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末妹「赤いバラの花が一輪ほしいわ、お父さん」(最終章と後日譚)
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657 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/12/01(日) 19:15:43.48 ID:C6t/czIb0
商人「もう馬の世話は済んだのかい?」
末妹「ええ、ブラシも掛けたし、ご飯も」
馬「ひひひひんぶるひひひん(どうですこの毛艶)」
商人「そうか、では私達もそろそろ朝ご飯の時間だな」
商人「さあ馬よ、今日は取引先のお宅に行くからな、また後で」
馬「ひーひひひん(まーかせて)」
末妹「……あら?」
商人「どうかしたのかい?」
末妹「お父さんの上着の懐に……さっきまではなかったと思うけど……」
商人「本当だ、なんだろう……封筒?」ピラ
商人「……驚いた、差出人は師匠様だよ」
末妹「それじゃあ……魔法でたったいま届いたのね!?」
商人「しかし、きのう話をしたばかりじゃないか……何か緊急で知らせたいことでも起きたのかな」ガサガサ
商人「……」
末妹「師匠様、なんて?」
商人「……悪い知らせではない、安心おし」
末妹「そうなんだ、よかった」ホッ
商人「内容については……少しこちらにも考える時間が必要みたいだな」
末妹「?」
商人「お前達にもいずれ話をするよ、今は私ひとりに預からせてくれ」
末妹「……わかったわ、大人と大人のお話、なのね……」
商人「ああ、大人同士の話だよ」
商人(どっちかと言えば、親同士の話……かな)
…………
658 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2019/12/01(日) 19:18:44.76 ID:C6t/czIb0
※さすがにご無沙汰しまくったので…すみませんでした※
659 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/12/02(月) 17:44:11.98 ID:lm6G66nF0
乙
年内の更新があるとは思わなかったから嬉しい
660 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/12/03(火) 02:14:27.37 ID:n8V9wPdqO
出遅れた乙
師匠の手厚い進路指導
661 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/08(土) 20:02:15.71 ID:rnYB6Vfl0
ほんまに完結するんやろか
662 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/02/16(日) 20:59:18.25 ID:BgmEBtxm0
商人の自室。
商人「うーむ」
商人「菫花くんはいい子だし、次兄や末妹の友達だし」
商人「何より彼の生い立ちを考えると、これからは自分の心の赴くまま生きて欲しいし」
商人「……かと言って」
商人「私の伝手で菓子職人や料理人を紹介すると言うのもどうかなあと……」
商人「いや、できるよ、紹介だけならできるよ、普通に腕も人柄も信用できる人物を」
商人「でもね」
商人「人には向き不向きというものがあるんだ、努力で克服することは不可能な類の」
商人「菫花くんが修行について行けるかも心配だが」
商人「彼を教える側に求められる寛容と忍耐は菓子職人や料理人に求められる範疇を超えているだろうなあ、と……」
商人「……」
商人「師匠様は、返事は急がないと手紙に書いていた」
商人「短慮に結論は出さずに、もう少しゆっくり考えてみよう」
商人「いずれうちの子供達の知恵も借りる可能性もあるかもしれんが、今はまだ私の胸だけに」
商人「……さて、そろそろ出掛ける時間だ……帰る時間を考えると、昼は久しぶりに外食でもするか」
……
663 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/02/16(日) 21:01:29.24 ID:BgmEBtxm0
南の港町、安宿。
従業員「お茶っす」カチャ
商人「ありがとうございます」ニコ
主人「こら従業員、言葉遣い」
主人「……まさかこんなに早く良いお返事をいただけるとは思いませんでした」
主人「本当にありがとうございます、商人さん!!」
商人「いやあ、ありがとうはこちらのセリフですよ」
商人「新しい試みとして、小規模な正式契約を結んでくださる取引先を私も探していましたから」
商人「お宅の宿は、もう3年も前からあの石鹸を買ってくださっているのですからね」
