とある後日の幻想創話(イマジンストーリー)4

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789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/05(月) 12:55:40.45 ID:nMBhGsN5o
乙です
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/06(火) 11:30:51.74 ID:0EwKwkz40
EXボスと6ボスを攻略したなら紅魔編はEDに入るな
紅魔邸は、以前までの現状維持を超えた温かい日常を得られるのか?
791 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/01/06(金) 20:28:27.04 ID:LTq/Bgx40
>>788
妖々夢編になれば出番あるから許してくださいお願いします

正月明けってことでちょいと忙しいので来週に投稿する予定
そう言えばどのくらい放置でスレ落ちしたっけここ?一ヶ月?
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/13(金) 11:05:49.10 ID:1kqniPjo0
確か誰のレスも無いと1ヶ月だったかな?まぁ管理人の管理の兼ね合いもあると思うけど
793 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/01/16(月) 00:30:50.69 ID:B0pI08Tp0
これから投下を開始します
794 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2017/01/16(月) 00:32:25.64 ID:B0pI08Tp0

姫神「はぁっ、ふっ、……上条君。」

上条「……姫神」



呼吸を落ち着けつつこちらに向けてくる彼女の瞳には、一言では言い表せない感情が込められているように思われた。
結局、彼女に相談することなくここまで来てしまった当麻への非難か。
それとも、彼女を危険晒したくない当麻の考えを蔑ろにしてしまった事への負い目か。
いずれかなのかはわからないが、二人は幾許かの間気まずい視線を交わすこととなった。


そんな二人を余所に、姫神秋沙のことを知らないパチュリーは彼女のことを土御門に尋ねる。


パチュリー「土御門、彼女が事態収拾のための鍵なのかしら?」

土御門「そうだにゃー。 カミやんが用意した現状打開のための必殺の手札ですたい」

パチュリー「必殺の手札、ねぇ……何処にでも居そうな日本の女子高校生といった感じだけど」

土御門「外見はそうでも、中身は結構複雑な事情を抱えてるんだけどにゃー……『吸血殺し』と言えば判るか?」

パチュリー「! まさか、それって……」

土御門「そのまさか、だにゃー」

795 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2017/01/16(月) 00:33:29.99 ID:B0pI08Tp0

土御門はにやりと口角を釣り上げるが、それとは対照的にパチュリーは文字通り頭を抱えて溜息をつく。
彼女は上条当麻が提案する作戦というものを土御門の言葉で察したわけだが、
その作戦が余りにも荒唐無稽すぎるものだったからだ。
それこそ、それを容易に悟ってしまった自分の頭脳を呪いたくなってしまうほどの。



パチュリー「……彼が言う作戦のことは大凡見当がついたわ。 本当に……えぇ、本っ当に馬鹿げた作戦ね」

土御門「まぁ、誰だってそう思うだろうな。 出来の悪い都市伝説をクソ真面目に信じるようなもんだ」

土御門「こんな事を魔術師達の面前で発表しようものなら、今世紀最高の笑い話として拍手喝采間違いなしだぜい」

パチュリー「ふざけないで。 それを判っていながら、どうして彼の案に賛成したのかしら?」

パチュリー「貴方はもっと合理的で、現実主義的な人種だと思っていたのだけど?」

土御門「おいおい、そいつは心外だぜい。 流石に親友の命がけの頼みを合理性だけで切って捨てるような薄情者じゃないにゃー」

土御門「まぁ、論理もへったくれもないようなものだったら問答無用で却下してたけどな」

土御門「俺がカミやんの案を採用したのは、偏に『吸血殺し』の存在があったからだ」

土御門「吸血鬼の存在は御伽話だ何だと言われてるが、現実としてそいつらを滅ぼす能力は存在する」

土御門「しかも『吸血鬼もどき』もこの場にいるときた。 それなら一丁、試してみる価値はあるんじゃないかと思ってな」

796 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/01/16(月) 00:34:34.24 ID:B0pI08Tp0

吸血鬼を殺すとされる異能『吸血殺し』。
『竜の子の刻印』によって生み出された人造吸血鬼。
この二つが関わり合った時、一体何が起きるのか?


『吸血殺し』は人造吸血鬼にも正常に機能するのか?
それとも人造吸血鬼は所詮まがい物でしかなく、『吸血殺し』は不発に終わるのか?
はたまた、自分達の予想を外れるような不可思議な現象が生じるのか?


