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垣根帝督「はぁ? 俺はオタクじゃねえぞ」
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25 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/08/22(金) 23:54:44.66 ID:HnNFepJv0
あれはゴーグルの内部パラメータの変動じゃなかったのかもしれない。
かと言って垣根の方、とは言っても好感度上昇ではなく、なにかのフラグでもなく。
もしかしたらバッドステータスかもしれない。
馬鹿なことを考えながらゴーグルが垣根の頭上に目をこらしても、もちろんアイコンとかマークとかそんな愉快なものは見えない。
「一応聞くけどね。彼の暴走防止もかねて君にお願いしたのはわかってるかな?」
「心理定規……人間、わかっててもできないことってあるんスよ。垣根さんが『心配するな、自覚はある。一回こう言うカッコしてみたかったんだよ』って言うんスよ? そこに俺がストップなんてかけられると思ってるんスか」
ゴーグルは胸をはる。
長いものには巻かれて、危ない橋は叩きもしない。
まして触らぬ垣根に祟りなし、だ。
要領よくやっていかないとこの学園都市では生き残れない。ちょっとオーバーだが。
とりあえず、ゴーグルの少年の中ではこの組織内で下げる選択肢は存在しない。
上げて、上げて持ち上げていくポジションを確立している。
「だからって……あなたたち自由すぎ。男の子ってわかんない」
使えないと心理定規の冷ややかな視線が語っていた。
26 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/08/22(金) 23:59:31.51 ID:HnNFepJv0
「俺はあれはあれでカッコいいと思うんスけど。フェスとかライブとかそう言うイベントなら」
ちょっとその辺に遊びにいこうぜ、と誘われたらゴーグルもお断りするかもしれない。
似合っているのが幸いと言うか不幸と言うか。
街中であれはとっても残念な人にみえそうだった。
中身が。
「さっきマシンガン持ってかないのかって聞かれたんだけど。どうせあんなの使わないだろうし、私邪魔なのは好きじゃないんだけどな」
壁際に置かれた鏡台とスチールラックを睨んで心理定規は頬を膨らめた。
彼女のスペースには、女の子らしいコスメやジュエリーに混じって物騒な小火器が置かれている。
もし戦闘になっても心理定規の能力は対人なら敵は居なくなる。
自分を、相手が傷つけられないような心の近い距離に置いてしまえばいい。
やりようによってはその場で人の盾も手に入るだろう。
しかし、自分からの攻撃手段は無く、乱戦にはあまり意味がないので彼女は暗部の仕事となると武器を持ち歩いているようだった。
「ギターケースに入れっぱなしのあれっスか。いいんじゃないスか? 今なら多分荷物持ってくれますよ。そうだなあ……バンドやるなら垣根さんはボーカルとかギターみたく派手なのっスかね。心理定規はキーボードか、歌えるならボーカルもいいかも。俺はベースかなあ。そうするとやっぱりもう一人、ドラムも欲しいっスよね。あはは、んなこと言って俺楽器弾けませんけどねー」
「おばかな妄想はいいから」
現実逃避しかけたゴーグルに釘を刺すと心理定規は呆れたように首を振る。
27 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/08/23(土) 00:05:00.64 ID:t+qvKS460
「で、これからどこ行くんでしたっけ」
「資料のファイル開かなかったの? 第十六学区にある施設よ。ちょっとした……マナー違反が出たみたい」
第十六学区は学園都市でも優れた商業区画だ。
高額なバイトや特別待遇だけでなく、学生の奨学制度や学区内独自の制度も多い。
人も金も多く集まり流れていく地域だ。
中にはもちろん『特別』なバイトもあるのでトラブルには事欠かない場所でもあった。
『スクール』でも前に「お掃除」や「お片付け」をしたことがある。
慈善事業じゃねえんだけど、とリーダーはつまらなそうにぼやいていた。
「あー……そこだったら呑みサーの学生風でバッチリだったんスね。そう言う連中も多いし目立たなかったかも。今はどこ行っても悪目立ちしそうっスよね」
最初のでGOサインを出しておけば話は早く済んだのか、と今更になって気付き。
ゴーグルは肩を落とした。
なんか余計に疲れた気がしていた。
そんなゴーグルの気持ちは、まあわかってるんだろうけど。
垣根をまじまじとみていた心理定規はお構いなしに次の難題をふっかけた。
28 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/08/23(土) 00:10:27.27 ID:t+qvKS460
「やっぱり着替え直すよう言ってよ。大急ぎね」
ちょっと嫌そうに心理定規は目を伏せた。
でもまあ正直なところ、ゴーグルの少年からみたら垣根も心理定規も派手さなら同列だった。
二人の方向性がちょっと違うだけだ。
ごくごく一般的で地味な服装のゴーグルのほうがたまに浮いているような気がしてしまう。
「ええっ、垣根さん今すげー機嫌いいじゃないスか! それも珍しく! 嫌っスよ。そう言うのって女の子が言った方が効果ありそうだし、心理定規はその辺専門じゃないスか。うまい感じに誘導して下さいって」
そんな気持ちは今は伏せて、情けなく抗議するゴーグルの少年に心理定規は静かに首を振った。
何を言ってるのかしら、なんて心の声が聞こえてきそうなかんじだった。
「効果的だからいやなのよ。私、仕事前に彼の不興なんて買いたくないの。余計な事したくないでしょ」
お馬鹿さん、もおまけについてきそうだった。
「何してんだお前ら。行くんじゃねえの」
ひそひそと二人で話し込んでいる内に、今のいままで人を待たせていたとは思えない態度のリーダーからお声がかかってしまった。
「ほら、まだ間に合うわ。がんばって。ね?」
「ええー!」
いつになく上機嫌な垣根と、口元だけで笑う心理定規に挟まれて。
ゴーグルの少年は自らの不幸さを嘆くしかなかった。
29 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/08/23(土) 00:20:07.43 ID:t+qvKS460
超能力者の自分だけの現実、特にセンスは未知数だぜ
麦野はあの中でも趣味良さそうだよね
下着透けちゃうストッキングはいちゃうけど
ドーモ
スマホでみるとけっこうつまってんね
中身つまらんけどつまってる
せりふまわりの行間いじってみた
ちったあマシかな
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)
[sage]:2014/08/24(日) 15:07:53.36 ID:nfKZswzH0
乙
面白いぞ
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)
:2014/08/24(日) 19:47:50.53 ID:TK2r7YrF0
マミ「100円ローソンが来週で閉店なんて・・・ショックだわ。」
まどマギの巴マミの日常の物語です。
この物語は見滝原100円ローソンと巴マミのエピソードである。
キャラ設定の崩壊があるかもしれないですが
ご了承下さいまし。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408390558/
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/08/25(月) 13:59:04.77 ID:8ql7nLHv0
乙
なんかいい感じ、面白い
垣根提督のくだりに凄い納得して笑ってしまった
実際の小説とかだとフリガナが入る分の空きがあったりするが
こういう場だと完全に行間が詰まってるからなぁ
個々人の環境設定次第にもよりはするんだろうけども
33 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 01:35:21.61 ID:nVAsCJCm0
「ああっ、ダメっスよそこは」
「ばーか違うだろ。もうちょい下だ」
「右っス右!」
「と、思わせて実は反対側が安全だったりしてな」
「あなた達うるさいわよ。これで……どうかなっ?」
「あーっ!! マジっスかー!!」
「よし。次お前だな」
とあるファミレスの一角。
小さい子供むけのおもちゃを囲んで騒ぐ一団がいた。
夕方、混み合う店内の騒がしさの中でもひときわ目立ちそうな大きな声を上げて少年がテーブルにつっぷした。
目の前におかれた『黒ひげ危機一髪』のプラスティック製の剣をつまむとテーブルをつつきはじめた。
「どうしよう……残り六本っスよ」
34 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 01:39:01.61 ID:nVAsCJCm0
任務帰りの『スクール』はご機嫌なゲームの真っ最中だった。
ルールは簡単、負けた奴が他のメンバーの食事をおごる。
それだけ。
ただし、外の車内で待つ構成員のテイクアウト分も含まれるので一般的な学生の財布基準でみると痛い出費になりそうだった。
「心理定規、お前ほんとにあれだけでいいのか。飯食わないと逆に太るらしいぞ」
「あなたが頼みすぎなのよ」
「そっか? 和風御膳とポテトとフライ盛り合わせだろ、やっぱピザも食おっかな」
「……好きにすればいいと思うよ。メインのおかずにから揚げがあるのに揚げ物追加するのはちょっとついてけない」
呆れた様な目をする心理定規の向かいの席。
いつもの服装とは違いややハードな格好の垣根はまだメニューを眺めていた。
出かける直前の懸命なゴーグルの訴えが効いて、パンクロッカーみたいに派手なジャケットが今回陽の目をみることはなかったものの。
音楽の道を踏み外して夜の街に片足突っ込んだ若者の様な格好に余り違いはなかった。
「やっぱり! 俺が飛ばす流れっスよねこれ?」
派手なカップルとうっかり相席してしまった学生、みたいに見えるゴーグルの少年が座るのは当然の様に通路側だった。
35 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 01:42:04.12 ID:nVAsCJCm0
「すいません。季節のフルーツのパンケーキ二つ追加」
「垣根さん?! まだ俺やってないのに注文足さないでくださいっス! しかも二個も」
どこに剣を刺すか悩んでいるゴーグルを無視して呼び出し用のボタンを押すと、垣根はデザートまでオーダーした。
店員に似合わない愛想笑いを返した垣根は途端にしれっとした顔で前の席を指差した。
「一個はこいつのだぞ」
「何で勝手に頼んじゃうの。食べるなんて言ってないよ」
一瞬目を丸くした心理定規は細い眉を寄せて抗議する。
テーブルに乗せられていた限定メニューのカードを端に寄せると、垣根は首を振った。
「お前こればっか見てたろ。いいから我慢とかしないで食っちまえ。俺が食ってる間、ぶすっとした面が目の前にあんのは気分が悪いだろ」
「心理定規? 嫌なら俺、食べるっスよ」
「いい。二人にそんないじわるされたら我慢できそうにないし」
こうなったら食べちゃうんだから、と心理定規は頬を膨らめた。
36 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 01:45:26.97 ID:nVAsCJCm0
「まさかこんなおもちゃで遊ぶことになるとは思わなかったなあ」
「カードもコインもダメってなると勝負の方法は限られるけど。俺こんなん初めて触るぞ」
「んなこと言ってもっスねえ、心理戦で二人に勝てた試しがないんで。やる前から結果見えてんのはフェアじゃねえっス」
赤と白。
それぞれ小さな剣を手の中で遊ばせる二人が呆れたように笑う。
店内で売られていたおもちゃに目をつけ、これを持ってきたのもゴーグルの少年だった。
「あら。あなたたちだってサイコロやコインの出方を確率以外のやり方で決められるじゃない。でもじゃんけんもダメなの?」
「そりゃ心理定規がいるんスから。俺が何を出すかこっそり誘導してるに決まってるっス。出なきゃ仕草や会話から読み取るんスよお」
情けない声を上げるとゴーグルの少年は目の前のおもちゃをぐるぐる回し始めた。
外からみたところでたった一つのハズレがどれかはわからないだろうに。
よっぽど負けたくないのか、くだらないことに大真面目になるゴーグル。
それを見ていた心理定規は自分の頬に手を当てると大袈裟にリアクションした。
「嫌だな。もしそうなっても、そんな無駄な事しないよ?」
「思い切り損得絡んでるけどな」
37 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 01:47:58.51 ID:nVAsCJCm0
「それよりほら。料理来る前にハッキリさせちゃわない?」
いつまでも自分のターンのまま、ゲームの進行を止めているゴーグルを見かねたのか。
心理定規がそう促した。
「ううう……」
散々悩んで渋っていたゴーグルも観念したように顔を上げた。
神様仏様二次元の女神様! と唱えるとゴーグルは思い切って剣を差し込む。
だがカチン、と小さな音がしただけだった。
タルにはまった人形はピクリともしていない。
「やったあああ! やっ……あ、あのスンマセンっス」
「次。さっさと貸せよ」
