「『須賀京太郎』とは、あなたのそうぞう上の存在に過ぎないのではないでしょうか」

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8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 19:00:49.77 ID:OGbMq6Pqo

さっと身支度をして、朝食をと思いリビングへ。

お父さんはもう出かけたみたいだ。机の上に置き手紙と可愛らしい紙袋。



『おめでとう』



簡単な、走り書きのそっけない文字。

それでも、すごく嬉しかった。紙袋の中身は私の好きなお店のシフォンケーキ、生クリーム付き。

ありがたく、朝食代わりに。幸せな甘さに頬が緩むのを感じる。カロリーからは目をそらす。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 19:02:19.26 ID:OGbMq6Pqo

お腹が満ちたら学校へ。

帰ってきて早々だが、取材が入っているとか何とか。


「まあ、勝ち進んだ者の義務みたいなものだと思って我慢して頂戴」


とは部長の言。



「おはよーだじぇ!」

「おはようございます」


待ち合わせをしていたわけでもないのに、登校途中で麻雀部の仲間と合流する。

まあ、普段から同じような時間に登校しているのだから特別なことでもないのだけど。


「おはよう。優希ちゃん、和ちゃん」

「ふっふっふ、ついにこの時が来たな咲ちゃん」


優希ちゃんは不敵な笑みを浮かべながら手をわきわきと動かす。

彼女は取材の話を聞いてからというもの、ずっとこの調子だ。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 19:02:47.26 ID:Gk0j/SJE0
ふむ
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 19:03:12.68 ID:OGbMq6Pqo


「疲れは取れましたか?」


ふわりと髪を揺らしながら和ちゃんが言う。

優希ちゃんと違って、和ちゃんはいつもどおりだ。

インターミドルの個人戦チャンプにもなった経験などで、取材には慣れているのかもしれない。


「うん。ホテルも良かったけど、やっぱり家は落ち着くね」

「そうですね、私も気がついたらウトウトとしていました」

「ほらほら、早く行こうじぇ。私の時代が待っているのだ!」


優希ちゃんが駆け出す。


「ああもう、転ばないで下さいね、優希」


そう言いつつも心持ち足を早めた和ちゃんに、本当に仲がいいなあと思わずくすりと笑い、私も二人を追いかける。


「ほらほら、咲ちゃん早く早く!」

「もう、優希。急かさないでください」

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 19:04:01.93 ID:OGbMq6Pqo

麻雀部の部室は、清澄高校本校舎から少し外れにある旧校舎の屋根裏が使われている。

運動部の熱心な練習の掛け声も、ここまでくると少し遠い。

階段を登り着いた部室には、すでに部長と染谷先輩が待っていた。


「おはようございます」

「おー、おはようさん」

「おはよう! どう、久しぶりの我が家はよく眠れたでしょう」


頼れる二人の先輩は、どうやら今日もごくごくいつも通りらしい。

染谷先輩は少しイタズラっぽい笑みを浮かべながらしっかりと。

部長は内から湧き出て止まらないとばかりに、自信に満ち溢れたような挨拶を返してくる。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 19:04:59.42 ID:OGbMq6Pqo


「しっかしあれじゃな、帰ってきて早々登校とは休む暇も無いのう」


自分の不満、と言うよりは私達後輩をねぎらうような様子で染谷先輩が言う。


「何言ってるんだじぇ先輩、私達の若さの前には休みなんかよりもやるべきことがいっぱいあるのだ!」


インタビューとかインタビューとか!と何に向かってか拳を突き上げる優希ちゃん。

取材に対して熱い思い入れがあるようだ。

単に目立つことが好きなだけかもしれないけど。

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 19:05:48.16 ID:OGbMq6Pqo


「ノリノリじゃのう」

「じゃあ、ちょっと早いけど優希の勢いがあるうちに行きましょうか。待たせるよりは良いでしょ」

「出陣だじぇ!」

「そうですね、このまま待っていると優希が疲れちゃいそうですし」


取材は本校舎内の応接間でやるらしい。

その後、部室で少し写真を撮らせて欲しいということで、各員私物を軽く片付ける。

掃除はインターハイ出発前にしていったので、綺麗なものである。

私達が居ない間も、学生議会の人たちが何度か埃を払いにきてくれていたそうだ。
15 :今日分はもうちょいあるけどまた後で [saga]:2015/10/27(火) 19:07:11.63 ID:OGbMq6Pqo