これは正しく、魔術界の歴史に残る実験と言えるかもしれない。
もしも『吸血殺し』が発動するならば、それは吸血鬼がこの世に実在することの証明に他ならないからだ。
外部の魔術師に情報が漏れでもしたら、界隈が瞬く間に混乱に陥ることになるのは必定である。
吸血鬼を抹消しようとする者と、吸血鬼をその手に掴もうとする者。
魔術界を二分に分ける戦争が勃発することになるだろう。


それを考えると、レミリア達が学園都市に居ることは非常に幸運である。
この街は魔術から最もかけ離れた場所。前統轄理事長が管理していた昔であれば、そうとは言い切れなかったのだが、
今では魔術を欠片も感じさせることのない、純粋な科学の街である。
魔術と科学の間に交わされた不可侵条約の下、魔術師は許可を得ずにこの街に侵入することは出来ない。
学園都市の上層部にしても、内部にいる魔術師である対して一定の監視を行っているだろうが、
実際に何をやっているのかを正しく理解できる者は少ないだろうし、ましてやその情報を外部の魔術師に横流しするはずもない。
従って、この場所では外部に対する吸血鬼に関する情報漏洩を心配する必要は無いのだ。

797 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/01/16(月) 00:35:30.79 ID:B0pI08Tp0

パチュリー「……胃が痛くなってきたわ」



だが、今パチュリーが気にかけていることはそんなことではない。
そんな魔術界の常識を覆すような実験を、『とりあえずやってみようぜ』というコンビニに行くような感覚で行おうとしている事実。
そして自分自身が、その実験の渦中にいつの間にか位置してしまっているということに辟易しているのである。


確かに彼女は科学に対して偏見を持たない、魔術師の中では変人と評される人間だが、
だからといって常識を一切合切かなぐり捨てているというわけではない。
『常識に囚われない』ことと『非常識である』ことは全く別なのだ。
この異常事態に対し、『はいそうですか』と首肯するのは魔術師としての矜持が許さないのである。



パチュリー「まさか、こんな事でこの案件に関わったことに後悔する羽目になることは思わなかったわ」

土御門「気持ちはわかるぜい。 だが、こればっかりは諦めてもらうしかないですたい」

パチュリー「そんなことは判ってるわよ……それにしても、やっぱり貴方は平気そうね?」

土御門「カミやんがぶっ飛んだ行動するのはいつものことだからにゃー」

土御門「それなりに付き合いも長いし、もう慣れたというか、慣れなきゃやってられないというか……」

パチュリー「ご愁傷様、とだけ言っておくわ」

土御門「そこは、『私が支えてあげる』って言ってくれてもいいんだぜい?」



そんな巫山戯た事を口走る土御門を余所に、パチュリーは視線を当麻の方へと戻した。
するとそこには五体投地で土下座している上条当麻と、それを無表情で見下ろす姫神秋沙の姿。
先ほどの話を鑑みるに、彼は無断で行動を起こしたことについて姫神に謝罪している真っ最中なのだろう。
一見大人しそうな彼女が男一人を土下座させるとは。意外と強気な部分もあるようだ。
これは少しばかり、認識を改めた方が良さそうだ。これから協力し合う相手なのだから、
相手の性格というものを正しく知っておくに越したことはないとパチュリーは考える。


――――実際の所その思考は、こんな状況でコントのようなことをしている二人に対しての、
ある種の現実逃避じみた行動であるのだが、そのことに彼女が気づくことはなかった。

798 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/01/16(月) 00:52:53.11 ID:B0pI08Tp0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ

今年もダラダラやっていくと思いますのでよろしくお願いします
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/16(月) 07:48:38.06 ID:VdIcwpOd0
乙!
吸血鬼分が無くなれば、超能力を扱うのに魔術的要素の阻害が減って、少しくらいはレベルが上がるかね?
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/16(月) 08:57:13.81 ID:hLOV3/i2o
乙です
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/18(水) 13:08:28.35 ID:5GK3kq3Y0
さぁーて、楽しい実験のお時間だァ〜!
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/21(土) 21:17:46.55 ID:irsDWeGU0
ZUNじろう先生!お願いします
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/05(日) 08:51:18.44 ID:pgu8sojI0
今日は来るかな?
804 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2017/02/13(月) 00:16:02.93 ID:/dRSXglt0
これから投下を開始します
805 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:20:36.30 ID:/dRSXglt0





     *     *     *





806 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:23:14.97 ID:/dRSXglt0

今回の事件の顛末を一言で表すならば、『最悪の事態にはならなかった』と表現できるだろう。


異端者として故郷を追われ、異国の地に隠れ潜んでいた二人の少女は、
一人の少年とその仲間達の手によって破滅の危機から救い出された。
最上の理想である『誰も傷付くことなく』とまでは流石にいかなかったが、
『絶望の結末(バッドエンド)』を回避できたことは素直に喜ぶべきことだ。


――――戦いを終えた彼等の行動を纏めてみよう。


先ず始めに一行は、気絶したレミリアを担いで用意した車に乗り込み、策を実行するに相応しい場所へと移動した。
去り際に徹底的に破壊された公園の惨状について、今後どうなるのかと当麻は心配したが、
土御門が言うには学園都市が『大規模なガス爆発事故』、もしくは『極秘実験における影響』として徹底的に隠蔽するらしい。
今回の件はイギリス清教と学園都市双方共に、『絶対に表沙汰にするべきではない』という点で意見が一致していた。
吸血鬼の刻印の情報が漏れでもしたら、世界をひっくり返したような大騒ぎになることは眼に見えている。
現在の不安定な情勢の中で騒ぎが起きるのは、魔術側にとっても科学側にとっても好ましくない。
従って学園都市が手を抜いた隠蔽工作をするということはあり得ず、心配はいらないだろうということだった。

