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垣根帝督「はぁ? 俺はオタクじゃねえぞ」
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387 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/07/11(土) 12:23:07.09 ID:rkHOgj4+O
すごく良かった。やはりゴーグルへの愛が溢れている。
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/11(土) 12:31:34.40 ID:htO3UZKDO
何このみさきち可愛い
389 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/11(土) 19:07:54.02 ID:sNBEK4rt0
仲良しレベル5って好きだけど
この面子だと常識通用しないホストが常識的だったりすることが多い謎
>垣根艦これ
曙「このクソ提督!」 垣根「あ?」
解体不可避
390 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/11(土) 21:16:31.59 ID:BP4tZuQX0
垣根はドMで苦労人だからな他の連中とはそのへんの差がついてしまうんだろ
中身は一番幼いけど
391 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/12(日) 11:22:30.66 ID:zI8C6B6pO
垣根と麦野がうける
>垣根「こっちは二人やられてんだ」
ってやったのお前らだろ!
削板も空気読めるんだなw
392 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/07/15(水) 00:25:37.33 ID:0k4V3Fdj0
>>200
についてあれこれとレス
>>1
は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐
>>200
の安価に片をつけねばならぬと決意した。
>>1
にはエロSSがわからぬ。
>>1
は、ただの暇人である。
さもないSSを書き、スレで遊んで暮して来た。
けれども初めて振った安価に対しては、人一倍に敏感であった。
って具合にあえて別ベクトルにガチなやつでやっつけたがご好評でなにより。
>>356
何をいっしょうけんめいやってんだろうと何度か我にかえったがたのしんでもらえたならいちもうかばれるくさばのかげでがっつぽーず。
垣根には悪いことしたね犠牲はつきものなのだわ。
>>357
書きましたー!
>>359
別に書いてないとこはお好きにドーゾだわ。黒幕ブッ殺エンドでもまさかのドナドナでも構わんよ。垣根にとってムカつく結果になったのは間違いないだけで。
しりあすって…え?シリアスって?
ちょっと上手いこと言ってんじゃねーw
>>360
元ネタこれか!一つ賢くなったありがとう。
そうかかわいいのか流石垣根は未元物質なんでもカバーするね。ありがとありがと。
>>361
垣根の口を塞いだらモブが無駄にやかましくなった。個性的な口調は楽でいいなかまちーは天才だな。
垣根がひどいことをされるシーンは都合削減した。でないとどんだけ長くすりゃいいのかわからんし切ってよかった気もする。
投下で三時間は正直ツラかった。
当時の全容なら『スクール』で回収しただろう撮影時のテープか、『滞空回線』にログがあるのでは、と1は『電話の相手』に見してーって言えばいんじゃないかそもそもネタでパラレルだけどなと無理を承知で進言します。
>>362
安心しろ。グレーゾーンなんて温いことは言わねえ。次の安価は真っ黒だ。
本編じゃやらないことを安価でしようぜネタに走るよ。だから次のも前のも気にすんなそのあとなんかどうするんだいレッツ常盤台だよ。
>>363
まさか一年も続くたあ驚き桃の木にしたって気が早くね。
つかなにこの流れ告白大会なの?そうか1はな…キリンさんがすきですでもかまちーはもーっとすきです!だから三期をよろしく。
>>364
詳細か
一人目主にバック、長音の人。恐らくこの中では一番ノーマルな趣味をしてるが子ども相手に暴力振るってもむしろ喜んじゃうタイプなので軽蔑すべきクソ野郎。巨根遅漏守銭奴の三重苦。
二人目拘束・SM、逆にの人。きっと機械工作が好き。相手が死ななきゃ何してもいいとか思ってそうな軽蔑すべきクソ野郎。他が濃すぎて影が薄い。
三人目BUKKAKEetc、ヤク好きの馬鹿の人。
調子こくとてきとうに薬盛っちゃうし『素材』の自爆補填が一番多い軽蔑すべきクソ野郎。ジャ◯顔のクズ。
四人目眼鏡の人。小さい時なんかあったっぽいが今では小さい子にひどいことするのも見るのも好きな立派な軽蔑すべきクソ。ロリペド教師予備軍
描写がほとんどないのはめんどくさくなったからではなく一人だけ安価内容にそぐわない為。とか言う勝手なこじつけで最終的に属性も変更。
最低限の描写でリンカーンっぽくしようとプレイのバリエーションだけでほわっとごまかした感があるんだが、かったるかったりエロがかけなかった訳ではありますん。
こう言うことが聞きたいんじゃないんだろうけど。心配するな自覚はある。
あんま考えてないからご丁寧におねがいされましてもお答えできかねます。
>>1
が書いてないことは妄想暴走お好きにドーゾ。
>>365
乙ありです。
まって誤字からのダブルミーニングつらいやめて。
>>367
どの花飾り風紀委員さんでしょうね。4コマからだっけ?腐ネタがあんの。
需要があんなら供給があるのかなと思って『雑貨稼業』さんをパク…インスパイアしました。
ありがと。本編も頑張って進めるわ。
>>1も垣根が好きだよ。
>>368
夢が先か事件が先か。さてどちらなんでしょうね。
『守護神』は『対空回線』の夢を見るか?でもいいと思うしAIM拡散力場がどうのでもいいと思う。
393 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/07/15(水) 00:26:28.98 ID:0k4V3Fdj0
>>383
Marchenな第二位だけにか。
軍服ってかっけーよね!垣根はうまく乗せたらコスプレとかしてくれるとおもう。
>>384
あの白ベースオレンジ目とかが何となく垣根ホワイトを思い出してしまった。クレイジーサイコホモ気味なレーズン垣根は元気にしてっかな。
みさきちかわいいよな。でももしかしたら麦野も酔うとかわいいかもしれんぞ。
>>385
黒い翼は、レッドブル飲ませたら…ってのもやろうと思ったけどやめた。
しっ!
麦野はもう原作からしてワガママワンマン女王様だから。
多分このメンツでも麦野と削板は他人と会話のキャッチボールをしないと思う。きっと投げっぱなしだろあいつら自由だよね。
多少の壊れはギャグってことで。尖らせてる自覚はある。
>>386
やばいぞ非常識&非常識がまともにみえてくるなんておかしな集団・超能力者に毒されてるぞ早く冥土帰しに診てもらった方が良さそうだね?
超能力者が全員ずーっとぶっ飛んでるとやばいよ。誰か上条さん呼んでこいだよ。
まあ一番ちゃんとした良識があるのは美琴ちゃんだよね。
>>387
え?はい、ドーモ。
おかしいなやつを愛でたつもりもさせたつもりもないぞ。
でもゴーグルがいないと『スクール』は任務以外のイベントが起きない感がやばいから大事にしたいと思います。狂言回し大事。超大事。
垣根と心理定規二人にするとそのまま会話なくても別に平気そうなんだもん。
>>388
みさきちほんとかわいい。超電磁砲ドリー編ですっかりファンになりました。
でもここ最近禁書で一番萌えたのはやたらとパワフルなおじいちゃんとカッコイイ犬です。どうしようorz
>>389
うぃき先生に聞いてきた。解体だ……僅かな資材と装備を残してバラされてしまうんだ
ギャグやらせるとツッコミ・ストッパー役=常識人みたいにみえてしまう気もする。
上条さんとか御坂もそっち寄りっぽいよね。
とかもっともらしいこと考えてみたけど。
見た目ホストっぼいから周りの面倒見せたりまとめさせても似合うんじゃないか?
あとあの中で、外面は一番いいとおもう。
>>390
そうなのか。まあ原作の扱いは、うん。仕方ないよね
>>391
垣根「正当防衛ってしってるか。やられる前にやっただけだ」
ソギーはいいやつだからな!
394 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/07/15(水) 00:29:05.12 ID:0k4V3Fdj0
強すぎる一撃には反動がつきものらしい。
ポケモ○の破壊光線の1ターンスタンよろしく、ホモネタを戦闘シーンにすり替えるために地の文を費やした1の精神は非常に落ち込んでいた。
その為何が生じたかというと。
苦労して前回薄めたホモ成分を超えるひどいものが出来上がった。
なので次の安価レスはデレるどころかひたすらホモネタ大喜利をする垣根です。今度はほぼご機嫌です。よろしく
どうしてこうなった。本当に。
とまあこれだけじゃなんだから次小ネタ。
ちょっと時期外れだけどパズデックスのあれ。
395 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/07/15(水) 00:31:04.61 ID:0k4V3Fdj0
謎解学園てきななにか
※一方さんが会長のあれ。まさかの2本目
※諸々あって『スクール』は風紀委員をしてます
登校時
ゴーグル「はぁ。昨日の小テストが上手くいかなかった。また放課後補習とかになったら嫌だー」
青ピ「ボクはちゃーんとやったで? 赤点ギリ回避!」
ゴーグル「担当が男だからやる気出してるんじゃないよな?」
青ピ「はっはっはー。その通りっ! 野郎に叱られてどないせっちゅーの! ってセンセんとこは確か……
第二外国語、オリアナ先生やん! マンツーマンで個人レッスンとか?! うーわー出来るんならして欲しいわ」
ゴーグル「はぁ。そんなの考えただけでツラい。そうなったら委員の仕事を盾にしてでも断固回避するぞ」
青ピ「あれ。センセ、なんやテンションえらい低くない?」
ゴーグル「ああ言う激肉食系女豹女子はあんまり……男子学生が露骨な下ネタ大好きだと思ったら大間違いなんだって」
青ピ「あー、センセの好みはおとなしい子ぉやったね」
ゴーグル「そうだよ……青ピ君とこの、姫神さんとか」
青ピ「姫神が?」
ゴーグル「ど真ん中ストライク……黒髪ロングストレート、清楚系で薄幸美人とか何だよ属性フルコンプじゃないのか?! あー、もう王道最高!!」
青ピ「そうやったん? でもセンセ、ウチのクラスはほぼカミやんフラグが済みになってるから難しいんやないかなあ」
ゴーグル「現実に高望みはしないから。同じ学校にあんな子がいるってだけで俺は充分です。心のオアシスっス」
青ピ「またそんな謙虚なことを……どう? 今度帰りにみんなでお茶しまへんか〜とか。誘ってみます?」
ゴーグル「えっ!」
青ピ「ボク同じクラスやし声かけたってもええよ? あ、ええんやでそんな気にせんでも! ボクとセンセの仲やないの!!」バシバシ
ゴーグル「……何が目的だこの野郎」
青ピ「え? どうせならセンセも女の子連れてきたってな〜。Wデートっ! あの、風紀委員の副委員長さんとか!!」
ゴーグル「あの子まだ中学生だぞ?」
青ピ「せやから?」
ゴーグル「……ようじょとかよりはいいんだろうけどさ。幾らなんでも委員の身内は売れねえっス。青ピ君も、いい度胸してるよな。風紀委員とフラグなんてもう立たないんじゃないか?
