【安価とコンマで】艦これ100レス劇場【艦これ劇場】

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/07(日) 18:58:09.57 ID:Y/WErN7YO
足柄と食事したときに調味料入れでチェスしながら会話
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/07(日) 19:53:53.44 ID:Fq64ZIZAO
こう
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/07(日) 20:00:45.37 ID:IIGhN9lI0
さて
509 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/06/07(日) 22:54:30.03 ID:tngg5+Sn0
>>504-508より
・金剛3レス/皐月1レス/響1レス
で『Phase B』が進行していきます。
(合計値:270 なので『Phase C』は発生しません)

『足柄と食事したときに調味料入れでチェスしながら会話』……はい。
これ……足柄メインの時でもいいですかね(次フェーズとか)。
流れ的に出番なさそうだし無理矢理出すよりメインで書いた方がいいよねー、と。



来週末ぐらいには投下したいですね。そんな感じで行こうと思います。
510 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/06/15(月) 02:37:46.72 ID:OKQC9Mr60
むーーー。先週末にと言ってましたがやっぱりダメでした。ゴメンナサイ。
遅くとも水曜日までにはなんとか……! 早ければ今日明日でどうにかお披露目したいですハイ。



せっかく(?)セルフ締め切りを遂行出来なかったので、また関係あるようでないようなどうでもいい話でもしましょうか。
メインで書きたかったキャラの話とかちょっと語っちゃいますか。なるべく本編関係なさそうな方面でね。いくつか書いてみますよ。
誰得かは知らねえっすけど。

・神通
わりと書きたかったキャラその1。ゲームでは夜戦で戦艦殺すウーマンとして皆さんも重宝してるんじゃないでしょうか。
儚くも力強いキャラクターが魅力ですよね。二次創作ではわりと鬼教官として描かれることが多いですが、それを逆手に取って書いてみたかったなーと。
個人的に神通はあまり後輩に無茶な指導をするタイプじゃないと思ってまして。あくまで個人的にですけど。
ホラ、時代が時代ですし。死ぬほど努力! 育まれる友情! 死線を超え勝利! とかそういう潮流はあんまないじゃないですか。
僕はそういうのも嫌いではないですけど、自分が書くとしたら神通がそういうこと言ったりさせたりするイメージは無いですね。
後輩相手には厳しいけど理不尽ではない感じの、わりとロジカルでクールな神通さんが書きたかったですね。
一方で提督相手には自分の悩みを打ち明けたり……とかそういう感じですね。なにせ体が火照っちゃいますからね!(?)
中間管理職としてもエースとしても活躍する神通さんとか、そんな感じのアレを書く予定でした。まあ安価で出なかったんで特に今後も登場しないと思いますが。

・山雲
わりと書きたかったキャラその2。結構新キャラなんで、「誰?」って人も居るかもしれませんが。デリケートでセンシティブな爆雷の子です。
こういうフワフワした雰囲気のキャラいいですよね〜。ちょっとどのキャラとも系統が違うというか、なかなか味のあるキャラですよね。
自分が書いてその魅力を引き出せるかっつったら微妙ですけど。浮き沈みのなさそうな彼女の内面を探っていったりするのも面白いかなと。
起伏のないように見える中から僅かな情動を探っていくみたいなそんなニュアンスのワビサビあるアレとかがやってみたかったっすね。
朝雲との絡みもいいですよね。彼女らどんな話してんだろとか想像するもをかし。基本的には彼女とのふんわりした日常を書けたらなぁとか思ってました。
ま、あんまメジャーなキャラじゃないので選ばれるとはハナから思ってなかったっすけど……。

・熊野
わりとの子その3。いいですよねこういう腐れ縁タイプの子。
「一捻りで黙らせてやりますわ!」とか川内のことをどこかのバカよばわりしてたりとか、育ちのわりに結構荒っぽい性格してますよね。
でもあばたもえくぼというか、そういう尖った部分があるキャラの方が書きやすいんですよね、書く側としては。
歯に衣着せぬ物言いとか舐め腐った態度とかがすごく相棒ポジションで映えるんだよなー。
この子はわりとシリアスな話でも活躍しそうかな、とか思ったり。あんまりそういうイメージないかもしんないっすけれども。
なんだろう、このキャラは追い詰められた時に精神的な高貴さを見せつけてくれるんじゃないかなあとか勝手に思っています。
普段は減らず口ばかりだけど、やる時はやる……みたいな方向性ですかね。お嬢様キャラとはあんま合致してないっすね。
まぁでも……気取ってるわりには結構俗っぽいじゃないですか(何

他にもありますが眠気が来たので今回はここまで。っていうか、眠い状態で文章書くとあんま良くないっすね。



////チラシ////
最近(と言っても少し前)漫画版アルペジオを読みました。
「アルペジオ? 艦これとコラボしてたっていうやつだよね」ぐらいの認識しかなかったので、わりとゆる〜い感じなのかなとか思ってましたが(なんだその偏見は)わりとガチですね。面白いですね。
と同時に艦これアニメイションもこういうディレクショナリティをチョイスしていたらもっとエキサイティングなエクスペリエンスをプロバイド出来たのではなかろうかとはほんのちょっぴり思いました。
ま、それはそれこれはこれであんまり関係ない話なのでやめときましょう。
511 :【56/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/06/17(水) 23:47:42.05 ID:GhW31TLF0
旧佐世保鎮守府正門前、現在は宇宙開発研究所予定地という立て札が立っている。
急ピッチで建設が進んでいるようで、作業員が忙しなく出入りしている。
榛名と霧島は金剛に呼ばれてここで待ち合わせをしていた。

榛名「お姉様はどうして私と霧島を呼んだのでしょうか。手伝って欲しいことがある……だそうですが」

金剛「フフフ……よくぞ訊いてくれまシタ……! 実はワタシ、政治家になろうと思ってマース! 二人にはそのための手伝いをして欲しいノデス!!」

真顔になる榛名と霧島。金剛の自信に満ちた表情に対し、どう声をかけていいのか分からず顔を見合わせる。


金剛「ア、アレ……? なんですカその冷たい反応は……。い、一応Policyとかも考えてありマスヨ!」

霧島「お姉様、シビリアンコントロールってご存知ですか?」

榛名「文民統制といって、簡単に言うと軍人や言に所属していた経歴のある人は政治家にはなれないんですよ。私たち元艦娘にもそれは適用されます」

金剛「マジ……?」

霧島「マジですよ。というか、その為に私たちを……?」

・・・・

金剛「い、妹たちが頑張ってるから……ワタシも何かしようと思ったのに……みっともないデース……」

霧島「いや……別に金剛お姉様のみっともない所なんて昔からよく見慣れてますし、今更どうとも思いませんよ」

金剛「ウワアアァァァァァン!! クソメガネ眼鏡割れろデース! だから二人とは同じ艦隊になりたくなかったんデス!」

榛名「(お姉様かわいい……)ま、まぁ、聞くは一時の恥 聞かぬは一生の恥って言いますし……」 金剛の様子を見て笑いを堪えている

金剛「ワタシ別に聞いてなかったヨネ!? 微妙に雑なフォローするぐらいなら黙ってて欲しいデース! っていうか、クスクス笑ってんのバレバレですヨッ!」

金剛「ウゥ……こういうのは私のキャラじゃないデース……」

霧島「ところで、どうしてお姉様は政治家になろうと?」

金剛「抉ってきますネ……。ワタシが鎮守府を出た後、volunteerをしていたのデスガ、会う人会う人皆がワタシたち艦娘は希望だって言ってくれたカラ……。
艦娘のワタシが政治家になったらもっと皆の為になれるかなって……。皆をワタシの力でHAPPYにしたいデース」

霧島「希望、ですか。そういう方向性ならアイドルなんてどうでしょうか。難しいとは思いますがお姉様なら無理ではないかなと……」

金剛「もう既に偉大な先駆者が居ますネ……。今度舞道館でライブやるらしいデスヨ……流石のワタシでもあのバイタリティには敵いそうに無いデス……」

鎮守府解体の報が伝えられるやいなや真っ先にアイドルの世界に身を投じ、実力だけで頂点にまで上り詰めたシンデレラガールの名を知らぬ者などこの世にいるはずもなかった。

榛名「そもそも『皆を幸せにする』って、皆って具体的に誰ですか。人によって幸せなんてそれぞれ違いますよ。手を差し伸べても感謝されるどころか憎まれたりすることだって少なくはありませんし……」

金剛「まさか妹にガチ説教を食らうとは思ってなかったデース……」

榛名「ごめんなさい。でも、私も昔それで悩んでいたので……。お姉様はまず誰かを幸せにしようと考えるよりも自分が幸せになった方が良いのだと思いますよ?」

霧島(昔からお節介焼きで厚かましいと思っていたけれど……榛名も榛名なりに考えていたのね)

金剛「ワタシにとっての幸せ……Hmm。ヤッパリ、テートクに会いたいですネ……」

霧島「手取司令と? 第一艦隊の旗艦から降ろされて、てっきり恨んでるとでも思ってましたが……それは意外ですね」

金剛「だまらっしゃい! ワタシとテートクの間には山よりも高く海よりも深い絆があるのデース!」

榛名(と思ってるのはお姉様の方だけなんじゃないでしょうか……とか言ったらまたうるさいのでやめておきましょう)

霧島「おぉー、もしかして司令のことをお慕いしてるとか?」

金剛「そっ、そんなんじゃありまセンッ! ワタシは、提督に対してはそういうのじゃなくてもっと……」

金剛「やっと、少しだけ近づけた気がするから……。もっと知りたいんデス……テートクのこと。このまま離れ離れじゃ、惜しい気がするんです……」

霧島(この姉、見かけによらず純情! そして初心! だがそれがいい……!)ガタッ

榛名(こんな乙女チックなこと言う程度には本気みたいですね)ガタッ

身を乗り出す榛名と霧島。先ほどの白けた対応は正反対に、若干興奮した様子だ。

榛名「決まりですね! 手取提督の足取りをつかみましょう!」

霧島「他の艦娘から情報を聞き出して手かがりとなる情報を集めた方が良さそうですね。司令が退職後の自分の居場所を漏らすとも思えませんが、一から探すよりは効率がいいでしょう」メガネクイッ

金剛「ちょ、ちょっと! 何勝手に話を進めてるんデスカ!? そ、それに、仮に会うとして、いきなり前の仕事の部下に会いに来られても迷惑なだけでしょう……」

榛名「理由なんて後から作ればいいじゃないですか。お姉様そういうの得意そうですし。会いたいから会いに行く! それだけですよ!」

金剛「……イ、イミワカンナイデース!! 強引に押し切ろうとするのやめてくだサーイ!!」

二人に引きずられながら鎮守府跡地を後にする金剛。
512 :【57/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/06/18(木) 00:02:45.41 ID:yXhYsAag0
霧島「MI作戦であの第二大隊の旗艦に選ばれた赤城さんなら、何か知っているかもしれません。早速会って話してみましょう」

金剛「エー……アカギとはあんまり仲良くなかったから会いたくないんですケド……」

赤城は艦娘を辞めた後に弓道場を開設し、ほぼ無償で近隣住民や志願者に弓術を教えている。
現代武道の弓道とは教え方に少し差があるが、艤装の力が無くとも彼女の卓抜した技術は人の域を超えていた。
そのため今では弓道の達人が彼女に教えを乞いに来るほど赤城弓道場の名は知れ渡っていた。
和室に案内される金剛たち。この施設の客間らしい。

赤城「珍しいですね。私に用があるみたいですけど……どうかしましたか?」

金剛「Uh……赤城に用はないんですガ……。テートクの行方を知りませんカ?」

赤城「残念ですが、私にも分かりませんね……。本人に聞いたのですけど、答えてくれませんでした」

金剛「そうですカ……。赤城にも言ってないってコトは、きっと他の誰にも居場所を伝えてなさそうデスネ……」

赤城「どうして提督を探しているんですか? 提督を探しているということは、何か目的があるのでしょう。違いますか?」

金剛「(この感触、何か知っている……? 少し揺さぶってみますか)目的があったとして、それをここで教える必要はありまセン」

赤城「それもそうですね。そういえば……それとは別に私も貴方に伺いたいことがあったんですよ。MI作戦の時、貴方はどうして戦線に加わったのですか?
第一艦隊から外されて、私の知る限りではどこのユニットにも属していなかったはず。作戦の名簿にも名前が書かれていませんでしたし、提督から遠回しに戦力外通告を受けたのだと解釈していましたが……」

金剛「そういうイジワルな言い方をされると答える気をなくしマスネ〜」

部屋にあった空の湯飲み茶碗を勝手に取り出し、持参した水筒で紅茶を注ぐ金剛。

榛名(い、居心地悪いですね……こんな仲悪かったんですねこの二人)

