本田未央「プロデューサーとのごはん」 その2

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410 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:34:36.77 ID:DMzpmect0
P「デート、って……まあ、またどこかに連れて行くよ。約束する」

未央「えー。いつもの感じじゃなくてデートがいいなー」

P「だから、デートは……あー、もう。いいよ、わかった。デートじゃあないが……いつもとはまた別で、遊びに行くか」

未央「遊び……デートじゃないの?」

P「違う」

未央「そっか。……うん。じゃあ、楽しみにしてるね、プロデューサー☆」

P「……頑張る」

未央「……その言い方、なんだか、自信がないみたいだね」

P「うるさい。……ないんだよ」
411 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:35:33.39 ID:DMzpmect0
未央「……えへへ。それじゃあ、確かに、頑張るしかないね、プロデューサー」

P「……なんで嬉しそうなんだよ」

未央「それはナイショ♪ それじゃ、そろそろおかゆをつくりに行くとしますか。キッチン借りるね、プロデューサー」

P「ああ。頼む」

未央「うん。未央ちゃんに任せたまえー。そんなに時間はかからないと思うから、ここで待ってて。それじゃ――」

P「」ニギッ

未央「……へ?」

P「……ん?」
412 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:36:05.30 ID:DMzpmect0
未央「……」

P「……」

未央「……えっと、プロデューサー? 服の裾を握られてると、キッチンに、行けないんだけど……」

P「……あ」

未央「……もしかして、プロデューサー」
413 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:36:37.20 ID:DMzpmect0
P「いやっ……その、ちょっと、さびしかっただけでだな。ひとりの部屋に戻るのがまた嫌だったというか、って、俺、何を言って……その、未央が来てくれて嬉しかったから、まだ一緒にいてほしい、って、だから、そうじゃなくて、いや、まあ、そうなんだけど、未央と離れたくないというか、いや、違う、違わないけど、いやいや違う、違うんだ。その、つまり……あー! 何言ってんだ俺!」

未央(……プロデューサー、顔、真っ赤)

P「えっとだな……つまり、今のは、ちょっと、間違えただけだ。なんか、手が勝手に動いたというか、それだけだ。だから……あー、頭が混乱してるな。とにかく、未央は行ってくれ。俺は、ちょっと、頭を冷やしとくから」

未央(こんなプロデューサー、ちょっと、珍しいかも)

未央(……なんだか)

未央「かわいいね、プロデューサー」

P「……は!?」
414 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:37:08.84 ID:DMzpmect0
未央(あ、声に出しちゃった。……でも、いっか)

未央「一緒に行く? プロデューサーくん」

P「かわ……いや、だから、さっきのは……」

未央「……私は、一緒に行きたいよ? ほら、手、貸して」

P「……ん」ニギッ

未央「ん、よろしい♪ それじゃ、手をつないで……行こっか、プロデューサー」
415 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:37:40.26 ID:DMzpmect0
P「……なんか、今日、情けないところを見られてばっかりだな……」

未央「病人がそんなこと気にしない。それに、情けなくなんかないよ。私にとっては、プロデューサーは、いつも……今も、かっこいいよ」

P「……かっこよくは、ないだろ」

未央「そうかな? そうかも。でも、かっこいいの」

P「矛盾してないか?」

未央「矛盾してちゃダメ?」

P「……わからない」

未央「なら、いいってことで。とりあえず、行こ? プロデューサー」

P「……ああ。行こうか、未央」
416 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:38:14.38 ID:DMzpmect0
未央「って、キッチンに行くだけなんだけどね」

P「それは言うな」
417 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:42:41.15 ID:DMzpmect0

――

未央「なんやかんやで、おかゆ、完成!」

P「なんやかんやってなんだよ……」

未央「なんやかんやは……なんやかんやです!」

P「なんでお前がそのネタ知ってるんだよ……」

未央「見たことあるから?」

P「いや、だろうけど……まあいいや。とりあえず、いただくか」

未央「私もちょっともらうね。それじゃ、いただきまーす」

P「いただきます」

未央(とは言ったものの、先にプロデューサーが食べてから、かな)

未央(普通のおかゆ、って感じだけど……プロデューサーの舌に合うかな。どうだろ)

P「」パクッ

未央(あ、食べた。もぐもぐして……この反応は)
418 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:43:18.86 ID:DMzpmect0
未央「どう? プロデューサー」

P「ん。おいしいよ。ありがとう、未央」

未央「やたっ」

未央(良かった……)

P「なんというか、ちょうどいいな。おいしいよ。俺の舌に合ってる」

未央「まあ、プロデューサーとは何度もごはん行ってるからね。私からすれば、これくらい造作もないことですよ」

P「そうか。それなら、未央には毎日俺のごはんをつくってほしい……なんてな」

未央「んっ……ぷ、プロデューサー。それ、意味、わかってるのかな?」

P「ん? いや、今のはただの……あ」

未央「……」

P「いや、その、べつに、そういう意味じゃなくてだな。ただ、褒めようと思って言っただけで、変な意味は……」

未央「……ないの?」
419 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:44:21.78 ID:DMzpmect0
P「……ずるくないか?」

未央「プロデューサーが先に言ったんじゃん」

P「それは、まあ、そうだが……ないことは、ない、です」

未央「です、って」

P「うるさい。からかうな。あー、もう、今日は本当にダメだな……」

未央「私は楽しいよ☆」

P「うるさい」
420 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:44:56.68 ID:DMzpmect0

――

未央「りんごもあるんだけど、剥く?」

P「んー……うん。剥くか」

未央「あ、もちろん私が、だよ?」

P「……確かに素で俺が剥こうとしてたけどなんでバレた」

未央「プロデューサーだから?」

P「理由になってないと思うんだが」

未央「なんかそんな気がしたってだけだから気にしない気にしない。それじゃ、剥くね」

P「ん、頼む」

未央「頼まれましたー……っと」シュルシュル
421 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:45:48.20 ID:DMzpmect0
P「……なんか、未央、うまいな」

未央「未央ちゃんは器用ですからねー」シュルシュル

P「自分で言うか」

未央「言っちゃうー」シュルシュル

P「……」

未央「……」シュルシュル

P「……なんか、こういうの、良いな」

未央「? 何が良いの? プロデューサー」

P「あ、声に出てたか。どうでもいいから忘れてくれ」

未央「えー。気になるよー。教えて教えてー」
422 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:46:28.88 ID:DMzpmect0
P「……俺の家で未央がりんごを剥いていて、それを無言で見ることのできることが、って、なんか言ってて恥ずかしくなってきたな」

未央「……未央ちゃんがお嫁さんに来たみたい、って?」

P「んっ……そういう意味じゃなくて、ただ……でも、そうなのかもな」

未央「お、素直。なになに? 未央ちゃんがお嫁さんに欲しくなっちゃった?」

P「……答えにくいんだが」

未央「そう? ごめんね。……よし、剥けたよ、プロデューサー」

P「ん。早いな」

未央「早いよー。それじゃ、一口サイズに切っちゃって……はい、プロデューサー。あーん♪」

P「……あーん」

未央「お、ノリ良い」

P「言わないと食べさせないだろ」

未央「まあね。じゃ、改めて、あーん」

P「あーん」パクッ
423 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:46:55.10 ID:DMzpmect0
未央「……どう?」

P「……ん、うまい。シャリシャリしてて、甘い。おいしいよ。未央も食べるだろ?」

未央「お、いいの? それじゃあもらうね。……あ、プロデューサー」

P「ん?」

未央「あーん」

P「……自分で食べろよ」

未央「あーん」

P「……ったく。あーん」

未央「んっ♪」パクッ

未央「……ん、ほんとだ。おいしいね」

P「おいしいな」

未央「未央ちゃんが剥いたからかな?」

P「りんごが良いんだよ」

未央「えー。冷たーい。アイドルの剥いたりんごなのにー」
424 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:47:29.09 ID:DMzpmect0
P「……アイドルってことよりも、俺としては、未央が剥いたってことの方が大事だけどな」

