【ゴッドイーター2】隊長「ヘアクリップ」

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1 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 22:09:45.84 ID:L7zAG9e10
隊長の今までとこれからの話
・GE2編からRB編の間のお話
・女隊長(主人公)による地の文っぽいもの主体のGE2編回想が主体なので注意
・隊長周りはオリ設定多し。俺のsettei*.txtが火を噴くぜ!
・隊長の性格と口調は一応女ボイス9(あがり症気味の優等生キャラ)イメージ


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439471385
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/13(木) 22:10:10.99 ID:Cr+1v+qMO
期待
3 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 22:14:46.10 ID:L7zAG9e10
1

 2074年×月某日。

 フェンリル極致化技術開発局、通称フライアによる極致化計画の第一人者、ラケル・クラウディウスの暴走によって引き起こされた、地球のエコシステム……
終末捕喰を巡る混乱が収束し、終わらない抵抗と戦いの日々が取り戻された現在。
私はある目的のため、依然として修繕作業が行われているフライアの移動要塞に足を運んでいた。
目的と言っても大した用事じゃなくて、ここにいた時期に作成していた日誌のデータを回収しに来ただけなんだけど。

 顔馴染みのフライア職員達に出迎えられつつ、嘗ての自室だった場所に入る。
異動やクーデターがあった手前、データベース内にファイルが残っているか不安だったけど、どうやら手つかずのようだった。
私はひとまず安堵し、手持ちのタブレット端末にデータを移す。
取り立てて言うほどの情報を書き込んだ覚えもないけど、こうした記録媒体は自分の初心を再確認する上で、重要なものになるだろう。
取り込んだデータの確認がてら、日誌に初めて書き込まれた日の分に目を通すと、初々しい文章が飛び込んできて、思わず苦笑してしまう。
私が神機使いになってから一年も経っていないはずだけど、こうして懐かしさを感じる程度には、濃密な時間を過ごしていた事を再確認した――
4 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 22:17:35.94 ID:L7zAG9e10

2

 ――この右腕に何もなかった頃、私はただの学生だった。
もちろん、"ただの"と言っても、フェンリル本部の内部居住区に設立された学校の高等部に通っている時点で、単なる民間人とは言えない。
私の実家は、フェンリル関連企業内の有力者の一人である父を始めとした名門であり、私もそれに与る形で比較的裕福な暮らしを送っていた。
母は5年前に病気で他界し、上には家督を継ぐ兄がいる。
私自身は、母譲りの緑がかった金髪がちょっとした自慢というだけの、平凡な箱入り娘だった。
父は優秀だけど、それと同じぐらい偏屈な人物で、
"人は在りのままの姿であるからこそ美しく、その気高さこそがこの世界を生き抜く意義にもなるのだ"という持論の元、人為的な肉体強化を施された神機使いを毛嫌いしている。
娘や出資先のフェンリルが相手でもその態度は変わらず、三年前に確定した、私の神機使いとしての適性も握り潰された。
散々神機使いにアラガミの脅威から守られておいて、虫のいい話ではあるけど、その面の皮の厚さでこの世界を生き抜いてきたのも確かだ。
5 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 22:20:39.02 ID:L7zAG9e10
そんな父を持った手前、私は神機使いになることを許されなかったばかりか、彼の思い描いたシナリオ通りの道程を歩むことも義務付けられた。
初等部からフェンリル本部所属まで、エスカレーター式に段階を踏むことのできるエリート校に在籍させられたのも、その一環だ。
私は特にそれらに反抗することもなく、17歳になるまで育ったけど、疑問がなかったわけでもない。
父が人を在りのままの姿で生かすことのできる医療関係に力を入れても、慰問の付添で訪れた外部居住区の様子を見れば、それだけでは情勢に対応できないことがすぐに分かったし、
アラガミと本質を同じくする神機使いを最終手段とした軍事力に、取り付く島は元よりない。
実質死ぬことのないアラガミを相手に、結局防戦一方にしかなっていないという実情を除けば、
人類の打開策として神機使いが機能している以上、個人の嗜好からそれを忌み嫌う父は、比較的早い段階で異常なものに見えた。
もちろん、私も神機使いがまともな職業だとは思っていなかったけど。
6 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 22:23:12.15 ID:L7zAG9e10