赤城「答える必要がない、答えたくない。理由としては結構ですが、自分がそういう態度で接しているのに私から情報を聞き出そう、というのでは不公平だと思いませんか?」

金剛「……という言い方をするってことは、そっちもまだ何か隠してるってことですよネ? ……まだるっこしい話はやめにしまショウ。
お互いにお互いの情報を欲している。なら、手持ちのCardをOpenするだけで済む話でショ?」

金剛は、自分が提督を探している理由は、純粋に彼に会いたいからだということを話した。
MI作戦時に自分は新たな深海棲艦の出現を食い止めるための任務を遂行していたのだと掻い摘んで説明した(南極に行ったことや精神世界で怪物と対峙したことまでは話さなかったが)。

赤城は素直に驚いていた。自分に力があるのを良いことに艦隊の和を乱し身勝手な振る舞いをしていた彼女に、そんな大役が与えられていたとは思いもよらなかったからだ。
(ついでに榛名や霧島もMI作戦序盤で金剛が何をしていたのか知らなかったため驚いていた)

赤城(任を果たすだけの力があるとあの提督に認められ、そして実際に期待に応えてみせた……ということですか。どうにも私は彼女を過小評価していたようですね)

金剛「サ。次はそっちの番ですヨ?」

赤城「分かりました。話しましょう……と言っても、手取提督の居場所を知らないのは事実です。
彼が辞意を示した時に、私が鎮守府を離れる時に、彼が提督としてあの鎮守府に居た最後の日に。三度尋ねましたが、三回とも断られてしまいました」

霧島(三顧の礼ならずですか。司令はそこまで厳しい人ではないという印象でしたが……確かにプライベートな話はしたがりませんでしたね)

赤城「ならば、彼の道について行こう……とも思ったのですが。それも断られてしまいました。手厳しいですね。
ですが、彼への手がかりを何も得られなかったわけではありません。彼の連絡先を教えてもらいました」

金剛「Oh! それ、ワタシに教えてくれませんカ? もちろんタダでとは言いませんヨ? ア、お金で解決するとかそういう意味じゃないですケド」

赤城「ごめんなさい。それは出来ません。提督の信頼に背くことになりますから」

金剛「デスヨネー」

赤城「ですが。私が『会う必要がある』と判断した時に、応じてくれるそうです」

金剛「I see. ナルホドナルホド……。じゃ、赤城に提督と会う必要があると思わせればいい、ってことですネ」

赤城「貴方にそれが出来ればの話ですが、ね」

金剛「オッケー。それだけ聞ければ十分デス。この金剛、舐めてもらっては困りマスヨ?」

・・・・

金剛さんたちは『私が提督と連絡を取り、直接会う必要がある』と思わせるような情報を探しにどこかへ行ったようです。
彼女が提督から密命を受けていたことも驚きですが……もう一つ驚いたのは、彼女の表情ですね。

提督に会いたいと語る彼女の姿からは、一切の私欲も打算も感じられなかった。
私の知る彼女は、こんな風に目をキラキラと輝かせて話をしたりはしない人物だった。
野心でも、恋慕でもなく、ただ純粋に会いたいのだという思いが伝わってきた。
彼が提督についての話をしていた時の、幼子のような天真爛漫な表情が印象深く残っている。
あの姿こそが彼女本来の気質なのか、提督に影響されて発露した彼女の一面なのかは分からない。

ただ……彼女は自分よりも提督と長い時間を過ごしてきたのだということだけは、悟ってしまった。

今、私の胸に渦巻いているこの感情が……嫉妬、なのでしょうか。彼女は……私が知らないあの人の表情を知っている……。

いえ、よしましょう。これ以上考えるのは。また、拒まれた時の事を思い出してしまう……。
何事もない日常の感覚に身を慣らしましょう。安らぎに満ちた平和の味を噛み締めましょう。あの人は……私にとっての、在りし日の幻想なのだから。
513 :【58/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/06/18(木) 00:07:47.52 ID:yXhYsAag0
旧佐世保鎮守府や赤城の弓道場からそう遠くない場所にある喫茶店『モンテーニュ』。
テーブルを囲んでいる金剛・榛名・霧島の三人。ここで今後の作戦を練るようだ。

榛名「お姉様、赤城さんとのやり取りすごかったですね……俄然やる気じゃないですか」

金剛「べ、別にそういうワケでは……でも、ここまで来たらテートクの顔を見ずには下がれませんからネ! ワタシも腹を括りました。
要は赤城や提督をギャフンと言わせるScoopをバシッと突きつけてやれば良いってことでショ!」

霧島「その意気ですお姉様! でも、どうして赤城さんは自分が提督と連絡を取れることを話したんでしょうね」

榛名「どこかお姉様を試しているような雰囲気がありましたよね」

金剛(まるで“何か”を期待しているかのようだったんですよネ……彼女も提督に会いたいと思ってはいるはず。
提督を引っ張り出せるほどの“何か”……)

霧島「うーん……スクープ、ですか……。と言っても、ここ最近はニュースも平和そのものですからねぇ。
違法漁や略奪などの海賊行為もだいぶ減ったみたいですよ。それまで深海棲艦と戦っていたような艦娘が海上パトロールしているみたいですし、当然といえば当然ですが」

金剛(ですよねぇー……今のところは“何か”が起こりそうな気配がないんですよネー)

・・・・

金剛「甘すぎデース……榛名パス」

金剛の目の前の皿には、大盛りスパゲッティが鎮座している。
スパゲッティといってもただのスパゲッティではなく、麺の上には生クリームやフルーツがトッピングされていて、雰囲気はパフェに近い。
が、目の前にある“それ”はパフェのような生易しい代物ではない。麺はイチゴシロップ(のようなもの)で着色されているらしく、ショッキングすぎるピンク色をしている。
ギトギトに油ぎった熱々の麺、麺の熱で溶ける生クリームと生温いフルーツ、苺(のような何か)の甘ったるい香り……。
甘党を自負していた金剛もこれには難渋しているようである。

榛名「ひゃるな……らいひょうぶじゃないれす……」

こめかみを押さえる榛名。目の前の山盛りのカキ氷を減らそうと努力していたものの、ついにスプーンを机の上に置く。いわゆる匙を投げたという状態に限りなく近いようだ。
とても数分前に『カキ氷! いいですね〜……子供の頃を思い出します』などと可愛らしいことを言っていた女性と同一人物とは思えない。
頭を抑え天を仰ぎ見る彼女の苦悩に満ちた表情は、シスターが神に祈りを捧げる姿のそれにどことなく似ている。

霧島「自分で頼んだんだから、なんとかしましょうよお姉様方……」

金剛「霧島! 榛名のばっかり食べてないで、ワタシの方も食べるデース!」

霧島「いやそっちはちょっと……」

二人とは対照的に、ストイックに自分の料理を食べ進めている霧島。
激辛ソースで塗りたくられたピラフを一口二口食べては榛名のカキ氷に手を伸ばしている。
日頃から辛い物を好んで食べていたのかギブアップする様子はなさそうだが、彼女の身体は明確に危険信号を発しているようで滝のように汗を流ている。

金剛「どうして霧島は自分しか食べられないようなものを選んじゃうんデスカ!? そもそもそんな辛いのに味がするんですカ?」

霧島「ええ。味というには微妙ですが……ナノデスソースのアイアンボトムサドンデス味に似てますね」

榛名「なんですかそれ……」

霧島「でも、量が多いのさえなんとかなればどうにかなりそうじゃありませんか? あの、その、なんていうか、身内にもっと独創的な味の料理を振舞う方が……」

金剛「確かに……ヒエーのよりはマシですネ……。そう思えばわりといける気がしてきまシタ」

・・・・

呉鎮守府第三艦隊会合室。作戦指示書を旗艦である比叡に届けに来たようだ。

響「これが次の作戦の指示書だ。……欠伸の出るほど簡単な内容だが、一応機密だ。他言はしないように」

比叡「はい! ありがとうゴザイマス!」

響「しかし……意外だな。君が姉と離れてまで艦娘であり続けることを選ぶとは思わなかったよ。君はどうしてここに居ることを選んだ?」

目を細めた渋い顔をして、うーんと唸る比叡。

響「いや……難しいなら無理に答えなくても構わないが」

比叡「んー……理由と言えるかは微妙ですがねー。今のお姉様は何か違うというか、うーん。今まで私が見てきたお姉様と違うんですよねえ。丸くなった、んでしょうけど……。
それが気に食わないんですよね! なんでかは分かりませんがッ!」

響「むっ、意外だなそれは……興味が湧いた。話が聴きたい」

比叡「いや、お姉様のことは今でも尊敬していますし、嫌いになったわけではありませんが。お姉様に聴かれた時も、やんわりと伝えてはぐらかしましたけど……ちょっと納得いってないですね。
なんですか艦娘をやめてボランティアを始めますって……。榛名や霧島みたく明確にやりたい職業があったならともかく……」

比叡「大体、あれだけ練度が高いのに艦娘をやめるだなんて勿体なさすぎますですよ! 一体何のためにあれだけ強くなったっていうんですか。
そりゃ自分がオイシイ思いをするためだとか、偉くなって人に認められたいからだとか、動機は邪だったかもしれませんけど! それを全部捨てて、今度は慈善家にでもなるのかって感じですよ!」

不満というのはひとたび口にすると堰を切ったように零れてくるものである。比叡の愚痴にも似た不満を、響は少し愉快な様子で聞いていた。
実のところ響と比叡はそこまで親しい間柄ではない。佐世保に居た頃は所属していた艦隊が異なり、性格的にも似通った部分はない。
しかし『同じ佐世保に居た艦娘』という経歴が親近感を生んだのか、このとき二人は妙に意気投合していた。
514 :【59/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/06/18(木) 00:25:20.23 ID:yXhYsAag0
呉鎮守府大会議室。鎮守府を総括する井州提督、重鎮である大和・武蔵、最古参の吹雪・陸奥など錚々たる顔ぶれが揃っている。
この会議に響もまた出席していた。旧佐世保鎮守府からの移入組も代表としてである。

井州「少し堅苦しい形式になってしまったが……あまり気張らなくていいよ。どうにもお堅いのは似合わないしなぁ。
っと……ひとまず、皆にはお礼を言わなきゃだね。未だに私についてきてくれてありがとう」

呉・横須賀鎮守府は、軍縮の影響によって元来在籍していた艦娘のほとんどを辞めさせなくてはならなかったという事情があった。
佐世保をはじめとする他鎮守府の艦娘を受け入れなければならなかったためである。
呉・横須賀に在籍していた艦娘は、鎮守府に残留するために厳しい試験を突破する必要があったのだった。

大和「私たちにとっては、ここが生まれ故郷みたいなものですから」

武蔵「フッ……地獄の果てまでお供させてもらうさ」

井州「うーむ。にしても大本営もヒドイ事をするよなぁ。わざと外部からの艦娘を受け入れさせ、元からいた艦娘は離れさせるなんてね。あっいや、君らに対して不満があるわけではないのだが」

響の方に笑みを向ける井州提督。手取提督と比べると態度や喋り方にまるで威厳がないと響は思った。

響「いいえ、結構。そう思うのも無理はないだろう。新参者よりも馴染み深い面々の方を遇したいのは当然だ」

井州「君らもうちの鎮守府に加わった以上は家族のようなものだし、もちろん君たち流入組のことも考えているが……どうにも軍縮の制約が厳しくってね。
まるで大本営は鎮守府が存続することを望んでいないかのような動きを見せているんだよね。艦娘が艦娘であり続けることを許さない、なんてところかな。完全にこっちの被害妄想だけど」

陸奥「深海棲艦との戦いに区切りが着いた以上、そういう動きになるのは分かるけれど……どうにも急すぎるのよね。提督率いる艦娘勢力がクーデターを起こす、なんて恐れているのかしら」

井州「であれば、手取提督が退役させられたのも納得行くんだけど……。やっぱり分からないなぁ、真意がどうなのか。かつて佐世保は紛争地帯だったからねぇ……」

響「紛争地帯、とはどういうことかな。手取提督からそういう話は聞かされていなかったから、純粋に興味がある。聞かせてくれないか」

井州「あぁ。ま、ちょっとしたいざこざがあってね……。あの提督が来る前に事故や事件があったのは君も知っているだろう? あれは我々のような各鎮守府と大本営の争いがあったからなんだよ。
……私はあまりそういう手荒なのは好きではないが、他の鎮守府の提督もそうであるとは限らないからね。大本営の刺客とこっち側の人間とで、いざこざがあったわけさ。水面下でだけどね」

