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末妹「赤いバラの花が一輪ほしいわ、お父さん」(最終章と後日譚)
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299 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/05(金) 20:59:27.66 ID:QmTXQ2QA0
……で、その夜。
(野獣「……どうだね末妹、私の初の作品は?」)
(末妹「わあ……初めてでここまでできるなんて、野獣様はお裁縫の才能があります!」)
(野獣「うふふふふ……」ニマニマ)
(師匠「少なくとも7歳児には劣らずに済んだようだな」ニヤニヤ)
(野獣「……なぜ今夜も全員お揃いなのでしょうか」)
(王子「師匠の話では、屋敷にいる時と違って、この世界に入る時だけはコントロールができなくなるらしいよ」)
(次兄「入る時『だけ』?」)
(師匠「ああ、全員が現実世界で眠りにおちた途端に各自の意志とは関係なく、こうなってしまう」)
(師匠「しかし出る時は今までと同じように、この世界で『眠れば』良いのだからな」)
(野獣「今夜は次兄や師匠の相手をする時間はありませんよ」)
(野獣「講師(末妹)にお墨付きをいただいたら、早速メイドに教えないと」)
(末妹「……それでは私も早速」コホン)
(末妹「野獣様おみごとです、免許皆伝ですよ……なぁんて、生意気ですね私ったら」テヘヘ)
(師匠「何、君はこの中では儂のつぎに精神年齢が高いから問題ない」)
(次兄「おっさんが言わんとしているのは……末妹は14歳相応の精神年齢で、野獣様はじめ俺達は……お察しください、だよね」)
(野獣「……師匠も頭の中は相当な悪童ですけどね」ボソ)
300 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/05(金) 21:01:54.03 ID:QmTXQ2QA0
(師匠「何か聞こえたがまあよいわ、いずれまたゆっくりじっくりと」)
(師匠「では……我々は立ち去るとしよう、明日も早いからな菫花」)
(王子「はい、それではおやすみなさい、そしてありがとう末妹さん、次兄君……」)
(末妹「おやすみなさい、菫花さん、師匠様」)
(王子「……野獣、メイドさん達によろしくね」)
(野獣「ああ、きっとメイドも元気になるさ」)
(師匠「眠りの魔法……」ポワワン)
(野獣「……さてと」)
(次兄「……とっとと眠ったほうがいいんですよね、はいはい」フテクサレ)
(野獣「執事に伝言があれば聞くぞ、次兄」)
(次兄「!!」)
(次兄「そ、そんな野獣様、(俺をめぐる)恋敵(=執事さん)に塩を送るような真似とか、どういう風の吹きまわしで!?」ゲヘヘヘヘ)
(野獣「……お前のその台詞は理解できない、いや、理解したくもないが」)
(野獣「執事の気分を害するような内容ならば私が握り潰せば良いだけ、とりあえず言ってみろ」)
(次兄「えーとえーと、おっさん達が騾馬を慣らすのに使う執事さんの獣臭セット、あれと同じ物を今度会う時に俺用にひとつ」)
(次兄「使い古しのだけど可能な限りフレッシュな手袋と抜け毛はなるべく毛足の長い冬毛のー」)
301 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/05(金) 23:06:58.21 ID:QmTXQ2QA0
(野獣「はい、とっとと眠るがよい」ドカン)
(次兄「きょええ!?」ゴトッ)
(末妹「……一瞬で眠って夢から出て行っちゃった」)
(野獣「特製の……超強力な眠りの魔法だからな」)
(末妹「それじゃ、私もそろそろ」)
(野獣「まあ待て、改めて末妹には礼を言いたい」)
(末妹「そんな……思い付きを採り入れてくださって、私こそ光栄です」)
(野獣「無論、今回のこともだが……それだけではない」)
(野獣「メイドだがな、使用人の中で、いや、屋敷で最初にお前と仲良くなったのはあいつで……」)
(野獣「お前と触れ合う中で、あいつも変わって行った」)
(末妹「メイドちゃんが? 変わった?」)
(野獣「ああ、使用人になった時から、従順で素直なのは変わっていないが……」)
(野獣「自分の頭でいろいろ物を考えたり、言いつけ以上のことをやってみようと工夫したり」)
(野獣「お前と出会ってから、次第にそういう姿が見られるようになって来たのだよ」)
(末妹「……」)
(野獣「あいつなりに、家族と離れて暮らすお前のために心を砕いていたのだろうな」)
302 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/05(金) 23:57:30.71 ID:QmTXQ2QA0
(末妹「……私が初めてお屋敷に来て、2〜3日たった頃」)
(末妹「メイドちゃん、私の押し花のしおりを見て、初めは絵かと思ったそうですけど」)
(末妹「乾燥させた植物の匂いがするから……それは何ですか、って聞いて来たのです」)
(末妹「乾燥させた花をお茶や薬にするのではなく眺めて楽しむ……というのは初めて知ったらしくて……」)
(末妹「不思議がっていましたが、前の季節に咲いたお花を忘れないように……って話したら納得してくれました」)
(野獣「末妹はあいつに新しい世界を見せてくれたのだ」)
(末妹「そんな大げさなものでは」)
(野獣「いやいや、お前はあいつの初めての『女の子の友達』だからな」)
(野獣「お前もメイドを『同年代の少女』として扱ってくれた」)
(野獣「末妹の振る舞いや考え方、女の子の遊び、私や執事達だけと触れ合っていては得られなかったもの」)
(野獣「それらがあいつを成長させ、賢くさせた」)
(野獣「正直言うと……メイドをただの子兎から使用人にする魔法をかけた私自らが……」)
(野獣「あの子が従順で愛らしければ、それ以上は要求も期待もしていなかった、それでいいと思っていた」)
(野獣「なのに、末妹から得たもので私の魔法以上に育ってくれた」)
(野獣「お前が意図していなかったとは言え、それでもお前のおかげなのだ、ありがとう」)
(末妹「野獣様……」)
303 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/08/05(金) 23:58:21.86 ID:QmTXQ2QA0
※今夜はここまで。お盆休み?に入ります……8月半ばに再開します、皆様お元気で※
300超えてしまった……500レス以内には終わらせる予定……
304 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/06(土) 00:24:45.71 ID:Hi2GIFdRO
乙
末妹ちゃん天使すぎ問題
305 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/14(日) 21:33:38.22 ID:DRmNCapN0
(末妹「私も、メイドちゃんのおかげでお屋敷により早く馴染めたと思います」)
(末妹「……野獣様や執事さんは、最初のころはやっぱり……ちょっぴり怖くって……」)
(末妹「でも、小さな兎さんのメイドちゃんが生き生きと明るく働いているのを見ていたら」)
(末妹「ずっと大きな生き物の私が怖がるのもおかしいかな、って」)
(野獣「……確かにメイドより大きな生き物には違いないな」))
(末妹「知れば知るほど皆さんは優しくて……メイドちゃんも野獣様や執事さんを尊敬しているって伝わってきて」)
(末も妹「皆さんと知り合えてよかったって私も思うようになって」)
(末妹「そうなった最初の目を開かせてくれたのは、きっとメイドちゃんです」)
(野獣「……それを聞いたら飛び跳ねて喜ぶぞ」フフ)
(末妹「ええ、ですから早くメイドちゃんに」)
(野獣「そうだな、私だけが末妹に会えたと言ったら、むくれるかもしれんが」)
(末妹「私だって鏡越しじゃなく会いたいから、再会を前よりもっと楽しみにしている、って伝えてください」)
(野獣「わかった……末妹、また明日な」)
(末妹「はい、おやすみなさい野獣様」ニコ)
(野獣「おやすみ……眠りの魔法……」フワッ)
(野獣「……さあ、手順を忘れぬうちにメイドに教えてやらねば」)
…………
306 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/14(日) 21:35:00.38 ID:DRmNCapN0
そして、メイドと野獣……
(メイド「……ふぇ、不思議ですねえ」)
(メイド「でもすっごく嬉しいです、末妹様が私のことを想ってくださるのは」)
(メイド「やっぱり末妹様、大好きです!!」ピョーン)
(野獣「……思いがけずとは言え私だけ会えて、なんだか申し訳ない気がするが」)
(メイド「よかったですね、ご主人様」)
(野獣「え?」)
(メイド「末妹様にお会いできて、よかったですね!!」)
(野獣「う、うむ」)
(メイド「だって私達はご主人様と違って短い時間とは言え週一回鏡でお話しできるし」)
(メイド「末妹様と違って毎晩夢でご主人様とお話しできますもの」)
(メイド「だから、お二人がお会いできてよかったです!!」)
(野獣「……そ、そうだな、ありがとう……」)
(野獣(てっきり羨ましがってむくれると思っていたが……))
(野獣「……メイドよ、お前も大人になったなあ」)
(メイド「??」)
…………
307 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/14(日) 21:37:29.52 ID:DRmNCapN0
二日後の夜、夢の世界のバラ園。
(師匠「……この町の牧場の騾馬はとてもよかったが、とりあえず予定の牧場は全て回ろうと思う」)