勝ち誇った様に大きくバンザイをしたゴーグルは次の瞬間、素早く腕をひっこめた。
ささーっと頭を下げながら隣にタル型のおもちゃを回す。
「こう言うのは、グダグダ考えずに直感でだな――」
垣根が言い終わる前にビョン! と人形が跳ね上がった。
「ごちそうさまー」
「ご、ゴチになります」
頭を下げる二人の前で俯くリーダーはちいさくため息をついていた。
38 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 01:49:47.96 ID:nVAsCJCm0
今回の敗者がはっきりしたところで、ゴーグルが席を立った。
心配事がなくなったのかすっかり晴れやかな顔をしていた。
「じゃあ俺飲みもの持ってくるっス」
「私ダージリン。あったかいのお願いね」
「アイス抹茶ラテ。あんま薄めんなよ」
「りょーかいっス」
少しして。
グラスを二つと湯気の立つカップを乗せたトレイを手にしたゴーグルが戻ってきた。
二人の前に飲み物を置くと、後ろを振り返りながら席に着く。
「なんかあっちにすごい客がいたんスよ」
そんな言葉を聞いて。
心理定規がカップを持ち上げながら首を傾げた。
「女子ばっかなんスけど、ドリンクバーオンリーどころか弁当とか缶詰持ち込みしてました。おまけに店員呼んでおかわり持って来いって言うんスよ!」
すごくないっスか? とゴーグルは自分の見てきたおかしなものを二人に伝えたが。
きっと席についたままの二人がその光景を見ることもこの感覚を共有することもない。
わざわざ見に行くどころか、きっとついで、で立つ用事もない筈だった。
39 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 01:53:01.08 ID:nVAsCJCm0
「随分非常識な連中だな。まぁ、お前みたいのがいないんだろ」
汗をかいたグラスを受け取ると垣根は意地悪く口元で笑った。
濁った底を混ぜ返すとカラカラと氷が音を立てた。
「それにしてもっスねえ。堂々としすぎっス。呼ばれたウェイトレスがかわいそうでしたよ」
「んな馬鹿共に構ってる暇があったらさっさと持って来いっつうの。氷、溶けてねえ?」
眉を寄せながら垣根はストローをくわえた。
それ以上の文句が飛んでこないので、どうやら気にしていた味の方は合格ラインに達していたらしい。
「ねえ、君の飲んでるそれは?」
ゴーグルの手にしたおかしな色にまじりあうジュースを心理定規が不審そうに見ていた。
40 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 01:58:43.49 ID:nVAsCJCm0
「これスか? ホワイトメロンジンジャーっス」
ゴーグルは得意げに答える。
なんて言っても、ドリンクバーに並んでいたジュースを適当に混ぜたものだ。
味はまあ、甘い炭酸飲料には違いない。
どうせ飲み放題なんだからそれぞれ一杯ずつ飲めばいいとか言ってはいけない。
これは、混ぜることに意味があるのだ。
「それ、香料と着色料がちょっと違うだけでほとんど砂糖水なんだよな。俺次コークジンジャー」
「1:2でしたっけ」
「そ。氷多めで。レモンあったっけ」
「それ他の店っス」
「やだなあ。あ、それこっちです。いただきまーす」
糖分の塊みたいな独自ブレンドを開拓する男子二人を無視して。
紅一点は目の前に運ばれてきたサラダに手を合わせた。
41 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 02:02:08.70 ID:nVAsCJCm0
「そう言えば。何でお前仕事中あんな感じになんの?」
「あ、私も気になってた。話し方とか妙にカッコつけてるよね」
普段は砕けた調子のゴーグルだが、『スクール』での有事の際にはそのキャラクターが度々変わる。
口数はうんと減るし、ふざけたことも言わなくなる。
おまけに敬語。
180度の路線変更を茶化され、ゴーグルは口にしていたサンドイッチを詰まらせかけた。
水で何とか流し込むとテーブルをグラスで叩いて反論する。
「おっ俺はTPOに合わせた感じにしてるんスよ! このノリじゃイザって時にしまらないってくらい自覚あるんス」
「あったのか」
ポテトフライをマスタードとケチャップまみれにしていた垣根が意外そうに眉を上げた。
「別にそのままでいいんじゃない? おかしくてつい笑いそうになっちゃう」
「後はほら……気持ち切り替えてるんスよ。俺ゲーム以外で物騒なのはそんな得意じゃねえってゆーか。だからあれは仕事用のキャラメイクっス」
42 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 02:05:53.19 ID:nVAsCJCm0
ゴーグルの言葉に垣根と心理定規は不思議そうに目を合わせた。
何言ってんだろうな?
さあ、わかんなーい
なんて無言のやりとりが聞こえてきそうだった。
「なんでそこで仲良く首傾げちゃうんスか……いーっスいーっス、俺だけ小者なのも自覚済みっス」
肩を落とすゴーグルをまじまじと見て、垣根は呆れた様に息をはいた。
改めて不思議そうに隣に目を向ける。
確かに、暗部組織や後ろ暗いものと関わりがあるようには見えない一見普通の少年だ。
普通の基準が『外』と学園都市では随分違ってしまっているとしても。
「はー。お前みたいなのがなんで『スクール』にいるんだかな」
「それは……お互い言いっこなしじゃないスか。ここで色々あった奴なんて山程いるんスから」
「……ご飯の間くらい、つまらない話はやめない?」
互いに一度視線を合わせると、三人は少しの間黙って目の前の料理を口に運んだ。
43 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 02:12:58.05 ID:nVAsCJCm0
「取りあえず、これからの方針は前と変わらず……でいいのかしら」
一通り食べて、大したことのない会話を終えて。
そう切り出したのはサラダとデザートを食べ終え、一足先に目の前の食器を下げさせてしまった心理定規だった。
彼女が眉を寄せる視線の先では、垣根が最後に運ばれてきたパンケーキにシロップをなみなみと注いでいた。
「動くのに必要な情報を得るにしても、もうちょっと懐に潜り込まないとっスよね」
『スクール』の中では各々の利害の一致から、ある程度の活動指針があった。
いつも電話をよこすエージェントから持って来られる話とは別に、それに沿って組織として動くこともある。
「やっぱり『直接交渉権』を引き合いに出来るくらいの位置にいかないとダメかな。組織でも個人でもいいんだけど、まだそんな話が出来る様な信用も対価も不十分よね」
心理定規はそう呟くと頬杖をついた。
それに答えたのは、それまで黙ってナイフを動かしていた垣根だった。
唇についたクリームを舐めとると。
暗部組織のリーダーは、店内の雰囲気に似つかわしくない裂いた様な笑みを浮かべた。
「信用なんか必要ねえ。ただ『スクール』が便利なポジションにいれば学園都市も俺達を利用せざるを得ないからな。まぁ、こっちが黙って頷くだけのいい子ちゃんじゃねえのはあっちもわかってんだろ」
44 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 02:14:55.64 ID:nVAsCJCm0
「やっぱ相当リスキーっスよ。後ろ盾も交渉材料もないし、手っ取り早くどっかの理事を引き込んじゃうとか出来ないんスか」
ドリンクバーとは別に注文したクリームソーダのアイスクリームを溶かしながら。
何気無くそう提案したゴーグルだがそれを聞いた垣根の顔が何故か不満そうになった。
むすっとした表情で再びスイーツと向かい合うリーダーに、心理定規はこれまた意味ありげに微笑む。
すっかり冷めていそうな紅茶をスプーンでくるくる混ぜながら口を開いた。
「ほら。やっぱりそうなるでしょ。だから話くらい聞いた方がいいよってアドバイスしたのになあ」
「嫌だっつってんだろ。お前やれよ」
「私にはまだそこまでのコネクションがないの。残念だけど」
「あのー。よくわかんないんスけど俺も混ぜてもらっていいスか」
ゴーグルは仲良くおしゃべりする二人に声を掛けたが、揃ってグラスとカップを突き出されてドリンクのおかわりを催促されてしまった。
45 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 02:16:15.29 ID:nVAsCJCm0
「垣根さん、いつもあんなにマネーカード持ち歩いてんスかね。ポケットにカードケースだけってどんだけ――あれ?」
テーブルの上を片付けていたゴーグルの少年が首をひねる。
用が済んだからといって買ったものを置いていくわけにもいかず。
箱に入れなおしていたおもちゃを見ると不思議そうな顔をした。
「どうしたの」
化粧を直していたらしい心理定規が荷物を取りに戻ってきた。
きれいに塗りなおされたピンクの唇を尖らせて、支度の遅いゴーグルの少年に声を掛けた。
「なんか剣が多いんスよ。ここの穴の数の割に、やけに余るような」
「勘違いじゃない?」
箱の横に印刷された仕様をみながらゴーグルはまだ首を傾げていたが。
「お前らなあ、早くしねーと車出すぞ!」
「はっ、はいいっ! 今行きます!」
疑問にけりが付く前に、強制的にピリオドが打たれる。
店の入り口から響いた怒号にゴーグルの少年はビシィ! っと背筋を伸ばした。
46 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 02:21:07.54 ID:nVAsCJCm0
ドーモ
禁書は学園物の割に殺伐としてるから普通の学生っぽいことしてるのがみたくなる
元暗部の中では『アイテム』がその辺は恵まれてそう。今は浜面もいるし。他は一応解散しちゃったし
モ○ゲーとかでやらないかな。大覇星祭系のイベント前に7、5以外の超能力者による選手宣誓デモンストレーション。でなきゃ描き下ろしカード
残りも男女ペアで1、3と2、4とかさー舞台裏がすげー殺伐としそうだけど
って考えると漫画でやったの七位と五位で大当たりだ。実行委員がかわいそうだわ
体操着の第四位とかいろんないみでヤバいっしょ
レスありがとう
乙の一言だけでやる気があがるぜ
がんばるわーまたかけたらくる
47 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)
[sage]:2014/09/13(土) 03:11:47.19 ID:XsPgkEth0
おつ
48 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/09/13(土) 06:31:29.75 ID:vZ9uBWZR0
乙っす、原作大幅改変せずここまで面白いスクール書けるとは
続きお待ちしております
49 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/09/13(土) 11:21:29.64 ID:sZwdb27R0
乙
なんだこいつら可愛すぎる、雰囲気が良いね
余った剣は白かったりするんだろうか
体操着の第二位と第四位が並ぶと何のプレイだとしか
50 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/13(土) 18:15:46.71 ID:nVAsCJCm0
このSSとは関係ないんだけど
大覇星祭の選手宣誓を超能力者にやらせるかの話し合い
ネタ浮かんだんだけど、ここに落としてもいいかな
51 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/09/13(土) 21:35:42.54 ID:ni7CcYJm0
いいんじゃないかな
まったく別ジャンルのネタってわけでもないし
52 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/09/13(土) 22:14:47.50 ID:vZ9uBWZR0
上記の話の構成力からして、期待せざるをえないネタだね
別スレだと見つけられるか判らんし、ぜひここに落としてください
53 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:17:16.55 ID:nVAsCJCm0
レスあざまーっす
スレッド立てたの初めてだからこういうのやべえうれしい
まとめて失礼
>>48
まだおばかな『スクール』SSだけど、今後大幅改変入る予定
それも気に入ってもらえたらうれしっすー
>>49
剣なー、どうなんだろうなー
お互い見た瞬間、垣根も麦野も即チェンジっていいそう
>>51
ありがとー
こっからちょっと落としてく
54 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:20:06.19 ID:nVAsCJCm0
>>52
即興だから期待されると自信ないw
短いからわざわざ立てるのもよくないしね
じゃあ折角前振りもしたし、お言葉に甘えて
こっから12レスくらい
台本
一応sageますスルーしてもらって結構っす
55 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:22:04.56 ID:nVAsCJCm0
※SSの内容とは関係ない一発ネタです※
頂点決戦ネタあり、あそこは時間の流れも原作本編の軋轢もあんまり影響ないギャグ特化世界なのでいーっすよね
何度でも春夏秋冬のイベントがみれるよ!
