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末妹「赤いバラの花が一輪ほしいわ、お父さん」(最終章と後日譚)
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589 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/02/28(水) 22:26:49.90 ID:nGFFY93s0
※一か月過ぎてしまうので…近日中に更新するので少々お待ちを…※
590 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/02/28(水) 23:06:08.95 ID:MEHSYlb2O
待つともさー
591 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/03/28(水) 13:36:48.69 ID:UVYSJKqTO
近日…近日?
592 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/04/01(日) 23:29:57.58 ID:rSQA9QWn0
※
>>1
です、マジごめんなさい
2〜3月ちょっと、いやかなり多忙というか余裕なくこの有様でした。必ず完結させますので……※
593 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/02(月) 01:06:28.13 ID:Z8Ei3vyqO
良かった
待ってます
594 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2018/04/28(土) 23:52:49.88 ID:JtVxUVrN0
商人の店。
長兄「……」
次姉「兄さん?」
長兄「……」
次姉「兄さん!! 何ボーッとしてるの?」
長兄「はっ……次姉」
次姉「もう、そんな調子じゃまたいつぞやみたいに手でもケガするわよ」
長兄「すまない」シュン
次姉「まあ……さっきまであの子達が無事に戻るかどうかって緊張した空気だったものね」
次姉「その中で文字通り『カギを握る』役目だったんだもの、疲れるのも無理ないか」
長兄「本当にすまん、もう大丈夫だ……次兄と末妹は?」
次姉「本人達は普通に元気そうだけど、お父さんが大事を取らせて、目の届く居間のソファで休ませてる」
次姉「家政婦さんは夕食の準備で忙しいけど、姉さんも同じ居間で編み物を始めたわ」
長兄「そうか、元気ならよか……長姉が編み物!?」
次姉「そこ?」
次姉「姉さんなりに料理だけじゃなく家事全般の腕を上げようと頑張っているの」
長兄「そうだな、長姉なら料理の腕もあっという間に上達したし、きっと編み物や裁縫もやる気になりさえすれば」
次姉「まあでも、今日は短い時間に色々考えたり力仕事したり気を揉んだりと」
595 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2018/04/28(土) 23:54:51.15 ID:JtVxUVrN0
次姉「私も正直疲れたわ、お父さんに確認して早めに店を閉めましょ」
長兄「ああ、先に上がっていいぞ」
長兄「午後から臨時休業にしていたところを、お客様のために少しの時間でもと開いたんだ」
長兄「通常の閉店時間まで俺一人このままやるよ」
次姉「……それなら私も」
次姉「兄さん一人にして、またさっきみたいにボーッとされても困るもの」
長兄「はは、本当に大丈夫……でもありがとな」
長兄「……」
長兄(本当は疲れてボーッとしていたとは微妙に違うんだよな)
長兄(鍵が開いたと同時に、引き出し自体の重みでほんの僅か……3ミリばかり……自然と、開いた)
長兄(あの重みが手にかかった瞬間、俺はその手で引き出しを押し戻すべきかそのままで維持するべきか)
長兄(それとも重さにまかせて更に引き出すべきか、迷った)
長兄(でも、それは本当の本当に一瞬だけの迷いだった)
長兄(次兄達がすぐに戻ってきたせいではない)
長兄(あの3ミリほどの隙間から……俺が感じた物は……)
長兄(我ながら滑稽だとか陳腐だとか思う)
長兄(……でも確かに感じたんだ、何か、例え難い……物理的な重さとはまた違う……圧迫感……)
長兄(……そして、寒気と恐怖感と……)
596 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2018/04/28(土) 23:56:04.48 ID:JtVxUVrN0
長兄(とにかく、何かわからんがこれ以上この引き出しを開いてはいけない)
長兄(この内にあるものに関わってはいけない、と頭の中で警鐘が鳴り立てた)
長兄(そこで次兄が戻って来て、ようやく俺も現実に引き戻され)
長兄(あの時感じた『何か』は……過ぎてしまえば気のせい、錯覚、あるいは)
長兄(実際になにかがあったとして、魔法の力が働いた作用……なのかもしれない)
長兄(……・)
(次兄「おっと、何も尋ねない約束ですぞ?」チッチッ)
長兄(次兄が言う通り、尋ねてはならない、問うてはならない……)
長兄(正体はわからずじまいだが、それが正解であり)
長兄(なんであれ、それで二人と二人の友人……友獣(?)達が無事に帰れたのなら、正しい使われ方をしたんだ)ウム
次姉「……」
次姉(兄さんまた何か考え事して一人で頷いているけど)
次姉(まあいいか、何であれそこまで真剣に考え込むほどでもない話だろうと真面目に考えるのが兄さんだもんね)フゥ
呼び鈴:チリリン…
次姉「! 兄さんお客様よ、いらっしゃいませ!」
長兄「はっ……いらっしゃいませっ!!」
……
597 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/04/28(土) 23:56:46.35 ID:JtVxUVrN0
※ごぶさたしてすみませんでした。読んでくれた方ありがとう※
598 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/29(日) 00:47:44.92 ID:NsDrLDu7O
おひさし乙
引き出しの奥のラスボス感ww
599 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/04/29(日) 07:53:41.23 ID:TAWosCSgo
乙です。ゆっくりで良いので。まったり更新待ってます〜
600 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/05/29(火) 22:36:05.37 ID:TLNxoXer0
※念のため。一か月早い…※
601 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/06/28(木) 00:08:50.87 ID:wCnuCsJK0
※お久しぶりです。来月頭までちょっとバタバタしてますが7月前半に更新します※
602 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/29(金) 00:49:34.26 ID:SYT844p5O
待ってるよー
603 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/17(火) 01:43:15.38 ID:B2G3C3AgO
上旬…過ぎたなぁ
604 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/07/17(火) 22:06:31.86 ID:7wOVzHIx0
※すみません、自分で「上旬」と書いておきながら「7月中」のつもりでいました…も少し待っててください…※
605 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/17(火) 23:34:59.81 ID:pisHK4gTO
おー、
>>1
が元気なら良かった
606 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2018/07/26(木) 00:27:39.02 ID:yFeLJr7c0
商人の家、居間。
商人「そうか、菫花君にとっては本当に良い旅になったようだな」
末妹「ええ、本当に」
商人「それに……親が子供とわかり合えるのは簡単なようで難しいものだが」
商人「だからこそ、お互いの想いが通じたと実感できる瞬間はどんなに尊いか」
商人「師匠様にも、きっと良い旅になっただろう……」
長姉「お父さん……」ニコ
