だ」


貴音「………」

貴音(やはり、取り返しのつかないところまで来ていたのですね)

貴音(……戦うしか道は無いのでしょう)

516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/28(金) 21:02:09.27 ID:lU/e7KMhO

ダークバハムート「それよりも、我の言いつけ通り青き星から光の戦士たちを連れて来たようだな」

ダークバハムート「よくやった。褒めてつかわす」


貴音「……何故、ですか?」


ダークバハムート「む? ……何故、とはどういう事だ?」


貴音「闇へ堕ちたご自分がいずれ光の戦士に倒されると分かっていて、何故わたくしを褒めてくださるのですか?」

貴音「わたくしには、ばはむーと殿の真意は測りかねます」


ダークバハムート「……随分と自信があるようだな。この我を倒すのはあくまで前提、という事か」


貴音「! ……す、すみません、過ぎた事を……」


ダークバハムート「ククッ……良い。それ程の気概が無ければ我を倒してコトリの元へは行けぬ」

ダークバハムート「……否。お前をコトリの元へなど行かせぬ」ゴゴゴ


貴音「!」

貴音(なんと、おぞましい闘気……!)


ダークバハムート「お前は……永久に我のものになるのだ……!」

ゴオオオオッ!!


貴音(……戻ることなどできない)

貴音(散々後悔し、迷いもしましたが……)


貴音「わたくしは引きません、ばはむーと殿」スッ

貴音「貴方を倒し、その先の光を手に入れますっ……!」ゴゴゴ


ダークバハムート「……見せてみよ、お前の力!」


517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/28(金) 23:43:09.78 ID:Vq+5ACzLO
久々の寝落ちか?
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:00:22.66 ID:kgLR5JNJO
ー 月の地下渓谷 B11F ー


スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



春香「……誰もいませんね」

律子「……そうね」

519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:02:26.90 ID:kgLR5JNJO

スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



春香「……何も、起こりませんね」

律子「……そうね」

520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:04:11.75 ID:kgLR5JNJO

スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



スタスタ…

春香「………」

律子「………」



…ピタッ

春香「………………」



春香「……………………おかしい!」


521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:13:49.15 ID:kgLR5JNJO

春香「絶対におかしいですよこれ! 進んでも進んでもずーーっと同じ景色だし、魔物なんてぜーんぜん出てこないし……」

春香「お姉ちゃん、私たちもしかして騙されてるんじゃないですか?」

律子「……あら、春香にしては察しがいいわね」

律子「貴音がいないから断言出来ないけれど、ここまで進んでも下り階段が見つからないのは、きっと罠なんでしょうね」

春香「や、やっぱり!」

春香「ど、どうしましょうお姉ちゃん!」

律子「うーん……さっきから考えてはいるんだけど、結局こういう場合って魔物を見つけないと進めないってパターンだと思うのよ」

春香「じゃあ、まずはこの階を守ってる魔物を探さないといけないんですね」

律子「ええ。でも……」チラッ

春香「……もう、結構進んできましたよね、私たち」

律子「そうね。ここまで進んでも何も無いとなると、このまま先へ進むべきか、いったん戻るべきか……」




「…………おおーーい!!」




春香「……えっ?」クルッ

律子「! あれは……」

522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:22:56.99 ID:kgLR5JNJO

タタタタ…


P「……はぁっ、はぁっ……!」

P「……よ、良かった、やっと知ってるやつに会えた……」


春香「プロデューサーさん!?」

律子「プロデューサー殿!」

春香「なんでここにプロデューサーさんが? 小鳥さんと一緒じゃなかったんですか?」

P「いやあ、中心核までの道で小鳥さんとはぐれてしまってな」

P「はは……面目ない」ポリポリ

春香「えっ、じゃあもしかして私たちが来るまでずっと迷ってたんですか?」

P「ああ。なぜかこの階には下へ降りる階段が見つからないんだよ。魔物の罠かもしれないんだ」

律子「丁度私たちもこれはきっと罠だ、って話をしていたところです」

P「そうだったのか」



P「それで、今は二人だけか? 他のみんなはどうしたんだ?」

春香「みんなは、親衛隊の魔物と戦ってくれています。だから私たちも早く先へ進まないと」

P「そうか……そうだな」

律子「ところで、プロデューサーはなんで私たちの後ろから現れたんです?」

律子「私たちが来るよりももっと前からこの階にいたんですよね?」

春香「あ……言われてみれば、私たち誰ともすれ違ってないのにおかしいですね」

春香「貴音さんの話だと、この階は一本道らしいですし……」
 
P「それは……」

523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:26:33.21 ID:kgLR5JNJO

P「うーん、口で説明するよりも実際に見た方が早いかもな」

P「春香、すまないがちょっとこの先へひとっ走り行ってきてくれないか?」

春香「先へ……ですか?」

P「うん。ずっとまっすぐ進んでくれればいいんだ」

春香「えっと……はい、分かりました」

春香「じゃあ、行ってきます!」

タタタタ…



律子「……なるほど、プロデューサーが何をやろうとしているのかがなんとなく分かりました」

P「そうか。流石は律子だな」

律子「また面倒くさそうな罠ですね」

P「俺ひとりじゃどうしていいか分からなくてな。二人が来てくれて助かったよ」

律子「ちなみに、この階を守っている魔物に心当たりは?」

P「すまん、分からないんだ」

律子「……ま、仕方ないですね」



タタタタ…



律子「……あ、来ましたね」

P「ああ」

524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:29:40.32 ID:kgLR5JNJO

春香「……はぁ、はぁっ……!」

春香「……あれっ? なんでここにプロデューサーさんとお姉ちゃんが……?」

P「俺たちはさっきからここを動いていない。春香は元の場所に戻ってきたんだよ」

春香「えっ? でも私、プロデューサーさんに言われた通りずーっとまっすぐ走ったつもりなんですけど……」

律子「春香、多分これはループする罠よ」

春香「ループ?」

律子「何らかの方法で空間が捻じ曲げられて、入り口と出口が繋がってしまっている」

律子「先へ進んだつもりでも、元の場所へ戻ってきてしまうようになっているんじゃないかしら」

春香「なるほど……だから今までも進んでも進んでもずっと同じ景色だったんですね!」

春香「でも、どうしましょう? これじゃ小鳥さんのところまで行けませんよ」

P「魔物を見つけさえすればなんとかなると思うんだけどなぁ……」

律子「………」

P「……仕方ない、どうすればいいか知恵を出し合おう」

春香「そうですね。三人で考えればきっと何か方法が見つかるはずです!」

P「……というわけで、律子、頼んだぞ」

律子「はい?」

春香「お姉ちゃんが頼りなんです!」ギュッ

律子「二人揃って丸投げとか、文殊の知恵はどこへ行ったんですか……」

律子「……まったく、仕方ないわねぇ」

525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:33:38.17 ID:kgLR5JNJO

律子「じゃあ、二人のお望み通り私の考えを話すけどいいかしら?」

P「もちろん!」

春香「もう何か思いついたんですか? さっすがお姉ちゃん!」

律子「まあ、考えって言っても魔物がどこにいるかについての考察だけなんだけどね」

P「充分だよ。いやあ、律子は頼りになるなあ!」

春香「それで、魔物はどこにいるんですか?」

律子「その前に……」

律子「春香、今までの会話で何か気づかない?」

春香「えっ? 何がです?」

律子「私たち三人のここまでの会話の中に、明らかにおかしい点があったわ」

春香「えっと……」

春香「……す、すみません、全然わかんないです……」

律子「あなたって結構鈍感なのねぇ。私は真っ先に気づいたっていうのに」

春香「もう、焦らさないでくださいよぅ!」

P「そうだぞ、律子。事態は一刻を争うんだ」

律子「……分かりました。じゃあ言いますけど……」





律子「……あなた、プロデューサーじゃありませんよね?」




P「えっ……?」
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:38:31.44 ID:kgLR5JNJO

春香「プロデューサーさんが、プロデューサーさんじゃない……?」

春香「ど、どういう事なんですか?」

律子「そのままの意味よ。そこにいる人はプロデューサーじゃない別の誰かってこと」

律子「もっと言うと、この階を守っている魔物じゃないかと思っているわ」

春香「ええっ!?」

春香「で、でも、どこからどう見てもプロデューサーさんだと思うんですけど……」チラッ

P「律子、今は冗談言ってる場合じゃないんだ。お前も分かっているだろ?」

律子「……ふーん、あくまでシラを切るつもりですか」

P「そもそも、何を根拠に俺を魔物だなんて言うんだよ?」

律子「根拠……根拠ねぇ……」

律子「もちろんあります。あなたがプロデューサーじゃないっていう根拠は」

律子「でないとこんなこと言い出したりしませんって」

P「………」

春香「……あの、お姉ちゃん。本物のプロデューサーさんじゃない根拠って何なんですか?」

律子「ええ、今から説明するわ」

律子「あなたがプロデューサーではないのではと思ったのは、会話の中に三つの違和感を感じたからです」

P「………」

527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:41:03.68 ID:kgLR5JNJO

律子「まず一つ目。あなたは小鳥さんとはぐれたって言ってましたけど、じゃあなんで小鳥さんは迎えに来ないんですか?」

P「それは……」

P「分からない。小鳥さんにも何か事情があったんじゃないか?」

律子「苦しい言い訳ですね。この地下渓谷は小鳥さんの庭のようなものらしいじゃないですか。それなのにあなたを迎えに来れない事情ってどんな事情なんでしょう?」

P「それが分からないからここにいるんじゃないか」

P「律子、お前はいつから仲間を疑ったりするようになったんだ?」

律子「………」

春香「あ、あの、二人ともケンカはダメですよ?」

律子「……ま、いいです。じゃあ二つ目の違和感」

律子「あなたは私たちよりも先にこの階の罠について知っていたみたいですけど、それはどうやって知ったんですか?」

P「? それは重要なことなのか?」

律子「重要です」

律子「この階の罠は、さっき判明した通り『無限ループの罠』です」

律子「でも、それって一人で気づけることですか?」

春香「どういうことですか?」

律子「私たちはさっき春香を使った実験でこの階の罠を知った」

律子「そして、その実験を提案したのはこの人。つまり、この人は私たちが来る前からこの階の罠を知っていたことになるわ」

春香「はい、そうなりますね」

P「………」

律子「でも、じゃあこの人はどうやって罠の内容に気づいたの?」

律子「さっきの実験みたいに先へ進む人とその場に留まる人に別れれば無限ループだと気づけるけど、果たして一人の時にその事実に気づくことができるかしら?」

春香「……確かに、一人だとさっきみたいな実験は出来ないし……」

P「そんなの簡単だよ。石か何かで壁に印を付けて、しばらく進んで同じ印が見つかれば無限ループしているってことだ。これくらいは誰でも思いつくことだと思うぞ?」

春香「あっ、なるほど」

律子「……ふむ」

528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:54:26.22 ID:kgLR5JNJO

律子「……じゃあ、三つ目の違和感です」

律子「今までの二つの違和感は、あなたが本物のプロデューサーではないのでは? という疑念を私に抱かせるにすぎない、言わば取っ掛かりのようなもの」

律子「証拠と言うには不十分です」

律子「……が、三つ目の違和感は、それだけであなたが別人であるという証拠になり得る確定的なものです」

P「………」

春香「……!」ゴクリ

律子「……プロデューサー殿、あなたは……」




律子「いつから小鳥さんのことを下の名前で呼ぶようになったんですか?」




P「えっ……?」

春香「あっ……」

春香「そうですよ! 確かにプロデューサーさんはいつも『音無さん』って呼んでます!」

春香「『小鳥さん』って名前で呼んでるのは、聞いたことないです」チラッ

P「………」

律子「あなた、誰ですか?」

P「………」

律子「魔物なんでしょう? 姿を現しなさい!」

P「………」



P「…………いやあ、参った。これは調査不足だったなぁ」


スゥーー…



「……大正解。ボクはプロデューサーさんじゃないよ」



春香「……あ、あなたは……!」


529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:56:06.03 ID:kgLR5JNJO

クルーヤ「……ハルカ、久しぶりだね。見違えたよ」ニコッ


春香「お父さんっ!」

律子「お父さん……?」

律子(じゃあ、この人が私の……)


クルーヤ「リツコ、見事だった。ボクの幻影を見破るなんて」

クルーヤ「とても賢く成長してくれたんだね。父親として鼻が高いよ!」ニコッ

律子「………」

クルーヤ「……それと、辛い思いをさせてすまない」

クルーヤ「君がコトリさんに操られて青き星を滅ぼそうとしていたのは知っていたんだ」

クルーヤ「でも、ボクはもうこの世の存在ではない。だから、世界に干渉して君を助けるわけにはいかなかった」

律子「………」

春香「お父さん……」

530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/10/29(土) 07:58:31.80 ID:kgLR5JNJO

律子「終わったことはもういいです。私はこうして春香と共にここにいるんですから」

律子「あなたがこの世の存在ではないっていうのも、特に興味は無いですし」

春香「お、お姉ちゃん?」

クルーヤ「………」

律子「それより、この世界へ干渉するのが禁じられているっていうならなぜあなたはここにいるんです?」

律子「禁忌を犯してまで私たちの邪魔がしたかったっていうんですか?」

クルーヤ「………」

春香「お、お姉ちゃん、それはさすがに言いすぎじゃ?」

律子「……ごめんね、春香。この人はあなたにとっては父親かもしれないけど、私にとっては目的の邪魔をしようとしているただの敵でしかないわ」

春香「!」

クルーヤ「……はは、嫌われちゃったなぁ……」

クルーヤ「父親らしいことなんて何一つ出来なかったクセに今さらのこのこと君の前に現れるなんて、虫が良すぎるよな」

春香「お父さん、でもそれは」

律子「私たち、急いでいるんです。ここを通してもらえません?」チャキッ

クルーヤ「……ふむ」

春香「お姉ちゃん、ダメですっ! お父さんは敵じゃありません!」

律子「……いいえ」

律子「こうして私たちの前に立ちはだかっている以上、今まで出会ってきた魔物たちと同じ、排除すべき敵だわ」

春香「そ、そんな!」

クルーヤ「………」



クルーヤ「……自分のいる位置を知っておくのも大事なことだ。いいよ、かかっておいで、リツコ」ニコッ



律子「っ! ……はぁぁぁあああっ!!」

タタタタ…


春香「お姉ちゃんっ!!」


531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 07:59:47.51 ID:kgLR5JNJO
ここまでです
寝落ちしました
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/29(土) 15:51:21.17 ID:l1trogsLO
ドンマイ
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/26(土) 17:32:26.24 ID:zWOiNkMA0
もうすぐ1ヶ月
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/11/29(火) 18:04:30.29 ID:17JM/YY8O
ー 月の地下中心核 ー


『……はああああっ!!』

『バキッ!! ドガッ!!』

『ドゴオオオン!!』


P「………」

小鳥「………」


小鳥「みんな、頑張ってますね」

P「はい。もう物語も最終局面ですからね。それぞれが持てる力の全てで戦いに臨んでいると思いますよ」

小鳥「………」

P「……音無さん?」

小鳥「は、はい、何でしょう?」

P「なんだかぼーっとしてましたけど、大丈夫ですか?」

小鳥「大丈夫、です」

P「無理はしないでくださいね?」

小鳥「………」

P「あっ……」

P「すみません。音無さんはもう覚悟を決めているんですよね。それなのに俺……」

小鳥「……ありがとうございます、プロデューサーさん」

小鳥「でも心配いりませんよ。私は一人でも戦えますから」ニコッ

P「………」

小鳥「それに、みんなと戦うのが楽しみな気持ちもあるのも確かです」

小鳥「みんながどれだけ強くなったのか。それに対して私はどこまでやれるのか。ちゃんとみんなを楽しませることができるのか」

小鳥「長い間待ってた出番がようやく巡ってきたんですもの。私、張り切っちゃいますからねっ!」

P「音無さん……」

535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/11/29(火) 18:12:03.86 ID:17JM/YY8O

P「あの、俺……」

P「この物語が今までゲームの通りに進まなかったのは、俺っていう不純物がこの世界に混ざってしまったからだとずっと思っていました」

P「でも、違ったんです」

P「この世界に呼ばれたみんなは、勝手が分からないながらも試行錯誤してそれぞれが思う通りに行動した」

P「その結果が今なんです」

P「本当は俺の存在なんて関係なくて、本来の筋書きなんかも関係なくて」

P「最初からみんなの想いが同じ方向を向いていた。……ただ、それだけだったんですよ」

小鳥「プロデューサーさん……?」

P「正直、ここまで俺がみんなの役に立てたかどうかは分かりません」

P「でも、俺はあなたも含めて全員のことを応援しています」

小鳥「っ……!」

P「一緒に戦うことはできないけど、ちゃんと最後まで見届けたい」

P「だから、何もしてあげられませんけど、せめて音無さんの側にいたいって思っています」

小鳥「……ありがとうございます、プロデューサーさん」ニコッ

小鳥(あなたがこの世界へ来てくれて、本当に良かったです……)



小鳥「……あの、ところでプロデューサーさん?」

P「はい、何です音無さん?」

小鳥「えっと……」

小鳥(せっかく二人っきりなんだし、もう少しお近づきになりたいなー……なーんて)

小鳥「あ、あの」

小鳥「えっと、その……できれば、名前で……」

P「? 名前がどうしたんです?」

小鳥「……や、やっぱりなんでもないです」

P「?」

小鳥(……ダメ、言えないわ。私のこともみんなみたいに名前で呼んでほしいだなんて)

小鳥(あーあ……私ってなんて弱い女なんだろう)

536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/28(水) 03:40:28.34 ID:ec0dlTo5O
1レスしかないからあれから続き来るかと1日1回は確認してるが来ないのな
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/30(金) 13:14:55.13 ID:QA3BFH4EO
すみません、いろいろ忙しくてこんな時期になっちゃいました
まだ待っててくれてる人がいるかはわかりませんが今日の夜投下します
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/12/30(金) 23:58:32.92 ID:4gchaJZ2O
ー 月の地下渓谷 B5F ー


プリンプリンセスたち「うふふふふ……!」ワラワラ


響「……ほんっとに、倒しても倒しても湧いてくるなぁ」

響「ま、でも、ラストダンジョンの敵があっさり倒せたら確かに物足りないもんな」

響「よーし、こうなったら全部倒してやるさー!」

響「いっくぞー!!」ダッ

ビュンッ…!


響「……ナンクル砲っ!!」バッ


ドゴオオオンッ!!


…ドサッ

プリンプリンセス1「」



響「もういっちょ!!」バッ


ドゴオオオンッ!!


プリンプリンセス2「」


プリンプリンセス3「っ! させませんわっ!」ダッ


響「ふふーん! 遅いぞっ!」ヒョイッ


響「……はっ!!」バッ


ドゴオオオン!!


響「い!!」バッ


ドゴオオオン!!


響「さー!!」バッ


ドゴオオオン!!


響「いっ!!」バッ


ドドドド…!!

ドゴオオオンッ!!!



ドサドサドサッ!!

プリンプリンセス3「」

プリンプリンセス4「」

プリンプリンセス5「」

プリンプリンセス6「」

プリンプリンセス7「」

プリンプリンセス8「」

539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:01:39.73 ID:1Hr7ym9uO

…スタッ

響「……よし、半分以上は減らしたかな」

響「えへへ、自分、確実に強くなってるぞ!」



プリンプリンセス9「ちぃ……! すばしっこい……!」

プリンプリンセス10「それに、あの人間業とは思えない砲撃が厄介ですわね……」

プリンプリンセス11「ですが、今度はこちらのターンですわよ!」

プリンプリンセス12「覚悟なさいっ!」


響「余裕余裕! どんな攻撃だって避けてやるさー!」タンッ タンッ


プリンプリンセス12「いきますわよっ! ……王女の歌!!」


プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」


響「えっ…………歌?」



ーー♪…


響「なーんだ、どんなすごい攻撃がくるかって期待して損したなー」


ーー♪…


響「そんな攻撃、痛くもかゆくもないぞ!」


ーー♪…


響「それじゃ、そろそろ反撃させてもらうからな!」ビシッ



ーードクンッ


響(!? ……な、なんだ?)

響(今、何か……)

響(……あ、あれ!? 身体が動かない……!)グッ

540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:04:15.89 ID:1Hr7ym9uO

プリンプリンセス9「うふふっ♪ 思うように身動きが取れないでしょう?」

プリンプリンセス10「『王女の歌』を聴いた者は自由と意思を奪われ……」

プリンプリンセス11「死が訪れるまで、ダンスドールとして永遠に踊り続けるのです!」

プリンプリンセス12「形勢逆転、ですわねっ!」



響(う、うそ……でしょ……!)グッ

響(死ぬまでずっとって……!)ググッ

響(……あ……ダメだ、身体が、勝手……に……)



響「うがあああっ!!」タッ

タタンッ



響(うぅ……どうしよう……)

響(このままじゃホントに死ぬまで踊り続けることになっちゃうぞ……)

響(自分、ダンスは大好きだけど、踊り死になんて絶対にいやだっ……!)



響「っ……!」キュッ キュッ



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」



プリンプリンセス9(さあ、舞踏会の始まりですわよ!)

プリンプリンセス10(このドールは果たしていつまで耐えられるのでしょうね)

プリンプリンセス11(でも、焦ることはありませんわ)

プリンプリンセス12(だって、パーティは死ぬまで終わらないのですから!)

541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:08:06.22 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B2F ー


ベヒーモス「うおおおおっ!!」

ドドドドッ!!


真「はああああっ!!」ガシッ


ベヒーモス「……ふふっ……! アタイと力比べとは、面白い……!」ジリッ


真「へへっ……!」ググッ


ズザザッ…


ベヒーモス「……どうしたんだい? 本気を出すんじゃなかったのかい?」ズズッ


真「……くぅ〜……!」ググッ

真「さすがに純粋な力比べじゃ勝ち目は薄いか……!」

真「……それだったら!」タンッ

…フワッ


ベヒーモス「なっ!? あの態勢から跳んだだと!?」


真「……飛燕、龍神脚!!」

ビュンッ…


ズドオオンッ!!


ベヒーモス「……なんて蹴りだ……! だが、狙いは外れだ!」ダッ


…スタッ

真「……飛燕……」クルッ

真「旋風脚っ!!」

ブオッ…

ドゴォ!! バキィ!!


ベヒーモス「ぐっ……!」ザッ


真「……雷煌拳っ!!」バリッ

ズガガガガッ!!


ベヒーモス「……ぬぅ……!」ヨロッ

542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:11:32.53 ID:1Hr7ym9uO

…スタッ

真「……ふぅ」


ベヒーモス「………」


真「君はさっき『最後に勝敗を分けるのは圧倒的なパワーだ』って言ったよね?」

真「ボクの故郷には、柔よく剛を制すって言葉があるんだ」

真「君の馬力は確かに滅茶苦茶だけど、普段から響の身のこなしを見ているボクには、君の動きが速いとは感じられない」


ベヒーモス「………」


真「ボクの動きに、ついて来られるかな?」タンッ


ベヒーモス「!」


…ビュンッ!



ベヒーモス「……ふっ!」ダッ


真「……遅いっ!」

…シュタッ


真「……暫烈拳っ!!」

ドゴゴゴゴ…!


真「……破っ!!」ブンッ

ドゴォッ!!


ベヒーモス「っ……ぐ……」ザッ

543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:14:23.04 ID:1Hr7ym9uO

真「へへっ! どう? 確かに戦いにはパワーも重要だけど、身のこなしだってもちろん無くてはならない要素だ」

真「ボクは、バランスが大切だって思うんだ」


ベヒーモス「……ふふっ」

ベヒーモス「このアタイの身体に傷を付けられる人間なんて今までいなかった」

ベヒーモス「あんたの技は本当に大したもんだよ」

ベヒーモス「……だが、それが全力なのかい?」


真「!」


ベヒーモス「身のこなし……か」

…ザッ


真(ん……? また突進かな?)

真(あいつの突進スピードはもう分かった。響ほどは速く動けないけど、あれくらいボクだって躱せる!)

…ジリッ


ベヒーモス「…………はっ!!」ダッ

ブワッ…


真「えっ、跳ん……!?」


ベヒーモス「はあっ!!」ブンッ

ブオオオオッ!!


真「! 空中から衝撃波!!」

真(予想外で反応が遅れた! 避けられない!)

真「くそっ」グッ


ドゴオオオオオオンッ!!



真「……くっ……!」


ベヒーモス「ふんっ!!」ブンッ

ザシュッ!!


真「うあっ!!」ヨロッ

…ザッ


ベヒーモス「はあっ!!」ブンッ


真「っ……!」タンッ

クルンッ…スタッ

544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:17:44.79 ID:1Hr7ym9uO

ベヒーモス「何も突進だけがアタイの武器じゃない」

ベヒーモス「この爪も角も、そこいらの剣や槍なんかに遅れは取らないように鍛えてある」


真(……まさかあんな巨体であんなに軽やかに跳ぶなんて思ってなかった)

真(油断しちゃったなぁ)

真(「柔よく剛を制す」なんて偉そうに言った自分が恥ずかしいよ……)


真「でも、確実に以前戦った時より成長してるよね? 君も修行したのかい?」


ベヒーモス「この動きは、コトリ様の『だんすれっすん』で身につけたのさ」


真「だ、ダンスレッスン?」


ベヒーモス「ああ。あいどるには必要不可欠なものなんだろう?」


真「そ、それはまあ、そうだけど……」

真(よく分からないけど、小鳥さんはやっぱりただボクたちを待ってるだけじゃなかったってことか)

真(これもボクたちを楽しませるために考えたこと……なのかな?)

真(……へへっ。小鳥さん、超えてみせますよ。あなたが用意した試練!)


ベヒーモス「さあ、見せてやるよ。れっすんで鍛えたアタイの実力を!」


真「……望むところだっ!」グッ

545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:23:04.85 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B4F 内部 ー



…ゴオオオォォォオオッ!!


銀竜「……く……!」

金竜「……ぬぅ……!」



亜美「よしっ!」グッ

亜美「んっふっふ〜! どうよ、亜美の『鳳翼天翔』は! びっくりしたっしょ?」


金竜「……炎を不死鳥に変えるとは、見事なり……!」

金竜「だが、貴様が不死鳥で戦うというのならば、我は天翔ける竜となりて貴様を喰らってやろうぞ!」

銀竜「しかし兄者、我らは既に竜であるぞ!」

金竜「む、そうであったな!」


亜美(天然さんかな?)



銀竜「しかし……」

銀竜「形が変わったとはいえ、先程の技の中身はファイガ二発分に変わりはない。我ら兄弟が耐えられぬ威力ではないぞ!」


亜美「ん……なかなかスルドイじゃん」

亜美「確かに銀ぴょんの言うとおりだよ。ファイガ二発じゃちょっとハデさが足りなかったかもしんないね」

亜美「だったら……」ザッ

亜美「……もうワンランク上、いっとく?」ニヤリ



銀竜「……なに?」

金竜「更に上だと……?」

546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:26:42.52 ID:1Hr7ym9uO

亜美「ねえ、その前にちょっとエーテル飲んでもいい?」


銀竜「魔力を回復させるのか。……兄者、どうする?」

金竜「ここで叩いても面白くあるまい。あやつの技を全て受けきった上で倒す。その方が箔が付くというものだ」

銀竜「流石は兄者、格の違いを見せつけるのだな!」

銀竜「……ということだ。子供よ、好きにするが良い」



亜美「んもー、子供じゃなくて亜美だよ! でもオッケーしてくれてありがと!」

亜美「えーっと……」ゴソゴソ

亜美(……あれっ? エーテルもうこれだけしかないじゃん。いつの間に使ったんだっけ?)

亜美(これじゃあと三回……ううん、二回くらいで勝負を決めないとダメっぽいよ)

亜美「んく、んく……」


亜美「……ふぅ。MP回復かんりょー!」

亜美「そんじゃ行っくよー!」


金竜「来い!」



亜美「……ブリザガ!」パリッ…



銀竜「今度は冷気か……!」



亜美「………………×3!!」パリパリパリッ



金竜「! 今度は三つ同時に!」



亜美「マイナス二百……えーと何度だっけ? 忘れたけど、接待零度の世界、タイケンさせてあげるよ!」

亜美「くらえー!! オーロラ・エクスキューションッ!!」バッ

キラキラキラ…



金竜「……冷気が、輝いて……! これが接待零度とやらか!」

銀竜「兄者、絶対零度だ!」



コオオォォ…!!

パリパリッ…シャキィィンッ!!

547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:32:55.58 ID:1Hr7ym9uO

亜美「……ふぃ〜、同時に三つはちょっとしんどかったかも」

亜美「でも……」チラッ



銀竜「」



亜美「銀ぴょんはカチンコチンだね。これで一体ゲキハ!」

亜美「あとは金ぴょんを倒すだけっぽいよ!」



…ビュンッ!! ドガッ!!



亜美「ぐえっ!?」ヨロッ

ドサッ



金竜「……あまり舐めてもらっては困るな。我らとてコトリ親衛隊の端くれ、この程度の子供騙しでやられはせぬっ!」


亜美「な、なんでピンピンしてんのさー!? まさか亜美のオーロラ・エクスキューション、全然効かなかったの?」


金竜「……我が弟が盾になったのだ」チラッ

金竜「……行くぞ!」フワッ


亜美「ぐぬぬ〜! ひきょーだよ〜!」


金竜「! 卑怯……だと?」ピタッ

548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:35:51.63 ID:1Hr7ym9uO

亜美「そーだよひきょー者ー! 弟を盾にするなんてカワイソーじゃんか!」

亜美「兄としてはずかしくないのかー!」ビシッ


金竜「ぬ……! た、戦いに情など無用なのだ! それがたとえ血を分けた弟であってもな」


亜美「そんなのおかしーよ!」

亜美「亜美にもきょうだいはいるけど、チョー仲良しだもん」

亜美「たまにケンカしちゃったりもするけど、すぐに仲直りするし」

亜美「もしも亜美がピンチになったとしても、真美を盾にして亜美だけ生きのびるなんてことだけは……ゼッタイにしない。したくない!」

亜美「だって、それがきょうだいの絆ってやつだと思うから!」


金竜「ぐ……ぬぅ……!」

金竜「銀竜……我は……」



亜美「……よし、今がチャンス!」

亜美「サンダガ! ……×3」バリバリバリッ


金竜「あっ、貴様、ズルいぞ!」


亜美「我が光速の拳、受けてみよ!」



亜美「ライトニング・プラズマーー!!」



…キラーンッ!

ズガガガガッ…!



金竜「ぬおおおおーーっ!!」



ドゴオオオォォォオオンッ!!

549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:39:32.98 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B3F ー


雪歩「えいっ! えいっ!」ブンッ

バキッ! ガキィン!


魔人兵「無駄だよ。君の得物ではこの装甲を貫くことはできない」

魔人兵「せめてオレのような兵器が無ければね」

魔人兵「……はっ!」

ガコンッ!

キュイィィン…ドゴオオオンッ!!


雪歩「ひぅっ!」

雪歩「……っ、ぜ、全然平気ですぅ!」


魔人兵「うーん……」

魔人兵「ビーム砲もレーザーもミサイルも全て通じない、か」

魔人兵「決め手を打てないのはこちらも同じみたいだね」

魔人兵「君の鎧がこれほどまでに堅牢だとは思わなかったよ」


雪歩「そ、そうです! アダマンアーマーはどんな攻撃だって防いじゃうんですぅ!」

雪歩(……小鳥さんの『メガフレア』だけは防げなかったけど)

雪歩(でも、それはきっと小鳥さんがものすごく強いから、だよね?)

雪歩(だから大丈夫なはず。今はなんとかしてあの魔物さんの装甲を破壊する方法を考えないと)


…パラッ


魔人兵「……うん?」

魔人兵(今の……)

550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:42:55.30 ID:1Hr7ym9uO

雪歩「い、行きますぅ!」チャキッ

タタタタ…



魔人兵「また懲りずにスコップで殴打か。無駄だっていうのに」


雪歩「はああああっ!」

キラッ…!


魔人兵「! なんだ? スコップが光って……」


雪歩「……えーーいっ!!」ブンッ

バキィンッ!!

ポロッ…


魔人兵「……げっ、オレの装甲に傷が……」


雪歩「……や、やりましたぁ!」グッ

雪歩(成功して良かったぁ……『気』をスコップに纏わせる技)

雪歩(真ちゃんから『気』のことについて少しだけ教えてもらってたけど、実際にちゃんと理論を理解して実践するのは初めてのことだったもんね)

雪歩(これも、ククロさんに鍛えてもらったスコップと真ちゃんの教えがあったからこそだよ)

雪歩(ありがとう、二人とも)


魔人兵「先手を取られちゃったか。この戦い、君が一歩リードってところだね」


雪歩「えへへ……」


魔人兵「でも、喜ぶのはまだ早いんじゃないかな? こちらの装甲に傷が付いたとはいえ、ほんの少し欠けただけだ。かすり傷に過ぎない」

魔人兵(それに引き換え……)チラッ


雪歩「そ、そうでした……。でも、この調子で行っちゃいますぅ!」


魔人兵(気づいていないのか? 自分の鎧にも傷が付いているってことに)

魔人兵(あの傷に合わせてオレの最大の砲撃を加えれば、おそらく……)

魔人兵(……よし、試してみるか)

551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:47:02.27 ID:1Hr7ym9uO

魔人兵「悪いね、ちょっとだけ本気を出してみることにするよ」

ウイィィン…ガコンッ!


雪歩「!」

雪歩(すごく大きな砲台が……)

雪歩(な、なんだろう、なにか嫌な予感がする……)

雪歩(気をつけなきゃ!)グッ


魔人兵「さあ、行くぞ!」


雪歩「っ!」ビクッ


魔人兵「……っと、その前に」チャキッ

キュイィィン…ドゴオオオンッ!!


雪歩「えっ!? じ、地面が……!」


魔人兵「君は穴掘りが得意みたいだからね。地中に逃げられないように少々地面を抉らせてもらったよ」


雪歩「そ、そんなぁ……」

雪歩(で、でも、大丈夫だよね、きっと。だってアダマンアーマーは今までずっと私を守ってくれたもん)


魔人兵「さて、それじゃ今度こそ」

ゴオオオォォ…


雪歩「あわわわわ……! な、なんだかものすごいエネルギーが集まってますぅ!」


魔人兵「これで君の装甲を突破出来なかったら……オレの負けでいい」



魔人兵「…………波動砲!!」



ゴオオオォォ…


雪歩「ひぃっ!」



………………カッ!!



ドゴオオオオォォォオオォオンッ…!!!

552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:49:43.48 ID:1Hr7ym9uO

雪歩「………」

雪歩「……うぅ……」

雪歩「けほっ、けほっ……」

雪歩「わ、私……! そ、そうだ、アダマンアーマー!」ゴソゴソ

雪歩「……ほっ、良かったぁ。壊れてないみたい」


魔人兵「……果たして本当にそうかな?」


雪歩「えっ」

…パキッ


雪歩「あ、あれ……?」

パキパキッ…


雪歩「う、ウソ……」

パキパキパキッ…



…………バキィンッ!!

ボロボロ…


雪歩「そ、そんな、アダマンアーマーが……」

雪歩(壊されちゃいましたぁ……)


魔人兵「君は気付かなかったようだけど、オレと戦う前から君の鎧にはすでに傷が付いていた」

魔人兵「よほど強力な攻撃を受けたんだろうね。大きなヒビが入っていたよ」


雪歩「そ、そうだったんですか……?」

雪歩(全然気付かなかったよぅ……)

雪歩(も、もしかして、昨日小鳥さんのメガフレアを受けちゃったからかな……?)


魔人兵「この戦い、どうやらこちらの勝ちが見えてきたようだ」

魔人兵「あいどるの真の実力とやらを見てみたかった気もするけど、まあ、それはコトリ様の過大評価だったのかもしれないしな」

魔人兵「……あとは、仕事を遂行するだけだ」

ウィーン…ガコンッ!


魔人兵「可哀想だけど、覚悟を決めてもらうよ?」


雪歩「ど、ど、どうしようっ……!」ビクビク

553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:54:04.72 ID:1Hr7ym9uO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


レッドドラゴン「熱線っ!!」


ドゴオオンッ!!


…シュンッ


あずさ「ブリザガ〜」


コオォォ…シャキーン!!


レッドドラゴン「うおっ!? 後ろかよ!」カチコチーン

レッドドラゴン「……んのやろっ!!」メキメキ


…パリンッ!


あずさ「あ、あらあら……強引に氷を割ってしまうなんて……」


レッドドラゴン「うりゃっ!!」ブンッ


あずさ「きゃっ……」ヨロッ


レッドドラゴン「もらったァ!!」ブンッ


ドゴォン!!


レッドドラゴン「………」


レッドドラゴン「……ちっ、またテレポで逃げやがったな」




あずさ「……ふぅ、危なかったわ〜」

あずさ(あの魔物さんはとても熱いから、きっと氷が弱点だと思うのだけど〜)

あずさ(ブリザガもあまり効果が無いみたい)

あずさ(やっぱり『あの魔法』を使わないと勝てないような気がするわ〜)

あずさ(う〜ん、でも……詠唱呪文どころか名前すら思い出せないのよねぇ)

あずさ(確かそんなに長い名前ではなかったような気がしたんだけど……)

あずさ(少し落ち着いて考えてみましょう。そうすれば必ず思い出せるわ、きっと)

554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 00:56:39.58 ID:1Hr7ym9uO

あずさ(え〜っと、最初の文字は〜)

あずさ(そう、確か『メ』だったかしら〜?)

あずさ(メ、メ……)

あずさ(……メガネ?)

あずさ(……何か違うわねぇ)

あずさ(メ、メ……)

あずさ(……メザシ?)

あずさ(お酒のおつまみに良さそうだけど、これでもない気がするわ〜)

あずさ(メ、メ……)

あずさ(…………メオト?)

あずさ(………)

あずさ(う〜ん? 少しだけ近いような……)

あずさ(でも……)

あずさ(うふふ、なんだかいい響きねぇ♪)

あずさ(私もいつかはステキな人と……)



…ッドゴオオオン!!!



あずさ「きゃっ……!」ヨロッ


レッドドラゴン「よそ見してんじゃねーぞコラァ! 戦う気あんのかよ!」


あずさ「そ、そうだったわ。今は戦いの最中なのよね」

…ニョキニョキッ

555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 01:00:06.88 ID:1Hr7ym9uO

レッドドラゴン「……へっ、何事もなかったかのように再生しやがる……」

レッドドラゴン「だが、そんな戦い方がいつまでも続けられると思うなよな!」

レッドドラゴン「あんたが魔道士で魔法を主体として戦う限り、いつかは魔力の底が見えてくるんだ」


あずさ(……確かにそうよね。このまま移動のたびにテレポを使い続けても、魔力の消耗が激しいわ)


レッドドラゴン「なるべく魔力を節約しつつ、さっき撃ちそこなった魔法を思い出す」

レッドドラゴン「あんたはそう考えるんだろうなあ?」


あずさ(あらあら、バレバレなのねぇ)

あずさ(というか、あの魔物さんはなんとなく考えるよりも先に手が出るタイプかなって思っていたけど……結構頭が回るみたいね)


レッドドラゴン「……おい、あんた今失礼なこと考えなかったか?」


あずさ「き、気のせいですよ〜」


レッドドラゴン「……とにかく、忘れた魔法を思い出すんならさっさとしろよな!」

レッドドラゴン「オレ様はそこまで気の長い方でもねえ」

レッドドラゴン「早く思い出さねえと、消しちまうぞ!」


あずさ「それは困りますね〜」

あずさ(あまり悠長に構えていられないかもしれないわね)

あずさ(なるべく早めに思い出さないと)

556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 01:03:05.00 ID:1Hr7ym9uO

レッドドラゴン「そんじゃバトル再開すんぞ!」

レッドドラゴン「うおおおお!」

レッドドラゴン「……熱線っ!」


ゴオオオオッ…!


あずさ「!」

あずさ(あれをテレポ無しで反射神経で避けるのは、私じゃほぼ無理だわ)

あずさ(だったら肉を斬らせて……)



…ドゴオオオンッ!!



あずさ「ううっ……」ヨロッ


レッドドラゴン「……お? 避けない? 瞬間移動はもうやめたのか?」

レッドドラゴン「だったら畳み掛けてやんぜっ!!」

ドドドドドド…


あずさ「……スロウ!」

カタカタ…シュルンッ!


レッドドラゴン「ぬおっ!」ノロ〜


あずさ「……バイオ!」

ブニューン!!


レッドドラゴン「痛ってえ!! クソっ!」


あずさ(意外に状態異常の魔法が効くみたい。これならテレポ無しでもなんとか戦えそうね)

…ニョキニョキ


レッドドラゴン「やってくれんじゃねーか! さすがはオレ様がライバルと認めただけはあるな!」


あずさ「あらあら、それは光栄です♪」ニコッ


レッドドラゴン「!」ドキッ

レッドドラゴン「……ちっ、だからって手加減なんかしねーからな!」

557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 01:06:37.34 ID:1Hr7ym9uO

ドゴォン! ドカァン!



