【艦これ】まるゆ「隊長が鎮守府に着任しました」

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1 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/11(水) 10:34:36.68 ID:Qsh5gqK30
 息を潜(ひそ)め、海に潜(もぐ)り、敵を狙い撃つ海のスナイパー、潜水艦。
 艦娘となった彼女達の役割は、先制雷撃による敵戦力の減衰、囮、海洋資源の回収、特定海域の定期的な安全確保等、多岐にわたる。
 しかし、潜水艦娘は重宝されこそすれ、重用されることは少ない。
 “使いやすい便利なコマ”、それが大抵の鎮守府における潜水艦娘達への評価だ。
 無論、全ての鎮守府がそうした評価を最終的に下している訳ではない。
 例えば、この鎮守府でも――。




「初期艦のまるゆです。よろしくお願いします、隊長」

「チェンジで」

「そんなぁ!?」




 ――これは、一人の提督と六人の潜水艦娘によるドタバタ奮闘記である。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1426037676
2 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/11(水) 10:35:26.09 ID:Qsh5gqK30
 初期艦は大事だ。とても大事だ。
 共にこれから戦う初めての仲間なのだから、友好を築きやすく頼りになるに越したことはない。
 百歩譲って初期艦が生真面目過ぎたりふざけていたり自信家だったりドジっ娘だったりおどおどし過ぎていたりしても、ゆくゆくはどうとでもなる。
 ――しかし、努力で解決出来ないことも、世界には確かに存在した。

「隊長、出撃ですか?」

「まるゆ、お前自殺願望でもあるのか? あるなら先に言え。解体者を大本営からすぐに呼んでやる」

「そんなの無いです。まるゆ、戦う為にここに居るんです!」

 いかにもやる気がありますという目と仕草で自分への出撃命令を促すまるゆ。
 それに深いため息を吐いた後で、提督は言葉を返す。

「お前達艦娘に“無茶”はさせるつもりだが、“無謀”なことをさせる気はない。確実に海の藻屑になる奴を出撃なんぞさせられるか」

「やってみなきゃ分かりません!」

「うるさいモグラ、いいからまずは工廠行くぞ」

「まるゆ、モグラじゃないもん!」

 自分の肩程も無い身長の初期艦についてのデータに目を通しながら、彼は工廠を目指す。
 何故彼女が自分の初期艦なのか、ここに配属される予定だった叢雲はどうなったのか、他にも様々なことが気にかかってはいるものの、そこに書かれている一文こそが、彼にとって今一番気になることだった。




 ――潜水能力に難あり。
3 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/11(水) 10:41:03.25 ID:Qsh5gqK30
 工廠に着いた二人を迎えたのは、数人のツナギを着た妖精だった。
 彼等、或いは彼女等は人間の言葉を理解しているが、基本的に人語を話すことはない。
 しかし、その性質は極めて人間に友好的であり、気分によるムラはあるものの、開発や建造を頼めば断られることはまず無かった。

「まるゆ、最初の任務だ。艦娘を二人建造する」

「まるゆじゃなくて隊長が頼んでも、妖精さんは建造してくれますよ?」

「今言っただろ、これは任務だ」

「了解しました!」

 流石に二度同じことを繰り返すようなことはせず、意気揚々と妖精の元へ駆け出し、建造を依頼するまるゆ。それを眺めながら、提督は少し思案する。

(初期艦が最悪の場合出撃すら危うい、か。今建造依頼した二隻と合わせて明日一度出撃させてみるとしよう。それでダメならまた考えるしか無いな――あっ)

 張り切ったあまり滑って転けている初期艦の姿に、また一つ大きなため息を吐く。
 しかし、かなり頼りないながらも一生懸命な彼女に提督は、まだ右も左も分からない新米だがとにかく頑張ろうという気にさせられるのだった。
4 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/11(水) 10:41:28.48 ID:Qsh5gqK30
「まるゆ、これが暫くはお前の机になる」

「隊長、わざわざ丸にゆって描いてくれなくてもいいですから……」

「サービスだ」

「そんなサービスいらないです」

「あっ、歪んだ」

(まるゆ、この隊長の下でやっていけるかなぁ……)

 まだ荷解きの途中で荷物が散乱している執務室。その中心で提督は一つの段ボールを組み立て、マジック片手に円を描いている。
 最初は真面目で少し怖そうな印象を彼に持ったまるゆからすれば、その行動は意外であり、少し不安にもさせられるものだった。

