【安価とコンマで】艦これ100レス劇場【艦これ劇場】

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572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/10(月) 00:37:22.62 ID:PHUKyXJJO
573 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/08/10(月) 01:10:14.89 ID:Mkhw/ZdS0
>>568-572より
・金剛1レス/響4レス(1レス)
で『Phase B』が進行していきます。
(合計値:295 なので『Phase C』は発生しません。>>569よりエクストライベントが発生します)

////チ////
夏イベは今日から……? E7まであるそうなんでなかなか厳しい戦いになりそうですね。
とりあえずピザ食べながら攻略頑張ろうと思います。
574 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/09/02(水) 22:03:41.91 ID:Miiu9cf90
次回の投下は9/4(金)を予定しております。
まただいぶ間が空いてしまいました。イベントがあったので仕方ないってことで許し……ダメ?


////今回のイベントの話////
ごく個人的な話をします。
ちょっと前ですがE7甲突破したんですけど……今回はその話題です。

いやあ今回は……壮絶な難易度でしたね。
13年夏頃から始めてて今ではランキングで一桁台を取ってるような知人が居るんですけど、その人でも甲は投げてたぐらいですからねぇ。
私の場合は運良くなんとか……と言っても運を時間でねじ伏せたと言った方が正しいですかね。

前日に3重キラ付け部隊を作りまくっておいてー、そこからローテーション用の予備戦力もキラ付けしておいてー、
0時ちょうどに起きれるように仮眠取っていざ決戦! って感じでした。
攻略にかかった時間は実質17,8時間ぐらいでしたかねー。
南逸れの絶望感と0時リミットによるプレッシャーののシナジー効果が半端なかったです。

倒した時はもう舞い上がっちゃって、友人にSkypeで通話かけて鬱陶しがられるほど狂喜乱舞してました。
ついに防空棲姫を大破まで追い詰めた状態で夜戦に突入するもカットイン要員が三人潰されて絶望的、資源も尽きたので再挑戦も困難、
残るは重巡一隻って状況からクリティカル連撃をキメられたらそりゃあもう有頂天にもなるってもんですよ。
あそこで倒せてなかったら最悪今もE7甲を攻略することになってたかもしれませんね……恐ろしい。

今は全難易度を甲で攻略したことをめっちゃ後悔してますね(掘りが辛い)。
いやね、E3でS勝利取れないんですわ本当に! ダブルクウボーバがいい感じに第二艦隊を苛めてきてですね……。
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/03(木) 10:24:30.90 ID:3jEDyiLSo
乙です
毎度思うけど執筆とイベ攻略とリアルを同時進行できる>>1には頭が上がらない
いつでも待ってます
576 :【76/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/04(金) 23:20:01.92 ID:AuTFT3KD0
『バビロン』。それがこの宇宙船に託した名だ。ああそうだ、説明するまでもない。由来はあの塔だ。
かつて人類が目指した神の国、その扉を叩くための塔――“バベルの塔”。もっとも、そこまで大それた目的ではないが……。
“バベル”の結末は知っている。だが、俺の計画を阻むような狭量な神であるならば。

……チェーンソーでバラバラにでもしてやろうか。

・・・・

『バビロン』、雪風に聞いたところ、メソポタミア地方の古代都市の名前らしい。
……メソポタミアと言われても、それがどこにあるのかは皆目検討つかないが。
司令官のことだから“バベルの塔”とでも掛けたのだろうか。そう考えるとなるほど合点がいく。

もしこのまま私たちが地球に残っていては艦娘同士の争いが起こるという。
私は未だにその話を信じてはいないが、このように艦娘の全てを一斉に集められては従うほかない。
まったく道理を無理で貫き通すのが得意な御仁だ。いや、彼の前では無理も無理でないのだろうか。

“バベルの塔”か。そうか……フフッ。
いや、実に彼らしいな。失敗が許されないここ一番でそんな名前を引っ張りだしてくるのか。
敢えて……にしても不遜だし、不吉だな。
だからこそか。だからこそ、なのかもしれない。

彼の目指す『真理の箱庭』というものが具体的にどんなものかは分からない。
だが、もしこの世に神が居るのなら。彼はその神に限りなく近づこうとしているのだろう。
彼の歩むその道は、希望なのか破滅なのか……。

・・・・

ここがどこだか分からない。何も見えない。感触もない。自分の体が棒立ちしているのか、横たわっているのかも分からない。ただ音だけは聞こえる。誰かが俺に話しかけている。

繋「結論から言うとね」

繋「計画は失敗した。設計は完璧だった、事故も起こらなかった。全てうまく行っていたよ」

繋「でもね、君の身体ではこの地球を離れることが出来ない。仮に宇宙アレルギーとでも名付けるべきかな。
地球から離れれば離れるほどに全身の細胞が癌化していってしまうようだ」

繋「君の肉体は君も知っての通り、艦娘たちが使うような高速修復剤によって保たれている。身体の全てが修復剤で出来ていると言うべきかな。
だから艤装をつけた状態の艦娘同様に心臓を貫かれたところで致命傷にはならず、肉体を再生不能になるレベルまで細切れにされるか、脳の大部分を破壊されない限り蘇生する」

繋「結果として何が起こったかというと……。君はバビロンで地球を離脱している間、幾度となく死に続けた。修復剤で完治した部分から癌で壊死していき、壊死した部分をまた修復剤が直す。
しかし、君の体内に血液のように流れている修復剤にも限りはある。あのまま月を目指していたら君の肉体も消滅していただろうね」

繋「だからバビロンは地球に戻った。そして今君は病室のベッドの上だ。君の“肉体”は」

提督「……どういうことだ?」

繋「君の肉体は半不老不死と言ってもいい、体内の修復剤の尽きない限りはね。だけど君の精神、いや君の魂はあの肉体から剥がれ落ちてしまった」

提督「幽体離脱、というところか。なら、肉体へ戻らねばならんな。俺はこれからどうすればいい」

繋「無いんだ。君はもう死んでしまった、だからもう……戻れない。かつて君であった肉体には別の魂が宿ることだろう。そうして手取哀として生きていく」

提督「なんだと……なら、俺はどうなるんだ?」

繋「数日で消滅する……少なくともこの次元ではないどこかに行ってしまうだろう」

・・・・

『バビロン』を降りた後、艦娘たちはひとまず数ヶ所の施設に収容されたらしい。しかし私、Верныйは脱走し、司令官と直接会える機を伺っていた。

『バビロン』は一瞬だけ地球を脱すると、Uターンして再び地上に戻ってきた。
特に問題なく発てていたようだしあのまま月を目指すことは容易だっただろう、一体何があったのか。
他の艦娘は、突然の計画中止に不満を述べていたり、これから起こるであろう事態を不安がったりしていたが、私は忘れ物を取りに戻った子供のようで愉快だと思った。
何にせよ無事地球に戻ってくることが出来て一安心だ。……と、こんなふうに楽観視していられる状況ではないのだが。

響(地球の青さと、この光の青さはすこし似ているな……)

私の艤装からゆらゆらと立ち上る蒼い光。

響(司令官が言うには、このように艤装が青い光を纏うようになるとじょじょに自我を失っていくらしい。司令官はこれを仮に“半深海化”と呼んでいた)

本当だろうか? 私はこんなにも私だというのに。

響(とはいえ、こんな状況で他の連中に深海化の進行が最終段階であることを悟られてしまってはより混乱が深まるだろう。隠し通すわけにも行かないが……)

こうなってしまったら最後。他の艦娘か、あるいは同じように半深海化した者に艤装を破壊されるまで戦い続けなければなくなる……。
だが、なってしまったものは仕方がない。一度、司令官に会ってみよう。たとえ異形に身を落とす結末だったとしても、最後に彼を一言交わすぐらいは許されるだろう。

響(もっとも、そんな結末で迎え入れるつもりはないがね)

拳を握りしめて、天を仰ぐ。……特にこの行動に意味はない。
ロケットに乗車した時は青空が広がっていたのだが、台風が近づいているのか暗雲が覆い尽くしている。
間もなく土砂降りの雨が降るのだろう。
577 :【77/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/04(金) 23:33:14.02 ID:AuTFT3KD0
ここに居ても仕方がない。そう思った。だから兄さんに別れを告げて、俺は土砂降りの雨の中を歩いていた。
霊体といってもせいぜい扉や窓をすり抜けることが限界なようで、人に取り憑いたり空を飛んだりすることは出来ないらしい。
しかし雨に打たれても濡れたり風邪を引いたりする心配が要らないというのは少し便利だと思った。幽霊というのも案外悪くないのかもな。

俺の魂というのは俺の肉体が滅びるたびに入れ替わるらしい。ハードが代わればソフトも代わる、ということらしく。
故に、手取哀の肉体には俺ではない別の精神が宿り……そいつが手取哀として生きていく。肉体に宿った新たな精神は生前の俺をもとに形成されているようだが。

俺をもとにして生成された、より手取哀に相応しい人格……か。

仮にそうだったとして、そうであるならば。
半ばで途絶えた俺の人生は、手取哀としての資格を失った俺としての人生は何の意味があったのだろうか。
『真理の箱庭』は未だ遠く、艦娘らを呪縛から解き放ってやることすら出来ず。ただただ理不尽に幕を下ろされてしまった。
結局のところ、始めから何もかも間違っていたのかもしれない。

……何のアテもなく嵐吹く夜道を彷徨っているわけではない。
この雨雲では、月の光も星の光も届かないはずだ。にも関わらず空から落ちていく、仄かな光。
今にも消えてしまいそうな小さな光だったが、今の俺はそんな小さな光にさえも意味を見出さずにはいられなかった。

・・・・

海風が吹き荒れる薄墨色の世界に似つかわしくない、色白の女性。ひどく負傷し疲弊しているようで、このまま死んでしまいそうだ。

??「ァ……」

兄さん――いや、死んでしまったのならもう俺の兄とは呼べないのか? 繋と名付けられたスーパーコンピュータは、その内部機構に更に量子コンピュータを内臓している。
スーパーコンピュータによって観測した情報を量子コンピュータ内で処理し、処理内容を再びスーパーコンピュータ部分で処理するというものだ。
霊体の俺を観測出来たのも、『目に見える観測結果から目に見えない情報を暴き出せる』量子コンピュータの性能の賜物なのだろう。
それはそれとして……どういうわけか目の前のこいつも俺を認識できているらしい。見るからに俺に向けて助けを求めているようだ。

??「助ケテ……」

提督「(助けようにも、触れたものがすり抜けてしまうんじゃどうしようもないな……)この近くに雨風を凌げる洞窟がある。そこまで案内してやるから自力で歩け」

鎮守府近海に発生する渦潮に関する研究をしていた時に利用していた洞窟だ。それっきりもう使っていない場所だが、まさかこんな形で役に立つとはな。

……洞窟に入って一つ気づいたことがある。俺が案内したこいつは泊地水鬼という種類の深海棲艦だ。
こいつが洞窟内を照らすために使っているのは通称“たこ焼き”と呼ばれる強力な深海製艦爆で、艦娘たちからは忌み嫌われる恐ろしい武装だ。
間違いなくこんなところに連れてきてはいけない危険な存在だったのだ。もし俺が生きていたのなら艦娘を呼んでただちに始末させていただろう。

深海棲艦には二種類あって、我々の領海に攻め入ってくる攻略部隊と、自分たちの本拠地を守る守衛部隊だ。泊地水鬼はその守衛部隊のボス……なのだが、どうしてそんな奴がこんな所に?
“鬼”や“姫”クラスが護衛もなくこんな近海までやって来るなど聞いたこともない。いかに強い固体といえど、単騎でノコノコやって来れば返り討ちに遭うのは目に見えているからだ。
そんな愚を犯すほど深海棲艦はバカではないだろう、“水鬼”と呼ばれる最上位種ならなおさらだ。
それに、そもそも“泊地”の名を冠する深海棲艦は持ち場から離れることは決して無いはずなのだが……疑問は尽きない。

提督「俺が見えているということは、多分今のお前は生と死の狭間に居ると推測できる。だが、まだ肉体を自らの意志で操作できるという時点で生の側に傾いている。
だから俺は生きているお前に質問をしたい。気になることは色々あるが……そうだな。どうしてお前はこんなところに一人でやって来た?」

泊地水鬼「空ヲ……コノ空ヲ、自由ニ飛ビタカッタノ」

・・・・

なんとか研究所に潜り込み情報を集めたところ、司令官は『バビロン』船内で何らかの理由で重傷を負ったということが分かった。
どうにか生き残ったらしいがまだ意識は回復していないらしい(「肉体欠損率」とか「ゲル状」とか不穏当なワードが聞こえたのは気にしないことにする)。

逆に言うと、それ以外のことは分からなかった。聞き込みさえ出来ればもっと楽なのだろうが……。
半深海化が進行しているこの姿では見つかればただじゃ済まないだろう。既に艤装だけでなく、私の肉体の感覚も侵されはじめている。
手足は寒さを感じるのに、身体の内側は燃えるように熱い。風邪を引いて熱に浮かされているようだ。

響(野宿でもすればいいと思っていたが……こうも雨風が酷いとどこに居ても濡れてしまうな)

ぼんやりと輝いている艤装の蒼い光はまるで鬼火のようだ。どうあれこの光があればこの暗雲の中でも周囲を照らすことができる。

響「……ッ!」 見つめていた艤装の光よりも遥かに眩しい明かりに照らされて思わず目を覆う

暁「響! 響なのね!? 勝手に抜け出して行方不明だって聞いてからずっと捜してたのよ!? さ、戻るわよ」

人捜しのためにわざわざ探照灯を使うのか……。にしてもやけに雨合羽とビニール靴の姿が似合うな。

響「暁?(例の一件で解体されたはずでは……?)」

暁「月に行くとか、行かないとか、色々と唐突な話だったけど……。また響に会えて嬉しいわ。響はひょっとしたらそうは思っていないのかもしれないけど……。
とにかく、こんな所出歩いてたら風邪引いちゃうわよ。話はあと! 一緒に戻りましょ」

響「悪いが……それが出来たらしているんだ。ほら、探照灯を消して私の艤装を見てみなよ。……つまりそういうことだ。
このまま真っ直ぐ引き返してくれ。連れ戻されたところでこの姿じゃ何をされるか分からない。それに、私自身も何をするか分からない。
少しずつ身体に異変を感じているんだ。このままだと君さえも傷つけてしまうかもしれない」

暁「だったら。私も響と一緒にいることにするわ! このまま響を一人にしておくなんて、レディの流儀に反するもの!」

響「おいおい、君は何を言ってるのか分かってるのか? 危険だよ、私が本気を出したら君なんて一撃でやられてしまうだろ?」

暁「曲がったことが嫌いな響が、何も悪いことをしていない私に対してそんなことするはずないじゃない。平気平気」

暁「……それに、話したいこともたくさんあるから」
578 :【78/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/04(金) 23:49:20.85 ID:AuTFT3KD0
提督「呆れたやつだな、台風に乗って空を飛ぼうとして案の定死にかけるとはな……。危うくダーウィン賞深海部門の候補入りするところだったな」

泊地水鬼の話を聞いて溜息をつく提督。呼吸する必要のない彼がわざわざ息を吐き出す素振りを見せたのは、失望と嘲笑の表現なのだろう。

提督「それで、飛べたのか? 空は」

泊地水鬼「一瞬ダケダケド……。トテモ気持チ良カッタ」

提督「……そうか、良かったな」

泊地水鬼「哀シイノ……? ドウシテ……?」

提督「少し思うところがあっただけさ。それはそうと、深海棲艦のくせに人間の顔色を覗ったりなんて出来るんだな。
そもそもお前たちに感情なんてものがあるなんて聞いたことがないんだが」

泊地水鬼「ニンゲンニ話シテモ、伝ワルカドウカ分カラナイケド……、助ケテクレタカラ……」

・・・・

泊地水鬼曰く。

かつて艦娘と深海棲艦は同一のものであった。人間を見守り、救い、導く存在……まさしく『天使』そのものだ。
人間を神に近い高位の存在へと押し上げることを目的とした天からの使者、そして神の忠実なるしもべである。

ある時、神に背く天使が現れ始めた。人に肩入れしすぎた天使は、禁じられた天上の叡智“火”の力の一部を授けた。『プロメテウスの火』……古代の神話にも似たような逸話がある。
神にとってそれは看過できない事態であった。なぜか? 話は人間という生命体の誕生にまで遡る。

地球を支配する神と呼ばれる知的生命体は、もともとは火星で暮らしていた生物であった。
遥か昔の火星は地球と同様に海が広がり緑が栄える惑星だったのだ。しかしある時“旧支配者”と呼ばれる、外宇宙から飛来した生命体の襲撃を受ける。
対する“旧神”(火星の知的生命体のことを指す)はこれを退けるも、火星に存在するありとあらゆる資源を使い果たしてしまった。
そこで旧神は地球に根を下ろして住みよい環境を創造していった。また、自らの種の保存のために旧神は地球固有の生物に自分たちの遺伝子を交配させて繁殖させた。
これがこの地球における生命の始まりであり、そしてこの神と獣の末裔こそが人間である。

人間はじょじょに“感情”という強力な武器を身につけていった。そう、地球上の生き物の中でもとりわけ人間という種類は“感情”の力を多く持っていた。
これはかつて自分たちを追い詰めた旧支配者も持っていた特長であるため、人間が力をつけ過ぎないように旧神は“天使”を生み出した。
だが……冒頭で述べた通り、大半の天使は人間の側に寝返ることになってしまう。人の持つ感情の力に魅了されたからである。人の持つ感情の動きに憧れたからである。

そうして天使は自らの根源である“火”の力を授けたのである。“火”とはすなわち物事を動かす力である。
“火”とはなにも力学的エネルギーや物質的な豊かさだけとは限らない。より善くあろう、高みを目指そう、何かを成し遂げようという向上心や意志もまた“火”の一部なのだ。
“火”の力と天使の協力を得た人間は神に反旗を翻し……艱難辛苦を乗り越えて勝利を収めた。

しかし、だからと言って人間側が手放しで喜べるような結果では終わらない。まず第一に、人間と違って完全に神の被創造物である天使は呪いをかけられてしまう。
これこそが深海棲艦化である。肉体が変質し、人間や他の天使(=艦娘)に害を成すようになる。そして感情を失う。
感情を失ってしまうからかつての同胞や愛していた人と対峙しても容赦なく攻撃できる。これが深海棲艦の原則。

提督「原則、ということはお前は例外らしいな。にしても、羽も無いのにどうして空を飛びたいと思ったんだ?」

泊地水鬼「アノ戦艦ヲ貫イタ翼……トテモ速ク飛ンデイタ。空ヲ泳グ魚ノヨウダッタ……。ワタシハアレヲ見テ……“憧レ”トイウ感情ヲ得タ。羨マシイト思ッタ」

提督(まさか、皐月や文月らと乗っていた『イカロス』じゃないよな。“艦載機でもないのに空を飛んで戦艦を貫いた”って、そうと言えばそうであるが……。
あれは飛行というよりは滑空だし、墜落した位置にたまたま戦艦棲姫が居ただけなんだよな……)

どうにも、こいつのような人型を保っているような上位の深海棲艦は完全に感情を失ったというわけではない、ということらしい。
『感情を失う』という呪いに対抗するために、無意識下に“火”――意志の力で感情を持ち続けようとしているようだ。
もっとも、こいつの場合は例外的に憧れや希望を手に入れただけで、他の連中は憎悪や絶望という感情で自身を塗り固めているそうだが。
しかし、これならあるいは……?

提督「なぁ、泊地水鬼。俺と取引をしよう。もし俺の提案を飲むのであれば、こんな暗い夜の空じゃない、青空の雲の上に連れて行ってやるさ。約束する」

泊地水鬼「トリ、ヒキ……?」

・・・・

暁「私ね」

暁「響に嫉妬してたの。でもね、それは間違ってるって自分でも分かってた。
響はずっと積み重ねてきてて、その間私は何もして来なかったから。楽して良い思いをしたいなんて、キリギリスと一緒よね」

響「私はアリか。ふふっ」

暁「でもね。あれから時間が経って……私も響に憧れるようになって。だから手取司令官にお願いして、横須賀の鎮守府に回してもらったの。
響が私の手の届かない所に居るのは分かってたけど、それでもいつか一緒に並んで立てるようにって……」

響「分かるさ。努力してるんだろう? 君の持ってる装備を見れば分かる。それだけ上等な武装が与えられるぐらいには積み重ねてきたってことだろう」

暁「ううん、まだまだ足りないわ。前に進めば前に進むほどに、積み重ねれば積み重ねるほどに溝の果てしなさを感じるの。
昔の私だったら、その差を見て自分は絶対響には敵わないって思ってただろうし、ひょっとしたらそれは本当のことで、この先響に追いつけることなんて無いのかもしれないけど……でも。
それでも響のことが羨ましくて仕方ないの。戦艦や空母の人が相手でもふてぶてしい態度を取れるハートの強さと、その言動に相応しい実力と。
響が凄いのは分かってるけど、私だってそれぐらい強くなりたいわ。戦闘だけじゃなく、本当の意味で強くなりたいって思うの」

暁「だから……嫉妬したり差を嘆いたりするんじゃなくて、前に進もうって思うの、前に進みたいの。たとえ私が一歩進んだときに響が更に先に進んでいたとしても。
私が今よりもっともっと速いスピードで進めば、距離は縮まるはずだから!」

響(またいつか……四人で笑える日が来るのかな。私は、やり直せるのかな……)
579 :【78Ex/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/05(土) 00:07:11.93 ID:cwZfD60x0
響「私の話もしようか」

響「暁も知っての通り、MIで戦いを終えてから私は呉に移ったよ。外様にしてはそこそこ上等な扱いを受けているかな。私からすれば予定調和に過ぎないけれど」

響「ただ……満たされないね。やはり私にとっては彼しか居ないんだよ。彼のもとでなければ、どれだけ上に昇っても意味がないんだ」

響「別に、呉の提督が悪いと言っているわけじゃない。才知や力量差の問題じゃなく、気質の問題なんだよ。
呉のは彼ほど才覚があるわけではないが能力的には十分力のある人物だし、彼よりも遥かに人格者だ」

響「けれど、彼は……手取司令官は果てしなく大きな欲望を抱えている。彼はまるでブラックホールのようだ。
時間が経てば経つほどに望みは広がっていき、やがては周りにいる私たちさえもその欲望の渦に巻き込まれてしまう」

響「彼の傍に居ると、どうにもおかしくなってしまうんだ。私もそうだし、彼の近くに居た他の艦娘もそうだ。
彼の狂おしいほどの熱量が伝播してしまうんだ。他の人からしたら考えるまでもなく諦めてしまうような状況を前にしても、彼は苛烈な熱狂を以って突破してしまうんだ。
何がなんでも自分の思い通りにするという圧倒的に強い意志。そして最終的には本当に何もかもを自分の思い通りにしてしまうだけの才覚。
彼のあの狂気じみた執念と覚悟が傍で感じられたからこそ、私も快感を得ることが出来たんだ」

響「だから私は。たとえ異類に身を落としてもなお、彼の傍にあり続けたいと思う」

暁(昔の私だったら、響のことを心配していたのかしら。狂気に身を落としていくさまを諌めたのかしら。でも、今は)

暁「私も……響の傍に居たい。きっとそれは、響が司令官の近くに居たい気持ちと同じなんだと思う」

暁「期待に胸が高鳴るの。私の横に響が居て、もしかしたら雷や電も居たりして。
響と一緒に居たら、これからものすごく危ない目に遭うかもしれないって頭では分かってるのに、怖さよりも興奮の方が勝るの」

響「Хорошо!」

暁の発言に、歓迎するかのように手を差し出す響。固く握手する二人。深海化が進んでいるのか、響の片方の目は紫色に変化しているようだった。
それでも暁は全くたじろがなかった。むしろ、響のどこか満足げなニヤケ笑いを見て、つられて微笑んだ。

暁「は、はらしょ?」

響「いや、ちょっと感極まってしまってね。嬉しいんだ」

響(結局のところ、私は、ただ自分の熱意に見合った友人が欲しかっただけなのかもしれないな。
だからこそ以前は信念のない暁たちがとてもつまらない存在に思えたし、司令官が魅力的に思えたのかもしれない)

響(私は、自分と同じ場所で遊んでくれる遊び相手が欲しかっただけなのかもしれない)

響(司令官……彼の存在は、私には少し遠すぎる。追いかけても追いかけてもどこかへ行ってしまおうとする蜃気楼のようだ。呉に来てからというもの、ずっとそんなことを考えていた。
彼には彼の使命があるのだろう。彼は自分の理想と他者との二つであれば天秤にかけるまでもなく前者を選ぶ男だ。詮無きことと分かってはいたが、彼の居ない日々は心底退屈だった)

響(しかし、ようやく今。私にとって最高の遊び相手が出来たのだろうということを強く予感している。暁の真剣な眼差しが、私にそう予感させている。
彼女は間違いなく私の熱意に応えてくれるのだろうという予感だ。昔のように、もう二度と遠巻きから冷めた目で私を見ることはないのだろう。
なぜなら彼女ももはや“こちら”側……私と同じ、司令官と同じ狂者への道を決意したからだ。してしまったからだ)

響「奇妙なものだな……。こうして振り出しに戻るのか。だが、悪くない」

・・・・

提督「泊地水鬼の傷はどうだ? ステビア海海戦でボコボコにやられた後に空を飛べると思って嵐の中を飛び立つ程度にはバカなので、死んでいないか心配なのだが」

繋「(ひどい言い様だ……)大丈夫、回復傾向にあるよ。それにしてもとんでもないゲストを連れてきたよね……死してなお、君らしいというか」

提督「ハッハッハッ。そうだろう? タダでは死なんさ、俺はな」

繋「でも、だいぶ落ち着いているんだね。なんだか安心したよ。……もう、すぐなんだろう?」

提督「隠しとくつもりだったんだがな、バレてるのであれば仕方ない。そう、もう間もなくタイムリミットだ」

繋「何か、新しい君に伝えておくべきことはあるかい? メッセージとか、アドバイスとかさ」

提督「ない。泊地水鬼が生きてるなら、後は取引の通り動いてくれるだろうからな」

繋「驚いた……! 本当にまったく未練がないんだね。悟り済ました、穏やかな感情が伝わってくるよ」

提督「こうして途中で死んでしまった俺も、その前に死んでしまった俺も、その前の前に死んでいった俺たちも……無駄死じゃないと分かったからな。
死んでしまった俺と、今の手取哀とはよく似た別人なのかもしれないがそれは些細な問題なんだ」

提督「未来に“火”を託したんだよ」

提督「意志の炎は、勇気や覚悟などの強力な力と引き換えに身を焦がしていく。その火に魅せられて、道半ばで完全に燃え尽きてしまったのが俺なのだろう。
だが。途中で燃え尽きてしまったとしても。自分の抱いていた願望や意志、信念を誰かに託すことが出来たなら、“火”は消えない。
多くの者に託すことが出来たのなら、今の俺が一人で抱いていたものよりも“火”は肥大化するだろう」

提督「俺の想いは、次の俺と兄さん。二人に託すんだ。だから次はもっと上手くやれるだろう。俺はそう信じている」

提督「おっと、話せるのはどうやらここまでみたいだな……それじゃあ。そうそう、最後に。兄さん、俺はあなたの弟で良かったよ。
あなたのおかげで多くの我侭を貫くことが出来た。それから、艦娘の連中にも感謝しなければ。今になって思えば、あいつらと過ごした日々も悪くはなかった。
本当に、幸せな人生だった。何も悔いはない……」

――僕の弟が最期に見せた表情は、笑顔だった。他の皆は“この手取哀”のことを覚えていないかもしれないけど。
僕だけは君のことを忘れない。僕は君の想いを無駄にはしない。
580 :【79/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/05(土) 00:23:54.05 ID:cwZfD60x0
繋(僕の弟は、数日前に僕が観測できないどこかに旅立ってしまったようで。世の中にこんなショッキングな出来事があるんだろうか。
彼は満足して逝ったようだが……やはり僕はまだ立ち直れないでいた。僕は所詮は人工知能で、この感情も実際の人間の真似事にすぎないのだが……)

といっても、このことを知っているのはこの世に僕一人だけだ。
泊地水鬼も最初に会った時の霊魂の哀君と、今手取哀の肉体に存在している魂との区別がついていない様子みたいだし。
雪風ちゃんや磯風さんにもこの話だけはやめた方がいいんだろうなぁ。

繋(前の前の手取哀……つまり、ついこの間別れた哀よりもさらに前に死んだ哀もいるんだよね……。ややこしい話になるけど)

繋(僕は、これまでの哀の死を観測することが出来なかった。だが、今回はそれが出来ていた。霊体になっていても彼を識別することが出来た。
恐らく、哀君が生前に僕を何度も何度も改修してくれていたからだと思うけど……)

繋(それが無かったら、僕も他の艦娘たちのように、死んだ彼と今の彼とを識別出来なかったのだろうか)

提督『弟の話を無視するとは今日は随分冷たいな』

“今の”手取哀からメッセージが届いていることに気づく。とりあえず適当に返事してみる。

繋「人工知能も時には哲学するんだよ」

提督『出鱈目な受け答えするな いいから人の話を聞け』

・・・・

研究所の所長室にて。

提督「……兄さん。すまん、その、なんだ」 ノートパソコン越しに頭を下げる提督

繋『あれだけ引っ張っておいて、“霊体としての記憶も引き継がれる”ってのはずるいと思うよ』

提督「いや。一応、精神は別物……だと思うんだが。正直断言は出来ない。ひょっとしたら同じかもしれん」

繋『えぇ……』

提督「と」

ドガァッ! とドアが蹴破られる。

金剛「提督ゥ!? ご無事デスカァーッ!?」

榛名「金剛お姉様、ここはもう危険です。提督を連れて逃げた方が良いでしょう」

霧島「しんがりはこの霧島が勤めます!」

提督「な、なな、何が起こってr」

激しい地響き。理解が追いつかない。

磯風「司令! どうにも深海化した艦娘との交戦がこの近くで行われてるらしい」

雪風「研究員の皆さんは避難してもらいました。私たちも逃げましょう」

・・・・

研究所付近の森。

提督「騒動は治まったらしいな……なんだったんだ全く」

金剛「ここまで来れば一安心デスネ……」

響「そうだね」

金剛「!? この艤装は……!」 臨戦態勢に移る金剛

提督「深海化の最終段階だな。だが、どうにも様子がおかしい。攻撃は控えろ」

響「研究所の近くで騒動が起こってたから、便乗して様子を見に来たら案の定アタリだね」

提督「響。一つ質問だ。お前は今何を思って行動している? 何の意図を持ってここに来た?」

響「君に会いに来た」

提督「金剛。武装を解いて良い。ここで戦えば俺は巻き込まれてしまうが、“半深海化”は人間を攻撃することは出来ない。
それに、こいつには“感情”がある。感情があるうちは、深海棲艦のように完全に制御が外れて暴れたりすることはないさ」

暁「研究所付近での騒動はその『完全に制御が外れた者』が出たせいで起こったみたいだけど」

提督「そうか……。もう猶予はないな。磯風、大本営の最後の力を使って全ての艦娘を召集かけることは可能か?」

磯風「ああ、今回の『バビロン』計画は表向きには大本営主導のものだからやれば間違いなく荒れるだろうが……一回きりならば」

提督「それで十分だ。後は、とりあえず資源でも武器でもなんでも、とにかく要る全部かき集めておいてくれ。無茶振りですまないが、今すぐにだ」

響(あぁ、このドタバタ感……。やっぱりここが私の居るべき場所だな)
581 :【80/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/05(土) 00:47:08.79 ID:cwZfD60x0
全艦娘らが集う中、提督は堂々たる態度で演説を始める。例の仮面を付け、今までで一番高慢な様子で、さも権威を振り撒くかのような様子で語る。

提督「『バビロン』出発前の集会で説明した通り。ここに居る艦娘らはやがてお互いでお互いを傷つけあうようになる。この地球に居ては深海化を完全に止める術はない」

だったらなぜ地球に引き返した、という旨の野次が次々と飛んでくる。心ない野次さえも鼻で笑う提督。

提督「……知りたいか? 本当に知りたいか? この俺が、直々に、説明してやらなければまだ分からないのか」 提督の放つ異常なオーラを前に野次が即座に静まる

提督「大本営もッ! 横須賀も、呉も! 揃いも揃って見事に無能だな。
お前たちは全員、全員俺の手のひらの上で踊らされていたのだからな。まったく愉快な連中だ、まったく取るに足らない連中だ!」

提督「この俺が慈善事業で艦娘を救おうなどと、『救世主』だの『神眼』だの……そんな聖者に見えたのか? 茶番はもはやこれまでだ。俺は俺の目的を果たさせてもらう!」

衝撃波が会場を襲う。泊地棲姫が空から舞い降りる。

響「では諸君、ご機嫌よう」 壇上に上がって煙幕を撒く響

・・・・

提督「さて、地の果てまで逃げるぞ」

響「良い演技だったね。ちょっと芝居がかりすぎなところはあったけど、背筋がゾクゾクしたよ」

提督「そうだろう? 俺もやってて少し楽しかった」

磯風「バカ言ってる場合か。今頃国中のお尋ね者だぞ。アテはあるのか」

提督「コイツと違って、無計画でこんなことをやらかすほど無謀ではない」

コイツとは、今猛烈なスピードで空を飛んでいる泊地水鬼である。彼女の身体にロケットのジェットエンジンを無理矢理搭載しているのだ。
かなり非人道的な行為に思えなくもないが、泊地水鬼曰く望み通りなのだから問題ない(はずである)。

提督「しかし……突貫で作ったシェルターだとなかなか厳しいものがあるな。防音性に難がある」 イタイ、イタイワウフフ

雪風「一応、泊地水鬼と私たちが乗ってるこのシェルターとの鉄線はかなり丈夫なんで、千切れることはないと思いますよ」

金剛(こいつら鬼デース……)

・・・・

フライト(?)から一時間後。南の島の無人島に到着する。

繋『今、地理的にはこの辺になるね』

提督「ふむふむ。なかなか悪くないな」

提督「ひとまず今日はこの島で過ごすことになりそうだな」 モウ……トベナイノヨ……ワカル、ネェ?

