利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」 二隻目

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573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/14(金) 21:54:13.51 ID:1BCy+viFO
良かった…づほはこれから幸せになれるんだね…
一杯可愛がってくれ
574 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:51:21.04 ID:SXU6Mpvqo
金剛「……では、本当に大丈夫なのですね?」

提督「ああ。心配してくれてありがとうな」

金剛「当然です。私達は提督が居るからこそ私達で居られるのですから。本当は押し切ってでも近くで護りたいくらいです」

提督「瑞鳳はそんな子じゃないはずだ。私の勘だがな」ポン

瑞鳳「…………」

金剛「ぅー……これはどれだけ言っても聞いてくれない提督になっているです……」

提督「良く分かってくれていて何よりだ」

金剛「はぁ……。でも、これだけは約束して下さい。何かあったらすぐに私を呼ぶ事です。隣の部屋の扉は半開きにしておきますから、声は届くはずです。これ以上は譲れません」

提督「お前も頑固なこって。──まず無いだろうが、万が一その時がきたら頼む」

金剛「ハイ! ……懐かしいですね」

提督「……そうだな。こういうやり取りは、本当に懐かしい」

金剛「もう少し思い出話に浸りたいですが、それはまた今度の機会にしましょう」

提督「ああ。おやすみ、金剛」

金剛「グッナイ、テートク──」

ガチャ──パタン

提督「……さて瑞鳳」

瑞鳳「……………………」

提督「夜もかなり深くなったから皆を帰した。私達も寝るとしよう」

瑞鳳「…………!」

提督「瑞鳳はそのベッドを使ってくれ。私は床に毛布を敷いて──」

瑞鳳「…………」シュル、パサ

提督「……なぜ服を脱いでいる。そんな状態で寝ては風邪を引くぞ」ソッ
575 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:52:07.02 ID:SXU6Mpvqo
瑞鳳「…………?」

提督「どうした。どうしてそんなに困った顔をするんだ?」

瑞鳳「…………!」スッ

提督「待て」

瑞鳳「!」ピタッ

提督「なぜ私のズボンに手を伸ばす」

瑞鳳「…………? …………??」

提督「……まさかとは思うが、それが瑞鳳にとって当たり前の事だったのか?」

瑞鳳「…………」コクリ

提督「そうか……。ここではそんな事をしなくて良いんだぞ」

瑞鳳「…………?」

提督「……言い方を変えよう。瑞鳳、それは強制されていた事か?」

瑞鳳「…………」コクン

提督「なら、嫌だったのだろう? それはここではしなくて良い事だ。そんな嫌な事はしなくても良くなったんだ」

瑞鳳「…………」フルフル

提督「……む? 嫌ではなかったのか?」

瑞鳳「…………」コクン

提督(……強制されていたのにも関わらず嫌ではないとはどういう事だ?)

提督「……すまない。私ではよく分からん。どういう事なんだ?」

瑞鳳「…………気持ち、良いから……」

提督「……そうか」
576 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:52:33.16 ID:SXU6Mpvqo
瑞鳳「痛くて……苦しい事は……瑞鳳にとって、気持ちの良い……事です」

提督(これは……そう思い込まされているのか。嘘でもずっと言葉に出していると、何が嘘で何が本当なのか分からなくなるとは言うが……これがその状態か)

提督「……いや、もう今までのような痛い事も苦しい事も無い。もう、そんな苦しみを味わわなくて良いんだ」

瑞鳳「……………………」

提督(……無表情すぎて感情が読めん。何を考えているのだろうか)

提督「そうだな……。とりあえず寝ると……いや、睡眠を取ろうか。これなら分かるか?」

瑞鳳「…………」コクン

提督「よし、良い子だ」ナデ

瑞鳳「…………?」

瑞鳳「…………」ジー

提督「ん? どうした?」

瑞鳳「…………」

提督(……本当に何を考えているのか分からん。どうしたんだ?)

提督(そうだな……少し、話をしてみるか。このまま放っておく事もできん)

提督「瑞鳳、これから睡眠を取る前に少し会話をしてみようか」

瑞鳳「…………?」

提督「少しずつで構わん。嫌だと思ったら何も言わず布団の中へ潜り込んでも良い。だから、お前が閉じ切ってしまった心を少しずつ開いてみないか?」

瑞鳳「…………」

提督「初めは声を出さず頷いたり首を横に振ったりするだけで構わない。もう一度言うが、嫌だと思ったらその時点で布団の中へ潜り込むんだ。それが会話の終了の合図とする。良いか?」

瑞鳳「…………」コクン

提督「ありがとう。──まず初めに、ここは瑞鳳が今まで居た鎮守府と色々違うはずだ。だが基本的に出撃と演習、遠征、そして事務仕事や掃除なんかは恐らくどこの鎮守府も同じだと思う。瑞鳳もそうだったか?」

瑞鳳「…………」コクン

提督「そうか。この鎮守府では朝礼もあり、朝は必ず全員が私と顔を会わす。そして、それ以外ではよっぽどの事でもない限り自由にしている。会話をするも良し。遊んでも良し。独自で訓練をするも良し。……まあ、酒は節度を守るようにとは言っているがな」

瑞鳳「…………」
577 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:53:13.46 ID:SXU6Mpvqo
提督「無論、瑞鳳もそれには従ってもらう。だが、現段階で瑞鳳は基本的にほぼ自由にさせるつもりだ。せいぜい、朝礼には顔を出して貰うくらいだろう」

瑞鳳「…………?」コテッ

提督「首を傾げたのは『なぜ?』という意味か? 正直に言うとだな、瑞鳳の精神状態を考えての事だ」

瑞鳳「…………」

提督「今のお前を他の子達と同じように扱ってはいけないと私は判断した。まずは心を癒す事が先決だ。何かしたい事があれば言ってくれ。出来る事であれば叶えよう」

瑞鳳「……………………」

提督「何かあるか?」

瑞鳳「……痛い、こと」

提督「む……?」

瑞鳳「痛い事……して下さい……」

提督「……どういう意味だ、それは?」

瑞鳳「私は……痛い事が、好き……ですから……」

提督「……それは無理矢理に言わされていた事だろう? ここではもう、必要以上の痛い事や苦しい事は受けなくて良いんだぞ」

瑞鳳「…………」フルフル

瑞鳳「痛みは……私に与えてくれるから……。生きているって……ちゃんと、生きているって……」

提督「…………」

瑞鳳「だから……痛い事とか、苦しい事が……好きです」

提督「……………………」

瑞鳳「……おかしい、ですか?」

提督「……そうだな」スッ

瑞鳳「あ……」ピクン

提督(……ああ、利根よりも首が細い。片手で充分な気すらある。──本気でやれば、折れてしまいそうだ)

提督(そうだな……瑞鳳も痛い事や苦しい事を望んでいるんだろう? ならば……)
578 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:53:41.72 ID:SXU6Mpvqo
コンコンコン──

提督「────!!」パッ

金剛「──テートク、本当に大丈夫デスか?」

提督「……金剛か。どうしたんだ?」

金剛「なんだか胸騒ぎがシタので……。入っても良いデスか?」

提督「……ああ。頼む」

ガチャ──パタン

瑞鳳「…………」ジッ

金剛「…………? 何かしていたデスか?」

提督「……そうだな。あまり良くない事をやりそうになっていた」

金剛「そうデスか……」トコトコ

金剛「提督……」ギュ

提督「!」

金剛「なんとなくですが、察しました……。やっぱり提督は『私達』の事を気にしているのですね」

提督「…………」

金剛「ごめんなさい……私が癒してあげられれば良いのですが、今の私では……」

提督「いや……そうやって気を掛けてくれるだけでも充分だ……。ありがとう、金剛……」

瑞鳳「…………」

提督「……すまんが金剛、頼みがある」

金剛「? 何でショウか?」
579 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:54:08.27 ID:SXU6Mpvqo
提督「今日だけでも構わないから、瑞鳳の隣で寝てくれないか? ……今の私は、酷く不安定だ」

金剛「ハイ。分かりまシタ。……って、テートクは床で寝るつもりデスか?」

提督「ああ。流石に一緒のベッドで寝る事はせんよ」

金剛「……本当、頑固なんですから」クス

金剛「──さて、そうと決まれば早速スリープするデース! 電気を消しマスので、二人は布団の中へ入って下サイ」トコトコ

提督「ああ。ついでに燭台にも灯を点けておこう」シュッ

瑞鳳「…………」

提督「ほら、瑞鳳もベッドの布団に入りなさい」モゾ

瑞鳳「…………」モゾ

金剛「では、消しマスね」

パチン──

金剛「さて、と」トコトコ

瑞鳳「…………」

金剛「隣、失礼するデース」モゾ

瑞鳳「…………」フイッ

金剛(あれ……?)

提督「さて、では寝るとしよう。灯を消してくれ、金剛」

金剛「ハイ」フッ

提督「おやすみ、金剛、瑞鳳」

金剛「グッナイ、二人とも」

瑞鳳「…………」

金剛(……私、何か嫌われるような事でもしてしまったのでしょうか)

…………………………………………。
580 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:54:38.63 ID:SXU6Mpvqo
金剛「すー……すー……」

提督「…………」

瑞鳳「…………」モゾ

瑞鳳「…………」ソロリ

提督「…………」

提督『──基本的にほぼ自由にさせるつもりだ』

瑞鳳(……私の、自由に)

瑞鳳「…………」モゾ

提督(む……?)

瑞鳳「…………」

提督(金剛……ではないな。瑞鳳か)

瑞鳳「…………すぅ……」

提督(……気付いていない振りをしておこう。何か理由があるのだろう)

瑞鳳「すぅ……」

提督(さて……私もまた眠るとするか……)

…………………………………………。
581 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:57:29.31 ID:SXU6Mpvqo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ると思います。

瑞鳳の本心はどうなんでしょうかね。『痛い事や苦しい事が好きだと言え』と下田の提督に言われてきたからなのか、それとも本当にそう思っているのか。
そして提督はどうするのか。
色々と不安です。
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/18(火) 05:00:14.68 ID:Mnd0ebUg0
そっち系に目覚めてしまったのか
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/18(火) 05:38:57.83 ID:DRoeiFeio
乙!
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/18(火) 08:55:43.87 ID:0mTYTGYFo
乙です
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/18(火) 20:48:10.93 ID:MiPWuCMAO
>>559
>対象B
急に小物っぽくされてワロタw
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/19(水) 20:48:04.09 ID:qnNLsvyXo
>>580
忍び寄る大人の世界(意味深

提督の貞操は大丈夫なのか?狙う乙女たちは一杯だぞ?!