未央「……それ、プロデューサーとしてはどうなのかな?」

P「ダメだな」

未央「だよね。……私は、嬉しいけど」

P「そうか」

未央「うん」

P「……」パクッ

未央「……」パクッ

P「……うまいな、りんご」

未央「……うん」
425 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:47:57.35 ID:DMzpmect0

――

P「ん、もうこんな時間か。未央。さすがにそろそろ帰らないとな」

未央「帰る……帰る、かー」

P「なんだその反応。何か不満でも?」

未央「いや、不満というか、何と言うか……プロデューサー、一人でも大丈夫かなー、って」

P「大丈夫かなー、って……俺をなんだと思ってるんだよ」

未央「とは、今日のことを考えると言えないよね?」

P「……まあ、そうだな」
426 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:48:36.11 ID:DMzpmect0
未央「……泊まってもいい?」

P「ダメだ」

未央「プロデューサーが自分を抑えられる気がしないって?」

P「そうじゃなくて、そんなことしたら、ちひろさんにどんだけ怒られるか……」

未央「……ちひろさんに怒られなかったら、いいんだ」

P「あ」

未央「……プロデューサーのえっち♪」

P「えっち、って……それを言うなら、先に泊まるとか言ったお前の方だろ」

未央「そうかな?」

P「そうだ」

未央「そうかー。まあ、セクシー担当だしね」

P「何のだよ……」

未央「ニュージェネとかポジパの? 美嘉ねーリスペクトー、みたいな」

P「……その二つのユニットなら、確かに、そうかもな」

未央「でしょ?」

P「まあ……って、何の話だよ」

未央「確かに、何の話だろ」
427 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:49:13.16 ID:DMzpmect0
P「……とりあえず、帰れ、未央。俺なら、大丈夫だから」

未央「……ほんとに、大丈夫?」

P「ああ。ありがとう、未央」

未央「……ん。それじゃあね、プロデューサー」

P「ああ。それじゃあな、未央」
428 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:49:44.89 ID:DMzpmect0

――

P「……ふう」

P(未央が帰った……か)

P(……大丈夫だとは言ったが、やっぱり、まだ寂しいな)

P「……ライブ映像でも、見るか」
429 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:50:29.40 ID:DMzpmect0
P(やっぱり、ウチのアイドルは最高のアイドルだな)

P(……あ、ヤバいな、眠くなってきた)

P(テレビ、消さないと……いや、もう、いいか)

P(今日は、このまま……寝てしまおう)

P(……)

P(……)

P(……)

プルルルル

P「……ん?」

P(電話? ちひろさんか? 何か、あったとか……って、未央?)
430 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:51:14.88 ID:DMzpmect0
P「もしもし。どうした? 未央」

未央『あ、プロデューサー。ごめん、もしかして、もう寝てた?』

P「まあ、寝てたな。でも気にするな。で、何の用だ?」

未央『いや……用というか、ちょっと、言い忘れていたことがありまして』

P「言い忘れていたこと……?」

未央『うん。プロデューサーに「おやすみ」って言ってなかったな、って』

P「……」

未央『まあ、もう寝ちゃっていたんだったら遅いし、むしろ起こしちゃっただけ悪いような気もするけどね』

P「いや、大丈夫だ。むしろ……」
431 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:51:41.40 ID:DMzpmect0
未央『? むしろ?』

P「なんでもない。……未央」

未央『なに?』

P「おやすみ」

未央『……うん。おやすみ、プロデューサー』

P「……それじゃ、切るな」

未央『うん。おやすみ――って、これ、さっきも言ったね。こういう時、電話を切る時のあいさつってどうするべきなんだろ』

P「べつに、おやすみ、でいいんじゃないか? 二回言っても、べつに、な」

未央『……そうだね。それじゃ、改めて』

P「ん。おやすみ、未央」

未央『おやすみ、プロデューサー』

ガチャ ツーツーツー
432 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:52:18.90 ID:DMzpmect0
P「……ありがとう、未央」

P(……寝よう)

P(ぐっすりと寝て、早く体調を戻して……そして、また)

P(未央を、みんなを……プロデュース、する、ために……)」



433 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 02:55:07.68 ID:DMzpmect0
これにて今回は終了です。
割りと久しぶりですね! あと今回あんまり「ごはん」って感じじゃないですね! 次回はそんなことないと思います!

今回こんな感じになったのはちょっと体調崩して弱ってた時に「こんな時に未央がそばにいてくれたらなあ」とめちゃくちゃ思ったからです。つまり個人的欲望の塊です。……いつも通りですね!

次回は割りとガッツリ食べたいかな……。

ここまで読んで下さってありがとうございました。
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/29(木) 02:58:57.74 ID:msq+CHAwo
最高だわ…
ずっと待っていた甲斐があった
乙です
435 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/09/29(木) 03:00:03.35 ID:DMzpmect0
あとSSとは関係ないですがフェス限未央……! あとデレステの次イベも未央……!
頑張ります! 頑張りたい。頑張ろう……。
はぁ……未央とただ寄り添っていたい……。

改めてありがとうございました。
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/29(木) 11:25:36.39 ID:D8i87csjo
乙です
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/29(木) 17:14:02.31 ID:iK2ST+RYO
おぉ、乙
心配してたけど来てくれたから良かった

未央のエネルギーを少しでもいいから貰いたいところ
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/29(木) 20:31:31.75 ID:QevCfxN4O
もしかして途中のは33分探偵?
あれもだいぶ前のドラマになっちゃったなあ
年月経過ってはやい

おっつおっつ
たまにはこういうのもアリ
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/30(金) 07:10:59.01 ID:qJMnEQNho
乙乙待ってたぞ
いい…
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [[sage]]:2016/10/03(月) 09:05:02.05 ID:GK1SrgyW0
行間を味わえる気がする文章で、すごく好き。 
もう一度言おう、このSSすごく好きだぜ。
441 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:26:26.02 ID:3MiJrL600
P「チャーハンが食べたい」

未央「えっ、いきなりどうしたの? プロデューサー」

P「いや、ちょっと知り合いがオススメしてた店があってさ。だから、行きたいな、って」

未央「それは未央ちゃんを誘っているということかな?」

P「まあ、そうだな。来るだろ?」

未央「えー。でも、私、アイドルだからなー。あんまり食べ過ぎるのもなー」

P「今まで食べまくってた奴がよく言う」

未央「それはプロデューサーのせい……だけじゃないけど、プロデューサーの責任もあるでしょ?」

P「それは……そうだな」

未央「そうそう。まったく、おかげで未央ちゃんのレッスンはハードなんですよ? 仕事もあるのに」
442 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:32:47.92 ID:3MiJrL600
P「……確かに、俺があんなに色んなところに連れて行ってるのに、未央はスタイル良いよな」

未央「ふふん、これも未央ちゃんの努力の賜物ですよ。美嘉ねーやくみねぇにも話聞いたりしてるけど」

P「あー……その二人なら問題ないな。で、結局どうするんだ?」

未央「どうするって、何が?」

P「チャーハン」

未央「行くよ?」

P「なんだその『当然じゃん』みたいな言い方」

未央「いや、だって……当然でしょ?」

P「さっき自分が言ったこともう忘れたのか?」

未央「それはまあ、いつものおふざけですし? プロデューサーもわかってたでしょ?」

P「そりゃ、まあな。でも、実際、アイドルをそんなに連れて行くのもな……」
443 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:36:16.26 ID:3MiJrL600
未央「そんなの、今更ですよ、今更。それに、未央ちゃんはプロデューサーとごはんを食べに行くために頑張ってるところもあるからね」

