朝潮「制裁」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/24(土) 01:36:03.66 ID:mht4cBHC0

〜夕暮れの鎮守府〜


比叡 「知ってる?」ヒソヒソ

霧島 「今日着任の子でしょ」ヒソヒソ

比叡 「そうそう、提督に怪我させたんだって〜」ヒエー

霧島 「あっ・・・い、行きましょう、比叡姉さん」ソソクサ


 廊下を歩く朝潮の顔色は優れない。


加賀 「朝潮、止まりなさい」


 呼び止めた加賀の表情は険しい。


朝潮 「はい、加賀さん」


 立ち止まった朝潮は何を言われるか予期したのか、その暗い顔に一層影が差した。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1422030963
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/24(土) 01:39:07.12 ID:mht4cBHC0

加賀 「提督に怪我をさせたそうね」

朝潮 「・・・はい・・・そうです」

加賀 「提督が上に訴えればあなた危険分子として処罰されるのよ、わかってるの?」

朝潮 「提督が」

加賀 「言い訳なんて聞きたくないわ」

朝潮 「・・・」

加賀 「処罰がどういうものかわかってるんでしょうね?」

朝潮 「はい」

加賀 「あなたが処罰されるのは構わないけど」

加賀 「お世話になった孤児院はあなたからの補助金が打ち切られたらどうなるでしょうね?」

朝潮 「・・・」

加賀 「その日の食べ物にさえ困るでしょうけど可愛そうとか思わないのかしら・・・」

朝潮 「・・・」

加賀 「あなたちゃんと聞いてるの? 聞いてるなら睨んでないで返事をして」

朝潮 「・・・はい」


バン

 加賀から放たれた平手打ちは、朝潮の右頬を真っ赤に染めた。

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/24(土) 01:40:38.42 ID:mht4cBHC0

加賀 「返事が遅い・・・」

朝潮 「・・・」

加賀 「・・・」イラッ


バン

 痛みは余り感じない。


加賀 「悪いと思うならすぐ謝りなさい」

朝潮 「すいません」


 赤くなった頬に手を当てる。


加賀 「人の痛みはわからないのに、一人前に自分の痛みは感じるのね」

加賀 「次席卒業か何か知らないけど、ここは訓練学校じゃないの」

加賀 「調子に乗るなら実力を伴ってからにするのね」

朝潮 「はい」

加賀 「追って懲罰を言い渡すわ」

朝潮 「はい」


 加賀は朝潮を睨みつけると、振り返り執務室に戻って行った。

 朝潮の右頬の内出血は消え、痛みもひいていた。



―――――
―――

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/24(土) 01:45:13.91 ID:mht4cBHC0

〜執務室〜


 提督と秘書官の加賀は机に向かい軍支給のパソコンで報告書と格闘している。


加賀 「駆逐艦の子にブラインドタッチの講習でも開こうかしら」

提督 「報告書の誤字脱字はそのままでいい」

加賀 「?」

提督 「どうせ上はその誤字脱字だらけの報告書に対して俺たちが作る総評しか見ん」

加賀 「なるほど」

提督 「上も報告書を全部見ることなんてとてもできんからな、見るのは総評とかの要点だけだ」

提督 「まぁ・・・かと言ってさぼったり戦果を偽装することには上官は目敏いからな、注意しろよ」

加賀 「そんなに監視が好きなら全艦娘に小型カメラでも付ければいいんじゃないかしら」

提督 「本部に何人用意して何時間かければそれを確認できる? 非効率的だ」

加賀 「比較的安全な本部に人手と時間をかけさせるのは」

加賀 「現場の艦娘に負担をかけるのとは話が違うと思わない?」

提督 「面白い話だな」

提督 「あくまで予算がもっとあればの話だが・・・」


 提督は机の引き出しから煙草を取り出し火をつける。

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/24(土) 01:49:05.36 ID:mht4cBHC0

提督 「報告書が面倒そうな割りに読むのは好きなんだな」

加賀 「違う艦種の動きや所属艦娘の個性もわかるからためになるわ」

提督 「なるほど」


 加賀がモニターから紫煙をくゆらせる提督に視線を移す。


加賀 「余裕がおありのようなのでいいでしょうか」

提督 「なんだ」

加賀 「書類整頓中に提督を押し倒してしまった朝潮ですが」

提督 「んー」スパー

加賀 「注意も行いましたし夕飯抜きの懲罰くらいでいいでしょうか」


 提督は吸いかけの煙草を灰皿に押し付ける。


提督 「出撃禁止や自室謹慎、反省文さえない・・・子供のおしおきか?え?」


加賀 「軍組織とは言え、朝潮はまだまだ子供です!!」

加賀 「違いますか!?」

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/24(土) 01:51:32.87 ID:mht4cBHC0

