魔女「ふふ。妻の鑑だろう?」

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485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 09:10:38.12 ID:JXbXJXUJo
これはもう駄目かもわからんね
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 15:42:54.62 ID:/mHyp+XRo
まだ待つぜ
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 20:11:10.65 ID:P33fqNTIO
はよはよはよ
生存報告だけでも
488 : ◆DTYk0ojAZ4Op [sage saga]:2016/07/07(木) 19:20:13.92 ID:Obdw9dry0
まじでちょっと待って
今週末
今週末には更新しますから
多分土曜か日曜になります
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/07(木) 21:22:37.54 ID:/sfo0cpno
まつから
生きてるならまつから
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/07(木) 21:43:18.17 ID:rO1G4H0ro
予告なんてしなけりゃいいのに
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/07(木) 22:59:59.19 ID:yfd+zHe4o
待つ
492 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:05:36.09 ID:UgjJ0tqW0

――――――――――――――――
―――――――――――
――――――

第三師団長「製造は順調です。
      …しかし、あれは一体なんです?」

勇者「何度も言わせるな」

第三師団長「ええ、焼夷兵器でしょう。
      一体なにから作られたものなのです。
      研究所の資料は喪失したはずでは?」

勇者「では既存技術の応用、という事だ。
   第一師団改編はどうなっている?」

第三師団長「…第一師団は大規模である上、複数の兵科で編成されています。
      ふたつの小型師団に分ける事までは簡単ですが…」

勇者「やはり、指揮する者が足りない、と」

第三師団長「ええ。
      ここ数年で兵科の多様化が急速に進んだ弊害です。
      特に騎兵戦力の運用に長けた者が少ない」

勇者「仕方ない、もう何人か昇格させろ」

第三師団長「…良いのですか?
      彼らの仕事は指揮官たちの警衛です。
      若者たちの中には実戦経験に乏しい者達も多く…」

勇者「貴様はいくつの戦場を経験した?」

第三師団長「三度です」

勇者「たった三度だろう。
   私に至ってはただの一度も無い。
   何、拠点防衛は私一人いれば事足りる。
   本来警衛など不要だ」



493 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:06:11.26 ID:UgjJ0tqW0



勇者「下がれ、明後日までに編成案を完成させろ。
   2週後の開戦に間に合うようにな」

第三師団長「………」

勇者「まだ何かあるのか?」

第三師団長「……兵はみな、不安がっている」

勇者「ほう?」

第三師団長「士気は高い。
      新型の焼夷兵器も一定の戦果を挙げるだろう。
      …これは結果の見えた戦です」

勇者「では不安を感じる事もあるまい」

第三師団長「そうです。
      …故にみな、どこか違和感を覚えるのだと」

勇者「はっきり話せ。
   私は忙しい」

第三師団長「我が国の国防計画は全てかの国を想定している。
      …北方の要塞線、魔研の設立、我が国に根付く魔法排斥の動き。
      全て、私が生を受ける前からの動きだ」

勇者「………それで?」

第三師団長「民草は無能だが無知ではない。
      …我が国はこの戦争を回避できない。
      その理由からみな目を背けているのです。
      結果は見えているとはいえ魔法の王国は大国だ。
      戦は数年に渡るだろう」

勇者「……貴様は軍人に向いていないようだな」

第三師団長「和睦の道など誰も夢にも思わない!
      民はみな心のどこかで、為政者たちにこの戦争を回避する選択を期待していたんだ!
      魔法は厄介な戦略単位だ、戦局などいくらでも覆る!
      たとえ勝利したところで、得るものも何も無いというのに…!!」


