鳳翔「あゝ栄光の、空母機動部隊!」 【お題募集】

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539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/27(金) 19:50:13.28 ID:ur8aiMglo
陸奥の見てきたんかええなぁ
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/28(土) 22:50:07.46 ID:XLT12dMe0
グラーフさん出てくるんですね
新キャラ追加するならせっかくですから大鳳さんも出してあげてもらえませんか? 1人残されるのも可哀想ですし

541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/28(土) 23:28:04.46 ID:6OGHoNYPO
それやると軽空母勢も全員参加させろ、ってなるのでは?
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/29(日) 00:45:35.39 ID:53gmoYZi0
グラーフは一応正規空母だからね・・・
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/29(日) 01:24:05.91 ID:1DZZ/3i90
ごめんなさい540です
1人でも何でも無かったですね
雲龍型忘れてました
忘れてください
544 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2015/11/29(日) 01:24:47.97 ID:Th3uvOj40

翔鶴さん短編がまとまらない……というかヒロインが鳳翔さん以外に慣れてない
明日あたりに延期します、本当すみません。


>>537
どうもです。
赤城さん短編みたいに、また別な提督の話なので……ハーレム苦手なもんで。
お母さん呼びは共通してるあたり、パラレルな話と思ってもらえれば。
545 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2015/11/29(日) 01:34:02.40 ID:Th3uvOj40

>>540、541、542
軽く新キャラ追加とか書いてしまって申し訳ありません。
一応自分の中では、大鳳・雲龍型・軽空母は他の鎮守府で戦ってることにしようと思ってました。

キャラを増やし過ぎて、話の中で一言しゃべるだけの立ち位置のキャラが多くなるのは
読んでいる方も嫌でしょうし。全員に出番を作れる文才があればいいんですが。
というか、もう何人かそういう子いますし……高雄とか愛宕とか最上とか


とはいえお題が来ましたので、舞鶴所属になるかは別として、その他正規空母勢も出番を作ろうと思います。

一番の問題は、正規空母で唯一、大鳳さんを持ってないということでしょうか……
546 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2015/11/29(日) 01:48:09.79 ID:Th3uvOj40

今までに出た艦娘のお題が助かるなどと書いておきながら、
軽くキャラ追加などと言ってはまずいですね。申し訳ありませんでした。

自分が相当ニッチなSSを書いてる自覚はありますので(全員にフラグ無いとか、お母さん呼び・赤城ちゃん加賀ちゃん呼びとか)
既に後輩キャラが確立しまくっている葛城などの扱いは、逆に難しいところはありますね。

いずれにせよ、これからは浅はかに追加などと言わないよう注意します。
これからもよろしくお願いいたします。
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/29(日) 04:16:25.19 ID:rTOlIc+C0
大鳳は正規空母じゃなくて装甲空母だからセーフ(震え声
本当、何時になったら実装されるんですかね
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/29(日) 09:34:33.33 ID:1DZZ/3i90
すみません540です
私の軽率な一言からこのような事態を引き起こしてしまい本当に申し訳ありません
>>1さんがお好きに書かれるのが本来ですので今回の件はお気になさらず自由に書いていただけると幸いです
本当に申し訳ありませんでした
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/29(日) 09:35:07.69 ID:1DZZ/3i90
すみません540です
私の軽率な一言からこのような事態を引き起こしてしまい本当に申し訳ありません
>>1さんがお好きに書かれるのが本来ですので今回の件はお気になさらず自由に書いていただけると幸いです
本当に申し訳ありませんでした
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/29(日) 09:37:05.17 ID:1DZZ/3i90
しかも書き込み重なってる....
慣れない事するものではないですね
お騒がせしました
551 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2015/11/29(日) 22:59:03.99 ID:Th3uvOj40

イベント甲完走できましたー! E5の削りは心臓に悪かった……
ドロップも大体終わりです、これからSS頑張りますね。


>>547
まあ大型回さないのが悪いんですけどね……
今まで困らなかったうえ、装甲空母は五航戦が来てくれたし。


>>548
今回は自分が軽率でした、すみません。
そんなに肩に力入れず読んでいただいたほうが嬉しいです、遅筆なSSですからね……
552 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2015/11/29(日) 22:59:32.67 ID:Th3uvOj40

翔鶴さん短編、立てさせて頂きました。
よろしければ読んでみてください。

翔鶴「あざなえる縄のごとし」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448802996/
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/09(水) 14:39:40.51 ID:xcEby+pa0
クリスマスボイスも無しかぁ、悲しいなぁ
是非鳳翔さんとの甘いクリスマスネタを…
554 : ◆GoPzFNH1CI [saga sage]:2015/12/25(金) 11:52:59.35 ID:tZDGZIZ50

大変お久しぶりです、夕方ごろに師走とクリスマス短編投下します。

24日のボイス追加にほんの少しだけ期待してましたが、やはり鳳翔さんには追加なし。
もし追加があればそれで書こうと思ってたので残念ですね。ちょっと本気で運営さんに忘れられてるんじゃないかと思う。

蒼龍さん短編も構想はできてるんですが、資格関連で時間がなく遅れてます、すみません。
なんとか年内にはあげたいです。


>>553
ありませんでしたねぇ。ここまで追加ないって希少価値なような……
555 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:20:55.47 ID:tZDGZIZ50


幕間9 〜きよしこの夜〜


那珂「――それじゃ、いってきまーす」

提督「うん。気をつけてな」

川内「相変わらず過保護だなー、ちょっとは信頼してよ」

提督「引率は慣れてるとはいえ、駆逐を全員連れてくのは初めてだろ」

神通「大丈夫ですよ、そんなに遠くまで行かないですから」


鳳翔「いいですか、あんまり遅くならないように。あと、ひとりでどこか行っちゃだめですよ? 軽巡の皆さんに心配かけないようにね」

「「「はーい」」」

那珂(完全にお母さんなんだよなあ)
556 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:21:52.12 ID:tZDGZIZ50