P「そのためかよ……」

未央「もちろん、そのためだけじゃないけど、そういうごほうびのためにも頑張ってるというところはあるというか? 頑張った後には、やっぱりおいしいものを食べたいですし。それが大好きな人となら最高でしょ?」

P「それはわかるが……いや、うん、そうだな。俺も同じ気持ちだから」

未央「私とごはんを食べるために頑張ってる?」

P「ってところも、まあ、あるな。正確には、それがあるって思えるから、より一層頑張れるというか」

未央「……なんか、スイーツを自分へのごほうびっていうOLさんみたいだね」

P「近いかもしれないな……」

未央「近いんだ……」

P「自分で言ってそういう反応するなよ……とにかく、行くか」

未央「おー」
444 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:36:46.54 ID:3MiJrL600

――

未央「それで、チャーハンってことは、今日は中華料理屋さん?」

P「中華……中華、なのか?」

未央「『なのか?』って言われても困るんだけど」

P「確かにな。でも、実際よくわからないんだよな」

未央「というと?」

P「チャーハン専門店みたいなところだから、だな」

未央「チャーハン専門店……あ、なんか聞いたことあるかも」

P「お、そうなのか。行ったことは?」

未央「ない、けど、たまにテレビとかで見るような……気がする」

P「俺もまあ存在だけは知ってたな、チャーハン専門店。それで、今日行くところがなかなかおいしいって話を聞いたから行きたいと思ったんだよ」

未央「ほうほう。チャーハン専門店のチャーハン……いったい、どんなものが出てくるのか。楽しみだね、プロデューサー♪」

P「そうだな。俺も、かなり楽しみだ」
445 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:37:13.03 ID:3MiJrL600

――店の前

未央「ここ?」

P「だな」

未央「……かにチャーハン?」

P「うん。……そのままの名前だよな、店名」

未央「わかりやすいけど……うん、わかりやすいけどね!」

P「とりあえず、入るか」

未央「うん……」
446 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:37:43.27 ID:3MiJrL600

――店の中

P「チャーハンだけ、って言っても、チャーハンにもそこそこ種類あるな。どうしようか」

未央「うーん……それじゃ、私はこの『かに海鮮五目チャーハン』っていうので」

P「む。俺もそれにしようとしてたんだが……まあ、一緒でもいいか。なんかセットにできるみたいだが、未央はどうする?」

未央「自家製かに焼売一個と肉汁餃子が二個のやつ!」

P「わかった。それじゃ、注文するか。すみませーん!」
447 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:38:11.02 ID:3MiJrL600

――

P「ん、まずは味噌汁か」

未央「味噌汁だね。かに味噌汁?」

P「らしいな。まあ、飲んでみるか」

未央「だね。それじゃ、いただきまーす」

P「いただきます」

未央(味噌汁……具は、これはネギ、かな? とりあえず、飲んでみよう)ズズ……

未央「ん!」

未央(わ! カニ! 結構カニだ! 一口飲むだけでカニってわかって、これは、なかなか……)

未央(ふぅ……。おいしくて、一気に飲んじゃ……あ! カニ! カニだ! 底の方にあって見えなかったけど、カニが入ってる! カニ身ってわけじゃないから、ちょっと、食べにくそうだけど……おおー、味だけじゃなくて、ちゃんとカニも入ってたんだ。なかなかびっくりかも)

未央(でも、味噌汁からおいしいなー。……チャーハン専門店で味噌汁がおいしいって、どうなんだろう。なんか、中華料理屋さんってスープのイメージが強いし……いや、おいしいんだけど。おいしいんだけどね? ……中華料理屋さんじゃなくてチャーハン専門店だから、かな)
448 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:39:05.06 ID:3MiJrL600
P「……お。カニも入ってるのか」

未央「そうそう。カニも入ってるんだよね。なかなかびっくり」

P「確かに、ちょっと驚いたな。味噌汁だけでもおいしかったから、これでカニ味噌汁なのかと思ったよ」

未央「私も私も。まあ、最初にお箸で中を突っついてみたりしたら気づいたのかもしれないけど、すぐ飲んじゃったから」

P「俺もそうだな。しかし、これでチャーハンはいったいどんな……って、そろそろ来そうだな」

未央「あ、ほんとに? ……あ、ほんとだ」
449 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:39:53.95 ID:3MiJrL600
P「で、来たな。かに海鮮五目チャーハン」

未央「カニと、いくら。あとは……イカ?」

P「だな。……うまそうだな」

未央「うん、おいしそう。いただこっか」

P「ああ」

未央(さてさて、かに海鮮五目チャーハン……どう食べようかな。とりあえず、まずはチャーハンだけで食べてみよう)

未央(わ。パラパラ。さすがはチャーハン専門店……スプーンですくっただけで実力を見せつけてくるとは! なんてやってないで、さっさと食べよー)パクッ

未央「……お」

未央(おおー……軽い。食感が軽い。すくっただけでパラパラだってことはわかってたけど、これは、思ったよりも……)

未央(なんか、全然べちゃってしてなくて、変に油っこくなくて……なんだか、いくらでも食べられそう、って感じ。チャーハンって油っこいイメージあったから、結構衝撃的かも)
450 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:40:25.12 ID:3MiJrL600
未央(……これを、カニと一緒に食べたら、どうなるんだろう)

未央(……いざ!)パクッ

未央「……ん」

未央(あー……おいしい。こんなのわかってたけど……わかってたけどさ!)

未央(あと、そう言えば、カニといくら、イカだけじゃなくて……じゃこ? も入ってる? のかな? 海鮮五目感あるね!)

未央(……イカも食べちゃお!)パクッ

未央「……うん」

未央(柔らかくて、いい味してる! それからそれから……カニといくらを、一緒に!)パクッ

未央「んー!」

未央(おいしい! 純粋にチャーハンとしてもおいしいけど、一緒に食べると、海鮮の味が口いっぱいに広がって……本当、幸せ)
451 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:41:04.00 ID:3MiJrL600
未央(あとは……そう言えば、餃子と焼売、食べてなかったな。食べちゃおー。まずは……餃子から!)パクッ

未央「……んっ」

未央(そ、そう言えば、名前、肉汁餃子だった……名前通り、すごい肉汁! おいしい……)

未央(……そのまま、焼売!)パクッ

未央「……はぁ」

未央(これもおいしい……なんか、もう、とにかく……おいしい)

未央(ぜんぶがぜんぶおいしくて……もう、最高ー!)
452 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:41:32.60 ID:3MiJrL600

――店の外

未央「おいしかったね、プロデューサー!」

P「ああ。チャーハン専門店だけあって、チャーハンもちゃんとおいしかったな。正直、カニを推してる店だと思ってたから……いや、まあ、推してるとは思うんだが」

未央「うんうん。チャーハンとしてもおいしかったよね。私、ここ好きかも。そんなに油っこくなくて、軽くて、食べやすいし」

P「あー……確かに、あんまり油っこくなかったな。味はしっかりしてたんだが、しつこくなかった。なんだか、いくらでも食べられそうな感じだ」

未央「そうそう。プロデューサーは油っこい方が好きだったりしなかった?」

P「それは体調とか気分にもよるな。それはそれ、これはこれで別物って感じでもあるしな」
453 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:42:10.53 ID:3MiJrL600
未央「そっかー……ふぇいふぇい、って、どうなんだろ?」