――こんな父でも根は聡明なのだから、少なくとも彼の敷いたレールに乗っておけば、痛い目に遭うことはない。
……とすんなり割り切れるほどできた性格でもなかったけど、口論を繰り返して家を飛び出せるだけの胆力も私にはなかった。
外の景色はずっと見ていない。アラガミの侵攻が今ほど激しくなく、まだ本部のアーコロジーが形成される以前、砂漠化とは無縁そうな草原と、
壁に遮られない青空のどこまでも広がっていく光景が、幼少の頃の思い出として、記憶の片隅にこびりついている。
美化された記憶と、父の支配から抜け出したい願望が合わさり、私はいつしか、もはや何も残っていないはずの外に、漠然とした憧れを抱くようになっていた。
今思えば何とも希少な、温室育ちのお嬢様らしいお花畑思考だ。
7 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 22:25:44.04 ID:L7zAG9e10


 現状にどこか引っ掛かりを覚えながらも、のうのうと学生生活を送っていたある日。
東の果てに現われた"赤い雨"や、"感応種"と呼ばれる新たなアラガミ……
ついでに本部直轄の"道楽"要塞についての話題で休み時間の教室が賑わいを見せていた頃、二名の客人が校舎を訪ねてきた。
一人は車椅子に乗った、喪服のような格好の女性。もう一人は、やや中性的な雰囲気を纏った、ゴシック調の衣装の青年。
内部居住区の人間から見ても少々独特な二人は私が目当てで来たらしく、私は放課後の誰もいない時間に呼び出された。

「初めまして……あなたのお父上には、フライア運用の件でお世話になりましたね」

出会い頭にそう言った女性の姿には見覚えがあった。確か、ラケル・クラウディウス博士……
神経科学分野の専門であり、本部が新たに立ち上げたフェンリル極致化技術開発局、通称フライアの副開発室長だ。
内にも外にも閉鎖的な本部が珍しく本格的な宣伝広告を打った事柄であったため、嫌でも記憶に残っていた。
しかし、そんな有名人が何の用だろうか。確かな力や資質を持った、父や兄ではなく、よりによってこの私に――

「……あなたには、ご家族の方々にない、大きな素質が眠っています」

――こちらの思考を見透かしたような発言に、思わず身体が強張る。
8 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 22:29:22.58 ID:L7zAG9e10

「そう緊張なさらずに」

ラケル博士がレースの奥の目を細める。
宗教画の如く美しい微笑み。それだけに、左目の下にある傷跡が異物感を醸し出していた。

「……荒ぶる神々を喰らうことのできる唯一の存在、ゴッドイーター……彼らもいずれは、上に立ち、道を指し示す指導者の存在を必要とするようになります」
「あなたは、旧世代のゴッドイーターたちを統べる精鋭……"ブラッド"の候補者として、フライアに招聘されました」

"ブラッド"……これも聞いたことがある。フライアの移動要塞を拠点とし、各支部の神機使いを教導する目的で新設されたという、特殊部隊の名称だ。
ふと、ラケル博士の傍らで沈黙を守る、青年の右腕が目に入る。
神機使いのものと思われる、大きな腕輪。
ただし、普段見る赤い腕輪ではなく、見慣れない装飾の施された、黒い腕輪だった。
恐らくラケル博士と、彼女を連れてきた輸送機のスタッフ、それに……私を護衛する目的で来たのだろう。

「まずは適合試験を受けてもらいます……今すぐご同行いただきますが、よろしいですね?」

微笑んだ表情のまま、ラケル博士が言葉を紡いだ。
柔らかな物腰とは裏腹に、有無を言わせぬ強引さを感じる。
そして、当の私本人はと言うと、自分でも意外なことに、彼女の無茶な申し入れを二つ返事で承諾していた。
9 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 22:33:24.02 ID:L7zAG9e10

あまりに突拍子もなさ過ぎて、事態の全容を理解する前に条件反射で応えてしまった部分もあるかもしれない。
ただ明確なのは、私がこの状況に期待心を持っていたということだ。
わざわざ校舎まで私自身を訪ねに来たことから察するに、恐らく父はこの状況を知らない。
いくら本部直轄のフライアといえど、用件が用件なので父の物言いを懸念したのだろう。
オペレーターか救護班に回すとでも言えば、彼も喜んで私を放り出したかもしれないけど、すぐバレる嘘はつきたくない、と言ったところだろうか。
正直、そこまでして私を抱き込む理由もわからなかったけど、私にとってもこれはチャンスだと判断することにした。
父の最も嫌がる方法で彼から独立して、外に出る口実を作る。
もう少し父の支配下に置かれておけば、独立の芽もあったかもしれないけど、この時は目の前に吊り下げられた、餌に飛びつく以外の選択肢が頭になかった。
そもそも、実際に目の前にいる二人が、このまま私を逃がしてくれるとも思えない、となれば。

後で頭を冷やしてひとしきり後悔する前に、せめて一度ぐらいは、どこまでも広がる空を眺めてみたい。

当時の私は、本気でそんなことを考えていた―
10 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 22:36:00.64 ID:L7zAG9e10