井州「その点あの提督はよくやっていたよ。どの立場にも属していないような立ち振る舞いだった。恐らくは大本営側の人間なんだろうが、にしてはやたらこっちに対しても協力的だったからね。
そして真意の分からないまま退場していった……。全く食えない御仁だよ、どうやっても勝てる気がしない」

井州「後から振り返ってみればMI作戦時の彼の行動なんかは間違いなく大本営の意図から外れた行動なんだよねぇ。あちらさんからすれば呉や横須賀といった抵抗勢力の戦力は削いでおきたいだろうから。
彼は深海棲艦にこちらの作戦が看破されていることに気づき、やたら作戦の変更を進言してきた。あの時私は彼を信じられなかったからそのまま作戦通りの動きをしてしまったが……。
ともかく、彼が完全にあちら側の人間だったなら、そんな忠告はせず見殺しにしていたと思うんだよね」

武蔵「呉の我々を囮にして敵を叩いた方がスムーズにやれただろうにな」

井州「これでも私は彼には感謝しているんだ。彼の戦略が結果的に私たちの艦娘の命を守ることにも繋がったわけだからね。感謝しないわけがない」

井州「私も、横須賀の提督も、権威欲でこの仕事を続けているわけじゃない。自分の艦娘を守りたいんだ。横須賀の彼のやり方は手荒すぎるゆえに大本営との対立を生んでしまったが。
私と思想の根本は同じだ。だからこそ私は彼の側についている。もちろん、彼の『自分の艦娘を守るためなら人を殺しても構わない』とでも言わんばかりの非人道的なやり口は賛同しないがね」

井州「提督とはつくづく業の深い職業だな。国を守るため、国民を守るため……そのために指揮をしていたはずなのに、いつからか目的が変わってしまうんだ。
私は君たちを失うことが何よりも哀しい。国よりも、平和よりも……今は君たち艦娘を守るためにこの命を捧げたいと思っているぐらいにね」

井州「だから今の大本営のやり方とは相容れないんだ。もちろん、離れいこうという意志を持って離れていく艦娘については仕方ないと思う。むしろ本人の望むべき道に進むのだから喜ぶべきだ。
だが、まだ軍に残ることを望んでいる艦娘たちから強引に居場所を奪おうとする……これを私は見過ごせない」

井州「っと、いけないいけない。こういう真面目な話はあまり私らしくないね。とにかく、まあ佐世保とその周りではそういうことがあったんだよ。本題に戻るね。軍縮への対応だ」

吹雪「ええ。大本営からの通達では、今年中に艦隊の規模を現在の半分にまで縮小するように……とのことです。とはいえ……」

陸奥「不可能ね。今この鎮守府には、外から来たにせよ元から居たにせよ、私を含めてテコでも動かないようなのしか揃っていないもの。ここを離れるなんて絶対に嫌がるわ」

響「…………だったら。簡単じゃないか。本当にクーデターを起こしてやればいい」

立ち上がり、言い放つ響。ざわつく。場の空気が変わる。なおも毅然とした態度を崩さないままの響。

吹雪「ちょっ、ちょっと! そんなことしたら……」

響「そんなことしたら何だい? そこの提督も、君達も、この鎮守府を離れたくないのだろう? そして今、大本営によって引き裂かれようとしている」

吹雪「そんな!? 大本営を敵に回すってことは、この国を敵に回すってことですよ!? 私たち艦娘が生きていくための資材だって……」

響「だったらこの国丸ごと乗っ取ってやればいい。簡単な話だろう?」

井州「響君、さすがにそれは……」

響「なに、ほんの冗談だよ。ただ、私の提督だったならやりかねないし、やるとなったら成就させるだろうと思っただけだ」

言い捨てて、退室する響。なおも室内のざわめきは止まない。

大和「不遜な物言いですね」

井州「そう言うな。彼女は彼女なりに思うところがあるのだろう。……とはいえそんな君達を危険に晒すような選択はしないさ。安心してくれ」

井州(この状況をどうにかしなければ私たちに未来がないのは事実なんだけどね……参ったなこれは)
515 :【60/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/06/18(木) 00:25:55.70 ID:yXhYsAag0
皐月「残念ながら桜の季節は逃してしまったけど……これからボクの学園生活が始まるわけだ! 楽しみだねぇ」

社会的には元艦娘という分類に含まれているが、皐月も文月もまだ艤装が解体されていない以上、実際には艦娘としての力が残っている。
艤装を直接装備しているわけではないので深海棲艦と対峙した時のような人間離れした力は発揮出来ないが、それでも成人並みの体力や知能が皐月たちには備わっていた。
つまり、見た目がどうであろうともう既に大人なのである(社会的にも、元艦娘はいかなる見た目をしていようと成人とみなす風潮が強かった)。
その為提督は「決して艦娘であることを悟られないこと」というのを条件に二人を学園に忍び込ませたのであった。

・・・・

いかに環境が変わったといえど、数日経てば十分慣れてしまう程度には二人の適応力は高かった。
昼休みになり、クラスメイトと『賭けポーカー』に興じる皐月。余計なことを口走らないか監視する文月。

『賭けポーカー』。この学校では皐月たちが来る前から流行っていた遊びで、要はただのポーカーに賭博要素が絡ませただけのものである。
といっても、学生の間で金銭を賭けるとなれば各々の家庭の財力によって負担度が変わってきてしまう。
そのため賭けるのは専ら“情報”である。この学校では、自分の好きな子に関する情報を聞き出すのも、テストの過去問に関する情報を聞き出すのも、全てこのポーカーによって行われる。
重要な情報はポーカーを介して聞き出せ……それがこの学校の不文律だそうだ。

皐月は、転校してきてから無敗の勝負師として早くも学校中に知れ渡っていた(設定上、皐月と文月はこの学校に転校してきたということになっている)。
訓練生時代がほとんどだったとはいえ、ある程度の死線は当然のごとく超えてきている。人生経験の乏しい高校生からすれば、皐月の勝負強さが鬼神のように感ぜられても不思議ではない。

文月「もっと真っ当に青春というものを謳歌しようよ……」

皐月「ふっふーん、ゲームもまた青春さ」

???「ちょっと良いかしら。次は私にやらせてもらえる?」 赤毛の少女が皐月の前に現れる

皐月「よそのクラスの子だね、君の名前は? そしてボクの何の情報を賭ける? それと、負けたら何を差し出す?」

陽炎「私の名前は陽炎。そっちが勝ったら私の過去に関する質問に3つだけ答えてあげる。負けたらその逆。これでどう?」ドドドドドド・・・

文月(陽炎……ひょっとして、艦娘じゃない? 司令官に艦娘であることをバレちゃダメって言われてるし、この勝負は受けない方が良いと思うんだけど……)ヒソヒソ

陽炎や皐月といった名前は、別段珍しいものではない。ありふれた女性の名前として認知されている。
また、かつて実在した駆逐艦にちなんだ名前と言っても、歴史の授業ではわざわざ駆逐艦の名前など知りはしない。クラスの中に一人か二人いる“歴史オタク”でも長門の名を知っているぐらいである。
それゆえ皐月や文月も駆逐艦として自分に与えられた名前をそのまま引き継いだが、相手が艦娘というのであれば話は別だ。
文月が陽炎の名を聞いて艦娘かと疑ったように、相手もまた自分たちのことを艦娘だと疑ってくる可能性は高い。

皐月(いいや。もし相手が艦娘なら……逆に情報を引き出してやればいい。負けなければボクたちは得をする!)

文月(『負けなければボクたちは得をする!』って、当たり前じゃ……)

皐月「乗った! 相手になるよ」

陽炎「そうこなくっちゃね。それじゃ、始めましょ」

・・・・

コインの枚数は皐月が39枚、陽炎が21枚。やや皐月が優勢なようだ。

皐月「勝負を挑んできたわりには、退け腰じゃない? 二度もドロップして、三度目もコールして結局ドロップ。さて今回はどのタイミングでドロップする?」

これまでの三回ともブラフ(ハッタリ)を通してきた皐月。しかし、皐月には皐月なりの考えがあった。

皐月(普段のボクなら相手が途中でドロップするのを期待してブラフ……なんてのはあまりやらない。
あくまで手札が強い時にだけ勝負に出て、やり口が読まれそうになった時だけブラフで掻き乱す。ま、定石だよね。
とはいえ……相手がボクの情報を事前に集めていたとしたら話は別だ。戦いの傾向を分析しているかもしれないからね……。そしてこの『かもしれない』は的中していたみたいだ)

キーンコーンカーンコーン

陽炎「……ビッド21枚、全てを賭けるわ。さ、勝負といこうじゃない!」

皐月(『鐘ルール』か……! 最初からこれを狙っていたのか)

『鐘ルール』。この学校では、授業の開始と終わりにチャイムが鳴るのではなく、授業の終わりと次の授業の開始五分前に鳴るのであった。
『賭けポーカー』ではこの授業開始五分前の鐘が鳴ったら、ポーカーを早く終わらせて次の授業の準備をすべく、
チップの枚数制限なくビットすることが出来るようになるというローカルルールが普及していた。
子供の遊びだから許されていた青天井なしのチップ乗せも、艦娘二人がやるとなったらそれはもう静かな戦争であり、教室には覇気と覇気がぶつかり合っている。

陽炎「さ、どうする? ちなみに私はここであなたがドロップしても、次もその次も私は21枚のチップを賭けるわ」

『鐘ルール』には他にも、チャイムが鳴ってからはドロップは三度までしか使えないというものがある。
そのため皐月も陽炎も、“絶対に勝てる手札”を待っていられるほど悠長な戦い方は出来なくなった。

皐月「……ドロップだね。さすがにそこまで強気で来られちゃあ敵わない」

陽炎の手札はキングとクイーンのフルハウス。一方皐月の方はツーペア。安堵する皐月。

皐月(さてドロップできるのはあと二回……願わくば強い手札を引き当てたいが……!)

皐月「……ノーペアか、これじゃ勝負にならなそうだ。ドロップ」

攻める陽炎に対し、二度目のドロップ。陽炎の方はまた上等な役が揃っていたようだ。
冷や汗をかく皐月に対し、余裕たっぷりの陽炎。
しかし焦りを表情には出すことはなく、神妙な面持ちで配られたカードを覗く皐月。数秒カードを眺めてから……深呼吸してから、陽炎を見据えた。
516 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/06/18(木) 00:43:32.41 ID:yXhYsAag0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~60/100)
・金剛の経験値+6(現在値21)
・響の経験値+2(現在値13)
・皐月の経験値+2(現在値10)

・雪風の現在経験値:9
・翔鶴の現在経験値:14
・足柄の現在経験値:22
----------------------------------------------------------------------

ちょっと推敲荒いかもですが一応水曜日に投下ということで滑り込みセ……アウトだろこれ。

そういえば今月はランカー入りを目指しております(現在EO全消化で404位)。
目指しているからといってなれるかどうかは別として目指してみてます。
5-4周回も積もり積もると資材とバケツが結構飛びますねー。
その分レベルはガンガン上がるのでレベリング海域としてはアリなのかもしれない。
そろそろ重婚も視野に入れる時期が来たようだな……。

----------------------------------------------------------------------
『Phase A』【-65/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5


よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらい眺めてなんとなくわかった気になってください。
(または>>495->>496あたりを見てわかった気になってください)
----------------------------------------------------------------------
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/18(木) 00:54:50.12 ID:IaOI4HM/O
乙 >>506
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/18(木) 00:56:56.79 ID:U69R89SAO
雪風
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/18(木) 00:58:12.65 ID:NvN55iNAO
皐月
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/18(木) 01:03:13.00 ID:XWoCcfS5o
足柄
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/18(木) 18:08:26.38 ID:a7Rzkdn/o
最近出番のない翔鶴
522 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/06/19(金) 12:30:26.73 ID:GyEcbuAjO
>>517-521より
・足柄2レス( 1レス)/雪風1レス/皐月1レス/翔鶴1レス
で『Phase A』が進行していきます。
(合計値:194 なので『Phase C』は発生しません。>>520よりエクストライベントが発生します)

そんなわけで次回は実質6レスですじゃ。
わりと混沌とした流れが続いてますがはてさて……。
それはそれとして次回の投下は来週の土曜あるいは日曜になるであろうと予告しておきます。
523 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/06/29(月) 00:05:17.55 ID:RTzo1CFF0
スミマセン! 土日で書き進めて投稿と思っていたのですが友人と豪遊していたら案の定……って感じであります。
うー……申し訳ありませんが今日〜明日には投下いたしますハイ。