(王子「なので、明日僕等はここを発ちます」)
(次兄「ということは野獣様ともまたお別れええええええ」ミョキャピェー)
(野獣「変な泣き声を上げるんじゃない」)
(末妹「思いがけない再会、嬉しかったです……」)
(野獣「ああ、私もな」)
(次兄「俺も嬉しかったでっすっ!!」ゴリゴリゴリ)
(野獣「わかってるわかってる、顔をごりごり押し付けながら主張せんでも良いわ気色悪い」ムギュ)
(王子(僕と元は同じなのにハッキリ言う時は言うなあ野獣は))
(次兄(びゃああ野獣様の大きな手で顔を鷲掴みとか荒々しい御褒美いぃぃぃぃ)モゴモゴ)
(師匠「おいおい、口を塞いでいないか?」)
(野獣「鼻は塞いでいないから呼吸はできますよ」)
(末妹(お兄ちゃんなんだか嬉しそうだから、心配はいらないみたいね……))
(末妹「……良い騾馬って、どんな子がいたんですか菫花さん」)
(王子「うん、まず見た目が僕の理想の毛色をした、きれいな若い騾馬でね……」)
308 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/14(日) 21:40:08.20 ID:DRmNCapN0
(王子「それに、執事さんのにおいを嗅がせても怯えた様子がなかったんだ」)
(王子「大きな犬が一頭いてね、牧場主さんの話では生後半年なのに他の犬達より大きくて、その騾馬とも仲がいいんだって」)
(末妹「あら、その犬さんの話は知らなかったわ……最近牧場に来た子なのね」)
(師匠「山岳地帯の猟師の家で生まれた子犬を譲り受けたと話していたが、儂の見たところ幾らか狼の血が入っているな」)
(末妹「あ……」)
(野獣「どうした末妹、複雑な顔をして」)
(末妹「……『狼の血を引く大型犬』がわりと近所にいるって、お兄ちゃんに聞かせてよかったのかしら、と思って……」)
(師匠「ああ……少年の好みのタイプと言うやつか」)
(野獣「大丈夫、執事の獣臭セットの話題が出たあたりから指で両耳を塞いでいるので」ガッシリ)
(次兄(みんなの話は聞こえないけど野獣様臭を間近で嗅げるからもう少しこのままでいいや)クンカクンカ)
(師匠「とにかく有力候補として、我々が旅を終えて返事をするまで、他には売らないでくれる約束をしたよ」)
(末妹「そうですか、幸先が良い……と言うのですよね、こういう時は」)
(王子「うん、最初からいい子に出会えて、これから何軒も牧場を回るけどこの先も楽しみだよ」)
(師匠「ま、君達とも野獣ともまたしばらく会えないが……明日この町を発つ前、菫花を君の家に顔出しさせるよ」)
(王子「そう言えば約束していましたね」)
(師匠「商人の家まで送り届けてやろうか? それとも宿屋まで迎えに来てもらおうか?」)
309 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/14(日) 21:42:17.64 ID:DRmNCapN0
(王子「もう大丈夫ですってば!!」)
(末妹「ふふ……お待ちしております菫花さん」)
(末妹「そうだ野獣様、メイドちゃんすっかり元気になって布の造花を作り始めたそうですけど」)
(末妹「今日の昼間の様子はどうでしたか?」)
(野獣「ああ、私が教えた花はすぐ作れるからと……」)
(野獣「執事から早くも自粛するよう忠告されたそうだ」)
(末妹「ええっ!?」)
(野獣「昨日の朝から今日の昼までかかって、すでに渡り廊下の壁がお花畑になる勢いだとか」)
(野獣「……そんなんだから、応用編として一つ作るのに時間のかかる凝った造りの花を自分で考えることにしたらしい」)
(末妹「自分で……」)
(野獣「料理長が料理をあれこれ自分の考えで工夫するように、自分にも教わった通りから更に工夫できるはずだと」)
(野獣「とにかく、寂しがっている暇はないくらい張り切っているようだ」)
(末妹「よかった、本当によかった……」)
(王子「僕も安心したよ……末妹さんと野獣のおかげだね」)
(野獣「花と言えば……師匠、このバラ園の片隅に、現実世界の屋敷では見たことのない色が一輪咲きましてね」)
(師匠「おお、それなら儂も見つけたぞ、少し珍しい色だなと思ってはいたが」)
310 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/14(日) 21:43:46.90 ID:DRmNCapN0
(師匠「まさか屋敷のバラ園にない色とまでは思わなんだ」)
(王子「ええっ、不思議ですね」)
(野獣「もしかしたら、来年以降に屋敷で咲くバラかもしれない」)
(師匠「ほう、それについてお前はどう考察しているのだ?」)
(野獣「230年の間に自然交雑が起きて……しかしバラ園には枯れない魔法と同時に新しい芽も出ない呪縛もかかっていた」)
(野獣「魔法が解けて、新しく生えて来るバラが……きっとそれなのですよ」)
(末妹「わあ……どんなお花なのかしら」)
(王子「見てみたいなあ……」)
(師匠「どれ、儂が案内してやろう、二人とも……ついておいで」)
(王子「あっ次兄君も」)
(次兄「……」ウットリ)
(末妹「……この上なく幸せそう」)
(王子「顔の下半分が隠れているにも拘わらずそれがわかるって余程だね……」)
(師匠「邪魔しちゃ可哀想だ、もっと正直に言うと構いたくない、さ、我々だけで見に行こう」)
(王子&末妹「「はい!」」)
(野獣「……」)
(野獣の手:スッ……)
311 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/14(日) 21:45:08.33 ID:DRmNCapN0
(次兄「はぅん?」ハッ)
(野獣「我に返ったか」)
(次兄「……皆は? なんかあっちの方に行ったみたいですが」)
(野獣「私があっちの方に咲いた珍しいバラの話をしたら、見に行こうとなってな」)
(次兄「……つまり、理由をつけて人払い……」)
(次兄「そんにゃ回りくどい真似をしてまで俺と二人っきりになりたかったなんてえええええええええええ」ガバァァァ)
(野獣「私を押し倒そうとか200年早い!!」ヒョイ)
(次兄「お約束ぅ!!」ビターン)
(野獣「……せっかくお前との時間を取ってやろうと思ったのに、調子に乗ると『また』超強力眠りの魔法をおみまいするぞ?」)
(次兄「そ! それだけはご勘弁を」)
(次兄「末妹には野獣様に余計な気遣いさせたくないからと口止めしていましたが、実は昨日の朝はですね!!」)
(野獣「ん?」)
(次兄「長兄に(扉を)ノックされても次姉に(尻を)キックされても目が覚めないのでお医者が呼ばれたんですよ?」)
(野獣「う、それは済まなかったな、午前10時には自動的に目覚める効果も加味されていたのだが……」)
(次兄「ええ、お医者が部屋に入った途端に何事もなかったように目覚め、おかげで事情を知らない姉達は呆れるわ」)
(次兄「同じく事情を知らない父と兄と家政婦さんはその後も一日じゅう心配するわ」)
(次兄「唯一事情を知る末妹は大ごとになる前に学校行ったから帰宅して話を聞いてびっくりするわ、散々でしたー」)
312 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/14(日) 21:49:36.11 ID:DRmNCapN0
(野獣「悪かった本当に悪かった、しかし……お前が好き勝手してよい理由にはならんからな、それはそれこれはこれ」)
(次兄「くっ流石は野獣様、付け入る隙を与えてくれない……」)
(野獣「……限られた時間、一方的に欲望を満たすより」)
(野獣「我々双方のそこそこ良い思い出になるよう、お互い譲歩する方が有意義とは思わんか?」)
(次兄「むう……正論です」)
(次兄「それでは野獣様のペースでこの場を進めてくださいどーぞ」)
(野獣「やれやれ、自分本位かと思えば人任せ、お前は本当に良く言えば不器用、悪く言えば……」)
(野獣「……泣かれると面倒だからやめておこう」)
(次兄「いいんですよどうせ俺ですから何と言われたって」イジイジ)
(野獣「機嫌を治せ、それより……勉強を頑張っているか? 今はどんなことを学んでいる?」)
(次兄「……がんばっていますよ、家庭教師に習った勉強の復習はほぼ完璧ぽいので、各教科のもう少し上を」)
(野獣「ほう、図書館に通っているのはそのためか」)
(野獣「絵の方は? 動物しか描けないのでは通用しない、のだろう?」)
(次兄「……まだ誰にも見せられませんが……人知れず影の特訓は絶やしていません」)
(野獣「特訓(絵の練習とも言うが)の成果が実を結ぶ日が楽しみだな!」)
(次兄「……うへへ、少なくとも無駄にはしませんから」)
313 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/08/14(日) 21:50:15.97 ID:DRmNCapN0
※とりあえず再開。今夜はここまででした※
いつもと違う機種で書き溜めしたせいかカッコの半角全角がおかしな感じに……
投下してから気づきましたごめんなさい……
314 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/15(月) 13:10:10.94 ID:+uMb0nUGO
乙。ピョーンってするメイドちゃん可愛い
あ、あと
>>1
に残暑お見舞い申し上げます。
http://s3.gazo.cc/up/59983.jpg
昨年より大きく育ったもよう
315 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/08/15(月) 23:51:57.94 ID:V7Arh/qJ0
※お知らせだけ。今週はあと1回もしくは2回更新予定です※
>>314
去年の続き&アニマルズ可愛く描いてくれて、ありがとうありがとう!