あずさ(……そもそも、なぜ私は忘れてしまったのかしら)

あずさ(試練の山で確かに覚えて、一度使ったことだってあるっていうのに)

あずさ(……命と引き換えに、だけれども)

あずさ(やっぱり私、トラウマになってしまっているの?)

あずさ(命を落とす原因となった魔法だから……?)




レッドドラゴン「……なあ、あんた」


あずさ「はい、あの、私、あずさっていいます〜」


レッドドラゴン「……アズサ。ひとつ気になったことがあんだけどよ」


あずさ「はい、なんでしょう?」


レッドドラゴン「あんた、本当にゾンビなのか?」


あずさ「え〜と……たぶん」

あずさ「私、実は一度死んでいるんです。その時にゾンビのお友達が助けてくれて、それで……」


レッドドラゴン「……ふーん。転生ってやつか? でも、それにしちゃ全然ゾンビらしく見えねーんだよな」


あずさ「あの〜、それはどういうことですか?」


レッドドラゴン「ゾンビってのはよ、もっとこう、腐ってて体も崩れかけててグチャ味噌で……」

レッドドラゴン「うまく言えねーけど、あんたみてーにキレイなゾンビなんて今まで見たことねーんだよ」


あずさ「あ、あら〜……キレイだなんてそんな〜……///」


レッドドラゴン「あっ……///」

レッドドラゴン「い、今のは違うぞ! 別にあんたが美人でオレ様の好みのタイプだとかそういうつもりで言ったんじゃねーからなっ!!」


あずさ「うふふ♪」ニッコリ


レッドドラゴン「くそぉ……余計なことを言っちまったぜ……」

レッドドラゴン「と、とにかくだ! 勝負は勝負、きっちりカタは付けるからなっ!」ビシッ


あずさ「は〜い♪」ルンルン

558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/31(土) 01:29:50.02 ID:VHqd7W40O
金竜銀竜の漫才が面白いな
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/26(木) 19:41:26.81 ID:3PjUUPrA0
まだか
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/09(木) 21:49:24.19 ID:dryvj0/kO
二ヶ月たっちまうぞ
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/02/12(日) 21:00:13.55 ID:2zaNk/pmO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


伊織「……ふっ!」ブンッ

ザシュッ!!


リルマーダー「ぐっ……このっ! サンダガっ!!」


ズガガガピシャーン!!


伊織「……遅い!」

伊織「はっ!」ブンッ

ズバッ!!


リルマーダー「ちくしょう……!」ヨロッ


伊織「あら? どうしたのかしら? 私の動きについて来れないみたいだけど」

伊織「私に見せてくれるんじゃなかった? 『王の力』ってやつを」


リルマーダー「………」

リルマーダー「けっ、わかってるよ。今から見せてやる。後悔すんじゃねーぞ!」

リルマーダー「……!」ゴゴゴ


伊織「!」

伊織(空気が変わった……)

伊織(魔力を集中させているってことは、アイツの『王の力』とやらは魔法なのかしら)

伊織(ま、どんな魔法でも当たらなきゃいいことよね)

562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:02:04.62 ID:2zaNk/pmO

リルマーダー「……汝、真理の囁きにのみ耳を傾けよ」

リルマーダー「万物姿形隠すこと、あたはず!」




リルマーダー「…………ライブラ!」バッ




伊織「!」

伊織(……聞いたことない魔法ね。とにかく魔法が発動するより速く射程圏外へ!)

ダッ…



ピピピッ…

ピコーン!


伊織「……なっ!?」ピタッ

伊織「なによこれ……どういうこと?」



『リルマーダー

7650/12000 弱点:雷』



伊織(アイツの頭の上に文字が……)

563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:04:29.33 ID:2zaNk/pmO

リルマーダー「げっ、間違えた! これじゃオイラの情報が筒抜けじゃねーか!」


伊織(対象の情報を知る魔法……ってところかしら? そういうのもあるのね)

伊織(アイツはそれを間違えて自分に使ったってこと? 間抜けにもほどがあるわ)

伊織(ま、なんにせよ重要なのは、『アイツの弱点が雷』って部分)



リルマーダー「今度こそっ! ライブラっ!」バッ


ピピピッ…


伊織「! 今度は私に!」

伊織「ちっ!」ダッ

タタタタ


リルマーダー「ムダだぜ! どうやってもライブラからは逃げられやしねー!」


…ピコーン!






『イオリ

誕生日:5月5日 血液型:AB 星座:牡牛座

身長:153cm 体重:40kg

スリーサイズ:B77 W54 H79

趣味:海外旅行、食べ歩き』






伊織「」

564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:08:14.65 ID:2zaNk/pmO

伊織「こっ……!」

伊織「この変態! de変態! EL変態! 変態大人ー!」カァァ

伊織「なに乙女の秘密を勝手に暴いてくれてんのよっ!」ビシッ



リルマーダー「へー、お前イオリっていうのかー。……変な名前」


伊織「うっさい!! アンタほどじゃないわよこのエロガキっ!!」


リルマーダー「なんだよー、イオリだってガキじゃんかー。B77ってあんまり大っきくないよな?」


ズガガガガーーンッ!!


リルマーダー「ぐええぇっ!?」ヨロッ



伊織「……アンタ、私を怒らせたわね……!」バリッ

伊織「もう手加減なんてしてあげないんだからっ!」


リルマーダー「ちょ、ちょっと待」


伊織「問答無用! 雷迅っ!!」バッ


ズガガドゴオオオォォオオンッ!!



リルマーダー「いぎゃああーー!!」

565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:10:32.91 ID:2zaNk/pmO

伊織「……ったく、なんでこの世界は変態ばっかりなのよ! これじゃ現実と大して変わらないじゃない!」

伊織「ま、これでアイツも立ち上がれないでしょ。二回も弱点を突いたんだし」チラッ



リルマーダー「」



伊織「バカバカしい戦いだったわ。さっさとやよいを追いかけないと」クルッ

スタスタ





リルマーダー「……待てよ……。オイラまだ参ったって言ってないぞ……」ヨロッ



伊織「……しぶといわね。さっさとやられちゃいなさいよ!」

伊織「雷迅っ!」バッ


ズガガドゴオオオォォオオンッ!!


リルマーダー「ぐああああっ!!」


リルマーダー「……ぐっ……」フラッ


伊織「ま、まだ倒れないの? アンタの弱点は雷のはずじゃない!」


リルマーダー「……ああ、そうだぜ。確かにオイラの弱点は雷だ」

リルマーダー「でも……」

リルマーダー「同時に雷はオイラの得意とする属性でもあるっ……!」バリッ

リルマーダー「うあぁぁああああっ!!」バリバリッ


伊織「!」

伊織(ウソ……! アイツ、まさか帯電してる……?)

566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:12:40.83 ID:2zaNk/pmO

リルマーダー「……三発だ」


伊織「……は?」


リルマーダー「お前の放った雷は三発。だからそれを……」バリバリッ


リルマーダー「倍返ししてやるぜっ!!」ビリビリッ

ゴゴゴゴ…!


伊織「な、なによこの魔力……!」

伊織(貴音や美希と同レベル……いえ、今この瞬間に限ってはそれ以上……!)



リルマーダー「くらいやがれ! 6倍サンダガっ!!」バッ


伊織(ま、まずいわ……!)



ゴゴゴゴ…

ズガガガガーーン!!

ドゴゴゴオオォォオオンッッ!!!



伊織「……ぅ……ぁ……!」ヨロッ


ドサッ

567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:15:56.75 ID:2zaNk/pmO

伊織「ぐ……っ」

伊織(なんてデタラメな威力っ……)

伊織(倍返し……。自分のサンダガに私の雷迅の分も上乗せして返してきたってわけ……?)

伊織(まさか、最初からそれが狙い?)

伊織(ライブラって魔法を自分に使ったのも……)

伊織(……そうよ、考えてみれば自分から弱点をさらけ出すなんて不自然じゃない……)


リルマーダー「へへっ……見たか、これが王の力だっ!」ビシッ

リルマーダー「さーてと、あとはじっくりとどめを刺してやるからなっ!」


伊織(迂闊……だった……!)

伊織(この状況、どうにかしなきゃ……!)


568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:21:38.58 ID:2zaNk/pmO
ー 月の地下渓谷 B7F ー


ブルードラゴン「……ふぬっ!」ブンッ


やよい「はわっ!」ダッ


ドゴオオンッ!!


…スタッ

やよい「しるふちゃんっ!」バッ



シルフ「……風の囁き!」



ビュオオオ…!!


ブルードラゴン「……ふむ、心地よい風じゃ」


シルフ「わ、私の風が効かないなんて、化け物ですね……!」


やよい「うぅ、さすがどらごんさんです……」



ブルードラゴン「召喚士よ。お前の従える幻獣たちはそのほとんどが属性を持つ。故にほぼ全ての属性攻撃を弾くワシとは相性が悪い」

ブルードラゴン「ワシに傷を負わせる可能性があるのは、さっき喚び出したアスラくらいじゃろう」

ブルードラゴン「はっきり言って状況はお前に不利じゃ。それはお前自身も分かっているはず。ならばなぜ足掻く?」


やよい「………」


ブルードラゴン「最初に言ったな。『このカードはハズレ』だと。つまりそういうことじゃ」

ブルードラゴン「お前は何も出来ず、コトリの元へ辿り着くこともなくここで果てる」

ブルードラゴン「もう無駄なことはするな。子供が苦しむ様は見るに耐えぬ。せめて一撃で楽にしてやろう……」

ブルードラゴン「……ふんっ!」ブンッ



やよい「! 高木社長!」バッ


…ガキィンッ!!


569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:24:33.81 ID:2zaNk/pmO

高木「……ウチのアイドルを傷付けるのは困るな。しかもこんなに小さな娘を」ググッ


ブルードラゴン「……幻獣騎士オーディンか。お前に何が出来る?」ググッ


高木「私の力はちっぽけかもしれない。だが、ちっぽけだからこそ他の誰かと力を合わせて道を切り開く。そういう生き方もあるとは思わないかね?」


ブルードラゴン「……ふ、知ったような口を」

ブルードラゴン「目の前にある結果こそが全てだ。そこの召喚士の為に力を振るうことの出来ぬお前は、ただの木偶に過ぎぬ!」ブンッ


高木「く……すまない、高槻君。私一人の力では……」


やよい「だいじょーぶです、社長。わたし、社長もみんなも大好きですから!」

やよい「みーんな、いっしょです!」


高木「高槻君……」

570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:25:46.75 ID:2zaNk/pmO

ブルードラゴン「何故そのように楽観的に考えられるのだ? お前は今、死の淵に立たされているのだぞ?」

ブルードラゴン「お前には恐怖はないのか?」


やよい「こわくなんてないです。だってわたしには、みんながいてくれますから」

やよい「……黒井社長!」バッ



黒井「高槻やよいに歯向かう馬鹿はお前か。私が引導を渡してやろう!」

黒井「……大海衝!」



ザァァァ…!



ブルードラゴン「無駄だというのが分からんのか……。津波など、ワシにとっては子供の水遊びと変わらぬ」



ザパアアァァァァンッ!!



ブルードラゴン「……気は済んだか?」


黒井「バカな……。この私の津波をものともしないだと……!?」

571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:28:56.39 ID:2zaNk/pmO

ブルードラゴン「さあ、もう万策尽きたであろう? 大人しくあの世へと旅立つのじゃ」スッ


やよい「……ごめんなさい、それはできません」ペコリ


ブルードラゴン「……何故じゃ。何故そこまで生に執着する?」

ブルードラゴン「生きることの辛さを知らぬ若さ故か?」


やよい「待ってる人がいるからです」


ブルードラゴン「………」


やよい「わたしには、待っててくれる人がいて、大切な人たちといっしょにめざす夢があるからです」

やよい「そのためには、小鳥さんのところへ行かなくちゃなんですっ!」

やよい「だから、わたしは死ねません」


ブルードラゴン「……現を抜かすのは、やはり若さの成せる業か」

ブルードラゴン「じゃが、その夢もちっぽけだったと気づく時がくる」

ブルードラゴン「その時にお前は、大きな絶望と失望を抱えることになる」

ブルードラゴン「世界とは、生とはなんと虚ろで意味の無いものだったのかと嘆く日が来るのじゃ」


やよい「………」





やよい「もし、そうなったとしても」



やよい「わたしには家族と……春香さんたちがいます!」

やよい「わたしが生きるいみは、それでじゅうぶんかなーって!」




ブルードラゴン「……!」

572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:32:33.90 ID:2zaNk/pmO

ブルードラゴン「哀れな娘よ。お前が生の虚しさに気づく前に、ワシが幕を引いてやる……!」ブンッ


やよい「!」

やよい「……お母さんっ!」バッ


ミストドラゴン「……ああ、ヤヨイ。あなたはなんと健気なのでしょうか……」

ミストドラゴン「この子の尊い願い、誰にも邪魔はさせませんっ!」

ミストドラゴン「……ミストブレス!」

シュウゥゥ…! キラキラ…!



ブルードラゴン「! また目くらましか……!」

ブルードラゴン「じゃが、そのような一時しのぎなどなんの意味もない。死を僅かに遅らせただけじゃ」



やよい「いーえ、これでいいんです」

やよい「……これで『ぜんいん』です。じゅんびはととのいました!」



ブルードラゴン「……なんだと?」




やよい「……『みなさん』! 出てきてくださいっ!!」バッ


573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:36:49.77 ID:2zaNk/pmO
イフリート「うおおおおお!! ヤヨイぃぃ!!!」ボオォ

シヴァ「ヤヨイさん……あなたは必ず守る……!」コォォ

ラムウ「幻獣全てを一度に召喚とは……。ヤヨイさん、やはりお前さんは誰よりも光に選ばれし者なんじゃな……」バリッ

翔太「僕たちもいるよー!」フリフリ

北斗「チャオ☆」シュタッ

冬馬「高槻、俺たちに任せろ!」グッ

高木「幻獣たちが一度に全員集合とは、なんとも壮観だねぇ」

黒井「フン……。同窓会じゃあるまいし、さっさとあの化け物を倒すぞ」

シルフ「きゃっ、なんだかかっこいいおじ様っ」ポッ



やよい「みなさんっ!」



ブルードラゴン(あれだけ続けて召喚魔法を使ったあとで8体もの幻獣を一度に喚び出すとは……なんたる魔力……!)

ブルードラゴン(ヤツの魔力は底なしか……?)

574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:38:30.97 ID:2zaNk/pmO

ミストドラゴン「私のかわいいヤヨイ……。ご覧なさい」

ミストドラゴン「皆あなたを慕い、あなたを案じ、あなたとともに生きることを選んだ」

ミストドラゴン「そこには主従関係を超えた強い絆があります」

ミストドラゴン「これが、これこそが……あなたの進んで来た結果なのです」



やよい「お母さん……」



ミストドラゴン「さあ、ヤヨイ。あなたの選んだ答えを、魔物に見せておあげなさい」



やよい「はいっ!」

575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:40:57.05 ID:2zaNk/pmO

やよい「どらごんさん」


ブルードラゴン「………」


やよい「わたし、まだまだ子どもで、世界のこととか生きるつらさとかぜんぜんわかりませんけど……」

やよい「わたしにとっての安らぎは、死ぬことなんかじゃなくて、生きることです」

やよい「みーんな笑顔ではっぴーでいられることなんですっ!」


ブルードラゴン「……幻獣たちの力でワシを攻撃せぬのか?」


やよい「こうげきなんてしません。わたしはただ、どらごんさんにも知ってほしいだけですから」

やよい「じぶんを待っててくれる人がいるってことを!」



ブルードラゴン「……そう、か」


やよい「だから、どらごんさんも仲間と生き」







ブルードラゴン「やはり、お前は分かっておらぬようだな」




やよい「…………えっ」

576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:44:28.02 ID:2zaNk/pmO

ブルードラゴン「つまらぬ問答に付き合わせてすまなかった。もう、終わりにしよう」


やよい「あ、あのっ!」


ブルードラゴン「……さらばだ」

…ブオオオォォ!!



やよい「!」



翔太「や、やよいちゃんっ!」

北斗「行くぞ、冬馬!」

冬馬「てめぇ化け物っ!」ダッ


イフリート「や、ヤヨイっっ!!」ダッ

ラムウ「我らではジュピター殿の力になれぬ! ヤヨイさんを守るんじゃ!」

シヴァ「ヤヨイさんっ!!」


シルフ「吹雪くらい、私の風で散らしてあげます!」

シルフ「風の囁き!」


ビュオオオ…!!


ミストドラゴン「私にも手伝わせてください!」

ミストドラゴン「ミストブレス!」

シュウゥゥーー…! キラキラ…!


ブオオオォォォッ…!!

やよい「……ぁ……ぅ……」



高木「……ダメだ、向こうの吹雪の方が勢いが強い!」

高木「黒井、私たちも鬼ヶ島君たちに続こう!」

黒井「………」

高木「……おい、黒井!」

黒井「……なんだ、これは……」

577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:47:04.27 ID:2zaNk/pmO

冬馬「てめぇ!! 吹雪を止めやがれ!!」

冬馬「うおおおおおおお!!」

ズドドドドド…!!


ブルードラゴン「ぐ、が……っ!」


高木「……斬鉄剣っ!!」

ズパァンッーー!!



ブルードラゴン「ぬ……ぅ!」



ブルードラゴン「む、無駄だ……。もう、手遅れだ……」



冬馬「あぁ!?」




やよい「ぁ……ぅ……」ガタガタ


イフリート「うおおおおおーーーー!!」ボオォ

シヴァ「イフリート、全然足りないわ! もっと火力を上げなさい!」

イフリート「くそおおおおーーーー!!」ゴオオ

ラムウ「ヤヨイさん、逝くな……!」ダキッ

やよい「……ぅぅ……」ブルブル


高木「高槻君っ! くそっ!」


黒井「………」

黒井(高槻やよい……。死ぬのか……?)

578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:48:28.71 ID:2zaNk/pmO

ブルードラゴン「ば、バラバラの、力を持った……お前たちでは……救えまい……」

ブルードラゴン「彼女は……安らぎの国へ旅立つのだ……」


冬馬「ふざけんなっ!!」ブンッ

ドゴオオォ!!

メキメキッ!



ブルードラゴン「……あ、ぐっ……」



ミストドラゴン「ああ、ヤヨイ、なぜ……なぜこのようなことに……!」ダキッ

翔太「北斗君、回復魔法!」

北斗「ケアルダ!」

シャララーン! キラキラキラ…!

やよい「……ぅぅ……」

北斗「くそっ、魔法がきいてないのか!?」

シルフ「気をしっかり持ちなさい! 私のご主人なんでしょう!? マコト様と一緒に無事に青き星へ帰るんでしょう!?」ユサユサ

やよい「……ぁ……」グッタリ

579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 21:57:00.77 ID:2zaNk/pmO

やよい(わたしのこたえ……まちがってたんでしょうか……)

やよい(どらごんさんには……とどかなかったんでしょうか……)


「ーー! ーーー!」

「ーーーー!」


やよい(……うぅ……さむいです……)

やよい(……わたし……死んじゃうのかな……)


「ーーーー! ーーー!」

「ーーー!」


やよい(みなさんの声が、とおくなって……)

やよい(…………は……さ…ん……)

やよい(……い…りちゃ……)

やよい(………………)


やよい(…………)


やよい(……)



やよい「」カチコチーン


580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 22:00:48.21 ID:2zaNk/pmO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


月の女神「……やあっ!」ブンッ


千早「ふっ!」ガキィン

千早「……はっ!」ビュッ


月の女神「おっと!」ヒョイッ

月の女神「やあぁぁあああっ!」

ブンブンブンブンッ!!

千早「!?」

千早「くっ!」

ガキィン! キィン! パキィン!


…スタッ


月の女神「……ふぅ」

月の女神「なかなかやるねー、私のぶん回しを防ぎきるなんて」

月の女神「うんうん、いいカンジ。もっともっと楽しもう!」


千早「………」ジリッ


月の女神(…………う〜ん)

581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 22:02:10.56 ID:2zaNk/pmO

月の女神「ねえ、あなたの名前はなんていうの?」


千早「えっ?」


月の女神「ほら、まだ聞いてなかったからさ」


千早「はあ……」

千早(なんでいまさら名前を訊くの? というか魔物相手に名乗る必要なんてある?)

千早(まあ、訊かれたのに答えないのも失礼よね。名前くらいは……いいかしら)



千早「……如月千早、です」


月の女神「ふーん、チハヤっていうんだー。キレイな名前だね」

月の女神「私は月の女神。まあそう堅くならずに楽しくいこうよ!」ニコッ

582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 22:04:10.77 ID:2zaNk/pmO

千早「何回も言ったけれど、私は別にあなたと馴れ合うつもりは……」


月の女神「えー、せっかくだから何事も楽しんだ方がいいと思うけどなー」

月の女神「おしゃべりもバトルも、楽しんだもの勝ちだよ?」


千早「おしゃべりはともかく、私にバトルを楽しむ趣味はないわ」


月の女神「ふーん……チハヤはマジメだねー」

月の女神「じゃあさ、趣味は? 好きな食べものは? 休みの日とか何してるの?」


千早「あの、私、あまり時間は無いのだけど。早くあなたを倒して仲間のところへ向かわないといけないの」


月の女神「ノリ悪いよチハヤー。せっかくこうして出会えたんだから少しくらいおしゃべりしようよー」


千早「…………はぁ」

千早「趣味は歌うこと。好きな食べものはソフトクリーム。オフの日は、美術館に行ったりすることもあるわ」

千早「……これで満足?」


月の女神「わぁ、なんか私の知らない言葉ばっかり!」

月の女神「ねえねえ、そふとくりーむってなーに? ビジュツカンって?」


千早(いちいち説明しなければならないのかしら……)


月の女神「わくわく」じーっ


千早(話さないと戦ってはくれなさそうね)

583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/02/12(日) 22:05:57.16 ID:2zaNk/pmO

千早「ソフトクリームというのは……そうね、甘くてふわふわで、食べるととても幸せな気持ちになれる、良いものよ」


月の女神「甘くてふわふわかぁ……。いいなぁ、私も食べてみたい!」

月の女神「それでそれで? ビジュツカンっていうのは?」


千早「絵画や彫刻などの美術品を展示している場所よ。そこでいろいろな作品を見て、アーティストとしての感性を磨いているの。そういうことが、歌の表現力を高めることにも繋がると思うから」


月の女神「えっと、よく分かんないけど、チハヤはあーてぃすとっていうのになりたいの? あいどるじゃなくて?」


千早「それは……」

千早「私にとって、アイドルというのはただの通過点に過ぎないから。いずれはアイドルを辞めて、ひとりの歌い手として活動していきたいと思っているの」


月の女神「あ、知ってる! 歌を歌うのは吟遊詩人っていうんでしょ? 青き星にいるって聞いたことあるよ!」


千早「吟遊詩人とは少し違うかもしれないけれど……」


月の女神「そっかぁ、チハヤは歌が好きなんだねー」

月の女神「なんか、チハヤのことを少し知ることができて嬉しいな!」ニコッ


千早(本当に嬉しそうな顔をするのね)


月の女神「……私ってさ、生まれてからずーっと月で過ごしてきたから、この月以外の世界のことは、なーんにも知らないんだぁ」

月の女神「それに、ここには私と同年代の子なんて全然いないし」

月の女神「だから、チハヤのお話が聞けて、私嬉しかったよ?」

月の女神「えへっ、ありがとう、チハヤ!」ニコッ


千早(……そんな顔をしないで)

千早(今から私はあなたを倒さなければならないのに……)


月の女神「ゴメンね、時間取らせちゃって。続き、しよ?」チャキッ


千早「………」チャキッ

584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/12(日) 22:11:10.65 ID:2zaNk/pmO
遅くなってすみません
完結はさせます
でも、今回の遅れで一ヶ月ルールに抵触しちゃったんじゃないかと心配なんですが大丈夫ですかね…
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/12(日) 22:16:28.63 ID:udHWWKOsO
大丈夫、一ヶ月ルールはあくまで誰もレスしなかった場合自動でhtml化されるってのだからさ
誰かが保守ついでにレスすればされないよ
問題は二ヶ月ルールかな、二ヶ月たったら一分遅れだろうが依頼対象になるのが…
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/05(日) 07:48:20.82 ID:/Er29PHUO
支援
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/03/09(木) 20:19:22.82 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


暗黒魔道士「……ファイガ」


ボオオオゥッ!!


美希「!」

美希「シェルっ!」バッ


ゴオオオ!! ボウッ!!


美希「きゃっ!」ヨロッ

美希「あつつ……」

美希「……むー、威力が強くてミキのシェルじゃ防ぎきれないの……」


暗黒魔道士「……サンダガ」


ズガガピシャァァン!!
 

美希「……おっとっ!」ヒョイッ

美希「……ふー、危なかったの……」

588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:21:46.93 ID:rmMzSg3nO

暗黒魔道士「……まったく、この暗闇の中でここまでボクの魔法に対応するなんて流石だよ、ミキ」

暗黒魔道士「本当は見えているんじゃないのかい?」


美希「そんなことないの。こーんな真っ暗じゃ、ネコさんでもない限り見えないって思うな」

美希「あっ、もしかしてアンコクさんってネコさんなの?」


暗黒魔道士「ねこ……? なんだい、それは」


美希「えっ、知らないの? すっごくカワイイのに」


暗黒魔道士「知らない……。ボクは知らないことだらけだ」

暗黒魔道士「でも、それでいい。ボクには……この暗闇さえあれば十分だ」

暗黒魔道士「この暗黒がボクの全てで、ボクに力を与えてくれるんだ……!」ゴゴゴゴ


美希「ふーん、暗いところが好きだなんて変わってるんだねー」


暗黒魔道士「ミキ。いつまでも余裕でいられるとは思わないことだ。君は今確実に、死へと向かっている」


美希「………」

589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:25:05.68 ID:rmMzSg3nO

美希「ミキもやられてばっかりじゃないよ。今度はこっちのターンなの!」

美希「……けがれなき天空の光よ、フジョウを照らし出せなの!」バッ

美希「ホーリー!」


キラキラキラ…!


暗黒魔道士「………」



…ドゴゴゴオオンッ!!




暗黒魔道士「……残念だったね」


美希「…………えっ?」


暗黒魔道士「暗闇でもボクからは君の行動は手に取るように分かる」

暗黒魔道士「君の詠唱をじっくり見てそれを躱すなんて、今のボクにとってはとても簡単なことなんだ」


美希「む〜、ちょっとくらい当たってくれてもいいのに〜」


暗黒魔道士「君の光はボクには届かない」

暗黒魔道士「君はその輝きを失い、闇に飲み込まれてしまうんだ」

590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:27:04.73 ID:rmMzSg3nO

暗黒魔道士「……バイオ」


ブニューン


美希「!」ダッ

タタタタ


美希「そんな方向に撃っても当たらないの!」


暗黒魔道士「ブリザガ」


コォォ…!


美希「……こっちなの!」ダッ


シャキィィン!!


美希「うん、なんとなく真っ暗にも慣れてきたってカンジ」

美希「じゃあ、次はミキの番だよ!」


暗黒魔道士「残念だけど君のターンは回ってこない」

暗黒魔道士「……トルネド」


ビュオオオッ!!


美希「なんでー!? アンコクさんばっかりズルいのー!」

美希「にゃーーーーっ!?」フワッ


…ドサッ

591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:28:39.43 ID:rmMzSg3nO

美希「うぅ、いたた……」


暗黒魔道士「言っただろう、ミキ。君という天才でも敵わないものがあるということを教えてあげるって」


美希「………」

美希(こんなのおかしいの。ミキがひとつのことをする間にアンコクさんは2回も3回も魔法を使えるなんて)

美希(絶対に何かズルしてるって思うな!)


暗黒魔道士「考えても無駄だよ。おそらく君にはたどり着くことはできない」

暗黒魔道士「何も見えないまま、何も分からないまま君はここでボクに負けるんだ」




美希(何か……何かきっとあるはずなの。アンコクさんが何回も続けて魔法を使える理由……)

592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:30:42.24 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


ダークバハムート「………」ゴゴゴゴ


貴音「………」ゴゴゴゴ





貴音(……動けない……)

貴音(ばはむーと殿の闘気にあてられている、というのもありますが……)

貴音(何より不気味なのは、一見ばはむーと殿は隙だらけのように見受けられるということ)

貴音(『遠慮なく撃って来い』と言わんばかりの挑発)

貴音(かといって安易に動けば、その瞬間にあの方の鋭い爪がわたくしの体を引き裂く光景が容易に想像できます)

貴音(あの方の強さをわたくしは知らない)

貴音(知らないはずなのに、解る)

貴音(こうして対峙しただけで理解してしまう)

貴音(神を前にして、いかに己が無力なのかを)



ダークバハムート「……どうした、タカネよ。そうして立っているだけでは我は倒せぬぞ?」


貴音「……承知しております」


ダークバハムート「為すべきことを理解していても、恐怖に縛られて動けない……」

ダークバハムート「不便なものだな、心とは」


貴音「………」


ダークバハムート「ククッ……!」

593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:33:05.64 ID:rmMzSg3nO

貴音(ともかく、こうしていても仕方がないのは事実。ここは……)


貴音「………」ザッ


ダークバハムート「……漸く一歩」

ダークバハムート「その一歩を踏み出すのにどれだけ時間を要したのだ?」


貴音「っ……!」ゾクッ

貴音(あの方にほんの一歩近づくだけで、少しずつ精神が削られていくのが分かります)

貴音(よもやこれまで禍々しい闘気とは……)


ダークバハムート「……だが、そう悲観したものでもないぞ? タカネよ」

ダークバハムート「大抵の者は我の殺気を感じたと同時に逃げ出すであろう。動くことすらままならずに気を失う者もいるやもしれぬ」

ダークバハムート「その我の殺気に僅かとはいえ近づいたのだ、誇りに思うがいい」


貴音「……はい」

貴音(しかし……)




ダークバハムート「……それだけでは、足りぬ」ユラ…


ーーフッ…




貴音「!!」

594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:37:02.46 ID:rmMzSg3nO

貴音(消えた!? いえ、考えられない速さで……!)


「……後ろだ」ブォンッ


貴音「! っ……ぶりんく!」バッ


ズシャアッ!!


ダークバハムート「………」

ダークバハムート「…………ふむ。幻影、か」ザシュッ



貴音「っ……はあっ、はあっ……!」ドクンドクン



ダークバハムート「今のは悪くなかったぞ。最良の判断であろう」

ダークバハムート「タカネ、お前は生き延びた」


貴音「っ……!」

貴音(一つ選択を間違えば、即ち、死……!)


ダークバハムート「今更何を抜けたことを。神に刃を向けるとはそういうことだ」


貴音「そう、ですね……」

貴音「!?」

貴音「ばはむーと殿……まさか、先ほどからわたくしの思考を……?」


ダークバハムート「これはすまぬ。申してなかったか」

ダークバハムート「我にはお前の心の声が聴こえる」

ダークバハムート「美しく気高き者が恐怖に怯える声、というのも悪くはないな……」

ダークバハムート「……ククッ!」


貴音「く……!」

貴音(ここにいるのは、もう以前のあの方ではない)

貴音(闇に堕ちた魔の者……)


貴音(……邪神、だーくばはむーと……!)

595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:40:55.15 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B11F ー


律子「はあああっ!!」

ブンッ!! ビュンッ!! ブォンッ!!


クルーヤ「ふっふっふ!」ヒョイヒョイ


律子「く……!」ブンッ


クルーヤ「おっと」ヒョイッ



春香「お、お姉ちゃんの剣が……全部かわされてる……!?」



クルーヤ「良い剣捌きだ、リツコ。君は強い」


律子「……完全に見切っておいてよく言うわよ、まったく……」


クルーヤ「いやいや、本当だってば。剣で君に敵う者はもうこの世にはいないんじゃないかなぁ、きっと」


律子「お世辞はいいです。もう理解しましたから」


クルーヤ「え?」


律子「全力でいかないとあなたには勝てない、って……!」ゴゴゴゴ


クルーヤ「……ほー」


春香「あれって確か……!」


律子「……赦されざる者の頭上に星砕け、降りそそげ!」バッ


律子「……メテオッ!!」



ヒュー… ヒューー…

ヒューー… ヒュー… ヒュー…


ドゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:44:25.56 ID:rmMzSg3nO

律子「………」


春香「お姉ちゃんっ!」タタタタ

律子「春香……」

律子「あなたはそこで見ていて。ここは私がやるわ」

春香「で、でもっ! あの人は私たちのお父さんなんですよ!」

律子「…………ふぅ」


律子「いい? 春香、よく聞いて」

律子「あなたがあの人にお世話になったのは知っているし、設定上私たちの父親だということも一応理解したつもり」

春香「だったら!」

律子「私たちはこの世界の人間ではないのよ」

春香「! そ、それは、分かってます……けど……」

律子「小鳥さんを倒さないと元の世界へ帰れない。アイドル活動だって再開できないの」

春香「………」

律子「あの人がわざわざプロデューサーに扮して私たちに近づいたのはなんのため? 小鳥さんの元へ行かせまいと私たちの足止めをするために違いないわ」

律子「それにおそらく、あの人を倒さない限りこの階は突破できない」

春香「う……」



……ザッ


クルーヤ「……うーん、まあ概ねリツコの言うとおりかな?」


律子「!」

春香「お、お父さん!」

597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:47:42.63 ID:rmMzSg3nO

律子「あんまり期待してなかったけど、やっぱりピンピンしてるわね……」

律子「メテオって最強の魔法じゃなかったの……?」


クルーヤ「最強の魔法には違いないよ。それに僕にだってまったくダメージがなかったわけじゃないさ」

クルーヤ「……ただ、リツコにはメテオを使う心構えがまだ出来ていない」

クルーヤ「その威力を完全に引き出せてはいないんだ」


律子「心構え……? どういうこと?」


クルーヤ「うーん、そうだなぁ……」ポリポリ



クルーヤ「ヒント1、『メテオは封印されし魔法である』」


律子「えっ?」


クルーヤ「ヒント2、『光あるところに闇あり。その逆もまた然り』」


春香「お父さん……?」 


クルーヤ「ヒント3、『天より降りそそぎし隕石、赦されざる者を討ち滅ぼす』」


律子「………」

春香「えっと、なぞなぞ……ですか?」


クルーヤ「まあ、そんなところかな?」

598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:51:57.11 ID:rmMzSg3nO

律子(メテオの真の力……? あの図書館の蔵書にはそんなこと一言も書いてなかったわよ?)

律子(……そういえば、貴音もメテオを使えたはずよね)

律子(生前あずささんが使ったメテオも、相当の威力だった)

律子(今の私のそれとは比べものにならないくらいの)

律子(もしかして……)

律子(私が魔道士ではないから真の力とやらを発揮できないとか?)

律子(だとしたら、どうしようもないじゃない……)



クルーヤ「悩むのは必要なことだ。悩んで悩んで、人は強くなる」

クルーヤ(……さて、どうしようかな。僕の目的のためには二人に剣を取ってもらわないといけないんだけど……)チラッ


春香「うぅ……」


クルーヤ(リツコがやる気満々なのはいいとして、問題はハルカか)

クルーヤ「………」

クルーヤ(……あの子は優しい子だ)

クルーヤ(多少スパルタになっちゃうけど、ハルカをやる気にさせるには、たぶん……)

599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:55:07.88 ID:rmMzSg3nO

クルーヤ「……よし、それじゃあそろそろお父さんの方からも行かせてもらおうかなっ?」チャキッ


律子「!」


クルーヤ「……大気満たす力震え……」


…ヴヴヴ…!!


春香「これは……!」


クルーヤ「我が腕をして閃光とならん……」


律子「……来るっ……!」チャキッ



クルーヤ「ーー無双、稲妻突き」ブォンッ



律子(速……!)



律子(ガードが間に合わなーー!)



ーーキィン!!





律子「………………え?」

600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 20:58:46.78 ID:rmMzSg3nO

春香「……間に合って、良かった……!」チャキッ





律子「春香……!」



春香「いくらお父さんでも、私の大事なお姉ちゃんを傷つけることは許せませんっ!!」


律子「春香、あなた……」

律子「私を守ってくれたのね。……ありがとう」

春香「お礼なんてそんな……。私のたった一人のお姉ちゃんですから!」ニコッ

律子(……今の技に反応出来なかった……)

律子(みんな私のことを強いって言うけれど、私には何かが足りないような気がする)

律子(根本的な何かが……)



クルーヤ(僕が授けた技とはいえ、反応したのか、閃光の速度に……)

クルーヤ(試練の山で会った時とは本当に見違えるようだよ、ハルカ)

クルーヤ(新たな世界。それを創るのは君たちだ、ハルカ、リツコ)


クルーヤ「よーし! それじゃあお父さんが少し稽古を付けてあげよう!」



春香「受けて立ちますっ!」チャキッ

律子「やるしかないわね……!」チャキッ

601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:02:03.05 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B3F ー


魔人兵「……発射!!」コオォ


雪歩「ひぃぃ〜〜っ!!」タタタタ


ズドドドドドドドオオンッ!!




魔人兵「ん、今度はあっちか」チャキッ

魔人兵「……発射っ!!」コオォ


雪歩「こ、怖いですぅ〜〜!!」タタタタ


ドドドドドドカアアン!!




魔人兵「逃さないぞ!」チャキッ

魔人兵「そりゃっ!」コオォ


雪歩「うええぇぇぇぇんっ!!」タタタタ



ズドオンッ!! ドゴオンッ!! ドガアアアンッ!!!


602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:07:00.89 ID:rmMzSg3nO

…ボロッ


魔人兵「……やれやれ、ちょっと周りを破壊しすぎたかな?」

魔人兵「でも、あの子が面白いほど逃げ回るもんだからつい……」

魔人兵「おーい、生きてるかーい!!」





雪歩「……うぅ……ぐすん……」





魔人兵「うーん……なんだか弱いものイジメみたいでかわいそうになってきたなぁ……」

魔人兵「でも、これも仕事だ。恨まないでくれよ?」ジャキッ



雪歩「ひうっ!?」ビクッ

雪歩(に、逃げ場……!)キョロキョロ

雪歩(……そんなの、もうないよね……。穴を掘って隠れるだけの地面も、盾になりそうな壁も……全部、壊されちゃった……)

雪歩(どうしよう……。アダマンアーマー無しであんな砲撃が当たっちゃったら、きっと私なんて粉々の木っ端微塵だよぅ……!)

雪歩(……ああ、このまま私、殺されちゃうのかな……)

雪歩(せっかく……せっかくみんなみたいに勇気が持てるようになったのに……)

雪歩(……けっきょく私は、アダマンアーマーに守られてないとなんにもできないダメダメさんなんですぅ……)



魔人兵「……さよなら、だ」ドゴォン!

ゴオオオオ…!!





雪歩(みんな、ごめんね……。私はもう……)




…ズドオオオオオンッ!!!



603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:11:27.02 ID:rmMzSg3nO

雪歩「………」

雪歩「………」

雪歩「………」

雪歩「………」



雪歩「……ぅ……」ピクッ

雪歩「……わ、私……」

雪歩(……まだ……生きてる……?)

雪歩(さっきの砲撃が直撃しちゃったはずなのに……)



…チカッ



雪歩(? 胸元で何か光って……)

雪歩(あ……これ、地下渓谷へ来る前にプロデューサーが作ってくれたネックレスだ……)


…チカッ


雪歩(控えめだけど、不思議な光……)

雪歩(見てるとあったかくなってくるような……)

雪歩(……もしかして、私を守ってくれたの……?)




『…………もう、諦めてしまわれたのですか?』




雪歩(えっ……? ネックレスから声が……)

雪歩(でも、この声って……!)

604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:14:58.20 ID:rmMzSg3nO

『何かに守られていないと敵に立ち向かうことすらできない……。私がお慕い申したユキホ様は、そんなに弱い方ではなかったはずですわ』


雪歩「あ……あのっ!」


『確かに、ここ最近のあなたは戦いに於いてずっと、魔物の攻撃をものともしない堅固な鎧に守られていました』

『……けれど、思い出してください』

『ファブール城での戦いの時も、磁力の洞窟での戦いの時も……』

『あなたは己の身ひとつで勇敢に敵に立ち向かっていったはずです』


雪歩「あっ……アンナさん……ですよね……?」グスッ


『………』

『どうか、本当の勇気を。……あなたは、本当はとても強いお方』


雪歩「アンナさん、私っ…………!」


『遠く離れた場所から、私はいつでもあなたを見守っていますわ……』


雪歩「ま、待って! 行かないでくださいぃぃ!」



雪歩「私……私っ……!」

雪歩「まだ、あなたに『ごめんなさい』も『ありがとう』も言えてないのに……!」







…ガシャアン!!



雪歩「!」

605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:22:35.32 ID:rmMzSg3nO

魔人兵「へぇ、今度こそ直撃したと思っていたけど、まだ息があるのか。なかなかタフなんだなぁ」


雪歩「………」



雪歩(本当の、勇気……)ギュッ



雪歩「っ……!」スクッ


魔人兵「……ん?」


雪歩「……!」チャキッ


魔人兵「……おや、反撃する気になったのかい?」


雪歩「私は本当に、ひんそ〜でダメダメで……」

雪歩「でも、そんな私にも大切な人たちがいて……」


……ザッ



雪歩「その人の想いに、私は応えたいっ……こんなところで終わりたくないですぅっ!」グッ



魔人兵(……表情が、変わった……?)