次兄(あの長姉ねえさんとは思えぬ穏やかな微笑)
次兄(これも元を辿れば幼馴染男さんの愛の影響力とやらなのか……)ムムム
商人「次兄、ややこしい顔して黙り込んでいるけど、体の具合が悪いのかい?」
次兄「はっ!? い、いいえ、なんともありません、何ひとつやましいことなどありませんよ!?」アセアセ
長姉「何をうろたえているんだか、変な子」
末妹「……」
末妹「あのね、お父さん」
商人「ん?何だい?」
末妹「今の学校を卒業してからのこと……そろそろ話をした方がいいと思うの…」
次兄(お、いよいよですな末妹)
商人「そうだな、お前も来年は15歳、町の学校に通うのもあと1年くらいか……早いものだ」
商人「で……お前はどうしたいのかな」
末妹「……私、将来は学校の先生になりたいんです」
商人「そ 長姉「いいじゃない!?末妹には向いてるわあ!!」
商人「あ 長姉「教員養成学校に行くのね、あんたなら大丈夫、絶対合格するから!!」
商人「え 長姉「ね、お父さん、素敵な話よね!!」
商人「……う、うむ……」
607 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2018/07/26(木) 00:29:30.18 ID:yFeLJr7c0
商人「が、頑張りなさい……応援するよ、末妹……」
末妹「お父さん……」
次兄「……えーっと……」
次兄「もうちょっと具体的な話をした方が、よくないですかねえ?」タスケブネ
商人「は」
商人「そ、それもそうだね……末妹、どのくらい考えているんだい?」
末妹「はい、あの……一番近い、隣町の養成学校に正式に入学するか、それとも」
末妹「市内の学校で代用教員として働きながら、養成学校の集中講義や資格試験を受けて、正式教員になるか」
末妹「今考えられるのは、これくらいだと思うの」
商人「……」
商人「うん、なかなか現実的な発想だね末妹……さすがはしっかり者だ」
商人「我が家には……お前を卒業後すぐに働きに出せねばならぬような理由はない」
商人「商売が最低でも現状維持であれば、の話だが」
商人「座学のみならず実践を積みたくば、養成学校から短期間の派遣を斡旋してもらう手もある」
商人「と言うわけで、まず初めの1〜2年だけでも、養成学校で学ぶことに集中してみてはどうかな?」
末妹「え」
末妹「正式入学になったら……隣の市で寮か下宿か、とにかく家を離れることになるけれど……」
商人「もちろん知ってるよ、住む場所は私も一緒に探すが、お前なら心配ない」ニコ
末妹「お、お父さん……!?」
次兄「」
608 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2018/07/26(木) 00:30:41.44 ID:yFeLJr7c0
次兄「父さんが……末妹までも家を離れることを承知したと……!?」
商人「離れると言っても隣の市じゃないか」ニッコリ
次兄「天変地i 長姉「やったじゃない、末妹!!がんばるのよ!!」
末妹「う、うん……ありがとう、お姉ちゃん」
末妹「ありがとう……ありがとうお父さん、私、頑張ります……!!」
商人「うん、うん……」ニコニコ
商人「……さて、そろそろ夕食ができた頃かな、ちょっと様子を見てこよう」
長姉「あ、私が行くわ」
商人「いいよいいよ、お前はこの子達と一緒にいてくれ」
ドア:ガチャ…パタン
商人「…………」スタスタ
商人「……これくらい離れたらいいかな」ピタ
商人「いつかこんな日は来ると思っていなかったわけではない……」
商人「うええええええんん頑張ったよ妻、私は頑張ったよおおおおおおん」
商人「お前がいたらきっと、必ず末妹を応援しただろう、そう思ったから私も……」グスングスン
商人「……そうだよ、隣の市、毎週とは言わなくても月に1回以上の週末は帰省するじゃないか……たぶん」スンスン
商人「長姉の言う通り、あの子には向いている、いい仕事だよ」
商人「……」ジワ
商人「……こ、今夜は長兄に、お酒に付き合ってもらおうかな……」グシュ
……
609 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/07/26(木) 00:31:11.44 ID:yFeLJr7c0
※短いけれど、お久しぶりです。次回更新は8月に※
610 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/26(木) 00:46:46.78 ID:pqSFvGQ3O
乙
お父さん頑張った
611 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/26(木) 06:54:23.01 ID:7g/1TNAyO
蘭子「混沌電波第151幕!(ちゃおラジ第151回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1516011054/
蘭子「混沌電波第152幕!(ちゃおラジ第152回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1516615777/
蘭子「混沌電波第153幕!(ちゃおラジ第153回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517221252/
蘭子「混沌電波第154幕!(ちゃおラジ第154回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517828308/
蘭子「混沌電波第155幕!(ちゃおラジ第155回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1518405378/
蘭子「混沌電波第156幕!(ちゃおラジ第156回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1519035694/
蘭子「混沌電波第157幕!(ちゃおラジ157回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1519642167/
蘭子「混沌電波第158幕!(ちゃおラジ第158回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520244800/
蘭子「混沌電波第159幕!(ちゃおラジ第159回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520849603/
蘭子「混沌電波第160幕!(ちゃおラジ第160回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521454455/
蘭子「混沌電波第161幕!(ちゃおラジ第161幕)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1522060111/
蘭子「混沌電波第162幕!(ちゃおラジ第162回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1522664288/
蘭子「混沌電波第163幕!(ちゃおラジ第163回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523269257/
蘭子「混沌電波第164幕!(ちゃおラジ第164回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523873642/
蘭子「混沌電波第165幕!(ちゃおラジ165回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1524480376/
蘭子「混沌電波第166幕!(ちゃおラジ第166回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1525058301/
蘭子「混沌電波第167幕!(ちゃおラジ第167回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1525687791/
蘭子「混沌電波第168幕!(ちゃおラジ第168回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526292766/
蘭子「混沌電波第169幕!(ちゃおラジ第169回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526897877/
蘭子「混沌電波第170幕!(ちゃおラジ第170回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527503737/
