利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」 二隻目

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334 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/03/21(月) 19:00:58.15 ID:lFglZpsro
提督「…………」サラサラ

コンコンコン──

提督「入れ」

ガチャ──パタン

飛龍「おはようございます」

利根「おはようなのじゃ提督よ」

飛龍「……あれ?」

利根「ぬ?」

提督「おはよう。どうした、何かあったのか?」

飛龍「ああいえ、なんとなく提督の雰囲気がいつもと少し違うなって思いまして」

利根「飛龍もそう思うたか。どことなく別次元に居るような雰囲気じゃのう」

提督「ふむ、そうか」

提督(昨晩の事が顔に出ていたか。……後で利根にだけは金剛の事を言っておくとしよう。利根も金剛と話して心の内にある壊れた部分を直した方が良い)

利根「何かあったのかの?」

提督(……だが、今は誤魔化しておくか。実際に見た夢を話して、飛龍にも悟られないようにしなければならんな)

提督「単純に妙な夢を見ただけだから安心してくれ。私が艦娘と同じく海の上を滑って作戦指示をしている内容だったんだ」

飛龍「なんですかその危険な夢は……」

提督「私としては状況を自分の目で見れる上、随時作戦命令を伝えられて素晴らしいと思ったのだが」

利根「被弾どころか至近弾ですら身体が弾け飛ぶじゃろ。何を言うておるのじゃ」

提督「ダメか」

利根「当たり前じゃ。そんな事が出来れば人間でなく艦娘かそれに近い何かじゃぞ」

提督「残念だ。……まあ、そんな夢を見たからいつもと雰囲気が違うのだろう」
335 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/03/21(月) 19:01:43.62 ID:lFglZpsro
提督「ところで、今日は手早く仕事を終わらせるぞ。やるべき事がある」

飛龍「やるべき事ですか?」

提督「ああ。利根は覚悟しておけ」

利根「か、覚悟じゃと!? 我輩、何かやってしもうたのか!?」ビクッ

提督「その時になれば分かる」

利根「う、うぅ……怖いのじゃ……」ビクビク

飛龍「あ、あはは……。頑張って下さい……」

利根「提督よ、飛龍はどうなのじゃ!?」

提督「お前だけだ」

利根「ひぃ……。絶対に我輩が何かをやったパターンじゃ……」ビクビク

提督「まあ、そんなに怖がるな」

利根「無理じゃ……」

飛龍「て、提督……お手柔らかにお願いしますね」

提督「善処しよう」

利根「善処ってなんじゃぁあああっ!!?」

提督「利根、煩くするのならば今から吊るすぞ」

利根「…………っ!」ピシッ

提督「よろしい。──では、朝礼が始まる前に少しでも執務を片付けておこうか」

利根・飛龍「は、はい!」

…………………………………………。
336 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/03/21(月) 19:11:00.81 ID:lFglZpsro
今回はここまでです。また一週間以内くらいに来ます。

いつぞやの金剛飛龍本をラノベ風に電子書籍化させた物を二、三日以内に販売開始する予定です。本を買えなかったという方はどうぞ。
全く同じという訳ではなく、ほんの少しの添削と、オマケ小説として曙があの鎮守府にやってきたらどうなるか──というショートストーリーを追加しています。気が向いたら見てやって下さいませ。
http://www.dlsite.com/maniax/announce/=/product_id/RJ173902.html
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/21(月) 19:16:43.19 ID:iIQtmHYho
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/21(月) 19:57:46.70 ID:DlPOlHxlo
乙です
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/21(月) 20:09:08.14 ID:egrSzytP0
夢って前のやつか?
340 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/03/28(月) 21:04:24.98 ID:Ugy7wxb8o
ガチャ──パタン

提督(さて、執務を進めるとするか)スッ

提督「……………………」サラ

提督「む……」

提督(……手が進まん。昼食後の軽い休憩時間はいつも執務に当てていたというのに)

提督「…………」チラ

提督(そうだな。少し金剛と話をしようか。金剛も一人で暇をしているかもしれない)スッ

ガチャ──パタン

提督(今までこんな事は無かったというのに……自分の事ながら自分の事が分からん……。…………良し。周りに誰も居ないな)

コツッ──コツッ──コツッ──

カチャッ……ガチャ──パタン

金剛「! テートク? どうシタのデスか?」

提督「執務に手が付かなくてな……。すまないが、話し相手になってくれないか?」

金剛「ハイっ。喜んで」

金剛「! ……えーっと、中でスリープしているので起こしマスね」

提督「いや、そういう意味ではない。必要以上の無理はしてくれるな」

金剛「デスが……」

提督「それは夜に頼む。その時に利根も連れて来て二人に話をさせたいんだ」

金剛「利根とデスか?」

提督「ああ。あいつも『金剛』と話をして、少しでも心を癒すべきだ」

金剛「……大丈夫でショウか」

提督「利根ならば大丈夫だ。話す事で改善されると信じれる」

金剛「そうなのデスか……?」
341 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/03/28(月) 21:05:11.60 ID:Ugy7wxb8o
提督「ああ。死者は何も口にする事が出来ない。故に残された者は死者が何を思っているのか、想像をするしか出来ないんだ。利根はあの三人が自分を責めているかもしれないと思っていて申し訳ないという気持ちが強いのだろう。それを癒せるのは、沈んでしまったあの三人の内の誰かだ」

金剛「なるほど……」

提督「頼めるか?」

金剛「勿論デス。協力させて下サイ。それが、今私が出来る事デス」

提督「ありがとう、金剛」ナデ

金剛「…………♪ ────!!」パッ

提督「どうした?」

金剛「ノー、デスよテートク。私の中にはテートクの大事な人が居るデス。頭を撫でるのは私ではなくその人の為にやるべきネ」

提督「……そうか」

金剛「…………」ズキッ

金剛(……ナゼ、胸が痛むのでショウか)

提督「すまなかった」

金剛「い、いえ。私の方こそすみまセン……」

提督「…………」

金剛「…………」

提督「……そろそろ執務に戻らるべきか。時間を取らせてしまってすまん」スッ

金剛「い、いつでも!」

提督「…………」

金剛「……いつでも、待っていマス。デスので、また来てくれマスか……?」

提督「……ああ。また来よう」

ガチャ──パタン

金剛「…………どうして私は、上手く言えないのでショウか。もっと、別の言い方があったはずなのに……」

金剛「私の中に居る人ならば、テートクを傷つけずに出来るのでショウか……」

…………………………………………。
342 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/03/28(月) 21:05:41.66 ID:Ugy7wxb8o
利根「……テートクよ? 覚悟をしろと言うておったというのに、なぜ金剛の居る部屋へ行くのじゃ?」トコトコ

提督「直に分かる」

利根「むぅ……?」

コツッ──コツッ──コツッ──

カチャッ……ガチャ──パタン

金剛「いらっしゃいデス」

提督「調子はどうだ、金剛?」

金剛「バッチリです。いつでも大丈夫デスよ」

利根「む? むむむ? 何の話じゃ?」

金剛「……テートク、良いデスか?」

提督「頼む」

金剛「はい──」スッ

利根「…………?」

金剛「…………」パチッ

金剛「──久し振りデスね、利根」

利根「んんんん? 久し振り……?」

金剛「現場の判断で私が提案シタ輪形陣。瑞鶴を中心として、先頭に私、左舷に響、右舷に利根。気を紛らわす為のお菓子の雑談」

利根「!!」

金剛「陣形はともかくとして、雑談の内容まではテートクに報告していないデスよね、利根?」

利根「……なぜお主が知っているのじゃ、金剛よ」

金剛「つまり、そういう事デスよ」ニコ

利根「……………………」

金剛「…………」ニコニコ

利根「っ!」ガバッ

金剛「ワォ!?」

利根「うぅ〜〜〜〜!!」ギュゥゥ

金剛「ふふ……。ただいまデス、利根」ナデナデ

利根「〜〜〜〜〜〜ッ!!」ギュゥ

金剛「しばらくそっとしておいた方が良いデスね」

提督「そうみたいだが……大丈夫なのか?」

金剛「あれから実は少しずつ練習をしていまシテ、慣れてきたので昨日より長く出られるデス」

提督「……ありがとう」ナデ

金剛「んー……♪」

…………………………………………。
343 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/03/28(月) 21:06:08.02 ID:Ugy7wxb8o
大佐「……はーつまらねぇ。世の中クソだな。この海みたいに真っ黒で面白い事なんてほとんどありやしねぇ……」

大佐「提督業も楽じゃねえし……。好きに出来る女に囲まれて暮らせる点については良い事だけどよぉ……中には反抗的な奴も居やがるし」

大佐「どーすっかなぁ……。また瑞鳳あたりにでも首絞めとかしてみるか? あん時の泣き顔は癒されるし。でも後が面倒だしなぁ……」

レ級「──へぇ。面白い人間じゃん」

大佐「あ? ────ッ!!?」

レ級「やあやあ人間クン。私が誰か分かるよねぇ? 君達の敵である深海棲艦! その一人だよぉ?」

レ級「実はさぁ、君がとある所の鎮守府から帰ってきた時から、ずーっと目を付けていたんだよねぇ。君、素質あるよ」

大佐「……何が言いたい」

レ級「君が大敗北しちゃったあの鎮守府……あれ、壊してみない?」

大佐「……おい」

レ級「んんー? 何かなぁ?」

大佐「その話、詳しく聞かせろ」

レ級「…………」ニヤァ

…………………………………………。
344 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/03/28(月) 21:07:10.52 ID:Ugy7wxb8o
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ます。

物語も佳境。楽しい時間。
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/28(月) 21:08:02.10 ID:zjI+VkgIo
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/28(月) 22:17:06.08 ID:c8on/IPno
乙です
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/06(水) 01:00:48.30 ID:+O36/yGD0
支援
348 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/07(木) 18:30:23.84 ID:FqZl1Y2ko
利根「……………………」

提督「落ち着いたか?」

利根「……それなりには落ち着いたのじゃ」

金剛「まるでスカードな夢でも見た子供のようでシタ」

利根「こうなるのも仕方がなかろう……。まさか、お主とまたこうして話せるなどとは夢でしか出来ぬと思うておったのじゃぞ」

金剛「私もお話できて嬉しいデス。お二人が帰ってきてから伝えたい事もありマスしね」

提督「伝えたい事?」

利根(……恨み言か何かじゃろうか)

金剛「ハイ。──まず言わなければならない事として、私……いえ、瑞鶴も響も、二人の事を恨んでなんていないデス。沈んだ私が言うのデスから確実ネ」

利根「────」

金剛「二人とも、私達の事を引き摺らずに立ち直って欲しいデス」

提督(──その言葉は……)

金剛「二人なら必ず立ち直れマス。私はそう信じているネ。……ただ──」

金剛「──私達の事、忘れないで下さいね?」

提督「────────」

金剛「これが、私の伝えたい言葉デス。きっと、瑞鶴や響も同じ事を思っているはずデス」

提督「……金剛」

金剛「ハイ、どうかしまシタか?」

提督「すまん……」ギュゥ

金剛「ん……。あったかいデス……」ソッ

提督「少しだけ……このままで……」

金剛「ハイ。喜んで」

利根(……ああ、なるほどのう。これには敵わぬ。敵うはずがないのじゃ)

利根(やはり、提督には金剛が必要なのじゃな。……うむ。良い雰囲気じゃ)
349 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/07(木) 18:30:58.86 ID:FqZl1Y2ko
金剛「…………」スリ

提督「……ありがとう、金剛」スッ

金剛「私も久々にテートクを堪能できたデース」ニコニコ

提督「二人とも、みっともない姿を見せてすまない」

利根「何を謝っておるのじゃ。そうなるのも無理はなかろう?」

金剛「私はお二人に会えただけで胸が嬉しい気持ちで一杯デス」ニコニコ

利根「まあしかし、あんなに弱々しい背中の提督を見れたのはラッキーかもしれぬのう」ニヤ

提督「まったくこいつときたら……」

利根「しかし、一番は金剛とまたこうして話す事が出来た事じゃな。不安が一気に無くなったぞ」

金剛「不安、デスか?」

利根「うむ。金剛達は我輩を恨んだり妬んだりしておるのではないかと不安になっていての。いくら状況が仕方が無かったとはいえ、我輩だけ生き残ったのじゃ。そう思われても不思議ではない。それ故に我輩も沈むべきではなかろうかと思った事もあった」

利根「じゃが、金剛はそんな事がないと言うてくれた。……我輩は、その言葉だけでも救われた気分じゃよ」

金剛「なるほど……。帰ってきた利根の様子がおかしかったのはそれが原因だったのデスね」

提督(…………ん?)