807 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:26:52.07 ID:/dRSXglt0

事情を知らぬレミリアが目を覚まして暴れ出さないように、パチュリーが彼女に催眠魔法を施す。
そして少しばかり窮屈な車に揺られながら数十分ほどかけて彼等が向かった行き先は、
入院した者はどんな症状の人間であれ、完治が約束されるという第七学区の病院。
何故その場所に行く必要があったのかといえば、レミリア達を人間に戻すための策は、
病院を経営している冥土帰しの手を借りる必要があったからである。


レミリアとフランドールの肉体は刻印による不完全な吸血鬼化によって、
『人間の肉体』と『吸血鬼の肉体』が混在した状態となっている。
通常の方法では、この二つの肉体を選り分けることはほぼ不可能だ。
冥土帰しならば時間をかければ可能かもしれないとのことだが、残念ながらそんな余裕は無い。


イギリス清教は事態の早急な収拾を望んでいる。
それだというのに、魔術側にとって核地雷と呼べるものを学園都市に預けるなど、
ましてや地雷の解除のために長々と時間をかけるなど許されるはずもない。

808 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:30:03.86 ID:/dRSXglt0

当麻でさえも一度は詰みかと思ったこの状況。しかし、それを覆す手段は彼の身近に存在した。
それが姫神秋沙『吸血殺し』。嘗て数多の吸血鬼を葬ったと噂される破魔の紅血。
もしもその噂が正しいとするならば、『吸血鬼の肉体』のみを選択的に取り除くことが出来るかもしれない。
正にこの状況にお誂え向きの能力。だが早々全てが都合良く済むわけではなく、解決すべき問題もある。


その問題とは、『彼女等が自身の肉体を破壊される事に、果たして耐えられるのかどうか』。
『吸血殺し』は保持者である姫神秋沙本人でも、一切制御することが出来ない。
血を吸わせた時点で、彼女等の肉体は人間の部分のみを残し、文字通り『破壊』される。
フランドールはおろか、全身の半分近くを変化させてしまっているであろうレミリアに至っては、
『吸血殺し』を口にした瞬間、自身の肉体の半分を一挙に失うことになるのだ。
常識的に考えればその時点でほぼ即死。仮に運良く生き残ったとしても、重篤な後遺症を抱えて生きていくことになる。
これではどんなに良く見積もっても、『大団円(ハッピーエンド)』とは言えないだろう。


つまるところ、それを回避するための冥土帰しなのだ。
『患者が望むものなら何でも用意してみせる』と豪語する彼ならば、もしかしたら――――
その一縷の希望を求めて、上条当麻は世界最高峰の医師を頼ったのである。

809 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:34:55.62 ID:/dRSXglt0

刻印の記憶は土御門とパチュリーに。吸血鬼の肉体は姫神と冥土帰しに。
当麻がするべき事は、スカーレット姉妹の肉体に刻まれた刻印を『幻想殺し』で消すことだけだ。
何から何まで他力本願であるが、異能を消す右手しか持ち得ない彼にはそれしかできることはなかった。


不満がないと言えば嘘になる。
特に彼としては、姫神秋沙をこの件に関わらせるつもりは毛頭無かったが為に。
彼女に対しては、頼る必要がなかったのならばこの一件を最後の最後まで隠し通すつもりだった。


姫神秋沙と吸血鬼。この二つは決して切り離せない。
過去において彼女の身に何があったのか、上条当麻は詳しく知らない。
本人が余り語ろうとはせず、当麻も積極的に聞き出そうとはしなかったためである。
三沢塾の事件の当時に見た、愁いを帯びた顔。それを鑑みれば、容易に踏み込むべきでは無いことは察しがついた。
同時に、彼女はそのことに関して未だ『何か』に後悔をしているのだろうということも。
それ故に姫神秋沙に対してこの一件を知らせることは、彼女が持つ自責の念を更に深くさせてしまう気がして憚られたのだ。


だが当麻が憂慮していた懸念は、実のところ全くの杞憂だった。
遅ればせながら事件に気づいた彼女が真っ先にとった行動は、当麻が自分に対し事件を隠していたことを責めること。
吸血鬼をどうこう言う前に、彼女は当麻が自分との約束を破ったことを真っ先に糾弾したのである。
自身の想像の埒外である行動をとった彼女を見て、一瞬唖然とした当麻であったが、
次いで襲ってきた『言い訳は許さない』という圧倒的な重圧と眼光を前に、
当麻は唯々その場に土下座して謝罪の言葉を口にすることしか許されなかった。
ただその心中においては、『事件を知ることが姫神の重荷にならない』という事実に心底安堵していたのだが。

