利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」 二隻目

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531 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/09/26(月) 23:34:21.17 ID:ZyK9hbAvo
今回はここまでです。また一週間後くらいを目安に来て下さいませ。悪足掻きも無駄じゃないと証明してくれる提督。

途中まで書いた内容が気に食わなくて書き直した事で相当遅くなってごめんよ。あと、クソほど中途半端な所で区切っちゃってますが、次の投下は>>530の場面から続くという形になります。
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/26(月) 23:34:48.08 ID:qVOnA7O1o
乙ヤーデ
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/09/26(月) 23:41:05.76 ID:s7ElG/LFo
乙です
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/27(火) 09:33:48.05 ID:XwXqRYwdO
空母悽姫怒りの覚醒くるー?
535 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/08(土) 00:02:14.86 ID:bzbRZr5uo
レ級「たかが一機の艦載機で何が出来るっていうのかなぁ!?」ジャキンッ

ドォン!!

レ級「……へえ、避ける気も無いんだ。じゃあ、あの時と同じように痛めつけてから殺してあげるからねぇ!」

空母棲姫「──やはり、その程度か」

下田提督(おいおい……なんでその距離で食らって掠り傷程度なんだよ……! 相変わらずの化け物め!!)

ヒュッ──ゴォン!!

レ級「ガッ!?」

提督(爆撃だと……? どこからそんな兵装を……)

レ級「……なるほど。たかが一機と言ったが訂正しよう。貴様には一機すら脅威だ。──斉射!」

ドドッ──!!

空母棲姫「…………」

下田提督(斉射でやっと有効打か……? それでも眉一つ動かさないとは……)

空母棲姫「…………」スッ

レ級「!!」ザッ

空母棲姫「避けても無駄だ」

ゴォン!!

レ級「なッ……!?」

利根「はは……。本当に艦載機運用能力が狂っておるのう……。どうして、今のを当てられるのじゃ……」

レ級「……まったくもって化け物と言えよう。あの島では嬲っていたと思っていたが、実際はさほど効いていなかっただけという事か」カコン

ドォン──!!

空母棲姫「……そろそろか」スッ

レ級(こいつ、まさか……)ダッ
536 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/08(土) 00:02:44.44 ID:bzbRZr5uo
空母棲姫「逃がさん」

ゴォン!!

レ級「────ッ!? 主砲、機能停止だと……?」

下田提督「…………!!」

提督(……どこから爆弾を積み込んでいるのかは不明だが、分かった事がある。空母棲姫が兵装を持つ事に反対していたのは、こういう事か)

提督(防御も回避も意味が無いほどの接近戦とはいえ、たった一機の艦載機……それだけでレ級を上回る戦闘力、か……)

レ級(対空砲と副砲は──)ダダダダンッ!!

空母棲姫「…………」ガガガガンッ

レ級(──やはり無意味に近いか。艦載機も読めない動きと近さで砲塔の旋回すら間に合わん……)

ゴォン!!

レ級(ッ……機関にもダメージ……これでは海に出たとしても逃げる事は叶わないだろう)

レ級(この劣勢を覆す事は、不可能だ──)

ガォン──ゴォン──ゴォン──……………………

レ級「……見事だ」

空母棲姫「…………」

レ級「よもや、あの島の時と立場が逆転するとは……。何が貴様をそこまで突き動かす。提督という存在を欲するからか。それとも、ただの復讐か」

下田提督「何やってんだ……何やってんだレ級!!! 至近距離で戦艦が空母に負けてんじゃねえぞ!!」

レ級「黙れよ。茶番はもう終わりだ。貴様とは互いに利用し合うだけだった関係を忘れるな」

下田提督「…………ッ!」

レ級「……早く答えろ。こちらの時間はもう残り少ない」

空母棲姫「……単純な事だ。私は、あの方に救われた。ならば、私もあの方を救うのは当然だ」

レ級「ただそれだけか?」

空母棲姫「……心地良かったのもある。暗い海の底に沈み、怒りと復讐しか感じなかった私に……優しさを思い出させてくれた。それだけでなく艦娘としての悦びすら……与えてくれました。それが理由よ」

レ級「……そうか」
537 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/08(土) 00:03:13.74 ID:bzbRZr5uo
空母棲姫「…………」

レ級「やはり、我々や艦娘だけでは何も出来ないようだ。可能性という鍵を握るのは、いつも人間か……」

空母棲姫「…………」

レ級「これだから面白いんだ……人間って……ヤツ、は…………」カクン

空母棲姫「! ……死亡、確認しました。終わりましたね」

提督「いや、もう一つだけ残っている」チラ

下田提督「クソ……クソックソックソッ……」

空母棲姫「……そうですね。動けないようにしなければいけません。何か縛る物でもあれば良いのですが……」

提督「いや、まずは武装解除からだ。銃でも持っていたら面倒だ──」

下田提督「! クク……ククク……! そうだった……俺にはまだ、これがある!! こうなったら貴様も道連れだ横須賀の提督!!」ゴソッ

空母棲姫「!! ダメッ!!」ダッ

提督「──だから頼んだぞ。金剛、利根」

金剛「──イエス、テートク」ブンッ

利根「──了解じゃ」ブンッ

ガンッ──!!

下田提督「ガ……ッ……」

ドサッ……

金剛「……完全に気絶しまシタ。これでもう安心デス」

空母棲姫「……はあぁぁぁぁ…………」ペタン

提督「どうした、空母棲姫」

空母棲姫「…………身動きも取れなくて殺されそうになった貴方が、どうして一番落ち着いているのかしら、もう……。私は、最後の最後で守りきれなかったのかと……」

提督「金剛と利根の動きには気付いていたからな。後は気を逸らしてやってから殴り倒して貰うだけだったという訳だ」

空母棲姫「もし先に撃たれたらどうするつもりだったのですか……」
538 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/08(土) 00:04:08.57 ID:bzbRZr5uo
提督「そうはならんと信じていた。何せ、私の金剛と利根だぞ? 信じられない理由すら存在せんよ」

ヲ級「……皆、大丈夫?」テテテ

提督「私や金剛と利根、空母棲姫は怪我さえ治せば問題ないだろう。だが響が気を失ったままだから、介抱してやってくれないか?」

ヲ級「うん!」テテテテ

提督「……ほら、お前もそろそろ拘束を解いてくれ」

瑞鳳「…………」

金剛「テートク、ウェポンは全て取り上げましたシタ」

利根「こやつの上着でしっかりと腕を縛ってやったから、これでもう好きには出来ぬぞ」

提督「そうか。これで安全は確保だな」

瑞鳳「…………」

空母棲姫「無理矢理にでも引き剥がしましょうか」

瑞鳳「…………っ」

提督「いや、危害は与えないでやってくれ。最後まで交渉する」

空母棲姫「分かりました。では、私は鎮守府の皆を──ん、あれは……」

ザッ──

島風「提督! だいじょう……うん……?」

提督「島風? 艤装も付けて一体……いや、なるほど。瑞鶴が応援を呼んでくれたのか」

島風「うん、そうだけど……もう終わっちゃったんだ?」

提督「ああ。皆、よくやってくれたよ」

瑞鶴「はぁ……ああもう……島風ったら速過ぎよ……」
539 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/08(土) 00:04:42.81 ID:bzbRZr5uo
提督「瑞鶴か。応援、ありがとうな」

瑞鶴「……え? あれ……ん、大丈夫なの?」

提督「響以外はなんとでもなるだろう。今、ヲ級が介抱してくれている」

ヲ級「響、目、覚ましたよ!」

提督「! 響、大丈夫か?」

響「……うん、なんとか。……ごめんよ、司令官。あまり役に立てなかった」

提督「気にするな。駆逐艦の響があのレ級に対してなんとかしようとしてくれた気持ちだけでも私は嬉しいよ。守ろうとしてくれて、ありがとう」

響「……どうすれば挽回できるかな」

提督「気にし過ぎだ。……だが、そうだな……どうしてもと言うのならば、これから少しずつ戦果を挙げていってくれるか? 少しずつ、ゆっくりと」

響「うん、約束する」

提督「よろしい。──ヲ級、響に入渠と救護妖精の診察を頼む」

ヲ級「はーい!」ダキッ

天龍「──おーい!」

提督「どうやら皆が来たようだ。帰るとしよう。……手荒な事は絶対にさせんからな。立つぞ」スッ

瑞鳳「…………」スッ

利根「……なんだか父親にくっついて離れぬ娘に見えてきたぞ」

提督「馬鹿を言え。割と本当に抜け出せないんだぞ」

利根「なんと……」

金剛(……シスター。身体をお返しします。本当にありがとうございました。……………………シスター?)