金剛「テートクも少しおかしい様子デスが、利根のように何か不安があるのデスか?」

提督「いや、また別の事だ。……ところで金剛。もしかすると、この鎮守府へ戻って来たのは最近の事なのか?」

金剛「んー……二年くらい前デス。少なくとも、私が帰ってきた時はテートクと利根は居なかったデス」

提督「……そうか」

金剛「…………」

利根「?」

提督「……つまり」

金剛「うぅ……そうデス……迷っていまシタ……」
350 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/07(木) 18:31:41.81 ID:FqZl1Y2ko
利根「ま、迷った?」

提督「やはりか」

金剛「だってだって! 方位も何も分からなかったのデスよ!? どこかの鎮守府の艦娘を見付けるまでウロウロと海を彷徨っていたデース……」

利根「なんと……。羅針盤はどうしたのじゃ?」

金剛「妖精が居ないのでクルクル回るだけでシタ……」

利根「……羅針盤は妖精が居らぬと壊れるのか」

提督「そうらしいな……」

金剛「陸へ着いても知らない場所でシタので、この鎮守府に戻るまで苦労したネ……」

提督「…………」ナデナデ

金剛「ん……♪ その苦労も、これで癒されるデス……」ホッコリ

利根「……変わらぬのう、金剛よ」

金剛「イエース! 私はいつまでも私デース!」

利根「くくくっ……。うむ。やはり金剛は金剛じゃな」

金剛「今の利根もいつもの利根っぽかったデー……ス?」フラ

提督「!」ソッ

利根「む……。大丈夫か、金剛よ」

金剛「……ソーリィ。もう……タイムアップみたい、デス……」

利根「何を謝っておるのじゃ。お主らはこんなにも頑張ってくれておるではないか」

金剛「……サン、キュゥ…………」カクン

提督・利根「…………」

金剛「…………っ」ピクン

金剛「ん……」スッ
351 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/07(木) 18:32:08.97 ID:FqZl1Y2ko
提督「……大丈夫か?」

金剛「!!」ビクンッ

金剛「……ごめんなサイ」

提督「どうやら寝惚けているようだ」

金剛「え……?」

利根「うむ。寝惚けておるようじゃの」

金剛「え、えっと……」

提督「特訓をしていたと聞いたぞ。ありがとう」

金剛「そ、それは……その……」

利根「我輩からも礼を言うぞ。話させてくれて、本当にありがたかった」ニパッ

金剛「!」

金剛(……利根がこんなに無邪気で明るい笑顔をしたの……初めて見たデス)

利根「うん? どうしたのじゃ金剛? そんな不思議なモノでも見たような顔をして」

金剛「あ、いえ、その……利根がそんな風に笑ったの、初めて見たので……」

利根「ふむ?」

提督「自覚無しか。利根、お前は今、私から見ても懐かしい笑みを浮かべていたぞ」

利根「む? むむ? そうなのかの?」

提督「ああ。昔見た良い笑顔だった」

金剛(という事は、さっきの笑顔が利根の本来の笑顔なのデスね)

金剛「少しでもお役に立てたのでしたら嬉しいデス」ニコ

提督「ああ。とても良い仕事をしてくれた」ソッ
352 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/07(木) 18:43:09.55 ID:FqZl1Y2ko
金剛「! 頭を撫でるのはノーですよ、テートク」

提督「む。そうだったな……」スッ

利根「むぅ? なぜ頭を撫でるのはダメなのじゃ?」

金剛「私の中にテートクの金剛が居るからデス。その手は、私ではなくこの方の為にあると思うデス」

利根「……ううむ」

金剛「だって、お二人は愛し合っていたのデスよ? それなのに、目の前で私がとっても優しくされるのはいけない事デス」

利根「とっても……?」

提督「…………」

金剛「……あの、もしかして」

利根「うーむ。流石に頭を撫でるのを『とても優しく』と言うのは少し大袈裟じゃよのう?」

提督「ああ」

金剛「…………」シュン…

提督「だが」ポン

金剛「…………?」

提督「私達の事を考えてくれて嬉しいぞ」ポンポン

金剛「……あの、頭は」

提督「撫でてはいない」

金剛「デスが……」

利根「このくらいならば、お主の中に居る金剛も文句は言わぬよ」

金剛「うぅ……」

利根「! のう提督よ。今夜は三人──いや、四人で寝るのはどうじゃ?」

提督「却下だ。だが、私抜きならば構わんぞ」

利根「むう……それだと意味がほとんど失うのじゃが……」

提督「諦めろ。風紀を乱し過ぎるのは良くない」

金剛「…………」

金剛(あれ……? 私、残念に思ってるデス……? …………やっぱり、なのデスか……?)

金剛(でも……それは……)

利根「むうぅ……全くもって残念じゃ……」

金剛(ひっそりと……ひっそりと、仕舞いまショウ……)

……………………
…………
……
353 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/07(木) 18:43:49.47 ID:FqZl1Y2ko
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ます。

終わりが見えるのに終わらない。
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/07(木) 18:50:49.60 ID:oCVHn+Wqo
金剛...
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/07(木) 20:25:49.14 ID:HnC4MmwJo
乙です
356 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/16(土) 22:18:54.72 ID:aWpC+zuEo
提督(──さて、皆が来る前に仕事をするか。珍しく書類の数が少ないが、やっておく事に越したことはない)スッ

提督(最近は段々と幽霊騒ぎも収まってきていて、そろそろ金剛をあの部屋から出せるかもしれん。金剛もいい加減、自由に歩き回りたいだろう)

提督「……む? 一時的な出撃の待機命令?」

提督「……………………」

提督(……本人の希望と実績による下田鎮守府提督の担当海域拡大? その能力の審査の為、一時的に横須賀鎮守府は哨戒と、昨日までに予定されていた遠征以外の出撃待機を命ずる……。あんな戦術を取っていた者が、希望と実績による担当海域の拡大?)

提督(妙な胸騒ぎがする。あんな指揮の執り方をしていて、急に変わる訳が無い。……あの四人に大佐の事を訊いてみるとするか)

コンコンコン──

提督「入れ」

ガチャ──パタン

飛龍「おはようございます、提督」

利根「今日も良い天気で執務のやり甲斐があるぞ!」

提督「おはよう二人とも。……その執務だが、今日ばかりはさっさと終わらせるぞ」

利根「む? 何かあったのかの?」

提督「そんな所だ。どうしても調べたい事が出来た」スッ

飛龍「……また総司令部から無茶な注文でもされたんですか?」スッ

利根「ふぅむ、なになに?」

利根・飛龍「……………………」

利根「…………むぅ?」

飛龍「確かに下田の提督は強大な戦力となる艦娘自体は持っていましたけれど、指揮能力の方は……」

利根「良くないのか?」

提督「今まで『敵を倒してこい』『必ず勝て』といったようなモノがほとんどだと耳にしている」
357 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/16(土) 22:19:22.64 ID:aWpC+zuEo
利根「……まさかとは思うが、激励ではなく作戦内容なのか?」

提督「そうだ」

利根「例え我輩が指揮を執る事となっても、そんな指示は出さぬぞ……」

提督「そんな、利根でもしないやり方をしていたのが下田の提督だ。これは明らかに怪しい」

利根「自分で言うたのは確かじゃが、真正面から同じ事を言われると心にくるものがあるぞ!?」

提督「利根のように作戦指揮に関する知識がほとんど無い者でもしないであろう事をしてきていたのが下田の提督だ、という意味だ。お前に戦術や戦略の事を教えた事など無いから、出来なくて当然だろう」

利根「それはそうじゃが……」

提督「ちなみに、九割はお前が自分から言ったから便乗しただけだったりする」

利根「やはり悪意しかないではないか!?」

提督「私がイヂワルだというのは知っているだろう?」

利根「むー……。嫌なのに嫌な気分になれぬ……」

提督「そんなに私の事を嫌いになりたかったのか」

利根「……我輩とてそろそろ拗ねるぞ」

提督「では、拗ねられる前に真面目な話に戻ろうか」ポンポン

利根(ううむ……こうして優しくされると許してしまうのが困りものじゃ……)

提督「私は四人に大佐の事を訊こうと思っている。大佐が普段、どのような指揮を執っていたのかを詳しく調べ、その上で本当に成果を挙げられるような人物なのかどうかを判断しよう」

飛龍「では、長門さんに瑞鶴さんや響ちゃんをお呼びした方が良いですか?」

提督「いや、表立って行動に出すと他の子に何があったのかを聞かれるだろう。世間話を装って調べようと思っている」

飛龍「なるほど。普段から皆と会話している提督だからこそ怪しまれないという訳ですか」

提督「そういう事だ」

利根「ふむ。では我輩達に出来る事は、このやたらと少ない書類を片付ける事くらいなのじゃな?」

提督「ああ。待機命令が解除されるまでは哨戒以外にまともな行動も出来ん。終わり次第、自由行動に入って良いぞ」

…………………………………………。
358 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/16(土) 22:19:54.05 ID:aWpC+zuEo
雷「いっくわよー! それっトス!」パスッ

暁「チャーンス!! 暁アターック!!」バシィッ

響「……明後日の方向に飛んでいったね」

如月「あらあらぁ……」

電「こ、こういう事もあるのです!」

暁「…………」

睦月「あ、長門さーん! ボール取って下さいますかぁー!」

長門「ん? ──ああ、これの事か。ほら」ポーン

睦月「ありがとうですよー!」ブンブン

長門「…………」フリフリ

雷(あ、なんだかすっごく優しい笑顔)