設定もこんな感じのサイズ比なんだけど、こうして見ると執事やっぱりでかいわ……
316 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/19(金) 23:02:07.20 ID:8ojf0xtHo
今週が去っていく〜
絵がもう消えてるぅorz
317 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/20(土) 22:49:32.15 ID:+fKwbDSI0
(末妹「お兄ちゃーん、野獣様ー」)
(野獣「お、戻って来たな」)
(野獣「……またお前とゆっくり話ができる日を楽しみにしているぞ」フフッ)
(次兄「社交辞令でも嬉しっす……」ウヒヒ)
(野獣(本音なのだがまあ良い、あまり調子に乗せてもな、こいつに限っては))
(次兄「末妹、見たことないバラがあったって?」)
(末妹「あのね、今まで見たことのない色でね、すごく綺麗なの!」)
(王子「まるで朝焼けが青空に変わって行く途中のようで」)
(王子「しかも光の加減で微かに色合いの変わる、不思議な色だったよ」)
(末妹「……野獣様や菫花さんの、ひとみの色にも似ているの」)
(次兄「バラなのにスミレ色なんだ」)
(野獣「ははは、確かにそう言えない事もないか」)
(師匠「あれが本当にバラ園に咲いたら新種発見かな」)
(師匠「鳥が種を運んだとか、既存の品種が紛れ込んだ可能性も全く無いとは言えんが」)
(王子「どちらでも、僕らには初めての出会いには変わりありません……楽しみです」)
(野獣「本当に咲くと良いな、『正夢』になることを願うぞ」)
(末妹「ええ、私も願っています……」コクン)
……………………
318 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/20(土) 22:50:53.30 ID:+fKwbDSI0
(野獣「……というわけだ」)
(野獣「庭師よ、もし本物のバラ園に新しい芽が生えてきたら、大事に世話をしてやってくれ」)
(庭師「はい!!」)
(庭師「楽しみだなあ……今度の春だといいな、早く春が来ないかな!!」ワクワク)
(メイド「ご主人様、私、バラの造花を作ってみようかと思います!!」)
(野獣「ほう」)
(メイド「花びらがいっぱいで、作るのに手間暇がかかりそうで、出来上がりはえーと、ごおじゃす? ですから!!」)
(野獣「おお、やる気に満ちているな、頑張れよ」)
(執事「急いで仕上げるより、ていねいに仕上げるほうを心がけるのだぞメイド?」)
(メイド「はい、最初は自分の手で『お花』が作れることそのものが楽しかったけれど……」)
(メイド「今はどうしたらもっときれいにできるか、作りながらあれこれ考えるの楽しいです!!」)
(野獣「ふふ、本当に楽しくてたまらない様子だ」)
(料理長「沈み気味だったメイドちゃんが、こんなに元気になって……」)
(執事「我々も負けずに素晴らしい馬小屋を仕上げなければ、な」)
(野獣「ああ、師匠達も楽しみにしている、頼んだぞ……」)
……………………
319 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/08/20(土) 22:55:05.50 ID:+fKwbDSI0
※今週は急用が入ったりで進まなんだ、すみません……明日はもう来週になっちゃうけど少し更新します※
なお現実では薄紫(青系)のバラは品種改良を重ねてできた新しい品種……ですがフィクションなので……
320 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/21(日) 01:20:03.73 ID:rWea6sm9O
乙
青いバラなんて……素敵ですやん
321 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/21(日) 23:59:07.39 ID:VnwYYGWH0
翌日、商人の店。
長兄「次姉、そっちの棚にこれ並べて」
次姉「はい」
長兄「長姉は料理教室か、だけど次兄は今日は行かないって話していたな」
次姉「お客さんが来るからよ、次兄と末妹に」
長兄「ああ、あの子だね」
次姉「『あの子』って……兄さんと同い年よ?」
長兄「……言われてみればそうだった」
長兄「見た目だけじゃなく、あの二人の友達だと思うと」
長兄「どうも感覚的に『俺より3つくらいは年下』って認識から抜け出せないようだ」ハハ
次姉「同い年どころか、生まれ年で言えばとんでもない『年上』だけど」
次姉「兄さん、自分の常識と相容れない『事実』は敢えて素通りしないと自分が保てない人だものね」フフ
長兄「おいおい、お前まで次兄みたいな批評は勘弁してくれ」
次姉「あら、次兄ってこんな感じだった?」
長兄「……前から思っていたけど、お前と次兄って見た目以外が……どこか似ているよな」
次姉「」
…………
322 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/22(月) 00:52:18.70 ID:vyqKvtyE0
商人の家、応接間。
家政婦「お客様が席に着かれたら、すぐに紅茶とお菓子をお持ちしますね?」
末妹「ありがとう、家政婦さん」
家政婦「それでは、また後ほど……」パタン
次兄「10時ごろ来るって言ってたのに……8分過ぎたよ、無事に辿り着けるかなあ」
末妹「師匠様お気に入りのカフェまでは二人で来るって、だからそんなに長い距離じゃないし……大丈夫よ」
次兄「距離が短くても、途中で何かトラブルがあれば」
末妹「そんな物騒な場所じゃないわ、しかも昼間から」
次兄「いやいや菫花さんのこと、顔の怖い人と目が合っただけで容易に挫折、いや気絶しかねない」
末妹「お兄ちゃんたら、いくらなんでも……」
末妹「……さすがにそこまでは……ねぇ……うん……うーん……」ミケンニシワ
次兄「ほぉら、不安になってきたでしょ?」
末妹「で、でも菫花さん自分であれだけ『大丈夫』と力説していたし、頑張る時は頑張る人だもの、私、信じる!!」
(仮想の窓で見ている野獣「…………」)
(野獣「師匠と菫花が完全に南の港町を発つまではこうして様子も窺えるが」)
(野獣「カフェから商人の家まで1.5km……14の女の子にその距離の一人歩きを心配されるハタチの男…………」)
(野獣「…………『自分』を客観的に見るのは、なかなか辛いものがある……」ハァ)
323 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/08/22(月) 00:57:32.93 ID:vyqKvtyE0
※今夜はここまで……台風で天気図もすごいことになっていますが、皆様何事もなく済みますように……※
324 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/22(月) 02:05:54.84 ID:FTf6pwTgO
乙
末妹ちゃんにこんな反応させる王子ェ…
325 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/26(金) 06:13:10.98 ID:A1rihvAWO
時期が過ぎてしまったけど、せっかくだから俺はお盆絵の続きも描くぜ!
次兄の瞳の色は想像なんだぜ!
http://s3.gazo.cc/up/60751.jpg
326 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/08/27(土) 00:27:13.36 ID:Vre1Itxi0
※日曜深夜から音沙汰なくてごめんなさい、土曜日の夜くらいに更新します……※
>>325
胡瓜と茄子を乗りこなす兄妹シリーズ(?)+野獣&王子、めっちゃ可愛くて嬉しいぜ!!
あと次兄の瞳は一応灰色という設定だが周囲の明暗で薄茶にも見えることに今なったので問題なしだぜ?
