「『須賀京太郎』とは、あなたのそうぞう上の存在に過ぎないのではないでしょうか」

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160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 18:01:02.58 ID:2Naznvg1o
永遠送りだと帰ってくるのに1年かかりますね。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:23:35.36 ID:LB6iXSW9o


てちてち、と床が鳴る。

見ると、京香さんの足元に毛むくじゃらなかたまりがふんふんと鼻を寄せていた。

カピバラのカピだ。


京香さんはカピを撫でて、表情を和らげた。

カピは京香さんの足の間へと潜り込み、身を落ち着ける。

京香さんが、静かな表情で私を見た。

162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:24:25.63 ID:LB6iXSW9o



「咲ちゃんも、知っているでしょう?」


彼女は言う。





「私は、子供を産めないの」




163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:25:25.59 ID:LB6iXSW9o




「体が出産に耐えられない。そして、この体の弱さは遺伝する可能性が高いと言われている」


「生まないではなく、産めない」


「……、咲ちゃんも、知ってるでしょう?」


164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:29:13.55 ID:LB6iXSW9o






         


                                            






165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:30:10.85 ID:LB6iXSW9o




「───」



私は11桁の番号を言う。

京香さんは一瞬虚を衝かれた顔をするが、すぐにそれが何か気づいたらしい。


少しだけ逡巡した後、どうぞ、というように私の後ろを手のひらで示す。

その指先は迷いを示すように僅かに曲がっている。
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:30:54.36 ID:LB6iXSW9o