今回は既に眠気と疲労ゲージがマックスなので余計な話は省略です(またの機会にってことで)。
友人やら何やらの来客があるのはありがたいっすけど趣味の時間は減りますねー。それでもうまく時間を創出していかなきゃならないのが人生。
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/29(月) 00:08:53.57 ID:J/G5YhHko
乙 豪遊と聞くとカイジ連想してしまって困る 使い過ぎには注意な
525 :【61-100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/06/30(火) 23:33:51.36 ID:jDYfS4tR0
皐月「受けて立つ……コールだ、ドロップじゃないよ!」

堂々とした態度で見得を切ると、勢いよく立ち上がる。コインが机から落ちる。落ちたコインを拾い集めようとした皐月、手に持っていたカードを床に落としてしまう。
床には3と書かれたカードが4枚、フォアカードだったらしい。

皐月「おっと……カードを床に落としちゃったな。……これじゃ仕切り直しだね」

この学校のローカルルールに、意図的でないミスでカードが相手に露呈してしまった場合、その回は無効となりカードを配り直すというものがある。
皐月はコインを拾うように見せかけてさり気なくカードを晒し、ドロップを使わずに決着を延ばしてみせたのだった。

・・・・

カードが配られると、手札を見てすぐさま皐月はドロップを宣言した。観戦していたクラスメイトたちが動揺する。

皐月「参ったな、君は最初の宣言通りまた21枚ベッドするんだろう? もうボクはドロップできないね……お手上げだ」

教室内は陽炎への歓声で沸いていた。
勝負が始まるとやたら強気な態度で無意味にブラフを連発、かと思えば今はドロップに徹し逃げの姿勢を見せる皐月。
普段の洗練されたプレイスタイルとは異なる様子で、どうにも見当違いなことをしているように聴衆には映ったようだ。
一方陽炎は序盤こそ引け腰であったものの、鐘ルールを利用して一発逆転を狙い攻勢に出ている。
『ポーカーはギャンブルじゃなくて、心理戦だよ。だから場を制する者が勝負を制するんだ。イカサマがない限りはね』
陽炎と戦う前に皐月が語っていた言葉も、今となっては完全に皮肉なものとなってしまった。

……かのように外野からは見えていた。だが、戦っている二人の心境は異なっていた。
皐月は苦戦しているフリをしながらも闘志に燃えていたし、陽炎は平静を装いながらも焦っていた。陽炎の唇が動いた瞬間に、動揺を見抜いたかのようにかぶせて言い放つ皐月。

皐月「……別にボクがビッドしてもいいんだよね? どうせもうドロップできないしね。ビッド21枚」

唇の動きから、陽炎はパスと言おうとしたのだろう。二人ともビッドせずパスすればただ手札を配り直すだけ。だが皐月はそれを許さなかった。

陽炎「ドロップするわ。どうも手札が悪いみたい」

皐月のビッドに乗らずドロップする陽炎。まだ2回ドロップ出来るのだ、一度ぐらい使ったところでどうということはない。カードが配り直される。

・・・・

皐月「おっと、またドロップか。ま、まだそっちはドロップ出来るからね。それも良いと思うよ? 次でボクに勝てる役が引けるなら……ね」 不敵に笑う

陽炎(まだ一回ドロップ出来るけど……カードは悪くない。勝負に出るのも……)

さっき皐月が床にフォアカードを落としたことを思い出す陽炎。あの行為の意味は? あれほど強い役であればコールするのが普通よね。
もし元艦娘なら“うっかり”カードを床に落とすなんてことをするとは考えられない。あの役を不意にしてまで、回を引き伸ばした意味は……?
いや、悩めば悩むほど相手の思う壺ね。勝負に出るには決め手に欠けるけど……ここでドロップして次に良いカードが引けるという保障はない。
ドロップという選択を失った上で悪いカードを引いてしまえば十中八九詰み。勝負に出るならやはりここ!

陽炎「(次に託して良いカードが来る確証はない。行くわよ!)いいわ。コールよ……勝負よ!」

・・・・

互いにドローを終え、カードを晒す。

皐月 ♠8 ♥8 ♠8 ♠10 ♦10 / 陽炎 ♥4 ♦5 ♦6 ♥7 ♣8

陽炎「フラッシュと……」

皐月「フルハウス! ボクの勝ちだね。ま、イカサマ師相手に負けるようなボクじゃないってことさ。ボトム・ディールだろ? 下手くそすぎてバレバレだったよ」

皐月「鐘が鳴ってから最初のドロップは、正直ビビって日和見しただけだった。でも、よくよく考えれば大したことはない。
最初から鐘ルールで短期決戦に持ち込もうと考えていたなら、全て辻褄の合うことだよ」

ボトム・ディール。カードを上から配るように見せかけて、陽炎の方には山札の下に仕込んでいたカードを配っていたようだ。

皐月「でも、仕込んだカードは4回分まで。万が一ボクが3回ドロップした時の備えまでは出来ていたようだけど、一回ボクがカードを落としちゃったからね。
そのイレギュラーまでは考慮できていなかったってワケだ。あ、ちなみに落とした時の役がフォアカードだったのは単に運が良かっただけだよ。
でも、土壇場になってあの時ボクが落とした役のことを考えたでしょ? そのせいで“今の”ボクの手札を読もうという注意力が少し削がれていたようだね。
底に仕込んだカードが出払った今なら、フルハウスでも相手を倒しうる決定打になる。そこに自分から突っ込んでいったのは君だ。ドロップを使い切るのが恐い気持ちは分かるけど」

文月「ふぅ〜、ほっとしたよぉ〜……負けるかと思ってた」

皐月「何でだよ! ま、それはそれとして……洗いざらい吐いてもらおうか」

陽炎「おっと……いけないいけない。もう授業が始まっちゃうわ! 次の授業移動教室なのよね〜…‥それじゃ!」 脱兎の如く走り去る陽炎

文月「逃げられたね……」 

皐月「……ま、放課後にでも向こうから来るだろうさ。さ、ボクらも授業の準備しなきゃね。文月、教科書とノートと筆記用具貸して」

文月「なんで何も持ってきてないの……」

皐月「いやー、前の移動教室で鞄ごと忘れて来ちゃって。ま、後で陽炎にでも持ってきてもらうとしよう」

文月(早速パシリ扱いしてるし……)
526 :【62/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/01(水) 00:17:45.98 ID:+umRnLwh0
ちゃぶ台の上には赤城の作った夕飯の皿が並べられている。鯖の味噌煮、味噌汁、切り干し大根、ひじきの煮物、豆腐、白米……。
全体的に量が少なく、艦隊所属の頃の彼女の食事量からは想像もつかないほど質素な内容だった。

赤城「出来合いの粗飯ですけど二人で食べましょう。事前に来ることを知らされていればもう少し豪華にしたんですけど……」

翔鶴「えっ、先輩、これしか食べないんですか? 本当にこれで大丈夫ですか?」 病人を気遣うかのように大袈裟に心配する翔鶴

赤城「大丈夫ですかって……私だって年がら年中貪食しているわけではありませんよ。出撃の前後に食べ溜めしていただけであってですね……」

翔鶴「ええっ……そうなんですか。失礼しました」

赤城「佐世保鎮守府が解体されてからは呉に行ったんですよね。呉での生活はどうですか?」

翔鶴「ええ、結構快適ですよ。ただ、主要部隊から外されてしまって暇ではありますね……」

赤城「……どうして私の元を尋ねてきたりなんかしたのかしら。何か相談かしら?」

翔鶴「ええ、情けない話ですがなんだか最近身が入らなくって……。
加賀先輩や赤城先輩を目標にして今まで頑張ってきましたが、先輩たちが居なくなってから急に何を目指して良いのか分からなくなってしまったというか……先輩はそういう時期がありましたか?
妹の瑞鶴は自分の技術を後輩たちに指導して立派にやっているのに、私はどうにも集中出来なくて……」 ぽつりぽつりと悩みを零す翔鶴

赤城「実は、昔の私がそうだったんですよ。ちょうどあの提督が来る前ぐらいかしら。今の貴方よりも酷かったかもしれないわね。
深海棲艦との戦いは苛烈さを増してきているというのに……いつか自分は沈むんだろうなという漠然とした感覚に支配されていたわ」

翔鶴「でも、先輩はきちんと二航戦の人たちに指導できていたじゃないですか。とてもそんな風には見えませんでした」

赤城「彼女たちは初めから優秀でしたからね、私が教えていなくても伸びていたと思うわ」

翔鶴「そうですか。……では、どうやって赤城先輩は克服したんですか? MI作戦でも見事な活躍ぶりだったじゃないですか」

赤城「あの提督の存在が大きいかもしれませんね。彼と会って、私の中で何かが変わったような気がします」

翔鶴「先輩は手取提督のことが好きなんですか? お付き合いされているとか?」

赤城「んッ……ゴホッゴホッ、ッ……。失礼、むせました。あなた、突拍子もないこと言い出しますね……」 ほんのりと紅潮する

翔鶴「優しくて強い先輩とクールな提督ならお似合いかなあって思いまして。ほら、艦娘と提督との恋愛はわりとあることじゃないですか」

赤城「ちょ、ちょっと。からかわないでください。私と提督はそんなんじゃありませんよ。もう!」

翔鶴「でも、提督のことを本当に大事に思っているんですね。なんだか先輩の意外な一面を見たような気がします」

赤城「……仮にそうだったとしても、彼は私のことを数あるうちの一人としか認識していませんからね」

翔鶴(あっ、なんか触れちゃいけない感じだったかもしれません)

赤城「これじゃどっちが相談してるんだか分かりませんね……加賀さんならもっと的確にアドバイス出来るんでしょうけど。あまり力になれなくてごめんなさいね」

翔鶴「そういえば加賀さんは……? 一緒に暮らしていると聞いていましたが」

赤城「確かにそうだけど、ここにはほとんど寝るためにしか寄らないわね。今は大手の広告代理店に勤めていて相当激務みたい。
マーケティング部門の部門長を任されているみたいで、忙しくも充実した日々を送っているみたいね」

・・・・

翔鶴「昨日はありがとうございました、泊めてまでいただいて……。先輩も私と同じで悩みを抱えているってことが分かって、少し気が楽になりました。
これからも頑張ろうと思います」

赤城「こういう時は『頑張ろうと思います』じゃなくて、『頑張ります』って言うものよ」

翔鶴「そうですね……頑張ります!」

翔鶴「先輩も頑張ってくださいね! 私、応援してますから」 赤城の手を取り目を輝かせる翔鶴

赤城「ふふっ、ありがとう。貴女に会って私も少し元気がもらえました」

・・・・

呉鎮守府。

瑞鶴「翔鶴ねえおかえりー。先輩たちには会えた?」

翔鶴「ええ。加賀先輩は忙しいみたいで会えなかったけれど、赤城先輩と会って話してきましたよ」

瑞鶴「おぉ、ほぼアポなしだったのによく会えたね。私も先輩のとこ行きたかったなぁ。どんな話したの?」

翔鶴「そうねぇ……。あんまり大した話はしていないわね。少し相談に乗ってもらってたのよ。最近ぼんやりしがちだって」

瑞鶴「えぇ!? 全然そんなことないわよ! 私より戦果出せてるし、MIの頃から更に成長してるって感じで羨ましいわ。私なんか下の面倒見てばっかりだもん」

翔鶴「そう言ってくれると嬉しいわね、ありがとう」

翔鶴(結局皆それぞれ悩みを抱えてるものなのかもしれないわね)
527 :【63/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/01(水) 00:44:53.59 ID:+umRnLwh0
宇宙開発研究所敷地内。工事作業はだいぶ進んだようで、全体の八割程度の工程まで完了したところらしい。
すでにいくつかの部屋は研究員が出入りし始めている。
かつては鎮守府の執務室であった部屋で話をしている提督と雪風、磯風。提督はかつてここで指揮を執っていた頃とは異なり、仮面をつけず素顔を晒している。

雪風「しれぇ! これ、開発部門の報告書です! こっちは第二技術部門からの研究レポートです」

提督「…………」 カタカタとノートパソコンのキーボードを叩いている

磯風「おいおい、意地が悪いな。せっかく可愛らしい秘書が資料を持ってきてくれたというのに無視はあんまりだろう」

提督「俺は司令じゃないからな。ともかく、この研究所が完成するまでにその呼び方は改めてくれ」

雪風「はいっ! しれ……じゃなくて、所長。うー……あんまりしっくりきませんね」

提督「そう言われても困る、慣れてくれ。それはそうと、何やらきな臭い流れになってきたな磯風。俺を監視しているよりも大本営の方に戻ってやった方が良いんじゃないのか」

磯風「うむ、厄介なことになっているようだな。が、ある程度予測されていた出来事だ……私が動くほどのことではない」

提督「大本営の上層部や自陣営寄りの政治家が失脚することさえも織り込み済み、というわけか? 想定の範囲内にしては随分と大事になっているようだが」

磯風「これからもっと良くないことが起こる予定ということだな……新時代への禊ということになるかな」

提督「驚きなのは横須賀連中の執念よな。メディアから何から何まで全部根回ししてどうにかこうにか自分たちの交渉を通そうとしている。
そこまでして艦娘を護持して何になるというのだ。二千年紀の歴史に倣って武力でこの世の王にでもなるつもりか?」