494 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:07:20.41 ID:UgjJ0tqW0



勇者はしばらく目を伏せていたが、


勇者「黙れ」


不意の、
髪から垣間見せた鋭い一瞥、
そしてただの一声の、煮え滾る内腑から絞り出すような低い声。
それはこの第三師団長という男を居竦ませるに充分に事足りた。


第三師団長「………!」

勇者「我が軍の指揮官は誰だ?」

第三師団長「………それは、あなた、だ」

勇者「そうだ。
   …この戦の指揮官は私だ。
   兵たちの生死も勝敗も、私の持つ権利だ」

第三師団長「…それは、危険なまでに傲慢な考えです。
      指揮官には兵をできうる限り生還させる義務がある」

勇者「そんなものはない。
   わかるか?
   そんなものは、無いんだ。
   兵が持つ義務とは、命を賭して指揮官に勝利を齎す事だけだ」

第三師団長「それでは!あなたの歩む道の先には、
      あなたしか居ない事になる!」

勇者「それでいい。
   例え私の指揮で全軍が滅びようと、
   目指す勝利の先が無人の荒野であろうと。
   …この戦の指揮官は私だ!」

第三師団長「……………」

勇者「戦争の発端がなんであろうと、
   民がどう思おうと関係ない。
   長期化した戦の産む犠牲がどれだけ多くとも、
   敵国を滅ぼすという目的は変わらない。
   和睦の道?ふざけるな。軍人が口にしていい言葉ではない」

第三師団長「しかし!
      …しかし、それを出来うるのは、もはやあなただけだ!
      英雄の再来と言われ、大権を委任されたあなたになら…!」


495 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:08:47.46 ID:UgjJ0tqW0



勇者「………国王亡き今、私に緊急権が与えられた意味をよく考えろ。
   所詮、私は未だ18の小娘に過ぎん。
   戦が終わればその役目は終わりだ。
   貴様も国の行く末を案ずるのなら、圧倒的戦力を持って敵を粉砕する方策でも考えるがいい。
   …和睦の道があろうとなかろうと、それは我々の範疇ではない。
   そういった話は宮廷で脳天気な話し合いをするような連中に任せておけばいい」


男は大将となってまだ日が浅く、
年齢も34と若かった。
理想と現実に引かれ合い震える身体を拳を握り締める事で堪え、


第三師団長「………わかり、ました」


なんとかその言葉だけを絞り出し、
銀髪の、上官でなければ小娘と呼ぶになんの躊躇もないであろう指揮官に背を向けた。

怒りが湧く度にその怒りが行き場を失い、暗い夜道にも似た喪失感、無力感に苛まされる。
男が部屋の扉に手をかけたその時、
その背に、勇者からなにやら言葉が投げかけられた。


第三師団長「………なにか?」

勇者「…いいや。
   そういえば、貴様の履歴を見た。
   なかなかに優秀な人材のようだ。
   私が居る限り、我が軍に敗走は無い。
   それだけは信じて欲しい」

第三師団長「あなたの強さは信じて疑いません。
      …が、無敵とはいかないでしょう」

勇者「………なぜそう思う?」

第三師団長「あなたは左腕をあまり使わない。
      理由はわかりませんが、過去に受けた傷が原因なのでは?」

勇者「……………」

第三師団長「…失礼する」


男が去り、また目を伏せた勇者は左腕を静かに掻き抱く。
その左手の指先は、微かに震えていた。


496 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:10:11.42 ID:UgjJ0tqW0



数分が経ち、
執務室のドアが数回叩かれた。


勇者「入れ」

兵士「…失礼します。
   第六師団所属…」

勇者「良い。貴様の顔は覚えている」

兵士「光栄ですね。英雄であるあなたに覚えて頂けているとは」

勇者「用向きだけ手短に話せ」

兵士「ええとですね、ふたつほど報告したい事が御座います。
   一昨日、王都管理局で、魔法使いを数人拘束しました。
   恐らく魔法学院執行部の残党かと思われます。
   妙な事を話されても困るので身柄は第六師団で押さえてありますが」

勇者「そうか。明日連れて来い。
   彼に預ける」

兵士「わかりました。
   次に、時計塔の街を中心に、末端ではありますが第六師団所属の部隊が次々に消息を絶っています。
   2日に1〜2部隊というかなりのスピードで対応が遅れました。
   部隊はみなならず者を雇用しただけの数合わせで被害は無いようなものだったのも原因ではありますが、
   昨日ついに西方の不安定化工作に関わっていた一部隊がやられました」

勇者「…ほう?」

兵士「不自然なほど痕跡を残していません。
   傷は剣によるものと、あとは矢傷です。
   剣は彼らの物を奪って使っているようです。
   我々の事を探っているものと」