提督「長門」

長門「!!」ビクンッ

提督「む? 驚かせてしまったか」

長門「……提督か。まあ……そういう事にしておいてくれ……」

提督「ふむ。ところで今、時間はあるか?」

長門「あるが、どうかしたのか?」

提督「今から話す事は世間話をしているような風体で話して欲しいのだが、下田の大佐に関して質問がある」

長門「……何か問題を起こしたのか?」

提督「逆だ。異常なほど優秀な戦果を挙げ始めた」

長門「優秀な戦果? そんなバカな」
359 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/16(土) 22:20:20.21 ID:aWpC+zuEo
提督「だが、事実だ。朝礼の時に話した待機命令も大佐の担当海域拡大の審査の為だ。そこで長門、お前に訊きたい。大佐はやれば出来るような人物なのか?」

長門「…………いや、難しいな。しっかりとやれば並の成果を得られるかもしれんが、あくまで並だ。私が知る限りでは尤も意欲的に執った作戦でさえ中の下といった成果だったぞ」

提督「中の下と評価したが、最近では最上と言っても過言ではない戦果だそうだ。何があればそうなると考えられる?」

長門「指揮を執っている者が変わったとしか考えられないな。それ以外でと言われれば、私が夢を見ているという可能性しか残らない」

提督「という事は『敵を倒してこい』『必ず勝て』といった命令が多かったのも事実か」

長門「ああ。それに加えて罵詈雑言もあった。……本当、よくそれで今までやってこれたと逆に感心してしまいそうだ」

長門(……それと比べるのも失礼なほど、ここは温かく優しい空気で満ちている。本当……どうしてここまで違いがあるのだろうな……)

提督「他に詳しい指示などは無かったのか?」

長門「ん、そうだな……。総司令部から送られてくる資料は毎回渡され、頭に叩き込めと言っていたくらいだ。たまに作戦指示を出す事もあったが、大抵はその資料の内容とほぼ同じだったぞ。結局は現場の判断でほぼ全て決めていた」

提督「……そうか。教えてくれて助かった」

長門「なに。このくらいお安い御用だ。……だが、私もどうやってあの愚か者が戦果を挙げているのか気になる。下田鎮守府では何か人事異動があったりはしていないのか? 提督を補佐する役が新しく作られたりとか」

提督「そういう話は今の所耳に入ってきていない。そもそも、部外者は鎮守府に近付く事すら許されていないから人手不足の現状では補佐役も居ないだろう」

長門「そうなのか。……ん?」

提督「どうした」

長門「いや、ふと気になった事があってな。国を護る為だというのに、どうしてそんなにも人手不足なのだ? 人を集めるくらいならば徴兵でもなんでもあるだろう? そこから訓練を重ねていけば──」

提督「長門」ジッ

長門「っ!」ゾクッ

提督「その話には足を踏み入れるな。そして、決して誰にも言うな。絶対にだ。もし今後も踏み入ってくる場合は……あまり使いたくない手を使わざるを得なくなる」

長門「……了解した」

提督「……すまんな。こればっかりはどうしても言えない機密なんだ」ポン

長門「いや、私の方こそすまない……。今後気を付ける。あと、頭を撫でるのは……その……」

提督「この癖は直さんぞ」

長門「むう……」

…………………………………………。
360 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/16(土) 22:21:23.32 ID:aWpC+zuEo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ます。

色々と忙しかったり疲れが取れなかったりとヤバイ。みんなも季節の変わり目は気を付けて下さいませ。
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/16(土) 22:32:36.24 ID:6g0Qd22Vo
乙です
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/23(土) 18:09:18.37 ID:7dacqD0l0
363 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/24(日) 17:30:38.28 ID:byy5ee08o
督「ふむ……」

提督(四人に聞いてみた所、初めに聞いた長門と同じ答えが返ってきた……。やはり、下田の提督が戦果を挙げるのは異様か)

提督(ならば、どうやってそんな戦果を上げられるようになる? ただの偶然か? ……いや、偶然などという不安定で不確定なもので戦果が何回も続く訳が無い。根本に何かがあるはずだ)

提督「…………参ったな。本当に何をすればいきなり戦果が挙がるようになったんだ? それとも私へ情報が届いていないだけで、本当に補佐か何かでも来たのだろうか……。今度、足を運んでみるか……」

コンコンコン──

提督「ん? こんな時間に誰だ……? ──入れ」

ガチャ──パタン

ヲ級「てーとく、さん! こんばんは!」

空母棲姫「……すみません」

提督「……なるほど。理解した」

空母棲姫「どうしても会いたいと仰っていまして……」

提督「空母棲姫も居る事だ。誰にも見付かっていないのだろう? それならば構わんよ。だが、こんな時間に来るのは珍しいな?」

ヲ級「なんだか、嫌な予感、するの」

提督「嫌な予感?」

ヲ級「うん!」

提督「どんな嫌な予感なんだ?」

ヲ級「えーと……んーと……。良く、わかんない」

提督「……………………」

空母棲姫「……この調子なんです。けれど、ここまで頑なに言うのも初めてなので、何か分かればと思って来てみました」

提督「ふむ……。嫌な予感か」

空母棲姫「何か心当たりがあるのですか?」

提督「……結びつきそうにもない、こじ付けならば一つある」

ヲ級「こじ付け? なんだろ?」
364 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/24(日) 17:31:05.76 ID:byy5ee08o
提督「最近、ここの鎮守府に一番近い鎮守府が異様な戦果を挙げているらしい。そこの提督はとてもそんな戦果を挙げられる者ではなく、その鎮守府で何かあったと思えるくらいだ」

空母棲姫「人事異動があったとかではなくて?」

提督「そういう話も耳にしていない。一応、そこの鎮守府とここはそれなりに繋がりがあってな。お互いの状態を確認し合う為にそれなりの情報交換は行われている」

空母棲姫「……差し出がましい事だけれど、私達をここへ置いておくのは非常に危険ではないかしら。もし私達が見付かったら大変よ」

提督「その点に関してはこちらから止めているから安心して良いぞ。流石に大勢へ見付かるとどうしようもなくなるが……」

空母棲姫「では、今後より一層気を付ける事にします」

提督「ありがたい。──話を戻すが、そこの鎮守府の動きが妙な事から、何か関係しているのかもしれないと思っている。通常の手段とは思えない戦果はただただ不気味だ」

空母棲姫「通常の手段ではない……」

提督「…………」

ヲ級「偵察、してみる?」

提督「偵察? どのようにだ?」

ヲ級「ほら、私達の、艦載機を、造ってから、使って」

空母棲姫「……何を馬鹿な事を言っているの、貴女は」

ヲ級「すっごく遠くから、見えるよ! 気付かれないくらい、遠くから!」

空母棲姫「そういう事を言っているんじゃありません。私達に兵装を持たせる事に問題があると言っているのよ。私達は深海棲艦。本来は提督やここの皆とも敵なのよ。そんな相手に武器を渡すのは良くないでしょう?」

ヲ級「あ……そっか……」

提督「ふむ、悪くないな」

空母棲姫「ええ。悪く……なんですって?」

提督「二人の偵察機を使って、その鎮守府を遠くから偵察。深海棲艦の技術は我々の技術を遥かに超えている事から、気付かれないように異変が起きていないかを調べるのに打ってつけだ」

空母棲姫「却下よ。いくらなんでもそこまで許可を与えるのは、目の前の敵に刃物を渡して殺しても構わないといっているのと変わりません」

提督「お前たち二人はそんな事をしないと私は信用している。私の中では、二人はもう他の艦娘の子達と同じく仲間だ」

空母棲姫「それでもダメです。他の方々が不安に思うはずよ」

提督「ふむ。ならば皆が不安に思わなければ良いんだな?」

空母棲姫「……………………」

提督「どうだ?」

空母棲姫「……良いでしょう。必ず貴方を説得してみせます」

…………………………………………。
365 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/24(日) 17:31:34.55 ID:byy5ee08o
開発妖精・建造妖精「出来たよー」

空母棲姫「馬鹿ですか貴女達は」ツネー

開発妖精「いひゃいいひゃい!? な、なんでぇぇえ!?」

空母棲姫「敵の兵装を造ってしまうだなんて何をやっているんですか。わざと失敗させるという手もあったでしょう」ジィー

開発妖精・建造妖精「勿体無いし……提督さんが信頼してるし……」

空母棲姫「……はぁ。どうしてこうもお人好ししか居ないんですか……」

提督「諦めろ。お前が今まで私へ築き上げた信頼の賜物だ」

空母棲姫「私は常識的にしていただけだというのに……」

利根「それが信頼を生んだのじゃよ」

飛龍「そうですよ。少しずつ、他の皆にも存在を打ち明けて良いと私は思います」

ヲ級「!! そうすると、自由に、お散歩、できる?」キラキラ

提督「範囲は限られているが、出来るようになるぞ」

ヲ級「やった! 姫、その時は、一緒にお散歩、しよ?」ニパッ

空母棲姫「……はぁ。どうしてこうなったのでしょうか……」

瑞鶴「まあ……なんとなく予想できたけど」

響「そうだね。二人なら間違っても襲ってこないって信用できるよ」

空母棲姫「……本当、どうしてこうなったのかしら」

提督「だが、常に警戒されていて監視されるのも気分が悪いだろう?」

空母棲姫「…………それは……そうですが……」

提督「そういう事だと思っておくと少しは気が楽になるんじゃないか?」
366 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/24(日) 17:31:52.34 ID:byy5ee08o
空母棲姫「……納得はしたくないけれど、そう思っておく事にするわ。本当は私達に気遣いはしなくても良いというのは忘れないで頂戴ね?」

提督「頭の片隅の外に置いておく」

空母棲姫「もう……」

利根「……ふーむ。なんだか振り回す旦那と、それを受け入れる嫁という風に見えるぞ」

響「なるほど。確かにそう見えるね」

空母棲姫「よ、め……?」

提督「…………」

ヲ級「姫、お嫁さんに、なるの?」

空母棲姫「……利根? ちょっとこっちで話をしましょう」ニッコリ

利根「な、なんじゃその満面の笑顔は!? 酷く怖いぞ!?」ビクッ

空母棲姫「それはそうでしょうね。私は今、怒っているもの」ガシッ

利根「ひっ!?」

空母棲姫「提督。少し教育してきますので、偵察機の発艦は後でお願いします。──そうですね。ロープもお借りします」ズルズル

利根「な、なぜ怒るのじゃああああああああ!!?」ズルズル

飛龍「……連れていかれちゃいましたね」

提督「……まったく利根の奴め。空母棲姫にあんなことを言ったらああなるくらい分かっていただろうに」

瑞鶴「でも……正直、私もそんな風に見えたかも」

ヲ級「ねー」

提督「……二人とも、空母棲姫の前で言うと吊るされるぞ」

瑞鶴「そ、それは嫌かなぁ……」

ヲ級「口は、災いの元……」

開発妖精・建造妖精(……なんだかんだで提督に染められちゃってるなー)

…………………………………………。
367 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/04/24(日) 17:32:47.38 ID:byy5ee08o
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。

旦那が提督で嫁が空母棲姫って良いカップリングに思えてしまう。
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/24(日) 18:42:49.70 ID:bVMXRIwR0
2号さんに最適かも

本妻を立てつつ、しっかりフォローしてくれそう
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/24(日) 18:46:18.05 ID:YutYJhIBo
乙です
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/24(日) 19:19:22.96 ID:BQwVf0n5O
まさに良妻賢母だね
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/24(日) 20:59:25.08 ID:7cy15FnfO


姫ルート、書いてくれてもいいのよ?
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 03:30:45.01 ID:+W7xeIasO

