末妹「赤いバラの花が一輪ほしいわ、お父さん」(最終章と後日譚)

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1 : ◆54DIlPdu2E [saga]:2015/10/27(火) 21:30:58.33 ID:X6dTKHtI0
前スレ

末妹「赤いバラの花が一輪ほしいわ、お父さん」 (旧タイトル【BとYとK】)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1426508868/

……の、続きです。あと少し、もうちょっとだけ、お付き合い願います。

本編投下は次回更新から
 

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1445949058
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/27(火) 22:57:12.16 ID:61O295tAO
立て乙おつ
最後まで応援してるぞ
3 : ◆54DIlPdu2E [sage]:2015/10/28(水) 19:57:50.72 ID:V4U2EeR20

※取り合えず連絡のみ。投下は早くても明後日の予定です…すみません※
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/31(土) 02:21:24.66 ID:XtDHdxPAO
後日譚もあるのか
楽しみだー
5 : ◆54DIlPdu2E [saga]:2015/11/01(日) 22:45:12.87 ID:Pxy8Pkbc0
久しぶりの、商人の家。

長姉「ただいま……」カチャ

家政婦「お帰りなさいませ、長姉様。今日はお早いのですね」

長姉「ええ、料理教室はお休みで、先生との打ち合わせだけだったから」

長姉「……みんなはお店?」

家政婦「今日は旦那様と次姉様が出ておられます。長兄様は材木屋さんにお出かけですよ」

長姉「そ、ま、普段通りね……」



商人の店。

長姉「ただいま、お父さん、次姉。お疲れ様」

次姉「あら、姉さん」

商人「おや長姉、お帰り……次姉、お客さんの少なくなる時間だから長姉と休憩しておいで」

次姉「いいの? ありがとう、お父さん」

長姉「近くのカフェにでも行く? 私がおごるわ」

次姉「おやおや珍しいこと」

6 : ◆54DIlPdu2E [saga]:2015/11/01(日) 22:47:03.51 ID:Pxy8Pkbc0
近所のカフェ。

長姉「あー久しぶり、ここのカフェオレが好きなのよー」

次姉「お父さんがコーヒー苦手だから、うちでは専ら紅茶だものね」

長姉「……お父さん、今日も平常通りよね」

次姉「ん? なんのこと?」

長姉「明日帰ってくるんでしょ、末妹…達。もっとソワソワしているかと思ったわ」

次姉「平常心で迎えるつもりでしょう、あの子達は『友達に会いに行っただけ』だからね」

次姉「どっしり構えた父親を目指すとも言っていたし」

長姉「……」

次姉「……私達に気を遣っている部分がないとは言わないけれど」

次姉「お父さんはお父さんで、変わるべきところは変えようとしているのよね」

次姉「ま、それでも明日になったらさすがにソワソワが隠せないのがうちのお父さんでしょうね」

長姉「……くす」

次姉「ん?」

長姉「お母様がお父さんのどこを好きになったのか、わかるような気がして来たの」

長姉「お父さんって、いい人 よね?」

次姉「ええ、いい人ね」

次姉「お父さんと結婚できたお母様は、きっと幸せだったと思うわ」

長姉「……うん」

長姉「私達のお母様は、幸せに生きたのよね……」

……
7 : ◆54DIlPdu2E [sage]:2015/11/01(日) 22:48:02.26 ID:Pxy8Pkbc0

※今回これだけ…※

一週間前から風邪で体調を崩し、予想より回復が遅くて滞っています、すみません…
良くはなってきたので、近いうちに復活します。たぶん…
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/02(月) 00:21:03.48 ID:c/mSKMtAO
乙 このお話は家族の物語でもあるんだよな

>>1はとりあえず安静にしてなっせ。のんびり待ってるから
9 : ◆54DIlPdu2E [saga]:2015/11/03(火) 22:53:54.93 ID:Oq+YyCeJ0
商人の店。