勇者「手口が荒いという事は結果を急いているという事だ。
   つまり残された時間をある程度把握していると見ていい。
   調べはどこまで進んでいる?」

兵士「それが、犯人達の潜伏場所は割とすぐ突き止めたのですが、
   今朝方踏み込んだところもぬけの殻でした」

勇者「場所は?」

兵士「時計塔の街の一軒家です」

勇者「……狸爺め。
   討ち漏らしたとは聞いていたが…。
   他には?」


497 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:11:06.34 ID:UgjJ0tqW0



兵士「以上です。
   調べを続けます」

勇者「…そうか、ご苦労。
   下がっていい」

兵士「わかりました。
   …あれ」

勇者「どうした?」

兵士「勇者殿、
いつもの剣はどうなさったのです」

勇者「…ああ」


勇者は腰に手をやると、


勇者「あの剣なら、人に貸していてね」


少しだけ、嘲るように笑った。


498 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:21:49.39 ID:UgjJ0tqW0


――――――――――――――――
―――――――――――
――――――


鉛色の異形を漆黒の鎧で武装し、
携えた大剣を持ちて繰り出される剣戟は、
相対した者をまさに紙細工のように打ち砕く。
肉体強度は卓越した戦士の斬撃で僅かに傷がつく程度。
知性的であり卓越した戦術眼を備え、自らの存在に誇りを持ち、
冷酷ではあるものの人間にも一定の理解を示すようだ。
魔法の練度についての詳細、不明だが低く見積もって小さな城壁を吹き飛ばす程。
恐らく人間の到達し得るレベルではないと見ていい。

問題は、この諸情報は、例のハルバード使いによるものという事だ。

あれほどの武芸をもってしても、この魔族は近接戦闘においてなお上回るという。
賢者の剣技はその例の男には及ばぬものである上、彼には魔法の才は無く、
その情報には若干の加重をかけねばならない。

広間では方々で悲鳴が上がり、
腰を抜かす者、逃げ出す者など様々だ。

どうやらこの怪物の存在は魔法王のみの企みによる結果なのだろう。
遠い玉座に座す魔法王の表情は、この状況に似つかず強張っていて、
魔神と対峙する賢者の姿をただ見つめていた。


魔法王「殺せ。その後は、好きにして良い」


そして王は語る。
敢えて言葉として受け入れる必要もなかったが、
使役する魔神への命であると同時に、賢者へと向けた通告とも取れるその言葉に、
賢者は心が激しく毛羽立つのを感じた。


賢者「………ふぅー…」


彼女はひとつ息を衝き、抜剣し、
剣先を柔らかく振り身体に魔力を通わせ、更にその魔力を室内の気流へと乗せた。
肉体から迸る視認を可能とするほどの魔力は蒼白い光の絹糸となり、
そのうねりは柔らかく揺れる細い剣先に全てを委ねているようだった。

気流のうねりはやがて激しさを増し、
遠く近く吹く風音が共鳴し合い、茫々たる天地に吹き荒れる嵐が奏でる音色を思わせるようになった時、


賢者「………はっ…!」


魔神の眼前から、魔法使いの姿が消え去った。



499 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:25:43.06 ID:UgjJ0tqW0



彼我の距離は目測で10メートルは離れている。
それは恐らく、互いに容易く距離を詰められる間合いではあるが、
賢者はまず自らの絶対的に信を置く、その疾さを試したのだ。
正眼に立つ異形の魔神、その正面から、糸を引くような剣先が横薙ぎに黒色のプレートメイルの継ぎ目を狙う。

魔神は刹那の反応の遅れを示し、だがしかし最短の動きで身構え、一枚板のような大剣で左半身を覆い隠した。
甲高く耳障りな金属音が響く。
ぶつかり合う細身の直剣と黒色の大剣、その圧倒的質量差に賢者の身体は浮き上がり、
しかしその接触点を支点に身を魔神の背後へと巡らし更に攻撃に転じた。
踏んでいた通り、やはり疾さにおいてはこちらが有利。
返す刃で背後から右肩を狙う。