提督「……ふう。駆逐と軽巡はイルミネーションを見に行く、と」

鳳翔「クリスマスとはいえ、全員で行って大丈夫でしょうか」

提督「まあ泊りじゃないし、すぐ帰れば大丈夫……だと思う」

鳳翔「全員といえば、今日はほとんどの方が休暇を取りたいと言ったとか?」

提督「うん。戦艦組と重巡組は映画を見るって」

鳳翔「映画?」

提督「長門が、今日じゃないとダメなんだと言ってね。ずーっと楽しみにしてたみたいだから」

鳳翔「赤城ちゃんたち6人はカラオケ、明石さんと大淀さんはディナー。今日は本当に、私たち2人ですね」

提督(もしかして気を遣われたのかな)
557 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:23:20.92 ID:tZDGZIZ50

提督「まあ、今日はゆっくりしようよ」

鳳翔「なんだか最近、ゆっくりしてばかりのような……まあ、いいんですけど」

提督「さて、乾杯で酔っぱらう前に――これ、クリスマスプレゼント」

鳳翔「え? 先月にも、もらったばかりですのに」

提督「それはそれ。12月はプレゼントの機会が多くてうれしいんだよ」

鳳翔「――あ、バッグですね。ありがとうございます」

提督「しかも鳳翔を飾って、デートで眺めることもできるわけだ」

鳳翔「そ、そんな面と向かって」
558 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:24:29.94 ID:tZDGZIZ50

提督「それでこっちが、起工日のプレゼントね。12月16日」

鳳翔「えっ? ネックレス……」

提督「続いてこれが、竣工日のプレゼント。12月27日」

鳳翔「こ、香水?」

提督「で、これは1年間の、仕事と家事へのお礼」

鳳翔「ブーツ……」

提督「最後にこれが、特に理由はないけど、鳳翔に似合うと思って買った服だ」
559 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:25:17.73 ID:tZDGZIZ50

鳳翔「お、多すぎますよ! こんなにいっぺんにお金を使っちゃダメで……」

鳳翔「…………」

鳳翔「なんで服と靴のサイズ知ってるんですか!?」

提督「それは言えない。提供者からは口止めされてる」

鳳翔「密告者がいるんですか!?」

提督「気にするな。流石にスリーサイズまでは聞いてないから」

鳳翔「そんなことまでバレてるんですか……」
560 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:26:09.70 ID:tZDGZIZ50

提督「さあ着替えて。ディナーにしようじゃないか」

鳳翔「え、これに着替えるんですか?」

提督「せっかく選んだんだから、はじめに見るのは私だけがいい」

鳳翔「えっ……」

提督「外に行けなくて申し訳ないけど。今日だけは、2人で過ごしたいじゃないか」

鳳翔「も、もう。しょうがないですね」


鳳翔「……ありがとうございます、あなた」
561 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:34:57.20 ID:tZDGZIZ50


飛龍「さてさて。提督はうまくやってるかな?」

瑞鶴「鎮守府に2人っきりか。色々危ないわね、安全とかの意味で」

飛龍「まあ、全力で走れば5分くらいで戻れるけど。妖精さんは残してきてるし」


飛龍「大丈夫でしょ。お母さんが友永隊を指揮すれば鬼に金棒よ」

瑞鶴「割と冗談じゃないのが怖いわね」



蒼龍「――生き残りたい がけっぷちでいい 君を愛してる――」

翔鶴「――目覚めたい いのちがいま、惹かれ合った――」

瑞鶴「ノリノリだなぁ2人とも」

飛龍「振り付けも完璧だしね、いつ練習したんだろ」
562 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:36:02.71 ID:tZDGZIZ50

赤城「――もしもし、注文お願いします。メニューのお料理全部、3個ずつ」

赤城「――え? はい、3個ずつです。あと、このスペシャルケーキは持ち帰りで――」

加賀「あと、お酒を。ピッチャーでお願いします」

赤城「カード使えますよね? では領収書を――舞鶴鎮守府司令官で」

飛龍「ああー。提督ご愁傷さま」

瑞鶴「理不尽な……提督さんはなんにも食べてないのに」
563 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:36:49.85 ID:tZDGZIZ50

蒼龍「――ふう、決まった。完璧だね」

翔鶴「格納庫で練習してきたかいがありましたね……」

飛龍「練習って、何のためになのよ。忘年会くらいしか使えないんじゃないの」

翔鶴「――ええー!!?? 78点!?」

蒼龍「なにこれ、壊れてんじゃないの!?」

加賀「ちょっと貸しなさい、こういうのはもっと音程を正確に――」

赤城「ああっ、次は私の曲ですよ!」

瑞鶴「……うちの鎮守府はどうしてこう、歌好きが集まるのかな」
564 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:40:05.52 ID:tZDGZIZ50


長門「――おーい、摩耶!! メモリアルパンフは確保したか!?」

摩耶「おう、全員ぶんバッチリあるぜ」

長門「那智、物販の方はどうだ!?」

那智「ものすごい人混みだ、いま姉さんと最上が並んでるが……すぐ合流は無理そうだぞ」

長門「うむ、とりあえずはよし」


長門「――陸奥、どうした座り込んで。気分でも悪いのか」

陸奥「6時間も並んでりゃ、悪くもなるわよ……」
565 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:41:18.03 ID:tZDGZIZ50

長門「む、だが初回上映を見逃すわけにはいかん」

長門「海外では2週間前から映画館の前で待ったり、そのまま結婚式を挙げたりするファンもいる。負けてられんぞ」

陸奥「私は……別にそこまで見たくない……」

長門「まあ、無理はするな。なんせ明日と明後日もあるのだからな」

陸奥「……一応聞くけど、なんで3回見るわけ?」

長門「日付け入りのパンフレットだ。このために予約したようなものだからな」

陸奥「私はもう来ないからね!」

長門「1人1枚チケットを持つ必要があるのだ。もう人数分買ってしまったからもったいないだろう」

陸奥「せめて事前に言ってよ!! いや言っても嫌だけど!!」
566 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:42:14.29 ID:tZDGZIZ50