長兄「ただいま父さん……材料調達は無事にできそうだよ、喜んで話に乗ってくれた」

商人「お帰り長兄、ありがとう」

商人「これで、長姉の嫁入りにはお前がデザインした衣装箱を持たせることができるよ」

長兄「……本当に、俺みたいな素人に作らせていいのかな?」

商人「お前が手掛けるのは装飾部分の彫刻だけ、本体の組み立ては工房に頼むから実用には全く問題ないさ」

商人「何より、長姉自身が望んだんだ」

長兄「……全く、俺だって暇人じゃないのに、本業の傍ら婚礼までに仕上げろなんて」ヤレヤレ

商人「嬉しそうな顔して何を言うか」

長兄「ははは、実は楽しみなんだ、趣味の木彫だけどそんな大物は初めてだし」

長兄「……引き受けると返事した時のあの娘の喜びよう、小さい頃と同じ顔で」

長兄「あいつだって、俺の可愛い妹だよな、って久しぶりに…その気持ちを思い出した」

商人「……」

商人「酒を飲みながら嫁に出したくないと口を滑らせた私の気持ち……少しはわかるかい?」

長兄「……うん」

長兄「同じ町の中で、子供のころから知っている奴の所へ嫁ぐにしても……寂しさは、あるよ」

商人「ああ、長姉と同じ家で過ごせるのもあと1年もないかもしれんが……」

商人「悔いのないように、父として兄としてあの子への務めを果たし、晴れて花嫁として送り出そう」

長兄「ええ、父さん」

長兄「寂しいけれど、長姉と仲直りができて本当によかった、そして長姉が自分の幸せを見つけてくれてよかった」

長兄「早く、次兄と末妹にも話してあげたい」

商人「そうだな……」

商人「明日は皆で、誰一人欠けることなく、あの二人を出迎えよう……」

…………
10 : ◆54DIlPdu2E [sage saga]:2015/11/03(火) 22:54:30.29 ID:Oq+YyCeJ0

※ごめん、これだけ…なかなか体力が戻りませんで…※

とりあえず、帰還前の自宅サイドはここまで。
今後はまた屋敷サイド、そして帰還、ちょこっとエピローグ…
…おおまかに、こんな予定です。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/03(火) 23:49:08.20 ID:HKN3T21AO
本当にあとちょっとなんだな…つらいぜ…
そして>>1は無理ダメ絶対
暖かくしてしっかり休んでくれ
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/06(金) 04:21:53.73 ID:F9VDxIYAO
ゆっくり気長に待っとるの
一さん お大事に
13 : ◆54DIlPdu2E [saga]:2015/11/06(金) 22:46:06.91 ID:wellT1Sb0
野獣の屋敷、次兄の客間…

末妹「お兄ちゃん、荷物はまとまった?」

次兄「うん、元々たいした物は持ってこなかったから。お前は?」

末妹「ドレスとオルゴールの分、ちょっと荷物が増えたけど、大丈夫」

次兄「荷物が増えると言えば、例の鏡も忘れずに持ち帰らないとね」

末妹「そうね、馬車には割れないように積まなきゃ」

次兄「今夜にでも用意してくれるって、菫花さん言ってたけど……」

メイド「末妹様、こちらにいらしたんですね」ピョッコリ

末妹「メイドちゃん、何かご用?」

メイド「あのですね……末妹様のお家の家政婦様に、これを渡してくださいませんか……」スッ

末妹「封筒? お手紙かしら」

メイド「ええ。でも私、字が書けないので菫花様に代筆していただきました」

メイド「バスケットの事とか…お世話になったお礼です、短いお手紙なのですぐ読み終わると思いますが」

メイド「あと、私が見つけた四つ葉のクローバーを押し葉にしたものを同封しています」

末妹「幸運のお守りね」

メイド「……葉っぱが大きくて形が良くて、それはそれは美味しそうなクローバーでしたが……そこをグッと堪えて……」

次兄「メ、メイドさんが食欲を自制しただと!?」

末妹「メイドちゃんの『本気』が伝わってくる(ような気がする)……」

末妹「よくわかったわ、その真心、間違いなく家政婦さんに伝えるから!!」メイドノマエアシニギニギ

メイド「お願いします、ありがとうございます!」

メイド「……家政婦様が親切なかたで、本当によかった」

メイド「いきなり現れて、おまけに喋るウサギが普通でないことは私にもわかります、それなのに」

末妹「メイドちゃん……」

メイド「きっと、末妹様達を心から信頼されているから、私のこともすぐに受け入れてくれたのだと思いますよ」

次兄(それだけじゃないな、俺の勘では彼女、クールビューティーに見えて意外と可愛いもの好き)

末妹「そうよね……」

末妹「……不思議な体験に理解を示してもらえるって、本当にありがたいことだと今になって思うわ」

末妹「帰ったら、私からも改めてお礼を言おう……」

……
14 : ◆54DIlPdu2E [sage saga]:2015/11/06(金) 22:47:12.68 ID:wellT1Sb0

>>11-12 ありがとうございます。
お陰様で体調は良くなってきましたが、なかなかペースは戻らず、すみません…※

次回は来週のどこかで、たぶん。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/07(土) 01:43:37.81 ID:OdlBn8sAO

お大事に
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/08(日) 17:40:33.13 ID:bt9RhF1AO
超有能家政婦さんをしてもケモナーの目は欺けない
次兄…恐ろしい子…!(白目)
17 : ◆54DIlPdu2E [sage]:2015/11/10(火) 21:33:37.11 ID:OSjYUVKD0

※おしらせのみ※

風邪のようなものが9割治ったと思ったら、リアルの事情により週末まで無理そう…ごめんorz

最低でも金曜日まで更新できないです
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/11(水) 02:27:30.49 ID:3SSNc+9AO
快気祈願に描いてたんだが治ったようで何より
でも病み上がりで無理は禁物
http://m1.gazo.cc/up/24557.jpg

