女神

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450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 23:23:57.05 ID:Ww3oqi+ko

「多分、それ唯の作り話だよ」

 あの唯の性格なら、このくらいのことはやりかねない。

「おまえ、石井先輩の卒業旅行のこと、本人にもクラスの人たちにも確かめてないんだ
ろ」

「それは。うん」

「唯のことだ。おまえにはそういう話をして、石井先輩にはおまえが先輩のことなんか何
も考えずに転校しちゃったとか言ったんだろ。どうせ」

 優はすぐに話を飲み込んだみたいだった。恋は盲目というけど、こんな単純な話に気づ
かないなんて、彼女らしくない。先輩だって同じだ。おそらく二人とも人一倍洞察力はあ
るのに、好きな相手のことになると、それが働かなかったのかもしれない。

「確かめてみろよ。今でも好きなんだろ」

「無理。先輩の携帯とか知らないし」

 付き合っていたのになぜだ。

「じゃあ、俺が前の学校の友だちに聞いてやるよ。一人くらいは知ってるやるがいるだ
ろ」

「いい」

「何でだよ」

「もっと早く気がついていればお願いしたかもしれないけど、今じゃあもう無理」

「だから、何でだよ。今でも好きなんだろ、石井先輩のこと」

「好きだけど、もう無理なの」

「さっきから何言ってる。理由を言えって言ってるんだろ」

 人の恋愛のことなんかどうでもいいが、唯が原因で別れたのなら、そこは修復したい。
唯のためにも。

「あのさ。唯って俺の知り合いの姉妹の妹でさ。そいつがこんなことをしたのなら、俺に
も手伝わせてほしいんだ。それに、唯と先輩は付き合ってないよ。そこを心配しているの
なら」

 唯は振られたと姉さんは言ったのだ。

「そういうことじゃなくてね」

 優は少しためらった。

「今のあたしは彼にふさわしくないから」

 援交でもしているのか。いや、こいつに限ってそんな。

 彼女は少し沈黙した後、不思議なことを言った。

「だって、あたし。女神だから」
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 23:24:27.06 ID:Ww3oqi+ko

今日は以上です
ま、た投下します
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/03(土) 19:17:56.10 ID:kQ4BPXEno
お、つ
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 23:56:37.18 ID:mEsaNNkyo

 魅了されるというのとは少し違うとけど、確かにこの時の俺は優のことが気になって
いた。恋愛的な意味じゃないと思うけど、同級生の女の子が気になるというのはそういう
ことだと、一般的には思われるのかもしれない。だから、俺は姉さんには優が転校してき
たこと、優と親しく過ごしていることは話さなかった。当時、あの東北の高校のやつらは
俺と優の仲を疑ったかもしれない。俺も優も、結構同級生や先輩、後輩から告られたのだ
けど、二人ともそれには全拒否の姿勢で臨んだ。俺には、姉さんがいたからだけど、優は
何でなのか。気に入った男がいなかったのか。それとも、まだ石井会長のことを引きずっ
ていたからか。さすがにそれは俺にもわからなかった。優に聞くことでもないし。

 それにしても女神って?
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 23:57:30.64 ID:mEsaNNkyo

 丘の上にある社宅になっているマンションを出ると、下に広がっている盆地が見える。
梅雨の朝に見るその光景は灰色にかすんでいて、それは、まるで美術で習った中国の山水
画のようだ。もちろん、見えるのは地方の県庁所在地の中途半端なビル街なんだけど、俺
は結構その景色が好きだった。

 好きだったけど、一人でその景色の中を歩くよりは、連れがいた方が楽しい。だから、
その頃は、学校まで四十分。その間を退屈だと思ったことはなかった。姉さんには言えな
いけど、あいつと一緒に登校していたから。

 女神とか言い出した翌日も俺は優と二人で、梅雨の下で登校した。

 クラスでからかわれるほどいつも一緒に登校していたといっても、実際はほとんど会話
は成り立っていなかった。最初に電車と会った日は別として、優はいつも自分のスマホを
眺めていて、俺が話を振っても生返事だった。楽しいといっても、さすがにこれだけつま
らなそうに無視されるといろいろな感情が湧き出してくる。

 別にこいつに好意を持たれようと努力する気なんかない。俺には姉さんがいたし、それ
はおいておくとしても、言い寄ってくる女は学校にいたわけだし、別に優に好意を求めよ
うとは思わなかった。

 それでも疑問は残る。俺と話す気がないなら何で毎朝俺と一緒に登校するのだ。ぼっち
が好きなら一人で登校したっていいじゃないか。こいつはそういうことに耐性がありそう
だし。