空母棲姫「…………」チラ

レ級「…………」

空母棲姫(……最後に満足そうな顔をしていたのは、なぜなのでしょうか)

提督(さて……これから色々と忙しくなるな)

…………………………………………。
540 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/08(土) 00:07:27.57 ID:bzbRZr5uo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ると思います。

山場は越えました。後は終わりへの道を緩やかに歩くだけです。色々と問題が発生しておりますが、どうなるやら?
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/08(土) 01:56:10.00 ID:mLsssxtAO
おつです!
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/08(土) 02:34:32.91 ID:5fPPNjNKo
待ってた
乙です
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/08(土) 04:33:08.94 ID:tsbmBwdc0

姫無双か
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/08(土) 10:30:36.83 ID:F75XUAFZ0
だが長門は吊られる
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/12(水) 02:55:40.46 ID:h6v4vVo10
まだやってんのこれ?
1年以上経っても1スレ終わらないならダラダラやってないでやめたら?
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/12(水) 17:07:58.48 ID:21A+55nNo
瑞鳳の逆さ吊りを期待
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/12(水) 23:56:18.83 ID:V/PFnXMv0


ここから大所帯になりそうだなw

548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 07:31:48.69 ID:kPRDNeU7O
やっぱ主任いい敵キャラだよなぁ…
549 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:45:31.73 ID:UicorJrKo
提督「──戦闘で疲れている所に呼び出してすまない。手を付けている問題と手付かずの問題を纏め、その処理についての会議を開く」

提督「手を付けている問題は、負傷した艦娘と破損した兵装と設備の修復。現状、負傷したままの艦娘は現在入渠している夕立と時雨、川内、神通の四名。兵装と設備は工廠の妖精達がどうにかしてくれるそうだ。レ級の処理は救護妖精に任せてある。こちらは多少時間が掛かるものはあれど、然程気にしなくても良いだろう」

提督「そして手付かずの問題。こっちが厄介なものばかりだ。一つは隣の部屋で未だ意識を失ったままの下田提督をどうするか。総司令部に報告すべきなのだろうが、その場合はこちらの鎮守府を調べられる可能性が非常に高い。そうなる前に空母棲姫とヲ級の二人をどこか見付からない場所へ匿う必要がある。ついでに、総司令部へはどう報告するかも考えものだ」

提督「二つ目は命令無視を長門への罰。これはいつでも出来るだろう。他のやるべき事が落ち着きしだい吊るすから覚悟しておけ」チラ

長門(……本当に吊るすのか)

飛龍(ご愁傷様です……)

提督「三つ目は空母棲姫とヲ級の艤装について。ヲ級はもはや戦闘にほぼ興味を無くし料理や家事に楽しみを抱いており、艤装は邪魔だから解体して欲しいと頼まれた」

ヲ級「意外と、場所、取るよ。アレ」ムー

提督「…………。そして空母棲姫だが、出来れば鎮守府周辺の哨戒をして欲しいのだが……」

空母棲姫「断固反対です。なぜかまた艦載機が扱えなくなりましたが、私は艤装がある限り爆撃装備などを艦載機に載せられる事が分かったはずよ。私に兵装を残しておくのは危険極まります」

加賀(……とても複雑な気分になります。私が深海棲艦になったら、こうなるのでしょうか……)ジー

提督「その話は後で広げよう。その事に関しても聞いておきたい事もある。そして四つ目だが……」チラ

瑞鳳「……………………」ジャラ

提督「……この子をどうするか、だ。なんとか説得をして互いを手枷で繋ぐ事である程度の距離を開かせる事は出来るようになったが、いつまでもこのままという訳にはいかん」ジャラ

瑞鳳「…………」

利根「何を聞いても答えぬしのう……。なぜか提督の質問にだけは首を振って答える事はあるが……」

提督(そして、もう一つの問題がある、が……)チラ

金剛「…………」コクン

提督(……それはここでは言えんな。妹の方の金剛の意識が途中から戻ってこなくなったらしいが、どうしたのだろうか。大事になっていなければ良いのだが……)

提督「まず、最優先事項は空母棲姫とヲ級をどこへ匿うかだ。あまり遠くではなく、そして居住性もある場所が良いのだが……現状、一番近くの小島へ隠れて貰うくらいしか思い付かん。だが、あの島は人が暮らす事を一切考えていない。完全に野宿と変わらん。他に良い場所を一緒に考えてくれ」
550 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:46:06.85 ID:UicorJrKo
利根「……うーむ」

加賀「……………………」

飛龍「ううん……」

金剛「…………」

ヲ級「えっと……うーん……?」

長門「……難しいな」

空母棲姫「あの小島で良いのではないでしょうか。暮らせないという程ではありませんし、木の実なども手に入ります。むしろ、すぐに行動すべき今では、そこへ行くべきでしょう」

提督「…………」

空母棲姫「一刻を争います。下田の提督を拘束している以上、すぐに上へ報告しなければならないのでしょう? ならば、提督の案を実行するのが最善手よ」

提督「むう……」

空母棲姫「……貴方は優し過ぎます。ですが、本当に私達を大切に思って下さるのでしたら、先程の案でいくべきです。時間が進めば進むほど事態は悪くなり、貴方の立場にすら影響を与えます。……そのような事、私達は望んでいません」

ヲ級「!」コクコクッ

提督「……仕方が無い、か。すまないが、少しの間だけ我慢していてくれるか?」

ヲ級「はーい!」

空母棲姫「了解したわ。それと、気にしなくても良いのよ?」

提督「……すまんな。では、早速だが出航の準備をしてくれ。ついでに空母棲姫の艤装も隠す目的で持って行こう」

空母棲姫「……なぜ私の艤装も。解体すれば良いでしょう?」

提督「お前の艤装は難解だそうだ。解体しようにも時間が掛かる。それならば隠してしまえば良いだろう?」

空母棲姫「海の底へ沈めるのはどうなのかしら」

提督「後々でどうなるか分からん。持っておくくらいならば良いだろう?」

空母棲姫「もう……頑固なんですから……。分かりました。今回は私が折れます。艤装と艦載機もあの島へ持って行きますね」スッ

提督「ああ。気を付けろよ」
551 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:47:19.90 ID:UicorJrKo
空母棲姫「貴方もね。そこの下田の提督は何をしでかすか分からないのだから」

提督「十二分に気を付けよう」

ヲ級「行って、きます!」ブンブン

ガチャ──パタン

提督「……さて、では次の問題を処理しよう。下田の提督の事をどう報告するか、だ」

長門「あの二人の事は伏せておいて、それ以外の事について全て報告すれば良いのではないか?」

金剛「深海棲艦が大量に押し寄せてきた事についてはどう説明するのデスか?」

飛龍「あ、そっか。私達は下田の提督とレ級が手を組んでいるって知っていたから深海棲艦と一緒に攻めてきたって分かるけど、今じゃその証拠も何も無いですよね」

利根「ううむ……バカ正直に深海棲艦を指揮したと言う訳がないからのう」

加賀「逆にこちらが深海棲艦と仲良くしていたと報告されかねません。こちらは鎮守府の皆と接していた分、その事実が発覚しやすいでしょう。嘘が苦手な子も居ます」

金剛「おまけに向こうはどうだったのか、よく分かっていまセン。もしかしたら一部、はたまた全員が知らない可能性もありマス」

長門「……本当、厄介な存在だな……あの愚か者は」

提督「さて、どうするか……。味方の鎮守府を襲撃するなど、余程の理由があると思われれば良くて両成敗、悪ければこちらが圧倒的不利になる」

金剛「……………………」

利根「……………………」

飛龍「……………………」

加賀「……………………」

長門「……………………」

提督「……………………む?」

コン──コン──コン──

大淀「……司令、総司令部より大将のお二人がお見えです」

提督(!! ……いつもと違うノックの仕方と、私を『司令』と呼んだ大淀……これは何かあったか)
552 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:48:08.17 ID:UicorJrKo
提督「──全員、私に話を合わせろ。下田の提督の事について会議をしていたと言うんだ」ヒソ

全員「!」コクリ

提督「……大将殿が? お通ししろ」

ガチャ──

大将A「失礼する」

大将B「何があった、中将よ」

陸奥・日向「…………」ピシッ

提督「……申し訳ございませんが、どの話かご説明頂けますでしょうか」ピシッ

全員「!」ピシッ

大淀「……では、私は失礼します」

──パタン

大将B「下田の艦娘から連絡が入った。大佐が並々ならぬ顔でここへ向かったと」

大将A「そして……大佐と深海棲艦が会話をしていたという報告も同時に入っている。大佐はここへ居るのか?」

提督(ち……。知らんと言っても、下田の提督がおきて暴れでもして気付かれたら面倒か。いくら防音と言えど、扉に体当たりでもすれば音は漏れる。まだ空母棲姫とヲ級の事について隠し通す算段は立っていないというのに……!)

提督「……隣の部屋にて拘束しております」

大将B「拘束とな」

提督「ええ。俄かにも信じ難い事ですが、戦艦レ級と共に行動しており、レ級を排除した上で無力化して拘束しました」

大将A「あの話は本当だったのか……」

陸奥「……提督。そっちも大事なんだけど、少し気になる事があるわ」

大将A「どうかしたのか?」

陸奥「なんで中将は瑞鳳と鎖で繋がってるのかなってね……? しかも、瑞鳳は敬礼もしなかった上に様子もおかしいし」

瑞鳳「……………………」
553 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:49:05.73 ID:UicorJrKo
大将B「ふむ……。私がこちらを担当する。君は隣の部屋の大佐から話を聞いてくれ」

大将A「はっ」ピシッ

提督「……こちらが隣の部屋の鍵です。そして、武装解除はさせておりますが、気を付けて下さい」

大将A「ああ、そうしよう。陸奥、行くぞ」

陸奥「了解したわ」

ガチャ──パタン

大将B「では、その鎖と瑞鳳の事について説明して貰おう」

提督(仕方が無い……ここは二人の事を伏せて真実を話すか……)

提督「はい。……まず初めに、瑞鳳は私の艦娘ではなく大佐の艦娘です。鎮守府防衛の終わり際、陸より負傷した状態で歩いていた所で私が捕まりました」

日向「…………?」

大将B「……むう? 話が見えん。初めから説明をして貰おうか」

提督「畏まりました。──事の初めは五百を超える深海棲艦の軍勢がこの鎮守府へ向かってきた事が始まりです。妙に統率が取れていた行動におかしくは思いつつ、勝利が確実になった所で瑞鳳が陸より亡者のように歩いているのを発見しました。指揮権を大淀へ委託後、私が救助へ向かったのですが……彼女は囮だったようで、そのまま彼女に捕まりました」

大将B「ふむ。それがさっきの話だな。続けよ」

提督「その直後、大佐とレ級が姿を現し、横須賀鎮守府を攻撃する意思を見せたので会話で時間稼ぎをしました。そこへ金剛と利根、瑞鶴、響が駆けつけ、辛くもレ級を殺害する事に成功。最後に銃を取り出そうとした大佐を殴って気絶させましたが、それでも瑞鳳は私を離そうとしませんでした。大佐より絶対に逃がすなと命令されていた事から、それを継続しているのかと思われます」

大将B「そして、今に至ると。ふむ……いくつか疑問点がある。まず、なぜ救援を求めなかった? 五百を超える軍勢を相手に勝てる勝算でもあったのか?」

提督「あの状況に限って言えばありました。陸路より少数精鋭部隊を奇襲として運用する事と、轟沈する前に高速修復材の使用による戦力の継続投入などなど……。前任の提督が残してくれた大量の資材がありましたので、それを使い切るつもりで迎撃すれば勝てる見込みが充分にありました」