雪歩「私は…………『もう』、負けませんっ!!」



魔人兵「何があったのか知らないけど、恐怖に立ち向かおうとするその心構えは立派だ」

魔人兵「でも、君に不利な戦況は変わらない」

魔人兵「どう覆すつもりなのかな?」



雪歩(恐怖に立ち向かうのは、自分。いつだって自分との戦いなんだ……)

雪歩(私は、私にできることをやるだけ……)

606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:26:14.38 ID:rmMzSg3nO

魔人兵(なんだろう……。今のあの子は何かをやってくれそうな……)

魔人兵(そんな予感がする)

魔人兵(雇われの身として仕事を完璧にこなさなければならない立場なのに、なぜこうもわくわくしてしまうんだろう……)


魔人兵「……オレの砲撃、かわせるものならかわしてみなよ……!」ジャキッ



魔人兵「……発射っ!!」

ズドドドドドドドッ



雪歩(アンナさん、私、やりますっ……!)チャキッ

キラキラ…!



魔人兵(さっきと同じ……また妙な力をスコップに纏わせた……)

魔人兵(それも、さっきの数倍の輝きだ……!)



雪歩「えーーーーいっ!!」ブンッ



ブォンッ!!


…ズドドドドドドドドッ!!!



魔人兵「! 砲撃の軌道を、スコップ一本で逸らしたのか……!」


…ドガアアアンッ!!!


607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:30:32.62 ID:rmMzSg3nO

雪歩「はぁ、はぁっ……」


『……いいかい雪歩。気っていうのは誰だって自分の体の中に持っているものなんだ』

『大切なのは、どうやってそれを外へ出してやるか』



雪歩(真ちゃん……ううん、お師さん……!)


『頭で考えるんじゃなくて、感じるんだ。自分の中に揺らいでいるエネルギーを解放するイメージを思い描くんだよ』



雪歩「……そのエネルギーを……」チャキッ







雪歩「………………スコップに込めて、撃つッ!!」ブンッ






キラキラ…!


ゴオオオオオオオオッ!!



魔人兵「こ、これは……!」



ドゴオオオオオオオオンッッ!!!



608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:34:06.47 ID:rmMzSg3nO

魔人兵「………」 

魔人兵「…………くっ」ボロッ



魔人兵(……オレの装甲が、破られた……!?)



魔人兵(今の、ベヒーモスのヤツがこないだ会得した衝撃波に似ていた……)

魔人兵(だが、威力は彼女のそれの比じゃない……)

魔人兵(オレの最大兵器、波動砲にも匹敵する……!)




雪歩「……はぁ、はぁ、はぁっ……!」

雪歩「……な、なんとか、一矢報いましたぁ……!」



魔人兵(一矢報いた? 冗談じゃない……)

魔人兵(オレに残された装甲を合わせて考えても、今ので互角……いや)

魔人兵(あの子のスコップを包むオーラの力は未知数だ)

魔人兵(これはひょっとすると……)



雪歩「……!」チャキッ



魔人兵(かなり危険な状況だ……)

魔人兵(……なのに、「見てみたい」と思ってしまっている自分がいる)



魔人兵(あの子の……あいどるの底力ってやつを……!)

609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:37:14.60 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B2F ー



ベヒーモス「うおおおおっ!!」ブンッ


ドゴオオオンッ!!


真「うりゃあああっ!!」ブンッ


ドゴオオオンッ!!



ベヒーモス「……ふんっ!」ブワッ


バキィッ!!


真「ぐっ!?」ヨロッ


ベヒーモス「……そらっ!!」ビュッ


真「……っとと!」ザッ

真「虎煌拳ッ!」


ゴオオオオッ!!


ベヒーモス「ちっ……!」バシッ


ズドオオンッ!!



真「やあああああっ!」タタタタ

タンッ…

真「……雷煌拳ッ!!」バリッ


ズガガガガッ!!


ベヒーモス「ぐぅ……っ!」ヨロッ


真「幻影……!」


ベヒーモス「甘いっ!」ガシッ

ベヒーモス「うらっ!」ブンッ



真「うわああぁっ!?」



ヒューー…


クルンッ スタッ


真「…………はぁ、はぁ、危なかった……」

610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:39:52.06 ID:rmMzSg3nO

ベヒーモス「ちっ……しぶといねぇ、マコト」

ベヒーモス「アタイの攻撃にしっかりついてくるその運動量、流石だよ」


真「……ははっ、そっくり言葉を返すよ、ベヒーモス」

真「君の圧倒的なパワーには本当に驚かされる。まさかこんなに苦戦することになるとは思わなかったよ」




真「……でも、こうも思うんだ」

真「『もっとこの時間が続いて欲しい』ってさ」


ベヒーモス「………」


真「もちろん、ずっとここにいるなんてそんなわけにはいかない。ボクは小鳥さんのもとへ行かなくちゃならないから」

真「ただ、君との勝負が思った以上に楽しくってさ。この勝負もいつかは終わっちゃうんだって思うと、少しだけ決着をつけるのが惜しい気がして……」


ベヒーモス「………」

ベヒーモス「……あんたは不思議だね」


真「えっ?」


ベヒーモス「アタイのパワーを見て怖気づくどころか、真っ向から勝負を挑んで来る。それも、アタイのパワーに匹敵するほどの技で」

ベヒーモス「だからアタイはもっと強いパワーをあんたにぶつける。当然マコトも技の威力を更に上げて対応してくる」

ベヒーモス「アタイはこれでも親衛隊の隊長だ。アタマ張ってるからには負けるわけにはいかない」

ベヒーモス「でも……そんな立場なんて関係なく、あんたとのやり取りをアタイも『楽しい』って思っちまってる」

ベヒーモス「……あんたのそのまっすぐな気持ちにそう思わされたんだ、きっと」

ベヒーモス「ふふっ、アタイもまだまだ若いねぇ……」ニヤリ


真「……へへっ」ニコッ

611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:47:00.89 ID:rmMzSg3nO

ベヒーモス「だが、ここで疑問に思うことがひとつあるんだ」

ベヒーモス「あいどるになるヤツってのはみんなあんたみたいに腕が立つ者ばかりなのかい? アタイがコトリ様から聞いたあいどる像とは随分違うみたいなんだけど……」


真「あー……うーん……」

真「えーっと……ほ、ホラ、修行して強くなったんだよ、きっと!」


ベヒーモス「ふーん……まあ、アタイたちと戦うつもりだったんなら修行もするだろうけどさ」

ベヒーモス「でも、衣装はどうしたんだい? あいどるってのはもっとこう……ふ、フリフリのカワイイ衣装とかを着るもんじゃないのかい?」


真「……そりゃあ、ボクだってフリフリの衣装を着て戦いたいよ」

真「でも、今のボクにはあんまり似合わないかなって」

真「でも、いつかはそういうキャピキャピの衣装が似合う女の子に絶対なるんだ!」


ベヒーモス「………」

ベヒーモス「……最初から思っていたけど、マコト、あんたまさか、女なのに男っぽく見られるのが悩みだったりするのかい?」


真「えっ! どうして分かったの!?」


ベヒーモス「あんまり自分で言うのもなんだけど、実は……アタイもあんたと似たような境遇なんだ」

ベヒーモス「だいたいのヤツはアタイのことをレディとして扱ってくれやしない」


真「そっか……君もそうだったんだね。すっごく分かるよ、その気持ち」


ベヒーモス「あいどるになるためには可愛らしさも必要だって聞いた。そうだろ? マコト」


真「うん。だからこそ、ボクはもっともっと女の子らしくならなきゃいけないんだ!」


ベヒーモス「それはアタイだって同じだ。アタイも一応、その……お、女の子なんだからね!」

ベヒーモス「でも、だとしたらこうも考えられる」

ベヒーモス「アタイたちは似た者同士、つまり……」




ベヒーモス「あんたとアタイの勝負は、女の子らしさを賭けた戦いだ、ってね……!」バーン




真「な……なんだってー!?」ガビーン

612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:49:56.24 ID:rmMzSg3nO

ベヒーモス「………」


真「………」





ベヒーモス「勝負ってのは常に非情、そして絶対だ」


真「……うん、分かってる。この勝負、勝った方が……」


ベヒーモス「……女子力が高いってことになる……!」


真「………」ゴゴゴゴ


ベヒーモス「………」ゴゴゴゴ



ベヒーモス「出し惜しみは無しだ。アタイの女子力を全てあんたにぶつけてやるよ……!」


真「望むところだ! ボクの方が女の子らしいってこと、証明してやるっ!」グッ


真「うおおおおっ!!」タタタタ






真「……きゅんきゅん☆正拳突きぃッ!!」ブォンッ


ベヒーモス「ラブリー☆ショルダータックルァァ!!」ズドドド



…ドゴオオオオォォオオンッ!!!


613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:52:22.08 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


レッドドラゴン「おりゃっ!!」ブンッ


あずさ「プロテス〜」

パキーン!


レッドドラゴン「うらあああっ!!」


ドゴオッ!!


あずさ「きゃっ……!」ヨロッ


レッドドラゴン「もらったァ! 熱せ」


あずさ「ぶ、ブリザガ〜」バッ


コォォォ…シャキィィン!!


レッドドラゴン「モガッ!?」ジタバタ



あずさ「!」

あずさ(今……! 今このチャンスに『あの魔法』が使えれば……!)

あずさ(でも、出てこないのよねぇ……)

あずさ(本当に、なんで思い出せないのかしら〜……?)


レッドドラゴン「んにゃろぉ!!」ブンッ


バキィンッ!!


レッドドラゴン「ふぅ……」

614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:55:11.11 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「……どうした、アズサ?」


あずさ「………」


レッドドラゴン「ブリザガで口を封じられてたオレ様は、あんたからすれば絶好の叩き時だったはずだぜ」

レッドドラゴン「それをしなかったってことは、まだ思い出せないんだな? 例の魔法をよ」


あずさ「………」


レッドドラゴン「言っておくが、勝負ってのは運の要素も強ええ」

レッドドラゴン「あんたが今だに思い出せないってんなら、それはあんたに武運が無かったってことになる」

レッドドラゴン「ここからはもう、手加減はしねーぜ!」



レッドドラゴン「コトリ様の親衛隊、特攻隊長として、オレ様は……全力であんたを撃つ!!」



あずさ「!」

615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 21:57:29.50 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「逃げ場なんて残さねえ。この階全体を覆い尽くすくれーの、特大の熱線だ……」

レッドドラゴン「はあああああっ……!!」ゴゴゴゴ



あずさ(勝負を決める気なのね、レッドドラゴンさん)

あずさ(思えば、今までだって私を消せる場面は何回もあったはず)

あずさ(ここまで待ってくださったレッドドラゴンさんの期待にも応えられず……)

あずさ(……みんなとの約束も果たせないまま、終わってしまうだなんて……)

あずさ(そんなの……)



レッドドラゴン「足掻いてみせろや! アズサァァァッ!!」

ゴオオオオオォ!!!




あずさ(……そんなの、悔しすぎるわ……!)




あずさ(お願い……!!)



ゴオオオオオォッッ!!!



あずさ(………………私に、力を…………!!)ギュッ











……キラッ




あずさ「…………え?」

616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:01:58.10 ID:rmMzSg3nO
ー 地球 ファブール城上空 ー


…ビュオオオ


ルビカンテ「………」

バルバリシア「………」

ルビカンテ「………」

バルバリシア「………」



バルバリシア「……なに黄昏れてるのよ、ルビカンテ」

ルビカンテ「……いや、良い風だと思ってな」

バルバリシア「ふふっ、そんなの当たり前じゃない。この『風のバルバリシア』の背中に乗って感じる風なんだから!」

ルビカンテ「風のバルバリシア……か。懐かしい呼び方だ」

バルバリシア「他人事みたいに言わないでくれる? あなたの気まぐれのせいで私のこの二つ名ももう必要なくなっちゃったんだから」

ルビカンテ「平和な世界はお気に召さなかったか?」

バルバリシア「そういう意味じゃないわよ。……意地が悪いわねぇ」




カイナッツォ「あおいぃぃ〜〜とりいぃぃいいい!!!」




スカルミリョーネ「……だ、黙れカイナッツォ、み、耳が、腐…る……!」フラフラ

カイナッツォ「まっすぐ飛ばんかゾンビめ! 耳どころかお前は全てが腐っているだろうが!」

スカルミリョーネ「……そ、そんなこと言うと、振り落とす…ぞ……?」ブォン

カイナッツォ「なっ!? ちょ、ヤメロ、私を殺す気か!!?」ガシッ

スカルミリョーネ「……し、死してなお恐ろしい土のスカルミリョーネの力、とくと味わうがい…い……!」ブォンブォン

カイナッツォ「ぎゃあああ! ふざけるなあああぁぁああっ!!!」



バルバリシア「……あの二人、あんなに仲が良かったかしら?」

ルビカンテ「ふ、あいどるたちの影響かもな」

617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:06:45.50 ID:rmMzSg3nO

バルバリシア「それにしてもカイナッツォ、相当酷い歌だったわよ? スカルじゃないけど耳がもげちゃいそうだったわ」

ルビカンテ「あれでもヤツなりの精一杯なのだろうが、確かに聴くに耐えんな」

カイナッツォ「……おい、それは聞き捨てならんぞお前たち! 私の歌を馬鹿にするのはいい。だがあの小娘の歌を馬鹿にするのは許さんっ!!」

バルバリシア「誰もチハヤの歌をバカにしてなんかいないじゃない。あなたが歌うと台無しって言ってるのよ!」

カイナッツォ「くっ……!」

カイナッツォ「だ、だが、歌を聴いて私は一気にヤツのことを気に入ったぞ!」

カイナッツォ「あれだけ歌に魂を込めて歌える者など世界中を探してもいないだろう。チハヤこそが最強のあいどるだ! 間違いない!」

バルバリシア「うーん……まあチハヤもなかなかいいセン行っているとは思うけど、やっぱりミキには敵わないわねぇ」

スカルミリョーネ「……あ、アズサが一番……」

ルビカンテ「バカめ、イオリに勝てるわけがなかろう」



カイナッツォ「………」

バルバリシア「………」

スカルミリョーネ「………」

ルビカンテ「………」



カイナッツォ「……まあ、なんだな。私たちもすっかりあいどるたちに感化されてしまったものだな」

スカルミリョーネ「……そ、それは仕方のないこ…と……」

バルバリシア「当然よ! だってあの子たちは人を惹きつける力を持っているもの」

ルビカンテ「……不思議なヤツらだ」

618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:12:46.05 ID:rmMzSg3nO

カイナッツォ「ところでルビカンテ。この見回りとやら、いつまで続ける気だ? かれこれ数時間は飛んでいるぞ?」

バルバリシア「まあ、実際に飛んでるのは私とスカルなわけだけど」

スカルミリョーネ「……い、生き延びて迷子になった人間、助け…る……」

ルビカンテ「アン、といったか。あのトロイアの神官の手助けをしているだけだ。世界を一回りしたら休もう」

カイナッツォ「まったく、我々四天王がまさか人間の小間使いに駆り出されることになるとはな……」

ルビカンテ「そう言うな、カイナッツォ。戦いをやめたからといってすぐに平和が訪れるわけではないのだ」

カイナッツォ「ふん、まあいい。こんな風に空を飛ぶのも、たまには悪いものでもないからな」




スカルミリョーネ「ーーっ!」ピクッ




カイナッツォ「……ん? どうしたスカル。手足でも腐り落ちたか?」

スカルミリョーネ「……よ、呼んで…るっ……!」

バルバリシア「呼んでるって、人間でも見つけたの?」

スカルミリョーネ「……み、南だ、ついて来い、バルバリシア……!」

ビュウゥゥゥーーーー!!


カイナッツォ「のわああぁぁあっ!! いきなり飛ばすなぁーーっ!!」



ルビカンテ「ただ事ではなさそうだな。……おい、バルバリシア」

バルバリシア「……はいはい、仰せのままに」


ビュオオオッ…!!


619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:18:39.07 ID:rmMzSg3nO
ー ミシディア 祈りの館 ー


長老「………」

長老「………」

長老「………」

長老「………」



…ガタンッ

ドタドタドタッ!!



長老「………」

長老「……祈りの最中じゃ、静かにしてくれんかのぅ」



スカルミリョーネ「……お、お邪魔しま…す……」ペコリ

カイナッツォ「……いたたた……!」

カイナッツォ「まったく、いったい何なのだスカル! この辺りはさっき見回っただろう?」


…スタスタ

バルバリシア「相変わらず田舎よねぇ、ミシディアって」キョロキョロ

ルビカンテ「……ほう、あの時の翁か」



長老「誰かと思えば、和平を結んだ魔物たちか。何か用かの?」



スカルミリョーネ「……あ、アズサと話がしたい……」

カイナッツォ「はぁ!? ズルいぞ貴様っ!」



長老「お主が、か?」



スカルミリョーネ「……と、時が、来たのだ……。あ、アズサの本当の力を目覚めさせる時が……!」



長老「……ふむ、そういえばお主らもあいどるたちと関わりがあったんじゃったか」

長老「丁度、ここで共に祈りを捧げていたリヴァイアサン殿たちが喚び出されてしまって、月への祈りの力が弱まっていたところじゃ」

長老「祈りは全ての者に平等。お主の想い、届けるが良い」



スカルミリョーネ「……お、恩に着…る……!」

620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:22:51.23 ID:rmMzSg3nO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


あずさ(……)

あずさ(……………)

あずさ(…………………)



あずさ(…………私……?)

あずさ(レッドドラゴンさんの全力の熱線を受けて……)

あずさ(……生きて…る……?)



『…………サ……アズサ……!』



あずさ(この声は……)

あずさ(……もしかして、スーさん?)


『……そ、そう…だ……』


あずさ(まあ、お久しぶりねぇ〜♪)

あずさ(……あら? でも、スーさんたちは地球でお留守番じゃなかったかしら?)


『……み、ミシディアから、声を届けてる……』


あずさ(ミシディア……って確か、亜美ちゃん真美ちゃんの故郷ね。なぜそんなところから?)


『……あ、あまり時間は無い。必要なことだけ言う…ぞ……?』


あずさ(あらあら、何か焦っているみたいねぇ。スーさんにしては珍しいわ〜)


『……あ、アズサ。生き返る時が来た……!』


あずさ(……ええっ!? そ、それはどういうことかしら〜?)

621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:28:19.91 ID:rmMzSg3nO

『……あ、あの時。ゾットでリツコ様と対峙したアズサがーーーを使って力尽きた時。お前の肉体は、正確には生きていた……』


あずさ(あ、あの、今なんて? スーさん、私、なんて魔法を……)


『……だ、だが、お前の魂は肉体を離れて彷徨う寸前だった。その魂を肉体に繋ぎ止めるため、オレの魂を一時的にアズサに貸した……』


あずさ(そうだったの? ということは私、死んでしまったわけではなかったのね……)


『……な、仲間に訊けば分かる。お前の心臓は、あの時点で動いていたはず……』

『……で、でも、オレの魂、返してもらう時が来た……』


あずさ(スーさんに魂を返してしまったら、私は……どうなってしまうの?)


『……し、心配するな、アズサ。今のお前なら、人間の肉体に戻れる。迷えるお前の魂は、お前の強い願いによって再び、その身体に還る……』


あずさ(まあ……!)


『……い、一時的にゾンビとなっていたお前は、ーーーを忘れてしまっただろう。ーーーは光の者にしか扱えない魔法だから……』


あずさ(スーさん、よく聞こえないわ。お願い、もう一度……)


『……つ、強く願え。想いは、必ず……!』


あずさ(……スーさん……)


622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:31:34.80 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「……はぁ、はぁっ……!」ヨロッ

レッドドラゴン「ど、どうだ、これがオレ様の全力だぜ!」

レッドドラゴン「参ったかアズサ!」



レッドドラゴン「………」



レッドドラゴン「……ちっ、影も形も消えちまいやがったか……」

レッドドラゴン「アズサのやつ、魔法が間に合わなかったんだな……」

レッドドラゴン「…………ちくしょう」

レッドドラゴン「勝ったってのに、なんでこんなに後味が悪いんだ!」



レッドドラゴン「………」



レッドドラゴン(……あばよ、女神様)

レッドドラゴン(初恋、ってやつだったぜ)

623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:33:48.92 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「……さて、いつまでもつっ立ってても仕方がねぇ。他の連中の様子でも見てくっかな」



……ザッ




レッドドラゴン「……っ!」ビクッ

レッドドラゴン「お、お前……!」



「……うふふ、私、なんとか生きてたみたいです♪」



レッドドラゴン「あ、アズサ!? よ、良かった!!」

レッドドラゴン「じゃねえ、どうやってオレ様の熱線を防ぎやがった!?」



あずさ「さあ……? ごめんなさい、あんまり覚えてないんです〜」



レッドドラゴン「くそっ、可愛い!」

レッドドラゴン「け、けど、もう一発くれーなら全力の熱線を撃てないわけでもねぇ」

レッドドラゴン「今度こそジ・エンドだぜ!」



あずさ「あらあら、それじゃあ私も頑張らないといけませんね〜」

624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:35:56.64 ID:rmMzSg3nO

あずさ(……強く、願う)

あずさ(大丈夫。『今の私』なら、きっと出来るわ!)



あずさ(私に……)



あずさ(どうか、力を……!)



…キラッ



あずさ(! また……! さっきと同じね。プロデューサーさんから頂いたネックレスが光ってる……)

あずさ(確かこれって、クリスタルの欠片なのよね?)

あずさ(もしかして何か不思議な力が……)



あずさ「ッ……!」ドクンッ














あずさ「……メ…………テオ……?」

625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:37:59.50 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「お別れだぜ、アズサ!」

レッドドラゴン「最大出力の熱線だあああっ!!」


ゴオオオオオオオオッッ!!!



あずさ「………」



レッドドラゴン(やっぱり、さっきのはたまたまかよ)

レッドドラゴン(恨むなよ、アズサ……!)



あずさ「……赦されざる者の頭上に……」



レッドドラゴン(……えっ?)



あずさ「星砕け、降りそそげ!」



レッドドラゴン(ま、マジか!? この土壇場で……!) 



あずさ「うふふっ……」ニコッ





あずさ「……メテオ〜♪」





ヒュー…



ヒュー… ヒューー… ヒュー…

ヒューー… ヒュー… ヒューー…



ズドドドドドドドドドドドッッ!!!



ドゴオオオオオオオオンッ…!!!


626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:40:17.12 ID:rmMzSg3nO

あずさ「……はぁ、はぁっ……」ヨロッ



あずさ「ちょ、ちょっとしんどかったわ〜」

あずさ「生身の体も久々だもの、仕方ないのかしら」

あずさ「……あつっ!」

あずさ「あらあら、左腕に火傷が……」

あずさ「……ケアルラ〜」

シャララーン! キラキラキラ…!


あずさ「……ふぅ。この感覚、ものすごく懐かしい気がするわね」

あずさ「う〜ん、やっぱりリハビリとかしないといけないのかしら〜?」

あずさ「………」

あずさ(……ありがとうございます、スーさん。本当に、助かりました)



あずさ「……そうだわ、そういえばレッドドラゴンさんは〜……」キョロキョロ



「……うぅっ……」



あずさ「!」

あずさ「レッドドラゴンさん……」

タタタタ…

627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:42:40.30 ID:rmMzSg3nO

レッドドラゴン「……へ……へへっ……や、やりゃできんじゃねーか、アズサ……」

あずさ「動いてはダメです。今、回復を……」

レッドドラゴン「ば、バカヤロー! 敵に情けなんかかけるんじゃねえ!」

あずさ「で、でも〜」

レッドドラゴン「……あんたの勝ちだ。とっとと行け……」

あずさ「あなたをひとり残しては行けません」

レッドドラゴン「ふざけんな……! どこまで優しいんだ、あんたはよォ……!」

あずさ「いいえ、優しいのはレッドドラゴンさんです」

あずさ「私のことなんていつでもやっつけられたのに、わざわざ私がメテオを思い出す時間までくれて」

あずさ「この戦い、本当なら私の負けだったんですよ?」

レッドドラゴン「………」

レッドドラゴン「……本気のあんたとやってみたかっただけだ」

レッドドラゴン「ほ、惚れた……女だからな……///」

あずさ「……あの〜、今なんて?」

レッドドラゴン「なっ、なんでもねぇ! もう行っちまえ!!」

あずさ「あらあら……」

628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/03/09(木) 22:44:26.54 ID:rmMzSg3nO

あずさ「……分かりました、それじゃあ私、行きますね?」

あずさ「私が言うことじゃないかもしれませんけれど、どうかお体に気をつけて」

レッドドラゴン「……おう」



レッドドラゴン「…………最後に、ひとつだけいいか?」


あずさ「はい……なんでしょう?」



レッドドラゴン「人間に戻ったあんたも、最っ高に可愛いぜ……!」



あずさ「……うふふっ♪ ありがとうございます〜♪」ペコリ


タタタタ…




レッドドラゴン「………」


レッドドラゴン「……あーあ、怪我が痛くて涙が出てくらぁ……」ポロッ

629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/09(木) 22:46:56.22 ID:rmMzSg3nO
ここまでです
カイナッツォが千早Pになったのは、巨人戦で千早の歌を聴いてからです
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/10(金) 08:18:08.67 ID:M5H45BDqO
四天王の選ぶアイドル談義があったら面白そうだな
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/16(木) 04:20:39.67 ID:HL4zm5NnO
なんだかんだでこのSS2014年7月に始まったから三年近くたつんだな
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/20(月) 19:40:11.69 ID:lZ7X+kbGO
ふと過去スレ読み返して思ったんだけどさ
黒ちゃんリヴァイアサンなんだよな?蛇なんだよな?
……つまりあの姿のままで顔が黒ちゃん……なの?
グロッ!ある意味でRー18じゃなかろうか
633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/22(水) 07:04:31.81 ID:6j4266zGO
このままの流れでこのスレで終わらなそうな気がする
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/03(月) 04:03:36.78 ID:nHjxpHBjO
春香誕生日おめでとう
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/04/07(金) 10:55:10.69 ID:Cs5pkJBqO
ー 月の地下中心核 ー


『……メテオ〜♪』

『ズドドドドドッ!!!』



P「………」

小鳥「………」

P「………」

小鳥「………」


P「……よし、ナイスあずささん! 流石ですっ!」グッ

P「…………あ」チラッ

小鳥「………」

P「す、すみません、嬉しくってつい……」

小鳥「いいんですよ、別に私のことは気にしなくても」

P「………」



P「あの、小鳥さんとしてはどうなんですか? やっぱり魔物側に勝ってほしかったですか?」

P「……って、なにバカな質問をしてるんですかね、俺ってば。あはは……」

小鳥「うふふ♪」

小鳥「まあ、立場上素直には喜べませんけど、あずささんが負ける姿は想像できませんでしたねー」

P「……やっぱり優しいんですね、音無さんは」

小鳥「えっ? やだなぁ、そんなことないですよぅ、プロデューサーさんったら」

P(……はぁ、なにしてるんだ俺)

P(これじゃ音無さんを救うどころか地雷踏みまくってるじゃないか)

P(しっかりしなきゃ……)

636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 10:58:40.10 ID:Cs5pkJBqO

小鳥「それよりプロデューサーさん、気付きました?」

P「何がです?」

小鳥「今の戦いであずささんがやられそうになった時、胸元がこう、パーって光りましたよね?」

小鳥「その後のあずささん、なんだか雰囲気が変わった感じでしたし、何か力に目覚めたのかしら」

P「ああ……」

P「月に来る前にアイドルたち全員にクリスタルを持たせたんですよ。といっても、それぞれが持っているのはほんの小さなカケラですけど」

小鳥「クリスタル……」

小鳥「なるほど、私への対策はバッチリってところですか」

P「……そうですね」

P「あの子たちにはお守り代わりとして渡してはいますが、一応音無さんとの決戦のことも見据えています」

小鳥(……そうよね。本来ゼロムスとの最終決戦はクリスタルを使ってからが本番だもの)

小鳥(んー、流石プロデューサーさん、抜け目ないわねぇ)

小鳥(ま、私もそう簡単にやられちゃうわけにはいかないんだけど)

小鳥(でも……)

小鳥(『カケラ』でいいんですか? プロデューサーさん)

小鳥(もしかしたら、ちゃんとしたクリスタルじゃないと私に通用しないかもしれませんよ……?)


637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:01:41.12 ID:Cs5pkJBqO
ー 月の地下渓谷 B4F ー



亜美「……はぁ、はぁっ……」

亜美「………」



金竜「……ぐ……!」グッタリ



亜美「ど、どうだ! 大魔道士亜美様の力を思い知ったかーっ!」ビシッ


金竜「……ぬぅ……おのれ……!」


亜美「………」チラッ



銀竜「」カチコチーン



亜美(銀ぴょんはカチンコチンに凍らせたし、金ぴょんもダウン……)

亜美(亜美、やれるだけのことはやったよ!)

亜美(もう起き上がってこないでよね! もう亜美のMPはゼロなんだよ……)

亜美(エーテルももうないから回復もできないし、今向かってこられたら……)


金竜「………」





金竜「………………ずえぇぇぇいっ!!」ガバッ



亜美「……げっ!?」

638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:05:37.86 ID:Cs5pkJBqO

金竜「……我は死なぬ……」

金竜「我が弟、銀竜の為にも……貴様に勝つッ!!」



亜美「な、なんでー!? なんでまだ生きてんのさー!」

亜美「金ぴょん、ゴキブリ並みの生命力だよ〜!」



金竜「ふふっ……!」

金竜「ごきぶり……というものは良く分からぬが、さぞや名のある戦士なのだろうな!」



亜美「う、うーん……まあ、ある意味そうとも言えるかも……」



金竜「ともあれ、我はまだ余力を残しているっ……!」

金竜「アミ、覚悟は良いな?」



亜美「ふ、ふん! 亜美だってまだまだ与作を残してるもんねっ!」

亜美(……もう残ってないよ〜!)



金竜「くっ、流石はあいどる……あれだけの魔法を使ってまだ力を温存しているか……」



亜美「う、うん。亜美、まだまだチョー元気だから、金ぴょんはそろそろ逃げた方がいいっぽいよ〜?」

亜美「さっきよりもすんごい魔法使ってみせちゃうよ〜?」

亜美(お願いだからビビって〜!)



金竜「………」

639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:07:47.74 ID:Cs5pkJBqO

金竜(迷うことなどない。我にはもう、前進以外に道は残されておらぬ……!)

金竜(銀竜……)

金竜「……ならば、我はそのさらに上をいく力でお前を迎え撃とうぞ!」



亜美「へ、へぇ、そう。そりゃすごいねー」

亜美(も〜、金ぴょんの分からずや〜!)




金竜「行くぞっ!」ブワッ



亜美「うあうあ〜!」



金竜「……ふんっ!」

ビュンッ…


亜美「うわぁっ!」ヒョイッ


ドゴオンッ!!


亜美「……ふぇぇ、今あんなのくらったらヤバいよ〜!」タタタタ


金竜「……そこだっ!!」

ビュン…

バキィッ!!


亜美「ぐえっ!」ヨロッ


…ドサッ

640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:10:15.57 ID:Cs5pkJBqO

金竜「追い詰めたぞ、アミ……」


亜美「う……うぅ……」


シュルシュルッ…

ガシッ!


亜美「……う……ぁ……」

亜美(体に巻きつかれて……動けないよ……)


金竜「小さくも勇敢なる魔道士アミよ。お前は勇気あふれる立派な戦士であった……」

金竜「時間をやろう。最期に何か遺す言葉はあるか?」



亜美「……ぅ……っ!」

亜美(……はるるん、りっちゃん、兄ちゃん……)

亜美(みんな……どーやら亜美の冒険はここまでっぽいよ……)

亜美(最後まで行けなくて、ゴメンね……)

641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:12:39.02 ID:Cs5pkJBqO

金竜「………」

金竜「……言葉はないか。沈黙も或いは雄弁に通ずるのかもしれぬ」



亜美(……あーあ、最後まで行きたかったなぁ……)

亜美(せっかく兄ちゃんに助けてもらったのに、こんなトコでやられちゃうなんて……)

亜美(……………………真美……)



金竜「……さらばだ、あいどるよ」










亜美「真美ーーーーーーっ!!!」












「………………ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…!





亜美「………………え?」

642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:15:19.71 ID:Cs5pkJBqO

「こらー! そこの細長いの! かわいい妹になにしてくれてんのさー!! 中学生に手を出したら犯罪なんだかんねっ!!」




金竜「ほ、細……え?」




真美「せくしー美少女白魔道士、真美、見参っ!!」ビシッ



亜美「真美っ……!!」パァァ
 
金竜「同じ顔……だと……!?」



真美「亜美、受け取れぇい!!」ブンッ

ヒュンッ




亜美「えっ?」パシッ

亜美「! これって……!」



金竜「くっ、こやつめ!」

ギチギチッ!

亜美「ぅあっ……!」




真美「亜美っ!!」

643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:18:16.87 ID:Cs5pkJBqO

金竜「貴様、援軍か!」

金竜「何を渡したか知らんが無駄なことだ!」

金竜「アミを始末したら……次は貴様の番だ!」




真美「んっふっふ〜♪ そううまくいくかなー?」

真美「亜美はカンタンにやられちゃったりしない強い子だもんモンねっ! 真美、信じてるもん!」



金竜「何を馬鹿なことを……。アミは我によって身体の自由を奪われ、さらに今となっては言の葉を発することも叶わぬ!」

金竜「この状況で何をしようというのだ?」

金竜「……そうか。貴様、マミといったか。アミの姉だと申したな?」

金竜「妹を助けに来たはいいが、恐怖で身体が動かぬ、といったところか」

金竜「なんとも情けないことだな……!」

金竜(………)



真美「………」

644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:22:12.45 ID:Cs5pkJBqO

真美「……確かに亜美は今動けないししゃべれないかもしんないけど、手は動くよね?」



金竜「……なにっ?」



真美(亜美……!)クイッ

真美(…………GO!!)p




亜美(……オッケー真美!)



亜美(……暴れちゃえ……!)


 



亜美(………………『ほしくずのロッド』!!)ブンッ





キラキラキラ…!!



金竜「な、何っ!? これは……!」



ヒューーーー…


ズドドドドドドドッ!!

645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:25:21.25 ID:Cs5pkJBqO

真美「亜美っ!」タタタタ



真美「平気? 立てる?」スッ

亜美「うん……真美のケアルガのおかげだよ」

真美「よかったぁ……。でも、無理しちゃダメだよ?」

真美「亜美、しょっぱなから魔法じゃんじゃん使ってたし、どーせもうMPもゼロでエーテルも切れちゃったんでしょ?」

真美「それを見越して『ほしくずのロッド』を回収する真美マジ有能!」

真美「はい、エーテル」スッ

亜美「うぅ……すまぬ……」ゴクゴク



真美「いやー、それにしてもカンイッパツってカンジだったねー」

真美「妹のピンチにさっそうとかけつける姉」

真美「まさにこれこそが最強の姉っしょ!」

亜美「………」

亜美「……真美っ!」ガバッ

真美「ふぇっ!? あ、亜美?」

亜美「うぅっ……会いたかったよぉ〜!」

真美「………」

真美「……うん、真美もだよっ」ギュッ

亜美「うえええぇぇえっ!」ポロポロ


真美(……ひとりでよくガンバったね、亜美……)ナデナデ

646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:28:08.22 ID:Cs5pkJBqO

亜美「……ま、そんなこんなで真美さんや」

真美「なにかね、亜美さんや」

亜美「亜美の予想だと、展開的に敵はまだ生きてる気がするのだよ」

真美「んー……。確かに、真美が合流したところで『こっからが本当の戦いだ!』ってなりそーだよね」

真美「敵さんのじょーほーについてはどんなカンジなの?」

亜美「んっとね、敵は二体。金竜と銀竜の兄弟……あ、亜美は金ぴょんと銀ぴょんって呼んでるんだけど、亜美が一体倒したから残すはさっきの一体だけだよ」

亜美「でも、真美の持ってきてくれた『ほしくずのロッド』もあるし、亜美たち二人が揃えば敵はいないっしょ!」

真美「兄弟かぁ……」

真美「亜美、あんまりユダンしないほーがいいかも」

亜美「えっ?」

真美「兄弟のキズナ、甘く見ないほーがいいっぽいよ」

亜美「………」

亜美「……うん。だね」





金竜「………………負けぬっ……!」ヨロッ





亜美・真美「!!」

647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:31:54.52 ID:Cs5pkJBqO

金竜「我は……負けぬ……負けられぬのだ……!」

金竜「ぬおおおおおっ!!」ビュンッ


真美「行くよ、亜美! ヘイスト!」バッ

カタカタ…シャキィン!

亜美「よしきた!」

亜美「ぬおおおおおっ!!」タタタタ



金竜「ぬりゃっ!!」ブンッ


亜美「ふっ、見切った!」シュンッ


ズドォン!!


亜美「くらえー! 『ほしくずのロッド』!」ブンッ



キラキラキラ…!


ヒューーーー…


金竜「おおおおおおおおっ!!」


ズドドドドドドドッ!!
 




金竜「……はぁっ、はぁっ……」

金竜「ま、まだだっ……!」ヨロッ

648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:34:46.40 ID:Cs5pkJBqO

亜美「うわぁ……もう亜美の魔法何発ブチ込んだかわかんないけど、しぶといなぁ」

真美「真美、まだ全然カツヤクしてないし、むしろ大歓迎だよ!」



金竜「……はぁ、はぁっ……」

金竜(……姉妹、か……)


『もしも亜美がピンチになったとしても、真美を盾にして亜美だけ生きのびるなんてことだけは……ゼッタイにしない。したくない!』

『亜美はカンタンにやられちゃったりしない強い子だもんモンねっ! 真美、信じてるもん!』



金竜(………)

金竜(我は、間違っていた……)

金竜(銀竜……)チラッ

 

銀竜「」カチコチーン



金竜(勝負とは非情なもの……。しかし……) 

金竜(お前を犠牲にして勝利したとしても、そこにはなんの意味も無いのだっ……!)

金竜(何故ならば……)



金竜「我らは、二人で共にあいどるになると誓い合ったのだからっ……!」

649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:37:30.94 ID:Cs5pkJBqO

真美「ん? なんか金ぴょん、おかしなこと言い出したよ?」

亜美「うーん、よくわかんないけど、金ぴょん銀ぴょんは亜美たちを倒してアイドルになりたいんだってさ」

真美「ふーん、変なのー。ピヨちゃんのオロシガネってヤツかな?」

亜美「たぶんねー。でも、金ぴょんには悪いけど、二人がアイドルになるのはさすがにムリがあるんじゃないかなぁ?」


金竜「出来る出来ないではない……。やるのだ」

金竜「それは、我ら兄弟の悲願なのだからな……!」



亜美・真美「!!」




亜美「……そっか。それは金ぴょんたちの『夢』なんだね」

真美「ひとの『夢』を笑うのは……失礼だよね」



金竜「………」

金竜(良き戦士たちに出会えた)

金竜(最愛の弟よ……我に力を……)



金竜「…………いざッ!!」




亜美・真美「……勝負じゃー!!」

650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:44:41.57 ID:Cs5pkJBqO

金竜「……稲妻よ!!」



ズガガガドゴォォォンッ!!



亜美「っ……あぶなっ!」

真美「亜美、へーき!?」

亜美「うん!」

真美「行くよ、亜美!」スッ

亜美「おっけー真美っ!」ギュッ



金竜「手を繋いだ……?」

金竜「そうか、それがお前たちの……」

金竜「撃ってみせよ! その力、この稲妻で砕いてみせよう!」バリバリッ



亜美・真美「はぁぁぁぁっ……!!!」ゴゴゴゴ



亜美(久しぶりだね、ふたりがけも)

真美(そだね。でも、きっと前とは威力もぜんぜん違うっぽいよ!)

亜美(うん! モチのロンだよ!)



亜美・真美「赦されざる者の頭上に、星砕け降り注げっ!!」




亜美・真美「…………メテオ!!!」




ヒュー… ヒューー… ヒュー…

ヒュー… ヒュー… 



金竜(封印されし魔法……! よもやこの魔法を使えるとは……)

金竜(我の稲妻だけでは防ぎきれぬ……。もはやこれまでか……!)




「ーー兄者ぁぁぁぁっ!!!」




金竜「!!」

651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:46:07.18 ID:Cs5pkJBqO

銀竜「我も助太刀するぞっ!!」

銀竜「ブレイズっ!!」

ゴオオオオッ!!


金竜「ぎっ、銀竜!? 生きていたのか!」

銀竜「兄者ひとりに辛い思いをさせてなるものかっ!」

金竜「銀竜……!」




真美「亜美、弟くんが復活しちゃったっぽいよ!?」

亜美「ぬぅ……死んだフリとはひきょーな!」

亜美「でも、亜美たちだって負けてらんないっしょ!」

真美「おうともさ!」



亜美・真美「うおおおおぉぉおおっ!!」




金竜・銀竜「おおおぉぉおおおおっ!!」





…ドッゴオオオオオン!!!