私はソファーから立ち上がって、一瞬ふらついて、駆け出す。

壁際に置いてある電話に手を延ばし、受話器を持ち上げる。

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:32:17.08 ID:LB6iXSW9o


私は携帯電話を持っていない。

でも、だからこそ、よく掛ける電話番号は覚えている。

自分の家、お父さんの携帯電話、和ちゃんの携帯電話、優希ちゃんの携帯電話。

そして、




───番号を押す。





京ちゃんの携帯電話の番号だって。

間違えるはずがない。指先が覚えている。

168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:33:26.99 ID:LB6iXSW9o





───♪〜







ガタガタガタ、という音と、アップテンポなメロディーが聞こえた。



すぐ、真横から。

169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:34:26.36 ID:LB6iXSW9o


電話機の横に、影に隠れるようにして、見覚えのある携帯電話が震えている。



「……咲ちゃんが言った電話番号は、その携帯電話の番号」


京香さんの声は、遠くてそれほど大きな声ではないのに、よく聞こえた。


「使ってない携帯電話だから、なんで咲ちゃんが番号を知ってるのか分からないけれど──」

170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:35:32.75 ID:LB6iXSW9o



「──居ないのよ。少なくとも、ここには。咲ちゃんの探す、『きょうちゃん』という人は」



大丈夫。

大丈夫。

私は落ち着いている。


大丈夫、私は落ち着いている。

京香さんが悪いのではない。

この世界からすると、私がおかしいのだから。






だから──







───お願い、落ち着いて。

171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:37:26.23 ID:LB6iXSW9o



「──あの、フラワーアレンジメント」

「?」



「焼き物で出来た掛け時計、太陽発電のラジオ、手彫りの写真立て」




「──その、肩に掛けているカーディガンも」



「全部……全部っ」





───ああ、駄目だ。もう無理だよ。


───聞きたく無かった。


───京香さんの、京ちゃんを他人のように呼ぶ声なんて。

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:38:53.52 ID:LB6iXSW9o







「京ちゃんが……京ちゃんのなのに」






173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:39:53.84 ID:LB6iXSW9o




───フラワーアレンジメントは、母の日のプレゼントだと一緒に作った。



───焼き物の時計は自然公園の手作りコーナーで。



───ソーラーラジオは、中学校の選択授業で上手く作れたのだと自慢気だった。



───手彫りの写真立ては、結婚記念日のプレゼント。



───カーディガンは、誕生日プレゼントで一緒に探した。



174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:40:21.91 ID:LB6iXSW9o






「なんで、忘れてるんですか?」





175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:41:09.33 ID:LB6iXSW9o


電話を置く。

写真立てにふらふらと近づく。


「なんで、覚えていないんですか?」


手彫りの写真立てには、今よりも若い京香さんと龍太郎さんが手を組んではにかんでいる。

その写真立ての隣の、シックな木目調の、もう一つの写真立てを手に取る。

176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:42:49.23 ID:LB6iXSW9o




「なんで───」










「───なんで、この写真には、京ちゃんが写ってないの?」


177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:44:02.43 ID:LB6iXSW9o



そこには、どこか自然にあふれた緑色の風景と、綺麗な湖。


そして、今とほとんど変わらない京香さんと龍太郎さんの二人だけが、やさしい笑みをたたえている。






───去年の夏の家族旅行、3人で撮ってもらったはずの、家族写真の中で。


178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:45:38.09 ID:LB6iXSW9o



ばたり、と扉の閉まる音で、意識が戻る。

あれ、いつの間に自分の部屋に戻ってきたのだろう。



何か忘れ物をしているような気がするけれど、思いつかない。思い出せない。


179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:46:54.41 ID:LB6iXSW9o



ふらりと、本棚へと近づく。


アルバムを探して、手に取る。

その重みは、お腹の方に響いた。


そして、座りもせずにページを捲る。

焦燥感で、手が震える。





──体の奥のほうが冷たい。





手が止まる。

カリカリと、爪先が紙をひっかく。




最後のページ。


閉じる。

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:48:30.80 ID:LB6iXSW9o


中学時代の写真は多くない。

その多くないほとんどに、一緒に写っていたはずなのに。


居なかった。

何処にも。

写真にすら。







京ちゃんの姿が。



181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:49:16.57 ID:LB6iXSW9o


アルバムを抱えて丸くなる。

ぎゅうと抱きしめていると、わずかに落ち着く気がした。






抱きしめる。





ぎゅうと、抱きしめる。



182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:50:22.82 ID:LB6iXSW9o





遠くで名前を呼ばれている気がして、目を開いた。

気がつけば電気をつけていない部屋は真っ暗で、今は何時なのだろう、とぼんやり思う。


咲、電話だぞー。


お父さんの声だ。

ふらふらと、立ち上がる。


ゴトリと音を立ててアルバムが床に落ちた。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:52:10.45 ID:LB6iXSW9o


電話のそばに行くと、お父さんが受話器を揺らしていた。

私を見て笑う。


「なんだ、寝てたのか? 凄いことになってんぞ」




あまり長くなるなよ?


渡された受話器を耳に当てる。

電子音が聞いたことのあるメロディーを奏でている。

フックを押して、保留を解除する。


聞こえてきたのは部長の声だった。


明日来れる?




断ろうとして、でも口からでた答えは違った。

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:53:10.28 ID:LB6iXSW9o




ベッドへと這い登る。

手を伸ばして、引っ張りだしたものに腕を回しながら、横になる。

カピバラのぬいぐるみを抱きしめて、目を閉じる。



明日には、何かが変わってるかもしれない。










そんな淡い期待に、全思考を預けながら。


185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/06(日) 20:54:27.06 ID:LB6iXSW9o

高校100年生の私に期待するのは当然!