810 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:36:03.48 ID:/dRSXglt0

冥土帰し「来たね、待っていたよ」

御坂妹「こんな夜遅くに病院に厄介になるなど、夜遊びは程々にした方が良いと思いますが。
と、ミサカは紛う事なき非行少年たちにジト目を向けます」



第七学区の病院に辿り着いた一行に待ち受けていたのは、既に受け入れ準備を済ませていた冥土帰しと担架を担いだ『妹達』の面々。
どうやら土御門が予め連絡を入れていたようだ。『妹達』は眠り続けるレミリアを担架に乗せると、風のように院内へと運び入れていく。
さながら軍隊のような手際の良さに舌を巻くが、彼女達の出自を考えれば当然のことだろう。
パチュリーはレミリアに催眠をかけ続けるため、当麻達と一旦別れ『妹達』に同伴していった。


その作業の中で冥土帰しは、少しばかり溜息をつきつつ土御門に対して愚痴のようなものを零す。

811 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:36:46.54 ID:/dRSXglt0

冥土帰し「まったく、僕としては患者が現れるのをみすみす見逃すようなことはしたくないんだけどね?」

冥土帰し「突然電話で『これから怪我人が出るから治療の準備を頼む』なんて言われる身にもなって欲しいね?」

土御門「それに関しては申し訳ないと思ってる。 だが、あんた以外に頼れる医者がいなかったんだ」

土御門「魔術と科学の双方に通じていて、尚かつ信用に足るとなると数限られるからな」

冥土帰し「魔術に関してはアレイスターと知り合いだったというだけで、そこまで詳しい訳じゃないんだけどね?」

冥土帰し「まぁ、求められたからには全力で答えるのが僕の信条だ。 彼女は絶対に救って見せよう」

冥土帰し「勿論、君たち二人も完治させてから退院させるよ?」

上条「ハハハ……」



一瞬冥土帰しの目が鋭くなったのを見て、当麻は気まずい顔をしながら頬を掻いた。


冥土帰しの病院は当麻の行きつけの病院であり、今までの間に数え切れない程お世話になってきている。
それこそ、既に病室の一つが事実上彼の専用になってしまっている程には。
何らかの事件に巻き込まれて怪我を負った場合、必ずと言っていいほどここに入院することになるのだ。
そんな明らかに不自然なことになったのも、おそらく裏でアレイスターが糸を引いていたからなのだろう。
自身の目的の要である上条当麻を、万が一にでも死なせないために。
学園都市の中でも最高峰の医療技術を持ち、尚かつ信用できる彼の庇護下に入るようにしたのかもしれない。


一行は今後の方針について話し合うため、冥土帰しの後について彼の診察室へと足を運ぶ。
その道中で当麻に背負われたまま眠っていたフランドールと、彼女と一緒にいると言い出したインデックスを病室の一室に預けた。
当然の如く二人が一緒になることに土御門は難色を示したが、御坂妹をお目付役として宛がうことで溜飲を下げてもらう。

812 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:37:25.82 ID:/dRSXglt0

残った二人は冥土帰しに誘われるがまま、彼の仕事部屋へと入室する。
喜ばしいことではないが、冥土帰しの診察室も当麻にとっては見慣れたものだ。
決して広いとは言えない部屋の中には、彼専用のデスクと回転椅子。
壁際には多くの医学の専門書が収められた本棚が一列に立ち並んでいる。
大方仕事の途中だったのだろう、やや使い古された鉄製のデスクの上には、
点けっぱなしになっているパソコンと、患者のカルテの束が置き去りとなっていた。



冥土帰し「とりあえず君たちの治療については後で話すとして、先に本題に入ろうか」



冥土帰しは少年二人を椅子に座らせると、開口一番にそう繰り出した。
その眼の中に携えるのは、プロの医師としての意気込み。
先ほどよりも明らかに雰囲気が変わった冥土帰しに、当麻達の背筋に緊張が走る。



