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利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」 二隻目
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199 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/03(日) 13:10:47.40 ID:W7PXa9gvo
提督「なんとなくはな。大方、私と飛龍を二人きりにさせようという所だろう」
飛龍「……………………え? なんでですか……?」
提督「そこまでは分からん。……一体何を考えているんだろうな。ここ最近の利根は何を考えているのか分からん事が多々ある」
提督(あの島では伴侶になりたいとまで言っていたが、それだとしたらなぜ……?)
提督「……考えていても分からんな。私達は私達の仕事へ入るとしよう」
飛龍「はい。では、お茶を淹れてきますね」スッ
提督「頼む」
提督「…………」ジッ
提督(……ふむ。今回の中規模作戦は慢心しないように全力で掛かるようにせよ、か。あのレ級を相手にするのだから、流石の総司令部も警戒するよう指示を出すか)
提督(こっちの報告すべき内容は……ふむ。この辺りは利根が資材を確認し終えてからか。では、まずはこの書類から手を付けるとしよう)
提督「…………」サラサラ
提督(……しかし、利根は何を考えているんだろうか。あいつの事ならばほとんどの事が分かるつもりで居たが、まだ分からない事もあるものだな)サラサラ
提督(いや、利根も変わってきているから分からない事が出てきたという方か? ……なぜ利根は私と飛龍を二人きりにさせたか、を解明すれば分かるだろうか)サラサラ
提督(利根自身の成長速度は充分。という事は初めに約束した『秘書艦として不充分でありながら上達が見込めない場合は降りて貰う』は当て嵌まらない。それとも、別に好きな男が出来たか?)
提督(……それこそ有り得んか。この鎮守府には私以外の男性は居ない。加えて、利根はいつも私と居て他の男性と接する機会など無かったはずだ)
提督(……分からんな。利根に何があったんだ?)
飛龍「──あれ? 提督、どうしたんですか? 何か書類で悩む事でもありました?」トコトコ
提督「む、いかん。手が止まっていたか」サラサラ
飛龍「提督が考え事で仕事の手が止まるなんて珍しいですね。何があったんですか?」
提督「まあ、少しな……」
飛龍(たぶん、利根さんの事なんだろうなぁ。私も利根さんが何を考えて二人っきりにしてくれたのか分からないし……)
200 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/03(日) 13:11:18.34 ID:W7PXa9gvo
飛龍「では、気分転換にお茶をどうぞ」スッ
提督「ありがた…………飛龍、これは」
飛龍「えっと……はい。見ての通りです。今日は日本茶ではありませんよ」
提督「……私は紅茶にはうるさいぞ」ズズッ
飛龍「お、お手柔らかにお願いします……!」
提督「…………」
飛龍「…………」ドキドキ
提督「……煎茶と紅茶は淹れ方が違うのは知っているか?」
飛龍「え……嘘……」
提督「飲んでみれば分かる」
飛龍「…………」コクコク
飛龍「…………………………………………」
提督「どうだ?」
飛龍「……美味しくないです」
提督「次からはほうじ茶と同じように沸騰直後の熱湯を使い、二分くらい待ってみろ。それだけで大きく変わる」
飛龍「ごめんなさい……」
提督「……………………。しかし……紅茶か」
飛龍「淹れるのは、ダメ……でしたか?」
提督「ダメという訳ではない。日本茶だろうと紅茶だろうと淹れる茶に制限を付ける気は無いぞ。……何の理由があって紅茶にしようと思ったんだ?」
飛龍「その……そろそろ紅茶が飲みたくなるんじゃないかなって思って……」
提督「…………」
飛龍「…………」ビクビク
提督「……飛龍、こっちへ来なさい」
飛龍「は、はい……!」ビクッ
飛龍(どうしよう……怒らせちゃったかな……)ビクビク
201 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/03(日) 13:11:59.73 ID:W7PXa9gvo
提督「…………」スッ
飛龍(うぅ……立ったって事は、絶対に何かあるよね……。やっぱり、紅茶を淹れるべきじゃ──)
提督「…………」ギュゥ
飛龍「──ぇう……?」
提督「…………」
飛龍「あ、あああの、提督……!? な、なんで抱き締めッ……!?」ドキドキ
提督「すまん……少し、このままにさせてくれ……」
飛龍「あ、ぅ…………はい……」
提督「……………………」
飛龍(…………ああ、そっか──)
飛龍(──そうだよね……提督は気丈に振舞っていただけだったんだ……)ソッ
飛龍(婚約までした想い人を失って辛くないはずなんてない……。あの島にずっと居た理由は、ただ総司令部の人に命じられていたからなんかじゃなかったんだ……)
飛龍(嫌な言い方になっちゃうけど、金剛さんの事を傷から記憶に昇華させる為でもあった。……だから、今回みたいな不意打ちの紅茶で色々と思い出したのかな)
飛龍(……ごめんなさい、提督)
提督「……すまなかった」スッ
飛龍「あ……はい……」
提督「……それと、飛龍にはお仕置きをせねばならんな」
飛龍「えっ……!? う……はい……」ビクッ
提督「これからは紅茶も淹れられるよう、しばらくの間は私を相手に紅茶の練習をしてくれ」
飛龍「────え?」
提督「どうした、聴こえなかったか?」
飛龍「い、いえいえ!! ちょっと意外だと思っただけです!」
提督「そうか。では、良いか?」
飛龍「はい! 喜んでお受けしますね!」
提督(……こういう事か、利根。お前という奴は……まったく……。お前は、本当にそれで良いのか──?)
…………………………………………。
202 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/03(日) 13:14:52.04 ID:W7PXa9gvo
今回はここまでです。また一週間後……に来れるかは分かりませんが、目安として考えて下さい。
明けましておめでとうございます。また今年もこの拙いSSをお相手下さいませ。
本格的に飛龍ルートへ入ったので安心安心。
203 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/03(日) 13:25:16.42 ID:8dW1q1xDO
乙
204 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
:2016/01/03(日) 14:16:00.26 ID:b1CVQ1Qdo
乙です
205 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/03(日) 15:13:01.42 ID:3m4TJjduo
>>204
sageろks
206 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/03(日) 15:54:37.21 ID:I0rcSXxj0
あけおめ乙です
207 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/03(日) 20:19:10.30 ID:eWKIDiuQo
おつ
208 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/05(火) 00:07:06.45 ID:PVplQPAa0
おつ
209 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[sage saga]:2016/01/13(水) 17:13:46.99 ID:94bpdhM+o
もう少々お待ち下さいませ。ちょっとお仕事の締め切りがあるので……。
明日か明後日に更新します。
210 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/13(水) 17:15:13.46 ID:Y+jnbEM6o
ktkr!
211 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
:2016/01/13(水) 22:47:23.34 ID:uQTmUx3Io
そう…
212 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/13(水) 23:17:03.01 ID:119OlRvGo
>>211
sageろks
213 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/13(水) 23:51:14.41 ID:5/pGvLaCo
カスはテメーだよ
214 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 16:57:28.59 ID:WK+LXA78o
飛龍「──それでは、おやすみなさい提督」
利根「おやすみじゃー」
提督「二人も良い夢を見るようにな」
──パタン
利根「さて、我輩たちもゆっくりと寝るとするかのう。飛龍、おやすみじゃ」
飛龍「はい。おやすみなさい」
利根「〜♪」トコトコ
飛龍(……うーん。やっぱり利根さんが何を考えているのか分からないなぁ。かと言って訊く事なんて出来ないし……)トコトコ
飛龍(……提督の身体、大きかったなぁ。包み込まれたって言葉がそのまま当て嵌まっちゃった)トコトコ
飛龍「…………えへ」
加賀「あら飛龍。執務はもう終わったの?」
飛龍「ひゃぁ!? あ、か、加賀さん……!」
加賀「……どうかしたの? それとも、そんなに私が怖かったのかしら」
飛龍「ああいえ、すみません……。少し考え事をしていたもので……」
加賀「そう。──ところで飛龍、これに付き合ってくれないかしら」クイッ
飛龍「? ……あ、もしかして良い銘柄でも手に入ったんですか?」
加賀「ええ。前にも飲んだ常きげんよ。この間は頂いたから、今度は私がお返しね」
飛龍「なるほど、あのお酒ですか。美味しかったですもんね。──あ、でも明日も執務があるので、程々で許して貰えますか?」
加賀「勿論よ。さあ、行きましょうか」
飛龍「はいっ!」
加賀(……あら? この香り……)
…………………………………………。
215 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 16:58:01.92 ID:WK+LXA78o
飛龍「──さて、今日はどんな味が好みですか?」
加賀「今日は私が用意するわ。誘ったのは私だもの」
飛龍「分かりました。では、日向燗でお願いします」
加賀「ええ、少し待っていて頂戴ね」スッ
飛龍「あ、そうだ。なんなら提督も呼んじゃいます? 嗜む程度であれば乗ってくれるかもしれませんよ」
加賀「……いえ、今日は止めておきましょう」
飛龍(あれ……加賀さんなら二つ返事するかと思ったんですけど……)
飛龍「……もしかして、何かありました?」
加賀「出来れば提督の前で話したくない内容なの。……少し、昔を思い出してしまって」
飛龍「昔、ですか」
加賀「ええ。──はい、日向燗よ」スッ
飛龍「ありがとうございます。頂きますね」スッ
加賀「んっ……。やはり良いわね。私にはこのお酒にこの温かさが一番合うわ」
飛龍「私も程々が良いと思います。──うん、美味しい!」
加賀「程々が良いと言いながら、熱燗が一番好きな癖に」
飛龍「味の移り変わりを楽しむのもお酒ですよ」