提督 「加賀にしては甘いな」

加賀 「仰る通りもっと重くしましょうか、後に残るような反省文も書かせて・・・」

加賀 「それでコトが外に漏れたら提督が困るんじゃないかしら」

加賀 「心配しているのよ、私は」


提督 「・・・何か勘違いをしていないか」

提督 「それぞれ作業をしていた時に不注意で朝潮がぶつかってきただけだ」

加賀 「不注意の事故か知りませんけど」

加賀 「新任の艦娘が一向に使われてないなんて異常は・・・」

加賀 「提督の言う目敏い上官は見逃さないでしょうね」


提督 「・・・ふん、わかった・・・出撃禁止も反省文もなしだ。夕飯抜きもいい」

加賀 「賢明な判断かと」

提督 「ただ、お前が考えるようなことはない」

加賀 「私が考えることって、提督が朝潮を襲ったと思ってることかしら」

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/24(土) 01:54:04.93 ID:mht4cBHC0

提督 「何度も言わせるな、そんなことはない」

提督 「愛してるのはお前だけだ」

加賀 「あなたの愛してるという言葉は浅薄ね、龍驤の胸の方がまだ厚みがあるわ」

提督 「女は胸の大きさだけじゃない」

加賀 「あなたの選定基準に関係ないのは胸だけかしら」

加賀 「今度から年齢も付け加えたらどうかしら」

提督 「くだらん言葉遊びを止めろ」

加賀 「遊びじゃなくて本気で言ってるの、わかる?」

提督 「俺が誰に手を出そうと自由だろ?口を出すな!!」

加賀 「自由ね、主力の娘達ほぼ全員に手を出して」

提督 「それで加賀は今まで文句を言ったことがなかったろ」

加賀 「えぇ、そうね」


加賀 「主力の分別ある娘があなたにいくら股を開こうがどうでもいいわ」

加賀 「あなたの病気を看病してるくらいにしか思わない」

加賀 「けど、今回は違うわよね」

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/24(土) 01:58:06.78 ID:mht4cBHC0

提督 「なんだ?」

提督 「体は小さい、世界も狭い少女をたぶらかすことに罪悪感はないかとか」

提督 「人並みなことでも言いたいのか?」


加賀 「・・・」

提督 「罪悪感、一切ないよ」

提督 「加賀はおれをロリコンと間違えてるだろ」

加賀 「違うのかしら?」

提督 「別に朝潮が好きという訳ではない」

提督 「だから、ロリコンがやるように無知につけこんで意のままにするつもりもない」

提督 「俺との経験で朝潮の狭い世界を広くしてやろうというのだ、何が悪い」

加賀 「軍事法廷でそれが通じると思ってるの? 朝潮のために襲いましたとでも?」

提督 「くだらん」

提督 「最前線の鎮守府を死に物狂いで守ってる俺を」

提督 「安全な内地にいるあいつらが裁く権利なんてない!!」

加賀 「どういう理屈よ・・・」

提督 「ふん、俺のお陰で広がった制海圏に地方本部を建てる時には長官にという話もある」

提督 「どうせ海軍の人間は手を出せんさ」

加賀 「海軍は見逃しても、憲兵が来るわよ」

提督 「主力の艦娘とは仲良くやってる積もりだ、丁重にお帰り願うだけだ」

提督 「加賀も守ってくれるだろう?」

加賀 「呆れた、追い返す積もりなの?」

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/24(土) 02:04:19.58 ID:mht4cBHC0

提督 「あぁ、強引なのが売りでな」

加賀 「そうやって強引に制海圏を広げて戦果を稼いだのは事実でしょうけど」

加賀 「他の鎮守府より轟沈する娘が多い問題があるのに長官候補?寝言なら寝て言って欲しいわ」

提督 「激戦区だから轟沈は仕方ない、俺の落ち度じゃない」

加賀 「・・・そうかもね」

提督 「それに長官候補は今の地方本部で営業して得た情報だから確度は高い」

加賀 「営業?」

提督 「俗に言う社内営業だ」

加賀 「わからないから説明してくれるかしら」

提督 「大雑把に言うと、戦果を稼ぐのが通常の営業活動なら」

提督 「部下の艦娘と親交を深めることと地方本部で上官に媚びを売るのが社内営業だ」

加賀 「なるほどね」

加賀 「あなたでも媚びを売ることがあるのね」

提督 「意外か?」

提督 「それで昇進に繋がったり失敗をお目こぼししてもらうことを考えれば安い」

加賀 「媚びってどうやって売るの?」

提督 「高級なお店で接待したりだ」

加賀 「そんなお金どこから出るの?」

提督 「企業秘密だ」

加賀 「そう・・・」

提督 「そんなに不安な顔をするな」

提督 「俺が地方本部長官になったら鎮守府の全員本部付きに昇格させてやる」

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