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利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」 二隻目
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173 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/22(火) 18:11:17.12 ID:6IDCvMaX0
あれ?
てか、なんで無人島生活してたんだっけ?普通に帰ってきたけど大本営とか関係ないんだよな?
174 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[sage saga]:2015/12/22(火) 19:06:37.05 ID:G0gfHGYMo
>>173
この飛龍ルートで詳細が分かるようにする予定ですのでお待ち下され。利根さんのルートでは提督も利根さんも執着はしていないので軽くしか触れていないのです。
175 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/22(火) 19:22:55.83 ID:QG7GTEhMo
乙です
1が飛龍ルートって書いてるからよくわからなくなったのだが利根シナリオのトゥルーエンドかifエンドに向かってるんでいいんだよね?
176 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[sage saga]:2015/12/22(火) 19:31:21.38 ID:G0gfHGYMo
>>175
その認識で問題無いです。そのどっちかに向かっていきます。
混乱させてしまってごめんよ。
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/22(火) 20:18:57.04 ID:UV7Eupth0
乙
言われてみれば、金剛をたちが沈んだのが原因なんだろうけど…
残された艦娘たち視点でもあるのか、楽しみ!
178 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[sage saga]:2015/12/23(水) 06:39:48.41 ID:G0pv1ijro
軽い報告をば。
もしかしたら一週間よりも早く続きを投下するかも。だいたいたぶんおそらくきっと。
あと、夏コミの金剛飛龍本が残っているらしく、冬コミに並べるそうです。
179 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2015/12/25(金) 20:17:33.72 ID:HhmmbTiJo
飛龍「うーん……」トコトコ
加賀「あら、そんなに唸ってどうかしたのかしら、飛龍?」
飛龍「あ、加賀さん。……実はですね、今日はなんだか嫌な予感がしたんですよ」
加賀「嫌な予感?」
飛龍「ええ。一昨日から今日までが加賀さんと私の航空哨戒じゃないですか。それで違和感が……」
加賀「違和感……? 特に異常だとは思わなかったのだけれど」
飛龍「気にする程ではないかもしれませんが、少し敵の数が増えているような気がしませんか? ほとんど感覚なんですけれど」
加賀「……気にするほど多くなったかしら。でも、言われてみれば多くなっている気もするわね」
飛龍「ですよね? 今までもこういう事はありましたけど、増えている割に対空射撃も大人しい気がしますし、撃墜されている数も記録を見ると減っているんです」
加賀「確かに対空射撃も大人しいかもしれないわ。被撃墜数も少なくなっているのは私も気が付いています。だけど、それは提督が戻ってきた事によるものかと思ったのだけれど……」
飛龍「やっぱり加賀さんもそう思っていますか。……提督に報告してきます。杞憂かもしれませんが、一考するのも悪くないと思いますから」スッ
加賀「そうね。私も一緒に報告するわ」スッ
飛龍「ありがとうございます」トコトコ
加賀「でも、よく気が付いたわね? 私は全く気にしていなかったわ」スタスタ
飛龍「私も書類の数字に注目しなければ気付かなかったと思います。なんだか最近、艦載機の消耗が少ないなって思ってから哨戒して感じたくらいですから」
加賀「なるほどね。私も秘書艦になるよう提案してみようかしら」
飛龍「えっと……たぶん却下されますよ?」
加賀「冗談よ」
飛龍「そ、そうですか……」スッ
コンコンコン──
提督「入れ」
ガチャ──パタン
提督「む? どうした。今は昼の休憩中だろう」
飛龍「提督、報告をしに来ました」
加賀「些細な事かもしれないけれど、耳に入れておいた方が良いと思ったの」
提督「なるほど。何があった?」
飛龍「最近、艦載機の消耗が少ないですよね。哨戒時の被撃墜数が減っています」
提督「ああ、そうだな」
加賀「けれど、ほんの僅かですが深海棲艦の数は増えているように感じます。今までこういう事は何度もあったから異常だとは思わなかったけれど、流石に被撃墜数が減っているというのは少しおかしいわ」
提督「……ふむ」
飛龍「私達の杞憂かもしれませんが、提督はどう思われますか?」
提督「……………………」
提督「……そうだな。確認しておいて損は無いだろう」スッ
加賀「確認、ですか?」
提督「そうだ。あの二人の所へ行くぞ」
…………………………………………。
180 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2015/12/25(金) 20:18:01.90 ID:HhmmbTiJo
空母棲姫「……これで良いのかしら」
間宮「はい。本当に覚えが早いですね……。もう教える切り方が無くなりました」
ヲ級「こっちも、出来たよ!」
伊良湖「では味見を…………うん! 良い仕上げですよ」
ヲ級「やった!」
提督「──すまないが、邪魔をするぞ」
間宮「あら? 提督さんに……加賀さんと飛龍さん?」
空母棲姫「どうかなされましたか?」
ヲ級「お腹、減ったの?」
提督「いや、そういう訳ではない。空母棲姫とヲ級に頼みたい事があって来たんだ」
空母棲姫「珍しいですね。何があったのですか」
提督「艦載機を飛ばして索敵をして欲しいのだが、頼めるか? 沖合いで少し気になる事があってな。確か、深海棲艦の使う艦載機はどれも人類の技術を上回っているのだろう?」
空母棲姫「……可能な事は可能ですが、それは良くないのでは。私達に兵装を与えるという事と同じです」
提督「何か問題があるか?」
空母棲姫「私達は深海棲艦です。いくらなんでもそこまで許可を与えるのは、目の前の敵に刃物を渡して殺しても構わないと言っているのと変わりません」
提督「常人ならばそう思うかもしれんが、私はお前達の事を信用している。絶対にそんな事をしない、とな」
空母棲姫「……皆もこの方を説得して下さい。流石にそれは行き過ぎだと」
飛龍「……提督は頑固ですからねー。それに、私も悪くはないと思います」
間宮「この機に久し振りに飛ばすのも良いかもしれませんよ」
伊良湖「これだけ一生懸命に料理を作る方に悪い方は居ないですもの!」
加賀「そうね。それに、私もなんだかんだで貴女達の事を信用しているわ。この鎮守府をどうにかしようと考えているのならば、いくらでもチャンスはあったはずよ。食事に劇物を混ぜるとかね。あと、貴女達の料理からも味だけではない温かい何かを感じました」
空母棲姫「……………………」
提督「そういう事だ。どうしても嫌だと言うのであれば無理強いはしないが、ダメか?」
ヲ級「ダメなの、姫?」
空母棲姫「この子まで……。はぁ……どうしてこうなるのでしょうか……」
提督「日頃の行いのおかげだな」
空母棲姫「まったく理解し難いです……」
提督「諦めろ。他の場所では知らんが、この鎮守府ではそういうものだ」
空母棲姫「……本当、馬鹿ばっかりなんですから」
飛龍(あ、なんだか嬉しそう)
提督「決まりだな。出来れば今すぐに索敵をして貰いたいのだが、手は空いているか?」
間宮「はい。丁度さっき一区切り出来たところですので大丈夫ですよ」
提督「そうか。ならば着替えを待つ。その間に工廠へ向かっても大丈夫なルートを確保、並びに工廠の妖精達に事情を説明しておこう」
ヲ級「はーい!」
…………………………………………。
181 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2015/12/25(金) 20:18:29.78 ID:HhmmbTiJo
開発妖精(……本当に深海棲艦だよねぇ)
建造妖精(ホント……なんでこの深海棲艦は提督さんと仲良しなのー……?)
提督「──さて、どうだ?」
空母棲姫「…………居ますね。非常に嫌な奴が」
ヲ級「レ級……!」
飛龍・加賀「────!!」
空母棲姫「しかも、何やら勢力を蓄えているようです。……正直、相手にしたくない量ですね。数え切れませんが、百や二百なんて数字ではありません」
ヲ級「こんなに、集めて、どうするんだろ……?」
提督「……まさかとは思うが、この鎮守府を狙っているのかもしれんな」
空母棲姫「その可能性は大いにありますね。何せ、貴方や私達はあのレ級と因縁がありますから」
加賀「……提督、どうするの?」
提督「決まっている。先手を取って潰すまでだ」
飛龍「でも……どうやってですか?」
提督「簡単な事だ。総司令部に報告して複数の鎮守府と連携した大規模殲滅作戦を展開すれば良い」
加賀「なるほど。数には数を、ですね」
提督「そういう事だ。今すぐにでも連絡を入れよう。空母棲姫、ヲ級、助かった」
ヲ級「えへー」ニパッ
空母棲姫「……ありがとう、ございます。少しでも時間を稼げれるよう、撹乱させる為の情報を流しておきます」
提督「頼んだ」
提督(まだぎこちないが、礼を言うようになったか。少しは素直になったな)
空母棲姫「──では、索敵機は作戦展開中の艦娘に撃墜されて貰います」
提督「ああ」
開発妖精「えっ!? 捨てちゃうの!?」
建造妖精「思ったよりも資材を使ったから勿体無いような……」
空母棲姫「戻っていく所を見られるのは非常に危ういわ。深海棲艦に近付く時は周辺の索敵から帰ってきたという風に出来るけれど、万が一でも鎮守府に入っていくのを見られたら大問題よ」
開発妖精「……あれ? じゃあ、どうやってここから見付からないように発艦できたの?」
提督「今日の航空哨戒は加賀と飛龍。そして、目視での哨戒は比叡だ。低空で飛ばし、なおかつ事情を知っているからこそ見付からないように出来た事だ。演習も遠征も出ていないしな」
建造妖精「ほえー……」
提督「さて、見付からない内に戻っておこう。開発妖精、建造妖精、邪魔をしたな」
開発妖精「えーと……うん」
提督「どうした?」
建造妖精「深海棲艦とも、仲良くなれるんだなーって思って……」
提督「この二人が特殊なだけだ。他の深海棲艦ならば、まずこうならないだろう」
空母棲姫「ですね。間違いなく攻撃をしてくるでしょう」
開発妖精・建造妖精(深海棲艦にも色々居るんだなぁ……)
……………………
…………
……
182 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2015/12/25(金) 20:18:56.58 ID:HhmmbTiJo
利根「提督よ、書類の処理が終わったぞ!」
提督「そうか。今日もご苦労だった利根、飛龍」スッ
飛龍「教えた事もしっかりとこなせるようになっていますし、処理速度も充分ですよ」
利根「本当か!? 頑張った甲斐があったのじゃ!」
飛龍(……ええ。寂しいですけど、もう利根さん一人でも秘書として務められそうですね)
飛龍「ですので、明日からはもう利根さん一人でも大丈夫だと思います」
利根「む? 何を言っておるのじゃ?」
提督「その件についてだが、まだ飛龍は執務をこなしてくれ」
飛龍「え?」
提督「執務もそうだが、他にも色々と教える事があるだろう?」
飛龍「それは……あるにはありますけれど、必須とうい訳ではありませんし……」
提督「あと、今回の件でもう少し飛龍には書類に目を通して貰いたいと思った。この二点だ」
利根「む? むむ? 何かあったのかの?」
提督「飛龍が小さな違和感に気付いてくれたおかげで、遠洋で力を蓄えていた深海棲艦の群れを発見できたんだ」
利根「なんと! 大手柄ではないか!」
飛龍「い、いえいえ。そんな……」
提督「いや、利根の言う通りだ。あのまま放っておけば大事になっていたのは間違いないだろう」
飛龍「う……。な、なんだか、恥ずかしいですね……」
提督「くくっ。褒められて恥ずかしがる事はないだろう」
利根(む?)
