やはり俺の脳内選択肢が青春ラブコメを全力で邪魔しているのは間違っている。

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232 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/23(土) 22:53:30.93 ID:Ja1p4IpZ0
 みんなと合流した後、列に並びなおして清水寺の有名な本殿に入った。

 俺たちのような修学旅行生だけでなく、一般の観光客もいてごった返している。

奏「すげぇ人……」

 嫌になるくらいに人が多い。

 そんな中でも、由比ヶ浜さんがアピール(とは言えないか)をしているのが見えた。

結衣「ヒッキー、写真一緒に撮ろうよ」

八幡「別にいいけどよ……」

 思い出づくりかー、いいなぁ。

【選べ

 1、大声で牛の鳴きまねをして思い出を作る

 2、集合写真に変顔で写り、思い出にする。

 3、清水の舞台から飛び降りる       】
233 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/30(土) 14:32:44.22 ID:03twstmO0
 社会的に死ぬか物理的に死ぬかの選択を強要されてる……っ!?

 いや、運が良ければ清水の舞台から飛び降りても死なないのか……? いや、こんな思考がアウトか……。フラグみたいだ……。

 集合写真写真は形に残ってしまう……。あとあとからいじられるネタになるだろう。

 その点では牛の鳴きまねも同じだけど、あれは記録には残らないはず……!

奏「ンモォ〜ウ」

 頭痛。

 まだやるのか!?

奏「モ、モォ〜ウ」

 突如牛の鳴きまねを始めた俺の周りに、やじ馬が集まり始める。

 そして、あ、ちょっとやめて! その可能性は考慮してなかった! スマホで動画撮るのはやめてよ観光客の皆さん!

 自分の意志でやってるんじゃないんだから! ある意味自分の意志だけど……仕方なくだから!

奏「モォ〜ウ……」

 そんな心の叫びが通じるはずもなく、結局SNSで拡散されている俺の鳴きまねを、由比ヶ浜さんが拾って後から見せてくれた。……結構俺うまいじゃん、と思ったのは現実逃避だ。




八幡「災難だったな……」

奏「ほんとだよ……」

ホテルへと向かう途中、完全にうなだれた俺を八幡が慰めてくれた。
234 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/30(土) 15:47:32.83 ID:03twstmO0
八幡「じゃ、買ってくるわ」

彩加「いってらっしゃい」

 八幡がゲームの罰ゲームで飲み物を買いに行ったあと、俺はなんとなく、謳歌に電話してみることにした。

奏「俺も、ちょっと外出てくる」

彩加「うん、いってらっしゃい」

義輝「うむ。存分に外の風にあたってくるがいい」

奏「はは、ありがとう」

 ちょっと苦笑いしつつ部屋を出る。
235 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/30(土) 15:56:04.26 ID:03twstmO0
 そして、携帯電話で電話をかけ始めた。

 prrrrr……

 prrrrr……

『おかけになった番号は、現在使われておりません。……』

 え……?

 それから二階ほど試してみたが、全て同じ結果だった。

奏(電話変えたのかな?)

 そう思い、今度はショコラ……家にかけてみる。

 prrrrr……

 prrrrr……

 『おかけになった番号は……』

奏(あ、そういえばそうか)

 俺、引っ越ししたんだった。

 ならばと思い、今度はふらのに電話する。

 prrrrr……

 prrrrr……
236 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/30(土) 15:56:41.31 ID:03twstmO0
     『おかけになった番号は、現在使われておりません。』
237 : ◆oUKRClYegEez :2016/04/30(土) 16:04:09.85 ID:03twstmO0
 え……?

 どうして、誰にも電話がつながらない……?

 そこで、迷惑かもしれないと思いながら、総武高じゃない人の電話を片っ端からかけていく。

『おかけになった番号は、現在使われておりません。』

『おかけになった番号は、現在使われておりません。』

『おかけになった番号は、現在使われておりません。』

『おかけになった番号は……』

 っ!

 どうして――誰にもつながらない!?

 他の人はともかく、チャラ神にも通じないなんて――何かが、絶対におかしい。

 電話に出ないのならまだわかる気もする。けど――神が、担当である俺に言わずに番号を変えるなんてこと、ありえるのか!?



 そして、気づいた。

 気づいてしまった。

 どうして俺は、今の今まで。

 この一か月ほど。

 あれほど仲のよかった人に、電話せず、されなかったのだろう?
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/30(土) 16:04:31.02 ID:f8yNg0LSO
終わり?
239 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/04/30(土) 16:05:07.89 ID:03twstmO0
※ 迷走してきました。今日はここまで。
240 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/04/30(土) 16:09:19.37 ID:03twstmO0
 >>238
ssは続きますよ
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/30(土) 23:08:39.67 ID:AoK+4t+sO
乙です
いよいよ物語が動き始めたー
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/30(土) 23:37:50.07 ID:h2mmkVyQo
乙です
243 : :2016/05/07(土) 19:30:18.93 ID:UQvx4Ufc0
そこまで考えて、あと少しでおかしくなりそうになった時ーー俺の意識は、途切れた。



奏「んあ……」

目が覚めると、そこはホテルの自分の部屋だった。

静「ああ、起きたか」

見ると、平塚先生が隣で京都の観光雑誌を読んでいた。俺を見ると部屋の畳に置いた。

外は明るく、曇ってはいるが既に日が昇っていることはわかった。

奏「すみません……俺、どれくらい寝てました?」

静「昨日私が夜に見つけてから今までだから……ちょうど12時間ってところか。よく寝たな」

奏「そうですか……」

静「今日も観光……したかったな……恋愛や結婚のご利益あるところ……調べてたのにな……」

付箋がびっしり貼ってある雑誌を恨めしげに見る先生を見て、凄く可哀想に思った。誰か、もう貰ってあげなよ………
244 : :2016/05/07(土) 20:39:38.35 ID:UQvx4Ufc0
静「君は目覚めたんだが、今日の予定はパスして、ゆっくり寝ていたまえ」

奏「……わかりました」

まぁ……当然か。

いきなり倒れたら、まぁ強制送還されないだけありがたいだろう。

静「明後日から、また参加すればいいさ。またちゃんと動けるように、しっかり休んでろよ」

奏「はい」

ゆっくり休むつもりだけど……あの事は考えないと……。
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/08(日) 00:21:35.23 ID:gC8vixNpo
乙です
246 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/05/12(木) 21:44:06.43 ID:33MnJtmI0
 修整
>>244
 いきなり倒れたのだから……まぁ、比企谷宅に強制送還されないだけ、ありがたいだろう。
247 : [sage]:2016/05/14(土) 14:30:52.34 ID:3GL1CB2yO
>>224 追加修正

静「明日から、また参加すればいいさ。



明後日じゃないですね
248 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/14(土) 22:27:43.18 ID:wvmG+it60
 とりあえず、紙に書いて整理してみよう。

 えっと、紙……紙……そうだ、なにも書いてない修学旅行の栞のメモ翌欄。

 栞は回収されるから、後で消しておかないと……

・晴光学園の人や家族とは連絡を取ることが不可能。

・チャラ神とも連絡不可に。

・ミッションもここのろころなし。選択肢が現れるため、警戒は必要。

・ここに来る過程の記憶が曖昧。


 こんなところか。

 しかし……どうしてこうなった。
249 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/14(土) 22:28:08.51 ID:wvmG+it60
 また、寝てしまってたみたいだ。

 もう夕方か……今日も、夕飯食って寝るか。
250 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/14(土) 22:29:00.22 ID:wvmG+it60
 昨日早く寝たこともあって、かなり早い時間に起きた。