「――よし、完成だ」

「わー、まるゆ、すごくうれしいです」

「心底嬉しくなさそうな声で言うな。待ってろ、これで不満なら今から白く塗ってやる」

「もうまるゆの机はいいですから、隊長は早く荷物の整理をして下さい」

「分かった、白く塗るのは後にするとして、そろそろもう一度工廠に行くか」

「あっ、もうこんな時間。整理全然進まないよぉ……」

 予め妖精さんに示された建造にかかる時間は約三十分。既に時計の短針が一周はしているので、すぐに新しい艦娘を迎えに行く必要がある。
 二人はまだ全く整理出来ていない執務室を後にし、再び工廠へと向かうのだった。
5 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/11(水) 10:43:26.06 ID:Qsh5gqK30
「伊168よ。言いにくいならイムヤでいいわ」

「伊58だよ。ゴーヤって呼んでね」

「念のために確認するが、二人の艦種は何だ?」

「「潜水艦」」

「おいモグラ、どうやったらこうなる」

「だからまるゆはモグラじゃないもん!」

 建造が終わり、蓋を開けてみれば潜水艦が追加で二隻。これでこの鎮守府には、現時点で存在が確認されている日本艦の潜水艦娘の半分が着任したことになる。
 油と鉄、多種の弾薬、それからボーキサイトを用い、妖精が未知の技術で行うのが“建造”という行為だ。
 どの艦娘が建造されるかは艦艇の魂や残留思念が資源で構成された肉体に完全に定着するまで判別出来ず、特定の艦娘を狙って建造することは出来ない。
 故に、この結果は完全なる偶然ではあるものの、提督は流石に頭を抱えた。

「何よ、私達が建造されたのが司令にはそんなに不満なの?」

「ゴーヤの魚雷はお利口さんだから、きっと役に立つでち」

「……お前達、潜水には当然自信があるよな?」

「当たり前じゃない」

「潜るのは大好きだよ?」

「だったらまるゆと明日出撃してもらう。今日は一緒に執務室や私室の整理だ」

「それは構わないけど、司令官、他の艦娘は?」

「ゴーヤ、挨拶したいでち」

「まるゆはここに居るよ?」

「……まさか、これだけなの?」

「理解が早くて助かる」

「そもそもまるゆって誰でちか?」

「まるゆはまるゆだよ!?」

「冗談でち」

 早速意気投合、とまではいかないものの、比較的良好な関係を築けそうな二人の艦娘を新たに迎え、四人は執務室へと歩いていく。
 丸は難しかったが数字だけなら簡単だなと考える提督に早足でついていくまるゆの表情がその時少し曇っていたのに、彼が気付くことはなかった。
6 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/11(水) 10:45:06.64 ID:Qsh5gqK30
書き貯めはここまで、更新はゆっくりです
7 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/11(水) 10:55:16.67 ID:Qsh5gqK30
関連する予定のスレ(読んでなくても大丈夫です)

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399761014/-20
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401844632/l20
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406746107/l20
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416478239/l20
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423975394/l20

関連しない過去スレ

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402048723/l20
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1415103633/-20
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/11(水) 11:10:00.78 ID:w7Pli/5Q0
チェンジと発言した件について陸軍憲兵司令部がお呼びです
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/11(水) 11:24:47.85 ID:ZCZNo1FSO
>>1乙です
前回のギス鎮終わりに言ってた潜水艦メインスレか。大鳳スレ共々更新楽しみにしてます
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/11(水) 12:35:53.83 ID:VDr9zvcJo
乙です
ろーちゃんは出ないのかな…
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/11(水) 13:16:01.74 ID:AfZSo0O5O
ろーちゃん要らないゆーちゃんで
12 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/12(木) 12:54:00.46 ID:yUSUK4N70
 執務室に戻り、イムヤの机とゴーヤの机を作った後、本格的に提督は荷物整理を始める。
 とは言っても半分ぐらいは彼の私物であり、四人でここに必要なものだけを出していくと、そう時間はかからなかった。

「ふぅ……とりあえずは出来ましたね、隊長」

「この段ボール机、どうにかならない?」

「ゴーヤは結構気に入ったよ。おっきな段ボール、大好きです」

「段ボールを被るなゴーヤ、それは隠れる為の物じゃない」

 頭隠して尻隠さず、段ボールからはみ出ているゴーヤの尻を提督が直視していると、二つの視線が彼に突き刺さった。
 別にそれを見ていかがわしい事を考えていた訳ではないのだが、ずっと見ているのは確かに無遠慮だったなと視界から外す。