わいわいと、部室を出る支度をし始める部員たちの中、部長に声をかける。


「今日は私達だけですか?」


インターハイの取材だからだろう、と納得しかけていたが、部室と部員で撮らせて欲しいという要望があると聞いて少し引っかかったのだ。


「? そりゃあそうでしょう」

「どうかしたのか、咲ちゃん」


当然、というような部長と優希ちゃんの言葉に、少したじろぐ。そういうものなのか。


「う、ううん、そうですよね」

「まあまだ疲れてるかもしれないけど、これが終わったら祝勝会だから!」

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/27(火) 19:37:42.06 ID:uNRPZssTO
もしかして;京ちゃん?
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/27(火) 19:58:56.45 ID:ytOUGB580
攻殻みたいなアレなのかな
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/27(火) 20:59:21.38 ID:G/5esnjAo
京ちゃんが私に囁いている
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/27(火) 21:04:43.18 ID:gJCI+QQn0
時々雑談スレで出ていた『京太郎咲ちゃんのイマジナリーフレンド説』がまさかSS化されるとはな
これは期待するしかない
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 22:37:32.70 ID:OGbMq6Pqo


取材は── 妙に私への質問が多かった気がするけど、そりゃねと部長をはじめ皆が笑っていた──順調に終わり、お昼過ぎから体育館で祝勝会が行われた。

朝から準備をしていたみたいで、床には絨毯が敷かれ垂れ幕がかけられていたりとかなり大掛かりだ。

壁際には料理が並んでいる。

学校側に許可をとって、有志で企画してくれていたらしい。

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 22:38:15.24 ID:OGbMq6Pqo

挨拶やら賞賛やらの声も落ち着き、ようやく自由になったところで飲み物を取りに行きつつ辺りを見回す。

学校中の生徒どころか、近くの商店街の人たちまで協賛してくれたようで、かなり大きな館内もかなり混み合っている。

こんなにも体育館の中に人がいるのに、その外には入りきれない人や立食に疲れた人が座れる休憩所のようなスペースまでもが広く作られているのだからびっくりした。

その多くが祭り気分での参加だとしても、どれだけの人が応援していてくれたのか、今更ながらに実感する。

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 22:39:19.95 ID:OGbMq6Pqo


「どうしたの、咲。トイレ探してる?」


キョロキョロとしていたら、後ろから声をかけられ、振り向く。

部長だった。

少し前に見た時には私の数倍の人に囲まれていたのに。

どんな手を使ったのか、今は周りにそれらしい人はなく、涼しい顔で手に持ったたい焼きを頬張っている。


「違います。というか、自分の学校でトイレの場所が分からないとか無いですから!」

23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 22:40:56.89 ID:OGbMq6Pqo


「いやー、でも咲だし」

「私をなんだと思ってるんですか」


いる? と差し出された食べかけのたい焼きを断りながら、気になっていることを聞く。


「挨拶、終わったんですか?」

「終わらないから、抜け出して来ちゃった」


お腹も減ってたし、と笑う。

副会長に押し付けたそうだ。


どうやって、と思わなくもないが、部長なら普通にやってのけるんだろうと思ってしまう。

24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 22:43:11.03 ID:OGbMq6Pqo

我らが麻雀部の部長は、麻雀部の部長というだけでなく、学校の学生議会長──所謂生徒会長──でもある。


その制度は名前だけでなく少々特殊で、副会長──正確には副議会長──と二人で立候補し、共に選挙戦を勝ち取って初めてその座に着くことができる。


部長と副会長は、数多の対立候補を退け、その座に2年連続で就いているという。


この自信に満ちた女性の相棒である、真面目そうでどこか達観した様子の有る、しかし先輩たち曰くロリコン疑惑があるらしい青年の顔を思い出す。

25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 22:47:32.27 ID:OGbMq6Pqo


そんな私の思考を知ってか知らずか、部長な生徒議会長は目の前でたい焼きをぺろりと平らげて、こちらに向き直る。