暗部解体後のどっかのギャグ次元ってことでひとつ
なかよしレベル5が定期的にみたくなる
運営委員「第一位さん入りまーす!」
一方「ったくなンなンですかァ……面倒くせェことで呼びやがって」
垣根「遅えぞ。第一位様は重役出勤ですかあー? こう言うのは最低五分前には動けよ」
一方「あァ? なンでオマエらがいるンだ」
麦野「大覇星祭の開会式ってのに超能力者の残りの面子が呼ばれたのよ。前に下二人が出たんなら、その上も使えると思ったんじゃない。こっちは迷惑だっつうの」
垣根「え。結果次第で『直接交渉権』の繋ぎがつくって話は? 第一位も来るし、当然来るよなって俺言われたぞ?」
麦野「アンタそれ、担がれたんじゃないの」
一方「超能力者を集めるって言ってもよォ。その割りに一人足りてねェみたいだけどなァ」
御坂「ごめんなさーい! 実験に付き合ってたら遅くなっ……ええっ?! 麦野沈利に一方通行も?」
麦野「来た来た。テメェなあ、人を呼ぶのにさんくらいつけたらどうなんだよ」
56 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:23:29.11 ID:nVAsCJCm0
御坂「えーと。そっちの人は?」
垣根「ああ、自己紹介が遅れたかな。はじめまして、俺は垣根帝督。第二位の超能力者だ。よろしく御坂美琴さん」
麦野「うわぁ」
一方「キモい」
御坂「どうも……あー、よかった超能力者って普通そうな人も私の他にいたんだ。安心したわ」
一方「残念だったなァ。こいつが一番非常識だぞ」
麦野「なーに猫被ってんだか。気持ち悪い」
垣根「人間、初対面の印象が大事なんだよ。こいつはこっち側じゃねえし、おまけに中坊だろ。無駄にビビらせてどうすんだよ」
麦野「相手で態度を使い分けるとか、性根の悪さが滲み出てるけど」
御坂「じゃあ、結局この中でまともなのは私だけかぁ」
垣根「……なぁ。こいつって実は性格悪いの? 単に口が悪いの?」
一方「口から出ちまうンだろ。悪意だらけなのはもっと酷ェぞ。まァ、悪気がないのは質が悪ィけどなァ」
麦野「第一位、アンタそのうち御坂の扱いも慣れてくるんじゃない?」
一方「オマエ相当ふざけてンなァ、麦野」
57 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:25:40.78 ID:nVAsCJCm0
垣根「で。俺たちに大覇星祭のイベントに出ろっつう話なんだよな。暗部が解体されたからって、随分と平和ボケしたもんだ」
一方「麦野オマエ、もォ断る理由がねェンじゃねェか?」
垣根「じゃあ麦野と御坂で充分だろ。俺たち来た意味ねえな。別に男女各一名、なんて縛りもねえだろうし」
御坂「ちょっと待って! 麦野と?」
麦野「私だってコイツとなんかごめんだっつうの」
垣根「ふーん。なんだ、お前ら仲良くねえんだ」
麦野「じゃあ、第一位と第三位でいいんじゃない。第二位と一緒は嫌でしょ」
一方「オマエ……それはマズいだろォが」
麦野「オリジナルとは嫌な訳?」
一方「俺個人の問題じゃねェよ」
御坂「嫌って言うか……複雑よね」
58 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:27:48.08 ID:nVAsCJCm0
垣根「御坂忙しそうだしな。メディア露出もかなり多いんだろ? じゃあ麦野と一方通行……は、ガキの教育に悪そうだな。目つき悪すぎ」
一方「腐ったドブみてェな目のヤツに言われたくねェ」
麦野「まるで自分はいいみたいな言い方ねえ。確かに子どもウケは良さそうだけどさー色々と」
垣根「テメェ、この中で一番格下の癖に俺に喧嘩売るとかいい度胸してんな。いっぺん痛い目みたくらいじゃ足りねえか?」
御坂「ちょっと、少しはまともに話し合いましょうって」
一方「もォオマエら並べば? リーダーさんよォ」
御坂「そうね。麦野と垣根さんなら二人とも丁度いいかもよ? スタイルとかバランスも」
垣根「美男美女なのはいいとして。これからたのしい運動会、ってガラじゃねえだろ。『外』でも流すんだよな確か」
麦野「何プレイだっての」
一方「オイ。せめて罰ゲームくらいにしとけ」
59 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:30:06.09 ID:nVAsCJCm0
垣根「まぁ、誰が出るにしてもだ。どんな感じか想定くらいしておこうぜ」
麦野「それはいいけど何でアンタが仕切ってんの」
垣根「だってお前らやる気ないだろ。これっぽっちも。こう言うのは誰かがやんねえとな、話にならねえ」
御坂「垣根さんて、意外と面倒見がいいのかな」
麦野「でも、確かに浜面は世話になったらしいのよね。滝壺のこととか」
一方「そォ言えばオマエ、口は相当ユルかったなァ。べらべら余計なことまで教えてくれてよォ」
垣根「そうか。そうかよ。そうですか。お前らそんなに俺が嫌いか」
御坂「えー。いや、ホラ今日あったばっかだし」
麦野「悪いけどさ、アンタみたいなの趣味じゃないから」
一方「ウゼェ」
垣根「俺だってテメェらなんか大っ嫌いだよ!!」
60 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:32:32.75 ID:nVAsCJCm0
御坂「まあ上から順に考えましょう。一方通行は、今回もし出るならどうするの?」
一方「もしもだろォ……カッコは前と同じでいい。面倒くせェ。最初に顔だけ出したら帰るからな」
御坂「前って……あー、あの応援団の」
一方「あれ暑いンだけどな」
御坂「じゃあほら垣根さんもあんな感じにすればいいんじゃない?」
麦野「長ランねえ、色は白でいいんでしょ。どうせ」
一方「裏地は紫ってかァ? 趣味の悪ィ」
垣根「テメェに服の話はされたくねぇ。っつうか、それだと俺は白組サイドってことでいいのか? 白手袋に白いハチマキ……あれ、結構よくねえ?」
麦野「一昔前のヤンキーみたいだなあオイ。ついでに派手な刺繍でも入れればいいんじゃないかにゃーん」
御坂「???」
一方「オイ、『超電磁砲』がついてこれてねェぞ。いつの時代のはなししてンだ」
垣根「なあ。それあんまりかわいくねえにゃーん?」
麦野「テメエらぁあ……ブチ殺し確定だぁああ!」
61 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:34:42.32 ID:nVAsCJCm0
垣根「まぁ、とりあえずカッコはその辺でいいとして。なんかこー、いい感じの煽り文句が欲しいよなあ」
麦野「その辺、第一位はどうだったのよ」
御坂「えっと、確か『最強の応援』だったかな?」
一方「じゃァ、コイツは『非常識な応援』でいいンじゃねェか。『上から二番目の応援』とか士気が下がンだろォが」
垣根「……『あのガキ、ケガしねェだろォなァ?(裏声)』」
御坂「ぷっ」
麦野「くふっ」
一方「垣根ェ……よっぽど愉快なオブジェになりてェらしいなァ?」
62 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:39:49.13 ID:nVAsCJCm0
垣根「用意するんなら横断幕は『未元物質』でいいぜー。間違ってもこっぱずかしいのは止めてくれ」
麦野「ふっ、ふふ…ガキの…名前とか?」
御坂「ちょっと、笑っちゃ悪いわよ」
一方「……気付いたら外堀からガッチリ埋められてた俺の気持ちなンざオマエらにゃわかンねェよ。はしゃいだアイツらにビデオ用意するだなンだって言われてから、参加するだろって話が出てくンだぞ」
御坂「ああ……それでアンタあんな似合わないことしたの」
一方「次はオマエらの番だろォなァ。楽しみにしてろォ」
御坂「なんかそう言われると嫌な想像しか出来ないんだけど……黒子とか、黒子とかマm」
麦野「ま?」
御坂「なっ、なんでもない!!」
垣根「……埋まる外堀がねえ」
63 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:43:41.43 ID:nVAsCJCm0
垣根「まぁ御坂は無難でいい感じにこなしてくれるとして、問題は麦野だろうな」
麦野「私?」
一方「体操服……着ンのか」
御坂「あんまり想像できないわね。確かに」
垣根「でなきゃチアとか……あんな短いの履く?」
麦野「あんなバカみたいなカッコ、誰がっ」
垣根「多分、お前スポーツとか似合うさわやかなキャラじゃねえんだよ。一方通行もそうだろうけどさ」
一方「否定はしねェ」
麦野「ああ? テメェは似合うってのかぁ?」
垣根「おお。そこのモヤシと違って腹筋割れてっからな。確認してみるか?」
一方「そこで脱ぐんじゃねェぞ。非常識野郎」
64 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:44:49.02 ID:nVAsCJCm0
垣根「いっそエロい路線でいけばいいんじゃね? ラウンドガールみたいに競技とか学校の紹介してまわれば?」
御坂「ステージ用のレーザーやライトも必要ないわね」
麦野「人のこと、馬鹿にしてんだろテメェら」
一方「……浜面が喜ぶンじゃねぇか」
垣根「あー、あいつそう言うの好きなの。チューブトップとか」
一方「バニーとかなァ」
麦野「……ぜっっったいに出ない」
御坂「へ?」
麦野「私は、そんなの絶対しないからなあっ! 畜生、帰るっ!!」
御坂「うっそ、本当に帰っちゃうの? ちょっと?」
垣根「超能力者ってさあ、めんどうなヤツばっかだな」
一方「まァな」
65 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:46:16.12 ID:nVAsCJCm0
垣根「……なんか、俺らも帰っていいってよ。デモンストレーションは無しだとさ」
御坂「急にどうしたの?」
垣根「前回出た、削板軍覇がどっかから聞きつけて『また出てやろうか』ってノリノリで立候補したんだと」
一方「それで懲りたってのか。下らねェ」
垣根「ああ。運営委員会の連中は超能力者が一筋縄じゃいかねえ、あいつらの思う様に動いてなんざくれねえってことを思い出したんだろうな。第七位でアレだ、その上の怪物なんて持て余すに決まってる。まぁ、賢い判断じゃねえのか」
御坂「うーん。大覇星祭自体私は好きだから、開会式くらい別にいいんだけど」
垣根「あっちは削板は使いたくないらしいから……『心理掌握』と並べば? 常盤台の株も上がるんじゃねえ。けどあいつもさー、中学生らしくねえよなあ」
御坂「!! やっぱり止めた!!」
垣根「女ってさあ、めんどうなヤツばっかだな」
一方「まァな」
垣根「……テメェ、ほんっとにやる気ねえな?」
一方「まァな」
66 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/13(土) 22:48:26.70 ID:nVAsCJCm0
ドーモ
お目汚ししつれいっした
暗部5は口調がどうも被っていかん。麦野は口が悪すぎて一方さんと被るし
とりあえず垣根以外は「アイツ」ってのはおぼえた。ちいおぼ
新規でキャラの描き下ろし増えねえかなーって思うわけっすよ
67 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)
[sage]:2014/09/14(日) 01:17:52.68 ID:aiBeIzT30
乙wwwwww
68 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/09/14(日) 17:28:02.33 ID:WFb9Wojy0
乙
こういうレベル5のギャグ的なのとても好き、掛け合いが面白い
この4人の中で一番マシな組み合わせは……垣根と美琴?