商人「これからは私も確実に品物をお届けできるようなりますし」
商人「おまけに鍋の磨き粉もうちと契約してくださるとは」
主人「ははは……お恥ずかしい話、今までこの町でその時々で一番安い磨き粉を使っていたのですが」
主人「先月、ひどい粗悪品に当たりましてねえ……鍋の焦げは落ちもしないのに従業員の手ばかり荒れてしまって……」
従業員「痛かったっす……」ポツリ
主人「俺……私は皮膚が強いので平気だったから、一晩かけてそいつで磨いたのですが、少しも鍋はきれいにならず」
商人「ああ、奥様の手が……それはひどい話ですね」
従業員「……!! 奥様、奥様っすか!? あたし『奥様』なんて呼ばれたの初めてっすーーー!!!!」ピョンピョン
主人「こ、こら、はしゃぐな、お客様の前で……」
商人「若い方は元気なのが一番ですよ」
商人(こうして見てるとほんとに親子みたいだが、10歳くらいしか離れていない夫婦なんだよなあ)
664 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/02/16(日) 21:04:36.26 ID:BgmEBtxm0
主人「とにかく、平凡な家庭料理しか出せないとは言え、宿には食事も大切ですからね」
主人「大事な食事を作る大事な鍋は大事に使いたいわけですよ」
主人「安物買いの銭失いになるくらいなら、多少値は張っても信頼できる品質のものを使いたい」
主人「と、考え方を変えたわけです」
商人「ええ、ええ、わかります……」
商人「人間は守りたいものができると、常に目先の効率だけを考えるのは必ずしも得策ではない、と思うようになります」
主人「守りたいもの……」チラ
従業員「……」ポッ
主人「な、何を赤くなってる!?」
従業員「お、おやっさんこそ、なんでこっち見たんすか!?」
商人「」
商人「えー、コホン……」
主人「」ハッ
主人「す、すみませんでした、見苦しい所を……そ、そうだ、もうすぐお昼になりますが」
主人「商人さん、お昼ご飯はお家に戻られて摂られますか?」
商人「え? うちの者には外食して来ると伝えていますが、何か?」
主人「あの、もしもよろしかったらですが、うちで食べて行きませんか? もちろんお代はいただきません」
主人「さっき申し上げた通り、平凡な家庭料理なので、商人さんのお口には合わないかもしれませんが……」
商人「え、私には嬉しいお話しですが……宿のお客様は……」
665 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/02/16(日) 21:09:09.28 ID:BgmEBtxm0
主人「いやあ、実は連泊の3人連れのお客が昼はここで食べる予定だったのですが……」
従業員「商人さんがお見えになるちょっと前に、急用だとかで帰っちまったっす」
主人「船の時間に間に合わない、と、大慌てでした」
従業員「もう出来上がっていたのに……」ショボン
商人「そ、そういうことでしたら……ありがたく」
……
商人「これはうまい……ご主人は謙遜されていますけど、すばらしい料理の腕をお持ちで」
主人「そ、そんな、舌の肥えておられる商人さんに」
従業員「普通には美味しいっすけど……あたしはもうちょっと香辛料と酸味を効かせた方がいいと、いつも思ってるっす」
主人「いつも言ってるがお前の味覚を基準にするなと」
商人「いやいや、実に心安らぐ味です……ご主人はどこで料理の修行をされたのですか?」
主人「いやー、おr……私の料理は母親の直伝でして……」
商人「親御さん……確か、この宿を以前に経営されていたのはご主人と違う苗字でしたね?」
主人「ええ、この宿は父親の親友から譲り受けたものです、私ゃ農家の四男坊ですから、母親も普通の農民です」
商人「母親直伝……普通の農民……」
商人「…………」
商人「それです!! それですよ!! ありがとうご主人!!」
主人&従業員「「はい?」」
商人「そうだよ、『家庭料理を振る舞う職業』だって成り立つんだ……!!」
……
666 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/02/16(日) 21:09:36.73 ID:BgmEBtxm0
※本当ごめんなさい、あと兄妹達も野獣サイドも出て来ない地味回ですみません※
667 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/17(月) 01:04:08.31 ID:WTb8ZoMtO
乙ですいつまでも待ちますよ
宿屋夫婦も可愛くて好き
668 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/06/21(日) 22:31:03.01 ID:5S1oSgum0