「それより、何か探してたの? 和なら入り口の所で質問攻めにあってたわよ。ちなみにたい焼きだったらすぐそこの裏ね」


焼きそばならあそこ、フランクフルトはあっちと食べ物の場所を案内し始めた部長に、先ほど気になっていたことを思い出す。


「ああ、いえ。京ちゃんの姿が見えないもので」


きっと祝勝会から来ているのだろうと思ったのだが、姿を見かけていない。

人が多いから見ないだけでどこかにいるのだろうとは思うのだが、自分たちだけ取材を受けたことへの漠然とした後ろめたさからか、気分の座りが悪いのだ。

来ているのなら、何か話題があるわけでもないけれど、少し話したかった。

26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 22:52:23.65 ID:OGbMq6Pqo


「部長は見かけませんでしたか?」

「うーん……」


どうやら見てはいないらしい。

でもこの様子なら、来ないという連絡も受けていなさそうだ。


「まだ来てないだけかな……あ、優希ちゃんと一緒にいるかも?」


部長に連絡をとってもらおうかと考えて、そこまでするほどでも無いかと一瞬で答えが出る。

私は相変わらず自分の携帯電話を持っていなかった。

27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 22:56:04.12 ID:OGbMq6Pqo


「まあ、見て回りながらちょっと探してみます。部長ももし京ちゃんを見かけたら教えて下さい」

「……良いけど、キョウちゃんってどんな子だったかしら」

「はい?」

「咲の言い方だと、きっと私も会ったことがあるんだろうけど、思い出せないのよね。咲の知り合いならそう多くないから、紹介されたら流石に覚えてると思うんだけど……」

「え、どうしたんですか、部長?」

「いや、失礼だとは思うのよ? 後輩に紹介された相手を……紹介されてるのよね? 人を覚えるのは得意だと思ってたんだけどねー……」

28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 22:58:59.29 ID:OGbMq6Pqo










「キョウちゃんって、うちの生徒?なのよね?」






29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 23:12:02.47 ID:OGbMq6Pqo


「部長?」


部長の言葉に、混乱する。


「京ちゃんですよ? えぇと、その……」


そして、気づく。

相手が、人をからかうのが好きな小悪魔みたいな人だということを。


「……もー、一瞬信じちゃったじゃないですか。このタイミングでやめてくださいよ」


本人はバツが悪そうだ。


「いえ、本当に分からないのよ」

「いや、もう分かってますから。いいですって」


しかし質の悪い冗談だ、と呆れる。

確かに、女子だらけの麻雀部にあって、少々影の薄い部分はあるけれど。


「……うーん、待って。もう一度思い出してみるから。いつ会ったのかだけでもヒント貰えない?」

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 23:13:26.20 ID:OGbMq6Pqo

もう、この人は。

往生際悪く悪ふざけを続ける部長に、少しむっとしたところで、また一つ声がかかる。


「おー咲ちゃん。楽しんでるかー?」


優希ちゃんだった。

探す手間が省けた、とほっとして、部長を放っておいて、聞く。


「ああ、優希ちゃん。京ちゃん見なかった?」

「?」

「多分、来てると思うんだけど」


私の言葉に、優希ちゃんは首をかしげる。




「誰? 私の知ってる人なのか?」



31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 23:14:28.90 ID:OGbMq6Pqo


「──……え?」


優希ちゃんの顔をまじまじと見る。

見る限り優希ちゃんにふざけている気配はなく、純粋に疑問を持って聞いているようだった。


「優希ちゃん、京ちゃんだよ? 須賀京太郎」


再び混乱する。

不快感を帯びた不安が、わずかにお腹をくすぐった。

32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 23:15:30.38 ID:OGbMq6Pqo


「え、キョウちゃんって男の子なの?」


部長が驚いたように声を上げる。

その声色が、あまりにも普通に驚いていて、振り返る。


驚いていた。


それが分かるほど、私にも分かるほど。演技ではないと、何故か確信した。

それほど部長は素の様子だった。

優希ちゃんもかなり驚いた様子だ。


「え、咲ちゃん、男に知り合い居たのか!」


意外だじぇ、と本当に意外そうに、目を丸くしている。

33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/27(火) 23:16:41.35 ID:OGbMq6Pqo