「――時にお前達、料理が出来たりするか?」

 場の空気を変える為、という訳でもなく真面目に聞いた提督の問いかけに、まずは首が二つ横に振られ、残る一人は段ボールを左右に振って答える。
 つまり、艦娘の中に料理が出来るものは居ないということだ。

「となると、必然的に俺が作ることになるのか」

「隊長、料理出来るんですか?」

「出来る。が、味は保証しない」

「司令官以外にこの鎮守府に人は居ないの?」

「どこの鎮守府にも“人”は提督しか居ない。何か鎮守府内で問題が生じた時、処分する人間の数は少ない方がいいという有難い配慮があってのことだそうだ」

「ふーん……」

 “労働力が足りないのならば艦娘を使え”、それが大本営の方針だ。
 確かに掃除や洗濯、炊事も自分達でやってやれないことはなく、無駄な人件費を一切省き資源や物資などの確保に回すというのは、一つの正しい選択といえる。
 ただ、泡まみれの手で出撃準備や、慌てて火にかけっぱなしになった油がはねて火事になるというような事態にもなりかねないので、ある程度の人数が揃わないと管理が大変なのも事実だった。

「そもそも初めて物を口にするから、ゴーヤには味なんて全く分からないでち」

「私もよ」

「まるゆは普通に食べてたから、分かります」

「どうせそのうち自分で作ることにもなるだろう。今から食堂で作るから横で見とけ」

「隊長、何を作るんですか?」

「チャーハン」




 総評、食べられる。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/12(木) 20:02:16.96 ID:qiU9zoc0o
チャーハン作るよ!
14 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/13(金) 19:03:49.87 ID:HW4s92Tj0
「旗艦はまるゆ、イムヤとゴーヤも出撃だ」

「まるゆ、頑張ります!」

「海のスナイパー、イムヤに任せて」

「いっぱい潜るでち」

 提督が着任して二日目になり、いよいよ初出撃の瞬間が訪れる。
 潜水艦のみでの出撃なのでもう少し準備を整えてからするべきなのかもしれないが、はぐれ一隻以外と遭遇した場合は即撤退するように命じてあるので、そこまで危険がある訳ではない。

「じゃあ行ってこい。沈むならもっと良い舞台をいつか用意してやるから、今はとにかくここへ帰ってくるのを優先しろ」

「陸地に近い場所に居るのは大抵弱い個体なんでしょ? 私達をあんまり舐めないでよね」

「余裕でち」

「――じゃあ、出撃します」




 その時三人が見たものは、天空を蹴るように水面から突き出したまるゆの両足が、ジタバタともがく姿。
 提督が一瞬それを見て犬神家の一族のマネで笑わせようとしたのかと錯覚したほど、彼女の足はピンと張っていた。
15 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/14(土) 01:42:49.88 ID:OmQPN6+c0
 結局鎮守府から出ることも無いまま、最初の出撃は失敗に終わる。
 当のまるゆはというと、身体を乾かすこともなく自室へと駆け込み、完全に閉じ籠ってしまっていた。

「司令官、知ってたの?」

「いや、あそこまでとは俺も予想してなかった。まるゆ自身が出撃に意欲を見せていたから、多少ぎこちない程度だと思っていたんだが……」

「ゴーヤ、心配だよぉ……」

「とりあえず、今日もこのまま待機してくれ。可能なら書類を手伝ってもらえると助かる」

「まるゆはどうするの?」

「夕方話しに言って、明日まで出てこなけりゃその時は――」

「その時は、どうするんでちか?」

「ドアを蹴破って入って連れ出す。たかだか潜水が出来ないぐらいでアマテラスみたいに閉じ籠られてたまるか」

「潜水艦としては致命的よ、潜水出来ないなんて」

 至極真っ当な意見がイムヤから出るが、提督は無言で窓から外を指差す。
 しかし、その先にあるのは海だけであり、潜水艦娘二人は顔を見合わせ、何が言いたいのか分からないといった様子で首を傾げる。
 結局、そのまま無言で執務室に戻っていく提督を、黙って二人も追っていくのだった。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/14(土) 09:45:05.80 ID:+ozmeBeSO
乙です
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/14(土) 14:26:18.33 ID:H5k8r8DU0
期待してるよ
18 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/14(土) 16:46:44.02 ID:OmQPN6+c0
 鎮守府から出ることも無いまま、最初の出撃は失敗に終わる。
 当のまるゆはというと、身体を乾かすこともなく自室へと駆け込み、完全に閉じ籠ってしまっていた。