大将B「なるほど。流石だな。では次に、なぜ中将が瑞鳳を救助しに向かった? いくら勝利が確実になったと言えど、伏兵が居るだけで引っくり返るだろう?」

提督「この加賀は夜間の偵察訓練を行っており、ある程度ですが夜目も利きます。それにより敵の全数は把握しておりました」

大将B「ふむ。では、なぜ大佐は深海棲艦と共に横須賀鎮守府を攻撃しようとしたのかは検討がつくか?」

提督「……申し訳ありませんが、皆目検討がつきません。なぜこのような凶行に出たのか……」
554 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:50:02.26 ID:UicorJrKo
大将B「では、瑞鳳に聞いてみるとしよう。──答えよ。なぜ大佐は横須賀鎮守府を攻撃しようとした?」

瑞鳳「……………………」

日向「……ダメだな。目が死んでいる。余程の事をされたのだろう。……君をそのようにしたのは誰だ?」ソッ

瑞鳳「……………………」

日向「質問を変えよう。横須賀の中将か?」

金剛「…………」

瑞鳳「……………………」

日向「では、下田の大佐か?」

瑞鳳「……………………」コクン

日向「なるほどな。答えてくれて助かるよ」

金剛(……分からないでもないですが、テートクから疑われるのは嫌な気分になります)

日向「提督、こうなってくると下田の大佐が怪しい。下田の艦娘に聞いた方が良いだろう」

大将B「そうだな。そうし──」

ガチャ──パタン

大将A「中将、話がある。貴様が深海棲艦を匿っているというのは本当か?」

提督(クソ……やはりそうなったか)

陸奥「ちょっとちょっと。いくらなんでも急すぎない?」

大将A「こういうものは時間を与えない方が良い。──さあ、答えろ中将。貴様は敵である深海棲艦を匿っているのか?」

提督(……悪あがきをするしかない)

提督「……一体どうしてそのようになったのでしょうか。私は敵を匿った覚えなどありません」

大将A「白を切るなよ。遠目でしか見ていなかったが、我々がここへ来た時に深海棲艦に似た二人を見掛けているんだぞ。艤装の無い空母棲姫とヲ級のような女をな」

大将B「……そうだな。私も見掛けたが、あまりにも普通にしていた故に人間だと思っていた。だが、確かに似ている」

提督(チ……これは、ここまでか……)
555 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:50:53.69 ID:UicorJrKo
陸奥「だーかーらー! せっかち過ぎるわよ提督! 私も見たけど、あの二人は深海棲艦じゃないでしょ?」

大将A「何……?」

提督(なんだ……? どういう事だ……?)

陸奥「そもそも、私たち艦娘は深海棲艦なんて見たら一発で分かるわよ」

大将B「……そうなのか、日向?」

日向「ああ。なんて言えば良いんだろうな……。黒く冷えているというか……戦うべき相手と分かるというか……深海棲艦はそんな感じがするはずだ」

大将B「あの二人にはそれが無かったと?」

日向「無かったな。あれば即座に瑞雲を放って突撃しているよ」

陸奥「そもそも、敵が居たらその場で報告するわよ?」

大将B「……………………」

提督(どうなっているんだ……? あの二人は確かに深海棲艦のはず……)

大将A「……一先ず、確認してみるとしようか」

大将B「……そうしよう」

…………………………………………。
556 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:51:23.83 ID:UicorJrKo
提督「──空姫、空、ここに居たのか」

空母棲姫「? ────!!」ピシッ

ヲ級「?」

空母棲姫「ほら、貴女も敬礼しなさい。提督の上官よ」

ヲ級「!」ピシッ

大将A「……やはり似ている」

大将B「…………」

空母棲姫(……総司令部に登録されている名前で呼んだという事は、バレないように振舞えって事ですね)チラ

空母棲姫「……提督、どうかなされたのですか?」

提督「ああ」コクリ

提督「こちらの方々は総司令部よりいらっしゃった大将だ。二人を見たいと仰られたので足を運んできた」

空母棲姫「ご足労お掛けして申し訳ございません。本来ならば私達から出向くべきでした」ペコ

ヲ級「!」ペコ

大将B「いや、構わん。何も連絡をせずいきなり押しかけたのはこちらだ。──して、普段は何をしている?」

空母棲姫「主に間宮と伊良湖の助手として調理をしております。そして、料理以外の家事も少々」

ヲ級「間宮と、伊良湖の料理、すっごく美味しいよ!」ニパッ

空母棲姫「貴女は少し静かにしていなさい」ポン

ヲ級「はーい!」

大将A(……とても深海棲艦とは思えん)
557 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:52:28.04 ID:UicorJrKo
大将B「……どうだ、日向?」

日向「見たままだな。クールな姉と無邪気な妹という印象だ」

大将A「陸奥はどう思う」

陸奥「似ているけど、それだけって感じね。別に何もおかしくはないわ」

空母棲姫「……あの、おかしいとは? 何か粗相でもしてしまったのでしょうか」

大将A「いや、こちらの話だ。気にしないで良い」

大将B「ところで、こんな工廠近くで何をしていた?」

空母棲姫「そろそろ皆さんの入渠が終わる頃ですので、タオルや衣服の洗濯物を回収しに来ました」

大将B「こんな夜中にか?」

空母棲姫「洗剤を溶かしたお湯に漬けておく事で、朝の洗濯時に油汚れなどを取りやすいようにする為です」

大将B「ふむ、なるほど」

大将A「……では、戻るとするか」

大将B「そうだな。洗濯の邪魔をして悪かった」

空母棲姫「いえ、お気になさらず」ピシッ

ヲ級「さよならー!」ブンブン

空母棲姫「こら、敬礼なさい」

ヲ級「ごめんなさい……!」ピシッ

大将A・大将B・陸奥・日向「……………………」

提督(上手くやってくれて助かったぞ、二人とも)

…………………………………………。
558 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:53:14.71 ID:UicorJrKo
下田提督「──馬鹿な!! そんなはずがない!」

大将B「現にその二人を見てきた。日向と陸奥も私達と同じく深海棲艦ではないという結論を出している」

大将A「何人かの横須賀の艦娘とも話をしてみたが、全員から料理や家事をやっていると証言も得た」

下田提督「何をした……何をした貴様ァ!! 賄賂か!! それとも脅しか!? 一体何を──」

日向「黙ろうか。君の行ってきた事は、君の鎮守府の艦娘から聞かせて貰っているよ」

陸奥「暴行、脅迫、陵辱、資材の私的利用、艦娘の轟沈処分、深海棲艦との共謀……読むのも面倒になるくらいまだあるわね。そんな貴方の証言を信用できると思うの?」ペラ

下田提督「だが、俺は確かに聞いたぞ!! こいつが深海棲艦を匿っていると!!」

大将A「……聞いた? 誰にだ? まさか、敵である深海棲艦のレ級から……などとは言わんよな?」

下田提督「っ……!!」

大将B「図星か。……提督の選別法に問題があるようだな。いくら素質があるとはいえ、敵と手を組む非国民を軍に置くなどとは……」

大将A「早急に調査する必要がある。やれやれ……ただでさえ人員が少ないというのに……」

大将B「連れて行け。処分は総司令部で行う」

日向「了解した」ガシッ

下田提督「放せ……放せえええええええッッ!!!!」

日向「…………」ガンッ

下田提督「っぁ…………」ガクッ

日向「これで静かになったな。車のトランクにでも放り込んでおくよ」ズルズル

大将B「ああ。そうしておけ」

ガチャ──パタン
559 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:54:42.41 ID:UicorJrKo
対象B「……ところで瑞鳳」

瑞鳳「……………………」

大将B「君はどうする。君の鎮守府の皆は解体される事が決まった。本人達の意思でな」

瑞鳳「……………………」

大将B「君も望むのならば解体しよう。さて、どうする?」

瑞鳳「……………………」

ギュ……

提督「……ん?」

瑞鳳「……命令、だから」

大将B「命令?」

瑞鳳「提督が……この人を、絶対に放すな……って……」

大将B「その提督の命令は、もう聞かなくて構わん」

瑞鳳「命令、だから……」

大将B「……そうか。中将、君が管理してくれるか? 中将は長門の件で問題無いと判断できる。適任だろう」

提督「畏まりました」

大将B「では、邪魔をしたな」

大将A「君には期待しているよ」

ガチャ──パタン

提督(……なんとかなったか。寿命が何年か縮んだぞ……)

提督(だが……)チラ

提督「……本当に良かったのか? 私がお前を管理する事になっても」

瑞鳳「……………………」コクリ

提督「そうか。ならば、これからよろしくな」

瑞鳳「…………」

提督「……ところで、この手枷は外しても──」

瑞鳳「…………」フルフル

提督「ダメか……。困ったな……」

…………………………………………。
560 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/13(木) 16:59:09.56 ID:UicorJrKo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ると思います。

大きな問題はある程度片付いて、づほを引き取りました。ただ……づほは大丈夫ですかね?