姫が艦娘を吊るすとか予測外すぎてワロタ
嫁は夫に似てくると言うしね、仕方ないね
373 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/04(水) 21:41:03.31 ID:AlRXC7gio
提督「──それで、1編隊には少しばかり多いが、この髑髏型偵察機を誰が使うかだが」

空母棲姫「飛龍がするべきです」

ヲ級「久し振りの、艦載機……!」ワクワク

飛龍「空母棲姫さんが一番だと思います」

利根「我輩は水上機しか分からぬからパスじゃ」

提督「……見事に意見が分かれてしまった」

空母棲姫「飛龍……なぜ私を候補に挙げたのかしら?」ジィ

飛龍「だって、この中で艦載機運用能力が一番高いのって空母棲姫さんだからですよ。……悔しいですけど、私では同じ条件で勝てそうにありません」

利根「……まあ確かに、制空権を確保されているのにも関わらず的確に相手へ攻撃を仕掛けるなどという芸当が出来るのはお主くらいじゃのう」

ヲ級「んー、そうだよね。姫、やろ?」

空母棲姫「…………」

提督「だそうだが、どうする空母棲姫?」

空母棲姫「……悩みます」

ヲ級「どうして?」

空母棲姫「敵である私に兵装を本当に与える直前にまで来てしまった事と、提督を説得出来るという自信がほとんど無くなってしまって私が折れてしまいそうだからよ……」

提督「よし。そのまま折ってしまおう」

空母棲姫「軽々しく言わないで下さい……」

提督「ふむ……。──空母棲姫、私に力を貸してくれないだろうか。今の私には、お前の力が必要だ」

空母棲姫「……その言い方はズルいです。断れないじゃないですか……」

提督「私はズルい人間だよ。──そして飛龍にも頼みがある」

飛龍「? なんですか?」
374 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/04(水) 21:41:39.78 ID:AlRXC7gio
提督「この髑髏艦載機を取り扱えるか試してみて欲しい。もし可能であれば、その技術を取り入れて飛龍たち空母の強化にも繋がる。……もしかすると、下田鎮守府と全面戦争する可能性だってゼロではないからな。備えはあればあるほど良い」

利根「全面戦争とは怖い単語じゃのう……」

提督「その他にも、あのレ級がいつ来るかも分からん。飛龍と加賀の二人でも制空権を確保できなかった事を考えると、あいつ自身も艦載機運用能力は高い。こちらも強化が出来るのならばするべきだ。……恐らく、あのレ級は狙った獲物を逃さない」

飛龍「……なるほど。あれ一隻であの制空力は確かに脅威です。どんな手を使ってでも、私達は提督をお守りします!」

提督「こら飛龍。『どんな手でも』なんて軽々しく言うんじゃない。お前達が私を大事にしてくれるのは分かっているが、それも限度を考えろ。まずは自分の身を守れ。他人の事を気にするのはそれからだ」

飛龍「ぅ……はい……」シュン…

瑞鶴「…………」ジー

響(どうしたんだい、瑞鶴さん)ヒソ

瑞鶴(ん……良いなって思ってね)ヒソ

響(……うん。私もそう思うよ)ヒソ

提督「では二人とも、頼んだぞ。──まずは空母棲姫。発艦後、海面ギリギリの高度を維持しつつ沖へ向かえ。それから下田鎮守府へ向かわせろ」

空母棲姫「分かりました」

提督「次に飛龍。同じく発艦後、海面ギリギリの高度を維持しつつ沖へ向かい、そのまま旋回や最高加速、最高速度、その他諸々を覚えろ」

飛龍「了解です!」

提督「では、やれ!」

空母棲姫・飛龍「はい!」

ヒュパッ──!

空母棲姫「──ん、私の方は少し動きが重いけれど大丈夫よ」

飛龍「……あの、私の方はうんともすんとも言いません」

提督「む?」

飛龍「というより、意識の連結が出来ません……。これ、艦載機ですよね……?」

提督「……すまん。私は艦娘や深海棲艦ではないから分からん。空母棲姫、何か心当たりはあるか?」
375 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/04(水) 21:42:14.82 ID:AlRXC7gio
空母棲姫「……もしかすると、艦娘は深海棲艦の装備を使う事が出来ないのかもしれないわね」

提督「識別信号でもあるのか?」

空母棲姫「いいえ、そんなものは無いわ。……ただ、私もこればかりは感覚で使っているものだから説明が難しいわね。飛龍もそうでしょう? 艦載機をどうやって自在に操っているかなんて、考えた事無いわよね?」

飛龍「えっと、はい」

提督「ふむ……。開発妖精、深海棲艦の技術を艦娘用の艦載機に移転できるか?」

開発妖精「それはちょっと難しいっていうか無理かも……何もかも違い過ぎて……。提督の持ってたサンプルも分解して理解するのに苦労したよー……」

提督「そうか……残念だ……」

利根「……しかし、どこからそんなサンプルを手に入れたんじゃ?」

提督「お前と一緒に釣ったアレだ」

利根「なんでそんなもの持って帰ってきたのじゃ……」

提督「何かに使えるかもしれんと思ってな」

瑞鶴「ま、まあ……それで今回はこうして空母棲姫さんの艦載機を作れた訳だし、ね?」

響「……少し気になったんだけど、良いかな」

提督「どうした」

響「確か横須賀から下田まで直線距離でも100kmくらいはあったよね? そんなに燃料は保つの?」

空母棲姫「私達の兵装に燃料は必要無いわ。強いて言うならば、後悔の念や怒りなど、負の感情が燃料であり、全てのエネルギー源よ」

利根「という事は、今もお主は何か負の感情を持っているという事かの?」

空母棲姫「そうなるわね。貴方達に対しては無いけれど、深海棲艦としての私の中にある蓄積された負の感情を使っているわ。──ああ、なるほど。だから艦娘は深海棲艦の兵装が使えないのね」チラ

飛龍「えーっと……私だって悔しいって思ったり悲しい気持ちになったりしますよ?」

空母棲姫「その度合いが違うのでしょうね、きっと」
376 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/04(水) 21:42:44.87 ID:AlRXC7gio
響「……でも、ヲ級さんは負の感情があるように見えないけれど」

ヲ級「ね、ね。何か、遊ぶ道具って、無い?」

建造妖精「んー……ここは遊び場じゃなくて工廠だからねー……」

ヲ級「ぁぅー……」

開発妖精(この子、暇なんだろうなぁ……)

空母棲姫「あの子もあの子で何か抱えているのだと思うわ。私は怒りと後悔がほとんどだけれど、全員が全員同じとは思えないもの」

提督「深海棲艦にも色々とあるのだな」

空母棲姫「そうよ。……ただ、私達は例外だと思うけれど」

利根「人間や艦娘に心を開いてくれる深海棲艦など滅多に居らんじゃろうなぁ」

空母棲姫「利根、もう一度吊るしてあげようかしら?」ニッコリ

利根「ひっ……!」ビクンッ

提督「だが、そうしてくれたからこそ今の私達が居る。お前も、あの時に様子を見るという事をしてくれたからここに居るんだ」

空母棲姫「…………確かに、嫌いではありませんが……」

提督「素直になっても良いんだぞ。私は勿論、ここに居る者達はお前達を仲間だと認めている」

空母棲姫「……そうやって篭絡した子は何人居るのかしら」

提督「さて。篭絡しようと思ってやっている訳ではないから分からん」

利根「この鎮守府に居る全員が篭絡されておるようなものではないか」

提督「空母棲姫、後で利根を吊るそうか」

空母棲姫「良いですね。二人で合わせて時間も倍という事でどうでしょう」

提督「良い案だ」

利根「さっきから我輩の扱いが酷くないか!?」

提督「こうやってお前をイヂるのはとても心地良い」ワシャワシャ
377 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/04(水) 21:43:29.64 ID:AlRXC7gio
利根「むぅー……。いい加減にせぬと拗ねるぞ……」

提督「それは困るから、ここらで止めておこう。拗ねられてしまったら愛でるの範疇を超えてしまう」

利根「もう半分拗ねておるわ。……後で背中にのしかからせてくれたら許すのじゃ」

提督「その程度で良いのならば」

利根「うむ! 約束じゃぞ!」

提督「ああ、約束だ」

空母棲姫「……………………」

空母棲姫(……本当、仲が良いわね。少し……少しだけ、羨ましいです)

提督「ふむ」

空母棲姫「…………? 何かしら。私の顔に何か付いていて?」

提督「よく観察するとお前は分かりやすい──いや、分かりやすくなってきた、と思ってな」

空母棲姫「……………………なんですって?」

提督「そのままの意味だ。怒っている時など顕著に。今のように哀愁を感じている時も弱々しい表情をするようになっている。嬉しい時も口元は笑っているしな」

空母棲姫「……貴方達が悪いのよ、貴方達が」

提督「良い悪事だ。これからもいつも通り接するとしよう」

空母棲姫「もう……」

飛龍(あ、嬉しそうな顔ですね)

利根(なるほど。確かに分かりやすいのう)

瑞鶴(……なんだか、ここの加賀さんに似てる?)

響(旦那さんとお嫁さん……うん。やっぱりそう見えるね)

空母棲姫「──沖へ出たわ。これから周囲を警戒しつつ下田へ向かいます」

提督「ああ。任せた」

…………………………………………。
378 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/04(水) 21:45:24.10 ID:AlRXC7gio
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。

GWは身体が疲れます。皆さんもお気を付けて……。
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/04(水) 21:56:29.52 ID:PDgHomI7o
乙です
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/04(水) 22:33:29.44 ID:1STTOT+x0

さすが良妻空母
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/05(木) 00:01:52.78 ID:Pgf1cMBLO
普段厳しい姫の嬉しそうな顔なんて反則だよな
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/05(木) 00:52:46.80 ID:GbtOAL6J0
乙 姫可愛い
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/05(木) 15:44:52.61 ID:2vICxVQlO
このスレのせいでイベントに姫が出てきたら倒す自信ないぞ
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/06(金) 05:38:49.01 ID:OA9c+gtOO
うちに空母棲姫が着任してくれません
どこでドロップするんですか?
385 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/12(木) 01:55:14.23 ID:Jqc775X6o
空母棲姫「……妙ですね」