P「菲菲……どうだろうな。香港ってことは、広東料理が主流だから……こういうのも、割りと好きなんじゃないか?」

未央「プロデューサー、そういうのまでわかるの?」

P「いや、ただの予想だ。もしかしたら、油っこいのの方が好きなのかもしれない……」

未央「……どっちなの?」

P「菲菲に聞いてみないとわからないな。香港生まれって言っても、それでわかるのは傾向だけだからな。菲菲自身がどうかはわからない。菲菲は菲菲だからな」

未央「そうだね。私も私だし、プロデューサーもプロデューサーだもんね」

P「……『プロデューサーもプロデューサー』って、当然のこと言ってるな」

未央「じゃあ、PさんはPさんだから?」

P「……その呼び方やめろ」

未央「えー。なんでー? 呼んでる人いっぱいるのにー」
454 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:42:49.05 ID:3MiJrL600
P「今になって未央からそういう呼び方されると、何と言うか、変な感じするんだよ」

未央「それはそうだけどさー……いつかは、そう呼ぶ日も来るでしょ?」

P「……かもな」

未央「かも?」

P「……たぶん」

未央「絶対じゃなくて?」

P「……あー! もう! とにかく! その日が来るまではあんまりその呼び方はするな!」

未央「もー。照れ屋さんなんだから」
455 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:43:27.49 ID:3MiJrL600
P「照れ屋とかそういうのじゃ……帰るぞ、未央」

未央「はーい。……ね、プロデューサー。手、繋がない?」

P「……なんでだよ」

未央「ほら、ちょっと、夜は肌寒くなってきたからさ」

P「……ん」ギュッ

未央「……えへへ。ありがと、Pさん」

P「……その呼び方はやめろ」

未央「だね。でも、手、離さないんだね、プロデューサー」

P「未央が寒いって言ってるからな」

未央「そっか」

P「ああ」
456 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:44:11.56 ID:3MiJrL600
未央「……」

P「……」

未央「……プロデューサー、手、あんまりあったかくないね」

P「……未央は、あったかいな」

未央「あたたまる?」

P「ああ」

未央「そっか。……良かった」

P「……なんか、逆になってないか?」

未央「確かにね」

P「……手は、離さないんだな」

未央「うん。……プロデューサーの手はあたたかくないけど、私も、あたたまってるから」

P「……そうか」

未央「うん」

P「……」

未央「……」ギュッ

P「……」ギュッ



457 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:47:47.14 ID:3MiJrL600
これにて今回は終了です。
チャーハン。おいしかったです。他にも種類はあったのですが、まだ食べていないのでいつか食べたいところ……。

最近は肌寒いというか、ころころ気温が変わる印象です。上がったり下がったり。個人的にはもうちょっと落ち着いてほしいですね。

今回名前だけ出したアイドルはいつか出したいなぁ……。

ここまで読んで下さってありがとうございました。
458 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/10/18(火) 20:51:07.87 ID:3MiJrL600
あとSSとは関係ないですがライブがありましたね。「ステップ!」は良い曲……。
本当に「本田未央」って感じの曲ですよね。大好きです。「ミツボシ☆☆★」も「ステップ!」も大好きです! 

遅くてもこれくらいのペースでは書いていきたい……。

改めてありがとうございました。
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/18(火) 21:35:28.85 ID:0mTYTGYFo
乙です
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/18(火) 22:08:48.42 ID:qSCuMRU6o

ググったら本当にかにチャーハンの店なのねww>店名
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/18(火) 23:54:05.17 ID:CB2iwkPEO

チャーハンおいしそうだ…

ミツボシもステップもどっちも素晴らしいけど、
1回のライブで両方聞いたら元気が出すぎてしまう気がする
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/19(水) 00:15:51.57 ID:NXhS1Efao

あー未央と結婚してーわー
463 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:10:59.57 ID:fFdY/3LN0

 CM。

 遠くから一人の少女の姿が映る。制服にマフラーを付けた長髪の少女。

 その手に何かを持っている。しかしまだそれが何かはわからない。

 カットが変わり、少女の整った顔が映し出される。

 少女はどこかを見ている。そのまっすぐな目は視聴者の心を掴む。

 少女が一本のポッキーを口に運び、パキッ、と割って食べる。

「……おいしい」

 今まで凛とした表情を見せていた少女の微笑み。

 そこでロゴマーク。「あなたも、私も」という少女の落ち着いた声から、視聴者が慣れ親しんだ「ポッキー」という男性の声。

 そして、次のCMに――

464 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:11:57.04 ID:fFdY/3LN0

――事務所

未央「……しぶりん、本当にCMやってる」

P「まあな。しかし、今年もこんな大きな仕事が入ってよかったよ。さすがは凛、って感じだな」

未央「……実際、しぶりんのチョコレートへの愛は結構重いもんね」

P「でも、このCMでは『おいしい』っていうあの表情にすべてが込められているんだよな。いつもの凛を知ってる人からしても、このCMはかなり良いと思うんだよなー。あの渋谷凛が何かを食べてあんな風に微笑むとか、俺でも買いたくなるもんな」

未央「買わなくてもあるけどね。……いっぱい」

P「……本当に、いっぱい、な」

未央「……ポッキーゲーム、する?」

P「なんでそうなる」

未央「いやー、だってこんなにポッキーがあるんだよ? それに、今日はポッキーの日! これはもうポッキーゲームするしかないでしょ!」

P「そうはならないと思うが」

未央「えー。でもでも、ポッキーゲーム、したくない? アイドルとのポッキーゲームだよ? 貴重ですよ?」
465 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:12:44.06 ID:fFdY/3LN0
P「アイドルとのポッキーゲームだから、やらないんだよ。……これ、去年も同じようなやり取りしたような気がするんだが」

未央「そうだっけ? そうかも。でも、去年と今じゃ……ほら、私たちの関係も、違うでしょ?」

p「同じだ。アイドルとプロデューサー。それ以上でもそれ以下でもない」

未央「えっ」

P「……なんでこの流れで本気でショックを受けてるんだよ」

未央「……あっ。そ、そっか。そうだよね。そういう流れ、だったよね。……でも、そうだとしても、それは言ってほしくなかったかも」

P「……すまん」

未央「……それじゃあ、ポッキーゲーム、しよ?」

P「それはできない」

未央「えー! なんでー! 未央ちゃん傷ついてるのにー!」

P「傷ついてる奴の言い方じゃないだろ……」

未央「……本当に、割りと、傷ついてるんですよ?」
466 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:13:13.57 ID:fFdY/3LN0
P「っ……」

未央「……なんちゃってー! でもでも、傷ついてるのは本当だから、慰めて♪」

P「……未央」

未央「なにかな? プロデューサーくん」

P「……いや、なんでもない。お前は優しいよな」

未央「まあ、未央ちゃんは世界でも五指に入る優しさの持ち主ですからなぁ……」

P「そこまでは言ってないが」

未央「むぅ。そこは乗ってよ、プロデューサー」

P「悪い悪い。で、ポッキーゲーム、だったか?」

未央「……やってくれるの? アイドルとプロデューサー以上でも以下でもないのに?」

p「……お前、根に持ってるな」

未央「だって本当にショックだったんだもん。そんなこと言われたら、しぶりんやあーちゃんでも落ち込むと思うよ?」

P「……すまん」
467 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:13:51.82 ID:fFdY/3LN0
未央「反省しているなら許してあげましょう。で、ポッキーゲームだけど……どうしよっか?」

P「どうするって?」

未央「負けた方に罰ゲーム的なの、ほしいなーって」

P「罰ゲーム……あんまり気は進まないが、まあ、いいぞ」

未央「お、いいの? 罪悪感かな?」

P「そうだよ。続けろ」

未央「えへへ。ごめんごめん。さっきのはもういいよ♪ いつまでも引きずられていると、私も気まずいからさ」

P「それじゃあ、罰ゲームはなしで」

未央「それはダメ」

P「ダメなのか……」
468 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:14:19.91 ID:fFdY/3LN0
未央「ダメですとも。だって、そうしないとプロデューサー、わざと負けるでしょ?」