職質の常連通り越してそろそろブラックリストに入るっスよ」
青ピ「ボクのことをしらん子は風紀委員に居らへんってことやね!!」
ゴーグル「前向きだよなぁ。それより俺の居ないとこでしょっちゅう問題起こさないで欲しいっスね」
青ピ「なんで?」
ゴーグル「女子の風紀委員から俺に苦情と未処理の報告書が押し寄せるんス。すっかり俺が専用窓口っつうか。
おかげで無駄に忙しい…ん? いや、一度くらい委員長直々に徹底的にシメてもらえばそんな気もなくなるかもしれないよな? 早速見回りの強化をしてもらって――」
青ピ「いやー! センセにはいっっっつもお世話になってます! このとーり!! もー、んなイジワル言わんといて? な? あのセンパイさんおっかないやんイケメンやけどっ!」
ゴーグル「あ。噂をすればあんなところに垣根さん」
青ピ「おーっとじゃあボクもう行くわー、さいならっ!」
396 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/07/15(水) 00:32:15.55 ID:0k4V3Fdj0
シェリー「よぉ。垣根」
垣根「クロムウェル先生。おはようございます」
シェリー「お前のこの前の課題。なかなか良かったぞ。細部の造形まで良く仕上げたじゃない。お前の創作は見事だよ、迫力の完成度が違う」
垣根「ありがとうございます」
シェリー「ただなぁ。芸術にはもう少し遊びがあっていいぞ。作品にもっと熱を込めてみろ。面白くなるわよ」
垣根「……そうですか」
シェリー「お! おーい削板!!」
削板「おおっと。おはよーございますっ!」
シェリー「うふふ。おはよう。朝から調子がいいらしいな、作品にもよく出てるよ」
削板「『根性は爆発だ!No.20』か。あれ? でも先生は絵が好きなんじゃなかったのか」
シェリー「そうね。確かに、前作の大胆な空間の使い方。あれも良かったがお前は筆を鑿に変えても魅せるねえ……お前、本格的にこっちに進む気はないの?」
削板「うーん。俺は体動かすのが合ってる気がすんだよなあ。作って遊ぶのも嫌いじゃないけど」
シェリー「まあ考えときなさい。色んな道があるからね。しばらくは立体作品が続くけど、筆がとりたくなったらいつでも言いな。美術室を好きに使っていい。居残りどもと一緒でよけりゃあな」
ゴーグル「垣根さんおはようございます。はー、人って見かけによらないんスね」
垣根「わっかんねーな。いや、理解したくもないけどさ」
削板「お、お前ら! オッ ス ! !」ビュオッ
ゴーグル「あー、走っては…ないんスね。なんだあれ新技か?」
垣根「なあゴーグル」
ゴーグル「はい」
垣根「昼休みが、楽しみだな」
ゴーグル「俺は既に胃が痛いっス」
397 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/07/15(水) 00:33:56.26 ID:0k4V3Fdj0
放課後
上条「ううう……二時間格闘した粘土の上に道具をひっくり返してしまうとは。我ながらなかなか不幸だ」
上条「流石にまだ居残りしてるのは俺たちくらいだな。みんなぱぱっと終わらせちゃうしなあ」
一方「連日居残り皆勤のオマエと違って俺は忙しいンだ。誰かさンが年中データをブチ消したり書類をダメにしてくれるからなァ。放課後にそンな時間がねェ」ペタペタ
上条「上条さんだって……無差別にそげりたくてゲンコロしてるわけじゃありませんっ!」
一方「そォですか。それより進んでねェ現実をなンとかしろ」
上条「むしろまた潰したんで後退してます。ちくせう。自由課題だからな。もう、長く伸ばしてイモムシってのはどうだ。いやーでもみんなすごいな。なかなかの力作だ」ウロウロ
上条「お。一方通行の方はどう……」
一方「ンー。こォ、か?」ペタペタ
上条「…………」ゴクリ
一方「……なンだよ」ガリガリ
上条「えーと。これはなんと言いましょうか……か、かわいいな?」
一方「……ン。まァな」
上条「えっと、それはペンギン……か何かでせうか?」
一方「はァ?」
垣根「うらー下校の時間だ。いつまで残ってんだ……って、テメェらか。何だ何だ? 生徒会役員様が授業の居残りですかあ」
一方「なンだオマエかァ」ぐにゃー
垣根「……へぇ」
一方「なンだよ」
垣根「いや? もうちょっとここは短くしたほうがいいんじゃねえの」
一方「うるせェ。余計なお世話だ」のばしのばし
上条「(垣根)」
垣根「あ? (何だよ)」
上条「(あれ、何だかわかるのか? 上条さんはさっぱりですが)」
垣根「(え。最終信号だろ?)」
上条「はぁあああああ?!」
一方「上条、うるせェぞ」ガチャガチャ
上条「あの何とも名状し難い粘土の塊が、打ち止め……? なんでわかったんだ」
垣根「あのアホ毛っぽいのとか、顔の割にやたらデカい…目…なのか、あれは? その辺のバランスがなんとなく…だな。
いや、相手があれじゃ断言は出来ねえぞ」
シェリー「お前ら今日はそろそろ終わりにしろよ。お、一方通行のも仕上がってきたじゃない」
一方「あァ」
シェリー「うんうん。お前の作品はエッジが効いてるな。そろそろ名前は考えたのか? 作品にはタイトルも大事よ」
一方「そォだな……」
垣根「(何だ、何がくる? 俺の読みは一体どこまで通用するんだ)」
上条「(もし本当にそうだったらかわいそうだが本人には見せてやれないぞ)」
398 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/07/15(水) 00:36:04.97 ID:0k4V3Fdj0
一方「……『道端の犬』だな」
上条「犬?!」
垣根「マジかよ!!」
上条「犬だったじゃん! 大ハズレだぞ」
垣根「これが……犬、だと……? 上条、ならテメェは何だと思ったんだよ」
上条「ペンギン」
垣根「は。俺の勝ちだな」
上条「何でだよ」
垣根「同じ哺乳類だろ」
上条「そこ? いやいやお前のほうがひどいぞ? これと一緒にするなんてかわいそうだ」
シェリー「盛り上がってるとこ悪いけどなあ上条。そろそろ何か提出してくれないとアンタの今学期の成績がつけられないのよ。これまでまともな作品がゼロじゃねえ」
上条「え」
一方「言っとくが次の会議は休ませねェぞ。記録係が不在じゃ話にならねェ」
上条「はい?」
シェリー「途中点でもいいけど……これは、流石に作り直すだろ?」べしゃあ
上条「マズい。このままでは技能教科の成績まで……なぁ、垣根」
垣根「はい。三階の施錠は終わりました。生徒の退去の確認を終え次第戻ります」ピッ
上条「垣根! 頼む助けてくれ!」
垣根「何だよ。んなきたねえ手で触んなよ?」
上条「なんとか粘土をこねるから、出来上がった奴が『何があっても壊れたり変形しないように』してくれないか?
上条さんは何度も何度も、何度も何度も! やり直すのはもう耐えられません!」
垣根「嫌だ」
上条「何でだよ」
垣根「俺は風紀委員、テメェは生徒会。俺は自分の敵には容赦はしねえ。残念だったな」
上条「そん……なぁあああああああ!」
一方「まァ、そンなに凹むな。俺はそろそろ終わるからな」
上条「へ」
一方「少しくらい…いや、時間があったらだけど……よォ」
上条「一方通行……おお、上条さんの心の友よ!!」
垣根「削板のって……これか?」
シェリー「うふ。うふふふふ。ああ。私も教師になって初めてここまでの才能の『原石』を見つけたわ。二五〇年に一人の逸材と言っても惜しくないくらいだよ」
垣根「やべえ。微塵も良さがわからねえ。前衛的にも程があるぞ」
後日
ザワザワ
青ピ「カミやん……またえらいもんを作り上げたみたいやね?」
土御門「実はカミやんもそっちサイドだったとはにゃー。邪神像が増えてるぜよ」
上条「ハハハハハカンセイシタノニフコウダー」
399 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/07/15(水) 00:38:26.44 ID:0k4V3Fdj0
ドーモ。
最近こんなんばっかで悪いな。
シェリーさん美術の先生にしてしまったが宜しいか。
第一位が実は画伯属性持ちだったら爆笑して愉快なオブジェになる。
でも、何でも出来る奴よりプラス欠点があるとおいしいだろ!
イケメンだけど羽が生えたりよ!!
じゃあまた
400 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/15(水) 10:49:36.64 ID:EStQ0NTeo
イケメンな上に羽が生えるとか利点でしかないだろ!いい加減にしろ!
垣根は美術作品は意外と堅実なのか。常識が通用しないピカソみたいな感じかと思ったが
401 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/07/16(木) 00:44:25.33 ID:pFcMGr1DO
まとめで一気に読んだけどどれもネタ多くてスゲー笑ったw
ホモのも普通に面白かったし
電話の男にデレてる垣根ははじめてみたかも
もっとえろくてもいいよ
ここの1の垣根愛はすんごいな
頭んなかどうなってんの
402 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/07/16(木) 09:18:36.16 ID:89AI6318O
相変わらず垣根への愛に溢れていて良かったよ。
このスレ見てからゴーグルも好きになってきたが、原作ではもうほとんど出番ないんだろうなあ……
403 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/16(木) 09:50:46.54 ID:BkggXRVjO
ていうかもう死んでるし
404 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/16(木) 14:50:24.66 ID:K9dua+MiO
セロリ画伯ワロタwwww
セロリもデレてるしみさみこ百合とかほもとかあれか
イッチは両刀か
405 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/16(木) 21:38:29.16 ID:9LqWfnkh0
垣根は能力に反して自分自身は常識から脱却できてない感じなのも似合う気はする
万能秀才だけど突き抜けてなくて、それが二位の壁っていうか
406 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/17(金) 00:17:33.32 ID:qykE4l9zO
この学校楽しそうでいいなw
校長はビーカーから飛び出して攻撃してくんの?
407 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/18(土) 10:23:54.71 ID:vkLMyOTZ0
非常識を極めるにはそれだけ常識、当たり前の概念に精通してないとな、と思わんこともない
極論だけどそれらの真逆が常識外の事だし
408 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/18(土) 14:19:50.26 ID:zZZYxVrYO
そういえば垣根って何歳なんだ?
校門で制服チェックしてる垣根におはようございます先輩って言われたい
409 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/18(土) 14:46:19.66 ID:K5dOLv4/O
あと白井が同じ学校で生徒会だと初春と垣根は同じ支部になるのか?帝春来る?
410 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/07/18(土) 18:08:28.84 ID:Eocbd2TIO
風紀委員の支部は学区内の幾つかの学校でまとまってんだっけ?同じ学校なら一緒だよな
トラブルのない垣根と初春の出会いは新しいかも
でも削×垣、一×上で薄い本のネタにされる未来が見える
411 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/28(火) 11:32:16.11 ID:BoziQS7/0
その後、さらに垣根に頼み込んで粘土を固めて貰うもげんころして不幸だーの展開が見える
412 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/28(火) 14:51:08.35 ID:2OsUHThzO
邪神化する前に軌道修正出来なかったのかよ
>>411
セロリ作だって知ってたら固める前にぶっこわしそうじゃね?
413 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/07/28(火) 18:08:01.85 ID:dJS3U45/O
青ピの気持ちがわかる
垣根になら放課後個人指導して欲しい
風紀めっちゃ乱れてるから直してくれるよな風紀委員さん
414 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2015/07/28(火) 22:56:41.97 ID:Dylg+ScK0
>>1
マダァ-?
(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
415 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/29(水) 01:46:01.67 ID:6DRJpZm3o
>>1
マダァー?
(U)←チンチン
416 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/07/29(水) 15:18:46.94 ID:yb3v818PO
>>1
マダァー?
∩
( 人 )←チンチン
417 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/02(日) 14:22:54.57 ID:1w9Oj+E2O
垣根のご冥福をお祈りします(-_-)/Ω チーン
418 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/02(日) 15:11:58.25 ID:YfCex2qq0
垣根提督ネタで思ったけど
艦娘の台詞を提督(役職)→帝督(名前)に変換すると
なんか親密度とか関係性が違って見えてちょっとニヤニヤできるな
生真面目な感じの台詞も名前呼び捨てだと途端に甘く聞こえる
419 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/03(月) 00:59:54.15 ID:3LE603sAO
ちゃんと考えようと思うと提督として着任させること自体が難しくてやれるネタじゃねえなあって断念したが、深海側で提督やらせんのならアリかもな
というかレ級やほっぽちゃんに懐かれる(物理)ホワイトが見たい
420 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/05(水) 12:34:28.89 ID:3XF9Zivb0
15巻後〜新訳のパラレルで、黒垣根モドキ的なのが深海棲艦の発生原因
それに対抗するための未元物質製自律兵器が艦娘
艦娘の統率・運用のために脳みそ分割から復活させられた垣根が提督に着任
学園都市に付けられた枷のせいで本人は戦えない&提督やるしかない(資源に使う未元物質も制限)
鎮守府は学園都市が作ったメガフロート的な
禁書ベースならそんな感じの設定も考えたことあるなぁ
深海側の方がハマる気もするけど、また一方通行あたりにやられる未来しか見えなくて…
艦これベースならなんやかんやあって提督になりましたでいいんじゃね?(適当)
421 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/05(水) 14:33:00.75 ID:mXmz99y2O
さすがに艦これはスレ違いじゃね?
