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とある後日の幻想創話(イマジンストーリー)4
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173 :
◆A0cfz0tVgA
[saga]:2015/07/21(火) 00:45:08.87 ID:lrL69xBH0
>>172
レミリアとフランは相部屋です
レミリアにはフランの保護者としての立場もあるので
これから投下を開始します
174 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 00:46:19.38 ID:lrL69xBH0
* * *
175 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 00:47:20.85 ID:lrL69xBH0
フラン「ただいま〜」
フランドールは帰宅の挨拶をするが、それに対する返答は無い。
ただ彼女としては予想通りのことだったらしく、気にする様子は皆無だ。
フラン(おねえさまは、まだ帰ってきてないみたい)ドサッ!
自室に入ってランドセルをそこら辺の床に放り投げると、部屋にある少し大きめのベッドの上に腰を下ろす。
フランドールとレミリアは一つ屋根の上に暮らしている。
本来であればあり得ないことであり、普通は学校の寮で暮らすのだが、
レミリアは『保護者』の立場であり、彼女の強い要望もあって特別に例外が通されていた。
ただしレミリア自身も学生であり、彼女一人だけでは当然不安が残るため、
何か異常が起こっていないか定期的に教師が訪問に訪れている。
176 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 00:49:48.04 ID:lrL69xBH0
フラン「さて、と……」
少しの間ベッドの上で呆けていた彼女だが、ふと思い出したかのように立ちあがると、そのままトイレへと向かう。
そして備え付けられた洗面台の前に立ち、鏡を凝視したかと思うと、その指を自身の目へと差し入れた。
フラン「んっ……」
目を大きく見開き、目じりを抑えつつ数回瞬きする。
すると目の中から黒色の何かがぽろりと落ち、彼女のもう片方の手のひらへと吸い込まれた。
その物体の正体とは、黒色のカラーコンタクトレンズ。
ただし度は無く、瞳に色を付けるためだけの娯楽用品である。
何故彼女がそんなものを付けているのか。その理由は、再び鏡に映る彼女の顔に示されていた。
177 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 00:51:17.41 ID:lrL69xBH0
フラン「んー……ちょっと紅くなってきてるなぁ、『眼』」
彼女の眼球。その瞳孔の部分が紅く染まっていた。
完全な真紅というわけでは無く、ただ若干紅く濁っている程度のものだが、
それでも普通の人間には無い違和感を際立たせている。
その眼はフランドールが気付いた時には、いつの間にかそうなっていたものだ。
常日頃からそうなっているというわけではなく、一ヶ月に一度の周期でこうして瞳孔が変色するのである。
突然目の色が変わるなど、普通の人間であれば何かの病気ではないのかと不安になるだろう。
しかしその異常を前にして、フランドールが動揺することは無かった。
それもそのはず、同じように眼が紅く、しかも日常的にそうなっている人間が彼女の身近にいたからだ。
178 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 00:53:34.81 ID:lrL69xBH0
その人間とは他でもない、彼女の姉のレミリア・スカーレットである。
レミリアの眼は妹と同じく紅いが、周期的にではなく恒常的にそうなっている。
故に姉はその眼を周囲の人間から隠すために、日頃から黒のコンタクトレンズを付けていた。
フランドールが姉と同じようにコンタクトレンズを付けているのも、同様の理由によるものである。
コンプレックスを抱いているというわけではないが、それでも他者の好奇の視線は気になる。
それに同学年の友達に知られでもしたら、しつこい冷やかしを浴びせられるのは想像に難くない。
彼女にとって、そんな面倒臭い状況は真っ平御免だった。
ガチャッ!
「ただいま」
フランドールがコンタクトレンズを仕舞おうとしていると、玄関口から来訪者の声が聞こえて来た。
少し低い、コントラルトの声色。聞き間違えるはずもない、姉のレミリアの声だ。
どうやら学校での勉学を終えて帰宅したらしい。
179 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 00:54:34.67 ID:lrL69xBH0
フラン「おかえり」
レミリア「あら、フラン。 帰ってたの?」
フラン「うん、ついさっき」
わざわざ玄関先に出て出迎えるようなことは無く、フランドールは声だけで挨拶を交わす。
姉妹の会話にしては、少々素っ気なく感じられるやり取り。
その理由は、フランドールは堅苦しい礼儀作法が好きではないからである。
レミリアも妹の心情については理解しているようで、そのことについてはあまり気にしているようには見えなかった。
一通りの作業を終えたフランドールは、洗面台から居間へと移動する。
そこには荷物をテーブルの上に置き、制服から私服に着替えている途中の姉の姿があった。
180 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 00:56:06.72 ID:lrL69xBH0
フラン「今日は早いのね」
レミリア「部活が休みになったからね。 中間テストも近いし……」
レミリア「他の子達もテスト勉強に専念すると言っていたから、テストが終わるまでは遊ばずに勉学に勤しむつもりよ」
フラン「ふーん……そうなんだ」
中間テスト。そう言えば、もうそんな時期だったか。
確か数日前に、学校の先生から中間テストの出題範囲について説明があった気がする。
今回のテストは前回の内容が簡単だったこともあり、少し難しめにするらしい。
当然生徒たちからは非難轟々であり、それを鎮めるために先生が苦労していたのを覚えている。
『自分もそろそろ勉強しなきゃ』等とぼんやりと考えていた時、
レミリアが突然真顔になって質問を投げかけて来た。
181 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 00:58:04.47 ID:lrL69xBH0
レミリア「……そう言えば貴方、私に先ず言わなきゃならないことがあるんじゃないの?」
フラン「え?」
レミリア「貴方、超能力を身につけたらしいじゃないの。 それを報告するべきじゃないのかしら?」
フラン「!? どうして――――」
レミリア「『どうして知っているのか?』、ね。 簡単なことよ、貴方の学校から連絡があったからよ」
レミリア「授業中にいきなり呼び出されたから、何事かと思ったけどね」
フラン「……そうなんだ」
話を聞くに、学校側が勝手に姉に対して情報を漏らしたらしい。
何か色々と言われるだろうと予測し、その話は姉には教えないようにしようと思っていた矢先のことだったので、
その事実はフランドールの心を大きく揺さぶることになった。
『なんてことをしてくれたのよ』と心の中で悪態をつくが、学校側の判断は間違っていない。
レミリアはフランドールの保護者だ。何かあった時、生徒の情報を保護者に伝えるのは当然のこと。
『フランドールが超能力を得た』という報せをレミリアに入れるのは、学校側にとっての義務である。
182 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 00:59:29.11 ID:lrL69xBH0
レミリア「それにしても、フランが能力者に、ね……先を越されちゃったわ」
レミリア「それで? 貴方の先生からある程度の大まかな話は聞いたのだけど、
どうやら個別授業を受けるように言われたみたいじゃない?」
レミリア「それに対して貴方は難色を示したようだけれど……それは何故かしら?」
フラン「何よ、お姉さまも同じことを言うの?」
レミリア「『同じ』?」
フラン「授業は私のためだとか、もっと強い能力者になれるとか……」
フラン「そんなの、もう聞き飽きたんだけど」
183 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 01:00:59.02 ID:lrL69xBH0
『この授業は君のためになる、とても素晴らしいものだ』。
『授業を受ければ、君はさらに上へと目指すことができる』。
それらの言葉は、教師達から耳にタコができるくらい聞かされた言葉だ。
確かに、その言葉は偽りのない真実であろう。
その授業を受ければ、フランドールの超能力はさらなる高みに登ることができるかもしれない。
彼女に可能性を見出した者にとって、それをただ腐らせるようなことはしたくないはずだ。
その考えは学園都市の常識に沿うならば至極尤もなことであり、そこに異論を挟む余地はない。
しかし、そんなことはフランドールにとっては全く興味の無いものだ。
現時点での彼女のレベルは『4』だが、その格は学園都市の能力者の中でも上層に食い込む位置にある。
学園都市に住む子供であれば、誰もが憧れるだろう高みに辿り着いているのだ。
これで不平不満を言おうものなら、それこそ他の者達に眼の敵にされるだろう。
それに、これより上の領域であるレベル5になるためには、天賦の才と途方もない労力が必要だ。
四六時中研究所にすし詰めとなり、研究者の手で身体のあちこちを弄り回されるのである。
そこに自由など無く、待っているのは『超能力を調べるための実験動物』という待遇しかない。