加賀「答えになっていないわよ。でも、その気持ちは分かるわ。私もたまに熱いのを飲みたくなるもの」
飛龍「お酒は嗜むものですからね」
加賀「ええ」クイッ
飛龍「……………………」チビチビ
加賀「…………」
飛龍「…………………………………………」
加賀「……………………」
216 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 16:58:31.57 ID:WK+LXA78o
飛龍「昔の話、でしたよね」コトッ
加賀「……ええ」チラ
飛龍「大丈夫ですよ。ここは誰も使っていない部屋です。誰かが来るなんて事はまずありません」
加賀「……そうよね。来ないわよね」
飛龍「?」
加賀「なんでもないわ。……飛龍、貴女は提督が居なくなった時の事を覚えているかしら」
飛龍「……それは勿論」
加賀「……本当、前にも言ったけれど、提督が壊れていると気付かなかった事がおかしかったわ」
飛龍「前にも言ったじゃないですか……それは仕方が無いですよ」
加賀「それでも、よ」チビ
飛龍「……あの時の提督が何をしていたのかを知っているのは、まだ私達だけですよね」
加賀「そのはずよ。貴女が情報を漏らしていなかったらの話だけれど」
飛龍「誰にも言えませんよ。……言える訳ありません」
加賀「……そうよね……ごめんなさい」
飛龍「あ、い、いえ。こちらこそすみません……」
加賀「…………あんなに優しい顔をしながら利根の首を絞めていた提督は、もう二度と見たくないわね」
飛龍「はい……。しかも、利根さんも喜んだ顔をしていたので……その、少し怖かったです」
加賀「私達が引き剥がさなかったら、もしかしたら利根は死んでいたかもしれないわね」
飛龍「本当……あの時のお二人ほど怖いモノを見た事が無いです」
加賀「……私なら、あの状態の提督に迫られたら動けないでしょうね」
飛龍「私なんて腰が抜けちゃいそうです」
加賀「……でも、少し興味があるわ」
217 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 16:59:01.05 ID:WK+LXA78o
飛龍「えっと……加賀さん?」
加賀「冗談よ」
飛龍「本当ですか……?」
加賀「……九割ほどは」
飛龍「一割は本音なんですね……」
加賀「そう言う飛龍はどうなのかしら」
飛龍「興味が全く無いと言うのは嘘になりますけれど、私は優しい方が好きです」
加賀「優しくされ続けていると、時には刺激を求めるらしいわよ」
飛龍「そ、そうなんですか……?」
加賀「だから私達は安心して出撃が出来るのではなくて? 普段は提督に優しくされて、戦闘になれば生きるか死ぬかの戦いをして刺激を得る。その死線を潜り抜けた時なんて悦びで一杯になる人ばかりでしょう?」
飛龍「そう言われたらそうですけど……。それだったら私は今のまま優しくしてくれる方が良いです。刺激は深海棲艦との戦いだけって事で」
加賀「……本当は、私達のこの感覚もズレているのよね」
飛龍「……そうですよね。絶対に沈まないという前提ですからね」
加賀「そんな事、あるはずが無いというのに……」
飛龍「……………………」
加賀「…………」
加賀「……私達に見付かった後の事も忘れるに忘れられないわ」
飛龍「……提督が総司令部へ打った信号の事ですよね。……総司令部もまさか、あんな催促をされるとは思わなかったでしょうね」
加賀「なんて打っていたのかを提督の口から聞いただけだから、もしかしたら違うかもしれないわよ」
飛龍「うわ……そういう事言っちゃいます? 提督だから本当にありそう……」
加賀「……ただ、大まかには本当でしょうね。一先ず言える事は、提督は自分が流刑になるように報告した……ね」
飛龍「普通、そんな人なんて居ませんよね。……それでも戻って『提督』として働ける辺り、そこまで人手が不足しているのでしょうか」
218 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 16:59:36.69 ID:WK+LXA78o
加賀「そうとしか思えないわ。でなければ、下田鎮守府の提督は変わっているはずだもの」
飛龍「あ、あはは……。私、あそこの艦娘にだけはなりたくなりです……」
加賀「私もよ。道具として扱われるのは遠慮しておきたいわ」
飛龍「……そう思えば、私達はまだ幸運だったのかもしれませんね」
加賀「提督の代わりを勤めていた人の事かしら。……そうね。腕はまだまだ未熟だったけれど、ちゃんと私達の声を聞いてくれたもの」クイッ
加賀「…………」
飛龍「はい、ぬる燗ですよ」スッ
加賀「……いつの間に用意していたの?」
飛龍「ひっそりと、です」
加賀「……ありがたいわ」スッ
飛龍「いえいえ」
加賀「話は変わるのだけれど、最近の提督はどう?」
飛龍「どう、と言われましても……普通ですよ。前とほとんど変わりありません」
加賀「私にはそう見えないわね」クイッ
飛龍「え?」
加賀「貴女と何かあったのではなくて、飛龍?」
飛龍「えっ?」ビクッ
加賀「…………」ジッ
飛龍「…………」ビクビク
加賀「ほら、言ってみなさい」
飛龍「うぅ……なんで分かるんですか……」
加賀「一体、貴女とどれだけ長い間を過ごしてきていると思っているの? 四年以上よ。貴女が今日、提督室から出てきた時の微妙な変化くらい分かるわ」
219 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 17:00:04.90 ID:WK+LXA78o
飛龍「あ、あはは…………えーっと、ですね」
加賀「…………」
飛龍「……辛そうに、抱き締められました」
加賀「…………? 辛そうに?」
飛龍「提督も、まだ心の整理が出来ていないんだと思います。気丈に振舞っているだけで、まだ金剛さん達の事が忘れられていないんでしょうね」
加賀「……そうなのね」チビ
加賀「それで、秘書艦の貴女はどうするのかしら?」
飛龍「私はサポート役ですよ」
加賀「最近は貴女がメインとなっている事くらい分かるわ。直に利根は普通の子と同じになるでしょうね」
飛龍「まだ分かりませんって」
加賀「だったら、もしそうなったらどうするのかしら」
飛龍「もし、ですか……。そうですね……………………提督に任せるかもしれません」
加賀「受身なのね」
飛龍「ゆっくりで良いんです。今は提督が自然と癒される事が大事ですから」
加賀「……そう言いながら、どこかで攻めそうな気がするわ」
飛龍「さて、それはどうでしょうかね。それも事の成り行き次第です」
加賀「そう。……まあ、貴女なら提督の傍に居ても納得できるわ」
飛龍「え?」
加賀「あら、意外だったかしら。こう見えても私は貴女の事を買っているのよ? ……むしろ、なんて言われると思ったのかしら」
飛龍「……少しお小言が来るかと思いました」
加賀「正直ね。でも安心なさい。私では難しいくらい分かっているわ」
飛龍「そうでしょうか」
220 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 17:00:35.53 ID:WK+LXA78o
加賀「そうよ。私だったら、紅茶を淹れるなんて事できないもの」
飛龍「……気付いてたんですか」
加賀「案外、分かるものなのよ。紅茶も香りを楽しむものでしょう?
飛龍「…………」
加賀「……私だったら、腫れ物を扱うように紅茶へは手を出さないわ。例え、提督が望んでいると分かっていても気付いていない振りをするでしょうね」
加賀「だから飛龍。提督の事、お願いするわ」スッ
飛龍「あれ、今日はもう良いんですか?」
加賀「程々にと言ったのは貴女よ」スタスタ
飛龍「えっと……残ったお酒はどうするんですか?」
加賀「提督と一緒に飲みなさい。あの方の事だから、帰ってきてから一滴も飲んでいないのでしょう?」
飛龍「ええっと……」
加賀「貴女はここで待っていると良いわ。……それに、きっと提督もそれを望んでいるはずよ」
ガチャ──パタン
飛龍「加賀さん……。────あ」
飛龍「そっか……利根さんも、加賀さんと同じで……」
飛龍「…………私なんかで、本当に良いのかな……」
…………………………………………。
221 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 17:02:28.28 ID:WK+LXA78o
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。
夜、二人きり、あったかいお酒、しんみりとした雰囲気。何も起こらないはずが…………この提督だったら本当に間違いが起きないかも。
222 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
:2016/01/15(金) 17:25:40.31 ID:JbdQxFY0o
乙です
223 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/15(金) 19:50:59.71 ID:D7zjp+PEo
おつ
224 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/16(土) 12:38:05.07 ID:sphrqQjrO
>>222
だからsageろ
225 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:26:48.39 ID:06b6WQ4uo
コンコンコン──。
提督「入るぞ」
飛龍「は、はいっ!」ビクッ
ガチャ──パタン
提督「どうした飛龍。こんな夜中に話があると……酒?」
飛龍「あ、えっと……さっきまで加賀さんと嗜んでいたものでして……」
提督「……飛龍が呼んでいると聞いてやってきたのだが、状況が掴めん。どういう事だ?」
飛龍「加賀さんが提督を呼んでくると……。加賀さん、提督にはなんて言ってましたか……?」
提督「飛龍から大事な話がある──とだけだ。それ以上の事は自分の口からは出せないとも言っていたかな」
飛龍「うぅ……そういう所はイジワルするんですね加賀さん……」
提督「ふむ。大事な話というのは無いのか」
飛龍「はい……。提督と一緒にこのお酒を飲みなさいと言ったくらいです……」
提督「常きげん……? 聞いた事の無い酒だな」
飛龍「加賀さんの好きなお酒ですよ。なんでも、石川県の地酒だそうでして、ほんの少し辛口なお酒です」
提督「ふむ……」
飛龍「……提督、飲んでみます?」
提督「少し悩んでいる。あともう一押し欲しい所なのだが」
飛龍「あともう一押しって……。それって飲みたいって事じゃないですか」
提督「……………………」
飛龍「…………? 提督? どうしました?」
提督「……………………」
飛龍(……あ、もしかして)
飛龍「一緒に、飲みます?」
提督「ああ。一緒に飲もうか。対面に座るぞ」スッ
飛龍「もう……。あと一押しってそういう意味でしたか」
226 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:27:29.81 ID:06b6WQ4uo
提督「基本的に酒は誘われた時のみにしているのでな」
飛龍「……初めて知りました。辛口のお酒がお好きですから結構飲んでいるのかと思っていましたよ。──あ、温かさはどれくらいが良いですか?」
提督「熱燗で頼む」
飛龍「はい。少し待っていて下さいね」
提督「……しかし、酒か。もう何年も口にしていないな」
飛龍「ずっとあの島で暮らしていましたからね。ここに戻ってきても忙しそうにしていて、それ所ではありませんでしたし」
提督「なるほど。だから酒の誘いが無かったのか。帰ってきたら酒の一杯や二杯はあるやもしれんと思っていたから不思議に思っていたぞ」
