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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/12/23(水) 20:37:13.93 ID:Xae/YECko
放課後になっても気持ちは少しも落ちつかなかった。有希の怒りとそれに対する俺の反
発のせいだ。有希が麻衣のことを大切に思っているにしても今朝の俺への苦言や怒りは行
き過ぎている。昼休に二見の手作りの弁当を二人きりで食うという思いがけないイベント
のせいで、俺の気持ちはややおさまったのだけど、やはり午後の時間に考えれば考えるほ
ど納得がいかない。突き詰めてみれば簡単だった。有希が俺と二見の関係に嫉妬したとい
うのなら、俺にも納得できる。というか、嬉しいという感情さえ持てる。でも、そうじゃ
ないことは明らかで、そうではない以上、俺と二見の間柄を有希にとやかく言われるいわ
れはない。たとえ、有希が麻衣のことを気にかけていたにしても、やはりそれは、俺と麻
衣だけの問題なのだ。
今までもそうだったとおり、有希は夕也のことだけを心配していればいいのだ。好きで
もない、付き合う気もない俺になんか干渉する必要も権利もない。要はそういうことだろ
う。
今日という今日は本気で怒ったからな。麻衣にも有希にも。俺は思った。よく考えれば、
俺は今日は金を持ってきていなかったのだ。夕也に頼めば昼飯代くらい貸してくれただろ
うけど、あいつは職員室に呼び出されていた。つまり、偶然二見が作り過ぎたっていう弁
当を分けてくれたからよかったけど、下手したら昼飯抜きになるところだったのだ。自分
だけ昼飯がないなんていう、腹が減るうえに屈辱的な経験をさせられるところだった。そ
れも有希と麻衣がしでかしたことのせいで。
よし決めた。今日は昼に麻衣とは会えなかったから放課後の約束もしていない。勝手に
帰ってしまおう。あと帰ったらカップヌードルで夕飯も済ませよう。こんな思いまでさせ
られて、妹の飯なんか食うもんか。
麻衣に会う前に帰ろうと思い立ち、席を立った俺に有希が近寄ってきた。
「ちょっといい?」
今さら何だよ。こいつは自分のしたことを反省すらしている様子がない。そんなやつの
相手をする理由はない。俺は有希を無視して教室の出口に向かった。
「え・・・・・・ちょっと麻人」
背後からうろたえたような有希の声がした。
「おい、有希がおまえを呼んでるって」
夕也が間に入って言った。こいつには悪いけど、有希に妥協する要素は何一つない。
「俺、今日はもう帰るから」
「麻人、ちょっと話が」
「おい、ちょっと待てよ」
「また明日な、夕也」
俺は有希の方を見ずに夕也にだけ別れを告げた。教室から廊下に出たとき、既に廊下に
出ていたらしい二見が俺を見た。
「池山君さよなら」
「え? ああ、二見。またな。つうかお昼ありがとな」
「別にいいよ。また食べてくれる?」
「おお。作りすぎちゃった時はいつでも声かけてよ」
「うん、そうする。じゃあね」
「おう、またな」
俺が二見に軽く手を振ってきびすを返したとき、有希が泣きそうな顔で俯いた姿が目の
端に映った。今さら反省でもしたのか。
「有希? どうかした?」
夕也が聞いた。有希はそれには答えなかったようだ。
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