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垣根帝督「はぁ? 俺はオタクじゃねえぞ」
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321 :
◆bdfKbGMUnwwb
[!orz_res saga sage]:2015/07/02(木) 00:46:50.99 ID:uW//TFY30
ザリザリと何かが擦れる音がしていた。
不愉快だ、と垣根は雑音に眉をひそめた。
開きかけたまぶたはまだ重かった。
頭も鈍い痛みがある。
体にかかる怠い重さと不快感から逃れるため彼は目を閉じようとしたが。
視界の端に映ったきらめきが垣根にそれを許さない。
光源は光を照り返したナイフだった。
危機感が鈍った感覚に警鐘を鳴らす。
垣根はそこでようやく「なにかおかしい」と感じることが出来た。
「やっべぇ。縛る前に上剥いとけばよかったんじゃね? 腕抜けないじゃん。服切る? え、それならやっぱ起きてからしたいんだけどイイ?」
「お前ほんと頭わりーなー。 つか脱がす必要あんのー?」
「なんかさあ刃がゼンゼン通んないんだわスパっとイカねえ。ナニコレ何製? 新種の超合金シャツ?」
「ここに運んできて裸じゃねえやつとか新鮮な。逆に」
近くでは緊張感のない声が次々と上がっていた。
遮音性の高いイヤホンを耳に挿したまま外の音を拾った時のように、聞こえづらいぼんやりとした音声が垣根の耳に届く。
沈みかけた意識を引き上げると。
彼はまだはっきりとはしない視界で辺りを見回した。
うつむき気味の姿勢のまま、静かに視線をめぐらせ状況を確認していく。
どうやら、垣根は椅子に座らされているようだった。
腕は更にその後ろで縛られてでもいるのか。動かせそうになかった。
今まで気絶していたのか。それとも眠らされていたのか。
どちらにしても随分と舐めた真似をされたものだ。
目がさめる前は……どうしていたか。
確か、喫茶店でコーヒーを注文した。
口をつけた記憶はなかったから運ばれてくる前に何かされたのか。
そうして思い返し思案する垣根の視界が大きく揺れる。吐き気をもよおす程の強いめまいが襲う。
おまけに頭もひどく痛むせいか、考えが思うようにまとまらない。
能力の使用に必要な演算に集中する以前の問題があるように感じられた。
まるで、考えると言う作業そのものが、のしかかる重い痛みに端からすり潰されていくようだった。
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