>>1
も別にやってないんでしょ
それよりデレる垣根はよ
422 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/08/06(木) 18:20:59.55 ID:+4k25sQJO
別にここの1はほっといても書くだろ
423 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/08(土) 13:01:57.44 ID:q+5fr0k4O
スピンオフの方でもいいから漫画にスクール出ないかな
424 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:42:27.73 ID:Bv+OH5KO0
我がもの顔でカンカン照りだった太陽が少し傾きはじめた夏の昼すぎ。
とあるマンションの一室、その中でも一番日当りのいい窓辺に置かれたカウチソファ。
その上に寝そべっていたのは背の高い少年だった。
超能力者、垣根帝督は持て余し気味な長い足を組んでいた。ちなみに靴は履いたままだが、能力でちょっと工夫すると靴底なんて汚れないんだと彼は組織のメンバーに自慢げに語ったことがある。
女子なら真っ先に避けそうな紫外線直撃スペースで、彼は涼しい顔してくつろいでいた。
やかましいセミの声も屋外のうだるような熱気もここまでは届かない。
そのかわり室内にはプラスティックやカーボン、アルミ。
硬質な小さなものの擦れあう無機質な合唱が響いていた。
その中心点からふと、気の抜けたサイダーのような声が上がった。
「あれ……そう言やさっき…心理定規来ませんでした?」
「バイトだって言ってたろ。さっきって、もう一時間は前じゃねえか」
「そー…でし…たっけ?」
やる気、というか生気のない声で答えるゴーグルの少年。
カウチに背をあずけていた垣根は顔を上げると、その背中に目をやって顔をしかめた。
「お前いつからそれなんだ」
別に『スクール』の用事があったわけではない。
この隠れ家の一室で垣根が寛いでいるところにたまたま心理定規がやってきて(彼女はついでだと言っていた)、ゴーグルの少年はリーダーが来るよりずっと前から私用で室内を占拠している。
頭の装置から腰まで垂れ下がったコードに囲まれた姿は何だかクラゲのロボットにでも乗っ取られたようにも見える。SF映画に出てきそうだ。
猫背気味に丸まった背中もまるでゾンビのようだった。
パソコンのモニタに視線をはりつけたまま、B級ホラーものっぽい異様な雰囲気をかもしだしている少年は声だけで返事をする。
「昨日の夜っス。いやー、四つのゲームのイベント開催が被った上に、どうしても出ない素材があって。このままだと揃わないんでもう追い込みかけんのに必死です。あ、ちゃんと寝てます。二時間机で」
口調はだるそうだったが、腕から先はまるで別の生き物のように素早く動いている。
手元の携帯ゲーム機、二台並んだパソコン。
どれもシーク音を立ててばっちり働いていた。
頭に装着したゴーグルで同時に幾つものゲームをすすめているのだろう。
恥も外聞も、尊厳さえ捨てたような姿勢でゲームに打ち込む姿はまさに『廃人』と言う言葉がぴったりだった。
そこまで聞いてねえよ、と垣根は呆れたように首を振ると視線をてのひらのスマートフォンに戻した。
425 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:47:31.84 ID:Bv+OH5KO0
少年は腰の機械のスイッチを切ると、ケーブルを外してゴーグルを取った。
疲れているのかだらけた様子で息を吐いた。
グシャグシャと頭をかいて両手で目元をこする。
「あ゛あ゛あ゛、ちくしょー物欲センサー爆発しろ」
ぐちりながら近くのビニール袋からペットボトルを取り出すと薄オレンジの液体をぐーっと飲み干す。
カフェインたっぷりのエナジードリンクと電解質バランスのいいスポーツドリンクでカクテルを作ると効きがいいと言うのはよくある噂だが。実際どうなんだろうか。
プラシーボなんてものでも馬鹿にできない効果はあったりするが、怪しいところだ。
そんな体によくなさそうな色をしたドリンクをうまそうに飲むと、少年は腕と肩を伸ばしてからもう一度ゴーグルを手に取った。
位置を合わせて頭にかぶり、コードを順につないで。
何気ない動作で。
スイッチを入れた。
「……あ」
ヤバい、と声にする前に。
後ろのローテーブルに置かれたタブレットの上で。
ぐしゃぐしゃとタッチペンが潰れていった。
「あーーーーーーー! またやったぁあああああああ!!」
悲鳴を上げたゴーグルは勢いよく立ち上がる。
ガシャッ! と派手な音を立てて椅子が転がるが、彼は構わずそのままタブレットの前に走っていく。
「あああああああ……よかった、ひとまず平気みたいで」
「何騒いでんだよ」
「危うくこいつをお釈迦にするとこでした。無傷って訳にはいきませんでしたけどギリセーフですよもー」
タブレット端末は液晶に傷とひびは入っているが、動作そのものに問題はないらしい。
被害は、その上で『念動力』によって操作されていたペンに集中していた。
金属製のペンの軸は乱暴にもみ消した煙草の吸殻のように変貌していた。
426 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:49:23.83 ID:Bv+OH5KO0
「うっかり『目』を離すと切り替え時の再設定しくってたまーにやるんス。あー、集中力切れてんなー」
残念そうに言いながら、少年は端末の横のケースから別のタッチペンを取り出した。
一度、ウエストポーチのように巻かれた装置に目を向けると机に置いたペンを宙に浮かべて丸を書く。
調整は問題なかったのか、うんうんうなずきながら席に戻って椅子を起こした。
「『念動力』も力加減が難しいんで。俺はまだその辺が甘いっつうか、最大と最小の幅がありすぎんのも考えものっス。ただボタン押すだけだって、人間の指一つでも再現するのは結構大変なんスから。
前に三徹した時は、ゲーム機バキバキに潰して……あれから俺は赤牛、打破と仲良くするのと能力で遊ぶのは二徹までって決めました」
「要はさ、たるんでんだろ。何してんだか」
超能力者級の自己管理を求められても困るのか、少年は情けなく眉を寄せた。
「俺みたいな能力だと事故ってプレスとかローラーみたいな機械で起きるのと一緒なんですよね」
作業中の不意の巻き込みっスから、と息をはくと、
「能力のフィードバックも自動じゃないっスから。大体これくらい、ってしてても少し設定しくじると簡単に」
パン! と両手を叩いた。
歪んでいた金属製のペンは丸めたガムの包み紙の様に小さく潰れていた。
カフェインの摂取と睡眠不足でハイになっているのか、ゴーグルは一人早口で喋り続けている。
「だから、ちゃんと見える範囲で能力つかわねえと。コロンブスの卵くらいならいいけど生き物って意外と脆いんだよなあ。こう――」
「ちょっとやってみろよ」
「はい?」
コロンブスの卵、と復唱すると垣根は当たり前のように、部屋に置かれた冷蔵庫を指さした。
427 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:52:20.74 ID:Bv+OH5KO0
急で意外すぎるリクエストにこたえてゴーグルの少年はよく冷えた卵の紙パックを両手でささげ持つように運んできた。
「お前、それ着けてると幾つ出来るって言ってたっけ。四か、五か」
「いまはいいとこ三つですね。カメラの台数によるんで」
何で今やるんですか、と少年の投げかけた疑問は、
「見たことねえから」
の一言で切り捨てられた。
「そうかそうか」
ゴーグルが手にしたパックから一つつまみあげると垣根は無造作に卵を放り投げた。
一つ、二つ。
パックが空いていく。
「いいッ?!」
ラックの上に飛んで行った卵が空中で止まる。
続いてパソコンのモニタの近くでもう一つ。
壁にぶつかる直前ですとんと下に向きを変えたものもあった。
卵の動きが止まると、少年は慌ててパックを横に置いた。
体の前で両手をおわんのようにしたゴーグルの少年は宙を見つめたまま息を止めた。
息を吐くと同時に、卵たちは不可視のレールに乗せられたように空中を滑り落ちていった。
中のものを零す様にゴーグルの少年は慎重な動きで両手のおわんを左右に崩す。
コロコロゴトン、と集合した卵が静かに床の上に転がった。
ひびが入っているものもあったが中身が漏れたりひどいことにはなっていない様だった。
コロンブスの卵は生卵を手を使わずに逆さに立てる念動能力専攻の学生にはおなじみの学習メニューだ。
難易度はちょっと高めだが、異能力者でも練習すれば一つくらい成功する様になるだろう。
でも投げられた卵を割らないようにキャッチする遊びは、かすりもしない別物のはずだ。
「いきなり、何、やらせるん、ですか! あーびびった。俺これ嫌いなんですよぜってえ失敗したくな」
文句を言っていたゴーグルの言葉が途中で止まった。
垣根が指でつまみ上げたものがそれを遮っていた。
卵はもう一つ残っていたらしい。
428 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:53:24.85 ID:Bv+OH5KO0
「嫌か。なら仕方ねえな」
気ぃ抜くなよ、と言うと垣根はにやりと笑った。
ゴーグルの少年の目の前にかざされた白い卵から。
垣根はすっと指を離した。
そのまま静止しているのを確認すると、彼を放置してカウチに座りなおしてしまう。
わけのわからないまま、卵とその場に残されたゴーグルの少年は眉を寄せて。
動きを止めた。
「零すなよ? 部屋が汚れる」
垣根が気軽にそんなことを言った先から、何かきしむように嫌な音が立ちはじめた。
ビシッ、と殻の先端に小さなひびが入る。
目には見えない力、重圧が卵の周りにかかっているようだった。
「うえ?! なんッ……だこれぇ!」
少年の悲鳴が上がった。
それにあわせたように、テーブルに大人しく転がっていた小型ボールカメラの向きが一斉に変わる。
まるで重いものを持ち上げているように少年は自分の腕を必死につかんでいた。
一〇、二〇、三〇秒。
それに少しプラスして、それでも一分はもたなかった頃、耐えかねたような声が上がった。
「かき、垣根さん! ギブですって……もう勘弁してください」
あっそ、と垣根がやる気なく返事をした途端、ゴーグルの少年は膝をついた。
べしゃっ。
へたりこむ少年の前で床に落ちた卵は落下の衝撃で無惨に潰れていた。
「ボウリングん時にした話覚えてたんですか? でも俺、防御は得意じゃないっていいませんでしたっけ? 言った気がする。それで重くて小さいピンポイント攻撃ぶつけてくるとか鬼ですか? 卵越しに? うううううちくしょう頭いてええええ」
寝不足と、それ以外の理由で充血しきった目をがしがし押さえているゴーグルの少年に。
垣根はあきれるほどあっさりした声を掛けた。
「なんだ。やれば出来るもんだな。どうだ、眠気は飛んだか?」
「そりゃ、もう……バッチリです」
しゃっくりを止めるために、心臓を止めるほどのドッキリを仕掛けても超能力者なら許されてしまうのだろうか。
そうなっても蘇生処置をすれば問題無いとか思っているかもしれない。おまけに心臓の真上を拳で思い切り叩くような荒っぽいやり方で。
生き返るなら死んでもいいのはゲームの中だけの話だ。
429 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:55:01.82 ID:Bv+OH5KO0
ちょっとげんなりしながらゴーグルの少年はテレビの横でゲームのセッティングをしていた。
用意されているのは壁の『外』製の、随分と古い機種だった。
今の学園都市の技術なら、指先程度の大きさの記録メディアにこのハードで遊べるゲームのデータが何十本も入ってしまうほど昔の技術で作られたものだ。
人気のあった作品は同じ会社の最新機種でも移植やダウンロードで当時のゲームが遊べるようになっているものがあるしリメイク版も作られていた。
技術は進み、時代が変わっても色あせないもの何てものはあるらしい。
前にゲームセンターでやってみて以来、垣根も少しそのへんのものに興味がわいているらしかった。
「垣根さん、アクションゲームは頭でやるもんじゃないんスよ。わずかなラグやタイミングの癖を体に教え込んでボタンを押すんです。反復練習っス。
格ゲーも基本一緒っス。コンボなんてそのうち指が覚えますから」
「んなもんとっくだけどな。コイツがやたら反応鈍いんだよ」
「喋ってるとまた打ち漏らしますよ? ほら、あ。また、コンボ途切れてますって。意味ねえっスよ」
「うるせえ黙れ。ボタンつぶれてんじゃねえのこれ」
NPC相手にコントローラーをガチャつかせながら垣根は画面を睨んでいた。
ゲーム機の方に文句を言われて、私物をわざわざ隠れ家まで持ってきた持ち主の少年は首を振った。
「そんなことないですって。これ、なかなかきれいなの残ってないんスよ。現役で動くようなのは特に。中古っスけどちゃんと手入れされてたの探したんス。生産なんてとっくに終わってんのに、部品からリペアしてる人がいるんスよね」
称賛にも似た得意げな目を本体に向けて少年は語るが。