P「……」

未央「答えは沈黙」

P「当たり」

未央「当たりじゃないよ! 不正解だよ! だから、罰ゲームは……勝った方の言うことを一つ聞くこと!」

P「……それ、未央も聞くのか?」

未央「もちろんですとも。まあ、私は負けるつもりないけどね」

P「……そうか。うん、なら、俺も勝ちに行く」

未央「お? プロデューサー、そんなにしてまで未央ちゃんに聞いてほしいことがあるのかな?」

P「まあな。……さて、ちひろさんや他の誰かが帰ってくるまでには終わらせないとな」

未央「そだね。じゃあ、早速……あ、プロデューサー」

P「なんだ?」

未央「……もしも、どっちも絶対に負けないつもりなら……ポッキーゲームって、どうなると思う?」

P「そりゃ……未央、お前」

未央「私は、負けるつもりないからね」

P「……」
469 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:15:18.95 ID:fFdY/3LN0
未央「それじゃ、しよっか、プロデューサー。ポッキーゲーム」

P「……わかった」

未央「じゃ、両端から食べていって、先に口を離した方が負け、ね? 私、チョコの部分もーらい♪」

P「……」

未央「ん。んー!」

P「……ん」パクッ

未央「んっふっふ……プロデューサー、未央ちゃんの顔が近くてドキドキしちゃう?」

P「……ノーコメント」

未央「ノーコメント、ね……えへへ。それじゃ、準備はいいかな? よーい……スタート!」
470 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:15:54.70 ID:fFdY/3LN0
未央(とは言ったものの……うーん、顔が近い)

未央(いきなり食べ進めた方がいいかな? たぶん、プロデューサーの方からは食べ進めてこないだろうし、ゆっくりでもいいと思うけど……どうしよっかなー)

未央(私としては、ずっとこのままでもいいんだけど……それはちょっと、未央ちゃんの心臓がもつかわからないからなー)

未央(……改めてプロデューサーの顔をこんな風に見ることって、そう言えば、あんまりなかったかも)

未央(うーん……こうして見ると、やっぱり、顔だけならもっとかっこいい人はいる……ハズ、なんだけどなぁ)

未央(……なんで、こんなにかっこよく見えるんだろ)

未央(客観的に見れば……うん、べつに、そこまでかっこよくはない……と思う。第一印象でも、べつに、かっこいいとは思わなかったし。だから、たぶん、そんなにかっこよくはないんだと思う)

未央(でも……それなのに、こんなに、こんな風に見えるのは)

未央(……たぶん、好きだから、なんだろうなあ)

未央(うーん……恋ってこわいものですね。さえないはずのプロデューサーが、こんなに魅力的に見えるだなんて……いや、まあ、あんまり知られてないだけで、プロデューサーはめちゃくちゃ魅力的なんだけどね。あんまり知られてないだけで。いや、知られても困るんだけど)

未央(って、私、誰に言ってるんだろ。……まあ、いいや。もうちょっとだけ、このまま――)
471 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:16:27.34 ID:fFdY/3LN0
P「未央」

未央「へ?」

P「そっちから来ないなら、こっちから行くぞ?」

未央「……え?」

未央(……いったい、プロデューサーは、何を……)

P「」サクッサクッサクッサクッサクッ

未央「……んぅ!?」

P「」サクサクサクサクサクサクサクサク

未央(え!? ちょ、プロデューサー、速くない? え? これ、今、何が、え? これは、ちょっと、予想外なんだけど!)

未央(わ、わ、わ。ぷ、プロデューサーの顔が近付いてくる。ちょ、ちょっと待って。こ、このペースじゃ、私が何もしなくても、プロデューサーの、唇が……)

未央(……ぷ、プロデューサー、私がさっき言った意味、わかってるよね? 覚悟、してるってことだよね? わ、私、離した方がいい? 離さなきゃ、でも、私……!)

未央(……ち、か……もう、鼻が、当たりそうで……唇も、もう、少しで……)
472 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:17:04.99 ID:fFdY/3LN0
未央「……」ギュッ

未央(……顔が熱い。手が震えてる。力が入らない。ただ、ぎゅーっと目をつぶっている)

未央(まだ? もうすぐ? どうなるんだろう。どうなるの? 私の初めて、ここで、なの?)

未央(心の準備が、まだ、できてない……けど、でも、プロデューサーとなら……プロデューサーが、して、くれるなら……)

未央(……心臓がドキドキしてる。顔が熱い。でも、ちょっと、楽になった)

未央(目を閉じていてもわかる。プロデューサーは、すぐそこにいる)

未央(吐息を感じるような距離。肌から熱を感じるような距離。もう、今にも触れてしまいそうなほど、近く)

未央(……うん。もう、大丈夫)

未央(心の準備も、一応、できた。だから、今はもう、プロデューサーに、すべてをあずけて――)
473 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:18:06.53 ID:fFdY/3LN0


パキッ


未央(……『パキッ』?)

P「……ふぅ。未央、顔、真っ赤だぞ?」

未央「……え?」

未央(……目を開けると、プロデューサー。唇に感触は……ない)

P「あんまり大人をからかうなよ? 俺だって、たまにはこれくらいするさ」

未央(……得意顔の、プロデューサー。にやけ顔の……!)
474 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:18:32.34 ID:fFdY/3LN0
未央「ぷ、ぷろ、プロデューサー……!」

P「なんだ? 未央。いつもお前がやっているようなことだろ? そのお返しだよ」

未央「……!」

P「でも、あんだけやったら未央の方から離すと思ったんだけどな。そこは負けたよ。まあ、試合に負けて勝負に勝った、って感じだけどな。さ、罰ゲームでもなんでもこい。今の俺は機嫌がいいから、割りとなんでも聞いてやるぞ?」

未央(……完全に、調子に乗ってる)

未央「……プロデューサー」

P「ん? 何――」グイッ
475 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:19:09.03 ID:fFdY/3LN0


チュッ


未央「――っぷは。……お返し、だよ」

P「……」

未央「次は、ちゃんと口にするから。……それが、お願い」

P「……未央、お前」

未央「プロデューサー」


未央「あんまり、女の子をからかっちゃダメだよ?」


未央「……それじゃ、私、そろそろ行くね。残りのポッキーはあげる。また明日、プロデューサー」

P「……ああ。また明日」


ガチャ


476 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:19:39.39 ID:fFdY/3LN0

――

ちひろ「ただいま戻りました……あら? プロデューサーさん、どうかしたんですか? あ、ポッキー。ポッキーの日、ですもんね。一本もらってもいいですか?」

P「……どうぞ」

ちひろ「ありがとうございます♪ ……あ、プロデューサーさん、ポッキーゲームでもします? なーんて、冗談です♪ ドキッとしちゃいました?」

P「……」

ちひろ「……プロデューサーさん? 本当に、どうかしましたか?」

P「……ちひろさん」

ちひろ「?」

P「……女の子って、すごいですね」

ちひろ「……?」



477 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:23:55.20 ID:fFdY/3LN0
これにて今回は終了です。
ポッキーの日……二回目! でも前とは割りと違う二回目! でも前と同じく食レポみたいなことはまったくやってないポッキーの日! いいのか……?