 部屋を出ると、そこには既に由比ヶ浜さんが。

奏「あ、おはよう」

結衣「おはよ、甘草くん。ヒッキー待ってるんだけど……」

奏「……奉仕部のこと? それともなんか個人的な用? なんなら起こしてくるけど」

 すると由比ヶ浜さんは顔を赤く染め、動揺しているのがあきらかな感じで言った。

結衣「ぜ、全然!? 個人的な用、とかじゃなくって……ほ、奉仕部のことでちょっと準備しなきゃなーって思って、朝ごはんキャンセルしたしそのことも言わなきゃなーって……」

 慌てて話す由比ヶ浜さんに言う。

奏「俺も奉仕部なんだし……その話聞いてもいい?」

結衣「あ……甘草くんが奉仕部だってこと忘れてた……」

奏「そ、そう……」

 傷つきました。ええ、とても。

奏「えっと、じゃあ、俺も朝飯キャンセルしてくるから……それから集合でもいい? 八幡、まだしばらく起きないと思うよ」

結衣「あ、うん、わかった。……ごめんね?」

 かるく両手を合わせて上目遣い。

 凄いね、並みの男ならまず惚れる。

 でも俺には……いるからな。片思い。

奏「いいよ、気にしてない。じゃ」

結衣「うん、じゃ」

 軽く俺は手を振って、エレベーターホールに向か――

【選べ

1、女子の階に降りて先生に見つかる

2、外に出て京都の朝の街を全力ダッシュ      】


 流石に1はないだろうと思いつつ……でも、一日ほぼまったく動いてない体にはきっつい選択肢だな、2は……。
251 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/14(土) 22:29:38.51 ID:wvmG+it60
 俺は朝食をキャンセルしたものの、お冷を何杯かもらう羽目になった。
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/14(土) 22:38:49.39 ID:ewjOjUQbo
乙です
253 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/21(土) 16:47:01.64 ID:tYKSPM800
 おしゃれなカフェで雪ノ下さんと合流し、朝食をとった後、伏見稲荷の階段を登る。

奏「ふぅ……」

 朝にちょっと運動したおかげで疲れがあるかと思ったけど……逆にいい運動になったみたいだ。かなり長くつらい階段も、それほど辛くない。明日以降の筋肉痛が怖いけれど。

 少しのぼったところで休憩(雪ノ下さんの体力の限界)し、そこで八幡があきらめて(主に雪ノ下さんのおもんばかって)下りることにした。

結衣「甘草くん、元気だね……」

 いつも元気な由比ヶ浜さんがやや疲れ越えで言う。

奏「……そうでもないよ?」

 11月だというのに、軽く額には汗をかいている。

 昼頃になるにつれて増えてきた観光客による人口密度のせいもあるかもしれない。

雪乃「ふぅ……」

 雪ノ下さんがため息をつく。

 八幡がそんな雪ノ下さんを見て『へっ』と笑うのが見えた。

 いや、君が疲れている雪ノ下さんを見てにやっとしたのはわかったけれど、笑いの擬音が『へっ』なのをちょっと自覚してほしいな。周りの観光客の方ひいてるじゃないか。俺も正直ちょっと引いてる。
254 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/21(土) 16:59:21.37 ID:tYKSPM800
 東福寺に行くと、そこには葉山君たちリア充グループがいた。

 写真を撮っているらしい葉山君がフラッシュと一緒に輝いて見える。すげぇ……。

葉山「や」

 葉山君が八幡と雪ノ下さんを見て軽く挨拶する。

 由比ヶ浜さんはもはや挨拶がいらない仲(流石リア充)、俺とは挨拶しない仲。

 由比ヶ浜さんのリア充スキルで、かねてから計画していた同行計画を自然なものにした。恐るべきリア充。

 雪ノ下さんと三浦さんが火花を散らす中、

姫菜「ヒキタニくん」

 海老名さんが八幡を呼んでどこかに行く。

 かなりの人ごみを、八幡のぼっちスキル(本人談)さながらにすり抜けていく。

 八幡はその後を追いかけていくけれど……俺は呼ばれていないから行かない方がいいだろう。

【選べ

1、 比企谷八幡の邪魔をする

 2、甘草奏の邪魔をする             】
255 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/21(土) 17:00:11.68 ID:tYKSPM800
 訳のわからない選択肢唐突にでたな!

 八幡の邪魔をしたくない、とはおもうけど……俺の邪魔をするってどういうことだ?

 とりあえず2を選択すると、俺は頭痛に見舞われた。

 思わず一歩よろめくと、少し軽減される。その先にはきれいに人ごみをすり抜けているぼっちの姿が。

 もしかして……『ついて行かない』俺の意志を邪魔しろと? ついて行けと?
256 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/21(土) 17:00:55.16 ID:tYKSPM800
姫菜「相談、忘れてないよね?

姫菜「どうどう? メンズたちの仲は? 睦まじい?」

八幡「……仲はいいんじゃないか? 夜とか麻雀してるし」

 そこかよ。てか八幡参加してたっけ?

姫菜「それだと私が見れないしおいしくないし!」

 見たいんだ……

八幡「まぁ俺たちも嵐山行くし、その時に……」

姫菜「よろしくね」

 海老名さんの顔は見えなかったが……「よろしくね」だけが、なぜか別の意味に聞こえた。
257 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/28(土) 19:02:45.26 ID:k1TJ7jmQ0
 今日は二レスで。明日もうちょっと続けようと思います
258 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/28(土) 19:03:24.13 ID:k1TJ7jmQ0
 さて、ここは北野天満宮。

 学業の神様こと菅原道真を祭った神社だ。

 小町ちゃんの高校合格祈願に、八幡の希望で寄った。まぁ、俺もちゃんと横で同じ絵馬描いてるあたり、人のことは言えないんだけど……。

八幡「……待たせて悪いな」

奏「待っててくれてありがとう」

 俺と八幡が雪ノ下さん・由比ヶ浜さんのところに戻る。

雪乃「では、行きましょうか」

 次は、嵐山。
259 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/28(土) 19:04:18.02 ID:k1TJ7jmQ0
 ……なぜか変なところで来る選択肢の頭痛『甘草奏の邪魔をする』で、八幡たちの少し後を追うようにして行く。

結衣「甘草くんどうしたの? 急にいなくなっちゃって……」

 正確にはストーカーに近い感じで後ろをついて行っていますよ、ええ。

八幡「まぁ、あいつにはあいつなりの事情があるんだろ」



結衣「あ、あれおいしそー!」

 多くの店が軒を連ねる通りで、由比ヶ浜さんが食欲を刺激され、何かいろいろと買ってるみたいだ。

雪乃「夕食、入らなくなるわよ……」

結衣「あ……。どうしよう、ゆきのん」

雪乃「はぁ……わかったわよ」

 多くの人の喧騒であまり詳しくは聞こえてこないんだけど……由比ヶ浜さんの持っているものを口に入れた。

雪乃「あなたも手伝いなさい」

 雪ノ下さんにジトっと睨まれて、八幡も由比ヶ浜さんから肉まんらしきもの(手で半分に割ってるから間接キスじゃない)を受け取り、食べる。

 由比ヶ浜さんが次に出した揚げ物も、八幡は同じように食べる。それを見て、由比ヶ浜さんが笑う。

 八幡のやつ、はたから見れば普通にリア充やってるんだけどな。
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/29(日) 08:54:59.32 ID:Us+D768Ko
乙です
261 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/29(日) 18:16:44.35 ID:UvbGVtmI0
 竹林の道で会話する。