という声を聞きながらまた後日。
今日中にもう一度更新したいけど難しいかなー
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 20:58:24.17 ID:EYW6OvbDo
乙です
続き期待
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 21:03:02.24 ID:C9M8P3uy0

咲から京太郎の話を聞いてドン引きする麻雀部一同、そこまで私は鬼畜じゃないと引き気味に答える部長と部長ならやりかねないと茶化すワカメまで浮かんだ。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 21:51:33.54 ID:awiyo9ESO

接点薄いはずなのになぜ懇意なのかという疑問を須賀さんが抱いてくれたなら
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 21:59:49.92 ID:vZHvsAwKO
京太郎がいなければ起こりえなかった事象や、京太郎と咲しか知らない何かがヒントかな。

>>1はやる夫スレとか見てた?
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 21:59:59.17 ID:2loKAQzLo

続きを期待せざるを得ない
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/06(日) 22:09:51.74 ID:ZPAxlv5S0
>>164のなにか書いてありそうなスペースが気になる……

犯人は神d
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/07(月) 02:03:20.23 ID:ao/mAR2T0
書いてありそうなと言うか実際に何かある
ドラッグしても文字数だけじゃさっぱりだが
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/07(月) 12:52:59.90 ID:qcjmC+KNo
乙です
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/08(火) 00:34:21.72 ID:pd900vKz0
京ちゃんいなきゃ咲はどうして麻雀部に入ったのか
鍵はここにある気が
195 :ちょっと書きながら投下してみる [saga]:2015/12/25(金) 23:59:28.08 ID:EgRF+ZNRo





「まあ、なんの為に集まってもらったのかは、あえて説明する必要もないでしょう」




部長が言う。

背の高いカウンターチェアに斜めに腰掛けて、足を組んだ格好は部長によく似合っていた。


196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/26(土) 00:03:59.83 ID:j1NV0rNZo


私達が今いるのは、部室ではない。

麻雀喫茶『roof-top』。

染谷先輩の実家で、何故か出前のカツ丼が評判の雀荘だ。

197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/26(土) 00:09:55.41 ID:j1NV0rNZo

部長はカウンター席に腰掛けて、優希ちゃんと和ちゃんは私と同じテーブルの席に座っている。染谷先輩は立ったまままだ。

今は開店前で、他にお客さんの姿はない。


「……」


私はただぼんやりと、机の上に置かれたお冷のグラスを見つめている。

これから始まるだろう議論に、弁論を用意する気力もなかった。

まるで魔女裁判のようになるだろう。

物語の中でしか知らない悲劇の描写を引き合いに出してみる。

それでも、悲壮感の欠片すら感じない。

只々、胸の内に空白を感じるだけだ。

198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/26(土) 00:22:36.93 ID:j1NV0rNZo


今朝、起きて、アルバムを開いた。

手は震えていたけれど、その時は確かに、わずかにでも希望があった。

あったと、信じたい。



しかし、開いて、そこにあるものを見た時。

浮かんだのは「やっぱり」という言葉だった。

淡い希望は打ち砕かれて、昨日から今日は何も変わらない。

199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/26(土) 00:38:03.13 ID:j1NV0rNZo


今日ここに来たのは、単に「約束したのだから行かなければ」という観念があっただけだった。

期待も希望も、特にあったわけではない。

断りの電話を入れるには、時間が迫りすぎていたということもある。

悪く言えば、私は惰性で今ここに座っていた。

200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/26(土) 00:39:21.40 ID:j1NV0rNZo



そんな私の内情を知ってか知らずか──きっと知らないだろう──部長は脚組みを解き、私をすっと見る。



「咲。答え難いことは答えなくていい、と言いたいところだけど、場合が場合だしね。出来る限り、詳しく聞かせて欲しいかな」



始まった。

ぼんやりと、そう思った。

201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/26(土) 00:40:17.53 ID:j1NV0rNZo


いったい何をするのだろう。

尋問みたいなことをされるのだろうか。

みたいなことを、と言っても実際にはどのようなものかは知らないのだけど。

それとも、私が言ったことを、端から端まで理論建てて否定していくのだろうか。

京ちゃんの存在を主張している私が、どれだけ間違っているのか、それをきっと教えてくれるのだ。

いや、もしかしたら私自身の何もかもを否定されるのかもしれない。

私はきっと、この世界でただ一人オカシイ人間なのだから、何から何まで否定されても可笑しくは無い。

202 :駄目だ限界なので寝る。年内にこの部分だけでも終わらせたいけど休みないからなぁ [saga]:2015/12/26(土) 00:42:52.90 ID:j1NV0rNZo