それはただのゲーム機だ。
簡単な計算も今日の天気も教えられない、平凡な子どもたちを非日常の冒険に少しの時間連れて行くことしか出来ないただの機械だった。
画面端にNPCを追い込んでとどめを刺している非凡な少年は気付いていないかもしれないが。
その口元にはなんだか、言葉に反して楽しそうな笑みが浮かんでいた。
「このゲームは壁ハメから卒業しないと対人は勝てませんよ」
テレビの前まで椅子を転がしてきたゴーグルの少年は、普段なら絶対に出来ない上から目線でそう言った。
ちょっと勿体を付けて、ゲーム機の入っていたケースの中からもうひとつのコントローラーを取り出す。
ことゲームに関してならゴーグルの少年に一日以上の長がある。
他のあらゆることで敵わなくても、得意分野の土俵の上でなら格上の相手の鼻をあかすことも出来る。
あと、もしかしたらさっきひどい目にあった仕返しも含まれているかもしれない。
430 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:56:09.25 ID:Bv+OH5KO0
「でもハンデ盛り盛りの接待プレイだと怒りますよね。こっち半ゲージなんて将棋の一丁半みたいなもんスよ。
ダメ減、コンボ、P縛りはしなくていいんスよね。どれか足しても飛車角落ちだと思いますけど」
「いいっつってんだろ。早くしろよ」
垣根の悪態を横目に画面を確認するとゴーグルの少年は自分の方の設定を変えてからゲームをスタートさせる。
前に同じゲームで対戦した時に「開始十秒は殴り放題」なんてルールを設けたが。
その後逆転負けした垣根にものすごく怒られたことがあった。
垣根は自分が負けると当然怒るのだが、彼がちょっと気を利かせてわざと勝ちを譲ってもそれに気付いて怒る。
でもまあ、垣根の上達には目を見張る早さがあったから、加減抜きで本気の対戦が出来る日もそう遠くないかもしれない。
「ゲームだろうとなあ、お前如きに手抜かれてんのは頭にくるんだ、よっ!」
「あー、また角が落ちた! 玉来いっての!」
開戦からボタンを叩いていた二人だったが連打の音がいきなり途切れた。
ピコンと画面がポーズモードになる。
スタートボタンを押した垣根は、コントローラーを握ったまま後ろを振り返った。
無人のパソコンの前でマウスが忙しく踊っていた。
と言うか確認なんてする前に、近くに座っている少年が頭にゴーグルをつけて遊んでいると言うのはつまりそういうことだ。
「言ってるそばから一人同時プレイしてんじゃねえよ! ああ? ナメてんのか?」
「えっ、俺言ってました? うっかり口に出してました?」
あれ? え? と、とぼけきれないゴーグルの頭を片手で掴むと垣根は力任せに揺さぶった。
相手が寝ぼけていようが能力を使っていようがお構いなしの容赦ない八つ当たりだ。
「誤魔化しもしねえのかよ。せめてばれないようにやれよ! 気分悪いんだよクソが!!」
「ちょっ、頭引っ張んないで下さい! ぎゃあああ線が、ケーブル抜けますってマジで!!」
騒いだままゲームも再開したが。
またしても少年は勝ってしまった。集中力が落ちているとその辺のさじ加減も難しいのかもしれない。
さらに。
垣根の不機嫌さのスイッチに手をかけたついでに、ゴーグルの少年は何か良くない法則でも引きよせたのか。
その後目的のクエストを何周してもお目当ての報酬は全然手に入らなかった。
431 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:56:48.08 ID:Bv+OH5KO0
「よし。もう一回」
「ダメです。ゲームは一日一時間っス」
「お前にそれは言われたくねえよ」
そんなゲーム界の格言みたいなセリフも。
平然と、体力の限界まで挑戦する人間から聞かされてはこれっぽちも説得力がない。
「でも垣根さんペース上げてやりこむとすぐクリアして飽きちゃうじゃないスか。こう言うのは、楽しみを長くとっとくもんです」
「そんなもんか?」
「それに長年の苦労を、たった数日で抜かれたら俺はどう立ち直ったらいいんですか」
「相手が悪かったな。諦めろ」
そこは得意げに言い放つ垣根。
その横顔からは言葉にするまでもない重みが感じられる。
現実に、ゲームのようなキャラクターシートやパラメータリストが存在していても垣根ならあらゆる項目でA以上の判定が出そうだった。
幾つか難あり、なポイントがあってもトータルの数値では圧倒的だろう。
たとえば……寛容さ、協調性なんかの数値が低くても、強制力やカリスマ性なんてところでカバーできてしまえそうだし。
「全方位チート(リアル対応)かぁ……わー、実生活用のPARってないのかな。昏睡とか副作用のないやつで。なんて言うといっそDNAマップの塩基配列からやり直した方が早い奴じゃねえっスか?」
笑いながら出来もしない愚痴をこぼす少年に垣根は、わかんねえなあ、と言いたそうな目をしていた。
432 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:57:14.26 ID:Bv+OH5KO0
「たまには体動かしたらどうだ」
「いいっスけど、能力使用オーケーならボウリングはこの前みたく俺がもらいますよ」
「そんなとこだけ強気だなお前」
「俺遊びには全力っスから。でも垣根さんもけっこーエグい配置ばっかこっちに出したじゃないスか。どっかのバラエティの無茶ブリみたいなの」
以前出かけた時に立ち寄ったボウリングコーナーで、スペアやスプリットの練習用にピンの配置が出来るコースをみつけた。
そこで二人はそれぞれ難しいフレームを作っては相手にトライさせる、と言う遊び方を試していた。
一ゲーム辺りに能力を使っていい回数も決めて相手の手を読み合いながらスコアを競うやり方は、即興にしてはいい思い付きだったらしい。
「あ、この前知り合ったヤツらはあれから連絡とってます?」
「何それ」
「えっ、あの時隣でやってたグループと垣根さんすっかり仲良くなってませんでした? ほら、俺がジュース買いに行って、SNSのアド交換して、確か今度飯いこうって話まで……あれ? しません、でした?」
「そうだっけ。ああ言うの、その場では盛り上がるんだけどな」
あまりに垣根が意味わかんねえ、って顔をしたのでゴーグルの少年はすごく不安そうな顔をしていた。
超能力者の記憶力を疑うくらいなら、自分の頭の記憶操作を心配した方が早い、みたいな反応だ。
異能あふれる学園都市では宇宙人の誘拐より小学生のイタズラでそんなことが起きかねない。
「別にいいだろ。そう言うの」
「そっスか?」
大した興味もなさそうに、吐き捨てるように垣根は言った。
単純に興味がなくて忘れていたということらしい。
コミュニケーション的な意味でなら、ゴーグルの少年も割と一人上手な方だとは自覚していたが。
それでも学校で、それ以外でも友達はいる。
なんと言うか垣根は違う。
ゴーグルの少年は、ほんの少しの関わりあいの中でしか彼のことを知らないが。
その部分だけでの印象でいうなら。世界がごく身近な、手の届く範囲で完結してしまっている感じだ。
超能力者だとそう言う価値観でも仕方ないのかもしれない。
頂点というのは文字通り点で、並ぶものがないから線にはならないし輪もつくれない。
それ以前に。
色んな経験値をすでに埋めてしまって、上りきった技能やスキルでステータスを埋め尽くしていそうな存在からするとそれ以下なんて見えているものが違いすぎて、てんで話にもならないだろう。
433 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:57:42.09 ID:Bv+OH5KO0
「何かそれ新しくなってねえ。あと後ろの壁もか。どうした」
一見、違いなんてないように見えるインテリアの一角を見た垣根はにらむように目を細めた。
「そうなんスよ。ちょっとダメにしちゃって。『スクール』のツテ使ったらすぐ済みましたけど。いやあ、まさか心理定規にゲームさせたらああなるとは思わなかったんス」
キャリーケースにゲーム機を大事そうにしまっていた少年は苦笑いをしながら答える。
「ふうん。で?」
それでどうしたのか簡潔に説明しろ、的なオーダーが凝縮されたクエスチョンマークに少年はうなずいた。
「ゲームなんて楽しいのかって聞かれたんで、心理定規でも出来そうなシューティングやらせたんス。廃墟系の」
「なぁ、いきなりオチが読めたんだけど」
「ちょっと我慢して下さいっス。この機種は普通のディスプレイはもちろん体感型のヘッドマウントディスプレイにも対応してるんスけど」
テレビの近くのラックに置かれているのは小さな最新機種のハードだった。
高音質高グラフィック、シアター並みの環境美の追求を謳ったコマーシャルで話題のハイチューンモデル。
真っ黒なボディは新品特有の指紋も曇りもない輝きを放っていた。
お前のそれみたいなもんか、とゴーグルを見ながら垣根が尋ねるが少年は首を振った。
「これは普通に目にするヤツっスから。俺のゴーグルに比べるとおもちゃみたいにかわいいっス。で、最初のボスに苦戦してるなーと思ったら……心理定規さんたらテンパってコントローラーぶん投げてそのままスカートに手を……」
その上に乗せられた、アイマスク型のディスプレイを手に取るとゴーグルの少年は外側についてしまった傷をいたわるように撫でた。
遠い目をしてかわいた笑いを浮かべている。
どうやらあまり楽しい出来事ではなかったらしい。
「へえ、よく無事だったな。っつうかあいつ普段どこに武器隠してんだ」
「まあ殺傷力なんてあってないような模擬弾入りの護身用だったみたいなんスけど。俺は後ろであそこのモニタ見てたんで。あと速攻で本体ぶち抜いて映像落としてくれたんで被害が最小で済みました。心理定規涙目になってましたよ」
そう言って少年は後ろを指さした。
小型ディスプレイとは別に、パソコンにも映像を飛ばしていたらしい。
「ふーん。お前ら面白そうなことしてんな」
「実は動画があります。いつもの実況用に使ってた機材一式はこっち側にあったんで無事でした!」
「じゃああいつ来たら流そうぜ」
「え。来る前じゃだめなんスか」
「その方が面白いだろ」
リーダーの口から出ると提案も決定事項になってしまうらしい。
434 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:58:28.53 ID:Bv+OH5KO0
その後。
小遣い稼ぎのバイトを終えて戻ってきた心理定規の前で、ゴーグルの少年秘蔵のムービーの上映会が行われた。
「内緒って言ったよね!? なんで彼に話しちゃうのかな。おまけにビデオがあるとか聞いてないんだけど?」
「いつもの癖で幾つか撮ってたやつがっスね後からひょっこりっスね……でもどこにもアップとかしてないっス」
普通に撮れていれば、『悪戦苦闘する女の子のゲーム初挑戦』って感じの微笑ましい動画になったかもしれない。
けど、心理定規がとてもネットには出せない様なオチを付けてしまったのでお蔵入り確定だった。
発砲する中学生とか少なくとも日本ではNG過ぎる。
「もうやだ……信じらんない。ちゃんと同じの買ったし、部屋の修理もしたし。ごめんねおしまいって話したよね。何でまたこんなことするの? なんで見せちゃうの?」
心理定規は腰に手を当てて少年を怒鳴りつけていた。
大画面で失態を流されたのだ。当然ながら怒っていた。
珍しく大声を出す彼女の剣幕に、誠意のアピールとして床に正座をしたままゴーグルはひたすら頭をさげつづけた。
「それは、そうなんスけどね? ええっと俺にもいろいろと事情がっスね?」
ちらちらと垣根を見ながらゴーグルの少年は言い訳をしたが、リーダーは弁護なんてしてくれなかった。
それで大体状況は分かったのだろう。
心理定規は話にならないと思ったのか怒りつかれたのか、ぽすんとソファに座った。
「あーあ。ショックだわ……私すっごく傷ついた。ゴーグル君ってばひどいんだから。どうしてあげようかな。君の彼への心理距離を操作しちゃおうかなー」
「そんなこと出来んの? っつうか俺関係ねえよな」
心理定規の問題発言に、我関せずを通していた垣根がやっと顔を向けた。
それでも。
二人で勝手に騒いでろ、みたいな迷惑そうな顔をしている。
「どうせけしかけたのはあなたなんでしょ。二人で私のことからかってたんだから悪いのは一緒よ」
むくれた顔で頬杖をつくと心理定規はぼんやりとゴーグルの少年に目を向けた。
ため息混じりの沈黙に嫌なものを感じたのか、少年はあわてて立ち上がった。
435 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:58:56.19 ID:Bv+OH5KO0
「待って下さいっス! 心理定規前に、悪趣味なことはしないって言ってましたよね? 言ってましたよね!」
「君が先にいじわるなことしたんじゃない。えーっと……何で君、かなり親密な距離にアニメのキャラクターがいるの? この名前ってそうだよね?」
「心理定規! 心理定規!! タンマっス。絶対に止めて下さい。俺はまだ来週の放送も明日の太陽もこの目で拝みたいんです!! 遠回しに死刑宣告は嫌ですって」
「ふーん。どんなの」
「確かよく名前出してる……あー、これかな?」