その斬撃は繰り返す事三度。
二種類の肉体強化、気流制御、歩法、持てる技術の全てを駆使した賢者の速度は、
もはや自らの認識の限界の処まで来ている。
五感はその速度に僅かに追いつかないが、彼女のたゆまぬ鍛錬と豊富な戦闘経験がその速度を可能とさせていたのだ。

しかしその斬撃はいずれも僅かに身動ぎした魔神の鎧によって防がれた。
振り向きざまに振るわれる大剣を認識し、彼女は息を呑んだ。
恐らく大剣の重量だけでも彼女の体重を越えるだろう。
更に驚くべきはその剣速。
移動速度、身のこなし、判断速度、そのいずれも彼女は魔神をも上回るが、
ただひとつ、その大剣の剣速だけは彼女の速度を上回っていた。


賢者「ぅああっ!!!」


異形の身体を蹴り飛ばし距離を取る。
そのまま空中で反転し、魔神の間合いから逃れると共に、彼女は渾身の魔力をもって、
一工程で行使できる最大威力の火炎魔法を投げ遣るように発した。
しかし魔神は一瞬で息を溜め、剣を構え跳躍するが如く逃れる賢者へとその身を踊らせる。
火炎魔法はいずれも馬車程度なら吹き飛ばす威力のものだが、
魔神はその火球を意にも介さず疾走した。
魔法の直撃をその身に受けながらも猛然と迫る怪物に、賢者が思わず身を居竦めた事を誰が責められよう。
その一瞬の間は大剣を回避するに致命的な隙となったが、
彼女は当惑しながらも魔力による防壁を三重に展開、加えて剣を構え、斬撃の防御を試みた。


500 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:29:10.95 ID:UgjJ0tqW0



苦し紛れの薄い防壁は全て大剣の一振りを前に砕け散り、僅かに剣速を鈍らせるに留まったが、
生死の境に感覚が超然と澄み切った一瞬、悲鳴をあげる肉体に更に鞭を入れ半身になる事で斬撃を回避、
更に細身の直剣が螺旋を描き魔神の首元をめがけ走る。
清明な彼女の頭脳は、かの斧槍使いの語った言葉を思い起こしてはいたが、
極限まで冴え渡る五感が本能的にそうさせたのだ。
斬撃は確かに魔神の首元を捉え、異形の怪物の皮膚を僅かに削り取り、
落胆をその背に負ったまま彼女は幾合もの剣戟を続ける。
頼れるのは自らの疾さ、ただその一点のみ。
その一点において彼女はこの怪物を上回る事だけは確信できた。

刹那の未来が遥か遠方にも感じられる打ち合いを続ける。
彼女に魔神の剣を防ぐ術はなく、
有効な防御はその身を躱す事のみ。
少しでも掠れば、衝撃は骨をも駆け抜けるだろう。

剣戟は時間にして10秒間ほどだが、彼女にとってどれほどの時間が過ぎただろうか定かではない。
躱した大剣が魔神の目線を遮った隙を衝き、
魔神の間合いから逃れた。


賢者「…ぅ……ぇ、げほっ……」


立ち止まると同時に肺は貪欲に酸素を求め、
その隅々まで大気を吸い込もうとするが、
極限の恐怖と戦闘への高揚感が咽頭と気道を粘つかせる。
視野はぼんやりと滲み、無理な魔法行使に頭痛が止まらず、
未だ20秒にも満たぬ戦闘にもかかわらず身体の節々は悲鳴をあげていた。

気付けば広間から人は消え、
暴虐の渦に包まれた破壊の痕跡だけが、魔神のその強壮さを彩っていた。
たった20秒間の交戦、ただそれだけで、
賢者の疲弊ぶりはもはや握る剣に力も無く、ただ迫る大剣を待つ事しかできない処まできていた。
あれだけ見えなかった刹那の先が今ははっきりと理解できる。

恐らく、自分は死ぬのだろう。
これほどの相手、相対した瞬間に撤退を決意するべきだったのだ。
しかし思い起こされるのは、かつて見た親友の笑顔。
眼前に立つ異形の怪物が自らの仇敵である事が、彼女の判断を鈍らせてしまった。