「じゃあまずは……そうね、コレをはっきりさせておくべきね」








「咲にとって、京ちゃんってどういう存在だったの?」

203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 00:55:02.91 ID:x/pHQZQRo
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 02:58:46.98 ID:VlZq9URzo
乙です
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 07:18:43.05 ID:ufBMySCSO
おはよう
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 09:30:41.21 ID:EUUY61I7o
乙かな?
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 10:11:45.24 ID:9IAlJMJf0

他に京ちゃんを覚えてる人っているのかな
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 17:48:54.63 ID:EbZaP2FN0
>>207
嫁田とハギヨシさんぐらいか?
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 02:08:54.47 ID:Tz+HW32Po
>>208
そんな描写あったか?
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 03:01:05.67 ID:zXL/JvOPo
ない
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 16:48:00.13 ID:IzGMCjOro
個人的な願望妄想を事実みたいに言うのは良くないぞ
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/29(火) 16:59:18.49 ID:Bh19fMQuO
クラスで聞いてダメだった時点で嫁田はないだろ
ハギヨシは判断材料ないが覚えてないと考えた方が自然
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/29(火) 18:05:18.51 ID:D2+q1Kp7o
現時点での可能性としてならオカ持ち(or魔物)ならワンチャンあるかもしれんが向こうがまず京太郎自体を知らないという
とりあえず鹿児島行こうぜ
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/29(火) 23:30:50.96 ID:TOdXQww70
そういえば鹿児島の某巫女は某所で世界線移動ネタが持ちネタになってたな...
215 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/07(木) 23:51:51.38 ID:ZsOYZilUo



部長が京ちゃんと呼んでいる。

不思議な感覚。



それにしても。

なんだか、普通の質問だ。

好奇心を滲ませた瞳を向けてくる部長を、無感動に見る。


皆も私をじっと見ていて、私の答えを待っている。

私にとっての京ちゃんって、なんだろう。

ぼんやりと考えて、言葉にしてみる。





「……京ちゃんは、……家族、みたいな感じでした」

216 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/07(木) 23:53:03.24 ID:ZsOYZilUo



反応はない。

その眼差しは真剣だったり、楽しそうだったりと違いはあるけど、一様に言葉の続きを促している。



私は話す。


「中学生のときからの付き合いで、私が困っているときには、いつも助けてくれました」


217 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/07(木) 23:58:54.78 ID:ZsOYZilUo



京ちゃんにはからかわれることも多いけど、助けてほしいと思ったときにはいつも助けてくれた。


迷子になれば見つけてくれたし、寂しい時にはそばに居てくれた。


中学からの付き合いで、男の子なのに、いつの間にか一番一緒にいる時間が長くなっていた。


喧嘩は……どうだろう。


今思えば、何かあった時には私が一方的に怒っていただけの気がする。


恋愛感情は、正直よくわからない。


ハンドボールをやってた時とかは、正直カッコ良いと思ったこともあるけれど。


218 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 00:03:56.94 ID:NbROBsPlo


「えー、じゃあ恋人じゃないのね」


部長が大げさにがっかりとしたように言う。


「キスとかもしたことないの?」

「ありませんよ、そんな……」

「手を繋いだりとかは?」

「えぇと、お正月とかの人が凄かったときには、少し」


流れで答えて、なんでこんなことを答えているのだろう、と意識が僅かにはっきりする。

顔が熱くなってきた。


「じゃあ、裸を見ちゃったり見ら」

「悪乗りしすぎじゃ」


ぱこ、と丸まったメニューが部長の額に当たり音を立てる。

渋谷先輩に叩かれて、あう、と部長がのけぞった。

219 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 00:11:41.26 ID:NbROBsPlo