提督「まあ、そういう事だ。飛龍、利根のサポートを頼んだぞ」
飛龍「……はいっ!!」
利根(ふむ……ふむふむ……)
利根「さて、では我輩はそろそろ部屋に戻るとするかのう」スッ
提督「む? 珍しいな。いつもは時間ギリギリまで居るというのに」
利根「そういう気分の日もあるものじゃ。──では、おやすみじゃ二人とも」フリフリ
提督「ああ。良い夢を見ろよ」
飛龍「おやすみなさい」
ガチャ──パタン
183 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2015/12/25(金) 20:19:23.67 ID:HhmmbTiJo
飛龍「……本当に珍しいですね。いつもは私と一緒に退室するのに」
提督「利根も一人になりたい日がある、か……まあ、嘘だろうがな」
飛龍「え?」
提督「変な気を遣ったように感じた。何か思う事があったのかもしれん」
飛龍「……何があったのでしょうかね」
提督「そればっかりは私にも分からん。流石に心の内の詳細までは読む事は出来ないからな」
飛龍「うーん……」
提督「考えても分からない事だ。真実は利根にしか分からん。ところで飛龍。飛龍はどうする」
飛龍「え? どうする……とは」
提督「何か雑談でもするか? それとも仕事の終わりに一杯でもやるか?」
飛龍「ああ、なるほど。……んー、そうですねぇ…………どうしましょうか」
提督「なんだ、部屋に戻りたいのか?」
飛龍「そ、そういう意味じゃないです! ……久々に提督とお酒が良いなとは思いましたけど、許してくれるかなって思っただけでして」
提督「構わんぞ。今日は早く終わったからな。明日に影響が出ない範囲であれば私も付き合おう」
飛龍「え、ホントに?」
提督「ああ。近々、大規模な作戦が始まるしな」
飛龍「やった! じゃあ、とっておきのお酒を持ってきますね!」
提督「嬉しそうだな」
飛龍「それは勿論! だって、提督とお酒なんて何年振りか分かりません!」
提督「それもそうだな。もう三年以上か」
飛龍「そうですよ。もうホントに久し振りなんだから!」
184 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2015/12/25(金) 20:19:55.13 ID:HhmmbTiJo
コンコンコン──
飛龍「あら?」
提督「こんな時間に珍しいな。──入れ」
ガチャ──パタン
瑞鶴「やっほー提督さん」
響「遊びに来たよ」
金剛「失礼しマス」
ヲ級「こんばんはー♪」
空母棲姫「お邪魔します」
提督「遊びに来たというのも気になったが、この面子が揃ったのも気になるな」
飛龍「本当に凄く珍しい面子ですね」
響「私はいつものように部屋から抜け出して外で海を眺めていたよ」
瑞鶴「そこに、なんだか眠れなくて外を歩いてた私と会って」
金剛「ナイトの鎮守府を歩いていた私が二人を見つけまシテ」
空母棲姫「久し振りに海へ出たいと、せがんだこの子に手を引かれた所で鉢合わせしました」
ヲ級「したの!」
飛龍「……凄い偶然ですねぇ」
響「金剛さんと瑞鶴さんはともかく、私と空母棲姫さん達はいつか会ってただろうね」
提督「二人はどうして今日に限って外に出たんだ?」
瑞鶴「だって……今この鎮守府の空気って凄く重いし」
金剛「私も気を遣われているのが居た堪れなくなりまシテ……」
空母棲姫「食事中も静かなようでしたし、貴方の『金剛』がそれだけ影響を与える立ち位置に居たというのがよく分かります」
飛龍「ああ、なるほど……」
瑞鶴「? 何か大きな事情でもあるの?」
飛龍「えーっと……それはですね……」チラ
提督「……私は金剛と婚約していたからな」
瑞鶴「……え!?」
響「そうなの?」
提督「ああ。そうだ」
金剛「デモ……私、テートクがリングを指に付けている所を見た事が無いデス。……私や瑞鶴のように仮では無いのデスよね?」
提督「結局、渡せずに居たからな」スッ
瑞鶴(指輪を入れる箱……。まだ保管してたって事は、つまりそういう事よね?)
提督「だが、いい加減に決別するべきだろう。今度、海で眠っている三人の所へ花と一緒に供えるか」
瑞鶴(……と思ったけど、大丈夫そうね。ちゃんと気持ちの整理、出来たのかしら)
185 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2015/12/25(金) 20:20:21.75 ID:HhmmbTiJo
響「その時は私も付いていって良いかな」
提督「ん? 構わないが、どうしたんだ」
響「ちゃんと挨拶しておきたいからね。これから司令官のお世話になります──って」
瑞鶴「あ、それ私も行きたい。提督さん、良い?」
提督「ああ。飛龍と金剛はどうする?」
飛龍「勿論行きますよ。そろそろ行きたいなって思っていましたから」
金剛「……そうデスね。私も行くデス。紅茶とスコーンを用意して、三人がティータイム出来るようにしマス」
提督「きっと三人も喜ぶだろう。日程が決まったら伝えよう」
ヲ級「私も、作りたい!」
空母棲姫「貴女は黙っていなさい」ポン
ヲ級「? どうして?」
瑞鶴「えーっと……」
響「…………」
提督「すまないヲ級。また今度作ってきてくれないか? 近い内に今ここに居る者達でお茶会を開こう」
ヲ級「あ、お菓子、作ってきてるよ!」パッ
飛龍「あら、自分で作ったんですか?」
ヲ級「うん!」ニパッ
飛龍「頑張っていますね」ナデナデ
ヲ級「えへー♪」
飛龍「提督、さっき言っていたお茶会、今やってみるのは如何ですか?」
提督「ふむ。構わんぞ」
金剛「それでは紅茶を淹れてくるデース!」
瑞鶴「金剛さんの紅茶とかすっごく久し振りよね」
響「うん。本当に久し振りだ。司令官、長門さんも呼びたいのだけど良いかな?」
提督「寝ていなかったら構わん」
響「そっか。じゃあ呼んで来るね」タタッ
提督「心配無いとは思うが、誰にも見付からないようにな」
響「勿論だよ。──じゃあ、行ってくるね」
ガチャ──パタン
提督「……飛龍、良かったのか?」ボソッ
飛龍「はい。お酌はまた今度という事で」ボソッ
瑞鶴「ん? 何か言った?」
提督「すまん。独り言だ」
瑞鶴「独り言? もう……皆が居るのに独り言って……」
提督「そういう事もあるさ。平和だからな」
瑞鶴「ん、そういう事にしておいてあげるわ」
…………………………………………。
186 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2015/12/25(金) 20:21:02.32 ID:HhmmbTiJo
長門「……こんな時間に茶の会とは随分とのんびりしているな」
提督「たまたまだ。こんな事は滅多に無い」
長門「むしろ『お茶会』は何かの隠語で実際は緊急作戦会議か何かかと疑ったくらいだ。……本当に言葉そのものだとは思いもしなかった」
響「ああ、だからやけに張り詰めた雰囲気だったんだね」
空母棲姫「何をそんなに身構えているのやら。そんなに私達が脅威に見えるか」
長門「可能性として考えるのは許してくれないだろうか。私はお前たち二人の事を良くは知らないんだ。……艦娘と深海棲艦が一緒の席に着いているという事も違和感ばかりだ」
空母棲姫「それが普通だな。そうやって認識してくれていると、私も本来は敵だというのを忘れずに済む」
提督「そのまま忘れてしまっても良いだろうに。少なくとも、今この場に居る全員は敵だと思っていない」
空母棲姫「だが……あまりに馴れ馴れしくするのは艦娘達の為にならないのでは」
提督「そうでもない。極論を言ってしまえば、艦娘と深海棲艦の違いは我々人類に危害を加えてきたかどうかの差でしかない。逆に艦娘が人間を襲い、深海棲艦が人間の味方をしていれば立場は逆転している。危害を加えてくるのならば敵。協力するのであれば仲間。お前たち二人が例外だというのは皆も分かってくれるだろう」
空母棲姫「確かに貴方の艦娘であればそうなりそうですが……」
提督「全ては認識次第だ。敵という認識ならば敵。味方という認識ならば味方。お前たち二人は今、味方という認識に置かれているという事だ。行動でな。そもそもの話、お前たち二人は私達に危害を加えてきたか? 逆に協力をしてくれただろう」
ヲ級「お魚、とか?」
提督「ああ。あれは本当に助かった。あのままでは飢え死にするのは間違いなかった」ナデ
ヲ級「えへー」ホッコリ
空母棲姫「……………………」
提督「まだ納得できないか?」
空母棲姫「…………はぁ……まったく、どうしてそんな風に割り切れるのかしら……」
提督「変わり者だとは常々言われている」
響「違いないね。ここにも変わった艦娘しか居ないし」
瑞鶴「待って。まさかそれって私も含まれてる?」
響「にゃぁにゃぁ」
瑞鶴「ッ!?」ビクンッ
五人「?」
瑞鶴「そ、そそそうねぇ……? 確かに変わり者ばっかりよねぇ?」
飛龍「? ──あ、金剛さん。そろそろお湯が沸く頃ですよ」
金剛「了解デース。淹れてくるネ」スッ
飛龍「ありがとうございます。──ところでヲ級ちゃん、お菓子は何を作ってきたんですか?」
187 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2015/12/25(金) 20:21:48.25 ID:HhmmbTiJo
ヲ級「ワッフル! 間宮さん、伊良湖さん、褒めてくれた!」スッ
空母棲姫「もうベタ褒めでした。甘い方も甘くない方も、初めて作ったとは思えないと言っていたわ」
長門「! ……確かに、良い香りだ」
瑞鶴「……ん? もしかして長門さんって甘い物が好きだったの?」
響「そうなんだ?」
長門「む……いや、そのだな……。…………嫌い、ではない……」
提督「そうか」
長門「……なんだ。悪いか? 悪いのか?」ジッ
提督「味の好みなど個人差が激しいものだ。好みで人を左右するようなものでもないだろう。食の好みに口を挟むような者はここには居らんよ」
長門「……そ、そうか。うむ。そうだな。味覚で人は決まらない」
提督「ああ。だから、これからは間宮と伊良湖が甘味を振舞った時も遠慮なく口にして良いぞ」
長門「〜〜〜〜〜〜っ!」
提督「恥ずかしがる事でもない。どうせ向こうでは口にしたくても出来なかったのだろう? ここならば誰も気にせん。むしろ、間宮も伊良湖も手を付けない事から甘い物が嫌いなのかと思っていると言っていた」
長門「……変ではないのか?」
提督「どこが変になるんだ。さっきも言ったように好みなど個人で大きく違う。堂々としていれば何もおかしく思われん。むしろ変に気にしていると周囲もおかしな目で見るぞ」
長門「なるほど……ふむ……」
提督(……長門も頑固な子か。……いや、プライドが高いのか? 自分の好きな物を抑えつけても仕方が無いだろうに)
金剛「お待たせしまシタ」
ヲ級「紅茶、初めて……!」キラキラ
金剛「紅茶は良いものデース。きっとお二人も気に入ってくれマス」スッ
ヲ級「♪」ワクワク
提督「さて、全員に行き渡ったようだ。頂こう。──ヲ級、少ない包みの方が甘くない方か?」
ヲ級「うん!」
提督「うむ。分かった」スッ
響「じゃあ私達はこっちだね」スッ
長門「…………」スッ
空母棲姫(素直に甘い方を手に取りましたね)スッ
飛龍「私も甘くない方を頂きますね」ヒョイ
提督「ふむ、珍しいな」
飛龍「たまには良いかなって思いまして」
提督「そうか。──では、私も頂こう」モグ
ヲ級「どうっ?」ワクワク
提督「ふむ……バターの味がとても良い。これは紅茶とよく合う」ズズッ
金剛「甘い方もとっても美味しいデース!」
瑞鶴「これが初めてなんて、とても思えないわね……」
響「才能かもね」
ヲ級「えへー」ニコニコ
188 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2015/12/25(金) 20:22:17.97 ID:HhmmbTiJo
長門「…………」モグモグ
長門(……非常に美味い。甘さもくどくなくて、すっきりとしている)
ヲ級「ね、ね、どうっ?」
長門「ぅ……む…………美味い、ぞ」フイッ
ヲ級「♪」ニコニコ
長門「…………調子が狂ってしまう」ハァ
空母棲姫「素直になってしまえ。我慢は良くないぞ」
提督「そうだ。頑固であれば頑固である程この現状に頭を痛めるぞ」
長門「全くもってそうだな……。こんな無邪気な顔を見せられたら、今まで警戒していたのは何だったのかと思ってしまう……」