 ……今は選択肢の効果は出ていない。

結衣「すごいね、ここ……」

奏「足元、灯篭があるんだね」

雪乃「夜になるとライトアップされるそうよ」

 すると先行していた由比ヶ浜さんがはっと後ろを振り返り、

結衣「ここだ! ここがいいよ!」

 と大きな声をあげた。

八幡「何が」

 かな〜り冷たいトーンの八幡に、照れながら由比ヶ浜さんが言う。

結衣「告られる……なら」

八幡「なぜに受動態……」

 ……俺は軽く苦笑して空を見る。

 ――今夜は晴れそうだ。

 ただ、風は秋らしい冷たいものだった。



 夕食の後、みんなで部屋に集まっていた。戸部君の挙動がおかしい。それはもう。恋してるなーって感じの挙動のおかしさだ。

翔「っあー、やっべ……緊張してきた」

 『してきた』じゃなくて『してる』でしょ、という野暮なツッコミはしない。

彩加「なんかこっちまで緊張するね」

 戸塚さ……くんが緊張気につぶやいた。

 というか、本当に一瞬この人が男子部屋にいるのにどきっとするんだけど……今更だけど。

 と、不意に葉山君が戸部くんに一言二言かけて部屋から出ていく。

 それについて行く八幡が気になって、気づいた時にはその後を追いかけていた。
262 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/29(日) 18:17:30.16 ID:UvbGVtmI0
八幡「やけに非協力的だな」

 川辺で会話する二人の声が聞こえる。

隼人「そうかな?」

 いつものイケメンスマイルで受け答える葉山君。

でも、そこには俺でもわかるくらいの暗さがあった。

隼人「そういうつもりはなかったんだけどな」

八幡「じゃ、どういうつもりなんだ?」

隼人「……俺は今が気に入ってるんだよ」

 行かない方がいいか、と思いつつ、今回の依頼に関する件なのはわかったので、どうしても抑えきれず、

奏「続き、俺も聞いてもいいかな?」
263 : ◆oUKRClYegEez :2016/05/29(日) 18:18:15.99 ID:UvbGVtmI0
 いつもの俺なら絶対にしない。

 でも、隠れて聞いてる方がよっぽど悪いと思うから。

 ――なにか、取り返しのつかないことになるような気がして。

 葉山君と八幡が驚いたように俺を見る。

 葉山君は一瞬驚いたような顔をして、

隼人「別に、いいよ?」

 と言った。

 そして、俺と八幡の方を(自然な動きで)向き直って、続けた。

隼人「戸部も、姫菜も、一緒にいる時間がいいんだ。だから、」

 しかし、そこまで言ったところで、八幡が止めた。

八幡「……それで壊れる関係なら、それまでだったってことだろ」

奏「……っ!」

 言いたい。なにか言い返したい。

 選択肢の頭痛はきていない。でも、文化祭のときに、まさにぶっ壊すことをした俺は……そんなこと言えない。俺が壊した責任を――感じているから。

隼人「そうかもしれない。でも……失ったものは戻らない」

八幡「勝手な言い分だな。お前の都合でしかない」

 葉山君のそんな言葉を、八幡が一蹴する。

隼人「ならっ! ……きみはどうなんだ。君たちは。君たちなら、どうする」

 ……八幡も、俺と同じようなことをしたことがあるのだろうか。

 あの屋上では、そんな雰囲気があったから、という理由で八幡を押しのけ、俺が壊したけど……。

八幡「俺の話なんてどうでもいいだろ」

奏「……俺が、意見できることじゃない」

 壊した立場の人間が……守る側の気持ちなんて。

 わかっているから、葉山君にそれを提示したらいけない。

隼人「……これはただの、俺のわがままなんだ」

 葉山君が、寂しげに笑う。

 わかった。

 彼は……『依頼できない依頼』をしている。

 俺の勘違いかもしれないけど……彼は、『今』を失いたくないと言った。

 つまりは……。

八幡「見くびるなよ葉山。俺は人の言うことを簡単に信じない」

奏「っ!」

 それも、わかった。

 八幡は……やるつもりだ。

 俺が、文化祭でやったことを。

 自己――犠牲を。

八幡「だから、お前のわがままも信じてやらない」

 葉山君が驚いた顔をする。

奏「八幡」

 俺は、気づけば呼んでいた。

八幡「……なんだよ」
264 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/05/29(日) 18:20:05.64 ID:UvbGVtmI0
 そろそろ7巻を完結させます。
 やけにレスが長いのは気にしないでください……。
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/30(月) 00:02:36.38 ID:/XgpMnjgo
乙です
頑張って
266 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/04(土) 13:02:47.67 ID:5Z0R9HG40
奏「なにを……するつもり?」

 必死に捻り出した言葉がそれだった。

八幡「…………」

 何も答えない。答えるつもりもないだろう。

 でも、ここで止めなければ八幡は――

隼人「……君にだけは頼りたくなかったんだけどな」

 葉山君がうつむいて話す。

――違う、そうじゃない。

 この話を曖昧にしたら、取り返しのつかないことになる――!

奏「自己犠牲は、やめろよ」

 迷った挙句、ストレートな言い方しか思いつかなかった。

八幡「なんの話だ」

 完全に理解したうえで、八幡はわからないふりをしている。  そんな顔だった。

奏「俺も協力する、だから――」

 一人で抱え込むな。

八幡「例えお前の協力があったとしても、俺のすることは変わらねえ。それがこの現状、一番効率のいい方法だ」

奏「効率って……」

 否定したかった。

 でも、自己犠牲以外の他の方法を――そもそも八幡の考える具体的な方法すら――思いつかない俺は、別の案がない以上、彼を否定して納得させることができない。

八幡「それに……自己犠牲だなんて呼ばせねえ。これは俺だけができる、だから俺のするべきことだ」

奏「でもっ……!」

 それじゃあ――八幡が傷ついたままじゃないか。

八幡「葉山……戸部のとこ行かなくていいのか?」

俺との話を八幡が断ち切る。

隼人「さっき行ってきたばっかりだよ」

八幡「それもそうか」

隼人「というかそろそろ……海老名さんが来るのを待ってないと」

八幡「……先に行ってる」

 そう言うと八幡は……先に行ってしまった。
267 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/04(土) 13:08:55.41 ID:5Z0R9HG40
隼人「甘草くん」

 八幡が行ったあと、葉山君が話しかけてきた。

隼人「すまない。比企谷にあんな頼みをして……。でも、彼に頼るしか、俺は……」

 誰だって頼りたくないだろう。

 自分たちが傷つかないために……変わらないために、八幡を傷つけることになる。

 それも……彼は自分から傷つくから、謝っても『それでいいのか』と思ってしまう。

 彼は、だから俺に独白する。

 自分ではなにもできず行き場のない感情を持つしかなかった彼は、実際に行動に移すところまではした俺に向かって。

 ――自分の依頼はそのままに、彼も助けてはくれないか、と。

奏「気にするな。なんとかなる」

 俺自身、なんとかしたいんだ。

 言われなくとも、やるだけやってやる。

隼人「…………ああ」

 そこからなんとなく……戸部君の告白場所、竹林の道に向かった。
268 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/04(土) 13:16:47.66 ID:5Z0R9HG40
八幡「戸部」

 道の真ん中に立っている戸部くんに、一言二言声をかける八幡。

 俺たち(雪ノ下さん、由比ヶ浜さん、葉山君、あと名前忘れちゃったけど二人)は、道の反対側からくる海老名さんから見えないところに隠れている。

 たたっと八幡が戻って来る。

結衣「ヒッキー、いいとこあるじゃん」

 声が少し弾んでいる由比ヶ浜さん。

雪乃「どういう風の吹き回し?」

 やや驚いたように言う雪ノ下さん。

八幡「そういうんじゃないんだよまじで。このままだと戸部は……」

雪乃「そうかもしれないわね……」

結衣「そう、だね……」

八幡「一応、丸く収める方法はある」

結衣「どんな方法?」

雪乃「……まぁ、あなたに任せるわ」

 二人とも、何をするか感づいてはいないみたいだ。

 本当に、俺が――八幡を止めないと。
269 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/04(土) 13:22:42.53 ID:5Z0R9HG40
 やがて海老名さんが来て、戸部くんや見守る俺たちの間に、独特の緊張感が流れる。

翔「おれ、おれさ」

姫菜「うん」

翔「あ、あのさ……」

 意を決したように顔を上げる戸部くん。

 と同時に、八幡が動き出した。

 止めないと――。

 そうだ、いっそのこと、ここで騒いでしまえば告白は未然に終わり、八幡も傷つかずに済むのではないか。

 ――降りてきた!