提督の見ているノートパソコンの画面上にダイアログボックスが現れる。

『分かっていませんね哀君、それでも僕の弟ですか。君は人の心というものに疎すぎますよ。彼らは野心から反旗を翻そうとしているのではないのですよ。
ただ一緒に居たいのです。君も艦娘たちと過ごして、離れたくないとは思わなかったのですか? でも、君のことだから微塵も別れの辛さを感じなかったのでしょうね。
君と共に過ごしてきた艦娘たちや他の鎮守府の提督の感情も理解出来ないことでしょう。全く君というのは歳を取れば取るほどに人間性を捨てていってしまって……。
私の話をもっときちんと聞いてくれていた頃は可愛げもあったというのに、あろうことか最近は必要な情報を聞き出すためだけに呼び出す始末じゃありませんか。まったく……』

ガタガタと何行にも連なるテキストの羅列が提督の眼前に現れる。自分の目を疑うように何度かまばたきを繰り返した後、眉間を押さえる提督。

提督「……嘘だろ? どういうことだ雪風……なぜ兄さんのアクセス制限が解除されている。これから研究所の全てを兄さんに監視されることになるのか、最悪だ……」

『人聞きが悪いですね。解除したのは雪風ちゃんではありませんよ。そこの磯風さん? という方です。なんでも私たちの知り合いだそうじゃないですか。
私にも哀君にも面識が無いというのは奇妙ですが……。とにかく、彼女のおかげで私も自由に動き回れるようになりました。
安心してください、監視なんて真似はしませんよ。面白そうな情報を検知したら動くだけであって、そうでない時は昼寝でもしていますから』

提督「信じられるかよ……ハァー、これからめんどくさくなるな……」

磯風「フフッ、君もそういう表情をするんだな、面白い。『神眼』『救国の英雄』と名高い手取提督も人の子というわけだな……」

提督「何勝手に関心している? というか、一体お前何者だ? 何を知っている、何が目的だ……?」

雪風「し、しれえ! 磯風さんは別に司令にとって都合の悪くなるようなことはしない……と思います! お兄さんの件も、私が磯風さんに頼んだんです!」

提督が磯風に対して問い詰めようとすると、割って入る雪風。

提督「雪風……お前はなぜいつも俺の傍に居ながら俺でない方の側に着くのだ……」

『まあまあ哀君、少し落ち着きましょう。むしろ僕がこうして自由に動けるようになったのは喜ばしいことではありませんか。
君や雪風ちゃんでは僕の機能の制限を解除することが出来なかったのですから。これでもっと君の役に立てますよ、いやー外の世界は良いですね。驚きに満ち溢れています』

ダイアログがポンポンと画面に表示される。

磯風「ま、あまりそう怖い顔をしないでくれ。仲良くやっていこうじゃないか」

提督「ハァ……どうやらここに俺の味方はいないらしいな。しかし……磯風。俺の兄さんを知っているとはどういうことなんだ。やはりそれは知っておかなければならない」

磯風「私が人工知能『繋』の生みの親だからな。君の兄らしいから、手取 繋(てとり つなぐ)……ということになるかな。つまり君も私の息子だ」

提督「!? 待て、その理屈はおかしい。兄さんに産みの親が居るというのは納得できる。それが艦娘によって作られたものなのだろうとも推測していた。
だが、仮に兄さんがお前の創造物だったとして、なんで俺がお前の子供でならなきゃならんのだ」

雪風「おぉー、司令のお母さんだったんですね! それはすごい!」

磯風「フッフッフ、すごかろう」

提督「ダメだ、この部屋に居続けると頭がおかしくなりそうだ……。俺はしばらく離席する」 ノートパソコンを畳み雪風から貰った資料を持って退室

雪風「しれ……じゃなくて、所長、出て行っちゃいましたね。そういえば、所長はどうして宇宙に行こうと思ったんでしょうか。子供の頃の夢とかなんですかね?」

磯風「ああ。繋に訊いてみたんだが、哀に口止めされてるから言えないそうだ。強引に情報を覗き見ることも出来なくはないが、それも無粋だろう?」

磯風「それにしても、創った直後の彼は人口知能というよりはただの自己成長機能があるだけのデータベース管理システムに近いものだったのだが……。
哀の影響もあったのかもしれんが、時間の経過によって人間のような感情さえも獲得してしまうとは驚いた。私の最高傑作かもしれないな……今更ながら愛着が湧いてきたよ」

雪風「あんな風にめんどくさそうな態度を取っていても所長はお兄さんのことすごく尊敬してますし、お兄さんも所長のことすごく気にかけてますよね。
あの二人ってなんだか不思議な関係ですね……」

磯風「うむ、共に成長してきたのだろうな。傍から見ても奇妙な絆のようなものが見て取れるよ、なんだか微笑ましいな」
528 :【64/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/01(水) 01:17:57.79 ID:+umRnLwh0
大淀法律事務所。東京の一等地に立てられたこの事務所は、社会的ステータスの高い人間が訪れることが多い。
実績はまだ少ないものの、請け負った案件一つ一つの規模が大きいことから、新設の法律事務所にしてはかなり評判が高かった。

足柄「またデカい案件が来たわよ! 今回のはなかなか金になるんじゃないかしら」 バァンと乱暴にドアを開ける

大淀「良いですね〜。テンション上がってきました」 目が¥マークになっている

清霜(弁護士というより、営業職だよねこれ……)

長門「失礼する。元艦娘の君たちが相手ならば話が早いからな。一つ頼まれてくれ」

長門「現職の総理大臣である江良井首相は知っているな。彼の孫が逮捕された。軍部への贈賄容疑でな」

大淀「ほぇ……。最近ニュースでやってた一件ですね。大本営のトップ数名に贈賄したとか」

長門「江良井首相は元艦娘の社会進出政策を推し進めていたな。艦娘の受け入れに反対する組織を力技でねじ伏せるぐらいには急速に。
そして収賄したのはこれまた軍縮を進めていた大本営のトップ。彼らは確かに金を必要としていた。艤装の解体には費用がかかるからな。
首相の孫が何を目的に贈賄したのかは不明だが、ひょっとすると艦娘を政府の私兵にしようと企んでいるのでは? ……だとか報道されていたようだな」

長門「総理の孫とはいえ23の選挙権もないガキが賄賂なんて送ってどうするんだ、という話だよ。常識的に考えておかしいだろう。バカか」

清霜「言うなァ〜。やっぱ戦艦は言うことが違うね」

長門「ハッ!? あぁ、いや失敬。わりと自由に動ける立場になったもんで、ついつい素がな……。ともかく、これは仕組まれた出来事だ。
潔白を証明してはもらえないだろうか。私が調べて回るわけにもいかんし、大本営も今はだいぶ疑心暗鬼になっていて、人を割くのが難しい」

足柄「でも、そんなことして誰が得するのかしらね。現政権の反対勢力? 軍上層部へのクーデター?
白を黒と言い張るような真似をするなんてよっぽど勝算がないとやれることじゃないわよ」

長門「それなんだがな。一つだけ心当たりがある。軍縮を進める政府や大本営を排除したくてしたくてたまらない立場の人間が居るんだよ」

大淀「横須賀と呉の鎮守府……ですか?」

長門「その通り。今回の一件は九割九分横須賀が関わっていると睨んでいる。場所が近くにあるわりに大本営と横須賀鎮守府の関係は最悪だからな。
自分がかつて所属していたところを疑いたくはないが……呉の鎮守府も一枚噛んでいるか、あるいはこれから関わっていく可能性はあるだろう。
メディアや自分の味方になりそうな勢力を丸ごと抱え込んでいる周到なやり口だしな。存外敵は多い」

長門「これだけ大事になったからには、潔癖を証明するだけでなく矛先を逸らす何かが無ければ解決出来ないだろう。
横須賀サイドの陰謀であることを暴けなければ完全な勝ちとは言えんだろうな……」

足柄「艦娘と離れたくないという理由だけでそれだけのことをやるなんてちょっとおかしい気がするけどね」 独り言のように呟く

長門「ちょっとどころじゃなくおかしいんだよ。呉はともかく、横須賀の提督はそれぐらいのことをやる。
艦娘と何十年もの時を過ごしてきた最古参の提督だ。彼は神に身を捧げる聖職者のように艦娘を想い、艦娘たちもまた彼に心酔している。
……呉でもあまりそれは変わらないのかもしれないな。お前たち横須賀の鎮守府が変わり者だっただけで、どこの鎮守府もそんなものさ」

長門「提督にとっては艦娘の存在が生きる理由になり、艦娘にとっても提督に尽くすことだけが生き甲斐となる……時間の魔力で、そうなってしまうものなんだよ。
長く過ごせば、情が移る。やがて終わりを迎えるべき時が来てなお、自らの意志で離れることが出来なくなるほどにな」

・・・・

足柄「引き受けたのはいいけど、どうすればいいんだか皆目検討つかないわねー」

清霜「自分から連れてきておいて……。でも、まずは贈賄が事実無根であることを示すアリバイを探した方が良さそうだね〜」

大淀「そうですね。まずは情報収集といきましょう。足柄さんと清霜さんは横須賀鎮守府にそれとなく探りを入れてみてください。私は大本営に出向きますから」

足柄「え〜〜〜〜〜」 口をへの字に曲げる足柄

大淀「なんでそんな露骨に嫌そうな反応なんですか」

足柄「内緒」

清霜「そう言われるとますます行きたくなってきたなー」

足柄「まずはアリバイって話だったでしょうよ。横須賀を探るのは今じゃなくても良くない?」

大淀「うーん、そこまで嫌なら仕方ありませんね。では、佐世保へ行ってもらいましょう」

足柄「?? どうしてそこで佐世保が出てくるの?」

大淀「手取提督なら何か知ってるかと思いまして。彼のもとには不思議と情報が集まってくるじゃないですか。知っていなくても、知恵を貸してくれるんじゃないですか?」

足柄「確かにあの提督が今も佐世保に居る気がするとは前に言ったし、居るとしたらどこなのかもおおよその検討はつくけど……。
あの人は自分に利がないと絶対に動かないわよ。多分私の名前を聞いただけで門前払いすると思うわ」

大淀「そこを何とか出来てしまうのが足柄さんのスゴいところなんですよねぇ。というわけで、よろしくお願いします!」 ビシッ

清霜「よし! そうと決まったら出発進行だね!」

足柄「えぇ……(ま、横鎮に行くよかマシね……)」
529 :【65/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/01(水) 01:42:36.73 ID:+umRnLwh0
足柄「さて来たわよ佐世保。とはいえどうっすかしらねー」 スーツケースを引く足柄にバックパックを背負う清霜

清霜「ねえ! 足柄! お昼はここにしない!? なんか美味しそうだよ!」

足柄「そうねぇ……喫茶『モンテーニュ』? いいわよ、入りましょ」 チリンチリン

扶桑「あら。MIの時の……お久しぶりですね。呉の扶桑です」

清霜「おぉー! 元戦艦の扶桑さんですね! 清霜です! サイン下さい!」

足柄「そういえばアンタそうだったわね……。私や大淀と一緒に退役しちゃって良かったわけ?」

清霜「うーん、それはそれ! これはこれ! 今も隙あらば戦艦になりたいと思ってるわ!」

足柄(隙あらばって……)

・・・・

大皿の上に乗ったイカスミピラフを食べ進める二人。

足柄「なかなかイケるじゃない。美味しいわね」

清霜「これ、扶桑さんが作ったんですか?」

扶桑「いいえ、私はこういう独創的な料理は作れないわ。メニューは全部妹の山城が作ってるのよ。私は店の掃除とか会計をやっているの」

提督「ずいぶんと変わった店だな……」 チリンチリン

扶桑「いらっしゃいませ、お二人様ですね。奥の席にどうぞ」

足柄「アッ! アンタはッ!」

加古「うげげ……! 最近アタシらついてなさすぎでしょ……」

??「おっと……佐世保んトコの子たちかな? それもわりと訳知りって感じだな……こりゃ仕方ない、話でもしようか」

加古「ええーッ!? なんでわざわざメンドクサイことするかな……」

??「まあまあ。お互い艤装つけてるわけじゃないんだからこの場で殺し合いってことにゃあならないでしょうよ。今更コソコソしてもねぇ」 扇子を取り出してパタパタと仰ぐ男