「なんか、咲ちゃんって男と話すのとか苦手そうなイメージがあるじぇ」

「京太郎、だっけ? それをキョウちゃんって、幼なじみとかなのかしら」

「まさか、恋人か!?」


わいわいと、にわかに盛り上がりを見せる二人に、困惑する。


「え、ちょっと待って下さい。どういうことですか?」


言葉が、上手く出ない。


「だって、京ちゃんですよ? 同じ麻雀部員の」


その、私の言葉に、二人はきょとんとする。

34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/27(火) 23:25:43.17 ID:w5EK1NcOO
もう既に胃が痛い……
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/27(火) 23:34:20.96 ID:PSr7xJLj0
インターハイ中についに存在が消えたか…
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/28(水) 00:05:57.18 ID:TAx5YXYwo


「何言ってるんだ、咲ちゃん」


「咲の場合天然ボケなのか冗談なのか、判断つき辛いわね」




「清澄高校麻雀部は、私達5人で全員」








「須賀京太郎なんて子、麻雀部には居ないでしょう?」




37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/28(水) 00:07:03.63 ID:TAx5YXYwo



その言葉は、あまりにも理解しがたかった。



冗談であって欲しいが──冗談でもあまり面白いものとは思えないが──二人の表情は、あまりにも普通の戸惑いを浮かべていた。


38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 00:07:40.61 ID:DNsFYr9To
ゼロノスのカード使い切ったか・・・
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/28(水) 00:08:04.52 ID:TAx5YXYwo


「──……冗談、ですよね?」


私は、こう言うしか無い。

これ以外に、言える言葉が見つからない。



なんなのだろう、これは。

冗談にしか思えないのに、冗談を言っているようにはとてもじゃないが見えない。

部長だけならまだその可能性が十分あった。

でも、隠し事の出来ない優希ちゃんまでが言う。


「……咲ちゃん?」

「咲?」

40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/28(水) 00:09:56.31 ID:TAx5YXYwo


周囲がざわめいている。

そのざわめきがひときわ大きくなって、そこから2つの声が飛び出した。


「どーしたんじゃ、こんなとこで。なんか揉めとるときーて来たんじゃが」

「なにかあったんですか?」


染谷先輩と和ちゃんだ。

二人を見て、顔を上げて、周りの皆がこちらを見ていることに気づいた。


目、目、目、目、目──


その視線の塊に頭がふらつくのを感じながら、部長が何かを言いかけたのを体で遮って、二人に縋り付く。

41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/28(水) 00:12:21.30 ID:TAx5YXYwo


「ねえ、京ちゃんを知ってるよね?」


「は?」

「?」



嫌な予感がしていた。

ありえないのに、そんなはずがないとわかっているはずなのに。

予感がしていた。






そして、その予感は──







「なんじゃ、京ちゃん? 人の名前か?」

「えっと、咲さんのご友人ですか?」

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/28(水) 00:13:53.22 ID:TAx5YXYwo








──── 予感ではなく、本当になった。






43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/28(水) 00:19:34.43 ID:TAx5YXYwo
本日分(プロローグ)は以上です

続きは……仕事の休み次第というかなんというか
まあ月2〜3くらいで更新はしようと思います
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 01:27:58.69 ID:Ri1UUiL70
つまり今週中にあと1〜2回あるのか
とりまブクマした
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 07:51:16.10 ID:SgFzo9g1O
これは期待
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 08:02:19.31 ID:ftEAgCo3o
乙です
超期待
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 08:45:34.70 ID:HE74J0K40
この咲ちゃんの入部経緯が気になるぜ
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 08:52:17.44 ID:+f7tgAWQO

期待して待ってる
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 08:52:31.79 ID:oPVnRGBgO
ついに存在を消されたか京ちゃん…
という訳でいn…京太郎はもらっていくじぇ
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/28(水) 10:20:16.61 ID:uRPlT8DC0
こんなの書いて何が楽しいんだか
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 10:33:23.75 ID:aUObmOwUO
>>50の書くやつよりは面白そう
原作知らない俺でも気になるタイトルだったんでね
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2015/10/28(水) 13:44:10.69 ID:kRrSUydNO
京太郎好きな人には受け入れられにくい話だってことだろ
話自体面白いかはともかく
自分もちょっと可哀想かなと思う
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 13:58:33.85 ID:ftEAgCo3o
むしろ京太郎好きな人以外がこのスレ読むのか?と思うが
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 14:30:19.45 ID:wgGAG3HH0
いろんな京太郎が最後の一人になるまで戦うSS思い出した
実況タイプの京太郎が五月蝿い奴wwwwww