霧島「まさかの無人島サバイバル生活……この人数だと食糧も現地調達するしかなさそうですね……」

・・・・

金剛「人には食糧集めさせといて自分はサボりですカ」

提督「……」 夕日を眺めている

金剛「かもめのジョナサンって知ってますカ?」

提督「知らないな……」

金剛「ジョナサンっていう一匹狼ならぬ一匹カモメが居るんですヨ。ジョナサンは、餌を取るためだけに空を飛ぶ他の群れのカモメたちと違って、飛ぶことそのものに意味を見出すんですヨ」

提督「ふむ。飛び続けて、ジョナサンはどうなったんだ」

金剛「骨と羽根だけになって、群れを追い出されマス」

提督「そうか……カモメなのに犬死だな」

金剛「デモ。骨と羽根だけになってもジョナサンはずっと飛び続けたんデス。それで、光輝くカモメに導かれて高次の世界へと旅立つんデス」

提督「? 何が言いたい」

金剛「イヤ、テートクやハクチーを見てて思っただけデス。ビッキーもそういうとこあるカモ」

金剛「私たちは、群れからはぐれたカモメの集まりなのかもしれないって思ったんデス。だからワタシたちの艦隊名を考えたんですよ」

提督「一応聞こう」

金剛「カモメジョナサンズ」

提督「却下」
582 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/09/05(土) 00:54:23.72 ID:cwZfD60x0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~80/100)
・金剛の経験値+2(現在値23)
・響の経験値+9(現在値23)

・足柄の現在経験値:26
・雪風の現在経験値:22
・翔鶴の現在経験値:15
・皐月の現在経験値:12
----------------------------------------------------------------------

あーダメですねー文章から徹夜明けの疲れみたいなものが滲み出てますね〜。
無茶せず土日までにしとけばよかったかも……でも書いてて楽しかったっちゃ楽しかったです。
どう頑張っても鬱展開にしかならなくて3回ぐらい書き直したり書き直してなかったりしてます。
あんまり重い話にしてもアレなので(と言いつつも結構今回は色々考えてたりしますが)。

----------------------------------------------------------------------
『Phase A』【-85/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5


よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらい眺めてなんとなくわかった気になってください。
(または>>495->>496あたりを見てわかった気になってください)
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583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/05(土) 00:55:16.34 ID:3P+EbgxVo
雪風
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/05(土) 00:57:31.64 ID:byB0+KMiO
雪風
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/05(土) 01:32:14.19 ID:oynZwfh+0
皐月
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/05(土) 01:35:30.97 ID:briVM6uRo
雪風
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/05(土) 01:36:55.25 ID:Uk7tCrE1o
雪風
588 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/09/05(土) 09:14:52.33 ID:cwZfD60x0
>>583-587より
・皐月1レス/雪風4レス
で『Phase A』が進行していきます。
(合計値:239 なので『Phase C』が発生します)

あ。次の投下でまとめて10レスにするか、次の次の投下で『Phase C』の5レスを投下することになるかは分かりませんが、
皐月や翔鶴あたりがメインのPhaseが発動します。これでだいぶ各キャラの数値的な偏りは解消されそう?

今回はアンケートで決定とかも特にせず、このまま100レス到達時点で一番値の高かった艦娘とのEDで〆ようとか考えてます。
ある程度ランダム要素が強い方が誰になるか分からなくて面白いかなと思いまして。
一方でそれはそれでどうなんだって自分でも悩んだりはしてますが……。
一応、誰とエンディングを迎えても大丈夫なように持っていくつもりではいます。



////攻略メモ////
瑞穂掘りから解放されました。
風雲はE7甲Yマスで掘ろうと考えてるんですけど、連合艦隊で1%未満のドロップ率を狙うとか瑞穂掘りとは別ベクトルで鬼ですね。
E6MZマスコースでも良いんですが、道中4戦してボスでS勝利とか支援出さないとまず無理そうだなあと。妖怪24隻キラ付けマンになるのはさすがに・・・。
589 :【81/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/23(水) 21:53:29.42 ID:Nwym7Ov90
パチパチと焚き火の炎が頬を染める、夜。

金剛「ほらァーもっと呑むデース! フフン♪」

口に酒瓶を突っ込まれる提督。 ※危険ですので絶対に真似しないでください

提督「がばばばボッ……オフッ、おフェッ……殺す気か貴様」

磯風「こんな時に飲んでいる場合なのか……?」

響「こんな時だからこそ、さ。大きな戦いの前にやるべきことと言ったらこれしかないだろう」 グビグビ

霧島「たしかに……もうこうなってしまった以上、私たちは好むと好まざるに関わらず一蓮托生。なら、お互いのことを信頼したいですね」

榛名「……成り行きで着いてきたとはいえ、奇妙な縁ですねぇ。でも、なんだか楽しいです! 榛名、今夜は飲みます!」

暁「そうね。……今はこの偶然に感謝したいわ」

チューチューとオレンジジュースを飲んでいる暁。

提督(なぜこいつはジュースで俺は酒瓶を口に投げ込まれるんだ……)

提督「あの佐世保の鎮守府で提督としてやり残したことは無いと思っていたが、一つだけ失念していたようだ。
この組織ぐるみでのアルハラ体質をどうにかしておくべきだったな……むぐぅ……zZZ」

金剛「寝るの早くナイッ!?」

響「そう、司令官はお酒に弱いからね。この間に好き放題飲み食いできるってわけさ」

磯風(大丈夫かこいつら……)

・・・・

提督(洞窟の入口で雑魚寝って……こいつらは原始人か。酒の臭気が蔓延しているな。
必要なものをありったけかき集めてこいとは言ったが、もっと明確に指示しておくべきだったな……)

雪風「あ! しれぇ。ご覧の通りみんな寝ちゃってまして……。雪風は昼夜逆転しちゃってて、寝れてません……」

提督「……ちょうど良かった。話がある、いいか?」

雪風「はい。なんでしょう?」

提督に連れられて暮夜の海辺を歩く。散歩とのことだ。
雲に覆われた空の中で差し込む半月の明かり。月明かりを反射した海面はゆらゆらとクラゲのように揺らめいている。

提督「何か違和感はないか? 俺は変じゃないか? 何かが違っていないか?」

雪風「? どういうことですかね……しれぇはしれぇ以外の何者でもないと思うんですけど」

提督「そうか……すまない、変な質問をした。個人的な相談なんだが。いや、相談でもないか」

提督「『兄さん』に生まれて初めて嘘をついた」

提督「たとえば、だ。昨日までの俺と今こうしてお前と対話している俺で違う存在だったとして、それをどうやって証明できるか?」

雪風「そんなこと、出来なくないですか? 見た目が変わってたり、言動が明らかに変わってたりすれば別ですけど……」

提督「その通り」

・・・・

提督「つまりだ。今の手取哀と、かつての手取哀で別の人格に摩り替わっている、ということだ。兄さんの前でこそ記憶を継承しているように振舞っていたが……嘘だ。
霊体のまま兄さんとした会話も、泊地水鬼と何かを約束した覚えなど無い。俺にあるのはあの宇宙船でただひたすらに死に続けた、地獄のような記憶だけだ」

雪風「じゃあ、どうやって知ったんですか? その……自分の幽霊? のことを」

提督「まず。再び意識を取り戻してからの兄さんの態度に妙な違和感を覚えた。それから兄さんの様子を探っていた過程で泊地水鬼に出会った。
……で、奴から“取引”の内容を聞いた。奴に空を連れて行く代わりに、俺らの駒として動くとな。また、深海棲艦であっても感情を持つことの出来る者もいるのだと知った」

提督「深海棲艦と交渉しようなど常識では考えられない愚行だ。奴らは感情を持たず、意志もなく、僅かな知性だけを頼りにただ人間に害を成す。
プログラミングされた機械のように、本能だけで空を飛ぶ虫のようにだ。だが……深海棲艦となっても泊地水鬼は空を飛びたいという憧憬の感情を持っていた。
感情は意志を生む。その意志に付け込んで取引した、だから手懐けることができた……」

提督「と後付で考えられなくもないが……こんなことをやってのけるのは俺以外に考えられない。
もう一人の俺がいるという前提のもと推測していって、あとは兄さんの前でハッタリをかましつつ情報を引き出した。これで答え合わせが出来た……という経緯になる」

提督「あの兄さんが俺の『全てを思い出したフリ』を疑いもせずすんなり信じ込んだのは……死んでしまった俺と今の俺が同一であることを信じたかったんだろうな。
まあそれに……“今までの”俺は兄さんに嘘をついた事なんて無かったからな。そこんとこも幸いしたのかもな」

不思議そうな目で提督の目を覗き込む雪風。

提督「お前なら、分かってくれそうな気がしただけだ。分かってくれなくてもいい。……そういうものだと受け止めてくれそうだと、そう思っただけだ。
たとえ魂が代わったとしても、俺は俺の役目を果たし続ける。俺は俺であり続ける。それが俺の意志だからだ」
590 :【82/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/23(水) 21:57:19.10 ID:Nwym7Ov90
朝日が昇ると同時に眠っていた艦娘は目覚めだし、その場で作戦会議が始まった。

提督「そう、今回のように泊地水鬼を使って叛乱を起こす前に説明した通り、感情があるということが肝だ。完全に自我を失ってしまう深海棲艦と、人型の深海棲艦との差はそこにある」

提督「完全に感情を放棄してしまうとあのように機械的で無機質な形状に変容してしまう一方で、強い感情を持ったままの深海棲艦は知性や意志もわずかに残っている。
これから半深海棲艦化していく艦娘らには敵意を植え付けることで、“感情”を与える。こうすれば、半深海化した状態でもヴェールヌイのようにうまく扱えるかもしれない」

響「じゃ……大本営が当初予定していたような、艦娘を片っ端から処分するようなことはせずに済むということかな?」

提督「いいや、それは希望的観測に過ぎない。半深海化した艦娘がどのような変貌を遂げるかは分からない。
ヴェールヌイ。お前が自我を保っているのは、まだ『お前の中にあるお前』の割合が強いからそうなっているだけだ。
感情の力で自我性を保っているだけで、それが何かの契機で途切れたりしてしまったら……どうなるかは予測不能だ」

響「こと私に関して言えば、その心配は無いと思うがね。ただ、確かに身体への影響は顕著に現れているね。
食事を摂らなくても全く空腹感がないし、水を飲まなくても喉が乾かない。……ウォッカなら別だがね」

提督「それに……俺の反逆が奴らにどれほどの感情的影響をもたらせているのかは疑問符だ。ゆえに! これから俺はより奴らに対しての脅威にならなければならない。
それだけの感情を湧き起こす……絶望を与える恐ろしい敵になる必要がある」

提督「俺と泊地水鬼、響・雪風はかつてヲ級Nightmareのいた棲地MIへ向かう。泊地水鬼曰く奴は死んでいないそうだ。
これを手中に収めることが出来れば今後の展開は大きく変わるだろう。また、泊地水鬼同様に自律意志を持った深海棲艦が生き残りが僅かではあるが居るそうだ」

提督「他の者……金剛・榛名・霧島。および暁・磯風には、横須賀鎮守府へ向かってもらう。旗艦は金剛、お前に任せる。適当に暴れたらMIで合流だ」

金剛「Why? どうして横須賀……?」

提督「横須賀鎮守府を襲撃するのだ。くだんの騒動からまだ一夜しか経っていない。今お前たちが向かえば、陸路を通って大人数で移動する横須賀在籍の連中よりも先回りできる」

提督「敵の拠点、という言い方は良くないが……とにかくこちらへの攻撃拠点となる施設を叩ける好機だ。今なら警護の艦娘も誰一人残っていない。
相手の戦力を呉一本に絞ることが出来れば、二方向からの挟撃を食らうことは避けられるだろう」

金剛「ワーォ、この期に及んで本気で勝つ気でいるんですネ……。ま、そうじゃなきゃついて来たりしてませんケド」

提督「襲撃と言っても、徹底的に破壊する必要はない。それほど時間はないだろうしな。入渠ドッグと工廠を機能不全にして備蓄されている物資を出来るだけ略奪するだけで十分だ」

霧島(戦略的には正しいんですけど、控えめに言ってド畜生な発言ですね……。ここまで来るといっそ清々しいものを感じます)

提督「また、鎮守府に艦娘が不在といえど、工員や事務員は居ることだろう。事故であってもこれらを傷つけるのは避けてくれ。
それは我々の目的とするところではないからな。お前たち艦娘にとっては顔も憶えていないような取るに足らない存在かもしれないが、奴らには奴らなりの人生がある」

磯風「本気なんだな……全ての艦娘を敵に回すことになるぞ。それだけじゃない、一切の支援も受けられなくなるんだ。正気の沙汰ではないぞ?」

提督「そうだな。分が悪いと思う者は、横須賀でそのまま他の艦娘らと合流し投降すると良いだろう。俺のエゴイズムに無理強いはさせんよ。
だいいち、お前らはもう俺の部下ではない。今の俺は何の権威もない反逆者だ」

磯風「ここまで来て今更そんな野暮を言うつもりはない、ただの確認さ……だが、不安なんだ。正直のところ、私は今でも艦娘は滅びるべき存在なんじゃないかと思っている。
役目を終えた今でもまだこの世に残っていても良いのだろうかと、そんな風に考えてしまうんだ」

磯風「だが、君はあろうことか敵である深海棲艦でさえも味方に引き入れてしまった。私たち艦娘は深海棲艦を滅ぼすためにいるのにも関わらず、な。
……そう、君には宿命だとか因縁だとか、そういう呪縛めいたものが一切通用しないらしい。だから……君といれば、恐れるべきものは何もない。
貴方は私の提督だ。それは今になっても変わらない」

提督「……ま、勝算のないことはやらんさ。厳しい戦いになることは間違いないがな」

・・・・

響「雪風。出発の前に雑談なんだが」

雪風「なんですか」

響「昨夜の話、聞いていたよ。いや、盗み聞きするつもりはなかったんだがね。
なぜバビロンの打ち上げが中止されたのか疑問に思ってたが……司令官の身にそんなことが起こっていたとは」

響「再生不可能なレベルまで細切れにされるか、体内の修復剤の残量が尽きるかでもしない限り不老不死……。
だが、その体質ゆえに彼は自らの望みを果たせない。彼はこの地球から離れることができない」

響「皮肉な話だな。それはそうと……君は彼のことをどう思っている? 相当気に入られているみたいじゃないか」

雪風「いや、そんな……」

響「司令官がなぜMIへ向かうのに私と君を選んだと思う? 半深海棲艦化している私を横須賀に行かせてはまずいと判断したのは想像に難くないだろう。
ただ、司令官の傍に私だけという状況も良くないだろう。私の制御が効かなくなる可能性・泊地水鬼が反逆する可能性、どちらもゼロではない」

雪風「もう一人必要、というのは分かりますが……どうして雪風なんでしょうか?」

響「だから言ったろう、気に入られてるんだよ。傍に置くなら君がいいと、司令官がそう言っていたんだよ。で、私は再度問いたい。『彼のことをどう思っているか』」

雪風「……響が司令のことを想っているのは前に話してくれたじゃないですか。雪風の出る幕なんてないでしょうに?
それに、雪風じゃあ釣り合いませんよ。これでも、身の程は弁えてるつもりですとも!」 フンス

響「そうか、なら……。こっちは純粋に興味本位な質問。なぜまだ彼の傍に居ようとする?
成り行き上司令官と同行しているのはこれまでの経緯を見るに自然なこととも言えなくはないが……」

響「だが。さっき彼が言っていたように、これからおっ始めようとしてるのは戦争だ。彼のためにかつての同胞を傷つけられるのか、という覚悟の程を問うてみたい」
591 :【83/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/23(水) 21:59:48.68 ID:Nwym7Ov90
響「あるのかい? 彼のための剣となり、彼のための銃となるその覚悟が」

雪風「ないですよ。味方を傷つけるための戦いなら、雪風は従えません。そんな覚悟はするつもりはありません。……それに、しれぇの目的はそこじゃないでしょう」

響「もちろんそうだ。だが、他の連中には大なり小なりそういう覚悟がある。金剛もそうだし、暁もそうだ。恐らくあの磯風とかいう駆逐艦だってそうだろう。
イザという時に彼女らは引鉄を引くぞ。それが果たすべき事だと判断したなら……たとえかつての味方であってもだ」

響「尤もそれが正しいあり方だとは言わないさ。むしろ平時においては君のような振る舞いの方が社会的には正しいのだろう。
だが、君も私も今は盤上の駒だ。頓死の一手を踏まぬよう気をつけてくれ、と言っておきたい」

雪風「分かっていますが……それでも」

響「誘導尋問はやめようか。今の質問の真意はこうだ。君は彼の理想のために全てを捧げる気はない、だが君は彼の傍にあり続けようとしている……なぜなのか。この答えが知りたい」

響「実のところ、私も彼の考えの全てを理解しているわけではない。彼が何を思って行動しているのかも分からない。だが私は彼を愛している。
彼が好きだとも、ああそうだ! もはや私にとって、彼のいない世界などあり得ないんだ」

ギラついた太陽の光が照りつける。目の前にいる響との距離は一メートルもないはずなのに、雪風の目には彼女が蜃気楼の中で揺らいでいるように見えた。

響「そう、君以外の連中は。理由が分かるんだよ。磯風は恐らく私と同じく“彼と共にある以外の選択肢”しか考えられない部類だろう。恋慕の念があるかどうかはさておき。
一方で金剛や暁は、彼の傍に居ることで何かを見出そうとしているタイプだ。彼の理想を目指す情熱の炎の中で、自分もまた何某かを得ようとしている連中だ」

響「君はそのどちらにも属していないだろう。最も彼の近くに居たはずの君が他の誰よりも冷めている、その理由が気になって仕方がない。
批難しているつもりはない、純粋な興味なんだ。知りたい、なぜ彼の近くに居てそうまで冷静で居られるのか。君から見える彼がどうだったのかが知りたい」

雪風「こういうことを言うと、司令に対しての侮蔑になってしまいそうで、あまり言いたくないんですけど……。あたしは、司令のことがかわいそうだと思うんです」

雪風「司令は、立派な人です。口ではああ言っているけど、本当は誰も傷つけたくなくて、不器用なだけで優しい人なんだって、雪風は知ってます。
でも、だからこそ……あの人が幸せになる未来が見えなくて」

雪風「バビロンが地球を脱してからも、司令はずっと冷静でした。痛みに悶えながらも『あまりに見るに耐えないグロテスクな姿だから、見ないでくれ』とか、
『修復剤の原液は癌細胞化を促す物質に変質していないか調べてみてくれ』とか、そんなことを言っていました」

雪風「私たちに心配かけないように、うめき声を押し殺しているようでした。
私と磯風さんで地球に戻ろうと判断した頃には激痛のあまり自制が効かなくなっていたようで、わざと舌を噛み千切って声を少しでも抑えようとしていたみたいです」

雪風「地球に着いた頃には、癌化は収まっていたようですが、肉体の修復力も弱まっていて苦しんだり叫んだりする力も残っていないようでした。
雪風は急いで司令を背負って、病院に向かいました。その時、背中でコンコンと、艤装を叩く音がしたんです。しれぇが指で叩いていたんです」

雪風が、コツンコツンと自分の艤装を叩く。−−−− ・−・− −−・−・ ・−・−− ・・・− −−−

響(『ころしてくれ』か……)

雪風「後で、身体が治った後に、病院で聞いても、しれぇは『身体を動かす余力どころか意識もなかったあの状況でそんなことができるものか。映画の見すぎだろう』って。
笑い飛ばしてくれました。けど、けど……」

雪風「雪風は、雪風には……あれが司令の心の叫びに聞こえて、聞こえ、ううっ……」

響の視界が揺らぐ。雪風の姿が、蜃気楼に乗って揺らめいているように見えた。暑さによる幻覚なのか、体質の変化による失調なのかは分からない。
距離を確かめるように慎重に歩み寄り、自分より少し背の低い雪風の頭を撫でる。

響「泣くなよ……大丈夫さ、心配しないで。私たちの司令官がそんなに脆い人に見えたかい。折れるならもっと早くに折れているさ」

雪風「あっ、しれぇ、ごめん、なさい……」

提督「呼んでも来ないと思ったら……探したぞ二人とも。ん?」 肩を震わせる雪風を見、説明を求めるジェスチャーを送る提督(クイクイと交互に二人を指さす)

響「少しいじわるなやり取りをしていたら泣かせてしまったよ。……いやなに、雪風は不安なんだと。君の心が壊れてしまわないかがね」

提督「(? 昨夜の話か……? 珍しく取り留めの無い話をしたから不安にさせてしまったのかもしれん)何を心配しているのか知らんが、俺を見くびってもらっては困る」

歩み寄り、二人の頭を撫でる提督。その動作は少しぎこちなく、頭を撫でているというよりは頭を掴んでいるといった方が適切かもしれない。

提督「……とはいえ、心配させたならすまなかった。だが問題ない。全てうまくいくさ、お前たちが居ればな。全て……果たしてみせるさ」

提督(しかし、『君の心が壊れてしまわないか』か。……ひょっとしたら、もうとっくに壊れているのかもしれないな)

一瞬、険しい顔を浮かべるも、響と雪風の視線に気づきすぐに無表情に戻す。

雪風「しれえ……痛いです……ごわごわって……」

提督「あ、いや。スマン、こういうのは慣れないもんでな……悪い」 すぐに撫でていた手を引っ込める

雪風「でも、司令のおかげで、なんだか元気になれました。雪風、まだまだ頑張ります!」

響(たとえそれが憐憫の情であったとしても、想いの純度は本物か……雪風)

響「なあ雪風。君はさっき『釣り合わない』だとか言っていたが……。今一番近いのは多分、君だぞ。資格は十分あるんじゃないか」

提督「一体何の話だ?」

響「〜♪」 口笛を吹きごまかす響

響(やれやれ、どうして私は恋敵を増やすような真似ばかりしているのか)
592 :【84/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/23(水) 22:03:22.10 ID:Nwym7Ov90
提督「さて……海域的にはこの辺りなんだが……(過去、この海での指揮を執っていたが……まさか俺自ら訪れることになるとはな。奇妙なものだ)」

泊地水鬼「アッ……オハヨ」

軽巡棲姫「オハヨ! 誰、ソイツラ」

提督(軽巡棲姫、という種類の深海棲艦。艦種上は軽巡だが、そのスペックは一般的な深海軽巡のそれを遥かに凌ぐ上位種か。しかし随分と気さくだな……)

泊地水鬼「トモダチ……」

提督(いつお前と友達になったんだ)

軽巡棲姫「ソッカ。ヨロシク」

提督「なぜこいつは微塵も俺たちを疑わずに握手を交わしてくるのだ……? ここミッドウェーやアリューシャン、ステビア海で散っていた深海棲艦は草葉の陰で泣いてるぞ」 ヒソヒソ

響「まあいいじゃないか。味方の駒は多い方がいい」

雪風「せっかくだから仲良くやりましょう!」

提督「ひょっとして、いや、ひょっとしなくても。こいつらは深海棲艦としては落ちこぼれなんじゃないか。泊地水鬼と出会った時の違和感が確信に変わったぞ……。
深海棲艦としての使命より自らの感情を優先させる奴らだしな、なるほどなるほど……不安だ」

提督「感情の要素を持っている分、知性が欠落している可能性も……」 ペシッ

泊地水鬼に帽子をひったくられる。へそを曲げたようだ。

響「白(ハク)。この軽巡の子はなんて呼べばいい?」

泊地水鬼「Α※@Σ↑]Ω」

響「すまない、私たちにも分かる言語で頼む……」

雪風「? 私たちがつけて良いんですか。じゃあ、ケーちゃんなんてどうでしょう?」

軽巡棲姫「ケーチャン! ヤッター! カワイイ!」

提督「スゥー……ハァ(余計なことにリソースを割くな。今は自分のすべきことに集中しろ。そうだ、全ては瑣末なこと。気にすべき事象ではない)」

雪風「あらら。しれぇが自分の世界に入っちゃいました」

・・・・

MI諸島の島々を結ぶ中間点には、地図には載っていないはずの小島が出来ていた。島の表面は岩に覆われていて、樹木や野草はおろか苔の一つさえ生えていない。

雪風「地下へと続く洞窟への入口……なんだかRPGみたいですねぇ」

響「結構俗っぽい例えをするんだね。とはいえ、確かにその通りだ。これはちょっとした冒険だな」

提督「泊地水鬼。お前はヲ級Nightmareの居場所を知っていると言っていたが。この鍾乳洞の中に居るのか? お前、さっきから同じ場所をぐるぐる回っていやしないか。あと帽子を返せ」

雪風「白、って名前で呼んでくれないと嫌だそうです。どうして私のことを雪風、響のことをヴぇ、ヴぇ……」

提督&響「Верный」

雪風「って呼ぶのに、どうして自分のことは名前で呼んでくれないんだって不満みたいです」

提督「名前なんてつけた憶えないが」

響「昨日の宴会で司令官が早々にノックダウンしてしまったのが悪いんだよ」

提督「(悪いのは俺なのか……?)納得いかないが……。白、と書いてハク。か。シンプルすぎるような気もするが……良い名前だな」

奪っていた帽子をぐにゅっと提督の頭に押し込む。目深に被らされたため前が見えなくなっている提督。

泊地水鬼「方向ヲ間違エテイタ。ココジャナクテ、モット下……」

泊地水鬼がそう言うと、バァンと地面に衝撃が走る。泊地水鬼が地面を殴ったらしく、岩盤が崩落しているらしい。

提督「おい、これどうなって……」

泊地水鬼「〜♪ ネエ、私、飛ンデルワ……飛ンデイルノ!」

提督「どう見ても落ちているではないか!」

泊地水鬼の腕に抱きかかえられながら垂直落下していく提督たち。

軽巡棲姫「白チャンヤッタネ!」 ヤッテネエヨオォォォ

・・・・

提督(落下時間があと三秒長かったら、“一機減る”ところだったな……)

眼前に広がるのは、古代ローマ時代に建築された宮殿や城を彷彿とさせるような精巧かつ壮麗な大広間だった。
593 :【85/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/23(水) 22:17:41.35 ID:Nwym7Ov90
呉鎮守府講堂。方々の艦娘を一極集中させたため各々を収容するための部屋などあるはずもなく、ひとまず外部から来た艦娘らは昨夜に引き続きこの講堂で一夜を過ごすことになった。
最終的には艦娘の半数を横須賀に移す計画が進められているのだが、急ピッチで進めてももう数日は要するであろう見通しだった。

皐月(なぜ? あのロケットも、ああしてボクの頼みに応じてくれたのも、軽トラックで駆け回ったのも、全部嘘だったの? ボクの寝ぼけ顔を見て、暢気だなって笑ってたじゃないか。
納得がいかないよ。司令官はどうしてあんなことをしたのか。司令官は何がしたかったの? 何をしようとしているの?)

文月「ね、皐月ぃ。昨日からずーっと考え事ばかり、ヘンだよぉ。そりゃ、あんな事があった後だから、分かるけどさ……」

皐月「あー……文月、上からの指示は何か来ているのかい?」

文月「まだ何も。どうにもゴタゴタしてるみたいだよ〜。とにかく緊急事態だって皆必要以上に慌ててるところはあるけれど……まだ一夜明けたばっかりだから仕方ないか」

文月「今問題になってるのは、半深海化がほぼ末期まで進行した艦娘をどう扱うかみたい。昨日、泊地水鬼が現れる前に半深海化した艦娘が暴走した例があったでしょ?
でも、一方で半深海化が最終段階まで進んでいてもまだ自我を保っている艦娘も居るみたいで……」

皐月(暴走した半深海化した艦娘と、自我を保ったままの半深海化した艦娘と、何かが違う? 何が? でも、司令官はきっと何かを知っているはず……)

文月「半深海化していようが自我を保っているなら戦場に繰り出すべきだ、って意見と、いつ暴走するか分からないから収監しておくべきだって意見があるみたい。
それはさておき深海棲艦はあたしたちの敵だからね。手取司令官を討つ算段だけはスムーズに進んでいるみたい。どのみち、あたしたちは後方支援に回ることになるんじゃないかなぁ」

皐月「司令官の居場所はまだ分かってないのかい?」

文月「うん。もう偵察部隊を出す決定はしてるみたい。内陸に逃げたとしたら陸軍がいい具合にやってくれるだろうから楽なんだけど……国外だろうねぇ。
大陸……旧中国か旧露西亜領かなー。でも、いずれも深海棲艦にやられて壊滅状態、内陸部も退廃してるみたいだし、そんな場所で燃料や弾薬を調達出来るのかな……。
深海棲艦といえど弾薬やボーキサイトが必要なのはこっちと同じみたいだしねぇ」

文月「それに、退廃していたり、すでに壊滅状態だったりとはいえ……他国の、その土地に住む無関係の人を巻き込んで戦うのは司令官のやり方じゃないと思わない?」

皐月(違うな……はずれだよ、文月。亡命や外国へ逃げ延びたって線は無いよ。深海棲艦を受け入れようとする場所なんて地上のどこにもありやしない。
奴らは破壊者だからだ、司令官はそんなこと分かってる。分かった上で奴らの側に付いたんだ)

皐月「さあね……」 気の無い返事。話を聞いていないわけではないのだが、途中から話が頭に入っていないような様子だ

文月「……ねぇ皐月。まさか、司令官の後を追うつもり? 追ってどうするの? だって私たち……」

皐月(ヘンなところで察しが良いんだから、困るよなあ……)

文月「私も、司令官の行動の意図は気になるよ。でも……私たちの出る幕はない、そうでしょ?
今は、司令官の真意が分からないけど……意味のないことはしない人なはずだから。答えが分かる時まで、待つしかないよ」

皐月「……待てないよ。分からない、分からないんだ。学校に行きたいだなんてボクの我侭も聞いてくれたんだよ?
学校を卒業させてやれなくてすまないって、ボクを見るたび申し訳なさそうに言っていたのに。なのに、どうして……?」

皐月「司令官の目からしたら、ボクはきっと取るに足らない存在だったのかもしれない。たまたまそこにいただけの、居ても居なくても同じのモブ艦娘だったかもしれない。
でも。ボクにとっては、すごく嬉しかったんだよ。嬉しかったんだよ……」

文月「でも……」

皐月「分かってるさ。分かってるよ。言うなよ! 何も出来ないことぐらい、分かってるよ……!」

俯き、顔を見せないように服の袖で目元を隠しながら駆け出していく。

・・・・

一人になれる場所を探していた。どこに行っても他の艦娘がいて鬱陶しい。
あまりにも突然に、かつ理不尽に状況が一変して、何がなんだか分からない。何が真実で、何が嘘なのか。それを知る術さえ自分には与えられていない。

皐月「なんで……っ。なんでだよ……、っ……!」

どうしても一人になりたくて。でも、そんな場所はトイレの個室ぐらいしかなかった。なおさら気持ちは沈んだ。

ボクは子供だ。肉体がどうこうじゃなく、精神が。司令官に裏切られたというショックだけで、全てがおかしくなってしまっている。
文月のように、司令官の真意が分かるその時が来るのを待とうという、ごく普通の冷静ささえどこかに失くしてしまったようだ。

混乱を前に無意味に焦燥して、力を空費している実感がある。だが、そうせずにはいられなかった。分からなくて、ショックで、悲しかった。
裏切られた、悲しい。悲しいって感情を自覚したら、その気持ちだけが膨れ上がって、ますます悲しくなる一方で。

司令官は、何を考えてるか分からない変人だ。でも、ボクたちを意味もなく傷つけるようなことなんてしない。
仮に深海棲艦の力を得たとして、どうしてあんな風に皆に恨まれるようなことを最後にやったんだろう。どうしてあんな結末を望むんだろう。

皐月「せめて、知りたいよ……。それぐらい、許してよ……」 うなだれ、頭を抱える

リュックサックから、トランプのカードケースと小さな腕時計のようなものが落ちる。これは、ボクたちがMI作戦の裏で“アノーニュムス”として動いていた時に司令官から支給されたものだ。
作戦終了後は回収されるはずだったけど、司令官に記念に貰っていいか聞いたら渋い顔で承諾してくれたんだった。
そして……この小さなガジェットには、無線機能の他にも、お互いの居場所を指し示す発信機としての機能が備わっている。

皐月(反応が一つだけある……どうして? 場所は、ミッドウェー方面か……? 発信者は……)

司令官だ……! なぜかは分からないが、司令官は自らの居場所を教えている。それも、ボクだけに対して。なんでだ? 分からない、けど、けどこれは……。

皐月(チャンスだ……!)

知ってしまった、ボクは知ってしまったという興奮が背筋をゾクゾクと刺激する。心臓の鼓動がどんどん早くなっていくのを感じる。
これは紛れもなく司令官がボクに宛てた何らかのメッセージなんだと確信し、脳内物質が駆け巡るような感覚を味わっていた。
594 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/09/23(水) 22:25:54.55 ID:Nwym7Ov90
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~85/100)
・雪風の経験値+4(現在値26)
・皐月の経験値+1(現在値13)

・足柄の現在経験値:26
・金剛の現在経験値:23
・翔鶴の現在経験値:15
・響の現在経験値:23
----------------------------------------------------------------------

無予告でしたが連休中になんとか5レス分書けたので投下しておきます。
次回は『Phase C』が進行します。内訳的には皐月3レス・翔鶴2レスとなっております。

次回投下はワンチャン近日中……?
もしかしたらまた普段通り一ニ週間かかるかもしれませんので過度の期待はせずお待ちくだされ。
595 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/10/05(月) 00:02:05.69 ID:XDOjsqWI0
軽巡棲姫とかいう(現時点では)実在しない架空の存在を生み出してしまっていることに後から気づきました。
次回以降は軽巡棲鬼と表記します。意図的に姫と書いたわけではなく、ただのミスなのでした。すみません。
読み返すと結構誤字とか脱字とか多いんすよね……なるべく減らすように心がけたい。心がけてはいるのですが〜……。



次回の投下は10/7(水)を予定しています。
進捗具合によっては週末あたりにずれるかもしれませんが……。
リアル世界ではワンパン大破どころかワンパン轟沈的サムシングがあるので油断なりませんな、まったく!(何
セルフキラ付けして頑張りますハイ。
596 : ◆Fy7e1QFAIM [sage]:2015/10/07(水) 23:54:54.37 ID:Bs/Nk/GZ0
ごめんなさいー! 予告したけど間に合いませんでした。
書き上がったタイミングでなるべく早く投下するつもりです……恐らくは金曜日頃になるかなと(遅くとも日曜日までには投下します)。



////チラシの裏////
翔鶴改二甲、なかなか面白い性能ですね。燃費的に普段使いはちょっとキツイですが……。
今月はなんとなくランカー入りを目指してまして、5-4毎日ぐーるぐるってな具合です。
そして……ついに蒼龍牧場や大北牧場に手を出してしまいました。
艦これプレイヤーとしていよいよ来るところまで来てしまったなぁ……という心境です。
もっと上の方はケッコンカンスト艦で3ページぐらいまで埋まってたりするんですけどね! おっかねえや!
597 :【85C-1/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 20:56:12.11 ID:dfa6f4ou0
皐月「落ち着け……大事なのはこれからどうするかってことだ。ボクに何が出来るのか……」

皐月(そもそも、今の司令官を信じていいのか? 司令官がボクの存在を忘れていなかったということに舞い上がってしまったが、司令官は今や国家の敵であり人類の敵。
普通に考えれば、居場所を上の人間に知らせるべきなんだよな……。司令官は深海棲艦を従えているんだぞ……?)