最上「全員ぶんのライトセーバー、確保したよ!」

妙高「グッズも、とりあえず買えるだけ買いこみました」

鳥海「スタンプラリーから戻りました! これ、景品のステッカーです」

長門「よし、よくやってくれた。飲み物とポップコーンは私が並んでおいたから、あとは待つだけだな」


鳥海「あれ? 摩耶、姉さんたちは?」

摩耶「ああ、高雄姉ならあっちで――」

高雄「」

摩耶「ぶっ倒れてる。戦艦組につき合わされてずっと並んでたからな」
567 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:43:25.46 ID:tZDGZIZ50

鳥海「愛宕姉さんは?」

摩耶「さっき手洗いに行ったが……逃げたかもしれないな」

長門「なに!? もうすぐ入場だぞ、すぐ探しに行かねば!」

摩耶「大丈夫だって、すぐ戻ってくるから。なにせ――」

愛宕「……摩耶ちゃあん」

摩耶「愛宕姉、財布を私に預けて忘れていったからな」

愛宕「返して〜、もう帰りたいぃ……」

鳥海「……姉さん、みんなで映画なんてすごく久しぶりなんですよ? そんなに嫌ですか」

愛宕「うぐ。わ、わかったわ、ちゃんと見るから……」
568 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:44:32.56 ID:tZDGZIZ50

山城「――ふん。長門、熱くなっちゃって子どもっぽいったら……ねー、姉さま」

扶桑「え? そ、そうね……」

扶桑(私も、長門さんに連れてこられたみたいな顔してるけど)

扶桑(言えない。私自身もチケット予約してたなんて、山城には……)

妙高「あ、扶桑さん。頼まれてたTシャツ、買えましたよ」

扶桑「わあ! ありがとうございます妙高さ――ハッ」

山城「…………」

扶桑「…………」


扶桑「山城!! これ柄違いなの、一緒に着ましょう!!」

山城「は、はあ。素直にペアルックを喜ぶべきか……」
569 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:45:21.73 ID:tZDGZIZ50



提督「……静かだな」

鳳翔「そうですね、私は好きですけど」

提督「何だかんだ言って、最近は結構2人の時間作れてるよね」

鳳翔「そういえば……鎮守府の皆さんも、仕事を手伝ってくれてますからね」

提督「うん。でも、まだまだ君がいないと回らないな」


提督「――本当に今年1年、ありがとう」

鳳翔「どういたしまして。あなたも、本当におつかれさまでした」

提督「これからもよろしく、お願いします」

鳳翔「はい。みんなで仲良く、頑張りましょうね!」
570 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2015/12/25(金) 16:50:50.48 ID:tZDGZIZ50

鳳翔さんの起工、竣工日おめでとうございます。

長門さんのキャラはすみません、やりたかっただけです……
私は30日に見に行く予定です。いやあ楽しみ。


最近はSSの更新も滞って、お題を下さった皆さんには本当に申し訳ありません。
次は年末か年始に更新できると思います。
まだもう少し続くと思いますので、これからもよろしくお願いします。
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/25(金) 17:17:30.44 ID:C2us0yz+0
乙です、こういうゆっくりまったりしたのもいいものだ
私事ですがやっと鳳翔さんとケッコンできた
待とうとかとも思ってたけど我慢できずにしてしまった
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/25(金) 17:59:27.75 ID:cvnVTWLbo
乙です
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/25(金) 18:21:20.78 ID:25wMvxmmo

外堀のキャラもどんどん固定されてくwwww
574 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/02(土) 13:43:02.16 ID:Gui0n/IY0
年末ボイスも新年ボイスもありませんでしたね
知ってた
575 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/02(土) 16:26:00.77 ID:kOdIBrOAo
うちの嫁艦ズも改二どころか追加グラ、各種追加ボイスがこないので心中お察しします。
576 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 01:45:47.71 ID:YuTh0OAb0


第4話 〜ホープフル・ニューフェイス〜


「――ふぅ、ようやく着いたか。ヨコスカからは遠すぎるな」

「ここが、マイヅルか。綺麗なところだ……伝統的な家屋も多いな、日本に来た実感がわく」

「こんな時勢でなければ、ゆっくり観光したかったところだが。そうもいかないな」

「日本最強の機動部隊がここに……さて、どんなものか楽しみだ」


「――しかし、なんだろうなこの天気は。今にも雨が降りそうな、そんな暗さだが」

「それだけではない、この胸のざわめきはなんだ」

「私としたことが、新天地への期待と不安で、動揺しているのか……」
577 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 01:50:01.20 ID:YuTh0OAb0

「――あの、こんにちは。Graf Zeppelinさん?」

Graf Zeppelin「ん? ああ、そうだが」

蒼龍「よかった、すぐ見つかって。私、航空母艦の蒼龍です」

Graf Zeppelin「ソウリュウ……はじめまして、これから世話になる」

蒼龍「こちらこそ。それじゃ、鎮守府まで案内するね」


蒼龍(お肌、白くてきれいな子だなぁ。海外の艦娘はみんなそうなのかな)

Graf Zeppelin(この、きれいな肌の日焼け具合。歴戦の空母のようだ)
578 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 01:56:02.35 ID:YuTh0OAb0

蒼龍「あのー、呼び方なんだけど」

Graf「うん?」

蒼龍「グラーフさんでいいかな。伯爵って、ちょっと呼ばれ慣れてないと思うけど」

Graf「かまわない、呼びやすさが一番だ。ゴウにいっては何とやらだからな」

蒼龍「おー、よく知ってるね」

Graf「ふふ、勉強は頑張ってしたぞ」
579 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:03:41.72 ID:YuTh0OAb0