69 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/09/14(日) 23:29:25.08 ID:OKRHc2e70
乙っす、期待を裏切らない面白さでした
次回も期待しております
70 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/09/15(月) 11:24:41.38 ID:sdtYvko4O
乙
面白い
71 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/21(日) 22:38:16.50 ID:sCgSYa+Z0
ちっともみさきちでないから今から投下するわー
>>68
垣根と御坂は営業スマイルも得意っぽそうだし、関わりないからお互い嫌がる理由もなさげだよね
ただ、垣根に頼みごとすると後で何を要求されるかが怖そう
72 :
◆q7l9AKAoH.
[saga ]:2014/09/21(日) 22:39:39.28 ID:sCgSYa+Z0
とあるマンションの一室。
広い部屋の中ではキータイプやクリックの音が折り重なる様に響いていた。
他は静かなものだ。
電源の点いたモニタの前に座る垣根も、パソコンから背を向けてじっとしていた。
手には少年漫画が一冊。
その近くには漫画が山と積まれていた。
どれもゴーグルがレンタルショップから借りてきたものだ。
ついさっきも垣根に、
「こんなにどうすんだ?」
とつっこまれたが、ゴーグルは胸を張って答えた。
「明日からたのしーたのしー夏休みっスから! パーっとまとめ読みするんス!!」
それを聞いた垣根はわざとらしく頷いていた。
もしかしたら夏休みなんて感覚がそんなにないのかもしれない。
超能力者には学校も授業もあまり重要じゃなさそうだった。
今現在『スクール』に与えられた任務は特にない。
だが、ゴーグルの少年はこの隠れ家でしばらくデスクワークの予定だった。
任務とは関係ない『スクール』の夏休みの課題、なんてところだ。
飲み物や弁当、スナック菓子をコンビニで調達し遠足気分でカンヅメの準備を進めていたところにたまたまリーダーがやってきて寛ぎはじめたのだ。
73 :
◆q7l9AKAoH.
[saga ]:2014/09/21(日) 22:40:31.92 ID:sCgSYa+Z0
「あーあ。だからどこもかしこも、下校時刻前だってのに学生だらけなのかよ。このクソ暑いのに」
むっとした顔で垣根は愚痴る。
ファミレス、ゲームセンター、カラオケなどなど。どこの娯楽施設も飲食店も浮かれた学生で溢れているだろう。
何しろ明日から夏休み。
ちょっとはしゃぎすぎても大目にみていただきたい。
「垣根さん……ちょーっとそれ、暑がってる風には見えねえっス」
今着ている長袖のジャケットをなんとかしてしまえばいいんじゃないか、とゴーグルは思う。
思うだけだ。
そこまでは口にしない。
「んなの気分だよ。気分。ったく、どうしろってんだよ。ギラついた日差しの下を呑気にお散歩でもしろってのか」
言われて目を向ければ、ここまで暑い中歩いてきた様には見えない。
汗なんてかいた様子もなかった。
街の混雑っぷりがお気に召さなかったらしいリーダーは、涼しい顔でエアコンの設定温度をいじっていた。
まさかわざわざ手伝いに来たとはゴーグルも思っていないが、どうやら本当にただ暇を潰しに来ただけらしい。
74 :
◆q7l9AKAoH.
[saga ]:2014/09/21(日) 22:41:15.12 ID:sCgSYa+Z0
パタン、と本を閉じる音にゴーグルはふとつぶやいた。
「垣根さんて漫画はゆっくり読むんスね」
「そうか? 普通じゃねえの」
「いつも資料とかはぱーっと目通しちゃうじゃないスか。あれスか、ああ言う時ってフォトリーディングとかしてるんスか」
「ホットリーディング?」
椅子にもたれたまま垣根はかくん、と首を傾げた。
どうやら聞きなれない言葉だったらしい上になんだか聞き間違っていた。
「それだと心理定規とかの分野っス。フォトリーディング、速読法の一種っスよ」
ホットリーディングはどちらかと言うとパチモン占い師の技能で、自前に調査しまくった情報を素知らぬ顔で「たった今あなたから読み取りましたよーすごいでしょーう」なんてわざとらしく披露することを言うらしいからちょっと違うかもしれない。
75 :
◆q7l9AKAoH.
[saga ]:2014/09/21(日) 22:42:03.44 ID:sCgSYa+Z0
「ああ。別に意識してねえ。能力開発されてるヤツにしたらそう言うのって工夫で何とかなるんじゃねえの」
『能力開発』も表向きは記憶術や脳科学のジャンルだ。
育脳なんて呼ばれることもあるが実質的には量子力学に基づいた『観測』がメインだ。
育てる前に捉えることが必要で、ある程度の演算能力がないと扱えない。
そんな能力者の頭脳にはその為に欠かせない訓練や開発もされていた。
もちろん個人差はある。
複雑な演算をしなければいけない高レベルの能力者の方がその辺の処理能力は高いはずだが、能力が使えてもお馬鹿さんなやつもいる。
「にしても、ああ言うのはテクニックと効率重視で実が少ないんス。かさましの専門書ならともかく小説や漫画にディッピングとかあり得ねえっスよ。様は他を読み飛ばしてるようなもんスから」
「そんなもんか」
「ファンは些細な描写も大事にしたいんスよ。アニメだって、作画で一喜一憂するし。キャラの公式プロフィールがあれば好きなものとか押さえときたいんス」
「そりゃ随分と暇だな。いや、忙しいのか?」
口と手を忙しく動かしながらモニタをにらみ続けるゴーグルに、垣根はキャスター付きの椅子を引きずりながらやる気なさそうに答えた。
読み終えた本をそばに積まれた山に戻しているらしい。
76 :
◆q7l9AKAoH.
[saga ]:2014/09/21(日) 22:42:52.94 ID:sCgSYa+Z0
「あれば……それもあればの話なんスけどね。いくら脇扱いでも誕生日や身長体重くらいもったいぶらなくていいと思うんスよ……」
「なぁ、これ続きねえの」
ゴーグルのマイナーな独り言は今や当然の様に流される。
アニメやゲームの話題に垣根や心理定規がいちいちなんだそりゃ、と聞いてくることはほとんどなかった。
下部組織の下っ端くん達は、愛想笑いでたまに頷く。
「あー、借りてんのはそこまでっスね。それは『外』の作品なんで買おうにもこっちでの流通少ないんスよ。確か既刊はまだあるんスけど。気に入りました?」
「読むと続きは気になんだろ」
「じゃあ後借りたらまた持ってきます」
「っつうかここはお前の家じゃねえからな」
『スクール』の中で恐らく一番身軽な垣根から釘をさされて、ゴーグルはペコっと頭を下げた。
ここは『スクール』の隠れ家として使っている部屋だが、ゴーグル個人の荷物も多い。
物理的な重量なら心理定規もいい勝負かもしれなかった。
室内のパソコンのうち1台もゴーグルの私物だった。
一体型のオシャレなやつの隣に置かれた、今使っているミニタワーがそうだ。
ネットサーフィンにはまるで必要なさそうな機能が充実している。
77 :
◆q7l9AKAoH.
[saga ]:2014/09/21(日) 22:44:29.23 ID:sCgSYa+Z0
「今日は合間に読もうと思って持ってきただけなんで。置いてきませんから大丈夫っス」
そうか、と返事すると垣根は別の漫画を手にとって読みはじめた。
78 :
◆q7l9AKAoH.
[saga ]:2014/09/21(日) 22:45:13.77 ID:sCgSYa+Z0
「垣根さんは……カリスマ性ばっちしなんで特質っスよね。操作系ってか具現化よりで中身は多系統の複合能力っぽいっスけど」
「そんなのここの能力者なんて操作か放出のどっちかってのがほとんどだろ」
ついさっき、
「休憩! 俺は今から絶賛休憩タイムに入ります!!」とハイテンションに叫んで作業を中断したゴーグルは漫画を片手に垣根とだべっていた。
「でも例外っぽいのもたまにいるみたいっスよね。レアな能力者とか。後は何でしたっけ『外』でたまーに自然発生するって言う『原石』とか。あ、このマンガじゃないスけど、磨けば光るっていいっスねえ。うらやましーっス」
「まぁ、学園都市の能力開発なんざ……たとえば必要な機材と材料を全部揃えた上で、適当な手順で人工ダイヤでも作ってる様なもんじゃねえの。発現する能力もやってみるまでわかんねえんだから。そうやって作ったもんも、それなりのカットを施せる出来かさえ怪しいレベルだろ? 磨いても光るかわからねえってのはひどい話だよな」
そうやって試行錯誤、失敗の繰り返しの中でたまたま見つけ出されたのが、この垣根の様な超能力者、と言う事になるんだろうか。
開発を受けている本人たちでさえ、この街で行われていることについてろくに知らなかったりする。
79 :
◆q7l9AKAoH.