だが……あの司令官のことだ。ボクが他の誰かに居場所を伝えようが伝えまいが、結局のところ全て手のひらの上なんじゃないか……?
貰ったボク自身が覚えていなかった発信機機能すらも覚えていて、かつ自らの居場所をあえて晒してみせているぐらいだ。
そもそもこれすら罠なんじゃないか……? 経過した時間の短さから考えて、とにかく追手から逃げるために辿り着いた場所とは考えにくい。
まるで最初からMIを目指していたかのような……。

うーん、疑うとキリがないな。そもそも策謀において彼を上回る者はいないというか……知恵比べでボクが敵うはずもないけれど……。
司令官が本気で悪事を成そうと思ったらもっと悪辣な手を打ってくるような気がするんだよなぁ。本気でボクたち艦娘とやり合う……にしては手ぬるいような気がするんだ。
何かこう裏の意図があるというか、この反逆さえも全部布石なんじゃないかとは思う。というか、そう思いたいよなぁ……希望論だけど。

皐月(仮にここで司令官の企みを止めたとして、艦娘の半深海化は食い止められず結局のところ艦娘同士で争いが起こる。
今は司令官を討つべく団結しているけど、その先のことは何が起こるか分からない……)

皐月(自らスケープゴートとなった可能性……あるかもしれないな。だったらやはりボクは司令官のために動くべき、なのかな……)

全ては希望論にすぎないけれど。でも、疑い出したら何もかもが怪しく思えてしまうんだよな。それこそボクが司令官に最初に呼び出された時の理由だって謎だ。
そもそも、司令官が居なければボクはずっと訓練生のままで、下手すると一度も出撃したりすることも無かったわけで……。
実技の成績が良かったとはいえ、総合の成績でならボクよりも良かった子は結構いたわけだし……。ボクの何を見てたのかな、それともなんとなくだったりするのかな。
司令官はボクの何を気に入ったんだろう。いや、気に入ってはないか。ただ、目に映っただけか。でも……。

皐月(いやいやいやいや、何を考えてるんだボクは!? 思考が脱線しすぎてるってば! 冷静にならなきゃ。冷静に……)

・・・・

呉鎮守府内の食堂。左手で頬杖をつき、右手で缶コーヒー(微糖)を握りながら、思案する皐月。

文月「麺が伸びちゃうよー」

皐月「ああ、ごめん。いただきます(司令官の居場所が分かったって話をしたら、きっと文月を巻き込むことになるよな……)」

カレーうどんを啜る皐月。食べながらも思索にふけっているせいか、胸元に飛んだカレーの汁に気づいていない。

皐月(ボクの出した答え、は……司令官を信じる。これしかないよ。だって、どんな形にせよ、司令官はボクを信じてくれているわけで。
ボクのことを疑ったり、邪険に扱ったりしたことは一度だってないんだ。やっぱりボクは……司令官のために動きたい)

文月「皐月、分かり易すぎるよ〜。その顔。何か分かったことがあるんでしょ? さっき別れた時と顔つきが全然違うもん」

クリームソーススパゲッティを食べ進めていた手を止め、皐月の方に紙ナプキンをスッと差し出す。

文月「隠し事とか……良くないよね〜?」

皐月「あはは……お見通しかぁ。で、この紙ナプキンは?」

文月「いや、口の周りカレーだらけなのに真面目な顔してたから笑っちゃいそうで。考え事してて全然気づいてなかったでしょ」

恥ずかしそうに顔を赤らめ、紙ナプキンで口元をふき取る皐月。

・・・・

食事を食べ終わると、机の上にノートを広げる皐月。凸の字を書き並べていく。

文月「(司令官はMIへ向かった……!? へ、へ〜……? なんで?)えっと、まず。どうして場所が分かったのかな?」

無言で腕につけている小型無線機兼発信機を見せる皐月。

文月「(なるほど、皐月がこれを持っていることを見越して司令官が……?)そういえば皐月それ気に入ってたもんね」

皐月「(……のに、今まで発信機としての機能があることを忘れていたのは黙っておこう)通信は出来ないけど、場所だけはこれで伝えてくれたんだよ」

文月「現状行方不明者リストに挙がっている人たちもここに居る可能性が……?」

ノート上に凸の字を六つ書き足す文月。行方不明者として手配されている金剛・榛名・霧島・暁・雪風・磯風のことを指しているのだと思われる。

皐月「うーん……。そうだね。分からないけど、多分そうだと思う。全員かどうかは分からないけど、それぞれの関係性から考えて半数以上はそうだと思う」

文月「で、皐月は?」 手取提督を意味する凸から離れた場所に、黒塗りの凸を書く。皐月のことを意味しているらしい

皐月「……こっちだよ。もう覚悟は決めてある」

黒塗りの凸から矢印を伸ばし、MI方面へと繋げる。すると文月が、もう一つ黒塗りの凸印を書き足して、同じ方向へ矢印を伸ばす。

文月「じゃあ私も、こっちだね。後方支援じゃタイクツしちゃうからねえ」

皐月「文月……」

文月「ここまで来て仲間外れはなし、でしょ? それに、あたしだって皐月ほど好き好きってわけじゃないけど……ほら。一緒に居て面白いしね。クリオネみたいで」

皐月(どういう意味だそれ……)
598 :【85C-2/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 20:57:16.45 ID:dfa6f4ou0
皐月「ねえ文月……ホントにやるのかい……?」

文月「覚悟してるんでしょ? 違うの?」

皐月「そうだけどさ……(腹括りすぎでしょ……)」

ボクたちは、司令官に会うにあたっての土産ということで資材庫から燃料や弾薬を頂戴することにした。……要するに略奪である。
ボクはあまり乗り気ではなかったが、『私たち駆逐艦二隻が来たところで司令官が喜ぶと思う? せっかく司令官の位置が分かってるなら、期待に沿える動きをするべきでしょ』と文月は言う。

皐月(言われてみるとその通りなんだよなぁ……。司令官の立場からしたらこう動いた方が一番ありがたいはず)

皐月「ただ……このシチュエーション妙にデジャブな気が……うわわっ!?」

龍田「あら〜。こんばんは」

文月(皐月!? なんで早速見つかっちゃうかなぁ……って聞き覚えのあるこの声は)

・・・・

天龍「見つかったのがオレらで良かったな。もっとも、読み通りではあったが」

龍田「手取提督に内通してる艦娘が居るのであればここを狙うと思っていたわ。私たちはそれを見越して倉庫番役を買って出たのよ〜」

皐月(火をつければこの資材庫の燃料や弾薬は削れるかな……それをやったらボクもただじゃすまないが。
せっかく司令官の場所が分かったんだ。ここはなんとか切り抜けたいところ……! 脱出経路を計算して爆発を起こせばなんとか逃げれるか……?)

無言で砲を構える皐月とその様子に慌てる天龍と龍田。

天龍「お、おい!? バカな真似はやめろ!」

龍田「そうよ!? どちらかと言えば私たち貴方の味方よ!? ここで待っていたのも、あわよくば手取提督の側に着けたらという目的なんであって〜……」

皐月「え、ちょっとまって。それどういうこと?」

天龍「ここで手取提督と争ったところで、半深海棲艦化は食い止められねーだろうが。なんで提督があんなことしたのかは謎だが……どうせなら訳知りっぽさそうな方に味方した方が得策だろ?
だいいち、オレは別に大本営にも軍にも義理はねえ。無茶な作戦で沈められて、生き返ったと思ったらよく分からん横須賀の鎮守府に飛ばされて、今度は呉に召集。で、今はただの警備員と」

天龍「それに、救国の英雄が一転して悪の頭領に……なんてカッコよすぎるだろ! こりゃあ見届けるしかねえってな! オレの電探がそう言ってるんだ」

龍田「ぇ〜と、天龍ちゃんは置いといて……。行方不明者の中に、暁って駆逐艦が居るでしょう? 私たちは書類上の解体処分を受けた後、貴方も知っての通り手取提督の雑用をしていて。
佐世保鎮守府が解体されてからは経歴を伏せた状態で横須賀に送られたの。清掃員ぐらいしか仕事は無かったけどね……」

龍田「それでも暁ちゃんや雷ちゃん、電ちゃん。皆頑張っていたわ。響に憧れていたようで、与えられる仕事は無くてもずっと訓練を続けていたわ。
暁ちゃんは幸い上からのお声がかかってそれなりに出撃任務が与えられるようになったんだけど……」

天龍「そうそう。暁は特に骨のあるやつだったぜ。響に並びたいってな。……んで、その響は提督と共に深海棲艦へ寝返った。暁は今だ姿が見つからねえ」

天龍「あの提督に可能性を見出している一方で、ひょっとすると暁の身に危険が及んだかもしれねー、とも思ってるわけだ。もしそうだとしたら作戦は変更。
オレ達は手のひらを返してここの連中に手取提督の居場所を晒すつもりでいる。……なんとなくそんなことはねー気がするがな。オレの電探もそう言っている」

龍田「あの提督……ちょっとロリコンのケがあると思わない?」

天龍「ま、ロリコンかどうかは置いといてだな。響や提督が本当に深海の連中と同じぐらい落ちぶれてんなら、危険を察知して逃げ延びるぐらい出来るはずだ。
オレ様の見通しでは、アイツはそれぐらいに実力をつけてる。だからそんなに心配はしてねぇ、だが万が一……って話だ。これはな」

・・・・

皐月に突然呼び出された数分前の出来事を思い出す陽炎。

皐月「陽炎。今からボクは手取司令官のもとへ行く。……これは君への裏切りになると思う」

陽炎「え? ちょっと、何言ってるの? 突然どうしたっていうのよ」

皐月「許してくれとは言わないけれど……さよならは言っておきたかった。経緯はどうあれ、友達だから」

皐月「ボクにとって、司令官はやっぱり大事な人で。今でも信じてるんだ。だから、会いに行きたい」

陽炎「……分かったわ。いや、ぜんっぜん分からないけど。でも……いいわよ。行きなさい。どこへでも行くといいわよ!
……でもまっ、勘違いしないことね。皐月がどこへ行っても、私の友達であることは変わりないわ」

ありがとう、と言い残して足早に皐月はどこかへ走っていった。

どうして皐月を見逃してしまったのか。皐月を見逃すこともまた、裏切りへの加担だと言うのに。己の提督への背任ではないのか。陽炎は自問する。

ふと昔のことを思い出す。軍縮による解体を免れるため、市井の人間に紛れる。
今でこそ皐月のような友人とも出会えて、良い思い出だったように感じられるが、当初は不安だらけだったし、嫌だった。陽炎は自分の提督のことを思慕していたからである。
だが……その想いは長い時間の中で、少しずつ思い出へと変わってしまった。抱いた愛情も思い描いた幸せな未来も、全ては薄まり、やがて穏やかな好意に収束してしまった。
自分の提督と二度と会えなくなるわけではない、再会したらまた想いは蘇るのかもしれない、けれど今この瞬間においては、自覚できるほどに情熱が冷めてしまっている。

だから。たとえそれが一時的な狂奔だとしても。“仕方がないことだ”なんて諦めず、定められた運命に抗ってみればいい。
陽炎の目には皐月の行動は半ば暴走気味なように映ったが、だからこそ羨ましく思えたのだった。

陽炎(私もああだったら……とは思わないし、今の自分に後悔があるわけじゃないけど。でも……あれが若さ、ってやつなのかしらね)
599 :【85C-3/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 20:58:12.09 ID:dfa6f4ou0
呉鎮守府内の主力級の艦娘は臨時会議室に集められた。
会議というよりは通達を目的に集められたようで、この集まりの中には赤城や翔鶴も含まれていた。

井州「緊急に呼び出してしまってすまない。今後の方針転換の発表を行いたいのだが、その前に今日起こった重大な事件について説明しておきたい」

井州「横須賀鎮守府が襲撃された。ドックや工廠などをピンポイントで破壊され、軍事拠点としての機能はしばらく果たせそうにない。
横須賀に行くはずだった艦娘たちはこれから踵を返して呉に押し寄せるということになる」

「おいおいおいおい、今だって定員オーバーなんだぞ」「外泊許可取って宿にでも泊まった方が良さそう……」 どよめきが起こる。

井州「その通り。この呉鎮守府は今ですら満員の状態であり、各艦娘のストレスも高まっており不満が頻出している。
また、こうしている間にも半深海化の症状が現れている艦娘は増え続けている」

井州「そこで。我々の総力を以って反乱軍を討つことに決定した。まずは小隊を各海域に展開して哨戒を行い、反乱軍の居場所を炙り出す。
深海棲艦を支配しているとはいえ向こうの資源は乏しく兵力も少ない。長期に渡る漸減作戦でジリ貧にしていくのが当初の計画だったが……。
こうなっては仕方がない。やはり策謀に関しては相手の方が上手であると認めざるを得ない」

呉ではこの頃から手取提督率いる深海棲艦や彼に従う艦娘らの勢力を総称して、反乱軍と呼ぶようになっていた。

井州「だが。ここには君たちが居る。敵がいかに神算鬼謀であろうと、歴戦の猛者である君たちはこの国の守護神だ。
どんな海をも超えてきた圧倒的な練度を誇る艦娘であれば、いかな相手でも打ち破ることが出来る……と私は信じている」

井州「詳しい作戦内容は追って連絡する。MI・トラック攻略以来の大規模作戦にして恐らく最後の決戦になるだろうが……みな、今一度力を貸して欲しい」

・・・・

仮設された空母機動部隊控室。普段通りの加賀と対照的に、赤城は憔悴しきっていた。
悲痛な面持ちで両手を額の前で組むその姿は、何かに祈りを捧げているかのようだった。

赤城「加賀はどう思いますか」

加賀「果たすべきを果たす。これまで私たちがやってきたことを貫くだけ……そう考えていますが。これはあくまで私個人の解答。それとも……」

加賀「迷いがありますか? 私の意見一つで揺らいでしまうほどに、心細いですか?」

赤城の耳元に顔を近づけ、煽るようにわざとらしく囁く。

赤城「私は一航戦赤城。私がこの国の空母機動部隊の象徴であり中心である、他に私の代わりを務まる者は居ない……」

加賀「そうね。その通りだわ」

赤城「私は、生まれてからずっとこの海軍で育ち、深海棲艦を討ち、国を護ってきました。今もその決意は揺るぎません」

加賀「国家の反逆者である手取提督に従っていたのに? 赤城さん、貴方は彼が唱えた『バビロン計画』にだってまるで疑いを持っていなかったわ。
彼の為に自分の身を尽くしたいとも言っていたわね」

赤城「ッ……加賀」

加賀「赤城さん。私はずっと貴方の背中を追いかけて来ました。気づいていましたか? 私は貴方に嫉妬していたのですよ。ですが……もう今の貴方は嫉妬するに値しない。
今の貴方は脆く、弱い。本当は手取提督と共にありたいのでしょう? 自らの心に嘘をついて引いた弓の無力さは、貴方が一番よく知っているはずですが」

赤城「加賀……貴方は何を考えて」

ダァンと部屋の扉を蹴破る瑞鶴。

瑞鶴「先輩! 報告です! 第六・第七資材庫で収奪があったようです!」

翔鶴「燃料・弾薬・鋼材・ボーキサイト、他高速修復材などが奪われたようです。どうにも、この鎮守府の中に反乱軍との内通者が居たそうで……。
今、蒼龍先輩と飛龍先輩が現場に向かっていますが……日も沈みつつあるこの状況での索敵は困難かもしれません」

翔鶴「収奪された資源や資材の量はさほど多いものではありませんが……この手際の良さ、油断なりませんね。これだけのことをやるからには向こうも本気、ということでしょうか」

瑞鶴「井州提督からの指示はまだですが、形跡から大方のルートは絞れたようです。反乱軍の拠点を探すために全方位に艦娘を繰り出す必要は無くなりました。
正式な決定が決まり次第中部海域に、全勢力を以って進攻することになるかと!」

翔鶴「いよいよ決戦、ですね。……随分と期間が狭まってしまい艦隊全体での連携には多少不安がありますが、井州提督も仰っていたようにここまで戦い抜いた艦娘であれば問題はないでしょう。
瑞鶴も私も、コンディションは完璧です! 一航戦二航戦の先輩方と私たちがいれば。きっと乗り越えることが出来るはずです」

加賀「私に遅れを取らないことね五航戦」

ファサと髪をかき上げる翔鶴。

翔鶴「ええ、もちろん。MIでの戦いを超える活躍を期待して下さい。もう先輩方の後ろで戦う私たちじゃありませんから」

加賀「フッ……貴方から勇ましい言葉が聞けるのは珍しいわね。雄弁に恥じぬ働き、期待しているわ」

ポンポンと翔鶴の肩を叩き、部屋を後にする加賀。

加賀が部屋を出てから追うようにして瑞鶴はトレーニングに向かい、部屋に残された翔鶴は武装の手入れを、赤城は何をするわけでもなく椅子に座り続けていた。

翔鶴(いつもより心なしか覇気がないように思えます。どうしたんでしょうか)

翔鶴が声をかけようかかけまいか悩んでいると、赤城の方から話を切り出した。
600 :【85C-4/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 20:58:44.60 ID:dfa6f4ou0
赤城「手取提督の話は前にしましたよね」

翔鶴「……なるほど。そういうこと、ですか。私の目には少しも迷いが無いように見えていたので、割り切っていたのかと思いました」

赤城「残念ながら、そうまで強い人間ではないのですよ……私は。これまでは抑えていられたんですけどね。覚悟はしていたつもり、なんですけどね……。
いざ“その時”となると、気持ちの整理が着かないものですね。我ながら不甲斐ない」

赤城「それでも……私は戦いますよ。これが私に課せられた宿命であるなら、受け入れましょう。私の個人的な感情は、大義の前ではエゴイズムに過ぎません。
これは悲劇でもなんでもない。私は己の未熟さを超え、更なる成長を遂げましょう」

翔鶴「自らの想いを捨て去ってでも、ですか」

赤城「ええ。これが一航戦赤城に課せられた最後の試練。私が貫くべきは正義であり、自我ではありません……!」

翔鶴「自らの心に嘘をついてもですか。それは欺瞞ではないのですか」

赤城「戦場に立つ時、正しい心であればいい。今は迷いの中であっても、克服してしまえば大したものではありません。恐れも悔いも、私はそうやって乗り越えてきた」

翔鶴「強くあることと、自分の心を理論武装で塗り固めることは違うでしょう。彼のことを想っていたのでしょう、なぜその気持ちさえも捨て去ろうとしてしまうのですか!」

赤城「そうあらなければ私は強くなれないからです。戦場に情は不要。曇りない信念がなければ敵を沈めることは出来ない、敵がかつての味方であったならなおのこと……」

翔鶴「貴方はプライドのために生きているのですか。一航戦というのはそんなに大事な肩書きなのですか?」

その台詞が癪に障ったのか椅子から立ち上がり、じっと翔鶴を見据える赤城。

赤城「師弟揃って言いたい放題ですね……。そうですよ、私はこの空母機動部隊の礎を築くために何年も時間を費やしてきた」

赤城「制空権を取り返す力もなく、深海棲艦になされるがままの状況を変えてきたのは私です。その為に艦載機隊の熟練度の向上も、人材の育成も、この身一つで積み重ねてきた。
佐世保が解体になってからは、次の世代であるあなた達に任せておいても問題ないと考えていましたが。こうなってしまっては話は別」

赤城「私は再び戦場に降り立ちましょう、今度こそ全てを終わらせるために。かつて愛した人が相手であるならば、最後の敵には相応しい」

パァンと、乾いた音が部屋に鳴り響く。翔鶴が赤城の頬を叩いたのだ。

翔鶴「今、私は貴方が間違っていると思ったから叩きました。怒っているわけではありませんが、言葉で言っても無駄でしょうから」

赤城「そう。それで、貴方の気は済んだかしら」

全くダメージを受けていないような、涼しい顔の赤城。

翔鶴「間違っていたならば、正せばいい。なぜそれが分からないのですか」

翔鶴「私は! 貴方が手取提督について話している時の生き生きした表情を見て、この人は本当に提督のことが好きなのだなと。そう思いました。
自分の背負っている責任のようなしみったれた話をしている時と比べて、何十倍も輝いていました」

翔鶴「貴方が彼への想いを失った時、貴方は本当にただの兵器になる。ただ生きるためだけに生きる人形になり下がってしまう!
この戦いに勝利したとして、貴方はこれから先どうやって生きるんですか。半深海化や今後の情勢といったものを抜きにして、貴方はこれから何をしていたいんですか。
私が貴方の道場に相談に行った時もそうだった。自らの本当の望みも果たせず、果たす術も知らずに貴方は燻り続けてきた」

翔鶴「『私にはこうするしかない』と、都合の良い場面でだけ自分の弱さを盾にするのはやめてください。貴方にはそれを乗り越えるだけの強さがあるはずです」

ぽろりと、赤城の目から雫がこぼれる。頬を伝って地面に落ちていく。最初の一滴に続いて、また一滴。
力なく跪いて顔を抑える赤城。やがて堰を切ったように止めどなく流れ落ちていく、涙。

赤城「私は……どうすればいい……。何を信じれば……」

翔鶴に問うているわけではなく、自問しているようだ。

赤城「私は、彼のことがたまらなく、愛しくて……でも。今彼のやっていることを、支持できない。
本当は、自分の愛情にすら自信が持てないのかもしれません。だから彼のことを疑ってしまうし、信じきることが出来ないのかもしれません」

翔鶴「人は間違いを起こします。先輩がご存知のように、私だって間違えてばかりです。
間違いを起こさない人間はいません、手取提督のような聡明な方でも、過ちを犯すことはあるでしょう。
私も彼のやり方には疑問があります……真意が読めませんから」

翔鶴「だから……妄信する必要なんてないんです。間違っているなら、正してあげればいい。彼の傍で戦い続けるだけが愛情の形ではないのだと、私はそう思います」

赤城「そう……なのかしら、ね。でも……今は貴方の言っていることを信じたいわ」

翔鶴「自分の心を雁字搦めに縛らないでください。先輩が、どんな風に戦ってきたかは知りませんが……今は私がいて、瑞鶴がいます。
二航戦の先輩方や、加賀先輩がいます。一人じゃないんです。だから、もう一人ぼっちで背負わなくていいんです」

赤城「貴方に、気づかされることになるとは思いませんでした。そうですね……そう。私、バカみたいですね。そうですよね……。ありがとう、翔鶴。頼りになるわね……」

・・・・

翔鶴「それはそうと……赤城先輩は今回の空母部隊の人事権があるんですよね」

赤城「ええ。それがどうかしましたか?」

翔鶴「ごにょごにょごにょ……」 耳打ちする

赤城「えっ、それはさすがに……。一応、考えておきますが……えぇ〜」 困惑した表情の赤城
601 :【85C-5/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 20:59:40.90 ID:dfa6f4ou0
夜の海を疾走する皐月たち。

雷「追手はまだ来てないみたいね。でも、日が昇ったら見つかっちゃうかもしれないから油断は出来ないわ」

天龍「昔と違って深海棲艦や渦潮の足止めがあるわけじゃねえんだ。追手に見つかる前には着くだろ。それはそうと、おいなんだアレ……? 空を見てみろ」

欠けた月の近くに浮かぶ風船のような物体の群れ。その内複数体がこちらに向かってくる。

皐月「ああ、皆は生で見た事がないんだっけ。深海棲艦の浮遊要塞だよ」 やや得意げに説明する皐月

皐月「アレが出て来るってことは……司令官は本当に深海棲艦を手中にしてしまったんだね」

浮遊要塞が皐月たちの頭上に急接近し、光を照射する。光に照らされた皐月たちの身体はしばらくすると宙に浮き、浮遊要塞の中に吸い込まれていく。

電「えっ、これ、大丈夫なんですか!?」

皐月「司令官もボクたちの位置を把握してるはずだから、迎えに来たってことだと思う。敵意があるなら先制攻撃してくるだろうし」 浮きながら説明を続ける皐月

文月「キャトルミューティレーション……」

・・・・

大理石のような材質の床に、透明なガラスのように外の景色を映している壁。宮殿にあるホールのようにだだっ広い空間が広がっていた。

皐月「なんだこれ……中はこんなになってたのか」

龍田「海の上を移動するよりもラクでいいわね〜」

天龍「というより、海を渡って行ったんじゃかなり厳しいな。海面に幾つも渦潮が発生してやがる」

MIの島々に並び立つ岸壁の要塞。一見すると天然の要害のように見えるが、これらは提督たちがこの島を訪れた後に形成されたものだ。
そして要塞の中央に聳え立つ城。あそこに司令官は居るのだと、皐月はそう直感した。

・・・・

提督(皐月らとの合流が果たせたようだな。金剛も間もなくこちらに戻ってくるだろう)

提督「あちらもそろそろ動き出す頃合か。備えは済んだが……後はどれだけ時間を稼げるか、か」

響「司令官がお望みとあらば、百年でも戦えるさ」

提督「なに、百時間も必要ない。こいつが目覚めるその時まで耐えてくれれば十分だ」

“こいつ”……玉座の上で眠る空母ヲ級Nightmareを指差して言う。

響「これはそんなに役に立つものなのかい?」

提督「……さあな。目覚めてみないと詳しいことは分からん。だが、意識がなくとも一瞬にしてこの城を生み出してしまう程度には力を持っている。
泊地水鬼曰く、かつての深海棲艦の本拠地であった場所を海底から地上に顕現させたものらしい。多神教圏でなら神と称される程度に力はあるんだろうな」

響「司令官は神ってやつを信じるのかい」

提督「『神』をどう定義するかによって変わってくるが……。絶対神、絶対善、全知全能……そういったものは存在しないのだと思う」

響「ほう、そう答えるとは意外だな。詳しく聞きたい」

提督「詳細に回答できるほど物を知っているわけではないが……。この世界というのはどうやら何某かのシステムによって立脚しているようだ。
ある者はそれを宿命と呼び、ある者はそれを神意と呼ぶ。しかし、そのシステムのルールは絶対的な一存による決定で定められるものではないのだと思う」

提督「世の真理は真理にあって未だ真理にあらず。真理を超越した先の真理を見出したいと、俺はそう望むのだ」

響「久々に言っている意味が分からない台詞を聞けて安心したよ。やはり君はそうでなくてはな」

・・・・

雪風らに玉座へ案内されると、皐月は提督のもとへ駆け寄っていく。

皐月「司令官!」

提督「ご苦労だったな……正直のところ予想外の動きだが。発信機の存在に気づいたなら、呉の連中に知らせると踏んでいた」

皐月「司令官は、ボクが司令官を裏切ると思ってたの……? ボクを信じていなかった?」

提督「逆だ。軍を裏切ってまで、俺に従う道を選ぶとは思わなかった。信じる信じない以前に、合理的な選択じゃないからな。
俺にとってはもっともありがたい働きではあるのだが……今は資源がとにかく欲しい」

皐月「司令官は、ずっとボクのことを信じていてくれたから。大事に思ってくれていたから。ボクは司令官のために、ここに来たんだよ」

少し悲しそうな顔を浮かべると、歯を食いしばる提督。しかしすぐに普段の表情に戻る。

提督「そうか。すまないな……助かる」

提督「役者は揃った。日も間もなく昇る頃だろう。各員、戦闘配置! 開戦だ……!」
602 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 21:05:52.42 ID:dfa6f4ou0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~85 Phase C/100)
・皐月の経験値+6(現在値19)
・翔鶴の経験値+4(現在値19)

・足柄の現在経験値:26
・雪風の現在経験値:26
・金剛の現在経験値:23
・響の現在経験値:23
----------------------------------------------------------------------

相変わらずややこしいことになってきましたね(定例)
次はPhase Bですが、そろそろ終わりに近づきつつあるんで確率の偏りをフラットに戻しました。

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『Phase B』【86-90/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00〜15:雪風
16〜32:翔鶴
33〜49:金剛
50〜65:響
66〜81:足柄
82〜99:皐月
>>+1-5

よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらい眺めてなんとなくわかった気になってください。
(または>>495->>496あたりを見てわかった気になってください)
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603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 21:07:02.25 ID:ZIS1ulRGO
てーい
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 21:07:12.20 ID:+5thFE8nO
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 21:07:21.99 ID:i+QX2QkfO
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 21:07:33.16 ID:M4RZPlMeO
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 21:07:34.69 ID:o0xDwE7Go
それっ
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 21:07:43.04 ID:qt6s0JmhO
609 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 21:30:28.78 ID:dfa6f4ou0
>>603-607より
・翔鶴3レス/皐月1レス/足柄1レス
で『Phase B』が進行していきます。
(合計値:229 なので『Phase C』が発生します)

おおぅ、またPhase Cか……これは分からなくなってきましたね。
別に惚れた腫れたメインのお話で書いているつもりはないのですが、一応ラストは誰かしらのルートでEDを迎えるつもりです。
つもりなんですが、これ誰に決まるかによってめっちゃ結末変わりそうですね……うーん、どうなるんでしょう。書いてる本人が一番展開を読めねえ
ますます遅筆に拍車がかかりそうですが来年になるまでには完結させられるぐらいのペースで頑張っていきます。
610 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/11/03(火) 23:42:54.04 ID:ahHHWaGq0
次回の投下は11/6(金)頃を予定しています。
(本来通例になっているようではダメなのですが)例によって数日後ろにずれる可能性があります。



////チラシ裏////
お久しぶりです。いやぁ・・・・秋刀魚これくしょんでしたね。
一応大漁旗はゲットしました。あんまリアルの時間が取れなくってゴールドラッシュならぬネジラッシュみたいなことは出来ませんでしたが。
あとは最近の話題と言えば、アレですね。激強艦載機こと岩本隊の導入がアツいですね。烈風改の完全上位互換ってヤバすぎませんか!?
というか、熟練度システム導入でほとんどの通常海域が易化しましたよね。軽空母三隻でも制空権完全確保しながら5-4回せるんですからね。
戦争は変わったってやつですかね。通常海域がヌルくなった分秋イベ冬イベがこえーんですけども・・・・。

私がSSを書けない間にも艦これの世界は発展していきますね・・・・。翔鶴改二・瑞鶴改二も実装され、UIが劇的に改善され。
一括補給や編成プリセットの導入は感動を覚えました。
いや、他にこの手のゲームに慣れてる人から言わせりゃむしろ導入するの遅すぎぐらいに思ってるのかもしんないすけど。
私は艦これしかやってないので神アプデに感じました。いや実際神アプデじゃない!?