蒼龍「グラーフさん、今までは横須賀にいたんだよね」

Graf「ああ。とはいえ、ほとんど日本語の勉強と、戦術の座学で終わってしまったが」

蒼龍「配属も、まだ決まってないんだって?」

Graf「そうなんだ。BismarckやPrinz Eugenが先に来ているから、同じ艦隊になるかと思っていたんだが」

蒼龍「あー、海外の子はどこの鎮守府にいたっけかなぁ」

Graf「提督との相性と適性を見て、配属が決まるそうだよ」

蒼龍「そっかぁ。新しい空母の子が来るなんて久しぶりだからなあ」
580 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:04:13.63 ID:YuTh0OAb0

Graf「そうなのか? 確かに正規空母は多いと聞いたが」

蒼龍「あはは、うちは戦力過多って言われてるから……」

Graf「なんにせよ、艦娘としての経験を積むには、最精鋭の空母が集っているここでジッチ、ケン……」

蒼龍「実地研修だね。いやあ、最精鋭なんて照れるなー」

Graf「本当のことだ。なにせ私は――」

蒼龍「え?」

Graf「……いや。後で話すよ」
581 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:05:29.93 ID:YuTh0OAb0

蒼龍「さて、まずは提督のところだね。こっちだよ」

Graf「ああ、頼む。だが蒼龍」

蒼龍「うん?」

Graf「マイヅルには、戦艦が4隻に航空母艦が6隻、その他の軍艦も多数いると聞いていた」

Graf「その割にはずいぶん静かだな。さほど広くは見えないが」

蒼龍「あー、これね。今日は出撃とか遠征なんかで、みんなほとんどいないのよ」

Graf「そうだったのか、忙しい時期にすまないな」
582 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:06:59.61 ID:YuTh0OAb0

蒼龍「それから、大規模改装中で外部の工廠に行ってる子もいるね。あとで紹介するけど」

Graf「ほう。空母なのか?」

蒼龍「そうそう、私の後輩だよ。仲良くしてあげてね」

Graf「私が教わる身だからな。こちらからお願いするよ」


蒼龍「――ああ、それから」

蒼龍「ここにいる空母は6隻じゃなくて、7隻だよ。貴女を入れたら8隻だね」

Graf「うん? そうだったか」

蒼龍「まあ、すこーし特別だけどね」
583 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:08:03.85 ID:YuTh0OAb0


提督「第2艦隊、状況報告」

飛龍『――飛龍です。先ほど目的地に到着、脱落した船はなし』

飛龍『予定通り、物資の揚陸を開始しました。見届けたら帰投します』

飛龍『母港への到着予定時刻、本日一八○○――送れ』

提督「了解。次の定時連絡まで、少しでも異常があれば通信せよ――以上」


提督「第3艦隊、ボーキサイト輸送船団の護衛。第4艦隊、合同演習」

提督「久々のフル稼働だな。鳳翔、そっちは問題ないか」

鳳翔「はい。それぞれ連絡を受け取っていますが、順調ですね」
584 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:09:01.42 ID:YuTh0OAb0

蒼龍「提督、お連れしました」

Graf「Guten Morgen! 航空母艦、Graf Zeppelinだ」

Graf「貴方がこの艦隊を預かる提督なのだな。そうか……よろしく頼むぞ」

提督「こちらこそよろしく。舞鶴へようこそ、歓迎するよ」

鳳翔「秘書艦の、鳳翔と申します。よろしくお願いしますね」


提督「出迎えなくてすまない。ちょっと、今日は予定が立て込んでいてね」

Graf「気にしないでくれ、敵は待ってくれないからな」
585 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:10:29.24 ID:YuTh0OAb0

提督「早速みんなに紹介したいところなんだけど……」

提督「あいにく、ほとんど出払っててね。今夜の歓迎会までには揃う予定だから」

Graf「私の歓迎会か? 気恥ずかしいが……」


提督「長旅で疲れただろう。鳳翔、部屋に案内してあげてくれ」

鳳翔「はい。ついでに、鎮守府の施設も紹介しますね」

蒼龍「それじゃあ、秘書艦は私が代わるよ」

鳳翔「よろしくね。ではグラーフさん、こちらへ」

Graf「ああ、お願いする。――Admiral、また改めて、な」

提督「うん、ゆっくり休んでくれ」
586 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:11:13.75 ID:YuTh0OAb0


Graf「――ええと、貴女は」

鳳翔「鳳翔、です。ほうしょう」

Graf「不勉強ですまない。名前を知っているのはアカギだけなんだ」

鳳翔「気にしないでください、まだ慣れていないでしょうから」

Graf「ある程度、勉強はしてきたのだが。どうも名前が独特で……」


鳳翔「焦らないでください。みんないい子たちばかりですから、すぐに仲良くなれますよ」

Graf「あ、ああ。しかし、航空戦力として経験を積むのが目的だから、早く覚えねば」

鳳翔「……ふむ」
587 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:13:33.67 ID:YuTh0OAb0

鳳翔「もしかして、焦っているのは……」

鳳翔「自分には実戦経験がないから、でしょうか」

Graf「な……」

鳳翔「ごめんなさい、ちょっと調べさせてもらいました。私は配属艦の艦歴を把握することにしていますので」

Graf「……そうか」


Graf「その通りだ。私には経験がない……あの戦争においても、この体になったあとも」

Graf「空母なのに、艦載機を扱ったことがないんだ。不安になるのも当然だろう?」

鳳翔「……わかります」

Graf「まあ、だからこそ、一番航空戦力の充実した艦隊へ来たわけだが」
588 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:14:44.27 ID:YuTh0OAb0

鳳翔「会ったばかりなのに、差し出がましいことを言うようですが」

Graf「うん?」

鳳翔「あの人……提督は、きっと良い采配をしてくれます。私が保証します」

Graf「信頼しているのだな」

鳳翔「ええ、長い付き合いですからね。あの人の下でずっと戦ってきた子は、みんなそうだと思いますよ」

Graf「…………」

鳳翔「それに、先ほども言いましたが。鎮守府の他の子にも頼ってみるといいですよ」

鳳翔「空母の子たちだけじゃなく、色んな子と話してみてください。きっといい経験になりますから」
589 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:17:36.34 ID:YuTh0OAb0