 別に優に好意を持ち始めたわけじゃないけど、毎朝俺の話を無視されると少しむっとし
た。こんなことなら一人で登校したっていいわけだし、とりあえず告られるほどじゃない
けど、俺に好意を抱いているとしか思えない女だって近所にいる。そいつと一緒に登校し
たっていい。なのに何で俺はこんな不愛想な女と一緒にいるのだ。可愛いことは認めるけ
ど、そんな女はほかにもいる。もっと愛想のいい女の子が。これが姉さんに内緒にしてま
で俺がしいたことか? 自分がなにをしたのか、この頃の俺はわからなくなっていた。

 こうなるともう意地のようなもので、あるいは俺に振り向かない女は許さないという俺
の病気のようなものだった。別に関心もないのに、俺は優に俺の方を振り向かせようと思
ったのだ。
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 23:58:21.96 ID:mEsaNNkyo

]うなものだ。

「なあ」

 無視。スマホをのぞき込んでいる。

「・・・・・・俺の話ってつまんねえ?」

「別に。何で?」

「何かつまらなそうだしさ、おまえ。無理に俺と一緒に登校してくれなくてもいいのに」

「何で? 一緒にいてくれて感謝してるよ。私、ぼっちだし」

「いや、それならいいんだけどさ。おまえ、いつもつまらなそうにスマホ見てるしさ」

「ごめん。それ、もう癖になってるのかも。気をつけるよ」

 そこまでこいつに言われるほど、俺はまだこいつと親しくしてない。

「別に謝ってもらうことじゃねえけど」

 まだってなんだ。俺はこいつの彼氏に、こいつと付き合いたいわけじゃないのに。それ
なのに、何でこいつの関心をひきたいんだろう。何で、こいつに俺を見てほしいんだろう。
もういいや。自分に正直になろう。姉さんのことはまた別だ。お互いに滅多に会えない環
境にいるんだし、目の前にいるのは、二見 優。こいつだけなんだから。

「まあいいや。おまえと一緒にいると楽しいし。もうそんだけでもいいかな」

「わけわかんない」

「好きな女の子と一緒に登校できるだけで結構嬉しいってこと」

「君も転校前に好きな人いたんじゃなかたっけ」

「でも、もう滅多に会えないしね」

「・・・・・・適当だなあ」

「おまえはどうなの?」

「うん?」

「まだ石井会長のこと好きなわけ?」

「どうだろ。前にも言ったけど、私はもうそんな資格はないから」

「女神とかっていうやつ?」

「そうそう」

「わけわかんね」

「わかんなくていいよ。君に言うつもりはないし」

「だったらそういう話しなきゃいいんじゃん」

「あはは。それもそうか」
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/12(火) 23:59:52.65 ID:mEsaNNkyo

 それから彼女は、以前よりはスマホに目を落とさずに、俺の話を聞いてくれるようにな
った。というか、自分語りまでしてくれるようになったけど、それは結構悲しい話だった。

「自分に興味を持ってもらえてさ、私の話を聞きたいって言ってもらったことがないんだ
よね。石井先輩と会うまでは」

「俺は、結構お前の話聞くのが好きだぜ」

「ありがとう」

 この冷徹女が少しだけ顔を赤くした。

「いや、マジで。石井先輩ほどかどうかはわからないけど」

「石井先輩はさ」

「何?」

「まあ、いいや」

「唯のことなら気にするなって言ったろ。あれはあいつの暴走だし」

「違うって。もうその話はいいよ」

「まあ、おまえがいいならそれでいいけどさ」

「うん。それはもういいの。大丈夫だから」

「そんならいいけど」

 本当に大丈夫かどうかはわからないけど、そう言うよりなかったのだ。

 本当のところどうなのか、彼女の胸の内はわからないけど、この頃になると俺も自分の
気持ちに気がつき始めていた。まじでこいつのことが、二見のことが気になっているのだ。
こいつのことが好きなのだ。多分、俺は。といっても姉さんのことがどうでもいいわけじ
ゃない。ただ、姉さんはそばにいないけど、優は毎日一緒に登校してくれる。自分でもた
ちが悪いと思うけど、素直に考えれば、俺は自分のそばにいてくれる女の子、それもきれ
いな女の子である優を好きになっていたのだろう。
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/13(水) 00:01:31.23 ID:yJtoOnGFo

 「浮気するなよ」

 姉さんからのメールはこういう出だしだった。

 やばい。

「冗談だよ。夕也のことは信じてるから」

 胸が痛む。

「大好きだよ、夕也」


罪悪感とか少し胸が切ない気もするけど、もともと俺は自分でも認めるくらいの浮気性
だ。目の前に、身近なところにこれだけ可愛い、そして謎めいた女がいたら、これはもう
行くしかないだろう。

 でも、優が何を考えているのかはわからなかった。文句を言ってからは、前よりもスマ
ホでなく俺に向き合ってくれていたとは思うけど、俺のことが異性として好きなのかどう
かはわからなかった。