3

 ――それから程なくして、適合検査で耐え難い痛みを伴いつつも、私は神機使いとなった。
父とはあれ以降、一度も連絡を交わしていない。
故郷での私の存在は、現在でも行方不明者として処理されているはずだ。
有権者の娘とはいえ、いつまでも生存の見込みのない者を捜索している余裕は、この世界にはない。
もっとも、共にフライアの開発責任者であるレア博士、ラケルのクラウディウス姉妹や、局長及び本部顧問のグレゴリー・ド・グレムスロワの後ろ盾が失われ、
"ブラッド"の活躍もある程度知られるようになった現在では、その効力も弱まりつつある。
大した用事じゃないとは言ったけれど、ここに日誌を回収に来たのは、
神機使いとなってからの自分を見つめ直すことで、このことに対する決意を固め直す意図もあった――
11 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 22:40:27.60 ID:L7zAG9e10

 ――正式にフライア所属の神機使いとなった翌日、"ブラッド"候補者としての基礎訓練の日々が始まった。
いくら偏食因子で身体能力が強化されたといっても、素体は体を動かすことに慣れていない元学生だ。
神機の扱いを訓練場内でものにするのは骨が折れたけど、今までの学生生活で身についた習慣のおかげか、座学の成績はそれなりによかった。
また、フライアには二人の候補者仲間がいた。
一人は香月ナナ。私と同時期にフライアに編入された、同い年の女の子。
後ろ髪を二束、アップで留めた、猫耳のような独特の髪型、布面積の狭いチューブトップの上に、
これまた背中と脇部分が大きく開いたベストを着込み、ボトムスはサイドのファスナーを開けたショートパンツ……
といった外見で、ラケル博士達とは別ベクトルで異彩を放っている。
初対面の時こそ驚いたけど、ナナ自身は裏表のない快活な子で、よく喋りかけにきてくれる。
……そういえば、出会った時に"おでんパン"という創作料理を貰ったけど、
私は北欧生まれなので、アレも彼女の出身地である、極東では知名度の高い料理なんだろうか……と最初は勘違いしていた。
"おでんパン"自体は意外と美味しい。
12 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 22:46:31.03 ID:L7zAG9e10

もう一人はロミオ・レオーニ。私達の1年前に入隊した先輩で、
ナナと2人で訓練の感想を話し合っているところに、彼がばったりと出くわしたのが初対面となった。
彼も砕けた性格で、調子づくことも多いけど、時には先輩として、神機パーツ毎のの基本戦略を教えてくれる。
外見はニット帽とダボついたボトムスがまず目に付き、帽子や短い丈のジャケットにはバッジなどの小物が散りばめられている。
やっぱりというか何というか、ナナとは気が合うらしく、初対面の時からあっさり打ち解けていた。

 飛んだり跳ねたりすることに慣れ始めた頃には、"ブラッド"隊長のジュリウス・ヴィスコンティ……
ラケル博士の護衛を務めていた、あの青年の計らいによって、実地訓練も行われるようになった。
初めて対峙するアラガミの姿。それを切り裂き、貫いた時の感触。
どちらも気味の悪いものだったけど、この時はまだ、あくまで訓練の延長線上か、仕事の対象としてしか見ていなかった。
交戦していたオウガテイル種のアラガミが更に増援として現われた際、
ジュリウスが"ブラッド"の証である"血の力"、"ブラッドアーツ"を披露する形で、初めての実地訓練は終了となった。
戦闘の緊張から解放され、空を見上げる。
何にも遮られない、どこまでも広がる青空。亡都を覆う雑草の群れはイメージと違ったけど、この空の光景だけは記憶通りだ。
感動とある種の達成感に笑みすらこぼしていると、一緒に訓練に来たナナが不思議そうにこちらの様子を眺めていた。
13 : ◆6QfWz14LJM :2015/08/13(木) 23:00:44.86 ID:L7zAG9e10
書き溜めが尽きたので今日はここまで

ついでに適当な捕捉
・神機使いの適合検査への招聘に応じることは居住区市民の義務だが、金持ちには賄賂で拒否する手段もある(GE2、サツキ談)
・内部居住区の描写はシリーズ中ほとんどないが、内部居住区市民の設定画は存在している(公式設定資料集)
・フェンリル本部はフィンランドにある(諸々の公式書籍)
・ラケル博士の付添は本来シエルの任務だが、護衛としては神機使いの方が適しているような気もするし、
ジュリウスがしばらくシエルに会ってなかった描写もあるので、ジュリウスがついていったことにした
・そもそもラケル博士がわざわざスカウトに出向く必要があったのかって?……彼女も内心ではブラッド集めに焦ってたということでどうにか
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/13(木) 23:02:54.95 ID:c+/9ytvFO
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