飛龍「忙しい所にお酒の話を持っていったら叱られちゃいそうですからね。最近は利根さんの教育だーって感じですから誘いづらいんだと思いますよ」
提督「そのおかげで色々と集中できて助かっていたよ」
飛龍「皆さん、良い方ですからね。提督の教育の賜物ですよ。──はい、熱燗です」スッ
提督「ありがたい。私の教育もあるだろうが、何よりもお前達が良い子だからだ」クイッ
提督「! ふむ。すっきり切れるな。この濃い辛さも美味いものだ。加賀が好くのも分かる」
飛龍「お気に召したようで良かったです。このお酒は特に燗で飲むのが良いお酒らしいですよ」
提督「ああ。これは飲むだけで燗が良いと分かる。そこまで酒に詳しくなくても分かる程だ。ほら、飛龍も飲んだらどうだ」
飛龍「私はさっき飲んで──あっ」
提督「うん?」
飛龍「……飲みたいのは山々なのですが、あともう一押し欲しい所ですね」
提督「なるほど。ならば飛龍、私と酒に付き合ってくれ」
飛龍「はい、喜んで!」
提督「ほら、器を持て」スッ
飛龍「ありがとうございます。──ふぅ……やっぱり、お酒はこういう辛いのを熱燗で頂くのが一番です」ホゥ
提督「もう一つ辛くしてみるか? 飛びきり燗でな」
飛龍「流石にそこまで辛くするのは……。私では無理でした……」
提督「冗談だ」
飛龍「もう……」
提督「くくっ」
飛龍「えへへ」
227 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:28:08.19 ID:06b6WQ4uo
提督「……さて飛龍。肴は何かな?」
飛龍「……………………」
提督「む?」
飛龍「な、何も考えていませんでした……」ションボリ
提督「そうか。ならば、お前が知りたそうにしている話でもしてみようか」
飛龍「私が知りたそうに、ですか?」
提督「酒の席で話すようなものではないが、酒のせいで口が滑ったと言い訳が出来る」クイッ
飛龍「ふふっ、どうぞ滑って下さいな。どんなお話ですか?」チビチビ
提督「私があの島へ行く原因となった時の話だ」
飛龍「……なるほど、そのお話ですか。確かに深い部分までは話してくれませんでしたね」
提督「元凶は知っての通り、金剛、瑞鶴、響を失った事だ。だが、その後の事はあまり知っていないだろう?」
飛龍「……はい」
提督「あの時の私は、三人を失った事で正常な判断が下せなくなっていたのは知っての通りだ。その状態で取った行動が、利根にやってしまったアレだな」
飛龍「例の首を絞めていたアレ……ですね」
提督「ああ。なぜあんな事をしたか、なのだが……私を慕ってくれるお前達が、どうして誰かに殺されなければならないのか──と考えたからだ」
飛龍「えっと……それがどうしてアレになるんですか?」
提督「誰かに殺されてしまうのならば、私が殺せば良い。……それが理由だ」
飛龍「…………」
提督「ハッキリ言ってくれて構わない。明らかに異常だった」
飛龍「……そうなってしまうのも無理はありません。だって、提督は大事な子を三人も失ってしまったんです。しかも……」
提督「…………」
飛龍「…………」
提督「……アレを見たのは、飛龍と加賀だけだったか?」
飛龍「……はい。他の子達には教えていません」
提督「ありがたい。他の子達を余計に不安にさせなかった事と、それでも私を慕ってくれて、ありがとう」
飛龍「誰だって、おかしくなってしまいますよ。ああなってしまうのは仕方の無い事だったんです」
228 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:28:42.54 ID:06b6WQ4uo
提督「……飛龍」
飛龍「?」
提督「隣に来て貰っても良いか?」
飛龍「勿論です」スッ
提督「……怖くないのか?」
飛龍「あの時の提督でしたら少し怖いですけど、今は全然です」
提督「……そうか。嬉しい事だ」
飛龍「……提督。一つだけ、失礼な事を聞いても良いですか?」
提督「酒のせいで滑ってしまうのも無理はないだろう」
飛龍「くすっ……。……今も、苦しいですか?」
提督「そうだな……。苦しい事には変わりない。だが、この苦しみはいつか時間が忘れさせてくれるだろう。苦しみは時間によって昇華され、記憶になるだろう」
飛龍「……後ろ、失礼しますね」スッ
提督「ああ……」
飛龍「…………」ギュゥ
提督「抱き付いてきてどうした?」
飛龍「少しくらいでしたら、こうする事で和らぐかな……と」
提督「そうか……」
飛龍「はい……」
提督「……温かいな」
飛龍「お酒で火照っていますから」
提督「なるほど。ならば、もう少し火照らせてみようか」
飛龍「……これ以上のお酒は、めっ──ですよ? 明日のお仕事に響いちゃいます」
提督「その点は安心しろ。──飛龍、後ろを向かせてくれ」
飛龍「え? は、はい」ソッ
提督「…………」クルッ
飛龍「…………?」
229 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:29:10.66 ID:06b6WQ4uo
提督「お前だけズルい」ギュ
飛龍「ひゃっ」ビクッ
提督「…………」ポンポン
飛龍「あ、あの……真正面は……その……」
提督「嫌か?」
飛龍「……イヂワル」ギュゥ
提督「……温かいな」
飛龍「……私は顔が熱いです」
提督「飲みすぎたか?」
飛龍「バカ……」
提督「飛龍が望むならば、今日はここで一緒に寝てしまいたいな」
飛龍「!」
飛龍(それって、もしかして……)
提督「…………」
飛龍「…………」
提督「……………………」
飛龍「……………………うん」コクリ
提督「では、徳利の中身は全て飲んでしまうか。燗冷めさせるのも勿体無い」
飛龍「は、はい。……お隣、失礼しますね」スッ
提督「さっきまで抱き合っていたのに、隣に座るくらい遠慮しなくても良いんじゃないか?」
飛龍「お、お酒が悪いのっ。ほろ酔いになってきたんですっ」
提督「くくっ、そうか。──ん? っとと、そんなに入れていなかったんだな。これで全部か」スッ
飛龍「ええ。ほら、嗜む程度に留めておくべきだろうと思いましたし……ね?」
230 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:29:41.20 ID:06b6WQ4uo
提督「ふむ……。半分ずつ飲むか」
飛龍「えっ!」
提督「器は一つだが、交互に飲めば問題無いだろう?」
飛龍「そ、そうよね! こ、交互に飲めば……うん!」
提督「初心な奴め。ひとり二航戦サンドとやらを人前でやったとは思えんくらいだな」
飛龍「……イヂワル」ソソッ
提督「ん? 肩を寄せてどうした」
飛龍「……サンド程じゃないけど、肩くらいならあったまるかなーって」
提督「…………」ナデナデ
飛龍「ん……」
提督「心も温まる」
飛龍「えへへ、良かった」
提督「先に頂くぞ」クイッ
飛龍「では、残りを私が」コクコク
提督(……私が口を付けた所で)
飛龍「んっ……ふぅ……」チラ
提督「…………」ワシャワシャ
飛龍「あ、あああ! 髪が乱れるじゃないですか! 私、ただでさえ癖っ毛なのに!」
提督「まったく……」スッ
飛龍(…………? 照れ隠し、なのかな)
231 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:30:10.28 ID:06b6WQ4uo
提督「明かり、落とすぞ」
飛龍「!」ピクン
パチン──
飛龍「…………」ドキドキ
提督「…………」モゾモゾ
飛龍「…………っ」ドキドキドキ
提督「……どうした。ほら、入ってこい」
飛龍「は、はいっ!」モゾ
提督「……手は出さないから安心しろ」
飛龍「……え?」
提督「ん?」
飛龍「え、あれ……?」
提督「……………………」
飛龍「…………あー……」
飛龍(早とちりしちゃった……。うぅ……さっきまで良い雰囲気だったのに……)
提督「……飛龍」モゾ
飛龍「…………? ひゃっ──!」
提督「すまんが、今日はこれで我慢してくれ」ギュゥ
飛龍「は、はい……!」ドキドキ
提督「もう少し……もう少しだけ、待っていて欲しい」
飛龍「……はい」ソッ
飛龍「いつまでも、待っていますからね。ゆっくりで構いませんので、いつかは……」
提督「ああ……。いつかは、お前を真正面から見れるように……」
飛龍「そう思ってくれるだけでも、私は嬉しいです──」
……………………
…………
……
232 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:31:03.38 ID:06b6WQ4uo
今回はここまでです。また一週間以内くらいに来ると思います。
なんでこの提督、この雰囲気で手を出さないんですかね。
233 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/19(火) 17:34:28.25 ID:P/zSmdbco
乙
一番聞きたいことを
>>1
が言う
234 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/19(火) 17:51:46.42 ID:Jv9i2MqnO
多分利根の裸見慣れすぎて劣情を催さないんだよきっと…
裸族だとただの裸に興奮しないのと同じ
235 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
:2016/01/19(火) 17:57:19.75 ID:rpGIFCB3o
乙です
236 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/19(火) 18:03:24.99 ID:MI7O777GO
性愛と愛情は一緒ではないから
237 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/19(火) 18:21:31.20 ID:BN3HPL310
EDじゃ仕方ない
238 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/19(火) 22:45:01.64 ID:o2pyqbM+o
おつ
239 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:06:55.76 ID:9mdLHh9Ko
利根「…………」カリカリ
飛龍「提督、この要請書の事なんですけど──」
提督「……ふむ。またこんなにも資材を要求するか。流石にレ級相手では──」
飛龍「やっぱりそうですよね……。どうしてもあの戦力を相手ですと──」
利根「…………」チラ
利根(うむ。うむうむ。二人の距離はしっかりと縮んできておる。このまま順調にいけば、必ず二人はくっ付くじゃろうな。……まあ正直、傍から見ている立場からすれば、さっさと将来を誓い合えば良かろうにと思うがのう)ズズッ
利根(……ふむ。紅茶もまた一段と腕を上げておる。元から日本茶を淹れるのが上手かったから、紅茶に慣れるのも早いものじゃのう)カリカリ
利根(まあ……少しばかり心が寂しいがの)カリ
利根(……なんじゃろうなぁ。あの物の無かった島の方が心が豊かじゃったかもしれぬ。……いや、これは考えるべきでない事じゃな。二人に失礼じゃ)カリ
利根(すぐに慣れると良いのじゃがなぁ……)
ポン──
利根「む?」クルッ
提督「どうした、利根」
飛龍「お疲れですか?」
利根「む? むむ? 何がじゃ?」
提督「さっきから声を掛けても心ここに在らずだったぞ。悩み事があるのならば言ってくれ。私も心配になる」
飛龍「それと、無理もダメですよ?」
利根「────────」
提督「……何をそんなキョトンとしているんだ。疲れているのを無理しているんだったらベッドに放り投げて寝かし付けるまで見張るぞ」
利根「…………」
飛龍(あれ……? なんだかすっごい柔らかい微笑みを向けられているような……?)