提督「妙? 何かあったのか」

空母棲姫「何かが『あった』というよりも、あるべきモノが『無い』と言った方が正しいです」

利根「あるべきモノ……?」

空母棲姫「海と空、その両方の哨戒が無いわ。所謂がら空きの状態よ」

瑞鶴「がら空きって……おかしいわね。最低でも偵察機で哨戒はしていたわよ。私も何回かはやった事があるし……」

響「鎮守府近海の警備も駆逐艦四隻で随時やっていたよ」

空母棲姫「……そのどちらも見当たらないわ。もう鎮守府全体が見えている距離なのに……どういう事なのでしょうか……」

飛龍「……防衛に回すべき戦力すら使って深海棲艦を倒しているのでしょうか」

提督「流石にそこまでおかしい事をするとは思えんが……。一体どうなっているんだ。空母棲姫、ギリギリまで近付けるか?」

空母棲姫「分かりました。山を背にしつつ建物内部の様子を調べます」

空母棲姫「…………やけに艦娘の姿が少ないわね。本当に防衛に回すべき戦力すら戦闘に駆り出しているのかしら」

瑞鶴「えっと……数が少ないように見えるのは、ほとんどの艦娘が自分の部屋で休んでるからだと思う。休める時に休まないと、いつ無理を言われるか分からなかったから……」

空母棲姫「なるほどね。……それにしても、嫌な雰囲気の漂う鎮守府ですね。まるで、悪魔でも住んでいるかのようです」

瑞鶴・響「……………………」

空母棲姫「貴女達の想像している意味とは違うわ。もっと別の、何か異質な雰囲気よ」

瑞鶴「……異質?」

空母棲姫「ええ。言葉で表現しにくいけれど、化け物が潜んでいるかのような……そんな異質さよ」

提督「二人とも、心当たりはあるか?」

響「……私は無いかな。あの司令官は化け物っていうより権力と暴力で捻じ伏せる人だったしね」

瑞鶴「私も響ちゃんと同じ。心当たり所か見当すらつかないわ」

提督「そうか……。空母棲姫、撃墜されても構わん。隠密に調べられるだけ調べてくれ」

空母棲姫「分かりました」

…………………………………………。
386 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/12(木) 01:55:40.73 ID:Jqc775X6o
ヲ級「!」ピクン

提督「む。どうした?」

利根「何かあったのか?」

ヲ級「ご飯の仕込み、そろそろ、しなきゃ!」

空母棲姫「…………」

利根「ほう、もうそんな時間か。通りで腹が空いておる訳じゃ」

提督「……そうだな。行ってきて良いぞ。瑞鶴、利根、見付からないように先行を頼む。そして、空母棲姫は任務中だと伝えてくれ」

利根「うむ、心得た」

瑞鶴「うん、分かったわ」

ヲ級「いってきまーす!」タタタ

瑞鶴「ああ、こら! 走らないの!」タタタッ

利根「ヲ級は元気じゃのう」タタッ

響「いってらっしゃい」フリフリ

空母棲姫「……あの、提督」

提督「そうだな……空母棲姫は機体を回収してからなら良いぞ。恐らく配膳の頃になると思うが──」

空母棲姫「待って下さい。機体を回収と言いましたか?」

提督「ああ、そう言ったぞ」

空母棲姫「……もう突っ込みません。お前なら問題無い、と仰るのでしょう?」

提督「よく分かっているじゃないか」

空母棲姫「いい加減、慣れます。……貴方はお人好し過ぎます。いつか、足元を掬われるわよ」

提督「それくらいの見分けは出来ているつもりだ」
387 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/12(木) 01:56:17.87 ID:Jqc775X6o
空母棲姫「またそうやっ──偵察機が艦娘に見付かりました」

提督「む、見付かってしまったか。仕方が無い。もっと沖の方へ逃げるように動け。もし残れば低空飛行で戻らせよう」

空母棲姫「分かりました。…………? おかしいですね。撃墜しようとしてきません」

提督「対空兵装をまともに装備していないのか?」

空母棲姫「いえ、駆逐艦四隻ですが対空砲は装備しています。……まるで、偵察機を確認しているかのようですね」

提督「……ふむ」

空母棲姫「……………………何の冗談かしら。何もしてこなかったわ」

提督「……無駄な戦闘を避けたかったという訳でもないのか? 傷を負っていたりはしていたか?」

空母棲姫「少なくとも無傷でした。砲を向けてくるという事もしてきませんでしたので、本当にどういう事か……」

響「……ねえ、駆逐艦が四隻って言ってたよね。艦名まで分かるかい?」

空母棲姫「艦は暁型が三隻と不明の艦が一隻よ。……そうね、貴女を白くしたような艦娘だったわ」

響「装備は全員、両脇に高射装置付きの高角砲と水上電探だったのかな?」

空母棲姫「……なぜ分かったの?」

響「やっぱり」

提督「……なるほど。その駆逐艦たちは下田鎮守府の近海警備という訳か」

響「うん。この辺りでその編成、その装備なら下田鎮守府で間違いないと思う」

空母棲姫「でも、敵の偵察機を見過ごすなんて、どういう事なのかしら……。戦果を挙げているという話だったけれど、こんな事をしていたら戦果なんてとても──」

空母棲姫「…………」

提督「もしかしたら、そういう事かもしれんぞ」

空母棲姫「いえ、でもそれは……」

響「? どういう事なんだい?」
388 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/12(木) 01:56:44.55 ID:Jqc775X6o
提督「空母棲姫やヲ級以外にも人間へ協力している深海棲艦が居る、という可能性があるという事だ。そして、その深海棲艦には艦載機を扱う者が居る」

響「……確かに居てもおかしくないと思うけれど、どっちかって言うと鹵獲して利用しているって言った方がまだ信じられるかな」

提督「これは提督と総司令部にだけ言われている事だが、鹵獲は禁忌とされている」

響「禁忌? なぜなんだい?」

提督「鹵獲した鎮守府は、必ずその深海棲艦によって破壊されてきている。一体何をしたのかは分からんが、どの深海棲艦も異常な強さになったとの事だ。無論、鹵獲された深海棲艦も協力なんてしていない」

響「……じゃあ、下田に居る深海棲艦は自らの意思で協力しているって事?」

提督「そうなる。……あくまで下田鎮守府に深海棲艦が居れば、の話だが」

空母棲姫「……本当に居るかもしれませんね」

提督「ほう」

空母棲姫「あの鎮守府から感じる化け物のような雰囲気は、凶悪な深海棲艦のモノだと言われると納得できます。恐らくですが、あの島で会った戦艦と同等かと思われます」

提督「だが、なぜ深海棲艦が仲間を大量に沈めるなどという事をするんだ? その理由が思い付かん」

空母棲姫「それは……私も分かりません。そんな事をして何があるのか……」

提督「……担当海域を広げさせ、大きな権力を手に入れてから総司令部を乗っ取るつもりか?」

空母棲姫「少し無理があります。非常に難しく時間も掛かる上、事を知った者達が蜂起してしまえば簡単に叩き潰されてしまいます」

提督「そうなるな。……一体、何を考えているんだ?」

空母棲姫「分かりません……。ですが、用心するに越した事はないかと」

提督「ああ。気を付けておくとしよう。──気を付けるにあたってだが、やはり空母棲姫の偵察機は回収しておきたい。これからも下田鎮守府を偵察する際にはその機体を使っていこう」

空母棲姫「分かりました。必ず帰還させます」
389 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/12(木) 01:57:11.01 ID:Jqc775X6o
響「…………」ジー

空母棲姫「? 何かしら」

響「なんだか嬉しくなったから、つい」

空母棲姫「嬉しく?」

響「うん。そうやって空母棲姫さんが協力してくれていると、凄く心強いからね」

空母棲姫「……煽てても何も出ないわよ」

響「私の正直な感想さ。空母棲姫さんは信頼できる。それが、より一層強く思えたよ」

空母棲姫「……まったくもう。貴女も提督に影響されてしまったのね」

響「きっと、空母棲姫さんの事を知った人ならばそう思うさ。──司令官、今度、暁たちに会わせてみないかい?」

提督「ふむ……そうだな。悪くない。まずは暁と雷、電の三人に紹介してみるか」

空母棲姫「本当に大丈夫かしら……」

提督「私を信じろ」

空母棲姫「……良いですね。提督の言葉なら、少しだけ安心できます」ニコ

提督「ほう」

空母棲姫「!!」ハッ

空母棲姫「…………」フイッ

響(照れてる)

提督「…………」ポン

空母棲姫「……なぜ、頭に手を?」

提督「ゆっくりで良い。ゆっくりと、歩くような早さで」

空母棲姫「……………………」コクリ

響(……なるほど。これは確かに『篭絡』かもしれない。随分と優しくて、相手に任せた篭絡だけどね)

…………………………………………。
390 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/12(木) 01:58:47.71 ID:Jqc775X6o
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ると思います。

次からまた日常パートになるかも。もしかすると、最後のほのぼのパート?
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/12(木) 02:00:36.72 ID:OekC/ruKo
乙です
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/12(木) 05:53:28.68 ID:cSIDKKxG0

姫に足元を掬われるなら本望だ(夜戦的な意味で)
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/12(木) 20:46:44.84 ID:6GgcEUjvO

姫攻略か、胸が熱いな
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/15(日) 23:39:14.25 ID:jDe4wye30
今追いついた
作品の完結を期待します。
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/15(日) 23:56:31.68 ID:jDe4wye30
やっと追いついた
完結に期待
396 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/23(月) 19:19:49.63 ID:kMfYaA4Ao
金剛「──二日後に、私をデスか?」

提督「ああ。幽霊騒ぎもほとんど収まってきている。そろそろ金剛をこの部屋から出しても良いだろう」

金剛「……大丈夫でショウか」

提督「……正直に言うと、初めは一悶着があるだろう。だが、大きな問題にはならないと信じている」

金剛「ならないではなく『信じている』なのデスか?」

提督「そうだ。確実だとは私も自信を持って言えない……だが、私はあの子達を信じる。きっと理解してくれる、と」

金剛「──ハイ。私も、テートクとこの鎮守府に居る皆さんを信じマス」ニコ

提督「ああ。きっと大丈夫だ」

金剛「……ところでテートク。そろそろもう一人の私とお話ししマスか?」

提督「嬉しい申し出だが、無理はしていないか?」

金剛「ハイ。今日も調子はベリーファイン、デス!」

提督「…………」

金剛「……あの、テートク? どうかしまシタか?」

提督「いや、一つ気になった事があってな」

金剛「気になった事、デスか?」

提督「うむ。意識を引っ込めた方とも会話が出来るのか、とな」

金剛「えーと……?」

提督「つまり、お前と中に居る金剛と同時に話す事は可能かどうか、という疑問だ」

金剛「んー……似たような事ならば出来ると思うデス」

提督「というと?」

金剛「表に出ている方が、中に居る方の言葉を代弁するという方法デス」
397 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/23(月) 19:20:17.04 ID:kMfYaA4Ao
提督「なるほど。それは負担が少ないのか?」

金剛「どうでショウか……やってみマスね」

提督「頼む」

金剛「では──」スッ

提督「む?」

金剛「…………」パチッ

提督・金剛「…………?」

金剛「えーっと、少し聞いてみるデス」

提督「お前もそう思ったか。聞いてみてくれ」

金剛「ハイ。……………………どうやら、まずは私とテートクを会わせたかったらしいデス。……気を遣い過ぎデース」

提督「なるほど、そういう事か。……なんだか申し訳ないな」

金剛「イエス……」

提督「……しかし、間接的にとはいえ三人で会話をする事も出来るのは良い発見だ」

金剛「良い発見、デスか?」

提督「ああ。今までは表に出ている方としか会話をしていなかっただろう? つまり、部屋の中に三人居るのに一人だけ除け者にしているような状態だった。それが解消できると分かったのは良い事だ」

金剛「なるほど。確かにそれはグッドな発見デース!」

提督「それで、負担の方はどうだ? やけに疲れるとか違和感とかはあるか? 中に居る金剛も答えてくれ」

金剛「……………………この子に負担は無いようデス。違和感は声を出そうとしているのに声が出ていない事くらいだそうデス」

提督「ふむ、そうか。お前はどうなんだ?」

金剛「んー……なんと言いマスか、変な違和感はあるデス」

提督「変な違和感?」
398 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/23(月) 19:20:43.29 ID:kMfYaA4Ao
金剛「イエス。抽象的デスが、ぽわーっとしているような、ふわふわとしているような……そんな、寝起きでまどろんでいるような感じネ」