 八幡を――止める! ここで!

 ―――――――――――――――――
270 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/06/04(土) 13:27:47.72 ID:5Z0R9HG40
 次回7巻分完結です
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/04(土) 13:46:17.94 ID:2buWl9g/o
乙です
期待
272 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/06/11(土) 21:23:00.06 ID:0ss/DwgJ0
 ――頭痛。

 選択肢の。

奏「っっうぅ!?」

 頭がかちわれそうなほどに痛い。

 まるで――そう、『お前は比企谷八幡の邪魔でなく、甘草奏の邪魔を選んだだろう』とでも言いたげに。

 動けない。

 動きたくても――頭痛がそれを阻害する。

 指を動かしただけで痛む。

 額に脂汗がにじんで――でもそんなことより、八幡を――!

「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください」
273 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/11(土) 21:23:54.95 ID:0ss/DwgJ0
 止められ、なかった。
274 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/11(土) 21:36:24.17 ID:0ss/DwgJ0
姫菜「ごめんね、今はだれとも付き合う気はないの」

 ぱたぱたと、誰かがどこかに走り去っていく音がする。

 そのあと、葉山君たちが八幡に二言三言、声をかけてから立ち去った。

雪乃「うまく言えなくてもどかしいのだけれど……。あなたのやり方、嫌いだわ」

 雪ノ下さんの声は底冷えするように冷たかった。

結衣「もっと人の気持ち、考えてよ! どうしていろんなことがわかるのに、それがわからないの……」

 皆が去ってから、呆然と立ち尽くし、星の見えない空を見上げる八幡に、俺は声をかけた。
275 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/11(土) 21:50:54.70 ID:0ss/DwgJ0
奏「……八幡」

八幡「…………なんだ」

 返事がどこか、上の空だ。

 でも、正直俺もそんな感じで話しかけていた。

 ぼーっとしたまま、でも何かを話し始める。

奏「俺、止められなかった」

八幡「別に、止めてもらわなくたっていい。事実、これで戸部はフラれずに済んで、葉山たちはこれまでの関係のままだ」

奏「……全部が今までのままってわけじゃない」

八幡「そうかもな。葉山たちには少しの雰囲気の悪さくらいは残るだろうな。でも、これが一番壊れないで、誰も傷つかないで――」

奏「傷ついてるよ」

八幡「誰が?」

 そういう八幡の声に、ややいらだちのようなものが混じる。

 でも、微妙にいらだちとは違う。なんだ……?

奏「お前が。そして俺自身が」

 ……我ながらなんて自分本位のセリフだろう。

 頭の、ろくに表に出てこない冷静な部分が軽く笑っている。

八幡「俺は傷ついてなんかいねえ」

 八幡はぶっきらぼうにそう言うと、来た道を戻って宿に戻ろうとする。

奏「……待てよ」

 たらたらと歩き始めていた八幡が、ふらふらと止まる。

八幡「……なんだ」
276 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/11(土) 22:02:06.14 ID:0ss/DwgJ0
 本人に傷ついている自覚はなくとも、たぶん、あいつは傷ついている。

 文化祭の時は俺が代わりに傷ついた。

 でも、今回は止められなかった。

 それは、50%位は選択肢のせいかもしれない。

 でも、もう半分は、止められない理由を選択肢のせいにした俺の――自己保身のせいだ。

奏「……悪い」

 言葉が出てこない。

 八幡が一番傷ついているのに、それがわかっているはずなのに、自分への絶望が止まらない。

 八幡を救ってやれる言葉が、出てこない。

八幡「お前が謝る必要なんて、どこにもないだろ」

 もっともなことを指摘される。

 でも。

奏「謝罪って、自分がしたいからするもんじゃないのか? 俺はお前を止められなかった。たとえそれがお前が望んだ結果の通りだとしても、俺はお前を止められなかったことに対して謝るよ。悪い」

 すると八幡は、へらっと(変で、竹藪のせいも相まってやや怖い)笑みを浮かべると、こう言った。

八幡「屁理屈って、自分が聞くと嫌になるもんなんだな。友達いないから初めて知ったわ」

奏「俺は、友達じゃないのか?」

八幡「訂正しようか。友達いなかったから、だ」

奏「……ははっ」

 それを聞くと、気が抜けた。
277 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/11(土) 22:21:29.34 ID:0ss/DwgJ0
八幡「俺の行動を、肯定でも否定でもなく――謝って。まぁそれは葉山もやったが、あいつは俺の行動じゃなく依頼したことに謝ったからな。ノーカンか」

 そこで一旦八幡は深呼吸して、続けた。

八幡「だからお前とは、いい関係になれる気がする。でも……」



八幡「やっぱりだめだ。人を信じないわけじゃあないが……俺はまだ、友人を作れない」
278 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/11(土) 22:26:17.37 ID:0ss/DwgJ0
 修学旅行最終日。

 帰りの新幹線を待っているとき、今回の八幡への依頼人と八幡が消えていた。

 秘密の逢瀬、といえばややいかがわしく聞こえるかもしれないが、そんなことは二人に限ってはないだろう。

 この依頼は、八幡と海老名さんだけの秘密にするだろう。

 俺が気づいたことは、海老名さんは知らない。知ったところで、どうもしない。

 俺は、八幡を止めようとした。

 実際には止められなかったが……止めようとしている意志は、八幡にはちゃんと届いていた。

 でも、あいつはやめなかった。

 帰りの新幹線で、俺はだれと話すでもなく、ただぼーっと景色を眺めていた。
279 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/06/11(土) 22:28:10.87 ID:0ss/DwgJ0
 次からはいろはす!いろはすですよ!!
 やっと!!!
 某ss(名前忘れてしまった)見てからすっかりファン(推し)のいろはすです〜〜!

 ……失礼。
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/11(土) 22:44:34.30 ID:EhKmQZwYo
乙です
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 12:58:21.71 ID:tcgR9eMQO
乙です

俺もいろはす好きだから楽しみ
282 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/18(土) 22:54:28.58 ID:9aIGj0f10
 月曜日。

 悪夢のような修学旅行から帰ってきて、休みを挟んだ月曜だ。

 週初めはいつも辛いけれど、今日はいつも以上に辛い。

 いや、この休みのことを考えれば、学校に行って八幡と一緒にいる時間が短くなるのはいいことなのかもしれない。

 あの告白で、俺と八幡のできかけていた絆のようなものが完全に消えた。

 まだなんとも言えないけれど、奉仕部内の空気もよくはならないだろう。

 今までのように起き、並んで顔を洗い、リビングに朝食を取りに行く。

 でも、どこかどんよりとした空気が付きまとう。

小町「あ、おにいちゃん奏さん、おはよう」

八幡「おお、おはよう」

奏「おはよ、小町ちゃん。今日もありがとう」

 比企谷さん(ご両親)は既に仕事みたいだ。

 小町ちゃんが朝食を並べてくれている。

 俺もたまには手伝うが、最近はどうしても八幡につられて寝てしまう。

小町「いいえぇ! 気にしないでください!」

 朝から快活に小町ちゃんが笑う。

小町「お兄ちゃんどしたの」
283 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/18(土) 22:55:02.22 ID:9aIGj0f10
八幡「なんもねえよ。むしろあれだな、俺の人生なにもなさすぎるまである」

小町「どしたのお兄ちゃん。いっつもおかしいけど今日は特におかしい」

 小町ちゃんがバッサリ言う。

おかしいけどさ。

 それを面と向かって言っちゃうか……。

小町「結衣さんと雪乃さんと……なにかあった?」

八幡「あいつらに何か聞いたのか? それとも奏からか?」

 少し内心ひやっとする。

 ……俺、言ってないよな?