652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:48:25.62 ID:Cs5pkJBqO

亜美「………」

真美「………」




金竜「………」

銀竜「………」




金竜「ふふふ、残念だったな。お前たちのメテオは凌いだぞ!」

銀竜「我ら兄弟が力を合わせれば、不可能など無いのだっ!」




亜美「………」チラッ

真美「………」チラッ



亜美・真美「………………ふっふっふっふー!」



亜美「亜美たちのメテオを防いだくらいで調子に乗ってもらっちゃあ困りますなー」

真美「まったくですなー」



金竜「……なにっ? さっきのメテオはお前たちの最大の魔法ではなかったとでも言うつもりか!?」

銀竜「馬鹿な……メテオは現存する魔法の中で最強のはず!」

653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:51:21.56 ID:Cs5pkJBqO

亜美「残念だったね、金ぴょんに銀ぴょん……」

真美「真美たちアイドルは変身するたびに強くなる」

亜美「その変身を、亜美たちはあと2回残している……」

真美「これがどういうことかわかるかね?」



金竜「変身……だと……!?」

銀竜(いや……これは明らかなハッタリだ。いくらあいどるが未知の存在とはいえ、人間が変身するなど聞いたこともない)

銀竜(アミめ、またもや嘘でこちらの戦意を削ぐつもりか。ならばこちらもハッタリで逆に戦意を喪失させてやる……!)


銀竜「……残念だったな、小娘たちよ!」



銀竜「我なんかあと3回変身を残しているのだっ!!」バーン



亜美・真美「な、なんだってぇー!!?」ガビーン



金竜「な、なんだとー!!?」ガビーン





銀竜「兄者ェ……」

654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/07(金) 11:54:17.18 ID:Cs5pkJBqO

銀竜「……と、とにかくだ!」

銀竜「二人揃えばもうお前たちを屠るのは容易い。覚悟せよ!」

金竜「我ら兄弟の絆こそ最強だと知れ!」



真美「んっふっふ〜♪」

真美「魔物のブンザイで真美たちにはむかうなど、身のほどをわきまえぬ者たちじゃ……!」

亜美「ふたたび生き返らぬよう、そなたたちのハラワタの中で息絶えるがよいっ!」



銀竜「ちょっと言っていることがよく分からぬが……」

金竜「尋常に勝負だっ!!」

655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 11:56:06.30 ID:Cs5pkJBqO
続きは今週末までに投下します
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/07(金) 19:07:19.26 ID:hIpwTBAQO
今週末…明日か…兄弟姉妹対決いいねー燃えるから好きよ
657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 02:58:19.73 ID:IB7jvRG1O
もう来週に入ったが更新なかったな
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/04/09(日) 05:59:33.83 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B5F ー



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」



響「……!」タタッ

響「……はぁ、はぁっ……!」タタンッ



プリンプリンセス9(『王女の歌』によってパーティが始まってから、そろそろ一時間……)

プリンプリンセス10(あの方もずっと踊り続けてようやく息が切れはじめたようですわね)

プリンプリンセス11(さあ、終宴へのカウントダウンが始まりましたわ)

プリンプリンセス12(名も無き花が己の短い命を咲き誇るように、美しく舞い……美しく散ってくださいまし!)

659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:00:43.89 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」



響「ぜぇ、ぜぇ……」スタッ

響「はぁっ……うぁ……!」クルンッ



プリンプリンセス9(パーティが始まって約二時間……)

プリンプリンセス10(息は切れているものの、今だに動きに衰えが見られない……。まさかここまで踊り続けることができるとは思いませんでしたわ)

プリンプリンセス11(流石はあいどる……といったところでしょうか。ですが、あの方の命の火が確実に小さく弱くなってきているのは事実)

プリンプリンセス(うふふ……やがて訪れる最期の瞬間まで、その輝きを保っていられるでしょうか?)

660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:02:15.20 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」



響「はぁ、はぁっ……」タンッ スタッ

響「……ぅくっ……」タタンッ



プリンプリンセス9(パーティが始まって三時間……)

プリンプリンセス10(お、おかしい……。常人ならばとっくに力尽きている時間……)

プリンプリンセス11(なんなんですのいったい……? 人間とは思えない体力……)

プリンプリンセス12(……いえ、問題などありませんわ。いつまでも全力で踊り続けていられる者なんて、いるはずありませんもの……!)

661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:03:24.12 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」



響「………」タタッ クルッ

響「………」シュタタッ



プリンプリンセス9(…………すでに、四時間が経過している……)

プリンプリンセス10(こんなの、絶対にあり得ない……あり得るはずがない……!)

プリンプリンセス11(……息が……声が、かすれて……)

プリンプリンセス12(ま、まずいですわ……。歌が……)

662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:05:05.08 ID:yKLskMaYO

ーーーーーー
ーーー



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」



響「………」キュッ キュッ

響「………」タンッ スタッ



プリンプリンセス9(…………)

プリンプリンセス10(…………)

プリンプリンセス11(…………)

プリンプリンセス12(…………)





プリンプリンセスたち(……ダメ……もう限界……! 声が持たない……っ!)






プリンプリンセス9「……っぷはぁ!」

プリンプリンセス10「はぁ、はぁ、はぁっ……!」

プリンプリンセス11「ぜぇ、ぜぇ……!」

プリンプリンセス12「……そ、そんな……私たちの歌に、耐えきるなんて……!」




響「………」

響「………」フラッ


…ドサッ



プリンプリンセス9「はぁ、はぁ……彼女も……」

プリンプリンセス10「限界だったようですわね……」

663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:15:05.02 ID:yKLskMaYO

響「……く、はぁ、はぁっ……!」ヨロッ




プリンプリンセス9「! ま、まだ立ち上がった……!?」

プリンプリンセス10「な、なんて生命力ですの……!」

プリンプリンセス11「あれだけのダンスをした後で……」

プリンプリンセス12「信じられない……!」



響「……はぁ、はぁっ……!」

響「へ……へへんっ……君たちとは……鍛え方が違うからなっ……!」



プリンプリンセス9「強がりがバレバレですわね……!」

プリンプリンセス10「明らかに立っているのがやっとではないですか……!」



響「はぁ、はぁ……そう言うプリ江たちだって、声がガラガラだぞ? もうあの歌、歌えないんじゃないのか……?」



プリンプリンセス11「くぅ……!」



響(……自分、わかってるんだ)

響(きっとプリ江たちの歌に耐えられたのは、プロデューサーがくれたネックレスのおかげだと思う)ギュッ

響(踊ってる間ずっとこのネックレスが小さく光ってて、「頑張れ」「負けるな」って自分を励ましてくれてるみたいだった)

響(ありがとね、プロデューサー。おかげで自分、まだなんとか戦えそうだぞ!)

664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:23:00.00 ID:yKLskMaYO

プリンプリンセス9「……ならばもう一度!」

プリンプリンセス10「今度こそ私たちの歌で、貴女を倒してみせますわっ!」

プリンプリンセス11「いきますわよっ!」

プリンプリンセス12「王女の歌!」



響「……!」



プリンプリンセスたち「ラララ〜〜♪」





響「……はぁぁぁあああああっ!!」

タタタタ…




プリンプリンセス9「!?」

プリンプリンセス10「な、なぜ!? なぜ動けますの!?」






響「くらえ、ナンクル砲っ!!」バッ



…ドッゴオオオオオン!!!



プリンプリンセス9「」



プリンプリンセス10「くっ! 止めますわ!」ダッ



響「甘いぞ!!」バッ


…ドッゴオオオオオン!!!



プリンプリンセス10「」



プリンプリンセス11「くっ……!」

プリンプリンセス12「王女の歌が、効かない……!?」

665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:25:28.80 ID:yKLskMaYO


響「………」スッ



プリンプリンセス11「? それは……?」



響「服を小さくちぎって耳栓代わりにしたんだ。歌を聴かなければきっと操られることもないって思ったからな」



プリンプリンセス12「そこに気づくとは……」

プリンプリンセス11「なかなか頭も切れるようですわね」



響(いや、それくらい誰だって気づくと思うけどなー)



…ビーッ! ビーッ!



響「! またこの音か!」





プリンプリンセス13「うふふふ……」

プリンプリンセス14「あははは……」



プリンプリンセス11「王女の歌を防いだ程度ではこの包囲網を抜け出すことはできません!」

プリンプリンセス12「……さあ、パーティを続けましょうか」



響「くそ〜、また増えたー!」



響(このままだと倒してもまた増え続けるっぽいし、やっぱりあの警報みたいな音をどうにかするしかないのか……)

響(音はそう遠くない場所でしてるから、たぶんこの部屋のどこかに仕掛けてあると思うんだけどなー……)キョロキョロ

666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:28:57.91 ID:yKLskMaYO

プリンプリンセス11「うふふ、何か捜し物ですか?」



響「………」



プリンプリンセス12「どうやら『アラーム』の役割に気づいたようですわね」

プリンプリンセス13「そう、私たちの仲間は『アラーム』の音に呼び寄せられる」

プリンプリンセス14「貴女がいくら私たちを倒しても、永遠に」



響「え、永遠にって、そんなの無茶苦茶だぞ!」



プリンプリンセス11「うふふっ♪」

プリンプリンセス12「『アラーム』を探しても無駄ですわ。貴女には到底見つけられない場所に隠してありますもの」



響(……つまり自分が勝つには、プリ江たちの攻撃を掻い潜りつつ『アラーム』ってやつを探し出して破壊すること……)

響(体力的にしんどいけど、それをやらなきゃ先に進めないならやるしかないんだ)

響(……大丈夫、きっと……)



響「…………なんくるないさー!!」

タタタタ…



プリンプリンセス11「生命は追い詰められた時にこそ、より一層輝きを増す……」

プリンプリンセス12「その一瞬の美しさは、何ものにも替え難いものです」

プリンプリンセス13「私たちに見せてくださるのですね。あいどるの真の輝きを」

プリンプリンセス14「……さあ、一緒に踊りましょうっ!」

667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:32:23.64 ID:yKLskMaYO
やよい「」



冬馬「……高槻……?」



冬馬「おい、なんの冗談だよそれ……」



イフリート「ヤヨイぃぃぃーーっ!!! くそおおお!! 氷が溶けねえええええっ!!」

シヴァ「ヤヨイさん、返事を……返事をしてっ!!」

ラムウ「ワシらは……この子に何もしてやれぬのかっ……!」



冬馬「なんとか言えよ、高槻……。いつもみたいに『うっうー!』とか言ってみろよ……」



やよい「」



ミストドラゴン「ああ……ああ! ヤヨイ、私のかわいいヤヨイ……!」ダキッ

シルフ「起きなさい! ぐすっ……起きないと承知しませんよっ……!」ポロポロ



冬馬「……なんだよ、これ……」



やよい「」



翔太「生命をもたらしたる精霊よ、今一度我がもとに!」

翔太「……レイズ!」バッ

…キラリーン!


やよい「」


翔太「……な、なんで!?」

高木「なんと……いうことだ……! 私はなんのためにここにいるのだっ……!」ギリッ



冬馬「なんだよ、これは! ふざけんなッ!!」ガッ

北斗「くそっ……!」

翔太「やよいちゃん……!」



黒井「………」

668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 06:34:23.88 ID:yKLskMaYO
ミス
≫667から地下6階です
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:36:35.22 ID:yKLskMaYO

黒井(これが……)

黒井(これこそが、力無き者の末路……?)

黒井(……違う。高槻やよいは決して力を持っていなかったわけではなかった。むしろ強大過ぎる力を秘めていたはずだ)

黒井(事実、ヤツは従えた召喚獣を一度に全て喚び出すという荒業をやってのけた)

黒井(……が、あの化け物を諭すためあえて攻撃は加えず平和主義を貫き……)

黒井(……命を落とす結果になった)

黒井(765プロが掲げていた『絆』とやらは魔物には通用しなかった、ということか)

黒井(呆気ないものだな。高木が765プロにしがみついて作り上げたものが、こんなわけも分からない世界であっさり否定されることになるとは)




黒井(…………いや待てよ)

黒井(この世界で高槻やよいは私たち幻獣を喚び出し、度々仲間との絆を主張していた)

黒井(だが、私たち自身はどうだ?)

黒井(私たちは一人ひとりが高槻やよいに対して忠誠を誓っていたが、ただそれだけで、私たち召喚獣同士の横の繋がりなどは無かった)

黒井(……違う。私『たち』ではない)

黒井(私一人が、それを否定し続けていたのだ……)

黒井(おそらくそれでは駄目なのだろう。ヤツの目指したものは……本当の『絆』とやらは、まだ完成してはいない)

670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:39:54.12 ID:yKLskMaYO

黒井(私はここで何をしている……? 何をすべきなのだ……?)

黒井(私は……)チラッ



やよい「」



黒井(………)

黒井(ああ、そうか)

黒井(死んではいない)

黒井(お前はまだ、死んではいないのだな)




やよい「」



黒井(………………なあ、やよいちゃん)




…キラッ



671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:41:53.31 ID:yKLskMaYO

黒井「……高木」

高木「っ……な、なんだね?」ゴシゴシ

黒井「おかしいと思わないか?」

高木「おかしい? いったい何がおかしいというのだね?」

黒井「おい、冬馬、翔太、北斗!」

冬馬「……ざけんなよ! ちくしょうっ!」

翔太「やよいちゃん……うぅっ……!」

北斗「黒井社長、何か?」

黒井「確かお前たちはこのゲームに詳しかったな。お前たちに訊きたいことがある」

北斗「は、はい。でも今は……」

黒井「高槻やよいは本当に死んだのか?」

北斗「……え?」

高木「黒井? お前、何を……」

冬馬「おっさん、今はそんなこと言ってる場合じゃねえだろーが! 氷漬けにされちまった高槻を生き返らせる方法を考えるのが先だ!」

翔太「そうだよ黒ちゃん! やよいちゃんは僕の『レイズ』でも生き返らなかったんだよ? だから、きっと本当に……」

翔太「…………あれ?」

翔太「ねえ北斗君、FFのレイズって失敗はしないはずだよね?」

北斗「ああ、確かそうだったはず」

北斗「………………あっ」

672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:45:04.94 ID:yKLskMaYO

高木「伊集院君、どうしたんだね?」

北斗「レイズが効かなかったってことは、やよいちゃんは蘇生対象ではなかった……?」

翔太「つまり、やよいちゃんはまだ……」

北斗「死んでないってことだ……!」

黒井「……やはりか」

冬馬「お、おい翔太、北斗、それは本当なのか!?」

翔太「うん。ドラクエのザオラルと違って、FF4の蘇生魔法である『レイズ』は絶対に失敗しないんだよ」

北斗「失敗する場合があるとすれば、それは対象が『まだ生きている場合』だ。生きている者を蘇生しようとしても意味はないからな」

高木「じゃ、じゃあ、高槻君は生きているのだね!?」

翔太「うんっ!」

冬馬「マジかあああああっ……!」グスッ

高木「高槻君……! よかった……!」

黒井「安心するのはまだ早い。おそらく、私たちがこちらに顕現していられるのは高槻やよい次第なのだから」

黒井「そうだな、北斗」

北斗「詳しい理屈はわかりませんが、たぶん黒井社長の仰るとおりだと思います」

北斗「召喚士であるやよいちゃんの魔力が途切れてしまえば、彼女と契約を交わした幻獣である俺たちはきっとこの場所から消えてしまう」

北斗「そうなったらもう、俺たちがここでやよいちゃんを救うことは完全に出来なくなってしまいます」

高木「な、なるほど。時間はあまり無いというわけか……」

高木「それにしても高槻君、あんな状態になってまで私たちのために魔力を放出し続けているとは……」

冬馬「よし! 早いとこ高槻を助けてあのドラゴンを倒そうぜ!」



ラムウ「……その戦い、どうかワシらにも手伝わせてもらえぬか?」



冬馬「じいさん……」

673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:48:20.74 ID:yKLskMaYO

冬馬「でも、あんたの雷はヤツに通用しなかったじゃねぇか」

ラムウ「ワシら幻獣の魂は召喚士と共にある。今力を発揮せずして何が召喚獣じゃ……」

シヴァ「たとえ無駄だと分かっていても、ヤヨイさんのために力を使いたいの。お願い……!」

北斗「エンジェルちゃん……」

イフリート「トウマ!! 頼むっっ!!」

シルフ「私も、このままじゃマコトさんにあわせる顔がありません!」

ミストドラゴン「お願いしますっ……!」

冬馬「お前ら……」

冬馬「………」

冬馬「それを決めるのも号令をかけるのも、きっと俺の役目じゃねえ」

翔太「えっ、冬馬君……?」

冬馬「だってよ、そーいうのはトップの仕事だろ?」



冬馬「……な、黒井のおっさん!」



黒井「………」



高木「黒井、命令してくれ。高槻君を救うために、私たちの王として!」

674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:50:31.84 ID:yKLskMaYO

黒井「……私は、勘違いをしていた」

黒井「やよいちゃ……高槻やよいの願いとは、私たちとヤツとの絆だと思っていた」


黒井(私は……)


黒井「だが違う。高槻やよいの本当に望むものは、私たち幻獣同士の繋がりも含めての絆」

黒井「いや、ヤツはおそらく……あの魔物とすら繋がりを持とうとしていたのだ」


黒井(今、私のすべきことは……)


幻獣たち「………」










黒井「力を貸せ。お前たちと私とで、やよいちゃんを救うぞ!」









幻獣たち「……っ!」コクリ

675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 06:58:49.46 ID:yKLskMaYO
ブルードラゴン「何故じゃ……お前たちは何故消えぬ……?」

ブルードラゴン「あの少女は氷の棺で息絶えたはず……」

ブルードラゴン「お前たちはいったい……?」



冬馬「へっ! 高槻はあんな攻撃でくたばっちまうほどヤワじゃねーってことだぜ!」

翔太「ここからは、ボクたちの反撃だよ!」

北斗「ゲームの世界のルールだとか、そんなものはもうどうでもいい。俺たちは今、本当の絆で結ばれたんだから!」

黒井「覚悟はいいか、化け物め。さっきの様な遅れはとらんぞ!」



ブルードラゴン(絆……懐かしい言葉じゃ)

ブルードラゴン(懐かしく、そして悲しい言葉じゃ)

ブルードラゴン「…………ふ、ふふふ……」

ブルードラゴン「……そうか。ようやく時が来たのじゃな」

ブルードラゴン「殺してみせよ……」

ブルードラゴン「どうかワシを生の呪縛から解き放ってくれ……!」




冬馬「いくぜええぇぇぇっ!!」





黒井(……高木、そちらは任せたぞ!)


676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:00:35.69 ID:yKLskMaYO

ラムウ「氷漬けになっているヤヨイさんを、お主の斬鉄剣で氷ごと斬るじゃと……?」

高木「ああ。おそらくこれは、懸命にこの世界を生きてきた彼女に何もしてやれなかった、私がやるべきことだと思うのだ」

シヴァ「でも、そんなことをしたらヤヨイさんが!」

高木「安心したまえ。高槻君を傷付けないように上手くやってみせるよ」

イフリート「うおおおおおっ!! よくわかんねえけどヤヨイは助かるのかっ!!」

ミストドラゴン「……あの、私たちにも何か出来ることはないのでしょうか?」

高木「もちろんあるさ。これは私ひとりでは決して成功させることはできない」

高木「『必ず成功する』と君たちが信じてくれれば、きっと想いは届く」

高木「高槻君は、助かる……!」チャキッ

ラムウ「想いか…………そうじゃの」

シヴァ「信じる……ヤヨイさんは絶対に死なせない!」ギュッ

イフリート「ヤヨイぃぃぃぃいいいいいっっ!!」

ミストドラゴン(帰ってきて……。その愛くるしい笑顔を再び私たちに見せてください、ヤヨイ……!)

677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:01:38.36 ID:yKLskMaYO

高木「………」チャキッ

高木(鉄をも切り裂く剣か……)

高木(そんな技を大切なアイドルに対して使うのは私だって不安だ)

高木(だが、手品とはいつも人々を驚かせ、楽しませるためにある)

高木(それに……幻獣諸君の力をこうして感じることができる。私はひとりではない)

高木(そちらは任せたぞ、黒井!)




高木(……我が剣よ、願わくば正しき者を救う剣となれ……)




高木「ーーーー斬鉄剣!!」ブンッ




ーージャキィィィィンッ!!



678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:03:52.66 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


千早「……はっ!」ビュンッ


月の女神「おっと!」ヒョイッ

月の女神「えいっ!」ブンッ


千早「くっ!」

ガキィンッ!!


月の女神「うふっ♪」タンッ


…フワッ


千早「!」

千早(ジャンプ……!?)


月の女神「えーーーーいっ!!」ブンッ


千早「くっ……!」ダッ



ズドオオンッ!!



千早(……なんて威力……地面に大穴が……)

679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:04:58.31 ID:yKLskMaYO

月の女神「これくらいで驚いてちゃダメだよっ?」ダッ

タタタタ…


千早「!」

千早(盾を構えての突進!)

千早「……ふっ!」ヒョイッ


月の女神「……チハヤがよけるのは想定済みだよっ!」ピタッ

月の女神「でえぇぇいっ!!」ブンッ


ザシュッ!!

千早「う……!」ヨロッ


月の女神「えへへっ♪ チハヤのジャンプ、マネしてみたよ」

月の女神「どうかな?」



千早「くっ……」ポタッ

千早(あの子のジャンプに気を取られてしまった……)

千早(ジャンプは私の特技だったはずなのに……)



月の女神「楽しい……楽しいよチハヤ」

月の女神「もっともっと、いっぱい遊ぼう!」



千早「………」

680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:06:49.52 ID:yKLskMaYO

月の女神「まだまだいくよっ!」チャキッ

月の女神「やああぁぁああっ!」

タタタタ…



千早「………」チャキッ



千早(私は、バトルに興味なんて持ったことはなかった)

千早(今まで避けることのできない戦いはもちろんあったし、自分が強くなるのは、少しでもみんなの役に立てれば……って思ったから)



月の女神「えーーいっ!!」ブンッ

千早「くっ!」

ガキィンッ!!


千早(でも、なぜだろう)

千早(負けたくない。ただ純粋に、自分の方が強いということをこの子に知らしめたい)

千早(心のどこかでそう思っている自分を、否定できない)



千早「……はっ!」グイッ

月の女神「わっ……」ヨロッ


千早「…………くっ!」タンッ

…フワッ




千早(空中戦で負けるわけにはいかない)


千早(…………竜騎士として!)



月の女神「……いいよ、付き合ってあげる!」タンッ

…フワッ




千早「はああああぁぁああっ!!」ブンッ



ーーズザシュッ!!



…スタッ

681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:08:30.56 ID:yKLskMaYO

月の女神「………」

月の女神「……くぅ……」ヨロッ



千早「……はぁ、はぁ……」

千早(ようやく……あの子にダメージを与えることができた……)



月の女神「さすが空中では強いね、チハヤ……」

月の女神「私、驚いちゃった!」ニコッ



千早(ダメージを与えたとはいえ、あの子の強さは身を持って知っている。決して油断なんてできない)

千早(けれど……)


ドクン…


千早(この高揚感はなに?)

千早(私も、バトルを楽しいと思いはじめているというの……?)



月の女神「楽しいね、チハヤ!」ニコッ



千早「………」

千早(目的は変わらない。最初からひとつだけ)

千早(でも……)



千早「…………ええ、そうね」ニコッ



千早(……勝ちたい……あの子と正々堂々、勝負をして!)

682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:10:48.91 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


暗黒魔道士「……ファイガ」



ゴオオオオッ!!



美希(……3、2、1……!)

美希「っ……!」ダッ



暗黒魔道士「逃さない……サンダガ」



ズガガガピシャァーーン!!!



美希「…………こっち!」ダッ




暗黒魔道士「もっと逃げるといい……なす術もなく……」



美希「……はぁ、はぁ……」

美希(……えっと、今回のが10時と9時……)

美希(『タイミング』もバッチリつかんだの)

美希(……うん、やっぱりミキのカンはそんなにハズれてないって思うな)

683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:13:18.49 ID:yKLskMaYO

暗黒魔道士「それにしてもよくここまで生き残ったね。視界を奪われた状態で魔法をかわし続けるなんて……」

暗黒魔道士「しかも、ボクが魔法を放つたびに動きが良くなっている」

暗黒魔道士「君には本当に驚かされるよ」



美希「あは☆ ありがとーなの」



暗黒魔道士「でも……気づいているかい? ミキ」



美希「ん?」



暗黒魔道士「君はもう、すでに死の淵に立っているということを」



…ヒュオオォォ…



美希「この風の音……もしかして崖?」

美希(知らないうちに崖っぷちに追い込まれてた……? ちょっとヤバいカンジなの!)



暗黒「……トルネド」



ビュオオオオッ…!!




美希「っ……吹き飛ばされちゃうわけにはいかないのっ!」

美希「レビテト!」

ポワッ…



暗黒「終わりだ……ディスペル」

パシュンッ



美希「あっ…………」



ヒューー…




暗黒魔道士「……落ちたか」

684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:15:56.00 ID:yKLskMaYO

暗黒魔道士「なんだ、意外と呆気ない最期だったね、ミキ。天才の君らしくもない、間抜けな終わり方だ」

暗黒魔道士「でも、君が悪いんだよ。君が……」

暗黒魔道士「君がそんなにも……」

暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士「……ボクは……」



…キラッ!


ーーヒュンッ

ドスッ!!



暗黒魔道士「ぐっ……!?」

暗黒魔道士「な……なんだ、これは……? 矢だって……?」

暗黒魔道士「まさか……!」



ーーヒュンッ

ドスッ!!



暗黒魔道士「く……真っ直ぐにボクの方へ……!」

暗黒魔道士「完璧にこちらの位置を認識しているのか……バカな……!」



美希「……カンペキじゃないけど、だいたい捉えたの!」

美希「ミキ、アンコクさんがどこにいるか分かっちゃった☆」

685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:19:20.80 ID:yKLskMaYO

暗黒魔道士「ミキ……! 君は崖から落ちたはずじゃなかったのかい?」



美希「うん、ミキも『落ちちゃう〜』って思ったんだけど、なんとか必死に崖にしがみついて助かったの」



暗黒魔道士「なんて運のいい……」

暗黒魔道士「それじゃあもうひとつ質問だ。一体どうやってこの暗闇の中でボクの位置を特定した?」



美希「えーっとね、魔法が飛んで来る方向、詠唱から到達までの時間、その二つの情報からなんとなーく逆算しただけだよ?」



暗黒魔道士「……ふ、ふふ……無茶苦茶だね。ボクが絶えず移動しているかもしれないじゃないか」

暗黒魔道士「その可能性がある限り、魔法が飛んで来る方角から君が正確にこちらの位置を特定するのは不可能だ、絶対に」



美希「んー……その可能性はないって思うな」



暗黒魔道士「!」



美希「アンコクさんの魔法って、飛んで来る方向がだいたい同じだったの」

美希「今までに撃ってきた魔法全部がだよ?」

美希「それって、アンコクさんが同じ位置からずっと動いていないって断定するのに十分な情報なの」



暗黒魔道士「……!」

暗黒魔道士(簡単に言っているけれど、ミキにとって周りは暗闇……視界ゼロの状況だ)

暗黒魔道士(目印も何も無いそんな状況下で『自分も動きまわりながら飛んできた広範囲の魔法を利用して相手のいる方向、位置を特定する』なんて簡単に出来ることじゃない……)

暗黒魔道士(やはり、天才なのか……)

686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:22:09.87 ID:yKLskMaYO

美希「でもね? ミキ、不思議に思ったの」

美希「だってずっと同じ方から魔法が飛んで来たら、誰だってミキと同じように考えると思うの」

美希「そしたらアンコクさんのいる位置が遅かれ早かれバレちゃうの」

美希「きっと何か『動けない理由』があるんじゃないかな?」

美希「この階が真っ暗なのも、完全に自分の位置を特定されないための煙幕に利用してる……」

美希「……どう?」



暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士(完璧な回答ではないけれど……今までのやり取りでそこまで読むのか……)



暗黒魔道士「……前者については正解。ボクはとある理由から、今いる場所から大きく動くことはできない」

暗黒魔道士「でも、後者についてはハズレだ」



美希「ガーン! ショックなの……」

美希(単なる煙幕じゃないんだ……)

美希(じゃあやっぱり、この階が真っ暗なことと今いる場所から動けないこと。この二つはアンコクさんが何回も連続で魔法を使えるってことと関係してるんじゃないかな)

美希(……なんとなくカクシンに迫ってきたってカンジなの)

687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:24:10.00 ID:yKLskMaYO

美希「それじゃ……」

美希「……今度こそ、ミキの反撃なの!」スッ

美希(位置はわかった。あとは、きっかけを作って突撃するの!)



暗黒魔道士「弓矢か……さっきは不意を突かれたけど、最初から注意さえすれば問題ない」



美希「汚れなき天空の光よ、フジョウを照らし出せなの!」



暗黒「! 詠唱……!?」



美希「ホーリー……」ギリッ



美希「…………アロー!!」バッ


キラキラ…!

ヒュンッ…



…ドスッ!!




暗黒魔道士「ぐっ……!」

暗黒魔道士「武器に魔法の効果を……!? そんなことが出来るはずが……!」




美希「あは☆ カッコイイでしょ? ミキが考えた技だよっ!」

688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:26:14.26 ID:yKLskMaYO

美希(うまい具合に怯んでくれたの。このまま勢いに任せて……)

美希「……攻めるのっ!」ダッ

タタタタ…




暗黒魔道士「……ふふ、驚きはしたけれど、君の考えはお見通しだ」

暗黒魔道士「近寄らせないっ……トルネド」


…ビュオオオオッ!!



美希「……きゃっ!」ヨロッ

…ドサッ



暗黒魔道士「……サンダガ」

ズガガガピシャァーーンッ!!



美希「あぅ……!」

美希(ま、マズいの、早く回復しなきゃ次が来る!)




暗黒魔道士「……滅びゆく魂に、暗黒神の名を刻め……」



美希(う……間に合わな……)



暗黒魔道士「…………フレア」



ブゥゥーーーン…


ババババババッ!!


ズドオオオオオオンッ!!

689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:28:18.18 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


貴音「……ぶりざが!」バッ



コォォ…シャキィィィン!!



ダークバハムート「……遅い」ブンッ

ザシュッ!!


貴音「うっ……!」ヨロッ


ダークバハムート「……休んでいる暇など無いぞ?」ブンッ


貴音「く……!」ダッ


…シュンッ


ダークバハムート「……追いついたぞ」ブンッ


貴音「っ……ぷろてすっ!」


ズバッ!!



貴音「はぐ……ぅ……!」ヨロッ



ダークバハムート「……む、次で終わってしまうか? 加減が難しいな」

ダークバハムート「防いでみよ、タカネ」ダッ



貴音「…………ほーりー!」


ダークバハムート「!」



キラキラキラキラ…


ズドドドドドッ!!!

690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:29:55.63 ID:yKLskMaYO

ダークバハムート「……クク……そう来るか」

ダークバハムート「ホーリーを詠唱無しで放つとはな。並の魔道士では出来ない芸当だ。今のは少々驚いたわ」



貴音「……はぁ、はぁ……」

貴音「……残念ですが、大した効果はなかったようですね……」



ダークバハムート「ふむ……悪くはなかったのだがな」



貴音(闇に墜ちた身ということはホーリーならばよもや、と思いましたが……)

貴音(肉弾戦では敵うはずもない。魔法も効果が薄い)

貴音(わたくしがばはむーと殿に勝てる術は、果たしてあるのでしょうか)



ダークバハムート「ククッ……!」

ダークバハムート「惚けるつもりか? 我は気づいているぞ」


貴音「………」


ダークバハムート「タカネよ。お前からは懐かしい匂いがする。我がこの身に成る前に捨てた、竜族の匂いがな」


貴音「………」


ダークバハムート「覚えて来たのであろう?」



ダークバハムート「…………メガフレアを」



貴音「……現時点でのわたくしの切り札ゆえ、なるべく思考にも出さずにいましたが……」

貴音「やはり、全てお見通しなのですね」

691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:31:55.94 ID:yKLskMaYO

ダークバハムート「お前が切り札をむざむざ出し惜しみして負ける様な阿呆でないことぐらい、我は心得ておる」

ダークバハムート「見せてみよ。我が眷属から受け継いだ技を!」



貴音「……そうですね。それしか手段は無いようです」



貴音「………」ゴゴゴゴ



ダークバハムート「……ほう、流石の魔力よ」



貴音「……夜闇の翼の竜よ……」

貴音「怒れしば、我と共に……胸中に眠る星の火よ!」



貴音「…………めがふれあ」




…ゴゥーーン…



ズバババババババッ!!



ドゴオオオオォォオオオンッ…!!!

692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:33:39.64 ID:yKLskMaYO

貴音「………」

貴音「…………うっ」ガクッ

貴音「っ……はぁ、はぁ……」

貴音「実際に使用するのは二回目とはいえ、なかなか慣れませんね……。この技は体に大きな負担が……」


貴音(『めがふれあ』以外の魔法で決着をつけることができれば少しは小鳥嬢との戦いに余力を残せるかと考えていましたが、やはりそれは甘かったようです)

貴音(ばはむーと殿は未だ実力の半分も出されていないはず)

貴音(全身全霊を賭して戦わねば、決して勝利は無い……)




「……ククッ、その通りだ」



貴音「………」



ダークバハムート「我は嬉しいぞ、タカネ。お前を……この様に近くに感じられるとはな……!」

ダークバハムート「だが、まだだ。お前は漸く言葉を覚えたばかりの稚児に同じ」

ダークバハムート「我に列び立つには、この月と太陽ほど遠い」



貴音「切り札すらも届きませんか……。これは厳しい戦いになりそうです」


ダークバハムート「言葉の割には表情から闘志が消えておらぬな?」

ダークバハムート「心を読まずともそれくらい解るわ……!」



貴音「たとえ無謀な挑戦だとしても……諦めるわけにはまいりませんので」



ダークバハムート「良いぞ……! それでこそ我の認めた女よ」

693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:36:08.29 ID:yKLskMaYO

ダークバハムート「良きものを見せてもらった礼だ、受け取るがよい」

…ゴゴゴゴ



貴音「っ……!」ゾクッ


貴音(美希の魔力とも、先日の小鳥嬢の分身の魔力とも違う……)

貴音(全てを呑み込み焼き尽くさんとする、逃れることの出来ない太陽の爆発の如き魔力……!)




ダークバハムート「……耐えてみせよ、タカネ」




ダークバハムート「ーーメガフレア」



…ゴゴゴゴ



貴音(……これが……ばはむーと殿の……!)





ーーーーーーカッ!!



694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:38:07.14 ID:yKLskMaYO

貴音「………」

貴音「………」

貴音「…………ぅ……」



ダークバハムート「……ふむ、まだ息はあるな」



貴音(か、体が……焼けるように……)

貴音(『しぇる』を使いましたが、まさに焼け石に水でしたね……)



ダークバハムート「その状態でも魔法のひとつは使えるであろう?」

ダークバハムート「回復せよ。続けるぞ」



貴音「………」

貴音「……けあるが」

シャララーン! キラキラキラ…



貴音(片や児戯の如き稚拙な魔法、片や全てを照らす太陽の輝き……越えられぬ壁……)

貴音(ばはむーと殿にだめぇじは殆ど無いように見受けられます)

貴音(『本物と付け焼き刃の違い』……)

貴音(……ふふ、小鳥嬢の分身に向けて言った言葉がそのまま自分に返って来る思いです)



ダークバハムート「……絶望したか?」



貴音「……いえ」

貴音「たとえ越えられぬ壁であろうと、わたくしは進まねばなりません」

貴音「それが友と、この世界の人々との約束なのですから……!」



ダークバハムート「……ククッ!」

ダークバハムート「お前は降りることは出来ない」

ダークバハムート「世界など最早関係ない。これは我とお前との因縁だ」

ダークバハムート「さあ、もっと舞ってみせよ……!」



貴音「…………参るっ!!」

695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:41:58.38 ID:yKLskMaYO
ー 月の地下渓谷 B11F ー


春香「やぁぁあああっ!!」ブンッ


キィンッ!!


律子「はぁぁぁああっ!!」ブンッ


ガキィンッ!!



クルーヤ「よっ……と」


クルーヤ「……ふむふむ。いやー、二人とも良い戦士に育ったね」

クルーヤ「……はっ!」ブンッ



春香「わわっ!?」ヨロッ

律子「きゃっ!」ヨロッ



律子「く……二人がかりでもまるで歯が立たないなんて……」

春香「うぅ、さすがは私たちのお父さんですね……」



クルーヤ「………」

クルーヤ「……うーん、これじゃあちょーっと厳しいかなぁ」



春香「えっ」



クルーヤ「確かに君たちは立派に成長してくれた。そこは僕としてもとても嬉しく思う」

クルーヤ「でも、二人がかりで僕に敵わないようじゃ……」



律子「……小鳥さんの足元にも及ばない、ですか」



クルーヤ「うん、その通りだ」



春香「そんな、小鳥さんはもっともっと強いっていうんですか……?」



クルーヤ「もちろんだよ、ハルカ」

696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:45:02.03 ID:yKLskMaYO

クルーヤ「リツコ、ハルカ。君たちはどれほどの存在に挑もうとしているのかもう一度よく考えてほしい」

クルーヤ「君たちがコトリさんに負けてしまえば、はっきり言ってそれはこの世界の終わりと同義だ。全ての生命が終焉を迎えるだろう」

クルーヤ「そんな事態は絶対に避けねばならない」

クルーヤ「でも、もちろん大変な責任を君たちだけに押し付けているのはとっても心苦しく思ってる」

クルーヤ「だから父親として僕が君たちに出来ることはなるべくしてあげたい」



律子(この世界の終わり……)

律子(正直、あまり興味のない話だわ。この世界はあくまでフィクションの世界であり、本来私たちがいる世界ではない)

律子(地球では巨人を倒すために人々と協力もしたけれど、小鳥さんも含めてみんなで元の世界へ帰ることができさえすれば、私はあとのことはどうでもいいと思ってる)

律子(……そう、『ゲームの設定』なんてどうでもいいのよ)



律子「……私が小鳥さんに勝てないかどうかは、これを見てから判断してほしいですね」チャキッ

…ゴゴゴゴ



クルーヤ「!」



春香「お姉ちゃん、もしかして……」

律子「私は、私の大切なものだけを護れればいい。他には何も望んでいない」

律子「だから、肉親だっていうあなただって倒してみせる!」



クルーヤ「リツコ……」



律子「……くらいなさい、暗黒剣っ!!」ブンッ



ズゥゥゥン…



春香「! 暗黒騎士だった頃の私とは比べものにならないほどの暗黒闘気……!」

春香(……でも、その技は……)



…ズバババババババッ!!!


697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:47:59.19 ID:yKLskMaYO

クルーヤ「………」

クルーヤ「……凄まじい闘気だ、リツコ」



律子「ま、まさか……暗黒剣も通用しないの……!?」

春香(…………やっぱり、そうなんだ)

春香「お姉ちゃん、たぶんお父さんは聖騎士だから暗黒剣は効かないんだと思います」

春香「ゾットの塔で、私もそうだったから」

律子「そんな……」

律子(地力はもちろん、メテオも暗黒剣もこの人には通用しない)

律子(それじゃあ私が勝てる要素なんてないじゃない……!)

律子(私は、なんのためにここにいるのよ……!)

律子「…………くっ!」ガクッ



クルーヤ(……自分の強さに完全な自信を持っていたという風には見えなかったけど、僕との実力差に心が折れてしまった……かな)

クルーヤ(……ふーむ)

698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:50:24.24 ID:yKLskMaYO

春香「お姉ちゃん、大丈夫です! まだまだこれからですよ!」

律子「……いいのよ、春香。気を遣ってくれなくても」

律子「知らなかったわ。私ってこんなに弱かったのね……」

春香「そ、そんなことないですっ! お姉ちゃんは今までずっと私たちの面倒を見てくれてましたし、魔物との戦いだって……!」

律子「いいえ、違うのよ」

律子「気づいてしまったの。みんなはこの世界でとても頼もしく成長したけれど、私は……」

律子「私だけが、まったく成長していないって」

春香「お、お姉ちゃん……」



クルーヤ「………」

クルーヤ「単純な実力で言えば、光の戦士の中ではリツコが一番強いと思う」



律子「気休めはよして! 私は……」

律子「私には、誇れるのものが何もない……!」

春香「そ、そんなこと!」



クルーヤ「………」

699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:53:18.58 ID:yKLskMaYO

クルーヤ(……そう。これが暗黒騎士の暗黒騎士たる所以だ)

クルーヤ(闇の力を借りて戦う限り、常に負の感情が付きまとう)

クルーヤ(自分だけが成長していない、か)

クルーヤ(成長するには自力で殻を破るしかない)

クルーヤ(僕が『きっかけ』を与えてもいいけど、それで律子は自信を持ってコトリさんと戦えるだろうか?)