そんな扱いを受けてまで、彼女は更なる力を付けたいという気になれなかった。
184 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 01:02:36.76 ID:lrL69xBH0
レミリア「……」
一方指摘されたレミリアは、此方を見たまま一言も言葉を発しない。
それが意味することは何か。言うまでもなく『図星を突かれた』ということだろう。
自分がこれから言おうとしたことを先んじられたのだ。それで思わず、言葉が詰まってしまった。
フラン「……やっぱりね」
そんな姉を見て、フランドールは蔑むような眼を向けながら呟く。
姉が敵であるということを見抜いた優越と、そして僅かながらの失望。その感情が彼女の顔に酷薄な笑みを浮かべさせる。
それはあたかも、小悪党を心底見下す人の顔のようであった。
しかし、彼女は決して『善人』などでは無い。
自分が我儘を言っているだけであり、そこに『正義』などという孤高なものが存在するはずがない。
第三者が見れば全員が全員、我儘を言うフランドールを『悪』と見なすだろう。
だが、今の彼女にとって自身の善悪のことなどどうでも良いこと。
重要なのは『姉が敵である』ということであり、『敵の謀略を見抜いた』ということだけである。
185 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 01:04:08.45 ID:lrL69xBH0
フラン「友達から聞いたんだけど、レベルが高い能力者ってずっと研究所に缶詰になってるみたいじゃない」
フラン「体を好き勝手に弄られて、何も無い時はずっと監視されるとか……」
フラン「そんな面倒でつまらないことなんて、絶対にしたくないから!」
フランドールは口を閉ざし続ける姉に対し、畳みかけるようにして
そして最後に明確な否定の言葉を叫ぶと、そのまま外へと飛び出してしまった。
姉と一緒にいることが耐えられなくなったのだろう。
これ以上の追及を避けるために、彼女は半ば衝動的に行動したのだ。
当然、行く先など決めているはずない。その周辺をぶらぶらと徘徊することになるのは目に見えている。
186 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 01:05:08.82 ID:lrL69xBH0
レミリア「……はぁ、仕方ないわね」
開け放たれた玄関の扉を見やり、レミリアは呆れるように小さく溜め息をついた。
自身の言葉に対してフランドールが何かしら反発することは予想していたのだが、
話の展開が全く自分の思い描く通りになるとまでは思いもよらなかったのである。
少しくらいはこちらの話を聞いてくれるとは思ったのだが、わき目もふらず飛び出してしまうとは。
レミリア(ま、暫くすれば戻ってくるでしょ。 それよりも……)
レミリア(説得は失敗、か。 まぁ、元からあまり期待できなかったのだし……)
『それほどのことでもないわね』と、心の中で一人ごちる。
元々期待薄だったのだ。彼女がその事実に何かしらのショックを受けることはない。
強いて言うならば、心の中に残っているのは無駄骨を折らされたことに対する徒労感くらいだろうか。
187 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 01:05:58.07 ID:lrL69xBH0
レミリア(それにしても、どう報告しようかしら? 期待されているのだし、
『はい、無理でした』なんて簡単に済ませるのも私の威厳に関わるし……)
レミリアがフランドールを説得しようとしたのは、彼女の善意によるものだけでは無い。
そのもう一つの理由。それは、フランドールが通う学校から依頼されていたからだ。
その依頼がされたのは、フランドールが超能力を修得した知らせが来た時と同時。
つまり、学校で授業中に呼び出しされた時のこと。
勉学を途中で打ち切られて何事だろうと職員室に向かった先、
教師から手渡された電話越しにそのことを伝えられたのである。
レミリア「はぁ……まったく、面倒なことになったわね」
彼女は大分傾いた太陽を眺めながら、人目を憚らず大きな溜息をついた。
188 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/21(火) 01:07:02.27 ID:lrL69xBH0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/21(火) 01:28:20.93 ID:aGwhGSsuO
乙です
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/21(火) 01:54:21.26 ID:MWvu+h/h0
体を好き勝手弄るつもりなんでしょ?同人誌みたいに!同人誌みたいに!
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage sage]:2015/07/21(火) 16:09:38.88 ID:uGNb0NvY0
虹彩が紅い程度、学園都市なら普通に居そうだけど……ww
192 :
◆A0cfz0tVgA
[saga]:2015/07/27(月) 01:19:53.09 ID:rwjASv/Y0
>>190
薄い本が厚くなるな……これ以上は厚くならないか
>>191
虹彩が赤い人の数は人類の人口の0.001%程度。アルビノの人間がそれ該当するそうです
スカーレット姉妹はアルビノではないので、それにも拘わらず虹彩が赤いのは非常に珍しいということですね
193 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:20:58.71 ID:rwjASv/Y0
これから投下を開始します
194 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:22:39.29 ID:rwjASv/Y0
――――PM2:13
195 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:25:49.86 ID:rwjASv/Y0
『授業中、申し訳ありません。 至急お伝えしたいことがあり、ご連絡させていただきました』
レミリア(……いきなり何かしら)
レミリアが通う学校の職員室。
教師から受け取った受話器を耳に押し当てたその時、フランドールが通う学校の人間は不意にそう口にした。
何が起こっているのか上手く飲み込めないこの状況。
此方の質問を待たずに話を進めようとする相手に文句をぶつけたくなるが、レミリアは済んでの所で留まる。
周りに教師達がいるのだ。変に騒ぎ立てれば碌でもないことになるのは目に見えている。
彼女はふつふつと湧き上がる怒りを収めつつ、相手の言葉を待つ。
学校側『本日行われた『身体検査』の結果、フランドールさんが超能力を修得していると判明しました』
学校側『能力名は『物質崩壊』。 念動力系の能力に分類され、『強度』は『4』です』
レミリア「……そうですか。 ご連絡ありがとうございます」
196 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:28:47.38 ID:rwjASv/Y0
矢継ぎ早に説明する相手に対し、レミリアは努めて冷静に返答する。
何故なのかはわからないが、察するにどうやら学校側は相当焦っているようだ。
社会人としては考えられない礼を失する態度から、そのことを読み取ることができる。
いや、直接レミリアの学校へ連絡してくること自体が既に異常と言えるだろう。
だが、そのことを指摘するのは尚早だ。
相手の不可解な反応に違和感を覚えながらも、レミリアは静かに話を聞き続けた。
学校側『はい。 ですが、本日貴方にご連絡させていただいた理由はそれだけではございません』
学校側『フランドールさんの今後について、保護者でいらっしゃる貴方にご協力をお願いしたいのです』
レミリア「協力……?」
学校側『フランドールさんの能力ですが、少し危険なものであることがわかっていまして……』
学校側『使い方を間違えると、大事故に繋がる可能性が示唆されています』
学校側『フランドールさんは能力に目覚めたばかり……能力を使う上で注意すべきことをしっかり理解しているとは言い難い』
学校側『そしてもう一つ、彼女の能力は今後も伸び代があると判断されております』
学校側『以上のことから、私達の方でフランドールさんに超能力を扱う上での必要な教育を施すこと、
そして超能力の向上を図るために個別のカリキュラム考案したのですが……問題が生じまして』
197 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:31:42.10 ID:rwjASv/Y0
そこで電話口の人間は声のトーンを低くして言い淀む。
何故、学校側がなりふり構わず自分に連絡をしてきたのか。
その理由を、レミリアは今までの話の流れからある程度察することができた。
学校側の行動とフランドールの性格。それから導き出される答えは一つ。
レミリア「……妹がその案を拒絶した。 そういうことですか?」
学校側『! ……お察しの通りです』
レミリア「まったく、あの子ときたら……要件というのはあの子にその案を飲むよう、
私に説得して欲しいということですか」
学校側『そうです。 ある程度の猶予を与えるので、もう一度よく考えるようには言い渡したのですが、
このままだと返答の内容が変わるとは思えませんので』
学校側『フランドールさんのためでもありますから、おいそれと引き下がるわけにも参りませんし……』
学校側『出来るだけ早めに、良いお返事を頂きたいのです』
レミリア(なるほど……)
198 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:33:14.80 ID:rwjASv/Y0