240 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:07:26.46 ID:9mdLHh9Ko
利根「言葉に甘えてしまっても良いかのう」
提督「無理をしていたのか。まったくお前ときたら……」ヒョイ
利根「ぉおわっ?」
提督「言っただろう。ベッドに放り投げて寝かし付けると」スタスタ
利根「な、なぬ!? 本当に投げるのか!?」ビクッ
提督「流石に投げるなんて事はしないがな」ソッ
提督(……お前には色々と無理をさせてしまってすまない。そして、ありがとう)ヒソ
利根(!! ……我輩は、その言葉だけでも充分じゃよ。提督よ、飛龍を大事にしてやってくれるかの?)ヒソ
提督(言われずとも、だ)ポンポン
利根「むう……我輩は子供か? そんな頭をポンポンされねば寝れぬという訳ではないぞ」
提督「ほう、ならば止めておこうか」
利根「まったく……提督はダメじゃな。女心が分かっておらぬ。ほれ、さっさと仕事をせぬか。飛龍が待っておろうに」
利根(飛龍が嫉妬しておるぞ。早く愛でてやらねばならんじゃろ?)ヒソ
提督(お前という奴は……。後で何か奢ってやる)ヒソ
提督「良い夢を見るんだぞ」スッ
利根「ならばカーテンはちゃんと閉めてくれぬか」
利根「…………」コクリ
飛龍「!」
提督「分かった」
シャッ──
利根「ついでに耳栓も借りるぞー」
提督「ああ」
飛龍(今の利根さんの合図って、つまり……)
利根(さて、これでまた二人の距離が縮まれば良いのじゃがのう──)
241 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:08:14.24 ID:9mdLHh9Ko
提督「……さてと飛龍」
飛龍「? どうしました?」
提督「私達も少し休憩しよう。隣に座って貰って良いか?」スッ
飛龍「え? はい」スッ
提督「良い子だ」ナデナデ
飛龍「! もう、提督ったら。私は子供じゃありませんよ?」
提督「ふむ、ならばやめておこうか」スッ
飛龍「……ごめんなさい。今だけ子供にさせて下さい」
提督「珍しく我侭だな」ナデナデ
飛龍「その……」
提督「ん?」
飛龍「…………えっと、そうですね……なんだか、羨ましくって……」
提督「……何か取ってつけたような理由だが、甘えてみるか?」
飛龍「甘える……」
提督「ああ。飛龍はなかなか甘えようとしてこないからな。今回はどう甘えても構わんぞ」
飛龍「ど、どんな甘え方でも良いんですか?」
提督「流石に限度はあるがな。──さあ、どんな甘え方をしてくる?」
飛龍「じゃあ……膝枕が良いなぁ」
提督「膝枕?」
飛龍「えっと……ダメでしたか?」
提督「いや、そんな事で良いのかと思ってな。──ほら、いつでもこい」
飛龍「あれ?」
提督「うん?」
242 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:08:43.04 ID:9mdLHh9Ko
飛龍「あ、いえ。なんでもありません。……失礼しますね」ソッ
提督(……私の知っている膝枕と飛龍の知っている膝枕は何か違いでもあるのだろうか)
飛龍「…………」
飛龍(本当は提督に膝枕をしたかったけど、これもこれで良いなぁ……。なんだろう。安心する……)スリ
提督「…………」ナデナデ
飛龍「あ、それ気持ち良いかも……」
提督「ふむ、そうか」ナデナデ
飛龍「♪」ニコニコ
飛龍「提督、実はですね、さっきの膝枕って言ったのは私がしたいなーって意味だったんですよ」
提督「む、そうだったのか?」
提督(……いや待て。それは飛龍が甘えさせる側になっていないだろうか)
飛龍「でも……提督の膝枕も凄く良いです。なぜかは分かりませんが、温かい気持ちになってホッとします」
提督「分からないでもない。心を許している相手に身体を預けるというのは、私もなぜか心地良く感じるよ」
飛龍「あ、提督も分かりますか。──本当、人って不思議ですよね。こうしてただ膝枕をして貰っているだけなのに、すっごく嬉しい気持ちになるなんて」
提督「私で嬉しく思ってくれてありがたい」
飛龍「それは勿論、そう思って当然ですよ。盲目になっていますからね」
提督「…………」
飛龍「おまけに聞く耳も持たなくなってて」
提督「…………」
飛龍「更には──…………?」
提督「……………………」
飛龍「……提督、どうかしましたか?」
提督「……いや、なんでもない」
243 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:09:13.75 ID:9mdLHh9Ko
飛龍「なんでもないって事はないでしょう? 提督、凄く辛そうな顔をしていますよ」スッ
提督「大丈夫だ。ほら、横になっていて良いんだぞ」
飛龍「……提督、見れば分かるんですよ?」
提督「…………」
飛龍「今の提督は、なんだかヒビの入ったガラスみたいに壊れてしまいそうです」
提督「……………………」
飛龍「…………」シュン
飛龍「……ごめんなさい」
飛龍(私では、話せない内容だったんだろうな……)
提督「お前が悪い訳じゃないんだ。……すまない」
飛龍「…………」
提督「……同じだったから、つい……な」
飛龍「同じ……?」
提督「昔、金剛と話した内容と、な。お前はどこか金剛と似ている所があるのかもしれん」
飛龍「そうなんですか?」
提督「少しだけだがな」
飛龍「……私も、金剛さんみたいになれたら良いんですけどね」
提督「私は、飛龍は飛龍のままが良いと思う」
飛龍「え?」
提督「金剛のようになっても、それは金剛の代わりにしかならん。私は飛龍を真っ直ぐ見れるようになりたい」
提督「……この間にも言ったが、もう少しだけ待ってくれ。ちゃんと、お前を真正面から見れるようになるから、な?」
飛龍「──はいっ」
提督「さて、貴重な休憩時間なんだ。存分にゆっくりと休もう」
飛龍「はい! ……じゃあ膝枕、良いですか?」
提督「する方か?」
飛龍「いえ、される方で。……あんまりにも心地良かったものでして」コテッ
提督「くくっ。頭も撫でてやろう」スッ
飛龍「えへへー」
飛龍(私を私のままで、か。……うん。私も、その方が嬉しいな。ありがとうございます、提督)
飛龍(そしてこの時間をくれた利根さんも、ありがとうございます──)
……………………
…………
……
244 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:09:54.90 ID:9mdLHh9Ko
今回はここまでです。また一週間以内くらいに来ると思います。
どうして平和ってこんなに壊れそうに見えるんですかね?
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/01/25(月) 00:30:43.22 ID:Ysbl340vO
乙です
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/01/25(月) 00:43:42.46 ID:hnInLSjxo
乙でした
うちの飛龍さんにも膝枕してほしいなぁ…
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/01/25(月) 07:08:37.45 ID:pP+9rVBD0
乙。3人以外は暫く登場しないのかな?
