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風俗嬢と僕
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/15(水) 23:02:37.60 ID:iBAz5cysO
ネオンライトがギラギラと輝く街。脂ぎったおっさんやキャッチの兄ちゃん、色気を撒き散らす女と、様々な人がそこを歩いている。
彼女にフラれた腹いせに風俗へ。
自分がこんなに短絡的な人間だとは思ってもいなかった。とはいえ、止める気もない。
デリヘルやソープといった様々な業種があるのは何となく知っていたけど、金銭的にも高価なところには行きづらくて。少しは敷居が低そうなピンサロに僕は向かっていた。
雑居ビルの5階に店はある。別にどの店でも良かったんだけど、ネットで検索したら上位でヒットしたからという理由だけで、僕はそこに狙いを定めた。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1429106557
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/15(水) 23:07:39.84 ID:iBAz5cysO
エレベーターに乗り込んで、それが上昇するのと共に胸の鼓動が速くなる。
浮気をしようとしてるわけでもなければ、自分は18歳だって越えている。生活費や仕送りに手を出しているわけでもなく、大学の授業の合間にこなしているバイトで稼いだ金で遊ぼうとしている。
後ろめたさを感じる理由はないはずなのに、どこか悪いことをしている気がするのはなぜだろうか。
何となく気後れしてしまったけど、乗り込んでしまったエレベーターは故障もせずに無事に5階まで到着してしまった。
扉が開いて一歩踏み出してみると、そこには受付の兄ちゃんが扉のそとで待ち構えていた。
「いらっしゃいませー! お兄さん、どう?」
おっさんというよりは兄ちゃんと言うべきか、ホストの出来損ないみたいな金髪ミディアムの男が胡散臭く笑いながら話しかけてきた。
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/04/15(水) 23:13:48.00 ID:iBAz5cysO
「えーっと、はい。お願いします」
何と返事をすべきかも分からず、変なことを言ってしまった気がするが、口から出てしまったことは仕方ない。
了承の返事に気を良くしたのか、男は早口に言葉を続けた。
「あざまーすっ! 今ね、一番人気のゆうちゃんが空いてるんですよ! 初めての来店なら、指名料込みでこの値段! お得ですよ!」
そう言って彼は看板の料金表を指さした。正直、他の店との相場とか人気とかあまり分からないけど、その値段自体は予算の範疇ではあったし、店の前に立っているのも何となくの恥ずかしさと後ろめたさがあったので、二つ返事で了解した。
「じゃあそれで」
「あざまーすっ! それじゃ、料金頂戴しますね。こちらの待合室で長かったら爪を切ってお待ちくださーい」
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/04/15(水) 23:29:05.22 ID:iBAz5cysO
提示された金額通りの紙幣を渡して、カーテンで仕切られただけの待合室のボロい椅子に腰かけた。
……こんな感じなんだ。
やたらうるさくてポップなBGMが流れていて、とてもエロいことをするようなムードには思えないけど、そういう店なのには間違いがないはずだ。
何となく異世界にきてしまったような戸惑いと、 後ろめたさと、でも悲しいかな男としてやっぱり期待するものもあるわけで、今までの人生で経験したことがないようなテンションになっている。
平日の昼間ということもあってか、他のお客さんはいないみたいだ。一人で落ち着かない気持ちになっていると、やっと店員から呼びかけられた。
「お客さん、来てください」
言われるがままに待合室のカーテンを潜ると、禁止事項を読み上げられた後にブースの指定をされた。
店内は柵か何かで分割してブースを作っているらしく、僕はそのなかで3番ブース、一番奥だった。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/04/15(水) 23:35:37.51 ID:iBAz5cysO
「それではごゆっくりどうぞー!」
男はブースの前まで案内すると、そんな言葉を残して待合室や受付の方へ戻っていった。
「ごゆっくりって言われても……」
柵はやたらと低くて立ってる人からは丸見えみたいだし、そもそも今は何をして待っていれば良いのかも分からない。
とりあえず床に座って黙って待つ。そういえば、一番人気ってことしか聞いてないからどんな女の子がきてくれるのかすら分かっていない。
勢いだけでここまできてしまったな、なんて独りごちてもどうしようもないんだけど。
数分待ったところで、場内アナウンスが聞こえた。
『ゆうさん、3番ブースへどうぞっ』
その声と共に入口からの気配を感じると、女の子がブースの入口に立っていた。
「こんにちはー! 初めまして、ゆうですっ」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/04/16(木) 11:32:45.91 ID:Nlsn1R+CO
視線を上げてみると、黒髪をミディアムボブにした、ちょっと小柄な女の子が立っていた。
女性や女といった表現よりは少女の方が適切だろうか。薄暗くて顔ははっきりと見えてないけど、醸し出している雰囲気や動作は何となく同年代のものに思えた。
「どもー」
ぺこり、と頭を下げて挨拶を返すと、彼女は靴を脱いでブースの中に入ってきた。
「初めまして? だよね! わかーい! お兄さん、いくつ? あ、言いたくなったら言わなくていいよー」
