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「『須賀京太郎』とは、あなたのそうぞう上の存在に過ぎないのではないでしょうか」
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360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 01:53:30.45 ID:X8/kvAPN0
それってリッツ「福山潤のギャラ高過ぎ...そうだ!」クラスで消されたってことですよね...
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 01:58:59.07 ID:lzoNbycto
お姉ちゃんの言葉に、考える。
もはや情報の更新が追い付かなくて、思考の外側が凍りついたように固まってしまっているのだけど、お陰で余計な思考が切り離された。
恐らく、憂うべきことなのだろう。
京ちゃんが消えた背景に何か特別な力が関わっているのではという妄想が、実際にあり得るのだと分かった。
あるのだと知ってしまうと、それが原因であるとしか思えないほどの力。
京ちゃんはただの失踪ではないのだ。
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 02:06:50.44 ID:e3+bmI0u0
>>360
くぎゅとかもっとギャラ高そうなやつはいると思うけどなぁ……
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 02:11:58.41 ID:lzoNbycto
存在が無くなり、名前は消え、誰も彼もの記憶から削除される。
常の事象ではない。
だからこそ、私は一度諦めた。
そう、普通なら諦めざるを得ないような異様な状況を作り出せる力。
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 02:23:40.12 ID:lzoNbycto
その力の関わりを手繰る糸が途切れてしまった。
憂うべきだろう。
ただ、やはり実感として乏しい。
受け入れられても、感情の域にまではまだ達しない。
それに──
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 02:35:35.06 ID:lzoNbycto
「──現状、ということは、オカルトが原因である可能性は消えていない、ということ?」
「うん」
お姉ちゃんは頷く。
「オカルトは、枠というものが無いから。私でも、『異質』のモノは分からない」
オカルトであっても、人の力。
分かることしか分からないし、出来ることしか出来ない。
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 02:37:03.69 ID:lzoNbycto
「ただ、『異質』のオカルトっていうのは珍しい。私のオカルトの『質』から外れているということは、人の領域から外れている可能性も高い」
「万が一、それが原因であるなら──解決は、難しいかもしれない」
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 02:47:14.48 ID:lzoNbycto
人の領域の外であるなら。
お姉ちゃんはこともなげに言うが、私にはもう、話が想像の出来ない域に達しつつあった。
なんとなく、途方も無い規模であるように思う。
もはや、推測すら曖昧だ。
ただ、思ったのは。
「お姉ちゃん、慣れてるんだね」
「慣れてる?」
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 02:53:11.60 ID:lzoNbycto
「うん、なんというか、そのオカルトの対応について」
お姉ちゃんはミルクレープをつつきながら、少し考える。
「……能力のせい、かな」
「能力の?」
「昔は強い何か……今思えばオカルトだったんだろうけど、そうしたものに遭遇した時に、能力が制御出来ないことがあった」
「私は、その度に。知ってきたから」
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 02:57:55.16 ID:lzoNbycto
「……そっか」
異能の代償、というものだろうか。
怪力を得た人が、異形に絶望するように。
名探偵が、人の死に直面するように。
心を読める人が、心を閉ざすように。
「うん」
お姉ちゃんは、いつもの通り静かに頷く。
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 03:09:43.88 ID:lzoNbycto
お姉ちゃんが紅茶のおかわりを頼んだ後、私に聞いてきた。
「咲。この『須賀京太郎』くんのこと、他の人に話してもいいかな」
「え?」
困惑しつつも、頷く。
「ええと、良いけど」
お姉ちゃんなら変な相手に話すことはないだろうし、そういった心配はない。
むしろ、そのような話をして、お姉ちゃんが変に思われないだろうか、と少々心配になる。
無関係の人に話すには、あまりにも信じがたい話だろう。
371 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 03:20:11.06 ID:lzoNbycto
「どうするつもりなの?」
「とりあえず、『異質』の方に詳しい人に話を聞いてみようと思う」
お姉ちゃんは、そういう人も知っているのか。
驚いていると、
「咲は、とりあえずもう一度、部の仲間に話を聞いてみて。混乱が起きたことで、何か変化があるかもしれない」
「うん」
素直に頷く。
お姉ちゃんは、昔よりもちょっと淡々としていて、他の人には表情に乏しいと言われたりしていたけれど、やはりお姉ちゃんだ。
それがこういう時にも関わらず少し嬉しい。
なんだか少し気が楽になって、ぐっと腕を伸ばす。
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 03:31:47.81 ID:e3+bmI0u0
中学からの友達のことを幼馴染という?高校生で
だとしたら和と優希も幼馴染?