248 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:23:04.72 ID:K0+3EKFxo
コンコンコン──。
提督「入れ」
ガチャ──パタン
飛龍「飛龍です。ただいま夕刻の哨戒から戻ってきました」ピシッ
提督「哨戒内容と現場の報告をしろ」
飛龍「はい。──敵影は見当たらず。また、これといって変わったモノなどもありませんでした。他の艦娘たちも至って真面目に取り組んでいるようです」
提督「何も問題無いな。ご苦労だった」
飛龍「いえいえ。……ところで提督、手に持っているそれはどうしたんですか?」
提督「これか。これは、片割れのペンダントだ」
飛龍「片割れ、ですか?」
提督「ああ。このペンダントは本来、二つで一つとなる物なんだ。よく見れば分かるが、錨が欠けた物に見えるだろう?」
飛龍「言われてみれば確かに……」
提督「時に飛龍。お前は右と左、どっちが好きだ?」
飛龍「と、唐突ですね……。正直に言ってどちらも変わりは無いんですけど……強いて言うなら左ですかね?」
提督「そうか。ならば左を渡そう」スッ
飛龍「ん? んん? すみません……話の先が見えないのですが……」ソッ
提督「右側は私が。左側は飛龍が。それで意味は分かるか?」
飛龍「────────」
提督「……気に入らなかったのならば言ってくれ。センスにはあまり自信が無いんだ」
飛龍「い、いえ! そういう訳じゃなくて……! あの……なんて言えば良いんでしょうか……」
提督「正直に言ってくれ」
飛龍「いえ……あの…………なんだか、顔がニヤけてしまいそうになって……」
249 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:23:36.85 ID:K0+3EKFxo
提督「そういう事か。ニヤけてしまっても良いんだぞ」
飛龍「…………」トコトコ
提督「む? 後ろに回ってどうした」
飛龍「……照れているのを隠す為、かな?」ギュッ
提督「なるほどな」
飛龍「えへへー……♪」
提督「喜んでくれたようで何よりだ」
飛龍「そりゃあ嬉しいですって。なんだか、特別な気分になるでしょ?」
提督「そうだな。よく分かるよ」
飛龍「……あ」ソッ
提督「うん? 離れてどうした」
飛龍「一つ気になったんですけど、これって提督にとっては二回目ですか?」
提督「……そうだな。飛龍の物とはデザインが違うが、渡している。その片割れは引き出しの奥に仕舞ってある」
飛龍「……着けているのを見た事が無いような」
提督「渡した当日に逝かれてしまったら、な。誰も知らないはずだ」
飛龍「……そういう事だったんですね」
提督「ああ」
飛龍「提督」
提督「なんだ?」
飛龍「私のも、金剛さんのも、大事にして下さいね?」
提督「勿論だ。……むしろ、お前こそ沈むなよ?」
飛龍「誰が沈んでやるもんですか。まだまだ提督としたい事があるんですから、この先八十年くらいは元気で居るつもりですよ」
提督「百までか。良いな。私も百まで生きよう」
250 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:24:05.13 ID:K0+3EKFxo
飛龍「…………」
提督「…………」
飛龍「……何言っているんですかね、私達」クス
提督「さてな。たまには良いだろう」ニヤ
飛龍「……それにしても利根さん、あまり来なくなりましたね」
提督「あいつなりに気を遣っているんだろう。利根も私の艦娘の一人だからな」
提督「──まあ、あまり気を遣わない者……いや、そうなっても仕方の無い者は居るが」チラ
飛龍「?」
コンコンコン──。
提督「入れ」
ガチャ──パタン
ヲ級「遊びに、来たよ!」ブンブン
空母棲姫「……すみません。どうしても行きたいと言っていまして……」
飛龍(なるほど。存在を秘密にしている二人ならそうなりますよね)
提督「という事は、また何か作れるようになったのか?」
ヲ級「うん! 今日は、おせんべい、作ってみた!」パッ
提督「煎餅か。珍しいな」
空母棲姫「小麦粉を少し余らせてしまったので、それに胡麻を混ぜて練り、油で揚げてみました」
提督「ふむ。では、四人で食べるとするか。飛龍、すまないがお茶の準備を頼んでも良いか?」
飛龍「分かりました。ほうじ茶で良いですか?」
提督「ああ。それで頼む。少し冷めてしまっているだろうが、湯はあったよな?」
飛龍「はい、ありますよ。少し待っていて下さいね」トコトコ
251 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:24:34.38 ID:K0+3EKFxo
ヲ級「お茶ー♪ おせんべー♪」ニコニコ
空母棲姫「本当、この子ったら……。ごめんなさいね……」
提督「気にしなくて良い。ヲ級の性格からして、人と触れ合いたいのだろう」
空母棲姫「……確かにそんな風に見えます。ですが……」
提督「私は困ってはいないから安心してくれ」ナデナデ
ヲ級「えへー」ニパッ
空母棲姫「……………………」
提督「溜め息を吐かなくなったな」
空母棲姫「いい加減、慣れました。溜め息を吐きそうになる事はもはや日常茶飯事なので」
ヲ級「!」ピクン
飛龍「──お待たせしました。お茶を持ってきましたよ」トコトコ
ヲ級「飛龍のお茶、私、好き!」
飛龍「ありがとうございます。私も美味しそうに飲んでくれるのは嬉しいですよ」コトッ
ヲ級「熱い?」
飛龍「熱いですよー。だから、気を付けて飲んで下さいね」ナデナデ
ヲ級「はーい!」
提督「……ふむ」
空母棲姫「? この子を見てどうかしたのですか?」
提督「なに。そろそろ皆の前に出しても良いだろうかと思ってな」
飛龍「あ、確かにそろそろ良いかもしれませんね」
ヲ級「!! もう、隠れなくても、良いのっ?」ワクワク
提督「ああ。明日の日が暮れた頃、皆の前に紹介する。それからは鎮守府内を自由に歩き回って良いぞ」
ヲ級「やった!」
252 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:25:02.78 ID:K0+3EKFxo
空母棲姫「…………」
提督「どうした。まだ不安か?」
空母棲姫「少しだけ……」
提督「安心しておけ。この鎮守府に居る子達ならば分かってくれる」
空母棲姫「…………反論できなくて嬉しいのやらなんとやら……」
提督「良い事だ。──さて、そろそろお茶会といこうか。飛龍も座ってくれ」
飛龍「はい」スッ
ヲ級「! 今日は、提督さんと、すっごく近いね?」
飛龍「あっ」
提督「良いものだぞ」
空母棲姫「……もしかして、お邪魔でしたか?」
提督「さてな。一つ言える事は、このお茶会を楽しもうという事くらいだ」
空母棲姫「もう……。そんな曖昧な返事を……」
飛龍「…………」チラ
提督「お前はここに居てくれよ?」
飛龍「ぅ……少し、恥ずかしいです……」
提督「今日ばかりは私の我侭だ。近くに居てくれ」
飛龍「もー……」
提督「くくっ」
提督(……まあ、こういうのも悪くはない。全ての物事は、止まる事無く流れていくのだから──)
提督「幸せにしてやるぞ、飛龍」
飛龍「……提督も幸せにしますからね!」
提督「ああ、楽しみにしているよ──」
253 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:26:41.93 ID:K0+3EKFxo
──── 利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」 IF End────
了
254 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:31:32.95 ID:K0+3EKFxo
飛龍ルートはここまでです。本当に穏やかに終わっていく締め方でした。こんな平和的に終わる長編物語を書いたのってどれくらい振りだろ……。
さて、次の投下からこの物語のトゥルーのルートを書いていきます。
たぶん皆さん気付いていると思うのですが、利根さんのルートと飛龍のルートのどちらもが提督と利根の問題があやふやのまま終わっています。これを直接的に解決するのがトゥルーです。
また一週間以内くらいにくると思いますので、もう少々この物語とお付き合い下さいませ。
255 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/01/31(日) 20:39:13.83 ID:X6mqKQWxo
乙
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/01/31(日) 21:10:44.17 ID:JqaNHut1o
乙乙
飛龍が可愛すぎてつらい
257 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/01/31(日) 21:12:27.58 ID:h+goxALIO
乙デス
258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/01/31(日) 22:11:19.00 ID:khtjwmJ5O
乙です
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/03(水) 00:51:11.12 ID:hQWPwPQpo
おつ
260 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:55:34.99 ID:7SUR/2U5o
前スレ907からの分岐です。
金剛さんが正式に鎮守府の一員となる少し前に、甘くないスコーンを焼いていた辺りです。
投下していきますね。
261 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:56:11.45 ID:7SUR/2U5o
金剛(……さて、そろそろ焼き上がる時間デス。オーブンから取り出しまショウ)スッ
金剛「ふむ……ふむふむ。見た目はグッドです。後は味の方デスが……」
金剛「…………」モグモグ
金剛「……甘味が無くて、私の口には合わないデス。メープルシロップを掛ければ美味しいと思いマスが……」
金剛「うーん……。テートクは美味しいと言って下さるでショウか……」
コツッ──コツッ──コツッ──
金剛(! テートクですかね?)ソワソワ
カチャッ……ガチャ──パタン
提督「調子はどうだ、金剛」
金剛「私は元気デス。テートクは……なんだか雰囲気が少し暗いデスね? 何かあったのデスか?」
提督「まあ……ちょっとした総司令部からの面倒事だ。段ボール箱三つ分の書類をいきなりドカンと送られてきた」
金剛「み、三つ……。大人の人でもスッポリ入れそうなアレですよね……?」
提督「そうだ」
金剛「……お疲れ様デス」ペコッ
提督「長年サボっていたツケだろう。──ところで、何か作っていたのか? スコーンを焼いているような匂いがするが」
金剛「!! 分かるのデスか?」
提督「多少はな」
提督(『金剛』がよく作っていたからな……)
金剛「ぁ……」
提督「ん? どうした」
金剛「い、いえ……」
金剛(…………きっと、テートクの『金剛』も同じようにスコーンを作っていたのデスね……。失敗しまシタ……)
提督(……ああ……この子はたぶん『金剛』の事を考えているんだな。さて……どうしようか……)
金剛「……………………」
提督「…………」
金剛「…………」
提督「…………」ポン
金剛「…………?」
262 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:56:42.65 ID:7SUR/2U5o
提督「……ありがとう」ナデナデ
金剛「……ごめんなさいデス」
提督「どうして謝る?」
金剛「私は、気を遣わせてしまっていマス……。本当でしタラ、テートクが喜べるようにするべきなのに……」
提督「その気持ちだけで充分だ」ナデナデ
金剛「でも──」
提督「充分だよ、金剛。そう思ってくれるだけで、私は嬉しい」ナデナデ
金剛「……ハイ」
提督「なあ金剛。そのスコーン、一つ貰っても良いか?」
金剛「え──。勿論デスけど……」
提督「けど?」