[saga ]:2014/09/21(日) 22:46:00.31 ID:sCgSYa+Z0
「垣根さんは手元から離しても能力使えますよね。羽根飛ばしたりしないんスか」
「羽伸ばしたりはするけど」
何だよ、と言いたげに顔を上げた垣根の表情を確認するとゴーグルは身を乗り出した。
この流れなら大丈夫! と判断して、思い切って『未元物質』の話題を振ってみた。
「バラして飛び道具にするのカッコよくないっスか? 『フェザーショット』的な。流石に敵を操るのは別能力っぽいから難しいかもっスけど」
「カッコいいのかよ。それ」
垣根は内心複雑そうに眉を寄せた。
だがゴーグルは首を縦に振る。
『未元物質』はすごい能力だ。
単純に戦闘面だけみても高い防御性能と攻撃力、そこにオールレンジ攻撃も可能そうな飛び道具なんてプラスされたら。
もしも何かのゲームキャラならよっぽどの弱点を設けるか他のパラメータを調整しないとバランスブレイカー過ぎて禁止キャラ扱いになりそうだった。
そう思いつくとぜひ一度試してもらいたくなる。
「やってみて下さいっス。すげーカッコいいですって」
広げた六枚の翼から『未元物質』を掃射する痩身の少年……は想像するとやっぱり絵面がシュールすぎるかもしれない。
そう思ったがゴーグルは黙っておいた。
垣根は満更でもない顔をしていた。
80 :
◆q7l9AKAoH.
[saga ]:2014/09/21(日) 22:47:47.60 ID:sCgSYa+Z0
「やっぱり、四六時中『未元物質』で遊んでるうちに能力が使える様になってたりしたんスか」
「別に。俺の場合は多分……他の奴らとはやり方がちょっと違ったかもな」
垣根が自分の能力の話をするのは珍しい。
ゴーグルは期待して聞き返した。
「違うって。どんな風にスか」
「俺についた開発官どもがやったのなんざ、俺が発現出来るようになった『未元物質』ってのが何なのか、理論的にこじつけた様なもんだ。既にあった何かの理論から上手いやり方を見つけてくるんじゃなく、その為に一から積み上げなきゃならなかった訳」
垣根はそう言うと組んでいた腕をつまらなそうに伸ばした。
開いた右手の周りにはパキパキと音を立てて『未元物質』が展開されていた。
室内照明からの光を不自然にねじ曲げ、反射しながら能力の産物はトゲだらけの螺旋を描いて伸びていく。
眺めていくうちにその形が歪み、滑らかになり、最後はチリ一つ残さずにきれいさっぱり消えてしまった。
「それでも、これが何なのか誰もわからなかった。この俺だって、こいつで何が出来るのか隅から隅まで理解してる訳じゃねえ。演算式もまだ未完成って所だし」
ぷらぷらと右手を振って、垣根は息を吐いた。
飽き飽きした様に吐き捨てる超能力者だが。
それを見ていたゴーグルの声は正反対なくらい興奮していた。
「それでも超能力者って……垣根さんがマジになったらどうなるんスかね。『未元物質』完全掌握! とかしちゃったらヤバいっスね!!」
「……いいな、それ」
垣根は驚いた様に目を丸くすると、ふっと微笑んだ。
81 :
◆q7l9AKAoH.
[saga ]:2014/09/21(日) 22:48:28.78 ID:sCgSYa+Z0
「まぁ、最初から情報が足りてねえのは自覚してるけど。無い物ねだってもどうにかなる訳じゃねえし」
垣根は頭の後ろで腕を組むとそのまま深く椅子に体を沈めた。
ギィィ、と背もたれが音を立てた。
不自由はしていない、しかし現状に満足もしていない。
そんな態度がみて取れた。
「能力者の法則って言えば、垣根さんが前に調べてた事例ってのはどうだったんスか?」
「暴走能力者か? ああ、ありゃダメだ。中身も参考にはならねえ。何より使われてんのが色々と悪趣味過ぎる」
そう言うと垣根は近くの収納を漁りはじめた。
少しして、分厚い何冊かの資料と共に小さなケースを取り出した。
「……なんスか。これ」
プリントアウトされた書類の方はぱっと見て「大脳生物学」とかの難しそうなものらしいこと以外よくわからない。
そしてケースの中から出てきたのは薬局にでもありそうな小さなビニールのパウチ。
中には白い粉末がごく少量だけ封入されていた。
82 :
◆q7l9AKAoH.
[saga ]:2014/09/21(日) 22:49:36.22 ID:sCgSYa+Z0
「『能力体結晶』。試すか? トベるかもよ」
垣根はつまんだ袋を指で叩くと底に溜まった粉末をならしてそう言った。
封を切ったスナック菓子でもすすめる様な気軽さだった。
「いいッ?! 『体晶』ってこれっスか? 能力者何人も潰したって薬っスよね。俺いいっス、遠慮しときます」
ゴーグルは思わずのけぞって首を振った。
適性があれば、極一部の能力者には大幅な能力の上昇効果があると言われる薬品だ。
だが、暴走状態を起こす強烈な副作用の方が有名で、その名前だけならゴーグルも聞いたことがあった。
「垣根さんまさか……試しました?」
「はぁ? んな無駄なことする訳ねえだろ、俺が」
おそるおそる聞いたゴーグルは苛立った目を向けられて慌てて謝る。
ゴーグルは、この人が暴走状態になったらどうやって止めるんだろう、とか怖い想像をしてしまったのだが不要な考えだったらしい。
超能力者、現在学園都市でも最高峰に位置する能力者がわざわざ危険な賭けに手を出す理由がなかった。
83 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/22(月) 02:32:40.75 ID:p1jngrY10
「これって何で出来てるんスか」
「暴走能力者の脳内には独自の伝達回路があるらしい。そこで異常分泌される神経伝達物質なんかを集めて精製したのがそれだ。物としちゃあ、暴走時の脳内を再現しちまうのか、それとも他の能力者の伝達回路ってのに使用者が拒否反応でも起こすんじゃねえかと思うんだけど」
「あれ。拒否反応って初耳っス。どうしてそう思うんスか?」
「『多重能力(デュアルスキル)』の研究は知ってるか。俺達能力者は、まるで違う二つの能力を使う事が出来ねえ。一つの能力の幅を広げる事は出来ても、開発で開いた脳回路を元から増やすなんざ負担がデカすぎるって立証済みだろ。そこに他人のおかしなモンをブチ込んでみろ、どうなるか……っつうか拒否反応以前に気持ち悪いだろ。それ、元は他の能力者の一部だぞ」
うげっ、と舌を出すと垣根は嫌そうに顔を顰めた。
劇薬で引き起こされる危険な暴走よりも、そちらの方が余程不快だったらしい。
「複数の能力使おうとするのはやっぱ無理なんスかね……能力使用に必要な、例えばOSみたいなもんの入ったドライブのパーテーションはいじれなくても、外付けとか他ドライブ経由なら何とかならないスかね? パソコンだって、既存のOS維持したままの切り替え方法くらい幾つもあるんスから」
学園都市に居る数多くの研究者の中には、愉快でイカレた仮説を立てたり実験してみたりする人間もいる。
今のはゴーグルがほんのちょっと思いついただけの事だが、探せばどこかにそんな「実例」もありそうだった。
84 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/22(月) 02:33:48.52 ID:p1jngrY10
「必要なもんを外から丸ごと持ってくるってことか? 今の段階じゃそれも難しいだろ、何しろ『自分だけの現実』や『AIM拡散力場』でさえ研究途中の分野だからな。たとえ脳を移植したって、能力は変わらないなんて話もあるし。開発してない人間に既存の能力者の機能だけあてがうとかするんなら、暴走はひとまず防げるかもしれないけど」
「あー。でもそれやると、能力開発そのものがいらなくなっちゃいますね。俺たちもお払い箱、とか」
いや、と垣根は少し何か考えてから首を振った。
いつの間にか真剣な顔をしていた。
雑談には変わりないが、つまらない内容が思わぬ方向に向かっていた。
「狙った能力者が手に入らねえうちは、『絶対能力(レベル6)』の可能性に当たるまで数をこなしたいってのも恐らくは学園都市の本音だろ。気軽にそんな真似したんじゃ本末転倒だろうけど、別に互いに潰し合う様な条件じゃねえ。まぁ、そんな技術が使えるかどうかは別として、今まで無駄に開発させられた下位能力者連中にはそれなりに同情するけどな」
現段階で、学園都市に暮らす180万の学生のほとんどは強能力者以下に振り分けられる。
日常生活で便利だと思える程度の異能さえ、手に入れられていないものが数多くいる。
85 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/22(月) 02:34:47.03 ID:p1jngrY10
「やっぱり超能力者から上ってのを作るのが学園都市の目的なんスかね」
能力開発を受ける為に希望を胸にやってくる子どもや、行き場のない子どもたちの為にただの親切や善意でこの街が開かれていないことは、垣根もゴーグルも嫌と言うほどわかっていた。
なんの為の能力開発か、なんてところに焦点があたった。
「さあな。だが、それだけだと思うか? だとしたら、第一位が確立した後の能力開発なんざそもそも意味なくなるだろ」
「うーん……たとえば約0.00000056%の確率のガチャを回したとして。一つでもマシなの引いたら、俺ならとりあえずそれを全力強化っスかね。次同じだけ回しても、いいのが出るとは思えないんで」
180万分の1の確率で見つかった金の卵。
それを、それこそ文字通りにレベルアップさせるなら、現在使えるベースで済ます方が早いに決まっている。
その後使うかもわからない素材を数万単位、数を揃える方が、余程手間がかかりそうだ。
「だが下は五歳から、ガキの能力者は今だって生産され続けてんだ。そんなに保険をかけたいのか、別に思惑があるのか。どっちにしろ学園都市の目的ってのがそこで止まるとはどうにも思えねえ」
学園都市は膨大なロスを抱え込んででも次の候補の発見に賭けたいのか。
それともその余剰すら必要だとでも言うのか。
たった二人の思いつきでは答えが出そうもなかった。
86 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/22(月) 02:35:40.55 ID:p1jngrY10
「そう言えば最近出回ってるって言う……それ何だっけ?」
「『幻想御手』、まだ調査中っス。薬なのか特別な開発方法の資料なのか……それがどんなもんかもはっきりしないし、噂されてる能力増強の話もなにがなんだか」
今日は朝からインターネットの掲示板を中心に眺めていたゴーグルは椅子の上で伸びをしながら返事をした。
思い出したようにモニタに向かうと、いくつかのウェブページを開いた。
「ただ……効果はあったって話はよく聞くんスよねえ。で――これは使えそうなんスか」
コピーしたログを作業中のテキストファイルに貼り付けてゴーグルは垣根を仰いだ。
「いや。目についたもんは当たっておきたいだけだ。何が『直接交渉権』への突破口になるかわからねえからな。だが」
垣根はコキコキと首を鳴らすと眉を寄せた。
椅子から立ち上がると、ゴーグルの背後からモニタを覗いた。
マウスを取ると次々にウィンドウを開いてゴーグルがまとめていたファイルに目を通し始める。
87 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/22(月) 02:36:35.39 ID:p1jngrY10
「どうも、話が広がり過ぎてねえか? 知られちゃマズいもんならさっさと情報が潰されてると思うんだがその様子もねえ。デマにしては息が長いだろ」
「そうっスね。『神様の頭脳』系の噂は山ほどありますけど、これは珍しいやつっス。噂の盛り上がりと探す書き込み、使用者の実体験報告がこの一週間で明らかに増えてます。燃料、何らかの裏付けがないと普通この手の話はあっと言う間に飽きられて消えちゃうんスけど」
「はぁ? 待て。そんなのわざわざ知らせてんのかよ。馬鹿じゃねえの」
呆れた様に垣根は聞いたがあるものはあるんだから仕方ない。
「ほら。ここに元無能力者の書き込みとか、こっちは動画とかあります。みんな自分の能力に変化があれば自慢したいんスよ。あーあ。現物があると色々わかりそうなんスけど」
「美味いだけの話なんざ、どうせ存在しねえ。馬鹿なやつらはろくに考えもせずに引っかかるんだな」
どう見てもチンピラな大男が、何もないところから火を起こして大はしゃぎする。