クルーヤ(かといって今のリツコに自分に打ち勝つ気力があるとは思えない)

クルーヤ(一応成長の手がかりはさっき伝えたけど、もしかしたら最悪の事態……律子の戦線離脱も考慮しなければならないかもしれないな)



春香「………」

春香「……っ!」グッ



春香「……わかりました。お姉ちゃんはそこで見ていてください」

春香「お父さんは私が倒しますから」ザッ

律子「は、春香……」

律子(私は……私はどうしたら……)







春香「……………………ヒント4」






律子「…………えっ」

700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/04/09(日) 07:56:53.52 ID:yKLskMaYO

春香「律子さんは……」

春香「お父さんの娘であり、私が尊敬する、大好きなお姉ちゃんですっ!」ニコッ



律子「……!」



クルーヤ(ハルカ……『気づいた』んだね……)



クルーヤ「……ほうほう、今度はハルカが相手かぁ」

クルーヤ「さっきは二人がかりでも敵わなかったのに、君ひとりで大丈夫なのかい?」



春香「やってみなきゃ、わかりません!」



クルーヤ「うん、そうだね」ニコッ



クルーヤ「……さあおいで、ハルカ」チャキッ



春香「…………はいっ! 今度は『全力』で行かせてもらいますっ!!」チャキッ

春香「うぁぁぁあああああっ!!」

タタタタ…


701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 08:01:18.56 ID:yKLskMaYO
ここまでです
本当はやよい誕までにはと思ってたのに春香誕にすら間に合わない始末
遅れてすみません
>>633の言うとおりこのスレで終われないと思います…
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/09(日) 08:10:46.24 ID:4GZLtGMtO
やっぱりか…まだ敵を倒してないし×11人分(春香と律子と亜美真美は一人分とカウント)だもんな
一人あたり10レスとしてもターン数でいえばそんなたってないもんなぁ
それに仮にこのタイミングで終わっても皆が合流して対ぴよちゃん編やるとしたらラストだからかなり使うし足りないよな
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/09(火) 22:40:08.76 ID:6zACVjbkO
今日で一ヶ月か…
704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/01(木) 04:56:13.72 ID:uZ6xIFx4O
二ヶ月までカウントダウン入ったぞまだか
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 19:32:14.67 ID:onZskDBLO
あと三日…
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 05:07:27.82 ID:YdG/Q6u3O
マジかよ…今日で2ヶ月だぞ
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/09(金) 21:43:08.80 ID:UPkPqYF7O
>>1です
書き溜めたデータが消失してしまい、やり直してるところです
すみません、投下にはあと少し時間がかかりそうです
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/26(月) 09:16:55.17 ID:+UdvjZUXO
もうすぐ月末なんだがまだなのか?
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/06(木) 02:37:43.76 ID:lzaJqrLiO
あと三日で一ヶ月たつんだがまだか?
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:43:14.33 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


リルマーダー「……そりゃっ!」ブンッ


ザシュッ!!


伊織「ぐっ……!」ヨロッ


リルマーダー「へへっ。どうしたイオリ? さっきと段違いに動きが鈍くなったんじゃねーか?」


伊織「よ……余計なお世話よ!」ブンッ


リルマーダー「ふんっ」ヒョイッ



伊織「……はぁ、はぁっ……」


リルマーダー「無理もねーぜ。お前はオイラの6倍サンダガを受けたんだからなっ」

リルマーダー「超電撃を受けたお前は身体が思うように動かないはずだ。むしろまだそれだけ動けるのは大したもんだぜ」


伊織「………」

伊織(ただの変態だと思ってたけど、とんだ策士だったわね……。自分の弱点をさらけ出してわざとそこを突かせるなんて……)

伊織(あいつの言うとおり、手足がちゃんと言うことを聞いてくれないんじゃ居合も使えない。雷迅を撃ってもカウンターを食らう)

伊織(状況は良くないわ)

伊織(どうする……?)


リルマーダー「けど、オイラは負けねえ。負けられねえんだよ」


伊織(見逃してくれるわけないわよね。何よりそんなのは私自身が許せないし……うーん……)


リルマーダー「オイラはさ、ずっとひとりだった」


伊織「……え?」



711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:45:51.58 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「小さい頃からゴブリン族の王として育てられてきたけど、ゴブリン族なんて魔物の中で最弱の種族だ。周りのヤツらからはずっと馬鹿にされ続けてきた」


伊織(なんなのコイツ、いきなり身の上話なんか始めちゃって)


リルマーダー「悔しかった。すげー腹が立った。オイラは王の器のはずなのに、周りは認めてくれないどころかよってたかってオイラをいじめた」


伊織「………」


リルマーダー「……だから、決めたんだ。絶対にオイラを馬鹿にしたヤツらをいつか見返してやるって」

リルマーダー「オイラという存在を、いやでも認めさせてやるって!」


伊織「……!」


リルマーダー「ひとりでたくさん修行して、強くなった。オイラは王だから、誰にも負けるわけにはいかないから」

リルマーダー「もちろんイオリ、お前にもな!」


伊織(……そうか、そうだったのね。コイツを見てるとなぜかイライラすると思ったら……)

伊織(似てるんだわ、コイツは。私に)

伊織(誰かに認めてもらいたい一心でがむしゃらに突き進んで、差し伸べられた手に気づくことができなくて)

伊織(でも、本当は……)


712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:49:42.35 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「楽しかったぜ、イオリ。オイラとまともにやり合った人間はお前が初めてだ」

リルマーダー「けどもう終わりだ。どっちが強いかはっきりさせてやるっ!」スッ


伊織「………」スクッ

伊織「……そうね。ここにもいい加減長居しすぎたわ。そろそろみんなを追いかけないと心配するでしょうし」

伊織「いい頃合いねっ……!」


リルマーダー「何言ってやがる。お前はここでオイラに負けるんだ!」


伊織「はぁぁあああっ……!」バリッ


リルマーダー「イオリ……? お前、バカなのか?」

リルマーダー「お前の雷迅の術はさっきオイラが倍にして返した。オイラに対して雷属性攻撃は無意味どころか自滅を招くだけだ」


伊織「ご忠告どうも。でもね、アンタが知ってる世界だけが全てじゃないってこと、教えてあげるわ!」バリバリッ


リルマーダー「……ガッカリだぜ。イオリはもっと頭のいいヤツだと思ってたのによ……」

リルマーダー(今降参すれば許してやったのによ……)

リルマーダー(そうすればイオリは命が助かって、それで……)

リルマーダー(……いや、何考えてんだオイラは。イオリは敵だぞ)



リルマーダー「……いいぜ。撃ってこいよ、イオリ! 望み通り返り討ちにしてやるっ!!」


713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:53:09.05 ID:GrUnCP8WO

伊織(あんまりスマートな方法とはいえないけど、思い付いちゃったんだからしょうがないわよね)


伊織「…………伊織ちゃん最大級の雷よ! 受けてみなさいっ!!」

伊織「雷迅ッッ!!」バッ


ズガガガピシャァーンッッ!!!



リルマーダー「……ぐっ!!」ヨロッ

リルマーダー「…………へへっ……い、いてーじゃねーか……」

リルマーダー「だがよ……」バリバリッ

リルマーダー「放った雷の威力が強ければ強いほど、より強い雷がお前を襲うことになるんだぜっ!」


伊織「はぁ、はぁ……」

伊織(赤い悪魔たちもそうだったけど、魔物がこんなに人間くさいなんて思ってもみなかったわよ)

伊織(でも、だからこそ私はあいつに……)


伊織「……っ!」ザッ


714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 22:55:00.58 ID:GrUnCP8WO

伊織(赤い悪魔……アンタは分が悪すぎる賭けだって笑うかしら?)

伊織(……いいえ、アンタならきっとこう言ってくれるわね)

伊織(『お前の信じた道を進め』……って!)

伊織(チャンスは一回。それ以上はたぶん私の体がもたない)

伊織(あいつに勝つには……)



伊織(………………あ私も、あいつの雷を利用するっ!)



伊織「来なさい、リルマーダー!!」



リルマーダー「うおおぉぉおっ!! ……2倍サンダガッ!!」


ズガガガピシャァーンッッ!!!



伊織「うぅっ……!!」ヨロッ


…ドサッ



715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 22:57:26.15 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「……はぁ、はぁ……」



伊織「………」グッタリ




リルマーダー「………」

リルマーダー「ちぇっ……」

リルマーダー「イオリ、お前なら……」

リルマーダー「ともだちになってやってもよかったのによ……!」グスッ




伊織「…………バカね……」ヨロッ



リルマーダー「!」



伊織「敵に涙を見せるなんて、アンタにはプライドってものがないワケ……?」ザッ



リルマーダー「イオリ……!」

リルマーダー「ち、ちげーよ! これはえっと……」ゴシゴシ



伊織「まだ……私のターンが終わってないわ……っ!」



リルマーダー「そんなものはねえ。お前はもう立つことすら…………」

リルマーダー「!!」

リルマーダー「なん……だと……!?」



伊織「スーパー忍者アイドル伊織ちゃんを、なめるんじゃないわよっ……!」バリバリッ…


716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:00:07.31 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「帯電……!? あいつ、オイラの技をパクりやがった……!」



伊織「敵の雷を受けてそのまま体に纏う……」バリバリッ

伊織「要は赤い悪魔が常に炎を纏っているのと同じ要領ってことよね。こんなの、伊織ちゃんにかかれば楽勝よっ!」バリバリッ



リルマーダー「イオリも倍返しってことかよ……! いい度胸じゃねーか! こうなったらどっちが先に倒れるか、根性比べだっ!」



伊織「………………はぁ。やっぱりアンタってひとつのことしか見えていないのね」

伊織「この伊織ちゃんがただの猿真似で終わるわけないじゃない!」



リルマーダー「ど、どういうことだ!」



伊織「………………この世で一番速いもの、なんだか分かる?」



リルマーダー「……あん?」



伊織「それは…………光よっ!」



ピカァァァーーーーーー!!



リルマーダー「うおっ!? まぶしっ! 急にイオリの胸元が光って……!」

リルマーダー「……あとでこも」ボソッ



伊織「うっさい!! おでこは光らないわよ!!」プンスカ


717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:01:59.94 ID:GrUnCP8WO

伊織「私が纏ったこの雷は私に光の速さを与えてくれるわ……!」


リルマーダー「バカ言ってんじゃねー! 光速で動くなんてそんなことできるわけないだろ! それにお前はもう動ける力なんて残ってねーはずだ!」


伊織「……だから『無理やり動かす』のよ……!」チャキッ

伊織(どんなに体がボロボロだって、人間の体は反射には逆らえない)

伊織(雷で脊髄反射を起こして、雷を纏った私はそのまま光の速度を手に入れる……)

伊織(いける……はず!)


…バチッ!


伊織「きゃっ……!」ビクンッ

伊織「ぐっ……!」フラッ


…ドサッ



リルマーダー「…………へ、へん! やっぱりムリだったじゃねーか!」



伊織「……ぅ……」

伊織「ざん……ねん……もう行った、わよ……」



リルマーダー「…………へ?」



…ブシュッ!!



リルマーダー「がっ……は……!」ヨロッ



…ドサッ


718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/09(日) 23:06:03.52 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「……うぐ……ちくしょう……」グッタリ



伊織(まだ息はあるみたいだけど、あの状態じゃ反撃はできないでしょ)

伊織(……とりあえず任務完了ってところね)

伊織(私もさっきの無茶で体動かないけど……)

伊織(うぅ……身体中がまだビリビリするわ……)



リルマーダー「こんなのウソだ……オイラが負けるわけがねえっ……!」



伊織(…………ったく)

伊織「………」ゴソゴソ

伊織「ゴクッ……ゴクッ……」

伊織「…………ふぅ」

伊織「…………よしっ」スクッ

スタスタ


伊織「負けを認めなさい。アンタじゃこの伊織ちゃんには勝てないわ」


リルマーダー「ぐ……! オイラは……王なのにっ……!」


伊織「なんでアンタが私に勝てないかわかる?」


リルマーダー「え……?」


伊織「アンタはひとりだって……頼れるのは自分しかいないって思い込んでいるからよ」


719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:09:17.86 ID:GrUnCP8WO

リルマーダー「な……なに言ってんだよ。戦いにおいて頼れるのは自分の力だけだ。そんなの当たり前じゃねーか……」


伊織「………」

伊織「誰にもすがることなく自分ひとりで生きていこうとするアンタのそのプライドは立派だと思うわ」

伊織「私もね、昔はアンタと似たような考え方だった。でも気づいたの。ひとりで出来ることには限界がある。ひとりで強くなるには限界があるってね」


リルマーダー「そ、そんなことはねー! オイラは、ひとりだってここまでやってきた!」


伊織「強情なやつね、まったく……」

伊織「私がアンタにやられてピンチになっても立ち上がれたのは、このクリスタルのおかげなの」スッ


リルマーダー「クリスタル……? そういえばそれ、急に光り出したよな」


720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:11:41.86 ID:GrUnCP8WO

伊織「これは、ひとつのクリスタルから仲間で分け合ったもの。いわば仲間との絆の証」

伊織「このクリスタルの欠片が、私に力をくれた。みんなと分け合ったクリスタルが私を再び立ち上がらせてくれたの」

伊織「私には仲間がいる。でも、アンタはひとりで戦っていた。……それがこの戦いの勝敗を分けたのよ」


リルマーダー「……仲間……」


伊織「アンタも小鳥の部下なら耳にしてるんじゃない? 仲間との絆こそが本当の強さだって」

伊織(アイツなら……小鳥ならきっとそう言うはずよ。だってアイツは……)



リルマーダー「……けっ。そんなのもう忘れちまったぜ」


伊織「……ホント強情ね、まったく」



リルマーダー「……イオリ、次は負けねーぞ。次に戦う時はオイラ、もっともっと強くなってるからな!」


伊織「………」

伊織(『次』なんてきっとない。あってはならない)

伊織(けど……)



伊織「ま、せいぜい頑張りなさい。アンタが強くなるって言うなら、この伊織ちゃんはもっともーっと強くなってるんだからっ!」

伊織「……にひひっ♪」



リルマーダー「…………ちぇっ」


721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:17:00.51 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B5F ー


プリンプリンセス34「はあっ!!」ダッ


響「……よっ」ヒョイッ


プリンプリンセス35「えいっ!!」ダッ


響「……ほいっ」ヒョイッ



プリンプリンセス33「くっ、ちょこまかと……!」

プリンプリンセス34「相変わらずすばしっこいですわね……」

プリンプリンセス35「これだけ長い時間動きが衰えないなんて……」

プリンプリンセス36「貴女、本当に人間なんですの?」



響「失礼だなー、自分はちゃんと人間だぞ!」

響「それに、これくらいでへばってたら長時間のライブなんて到底持たないからね!」

響「アイドルは身体が資本! 常識さー!」


響(……とは言うものの、やっぱり倒しても倒してもプリ江たちはあとから湧いてくるなぁ。もう何匹倒したかわかんないぞ……)

響(ナンクル砲も無限に使えるわけじゃないし、早いとこアラームってやつを見つけ出して壊さないと)

響(でも、いったいどこに隠してあるんだ……? この部屋のどこかだってことは間違いないと思うんだけど……)キョロキョロ



プリンプリンセス33(うふふ、アラームをいくら探しても無駄ですわ。この部屋の壁の中に隠してあるのですから)

プリンプリンセス34(それも一つや二つではなく、無数のアラームが壁に埋まっているのです!)

プリンプリンセス35(いくら彼女が私たちの攻撃を躱し続けても、いずれ限界が来る……)

プリンプリンセス36(その時こそ本当にあいどるの最期ですわ……!)


722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:19:14.24 ID:GrUnCP8WO

響「……ひとつ、質問いい?」


プリンプリンセス33「なんでしょう?」


響「ピヨ子はさ…………あ、えっと、小鳥はプリ江たちのこと、こき使ったりしてるの?」


プリンプリンセス34「? そのようなことはありませんが? コトリ様は私たちのことを大切に思ってくれていると信じています」


響「……そうなのか」


プリンプリンセス35「それと、コトリ様は私たちのことを『コトリ様のぷろでゅーすするあいどる』だと仰っていました」

プリンプリンセス36「だからこそ、貴女方と私たち、どちらが本物のあいどるか決着を着けねばなりません」


響「………」


プリンプリンセス33「貴女のダンスは本当に素晴らしい。けれど、私たちだって負けたくない!」

プリンプリンセス34「私たちをあいどるだと仰ってくれたコトリ様の思いに応えねばなりません!」

プリンプリンセス35「さあ、勝負を続けましょう、ヒビキ!」



響「………」

響「…………よし、決めた!」





響「この部屋ごと…………全部ふっとばす!!」





プリンプリンセスたち「…………えっ?」


723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:21:28.22 ID:GrUnCP8WO

響「プリ江たちの話を聞いて、ピヨ子が優しいピヨ子のままでいてくれて自分ホッとしたぞ」

キュィィィィン…!!


プリンプリンセス36「! エネルギーが彼女の手に集中していく……!」


響「それで、やっぱり早くピヨ子に会いたい、会って話をしたいって思ったんだ」

響「だから、悪いけどもうこの戦いは終わらせるっ!」


プリンプリンセス33「貴女の砲撃では私たちのうちひとりを倒すのが精一杯のはず! この部屋ごとなんて無理に決まってますわ!」


響「いや、方法がないわけじゃないぞ」

響(……ただ、本当ならあんまり使いたくなかった技なんだけどね)

響(エン太郎、ごめん。すっごくイメージの悪い技だけど、許してね……!)



響「はああああああっ……!!」



響「ナンクル……波動砲っ!!」バッ




ーーーーカッ!!



ドッゴオオオォォォオオォォオンッッ!!!




724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:25:07.20 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B2F ー



真「おおおおおおっ!!」タタタタ



ベヒーモス「おらあああああっ!!」ドドドド





ベヒーモス「身だしなみには細心の注意を払ってる!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


真「お風呂は一回二時間! 寝る前に笑顔の練習も忘れずにっ!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


ベヒーモス「女の子っぽい趣味だって持ってる!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


真「料理やカワイイぬいぐるみ集め!! 最近じゃ響に裁縫を習いはじめた!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


ベヒーモス「こんななりだけど、苦手なものだってあるんだ!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


真「ゴキブリとか大っきらいだし、お化けも怖い!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!





ベヒーモス「はあっ、はあっ……」


真「はあっ、はあっ……」


725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:26:31.50 ID:GrUnCP8WO

ベヒーモス「ふ、ふふっ……どうしたマコト。ずいぶん息が上がってきたじゃないか」


真「へ、へへ……そういう君だって攻撃が鈍ってきたんじゃないかい?」


ベヒーモス「ふふふ……」


真「へへっ……」


ベヒーモス「………」


真「………」





ベヒーモス「うおおおおおおっ!!」ダッ


真「うああああああっ!!」ダッ



ズガアアアァァアン…!!




726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:28:08.73 ID:GrUnCP8WO

ベヒーモス「見た目が凶暴そうだからって怖がるんじゃねぇぇぇええっ!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


真「ボクは好きで男の子っぽくなったわけじゃないんだあああっ!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


ベヒーモス「アタイだってカワイイ服やメイクに興味があるんだ! それを鼻で笑いやがってぇぇぇ!!」ブンッ

ドゴオオオオンッ!!


真「なにが真王子だ! ボクが憧れてるのはキャピキャピのお姫様なんだああああっ!!」ブンッ

ズドオオオオンッ!!


ベヒーモス「アタイを……!」


真「ボクを……!」





真・ベヒーモス「もっと女の子扱いしやがれええぇぇぇええええっ!!!」





ドッカアアアアン…!!!




727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:30:34.88 ID:GrUnCP8WO

ベヒーモス「はあっ、はあっ……」


真「はあっ、はあっ……」


ベヒーモス「………」


真「………」




真「ベヒーモス……」

真「次の一撃が、たぶんボクたちの最後の別れになるだろう……」

真「互いに目指した女子力、いまだ消えずにこの心に焼き付いているよ……!」


ベヒーモス「……いいだろう。だったらあんたの女子力、砕いてみせよう……! この拳にアタイの女子力の全てを込めて!」


真「うおおおおおおっ……!!」ゴゴゴゴ


ベヒーモス「はああああああっ……!!」ゴゴゴゴ





ドゴオオオォォォオオオン……ッ!!!




728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:45:14.50 ID:GrUnCP8WO
ー 月の地下渓谷 B3F ー


ゴオオオオッ…!!


雪歩「……!」チャキッ

ブンッ!!


ズドオオオオンッ!!!



魔人兵(……参ったな。どの兵器も全てあのスコップ一本で弾かれてしまう)

魔人兵(それにあの子の堂々とした立ち振る舞い……。最初の頃の怯えた様子なんて見る影もない)

魔人兵(あらゆる兵器を備えているオレが、たった一本のスコップを持った少女に圧倒される……)




雪歩「はああああっ……!」チャキッ

雪歩「スコップ波!!」ブンッ

ズドオオオオオン!!


魔人兵「くっ……!」ジャキッ

魔人兵「……波動砲!!」コォォ

ドゴオオオオオオオオンッ!!!



雪歩「えいっ……!」ブンッ


ドカアアァァァアアンッ!!!




雪歩「………」チャキッ



魔人兵(大切な人たちの想いに応えたい、か)

魔人兵(……そうか、彼女の本当の武器は……)


729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:46:48.76 ID:GrUnCP8WO

雪歩「あの、時間稼ぎはもうやめにしましょう。私には果たさなきゃいけない約束がありますから」チャキッ



魔人兵「……その前に、君の名前を教えてくれないか?」


雪歩「………」

雪歩「雪歩。萩原雪歩です」


魔人兵「ユキホ。君のおかげでオレは大切なものに気づくことができた」

魔人兵「ありがとう」ニコッ


雪歩「私なんかをお手本にしてもためにならないと思いますけど……。でも、そう言ってもらえるのは素直に嬉しいですぅ」ニコッ




魔人兵「どんなに考えても、これしか思いつかなかった」


雪歩「?」


730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:48:01.38 ID:GrUnCP8WO

魔人兵「これで終わりだ。オレの生命をもって、君に勝利する!」

キィィィン…!!


雪歩(えっ? なんかすっごく光ってる……?)

雪歩(生命をもってって……ま、まさか……!?)


魔人兵「オレにだって大切なものはいる。そいつの想いに、オレは応えたいっ……!」


雪歩「死ぬつもりですか!? 死んだらなにもかもおしまいになっちゃいますぅ!」


魔人兵「終わりじゃない。思い出は残る。そういう報い方があってもいいんじゃないかって、オレは思うんだっ……!」ゴゴゴゴ


雪歩「や、やめ……!」


魔人兵「君を巻き込んで本当にすまないと思ってるが、これでも根は真面目なんでね」

魔人兵「与えられた仕事は……完遂しなければならない!」





魔人兵「さよならだ…………自爆!」



雪歩「!」



ーーーーカッ!!




731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:51:13.91 ID:GrUnCP8WO



ヒュゥゥ…



魔人兵「………」

魔人兵「…………」

魔人兵「………………どういうことだ……なぜオレは生きてる……?」



魔人兵「!?」



雪歩「……!」ギュッ

魔人兵「! ユキホ……!」

雪歩「死んで報いるなんて、そんなの認めませんっ!」ダキッ

魔人兵「オレの自爆を止めたのか……? どうやって……?」

雪歩「私のオーラであなたごと包みました。覚えたてだからとっても雑だと思いますけど……」

魔人兵(そういえば、なんだか温かいな。これがユキホのオーラとやらなのか……)


732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:53:13.16 ID:GrUnCP8WO

魔人兵「今の君なら、少なくともオレを助けずに全力で逃げればかすり傷程度で済んだはず。怪我を負ってまでなぜオレを助けた?」

雪歩「……あ、あなたの大切な人たちを、悲しませたくないから!」

魔人兵「!」

雪歩「残された方だって、辛いんですっ……ぐすっ……悲しい思いを、もう……誰にもしてほしくないっ……!」

魔人兵「………」

雪歩「ううっ……ひぐっ……」

魔人兵「オレの……負けだ」

雪歩「ぐすっ……」

魔人兵(他人のことにすら命をかける……これもまた、あいどるの強さなんだろうか)




…ゴゴゴゴ




魔人兵「……ん?」


733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:55:31.04 ID:GrUnCP8WO



ドゴオオオオンッ!!!




魔人兵「なんだ!? 天井が崩れる……!」

雪歩「えっ?」

魔人兵「ユキホ、オレの後ろに隠れているんだ!」スッ

雪歩「は、はいっ!」



ドカアアアアァァアアンッ!!!



ドサドサッ


真「…………はあ、はあっ……!」


ベヒーモス「…………はあ、はあっ……!」




雪歩「ま……真ちゃんっ!?」


魔人兵「ベヒーモス!」



ベヒーモス「凄まじい……女子力だった……マコト……。アンタが……女子力No.1だ……」フラッ

ドサッ


真「ベヒーモス……手強い女子力を持った相手だった……」



雪歩(えっ、どういう状況?)


734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/09(日) 23:58:06.06 ID:GrUnCP8WO

雪歩「ま、真ちゃんっ!」

タタタタ

真「雪歩!? どうしてここに?」

雪歩「どうしてもなにも、真ちゃんたちの方が上から落ちてきたんだよ?」

真「えっ、そうだったの?」

雪歩「ともかく、無事で良かったっ……!」ダキッ

真「……うん、雪歩の方もね」ニコッ



魔人兵「………」ザッ



真「! 雪歩、下がって」スッ

雪歩「あ、大丈夫だよ真ちゃん。その魔物さんはもう、敵意はないみたいだから」

真「そうなんだ。じゃあ、雪歩の方も終わったんだね」



魔人兵「……いや、まだ終わってない」



雪歩「えっ?」



魔人兵「まだオレには、やり残したことがある」チラッ



ベヒーモス「………」グッタリ


735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:00:47.29 ID:pmiZAnOYO

雪歩「な、何をする気なんですか……?」



魔人兵「…………ベヒーモス!」



ベヒーモス「…………なんだ甲斐性無し、いたのか……」

ベヒーモス「その様子だとアンタも負けたのか。はっ、無様だね……」


魔人兵(オレは、ユキホに勇気というものを教わった。今がきっとその勇気を出す時なんだ……!)



魔人兵「ベヒーモス……」


ベヒーモス「うるさいね……聞こえてるよ……」




魔人兵「……結婚しよう!」



ベヒーモス「えっ!?」


真「えっ?」

雪歩(ああ……もうわけがわからないですぅ……)


736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:02:07.56 ID:pmiZAnOYO

魔人兵「子供まで作っておきながら、君のことをずっとほったらかしだった。いい歳して仕事もなく、ずっと燻っていた自分に自信が持てなくて……君のこと、腹をくくることができないでいたんだ」

魔人兵「でも、もう決めた。待たせてすまない。絶対に幸せにする!」



ベヒーモス「…………バカ、遅すぎだよ……」グスッ

ベヒーモス「でも……アタイ、嬉しい!」ダキッ



真「いい話だなぁ……!」グスッ

雪歩「う、うん、そうなのかもね……」


737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:04:39.71 ID:pmiZAnOYO

真「……さて、と。ボクたちの勝ちってことでいいんだよね?」



魔人兵「ああ。オレたちの負けだ」

ベヒーモス「ふふっ♪ あんたたちは先へ進むがいいよ!」ニコニコ


雪歩「すっごい幸せそうだね」

真「ね」



ベヒーモス「あんたたちには、なんだか世話になっちまったね」

魔人兵「ありがとう。君たちがいなければオレたちはこうして寄り添うことはなかった」

真「ボクたちは何もしてないさ!」

雪歩(っていうかこんな展開、絶対に予想できないよね)



真「それじゃあボクたちは行くよ」

雪歩「えっと……末永くお幸せに?」


魔人兵「ああ。君たちの武運を祈っているよ」

ベヒーモス「マコト、あんたも早くいい人見つけなよ!」



真「よ、余計なお世話だよ!」


738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:07:36.62 ID:pmiZAnOYO

真「さて、ずいぶん時間食っちゃったから少し急ごう。体は平気かい? 雪歩」

雪歩「うん、大丈夫だけど……。真ちゃん、一度上に戻ってみない?」

真「えっ、何か忘れものでもしたの?」

雪歩「ううん、そうじゃないんだけど……。私、あずささんの様子を見に行った方がいいと思うんだ」

雪歩「あずささんはまだ私がいた階には来てないけど、もし地下1階で魔物さんに苦戦してるんだとしたら心配だし……」

雪歩「魔物さんを倒した後だとしても、それはそれでその後の行方が心配だし……」

真「あー…………なるほど」

真「確かにボクがいた地下2階にもまだ来てない……となると、あずささんはまだ地下1階にいる可能性が高いね」

真「よし、じゃあ地下1階に戻ろうか」

雪歩「うんっ」

タタタタ…


739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:10:39.52 ID:pmiZAnOYO

真「……ああーーっ!!」

雪歩「ひぅっ!?」ビクッ

雪歩「ど、どうかしたの? 真ちゃん」

真「いや、ベヒーモスのやつ、旦那さんどころか子供までいたんだなーと思って」

雪歩「あ、うん、そうみたいだね」

真「よくよく考えるとボク、なんだか試合に勝って勝負に負けたって気がする……」

雪歩「えっと、それってもしかして女子力がどうのっていう?」

真「ベヒーモスと決めたんだ。戦いに勝った方が女子力高いってことにしようってさ」

雪歩「ふ、ふーん。なんか変わった戦いだったんだね……」

真「あー! なんかモヤモヤするなぁ!」

雪歩(真ちゃんはこんなふうにちょっぴりズレてるところがとっても可愛いって思うんだけど……)

雪歩(自分じゃ気付かないんだろうなぁ……たぶん)

740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:13:31.38 ID:pmiZAnOYO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


伊織「……ふぅ。親衛隊も退けたし、早いところやよいのところに向かわないと」

フラフラ

伊織「……なんでかしら。心なしかうまく歩けないような気がするわ……」

フラフラ

伊織「……はぁ、はぁ……」

伊織「……あっ」ヨロッ

ドサッ



伊織「ぐぬぬ……! 手足が動いてくれない……!」ググッ

伊織「もう、どうなってんのよこれ! さっきポーションで回復したばっかりじゃない!」

伊織「私は……こんなところで地面に這いつくばっているわけにはいかないのよっ……!」

伊織「ぐぎぎぎ……! 動きなさいよ私の手足っ!!」ググッ



…ドッゴオオオォォォオオンッ!!!


741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:14:56.79 ID:pmiZAnOYO

伊織「きゃっ!? な、なによ今の爆発!?」キョロキョロ

伊織「……上?」チラッ



…ヒューーー



ドサッ



伊織「むぎゅ」




「…………ふー、下にクッションがあってなんとか怪我しないで済んだぞ……」


伊織「ちょ、ちょっとアンタなんなのよ! いきなり人の上に降ってくるなんて!」ジタバタ


「あっごめん! クッションじゃなくて人間だったのか、自分気付かなかったぞ」

「……って」 



伊織「アンタ……!」




響「……伊織!?」

伊織「……響!!」




742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:17:00.29 ID:pmiZAnOYO

響「伊織ぃぃぃ〜!!」ウルッ

響「良かった……無事だったんだね!」ダキッ

伊織「まあ、おかげさまでね。っていうかアンタ、すぐ上の階にいたのね」

響「うん。ちょうど今親衛隊を倒したところさー! もしかして伊織も?」

伊織「ええ、まあ……」

伊織「……ふぅ」

伊織(なんか、響の顔を見た途端に力が抜けちゃった……)

伊織(……あ……ちょっと……眠いかも……)

響「伊織? どうしたんだ伊織?」

伊織「響……ごめんなさい……。この下の階に……やよいが……」

響「えっ? 下にやよいがいるのか?」

伊織「アンタ……だけでも……やよい……を……」

ガクッ


響「伊織!? ちょっと伊織!」ガシッ

伊織「………」

響「起きて! 起きてよ伊織っ!!」



「……安心なさいな。その方は死んでしまったわけではありませんわ」


響「えっ?」


743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:21:24.20 ID:pmiZAnOYO


プリンプリンセス「はぁ、はぁ……」


響「プリ江! 生きてたのか!」


プリンプリンセス「ええ、まったくひどい目に遭いましたわ……」

プリンプリンセス「それよりも、そちらのおでこの方、危険かもしれませんわよ?」


響「危険ってどういうこと?」


プリンプリンセス「見たところ手足が麻痺しています。このまま麻痺が全身に回れば……」


響「ぜ、全身にまわったら、どうなるんだ?」


プリンプリンセス「命の保証はできませんわね」


響「そ、そんな! うぅ、でも自分は白魔法使えないし、回復するアイテムももう持ってないし……」

響「早く白魔法使える誰かのところに連れて行かないと……!」

744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:23:20.44 ID:pmiZAnOYO

響「伊織、すぐに治してあげるからな!」ダキッ

伊織「………」グッタリ


プリンプリンセス「お待ちなさいな。私はまだ貴女に負けたつもりはありませんわよ?」


響「!」

響(まずい、もう自分もナンクル砲を撃てるだけの体力が残ってないぞ……)

響(今襲ってこられたら……)


プリンプリンセス「貴女にやられていった仲間たちの仇、討たせてもらいます」

プリンプリンセス「貴女はその方を守りながら私と戦わねばならないのです!」


響「……!」

響(……伊織、ちょっと待っててね)スッ

伊織「………」



響「わかったぞ。どこからでもかかってこい」

響「自分はここから動かない。伊織には絶対に指一本触れさせないからなっ!」ビシッ



プリンプリンセス「………」



745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 00:27:52.82 ID:pmiZAnOYO

プリンプリンセス「…………ふふっ、冗談ですわ」



響「……えっ」



プリンプリンセス「確かに貴女は敵ではありますが、私が守護する地下5階を突破された以上、負けを認めます」

プリンプリンセス「ルールの無い勝負ほどつまらないものはありませんから」


響「プリ江……!」

響「ねえ、プリ江も自分たちと一緒に来ないか? みんないい子たちだからきっとすぐ仲良しになれるぞ!」


プリンプリンセス「勘違いしないでくださる? あくまで貴女は私の敵。馴れ合いなんて勘弁ですわ」

プリンプリンセス「それに、私が仕える主はコトリ様ただ一人……。主君の敵に降るなんて無様な真似をしたら、コトリ様にあわせる顔がありませんもの」


響「……へへ、そっか。なんかカッコいいな!」ニコッ


プリンプリンセス「先を急いだ方がよろしいのではなくて? そちらのおでこの方、手遅れになってしまいますわよ?」


響「あ、うん。じゃあ自分、もう行くね!」

響「よっ……と」

伊織「………」




響「プリ江ーー! 自分たちは敵同士かもしれないけど、もう友達だからなーー!!」フリフリ



プリンプリンセス「………」

プリンプリンセス「本当に、変わった方でしたわね……」


746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 01:07:53.12 ID:B9v77NChO
正直な話、オーラとかいらなかった思う…雪歩のスコップは最強の武器で攻撃弾くんだし
だったらオーラなんかじゃなく、雪歩の土木で鍛えた目と勘の鋭さで自爆装置の部分をピンポイントで破壊
それにより自爆を阻止っていう方がまだアイマスとFFクロスぽかったかなーって
オーラじゃまるでハンターハンターの念みたいでアイマスぽくもFFぽくもないなーっと感じた
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/10(木) 23:43:12.55 ID:8Tz6gHKyO
ー 月の地下渓谷 B4F ー


亜美「くらえー! ファイガ×2!!」バッ


ゴオオオオッ…!!


金竜「その技はもはや見切った!」シュンッ

金竜「ふぬっ!!」ブンッ


ーパシュンッ


金竜「! 消えた!?」


亜美「んっふっふ……残像だ」キリッ


金竜「おのれ小癪なっ……!」


銀竜「隙ありっ!!」ブンッ


亜美「うわぁっ!?」


真美「真美を忘れてもらっちゃ困るよっ!」

真美「右手にプロテス……左手にシェル……」

真美「合わせて、ウォールっ!!」


ガキィンッ!!


銀竜「くっ……防御壁か!」


真美「亜美、カッコつけてる場合じゃないっしょ〜!」

亜美「だって言ってみたかったんだもん〜」


…シュルルッ! 

真美「おわぁっ!?」ヨロッ


金竜「ふっふっふ、捉えたぞ!」


ーパシュンッ


真美「んっふっふ……残像だ」キリッ


金竜「ぐっ……!」


748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/12(土) 00:53:45.13 ID:LTZ//tVA0
ブリンクかな?ww
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/29(火) 23:57:46.41 ID:6ogvSAp7O

銀竜「あの白魔道士、マミといったか。ブリンクにプロテス、ヘイスト……補助魔法が厄介だな、兄者」

金竜「………」

銀竜「……兄者?」

金竜「閃いたぞ銀竜! 我らも分身するぞ!」

銀竜「あの、嫌な予感しかしないんですけど……」



亜美「へいへいどーしたー!?」

真美「真美たちの強さにビビッちまったのかーい!?」



銀竜「ぐぬぬ……奴らにこれ以上でかい顔はさせん! 兄者の作戦に乗るぞ!」

金竜「よし! それでこそ我が弟!」



ユラ…


亜美「ん……?」


ビューーンッ…!


真美「お……?」


グルグルグル…


亜美「金ぴょんと銀ぴょんが……」

真美「すんごい速さで真美たちの周りを回りだした……?」


750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:00:28.53 ID:eKm/UeYuO

金竜「ふはははは! どうだ、手も足も出まい!」グルグル

銀竜「これぞ本物の残像だ!」グルグル



亜美「ま、真美どうしよう!? 動きがメッチャ速いから魔法の狙いが定まんないよ〜!」

真美「むむむ、さっきの仕返しってわけだね……!」



金竜「お前たちを囲む円はどんどん小さくなってゆく……」グルグル

銀竜「我らが円の中心……つまりお前たちの元へ辿り着いた時がお前たちの最後だ……!」グルグル


シャシャシャシャ…


亜美「な、なんかそれっぽいこと言ってるよ〜! これ、もしかしてヤバいっぽい?」

真美「こんな時は…………アレだよ亜美!」

亜美「アレって?」

真美「ほら、心の目で見れば本物が見える的な!」

亜美「あ、そっか!」


751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:02:35.97 ID:eKm/UeYuO

亜美「む〜……!」じーっ

真美「む〜……!」じーっ


金竜「ふはははは!」グルグル

銀竜「ふはははは!」グルグル


亜美「うあうあ〜! 金と銀ばっかで目がチカチカするよ〜!」

真美「真美……ちょっと気持ちわるくなってきたかも……」オェッ










金竜「ううむ……目が回った…………オェッ」フラフラ

銀竜「……ですよねー……」ガックリ


752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:05:01.21 ID:eKm/UeYuO

亜美「…………と、茶碗はここまでだよ!」ビシッ


銀竜「茶番だ」


真美「真美たち、ここからは本気中の本気で行かせてもらうかんねっ!」ビシッ


銀竜「……はぁ……。次こそは真面目にかかってくるのだろうな?」


亜美「あったりまえじゃん!」

真美「あっと驚く為五郎もチョービックリの戦いを見せてあげるよ!」


銀竜「期待はあまりできんな。お前たちはふざけてばかりだ」

銀竜「真面目にやるのが馬鹿らしくなってくる……」



亜美「ええぇー!! 銀ぴょんノリ悪いよ〜!!」

真美「そーだそーだー!!」



金竜「まだわからぬか、銀竜よ」

銀竜「? どういう意味だ、兄者」

金竜「奴らは決してふざけているのではない。あれで真面目に戦っているのだ」

銀竜「……なに?」


753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:08:10.35 ID:eKm/UeYuO

金竜「ここまで戦ってきて理解した。奴らのパワーの源は『遊び心』だ。この命を賭けた戦いすら、奴らは心から楽しんでいる」

金竜「もちろんアミマミに戦うことに対しての疑問や戸惑い、命の危険に対しての恐怖心が全く無いわけではないだろう」

金竜「だが、それらを上回る遊び心が奴らを戦わせ、その気持ちが強くなる程奴ら自身も更に強くなる……!」

銀竜「まあ、それに関しては兄者も大概だとは思うが」

銀竜「遊び心か……」

金竜「奴らと戦っているとこちらまで心躍る。そうは思わぬか?」

銀竜「………」チラッ



亜美「……で……を……してー……」ヒソヒソ

真美「……おおっ!? それナイスアイデアだよ亜美ー!」



銀竜「…………ふっ、真面目にやるのが馬鹿らしくなってくる……!」ニヤリ

金竜「我はもう決めたぞ。何があろうとこの戦いを心から楽しむ。……奴らと共にな」

金竜「お前はどうする?」

銀竜「……愚問だ。我の魂は常に兄者と共にある!」

金竜「……流石は我が弟だ」ニヤリ


754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:11:46.63 ID:eKm/UeYuO

銀竜「……聞け、アミ、マミよ!」

銀竜「我が名は銀竜! 金色の竜の片割れとしてお前たちに改めて決闘を申し込む! 返答や如何にッ!!」ビシッ


亜美「えっ? えっと、タコに!」

真美「じゃあシジミに!」


銀竜「………」



銀竜「ま、まあ良い。では行くぞっ!」

金竜「銀竜よ……本気でやるぞ!」

銀竜「兄者……あの手で行くのだな、了解した!」



亜美「よっしゃー! かかってこーい!」

真美「返り討ちにしてやるぜー!」



金竜「お前たちに我らの真の力を見せてやろう……」

銀竜「しかと目に焼きつけよ!」






金竜・銀竜「……合体ッッ!!」シャキーン






亜美・真美「な、なんだってー!!?」ガビーン



755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:14:06.34 ID:eKm/UeYuO




金銀竜「…………ふぅ、待たせたな」ゴゴゴゴ




亜美「金ぴょんと銀ぴょんが……」

真美「フ○イザード将軍みたいにひとつになっちゃった……!」

亜美「あんましカッコよくないけど、でもなんかすごそう!」



金銀竜「カッコよくないって言うな!!」

金銀竜「我らがこの姿になった以上、もはやお前たちに勝ち目はないっ!!」

ビュゥゥゥ…



真美「来るよ、亜美!」スッ

亜美「うんっ!」ギュッ

真美(金ぴょんと銀ぴょんが『そう』来るのは、もはやキョーダイのサダメってヤツだよね)

亜美(でも、亜美たちの方が強いってこと、思いしらせてあげるよっ!)