賢者「…はぁ、はぁ、はぁ…」


悠然と眼前に立つ魔神を見据え、
彼女は構えを解いた。
次の瞬間にも大剣が迫り命を落とす事を痛いほど知りながら。

だがそれにも悔いはない。
男との約束は破ってしまう事になるが、
友の仇を前にして撤退するという選択を彼女は持ち得なかった。
敵の強大さについての予備知識は確かにあった。
本来ならば執行部総掛かりで倒す相手である事も知っていた。
だが彼女には実力があった。
どれだけの難敵を前にしても、倒し切る事はできずとも、
制し切る自信も持っていた。

ただ、敵の脅威を見誤っていただけの事。

死を前に彼女は目を閉じた。
もう、二度とその目を開く事はないと覚悟をして。



501 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:30:24.05 ID:UgjJ0tqW0



魔神「…なかなかの練度だ、魔法使い」


だが慮外にも、浴びせられたのは大剣ではなく、言葉だった。
突然の魔族からの賞賛に、彼女は二度と開かぬはずの目を大きく見開いた。


魔神「剣腕、魔法ともに申し分ない。
   だがそのいずれも我を傷つけるには至らぬようだ。
   驚嘆すべきは疾さだが…目に留まらぬほどでもない」

賢者「………お褒めの言葉ありがたく頂戴するわ、魔王さま。
   死ぬ覚悟はできているわ。
   さっさと殺しなさい」


魔神は大剣を構える事なく強く床に突き刺し、
そのまま座り込んだ。


魔神「行け、魔法使い。
   今なら落ち延びる事もできるだろう」

賢者「……………は?」

魔神「見逃してやる。
   生き延び、研鑽を積むがいい。
   我と戦える強さを掴むまでな」

賢者「…契約者の命令に背くの?」


魔法王は、魔女の術式を解析したと言っていた。
それが真実であるならば、召喚に応じた魔族は術者と契約を交わし、
その契約に縛られるはずだ。
契約者と魔族は魔法によるパスが繋がり、互いの魔力を譲渡し合う事ができる。
それによる肉体的な影響やら精神的感応やら色々とあるらしいが、
詳しい事はわからない。

ただ、その契約は次元跳躍を可能にする条件とも言うべきもので、
その順守は絶対であるはずだ。
内容についておおよそ考え至る事は契約者への絶対服従。
明らかに魔法王を上回る存在が命令に従っていた事からして、
契約とはそれに近いものだと考えて自然だろう。


502 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:31:49.31 ID:UgjJ0tqW0



魔神「人間如きの考えた粗末な制約など、召喚と同時に破棄した。
   あの人間は…そうだな、協力者とでも言っておこう。
   我はなにもこの世界に戦いにきた訳ではない。
   奴は我の目的のための環境を提供し、我は奴の願いを多少聞いてやる。
   その程度の間柄だ」

賢者「…魔族が人間を見逃すのね」

魔神「つまらぬ戦いなどに興味は無い。
   無論殺される事も御免こうむるが、
   貴様如きに我は倒せん。
   が、見どころはある。
   腕を磨き出直すがいい」


その時、賢者の鼓動に変化が現れた。
どくん、とひとつ大きく心臓が収縮し、
鼓動がどんどんと早まっていく。

瞳は焦点が定まらず、
視界がぼやけ、眼前で声を発する魔神の声も、徐々に耳に届かなくなっていった。


魔神「…どうした?
   みすみす死ぬなど莫迦らしいぞ、人間」


ぐるぐると螺旋を描き、意識が遠のいていく。
この感覚はいつか味わったものだ。


―――お姉さん、魔法使いなの?