提督「ふむ……。あまり良くない事なのだろうか」

金剛「そうなのデスか?」

提督「いや、私の勝手な推測だ。根拠も何も無い」

金剛「……そう言っている時のテートクの言葉は当たっている事が多かったデス。何かあるかもしれまセンね」

提督「そう不安にさせるんじゃない。中に居る金剛も不安に思うだろう。──中に居る金剛も違和感などはあるか?」

金剛「……………………特には無いそうデス。強いて言うならば、心の中で会話しているみたいなこの状態が不思議な感覚だそうデス」

提督「ふむ、そうか。二人とも、何か異常があればすぐに言うんだぞ」

金剛「分かりまシタ。この子も頷いてくれたデース」

提督「うむ。……しかし、一つ疑問に思った事があるんだが」

金剛「? どうかしまシタか?」

提督「今表に出ている金剛が姉で、中に居る金剛が妹のような立ち位置になっていると思ってな。何かあったのか?」

金剛「いえ、特に何かがあったという事は無いデス。自然とこうなりまシタ」

提督「ふむ。そうか」

金剛「……………………」ホッコリ

提督「? どうした? そんな優しい笑顔を浮かべて」

金剛「この子から小動物のようにシスターと呼ばれたので、庇護欲が掻き立てられまシテ」

金剛「ん……?」

提督「! どうした金剛」

金剛「……ソーリィ。そろそろ限界のようデス。頭がボーっとしてきまシタ……」

提督「そうか……。ゆっくり休んでくれ」ナデ
399 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/23(月) 19:21:09.78 ID:kMfYaA4Ao
金剛「んー……♪ グッナイ、テートク……。また、こうや……て……」スッ

提督「……おやすみ」ナデナデ

金剛「!」ピクン

提督「おかえり、金剛」ナデ

提督「気を遣ってくれてありがとう」スッ

金剛「いえ、私はこのくらいしか役に立てないデスから……」

金剛(……最後の一撫では、わざとだったのでショウか? ……嬉しいと思うのは、良くないのに)

提督「そんな事はないから安心しろ。そして、些か気にし過ぎだ。もっとお前のやりたいようにやっても良いんだぞ」

金剛「えっと……ハイ」

提督「うむ。──ところで、体調は大丈夫か?」

金剛「ハイ。それに関してはノープロブレム、デス」

提督「ふむ」ジッ

金剛「…………? あ、あの、テートク? どうかしたデスか?」

提督「少しずつだが、お前の事が分かってきたからな。さっきの言い方から察するに、気にしなくても良いくらいの何かがあるのだろう?」

金剛「! うぅ……ハイ……」

提督「どういう状態なんだ?」

金剛「……ほんの少しデスが、頭がポーっとしマス。重力が半分になったような、軽い浮遊感もあるデス」

提督「そうか。時間も時間だ。今日はもう寝てしまおう」

金剛「ハイ。分かりまシタ」

提督「それと、二日後に備えて心の準備はしておいてくれ」

金剛「心の準備デスか?」
400 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/23(月) 19:21:36.81 ID:kMfYaA4Ao
提督「ああ。あくまでその時の金剛と私は初対面だ。それを忘れないでくれ」

金剛「なるほど。本来ならば知らない事を知っていたりしているとおかしい、という事デスね」

提督「そういう事だ。頼むぞ」ポンポン

金剛「あ、また……」

提督「このくらいならば良いだろう?」

金剛「むー……」

提督「不安ならば姉に聞いてみると良い。きっと笑われるぞ」

金剛「……本当にそうなりそうデース」

提督「それと、二日後は私がこうしても困った顔をしないでくれ」

金剛「う……が、頑張りマス!」

提督「よろしい。──では、また明日な、金剛」スッ

金剛「ハイ。おやすみデス」

提督「おやすみだ」

ガチャ──パタン

金剛「……………………」

金剛「シスター……本当にこれで良いのデスか……?」

……………………
…………
……
401 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/23(月) 19:22:33.11 ID:kMfYaA4Ao
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。

疲れてて更新が遅くなってごめんよ。
そして、もうちょっとだけほのぼのパートは続くんじゃよ。
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/23(月) 20:52:03.70 ID:2PBF6uV2o
乙です
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 22:24:32.91 ID:1Ozv8dfAO
長門が吊されたシーンはカットなのかな?いつかはやってくれるのか?
404 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/05/24(火) 01:25:27.94 ID:2Gu4mc1ho
>>403
完全に忘れてました。どこかで組み込みます。必ず。絶対に。何があっても。
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/26(木) 02:14:03.89 ID:UPZ/iap9O
スレタイで金剛が提督してるのかと思ってたから見てなかったけど
前スレから読み始めた面白かった、おかげでここ2、3日寝る時間削って読んでた
ヲーちゃんも姫も可愛い
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/26(木) 05:09:02.28 ID:i9v/WSUJO
深海悽艦って艦娘が強い負の感情を抱いたまま沈んだ姿
だとしたら間宮も一応艦娘で沈んだ場合に深海悽艦になったら補給悽艦とにでもなるのか?
イベントボスで味方が全員沈んだ時に生きてれば一度だけ補給で全艦復活とか
407 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/02(木) 10:00:30.04 ID:4Y1+l+d4o
暁「私達に特別な用事って何かしら?」トテトテ

雷「きっと、とっても大事なコトよ! 司令官が特定の艦娘を呼ぶだなんて滅多に無いもの!」トコトコ

電「はわわ……! 一体どんな事なのでしょうか……!」トコトコ

響(……さて、大丈夫だとは思うけど、暁がちょっと不安かな)トコトコ

雷「着いたわ! ノックするわね!」スッ

暁「あ! 私! 私がする!」

雷「ちゃんと三回ノックするのよ?」

暁「ぅ、バカにしないでよね。そのくらい分かってるわよ」

響(これは知らなかったと見た)

コン……コン……コン……

提督「入れ」

ガチャ──パタン

響「司令官、言われた通り来たよ」

雷「それで、特別な用事って何? 何なのかしらっ?」キラキラ

電「…………!」ワクワク

暁「…………っ」ソワソワ

提督「その事なんだが、まずは約束して欲しい事がある」

暁「約束?」

提督「ああ。今日の事は非常にランクの高い機密だ。この事は誰に何を聞かれようと、鎮守府から漏らさないと約束してくれ」

電「ハ、ハイなのです!」ピシッ

暁「わ、分かったわ!」ピシッ

雷「はいっ!」ピシッ

響「了解だよ、司令官」ピシッ
408 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/02(木) 10:01:02.91 ID:4Y1+l+d4o
提督「それともう一つ。絶対に大声を出さないでくれ。良いな?」

四人「!」コクリ

提督「よろしい。──二人とも、出てきて良いぞ」

ヲ級「はーい!」ヒョコッ

空母棲姫「…………」スッ

三人「────ッ!!?」ビクッ

暁「ピ──!?」

響「はい、静かにね暁」ムギュ

暁「んぎゅーっっ!!?」モゴモゴ

雷・電「…………」

響(二人は顔が真っ青になって声も出ない、か。やっぱりそうなるよね)

提督「見ての通り、二人は深海棲艦だ。だが、この二人は私や利根の命の恩人でもある」

電「……え?」

空母棲姫「またそうやって誤解を招くような……」

提督「事実だろう? あの時、食糧を確保できるという保証なぞ無かった。そんな中で大量の魚や貝、海草を採ってきてくれたのは誰だったかな?」

空母棲姫「それは……」

提督「私ならばなんとか出来るだろう──と思うのは間違いだ。どうにもならん時なんていくらでもあるし、判断のミスもある。あの時はどうにもならない状況だったのはお前も分かっているんじゃないのか?」

空母棲姫「…………」

提督「それに、私の悩みを解消してくれた事も忘れんぞ」

空母棲姫「あれは──……いえ、貴方には何を言っても勝てそうにないわ……」

ヲ級「私、あの時の、魚が一番、好き! 今度、採ってきて、良いっ?」キラキラ
409 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/02(木) 10:01:29.92 ID:4Y1+l+d4o
提督「もう少し状況が落ち着いてからならば良いぞ。きっと、間宮や伊良湖だけでなく皆が喜ぶだろう」

ヲ級「わーい!」ピョンピョン

三人「……………………」パチクリ

響(なんとなく、こうなるのは予想できたよ)

電「……あの、司令官さん」

提督「どうした、電」

電「……私の勘違いでなければ、二人は敵……ですよね? 空母ヲ級と空母棲姫ですよね……?」

提督「間違ってはいないが、大きく違う点がある」

雷「違うところ……?」

提督「そうだ。見ての通り二人は敵対していない。むしろ、協力してくれているくらいだ。さっきも言ったが、私と利根がこの鎮守府を離れて島暮らしをしている際にも生きる手助けをしてくれた。私にとって、この二人は皆と同じく仲間だ」

三人「…………」ジー

ヲ級「?」ニパー

雷「……司令官、二人が敵じゃないっていうのは司令官を見て分かったわ。けど、どうして私達にそれを教えたの?」

提督「簡単だ。二人は深海棲艦である以上、身を隠しながら行動しなければならない。それをなんとかしてやりたいと思ったからだ」

電「えっと……皆が受け入れてくれれば、鎮守府の中を自由に歩けるようになるから……なのです?」

提督「そういう事だ。それでまずは電たちに紹介する事にした」

雷「……でも、流石にちょっと怖いわ」

響「まあ、そうなるよね」トコトコ

暁「ひ、響……?」

響「二人とも、調子はどうだい?」

ヲ級「今日も、元気、だよ!」

空母棲姫「……悪くはない」

響「それは良いって事なのかな?」
410 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/02(木) 10:01:56.77 ID:4Y1+l+d4o
空母棲姫「む…………はぁ……そういう事ね」

響「…………」ニヤ

空母棲姫「本当、貴女はこの方に影響されているわね?」

響「されるなっていう方が無理だと思うよ」チラ

空母棲姫「それもそうね」チラ

提督「褒め言葉として受け取っておこう」

空母棲姫「もう……これなんだから……」

三人「…………」

電(あれ……? なんだか普通なのです……)

雷(なんか深海棲艦とか敵って感じがしないわ……。深海棲艦なのに……)

暁(…………)

暁「……思ったんだけど、どうして響はその二人と仲が良いの?」

提督「簡単な話だ。教える前に響にバレてしまった。それで三人よりも先に交流していたって所だな」

暁「……そうなのね」

提督「ああ。良かったら響と同じく仲良くしてやってくれ」

暁「……私はもう少し様子を見るわ」

雷「じゃあ、私はこれからちょっとだけお話ししてみようかしら」

電「わ、私もなのです」

響「私はいつも通りかな」

暁「う……わ、分かったわよ! 私も一緒に居るわ!」

提督「お姉さんは辛いな」

暁「うぅー……」

空母棲姫「無理はしなくても良いのよ?」

暁「この人に言われると、なんか複雑な気分……」

提督「まあ、直に慣れるだろう」

暁「ううぅー……」

…………………………………………。
411 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/02(木) 10:02:57.65 ID:4Y1+l+d4o
今回はここまでです。また一週間後くらいにきますね。