レミリアはここで学校側が言いたいことを完全に理解する。
要は、学校側は自分達の口では説得できなかったから、その役目を自分に任せようというのだ。
確かに自分はフランドールの保護者である。保護者の立場を使って、フランドールを説得することは可能だろう。
都合良く利用されているようで少し気にいらないが、だからと言って断ってしまうのも考え物だ。
レミリアはフランドールの姉であると同時に、保護者としての立場も有している。
ここで学校側の提案を拒絶するということは、その立場を放棄することと同じ。
そして、レミリアとフランドールが同じ屋根の下で共に暮らしていられるのはその立場があってこそ。
本当であればフランドールは、学校付属の寮に暮さねばならないのだから。
レミリア(向こうの提案を断るのは無理ね。 あの子が私の眼の届かない所に行ってしまうのは危険だわ)
レミリア(ここは科学の街。 私たち魔術側の人間にとっては、敵地の真っただ中にいるようなもの)
レミリア(わざわざ孤立するような状況を造るのは愚策もいいところね……)
199 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:34:22.96 ID:rwjASv/Y0
レミリアは静かに、そして素早く考えを巡らせる。
レミリアとフランドールは、元を正せば魔術の領域に属する人間だ。
超能力開発を受けた時点で魔術を捨てたも同然なのだが、それでも立つ位置が変わったというわけではない。
例え魔術を使えなくなったとしても、『魔術を知っている』という点は変わらないのだ。
彼女達はどう頑張っても、『魔術を知らない真っ当な科学側の人間』になることはできない。
それを考えると、『科学』と『魔術』の間にある確執は避けられない問題だ。
この二つの陣営が長年にわたって戦争状態にあるということは、レミリアも父親からよく聞かされていた。
今でこそ互いに不干渉を貫いているが、過去に於いては血生臭い争いを何度も繰り返していたと聞く。
レミリアにとっては心底どうでもいいことなのだが、だからと言って無関係を貫くことなどできはしない。
『科学』と『魔術』が敵対している以上、本人に意思とは無関係に彼女達は『学園都市の敵』である。
今は平穏を享受しているが、実際はいつ学園都市の尖兵に攻撃を仕掛けられるかわからないのだ。
レミリアは自傷覚悟であればある程度身を守ることができるが、フランドールは何の力を持たない一般人に等しい存在。
互いに離ればなれになるのは、二人にとって何の良い結果も齎さない。
故に、レミリアに学校側の要求を断るという選択肢は存在しなかった。
200 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:34:55.78 ID:rwjASv/Y0
レミリア「わかりました。 その依頼、お受けします」
学校側『おぉ、ありがとうございます!』
レミリア「いえ、妹のためでもありますし、私は無能力者ですから……能力関係についてはお任せします」
レミリア「あの子が私の言うことを素直に聞いてくれるかはわかりませんが」
学校側『説得できなかった場合についての対処は考えておりますので、例えそうなっても気に病む必要はございません』
レミリア「えぇ」
電話越しでも伝わるほどの大袈裟な感謝の言葉を聞きながらも、レミリアの心中は冷静そのものであった。
他者に感謝されることが嫌いというわけではない。
寧ろ他者からの好意は自身のパラメータとなる重要なものであり、
一族の名を背負っている彼女にとっては『名声』の面で好ましいことである。
それにも拘らず愉悦を得ることができなかったのは、心にしこりの様なものが残っていたからだ。
話の始まりから抱いていた『あの疑問』。それを解消するべく、レミリアは電話越しの相手に質問をぶつける。
201 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:36:45.18 ID:rwjASv/Y0
レミリア「……一つだけ、尋ねてもよろしいでしょうか?」
学校側『何でしょう?』
レミリア「貴方の言動から、何やら随分と急いでいる印象を受けたのですが……それは何故?」
学校側『いえ、それはですね……』
レミリア「私としては、本来なら個別授業を受けるかどうかはフラン本人が判断すべきことだと思います」
レミリア「あの子も馬鹿ではありませんから、そちらの厚意には気付いているはず……」
レミリア「じっくり話し合いさえすれば、自分から納得して個人授業を受けるでしょう」
レミリア「それなのに貴方達はあの子との対話を早々に諦め、私という身内に縋りついた」
レミリア「傍から見れば、教師としての義務を放棄したようにも捉えられますが……?」
相手の言い訳を許さないかのように、レミリアは言葉を覆い被せていく。
こうして自身の考えを口にしていくにつれて、学校側の行動の中にある不可解な点が徐々に明白になってきた。
そもそも、話の展開が急過ぎるのだ。
フランドールが超能力を会得していることが発覚したのは、恐らく昼頃のこと。
それから数時間の内にフランドールへの個別授業の案が学校の中から出て、
それを本人に提案した所拒絶され、さらにその説得の御鉢がレミリアに回ってきたのである。
普通であれば、数日かかって展開される話であるはず。
それを考えると、学校側がどれほど焦っているのかが改めて理解できるだろう。
202 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:37:30.04 ID:rwjASv/Y0
学校側『えー、それは……』
レミリア「……」
言葉が詰まり、中々二の句が継げない学校側。
その様子に対し、レミリアの心の中にある猜疑心が急速に膨れ上がっていく。
質問に答えられない時というのは、『答えると自身の都合が悪くなる』、
そして『その場凌ぎの言い訳を考えている』時と相場は決まっている。
つまり、学校側はレミリアに対し何らかの後ろ暗いものがあるということだ。
無論、それなりに歳を食った大人であれば息を吐くように嘘八百を並べることができるのだろうが、
レミリアと相対している大人はそれだけの機転は持ち合わせていなかったらしい。
ただ単純に、子供であるレミリアに急所を突かれるとは予想していなかっただけかもしれないが。
203 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:38:19.72 ID:rwjASv/Y0
レミリア「……結構です」
学校側『はい?』
レミリア「先ほどの質問については、お答えしなくて結構です」
学校側『し、しかし……』
レミリア「答えられないというのであれば、これ以上詮索はしません」
レミリア「貴方も組織に属する人間です。 しがらみで思うように動けないこともあるでしょうから」
学校側『……』
レミリアは電話越しの相手に労わり言葉を投げかける。
しかし実際の所、その言葉に相手を思いやるような感情は乗せられていなかった。
今の彼女の内にあるのは、学校に対する『不信』のみ。
『相手は自分達に何かを隠している』という、断定こそはできないが半ば確信めいた考えがあり、
そして彼らが隠しているであろう『何か』についても、彼女はある程度察知していた。
204 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:39:05.97 ID:rwjASv/Y0
レミリア(大方、フランの能力を狙っているんでしょうね)
学校側が今、何を考えて行動しているのか。どうしてこれほどにまで焦っているのか。
学園都市に蔓延する『超能力至上主義』。全てにおいて超能力を優先するその価値観を鑑みれば、理由など容易に推し測れるだろう。
『一人の超能力者の価値』は『幾千の無能力者の価値』よりも遥かに勝る。
学校側にとって能力者の生徒が居るのと居ないのとでは、得られる恩恵は雲泥の差があるのだ。
つまり彼らとしては、能力者であるフランドールは垂涎ものの存在なのである。
故に彼らはどんな手を使ってでも、彼女を手に入れたいと考える。
――――例えば、『身内を利用して彼女を説得する』等の方法を使ってだ。
205 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:39:55.86 ID:rwjASv/Y0
レミリア(何ともまぁ、随分と姑息な手を使うものね。 倫理に欠けた狂人には相応しいのかもしれないけど)
レミリアは相手の愚劣な考えを、心の中で侮蔑した。
妹を、フランドールをただの『超能力を持った人間』として扱うとは。
本当であれば自身の手で八つ裂きにしてやりたいところだが、無能力者である彼女にそんな力があるはずもない。
正確には手段はあるのだが、諸刃の刃であるそれを使ってまで奴等を粛清するのは余りにも危険過ぎる。
直接指摘して釘を刺すことも考えたが、狂科学者たちがこちらの発言を意に介すとも思えない。
加えて、此方の不信は明確な根拠が無い直感的なものであるため、指摘してもはぐらかされるだけだろう。
故に、彼女はその意思を声色に乗せることだけでしか表示することができないのだ。
206 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:40:37.58 ID:rwjASv/Y0
レミリア「フランの説得は、先ほど申し上げたようにきちんと行います。 断るつもりはありませんのでご安心を」
レミリア「能力を手に入れた人が道を踏み外すのを、私も何度か見てきていますので……」
レミリア「それと、あの子のことをいち早く教えてくれたことには心から感謝しています」
レミリア「今後も、『あの子のことを大切にしてくださいね?』」
学校側『……了解しました。 それでは吉報をお待ちしております』
レミリア「えぇ。 それでは」ガチャン!