「でも、彼氏じゃなかったって分かって少し安心したじぇ」


優希ちゃんが、ズズズとオレンジジュースをストローで啜る。


「咲ちゃんに彼氏が居るって知ったら、ちょっと咲ちゃんのイメージを改めなきゃいけないとこだったじぇ」

「そうじゃのう、後輩に先を越されてたかと少し心配に思うたわ」

「あら、まこはそういうの興味あるの?」

「そりゃまあ、華の女子高校生じゃしの」

「でも、ずっと仲の良い男の子が居るっていうのは少し羨ましいですね」

「和がそう言うのは意外ね」

「のどちゃんは意外と乙女なのだ」

「意外とってどういう意味ですか」

220 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 00:17:10.42 ID:NbROBsPlo


わいわいと、皆が喋り出す。

あまりの空気の違いに、呆気にとられていると、部長が私に言う。


「麻雀部ではどうだったの?」

「どう、というのは」

「男の子一人でしょ? 色々大変そうじゃない?」

「そうじゃのう、ちょっと想像できんな」

「京ちゃんはそういうの気にしてませんでしたよ、というより部内では誰も男子女子を気にしてなかったような……」

「男女のあーんなことやこんなことは?」

「なかったですよ……」

「えー、こーんな可愛い女の子に囲まれたハーレムなのに何にもなし?」

「自分で言うか」


もちろんまこも含まれてるわよ、と妙に自慢気な顔で部長が言う。

染谷先輩ははいはい、と生返事。

221 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 00:22:15.25 ID:jSe63SJMo
渋谷先輩……たかみー?
222 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 00:22:51.64 ID:jSe63SJMo
直ってたか
忘れて
223 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 00:24:47.15 ID:NbROBsPlo


「しかし唯一の男手じゃ。久がコキ使ったりしとったんじゃありゃーせんか?」

「いえ、まあ……」


やっぱりのう、と染谷先輩は部長をじろりと見る。

部長は神妙な顔をして頷く。


「その私はきっと、私の偽物ね。だって私には覚えがないもの」

「あんたなぁ……」


呆れた顔で染谷先輩はため息をつく。

不思議だった。

酷い言い分なはずなのに、昨日と同じ『覚えてない』のはずなのに、心はざわめかない。


「でも、京ちゃんも率先してそういうことをしてましたから」


実際、京ちゃんは人に頼られることが性に合っていたみたいだった。

文句を言ったり渋ったりしながらも、人のために何かをすることが多くて、本人は母さんのせいだな、と笑っていた。

京香さんはああ見えて、家事以外はけっこうな、その……ポンコツ、だったりする。

224 :>>221 全然気づかんかった……ワハハの読み間違い並に直したい……各自修正してくれい…… [saga]:2016/01/08(金) 00:37:37.46 ID:NbROBsPlo


「麻雀は強かったんですか?」

「ううん、高校から始めたって言ってたし、普通の初心者だったよ」

「ありゃ、意外じゃの」

「私も咲ちゃんの昔なじみって聞いて強そうなイメージだったじぇ」

「……ちゃんと、教えてあげたりしてたのかしら」


部長が少し声量を落とす。

この点は、流石に心配になったらしい。


「最近はインターハイとかもありましたし、ちょっと放置でしたけど……」

「そう……」

「でも、本人はそんなに気にしてませんでしたね」

「? やる気が無かったとかか?」

「やる気がなかったとはちょっと違うかな」


優希ちゃんの言葉に、少し考える。


「部活は真面目にやってたし、でも、何だろ……競技としての麻雀には重きを置いてなかった、のかな」


負ければ悔しがっていたし、ネット麻雀で勉強したりもしてたけど、なんというかそこを重要視していなかった気がする。


「目当ての子でも居たのかしら」

「あはは……」


否定出来ないので、曖昧に笑う。


「まあ、空いた時間に教えたりしてましたよ。そもそも打てるようになるまで教えてもらったのが麻雀部だったそうですし」

「そう」


私の言葉で、部長も少しは安心したみたいだ。


225 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 01:00:01.73 ID:NbROBsPlo