ヲ級「?」パクパク
長門「ああほら、欠片が口の端に付いているぞ」スッ
ヲ級「! ありがと!」ニパ
長門(……本当に、敵とは思えないな)
空母棲姫「……私も、もう少し認識を改めなければな」
長門「ん?」
空母棲姫「…………」フイッ
長門(……本当、私たち艦娘も深海棲艦も……なぜ戦っているのだろうな。二人に訊いてみたいとは思うが──)チラ
金剛「今度スコーンも焼いてみまセンか?」
ヲ級「すこーん?」
響「英国のお菓子だよ。紅茶と一緒に食べると凄く美味しいんだ」
金剛「テートク、今度また隣の部屋をお借りしても良いデスか?」
提督「構わんぞ。その時は私に鍵を取りに来るようにな」
瑞鶴「あ、私も見てみたい」
ヲ級「楽しみ! ね、姫?」
空母棲姫「そうだな。新しい料理を覚えるのは楽しい」
飛龍(素直になってきてるなぁ)ニコニコ
空母棲姫「……なんだ、その母親が子供に向けていそうな目は」
飛龍「いえいえ。素直が一番、って思っただけですよ」
空母棲姫「……ふん」
長門(……この空気を壊したくない。機会があったときにでもするか)
……………………
…………
……
189 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2015/12/25(金) 20:23:10.36 ID:HhmmbTiJo
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。メリークルシミマス。
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/25(金) 21:27:23.41 ID:25wMvxmmo
乙
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/25(金) 21:54:14.18 ID:PDaE5P4No
おつ
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/25(金) 21:55:04.96 ID:mWgUx0Xa0
乙
姫もいいな
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/12/25(金) 21:58:57.27 ID:cvnVTWLbo
乙です
194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/25(金) 22:03:26.33 ID:aSOhH9Kvo
>>193
ageんなks
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/25(金) 22:16:41.36 ID:PDaE5P4No
カスはおめーだよ
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/12/26(土) 10:31:50.07 ID:k2Yge/J00
乙です
ビジュアルノベルの続報をずっと心待ちにしてたり……(チラ
197 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/03(日) 13:09:36.81 ID:W7PXa9gvo
提督「──では、朝礼を行おう。まずは連絡事項からだ。皆も知っての通り、現在は深海棲艦が沖で力を蓄えている。が、総司令部からの伝達により我々の鎮守府は周辺海域の警邏に当たる事となった」
利根「警邏……? なぜじゃ。多くの深海棲艦がおったのじゃろう?」
提督「確かに多くの深海棲艦は居たが、索敵により三つの鎮守府の戦力を合わせれば充分に殲滅出来るであろう数だそうだ。また、我々の鎮守府よりも近くにある鎮守府が作戦に入り、私達は裏方をせよとの事だ。他の敵が作戦域に入ってこれないよう見回るのも重要な仕事なので、警邏と言っても厳重に警戒する事。良いな」
全員「ハイッ!」
提督「今回の遠征は警備任務と海上護衛任務の二つを行う。今回は先程言った中規模作戦の関係上、従来のモノとは異なり重巡の子達も出て貰う。だが、今まで出したことは無いので慣れない点もあるだろう。よって旗艦は慣れている者に任せる」
提督「警備任務は龍田を旗艦とし、熊野、暁、響、雷、電の六人で行う。海上護衛任務は天龍を旗艦とし、那智、羽黒、夕立、時雨、春雨の六人だ。天龍、龍田、頼むぞ」
天龍「おう! 俺に任せとけって!」
龍田「は〜い。任せてね〜」
提督「その他の者は自分の仕事がある場合はそれに従事する事。演習は中規模作戦を展開している間は控える。いつ何が起きるか分からないので、いつでも出撃できるよう心構えはしておいてくれ。──以上だ。何か質問はあるか? ……………………無いようだな。朝礼は終わりだ。各自、持ち場に就け」
全員「ハイッ!」
…………………………………………。
198 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/03(日) 13:10:14.78 ID:W7PXa9gvo
提督「──さて、私達は私達の仕事をするとしよう。いつもより書類が多いから心しておくように」
利根「うむ、了承したぞ」
飛龍「はい。……とは言っても、多くなってもこのくらいなんですね」
提督「増えた書類の数だけは大した事はないが、一番面倒なのが資材の確認だ。帳簿と実際の数字が合っているかどうかを確認する作業は面倒極まりない」
飛龍「ぅえ……。あの資材を全部確認するんですか……?」
提督「そうだ。帳簿と違っていて、物資支援する際に足りませんでした……となったら大問題だろう?」
飛龍「ああ、なるほど……。前の大規模作戦の時に確認していたのはそういう事だったんですね」
提督「まあな。整理はするようにしているから多少はマシだが、それでも確認だけで多くの時間は掛かる」
利根「ふむ……ふむふむ」
飛龍「? どうかしたんですか?」
利根「なに。思うてみれば資材を数えた事が無かったからのう。提督よ、その確認作業を我輩に任せてくれぬか?」
提督「速い数え方を知っているのか言ってみろ」
利根「縦横奥で掛け算すれば良いのじゃろう? それが出来ぬ場合は地道に数える。これでどうじゃ?」
提督「ほう。成長していっているな。正解だ」
利根「ふふん。我輩とて少しずつじゃが育つぞ。──では、我輩は向かうとしよう。帳簿を借りてゆくぞ」スッ
提督「頼んだ」
ガチャ
利根「…………」チラ
飛龍「?」
利根「…………」グッ
パタン
飛龍「……利根さん、なんでサムズアップしたんですかね」
提督「まったく……」
飛龍「え……? 提督は今ので分かったんですか?」
199 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/03(日) 13:10:47.40 ID:W7PXa9gvo
提督「なんとなくはな。大方、私と飛龍を二人きりにさせようという所だろう」
飛龍「……………………え? なんでですか……?」
提督「そこまでは分からん。……一体何を考えているんだろうな。ここ最近の利根は何を考えているのか分からん事が多々ある」
提督(あの島では伴侶になりたいとまで言っていたが、それだとしたらなぜ……?)
提督「……考えていても分からんな。私達は私達の仕事へ入るとしよう」
飛龍「はい。では、お茶を淹れてきますね」スッ
提督「頼む」
提督「…………」ジッ
提督(……ふむ。今回の中規模作戦は慢心しないように全力で掛かるようにせよ、か。あのレ級を相手にするのだから、流石の総司令部も警戒するよう指示を出すか)
提督(こっちの報告すべき内容は……ふむ。この辺りは利根が資材を確認し終えてからか。では、まずはこの書類から手を付けるとしよう)
提督「…………」サラサラ
提督(……しかし、利根は何を考えているんだろうか。あいつの事ならばほとんどの事が分かるつもりで居たが、まだ分からない事もあるものだな)サラサラ
提督(いや、利根も変わってきているから分からない事が出てきたという方か? ……なぜ利根は私と飛龍を二人きりにさせたか、を解明すれば分かるだろうか)サラサラ
提督(利根自身の成長速度は充分。という事は初めに約束した『秘書艦として不充分でありながら上達が見込めない場合は降りて貰う』は当て嵌まらない。それとも、別に好きな男が出来たか?)
提督(……それこそ有り得んか。この鎮守府には私以外の男性は居ない。加えて、利根はいつも私と居て他の男性と接する機会など無かったはずだ)
提督(……分からんな。利根に何があったんだ?)
飛龍「──あれ? 提督、どうしたんですか? 何か書類で悩む事でもありました?」トコトコ
提督「む、いかん。手が止まっていたか」サラサラ
飛龍「提督が考え事で仕事の手が止まるなんて珍しいですね。何があったんですか?」
提督「まあ、少しな……」
飛龍(たぶん、利根さんの事なんだろうなぁ。私も利根さんが何を考えて二人っきりにしてくれたのか分からないし……)
200 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/03(日) 13:11:18.34 ID:W7PXa9gvo
飛龍「では、気分転換にお茶をどうぞ」スッ
提督「ありがた…………飛龍、これは」
飛龍「えっと……はい。見ての通りです。今日は日本茶ではありませんよ」
提督「……私は紅茶にはうるさいぞ」ズズッ
飛龍「お、お手柔らかにお願いします……!」
提督「…………」
飛龍「…………」ドキドキ
提督「……煎茶と紅茶は淹れ方が違うのは知っているか?」
飛龍「え……嘘……」
提督「飲んでみれば分かる」
飛龍「…………」コクコク
飛龍「…………………………………………」
提督「どうだ?」
飛龍「……美味しくないです」
提督「次からはほうじ茶と同じように沸騰直後の熱湯を使い、二分くらい待ってみろ。それだけで大きく変わる」
飛龍「ごめんなさい……」
提督「……………………。しかし……紅茶か」
飛龍「淹れるのは、ダメ……でしたか?」
提督「ダメという訳ではない。日本茶だろうと紅茶だろうと淹れる茶に制限を付ける気は無いぞ。……何の理由があって紅茶にしようと思ったんだ?」
飛龍「その……そろそろ紅茶が飲みたくなるんじゃないかなって思って……」
提督「…………」
飛龍「…………」ビクビク
提督「……飛龍、こっちへ来なさい」
飛龍「は、はい……!」ビクッ
飛龍(どうしよう……怒らせちゃったかな……)ビクビク
201 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/03(日) 13:11:59.73 ID:W7PXa9gvo
提督「…………」スッ
飛龍(うぅ……立ったって事は、絶対に何かあるよね……。やっぱり、紅茶を淹れるべきじゃ──)
提督「…………」ギュゥ
飛龍「──ぇう……?」
提督「…………」
飛龍「あ、あああの、提督……!? な、なんで抱き締めッ……!?」ドキドキ
提督「すまん……少し、このままにさせてくれ……」
飛龍「あ、ぅ…………はい……」
提督「……………………」
飛龍(…………ああ、そっか──)
飛龍(──そうだよね……提督は気丈に振舞っていただけだったんだ……)ソッ
飛龍(婚約までした想い人を失って辛くないはずなんてない……。あの島にずっと居た理由は、ただ総司令部の人に命じられていたからなんかじゃなかったんだ……)
飛龍(嫌な言い方になっちゃうけど、金剛さんの事を傷から記憶に昇華させる為でもあった。……だから、今回みたいな不意打ちの紅茶で色々と思い出したのかな)
飛龍(……ごめんなさい、提督)
提督「……すまなかった」スッ
飛龍「あ……はい……」
提督「……それと、飛龍にはお仕置きをせねばならんな」
飛龍「えっ……!? う……はい……」ビクッ
提督「これからは紅茶も淹れられるよう、しばらくの間は私を相手に紅茶の練習をしてくれ」
飛龍「────え?」
提督「どうした、聴こえなかったか?」
飛龍「い、いえいえ!! ちょっと意外だと思っただけです!」
提督「そうか。では、良いか?」
飛龍「はい! 喜んでお受けしますね!」
提督(……こういう事か、利根。お前という奴は……まったく……。お前は、本当にそれで良いのか──?)