「司令官、知ってたの?」

「いや、あそこまでとは俺も予想してなかった。まるゆ自身が出撃に意欲を見せていたから、多少ぎこちない程度だと思っていたんだが……」

「ゴーヤ、心配だよぉ……」

「とりあえず、今日もこのまま待機してくれ。可能なら書類を手伝ってもらえると助かる」

「まるゆはどうするの?」

「夕方話しに言って、明日まで出てこなけりゃその時は――」

「その時は、どうするんでちか?」

「ドアを蹴破って入って連れ出す。たかだか潜水が出来ないぐらいでアマテラスみたいに閉じ籠られてたまるか」

「潜水艦としては致命的よ、潜水出来ないなんて」

 至極真っ当な意見がイムヤから出るが、提督は無言で窓から外を指差す。
 しかし、その先にあるのは海だけであり、潜水艦娘二人は顔を見合わせ、何が言いたいのか分からないといった様子で首を傾げる。
 結局、そのまま無言で執務室に戻っていく提督を、黙って二人も追っていくのだった。
19 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/14(土) 16:50:32.32 ID:OmQPN6+c0
投下したのを忘れて再投下してしもうた…ごめんなさい…
20 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/15(日) 19:08:12.70 ID:VverVzgF0
 執務室での作業も一段落し、提督は再びまるゆの部屋を訪れていた。
 イムヤとゴーヤには米炊きと、玉子焼きを人数分作るという任務が彼から与えられており、ここには同行していない。

「まるゆ」

 扉を叩き、呼び掛けるも返事はない。

「まーるーゆー」

 強く扉を叩き、なおも呼び掛けるが返事はない。

「初期艦であり秘書艦であるお前が二日目からサボりか?」

 叩くのをやめ、ただ問いかける。部屋の中から多少なりとも反応があるのを提督は期待するが、風が廊下の窓を叩く音以外はせず、ドアの向こうからは何も聞こえてこない。

「……分かった、明日まで待ってやる。それまでに出てこないなら、着替えてようが裸だろうがドアを蹴破ってでも連れ出してやる」

 この鎮守府にもマスターキーというものが存在しており、蹴破らずとも外側から部屋のドアを開けることは可能だ。
 しかし、本人自ら外へ出てくるのが最良であり、彼もそうなることを願っているからこそ、蹴破るという脅しを口にしていた。
 ただ、その言動が裏目に出るかもしれないことにまで思慮が回っていないのは、経験が浅いと言わざるを得ない。

(年頃の娘を持つ親の気持ちってのは、こんな感じなのかねぇ……)

 艦娘も人も難しい、などと考えながら、料理に奮闘しているであろう二人の元へと提督は向かう。
 その背中が曲がり角の先に消えていくのを、ほんの少しだけ開けたドアの隙間から少女は見つめていたのだった。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/16(月) 11:50:09.75 ID:vfs7gjADO
まるゆさんになる日は来るのか
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/16(月) 11:53:43.07 ID:YLuIDjXSO
それより木曾の着任を早急にしないとな
23 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/16(月) 19:57:45.82 ID:oAsNePAM0
 調理場に着いた提督を出迎えたのは、動く寸胴鍋だった。

「ゴーヤ、何度も言うが物を被るのはやめろ」

『おっきなお鍋、大好きです!……でも、声が反響してくらくらするでち』

 軽く鍋を小突いてから、奥に居るイムヤへと彼は歩み寄る。
 真後ろに立っても気付かない辺り、手元でしている作業に相当集中していることが窺い知れた。

(失敗が1、見た目の悪いのが1、この調子ならすぐに失敗しなくなりそうか)

「――よし、今度はうまく焼けたわ」

「そうか、それは良かった」

「ひゃわっ!?」

 急にかけられた声に驚いたのか、イムヤは綺麗に焼けた玉子焼きを乗せた皿から手を放してしまう。
 そのまま床へと落下し、皿の割れる音が調理場に響くかと思われたが、咄嗟にしゃがんで受け止めた提督により事なきを得た。

「落とすな、勿体無いだろ」

「あ、ありがと、司令……官?」




 振り向いたイムヤの腰の辺りに彼の顔があったのは、あくまで不幸な偶然である。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/16(月) 20:58:10.37 ID:dA9b0wcbO
不幸な偶然なら仕方ないな
更に偶然でよろけたって仕方ないな
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/16(月) 21:03:49.08 ID:RaIFyLwlO
ラッキーすけべは基本
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/16(月) 21:17:09.54 ID:+s9cGhD8o
エプロンしてるだろうからセーフ(錯乱)
スク水エプロンってちょっと濃いよな
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/16(月) 22:00:55.28 ID:KQWEfjDfo
油とか跳ねたら危ないから、割烹着着てほしい……
28 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/18(水) 21:02:08.81 ID:lq6nQWPN0
 少し柔らかめのご飯、失敗から成功への過程が見える玉子焼きが四つ、後は買ってきた海苔と増えすぎたわかめ入りの味噌汁が、この日の夕飯の献立である。