327 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/27(土) 23:50:56.77 ID:zlIPDL7j0
…………
そのころ、料理教室は休憩時間……
幼馴染男「へえ、それで次兄君は来ないのか」
幼馴染男「しかし……次兄君と末妹ちゃんの友達にしてはちょっと歳が離れているかな?」
長姉「でも違和感なかったわ、なんだか子供みたいな人でね、おまけに極端に内気だとかで」
長姉「うちの店に買い物に来たって話したでしょ?」
長姉「実はその時にね、マフラーで顔をぐるぐる巻きにして入って来たのよ」
幼馴染男「あれ……それって料理教室が休みで、うちの先生に外国のお客さんが来た日……だったよね?」
長姉「ええ、私と次姉で店番した日よ」
幼馴染男「その日なら……ほら、あのカフェオレが評判のカフェの近くで、それらしき人に道を聞かれたよ」
長姉「え」
幼馴染男「君んちの店に行きたいって、顔は隠れていたけど、体形と声からすると若い男性だなとは思ったよ」
幼馴染男「困っていたふうだったから、教えてあげたら礼儀正しいお礼を言われてね」
幼馴染男「顔は隠したままだったけれど」
長姉「……あんた、そんな怪しい風体の人物を、か弱い乙女である私のいる店に……」
幼馴染男「え」
長姉「たまたまあの子らの友達だったからいいものを、本当に悪漢だったらどうするのよ!?」
幼馴染男「……確かに顔を隠して怪しくはあったけど、悪い人には思えなかった」
328 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/27(土) 23:53:08.21 ID:zlIPDL7j0
幼馴染男「君んちの近所には憲兵隊の詰所もあるし」
幼馴染男「それに悪事を働こうって人間なら、あからさまに怪しい姿で通行人に道を聞くような真似はしないよ」
長姉「そ、それはそうかもしれないけど……」
幼馴染男「……それなりに財産持ちの父が亡くなったら、いろんな人が遺産目当てで現れて」
幼馴染男「借金が発覚したら、今度は別のいろんな人が現れて」
幼馴染男「先生に出会って何かと救われたけど、学者の世界も思っていた以上に……世知辛くてね」
幼馴染男「ぬくぬく育った子供のころとは違って、世の中にはいろんな人間がいるのを知ってからは」
幼馴染男「……なんというか、本当に勘ではあるけど」
幼馴染男「少なくとも『この人は悪い人じゃない』という印象は外れたことがないよ」
長姉「…………」
幼馴染男「……ってね、ごめん、君に責められて初めて君が怖い思いをしたと気付いた」
幼馴染男「言い訳だね、本当に……何事もなくてよかった、結果オーライに過ぎないよね、ごめん」
長姉「……じゃない」ボソ
幼馴染男「ん?」
長姉「バカね、真面目に謝ることないじゃない」
長姉「そうよ……あんたが桁違いのお人好しなんて前から知ってたもの」
329 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/27(土) 23:55:21.67 ID:zlIPDL7j0
長姉「そんなあんたじゃなきゃ私みたいな女と付き合ってくれないって、それも知ってるもの」
幼馴染男「……えーと……」
長姉「……それに次姉も言ってた、変だけど少なくとも危険なお客様ではないと、すぐにわかったって」
長姉「私も店に入って来た時はびっくりしたけど」
長姉「確かに顔を出す前から気が弱そうな中身は丸見えだったわ」
長姉「だから、あんたが悪い人じゃないと思ったのも間違ってない」
長姉「……さっきのは私が怖い思いをしたからと言うより、あんたのお人好しにちょっと呆れただけ」
幼馴染男「うん、確かに呆れられても仕方ないね……」トホホ
長姉「だからって鈍感で何も考えていない世間知らずなんかじゃないのよね、あんたは」ギュ
幼馴染男「っ、長姉!?」ボワッ
長姉「やだ、手を握られただけで真っ赤になって」クス
長姉「……もういいの、何事もなかった済んだ話は」
長姉「でもね、本当に悪い人が現れたら……私のこと、守ってくれる?」
幼馴染男「も」
幼馴染男「ももももももももももももも、もちろんだとも!?」
長姉「……ありがと、頼りにしているわ」フフ
330 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/08/28(日) 00:25:10.63 ID:DbElbTPu0
そうです、今は料理教室の休憩時間。
受講生1「……何の話をしているかわからないけど、あの二人の周囲の空気が甘ったるいのはわかるわ」
受講生2「やだ、まだあの彼に未練あったの?」
受講生1「そんなんじゃないけど……私も早く彼氏ほしいなって思っただけ」
受講生2「ねえ、このあいだ町で素敵な人見かけたじゃない、アッシュブロンドの美少年」
受講生1「ああ、旅行者ぽかったけど……すっごい可愛かった」
受講生2「あそこまでのレベルはさすがに求めていないけど、望みを捨てなければいつかきっと私達にも」
受講生1「そうね、そのためにも頑張らなくちゃ、料理の腕磨き!」
未亡人「……」
未亡人「何の話をしているかよくわからないけど、あの子達からやる気が伝わってくるのは間違いないわ」
未亡人「長姉さんと幼馴染男さんもいい雰囲気だし、若い皆さんから私まで元気を貰える気分よ」
未亡人「料理教室を開いて本当によかったわ……」
…………
いっぽう、自分が話題にされているとはつゆ知らずの王子……
王子「……カフェからここまで、何事もなかった……」ホッ
王子「えーと、個人的な客なのだからお店から入っては駄目、ちゃんとお住まいの玄関に回って、と……」
王子「深呼吸深呼吸……」スーハー
王子「呼び鈴、これだな、さあ……鳴らすぞ!!」
331 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/08/28(日) 00:27:39.78 ID:DbElbTPu0
※今回はここまで……呼び鈴は紐を引いて鳴らすタイプです※
ダレカラブシーンノカキカタヲオシエテクレェ
332 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/08/28(日) 02:31:02.76 ID:vVlelSpGO
乙
大丈夫、良い雰囲気だ
幼馴染男マジ聖人
333 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/03(土) 23:41:41.82 ID:0CuJ3kkU0
商人の家、玄関の扉の外側……
王子の手:グイッ
呼び鈴の紐:ブツッ
王子「」
切れた紐:ダラーン
王子「…………あああああやってしまったあああああ!!」
商人の家、玄関が見える窓の内側……
次兄「……菫花さん、何やってんの?」
家政婦「真下に引いて耐え得る構造ではなかったようですね、そもそも引きながら前後か左右に振らなくては鳴らせませんが」
次兄「それくらい常識でしょーに、て言うかどれだけ力込めて引っ張ったんだろ?」
末妹「緊張しているのよ……」
家政婦「呼び鈴の日常点検も甘かったのです、私の役目ですのに……」
家政婦「丈夫な紐につけ替えるのは後にしても、とにかくお客様を招き入れなくては」
末妹「待って家政婦さん、私が行きます」
……
王子「どど、どうしよう、台や梯子なしにあそこ(呼び鈴の位置)まで届かないし……」ブツブツ
王子「いや、ここは家の人に素直に謝る一択……」ブツブツ
ドア:カチャ
末妹(……ドアが開いたのも気付かないみたい)
王子「あああ恥ずかしいいいいい歳して呼び鈴ひとつ満足に鳴らせないのかあああ」
末妹「菫花さん!」
王子「はっひゃっ!?」
334 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/09/03(土) 23:42:18.19 ID:0CuJ3kkU0
※前回以来音沙汰なしの上に短くてすみません、明日にでも続きを…※
335 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/04(日) 00:53:23.86 ID:QEPvJNi+O
乙
冷静な家政婦さん素敵
336 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/04(日) 23:57:00.47 ID:KTgC0RT70
末妹「ようこそ、お待ちしておりました」
王子「あ、あの、実は僕」アワワワ
末妹「ええ、窓から見ていました……でも大丈夫です、今度は丈夫な紐につけ替えれば」
王子「見(られ)ていた……」
末妹「だから、何も心配いりません」
末妹「……菫花さん怒られるのが怖かったわけじゃないって、わかっていますよ私?」ニコ
王子「あ」
王子「……ご、ごめんなさいっ!!」
末妹「大丈夫ですから、本当に」
末妹「さあ、次兄(あに)も待っています、どうぞ」
……
商人の家、応接間。
次兄「こんちはー菫花さん」ウヘヘ
王子「次兄くん……こんにちは」
次兄「意外と力持ちっすね?」
王子「」
末妹「お兄ちゃんたら!」
337 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/05(月) 00:14:14.49 ID:Pbe4L40P0
家政婦「いらっしゃいませ、菫花様……」ペコリ
次兄(家政婦さん良いタイミングで登場)
王子「あ、家政婦さん……あの……すみません、僕さきほど」
家政婦「呼び鈴の紐は既につけ替えました、以前より丈夫なものに交換したのでご安心を」ニコ
王子「はう(素早い……いつの間に)」
家政婦(こちらの点検の不備を謝ったりしようものなら、余計に取り乱される……と、次兄様からは伺いましたが……)
王子「あ、ありがとう、ございます……」
家政婦(……これでよろしかったのでしょうか?)アイコンタクト
次兄(完璧です)グッ
末妹「ありがとう家政婦さん!」
家政婦「どういたしまして」フフ
家政婦「さて、今日はココアと軽い口当たりの焼き菓子を用意しました」カチャカチャ
次兄「おー、ココアは久しぶり、嬉しいなっと♪」
家政婦「ごゆっくりどうぞ……」ペコリ
王子「……」
末妹「菫花さん、南の港町を発ったら、次はどちらへ?」
王子「ぅはいっ」
338 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/09/05(月) 00:15:34.16 ID:Pbe4L40P0
※今夜ここまで、なかなか進まなくてすみません、おやすみなさい……※
339 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/05(月) 02:05:51.56 ID:f2BfQFXKO
乙
有能な家政婦さん素敵
340 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/09/06(火) 22:58:55.04 ID:255YKykH0
※予告のみ。早くても次の土曜日更新です。しばしお待ちを※
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/07(水) 12:16:09.61 ID:8Ju1TPk1O