レミリアは相手が通話を切るのを待たずに、少々乱暴に受話器を置く。
プラスチック同士がぶつかる軽い音が職員室に響き渡った。
207 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/07/27(月) 01:41:38.09 ID:rwjASv/Y0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
208 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/27(月) 11:56:38.24 ID:OYltEQ6yo
乙です
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/27(月) 13:55:07.67 ID:kP7yTTno0
ギスゥ
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/27(月) 19:46:34.81 ID:UICO+1DR0
乙
16歳フランが能力を使えていた以上何らかの訓練はやったものと推測できるが‥無能教員が説得したとはちょっと考えにくいな
211 :
◆A0cfz0tVgA
[saga]:2015/08/09(日) 23:54:57.82 ID:3HuzRGYm0
これから投下を開始します
212 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/09(日) 23:57:27.58 ID:3HuzRGYm0
――――PM 7:23
213 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/09(日) 23:59:24.28 ID:3HuzRGYm0
レミリア(……帰ってこないわね)ジュー
レミリアはフライパンを揺すりながら、未だに帰ってこないフランドールを考える。
彼女は今、料理の真っ最中。
部屋の中には香ばしい肉が焼ける匂いが漂い、そこにいる者の胃袋を刺激する。
彼女がフライパンを勢い良く振り上げると、中から挽肉の大きな団子が宙へと舞い上がった。
今日の料理はハンバーグ。フランドールの好物の一つである。
本当であれば、今日造る料理をハンバーグにするつもりは全く無かった。
そもそも無能力者(フランドールは本日晴れて能力者になったが)であり、
奨学金をあまり多くもらえない彼女達にとって、肉料理などそう頻繁に食べられるものではない。
貧乏学生の例に漏れず、もやしやキャベツ、そして特売の卵を用いた健康的とは言い難い格安料理を作る予定だった。
勿論亡くなった両親の遺産はあるにはあるが、それについては成人するまでなるべく手を付けないようにしていた。
214 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:00:43.56 ID:Ns/1g1At0
では何故路線変更をしたのかというと、言ってしまえばフランドールのご機嫌取りのためである。
反抗期なのかは定かではないが、フランドールは最近目立って姉に不平不満を漏らすことが多くなった。
言葉上は普通であるが、声の端々に棘が混ざり始めている。
一応保護者の立場であり、彼女の親代わりを務めている以上、
フランドールとの仲が悪くなるのは絶対に避けたいことであり、何とか仲を取り持ちたい。
しかし反抗期の子供の対処法を、同じ子供であるレミリアが知るはずもなく、
精々できることと言えば物を使って釣り上げることぐらいであった。
レミリア(変な意固地を出して門限までに帰ってこない、なんてことにならなければいいけど)
レミリア(あの子ったら、ケータイも持たずに出て行ってしまったし……)
フランドールが部屋に携帯電話を置いていってしまったことから、今彼女と連絡を取る術は皆無である。
不機嫌な状態のまま家を飛び出してしまったことを考えると、連絡が取れないというのは不安要素でしかない。
変な気を起こして危険地帯に入り込み、事件に巻き込まれてしまったとしても、彼女は姉に助けを求めることができないのだから。
215 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:02:35.46 ID:Ns/1g1At0
こちらからフランドールを探しに行くことはできる。
しかし彼女がどこにいるのかわからない以上、門限まで見つけることができないか、入れ違いになる可能性の方が高い。
それよりであれば、こちらは動かずに待っている方が賢い選択だろう。
無論、これはフランドールに今日中に家に帰ってくる意思があればの話になるが。
レミリア「結局、無事に帰ってくるのを待つしかないか……っと」
程良い焦げ目が付いたハンバーグを再びひっくり返しながら、レミリアはそう結論付けた。
レミリア(そろそろかしら……)
火の通り具合を見るべく、レミリアはハンバーグを爪楊枝で少し突く。
すると穴が空いた場所から、透明な肉汁が弾けながら飛び出してきた。
どうやら良く火が通っているようだ。これ以上焼くと表面が焦げてしまいそうなので、そろそろ頃合いだろう。
少し大き目の皿を棚から取り出すと、予め刻んでおいたキャベツを手早く敷き、
さらに惣菜のマッシュポテトとミニトマトを数個添える。
そしてフライパンをコンロから引き上げると、中に入っている大きなハンバーグを静かに皿に移した。
仕上げに残った肉汁をその上に少しかけて完成。パチパチという軽い音と共に、微かな白い蒸気が立ちあがる。
216 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:04:05.47 ID:Ns/1g1At0
レミリア「ん〜〜〜……我ながらカンペキね」
料理の出来栄えを見て、レミリアはそう自賛する。思わず写真に撮ってしまいたい衝動に駆られた。
今でこそ彼女は人並みに料理を作ることができるが、学園都市に来た当初といえば、それはもう散々であった。
何故かと言えば、イギリスに居た頃は館のメイドが作ってくれていたこともあり、
彼女自ら料理をしたことなど一度も無かったからである。
そして学園都市に来て間もなく、『ここで暮らすためには自炊することも必要だろう』と考えて行動を起こした結果、物の見事に失敗。
施行錯誤の末できたヨクワカラナイモノを、冷たい目線を向ける妹の前で泣く泣く食したのは今でも鮮明に覚えている。
そんな時代と比べれば、今のレミリアの料理の腕は格段に向上している。
少なくとも、友人を呼んで料理を振る舞う位は出来るだろう。
レミリア(今度、誰かを呼んで料理を御馳走するのもいいかもしれないわね)
そんなことを考えつつ、彼女は料理が入った皿を運んで行った。
217 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:06:22.90 ID:Ns/1g1At0
――――PM 8:35
218 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:07:57.40 ID:Ns/1g1At0
レミリア「……遅い」
8時半頃を指し示している時計を見やり、レミリアは少し苛立ちながら呟く。
眼前に据えられたテレビには、中年の男性が黒板に向かって文字を書き連ねる様子が映し出されている。
内容は高校数学。レミリアはその番組を見つつ、今日自身に課せられた宿題を片付けていた。
学園都市のテレビ番組は、外部のそれと比較して教育系のものに偏っており、
その反面娯楽番組は非常に少なく、放送時間も限られている。
特に小中高それぞれの学校で学ぶ授業を解説する『教育番組』が一際多く存在し、
ゴールデンタイムと呼ばれる時間帯でも平然と高校の数学解説をやっていたりする。
教育番組がテレビを席巻してしまっているのは、学園都市の方針によるところが大きい。
この街では教育には関係の無い、娯楽に関わる商品には法外な税金がかかる。
しかしその代わり、勉学に関わる商品についてはほぼ無税と言っても差し支えないほど税金が低い。
詰まる所、教育番組は無料で視聴できるが、本格的な娯楽番組を見たい場合は別途で受信料が必要となるのである。
『学生の本分は勉強である』という、大人にとって至極真っ当な正論を反映した結果であった。
219 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:09:38.69 ID:Ns/1g1At0
レミリア(宿題が終わっちゃったから、やることが無くなってしまったわ)ピッ
レミリア(それに、料理もすっかり冷めてしまったし……)
レミリアは味気のない番組を流し続けるテレビを消すと、テーブルの上に広がる料理を見て眼を細める。
料理をテーブルに運び、フランドールの帰宅を待つこと1時間。
折角作った妹用のハンバーグはすっかり冷めてしまい、油が固形化して白くなっているという有様だ。
電子レンジを使って温めればそれでいいのだが、彼女としては出来たてを食べさせたかったこともあり、
何とも言い難い無念を心の中でひしひしと感じていた。
レミリア(門限まで後少し……まだ余裕はあるけど、どうしたものかしら)
マンションの中央エレベーターが休止するまで残り30分。妹が帰ってくる気配は未だに無い。
少し待てば頭を冷やして戻ってくるだろうと考えたのだが、どうやら見通しが甘かったらしい。
フランドールの心中は、レミリアが思ったよりも荒れていたようだ。
220 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:10:30.85 ID:Ns/1g1At0
これは非常に不味い。
門限を過ぎたら最後、フランドールは明日までこの建物から閉め出されることになり、
逆にレミリアはこの建物から一歩も外に出ることができなくなるのだ。
果たして、家に帰ることができなくなった妹は一体どのような行動を取るのだろうか。
レミリア(最悪、『警備員』に連絡した方が良いかしら……?)