「てーとく、まるゆはまだ部屋なの?」

「あぁ」

「まるゆの分も言われたから作ったけど、来ないなら無駄になっちゃうわね」

「後で部屋の前に供えとくから安心しろ」

「――供えるのは、やめて欲しいです」

 椅子に座ったまま反り返り、提督は後ろを見る。
 そこには、食堂の入り口から覗き込むように三人を見ている逆さまのまるゆが居た。

「そんなところに居ないで、こっちに来てさっさと食べたらどうだ?」

 少し躊躇うように視線を泳がせた後、小さく頷き、まるゆはゆっくりと三人の元へと歩み寄る。
 そして、彼女が自分の席の前まで来ると同時に、ゴーヤは勢いよく席から立ち上がる。

「ゴーヤ、ご飯よそってくるでち!」

「ゆっくり立て、味噌汁が……溢れないな、これ」

「玉子焼き、まるゆのは上手く焼けたやつにしてあげたんだから感謝してよね」

「……いただきます」




「イムヤ、甘い」

「甘い方が美味しいでしょ?」

「激甘でち……」

(甘くて美味しい……)
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/19(木) 22:03:46.92 ID:elU+JuaUo
イムヤの腰辺りに提督の顔があってどうなったんだよ!そこ重要だろ!(バンバン!
30 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/20(金) 20:46:20.08 ID:lqcXxKh60
「隊長」

「何だ?」

 食事の後、後回しにしてあった書類や艦娘の資料に提督が目を通しているところへ、まるゆは自分の話をする為に訪れていた。
 そして、一から全て伝えようと話し始める。

「まるゆは……まるゆは潜るのが苦手なんです!」

「知ってる、それで?」

「そもそもまるゆ達はあまり潜水が得意じゃなくて、たまに同じように潜水が出来ないまるゆがいるそうなんです。まるゆも、その一隻で……」

「それで?」

「まるゆを建造してくれた隊長からは面倒を見る余裕は無いって言われて、軍本部預かりになることが決まって、それからずっと潜航の練習をしてたんです。……でも、全然うまく潜れなくて……」

「長い、結論から先に言え」

「ふぇっ!? え、えっと、あの、まるゆは潜れないので、戦力にはなれそうにない、です」

「そうか、じゃあ今日はもう寝ろ」

 話の間は止めていた手を動かし、提督は再び資料へと目を通す。
 一方のまるゆはというと、頭に疑問符を浮かべたままその場で固まってしまっていた。

「お前、立ったままここで寝る気か?」

「い、いえ、あの、隊長?」

「寝てもいいが、風邪は引くなよ。明日は一日海に入ってもらう」

「はい、気を付けま……へ?」




 二日目、まるゆが潜れなかったり増えるワカメが増えすぎたりイムヤの平手打ちで提督の頬が真っ赤になっていたりしたが何事もなく終了。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/21(土) 09:36:41.17 ID:7Xl4WgtDO
おつ


ビンタて
32 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/23(月) 00:10:32.07 ID:XeBNqtcv0
 三日目の朝、四人は鎮守府と目と鼻の先の海――正確には海の上と下――に居た。

「司令官、コレで本当に大丈夫なの?」

「知らん」

「し、知らんって……」

「潜るのが苦手な潜水艦がどうすればうまく潜れるようになるかなんて、俺にはさっぱり分からんし」

 今、まるゆはゴーヤに見守られながら“沈んで”いた。
 手に持った重りによって沈み、それを放して浮上するという行為を繰り返し、身体に潜る感覚を覚えさせる為だ。
 効果があるかは不明だが試せることはやってみよう、というダメ元の特訓である。

「これでダメだったらどうするの?」

「次の方法を考える」

「それでダメなら?」

「また考える」

「ふーん……」

 提督用の小型艦のへりの上に乗り、足をぶらぶらさせながらイムヤは二人が浮いてくるのを待つ。
 その背に加えられた力により、気の抜けたような声と共に彼女が海へ落下するとは、押した提督も予想していなかったのだった。