冗談はともかく、逆さ吊りになってお姉ちゃんに「メッ」される未来を切望
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/20(木) 15:09:17.71 ID:w0M0i81hO
痛いことが好きなら鼻と両耳に洗濯バサミを付ければいいな
588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/20(木) 20:44:06.67 ID:TNx8fYxJ0
>>587
クワガタとザリガニも追加だな
589 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:42:25.32 ID:n4pu7Ko0o
提督「──朝礼でも言ったように、総司令部からの通達でしばらくは全戦線を停滞、維持させる事となった。よって、その間は暇になるだろう。新たに指示が与えられるまでに昨日言っていた問題点を解決したい」

金剛「ハイッ!」

利根「うむ!」

ヲ級「はーい!」

空母棲姫「分かりました」

瑞鳳「…………」

提督「ここに居る全員が知っての通り、昨夜のいざこざで最も面倒な問題が解決した。次に解決したい問題として、空母棲姫の艤装をどうするか、だ。なお、ヲ級の艤装は今朝方解体し終わったと報告が上がっている」

ヲ級「やった! 部屋、広くなる!」

空母棲姫「……それで、私の艤装はどうなったのでしょうか?」

提督「手を付けてすらいない」

空母棲姫「…………」ジッ

提督「それには理由があるから、そう睨むな」

空母棲姫「理由とはなんでしょうか」

提督「第一に解体が困難という事。まあ、これは時間を掛ければどうにかなるが、他にやる事があるため優先順位は低めだ。そして第二に、なぜ空母棲姫が艦載機をもう一度扱う事が出来たのか、という事だ。確か、艦載機との意識連結が出来なくなったはずだったな?」

空母棲姫「ええ……。私でも分かりません。なぜ、あの時だけ扱えたのか。その理由は私も知りたいわ」

提督「空母棲姫自身が分かっていないのか……。困ったな……。要因が分かるのならば、いざという時の自衛に使って欲しかったのだが……」

空母棲姫「鎮守府において自衛は必要でしょか」

提督「可能性は低いだろうが、今回のレ級のように狙ってくる者が居ないとは限らない。それならば、空母棲姫も艦載機が扱える方が色々と安心できるだろう?」

ヲ級「? どうして、可能性、低いの?」

提督「あれだけ大々的に動いていたんだ。もし狙っているのだったら一緒に行動すると思われる。わざわざ分けるメリットも無い」

ヲ級「なるほどー」
590 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:42:58.35 ID:n4pu7Ko0o
空母棲姫「……理由は分かりましたが、やはりそれでも反対です。私に兵装を持たせるという事は危険極まります」

提督「その事についてだが、私は兵装を完全に排除する方が危険だと思っている。先の防衛戦は空母棲姫が索敵をしてくれなければ負けていただろう」

金剛「その点については私も同意デス」

利根「そうじゃな。間違いなく負けておる。戦況が常時分かっておったから突っ込み時も引き際も分かっておれたからのう」

空母棲姫「それ、は……」

提督「空母棲姫、こう考えてくれないだろうか。艤装の解体はいつでも出来るが、手放した艤装は二度と帰ってこない。ならば一旦保留にしておこう──と」

空母棲姫「ですが……」

提督「ふうむ……。ならばこうしよう。一つ、艤装は私が預かっておく。必要時以外は空母棲姫が触れる事を禁ずる。二つ、空母棲姫が艤装を使用する際は私の許可と共に私の管理下である事。……これでどうだ?」

空母棲姫「…………考えさせて下さい」

提督「ああ。ゆっくり考えると良い」

空母棲姫「はぁ……やっぱり貴方には勝てそうにありません……」

提督「これでも鎮守府を預かる者だからな」

ヲ級「それにしても、どうして、姫は、艦載機、使えたんだろ?」

空母棲姫「そればっかりは分かりませんね……一体何があったのか……」

利根「……む? そういえば、前に負のエネルギーがどうのと言っておらなんだか?」

提督「ふむ。確かに言っていたな。その負のエネルギーが枯渇した、とかか?」

空母棲姫「なるほど、筋は通っています。貴方達と出会ってから怒りも後悔もほとんど感じていませんし、レ級と戦闘に入った時なんて怒りで我を忘れていましたし」

利根「その負のエネルギーが無くなったから艦娘からも深海棲艦と見られぬのかものう」

提督「……関係あるのか?」

利根「あるやもしれぬぞ。深海棲艦は見れば分かるし敵と判断できるが、空母棲姫とヲ級の二人は島の頃はともかく、今は敵と感じられぬ上に深海棲艦と識別できぬ。昨日戦った深海棲艦は深海棲艦と分かった事から、可能性は高いのではないか?」

提督「ふむ……。そうだな。確かに可能性は高い。これからは頭に置いておこう」
591 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:43:25.50 ID:n4pu7Ko0o
ヲ級「? 何か、変わるの?」

提督「何も変わらんよ。お前達は今まで通りのんびりと暮らせるって話だ」ポン

ヲ級「えへー」ニコニコ

提督「では、この話は一旦ここで保留だ。次に、瑞鳳をどうするかなのだが……」

瑞鳳「……………………」

提督「……率直に聞く。どうするのが一番だと思う?」

利根「また難しい事を……」

提督「難しいからこそ知恵を貸して欲しくなるんだ。現状では瑞鳳を癒す事しか思い付かんが、その方法すらどうしたものか……」

利根「好きな事をやらせるのはどうなのじゃ?」

提督「瑞鳳、言っても良いと思うのならば言ってくれ。瑞鳳がしたい事はなんだ?」

瑞鳳「……………………」

ヲ級「?」

提督「……という事だ。あまり口に出せる事でもない。そして、私はそれをしようとは思っていない」

空母棲姫(……性的な事なのかしら。もしそうであれば困難ね。この方は随分と堅物でしょうし)

金剛「では、甘い物とかどうデスか?」

瑞鳳「…………」

金剛「ぅー……反応が無いデース……」

ヲ級「!!」ピンッ

ヲ級「甘い物、あるよ!」ゴソゴソ

利根「ぬ? なんじゃ?」

ヲ級「玉子焼き!」パッ

瑞鳳「!」
592 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:43:59.82 ID:n4pu7Ko0o
利根「……なぜ玉子焼きを持ってきておるのじゃ?」

ヲ級「初めて、焦げ目無しで、綺麗に焼けたから!」キラキラ

利根「ふむん? ……ほう! 綺麗じゃのう。こんな綺麗な玉子焼きは見た事がないぞ。……しかし、玉子焼きくらいならば二人は簡単に作れるのではないか?」

空母棲姫「難しいわよ。白身と黄身、そして出汁が綺麗に混ざっている事と火加減の調整が上手く出来なければ、ここまで黄一色の玉子焼きは出来ないわ。基本の料理という物は、シンプルが故に作り手の技量が分かるものよ」

提督「空母棲姫も出来るのか?」

空母棲姫「……出来ません。中の隙間は無くなっても、どうしても層の部分が分かります。本当、この子は料理の才能があるわ」ナデ

ヲ級「えへー」ニコニコ

瑞鳳「…………」ジー

金剛「? 瑞鳳が興味を持っているデス」

提督「む。食べたいのか?」

瑞鳳「…………」フルフル

提督「では、作りたいと?」

瑞鳳「…………」コクン

提督(……料理が好きなのだろうか? いや、そうならば食事の時に何らかの反応をしているはずだ。玉子焼きに何か拘りでもあるのか……?)

提督「構わんぞ。昼食後のツマミとしよう」

瑞鳳「…………」コクン

ヲ級「一緒に、作ろ?」ニパッ

瑞鳳「…………」コクン

…………………………………………。
593 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:44:29.63 ID:n4pu7Ko0o
瑞鶴「──それで、焦げ目とか層の隙間が無くなるまでやったのね。あ、美味しい」モグモグ

長門「なるほどな。だから妖精も含めた全員に玉子焼きがオヤツとして出されたのか」

翔鶴「ですが、本当に美味しいですね」ニコニコ

電「なのです。とっても美味しいのです」

雷「瑞鳳さんも料理が上手なのね!」

暁「…………」ジー

響「? 暁、どうしたんだい?」

暁「……まだ司令官と鎖で繋がってるのが気になるのよ」ジー

提督「そう言ってくれるな。この子は下田の提督の命令を続けているだけなんだ」

瑞鳳「…………」

利根「鎖を外せば腕にしがみ付くが、それの方が良いのかの?」モグモグ

暁「うーっ……」ジー

空母棲姫「大丈夫よ。提督が説得をしてくれているから」ナデ

暁「ぅー……」

ヲ級「嫉妬?」

暁「なっ!! 違うわ! ふーきの問題があるって事よ! レディは嫉妬なんかしたりしないわ!!」

提督(嫉妬なのか)

響(嫉妬だね)

雷(嫉妬なのね)

電(嫉妬なのです)

利根(嫉妬じゃのう)

瑞鶴(嫉妬ねー)

翔鶴(あらあら……)

長門(……本当にこの方は皆から好かれているな)

空母棲姫(本当、分かりやすいわね、この子)

ヲ級「♪」ニコニコ

暁「もーっ!! なんで皆してそんな温かい目で見てくるのよー!! 嫉妬じゃないんだからぁー!!」
594 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:45:01.59 ID:n4pu7Ko0o
ギャーギャー

瑞鳳「…………」ジー

提督「どうした、瑞鳳」

瑞鳳「……………………楽しそう……」

提督「いずれお前もあの中に入れるさ」ナデナデ

瑞鳳「……うん」

暁「あーッッ!! 今度は頭撫でて貰ってる!!!」

響「暁、もしかして甘えたいだけだったりする?」

暁「そんな訳ないでしょ響!! レディはお子様みたいに甘えたりしないんだからぁー!!!」

提督「時と場を弁えれば構わんぞ」

暁「む……」

響「あ、考えたね」

暁「!!! もー!! 響、貴方の玉子焼き食べるわよ!?」

響「おっと。食べられたら困るから、これ以上は刺激しないでおこうかな」

暁「ふん、だ!」

ヲ級「♪」ニコニコ

提督(……金剛も今頃は姉妹と食べているのだろうか。……本当、金剛の問題もどうするべきか)

瑞鳳(甘える……)

…………………………………………。
595 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:47:27.89 ID:n4pu7Ko0o
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。

残す問題は瑞鳳と金剛さんの二人のみ。この厄介な問題はどうなるのやら。
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/27(木) 17:21:17.11 ID:G5b4MgMho
乙!
597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/27(木) 18:41:57.80 ID:rsWRxaIOo
卵を焼くだけの艦娘がいてもいいと思う
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/28(金) 10:07:24.53 ID:2ChNahhq0
男女・・・外せない手錠・・・ ハッ?