亜美・真美(バシッと決めるよ! 亜美(真美)たちのサイキョーの技、『ふたりがけ』で!!)


756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:16:21.95 ID:eKm/UeYuO

亜美・真美「はぁぁぁぁぁあああっ……!!」ゴゴゴゴ



金銀竜「凄まじい魔力……! 二人の魔力を統一し更に高次元の魔法を放つ、ふたりがけ……厄介だ」

金銀竜「だが……」


ーーシュンッ!!


ドゴオッ!!



真美「うわぁっ……!」ヨロッ

亜美「あ……真美!?」

真美「へ、へーき、ちょびっとかすっただけだから」



金銀竜「……む、速すぎたか」

金銀竜「魔法というものは不便だな。発動するまでに詠唱、魔力の錬成と手順を踏まなければ発動しない」

金銀竜「それに引き換え、物理攻撃にはそういったタメを必要としない」


757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:18:33.55 ID:eKm/UeYuO

亜美「今、金ぴょんたちの動きがゼンゼン見えなかったよ……!」

真美「う、うん……」



金銀竜「それはそうだろう。我らの力は合体してこそ真価を発揮する。単純に力が二倍になるのではなく、二乗になるのだからな!!」



亜美「なん……」

真美「だと……!?」










真美「ニジョウってなに? すごいの?」

亜美「さあ?」



金銀竜「力が足し算じゃなくって掛け算になるってことー!!!」ガビーン


758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:21:43.22 ID:eKm/UeYuO

亜美「ふーん……確かに100+100より100×100の方がすごいけど……。だったらこっちは100億万倍だもんね!」

真美「100億万×100億万パワーで、えーっと…………メチャスゴパワーだよ!」



金銀竜「またハッタリか。もうそれは聞き飽きたぞ」



真美「ハッタリかどうか!」ゴゴゴゴ

亜美「見せてあげるっ!」ゴゴゴゴ



亜美・真美「いっけーーーー!!! ……メテオーッ!!!」



ヒュー… ヒュー… ヒュー…

ヒュー…… ヒュー… ヒュー…



金銀竜「ぬおおおおおおっ!!!」



ズドドドドドドドッ!!!!




759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:27:06.89 ID:eKm/UeYuO

真美「……どうだ! まいったか!」



…ヒュンッ



真美「……えっ?」



ドゴォッ!!



真美「あ……ぅ……!」

…ドサッ


亜美「あっ……真美!」



ビュンッ…ズガッ!!



亜美「ぐぇ!?」

…ドサッ



金銀竜「ふふふ……流石は双子、よく息の合った魔法だ。最初のメテオよりも効いたぞ……!」



亜美「な……なんでピンピンしてんのー!?」



金銀竜「この状態の我らは能力が強化されている。力、素早さ、体力、防御……全てにおいてだ」

金銀竜「生半可な攻撃では我らは倒せん!」



亜美「そ、そんなぁ! ふたりがけがきかないなんてずるいよ〜!」

真美「くそ〜……!」

亜美「絶体絶命の大ピンチっしょ……」


760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:29:35.57 ID:eKm/UeYuO

金銀竜「アミにマミよ。ここまでよく戦った。お前たちは立派な戦士だ」

金銀竜「悔いることなど何もない。我ら兄弟の絆の方が上だった……ただそれだけのことなのだから」

金銀竜「我ら兄弟こそが最強! 我ら兄弟こそが究極なのだ!!」



亜美「!」

亜美(……そっか、もしかしたら……!)

亜美「……真美」

真美「……うん。ダメだね、まだあきらめちゃ!」グッ

真美「あ……真美たちのキズナの方が、チョースゴいんだ!!」



金銀竜「……まだ心が生きているか。流石はあいどる!」

金銀竜「ならばそれも砕いてみせる。我ら兄弟が完全なる勝利を手にするのだっ!!」


761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:32:14.72 ID:eKm/UeYuO

亜美「真美、もう一度行くよ!」

真美「うんっ!」

亜美・真美「はあああああっ……!!」ゴゴゴゴ



金銀竜「……させぬぞ!!」ビュンッ



亜美「うあっ!?」ヨロッ

真美「うぇっ!?」ヨロッ



金銀竜「お前たちが手を繋ぐことでふたりがけを発動させているのは分かっている。離ればなれならばふたりがけを放つことはできまい?」

金銀竜「こちらに致命傷にはならぬが、お前たちの攻撃手段は潰させてもらう!」



真美「そ、そんなぁ!」


亜美「……く、くるっ!」



ヒュウッ…



ドガッ!!



真美「うっ……!」ヨロッ

…ドサッ


762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:34:18.56 ID:eKm/UeYuO

金銀竜「マミの白魔法がなければ、もう回復はできまい」



亜美「く、くっそ〜!」



金銀竜「アミ、マミ……本当に見事な戦いであった。せめて最後はひとおもいに楽にしてやろう!!」

ビューーン!!



亜美「うあうあ〜!!」



金銀竜「さらばだ、アミよ!!!」ブンッ











亜美「…………なんちゃって☆」



金銀竜「……え?」



亜美「右手にヘイスト、左手にヘイスト……合わせて、ヘイスガ!!」バッ

カタカタ…シャキーン!!


タンッ



金銀竜「!!?」


763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:37:18.18 ID:eKm/UeYuO

金銀竜「ヘイストだと……!? なぜアミが白魔法を……!?」



…スタッ

亜美「ケアルガ!!」

シャララーン! キラキラキラ…!


真美「……ふー、助かったよ〜」



金銀竜「どういうことだ!? アミ、お前は黒魔道士、白魔法は使えないはず!!」



亜美「それはね……こーいうことだよんっ!」シュルッ



金銀竜「あっ……!」




真美「んっふっふ〜♪」

真美「じゃじゃ〜ん! 真美は亜美じゃなくて真美でしたー!」

亜美「そんでもって亜美は真美じゃなくて亜美でしたー!」シュルッ



金銀竜「髪留めの位置を入れ替えたのか……!」




亜美「今だよ真美っ!」タタタ



真美「オッケー亜美っ!」タタタ




金銀竜「さ、させぬっ!!」ビューーンッ



ドゴォンッ!!!




亜美「う〜! あと少しだったのに〜!」


764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:41:17.10 ID:eKm/UeYuO

金銀竜「この期に及んでまだ策を隠していたとは……全く大した奴らだ」

金銀竜「だが、ふたりがけを使えぬお前たちに勝機はないっ!!」

金銀竜「……ゆくぞ!!」

ビュウッ…!



ズドォンッ!!



真美「おそいよっ!」シュタッ



金銀竜「ちっ、さっきの二重ヘイストか!」



真美「真美たちはね、負けらんないんだよ! だって、負けたらムダになっちゃうから!」

真美「ここまでみんなでガンバってきたこととか、長老っちに教えてもらったこととか、全部ムダになっちゃうから!」



亜美「だから亜美たちは負けない! たとえ負けたとしても勝つッ!!」ビシッ



金銀竜「いやそのりくつはおかしい」



真美(勝ちたい……!)


亜美(全部ムダにしないタメに、力がほしいっ……!)





…パァァーーーー!!!





金銀竜「ぬっ!? なんだこの光は……!」


765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:44:39.85 ID:eKm/UeYuO

真美「すごい……なにこれ!!」パァァ



亜美「亜美たちメッチャ光ってるよ……!!」パァァ  



金銀竜「まさか、奴らの身につけているクリスタルの欠片が……!?」



真美「今なら……きっとできそうな気がする。ね、亜美?」チラッ



亜美「うん! どっちがホントに『究極』か、思いしらせてあげるッ!!」



亜美・真美「はあああああっ……!!」ゴゴゴゴ




金銀竜「くっ! ふたりがけはさせぬ!!」ブンッ




亜美「ムダだよっ!」ヒョイッ



亜美「亜美たち、わかっちゃったんだ。……ううん、もしかしたらこのクリスタルの光が教えてくれたのかも」



真美「真美と亜美は、離ればなれでもずっと心は一緒だって!!」




キラキラキラ…!!




金銀竜「ぬおおお! なんという膨大な魔力っ……!?」


766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:51:04.01 ID:eKm/UeYuO

亜美(すごい……なんかわかんないけど、力がわいてくるよ……!)

亜美(亜美も真美も、もうけっこうボロボロなのに……)

真美(そんなの決まってるっしょ、亜美)

亜美(えっ……?)

真美(真美は、亜美がいるから最高の力が出せる。……亜美は?)

亜美(あ…………。へへっ♪)

亜美(亜美は、真美がいるから最高の力が出せる!)

亜美・真美(だからもう……亜美(真美)たちに敵はいないっしょ!!)

真美(行こう、亜美! 真美たちの究極魔法を金銀ぴょんに見せてあげよう!)

亜美(うん! …………お姉ちゃん!)




亜美・真美「……虚栄の闇を払い、真実なる姿現せ……あるがままにッ……!!」




亜美・真美「これが亜美(真美)たちの究極だーーーー!!」




亜美・真美「…………アルテマッッ!!!」





キラキラキラ…!!



金銀竜「あ……」




ーーーーカッ!!




ズドオオオオォォォオオンッッ……!!!




767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 00:54:27.40 ID:eKm/UeYuO

金銀竜「………」

金銀竜「…………ふ」

金銀竜「………………ふふふふ」




真美「はぁ、はぁっ……!」

亜美「ど……どうだっ……!」



金銀竜「素晴らしき姉妹の絆……み、見事……だ……」


…ドサッ




亜美「………」

真美「………」

亜美「……か……勝った……」

真美「……真美たちの……勝ちだ!」

亜美「や、やった……」フラッ

ドサッ

真美「あ、亜美、しっかり!」

真美「あっ……」フラッ

真美「やば……ちょっとねむい……かも……」

ドサッ

768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 01:04:59.67 ID:eKm/UeYuO
ー 月の地下中心核 ー



『……真美たちの……勝ちだ!』



P「亜美、真美……よくやった!」

小鳥「………」



小鳥「……さて、と」スクッ

P「? 音無さん、どうしたんですか?」

小鳥「はい。みんな頑張ってますし、私もそろそろ最終決戦に向けてみんなをお出迎えする準備をしておこうかと思いまして」

P「みんなを出迎える準備……ですか」

小鳥「あ、そうだ。プロデューサーさんにひとつ確認したいことがあったんです」

P「なんです?」

小鳥「今回このゲーム世界へ飛ばされた私たちに適応されるルールについてです。『私たちがこの世界でどんな目に遭っても現実世界には全く反映されない』っていうルール、ご存知ですか?」

P「ああ、それはあの妖精から聞いてますよ。だから俺もそこまで不安はなかったんです」

P「えーと、もしかして音無さんも妖精から聞いたんですか?」

小鳥「はい。私は配役的に特別待遇だそうで、そういう裏ルールは事前に教えてもらってました」

P「そうだったんですか」

P(だとすると、ここまで音無さんがこの世界で無茶をしてきたのは、現実世界に影響がないことを知った上で最大限にあの子たちを楽しませようと考えた結果なのかもしれない)

P(やっぱり本当にみんなと楽しみたいだけなんだな、音無さんは)

769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 01:07:01.30 ID:eKm/UeYuO

小鳥「それで、そのことをあの子たちは?」

P「あ……そういえば誰にも言ってませんでしたね。すっかり忘れてました」

小鳥「そうですか。まあ、その方が好都合ですね」

P「えっ?」

小鳥「それじゃ私、ちょっとだけ席を外します。プロデューサーさんはみんなの様子を見ててあげてくださいね?」

スタスタ


P「………」

P(現実世界に影響がないとはいえ、みんなと戦うにはそれなりに心構えも必要なんだろうな。音無さんはああ見えてとても真面目な人だし)

P(邪魔しちゃいけないし、音無さんのことはそっとしておこう)

P(俺の役目は、最後の戦いを見守ること)

P(そして……)

P(最後の最後の瞬間に、みんなが笑っていられるようにすること)

P(最終決戦ももうすぐか……)


770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/30(水) 01:10:42.60 ID:eKm/UeYuO

小鳥(予定通りアイドルのみんなは勝ち進んでいる。着々と私のもとへ歩みを進めているわね)

小鳥(私が育てた子たちはどんどんアイドルたちに負けていく……)

小鳥(分かってたことだけど、春香ちゃんたちを応援する気持ちよりも……あの子たちに申し訳ないって気持ちの方が大きくなってる)

小鳥(『みんなを楽しませる』って言ってはいるけど、私は結局、親衛隊のみんなやバハムートさんをダシにして、アイドルのみんなすら巻き込んで……)

小鳥(……あれ? おかしいわね。春香ちゃんたちと戦うの、すっごく楽しみだったのに……)

小鳥(今は、そんな気分になれない)

小鳥(なんで……?)



小鳥(私、どんな気持ちでみんなを迎えるつもりだったんだっけ? ……わからない……)

小鳥(私は……765プロの事務員、音無小鳥? それとも、月の民でありながら深い憎しみを湛えた暗黒生命体、ゼロムス……?)

小鳥(私は……)




小鳥(深い憎しみ、か)

小鳥(そうね…………やっと気づいた)

小鳥(私は憎む側ではなく、憎まれる側だったんだ。全てから憎しみを受け、それを飲み込んで、そして……)



小鳥(宇宙の塵のひとつとなって……)



ズズズ…

771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/03(日) 19:26:38.34 ID:a98BiHTBO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


冬馬「うおおおおおっ!!」

ズドドドドドドッ!!


ブルードラゴン「ぐっ……」

ブルードラゴン「……ふっ、どうした? 先ほどよりも攻撃力が落ちているように見えるが?」


冬馬「くそっ……!」

翔太「なんで!? 冬馬くんの攻撃があんまり効いてない……?」

北斗「わからないけど、もしかしたらやよいちゃんの魔力が弱まってきているのかもしれない……」

翔太「そ、そんなぁ!」

北斗「高木社長次第だけど、最悪のケースも考えなければならないのかも……」

冬馬「バカヤロウ! 高槻を信じろ、北斗、翔太! あいつは全面的に俺たちを信じてくれてる」

冬馬「仲間を信頼することも戦いのうちだ。……だろ?」

翔太「冬馬くん…………うんっ!」

北斗「そうだな。それがせめてもの……」



772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:28:37.05 ID:a98BiHTBO

黒井「どけ冬馬。次は私が行く」

冬馬「おっさん……おう!」

黒井「私がいつまでもやられっぱなしではないということをあの化け物に教えてやる……!」

北斗(黒井社長の『大海衝』は水属性。あのドラゴンには通じないはずだけど……)

北斗(社長のことだ、何か考えがあるんだろう)



黒井「はああぁぁぁ……!」ザァァ


ブルードラゴン「懲りずにまた津波か。幻獣王の肩書きも地に落ちたな……」

ブルードラゴン「その津波、凍らせてやる……!」

ブオオオオッ…!!


冬馬「やべぇ、吹雪が来るぞ、おっさん!」


黒井「わかっている! ……頼むぞ、シルフ!」


シルフ「はい、おじ様!」

シルフ「……風のささやきっ!!」


ビュオオオオッ…!!



773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:30:05.33 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「ワシの吹雪にそのようなそよ風など無駄だ」



シルフ「く……!」

シルフ(そんなのわかっています!)

シルフ(一瞬でいい……おじ様が津波を蓄える時間を少しでも稼げれば……!)


ビュオオオオッ…!!


ブルードラゴン「粘りおる……。結果は見えているというのに……」



黒井「よくやった、シルフ。もう十分だ」ザァァ


シルフ「おじ様っ!」


黒井「化け物よ、高槻やよいに歯向かったことを悔いるがいい!」

黒井「……大海衝!!」



ザァァァァ…!!



ブルードラゴン「……無駄なことだ」



黒井「…………ノワール」

ズズズ…


ブルードラゴン「なに!?」



ザァァァ…



冬馬「津波が……真っ黒になりやがった!?」

翔太「うわぁ、なんか大量の墨汁みたいだね〜」



ザッパァァァァン…!!




774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:31:41.36 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「……ぐっ、馬鹿な……! ワシにダメージがあるだと……!?」



黒井「ハッハッハッハァ! ノワールは全てを黒く塗りつぶす! 属性すらもな!」

黒井「私の津波は無属性の水となった。もう貴様も余裕ではいられんぞ!」

黒井「高槻やよいにふざけたことをしてくれた罪、この私が贖わせてやろう……!」ゴゴゴゴ

シルフ「素敵ですわ、おじ様っ」

北斗(属性を塗りつぶすなんてめちゃくちゃだけど、今はそのめちゃくちゃが心強い!)

北斗(オレたちには時間がない。ここは攻めるべきだ)

北斗「冬馬、黒井社長に続くぞ!」

冬馬「っしゃああああああっ!!」ダッ



ブルードラゴン「………」



775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:33:04.54 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「お前たちは肝心なことを忘れていないかの?」



冬馬「……あん?」

ブルードラゴン「お前たち幻獣の力の源はそこの召喚士だ。つまり攻撃力は召喚士の魔力に依存している」

ブルードラゴン「彼女がなぜあんな状態になってまで魔力を放出できるのかは理解できないが、彼女の生命は確実に終わりへと近づいている」

ブルードラゴン「弱まっているのじゃ、お前たちの力は」



冬馬「うるせぇっ!!」ブンッ

ドゴオッ!!


ブルードラゴン「っ……ふふ、お前の拳はその程度だったかの?」


冬馬「く……!」

北斗「本当に弱まっているのか……!」

翔太「うぅ……やよいちゃんが復活してくれれば……!」

黒井「冬馬、次は二人で行くぞ!」

冬馬「おっさん!」

シルフ「私も、お手伝いさせてくださいっ!」


黒井(まだなのか、高木……!)

黒井(やよいちゃんっ……!)



776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:37:28.78 ID:a98BiHTBO

やよい(………)

やよい(…………わ…たし……)

やよい(……どらごんさんの……ふぶきで……)

やよい(……さむい……)




やよい(……どらごんさん、安らぎは死ぬことだって言ってました……)

やよい(わたしの答えはまちがってるって……)

やよい(死ぬのが安らぎなんて、そんなのダメって思うのに、うまく言えなくて……)

やよい(………)

やよい(……死んだら、本当に楽になるのかな……?)

やよい(しあわせに、なれるのかな……?)






『…………やーよいっ♪』





やよい(!)



777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:39:40.49 ID:a98BiHTBO

『やよいちゃんっ』

『やよい!』

『やよいー!』

『『やよいっちー!!』』

『……高槻さん』

『……やよい』

『うふふ、やよいちゃん♪』

『しっかりね、やよい!』



やよい(……みなさん……!)


『ヤヨイィィィ!!』

『ヤヨイさん……』

『ああ、私のかわいいヤヨイ……』

『あなたは私のご主人様なんですからっ』

『……ヤヨイさんはばあさんの若い頃そっくりじゃ』


『やよいちゃんっ』

『……やよいちゃん』

『高槻っ!』

『高槻君……!』

『………………高槻やよい……!』



やよい(…………わたし……わたしっ……!)



『今のアンタならもう大丈夫。……そうでしょ、やよい!』



やよい(伊織ちゃんっ……!)


778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:41:49.78 ID:a98BiHTBO

やよい(……おかしいな、さっきまでさむかったのに……)

やよい(えへへ……みなさんの声をきくだけで心がぽかぽかです……)



やよい(わたしはどらごんさんの悲しみがどんなに深いのかわかりません)

やよい(いくら考えてもわかりません)

やよい(でもでもっ……)







やよい(やっぱり……どれだけ考えても、死んだら楽になれるっていう考え方は、ぜったいにまちがってるかなーって!!!)






779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:44:41.40 ID:a98BiHTBO

ラムウ「……まさか本当に氷だけを斬るとは……。いやはや、驚いた……」


やよい「………」グッタリ


高木「失敗するとは微塵も思っていなかったよ。私だけの力じゃないのだからね」

高木「だが、早く高槻君を起こさねばな。黒井たちも苦戦しているようだ」チラッ

イフリート「ヤヨイィィィッ!! 起きろーーーっっ!!」ボオオッ

やよい「………」グッタリ

ミストドラゴン「ヤヨイ……!」

シヴァ「………」


シヴァ「私は……なんて無力なの……!」

シヴァ「こんな私にとても優しくしてくれた友達に、何もしてあげられないなんてっ……!」ウルッ

ポタ…ポタ…

シヴァ「ヤヨイさん、どうか起きて……!」

シヴァ「また私たちに、笑って見せてっ……!」



…ポタッ




…ピカァァァ!!




シヴァ「!?」


780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:46:27.37 ID:a98BiHTBO

イフリート「ど、どうしたんだ!? いきなりヤヨイが光って……!」

高木「まさか高槻君の身に何か!?」

ミストドラゴン「……いえ」


やよい「………」ピカァァァ!!


ミストドラゴン「見てください。光はどうやらヤヨイの胸元から発しているようです」

ミストドラゴン「ヤヨイが首からかけているネックレス……おそらく……」

ラムウ「……クリスタルじゃ……!」



やよい「………」ピカァァァ!!



シヴァ「ヤヨイさん! ヤヨイさんっ……!」


781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:48:32.85 ID:a98BiHTBO

やよい「………」ピクッ

シヴァ「! 今……!」

やよい「………………ぅ」

高木「高槻君の意識が戻りかけている! みんな、呼びかけるんだ!」

イフリート「ヤヨイィィィッ!!!」

ラムウ「ヤヨイさん……!」

シヴァ「ヤヨイさん、起きて……!」

ミストドラゴン「どうか……!」



やよい「……………………う…………」



やよい「……………………うぅっ……」











やよい「うっうーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」








一同「!!!」

782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:53:13.42 ID:a98BiHTBO

シヴァ「や……ヤヨイさんっ!」ダキッ

ミストドラゴン「ヤヨイっ……!」ウルッ

イフリート「うおおおおおおおお!! ヤヨイィィィィィィッッ!!」

ラムウ「よくぞ……よくぞ戻ってきてくれた……!」

高木「た、高槻君! 身体の方は大丈夫なのかね!?」

やよい「へっちゃらですっ!」

やよい「あの、みなさん。心配かけちゃってすみませんでした!」ペコリ

やよい「わたし、じぶんの思ってることが本当に正しいのかわからなくなっちゃって……」

やよい「でも、もうだいじょーぶです!」ニコッ

シヴァ「良かった……! 本当に良かったっ……!」

イフリート「っしゃあああああっ!!」ボオオッ

ラムウ「ヤヨイさん、復活したばかりで申し訳ないが、まだ戦いは終わっていないのじゃ」

高木「ああ。今は黒井たちが魔物を食い止めてくれている。高槻君、行けるかね?」

やよい「はい! 行きましょうっ!!」グッ

ミストドラゴン「さあ、私の背中に乗ってください、ヤヨイ」

やよい「わかりました!」


783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:54:49.35 ID:a98BiHTBO

冬馬「おい、おっさん。気づいたか?」

黒井「うむ。この漲る力……ヤツが復活したのだな」



ブルードラゴン「……馬鹿な……ワシの氷の棺を自力で破るなどあり得ぬ……!」



冬馬「言ったはずだぜ。高槻は吹雪なんかにやられちまうようなタマじゃねーって」

黒井「さて、貴様には望み通り死を与えてやるとするか……!」



ブルードラゴン「………」

ブルードラゴン(死……。そうじゃ、ワシは望んでいたはずじゃ)

ブルードラゴン(ならばここで果てるは本望と思うべき)

ブルードラゴン(………)



784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:56:17.58 ID:a98BiHTBO

やよい「じゅぴたーさん、黒井社長、しるふちゃん!」

翔太「やよいちゃん!」

北斗「やよいちゃん……!」

シルフ「もうっ! 何してたんですか! 心配したんですからねっ!」グスッ

黒井「………」

冬馬「高槻……!」

やよい「みなさん、ごめんなさい! それと、ありがとうございました!」ペコリ

黒井「話はヤツを倒してからにしろ、高槻やよい」

やよい「あ、はい!」

やよい「………」チラッ


やよい「どらごんさん……!」



ブルードラゴン「…………殺せ。もう現世に未練はない」



やよい「………」

黒井「……何を考えている、高槻やよい」

やよい「あの、黒井社長。ちょっと耳をかしてもらえますか?」

黒井「?」

やよい「ごにょごにょ……」


785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:58:06.33 ID:a98BiHTBO

黒井「………………なんだそれは。そんなことできるかどうか知らんぞ」

やよい「だいじょーぶです。きっとできます!」

黒井「まあ、貴様がそう言うならばやるだけやってみるか」

黒井「はああああっ……!」ゴゴゴゴ



ブルードラゴン「……先程の黒い津波か……」

ブルードラゴン(これでようやく逢える。家族に、友に)

ブルードラゴン(…………だというのに、何故じゃ)

ブルードラゴン(この気持ちは……何なのじゃ……?)



やよい「みなさん、黒井社長にパワーをあつめてくださいっ!」ゴゴゴゴ

北斗「えっ……? そんなことが出来るのか?」 

翔太「出来るに決まってるじゃん! やよいちゃんが言うんだからさ!」

冬馬「ああ、翔太の言うとおりだぜ!」

冬馬「うおおおおおおっ……!!」ゴゴゴゴ

冬馬「おっさん! 俺たちのパワー、使ってくれ!」

パァァァ……!



黒井「! 津波に色が……!?」ザァァァ…



786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 19:59:21.38 ID:a98BiHTBO

ラムウ「さて、ワシらも続くとするかの……!」ゴゴゴゴ

高木「ああ、そうだね!」ゴゴゴゴ

イフリート「うおおおおぉぉおおぉぉぉおおおっっ!!!!」ゴゴゴゴ

シヴァ「……っ!」ゴゴゴゴ

シルフ「はああああっ……!」ゴゴゴゴ

ミストドラゴン「クロイ殿……。私たちも助力致しますっ……!」ゴゴゴゴ


パァァァ……!



黒井「くっ……! 私に集まった津波が色とりどりに輝いているだと……!?」ザァァァ

黒井「これが……力を合わせるということなのか……!」

パァァァ……!



ブルードラゴン(…………そうか、そういうことか……!)

ブルードラゴン(気づいてしまった……この気持ちの正体に……)



787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:01:42.63 ID:a98BiHTBO

やよい「黒井社長、行きましょうっ!!」ゴゴゴゴ

黒井「よし……!」

黒井(高槻やよいが魔力を練るだけでこうも力が湧き上がってくるとは……!)


黒井「食らえ化け物……!」

黒井「大海衝……!」




黒井「…………カラーズ!!」

やよい「うっうーーーー!!!」



ザァァァ…!!




ブルードラゴン(目の前に起こっていることが全て……つまりはそういうことなのだ)

ブルードラゴン(ワシは死に場所を求めていたつもりだったが、あの召喚士に気づかされてしまった)

ブルードラゴン(『死にたくない』と思ってしまった……!)

ブルードラゴン(あの娘が、あんなに楽しそうに笑うから……!)



ブルードラゴン「ぬおおおおおおお!!」




…ザッパアアアァァアアンッッ!!!




788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:06:51.78 ID:a98BiHTBO
やよい「はぁ、はぁっ……」

ミストドラゴン「大丈夫ですか? ヤヨイ」

やよい「だ、だいじょーぶです! ……ごほっ……」

黒井「無理をするな。我々をこちらに長時間顕現させているだけでも相当堪えるはずだ。一旦術を解け」

やよい「いえ……それじゃ、いみがありませんから!」

黒井「……まったく、意外と強情なのだな」




ブルードラゴン「……ぐっ、ぬぅ……」

ブルードラゴン「…………何故じゃ」

ブルードラゴン「何故ワシを殺さない……?」



やよい「それは……」

やよい「どらごんさんにも、安らぎを知ってほしかったからです」



ブルードラゴン「………」



789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:08:46.81 ID:a98BiHTBO

やよい「わたし、かんがえました」

やよい「どらごんさんはわたしよりもたくさんたくさん長生きだし、わたしよりもたくさんたくさんつらいことをけいけんしてきたって言ってましたし……」

やよい「そのどらごんさんが、安らぎが死ぬことって言うのなら、それは正しいことなのかもって」

やよい「でもわたし、どうしてもなっとくがいかなくって……」

やよい「だって、やっぱりわたしにとっての安らぎは、みなさんと笑ってすごすことですから」



ブルードラゴン「………」



やよい「だから、まちがってるかもしれませんけど、わたしはどらごんさんをころしたりはしません」

やよい「どらごんさんにもいますよね? いっしょにがんばる仲間が」



ブルードラゴン「!」



やよい「前にたたかった時、思ったんです。しんえーたいのみなさんも、わたしたちと同じなんだなーって」

やよい「みんなできょうりょくして、がんばってるなーって」

やよい「大切な人たちと笑い合える安らぎ……。それを、知ってほしくて」

やよい「……ううん、わたしが言わなくても知ってるはずなんです、どらごんさんも!」

やよい「だから……どうか思いだしてくださいっ!!」



ブルードラゴン「………」


790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:10:38.22 ID:a98BiHTBO

ブルードラゴン「思い出す必要などなかったのじゃ」



やよい「えっ?」



ブルードラゴン「そなたらと戦っている最中に、すでに理解していたのだから」

ブルードラゴン「いや、最初から……。もしかしたらそなたに会った瞬間に気づいていたのかもしれん。安らぎというものに」

ブルードラゴン「ヤヨイ……そなたのひたむきな心、そして果てのない優しさのおかげじゃ……」

ブルードラゴン「……ありがとう」



やよい「……えへへっ♪ どういたしましてですっ!!」ニコッ



冬馬「……一件落着ってところか?」

翔太「だね! まあ、やよいちゃんが負けるなんてあり得ないって思ってたけど」

北斗「結局、天使の微笑みに敵うものなんていなかったわけだ」

高木「いやあ、やはり高槻君はとても良い子だねぇ……!」ホロリ

黒井「………」


791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/03(日) 20:14:54.97 ID:a98BiHTBO

黒井「……さて、帰るぞ」

冬馬「……だな。これ以上高槻に負担かけるわけにもいかねーし」

高木「うむ。そうだね」

翔太「僕たちは次の出番までまたミシディアでお祈り、だね!」

北斗「……エンジェルちゃんたち、帰ろう」

シヴァ「……ええ」

イフリート「いよっしっっ!!」

ラムウ「ヤヨイさん、また必要になったらワシらを呼んでくれ」

シルフ「仕方ないのであなたのために待機していてあげますよ〜」

ミストドラゴン「可愛いヤヨイ。……また会えるのを楽しみにしています……」



スゥゥゥーー…



やよい「みなさん、今回もありがとうございましたっ!」


やよい「…………あっ、あの! 黒井社長!」



黒井「……なんだ?」



やよい「また、よろしくおねがいしますね?」



黒井「……ふん」



やよい「えへへっ♪」ニコッ



792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/10(日) 20:45:02.11 ID:E6eoG1uYO
ー 月の地下渓谷 B8F ー


ガキィン!! キィンッ!!


千早「…………はっ!」ブンッ


月の女神「えいっ!!」ブンッ


ガキィンッ!!



…スタッ



月の女神「……はぁ、はぁっ……!」


千早「………」

千早(あの子の息が切れはじめた……。それに、こちらの攻撃を躱さずに受け止めるケースが多くなってる……?)

千早(もしかしたら、このまま押し切れるかもしれないわ)

千早(ここは攻撃の手を休めないのがベスト!)


ダッ…


793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/10(日) 20:46:11.86 ID:E6eoG1uYO

千早「はあああっ!!」ブンッ


月の女神「……くっ!」ガキィンッ


千早「そろそろ体力の限界かしら。でも手加減はしないっ……!」ブンッ


ザシュッ!!


月の女神「ううっ……!」ヨロッ


月の女神「……はぁ、はぁっ……!」


千早「………」チャキッ




月の女神「………………ふふ、うふふふふっ」



千早(……わ、笑ってる……?)


794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:47:36.04 ID:E6eoG1uYO

月の女神「ねえチハヤ。チハヤはあーてぃすとっていうのになりたいって言ってたよね?」


千早「え、ええ。それがどうかしたの?」


月の女神「じゃあさ…………チハヤにとってあいどるってなんなの?」


千早「……えっ?」


月の女神「あーてぃすとになるためなら捨てても構わないって思ってるくらい、チハヤにとっては別に大切じゃないものなのかな?」


千早「そ、それは……」
 

月の女神「チハヤにとって、あいどるってなに?」


千早「………」

千早(まさか、動揺を狙う作戦?)

千早(……いいえ、ここまで戦ってきたから分かる。この子は純粋な力比べにそんな水を差すようなことをする子じゃない)

千早(おそらく、ただ疑問に思ったことを口にしているだけなんだわ)

千早(…………私にとっての、アイドル……?)


795 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:49:34.55 ID:E6eoG1uYO

月の女神「私ね、悔しいんだ」

月の女神「チハヤの方が体力があるとか、私が負けそうだとかそういうことじゃなくて」

月の女神「せっかく仲良くなれたのに、想いを共有できないのが……」



月の女神「……とっても悔しいっ……!」メキメキッ

ボゴオッ!!



千早「!」

千早(な、なに……あれ……)

千早(あの子の腕がまるで大木のように膨れ上がった……!?)



月の女神「はぁ、はぁっ……」

月の女神「ごめんね、チハヤ」

月の女神「本当は私、『こう』なるつもりはなかった。普通に戦ってチハヤに負けちゃうなら、それはそれで仕方ないかなって思ってた」

月の女神「……でも、だめだね……!」ギラッ



千早「っ……!」ゾクッ

千早(なんて……目つきなの……!)


796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:51:21.99 ID:E6eoG1uYO

月の女神「私は、あいどるが好き。キラキラ輝くあいどるに私はなりたい」

月の女神「コトリ様にあいどるの話を聞いてから、私の中であいどるが絶対になった……」


千早「………」


月の女神「あいどるを軽んじる人を私は許さない。あいどるを利用することを私は許さない」

月の女神「あいどるは至高の存在であって、穢されてはならないもの。貶められてはならないもの」

月の女神「だから、あいどるなのにあいどるを大事にしていないチハヤを……」



月の女神「私は……壊さなきゃっ……!」
 


千早(人の数だけ考え方あるのだから、中にはこういう偏向的な考えの人がいても当然)

千早(とはいえ……これは流石に異常……!)

797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:53:58.12 ID:E6eoG1uYO

月の女神「覚悟してね…………チハヤ!」

月の女神「いっくよーっ♪」ブォンッ



千早「くっ……!」チャキッ


ドゴオォッ!!


千早「っ!?」


ヒューー…ズドォォォン…!!




月の女神「……あははっ、ちょっと殴っただけなのにすっごい飛んでっちゃった」




千早「……っ……く!」

千早(なんて無茶苦茶な威力……! 防御がまるで意味をなさないなんて……)


798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:55:41.78 ID:E6eoG1uYO

月の女神「防御なんてムダだよ。だってガードごと吹き飛ばしちゃうもんねっ」

月の女神「うふふ……まだまだだよっ!」ダッ

タタタタ…



千早(受けることが出来ないなら、避けるしかない……!)

千早「…………くっ!」タンッ

フワッ…



月の女神「ふふ、やっぱり空中に逃げるよねっ!」タンッ



千早(来た……)

千早(近づかれるのは危険。……なら!)

千早「……ホーリーランス!!」チャキッ

キラキラキラ…!


ドゴゴゴゴオオォォォンッ!!!




…スタッ

千早(攻めの手を緩めてはダメね、きっと)

千早「……もう一度!」チャキッ



月の女神「……あははははっ!!」

タタタタ



千早「えっ……!?」




月の女神「つーかまーえたっ♪」ガシッ



799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 20:57:45.27 ID:E6eoG1uYO

千早「み、身動きが……取れないっ……!」グッ

月の女神「当たり前だよー。だって今の私の腕力は、元の何倍にもなってるからね♪」

月の女神「絶対に離さないよー!」

千早「っ……!」

月の女神「さーて、どーしよっかな?」

月の女神「チハヤってかなり華奢だから、ちょっと力入れたら簡単に折れちゃいそうだね♪」

千早「くっ……!」

千早(まずいわ……このままじゃ……!)


メキメキッ!


千早「うあああっ!!」


月の女神「あははっ♪ 歌が好きなだけあって、本当にいい声してるよね! 悲鳴までキレイ!」

月の女神「……チハヤがいけないんだよ。チハヤはあいどるなのに、あいどるのことを大切にしないから」

千早「ぅ……!」



千早(私にとっての……アイドル……)


800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:00:03.11 ID:E6eoG1uYO

千早(いったいなに……? 私にとってのアイドルって……)

千早(私はたまたまアイドルになったけど……それは、自分の歌を認めてもらう為の手段に過ぎなくて……)

千早(そう、私にとってアイドルはただの通過点)

千早(ちゃんと自分の歌を世界に届けられるようになるまでの繋ぎ)

千早(それ以上に思ったことなんて、今まで……)



『だから私、思ったの。この世界のみんなに、お礼がしたいなって』



『それでは、聴いてください……』



千早(あ…………)



801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:02:10.15 ID:E6eoG1uYO

月の女神「絶体絶命ってカンジだね、チハヤ。もう自慢の槍どころか、腕一本動かすこともできないでしょ?」

千早「………」

月の女神「せっかく仲良くなれたけど……お別れだねっ!!」グッ


メキメキッ!!


千早「くっ……!」グッ

月の女神「! ……ふふっ♪ そうだよね。死にたくないよね、チハヤだって」

月の女神「でもダメ。だってチハヤ、あいどるを大切にしないんだもん!」


千早「……まだ……武器はあるわ……!」


月の女神「えっ?」







千早「あーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」







月の女神「〜〜〜ッッ!!?」


802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:03:46.73 ID:E6eoG1uYO

月の女神「くぅぅ……み、耳が……!?」キーン

月の女神「な、なんだったの、今の……?」




千早「はぁ、はぁっ……」

千早「……自慢じゃないけど、私、声量には少しだけ自信があるの。鍛えてるから」



月の女神「チハヤ……」



千早「もちろん、声だけでダメージを与えられるなんて思ってはいないわ。でも、少しは驚いてもらえたみたいね」



月の女神「……うん、びっくりした。まさかそんな風に攻撃してくるなんて」



千早「……あなたの質問の答えになるかわからないけれど」



月の女神「え?」


803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:06:13.20 ID:E6eoG1uYO

千早「私は今まで、私のために歌を歌ってきた。自分の歌を認めてもらうために、一人で歌ってきた」

千早「でも、アイドルになってからは、それでは通用しなくなってしまった」

千早「何故なら、アイドルは……一人じゃ存在できないものだから」



月の女神「一人じゃ、存在できない……?」



千早「アイドルはね、自分のために歌うのではなく、聴いてくれるファンの人たちのために歌うものなのよ」

千早「アイドルはファンの人たちがいなければ存在できないの」



月の女神「………」



千早「アイドルになって私は、誰かのために歌うということを知った」

千早「自分だけのものだった歌がそうじゃなくなって、最初は戸惑いを覚えた。……でも、誰かと共有するということが、どこか温かく感じられて」

千早「だから、私にとってのアイドルは……」



千早「歌で誰かと繋がることを教えてくれた…………とても、大切なもの」



月の女神「………」

804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:12:07.14 ID:E6eoG1uYO

月の女神「………」

月の女神「…………ふふふっ♪」

月の女神「なぁんだ、じゃあチハヤにとってあいどるはいらないものじゃなかったんだね」



千早「以前はそうは思わなかったわ」

千早「今は……大切だと思える。ファンの人たちとの繋がり、仲間との絆。誰かと繋がること、その温かさを私に教えてくれたのがアイドルだから」



月の女神「誰かと、繋がること……」



千早「でも、やっぱり私には歌しかないから、いつまでもアイドルでいるつもりもないの」



月の女神「えっ……なんで? なんで大切なものなのに捨てちゃうの? そんなのおかしいよ!」



千早「夢だから。自分の歌を世界のいろんな人たちに聴いてもらうのが」

千早「そしてそれは、アイドルのままではきっとできないことだと思うから」



月の女神「夢……」




千早「あなたがアイドルに憧れるのと同じように、私にも目指すものがある、ということなの」



月の女神「………」

月の女神「…………正直、よく分からないよ。けど、ちょっとだけわかった気がする。チハヤのこと、あいどるのこと」



千早「……ありがとう」



月の女神「ねえ、もうひとつ訊いてもいい?」



千早「何かしら」


805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:14:36.95 ID:E6eoG1uYO

月の女神「チハヤがアイドルになって仲良くなった子たちは、チハヤがあーてぃすとになったらどうなるの?」

月の女神「せっかく仲良しになったのに、いつかはお別れしちゃうってことなの? チハヤは……悲しくないの?」



千早「………」



千早「……ふふっ」ニコッ



月の女神「!」



千早「悲しくなんかないわ。だって、消えないから」



月の女神「えっ……」



千早「苦しいレッスンも、大変な仕事も、みんなで頑張って成功させたライブも……」

千早「仲間と過ごしたかけがえのない時間は、一生消えることなくこの胸に生き続けるって……そう、信じてるから」



千早「だから…………悲しくなんて、ない」


パァァァーー!!