鳳翔「私にも、困ったことはなんでも相談してくださいね。なんでもいいですよ」

鳳翔「お国の料理が食べたいとか、そういうのでも。こう見えてもお料理は得意だと思ってますので」

Graf「……ああ。ありがとう」



Graf(――なぜ初対面で、ここまで弱みを話してしまったんだ)

Graf(自分の過去を見透かされて、動揺してしまったのか……)

Graf(だが、まったく不快さを感じない)

Graf(それどころか、私を気づかう、あたたかな感情が伝わってくる――)

Graf(私より小さな体が、大きく見える)


Graf(……いったい、このひとは何者なのだろう)

590 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:25:18.67 ID:YuTh0OAb0

10日遅れで、新年あけましておめでとうございます。
今年もまた、ゆっくりお付き合いくださるとうれしいです。

第4話はグラーフさん舞鶴に立つの巻。頂いたお題も盛り込んでいきます。
正統派クールは少ないので、性格は固まりやすいですかね。長門さんとの差が難しい。
続きはなるべく早くしたい……って全然守れてなくてすみません。
蒼龍さん短編も書いてますがまとまりません。時間がほしい……


なんにせよ、これからもよろしくお願いいたします。
591 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/11(月) 02:34:58.58 ID:9ILWJlQTo
乙です
592 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/01/11(月) 02:35:21.26 ID:YuTh0OAb0

前回は年内に蒼龍さん短編あげるとか言ってましたが、またもやウソ予告になってしまいました。
最近はとても大切な試験もあり、少しづつしか時間が取れていません。
申し訳ありませんが、気長に待っていただけますと幸いです……もう何回言ったかわからないくらいですが……


>>571
おめでとうございます! 何人かの方が書き込んでくれてますが、こういう報告もうれしいです。
待とうかとは何をお待ちに? 竣工日が記念日の方でしょうか。

>>574 >>575
年末大掃除も新春ボイスもありませぇん(毎年恒例)
いや、これでまた軽空母で唯一追加なしという個性は守られたのです……
593 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/11(月) 02:35:23.18 ID:0zf8Kpzvo

冬イベで正規空母追加される事を祈ってます(ニッコリ
594 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/11(月) 19:04:38.45 ID:6aEym1JEo
おつん
595 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 17:00:43.73 ID:mC61vXdlO
浮気ネタ楽しみや

グラコロまで出てくるとはやったぜ
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/07(日) 13:38:55.61 ID:ICY+dlzS0
遂に鳳翔さんにボイス来ましたね…
しかもバレンタイン!
597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/07(日) 15:16:53.49 ID:0+ojQhf9O
残念ながら軽空母唯一追加無しの称号を捨てる時が…、嬉しいよぅっ!
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/07(日) 15:20:45.27 ID:F+DXvEJG0
バレンタイン・キッスはあるのでしょうか?
599 : ◆GoPzFNH1CI [sage saga]:2016/02/08(月) 21:35:52.64 ID:uLU+ztjt0

おつかれさまです、4話の続きは近いうちに投下します。

そんなことよりも!!
鳳翔さんにボイスがある……だと……思わず二度見しましたが、ついに!


>>596,597,598

追加なしのアイデンティティがなくなりましたね、嬉しいけど少し寂しいですね……

これはバレンタインボイスで短編を書かざるを得ない!
4話終了後に、ボイスの内容で考えたいと思います。
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/12(金) 18:20:28.19 ID:f6kq349w0
鳳翔さんのボイスが可愛すぎて死んだ
更新楽しみに待ってます、イベントも頑張りましょう
601 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/24(水) 23:43:15.32 ID:v9LQex5P0

こんばんは、おつかれさまです。第4話続きです。
もういろいろ遅くなったことは投下後に改めて謝ります……
書きたいことを詰めすぎて、意外と長くなってしまいました。

今さらですが第4話のお題:五航戦改二・大破・Grafさん・バレンタイン です。


【投下前の注意】
今回は深海棲艦サイドにも、少々コミカルなオリ設定を使っています。
特に、14夏イベ:MI作戦への思い入れが強い方にはご注意いただきたいです。

また>>583の第4艦隊ですが、演習ではなく「改装のための遠征」に修正させてください。失礼しました。
602 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/24(水) 23:45:10.17 ID:v9LQex5P0





―― コンニチハー

Graf「――ああ、どうぞ?」

五月雨「失礼します、駆逐艦五月雨と――」

綾波「綾波です。スーツケースをお持ちしました」

Graf「ああ、ありがとう。わざわざすまないな」

綾波「ここに置いておきますね。――あ」

五月雨「あっ」

「「…………」」ジー
603 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/24(水) 23:46:12.12 ID:v9LQex5P0

Graf「……ん? 私の顔が、なにか?」

五月雨「どうしてそんなに!!」

綾波「お肌が白いんですか!?」

Graf「な、なに?」


綾波「私たち、出撃の前には日焼け対策をしてるんですけど」

五月雨「いくらやっても、ある程度は焼けちゃうんですよね」

Graf「そうだろうな。海面からの反射も強いだろうし」
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/24(水) 23:47:03.06 ID:nr50SjZso
おっしゃ続きや!
605 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/24(水) 23:47:15.89 ID:v9LQex5P0

綾波「でも、グラーフさんみたいな真っ白な艦娘、初めて見ました!」

五月雨「どんな日焼け止め使ってるんですか!?」

Graf「い、いや違う。これは多分、日本生まれではないから」

綾波「ええっ、外国なら焼けないんですか!?」

Graf「そうではなくて、艦体のつくり自体が違うだろうから――」

五月雨「それじゃ、私も外国で改装してもらったらいいわけですね!?」

Graf「いや……うん。したいなら止めないが」
606 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/24(水) 23:48:34.46 ID:v9LQex5P0