レミリアは最終手段として、『警備員』を利用する案を思いつく。
もしもフランドールが帰ってこなかった時は、『警備員』に保護してもらおうという考えだ。
最も安全で確実な方法である。しかし、その案を考えた当人の表情は優れなかった。
彼女としては、出来るだけ『警備員』や『風紀委員』といった公安機関のお世話にはなりたくない。
理由は様々ではあるが、敢えて挙げるとするならば『自身が魔術師の端くれだから』である。
科学と魔術は互いに相反するもの。彼女の立場で考えると、敵陣のど真ん中に入り込んでいるようなものだ。
そんな場所で目立つ行動を取るのは、どう考えても賢いとは言えない。
221 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:12:15.12 ID:Ns/1g1At0
彼女の用心深さをただの杞憂だとする人がいるかもしれない。それは一理ある。
科学が全てを占めるこの街に於いて、『魔術』などただの空想上の産物に過ぎない。
現に、レミリア達が街に住み始めてから一度も『魔術』という言葉を耳にしたことは無かった。
おそらく、この街に『レミリアが魔術師であること』を見抜ける人間はいない。
彼らにとって、魔術は『存在しないもの』なのだ。魔術が存在しないのならば、当然魔術師も存在しない。
『存在しない存在』を見抜くことなどできはしないのだから。
だがそれは所詮『おそらく』であり、絶対確実とは言えないものだ。
もしかしたらこの街の何処かに、自分達と同じように潜入している魔術師が居るかもしれない。
そして、その人物とばったり出くわしてしまったら。そうでなくとも、自分達のことを知られてしまったら。
その時点で今までの平穏は脆く崩れ去り、最悪破滅を迎える可能性すらある。
故に、例えそれがほんの僅かな可能性であったとしても、ゼロでは無い以上用心するに越したことは無い。
レミリア(でも、万が一の時に何も出来なかったら本末転倒だし、今回ばかりはしょうがないかしらね)
しかし『警備員』の手を借りなかったがために、フランドールの身に何かがあってしまっては意味が無い。
本当に必要な時に限っては、多少のリスクには眼を瞑る必要があるだろう。
そう判断したレミリアは、『警備員』に連絡を取るべく受話器を手に取ろうとした。ところが――――
222 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:13:53.53 ID:Ns/1g1At0
ガチャッ!
その行動を遮るようにして、玄関先から扉が開く音が聞こえてきた。
レミリア(……帰って来たみたいね)
音を出した人物に当たりを付けた彼女は、受話器にのばした手を引く。
おそらく、フランドールが戻ってきたのだろう。
彼女が家を飛び出してから3時間余り。その間何をしていたのかは知る由もないが、
おそらくこの周辺をただ歩き回っていたのだろうとレミリアは想像した。
フランドールは財布も持たずに飛び出していっていたので、何処かの店で暇つぶしをすることは出来ない。
ホテルに泊まって一夜を過ごすなど、尚更あり得ないことである。
また特別に親密な友人を持たない彼女が、その友人の家に転がり込むとは思えない。
何よりも、彼女の友人が居るであろう学校の寮と自宅は、歩いて向かうには距離が離れ過ぎている。
故に家を飛び出したフランドールが最終的に取る行動は、次の日の朝になるまでこの街の何処かで野宿をするか、
もしくは大人しく自宅に戻るかのどちらかに帰結するのは必然であった。
もっとも、野宿をした場合はレミリアから依頼を受けた『警備員』が彼女を補導し、
自宅に連れてくることになっていたはずなので、どちらにしても結果は変わらなかったのだが。
223 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:14:49.00 ID:Ns/1g1At0
レミリア「フラン、今までどこに――――」
レミリアは玄関に赴き、帰宅したフランドールを迎え入れる。
感情のままに行動した不出来な妹を刺激しないように、穏やかな口調を装いつつ。
しかしその言葉は、最後まで紡がれることはなかった。
フラン「……」
レミリア「フラン、貴方……」
レミリアはフランドールを見て、その場に棒立ちになる。
目の前に立つ妹の姿は、自身が想像していたものとはかけ離れたものだったからだ。
顔、腕、足……全身に見られる擦り傷と打撲。
血こそは流れていなかったが、赤く腫れ上がったそれは元から色白の彼女の肌にはあまりにも目立ち、
特に顔の傷は実際の怪我の度合い以上に、見た目の痛々しさを強調している。
彼女が着ている服は何故か灰色に染まっており、何処かに引っかけたかのように破れている箇所もあった。
これではもはや、その服を着ることは二度と出来ないだろう。
しかしそれ以上に、レミリアの視線を引いたのが『眼』だ。
普段の快活な彼女の様子からは考えられない『座った眼』。家を飛び出す前とは違った、覇気のない眼だ
それが生み出す周りの全てを拒絶するかのような眼光は、レミリアの体に深く突き刺さり、その場に縫い付けた。
224 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:18:27.90 ID:Ns/1g1At0
レミリア「何が――――」
フラン「――――」ダッ!