「なーなー咲ちゃん、そのきょーちゃんは1年だったんだろ? 私はどうだったんだ?」

「優希ちゃんとは仲が良かったよ、いつもじゃれてるみたいで」

「そうですよね、私達とは同級生だったんですよね。私はどんな感じだったんでしょうか」

「和ちゃんは……普通?だったかな」


京ちゃんが好意を抱いていた、というのは言わないほうが良いだろう、多分。


「普通……ですか」


和ちゃんは少し複雑そうな表情。

ごめん和ちゃん、でも和ちゃんは本当に普通に接してたし……。


「私は私は?」

「部長は……姉御と舎弟?」

「えー」

「ちなみにわしは?」

「染谷先輩は良い先輩後輩でしたよ」


なんかまこだけ扱い良くない?と言う部長に、再び染谷先輩が呆れた顔をしてワイワイと盛り上がる。

226 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 01:08:00.94 ID:NbROBsPlo


「じゃあねえ、次は──」



「……あの、これは何なんでしょうか」



「?」

「だって、私は話を聞きたいって言われてきたんですよ?」

「だから、話を聞いてるんじゃない」

「そうじゃなくて……」


あまりにも、空気が違いすぎた。


昨日はまるで、得体のしれないものの話をしていたようだったのに。


227 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/08(金) 01:09:14.28 ID:NbROBsPlo



「……昨日ね、皆で話したのよ」

「話した?」

「咲が帰った後にね」


部長が静かな笑顔で言う。


「咲が、なんであんなことを言い出したのかって」

228 :中途半端だけどここまでで [saga]:2016/01/08(金) 01:14:35.36 ID:NbROBsPlo



「同じ学校にもう一人生徒が居た。麻雀部に、もう一人の部員が居た。 私に──もう一人後輩が居た」


染谷先輩が続ける。


「正直、突拍子もない話での。記憶に無い人間が、仲間に居たはずと言われたんじゃ。まあ、ちょっと信じがたいのう」

「でも、咲ちゃんが嘘をついてないことくらい、私達にも分かったじぇ」


まんじょーいっちだったじぇ、と言う優希ちゃんの後に、だから、と和ちゃんが続く。


「だから、皆で決めたんです。咲さんの話を聞こうって」





皆が、私をまっすぐに見ている。

皆を見渡して、部長と目があったところで、部長が笑う。



「まあ、そういうことよ」
229 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 01:19:22.64 ID:jSe63SJMo
乙でー
230 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 01:20:48.69 ID:LdmYdzkYO
乙です
231 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 08:22:23.72 ID:YdDq9Y3bO
あけおめ
232 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 11:09:06.33 ID:DY2O9Hg3o
舞ってた
233 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 17:01:29.18 ID:Edc59ffko
乙です
234 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/09(土) 07:31:14.65 ID:0vP6kVdSO
おつ
解決してほしいな
235 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 23:11:02.72 ID:vs5sEIMK0
追いついた
これが本当の非実在青少年ってやつか…
236 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 19:28:05.63 ID:FpEpUavGo



「正直ね、落ち着いてから、少し後悔したのよ。結論だけを急ぎすぎたんじゃないかって」


部長が恥ずかしげに首に手を当てる。


「何も急ぐことは無いのに、答えだけを突き付けてしまった。咲だって、嘘をついてる訳じゃない、それは分かったはずなのに」

「これは結論ではなくて、結論までの過程こそが大切なことだと気づくのに、少し時間がかかってしまったの」


237 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 19:29:37.20 ID:FpEpUavGo