冥土帰し「大まかなことは土御門君から電話で聞いているよ。 何でも今運ばれてきた子の全身を蝕んでいる、
悪性の細胞を除去することに協力して欲しいそうだね?」

上条「はい。 ただ、それを取り除くことについては俺達の力で何とかできます」

上条「先生にはその後のことをお願いしたいと思って……」

冥土帰し「ふむ……つまりそれが『そちら』に関わることというわけだね?」

813 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:37:59.15 ID:/dRSXglt0

土御門「そうだ。 レミリア・スカーレットの全身に散在している細胞は魔術側の手で作られたものだ」

土御門「そうである以上、そいつは既存の医療技術でどうこうなるようなもんじゃない」

土御門「あんたの腕前の疑うわけじゃないが、まず間違いなく治療には時間がかかるだろう」

土御門「そしてその時間を許せるほど、今は余裕がある状況じゃない。 だから細胞の除去は俺達の手で行わせてもらう」

冥土帰し「君たち子供に問題を丸投げするのは、大人としての矜持が許さないんだけどね……」

冥土帰し「ただ、必要ないと言っているところに無理矢理介入するのも考えものか。
わかった、そのことについてはより詳しい君たちに任せるとしよう」

冥土帰し「勿論、不測の事態に備えて立ち会いはさせてもらうけどね?」

土御門「そうしてくれると助かる」

冥土帰し「となると、僕は君たちが仕事を終えた後のアフターケアをすることになるわけだけど、
具体的には何をすればいいのかな?」

土御門「それは――――」

814 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:40:24.44 ID:/dRSXglt0

土御門は冥土帰しに対し、自分達がこれから行う治療の方法、そして冥土帰しに行って欲しいことを伝えた。
嘘偽りなど一切ない。吸血鬼のこと、『吸血殺し』のこと、治療によって齎されるであろう事象など、全ての情報を開示する。
当麻は彼らしくないその姿に少しばかり困惑した顔をしていたが、それも無理からぬことだろう。


土御門元春は自他共に認める嘘つきであり、その何重にも張り巡らせた虚偽によって己の本性を覆い隠す。
そのようなことをする理由は、彼が科学と魔術を橋渡しする仲介役であり、
それと同時に双方の陣営に潜入している多重スパイであるがため。
蜘蛛の糸を綱渡りするかのような非情に危うい立場に立っている以上、
容易に他人に対し本心を見せるのは、ギロチンに自身の首を自ら晒すようなものだ。


だがそんな彼であっても、嘘をつくタイミングは弁えている。
冥土帰しは上条当麻の作戦を成功させる為の最重要人物だ。
彼の力無くしては、レミリアとフランドールを救うことは不可能。
ここで情報を出し惜しみしては、彼の十全な力を借り受けることは出来ない。

815 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:42:45.00 ID:/dRSXglt0

冥土帰し「……なるほど、君の話からするに、かなり大がかりなことになりそうだね?」

土御門「あぁ、少なくとも体の大半を欠損した患者を生きながらえさせるだけの設備が必要だ」

冥土帰し「となると、必要となのは失われた臓器の代替と、細胞の再生を促進する培養液、後は生命維持装置かな?」

冥土返し「培養液と生命維持装置は『妹達』の調整に使っているものを転用できそうだね?」

冥土返し「代替臓器はいくつかスペアがあるはずだから、彼女達の体型に合ったものを一通り用意しよう」

冥土返し「後は設備を置く場所だけど、結構規模があるから場所は限られるね?」

冥土返し「君達が作業を終えた後直ぐに執りかからないといけないから……土御門君、
どのくらいのスペースが必要なんだい?」

土御門「いや、場所はとらない。 そこら辺の診療台の上でもできる」

冥土返し「そうか、それは都合がいい。 なら設備を置く大部屋と診察室が近いエリア……
ふむ、5階の南西にある区画が丁度いいね」

冥土返し「至急、設備をその場所に設置するとしよう」

816 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:45:22.96 ID:/dRSXglt0

冥土帰しがそう言ってからの行動は早かった。


彼は手の空いた『妹達』や夜勤の看護師達に指示を出し、必要な物資を手際よく目標の場所に輸送させる。
1時間どころか10分もしないうちに齎された準備完了の報告に、当麻ならず土御門も心の底で舌を巻くことになった。


確かに彼が『超』のつく程の一流の医者であることは重々承知しているが、いくら何でも早すぎである。
彼だけでなく周囲のスタッフも優秀でなければ、こうも迅速な対応は出来ないだろう。
改めて冥土帰しの――――否、この病院の規格外さを二人は実感したのだった。



土御門「さて、果たして上手くいくかにゃー?」

パチュリー「今頃になって何を言ってるのよ、貴方は」



診察室へ向かう道すがら、土御門は独り言のように呟く。
それに対し、隣を歩いていたパチュリーが眉間に皺を寄せながら睨みつけた。



土御門「いや、今更ながら俺達のやってることは実に非合理的なもんだと実感してな」

土御門「この作戦は『吸血殺し』という存在だけを柱にして成り立っているようなもんだ」

土御門「それだけでも危ういってのに、肝心の『吸血殺し』は実体もよくわかっちゃいないものときてる」

土御門「常識的に考えれば、こんな作戦を実行するなんて正気の沙汰じゃない」

パチュリー「だから言ったじゃない。 馬鹿げた作戦だって。 そしてそれを黙認している貴方も大馬鹿者よ」

土御門「正論過ぎてぐうの音も出ないな。 ……そう言いながら、結局ここまで一緒に来てるあんたも同類だぜい?」

パチュリー「本当にね……」

817 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:47:32.98 ID:/dRSXglt0

ふぅ、と肩を竦めて溜息をつくパチュリー。
死んだと思っていた親友と再会し。そして再会したばかりの親友と死闘を繰り広げ。
親友に敗北した挙げ句、命を諦めかけたところを助けられ。
最後には親友を助けるべく、こうして一世一代の賭けに出ようとしている。