数瞬の後、金縛りから解かれたレミリアは重苦しくその口を開く。
しかし事情を聞くより先に、フランドールはその追求から逃れるようにして足早に姉の脇を通り過ぎた。
そして彼女は自身の部屋に飛び込み、そのまま部屋の鍵をかけてしまう。
レミリア「フラン! 何があったの、フラン!」
レミリアは慌ててそれを追いかけ、フランドールに対し扉越しに声をかけるが時既に遅く。
部屋に閉じこもった妹は、沈黙を保ったまま取り合おうともしない。
姉の侵入を拒む木製の扉は、その時に限っては重く頑丈な石扉のように思えた。
225 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:19:04.08 ID:Ns/1g1At0
一体、妹の身に何があったのか――――
扉の前に立ち尽くすレミリアの頭の中に、様々な仮定が思い起こされる。
しかし仮定が確証に至ることはなく、その思考は濃霧の中を歩くかのように定まらず、彷徨っていた。
妹の口から語られない限り、真実を知ることは出来ない。だが、少なくともこれだけは言えることがある。
それは彼女の身に起こったことは、『決して良いものではない』ということ。
どの程度『良くない』のかはわからない。ただ、それが軽いものであることを願うしかない。
レミリア「……」
どうすることも出来なくなったレミリアは、妹をそのままにして居間に戻る。
戻って眼に付いたのは、テーブルの上に並べられた2皿の料理。
一つは自分の、もう一つは妹の分。すっかり冷め切ってしまった料理の姿は彼女の心に寂寥をもたらした。
無言のまま椅子に座ってナイフとフォークを手に取り、ナイフでハンバーグを丁寧に切り分け、その一切れを口に含む。
226 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:19:38.32 ID:Ns/1g1At0
レミリア「……冷たくて、美味しくないわね」
口の中に入れた肉塊を噛みしめながら、ぽつりと言葉を漏らす。
不味い。とてもではないが、『美味しい』と言える代物ではない。
口の中に広がる塩の味と、凝固した油のぬるぬるとした舌触り。
もそもそした食感のそれを、しっかり味わって食べようとは到底思えなかった。
ただ、この料理を『不味い』と思える理由には、味や食感以外にも何かある気がする。
レミリアはその理由をぼんやりと考えつつ、冷めた料理を最後まで食し続けた。
227 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/10(月) 00:20:16.21 ID:Ns/1g1At0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/10(月) 00:25:21.81 ID:pIzWBcAOo
乙です
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/10(月) 01:50:28.49 ID:a8CJG0uw0
乙
マジで何してきたんやらな
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/10(月) 08:06:21.12 ID:7B7qUe+D0
乙
一人、冷や飯を食う破目になるとは哀しいもんだ
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/11(火) 07:59:31.10 ID:a9/8UjU60
破壊系の能力ってのは狂わせるねぇ
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/11(火) 19:15:00.42 ID:Ia3pGGtM0
フラン「正当なる防衛だよ」(某金髪ロールピザ(当時)男風)
233 :
◆A0cfz0tVgA
[saga]:2015/08/24(月) 00:10:54.91 ID:KRW/N0gR0
これから投下を開始します
234 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:11:48.78 ID:KRW/N0gR0
フラン「……」
レミリアが冷めたハンバーグを一人で食べている頃。
フランドールは自室のベッドに上に蹲り、身じろぎ一つせずにいた。
部屋に明かりは付いておらず、カーテンまでも閉めきっており、一寸先も見えない暗闇である。
更には、今夜は新月のために月明かりが入り込むこともない。
闇に眼を慣らしたとしても、辛うじて物の輪郭がわかる程度にしかならないだろう。
もっとも、顔を伏せてしまっている彼女にとってはあまり関係のないことなのかもしれない。
顔はほぼ全てが膝の下に隠れており、その全貌をうかがい知ることはできない。
また彼女は家に帰ってから着替えもせずにいるため、衣類はぼろぼろのままだ。
それを身に纏っている後ろ姿は、心なしか見た目以上に小さく見える。
どうして、彼女はこのような姿になってしまったのか。
その理由を知るには、彼女が家を飛び出したその後について詳しく読み解くしかないだろう。
235 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:17:33.23 ID:KRW/N0gR0
――――PM 6:22
236 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:18:42.26 ID:KRW/N0gR0
フラン(あ〜……どうしよ)
街の中を一人で歩きながら、フランドールは一人頭の中で悶絶していた。
姉の追及を振り切るように家を飛び出してから数十分。
目的地も定めずに無我夢中で走り回った結果、彼女はいつの間にか街のど真ん中にいた。
周囲には授業や仕事帰りの人、そして夕飯の材料を買い求めている人でごった返している。
誰も彼もフランドールのことを眼に止めることはなく、追い立てられるように足早に歩いていた。
その光景を見て彼女は急激に孤独感じることになったが、この事態を引き起こしたのは彼女自身。
責めるべきは他者ではなく、姉から逃げ出した自分本人であることは疑いようもない。
しかし『自省』などという大人な判断が出来ない彼女には、レミリアに対してぶつくさと不平不満をぶつけることしか出来なかった。
そんな子供な行為暫くしていたフランドールではあるが、やがてその『不満』は次第に『焦り』へと変化してくる。
姉に対して粗暴な口利きをしてしまったという事実。それによる後悔が首を擡げてきたのである。
237 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:19:53.59 ID:KRW/N0gR0
レミリアは彼女にとって、口うるさくはあるが頼りになる姉だ。
家の管理をしているのは彼女だし、フランドールが通う学校からの連絡を受け取っているのも彼女である。
言ってしまえば、レミリアはフランドールの親代わりであり、
フランドールがこの学園都市で暮らしていけるのは、全てレミリアのおかげなのだ。
何から何まで世話になっている姉に対し、何の感謝の念も抱かないなどという恩知らずな性格はしていない。
彼女自身は自覚していないが、心の何処かで姉に対し羨望のようなものをもっている。
その想いが、幼いながらも彼女に自責の念のようなものを抱かせたのだろう。
フラン「うぅ〜……」
顔を俯き、時々低い唸り声を上げながら街の中をフランドールは歩く。
端から見れば少々不審に見える姿であったが、そんな彼女の様子を気にかける者はいなかった。
しかしそのおかげで、彼女は『姉への釈明』についての思考に集中することが出来たのだが。
238 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:20:58.72 ID:KRW/N0gR0
フラン(早くお姉さまに謝らないと何言われるか……でも、今戻るのは気が引けるし……)
今すぐ家に帰り、姉に対して謝罪するのか。
それとも、ほとぼりが冷めるまで待つのか。
彼女の思考はこの二つの選択肢の内、どちらを選ぶのかで判断をしかねていた。
普通に考えれば直ちに姉の元へ参じ、自身の非礼をわびるのが最良だろう。
己の失敗の後始末を先延ばしにすれば、手痛いしっぺ返しを食うのが当たり前である。
しかし再三言うように、幼子のフランドールにそのような大人びた判断が出来るはずもない。
仮に頭の中では理解していたとしても、『姉に対する恐怖』が行動を躊躇させてしまうだろう。
従って彼女に出来ることは、後ろめたさを感じながらも街中を徘徊することしかなかった。
239 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:21:34.31 ID:KRW/N0gR0
フラン(もう少ししたら、戻ろうかな……でも……)
戻らなければならないと心の底で理解しつつも、覚悟ができずに踏みとどまる。
そんなことを繰り返して、どれだけの時間が経ったのだろうか。
時計も携帯電話も持たない今の彼女に、それを知る術はない。
フラン「……あ」
それからさらに、いくらかの時間が経った頃。
ふと無意識に顔を上げると、空が夕日に紅く染まっている光景が目の前に広がっていた。
見渡す限り立ち並ぶ高層ビル群の彼方に、輝きが鈍った太陽がぷかりと浮かんでいる。
ビルの隙間からこっそり街を覗き込んでいるように見え、
太陽がこの街から離れることを名残惜しんでいるように思えた。
240 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:22:20.55 ID:KRW/N0gR0
フラン「きれい……」
ぽつりと、そんな言葉をフランドールは漏らす。
毎日見ているはずの夕暮れだというのに、今この瞬間においては、
心深く染み入る『何か』をそれから感じ取ることができた。
こんな風に茫然と空を見つめたのは、果たしていつ以来のことだろうか。
普段は全く気に留めなかったが、いざこうしてみると改めて空の大きさを身に沁みて感じ取ることが出来る。
それと同時に、自身が持っている悩みが見る見るうちに縮こまり、まるでくだらないもののように思えた。
『今は昔と比べて、空が狭くなった』と人は言う。
確かに、天高く聳え立つビルにより、目に見えるものは減ったかもしれない。
しかし、それでも空は、地上が如何に変わろうとも変わらずそこに在り続けているのだ。