「二人とも、何やってるんでちか?」

「司令官が一緒に海に潜りたいって言うから、連れていってあげようと思って」

「奇襲に反応出来るか試してみたらこうなった」

「隊長、まるゆにはやらないで下さいね……?」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/23(月) 20:32:07.62 ID:IcNyTXEto
今のところはイムヤが一番ヒロインっぽいな
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/23(月) 22:09:53.32 ID:+U/eI75Do
いむや結構ヒロイン力あるものなあ
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/24(火) 17:06:36.10 ID:BsaKk8LoO
イムヤの古女房感は高い
36 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/03/27(金) 21:54:32.44 ID:CkM37cvV0
 潜水訓練を一日行った成果は、しょぼくれながらシャワーを浴びに行ったまるゆの背中が物語っていた。
 そのフォローは二人に任せて、提督はもっと何か有効な手は無いかと手当たり次第に資料を漁る。
 各鎮守府には紙媒体の様々な艦娘に関連した資料が、提督着任時に支給される決まりとなっていた。
 それは、備え付けの書棚が優に二十を超える資料室を埋め尽くす膨大な量だ。

(『トラウマへの対処法』……『記憶の混濁を防ぐには』……『八百万の神と妖精』……)

 医学的なモノからオカルトめいたモノまで雑多にある中から、目当ての資料を探すのは容易ではない。
 そもそも、それが本当にこの中にあるかどうかすら、彼には分からなかった。

(『艦娘の生態』……『深海棲艦の分類と呼称について』……ん?)

 何の気なしに手に取り開いた資料。そこには、数名の艦娘達に起こった出来事とその対処法について書かれていた。

(過去の艦自体に刻まれた記憶や、艦に乗った者とその艦を知る海に眠る者達の思念が色濃く現れた場合、稀に慢性的な不調を訴える艦娘が生まれることがある。それを解消する手段は――)




 それはとても簡単であり、非常に難しい事柄だった。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/31(火) 08:29:30.94 ID:FMXiCTK8o
良いとこで切れてるなぁ
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/31(火) 08:32:58.47 ID:M3bAsmZJ0
お、来てたのか続きはよ
39 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/04/03(金) 23:45:39.87 ID:zd6DXnlh0
「まるゆ、今日は潜水訓練する前に話がある」

「何ですか、隊長」

「イムヤとゴーヤも聞いといてくれ」

「いいけど、何?」

「おっきな段ボールの話?」

 三人の意識を自分にしっかりと向けさせてから、提督は話を始めた。
 まず、他にもまるゆのように何らかの原因で潜航や航行、砲撃などに関する不調が一向に治らない艦娘が居ることを説明する。
 そして、その資料には解決策も載っていたことを三人に告げた。

「解決策……」

「それって、具体的にはどうするの?」

「簡単だ、原因不明の爆発や不運みたいなのを完全に治すのは難しいが、潜れないみたいにはっきりしたのは本人と周囲の意識の問題でしかないと書かれてる」

「そっか、なるほどなるほど……どういうことでち?」

「まるゆ自身が自分は潜れると信じて、俺達も信じているという気持ちをまるゆがちゃんと受け止めれば、負の思念によるしがらみからは抜け出せる。そこから先はまるゆの頑張り次第ってことだ」

「まるゆが、まるゆ自身を……」

 厳密にはこれで解決出来る可能性があるというだけで、解決しなかった事例も存在する。
 しかし、それをこの場で言うべきではないと考え、提督は敢えて潜れるようになると断言した。

「信じるって言葉にするのは簡単だけど、信じろって言われてすぐに出来るものなの?」

「少なくとも俺は潜れるようになると信じてるぞ? これから先ずっと付き合っていくことになるのに、信じられないとかやってられん」

「隊長……」

「ゴーヤもまるゆともいっぱい潜りたいから信じるでち!」

「……わ、私も一緒に潜れるようになるのは嬉しいかも」

 当たり前のように、素直に、照れ臭そうに、それぞれに信じると口にする。
 少し涙ぐむまるゆの胸中でこの時起きた変化がどう潜航訓練に影響するかは、海に出れば分かることだった。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/04(土) 01:06:19.06 ID:BxrOmYr+o
いい子たちだ…
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/11(土) 08:42:37.27 ID:bfPtNmJKO
続きマダー
42 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/04/14(火) 23:21:29.51 ID:l+rpmNxf0
 三人に見守られる中、まるゆは海へと身を投じる。
 潜れない自分を見た者が落胆するのは仕方無いと思っていた部分が彼女には確かにあり、無理に張り切って欠陥品扱いされる怖さを誤魔化していたのも事実だ。
 信じると言われた今でも、潜れずに顔を上げた時、ため息や冷たい視線が向けられるのではないかという恐怖感を完全には拭いきれていなかった。

(でも、もう怖いだけじゃない)

 まるゆは深呼吸を一つ、二つと繰り返し、大きく勢いを付けて海中へと潜ろうとする。
 その背中に届いた頑張れの一言が、いつもならば途中で止まってしまう身体を押し込んだ。

(――アレ? ちゃんと潜れてる?)