小町「ううん、聞いてないよ。ただ、小町がそう思っただけだよ」

八幡「そうか」

 そこで小町ちゃんは一区切りすると、切り出した。

小町「それで……なにやらかしたの?」
284 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/18(土) 23:09:07.43 ID:9aIGj0f10
八幡「なんもねえよ。もともとなにもなかったんだから」

小町「またまたぁ。ちょっとずつ妹に話してみそ?」

 小町ちゃんはしつこいくらいに聞く。

八幡「しつけえぞ。いい加減にしろ」

 ――ついに少しキレたのか、八幡が荒っぽく言う。

小町「なにその言い方ぁ!」

八幡「別に、普通のこと言っただけだろ。実際、しつこかったしうざかった」

【選べ

 1、「やーいやーい八幡キレたぁwww」

2、「……あれ、この食パン賞味期限切れ? 変な味がする」   】

 おおう。流石に1は煽りすぎだと思う。

 この場を和ませる可能性に懸けるのもあり……いやなしだなやっぱり。

奏「……あれ、この食パン賞味期限切れ? 変な味がする」

小町「ふーん、じゃあもういい。聞かない」

八幡「そうしてくれ」

 スルー不可避……。

小町「じゃあ、小町先行くから。鍵かけといて。奏さんもお願いします」

奏「あ、う、うん」


小町「やっぱりなにかあったんじゃん」
285 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/18(土) 23:15:51.91 ID:9aIGj0f10
奏「……八幡」

八幡「なんだよ」

奏「今日ケーキでも買って帰る?」

八幡「どうしてそうなる」

 八幡がぶっきらぼうに答える。

奏「あれは言い過ぎだ。八幡、らしくなく熱くなってる」

八幡「……熱くなるのは俺らしくないのか」

奏「……」

 無言で、圧力をかける。

 さっき悪いのは、しつこかった小町ちゃんもだけど、八幡の態度も悪かったと。

八幡「わかったよ。帰りになんか買ってくるか」

奏「よし」

 嫌そうではあるが、悪いことをした自覚はあるみたいだ。

 友達にはなれない宣言をされた俺だが、普通に話せるもんだな。

 このまま小町ちゃんと八幡が仲直りできたらいいんだけど。
286 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/18(土) 23:51:27.80 ID:9aIGj0f10
 やっと慣れてきた総武高校への登下校。

 八幡は自転車、俺は歩きだけど、だいたい同じ時間に出る。

 ちゃんと間に合う。

 歩きケータイは本来いけないけど、時間もないのでそっこーでメールをうつ。


 宛先 比企谷小町
 件名 朝

 気持ちはわかるけど、ちょっとしつこかったかな?

 八幡ももう謝る気みたいだし、許してあげて?       』


 ……これでいいかな?
287 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/25(土) 17:15:01.83 ID:AiGsgMPM0
 今日もそこそこギリギリの登校。

 クラスに入ると、……まぁ何もないのだけど。

 挨拶を交わすような仲なのは奉仕部の面々くらいで、あとは特に交流がない。

 若干浮いているくらいだ。

 八幡と川崎さんが同じように窓側をぼーっと見ていたけど、意図せずして同じ状態になっているだけだろう。

 そうしてそのまま、何もないまま放課後になった。
288 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/25(土) 17:51:52.83 ID:AiGsgMPM0
 いち早く教室を出ていく八幡をチラリと見ながら、俺も部室に行く準備をはじめ――

【選べ

1、 廊下を奇声をあげながらダッシュする

2、 廊下をほふく前進で進む

 3、廊下を逆立ちで進む                    】

奏「キエエエエエエエエエエエエエエエエエっ!」

 選択肢のバカヤロー! という思いをこめればかなりの奇声が出た。

奏「ぜぇ……ぜぇ……」

 奉仕部の部室に着く。

中に入ると、雪ノ下さんが紅茶をいれているところだった。

雪乃「ああ、甘草くん」

奏「こんちわ、雪ノ下さん」

【選べ

 1、「はぁはぁ雪ノ下さん、今日もお美しいですねはぁはぁ……そのお美しい脚で踏まれたい」

 2、「はぁはぁ雪ノ下さん、今日もお綺麗ですねはぁはぁ……そのお綺麗な脚で踏まれたい」   】

 どっちも似たような感じで社会的にアウトじゃねぇか……。

奏「はぁはぁ雪ノ下さん、今日もお美しいですねはぁはぁ……そのお美しい脚で踏まれたい」

 微妙に逡巡した結果、1を選択。

 まぁ2を選択しても結果は変わらないことはわかっている。

雪乃「まずは息を整えて、それから顔を5分ほど冷水につけていなさい」

奏「5分は死ぬよ」

雪乃「顔は洗ってきなさい」

奏「はい」

 有無を言わさぬ雪ノ下さんの迫力に負けた。
289 : ◆oUKRClYegEez :2016/06/25(土) 17:52:27.18 ID:AiGsgMPM0
 戻ると由比ヶ浜さんが来ていて、それからほどなく八幡が来た。

 冷たい空気が流れる。

 さっきの俺のこともあってか、雪ノ下さんが妙に怒っているようなオーラを出している。

 ……はやく帰りたい。

 由比ヶ浜さんが必死に話題を作ろうとしているけど、成功しない。

 と、ドアがノックされた。

八幡「どうぞ」

 この空気で雪ノ下さんは返事せず、由比ヶ浜さんはおろおろと様子をうかがっていたので、八幡が答えた。

静「入るぞ」

 入って来たのは、平塚先生だった。
290 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/02(土) 18:12:58.86 ID:z0fimsPl0
静「少し頼みたいことがあるんだが……何かあったのかね?」

八幡「いえ、なにもありませんよ」

 奉仕部内に流れる空気を察して平塚先生が聞いてきたのに対し、八幡が受け答えた。

 なにもなかったわけじゃない。

 でも、自分たちで解決すべきことは自分たちで、ということだろうか。

【選べ

 1、「yo―yo! 問題はないぜ! 依頼人もいないぜ!」

 2、「いやー、実は八幡やらかしたんですよぉ〜」     】

 うっわぁ……。

 最近の選択肢は社会的に死ぬことが少なくなってきてはいるけれど、人間関係的なものに亀裂が入りやすいものが増えてきた気がする。

奏「yo―yo! 問題はないぜ! 依頼人もいないぜ!」

 一番を選択するものの、言っててちょっと悲しくなってくる。

 依頼人がいないって、結構悲しいことだよな……いや、なにもないっていいことなんだろうけど。
291 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/02(土) 18:25:26.71 ID:z0fimsPl0
静「…………改めた方がいいかな」