241 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:22:48.73 ID:KRW/N0gR0
フラン「……暗くなっちゃった」
結局フランドールは、太陽が完全に沈み行くまでそれを眺めていた。
足元を見ると、自身の影法師は既に無く、形のはっきりしない冥暗が映るのみ。
周囲では闇に沈む町を照らそうと、街灯の明かりがぽつぽつと付き始めている。
これより先は夜の時間。
昼間の活気に満ちたものとは違う、妖しい雰囲気が漂う『宵闇の街』が現出する。
そしてその世界において、フランドールの存在はあまりにも不釣り合いだ。
高校生や大学生といった、有る程度年を重ねた青年たちならまだしも、
年端もいかない小学生、しかも女の子が歩き回って良い場所ではない。
この街は、弱者に対してはそれほど優しくはないのだ。
242 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:23:32.78 ID:KRW/N0gR0
そのことについては、フランドール自身も理解していた。
夜の街がどれほど危険なのかは、学校の先生から再三聞かされている。
そして犯罪に巻き込まれた生徒達が、一体どのような末路を迎えたのかについても。
子供達の事を考え、詳しく内容が語られることはなかったが、『それ』がどれほど恐ろしいことなのかは知っていた。
そして今、自分は犠牲になった生徒達と同じ『一人で夜の街にいる』という状況下にある。
自身を守る『盾(大人たち)』はこの場に無い。言うなれば、今の自分は暗い森に迷い込んだ脆弱な兎である。
『腹を空かせた狼(犯罪者)』に狙われたら最後、抵抗も出来ずに餌食となるしかないだろう。
その事実に気づいたフランドールは、急に強烈な不安に駆られた。
先ほどまでは全く気にしていなかったというのに、自覚した途端に恐怖が首を擡げてきたのだ。
まるで、不意に獰猛な肉食獣と相対した時のような。突然の出来事に一瞬呆けるが、
状況を理解した時に改めて襲い来る『あの恐怖』と似ていた。
243 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:24:02.91 ID:KRW/N0gR0
フラン「早く、帰らないと――――」
誰かに聴かせると言うこともなく、ぽつりと言葉を漏らす。
その言葉が出た理由は、自身の中の不安を少しでも吐き出すため。
居るはずのない『誰か』と会話することで、平静を保とうとする無意識の行動である。
しかし、それは所詮付け焼き刃に過ぎない。心の中の不安は吐き出した以上に大きく膨れあがっていった。
やがてフランドールは、ゆっくりと自宅へ足を向け始める。
最早彼女の中には、姉に対する後ろめたさは微塵も残っていない。
『その程度のこと』など、自身に迫る危険に比べれば実に些細な問題である。
その代わりとにかくここから離れ、安全な場所へ行きたいという思いが強く支配していた。
彼女の足は迷いを見せることなく、帰路の道を進んでいく。だが――――
244 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:25:21.71 ID:KRW/N0gR0
「よう、お嬢ちゃん。 俺達とイイことしない?」
少し、行動に移すのが遅かったようだ。
思わず足を止め、声をする方を見やるとそこには。
下卑た笑いを浮かべた男達がこちらを見ていた。
245 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/08/24(月) 00:26:53.79 ID:KRW/N0gR0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/24(月) 00:31:07.99 ID:9A/IwvZyO
乙です
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/24(月) 23:38:49.63 ID:kCwhG4/o0
罪袋とどっちがマシだろうか
248 :
[sage]:2015/08/25(火) 17:30:27.96 ID:4yFXt0p10
不っ吉な夜が〜迫って来たら〜♪(ネズミー音楽verVILLANS感)
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/04(金) 01:44:02.37 ID:w6VCVaNh0
同人誌みたいに
250 :
◆A0cfz0tVgA
[saga]:2015/09/07(月) 00:15:05.06 ID:bBfa6yub0
休日だというのに筆が進まない。書き溜めがががg
これから投下を開始します
251 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:16:13.07 ID:bBfa6yub0
* * *
252 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:16:43.36 ID:bBfa6yub0
「ちっ、暴れんじゃねぇよ!」
フラン「いやっ、離して!」
それから数分後。
フランドールは男たち3人に、半ば誘拐される形で人の気配がない路地裏へと連れ込まれた。
周囲には見上げるほどの高さの高層ビルが建ち並び、空を非常に狭く見せている。
その空には星が瞬き始めているが、月はその顔を覗かせていない。
それもそのはず、今宵は『新月』。月が空から姿を消す日である。
故に月明かりに照らされない路地裏はいつも以上に闇が深く、人の本能に原初の恐怖を訴えかける。
フラン「きゃっ!」ドサッ!
人の眼が届かない場所に辿り着くと、フランドールの腕を引っ張っていた男は彼女を乱暴に前に突き出す。
その勢いのままフランドールは前につんのめり、その膝と手を地面に突いた。
手の平が強く擦れ、僅かに血が滲み出す。服には土埃が付き、真紅の衣装の所々を灰色に彩った。
253 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:17:31.11 ID:bBfa6yub0
男1「さて、と。 どうする?」
男2「どうするってお前、そんなもん決まってるだろ」
男1「俺が聞いてるのはどんなシチュがいいかってことさ」
男2「シチュって言われてもな……いつも通りじゃダメなのかよ?」
男1「3人でマワして終わりじゃ飽きるだろ? 偶には変わったことしないとな」
男2「まぁ……お前がそう言うなら別にいいけどさ」
フランドールをそっちのけで楽しげに会話を進める男たち。
会話の内容はほとんどわからなかったが、自分に『何か』をしようと相談していると言うこと、
そしてそれは碌でもないことであるというだけは理解できた。
254 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:18:47.43 ID:bBfa6yub0
フラン(どうにかして逃げないと……!)
フランドールは逃げる算段を立てるが、現状では難しいと言わざるを得ない。
人がいる大通りからはそれほど離れてはいない。
全力で走れば、比較的簡単にたどり着くことができるだろう。
しかし、男3人を振り切ってとなるとその難度は跳ね上がる。
未熟な小学生のフランドールの足では、男達の足からは逃げられない。
加えて用心深いことに、男たちはフランドールの逃げようとした時に対処出来るように策を立てていた。
ガタイの良い男2人が正面と背後に1人ずつ。彼女を挟むようにして仁王立ちしている。
彼らの脇をくぐり抜けるのは至難の技だろう。
そして残った1人は、フランドールにほぼ密着するにまで近づいており、ほとんど彼女を真下に見下ろす形になっている。
ここまで近づかれては、少しでも不審な動きをした時点で容易く取り押さえられてしまう。
それは正に二重の檻。
この手慣れた手口を見るに、おそらく男たちは過去に同じ手段を使って、
数多くの女性たちを毒牙にかけてきたのだろう。
255 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:20:15.57 ID:bBfa6yub0
男1「一斉にぶち込むか、両手に茎にするか……お前はどっちがいい?」
男2「好きにしろよ。 俺は別にヤれればそれで良いし」
男1「なんだよ、つまんねぇな。 こんなカワイイ娘とヤれる機会なんて滅多にねぇんだぞ?」
男2「別に俺はロリコンじゃねーし。 むしろ熟女派だし」
男1「いままで散々JC相手にしてきたくせに、何を今更言い逃れしてるんだよ」
男3「良いからさっさとしろよ〜。 こちとらこの日のために1週間も溜めて来てるんだからさぁ〜」
男2「うるせーよ、この性欲魔人」
男1「あ〜、もうその時その時で考えるか」
男2「仕込みは任せたぜ」
一通りの相談が終わると、フランドールの目の前に立っていた男が再び彼女に向き直る。
彼の眼は完全に獲物の品定めをする獣のそれであり、他の2人も同様である。
256 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:21:33.53 ID:bBfa6yub0
男1「さて、痛い目に会いたくなかったら脱ぎな。 脱がねぇなら俺が脱がせてやる」
男1「ま、そうなったらそのきれ〜な服は使い物にならなくなるけどな」
フラン「……」
男1「……おい、聞いてるのか?」
フランドールは俯いたまま、沈黙を貫いている。
恐怖で足が竦んでいるのか、それとも男達に対する精一杯の抵抗か。
顔が見えないこの状況では、そのどちらとも取れなかった。
男1(へっ、健気でやんの。 俺としては無理矢理の方が好みだけどな)
しかしその行動は、男の劣情を更に刺激させる結果にしかならなかったようだ。
彼は内心舌なめずりしつつ、フランドールに手を伸ばす。
257 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:29:42.57 ID:bBfa6yub0
どこから先に手を付けようか?
上着を無理矢理破き、幼い乳房を弄り回してみようか?
下着を脱がせて、そのまま本番に突入するのも良いかもしれない。
その場合は少女が泣き叫ぶ事になるだろうが、この場所なら多少声が大きくなろうとも誰かの耳に届くことはないだろう。
つまりは、『全ての事が終わるまで』自分たちを邪魔する者はいないということだ。
男1「さぁて、先ずは――――」
ブンッ! ドガッ!