蘭子「混沌電波第171幕!(ちゃおラジ171回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528107596/
蘭子「混沌電波第172幕!(ちゃおラジ第172回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528712430/
蘭子「混沌電波第173幕!(ちゃおラジ第173回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529353171/
蘭子「混沌電波第174幕!(ちゃおラジ第174回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529922839/
蘭子「混沌電波第175幕!(ちゃおラジ第175回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1530530280/
蘭子「混沌電波第176幕!(ちゃおラジ第176回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1531133134/
蘭子「混沌電波第177幕!(ちゃおラジ第177回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1532340969/
612 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/08/26(日) 23:30:02.40 ID:hagAf68X0
※一か月経ってしまう…健在報告のみしておきます、すみません※
613 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/08/27(月) 09:20:58.84 ID:cFlhxncGO
暑いのでお身体に気を付けてー
614 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/16(火) 00:26:59.99 ID:D84cTNVBO
復旧して良かった…保守。
615 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/10/21(日) 23:41:21.42 ID:oFV2Z1Hb0
※ごぶさた、すみません…※
復旧がずっと先なら移転して書くか、だとしたら修正しつつまたここの
>>1
から?とか…あれこれ考えていました。
復旧後もしばらく迷いましたが、やはりこちらで続けさせていただくことにしました。
というわけで近日中に再開…します
616 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[age]:2018/10/22(月) 06:22:00.92 ID:QjrfTbLQo
乙。待ってます
617 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/10/22(月) 09:54:26.34 ID:rdXYhQmCO
乙です
また起こらないとは限らないし、移転するならどことか事前に知らせてくれるともしもの時助かるんだけど
ちなみに今回はしたらばの方の生存報告スレが結構役に立ってたみたい
618 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/10/29(月) 01:08:14.18 ID:RE0GXokB0
※今週中に更新します。待っててくださる皆さん本当にありがとうございます…※
>>617
>生存報告スレ
移転の際は↑そちらでアナウンスさせていただきますね。
完結するまでこちらの板が無事に使えるならば、このまま…
619 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2018/11/04(日) 00:30:22.30 ID:KsZuJ7po0
その翌日……
師匠「ほれ、屋敷が見えてきたぞ? あともう少しだ」
王子「帰って、来ましたね……皆さんには先に会ってしまいましたが」
師匠「森に一番近い村まで乗合馬車だったがそこからは歩き通しだ、少し休んで行こうか?」
王子「だ、大丈夫です、僕も今回の旅でだいぶ体力つきました、から……」
師匠「無理するな、屋敷は逃げはせん」
王子「……」
王子「そうですね、執事さん達に疲れた顔を見せては」
師匠「さっきの村でこれを買ったのだ、皆の土産に追加しようと思ってな」
師匠「一口ずつ味見をしよう、ほれ、手を出せ」
王子「?」
ポトリ
王子「え、これは……? 蜂蜜?」
師匠「あの村では、小規模ながら兼業で養蜂を営む農家が多くてな」
師匠「これは巣蜜だ、そのまま食べていいが蜜蝋はよく噛めよ?」
王子「は、はい……」パク
むっちゃむっちゃ
王子「……甘い……蜂蜜だから当たり前か」
師匠「うむ、美味いが、蜜を取る花の種類はひとつではなさそうだな」
師匠「料理長なら特定できるかもしれん」
620 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/04(日) 02:03:47.31 ID:KQV2Q1ggO
甘やかす師匠
621 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2018/11/04(日) 02:22:01.60 ID:KsZuJ7po0
王子「美味しいだけではなく上質なのでしょうね、料理長さんが喜びそうです」
王子「……彼の事ですから、自分で食べずに僕らに食べさせる料理に使っちゃうのでしょうけど」
師匠「穴熊は蜂蜜が大好物だからな」
師匠「安心しろ、料理用と料理長個人の土産用とは分けて渡すつもりだ」
師匠「土産用を料理に使ったら、儂は魔法で判定できるのだぞ……とでも言えば、絶対それを守るさ」
王子「さすがですね師匠……」
王子「……昨日夢の世界で精神体には会えたけど、早く実体の皆さんの顔を見たいし話もしたいです」
師匠「ああ、儂も楽しみだ」ニコ
王子「……師匠」
師匠「意外な物を見たような顔をするな」
師匠「儂の家でもあるし、儂の家族でもあるからな」
師匠「しばらく離れていた自分の家で寛ぎたいのは当然ではないか」
王子「……そうですよね、僕と野獣だけではなく、師匠の家でもあり師匠の家族でもあるんです」
王子「早く会いたいのは当然です」
師匠「そうだ当然だ、だからもう二度と口にはしないぞ、屋敷が儂の家で執事達が儂の家族だ、とは」
師匠「わかり切っているからな」
王子「はい、周知の事実ですから!!」
師匠「その笑顔なら疲れもすっかり取れただろう、行くぞ」
王子「ええ、早く帰りましょう!」
……
622 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/11/04(日) 02:22:47.50 ID:KsZuJ7po0
※おひさしぶりでした。眠いので今回はここまで…※
623 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/05(月) 00:56:49.29 ID:araSXQmZO
乙
>>618
了解です、ありがとう
624 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2018/11/25(日) 23:25:52.64 ID:zAbu7Jxs0
※止まっててごめんなさい、必ず続き書きます※
625 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/26(月) 15:54:25.35 ID:uVyeWyceO
待ち続けるぜ
626 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/02(水) 03:41:51.83 ID:ufr2lFbeO
あけおめ
627 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2019/01/02(水) 23:58:10.74 ID:nKmyBvpx0
野獣の屋敷。
タタタッ
庭師「師匠様と菫花様です! もうすぐ門までお着きになりますよ!」
執事「こら庭師、気持ちはわかるが『ただいま』も言わずに入って来るな」
メイド「窓から入るのは問題ないのですね執事様?」
料理長「それではシチューを温めて……おふたりが旅支度を解く頃に合わせて、食卓を整えましょう」