>>546
逆さ吊りなんかで良いんですか(小声)
という冗談はさておき、今の所の予定では目一杯愛でます。今の所の予定では。
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 17:47:15.60 ID:PYlS1JniO
づほが迷子の子供みたいで可愛い(コナミ感)
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 17:50:09.49 ID:e/RzeiMyo
いわゆる手錠なのかチェーンデスマッチの出来そうな手枷なのか気になる所
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/13(木) 17:56:02.88 ID:cPKeqnhzo
乙です
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 18:00:48.80 ID:M9gvaiTqo
手錠(結束バンド)
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 18:37:12.59 ID:QHMI7TOyO
乙です
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 18:51:35.55 ID:jei4jNczo
567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 20:44:47.20 ID:NbK6r35G0
ここの世界観での解体は死亡に当たるんだっけ?
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 22:11:33.62 ID:If2vEra70
逆さ吊り程度はご褒美だよな
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 22:46:19.53 ID:iZlbTNniO
手枷(鎖)ってイメージ
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 23:16:28.44 ID:sLSr2uG5o
僕もづほと手錠で結ばれたいです
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/13(木) 23:26:04.67 ID:m9kB61QoO
とりあえず瑞鳳の格納庫まさぐりたい
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/14(金) 02:00:50.24 ID:sPwuzgZA0
違和感というか予想外の進展もあるけど、とりあえず難所の突破はよかった
あとお前ら自重しろw
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/14(金) 21:54:13.51 ID:1BCy+viFO
良かった…づほはこれから幸せになれるんだね…
一杯可愛がってくれ
574 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:51:21.04 ID:SXU6Mpvqo
金剛「……では、本当に大丈夫なのですね?」

提督「ああ。心配してくれてありがとうな」

金剛「当然です。私達は提督が居るからこそ私達で居られるのですから。本当は押し切ってでも近くで護りたいくらいです」

提督「瑞鳳はそんな子じゃないはずだ。私の勘だがな」ポン

瑞鳳「…………」

金剛「ぅー……これはどれだけ言っても聞いてくれない提督になっているです……」

提督「良く分かってくれていて何よりだ」

金剛「はぁ……。でも、これだけは約束して下さい。何かあったらすぐに私を呼ぶ事です。隣の部屋の扉は半開きにしておきますから、声は届くはずです。これ以上は譲れません」

提督「お前も頑固なこって。──まず無いだろうが、万が一その時がきたら頼む」

金剛「ハイ! ……懐かしいですね」

提督「……そうだな。こういうやり取りは、本当に懐かしい」

金剛「もう少し思い出話に浸りたいですが、それはまた今度の機会にしましょう」

提督「ああ。おやすみ、金剛」

金剛「グッナイ、テートク──」

ガチャ──パタン

提督「……さて瑞鳳」

瑞鳳「……………………」

提督「夜もかなり深くなったから皆を帰した。私達も寝るとしよう」

瑞鳳「…………!」

提督「瑞鳳はそのベッドを使ってくれ。私は床に毛布を敷いて──」

瑞鳳「…………」シュル、パサ

提督「……なぜ服を脱いでいる。そんな状態で寝ては風邪を引くぞ」ソッ
575 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:52:07.02 ID:SXU6Mpvqo
瑞鳳「…………?」

提督「どうした。どうしてそんなに困った顔をするんだ?」

瑞鳳「…………!」スッ

提督「待て」

瑞鳳「!」ピタッ

提督「なぜ私のズボンに手を伸ばす」

瑞鳳「…………? …………??」

提督「……まさかとは思うが、それが瑞鳳にとって当たり前の事だったのか?」

瑞鳳「…………」コクリ

提督「そうか……。ここではそんな事をしなくて良いんだぞ」

瑞鳳「…………?」

提督「……言い方を変えよう。瑞鳳、それは強制されていた事か?」

瑞鳳「…………」コクン

提督「なら、嫌だったのだろう? それはここではしなくて良い事だ。そんな嫌な事はしなくても良くなったんだ」

瑞鳳「…………」フルフル

提督「……む? 嫌ではなかったのか?」

瑞鳳「…………」コクン

提督(……強制されていたのにも関わらず嫌ではないとはどういう事だ?)

提督「……すまない。私ではよく分からん。どういう事なんだ?」

瑞鳳「…………気持ち、良いから……」

提督「……そうか」
576 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:52:33.16 ID:SXU6Mpvqo
瑞鳳「痛くて……苦しい事は……瑞鳳にとって、気持ちの良い……事です」

提督(これは……そう思い込まされているのか。嘘でもずっと言葉に出していると、何が嘘で何が本当なのか分からなくなるとは言うが……これがその状態か)

提督「……いや、もう今までのような痛い事も苦しい事も無い。もう、そんな苦しみを味わわなくて良いんだ」

瑞鳳「……………………」

提督(……無表情すぎて感情が読めん。何を考えているのだろうか)

提督「そうだな……。とりあえず寝ると……いや、睡眠を取ろうか。これなら分かるか?」

瑞鳳「…………」コクン

提督「よし、良い子だ」ナデ

瑞鳳「…………?」

瑞鳳「…………」ジー

提督「ん? どうした?」

瑞鳳「…………」

提督(……本当に何を考えているのか分からん。どうしたんだ?)

提督(そうだな……少し、話をしてみるか。このまま放っておく事もできん)

提督「瑞鳳、これから睡眠を取る前に少し会話をしてみようか」

瑞鳳「…………?」

提督「少しずつで構わん。嫌だと思ったら何も言わず布団の中へ潜り込んでも良い。だから、お前が閉じ切ってしまった心を少しずつ開いてみないか?」

瑞鳳「…………」

提督「初めは声を出さず頷いたり首を横に振ったりするだけで構わない。もう一度言うが、嫌だと思ったらその時点で布団の中へ潜り込むんだ。それが会話の終了の合図とする。良いか?」

瑞鳳「…………」コクン

提督「ありがとう。──まず初めに、ここは瑞鳳が今まで居た鎮守府と色々違うはずだ。だが基本的に出撃と演習、遠征、そして事務仕事や掃除なんかは恐らくどこの鎮守府も同じだと思う。瑞鳳もそうだったか?」

瑞鳳「…………」コクン

提督「そうか。この鎮守府では朝礼もあり、朝は必ず全員が私と顔を会わす。そして、それ以外ではよっぽどの事でもない限り自由にしている。会話をするも良し。遊んでも良し。独自で訓練をするも良し。……まあ、酒は節度を守るようにとは言っているがな」

瑞鳳「…………」
577 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:53:13.46 ID:SXU6Mpvqo
提督「無論、瑞鳳もそれには従ってもらう。だが、現段階で瑞鳳は基本的にほぼ自由にさせるつもりだ。せいぜい、朝礼には顔を出して貰うくらいだろう」

瑞鳳「…………?」コテッ

提督「首を傾げたのは『なぜ?』という意味か? 正直に言うとだな、瑞鳳の精神状態を考えての事だ」

瑞鳳「…………」

提督「今のお前を他の子達と同じように扱ってはいけないと私は判断した。まずは心を癒す事が先決だ。何かしたい事があれば言ってくれ。出来る事であれば叶えよう」

瑞鳳「……………………」

提督「何かあるか?」

瑞鳳「……痛い、こと」

提督「む……?」

瑞鳳「痛い事……して下さい……」

提督「……どういう意味だ、それは?」

瑞鳳「私は……痛い事が、好き……ですから……」

提督「……それは無理矢理に言わされていた事だろう? ここではもう、必要以上の痛い事や苦しい事は受けなくて良いんだぞ」

瑞鳳「…………」フルフル

瑞鳳「痛みは……私に与えてくれるから……。生きているって……ちゃんと、生きているって……」

提督「…………」

瑞鳳「だから……痛い事とか、苦しい事が……好きです」

提督「……………………」

瑞鳳「……おかしい、ですか?」

提督「……そうだな」スッ

瑞鳳「あ……」ピクン

提督(……ああ、利根よりも首が細い。片手で充分な気すらある。──本気でやれば、折れてしまいそうだ)

提督(そうだな……瑞鳳も痛い事や苦しい事を望んでいるんだろう? ならば……)
578 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:53:41.72 ID:SXU6Mpvqo
コンコンコン──

提督「────!!」パッ

金剛「──テートク、本当に大丈夫デスか?」

提督「……金剛か。どうしたんだ?」

金剛「なんだか胸騒ぎがシタので……。入っても良いデスか?」

提督「……ああ。頼む」

ガチャ──パタン

瑞鳳「…………」ジッ

金剛「…………? 何かしていたデスか?」

提督「……そうだな。あまり良くない事をやりそうになっていた」

金剛「そうデスか……」トコトコ

金剛「提督……」ギュ

提督「!」

金剛「なんとなくですが、察しました……。やっぱり提督は『私達』の事を気にしているのですね」

提督「…………」

金剛「ごめんなさい……私が癒してあげられれば良いのですが、今の私では……」

提督「いや……そうやって気を掛けてくれるだけでも充分だ……。ありがとう、金剛……」

瑞鳳「…………」

提督「……すまんが金剛、頼みがある」

金剛「? 何でショウか?」
579 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:54:08.27 ID:SXU6Mpvqo
提督「今日だけでも構わないから、瑞鳳の隣で寝てくれないか? ……今の私は、酷く不安定だ」

金剛「ハイ。分かりまシタ。……って、テートクは床で寝るつもりデスか?」

提督「ああ。流石に一緒のベッドで寝る事はせんよ」

金剛「……本当、頑固なんですから」クス

金剛「──さて、そうと決まれば早速スリープするデース! 電気を消しマスので、二人は布団の中へ入って下サイ」トコトコ

提督「ああ。ついでに燭台にも灯を点けておこう」シュッ

瑞鳳「…………」

提督「ほら、瑞鳳もベッドの布団に入りなさい」モゾ

瑞鳳「…………」モゾ

金剛「では、消しマスね」

パチン──

金剛「さて、と」トコトコ

瑞鳳「…………」

金剛「隣、失礼するデース」モゾ

瑞鳳「…………」フイッ

金剛(あれ……?)

提督「さて、では寝るとしよう。灯を消してくれ、金剛」

金剛「ハイ」フッ

提督「おやすみ、金剛、瑞鳳」

金剛「グッナイ、二人とも」

瑞鳳「…………」

金剛(……私、何か嫌われるような事でもしてしまったのでしょうか)

…………………………………………。
580 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:54:38.63 ID:SXU6Mpvqo
金剛「すー……すー……」

提督「…………」

瑞鳳「…………」モゾ

瑞鳳「…………」ソロリ

提督「…………」

提督『──基本的にほぼ自由にさせるつもりだ』

瑞鳳(……私の、自由に)

瑞鳳「…………」モゾ

提督(む……?)