「おまえら仲いいよな」

「二見さんって美少女だもんな。さすがは夕也。おまえならあの子とお似合いだよな。悔
しいけどよ」

 そうじゃないのだ。俺はまだ優に意識されていない。何とかしなきゃいけない。いや、
姉さんのことを考えれば、優に意識されては困るのだけど。それでも俺は優に意識されよ
うに頑張った、いったい何がしたいんだ、俺は。

 これはもう単なる恋愛じゃない。これは心理戦だった。

 俺も含めて誰でもそういう経験はあるだろう。ちょっと冷たくしたり、優しくしたり。
そういう駆け引きには俺は慣れていたはずだった。言い寄ってくる女の子を振り回すあの
感覚。でも今までのそれは自分が優位に立っていた場合の心理戦だった。悔しいけど今は
違う。今の関係では俺の方が優の下位に立っている。それは優の心が読めないからだ。俺
のことが好きかどうかは重要な情報だけど、それだけではない。石井先輩のこととか、な
んでわざわざぼっちを選ぶのとか、女神とかいうこととか、俺には優の気持ちが全く読め
ないのだ。そんな面倒くさい女に引っかかっている場合かという気もしたけど、俺にはそ
のとき、何ていうか意地のような感情があったのだ。こういう難しい女を俺を好きにさせ
依存させたいという。そこに山があるからだとはよく言った物だと思う。
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/13(水) 00:02:24.15 ID:yJtoOnGFo

 一度そういう意識になると、もう俺には優しか見えなくなった。あれだけ、昔から好き
だった姉さんを裏切っているという意識さえ遠のいていくほどに。

「何か難しい顔をしてるね」

「難しい顔ってなんだよ」

「何か悩みでもあるんですか。聞いてあげようか」

 ふざけるな。悩みの原因はおまえだ。

「君って最近、何か元気ないしさ。ちゃんとご飯食べてる?」

「うるせーよ。食ってるよ」

「私さ、人の悩み聞くの得意なんだよ」

 そう優は言った。

「意味わかんね。カウンセラーみないなの?」

「まあ、そんな感じ。別にプロってわけじゃないけど」

 そうなのかもしれないけど、俺がおまえに抱いている感情とか相談できるわけないじゃ
んか。そういうわけで、俺の感情面とフラストレーションは、優び相談することはなかっ
たのだ。

「変なの」

 優はそう言った。

 俺は珍しく勇気をふり絞った。

「おまえが、優のことが好きなんだよ。それが悪いことかよ」

 優は少しだけ、俺の顔を見て、すぐに視線を逸らした。

「ごめん」

「ひょっとして俺って、振られたの?」

「・・・・・・ごめん」

「ふざけんなよ。ごめんじゃねえだろ」

 女の子に振られ経験がないわけじゃないけど、これほど喪失感を感じたのはこれが最初
だった。

「ごめん」

「いや。俺の方こそごめん」

 これでは謝りあっているだけだ。何も話が進まない。

「あのさ。はっきり聞くけど」

「うん」

「石井先輩のことが気にならないならさ。おまえ」

「うん」

「今は好きなやつとか気になるやつとかいるの?」
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/13(水) 00:03:31.59 ID:yJtoOnGFo
また投下します
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/17(日) 08:09:27.81 ID:V72KQAQx0
おつつ
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/01(日) 19:11:26.77 ID:hQFGGy4v0
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 10:49:38.35 ID:zbOSzJXno
気長に待ってる
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/13(水) 12:41:15.52 ID:OZsu1bjK0
【最悪のSS作者】ゴンベッサこと先原直樹、ついに謝罪
http://i.imgur.com/Kx4KYDR.jpg

あの痛いSSコピペ「で、無視...と。」の作者。

2013年、人気ss「涼宮ハルヒの微笑」の作者を詐称し、
売名を目論むも炎上。一言の謝罪もない、そのあまりに身勝手なナルシズムに
パー速、2chにヲチを立てられるにいたる。

以来、ヲチに逆恨みを起こし、2018年に至るまでの5年間、ヲチスレを毎日監視。

自分はヲチスレで自演などしていない、別人だ、などとしつこく粘着を続けてきたが、
その過程でヲチに顔写真を押さえられ、自演も暴かれ続け、晒し者にされた挙句、
とうとう謝罪に追い込まれた→ http://www65.atwiki.jp/utagyaku/

2011年に女子大生を手錠で監禁する事件を引き起こし、
警察により逮捕されていたことが判明している。
464 :ねむ :2018/07/03(火) 01:11:41.26 ID:MupNRFff0
まじでもう書かないわけ?
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/09(木) 12:42:36.32 ID:V+tj9mfaO
さすがに終わったな
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/03/16(土) 22:18:13.65 ID:1Vss8Pwx0
まだ待つわ
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/07/06(土) 15:25:26.90 ID:FTlql2AiO
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/30(月) 08:18:36.60 ID:crSPBa48o
久しぶりに思いだして来たら現行スレが残ってるとは
この人の文好きだったけどこんだけ空いちゃもう無理かな
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