早口でガンガンまくしたてながら、彼女は僕の正面に座した。正面から見た彼女の顔はやっぱり幼くて、さすがに未成年ということはないだろうが、僕より歳上でもないとは思う。しかし、それでも顔の造作はさすがというべきか綺麗なもので、美人ではなくとも美少女という言葉がぴったりと当てはまりそうだった。
「あー、えっと、21、です」
何となく歯切れが悪い返事になってしまったのは、この空間に飲まれているからか、彼女の美貌に怖じ気づいているからか。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/04/16(木) 17:42:03.01 ID:Nlsn1R+CO
「えっ、今年21になったの? 同い年? 今年22になるの?」
その問いかけと共に彼女は僕の手を取って、上下に揺らしてきた。手を繋ぐなんて今まで何度もしてきたことなのに、やっぱりドキドキしてしまうのは何でだろう。
「あ、今年21、です。4月で21になりました」
「えー、最近じゃないですかー! 同い年だー、やったー! 私は6月で21になりますー!」
「あ、でもやっぱり同い年なんだ」
歳上ではない、という読みが当たってふと呟いてしまった。彼女は目敏く……ではなく、耳敏くそれを聞いたようで、問い返してくる。
「やっぱりって?」
「いや、同い年くらいかなー、って思ったから。雰囲気とかさ」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/16(木) 21:42:46.01 ID:Nlsn1R+CO
「あ、そう? 若いお客さんって珍しいから、私にしてみたら皆同い年みたいに見えるけど」
そう言って彼女はふふふっと妖しく笑って見せた。
「今日は何でこの店に? 風俗通いが趣味なんですか?」
「まさか! 初めてですよ、初めて!」
慌てて彼女の言葉を否定すると、彼女は意外そうに目を丸めた。
「あら、そうなんですか? ほら、一人で来てるみたいだから慣れてるのかなって思って。初めてなんですね、そっか」
そういって彼女は意味深そうに頷いて見せた。それが何だか可笑しくて、僕は思わず笑みを漏らす。
「あっ、やっと笑った?」
彼女はしてやったりという顔でにこっと笑うと、言葉を続けた。
「お兄さん、緊張してるのか知らないけどずっとガチガチだったから。少しは気が緩んだ?」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/16(木) 21:43:25.48 ID:Nlsn1R+CO
「そんなに?」
「そりゃもう、これから職場の上司に怒られますー! みたいな顔だったもん」
「上司なんていないけどね」
そう言うと、彼女は目を大きくして驚いた。
「えっ、社長?」
なんでそうなるんだよ、と思わず苦笑を洩らし、言葉を返した。
「いや、学生だから」
「あー、学生さん! 私が高卒だから、その発想は無かったなー。大学生?」
その質問には肯定の意をこめて頷いて見せた。
「通りで若く見えるわけだー。うわー、珍しい珍しい」
ぺたぺたと僕の顔を触りながら、彼女はすっと僕の隣に来た。綺麗に整った小さな顔が僕の目の前まで近づいてきて、思わず目を逸らしてしまう。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/04/16(木) 21:43:59.72 ID:Nlsn1R+CO
「もー、何で顔そらすの?」
拗ねたような上目づかいでこちらを見つめてくる。仄暗い部屋の中でもはっきりと分かるくらい彼女の目は大きくて、吸い込まれそうになる。
「これから私たち、楽しいことするんじゃないのー?」
猫撫で声をあげながら、彼女は僕の胸元に顔をうずめた。何だか良いにおいがする。
「ね、こっち見て?」
そう言うと同時に彼女は僕の両頬を手で挟み、顔を合わせた。
頬が熱くなるのを感じる。彼女はそのまま顔を僕と同じ高さに持ってきて、すっと耳元で囁いた。
「お兄さん、こんなお店に来るなんてエッチだね」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/04/16(木) 23:07:03.65 ID:Nlsn1R+CO
彼女の言葉は僕の羞恥心を煽りながら、耳元で紡がれる。
「何をしたくてここに来たのかな? ゆうに教えて?」
小さな声と共に吐息を感じて、少し身震いしそうになってしまう。何だろう、恥ずかしいんだけど、嫌じゃない。
「えっと……」
言葉を続けられずに悶えていると、彼女は責めるように呟きを止めない。
「言ってくれないと分からないよ? 何でお兄さんはここに来たのかなー?」
うふふ、と笑ったところまで計算しているのだろうか。何にせよ、このまま黙っているのは許してくれないらしい。
「それは、えーっと……」
「うんうん」
彼女は言葉の先を心待ちにしているかのように頷きながら待っている。
「彼女にフラレた心の傷を癒しに? かな?」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/04/17(金) 22:47:20.07 ID:WsVyVr4DO
「へっ?」
予定外の返事だったのだろうか、彼女は間抜けな声をあげてきょとんとした目で僕を向いた。
そりゃ、こんなところであんな質問をされたら、普通はエッチをしに来たとか言うべきなんだろうけどさ。
「この間、彼女にふられて。思ったより傷ついてたから、人生経験も兼ねて?」
疑問調なのは、これが果たして何の人生経験になるのか自分でも分かっていないから。
「ふられたの? お兄さんが?」
その問いかけには、首肯で返事を示そう。
彼女は僕を見ながら、純粋そうに問いかけた。
「えー、何で? 何でふられたの?」
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