>>50の書く自己投影した安価ハーレム京太郎TUEEEESSより面白い
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 15:42:14.94 ID:wS5DsEdYo
何か事情があって忘れられてるだけっぽいしまだどうなるか分からん
京太郎に興味がない人はこのSS見ないだろ
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 16:04:39.47 ID:t/i/xmMAO
咲ちゃん公式で海外ミステリ好きだからすぐに解決できるやろ(鼻ホジ)
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 17:08:44.27 ID:zBZqvwKKo
気になる
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 21:41:55.03 ID:TKTXnHpn0
とは言え、合宿所まで70-80kgの荷物(ディスクトップ、麻雀卓から推測)を運ばされ、ろくすっぽ指導されず、偶に打っても実力差が有りすぎ可愛がりしかならず、雑用漬けの部活で続けられるか考えると想像上の人物で存在しなかったと考えた方が自然なのも確か。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 22:48:24.80 ID:HE74J0K40
永遠はあるよ ここにあるよ
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/28(水) 23:24:57.23 ID:OIqkS6yko
京ちゃん…… えいえんのせかい行く約束でもしたのん?
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/29(木) 01:44:03.41 ID:8V5UqqoSO
懐かしいな
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/30(金) 19:19:43.56 ID:A0CTYW700
京太郎がいないとなると所謂嫁田の存在も怪しくなってくるな
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/31(土) 23:11:33.81 ID:RR/AkMlTo
乙です
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:06:36.36 ID:HgY52dfyo
今月単休6に加えヒトコロシフトなので今のうちに進められるだけ進めておく
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:08:46.03 ID:HgY52dfyo







須賀京太郎。




清澄高校麻雀部唯一の男子部員で、私の、宮永咲の中学からのクラスメイト。



身長は大分高い。



ひょろっとしているようで、中学時代にはハンドボールに打ち込んでいたから、見た目よりもずっと筋肉質で力も体力も結構ある。



成績は特別悪くもなく、得意な科目も苦手な科目もある。一番得意なのは体育。

66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:10:04.09 ID:HgY52dfyo


私と比べると文系科目が出来なくて、理系科目が出来る。



最近は料理を始めたらしい。



龍門渕さんの執事さんが先生で、ある縁でタコス作りを教わってからだいたい週1で料理を教えてもらっているそうだ。



何度か食べさせてもらったことがあるけど、結構おいしくて、宮永家の家事を受け持っている私としてはもやもやとした危機感を抱いている。

67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:10:45.03 ID:HgY52dfyo

ちなみに、麻雀は高校から。


初心者で、どういう縁かは知らないけれど、何故か麻雀部に入っていた。


あんな離れにある場所だから、興味が無ければ辿りつけないと思うのだけど。


女子だらけで平気なのかなと思わないでもないけど、本人は特に居心地が悪そうということはなく、かと言って浮かれた様子もない。


そういえば、中学校の頃から女子だらけの中でもあまり気にしていなかったな。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:12:23.13 ID:HgY52dfyo


部長からはなんというか、肉体的に頼りにされている。

唯一の男子部員だから、仕方ないかも。本人も普通に請け負っているし。


染谷先輩からは時折からかわれながらも、普通に信頼し、信頼されている感じだ。よく気にかけられてもいる。

お手本のような先輩後輩の関係、かな。


優希ちゃんは犬、犬と言いながらよく京ちゃんをかまっている。かまっているという言い方は京ちゃんが聞けば嫌がるだろうけど。

なんというか、悪友というのはこういうものなのかな、という仲の良さ。


和ちゃんは、なんというか……部の仲間、って感じ。

こう、別に悪いことでもないのに歯切れが悪いのは、京ちゃんが和ちゃんのことを好いているみたいだから。

対して和ちゃんの京ちゃんに対する接し方は極めて自然で、なんの含意もなく、普通に部員としてのものなのだ。

京ちゃんには残念だけれど、和ちゃんにはそうした気持ちは一切ないだろう。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:13:45.69 ID:HgY52dfyo