あれはどこだったか。

確か、最近、どこかの小さな村で。


―――意外と可愛いね。もう、喋れないか。
―――………じゃ、お邪魔しまーす………


そこで意識は暗転する。
記憶の底にあるいつか見た、忘れ去られ、苔むし、澱み、いつしか腐りきった底知れぬ沼のような瞳の中へ、
彼女の精神は堕ちていった。



503 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:33:14.43 ID:UgjJ0tqW0



少年「さすがに苦戦するみたいだね、おねーさん。
   あはははは…」


どこまでも白い世界。
ここは夢か、現か。

何もかもが消えた白い景色、
自らが立っているかどうかも定かではない場所。

眼前には、悪魔のような笑顔を湛えた、金髪の少年の姿があった。



504 : ◆DTYk0ojAZ4Op [saga]:2016/07/11(月) 19:34:56.79 ID:UgjJ0tqW0

遅筆ですみません。
今回はここまでです。

待って頂いている方、本当に申し訳ありません。
励みになります。

次回をお待ちください……。すみませんすみません。
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/11(月) 20:47:05.53 ID:755YVAR6O
乙!
今回も面白い!
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/11(月) 21:04:33.46 ID:mIcocA35O
楽しみに待っとるで!
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/11(月) 23:48:59.14 ID:VaKue2Wao
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/11(月) 23:49:52.22 ID:X/sCI29q0
キタ━(゚∀゚)━!
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/12(火) 00:41:38.46 ID:g2nyR+MAo
待ってた
乙です
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/12(火) 01:39:10.45 ID:UjHxVDTDO
更新キター!次の更新も楽しみにしてます。
511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/12(火) 13:46:40.90 ID:yOfkyLW1O
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/16(土) 01:51:14.72 ID:sG+LcXYGO
ん、勇者は互角の相手なのに賢者は勝てないのか
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/18(月) 04:11:17.02 ID:x1Lh9P+x0
その時より強くなったんじゃね?
それか相性の問題か
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/02(火) 21:44:02.67 ID:ruA+SOV1o
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 15:44:31.71 ID:hhNwrcEDO
516 : ◆DTYk0ojAZ4Op [sage saga]:2016/09/12(月) 11:41:04.68 ID:n6kBgbqa0
もうちょいお待ちください…。
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/12(月) 11:50:46.61 ID:HqLXKod3o
待つ
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/12(月) 13:20:06.30 ID:rhFpl/dQO
待つぞ
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/12(月) 20:06:49.83 ID:foyWT91DO
待ちます
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/12(月) 21:32:05.63 ID:j79H8tQqo
生きてたか
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/21(水) 16:42:00.05 ID:GdfLSx3TO
ほー
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/01(土) 19:35:28.89 ID:BYEv/WJ8O
ほっしゅ
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/15(土) 19:59:43.17 ID:VrTNWYnvo
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/30(日) 10:21:50.86 ID:1M/WAzen0

525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/05(土) 09:16:07.24 ID:kZevey+dO
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/11/22(火) 01:10:02.98 ID:rjRGeq6IO
生存報告くれ
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/02(金) 16:05:18.24 ID:eIpL/GFfO
アウトか
落ちるんじゃね
めっちゃ残念だわ
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/02(金) 23:13:11.20 ID:0H9iN6qkO
まってる
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/05(月) 14:14:17.15 ID:Gdud6tdDO
それでも信じて待つよ
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/10(土) 10:52:12.12 ID:ydzgORf5o
魔女すくわれなかったか
悲しいな
531 : ◆DTYk0ojAZ4Op [sage]:2016/12/12(月) 02:38:16.69 ID:cMGBukse0
僭越ながら保守らせて頂きます…
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/12(月) 08:00:38.40 ID:slYRua8Uo
待ってる
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/13(火) 21:31:49.56 ID:CkTafw+qo
生きてるならよし
待ってる
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/23(金) 18:14:07.98 ID:T0l5FPYhO
書く気はあるの?
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/25(日) 22:19:13.46 ID:mpHZNT66O
忙しいのか構想が固まらんのか
どちらにしろ本人が保守してくれてるんだから大丈夫大丈夫
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/10(火) 18:36:29.41 ID:CiXt3dlSo
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/20(金) 08:28:23.06 ID:AXfMR9NLo
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 18:47:31.80 ID:DWurn+MTO
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/28(火) 09:53:37.68 ID:I4/Rb7DNO
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 16:16:30.25 ID:jDBSPc9hO
2ヶ月超えてるんですけど…
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/08(水) 23:08:21.32 ID:biPNnwrUO
スレ消えてないし大丈夫だろ
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 01:12:33.54 ID:KMEImb2DO
ほっしゅ
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/06(木) 18:58:01.57 ID:hzzXx/KB0
てす
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/15(土) 00:09:29.21 ID:bwcRg7jKo
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/01(月) 23:41:16.44 ID:bV8hmYrho
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/21(日) 10:33:44.87 ID:tKsGsD3BO