心理定規はスマートフォンで検索すると、出てきた画像を寄ってきた二人に見せる。
アイドルみたいなフリフリ衣装のいかにもなアニメヒロインみたいなイラストだった。
だが、それを見たゴーグルの少年はなぜかほっとしたような顔をした。
「あ。それなら多分大丈夫っス。まだ」
「じゃあこっちのは?」
今度出てきたのは、なんてことのなさそうなアニメキャラの画像だった。
長い髪にセーラー服、大人しそうな顔で笑う女の子。
それに今度は少年の剣幕が変わった。
合わせた両手を頭の上にかかげて拝むように心理定規に頭を下げた。
そりゃもうお白洲にひったてられた罪人か、セーブしてないのにゲーム機の電源切れと宣告された、みたいな必死の形相だった。
「その子は洒落にならないんで止めて下さい。もし垣根さんを一瞬でもそんな風に捉えたら俺は即愉快な死体決定っス」
「お前にとってそう言うのって、なんなの」
「日々の癒しと生き甲斐っスかね」
「何でそれで死体になっちゃうの?」
意味がわからないのはいつものことだけど、本気でわけがわからない。
そんな顔をする二人の前でゴーグルの少年は、苦しい胸を掻くように体の前で手を握った。
436 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 00:59:25.03 ID:Bv+OH5KO0
「心理定規は……俺が
『垣根さん昨日も今日も明日も未来永劫かわいいっスね! もはや世界の常識不変の真理っスね! 垣根さんペロペロ( ^ω^ )』
とかトチ狂ったことを悪気無く、つい、ポロっとうっかり本気で言ってしまったりしてもいいんですか? それで済めばいいんですけどね俺は嫌です絶対嫌です本当に!! どうか勘弁して下さいこの通り!!」
懺悔か祈りのポーズで叫んだ少年だったが、あんまりにもあんまりな発言に周囲の空気は急速に冷え切っていく。
心底軽蔑したような目を向ける垣根。
今にも息絶えそうな可哀想なものを見たような顔をする心理定規。
「テメェ、じゃあ望み通り死ねば?」
「あのね。私はさっきすっごく恥ずかしかったの。いやだったの。だから君もそんな気持ちをわかってくれるといいなぁって思っただけよ? そこまでしなくていいから。ね?」
「恥ずかしくて死んじゃうってのがシャレじゃなくてマジになるって言ってるんスよ!
垣根さん、怖い顔はやめて下さいおねがいします。言いませんから、万一垣根さんが天使みたいに可愛いあの子に思えてもそんなこと冗談だって口にしませんから!!」
「誰が天使でメルヘンだって?」
「言ってません! 俺そこまで言ってませんからぁああああ!!」
バキバキと伸びた翼が近くの椅子やテーブルを押しのけるのを目の前にして。
ゴーグルは後悔どころか燃え尽きたような顔をしていたが既に手遅れだろう。
自分は能力も手も出さずに、ほとんど何もしないで最終的には少年をこらしめることに成功した心理定規は。
男の子って面白いなあ、みたいな顔をしてドタバタ騒ぐ二人を眺めていた。
437 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2015/08/17(月) 01:00:06.82 ID:Bv+OH5KO0
ドーモ。
久しぶりにメインっぽいのを。書き手体感でデレ大目だったからかなんか垣根が不機嫌です。
ゴーグルごめんよ。残りの二人の人間性がいまいちわからないからついやりやすくてやりすぎる。まあ原因はリーダーなんだけどね。
安価はまたじゃあまた。
438 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/17(月) 01:36:31.37 ID:j2/IzdxB0
乙ーん
実際垣根のキャラは俺もよくわからんなあ、振れ幅有りすぎて
どんなキャラしてても垣根らしくもあるし垣根らしくもないし
439 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/18(火) 17:53:07.23 ID:Cd8Q+8XDO
ゴーグル欲望に忠実すぎwオープンな職場だな
440 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/18(火) 17:57:31.31 ID:BDh4HU/PO
>>438
どこの作者?
ここって結構作者っぽいひと来るよね
441 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/18(火) 19:28:43.12 ID:AHAE0xii0
垣根はギャグキャラは許容できない
442 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/19(水) 04:11:29.23 ID:J7ZZlrPc0
乙
学園都市トリビア:スクールで天使はNGワード
しかし楽しそうだなこいつら
443 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/19(水) 20:52:03.63 ID:hqvwXOnto
垣根が本気出したらどんなゲームでも一月で世界大会二位になれるよ。
一位は一週間前に垣根がゲーム大会に出ることを知って妨害しに来たセロリだけど。
444 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/08/20(木) 01:06:49.45 ID:2AxEGWvMO
カキネクンの可愛さは不変の真理かあ
ゴーグル(覚醒)とはうまい酒がのめそうだ
445 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/21(金) 18:13:55.89 ID:b+OIQgYCO
アイテムとグループも好きだけどスクールもいいな
暗部のやつらが遊んでんのって和む
446 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/08/21(金) 22:06:41.44 ID:Y4nMLq6GO
普通の話でこんなに垣根でれちゃうと安価ですごいでれるなんてもうする事限られてくるよな
期待してる
447 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/22(土) 00:17:49.51 ID:uHv1uh5to
手例流とは中国の殺人拳法の一つで欧州から伝来したと言われている。
殺人拳法ながら流儀を重んずるのが特徴で、勝者は敗者の手を切断し、川に流すことで敬意を表す。
現在は派生の摘手例や梁手例などが一般的である。
448 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/25(火) 21:52:20.72 ID:3J8ZvmswO
夏休みもそろそろ終わるな
スクールの夏休みはまだ続くのか待ってる
449 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/26(水) 00:17:39.35 ID:4Kw081Jyo
暗部の呼び出しで夏休みなんて無さそう
450 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/08/26(水) 21:34:46.72 ID:nvEDb3YF0
ジュラシックワールドみたら恐竜で遊ぶ垣根思い出した
テーマパークとか好きそう
451 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/06(日) 03:47:30.44 ID:D7S5WN+q0
このスレタイからこんなことになろうとはな
ゴーグル裏山すぎ
452 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/06(日) 11:12:47.15 ID:0tlXAY99O
9月になったけど
>>1
レスしにも来なかったな
453 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/06(日) 14:09:25.46 ID:6aowFm68O
レスとかいいだろ
他にもなんか書いてんじゃないの
454 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/11(金) 15:42:12.63 ID:bNV14CODO
>>453
>>1
はきっとUR引換券を取るために課金してる
455 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/11(金) 21:25:51.16 ID:UQvr1S/To
キメセクで忙しいんでしょ
456 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/17(木) 09:43:55.12 ID:IlhSpQsBO
すんげー今更だけど、
>>161
の描写ってデッドマンズQのオマージュなのかしら
457 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/17(木) 20:46:28.58 ID:tkPxpiyxo
確かにそれっぽいな。
垣根も平穏を求めている・・・?
458 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/09/17(木) 23:04:19.46 ID:ZlwduGjNO
そんな事より1はどうしたんだ
459 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/18(金) 20:20:29.95 ID:uH6LG5yi0
デレていとクンマダァ-?
(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
460 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/18(金) 20:57:46.34 ID:7+SJXQRMo
テイトクマスターシンデレラていとくん
略してデレていとクン
461 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/09/24(木) 13:58:26.63 ID:oY7bbAf6O
待ってるぞー!
462 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/09/24(木) 22:11:54.11 ID:P8R7w++NO
シルバーウィークが終わったし
来るよな?
463 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/02(金) 17:22:37.38 ID:rwhfKcHMO
このまま落とさないとは思うけど十月になったから心配
464 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/04(日) 11:03:51.32 ID:aEWSkDMx0
まだかよ
めっちゃ楽しみにしてんだぞ
465 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/10/04(日) 14:52:48.53 ID:1A7F0n+tO
1もとあるに嫌気がさしたんだろ
HOはアニメ化したけどもう3はやらないだろうし
スクールなんてマイナーじゃネタも続かない
466 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/07(水) 12:53:50.48 ID:HPhV8nmyO
どっかで3期はないだろうって言われたらしいな
467 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/09(金) 12:41:52.95 ID:g5J41zS1o
あと一週間以内に
>>1
が生存報告してくれればもう二か月希望が持てるのでオナシャス
468 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/11(日) 21:24:28.58 ID:IpCeTvgS0
はよせんと落ちちゃうで
469 :
まだ八月なんだよなここ
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/10/15(木) 02:38:56.63 ID:yXmdwrH20
「俺の借りものが『レベル4以上の能力者』なんスよ! ケータイは使えねーし連絡つく大能力以上のレベルの知り合いなんて垣根さん以外いないんですよ!!
それにここで高得点をたたき出せればうちの学校にもチャンスがあるんス。ですからどうか俺と一緒に走ってくださいおねがいします失格だけは何としても避けたいんス!!