風呂は!?
お風呂回はまだですか!?
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/28(金) 11:14:53.29 ID:K/W1WlBdo
いやそれよりも生理現象だよ、いうなれば厠だ
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/28(金) 17:49:34.34 ID:zLLV6IoyO
雪隠か
601 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:27:11.01 ID:QqswW4aao
提督「…………」サラサラ

瑞鳳「…………」ジー

コンコンコン──

提督「入れ」

ガチャ──パタン

大淀「失礼します。提督、少し急な報告……もとい、相談がございます」

提督「む? 何があった?」

大淀「多くの方から、ある相談を受けまして……。本来はご本人の前で言うのは憚られるのですが、今回はそうもいきそうにありません」

提督「ふむ」

大淀「……率直に申し上げますと、提督と瑞鳳さんが鎖で繋がっているのを良しとしない方々が多くいらっしゃいます」

瑞鳳「…………」

提督「やはりそうなったか……」

大淀「駆逐艦の子達は理解も納得も出来ない意見が多く、軽巡以上の方々も理解は出来ても納得がいかないという意見を耳にしております。いくら扉を隔てているとはいえ、お手洗いや入浴など特に……」

提督「……あまり良くはないな。このままでは分裂や喧嘩も起きてしまいかねん」

大淀「はい……。皆さんも提督へ直接言うのを避けているのか、私へ相談が殺到しました……」

提督「苦労を掛けてすまない。……しかし、どうしたものかな」

大淀「私も考えてはみたのですが、解決できそうな案は思い付きません……」

提督「……明日まで待って貰ってくれないだろうか。それまでに対策を考える」

大淀「……なんとか頑張ってみます」

提督「ありがとう。……効果は無いかもしれないが一応、厠と風呂の際、待っている方は目と耳を塞いでいると伝えてやってくれないか?」

大淀「はい。畏まりました」
602 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:27:38.96 ID:QqswW4aao
提督「大淀ももう少しだけ我慢してくれ」

大淀「お気遣いありがとうございます」

提督「何か望みがあるか? 出来る範囲ならば叶えよう」

大淀「え? よろしい……のですか?」

提督「ああ。流石に大きな迷惑を掛けてしまった」

大淀「…………えっと、では……瑞鳳さんと同じように、とかは……」

提督「……………………」

大淀「あの……すみません、冗談です」

提督「……今度叶える。その時が来たら伝えよう」

大淀「──え!? ほ、本当ですか!?」ドキドキ

提督「ああ」

提督(……大淀にそんな趣味があったとは思わなかった)

大淀「提督と繋がる事が出来るなんて……夢でしか出来ないと思っていました」

提督(ふむ? 『繋がる』という事が大事なのか? ……まさか、不満を言っている者達もそれが原因……いや、それは無いか)

大淀(言ってみるものですね♪)テレ

提督(……無いよな?)

提督「……くれぐれも内密にするように」

大淀「はいっ!」

提督「では、頼んだぞ」

大淀「はい。大淀、頑張りますね! ──失礼しました」

ガチャ──パタン

提督「瑞鳳も、秘密にしてくれよ?」

瑞鳳「…………」コクン

提督「よろしい。──さて、仕事の続きとするか」サラサラ

瑞鳳(……相談をしても、良い人)

…………………………………………。
603 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:28:15.50 ID:QqswW4aao
瑞鳳「…………」ジー

利根「今日はやけに提督を見ておるのう」モグモグ

金剛「何かあったのデスか?」コクコク

提督「……心当たりが全く無い。私も不思議に思っているくらいだ」ズズッ

瑞鳳「…………」ジー

利根「紅茶や茶菓子もほとんど手を付けておらぬしのう……」

金剛「……あの、もしかして美味しくなかったデスか?」

瑞鳳「…………」チラ

瑞鳳「…………」フルフル

瑞鳳「…………」フイッ

利根「……マズい訳ではないが、今は提督を見る事の方が優先されている……なのかのう?」

提督「一体どうしたんだ、瑞鳳?」

瑞鳳「…………」ジー

提督「ふぅむ……」

利根「うーむ……。まあ、考えても分からぬ。ここは保留じゃな」

提督「そうするか……。すまんな瑞鳳。私にはお前が何をしようとしているのか分からん」ナデ

瑞鳳「…………」

提督「だが、もし何かしたい事があったら言ってくれ。可能な範囲であれば許可も出せる。そして叶えてやる事も出来る」

瑞鳳「…………」コクン

金剛「あ、瑞鳳。もし紅茶が冷めてしまったら言って下サイ。すぐに取り替えるデス」

瑞鳳「!」ゴクゴク

利根「一気に飲んだのう」

金剛「…………?」

提督「一体どうしたというのか……」
604 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:28:50.26 ID:QqswW4aao
瑞鳳「……捨てるのは、勿体無いから」

利根「ああ、なるほどのう。捨てられると思うたのか」

瑞鳳「…………」コクン

提督(……そうだとしても急だったな。……また下田の提督関係で何かされていたのだろうか)

提督「…………」ポン

瑞鳳「?」

提督「…………」ナデナデ

瑞鳳「…………」

金剛(本当、下田では何があったのでしょうか……。私も何か出来れば良いのですが……)

金剛(そもそも、瑞鳳はどうしてこんな風になったのでしょうか。酷い事をされてきたというのは耳にしていますが、一体どんな事をされたら──)

金剛「!」ピン

金剛「瑞鳳、隣に座りマスね」

利根「む?」

瑞鳳「…………」

金剛「少し、失礼するデス」ギュ

瑞鳳「!」

金剛「今まで何を経験してきたのか、それは私では分かりまセン……。ですが、辛いものだったという事だけは分かりマス」

瑞鳳「…………」

金剛「こうやって抱き締められると、私は落ち着きマス。こうやって下さる人が居るから、私は辛い事があっても頑張れてきまシタ。瑞鳳も同じかは分かりまセンが、少しでも落ち着けられるなら嬉しいデス」

瑞鳳「…………」ホゥ

利根(ふむ)
605 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:29:19.19 ID:QqswW4aao
瑞鳳「…………」スリ

金剛「アハ。落ち着きマスか?」

瑞鳳「…………」コクン

金剛「良かったデス。好きなだけこうしていて下サイね」ナデ

金剛「テートクも、こうしてあげたら良かったデスよ?」チラ

提督「それをお前が言うか……」

金剛「私だから言えるのデス」

提督「……まったく。本当にお前には時々勝てんよ」

金剛「えへへー」ニコ

利根(……もしやとは思うておったが、この金剛は……あの金剛ではないか?)ジー

提督「…………」チラ

利根「!」

提督「…………」ジッ

利根(やはりそうなのか。……うむ、分かっておる。誰にも言ったりはせぬよ。何か事情があるのじゃろう?)コクン

提督「…………」コクリ

金剛「ほら、テートクも落ち着かせてあげて下サイ」

提督「しかし……」

金剛「きっと、この子もそうして欲しいと思っているデスよ?」

提督「……そうなのか、瑞鳳?」

瑞鳳「…………」チラ

金剛「♪」ニコニコ

瑞鳳「…………」チラ

提督「…………」

瑞鳳「…………」コクン
606 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:29:51.36 ID:QqswW4aao
金剛「ハイ! 瑞鳳もそう言っているデース! テートクは人を落ち着かせるのがとっても上手ネ!」スッ

提督「そんな事はないと思うが……」

利根「自覚無しじゃったのか。我輩がなぜいつも背中にのしかかっておったのか分からぬのか?」

金剛「背中にのしかかっていた、デスか?」

利根「うむ。とある島で提督と二人で何年か過ごしていた頃にの。我輩はそれが好きで暇さえあればその状態じゃった」

提督「確かにほぼずっとそんな感じだったな」

金剛「そんな事があったデスか。私、その頃の話が聞きたいデース!」

利根「うむ。我輩は良いぞ。提督も良いよな?」

提督「ああ。構わん」

金剛「ヤッタ! その島ではどんな事があったデスか?」

利根「基本的には暇で海を眺めてばかりおったのう。他には──」

金剛「ふむふむ」

提督(……そうか。色々な事があって金剛に話していなかったな。……本当、色々な事があったものだ)

瑞鳳「…………」クイクイ

提督「うん?」

瑞鳳「…………」ジー

提督「……なるほど、催促か」チラ

金剛「?」チラ

金剛「♪」コクリ

利根「金剛よー、聴いておるのか?」

金剛「勿論デース。それで、釣りで利根はテートクに何回勝ったデスか?」

利根「む。そ、それはじゃな?」

瑞鳳「…………」クイクイ

提督「……ほら、おいで」スッ

瑞鳳「…………」ソッ

提督「…………」ギュ

瑞鳳「!」ピクン

瑞鳳「…………」ホゥ

提督(金剛のおかげで一層落ち着けているようだな)ナデナデ

瑞鳳「…………」コテッ

提督(む、身体も預けてきたか。……ああ、構わんぞ。好きなだけ甘えて良い。甘えてきた以上に愛でよう)ナデナデ

瑞鳳(……この人は、優しくて……温かい人。……甘えても、良い人)

瑞鳳(良いなぁ……これ……。眠っちゃいそう……)

…………………………………………。
607 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:30:17.98 ID:QqswW4aao
利根「では提督、瑞鳳よ、また明日じゃ」

金剛「グッナイ二人とも!」

提督「ああ。お前達も良い夢を見ろよ」

ガチャ──パタン

提督「さて、私達も寝ると──ああいや、今日は風呂に入る間が無かったんだったな。寝る前に風呂に入るとしよう」スタスタ

瑞鳳「…………」コクン

ガチャ──パタン

提督(……しかし、この部屋に備え付けてある風呂場に瑞鳳と共に居るのはこれで数日だが、未だに慣れんな)

提督「さて、今日も瑞鳳が先に入るか?」

瑞鳳「…………」フルフル

提督「そうか。では、私が先に入ろう。着替える間だけ手枷を外すぞ。瑞鳳、私の方の鍵を出して外してくれ」

瑞鳳「…………」スッ

カチャ──カチンッ

瑞鳳「…………」ジー

提督「……む? 瑞鳳、向こうを向いてくれないか? 着替えれん」

瑞鳳「……私のも」スッ

提督「む? 瑞鳳の手枷も? どうしたんだ?」

瑞鳳「…………」ジー

提督「まあ、良いか……」カチンッ

提督(漸く手枷で繋がなくても良いと思ってくれたのだろうか)
608 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:30:46.89 ID:QqswW4aao
瑞鳳「…………」シュル

提督「待ちなさい」

瑞鳳「…………」ピタッ

提督「なぜお前も服を脱ごうとしているんだ……」

瑞鳳「…………」ジー

提督「…………」

瑞鳳「……甘えたい」

提督「……………………そうか。甘えるのは構わないが、一緒に風呂へ入ろうとするのはやめておけ。風紀の問題がある」

瑞鳳「…………」ジー

提督「こればっかりは堪えてくれ。そもそも、男女が同じ風呂に入るというのはあまり良くない事だ」ナデ

瑞鳳「…………………………………………」

瑞鳳「…………」コクン

提督(長く考えていたようだが、納得してくれたか)

提督(しかし……甘えるとしても、なぜ一緒に風呂へ入ろうとしたんだ……?)