サーイェッサー
342 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/10(土) 23:36:22.51 ID:w6ag8xGC0
次兄「菫花さん、リラックスリラックス」
王子「そ、そうだよね、もうこの場には君達しかいないのに」ココアゴクー
王子「……おいしい……」ホッ
王子「ええと、師匠のプランでは……このあとは東側の国境付近に紹介された牧場があるので、それが次の目的地です」
王子「ある程度北上したら、今度は国の西側に横断しつつ、騾馬の産地をいくつか巡って再び南下」
王子「南側の国境都市に入ったら、内陸を通って北上しながら森へ帰ります」
末妹「移動手段はどのように?」
王子「森からここまで内陸の道を来た時のように、乗合馬車を乗り継いで、時々は徒歩で」
次兄「優雅な旅ですなあ」
王子「うん、それはそうだけど……これから地道に暮らすための準備の旅でもある」
王子「……師匠の言葉だけどね」
末妹「この旅で騾馬さんを連れ帰って……そして、お屋敷に帰った菫花さんはどんなお仕事を?」
王子「しごと」
次兄「地道な暮らしは労働が前提だもんね」
王子「……………………」シーン
末妹「……き、聞いてはいけない質問だったかしら」オロオロ
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/11(日) 02:10:38.87 ID:+l0qUWfnO
王子だし働くって概念自体なかったんだろうなぁ
344 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/12(月) 00:06:13.19 ID:9oy2EtiR0
次兄「何もこの場で『具体的に』答えて欲しいわけじゃないんだろ、末妹?」
末妹「え、ええ」
末妹「……でも、菫花さんを悩ませてしまうなら、取り消しま」
王子「いいいいいえ、いいえ、答えるよ、答えられるよ!!」
王子「考えてはいるんだ……でも、今はまだはっきりとした道は見えない」
王子「と言うより『何を』『どう』『どこから』考えたらいいのかさえ、わからなくって、だから」
王子「この旅で、少しはヒントが見つかればいい、とは思っている」
王子「……今現在、答えられるのはここまで……」
末妹「……見つかればいいですね」
王子「あ」
末妹「菫花さんは……この世界で暮らし始めて日が浅い、今は考える時期で当たり前だって……思いますよ?」
王子「……うん……ありがとう、末妹さん」ヘヘ
王子「……」
王子「今さら取り繕っても意味ないよね、特に君達相手に」ポツ
末妹「取り繕う?」
王子「……君達より年上なのに、もう大人なのに、何かと情けないと、最近思うようになって……」
345 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/12(月) 00:08:13.60 ID:9oy2EtiR0
王子「でも末妹さんがさっき言ってくれたように、君達よりこの世界での経験は全然足りないし」
王子「……ううん、君達と同じ時代にこの年齢差で生まれても、きっと僕の方が世間知らず」
王子「二十年間の人生で、見て来たものがあまりにも少ない、触れて来たものがあまりにも少ない」
王子「……自分の力を使って何かをした経験があまりにも少ない」
王子「そして、どこかでそれを認めたくない自分もいる、だから取り繕ってみたり」
王子「……過剰に恥ずかしがったり落ち込んだりも、きっと認めたくないが故の……」
末妹「……」
王子「……と、自覚ができても、すぐに受け入れることはできないと思う」
王子「恐らく、行ったり来たりしないと前に進めないんだ、僕は」
次兄「三歩進むまでに二歩下がる動作が不可欠なのですな?」
王子「さ、下がる頻度は減らしたいとは思っているけど……」
末妹「……それ全部ひっくるめて、菫花さんですよ」
末妹「取り繕ってしまうのも、そうやって取り繕うのを意味がないと思ってしまうのも」
末妹「行ったり来たりしながら前に進むのも全部」
次兄「そうです、そして俺達そんな菫花さんが好きなのですっ!!」ババーン
王子「 」
346 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/12(月) 00:09:30.10 ID:9oy2EtiR0
末妹「……こ、今度こそ固まっちゃった……?」
次兄「……そんなにショック受けなくてもいいじゃん……」ヨヨヨ
王子「」ハッ
王子「だ、大丈夫、ちょっと意表を突かれて面食らっただけで、意識までは失っていないよ!!」
王子「……ありがとう、末妹さん、次兄君」
王子「君達の言葉はいつも……僕は無理をしなくて良いのだと、そんな安心を与えてくれて」
王子「同時に、僕はこのままではまだまだ駄目なんだ、変わらなきゃならない、そんな決意も新たにさせてくれる」
王子「……矛盾しているよね、おかしい……かな?」
末妹「……」フルフル
末妹「おかしくなんかないですよ」
末妹「これから少しずつ、無理をしないで、私達や菫花さん自身がまだ知らない菫花さんに変わって行く」
末妹「私や次兄(あに)も同じ、少しずつ、自分のできることを増やしながら大人に近づく」
末妹「……ね、何もおかしくなんかないでしょう?」ニコ
王子「末妹さん」
次兄「そうだよ、うちの二人の姉達だって昔より……」
次兄「……なんだろう、毒が抜けた? 牙と爪を引っ込めた?? 鬼そのものから普通に怖い女子にレベルダウンした???」
347 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/12(月) 00:11:27.61 ID:9oy2EtiR0
次兄「とにかく昔よりすごく丸く……体形がじゃないですよ? 態度が丸くなって、普通に俺達とも話してくれるようになった」
王子(野獣と話す時もだけど、どうして次兄君はリスクの高い言葉を選ぶんだろう?)
末妹(まかり間違っても一連のお兄ちゃんの言葉が二人の耳に入りませんように……)オイノリ
次兄「脳筋の堅物かと思われていた長兄だって最近は何かと柔軟になって」
次兄「たまに家政婦さんの甲斐甲斐しく働く姿を眺めている間の抜けた表情をうっかり見せたりもする」
末妹「……私それは知らなかった」
次兄「見せると言っても数日に数秒間くらいの頻度だから学校や店番の時間の長い末妹が気付かなくても当然」
次兄「……みんな生きている限り少しずつ変わって行くのです、我々若者ならば尚更、成長という名前の変化を」キリッ
王子「みんな……生きている限り……」
王子「……そうだね、明日のその先が見えないのも、それを恐れているのも、僕だけではない」
王子「でも……多くの人は縮こまったりも隠れたりしもしないで立ち向かっている……君達のように」
末妹「何度も言いますが、無理することはないのですよ?」
王子「うん、わかっている」ニコ
王子「……今なら……話せるかな」
末妹「え?」
王子「この旅の中で……本来の行程からは寄り道だけど、ひとつ……やってみたい事、いや、行ってみたい場所があってね」
348 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/12(月) 00:13:14.20 ID:9oy2EtiR0
王子「まだ師匠にも持ちかけていないけれど……」
王子「……小国の王と王妃と……そして王子の墓、に」
末妹「!」
次兄「って、確か地味ながら観光地になっている場所……だよね?」
王子「そうだよ、その場所……かつての小国の王の城が合った場所を、訪れたい」
次兄「あれ、歴史書では、お城と歴代王族の墓所は土地が離れていたような?」
王子「……暗殺された『彼等』は、先祖達の墓所には葬られなかったと、師匠が」
王子「だから、そこに眠っているのはその3人だけ、正確には王と王妃と骨格模型だけど」
末妹「模型?」
王子「魔術師ギルドに、教材用に置いてあった出来の良い骨格模型、それが王子の白骨死体の正体」
王子「師匠が言うには動物の骨すら使っていない『木と石膏と粘土と顔料と企業秘密』だそうで」
王子「……まあそれはいいとして、『僕の両親のお墓』に行ってみたい……」
次兄「……その、大丈夫、なの?」
末妹「……菫花さん……」
王子「たとえその前で気絶しても、と師匠には話すつもりだよ……とは言え」
王子「牧場を巡り終えた帰途の更に終盤になるはずだから、少し先の話で……それまでに僕の決心は鈍るかもしれないけど」
349 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/09/12(月) 00:14:17.94 ID:9oy2EtiR0
※昨夜はほぼ寝落ち状態ですみません、今夜はここまで※
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/12(月) 02:06:04.70 ID:HoXxI+KKO
乙
次兄が人間相手に好きなんて言うとはびっくりー
351 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/18(日) 23:03:11.31 ID:U3BHccjz0
……
(野獣「……やれやれ、師匠に旅程を教えてもらった時から、薄々こうなる予感はしていたのだが」)
(野獣「往路は小国の王都だった地域を遠巻きにするように南下し」)
(野獣「復路はその土地を通りながら屋敷のある森へ戻る……?」)
(野獣「……まさか、最初から狙っていたのだろうか、師匠……」)
……
師匠お気に入りのカフェ。
給仕1「あれ、あのお客さんさっきから手鏡を見つめている……そこそこ年配のおじさ……紳士なのに」
給仕2「自分大好き? それとも鼻毛が気になる?」
店長「そこ2人、くだらないお喋りはやめて働く!!」
師匠「……ふむ」
師匠「野獣もあっちの世界から仮想の窓で、この子らの様子を見ているのだろうが……」
師匠「あいつの事だ、儂が仕向けたくらいは思っていそうだなあ」
師匠「あの土地を通る時にさりげなく話題にしてみようか、程度には考えていたが……あくまでその程度だ」
師匠「正直、儂だってこれでも驚いているのだぞ?」
師匠「ま、菫花がどういう心境でどんな意図であろうとも」
師匠「あちらから切り出すまで、こちらからは振らないでおいてやろう」
……
352 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/18(日) 23:05:34.96 ID:U3BHccjz0
次兄「おっさんに話しをするのはまだ先……と」
王子「うん」
次兄「……詰めが甘い、菫花さん」キリッ
王子&末妹「「!?」」
次兄「あのおっさんの事です、鏡の魔法でこちらの様子を窺うくらいワケないですよ?」
王子「あ」
次兄「この旅行中、菫花さんに魔法の使用を禁じても、自分はヘーキで使うような御仁に決まっています」
次兄「あと、もしかしたら野獣様も見ている可能性あるけど」
末妹「……そうか、師匠様と菫花さんが私達の町にいる間は……」
次兄「まあ菫花さん的には野獣様に知られるのは良しとしても」