その夜、商人の自室。
商人「しっかり封をしてと……師匠様の手紙に返信方法が書かれていたっけ」
商人「同封されていた、魔法陣だっけか、これが描かれた紙を広げて……」ガサガサ
商人「真ん中に返事の手紙を置く」カサ
商人「おっと、封筒の裏側……私の署名を魔法陣に触れさせるのだった」クル
商人「で、真上からは覗き込まないようにせよと……少し離れるか」スッ
商人「……」
魔法陣:チカッ
商人「お、光った」
商人「小さなランプ程度のまぶしさだな……しかし見慣れた炎の色ではなく青白く輝いている」
商人「……魔法陣が光と共に手紙を中心部に吸い込んで行く……魔法陣そのものも消えた、ただの白い紙に……」
商人「……」
商人「私は、大概の人が一生かかっても出会わないような体験をしてしまったのでは?」
商人「珍しい体験……」
商人「……今更か」
商人「野獣に出会った時から続く数々の不思議な出来事より、それをあっさり受け入れている自分に驚くよ」
商人「さて、師匠様と菫花君、そして野獣、私の意見をどう捉えてくれるかな」
……
669 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/06/21(日) 22:34:40.66 ID:5S1oSgum0
※話は進まなくて繋ぎの回です…このところ色々思うことあって書けませんでしたが、これから復帰します※
670 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/22(月) 02:29:20.31 ID:4JrRoX2gO
乙
コロってたんじゃなくて良かった!!
671 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 17:47:47.97 ID:gg7oyO++0
復帰とは……
672 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/09/22(火) 23:44:45.52 ID:EY908xQe0
野獣の屋敷、師匠の自室。
魔法陣:ぽわーん……
封筒:パサッ
師匠「おう、商人殿からの返事か」
師匠「ずいぶん早く書いてくれたのだな、どれどれ」ガサガサ
師匠「ふむ……」
師匠「……なるほどな」
師匠「儂もあの宿には世話になったし、いかにも家庭料理な食事は確かに美味かったが」
師匠「ここまでは考えが及ばなかった、さすがは商人殿」
師匠「『かと言って、南の港町の宿とは立地条件が違うので』……ふむふむ」
師匠「『都会から田舎へ避暑や保養に来る人々』を相手にした商売……か」
師匠「森に一番近い村は、国境にも近いせいもあり、意外と旅人が訪れる」
師匠「商人殿はそこに目を付けたようだな」
師匠「商人殿の直接の知人はいないが、伝手が全くないわけではない、店舗や協力者を探してくださる……と」
師匠「ありがたい申し出だ」
673 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/24(木) 02:29:10.16 ID:wBXCkvQxO
乙です
674 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2020/11/25(水) 00:10:51.30 ID:zLtAHv7w0
…………
数日後……
家政婦「旦那様、こちらは携行食です、あと防寒具はこちらに」
商人「ありがとう家政婦さん」
商人「では、留守を頼むぞ長兄」
長兄「ああ、父さんも気を付けて……馬を連れて来るよ」
次姉「向こうは寒いから、風邪ひかないようにね」
長姉「それにしても……末妹は学校に行く前に挨拶を済ませたから良いものを」
長姉「お父さんの久しぶりの長旅だってのに、次兄ってば寝坊なんかして」
商人「はは……昨日あいつは末妹の学校へ行って、特別にお願いしていた模擬試験を受けさせてもらったんだ」
商人「次兄には10年ぶり……いや、あの時は教室にも入れず終わったから……実質初めての通学」
商人「相当疲れてしまったんだろう、ゆっくり寝かせてやろう」
長姉「私達も教わった先生達もいるのよ、学校で恥ずかしい真似しなかったでしょうね」
商人「先生のお話しでは、試験は真面目に取り組んでいたそうだよ」
商人「同じ校舎で授業を受ける末妹に恥をかかせる真似はしないさ」
次姉「半日緊張しっぱなし……か、そりゃ次兄なら疲れるわ」
長姉「美術学校に合格したら毎日通わなきゃならないのに、先が思いやられるったら」
長姉「ま、それはともかく……本当に気を付けてねお父さん」
675 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2020/11/25(水) 00:11:45.81 ID:zLtAHv7w0