以上が、清澄高校麻雀部唯一の男子部員の簡単な説明だ。


半年にも満たない期間ではあるけれど、彼は確かに存在して、皆と絆を紡いできた。



70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:15:42.78 ID:HgY52dfyo



その彼が、京ちゃんが。





まるで居ないものを語るかのように、同じ麻雀部員の仲間から名を呼ばれている。





物珍しそうに、聞き覚えがまるでないように。







71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:19:22.83 ID:HgY52dfyo







「……」


自分の部屋の天井をじっと見つめる。

何度も何かを考えようとして、そのたびに何も考えられないことに気がついて、ただただ天井を見つめる。

胸元で意味もなく合わせた両の指先が絡まり、離れ、押し付けあう。



ぷかりと、ふと気がついたように、一つ感情が浮かぶ。



今日は、悪いことをしてしまったな。


72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:26:36.43 ID:HgY52dfyo

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「どうじゃ?咲。落ち着いたか?」

「……はい、すみませんでした」


騒がしさから離れた空き教室。

今日の、祝勝会の準備の為に開けてもらっていたらしいそこに、私は染谷先輩と向き合って座っていた。

染谷先輩の横には、心配そうな顔をした和ちゃんと優希ちゃんが私の顔を覗き込んでいる。

部長は会場で先ほどの私の奇行を執り成してくれているらしい。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/01(日) 01:27:29.02 ID:HgY52dfyo


そう、奇行。


染谷先輩と、和ちゃんの言葉を聞いて、私は少しパニックになってしまった。

麻雀部の部員だけでなく、周囲で見ていた皆に、京ちゃんのことを知っているかと聞いて回る。

その様子が、自分でも分かるくらい必死過ぎて、誰も彼もを困惑させた。


そこには自分のクラスメイトが居て、知ってる人と知らない人が居て、京ちゃんと仲の良い友達が居て──
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/01(日) 08:11:53.10 ID:yKo1hhfIo
>>1までそうぞう上の存在になってしまったか
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/01(日) 08:51:23.68 ID:ikeDbI5jo
乙です
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/01(日) 21:19:35.89 ID:pwkZZQI00
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/02(月) 08:04:52.20 ID:sPDV2DNJO
乙!
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/03(火) 19:20:36.55 ID:elEcM0hz0
乙や
楽しみ
79 :ガチ寝落ちしてその後余裕なくてPC触れなかったし!ゴメンだし! ちょい急ぎ投稿なんでミスあるかも [saga]:2015/11/04(水) 11:59:45.44 ID:hlpsUJTTo


「……」


部長の計らいはありがたい。

あのままだと、もしかしたら夏休みが明けたらクラスから浮いてしまっていたかもしれない。

そう冷静に部長に感謝を抱く自分は頭の隅の方に確かにいる。


                     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
しかし、冷静になってなおそれどころではない衝撃が今も頭を揺らしている。



何故。

どうして。

疑問ばかりが頭のなかをぐるぐる廻る。

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:00:35.84 ID:hlpsUJTTo


生徒、先生、商店街の人たち。

その誰一人として、京ちゃんのことを知っている人は居なかった。



麻雀部の1年生4人で買いに行ったコロッケ屋のおばさんも、一緒に食べに行ったラーメン屋のおじさんも。

京ちゃんのクラスを受け持っている先生も、何度か部長命令で一緒に手伝いに行ったことのある生徒議会の人たちも、一緒に馬鹿みたいなことをやっていた友達も。



誰一人として。

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:02:20.32 ID:hlpsUJTTo


「……本当に、知らないんですよね──」


絞りだすようにして発した言葉は、かすれていた。


「──京ちゃんのこと」


私の言葉に、和ちゃんは私をじっと見て、優希ちゃんは俯く。

染谷先輩は一瞬顔を背けて、私の目を見て、躊躇うように言う。


「……ああ、知らん」


そこには、私に悟られまいとしているけれど、隠し切れない困惑があった。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:04:17.69 ID:hlpsUJTTo


染谷先輩だけではない。

和ちゃんは私を心配したように見つめている。

優希ちゃんも、先ほどのはしゃぎ様が嘘のように、俯いて時折私の様子を上目遣いに伺っている。




皆、私と同じだった。


私と同じように、異常性を感じている。





私は、皆に。




皆は、私に。


83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:05:31.02 ID:hlpsUJTTo


根本の部分が異なってしまっているような。

一人の人間の存在を通じて、まるで世界が隔てられているような。





そして、先ほど。

分かってしまった。









私は、ただ一人異物だった。


84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:06:47.30 ID:hlpsUJTTo


「須賀、京太郎、か」


染谷先輩が呟く。

それは、まさに初めて聞いた言葉の語感を確かめるようで、お腹の奥がきゅうとなる。


「……咲さん」


和ちゃんが、落ち着いた声で言う。


「咲さんは、その、本当に……」


和ちゃんの言葉が詰まる。

それでも、聞きたいことは分かる。


分かるけれど、答えたくなかった。


場が沈黙する。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:07:48.48 ID:hlpsUJTTo