「ごめんなさい、咲さん」


部長の後を継ぐように、和ちゃんが言う。


「私達は嘘をついていない、それは本当のことです」

「でも、だからといって咲さんが嘘をついていることにして良いはずが無かったんです」





「昨日の今日で、手のひらを返しているように思われるかもしれませんが……力にならせてもらえませんか?」




和ちゃんの言葉に、染谷先輩が頭を掻く。


「ただ、言っとくがのう。その『京ちゃん』の存在を、わしらが信じたわけじゃないことは言うとくぞ」






「わしらが信じとるのは、ただ咲のことだけじゃ」









それは、今の自分にはあまりにも綺麗な言葉だった。

238 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sagasage]:2016/01/16(土) 19:56:42.69 ID:PSf5QnmPO
まあこれは咲さんのお話だけどこの状況での京ちゃんサイドを考えても面白いよね
ない訳じゃない世界線移動じゃなかった場合の奮闘劇みたいな
239 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 20:16:58.25 ID:HQKfN02SO
<●><●>
240 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 20:56:09.41 ID:z+sf/GTEo
なんかすごく悲しい
241 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/16(土) 21:05:39.11 ID:v+1oVdFzO
優しいルートには違いないけど一歩間違えばこれ部員全員狂気ルート突っ込むな(フラグ)
242 :寝落ちってたのよー [saga]:2016/01/16(土) 21:28:59.58 ID:FpEpUavGo