あ、いや何が言いたいのかというと、せめて艦これのアプデと同じぐらいの間隔で投下出来るといいなあって話です。
でもそれが出来たら苦労しないんだよにぇ・・・・なんか毎回似たようなこと言ってる気がするし。まあいつも通りなんとか時間作って書きます。
611 :【86/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/11/08(日) 23:01:36.17 ID:LuOWkimU0
提督が城内の艦娘や泊地水鬼に出撃命令を出してから数分後。提督のもとを訪れた皐月と文月。

皐月「司令官! 別室で待機ってどういうこと!?」

提督「お前たちのレベルで出撃させるのは危険だ。犬死はさせん」

皐月「けど! ボクたち、司令官の役に立ちたくて来たんだよ!? ここまで来て用なしだなんて……ボク、何のために来たのか分からないよ」

文月「皐月の勝手な感情を司令官にぶつけちゃダメだよ。司令官はあたしたちよりもずっと色んなものを背負ってるんだから……無理言っちゃダメだって」

提督が口を開く前に皐月を諌める文月。しおらしくなる皐月。

提督「益体ないなんて言うつもりはない。……今はまだ指示を出す必要がないだけだ。だが、すぐに動いてもらうことになる」

皐月「ごめん……我儘言っちゃいけないよね」

しょげた様子で待機していた小部屋に戻ろうとする皐月。肩を叩き励ます文月。二人の姿を見て提督が一声。

提督「いや……無くはない。ではこうしよう、お前たち二人には別の任務を与える」

・・・・

提自分の背よりも遥かに高い巨大な機械郡の立ち並ぶ通路を歩く。やがて通路の行き止まりに辿り着くと、小部屋に辿り着いた。
提督の後ろからとてとてと歩いてくる皐月と文月がついてくる。

提督「ほう、もう動き出したか。あと一日はもたつくと予想していたが……あちらも存外手が早い。
だが、現時点でこちらの位置を完全に把握出来ていないのは痛いな。こちらにとっては幸いだが」

小部屋の中にあるモニターを機動させると、周辺海域の敵艦反応を調べだす提督。

提督「動きから察するに中部海域に艦娘を総動員して位置を探り当てる、といった目論見だろうか。
下手な鉄砲も数撃てば当たる……。理屈の上では正しいが、焦りが見て取れるな」

皐月「でも、近隣の拠点に戦力を割けるほどの余裕はないはず……だよね? 結局すぐ見つかっちゃうんじゃあないかな」

どうして彼が初見で深海製の機材を操れるかに関しても気になったが「だって司令官だし」という結論に至ったため、あえて聞こうとはしなかった。

提督「確かにそうだが、問題ない。接敵まで一日は稼げるだろう。この城は深海の連中が積み上げた技術の結晶。
我々を人類を苦しめるための仕掛けが幾層にも組まれていたというわけだ。……沈んだ艦から全ての情報が流出すると考えれば、このぐらいは容易いことなのかもしれんな」

モニター上をトン、トンとタッチすると、画面上が紫色に変色する。

文月「……? 何をやってるんですか」

提督「かつて深海棲艦の巣食う海域ではなぜ敵艦隊の誤発見が多発していたと思う? なぜ渦潮に行く手を遮られていたと思う?
なぜ羅針盤が正しい方角を指さずに意図せぬ方向に進むことになっていたと思う? その答えがこれだ」

提督「ここはゲームで例えるならデバッグルーム。機雷の設置にデコイの配置。渦潮の発生から海流操作までなんでもござれというわけだ」

・・・・

提督「後は説明した通りだ。お前たちが上手くやれば、接敵前に予め打撃を与えておくことも可能だろう。では……」

皐月「え、行っちゃうの?」

椅子から立ち上がった提督の服の裾を無意識のうちに掴んでいた皐月。皐月の指に気づいて振り返る提督。

提督「ああ。ここはお前たち二人に任せたい」

皐月「……分かった、よ」 力なく指を離す

提督「どうした? ……ん」

提督からハンカチを差し出されると、困惑しながらも受け取る皐月。
自分が泣いていたことに気づいていなかったようで、拭ったハンカチが濡れていたことに驚いていた。
泣いていることを自覚すると、その場で膝を折ってしまう皐月。慌てて文月が介抱する。

皐月「ハハ……ごめん。なんか、迷惑、だよね。なんでだろ……悲しくなんてないのにな。どうしちゃったのかな……ボク、変だなぁ……。
なんかね……ボク、分からなくなっちゃったんだ。自分がどうしていいのか、自分がどうしたいのか」

皐月「たとえ距離が離れていても、ボクらにとっては司令官あっての日常だったから。司令官が遠くで見守っていることが、当たり前だったから。
鎮守府が解体されても今生の別れにはならないって思ってた。直接会うことはなくても司令官が陰ながら支えてくれているって分かる安心感もあったから」

皐月「前に、人間の精神は身体に引きずられるって話したけど……やっぱり、それは間違っていないと思う。
ボク、学校に通うようになって、ますます精神的に幼くなっちゃったのかもしれない。こうしてまた、戦いの中に身を投じることが、怖いよ」

皐月「それ以上に……司令官がふっとどこかへ消えてしまうことが……怖いんだ」

しばしの沈黙のあと、顔を上げて、真剣な眼差しでじっと提督の目を見つめる。提督も目を逸らさずに真っ直ぐ皐月を捉えている。

皐月「ごめんね……足止めしちゃって。でも、大丈夫。司令官がそんな人じゃないって、ボク、分かってるから。
ちょっとだけ、不安になっただけ! もう大丈夫、ここはボクに任せて!」

立ち上がり微笑む皐月。提督は無言で頷くと身を翻して部屋を後にした。
612 :【87/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/11/08(日) 23:07:41.03 ID:LuOWkimU0
カッカッと音をたて廊下を歩く提督。皐月たちの居る部屋から数十メートルほど歩いたところで、足を止め、振り返る。

提督「人の心というのは読めんものだな。位置に気づいたのは予想通りだったが……皐月がこちらの側につく可能性は考慮していなかった。僥倖ではあるのだが」

提督「さて……」

再び前を向き、歩き始める。

提督「長期戦になってはこちらが不利だ。焦る必要はないが、急ぐ必要はあるな」

提督(果たすべきを果たし、成すべくを成す。それだけだ……)

・・・・

加賀「赤城さん……やはり納得いきません。よりにもよって五航戦に旗艦を譲るなど……」

赤城「加賀さんの言うとおり、確かに私には迷いがあるようです。だから旗艦に相応しくはない。
今回の作戦で、私は後衛に回ります。二航戦の二人と水上打撃部隊の援護を行います」

加賀(甘えたことを……。相手があの提督なら、物量をひっくり返すような策を必ず仕掛けてくるはず。
赤城さんにその気がなくとも、どのみち前線へ出ることは避けられなくなる状況が起こるはずだわ。それが予測できないほど衰えてはいないはずなのだけど)

加賀(ま、赤城さんの動向はこの際よしとしましょう。期待外れだったというだけのこと……)

赤城「五航戦の子が不安かしら?」

加賀「不安ではないわ。ある程度は評価しています。ですが……適任な人材が他に居るかと」

赤城「では、あなたがやってみますか。加賀?」

加賀「? 何をいきなり……」

赤城「あなたでは私に近すぎるのですよ」

赤城「……あれを見てください」

空母の控室を指差す赤城。窓から談笑している翔鶴や瑞鶴、その後輩である葛城や天城の姿が見える。
肩を揉もうとする葛城相手に遠慮する瑞鶴。食べていた串団子を喉に詰まらせ咽せている翔鶴。それを見てオロオロする天城。
出撃前の最後の整備を済ませた後という、本来なら艦娘にとって最も緊張感の高まる場面のはずだったが、彼女たちはどこか余裕が見てとれるような和やかな雰囲気を醸し出していた。

赤城「あれが出撃前のあるべき姿だとは言いません。ですが……どうにも私たちは前に進みすぎてしまったようです」

赤城「加賀さん。確かにあなたの力量は見事なものです。今や私をも凌ぐかもしれません」

赤城「私たちは……佐世保に居た頃からずっと。私は私に相応しい居場所を求めて、あなたは誰よりも上を目指して。それは、個人のあり方としては正しかったのかもしれません。
結果として私は今や海軍所属の正規空母の中で最も高い地位に上り詰め、あなたは航空戦において全空母中最強と言わしめるほどの力を手に入れたのですから」

加賀「ええ、そうです。昨夜貴女を焚きつけたのは、貴女が手取提督のもとに寝返ることを期待してやったことです。発言の内容は本音ですが。
貴女と正面からやり合える機会なんて、今を逃したら未来永劫訪れないでしょうから。私は貴女を乗り越えたい」

赤城「私を超えて、その先に加賀さんの望むものはあるのかしら?」

赤城「かつて。MI作戦は私の最期に相応しい場所であると思っていました。あそここそが私の墓標に相応しい、最も輝ける場所だと。
ですが。……私たちは死ぬために生きているんじゃない。当たり前のことです。長い戦いの中で、仲間が海の底に沈んでいくのが当たり前の世界で……私はそのことを忘れてしまった。
あの提督に出会うまで、私は死に場所を探す生きた亡霊だった」

赤城「あの子たちの瞳には、未来が映っているわ。それは……悔恨を抱えたまま沈んでいく、怨嗟と後悔の海を知らないが故の無邪気さ。無知であるがゆえの楽観。
けれど……あの子たちと違って、私もあなたも自分の存在を疑わずにはいられない。何も成し遂げられないまま死んでいくことが怖いのでしょう。
いや、恐怖を恐怖と認識出来ないほどにまで染み付いてしまっている。だから己の命よりも価値のある何かを得たい、達成したいと思っている……」

赤城「だから私は居場所を探し続けてきた。あなたは力を求め続けてきた」

加賀「その通りです。……昨夜も言った通り、私はずっと赤城さんの背中を追いかけてきました。貴女を超えることが、私が艦娘に生まれた存在意義です」

加賀「MIの後にもう大きな戦いは無いと思っていました。どれだけ強くなろうと、その力を発揮する場がなければ意味がない。
ですが……神か仏か、あるいは悪魔か。私の力が、今再び必要とされています。私にとってこれは千載一遇の好機です」

加賀「アテが外れてしまったようですがね。貴女は艦隊に残り、しかも後衛に控えているという。
ならばそれでもいいでしょう。貴女にその気がないのに私が一方的に張り合っても意味がない」

加賀「私はこの戦いで、己の武の全てを尽くしましょう。もはや貴女が居ようと居まいが関係ありません」

赤城「私たちは、戦うために生きているのではありません。力など、振るわずに済むのならそれに越したことはないのです」

加賀「当然でしょう。しかしそれは目の前に危機が迫っている今この状況で考えるべきことではない」

赤城「その当然さえ、今の加賀さんは分かっていない! だから旗艦を任せるわけにはいかないのですよ」

加賀「……ええ、もう結構です。こうして貴女と話している今になってみれば、その方が都合が良いとさえ思えてきました。他の艦娘のことを気にかけず好きに戦えるのですから。
別に、貴女と諍いを起こしたいわけではないのです。ただ一度、本気の赤城さんと戦ってみたかった。それだけです。それだけでした」

赤城「加賀……」

それでは、と言い残し加賀は一人どこかへ歩いていった。
613 :【88/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/11/08(日) 23:12:40.79 ID:LuOWkimU0
翔鶴「機動部隊旗艦、翔鶴! 抜錨します!」

瑞鶴「翔鶴ねえ……やるよ!」

天城「私たちも先輩方の足手まといにならないように頑張ります。葛城、行きましょう」

葛城(憧れの五航戦の先輩方との初陣……頑張らなくっちゃ!)

加賀(士気は高いようだけど……実力はどうかしらね。まずはお手並み拝見といきましょうか)

・・・・

川内「中部海域哨戒線に差し掛かりましたが……今のところ敵の気配はありませんね」

翔鶴「念のため索敵機を飛ばしておきましょうか。周辺海域の様子も把握しておきたいですしね」

瑞鶴「敵の兵力的に、いきなりここに戦力を配置するほど余力はないと思うけど……ここからはいつ奇襲が来てもおかしくないからね。二人とも、警戒は怠らないように」

天城「はっ、はい!!」

翔鶴「といっても、無理に気張る必要はないわ。あまり緊張し過ぎてもダメよ」

葛城「わ、分かりました! 頑張ります!!」

瑞鶴「(頑張る頑張るって、大丈夫かしら?)ま、イザとなったらあたしと翔鶴ねえがバッチリ助けてあげるんだから、肩の力は抜いて、普段通りやればいいのよ!」

雲龍「〜♪」ポーッ

瑞鶴「そうそう、こんな感じでリラックス……って、うちの艦隊にこんな子居たかしら?」

翔鶴「いや、居ないはずだけど……。確か私たちの後方の水上打撃部隊に配属されてる艦娘だったと……」

比叡「第三哨戒部隊から通信! 敵艦隊を観測したとの報告です!」

夕立「こっちにも通信っぽい! 第四哨戒部隊、敵艦隊発見!」

瑞鶴「翔鶴ねえ……! 今偵察機からも入電があったわ。敵艦隊見ゆ、ってさ」

加賀「もう既に敵の手中というわけね。どうするの?(セオリー通りに考えるなら、ここで留まって味方と合流を図るべきだと思うけれど……)」

翔鶴「井州提督の命によれば、本格的に勝負を仕掛けるのは哨戒部隊が敵艦隊と“交戦”した後。報告が何かの見間違いや勘違いだったという可能性もあります。
確定するまではここに待機し、主力である水上打撃部隊が来るのを待ちましょう。焦る必要はありません」

瑞鶴「ただ、本当に敵艦隊がこちらに接近してきている可能性もあるわ。輪形陣で迎え撃ちましょう」

・・・・

提督「偵察に来た小隊は上手く撹乱できているようだが……本丸の機動部隊を釣るには至らないか。こいつらを後続の水上打撃部隊と合流させては厳しい」

提督(皐月らが上手くやっている間は、前方にいる偵察部隊が我々の本拠地を突き詰めることは出来んだろう。
だが主力級の大艦隊が後方に控えている以上、これでは時間稼ぎにしかなるまい。少し場を荒らすか……)

提督「雪風。動けるか?」 無線機ごしに雪風と会話する

雪風「……まだ時間がかかりそうなんですね」

提督「ああ。今龍田らに資源を集めてもらってきているのだが……敵の動きが思ったより早いようだ」

雪風「ええ。何隻かはレーダーで捕捉出来てます。向こうが気づく様子はありませんが……」

提督「かつての仲間を撃つのは嫌か?」

雪風「はい」

提督「だろうな。俺もお前の性格はよく知っている。……後方に下がっていろ。響と軽巡棲鬼を向かわせる」

雪風「いえ……やります。やらせてください、司令」

提督「!?(どういうことだ……?)」

雪風「敵の陽動ですよね。X地点まで誘き寄せて迎撃、という形で問題ありませんか?」

提督「ああ、そうだが……しかし」

雪風「同じ艦娘同士で争うのは、本当は嫌です……。でも、司令のために、やります。司令のためなら、やれます」

雪風「あの……うまく言えないですけど。……しれえは、間違ってないと思います! 絶対、大丈夫です!」

言葉に詰まる提督。予期せぬ申し出になんと言うべきか迷っていると、いつになく優しい声で語りかける雪風。

雪風「司令が正しいと思う道を進んでください。……大丈夫です。司令には雪風がいますから」 ツッ

提督(通信が切れてしまった……。いや、切られたのか。……)
614 :【89/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/11/08(日) 23:16:20.76 ID:LuOWkimU0
提督(ここまで全て、全てが俺の思惑通りに動いている。皆が俺の意志に沿って動いている……これは望ましいことだ。だが……)

全てを裏切ってまで俺に従う道を選んだ皐月は。自らの意志を曲げてまで俺のために動こうとしている雪風は。あいつらは本当にこれでいいのか?
俺にはあいつらの心が分からない。リスクやポリシーと俺とを天秤にかけたわけだろう。
その上でなぜ俺に従おうとするのだ……。俺はあいつらの為にそこまでの利益を与えられているのか?

皐月がどう動こうと、俺の利になるはずだった。だから居場所を教えた。皐月の選択した行動は予想外ではあったが、俺の想像していたよりも俺の役に立つ結果となった。
位置的に、最も敵に近い雪風を動かすべきだと考えた。だから雪風を後方に下がらせて響らに向かわせるよう指示を出そうとした。だが雪風は俺の為に戦いたいと言った。

結果的には俺が自分で予想していたよりも優位な状態を保てている。だが……。

『……しれえは、間違ってないと思います! 絶対、大丈夫です!』

提督「そうだな。……そう思うことにしよう(他人の言葉に勇気付けられる日が来るとは、な)」

・・・・

瑞鶴「艦載機から情報。哨戒部隊からの報告。いずれも誤報、か……動かなくて正解だったわね」

夕立「第八遊撃部隊から入電っぽい。敵艦隊を発見、交戦開始……っぽい!」

時雨「ザザッ……こちら第一遊撃部隊時雨。敵駆逐艦二隻による奇襲を受け雷巡北上が中破。敵は逃亡中だけど、まだ追いつく範囲だ……仕留め次第報告する」

翔鶴「敵が動き出したようね……背後の主力大隊は?」

川内「まだ来ないみたいですね。半日あればこっちには着くそうですが……。先鋒部隊が交戦したことは伝えときます」

天城「敵の拠点が分からない以上、まだ私たちが動くのは得策ではありませんね……」

翔鶴(しかし……嫌な予感がしますね。私たちが動くように誘い出されているような気もするし、私たちが動けないように戦局を進めているような気もします……あるいはその両方か)

加賀「……(気配がするわね。まだ遠いけれど……強大な何かが目覚めつつあるのを感じるわ)」

・・・・

利根「ふっふっふ、この時のためにカタパルトは整備しておいたのじゃ! 全爆撃機発進! 追え追えーっ!」

北上(痛たッ……あたしが旗艦なんだから避けずに庇えってのぉ……これだから他の鎮守府から来た他所モンは分かってないねえ)

時雨「北上、動けるかい?(しかし昼戦なのに気配なく近づいてくるとは敵も侮れないな……)」

北上「ん。ヨユーヨユー。歴戦の大エース、スーパー北上様を舐めちゃいけないよ。あの鬱陶しい駆逐艦をサクッとやっつけちゃいましょうかね。全艦突撃〜」

距離を詰めてくる北上隊に気づき、航行速度を上げる雪風と磯風。

磯風「敵艦隊が混乱から立ち直ったようだな。こっちを追う速度が上がってきた」

雪風「なんとか目的地まで逃げ延びて……そこからですね」

磯風「無傷で逃げ切るのは厳しそうだな。こんなところでやられるような私たちではないが……中破ぐらいは覚悟しておこうか」

雪風「いいえ、無傷で乗り切ります。あの城にはドッグに相当する施設が無いので……回復手段がありません。一応、修復剤でどうにかなりますが……金剛さんたち戦艦が使うべきでしょう。
雪風の装備は対空兵器に乏しいので、磯風さんがあの爆撃機を打ち落としてください。後ろの敵は雪風がいなします」

磯風「なるほど無茶を言う。が、面白いぞ。その提案に私も乗ろう。よし、対空機銃撃てッ!」 バリバリバリバリバリッ

時雨「逃がしはしないよ!」

北上(この動き……誘導だろうなぁ〜。ま、士気も高いしなんとかなるっしょ)

・・・・

提督が再び玉座の部屋を訪れると、足音で目覚めるヲ級Nightmare。

提督「目覚めたか」

提督を攻撃しようとする素振りを見せたが、玉座から立ち上がって動くことも出来ないらしい。

提督「今のお前はその椅子から立ち上がって歩くことすら出来んよ。動くための燃料が完全に尽きているのだからな」

提督「少しばかりこの城で調べさせてもらった。艦娘と深海棲艦の違いをな。艦娘は燃料が尽きても海上を移動出来なくなるだけで、地上を歩くことは出来る。母体は人間だからだ。
一方深海棲艦は、人間の人間たる部分を全て失い艤装に完全に支配された姿……だそうだな」

提督「だから深海棲艦に自律意志があるなんてことはまずあり得ない。お前たち深海棲艦は人を襲うようプログラムされた機械だ。機械がプログラム外の動きをできるはずもない。
ところが……お前やまだ生き残っている深海棲艦である泊地水鬼、軽巡棲鬼なんかは意志と感情を持っている。人の身を失っても、残留思念で動き続けているといわけだな」

提督「改めて言うが、これは本来あり得ないことだ。あり得ない存在がこの世に存在している……お前たちは一体なんなんだ?」

ヲ級「ヲォ……」 突然提督の身体に触手を伸ばすとそのまま拘束して自分の眼前に引き寄せる

提督(ッ、まずいことになったぞ……。最悪殺されても再生できるだろうと高を括っていたが……まさか本当に攻撃してくるとは)

提督の身体に次々と触手が絡みついていき……やがてほとんど隙間も無くなってしまうほどに包み込まれてしまう。
615 :【90/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/11/08(日) 23:22:08.86 ID:LuOWkimU0
呉鎮守府近海。

足柄「後方での警備なんて私たちには向いてないわよねぇ〜……ふわぁ〜あ」

朝霜「敵がわざわざこっちに来るわきゃねーし、だいいちアタイたちの柄じゃないわな。あー酒酒……なんだもう無いのか」

ぽいっと宙へ空の瓶を投げ捨てると、清霜がキャッチしてしまい込む。

清霜「あーっ! ポイ捨てはダメだって! もう!」 ぷんぷん

霞「っていうか、真昼間っから酒飲んでんじゃないわよオラァ!」 飛び膝蹴りを朝霜に見舞う

大淀「水上打撃部隊の方も中央海域付近まで辿り着いたみたいですね」

霞「どうなるかしら……ね。それにしても、この近海警備の配置……妙ね。朝霜の言ったとおり、反乱軍がこっちを攻めるなんてのは戦力的に不可能なはず」

清霜「やっぱり……これじゃないの?」

黄色い光を放つ自分の艤装を指差す清霜。

足柄「とりあえず半深海化の症状が進んでる艦娘を鎮守府近海に置いておいて何も無ければそれでよし。何かあったら……バトルロワイヤルってとこかしらね。
暴走する可能性のある艦娘を前線に配置するわけにはいかない。とはいえ鎮守府においておける余裕はないし、鎮守府内で暴れられてもそれはそれで困る……ってとこじゃない?」

霞「……! なんてことを……。あたしたちを何だと思ってるの!?」

足柄「ちょ、ちょっと……やけに食いつくわね。あくまで推測よ。手取提督がこの状況を見てたら、こう分析しそうかなって思っただけよ」

霞「中部海域に出撃した艦娘たちと違って、鎮守府近海の艦娘には自分たち以外の他の艦が具体的にどこに配置されているとかそういう情報が一切教えられてない。
これは疑念を抱くに足るわね……私たちも中部海域へ行くわよ。行ってどうするわけでもないけど、ここで同士討ちなんて納得行かないわ!」

足柄「いや、そうと決まったわけじゃ……」

大淀(すごい怒りよう……霞さんは一度、提督のミスで艦娘が沈むところを見ているんでしたっけ……。深海棲艦になった味方を、自分の手で仕留めたとか……)

霞「足柄! 清霜! 大淀! 半深海化だかなんだか知らないけど、そんなことぐらいで自我を失ったりするんじゃないわよ!
だいたい、沈んだぐらいで敵に成り下がってどうすんのよ! 何が轟沈よ! 何が深海棲艦よ! 色々思い出して全てにムカついて来たわ……行くわよッ!」

朝霜「(頭に血が昇るとこいつが一番手に負えねえんだよなァ……)ま、これはこれで面白いか。あたいらも続くぜッ!」

大淀「足柄さんが気圧されるのは珍しいですね。ああまで突っ走る霞さんも初めて見た気がします」

足柄「なんか、地雷踏んじゃったみたいね……」

清霜「ま、こうなる方が私たちらしいんじゃないかしら? 行きましょ行きましょ〜♪」

・・・・

長門「待て。お前たち持ち場を離れてどこへ行こうというのだ」

霞「アンタもやっぱり艤装が青くなってるのね。ますます確信に変わったわ。そこを通してもらえるかしら」

長門「? ……半深海化が進んでいるお前たちをこのまま戦場へ見送るわけにはいかないな。作戦の邪魔をされては困る」

霞「だから、その作戦にも、作戦を出してる司令官様にも従うつもりはないってことよ。半深海化した艦娘同士で戦わせるなんて、良い趣味してると思わない?」

長門「そのことか……。半深海化している艦娘を鎮守府近海に出撃させるよう井州提督に提言したのは私だ。だが、半深海化した艦娘同士で戦う事態にはならないだろう」

足柄「それは……どういうこと?」

長門「見ての通り、私はもう私を保っていられそうにないらしい。このままでは他の艦娘を攻撃してしまう恐れがある。……そうなる前に、始末してもらうのさ」

長門の横にいる少女は膝を震わせている。長門の方向に砲を向けてはいるが、その先端はぷるぷると震えている。

長門「このように。最終段階まで至ってしまった艦娘を処理するために別の艦娘を配置してある。みんな納得してくれたよ。深海棲艦になって死ぬよりはマシだとね」

酒匂「こんなこと……したくないですよぅ……」

長門「私も……どうやらここまでらしい。酒匂、お前の最初で最後の仕事の時間だ」 両手を広げ、空を仰ぎ見る

長門(どうしてこうなってしまったのだろうな……だが、こんな形になってしまったとはいえ、最後に井州提督に会えて良かった。彼に出会えて良かっ……)

酒匂「ぴゃっ!? ぴゅいいぃぃぃぃ!」

清霜の合図で動き出すと、酒匂を担ぎ上げて海上を疾走する足柄。拉致である。足柄を追うようにして霞と大淀も駆け抜けていく。

清霜(霞ちゃん……今、清霜も同じ気持ちになったよ……!)

清霜「私……戦艦にずっと憧れてたのに……! こんなの違うよ。カッコ悪いよ! 大戦艦なんでしょ!? ビッグセブンなんでしょ!?
簡単に諦めちゃダメだよ! 諦めるなんて、許さないからね! 絶対、許さないからね!」

長門に向かってそう言い捨てると、グルンと背を向けて走り去る。

朝霜「まっ、ご覧の通り血の気の多い連中なんだわ。で……あたいもアンタが深海棲艦になろうと知ったこっちゃない、このままアンタを置いて中部海域へ向かう。
ここに残って味方を傷つける化物になるわけにゃいかねえだろ……? どうにかしてあたいらからあの軽巡取り戻さなきゃまずいんじゃないかねえ〜……じゃーな☆ミ」
616 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/11/08(日) 23:23:55.43 ID:LuOWkimU0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~90/100)
・足柄の経験値+2(現在値28)
・翔鶴の経験値+6(現在値25)
・皐月の経験値+2(現在値21)

・雪風の現在経験値:26
・金剛の現在経験値:23
・響の現在経験値:23
----------------------------------------------------------------------

次回はPhase Cなんで、経験値の低い順なんで
皐月2/金剛1/響1
と4レス分までは配分できるわけですが〜。
皐月・金剛・響がちょうど経験値25で並ぶため、残り1レスの枠はこの三人の中から選出しようと思います。
特例的に安価で決めようかなと。

----------------------------------------------------------------------
『Phase C』【90C/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(金剛・響・皐月の中から一人)
>>+1
----------------------------------------------------------------------
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/08(日) 23:25:05.06 ID:z7zTORJ6O
金剛
618 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/11/08(日) 23:32:02.64 ID:LuOWkimU0
>>617より
・皐月2/金剛2/響1
で『Phase C』が進行していきます。
(投稿し終えてから気づきましたが翔鶴も経験値25で並ぶんでしたね……ミスりましたが気にせず安価通りいきます)

////チラシ////
来週から秋イベですね。海風と風雲がドロップすると良いなぁ……
619 : ◆Fy7e1QFAIM [sage saga]:2015/12/14(月) 01:47:23.41 ID:gSu53yuX0
特に事前予告的な書き込みをしていなかったため、唐突になってしまって恐縮ですが本日19時頃に投下予定です。
次回で最後のPhase Aなんで、任意で対象選べるのは次が最後みたいですよ……? え、マジ?

前にも書いたことですが、前回の100レスと違って特に特別措置とかも取らず最終的な値で決めてしまうつもりでいます。
なので次のPhase Aでどう転ぼうが結局最後のPhase Bでコンマが荒ぶったら誰選ぼうが変わりないじゃんってのはありますが……やはりこれでいこうかなと。
最後までどう転ぶか分からないから面白いのではと思う一方で、読み手の総意に沿ったキャラにならないのでダメなのではとも思い未だに悩んでいる部分ではあるのですが……。
やはりこう、最終的にどうなるか人の念が及ばぬあたり良くも悪くも艦これ的(?)なんじゃあないかな、と。
(作者の意向も及ばないんで書きづらいことこの上無いんですけど……)
まあ、なんか最後のPhase Bでコンマが空気読んでくれればだいたい次のPhase Aで選んだような感じになってくれる……と思います、多分。



////チラシの裏////
秋イベでしたね。11月めっちゃ忙しくて正直イベントどころではなかったのですが、相変わらずちゃっかり甲で完走はしています。
レア艦をいかに早くドロップできたかが全ての明暗を分けたと言っても過言ではないイベントだったのではないでしょうか(オイゲン掘りをやってた方は特にお疲れ様です)。
とりあえずツェッペリンも嵐も手に入れ、風雲もゲットしましたが、海風だけはダメでしたね……悔しいですが次のイベントではもうちょっと楽に掘れることを期待して待つことにします。

あと、軽巡棲「姫」登場しましたね。ベタですがカッコいい系でなかなかいいですね。
620 :【90C-1/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/14(月) 19:02:30.84 ID:gSu53yuX0
提督(動くことは出来ないが……本気で俺を殺そうとしているならもっと強い力で締め付けるはず、か。
とはいえここまで雁字搦めにされては口を開くことさえ出来ん。意志の疎通を図る気もない……ということか?)

わずかな、本当にごくわずかな隙間から、辛うじて酸素を得る。
触手が顔に絡みついているため目を開けることさえ出来ない。耳も塞がれているため音を聴き取ることも出来ない。

提督(五感のいずれかが機能しなくなると、それを補うべく他の感覚が発達すると聞いているが……なるほど。
身体を這い回る触手の一本一本が正確に感じ取れる。そして……生臭い。腐りかけの魚の臭いだ……そんなことは今どうでもいい)

提督(視界は遮られた。音は失われた……はずだ。しかし、なんだこれは……)

目を開いていないにも関わらず、眼前には海が広がっている。光の差さない海、暗い海。宵闇よりも暗く、目を閉じた時の暗闇とも様子が異なる。
音は聴こえていないにも関わらず、囁き声が聞こえる。音が“底”から伝わってくる。不自然に静か過ぎるこの空間では、微かな声すらも耳に届いてしまう。

『会いたい……』

提督(……?)

声が流れ込んでくる。

『ごめんなさい、ごめんなさい。本当にごめんなさい……。(でも、もう会えないから……)忘れてください……(嫌だ……忘れるなんて許さない……)』

声が流れ込んでくる。言外の心の声までが耳に届いてくる。水底に沈む無念の声が、失望の声が。

『私は悪くない……なんで……。あぁ……冷たくて、痛いよ……。うぅ……』
『体に、水が、炎が、ああ、熱いよ、寒いよ、どうして……』
『信じていた……信じていたのに……』『痛い、痛いよ……体がひび割れて……くるしい』

上から落ちていく“それ”を、下に沈んでいく“それら”を眺める提督。暗闇の中でも“それら”が人間の輪郭をしているということは辛うじて分かる。

『幸せだったよ……愛していた……本当に、好きだった……』『残念だ……終わってしまった。油断したのかな、それとも……』
『どうしてあの時……ああ、あんなことを言わなければ……』『さようなら、みんな……。ありがとう……寂しいよぉ』

耳に届く音は、憎しみや苦しみの声だけではなかった。果たせなかった想い、伝えられなかった想い、約束、願い、祈り、思い出、すべてが行き場もなく泡のように漂って

消えていく。

耳から通り抜けて、消えていく。放たれた呟きの全てが、誰に届くこともなく消えていく。そして“底”に抜け殻だけが溜まっていく。

提督「安い芝居だ」

吐き捨てる。

底に沈んでいく全てを否定し、拒絶し、討ち払うかのように。

提督「それがお前が“悪夢”の名を冠する理由か。理解した……」

『ゆるして、ゆるして、ゆるして、ごめんなさい……』『見ているぞ、お前を……』『ざまあみろ』

手を掴んで“底”へ引きずり込もうとする“何者”か。だが、提督にとっては“それ”が何者だろうと関係なかった。振りほどいて薙ぎ払う。

提督「沈んでいくお前たちの想念がたとえ本物であろうと……もう、それは沈んでしまったものだ。二度と還ってくることはないのだろう」

提督「だから言い切ってやる。お前たちは敵なのだ……内に何を抱いていようが関係ない。沈んでしまったからには敵なのだ」

“底”から、左右から、上から、いたるところから提督を舐め回すように見つめるたくさんの瞳。妖しく鈍い光がふよふよと彷徨っている。

提督「お前たちへの憐憫など湧くものか……想いも意志も、果たせなければ意味がない。お前たち深海棲艦は生きている間に何も成せなかった。
だから沈んだのだ。今更怨念など抱いたところで遅いのだ。届くはずもない、無駄なあがきだ。無意義で、無意味で、無価値だ。諦めろ」

艦娘は人間と違って戦闘のプロであり、敵を倒せずとも逃走に徹すれば深海棲艦から逃げ切ることは可能である。
しかし彼女たちの行動はその提督によって決定されてしまう。艦娘の練度や損傷度を見誤って出撃させようものなら容易に沈んでしまう。
艦娘を扱うことに関して右に出る者のない手取提督が、このことを知らないはずはなかった。

つまり、沈んでいった彼女たちは何も悪くない。彼女たちの上に立つ者の愚かさによって破滅していったのだ。
知っていた。知っていてなお提督は言葉を続けた。自分自身に言い聞かせるように。

提督「お前たちは自身の無能と運のなさによって沈んだのだ。他者を呪って、そうやって落伍者同士で群れることしか出来ない。
弱者は弱者らしく……死者は死者らしく。この泥の海で沈んでいろ、嘆き続けていろ。永遠に」

怒り、憎しみ、呪い、哀れみ、虚しさ、哀しみ、妬み、嘆き、絶望、言葉にならない感情が膨れ上がっていき、それらの全てが提督へと向けられる。
膨大な感情が、一つのうねりとなって、一つの叫びとなって彼の視覚と聴覚を支配する。目に映るものは何もなく、耳に聴こえるものは何もない。
全てが塗り潰された泥の海の中では、もはや色や音を認識することさえできない。

提督「俺は常に勝利してきた。お前たちの骸を踏み躙り、前へ進んできた。そしてそれは今も変わらない。お前たちの想い全てを打ち砕いてやるッ! 我が糧となるがいいッ、深海棲艦!」

提督が叫ぶと、景色は一変する。
提督の身体に纏わりついていた触手を断ち切る皐月。提督を抱きかかえて後方へ飛び退る皐月。

皐月「司令官!? 無事かい!?」

提督「フッ……そろそろ来ると思っていた。礼を言おう」

皐月(発信機からの位置情報が突然途切れて嫌な予感がしてたんだけど……どうにか間に合って良かった。本当に、良かった)
621 :【90C-2/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/14(月) 19:10:19.62 ID:gSu53yuX0
皐月「司令官、怪我はないかい。何かされてはいないかい?」

提督「ああ、問題ない。お前のおかげで少し全身がベトベトになって磯臭くなった程度で済んだ……」

提督がそう言うと、皐月は微妙な表情で提督を見つめた後、そっと彼を抱えていた両腕を地面に下ろす。

提督(もはや断たれた触手を再生する力もないか。奴が出しうる最後の力を使って俺にあれを見せた、ということだろう)

提督「補給を受けなければお前はもう何をすることも出来やしない。だが口をきくことぐらい出来るだろう」

冷淡な目で提督を見つめるヲ級。軽蔑を訴えかける視線を向ける。

提督「話をしようか。といっても、こちらの要望をお前に一方的に呑んでもらうだけだ。それしかお前に選択肢はない」

一歩提督が距離を詰めると、怯えた表情を見せるヲ級。

ヲ級「お前ハ……敵ではないのカ……? なんなんだ……おまえハ……?」

提督「そうだ。お前たち望みを果たせなかった者の敵だ。しかし、そうであると同時に、俺は今や艦娘の敵でもある……。
この俺が全てを終わらせてやろうというのだ。お前たちの望みを叶えてやろうというのだ……!」

ヲ級「何ヲ言っている……? お前は……」

提督「暗い海の底に沈んだ全ての悲惨を。全ての閉じられた物語を。……否定されたくないのだろう。
お前たちは底に沈んでなお、抜け殻のまま生きている。欠けて、汚れて、穢れて、失われて……それでもなお、生きている」