メイド「パンも軽く炙りましょうか? 外はカリカリ中はふんわり〜♪」
庭師「僕もお手伝いします!」
料理長「ありがとう、頼んだよ」
執事「わたくしもお出迎えの準備をしなくては」
執事「……今日から皆また忙しくなる……喜ばしいな」フフ
……
師匠「いよいよ門に辿り着くぞ」
菫花「執事さん、呼べば出て来てくれますよね」
師匠「ふふ、もう門を開くため今か今かと待ち構えているさ……」
菫花「はい?」
師匠「さっきの一休みの時に、周囲の一番高い木から庭師がこちらを窺っていたのだ」
菫花「ああ、それで」
628 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2019/01/02(水) 23:58:49.44 ID:nKmyBvpx0
※あけましておめでとうございます※
629 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2019/01/03(木) 00:01:42.46 ID:E1fqjb7r0
※…名前欄の 菫花 は 王子 に置換してください…正月ボケです…※
630 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/03(木) 01:47:32.65 ID:pWhFEhwZO
正月早々乙
使用人のみんなが可愛くて癒される
631 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/01/27(日) 23:54:06.92 ID:mSYYAmW80
屋敷の門:ガション……ギキィィ〜……
執事「……お帰りなさいませ、師匠様、菫花様」
王子「執事さん!!」
師匠「少しばかり門扉を開くのが早くないか? らしくもない、のう?」フフフ
執事「はっ!? ……わ、わたくしとしたことが」アワワ
師匠「泡食う姿もまた珍しい」
師匠「……・ありがとう、ただいま」ニッ
王子「ただいま、執事さん!!」ニコリ
執事「……!」
執事「さ、さあ、早くお入りください……暖かいお茶と軽食を用意しています」
師匠「楽しみにしていたぞ」
王子「楽しみと言えば馬小屋の出来も、何より料理長さんやメイドさんや庭師君に会えるのも、それに」バタバタ
師匠「ああこら慌てるな、こけるぞ、全く」
ドズシャア
王子「」
執事「菫花様!? ああ、荷物を抱えたまま脱ぎかけの外套にもつれて……しっかりしてください!」
師匠「……本当にこける奴がいるか」ハァ
師匠「それにあの歩調でどうしたらそこまで派手な音立てて転倒できるのだ?」
メイド「な、なんの音ですか!?」スッピョン
632 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/01/27(日) 23:55:43.81 ID:mSYYAmW80
執事「丁度良い、メイド、菫花様の外套を頼む」
メイド「ええ……どうしたらこんなごちゃごちゃに絡まるんですかあ……?」
執事「余計な言葉は慎め、とりあえず菫花様の足元から遠ざけてくれ……お怪我はありませんか?」
王子「あ、ありがとう……ごめんなさい、本当に」
メイド「ご無事そうですね、よかった……でも菫花様らしいですねえ」ウフフー
王子「 」
執事「だから余計な言葉は」
メイド「あっ失礼しました、何より、お帰りなさいませー!!」ペコン
王子「……た、ただいま、メイドさん……」
執事「もうここはいい、厨房に戻れ」
メイド「はいー」パタパタ
師匠「あっという間にいつもの日常だ」
師匠「……帰って来たのだな……二人で……」
……
庭師「お帰りなさい!!」
料理長「お帰りなさいませ、さあ、熱い紅茶を召し上がってください」
師匠「うむ、野獣のレシピで調合した茶葉だな」ズー
王子「野獣にももっと話したいことがある……もちろん皆さんにもです!」
師匠「だから落ち着け、誰もここから……お前から逃げないからな」
633 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2019/01/27(日) 23:57:42.21 ID:mSYYAmW80
※毎度ご無沙汰です…帰宅に何か月かけてる…※
今後、更新が短い場合は作者一言省略する場合もあるので、数十分続かなかったらその日はそういうことなのでよろしくです…
634 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/01/28(月) 00:04:21.91 ID:zjoUpj+70
乙
王子の変わらないへっぽこさになんかホッとするw
635 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/03/01(金) 03:00:23.81 ID:Yn4FbGL3O
保守せんとす
636 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/02(火) 01:09:25.90 ID:pNAsUzi+O
>>1
の生存報告を待つ
637 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2019/04/07(日) 23:47:08.33 ID:rTnzqCjk0
※ 1です。内容更新以外では当面は出ないつもりでしたが、さすがに…遅くとも5月上旬には更新します!※
多忙が主な要因でした。ごめんなさい…
638 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/04/07(日) 23:53:13.24 ID:xhqONoRL0
ヨカッタヨカッタ
639 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/23(木) 23:54:21.35 ID:lOxVMDMx0
コレはもう駄目かも分からんね
640 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/25(土) 01:05:34.58 ID:u5Bo/Z9BO
まだ5月は終わってないから…
641 :
◆54DIlPdu2E
[saga ごめんなさい…]:2019/05/26(日) 22:22:34.69 ID:Vkcul4q20
その夜、野獣の夢の世界。
(王子「それで……馬小屋は本当に素敵で、早くあの可愛い騾馬を迎え入れたくて……」)
(野獣「うんうん、そしてメイドの作った造花も可愛らしかったんだな?」)
(野獣「同じ話を二度繰り返しているぞ」)
(王子「あ……そうだった、あんまり感激したので」)
(王子「それに、庭師君やメイドさんが中を案内しながら楽しそうに説明してくれたので……」)
(野獣「ふふ、お前の気持ちはよくわかる……私も楽しみだ」)
(野獣「ところで、師匠はまだ起きているのか?」)
(王子「うん、手紙を書いてから寝るって、お弟子さんのご子孫に」)
(野獣「魔法で瞬時に手紙を届けて構わない相手だな、帰着の報告か」)
(王子「本当に有意義な旅だった……君に話をしたいこともできたよ」)
(野獣「あの騒動と南の港町の滞在時、旅の途中で会えたではないか」)
(王子「こうして家に帰って来てこそ話したかった!」
(野獣「そこまで張り切って私にしたい話か、なんなんだ?」)
(王子「それは……ええと……どう話せば、いいのか……な」)
(野獣「あのな、まずは話を組み立てて、それから話があると切り出すものではないか?」)
(野獣「お前には不得手なのはよく知って(自覚して)いるが……」)
(王子「えーと……将来、の」)
(野獣「うん?」)
642 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/05/26(日) 22:23:21.57 ID:Vkcul4q20
(王子「将来の夢……将来やりたい仕事……とか……」ボソボソ)
(野獣「……お前のか?」)
(王子「え? 他に誰のことだと?」)
(野獣「おほん、そ、そうだな」)
(王子「次兄君には画家になる夢、そして末妹さんにも将来の夢がある、僕も負けてはいられない」
(野獣「……やはり知っているのか?」)
(王子「何を?」)
(野獣「う、ま、まあ……若者には夢があって当然だ、一般論としても」オホン)
(王子「末妹さんが将来何を目指しているのか僕は知らないけど、きっと」)
(王子「あの優しさと芯の強さを活かして、誰かを助けて励まし支えになれるような仕事が似合うと思う」)
(野獣「うむ」コク)
(野獣(その通り、きっと良い教師になれるだろう)フフ)
(王子「だから僕も……・同じように」)
(野獣「お前に教師は絶対無理だ!!」)
(王子「教師??」)