商人「ふう……大袈裟だな、長旅とか」
商人「西端都市の用事を済ませたら、北の国境近くの村へ立ち寄って、あとはまっすぐ帰るよ」
次姉「今回は西端都市の用事が大変なんでしょ?」
次姉「商談が済んだら、親戚おじさま達と……」
商人「彼等に戦いを挑むわけじゃない、敵陣とか言う次兄に呆れていたのは次姉だろう?」
商人「親戚1さんも上手に取り持ってくれるさ」
次兄「でもあの人、いまいち頼りないような……」
商人「いいや信用できる人だよ、お互い過去を清算し今後のために有意義な話し合いになる……してみせる」
商人「って、いたのかい次兄!?」
長姉「いつの間に起きて来たのよ!?」
次姉「心臓に悪いから気配消さないでくれる!?」
馬「ぶるるひん(おはよう)……」カッポカッポ
長兄「やあ、自力で起きたのか次兄……なんで長姉と次姉は恐い顔しているんだ?」ガシャ
家政婦「(馬車に馬を繋ぐ)お手伝いいたします」ササッ
長兄「あ、ありがとう家政婦さん」ガチャガチャ…
次兄(ほほう共同作業ですな)
商人「二人ともありがとう……よろしく頼むよ愛馬」ポン
馬「ぶひひひひん(こちらこそ)」
676 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2020/11/25(水) 00:12:31.73 ID:zLtAHv7w0
……
次姉「……行ったわね、とりあえずお天気が良くてよかった」
長姉「それにしても……北の国境近くの村での用事って、何なのかしら」
次姉「仕事と全く無関係でもないけど個人的な用って言ってたわ」
長兄「なんだお前も詳しくは知らないのか」
次姉「あら……兄さんも知らないの?」
次兄「俺も知らないよ」
長姉「あんたが知ってるとは誰も思わないわ」
次兄「ですよねえ」
……
町の学校……休み時間
わいわいがやがや……
末妹(お父さんもう出発したかな……)
末妹(北の国境近くの村って、野獣様のお屋敷……あの森に一番近い村よね)
末妹(お父さんが言うには、師匠様からのお手紙に関係した用事……だって)
末妹(いずれ私達みんなに話すから、師匠様のご意向もあるので、とりあえず手紙がきた事も黙っててくれ……とも)
末妹(師匠様のお考えなら、お屋敷の誰かに関係あることだろうなあ)
友2「末妹ちゃん、何ぼーっとしてるの?」
末妹「あ」ハッ
友1「考え事してたんでしょ?」
友3「えへ……さっきの問題の答え、どうしてこうなるのか教えてくれる?」コソコソ
末妹「さっきの問題ね、えーと……」
……
677 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/11/25(水) 00:13:55.39 ID:zLtAHv7w0
※忘れてはいません…すみません。間が空いてしまったので読み返し思い出しながら書いています…※
678 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/25(水) 02:49:44.91 ID:PN2zQ4FqO
乙
久しぶりの次兄と末妹ちゃんウレシイ…
679 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/04/13(火) 18:43:28.84 ID:ZD8iegGRO
やっと復旧したか…とりあえず保守
680 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/11/25(木) 03:06:32.49 ID:JpTEDRvzO
ただただ悲しい
駆け足になるとしても1スレで終わってたら良かったのかな…
681 :
◆54DIlPdu2E
[sage]:2022/11/20(日) 22:37:31.54 ID:ma7kUVb00
2年も放置して本当にすみません
近いうちなんとかします
682 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/19(月) 17:37:43.17 ID:JUL2TufY0
はい
683 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/19(月) 18:11:58.23 ID:nV0VJ+tE0
はい
684 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/31(土) 21:36:32.31 ID:HOhWDrlh0
全然再開しなくて草
685 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2023/01/09(月) 18:02:12.20 ID:98/S2SPl0
…………
さらに数日後、北の国境近くの村……