そんなある意味微笑ましい動画を横目に。
垣根はさっき出した資料と『体晶』を元の様にしまった。
「でも、調子にのり過ぎて騒ぎを起こすやつがいるなんて話もあるんスよね。そっちが大事になると……いよいよ俺らに話が回ってきますかね」
にしし、と愉快そうにゴーグルが笑う。
だが垣根は冷め切った目を細めただけだ。
あまり期待はしていない様だった。
88 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/22(月) 02:37:30.61 ID:p1jngrY10
「下手に騒ぎになって警備員や風紀委員が絡む様だとかえって俺たちの出る幕は無くなっちまう。話の裏を取る前に、表向きそれらしい体裁が整えられちまうこともあるだろうし。そしたら余計な詮索なんざした所でこっちが怪しまれるだけだ」
痛くもない腹を探られるのは誰だって嫌だろう。
でも、人間痛いところをつかれるのも癪なものだ。
ただでさえ『暗部』の首輪が付いている様な状況で、牙を剥いたのではないかと今認識されるのは『スクール』としても望ましくない。
「引き続き様子はみとけ。だが、タイミングを見誤らない様気をつけねえとな。いいカードがあっても、それを引く前にこっちがバーストしたんじゃ意味がねえ」
はーい、と少年は軽い調子で答えると机の上に置いてあった輪の様なゴーグルを頭に付けた。
同時に、それまで暗かった近くのモニタも電源が入り室内からは立ち上がったハードディスクのシーク音が幾つもしはじめた。
89 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/22(月) 02:38:42.46 ID:p1jngrY10
「まー、俺らみたいのが多少つつき回しても、次々わいてくるんスよね。この手の話。ネタに困らないのはいいんスけど今更そんなもんどうした、ってあっちも開き直りそうでムカつきません?」
「必要なのは、中核に食らいつける程の重みのあるもんだ。上辺だけ掬い取って掻き集めた所で、これっぽっちも役に立たねえだろうし」
繋いだケーブルをいじりながらゴーグルは愚痴っていた。
休憩時間は終わったらしい。
「もしも……もし、俺が……はじめっから」
「垣根さん? 何か言いました?」
垣根の呟きは、再びキーボードに指を走らせカタカタと作業を再開したゴーグルに拾われたらしい。
「別に。少しばかり面倒だってだけだ。何でもねえ」
肩をすくめると垣根はまた椅子に座った。
頬杖をつくと窓の外を睨む様に眺める。
学生で賑わう街は日が暮れようとしていた。
90 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/09/22(月) 02:39:59.43 ID:p1jngrY10
ドーモ
『未元物質』のはなしする真面目ルヘンに挑戦
学園都市に知られ過ぎてたって言う『スクール』の動向が気になる
このあとはビリビリ大惨事になるから多分ゴーグルは泣くことになると思う。がんばれ
91 :
◆q7l9AKAoH.
[saga sage]:2014/09/22(月) 02:41:27.19 ID:p1jngrY10
って投下しようとしてたらまさか我が家がビリビリ大惨事だった
煙でたり色々修羅場になった
垣根「ブレーカー上がんねえしお湯出ねえぞコラぁ!!」
ゴーグル「俺のせいじゃありません!!!!」
みたいな小ネタ足そうとしたからか
その呪いか、いや能力か
魔術師の仕業か
間あいたけど、たぶん抜けはないはず
とりあえずおやすみ
92 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/09/22(月) 03:30:07.02 ID:e5Zwx6bp0
乙
おのれ魔術師!
未元物質って何がどこまでできるのかよくわからんよね
>脇扱いでも誕生日や身長体重くらい〜
名前すらないゴーグル君が言うと涙を禁じえない
93 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/09/22(月) 04:05:21.68 ID:F4WqGn75O
乙ぅ
ゴーグル君の名前はいつ知ることが出来るの
未元物質がどこから出てきたか分かっただけで垣根が世界の全てに勝てると思うあたり
垣根の中の世界から出てきたとでも思うのが妥当なのかもしれない
現実との差異の演算次第でなんでも出来るかもね
94 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/09/22(月) 04:40:14.76 ID:zFV1W3KlO
禁書はキャラ多いわりには正確な名前わからないキャラが多いんだよね
モブとメインキャラの中間みたいな
95 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)
[sage]:2014/09/22(月) 18:23:40.03 ID:pE0HBHw70
未元物質って禁書SSのどらえもん的な感じあるよね
物質を生成できるってのがとても便利、一方通行よりチートに思えてならない
96 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)
[sage]:2014/09/22(月) 21:59:43.75 ID:TWMzwHTT0
新約6の未元体の垣根の発言から未元物質は垣根の自分だけの現実から生成されてるって言ってたから未元物質はAIM系の能力で確定だね
97 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)
[sage]:2014/09/24(水) 17:26:25.20 ID:sdgT9vT/O
乙
能力者は大なり小なり物理法則を突破してるが、垣根のはその中でも「無から有を引き出す」という質量保存の法則ガン無視の超異能だからな……
未元物質自体の性質も合わせて、どうも魔術寄りな能力に思えてならない
98 :
◆q7l9AKAoH.
[sage]:2014/10/06(月) 00:47:35.97 ID:iz+wV3nL0
一位が来る前に二位がカンストしそうだぞちくせう
前回ので一巻久しぶりに読んだ
能力開発って「もしかしたらあり得るかもしれないけど自然の状態ではまずあり得ない未来の現象の可能性」を
「それを観測した個人の頭の中から現実にひっぱり出す」みたいなことしてんだっけ
それを説教やワンパンで問答無用にブチ[
ピーーー
]上条はすげーなあと思うんだ
どうやら好きでやってるわけじゃないらしいのにそのおかげでメルヘンな羽しょっちゃう羽目になった垣根ってきっと頭おかしいんだろうなあと思うんだ
他にも周りを反射するやつとか、ものすごいビーム打っちゃうとか、他人をおもちゃにしてみるとか、前髪から放電するとか色々あれだけど。そんなのが自分の可能性って確かにみんな隠しきれない人格破綻者っぽいけど
>>92
それな。ゴーグルくんなんかモブの中でも名もなきモブだからな。『ブロック』のやつすら名前と過去とおかしな口調とキャラ設定あったからな
>>93
超電磁砲の外人研究者もアニメ化したら確か名前があった。つまり何らかの形で映像化されればワンチャン。それでも「ゴーグルの少年」のままかもしれないけど
>>94
あえて名前を出していないタイプがインなんとかさん、一方通行、冥土帰しあたりだとして……残りはなー期待しちゃダメなやつだよな
>>95
未元物質食べたりする話あったしね
きっとその気になれば衣食住完備出来る。なんでもありだ夢が広がる
>>96
「AIM系の能力はとりあえずなんかチートっぽい」イメージ。AIM拡散力場がよくわかんねー
あと超電磁砲SでフェブリのAIMを物質化する能力うんぬんかんぬんって出てきたときに「なんでそこで未元物質は触れられないしでてこないんだよ!」
と思った人は一人くらいいると思うんだ。なんとなく系統は近そうだよね
>>97
ほんとなんなんだ未元物質
科学発の能力のくせに天使に似た六翼なんてモロ魔術的な象徴を背負ってるあたり怪しいよな
一方通行のも風斬のも翼って作中で呼ばれてるがあっちは輪っかついてるけど形全然違うし
色々怪しんでるけどいつかかまちーが教えてくれんだと信じてる
99 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 00:51:27.74 ID:iz+wV3nL0
「はぁあああ……マジ雷空気読んでほしいっスわーありえねえっスわー」
しょげながらキーボードを叩くゴーグルの少年の口からはやる気のない愚痴がだらだらともれていた。
ソファに転がっていた垣根がその頭を狙って本を投げつけた。
「お前それ何回言い続ける気なんだよ。聞き飽きた」
「この前の落雷で最終回の予約がパーになったんスよ……円盤になるまで悔みきれねえっス。作業途中でふっとんだデータはなんとかなるからいいんスけど」
ぶつかる直前で急に下に落ちた本を拾うと、ゴーグルは次の巻を机の横から探して投げ返した。
ゴーグルの少年は先日に引き続き『幻想御手』に関する話をネットから拾い集めていた。
垣根はたまに顔を出してダラダラしながらゴーグルが借りてきた漫画を読んでいた。
ゴーグルを追い越してすっかり先まで読んでしまったらしく、そのうちレンタルの催促とかをされそうだった。
100 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 00:52:43.54 ID:iz+wV3nL0
「ああ、あん時はシャワーが水になったから焦ったけどすぐに戻ったな」
「こっちは突然全落ちっス。レンジもダメでした。この辺だけじゃなくて、やっぱそこそこの範囲に影響あったんスね。雷なんて予報になかった筈なんスけど」
「どっかの研究所がなんかやらかしたって話も聞かねえしな」
「人為的な落雷をあの規模で起こすのなんてどんな無茶っスか。それこそ超能力者でも呼んでこないと」
おかしな出来事、をそんな風に笑い飛ばそうとしたゴーグルだったが、はっと顔を上げると大声でしゃべり始めた。
「そう言えば。なんなんすかねー今朝! 朝の五時っスよ? 警備会社からすげー電話来たんスよ。あんまうるさいんで起きて出たら警報装置がどうの、もう用事済んでますーとか言ってなあなあで切られたんス。結局『スクール』で使ってるマンションからだったんスけど。あれもなんだったんだか。迷惑っスよね」
101 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 00:54:12.59 ID:iz+wV3nL0
「ああ。俺」
「へ?」
椅子のキャスターを転がしてゴーグルは思わず後ろを振り返ったが。
「私が犯人です」とあっさり自白した超能力者は呑気にコミック本のページをめくっていた。
「それ俺。そっか、お前んとこにも連絡いったのか」
大したことなさそうな垣根だが、ゴーグルはそうはいかなかった。
この超能力者がトラブルを起こしたと聞いてしまうと前例がいくつか浮かぶだけに嫌な方に考えてしまう。
「垣根さん? あそこって確かこの前借りたばっかっスよね? まさかもう何か壊しちゃったんスか!?」
「壊してねえよ。ったく、一々うるせえんだよな。ちょっと窓開けただけだっつうの」
102 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 00:55:53.21 ID:iz+wV3nL0
「なんでそれで警報鳴るんスか」
そこで垣根は黙ってしまった。
ソファに本を置くと、おもむろに座りなおした。
両膝の上にそれぞれ腕を乗せて下を向いてしまう。
「……外から」
そしてぼそっと呟いた。
「はい?」
「ああもう! 外から窓開けて中に入ったんだよ! 悪いかよ!」
下を向いていた垣根は顔を上げると同時に、そりゃあ見事に逆ギレした。
外ってなんですか何してるんですかおかしいし悪いでしょう! とツッコミたくなるのを我慢してゴーグルは息をはいた。
103 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 01:04:49.52 ID:iz+wV3nL0
「いや、そりゃ警報バッチリ作動しますよ。無人の部屋の、あのでっかい窓が玄関より先に外から開くなんて空き巣か何かに決まってるじゃないっスか。泥棒でもそんな無茶すんのはアクション映画の主役くらいっス」