去年のポッキーの日は前スレの>>660くらいからのハズ。このSSでの凛はチョコレートが好きです。

ここまで読んで下さってありがとうございました。
478 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/11(金) 23:25:37.94 ID:fFdY/3LN0
あとSSとは関係ないですがそろそろ総選挙CD発売ですね。楽しみです。

青空リレーションすき。

改めてありがとうございました。
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/11(金) 23:40:38.27 ID:dnkJ7ql+o
乙です
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/11(金) 23:49:42.61 ID:PEykukDDO
甘いわ…最高だわ…
前回のポッキーゲームと比べると更に良い
乙でした
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/12(土) 21:18:22.25 ID:BULzJ7KVo

未央とポッキーゲームする次元に生まれ変わりたい
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/13(日) 04:56:11.10 ID:2kP7FayL0
おお、続いていたか乙!
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/13(日) 10:39:31.29 ID:sD+eC88fO

もう何度か書いたけど、じわじわ縮まってる二人の距離感がたまらん!
484 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/30(水) 23:44:45.37 ID:Oz6oIwso0

 夜。

 未央は独り、事務所の屋上で夜空を見ていた。

「……」

 何も言わず、ただ独りで夜空を見る。

 普段の彼女からは考えられない、静かな表情。

 明日、12月1日は本田未央の誕生日である。

 そして、バースデーライブが開催される日でもある。

 こんな時間になっても未央が事務所にいるのはそういったことが関係していた。千葉から事務所までそう時間がかかるわけでもないが、今回はこっちに泊まると言っておいたのだ。

 こういったことは何も珍しいことではない。LIVEの前日、女子寮などに泊まるアイドルは少なくなく、未央もその一人というだけの話だった。

 ただ、明日は未央のバースデーライブである。ソロライブが初めてかと言えばそういうわけではない。小規模なものであれば、今までにも経験したことはある。だが……。

「……プロデューサーからの、バースデープレゼント、だもんね」

 そう思うとなんだか嬉しくて、だらしなくにやけてしまいそうになる。誰にも見られてはいないだろうが、すぐにハッとして、未央は自分の頬に手を添える。

「冷たっ」

 頬に当たった自分の手がおもったよりも冷たくて、未央はそんな声を上げてしまう。……そう言えば、私の誕生日ってことは、もう、そんな季節なんだよね。……ちょっと、寒いかも。
485 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/30(水) 23:48:06.90 ID:Oz6oIwso0
 ちょうどそう思った時、ぱさり、と未央の肩に何かが降ってきた。

「ひゃっ」

 いきなりのことに未央は肩を跳ねて驚いてしまう。いったい、何が……。そう思って、肩に落ちてきたものを見ると、そこには見慣れたコートがあった。それがどういうことを表しているのか、未央が思いつく前にくっくっと笑い声が聞こえていた。

「ひゃっ、って。そんなに驚くことでもないだろ」

 未央が目を向けると、そこにはプロデューサーが立っていた。彼はそのまま未央にマグカップを差し出した。

「……ありがと」

 驚かされたことに文句を言いたい気持ちもあったが、その好意は素直に嬉しかったので、感謝を言って受け取ることにした。湯気が立ち上る、温かいココアだ。飲もうとしたが飲めなかった。それほど熱かったのである。

「明日はライブだってのに、こんなところで何してるんだよ」

 呆れた様子でプロデューサーが言う。確かに、翌日にライブを控えたアイドルがこんな時間にこんなところで何をしているのか、と言う話だ。

「いやー……実は、緊張してまして」

 返す言葉もなかったので、とりあえずごまかすことにした。そんな未央にプロデューサーは「ふーん」と口にして、にっ、と笑った。

「あんなにやけ顔してたのに、か?」

「なっ」

 さっきの、見られてた!? いや、まあ、確かに、あのタイミングなら……。

 自分でもだらしない顔をしているだろうと思っていたが、まさかプロデューサーに見られていたなんて……。さっきまでは寒かったのに、急に暑くなってきた。少なくとも、顔は熱い。恥ずかしい。

「まあ、それはそれとして……早く、中に入ろう。ここは寒い。風邪をひくわけにはいかないだろ?」

「……うん」

 プロデューサーの言葉は正しい。未央はプロデューサーに続いて事務所の中に入った。
486 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/30(水) 23:51:31.87 ID:Oz6oIwso0
 事務所には既に未央とプロデューサー以外誰もいなかった。この時間だから当然……というわけでもないのだが、少なくとも今日はそうだった。

「誰もいないね」

「そうだな。ちひろさんも、さっき帰ったし……未央は、女子寮でいいんだよな?」

「うん。こんな時間になっちゃったけど、入れる……よね?」

「正面からは入れないが……大人組にはこれくらいの時間まで仕事してる人もいるし、これくらいの時間まで飲んでる人もいるからな」

「……これくらいの時間まで飲んでるのって、大人なら普通?」

「普通かもしれないが、アイドルなんだからあんまり……いや、まあ、控えてはほしいし、ある程度控えてくれてはいるんだけどな? でも……でもなぁ」

「心配、って?」

 こくり、とプロデューサーがうなずく。心配……心配、か。

「……私も20歳になったら、そんな風になるかもよ?」

「ならないでくれ」

 即答である。そんなプロデューサーに対して未央は笑って、

「それは未央ちゃんが心配だからかな?」

「そうだ」

 これも即答だった。これも即答されるとは思っておらず、未央は一瞬だけ固まる。

「……プロデューサーって、束縛、強い方?」

「束縛……」

 プロデューサーはそうつぶやいて、ハッとする。

「い、いや、そういうわけじゃないぞ? 確かに心配だからだが……束縛が強い方じゃ、ない、と、思う。たぶん」

「たぶん、って……私は、べつに、束縛強くてもいいんだけど」

「んっ!?」

 ごほっごほっとプロデューサーがむせる。いきなりむせ始めたプロデューサーの背中を未央はさする。

「お前、そういうこと、言うなよ」

「なんで? ……あ、もしかして、えっちなこと考えた、とか?」

「……お前、意味わかって言ってるか?」

 意味。もちろんそれはわかっている。束縛が強いというのを、えっちなことで考えると……ん!? もしかして、私、すごいこと言った!?

「わかったみたいだな」

 顔を赤くして照れる未央を見て、プロデューサーは溜息をつく。プロデューサーもプロデューサーで、耳を赤くしていたのだが。
487 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/30(水) 23:55:00.81 ID:Oz6oIwso0
「というか、ココア、まだ飲まないのか? 冷めるぞ」

「あ」

 すっかり忘れていたと言うように、未央は手元のマグカップを見る。

「……さ、さっきは熱くて飲めなかったから、わざと冷ましていたのですよ?」

 口調からして明らかにおかしかったが、熱くて飲めなかったというのに嘘はない。幸い、さっきからそれほど時間が経っているわけでもなく、マグカップからはまだ温かみを感じる。

「……まあ、まだ冷めてはいないだろ。飲んどけ」

 プロデューサーに言われた通り、未央はココアを飲むことにする。さすがにまだ大丈夫だろうとは思いながらも、さきほどの痛みを忘れられず、恐る恐る口をつける。

 上唇がぴちゃ、と付いた瞬間思わず離してしまうが、熱くはない。

 それに安心して、今度はゆっくりとココアを飲んで……。

「ん……」

 温かい。熱くはないけど、身体の芯から温まるようだった。

 優しい味だった。甘くて、でも、少しだけほろ苦くて……それが、とても心地良かった。

「おいしいよ。ありがとう、プロデューサー」

「どういたしまして。身体、ちょっとは温まったか?」

「うん。プロデューサーのおかげで、体調は万全だよっ」

「……それならそもそも外に出るなよ」

 もっともである。しかし、未央は「えへへ」と笑ってごまかす。プロデューサーもまた、呆れたように笑うだけでそれ以上のことは何もしない。
488 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/11/30(水) 23:58:00.74 ID:Oz6oIwso0
「……明日、バースデーライブなんだよね」