綾波「艦娘のパスポートってあったっけ」

五月雨「ヨーロッパまでどうやって行こう」

「「うーん……」」

Graf(……日本の駆逐艦は変わっているんだな)


五月雨「――あ、そうでした。荷物を広げたら、執務室まで来ていただきたいそうです」

綾波「よかったらお手伝いしましょうか?」

Graf「いいのか? ありがとう」
607 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/24(水) 23:50:19.88 ID:v9LQex5P0





提督「――さて、改めて」

提督「航空母艦Graf Zeppelin。本日付けをもって、舞鶴鎮守府への着任を命ず」

Graf「Ja!」

提督「研修期間は2か月。その後の配属は、君の希望と各地の戦力、戦況を考慮して決定する」

提督「もちろんここでも構わない。早く馴染んでくれるように努力するよ」

Graf「感謝する、Admiral」
608 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:03:54.55 ID:ZazPqgGp0

提督「研修の目的は、艦隊で問題なく動けるようになることと、艦上機の習熟だ」

提督「ここの方針、というより、どこでも基本だと思うけど――」

提督「練度がある程度上がるまでは、演習と遠征が主になる。出撃する場合も、鎮守府周辺海域がメインだ」

提督「出撃や遠征では、主に船団の護衛や航路の啓開。これはほぼ毎日だね」

提督「最初は、これらの任務に当たってもらいたい。異存ないかな」

Graf「ありません。――で、私の役目はいつから?」
609 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:04:38.22 ID:ZazPqgGp0

提督「そうだなぁ、急ぐこともないと思うんだけど……」

Graf「鳳翔にもそう言われたが、期間も限られているからな」

鳳翔「それじゃあ、これから鎮守府近海まで出てみますか?」

Graf「おお。出撃か?」

鳳翔「他の皆さんが出撃や遠征、演習から帰ってくるときの、航路を警備するんです」

Graf「航路の警備?」
610 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:06:13.09 ID:ZazPqgGp0

鳳翔「鎮守府の周辺には艦隊だけでなく、はぐれ艦と呼ばれる敵艦もいるのですが」

Graf「はぐれ艦か、知っている。ヨコスカにもかなりの数がいたな」

鳳翔「ええ。危険性はそれほどでもないのですが……」


鳳翔「弾薬が少なくなった時や、演習用の装備の時に見つかると大変ですからね」

鳳翔「はぐれ艦はほとんどが駆逐艦や潜水艦1隻ですが、そのぶん行動も読みにくいのです」

Graf「なるほど。この鎮守府は慎重なのだな、Admiral」

提督「無事に帰る確率を上げるためだよ。作戦成功して帰り道にやられました、じゃ意味がないから」
611 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:07:59.65 ID:ZazPqgGp0

鳳翔「それほど遠くへは出ませんし、海域を覚えるにはいい機会じゃないでしょうか」

Graf「鳳翔が出てくれるなら心強い、私からもお願いする」

提督「――よし、わかった。今日の指導は鳳翔に任せよう」

鳳翔「お任せください! それじゃグラーフさん、工廠で艤装を着けてみましょう」

Graf「ああ、よろしく頼むよ鳳翔」


蒼龍「――もう仲良くなっちゃって。お母さん、なんだかうれしそう」

提督「はは、新しい子は久々だもんなぁ。いろいろ教えてあげたいんだろ」
612 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:11:02.45 ID:ZazPqgGp0

蒼龍「――ん? 天気がまた……」

蒼龍「……なんだか、変な色の雲が出てきたね」

提督「本当だな、いきなりどうしたんだろう」


蒼龍「ねえ提督。さっき外に出たときに思ったんだけどさ」

提督「ん、どうした。何かあったのか」

蒼龍「はっきりとはわからないけど……今日の空はちょっと変だよね」

提督「確かに妙な空模様だな。雲の流れも速いし、ひと雨来るのかな」
613 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:11:35.48 ID:ZazPqgGp0

蒼龍「気象台から報告は? 海が荒れそうだとか」

提督「私も気になって問い合わせたんだけど、特に強風も波浪も心配ないそうだよ」

提督「少し霧がかかるらしいが、これはよくあることだし」

蒼龍「そっか……うーん」


蒼龍「でも、なーんか気になるな。嫌な予感がする」

提督「……そうか」
614 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:12:51.96 ID:ZazPqgGp0

提督「それじゃ、艤装の用意だ。ボイラーに火を」

提督「非番の子にも声をかけて、それから航空隊も地上配備しておくか」

蒼龍「え、いいの? 根拠ないよ」

提督「念のため、ね。今は自由に出せる戦力が少ないし、民間から要請が来た時に出せる戦力は必要だから」


提督「――それにどういうわけか、うちの悪い予感はよく当たる。私も含めてね」

蒼龍「そ、そうかなー? あはは……じゃあ、非番の子には私が言っとくから」

提督「うん、頼んだよ」
615 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:14:00.92 ID:ZazPqgGp0

鳳翔「では、行ってまいりますね」

提督「うん。くれぐれも……」

叢雲「気をつけて、でしょ。――ったく、いつまでも言うこと変わらないんだから」

満潮「言われなくても気をつけるわよ。何回も言うと、言葉の価値が下がるわ」

五月雨「2人とも、今日はいつもとちょっと違うんですよ! 油断しちゃダメです!」

Graf「世話になる。なるべく荷物にならないよう付いていくよ」

綾波「あ、大丈夫ですよ。そんなに肩に力入れないでください」
616 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:15:19.29 ID:ZazPqgGp0

鳳翔「あの、それから……」

提督「うん?」

鳳翔「い、いえ、あの」


鳳翔「帰ってきたら、渡したいものがありますので……楽しみにしていてくださいね」

提督「渡すもの? ――うん、わかったよ」

鳳翔「そ、それでは、出撃いたします!」


提督「――帰ってきたら、か。楽しみだな」

提督「何か立った気もするけど……」
617 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:24:13.59 ID:ZazPqgGp0





蒼龍「――おかしいよ提督。本格的に霧が出てきた」

提督「そろそろ艦隊が帰投するのに、参ったな。いきなりどうしたんだ……」

蒼龍「第1艦隊も大丈夫かな。視界が悪いと、潜水艦だけじゃなくて水上艦も怖いね」

提督「そうだな。だから、綾波と叢雲には砲戦装備を積んだんだ」

蒼龍「いつもは対潜装備多めだもんね。――まあ、お母さんなら心配ないか」

提督「これ以上濃くならないうちに誘導灯の確認と、それから気象情報をもう一回見てみるか」
618 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:29:52.27 ID:ZazPqgGp0

――バタァン!