でないと人質に取られた俺の大事な」
「はぁ? めんどい。怠い。靴が汚れる」
大覇星祭真っ最中。
二日目、とある競技場内。
観客席の学生用観覧スペースで一世一代の演説を一席ぶっていた少年のマシンガントークがたった三発であっけなく叩き落とされていた。
「そんなざっくり論破しないで欲しいっス。つか垣根さん最後って問題なくないっスか?」
「何よりダセェ。全世界公式行事なんて馬鹿言ってる場所でんな真似出来るか」
突然の事件事故に巻き込まれても微塵もダメージがなさそうなレベル5様は実害より精神的なデメリット、プライドが汚されること理由を盾に首を横に振った。
場内のコースにはずらっと報道用カメラのレンズが向けられている。
「大丈夫っスよ、もしカメラに抜かれても世界規模での垣根さんファン人口がちょっと増えるくらいっスから!」
「馬鹿じゃねえの。お前が大丈夫かよ」
必死になりすぎたのかハイテンションでいよいよおかしなことを口走りはじめた少年に、垣根は心底呆れたような目を向ける。
普段以上のトンだ言動に頭の具合を怪しんでいるらしい。
「君のところの競技は……ちょっと変わってるけどメインは二人三脚なのよね? ちっとも競走させる気がなさそうだけど」
「げ。なんだありゃ。動く障害、ぬかるんだプールに地雷式煙幕……ってえげつねえお笑いの罰ゲームかよ」
観客席の上に設置された巨大なモニターには競技場内のコースの様子が映し出されていた。
その一部を見ただけで、垣根はそのくだらなさに嫌気のさしたような顔をしていた。
この競技場で繰り広げられる競技は。
ただの二人三脚ではない。
ただの借りもの競走でもない。
470 :
いつになるかわかんないので
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/10/15(木) 02:48:22.26 ID:yXmdwrH20
二人一組で並び立つアトラクションを乗り越える、新感覚アクション強制参加な競技だった。
会場を中心とした競技範囲そのものはそこまで広くない。
だが、子ども相手とは思えないサバイバルアタックを押し出したド派手な演出はまるでスポーツエンターテイメント番組のような催しだった。
学園都市のアミューズメント事業に携わるいくつかの企業がプロモーションもかねて協賛していると噂されるくらい大がかりなコースは派手で、
極めて安全だがものすごく難易度の高いものになっているらしい。
その為話題性、動員される取材カメラと一般の観客数のいずれも高いお祭り騒ぎな種目だった。
「どうスか心理定規! その辺の能力者を協力させてもらって結構っスから!」
「あら。彼の方がずっと頼りがいがあるわよ。あなたもせっかくこんな所まで来て観戦してるんだから……参加してあげてもいいんじゃない? 思い出になるかもよ」
どうしても競技に出場しないといけないらしいゴーグルの少年はいつになく必死だった。
すぐさま標的を変えようとする少年の動きに心理定規はいち早く別のルートを示してそれを回避しようとしていた。
それも、垣根の気分を盛り下げないように巧みに言葉を選んでいる。
読み合いを駆使した本気っぽい頭脳戦をすごい小規模で繰り広げる二人を、本来まとめ役の垣根は一歩引いた様子でみていた。
「お前らって……変わり身早いよな。っつうかお前はここでもいつもの格好かよ」
「流石に自分のところに参加しなきゃいけない時は……あれに着替えるしかないと思うけど。まだいいでしょ」
そう言って心理定規は小さく頬をふくらめた。
仮に彼女の能力強度が4以上、大能力者だとしても。
体操服どころか、学校指定の制服でさえない心理定規は今すぐハードな競技に参加なんてできそうになかった。
本来避けそうな垣根に真っ先に話をそらしたあたり、本人は協力して関わるのもいやなのだろう。
と言うかドレス姿の女子を走らせるとかそれだけでも間違いなく大事故が起きる。
そちらは対策済みかもしれないが、心理定規に限っては一般人の衆目に晒してはいけない危険なおまけが短いスカートの下から出てきそうで怖い。
「はあああ……もう、だめだぁあ」
手詰まりになってゴーグルの少年はがっくりとその場で膝をついた。
その時だった。
471 :
小ネタにしました
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/10/15(木) 02:52:07.95 ID:yXmdwrH20
「よっこいしょーー!!」
「うえぇ!?」
謎の雄たけびと共に頭上から何かが降ってきた。
ズズン、と大きな地響きを起こしたそれは片腕を大きく上に突き上げる。
「うしっ! 根性っ!!」
バウーン! と特撮ヒーローものっぽい煙と爆音の特殊効果を自力で起こしたのは。
もこもこしたまるっこいシルエットの未確認飛来物体だった。
「な、なんスかこれ? 垣根さん、空から女の子が! じゃなくて手作りっぽい…着ぐるみ?」
「オレは大覇星祭非公認マスコット!! そ……根性くんだ! おまえらの根性を応援してやるぜ!」
「うわぁああ? なんだこれめっちゃ早い分身、いや残像?! なんか動きが怖い!」
コンジョウゥ! と謎の鳴き声をあげながらゆるキャラっぽい空から落ちてくる系のなにかは突然、着ぐるみにしては激しいアクションをはじめた。
「一体なんなんスか……って垣根さん? 心理定規まで。なんで急にそっぽ向くんスか? そんな他人みたいな顔って……聞こえて、ない…? ガチシカト…だと…?」
他人の振りどころか。
ゴーグルの少年も、この「オレか? オレは根性の妖精だ!」とか自称しそうなもこもこしたものも。
まるで見えていない様な反応の二人に、少年は呆然としていた。
「おいお前。そんなに落ち込んでどうしたんだ? もっと根性出せ! 根性!!」
「そうだ……超障害物借り物二人三脚に出てくれる大能力者よりすごい人がいないと俺はっ、俺の大事なものが……!」
「そんなことか根性! オレに任せろ根性! ったく、お祭りなんだぞ! 決まった競技にしか出れねえとかやることちっちぇえんだよな!」
「なんスか急になんでゆるキャラが俺の足をぐるぐる巻きに?」
ゴーグルの少年の持っていたバンドを奪い取ると、根性くんは勝手に自分の足首らしきところと結んでしまった。
おっ、また向こうの組かちょうどいいぜ、張り合いねえと面白くないからな、と意味の分からないことを言っている非公認マスコットはすっかり競技に参加するつもりらしい。
「何とか競走のルールは? 根性。手短にな根性」
「参加者と協力者がこれとこれを着けて、スタート、ゴールと途中の障害のセンサーを全部通って最後の借り物チェックをクリアしたらおしまいです」
もこもこしてるくせに威圧感ハンパない根性くんの気迫に押されて彼は簡潔な説明をした。
足についたバンド、そして手に持ったGPS付きのリストバンドを指さしてからゴーグルの少年は会場内の特設ステージに張られたゴールテープを指した。
「よーしコースはあっちか根性! 干渉数値を気にすんのはスタートしてからだったな根性。
まあ数字聞いてもよくわかんねえしどーせオレの競技じゃないからこまけえこたあいいだろ根性」
「えっあの」
「よっしゃあいくぜ! ハイパーエキセントリックウルトラグレートギガエクストリームすごい……ダッシュ!!」
「ちょt」
いきなり降ってわいた助っ人の登場と勢いについていけてなかったゴーグルの少年は。
一瞬で本当に見えなくなった。
「きゃっ! 衝撃の余波でこれって。もう!」
突然の暴風にスカートを押さえると心理定規はスタート地点の方をにらんだ。
肝心の走者の姿は見えないが、そこ目がけて一直線につむじ風のようなものが伸びていく。
「行ったか」
「あら。他人をわざわざさけるなんてあなたらしくないんじゃない? あのぬいぐるみの中身がどう考えても超能力者だから?」
「嫌なんだよああ言う言葉の通じねえタイプ。人の話を聞く気のないヤツは特にな」
コキンと首を鳴らした垣根はうんざりしたような顔をしていた。
厄介ごとが二つ、二人の前からものすごい勢いで遠ざかっていった。
472 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/10/15(木) 02:53:29.26 ID:yXmdwrH20
「おい。何かあっちで派手なのが上がってっけど」
「ゴールしたみたいね。彼は無事かしら」
高さ一五メートルほどのステージの上に作られたゴール地点では派手な三色の煙が特撮ものっぽい爆音と共にたちのぼっていた。
超難度のコースクリアに拍手と歓声が沸き起こり取材のカメラが勝者にレンズを向ける。
競技場のどでかいモニター内では、物理法則を無視していそうな動きではしゃぐ超能力者入りの着ぐるみが暴れていた。
「ちースおわりました……」
砂埃となんだかドロドロしたものと白い粉にあちこち塗れて、体操服に焦げまでつけたひどい格好でゴーグルの少年は観客席にやってきた。
カメラが追い切れていなかったところも含め、障害物コースはなかなかハードだったらしい。
「根性くん大活躍で上位に入ったのはいいんスけどまだ目の前がぐるぐるして…
うーん垣根さんが三人見えるぅうう……あなたが落としたのは金の垣根さんですか、銀の垣根さんですか……金なら一枚銀なら五枚……」
「やだ。そんなにいたら大変じゃない」
「あの着ぐるみどうした」
「ゴール直後になんか係とか警備員に追いかけられてものすごい速さで去っていきました。でもおかげでボーナス付きで得点ゲットっスよ!
いやー怖かったけど非公認マスコットさまさまっス!! ってなんで二人ともそんな冷たい目なんスか 俺がんばったんスけど?!」
「だって。ねえ?」
「結果出したのお前じゃなくてあの着ぐるみだろ」
何言ってんだろうこいつ、と言う二人の指摘にそうなんスけどねえ?! と叫んでゴーグルの少年は頭を抱える。
圧倒的なレベル差の相手に文字通り必死になってついていった少年の苦労は残念ながらいまいち評価されなかった。
473 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/10/15(木) 02:57:35.51 ID:yXmdwrH20
「非アクティブ低フィジカル勢にこんなハードな競技をあてるなんてあいつら覚えてろ。前日のバルーンハンターがうちの種目にあったら良かったんスけど」
「どうなるんだよ」
「えーっと」
……競技開始から一〇分が経過していますがハイペースで風船が割られていきます!
突然飛んでくる球に対応できる選手もいますが……しっかし何が起こってるのかよくわかりませんね?
どうやらどこかのチームに『念動力者』がいるようだけど。遠隔操作が出来るならこの競技相当有利ね。
威力の高い能力で動く標的の頭部に乗せた紙風船を狙うのはかえって危険だ。
見えない狙撃手、序盤から攻めてるけどこんなに飛ばして大丈夫かぁ?!
『空間移動』では精密な計算と高度な演算が必要だけどそう言った縛りがないのも単純な能力の強みだけど。
ほぼ同時に離れたポイントでも攻撃している点からも能力者は複数いるとみるのが自然だろうと……
脳内妄想で都合のいいゲーム展開をざっくりシミュレートすると少年はうんうんうなずいた。
勿論、余計な装備は競技場に持ち込み禁止です、と言われたら地味に一つ一つボールを操作して割っていくしかない。
「ゴーグル有りでいいんなら、誰がやったかよくわからないまま、いい展開に持ち込めそうな気がします。クラスメイトにカメラ頼めばいけますね」
「それって盛り上がんの」
「観客はつまらないかもね。君あっちこっちひどいけど、大丈夫?」
「あー、学校戻って着替えますよ。って、ソッコーでカムバックメールかよあいつらもっと功労者をねぎらえっての……お二人とも、じゃあまたっス」
文句をいいながらもうれしそうな顔をしたゴーグルが行ってしまうと垣根は隣の心理定規にどうする、と声を掛けた。
早くも飽きてしまったようなやる気のなさだ。
ダサカッコ悪く障害に苦戦する選手たちは繰り返し見るほど面白いものではなかったらしい。
「そうね。私も競技があるからもう少ししたら行かないと。あと午後にも、一つあるけど……なぁに」
「いや? 客席から手の一つも振ってやろうか」
「いいわよ? 別にわざわざ見なくたって。そう面白いものじゃないから」
「そうだな」
頬杖をつく心理定規はそのままにして垣根は先に席を立った。
「けどまぁ、暇だからな。さーて、後はどうすっかな」
ナイトパレードは見た方がいいんだろ、とぼやくと垣根はつまらなさそうに欠伸をしていた。
日が暮れるまでの時間潰しに悩み始めた横顔に心理定規がため息をつく。
「あなたこそ所属校で何かやれば良かったんじゃない? 似合わないことしてるあなたなんて珍しいもの。応援くらいなら、してあげてもよかったわよ」
「……そうかよ」
垣根が睨むように見上げた先のオーロラビジョンには懸命に競技に取り組む生徒たちの姿があった。
夢や希望、絵空事ではなく目の前にある勝利をつかもうと汗や泥に汚れながら描かれる青春の一ページが大きく映し出されていた。
474 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/10/15(木) 03:00:58.59 ID:yXmdwrH20
『第3レースを開始しています。走者が制限時間内に競技場に戻らない場合はその場で失格と見なされます。参加者の皆さん、ご注意ください』
場内のアナウンスが聞こえる。
競技場からそう遠くない場所で一人の男子生徒が歩いていた。
足取りは重く覇気に欠けた様子で、おまけにふらふらしている。
「戦う前から勝負は終わったんや……こんな借りもん……せめて女子、いやロリショタならやる気もでるんやけど無理やん。
こんなん無理やねんなー。まず、見付からへんって……のぉっ?!」
「あぁん? なんだコラテメェどこに目ぇつけてんだよ」
うつむき加減でぼやいていた青髪ピアスはコントのようなリアクションで後ろにのけぞった。
前からやってきた茶髪に鼻ピアスの男子学生とぶつかってしまったせいだ。
青髪ピアスとキャラが被りそうで被らないちょっと被るキャラ要素をしているが、こちらはどう見ても違う方面でアウトだった。
大覇星祭なんて関係ありまっせーん! みたいなTHE不良な格好をしたお友達がたくさんいた。
スキルアウトのみなさんで、間違いない。
「なんだこれ。借りもの競走? つまんねーことしなきゃならないヤツらは大変だな。見ろよこれ」
青髪ピアスの手から落ちた、でかでかと競技名の印刷された紙切れを拾い上げると茶髪鼻ピアスはそれを仲間に回した。
開いた中に書いてある、二人三脚のパートナー兼借りものは。
『外人傭兵部隊に所属してそうなでかくて重いマッチョマン』
競技の助っ人としては大当たりの借りものでも、開発された能力の評価が極めて高い学園都市の中ではガチの体育会系はなかなかハードルの高そうなオーダーだった。
そのとき。
青ピの前をふさいで笑っていた不良少年達の後ろから。
ゴリラと、フランケンシュタインの怪物のハーフみたいな日本人離れしたガタイの男がぬっと現れた。
仲間の手から紙切れをつまみあげると。
それを読んだでかくて重そうなマッチョマンは、
「……手伝うか?」
そう尋ねて青ピに首をかしげた。
見た目によらず親切な方だったようだ。
475 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/10/15(木) 03:05:16.43 ID:yXmdwrH20
(いややぁあああそっち!? 絡むんでもカツアゲでもなくそっちぃ? なんでそこ、見逃してくれなかったん?