547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/06(火) 15:06:39.81 ID:25LJC8OWo
魔女!
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/30(金) 05:44:07.80 ID:j8mt44KDO
保守

しかし、こうやって定期的に保守してくれる人がいるっていうのはいいSSである証拠だよな。
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/12(水) 13:19:38.47 ID:UyhE2jjBO
エタったらそれも無評価になる
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/16(日) 17:04:03.09 ID:UQDnR5Ggo
無評価にはならんよ
ああ、そういう人なんだねと評価は積み重なる
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/28(金) 22:15:39.93 ID:er/uwVLT0
まだか・・・
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/30(日) 14:45:48.69 ID:LL5FHHJpo
待ってる
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/27(日) 00:23:17.18 ID:SNYWEt/Ro
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/14(木) 16:22:05.78 ID:KqhhwT/Go
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2017/10/24(火) 05:06:48.07 ID:SETiI0GiO
読み直したけど相変わらず面白かったぞ
続きがよみたい
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/27(月) 21:31:04.09 ID:XyxXhAurO
まつぞい
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/15(金) 08:25:14.73 ID:gM8aSHLHO
続きを!
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/30(土) 16:36:21.55 ID:0quW2XoBo
めっちゃきになる
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/03(水) 05:10:04.97 ID:tsAtg+vQo
あけたぞ!
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/03(土) 15:03:19.74 ID:eEvytxVoo
まだか
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/02/10(土) 08:08:23.50 ID:K/Ai+9nQo
みたい
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/12(月) 00:00:15.40 ID:XY58EG7sO
まだ?
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 17:25:41.21 ID:dI/DF2GuO
1年9カ月
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/02(水) 02:38:09.55 ID:Tv6knbkco
作者が生きているかどうかだけでも知りたい
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 13:57:02.68 ID:n89WtCtXO
まうまう
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/01(日) 02:12:47.11 ID:H5d5G4gjo
おきて
567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/05(日) 01:08:50.62 ID:4AcFwlF9o
みたいぞ
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/21(火) 07:09:54.37 ID:HnwAo9Efo
2年超えてた
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 22:43:46.53 ID:+0dVEA9co
まつ
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/06(火) 15:39:50.57 ID:Rcs9UzMZo
よみたい
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/12/21(金) 22:57:03.48 ID:y/m7wO5qo
いきかえって
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/03/15(金) 03:35:27.83 ID:gmSihNEuO
まってる
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/03/21(木) 07:55:46.84 ID:lPTCePZk0
追い付いてブクマさせて貰ったよ
戦士たちのこの話はいつまででも待ってるから、貴方の構想の結末を死ぬまでに見させてくれ
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/07/06(土) 01:42:28.98 ID:0SFIbGOWo
まだかしら
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/10(月) 03:27:44.85 ID:ycKlycRq0
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/09(水) 02:33:40.27 ID:vwBAVo1co
見てる
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/19(月) 05:51:08.47 ID:+dh2tOXso
まだかな
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/02(月) 12:52:13.02 ID:6qrKID5SO
甦れ
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/12(日) 04:33:22.75 ID:m5oZ2Zboo
まってる
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/29(水) 15:53:22.70 ID:SITGL4eOO
2022年になっても待ってるからね…
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/29(水) 16:17:05.45 ID:ty/EBaWKO
マジで続き読みてぇ
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/20(木) 22:07:06.72 ID:0fQVVB0Yo
あけたよ
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/22(火) 03:33:16.56 ID:Q4y+6fVuo
まだかな
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/10/29(土) 10:33:19.03 ID:ceQu2TMY0
仕事が忙しいか? 家庭を持ったか? 古いPC処分した時にプロット失ったか?
6年経ってもまだ待つぞ
この物語の結末がどうしても見たい

再来年、もしまだ現れてなかったら
まだ待っている人がいる事を様々な方法で発信して主の目に付くよう努力する
今更もう書いてくれないかもしれないけど、今度は俺たちを見捨てないでくれ
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