373 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 04:01:04.52 ID:lzoNbycto
「疲れた?」
届いた紅茶に手を伸ばして、お姉ちゃんが聞いてくる。
「ちょっとだけ。……ねえ、お姉ちゃんがそういう力を持ってたのって、もしかして、昔から?」
「そういうものだと知ったのはこっちに来てからだけど」
言いながら、そっと紅茶を飲む。
「能力自体は、昔からあったんだろうと思う。それをそうだと認識していなかっただけで」
「なんだか、凄いね。物語に出てくるような力を持っているだなんて」
笑う私に、お姉ちゃんは少し首を傾げる。
「咲にも、あるかもしれない」
「私にも?」
「さっきも言ったけど、オカルト打ちには結構な確率で生まれ持つオカルトを利用している場合が多いから。そうだと認識していないだけで」
「認識……」
「まあ、結局持ってても生涯認識することのない人がほとんどだから、咲もその可能性はあるけど」
お姉ちゃんの言葉を聞きつつも、手のひらを見てみる。
まるでそこに自分の能力があるかのように。
もしも、私にもオカルトがあるのなら。
京ちゃんにまた、会える力だったら良いのに。
そんなことを、思う。
374 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 04:02:47.38 ID:lzoNbycto
私がコップを空にしたのを確認して、お姉ちゃんが時計を見る。
「そろそろ出よう。おかーさん、咲来るの楽しみにしてたし」
「うん」
お会計を済ませ、カランカランと音を鳴らし、外に出る。
湿気を含んだ熱気に僅かに怯んだけど、慣れた様子で先を行くお姉ちゃんの後を小走りで追いかける。
「ねえ、お姉ちゃん」
「?」
「今日は、ありがとう」
「うん」
外はまだまだ明るいが、日は僅かに傾いて、空を赤みがかった色に染めている。
二人で空を見上げて、なんとなく立ち止まる。
お姉ちゃんがふと、思い出したように呟く。
「須賀京太郎……京香さんの息子さん、か」
375 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/02/28(日) 04:09:59.36 ID:lzoNbycto
というわけで今回はここまで。俺は寝る。
ちなみに基本原作設定です(というかアニメは飛び飛びでしか見たこと無い)
376 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 04:12:50.63 ID:YSnNlzzyO
乙
377 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 04:40:58.01 ID:xWJ9r9e8o
乙乙
378 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 05:50:17.80 ID:5FSqNh8+0
投下は月1くらいか?