奏「いえっ、ぜんっぜん大丈夫です!」

 慌てて取り繕う。かなり心苦しい。

静「……まぁ、いいならいいか。入りたまえ」

 平塚先生がそう言うと、部室の入り口から二つの影が出てきた。

めぐり「こんにちは〜。相談いいかな?」

 一人は生徒会長・城廻先輩。俺は文化祭以来だ。

 いい印象を持たれているとは言いづらいだろうな。

いろはす「こんにちは〜……ってあれ、結衣先輩じゃないですかぁ」

結衣「あ、いろはちゃん。やっはろー」

 二人目はなにやら今時の女子高生っぽさを固めたような、可愛らしい女子だった。

 八幡がぴくっと反応する。顔見知りなのだろうか。

奏「知ってるの?」

 こっそりと耳打ちする。

八幡「……見たことがあるくらいだ」

 ちょっと反応が遅い、と思ったけど、俺と八幡、今けんか(?)中だっけ……。

めぐり「あ、知り合いなの? じゃ、早速相談内容に入らせてもらってもいい?」

雪乃「ええ、どうぞ」

 雪ノ下さんは知っているのかわからないけれど、この人なら全校生徒の顔と名前が一致していてもおかしくないかもしれない。 ……話したことがあるかどうかは別にして。

めぐり「じゃあ……。もうすぐ生徒会選挙があるのは知ってる?」
292 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/09(土) 22:17:49.08 ID:HRqinJj10
雪乃「はい。もう公示も済んでいますよね」

めぐり「さすが雪ノ下さん。立候補者のいなかった書記以外はもう発表されてるよ」

 会長が嬉しそうに顔をほころばせる。八幡ノートのとおりだな、ほんわかする……。

 そうじゃなくて。

めぐり「ただ、公示までは終わったんだけど……」

結衣「こうじ……」

 雪ノ下さんも八幡もなにか考えているようだったので、俺が由比ヶ浜さんに耳打ちする。

 あ、耳打ちって言っても息を吹きかけたりなんかしないからな、俺は!

【選べ

1、由比ヶ浜結衣の耳元で息を吹きかけながら『公示』の説明

2、城廻めぐりの耳元で囁くように「何か問題が?」と聞く

3、平塚静に結婚を申し込む                  】

 すぐかよ!

 しかも三つめの選択肢、微妙におかしくないか!?

 前の二つがおかしくないかと言われれば、まあおかしいと答えるけれど、もう耳元関係ないし冗談で済ませられるレベルを超えているような……。

 俺、これ言って冗談ですってごまかしたら、たぶん平塚先生に殺される……。
293 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/09(土) 22:18:59.29 ID:HRqinJj10
 結局、1を選んだ。

 由比ヶ浜さんにこういうことへの慣れがあることを祈りながら。

奏「公示っていうのは、選挙に出る人が誰とか、選挙の日はいつだとかを発表することだよ。…………ふぅ〜」

 最後まで息を吹きかけないでいると選択肢が頭痛をひきおこしたので、仕方なく。

結衣「ひゃっ!? あ、ありがと……?」

 びっくりしながらもお礼を言ってくれた。俺こんなことしたのに……ええ子や……。

奏「あ、うん」

 今度は選択肢もでないので、普通に離れて返事する。

雪乃「ところで甘草くん。由比ヶ浜さんへのセクハラは止めなさい。証人が何人もいる目の前ですることではないわ。もちろん、いなくてもしていいということにはなりはしないけれど」

 11月だというのに背中に汗が流れるのを感じながら、俺は雪ノ下さんにうなずいた。
294 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/09(土) 22:19:27.71 ID:HRqinJj10
めぐり「ええと……じゃ、続けるね? ここにいる一色さんが、今回の会長に立候補してるんだけど……」

 八幡の顔に「へー意外」って書いてあった。

 すると一色が反応する。

いろはす「あ、今意外だって思いました?」

八幡「いや別に」

 八幡がはぐらかす。

 いや無理あるでしょ……。
295 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/16(土) 23:55:41.99 ID:ERVi89/u0
雪乃「それで、何か問題が?」

めぐり「あ……えーっと……」

 雪ノ下さんの問いかけに口ごもりながら会長が答える。

めぐり「一色さんは立候補してるんだけど、当選させないようにしたいの」

 え、それ本人の目の前で言っていいの!?

 と思ったが、どうやら本人の希望らしい。

めぐり「うちは推薦人さえ集めれば立候補させられるからね……。私たち選管がきちっと本人確認とっていればよかったんだけど」

 本人確認をとらなかったら、このように知らぬ間に立候補というわけか。

 ……それ結構本人嫌われてない?
296 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/07/16(土) 23:56:52.52 ID:ERVi89/u0
※ すみません! 書けてないです。三連休中にはまた投稿します。
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 00:05:54.29 ID:dx6nacQco
乙です
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 03:06:19.13 ID:/Kokw56IO
乙乙ー
面白いからマイペースで頑張ってー
299 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/07/17(日) 10:30:26.81 ID:1QGr0NI40
>>297 >>298
ありがとうございます!

次300レス目です(どうでもいい)
300 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/18(月) 22:30:01.11 ID:ggaw1HMR0
奏「立候補の取り下げってできないんですか? ほら、最近の政治家みたいに」

 某芸能人だとか、やるーやっぱやらないー、ってやってるし。

雪乃「立候補の取り下げは選挙規約に規定されていないはずよ」

めぐり「そうなんだよ〜」

 ほんわか。

奏「そうなんですか」

八幡「あれだ、普通俺が会長になるーとか言うイケイケな連中は立候補の取り下げなんかしねえだろ」

奏「確かに……」

雪乃「納得するのね……」
301 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/18(月) 22:30:54.14 ID:ggaw1HMR0
めぐり「今のところ立候補が一色さんだけだから」

雪乃「信任投票になりますね」

八幡「そうなれば決定的、か……」

結衣「しんにんとうひょう?」

 二人が理解した顔をして、もう一人は小首をかしげていた。信任投票、知っておこうよ……もうすぐ選挙権できるんですよ俺たち……。

静「この人に任せてもいいか、を投票するんだ」

 平塚先生が小声でささやいた。

八幡「まぁ、信任投票でも反対票が多ければ再選挙になるんだろうけどな」

いろはす「信任投票で落選って超かっこわるいじゃないですか!」

 つまりまとめると。

奏「会長に立候補させられて、なりたくないというのが依頼、けど信任投票でほぼ決定的、なおかつ落選という形にはしたくない、と」

 なにこのムリゲー。
302 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/18(月) 22:31:20.55 ID:ggaw1HMR0
結衣「うう〜ん……難しいね」

 由比ヶ浜さん、ちゃんとついてこれてるみたいかな?