コンコンコン、とノックがされたのはその時だ。


「どう? 咲の様子は」


少し空いたドアの隙間から、部長が顔をひょこりと覗かせる。

そして場の空気に気づいたのか、肩を竦めた。


「まあ、こうだろうとは思ったけど」


教室へと足を踏み入れ、染谷先輩の横に立つ。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:08:52.44 ID:hlpsUJTTo


「主役は抜けちゃったけど、祝勝会は続けてもらってるわ。せっかく準備してもらったしね」


ああ、そうだった。

せっかく準備してもらったのに。


冷静な部分が思う。

思うけれど、冷静でない部分はそんなこと、と思ってしまう。


手のひらが痛いことに気がついて、手を開く。

くっきりと爪の跡がついていた。

87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:11:26.11 ID:hlpsUJTTo


と、その開いた手にペラリと一枚の紙が差し出される。

顔を上げる。


「見たほうが早いと思って」


部長がひらひらと紙を揺らす。

紙を受け取って、それが何かすぐに気づく。



『麻雀部員一覧』



注意書きを見るに、生徒議会が管理している部活動のメンバー表らしい。





そこにある名前は───


88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:17:11.38 ID:hlpsUJTTo






   3年
   ・竹井久
   2年
   ・染谷まこ
   1年
               
   ・原村和
   ・片岡優希
   ・宮永咲




89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:18:35.16 ID:hlpsUJTTo




分かっていた。

分かっていたけれど、実際に目にして、紙を持つ手が震えた。



「──須賀京太郎という部員は、いない」



部長の言葉は静かだ。




「そして、私──私たちは、須賀京太郎という子を知らない」

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:19:07.72 ID:hlpsUJTTo


私は、手で顔を覆う。


「……なんで──」


手のひらを、目に押し付ける。

それでこの夢が覚めるのではないか。

夢ならば、覚めてくれないだろうか。




夢であってはくれないだろうか。

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:20:20.79 ID:hlpsUJTTo


ぽんと、肩に何かが乗っかる。

その後、部長の声がした。


「……ごめんなさいね、もしかしたら酷なことをしたのかもしれない」

「でも、ここははっきりとさせたほうが良いと思ったの。……きっと、咲のためにも」


私は、顔を上げられない。

声は聞こえているけれど、反応をする器官が麻痺したようだった。

そんな私を気にしてなのか気にせずなのか、部長は私の肩から手を離す。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:21:06.11 ID:hlpsUJTTo