「もしかしたら、咲ちゃんだけじゃ分からないことが分かるかもしれないじぇ!」

「昨日も、色々話したのよ? 咲だけ異世界人説は和が全力否定してたけど」

「そんなオカルトありえません。真面目に考えてください」

「真面目なんだけどねえ」



あまりにも、眩しかった。






──私は、諦めてしまったから。





「なんで」

なんで、今更。








私が諦めてしまった後に。



繋ぎ止めようとするの。

243 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:29:51.70 ID:FpEpUavGo






「無理ですよ」





244 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:31:25.22 ID:FpEpUavGo

「あら、わからないじゃない」

「だって、ぜんぜん違う。私の知っている世界と、この世界は違うことだらけ」

「どこまで同じでどこから違うのかも分からない」



「それこそ、本当に異世界に来たみたいに」



「教えて下さい」

「私は、インターハイに出れたんですか? そもそもいつ麻雀部に入ったんですか?」

「私が麻雀部に入ったきっかけは? 出会ったとき、私は私だった? お姉ちゃんとは仲直り出来たの? 私は、どうして清澄高校に入ったの?」



本当に異世界の住人であれば、良かったのに。

そうすれば、私はただ戻る術を探せば良いだけなのに。



「──教えて、ください」


245 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:32:58.65 ID:FpEpUavGo


そんな私に皆は顔を見合わせ、



「咲と会ったのは、わしが一番最後だったかのう。第一印象は本を探してる文学少女って感じじゃったが」

「咲ちゃんは出会った時から咲ちゃんだったじぇ」

「私の時はまた小さい子がいるわねぇって感じだったかしら。その後すぐに凄いの来た!って思ったけど」

「私は……正直、その、最初はちょっと嫌でした。麻雀は好きじゃないって言われたり……」

「のどちゃんも強く当たったりしててお互い様だった気もするじぇ。そーいえば、怒って帰っちゃったとかあったなー」

「それは、その……若気の至りというか……」

「たった半年前じゃろうが」




私に、応える。

246 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:37:03.85 ID:FpEpUavGo


「インターハイはまあ、昨日の祝勝会で言わずもがなでしょう」

「おねえさんとは仲直りしたって咲ちゃんが自分で言ってたじぇ」

「挨拶もしたしのう、アレで実は仲直りしてなかったのなら驚きじゃ」



言葉が痛い。

関わるのを止めて欲しくて、皆を遠ざけようとして吐いた言葉が飲み込まれていく。

247 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:40:44.50 ID:FpEpUavGo


「咲が麻雀部に入ったのは勧誘期間が過ぎてしばらくしてからだったかのう」

「私が図書館で誘ったのよね。咲が清澄を選んだ理由って聞いたことある?」

「そういえばありませんね」


それでも、やっぱり希望に至らない。

どころか、私の納得を深くする。





諦めるための納得を。

248 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:42:08.45 ID:FpEpUavGo




「──やっぱり、無理ですよ」


「聞けば聞くほど、私の知ってる世界なのに」


「ただ、京ちゃんだけが消えている」



執拗に、徹底的に。

まるで、何かの意思が京ちゃんだけを消そうとしているかのように。

249 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:43:52.61 ID:FpEpUavGo


「ねえ和ちゃん、優希ちゃん、覚えてないの?」


「私をここに連れてきたのは、京ちゃんだよ?」


「なのに、なんで?」


「部長が私を?」


「私が、知ってる世界でも、図書館で部長に誘われたけど」


「それは、京ちゃんが私を連れてきたからで、だから部長が私を麻雀部に誘ったんだよ?」


「なのに、京ちゃんではなく部長が──」


250 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:45:10.81 ID:FpEpUavGo






「──────」




251 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 21:46:00.93 ID:FpEpUavGo




「────部長」


「部長はなんで」






「なんで私を誘ったんですか?」
252 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:10:51.90 ID:FpEpUavGo



「……やっぱり、強かったっていうのが一番の理由かしら」

「強かった、から」

「ええ。プラマイゼロを見せられて、夢を見ないなんて方が無理な話でしょう」

「でも、部長」


253 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:11:21.99 ID:FpEpUavGo



「どこで、私が強いなんてことを知ったんですか?」

「え?」



254 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:15:27.53 ID:FpEpUavGo


「ええと……んん? あ、そうそう、部室で和と優希とゲストが打ってたのを見たのよ」

「さっき言ったでしょう、ゲストに小さい子が居るなって思って、その打ち方に驚いたのよ」

「じゃあ、麻雀部に連れてきたのは部長じゃないんですね?」

「そうね」




「ねえ、和ちゃん優希ちゃん」

「私が、なんで麻雀部に居たか覚えてる?」



「……確か私は咲ちゃんが来たとこを見てないからのどちゃんが答えるじぇ」

「え? ええと……普通に、麻雀を打ちに来たのでは?」

255 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:20:56.99 ID:FpEpUavGo






 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「私は麻雀がキライだったのに?」




256 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:27:35.29 ID:FpEpUavGo


広い室内が、しんとなる。


「和ちゃん、言ってたよね」


「私が、麻雀好きじゃなかったって」

「それは……」

「間違いじゃないよ、和ちゃんには控えめに言ったけど、私はあの時確かに麻雀がキライだったから」



             ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「でも、じゃあ、なんで私は麻雀部で麻雀を打っていたの?」

257 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:29:15.64 ID:FpEpUavGo


「……待ってください、ちょっと、待って……」

「和か、優希が誘うたんじゃないんか?」

「私も、のどちゃんもあの時が初顔合わせだった……はずだじょ」

「え、ちょっと待って、和も優希も覚えてないの?」

「部長」

258 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:31:44.24 ID:FpEpUavGo


「部長はさっき、私が打っていたのを見たと言ってましたよね」


「和ちゃんと、優希ちゃんと、私と──あと一人は?」

「あと一人……ゲストの子じゃあ」

「何年生か、どんな子だったか。覚えてますか?」

「あれ、えーと、ちょっと待って。ええと……え? あれ?」

259 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/16(土) 22:35:39.64 ID:FpEpUavGo


「……どういうことじゃ」


染谷先輩が、呆然と呟く。


「誰も……誰も、覚えてないんか?」


「……ぁああ」

「咲!? どうした、大丈夫か!?」

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