こんなギャップ無駄やん萌えへんもん、ちぃっとも萌えへんから! 筋肉でも巨大でも性別:女子なら別としても!!)
ものすごく大当たりっぽいけど絶対に肩を組みたくない借りもの候補(仮)の出現を青ピは脳内で激しく嘆いた。
引いた借りものが女子でオーケーそうだったら合法的に。
いやルールだから仕方ありませんがなにか? と堂々とNO職質、YES密着だった筈なのに。
やっぱり日頃の行いとかあるんかなあ、カミやんの不幸って感染るんかなぁ……と青ピは乾いた笑いを浮かべていた。
「あははは…大丈夫やって。ボクも丁度サボったろーと思っとったとこで……」
そう言って不良たちにさよならしようと背を向けようとした青ピだが、そこで街頭のモニターが目に入った。
近くの競技場の様子を流しているそれには、クラスの奴らと小萌先生が応援しているところも映っていた。
「小萌せんせー、みんなぁ…ボクは、ボクはぁああ……なんて、なんてことをッ!!」
今まさに私欲にかられて欠場してやろうと目論んでいた人面獣心鬼畜青髪ピアスの邪智暴虐非道の所業など彼らは知らない。
ただ、青ピが競技場に戻ってくることを。
そして、全力でゴールテープを切ることを待ち望んで、いや信じてあの場に立っているのだ。
「みんなの気持ちを裏切れない」と「マッチョマンはダメ。マッチョマンはダメ」の相反する感情にさいなまれて青髪ピアスはその場に崩れ落ちた。
「ううう……この青髪ピアスにはみんなに合わせる顔なんてないんやッ」
「立て。仲間の所に戻るんだろう」
その肩を叩いたのは。
パーフェクト借りもの要素を体現したマッチョマンさんその人だった。
「駒場のリーダーが」
「出場するぞおまえらあ!!」
「っしゃあ! アレ用意しますか?」
「構わん。小細工は、無しだ」
どうやらリーダーらしいゴリマッチョ氏が手下っぽいやつに首を振ると、周りの少年たちのテンションがますます上がった。
よっしゃカメラ用意しろ、とかなんとか勝手な声援が上がりはじめる。
青髪ピアスの目の前でものすごい勢いで退路が断たれ、いかっちいオニイサンとなかよしこよしおてて繋いで出場への道に向けてルートが狭まっていく。
476 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/10/15(木) 03:16:51.74 ID:yXmdwrH20
「ガキ共に勇姿を見せつけてやってくださいよ!!」
「……行くか」
何が決定打だったのか。
それまで陰鬱だった男の声が一段と真剣さを増していた。
なぜかすっかり参加する気も覚悟完了しているマッチョマンさんを前に、とてもじゃないが青ピがお断りできる空気ではなかった。
きっと言っても周りの奴らが聞いてくれないし、今度はそれでスキルアウトの団体様にボコボコにされそうである。
(だがしかぁあし! ばっちりゴール出来たら小萌せんせーにほめてもらえるやん? なでなで付きでッッ!!
おまけにクラスのヒーローになって帰ったらもうそれこそ女子の矢印、フラグの総取り……に、とどまらず! 学園都市さらにはテレビの向こうの女子の溢れるラヴがっ……ふはは、カミやんにばっかおいしい思いはさせられへんよねーっ!)
想像妄想たくましく、一気にテンションをぶっちぎらせた青髪ピアスは勢いよく立ち上がった。
その横に不良少年のリーダーが並ぶ。
青ピも背は高い方なのだが。
この「気は優しくて力持ち(おまけに顔怖い)キャラ」っぽい御方は更に縦にも横にもでかかった。
革のジャケットの下はプロアスリート並みに鍛えられた鋼の肉体だろうと素人目に見てもわかる。
障害物競走にはものすごーく有利だろうが、たとえ足手まといだろうとパートナーはかわいい女子がいい。
二人三脚の理想展開、足がもつれてラッキースケベなんて冗談じゃない。
もし青ピが全力で転んでも相手の軸は一ミリもブレない気がする。
競技内容におあつらえ向きすぎる屈強なパートナーをゲットした青髪ピアスはこの試合には勝てそうだが、男としての勝負に負けていた。
「やっぱりいーやーやーぁああああ!」
肩をつかまれ、ちょっとひきずられるようにして会場に戻っていく青ピを、盛り上がった不良少年達は大きく手を振って見送っていた。
477 :
◆q7l9AKAoH.
[sage saga]:2015/10/15(木) 03:28:04.32 ID:yXmdwrH20
ドーモ。
青ピ「って言う夢をみたんやけど。いやー、おっかなかったわー」
うんまたなんだすまない。
根性つながりでモツ鍋さんでもよかったんだけど謎解の方がロリの頂点競ってたからゴリ場さんにしました。
ロリの味方とロリの天敵が手を取りあったありえねー大覇星祭いっぱつネタでしたどっとはらい。
いつからレスもしてなかったっけ…と1は自分のふがいなさを見下げ果てつつ小ネタで延命とお茶を濁そうと目論みます。
前回のスクールもの本編分は、卵の割れる音で新耳袋の怖い話を思い出した、昔のゴーグルくん能力ネタリサイクルもちょろっとしたやつ。
そんときのありえねーネタもみつかったから供養しとく
垣根「エナジードリンクって。こんなん飲んでうまいのかよ」
ゴーグル「試してみます? これは通販で買ったマジモンなんで、その辺のコンビニのより効きます。シュガーフリーのもあるんスけど」プシッ
垣根「ふーん」ゴク
バサッ
ゴーグル「え?」
垣根「なんだこれ。あれ? 消えねえ」
心理定規「何してるの? もう気はすんだんじゃなかった?」
垣根「いや…なんか翼が勝手に、っつうか…しまえねえんだけど」
心理定規「それって収納するものだったの?」
ゴーグル「あのCMほんとだったんだ? レッド○ルすげええええええ!」
当然の如く没。翼がーほーしーいー
チャンスをみつけてまたきますなるはやで
478 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/15(木) 16:19:14.84 ID:oPSqwEyx0
パズデックスの垣根記念カキコしようと思ったら来てた、乙
落とさないならどんなスローペースだろうが待ってる
全レスも待ってる(ニッコリ
479 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/10/15(木) 21:45:47.27 ID:i75RJAiAo
SSの更新万歳!Hurrah! Ура!
480 :
お久の本編です
◆q7l9AKAoH.
[ saga]:2015/10/15(木) 23:59:09.62 ID:yXmdwrH20
午後のファミレスの一角。
比較的静かな奥のテーブル席を『スクール』のメンバーが陣取っていた。
その前にはどれも中身の少ないグラスが並んでいる。
「……で、今度『スクール』のメンバーの枠が埋まるかもしれねえって話だ。
派遣業者からのレンタル品でも、頭数が欲しいってことなら……その内デカい仕事でも回す気なんだろ」
先程までの電話の声の話を鬱陶しそうに垣根はまとめたが、その顔はちょっと楽しげだった。
一方、隣の心理定規は唇を尖らせてアイスティのストローを弾いていた。
「そんな話をさせる為に、あの人こんなところまで呼び出したのかしら」
「まあまあ。最近活動してなかったじゃないスか」
「その割にあなた達と顔合わせてる気がするけどね」
「確かに高エンカウントっスねえ。そうだ。垣根さーん、あれから艦っち全然やってないっスよね? やりましょうよー」
「……何で知ってんだよ」
むっとした返事にゴーグルの少年はカバンを持ち上げた。
「こう言うのは……フレンドのログイン状況が見えるんスよ。ほら、ここです」
テーブルをはさんでタブレット端末の画面を見せながらゴーグルはそう言った。
ユーザーネームの横には最新のログイン情報が表示されているが、垣根のものは他と比べて随分と以前のものだ。
「言ったろ。飽きた」
そんなあ、まだ全然っスよこれから面白くなるんスよボイス聞かないとさびしいなあってその内生活の一部になっちゃうんスよ?
いや、垣根さんにこっちの道にはまってほしいんじゃないんですけどね?
と少年の無駄に熱い叫びを前に垣根はうざったそうに片手を振った。
「お前自分で作業ゲームだっつってたろ。何が楽しいんだこう言うの」
「好みのキャラゲットしよう、出たら今度は育てよう、とかそう言うのきっかけにするじゃないスか。ログボとかでもいいんスけどね。
こう言うのは、スタート押しちゃえばなんとなくで続くんス。その内ランキング上位とか報酬とかが見えてくるとまた幅がっスね」
481 :
◆q7l9AKAoH.
[ saga]:2015/10/16(金) 00:12:29.68 ID:cKXKQ63x0
「こんなんに好みもクソもあんのかよ」
ゲーム画面に並んだ萌え系少女キャラの画像を前に垣根は首をひねっていた。
そうは言っても、絵師も違えばキャラタイプもさまざまでこう言うのには、
大所帯のアイドルよろしくどこか一か所一人くらいツボを狙い撃ちしてくるのがあると言うのがセオリーで醍醐味なのだが。
「ツインテが好きだー。五人いたら緑の子! とか。縦セタ最高、ツンデレはやっぱ王道だよなーとか……そういうのないっスか」
「そう言うので好みを判断すんの?」
「あー、そうっスよね。ですよね……」
新人提督様にはちっともピンとこなかったらしい。
心底不思議そうな目をしている垣根の反応に、なぜかゴーグルの少年は打ちのめされていた。
軽く額をおさえていたかと思うと、心理定規に声をかけられて頭を上げる。
「いや…非オタとのフィルタリングの違いを再認識して俺は今ちょっとした衝撃を受けてます。そうっスよね……普通は属性とか気にしないんスよね?」
高身長イケメンクール俺様ホスト系ミステリアス悪役リーダーポジ規格外能力高パラ底が見えない大物感ギャップメルヘンセレブ臭超能力者謎のチェーンetc…
本人にはハイスペックで多彩なタグ付けがされそうだが『スクール』のリーダーには縁のない知識かもしれない。
「はぁ。これ、お願いしていい? 今度はあったかいのがいいな」
「はいっスー! 垣根さんは?」
「炭酸」
男子の意味不明トークを不審そうに伺っていた心理定規はにっこり笑ってグラスをゴーグルの少年の前におしやった。
暗部のミーティングも終わったところで、ゴーグルの少年はファミレス仕様いつのもお仕事に取り掛かるべくドリンクバーへと向かっていく。
482 :
◆q7l9AKAoH.