月の女神「っ……ち、チハヤ……?」


806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:19:00.53 ID:E6eoG1uYO

千早「温かい光……これはいったい……?」パァァ

千早(……なんだろう、とても気分が落ち着く)

千早(………)

千早(……そう、そうなのね。私の出した答えを褒めてくれるんですね)

千早(…………ありがとうございます)ギュッ




月の女神「ねえ、チハヤ。チハヤはやっぱり強いんだね」



千早「私が……? いえ、そんなことはないと思うわ」



月の女神「ううん、強いよ。だって今の千早、とってもいい顔で笑ってるもん」



千早「そ、そう……なの?」



月の女神「いいなぁ。私も千早みたいなカッコいいあいどるになりたい!」

月の女神「えへっ♪ ますます負けられなくなっちゃった!」スッ



千早「私も、簡単に負けるつもりはないわ!」チャキッ



…ザッパァァァァ!!




千早「!?」

千早「な、なに!? いきなり天井から大量の水が……!?」



ザァァァ…!!



千早「と、とにかく、逃げなきゃ!」タンッ

フワッ…


807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:22:08.78 ID:E6eoG1uYO

…スタッ

千早「……とりあえず、ここまで高いところに登ればひとまず安心かしら……?」


ザァァァ…!!



千早(水はすごい勢いで流れ落ちてきている)

千早(なぜ急に上から水が? 上で何かあったの?)チラッ


千早(……もしかしたら、誰かが上の階で戦っているのかもしれないわね)

千早(誰かはわからないけれど、無事だといいのだけど……)


千早「……あ、そういえばあの子は?」キョロキョロ



千早「………」

千早「……見当たらない。今の水流に呑まれてしまったのかしら……?」

千早(あの子がいない今なら、下の階へ進むことができる)

千早(少し待って、水の流れが落ち着いたら先へ進みましょう)

千早(………)

千早(でも、もしあの子は溺れているのだとしたら……)

千早(……いいえ、あの子だって魔物だし、溺れたくらいで死んでしまうことはないはず)

千早(というかそもそも、私が敵であるあの子の心配をする必要がないのよ)

千早(………)

千早(…………)

千早(………………こんなことをしている暇、本当はないんだけれど……)

千早「……ふっ!」タンッ


…ザッパァァン!!


808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:28:37.86 ID:E6eoG1uYO
ー ミシディア 祈りの館 ー



冬馬「戻ったぜ爺さん!」



長老「……おお、よくぞ戻ってきてくれた。ずいぶん長かったの」

冬馬「まあ、いろいろあってな」

冬馬「…………って」チラッ


ルビカンテ「……ほう、お前たちが翁の言っていた幻獣か」


冬馬「……誰だ?」


カイナッツォ「ふっふっふ……! 我こそは水のカイナッツォ!」

スカルミリョーネ「……つ、土の、スカルミリョーネ……」

バルバリシア「風のバルバリシアよ、坊やたち。よろしくね?」

ルビカンテ「火のルビカンテだ」


北斗「へぇ、まさか四天王がここにいるとはね」

冬馬「四天王ってもしかして……」

北斗「ゲームでは主人公たちの行く手に立ち塞がる敵キャラだけど……」

翔太「見た感じ、敵対してる様子はないよね」

冬馬「ふーん……」

長老「彼らもまたハルカたちに影響を受けた者たちじゃ。ここで共に祈りを捧げてくれることになった」

冬馬「おー、まあよろしくな」

長老「……あっさりと受け入れるんじゃのう。魔物と共に祈ることを」

冬馬「今さらだぜ、そんなの。天海たちと関係があるってんなら、少なくとも敵じゃねーんだろ? だったら何も言うことはねーよ」

カイナッツォ「ほう、幻獣とはもの分かりがいいのだな。まあ、せいぜい私たちの足を引っ張らないことだ!」

スカルミリョーネ「……ひ、一言多い……!」

冬馬「足を引っ張るとかそういうんじゃねーだろ? 俺たちもあんたたちも、あいつらに力を貸したいと思ってるからここにいる」

冬馬「ダチに協力するのに幻獣も魔物もねーんだよ」

カイナッツォ「ふん……!」

スカルミリョーネ「……い、いいこと言う……!」

バルバリシア「へーぇ……」

ルビカンテ「………」


809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:30:57.43 ID:E6eoG1uYO

翔太「……へへっ、冬馬君、なんかカーッコイイ!」

北斗「ああ、カッコイイぜ、冬馬!」

冬馬「べ、別に、俺は思ったことを言っただけだ」

高木「嬉しいねぇ。あの子たちに力を貸したいと思ってくれるのは。どうか、よろしく頼むよ」

ルビカンテ「乗りかかった船だ。最後まで見届けさせてもらう」

黒井「……さあ、さっさと祈りとやらを再開するぞ。時間は限られているんだ」

バルバリシア「し、シブい……! もろ好みだわ……!」ガーン


長老「ふふふ……」ニコッ


長老「っ……ごほっ、ごほっ!」


高木「だ、大丈夫かね? ご老人」スッ

長老「す、すまん……大丈夫じゃ。…………ごほっ!」

冬馬「いや、血ぃ吐いてるじゃねーか! どう見てもヤバいだろ!?」

長老「心配は……いらんよ……」

翔太「ねえ、おじいさん、少し休んだ方がいいんじゃ……」

長老「アミとマミが頑張っているんじゃ。ワシだけ何もしないわけにはいかんのじゃ」

長老「ワシはこんなところでは死なんよ。……なにせ、あと500年は生きねばならんからの」ニコッ

冬馬「……は?」

長老「こっちの話じゃ。……さあ、祈りを捧げよう」



810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:34:19.64 ID:E6eoG1uYO
ー 月の地下渓谷 B7F ー



…バシャァッ!


千早「……っぷはぁ、はぁ……!」

千早「くっ……!」ガシッ

…ドサッ


千早「……なんとか……見つけることはできたわね」チラッ

月の女神「………」グッタリ

千早「死んでしまってるわけではないみたいだけど、意識をなくしているみたい」

千早「この子、泳げなかったのかしら……?」

千早(……私、なんで助けたんだろう。放っておいてもいいはずなのに)

千早(この子がアイドルに憧れているから? 私のことを友達と言ってくれたから?)

千早(それとも……)




千早「…………ゴク、ゴク」

千早「……ふぅ」

千早「いつまでも休んでいるわけにはいかない。先へ進まないと」

千早「………」チラッ


月の女神「………」グッタリ


千早「………」

千早(とどめを刺すなんてことはしないし、これ以上あなたを助けることもしない)

千早(……でも)

千早(今はとても心が軽いの。きっと、あなたが私に気づかせてくれたからね)


月の女神「……とっぷ……あいどる……」ムニャ


千早(……あなたの夢、叶うといいわね)



千早「…………さよなら、月の女神」クルッ

スタスタ…



月の女神「……チハ…ヤ……」ムニャ



811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/10(日) 21:36:14.78 ID:E6eoG1uYO
ミス
>>810は地下8階の間違いです
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:38:31.76 ID:E6eoG1uYO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


美希「……はぁ、はぁ……」ヨロッ



暗黒魔道士「……まだ立ち上がるのか。本当にキミは負けず嫌いなんだね」



美希「違うの。負けたくないんじゃなくて、負けられないの」

美希「みんなでコトリに会いに行くのに、ミキひとり遅刻じゃカッコ悪いもん」



暗黒魔道士「………」

暗黒魔わ道士「……まあいい。どちらにしろキミは立っているのがやっとだろう?」

暗黒魔道士「今度こそ終わりだ」バッ

ゴオオオオッ!!


美希「!」


暗黒魔道士「もちろんキミがこれを避けても、ボクには次の一撃がある」

暗黒魔道士「ミキ、キミにはボクの連撃をやり過ごす体力は残っていまい」


美希「……やってみなきゃ、わからないの!」ザッ


暗黒魔道士「……いいだろう。さあ、行くよ」


暗黒魔道士「…………ファイガ」


ゴオオオオッ!!



813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:40:38.38 ID:E6eoG1uYO

美希(たぶんアンコクさんが連続で使える魔法は3コか4コまでだよね……!)

タタタタ…


ドゴオオォォンッ!!



暗黒魔道士「…………ブリザガ」


コォォ…シャキーン!!



美希(これもなんとかやり過ごして…………っ!?)

美希(熱い……!? なにコレ……?)

美希「…………あっ」スッ

美希「さっき拾った石……?」




暗黒魔道士「…………トルネド」


ビュオオオッ…!!



美希「…………そっか。なんで今まで気付かなかったんだろ……!」



ビュウウウウッ!!



暗黒魔道士「…………よし、直撃したっ……!」

暗黒魔道士「ふふ……乱気流に捕らわれたキミは地面に叩きつけられて今度こそ終わりだ……!」

暗黒魔道士「ボクの…………勝ちだッ!」




「…………んーん、それは違うよ?」




暗黒魔道士「!?」


814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:43:08.26 ID:E6eoG1uYO

暗黒魔道士「な、なぜボクのそばに!? 一体どうやってここまで……?」


美希「あずさに聞いたの。テレポは建物とかから脱出するだけじゃなくて、ちょっとした距離の移動にも使えるって」


暗黒魔道士「そ、それでこの暗闇の中をボクのところまで真っ直ぐ来たっていうのか……? いや、そういえばキミはボクの位置を把握していたんだったね……」

暗黒魔道士「だとしても、ならばなぜ今までテレポを使わなかった? 幾度となく危ない瞬間はあったはずだ」


美希「……アンコクさん、ユダンしすぎなの。ミキ、もうとっくに詠唱終わっちゃったよ?」


暗黒魔道士「…………え?」


美希「…………ホーリー!!」バッ


キラキラキラ…!!


暗黒魔道士「しまっ……!」



ズドドドドドドッ!!!


815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:45:27.80 ID:E6eoG1uYO

暗黒魔道士「っ……ぐはっ……!」ヨロッ

暗黒魔道士「く、くそ……!」



美希「ふーん、やっぱりアンコクさんって魔法はスゴいけど、運動神経はあんまり良くないみたいだね」

美希「魔道士って大変だよねー」



暗黒魔道士「……はぁ、はぁ……!」



美希「さっきの質問だけど、テレポでの移動は大事な時だけにしようって思ってただけだよ。最初の方に使って対策を用意されたら厄介だし」



暗黒魔道士「それがキミの切り札ってわけか……。でも、ミキの言うとおりだ。テレポは考慮させてもらう……!」



美希「いいよ、べつに。たぶん、もうすぐ夜も明けると思うし」



暗黒魔道士「え?」



…パキッ!


暗黒魔道士「!!」



パリンッ…!



暗黒魔道士「ま、まさか……!?」



美希「……『これ』だったんだね。全ての原因は」スッ



暗黒魔道士「や、やめろ、『それ』が壊れてしまったらボクは……!」


…キラッ!


暗黒魔道士「う…あ……ひ、光が……!」



パァァァーー!!



816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:51:15.91 ID:E6eoG1uYO

美希「っ……まぶしっ……!」

美希「………」

美希「………」

美希「……ふぅ。ようやく明るくなったの。もう何時間も夜みたいだったから、なんかすごくヘンなカンジ☆」


暗黒魔道士「うぅっ……! な、なぜ……なぜキミがそれを持っているんだ……? くそ、全て破壊されている……!」


美希「ここへ来る途中の階段でたまたま拾ったの」

美希「アンコクさんのパワーの源で、この階が真っ暗だった原因は、この石だったんだね」


暗黒魔道士「いつだ……いつ気づいた……?」


美希「気づいたのはついさっきだよ。アンコクさんが魔法を使う時にこの石が熱くなってて、『あれ? もしかして』って」

美希「ホントはもっと早く気づいてもよかったはずなんだけど、まさかこんな石が関係してるとは思わなくて」

美希「ねえ、この石ってなんなの?」


暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士「……ダークマター。宇宙の欠片だ」

暗黒魔道士「ダークマターの漆黒の輝きはボクのような闇属性を持っている者のパワーを増幅させる。そして、ある程度の数を集めれば一時的に宇宙空間を作り出すこともできる」

暗黒魔道士「戦いの前にコトリ様からいくつか借りて、予めこの階をボクの戦い易いようにしておいたんだ。……キミたちを倒すためにね」


美希「ふーん……」


817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:53:45.74 ID:E6eoG1uYO

暗黒魔道士「……悔しいけど、どうやらボクの負けみたいだ。こう光が多いと、ボクは満足に戦えないだろう」


美希「じゃあミキ、先に進んでもいい?」


暗黒魔道士「ああ……。好きにするといい」


美希「ありがとーなの!」ニコッ



美希「バイバイ、アンコクさん! なかなか強かったよ? あはっ☆」

スタスタ…



暗黒魔道士「………」









暗黒魔道士「………………ククク……」



暗黒魔道士「…………アスピル」


シュイィィィィンッ!!




美希「っ……ぁ……!?」ガクッ


818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:56:40.14 ID:E6eoG1uYO

暗黒魔道士「ミキ。キミみたいに才能があるっていうのは一概に有利とは言えないのかもしれないね」

スタスタ…


美希「ううっ……!」


暗黒魔道士「何故なら、大抵の者は自分の才能に慢心して油断してしまうからだよ」

暗黒魔道士「その点、ボクのように才能の無い者は決して慢心したりしない。自分の底を知っているからね」

暗黒魔道士「用心深く敵を観察し、周到に罠を張り巡らせて、本当に勝てると思った時にしか戦いを仕掛けない」

暗黒魔道士「キミが魔道士で良かった。『アスピル』で魔力さえ吸い取ってしまえば無力なんだから」



美希「………」スッ



暗黒魔道士「……ブリザガ」

コォォ…シャキーン!!


美希「あぅ……!」



暗黒魔道士「エーテルを持っているんだね。だけど回復はさせないよ」



美希「む〜……」



暗黒魔道士「本当にキミはボクを驚かせてくれた。でも、これで本当に終わりだ。今この瞬間こそ……」


暗黒魔道士「天才が凡人に負ける瞬間だッ……!」ゴゴゴゴ


ビュオオオッ…!!



美希「………」


819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 21:58:42.03 ID:E6eoG1uYO

美希「……もー、わかってないなー」スクッ

美希「言ったでしょ? ミキ、負けられないって」



暗黒魔道士「強がりはよすんだ。魔力を失った今度こそ、キミに成す術はないんだから……!」

暗黒魔道士「…………トルネド!」バッ

ビュオオオッ!!




美希「アンコクさんってさ、その風の魔法好きだよね」



暗黒魔道士「……ああ。トルネドはボクが最も得意とする魔法だからね」


ビュオオオッ!!



美希「でも、ザンネン。そんな風じゃ、ミキは怯まない」ザッ



暗黒魔道士「負け惜しみかい? ボクに負けるのが悔しいかい……!」


ゴオオオオオッ!!



美希「そうじゃないよ……!」ゴゴゴゴ

美希(たぶん、できる。だってミキ、一度見てるもん)

美希(お願い、力を貸してほしいのっ……!)


…パァァァーー!!



暗黒魔道士「! な、なんだ……? 魔法……?」

暗黒魔道士「そんなはずはない……! ミキはすでにケアルすら使えないはず……!」


820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 22:02:02.94 ID:E6eoG1uYO

美希「ハニーにもらったネックレスが光って……」

美希「……うん、わかった。強く願うんだね……!」ギュッ




美希「力を貸してほしいの! ……シアちゃんっ……!」バッ


ビュオオオッ…!!




暗黒魔道士「!?」

暗黒魔道士「この風は一体どこから……!? ま、まさか……!?」



美希「そんな扇風機みたいな風、すずしいだけだって思うな!」

美希「ホントの風……ミキが教えてあげるのッ!」

美希「はあああああっ……!」

ビュオオオッ!!




美希「…………ミールストームッ!!」


ゴオオオオオオッ!!




暗黒魔道士「ば、バカな……!? これは魔物の技……!?」

暗黒魔道士「ぐっ……! ぼ、ボクの魔法が押されて……!」



ゴオオオオオオーーッ!!




暗黒魔道士「うわぁぁあああぁぁっ!!」



ドゴオオォォンッ…!!!


821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 22:05:07.27 ID:E6eoG1uYO

暗黒魔道士「……ぐ…は……!」ヨロッ

暗黒魔道士「……はぁ、はぁ……! くそっ……」

暗黒魔道士「ぼ、ボクは……負けたのか……?」

暗黒魔道士「あんなに……周到に用意したというのに……」


美希「……はぁ、はぁ……」

美希「……まだ、やる?」


暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士「正真正銘、ボクの負けだ……」

暗黒魔道士「ミキ、まさかこんな技を隠していたなんて……」

暗黒魔道士「ボクが勝てる要素なんて、最初から無かったようだね……。キミはボクと違って本当に天才だったんだ……」


美希「……それは違うよ。アンコクさんに勝つことができたのはミキだけの力じゃないもん」

美希「ミキね、貴音から聞いてたから知ってたの。アンコクさんがアスピルっていう魔法を使うこと」

美希「だから、事前に対策を考えることができたんだ」

美希「それに、この……ダークなんとかっていう石を見つけられたのは、春香が階段で転んでくれたおかげだし」

美希「テレポの使い方だって、あずさに教えてもらわなければ知らなかったの」

美希「最後の技もそう。ミキの大切なお姉ちゃんの力を借りて、やっとできたんだよ?」

美希「だから、これはミキひとりの勝利じゃないの」


暗黒魔道士「………」

822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/09/10(日) 22:06:41.92 ID:E6eoG1uYO

美希「それとね? ミキ、天才って言われるのあんまり好きじゃないの。だってミキ、天才なんかじゃないし」


暗黒魔道士「……勝者ゆえの余裕にしか聞こえないよ、ミキ。キミがボクの力を上回っていたのは確かなんだ」

暗黒魔道士「妬ましい……。キミのその才能が、妬ましいよ……」


美希「才能がどうとか、ミキ的にはカンケーないって思うな。がんばらなきゃなーんにもできないし、がんばればなんだってできる」

美希「最後に笑うのは、たくさん努力した人なんじゃないかな?」


暗黒魔道士「………」

暗黒魔道士「…………ふふ。キミは本当に残酷だ……」

暗黒魔道士「まあいい……。キミたちはすぐに死ぬことになるんだから……」

暗黒魔道士「……コトリ様の手によってね……!」


美希「!」


暗黒魔道士「せいぜい束の間の勝利を喜ぶといい……」


スゥゥゥーー…



美希「…………消えちゃったの。あふぅ」

美希(……小鳥、ホントにノリノリなんだね)

美希(そういえば、死んだらどうなっちゃうのかな。前に貴音が死んじゃった時はミキが生き返らせたらしいけど、ミキ、その時のこと全然覚えてないし)

美希(ミキ、そーいう魔法使えるのかな……?)


823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 08:12:20.76 ID:udhaJQTNo
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 10:51:39.87 ID:Ijlr45TlO
遅れてごめんなさい
待ってくれてる人はもういないかもですけど一応今日か明日の夜投下します
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 14:15:42.83 ID:0g11BZLOo
ふざけんな居るっつーの!!
ずっと待ち続けてるっつーの!!

お疲れ様です、ご無理はなさらず
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/04(土) 20:16:17.22 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


貴音「…………ふれあ!」バッ


ブゥゥゥゥン…

ババババババババッ!!

ドゴオオオオオンッ!!

 

ダークバハムート「……ククッ、効かぬわ」


ダークバハムート「……ふんっ」ブンッ

ザシュッ!!


貴音「っ……ぐぅ……!」ヨロッ

貴音「……けあるが」

シャララーン! キラキラキラ…!


ダークバハムート「……ほれ、早くせぬと後手に回るばかりだぞ?」シュンッ


貴音「! ……へいすと!」

カタカタ…シャキーン!


ダッ…!


貴音「……ふれあ!」バッ


ブゥゥゥゥン…

ババババババババッ!!

ドゴオオオオオオンッ!!



ダークバハムート「…………」バサッ


827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:18:28.76 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「我に通常の魔法など通用せぬ。我を倒したくばメガフレアで来い、タカネ」



貴音「………」

貴音「……どうやらそのようですね。次からはそうすることにします」


ダークバハムート「お前のことだ、敢えてフレアを撃ってきたことに何か理由があるのだろう?」


貴音「はい。『ふれあ』と『めがふれあ』は何か共通項があるのではないか、と思ったのです」

貴音「わたくし自身はまだ『めがふれあ』を扱い慣れておりません故、参考になる部分があれば、と」


ダークバハムート「ふっ……頭の回る女よ。その様子だと、骨は掴めたようだな」


貴音「おかげさまで」ニコッ

貴音「めがふれあの太陽爆発のいめぇじが自分の中で固まってまいりました」


ダークバハムート「ククッ……!」

ダークバハムート(魔法を使う上で一番重要なのはイメージ。頭にイメージを思い浮かべ、それを魔力でもって展開していくことになる)

ダークバハムート(新しく習得した魔法を想像し発動するのは、普通ならばなかなか慣れぬものだ)

ダークバハムート(タカネほどの者にもなると覚えたての魔法であっても短い時間で自分のものにしてしまう、か)

ダークバハムート(だが……)


828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:21:11.50 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「タカネよ、言っておくがお前は我に勝利する為の条件を一つクリアしたに過ぎぬ」


貴音「ええ、十分に存じております」

貴音(めがふれあをものにするのは、あくまで最低条件。それよりもその次の段階の方が厄介と言えましょう)

貴音(そう。武器の扱い方を理解したとしても、それを撃つ機会がなければ意味は無い)

貴音(如何にして隙を全く見せないばはむーと殿を欺き、隙を作るか……)


ダークバハムート「そういうことだ。自らを脅かす攻撃が来ると分かっていて、それをみすみす見逃す者などいない」

ダークバハムート「隙など見せぬ。全力で止めさせてもらうぞ……!」


貴音(やはり、心を読まれるというのは厄介ですね……。こちらが何をしようとしているのかが全て筒抜けなのですから)

貴音(いっそここは無心に……)

貴音(! ……いえ……)


ダークバハムート「む? どうした? 何か良い策を思い付いたのか?」


貴音「……ええ」ニコッ

貴音(これならば、或いは……!)


829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:23:56.31 ID:Ijlr45TlO

貴音「………」



ダークバハムート(動かぬ……何を考えている……?)



貴音「………」



ダークバハムート(……タカネの心の声が聴こえぬ。いや、これは……)



貴音(……醤油、味噌、豚骨、塩……)



ダークバハムート「……?」



貴音(……葱、めんま、海苔、もやし、ちゃあしゅう、白菜、胡椒……っ!)ゴゴゴゴ



ダークバハムート(なんだこれは? 一体何の呪文なのだ……?)



貴音(……めんかたからめやさいだぶるにんにくあぶらましましッ!!)クワッ



ダークバハムート(意味は理解できぬ……が、何やらタカネから鬼気迫るものを感じるぞ……!)



貴音「……!」ダッ

タタタタ…



ダークバハムート(来るか……! しかし全く行動が読めぬ)



貴音「……れびてと」ポワッ

ビュィィンッ…


ダークバハムート「……上か!」タンッ

バサァッ…


830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:26:04.36 ID:Ijlr45TlO

貴音「……はああああっ!」ゴゴゴゴ



ダークバハムート「莫迦め、遅いわ!」ブンッ


ーパシュンッ


ダークバハムート「分身……! 本物は……」キョロキョロ



貴音「下におりますよ、ばはむーと殿」



ダークバハムート「! ぬんっ!」ブンッ


貴音「……てれぽ」

…シュンッ



ダークバハムート「今度は瞬間移動……! 何処へ消えた……?」



貴音「……咄嗟に理解できない物事に直面した時、一瞬人間の頭は真っ白になり判断が鈍ってしまうといいます」

貴音「それは神である貴方も同じなのですね」



ダークバハムート「ちっ! また上に!」タンッ



貴音「……間一髪、詠唱が間に合いました」




貴音「…………めがふれあ」バッ



ダークバハムート「!」



ブゥゥゥゥン…

ババババババババッ!!!


ドッゴオオオォォォオオンッッ!!!


831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:27:54.59 ID:Ijlr45TlO

貴音「……はぁ、はぁ……」

貴音「……手応え……有りっ……!」




ダークバハムート「…………ぐ……」

ダークバハムート「……ククク……!」

ダークバハムート「我に傷を付けるか、タカネよ……!」



貴音(深手を負わせるまでには至りませんでしたが、ようやく一撃)

貴音(戦いは、これからです!)



ダークバハムート「ククク……! ハァーッハッハッハ!!」

ダークバハムート「愉快だぞタカネ……!」



貴音「ばはむーと殿……?」



ダークバハムート「遂にお前はメガフレアを会得し、我に傷を付けるに至った」

ダークバハムート「これで漸く我らは対等になったのだ……!」


ダークバハムート「待っていたぞ、この時を!」ゴゴゴゴ



貴音「!」

貴音(ばはむーと殿の魔力が……恐ろしいほど膨れ上がっていく……!?)


832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:29:59.92 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「お前に時間をやろう」



貴音「? どういう意味です?」



ダークバハムート「今から五つ数える。その間にお前が我を倒せなければ……」

ダークバハムート「今度は、我のターンだ……!」



貴音「………」

貴音(あの方は心から戦いを愉しんでいるように見受けられます。次は本気を出されることでしょう)

貴音(本気のめがふれあをまともに受ければ、恐らくわたくしの敗北は必死……)

貴音(ならば、こちらも全力を尽くさねば……!)




貴音「……はあああああっ……!」ゴゴゴゴ


833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:32:41.17 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「さあ、足掻いてみせよ、気高き人間よ。神である我を討てる力を見せてみよ……!」

ダークバハムート「…………ひとつ」



貴音(考えるに、手数での勝負は恐らく悪手。ようやく慣れてきたとはいえ、めがふれあを何度も撃つのは流石に堪えます)

貴音(ならば……!)ゴゴゴゴ



ダークバハムート「……ほう、一撃に賭けるか。時間一杯を魔力の練成に使うつもりなのだな」

ダークバハムート「それもまた一興……!」

ダークバハムート「…………ふたつ」



貴音(まだ……これではまだ足りません……)

貴音(もっと……あの方に対抗し得る力を……!)ゴゴゴゴ


834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:34:31.42 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「ククッ……! 恐るべき魔力……! 人の身でここまでの魔力を持つ者などそうはいまい……」

ダークバハムート「血が沸き立つぞ……!」

ダークバハムート「…………みっつ」



貴音(身体が熱い……。まるで太陽に焼かれる様な気分です……)

貴音(全てを焼き尽くす、原始の炎……)

貴音(今は焼かれてもいい……。それでばはむーと殿に勝てるのなら……! ばはむーと殿を救えるのならっ……!)ゴゴゴゴ



ジュワァァ…!!



ダークバハムート「! ……ふ、タカネの魔力で大気の温度が上昇しているか……」

ダークバハムート「もはやお前は、人を超える者よ!」

ダークバハムート「…………よっつ!」



貴音「………」

貴音「………」

貴音「………」

貴音「………………整いました……!」ゴゴゴゴ



貴音「貴方を討ち、その魂をお救いできるのならば、わたくしは鬼にでも悪魔にでもなりましょう……!」

貴音「…………全ての魔力を、この手にっ!!」

貴音「…………めがふれあ!!」バッ



ーーーーカッ!!



835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:36:53.45 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


真「おーーい! あずささーーん!!」

雪歩「どこですかーー!」



真「……うーん、見当たらないなぁ」

雪歩「隅から隅まで探してもいないってことは、これってもしかして……」

真「………」

雪歩「あ、あずささん、大丈夫かなぁ」

真「……雪歩、ちょっとついて来て!」

雪歩「? う、うん」

タタタタ…




雪歩「ここは……私たちが最初に来た場所?」

真「ボクたちってさ、クリスタルの力でここまで来ただろ? だからもう一回クリスタルを使えばあの館に戻ることもできるんじゃないかと思って」

真「……クリスタル、ボクたちをあの館へ帰してくれ!」スッ


…シーーン


雪歩「…………何も起こらないみたいだね」

真「ダメかぁ」

雪歩「あの時はみんながいたし、やっぱり私たちが全員揃わないとクリスタルの力を発揮できないんじゃないかな?」

真「どうやらそうみたいだ」

真「でも、そうなるとあずささんがあの館に戻った可能性はなくなったね」

雪歩「あ、そっか。真ちゃん頭いい!」

真「へへっ、まあね!」


836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:39:59.69 ID:Ijlr45TlO

真「……状況を整理しようか」

真「まず、最初にあずささんをこの地下1階にひとり残してボクらは先に進んだ」

雪歩「それで、次は真ちゃんが地下2階に残って戦ったんだよね」

真「うん。でも、今こうして雪歩とは合流できた」

雪歩「私がいたのは真ちゃんのすぐ下の階みたいだったから、地下3階ってことになるのかな?」

真「そうだね。そして、雪歩はあの後他のみんなとは会ってないようだから、他のみんなは地下3階よりももっと下の階にいるってことになる」 

雪歩「ここで戦ってたはずのあずささんも、きっとそうだよね……」

真「……だと思いたいんだけど、あの人はたまに物理法則とか無視するからなぁ」

雪歩「あ、あはは……」

真「とにかく、地下4階以降をしらみつぶしに探せばきっとみんなと合流できるはず。……いや、もしかしたらもう小鳥さんのところに誰かたどり着いているかも」

雪歩「それじゃ、私たちも……」

真「うん。先へ進もう」

スタスタ…


837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:42:12.24 ID:Ijlr45TlO

真「……ところで雪歩。ずっと気になってたんだけど、アダマンアーマーはどうしたの?」

雪歩「えっと……魔物さんと戦ってる時に壊されちゃって……」

真「そうだったんだ……。でもすごいじゃないか。アダマンアーマーなしで魔物に立ち向かったってことなんでしょ?」

雪歩「……やっとね、分かったんだ。私もいつまでも臆病なままでいられない……って」

真「見つけたんだね、自分の大切なもの」

雪歩「うん。でも、きっと私ひとりじゃ手に入れられなかったかも。たくさんの人たちに支えられて、私は生きてるんだなあって」

真「……いい顔になったね、雪歩!」ニコッ

雪歩「そ、そんなことないよぅ……///」

真「でも、大切なものを見つけたのはボクだって同じだよ。ベヒーモスとの戦いで勝ち取った女子力で小鳥さんに勝負を挑むつもりさ!」

雪歩「う、うん、期待してるね」



…ドゴオオォォン…!!



雪歩「!」

雪歩「真ちゃん、今の……!」

真「……魔力がないボクでも分かったよ。とてつもない魔法だって」

雪歩「……急いだ方がいいのかも」

真「……だね!」


タタタタ…


838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:44:14.77 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B11F ー


ヒュゥゥゥ…


ガラ…



貴音「……っ」ヨロッ

貴音「はぁ、はぁっ……」

貴音(……骨を掴んだとはいえ、全力のめがふれあは身体への負担が普通の魔法とまるで違う……)

貴音(やはり人の身には過ぎた魔法、ということなのでしょう……)

貴音「………」チラッ

貴音(地形がかなり変わってしまいましたか。太陽爆発を以てすれば、それも当然……)

貴音(破壊に於いて最強の威力を発揮する魔法……。さしずめ神の裁きといったところですか)




「…………違うな。神の裁きはこれからだ」




貴音「!!」


839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:46:23.37 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「…………ククッ!」


貴音「ばはむーと殿……っ!」


ダークバハムート「よもやここまで使いこなすとはな……。流石に今のは効いたわ……!」

ダークバハムート「………………いつつ。時間だ……」



貴音「く……届きませんでしたか……!」ガクッ



ダークバハムート「……ククク、躰の奥底から湧き上がる……! この得体の知れぬ感情は何だ……?」ゴゴゴゴ


貴音(全力でも届かないとは……甘く考え過ぎていたようです……)

貴音(やはり人が神を超える理など、存在しない……!)

貴音(皆……申し訳ありません……。わたくしでは神に勝つことなど……)
 


ダークバハムート「さあ、悔い改めよ。我が力の前にひれ伏せ……!」



ダークバハムート「ーーーーメガフレア」



貴音「ーーっ!」



ーーーーカッ!!



840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:50:58.57 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B5F ー


ビューーン…


亜美「うわー! メッチャ楽チンだよこれー!」

真美「んっふっふ〜♪ レビテトとヘイストを同時にアレすればこんなカンジに武○術っぽくなるのだ!」

亜美「むー、白魔法もなかなかベンリなのが多くていいな〜」

真美「えー、でも黒魔法の方がハデっぽくてうらやましいけどな〜」

亜美「………」

真美「………」

亜美「……ま、どっちもどっちってカンジかね」

真美「そーだね。どっちにもいいトコロがあるっしょ」



真美「……それにしてもさ、さっきのすごい音」

亜美「うん。はげしすぎて思わず飛び起きちゃったよね」

真美「ずーっと下の方から聞こえたけど……誰かが戦ってるんだよね」

亜美「そーだと思う。それに亜美、なんとなく思うんだ。さっきの爆発、メガフレアなんじゃないかって」

真美「ってことは……お姫ちん?」

亜美「たぶん……」


841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:55:18.26 ID:Ijlr45TlO

亜美「ねえ真美、お姫ちんはバハムートと仲良しなんだよね?」

真美「うん。バハムートの家の子たちとも仲良かったっぽいし」

亜美「お姫ちんが戦うとしたら、やっぱバハムートになるのかな……」

真美「………」

真美「……信じるしかないっしょ。あのお姫ちんが負けるなんて想像できないし」

亜美「ん……そーだよね」




真美「…………っと」キキーッ

亜美「おわっ……急に止まってどーしたのさ?」

真美「見て、亜美。この部屋だけメッチャボロボロになってる」スッ

亜美「……ホントだ。ここで戦いがあったのかな?」

真美「そーだと思う。誰かいるかもしんないし、見てみる?」

亜美「うん! 誰かいるといいね!」

真美「よーしっ、タンサク開始ー!」


842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 20:59:20.01 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B10F ー


ヒュゥゥゥ…


ダークバハムート「………」

ダークバハムート「タカネが二発、そして我が二発……」

ダークバハムート「ふむ……壁も階段も跡形も無く消え去ってしまった。これでは後からここへ来る者が不自由するやも知れぬな」

ダークバハムート「……まあ、その様なことはどうでも良いが」

ダークバハムート「………」チラッ



貴音「………」

貴音「…………ぅ……」ピクッ



ダークバハムート「………」

スタスタ



貴音「……く……!」


ダークバハムート「まだ息があるか……」


843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:02:16.88 ID:Ijlr45TlO

貴音「……ぅ……はぁ……はぁ……」



ダークバハムート「………」

ダークバハムート「生物というものは、世に生まれ落ちてから皆等しく死へと向かっている」

ダークバハムート「我とてその全ての生物の思考を把握しているわけではないが、命が潰える瞬間にその者の胸中を支配するのは多くの場合、恐怖なのだと理解している」

ダークバハムート「タカネよ。お前は死が怖いか?」


貴音「……怖い……。そう……ですね……」

貴音「死に対する恐怖よりも……今は……後悔の念の方が強いかもしれません……」


ダークバハムート「……そうか。仲間との誓いを果たせぬことへの後悔か」


貴音「……そ、それも……ありますが……」

貴音「……一番強いのは、ばはむーと殿……貴方の想いに……応えられなかった気持ちです……」


ダークバハムート「我の想いだと……?」


貴音「はい……。そんなお姿になられてまで案じていた世界を……わたくし自身の手で救えないことへの……貴方に託された願いを叶えることができないことへの……後悔です……」


ダークバハムート「……莫迦な。世界のことなど既に我の知ったことではない。我は今や闇に身を窶した身だぞ」

ダークバハムート「タカネよ、お前は思い違いをしている。我はお前と戦うことができればそれで満足なのだ。その他のことはどうでも良い。お前が居ればこそ、我の真に存在する意味があるのだ……!」


貴音「………」

貴音「……ふ、ふふっ……。その言葉……捉え方によってはまるで愛の囁き、ですね……」


ダークバハムート「……愛だと!? 戯言を!」


844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:04:23.35 ID:Ijlr45TlO

貴音「わたくしが貴方の存在理由だと仰るのならば……わたくしを殺した後……貴方はどうなさるおつもりですか……?」


ダークバハムート「………」


貴音「……そもそも、神であられる貴方がたった一人の人間に執着するというのも不自然……うぐっ!」

ガシッ…!


ダークバハムート「……少々喋り過ぎだ」グッ 

貴音「ぁ……!」グッタリ


ダークバハムート「知った風な口の聞き方だな、タカネよ。お前は我の心の声でも聴いたつもりか?」

ダークバハムート「大人しくすれば幾許かの時間を与えてやろうと思っていたが……。今すぐにでも死ぬか?」

ダークバハムート「我がほんの少し力を籠めればお前の頭と胴体は離ればなれになるぞ?」ググッ


貴音「ぅ……ぁ……!」


貴音(ここまで……のようですね……)

貴音(後悔は残りますが……ばはむーと殿の手によってわたくしの命が終わるのならば、それは因果応報というもの)

貴音(ばはむーと殿が闇に落ちたのは、わたくしの責任なのですから……)

貴音(魂を救って差し上げることができないのであれば、せめてその手に……)






貴音(………………いえ、それは駄目です……!)

貴音(わたくしがここで諦めてしまっては、あの子たちの想いを無碍にしてしまうことに……!)

貴音(あの幼子たちの健気な願いを……無駄になどどうして出来ましょうか……!)


845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:07:38.22 ID:Ijlr45TlO

…ガシッ!


ダークバハムート「フン……どうした? やはり死が怖くなったか?」


貴音「ぐッ……!」ググッ


ダークバハムート「魔法でこそ比類無き強さを誇るお前も腕力は並の人間と変わらぬ。抵抗など無駄だと分からぬわけではあるまい?」


貴音「そ……れで……もっ……!」ググッ

貴音「おもい……だした……のです……!」

貴音「わた……くしは……しねない……っ!」


ダークバハムート「………」

ダークバハムート「……死を受け容れたかと思えば今度は抗うか。何がお前をそうさせる? お前も所詮は生に醜く縋り付く凡百の人間と同じなのか……?」


貴音「……ぐ……ぅ……」

ギリッ…!


ダークバハムート「…………フン!」

ブンッ!


…ドサッ!



貴音「がっ……は……!」


846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:10:12.52 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「タカネよ、お前は足掻く姿も美しい。だがその姿は何故か我を混乱させる」

ダークバハムート「だから……もう、死ね」スッ



貴音「……お、お待ち……ください……! 一つだけ、お訊きしたいことがあります……」

貴音「……なぜ……先ほど、わたくしの思考を読まれなかったのですか……?」

貴音「そうすれば……わたくしに問わずとも、生への執着の理由が簡単にお分かり頂けると思うのですが……」


ダークバハムート「………」

ダークバハムート「死にゆく者は知る必要の無いことだ。我は邪神、冥土の土産すらも許さぬ」

ダークバハムート「ククク……! タカネよ、哭いてみせよ。お前の泣き顔が見てみたいぞ……!」



貴音「………」

貴音「……申し訳ありませんが」スッ


キラーン!


ダークバハムート「!!」




貴音「……けあるら!」

シャララーン! キラキラキラ…!



ダークバハムート「っ……愚かなっ!」ブンッ


ドゴオオオンッ!!




…スタッ

貴音「……はぁ、はぁ……!」


847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:13:37.78 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「今の光はクリスタル……! 隠し持っていたのか……!」



貴音「……はい。欠片ですが」



ダークバハムート「クリスタルの輝きを目くらましに使うとはな」

ダークバハムート「闇属性の弱点を突いた、というわけか」



貴音「ばはむーと殿。冥土の土産は諦めることに致します」

貴音「それと、もしかしたらわたくしの泣き顔は貴方にお見せすることが出来ないかもしれません」



ダークバハムート「……ほう、強く出たな。相応の自信があるのだろうな?」



貴音「………」

貴音(はっきり言って策などありません。僅かに体力を回復出来たとはいえ、依然窮地は変わらず……)

貴音(ですが、気に掛かることが一つ)



ダークバハムート「ククッ! ならば行くぞ! 死んでおけば良かったと後悔させてやる!」

ブワッ…



貴音(残された魔力、大切に使わねば……!)