…………………………………………。
609 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:31:28.96 ID:QqswW4aao
提督(そして風呂が終わったらこれか)

瑞鳳「…………」ギュゥ

提督(……手枷をする前に戻っていないか、これは?)

瑞鳳「……横須賀の提督さん」

提督「! どうした?」

提督(……この子が自分から話し掛けたのは初めてじゃないか?)

瑞鳳「甘えさせて、下さい……」

提督「……ふむ」

瑞鳳「寝る時に抱き締めてくれると……嬉しい、です」

提督(…………今はそうしてあげた方が良いか)

提督「分かった。電気を消すから、先にベッドへ入っていなさい」

瑞鳳「はい」トコトコ

カチッ──

提督(む……燭台に火を点けておくべきだった。……まあ、どうとでもなるか)スタスタ

提督「私もベッドへ入るから、ぶつからないように」ソッ

ピトッ──

提督「む?」

瑞鳳「……私は、ここに居ます」

提督「……そうか」モゾ

瑞鳳「ん……」ギュ

提督「む」

瑞鳳「落ち着きます……」

提督「……そうか」
610 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:32:49.82 ID:QqswW4aao
瑞鳳「横須賀の提督さんも、抱き締めてくれますか……?」

提督「……分かった」ギュ

瑞鳳「んっ……!」ピクン

提督「む、痛かったか。すまない」スッ

瑞鳳「……もっと、して下さい」

提督「うん?」

瑞鳳「瑞鳳は……痛いくらいが良いです。もっと、あったかいのを感じたいです」

提督「…………」

瑞鳳「…………」ギュゥ

提督「……温かいのを感じたいから、なんだな?」

瑞鳳「はい……」

提督「分かった。それならば良いぞ」ギュウッ

瑞鳳「んっ──!」ピクッ

瑞鳳「……あったかい」スリ

提督「痛くはないか?」

瑞鳳「……もう少し、強くても良いくらいです」

提督「……これ以上は睡眠に支障をきたしそうだから止めておく」

瑞鳳「はい……」スリ

提督(……瑞鳳の鼓動を感じる。しかし……なんだか速いな)

瑞鳳(これ……身体の奥から気持ち良い……。あったかくて優しい痛みなんて、あるんだ……)

瑞鳳(提督がくれた痛みよりも、もっともっと欲しくなる痛さ……)

提督「良い夢を見てくれよ」

瑞鳳「……はい」

瑞鳳(良い夢……うん……。見れそう……。この人とくっついていると……温かい気持ちになる……)

…………………………………………。
611 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:36:25.44 ID:QqswW4aao
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ます。

お風呂の要望があったので少し間違った形で書いてみました。なお、お手洗いもこれとあまり変わりありません。
待っている方は目隠しと耳栓をしているとありますが、一部の艦娘はそれを聞いて別の妄想をしているかも。イタズラし放題だとかなんだとか。提督の思慮を超えた想像です。
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/05(土) 04:47:59.88 ID:sNZ5g+IJ0
大淀はMでむっつり確定だな
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/05(土) 12:06:43.00 ID:JrU/shuwo
乙ヤーデ
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/05(土) 12:36:01.57 ID:np02+QU1o
乙です
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/05(土) 13:05:40.96 ID:d/ej9hmw0


そっか、ちょっとの間なら外せるのか、手錠。
616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/05(土) 19:07:28.89 ID:3Uob72iqO
瑞鳳好きが周りにいて不思議だったがこれ見て好きになりそう
617 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:09:27.68 ID:3cgKq1PEo
瑞鳳『提督、今日はダシ巻き作ってみたんだけど、食べる?』

提督『ほう。頂こう。──うむ、良い味だ』

瑞鳳『本当ですか? 一杯あるから、たくさん召し上がれ♪』

提督『良い子だなぁ瑞鳳は』ナデナデ

瑞鳳『えへへ』

────────────────。

瑞鳳「!」パチ

瑞鳳(朝……?)

提督「…………」ナデナデ

瑞鳳「ぁ……」

提督「ん、起きたか瑞鳳」スッ

瑞鳳(……そうだった。私、抱き付いて寝てたんだっけ)

提督「そろそろ起きるとしよう。他の皆が来る前に」

瑞鳳(──もしかして、ずっと頭を撫でてくれていたのかな。だから、あんなにあったかい夢を……)

瑞鳳(そういえば……あんなに心地良い夢を見たのって、いつ振りだろ……)

瑞鳳(…………この人には、本当に心を見せても……良いのかな)

提督「瑞鳳? どうした?」

瑞鳳「……あの」

提督「うん?」

瑞鳳「……………………え、と……」

提督「…………」

瑞鳳「……なんでも、ないです」

提督「ふむ……。少し失礼する」ギュゥ

瑞鳳「!!」ピクンッ

提督「このくらいだったか?」

瑞鳳「……はい」ギュ

瑞鳳(ああ……良いんだ……。私……もう閉じ篭らなくても、良いんだ……)

瑞鳳(温かくて、優しくて、安心できて……。いつか夢に見た、落ち着ける時間……)ジワ

瑞鳳(なんでこの人は、私にソレをくれるんだろう……? 迷惑ばかり掛けている私に、どうして……?)ポロポロ

瑞鳳(私の状態が良くないから……? 治さなきゃいけないから……? ……ううん。きっと、この人はこれが普通なんだ……。この人にとっては、ただちょっと優しくしているだけなんだ……)ポロポロ

提督「……もう少しだけ、うたた寝でもしようか。まどろみの中は気持ちが良い」ナデ

瑞鳳「はいっ……!」ポロポロ

瑞鳳(ああ……嬉し泣きって、本当にあるんだ……。私、こんなの初めて……)ポロポロ

…………………………………………。
618 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:09:54.33 ID:3cgKq1PEo
瑞鳳「……ありがとうございます」

提督「もう良いのか?」ナデ

瑞鳳「うん……。名残惜しいけど、もうそろそろ起きなくちゃいけないから」

提督「そうだな。もうあと少しで金剛や利根がやってくる」

瑞鳳「……大丈夫かな」

提督「赤くなった目が治るかどうかか?」

瑞鳳「ううん、違うの。私、皆に会うのがちょっと怖くて……」

提督「ふむ」

瑞鳳「だって……昨日、大淀さんが言ってたように……皆が不満を持ってるって……」

提督「なるほど。それで不安なのか」

瑞鳳「うん……」

提督「大丈夫だ。その事については謝っておけば問題無い。あの子達ならば分かってくれる」

瑞鳳「……ホント?」

提督「流石にその場で一切合切なにもかも飲み込んでくれはしないだろうが、少し時間を掛ければ受け入れてくれるだろう」

瑞鳳「…………」

提督「怖いか?」

瑞鳳「……ちょっとだけ。でも、横須賀の提督さんが言うのなら……大丈夫、だよね?」

提督「信じてくれるとありがたい」ナデナデ

瑞鳳「……うん。信じるね」

提督「うむ。では、顔を洗ってきなさい」

瑞鳳「うん!」ニコ

トコトコトコ──
619 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:10:22.70 ID:3cgKq1PEo
提督(……どことなく、妹の方の金剛と似たような笑い方をしている。儚い笑みだ……)

瑞鳳「……えっと、横須賀の……じゃなくて、中将さん」ヒョコッ

提督「うん? どうした?」

瑞鳳「…………提督は……どうなるのかな」

提督「大佐か。……分からん。ただ、敵に協力をしていたと認めてしまった事から『処分』もあり得る」

瑞鳳「……そっか」

提督「…………」

瑞鳳「やっぱり、そうなっちゃうよね……。うん……そっか……」

提督「……辛かったら、いつでも話を聞くぞ」

瑞鳳「うん……」トコトコ

提督(……本当、あんなに酷い事をさせられても悲しめるとは)

提督「艦娘、か……」

提督(基本、ただ一人の提督に付き従うと聞くが……ここまでいくものなのか……。私に付き従ってくれる子達も、同じなのだろうか……)

提督(そして、好いてくれる理由も……。そして……もしかすると、金剛も……)

提督「…………」チラ

提督(金剛との、つがいのネックレスは引き出しの奥にある。……もしかすると、あのネックレスは金剛にとって呪いだったのだろうか。より束縛し、より私を盲目に信じさせる、薄汚い物だったのだろうか……)

提督「……どうなんだろうな」

提督(もしそうであるのならば……寂しいな)

瑞鳳「──中将さん」トコトコ

提督「どうした、瑞鳳」

瑞鳳「辛そうだけど、大丈夫……?」
620 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:11:03.89 ID:3cgKq1PEo
提督「……ポーカーフェイスには自信があるつもりだったが」