大淀「て、提督、大変です!」

提督「どうしたんだ、慌てて」

大淀「帰還中の第2、第3、第4艦隊からの通信が途絶えました!」

「「!!」」


大淀「定時連絡も、こちらからの通信への応答もありません!」

提督「何だって!? 3艦隊分、全員からか!!」

蒼龍「ということは、故障じゃないよね。これはやっぱり――」
619 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:30:45.57 ID:ZazPqgGp0

――バァン!!


明石「――て、提督!!」

提督「今度は明石か。どうした?」

明石「この霧です! 帯電した霧が、通信を阻害しています!!」

蒼龍「ああ……嫌な予感、当たってほしくなかったのに」


大淀「ど、どうしましょう。艦隊がお留守の時に……」

明石「すぐに動ける子は少ないです。それに、出しても通信できなくては――」
620 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:32:42.21 ID:ZazPqgGp0

提督「――落ち着け。飛龍の第2艦隊、赤城の第3艦隊は近くまで戻っているはずだ」


提督「蒼龍! 航空隊に電文を持たせて、直接届けてやってくれ」

提督「この霧のことと、航行速度を上げて早く戻るように、と」

蒼龍「わかった。――翔鶴と瑞鶴にはどうする?」

提督「第4艦隊は離れたところだからな。あまり航空隊をそれぞれに振り分けすぎると、遭遇できないかもしれない」

提督「まず確実に第2、第3と連絡をとって、その後全力で第4艦隊と接触する」


提督「――速さが肝心だ、頼むぞ蒼龍」

蒼龍「了解。任せてね!!」
621 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:33:43.97 ID:ZazPqgGp0

提督「明石。横須賀の司令部と、各鎮守府に連絡を取ってくれ」

提督「有線は繋がるよな? とにかく情報を集めるぞ、通信もあらゆる周波数を試してみるんだ」

提督「大淀は全ての艦娘を作戦室へ集めてくれ。後で状況を説明する」

「「了解!!」」



提督「……鳳翔」

提督「すぐ、気付いてくれていればいいんだが」
622 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:42:57.30 ID:ZazPqgGp0





鳳翔「――いかがですか、調子は?」

Graf「問題ない。波が高いのには驚いたが」

鳳翔「艦上機もいい動きです。特に心配もいりませんでしたか」

Graf「ああ――それにしても、この爆撃機は素晴らしいな!」

Graf「急降下の速度も、機動性も申し分ない。この国の技術には、まったく感服するよ」

鳳翔「ふふ、ありがとうございます。私もうれしいです」

鳳翔「国というより、この国の妖精さんの技術力ですけどね」
623 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:44:31.29 ID:ZazPqgGp0

Graf「この艦上機は、何と呼ぶのだったかな?」

鳳翔「彗星一二型甲、我が艦隊の主力爆撃機ですね」

Graf「そうか、Komet……スイセイの上位機か。この性能で、主力機として揃えられているとは驚いたぞ」

鳳翔「いえいえ。グラーフさんは初めて扱うでしょうに、お見事な腕です」

Graf「それだけ、こちらの搭乗員が優秀なのだろう」


Graf「――私が連れてきたスツーカ隊も、まだまだ成長できそうだな」

鳳翔「そうですよ。じっくりと練度を上げていってください」
624 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:45:45.19 ID:ZazPqgGp0

鳳翔「ただ、少々霧が深くなってきましたね。せっかく調子が出てきたところで申し訳ありませんが……」

鳳翔「今日のところは、早めに切り上げたほうがいいでしょうか」


綾波「――あ、あれ」

五月雨「どうしたの?」

綾波「いきなり電探から雑音が……故障かな」

叢雲「こっちも同じよ。33号が同時になんて……鳳翔さん!」

鳳翔「――ええ、故障ではありませんね。異常事態のようです」
625 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:46:32.08 ID:ZazPqgGp0

鳳翔「お2人とも、ソナーの動作は?」

五月雨「問題ありません、正常に動いてます」

満潮「私も大丈夫。聞き取りにくいこともないわね」

鳳翔「ということは、通信に問題が……これは、早く帰投した方がよさそうですね」

鳳翔「今回はここまでにしましょう。艦隊は進路を――」


―― ズゥウウン……


「「「!?」」」
626 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:47:19.54 ID:ZazPqgGp0

Graf「い、今の音は!?」

綾波「戦艦の砲撃音です!! 霧の向こうで、発砲炎がかすかに!!」

鳳翔「早く散開を――グラーフさん!!」

Graf「!!」

鳳翔「が、っ……」

Graf「ほ、鳳翔!?」

鳳翔「……だ、大丈夫ですから……早く……」

Graf「私が曳航する! 誰か先導を!!」
627 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:51:51.19 ID:ZazPqgGp0




飛龍「お? おーい赤城さん、加賀さん」

赤城「飛龍、戻ってましたか」

飛龍「ついさっきね。――妙な騒ぎになったわね」

加賀「これでは歓迎会も、微妙な雰囲気になりそうね」

赤城「そんなことありませんよ、お母さんの料理を食べれば!」


提督「――戻ったか。おつかれさま」

飛龍「おつかれさまです……どうしたの、暗い顔して」

提督「……それが、な」
628 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:52:26.71 ID:ZazPqgGp0