 潜水艦ならば経験して当たり前の感覚。しかし、まるゆにとって自力では初の体験であり、今までとは海の中がまるで別世界のように見えていた。

(海の中って、こんな風だったんだぁ……)

 目新しくもあり懐かしくもあるその光景が、今まで感じていた不安などを一つずつ消していく。
 そして――。




「潜りすぎて浮けなくて慌てる潜水艦も初めて聞いたぞ」

「うぅ、ごめんなさい……」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/15(水) 17:53:32.51 ID:75/l4ty0o
まるゆ可愛い
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/22(水) 16:07:34.86 ID:fYrkJgrqO
続きマダー
45 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/04/23(木) 22:30:29.18 ID:r04OVrsN0
「うぅ、ボロボロだよぉ……」

「大丈夫だよまるゆ、バケツ被れば治るもん」

「バケツを被っても治りはしないってば……」

「そもそも烏の行水程度で今のお前等は事足りるだろうよ」

「お風呂はゴーヤ達にとってすっごく大事なんでち!」

「バケツ被ればとか言ってたお前が言うな」

 潜水に支障が無くなったまるゆ。
 今度こそは大丈夫と意気揚々と出撃したまるゆの戦果は雷撃する前に大破、撤退という散々なものだ。
 今度は部屋に駆け込むようなことは無かったものの、落ち込んでいない訳ではないのは明らかだった。

「何はともあれまるゆはとりあえず入渠して来い、イムヤとゴーヤは飯の準備な」

「はい、隊長」

「今日はパンにしてみる?」

「じゃあゴーヤが目玉焼くでち」

(何の目玉を焼くつもりだよゴーヤは……それにしても、はぐれすら強敵になるか)

 最初にして最大の問題を乗り越えたかのように見える鎮守府。
 しかし、やはり戦力が全て潜水艦というのにもかなり難があると提督は痛感していた。
 資源不足になりにくいというのは立派なアドバンテージであるものの、それだけで深海棲艦との戦いを続けていけるはずもない。

(――もう二隻ぐらいなら、建造してもどうにかやりくり出来るか?)

 頭の中で資源の計算や今後の作戦を練りつつ、提督はまた工廠へと足を運ぶ。
 後に彼は、その時の事をこう語った。




――――“諦めるには十分な衝撃だった”、と。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/24(金) 01:13:41.64 ID:g5PAJSG0o
あぁ…うん、まぁ、ね…?
47 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/04/25(土) 20:24:15.06 ID:rNRtFphH0
「あ、あの、隊長……」

「何も聞かず、受け入れろ」

「目玉後二つ焼くでち」

「その言い方怖いからやめてよね」

 食堂に集まっていた三人の元に、提督は二人の新たな仲間を連れて入ってきた。
 困惑するまるゆ、料理の追加に着手するゴーヤ、視線をあからさまに逸らし見なかったことにしたイムヤ、反応はそれぞれだ。

「今からご飯なの?」

「シュトーレンが食べたいな」

「今から夕飯だ、とりあえずこの場で挨拶も済ませたいから座って出来上がるの待ってろ。後、シュトーレンが欲しけりゃ出撃して戦果挙げろ。そんなもん買ったり作ったりする余裕も時間も今は無い」