瑞鳳「……いつも提督の顔色を伺っていたから、なんとなく分かっちゃうの」

提督「そうか……」

瑞鳳「えっと……私、痛い事は好きなの。だから、もしそれで気が紛れるなら、いつでも良いですよ?」

提督「馬鹿を言うんじゃない」

瑞鳳「本当なの。……最初は痛い事は嫌だったし逃げ出したかったけど、いつの間にか『痛い』って感覚は生きてる証に感じて、生きてるって分かる事が好きになって……」

提督「……………………」

瑞鳳「私なら大丈夫です。自分で自分の小指を切る事も出来るから、ね?」

提督「自分の、指を……?」

瑞鳳「うん。そうしなかったら、私の代わりに他の艦娘の指を切り飛ばすって言われたから……」

提督「……瑞鳳、もっと近くに来なさい」

瑞鳳「? うん」トコトコ

提督「おいで」スッ

瑞鳳「え? 腕の中……良いんですか……?」

提督「ああ」

瑞鳳「……うん!」ソッ

提督「こうされるのと、どっちが好きだ?」ギュッ

瑞鳳「んっ……。こっち、かな?」

瑞鳳「痛いのも良いけど、こうやって、誰かの心臓の音を感じるのも……好き。痛いくらい抱き締められるのって、もっと欲しくなる痛みだから……。それに、心臓の音を聞いてると、生きてるんだなって思えるの……」スリ

提督「……そうか」

瑞鳳「うん……。気持ち良くて、優しくて、あったかいから、凄く好き……。もしかしたら癖になるかも」
621 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:11:50.52 ID:3cgKq1PEo
提督「…………」

瑞鳳「あぁ……ずっとこのままで居たいって思っちゃう……」

提督(そういえば……金剛も抱き締められるのは好きだったな……。…………少しくらいは、私も都合良く考えても許されるだろうか)

提督「……ありがとう、瑞鳳」

瑞鳳「? お礼は私が言うべきじゃ……」

提督「いや……少しだけ、軽くなった」

瑞鳳「軽く……? え、えっと……?」

提督「ありがとう……」

瑞鳳「……うん」

コンコンコン──

提督「──さて、今日も一日が始まる。瑞鳳、今日は正式に鎮守府の皆に自己紹介しようか」スッ

瑞鳳「はいっ」

提督「よろしい。──金剛、入ってきて良いぞ。知らせたい事もある」

…………………………………………。
622 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:12:42.29 ID:3cgKq1PEo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ます。

……おかしいな。もう終わるはずなんだけどな。
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/17(木) 06:34:29.08 ID:RBU9E/8Wo
おつ!
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/17(木) 11:25:23.00 ID:12BBj0BGo
乙です
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/17(木) 20:41:33.80 ID:et9rYABA0
おつおつ
まったりでも続いてくれるのは大歓迎ですよ〜
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/17(木) 22:43:00.89 ID:57kF03Hy0
乙です
でもこのルートのヒロイン誰?
627 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/01(木) 04:40:33.50 ID:svt2Tvv2o
金剛「…………」チラ

瑞鳳「────?」オドオド

祥鳳「────────」ナデ

瑞鳳「────♪」

天龍「? ────!」

暁・雷「!」

ヲ級「────!」ブンブン

瑞鳳「!」チラ

祥鳳「────」フリフリ

瑞鳳「…………」フリフリ

暁・雷「…………」チラ

天龍「? ────?」

暁・雷「…………」フリフリ

金剛(……祥鳳はともかく、さすが天龍とヲ級ですね。事情が事情だからなのか、それとも素の行動なのかは分かりませんが、わだかまりを解消してくれそうです)クルッ

金剛(こう言うのは良くありませんが、おかげでこっちの問題も手が付けられそうです。……シスターの事、テートクに相談しなくちゃ)スタスタ

金剛(今の時間は大抵が執務のはずですが、最近は執務が少なくなった事で休憩時間にしていましたから大丈夫ですよね)スッ

コンコンコン──

提督「金剛か、入れ」

??「なっ!!」

金剛(? 誰の声でしょうか?)
628 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/01(木) 04:41:03.67 ID:svt2Tvv2o
ガチャ──パタン

長門「な……なな、ななな……!!」ブラーン

金剛「……なんで吊るされているのデスか?」

提督「この前の深海棲艦との戦闘で命令を無視してまで前線に残っていた罰だ。あれではいつ沈んでもおかしくなかったぞ」

金剛(ああ……なるほど)

利根「ほれ、金剛も見るかの? なんと純白の下着じゃぞ。意外じゃよのう」ピラ

長門「何をする!? やめないかッ!!」

利根「とは言うても、これがこのお仕置きの醍醐味じゃからのう。……おぉ、よく見ると小さな薄桃のリボンがあるのじゃな。やはり可愛いもの好きか」ジー

長門「〜〜〜〜〜〜!! て、提督も何か言ってくれ!」

提督「私はここでお前の反省を見守るだけだ。それ以外はよっぽどの事を除いて関与せん」

長門「見守るなどと言いつつ戦艦すら射殺す目をしているではないか……!!」

金剛・利根「あ」

提督「反省の色が見えんな。十分追加」

長門「なぁっ!? ほ、他の者達が更に来たらどうする!?」

提督「それはお前自身が招いた事だ。それによって生まれる問題は自分の行動の結果だと思え」

長門「くぅっ……!」

利根「じゃが、羞恥心ばかりで恐怖心が無いのはまだ良いのではないか? 我輩など提督がこんな形相で視線を逸らす事も許されず仁王立ちなどされたら怖くて縮こまってしまうぞ」

長門「今はそれどころではない!! これ以上、誰かに見られたらと思うと──!」

提督「ほう? 反省をするどころか全く別の事を考えるか」ジッ

長門「ひっ!? じ、時間を延長するのは止めてくれ!! もうあんな事はしないと誓う!!!」

提督「宜しい。あと五分で降ろすとしよう」
629 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/01(木) 04:41:30.38 ID:svt2Tvv2o
長門「な、長くなっているのは変わらないのか……!!」

提督「お望みならばもっと長くしてやるが」

長門「や、やめてくれぇ!! こんな姿をこれ以上見られたくない……ッ!!」

利根「……プライドの塊というのは生き辛そうじゃのう」

金剛「効果抜群ネー……」

────五分後──

長門「…………終わった……。二つの意味で、終わった……」ズーン

利根「瑞鶴と響がやってくるとはのう。気を利かせてくれたのか、すぐに帰ってくれたが」

長門「誰かに話していたり、しないだろうか……」

利根「瑞鶴は何かあった時にポロッと口にしてしまいそうじゃ。響は……言いそうではないが、今回の事を知っている者の間では言いそうなイメージはあるかの」

長門「ああぁぁぁぁぁ…………」

金剛「物凄い悲痛な声デス……」

利根「しかし少し意外じゃったな。てっきり『フン。ビッグ7たる者、この程度で屈したりはしない』なんて言うかと思っておったのじゃが」

長門「こういう羞恥心を煽られる事は苦手なんだ……」

利根「なるほどのう」

提督「反省はしたか?」

長門「!! は、はいッ!」ビクッ

金剛(また一人、テートクを怒らせてはいけないと身をもって知ったですね……)

提督「宜しい。部屋に戻って良いぞ。──利根、部屋まで送ってやってくれ」

利根「うむ。フォローは任せるが良いぞ」トコトコ

長門「失礼……した……」トボトボ
630 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/01(木) 04:42:00.98 ID:svt2Tvv2o
ガチャ──パタン

提督「……さて金剛。少し話がある」

金剛「……ハイ。シスターの事デスね?」

提督「ああ。あれから表に出てきたりはしているか?」

金剛「いえ……塞ぎこんでいてまったく返事をしてくれまセン。心の奥に居るのだけは分かるのデスが……」

提督「大丈夫なのだろうか……」

金剛「分かりまセン……。そもそも、どうして塞ぎこんでしまったのかも分からないデス……」

提督「むう……」

金剛「…………」

提督「……一先ず、呼び掛けて──いや、呼び掛け続けてみよう。もしかしたら反応してくれるかもしれん」

金剛「ハイ。私も諦めまセン。諦めてしまったら……それは私がシスターの身体を乗っ取ってしまうのと変わらないデス」

提督「そうだな。……金剛、気になったのだが、最後に妹の方と話した時に何かおかしい所とかはあったか?」

金剛「そうデスね……。レ級と戦っていた時にたしか、この身体は私のモノとして扱って下サイ、と言っていたデス」

提督「……ダメージを気にしないで良い、と言った訳ではなさそうだな」

金剛「ハイ……。あの時は考える余裕がありまセンでシタが、今になって思うと、あれは私に身体を受け渡すという意味にも聞こえるデス」

提督「ああ……。本当、どうしてなんだ金剛。お前の身体はお前のモノだろう? 誰かのモノでもない、自分自身のモノだ。今はただ好意で私達を会話させる為に──……」

金剛「!」ハッ

提督「……そういう事か」

金剛「きっと、そうかもしれまセン。……馬鹿デス」

提督「本当にな……。そんな事をしても、誰も喜びはしないというのに……」

提督「──私と金剛の為に、自分を犠牲にしようと考えるか。なぜそんな事を……」
631 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/01(木) 04:42:27.46 ID:svt2Tvv2o
金剛「……艦娘、だからデスかね」

提督「…………」

金剛「私達はテートクの為に動き、テートクに喜んで貰いたいと思っているデス。……きっと、シスターは自分ではなく、私の方がテートクを喜ばせられると思ったのでショウね」

提督「……………………」

金剛「……シスター、お願いデス。もし本当にそんな事を考えているのでしタラ、考え直して欲しいデス。私もテートクも、そんな事は望んでいないデス」

提督「金剛、話をさせてくれ。このままお前が居なくなるなど、私は認めん。……頼む」

金剛「…………ダメです。反応も何もしてくれまセン……」

提督「金剛……」

金剛「シスター……」

…………………………………………。
632 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/01(木) 04:43:19.70 ID:svt2Tvv2o
今回はここまでです。また一週間後くらいに来るかもしれません。

お仕事が忙しくて更新が遅れてごめんよ。
633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/12/01(木) 09:30:29.38 ID:DOekaYrLo
乙です
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/01(木) 11:25:49.11 ID:GRDlODAlO
ひとつノルマが達成された
635 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/15(木) 04:16:02.26 ID:2Gw8Ge/do
飛龍「…………」カリカリ

利根「…………」カキカキ

提督「…………」サラ

飛龍(……利根さん。提督に何かあったんですか?)ヒソ

利根(いや……我輩は知らぬ。朝から何か深く考えておるようなのじゃが……聞いても生返事なのじゃ)ヒソ

飛龍(……一体、何があったんだろ。それに、私達に相談してくれないって事は……私達は頼りにならないって事なのかな……)シュン…

利根(飛龍よ)ヒソ

飛龍(…………?)