瑞鳳「…………」

提督(金剛……ではないな。瑞鳳か)

瑞鳳「…………すぅ……」

提督(……気付いていない振りをしておこう。何か理由があるのだろう)

瑞鳳「すぅ……」

提督(さて……私もまた眠るとするか……)

…………………………………………。
581 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/18(火) 02:57:29.31 ID:SXU6Mpvqo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ると思います。

瑞鳳の本心はどうなんでしょうかね。『痛い事や苦しい事が好きだと言え』と下田の提督に言われてきたからなのか、それとも本当にそう思っているのか。
そして提督はどうするのか。
色々と不安です。
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/18(火) 05:00:14.68 ID:Mnd0ebUg0
そっち系に目覚めてしまったのか
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/18(火) 05:38:57.83 ID:DRoeiFeio
乙!
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/18(火) 08:55:43.87 ID:0mTYTGYFo
乙です
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/18(火) 20:48:10.93 ID:MiPWuCMAO
>>559
>対象B
急に小物っぽくされてワロタw
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/10/19(水) 20:48:04.09 ID:qnNLsvyXo
>>580
忍び寄る大人の世界(意味深

提督の貞操は大丈夫なのか?狙う乙女たちは一杯だぞ?!


冗談はともかく、逆さ吊りになってお姉ちゃんに「メッ」される未来を切望
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/20(木) 15:09:17.71 ID:w0M0i81hO
痛いことが好きなら鼻と両耳に洗濯バサミを付ければいいな
588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/20(木) 20:44:06.67 ID:TNx8fYxJ0
>>587
クワガタとザリガニも追加だな
589 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:42:25.32 ID:n4pu7Ko0o
提督「──朝礼でも言ったように、総司令部からの通達でしばらくは全戦線を停滞、維持させる事となった。よって、その間は暇になるだろう。新たに指示が与えられるまでに昨日言っていた問題点を解決したい」

金剛「ハイッ!」

利根「うむ!」

ヲ級「はーい!」

空母棲姫「分かりました」

瑞鳳「…………」

提督「ここに居る全員が知っての通り、昨夜のいざこざで最も面倒な問題が解決した。次に解決したい問題として、空母棲姫の艤装をどうするか、だ。なお、ヲ級の艤装は今朝方解体し終わったと報告が上がっている」

ヲ級「やった! 部屋、広くなる!」

空母棲姫「……それで、私の艤装はどうなったのでしょうか?」

提督「手を付けてすらいない」

空母棲姫「…………」ジッ

提督「それには理由があるから、そう睨むな」

空母棲姫「理由とはなんでしょうか」

提督「第一に解体が困難という事。まあ、これは時間を掛ければどうにかなるが、他にやる事があるため優先順位は低めだ。そして第二に、なぜ空母棲姫が艦載機をもう一度扱う事が出来たのか、という事だ。確か、艦載機との意識連結が出来なくなったはずだったな?」

空母棲姫「ええ……。私でも分かりません。なぜ、あの時だけ扱えたのか。その理由は私も知りたいわ」

提督「空母棲姫自身が分かっていないのか……。困ったな……。要因が分かるのならば、いざという時の自衛に使って欲しかったのだが……」

空母棲姫「鎮守府において自衛は必要でしょか」

提督「可能性は低いだろうが、今回のレ級のように狙ってくる者が居ないとは限らない。それならば、空母棲姫も艦載機が扱える方が色々と安心できるだろう?」

ヲ級「? どうして、可能性、低いの?」

提督「あれだけ大々的に動いていたんだ。もし狙っているのだったら一緒に行動すると思われる。わざわざ分けるメリットも無い」

ヲ級「なるほどー」
590 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:42:58.35 ID:n4pu7Ko0o
空母棲姫「……理由は分かりましたが、やはりそれでも反対です。私に兵装を持たせるという事は危険極まります」

提督「その事についてだが、私は兵装を完全に排除する方が危険だと思っている。先の防衛戦は空母棲姫が索敵をしてくれなければ負けていただろう」

金剛「その点については私も同意デス」

利根「そうじゃな。間違いなく負けておる。戦況が常時分かっておったから突っ込み時も引き際も分かっておれたからのう」

空母棲姫「それ、は……」

提督「空母棲姫、こう考えてくれないだろうか。艤装の解体はいつでも出来るが、手放した艤装は二度と帰ってこない。ならば一旦保留にしておこう──と」

空母棲姫「ですが……」

提督「ふうむ……。ならばこうしよう。一つ、艤装は私が預かっておく。必要時以外は空母棲姫が触れる事を禁ずる。二つ、空母棲姫が艤装を使用する際は私の許可と共に私の管理下である事。……これでどうだ?」

空母棲姫「…………考えさせて下さい」

提督「ああ。ゆっくり考えると良い」

空母棲姫「はぁ……やっぱり貴方には勝てそうにありません……」

提督「これでも鎮守府を預かる者だからな」

ヲ級「それにしても、どうして、姫は、艦載機、使えたんだろ?」

空母棲姫「そればっかりは分かりませんね……一体何があったのか……」

利根「……む? そういえば、前に負のエネルギーがどうのと言っておらなんだか?」

提督「ふむ。確かに言っていたな。その負のエネルギーが枯渇した、とかか?」

空母棲姫「なるほど、筋は通っています。貴方達と出会ってから怒りも後悔もほとんど感じていませんし、レ級と戦闘に入った時なんて怒りで我を忘れていましたし」

利根「その負のエネルギーが無くなったから艦娘からも深海棲艦と見られぬのかものう」

提督「……関係あるのか?」

利根「あるやもしれぬぞ。深海棲艦は見れば分かるし敵と判断できるが、空母棲姫とヲ級の二人は島の頃はともかく、今は敵と感じられぬ上に深海棲艦と識別できぬ。昨日戦った深海棲艦は深海棲艦と分かった事から、可能性は高いのではないか?」

提督「ふむ……。そうだな。確かに可能性は高い。これからは頭に置いておこう」
591 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:43:25.50 ID:n4pu7Ko0o
ヲ級「? 何か、変わるの?」

提督「何も変わらんよ。お前達は今まで通りのんびりと暮らせるって話だ」ポン

ヲ級「えへー」ニコニコ

提督「では、この話は一旦ここで保留だ。次に、瑞鳳をどうするかなのだが……」

瑞鳳「……………………」

提督「……率直に聞く。どうするのが一番だと思う?」

利根「また難しい事を……」

提督「難しいからこそ知恵を貸して欲しくなるんだ。現状では瑞鳳を癒す事しか思い付かんが、その方法すらどうしたものか……」

利根「好きな事をやらせるのはどうなのじゃ?」

提督「瑞鳳、言っても良いと思うのならば言ってくれ。瑞鳳がしたい事はなんだ?」

瑞鳳「……………………」

ヲ級「?」

提督「……という事だ。あまり口に出せる事でもない。そして、私はそれをしようとは思っていない」

空母棲姫(……性的な事なのかしら。もしそうであれば困難ね。この方は随分と堅物でしょうし)

金剛「では、甘い物とかどうデスか?」

瑞鳳「…………」

金剛「ぅー……反応が無いデース……」

ヲ級「!!」ピンッ

ヲ級「甘い物、あるよ!」ゴソゴソ

利根「ぬ? なんじゃ?」

ヲ級「玉子焼き!」パッ

瑞鳳「!」
592 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:43:59.82 ID:n4pu7Ko0o
利根「……なぜ玉子焼きを持ってきておるのじゃ?」

ヲ級「初めて、焦げ目無しで、綺麗に焼けたから!」キラキラ

利根「ふむん? ……ほう! 綺麗じゃのう。こんな綺麗な玉子焼きは見た事がないぞ。……しかし、玉子焼きくらいならば二人は簡単に作れるのではないか?」

空母棲姫「難しいわよ。白身と黄身、そして出汁が綺麗に混ざっている事と火加減の調整が上手く出来なければ、ここまで黄一色の玉子焼きは出来ないわ。基本の料理という物は、シンプルが故に作り手の技量が分かるものよ」

提督「空母棲姫も出来るのか?」

空母棲姫「……出来ません。中の隙間は無くなっても、どうしても層の部分が分かります。本当、この子は料理の才能があるわ」ナデ

ヲ級「えへー」ニコニコ

瑞鳳「…………」ジー

金剛「? 瑞鳳が興味を持っているデス」

提督「む。食べたいのか?」

瑞鳳「…………」フルフル

提督「では、作りたいと?」

瑞鳳「…………」コクン

提督(……料理が好きなのだろうか? いや、そうならば食事の時に何らかの反応をしているはずだ。玉子焼きに何か拘りでもあるのか……?)

提督「構わんぞ。昼食後のツマミとしよう」

瑞鳳「…………」コクン

ヲ級「一緒に、作ろ?」ニパッ

瑞鳳「…………」コクン

…………………………………………。
593 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:44:29.63 ID:n4pu7Ko0o
瑞鶴「──それで、焦げ目とか層の隙間が無くなるまでやったのね。あ、美味しい」モグモグ

長門「なるほどな。だから妖精も含めた全員に玉子焼きがオヤツとして出されたのか」

翔鶴「ですが、本当に美味しいですね」ニコニコ

電「なのです。とっても美味しいのです」

雷「瑞鳳さんも料理が上手なのね!」

暁「…………」ジー

響「? 暁、どうしたんだい?」

暁「……まだ司令官と鎖で繋がってるのが気になるのよ」ジー

提督「そう言ってくれるな。この子は下田の提督の命令を続けているだけなんだ」

瑞鳳「…………」

利根「鎖を外せば腕にしがみ付くが、それの方が良いのかの?」モグモグ

暁「うーっ……」ジー

空母棲姫「大丈夫よ。提督が説得をしてくれているから」ナデ

暁「ぅー……」

ヲ級「嫉妬?」

暁「なっ!! 違うわ! ふーきの問題があるって事よ! レディは嫉妬なんかしたりしないわ!!」

提督(嫉妬なのか)

響(嫉妬だね)

雷(嫉妬なのね)

電(嫉妬なのです)

利根(嫉妬じゃのう)

瑞鶴(嫉妬ねー)

翔鶴(あらあら……)

長門(……本当にこの方は皆から好かれているな)

空母棲姫(本当、分かりやすいわね、この子)

ヲ級「♪」ニコニコ

暁「もーっ!! なんで皆してそんな温かい目で見てくるのよー!! 嫉妬じゃないんだからぁー!!」
594 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:45:01.59 ID:n4pu7Ko0o
ギャーギャー

瑞鳳「…………」ジー

提督「どうした、瑞鳳」

瑞鳳「……………………楽しそう……」

提督「いずれお前もあの中に入れるさ」ナデナデ

瑞鳳「……うん」

暁「あーッッ!! 今度は頭撫でて貰ってる!!!」

響「暁、もしかして甘えたいだけだったりする?」

暁「そんな訳ないでしょ響!! レディはお子様みたいに甘えたりしないんだからぁー!!!」

提督「時と場を弁えれば構わんぞ」

暁「む……」

響「あ、考えたね」

暁「!!! もー!! 響、貴方の玉子焼き食べるわよ!?」

響「おっと。食べられたら困るから、これ以上は刺激しないでおこうかな」

暁「ふん、だ!」

ヲ級「♪」ニコニコ

提督(……金剛も今頃は姉妹と食べているのだろうか。……本当、金剛の問題もどうするべきか)

瑞鳳(甘える……)

…………………………………………。
595 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/10/27(木) 16:47:27.89 ID:n4pu7Ko0o
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。

残す問題は瑞鳳と金剛さんの二人のみ。この厄介な問題はどうなるのやら。
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/27(木) 17:21:17.11 ID:G5b4MgMho
乙!
597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/27(木) 18:41:57.80 ID:rsWRxaIOo
卵を焼くだけの艦娘がいてもいいと思う
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/28(金) 10:07:24.53 ID:2ChNahhq0
男女・・・外せない手錠・・・ ハッ?