次兄「あのおっさんの事です、菫花さんがいつどこでどのように切りだすのか……」
次兄「心の中で、ワクワクしながらほくそ笑みながらニヤニヤしながら待ち構えることになるでしょうな」
王子「……」
王子「……でも僕は、君達にはあらかじめ話しておきたかったから」
王子「さっきは決心が鈍るかもとは言ったけど……本当は、話しておくことで自分の退路を断ちたかったんだと思う」
王子「いいや、断ちたかったんだ」
次兄「……菫花さんが『だ』と言い切った……」オオオ
353 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/09/18(日) 23:50:46.85 ID:U3BHccjz0
※時間開いちった…この続きは明日に…おやすみなさい※
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/19(月) 02:04:50.92 ID:j9RyIapJO
乙
渋いおっさんが熱心に手鏡を覗き込んでいる光景というのはなんか…アレだな
355 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/19(月) 23:53:11.75 ID:TWXB0LOf0
王子「お墓に行きたい理由は……今は、まだ話せないけど」
次兄(おっさんも聞いてますしね)
王子「でも、決意だけは君達に」
王子「次兄君と末妹さんは、僕の友達だから」
王子「家族にまだ言えない話でも、先に打ち明けられる存在が、友達……だと」
王子「……そう思ったから、君達ふたりに話したんだ……」
末妹「……私……」
末妹「さっきまでは菫花さんに、無理はしないで、と言うつもりでいたのだけど」
末妹「今は、頑張って、と言いたくなりました」ニコ
王子「……ありがとう……」
次兄「俺も俺も俺も、応援しますよ?」ニュイ
次兄「内面の弱さにもおっさんによる趣味の試練にも負けまいと」
次兄「初心を貫こうとする意志をごく稀に垣間見せる菫花さんも、俺達は好き」
王子「 」ニドメ
末妹「……お兄ちゃん、今日はいったい……どうしたの……?」
次兄「末妹まで俺を今まで見たことない昆虫に遭遇したかのような目で見ないでください」
356 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/20(火) 00:55:33.51 ID:EzFefl9x0
次兄「最初に釘を刺しておくけど、野獣様が見ているかもだからエエカッコしいしているわけでは無くてよ?」
次兄「菫花さんは確かに、我々兄妹の愛する野獣様の原点にして素材にして表裏一体」
次兄「末妹はともかく、俺が菫花さんをなんとかどうにか助けねばと思った理由はそれのみ」
次兄「……だったんだけど」
次兄「野獣様とは別人格の菫花さんが、もしも、今とは違うタイプの人だったら、とある時ふと考えてみたら」
次兄「タイプによっちゃ今こうして一緒にお茶の席を囲んでいるかはわかんないし?」
次兄「菫花さんがこんな人だから俺も安心してツッコミ入れられるし?」
次兄「目の前で気絶されたら対処もしようと思うし?」
次兄「大事な末妹があれこれ世話を焼いている様子も安心して見ていられるし?」
末妹「お兄ちゃん……」
次兄「……で、結論としては」
次兄「やっぱり俺と末妹の大切な友達だから、それはやっぱり、この俺ですら、ほらあの」
次兄「菫花さん自身に好意を持ってんじゃないかなー? って、気付いちゃったわけですよって言わせんじゃないわよぉ!!」
王子「 」シロメ
末妹「菫花さん、今度は本当に意識が!?」
王子「……っ大丈夫、戻って来れたよ、辛うじて持ちこたえたよ!!」
357 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/09/20(火) 00:56:35.89 ID:EzFefl9x0
※今回これだけです、寝ますごめんなさい※
358 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/20(火) 01:36:21.67 ID:pUGwhuPGO
おやす
王子も好きって言われるの慣れてないんだろうなぁ
359 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/23(金) 00:11:24.30 ID:p7ABdprZ0
……
(野獣「次兄が菫花自身を快く思ってくれているとわかって、私も安心したし嬉しいが」)
(野獣「その……もう少し伝え方を……こちらまで赤面してしまう、と言うか……」カァァ)
(野獣「いやわかっているぞ、次兄はあれでも優しいし、人間関係でおそろしく不器用なのも……わかってはいるがなあ……」)
……
王子「ぼ、僕は……こんなふうに好意を示されるのに慣れていなくて……ましてや今の時代に来る前の、人生の大半は……」
王子「……だからこういう時、どう返せばいいのかわからない、けど」
王子「僕も次兄くんのこと、好きだよ……!!」ダッ
次兄「菫花さんっ……!!」ダダッ
……
師匠「うわあ」
……
末妹「……私よくわからないけれど」
末妹「世に言う『男同士の友情』って、こんな感じ……なのかしら??」
……
師匠「……末妹嬢はまだ子供だから仕方ないが」
師匠「こいつらを男子の見本にしないでくれんかなあ……」
……
(野獣「……次兄と菫花がお互い駆け寄るあたりで、抱擁し合うと思ってハラハラしたが」)
(野獣「固い握手で済んだ……」ホッ)
……
360 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/09/23(金) 00:12:04.25 ID:p7ABdprZ0
※続きは土日かな。最近コマギレですみません※
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/23(金) 01:06:27.51 ID:UNWUyll9O
なんだこいつらww
362 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/26(月) 00:00:31.73 ID:pT1LTQpC0
商人の家、玄関。
家政婦「お帰りなさいませ、旦那様」
商人「ただいま……菫花君は来ているのかい?」
家政婦「ええ、次兄様と末妹様と応接間でご歓談されていますわ」
商人「ふむ、それでは少し顔を出して、ご挨拶させていただくかな?」
……
応接間……
扉:コンコン……
商人の声「私だよ、ちょっといいかな?」
末妹「お父さんね、どうぞ」
扉:ガチャ
商人「いらっしゃい、菫花く…………」
商人「…………次兄、何があったんだい?」
次兄「何って、固く握手を交わし男の友情を確認している最中ですが?」ギュー
王子「こんにちは商人さん、お邪魔しています」ギュー
商人「……そ、そうなんだ」
商人「……何か見たことも聞いたこともない異国の格闘技か何かと思ったよ」
363 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/26(月) 00:01:29.65 ID:pT1LTQpC0
次兄「普通に握手しているだけなんですがねえ」
商人「うん、友情を確かめ合うのは大いに結構だが」
商人「なんだか二人とも握り合う手の血が止まりそうな勢いで……ほら怪しい色になって来た、痛くないかい?」
次兄「言われてみれば手の感覚が……今日の所はこんなもんにしておきましょう」パッ
王子「そ、そうだね……」パッ
王子「……あ、血流が戻ってきた」
次兄「本当だ、手がじわーってするぅ」
商人「ははは……せっかく家政婦さんが用意してくれたココアが冷めてしまうぞ?」
商人「菫花君、これからもこの子達と仲良くしてあげてね」
王子「は、はい、僕の方こそ……」
商人「ではまた後でね、帰る時は見送らせておくれ」
王子「はい、あ、ありがとうございます」
末妹「お父さん、私達にご用があったんじゃないの?」
商人「いやいや、軽く挨拶したかっただけさ」
商人「それじゃ私はこれで、ごゆっくり……」
扉:パタン……
商人「……」
364 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/26(月) 00:02:38.64 ID:pT1LTQpC0
商人「……改めて思うが、次兄は我が子ながら風変わりで」
商人「その風変わりな所も受け入れてくれそうな友達ができるなんて、あの子には悪いけど少し前までは思ってもみなかった」
商人「親としては素直に嬉しい物だな」フフ
商人「……さっきの様子は勢い余って危険な方向へ行ってしまわないかちょっと心配になったけど」
……
(野獣「ないない、それだけは断じてないからな商人!!」ブンブン)
……
師匠「(息子の友人が)こいつでいのか、商人?」
……
少しのち。
商人「またおいで菫花君、師匠様……お父上にもよろしく」
王子「美味しいココアとお菓子ご馳走様でした、それと」
王子「あの……呼び鈴の事、本当にごめんなさい」
家政婦「本当に、お気になさらないでくださいませ」ニコリ
商人「旅の無事を祈っているよ」
王子「ありがとうございます」
365 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/09/26(月) 00:18:37.61 ID:pT1LTQpC0
次兄「おっさんにも負けないでね? まあ勝てないのはわかっているけど」
王子「あ、ありがとう」
末妹「……この先も、実りの多い旅になりますよ」
王子「うん、今日の事も含めてね」
王子「野獣もきっと、応援してくれると思う」
末妹「そうですね、きっと」ニコ
王子「また会おうね、次兄君、末妹さん」
末妹「ええ、次はお屋敷で」
次兄「お屋敷の皆様を交えての再会、楽しみにしています!」
……
(野獣「友達と友達の家族に笑顔で見送られる菫花……」)
(野獣「……よかったな、お前にそんな平凡で、平穏で、それゆえに尊いひとときが訪れるとは」)
(野獣「それをこうして見守れる私も幸せだ」)
(野獣「……両親の墓、か……」)
(野獣「もはやお前の真意は語ってもらわなくては理解できないが、おそらくは」)
(野獣「その先に待っているのは、間違いなく今より少し成長した菫花自身だろうな……」)
……
366 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/09/26(月) 00:19:22.64 ID:pT1LTQpC0
※ここまででした。この後はある程度まとまった量を書き溜めようと思うので、更新間隔すこし開くかもです※
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/09/26(月) 00:48:52.18 ID:QG5UBgoBO
乙
それは待ち遠しくも楽しみ
368 :
◆54DIlPdu2E
[sage]:2016/10/12(水) 22:55:26.96 ID:SS3Kqd5J0
※お知らせのみ。来週をめどに、復帰予定です※
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/12(水) 23:16:56.02 ID:Qm9WiDzdO