八幡「だな……応援演説が誰かって決まっているんですか?」

いろはす「いえ、決まっていませんよ」

八幡「そうか。なら簡単だな、一色を会長にしない方法」
303 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/23(土) 22:32:58.85 ID:BnP90uSl0
結衣「どうするの?」

八幡「応援演説が原因で落選するなら、誰も一色を気にしないだろ」

雪乃「許さないわ」

八幡「何を?」

 奉仕部全員が知っている、修学旅行で八幡のしたことを言っているのだろう。

 俺が、それを咎めることはできない。

 俺だって、自己犠牲で文化祭を乗り切ったんだから。

雪乃「そのやり方よ。もっと他にやり方はあるはずだし、票数を公開せずに結果だけを発表してもいい。その気になればいくらでも――」

静「雪ノ下」

 平塚先生が止める。

 しかし、結果の改ざんか。真面目そうな雪ノ下さんからとんでもない意見が出たな。

雪乃「……失言でした、撤回します」
304 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/23(土) 22:47:21.94 ID:BnP90uSl0
結衣「その演説ってさ……誰がやるのかな……。そういうの、やだな……」

 うつむきながら由比ヶ浜さんが言う。

八幡「それは……できるやつがやればいいんじゃねえの」

 『できるやつ』が具体的に誰のことを指しているのかなんて、明白だった。

 少なくとも奉仕部4人には。

 あるいは平塚先生も、なにかを感じてはいるかもしれない。

奏「まぁ、そんな自己犠牲を自分からするような人、いないからなあ」

 俺が言うのはすごく自分自身違和感があったが、機先を制することはできたと思う。

 由比ヶ浜さんが言いかけたこと、八幡にその役をしてほしくない。

 俺はそれを念を押すように、みんなと話している体を装って八幡に話す。

八幡「……」

 たぶん、俺が言わなくても由比ヶ浜さんのあの言葉だけで十分だったんだろう。

 まぁ、備えあれば患いなしと言うし。
305 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/30(土) 22:35:25.70 ID:oSZj9G7d0
雪乃「城廻先輩。一色さんが会長を辞退する場合、別の候補者を立てる必要がありますよね」

めぐり「あっ、そうだね。うん……」

 名前を呼ばれてのとっさの反応は流石だったが、話の内容で凹んでしまう会長。

八幡「やる気のあるやつだったらもう立候補してますよね。どうするんですか?」

 八幡のもっともな指摘。そもそも、それをどうしようかと、先輩たちは相談に来たようなものだ。

結衣「でも、やってくれそうな人にあたれば……」

流石に大変じゃないかな……。先輩たちもあたった結果、もしくはその途中でここに来たんだろうし。
306 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/30(土) 22:36:11.55 ID:oSZj9G7d0
八幡「仮に立候補者が見つかったとして、だ。そいつがこの一年生に勝てるのか? 高校の生徒会選挙なんて人気度で票が入るんだぞ」

静「その通りなのがなんとも言えんな」

 確かに、黒白院先輩も獅子守先輩も人気あったしなあ……。

八幡「投票までの間にしなければいけないことを、今から全部こなせるのか? 確実なあてがあるのならいいが、そうじゃないだろう」

めぐり「あの、比企谷くん?」

 熱くなり始めた八幡を止めたのは、困惑した様子の先輩だった。

 一色さんはさも面倒そうにため息をつく。……いや、君が会長にならないための話じゃなかった?

静「すぐに結論は出なさそうだな」

 それが、この話し合いのお開きの合図になった。
307 : ◆oUKRClYegEez :2016/07/30(土) 22:36:41.16 ID:oSZj9G7d0
雪乃「では城廻先輩、また改めてでもよろしいですか?」

めぐり「うん、よろしくね。失礼します」

いろはす「失礼します」

 俺もふらっと立ったが、雪ノ下さんがすぐに平塚先生に言った。

雪乃「先生。少しよろしいですか?」

静「ああ。話してみたまえ」

 平塚先生が俺の方を見て、椅子の方にくいっと首を動かす。

 それを見て、俺は(ああ……逃げたらなんか言われそうだな……)と思いながら、さっき立った椅子に座りなおした。
308 : ◆oUKRClYegEez :2016/08/07(日) 22:50:02.15 ID:BWPqh19v0
雪乃「今、私と比企谷君の勝負はどうなっていますか」

結衣・奏「勝負?」

 初耳だ。

静「私の独断と偏見で勝敗を決めているんだ。どちらがより奉仕活動できているか、ね。勝った方は負けた方になんでも一つ命令できる」

結衣「なんでも……」

 由比ヶ浜さんは八幡を「うわぁ……」という目で見ながら、「まぁゆきのん負けず嫌いだしね……」という顔を両立させていた。

静「勝負は、まだついていない」

雪乃「なら……比企谷君と私たちが、同じ方法をとる必要はありませんよね? 勝負が未だ継続しているのなら」
309 : ◆oUKRClYegEez [sage]:2016/08/07(日) 22:50:53.72 ID:BWPqh19v0
※更新遅れて本当にすみません(汗)
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/07(日) 23:19:35.13 ID:jd33MJxBo
乙です
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/08(月) 00:25:12.17 ID:By4gS1MIO
乙乙
いろはすだけ『いろはす』なのがいろはすって感じでいろはす〜^^
312 : ◆oUKRClYegEez :2016/08/13(土) 21:46:25.91 ID:vQT1B5290
静「……仕方あるまい。その間部活動はどうする?」

雪乃「自由参加という形でいいかと」

静「まぁそうなるか」

 おいちょっと待てよ。

八幡「じゃあ、俺は帰るわ」

結衣「あ、ちょっと待って!」

 違うだろ。

 どうして――八幡も雪ノ下さんも、協力しないんだよ。

 協力しなかった結果は、この前の修学旅行ではっきりしたじゃあないか。



 しかし俺は、既に鞄を持って下校しようとしている八幡を止められなかった。

雪乃「なれ合いなんて……わたしもあなたも一番嫌うものだったのにね……」

 ぽつりと雪ノ下さんがつぶやいたその言葉に、どんな意味があったのか。

 転校生の俺は、まだ知らない。
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/14(日) 17:58:27.90 ID:/TI7iiGao
おつ
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/15(月) 19:11:45.95 ID:A7fBJLjHo
乙です
315 : ◆oUKRClYegEez :2016/08/20(土) 23:00:50.73 ID:BymoiPg10
 家に着いてみると、先に帰っているはずの八幡はおらず、小町ちゃんだけがいた。

小町「あ、奏さんお帰りですー」

奏「あ、うんただいま」

 なんだか、すごく久しぶりに小町ちゃんに会った気がする。

 どこか知らないところで時間が過ぎているような感覚。よくわからないけど。

小町「おにいちゃん知りませんか?」

奏「いや、俺も知らない。学校を出たのは八幡の方が先だから、どこか寄り道してるのかも」

 あるいは、俺の朝言ったことを実践してたりするのだろうか。いや、奉仕部であんなことがあったんだ。覚えてないか……。

奏「そうだ小町ちゃん」

小町「はい」

奏「ちょっとシュークリーム買って来たんだけど、食べる? 5個買ったから全員分あるよ」

小町「わぁ、わたし3つですか!?」

奏「……どうして?」

小町「お兄ちゃんのはわたしが食べる、わたしのはわたしが食べる、お父さんは頼んだらくれる」

奏「分けてあげてください」
316 : ◆oUKRClYegEez :2016/08/21(日) 08:56:05.99 ID:pYOsojwo0
奏「ねえ……小町ちゃん」