…………………………………………。
202 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/03(日) 13:14:52.04 ID:W7PXa9gvo
今回はここまでです。また一週間後……に来れるかは分かりませんが、目安として考えて下さい。
明けましておめでとうございます。また今年もこの拙いSSをお相手下さいませ。
本格的に飛龍ルートへ入ったので安心安心。
203 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/03(日) 13:25:16.42 ID:8dW1q1xDO
乙
204 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
:2016/01/03(日) 14:16:00.26 ID:b1CVQ1Qdo
乙です
205 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/03(日) 15:13:01.42 ID:3m4TJjduo
>>204
sageろks
206 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/03(日) 15:54:37.21 ID:I0rcSXxj0
あけおめ乙です
207 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/03(日) 20:19:10.30 ID:eWKIDiuQo
おつ
208 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/05(火) 00:07:06.45 ID:PVplQPAa0
おつ
209 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[sage saga]:2016/01/13(水) 17:13:46.99 ID:94bpdhM+o
もう少々お待ち下さいませ。ちょっとお仕事の締め切りがあるので……。
明日か明後日に更新します。
210 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/13(水) 17:15:13.46 ID:Y+jnbEM6o
ktkr!
211 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
:2016/01/13(水) 22:47:23.34 ID:uQTmUx3Io
そう…
212 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/13(水) 23:17:03.01 ID:119OlRvGo
>>211
sageろks
213 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/13(水) 23:51:14.41 ID:5/pGvLaCo
カスはテメーだよ
214 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 16:57:28.59 ID:WK+LXA78o
飛龍「──それでは、おやすみなさい提督」
利根「おやすみじゃー」
提督「二人も良い夢を見るようにな」
──パタン
利根「さて、我輩たちもゆっくりと寝るとするかのう。飛龍、おやすみじゃ」
飛龍「はい。おやすみなさい」
利根「〜♪」トコトコ
飛龍(……うーん。やっぱり利根さんが何を考えているのか分からないなぁ。かと言って訊く事なんて出来ないし……)トコトコ
飛龍(……提督の身体、大きかったなぁ。包み込まれたって言葉がそのまま当て嵌まっちゃった)トコトコ
飛龍「…………えへ」
加賀「あら飛龍。執務はもう終わったの?」
飛龍「ひゃぁ!? あ、か、加賀さん……!」
加賀「……どうかしたの? それとも、そんなに私が怖かったのかしら」
飛龍「ああいえ、すみません……。少し考え事をしていたもので……」
加賀「そう。──ところで飛龍、これに付き合ってくれないかしら」クイッ
飛龍「? ……あ、もしかして良い銘柄でも手に入ったんですか?」
加賀「ええ。前にも飲んだ常きげんよ。この間は頂いたから、今度は私がお返しね」
飛龍「なるほど、あのお酒ですか。美味しかったですもんね。──あ、でも明日も執務があるので、程々で許して貰えますか?」
加賀「勿論よ。さあ、行きましょうか」
飛龍「はいっ!」
加賀(……あら? この香り……)
…………………………………………。
215 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 16:58:01.92 ID:WK+LXA78o
飛龍「──さて、今日はどんな味が好みですか?」
加賀「今日は私が用意するわ。誘ったのは私だもの」
飛龍「分かりました。では、日向燗でお願いします」
加賀「ええ、少し待っていて頂戴ね」スッ
飛龍「あ、そうだ。なんなら提督も呼んじゃいます? 嗜む程度であれば乗ってくれるかもしれませんよ」
加賀「……いえ、今日は止めておきましょう」
飛龍(あれ……加賀さんなら二つ返事するかと思ったんですけど……)
飛龍「……もしかして、何かありました?」
加賀「出来れば提督の前で話したくない内容なの。……少し、昔を思い出してしまって」
飛龍「昔、ですか」
加賀「ええ。──はい、日向燗よ」スッ
飛龍「ありがとうございます。頂きますね」スッ
加賀「んっ……。やはり良いわね。私にはこのお酒にこの温かさが一番合うわ」
飛龍「私も程々が良いと思います。──うん、美味しい!」
加賀「程々が良いと言いながら、熱燗が一番好きな癖に」
飛龍「味の移り変わりを楽しむのもお酒ですよ」
加賀「答えになっていないわよ。でも、その気持ちは分かるわ。私もたまに熱いのを飲みたくなるもの」
飛龍「お酒は嗜むものですからね」
加賀「ええ」クイッ
飛龍「……………………」チビチビ
加賀「…………」
飛龍「…………………………………………」
加賀「……………………」
216 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 16:58:31.57 ID:WK+LXA78o
飛龍「昔の話、でしたよね」コトッ
加賀「……ええ」チラ
飛龍「大丈夫ですよ。ここは誰も使っていない部屋です。誰かが来るなんて事はまずありません」
加賀「……そうよね。来ないわよね」
飛龍「?」
加賀「なんでもないわ。……飛龍、貴女は提督が居なくなった時の事を覚えているかしら」
飛龍「……それは勿論」
加賀「……本当、前にも言ったけれど、提督が壊れていると気付かなかった事がおかしかったわ」
飛龍「前にも言ったじゃないですか……それは仕方が無いですよ」
加賀「それでも、よ」チビ
飛龍「……あの時の提督が何をしていたのかを知っているのは、まだ私達だけですよね」
加賀「そのはずよ。貴女が情報を漏らしていなかったらの話だけれど」
飛龍「誰にも言えませんよ。……言える訳ありません」
加賀「……そうよね……ごめんなさい」
飛龍「あ、い、いえ。こちらこそすみません……」
加賀「…………あんなに優しい顔をしながら利根の首を絞めていた提督は、もう二度と見たくないわね」
飛龍「はい……。しかも、利根さんも喜んだ顔をしていたので……その、少し怖かったです」
加賀「私達が引き剥がさなかったら、もしかしたら利根は死んでいたかもしれないわね」
飛龍「本当……あの時のお二人ほど怖いモノを見た事が無いです」
加賀「……私なら、あの状態の提督に迫られたら動けないでしょうね」
飛龍「私なんて腰が抜けちゃいそうです」
加賀「……でも、少し興味があるわ」
217 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 16:59:01.05 ID:WK+LXA78o
飛龍「えっと……加賀さん?」
加賀「冗談よ」
飛龍「本当ですか……?」
加賀「……九割ほどは」
飛龍「一割は本音なんですね……」
加賀「そう言う飛龍はどうなのかしら」
飛龍「興味が全く無いと言うのは嘘になりますけれど、私は優しい方が好きです」
加賀「優しくされ続けていると、時には刺激を求めるらしいわよ」
飛龍「そ、そうなんですか……?」
加賀「だから私達は安心して出撃が出来るのではなくて? 普段は提督に優しくされて、戦闘になれば生きるか死ぬかの戦いをして刺激を得る。その死線を潜り抜けた時なんて悦びで一杯になる人ばかりでしょう?」
飛龍「そう言われたらそうですけど……。それだったら私は今のまま優しくしてくれる方が良いです。刺激は深海棲艦との戦いだけって事で」
加賀「……本当は、私達のこの感覚もズレているのよね」
飛龍「……そうですよね。絶対に沈まないという前提ですからね」
加賀「そんな事、あるはずが無いというのに……」
飛龍「……………………」
加賀「…………」
加賀「……私達に見付かった後の事も忘れるに忘れられないわ」
飛龍「……提督が総司令部へ打った信号の事ですよね。……総司令部もまさか、あんな催促をされるとは思わなかったでしょうね」
加賀「なんて打っていたのかを提督の口から聞いただけだから、もしかしたら違うかもしれないわよ」
飛龍「うわ……そういう事言っちゃいます? 提督だから本当にありそう……」
加賀「……ただ、大まかには本当でしょうね。一先ず言える事は、提督は自分が流刑になるように報告した……ね」
飛龍「普通、そんな人なんて居ませんよね。……それでも戻って『提督』として働ける辺り、そこまで人手が不足しているのでしょうか」
218 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 16:59:36.69 ID:WK+LXA78o
加賀「そうとしか思えないわ。でなければ、下田鎮守府の提督は変わっているはずだもの」
飛龍「あ、あはは……。私、あそこの艦娘にだけはなりたくなりです……」
加賀「私もよ。道具として扱われるのは遠慮しておきたいわ」
飛龍「……そう思えば、私達はまだ幸運だったのかもしれませんね」
加賀「提督の代わりを勤めていた人の事かしら。……そうね。腕はまだまだ未熟だったけれど、ちゃんと私達の声を聞いてくれたもの」クイッ
加賀「…………」
飛龍「はい、ぬる燗ですよ」スッ
加賀「……いつの間に用意していたの?」
飛龍「ひっそりと、です」
加賀「……ありがたいわ」スッ
飛龍「いえいえ」
加賀「話は変わるのだけれど、最近の提督はどう?」
飛龍「どう、と言われましても……普通ですよ。前とほとんど変わりありません」
加賀「私にはそう見えないわね」クイッ
飛龍「え?」
加賀「貴女と何かあったのではなくて、飛龍?」
飛龍「えっ?」ビクッ
加賀「…………」ジッ
飛龍「…………」ビクビク
加賀「ほら、言ってみなさい」
飛龍「うぅ……なんで分かるんですか……」
加賀「一体、貴女とどれだけ長い間を過ごしてきていると思っているの? 四年以上よ。貴女が今日、提督室から出てきた時の微妙な変化くらい分かるわ」
219 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 17:00:04.90 ID:WK+LXA78o
飛龍「あ、あはは…………えーっと、ですね」
加賀「…………」
飛龍「……辛そうに、抱き締められました」
加賀「…………? 辛そうに?」
飛龍「提督も、まだ心の整理が出来ていないんだと思います。気丈に振舞っているだけで、まだ金剛さん達の事が忘れられていないんでしょうね」
加賀「……そうなのね」チビ
加賀「それで、秘書艦の貴女はどうするのかしら?」
飛龍「私はサポート役ですよ」
加賀「最近は貴女がメインとなっている事くらい分かるわ。直に利根は普通の子と同じになるでしょうね」
飛龍「まだ分かりませんって」
加賀「だったら、もしそうなったらどうするのかしら」
飛龍「もし、ですか……。そうですね……………………提督に任せるかもしれません」
加賀「受身なのね」
飛龍「ゆっくりで良いんです。今は提督が自然と癒される事が大事ですから」
加賀「……そう言いながら、どこかで攻めそうな気がするわ」
飛龍「さて、それはどうでしょうかね。それも事の成り行き次第です」
加賀「そう。……まあ、貴女なら提督の傍に居ても納得できるわ」
飛龍「え?」
加賀「あら、意外だったかしら。こう見えても私は貴女の事を買っているのよ? ……むしろ、なんて言われると思ったのかしら」
飛龍「……少しお小言が来るかと思いました」
加賀「正直ね。でも安心なさい。私では難しいくらい分かっているわ」
飛龍「そうでしょうか」
220 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 17:00:35.53 ID:WK+LXA78o
加賀「そうよ。私だったら、紅茶を淹れるなんて事できないもの」
飛龍「……気付いてたんですか」
加賀「案外、分かるものなのよ。紅茶も香りを楽しむものでしょう?