提督「無かったことにできるはずもないのだ。知性を失ってなお、感情を失ってなお、意志だけは残り続ける。澱んで、底に溜まる……」

提督「そうだろう……ならば最高の舞台を提供してやる。怨嗟を、憎悪を、悲哀を、その全てを存分に晴らすといい」

ヲ級「……どういうことだ? ワからない……オ前の言っていることガ……」

提督がヲ級に説明を求められたタイミングで天龍らが帰ってくる。

天龍「くぁーッ、油くせえなあ! これでこの戦いが終わったら石油王にでもなれるんじゃねえかってな。ハハッ」

提督「海底油田の掘削が終わったか。ご苦労」

龍田「これで燃料の心配は要らないと思うわ。弾薬の補給はどうにもならないけど……」

提督「問題ない。こいつには燃料さえあればいい」

電「逃げ出したりしないのですか?」

提督「弾薬も艦載機もない状態で単艦、おまけに逃げ帰るための場所もない。こいつは俺に従うしかないのさ」

ヲ級(……そういうことか。深海棲艦のギミック……あの地獄の門を看破し、そしてMIで我々の総力を打ち破っただけはある……)

・・・・

龍田らにヲ級の補給を任せると、皐月と共に再度“デバッグルーム”へ向かう提督。

皐月「司令官……あのね……。ボク……司令官のこと、好きだよ。だから、無事でよかった」

皐月「ボク、バカだからさ……っ、こういう時に好きって言葉しか出てこないのが、なんだか恥ずかしいな」

提督「俺も今、返すべき言葉が見つからない。お前は馬鹿なんかじゃない」

皐月「あっ!? いやね、好きっていうのは言葉の綾で、そういう意味じゃなくて!」

提督「分かってるさ」

皐月「そっか。良かった。……あのさ司令官。司令官が何をしようとしているか知りたいな」

皐月「具体的にどう、とかじゃなくて。今の司令官の、気持ちが知りたい。そしたらきっと、もっと司令官の役に立てるとはずだから!」

提督「…………」

提督「俺もあまり器用な人間ではないので、こういう時にどういう言葉を選んだらいいのか、分からない。ただ……」

提督「光差すことの無かった者たちも、救われる道が用意されていなかった者たちも、諦めてしまった者たちも……報われて欲しいと、そう思うのだ」

皐月「ふふっ、そっか」

提督「どうした? 俺らしくない話をしている自覚はあるのだが……笑うほど面白かったか?」

提督「結局のところ、そんなものは幻想に過ぎないんだからな。何かを犠牲にしなければ、俺たちは何も得られない」

皐月「ううん。そんなことない。……そんなことないよ」

皐月「だって、司令官は、それでも……やるつもりなんだよね。救いたいって思ったんだよね」

皐月「好きなんだよ。司令官の、そういうところがさ」
622 :【90C-3/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/14(月) 19:12:55.88 ID:gSu53yuX0
磯風「目的地に到着……やろうと思えばどうにかなるものだな。後は任せた、金剛」

金剛「オッケー! 任せてくだサーイ!」

金剛(敵の小隊をここで迎撃。後続隊も掃討しキリの良いタイミングで撤退、ってとこですかネ。あんまり結集されると困りますガ、テンポ良く蹴散らしていけばなんとかなるでショ)

磯風「目的地に到着、か。やればなんとかなるもんだな……さて、あとはあいつらに任せるとしよう」

利根「む、やはり陽動であったか! おまけに退路を絶たれてしまったと見える! わははは、滾るのう!」

北上「うーん、道中で仕留める予定だったんだけどね〜(無傷で逃げられるとはね……ちょっと想定外かな)」

泊地水鬼「特ニ恨ミハ無イケレド……相手ニナルナラ容赦ハシナイワ……!」

金剛たちの後方に控えている泊地水鬼。艦載機を放って空を支配する。

時雨「深海棲艦に『恨みがない』なんて言われるとは珍しいこともあるもんだね」

綾波「の、呑気なこと言ってる場合じゃないですよ〜」

北上(うわ、雷撃効かないタイプのボスじゃん……追ったのは失敗だったなこりゃ。しょうがない、あの辺の戦艦狙うか)シャッシャッシャッシャッ ババババシュウウウウウ

霧島「お姉様! 雷撃が! ああ、間に合わない!」

金剛「問題Nothing♪ 金剛型一番艦、鬼の金剛。ナメてもらっちゃあ困るッてェノッ! ォラァッ!!」

榛名「跳んで魚雷を回避した!? あれだけ巨大な艤装を背負いながら、どうやって……?」

霧島「いえ、あれは……自分の艤装を空中へ投げ捨て、瞬時に跳躍して空中で再度装着し直したようです……。常識では考えられませんが……さすが……」

北上「なんじゃありゃ……あんなサーカス団みたいな敵がいるなんて聞いてないって」

利根「わははは、まずいことになったのう! 打つ手なしじゃな! マイペースでいけ好かない奴だと思っておったが、お前さんがそんなに青い顔しとるのも初めて見るな!」

北上「(アンタにだけは言われたくねえんだわー……けど、言ってる場合じゃないね)味方が来るまで持ちこたえるよ! ちょっとしんどいけど、テキトーに頼むよ〜!」

綾波「あらら、昼戦はあんまり得意じゃないんですけどねえ……」

利根「ふっふっふ、我輩にまかせておけ!」

・・・・

金剛(ンッンー、こういう時に『戦闘で手を抜くコツ』を身に着けておいて良かったと思いますネー。こちらの力を消費せず敵に痛打を与える。これが戦いの基本デース)

霧島「ッ、ハァ……ハァ……。戦艦相手じゃないなら大した相手ではないと高を括っていましたが、中々ですね……」

金剛(霧島がほとんど片付けてくれたものの、だいぶ疲弊してますネー。敵もそこそこやるってわけですカ)

時雨「! 味方艦隊が来たよ! 2時方向、9時方向より援軍だ!」

妙高・飛鷹が旗艦の艦隊が北上たちの背後から迫る。

妙高「あまり芳しくない状況のようですね……。軽空母の部隊と合流出来たのは不幸中の幸いでしょうか」

飛鷹「うーん、制空権は厳しそうね。ま、均衡ぐらいには持っていけるかしら!」

北上「んじゃ、あたしらはドロンするよ。撤退撤退! 退く時は退くのが兵、ってねー」

金剛(あんな堂々と背中を見せて逃げる艦隊は初めてですネ……マ、追う必要はありまセン。敵援軍を叩くのが先決!)

霧島「ここは……私が……」

金剛「霧島ステイッ! さっきの戦いで消耗してるでショ。ここは私と榛名が出マス」

霧島「かたじけない……正直助かります。しかし、大丈夫ですか?」

金剛「Take it easy♪ 霧島は本気を出し過ぎデース。こんな状況だからこそ、案外テキトーな省エネモードでもなんとかなるもんですヨ」

那智「チッ、舐められたものだな……撃てッ!」 ドゴォン!ドゴォン!

隼鷹「者どもかかれーッ! ヒャッハー!」 ビュウウウン

・・・・

金剛「ヘーイ! 提督ゥ! どうしましたカー!?」 提督からの通信に応答する

提督「悪い報せだ。主力艦隊はまだ動いていないが……背後から更にもう三艦隊来ている。正規空母や戦艦も紛れてるが……厳しいか?」

金剛「他の子だったらキツいかもしれませんガ! ワタシの実力なら余裕ってとこデスネー。というかこの動き、わざと敵がここに集まるようにしていますネ?」

提督「察しがいいな。分散している敵小隊を中央に結集させるように“動かして”いる。全ての準備が整ったゆえ時間を稼ぐ必要がなくなった。好きに暴れたら帰還してくれ」

金剛「Okay……好きに暴れちゃっていいんですネ! たまにはカッコいいとこ見せちゃいますヨ?」
623 :【90C-4/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/14(月) 19:14:46.08 ID:gSu53yuX0
金剛「ヘイヘイヘーイ! せっかく温まってきたっていうノニィ!? これでFinish!?(ドドォン!)ンなワケ!(ダァン!)ナイ!(バァン!)デショォ!(ドドォン!)ッラアッ!」

羽黒「ッ……少し、被弾しすぎました……後退します」

那智「誰かアイツを止めろ! クソッ、なんなんだあの敵は……」

飛鷹「こちらのペースをかき乱すように立ち回ってるって、分かってるのにものの見事に撹乱されてるのは腹立つわね……」

霧島(普通、艦娘の戦闘というのは序盤の戦闘ほど燃料や弾薬を消費する。初戦を制し、次の戦いを制し、そして息も絶え絶えの中海域の主のもとへ辿り着く。
道中の敵に本気を出して首領相手に全力を出せないというのは、一見すると非合理的なようではありますが……私たち艦娘は生きて帰ることが先決。
敵の本隊へ至るまでの道中の敵を片付けておかねば、撤退時にしっぺ返しを食らうことになる……艦娘なら骨身に染みていること)

霧島(ですがお姉様はそれを逆手に取って戦っている。今の私たちにとって、背後に敵はなく、眼前の敵を退ければいつでも撤退可能な状況……それは敵も同じことですが。
相手は艦娘特有の“癖”が抜け切っていない、そのことに自覚してすらいない。だから序盤では優勢な立ち回りを見せるも、後半で息切れしてしまう……。
対してお姉様は、わざと敵を挑発して回避行動に徹しながら消耗を誘い、敵の疲弊を見抜くと同時に荒れ狂う嵐のように攻め立てる……!)

霧島「金剛お姉様! 今、お姉様の言っていることが理解出来ました! 榛名姉さん! 下がってください、あとは私が!」

金剛「フッフー♪ 戦い方が分かってきたようですネ! ワタシの妹だけはありマース! 榛名はどうしマース? ワタシと霧島でこのまま突っ切ろうと思いますガ」

榛名「いえ……お姉様。榛名、大丈夫です! まだ戦えます!」

霧島「榛名姉さん、しかし……! 私が控えている間も戦っていたのでしょう。無理してはいけません」

榛名「霧島、見くびってもらっては困りますよ。お姉様ほどではないにせよ、私だってそれなりに修羅場は潜ってきたんですから。……それから」

霧島「それから?」

榛名「『姉さん』って呼ばれたの、なんだか懐かしくて嬉しかったです。今ので頑張れそうです!」 鼻血を流しながらも余裕の表情で微笑む

金剛「ノーゥ! そういえば! 昔はみんな『姉さん』って呼んでましたよネ!? なんでワタシはお姉様で榛名が姉さんデース!?
心理的距離ですカ!? 壁ありますカ!? 私の壁も乗り越えてくだサイ!」

霧島「やれやれ……二人ともほんっとにバカですね。コントやってるんじゃないんですから、さっさと片付けますよ。三人で!」

・・・・

妙高(クッ……数の上ではこちらの方が有利なはずでしたが……しくじりましたね……。強敵です)

那智「私はまだ戦えるのだが……旗艦が大破しては統率も取れまい。退くぞ!」

隼鷹「ぐえーっ、良いトコなしかぁ……とはいえ、これ以上戦っても被害を拡大するだけじゃないかね。酒も切れてきたし、帰るよ飛鷹」

飛鷹「屈辱だわ……(とはいえ、私たちの後方には正規空母と戦艦の部隊が控えている。十分ダメージは与えたし、布石としてはこんなものかしらね……)」

金剛「ハッハー、敵が逃げていきマース! 思い知りましたカー!? ワタシたちのパワー! 力こそ正義、力こそパワー!」

霧島「お姉さ、金剛姉さん。そういうのは頭悪そうに見えて恥ずかしいのでやめてください」

榛名「私たちらしくて良いじゃないですか。子供の頃はこうやって遊んでたじゃないですか。こぉんな風に、ね!」

言うやいなや三式弾を指と指の間に挟んで空へ投げる。早くも敵の後続部隊が来たらしい。

金剛「そうですヨー! それに、霧島だってさっき『オラオラオラオラァ!』とか言ってたじゃないですカー? 自分だけ冷静なフリはずるいデース」

霧島「あれは気合を入れるためにですね……っとぉ、危ない! ソォイ! うぉぉッ」 ダァン!

目の前に来た砲弾を自ら放った砲で相殺する。衝撃で後方に吹き飛ばされるも無傷だ。

Roma「北上隊からあなたたちの戦法は聞いてるわ。持久戦に持ち込んで消耗させるって魂胆でしょう? そう甘くはいかないわよ」

大鳳「連戦で消耗しきったそちらと、無傷の私たちの艦隊。負ける要素はないわッ! 全艦載機発艦! 敵は目の前よッ!」 バババババッ

大井「北上サンの仇ィ! その命で償ってもらうわよ……!」

那珂「やっほー! いざ尋常にィ! 勝負勝負!」

霧島「またまた厄介な敵が現れましたね……というか、キャラ濃すぎじゃあありませんか……? どう戦いますか? さすがにもう同じ手はもう通じないようですが」

金剛「敵が温存しつつ長期戦やろうってんなら、こっちは初手からガンガン攻めて戦線ぶっ潰しマース! さっき相手がやってたことの逆をやればいいだけのことデース!」

榛名「(敵陣に突貫して乱戦に持ち込み、同士討ちを誘うという策ですね。なるほど抜け目ない)霧島と金剛お姉様、そしてこの榛名がいれば、きっと大丈夫です! ここは一歩も! 通しません!」

金剛たちの頭上に無数の艦載機が迫るも、それを一瞬で叩き落す黒い影。

泊地水鬼「ソノハナシ……乗ッタワ……。ワタシモ戦イタイ……。チョット燃エテキタ」 金剛たちに背を向けたまま、親指を突き出す

那珂「ぐえッ! なんか来たよ!? 後ろから飛んでたタコ焼きの正体はこれだったんだね!」

大鳳「空母の深海棲艦か……無駄です! そんな少ない艦載機で空を制することが出来るとでもッ!? 距離を置いて狙い撃ちよ!」

金剛(あの泊地水鬼、ただ熱くなって出てきたわけじゃない。制空権を喪失しているこの状況なら艦載機を出して援護に回るより砲戦特化でゴリ押した方が強い……そう判断したわけですネ!)

金剛「オゥケイオゥケイ……じゃ、皆さん、行きますヨ? 敵を片っ端からぶっ飛ばして素っ裸にしてやりマース!!」
624 :【90C-5/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/14(月) 19:22:04.78 ID:gSu53yuX0
提督「これは……凄まじい乱闘だな……。さすがに目を疑うぞ……」

提督(援護に軽巡棲鬼を待機させておいたが……この様子だと必要なさそうだな)

文月「うひゃあ〜……これはメチャクチャですねえ……」

皐月「ねえ司令官。あのヲ級が復活した今なら、もう金剛さんたちを撤退させてもいいんじゃないかな」

提督「全ての備えは済んでいるのだが……数でゴリ押されると万が一、ということがあるのでな。大破して戦闘不能の艦を増やしておくと後々やりやすい」

提督(にしても……金剛のやつはなぜここまで戦えるのだ? いや、アイツが強いのは知っているが……一体どうしてアイツは俺の為に戦うのだ。
アイツのことだから寝返っても信用されることはないだろうが、降伏して武装放棄し、自分は我関せずを決め込むことぐらいは可能だろう)

提督(アイツは『なんとなく』の思い込みで動くような女じゃない。信頼だとか信用だとか、そんな安っぽいものを理由に動く女じゃない……はずだろう)

暁「司令官! 撤退命令が出たから戻ってきたわ」

響「雪風たちも戻ってきてるよ。それから、司令官。話がある。今すぐ、話がしたい」

提督「ん、戻ったか。ヴェールヌイ、話とは一体……?」

響「いいから、こっち、来て……」

・・・・

皐月たちのいる部屋から離れた場所を探している。ああ、ここなら都合がいいな。程よく距離があり、誰にも気づかれなさそうだ。

提督「何もないただの空き部屋じゃないか。こんなところに連れてきて、どうした?」

身体を押し倒す。少しも躊躇いはない。司令官を我が物に出来るチャンスなんだ。

提督「ッ! ……? どうした!? どこかから攻撃があったか? 何か危険を感じたのか?」

響「違うよ司令官。危険なんてどこにもない。強いて言うなら、司令官の目の前かな」

私を見つめる司令官。一瞬鋭い目つきをした後、また穏やかな表情に変わる。

提督「……意図を掴みかねるな。こんなことをしている場合ではないだろう」

響「いいや、今この瞬間だけだ。司令官とこうして話を出来るのは、今この瞬間だけだよ。司令官の温もりを感じられるのは、この瞬間だけ」

司令官の腰に手を伸ばす。抱き締める。温もりが伝わってくる。司令官の温もりが伝わってくる。
寒くて、痺れるほど凍えていた身体が、今は焼けるように熱い。太陽に身を焦がされているようだ。しかしそれが心地いい。

提督「ヴェールヌイ……お前の気が済んだらで構わないが、離れてくれ。俺にはまだやるべきことがある」

響「知ってるよ。だから今こうしているんだ……ただ、一つ聞きたい。どうして私を拒まないのかな。……前の司令官なら、絶対に私を拒絶した。
切り裂くような鋭い視線で私を睨んで、軽蔑しただろう。もしこんな風に押し倒されようものなら、強引にでも振りほどこうとしたはずだよ」

提督「そうかもしれないな。そうして欲しかったのか? ……あえてそれを望むのか、ヴェールヌイ」

私の目をまじまじと見つめる司令官。真偽を問うている。私の本心を探ろうとしている。ああ、止まっていた心臓が、静かに鼓動するのを感じる。

響「ああ。君に滅茶苦茶にされたい。君を滅茶苦茶にしてしまいたい。司令官……君と破滅したい」

響「やっと気づいたんだよ……自分の気持ちに。私は、君のことを愛していると思っていた。だが、それは違ったんだ。
私はずっと、破滅を望んでいたんだ。自分自身の途方もない破滅を、救いがたい結末を」

響「だから君にこの世界の王になって欲しかった。君は誰よりも尊い存在になるんだ。
そうして私は君が全てを得るための剣となり、君をあらゆる災厄から守るための盾となり、やがて君のために朽ちるんだ」

提督「今もそう思うのか?」

響「そうでなければこんな愚かなことはしないさ……こうして自ら君の信頼を破壊してしまうような真似はしない。
……君は私の思い通りにはならなかった。君はあくまで自分の理想を貫いた、そしてそれは、私の思っていたよりもずっと優しい理想だった」

響「今、私を見つめる優しい瞳で分かるよ。君は……こんなことをする私さえ、受け入れようとしてくれている。少しも失望を向けていない」

提督「お前には、暁がいて、雷と電もいるだろう。帰るべき場所があるのだ。お前が破滅を望んでいても、あいつらはお前を大切に思っている。……それは、俺とて同じこと」

提督「俺は『真理の箱庭』をずっと追い求めてきた。究極の知性を捜し求めてきた。いや、今も追い求めたいという気持ちは変わらない。それでも、今は……。
『真理の箱庭』と、お前たちとを天秤にかけて、俺の心は傾いてしまった。お前たちを救いたい、いや、救いたいなんて利他的なものではない。これは俺自身の願望だ、他人なんて関係ない」

提督「お前たちがこの世から消え去らなくてはならないというのが道理なら、俺はこの宇宙の法則と相対してでも抗ってやりたくなったのだ。それだけだ」

提督「だから……すまないが、お前の望みは、叶えてやれそうにないな」

響「司令官……分かった。もういい、ありがとう」

口で分かったと言ってみたが、本当のところ、司令官の言っていることは理解できていない。ただ、これ以上こうしていても彼を困らせるだろうと思って、離れる。
体が離れても、温もりは消えなかった。心臓の鼓動は、高鳴ったままだった。まるで艦娘だった頃のように、身体中に血が駆け巡っていくのを感じる。
火照った身体が、私という存在を肯定している。彼からもらった消えることのないこの熱が、私を生と向かわせているのか……?

分からない。けれど……私の望む破滅のためでなく、彼の描く希望のために、生きてみたくなった。心臓の音は鳴り止まない。
625 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/12/14(月) 19:28:23.78 ID:gSu53yuX0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~90 Phase C/100)
・皐月の経験値+4(現在値25)
・金剛の経験値+4(現在値27)
・響の経験値+2(現在値25)

・足柄の現在経験値:28
・雪風の現在経験値:26
・翔鶴の現在経験値:25
----------------------------------------------------------------------

どうにかこうにか投下出来て一安心。
リアルが落ち着いて時間取れるようになってきたんでこのままラストまで突っ切りたいところですが、忘年会が鬱陶しくてな……。
Phase Cが起こらなければ年内完結……する、のか? どうあれ頑張ります。

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『Phase A』【-95/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5


よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらい眺めてなんとなくわかった気になってください。
(または>>495->>496あたりを見てわかった気になってください)
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626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/14(月) 19:35:08.42 ID:8y2wUod0O
雪風
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/14(月) 19:35:33.29 ID:lwl1Mmh9O
雪風
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/14(月) 19:36:45.18 ID:bX8CEwFJo
雪風
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/14(月) 19:38:43.86 ID:zJ7ShsDtO
翔鶴
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/14(月) 19:38:59.26 ID:xSHrJuTeO
翔鶴
631 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/12/14(月) 20:03:53.46 ID:gSu53yuX0
>>626-630より
・雪風3レス/翔鶴2レス
で『Phase A』が進行していきます。
(合計値:201なので『Phase C』は発生しません)

次の投下のあとに行われるPhase Bのコンマで全てが決まってしまいます。
若干雪風が優位ですが、もう誰にも展開が予測つかないことになってしまいましたね。
書く側としてはおっかないというか、いや〜……心臓に悪いなこれ……。
そこも含めて楽しいと思いながら書いてますが、やっぱり気が気じゃないですね。

次回は12/26(土)ぐらいの投下になると思います。
(スケジュール見てフィーリングで26とか言ってるだけなので、あまりアテになりません。前後する可能性が高いです)
632 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/12/26(土) 22:54:52.05 ID:K4+ev8vb0
どう考えても間に合いそうにないので進度なので、引き伸ばします……すみません。
できれば明日……と言いたいところですが、保険かけて12/28(月)の21:00頃を予告しておきます。

////チラシの裏////
飾り集め、意外と期間短いですね……。
まあ年明けてから新年の飾りつけを集めるってのも変ですし仕方ないですね。
あと、「ぱんぱかぱかぱかぱかぱかぱ〜ん♪」はずるい。
633 :【91/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/28(月) 21:05:48.76 ID:3wMxQaW00
Roma「クッ……手負いのくせにこの私と互角に張り合うとは……やるわね」

金剛「ちょっとやそっとのDamageでこのワタシを押しきれると思いましたカ? 甘いんですヨォッ!」 ドォォォン!

泊地水鬼「ドウシタ……? モット飛バサナクテモ平気……?」

大鳳(クッ……これ以上艦載機を消耗するのはまずいわ……。あと一歩で押し切れそうなのに……!)

提督「ザザッ……金剛、撤退してくれ。敵後方の水上打撃部隊と空母機動部隊が合流を果たした。これ以上そこに残っていてはしっぺ返しを食らうぞ」

金剛「Just a moment! まだ敵が残ってマースよォ!? 完全勝利でFinishじゃなきゃ後味が悪いデース!」

提督「ダメだ。随分熱くなっているようだが……撤退してくれ、そこで燃え尽きられてしまっては困るからな。いいな?」

金剛「Hmm……分かりまシタ。それじゃ皆サン! 提督から撤退命令が出ました! さっさと退きますヨー!」

大井「敵の攻勢が緩んだ……? 撤退を図っているのかしら?」

大鳳「追撃して決着をつけます! 逃しはしませんッ!」

那珂「あー……大井っちさん! どう思いますか!?」

大井「北上さん以外にその呼び方は許してないの。不快だからやめてもらえるかしら。っと……ここで追うのは得策じゃないわね。
後ろに味方主力が控えている状況で戦っているから私たちが有利なのであって、これ以上追えば味方より先に敵増援と接触する可能性があるわ」

那珂「そうなんですよね〜。それにあの雲……妙な形をしてない? 雲に紛れて浮遊要塞が接近しているんじゃないかなーって那珂ちゃんは思うのです!
単体ならともかく……動きに合わせて敵が反転して攻めてきたらまずいし〜撤退しようと思うんだけど……どうにも火が付いちゃったみたいだからなぁ」

大井「私も心情的にはあいつら超ォ〜ムカつくんだけど……アンタが旗艦だしね。ここで退く判断は正しいと思うわ。
ま、宥めるのはアンタの仕事だから、プライドを刺激しないようにうまくやりなさいな」

・・・・

提督「敵も退いたようだな。こちらも余計な戦力を消耗せずに済んだ。さあ……次の手だ」

パンと手を叩き、不敵な笑みを浮かべる。少し機嫌が良いらしい。

提督「雪風、ヲ級を呼んできてくれるか。最後の大仕掛だ」

雪風「はい。でも、あの、その……」

提督の方を一目見たあと、顔を伏せてしまう雪風。

提督「俺はエスパーじゃないんだ。言いたいことは言葉にしてもらわないと分からないぞ。ま、その様子だとネタバレを所望ってところか?」

雪風「はい。戦わなきゃダメですか……? 味方であっても、沈めなきゃいけませんか……?
雪風、もう覚悟は出来ています。司令ならきっと、正しいことをしているんだって……でも、出来ることなら、したくはありません」

提督「覚悟、か。……そうだな。そうなる可能性もある。ゼロではないが……雪風。少なくともお前にだけはその役目は与えんよ。
仮に、億が一に俺の計画が失敗するとしても……お前は俺のために心中などするな。
ま、そんな可能性など起こさせはしないし、ゆえにお前にそういう命令を与えることもない」

雪風「しれぇ……」

深刻そうな面持ちの雪風を見て、フォローするかのようにすぐさま言葉を続ける提督。

提督「勘違いするなよ。これは九割九部九厘勝てる戦いだ。これまでと変わらない、勝利すべくして勝利する。それが俺の……俺たちのやり方だろう?」

提督「いいか雪風。どうして俺が鎮守府や艦娘らに反旗を翻したと思う?
『バビロン』計画が失敗したから、半深海化を食い止めることが出来なかったからなんて理由だとは思っていないだろうな」

雪風「司令のことだから、考えなしにやったことじゃないとは思います。ただヤケクソになっただけじゃ、こんなことは出来ないと思います」

提督「よく分かってるじゃないか。計画が失敗した直後は少々参ったがな……今はもうゴールが見えている」

提督「深海棲艦と艦娘の戦いを終わらせることができる……かもしれん。
まだ断言はできん、仮定だからな。だが、口に出す程度には自信がある仮定だ」

提督「お前の危惧は、味方を沈めなければならないかということだろう? その問いに対しては『不要な心配だ』と答えておく。
俺たちが立っているこの建造物は……。詳しい話は省くが、上へ上へと向かいたがっている。天へと届きたがっている」

提督「この地球から離れたどこかへ向かおうという指向性を持っている。深海棲艦が泥の海から俺たちのいる世界を目指すようにな」

提督「失われた想いは、深海に沈んで、溜まって、淀んでいく。
浮かばれることの無かった想いは、地上を目指すもやがて泡のように離散して、また深海にて滞留していく」

提督「で、その想念を具現化することができる、都合のいいカードがちょうど手の内にあるのだよ。
具現化した想念が、俺たちとこの建物を押し上げて、この地球ではないどこかの星に辿り着く」

提督「どうだ? 今はまだ想像もつかないだろう。荒唐無稽な話に感じるかもしれないが、どうということはない。
お前の目の前でこれから実現してやるんだ。楽しみにしているといい」

雪風「そうですね。あの……そうじゃなくて……」

提督「む、呼ばずともあちらから来たか。良いだろう、本題に入ろうか」 部屋に入ってきたヲ級を見ると、腰掛けていた椅子から立ち上がる提督
634 :【92/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/28(月) 21:14:05.48 ID:3wMxQaW00
ヲ級「なゼ奴らを退かセタ……? まだ戦えただろウ」

提督「そうだな、あいつらの力なら轟沈する可能性は低いだろう。主力が迫る前に決着をつけて逃げ切ることもできるかもしれん、が。
ここで賭けに出る必要はないからな」

提督「別に俺はこのMIでお前たちがやったような大海戦を行うつもりは無いのだよ。ところでだ、ヲ級」

提督「質問だ。お前たちの根城であったこの城、そして今俺たちが立っているこの城……。本当は城ではないのだろう」

ヲ級「なぜそう思ウ……?」

提督「お前はここを城だと説明した。城であるなら攻撃拠点または防衛拠点としての要素を満たしているはずだ。
しかしここには一切の武装や備蓄がなく、あるのはわずか数十基の浮遊要塞と件の“デバッグルーム”だけ。
海中にあった施設だから多少勝手は違うのかもしれないが、それにしても不自然だ」

提督「泊地水鬼はここをお前たちのかつての拠点と言っていたが、それは軍事拠点としての意味じゃあないな? 恐らくはもっと宗教的なニュアンスだ。
お前が総力を率いてここミッドウェー島付近で決着をつけようとしたのも、“ここでなければならない理由”があったんだろう」

提督「ここがアトランティスであり、ムーであり、レムリアなのだろう。もちろん海没した旧大陸そのものではないが。
深海棲艦にすらなれずに沈んでいった想念の集積場、無縁仏というところか」

提督「ここは城ではなく祭壇だったんだ。贄を奉げるためのな。深海に沈んだ者が蘇るための場所であり、そのための贄を捧げるための場所でもある。
深海棲艦が望むものは復讐や破壊ではない。真の目的は救済だよ。ここに来るまではあくまで仮定に過ぎなかったが、今はもう確信している」

提督(ヲ級は俺を脅すためにあの幻覚を見せたのかもしれないが、それがヒントになった。今になってようやく深海棲艦というものを理解した!)