足柄「あなたが不破提督ね。旧鹿屋基地の提督……だったかしら?」 清霜を隣に座らせ、目の前の椅子を空ける

不破「その通り。うちの加古が世話になったようだね。鹿屋基地総括であり、海軍大将でもある不破さんですよ。どっちも頭に元が付くけどね。
今は落ち延びて加古と好き勝手やっているよ」

足柄「とりあえず、あなたたちがそうなった経緯が知りたいわね。特に麻薬の一件からMI作戦の間何があったのかが気になるわ。
こっちの鎮守府ではあの一件で数名が処分されたけれど、そっちはお咎めなしってのは妙じゃない?」

不破「何があったと訊かれたら何も無かったという回答になるけれど……手取提督に黙っててもらったんだよ。
MI作戦で呉の井州提督率いる第一大隊から勝手に抜け出して第二大隊の援護をする代わりにね」

不破「まー……その、鹿屋基地は勢力的に大本営寄りの鎮守府だからね。村八分されていたわけなのさ。ほら、大本営ってなんか知らないけど色んな提督に嫌われてるじゃないかい?
だからよその鎮守府から資材を分けてもらったりってのが難しかったんだよね。麻薬の件も、それをやらなければ艦隊を保てなかった程度には追い詰められていたってのがあるわけさ」

不破「自分のやったことを肯定するわけじゃないが、とにかくあの時は燃料や弾薬を補填するためになんとしても金が必要だった。
手取元帥にバレた時はさすがに腹を括ったが……罪を知ったうえであえて責任の追及をせず、燃料や弾薬の一部を補助してくれるって申し出てくれた。
私にとっては地獄で仏に会ったようなものだったからね、喜んで飛びついたさ。もちろん、それから先は実質彼の配下部隊としてあれこれ動いてたってところだね」

不破「そんなわけで、私のかわいい加古をあまりいじめないでやってくれるか。責任の全ては私にあるってことでここは一つ」

加古「あー……寝言は寝てから言うもんだよ? ま、そんなわけで私と提督は今は大本営の刺客としてウロウロしてるって感じかな。ふわぁ」 緊張が解けたのか欠伸をする

足柄「そっちに喋ってもらってばかりじゃ不公平ね。私たちは大本営の人間から依頼されて江良井首相の孫を弁護するつもりよ。
大本営と現政権との関係性が潔白であることを証明して陰謀の親玉を暴くのが目的」

不破「あっ、じゃあこれをあげよう。ちょうど良かったな〜。贈収賄が架空のものであることを証明する資料だ。
情報をまとめて資料を作ったは良いけれどあんまり目立つようなことしたくないし、大本営に居るどの人間にこの資料を渡していいかも判断つかないからね」

不破「大本営って元老院みたいなもんだからねー。一枚岩じゃないし、誰が一番偉いのかも良く分からないし……って、ああ。いけないいけない。仕事の愚痴はよくないね。とにかく任せた」

足柄「こんな大事なもの私たちに渡していいのかしら?」

不破「なんてったって“神眼”の手取提督だからね。彼の下に居た艦娘ならアホな真似はしないでくれると信じてるよ。大本営から依頼される程度にはやり手ってことだろうしね」

足柄「……そう。あ、出来ればで良いんだけど手取提督(元提督だけど)とアポイントは取れるかしら?」

不破「手取元帥に関しては悪いけど何も知らないかな。大本営のわりと偉いのでも消息不明って感じ。セキュリティクリアランスレベル最上位の人間なら知ってるかもって領域だね」

足柄「なるほどね。運良く重要アイテムを入手できたし、もう帰ってもよさそうね」

清霜「まだ司令官に会ってなくない?」

足柄「え……無理に会う必要もないじゃない。これさえあれば十分収穫でしょうよ」
530 :【65Ex/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/01(水) 01:49:58.81 ID:+umRnLwh0
足柄(提督にわざわざ会う必要はない。とは言うものの……)

足柄「寝てる清霜をホテルに置いてきてまでわざわざ来てしまったわ……! そして……!」

雪風「チェックです!」

提督「雪風、それチェック出来てないぞ」

足柄「…………」

・・・・

事のいきさつはこう。私が宇宙開発研究所を入ろうとすると、意外にもすんなり招き入れられ、どういうわけかチェスをしている。
実にシンプル。ゆえに理解不能……。

提督「宇宙に存在する原子の数は10の80乗程度と言われている。一方チェスのゲームの可能性は10の117乗ほどだ。高度な人工知能であってもその全てを把握する事など不可能。
だがそれゆえに分析する対象としては最適だ。茫漠とした無数の可能性の中から最適解を探り出すための筋道を見出し……」

相変わらずよく分からないことを言っている。どういうことなのかは分からないが、私と雪風にチェスをさせたいらしい。
「自分でやればいいのに」と言ったら『二人零和有限確定完全情報ゲームの一つであるチェスは、運の要素が排除されたゲームだ。それでは俺が負ける要素がない』と、突っぱねられてしまった。
よく分からないけど、チェスをやらせたいのは確からしい。

磯風「私の厨房から調味料が無くなっていると思ったら! 一体何の真似だこれは!」

エプロン姿の黒髪の女性が出てきた。艦娘?

提督「チェスだ。駒がないんで代わりに使わせてもらってる」

磯風「なあ、それがないと料理が出来ないだろう。返してもらえないだろうか」

提督「いいや。これも俺の目的達成のための重要な思考実験であり……」

磯風「何を言っている! なぜ君は私が料理をしようとするといつも邪魔をする!? こないだ作った料理がそんなにダメだったのか? 今度は失敗しないから任せておけ」

提督「いいや、この調味料入れには料理よりも有効な利用方法がある! 今からそれを証明してみせる!」

提督(こと料理に関してはこいつを野放しにしておくわけにはいかないのだ。失敗という領域にさえ存在しない暗黒物質を食わされてたまるか)

足柄「……よく分からないけどほっときますか」

・・・・

雪風「足柄さんはなぜここに?」

カチッとキング(粉チーズの容器)を動かし、ルーク(ウェイパーの缶)と入れ替える。キャスリング(チーズ王を入城)させて守りを固めたようだ。

足柄「最近ニュースでやってる事件に関する情報を集めてるのよ。提督が何か知ってたら教えて欲しいと思ってね。まさかすんなり入れてくれるとは思わなかったけど……」

雪風のクイーン(レモン汁)によって動きを封じられ、攻めあぐねている。足柄はポーン(醤油瓶)を一歩前に進める。
どうにも雪風は提督と相当チェスをやっていたらしく、能天気な顔をしながら打っているわりに足柄をゆるやかに追い詰めている。

雪風「そうですね、ちょうどタイミングが良かったと思います。でも、しれえはその件については特に知らなそうですね。興味もないみたいです。あ。チェック」

クイーン迫る。足柄、やむなくキング(七味唐辛子の容器)を動かす。雪風、すかさずその奥にあった足柄のルーク(オリーブオイルの瓶)を奪取する。

足柄「スキュア……最初からこっちが狙いだったってわけね」

醤油瓶前へ。ビショップ(ターメリックパウダーの容器)が醤油瓶を攻撃。

足柄「そう。あの提督……この辺の一件には関わってないのね。だったらこの先どうなるのかしらね、ちょっと予想がつかないわ」

ターメリックパウダーにナイト(めんつゆ)が反撃。追い詰められながらも反撃の手を練っていく。

・・・・

雪風「めんつゆ強いですね〜」

ヒットアンドアウェイで攻めつつ逃げつつを繰り返し奮闘するめんつゆ。互いの駒も減りエンディング(終盤戦)のようだ。

雪風「でも、負けませんよ。えいっ」

数少ない生き残った駒の中では最強格のウェイパー缶がめんつゆに襲いかかる。前進しパルメザンチーズと向き合う七味唐辛子。
ウェイパー缶が動いて七味唐辛子の移動範囲を狭める。

足柄「あー……これは降参ね。でも、これだと不思議と負けても悔しくないわね」

磯風「む、終わったか。ほらさっさとよこせ哀」

提督「いや、この実験にはもっと多くのデータが必要だ。足柄、雪風ともう一局やってみてくれないか?」

足柄(……予想に反して得られたものがまるでない気がするけど、なんか面白かったしよしとするわ)
531 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/07/01(水) 01:59:08.91 ID:+umRnLwh0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~65/100)
・足柄の経験値+3(現在値25)
・皐月の経験値+1(現在値11)
・雪風の経験値+1(現在値10)
・翔鶴の経験値+1(現在値15)

・響の現在経験値:13
・金剛の現在経験値:21
----------------------------------------------------------------------

一つ学びました。やっぱ二週間に一度ペースじゃないと無理だこれ

----------------------------------------------------------------------
『Phase B』【65-70/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
01〜19:雪風
20〜36:翔鶴
37〜49:金剛
50〜68:響
69〜79:足柄
80〜99:皐月
>>+1-5

よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらい眺めてなんとなくわかった気になってください。
(または>>495->>496あたりを見てわかった気になってください)
----------------------------------------------------------------------
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/01(水) 02:00:41.09 ID:pOQXKEGLO
こんなスレあったんだ
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/01(水) 02:00:48.08 ID:HM+lasYFO
あい
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/01(水) 02:00:53.01 ID:RAYxUuD8O
ほい
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/01(水) 02:00:58.06 ID:gdV/Fzv5O
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/01(水) 02:01:03.02 ID:8oGB2qhgO
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/01(水) 09:15:41.28 ID:Gt9j1JdAO
ナニコレ……
538 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/07/01(水) 11:24:36.02 ID:CketLj9BO
>>532-536より
・雪風5レス
で『Phase B』が進行していきます。
(合計値:26 なので『Phase C』は発生しません)

・雪風5レス
で『Phase B』が進行していきます。

・雪風5レス

え、なんすかこれ……。

運命のいたずらなのか幸運の女神のキスなのか分かりませんがとりあえず次回はこれで行きます。
コンマでやってると何の前触れもなく突然荒ぶるのが怖いっすね。

////チラシの裏////
6月は初めてランカー争いに参加したんですけど、いやー厳しいですね。
6/30 15:00時点で520位ぐらいで、そっからボーキが尽きるまで5-4回しまくりましたが多分圏外って感じですねー。
修羅の国サーバーは伊達じゃないっすわ……。

結果はどうあれなかなか面白かったですね。本当に最終日は追い詰められてて、たかが200のボーキサイトを得るためだけに
普段やらない水上反撃部隊任務をやってみたりしてました(そのぐらい資源を枯渇させながら回してました)。
圏外でも悔いはないですね〜。6月月初にLv50だった葛城も90超えましたし、戦力増強には繋がったかなと。
さすがに今月はやりませんがね。夏イベに備えねば……。
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/04(土) 13:33:01.97 ID:7v6ils6Zo
乙です、さすが雪風
チェスの駒がシュールすぎるw
540 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/07/13(月) 00:31:10.83 ID:cXeKzc1N0
周期的に大体この辺のタイミングで投下する頃合なんですけど、まだ書き切れてないんでもうちょっと待ってくだしあ。
数日後には投下出来るとよいのですが……先々週ぐらいからわりとデスマーチ気味なんでびみょいです。
自分の中でわりとエンジンかかってきたので、時間さえあればなんとかなると思うんですけどねー。

そんなわけで近日中に投下できたらと思っています。思っているだけですが一応頑張ります。



////チラシの裏////
今更なんですけど、すっげー今更なんですけど。

熊野って改になると航巡になるじゃないっすか。
出撃時に「重巡熊野、推参いたします!」って言うじゃないですか。
今まで何の疑問も持たずに聞いてた台詞の一つですけど……お前重巡じゃないじゃないか!
いや、単に改装後の追加ボイスが実装されてないだけなのは分かってますけど(ちなみに鈴谷改も重巡を自称しています)。

自分の中では衝撃の事実でしたね。
なんてったって98レベルにもなってようやく気がついたんですからね。
コペルニクス的転回級の衝撃ですよ(?)