[ saga]:2015/10/16(金) 00:15:45.92 ID:cKXKQ63x0
「あぁ? 何だよ。話は終わったんじゃなかったのかあの野郎」
着信音を鳴らしながら震えるポケットに向かって悪態をつくと。
うるさい携帯電話を片手に垣根は席を立ってしまった。
その隙に、と言った様子でゴーグルの少年は腰を浮かせた。
「そう言えば、今日はいつもの運転手じゃなかったっスよね。まさか、またコレですか」
首元を指先で一閃するジェスチャー付きでひそひそ尋ねたが。
心理定規の話によるといつもの運転手はただの休みだと言う。
小声で不安そうに聞いてきたゴーグルの反応が面白かったのか、彼女はくすっと笑って目を細める。
「心配? 大丈夫よ。彼もそう無駄なことはしないでしょ。前にやって懲りてるはずだから」
「あん時は、なかなか替えに出来そうなのが居なくって垣根さんイラついてましたもんね」
下部組織から探さなくても、腕のいい専門の業者を使えばいいじゃないかと少年は遠い目をしてぼやく。
上司が目に見えて不調なのは職場の空気も悪くなるし、人員の精神衛生上もよろしくなかった。
そんな経験でも思い返しているらしい。
「そう言うのって一般人ばかりじゃなかった?……ねえ。前の運転手さんのこと、覚えてる?」
「ハイヤーの人っスよね? んーまあ。礼儀正しい、普通っぽい人でしたよね」
「普通。そうね、お子さんは二人、男の子の方は小学校に上がったばかりで娘さんは三つだったかな。きっと、私達みたいにはなってほしくないでしょうね」
カップにポーションのミルクを注いでいた心理定規はそう言って目を伏せた。
持ち上げたスプーンから小さくしずくが落ちる。
「なんでそんな詳しいんスか」
「別に私が聞いたわけじゃないわ。ああ言う人ってつい自分から話を振っちゃうのは職業柄かしら?
特に男の人は、狭い空間で相手が女の子とみると安心感でも与えたいのか何気ない話題っていうのを頼んでなくても持ち出したがることがあるのよ」
「へえ〜。そうなんスか……うわ、俺そんな覚えねーやって思ったらそもそも女子に振れる一般受けしそうな話題も、そのシチュも前例なかったっス」
「得意げにしないで。で、そんな普通の人が、わざわざこんな仕事に関わってたのも……まぁ、よくある話よね」
知ってるけどなぁに? みたいな顔をした心理定規からすらすら出てきたプライベート情報に目を丸くしたゴーグルに首を振ると。
呆れたような顔で眉をあげながら、情報網の広そうな少女はカップを傾ける。
483 :
◆q7l9AKAoH.
[ saga]:2015/10/16(金) 00:31:08.73 ID:cKXKQ63x0
「そう言えば心理定規も運転出来るって聞きましたけど。立候補したりとか…」
「気乗りしないわ。仕事中に余計な気を使いたくないし、もし事故に巻き込まれたら困るもの」
「ですよねえ」
リスクをわざわざ増やしたくないと語る少女にゴーグルは同意したが。
どう見ても学生っぽい女の子が運転席に座っていることの方が、本来は問題なはずだ。
カップを置くと淵に付いてしまったリップを指先でなぞりながら彼女は続いてため息をもらした。
「前みたいに彼が一眠りできるくらいのテクニックを求められるのも、ね。
まぁ、そんなこと言い始めたら今以上に…ものすごく厳選しなきゃいけなくなるんだけど。何とか妥協してもらいましょう」
それか、今度の新入りさんの運転技術に賭けてみる?と茶化した。
そんな話を聞いていた少年は、納得するどころか改めて疑問を深めたらしい。
「それをすてるなんて…じゃなく、なんでまたそれを切っちゃったんスか。垣根さんも。確か……ちょっと言うこと聞かなかっただけですよね?」
入手の難しいアイテムをうっかり処分しようとしたプレイヤーに警告するゲーム内のメッセージを口にしかけた少年は、ますますリーダーのパターンも思考もよくわからない。
そんな顔を心理定規に向けた。
「さあ? あえて言うなら…あの人が暗部の人間じゃなく、普通過ぎたのが原因じゃない? 出過ぎた真似をして、リーダーの言いつけがきちんと守れないのは致命的よ」
ハンドルを握れなくなった運転手なんて置いておけないでしょ、と当たり前のことを疑問にも思わないように彼女は口にした。
同情めいたものも感慨もそこには感じられない。
484 :
◆q7l9AKAoH.
[ saga]:2015/10/16(金) 00:35:00.41 ID:cKXKQ63x0
「あれ。垣根さんがしたんじゃないんですか? ビジネス的な意味だけじゃなく物理的に切り捨てたんスよね」
「そうよ。最終的には…ね。命に関わるほどのものでもなかったし、事故扱いで彼にはちゃんと上から手当てが出たみたいだけど。
もうこんな仕事は出来ないでしょうね。したくもないでしょうけど。そうだ、私たちがそんな目にあっても災害時の保険みたいなのは適応されると思う?」
気軽な思い付きとでもいいたげに少女は可愛らしい仕草で首を傾げた。
冗談なのか、本気なのかわからない。
そもそも想定された事態が、あまり考えたくもない類のものだ。
一応は、組織の頂点に据えて掲げている人間からそんな目には合わせられたくない、と言う気持ちはあるだろう少年は。
あえて真面目ぶった顔で彼女の問いに腕を組んだ。
「天変地異だと場合によるんですよねー。でも隕石が頭の上に降って来るよりはありえそうで嫌っスね」
「戦争だと免責なんだっけ。死んでもおかしくない状況では仕方ないのかしら」
「垣根さん戦闘能力は充分そっちで通用するクラスっスけど。うーーん。そう言う意味じゃ、俺たち暗部はいつ何が起きても、ってとこありますよねえ。その辺は自己責任で、って感じっスかね」
「まぁ、私が使えないのにそんなものがあってもね。それでブランドの新作が着れるわけじゃないし」
「同感っス。運よく生還しても入院してる間に録画予約がふっとんでたりしたら川向こうのお花畑にもっかいダイブしたくなります」
ブラックなジョークの体でオチをつけたところで、心理定規は通路の先をみると一度席を立った。
奥のシートに座った垣根はおしゃべりしていた二人を見比べた。
「何の話だ?」
「使えねーのに金だけあっても困るんで、それよりは万一ん時に積み荷を燃やしてもらうことを考えねえとって話をっスね」
「なんだそりゃ」
災害や天変地異、はたまた世界規模のドンパチとある意味並べられそうになっていた一個人が戻ってきて。
縁起でもない、くだらない雑談は終わった。
485 :
◆q7l9AKAoH.
[ saga]:2015/10/16(金) 00:43:15.89 ID:cKXKQ63x0
また着信音が鳴る。
またしても出所は垣根。
今度はスマートフォンだった。
だが垣根は通話はしないで画面を触っていた。
「あれ。出ないんスか」
垣根はちょっと面倒そうな顔をすると、
「こっちはプライベート用だからな」と言って画面をスライドすると着信を切った。
「放っておいていいんスか」
私用の電話なら余計に出ればいいのにと思うところだが。
気をつかっているのか、嫌なのか。
垣根本人は、登録してねえ番号には出ねえ、と首を振った。
「迷惑なラブコールだよ。心底ウンザリしてるんだが、一つ着拒するとすぐ別の番号から掛けてきやがる。こう言うのは無視が一番だ」
「えっ。垣根さんにそんな人がいたんスか?」
予想外の、「暗部のリーダーにまさかの恋バナ浮上か」、「お相手は某アイドル似の一般女性!?」なんて三面記事の見出しみたいな話題の予感にゴーグルの少年は食いついたが。
口にした本人は楽しいどころか、渋い顔をしていた。
「そんなんじゃねえよ。言葉通り受け取んな」
「ああ。確か相手は……男の人だっけ」
「え」
またしても訳知り顔、事情通の心理定規さんの問題発言に、ゴーグルの少年は困った顔でしばらく二人を見回していた。
「垣根さん……イケメンも大変なんスね。それともストーカーっスか?」
「ばーか。違えよ、だからそんなんじゃねえっての」
「あなたがおかしな言い方するからだと思うけどな。でも熱烈なラブコールには違いないんでしょ?」
なんなんスか、って言うかまた二人でひそひそバナシっスか? とゴーグルの少年が騒がしくなりはじめたところで。
垣根は気忙しげに髪をかきあげた。
不服そうな視線を向けられた心理定規は私? 関係ないわ、と言わんばかりに肩をすくめる。
486 :
◆q7l9AKAoH.
[ saga]:2015/10/16(金) 00:45:25.01 ID:cKXKQ63x0
垣根は眉間にしわを寄せたまま大きく息を吐いた。
ものすごーく忌々しげに自分のスマートフォンを睨みつけてからやっと口を開いた。
「潮岸だよ。統括理事会理事の一人。ったく、番号も部屋も前に変えたんだがな」
「な、何でそんな人から? 『スクール』じゃなくて垣根さんに直電が?」
突然のビッグネームにゴーグルの少年はガタッと体を起こした。
知り合いに超能力者と言うのも一応はかなりのものだが、「組織のリーダーがめっちゃすごい人」と「名前は聞いたことあるなんかすげーえらいひと」では随分印象が違うらしい。
「軍事関係はあの人の仕事みたいだから。彼の能力を活かして色々作りたいんだって。前から声は掛けられてたみたいよ。プレゼントも随分来てるんでしょ?」
なんて言いながら。
垣根がいつになく困った状況にあるのを見て心理定規は楽しそうに笑った。
「全部突き返してるぞ」
「それ。この前も『スクール』傘下の構成員の子をつきあわせてたよね。理由は伏せて、わざわざあなたの部屋まで様子を見に行ったんでしょ?」
その言葉にゴーグルの少年はピンと来た顔をした。
夏休み前後、このリーダーは仕事もないのにやけにあちこちの『スクール』の隠れ家に顔を出していると見たり聞いたりしていたのだが。
「もしかして垣根さん、最近こっちによくいるのって」
「ああ。そうでなくても、俺名義のとこにはよく交渉人とかがうろついてんだ。暑くなるとヤブ蚊も増える。んな所に帰るのも面倒だろ。そう言う連中を一々熨斗付きで帰らせるのも最近じゃ飽きてきたし」
垣根は今度は気軽に答えた。
ひょっとしなくても、自分の部屋にあまり帰っていなかったらしい。
学園都市内に暗部組織のものとは言え、勝手に使えるセカンドハウスみたいなものがゴロゴロしているとあまり不自由は感じないのかもしれないが。
聞いていたゴーグルの少年は、おかしな話だと言いたげに眉を寄せた。
そして。
超能力者の倍返しなんて想像するのも恐ろしいのだろう。
詳しく中身を質問するような真似は自粛したらしい。
「大丈夫スか垣根さん。牛乳とか冷蔵庫の中のもんダメにしてませんか」
「俺の冷蔵庫は最新式だ。まぁ、腐る様なもんも放置してねえけど」
ふと。垣根が首を傾げた次の瞬間。
バキバキと音を立ててゴーグルの前にあった空のグラスが上からきれいに潰れていった。
一瞬前まで容器だったのに、今はちょっとおしゃれなコースターのようなものに変貌している。
「なんスか?! 俺何かしましたっけ?」
「ムカついた。何でかはよくわかんねえけど」
場を和ませるつもりだったのか適当に振った話題が予想外の方向に転がってしまった。
加害者本人もよくわからない怒りをぶつけられた不運な無機物に、少年は申し訳なさそうに目をやった。
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