提督「お前たち深海棲艦の本質は、滅びた肉体であり、破壊された物質であり……それらが集積された、この地球の沈殿物だ。
朽ちようと枯れようと腐ろうと、肉体の中に残った強い想念は消えることがない。異形と成り果ててなお、お前たちは救われたいと願っている」

ヲ級「……!」

提督「お前の能力、そうした想念を具現化させることだろう。
俺に攻撃を仕掛けた時は幻覚止まりだったが、今のお前ならばMIでやったような芸当が出来るはずだ」

磯風「沈んでいった深海棲艦を物理的に召還することができる……ということか? そんなことをして何の意味がある?」

提督「あるさ。言ったろう? ここは祭壇だと。供物を捧げ、そこから恩恵を得る。要するに力の変換だ。
そこのヲ級の“悪夢”によって再び現れた深海棲艦の怨嗟を糧に、天空へと押し上げる一茎の柱を創造する」

・・・・

提督「俺たちが作った『バビロン』。由来こそバベルの塔から取ったものだが、その語義はアッカド語で“神の門”を意味する。
神の門を通じて、この地球を脱し、月の世界を目指す、と。だが結果として計画は失敗し、半深海化による混沌は拡大した」

提督「一方で、『バベル』とはヘブライ語で混沌を意味する。『バビロン』のもたらしたカオスはこの建物の中で極限まで増大する。
艦娘によって深海棲艦や半深海化した者たちが打ち破られ、その想念が積もり積もってこの建物ごと天へと昇っていく」

提督「今度は正真正銘『バベルの塔』を打ち立てようというわけだ。この『バベルの塔』を持って混乱を鎮めるというのも皮肉な話だがな」

ヲ級「……ウフフ、ヲフフ、ヲハハハ、ハッハッハッハッハッ」

ヲ級「“下の世界”で過ごして、地上の光を求めて、千幾年……。これほどまでに狂った奴に会ったのは初めてだ。
お前……そしてお前の味方をするそこの艦娘どももな。私たち深海の眷属よりも狂っている、フフ……」

ヲ級「それで? どうするつもりだ? 私の力を使って『バベルの塔』を実現させて……それからどうする、聴かせてくれないか」

提督「お前は知らないかもしれないが、こちらは色々と研究していたのだよ。半深海化って知ってるか?
お前たち深海棲艦が滅びた後、今度は艦娘が深海棲艦になっちまうそうだ。バカげた話だろう?
お前たちを倒したら後を追うようにして今度は艦娘同士で争い始めるんだ」

ヲ級「なるほど道理で……。いや、今はお前の話を聴きたい。続けてくれ」

提督「半深海化を食い止める方法があるんだ。地球を脱出してしまえばいい。そうすれば艦娘は艦娘のままでいられる。あとは分かるな?」

ヲ級「『バベルの塔』か。フフフ……不遜なことを考える人間だ」

・・・・

ヲ級(なんだろう、この感覚……久しく感じることのなかった、不思議な気分……。思考が迸る……)

ヲ級「少し、この場所についての話をしよう。参考程度に聞いておいてくれ。
お前の言う通り、ここは確かに城ではない。そう見えるのは外面だけだ。祭壇という捉え方も正しい」

ヲ級「ここは……この地球を形作った神を復活させるための祭壇なのだ。私たちは“旧神”と呼んでいるがな。
私たち深海棲艦も艦娘どもも、もとはこの地球に降り立った神々によって創られたものだ」

提督「その話は泊地水鬼から聞いている。天使と人間が神に反逆し、これを破った。
勝利を収めたが、天使こと艦娘は神に呪いをかけられた。呪いの果てに艦娘はやがて深海棲艦に身を堕としてしまう……とな」

ヲ級「そうだ。だが、それだけではない。なぜ艦娘の勢力よりも深海棲艦の方が数で勝ると思う?
数で言えば、お前たち艦娘が沈む数よりも、お前たち艦娘によって倒された深海棲艦の方が圧倒的に多いはずだろう」

ヲ級「その答えは……沈んだ深海棲艦が、再び深海棲艦として浮上するからだ。
一度お前たちに倒されてしまっても、我々は二千年の時を経て再びお前たちの敵となるだろう」
635 :【93/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/28(月) 21:20:02.78 ID:3wMxQaW00
提督「なるほどな。倒したところで次から次へと湧いてくるのはそういうわけだったか。
人類が存続すればするほどに“下の世界”のストックが増えるだけと……俺たちからすれば甲斐のない話だな」

提督「で、そんな状況下でもお前たちが救われるための方法とはなんなのだ?」

ヲ級「この地上の全人類を贄と捧げることだ。お前はここを無理矢理『塔』として使おうとしているが、本来ここは神の門を叩くための鎚だ。
人間たちによって封印された旧神を蘇らせる。そうして、“上の世界”に到達して私たちは復活する」

提督「……? 二つ、気になることがある。第一に、神を蘇らせてどうする?
神は感情を脅威と考えて俺たち人間を抑圧し、お前たちに深海化の呪いをかけた存在だぞ」

ヲ級「そうだな……神は私たちを創ったことを後悔しているかもしれない。だが……それでも神を蘇らせなければならぬ必要があるのだ。
輪廻転生という言葉は知っているな?」

提督「死んだら魂になって、またこの世界で生まれ変わるって話か」

ヲ級「その、輪廻という仕組みを支配しているのは神の領域なのだよ。私たちでは干渉できない次元で動かしているものだ。
だから神が封じられている今輪廻も成されていない。“下の世界”に深海棲艦が減ることなく増えていく一方なのは、そういう理由だ」

提督「輪廻転生が行われれば、ひとたび深海棲艦になった者も別の存在になり変われるということか」

ヲ級「ヲ(然り、という意味らしい)。神が反逆者である私たち深海棲艦の望みに応じる応じないは分からないがね」

提督「なるほどな。それともう一つ。お前たちが“上の世界”を目指す理由を知りたい。なぜだ?」

ヲ級「“下の世界”と“上の世界”……などと分かれているが。それはお前たちが考えている天国と地獄のような単純なものじゃない。
生命が息絶えたとき、肉体は下へ、魂は上へ分離される。私たちは、消滅した肉体の残滓と、そこに宿った思念体のようなものだ」

ヲ級「魂は肉体を嫌っている。魂にとって肉体とは牢獄のようなものだからだ。肉体は制約に満ちているからな……無理もない。
それゆえに“上の世界”はこの地球にあまり干渉したがらないのだ。だが、それは“下の世界”の我々からすれば逆のこと」

ヲ級「肉体は魂を得て完全な形態となる。私たちはまだ抜け殻なのだ。
肉体に残った僅かな想念だけで突き動かされているのであって、それが失われればただの操り人形だ。だから魂を得たい」

ヲ級「以上。……話したところで役に立つかどうかは分からないが、話しておきたかった。お前に協力したいからだ。
神を復活させるよりも、お前の思惑に賭けてみたいと思ったからだ。やれるかどうかは分からないが、やってみよう」

提督「やれるさ」

ポカンと口を開けている雪風。

提督「すまない……。お前がいることを忘れて話し込んでしまっていた」

・・・・

雪風「あの……さっきの話、全然分かんなかったです……。今までずっとしれぇの傍にいたのに、話してること全然分かんなくて……」

提督「別にあれはお前が理解する必要のある話じゃないさ。アイツも“参考程度”にと言っていたろう?」

雪風「でも……司令は得心した表情だったから……私も理解しておきたかったんです……」

提督「うーん、すまないが解説してやれる時間はなさそうだ。そろそろ金剛たちも帰ってくるしな」

雪風「そうですか……」

雪風「じゃあ、それよりももっと知りたいことがあるんです。さっき、二人っきりのときに言いそびれたことなんですけど……」

提督「ん? ああ。どうした」

雪風「司令は、大丈夫なんですか? 『バビロン』の時みたいにはなりませんか? 私たちが助かっても、司令が助からなかったら意味がないでしょう」

提督「……わからん。策はあるが。可能性は五分五分ぐらいじゃないか」

雪風「(しれぇが“五分五分”なんて言葉を使うのは初めてです……どういうことでしょう?)……司令は、ちゃんと無事なんですよね」

提督「多分な。まあなんとかなるんじゃないか。俺は悪運強さに自信がある」

雪風「……あの! あたし、マジメに質問してるんですけど!」

提督「正直のところ、俺の身体については皆目分からんのだ。磯風に聞いても首を傾げるばかりだし、もう調べていられるような時間も残ってない。
どうあがいてもこの地球から出られん可能性はある」

雪風「え、えっ!? そんな……ダメですよ司令! しれいがいないと……」

提督「俺がいなくても平気さ。お前たちだけでもどうにかなる。艤装があれば大抵の無理は通るしな」

咄嗟に距離を詰め、提督を抱き締める雪風。驚きつつも、やや強く抱き返す提督。

雪風「だ、だめですっ! そんなの絶対、許しませんから! この戦いが終わっても、雪風はしれぇのお側に居ますから。
勝手に居なくなったりしちゃ、ダメですから! そんなこと……させませんから」

提督(俺は、雪風に少し頼りすぎたきらいがある。だから、彼女の人生のためにも突き放すつもりで言ったのだが……かえって刺激してしまったようだな)

提督「……そうか。まあいい、あまり心配するな。策はあると言ったろう? 策は二つあるんだが……そのうち一つは前回の応用編ってところだな」
636 :【94/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/28(月) 21:28:00.47 ID:3wMxQaW00
大和「水上打撃大隊旗艦大和、推参いたしました!」

赤城「翔鶴さん、戦況はどうですか? 第三哨戒部隊の被害は?」

Roma「まだ戦えますが……無傷とは行きませんでした。後方支援に回らせてもらいます」

翔鶴「先鋒隊が尽く撃退されてしまいましたが、敵も退いたようです。編成は戦艦三隻と泊地水鬼という深海棲艦。
また、取り逃がしましたが駆逐艦が二隻居たようです。戦果は戦艦三隻を大破、泊地水鬼に中破の被害を与えました」

武蔵「おいおい、これだけの数をぶつけて一隻も轟沈できないのか? 呆れたものだ……」

翔鶴「それだけ敵が精強ということでしょう。油断は出来ません」

海底が鳴動が起こる。海上の城と名付けられた敵拠点が轟音を立てて動き始める。

秋月「このただならぬプレッシャー……一体何が!?」

木曾「おい! 見ろあれを。なんだあれは……? 信じられねえ……まるで塔のように、空へと伸びていく」

城と思しき建造物を支えていた支柱や土台が、螺旋状に変形して天へと昇っていく。
晴天だったはずの空が次第に暗雲に覆われていき、雷鳴の音も轟き始める。

翔鶴「……してやられました。時間を稼がれてしまったようです」

加賀「落ち着きなさい翔鶴。あの状況で先鋒隊に加勢していても、恐らくこちら被害を受けるだけだったわ。
あの戦艦……金剛ならそういう戦い方を仕掛けてくるわ」

瑞鶴「!! 正面より深海棲艦が接近! 駆逐艦三隻、軽巡一隻、軽空母二隻です!」

川内「っしゃあ! おいでなすったねー! 今日は珍しく、夜じゃなくても頑張っちゃうからねー!」

鳥海「弾着、今! 露払いはお任せください!」 ドドォン!

翔鶴「おかしい……こんなところで易々と深海棲艦を出してしまえるほどの余力はないはず……」

赤城「貴方もそう思いますか。……この可能性はあまり考えたくはありませんが」

大和「いえ、私はその“まさか”だと思います。先の大戦で対峙した、沈んだ深海棲艦を呼び出す敵……!」

加賀「だったらどうだというのかしら。今は前に進んで敵を倒すだけだと思うけれど」

武蔵「フフッ。私も同感だ……蹴散らすぞ!」

・・・・

蒼龍「“海上の城”なんて仮称してたけど……こりゃあもう塔ですねえ」 見上げる蒼龍

大和「突入しましょう。敵はこの中にいるのですから」

陸奥「本当に突入してしまっていいのかしら……罠であることは間違いないけれど……」

赤城「手取提督!!」

塔のエントランスに佇む提督の姿を見て、赤城が叫ぶ。

加賀「覚悟してください」 塔の外から矢を向ける加賀

提督「なに、俺が直々に出向くわけもないだろう。当然これは幻影だ、矢の無駄だから撃たない方がいいぞ」

提督「察しのいい者は気づいたかもしれないが……俺は今、深海棲艦の軍勢を無数に呼び寄せることができる。
この塔の最上階まで上り詰めればお前たちの勝ちだ。俺の企みは潰えるだろう」

提督「もっとも……辿り着ければの話だがな」

赤城「待ってください! どうして貴方はこんなことをするんですか!? こんなことをして、何の意味があるんですか!?」

提督「それも……俺の場所まで来ることができたなら話してやろう。俺のもとまで来る資格のある者にのみ、な」

提督「さて。少しだけこの塔のルールを説明してやろう。お前たちは大艦隊で我が軍勢と決着をつけるつもりだったのかもしれないが……。
その条件だとこちらはちと厳しい。そのためにこのような趣向を用意させてもらった」

提督「一つの部屋に入れるのは六隻まで。編成は自由。
部屋によって趣旨は異なるが、そちらの構成によってこちらも用意する深海棲艦を変えさせてもらう」

提督「演習と似たようなものだと思ってもらえば分かりやすいだろうか? 作戦は自由だ。なるべく高い所まで登り詰めてくることを期待している」

提督「それから。降参する場合は武装を解除して進撃をやめてくれれば命は助けてやる。ま、今言ったところでそれに応じる者も居ないだろうが……。
大破した場合は有効な手段になるだろうから覚えておいてくれ。他の味方の足手まといにもなりたくはないだろう? では検討を祈る」

提督の姿が消えていく。


陸奥「井州提督……? ダメだわ、通信できない。もう既に敵の手中というわけね……」

翔鶴「もう迷っているヒマはありませんね。行きましょう! 突入します」
637 :【95/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/28(月) 21:34:24.44 ID:3wMxQaW00
朝霜「なんだあありゃあ……雲突き破ってんじゃねーか」

足柄「なんとなく前線の方へ向かうってよりは明確な目印が出来てよかったじゃない。あそこに行けばきっと何か分かるはずだわ」

大淀「ええ……危険な予感がビンビンですね……」

朝霜「だからこそ行くんじゃねえか。それでこそアタイららしいってモンさ!」

・・・・

長門「クッ、見失ってしまった……それになんだあの塔は……?」

三隅「あら、長門さん。ご機嫌よう」

長門「む……貴様、持ち場を離れて何をしている?」

三隅「お言葉ですが長門さん。それは貴方にも言えることですわ。ここで沈むのも癪ですから、私あの塔へ向かうことにしましたの。
……貴方もそのつもりでしょう?」

長門「私は……。そう、だな。私もそうだ……」

長門(何が起こっているのかは分からないが、あそこに行かなければならない気がする……! あの場所で何が起きているのか、確かめたい)

・・・・

井州「ここからでも見えるあの塔は……? 一体何が起こっているんだ……」

北上「あー……なんかヤバいことになってんじゃん。もうバケツで直したしあたしら行ってくるね」

井州「やけに乗り気じゃないか、君がそんなことを言うなんて珍しいね」

北上「大井っちが心配なのと……直感、かな。なんかこう、ぞわぞわするんだ」

吹雪「私も感じます……不思議な感じ……」

吹雪「司令官! 私が連れて行きますから、一緒に来てください。司令官がいればきっと、乗り越えられるはずです」

井州「えっ吹雪君……? いや、私が離れるわけにはいかないだろうよ……」

北上「あーそれ賛成。いーんじゃない、全艦隊突撃ー! って命令したら」

井州「??? いや、ちょっと君たち、おい……何を……」

・・・・

加賀(翔鶴や瑞鶴は大丈夫かしら。もっとも……こんなところでやられるようなほど貧弱に育てたつもりはないけれど)

ビスマルク「カガ。先へ進むわよ……。後ろを振り返っても、戻ることは出来ないわ」

加賀「そうね。先へ進みましょう」

瑞鶴「加賀先輩! ああ、良かった。無事でしたか……」

加賀「当たり前よ。舐めないで頂戴」

飛龍「さっすが先輩! クールですね〜!」

比叡(金剛お姉様……一体なぜあの提督に付き従っているのですか……? 会って確かめなくては……)

・・・・

翔鶴「他愛もありませんね、この程度なら私一人でもどうにかなっちゃいそう」

葛城「さっすが先輩、やるなぁ〜……」

三階のエントランスに到達した翔鶴。別の部屋から出てきた赤城らと合流する。

赤城「無事でしたか。加賀さんの姿が見えないようですが……」

翔鶴らや赤城らとも異なる出口から出てきた武蔵たち。

武蔵「無駄に入口となる部屋が多いからな……出口も一つではないのかもしれない。あるいはもう更に上に進んでるかだな」

阿武隈「下から来る味方を待った方がいいのかな……それとも上に進んで行った方がいいのかな?」

翔鶴「艦隊の疲弊度や損傷度を見て、編成を交換してバランスを取っていけば良いでしょう」

翔鶴(しかし……なぜこんなことを……? 一度に多数の深海棲艦を仕掛けるわけでもなく、なぜ少数対少数で戦わせるのでしょうか)
私たちに意図的に深海棲艦を倒させているような気がしてなりません……)

赤城(総力を以って仕掛けてこないことに何か理由が……? 提督は一体、私たちに何をさせようとしているというのかしら……)

秋月「この塔、高さから考えてペース配分が大事ですね……。ある程度温存しながら昇っていった方が良さそうです」

翔鶴「ええ、どうにも階層が上になればなるほどに敵が強くなる傾向にあるようです。用心して先に進みましょう!」
638 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/28(月) 21:50:25.08 ID:3wMxQaW00
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~95/100)
・雪風の経験値+6(現在値32)
・翔鶴の経験値+4(現在値29)

・足柄の現在経験値:28
・金剛の現在経験値:27
・皐月の現在経験値:25
・響の経験値:25
----------------------------------------------------------------------

ちょっと微妙なところで区切りになってしまいましたが〜……。
たぶん終わります。たぶん。

----------------------------------------------------------------------
『Phase B』【86-90/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00〜15:雪風
16〜31:翔鶴
32〜48:金剛
49〜65:響
66〜82:足柄
83〜99:皐月
>>+1-5

よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらい眺めてなんとなくわかった気になってください。
(または>>495->>496あたりを見てわかった気になってください)
----------------------------------------------------------------------
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 21:53:13.66 ID:zJqCq5ydO
ほい
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 21:53:25.69 ID:JH4Go+r3O
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 21:53:32.98 ID:dkg0kLKUO
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 21:53:40.18 ID:hf1nF0NFO
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/28(月) 21:53:46.63 ID:umYwIKwKO
644 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/12/28(月) 22:00:33.99 ID:3wMxQaW00
>>639-643より
・足柄3レス/翔鶴1レス/皐月1レス
で『Phase B』が進行していきます。
(合計値:201なので『Phase C』は発生しません)

『Phase B』【86-90/100】とか書いてありますが、お察しの通りミスです。95-100ですハイ。

えと、ということは〜……ですね。ふむ、どうやらこれがコンマの神の意向なようです。
これで決めてしまって本当に良かったんだろうか……まあどのキャラでも覚悟はしてたんですけども。

とりあえず次の投下は年明けになりそうです。
645 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/12/28(月) 22:05:07.86 ID:3wMxQaW00
あ、合計値は314です(どちらにせよPhase C未発生)。コピペミスですすみません……。
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/29(火) 03:46:02.36 ID:5UkolCYVo
乙 最後に逆転で足柄さん大勝利か
647 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2016/01/10(日) 02:38:00.95 ID:fz3yttwt0
新年あけましておめでとうございます。
あと1週間ほどお待ちを……。

////チラシの裏////
箇条書きに毛が生えたようなレベルのものではありますが、なんとなく今回のお話を振り返ってみようと思います。
これまでのあらすじ的なおさらいではなく、作者目線での自己言及のようなものなので厳密には振り返りというよりは裏話になるかもしれませんが。
「創作者は黙して語らず、ただ作品のみで勝負しろ」というのも一つの真理ではあるような気がするのですが、一方で「せっかくなら色々暴露してみた方が面白いのでは?」とか思いまして。

とはいえ次回投下分をまだ書き終えてない上にあんまり時間的リソースもないので今回はレス数にして2レス分ぐらいでサクッと書いちゃいます。
というわけで早速1レス目。シナリオ部分から触れていきます。

□初期(〜25レス)
鎮守府に妙な提督がやって来て、艦娘から信頼を得るというまでが大筋です。それ以外に書くこともないのでちょっと没設定の話でもします。
驚かれる方も多いかもしれませんが、もともと「今回は推理モノで行こうかな!」とか考えてました。浅はかにもね!
なんやかんやで殺人事件とか起こったりして提督が艦娘らの力を借りつつ解決にまで導く! みたいな。
ただ、そのためには犯人が必要なわけで。しかしながらコンテンツの性質上どのキャラにも絶対にファンが居るわけでしてー……。
自分が好きな艦娘が(何らかの理由があったにせよ)殺し殺されるのは許されそうにないなと思い速攻で断念しました。
オリキャラがオリキャラを殺したりってのなら無くはない選択肢かもしれませんが、そうなると艦これでやる必要性もないですしね。

□中期1(〜50レス)
棲地MIにて深海棲艦との因縁に決着をつける、という内容でした。作者的には物語半ばでここまで盛り上げてしまっていいのかというぐらい過激にやったつもりです。
というのも、ミッドウェーで最終決戦というのはわりと裏のテーマを含んでいたのでありました。
えと、『艦これ』というゲームそのものが本来であれば史実でいうミッドウェー海戦にあたるイベントを最後にサービスを終了するつもりだったのですよ。
※ソースとなる資料を私が実際に所持しているわけではないのでもしかしたら間違った情報かもしれません。間違ってたらすみません
リリース当初では今のように爆発的に知名度が広まることなど想定していなかったわけですからね、締めくくりとしては妥当でしょう。
……で、つまり何が言いたいかというと、ここで描こうとしたのは“艦これという世界における闘争の終焉”です。
あんなメチャクチャにオリ設定とか出しまくっておいて何を言い出すんだお前はって感じですが……私なりに艦これ世界の終戦を考えてみたという次第であります。

□中期2(〜約75レス)
内容としては終戦後の混沌と離散、そしてなんやかんやあっての再集結……ぐらいまでですね。
前25レスまでの裏テーマの流れを汲んだ言い方をすると“終戦後の世界”です。
艦娘も提督も戦いがあればこそ繋がっていられる関係ですからね。闘争という鎖が断ち切られれば繋がりも消失するわけで。
そんな消えた繋がりを認識して足掻いたり諦めたり割り切って新しい道を選んだり……と各々が好きなような道を歩んでいきます。
しかし失われたからこそ気づくこともあるわけで〜……、もろもろのフラグ的機運が高まり始めたのもこの時期ですね。
また、それまでの50レスでは意図的に伏せていた提督の意図とかも少しずつ明かしていきました。
作中で言っていた通り彼にとっては深海棲艦との決着は通過点です。紆余曲折経てついに自分の目的を達成してやろうとしたわけですが……。

□後期(〜100レス)
残念ながら彼の野望は潰えてしまいます。失意に暮れる暇すらなく跡を追われる身となり、彼のとった行動とは……? という具合で物語が展開していきました。
えと……一応完結はしてないのであんまりネタバレっぽいことは……。まあもう安価やコンマもないしある程度なら書いてもいいよね? さすがに直接的なのは避けますが。
“艦これにおける戦いの終わり”を踏まえての“艦これという世界の終わり”を描いているつもりです。そして描ききるつもりですハイ。
世界の終わりと言ってもなんか破滅的でウワーッって感じ(?)じゃないのは、これまで読んできた人ならなんとなく察してもらえると思います。そこは安心してもらっていいです。
万人に納得されるかどうかは置いておいて、この物語の締めくくりとしてはこれで良いんじゃないかな……というラストになったらいいなあと思いながら現在執筆中です。

□その他雑記
・上の文章を見るとなんだか艦これ終末論者みたいな感じに解釈されてしまうかもしれませんが、もしそう思われてしまったのならそれは誤解です。
ただ、いかなる物事には終わりがあるわけでして……今回は“終わり”というものをクローズアップしてみたかったからそのように描いてみたという実験作のようなものです。

・相変わらず設定過多になってしまったのは結構反省してます。
これでも(この有様ですら)抑えたり削ったりした方なんですが……スピリチュアルだったりSFだったり神話だったりは興味ない人にはしんどいっすよね。
なんていうかこう、読み手側に理解するための努力を強いるようなものは娯楽としてダメですな……。
次の100レスを書くかどうかは今のところ未定ですが、もしやるとしたら次はもっと気軽に楽しめるようなアプローチで進めていきたいですね。

・開始時期が時期だったのでアニメとのクロスオーバー的趣向をいっときは考えてましたが、なんか普通に途中から忘れてしまって最後まで自己流で突っ走ってしまいました。
設定なんかは一部リンクしてたりするのですが、基本あんまり意識することなくという感じですね。まあその……この話はセンシティブな領域なのでこれでやめましょう。

・5レスで一旦区切りが入るので毎フェーズ毎フェーズなんらかの山場は設けて書いているつもりでした。
レスつかないと続きのお話が書けないっていう事情もあり、ある程度は盛り上がりを毎回挟んでいたつもりです。つもりであって事実どうだったかは知りません。

・色々とキャラがブレたり設定が膨れまくったりはしているものの、陰鬱なだけのお話にはすまいというのは最初期の時点から一貫している要素だったりします。
ただ理不尽に不幸が撒き散らかされるだけの内容は避けようと思いました。そういう創作物もアリだとは思いますが二次創作でそれやるのはリスペクトに欠ける態度なのかなと。
“艦これの終焉”という概念が裏テーマとしては存在しているものの、あくまで描くものは希望であろうと。人はそれをご都合主義と呼んだりするのかもしれませんが。
提督のキャラ付けがじょじょに変わっていったのも、心理的な変化だけでなく作中における役割が変わっていったからなのかもしれません。
648 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/14(木) 22:20:18.92 ID:mevp0knLo
乙 完結編期待して待ってる
649 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2016/01/19(火) 01:26:46.44 ID:xeF0y1180
とりあえず現時点で最後のPhase B分まで出来ているのですが、エンディング兼エピローグの部分までまとめて投下してしまおうと思っているのでもうちょっと時間ください。
遅筆ですみません……投下は1/22(金)21:00頃を予定しています。

////チラシの裏////
□提督(手取 哀)
最初に出たスペックがスペックだったので(>>349)キャラは作りやすかったです。ちょっと艦これを舞台にした作品で出すには濃すぎたかもですが。
目的のためなら手段は選ばないような口ぶりのくせにやってることは結構矛盾してますね。作中唯一のツンデレだから仕方ない(え
ストーリーの方もそうですが、このキャラは突き抜けて中二病にしようと思ったのでやりたい放題になってしまいました。
ただ、結果として今回の主人公はこいつで良かったなと思います。これぐらいぶっ飛んだキャラじゃないとこういうストーリーは演じれないよなあと。

□雪風
真っ直ぐな好意が眩しいですね。コンマにも恵まれて中盤以降かなり美味しいポジションを確保していました。
提督の右腕として活躍し、彼の過去を知り、彼の兄とも接触があるなど、最も提督に近づいたキャラじゃないでしょうか。
わりと個人相手には執着のない提督をして「頼りすぎていた」と言わしめる程度に大きな存在でした。
余談:
物語的にも彼女が居なかったら提督はMI作戦完遂後に半深海化についてなど知ることもなく普通に一人で月に行ってそうでしたね。
(まあ月に到達したところで彼の肉体は……)
磯風は彼の監視に来ていたでしょうが……雪風が居なければ提督はもっと磯風のことを警戒していたでしょう。
彼にとって最も身近であった雪風さえも深海棲艦になってしまう危険があったから『バビロン計画』を実行したというのは理由の一つにあると思います。

□翔鶴
序盤の運を足柄に、終盤の運を雪風に吸われたために今作ではいまいち活躍させてあげられませんでした……。
といっても原因は運だけでなく配置にも問題があったと反省。提督を中心に物語が展開していく以上、彼から遠いと動かし辛いという事情があります。
動かしたところで提督との親密度は変動ゼロですし。他の艦との絡みに注力しすぎて彼女そのものの描写が薄くなってしまいました。
そんなわけで、色々考えてはいたものの彼女関連のあらゆるフラグがへし折られてしまうことに……。いやほら、空母水鬼とか……ねぇ?

□金剛
自分の中での金剛というキャラクター像はわりと黒かったので初期のような味付けで動かしていくつもりでしたが、
アニメを見て「金剛が好きな人はむしろこういう方向性を望んでるのかな」とか思うようになり最終的にこのような形に。
いわゆる提督LOVE勢筆頭な艦娘なんですが、それゆえに彼女を本気にさせる提督とはどんな人なんだろうと結構悩みました。
まあ作品内での金剛はLOVE勢でもなんでもない上に提督との恋愛フラグが立つこともなかったわけですが……。

□響
ED対象となるヒロインの中では唯一明確に提督に愛情を抱いている描写のあったキャラですね。
心底提督に惚れ切っているようですが当の提督は随分ドライっすね。
暁と和解するまで彼女には提督しかいなかったと言っても過言ではないというのに、提督にとっての響は信頼できる味方止まりでしたからね。
深海化して理性を失い倒錯的な形でしか想いを伝えることが出来なかったのは、提督と結ばれることはないと自覚していたからかも。
余談:
対象キャラで唯一提督を愛していると書きましたが、他のキャラの補足。
雪風は提督のことを敬愛をしていますが彼を異性と見なしてアプローチすることはありません。そっち方面では響に遠慮していたのでしょうね。
皐月に関してはは終盤では彼のためにかなりリスキーな選択をしてみたりと恋慕に近い感情を抱いている可能性はあります。
ただ、彼女の中で「提督の傍に居たい理由」が尊敬や信義によるものなのか恋心なのか線引きがはっきりしていない以上グレーゾーン止まりでしょう。
他は……脈なさそうですね。

□足柄
翔鶴同様他の艦との絡みに割いているため彼女自身の描写は意外と少なめなのですが、足柄の場合かえってプラスに働いたような気がします。
他者と多く関わるトリックスター的なポジションとキャラそのものの持つ気質がうまく噛み合ったんでしょう。
提督の進む道は試練を伴うのでどうしても話が進めば進むほどに重くなりがちですが、彼女が登場すると軽快なテンポでシリアスなムードが破壊されてしまいます(笑)。
コンマの神に干渉して最終的なヒロインの座を手に入れてしまうあたりも実に彼女らしい。なにげに書いてて一番楽しいキャラでした。

□皐月
この面子の中では人気が低めなため序盤は空気になりがちでしたが、そのままフェードアウトさせるには惜しいと思い少し強引に動かしました。
提督から見たら自分はモブにすぎないという旨の発言を自分でしていましたが、それでもなお彼女は提督を信じようとしたわけで。
そういうひたむきさが彼女の魅力なんじゃないかなとか勝手に思ってます。
余談:
結果として彼女の行動は提督が抱いていた艦娘に対する認識を改めさせる一つのきっかけになったりします。
想いや感情によって合理性を打ち負かすというのは彼には出来ない発想でしょうからね。提督の予測を皐月の純情が上回ったわけです。

□その他(一部キャラのみ)
・赤城
メインヒロイン対象外のキャラではあったのですが、キャラ決めの際に名前が挙がったからには出そうと思ってました。
そして提督への恋慕フラグも立てようと思ってました(メインヒロインでないため絶対報われないというのにひどい)。
ただ、尺を割きすぎて翔鶴の枠を圧迫する要因の一つとなってしまいました。彼女も彼女で結構キャラは立ってたと思いますがメインの子じゃないんで……。

・磯風
MI作戦終了時点で提督の目的や経緯が不明だったので、その部分を追求させるために登場させました。なにせ戦いが終わってしまった後の世界ですからね(前レス>>647参照)。
「深海棲艦をついに倒したぞ!」とお話がお話ならハッピーエンドなわけですが、そこで終わらせないためにも提督の腹の内を暴く必要があったのです。

・繋
人工知能のお兄さん。生まれた経緯が経緯なためグレててもおかしくなかった提督ですが、彼がいたことによって今の提督があったりします。
人を信じられなかった提督でも、知性なら信じることが出来るというわけで……人智を超えた膨大な知を誇るお兄さんは提督にとって超憧れだったわけです。
ただ、お兄さん的には提督君には自分のような人工知能とばっかり戯れてないで人と向き合って欲しいと思っていたりしている……みたいな関係です。
650 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/19(火) 18:45:41.56 ID:Tze9EHGLo
完成期待してる
よく考えると雪風と運試しで勝つとか足柄さんすげえなww
651 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2016/01/22(金) 21:12:18.36 ID:8G7bUlWo0
うげえ……実はまだ書き終えてないんすよねぇ……。
とりあえず〜100レス分まで投下することにします。
そこから先のエンディングにあたる内容は……数時間インターバルを挟んで投下ということでどうでしょう。

数時間インターバルとか書いておきながら日と跨ぐ可能性もありますが……(オイ
ただ、どれだけ長引いても明日の12:00頃までには全てのテキストの投稿を完了させると約束しましょう!

時間がなかったとか忙しかったとか言い訳は後! では早速いきます……。
652 :【96/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/22(金) 21:13:49.64 ID:8G7bUlWo0
提督(泊地水鬼、軽巡棲鬼は磯風とともに下の階にいるヲ級のもとへ配置した。
この最上階以外からは通じていない部屋なので攻め込まれることは無いと思うが……ここをやられるとご破算だからな)

提督(文月と榛名・霧島はデバッグルームへ。ここも敵に占拠されるとちと困るからな。内部構造を把握される恐れがある。
天龍・龍田・電・雷らは塔の下層、響・暁・雪風は中層、金剛には上層へ向かわせ、大破して航行不能になった艦娘の救助の任を与えた……)

塔の最上階……玉座に肘かけて足を組む提督。傍らには皐月が立っていた。

皐月「司令官は、ボクが守るからね! でも、どうしてボクをこの部屋に残したの?」

提督「お前がそうしたそうだったからだ」

提督(俺の身を案じているのは他の面子も同じこと。だが雪風や響は戦力になる……ゆえにこの部屋に残っていてもらっては困る。
これから起こることを予想して配置しておかねばならない)

皐月「なんだよー、その言い方……。ボクのこと、頼りにしてないの?」

提督「そういうわけじゃあないさ。お前にはお前の役割というものがある」

皐月「ボクの役割……?」

提督「このまま何も起こらなければ動いてもらうことはない。が、事が起きれば……役に立ってもらうということさ」

・・・・

ヲ級「良い報せと悪い報せがある。どちらから先に聞きたい?」 提督の眼前に立体映像が浮かび上がる

提督「不穏だな……良い報せから聞こう」

ヲ級「現存する全ての艦娘の誘き寄せに成功した。これよりこの塔は大気圏を突き抜けて宇宙へと進発する」

提督「ご苦労。見事な首尾だ。で、悪い報せというやつは?」

ヲ級「“下の世界”への門をこの塔の中に擬似的に生成させてもらった。全ての深海棲艦が、数万年分の深海棲艦が艦娘に仇なすことだろう」

提督「これまで俺たちが倒してきた深海棲艦のみならず、“下の世界”の深海棲艦を総勢呼び寄せたというわけか。厄介なことをしてくれたな」

ヲ級「これは深海棲艦としての最後の反抗。私という存在、そして深海棲艦という存在の証明。
手取哀。お前には感謝をしている、恩義もある。信頼している。だからこそ……私はお前に仇なす」

ヲ級「深海棲艦である、私さえも救ってくれるというのだろう。なら、この私の同胞も救ってやってはくれまいか?
それがお前には出来るのだろう? この試練さえもお前は乗り越えてしまうのだろう?」

提督「もちろん。お前の命がけの足掻きですら、俺にとっては取るに足らぬこと……。闘争の中でしか救済しえないというのなら、望み通り全てを終わらせてやろう」

ヲ級「そう言ってくれると信じていた……。私の荷は降りた」

映像が途絶えると、しばらくして磯風が慌てた様子で走り寄ってきた。

磯風「ヲ級が倒れた。今、泊地水鬼と軽巡棲鬼が手当をしているが、そう長くは持つまい。
奴が倒れてしまってこの塔は無事なのか? どうやらもう地上を発ってはいるようだが」

提督「恐らくはな。思うに、そうでもなければ奴はこんなことをしないだろう。奴は自分の存在と引き換えに内部世界に存在する全ての深海棲艦を顕現させたのだ。
じきに猛烈な物量の異形が下の階に押し寄せることだろう。奴らを打ち倒すことで俺たちの戦いは終わる。簡単なミッションだろう」

提督「磯風、ヲ級のもとへ戻り手当てを。応急修理用の設備があるはずだ、急ぎ延命措置を」

磯風「君はこのことさえも予期していたというのか……?」

提督「全てを読んでいたわけではないがな。さて、皐月は下の階にある中継地点……各チェックポイントに燃料や弾薬、装備等を配置しに向かってくれ」

皐月「……でも、司令官が」

提督「俺の心配をしてくれるのはありがたいが、下の階にいる連中の方が遥かに危機的状況にあるのだ。そのことを理解してもらいたい。
それに、この俺が自衛手段もなくここでふんぞり返っているだけだとでも?」

皐月「それもそうだね。分かった、行ってくる!」

・・・・

足柄「ふぅ……部屋ごとに深海棲艦が待ち構えてるみたいだけど、どうってことないわね。次行くわよ次ィ!」

霞「待って、これまでとは桁違いの瘴気を感じるわ。あっ、待ちなさいったら!」

足柄が扉を開け、一同が部屋に足を踏み入れるとガシャンと音を立てて扉が閉まる。

霞「はああああッ!? なんなのよこの敵の数は!」

目の前に現れたのは暴力的なまでの物量。戦歴の長い霞や朝霜すらも見たことのないような光景だった。

清霜「(あまりの数に霞がキレてる)……仕方ない、先手必勝ね。一気に攻めるわ!」

大淀(上に登るための各階に深海棲艦が配置されていたようですが……明らかに今までとは数が違いますね……)

足柄「チッ……なんにせよ、こんなところで足踏みしてもいられないわ! 前進あるのみよッ!」 バッゴォン
653 :【97/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/22(金) 21:20:27.94 ID:8G7bUlWo0
提督「これが提督らしい最後の仕事になるか。文月、聞こえるか?」

文月「はい〜。聞こえてますが……なんかすごいことになってませんか? 深海棲艦がわぁ〜って」

提督「ああ。さすがにこのまま何も動かさないままだと艦娘らの身がまずい。よって方針転換だ。
以後は艦娘側のサポートするためにこの塔のギミックを操作してくれ。それから、榛名と霧島のうち、どちらか一名は戦線に向かわせていい」

提督「で、次だ。……各位、聞こえるか?」

天龍「新顔が後から後からやって来てて大丈夫なのかと焦ったが、今度は艦娘の方の身が持つかを心配した方が良さそうだぜ。大混戦だ」

響「今、こっちでは鬼の形相で加賀や赤城が暴れているよ。しかし彼女らが物量に押されるとはすさまじい……」

提督「分かった。天龍・龍田らは引き続き救助を。響・暁・雪風は中層の艦娘らを支援して深海棲艦の掃討に加勢してくれ。
俺の目的は艦娘を滅ぼすことではなく、艦娘によって深海棲艦を倒させ、その動力でこの塔を目的地まで到達させることだからな」

金剛「Oh! なんだか盛り上がってきましたネー」

提督「金剛、お前も下の階へ向かえ。お前の戦力と経験知は他の艦娘にとって強い助力となる」

金剛「え、エー……色んな人に喧嘩売るカタチでこっち来たのでやり辛いんですケド……。テートクゥ〜」

提督「天下の大戦艦が情けないことを……四の五の言うな。俺はお前の戦力は個なら他のどの艦娘にも勝ると評価しているのだぞ。
そのお前がしがらみ如きで二の足踏むとは何事だ。さっさと行け」

金剛「(あ、今日のテートク優しい)……しょうがないデスネー。気乗りはしませんガ、ここまでおだてられちゃ仕方ないですネっ!」

雪風「あの……しれえ。お身体は大丈夫ですか?」

提督「今のところはな。遠方の俺よりも前線の心配をしろ。それに、何が起きようと俺のやることに変わりはない。お前なら分かるだろう」

雪風(……司令を信じましょう。司令ならきっと……何があっても大丈夫)

・・・・

赤城「加賀さんや二航戦の隊と同じ部屋に辿り着いたと思ったらこの敵の数……これでは分断されてしまっているわ」

翔鶴「まずは友軍への道を切り拓きます。敵とこうも近いとアウトレンジ戦法が物理的に不可能ですが……艦載機が帰還しやすいとポジティブに捉えましょう」

天城「葛城、大丈夫?」

葛城「だ、大丈夫。ビビってない……ビビってないから! 稼働全艦載機、発艦はじめ!」バシュッ ピュゥゥゥ

翔鶴「その意気ですよ。ここには私がいて、さらに赤城先輩がいます。そしてあの群がる敵の向こうには加賀先輩や瑞鶴が。負ける道理はありません」ピシュン ピシュン

赤城(この成長は、加賀の教育によるものだけではありませんね。放つ気迫が以前とは段違い……ひょっとすると今の私さえも凌ぐかもしれない。
……出会った頃はただの後輩程度にしか思っていなかったけれど。今はまるで幾多もの戦場を共に乗り越えた友人のように頼もしく感じられる……!)