(野獣「あ、えーっと、なんでもないこちらの勘違い」ハハ)
(野獣「で、お前は何をやりたいのだ?」)
(王子「さっきから話そうとしてるのに、君が何度も話の腰を折るから……」)
643 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/27(月) 07:21:15.90 ID:223SiuuMO
令和でもよろしく
王子は頭良いんだろうけど、教えたり導いたりするのは苦手そうだな
644 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/05/30(木) 22:51:41.30 ID:uHi9Im2p0
乙
645 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2019/07/21(日) 23:18:52.23 ID:KUneq7jp0
※すみませんでした。ちょっと色々余裕がない(なかった)…次回更新8月です※
646 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/08/20(火) 23:11:32.04 ID:pmyRdLHz0
(王子「美味しいものを食べたら、たいがいの人は元気になるよね?」)
(野獣「は?」)
(野獣「……う、うむ、まあ、そうだな?」)
(王子「……」)
(王子「考えながら話すから、まどろっこしいかもしれないけど」)
(王子「しばらく聞き役に徹してもらっていいかな?」)
(野獣「そ、そうか、了解した」)
(王子「……えーとね、どう言えば……」)
(王子「……君と分離されたばかりの僕はずいぶん弱ってて」)
(王子「何も食べられずに寝込んでいた」)
(王子「僕の存在が君を完全に消してしまったと思えば、ますます身も心も縮こまるばかり」)
(王子「でも、末妹さん達や屋敷のみんなに対して、最低限の責任を果たすまでは死ぬわけにもいかないから」
(王子「執事さんが用意してくれた水と蜂蜜を少しずつ摂って、命を繋いでいたんだ」)
647 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/08/20(火) 23:12:38.34 ID:pmyRdLHz0
(野獣(そうだった、当時のお前は、私がいるこの場所をまだ知らなかったものな))
(王子「そんな僕のために料理長さんが作ってくれたのが、林檎のコンポートのカスタード添えで」)
(王子「それを口に運ぶ僕を見守りながら、執事さんと料理長さんは」)
(王子「……僕に、生きてほしいと……それだけが願いだと」)
(野獣「……」)
(王子「そして、君から僕のことを託された、とも伝えてくれた」)
(王子「それで……ようやく僕は、簡単に生きるのをやめるわけには行かないと思えた」)
(王子「そのためにも、ひとまずはこれを食べて元気にならなくちゃって」)
(王子「……僕の生きる気力は、あのコンポートの味を甘くて美味しいと感じることで、湧き上がって来たわけで」
(王子「それから」)
(王子「僕らが昔生きていた時代は、お菓子は贅沢品で、王族や貴族の口にしか入らないものだったけど」)
(王子「師匠と各地の町や村を巡ると、街角の小さなお店で、子供もお小遣いで買えるような焼き菓子を売っていたり」)
(王子「僕らの訪れた農家で、奥さんが果物や木の実の入ったパイを焼いて、振る舞ってくれたり」)
(王子「もちろんその家の人達と一緒に」)
648 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/08/20(火) 23:13:19.91 ID:pmyRdLHz0
(王子「あと、商人さんの家でも、家政婦さんの作ってくれたお菓子をご馳走になった」)
(王子「どれも美味しくて、そしてそれぞれ作り手の個性もなんとなく感じられて」)
(王子「……そこで僕は、料理長さんの作る味も、どこかの誰かにも食べてもらえたら」)
(王子「……どこかの誰かにも食べて欲しいと思ったんだ」)
(野獣(ふむ……))
(王子「だから、料理長さんにお菓子の作り方を教わって」)
(王子「たくさん作ることは無理でも、その味を再現して、それを美味しいと思ってくれる人に食べてもらう」)
(王子「……それを自分の仕事にできたらいいなあと……今回の旅の中で考えていたんだ……」)
(野獣「……口を開いても良いか?」)
(王子「う、うん」)
(野獣「菓子作りを生業とする具体的な手立てまで考えているのか?」)
(王子「えっと、それは……」)
(王子「……これから考えるよ」)
(野獣「私もいわゆる世間知らずだからよくは知らんのだが」)
649 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/08/20(火) 23:14:16.16 ID:pmyRdLHz0
(野獣「たいがいは、正式に職人に弟子入りしないと、自分の店を出すことは認められないのが普通では?」)
(王子「そ、そういうものなのかな……」)
(野獣「……」)
(野獣「まあな、お前の場合は仕事としたい何かが見つかっただけでも進歩と言うか、収穫なのだから」)
(野獣「師匠とも相談して、もう少しじっくり考えても」)
(王子「そうだね……」)
(王子「聞いてくれてありがとう、君に否定されないでよかった」)
(野獣「否定はしないさ」)
(白バラの茂み(……))
(白バラの茂み(手紙を書いて送る作業が終わったので眠ってみたら))
(白バ(以下略)に隠れている師匠(菫花め、菓子職人になりたいとはなあ))
(師匠(儂も頭ごなしに否定するつもりはないが))
(師匠(あいつが職人の世界に飛び込んで、通用するとも思えん……)ハァ)
(師匠(……さて、どうしたものか))
650 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/21(水) 00:45:02.13 ID:uSt00QOAO
乙
これは意外な夢
料理長と家政婦さんの料理食べてみたい
651 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/25(日) 23:56:07.27 ID:Z9IFg7x70
師匠いっつも茂みで盗み聞きしてんな
652 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2019/10/05(土) 23:21:47.47 ID:X+jsnDiZ0
(野獣「……」)
(野獣「師匠、近くにいるんですよね?」)
(師匠「」ギクッ)
(王子「え?」)
(師匠「……やれやれ、この世界でお前から隠れることは無理だと、頭ではわかっておるのだがな……」)ゴソゴソ
(野獣「いっつも同じ白バラの茂みというのも、工夫がないですよ」)
(師匠「自分では選べんのだ、強制的にこの白バラの近くに送り込まれる仕様らしい」)
(王子「僕の話を聞いていたのですか、師匠……」)
653 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/08(火) 23:03:07.02 ID:ckbp2IeRO
乙
654 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/12/01(日) 19:12:28.87 ID:C6t/czIb0
(師匠「うむ、聞かせてもらったぞ、だから手短に」)
(王子「あっ待ってください心の準備が」)
(師匠「儂にできることなら協力するぞ」)
(王子「ですよね……師匠ならそう答え……」)
(王子「……えっ!?」)
(師匠「」)
(師匠「『えっ』とはなんだ? 『えっ』とは?」)
(王子「あわわわごめんなさいなんだか意外でいえあのその」ヘドモド)
(野獣「私も正直びっくりしたが、落ち着け菫花」)
(師匠「お前もびっくりなのか……」)
(師匠「確かに今までが今までだったからな……だが……お前達、まずは儂の話を聞け」)
(王子「は、はい……」)
(師匠「菫花に積極性が出て来たのは儂だって喜ばしい、それをむざむざへし折りはせん」)
(師匠「しかし実現させるためには……先ほど野獣も言った通り、じっくり考えなければなるまい」)
(師匠「お前達ふたりは誰よりも世間知らずだが」)
(師匠「儂にだって、この時代のこの国のあらゆる職業の仕組みについての知識があるわけではない」)
(師匠「この屋敷の住人がいくら頭を突き合わせてみたとて、現実的な手立ては期待できまい」)
(野獣「……確かに」ハァ)
(王子「……や……やっぱり僕が仕事に就くなんて無理な話……なんですね……」ズーン)
(師匠「地面にめり込むのは早いぞ、最後まで聞かんか」)
(野獣「良い考えがあるので?」)