今日という日は、一人の人間が体験にするには余りにも濃密すぎる一日。
まともに自身の気持ちの整理をする余裕もなく、ここまで走ってきた彼女の心労は如何ほどのものか。
常人であれば疲労の色を隠せないはずであるが、しかし彼女の表情にはさほどの陰りは見られない。
むしろ体の重石が取れたかのような、少しばかりの清々しさが感じられた。



土御門「ま、兎も角これで俺達も背水の陣って訳だ」

土御門「『最大主教』に報告もしないで、現場で巻き込まれた一般人に諭されて博打紛いのことをしようとしている」

土御門「もしもばれたら大目玉……今まで築き上げてきた立場やら何やらが跡形もなく吹き飛ぶって寸法だ」

土御門「オレのスパイ稼業も、そろそろ卒業ってところかにゃー……」

パチュリー「私としては本さえ読めれば、後はどうなっても良いわ。 今の立場が惜しいわけでもないし」

パチュリー「図書館の管理はリトルにでも任せて、隠居生活もいいわね」

土御門「その歳でもう隠居か? 第一、『最大主教』がそんな悠々自適な生活を許すと思ってるのか?」

土御門「あの女狐ことだ、嫌がらせで読書とは無縁の猫の手を借りたいくらい忙しい部署に配属されるぞ」

パチュリー「……………………心配いらないわ。 もしそうなったら、跡形もなく吹き飛ばしてあげるから」

土御門「おぉ、怖。 世界広しといえど、『最大主教』に正面切って攻撃仕掛けられる奴なんか片手で数えられるかどうかだぜい」

818 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:50:58.44 ID:/dRSXglt0

腕を組んで怯える仕草をする土御門であるが、その隠そうともしない口角の釣り上がった顔を見ては説得力など皆無である。
しかしその不敬な姿を見た当のパチュリーは、何も言うことなく黙って歩くばかりであった。



上条「大丈夫さ」

土御門「何?」



そんな会話をしている二人に対し、前を歩く当麻が不意にそんな言葉を零す。
怪訝な顔をする一同に向かって振り返る彼の顔には、不安の感情など一切見て取ることは出来ない。
その代わりに張り付いている感情を言葉で表すとするなら、それは『確信』。
そう、彼は自分の考えた一連の策の成功を確信している。



土御門「随分と自信満々だな、カミやん。 ……何か根拠でもあるのか?」



余裕を持ちすぎている立案者の顔を見て、土御門は不可解そうに眉間に皺を寄せて問い質した。
すると当麻は少し困ったような、嬉しいような嬉しくないような、何とも言い難い表情をしながら頬を掻く。



上条「ちょっと、思うことがあってな」

土御門「は?」

上条「いやさ――――――――」

819 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:54:39.38 ID:/dRSXglt0










上条「『不幸の避雷針』なんて呼ばれてる俺がいるのに、俺を差し置いて不幸になる奴なんているわけないだろ?」
だから、あいつ等に『人間に戻れない』なんて不幸が起きるわけないさ」










820 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/02/13(月) 00:57:32.54 ID:/dRSXglt0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/13(月) 01:01:04.85 ID:uhciagy3o
乙です
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/13(月) 23:21:37.25 ID:a4w5IThC0
へぇー?なら、そんなアンラックスティーラーが、その状況で真っ先に受ける不幸ってなどんなもんなんだろうねぇ〜?
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/16(木) 22:46:53.93 ID:6P4x/nPh0
はやい!もう(治療の用意が出)来たのか!
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/02/19(日) 06:20:03.90 ID:xwv94D3e0
いや、早いってレベル遥かに超えてるだろwww

それにしても、エピローグに入る前だからか?随分淡々と状況説明されるだけだったなぁ
目立ったのはパッチェさんの感情発露くらいかな?w
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/06(月) 23:35:32.79 ID:FKJ0eI+b0
>>822
どうせ
ラキスケて
ボコられる
826 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/03/09(木) 02:26:32.42 ID:2YPfu8Qf0
やべぇ、話が纏まんねぇ。残りはそれぞれの視点のエピローグを書くだけなんだが
後レジェンドでワイルドなゲームのせいで時間ががががg

というわけで次投稿には時間がかかりそうです。申し訳ない
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/03/26(日) 20:10:34.09 ID:lv02HZcJ0
さて、今日はどうかなー?
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/02(日) 22:49:33.06 ID:Vp38R4uW0
めーちゃんはああなるのかい?
829 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2017/04/10(月) 01:35:58.62 ID:5wSePt270
これから投下を開始します
830 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/04/10(月) 01:36:41.12 ID:5wSePt270