飛龍「…………」
加賀「……私だったら、腫れ物を扱うように紅茶へは手を出さないわ。例え、提督が望んでいると分かっていても気付いていない振りをするでしょうね」
加賀「だから飛龍。提督の事、お願いするわ」スッ
飛龍「あれ、今日はもう良いんですか?」
加賀「程々にと言ったのは貴女よ」スタスタ
飛龍「えっと……残ったお酒はどうするんですか?」
加賀「提督と一緒に飲みなさい。あの方の事だから、帰ってきてから一滴も飲んでいないのでしょう?」
飛龍「ええっと……」
加賀「貴女はここで待っていると良いわ。……それに、きっと提督もそれを望んでいるはずよ」
ガチャ──パタン
飛龍「加賀さん……。────あ」
飛龍「そっか……利根さんも、加賀さんと同じで……」
飛龍「…………私なんかで、本当に良いのかな……」
…………………………………………。
221 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/15(金) 17:02:28.28 ID:WK+LXA78o
今回はここまでです。また一週間後くらいに来ますね。
夜、二人きり、あったかいお酒、しんみりとした雰囲気。何も起こらないはずが…………この提督だったら本当に間違いが起きないかも。
222 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
:2016/01/15(金) 17:25:40.31 ID:JbdQxFY0o
乙です
223 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/15(金) 19:50:59.71 ID:D7zjp+PEo
おつ
224 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/16(土) 12:38:05.07 ID:sphrqQjrO
>>222
だからsageろ
225 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:26:48.39 ID:06b6WQ4uo
コンコンコン──。
提督「入るぞ」
飛龍「は、はいっ!」ビクッ
ガチャ──パタン
提督「どうした飛龍。こんな夜中に話があると……酒?」
飛龍「あ、えっと……さっきまで加賀さんと嗜んでいたものでして……」
提督「……飛龍が呼んでいると聞いてやってきたのだが、状況が掴めん。どういう事だ?」
飛龍「加賀さんが提督を呼んでくると……。加賀さん、提督にはなんて言ってましたか……?」
提督「飛龍から大事な話がある──とだけだ。それ以上の事は自分の口からは出せないとも言っていたかな」
飛龍「うぅ……そういう所はイジワルするんですね加賀さん……」
提督「ふむ。大事な話というのは無いのか」
飛龍「はい……。提督と一緒にこのお酒を飲みなさいと言ったくらいです……」
提督「常きげん……? 聞いた事の無い酒だな」
飛龍「加賀さんの好きなお酒ですよ。なんでも、石川県の地酒だそうでして、ほんの少し辛口なお酒です」
提督「ふむ……」
飛龍「……提督、飲んでみます?」
提督「少し悩んでいる。あともう一押し欲しい所なのだが」
飛龍「あともう一押しって……。それって飲みたいって事じゃないですか」
提督「……………………」
飛龍「…………? 提督? どうしました?」
提督「……………………」
飛龍(……あ、もしかして)
飛龍「一緒に、飲みます?」
提督「ああ。一緒に飲もうか。対面に座るぞ」スッ
飛龍「もう……。あと一押しってそういう意味でしたか」
226 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:27:29.81 ID:06b6WQ4uo
提督「基本的に酒は誘われた時のみにしているのでな」
飛龍「……初めて知りました。辛口のお酒がお好きですから結構飲んでいるのかと思っていましたよ。──あ、温かさはどれくらいが良いですか?」
提督「熱燗で頼む」
飛龍「はい。少し待っていて下さいね」
提督「……しかし、酒か。もう何年も口にしていないな」
飛龍「ずっとあの島で暮らしていましたからね。ここに戻ってきても忙しそうにしていて、それ所ではありませんでしたし」
提督「なるほど。だから酒の誘いが無かったのか。帰ってきたら酒の一杯や二杯はあるやもしれんと思っていたから不思議に思っていたぞ」
飛龍「忙しい所にお酒の話を持っていったら叱られちゃいそうですからね。最近は利根さんの教育だーって感じですから誘いづらいんだと思いますよ」
提督「そのおかげで色々と集中できて助かっていたよ」
飛龍「皆さん、良い方ですからね。提督の教育の賜物ですよ。──はい、熱燗です」スッ
提督「ありがたい。私の教育もあるだろうが、何よりもお前達が良い子だからだ」クイッ
提督「! ふむ。すっきり切れるな。この濃い辛さも美味いものだ。加賀が好くのも分かる」
飛龍「お気に召したようで良かったです。このお酒は特に燗で飲むのが良いお酒らしいですよ」
提督「ああ。これは飲むだけで燗が良いと分かる。そこまで酒に詳しくなくても分かる程だ。ほら、飛龍も飲んだらどうだ」
飛龍「私はさっき飲んで──あっ」
提督「うん?」
飛龍「……飲みたいのは山々なのですが、あともう一押し欲しい所ですね」
提督「なるほど。ならば飛龍、私と酒に付き合ってくれ」
飛龍「はい、喜んで!」
提督「ほら、器を持て」スッ
飛龍「ありがとうございます。──ふぅ……やっぱり、お酒はこういう辛いのを熱燗で頂くのが一番です」ホゥ
提督「もう一つ辛くしてみるか? 飛びきり燗でな」
飛龍「流石にそこまで辛くするのは……。私では無理でした……」
提督「冗談だ」
飛龍「もう……」
提督「くくっ」
飛龍「えへへ」
227 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:28:08.19 ID:06b6WQ4uo
提督「……さて飛龍。肴は何かな?」
飛龍「……………………」
提督「む?」
飛龍「な、何も考えていませんでした……」ションボリ
提督「そうか。ならば、お前が知りたそうにしている話でもしてみようか」
飛龍「私が知りたそうに、ですか?」
提督「酒の席で話すようなものではないが、酒のせいで口が滑ったと言い訳が出来る」クイッ
飛龍「ふふっ、どうぞ滑って下さいな。どんなお話ですか?」チビチビ
提督「私があの島へ行く原因となった時の話だ」
飛龍「……なるほど、そのお話ですか。確かに深い部分までは話してくれませんでしたね」
提督「元凶は知っての通り、金剛、瑞鶴、響を失った事だ。だが、その後の事はあまり知っていないだろう?」
飛龍「……はい」
提督「あの時の私は、三人を失った事で正常な判断が下せなくなっていたのは知っての通りだ。その状態で取った行動が、利根にやってしまったアレだな」
飛龍「例の首を絞めていたアレ……ですね」
提督「ああ。なぜあんな事をしたか、なのだが……私を慕ってくれるお前達が、どうして誰かに殺されなければならないのか──と考えたからだ」
飛龍「えっと……それがどうしてアレになるんですか?」
提督「誰かに殺されてしまうのならば、私が殺せば良い。……それが理由だ」
飛龍「…………」
提督「ハッキリ言ってくれて構わない。明らかに異常だった」
飛龍「……そうなってしまうのも無理はありません。だって、提督は大事な子を三人も失ってしまったんです。しかも……」
提督「…………」
飛龍「…………」
提督「……アレを見たのは、飛龍と加賀だけだったか?」
飛龍「……はい。他の子達には教えていません」
提督「ありがたい。他の子達を余計に不安にさせなかった事と、それでも私を慕ってくれて、ありがとう」
飛龍「誰だって、おかしくなってしまいますよ。ああなってしまうのは仕方の無い事だったんです」
228 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:28:42.54 ID:06b6WQ4uo
提督「……飛龍」
飛龍「?」
提督「隣に来て貰っても良いか?」
飛龍「勿論です」スッ
提督「……怖くないのか?」
飛龍「あの時の提督でしたら少し怖いですけど、今は全然です」
提督「……そうか。嬉しい事だ」
飛龍「……提督。一つだけ、失礼な事を聞いても良いですか?」
提督「酒のせいで滑ってしまうのも無理はないだろう」
飛龍「くすっ……。……今も、苦しいですか?」
提督「そうだな……。苦しい事には変わりない。だが、この苦しみはいつか時間が忘れさせてくれるだろう。苦しみは時間によって昇華され、記憶になるだろう」
飛龍「……後ろ、失礼しますね」スッ
提督「ああ……」
飛龍「…………」ギュゥ
提督「抱き付いてきてどうした?」
飛龍「少しくらいでしたら、こうする事で和らぐかな……と」
提督「そうか……」
飛龍「はい……」
提督「……温かいな」
飛龍「お酒で火照っていますから」
提督「なるほど。ならば、もう少し火照らせてみようか」
飛龍「……これ以上のお酒は、めっ──ですよ? 明日のお仕事に響いちゃいます」
提督「その点は安心しろ。──飛龍、後ろを向かせてくれ」
飛龍「え? は、はい」ソッ
提督「…………」クルッ
飛龍「…………?」
229 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:29:10.66 ID:06b6WQ4uo
提督「お前だけズルい」ギュ
飛龍「ひゃっ」ビクッ
提督「…………」ポンポン
飛龍「あ、あの……真正面は……その……」
提督「嫌か?」
飛龍「……イヂワル」ギュゥ
提督「……温かいな」
飛龍「……私は顔が熱いです」
提督「飲みすぎたか?」
飛龍「バカ……」
提督「飛龍が望むならば、今日はここで一緒に寝てしまいたいな」
飛龍「!」
飛龍(それって、もしかして……)
提督「…………」
飛龍「…………」
提督「……………………」
飛龍「……………………うん」コクリ
提督「では、徳利の中身は全て飲んでしまうか。燗冷めさせるのも勿体無い」
飛龍「は、はい。……お隣、失礼しますね」スッ
提督「さっきまで抱き合っていたのに、隣に座るくらい遠慮しなくても良いんじゃないか?」
飛龍「お、お酒が悪いのっ。ほろ酔いになってきたんですっ」
提督「くくっ、そうか。──ん? っとと、そんなに入れていなかったんだな。これで全部か」スッ
飛龍「ええ。ほら、嗜む程度に留めておくべきだろうと思いましたし……ね?」
230 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:29:41.20 ID:06b6WQ4uo
提督「ふむ……。半分ずつ飲むか」
飛龍「えっ!」
提督「器は一つだが、交互に飲めば問題無いだろう?」
飛龍「そ、そうよね! こ、交互に飲めば……うん!」
提督「初心な奴め。ひとり二航戦サンドとやらを人前でやったとは思えんくらいだな」
飛龍「……イヂワル」ソソッ
提督「ん? 肩を寄せてどうした」
飛龍「……サンド程じゃないけど、肩くらいならあったまるかなーって」
提督「…………」ナデナデ
飛龍「ん……」
提督「心も温まる」
飛龍「えへへ、良かった」
提督「先に頂くぞ」クイッ
飛龍「では、残りを私が」コクコク
提督(……私が口を付けた所で)
飛龍「んっ……ふぅ……」チラ
提督「…………」ワシャワシャ
飛龍「あ、あああ! 髪が乱れるじゃないですか! 私、ただでさえ癖っ毛なのに!」
提督「まったく……」スッ