258 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:30:16.15 ID:bBfa6yub0
突如、その言葉を遮るように周囲に何かがぶつかる鈍い音が響く。
周りで待機していた他の男達は反応することが出来ず、ただ呆然とその音がした方を注視した。
視線の先にはフランドールと男が相も変わらず立っている。
少女は俯いたまま顔は見せず、男はその少女に手を伸ばしたままだ。
ただ、一つだけ変化があった。フランドールの右足が、思いっきり振り上げられているという変化が。
そしてその足の先は、男の秘部へと深く突き刺さっていた。
男1「――――」ドサッ!
急所を蹴り上げられた男は、無言のまま前のめりになりながらその場に崩れ落ちる。
手の平を突いて受け身を取ることもなく、豪快に倒れ伏した。
259 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:31:33.01 ID:bBfa6yub0
男2「おい――――」
フラン「――――!!!」
そんな仲間の姿を見た男の1人が、慌てて声をかけようとする。
想定外且つ衝撃的な光景を前に、彼の頭の中から少女の存在が完全に消し飛んだ。
その瞬間をフランドールは見逃さない。
極限の状況で思いついた、咄嗟の打開策。そして、それにより生み出された光明。
これを逃せば、この先自分を待ち受けているものは破滅だけである。
彼女は弾けるようにして、この場から逃走を開始した。しかし――――
男3「おぉっと! 逃がさないよ〜ん」
フラン「っ!?」
260 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:32:03.82 ID:bBfa6yub0
それよりも先に、もう一人の男がフランドールの腕を掴み取る。
まるで彼女がどんな行動を取るのか、予め判っていたかのような素早い動きだ。
唯一の脱出の機会を潰された彼女は、驚愕と恐怖で全身が硬直した。
男3「ん〜? なんだか随分と驚いてるみたいだけど、そんなに意外だった?」
男3「君は俺達を不意打ち驚かせてる隙に逃げるつもりだったみたいだけど、残念だったね〜お見通しなんだよね」
フラン「……っ」
男は口角を釣り上げ、ニタニタしながらフランドールを見下ろしている。
随分と軽い言動を繰り返していて、仲間の内からも残念な印象持たれていた様子から3人の中で一番警戒していなかったが、
その予想に反して、どうやらこの男がで一番厄介な存在だったようだ。
261 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:33:53.71 ID:bBfa6yub0
男3「にしても、あいつも馬鹿だな〜。 不用意に近づけば、手痛い反撃を食らうのは判りきったことなのにさ」
男3「『窮鼠猫を噛む』って諺知ってる? 獲物を追い詰めた時は、今まで以上に警戒しなきゃならないんだよね〜」
男3「ほんと、この言葉を造った昔の人達には頭が下がるよね〜」
男は蘊蓄を長々と垂れているが、フランドールにとっては至極どうでも良いことである。
この場から逃げ出す千載一遇の機会を逃した――――その事実だけが、彼女の心に暗澹たる影を齎していた。
これから自分はどうなってしまうのか。
きっと、自身の予想以上に酷い目に会わされるに違いない。
何故なら、男達に反抗してしまったのだから――――
最早フランドールに抵抗する意志は無く、自身が行ったことに対して後悔し、これから降りかかる悲劇に恐怖するのみ。
そんな彼女の心境を知ってか、男は彼女の腕をしっかりと捉えつつも気の抜けた声で仲間に呼びかけた。
262 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:38:50.28 ID:bBfa6yub0
男3「お〜い。 そっちは大丈夫か〜?」
男1「」ピクピク
男2「駄目だな、完全にイッちまってやがる。 こりゃ暫らく目ぇ覚まさねーぞ」
男3「あらら、残念。 で、どうする? 俺達2人で楽しんじゃう〜?」
男2「それもそうだな。 こいつには悪いが、起きるまで待ってると流石に誰か来るかもしれねーしな」
男2「それに――――」
ガッ!
フラン「あぐっ!」
男2「ダチに手を出したツケは、さっさと払ってもらわないとなぁっ!」
263 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:40:22.50 ID:bBfa6yub0
男は拳を握りしめ、フランドールを思いっきり殴りつける。
そして尻餅就いた彼女を、今度はそのまま勢いよく足蹴にし始めた。
彼の顔に浮かぶのは怒り、そして愉悦。
前者は仲間を傷つけられたことに対しての、後者はそれを行った者に報復できていることに対してのものだ。
仲間を傷つけられたことは、彼等の完全な自業自得である。
しかし、暴力をふるう彼にとっては自身に行いの善悪などどうでも良く、
『自分達に刃向かった』という事実のみが彼等の感情を扇動し、激高させる理由となっていた。
男2「オラァ! さっきまでの威勢はどうしたよ、オイ!?」
男3「ヒュウッ! 激しくやるね〜」
男2「自分の立場は徹底的に教え込まないとな。 どうだ、お前もやるか?」
男3「流石にリンチしたら死んじゃうでしょ」
男2「この程度じゃ死にゃしねーよ。 ま、骨の一本ぐらいは折れるかもしれねーけどな」ガシッ!
フラン「っ! ぅうっ!」
264 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:42:21.22 ID:bBfa6yub0
男がそんなことを呟くのを耳の端に聴きながら、フランドールはただひたすら痛みに耐える。
名も知らぬ男から向けられる、一方的な『敵意』と『暴力』。
それは彼女が今まで生きてきた中で初めて自身に向けられたものであり、故に彼女を心の底から恐れさせた。
親に叱られた時とも、姉を怒らせた時とも違うその『恐怖』は、幼子の精神を劇毒のように蝕んでいく。
親であれば、きちんと反省すれば許してくれた。姉であれば、素直に謝罪すれば怒りを収めてくれた。
しかしこの男には、反省も謝罪も全く意味を成さないだろう。
それをした所で、この暴力は収まらないことを彼女は直感的に理解していた。
暴力を一方的に受け続けるしかないという『絶望』。
そして、この状況を生み出してしまったことに対する『後悔』。
彼女の心の内にあるのは、この二つの感情のみ。
265 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:44:10.00 ID:bBfa6yub0
ガッ! ガシッ!
フラン「ぁ! ぐっ!」
暴力の嵐は収まらない。
男の蹴りは少女の絹肌に数多の傷を刻み、蹂躙し続ける。
既にフランドールの姿は、服の汚れと体の傷で眼にも当てられない。
痛みに次ぐ痛みで意識は朦朧とし、まともな思考も出来なくなっていていた。
――――正常な判断力を失った脳は、本能に従う。
身体に絶え間なく加えられる苦痛。そして、極限にまで追いやられた精神状態。
それらの要素は、彼女に『死』の気配を感じさせるには十分なものだ。
フラン(――――嫌だ)
そしてその『死』は、フランドールの『生への欲求』を煽り立てる。
それは生物であれば誰しもが持つ、至極当たり前のもの。
しかし子供の場合、その欲求は大人のそれよりも貪欲だ。
『生への欲求』は『死への恐怖』を瞬く間に押し流し、彼女を『逃避』へと走らせる。
そこに理屈も打算もない。それが可能かどうかは別であり、『ただ本能のままに行動する』だけだ。
266 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:44:41.52 ID:bBfa6yub0
死にたくない
267 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:45:12.02 ID:bBfa6yub0
死にたくない死にたくない死にたくない
268 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga !red_res]:2015/09/07(月) 00:46:42.48 ID:bBfa6yub0
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
269 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga !red_res]:2015/09/07(月) 00:47:46.68 ID:bBfa6yub0
フラン(死にたくないっ!)
ビシィッ!!!
270 :
◆A0cfz0tVgA
[sage saga]:2015/09/07(月) 00:48:45.16 ID:bBfa6yub0
中途半端ですが、今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
271 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/07(月) 00:53:00.54 ID:eg3Q/xSVO
乙です
272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/07(月) 12:32:11.12 ID:8FPE1tuA0
幼女にはちょいとキツめのイヤボーンでしたか
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[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
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