赤城「――お母さんが、大破!?」

提督「いつも通り、近海警備に出たんだ。そうしたら普段は見ない深海棲艦と遭遇したらしい」

加賀「見ないとは?」

提督「五月雨が言うには、戦艦級の砲撃だと。改修が済んだ鳳翔を大破させる威力だ」

飛龍「もしかして、この霧のせい?」

提督「詳しいことはまだわからない。帰ってきて早々すまないが、補給はしておいてくれ」

赤城「……了解しました」
629 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:54:15.59 ID:ZazPqgGp0

赤城「……加賀さん、飛龍」

飛龍「あー、何考えてるか大体わかるよ」

加賀「私も同じです――このままお母さんをやられたままで、黙っていられませんね」

赤城「よし、ではすぐ補給を」


赤城「――そうだ、蒼龍は……」

蒼龍「――ここにいるよ。お帰り、みんな無事でよかった」

飛龍「そっちも1人で大変だったでしょ。おつかれさま」

蒼龍「うん。お母さんはもう入渠したから、心配しないで」

赤城「そうですか……よかった」
630 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:55:14.09 ID:ZazPqgGp0

蒼龍「それで、するんでしょ? かたき討ち」

飛龍「蒼龍、いっしょに行こうよ!」

蒼龍「気持ちはみんなと同じだけどさ……」


蒼龍「鎮守府に誰か1人、空母はいないと。私まで出たら、基地航空隊を指揮できなくなっちゃうでしょ」

蒼龍「五航戦の2人も、誘導してあげないとね。ひと段落したら、私も追いかける」

加賀「わかったわ。提督にはうまく言っておいてね」

蒼龍「しょうがないなあ、もう――気をつけるんだよ、3人とも!」
631 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:57:47.42 ID:ZazPqgGp0


提督「――なに、鳳翔に高速修復材を?」

提督「だめだ、だめ! すぐ直ったら、すぐ出撃したがるに決まってる」

提督「大変なときに寝てられないとか言ってな。修復材はだめだ」

提督「修理はどれくらいかかる? ――およそ11時間? わかった、それまで寝かせてやってくれ」


蒼龍「提督ー」

提督「おお、蒼龍。赤城たちはどうした」

蒼龍「え、えっと……」
632 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:58:26.59 ID:ZazPqgGp0

蒼龍「――ご、ごめん。またすぐ出ていっちゃった」

提督「出ていった?」

蒼龍「お母さんのかたき討ちに、3人で」

提督「……3人でか」


蒼龍「えっと、あのですね。私たちの気持ちも酌んでほしいなっていうか――」

提督「まったくもう……すぐ護衛を出さないと」

蒼龍「あ、あれ? 怒らないの?」
633 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 00:59:16.91 ID:ZazPqgGp0

提督「少しは予想できてたし、それに」

提督「自分が赤城たちの立場だったら、同じことをしてたかもしれん」

提督「好き放題やられて、怒ってないわけじゃないんだ」

蒼龍「おお。久々に怒りをあらわに」


提督「とはいえ、ちゃんと飛行機で連絡は取りあっておいてくれよ」

蒼龍「それは大丈夫。よく言っておいたから」

提督「第4艦隊も帰ってくるし、すぐ後詰の艦隊を編成しよう。作戦室へ行くぞ、蒼龍」

蒼龍「うん!」


提督「……と、その前にグラーフを探さないと」
634 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 01:00:16.20 ID:ZazPqgGp0


鳳翔「すぅ……すぅ」

Graf「…………」


提督「入るぞ――やっぱりドックだったか」

Graf「……Admiralか」

提督「五月雨たちから、大体の事情は聞いたよ。最初の出撃から災難だったね」

Graf「…………」
635 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 01:00:53.11 ID:ZazPqgGp0

提督「わかりやすく落ち込んでるな」

Graf「……当然だろう。鳳翔は私をかばって被弾したんだぞ」

提督「初めに言っておくが、君に落ち度はないぞ」

Graf「なに?」


提督「電探が使えず、航空隊も電信を打てず」

提督「それに、戦艦級がこの海域まで出ることは想定外だった。艦隊の誰も予測できないことが起きたんだ」

提督「最終的に、出撃の許可を出したのは私だ。艦隊の損害は、すべて私の責任と言えるな」
636 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 01:03:44.82 ID:ZazPqgGp0

Graf「……貴方たちの信頼の深さは、今日会ったばかりの私にも伝わるほどだ」

Graf「ならば今回の敗北と損害は、一番練度の低い者のせいだとは思わないか」

提督「――あのな。今回は負けだと思ってるかもしれないが、それは違うんだぞ」

Graf「なんだと? 大破して撤退すれば、それは……」

提督「ああ、そうじゃなくて。私たちの敗北の考え方は違うんだ」

Graf「……どういう意味だ?」
637 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 01:04:23.27 ID:ZazPqgGp0

提督「あー、これは私が尊敬してる人の考え方でもあるんだけど」

提督「大破だろうが撤退しようが、大事なのは沈まないこと……生きていることなんだ」

Graf「…………」


提督「出撃した全員が、沈まずに帰還する」

提督「それだけで大勝利なんだよ、グラーフ。もう少し経験を積めば、君もわかるはずだ」

Graf「……鳳翔も、そう思っているか?」

提督「言葉を交わしたわけじゃないけど、きっと」
638 : ◆GoPzFNH1CI [saga]:2016/02/25(木) 01:05:19.71 ID:ZazPqgGp0

Graf「――Admiralが言いたいことは、わかる気がする」

提督「うん。そうか」

Graf「しかし、私にはまだ、それを心するだけの経験がない」

Graf「言葉だけわかっていても意味がないからな。経験と実践が、自分の実力となる」

提督「そうだな、そう思うよ」


Graf「……聞いていた通り、ここは素晴らしい艦娘が揃っているようだ」

提督「そうとも。自慢の子たちだよ」
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