飛龍(…………? 照れ隠し、なのかな)
231 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:30:10.28 ID:06b6WQ4uo
提督「明かり、落とすぞ」
飛龍「!」ピクン
パチン──
飛龍「…………」ドキドキ
提督「…………」モゾモゾ
飛龍「…………っ」ドキドキドキ
提督「……どうした。ほら、入ってこい」
飛龍「は、はいっ!」モゾ
提督「……手は出さないから安心しろ」
飛龍「……え?」
提督「ん?」
飛龍「え、あれ……?」
提督「……………………」
飛龍「…………あー……」
飛龍(早とちりしちゃった……。うぅ……さっきまで良い雰囲気だったのに……)
提督「……飛龍」モゾ
飛龍「…………? ひゃっ──!」
提督「すまんが、今日はこれで我慢してくれ」ギュゥ
飛龍「は、はい……!」ドキドキ
提督「もう少し……もう少しだけ、待っていて欲しい」
飛龍「……はい」ソッ
飛龍「いつまでも、待っていますからね。ゆっくりで構いませんので、いつかは……」
提督「ああ……。いつかは、お前を真正面から見れるように……」
飛龍「そう思ってくれるだけでも、私は嬉しいです──」
……………………
…………
……
232 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/19(火) 17:31:03.38 ID:06b6WQ4uo
今回はここまでです。また一週間以内くらいに来ると思います。
なんでこの提督、この雰囲気で手を出さないんですかね。
233 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/19(火) 17:34:28.25 ID:P/zSmdbco
乙
一番聞きたいことを
>>1
が言う
234 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/19(火) 17:51:46.42 ID:Jv9i2MqnO
多分利根の裸見慣れすぎて劣情を催さないんだよきっと…
裸族だとただの裸に興奮しないのと同じ
235 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
:2016/01/19(火) 17:57:19.75 ID:rpGIFCB3o
乙です
236 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/19(火) 18:03:24.99 ID:MI7O777GO
性愛と愛情は一緒ではないから
237 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/19(火) 18:21:31.20 ID:BN3HPL310
EDじゃ仕方ない
238 :
以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[sage]:2016/01/19(火) 22:45:01.64 ID:o2pyqbM+o
おつ
239 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:06:55.76 ID:9mdLHh9Ko
利根「…………」カリカリ
飛龍「提督、この要請書の事なんですけど──」
提督「……ふむ。またこんなにも資材を要求するか。流石にレ級相手では──」
飛龍「やっぱりそうですよね……。どうしてもあの戦力を相手ですと──」
利根「…………」チラ
利根(うむ。うむうむ。二人の距離はしっかりと縮んできておる。このまま順調にいけば、必ず二人はくっ付くじゃろうな。……まあ正直、傍から見ている立場からすれば、さっさと将来を誓い合えば良かろうにと思うがのう)ズズッ
利根(……ふむ。紅茶もまた一段と腕を上げておる。元から日本茶を淹れるのが上手かったから、紅茶に慣れるのも早いものじゃのう)カリカリ
利根(まあ……少しばかり心が寂しいがの)カリ
利根(……なんじゃろうなぁ。あの物の無かった島の方が心が豊かじゃったかもしれぬ。……いや、これは考えるべきでない事じゃな。二人に失礼じゃ)カリ
利根(すぐに慣れると良いのじゃがなぁ……)
ポン──
利根「む?」クルッ
提督「どうした、利根」
飛龍「お疲れですか?」
利根「む? むむ? 何がじゃ?」
提督「さっきから声を掛けても心ここに在らずだったぞ。悩み事があるのならば言ってくれ。私も心配になる」
飛龍「それと、無理もダメですよ?」
利根「────────」
提督「……何をそんなキョトンとしているんだ。疲れているのを無理しているんだったらベッドに放り投げて寝かし付けるまで見張るぞ」
利根「…………」
飛龍(あれ……? なんだかすっごい柔らかい微笑みを向けられているような……?)
240 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:07:26.46 ID:9mdLHh9Ko
利根「言葉に甘えてしまっても良いかのう」
提督「無理をしていたのか。まったくお前ときたら……」ヒョイ
利根「ぉおわっ?」
提督「言っただろう。ベッドに放り投げて寝かし付けると」スタスタ
利根「な、なぬ!? 本当に投げるのか!?」ビクッ
提督「流石に投げるなんて事はしないがな」ソッ
提督(……お前には色々と無理をさせてしまってすまない。そして、ありがとう)ヒソ
利根(!! ……我輩は、その言葉だけでも充分じゃよ。提督よ、飛龍を大事にしてやってくれるかの?)ヒソ
提督(言われずとも、だ)ポンポン
利根「むう……我輩は子供か? そんな頭をポンポンされねば寝れぬという訳ではないぞ」
提督「ほう、ならば止めておこうか」
利根「まったく……提督はダメじゃな。女心が分かっておらぬ。ほれ、さっさと仕事をせぬか。飛龍が待っておろうに」
利根(飛龍が嫉妬しておるぞ。早く愛でてやらねばならんじゃろ?)ヒソ
提督(お前という奴は……。後で何か奢ってやる)ヒソ
提督「良い夢を見るんだぞ」スッ
利根「ならばカーテンはちゃんと閉めてくれぬか」
利根「…………」コクリ
飛龍「!」
提督「分かった」
シャッ──
利根「ついでに耳栓も借りるぞー」
提督「ああ」
飛龍(今の利根さんの合図って、つまり……)
利根(さて、これでまた二人の距離が縮まれば良いのじゃがのう──)
241 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:08:14.24 ID:9mdLHh9Ko
提督「……さてと飛龍」
飛龍「? どうしました?」
提督「私達も少し休憩しよう。隣に座って貰って良いか?」スッ
飛龍「え? はい」スッ
提督「良い子だ」ナデナデ
飛龍「! もう、提督ったら。私は子供じゃありませんよ?」
提督「ふむ、ならばやめておこうか」スッ
飛龍「……ごめんなさい。今だけ子供にさせて下さい」
提督「珍しく我侭だな」ナデナデ
飛龍「その……」
提督「ん?」
飛龍「…………えっと、そうですね……なんだか、羨ましくって……」
提督「……何か取ってつけたような理由だが、甘えてみるか?」
飛龍「甘える……」
提督「ああ。飛龍はなかなか甘えようとしてこないからな。今回はどう甘えても構わんぞ」
飛龍「ど、どんな甘え方でも良いんですか?」
提督「流石に限度はあるがな。──さあ、どんな甘え方をしてくる?」
飛龍「じゃあ……膝枕が良いなぁ」
提督「膝枕?」
飛龍「えっと……ダメでしたか?」
提督「いや、そんな事で良いのかと思ってな。──ほら、いつでもこい」
飛龍「あれ?」
提督「うん?」
242 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:08:43.04 ID:9mdLHh9Ko
飛龍「あ、いえ。なんでもありません。……失礼しますね」ソッ
提督(……私の知っている膝枕と飛龍の知っている膝枕は何か違いでもあるのだろうか)
飛龍「…………」
飛龍(本当は提督に膝枕をしたかったけど、これもこれで良いなぁ……。なんだろう。安心する……)スリ
提督「…………」ナデナデ
飛龍「あ、それ気持ち良いかも……」
提督「ふむ、そうか」ナデナデ
飛龍「♪」ニコニコ
飛龍「提督、実はですね、さっきの膝枕って言ったのは私がしたいなーって意味だったんですよ」
提督「む、そうだったのか?」
提督(……いや待て。それは飛龍が甘えさせる側になっていないだろうか)
飛龍「でも……提督の膝枕も凄く良いです。なぜかは分かりませんが、温かい気持ちになってホッとします」
提督「分からないでもない。心を許している相手に身体を預けるというのは、私もなぜか心地良く感じるよ」
飛龍「あ、提督も分かりますか。──本当、人って不思議ですよね。こうしてただ膝枕をして貰っているだけなのに、すっごく嬉しい気持ちになるなんて」
提督「私で嬉しく思ってくれてありがたい」
飛龍「それは勿論、そう思って当然ですよ。盲目になっていますからね」
提督「…………」
飛龍「おまけに聞く耳も持たなくなってて」
提督「…………」
飛龍「更には──…………?」
提督「……………………」
飛龍「……提督、どうかしましたか?」
提督「……いや、なんでもない」
243 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:09:13.75 ID:9mdLHh9Ko
飛龍「なんでもないって事はないでしょう? 提督、凄く辛そうな顔をしていますよ」スッ
提督「大丈夫だ。ほら、横になっていて良いんだぞ」
飛龍「……提督、見れば分かるんですよ?」
提督「…………」
飛龍「今の提督は、なんだかヒビの入ったガラスみたいに壊れてしまいそうです」
提督「……………………」
飛龍「…………」シュン
飛龍「……ごめんなさい」
飛龍(私では、話せない内容だったんだろうな……)
提督「お前が悪い訳じゃないんだ。……すまない」
飛龍「…………」
提督「……同じだったから、つい……な」
飛龍「同じ……?」
提督「昔、金剛と話した内容と、な。お前はどこか金剛と似ている所があるのかもしれん」
飛龍「そうなんですか?」
提督「少しだけだがな」
飛龍「……私も、金剛さんみたいになれたら良いんですけどね」
提督「私は、飛龍は飛龍のままが良いと思う」
飛龍「え?」
提督「金剛のようになっても、それは金剛の代わりにしかならん。私は飛龍を真っ直ぐ見れるようになりたい」
提督「……この間にも言ったが、もう少しだけ待ってくれ。ちゃんと、お前を真正面から見れるようになるから、な?」
飛龍「──はいっ」
提督「さて、貴重な休憩時間なんだ。存分にゆっくりと休もう」
飛龍「はい! ……じゃあ膝枕、良いですか?」
提督「する方か?」
飛龍「いえ、される方で。……あんまりにも心地良かったものでして」コテッ
提督「くくっ。頭も撫でてやろう」スッ
飛龍「えへへー」
飛龍(私を私のままで、か。……うん。私も、その方が嬉しいな。ありがとうございます、提督)
飛龍(そしてこの時間をくれた利根さんも、ありがとうございます──)
……………………
…………
……
244 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/25(月) 00:09:54.90 ID:9mdLHh9Ko
今回はここまでです。また一週間以内くらいに来ると思います。
どうして平和ってこんなに壊れそうに見えるんですかね?