『スクール』で使っている中には第三学区の某タワーマンションもあった。
それも上層階だ。
そんな所にワイヤーアクションとかで侵入を試みる命知らずがいるなら、拍手喝さいと共にブタ箱送りだろう。
そもそも窓はどうやって開けるんだ、と思ったが『未元物質』ならそれもなんかやれそうだったのでゴーグルの少年はあえてそこに触れなかった。
「言っとくけど靴は脱いだぞ。っつうか警備会社のヤツとおんなじ様なこと言ってんじゃねえよ。俺は疲れてたんだよ。エレベーター待つより直のが早いだろ」
「垣根さん……それでもせめてドアからちゃんと帰ってください。そこは常識的に」
104 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 01:09:55.96 ID:iz+wV3nL0
ゴーグルはちょっとがっかりしながらそう忠告した。
しかし、ほんのちょっと前までむくれていた垣根はもう悪びれた感じもなく腕組みすると不敵に笑った。
「この俺にその常識は通用しねえ。まぁ、次からは心配いらねえよ。外からも電子ロックと認証を解除出来るようにさせたから」
「そんなの誰も出来ないっス。垣根さん専用じゃないスか……てか勝手にしちゃっていいんスか? オーナーに話通しました?」
「何かあったら後で言やいいだろ」
自分が折れると言うのはとことん垣根の中ではあり得ない事らしい。
おまけに反省もしていないし、次もあるつもりの様だった。
心理定規がびっくりしなくていいように、今度それとなく『垣根さん専用口』の話をしておこう、とゴーグルは心のメモに書いておいた。
それと。
もしかしたら大笑いするかもしれないから垣根さんのいない時にしておこう、と書き足した。
105 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 01:12:25.44 ID:iz+wV3nL0
「ああ、なんかまたお前宛に荷物来てたぞ『PC部品』だっけ。お前の棚んとこに置いといたけど。本当パソコン好きだな。全部で何台あるんだよ」
「寮の部屋の抜いても三台はありますけど……って、まさか開けました?」
「その辺は常識的だ」
垣根の言葉に一瞬肝を冷やしたゴーグルだが、慌てず騒がず落ち着いて聞き返した。
「ですよね……いや、その、中見てないんならいいんスけどね万一あると俺の信用とか社会的な生死に関わるんで困るんですよねははははは」
ゴーグルは内心必死になって脳をフル稼働させていたが、最近その手の商品は注文していなかった気がする。
多分。
だからセーフだ、もし何かあってもきっと。
多分。
学園都市は『外』以上に年齢規制のレーティングが厳しいところがあってちょっとした買い物にも苦労する。
アニメが好きなやつだと認知されているのはいいが、流石にゲームオタクの方だと『スクール』内での評価とか色んなものがガクッと下がりそうだった。
106 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 01:13:47.57 ID:iz+wV3nL0
「ああ……お前もおかしな名前で注文するんだ? この前心理定規のやつに『メルヘン・ファンシーグッズ』とか届いてたから開ける所見てたんだけどよ、期待裏切って小分けのプラスチック爆弾だったわ」
「これっぽっちもファンシーでもメルヘンでもないじゃないっスか。まるで対極っスよ」
「だよな。しかも『ぬいぐるみか何かだと思った?』とか言って鼻で笑いやがったぞあいつ。かわいくねーよな」
今いない心理定規のがっかりなニュースに二人は息を吐いた。
『スクール』の紅一点は時に変化球を放ってくる。
いや、案外自分の部屋はかわいいものだらけとかそんな感じなのかもしれない。
男子としてはそんな幻想を抱きたかった。
「顔は結構かわいいんスけどね」
「な。っつうかお前アニメ以外の女に興味あったんだ」
「そりゃま普通に」
「そう言えばあいつ、今度知り合いに頼んで大型免許の教習受けるとか言ってたな」
107 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 01:16:57.03 ID:iz+wV3nL0
ギャップありすぎな二球目にゴーグルはずっこけた。
心理定規と車。
それもかわいいバスガイドさんとかタクシーの運転手のお姉さんとか言うレベルじゃない。
大型車両でイメージされるのはトラックとかダンプ、ショベル、クレーン車。
まるでかわいくない、十代の女の子とは無縁そうなものばかりだ。
「いや、普通に年齢でひっかかりません?」
「技術教習だけでカード取るわけじゃねえからいいらしい。それも動けばいいってレベルで充分とか言ってやがったな。何かあっても、その辺の車やなんか使えれば確かに足には困らないだろうけど」
「ああー、前に普通車なら動かせるって言ってたかも。言ってたなあぁ。動かすってなんだろって思ったんスけど」
ちょっぴり残念な記憶を思い出してしまったゴーグルは頭を抱えた。
もしかしてピッキングとかも出来るんだろうか、なんて想像をたくましくすると心理定規が段々とマルチスキルなトンデモ少女になってしまいそうだった。
『スクール』に常識的な人はいないのだろうか誰かに聞きたくなる。
108 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 01:22:38.92 ID:iz+wV3nL0
まさかの特技にゴーグルはそれなりに驚いたのだが。
ある意味なんでもアリな超能力者はあまりその辺りは気にならなかったのか。
なんてことない調子で続けた。
「攻撃も防御も出来ねえ、その上逃げるのにも使えねえ能力だといざって時に苦労するらしいぜ。あいつも、テメェしか信じてねえ様なタイプだしな」
「いやーしたたかっスねー。でも幾ら緊急事態でもあのカッコでトラックとか乗ってほしくない様な……」
困った時誰かに助けてもらう、と言う女の子の王道がイメージできない心理定規だった。
何かあっても、能力で相手を誘導して結局は自分の力で助かってしまいそうだ。
「垣根さんは乗らないんスか? バイクとか似合いそうっスけど」
「車なんざテメェで乗るもんじゃねえ。用意させるもんだ」
今ここで口に出しては言えないが、能力で飛べてしまう人間に乗り物の必要性はあまりないかもしれない。
おまけにものすごーく上から目線な、リーダーらしいお言葉を頂戴してしまった。
109 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 01:26:49.48 ID:iz+wV3nL0
駄弁っているうちにゴーグルの机の上の携帯電話が鳴った。
「もしもーし。え? スコア? ああ、マジかー。じゃあ今度更新しとくから――」
なんだかやたらハイテンションな相手と話すと、ゴーグルはすぐに通話を切ってしまった。
「ダチか」
「ええまあちょっとゲーセンで知り合ったんスよ。あえば遊ぶ顔見知りっス」
「そいつもオタク?」
「んー、まあリアル寄りっスけどね。面白いヤツですよ。ストライクゾーン激広くって」
「そこは否定しねえのか」
呆れた顔で笑うと垣根はまた漫画の続きを読み始めた。
モニタの前に戻ると、ゴーグルはなんとなしに口を開いた。
話のタネになりそうな知り合いの愉快で馬鹿な話はちらっと聞いたことがあった。
110 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 01:34:12.00 ID:iz+wV3nL0
「なんかこの前は……『JSの希望の星になるんやー!』って言って遠足シーズンの小学生にてるてる坊主を山ほど作って配ったとか配らないとか」
「JSって何だ」
「女子(J)小学生(S)の略、っスかね」
「それただの変態じゃねえか」
眉をひそめると垣根はズバっと言い切った。
件の知り合いなら自分は紳士だとか言いかえしそうだった。
女の子に言われるなら大喜びしそうだからやっぱり変態だろうとゴーグルも思う。
「光源氏計画なのか、単にお礼が聞きたかったのかわかんねえっスけどね」
「礼? なんでわざわざんなもん聞きてえんだ」
「さあ……なんでなんスかね」
ゴーグルもなんでそんなことをしたのか何て詳しくは知らない。
一緒にいたそいつの知り合いによると、不審者として風紀委員にしょっぴかれたらしいからうまくいったのかもあやしい。
「うーん。ちょっとしたことでいいんスけど誰かに、感謝されたい時ってありません? でも悲しいもんで、小さい子は何かあっても『ありがとうございます』って素直に言ってくれるんスけど、特に女子は年齢上がると途端に態度が辛辣になるんスよ。まぁ最近は小さい子相手だと親切も『事案』扱いになっちゃうんスけど」
「そう?」
さっきからこの話題にまるっきり共感できないらしく、垣根は首をひねっている。
「ああー……垣根さんには関係ない話っスよね。そうっスよね。垣根さんの場合、もし人とぶつかっても相手の方からお詫びしたいって連絡先とかプレゼントとか貰いそうっスよね。すいません俺が間違ってました」
「お前……どっかで人のこと見張ってんのか」
「マジスか」
冗談で言ったつもりが垣根には真剣な顔をされてしまった。
111 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 01:39:16.78 ID:iz+wV3nL0
「この前、カウンター席で近くの女に水ひっかけられてさ。どうせ汚れもしねえしいいって言ったんだけどよ」
ポケットをごそごそしていた垣根は取り出したものを放り投げた。
女物のハンカチだった。
シルクか何かの高そうな、なんか刺繍とかしてある。
その間に小さな紙がはさんであった。
「まさかっ、『きゃーごめんなさーい手が滑っちゃった☆』ノリの超古典的な逆ナン……ッ?!」
今時ドラマや漫画でもみないような手法なのかと、メモを手にしたゴーグルは戦慄した。
焦って書いたのか斜めに走る文字で電話番号とメアドが書いてあった。
いや。
もしかしたら、本当に心優しい女の子が何かしたくて勇気を振り絞ったのかもしれない。
学園都市だってそんな純粋な子が一人くらいいるかもしれない。
「やるよ。いらねえし」
「お、俺がもらっても何にもならないじゃないスか、いいです!!」
そんな自覚も興味すらなさそうな垣根の前では彼女のフラグは立つ前に消滅しまった様だ。
成就させたり回収するどころか構築するのにはきっと苦労するんだろう。
112 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/10/06(月) 01:40:18.05 ID:iz+wV3nL0
ドーモ
冷蔵庫とクレーン女に比べるとゴーグルのインパクトのなさが際立つ
かわいそうに
クレーンはプラス大型特殊免許がいるんだってね
定規ちゃんがんばれ
113 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/10/06(月) 03:49:27.01 ID:j2WEEcyX0
乙
専用口wwww
青ピ名無し繋がりかぁーとか反射的に思ってしまったのが少し悲しい
定規ちゃんは教習を受ける時もドレスなんだろうか
114 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)
[sage]:2014/10/06(月) 09:18:46.45 ID:EzNvtc0ZO
マジな話、垣根は恋愛に興味無さそうだもんなー
彼女いないだろって突っ込まれても「それがどうした?」って返しそうだ
115 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/10/06(月) 23:19:12.19 ID:tn4JfjjXO
どうしよう垣根がモテるビジョンが浮かばない
なんかサドっぽい女に股間踏まれてるところしか浮かばない
あの中学生みたいな精神の虫マニアが数々の女性に愛されてたという過去が暴露されたら
鬱要因にしかならなかったオティヌスからの虐待シーンも魔神様もっとやっちまいなって見方にすり替わりそう
あと俺も垣根進化させた上でランクマしました
一方通行出なさすぎてもうどうでもいいの心境
男しかいないホモパ作りたかったのにィ!!