この後、第六駆逐隊の三人がどうなるかは想像するまでもないですね。
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/06/02(木) 15:27:05.91 ID:oAzYd+7Do
乙です
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/02(木) 22:27:58.88 ID:1kFL59wZ0

414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/10(金) 14:23:14.14 ID:i8UWGWzWO
一週間すぎたがまだか
415 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:06:10.10 ID:dCKzIXvTo
提督「──とまあ、今言ったように暁たちは空母棲姫たちと打ち解けたと言って良いだろう」

金剛「やっぱりデスね。あの二人ならばすぐに仲良くなれると思いまシタ」

提督「そして、お前もすぐに皆の中に溶け込めるだろう」

金剛「それは……どうデスかね? 皆さんにとって、私はやっぱり──」

提督「大丈夫だ。初めこそ動揺されるだろうが、すぐに受け入れてくれるさ。瑞鶴と響の時もそうだった。心配する事はないぞ」ポンポン

金剛「……ハイっ」ニコ

利根「うむうむ。そうじゃぞ」ニコニコ

利根(──うむ。良い雰囲気じゃのう。やはり提督はこの笑顔が一番じゃ。きっと、この笑顔を引き出せるのは金剛だけじゃろうなぁ)

利根(いや……『金剛』だから、なのかのう? 金剛であり『金剛』でもあるから、この笑顔に出来るのじゃろうか)

利根「うーむ」

金剛「? どうシタですか、利根?」

利根「なんだか今日は眠くなるのが早くてのう。すまぬが、我輩は先に寝るのじゃ。眠気には逆らえぬ」スッ

提督「……ふむ」

金剛「珍しいデスね?」

利根「こういう事もあるじゃろうて。──では、おやすみなのじゃー」

利根(しっかりと堪能しておくのじゃぞ、提督よ)ニヤ

ガチャ──パタン

金剛「グッナ……もう行ってしまいまシタ。なんだか今日の利根、不思議な感じでシタね?」

提督(……あいつめ、変な気を回したな)

提督「まったく……」

金剛「?」
416 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:06:42.60 ID:dCKzIXvTo
提督「まあ、あいつが深読みをしたという所だ」

金剛「深読み、デスか?」

金剛「──あ、なるほど」

提督「教えて貰ったのか」

金剛「ハイ。けど、本当にシスターは皆さんの事をよく分かっているデスね。私にはどういう事なのか検討もつかなかったデス」

提督「何年も一緒に居るから分かる事だ。そうでなかったら分からないのが普通だろう?」

金剛「……………………」

提督「うん?」

金剛「ぁ……い、いえ。なんでもないデス」

提督「……そうか」

提督(……下田の仲間達の事を、よく分かっていなかったのだろうか)

金剛「! ……あ、あの…………」

提督「どうした?」

金剛「私が何を考えていたのか、分かってしまったデスか……?」

提督「いや、分からんよ。出来るのは憶測くらいだ」

金剛「……なんだか、テートクならば私の考えていた事を言い当てそうデス」

提督「さて、それは分からんな」

金剛「…………? えっと、それはどういう…………あぅ……分かりまシタ……」

提督「……金剛、この子に何かを吹き込んでいるな?」

金剛「……………………テートクはこういう時に頑固になるから、何を考えていたのかも教えてくれなくなると言っていまシタ」

提督「…………」フイッ

金剛(顔を背けた……という事は、当たっているのデスかね?)

提督「ところで話は変わるが、明日の準備は出来ているか?」

金剛「正式に私が在籍するお話デスね。ハイ。ちゃんと頭の中でイメージトレーニングも出来ていマス」

提督「よろしい。ならば、最終確認として私と会話をしてみよう。明日の予行演習だ。──金剛、これからよろしく頼む」

金剛「ハイ。こちらこそよろしくデス」ペコ

提督「……ふむ。硬いな」

金剛「あう……硬いデスか」

提督「そうだな。硬い。もっと素直に自分を曝け出して構わんのだぞ?」

金剛「それは失礼のような……」

提督「……ふうむ。ならば──」

金剛「えっと、それでしタラ──」

提督「────────」

金剛「────? ────────!」

…………………………………………。
417 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:07:13.32 ID:dCKzIXvTo
利根「…………」ボー

利根「……綺麗な月じゃのう。星々も自己主張するかのように強く輝いていて良い夜空じゃ」

利根「…………」モグモグ

利根「うむ。うむうむ! ヲ級に空母棲姫め、また腕を上げおったな? 美味い饅頭なのじゃ。……まあ我輩一人じゃから、ちと寂しいがの」

利根「うーむ。誰かを呼んでみるかの? 筑摩……はまだ鎮守府に居らなんだな。まったく。一体いつになったらこの鎮守府にやってくるのじゃ。姉不幸者め」

利根「まず駆逐艦の皆はもう寝ておるじゃろうなぁ。軽巡の者もそろそろ寝る頃のはずじゃ。重巡は……たしか今日、軽空母の皆と酒を飲み交わしておるんじゃったか。我輩は酒が飲めぬから邪魔をする訳にもいかぬな」

利根「となると戦艦や空母の者たちじゃな」

利根「加賀や赤城はどうじゃろうか? ……無理じゃな。会話が続かずに饅頭を食い尽くされるだけじゃ。飛龍と蒼龍も今日は何か予定があると話をしておったのう。鶴姉妹は……なんだか寝ておりそうじゃから止めておくかの」

利根「戦艦は……正直、金剛型の三人とは特別仲が良いという訳でもないからのう……。簡単に話をする程度じゃし。それに、四人ではこの饅頭の量は少な過ぎる」

利根「という事で残るは長門じゃな。……む。いかん。長門の部屋はどこじゃったかの……?」

利根「……うーむ。仕方が無い。今日は一人で居る事にするかのう。流石にヲ級と空母棲姫の二人を呼ぶ訳にはいかぬしのう」

川内「──あれ? 利根さん?」

利根「うん?」クルッ

川内「やっぱり利根さんだー! どうしたの、こんな夜に? 夜戦?」

利根「どこに敵が見えるというのじゃ、どこに。そういう川内こそこんな夜にどうしたのじゃ? また夜戦病でも発症したのかの?」

川内「さ、流石にそれはもう無いかな。もう提督に吊るされたくないから……」

利根「クックッ。この鎮守府で一番吊るされておるからのう。──まあ、なんじゃ。これも何かの縁。一緒に饅頭でも食わぬか?」

川内「え、お饅頭!? 良いの!? やったー!」チョコン

利根「うむ。月を肴に饅頭を食べておったのじゃが、そろそろ一人は寂しくなってのう」

川内「あれ、提督と一緒じゃなかったの?」

利根「提督はちと用事があってのう。邪魔をせぬよう抜け出したのじゃ」
418 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:07:38.80 ID:dCKzIXvTo
川内「ふーん? 提督も忙しいよねー。あ、いっただきまーす!」パク

利根「どうじゃ? 塩味のある饅頭も美味いものじゃろう」

川内「本当だ、おいしー!! これ利根さんが作ったの?」

利根「我輩は料理なぞ出来ぬよ。これはお裾分けしてもらったものなのじゃ」

川内「という事は間宮さん達かな? へぇー、お饅頭にお塩っていけるものなんだねー」モグモグ

利根「たしか、塩味で甘さが引き立つとか言うておったぞ。不思議な話じゃよのう」

川内「あ! それ聞いた事がある! 西瓜に塩を掛けるってやつだ!」

利根「それと同じじゃな。──ところで川内よ、こんな時間に外に出てどうしたのじゃ?」

川内「ん? やっぱ夜が恋しくなってさー。部屋の中だと静かにしないといけないから外に出てきたんだー」モグモグ

利根「なるほどのう。本当に川内は夜が好きじゃなぁ」

川内「そりゃもうね! だって夜だよ! こう、血沸き肉躍るって言えば良いのかな? そんな感じだよ!」

利根「……やはり夜戦病が発症したのではないのか?」

川内「いやいや、本当にただ歩き回ってるだけだよ。前みたいに騒いだり海へ出ようとしたりしないって」

利根「クックッ。あの時の提督と川内の様子はまだ憶えておるぞ。あれは辛かったじゃろうなぁ」

川内「そ、その話はやめよ? ね? あの時の提督を思い出したくないからさ……?」ビクビク

利根「さて、それはどうしようかのう?」ニヤ

川内「利根さんも提督みたいにイヂワルしないで!? ……ん?」チラ

利根「む?」チラ

利根(ぬ……あれはヲ級と空母棲──あ、気付いて隠れたか)

川内「……ね、ねえ利根さん。今何か見えなかった?」

利根「うん? 何かって何じゃ?」
419 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:08:08.05 ID:dCKzIXvTo
川内「いや、ほら……さっき誰かがあそこに……」

利根「何を言うておるのじゃ川内よ。夜戦病の中毒症状で見えない敵でも見たのかの?」

川内「いやいやいやいや!! 絶対に誰か居たって! こっち見てたってば!!」

利根「じゃが、今は居らぬのじゃろ?」

川内「そ、そうだけどさぁ……。もし敵とかだったら危ないよ」

利根「深海棲艦がこんな所に居る訳なかろうて。それに、深海棲艦ならば一瞬見ただけでも深海棲艦と分かるじゃろう?」

川内「あ、それもそっか。……うーん。でも、なんだか敵っぽく見えたんだよね」

利根「ほれ川内。饅頭じゃ」スッ

川内「え? えーっと……あむ」パク

利根「食って少し落ち着くが良いぞ。それに、もし敵ならば我輩が見逃しておらん」

川内「うーん……? まあ、利根さんがそう言うのなら……」モグモグ

利根「ところで川内よ、お主は星の事が分かるか?」

川内「星? ……全然わかんない」

利根「では、提督から聞いた星の話をしてやろう。北極星というのは知っておるか?」

川内「えっと、確か常に北にある星だっけ?」

利根「うむ。そんなものじゃ。その北極星じゃが、実は我輩たちが見ている北極星は四百年前の姿らしいぞ」

川内「四百……? えーっと、どういう事?」

利根「北極星の光が地球へ届くまで四百年の時間が掛かるという話じゃ。つまり、北極星が今この瞬間に消えて無くなっても、地球では四百年後まで北極星が見えておるという事なのじゃ」

川内「……え!? 光ってあの光だよね!? パッて光ってパッて消える光だよね!? あれって一瞬で向こう側に届くんじゃないの!?」

利根「どうやら光にも速さがあるらしいのじゃ。なんでも、一秒で地球を七周半するらしいぞ」

川内「七周半!? って、そんなに速いのに四百年も掛かるってどれだけ遠いの!?」
420 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:09:55.85 ID:dCKzIXvTo
利根「途方もない遠さじゃなぁ。前に教えて貰ったが、何千兆キロだとか言っておったのう」