金剛「…………いえ、ぜひ召し上がって下サイ! とっても久し振りデスが、上手く出来まシタ!」
提督「ああ、頂く」ヒョイッ
金剛「…………」ドキドキ
提督「…………」モグ
金剛「……お口に合いマスか?」ドキドキ
提督「……うむ。良いな、これは。美味い」
金剛「リアリー!? やったデース!」
提督「金剛、確かに防音になっているとは言ったが、少し声を抑えてくれ」
金剛「あぅ……ソーリィ……」シュン
提督「だが……」
金剛「…………?」
提督「やっぱり、お前はそうやって明るい方が似合っている。正式にこの鎮守府に籍を置く事になった時は、素を出してくれ」
金剛「──ハイッ」
提督「うむ。良い返事だ」
263 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:57:17.06 ID:7SUR/2U5o
提督(私としても、暗い金剛を見るのは辛いからな……)
金剛(……ああ……やっぱり、私を見ると思い出してしまうのデスね)
金剛「……………………」グッ
金剛(私は、テートクの為に何かしたいデス)
金剛「テートク」
提督「ん、どうした」
金剛「ご無理はしないで下サイ。……もし、どうしても私の姿を見るのが辛い時は、そのように言って下サイ」
提督「……何かするつもりなのか?」
金剛「ホラ、髪型を変えてみるとイメージが変わるかもしれないデス」ホドキホドキ
提督「髪型を?」
金剛「ハイ。……よいしょ…………今は手で支えているだけデスが、ポニーテールです。どうデスか?」スッ
提督「より活発なイメージになったな」
金剛「こうすれば、少しは意識を逸らせるかな……と思いまシテ」
提督「……なるほどな。だが、それは気持ちだけ受け取っておく。私の事を考えてくれるのは嬉しいが、金剛は自分の好きなようにやっていてくれ。いつもその髪型で居るという事は、その髪型が気に入っているんだろう?」
金剛「確かにそうデスけど……。それよりも私の好きなようにとは……?」
提督「島に居た時にも言ったかもしれんが、ずっと出撃続きで自分のやりたい事も何も出来なかったのだろう? この鎮守府で出来る範囲だったら好きな事をやっても良いんだぞ」
金剛「…………それでは、お言葉に甘えさせて頂きマス」
提督「ふむ。何がしたいんだ?」
金剛「──私は、テートクの為に何かをしたいデス」
提督「────────」
金剛「テートクが笑顔になれるようにしたい……。それが、今の私のやりたい事デス」
提督「……そうか」
金剛「ハイ」
264 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:57:50.48 ID:7SUR/2U5o
提督(私としても、暗い金剛を見るのは辛いからな……)
金剛(……ああ……やっぱり、私を見ると思い出してしまうのデスね)
金剛「……………………」グッ
金剛(私は、テートクの為に何かしたいデス)
金剛「テートク」
提督「ん、どうした」
金剛「ご無理はしないで下サイ。……もし、どうしても私の姿を見るのが辛い時は、そのように言って下サイ」
提督「……何かするつもりなのか?」
金剛「ホラ、髪型を変えてみるとイメージが変わるかもしれないデス」ホドキホドキ
提督「髪型を?」
金剛「ハイ。……よいしょ…………今は手で支えているだけデスが、ポニーテールです。どうデスか?」スッ
提督「より活発なイメージになったな」
金剛「こうすれば、少しは意識を逸らせるかな……と思いまシテ」
提督「……なるほどな。だが、それは気持ちだけ受け取っておく。私の事を考えてくれるのは嬉しいが、金剛は自分の好きなようにやっていてくれ。いつもその髪型で居るという事は、その髪型が気に入っているんだろう?」
金剛「確かにそうデスけど……。それよりも私の好きなようにとは……?」
提督「島に居た時にも言ったかもしれんが、ずっと出撃続きで自分のやりたい事も何も出来なかったのだろう? この鎮守府で出来る範囲だったら好きな事をやっても良いんだぞ」
金剛「…………それでは、お言葉に甘えさせて頂きマス」
提督「ふむ。何がしたいんだ?」
金剛「──私は、テートクの為に何かをしたいデス」
提督「────────」
金剛「テートクが笑顔になれるようにしたい……。それが、今の私のやりたい事デス」
提督「……そうか」
金剛「ハイ」
265 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:58:16.79 ID:7SUR/2U5o
提督「…………」
金剛「…………」
提督「……そうだな。とりあえずは、今晩あたりで一緒にティータイムでもするか」
金剛「! ハイッ! お待ちしていマス!」
提督「金剛、何時まで起きていられる」
金剛「深夜でも問題ナッシングです。……流石に三時とかですと辛いデスが」
提督「ならば、零時にここへ来るとしよう」
金剛「ハイ! 楽しみにしていマス!」
提督「…………」ポン
金剛「?」
提督「ありがとう」ナデナデ
金剛「!」
提督「では、私は執務に戻る。また今夜に」
ガチャ──パタン
金剛「……テートクの顔、穏やかでシタ」
金剛「少しは、お役に立てているのでショウか……?」
…………………………………………。
266 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:58:43.24 ID:7SUR/2U5o
提督「──さて、今日の執務はこれで終わりだ。ご苦労だった、飛龍」トントン
飛龍「お疲れ様です、提督」
提督「ああ。今日はもう休んで良いぞ」
飛龍「はい。──あ、そうだ。一つ良いですか?」
提督「ん?」
飛龍「これから何かご予定とかありますか?」
提督「……そうだな。一つ入っている」
飛龍「あら、そうですか……」
提督「何かあったのか?」
飛龍「ああいえ! 大した事ではありませんから」
提督「ふむ?」
飛龍「ええーっと……ただ、お酒に誘おうかなっと思っただけです。ほら、まだ日も跨いでいませんし」
飛龍(何より、なんだかいつもよりも誘いやすそうな雰囲気でしたしね)
提督「そういう事か。すまんが、それはまた今度にしてくれ」
飛龍「はい。また誘いますので、提督の都合が良い時に飲みましょう」
提督「ああ、そうしよう。──では飛龍、良い夢を見ろよ」
飛龍「はい! おやすみなさいませ」
ガチャ──パタン
提督(……さてと。約束の時間までかなり余裕があるな)
提督「……………………」チラ
提督「月夜に照らされた海、か……」
提督(そうだな。久し振りに夜の海でも眺めてみるか)
…………………………………………。
267 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:59:10.26 ID:7SUR/2U5o
提督(……暗いな。月が昇っているとはいえ、半分だけの光では波くらいしか見えるものがない)スタスタ
提督(本当にどこまでも吸い込んでいきそうなほど黒い。……深海に沈むと、こんな風に暗くて黒いのだろうか)
響「…………」ボー
提督「む、響?」
響「! ……司令官? ビックリしたよ」
提督「私こそ驚いたぞ。こんな時間にどうしたんだ?」
響「なんとなく部屋を抜け出したくなってね」
提督「……ふむ」
響「向こうに帰りたいとかじゃないよ。それだけは先に言っておくね」
提督「ならば、他に思う所があるのか」
響「ん、そうだね……。皆が優しい所が少し辛いかな」
提督「優しい所が?」
響「うん。暁や雷、電が優しいんだ。私を相手に普通にしようと努力してくれてる」
提督「…………」
響「私を見て、話して、一緒に居て、三人は辛いはずだよ。そうだっていうのに、三人は私と普通にしてくれてるんだ。……そんな三人の姿を見るのが、私は少し辛い」
提督「だから部屋を抜け出したのか」
響「うん。ごめんよ、司令官」
提督「謝る事ではない。いずれ、三人も響も慣れる事だ」
響(司令官みたいに……とは言わないでおこうかな)
提督「響」
響「なんだい司令官?」
提督「お前には、目の前に広がる海がどう見える?」
268 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:59:45.07 ID:7SUR/2U5o
響「……………………なんだか、私や司令官みたいに見えるよ。誰かが見ている時は至って普通のようにしているのに、夜になって見る人が居なくなったら暗くて冷えてしまっている姿を見せるから」
提督「……そうか」
響「…………」
提督「…………」
響「金剛さんや瑞鶴さんも、同じなのかな……」
提督「……それは二人に聞いてみないと分からないかもな」
響「うん……」
提督(…………ん?)チラ
長門「──二人してこんな所で何をしているんだ?」
響「! ……海を見ていたんだよ」
長門「なぜまた夜の海なんかを……。暗くてほとんど何も見えないだろう?」
響「なんとなく、かな」
提督「そうだな。なんとなくだ」
長門「……はぐらかしているように感じるが、まあ良いか」
提督「お前こそ、こんな夜中にどうしたんだ?」
長門「少し夜風に当たりたくなってな。時々だがこうやって夜、外に出ているんだ」
提督「そうか。意外だな」
長門「……意外か?」
提督「就寝と起床のどちらも規則正しくしていそうなイメージがある」
長門「なるほど。出来れば私もそうしたいものだな」
269 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 19:00:14.12 ID:7SUR/2U5o
響「長門さんも休みは不定期だったからね」
提督「それで体内時計が狂ってしまったのか?」
長門「そんな所だ。何も無いのにいきなり目が覚めてしまう事もある。そういう時はこうして夜風に当たっているぞ」
提督「…………」ポン
長門「……なぜ頭に手を置いた」
提督「やはり、お前も苦労していたんだなと思ってな」ナデナデ
長門「私を子供扱いか……」
提督「ただの労いだ。素直に受け取っておけ」スッ
長門「むぅ……」
提督「──さて、私はそろそろ中へ戻るとしよう」
響「もう行っちゃうの?」
提督「金剛と約束をしていてな」
響「私も行って良い?」
提督「そうだな。金剛も喜ぶだろう。──長門、お前はどうする」
長門「ふむ……。お邪魔させてもらおうか。その内、眠気もやってきてくれるだろう」
提督「決まりだな。では、行くか」
…………………………………………。
270 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 19:01:32.04 ID:7SUR/2U5o
今回はここまでです。また一週間以内くらいに来ますね。
さて、こっちはどれくらい長くなるのだろうか。
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/02/06(土) 19:36:19.62 ID:d+eBfmFuo
乙です
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/06(土) 19:52:32.79 ID:WC9vB3sU0
乙。誰ルートなんだろ
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/07(日) 03:39:21.99 ID:rBmzpgPko
乙
言い方悪いけど轟沈三姉妹かな
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/07(日) 08:49:37.08 ID:AD2ZUQQNo
これでラストのトゥルールートだって言ってたの忘れたのか
利根ルート(エンド)じゃなかったらスレタイ詐欺だろ
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/07(日) 16:05:57.15 ID:WjnUwsH70
そう思わせて、まさかの長門エンド
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/07(日) 16:44:17.14 ID:3/TJhy67O
スレタイ詐欺も何も既にスレタイ回収してるんだから別に何でもよくね?