利根(お主が考えている事はなんとなく分かる。じゃが、あの提督じゃぞ? 一人でこんなに考えるという事は、きっと人に言えぬ事なのじゃ。それか、言うと問題のある事なのかも知れぬ)ヒソ

飛龍(…………)

利根(今はそっとしておくのが良かろう。見守るというのも、一つの信頼の形なのじゃ)ヒソ

飛龍(……………………)

飛龍「……利根さん、私はこういうのが苦手なのは知っていますよね?」

利根「!」

提督「……うん?」

飛龍「私は不器用に真っ直ぐです。だから、私は訊くしか出来ません」

提督「……何の話だ?」

飛龍「……提督。提督の悩みは、何ですか? それを教えてくれませんか?」

提督「む……」

飛龍「こんな風に提督が悩んで苦しんでいる姿は私も辛いです。だから、一緒に考えさせてくれませんか? 頼りないかもしれませんが、提督の悩みを私達にも共有させてくれませんか?」

利根(むう……これは良くないぞ……)
636 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/15(木) 04:16:28.45 ID:2Gw8Ge/do
提督「……飛龍」

飛龍「! はい」

提督「……すまない」

飛龍「……それ、は…………」

提督「そういう事だ。……簡単に人に話せる事ではないんだ。私も誰かと相談をしたい気持ちがある。今ここで話したいくらいだ。……だが、言う訳にはいかない。そうすると──」

提督(──余計に、殻に閉じ篭っている金剛の立ち位置が危ぶまれる。いつか必ず、あの子が酷く傷付いてしまう)

提督「…………すまない」

飛龍「そう……です、か……」

利根「……提督よ。一旦、休憩にせぬか? 今のままでは仕事にならぬじゃろう」

提督「……そうだな。休憩に──」

飛龍「…………」ジワ

提督「!!」

飛龍「!」ブンブン

飛龍「す、少し顔を洗ってきます!」タッ

提督「飛りゅ──」

ガチャ──パタン

飛龍「ごめんなさい、提督……」

飛龍(……馬鹿だな、私。勝手に訊いて、勝手に傷付いて……。提督だって人なんだから、誰にも言えない事くらいあって当然なのに……)

金剛「──飛龍?」

飛龍「!!」

金剛「どうシタのデスか? 泣いているようデスが……」
637 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/15(木) 04:16:54.96 ID:2Gw8Ge/do
飛龍「……金剛さん。…………ごめんなさい……」スッ

金剛「あ……。……何があったのでショウか」チラ

利根『────難しいものじゃなぁ……』

提督『飛龍には悪い事をしてしまった……。もう少し、言い方があったかもしれんというのに』

利根『……これは我輩の勝手な憶測なのじゃが、金剛の事で悩んでおるのではないか? そして、それは我輩にも言えぬ事かの?』

提督『……そうだな。なるべくならば誰にも伝えない方が良い内容だ』

利根『ふぅむ……。ならば我輩は待っておるとするかの。……じゃが、飛龍のような子も居るのじゃ。その点はどうにかした方が良いぞ?』

提督『ああ……まったくだ。今回の落ち度は私にある』

利根『……本当、難しいものじゃな。人間も、艦娘も……』

金剛(この話は、もしかして……)

金剛(……どうしましょうか。……本当、困りました。どうすれば、この状況を解決出来るのデスか……?)

金剛「……………………」

金剛(一先ずは飛龍です。利根の言っていたように、飛龍のように傷付いてしまう子だって居ます。ただ……こればっかりはテートクではどうしようもできそうにないですね……。ならば──)スッ

金剛(──私がやらなければなりません。そうでないと、この鎮守府は大変な事になってしまうです)スタスタ

金剛(飛龍の事です。きっと、あの部屋に行っているでしょうね。あの部屋ならばここから近いですし、それに今の時間ならば一人になれるはずですから)スタスタ

金剛(廊下を曲がって突き当たり……夜、お酒を飲む時に使われる部屋。飛龍なら、きっとここに……)スッ

コンコンコン──

ガチャ──パタン

飛龍「!! こ、金剛さん……? どうしてここに……」

金剛(やっぱり居ました。……やっぱり、泣いていたようですね。目尻が赤くなってるです)

金剛「飛龍がここへ入っていくのを見たので、来まシタ。隣に座りマスね。それで……何かあったのデスか?」スッ
638 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/15(木) 04:17:21.34 ID:2Gw8Ge/do
飛龍「それ、は……その……」

金剛「ハイ」

飛龍「……私の自分勝手な行動で、私が勝手に傷付いたんです。……私はある人に、心の奥へ踏み込むような事をしてしまいました。けれど、それはその人にとってとても重要な上、誰にも話す事の出来ない内容だったようで……。それで、話してくれなかった事が凄く辛くて……」

金剛「自己嫌悪してしまった、デスか」

飛龍「はい……。今、そんな事をしてしまった事を後悔しているんです……」

金剛「後悔、デスか」

飛龍「ええ……。もう、自分が嫌になります……」

金剛「……その人はとても悩んでいたのデスよね?」

飛龍「はい……見ていてこっちも心配になるくらいでした……」

金剛「心配になる……という事は、その人は普段そんな風に悩まないのデスね?」

飛龍「そうです……。あんなに悩んでいる姿なんて、初めて見ました……」

金剛「……これは私の勝手な意見デスが、私は飛龍のした事は間違っていないと思うデス」

飛龍「でも……」

金剛「普段、悩んでいる姿を見せない人なのデスよね? なのに、そんな人が悩んでいる姿を人に見せてしまうという事は、誰かにその悩みを話したいのだと思いマス」

提督『……簡単に人に話せる事ではないんだ。私も誰かと相談をしたい気持ちがある。今ここで話したいくらいだ』

飛龍「……はい」

金剛「その人は話す事が出来ないと言ったようデスが、それは飛龍の為を思ってなのかもしれまセンよ?」

飛龍「私の為……?」

金剛「ハイ。誰にも話す事が出来ないという事は、話す事自体が危ない事や、話す事で誰かが傷付く内容だったという可能性が高いデス。それを知ってしまった飛龍が、その人と同じく悩んでしまうのを避けたかったのかもしれまセン」

飛龍「……………………」

金剛「少し待ってみてはどうデスか? 時間が経つ事で話せるようになるかもしれまセンし、もし解決シタのならば、掻い摘んで話してくれると思うデス」
639 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/15(木) 04:17:55.27 ID:2Gw8Ge/do
飛龍「……そう、ですね。……そうしてみます」

金剛「イエス! そうとくれば、涙を拭いて顔を洗ってから、その人の所へ行ってあげて下サイ! 待っていると言っておけば、話せる時になったら話してくれるはずデース!」

飛龍「──はい。ありがとうございます、金剛さん」

金剛「私は自分の考えを言っただけネ。それでどんな風に受け取って、どんな風に解決するかは飛龍次第デス」

飛龍「……なんだか提督みたいな言葉ですね?」クス

金剛「私もテートクに影響されているデスからね」ニコニコ

飛龍「……なんだか、懐かしいです」

金剛(……はぐらかしておきましょう。言う訳にはいきません)

金剛「懐かしい……?」

飛龍「あ──い、いえ! なんでもないです!」

金剛「うーん……そういう事にしておきマス! では、飛龍もどうすれば良いのか分かったようなので、私も行くデス」スッ

飛龍「……もしかして、何か用事があったりしました?」

金剛「ノンノン。レディのお化粧直しを見る訳にはいかないデース。──では、失礼しまシタ」

ガチャ──パタン

飛龍(……やっぱり、あの金剛さんに似てるなぁ。やっぱり、別人でありながら同一人物って事なのかな)

金剛(これで上手くいけば良いのですが……。少なくとも、飛龍の落ち込んでいる姿を見て、テートクが何かを悩んでいるという事は無いでしょう。……テートクならば、これから悟られないようにしてくれるはずです)

金剛(……シスター。せめて、お話の場だけでも用意してくれたら……)

…………………………………………。
640 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/15(木) 04:20:27.46 ID:2Gw8Ge/do
今回はここまでです。また一週間後くらいに出没するかもしれません。目安にして下さいませ。
今回も遅くなってごめんよ。クリスマスには何か書くかも。誰の話にしようかちょっと悩み中。金剛さん、瑞鶴、響ちゃん、飛龍、利根さん、空母棲姫の誰かにしようかと考えています。
希望がありましたらお気軽に言ってくださいませ。
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 04:52:28.60 ID:y7xPU6HNO
響ちゃんの話がいいな、活躍などはしたりするがあまり話にでてきたりしない気がするし
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 05:14:03.15 ID:DPfV9La60
全員でもいいのよ?
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 08:51:48.15 ID:KLY9itLvo
飛龍がいいな。
うちに来た初めての空母だから思い入れ結構強いんだ。
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 09:25:50.11 ID:Sjjx/gpA0
利根の話が見たいけど、棲姫の話も気になるw
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 12:47:19.41 ID:EZIYivpA0
やっぱ利根かなぁ
ハッピーな話しが読みたいな
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 13:02:26.37 ID:sQnjIkHvO
>>644-645
ID微妙に変わってないぞw
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/15(木) 21:17:44.56 ID:K9epm46u0
リクエスト、悩みどころだけど利根かなあ
このシリーズのおかげで利根がさらに好きになったから
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/18(日) 22:14:32.78 ID:E9vmBOc50
空母棲姫
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/20(火) 06:15:54.70 ID:oMXdG70CO
利根のケッコン初夜(直球)
650 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/25(日) 04:47:32.25 ID:gfxgnvvZo
本当は利根さん、飛龍、空母棲姫の三人を書くつもりだったけど、仕事で利根さんのを中途半端にしか書けなかった。ちくせう。
今回はクリスマスの利根さんとの一日を投下します。利根さんルートのその後と考えて下さいませ。
651 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/25(日) 04:48:02.84 ID:gfxgnvvZo
利根「──のう提督よ。サンタになってみる気はあるかの?」カリカリ