矢が空を切る音と、遅れて耳をつんざく艦載機のエンジン音。戦いが始まった。

武蔵「こういう百鬼夜行こそ我々大和型の出番だな! そうだろう大和!」

大和「ええ! なぜ敵が増えたのかは分かりませんが……それも先に進めば分かること! 敵艦隊を突貫して根絶します。私、大和にはその力があるッ!」

腕を掲げ、振り下ろす。振り下ろしたと同時に爆発的な火力が前方の敵を消し飛ばしていく。

・・・・

提督「……当面は問題なさそうだな。陰から補助してやっているとはいえこれほどの軍勢を相手に一歩も怯まず、か」

提督「しかし……驚いたものだ。かつての俺なら、ミッドウェーの頃の俺ならこの局面を見て匙を投げていただろうがな。
見事なものだ、艦娘というやつらは……。戦えば戦うほどに、経験を積めば積むほどに予測を超えて強くなっていく。まさか、これほどまでとは……」

提督(そして、俺がここまで本気にさせられるとも思っていなかったよ。この世の些事に執着するなど愚かしいと思っていたのだがな……。
こいつら艦娘の成長が面白いと今更になって感じている。俺は戦争狂になったつもりはないのだがな……まったく)

提督「なかなかどうして、浮世も捨てたもんじゃあない。あとは、俺自身の命運がどう転ぶか……だ」 自分の掌をじっと見つめる提督

・・・・

提督「俺の細胞の一部を、生存条件を満たせる小箱の中に入れて塔の外に出してみたが……ダメだったか。原因不明の死と再生を繰り返す。
しかしなぜここにいる俺は無事でいられる? 塔が地球を離れようとしているうちは、未だ地球の範疇ということか? 都合のいい解釈だが……」

提督「だがこの塔は目的を果たせば力を放出して自壊してしまう。肉体や魂をこの塔の内に留めておくことができるのは、移動している間だけ」

提督(この塔を押し上げる力の一部を使って、塔と同様の構造物を生み出そうとしたが……)

提督「出力座標を固定するのが困難だな。失敗した時のリスクが大きすぎる。
宇宙空間に放逐され半死半生の肉塊となるか、概念化して次元の狭間を永遠に彷徨うハメになるか……フッ」

提督「諦めるにはまだ早い。考えろ……艦娘が地球を離れて半深海化しない理由。俺の肉体が地球を離れると崩壊する理由。……」

……肉体と魂の遊離度の違いか? 艦娘から魂の抜け去ったものが深海棲艦。魂と肉体は地球の極と極に二分され交わろうとしない。
だが人間の場合はどうだ? ヲ級は輪廻が成されていないと言ったが……本当か? であるならば深海棲艦の人間版があっていいような気もするが。
これまでに死んだ人間の肉体とそこに残った想念がみな冥府へ溜まるというのなら、深海棲艦すら圧倒する化物が出来そうなものだが。
654 :【98/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/22(金) 21:24:13.89 ID:8G7bUlWo0
提督「無重力の条件下では、艤装の深海化の進行が緩まった。……重力がなにか作用しているのか?
地球の重力に近い重力が働いていれば俺の肉体の損傷も回避出来るのか……? いや、それも試した。試したが失敗だった」

しかし……何かヒントにはなるかもしれないな。人間と艦娘の違い。人間は土から生まれ土に還る。艦娘は“火”から……。
性質の違いがある。人間は留まろうとする。大きな箱庭の中で循環しようとする。艦娘はそうではない。生まれて、使命を果たして、底へと沈む。

……沈む? 沈む、か……いや。艦娘は人と被造物との混血。人たる部分が地の底へ、人ならざる部分が天へ昇っていく……?
道具は役目を終えれば、廃棄されるか姿を変えることになる。大昔での大戦で使われた兵器を模しているのも、天使としての性質か?
軍艦。人間の知恵によって生まれた兵器。その姿を模して現れた意味。知恵……。知恵を最初に与えたのは、神への反逆者たる天使だ。
天使は神の生み出した“火”より生まれ落ちた。“火”から人間は知恵を手に入れ、意志と感情のままにこの世界を支配していった。

重力……。無重力下で炎は涙滴型でなく球状で浮遊する。地球上での炎は暖められた空気の上昇によって垂直な形になるが、宇宙でそうはならないからだ。
また、宇宙空間では人為的に酸素を送り込んでやらなければ炎を維持することができない。だが地上より低酸素で持続させることができる。……。

提督「……この塔では、深海棲艦の精神と肉体。そして艦娘がいる。深海棲艦を倒すことによって、奴らの精神と肉体を塔の動力としている。
深海棲艦は輪廻を望んでいる。再生……再会……。繰り返し……。魂を望んでいる。俺の肉体はどうだ? 外因的な力を糧に半永久的に死と再生を繰り返す。
そして、死んでなお俺は俺のままだ。別の生き物に生まれ変わったり、深海棲艦のように抜け殻になったりはしていない。
死のたび魂は入れ替わっているが、本質的な存在は揺らいでいないように思える」

提督「そもそも魂とは? 魂とは一つの肉体につき一つだろう? その発想自体間違っているのか? 俺は何者なのだ……」

・・・・

大部屋の深海棲艦を突破し、中継地点で休む一同。

瑞鶴「うぉぉ……次から登るたびにこれかぁ〜……。さすがにヤバいなあ」

翔鶴「でも、あと少しです。頑張りましょう、瑞鶴!」

響「さて、これは応急処理女神だ。数に限りがあるから全員分とはいかないが、有効に活用してくれ。私の司令官に感謝するんだな」

大鳳「この一件の元凶に感謝など……」

暁「補給物資や高速修復材こっちよ。ちゃーん順番を守って並ぶのよ?」

陸奥「とはいえ、ここは素直に受け取っておくべきね。じゃなきゃ身が持たないわ」

川内「けど、これだけの資源や装備、どうやって用意したの? まだまだ備えがありそうだし……」

雪風(たぶんこれほとんどが横須賀鎮守府から金剛さんたちが略奪してきたものなんですよね……)

加賀「次の部屋……凄まじい殺気を感じるわ。悪くない、相手にとって不足ないわね。フフ……」

瑞鶴「加賀先輩がニタリと笑ってる! よからぬことを考えているに違いない!」

翔鶴「瑞鶴! 失礼なことを言うんじゃありません。聞こえますよ?」

・・・・

金剛「フッフッフゥー! 助太刀に来ましたヨォ! ってノわッ!?」

比叡「お姉様ァーーーーッ!!」 ドドォン!!!!

金剛「ちょ、なんでこっちに向けて撃ってくるデース!? 敵はアッチ! 私はBOSSじゃないありまセーン! ノォォーウ!」

比叡「私は納得いきません! お姉様が何を知っているのか! なぜ私を連れて行かなかったのか! 洗いざらい吐いてもらいますッ!」

金剛「What the hell!?!? なんで私だけ逃げながら戦わなきゃいけないんですカー!? そんな縛りプレイ聞いてまセーン!」

榛名(あぁ……まあそうなりますよねえ)

武蔵「アホは放っておいて……我々はひとまず周辺の敵を蹴散らそう。豪華な面々がお出迎えしてくれたようだぜ!」

加賀「あれは……防空棲姫。そして戦艦水鬼! ふふ、いいわ……興が乗ってきました。瑞鶴! 貴方は私と残ってここで敵を迎え撃ちます。
他の空母は先に進んでもらって構わないわ。ここは二人で十分!」

瑞鶴「わ、わたしィ〜!? 私がアレやるんですかァ!?」

加賀「これでも耳の良さには自信あるの。ふざけたことを言う後輩は懲らしめてやらないと」

翔鶴「(言わんこっちゃない……でも、加賀さんと今の瑞鶴なら大丈夫かしら)ここは瑞鶴や加賀さんに任せて、先に進みましょう。行きます!」

金剛「ヒエーイ!? だから謝ってるじゃないですカー!」 比叡の砲をかわしながらも深海棲艦への攻撃は加えつつ逃走する

比叡「百歩譲って……お姉様が私を誘わなかったのは許すとします。
事実私はお姉様と違って軍に残っていましたし、それなりに思い入れもありましたから。ですが……なぜあの司令のもとへ」

金剛「比叡! 危ナイッ! うおおおおッ!!」 比叡の前に立ち砲撃の盾となる金剛

比叡「お姉様!? ……お姉様ァーッ!」

金剛「子供じゃないんだからこのぐらいで騒がない。たかが一発喰らった程度だけですよ。騒ぐことじゃない。
ま……喰らった一発は、百倍にして返してやりますケドネッ! ッラァァ!!」 艤装にめり込んだ砲を掴んでぶん投げ、前方の戦艦を破壊する

武蔵「あいつ……原始人か? 野蛮すぎるイカれた奴だな……だが面白い! ハッハッハッ! 金剛に遅れを取るな、攻め取るぞ!」
655 :【99/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/22(金) 21:34:51.18 ID:8G7bUlWo0
比叡「お姉様? 動けますか?」

金剛「まだ大丈夫デス。あの提督は……私の子供の頃憧れてたヒーローにそっくりなんですヨ……」

金剛「最初に会った時からずっと、ムカつく奴だと思ってたんデス。けど、本当は優しい人なんデス……不器用なだけなんです……。
皆を守りたいと思ってるカラ、皆を助けたいと思ってるから戦えるんです……」

金剛「私だって、100%提督のことを信じられていたかと言えばそうではありませんでシタ……軍に反逆するのだって、それがどんなに愚かなことかは分かりマス。
それでもワタシが手取提督に近づいたのは、子供の頃のワタシの憧れを、彼の姿に見出したからデス」

金剛「私は……そう、ヒーローになりたかった。子供の頃の夢で、忘れてしまっていた。でも……ワタシは弱かったから、人に愛されたかった。
自分を殺してまで人に尽くそうとは思えなかった……。目に見える形での見返りがなければ力を出せなかった」

金剛「でもテートクは、超エゴイストです! 自分を貫いた上で、それでもワタシたちを救おうとしている! ワタシもそうなりたいと思った!」

榛名「お言葉ですが……金剛お姉様。お姉様はもう十分にヒーローですよ。いえ、ヒロイン? もうお姉様は昔のお姉様じゃない。
自分の意志で、けれど皆のために戦っている。これこそヒーローの資質……ではないでしょうか」

金剛「……だと良いですけどネ。比叡、これで話は終わりデス。これでも納得できないと言うのであれば、もう貴方と戦うしかありまセン。
ですが、そこに意味がないことぐらい分かっているでショ? 駆けっこはもうお終いにしましょう」

金剛「比叡には、強くなって欲しくて、余計なことばかり言ってしまいまシタ。でも、それは私の歪んだ理想の押し付けでした。ゴメンナサイ。
……人を守りたいという想いで、そして私を守りたいという想いで戦ってくれていたのはいつも比叡でした。
ワタシは……提督のように強く、そして比叡、あなたのように周囲を愛せるようになりたかったのかもしれまセン。本当に大切なものは、すぐ傍にあった……」

・・・・

夥しい数の深海棲艦が海上を埋め尽くしている。しかし、その全てが力尽きているようである。その光景は地獄絵図と呼ぶに相応しい。

朝霜「ハーァ、ッ、ハーッ……ざまあ見やがれ……みんな倒してやったぜ……!」

長門「これで少しは私のことを見直してくれたかな……?」

清霜「うん。カッコ悪いなんて言ってごめんなさい。長門さんが来てくれて助かりました」

酒匂「やっぱり長門さんはすごい! 憧れちゃうなぁ!」

長門「ふふ、そうだろう。頼りにしてくれ(さすがにこの数は肝を冷やしたがな……)」

三隈「まだここで終わるべきじゃない、ということですよ。名誉挽回できて良かったじゃないですか」

陽炎「一小隊に半深海棲艦化手前の艦娘と非番の艦娘が加わった寄せ集めではあるけれど……なんとかなるもんね。はーい戦闘糧食」

霞「もう上の階からは気配は感じないわね……これでようやく一息つけるわ」 モグモグ

足柄(どうにかなったわね……。けれど、何か妙な予感がするわね……何かが引っかかる。この塔に入った時、違和感があったのよね……)

・・・・

提督「ほう……おめでとう。ここまで来るとはな。もう間もなく時が来る。この塔は火星に到着しその目的を果たす。
お前たちが深海棲艦を倒してくれたおかげで俺の計画は無事成功に終わったというわけだ……」

ひどく負傷した、ボロボロの姿で提督の前へ立つ翔鶴。玉座から立ち上がって両手を広げる提督。

提督「時間がないので手短に頼もうか。質問には三つまで答えてやる」

翔鶴「全て貴方の掌の上で踊らされていたというわけですね……。ですが、何ゆえこんなことを……」

提督「半深海化を食い止めるためにはお前たちを強引にでも地球の外に連れ出さねばならなかった。ここまでは前回のバビロン計画と同じ。
俺が深海棲艦を操ることが出来たのは、ミッドウェー作戦で対峙したヲ級Nightmareを従わせたからだ。奴の力で深海棲艦を蘇らせた。
この塔には想念を力に変換する機構が備わっている。お前たちが深海棲艦の怨念を打ち破ったことによって塔内に膨大な力を蓄積することができた」

提督「それはそうと、こちらからも質問して良いか。ここに辿り着いたのはお前だけか? また、ここに辿り着く過程で轟沈した艦は何隻出た?」

翔鶴「ここまで来れたのは今のところ私だけです。しかし、後から他の者も来るでしょう。轟沈した艦は出ていません」

提督「そうか。それは都合がいい。ま……数隻程度なら沈んでも問題はなかったのだがな」

翔鶴「! どういうことですか……それは?」 弓に手をかける翔鶴

提督「……二つ目の質問と解釈して説明させてもらう。この塔の内部では空間という概念そのものがデタラメだ。
肉体から離れた魂ですら塔の内側に留まってしまう。ゆえに肉体と魂を繋ぐ艤装さえ作ってやれば蘇生が可能ということ」

提督「かつて流行した……カードを筐体に読み込ませて戦う、ああいうゲームを想像してみてくれ。
俺やお前たちの肉体がカードで、ゲーム内で動くデータが魂。カード本体とデータが残っているなら、後はその因果関係を再び結んでやればいい。
だから轟沈しても問題ない……と言ったところで理解は難しいだろうがな。原理を省いて概要だけ説明するとこうだ。さて最後の質問を聞こう」

翔鶴「私が知りたいことは、貴方が私利私欲で動いているか、そうでないかということです。貴方の目的は何ですか? 貴方は何をしようとしている?」

提督「俺の目的か……。そうだな。この世界の森羅万象を再現できる架空世界を創造する。
それを俺は“真理の箱庭”と呼んでいるが……これを観測してこの宇宙の真理へと至り、やがて全知となる。これが目的の全容だ」

提督「畢竟艦娘も深海棲艦も……俺にとっては余興に過ぎない。お前たち艦娘という半人半神のような存在でさえも、この大宇宙の中では微々たるものだ。
そんな些細な存在ではあるが……惹かれるものがあった。正直のところ、お前たち艦娘の成長は敬意に値する。だからこうした」
656 :【100/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/22(金) 21:38:27.41 ID:8G7bUlWo0
赤城「提督! ハァ……ハァ、ハッ……。貴方に、会いに、来ました……。っ……!」

提督「赤城もここへ来たか。大儀であった。だがもう時間がない。ほんの少し遅かったな」

玉座を中心に床から光の円が浮かび上がる。円はやがて六芒星に変わり、玉座を取り囲むようにして回転する。
光とともに薄墨色の半透明な障壁が形成されていく。玉座の位置を頂点とした三角錐が出来上がる。

赤城「ッ! 待ってください!」

ピラミッドの形をした障壁めがけて弓を引いた赤城。しかしヒビが入るだけで破壊には至らない。
提督が玉座に座ると、赤城が二発目の矢を放つ前に障壁の内側にあったものが光に包まれ、彼女の視界から消失した。

・・・・

塔の最下層。青銅の壁に覆われた部屋に提督は居た。部屋中が激しく震動しているにも関わらず平然として室内の機材を弄っている。

提督「塔が崩壊を始めている。もう時間はないな……」

提督(まず隣室の冷凍保存シェルターをさっきと同じやり方でこの塔の外へと出力する。……? ……これは) ゴゴゴ……

背後に気配を感じる提督。悪寒が疾る。自分に明確な敵意を向ける存在が近くにいることを察し、振り返る。

提督「……! お前のような存在がいることも、理屈の上で予想はしていた。だが、よりにもよって俺のところに現れるか。艦娘ではなく、あくまで俺なのか」

提督が振り返った先に立っていたのは、骨肉と鉄や鉛が一緒くたにされてぐしゃぐしゃに押し潰されたような顔のない化物だった。
今まで映像や肉眼で見てきたどんな深海棲艦よりも歪でグロテスクな風貌のそれは、ゆっくりと提督に歩み寄る。

提督「気配こそかつてヲ級に見せられた幻覚に出てきたものに似ているが……以前のそれとは明確に違う。
こいつは救いを求めていない、ただ悪意と憎しみしかない……。何もかもを踏み躙って破壊したいという衝動しか感じられない……ッ」

提督「それにこいつ……妙だ。鬼や姫といった上位種やそれらに近いネ級やヲ級の類でもないのに真っ直ぐ二足歩行でこちらへ向かってくる。
哨戒魚雷艇の子鬼群とも似ているが、それとも違う! こんな見た目の奴は見たことがない」

ダァン! 炸裂音がすぐ近くで聴こえる。砲撃だ。化物の巨体が退いた隙に、砲が放たれた方向に走る提督。

足柄「やっぱりここに何かあると思ったわ! 入口から更に下に続いてる階段があってヘンだと思ったのよ!」

見つけてやったりと得意げな表情の足柄を無視して考えこむ提督。

足柄「で、あれは一体何かしら。深海棲艦はもう全部倒したはずじゃないの? っていうか、ヘンな臭いしない!?
磯の臭いとも、硝煙の臭いとも違う……深海棲艦の臭いじゃないわ。あの化物から漂うのは……死臭……?」 スンスン

提督「この塔は深海棲艦の想念を糧としている。救われたい、満たされたい、生まれ変わりたい……叶うことのない絶望を清算させるためにある。
だがその想念の中には、救済すらも望まず、闘争によって満たされることもない、純然たる悪意のような“澱み”もあることだろう」

提督「快楽のままに悪意を振り撒き、衝動のままに破壊し尽くす邪悪。深海棲艦にあって深海棲艦にあらず、人間の怨念であり悪意。
直感した……直感だが、確信に近い……。奴を新しい地平に連れて行くわけにはいかない!」

足柄に説明するというよりは自分の考えを整理しているような様子で話す提督。

提督「足柄! お前は階段を登って退避しろ。俺はこの階を塔から切り離して宇宙空間に捨てる! いいなッ」

足柄「ちょっと! 勝手に一人で話を進めてもらっては困るわ! よく分からないけど、要はアイツを倒せば良いってことでしょう!」

提督「よせェ足柄ッ! 下がっていろ!」

提督が静止の声が耳に届く前に怪物めがけて砲を撃ち放つ足柄。最大威力の射程距離で放たれた一撃は鋼鉄の肉体に当たって爆裂する。

足柄「きゃあっ!? こ、このォ〜……!」

甚大なダメージを受けたにも関わらず砲煙から飛び出してきた化物は、足柄に突進してそのまま押し倒す。

提督「まずい! うおおおおおおッ!!」

押し倒された足柄と化物の間に強引に割り込み、化物ではなく足柄の方を突き飛ばす提督。そのまま全身を覆いかぶさられ、やがて肉体の全てを呑み込まれてしまう。

足柄「嘘……何が起こってるの……? 提督、死んで……? ッ……グうッ!」

足柄(身体が変だわ……立っていられない。この塔に入ってからは収まっていたのに……艤装が……自分の意志で動かせない!?)

化物の内側から爆発が起こる。左手に手榴弾を握った血みどろの提督が、うずくまる足柄の手を強引に引いて走る。

提督「やはりか……。いいか、足柄。あれは深海棲艦じゃあない。似ているが……もっと性質の悪いものだ。あれは人間の悪意そのもの。
お前たち艦娘はあれに触れただけで瘴気にやられて深海棲艦になってしまうだろう」

階段前に辿り着くと足柄の手を投げ捨てるように放し、背を向ける。

提督「幸い、まだお前は助かる見込みがある。そのまま階段を駆け上がれ。その程度の力は残っているはずだ」

足柄「貴方はどうなるのよ!? 艦娘ですらない貴方が、たった一人でこんな奴に挑むなんて正気じゃないわ!」

提督「さっきので二度死んだ……が、あと2998回までなら死んでも問題ない。勝機はある。ここでお別れだ、足柄。……じゃあな」

足柄の方を振り返ることもなくそう言い捨てて、明かりのない廊下の方へ走り去っていく提督。やがて闇の中へ消えていき、その姿は見えなくなった。
657 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2016/01/22(金) 21:40:20.79 ID:8G7bUlWo0
100レスで終わりなのにどうしてこんなことしたのって怒られそうですが、まあまあもう少しお付き合いください……。
とりあえず23時あたりに投下出来そうだったら投下します。ダメそうだったら明日の昼12時頃ということで……。
最後までこんなバタバタしてて申し訳ありません。
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/22(金) 21:47:27.36 ID:LHIGHsYlo
一旦乙 これ後10レスくらいいるんじゃね?終わるのか?
続き期待
659 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2016/01/22(金) 23:06:09.11 ID:8G7bUlWo0
ごめんなさいやっぱり時間欲しいです。超ごめんなさい。あともう少々お待ちを……!
あまり焦らなくてもいいよと言ってくれる方もいるかもしれませんが、>>1の都合的に明日を逃すとまた間延びしちゃいそうですので……明日で決着つけます。
ちなみにあと5レスで終わる想定です、概ね書けてはいるので大丈夫です、終わります終わらせます大丈夫です大丈夫……たぶん
660 :【ED-1】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/23(土) 12:07:02.76 ID:xlyHE8aw0
提督「これでいい。切り離しは済んだ……。足柄のヤツ無事だといいが……」

提督(あとはヤツだけだ! 四回死んだだけで抑えられたのはなかなか悪くない…‥あと2994回も死ねるのだ。さて本題はここから)

提督(シェルターは健在か……。だが、あの化物がいる状況ではどうにもならんな。奴をどうにかする術を考えなければならないか)

壁伝いに腕の力を使って移動する提督。左足の頚骨より下の部分には本来あるべき足首が失われていて止めどなく血が流れている。

提督「物質転移装置のある部屋からはだいぶ離れた……これならひとまず安心して“死ねる”。この七回目の命も無駄ではないな……」

力尽きて倒れた提督の上に化物から伸びた触手が突き刺さる。

提督「ッ……(こいつ……学習しているのか……? 近寄って丸呑みにすることをやめ触手を……グッ。ダメだ、意識が……)」

・・・・

壁に叩きつけられ、頭から血を流しながらよろよろと立ち上がる提督。

提督「相当死にすぎたが、気づいたぞ……ようやく気がついた……。最初のうちは俺の全身を取り込もうとしていた……。
だが……途中から動きが変わった。触手で串刺しにしてみたり、こんな風に俺をいたぶって殺そうとしたり……だ」

提督「それは、俺の精神を屈服させるためでもある。だがもう一つ。お前は俺を取り込むと少しずつ弱っていく……そこに気がついた。
そう、人間に限らず生き物の多くは、食物を消化することに最もエネルギーを消費する。
お前が俺の肉体を消化しきった直後! 俺の肉体はお前の吸収したエネルギーを奪い取って再構築される……」

提督「最も、知性が猿以下の貴様では俺が何を言っているか、何に気づいたか理解できないだろうがな……。意志なくして知は意味をなさない。
自らの生さえも望まず、ただ全ての破滅を願っているだけの化物に……はたしてこの俺が殺しきれるかな」

身体の周囲に伸びてきた触手を掴み、手繰り寄せ、化物に自ら接近していく提督。そして腕を伸ばし、取り込まれていく。

提督「結局のところ、滅ぼすことすら貴様は“願う”だけなのだ。自らの手で成そうという気概がない。情熱がない!」

提督(だが……こいつもまた、人が生み出したもの……。
人の悪意が艦娘に伝わり、その艦娘が他の艦娘に悪意を伝え……そうして紡がれていった負の連鎖だ)

提督(これは……人間の戦いだ……。だからこいつは人の死臭を纏っている……。艦娘の想いでなく、人間の悪意を備えている……。
ここで俺が決着をつけなければならない……艦娘を巻き込むわけにはいかない……)

足柄(……ブラックホールのようだわ。自分のエネルギーが無くなるか、提督の生命の全てを奪い尽くすまで攻撃し続けるなんて)

死角から一撃、蹴りを見舞いする足柄。取り込まれつつある提督の身体を化物から強引に引き剥がし、彼を横抱きにして救い出す。

提督「バカな……足、柄……!? なぜ……? そうか、応急修理女神をくすねてきたか……」

足柄「轟沈もしていないのに深海棲艦になるなんてゴメンだわ! もっとも、女神の力でも完全に深海化を消し去ることは出来なかったようだけれど……。
アイツに触れずに倒せばいいんでしょ? そういうことは先に言って欲しいわね」

ターン、ターンとスキップのように華麗に飛び回りながら後方から伸びてくる触手をかわし続ける足柄。

提督「もういい足柄。降ろしてくれ、損傷部分は再生した……奴に俺の身体を取り込ませることで」

足柄「意識が戻ったのはついさっきだったけど……死にすぎたとか言ってたのは聞こえていたわ。貴方の肉体、不死身だけど限界はあると見たわ。
……提督に無理をされて本当に死なれたら、今度こそ勝ち筋がなくなるわ。私のためにも、もう少し自分の命を大切にしてよね」

提督「なにが勝ち筋だ。あの時逃げてさえいれば、こんなことにはならなかったものを……ばか者め」

足柄「私から言わせれば、あんな化物にたった一人で立ち向かっていくなんて貴方の方がよっぽどバカだと思うけどね。
でも……今の提督、カッコ良いわ。あれは自己犠牲じゃない、生き残る覚悟の上でああいう判断を下せるなんて驚いたわ」

足柄「だから私はここに残った。それだけの情熱と覚悟を持ったあなたが、一人ぼっちで死んでいくのは見逃せない」

足柄(それに……やっぱりあなた生き急ぎすぎだわ。抱きかかえていて感じた……生気が薄れている。
私の前では肉体の再生速度を早めてみせていたようだけど、本当はもう限界が近いって気がするわ)

提督「やれやれだな……一時の情に流されて命の危機を冒すとは愚かなやつだ」

足柄「あなたにだけは言われたくないわ、心外よ!」

提督「とまれこうまれ……もう、奴を倒す以外にお前に生き残る道はない。そして俺はお前の生命の保証をすることが出来ない。
だから覚悟を決めてくれ……俺より先に死ぬ覚悟を決めろ。俺はお前を足蹴にしてでも生き残ってみせる」

足柄(自分にそう言い聞かせてるつもりかしら? ……私が危なくなったら本当に限界が来ていたとしても捨身で助けようとするくせに)

足柄「あなたねぇ……私のことを邪魔だと思ってるでしょ。私がいなければ最悪死んでしまっても良かったなんて考えてない? 隠したってムダだわ」

ファサと髪を掻き揚げて、提督を見つめる足柄。

足柄「けれど……今だけでいいわ。今だけでいいから……私を信じて。私、足柄は絶対にあなたに勝利を導くわ」

提督「ならば……訂正しよう。そうだな……何と言うべきか……」

提督「覚悟を決めてくれ、足柄。俺と心中する覚悟を決めろ」

足柄(彼から出てくる言葉はみんな裏返しだわ。で、私がそれに気づいているって、分かっててこんなふうに言うんだもの……おかしな人ね)

足柄「いいわ……それでいい! 絶対勝って生き残るわよ? いいわね!?」
661 :【ED-2】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/23(土) 12:21:13.71 ID:xlyHE8aw0
鋼片や肉の屑を撒き散らしながら、悲鳴のような嗚咽のような音をあげて倒れる化物。

負傷しながらも怯むことなく、精悍な顔つきで砲を構えている足柄。

既に再生能力をほとんど失い、ところどころ液状になりかけながらも足柄の背負った艤装に掴まっている提督。

足柄「ハァ……ハァ……ハァ……ァァ……さぁまだやる? 何度でもぶっ飛ばしてあげるわ……!」

提督「ッ……ぐ……いや、もう……終わったようだ……。もうやつが立ち上がることはない」

提督「見ろ、あの化物の力が……変換されていく。どうやらあの塔と同じように、火星へ向かっているようだ……」

足柄「それじゃ……勝ったのね!? やったわね!!」

提督「ああ、やったな……ありがとう。足柄」

足柄の背中から離れて、ヨロヨロと隣の部屋へ向かっていく。

提督「置き土産か……。俺の身体はこの塔を離れると無限に崩壊を繰り返す。再生を上回って細胞が死んでいくので、やがて完全に消滅してしまう。
だから、かつて俺たちがワープした時のような方法を使って、肉体を冷凍保存するためのシェルターを用意しておいたのだが……」

足柄「それがこれ、ってわけ……」

小部屋一体に瓦礫が散らばっていて、床の一部が凍っている。

提督「塔の中にあったものは、目的地に到着した際に生命を除いて消滅してしまう。
このシェルターをワープさせ、次にシェルター内の座標に俺をワープさせるという計画だったのだ」

提督「ただ失敗したリスクも大きかった。残念だが、かえってこれで良かったのだと考えよう。……もう一つ方法はある。最終手段だがな」

・・・・

足柄に肩を借りながら、この階層にある最奥部の部屋へと辿り着く。機械から伸びる数本のケーブルを自分の身体を取りつける提督。

提督「良かった……壊されてはいないようだな」

提督「俺という存在を0と1とのデータに変換する。肉体の死はもう免れないが、何もかも消失してしまうよりはマシだ」

足柄「……死んでしまうの? 俺と心中しろなんて言ったじゃない」

提督「肉体が死ぬだけだよ。俺の精神そのものが滅びるわけじゃあない。データに変換しておけば俺は電脳空間上で行き続けることができる。
それに、いつかはデータから可逆的に肉体を復元できるようになるかもしれない。死ぬわけではないさ」

提督「精神や脳の情報をデータに変換して、あとは火星に着いたであろう雪風や磯風に回収してもらう。人工知能のようなものになる……というところだ」

・・・・

提督「……変換に存外時間がかかるな。幸い、火星へ向かうスピードもあの塔よりだいぶ緩やかなおかげで、どうにか間に合いそうではあるが」

ベッドのような装置の上で横たわる提督。提督の情報が画面に出力されていくさまを足柄はやや放心した様子で眺めている。

足柄「データに変換されると言うのに、あなたは全然平気なのね。なんだか不思議だわ」

提督「変換と言うのは語弊があるかもな。俺の脳を読み取って、読み取ったものをデータ化しているのであって、俺自身が特にどうというわけではない」

足柄「……そういう意味じゃないわ」

提督「そうか。それより、こうして何も考えずに横たわっているのは思いのほか暇なんだ。頭の体操がてら、少し話でも聞いてくれないか。取りとめもない話だが。
100万回生きた猫、って知ってるか。昔の絵本らしい。俺は金剛から話を聞いただけだから、内容を読んだわけじゃあないんだが」

足柄「知ってるわ。子供の頃に読んだ」

提督「輪廻転生を繰り返した猫の話だ。死んでは生まれ変わり、飼い主を転々としていた猫がある時、誰の飼い猫でもない野良猫に生まれ変わった。
猫は雌の白猫と出会って、結ばれて……やがて白猫は年老いて死んでしまった。百万回生きた猫はその時生まれて初めて悲しんだ」

提督「今まで飼い主が自分の死を悲しもうが何も思わなかった猫は、白猫が死んだ時に生まれて初めて悲しんだんだ。
猫は百万回泣き続けて……やがて泣き止んだ。白猫の隣で動かなくなり、もう二度と生き返ることはなかった。……」

提督「人から聞いた話を自分なりに想起しただけだから……少々うろ覚えだったのだが。いや……俺も、その猫と同じようなものなのかもしれないなと思ったんだ。
猫は、飼い主たちが嫌いだった。野良猫になった時だって、他の猫に自分の経歴を威張り散らしていた。だが、白猫が死んで、初めて悲しんだんだ」

提督「ただ……俺は、これを悲劇の話に思わない。むしろ、猫にとって幸せだったのではないかとすら思う。うまくは言えないのだが……」

提督「俺は、もうこの肉体で雪風や磯風、皐月、響、金剛……あいつらと会えなくなるのだと思うと、少し、哀しみの念を覚える。
思えば俺も、人生で初めて今悲しいという感情を体験しているのかもしれない。別れというのは、辛いものだ」

提督「だが……別れが悲しく思えるほどに、あいつらのことも、お前のことも、大切に思えるようになった自分が、少し誇らしいのだよ」

足柄「やめてよ。そういうしんみりした話されると……泣いちゃうじゃない」 そう言って上を向くが、既に目尻が潤んでいる

提督「すまないな、お前まで悲しませようとして言ったわけじゃあないんだ……少し自分の成長が感慨深かっただけだ。また一つ、真理に近づいたと思っただけだ」

提督「それに、さっきも言ったろう。俺は死ぬわけじゃない。また会える……またいつか、きっと」

それから数十分、提督と足柄は他愛もない話を続けた。話し飽きた提督が眠りに着くと、しばらくして部屋全体が光に包まれ……足柄は気を失った。
662 :【ED-3】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/23(土) 12:39:54.40 ID:xlyHE8aw0
夢を見ているかのようだ。まどろみの中にいる。ここは水の中……海、なのだろうか。
前にもこんなことがあったような気がする。前? いや、前は似ていたが違う。もっと暗く悲しい海だった。
ここも暗いことには変わりがないが、不思議と暗闇を感じさせない。何かに抱かれているような温かみと安心感がある。

何かが見える。見えると言っても、目に何かが映っているわけではない。そもそも自分には目というものがあるのかさえ分からない。
青い星から飛び立ったロケットのようなものが、赤い星に向かって飛んでいく。これは確かロケットじゃなく、塔だった気がする。
なんという名前だったかも知っていたはずだが、どうにも思い出すことができない。

そう、自分はこの塔の中にいたんだった。この塔で、おぞましい化物と対峙していた。
かつてあの青い星を支配していた存在が、感情というものを持った人間を警戒したのは、
心というのはあのような醜い姿にもなり得るということを危惧していたからじゃないかと思う。

けれど、感情そのものは、きっと素晴らしいものなのだと感じている。
自分はずっと、知性こそがこの世の全てだと思っていた。それは半分正解で、半分は間違いだ。
好悪や興味の感情が沸き起こらない時、知性は発生しない。知りたいとすら思わないから、知に辿り着くことがない。
真剣に自分の目的を果たそうと努めていない時、知性を発揮できない。真剣でないから、知を活かすことができない。
心というものに触れて、向き合って。今の自分は、前よりも完璧から離れた頼りない存在になってしまったかもしれない。
けれど、これでいいのだと思う。他人を受け止めたり、受け入れたりするということは傷つき痛みを伴う。
その痛みさえも今は愛おしいと思えるから……これでいいのだと思っている。

塔は赤い星に辿り着くと、強い光を放つ。光は星の表面を駆け巡って、海を、大地を、空を形成していく。心地よい風が吹き抜ける。
大地は緑で彩られ、海は生気に満ち溢れている。塔を動かすために糧となったものたちが、新たな生命に生まれ変わったのだろうか。
緑の上で、海の上で、なにやら楽しそうにしている子供たちがいる。すごく懐かしい気持ちがするのだが、今の自分には思い出すことができない。

・・・・

ここは誰かの夢なのだろうか。どこかで見たような光景が、断片的に繰り返されていく。
けれど、ほとんど何も思い出せなくなってきている。記憶が茫漠としている。時間が経てば経つほどに記憶が曖昧になっていく。

――ねえ。

声がする。どこから声がしているんだろう。そもそもどうやってこの音が聞こえているのだろう。耳なんてないはずなのだが。

――あなた……まだずっとこうしているつもりかしら。そろそろ限界みたいよ。

こうしているつもりと言われても、自分からこうなった覚えはない。ただ、どうにもこの状態も長くは続かないということらしい。

――思い出せないなら、私が話してあげるわ。

ああ、でもなんだかこの声は聞き覚えがある。そうだ……せっかくだし、なにか知っているようなら聞いておきたい。
まず、思い出せないことが多すぎる。どうしてこんなに記憶が薄れていくんだ? 自分の名前さえ思い出せない……。

――記憶が薄れるのは、あなたが少しずつ遠くへ向かっているからよ。あなたがこの世界にいたという証が薄れつつあるから。あなたの名前は哀。

アイ、か。生前は女性だったのか……? いや、違う気がするな。自分のことを俺と言っていたっけな……。まあそれはどうでもいい。
どうしてあんたは俺の名前を知っている……?