面白いから待ってる
379 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 05:57:02.47 ID:NqeF3SfQo
乙です
380 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 07:45:32.83 ID:TkXcYpTSO
乙乙
前回やっと掴んだ手がかりの欠片か、完成するのはまだまだ先みたいだな…
頑張れ咲ちゃん
381 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 08:33:23.82 ID:o12iEcWAO
>>372
知らんが原作でそう言ってるんだからしゃーない
382 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 10:06:07.62 ID:TYmdPhVF0
まってrう
383 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 13:16:12.68 ID:2bgKMPoAO
乙です
384 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 14:23:05.29 ID:C/0xjHcxo
照がこんなにお姉ちゃんしてるssは珍しいかも
乙です
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 15:50:56.97 ID:2WQ/d7Rpo
原作では中学からのクラスメイト(それ以前の確定情報無し)で幼馴染みって発言はない
アニメだと幼馴染み(いつから一緒かは知らん)に改変されてたはず
幼馴染みだと思ってる人はアニメしか見たことないか混ざってるだけかと
386 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 15:55:46.10 ID:e3+bmI0u0
どっかで聞いた話だといつの間にか原作でも設定が改変されたらしいよ
387 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 16:09:43.78 ID:aoXGnYf0o
えぇ…
漫画とリッツのHP見てるけどそんな情報聞いたこと無いんだが
まあ中学以前一緒じゃなかったとも言われてないから可能性はあるんだけどさ
ソースはあるんかなあ、現状じゃ言った人が妄想を最もらしく語っただけな気が
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 16:28:02.14 ID:j759CW4vo
ヤンガンの柱のキャラ紹介だったかで幼馴染表記になってたとかなんとか
389 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 16:55:30.85 ID:aoXGnYf0o
柱か、あそこは編集が書いてるからなー
いろんな漫画でよく間違えられてるし
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 17:42:00.55 ID:BXFAIPRjo
ヤングガンガンのHPでも幼馴染表記
391 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 20:59:57.00 ID:NIJVFIiHo
HP系も編集の仕事ちゃうんか
まあ昔からその表記じゃなくて最近になって幼馴染み表記に変わったっていうなら、変えるだけの何らかの変化はあったんかな
392 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/28(日) 21:53:42.57 ID:BeIkzQTJ0
設定とか変えるなら、そもそもの前提として京ちゃんにもうちょっと出番を与えてくれという・・・
本気で存在が無かったことにされかけている中で、設定変更だけされてもどうしろというのか。
割と色んなSSで言われてるけど、確かに中学からだと幼馴染とは言いにくいか。そもそも幼くはないだろうし。
しかし、中学で知り合った男女があれだけ親密になれるってのも凄いよな。
特に咲さんはATフィールド相当強そうだし。
393 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/02/28(日) 22:07:56.74 ID:lzoNbycto
公式でもなんか色々あんのかな
まあとりあえず、気にする人が居るみたいなのでこのSS内では幼馴染設定が無いことだけ明言しときます
しかし原作側で小学校や幼稚園、それ以前からの付き合いがあったと公表があればそれはそれでSSの幅が広がるなぁ
HPでその辺に触れてくれないだろうか
394 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/29(月) 12:06:07.80 ID:mwvB61edO
嫁さん茶化したクラスメートのフルネーム考えてる暇あるなら
その辺り意思統一しとけと思わんでもない
395 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/18(金) 06:20:31.84 ID:npbuyvNpo
待ってます
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/22(火) 20:32:33.14 ID:Pg5stBkoo
そろそろ1ヶ月か…
397 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/23(水) 23:46:47.12 ID:bV5+JgDlo
流石に1ヶ月丸々空けるのはちょっとなということで中途半端ながら投下
ヤスミガホシヒヨ
398 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/23(水) 23:48:40.08 ID:bV5+JgDlo
電話の向こうの声は、なんだか疲れているように聞こえた。
「まぁ、とりあえず。咲にも参加してもらおうかしら」
そう言って、部長の電話は切れた。
参加?