小町「んっく……。はい何でしょう」

 シュークリームを一気に飲む(食べるよりこっちの方が表現として適当な気がする)と、小町ちゃんが聞き返してきた。

奏「八幡や雪ノ下さん、由比ヶ浜さんのこと、知っている限りで教えてくれないかな」

 シュークリームはご機嫌取り。

 理由が汚いけど、奉仕部の完全な決別を回避するために俺は情報を集めたい。

 奉仕部は、初めは何だこれは、と思っていたような部活だったけれど、転校したばかりの俺にはありがたい場所だったんだ。

小町「あ……それが狙いでしたか」

 凄く簡単にバレてる。

小町「わかりました、ごちそうになりましたし、おいしかったですし、わたしの知っている限りでお話ししましょう!」

奏「ありがとう!」
317 : ◆oUKRClYegEez :2016/08/21(日) 08:58:09.23 ID:pYOsojwo0
八幡「……」

 八幡が静かに帰って来た。

 俺と小町ちゃんはお茶をしながらゆっくり部屋で話していたが、八幡に聞かれるとマズいことになりそうなので、静かにしておく。

 すると音がしなくなった、と思い下に降りてみると、ソファで寝ている八幡が。

小町「もう……おにいちゃんてば……」

 朝喧嘩したにも関わらずゆっくり毛布をかける小町ちゃん。

 兄妹愛っていいなぁ。あこがれる。

 ソファの前の机には紙袋があった。

 ……俺が朝に言ったこと覚えていたのだろうか。

小町「ほんと、ごみいちゃんは……。奏さんとモノかぶってるし、しかも奏さんの方がよっぽど高いです」

奏「はは……」

 それでも嬉しそうじゃないか。よかった。
318 : :2016/08/24(水) 21:15:43.85 ID:Uu+FtbdmO
>>316 訂正
理由が汚い→方法が汚い
319 : ◆0KQMVLQguk3L [sage]:2016/08/27(土) 21:14:37.97 ID:KhPJVSj60
※更新遅れます。月曜日予定です
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 03:20:01.70 ID:ZJazGDK9o
乙です
321 : ◆oUKRClYegEez :2016/08/29(月) 09:32:46.18 ID:BGk+0DpG0
 翌日。

 眠りこけていた八幡を置いて(アラームだけセットしておいた)学校に行く。

 寒いと連呼しながら小町ちゃんと中学校で別れ、総武高に向かう。

 比較的広い道で黒いリムジンを見かけたが、中にいる人は見えなかった。
322 : ◆oUKRClYegEez :2016/08/29(月) 09:41:23.48 ID:BGk+0DpG0
 何事もなく今日の授業が終わる。

 由比ヶ浜さんたちリア充組は早々に教室を出ていき、八幡だけがひとりぽつんと残る。

奏「はちま……」

【選べ
 1、「昨日のシュークリーム、小町ちゃんが罵倒してたよ」

 2、「昨日俺が買ってきたシュークリーム、食べた?」      】

 ひっさびさに出てきたと思ったら絶対にここで使っちゃいけない選択肢でたなぁ!

 シュミレーションゲームなんかでこんな選択肢が出たらBADエンド確定、みたいなそんな絶望的な選択肢だ。

 ここは、小町ちゃんに迷惑にならない方向で……

奏「昨日俺が買ってきたシュークリーム、食べた?」
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 10:16:26.42 ID:YvqncKeqo
乙です
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/29(月) 10:59:30.09 ID:/n6UaWh60
2062 未来人 嘘 震災詐欺 指名手配 爆弾所持 連続殺人 不審者 遅漏 押し売り 著作権侵害
デジタルナレッジ 捏造 嘘 著作権侵害 ストーカー 放火魔 詐欺師 違法 公文書偽造罪
永山崇 恐喝 ナイフ所持 ヤクザ 人身売買 セクハラ 偽計業務妨害 中卒 置石
2062 未来人 詐欺 罪状 マラ クズ 万引き 創価学会 保健室登校 ろりこん
永山崇 禁錮 元公安 前科持ち ひかりの輪 整形 知的障害 我慢汁 執行猶予
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デジタルナレッジ 実行犯 暴行罪 有印私文書偽造罪 強盗罪 真珠様陰茎小丘疹 器物損壊罪 サリン ウィルス
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永山崇 助平 通り魔 脱糞 猿顔 異常性癖 ワキガ 尖圭コンジローマ 窃盗

325 : [sage]:2016/08/29(月) 15:27:55.64 ID:BGk+0DpG0
>>323 ありがとうございます
>>324 ……どうした
326 : ◆oUKRClYegEez :2016/08/29(月) 23:28:05.41 ID:BGk+0DpG0
八幡「あぁ、まぁ、一応な。うまかった」

 頭をかきながら言う八幡。

八幡「ドーナツと迷ったんだがな……。そっちにしておくべきだったか……」

奏「そうだったかもね」

 そして二人笑う。

 このまま……このまま。

 なにごともなく、終わってくれ。
327 : ◆oUKRClYegEez :2016/09/03(土) 18:40:44.00 ID:ZZGCH6S10
 八幡と共に奉仕部に来て、戸を開ける。

結衣「あ……来てくれたんだ」

 由比ヶ浜さんが少し安心したように言う。

八幡「……ああ、まぁな」

 軽く八幡はそう返した。

 部室には雪ノ下さん、そして一色さんがいた。

雪乃「では、話を聞きましょうか」

奏「あ……ごめん、待たせちゃってた?」

結衣・いろはす「ううん(いえ)、全然!」

奏「そう? ならいいんだけど」

 たぶんそこそこには待っていただろうけれど、その気持ちがうれしかったり申し訳なかったり。

結衣「あ、じゃあ聞いてくね? あたしたちの方針きめるから〜」

いろはす「はーい」

結衣「じゃ早速。とりあえず、選挙で他の候補者を立てて、ふんわりと会長にならない。そんな感じ?」

いろはす「そんな感じですー」

 一色さんが元気に答える。ぼーっとグラウンドを眺めてるあたり、部活のサッカーが気になるのだろうか。
328 : ◆oUKRClYegEez :2016/09/03(土) 18:41:43.26 ID:ZZGCH6S10
八幡「誰か候補は見つかったのか?」

結衣「それはまだ見つかってない……」

雪乃「立候補の最終締め切りまでは、まだ時間があるわ。それまでにはなんとか。それより、他のことを決めてしまいましょう」

 気のせいだろうか。雪ノ下さんが、やや焦っているような……?

 八幡との勝負、そんなに熱くなっているのかな?

雪乃「どういう形になるにしろ、一色さんには演説してもらうことになるわ」

いろはす「ですよね〜……」

 雪ノ下さんの言葉に一色さんがうなだれる。

いろはす「大丈夫なのは大丈夫ですけど、そういうの」

 大丈夫なんだ……。結構恥ずかしくない?

雪乃「私たちが立てる候補者と公約が重ならないようにする方がいいと思うわ。そこで、公約の案を考えてみたのだけれど」

 さすが雪ノ下さん、仕事が早い。

 一色さんが紙に目を通す中、八幡がつぶやいた。

八幡「……これ、お前らのやってること、完全な傀儡候補なんだが、それでいいのか?」
329 : ◆oUKRClYegEez :2016/09/03(土) 18:42:30.28 ID:ZZGCH6S10
雪乃「なら、あなたのやり方には何の意味があるの?」

 八幡が雪ノ下さんから目をそらす。

雪乃「あなたは前もそうやって、逃げてきたわ」

 修学旅行。俺が――止めてさえできていれば。

 いや、それはそれでエゴというものだろうか。

八幡「それで……何か問題があったか?」

奏「あったじゃないか!」

 俺は思わず、大声を出してしまっていた。
330 : ◆oUKRClYegEez :2016/09/03(土) 18:43:13.46 ID:ZZGCH6S10
八幡「奏……?」

奏「八幡と雪ノ下さんが協力しなくなって! 小町ちゃんにも心配かけて! それで何も問題はなかったって、そう言い切れるのかよ!?」

八幡「…………」

 黙りきる八幡。

 しかしそこには、何か頑ななものがあって。

雪乃「……変えるつもりは、ないのね」

八幡「……ああ」

二人の間に沈黙が横たわる。

結衣「あ、あのさ……」

 由比ヶ浜さんが間に入ろうとして、入れない。

八幡「そろそろ帰るわ。話も聞いたし」

 そう言って、八幡は出て行ってしまった。
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/03(土) 19:02:28.06 ID:62c4E2fY0
想像通りの生ける屑野郎でしたね〜(汗) 葉山お前にはガッカリだよ! 
これからも屑山が邪魔するかもしれませんが温かい目で見てもらえるとありがたいです!
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