風呂は!?
お風呂回はまだですか!?
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/28(金) 11:14:53.29 ID:K/W1WlBdo
いやそれよりも生理現象だよ、いうなれば厠だ
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/28(金) 17:49:34.34 ID:zLLV6IoyO
雪隠か
601 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:27:11.01 ID:QqswW4aao
提督「…………」サラサラ

瑞鳳「…………」ジー

コンコンコン──

提督「入れ」

ガチャ──パタン

大淀「失礼します。提督、少し急な報告……もとい、相談がございます」

提督「む? 何があった?」

大淀「多くの方から、ある相談を受けまして……。本来はご本人の前で言うのは憚られるのですが、今回はそうもいきそうにありません」

提督「ふむ」

大淀「……率直に申し上げますと、提督と瑞鳳さんが鎖で繋がっているのを良しとしない方々が多くいらっしゃいます」

瑞鳳「…………」

提督「やはりそうなったか……」

大淀「駆逐艦の子達は理解も納得も出来ない意見が多く、軽巡以上の方々も理解は出来ても納得がいかないという意見を耳にしております。いくら扉を隔てているとはいえ、お手洗いや入浴など特に……」

提督「……あまり良くはないな。このままでは分裂や喧嘩も起きてしまいかねん」

大淀「はい……。皆さんも提督へ直接言うのを避けているのか、私へ相談が殺到しました……」

提督「苦労を掛けてすまない。……しかし、どうしたものかな」

大淀「私も考えてはみたのですが、解決できそうな案は思い付きません……」

提督「……明日まで待って貰ってくれないだろうか。それまでに対策を考える」

大淀「……なんとか頑張ってみます」

提督「ありがとう。……効果は無いかもしれないが一応、厠と風呂の際、待っている方は目と耳を塞いでいると伝えてやってくれないか?」

大淀「はい。畏まりました」
602 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:27:38.96 ID:QqswW4aao
提督「大淀ももう少しだけ我慢してくれ」

大淀「お気遣いありがとうございます」

提督「何か望みがあるか? 出来る範囲ならば叶えよう」

大淀「え? よろしい……のですか?」

提督「ああ。流石に大きな迷惑を掛けてしまった」

大淀「…………えっと、では……瑞鳳さんと同じように、とかは……」

提督「……………………」

大淀「あの……すみません、冗談です」

提督「……今度叶える。その時が来たら伝えよう」

大淀「──え!? ほ、本当ですか!?」ドキドキ

提督「ああ」

提督(……大淀にそんな趣味があったとは思わなかった)

大淀「提督と繋がる事が出来るなんて……夢でしか出来ないと思っていました」

提督(ふむ? 『繋がる』という事が大事なのか? ……まさか、不満を言っている者達もそれが原因……いや、それは無いか)

大淀(言ってみるものですね♪)テレ

提督(……無いよな?)

提督「……くれぐれも内密にするように」

大淀「はいっ!」

提督「では、頼んだぞ」

大淀「はい。大淀、頑張りますね! ──失礼しました」

ガチャ──パタン

提督「瑞鳳も、秘密にしてくれよ?」

瑞鳳「…………」コクン

提督「よろしい。──さて、仕事の続きとするか」サラサラ

瑞鳳(……相談をしても、良い人)

…………………………………………。
603 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:28:15.50 ID:QqswW4aao
瑞鳳「…………」ジー

利根「今日はやけに提督を見ておるのう」モグモグ

金剛「何かあったのデスか?」コクコク

提督「……心当たりが全く無い。私も不思議に思っているくらいだ」ズズッ

瑞鳳「…………」ジー

利根「紅茶や茶菓子もほとんど手を付けておらぬしのう……」

金剛「……あの、もしかして美味しくなかったデスか?」

瑞鳳「…………」チラ

瑞鳳「…………」フルフル

瑞鳳「…………」フイッ

利根「……マズい訳ではないが、今は提督を見る事の方が優先されている……なのかのう?」

提督「一体どうしたんだ、瑞鳳?」

瑞鳳「…………」ジー

提督「ふぅむ……」

利根「うーむ……。まあ、考えても分からぬ。ここは保留じゃな」

提督「そうするか……。すまんな瑞鳳。私にはお前が何をしようとしているのか分からん」ナデ

瑞鳳「…………」

提督「だが、もし何かしたい事があったら言ってくれ。可能な範囲であれば許可も出せる。そして叶えてやる事も出来る」

瑞鳳「…………」コクン

金剛「あ、瑞鳳。もし紅茶が冷めてしまったら言って下サイ。すぐに取り替えるデス」

瑞鳳「!」ゴクゴク

利根「一気に飲んだのう」

金剛「…………?」

提督「一体どうしたというのか……」
604 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:28:50.26 ID:QqswW4aao
瑞鳳「……捨てるのは、勿体無いから」

利根「ああ、なるほどのう。捨てられると思うたのか」

瑞鳳「…………」コクン

提督(……そうだとしても急だったな。……また下田の提督関係で何かされていたのだろうか)

提督「…………」ポン

瑞鳳「?」

提督「…………」ナデナデ

瑞鳳「…………」

金剛(本当、下田では何があったのでしょうか……。私も何か出来れば良いのですが……)

金剛(そもそも、瑞鳳はどうしてこんな風になったのでしょうか。酷い事をされてきたというのは耳にしていますが、一体どんな事をされたら──)

金剛「!」ピン

金剛「瑞鳳、隣に座りマスね」

利根「む?」

瑞鳳「…………」

金剛「少し、失礼するデス」ギュ

瑞鳳「!」

金剛「今まで何を経験してきたのか、それは私では分かりまセン……。ですが、辛いものだったという事だけは分かりマス」

瑞鳳「…………」

金剛「こうやって抱き締められると、私は落ち着きマス。こうやって下さる人が居るから、私は辛い事があっても頑張れてきまシタ。瑞鳳も同じかは分かりまセンが、少しでも落ち着けられるなら嬉しいデス」

瑞鳳「…………」ホゥ

利根(ふむ)
605 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:29:19.19 ID:QqswW4aao
瑞鳳「…………」スリ

金剛「アハ。落ち着きマスか?」

瑞鳳「…………」コクン

金剛「良かったデス。好きなだけこうしていて下サイね」ナデ

金剛「テートクも、こうしてあげたら良かったデスよ?」チラ

提督「それをお前が言うか……」

金剛「私だから言えるのデス」

提督「……まったく。本当にお前には時々勝てんよ」

金剛「えへへー」ニコ

利根(……もしやとは思うておったが、この金剛は……あの金剛ではないか?)ジー

提督「…………」チラ

利根「!」

提督「…………」ジッ

利根(やはりそうなのか。……うむ、分かっておる。誰にも言ったりはせぬよ。何か事情があるのじゃろう?)コクン

提督「…………」コクリ

金剛「ほら、テートクも落ち着かせてあげて下サイ」

提督「しかし……」

金剛「きっと、この子もそうして欲しいと思っているデスよ?」

提督「……そうなのか、瑞鳳?」

瑞鳳「…………」チラ

金剛「♪」ニコニコ

瑞鳳「…………」チラ

提督「…………」

瑞鳳「…………」コクン
606 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:29:51.36 ID:QqswW4aao
金剛「ハイ! 瑞鳳もそう言っているデース! テートクは人を落ち着かせるのがとっても上手ネ!」スッ

提督「そんな事はないと思うが……」

利根「自覚無しじゃったのか。我輩がなぜいつも背中にのしかかっておったのか分からぬのか?」

金剛「背中にのしかかっていた、デスか?」

利根「うむ。とある島で提督と二人で何年か過ごしていた頃にの。我輩はそれが好きで暇さえあればその状態じゃった」

提督「確かにほぼずっとそんな感じだったな」

金剛「そんな事があったデスか。私、その頃の話が聞きたいデース!」

利根「うむ。我輩は良いぞ。提督も良いよな?」

提督「ああ。構わん」

金剛「ヤッタ! その島ではどんな事があったデスか?」

利根「基本的には暇で海を眺めてばかりおったのう。他には──」

金剛「ふむふむ」

提督(……そうか。色々な事があって金剛に話していなかったな。……本当、色々な事があったものだ)

瑞鳳「…………」クイクイ

提督「うん?」

瑞鳳「…………」ジー

提督「……なるほど、催促か」チラ

金剛「?」チラ

金剛「♪」コクリ

利根「金剛よー、聴いておるのか?」

金剛「勿論デース。それで、釣りで利根はテートクに何回勝ったデスか?」

利根「む。そ、それはじゃな?」

瑞鳳「…………」クイクイ

提督「……ほら、おいで」スッ

瑞鳳「…………」ソッ

提督「…………」ギュ

瑞鳳「!」ピクン

瑞鳳「…………」ホゥ

提督(金剛のおかげで一層落ち着けているようだな)ナデナデ

瑞鳳「…………」コテッ

提督(む、身体も預けてきたか。……ああ、構わんぞ。好きなだけ甘えて良い。甘えてきた以上に愛でよう)ナデナデ

瑞鳳(……この人は、優しくて……温かい人。……甘えても、良い人)