あるいは……重巡とは心のあり方なのかもしれませんね。
航巡になってなお『重巡洋艦の良いところ』を忘れない。そういう意識が彼女たちにはあるのでしょう。
バカなこと言ってないで寝ます。
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/13(月) 00:45:23.89 ID:nY80rdIdO
追いついたのは良いが我が嫁が出ている一周目に出遅れてしまった…
ガッデム
542 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/07/21(火) 01:58:03.23 ID:C4qVFItR0
皆さんにとって近日中とはどのぐらいの長さでしょうか。
私は大体「4〜5日ぐらいでなんとかします」のニュアンスだと思ってます。
(ちなみに数日中だと2〜3日の長さです。完全に個人的な尺度ですけど)

……近日中に投下すると言ってから既に7日が経過しておりますが。
申し訳は聞き飽きたと思いますが申し訳ありません。
本日中の投稿を約束いたしますゆえご容赦くださいハイ。
543 :【66/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/21(火) 21:34:36.35 ID:C4qVFItR0
チェスを続ける雪風と足柄。数十分間に渡る激論の末、不満気に退室していく磯風。

提督「やれやれ……巻き込んですまなかったな足柄。お前のおかげで難を逃れることができた」

雪風「でも、どうしてここに来たんですか? しれぇにご用とか?」

提督「司令ではないと言っているだろうに。足柄、お前は確か大淀のところで働いていると聞いたが……贈収賄事件にでも絡んでいるのか?」

足柄「ええ、そうよ。でもその件についての情報はもういいわ、どうにかなりそうだし。それよりも大本営についての話と横須賀鎮守府に関する話を聞きたいわね」

提督「それだけでは漠然としすぎていて返答に困るが……。贈収賄事件に絡めて話すなら、引き鉄は横須賀のによって引き起こされたと考えて間違いないだろうな。
意図は知らんが奴は艦娘を自分の鎮守府から引き離したくないと思っている。だが大本営は当然それを許さない。ゆえに横須賀が罠を仕掛けた、というところだろう」

足柄「(あら、案外親切に話してくれるのね)……あなたはそのことについてどう思ってるの?」

提督「横須賀が悪あがきをしたところで時代の趨勢は覆らんよ。確かにまだまだ艦娘はこの世界に必要だ。失うには惜しすぎる価値があることは認めよう。
だが……その力は争いのために用いられるべきではない。深海棲艦も俺たちが戦っていた頃の半数も残っていないわけだしな……」

提督「ただ……大本営の苛烈な規制っぷりにも裏があるような気はしなくもない。呉や横須賀から力を失わせたいなら時間をかけて緩やかに首を絞めていくべきだしな。
急ぎ軍縮を進めなければならん事情でも抱えているのかもしれん。表向きな関わりはもう絶ってしまったゆえ俺の方も詳しくは知ることは出来んが」

足柄「(なるほどね。そこいら辺は大淀に会えば何か分かるかもしれないわね)ごめんなさい。電話出るわね」 プルルルル……ピッ

足柄「もしもし、清霜? しょうがないじゃないアンタ爆睡してたんだから。起こす方が酷だと思ったのよ。……帰りにプリン買っていくから、それで許してちょうだい」

足柄「怒りのクレームをいただいたのでそろそろ帰るわね。また会いましょう?」 スマートフォンをしまいそそくさと帰り支度をする

提督「あぁ。久々に懐かしい顔が見れたな……縁があれば、また会おうか」

・・・・

廊下を歩く雪風と足柄。

足柄「……だいぶ、変わったんじゃないかしら」

雪風「?」

足柄「提督よ。随分丸くなったと思わない? 門前払いされると思ってたわ」

雪風「そうですね……。プレッシャーや責任から解放されたのもあるかもしれませんね。足柄さんは想像つかないかもしれないですけど、最近はよく笑うんですよ」

足柄「意外だけど……ま、そうね。なんだか安心したわ。あの提督、独りのまま放っておくとどんどん捻じ曲がっていきそうなんだもの。アンタが居るうちは平気そうね」

ポンポンと雪風の頭を撫でる足柄。

足柄「さって! そっちも頑張ってるみたいだし! 私も負けてられないわね。それじゃ、またね」

・・・・

散らかった調味料を片付けている提督。

提督「戻ったか。足柄とどんな話をしていたんだ?」

雪風「しれ……じゃない、所長ってちょっと変わりましたよねって」

提督(変わった? 俺が……? どちらかといえば雪風の方が変わったような気がするがな。物怖じしなくなったし、少し大人びた雰囲気がするようになった)

提督「変わったと言われても自覚はないな。それは客観的にみて俺の中のなにがしかが改善されたということか? あるいはその逆か?」

雪風「ええと、その……どうなんでしょう。分かりません」

提督「なんだそれは」

雪風「昔は昔でカッコよかったというか……響と組んで作戦を練っていた姿とか、遠巻きに見ててすごく尊敬してました。でも、ちょっと近寄り辛かったかなって。
今は、こうして理由もなく雪風と話してくれるじゃないですか。それに、なんだか優しくなったなって思うんです!」

提督「格好いいだとか優しいだとか、お前の基準はよく分からんな……褒めてもらえるのは有難いが。だが、俺が優しいと思っているならそれは勘違いだ。
俺は自分の望みを果たすためだけに生きている。他者がどうなろうと知ったことではないさ」

雪風「またまたぁ〜」 少し馴れ馴れしい、腐れ縁の友人に話しかけるかのような口調

提督「またまたではない」

提督「ま……思うところがないわけではないさ。俺を生んだこの世界の情景を目に焼きつけておきたい。二度と戻ることはないのだからな」

提督の発言に少し物憂げな表情を見せる雪風。

雪風「……雪風は、こうしてもっとしれえと一緒に居られたらって思ってます。提督と艦娘という関係だったあの頃とも違う。
平穏だけど、退屈じゃなくて……。あたし、今が一番幸せに感じます。もっとこの幸せが続いたらって、そう思うんです!」

調味料を片付け終えた提督はソファに腰掛ると、無言のまま思考に耽ってしまう。
その様子を見た雪風も提督の隣にちょこんと座り、考え事を始めたようだ。
544 :【67/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/21(火) 21:58:05.04 ID:C4qVFItR0
研究所の屋上から雲一つない蒼い空を眺めている提督。片膝を立て、もう片方の足はぶらんと宙に投げ出している。

雪風「所長! こんな所に居たんですね! 探しましたよ!」

提督「あいつを見送ってやろうかと思ってな」

“あいつ”とはカプセル型宇宙船『アリバトロース』のことである。
最初は提督の趣味で神話にちなんだ名前をつけていたのだが、膨大な量の発明品やプロジェクトの一つ一つに名前を付けていたのではそれだけで大仕事になってしまう。
仕方がないので繋に機械的に名付けてもらい、今回打ち上げられる使い捨ての実験用無人宇宙船には『アリバトロース』という名前が付いたのであった。
ちなみに、『アリバトロース』とはアホウドリのことだ。

雪風「せっかく打ち上げるのに所長がいなくてどうするんですか! 職員の皆さんが心配してましたよ!」

この研究所には艦娘というものが具体的にどういうものなのかさえ知らないような職員が少なからず在籍している。
当然提督が単身で宇宙に向かおうとしていることや、ここがかつて対深海棲艦攻略のための拠点である鎮守府だったということなど、雪風や磯風以外には誰一人として知りもしないことである。
職員たちからすればこの研究所の所長はほとんどの経歴が不明で多くを語りたがらず、元艦娘の少女とばかり喋っている気味の悪い人物であった。
自分の計画を邪魔されずに進めたい提督にとってこれはかえって好都合であったため、意図的に雪風や磯風以外とは会わないようにしているらしい。

提督「お前か磯風が居ればとりあえず問題なかろう。何が心配だと言うんだ」

不遜だが理知的な磯風や愛嬌があって素直な雪風は、職員たちから好かれていた。
見た目こそ年端も行かない十代の少女だが、(一般人からすれば)中身は大人顔負けの大天才であり、彼女たち二人が居れば万事が丸く収まるのが常であった。

雪風「どうしてそんなに一人で宇宙に行くことに拘るんですか。やっぱり納得行きませんよー」 少し冗談めかした口調で伝える本音

提督「一人じゃないさ。俺には兄さんがいる。お前にとってはただの人工知能なのかもしれないが、俺にとってはかけがえのない兄だ」

雪風「所長はどうしてお兄さんと一緒に居ることに拘るんですか? その、雪風じゃどうしてダメなんでしょうか」

提督「お前には世話になったしな……昔話ぐらいしてやってもいいか。この実験が終わったら、次はいよいよ俺もこの星を離れるわけだしな」

・・・・

提督「くだらん身の上話になるが……俺は生まれた時から親がいなかった。それもそのはずだ、DNA操作によって生み出された強化人間なんだからな。
『デザインチャイルド』計画なんて名前のプロジェクトだったかな……なにぶんガキの頃だったから、よく憶えてないな」

雪風(くだらない身の上話で済まされるスケールじゃないんですけど……)

提督「元々は艦娘に代わる人間兵器を生み出そうという計画だったらしい。そっちの方は実現性が低くて計画倒れで終わったようだが。
……数十年前の話だからな。そういうことが罷り通ってしまうぐらいには追い詰められていた情勢なのはお前も分かるだろう。
『デザインチャイルド』計画で目的とされたのは、艦娘を率いて深海棲艦を討ち滅ぼすことの出来る頭脳を持った超人だ。
ま、そういう意味では数十年越しに計画を達成したということになるらしいが……どうでもいいことだな」

提督「俺は自分の生まれた研究所で十数年の時を過ごした。外には出られず、研究所の中しか自由に歩き回れなかったから本当に退屈だったよ。
いよいよ俺も提督として鎮守府に着任する……という折に起こったのが未曾有の大災害『アケラーレ』」

『アケラーレ』――今から十三年前に起こった大規模な暴風雨である。
一年を通じて吹き荒れ続けたこの大嵐によって地上の施設は徹底的に破壊し尽くされ、国民の92%は地下都市に退避。
十数年かけてようやく復興を遂げたものの、今なお内陸の村落地区にはその爪痕が残っていて、復興が待たれている状態だ。

提督「『アケラーレ』によって俺の居た研究所を含め都市一帯が壊滅状態。研究員はみな逃げおおせたらしく、俺一人だけが取り残された。
廃墟と化した研究所内の中で兄さんと出会い、ともに過ごすことになる。兄さんは俺に機器のメンテナンスを頼み、代わりに俺は周辺の地形情報や生活のための知恵を得る。
その情報をもとに開拓、開墾、耕作……生きる為に色々なことをやったさ。稲作・畑作・菌床栽培……さすがに牧畜はやれなかったが。
荒れ果て人が去った地上での生活は俺にとっては心地のいいものだったよ」

雪風(この人わりと牧場経営の才能とかありそう)

提督「……と、話が逸れた。そんなわけで四〜五年廃研究所で過ごしてたら人間どもが地上に現れ出して、研究所も取り壊しになった。
俺は兄さんの基本情報だけを記憶媒体に残して研究所を離れ、それから暫くは軍の工場で勤務しながら秘密裡に兄さんの情報を復元するための装置を開発。
その頃には俺がデザインチャイルドの末裔であることを知る者は誰一人として残っていなかったようだし、なるべく目立たないようにしていたのだが……。
一年ほど前に軍のお偉方に引き抜かれ、好きにやらせてもらう代わりに雇われ提督としてここ佐世保の地に着任したと。そんな経緯になるな」

エンジンの轟音がする、『アリバトロース』が空に向かって真っ直ぐ突き進んでいく。提督は立ち上がり空を見上げる。

提督「俺のこれまでのいきさつはこの通りだ。さて、質問に答えよう。さっきも言った通り、俺は強化人間だ。
普通の人間とは決定的に違う……人ならざる者に生まれたのなら、その理由を確かめたい。なぜただの人間に生まれることが出来なかったのか、なぜ俺でなければならなかったのか。
どこまでが遺伝子操作によって“作られた”俺で、どこからが俺の自我なのか……? 湧き上がる懐疑と好奇心を抑えることが出来ない」

提督「しかし、この世界はそれを望まない。人の世は秩序を求めているし、そうあるべきだ。だから俺は人の住まう地球を離れ、全てが赦される自分の箱庭を創るんだ。
そうして生命とは何なのか、自分とは何なのか、真理とは何であるかを究明したい」

雪風「そんな風には思いません。所長には所長なりの考えがあるんだなって分かって少し安心しました。正直、そこまで言われるともうなんとも言えないって感じです」

提督「理屈で片付けられる情動ではないのだと思う。納得したいんだよ。この知性が、この感情が、この意志が本物の俺の物であるかということを」

雪風には提督の言っていることは分かったが、彼がどんな感情を抱いているかを理解することは出来なかった。
けれど、彼が何かしらの“納得”を手に入れるまではその有様を見届けていたいと想った。
545 :【68/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/21(火) 22:04:47.25 ID:C4qVFItR0
提督「足柄のやつ、どうにも上手くやれたみたいだな」