私は首をかしげる。
東京から帰って来たその日。
お姉ちゃんと話し合った通り麻雀部の皆にもう一度話を聞こうと、部長に電話を掛けたときの事だ。
399 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/23(水) 23:53:20.33 ID:bV5+JgDlo
1日、東京に滞在したからたった二日ぶり。
にもかかわらず、部長はなんだか変わった様子だ。
まあ、とにかく、明日。
明日に、もう一度話し合おう。
それは二日前のあの時とは全く違う心持ちで、部長のことを言えない「変わった様子」だ。
この数日間、私の心向きはころころとしている。
困惑、驚愕、疑心、恐怖、逃避、諦観──ただ光を失い続けた心が、いまは影もできないほどに全方位的な明るさに満ちている。
京ちゃんは、居るんだ。
それを今、私は疑わない。
400 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/23(水) 23:57:05.48 ID:bV5+JgDlo
「おはよーだじぇ、咲ちゃん」
「おはようございます」
学校までの道でいつものように、優希ちゃんと和ちゃんと出会う。
「おはよう」
しかし、気のせいだろうか。
昨日の部長と同じように、僅かに疲れているように思える。
「ねえ、今日は何かあるの? 部長には、参加って言われたんだけど」
「あー……今日はっていうか今日もってゆーか」
「まあ……行けば、分かりますよ」
「?」
401 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 00:04:09.33 ID:CR2fpizZo
それは確かに、行けば『何かがある』と分かるような光景だった。
「うわ……」
部室に入り絶句する私に、
「おう、おはよーさん」
「おっはよー」
染谷先輩と部長が挨拶し、
「おはようございます」
「おはよーだじぇ」
和ちゃんと優希ちゃんが挨拶を返しながら横をすり抜ける。
先ほどの様子からしても、二人は知っていたのだろう。
私はただ一人、困惑している。
402 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 00:07:56.11 ID:CR2fpizZo
「何ですか、この……紙の山は」
部室の机の上のみならず、床一面にも紙の束や冊子が詰め込まれた紙袋がいくつも並んでいる。
「いやあ、こんなに多くなるとは私も思わなかったんだけどね」
部長が少し疲れたように笑う。
「まあ、とりあえず見てみぃ」
そう促す染谷先輩に、戸惑いを残しながらも紙の山から1枚のプリントを手に取る。
403 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 00:13:13.33 ID:CR2fpizZo
目を通すが、何でもないただの授業参観のお知らせだ。
授業参観の後に懇親会があり、可能なら参加してください、というよく見るもの。
これがなんなのだろう、紙の束はもしかして全部こういったものなのだろうか、そう思ってなんともなしに日付を見る。
「──え?」
2年前。
それにも驚くが、それ以上にその下に書かれた学校名に目を見開く。
そこに記されているのは、私の通っていた中学校の名前。
404 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 00:18:07.73 ID:CR2fpizZo
プリントの下、紙の束や冊子を見る。
全て同じ中学校の名前が記されている。
中には、見覚えのある装丁の冊子もあった。
「こっちは高校のもので、そっちが中学校のもの」
混乱しながら部長を見ると、部長が言う。
「高校の方はなんとかなるとしても、中学の方はどうしようもなくてね」
「それで、同じ中学校だった子とかに声をかけたんだけど、伝言ゲーム的に話が広がったらしくて」
405 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 00:23:45.17 ID:CR2fpizZo
染谷先輩がため息をつく。
「今の1、2、3年どころか、兄弟姉妹の残ってた資料まで持ってこられてのう。親の、と言われた時には流石に笑ったわ」
「一昨日はマシだったけど、昨日は酷かったじぇ。部長が慌ててストップかけて、それからもしばらくは止まらなかったし」
「咲さんと同じ学年のものだけを分けるだけで、1日かかりましたしね」
優希ちゃんと和ちゃんが、積み上がっている『中学校のもの』を見ながら思い出したように笑っている。
「いやあ、思わぬところで私の人望の厚さを垣間見たわね」
「なんとも物理的な厚さじゃな」
「もう少し纏まっていてくれれば良かったのですが」
「のどちゃん、その言い方だとなんだか部長の人望が散らかっているみたいだじぇ」
部長たちの会話から、断片的に情報を得る。
一昨日から集まってきていた、ということは、つまり。
「あの後から、集めてたんですか?」
あの、roof-topでの話し合いの、すぐ後から。
406 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 00:37:55.83 ID:CR2fpizZo
「まあ、声だけね」
部長が頬をかく。