瑞鳳(良いなぁ……これ……。眠っちゃいそう……)

…………………………………………。
607 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:30:17.98 ID:QqswW4aao
利根「では提督、瑞鳳よ、また明日じゃ」

金剛「グッナイ二人とも!」

提督「ああ。お前達も良い夢を見ろよ」

ガチャ──パタン

提督「さて、私達も寝ると──ああいや、今日は風呂に入る間が無かったんだったな。寝る前に風呂に入るとしよう」スタスタ

瑞鳳「…………」コクン

ガチャ──パタン

提督(……しかし、この部屋に備え付けてある風呂場に瑞鳳と共に居るのはこれで数日だが、未だに慣れんな)

提督「さて、今日も瑞鳳が先に入るか?」

瑞鳳「…………」フルフル

提督「そうか。では、私が先に入ろう。着替える間だけ手枷を外すぞ。瑞鳳、私の方の鍵を出して外してくれ」

瑞鳳「…………」スッ

カチャ──カチンッ

瑞鳳「…………」ジー

提督「……む? 瑞鳳、向こうを向いてくれないか? 着替えれん」

瑞鳳「……私のも」スッ

提督「む? 瑞鳳の手枷も? どうしたんだ?」

瑞鳳「…………」ジー

提督「まあ、良いか……」カチンッ

提督(漸く手枷で繋がなくても良いと思ってくれたのだろうか)
608 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:30:46.89 ID:QqswW4aao
瑞鳳「…………」シュル

提督「待ちなさい」

瑞鳳「…………」ピタッ

提督「なぜお前も服を脱ごうとしているんだ……」

瑞鳳「…………」ジー

提督「…………」

瑞鳳「……甘えたい」

提督「……………………そうか。甘えるのは構わないが、一緒に風呂へ入ろうとするのはやめておけ。風紀の問題がある」

瑞鳳「…………」ジー

提督「こればっかりは堪えてくれ。そもそも、男女が同じ風呂に入るというのはあまり良くない事だ」ナデ

瑞鳳「…………………………………………」

瑞鳳「…………」コクン

提督(長く考えていたようだが、納得してくれたか)

提督(しかし……甘えるとしても、なぜ一緒に風呂へ入ろうとしたんだ……?)

…………………………………………。
609 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:31:28.96 ID:QqswW4aao
提督(そして風呂が終わったらこれか)

瑞鳳「…………」ギュゥ

提督(……手枷をする前に戻っていないか、これは?)

瑞鳳「……横須賀の提督さん」

提督「! どうした?」

提督(……この子が自分から話し掛けたのは初めてじゃないか?)

瑞鳳「甘えさせて、下さい……」

提督「……ふむ」

瑞鳳「寝る時に抱き締めてくれると……嬉しい、です」

提督(…………今はそうしてあげた方が良いか)

提督「分かった。電気を消すから、先にベッドへ入っていなさい」

瑞鳳「はい」トコトコ

カチッ──

提督(む……燭台に火を点けておくべきだった。……まあ、どうとでもなるか)スタスタ

提督「私もベッドへ入るから、ぶつからないように」ソッ

ピトッ──

提督「む?」

瑞鳳「……私は、ここに居ます」

提督「……そうか」モゾ

瑞鳳「ん……」ギュ

提督「む」

瑞鳳「落ち着きます……」

提督「……そうか」
610 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:32:49.82 ID:QqswW4aao
瑞鳳「横須賀の提督さんも、抱き締めてくれますか……?」

提督「……分かった」ギュ

瑞鳳「んっ……!」ピクン

提督「む、痛かったか。すまない」スッ

瑞鳳「……もっと、して下さい」

提督「うん?」

瑞鳳「瑞鳳は……痛いくらいが良いです。もっと、あったかいのを感じたいです」

提督「…………」

瑞鳳「…………」ギュゥ

提督「……温かいのを感じたいから、なんだな?」

瑞鳳「はい……」

提督「分かった。それならば良いぞ」ギュウッ

瑞鳳「んっ──!」ピクッ

瑞鳳「……あったかい」スリ

提督「痛くはないか?」

瑞鳳「……もう少し、強くても良いくらいです」

提督「……これ以上は睡眠に支障をきたしそうだから止めておく」

瑞鳳「はい……」スリ

提督(……瑞鳳の鼓動を感じる。しかし……なんだか速いな)

瑞鳳(これ……身体の奥から気持ち良い……。あったかくて優しい痛みなんて、あるんだ……)

瑞鳳(提督がくれた痛みよりも、もっともっと欲しくなる痛さ……)

提督「良い夢を見てくれよ」

瑞鳳「……はい」

瑞鳳(良い夢……うん……。見れそう……。この人とくっついていると……温かい気持ちになる……)

…………………………………………。
611 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/05(土) 03:36:25.44 ID:QqswW4aao
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ます。

お風呂の要望があったので少し間違った形で書いてみました。なお、お手洗いもこれとあまり変わりありません。
待っている方は目隠しと耳栓をしているとありますが、一部の艦娘はそれを聞いて別の妄想をしているかも。イタズラし放題だとかなんだとか。提督の思慮を超えた想像です。
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/05(土) 04:47:59.88 ID:sNZ5g+IJ0
大淀はMでむっつり確定だな
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/05(土) 12:06:43.00 ID:JrU/shuwo
乙ヤーデ
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/05(土) 12:36:01.57 ID:np02+QU1o
乙です
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/05(土) 13:05:40.96 ID:d/ej9hmw0


そっか、ちょっとの間なら外せるのか、手錠。
616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/05(土) 19:07:28.89 ID:3Uob72iqO
瑞鳳好きが周りにいて不思議だったがこれ見て好きになりそう
617 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:09:27.68 ID:3cgKq1PEo
瑞鳳『提督、今日はダシ巻き作ってみたんだけど、食べる?』

提督『ほう。頂こう。──うむ、良い味だ』

瑞鳳『本当ですか? 一杯あるから、たくさん召し上がれ♪』

提督『良い子だなぁ瑞鳳は』ナデナデ

瑞鳳『えへへ』

────────────────。

瑞鳳「!」パチ

瑞鳳(朝……?)

提督「…………」ナデナデ

瑞鳳「ぁ……」

提督「ん、起きたか瑞鳳」スッ

瑞鳳(……そうだった。私、抱き付いて寝てたんだっけ)

提督「そろそろ起きるとしよう。他の皆が来る前に」

瑞鳳(──もしかして、ずっと頭を撫でてくれていたのかな。だから、あんなにあったかい夢を……)

瑞鳳(そういえば……あんなに心地良い夢を見たのって、いつ振りだろ……)

瑞鳳(…………この人には、本当に心を見せても……良いのかな)

提督「瑞鳳? どうした?」

瑞鳳「……あの」

提督「うん?」

瑞鳳「……………………え、と……」

提督「…………」

瑞鳳「……なんでも、ないです」

提督「ふむ……。少し失礼する」ギュゥ

瑞鳳「!!」ピクンッ

提督「このくらいだったか?」

瑞鳳「……はい」ギュ

瑞鳳(ああ……良いんだ……。私……もう閉じ篭らなくても、良いんだ……)

瑞鳳(温かくて、優しくて、安心できて……。いつか夢に見た、落ち着ける時間……)ジワ

瑞鳳(なんでこの人は、私にソレをくれるんだろう……? 迷惑ばかり掛けている私に、どうして……?)ポロポロ

瑞鳳(私の状態が良くないから……? 治さなきゃいけないから……? ……ううん。きっと、この人はこれが普通なんだ……。この人にとっては、ただちょっと優しくしているだけなんだ……)ポロポロ

提督「……もう少しだけ、うたた寝でもしようか。まどろみの中は気持ちが良い」ナデ

瑞鳳「はいっ……!」ポロポロ

瑞鳳(ああ……嬉し泣きって、本当にあるんだ……。私、こんなの初めて……)ポロポロ

…………………………………………。
618 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:09:54.33 ID:3cgKq1PEo
瑞鳳「……ありがとうございます」

提督「もう良いのか?」ナデ

瑞鳳「うん……。名残惜しいけど、もうそろそろ起きなくちゃいけないから」

提督「そうだな。もうあと少しで金剛や利根がやってくる」

瑞鳳「……大丈夫かな」

提督「赤くなった目が治るかどうかか?」

瑞鳳「ううん、違うの。私、皆に会うのがちょっと怖くて……」

提督「ふむ」

瑞鳳「だって……昨日、大淀さんが言ってたように……皆が不満を持ってるって……」

提督「なるほど。それで不安なのか」

瑞鳳「うん……」

提督「大丈夫だ。その事については謝っておけば問題無い。あの子達ならば分かってくれる」

瑞鳳「……ホント?」

提督「流石にその場で一切合切なにもかも飲み込んでくれはしないだろうが、少し時間を掛ければ受け入れてくれるだろう」

瑞鳳「…………」

提督「怖いか?」

瑞鳳「……ちょっとだけ。でも、横須賀の提督さんが言うのなら……大丈夫、だよね?」

提督「信じてくれるとありがたい」ナデナデ

瑞鳳「……うん。信じるね」

提督「うむ。では、顔を洗ってきなさい」

瑞鳳「うん!」ニコ

トコトコトコ──
619 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:10:22.70 ID:3cgKq1PEo
提督(……どことなく、妹の方の金剛と似たような笑い方をしている。儚い笑みだ……)

瑞鳳「……えっと、横須賀の……じゃなくて、中将さん」ヒョコッ

提督「うん? どうした?」

瑞鳳「…………提督は……どうなるのかな」

提督「大佐か。……分からん。ただ、敵に協力をしていたと認めてしまった事から『処分』もあり得る」

瑞鳳「……そっか」

提督「…………」

瑞鳳「やっぱり、そうなっちゃうよね……。うん……そっか……」

提督「……辛かったら、いつでも話を聞くぞ」

瑞鳳「うん……」トコトコ

提督(……本当、あんなに酷い事をさせられても悲しめるとは)