245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/01/25(月) 00:30:43.22 ID:Ysbl340vO
乙です
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/01/25(月) 00:43:42.46 ID:hnInLSjxo
乙でした
うちの飛龍さんにも膝枕してほしいなぁ…
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/01/25(月) 07:08:37.45 ID:pP+9rVBD0
乙。3人以外は暫く登場しないのかな?
248 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:23:04.72 ID:K0+3EKFxo
コンコンコン──。
提督「入れ」
ガチャ──パタン
飛龍「飛龍です。ただいま夕刻の哨戒から戻ってきました」ピシッ
提督「哨戒内容と現場の報告をしろ」
飛龍「はい。──敵影は見当たらず。また、これといって変わったモノなどもありませんでした。他の艦娘たちも至って真面目に取り組んでいるようです」
提督「何も問題無いな。ご苦労だった」
飛龍「いえいえ。……ところで提督、手に持っているそれはどうしたんですか?」
提督「これか。これは、片割れのペンダントだ」
飛龍「片割れ、ですか?」
提督「ああ。このペンダントは本来、二つで一つとなる物なんだ。よく見れば分かるが、錨が欠けた物に見えるだろう?」
飛龍「言われてみれば確かに……」
提督「時に飛龍。お前は右と左、どっちが好きだ?」
飛龍「と、唐突ですね……。正直に言ってどちらも変わりは無いんですけど……強いて言うなら左ですかね?」
提督「そうか。ならば左を渡そう」スッ
飛龍「ん? んん? すみません……話の先が見えないのですが……」ソッ
提督「右側は私が。左側は飛龍が。それで意味は分かるか?」
飛龍「────────」
提督「……気に入らなかったのならば言ってくれ。センスにはあまり自信が無いんだ」
飛龍「い、いえ! そういう訳じゃなくて……! あの……なんて言えば良いんでしょうか……」
提督「正直に言ってくれ」
飛龍「いえ……あの…………なんだか、顔がニヤけてしまいそうになって……」
249 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:23:36.85 ID:K0+3EKFxo
提督「そういう事か。ニヤけてしまっても良いんだぞ」
飛龍「…………」トコトコ
提督「む? 後ろに回ってどうした」
飛龍「……照れているのを隠す為、かな?」ギュッ
提督「なるほどな」
飛龍「えへへー……♪」
提督「喜んでくれたようで何よりだ」
飛龍「そりゃあ嬉しいですって。なんだか、特別な気分になるでしょ?」
提督「そうだな。よく分かるよ」
飛龍「……あ」ソッ
提督「うん? 離れてどうした」
飛龍「一つ気になったんですけど、これって提督にとっては二回目ですか?」
提督「……そうだな。飛龍の物とはデザインが違うが、渡している。その片割れは引き出しの奥に仕舞ってある」
飛龍「……着けているのを見た事が無いような」
提督「渡した当日に逝かれてしまったら、な。誰も知らないはずだ」
飛龍「……そういう事だったんですね」
提督「ああ」
飛龍「提督」
提督「なんだ?」
飛龍「私のも、金剛さんのも、大事にして下さいね?」
提督「勿論だ。……むしろ、お前こそ沈むなよ?」
飛龍「誰が沈んでやるもんですか。まだまだ提督としたい事があるんですから、この先八十年くらいは元気で居るつもりですよ」
提督「百までか。良いな。私も百まで生きよう」
250 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:24:05.13 ID:K0+3EKFxo
飛龍「…………」
提督「…………」
飛龍「……何言っているんですかね、私達」クス
提督「さてな。たまには良いだろう」ニヤ
飛龍「……それにしても利根さん、あまり来なくなりましたね」
提督「あいつなりに気を遣っているんだろう。利根も私の艦娘の一人だからな」
提督「──まあ、あまり気を遣わない者……いや、そうなっても仕方の無い者は居るが」チラ
飛龍「?」
コンコンコン──。
提督「入れ」
ガチャ──パタン
ヲ級「遊びに、来たよ!」ブンブン
空母棲姫「……すみません。どうしても行きたいと言っていまして……」
飛龍(なるほど。存在を秘密にしている二人ならそうなりますよね)
提督「という事は、また何か作れるようになったのか?」
ヲ級「うん! 今日は、おせんべい、作ってみた!」パッ
提督「煎餅か。珍しいな」
空母棲姫「小麦粉を少し余らせてしまったので、それに胡麻を混ぜて練り、油で揚げてみました」
提督「ふむ。では、四人で食べるとするか。飛龍、すまないがお茶の準備を頼んでも良いか?」
飛龍「分かりました。ほうじ茶で良いですか?」
提督「ああ。それで頼む。少し冷めてしまっているだろうが、湯はあったよな?」
飛龍「はい、ありますよ。少し待っていて下さいね」トコトコ
251 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:24:34.38 ID:K0+3EKFxo
ヲ級「お茶ー♪ おせんべー♪」ニコニコ
空母棲姫「本当、この子ったら……。ごめんなさいね……」
提督「気にしなくて良い。ヲ級の性格からして、人と触れ合いたいのだろう」
空母棲姫「……確かにそんな風に見えます。ですが……」
提督「私は困ってはいないから安心してくれ」ナデナデ
ヲ級「えへー」ニパッ
空母棲姫「……………………」
提督「溜め息を吐かなくなったな」
空母棲姫「いい加減、慣れました。溜め息を吐きそうになる事はもはや日常茶飯事なので」
ヲ級「!」ピクン
飛龍「──お待たせしました。お茶を持ってきましたよ」トコトコ
ヲ級「飛龍のお茶、私、好き!」
飛龍「ありがとうございます。私も美味しそうに飲んでくれるのは嬉しいですよ」コトッ
ヲ級「熱い?」
飛龍「熱いですよー。だから、気を付けて飲んで下さいね」ナデナデ
ヲ級「はーい!」
提督「……ふむ」
空母棲姫「? この子を見てどうかしたのですか?」
提督「なに。そろそろ皆の前に出しても良いだろうかと思ってな」
飛龍「あ、確かにそろそろ良いかもしれませんね」
ヲ級「!! もう、隠れなくても、良いのっ?」ワクワク
提督「ああ。明日の日が暮れた頃、皆の前に紹介する。それからは鎮守府内を自由に歩き回って良いぞ」
ヲ級「やった!」
252 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:25:02.78 ID:K0+3EKFxo
空母棲姫「…………」
提督「どうした。まだ不安か?」
空母棲姫「少しだけ……」
提督「安心しておけ。この鎮守府に居る子達ならば分かってくれる」
空母棲姫「…………反論できなくて嬉しいのやらなんとやら……」
提督「良い事だ。──さて、そろそろお茶会といこうか。飛龍も座ってくれ」
飛龍「はい」スッ
ヲ級「! 今日は、提督さんと、すっごく近いね?」
飛龍「あっ」
提督「良いものだぞ」
空母棲姫「……もしかして、お邪魔でしたか?」
提督「さてな。一つ言える事は、このお茶会を楽しもうという事くらいだ」
空母棲姫「もう……。そんな曖昧な返事を……」
飛龍「…………」チラ
提督「お前はここに居てくれよ?」
飛龍「ぅ……少し、恥ずかしいです……」
提督「今日ばかりは私の我侭だ。近くに居てくれ」
飛龍「もー……」
提督「くくっ」
提督(……まあ、こういうのも悪くはない。全ての物事は、止まる事無く流れていくのだから──)
提督「幸せにしてやるぞ、飛龍」
飛龍「……提督も幸せにしますからね!」
提督「ああ、楽しみにしているよ──」
253 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:26:41.93 ID:K0+3EKFxo
──── 利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」 IF End────
了
254 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/01/31(日) 20:31:32.95 ID:K0+3EKFxo
飛龍ルートはここまでです。本当に穏やかに終わっていく締め方でした。こんな平和的に終わる長編物語を書いたのってどれくらい振りだろ……。
さて、次の投下からこの物語のトゥルーのルートを書いていきます。
たぶん皆さん気付いていると思うのですが、利根さんのルートと飛龍のルートのどちらもが提督と利根の問題があやふやのまま終わっています。これを直接的に解決するのがトゥルーです。
また一週間以内くらいにくると思いますので、もう少々この物語とお付き合い下さいませ。
255 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/01/31(日) 20:39:13.83 ID:X6mqKQWxo
乙
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/01/31(日) 21:10:44.17 ID:JqaNHut1o
乙乙
飛龍が可愛すぎてつらい
257 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/01/31(日) 21:12:27.58 ID:h+goxALIO
乙デス
258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/01/31(日) 22:11:19.00 ID:khtjwmJ5O
乙です
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/03(水) 00:51:11.12 ID:hQWPwPQpo
おつ
260 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:55:34.99 ID:7SUR/2U5o
前スレ907からの分岐です。
金剛さんが正式に鎮守府の一員となる少し前に、甘くないスコーンを焼いていた辺りです。
投下していきますね。
261 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:56:11.45 ID:7SUR/2U5o
金剛(……さて、そろそろ焼き上がる時間デス。オーブンから取り出しまショウ)スッ
金剛「ふむ……ふむふむ。見た目はグッドです。後は味の方デスが……」
金剛「…………」モグモグ
金剛「……甘味が無くて、私の口には合わないデス。メープルシロップを掛ければ美味しいと思いマスが……」
金剛「うーん……。テートクは美味しいと言って下さるでショウか……」
コツッ──コツッ──コツッ──
金剛(! テートクですかね?)ソワソワ
カチャッ……ガチャ──パタン
提督「調子はどうだ、金剛」
金剛「私は元気デス。テートクは……なんだか雰囲気が少し暗いデスね? 何かあったのデスか?」
提督「まあ……ちょっとした総司令部からの面倒事だ。段ボール箱三つ分の書類をいきなりドカンと送られてきた」
金剛「み、三つ……。大人の人でもスッポリ入れそうなアレですよね……?」
提督「そうだ」
金剛「……お疲れ様デス」ペコッ
提督「長年サボっていたツケだろう。──ところで、何か作っていたのか? スコーンを焼いているような匂いがするが」
金剛「!! 分かるのデスか?」
提督「多少はな」
提督(『金剛』がよく作っていたからな……)
金剛「ぁ……」
提督「ん? どうした」
金剛「い、いえ……」
金剛(…………きっと、テートクの『金剛』も同じようにスコーンを作っていたのデスね……。失敗しまシタ……)
提督(……ああ……この子はたぶん『金剛』の事を考えているんだな。さて……どうしようか……)