116 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(SSL)
[sage]:2014/10/12(日) 16:39:54.87 ID:1ufmQ7Be0
艦コレで初春って見ると、提督+初春で帝春を連想してしまい
同時にこのスレも思い出す今日この頃
117 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/10/13(月) 14:06:19.29 ID:qLFAkSQp0
レベル5の男共は女に縁がない運命なんだよ
118 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/10/31(金) 12:59:17.14 ID:njB5VnQ4O
待機
119 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/11/15(土) 01:05:51.79 ID:rO11E524O
戻ってきてよ
>>1
さん
パズデックスで垣根が弱体化されたショックで死にそうなんだ
助けてよ
僕を助けてよぉ!
120 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/11/17(月) 16:11:18.93 ID:c+q43Nep0
スクールのスピンオフとかでねぇかなぁ…
121 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/11/17(月) 23:29:33.81 ID:s3Hx9eX3o
ていとくんについてどこかで見かけた、「禁書SS界の渚カヲル」って表現は至言だと思った
122 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/12/03(水) 02:53:07.59 ID:wPRqB3Qw0
微かな音を立ててエアコンが室内の空気を整えている。
適当な手つきでリモコンをいじっていた少年は少ししてそれをソファの上に放り投げた。
真夏だというのに長袖のワイシャツに袖を通した少年は続いてテレビのリモコンに手を伸ばす。
昼すぎのバラエティ番組で若い女性リポーターがにこにこしながら、
「おいしーい」
「かわいーい」
「すごーい」
を繰り返すのを数パターン眺めてからチャンネルをあちこち変える。
しばらくそんなことをしてから、電源を切るとため息と共に肩を落とした。
そんな時、玄関の方から物音がした。
「ちース。やっぱ垣根さんスか」
ドアを開けるなりゴーグルの少年はそう口にした。
垣根が眉を寄せると、彼は鍵が開いていたから居ると思ったと答えた。
「最近心理定規は見てないし。夏休みっスからねえ」
「そう言うお前は? わざわざこっちに何しにきてんの」
ついこの前まで調べていた『幻想御手』にまつわる話は結局これと言って『スクール』に役立ちそうな情報は掴めないままだった。
騒ぎと、ちょっとした事件がほんの数日であっと言う間に収束したかと思うと、後には嘘か本当かわからないような噂話ばかりが残っていた。
『スクール』での目立った活動もないので、彼も特にここに来る用事はないはずだった。
「隠れ家のパソコンならセキュリティその他が『ランクB』以上で使えるんで。何かと便利なんスよ。なんか今日は、日付変わったへんからっスかね? ネットとか回線がやけに重いんス」
なんて言いながら少年は背負っていたリュックサックを降ろすが。
そんなことを言っていた癖に中から出てきたのは数台の携帯ゲーム機だった。
「はぁ。しっかし今日もつまんねえな」
ソウデスネーと返事をしながら後ろを通ろうとしていたゴーグルの少年は、ちょっと引き返すとスマホをいじっていた垣根の手元を覗きこんできた。
「あ。スコアアタックっスか? 『キャンディ☆スラッシャー』、けっこうハマりますよね」
「ああ。クエストの方はだいぶ埋まったから」
「あれ。垣根さん、チョコフォンデュのブラインドってアイテムで消せますよ?」
123 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/12/03(水) 02:56:33.90 ID:wPRqB3Qw0
パズルアプリの中でも、好き勝手にキャンディを操作して時間いっぱいひたすらポイントを稼ぐモードで遊んでいた。
ちょうど、画面の上に出てくる敵キャラが数ターンおきに邪魔をしてくるステージだった。
ボウルに入ったチョコをぶつけられると画面に並んだキャンディが少しずつ見えなくなってしまう。
チョコレートをなぞると一瞬だけ下のキャンディは見えるようになるが、それで移動してしまえばあまり意味はない。
面倒なオジャマ効果をなくすには、同じところを三回以上こするか専用のアイテムでまとめて取り除くしかない、と言うのが一般的な攻略法だった。
「いいんだよ。こういうプレイだ」
「でもキャンディ全然見えないじゃないスか。どんな縛りプレイっスか」
首をひねるゴーグルの前で、垣根は画面の上を一筆書きで素早くスワイプしてみせた。
すると。
面白い様に少年は目を丸くする。
「え? なんでそれで15も連鎖するんスか?」
「開始直後、一番最初の並びは見えるだろ。動かせば確認も出来るし」
「あー、でもまたチョコが……って、更に18? どうなってるんスかこれ」
再び塗り潰されたなんてお構いなしに、垣根が指を動かすと次々にキャンディが消えていく。
画面に浮かび上がるコンボ数にゴーグルは信じられないと言いたそうな声をあげた。
「こいつの配置と落ち方のパターンな。やってるうちに大体読めてきた。あー、二つ連鎖が足りねえってことは……ここ、丸い緑じゃなくて紫のがきやがったな」
「……本当だ」
キャンディの色も形も見えない所で垣根が指を動かすとなぞられた場所だけ一瞬キャンディが浮かび上がる。
繋げられた緑のキャンディが消えていく。
ずれたキャンディも消えて2COMBと文字が光る。
上から落ちてきたキャンディも更に増えたが、おかげで半分近く目隠しされた所が今どう並んでいるかは横から見ていてもほとんどわからない。
「見てろ。この配置なら次は後五……いや、四ヶ所落とせばもっと消えるから」
ろくに見えないゲーム画面を頭の中でシミュレートしてしまったらしく、垣根は得意そうに笑った。
すごいのだが、何かもうケタも違うレベルですご過ぎてゴーグルの少年はぼんやり口を開けて頷くしかなかった。
124 :
◆q7l9AKAoH.
[saga]:2014/12/03(水) 02:59:28.34 ID:wPRqB3Qw0
「いやー、すごいっスけど。垣根さん何と勝負してるんですか。ランク上位とかんなレベルじゃないですよね」
「ハイスコアとかボーナスとか。やりはじめでどうなるか見えてくるとそんなに面白くねえんだよな。落ちてくるのに合わせて配置すりゃ残りも消える。点とかその通りやりゃ出るし」
ゴーグルはためいき混じりに称賛するが、垣根は面白くなさそうだった。
これも飽きてきたな、と呟くとポケットにスマホをしまってしまう。
「あんま狙っても出ないんスけどね。うーん、じゃあパズル以外のアプリにしたらどうっスか。箱庭ものとか、それか携帯機のゲームにします? アクション系とか」
リュックからポーチを取り出すとゴーグルの少年はゲームソフトを探し始めた。
「アクションものっつうとあれだろ。敵狙ってポイント稼ぐとか、潜入して情報収集とか銃撃戦とかだろ? そう言うゲームって普段しねえようなことして遊ぶんだよな、普通は」
気乗りしないらしい垣根の言葉にゴーグルは苦笑いした。
「あー。リアルっスね。俺らたまにしますねそう言うの。気分転換には向かないかもっスね」
「な」
「でも面白いのもあるんスよ。実は最近やってる奴みつけたんで、『スクール』系の組織メンバーでパーティ組んでるのがあって――」
近くのテーブルの上に数種のゲーム機とソフトを並べて小さな見本市を展開していたゴーグルがカバンの底の方を漁る横で。
垣根は一台だけ起動している機体に目を向けた。
テーブルの端、ちょっと手の届きづらそうなところにそれだけ押しのけられていた。
「お前はいっつも、ながらで何かしてるだろ。これは何してんの?」
垣根が勝手に動いているゲーム機を手に取った瞬間。
ガキン! とおかしな音が立った。
それに慌ててゴーグルが顔をあげた。
「うわ! 垣根さん、ちょっ何してんスか? ケガとかしてねえっスか」
「別にこれくらいなんともねえけど」
「あー、びっくりした。『未元物質』スか。でも俺が動かしてる物にいきなり手ぇ出さないでください。見てない時に何か巻き込んだら怖いじゃないスか」
「あれ。これ能力っつってもお前がやってるわけじゃねえのか」
垣根は携帯ゲーム機の画面を覗いて首をかしげた。
今は止まっているそれをポーズモードにするとゴーグルは他のものと同じように並べた。
「そっス。それは範囲と対象――そのゲームなら押すボタン決めてそこにぶつけてるんで、セミオートってかそれ以外のものに触ったら止めるとか器用な設定は出来ないんス。判断は今SE聞いて俺の耳でしてたんで。いやーだからっスかね、心理定規なんて俺が能力使ってるってわかるときは近寄ってきませんよ」
「使ってる時『は』? 『も』じゃなくてか」
「え。俺そんな嫌われてます?」
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