了解っすー
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/18(火) 22:47:31.80 ID:tS4nFfrBO
そわそわ
371 :
◆54DIlPdu2E
[sage]:2016/10/20(木) 22:57:34.17 ID:pJUbkhON0
※予告。今週の土曜日の夜に更新します、遅くなりました…※
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/21(金) 00:53:22.93 ID:FejcRIzSO
ギリギリ今週中だからセフセフ
373 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/10/22(土) 23:16:48.17 ID:KEUGA59S0
……………………
それからしばらく日が経った金曜日の夜、魔法の鏡を通してのおしゃべり……
末妹「……もうすぐ師匠様や菫花さんがお帰りになるから、楽しみですね皆さん」
執事『師匠様のことですから、きっちりとあらかじめ決めた日付でお戻りになるでしょう』
料理長『それに合わせて晩餐の準備も進めなくてはなりません、久しぶりに腕が鳴ります』
メイド『うふふ、お屋敷や騾馬さんの小屋があちこち華やかになりました、早くご覧になっていただきたいですー』
庭師『立派に完成した騾馬さんの小屋そのものも見てほしいです!!』
メイド「ええ、きっとお二人も楽しみにしていらっしゃるわ……」
次兄(おっさんと菫花さんがいようがいまいが、俺の熱い視線は執事さんに注がれ続けるのであった)ジー
執事『……ほんと、変わり映えしないお方で』ハァ
末妹「……」
末妹(師匠様と菫花さんがお屋敷に戻る前、かつての小国の王都)
末妹(予定では明日に通るはず……)
末妹(……頑張ってくださいね、菫花さん……)
…………
374 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/10/22(土) 23:18:28.14 ID:KEUGA59S0
翌日正午の少し前、南の港町……
トコトコ……
末妹「あ、お兄ちゃん、図書館からの帰り?」
次兄「おお末妹、今日は土曜授業だったそうだが……もう終わったの?」
末妹「ええ、お昼で終わり。希望者だけの補習授業だから」
次兄「そっか……んじゃ一緒に帰ろ、今日の昼ごはんは長姉ねえさんが用意してくれるはずだから」
末妹「……『だから』とはどういう意味?」
次兄「長姉ねえさんの料理とドヤ顔を前に、俺がうっかり余計な発言をしそうになったら止めて欲しい」
末妹「余計だとわかっているなら、言わなければ良いのに」
次兄「それができるくらいなら今の俺はこんな俺じゃない、そう思いませんこと?」
次兄「……自助努力はするけど」
末妹「うん、『間に合えば』止めるからね?」
次兄「ありがとう、俺の理性の守護天使様……別名、社会的な意味での安全装置様」
トコトコ……
末妹「本を借りて来たの? 3冊も」
次兄「ああ、2冊は勉強用だけど……これだけは個人的に」スッ
末妹「どれどれ……『歴史の中の魔法』……?」
次兄「そうだよ」
375 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/10/22(土) 23:19:50.63 ID:KEUGA59S0
次兄「末妹は、なぜ野獣様が、菫花さんが……『王子様』が魔法を使えるのか、考えたことある?」
末妹「なぜ……」
末妹「『王子様』は……私達くらいの年頃から師匠様達の魔術師ギルドで魔法を習って、だけど」
末妹「……元々魔法の素質がなくては習おうとは思わない、それに王子様は生まれつきの能力が高かったと」
末妹「でも当時は師匠様のような魔法使いの人も何人もいたのでしょう?」
末妹「師匠様と野獣様達は何かが違うのか、何が違っているのか……と」
末妹「少し不思議に思ったことならあるわ」
次兄「俺もだいたい同じように考えていたよ」
次兄「でね、俺はあの小国がなくなる辺りの歴史書ならたくさん読んだけど」
次兄「この本には今まで知らなかった小国が誕生したころの話が書いてあって……」
次兄「『王子様』が生まれた頃より更に何百年も昔、人間とも動物とも違う、本物の『魔物』があちこちにいて」
次兄「中には人間の脅威になる魔物もいて、人間との大きな争いも何度か起きた時代に」
次兄「『まっとうな方法』ではとても魔物達に対抗できないと考えた『英雄』のひとりが」
次兄「『強引な方法』で人間に敵対する魔物の力を敢えて我が身に取り込んで」
次兄「人間としては、同時代のどんな魔術師より強力な魔法の使い手になった」
次兄「で、結論を言うと、その魔力を使って戦った末に、自分達の土地を守り抜いた」
376 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/10/22(土) 23:22:03.76 ID:KEUGA59S0
次兄「その英雄が、小国を建国した人物……小国の初代の王、野獣様達のご先祖」
末妹「……!」
次兄「この本によると、初代王が強引に身に付けた魔力は彼の子孫にも受け継がれた」
次兄「しかし代を重ねるごとに少しずつ血は薄れ、また初代より後の世代の魔力の現れ方は不規則でまちまちだった」
次兄「あと、魔術師ギルドは大陸各地にあったけれど、小国で特に発展したのもその影響だったそうだ」
次兄「……記述はこれだけ、簡単なものだったけれどね」
末妹「……野獣様達の、あの優しい魔法に使われる魔力が」
次兄「人畜無害な魔法とも言うよな」
末妹「元々は戦うための力で、しかも人間に敵対する魔物から取り込んだものだったなんて」
末妹「……なんだか複雑な気持ち」
次兄「なんでも使う人次第だよ」
次兄「初代の王様だって人々を守るために使ったし」
次兄「おっさんなんて、今でも物凄い危険な魔法も使えるはずだけど」
次兄「末妹はそんなおっさんが怖い?」
末妹「……ううん」フルフル
次兄「逆に、野獣様達の父王様は魔法を使えなかったみたいだけど」
次兄「話を聞く限りの性格と生き方じゃあ、使えなくてよかったなあってしみじみ思う」
末妹「……」
377 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/10/22(土) 23:23:41.00 ID:KEUGA59S0
末妹「野獣様も、菫花さんも、自分は弱い人間だったと仰るけれど……」
末妹「実のご両親から役立たずと否定されても、そのために孤独になっても、もしかしたら」
末妹「自分を譲らなかった、譲らないものがあったのかも……」
次兄「?」
末妹「本当に弱かったら、きっと流されてしまう」
末妹「寂しさに耐えきれず、自分を曲げてでも父王様に認められるために魔法の力を使ったかもしれない」
末妹「でも、なんと言われようと、邪険に扱われようと」
末妹「王子様は人を傷つけない魔法だけを覚え、花や小鳥に心を寄せて、身分違いの図書館の娘さんを愛した……」
末妹「それって、本当に弱い人にはできないと思うの」
次兄「……そういう考え方もできるか」フム
次兄「確かに国民にとっての最大の脅威が他国でも魔物でもなく自分達の王様、なんて異常な状況で」
次兄「王子様がその王様に染まらないでいられるのも並大抵ではないのかもしれん」
次兄「……なんて話している間に家に着いたな」
末妹「ふふ、誰かとお話ししながら歩く道って一人で歩くより短いものね」
末妹「あ、郵便受けにお手紙が来ている」カタン
378 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/10/22(土) 23:24:40.40 ID:KEUGA59S0
次兄「ほとんど父さんの仕事関係だね、いつもの事だが」
末妹「そうね、えーと、これは領収書在中だって、こっちは見積書……これもお父さん宛だけど、普通のお手紙……」
末妹「あ」
次兄「この差出人……」
末妹「……親戚1さんと……」
次兄「……親戚2さんと親戚3さんの連名だ」
……………………
…………
とある国の北部、かつての小国、王都の跡地……
師匠「……ふむ、この近くだな」
王子「……」
師匠「ほれ、観光客がちらほらと」
王子「……地味ながらちょっとした名所化しているとは、本当だったのですね」
師匠「ま、お前から話を聞くのは後にして、まずは目的地に向かうぞ」
王子「はい」
…………
379 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/10/22(土) 23:25:58.65 ID:KEUGA59S0
※お待たせしました。今回ここまで。次回は来週のどこかで?※
「野獣様達」とは野獣&王子(菫花)のことですはい
380 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/23(日) 00:42:43.68 ID:XqexhDQJO
一日千秋でした、はい
割と平和な魔法ばかりだったから、危険な魔法を使う野獣達はちょっと想像つかないな
381 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/10/29(土) 22:47:59.95 ID:frUYjYPSo
※お知らせのみ。所用により更新少し延期します…ごめんなさい…※
382 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/10/30(日) 00:05:04.57 ID:SVBOf0V0O
いやん残念
でも待ってるよ
383 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/11/03(木) 23:18:49.71 ID:IQETRAQv0
……………………
商人の家。
商人「うん、親戚1さんが設けてくれる、彼等と私の話し合いの場についての件だよ」
商人「初めはあちらの3人が南の港町に来てくれるつもりでいたのだが」
商人「私の方に、仕事で西端都市を訪れる用事ができたのでね、彼等さえよければ……とこちらからお願いしたんだ」
長兄「今回はそれを承諾してもらえた返事なんだね」
次兄「敵陣に単騎で乗り込んで行くとは……父さんの戦法やいかに?」
次姉「何を言ってるのよ」ハァ
商人「敵陣も何も……別に戦いに行くわけじゃないし、勝った負けたって話でもないからね」
商人「彼らの自宅でもない、3人でゆっくり話せる部屋を予約してくれたそうだ」
商人「……まあとにかく、そんな不安げな顔をしないでおくれ、な、末妹?」ニコ
末妹「あ」
末妹「私、そんな顔していたのね……ごめんなさい」
次姉「……」
次姉「これはもう、あんたとおじさま達だけの問題じゃないのよ?」
次姉「自分ひとりのためにお父さんに労力を使わせているとか、そんな風に思っちゃ駄目」
長兄「そうだよ、これは家族みんなの問題なんだから」
次姉「そうよ、更に言うなら、私達家族とおじさま達の家族、みんなのね」
末妹「みんなの、問題……」