 ぽつり、とつぶやくように未央が言う。その突然の変化に驚くこともなく、プロデューサーは「そうだな」と返す。

「プロデューサーの、バースデープレゼント?」

「……バースデープレゼントが仕事でいいのか?」

 プロデューサーは真面目な調子で言った。……こんなところは鈍いよね。未央は笑いながら、「もちろん、くれるなら他にもほしいけどね」と言う。

「でも……うん。私にとっては、最高のプレゼントだよ」

「そうか」

「うん」

 それだけを言って、二人は黙った。

 プロデューサーは仕事が終わったのだろうか? 自分の席に戻る様子も見せず、ただ、そこに立っている。

 でも、だからと言って未央は「帰らないの?」なんて言ったりはしない。

 そもそも、こんな時間まで未央が事務所に残っている理由は一つなのだ。

 それは……そう言えば、今、何時だろう。

 たぶん、そろそろ――

 未央がそう思って時計を見ようとした、その時。

「未央」

 その声に、未央はプロデューサーの方を見る。見ようとしていた側の、反対側。

 時計の反対側。

 そして、プロデューサーが時計の反対側にいるということは、プロデューサーから見て、私は――
489 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 00:00:00.83 ID:2RSVv31G0


 カチッ、と時計の針の音がした。


490 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 00:00:27.19 ID:2RSVv31G0
「誕生日、おめでとう」

 そう言って、プロデューサーは微笑んだ。

「……ありがとう、プロデューサー」

 ……祝って、もらえた。

 去年もそうだったけれど……今日は、プロデューサーに、いちばんに言われた。

 それが、とても、とても嬉しくて……。

「本当に、ありがとう!」

 未央はプロデューサーに満面の笑みを向けた。まだ「おめでとう」と言われただけだ。でも、それだけで良かった。それだけで、こんなにも……こんなにも、嬉しい。

 それ以上、言葉はいらなかった。

 おめでとうと言って、ありがとうと返した。

 二人は黙って、互いを見つめる。

 何も言わずに、見つめ合う。

 そして……。
491 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 00:02:49.28 ID:2RSVv31G0


 ピロロン


 静かな事務所に、通知音が鳴り響いた。


 ピロロン ピロロン ピロロン ピロロン


 その音は鳴り止むことなく、ずっとずっと鳴り響く。

「……ぷっ」

「……ふふっ」

 二人は顔を見合わせて、こらえきれないと言った風に笑い出す。

「こんな時くらい、通知音、切っとけよ」

「こんなことになるなんて思わなかったんだもん。そりゃ、私がこんな時間までいたのはプロデューサーにいちばんに祝ってほしかったからだけどさー」

「それ、俺に言ってもいいのか?」

「べつにいいでしょ? こんな雰囲気だし。今さら隠しても……じゃない?」

「それもそうだな」

 そうやって笑いあった後、プロデューサーが「お祝いの言葉、見ないでいいのか?」と言ったので、未央はスマホに届いた自分へのお祝いの言葉に返信していった。
492 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 00:16:29.90 ID:2RSVv31G0
 そうして未央がすべての返信を終え、一息ついたところで。

「じゃ、帰るか」
 
 プロデューサーが言った。「へ?」と未央から声が漏れる。

「……プロデューサー、仕事、もうないの?」

「ん? まあ、そうだな」

「……じゃあ、どうして、こんな時間まで残ってたの?」

「それはまあ、未央の誕生日をいちばんにいわ――」

 プロデューサーが固まった。

 そんなプロデューサーを見て、未央は「あれあれ〜?」と意地悪な笑みを浮かべ始める。

「プロデューサーくん、それはいけないことじゃないのかなー? アイドルの誕生日をいちばんに祝いたいなんて理由で、アイドルをこんな時間まで事務所にいさせるなんて、ダメなことなんじゃないかなー?」

「……ついさっき、終わったところなんだよ」

「ほんとかなー?」

「……本当だ」

 もちろん、未央はプロデューサーを疑ってなんていなかった。ついさっきまで仕事をしていたのは本当だろう。ただ、あと少しで自分の誕生日だったから、それまでは……と思っただけで。

 それは未央にとってもありがたかったし、とてもとても嬉しいことだった。

 自分だけではなく、プロデューサーもそう思ってくれていた。

 それが嬉しくて嬉しくて……だからこそ、未央はプロデューサーのことをからかったのだ。
493 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 00:23:12.59 ID:2RSVv31G0
 しかし、からかい過ぎたのか、プロデューサーはとうとうむすっとしてしまった。

 そんなプロデューサーを見て申し訳なく思うのではなく、かわいいなぁ、なんて思ってしまう。

「プロデューサー、拗ねないで。からかい過ぎたのは謝るから〜」

「……とにかく、帰るぞ。女子寮までは送るから、早く準備しろ。明日はライブなんだからな」

 そんなプロデューサーに対して、未央は小声で「……それなのに遅くまで帰らさなかったのは誰かなー」なんて言う。プロデューサーがわかりやすく落ち込む。

「ごめんごめん、べつにせめてるわけじゃないよ。本当、嬉しかったもん。感動したよ!」

 その言葉は未央の本音だったが、今のプロデューサーからすれば慰めの言葉にしか聞こえない。

「ごめんな……自分勝手で……」

 プロデューサーの自己嫌悪モードである。こうなるとすごく面倒くさい。それを未央は知っている。

 うーん、どうするか……これはさすがに私が悪いし、でも、このまま落ち込まれても……。

 そう思った未央は、そうだ、とあることを思いつき、ととと、と事務所の冷蔵庫の方に走ってあるものを持って戻ってきた。

 そして。

「えいっ」

 ぐさっ、とプロデューサーの口にあるものが差し込まれた。

 ポッキーである。

 いきなり、何を……そう思ってプロデューサーは未央の方を見た。

 未央は言った。

「早く立ち直らないと、またポッキーゲーム、だからね」

 ポッキーゲーム。

 その言葉を聞いたプロデューサーの脳裏に浮かんだのは、つい最近、ポッキーの日にあった……!

「それはダメだ!」

 プロデューサーが叫ぶようにして言った。よし、作戦成功。未央はプロデューサーに見えないように小さくガッツポーズをつくった。

「うん、やらないよ。だから、早く帰ろう? 私をお城まで送って下さいませ、王子様」

 演技がかった調子で、まるでお姫様がドレスのスカートをつまんであいさつをする時のように、ミニスカートをつまんで礼をして、それからお姫様がエスコートをされる時のように未央は手を差し出した。

 そんな未央を見て、プロデューサーは今までのことは自分のためにやってくれたのだと悟る。ふっと微笑み、

「必ず無事に送り届けますよ、シンデレラ」

 なんて言って、未央の手を取り、歩き出す。

「……の前に、色々、戸締まりとか確認しないとな」

「……台無しだよ、プロデューサー」
494 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 00:26:59.59 ID:2RSVv31G0

――

 女子寮の前。

「それじゃ、未央。明日――じゃなかった。今日のライブに備えて、しっかり寝ろよ」

「うん。プロデューサーも、だよ?」

「わかってる。さすがにちゃんと寝るよ。……あと、未央」

「何?」

「明日、ライブの後……時間、あるか?」

「……ごはん?」

「察しがいいな。まあ、そういうことだ」

「んー……それって、予約とかしてる?」

「予約……は、してないが、まあ、心配しなくてもいい」

「……どういうこと?」

「さあ? どういうことだろうな」

 プロデューサーは明らかに何かを隠している様子だったが、問い詰めても何も出そうにない。

 ……まあ、いっか。プロデューサーとのごはんは、楽しみだし。

「とりあえず……おやすみ、未央」

「うん。おやすみおー」

「……おやすみお」

 お、乗っかってくれた。珍しい。

 そのまま未央は女子寮の中に入って、プロデューサーと別れた。

 ……今日はライブだ。

 緊張はあまりしていない。緊張で眠れない、なんてことはない。

 でも。

 ……めちゃくちゃ楽しみだから、それで眠れない、って可能性は、ちょっとあるかも。

 未央はそんなことを思った。



 ちなみに、それから30分もしない内に未央は寝た。


495 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 00:28:49.04 ID:2RSVv31G0
これにて今回は終了……ではありません!
続きます!
たぶん今夜20時くらい!