(師匠「うむ、この時代の現実的な事象に強そうで、尚且つを貸してくれそうな人物を思い出した」)
……
655 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/12/01(日) 19:13:40.72 ID:C6t/czIb0
商人の家、朝。
次姉「あ、おはよう、お父さん」
商人「おはよう……」
次姉「元気ないわね、顔がむくんで、特に……目が腫れぼったいような……体の調子が悪いの?」
商人「い、いや、体はいたって健康だよ……」
商人「あれだけ飲んだのに二日酔いにもならないほどには健康さ……」ハハハ
次姉「声に力がないんだけど」
次姉「昨夜お酒のんだの? 兄さんと、そうでしょ?」
長兄「おはよう次姉、そうだよ昨夜は二人で飲んだんだ」
商人「……私は馬の様子を見て来るよ」フラフラ〜
ドア:パタン……
次姉「……本当に大丈夫かしら、全身に力が入っていないような、心ここにあらずと言うか」
長兄「長姉から聞いてないか?」
次姉「末妹の話? でも、お父さんは養成学校での勉強に集中しなさい、って話していたんじゃないの?」
長兄「本人にはそうやって背中を押してやるのが父親の役目……なんだってさ」
次姉「……」
次姉「とは言うものの、本音ではやっぱり寂しい……ってわけね」
長兄「でも安心しろ、あの時のように……生きた屍みたいには絶対ならないぞ」
長兄「って、最後はそう宣言して笑顔になっていたから、きっと大丈夫」
次姉「……そうね」
次姉「お父さんも私達も……あの頃とは違うものね」フフ
656 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/12/01(日) 19:14:55.86 ID:C6t/czIb0
馬小屋……
商人「おはよう愛馬、今日のご機嫌は……」
馬「ひひひん(おはよう)!」
末妹「おはよう、お父さん!」
商人「」
商人(そそそそそそうだった、朝の馬小屋で末妹と鉢合わせるのはあまりにも当然だった)
末妹「……お父さん?」
商人「あ、ああ、おはよう末妹」ワハハハ
末妹「……ありがとうお父さん、私の夢を認めてくれて」
商人「ち、父親として当たり前じゃないか……きっとお母さんも、同じように言っただろう」
末妹「お母様も……」
商人「父親、いや、母親もだな、世の親の役目とはそういうものだよ……」
末妹「……」
末妹「養成学校に行っても、できるだけ家には帰るようにするからね、お父さん」ニコ
商人「え」
商人「……」
商人(……そうだよな……私がどんな心境かを、この子に悟られないはずがない……)
商人「ああ……その気持ちだけで充分……だけど、やっぱり顔を見られる時間は長いほうが」
商人「正直、お父さんは嬉しいよ……」ニコ
末妹「えへへ……うん、お父さん」キュ
商人「末妹……」ギュ
馬「ひん……」
657 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2019/12/01(日) 19:15:43.48 ID:C6t/czIb0
商人「もう馬の世話は済んだのかい?」
末妹「ええ、ブラシも掛けたし、ご飯も」
馬「ひひひひんぶるひひひん(どうですこの毛艶)」
商人「そうか、では私達もそろそろ朝ご飯の時間だな」
商人「さあ馬よ、今日は取引先のお宅に行くからな、また後で」
馬「ひーひひひん(まーかせて)」
末妹「……あら?」
商人「どうかしたのかい?」
末妹「お父さんの上着の懐に……さっきまではなかったと思うけど……」
商人「本当だ、なんだろう……封筒?」ピラ
商人「……驚いた、差出人は師匠様だよ」
末妹「それじゃあ……魔法でたったいま届いたのね!?」
商人「しかし、きのう話をしたばかりじゃないか……何か緊急で知らせたいことでも起きたのかな」ガサガサ
商人「……」
末妹「師匠様、なんて?」
商人「……悪い知らせではない、安心おし」
末妹「そうなんだ、よかった」ホッ
商人「内容については……少しこちらにも考える時間が必要みたいだな」
末妹「?」
商人「お前達にもいずれ話をするよ、今は私ひとりに預からせてくれ」
末妹「……わかったわ、大人と大人のお話、なのね……」
商人「ああ、大人同士の話だよ」
商人(どっちかと言えば、親同士の話……かな)
…………
658 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2019/12/01(日) 19:18:44.76 ID:C6t/czIb0
※さすがにご無沙汰しまくったので…すみませんでした※
659 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/12/02(月) 17:44:11.98 ID:lm6G66nF0
乙
年内の更新があるとは思わなかったから嬉しい
660 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/12/03(火) 02:14:27.37 ID:n8V9wPdqO
出遅れた乙
師匠の手厚い進路指導
661 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/08(土) 20:02:15.71 ID:rnYB6Vfl0
ほんまに完結するんやろか
662 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/02/16(日) 20:59:18.25 ID:BgmEBtxm0
商人の自室。
商人「うーむ」
商人「菫花くんはいい子だし、次兄や末妹の友達だし」
商人「何より彼の生い立ちを考えると、これからは自分の心の赴くまま生きて欲しいし」
商人「……かと言って」
商人「私の伝手で菓子職人や料理人を紹介すると言うのもどうかなあと……」
商人「いや、できるよ、紹介だけならできるよ、普通に腕も人柄も信用できる人物を」
商人「でもね」
商人「人には向き不向きというものがあるんだ、努力で克服することは不可能な類の」
商人「菫花くんが修行について行けるかも心配だが」
商人「彼を教える側に求められる寛容と忍耐は菓子職人や料理人に求められる範疇を超えているだろうなあ、と……」
商人「……」
商人「師匠様は、返事は急がないと手紙に書いていた」
商人「短慮に結論は出さずに、もう少しゆっくり考えてみよう」
商人「いずれうちの子供達の知恵も借りる可能性もあるかもしれんが、今はまだ私の胸だけに」
商人「……さて、そろそろ出掛ける時間だ……帰る時間を考えると、昼は久しぶりに外食でもするか」
……
663 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/02/16(日) 21:01:29.24 ID:BgmEBtxm0
南の港町、安宿。
従業員「お茶っす」カチャ
商人「ありがとうございます」ニコ
主人「こら従業員、言葉遣い」
主人「……まさかこんなに早く良いお返事をいただけるとは思いませんでした」
主人「本当にありがとうございます、商人さん!!」
商人「いやあ、ありがとうはこちらのセリフですよ」
商人「新しい試みとして、小規模な正式契約を結んでくださる取引先を私も探していましたから」
商人「お宅の宿は、もう3年も前からあの石鹸を買ってくださっているのですからね」
商人「これからは私も確実に品物をお届けできるようなりますし」
商人「おまけに鍋の磨き粉もうちと契約してくださるとは」
主人「ははは……お恥ずかしい話、今までこの町でその時々で一番安い磨き粉を使っていたのですが」
主人「先月、ひどい粗悪品に当たりましてねえ……鍋の焦げは落ちもしないのに従業員の手ばかり荒れてしまって……」
従業員「痛かったっす……」ポツリ
主人「俺……私は皮膚が強いので平気だったから、一晩かけてそいつで磨いたのですが、少しも鍋はきれいにならず」
商人「ああ、奥様の手が……それはひどい話ですね」
従業員「……!! 奥様、奥様っすか!? あたし『奥様』なんて呼ばれたの初めてっすーーー!!!!」ピョンピョン
主人「こ、こら、はしゃぐな、お客様の前で……」
商人「若い方は元気なのが一番ですよ」
商人(こうして見てるとほんとに親子みたいだが、10歳くらいしか離れていない夫婦なんだよなあ)
664 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/02/16(日) 21:04:36.26 ID:BgmEBtxm0
主人「とにかく、平凡な家庭料理しか出せないとは言え、宿には食事も大切ですからね」
主人「大事な食事を作る大事な鍋は大事に使いたいわけですよ」
主人「安物買いの銭失いになるくらいなら、多少値は張っても信頼できる品質のものを使いたい」