277 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/13(土) 23:07:19.03 ID:5gqbYN2eo
コツッ──コツッ──コツッ──
金剛「!」ソワソワ
カチャッ……ガチャ──パタン
提督「待たせた」
瑞鶴「お邪魔しまーす」
響「やあ」
長門(……甘い匂い)
金剛「ワォ。皆、来てくれたのデスね」
提督「外では響と長門に、廊下を歩いている途中で瑞鶴と会ってな。事情を知っている者だから誘ったんだ」
金剛「なるほどデス。では、お湯も沸いているので、すぐに紅茶を淹れるネー」ソッ
長門「……本当、随分と元気になったな」
金剛「そうデスか?」
瑞鶴「うん。あそこに居た時とはもう全然違うわよ」
響「枯れ掛けた花に水をあげたような感じだよね」
長門「うむ。確かにそのような感じだ」
金剛「枯れ掛けたって……まるでお婆ちゃんみたいな言い方デス……」
提督「流石に婆さんは無理がある。どんなに悪く見積もってもお姉さんだろう」
瑞鶴「提督さん的には今の金剛さんはどんな風に見えるの?」
提督「うら若き乙女」
金剛(……少し照れマスね)テレ
響「私は?」
提督「頭の回る聡明な子、だな」
響「ハラショー」
278 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/13(土) 23:07:58.15 ID:5gqbYN2eo
瑞鶴「じゃあ私や長門さんはどうなの?」
提督「瑞鶴は少女というのがピッタリと当て嵌まる。長門は……そうだな」
長門「…………」
提督「……プライドの高い女性だろうか」
長門「……なんだか私にだけ毒があるように聞こえるのは気のせいか?」
提督「まだ長門の事はよく分かっていないからどうもな。第一印象より少し踏み込んだ部分までしか判断できん」
長門「私はそんなにもプライドが高いように見えるのか……」
瑞鶴「うん」
金剛・響「…………」コクコク
提督「喋り方や仕草、自分の趣味を隠す所など特に」
長門「〜〜〜〜〜〜ッ」
提督「ついでに言うと、素直になれない不器用な子にも見える」
長門「……酷く、落ち込むなそれは…………」ズーン
響「こればっかりは性格だから仕方が無いのかな」
長門「……なるべく早く直すよう善処しよう」
提督「私は無理に変えようとしなくても良いと思うが」
長門「気休めの言葉は受け取らんぞ……」
提督「変えるなとは言っていない。そういうのはゆっくりで良いんだ。周りに迷惑を掛けている訳でもないだろう? むしろ、急に変えようとするとストレスにもなる上、周りも心配する。そういうものは自分のペースで変えていく方が上手くいくものだ」
長門「……ああ、なるほど。そういう事か」
瑞鶴「…………? 何がそういう事なの?」
長門「いや、すまん。駆逐艦の子達が揃ってこの方の事をお父さんみたいだと言っていたのを思い出してな。それでなるほどと思ったんだ」
金剛「言われてみれば確かにそんな感じもするネ。──お待たせしました。アッサムですヨ」
279 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/13(土) 23:08:24.29 ID:5gqbYN2eo
瑞鶴「良い香りねー。どういう紅茶なの?」
金剛「深いコクと力強い味の紅茶デス。味が強いデスので私はミルクティーが一番合うと思いマス」
響「じゃあ、私はミルクティーにするね」
瑞鶴「私もミルクティーにしてみる」
提督「私はストレートで頂く」
金剛「長門はどうしマスか?」
長門「では……ミルクティーで」
金剛「分かりまシタ。──まずは提督の分デス」ソッ
提督「ありがたい」
金剛「そして……ハイ、三人の分デス」ソッ
瑞鶴「ん? 金剛さん、なんで提督さんのと私達のでポットが違うの?」
金剛「ミルクティーにする時は茶葉の量を多くすると、とっても美味しくなるデース。飲み比べると分かるデスよ」
瑞鶴「へぇ……。あ、ミルクってどれくらい入れるの?」
金剛「お勧めは紅茶の半分くらいデス」
長門「半分……? そんなにも入れるのか」
金剛「イエス。ストレートティーに同じ量を入れるとミルクの味に負けてしまいますが、そうならないように茶葉を多く入れるのデス」
響「そうなんだ。じゃあ早速」スッ
響「……美味しい。紅茶って、こんなに美味しいんだ」
瑞鶴「何これ。支給品の紅茶と全然違う。砂糖も入ってないのに、淹れ方が違うだけでこんなにも美味しくなるんだ」
長門「これは……」パチクリ
金剛「長門も気に入ってくれたようデスね」ニコニコ
長門「ああ。こんなに美味い紅茶を飲んだのは初めてだ」
280 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/13(土) 23:08:51.32 ID:5gqbYN2eo
金剛「テートクはどうデスか?」
提督「ああ、美味いぞ。スコーンも頂こうか」スッ
瑞鶴「あっ私も」
金剛「瑞鶴、このスコーンはプレーンですからジャムやメープルシロップ、クリームを付けると良いデスよ」
響「金剛さんのお勧めは?」
金剛「少し悩みマスが、私はクリームを付けるのが一番だと思うデース」
瑞鶴「クリームね。分かったわ」
金剛「たっぷりと付けるのが秘訣ネ」
瑞鶴「じゃあ……このくらい?」
提督「もう少し多くするくらいだ。──ああ、それくらいだな」
金剛「!」
瑞鶴「〜〜〜〜〜〜!! 最高……っ! こんなに美味しいお菓子を食べたのって初めてかもしれないわ……!!」
金剛(……確か、テートクは砂糖が苦手だったはずデス。という事は……)
提督「どうした金剛? お前も食べて良いんだぞ」
金剛「──アハ。皆の美味しそうに食べてくれる姿に気を取られちゃったデース」
長門「これほど美味い菓子を作ってくれたんだ。私も大満足だぞ」
金剛「ありがとうございマス!」
金剛(……このティータイムは、失敗だったかもしれまセン)
提督(ふむ……)
…………………………………………。
281 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/13(土) 23:09:26.60 ID:5gqbYN2eo
金剛「……………………」カチャ
金剛(よく考えれば、当たり前の事でシタ……。私達はテートクの事をよく知っていませんが、テートクは『私達』の事をよく知っているのデス……)
金剛(大体の好みも、どういう事が苦手なのかも、テートクは分かっているはずデス……。だから、私が手の込んだお菓子や紅茶を用意しても、それはテートクの『金剛』が既にやっている事のはずデス……)
金剛「……辛く、思い出させてしまっただけデス。本当、私はダメな艦娘デス……」
金剛(こんなだから、私は──)
コンコンコン──
金剛(────っ? ……誰デスか? 私を知っている人ならば、誰もこんなノックなんてしないはず……)
カチャッ……ガチャ──パタン
金剛「……え?」
提督「さっき振りだな。少し時間をくれないか?」
金剛「ええ……それは構わないのデスが……何かあったのデスか?」
提督「何かがあったのは金剛、お前だろう」
金剛「────────」
提督「今回のティータイム、失敗したと思っていないか?」
金剛「……は、い…………」
提督「やはりな。途中で様子がおかしかったから、そうだと思った」
金剛(怒られるのでショウか……)ビクビク
提督「今回、ティータイムを提案したのは私だというのを忘れていないか?」
金剛「…………? あ──」
提督「ようやく気付いたようだな。そういう事だ。私は、今回のティータイムは良い時間だったと思っていた。金剛や瑞鶴、響に長門が小さいながらも喜んでいただろう? ああいう時間がお前達には必要だと、改めて思ったくらいだ」
提督「金剛が何を思って罪悪感を覚えたのかまでは分からないが、その罪悪感は杞憂だから安心しろ。実際に、紅茶を飲む私は辛そうな顔をしていたか?」
金剛「…………」フルフル
提督「そうだろう? お前は頭が回る。そして少し臆病だ。自分が悪かったと思ってしまうのも過去を考えれば仕方が無いが、そんな事はないと伝えておく」
金剛「…………」
提督「…………」
金剛「……………………」
提督「……大丈夫だ」ソッ
金剛「っ……!」ピクン
提督「大丈夫だよ、金剛」ナデ
金剛「…………」ジワ
提督「また、機会があったら美味い紅茶を淹れてくれ。楽しみにしているから、な?」ナデナデ
金剛「……はい…………っ」ポロ
金剛「はい……! はいっ……!」ポロポロ
金剛「ありがとう、ございマス……! 本当に……本当に、不安だったのデス……! 迷惑しか掛けていないんじゃないかと……余計な事しかしていないんじゃないかと……!」ギュゥ
提督「……雨が止むまで、私は傘になっておこう。雨宿りくらいならば出来るはずだ」ナデナデ
金剛「うぁぁ……ひっく…………ぁぁ……」
…………………………………………。
282 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/13(土) 23:12:41.32 ID:5gqbYN2eo
今回はここまでです。また一週間以内くらいに来ると思います。
いつの間にか日付が進んでいるから困る。
283 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/13(土) 23:40:07.63 ID:g16RVG6X0
乙
まぁトゥルーというなら金剛ルートだろうなどう考えても…
利根はどう見ても幼馴染ポジというか滑り台というか舞台装置感ががが
ハーレムでもいいけどね(真顔
284 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/02/13(土) 23:46:51.43 ID:nC+f6krsO
乙です
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/14(日) 01:34:08.42 ID:7ae5TbEQ0
なぁに、どうせ全員消える(前作感)
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/14(日) 06:40:02.28 ID:isK6IT5Co
か、解体さえしなければ設定的には消えないから(震え声
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/14(日) 10:53:41.61 ID:swTQ0+d80
イデが発動しなけりゃへーきへーき
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/15(月) 21:04:22.85 ID:RQE/K1PN0
たのしみ
289 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/21(日) 01:42:19.62 ID:Y/xJyOjdo
金剛「……もう、大丈夫デス」
提督「そうか」スッ
金剛「……えへ。なんとなくデスが、分かった気がしマス」
提督「何がだ?」
金剛「今はまだ秘密、デス」
提督「そうか……」
金剛「ハイ。この先どうなるかは分かりまセンが、もしかしたら言えるかもしれないデス」
提督「ふむ」
金剛(期待すると同時に、抑えておいた方が良いかもしれまセンけれどね……)
金剛「ところで、もうこんな時間デスけれど朝は大丈夫なのデスか?」
提督「すぐにでも寝れば問題無い。心配してくれてありがとな」
金剛「いえいえ。お身体は大事にして下サイね?」
提督「ああ。皆の心配する顔はあまり見たくはない」
金剛「もう……そっちデスか」
提督「こればっかりは性分だ。諦めろ」
金剛「むぅ……──!」ハッ
金剛「ほらほら、早くスリープして疲れを取って下サイ。でなければ明日辛いのはテートクですヨ」グイグイ
提督「そうしておくか。──では、良い夢を見ろよ、金剛」
金剛「ハイッ。テートクも良い夢を見て下サイね」
ガチャ──パタン
金剛「…………」トコトコ
カチン
金剛(……さて、鍵も掛けましたし片付けの続き──は、もうこれでお終いデスね)カチャ
金剛(であれば、私もそろそろお休みするとしまショウか)パチン
金剛(よいしょ……)コロン
フワッ
金剛「あ──……」
金剛(……なぜでショウか。たまにあるのデスが、こうして横になっていると誰かに護られているような気分になりマス……)
金剛(……この鎮守府は、本当に不思議な事で一杯デス)
金剛(艦娘をあんなにも大切に扱って下さるテートクに、深海棲艦の二人、そして本当は違う提督の艦娘の私達……。どれも普通ではありまセン)
金剛(このベッドもそうデス。こんなにも心が落ち着けるなんて、本当に不思議デス)
金剛(今日も、ぐっすりと眠れそうデスね──…………)
……………………
…………
……
290 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/21(日) 01:42:54.62 ID:Y/xJyOjdo
提督「──さて、今日の執務はこれで終わりだ。今日はよく最後まで起きていたな、利根」
利根「まあ、そういう事もあるのじゃ」
提督(……うん?)