提督「……執務中だというのに、いきなりどうした利根?」サラサラ

利根「何。簡単な事じゃ。一部の者達がクリスマスを楽しみにしているようでな」カリカリ

提督「なるほど、そういう事か。……しかし、今からプレゼントなど用意できんぞ。そもそも、娯楽品を手に入れる事自体が難しい事から、希望の品を渡す事もままならない」サラサラ

利根「そこは提督という権限でどうにかしてやってはどうじゃ?」

提督「馬鹿を言え。また島流しされたいのか?」

利根「やはりそうなるよのう……」

提督「……しかし、どうしてまたそんな話をしたんだ? プレゼントを欲しがっている子でも居たか」

利根「まあ居る事は居たが、少数じゃな。単純にクリスマスの雰囲気を知りたいという者が多かったのじゃよ」

提督「ふむ……」

利根「そこで気になったのじゃが、どうして提督はクリスマスに何かイベントをしたりしないのじゃ?」

提督「クリスマスは、深海棲艦が現れる前に戦争していた敵国の祭りだからだ。敵国の祭りで祝うなど士気の低下に繋がりかねんと判断して一切の手を付けていない。むしろ、祝っているのを上層部に知られでもしたら面倒だ」

利根「ほー。初めて知ったぞ。むしろ、深海棲艦と戦う前に戦争などしておったのか」

提督「……そうか、お前達は知らないのか。一応この国は枢軸国として、ドイツなどと共にアメリカやイギリスなどの連合国を相手に戦っていたぞ」

利根「過去形なのじゃな」

提督「今はそれどころではないからな。連合はおろか、枢軸にすら連絡が取れん。近くにある国ですら人を確認できていない。深海棲艦によって殲滅された可能性は大いにあるだろう」

利根「なるほどのう。……話は戻すが、お菓子を配る事も難しいかの」

提督「菓子か。ふむ……。それならば士気向上という建前も得られる。それに、実際に皆が喜ぶだろう」

提督「あと、お前も喜びそうだ」チラ

利根「むむ。我輩はお子様ではないぞ?」

提督「そうか。──では、間宮たちに頼んで25日に配る菓子を用意して貰うか」

利根「ちなみに、どんな物を配るのじゃ?」

提督「そうだな……。出来れば、普段とは違う菓子が良いな。その方が皆も喜ぶだろう。そこは間宮たちと一緒に相談でもしよう」

利根「ほうほう」

提督「さて、では間宮たちと話す為に執務をさっさと終わらせるとしよう。利根、ついてこいよ」サラサラサラサラサラ

利根「ぬぁ!? そ、そんなに速く処理など出来ぬわ! 腕が早送りしているみたいじゃぞ!?」カリカリカリ

……………………
…………
……
652 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/25(日) 04:48:29.16 ID:gfxgnvvZo
提督「──さて間宮、最中はどうなった?」

利根「ほう、最中にしたのか」

間宮「はいっ、ちゃんと作っておきました。こちらに用意していますよ」

利根「おお……これまた凄まじい量じゃのう……」

提督「……山と言うのはこういう事だな。百なんて個数ではないだろう、これは」

ヲ級「一杯、作った!」ニパッ

伊良湖「空母棲姫さんとヲ級ちゃんが頑張って下さったので、一人あたり四個も用意できましたよ!」ニコニコ

空母棲姫「頑張りました」

提督「という事は三百近くもか……。本当、ありがたい」ナデ

間宮「いえいえ♪」ニコニコ

伊良湖「わわっ……! 頭を撫でてくれたのって初めてかも……!」

ヲ級「えへー♪」ニパー

空母棲姫「少し……恥ずかしいです……」

ヲ級「姫、照れてる!」

空母棲姫「……頬を伸ばしてあげても良いのよ?」

ヲ級「素直が、一番!」ニコニコ

空母棲姫(……こうも純粋に笑顔を向けられると、お仕置きも出来ないわ)

利根「ところで、提督よ」

提督「どうした」

利根「既に菓子の匂いに釣られて何十人……というよりも、全員が食堂を覗いているようじゃが、どうするのじゃ?」
653 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/25(日) 04:48:57.55 ID:gfxgnvvZo
川内「ねえ、何かなアレ?」

電「ちっちゃな袋が沢山なのです」

赤城「甘い匂いがします……!」

鈴谷「もしかしてお菓子とか? 提督やるじゃーん!」

提督「丁度良いからここで配るとしよう」スッ

提督「──お前達、中へ入ってこい」

全員「はーい」

ゾロゾロ

提督「全員揃ったな。──本日はクリスマスだというのは皆も知っているだろう。今までは事情により開催される事はなかったが、今年より菓子の配布という形で実施する事とした。今日の為に頑張ってくれた四人には必ず礼を言うようにしてくれ」

全員「はいっ! ありがとうございます!」

提督「よろしい。では、菓子を配る。私たち六人で配るので、六列に並んで受け取ってくれ。一人につき四個だ」

…………………………………………。
654 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/25(日) 04:49:23.72 ID:gfxgnvvZo
ガチャ──パタン

利根「ふぅ……。皆、喜んでおったのう」

提督「ああ。良い笑顔だった。これからもクリスマスは菓子を配るとしよう」

利根「うむ!」

提督「さて利根。手伝ってくれたお前にもクリスマスプレゼントがあるのだが」

利根「ほう、プレゼントとな? 何があるのじゃ?」ワクワク

提督「これだ」スッ

利根「うん? さっき配っていた最中……と似ておるのう。なんだか形が歪じゃ」

提督「間宮と伊良湖の完全監修の下だったが、私が作った」

利根「……なぬ!? 提督の手作りじゃと!?」

提督「そんなに驚くか」

利根「なんでも、以前は卵と塩だけで虹色の物体Xが出来るとかと耳にした事があるぞ」

提督「まあ……な。そんな時代もあった。私は料理が壊滅的に下手だ。……だが、島暮らしをしていた事もあって、簡単な料理くらいならば出来るようになっている。それで、いつも私の傍に居てくれている利根へ渡すのに丁度良いと思ったんだ」

利根「レア物じゃ!! 提督の手作り菓子じゃ!! わーい!」

提督「お前、この間はお菓子で喜ぶのはお子様だとか言っていなかったか?」

利根「何を言う! 提督の手作りで喜ばぬ愚か者など居らぬわ!」

提督「喜んでくれて何より」

利根「……じゃが、ちと足りぬのう」

提督「食いしん坊かお前は」

利根「そういう意味ではないわ。……提督よ、この最中を口で咥えてくれぬか?」
655 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/25(日) 04:50:30.79 ID:gfxgnvvZo
提督「……そうきたか」パクッ

利根「ん……」スッ

提督「…………」スッ

利根「……くくっ、これは良いものじゃ。気分が良くなるのじゃ」ニヤ

提督「……私は少し恥ずかしさがあるぞ」

利根「まあまあ。プレゼントなのじゃから少しくらい良かろう?」

提督「まったく……」

利根「提督、もう一回頼むぞ」キラキラ

提督「……もうこうなったら何回でも付き合ってやる」スッ

利根「うむ! ありがたいぞ!」ニパッ

提督「困った嫁を持ったものだ」

利根「それはお互い様じゃろう?」

提督「……ほら、早くしないと誰かが来るかもしれんぞ」スッ

利根「っとと、そうじゃな。……ん」スッ












響(実は最初から見ているんだけどね。嬉しそうにしている二人を見る……これはこれで良いものだね)ニヤ

クリスマス・利根編 了
656 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/25(日) 04:53:27.27 ID:gfxgnvvZo
以上がクリスマスの短編です。短くてごめんよ。
そして、飛龍と空母棲姫がどんな感じだったのかの殴り書きメモはありますので置いておきます。妄想して下さいませ。

・空母棲姫
ヲ級がサンタを信じているとかなんとかで相談。ヲ級を早めに寝かせる事に。
空母棲姫と提督がサンタを演じてプレゼント配布(利根の時のと同じ)
早く寝たヲ級の元へ、空母棲姫お手製の長いマフラーをプレゼント。
翌朝、ヲ級が空母棲姫に見せて喜ぶ。そして長いマフラーなので二人で一緒に包まる。その様子を見た提督が小さく微笑むと、それに気付いた空母棲姫も柔らかい笑みで返す。

・飛龍
提督がプレゼント配布(利根n略)している時に飛龍が手伝うと申し出る。当たり前のように蒼龍に煽られる。
全員にプレゼントし終わった後、いつぞやに言っていた、わらび餅を貰う飛龍。わらび餅と提督を交互に見て悩みに悩んだ後、提督へのプレゼントは私とか言い出す。何でも命令して良いとかなんとか。
流石に提督が硬直。軽く説得をするも引かない飛龍に折れて、提督が酒の相手になってくれとかなんとか。期待をしていた飛龍、渋々承諾。
ホワイトクリスマスの外を見ながらお酒。飛龍が「いつか振り向いて貰いますからね」と言う。
657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/25(日) 13:05:35.21 ID:+x5ACX0u0
ありがとうございます!
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/25(日) 13:55:45.34 ID:Cu8T7nrvO
(遅れて書いてもいいのよ?)
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/25(日) 16:09:12.86 ID:ircEhWvP0
鎮守府の人数的には最中の数からして70〜80人の間か・・・。
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 09:08:13.65 ID:WWaXoCYEO
提督の硬直姿とかレアだしみてみたさはある
661 : ◆Vwy6LzUNHA :2017/01/03(火) 10:39:37.85 ID:GvKRwpRL0
あけましておめでとうございます
662 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2017/01/14(土) 01:28:25.93 ID:lFK1rZlxo
カチャッ……ガチャ──パタン

金剛「…………」トコトコ

ポフッ

金剛「……ここのベッドは、いつも通りデスね」ナデ

金剛「シスター、知っていまシタか? この部屋、実はテートクと私にとって大事な部屋なのデスよ。なぜだと思いマスか?」

金剛「……それはデスね、この部屋は……テートクと私の部屋だったからデス。二人っきりになりたい時は、必ずこの部屋を使っていまシタ」

金剛「二人になりたい時以外にも、スリープする時や皆さんには秘密の話をする時も……愛を囁く時も、必ずこの部屋でシタ。知っているかもしれまセンが、この部屋は防音加工をしているデス。完全に二人っきりになりたいから、そんな改造をしまシタ」