貴音「……てれぽ!」

シュンッ…




ダークバハムート「ぬ……! 逃げたか」


848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:17:19.40 ID:Ijlr45TlO

貴音(………)

貴音(この位置ならば瓦礫のおかげでわたくしの姿がばはむーと殿の視界には入らない)

貴音(今のうちにめがふれあの詠唱を)

貴音「っ……!」ゴゴゴゴ




ダークバハムート「隠れても無駄だ。瓦礫ごと吹き飛ばしてくれるわっ!!」

ダークバハムート「……ぬんっ!!」ブンッ

ドゴオオオンッ!!


貴音「!」


ダークバハムート「………」


ダークバハムート「……外したか」

ダークバハムート「何処だタカネ。何を考えている……?」



貴音(……やはり……)



ダークバハムート「………」

ダークバハムート「面倒だ。全て破壊してやる」ゴゴゴゴ



…ザッ

貴音「それには及びません」スッ



ダークバハムート「……現れたな!」



貴音「…………めがふれあ!」



ダークバハムート「!」



ーーーカッ!!



ドゴオオオォォォオオンッッ!!!


849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:19:35.02 ID:Ijlr45TlO

貴音「……く、はぁ、はぁ……!」ヨロッ



ダークバハムート「……ぐッ……!」ガクッ



貴音「……まだ稚拙ではあると……自覚はありますが、これでも幼き竜たちから受け継いだ力」

貴音「流石にばはむーと殿でも、三度めがふれあを受ければただでは済まないはずです」



ダークバハムート「……はぁ、はぁっ……! この我に、膝を着かせるとはなッ……!」



貴音「もちろん、これで決着とは思っておりません。ですが貴方もわたくしもお互いに手負い。ここからは五分の条件の戦いとなるはず……」



ダークバハムート「……どうやら……誤算だったようだな……。お前がここまで足掻くとは……クッ!」

ダークバハムート「……良かろう。ならば我も命を賭して戦おうぞ!」スッ



貴音「………」



ダークバハムート「………」


850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:22:44.16 ID:Ijlr45TlO

貴音「………」



ダークバハムート「………」





ダークバハムート「……いつまでそうして動かぬつもりだ。来ないのならば此方から行くぞ」



貴音「……わたくしが今、何を考えているかお分かりですか?」



ダークバハムート「…………何?」



貴音「いいえ、恐らく貴方は分からない。何故ならば……」

貴音「貴方は何らかの理由でわたくしの心を読めなくなっているのですから」



ダークバハムート「………」

ダークバハムート「……フン、だから何だというのだ。お前の手の内など限られている。今さら心を聴くまでもないわ」



貴音「………」

貴音「これは推測で、何の確証もありませんが……」

貴音「ばはむーと殿。もしや貴方から『神としての力』が何らかの理由で失われつつあるのでは? 心を読めなくなったのもその兆候かと」



ダークバハムート「………」

ダークバハムート「…………クククッ!」

ダークバハムート「先ほど言ったであろう? 我は既にお前の存在以外の事柄に興味などない!」

ダークバハムート「我自身にすら、な……!」ゴゴゴゴ




貴音「! ……これはっ……!?」


851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:24:03.09 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「教えてやろう……。メガフレアの更に上を……!」



貴音(空気が……熱により膨張している!? 凄まじい魔力……!)

貴音(めがふれあは今からでは間に合わない。ならばせめて防御を!)

貴音「っ……!」ポゥ



ダークバハムート「何をしようと無駄だ。我の全てをお前に注ぐ」




ダークバハムート「受けよ。我の全力を!」



ゴオオオオオオオッ!!



貴音「くっ……!」ヨロッ




ダークバハムート「…………テラフレア」




ブゥゥゥン…




ーーーカッ!!




ズドオオオオォォォオオオオンッッ!!!


852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:33:54.51 ID:Ijlr45TlO
ー 月の地下渓谷 B7F ー


スタスタ

響「………」

響(……うぅ、さっきから何回もすごいデカい音が聞こえてて、みんなのことが心配になるんだけど……)

響(今は、自分のことに集中しなきゃいけないよね)チラッ

伊織「………」グッタリ

響「伊織、あとちょっとガマンだぞ。ちゃんと自分が助けてあげるからね!」




響「それにしても……」キョロキョロ

響「すっごい水浸しだぞ、ここ。洪水でもあったのかなぁ……?」

響「この階でやよいが戦ってるって伊織が言ってたっけ」

響「やよい、無事だといいけど……」



響「……おーーーーい!! やよいーー!!」

響「いたら返事してーーーー!!」




響「………」

響「………」

響「………………やよい……」

響「やよいーーーーっ!!」

タタタタ



ーーースゥゥ…



響「!」ピタッ



「…………お主が探しているのはこの少女かの」



響「お前は、あの時の……!」




ブルードラゴン「………」


やよい「………」グッタリ


853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:36:57.37 ID:Ijlr45TlO

響「やよいっ! ……やよいに何をしたんだっ!」



ブルードラゴン「敵意丸出しじゃのぅ。安心せい、ヤヨイは眠っているだけじゃ」

やよい「……zzZ」



響「えっ? そーなの?」



ブルードラゴン「この子は常人では考えられぬほどの魔力を放出した。それも長時間に渡ってな」

ブルードラゴン「この階層がほとんど水で埋め尽くされたのもこの子の魔力じゃよ」



響「うわ……すごいなやよい……」



ブルードラゴン「そして今は失った魔力を取り戻すために眠っているのじゃ」



響「そっか……良かった……」

響「でも、君は確かあの時襲ってきた親衛隊だよね? なんでやよいと一緒にいるの?」


ブルードラゴン「ワシはこの子と戦うことによって救いを得た。だからせめてこの子が眠っている間は魔物が襲って来ぬよう付き添っていただけじゃ」



響「そーだったのか! へへ、ありがと! やよいを守ってくれて!」



ブルードラゴン「……この子を連れて行くのか?」



響「うん。悪いけど自分たち、急いでるんだ」


854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:39:20.64 ID:Ijlr45TlO

ブルードラゴン「しかしそなたは既に一人背負っている。眠っているこの子を連れて行けるのか?」



響「ふふん! 自分完璧だから、二人くらい背負っても全然余裕だぞ!」



ブルードラゴン「そうか。ならば連れて行くが良い」



響「ありがと!」

スタスタ




響「……よっと」

やよい「……zzZ」

伊織「………」グッタリ

響「おっとっと……」ヨロッ




ブルードラゴン「……やはり厳しいのではないかの?」



響「だ、大丈夫だぞ、これくらい!」

響(伊織もやよいも頑張ったんだ。自分だっていいとこ見せなきゃだもんね!)



響「……って」バシャッ

響「うぎゃー! ここって水浸しだから歩いて渡れないぞ〜!」



ブルードラゴン(面白き娘じゃの)


855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:42:21.98 ID:Ijlr45TlO

ブルードラゴン「待っておれ。ワシが道を作ってやる」



響「えっ?」



ブオオオオオッ…!!



カチコチーン!



響「おおっ! 氷の道が出来た!」

響「助かったぞ! えっと……」



ブルードラゴン「? ……ワシの名前か? ワシはブルードラゴンじゃ」



響「ドラ左衛門、ありがとね!」ニコッ



ブルードラゴン「………」


856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:46:39.25 ID:Ijlr45TlO

ブルードラゴン「……そうじゃ。ヤヨイが起きたら伝えておくれ。ワシもまた仲間と共に歩むことにした、と」



響「? 事情がよく分からないけど、分かった。さっきのお礼に頼まれてあげる!」



ブルードラゴン「……不思議じゃの、そなたらは。見ていると何故か温かい気持ちを思い出させてくれる」



響「そう……かな?」

響「んー……そうだなー。それは、自分たちがアイドルだからだと思うぞ」

響「アイドルってさ、みんなに笑顔と元気をあげるのが役目なんだ」

響「やよいはきっと、君に笑顔をあげたんだ。心があったかいのはそのせいじゃないかな?」



ブルードラゴン「笑顔……か。ふむ」

ブルードラゴン「……引き留めてすまなかったの。さあ、もう行くが良い」



響「うん。……さよなら!」

スタスタ



ブルードラゴン「………」

ブルードラゴン(……さらばじゃ、あいどる。ありがとう、太陽の如き慈愛の少女よ)


857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:49:07.86 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「………」

ダークバハムート「これが……我の全てだ、タカネよ」

ダークバハムート「我の……最後の技だ……」

ダークバハムート「テラフレアを受けて尚立っていることが出来たなら、お前は……」

ダークバハムート「……クッ……!」ヨロッ














…ザッ

貴音「………」





ダークバハムート「……クククッ!」ニヤリ


858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 21:51:28.48 ID:Ijlr45TlO
またやった
≫857から地下10階です
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:53:33.92 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「予感はあった。お前が欠片を持っていた時からな」

ダークバハムート「クリスタルの欠片がお前を護ったのだな」



貴音「………………はい」



ダークバハムート「クリスタルは想いを?ぐ石。お前を護りたいという強い願いがそれに籠められていた」

ダークバハムート「我にも聴こえたぞ。お前を護る声が」

ダークバハムート「そしてその声には聴き覚えがある」




ダークバハムート「願いの主は…………ぷろでゅうさぁであった」




貴音「………」




ダークバハムート「我の…………敗けだ」


…ドサッ


  

貴音「! ばはむーと殿!」

タタタタ


860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 21:57:38.48 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「グハァッ……!」

貴音「ばはむーと殿……」

ダークバハムート「……先ほど言ったな。『我も命を賭して戦う』と」

ダークバハムート「テラフレアは生命を燃やす技……。それ故、後には何も残らぬ」

ダークバハムート「……後はただ、死を待つのみだ」

貴音「っ……!」



貴音「ばはむーと殿、わたくしは……!」

ダークバハムート「っ……ハァ、ハァ……」

ダークバハムート「無様な最期と嘲笑うか? 神と名乗った者がこの様な末路……」

ダークバハムート「……否。お前はそうは思わぬだろうな」

ダークバハムート「お前は心優しき女。我の様な成れの果てにすら慈悲を持つに違いない……」

貴音「違うのです!」

貴音「わたくしはずっと苛まれてきました。あの時、貴方を一人小鳥嬢の元へ残してしまったことに」

ダークバハムート「何を莫迦なことを。あれは我の判断だ。お前がまだコトリと戦うレベルに達していないと、そう判断しての行動だ」

ダークバハムート「お前に非があるわけがなかろう」

貴音「いいえ。『でじょん』なる魔法にて地上まで戻されたあの時、ばはむーと殿を助けに向かうこともわたくしには出来たのです」

貴音「それをしなかったのは、魔導船にて地球へ向かえる、仲間たちに会えると知って浮かれてしまったわたくしの心の弱さなのです」

ダークバハムート「……強情な女だ。それこそ我がお前に託した願いだ。重ねて言うが、お前に非があるはずもない」

貴音「……もちろん、心優しき貴方ならば、きっとそう言ってくださると分かっておりました」

貴音「だから、わたくしは無意識のうちにそれに甘えようとしたのです。貴方のその言葉で、わたくしは許されようと……!」

ダークバハムート「………」


861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 22:03:20.59 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「……一つ、教えてやろう」

ダークバハムート「我が神としての力を失いつつあるというお前の推測は、正解だ。我は既に神の資格を失った」

ダークバハムート「何故だと思う?」

ダークバハムート「我が…………タカネ、お前を愛しいと強く想ってしまったからだ」

貴音「そう、ですか……。ばはむーと殿がわたくしを愛しいと……」

貴音「……………………え?」

貴音「なっ……///」カァァ

ダークバハムート「神は全てを平等に愛さねばならない。……だが、我はお前を……」

ダークバハムート「…………タカネ?」

貴音「おっ……お戯れを……! わ、わたくしは、そのっ……い、愛しいなどと急に言われましてもっ……///」

ダークバハムート(……愛い奴め)


862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 22:06:27.28 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「……済まぬ。お前がそこまで初だとは思わなかった」

貴音「うぅ……その様な、あ、愛の言葉、言われたのは初めてです……」

ダークバハムート「ふ……」



ダークバハムート「……矢張り、我には後悔などない」

貴音「…………ばはむーと殿?」

ダークバハムート「お前は我がコトリに敗れ、闇へ堕ちたことに責任を感じている。或いは、神ですらなくなったことにも」

ダークバハムート「だが、それで良かったと我は考える」

ダークバハムート「何故なら、愛がこの様に素晴らしいものだと気づくことが出来たのだからな」

貴音「…………」

ダークバハムート「待つ時間は焦がれ、想いを馳せると寂しさと愛おしさの入り混じった何とも言えぬ気分になる」

ダークバハムート「だが、その辛さが会った時には天に昇る程の快楽へと昇華する」

ダークバハムート「本当に不思議な感情だ」

ダークバハムート「……それに気づかせてくれたのは、お前だ、タカネよ」

ダークバハムート「お前は我を救うことに固執していたようだが、それは全て無駄だったのだ」

ダークバハムート「何故ならば……我は最初にお前と出会った時点で既に救われていたのだからな」

貴音「その様な、勿体ないお言葉……!」


863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 22:10:58.43 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「……もう一つ。お前はこの期に及んで隠しているつもりのようだが、敢えて言わせてもらおう」

ダークバハムート「お前は……お前たちは、この世界の人間ではないな?」

貴音「! 何故、それを……!」

ダークバハムート「分からいでか。偶に発するお前の奇妙な言動を考慮すれば容易に察知することが出来たぞ」

貴音「……すみません。何と説明すれば良いか分からなかったので……」

ダークバハムート「良い。我は滅びる運命だ。お前が本当は何処から来たのか。冥土の土産は持たずに逝こう」

ダークバハムート「それに恐らくは、我の測り知れぬ力が働いているのであろう。あのぷろでゅうさぁという男を見た時にそう思った」

貴音「………」


864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 22:13:45.05 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「だが、お前が何者であろうと、理解を超えた存在であろうと、我の中に芽生えたこの感情は変わらぬ」

ダークバハムート「死ぬまでの僅かな時間、お前を愛することを許せ」

貴音「ばはむーと殿っ……」

ダークバハムート「……その様な悲しい顔をするな。戦っている時はああ言ったが、本心はお前の悲しむ顔など見たくはないのだ」

貴音「………」

貴音「……前言を撤回させて頂いても、よろしいでしょうか……」

ダークバハムート「……構わぬ」

貴音「貴方に泣き顔を見せないと言いましたが……」

貴音「どうやら……っ」ウルッ

ダークバハムート「………」

ダークバハムート「泣くな。……いや、存分に泣け。それで晴れるのならば」

貴音「っ……ひぐっ……!」ポロポロ

貴音「ううっ……!」


865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/04(土) 22:18:30.54 ID:Ijlr45TlO

ダークバハムート「……ガハァッ!」

貴音「ば、ばはむーと殿っ!?」

ダークバハムート「……最期は近いようだな……」

貴音「ぅくっ……!」ポロポロ

ダークバハムート「タカネよ、頼みがある……」

貴音「は……はいっ……!」

ダークバハムート「最期は愛する女の腕の中で逝きたい……」

貴音「っ……わ……分かり……ました……」ダキッ

ダークバハムート「……ああ、温かいな……。お前はこんなにも温かいのだな……」

ダークバハムート「今この瞬間は……恐らく何ものにも勝る……」

貴音「うぅ……っ!」

ダークバハムート「……コトリに……会ったら……伝え…て…くれ……。お前との時間……悪く無かった……とな……」

貴音「は、はい……! 必ず……!」

ダークバハムート「それと……あの子たちに……済まぬ……と……」

貴音「ぐすっ……! はいっ……!」

ダークバハムート「た……タカネ……」

ダークバハムート「お……まえ……に……会え……て……」

ダークバハムート「し……あ……わせ……だ……っ……」


ダークバハムート「」ガクッ



貴音「っ……ぁ……!」




貴音「〜〜〜〜っ!!」ポロポロ


866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 22:21:27.07 ID:Ijlr45TlO
続きは明日の夜に
明日の投下後に次スレ移行します
次こそは最終スレになります(たぶん)
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 22:22:39.76 ID:yMn3WB6cO
バハムート…貴方はやはり最期まで漢だった…
貴音ルート終わりと考えて残りは律子のみか?
あれ?春香と律子の二人で戦ってるんだっけ?
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 22:24:18.88 ID:yMn3WB6cO
>>866
まあさすがにそうならないと本当にfinal詐欺に…
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 23:58:32.00 ID:1lQZ4Rq3o
乙!

そういえばfinalってこのスレの前にもついてたんだっけ
今更そんなの気にしないで続きをまた待ってます!
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/05(日) 20:06:53.33 ID:f99GTpNXO
ー 月の地下渓谷 B11F ー


春香「やぁぁぁぁあああっ!!」タタタタ


春香「えいっ!!」ブンッ

ガキィンッ!!

クルーヤ「……よっ」ブンッ


春香「!」

ダッ

…スタッ


春香「………」チャキッ


クルーヤ「……これはどうかな?」ブンッ


春香「……えいっ!」

ガキィン!!


クルーヤ「それっ」ブンッ


春香「……やっ!」カキン


クルーヤ「!」


春香「たぁぁぁっ!」ビュッ


クルーヤ「うおっと!」ヒョイッ



クルーヤ「……ふふ、ハルカもあれからかなり経験を積んだみたいだね。あの時とは本当に別人のようだよ」ニコッ


春香「えへへっ♪ ありがとうございます! じゃあ、もうちょっと本気出してもいいですか?」


クルーヤ「ははっ、遠慮はいらないよ。持てる力全てでかかってくるといい!」

クルーヤ「お父さんが全て受け止めてあげるよ!」


871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:08:49.61 ID:f99GTpNXO

春香「………」チラッ

春香(……お姉ちゃん……)


律子(? 春香……?)


春香「……よしっ!」グッ



春香「……行きますよ、お父さん!!」チャキッ

春香「大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならんっ!!」


春香「無双……稲妻突きッ!!」ブンッ

ズガガガッ!!!


クルーヤ「!」

ダッ


クルンッ…スタッ



春香「わぁ、流石はお父さん! 私の技なんて軽々とかわしちゃうんですね!」


クルーヤ「あ……ああ、うん。ハルカもなかなかやるじゃないか」



律子(軽々と……?)

律子(今のクルーヤさんの動き、少し違和感があった気がする)

律子(まるで、技を見てから受けるより躱すことを選択したような……)


872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:10:07.59 ID:f99GTpNXO

春香「次ですよっ!!」

春香「死兆の星の七つの影の……経絡を絶つ!!」チャキッ

春香「北斗……骨砕打ッ!!」ブンッ

ズドドドドドドドッ!!!


クルーヤ「くっ……!」ダッ


春香「えーいっ!!!」ブンッ

ガキィンッ!!


クルーヤ「っ……!」


春香「これも止められちゃいますかぁ……。うまく使いこなせてる自信はあったんだけどなぁ」



クルーヤ「ま、まあね。はははっ」



律子(こうして春香の戦いぶりを見るのはずいぶん久しぶりのような気がするけど、なんだかあの子、技のキレがすごいことになってない?)

律子(気のせいかしら……)


873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:11:52.62 ID:f99GTpNXO

春香「続けて行きます!!」

春香「鬼神の居りて乱るる心……されば人、かくも小さきものなり!」チャキッ

春香「乱命……割殺打ッ!!」ブンッ

ドガアアアンッッ!!



クルーヤ「くっ……!」

ズザザザザッ!



律子(クルーヤさんを吹き飛ばした……!?)

律子(本当にどうなってるの、あの子……)



クルーヤ「………」



春香「あっ……大丈夫ですか!? 私、ちょっとやり過ぎちゃったかも……」



クルーヤ「……大丈夫だよ」

クルーヤ(最初の無双稲妻突きでまさかとは思ったけど……今ので確信した)



クルーヤ(ハルカはすでに、ボクのレベルを超えている……!)


874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:13:53.01 ID:f99GTpNXO

クルーヤ(でもなぜだ? 長い長い旅を経てハルカも成長したんだろう。それはわかる)

クルーヤ(けれど、彼女の中にはまだ闇がいるはず。闇の心を持っている限り、聖剣技を完璧にマスターすることはできない)

クルーヤ(だというのに、ハルカの剣気には微塵も闇が感じられない)

クルーヤ(まさか……)



クルーヤ「……ところでハルカ。君の闇は元気にしてるかい?」


春香「闇って……ああ、ヤミちゃんのことですね?」

春香「ヤミちゃんとはその、いろいろあってお別れしたんです。せっかく仲良くなれたのに残念でしたけど……」


クルーヤ「そうだったのか……」

クルーヤ(やはりそうか。つまり、ハルカは今や心身共に完全なる聖騎士だ。さらに、ボクの力を上回っている)

クルーヤ(少し予定とは違うけれど、今のハルカになら『あの技』を託せるかもしれない)

クルーヤ(ボクもまだ完全に使いこなせていない、最強最後のあの技を……!)


875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:15:59.62 ID:f99GTpNXO

春香「最後の技は、とっておきですよ!」

春香「はぁぁぁああっ……!」ゴゴゴゴ



律子(! 春香、いつの間にこんな力を……!?)



クルーヤ「く……!」ズサ

クルーヤ(なんてこった……! ボクが娘の剣気のみに圧倒されているなんて……!)



春香「命脈は無情にして惜しむるべからず…………葬る!!」チャキッ

春香「不動……無明剣ッ!!」ブンッ

ズドオオオオオンッッ!!!




クルーヤ(まずい、これは躱すことも受け切ることもできない!)

クルーヤ(仕方ないか……!)

クルーヤ「はあああああっ!!」ゴゴゴゴ

クルーヤ「……せいっ!!」ブンッ

キラキラキラ…


春香「えっ……」


ドゴオオオオオオンッ!!!


春香「きゃあっ!!?」

ドガッ…!!

ドサッ



律子「は、春香っ!」

タタタタ…


876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:18:18.69 ID:f99GTpNXO

律子「春香、しっかりして!」ダキッ

春香「うぅ……」グッタリ



クルーヤ「……しまった、つい力が入ってしまったか……」

 

律子「春香! 春香っ!」

春香「……へ、平気……です……えへへ……」

律子「平気なわけないじゃない! 血が……!」

春香「か……かすり傷ですよ、かすり傷……っ」

律子「と、とにかくポーションを!」ゴソゴソ




クルーヤ「……すまない。ボクはまだ、消えるわけにはいかないんだ」

クルーヤ「けど、これでリツコが立ち上がるしかなくなったね」

クルーヤ「さあ、君はどうする? リツコ」



律子「………」


律子(私は……私を呪うわ)

律子(大切な妹さえ助けてあげられない……)

律子(誰かを傷つける力は持っているくせに、大事なものを守る力を持っていないなんて……!)

律子(ああ、なんで私は…………っ!)


春香「……ダメ……ですよ、お姉ちゃん……」ギュッ

律子「は、春香……」

春香「お姉ちゃんには……怖い顔よりも、笑顔の方が似合うんですから……。えへへ……」

律子「っ……!」


877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:20:45.89 ID:f99GTpNXO

律子(……そうよ、そうだった)

律子(自分を責めることなんて後からでもできる。春香を守りたいのなら、恨みに任せちゃだめ。思考を停止しちゃだめ!)

律子(考えなさい、律子! きっと打開策はあるはず!)

律子(何か……今の状況を変えるような策が……)



クルーヤ「何を考えているのかな? ボクを倒す算段か、それとも逃げる方法?」

クルーヤ「分かっていると思うけど、逃げるのは不可能だよ」



律子「ちょっと黙っててください!」



クルーヤ「あっ…………はい」シュン



律子(……そういえばクルーヤさんが言ってたっけ。ヒントがどうのって)

律子(確か、『メテオは封印されし魔法である』、『光あるところに闇あり。その逆もまた然り』、『天より降り注ぎし隕石、赦されざるものを討ち滅ぼす』……だったわね)

律子(あの人が私にヒントを出したタイミングを考えれば、これらはメテオを使いこなす為のヒントと捉えることができる)

律子(封印されし魔法……光あるところに闇あり……天より降り注ぎし隕石……)

律子(………)

律子(……これって、まさか……)




『……お父さんの娘であり、私が尊敬する大好きなお姉ちゃんですっ!』




律子(……あ……!)


878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:22:43.67 ID:f99GTpNXO

律子(私はなんて馬鹿なの……)

律子(春香もクルーヤさんも、私に示してくれていたんだ。私が進むべき道を)

律子(ちゃんと二人の言葉に耳を傾けていれば、もっと早くこのことに気づいていたのに)

律子(……って、後悔しても仕方ないわね。今は私がやるべきことをやらなければ!)



律子「………」スクッ

春香「……お姉……ちゃん……?」



クルーヤ「……ようやく立ち上がってくれたか。そのまま心が折れてしまうかと思ったよ」



律子「……返す言葉もありませんね」



クルーヤ「ふふ。それで、答えは出たのかい? リツコ」



律子「……ええ、まあ」スッ

…カランッ


クルーヤ「! 剣を……捨てた……?」


879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:24:42.66 ID:f99GTpNXO

春香「お姉ちゃん、なんで剣を……?」

律子「もっと早くに気づくべきだった。この戦いが始まった時に」

律子「……いいえ、もっと前に。トロイアの洞窟で春香、あなたと再会した時に」

春香「えっ……」

律子「もう迷わない。挫けない。後悔しない」

律子「私は……」



律子「私は、変わってみせるっ……!!」ゴゴゴゴ



クルーヤ「リツコ……!」





律子(私にもできるはず……! 私にもなれるはず……!)

律子(だって、あの子が私を信じてくれているんだもの……!)

律子(だから……!)



律子「私の中から出て行きなさい…………闇よ!!」



…パァァァーーーー!!!




律子「…………ケアルガ!!」

シャララーン! キラキラキラ…!



春香「!」





クルーヤ「…………大正解だよ、リツコ。100点満点だ」ニコッ


880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:27:18.86 ID:f99GTpNXO

律子「できた……! 私にも、回復魔法が……!」

春香「お姉ちゃん……!」

律子「春香、大丈夫?」

春香「……えへへっ♪」ダキッ

律子「ちょ、ちょっと……!」

春香「私、信じてました。だから全然驚いてません。お姉ちゃんならきっと、自分の力で殻を破ることができるって!」

律子「良かった……!」ギュッ



クルーヤ「……癒やしの光は聖騎士の証。大切なものを守りたいという願いが、闇を打ち滅ぼした」

クルーヤ「おめでとうリツコ。これで君もボクたちと同じ、パラディンになったんだよ」ニコッ



律子「私が、パラディンに……」

律子「ありがとう春香。あなたのおかげよ」

春香「いいえ、そんなことないです。これはお姉ちゃんの実力です!」

春香「……あれ? でもケアルガ?」

春香「私、ケアルラしか使えないんですけど?」



クルーヤ「それはまあなんていうか、才能の差……かな?」



春香「うぅ……なんかショック……」ズーン


881 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:30:09.13 ID:f99GTpNXO

律子「……クルーヤさん。聞かせてもらえませんか?」


クルーヤ「うん? 何をだい?」


律子「あなたの本当の目的です」

律子「あなたはただ私たちの足止めをするためにここで待っていた、ってわけではないんでしょう?」

春香「あ、それ、私も気になってました」


クルーヤ「…………そうだね、わかったよ。今の君たちなら、きっと大丈夫だろう」




クルーヤ「ボクがここでハルカとリツコ待っていた理由は二つある」

クルーヤ「一つは、君たちがコトリさんと戦えるレベルかどうかを見極めるため」

春香「えっ……」ドキッ

律子「………」

クルーヤ「ははっ、二人ともそんな顔しなくてもいいよ。リツコは無事パラディンにジョブチェンジできたし、ハルカの素晴らしい実力も確認した」

クルーヤ「君たちは強い。身体も、心もね」

春香「良かったぁ……。お父さんに認めてもらえれば百人力ですね!」

律子「……ま、その言葉は素直に受け取っておきましょうか」

クルーヤ「そしてもう一つは、君たち二人にプレゼントを渡すためなんだ」

春香「プレゼント……ですか?」

律子「………」

律子(……クルーヤさん、自分でこの世の存在ではないって言ってたし、プレゼントというよりも形見のつもりなんじゃないかしら)

律子(そんな風に考えるのは野暮なのかもしれないけど)


882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:32:45.81 ID:f99GTpNXO

クルーヤ「まずは、リツコ」

律子「はい」

クルーヤ「プレゼントだ。ボクの使っていた剣を君に託すよ」

律子「剣を? いいんですか?」

クルーヤ「リツコが使っていた剣は君が聖騎士になったことでその役目を終えたんだ。せっかくジョブチェンジしたっていうのに武器も持ってないんじゃ格好つかないないだろう?」

律子「………」

クルーヤ「遠慮なんかしなくていいさ。ボクにはもう必要のないものだからね」

律子「いえ、遠慮っていうか……これもまた罠なんじゃないかって疑っているんです」

クルーヤ「うっ……」

クルーヤ「あ……あはは、まあ最初に騙したのはちょっとした余興みたいなものだよ。……でも今回のは、正真正銘ボクの親心なんだ」

春香「お姉ちゃん、受け取ってあげてください。お父さんは悪意を持って人を騙すような人じゃないです。私が保障します!」

律子「……そうね、春香がそう言うなら、有り難く受け取っておくわ」スッ

クルーヤ「その剣の名は『エクスカリバー』。この世に二振りと無い聖剣だ」

律子「聖剣、エクスカリバー……」チャキッ

春香「わぁ、なんか私の『ライトブリンガー』とお揃いで姉妹って感じですねっ♪」チャキッ

クルーヤ「そうだね。光をもたらす剣に、王たる剣。どちらもこの世界に無くてはならない存在だ」

律子「ふむ……」スチャ

律子(エクスカリバーって円卓の騎士アーサー王の剣だったわよね、確か)

律子(うーん、猫に小判にならないようにしなきゃ)


883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:35:20.78 ID:f99GTpNXO

律子「それで、春香にはどんな贈り物を?」

クルーヤ「うん。それなんだけど……」

クルーヤ「ハルカへのプレゼントは、少しだけ時間を必要とするものなんだ」

律子「時間がかかるもの……?」

春香「あの、お父さん。でも私たち、そんなに時間は……」

クルーヤ「わかってる。世界を救う戦いに水を差すような真似はボクもしたくはない。でもその大事な戦いにおいてきっと役に立つものだから、是非ハルカに受け取って欲しいんだよ」

春香「うーん……お父さんがそこまで言うなら……」

クルーヤ「……ん?」ピクッ

春香「? ……どうかしたんですか?」

クルーヤ「どうやらお客さんみたいだ。地下11階に足を踏み入れた者がいる」

律子「もしかして、アイドルの誰かが?」

クルーヤ「どうやらそうみたいだね」

春香「お姉ちゃん、合流しましょう!」

律子「ええ。小鳥さんのところへ向かう前に体勢を整えなきゃ」

クルーヤ「あ、言ってなかったけどボクたち三人が今いるのはもとの世界とは別次元なんだ。だからここへたどり着いた子がハルカやリツコと会うことはできない」

春香「へ? 別次元……?」


884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:38:08.75 ID:f99GTpNXO

律子「……詳しい説明をお願いします」

クルーヤ「ほら、君たちがここへ来た時に言ってたろ? この階の出口が見つからない、いくら進んでもずっと同じ景色だって。あれはこの階の入り口に次元の歪みを作っておいたからなんだ。君たち二人は、それに気づかずに歪みへ迷い込んだ」

春香「次元のひずみ……ですか」

クルーヤ「そう。ボクたちが今いるこの場所は、言ってみれば次元と次元の隙間……次元の狭間ってところかな」

律子「……えーっと、要約すると親子水入らずになるための手の込んだ誘拐って感じですか。あなたは私と春香のことを待っていたんでしょう?」

クルーヤ「まあ、そういうことだね」

律子「でも、もしここへ最初にたどり着いたのが私たちじゃなかったらどうするつもりだったんですか?」

クルーヤ「その時は次元の歪みは開かずに、ここへ迷い込むこともない。君たち以外のあいどるは何事もなく地下11階を通り抜け、最深部の地下12階……コトリさんのところへ行っているだろうね」

律子「ふーん、よくできてるんですね」

春香「じゃあ、みんなとはまだ会えないんですか?」

クルーヤ「ボクとしても目的があるから、それを遂げるまでは我慢してもらいたい」

春香「そ、そうなんですか……」

律子「………」

律子「すみません、ちょっとお願いがあるんですけどいいですか?」 

春香「……お姉ちゃん?」


885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:41:03.98 ID:f99GTpNXO
ー 月の地下渓谷 B9F ー


「……起きて。ねえ、起きて」


美希「……ムニャ……」


「美希、起きて」


美希「んぁ……」


「起きなさい、美希」


美希「……ん……うん……」






美希「んん……」ムクッ

千早「……良かった、やっと起きたのね」

美希「あ、千早さん……。おはよ〜なの。……あふぅ」

千早「予想はしていたけれど、本当に寝ているとは思わなかったわ」

美希「ただ寝てたわけじゃないよ? 戦いが終わったからちょっぴり休憩してたの。ほら、魔力だって回復しなきゃでしょ?」

千早「それはそうだけど、こんなところで寝ていたら危ないと思うのが普通だと思うけど……」

美希「んー、それはたぶんへーきなの。ミキって結構運良いし」

千早「まあ……そうね。結果的に無事だったんだから良しとしましょうか」


886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:44:41.37 ID:f99GTpNXO

美希「ねえ、千早さんがここにいるってことは……」

千早「ええ。上の階はなんとか通ることができたわ」

美希「さっすが千早さんなの!」

千早「美希の方も、もうカタはついているのよね?」

美希「うん。じゃなきゃさすがのミキも寝たりしないって思うな」

千早「それでも美希なら戦闘の最中に寝そうではあるけどね」

美希「む〜、ヒドいの!」




千早「春香や四条さん、律子は?」

美希「先に進んでもらったよ。たぶん、三人も今頃戦ってるところじゃないかな?」

千早「そう。じゃあ私たちも急がないと」

美希「あ、待って」

美希「……ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…!

美希「千早さん、少しだけ疲れた顔してたから。ロクに回復してないでしょ?」

千早「ありがとう、美希」

美希「んーん。最後の戦いはきっと今までで一番タイヘンな戦いになるから、少しでもいいコンディションでいなきゃ」

千早「本当に有り難いわね、白魔法は。大抵の怪我は治ってしまうんだから」

美希「……それでも、きっと治せないものもあるって思うな」

千早「え?」

美希「千早さん、あのね。もし最後の戦いで誰かが……」

美希「……ううん、ゴメンね。今のは忘れて」

千早「美希……?」

美希「さ、行こっ♪」ギュッ

千早「え、ええ」


887 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:48:27.48 ID:f99GTpNXO
ー 月の地下渓谷 B11F ー


貴音「………」スタスタ

貴音「………」

貴音「………………ぐすっ」

貴音「………」ゴシゴシ



貴音「…………ふむ」キョロキョロ

貴音「なんとも静かで面妖な場所です。魔物の気配すら感じ取ることができませんね」

貴音「律子嬢や春香は、既にここを抜けて小鳥嬢の元へ辿り着いているのでしょうか……?」



…ザッ



貴音「!」



「……あら、貴音だったのね」



貴音「律子嬢!?」


貴音「い、一体どこから現れたのですか? つい先ほどまで気配すら感じられなかったはずでしたのに……」

律子「ごめん。ちょっと異次元行ってたのよ」

貴音「はて……? 異次元……ですか?」

律子「まあ、ヤボ用があってね」

貴音「春香はどうしたのですか? それに、律子嬢の纏う雰囲気が以前とは全く違うような……」

律子「向かいながら話すわ。とりあえず進みましょう」

貴音「……分かりました」

スタスタ…


888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:51:00.84 ID:f99GTpNXO

貴音「……なるほど、くるーやという方は律子嬢と春香の父君でしたか」

律子「ええ。どうやら彼は私たちにお土産を用意して待っててくれたみたい」

貴音「それで、春香は今もその異次元でくるーや殿から土産とやらを享受しているところなのですね?」

律子「そうよ。なんか時間かかりそうだったから、とりあえず私だけ抜けて来たってわけ」

律子「父親っていってもあくまで架空の世界の話だから、特に感慨が湧くってわけでもないんだけどね」

律子「まあでも……彼のおかげで私はパラディンになれたんだし、一応感謝はしているわ」

貴音「……ふふっ」ニコッ

律子「な、なによ?」

貴音「律子嬢から邪悪の気配が完全に絶たれたことが、わたくしは何より嬉しいのです。それに、何やらとてもすっきりとされている様子。もう、気持ちに一片の曇りも無いようですね?」

律子「……まあねー。あれだけネガってた自分が嘘みたいに、今はすごく気分が晴れてるのよね」


律子(クルーヤさん……か。なんか変わった人だったなぁ)

律子(ありがとう。…………行ってきます、お父さん)


889 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:54:51.45 ID:f99GTpNXO

律子「心配かけてごめんね、貴音」

貴音「いえ、良いのです」

律子「貴音の方も無事で良かったわ。その……大切な友達だったんでしょ?」

貴音「………」

貴音「わたくしは、あの方の魂を救うつもりで戦いに挑んだのですが……」

貴音「……結果、救われたのはわたくしの方でした」

律子「貴音……」

貴音「ばはむーと殿がわたくしにとってどの様な存在だったか。それは今考えてみても答えを出すことができません。……ですが、これだけは自信を持って言えます」

貴音「ばはむーと殿に出会うことが出来て、本当に良かった、と」

律子「そう……」

律子「ねえ貴音。あなた、前より綺麗になったんじゃない?」

貴音「なっ、何をいきなり……?」カァァ

律子「なんか雰囲気が少し大人びたっていうか……。ひょっとしてバハムートさんと何かあった?」

貴音「ななな何かとはどういう意味ですか!? わ、わたくしはやましい事は何も!」

律子「でも、貴音が大人っぽくなったっていうのは私の正直な感想よ?」

貴音「うぅ……ぱらでぃんになられた律子嬢はいけずです……」

律子「あははは! ごめんね、からかうわけじゃないのよ。ただ、春香の言った通りだったなーって」

貴音「春香の……?」

律子「ほら、ここへ来る前に春香がみんなの決意を固めるために言った言葉があったじゃない? 『小鳥さんがラスボス役を演じてくれたから私たちは強くなれた』って」

貴音「……なるほど、律子嬢の中で気持ちが吹っ切れたのも、わたくしに小さな変化があったのも、全ては小鳥嬢の思惑通り、ということですか」

律子「小鳥さんがそこまで考えてたかどうかは分からないし、クルーヤさんやバハムートさんはもしかしたら小鳥さんの思惑とは別に動いていたのかもしれない」

律子「でもね、今のこの状況は、小鳥さんがラスボスをやってくれてるからある状況なのよ」

律子「だから、そこだけは感謝しなきゃ、って」

貴音「……ええ、そうですね」


890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/11/05(日) 20:57:54.46 ID:f99GTpNXO

律子「世界ってさ、勝手に回るものだって今まで思ってたけど、本当はそうじゃないのよね」

律子「この世界はもうゲームとは全く違う道に進んでる。それはきっと、私たちがゲームのキャラではなく、意思を持った一人の人間だから。私たちだけじゃない、この世界に生きる人たち全てがそう」

律子「もしもその全ての意思が絡み合って、それが素敵な物語を紡ぐんだとしたら……」

律子「そんな風に考えると、ちょっとロマンチックじゃない?」

律子「……なーんてね、ふふっ♪」ニコッ

貴音「………」

貴音「律子嬢、ぱらでぃんになられて少々可愛らしくなりましたか?」

律子「う、うるさいわね、私だってそういうこと考えたりする時もあるわよ」

貴音「ふふっ、先ほどの仕返しです」ニコッ




…ザッ

律子「………」

貴音「………」


律子「この階段を降りれば……」

貴音「……ええ」

律子「貴音、心の準備はいい?」

貴音「整っております。……いざ、参りましょう」

律子「よしっ! それじゃあいっちょ世界を救いに行ってきますか!」

スタスタ…


891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 20:59:49.24 ID:6GDhUoGSO
デ!デ!デ!デカマラ!
892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 21:00:00.93 ID:f99GTpNXO
ここまでです
次スレ立ててきます
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 21:21:38.96 ID:f99GTpNXO
次スレP「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL3
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509884229/
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/22(水) 00:05:21.70 ID:yAUtt+Eh0
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2020/08/15(土) 21:53:38.87 ID:VM4qoLI3O
加藤純一(うんこちゃん) Youtubelive

PS4アーカイブス/ゲーム発掘枠
『8月ゲーム部』
(21:26〜放送開始)

://youtube.com/watch?v=RoQBo1Qf53Q&t=0s
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/05(火) 00:32:08.37 ID:sHZl9DEdo
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2023/05/27(土) 15:36:15.59 ID:vx5D4UAlO
『なんかおもろいゲームをやる』
※ジャンル、ハード不問
雑談
(15:08〜開始)

https://www.twitch.tv/kato_junichi0817
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