商人「……というわけで、旅行者が旅先でお茶の時間を楽しむのも悪くないと思うのですよ」
商人「隣国や北辺都市への通過地点として一泊するだけではなく」
商人「この村やその周辺、そのものを目的にする旅行者が増えるかも」
村長「ふむ……しかし、この村の宿兼酒場の規模では、お茶の時間に飲食を提供できる余裕まではありません」
村長「商人さんもご覧になったでしょう?」
商人「はい、村長さんの妹さん夫婦が経営しておられる、村唯一の宿ですね」
村長「昨年、北部街道の整備が終わってから村を訪れる旅行者も急増し、忙しいと日々ぼやいております」
村長「まあ嬉しい悲鳴なので、贅沢な悩みですが……」
商人「ですから妹さん達のご負担を増やさないように」
商人「カフェの切り盛りはこちらの紳士とそのご家族が一切引き受け、売り上げから村へ建物と土地の借用代を支払う形になります」
師匠「ええ、この儂が経営者となります」
村長「酒場の裏の空き家……あのボロ家に家賃が発生するとは有り難い限りです」
村長「しかし、美しい店に改装したとて、提供する軽食、お菓子、お茶がどのようなものか……」
商人「百聞は一見に如かずです」
商人「こちらに試食を用意しております……師匠様」
686 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2023/01/09(月) 18:03:24.73 ID:98/S2SPl0
師匠「うむ、村長殿、こちらのクッキーとブリオッシュを……いずれも儂の『家族』が今朝焼き上げたものです」
村長「ほう、見た目は非常に美味しそうですな」
師匠「あと紅茶を……少々お待ちください」
師匠(商人殿、村長殿の意識を10秒ほど儂から逸らしていただけますかな?)ヒソヒソ
商人(え、10秒? や、やってみましょう)
村長「……」サクサク
村長「……これは美味い!?」
商人「でしょう、絶品ですよね!!」
商人(アナグマの料理長さんのクッキーはね)
村長「この軽やかな歯ざわり、ほどよい甘みと鼻に抜ける良質なバターの香り、そして表面にあしらわれたサクランボの砂糖漬けの甘酸っぱさがアクセントとなり……」
商人「村長さん?」
村長「芸術……クッキーの芸術品と呼んでも過言ではない、ブリオッシュはどうだ?」パク
村長「……お、おお、おお」モグモグ
商人「あ、あのー……」
村長「新鮮な牛乳と卵を練り込んでいるな、それに、この天使の羽根のようにふんわりとした焼き上がりの中にも、力強い生地の存在感を感じる……」
村長「発酵時間と焼き上がりの見極めが絶妙なのであろう、これぞ達人の仕事……」
商人「……えーと」
687 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2023/01/09(月) 18:04:02.45 ID:98/S2SPl0
師匠(商人が気を逸らさんでも見つかることなく瞬間移動で屋敷に行って戻って来れた)
師匠「さあ、淹れたての紅茶をどうぞ」カチャ
村長「む? 茶器セットや熱湯を持参していたようには見えなかったが……いい香りだ」ズー
村長「ほ、ほおおおおおおおおお……」カタカタカタカタ
商人(いかん、また別世界に飛び立ちかけている)
商人「ねっ村長さん、お茶も美味しいでしょ!?」
村長「ハッ」
村長「そ、そうですね……茶葉と水も良質だろうが、よほど上手に淹れなければここまでその良質さを引き出せないでしょう……」
師匠(ウサギのメイドが淹れたとは思いもよらんだろうがな)
村長「このすばらしいお茶やお菓子を提供し続けることができるとして……」
村長「こんな田舎の村に、昼下がりから夕方までの短時間限定の開店では勿体ないほどですよ」
村長「逆に、限定だからこそ品質を維持できるのかもしれませんが」
村長「よろしい、開店の許可を出しましょう」
商人「あ、ありがとうございます!!」
村長「むしろこちらからぜひにとお願いしたいくらいです」
村長「その……旅行者の少ない時は、村の者が立ち寄っても構わなければ」
商人「師匠様」
師匠「もちろんです、どなたにでも楽しんでいただける店を目指しますとも」
師匠(……さて、建物と売り物は準備万端)
師匠(あとは店員、か)
……
688 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/01/12(木) 22:29:01.75 ID:hcWTnrbW0
乙
腹減る飯テロ
689 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/05/15(月) 21:24:17.29 ID:sruQ6Llc0
再開したのかい?してないのかい?
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