     *     *     *





831 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/04/10(月) 01:38:00.80 ID:5wSePt270

ふと気がつくと、私は地面に仰向けに寝そべっていた。
眠りから覚めたにしては、余りにもあっさりし過ぎている目覚め。
電球にスイッチを入れたかのような覚醒に違和感を覚えつつも、私は目の前の光景に意識を向ける。


空を見上げた瞳に映るのは、木立の隙間から顔を覗く血のように紅く染まった満月のみ。
星の姿は見受けることは出来ず、その瞬きを望むことは叶わない。
心なしか月から発せられる赤い光が、まるで質量を持っている液体のように空を舐め回っているように見える。
もしやあの光は、月が食らった星々の血液だとでもいうのだろうか。


一瞬過ぎった思考に、不快感が胃の奥底から広がり、体の末端まで染み渡る。
その悪寒から逃げるかのように、私は弛みきった体の筋肉を叩き起こし、ぎこちない動作で上半身を起こした。

すると次に視界に飛び込んできたのは、自分を包囲するかのように立ち並んだ木々。
鬱蒼と生い茂った森は月の光が地上まで落ちることを許さず、地を這いずり回る深淵達に闇の楽園を提供している。
そのおかげで目が届く範囲は自身から数メートルといった有様であり、
『一寸先は闇とはこのことを言うのか』などと場違いな考えが浮かぶ始末。

832 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/04/10(月) 01:43:13.85 ID:5wSePt270

無音が一帯を支配している。風の音どころか、生命の息吹さえも感じられない。
これほどまでに緑が生い茂っているというのに、鳥の囀りも、虫の羽音さえも聞こえないのだ。

『緑の砂漠』とも表現できるだろうか。それ程までにこの場所には命の気配が存在しなかった。
自身の乱れた呼吸の音が耳を突き抜け、心臓の鼓動が体を大太鼓のように叩き続けている。
自分が生きているという感触。それがどうしようも無く気持ち悪く、私の心をぞりぞりと削っていく。

この感情は『孤独に対する恐怖』だ。それが私を押し潰そうとしてくる。
心の奥底から湧き出す悪寒。それを抑えようと、身を抱えたくなる。大声で叫びたくなる。
昔、私が過ちを犯してしまった頃に散々感じたそれに、非常によく似ていた。


私はその状況に耐えきれずに立ち上がり、そして行く当ても無いのに足を動かし始める。
その足が向かう先は闇。何処の方角を向こうとも闇しかないので、選択肢など初めから在りはしない。
紅く染まった木漏れ日が地面に残す、血痕のような斑点だけを頼りに前へ前へと進んでいく。

ガサガサという落ち葉の音。パキパキという枯れ枝の音。それらを音楽にして、私は道無き道を歩んでいく。
それからしばらくした頃、私は何やら開けた場所が先にあることに気づいた。
逸る気持ちを抑えつつ、それでも足が早歩きになることは抑えきれずに先を目指す。

833 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/04/10(月) 01:48:00.04 ID:5wSePt270

そしてものの数分もしない内に森を抜けた私は、目の前の光景に思わず息をのんだ。
広がるのは、向こう端の木々が針の先のように小さく見える程の広大な湖。
四方八方を森で囲まれた中にあるこの場所は、まるで世界のヘソのようだ。
風波一つ立たない湖面は巨大な鏡のようであり、空の月を模様の細部までくっきりと映し出している。
空の月と地上の月。その二つは双眼のように、湖岸に立ち尽くす私を睨んでいる。


幾許の間呆然としていた私は、妙なものが視界の中にあることに気がついた。


館だ。それもかなり大きい。

私もそれなりに大きな家に住んでいるけれど、目の前にある建物はそれ以上だ。
何せ遠目から見ても分かるくらい大きな塀がある。私の身長の5倍くらいの高さがありそうだ。
加えて館と塀の遠近から考えれば、塀の中も相当な広さだろう。最早、『城』と表現しても良いかもしれない。
屋上から突きだした、巨大な時計盤が備え付けられた塔がより『それっぽさ』を醸し出している。


湖の畔に聳え立つ城。ただの人がその言葉だけを聞いたならば、さぞ荘厳な情景が脳裏に浮かぶことだろう。
だが今私の目の前に映る建物は、人々が思い描くようなものとはかけ離れたものだと断言出来る。それは何故か。

『紅い』のだ。屋根の色が紅いとか、紅月の光に照らされているから壁が紅いとか、そんな次元ではない。
『全てが紅い』。空からペンキをぶちまけられたかのように、真紅に染め上げられている。
唯一の例外は時計盤だけだ。その部分だけがくり抜かれたかのように白かった。


そんな異様な雰囲気が漂う建造物に対し、私はどうしてなのか、その目を離すことが出来なかった。
まるで眼球が固定されたかのように、視線を逸らすことが出来ない。
それどころか、無性にその場所に行きたいという感情が湧いてくる。
そして何よりも不思議なことは、その事実に微塵も不快感を覚えないことだった。