次兄は屋敷でなら寝込むのも悪くないかもとか思ってそう
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/16(月) 00:33:22.20 ID:Wv/mPQZAO
ただ忙しいだけで、ぶり返してダウンしてるとかじゃなきゃ良いんだが

病弱な>>1は次兄である可能性が微レ存…?
20 : ◆54DIlPdu2E [sage saga]:2015/11/16(月) 22:34:57.53 ID:SRxT/MKH0
>>18
本当にありがとう、微妙に嬉しそうな表情の次兄がw
周囲で心配している皆も可愛いよぉぉ


体調は9割9分回復したけど、忙しい事情が続いているのでorz
今週、せめて1レスだけでも更新したいぜ…
 
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/19(木) 00:56:26.85 ID:4eMX2nPAO
>>1が元気ならええんよ
待ち焦がれるのもまた一興

http://m1.gazo.cc/up/24744.jpg
22 : ◆54DIlPdu2E [sage saga]:2015/11/20(金) 23:04:54.09 ID:y7R3pQBL0
今週末はやっぱり無理だった…でも見通しだけは立ちました
来週末〜再来週で少し更新します

>>21
ありがとう! 相変わらず細部がなんとも「らしくて」嬉しい
23 : ◆54DIlPdu2E [saga]:2015/11/29(日) 00:01:53.05 ID:SV0bJE2A0
野獣の屋敷、師匠の自室。

師匠「ふむ、あの子達に渡す鏡か」

王子「ええ、これです」

師匠「どれ、小さいがいちおう鏡台になっているのだな」

師匠「ガラスの鏡だが、枠も覆いもしっかりした木製だ、これなら馬車の揺れ程度では割れる心配もなかろう」

師匠「それに若い娘の部屋に置いてもさほど違和感のないデザイン」

師匠「お前にしては気が利いている」

王子「……野獣と話をしたくて、お茶会の後にひと眠りしたんですよ」

王子「『いくらでも余っている客間のひとつに据え付けではない小ぶりの鏡台が置いてあるから、それを使え』と」

王子「聞いてよかった、僕ならあの子の部屋との調和も考えずに、こんな鏡を渡す所でした」

王子「これも使わない客間にあったものですが」コトッ

派手な飾り付きの鏡:ゴテゴテギラギラー

師匠「……確かにこれも女性が使う鏡だが、なんというか…少なくとも清楚な少女の部屋には似合わんな」

師匠「いかにもな成金のマダムが使いそうな、と言うべきか」

王子「……やはりセンスが悪いですよね、僕って」ハァ

師匠「お前が図書館の娘に送ったドレスは、なかなか趣味が良かったのにな」

王子「…………あれは、彼女が好きだと言っていた色だけをこちらで指定して…デザインは仕立屋まかせです」

師匠「そうか、しかしあの明るい青は彼女の黒髪によく映えておったぞ」

王子「……そう言えば、師匠」

師匠「うん?」
 
24 : ◆54DIlPdu2E [saga]:2015/11/29(日) 00:03:43.67 ID:SV0bJE2A0
王子「彼女には舞踏会の招待状を受け取ってからを夢と思わせたにしても、実物として存在するあのドレスは?」

師匠「うむ……」

師匠「証拠隠滅のために我々が没収する手もあったのだが、それも……どうにも忍びなくてな」

王子「師匠」

師匠「わ、儂ではないぞ!? 魔術師ギルド唯一の女性幹部、面識くらいあっただろ、主に彼女が強く反対して!?」

師匠「……検討の結果な……王子は魔術師ギルドに通うための私服を、自分の小遣いで新調しようとしていた」

師匠「が、そこで王子は何を間違ったのか、仕立屋に女性物のドレスを発注してしまい」

師匠「届いた現物を見て自分のミスを知った王子はさんざ悩んだ挙句、『どうしよう、返品は店に迷惑がかかるし』」

師匠「『それに父上母上にバレたらどうなるやら、頼むから娘さん引き取ってくれ』と」

師匠「必死に頼まれたあの娘は、やむにやまれず……というストーリーの暗示をかけてやった」

王子「」

師匠「他ならぬお前ならばさもありなん、というエピソードだろう?」

王子「……娘さんも、それを信じたのですね……」

師匠「誕生プレゼント、世話になっている感謝のしるし、他にも案は出たが」

師匠「間抜けてほほえましい思い出の方が負担にはならぬと思うのだが?」

王子「間抜け」

王子「……そうですね、本来、死をもって償うほどの過ちを犯した僕です……」

王子「彼女が王子という人間を間抜け程度の認識で済ませてくれるように図ってくださったのは、感謝こそすれ恨むのは筋違い」

師匠「少しは恨んでいるかのような言い草だのう」

師匠「……」

師匠「儂は、あの娘が図書館の仕事を辞めた後」

師匠「結婚して一人目の子供が生まれた頃までを直に見届けた、何度か会って話もした」

師匠「夫となる男の求婚を受け入れてから、あのドレスは処分しようかと思ったそうだが、それを男に止められたそうだ」

王子「……?」
 
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