「今日のところは帰りなさい、話し合うにしてもちょっと日が悪いし。疲れているにも関わらず来てもらってありがとうね」


耳の先で部長の声が聞こえた。

続けて和ちゃんと優希ちゃんにも声をかける。


「和と優希は咲を送ってあげてくれないかしら。その後戻ってくるにしろ帰るにしろ、連絡を頂戴。まこはこっちを手伝って」


こんな時でも、部長は部長らしい。

いや、こんな時だからこそだろうか。


和ちゃんと優希ちゃん支えられるようにして立ち上がりながら、ぼんやりとそう思った。

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:22:02.55 ID:hlpsUJTTo




優希ちゃんと和ちゃんに付き添われ、家に着き、二人の心配を背に受けながら家に入る。


部屋に入り、入り口にかばんを落として、低い丸テーブル前の座布団にぼふりと腰を落とす。


丸テーブルに残る黒いシミを理由もなく指先で擦る。


94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:27:11.08 ID:hlpsUJTTo


この机は冬にはこたつにもなる優れものだ。

ただ、ギリギリ2人用といったところなので、もう一人体の大きい人が入ると机の下はぎゅうぎゅうになる。


冬に京ちゃんが来るとそれはもう激しい戦いが、用語の意味ではなく文字通りの机下で繰り広げられたものだ。

足が乗っかり乗っかられ、絡まり、色んな所を蹴り合って、たまに変なプロレス技をかけられる。

二人が──というより私が──疲れてきたり、机の上で何かを食べたりするときには、大体は真ん中で区切ったり、京ちゃんの足の上に私の足を乗せることで落ち着くけれど。

95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:27:56.41 ID:hlpsUJTTo



指先で擦るシミを見る。

これはなんのシミだったか。

鍋をつついた時に出来たものだっけ。いや、クリスマス祝いとか言ってケーキを食べたときだったかもしれない。



そのまま体を倒して、ごろりと寝転ぶ。

天井が見えて、何かを考えようとして。

96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:30:03.06 ID:hlpsUJTTo

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何も考えられずに、今に至る。



そうだ、と思った。

せっかく準備してもらった祝勝会を抜けてきたのだった。

それどころか一時的に中断させるようなことまでして、部活の皆を巻き込んでしまった。





部活の皆を。





一人居ないはずの、皆。

そう思っているのは私だけ。
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:31:21.43 ID:hlpsUJTTo


今日の会話を思い返す。

他人事のように改めてみると、まるで似ている別の世界に迷い込んでしまった物語の会話みたいだ。



──もしかして、本当に別世界に迷い込んだのかも。



そんなオカルトじゃないんですから、と親友の声を幻聴する。



くすりと笑う。

これは余裕が出てきたのだろうか、それとも現実逃避をしているだけだろうか。

98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:33:50.01 ID:hlpsUJTTo


首を反らして、飾ってあるカピパラのぬいぐるみを見る。



───ねえ、まだやるの?

───もうちょっとなんだって。

───あ。

───おっしゃ! ほら、カピそっくりだろこれ!

───可愛いけどさー……買ったほうが安かったんじゃないのかなー。

───ばかやろー、自分の手で取るのが良いんじゃねーか。ほれ。

───? なに?

───ウチにはカピがいるからな。これは咲にやる。

───……なんの為に取ったのさ。





────でもまあ、ありがとう。京ちゃん。

99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:35:16.59 ID:hlpsUJTTo


そうだ。

彼が居ないなんてありえない。

だったら、ここにあるぬいぐるみはなんなのだろう。

あの時、少ないお小遣いをかけてとって私にくれたぬいぐるみは、たしかにそこにある。

確かに、そこにあるんだ。





目を閉じる。

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:35:52.02 ID:hlpsUJTTo



昨日は、確かに京ちゃんが居た。


そこには部長も染谷先輩も、和ちゃんも優希ちゃんも居て、皆で話しながら帰った。


京ちゃんは私の荷物を持っていて、駅に着いて、私を家に送った。


そして京ちゃんは───

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:36:35.37 ID:hlpsUJTTo


バッと跳ね起きようとして、勢いが足りなくて後頭部をしたたかに打ちつけ、少し悶絶する。

そして、床に手を付きながら身を起こす。




そうだ、なんで思いつかなかったのだろう。



制服のママ、部屋を飛び出して、靴を履いて家を出る。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:37:44.69 ID:hlpsUJTTo


先輩たちの会話で、まるで京ちゃんがいなくなったように錯覚していた。

そもそも、それもおかしな話だけれど、それでもこれは大きな勘違いだ。



駆けて、すぐそこにも関わらず息が上がりながら辿り着いたのは、ある一軒家の前。

外はもう夕方で、夕焼け色に辺りが染まっている。

朱色に染まったポストの上に掛けられた表札の名前は──須賀。

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:38:42.90 ID:hlpsUJTTo


最初から、悩むよりも先に、こうすればよかったのだ。

何が起きているのかは分からない。

でも、だからこそ話すべきだった。




話そう。


話して、一緒に考えてもらうんだ。

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:39:28.88 ID:hlpsUJTTo


インターホンを押す。

聞こえてきた声に、私は声を張り上げる。




「あの、京ちゃんいますか!」





京ちゃん──須賀京太郎、本人に。

105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:44:21.36 ID:hlpsUJTTo
ここからが本編。
まさか導入だけで今までの最長になるとは……

本編はさくさく行きたい
ではまた後日
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/04(水) 12:47:14.29 ID:hlpsUJTTo
ちなみにモブってかぶっちゃけ須賀夫妻はオリジナルです。
それ以外にも普通に二次SSですのでオリジナル設定だらけ&オカルトだらけなのでどうぞよろしく。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/11/04(水) 12:50:48.74 ID:hlpsUJTTo
いや、導入は最初に終わってる部分だ……寝ぼけてるわ
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