「咲がいなくなってからも、わしらは少し残っててのう」
「……口では信用すると言っていたものの、私たちにはまだどこか咲さんの言葉を軽んじている部分があったのかもしれません」
「咲の問いかけに何一つ、答えることができなかったのはまだしも、その事実に愕然としとったからな」
──自分たちの記憶が穴だらけで、しかもその事実に言われるまで気づかなかった。
──10年や20年前ならまだしも、まだ1年と経って居ない記憶が。
「あんなに混乱したのは、算数が数学になったとき以来だったじぇ」
「混乱している最中。咲さんの言っていたことが、本当かもしれない──信じているはずだったのに、あの時、そう思ってしまった」
──先輩たちの言葉に、思う。
──それで混乱することなど、なんら恥ずることはないだろうに。
──それでも、私のために恥じてくれるのだという。
「それで、話し合ったんです」
「私達も、知らなければいけない、と」
和ちゃんが、言う。
407 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 00:48:18.18 ID:CR2fpizZo
「で、まずは資料を集めよう、ってね」
部長が手近なプリントを手に取って、ひらりと持ち上げる。
「調べようにも、何を調べたらいいのかすら分からなかったから、調べられるものを集めましょう、って」
「こんなに集まったのは、予想外じゃったけどな」
「咲ちゃんが来てくれたのは、かなり助かるじぇ」
「最初は咲に内緒でやろーかなーとも思ったけど、そー言うものでもないしね」
「というわけでまあ、咲も手伝ってくれないかしら」
そう言って、部長は私にプリントを差し出してくる。
私の──京ちゃんの中学校の名前が入っているプリントを。
「私たちが、『須賀京太郎』くんを知るために」
408 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 00:49:29.88 ID:CR2fpizZo
チッチッという時計の秒針が進む音に、時折紙の擦れる音が混じる。
この音は嫌いではない。正確に言えば好きだ。
自分も紙をめくりながら、そんなことをふと思う。
409 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 00:57:25.50 ID:CR2fpizZo
皆が資料に集中して数分が経った。
私が今確認しているのは、私と京ちゃんの所属していた三年間分の資料だ。
三年分と言っても、なにせ持ってきた資料が数十人分になるので、生半な量ではない。
複数人が持ってきた為被りも多いのだけど、それをまた分別する手間や返すべき資料の再分別をする手間を考えて、資料ごとではなく山ごとに各自が確認することになった。
どこに手がかりがあるか分からないため、関係なさそうなものも端から端まで。
本を読み慣れているおかげか、辛くは無いのだが、大変な作業だ。
と、思っていると──
「……優希? ……ああ、もう」
見ると、優希ちゃんが紙の山に顔を突っ伏して寝ていた。
昨日もこの紙の山を選り分けて、しかも次々と来る人達の対応までしていたというのだから、疲れも有るのだろう。
感謝しかない。
優希ちゃんにも、和ちゃんにも、染谷先輩にも、部長にも。
跡がつかないようにとだけ、優希ちゃんの顔の下にベッドの上にあった枕を差し込む。
410 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:06:41.18 ID:CR2fpizZo
見終えた紙束を、取り上げた側と反対に置く。
当然だけど、どれも見たことがあるはずのもので、目を通しているだけで懐かしさが漂う。
三者面談のお知らせ、予防接種のお知らせ、全校ハイクの日程と予定、最近不審者が目撃されています──この紙の束はそうした告知のものがまとめられていた。
私はこうしたものは年末の大掃除や年度の切り替わりに捨ててしまっているので、よく取っておいたなぁと思う。
次の冊子を手に取る。
411 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:18:32.95 ID:CR2fpizZo
しかし、これは中々厳しい作業だ。
始めて少ししか経っていないけれど、気づく。
生徒の名前が載っている資料というのは、あまり多くない。
しかし、多くの無関係な資料の間に挟まっている学級報や校内紙で生徒の名前が出ていたりするので、気が抜けない。
手にとった冊子は結構厚く、和紙で簡単に装丁されていて、一文字『心』と書かれている。
見た覚えが有るような無いような、と思いながらページをめくると、
「……あぁー」
小さく、呻くような声が思わず出る。
詩集。
それだけで、分かる人は分かるだろう。
思春期の始まりに、こんなものを作らせるなど、なんと残酷なことだろうか。
少しばかり大人になった今、そう思わずにはいられない。
しかも、学年でまとめているものだから、その被害は結構な広範囲だ。
412 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:27:54.15 ID:CR2fpizZo
しかし、こういうものをこそ見なければならない。
学年の全クラス。
つまり私も、京ちゃんも、この中にいる『ハズ』だから。