834 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/04/10(月) 01:55:34.45 ID:5wSePt270

ふらふらと、何かに操られたかのように、足が勝手に動き出す。
あの妖しい建物に向かうような、さしたる理由などある筈がない。
そもそも、何故この場所にいるのかさえ分からないのだから。


それだというのに、私の足が止まる気配はない。
理由なんてないのに、そこに行かなければならないという考えが振り払えない。
そもそも振り払おうにも不快感がないのだから、私がその正体不明の誘惑に抗える道理などなかった。


視界が壊れたテレビのようにコマ落ちする。

ある時には、私は湖畔の傍を唯々歩き続けていた。
ある時には、私は浮遊感と共に空の月を見上げていた。
ある時には、私は体に風を受けながら湖の上を進んでいた。

意識が定まらない。麻薬を打ち込まれたかのように、心地よいしびれが全身を支配している。
私の眼が映す光景を、脳が解釈することが出来ない。
明らかに異常なものな、それを異常と判断することができない。


どれ程の間、そんな状態になっていたのだろう。
始まりがあやふやで、過程すらも定かでないのに、そんなことがわかるはずがない。
ただ、終わりだけは明白だった。豆電球に電気を通すように。パチンという幻聴が聞こえそうなほどはっきりと。
私の意識は、突然微睡みの中から引きずりあげられた。


眼前に聳えるのは、先ほど遠目で見ていた紅の館。私はその門前に立っていた。
重量感のある鉄柵の門に右手を触れると、それは想像に反して驚くほど簡単に開かれる。
その動作には殆ど重さを感じさせず、自分から勝手に動いたかのように。
まるで私を招いているかのようにさえ感じられた。

835 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2017/04/10(月) 02:02:52.98 ID:5wSePt270
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ

ネタが浮かばないせいで滅茶苦茶短くてなってすまない……
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 08:28:02.74 ID:+zixlBlXO

短くても更新あるだけでありがたい
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 08:45:44.32 ID:FKLwBhMFo
乙です
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/10(月) 10:55:04.42 ID:1X4QP5IK0
乙!
このクロスではイマブレで学園都市から完全否定された”吸血鬼であるレミリア”も、幻想入り?によって救われた?んかなって……
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/04/22(土) 22:07:04.98 ID:wOoJtIEA0
二次創作は原作世界の夢を見るか?
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/03(水) 19:40:46.12 ID:qvNL5v5J0
乙!!
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/30(火) 00:03:56.03 ID:WN9lR/2V0
メントス紅魔館
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/20(火) 15:12:45.13 ID:UsnMpIN90
>>1さんは天空璋と憑依華、購入の予定はありますかな?
843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/21(水) 20:36:18.39 ID:7Dh+wMax0
とりあえず天空璋は欲しいなぁ
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/08(土) 10:26:28.60 ID:TFun65wB0
日焼けチルノか……このSSの世界なら毎年普通に見られそうですね
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/07/22(土) 23:05:51.94 ID:EK3z6eQn0
レミフラ 仲良しになれ
846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 21:32:46.77 ID:shCNAHgR0
落とさせはしない
847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/13(水) 21:43:22.47 ID:bMg901FZ0
来るのを待ってる
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/08(日) 18:12:27.06 ID:ixkxGSJp0
>>1さん冷えてんの?
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/03(金) 16:47:05.67 ID:jW4QEN600
忘れてたら危ないとこだった
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/30(木) 17:02:13.46 ID:qaTCODY/0
ぷぷぷぷっぷっよぷよ〜
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/12/25(月) 19:16:40.54 ID:Kqy65rzdO
横から失礼するぜ。俺ガイル荒らしのハチマ○コことnikkolのpixivとtwitterのアカウントだぜ

https://www.pixiv.net/member.php?id=2716600

https://twitter.com/nikkol000

「罵詈雑言も誹謗中傷もねじ伏せてやるからいつでもかかって来い」との仰せだ
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/25(月) 19:31:50.94 ID:E1Ij+NE+0
知らんがなw
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 10:59:08.18 ID:JUILk7iA0
あけおめ!ことよろ!
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/08(木) 16:31:49.24 ID:XcQBpGB50
あれからほぼ3ヶ月……
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/01(日) 10:57:44.33 ID:GXLMLtboO
新年度始まったぞ
856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/16(火) 20:38:11.75 ID:bMxI1nbt0
祝!SS速報復活!
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/10(月) 23:35:06.57 ID:YjC0i0yZ0
平成終わったぞ
以前待ち続ける
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/29(日) 18:43:14.97 ID:rqFjqOYG0
鬼形獣も出て数ヶ月経ったなぁ。
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/30(月) 07:41:07.45 ID:NEnLDDvT0
こうなるともはや、生きていらっしゃるのかどうか……。
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