飛龍「それでは、私はそろそろ部屋に戻りますね」スッ
利根「む? なんじゃ。今日はやけに早く帰るのじゃな」
飛龍「加賀さんにお酒を誘われていましてね。提督と利根さんも一献どうですか? 良いお酒が入っていますよ」
利根「そうじゃのう。我輩は次に回すとするかの」
飛龍「ありゃ。用事でもありましたか」
利根「うむ。ちっとばかし厄介事がの」チラ
飛龍(ん……? 提督の方へ視線を……?)
提督(……私に関係する事か)
提督「すまんが飛龍、今ばっかりはタイミングが悪い。また今度誘ってくれるか?」
飛龍「……はい……分かりました」シュン…
提督「良い夢を見ろよ」
飛龍「はい……」
ガチャ──パタン
提督「──それで、何があったんだ利根? 今まで起きていたのもそれを伝える為か」
利根「うむ。些細じゃが気になる噂を耳にしての」
提督「噂?」
利根「なんでも、夜に幽霊が現れるらしいぞ」
提督「見間違いか寝惚けていたか、それとも誰かが面白がって流したという可能性は」
利根「無論、その可能性もあるじゃろうが、限りなく低いじゃろう。内容が内容じゃ。面白半分で流す奴なぞこの鎮守府に居らん」
提督「……何を見たと言うんだ」
291 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/21(日) 01:43:22.06 ID:Y/xJyOjdo
利根「……………………」
提督「…………」
利根「……金剛じゃ」
提督「なんだって……?」
利根「信じにくい話じゃが、あの金剛らしいぞ」
提督「それは、今隣に居る金剛を見掛けたという事ではないんだな?」
利根「うむ。我輩達のよく知る、我輩達が壊れる切欠となった金剛……。半分ほど透き通っており、おまけに艤装付きだったそうじゃ」
提督「…………」
利根「提督よ、我輩は幽霊というもの自体は信じておる。じゃが、金剛の幽霊となると話は別じゃ。……あやつは、沈んでしまったのじゃからな」
提督「……必ずとは言えないが、艦娘が沈めば深海棲艦となる。幽霊になるはずが無い……か」
利根「うむ。──ちなみにじゃが、その話をしておった者達にはこれ以上、話が広がぬよう口止めをしておいた」スッ
提督「良くやった。では、確かめに行くぞ」スッ
利根「うむ。……こればっかりは、真相を確かめねばならん」
ガチャ──
提督「……利根」
利根「うん? どうしたのじゃ?」
提督「もしも、その噂が本当だったらどうする」
利根「…………さあ、のう……。まずは見付けてみねば分からぬ」
利根「眺めるだけか、何をしておるのかと話し掛けるか、地に手と頭を擦り付けて謝るか……どうするのかは、分からぬ」
提督「……そうか」
利根「そう言うお主はどうするのじゃ、提督よ」
提督「…………さあ、な。私も分からん」
利根「やはりか……」
提督「……一先ず、幽霊とやらを見付けるぞ。色々と問題が起きるかもしれんからな」
利根「うむ」
──パタン
292 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/21(日) 01:43:52.74 ID:Y/xJyOjdo
利根「…………」キョロキョロ
利根「一応聞いておくが、この部屋に居る金剛に関する話はせぬ方が良いのじゃな?」
提督「ああ。こんな時間とはいえ、誰に聞かれるか分からん」
利根「了解じゃ。……ところで提督よ」トコトコ
提督「どうした」スタスタ
利根「なぜ、幽霊は現れたのじゃろうな」
提督「さあな……。心配で様子を見に来た……とかだったら可愛いものなんだが」
利根「……もしそうならば、提督は本当に慕われておるのう」
提督「提督冥利に尽きる」
利根「こうやって冗談を言えている内は、まだ問題無いのう」
提督「ああ……。──ちなみに、どこで見掛けたとかは言っていなかったのか?」
利根「む……すまぬ。それは聞いておらなんだ。用を足しに行った時に見付けたとは言うておったから、恐らくそれまでのどこかじゃろう」
提督「ふむ。一応、鎮守府を回って見てみるか。別の場所でも見掛ける可能性はある」
利根「うむ。そうするかの」
スタスタスタ──
────────。
??「……………………」
…………………………………………。
293 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/21(日) 01:45:23.39 ID:Y/xJyOjdo
今回はここまでです。また一週間以内くらいに来ますね。
幽霊に絡まれて思う事は一つ。頼むから色々と邪魔しないでマジで。
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/02/21(日) 02:01:24.93 ID:q4F9PmhFO
乙です
295 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/23(火) 00:27:18.14 ID:JRljDrWrO
乙乙
296 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/28(日) 20:31:43.87 ID:7Iq+mEEgo
利根「……居らぬのう」
提督「居ないな。噂は噂にしか過ぎんという事だろうか」
利根「もしくは、今日たまたま会わなかっただけかもしれぬ」
提督「その可能性も高い──が、今日はもう遅い。お前はそろそろ寝ておけ」
利根「無論、提督も寝るのじゃよな?」
提督「私の性格を知っているだろう」
利根「知っておるから念押ししておるんじゃろうが。我輩の体調を気遣うお主が、自分の体調を気遣わないとは説得力が無くなるぞ」
提督「……仕方が無いな。今日は切り上げだ。次の夜にまた探すとしよう」
利根「それがベストじゃろうな。……ところで提督よ」
提督「どうした」
利根「此度の幽霊騒動じゃが、金剛を表に出す事に影響は出ぬか?」
提督「丁度、私もその事について考えていた所だ。そろそろ金剛もこの鎮守府の一員として迎えようと思っていたが、少し難しくなった」
利根「やはりか」
提督「金剛の幽霊を見たのは利根が聞いた者だけとは限らん。その上、幽霊を見た者からすると、ここで金剛を迎え入れる事となれば不気味に思うだろう」
利根「そうなるのう。……という事は、見送りか」
提督「残念ながらな……。ほとぼりが冷めるまで、また金剛には我慢してもらうしかない」
利根「仕方が無いのう……」
提督「……もしかしたら、金剛の幽霊が現れたのには意味があるかもな」
利根「なんのじゃ?」
提督「さて。それは私にも分からない。そもそも、本当に意味があるのかすらも分からん」
利根「全ては予想でしかない、という事じゃな」
提督「そういう事だ」
利根「金剛の幽霊が現れた意味……か。何かありそうな気がするのう……」
提督「どんな意味があると、お前は考える?」
利根「漠然とありそうと思っただけじゃな」
提督「そうか」
利根「……しかし、残念じゃ」
提督「ああ……残念だ。あそこに押し込んでおくのは、金剛にとってもあまり良くない」
利根「深夜くらいは外出許可を出してみてはどうじゃ」
提督「一考しておこう」
提督(……金剛の幽霊が現れた意味、か。……私に愚痴の一つでも言いに来たのだろうか。それとも、ただ単に会いに来たくなっただけ……というのは夢を見過ぎか……)
…………………………………………。
297 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/28(日) 20:32:23.49 ID:7Iq+mEEgo
金剛「…………?」
瑞鶴「え、金剛さんは待機? なんで?」
響「何があったんだい、司令官」
提督「昨日、ある問題が発生した。それが原因で金剛には悪いが、もう少しここに居て欲しいんだ」
瑞鶴「問題?」
提督「ああ。この鎮守府で、幽霊が目撃された」
瑞鶴「え……」ビクッ
金剛「ゴースト、デスか」
響「……それだけ?」
瑞鶴(え、みんな怖くないの!?)
利根「ただの幽霊ならば無視して構わぬが、金剛の姿をしておるのが問題なのじゃ」
金剛「私……?」
提督「正確にはこの鎮守府に存在していた金剛だ」
響「…………ッ」
金剛「────」
瑞鶴「…………!」ビクビク
提督「もしかしたら、私に文句の一つでも言いに来たのかもしれんな」
金剛「それは無いと思いマスけど……」
利根「うむ。想像も付かん」
響「二人に同意かな。私も全然思いつかない」
瑞鶴「…………」コクコク
298 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/28(日) 20:33:46.81 ID:7Iq+mEEgo
提督「深く関われば相手の欠点や不満に思う部分などいくらでも出てくるものだ」
提督(無論、その部分も含めて愛おしいが)
瑞鶴「……えっと、つまり、提督さんはその金剛さんに不満とかってあったの?」
提督「ある事にはあったぞ」
瑞鶴「へぇ……どんな事?」
提督「まずは無理をしがちな所だな。しかもそれを隠そうとする。もう少しは私を頼ってくれても良いと思うのだが。それと、アイツは私に対して盲目だった。いや、盲目は言い過ぎか。並大抵の事であれば受け入れてしまうんだ。ハッキリと言う所は言うのが救いだったか。あと、私を悪くない意味で困らせる事も多々あったな」
金剛(ナゼだか私にも当て嵌まっている所があるような気がするデス……)
響「喧嘩とかもしたの?」
提督「すぐに収拾は付いていたが、たまにしていたぞ」
利根「二人が喧嘩をすると怖いのじゃぞ。誰一人、あの加賀ですら近付こうとせんのじゃからな」
瑞鶴「うわぁ……それってよっぽどよね……」
響「どっちが折れてたの?」
提督「どっちもだ。冷静に考えて、互いに自分の悪い部分を言って丸く収まっていた」
瑞鶴「何それ……すっごく羨ましい」
利根「そうなのかの?」
金剛「……私達は、あの方に逆らえまセンでシタから」
瑞鶴「…………」コクッ
響(夫婦や主従関係どころか、奴隷って感じだったしね)フイッ
響「それでも、やっぱり聞く限りじゃ文句なんて言いそうにないかな」
提督「ふむ。どうしてそう思ったんだ?」
響「勘、かな。女の勘」
提督「……響が女の勘と言うと、妙に信じてしまうな」
利根「うむ……。しかし、そうとしても深海棲艦にならずに幽霊になったのかは分からず仕舞いじゃぞ」
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