「はーい」

「シュトーレン……」

 他の四人と比べると明らかに身体の一部が圧倒的な大きさを誇る艦娘と、眼鏡をかけたシュトーレンを要求する艦娘。
 二人も空いた席につき、全員分が食卓に並ぶのを待つ。

「てーとく、こんがり上手に焼けたよ」

「目玉焼きでそれは焦げたって言うんだぞゴーヤ、それは俺が食うからコイツ等にちゃんと焼けたの渡してやれ」

「了解でち」

 パンと目玉焼き、それとハムが全員の前に並び、食事の用意が整う。
 それに合わせて、提督も新顔二人の挨拶を始める。

「見ての通り、今妖精さんに頼んで建造した新しい仲間だ。二人とも、自己紹介しろ」

「伊19なの、イクって呼んで欲しいのね」

「伊8です。ハチ、はっちゃん、アハト、好きに呼んで下さい」

「よろしくお願いします! 秘書艦のまるゆでしゅ!」

「ゴーヤだよ、段ボール欲しかったらゴーヤに言ってね」

「イムヤよ、よろしく」

「よし、じゃあ後の話はこれ食べてからだ」

「「「「「はい、いただきます」」」」」

 何事もなく挨拶も終わり、四人から六人に増えた食事が始まる。
 異様なまでのスク水率ではあるものの、既に慣れてしまった提督には特に何の違和感も無かった。
 しかし、相変わらず潜水艦しか居ないという現状には慣れようも無いのだった。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/25(土) 20:26:48.36 ID:9s9rgCGSO
あとはろーちゃんだけか
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/25(土) 20:30:07.03 ID:cWsGxiUOO
しおい……
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/25(土) 20:30:50.18 ID:sFEEbsd1O
しおいを忘れんな
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/25(土) 21:57:38.67 ID:DFmtNQv/O
はっちゃんのアハトアハトもなかなか大きいアハト
52 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/05/01(金) 22:59:29.36 ID:IqBgO6Q/0
「イク、行くのー!」

「ゴーヤ、潜りまーす!」

「はっちゃん、待機します」

「イクはその銛置いてきなさい、ゴーヤはそのでっかいタコツボみたいなのどっから持ってきたのよ、ハチは本読んでないで来る!」

 五人での初出撃。その前途は多難なようで、イムヤは三人に怒鳴る。
 ハチだけは若干本気にも見えるものの、イクとゴーヤに関しては単純にちょっとふざけただけらしく、ケラケラと笑っている。
 その様子を、旗艦であるまるゆは少し憂鬱そうな表情で眺めていた。

「まるゆ、どうかしたか?」

「イムヤは皆をまとめられて凄いです。まるゆ、旗艦なのに皆の足を引っ張ることしか出来てません……」

「お前にはお前にしか出来ないこと、分からないことがあるだろ。旗艦がそんな顔してんな」

「隊長……はい!」

 自分の両頬を軽く叩き、まるゆは四人の元へと歩み寄る。
 実際問題、いくら戦闘能力に関して難があるとはいえ、彼女にしか旗艦が務まらない理由は確かに存在した。
 それは――。
53 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/05/01(金) 22:59:59.77 ID:IqBgO6Q/0
「て、敵艦発見です! イムヤとゴーヤは敵の注意を惹き付けて、ハチとイクは合図を出したら撃って下さい!」

「イムヤにお任せ!」

「潜るでち!」

「スナイパー魂がたぎるのね!」

「帰って早くあの本読みたいな……」

 艦隊が五人に増えたことにより、戦術というものが使えるようになっていた。
 そして、その戦術を現状使えるのは、海に出られなかった時間を戦術書を読むことなどに費やしたまるゆしか居ない。
 これが、彼女が旗艦でなくてはならない理由である。

「――二人とも、今!」

「イクの魚雷でいっちゃえなのー!」

「これで倒せたら、ご褒美にシュトーレン欲しいな……」




――――戦果報告。出撃三回目にして、はぐれ深海棲艦四隻の撃破に成功。
54 : ◆UeZ8dRl.OE [saga sage]:2015/05/02(土) 22:59:38.94 ID:dIMR0tET0
 初戦果を挙げたということもあり、帰投した五人の表情は明るかった。
 まるゆも潜水が出来るようになっただけではないという自信を持てた為、戦果報告に向かう足取りはどこか誇らしげだ。

「隊長、第一艦隊ただ今帰投しました! 戦果はイ級3、ホ級1です!」

「初戦果だな、御苦労さん。今日はゆっくり休め」

「はい!……隊長、お手伝いしましょうか?」

「いや、大丈夫だ。他の四人にもしっかり休めって――」

 ――段ボールいっぱい探すでち!

 ――夕飯を一品増やす為に、ちょっと行ってくるのね。

 ――ここに、書庫ってあるのかしら。

 ――料理のレシピって調べたら分かるかな?

「……まぁ、好きにさせるか」

「だったら、隊長のお手伝いも好きにしていいですよね?」

 そう言って書類に手をつけ始めるまるゆ。
 止めさせようかと一瞬考えるも、好きにしろと言った手前、提督は諦めて手元の書類へと再び目を落とす。

「なぁ、まるゆ」

「はい、何ですか?」




「とりあえず、シャワー浴びて乾かしてこい」
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