主人「と、考え方を変えたわけです」
商人「ええ、ええ、わかります……」
商人「人間は守りたいものができると、常に目先の効率だけを考えるのは必ずしも得策ではない、と思うようになります」
主人「守りたいもの……」チラ
従業員「……」ポッ
主人「な、何を赤くなってる!?」
従業員「お、おやっさんこそ、なんでこっち見たんすか!?」
商人「」
商人「えー、コホン……」
主人「」ハッ
主人「す、すみませんでした、見苦しい所を……そ、そうだ、もうすぐお昼になりますが」
主人「商人さん、お昼ご飯はお家に戻られて摂られますか?」
商人「え? うちの者には外食して来ると伝えていますが、何か?」
主人「あの、もしもよろしかったらですが、うちで食べて行きませんか? もちろんお代はいただきません」
主人「さっき申し上げた通り、平凡な家庭料理なので、商人さんのお口には合わないかもしれませんが……」
商人「え、私には嬉しいお話しですが……宿のお客様は……」
665 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/02/16(日) 21:09:09.28 ID:BgmEBtxm0
主人「いやあ、実は連泊の3人連れのお客が昼はここで食べる予定だったのですが……」
従業員「商人さんがお見えになるちょっと前に、急用だとかで帰っちまったっす」
主人「船の時間に間に合わない、と、大慌てでした」
従業員「もう出来上がっていたのに……」ショボン
商人「そ、そういうことでしたら……ありがたく」
……
商人「これはうまい……ご主人は謙遜されていますけど、すばらしい料理の腕をお持ちで」
主人「そ、そんな、舌の肥えておられる商人さんに」
従業員「普通には美味しいっすけど……あたしはもうちょっと香辛料と酸味を効かせた方がいいと、いつも思ってるっす」
主人「いつも言ってるがお前の味覚を基準にするなと」
商人「いやいや、実に心安らぐ味です……ご主人はどこで料理の修行をされたのですか?」
主人「いやー、おr……私の料理は母親の直伝でして……」
商人「親御さん……確か、この宿を以前に経営されていたのはご主人と違う苗字でしたね?」
主人「ええ、この宿は父親の親友から譲り受けたものです、私ゃ農家の四男坊ですから、母親も普通の農民です」
商人「母親直伝……普通の農民……」
商人「…………」
商人「それです!! それですよ!! ありがとうご主人!!」
主人&従業員「「はい?」」
商人「そうだよ、『家庭料理を振る舞う職業』だって成り立つんだ……!!」
……
666 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/02/16(日) 21:09:36.73 ID:BgmEBtxm0
※本当ごめんなさい、あと兄妹達も野獣サイドも出て来ない地味回ですみません※
667 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/02/17(月) 01:04:08.31 ID:WTb8ZoMtO
乙ですいつまでも待ちますよ
宿屋夫婦も可愛くて好き
668 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/06/21(日) 22:31:03.01 ID:5S1oSgum0
その夜、商人の自室。
商人「しっかり封をしてと……師匠様の手紙に返信方法が書かれていたっけ」
商人「同封されていた、魔法陣だっけか、これが描かれた紙を広げて……」ガサガサ
商人「真ん中に返事の手紙を置く」カサ
商人「おっと、封筒の裏側……私の署名を魔法陣に触れさせるのだった」クル
商人「で、真上からは覗き込まないようにせよと……少し離れるか」スッ
商人「……」
魔法陣:チカッ
商人「お、光った」
商人「小さなランプ程度のまぶしさだな……しかし見慣れた炎の色ではなく青白く輝いている」
商人「……魔法陣が光と共に手紙を中心部に吸い込んで行く……魔法陣そのものも消えた、ただの白い紙に……」
商人「……」
商人「私は、大概の人が一生かかっても出会わないような体験をしてしまったのでは?」
商人「珍しい体験……」
商人「……今更か」
商人「野獣に出会った時から続く数々の不思議な出来事より、それをあっさり受け入れている自分に驚くよ」
商人「さて、師匠様と菫花君、そして野獣、私の意見をどう捉えてくれるかな」
……
669 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/06/21(日) 22:34:40.66 ID:5S1oSgum0
※話は進まなくて繋ぎの回です…このところ色々思うことあって書けませんでしたが、これから復帰します※
670 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/22(月) 02:29:20.31 ID:4JrRoX2gO
乙
コロってたんじゃなくて良かった!!
671 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/14(月) 17:47:47.97 ID:gg7oyO++0
復帰とは……
672 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/09/22(火) 23:44:45.52 ID:EY908xQe0
野獣の屋敷、師匠の自室。
魔法陣:ぽわーん……
封筒:パサッ
師匠「おう、商人殿からの返事か」
師匠「ずいぶん早く書いてくれたのだな、どれどれ」ガサガサ
師匠「ふむ……」
師匠「……なるほどな」
師匠「儂もあの宿には世話になったし、いかにも家庭料理な食事は確かに美味かったが」
師匠「ここまでは考えが及ばなかった、さすがは商人殿」
師匠「『かと言って、南の港町の宿とは立地条件が違うので』……ふむふむ」
師匠「『都会から田舎へ避暑や保養に来る人々』を相手にした商売……か」
師匠「森に一番近い村は、国境にも近いせいもあり、意外と旅人が訪れる」
師匠「商人殿はそこに目を付けたようだな」
師匠「商人殿の直接の知人はいないが、伝手が全くないわけではない、店舗や協力者を探してくださる……と」
師匠「ありがたい申し出だ」
673 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/24(木) 02:29:10.16 ID:wBXCkvQxO
乙です
674 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2020/11/25(水) 00:10:51.30 ID:zLtAHv7w0
…………
数日後……
家政婦「旦那様、こちらは携行食です、あと防寒具はこちらに」
商人「ありがとう家政婦さん」
商人「では、留守を頼むぞ長兄」
長兄「ああ、父さんも気を付けて……馬を連れて来るよ」
次姉「向こうは寒いから、風邪ひかないようにね」
長姉「それにしても……末妹は学校に行く前に挨拶を済ませたから良いものを」
長姉「お父さんの久しぶりの長旅だってのに、次兄ってば寝坊なんかして」
商人「はは……昨日あいつは末妹の学校へ行って、特別にお願いしていた模擬試験を受けさせてもらったんだ」
商人「次兄には10年ぶり……いや、あの時は教室にも入れず終わったから……実質初めての通学」
商人「相当疲れてしまったんだろう、ゆっくり寝かせてやろう」
長姉「私達も教わった先生達もいるのよ、学校で恥ずかしい真似しなかったでしょうね」
商人「先生のお話しでは、試験は真面目に取り組んでいたそうだよ」
商人「同じ校舎で授業を受ける末妹に恥をかかせる真似はしないさ」
次姉「半日緊張しっぱなし……か、そりゃ次兄なら疲れるわ」
長姉「美術学校に合格したら毎日通わなきゃならないのに、先が思いやられるったら」
長姉「ま、それはともかく……本当に気を付けてねお父さん」
675 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2020/11/25(水) 00:11:45.81 ID:zLtAHv7w0
商人「ふう……大袈裟だな、長旅とか」
商人「西端都市の用事を済ませたら、北の国境近くの村へ立ち寄って、あとはまっすぐ帰るよ」
次姉「今回は西端都市の用事が大変なんでしょ?」
次姉「商談が済んだら、親戚おじさま達と……」
商人「彼等に戦いを挑むわけじゃない、敵陣とか言う次兄に呆れていたのは次姉だろう?」
商人「親戚1さんも上手に取り持ってくれるさ」
次兄「でもあの人、いまいち頼りないような……」
商人「いいや信用できる人だよ、お互い過去を清算し今後のために有意義な話し合いになる……してみせる」