384 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/11/03(木) 23:20:25.85 ID:IQETRAQv0
……………………
商人の家。
商人「うん、親戚1さんが設けてくれる、彼等と私の話し合いの場についての件だよ」
商人「初めはあちらの3人が南の港町に来てくれるつもりでいたのだが」
商人「私の方に、仕事で西端都市を訪れる用事ができたのでね、彼等さえよければ……とこちらからお願いしたんだ」
長兄「今回はそれを承諾してもらえた返事なんだね」
次兄「敵陣に単騎で乗り込んで行くとは……父さんの戦法やいかに?」
次姉「何を言ってるのよ」ハァ
商人「敵陣も何も……別に戦いに行くわけじゃないし、勝った負けたって話でもないからね」
商人「彼らの自宅でもない、4人でゆっくり話せる部屋を予約してくれたそうだ」
商人「……まあとにかく、そんな不安げな顔をしないでおくれ、な、末妹?」ニコ
末妹「あ」
末妹「私、そんな顔していたのね……ごめんなさい」
次姉「……」
次姉「これはもう、あんたとおじさま達だけの問題じゃないのよ?」
次姉「自分ひとりのためにお父さんに労力を使わせているとか、そんな風に思っちゃ駄目」
長兄「そうだよ、これは家族みんなの問題なんだから」
次姉「そうよ、更に言うなら、私達家族とおじさま達の家族、みんなのね」
末妹「みんなの、問題……」
385 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/11/03(木) 23:21:38.01 ID:IQETRAQv0
次兄「そだね、考えようによっちゃ……あの3人……て言うか、(感じ悪い)あの2人も」
次姉「どこかですっぱり、けじめを付けなくちゃ……世の中で暮らして、それぞれ守るべき家族もいる限り、ね」
次兄「そんな感じのセリフ、俺が言おうと思っていたのに……」フシュン
末妹「けじめ……」
長姉「みんな、お話は終わった!?」ババン
末妹「長姉お姉ちゃん」
長姉「幸い私が手間取って、スープのパイ包み焼きが正午に間に合わなかったからいいけれど……」
長姉「さすがにこれだけ待たされたら冷めちゃうわ、待っていられない!!」プンスコ
商人「わかった悪かった、とりあえずお昼ご飯にしよう」
次兄「うん、実はさっきからはらぺこ」グー
長姉「じゃあ、すぐ用意するからね!!」
末妹「私、手伝うわ」ガタ
次姉「ふふ、私も」ガタ
長姉「ありがとう、ああ、これで家政婦さんも一緒に食卓についてくれたら完璧なのにぃ」
長兄「……」
商人「規則だからね、仕方ないよ……彼女はとくべつ職務熱心だし」
次兄「残念だったね兄さん」ニヤニヤ
長兄「な、なんの話だ」ヒヤヒヤ
末妹「……」
末妹(けじめ、か……)
……………………
…………
386 :
◆54DIlPdu2E
[sage]:2016/11/03(木) 23:24:06.61 ID:IQETRAQv0
※超短くてすみません、王子サイドまで行けなかった……今週末はちょっと厳しいので次回は来週です※
あと
>>383
はなかったことにしてください、作者は3超えた数がまともに数えられない模様……
(親戚達と商人の合計人数をミスりました)
387 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/11/03(木) 23:26:50.12 ID:IQETRAQv0
本編もsageてた_| ̄|○
ほんとごめんなさい、もう寝る、おやすみなさい…
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/04(金) 01:17:51.27 ID:pvy8NT/pO
どんまい乙
長兄まで可愛く思えてきた、いかんいかん
389 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/11/11(金) 22:34:01.67 ID:OqJ3DZoK0
※お知らせのみ。とりあえず、明日土曜日に少し更新。時間帯未定です…※
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/12(土) 23:22:25.74 ID:qI3J5XkNo
土曜が終わってしまう
391 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/11/13(日) 00:26:17.13 ID:qZtnwQwa0
師匠と王子……
師匠「ほれ、見てみるがいい」
王子「……本当だ、お墓に花が供えてある」
師匠「儂も実際にここに来たのは初めてだが」
師匠「聞いた話では、30年ほど前から、真冬を除いて花が絶えたことはないそうだ」
王子「30年前……」
師匠「小国がとある国に併合されて200周年の年、ちょっとした催し物があったとかで」
師匠「それがきっかけらしいな」
王子「……人々の生活に余裕ができ始めた時代に(小国の存在を)思い出してもらえた、そんな所でしょうね」
師匠「ははは、お前にしてはいい考察ではないか」
師匠「さて……どうする? 魔法でさりげなく人払いをしてやろうか? ん?」
王子「へ?」
師匠「半径50メートル以内に足を踏み入れた人間がふと他の場所に行きたくなるような、緩く且つ強固な結界をだな」
王子「い、いりませんよそんな、大きな声で師匠と話をしたいわけでもないし」
王子「……世間からただの観光客に見えるくらい、自然にこの場にいたいのです」
師匠「ふむ」
392 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/11/13(日) 00:35:58.57 ID:qZtnwQwa0
※遅れてごめんなさい。昨日(土曜)は色々ありまして……続きは今日中のどこかで……※
あれ、しかもまたsageていた…なにやってんだまじでorz
393 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/13(日) 01:28:12.07 ID:49b27KuyO
>>1
のペースでやったらええんやで
394 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/11/13(日) 22:45:25.06 ID:sFEOF2nO0
王子「……城は跡形もありませんが、庭園の一部はそのまま公園の花壇として活かされているのですね」
師匠「ああ、今の時季さすがに咲いている花はないが」
王子「二人とも、城の彩りとして代々受け継いだ庭園の花を育てさせてはいましたが」
王子「花そのものはあまり好きではなかったから、自分達の身近には置かなかった」
師匠「王はともかく王妃も、というのは珍しいかな、女とは花を好むものではないかと」
王子「茶色く枯れたり、花粉や葉を落としたり、虫を呼んだり」
王子「花も生きていますから、当たり前なのに」
王子「……実用以外の動物を好まなかったのと同じ理由ですよ」
王子「なので、当時のものとは銘柄が違いますが……花の代わりにワインを」コト
師匠(そこそこの高級品、我々が立ち去れば速攻盗まれそうだな)
親子連れ:キャーキャー コラ、ハシッタラアブナイヨー ハハハ…
王子「……」
王子「血を分けた我が子であろうと、出来が悪かった故に愛さなかった」
師匠「菫花」
王子「二人に安らかに眠りに就いてほしいと、肖像画の部屋で話したのは嘘ではありません、今もその想いは持っています」
王子「それでも、知りたいという想いも拭えない……」
師匠「何を、知りたいのだ?」
王子「……僕が生まれる前の両親、二人はどんな人達だったのでしょう」
王子「師匠は、ご存じ……なのですよね……?」
師匠「……顔色がいつにも増して青白いぞ、大丈夫か?」
王子「平気です、少しばかり寒いだけです!!」
師匠「強がりおって」ゴソゴソ「儂のマフラーも巻いとけ」ポイ
師匠「耳を塞がず喋れるようにもしておけば、顔も隠して構わん……儂は寒ければ魔法で暖まるからな」
王子「……師匠……ありがとうございます」
師匠「さて……どのへんから聞きたい?」
395 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/11/13(日) 22:46:09.97 ID:sFEOF2nO0
※これっぽっちですみません、次回は今週の後半あたりで※
師匠の過去語り、あまり長くはしない予定です……
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/11/14(月) 01:22:33.42 ID:mJ2Sjg0HO
乙
師匠やさしい
397 :
◆54DIlPdu2E
[sage saga]:2016/11/19(土) 23:48:29.31 ID:ho+19fBH0
※ごめんなさい週が変わっちゃう、でもこの日曜日中に更新あります※
398 :
◆54DIlPdu2E
[saga]:2016/11/20(日) 23:51:07.60 ID:Ubs41WGA0
王子「……僕が習った『王家のはじまり』は、都合良く書き換えられたものだった、そうでしょう?」
王子「当然、国民達に知らされた歴史も」
師匠「お前どころか、お前の両親も儂も生まれる前の話ではないか」
師匠「……そこから知りたいならざっくりと話してやるがな、儂の知る範囲で」
王子「お願いします」
師匠「そうだな、まずは……もともと小国は、周辺の国とあまり変わらない大きさだったのは知っているか?」
王子「え、知りませんでした」
師匠「400年ほど前……いや『現在から』600年ほど前、王家の始祖の『英雄』が王になる前の話だ」
師匠「で、その英雄、彼が人間に害をなす魔物から土地や人々を守った……それは嘘ではない」
師匠「そもそも、なぜ魔物と人間の間に争いが起こったかというと……」
師匠「……菫花、今のこの時代の常識は全て、お前が育った230年前から常識だったと思うか?」
王子「はい?」
王子「……いいえ、その……この時代には当時存在しなかったものがたくさんありますし」
王子「人々の生活もずいぶん変わりましたから」
師匠「だよな」
師匠「逆に今は存在が失われたものもあるが、それはさておき」
師匠「魔物の中でも知性があり文化を持つ種族」
師匠「600年前の彼等の『常識』の中には、後の世で言う『迷信』と呼ばれる考え方があった、人間がそうであったのと同じだ」
師匠「簡単に言うと、地表の世界を一度全て滅ぼせば太陽も滅び夜の世界になると、そう思ったらしく」
師匠「……太陽が滅びようものならこの星は『夜になる』どころでは済まされないし」
師匠「魔物でさえ半分くらいの種族は死に絶えるだろう」
師匠「それ以前に、この星の地表、薄皮一枚の上で何が起ころうが太陽はお構いなしだがな」
師匠「ま、自分達が住みやすい土地をもっと増やしたいために、人間に攻撃を仕掛けてきたわけだ」
師匠「儂のような魔術師達は当時から存在してはいたが、上位の……知性を持ち魔法を駆使する種族にはとても敵わず」
師匠「そこで英雄はかなり無茶な方法を選んだわけさ」
王子「……魔物達を倒すためですね」
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