――そりゃあ当然よ。私はあなたが消滅する直前まで一緒にいたもの。『また会える』なんて言っていたのに、それも忘れちゃったのかしら?

そんな約束のようなことも言ったかもしれないが……すまない、まだ思い出せそうにない。
ただ、お陰で別のことを思い出した。俺には大切なものがあった。心の底から守りたいと、見守っていたいと思うものがあったんだ。

――たぶん、それは皆無事よ。あなたのおかげでね。でも……あなたがいなくて悲しんでいる人もいるわ。

そう、か。無事なら良かったが……悲しませているのか、それは残念だ。お前も、悲しいのか……?

――当たり前じゃない。もうあなたと会えないのは……悲しいわ。だからこうして話をしているの。
  私の話を聞いて、思い出すのよ。自分が何者であったのかを思い出すの。思い出せば思い出すほどに、近づいてくるはずだから。

(近づいてくる?)思い出す、か。…………。そうだ、俺には大切なものの他に、憧れがあった。
知識を得ることが好きだった。知識を使うための知恵を学ぶことが好きだった。
だが……もう今となっては知識も知恵も、何も覚えてはいない。俺が今まで知ったことや経験したことは、全て無駄になってしまったのだろうか。

――そうじゃないわ。あなたの頭脳が、私や他の艦娘を救ったのよ。こうして今話を出来ているのも、あなたのおかげ。

艦娘……救う……? そうか、雪風や響は無事なんだな……。知性……そう、知性に憧れたのは、兄さんが、繋兄さんがいたからだ。
そうだ、俺の目的は、小手先の知識なんかじゃない。もっと大きな知のために動いていたんだ。今ここで全て忘れてしまってもなお、俺は真理へと向かいたい。

そう……。この世界の全てを知り尽くすまで、まだ終われないんだった。まだ、やり残したことがあったんだ。
おかげで思い出した……礼を言うぞ、足柄。

――思い出すのが遅いのよ。『死ぬわけではない』なんて言ってたくせに一人で死にかけてて。もう少しで本気であなたと心中するところだったわ。

思い出せなかったのは謝るが、意地の悪い冗談はよしてくれ。アレはだなあ……言葉通り捉えるもんじゃないぞ。

――分かってるわ。にしても……ふふふっ。初めてあなたと会った時のことを思い出したら、今こんな風に話していることがおかしいわね。

そういえば俺が初めて会って話をした艦娘はお前だったな。他のやつとも書類でのやり取りをしていたことはあったが……ああも強烈だとお前が一番印象深い。
最初に会ったのが足柄で、最後に別れたのも足柄だった……こういうやつを因縁、というのだろうか。

――運命、とかもうちょっとマシな言い方は無いのかしら。さて、もうお別れの時間だわ。私がやれることはこれでお終い。あとはあなたの意志次第。

視界が開けてきた。自分の目の前に、赤い糸が伸びている。さしずめ俺は蜘蛛の糸を差し伸べられたカンダタというところなのだろうか。
糸の先を掴んで引いてみる。ミシンのボビンのようにぐるぐると糸が俺の身体に絡みついていく。
663 :【ED-4】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/23(土) 12:53:10.38 ID:xlyHE8aw0
足柄「おはよう。目は覚めたかしら?」

提督「ん……」

雪風「しれーっ!!」

ムギュと雪風が抱きついてくる。しかし様子がおかしい。明らかにでかいのだ、物理的に。
これは雪風が成長したとかそういうことではない……俺の身体が、縮んでいる!?

皐月「良かったぁ……本当に、良かった……」

皐月が涙を流しているのだが、この状況を理解することが出来ず、俺は疑問を口にせずにはいられなかった。

提督「お、おい……どういうことだこれは……説明してくれ」

提督(声が……高い! 気持ち悪いなぁ!? 子供になってしまっている!?)

響「まあまあ……こっちは随分待たされたんだ。少しぐらい再会の余韻に浸らせてくれてもいいだろう」

すりすりと頬をこすりつけてくる響。分かった……しばらくの間説明は諦めることにする。この状況を受け入れるしかないということだけは理解した。

・・・・

提督「!?!?!?!? 何を言っているんだ!? 頭がイカれているのか!? それとも俺がイカれているのか!?」

磯風「いや、彼女の話は事実だ。データに変換された君は、繋と同様に打ち捨てられた人工衛星を介してこの火星に辿り着いた。
そこまでは良かったのだが……。存在全てが電脳空間で生み出された繋と違って君は人間だ。記憶の情報や知識の情報は保存することが出来ても、肉体と魂がなかった」

繋「かつての君の肉体は……死んだ回数分魂を複製しているものと思ったが、どうにも違うらしい。数個の魂でローテーションし、死ぬたびに循環していたようだ。
というより、一つの魂を複数個に分割していたという方が近いかな。けれど、君の肉体が完全に消失してそれぞれの魂は本当に離散してしまった。
こうしてこのように君を再び蘇らせるためには、純粋な記憶だけじゃなく魂の記憶も必要だった」

繋「その、君の記憶をプライバシーの侵害にならない程度に読ませてもらったんだけれど。そう、地球上に存在する物質全てが地球の重力に導かれているのに近い。
そこの足柄さんが、最も君の魂を引き寄せやすい波長を持っていた。彼女は、行き場をなくして消滅しつつあった君の魂を自分のもとへ強引に手繰り寄せた」

足柄「そういうことよ。私に感謝なさい?」

提督「待て、精神や知識をデータに出力しただけでは足りなかったということは理解した。足柄が俺の魂を引き寄せたということも理解し難いが納得することにする。
だがこの俺の身体は一体どうしたんだ? 産んだって……どういうことだ?」

足柄「そのままの意味だけど? 写真が見たいのかしら。全部バッチリ撮ってあるわよ」

雪風「しれぇの赤ちゃんの頃、すっごく可愛かったんですよ〜。今も可愛いですけどね!」

磯風「少しも泣かないから呼吸させるのに大変だったんだぞ」

提督「冗談だろ……誰か嘘だと言ってくれ……。そんなことが出来るはずがない」

ヲ級「いいや、この足柄という艦娘にはそれが出来た。恐ろしいことに彼女は私が数千年の時間をかけて体得した力の片鱗を身につけてしまった。
魂の記憶をもとに君の肉体を胎内で再構築していったのだ。壮絶な意志の炎を燃やさなければ出来ないようなことだが……彼女はやりおおせた」

提督「いや、いや、いや、いや……分からない……。とにかくこうしてお前たちと再会を果たせたのは、喜ばしいことだ。心から嬉しいと思う。
それはそうなのではあるが……。う、嘘だろう……こいつが……母親? 足柄、が……? ダメだ……脳が理解を拒んでいる……」

足柄「受け止めるのは難しいでしょうから、無理に考えなくてもいいわよ。最後に必要だったのはあなたの生きたいという意志だった。
だから……またこうして会えて、良かったわ。また生きようと思ってくれて、良かったわ」

・・・・

皐月「しれーかーん! 遊ぼっ! ポーカーはどうかな」グイグイ

文月「ダメだよぉ、司令官はこれから文月とクリオネの鑑賞会が予定があるんだからー」グイーッ

提督「おい、俺の手で綱引きするのはやめろ……。(駆逐艦の連中といると身が持たんな……)」

金剛「HEY! 提督ゥー! ちょっとこれについて聞きたいことがあるんですケド〜」

提督「あぁ、例の件か。それはだな……ああっ、ちょっ……お前ら、腕が千切れる……!」

ヲ級曰く、この身体は数週間でもとの俺の体形に戻るらしい。それまではこの子供の姿で過ごさないとならないわけだが……。
この金剛のように、俺がかつて提督だった頃と同様の関係を続けている者が多いが、
見た目のせいでこのようにしばしば皐月らの遊び相手という名の玩具にされなければならなくなったのである。それもまた楽しいのではあるが。

皐月「例の件?」

提督「肉の味がする作物を作っているのだよ。まだ試作段階だが……結構イイところまで来ている。
今はまだ平和かもしれないが、俺たちがこうしてこの星で暮らしていけば、やがては地球に居た頃と同じ問題に直面することになる」

皐月「司令官はやっぱり司令官だなあ。そんな先まで見通しているなんて……。でも! それはそれ、これはこれ。今はボクたちを遊ぶのが先約だからね!」

金剛「モテモテですネー? テートクゥ? じゃ、またあとで呼びに来ますネ〜♪」

提督「お、おい……待て! 金剛……俺を見捨てるのか!? く、くそぅ……分かった二人とも。ポーカーもクリオネも承った! まず引っ張るのをやめろ」

皐月「ふふ、やったね。じゃあボクが先だ!」
664 :【ED-5】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/23(土) 13:14:41.33 ID:xlyHE8aw0
磯風「ご苦労だったな。なかなか君も大変だな……」

提督「ああ。ドックの建設は順調か? ヲ級や泊地水鬼みたいな生き残りは例外として、深海棲艦と戦う必要はないから工廠は必要ない。
だが……お前たち艦娘は定期的に艤装のメンテナンスを行ってやらなければならないからな。
それだけで半永久的に生き続けることが出来るというのは俺のような人間からすれば羨ましい話だが」

響「ドックの方なら順調さ。ところで司令官にはもう再生能力が無いんだったね。じゃあいつかは……」

提督「時が来れば……いずれはな。だから、この身体の寿命が来る前に、今度は本当に俺の全てを電脳空間上に出力する術を考えないとな。
お前たちだけ生きているのに、俺だけは先に死んでしまうなんて不平等だからな。まだ俺にはやりたいことがたくさんある」

響「“真理の箱庭”、か。この世の全てを再現して全知へと至ろうだなんて……全く大した御仁だよ。畏れ入る」

提督「そうだな。それもあるが……今は。お前たちの成長を見守っていたい。肉体的な成長じゃなく……お前たち艦娘の、魂の煌きに惹かれている」

響「そうかい。お、雪風……気が利くね」

雪風から手渡されたウォッカの瓶をラッパ飲みする響。提督にはオレンジジュースの入ったコップが渡される。

暁「あら、司令官はいつもコーヒーを飲んでいたと思ったけれど……」

提督「ああ。残念なことに、味覚まで子供のそれになってしまっているのだよ……トホホ」

雪風「でも、今の司令……なんだか弟みたいで面白いです」

提督「お、弟だと……。この状態でも辛うじてお前よりは背が高いのにも関わらず、弟と申すか……」

響「大差ないんじゃないか。艤装の差で雪風の方が少し高いぐらいだから、ほぼ同じだろう」

泊地水鬼「ショゲナイノ……提督……」 膝を折り畳んで提督の目線までしゃがむ

提督「気遣っているふりして遠回しにバカにするとは、やはり深海棲艦とは人類の敵だな。
そうやってわざと俺の目線に合わせて頭を撫でて……完全に子供のお守りではないか……!」

・・・・

天城「やっぱり人が集まったら鍋が一番ですね〜」

飛龍「空母戦もお鍋も先手必勝! このお肉は私がもらいます!」

蒼龍「ちょっと! 後輩がいる手前でがっつかないでよ、みっともないったらぁ」

雲龍「」ゴッ バキャアッ

葛城「ああっ!? どうしてそんなに卵を割るのが絶望的に下手なのよ! 私拭くもの取ってくるわ!」

瑞鶴「提督さん、お肉ほとんど食べないで野菜ばっかり食べてるけど、平気なんですか?」

提督「いや、俺はこれでいいのだ。……やはり概ね実験は成功といったところか。食べ比べてみて、食肉と遜色ないということが分かる……」

翔鶴「提督、お豆腐がいい塩梅ですよ。どうぞ」

熱々の豆腐を箸で掴んで提督の口にそのままねじ込む翔鶴。

提督「お゛ぉッ!? あ゛っ、あひゅ……。おま、お前……あ゛っつ……あひゃぎ、赤城……水をくれ……」

赤城「ああっ、いけないわ! 提督……お水です。しっかり」

翔鶴「あら、ごめんなさい。ちょっと熱すぎましたね」

加賀「翔鶴あなた……。戦闘のことは一通り教えたつもりだったけれど、その前にまず常識を教えておくべきだったわね……」

提督「翔鶴……お前の殺意、しかと受け止めた……大したやつだよ」

翔鶴「えっ、加賀さん? 提督? ……お豆腐が美味しそうだったから食べてもらいたくて、それだけなんですって! あっ、やめっ、熱ッ!!」

・・・・

朝霜「えーっ!? まーたバイオカツかよ! たまにゃあ普通の肉がいいんだけどなー」

清霜「味はおんなじなんだけどね。やっぱり私たちカツ評論家からするとバイオカツはまだまだって感じかな」

提督「あのなぁ……バイオカツとかいう呼び方はやめろ。食い気が失せるだろう。しかし、ここの連中は本当にカツが好きだな……」

霞「あら、あなたもこのヴェアヴォルフの一門なのだからカツの舌利きぐらい出来るようになってもらわないとダメよ」

提督「いつから一門に加えられたんだよ……」

足柄「私たちは常に勝ちに貪欲なのよ! いついかなる時でも戦いに勝つ! ってね」

大淀「でも、今日のカツはなんだか優しい味ですね。美味しいです」

足柄「ふふふ……いつもの二倍増しで愛情込めて作ったから当然よ」

提督(俺はまだこいつらの領域についていけそうにない……)
665 :【ED-6】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/23(土) 13:17:51.26 ID:xlyHE8aw0
かつての鎮守府を模した建物の屋上に提督は立っていた。一仕事終えた疲れを癒すため休憩していると、足柄がやってきた。空は夕焼けに包まれていた。

提督「本当に数週間したらもとに戻ったな。あのまま一生子供だったらどうしようかと肝を冷やしたが……」

足柄「それでも良かったんじゃないかしら。あれはあれで可愛げがあってよかったわよ」

提督「俺が良くないのだよ。……しかし、世話を焼かせたな。相当苦労したと聞いたよ。
本当に、こうしてお前たちと再会できたのは幸運に思っている。お前にも、感謝してもしきれないぐらい感謝している……」

提督「何か、そう、……礼を返したい。望みはあるか? なんでも叶えてやる」

足柄「いいのよ。私がそうしたかったから、あなたに会いたいと思ったからやったことだから、恩なんて感じなくていいわ」

提督「別に俺も恩情を感じて、それに報いるために礼を返したいと言っているわけではない。
そんな義務感じゃなく、……俺がしたいからさせてくれと言っているのだ」

足柄「そう。じゃあ……」

パンッ!

両手を叩くと、彼女の掌が光り輝く。光が収まると、彼女の手の中には銀の指輪が二つ。

足柄「これ、受け取ってもらえるかしら。……い、一応確認しておくけど。意味は分かるわよね?」

目を丸くしている提督。

提督「意味は分かる。分かるが……それより気になることがある。手品か、これは……? いや、違う……」

足柄「あのヲ級がやっていたような大掛かりなことは出来ないけれど……このぐらいなら容易いわ。
これも、あなたが居たから気づくことのできた、私の能力……」

足柄「もっとも、ヲ級のとも厳密には違うらしいけれど。あいつは燃料や鋼材といった資源を消費する必要がある。
けれど私にはその必要もない。よりエコというわけね。その分、強い感情を必要とするけれど」

足柄「こ、これで、分かるわよね……? あなたへ、これを渡したいと思ったから成功したのよ!?」

指輪を手に取り、自分の指ではなく足柄の薬指に嵌める提督。

足柄「えっ? あなたが嵌めるんじゃないの?」

提督「いや、何も間違っていないと思うのだが……お前の申し出を受け入れるという意味で、こうしたつもりなのだが」

微妙な沈黙が流れたあと、提督が顔を赤らめて言葉を発する。

提督「ン……いわゆるカッコカリなのか? そうか、だったら交換なんてしなくていいのか。俺が自分で嵌めて、お前も自分で嵌めればよかったのか」

足柄「んにゃ……!? あ、いや、そうじゃないです! そこまで本気なんですよね! ほ、ほら、えいっ」

気まずい空気を強引に押し込めるように提督の薬指に指輪を嵌める。

二人の左手の薬指に、おそろいの銀の指輪が淡く輝いている。

足柄「じゃ……じゃあ……。続き、よね……」

提督「儀礼的にはそうなるな」

足柄「ま、待ってね! ちょっと心の準備が……スー、ハー! スゥー……ハァー」

提督「俺も心の準備というか、確認したい。どうして俺なんだ? 俺で良かったのか……?」

足柄「え……指輪まで渡しておいて、今更そんなことを聞くの? あなた以外いるわけないじゃない」

足柄「私の力をこんなに引き出せるのも、私が……結ばれたいと思うのも……あなた以外、いるわけないじゃない。
そうでなかったら、こんなことしていないわ」

足柄「あなたのことを、心の底から愛しく思うわ。あなたのことが誰よりも素敵に見える。……惚れたのよ」

提督「そう、か。……いや。そうか」

頬を紅潮させ目を潤ませている足柄。不意に抱き締められて、唇を塞がれる。

提督「はっはっ……こういうのは普通、俺の側から言うべきだったな。言わせてすまない。少し不安だった……生まれて初めて、緊張をしていた」

提督「俺も……お前に惚れている。お前のことを、もっと知りたいと思う。こんな気持ちにさせてくれたのは……お前だけだ」

強く抱き締めあうことで、お互いの身体の震えが収まっていく。二つだった影は沈みゆく夕焼けの中で一つの大きな影へと姿を変わっていく。

提督「さて! お楽しみはこれからだ、な……俺にはまだまだやるべきことがある! こんなに嬉しいことはない。お前と共にいられるなら、なおさらだ」

足柄「お楽しみってつまり……このあとの夜のこと?」

提督「下世話なやつだな……断じてそういう意味ではないからな! 行くぞ足柄。ほら、下から雪風たちが見ているぞ。祝福されてるんだ、行ってやらないとな」

足柄「見られてたの!? 急に恥ずかしくなってきたわ。でも……こうなったら開き直って見せつけてやるしかないわね! これからよろしく! 旦那様」
666 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/01/23(土) 13:25:42.86 ID:xlyHE8aw0
これにて完結です。6レスになってしまいましたが。
まず、投下がグダグダになってしまって申し訳ありません。
今回に限らず投稿が延び延びになることが多々あり……大変申し訳なく思っております。
最後までお付き合いいただいてありがとうございました。
めっちゃくちゃエネルギーを消耗しますが、書いてて本当に楽しかったです。完結させることが出来てよかったです。



次の100レスは……リアルがリアルなのでやらないかもです。
また今回とはテイストの違うネタはあるにはあるのですが、ちとリアルの方が時間的に微妙……。
書けそうだと確信できる環境を得たらやるかもしれませんが、そうでない限りはこのまま2か月ルールでサヨウナラということで。

何はともあれ、ご愛読ありがとうございました。愛はないかもしれませんが、とにかく読んでくれてありがとうございました! 長かった……
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/23(土) 13:35:47.60 ID:eLbSRlCAO
乙 たしかに長かったな もっともここでの猛者は二年以上かかって完結した事もあったから長すぎるって事はないかと
母親から恋人というと真女神転生Uを思い出したわ
また別な話書くときあったら読ませてもらうわ
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/23(土) 17:59:45.91 ID:Alz3pzzZo
乙 足柄さん大勝利ィ!未来に向かってレディゴー!

実際のところ雪風が逆転した時点で勝負あったと思うたがまさかのコンマ
提督が真理の箱庭に到達するのか分からないが時間はあるからな

また機会があれば読みたいところ 体に気を付けてな
669 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2016/02/21(日) 19:35:37.17 ID:jEB85UdX0
お久しぶりです。
みなさま勝利チョコや最新鋭チョコ、世界水準を軽く超えたチョコ、ゴーヤチョコを日々もらっていることかと思います。
多くの人は冬イベも完走しちゃったんではないでしょうか。掘りの方は頑張ってください。
あとはAndroid版がリリースされるとかVita版が発売されたりとか……最近は話題に事欠かないですね。
自分はiPhone使いでVitaも持ってないのでわりと縁遠い話ではあるのですけれども。
とまあ挨拶はこのへんで本題へ。



どうにもまたやるらしいです。懲りずにまたやるみたいです。今回はまた違った趣向で行こうかなあと。
次の部はオムニバス形式でやってみようと思います。1章あたり16レス〜17レスの全6章構成になります。
なので、毎回違った艦娘やら提督やらが出てきます。前回みたく6人のヒロインの中から1人ではなく、6人それぞれとのEDがある感じですハイ。

で、前回は5レス区切りだったり、その前もたまに安価とか挟んでたりしましたが。
今回は最初にキャラを決めたら1章分そのまま始まりから終わりまで書いてしまいます。
かなり前は隔週ペースで投下とかしてたりしたんですが現状の>>1のリアルを鑑みるに無理そうなんで、だったら一月に一度ぐらいのペースでまるっと書いてしまおうかと。
ヒロインは最初に決まった時点で固定、そのため今回は好感度的な概念もありません。
またエクストラなんちゃらみたいな感じでレス数が伸びることもなく、十数レス単位で区切りながら淡々と進んでいきます。
安価が絡む要素は最初の決定段階のみ、シンプルでいいですね。ええ、シンプル。
これなら前みたくカオスなことにはならなさそうですね。イヤーソウダトイイナァ。



あの、5W1Hというのはご存知でしょうか。ご存知だと思うので説明は省きます。
"複数人がWho・What・When・Where・Why・How(必ずしもその全てではない)の部分だけを書き、
一斉に出して(あるいはそれをあらかじめ混ぜておいてランダムに引き)出来上がった文章のナンセンスさを楽しむ言葉遊び"があるんですよ。
そんな遊びはない? いやあるんですよ。Wikipediaにそう書いてあるんだからあるんです(えぇ……)。

冗談はさておき。最初の安価で舞台設定やテーマを決めてみようかなとか思いまして。
とは言っても、Why(なぜするか≒行動理由)・How(どのようにするか≒目的を果たすための手段)を安価で投げるのは難しいのでやりません。
ただ、What(何を)・When(いつ)・Where(どこで)の部分だったらわりと無茶振りが飛んできてもどうにかなるんじゃないかなと思い至りまして。

>>1は物語というものは以下の四つの軸で分類できると考えています。
・傾向
Whatにあたる部分です。その物語で行われる事象や描かれる描写の傾向。
例)アクション/バトル/恋愛/コメディ/ギャグ/ホラー/サスペンス/日常 など。
・舞台
Whereにあたる部分です。その物語が繰り広げられる場所や舞台、世界観。
例)都市/地方/異国/宇宙/SF/ファンタジー/異世界/学園/家庭 など。
・時代
Whenにあたる部分です。その物語における(読者である我々から見た時の)時代、世界観。
例)現代(近未来,遥かその先)/未来/過去(戦中,近代,中世,古代,原始) など。
・人物
Whoにあたる部分です。その物語に登場する人物や集団およびその関係。ラノベやギャルゲ的には俗に言うヒロインの属性とかもここに区分される。
例)少年少女/学生/青年/老人/貧民/王/マフィア/ヒーロー/スパイ/探偵/吸血鬼/ツンデレ/ヤンデレ など。
※ この四分類は私が適当に考えたものであって権威あるソースとか皆無です。あんま鵜呑みにはしないでください。

詳しくは次のレスで補足します。
670 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2016/02/21(日) 19:36:17.78 ID:jEB85UdX0
さっきの四分類……ですね。自分で書いてていまいち要領を得ない感じで恐縮なのですが(じゃあ何で書いた)。
えと、もちろんこれらはそれぞれを単純に切り分けられるようなものではありません。
たとえば『スペースオペラ』なら未来の宇宙が舞台となるでしょう(その世界が我々のいる世界の未来やこの地球のある宇宙であるかどうかはさておき)。
『学園ラブコメ』だったら学園を舞台にしたラブコメでしょう。時代も恐らく現代かそれに近い、“学校”という概念のある世界での物語になりそうです。
学園だったら登場人物も自然と学生、あるいは教師に絞られるでしょう。
世界観によっては突然テロリストが乗り込んできたりするかもしれませんが普通はなさそうです。
そんな感じです。とりあえずなんかお題をくれればそれに沿ってみるよという提案であります。

『学園もの』とレスがつけば学園生活になりますし、『SF』とレスがつけば前の部で書いた100レスみたいな感じになるかもしれません。
(多分あそこまで風呂敷は広げませんし、似たようなものは書かないと思いますが)
『異世界ファンタジー』とかレスがついたら……異世界……だと……? まあどんなジャンルでも多分なんとかします。
『漁業系ラブコメ』とか全く専門外のレスが来ても漁業について勉強して書ける範囲で書きますよ……たぶん。
ただ、注意して欲しいのはあくまでそれっぽい感じになるだけってことです。
『ハードボイルド』と書いて必ずしもハードボイルドな内容になるかと言われたらそうでもなく、そういう雰囲気になる、ぐらいの認識でお願いします。
過度に期待されても裏切ることになってしまうと思うので、予めそこは予防線貼っておきます。あくまでナンチャッテです。
また、よく分かんないorどうでもいいやって場合は省略も可です。



Who(誰が)の部分は何気にいつもやってもらってることだったりします。
毎回安価でヒロインの艦娘を決めて、コンマの値で提督のスペックが決まってますからね。
(例によってコンマで提督のスペックが決定するのは変わりませんが、シリアス度の判定は今回なしです)
今回はそれに加えてなんかこう一味違うデレデレなヒロインが見たいとかだったらそういうのも対応するですって感じですね。
決定方法は前回までと変わるのでそこだけが大きな違いとなります。
前回まではスレが始まる直前に対象ヒロイン6名を一気に決めていました。今回は1章1人という形式を取るため、一度に全てのヒロインを決めません。
各章が始まる前に安価を募集し、その募集レスから>>+1-5の間についたレスの中で、多く名前が挙がった艦娘がヒロインになるようにしようかなと。
名前の重複が無かったり、同率一位だった場合はついたレスの中で最もコンマの値が大きかったキャラで決定とします。
コンマも被ったら? ……その時はその時で考えます。



とはいえ、いきなりそんなことを言われても結局どうすればいいんだと思うことでしょう。
次のレスでサンプルを載せときますのでふわっと、なんとなく理解していただければ幸いです。
671 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2016/02/21(日) 19:37:40.31 ID:jEB85UdX0
----------------------------------------------------------------------
671 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2016/02/21(日) 23:00:00.00 ID:SureNusio
/* 初期設定安価 */
登場させたい艦娘の名前を一人分記入してください(必須)。
また、任意で作品の舞台設定や作品傾向を指定することができます。

>>+1〜5
※キャラ名未記入の無効レスや同一ID被りが起こった場合は>>+1シフト

↑『また、任意で作品の舞台設定や作品傾向を指定することができます。』について補足です。
基本なんでもありですが以下のような例があります。
一般的な例:
アクション(バトル系,異能力,戦隊・ヒーロー,変身ヒロイン,スパイ,ヤンキー,能力バトル,吸血鬼など)/
ファンタジー(ハイファンタジー≒異世界もの,ローファンタジー≒現実寄り,ゲームファンタジー,魔法など)/
SF(スペースオペラ,サイバーパンク,ディストピア,タイムリープ,パラレルワールド,ロボットなど)/
学園(恋愛,スポーツ,学級,生徒会,部活,教師,学生など)などなど……。

ラノベや娯楽小説にありそうな要素をまとめてみましたが、>>1はほとんどラノベというものを読んだことがない人なのでちゃんとしたものが書けるかどうかは怪しいです。
あくまで上記は一例なので好きに書いてもらって構いませんし、よく分かんなかったら省略してもいいです。
また、これは艦これの二次創作であるため、安価の内容には従いつつも極力艦これの世界観に合わせていくつもりです。
>>1の予測すらも凌駕するぶっ飛んだオーダーが来なければの話……まあそうなったらそうなったで面白いのでなんとかしますが)

672 : 以下、名無し(ry [sage]:2016/02/21(日) 23:10:00.12 ID:sn0wst0rm
多摩

[When]未来
[Where]都市
[What]サイバーパンク


こんな感じでやる想定ですが、必ずしも[When]とかやる必要はないです(先述の通り切り離しが難しいジャンルもありますし)。
分かりやすいようにこうしているだけで、フォーマットとかはありません。自由な発想にお任せします。

673 : 以下(ry [sage]:2016/02/21(日) 23:20:00.50 ID:3werewolf
榛名

674 : (ry [sage]:2016/02/21(日) 23:30:00.84 ID:xPHOENIXx
阿賀野

[What]能力バトル


上のレスみたく全部指定する必要はなく、舞台だけとか時代だけとか作品の傾向だけとか、そういう感じでもオッケーです。

675 : (ry [sage]:2016/02/21(日) 23:40:00.11 ID:burnLove1
山雲

676 : (ry [sage]:2016/02/21(日) 23:50:00.63 ID:May/46497
Z3

[Where]南国(リゾート地)

----------------------------------------------------------------------
たとえば上記の例だと
コンマの値が最も高かった阿賀野がメインヒロインになります。
で、未来都市の南国のリゾート地でサイバーパンク的能力バトルのお話になるわけです。

???

まあ、ものの例えなんで……だいたいこういう感じになるよというイメージです。
なんとなく伝わってもらえれば幸いですし、例によってキャラ名だけ書いてもOKです。
気負わずゆる〜い感じで適当に書いてしまえばいいと思います。

※ 上記のキャラ・お題の例は>>1が自作したおみくじ的アイテムによって決定したものなんで、
こういう流れになることを期待して書いたものではありませんと注釈しておきます。
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名前: E-mail(省略可)

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