誕生日おめでとう、未央。

ありがとうございました。
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/01(木) 00:32:01.03 ID:nMXom57d0
乙ー
 
うん、今日未央の誕生日だから必ず来ると思ってたわ
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/01(木) 00:46:56.42 ID:ak2eE5eWo

誕生日おめでとう未央
未央と恋愛したいだけの人生だった…
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/01(木) 01:01:42.57 ID:lPxjDjPg0
乙! 未央誕生日おめでとう!
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/01(木) 01:30:09.92 ID:DOekaYrLo
乙です
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/01(木) 01:36:49.37 ID:RtPGCFQHo
誕生日おめでとう!!時間を合わせるところに愛を感じる
一旦乙です
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/01(木) 08:38:39.08 ID:lhK4MASto

未央おめでとう
502 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 20:00:18.88 ID:2RSVv31G0

――バースデーライブ終了後・控室

P「お疲れ、未央」

未央「お疲れー! すっごく、すっごく楽しかったよ、プロデューサー! みんなが私の誕生日を祝ってくれて……私、みんなにお返しできたかな?」

P「ああ。ファンも楽しそうだったし……それは近くで見ていた未央もわかっているだろう?」

未央「……うん。えへへ、ありがと、プロデューサー♪」

P「……それ、俺に言う言葉か?」

未央「ファンのみんなにはさっき言ったし……私もファンも、みんなでこんなに楽しいライブをできたのは、プロデューサーのおかげだからね」

P「スタッフさんがいたから、だけどな」

未央「それはプロデューサーも一緒に言ったし……もちろん、感謝してるけどね! あと、ごまかそうとしても無駄だよ? 私はプロデューサーにめちゃくちゃ感謝してるんだからね」エッヘン

P「偉そうに言うな」ペチン

未央「痛っ……むぅ。誕生日なんだから、もうちょっと優しくしてくれてもよくない?」

P「そんなに強く叩いてないだろ。優しくもしてる」

未央「えー。足りないよー」
503 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 20:08:27.47 ID:2RSVv31G0
P「足りない、って……何をすればいいんだよ」

未央「んー……あ! 今はたかれた頭が痛いから、さすってくれない?」

P「……女性の頭を撫でるのはデリカシーがないってならないか?」

未央「それは正しいけど、こういう状況ではむしろそうやって聞く方がダメだと思うよ?」

P「よくわからんな……」

未央「とにかく! 早く早く、撫でてみてよ!」

P「……」サスッサスッ

未央「……なんか、くすぐったい」

P「それは下手ってことか?」

未央「んー……どうなんだろう? 私も頭を撫でられることなんてないからなー……」

P「お兄さんとかには?」

未央「いや、兄妹でも撫でられるのとか嫌じゃない?」

P「……それ、お兄さんにはあんまり言わない方がいいぞ」

未央「? どうして?」

P「……まあ、いいか。で、俺はどうすればいい?」
504 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 20:15:23.29 ID:2RSVv31G0
未央「どうすれば……あ、それじゃあ、もうちょっと強く撫でてくれない?」

P「強く……って言うと、これくらいか?」ナデナデ

未央「おっ! お、おお……これは結構、いい感じかも……」

P「いい感じなのか……」

未央「なんか……髪を切る時とかに、シャンプーされるのが気持ちいい、みたいな……そんな感じ……」

P「あー……ってことは、もうちょっと力入れた方がいいか?」

未央「それは……どうだろ? ちょっと、やってみてくれる?」

P「ん」ガシガシ

未央「んっ!」

P「あ、さすがに強かったか」

未央「あ、でも、これはこれで気持ちいいかも……マッサージされてるみたい……」

P「……なんか、犬みたいだな」

未央「……それはさすがに失礼じゃない?」
505 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 20:23:37.74 ID:2RSVv31G0
P「いや、なんか、こうやってガシガシ撫でて気持ちよさそうにしてるのを見ると、かわいいな、と思ってな」

未央「かわいい……なら、よし」

P「誰だよ」

未央「にゃんみおー!」

P「なんで猫だよ。それなら『わんみお』じゃないか?」

未央「いやー、それはみくにゃんに悪いかなー、って。……しぶにゃんとか、また見たいなぁ」

P「頼んだら……無理か」

未央「あの時はやってくれたけど……うーん」

P「……あ」

未央「? どうしたの? プロデューサー」

P「……髪」

未央「……あ!」
506 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 20:37:43.23 ID:2RSVv31G0

――車の中

P「ごめんな、未央。髪、ぐちゃぐちゃにしちゃって」

未央「いいよ。そもそもは私から頼んだんだし。それで、どこ行くの?」

P「どこ、って?」

未央「ごはん、食べに行くんじゃないの? 未央ちゃん、それも楽しみにしてたんだけどなー」

P「あー……まあ、そうだな。そもそも、俺が言ったんだしな」

未央「そうだよー。もしかして忘れられてる? ってちょっと心配になっちゃったよ」

P「それは悪いな。本当に心配してたなら、だが」

未央「くっ! 本当はそこまで心配していなかったと見破られたか……! それで、どこに行くの?」

P「事務所だ」

未央「事務所……何か、用事?」

P「ああ。ちょっとな」

未央「ん、わかったよ、プロデューサー。それじゃあ、ごはん、楽しみにしてるね」

P「……まあ、楽しみにしてくれ」

507 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 20:43:00.24 ID:2RSVv31G0

――事務所

ガチャ

未央「ただいま――」


パンッ!


卯月「未央ちゃん!」

凛「誕生日」

「「「おめでとー!」」」


パンッ! パンッ! パンッ!


未央「……へ?」
508 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 20:51:32.96 ID:2RSVv31G0
藍子「その反応……サプライズ、成功したみたいですね」

茜「未央ちゃんになら絶対に気付かれると思っていましたが……プロデューサー! さすがです!」

P「はっはっは。そうだろ。褒めていいぞ」

茜「さすがです! すごいです! 神算鬼謀です!」

P「なんでいきなり難しい言葉……」

茜「以前の食レポ番組で文香ちゃんが言ってました!」

P「食レポ番組でそれ言う場面あるか!? ……いや、確かあったな……文香、混乱すると割りと変だからな……」

文香「……変、ですか?」

P「あっ、いたのか……」

文香「変……変、ですか……変……」

P「文香? ごめん、ごめんって。変じゃない。変じゃないぞー」
509 : ◆Tw7kfjMAJk [saga]:2016/12/01(木) 21:01:53.60 ID:2RSVv31G0
未央(……これ、って)

加蓮「未央、どうしたの? 早く来なよ」

美嘉「でも、未央が気付かないなんて意外だね。プロデューサーが未央を相手に隠しきれるなんて思わないんだけど……」

泰葉「そもそもそういう話題にならなかった、という可能性もありますけどね」

加蓮・美嘉「「あー……」」

泰葉「それで、未央ちゃん。どうかした?」

未央「……あ、やすやす。えっと、その、大丈夫だよ。ちょっと、びっくりしちゃって」

加蓮「……Pさんと二人きりでごはんだと思ってたのに残念、とか思ってたりして」

未央「そんなことないよ。いや、まあ、確かにプロデューサーと二人でごはんだとは思ってたけど……むしろ、みんなと一緒で嬉しいよ! 美嘉ねー、かれん、やすやす……大好きだー!」ダキッ

美嘉「ちょっ……もう。アタシたちも大好きだよ、未央」

未央「み、美嘉ねーからの告白……私、どう答えたらいいのかしら」

美嘉「そういう意味じゃないから! と言うか、先に言ったの未央でしょ!」

加蓮「美嘉ってば、こんなところで告白だなんて大胆だね」

泰葉「本当に……びっくりしてしまいました」

美嘉「泰葉ちゃんまで……なんでいきなりそんな流れになるのー!」
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