金剛「だから……テートクがシスター達をこの部屋に通した時はビックリしたデス。それに、シスターをしばらくここへ残していたのも複雑な気持ちになりまシタ」

金剛「私の死をしっかりと受け止めてくれたのかな……と思ったり、私ではなく『金剛』であればそれで良いのかな……と思ったり、それとも未練が残っていてシスターを私と重ねていたのかな……とすら思いまシタ。……そのどれも違っていまシタけれどね」

金剛「……シスター。テートクは前に進もうとしているデス。もう一緒に歩く事が出来なくなった私の傍に居ようとせず、前に向かって進んでいる皆さんと共に歩んでいこうとしてくれていマス。……けれど、私が居るとそれは出来まセン。私は……もう過去の存在なのデス。テートクの未来に、もう……私は居まセン。死者は死者らしく、ひっそりと見守るだけにすべきでシタ」

金剛「ごめんなさい、シスター……。私のせいで、シスターを思い詰めさせてしまいました……。私は、悪霊と何も変わりません……」

金剛『……違いマス』

金剛「!! シスター……!」

金剛『なんで、そんな風に言うのデスか……。悪霊だなんて、私は一度も思った事なんてありまセン! シスターは私にとって頼りになって、強くて優しい存在デス!』

金剛『私は……私は……! テートクに喜んで欲しかったのデス!! シスターと一緒に暮らしていけば……初めこそ私を気に掛けようとも、いつかきっと幸せに暮らして下さると思ったからデス!! だというのに……なぜデスか!? テートクもシスターも、心の底から愛し合っていたはずデス!! なのに、なぜお二人はそんなに悲しそうにするのデスか!? 二度と会えないはずだった二人が一緒に暮らせるようになってハッピーエンドで良かったではありまセンか!!』

金剛「…………」

金剛『だから……だから……!』

金剛「……………………」

金剛『シスター……』

金剛「…………あれ?」フラッ

ボフッ……
663 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2017/01/14(土) 01:29:01.34 ID:lFK1rZlxo
金剛『シスター……?』

金剛(……身体が、思うように動かせない?)

金剛『え……?』

金剛(何ですか、これは……。どこにも力が入りません……)

金剛『え……え……?』

金剛(……右手は……ダメです。左手……指……両足……腰……首……。…………本当にダメです。どこも動きません)

金剛『な、何が起きているのデスか?』

金剛(分かりません……。一体、何が起きたのでしょうか……。……シスターは動かせられますか?)

金剛『……………………。私も動かす事が出来まセン……』

金剛(……一先ず、主導権を変わりましょう。シスター、身体を動かす事が出来るか試して下さい)スッ

金剛『ハ、ハイ!』スッ

金剛「…………変わりまシタが……何デスか、これは……? まるで、自分の身体ではないみたいデス……」

金剛『どこか動かす事は出来ますか?』

金剛「……………………少しだけならば動かせマス。とは言っても、指くらいデス……」

金剛『……困りました。このままだと自分ひとりでは何も出来ません……』

金剛「しかも、この部屋って防音デスよね……? 誰か気付いてくれるのでショウか……」

金剛『……………………』

金剛「うぅ……どうしまショウ……」

金剛『……いえ、大丈夫です』

金剛「え……?」

金剛『テートクならば、必ず気付いてくれます』

金剛「でも……」
664 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2017/01/14(土) 01:29:27.75 ID:lFK1rZlxo
金剛『大丈夫です。テートクを信じて下さい』

金剛「……シスターが言うのであれば、信じるデス」

金剛『……ちなみにですが、こんな事になった原因は私にあると思います』

金剛「え?」

金剛『私がシスターと一緒に過ごし始めてからシスターの身体がおかしくなっています。頭がボンヤリとするくらいならばあまり気になりませんでしたが、こんな風にまでなると無視できません』

金剛「そ、それは……」

金剛『シスター。やはり私は──』

金剛「駄目デス」

金剛『シスター……』

金剛「テートクにはシスターが必要デス。テートクを本当の意味で癒す事が出来るのは、シスターだけデス。……なのに、今ここでシスターが居なくなってしまっタラ、いったい誰がテートクを癒すのデスか?」

金剛『……………………』

金剛『……いえ、それは違います』

金剛「え?」

金剛『死者は死者でしかありません。死んでしまった私は、本当ならば干渉する事は許されていないのです。……それに、テートクをこれから癒すのは、シスター達の役目です』

金剛「で、ですが……!」

金剛『シスター、やっぱり私は大人しく見守る事にします。そうすれば、きっとシスターの身体の異常も無くなるはずです』

金剛「…………」

金剛『たぶん大丈夫ですが、シスターの身体から出られるか試しますね』

金剛「……テートクに!」

金剛『…………?』

金剛「テートクに訊いてみまショウ! テートクなら、きっとシスターを求めるはずデス! だって、お二人は愛し合っていたのデスから!」

金剛『…………』
665 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2017/01/14(土) 01:30:01.67 ID:lFK1rZlxo
金剛「もしテートクがシスターを求めるのならば、シスターは残って下サイ! 私は、お二人が離れ離れになるのが嫌デス!! 折角のチャンスなのデスよ!? もう二度と話す事すら出来なかったお二人が、また一緒に暮らして笑い合えるチャンスを捨てないで下サイ!」

金剛『……では、テートクが私を求めなかった場合、私はシスターの身体から出るようにします』

金剛「……ハイ! 構いまセン! テートクは、必ずシスターを放さないデス!」

金剛『それともう一つ。もし私が身体から出る事になったら、シスターは自分を大事にして下さい。シスターは、少し自分を蔑ろにしがちです』

金剛「分かりまシタ。約束しマス」

金剛『約束デス。──では、テートクを待ちましょう』

…………………………………………。
666 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2017/01/14(土) 01:32:15.92 ID:lFK1rZlxo
明けましておめでとうございます(遅い)
今年もこのSSをよろしくお願いします(遅い)

さて、今回はここまでです。また一週間後くらいに来ると思います。遅くなってごめんよ(遅い)
もう終わるはず。そのはず。……そのはず。半年以上前にも言ったような気がするけど、そのはずです。
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/14(土) 01:33:08.47 ID:Uf9jdeFKo
おつ
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/14(土) 05:55:34.62 ID:VO9OJzGRo
おつ
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/15(日) 01:48:11.35 ID:qbAq72+A0
あけおめ、待ってました!
まったりのんびり続けてくれる分には嬉しいんだけどなあw
670 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2017/01/24(火) 03:05:43.00 ID:75xTnsMro
金剛「…………テートク……」

金剛(信じていマス、テートク。きっと……いえ、必ずシスターを選んで下さると。そして……)

金剛『……………………』

コンコンコン──

金剛「!」

ガチャ──パタン

提督「ここに居たのか、金剛」スタスタ

提督(む……?)

金剛「……テートク」

提督「! お前は……」

金剛「テートク、大切なお話がありマス。訳有ってこの体勢デスが、許して下サイ」

提督「……ああ、構わんぞ。大切な話とはなんだ?」

金剛「それは、私とシスターの事デス」

提督「……ふむ」

金剛「……………………」

提督「…………」

金剛「実は、デスね。もうそろそろ限界なんデス」

提督「限界?」

金剛『シスター……?』

金剛「私は……もうすぐ消えてしまいマス」

提督「…………」

金剛『消える……? 一体何を……』
671 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2017/01/24(火) 03:06:13.03 ID:75xTnsMro
提督「どういう意味だ?」

金剛「あの島で拾われた私の意識は、もうすぐ無くなってしまうのデス。そして、この身体はシスター……テートクの『金剛』が受け継いでくれマス」

金剛『──待って下さい!! 何を言っているのですか!?』

金剛「こうなるのは分かっていまシタ……。ケド、確信は持てなかったのデス。……この前の、深海棲艦の大群と戦うまでは。だから……後はシスターと二人でお願いしマス」

提督「……それは、お前が消えて、姉の金剛が残るという意味か?」

金剛「……ハイ」

金剛『…………っ。そういう、事ですか……。シスター……貴女はどこまで馬鹿なのですか……。嘘を吐いてまで、どうして……』

金剛(馬鹿デスよ、私は。私よりも、シスターがテートクを幸せに出来マス。そして……テートクもその方が良いはずデス。その為であれば、私は自分の命すら惜しくありまセン。しばらくシスターに身体を預けていて、私は自分の意識をこの身体から消せる事も知りまシタ。後は……お別れの言葉だけデス)

提督「……そうか。ならば、言わなければならない事が出来たな」

金剛『提督!?』

金剛「……ハイ」

提督「──私がその程度の事、分からないとでも思ったか?」

金剛「…………え?」

提督「アイツがその程度で納得するものか。お前が消えると言っていたが、アイツがそれに納得する訳が無い」

金剛「で、でもシスターは……」

提督「舐めるなよ。アイツは私が選んだ子だ。強く、賢く、そして眩しいほどに真っ直ぐな子だ。そんなアイツがお前の犠牲を認めるとでも?」

金剛「…………っ」

提督「アイツは諦めが悪い。どんな状況でも、どんな状態であろうと、自分がどうしても納得できない時は全力で立ち向かう。例えそれが、どんなに無駄だと分かっていても」

提督「そもそも死者は死者でしかない。アイツが……死者である金剛が、生者に成り代わろうとするものか」

提督「──私が愛した金剛は、そういう子だ」

金剛「────────」

金剛『……ふふっ。やっぱり、提督は提督ですね。こうやって私を理解してくれるから、私は提督を心から愛せました』

金剛『私を理解してくれて、私と一緒に歩んでくれて、私と一緒の時間を過ごしてくれて……。沈んでしまった後もこうやって理解してくれて、私は本当に幸せ者です』
672 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2017/01/24(火) 03:06:52.47 ID:75xTnsMro
金剛「…………」

金剛『シスター、これで分かりましたね。消えなければならないのは、私の方です』

金剛「なぜ、デスか……」

金剛「なぜ!? なぜ二人はそうやって割り切れてしまうのデスか!? そんなに愛し合っていたというのに、どうしてこのチャンスを捨てようとするのデスか!!?」

金剛「私には分かりまセン!! 二人は言っていたではありまセンか!! また話したいと! また会いたいと! なのに、なぜ!?」

提督「充分に夢を見させてくれたからだ。本来ならば絶対に叶わない夢を……」

金剛『ですが、夢は夢です。いつか、覚めなければなりません』

提督「それに、金剛ならば待っていてくれる」

金剛『ええ。いつまでも待っていますよ』


ヴァルハラ行きを蹴ってでも──
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