商人「って、いたのかい次兄!?」
長姉「いつの間に起きて来たのよ!?」
次姉「心臓に悪いから気配消さないでくれる!?」
馬「ぶるるひん(おはよう)……」カッポカッポ
長兄「やあ、自力で起きたのか次兄……なんで長姉と次姉は恐い顔しているんだ?」ガシャ
家政婦「(馬車に馬を繋ぐ)お手伝いいたします」ササッ
長兄「あ、ありがとう家政婦さん」ガチャガチャ…
次兄(ほほう共同作業ですな)
商人「二人ともありがとう……よろしく頼むよ愛馬」ポン
馬「ぶひひひひん(こちらこそ)」
676 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2020/11/25(水) 00:12:31.73 ID:zLtAHv7w0
……
次姉「……行ったわね、とりあえずお天気が良くてよかった」
長姉「それにしても……北の国境近くの村での用事って、何なのかしら」
次姉「仕事と全く無関係でもないけど個人的な用って言ってたわ」
長兄「なんだお前も詳しくは知らないのか」
次姉「あら……兄さんも知らないの?」
次兄「俺も知らないよ」
長姉「あんたが知ってるとは誰も思わないわ」
次兄「ですよねえ」
……
町の学校……休み時間
わいわいがやがや……
末妹(お父さんもう出発したかな……)
末妹(北の国境近くの村って、野獣様のお屋敷……あの森に一番近い村よね)
末妹(お父さんが言うには、師匠様からのお手紙に関係した用事……だって)
末妹(いずれ私達みんなに話すから、師匠様のご意向もあるので、とりあえず手紙がきた事も黙っててくれ……とも)
末妹(師匠様のお考えなら、お屋敷の誰かに関係あることだろうなあ)
友2「末妹ちゃん、何ぼーっとしてるの?」
末妹「あ」ハッ
友1「考え事してたんでしょ?」
友3「えへ……さっきの問題の答え、どうしてこうなるのか教えてくれる?」コソコソ
末妹「さっきの問題ね、えーと……」
……
677 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2020/11/25(水) 00:13:55.39 ID:zLtAHv7w0
※忘れてはいません…すみません。間が空いてしまったので読み返し思い出しながら書いています…※
678 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/11/25(水) 02:49:44.91 ID:PN2zQ4FqO
乙
久しぶりの次兄と末妹ちゃんウレシイ…
679 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/04/13(火) 18:43:28.84 ID:ZD8iegGRO
やっと復旧したか…とりあえず保守
680 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/11/25(木) 03:06:32.49 ID:JpTEDRvzO
ただただ悲しい
駆け足になるとしても1スレで終わってたら良かったのかな…
681 :
◆54DIlPdu2E
[sage]:2022/11/20(日) 22:37:31.54 ID:ma7kUVb00
2年も放置して本当にすみません
近いうちなんとかします
682 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/12/19(月) 17:37:43.17 ID:JUL2TufY0
はい
683 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/12/19(月) 18:11:58.23 ID:nV0VJ+tE0
はい
684 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/31(土) 21:36:32.31 ID:HOhWDrlh0
全然再開しなくて草
685 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2023/01/09(月) 18:02:12.20 ID:98/S2SPl0
…………
さらに数日後、北の国境近くの村……
商人「……というわけで、旅行者が旅先でお茶の時間を楽しむのも悪くないと思うのですよ」
商人「隣国や北辺都市への通過地点として一泊するだけではなく」
商人「この村やその周辺、そのものを目的にする旅行者が増えるかも」
村長「ふむ……しかし、この村の宿兼酒場の規模では、お茶の時間に飲食を提供できる余裕まではありません」
村長「商人さんもご覧になったでしょう?」
商人「はい、村長さんの妹さん夫婦が経営しておられる、村唯一の宿ですね」
村長「昨年、北部街道の整備が終わってから村を訪れる旅行者も急増し、忙しいと日々ぼやいております」
村長「まあ嬉しい悲鳴なので、贅沢な悩みですが……」
商人「ですから妹さん達のご負担を増やさないように」
商人「カフェの切り盛りはこちらの紳士とそのご家族が一切引き受け、売り上げから村へ建物と土地の借用代を支払う形になります」
師匠「ええ、この儂が経営者となります」
村長「酒場の裏の空き家……あのボロ家に家賃が発生するとは有り難い限りです」
村長「しかし、美しい店に改装したとて、提供する軽食、お菓子、お茶がどのようなものか……」
商人「百聞は一見に如かずです」
商人「こちらに試食を用意しております……師匠様」
686 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2023/01/09(月) 18:03:24.73 ID:98/S2SPl0
師匠「うむ、村長殿、こちらのクッキーとブリオッシュを……いずれも儂の『家族』が今朝焼き上げたものです」
村長「ほう、見た目は非常に美味しそうですな」
師匠「あと紅茶を……少々お待ちください」
師匠(商人殿、村長殿の意識を10秒ほど儂から逸らしていただけますかな?)ヒソヒソ
商人(え、10秒? や、やってみましょう)
村長「……」サクサク
村長「……これは美味い!?」
商人「でしょう、絶品ですよね!!」
商人(アナグマの料理長さんのクッキーはね)
村長「この軽やかな歯ざわり、ほどよい甘みと鼻に抜ける良質なバターの香り、そして表面にあしらわれたサクランボの砂糖漬けの甘酸っぱさがアクセントとなり……」
商人「村長さん?」
村長「芸術……クッキーの芸術品と呼んでも過言ではない、ブリオッシュはどうだ?」パク
村長「……お、おお、おお」モグモグ
商人「あ、あのー……」
村長「新鮮な牛乳と卵を練り込んでいるな、それに、この天使の羽根のようにふんわりとした焼き上がりの中にも、力強い生地の存在感を感じる……」
村長「発酵時間と焼き上がりの見極めが絶妙なのであろう、これぞ達人の仕事……」
商人「……えーと」
687 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2023/01/09(月) 18:04:02.45 ID:98/S2SPl0
師匠(商人が気を逸らさんでも見つかることなく瞬間移動で屋敷に行って戻って来れた)
師匠「さあ、淹れたての紅茶をどうぞ」カチャ
村長「む? 茶器セットや熱湯を持参していたようには見えなかったが……いい香りだ」ズー
村長「ほ、ほおおおおおおおおお……」カタカタカタカタ
商人(いかん、また別世界に飛び立ちかけている)
商人「ねっ村長さん、お茶も美味しいでしょ!?」
村長「ハッ」
村長「そ、そうですね……茶葉と水も良質だろうが、よほど上手に淹れなければここまでその良質さを引き出せないでしょう……」
師匠(ウサギのメイドが淹れたとは思いもよらんだろうがな)
村長「このすばらしいお茶やお菓子を提供し続けることができるとして……」
村長「こんな田舎の村に、昼下がりから夕方までの短時間限定の開店では勿体ないほどですよ」
村長「逆に、限定だからこそ品質を維持できるのかもしれませんが」
村長「よろしい、開店の許可を出しましょう」
商人「あ、ありがとうございます!!」
村長「むしろこちらからぜひにとお願いしたいくらいです」
村長「その……旅行者の少ない時は、村の者が立ち寄っても構わなければ」
商人「師匠様」
師匠「もちろんです、どなたにでも楽しんでいただける店を目指しますとも」
師匠(……さて、建物と売り物は準備万端)
師匠(あとは店員、か)
……
688 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/01/12(木) 22:29:01.75 ID:hcWTnrbW0
乙
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