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【安価とコンマで】艦これ100レス劇場【艦これ劇場】
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◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2016/03/27(日) 23:31:54.80 ID:Ogtl1Ak10
柱島は狭い。面積はおよそ3.12平方キロメートルで、一時間も歩けば島の外れまで辿り着いてしまう。
島の外れに島尻の浜という砂浜があり、そこで和服を着た見知らぬ男が一人。
すまし顔で夕陽を眺めながら金管楽器を吹いている。緑がかった黒髪の若い青年だ。
瑞鳳は草葉の陰から彼を観察していた。
瑞鳳「……? あの人、何者……?」
当然、艦娘瑞鳳はこの男のことが気になった。漁船すらほとんど近寄らないこの島に、客人が来ることなど考えにくい。
ここ柱島は今や海軍関係者しか立ち寄ることのない島であり、艦娘を含めても総人口は百人に満たない。
そんな柱島に、舞鶴の温泉宿からそのまま抜け出してきたような格好の男がいれば目立つのも無理はない。
ゆえに、彼を最初に見た瑞鳳から出た一言は『誰?』でなく『何者?』という言葉であった。
??「僻地と聞いていたが……海も清んでいるし、何より人が少ない。良いところだね」
瑞鳳の存在に気づいた男は演奏をやめ、防波堤の傍に置いていた荷物の方へ歩み寄る。
トロンボーンをケースへしまおうとしているようだ。
??「きみ、中学生かな? 僕に何か用かい」
楽器の手入れをしながら、瑞鳳に話しかける男。
瑞鳳「ちゅ、中学生!? 違います! 私は……ず」
艦娘である自分の名を、目の前の見ず知らずの男性に名乗っていいか躊躇い言葉に詰まる瑞鳳。
手入れを終え荷物をまとめると、男は握手しようと瑞鳳に手を差し出す。
??「僕は乙川 奏(オトカワ カナデ)。ちょっとワケあってこの島に世話になることになったんだ。よろしくね」
瑞鳳「はい、よろしく……って」
彼の手を取る瑞鳳、その名前を聞いて目を丸くする。
瑞鳳「!? じゃあ、あなたが新しく来たっていう提督……?」
提督「おや。艦娘だったのか、きみ。名前は?」
瑞鳳「瑞鳳です。って……輸送船が着港した昼からずっと探してたんですよ!? どこに居たんですか今まで!?」
提督「瑞鳳か。聞いたことあるなぁ……何年か前の観艦式で見かけたことがあるかもしれないな……」
彼女の名前を聞いた途端顎に手を当てて考える仕草をする提督。『瑞鳳です』から先は聞き流したようだった。
提督「まあいいや、艦娘なんだっけ。よろしくね。そろそろ散歩も飽きてきたし、案内頼むよ」
瑞鳳(マイペースな人だな……こんな人が提督で大丈夫かなあ)
・・・・
柱島泊地――柱島から続く海底トンネルを経由して車で十数分の位置にある、海上に建てられた小規模な日本海軍の拠点だ。
規模からして海軍要港部と呼んだ方が相応しい小さな施設だが、通俗的に鎮守府と呼ばれている。
瑞鳳に急かされて、柱島港に停めてあったワゴン車に半ば無理矢理乗せられる提督。
提督「鎮守府ってこの島の中にあるもんじゃないんだね。どおりでこじんまりしてるなと思ったよ。あ、僕運転できないから」
運転席に座りハンドルを握っておいてこの一言。呆れる瑞鳳。
瑞鳳「え、え〜……先に言ってくださいよ!」
提督「君が運転すればいいじゃないのさ」
瑞鳳「私も出来ないから困ってるんですよっ! あっ、もうこんな時間!」
ポケットから取り出した懐中時計を見やると、何やら慌て始める瑞鳳。
バタンと運転席の扉を開け、小さくジャンプして提督に抱きかかり、腰に手を回してそのまま持ち上げる。
提督「!?」
神輿のように担ぎ上げられる提督。体格差からしてかなり無理のある絵面なのだが、瑞鳳はまるで負担に感じていない様子だった。
提督を持ち上げる労力などよりも、時間が押していることを気にしているらしい。
瑞鳳「走って間に合うかなぁ……急がなきゃ!」
提督「急がなきゃ……じゃ、なく、て……アッ……」
担ぎ上げた状態で走り続けるのは難しいようで、じょじょに提督を固定する腕の位置が彼の首元と腹部に移動していく。
プロレスで使用される技の一つ、バックブリーカーに近い体勢で運搬される提督。
華奢な体格の提督がこの無自覚な暴力に耐えられるはずもなく、わずか数分で意識を飛ばしてしまう。
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