並ぶ言葉の青臭さに、恥ずかしさに耐えながらページをめくる。
最初から、一文一文を丁寧に確認する。
何処に手がかりがあるか分からない。
それは、京ちゃんの存在が、必ずしも私の知る通りではない可能性があるからだ。
これは部長たちが私の居ない間に出した答えの一つ。
私も、それに了承した。
413 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:35:44.37 ID:CR2fpizZo
『私の知っている京ちゃんではないかもしれない京ちゃんの可能性』。
おかしな話だけど、それがなんらおかしくはないことを、私は知っている。
ちょっと前の私なら、受け入れられなかったことだろうけど。
でもただでさえ、現状でさえ、今の京ちゃんは私の知っている京ちゃんではないのだ。
それを、今の私は理解している。
何故なら、私の知っている京ちゃんは、皆に忘れられてはいないのだから。
414 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:39:54.47 ID:CR2fpizZo
知っている名前がちらほらと出てきて、ちょっと感動しつつ、その内容に悶たくなる衝動を耐えつつ、ページをめくる手は止めない。
その手が止まったのは、私のクラスのページに差し掛かった時だった。
左のページ一枚に、クラスと、皆で話し合って決めた見出し。
見出しには『絆』と書かれている。
無意識に止めていた呼吸を、ゆっくりと、深く再開して、一層慎重にページをめくる。
あ……お……か……こ……
五十音順に並んだ名前は、もちろん知った名前ばかりだ。
うろ覚えだったクラスメイトの記憶も、名前を見て、文字を見てはっきりとした輪郭を持つ。
さ……
415 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:42:37.11 ID:CR2fpizZo
その後を、ゆっくりと目で追う。
ページの上下に、ひとりずつの手書きの詩。
それが見開きで、4人分。
私の知っている通りなら、さ行は6人だ。
何かの時に出席番号順で並んで、ちょうど一列がぴったりさ行で埋まって話のネタになっていた。
あの時、京ちゃんは何番目だったっけ。
416 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:44:50.13 ID:CR2fpizZo
目を通す。
ページをめくる。
後ろのほうだった気がする。
4番目?5番目?一番後ろ?
目を通す。
違和感。
確かに、違和感がある。
でも──
左上に視線を移す。
…………た。
417 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:45:20.58 ID:CR2fpizZo
──『須賀京太郎』は、見つからない。
418 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:48:49.73 ID:CR2fpizZo
ほう、と息を吐く。
分かっていたことだ。
そんな簡単に見つかるようなら、私はあれほどの焦燥に駆られることもなかったはずだ。
気を取り直す。
期待はしていた。
でも、その期待が外れたところで、落ち込みはしない。
一度諦めた私には、分かっている。
諦めることの気楽さを、落ち込むことの安心を。
諦めることの恐怖を、虚無感を、失望を。
落ち込むことの苦しみを、停滞感を、焦燥を。
419 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:50:38.35 ID:CR2fpizZo
もう一度冊子を見直してみる。
さ行の名前は右上から始まり、一二三四。
ページをめくり、五。
やはり、どこか違和感がある。
次を探そう、と考える思考と、この違和感の原因を調べた方が良い、という感覚に迷いながら、名前を確認していく。
再度、ページをめくり、右下を確認して、ああそうか、と気がつく。
先程は気付かなかったが、右上が空白になっている。
420 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:52:23.22 ID:CR2fpizZo
なんだ、と思いつつも納得した。
5人しか居ないのに、偶数分のページが使われていたことに、無意識ながら違和感を感じていたようだ。
先生が間違えたのかな。
そう考えながら、空白部分に目をやって。
421 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/03/24(木) 01:53:09.95 ID:CR2fpizZo
そうだ、京ちゃんは5番目だった。
それを思い出すと同時。
422 :
今日はここまでなのよー
[saga]:2016/03/24(木) 01:56:49.45 ID:CR2fpizZo
「──え?」
────── 須賀 京太郎
私は、その名前を見る。
423 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/24(木) 02:09:09.32 ID:jVGr6X4DO
乙
軽く?ホラーである
気付きと当てはめで存在が確定する?