提督「艦娘、か……」

提督(基本、ただ一人の提督に付き従うと聞くが……ここまでいくものなのか……。私に付き従ってくれる子達も、同じなのだろうか……)

提督(そして、好いてくれる理由も……。そして……もしかすると、金剛も……)

提督「…………」チラ

提督(金剛との、つがいのネックレスは引き出しの奥にある。……もしかすると、あのネックレスは金剛にとって呪いだったのだろうか。より束縛し、より私を盲目に信じさせる、薄汚い物だったのだろうか……)

提督「……どうなんだろうな」

提督(もしそうであるのならば……寂しいな)

瑞鳳「──中将さん」トコトコ

提督「どうした、瑞鳳」

瑞鳳「辛そうだけど、大丈夫……?」
620 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:11:03.89 ID:3cgKq1PEo
提督「……ポーカーフェイスには自信があるつもりだったが」

瑞鳳「……いつも提督の顔色を伺っていたから、なんとなく分かっちゃうの」

提督「そうか……」

瑞鳳「えっと……私、痛い事は好きなの。だから、もしそれで気が紛れるなら、いつでも良いですよ?」

提督「馬鹿を言うんじゃない」

瑞鳳「本当なの。……最初は痛い事は嫌だったし逃げ出したかったけど、いつの間にか『痛い』って感覚は生きてる証に感じて、生きてるって分かる事が好きになって……」

提督「……………………」

瑞鳳「私なら大丈夫です。自分で自分の小指を切る事も出来るから、ね?」

提督「自分の、指を……?」

瑞鳳「うん。そうしなかったら、私の代わりに他の艦娘の指を切り飛ばすって言われたから……」

提督「……瑞鳳、もっと近くに来なさい」

瑞鳳「? うん」トコトコ

提督「おいで」スッ

瑞鳳「え? 腕の中……良いんですか……?」

提督「ああ」

瑞鳳「……うん!」ソッ

提督「こうされるのと、どっちが好きだ?」ギュッ

瑞鳳「んっ……。こっち、かな?」

瑞鳳「痛いのも良いけど、こうやって、誰かの心臓の音を感じるのも……好き。痛いくらい抱き締められるのって、もっと欲しくなる痛みだから……。それに、心臓の音を聞いてると、生きてるんだなって思えるの……」スリ

提督「……そうか」

瑞鳳「うん……。気持ち良くて、優しくて、あったかいから、凄く好き……。もしかしたら癖になるかも」
621 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:11:50.52 ID:3cgKq1PEo
提督「…………」

瑞鳳「あぁ……ずっとこのままで居たいって思っちゃう……」

提督(そういえば……金剛も抱き締められるのは好きだったな……。…………少しくらいは、私も都合良く考えても許されるだろうか)

提督「……ありがとう、瑞鳳」

瑞鳳「? お礼は私が言うべきじゃ……」

提督「いや……少しだけ、軽くなった」

瑞鳳「軽く……? え、えっと……?」

提督「ありがとう……」

瑞鳳「……うん」

コンコンコン──

提督「──さて、今日も一日が始まる。瑞鳳、今日は正式に鎮守府の皆に自己紹介しようか」スッ

瑞鳳「はいっ」

提督「よろしい。──金剛、入ってきて良いぞ。知らせたい事もある」

…………………………………………。
622 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/11/17(木) 06:12:42.29 ID:3cgKq1PEo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ます。

……おかしいな。もう終わるはずなんだけどな。
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/17(木) 06:34:29.08 ID:RBU9E/8Wo
おつ!
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/17(木) 11:25:23.00 ID:12BBj0BGo
乙です
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/17(木) 20:41:33.80 ID:et9rYABA0
おつおつ
まったりでも続いてくれるのは大歓迎ですよ〜
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/17(木) 22:43:00.89 ID:57kF03Hy0
乙です
でもこのルートのヒロイン誰?
627 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/01(木) 04:40:33.50 ID:svt2Tvv2o
金剛「…………」チラ

瑞鳳「────?」オドオド

祥鳳「────────」ナデ

瑞鳳「────♪」

天龍「? ────!」

暁・雷「!」

ヲ級「────!」ブンブン

瑞鳳「!」チラ

祥鳳「────」フリフリ

瑞鳳「…………」フリフリ

暁・雷「…………」チラ

天龍「? ────?」

暁・雷「…………」フリフリ

金剛(……祥鳳はともかく、さすが天龍とヲ級ですね。事情が事情だからなのか、それとも素の行動なのかは分かりませんが、わだかまりを解消してくれそうです)クルッ

金剛(こう言うのは良くありませんが、おかげでこっちの問題も手が付けられそうです。……シスターの事、テートクに相談しなくちゃ)スタスタ

金剛(今の時間は大抵が執務のはずですが、最近は執務が少なくなった事で休憩時間にしていましたから大丈夫ですよね)スッ

コンコンコン──

提督「金剛か、入れ」

??「なっ!!」

金剛(? 誰の声でしょうか?)
628 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/01(木) 04:41:03.67 ID:svt2Tvv2o
ガチャ──パタン

長門「な……なな、ななな……!!」ブラーン

金剛「……なんで吊るされているのデスか?」

提督「この前の深海棲艦との戦闘で命令を無視してまで前線に残っていた罰だ。あれではいつ沈んでもおかしくなかったぞ」

金剛(ああ……なるほど)

利根「ほれ、金剛も見るかの? なんと純白の下着じゃぞ。意外じゃよのう」ピラ

長門「何をする!? やめないかッ!!」

利根「とは言うても、これがこのお仕置きの醍醐味じゃからのう。……おぉ、よく見ると小さな薄桃のリボンがあるのじゃな。やはり可愛いもの好きか」ジー

長門「〜〜〜〜〜〜!! て、提督も何か言ってくれ!」

提督「私はここでお前の反省を見守るだけだ。それ以外はよっぽどの事を除いて関与せん」

長門「見守るなどと言いつつ戦艦すら射殺す目をしているではないか……!!」

金剛・利根「あ」

提督「反省の色が見えんな。十分追加」

長門「なぁっ!? ほ、他の者達が更に来たらどうする!?」

提督「それはお前自身が招いた事だ。それによって生まれる問題は自分の行動の結果だと思え」

長門「くぅっ……!」

利根「じゃが、羞恥心ばかりで恐怖心が無いのはまだ良いのではないか? 我輩など提督がこんな形相で視線を逸らす事も許されず仁王立ちなどされたら怖くて縮こまってしまうぞ」

長門「今はそれどころではない!! これ以上、誰かに見られたらと思うと──!」

提督「ほう? 反省をするどころか全く別の事を考えるか」ジッ

長門「ひっ!? じ、時間を延長するのは止めてくれ!! もうあんな事はしないと誓う!!!」

提督「宜しい。あと五分で降ろすとしよう」
629 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/01(木) 04:41:30.38 ID:svt2Tvv2o
長門「な、長くなっているのは変わらないのか……!!」

提督「お望みならばもっと長くしてやるが」

長門「や、やめてくれぇ!! こんな姿をこれ以上見られたくない……ッ!!」

利根「……プライドの塊というのは生き辛そうじゃのう」

金剛「効果抜群ネー……」

────五分後──

長門「…………終わった……。二つの意味で、終わった……」ズーン

利根「瑞鶴と響がやってくるとはのう。気を利かせてくれたのか、すぐに帰ってくれたが」

長門「誰かに話していたり、しないだろうか……」

利根「瑞鶴は何かあった時にポロッと口にしてしまいそうじゃ。響は……言いそうではないが、今回の事を知っている者の間では言いそうなイメージはあるかの」

長門「ああぁぁぁぁぁ…………」

金剛「物凄い悲痛な声デス……」

利根「しかし少し意外じゃったな。てっきり『フン。ビッグ7たる者、この程度で屈したりはしない』なんて言うかと思っておったのじゃが」

長門「こういう羞恥心を煽られる事は苦手なんだ……」

利根「なるほどのう」

提督「反省はしたか?」

長門「!! は、はいッ!」ビクッ

金剛(また一人、テートクを怒らせてはいけないと身をもって知ったですね……)

提督「宜しい。部屋に戻って良いぞ。──利根、部屋まで送ってやってくれ」

利根「うむ。フォローは任せるが良いぞ」トコトコ

長門「失礼……した……」トボトボ
630 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/12/01(木) 04:42:00.98 ID:svt2Tvv2o
ガチャ──パタン

提督「……さて金剛。少し話がある」

金剛「……ハイ。シスターの事デスね?」

提督「ああ。あれから表に出てきたりはしているか?」

金剛「いえ……塞ぎこんでいてまったく返事をしてくれまセン。心の奥に居るのだけは分かるのデスが……」

提督「大丈夫なのだろうか……」

金剛「分かりまセン……。そもそも、どうして塞ぎこんでしまったのかも分からないデス……」

提督「むう……」

金剛「…………」

提督「……一先ず、呼び掛けて──いや、呼び掛け続けてみよう。もしかしたら反応してくれるかもしれん」

金剛「ハイ。私も諦めまセン。諦めてしまったら……それは私がシスターの身体を乗っ取ってしまうのと変わらないデス」

提督「そうだな。……金剛、気になったのだが、最後に妹の方と話した時に何かおかしい所とかはあったか?」

金剛「そうデスね……。レ級と戦っていた時にたしか、この身体は私のモノとして扱って下サイ、と言っていたデス」

提督「……ダメージを気にしないで良い、と言った訳ではなさそうだな」

金剛「ハイ……。あの時は考える余裕がありまセンでシタが、今になって思うと、あれは私に身体を受け渡すという意味にも聞こえるデス」

提督「ああ……。本当、どうしてなんだ金剛。お前の身体はお前のモノだろう? 誰かのモノでもない、自分自身のモノだ。今はただ好意で私達を会話させる為に──……」

金剛「!」ハッ

提督「……そういう事か」

金剛「きっと、そうかもしれまセン。……馬鹿デス」

提督「本当にな……。そんな事をしても、誰も喜びはしないというのに……」

提督「──私と金剛の為に、自分を犠牲にしようと考えるか。なぜそんな事を……」
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