川内「うっわー……もうすっごく遠いってくらいしか分からないや……」

利根「ちなみに一番近所の銀河は何千京キロだそうじゃ」

川内「京って兆の一つ上だったよね!? なにその遠さ!?」

利根「他にも色々と聞いたぞー。そんな遠くからやってくる星の光でも影が出来るとか──」

川内「新月の夜って真っ暗で何も見えないのに、影って──」

利根「それが、綺麗な空気の場所じゃと──」

川内「見てみたいなぁ──」

利根「そして──」

川内「うんうん! ────!」

利根「────」

川内「────!」

…………………………………………。

ヲ級「危なかったね、姫」

空母棲姫「油断していたわ……。これからはもっと気を付けましょうか」

ヲ級「はーい。私も、もっと気を付けるね」

空母棲姫「ええ。後で利根にお礼を言いましょう。逸らかしてくれたみたいだもの」

ヲ級「うん! 次は、あのお饅頭よりも、もっと美味しいの、作る!」

空母棲姫「きっと利根も喜んでくれるわ」

……………………
…………
……
421 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/12(日) 01:11:02.50 ID:dCKzIXvTo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。

次から金剛さんの正式な鎮守府在籍と、そして……
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 01:42:17.05 ID:v2JCNuFAO
終わってからでいいから利根のハッピーエンド見たくなった
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 06:11:17.75 ID:Agq5TNNY0
もうすでにハッピーエンドやったような
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 06:58:14.94 ID:3J6x9XGj0
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 08:17:39.99 ID:bXVche6P0
長門が釣られるのか
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 08:18:10.49 ID:+iEjBKkwO
利根に指輪を渡したことあったような…
427 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/22(水) 10:01:34.02 ID:2mtgqGRLo
今夜か明日に更新する予定です。遅くなってごめんよ。
梅雨の時期は色々な意味でしんどい……。雨なのに暑くて湿度がけたたましく高いのは地獄。
皆さんもバテないよう注意して下さいませ。
428 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:19:06.74 ID:QDsZQ4q2o
提督「──本日の任務は以上だ。加えて、この鎮守府に新しくやってきた艦娘を紹介する。……入ってきてくれ」

比叡「ッ──!!」

榛名「────────」

霧島「…………」

金剛「英国で生まれた、帰国子女の金剛デース! よろし……」

全員「……………………」

金剛「…………く……」

金剛(……やっぱり、こうなりマスよね)

金剛「えーと、私、どこかおかしかったデス?」チラ

提督「いや、どこもおかしくはない」

長門(……こうなるのも無理はないだろう)

比叡「……司令、一つよろしいですか」

提督「……許可する」

比叡「嫌な予感はしていましたけど、これは一体どういう事ですか?」

提督「……………………」

比叡「……………………」

飛龍(……あれ? なんだか……?)

利根(提督も辛そうじゃな……)

提督「……見ての通りだ」

比叡「…………………………………………」

榛名「…………」ハラハラ

霧島(大丈夫かしら……)
429 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:19:33.43 ID:QDsZQ4q2o
金剛「……比叡?」

比叡「っ!」ハッ

比叡「……いえ、ごめんなさい。司令が何も考えていない訳なんてないのに……」

提督「辛い思いをさせてすまない……」

比叡「…………」

金剛(……えっと、一応ひっそりとしておく方が良いデスよね?)

提督「そして金剛。来て早々に見苦しい姿を見せてしまった」

金剛「! ノープロブレム! 気にしないで下サーイ!」

提督「ありがたい。──そして、金剛に鎮守府の案内を誰かに任せようと思っている。希望者は居るか?」

加賀「私がします」スッ

提督「そうか。加賀ならば分かりやすく教えられるだろう。頼む」

加賀「ええ、お任せ下さい」

提督「ああ。……比叡」

比叡「……はい」

提督「この後、提督室へ来るように。……ちゃんと説明をする」

比叡「…………はい」

提督「以上だ。何か質問のある者は居るか?」

響「司令官、比叡さんにする説明を私達が聞いても良いのかな」スッ

提督「比叡にだけは聞かせる言葉もあるから、一緒にというのは諦めてくれ。その後ならば聞きたい者だけに教える。比叡が拒否しなければ比叡から聞いて貰っても構わない」

響「うん、分かったよ」

提督「……………………さて、他に質問のある者は居ないようだな。解散」

…………………………………………。
430 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:20:03.97 ID:QDsZQ4q2o
コンコンコン──

榛名「はい、どうぞ」

ガチャ──パタン

金剛「……ただいまデース、マイシスターズ!」

霧島「! おかえりなさい、金剛お姉様」

榛名「おかえりなさいませ。加賀さんの案内は終わったのですか?」

金剛「イエス! とっても分かりやすい説明でシタ! ──ところで、比叡はまだ戻っていないデスか?」

霧島「まだですね。……比叡にだけするお話とは、一体なんでしょうか」

榛名「どういうお話なのでしょうか……」

金剛「…………」

金剛(こういう時は、どう声を掛ければ良いのでショウ……)

コンコンコン──ガチャ──パタン

比叡「ただい──! おかえりなさいませ、お姉様」

金剛「比叡こそおかえりデース!」

霧島「……司令とのお話は、どうだったの?」

比叡「司令に泣かされました」

金剛「!? ど、どういう事デスか比叡!?」オロオロ

比叡「あ、えっとですね……司令がどうして金剛お姉さまを再び受け入れたのかを聞いて、その後に私の頭を優しく撫でてくれたんです。それでなんだか涙が出てきて、司令に泣き顔を見られてしまいました」

金剛「そうだったのデスね、どういう事なのかと思ってビックリしたデス……」ホッ

三人「!」

榛名(……少しだけですが『金剛お姉様』と違います。私の知っている『金剛お姉様』は、苦笑いでもこんなにも弱々しい笑顔ではなかったはずです)

霧島(まったく同じという訳ではないようですね。……別の『金剛お姉様』……ですか。なんだか、妙な気分です……)

比叡(…………)
431 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:20:30.42 ID:QDsZQ4q2o
金剛「? どうかしまシタか、三人とも?」

榛名「い、いえ……榛名は大丈夫です」

霧島「答えになっていないわよ、榛名」

榛名「ええと、それは……」

金剛(──やっぱり、ここの榛名も大人しい子のようデスね。ただ、向こうの榛名と違って目が据わっていないからか、なんだか普通の大人しい子に見えるデス)

霧島「もう……。『大丈夫です』って口癖は直すようにと司令からも言われているでしょう?」

榛名「うぅ……」

比叡「…………」

金剛「まあまあ霧島。榛名もきっと、つい出てしまっただけデスよ。ネ、榛名?」

榛名「……はい」コクン

金剛「ゆっくりと直していきまショウ。出来ないなんて事は無いはずネ」ナデ

榛名「……はい!」

霧島(……ふむ。『金剛お姉様』よりも少し甘いようですね。……ですが、それと同時に優しさももっと柔らかく感じます)

比叡「……………………」

金剛「? 比叡?」

比叡「!! は、はい! なんでしょうか」

金剛「いえ、ボーっとしていたようでシタので……。疲れているデス?」

比叡「…………かも、しれないです。もしかしたら、司令に泣かされたから疲れてしまったのかもしれません」

金剛「……もし良かったら、テートクがどんな話をしていたのかを聞いても良いデスか?」

比叡「それは……」チラ

霧島「……私は聞きたいと思っています。司令が何を思っているのか、どう想って受け入れたのかを知りたいです」
432 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:20:59.97 ID:QDsZQ4q2o
榛名「私も、知りたいです。どういう理由なのか、とても気になっています」

比叡「……分かりました。司令もこうなるのを予想していたでしょうし、どんな話をしていたのかを話しますね」

比叡(ただ……金剛お姉様が別の鎮守府の捨てられた艦娘とかそういう部分は言わないようにしないと……)チラ

金剛(確認をするような目……。きっと、比叡は口裏合わせの準備はオーケーなのかと聞いているのでショウね。大丈夫デス。私はテートクの事をほとんど知らない、ここへ来たばかりの『金剛』と思って話しマス)

金剛「私の準備はオーケーです。比叡、話してくれマスか?」

比叡「はい。──司令はウェーク島で何年も三人の事を考えながら暮らしていて、とある事に気付いたそうなんです。『今の自分を、三人が見たらどう思うか』と。それで────────」

霧島(…………ああ……その言葉は金剛お姉様が言いそうな言葉ですね)

榛名(だから提督は戻ってきて、そしてこちらの金剛お姉様を受け入れたのですね)

比叡「その時に言った事なんだけれど、私達も気を付けないといけないと思います。司令ならば私達を沈ませないと妄信してはいけないと。総司令部からの伝達でも毎月、何人もの艦娘が────────」

金剛『……ええ。私達も、その事をすっかりと忘れてしまっていまシタ。比叡と同じく、心のどこかで安心していたのでショウね』

金剛(! 起きていたのデスか?)

金剛『今さっき起きたばっかりデース。──どうデスか、私の自慢のシスターズは?』

金剛(良い子たちデス。本当、こうして見ると姉妹というのはこれがノーマリティだと思えマス)

金剛『ノーマリティかどうかは分かりまセンが、この子達はこれが普通デス。仲良くして下サイね、マイシスター?』

金剛(──ハイッ! マイシスター!)

比叡「──って、あれ? お姉様、話聞いてますか……?」

金剛「……ソーリィ。ちょっと感傷的になってて聞いてなかったデス」

比叡「もー……」

……………………
…………
……
433 :妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A [saga]:2016/06/23(木) 21:21:45.48 ID:QDsZQ4q2o
レ級「──さぁて、そろそろ準備とか良いんじゃないかな、大佐クン?」

大佐「その前に戦力の方を聞かせろ。集まった深海棲艦の数はどれくらいなんだ?」

レ級「ざっと七百ってところかなぁ? まっ、あの鎮守府の十倍くらいは居るんじゃない?」

大佐「十倍か。くっ……くくくっ……如何に奴が優秀でも、これだけの戦力差があるなら余裕だ!」

大佐「くく……感謝してやるレ級。お前のおかげで奴をブッ潰す事が出来そうだ」

レ級「これだけ戦力を用意したんだからさぁ、ちゃーんとこっちの計画も忘れないでよぉ? じゃないと……ゴミムシらしく地べたを這いずり回るだろうからさっ」ニヤァ

大佐「分かってる分かってる。あの鎮守府に裏切り者の深海棲艦が居るんだろ? そいつはちゃーんと逃がさないようにすっからよ」

レ級「じゃあ聞くけど、陸に逃げられそうになったらどうするのかな?」

大佐「奴の鎮守府にプレゼントを送っておいた。それを奴が読めば、陸へ逃げようとしないだろうよ」

レ級「へぇ……? じゃあそっちは任せよう!」

大佐「お前こそ艦隊の指揮をミスすんじゃねえぞ」

レ級「だーいじょうぶだって! ……あの蝙蝠どもは殺さなければならんからな」

大佐「…………!」ゾワッ

レ級「そんじゃ! 強襲する日程を決めよう! なんだったら今からでも──」

瑞鳳「──あ、提督……こんな所に居た、の……で……ッ!?」ヒョコ

レ級「って……あーらら。見付かっちゃった」

大佐「ちっ……面倒な……」

瑞鳳「ぇ……え……? し、深海……棲艦が……な、なんで……?」カタカタ

レ級「はーい動かないでねぇ。ついでに喋らないように」ジャキッ

瑞鳳「っ!」ビクッ

レ級「うぅーん、良い子だ。……でさぁ? 今ここで起きている事は全部忘れてくんない? ロケットスタートを決めようとしたのに邪魔をされるのは御免だからさぁ?」
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