だが写真だの須賀家だのでは京太郎でてこなかったよな
あの時とは咲の心持ちが違うから?
424 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/24(木) 02:10:17.78 ID:CiCQ0GXLo
乙
いつもいつも切り方がいい意味でひどい
続きはよ
425 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/24(木) 03:40:17.78 ID:k3n2IRINO
続き期待
426 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/24(木) 07:28:17.80 ID:x4gng0Oko
乙です
427 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/24(木) 08:21:56.08 ID:vGsaf2A9o
一体何が起きているんだ……?
乙です
428 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/24(木) 08:31:13.09 ID:TNZNt+kCo
認識されることで存在が確立するとかなんとかみたいな話……?
429 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/24(木) 12:33:21.17 ID:sSKv/TulO
乙です
>>88
と同様に存在した場所は残ってるのに存在だけが削り取られてるな
430 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/24(木) 17:18:43.91 ID:u0FABINvo
京太郎やその痕跡は消えたんじゃなくて、認識できなくなってるのかね。
だとするとモモ以上のステルスだなあ。
431 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/24(木) 20:10:54.76 ID:IT/vleqno
乙
ということは京ちゃんは消えたのではなく…
432 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/24(木) 23:21:56.74 ID:YhGp0wyAO
乙です
いないかもと思うといない
いると思えばいる?
433 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/03/25(金) 20:53:42.66 ID:y614Y/wSO
乙乙
素直に見守ろう…
434 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2016/03/25(金) 22:13:39.08 ID:rb9fu6XN0
乙
シュレディンガーの京太郎
清澄の環境的に消えたままでいたくなったから姿を消した
435 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/10(日) 21:41:45.45 ID:LcjYBZIP0
待ってます
436 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/17(日) 04:08:46.02 ID:qwqlcN4eo
今日の夜辺りにちょい更新か来週土か日にまとめて更新する所存〜
437 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/17(日) 04:46:33.17 ID:2dydZFGwO
やったぜ。
438 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/17(日) 11:15:43.16 ID:Z+NTjOg8o
よっしゃ
439 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/23(土) 17:35:00.93 ID:UgdK5KBUO
待つ
440 :
まとめてと言うほど進められなかったけどとりあえず。アホほど眠いので短いにも関わらず寝落ちしたらスマヌ
[saga]:2016/04/23(土) 20:28:33.43 ID:iAKyAZZHo
「あ、えっと」
混乱する。
視界がおかしくなっているような感覚。
でも、文字はそうとしか読めない。そうだとしか思えない。
須賀京太郎
そこには、確かにそう書いてある。
441 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/23(土) 20:29:33.09 ID:iAKyAZZHo
「あれ……?」
探していた、探している名前だった。
けれど、あるのは喜びではなく。
「え、なんで?」
疑問。
442 :
ID加速中
◆QdSnJBTTyA
:2016/04/23(土) 20:30:15.80 ID:1u4F3rNs0
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443 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/23(土) 20:31:07.94 ID:iAKyAZZHo
そこには、なんの問題もなく京ちゃんの名前がある。
名前どころか、京ちゃんの書いた詩までしっかりと。
にもかかわらず、何故私はこれほど驚いているのだろう。
そこに書かれているのが当たり前の文字に。
須賀京太郎という普遍的な存在に。
私は、これほど迄驚いている。
「さっきは、無かった……?」
無かった?
京ちゃんの名前が?
本当に?