金剛「……………………」
提督「…………」
金剛「…………」
提督「…………」ポン
金剛「…………?」
262 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:56:42.65 ID:7SUR/2U5o
提督「……ありがとう」ナデナデ
金剛「……ごめんなさいデス」
提督「どうして謝る?」
金剛「私は、気を遣わせてしまっていマス……。本当でしタラ、テートクが喜べるようにするべきなのに……」
提督「その気持ちだけで充分だ」ナデナデ
金剛「でも──」
提督「充分だよ、金剛。そう思ってくれるだけで、私は嬉しい」ナデナデ
金剛「……ハイ」
提督「なあ金剛。そのスコーン、一つ貰っても良いか?」
金剛「え──。勿論デスけど……」
提督「けど?」
金剛「…………いえ、ぜひ召し上がって下サイ! とっても久し振りデスが、上手く出来まシタ!」
提督「ああ、頂く」ヒョイッ
金剛「…………」ドキドキ
提督「…………」モグ
金剛「……お口に合いマスか?」ドキドキ
提督「……うむ。良いな、これは。美味い」
金剛「リアリー!? やったデース!」
提督「金剛、確かに防音になっているとは言ったが、少し声を抑えてくれ」
金剛「あぅ……ソーリィ……」シュン
提督「だが……」
金剛「…………?」
提督「やっぱり、お前はそうやって明るい方が似合っている。正式にこの鎮守府に籍を置く事になった時は、素を出してくれ」
金剛「──ハイッ」
提督「うむ。良い返事だ」
263 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:57:17.06 ID:7SUR/2U5o
提督(私としても、暗い金剛を見るのは辛いからな……)
金剛(……ああ……やっぱり、私を見ると思い出してしまうのデスね)
金剛「……………………」グッ
金剛(私は、テートクの為に何かしたいデス)
金剛「テートク」
提督「ん、どうした」
金剛「ご無理はしないで下サイ。……もし、どうしても私の姿を見るのが辛い時は、そのように言って下サイ」
提督「……何かするつもりなのか?」
金剛「ホラ、髪型を変えてみるとイメージが変わるかもしれないデス」ホドキホドキ
提督「髪型を?」
金剛「ハイ。……よいしょ…………今は手で支えているだけデスが、ポニーテールです。どうデスか?」スッ
提督「より活発なイメージになったな」
金剛「こうすれば、少しは意識を逸らせるかな……と思いまシテ」
提督「……なるほどな。だが、それは気持ちだけ受け取っておく。私の事を考えてくれるのは嬉しいが、金剛は自分の好きなようにやっていてくれ。いつもその髪型で居るという事は、その髪型が気に入っているんだろう?」
金剛「確かにそうデスけど……。それよりも私の好きなようにとは……?」
提督「島に居た時にも言ったかもしれんが、ずっと出撃続きで自分のやりたい事も何も出来なかったのだろう? この鎮守府で出来る範囲だったら好きな事をやっても良いんだぞ」
金剛「…………それでは、お言葉に甘えさせて頂きマス」
提督「ふむ。何がしたいんだ?」
金剛「──私は、テートクの為に何かをしたいデス」
提督「────────」
金剛「テートクが笑顔になれるようにしたい……。それが、今の私のやりたい事デス」
提督「……そうか」
金剛「ハイ」
264 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:57:50.48 ID:7SUR/2U5o
提督(私としても、暗い金剛を見るのは辛いからな……)
金剛(……ああ……やっぱり、私を見ると思い出してしまうのデスね)
金剛「……………………」グッ
金剛(私は、テートクの為に何かしたいデス)
金剛「テートク」
提督「ん、どうした」
金剛「ご無理はしないで下サイ。……もし、どうしても私の姿を見るのが辛い時は、そのように言って下サイ」
提督「……何かするつもりなのか?」
金剛「ホラ、髪型を変えてみるとイメージが変わるかもしれないデス」ホドキホドキ
提督「髪型を?」
金剛「ハイ。……よいしょ…………今は手で支えているだけデスが、ポニーテールです。どうデスか?」スッ
提督「より活発なイメージになったな」
金剛「こうすれば、少しは意識を逸らせるかな……と思いまシテ」
提督「……なるほどな。だが、それは気持ちだけ受け取っておく。私の事を考えてくれるのは嬉しいが、金剛は自分の好きなようにやっていてくれ。いつもその髪型で居るという事は、その髪型が気に入っているんだろう?」
金剛「確かにそうデスけど……。それよりも私の好きなようにとは……?」
提督「島に居た時にも言ったかもしれんが、ずっと出撃続きで自分のやりたい事も何も出来なかったのだろう? この鎮守府で出来る範囲だったら好きな事をやっても良いんだぞ」
金剛「…………それでは、お言葉に甘えさせて頂きマス」
提督「ふむ。何がしたいんだ?」
金剛「──私は、テートクの為に何かをしたいデス」
提督「────────」
金剛「テートクが笑顔になれるようにしたい……。それが、今の私のやりたい事デス」
提督「……そうか」
金剛「ハイ」
265 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:58:16.79 ID:7SUR/2U5o
提督「…………」
金剛「…………」
提督「……そうだな。とりあえずは、今晩あたりで一緒にティータイムでもするか」
金剛「! ハイッ! お待ちしていマス!」
提督「金剛、何時まで起きていられる」
金剛「深夜でも問題ナッシングです。……流石に三時とかですと辛いデスが」
提督「ならば、零時にここへ来るとしよう」
金剛「ハイ! 楽しみにしていマス!」
提督「…………」ポン
金剛「?」
提督「ありがとう」ナデナデ
金剛「!」
提督「では、私は執務に戻る。また今夜に」
ガチャ──パタン
金剛「……テートクの顔、穏やかでシタ」
金剛「少しは、お役に立てているのでショウか……?」
…………………………………………。
266 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:58:43.24 ID:7SUR/2U5o
提督「──さて、今日の執務はこれで終わりだ。ご苦労だった、飛龍」トントン
飛龍「お疲れ様です、提督」
提督「ああ。今日はもう休んで良いぞ」
飛龍「はい。──あ、そうだ。一つ良いですか?」
提督「ん?」
飛龍「これから何かご予定とかありますか?」
提督「……そうだな。一つ入っている」
飛龍「あら、そうですか……」
提督「何かあったのか?」
飛龍「ああいえ! 大した事ではありませんから」
提督「ふむ?」
飛龍「ええーっと……ただ、お酒に誘おうかなっと思っただけです。ほら、まだ日も跨いでいませんし」
飛龍(何より、なんだかいつもよりも誘いやすそうな雰囲気でしたしね)
提督「そういう事か。すまんが、それはまた今度にしてくれ」
飛龍「はい。また誘いますので、提督の都合が良い時に飲みましょう」
提督「ああ、そうしよう。──では飛龍、良い夢を見ろよ」
飛龍「はい! おやすみなさいませ」
ガチャ──パタン
提督(……さてと。約束の時間までかなり余裕があるな)
提督「……………………」チラ
提督「月夜に照らされた海、か……」
提督(そうだな。久し振りに夜の海でも眺めてみるか)
…………………………………………。
267 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:59:10.26 ID:7SUR/2U5o
提督(……暗いな。月が昇っているとはいえ、半分だけの光では波くらいしか見えるものがない)スタスタ
提督(本当にどこまでも吸い込んでいきそうなほど黒い。……深海に沈むと、こんな風に暗くて黒いのだろうか)
響「…………」ボー
提督「む、響?」
響「! ……司令官? ビックリしたよ」
提督「私こそ驚いたぞ。こんな時間にどうしたんだ?」
響「なんとなく部屋を抜け出したくなってね」
提督「……ふむ」
響「向こうに帰りたいとかじゃないよ。それだけは先に言っておくね」
提督「ならば、他に思う所があるのか」
響「ん、そうだね……。皆が優しい所が少し辛いかな」
提督「優しい所が?」
響「うん。暁や雷、電が優しいんだ。私を相手に普通にしようと努力してくれてる」
提督「…………」
響「私を見て、話して、一緒に居て、三人は辛いはずだよ。そうだっていうのに、三人は私と普通にしてくれてるんだ。……そんな三人の姿を見るのが、私は少し辛い」
提督「だから部屋を抜け出したのか」
響「うん。ごめんよ、司令官」
提督「謝る事ではない。いずれ、三人も響も慣れる事だ」
響(司令官みたいに……とは言わないでおこうかな)
提督「響」
響「なんだい司令官?」
提督「お前には、目の前に広がる海がどう見える?」
268 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 18:59:45.07 ID:7SUR/2U5o
響「……………………なんだか、私や司令官みたいに見えるよ。誰かが見ている時は至って普通のようにしているのに、夜になって見る人が居なくなったら暗くて冷えてしまっている姿を見せるから」
提督「……そうか」
響「…………」
提督「…………」
響「金剛さんや瑞鶴さんも、同じなのかな……」
提督「……それは二人に聞いてみないと分からないかもな」
響「うん……」
提督(…………ん?)チラ
長門「──二人してこんな所で何をしているんだ?」
響「! ……海を見ていたんだよ」
長門「なぜまた夜の海なんかを……。暗くてほとんど何も見えないだろう?」
響「なんとなく、かな」
提督「そうだな。なんとなくだ」
長門「……はぐらかしているように感じるが、まあ良いか」
提督「お前こそ、こんな夜中にどうしたんだ?」
長門「少し夜風に当たりたくなってな。時々だがこうやって夜、外に出ているんだ」
提督「そうか。意外だな」
長門「……意外か?」
提督「就寝と起床のどちらも規則正しくしていそうなイメージがある」
長門「なるほど。出来れば私もそうしたいものだな」
269 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 19:00:14.12 ID:7SUR/2U5o
響「長門さんも休みは不定期だったからね」
提督「それで体内時計が狂ってしまったのか?」
長門「そんな所だ。何も無いのにいきなり目が覚めてしまう事もある。そういう時はこうして夜風に当たっているぞ」
提督「…………」ポン
長門「……なぜ頭に手を置いた」
提督「やはり、お前も苦労していたんだなと思ってな」ナデナデ
長門「私を子供扱いか……」
提督「ただの労いだ。素直に受け取っておけ」スッ
長門「むぅ……」
提督「──さて、私はそろそろ中へ戻るとしよう」
響「もう行っちゃうの?」
提督「金剛と約束をしていてな」
響「私も行って良い?」
提督「そうだな。金剛も喜ぶだろう。──長門、お前はどうする」
長門「ふむ……。お邪魔させてもらおうか。その内、眠気もやってきてくれるだろう」
提督「決まりだな。では、行くか」
…………………………………………。
270 :
妖怪艦娘吊るし
◆I5l/cvh.9A
[saga]:2016/02/06(土) 19:01:32.04 ID:7SUR/2U5o
今回はここまでです。また一週間以内くらいに来ますね。
さて、こっちはどれくらい長くなるのだろうか。
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2016/02/06(土) 19:36:19.62 ID:d+eBfmFuo
乙です
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/02/06(土) 19:52:32.79 ID:WC9vB3sU0
乙。誰ルートなんだろ
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