444 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/23(土) 20:32:22.96 ID:iAKyAZZHo
口がだんだん言葉を失うのがわかる。
そうだ、何を言っているのだろう。
さっきは、無かったはずなのに、だなんて。
それではまるで、京ちゃんのことを探して──
──そう、私は、探していたのだ。
「──ぁあっ!」
押さえつけられていたものが弾けるかのように、声が飛び出す。
445 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/23(土) 20:34:33.90 ID:iAKyAZZHo
「んえ?!」
優希ちゃんがびくりと起き上がる。
「ど、どうしたんですか、咲さん」
和ちゃんが驚いた顔でこっちを見た。
和ちゃんだけでなく、部長も、染谷先輩も。
「あ、じゃなくて、えっと」
言葉が出ない。
こういう時には何と言えば良いのだろう。
とにかく、伝えることを。
伝えなければいけないことを。
「きょう、」
「京ちゃんの、名前が、あった」
446 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/23(土) 20:35:43.15 ID:iAKyAZZHo
「え!?」
部長たちの喫驚した声が重なる。
「ほ、本当ですか、咲さん」
皆が、足元を埋める紙の群生にもどかしそうにしながら、駆け寄ってくる。
優希ちゃんだけは、事態を飲み込めずきょとんとしている。
「これの、ここに」
私の示す詩集に、部長が片眉を上げる。
「あれ、コレなら私も確認したんだけど」
「見落としとったんじゃろ。とにかく、今は認識が先じゃ」
染谷先輩の言葉に、皆が顔を寄せ詩集へと視線を落とす。
ページの、右上。
指さされた箇所を見て、皆は──
447 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/23(土) 20:36:53.52 ID:iAKyAZZHo
「──何も、ありませんね」
和ちゃんが、ポツリと言う。
「えっ」
和ちゃんの言葉に、自分の指先を見る。
そこには、先程から変わらず京ちゃんの名前がある。
「無いわね」
「……無いのう」
しかし、部長と染谷先輩まで、和ちゃんと同じことを言う。
448 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/23(土) 20:38:15.32 ID:iAKyAZZHo
「これ……ここ、だよ?」
指先を、紙面に押し付ける。
しかし、和ちゃんたちは目を凝らすばかりで、そこには何も見えない様だった。
「どういうこと……なのかしら」
部長が、困惑したように呟く。
「どうかしたのか?」
優希ちゃんがとてとてと近寄ってくる。
「優希ちゃん……ここに、京ちゃんの名前が……」
「んー?」
私の指先を覗いて、
「なーんもないじぇ?」
やはり、言う。
「だって……ここに……」
449 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/23(土) 20:39:30.31 ID:iAKyAZZHo
言葉が、尻窄みになる。
憮然として、靄がかった思考だけがノロノロと回る。
指先が、須賀京太郎をなぞる。
「そんなこと言っても、やっぱり……あ、ホントだ」
「え?」
450 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/23(土) 20:40:16.97 ID:iAKyAZZHo
「確かに、京太郎の名前があるじぇ」
451 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/23(土) 20:41:39.30 ID:iAKyAZZHo
今、優希ちゃんはなんて言った?
「え、本当にか?」
「優希、本当ですか?」
「いや、だってここに書いてあるじぇ」
優希ちゃんの言葉に、皆が再び顔を寄せる。
私は、思考がついていけず座り込んだままだ。
「まあ、そうよね」
皆と顔を寄せたまま、部長がそう言う。
やはり、部長たちには見えな──
452 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2016/04/23(土) 20:43:17.95 ID:iAKyAZZHo
「咲達の学年の詩集なんだから」
453 :
本日終わり。
[saga]:2016/04/23(土) 20:43:43.89 ID:iAKyAZZHo
「須賀くんの名前があるのは当たり前よね」
454 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/23(土) 20:45:54.68 ID:Td9Ydmp+o
部員たちの記憶も元に戻ってる…?
咲ちゃんだけリーディングシュタイナー持ちかなにかかな?
乙でした
455 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/23(土) 21:01:55.71 ID:fJ/VHpy4o
乙です
456 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/23(土) 21:23:24.68 ID:BG5EIZG1o
乙です
続きに期待
457 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/23(土) 21:52:38.59 ID:v8btuqC80
乙です
続きが気になって仕方ない
458 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/23(土) 22:54:07.48 ID:3AkKiDQNO
ぞゎぞゎするわ
459 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/04/23(土) 22:54:50.78 ID:A7bH3BlzO
寝落ちったか
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