ノートパソコンを開き、ニュースサイトを眺めている提督。「贈収賄事件の真犯人現る!」という見出しが躍っている。

雪風「あー。でも、横須賀の提督が捕まったわけじゃないんですねー」

提督「そりゃそうだろう。こういうので真っ先に標的になるのは実行犯だ。もっとも……黒幕の方もそう長くは持たんだろうがな。既に捜査の手が伸びてるんじゃないか?」

『ちょっといいかい、少し真面目な話がしたい。地下室まで来てもらえるかな。かつての執務室地下と言えば分かりやすいかな』 提督のPCに繋からのメッセージが届く

・・・・

提督「“鎮守府”でなくなってからはここもめっきり使わなくなったな、一応壊さずにそのまま残しておいたのだが……」

雪風「今更ですけど、秘密基地みたいでカッコいいですよね!」

繋に促され、両眼を覆うヘッドマウントディスプレイを装着する提督と雪風。

繋「わざわざ呼び出してすまないね。こうでもしないと直接話が出来ないもんでね」

提督(脳波を読み取られるのはあまり好きじゃないんだがな……思考が筒抜けなのは不快だ)

繋「まあまあそう言わずに。僕にとってはこの部屋が一番都合が良いんですから」

提督(言ってないんだがな……)

雪風「わざわざこの部屋に呼び出すってことは、重要な話なんですよね……?」

繋「そうなるね……磯風さんに関する話なんだけれども。彼女、大本営から来たと言っているけれど……彼女は大本営直属の艦娘じゃないみたいだ。
色々気になることがあって大本営の名簿データベースを(無断で)覗かせてもらったんだけれども……磯風なんて名前の艦娘はどこの部にも所属していないんだ」

繋「で、それだけならまだ良いんだ。ミステリアスな一面はあれど、彼女は僕たちの為に動いてくれているからね」

提督(良くないだろう)

繋「ただ『磯風』という単語を追って検索をかけていたら、面白い情報……いや、面白くない重大な情報を見つけてしまったんだ。磯風さんと直接の関係があるかは分からないけど」

繋「大本営は深海棲艦の残党に呉や横須賀の作戦情報を漏らしてるようだ、意図的にね」

提督「なんだと? MI作戦の本土強襲も、自作自演だったと?」

繋「いいや、それは違う。MIの一件は大本営からの作戦を各鎮守府の提督らがどこかで漏らしてしまったのが原因なようだ。だが今回は……その事例に倣って故意に行っているらしい」

提督「何が目的なんだ? そんなことをして何の意味がある……? 横須賀や呉と敵対関係にあるとはいえ、そんな理由で許されるような行為じゃない。大本営がそこまで愚かなはずはない」

繋「ほとんどのデータが抹消されていて、詳しい情報は分からなかったんだけど……」


『AK-クラス:████████シナリオ』


提督と雪風の眼前にテキストが表示される。

繋「このAK-クラスが、そして████████シナリオが何を意味するのかは分からない、しかし……。大本営は艦娘という存在がこの世界の存亡に関わるレベルで危険な存在だと認識しているらしい。
警戒の仕方から察するに……横須賀や呉鎮守府の提督が造反する危険性への対策、というだけではない事情があると考えていいと想う。」

提督「磯風に話を聞いてみる必要はありそうだな……」

雪風(なんかよく分からないけど……大変なことになっちゃいました)

繋「哀君。ひょっとすると、これで今生の別れになるかもしれないから伝えておく。……本気で磯風さんと事を構えるになったら僕に勝てる道理はないからね。
君は人の為に生きるべきだ。人と生きる中で幸せを見出して欲しい。それは、僕のような人工知能には出来ないことだからね」

提督「お断りだ……俺はいつだって俺のために生きるだけだし、俺は幸せになるために生きているわけじゃない。あと、縁起でもないことを言うもんじゃあないぜ」

繋「ハハ、言うと思ったけど……雪風ちゃん。哀君のこと、よろしく頼むよ」

・・・・

磯風の部屋を訪れた提督と雪風。

磯風「フフフ……そっちから尋ねて来るなんて珍しいじゃないか。良いぞ、たまにはゆっくり話でも……」

提督「そうだな。『AK-クラスのシナリオ』とは何を意味するのか……是非聞かせてもらいたいものだな」 

はぁ、と残念そうな顔を浮かべて溜息をつく磯風。

磯風「繋、か。……完全ではないとはいえ、大本営のデータベースに潜り込むとは大したものだな。そうか……」

椅子に腰掛け、頭上を見上げる磯風。意識はどこかに離散しているようで、目の焦点は合っていなかった。その様子は普段の理知的で不敵な磯風とは正反対に、くたびれた老人のようだった。

磯風「はは、は……。せめてもの罪を滅ぼそうとして……それで、このざまか。何もかも、裏目だな。分かった、話そう。話すとしよう」

磯風「私の目的は……『全ての深海棲艦を滅ぼし、全ての艦娘を滅ぼすこと』だ」
546 :【69/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/21(火) 22:30:36.15 ID:C4qVFItR0
磯風「もうじき……そう間もなくだ。艦娘同士での争いが始まる。お互いがお互いを憎しみ合い、破壊し合うようになる。
そうして艦娘はこの世界を去り、再び二千年の時を待つ。私たち艦娘は人の為に生きて、人の為に死ぬ……! それが艦娘に隠された最後の真実だ。
君が深海棲艦をMIで打ち破って、新たな深海棲艦が現れることが無くなってからもうカウントダウンは始まっていたんだ。そしてタイムリミットは近い」

驚きに目を丸くする雪風。提督の方を見遣ると、彼にとっても意外だったようで考え込んでしまっているようだ。

雪風「それってつまり……? 私と磯風さんが戦うってことですか? 全然想像出来ないんですけど……」

磯風「今はまだな。“そうなってしまった”なら全て手遅れなんだよ。いや、もう既に手遅れか。解体された旧鎮守府の艦娘はどうにかなっても、横須賀や呉の連中はみな助からんだろう」

提督「待て。深海棲艦が滅んだ後に艦娘同士で争いを始めるなんて聞いたことないぞ?」

磯風「そうだろうな。繋のデータベースの中にはこの情報は入っていないし、大本営でも知っている者はごく僅かだ。だが、これは事実だ」

提督「事実だと言われて信じられるような内容じゃないな。それがお前の妄想でないという証拠を提示出来るのか?」

磯風「残念ながら現時点では不可能だ。
しかし、なら逆に聞くが、ここの職員連中に私たち元艦娘が深海から現れた異形の化物どもと戦っていたと説明したところでそれを想像出来ると思うか。そういうことだよ」

提督「……では、仮にそれが未来に起こる真実だとして、深海棲艦の残党はどうなる?それに完全なる復興にはまだまだ艦娘の力が必要だ。
艦娘の頭脳や労働力を失うには惜しすぎると思わないか? 早計すぎるだろう」

磯風「艦娘はもう、その役目を終えたんだ。だから滅ばなくてはならない……滅びなくてはならない」

磯風「それだけ残り時間はもう無いということだ。既に最善手を打った上で、その果てに今がある、もう形振り構ってはいられない。
深海の残党を一網打尽にするにしてもやはりこのやり方が一番いい。向こうにとってもここで勝負に出なければジリ貧だからな。……我ながら最低の策だと思うが」

磯風「君は艦娘はこの世界に艦娘は必要だと言っていたな……『戦うためじゃなく、より人の世を豊かにするために』と。違うんだよ。
艦娘にそんな未来は用意されていないんだ。役目を終えたら消え失せる……これが艦娘の宿命だ」

諦観。椅子にもたれかかり、全ての体重を預ける磯風。生気のない抜け殻のようだ。

提督「ならばなぜ黙っていた。なぜ今まで俺にその話をしなかった?」

磯風「MIで君が深海棲艦の命脈を絶っていなければ、私たちは手詰まりになっていただろう。
もしあの戦いで我々が敗北していたなら、主要な拠点は横須賀・舞鶴鎮守府のみになる。そんな状況で国防など出来るはずがない。
君が有能であればこそ、この話をするわけにはいかなかった。躊躇なく深海棲艦を討ってもらわねばならなかった」

提督「だが、その後は? 何のためにお前はここにやってきたんだ。俺の下働きをするために来たとでも? 笑わせるな」

磯風「……そうだ。その通りだ。君には関わって欲しくなかった。君がこの話を聞いたら絶対に艦娘を救うために動いてくれるだろうと思っていた。
そう推測していたからこそ関わって欲しくなかった。どう足掻いても助かる術など無いのだから、願わくば知らないままでいて欲しかった。
そうしてそのまま自分の目的の為だけに突き進んでいて欲しかった。それに……」

磯風「きっと君はデザインチャイルド計画の生き残りなんだろう? それも最後に生まれた一人。
デザインチャイルドは高く発達した頭脳によって、私たち艦娘さえも凌ぐ思考力・情報処理能力を発揮することが出来る。
だが、それゆえに考え過ぎてしまう、自ら命を絶ってしまうんだ。考えることを放棄できない性質ゆえに精神がやられて耐え切れなくなってしまう」

磯風「君は最も辛い運命を背負って生まれてきてしまった哀しい子だ。かけられた呪いを呪いであると自覚することさえ出来ない……。
だからこそ償いたかった。せめて、君にとっての希望ぐらいは叶えて欲しかった。私たち艦娘のことなど気にかけて欲しくなかった」

提督「勝手に生んでおいて哀れむな。自覚はあるさ……『決して絶望することが出来ない』のだろう。
『自ら命を絶つことも出来ない』し『自ら命を絶とうと望むことさえ出来ない』んだろう? 上等じゃないか。俺はアンタの成功作だろう」

磯風「この世界は抗いようのないものに満ちている。再現なく理想を望めばいつか限界が来る。
それを思い知ることが出来ない君はいつかやがて破滅的な結末を迎える……そう分かっていて君を創ってしまった。そうせざるを得なかった」 独り言のように呟く

提督「アンタがどういう人生を送ってきたかは知らないが……失望させないでくれ。俺を創った親だと言うのならもう少し子に似ていてくれよ、なあ?
俺は今アンタが親だと知って喜んでいるんだ。俺が生まれた元凶と対峙出来るなんて想像もしてなかったからな。胸が高鳴っているんだよ、失望させないでくれよ」

怒っているとも笑っているともつかないような様子で奥歯を噛み締めながら話す提督。興奮気味の提督を見て、目を疑う雪風。当然こんな姿は今まで見たことがなかった。

雪風(司令でも所長でもなく……これが、『手取 哀』本来の姿。この人の本質……)

司令としての仮面・所長としての仮面……合理的で冷静、無感情で無感動。その仮面の裏にはめまぐるしいほどの激情が動いていることを思い知った。

提督「雪風! 兄さんに全ての艦娘を収容することが出来るような設計に変更することは可能かを訊いてくれ」

磯風「何を……!?」

提督「艦娘の行動原理は“人間のため”だ。だから艦娘がお互いを破壊し合うというのも“人間のため”というやつなのだろう。
対象となる人間のいない世界でなら生き残る道があるかもしれない。あくまで可能性の話だが……今のシナリオよりはずっといい」

提督「第一、だ。『過去の全てが失敗例だった。だから艦娘は救う道がない』……そもそもその前提は正しいか?
深海棲艦と艦娘の戦いが2000年に一度欠かすことなく繰り広げられてきたのであれば、最多でもせいぜい百数十回か。
元提督を舐めてもらっては困るな。提督というのは、幾百幾千幾万と同じことを繰り返すものだ。百回や二百回の失敗など誤差の範疇だろう。
歴史とはそういうものではないのか? 過去を受け継いだ上で更なる理想へと近づけていくことこそが未来に生まれた者の使命だろう」

提督「では改めて……力を貸してもらおうか、磯風。俺に考えがある。俺と兄さんならば、お前にとっての絶望さえ超えられる」
547 :【70/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/21(火) 22:31:47.16 ID:C4qVFItR0
提督「やっぱり杞憂だったじゃないか。なーにが『これで今生の別れになるかも』だ」

雪風(磯風さんと話をしてから数日後。司令は以前よりも素の口調になることが増えた気がします)

『あんまからかわないでくださいよ……あの段階じゃ磯風さんが何を考えているんだか分からなかったんですから。
そんなことより大胆な仕様変更のせいで頭がフットーしそうですよ全く』

『ま、嬉しいんですけどね。やっぱり君は僕に対して無茶苦茶な要求してくる時が一番輝いていますよ。
……口では尖った事を言っていても、やっぱり哀君は優しい子ですね』

繋に対し『減らず口を叩いている暇があったら作業を進めろ』と返信する提督。

雪風(繋お兄さんは設計・開発のための作業に追われています。本人曰くフル稼働で手一杯らしいですが、そのわりには余裕そうな口振りで安心します)

提督「やれやれ……いつまでもガキ扱いされていてはかなわん」

提督「しかし残された時間が少ないな。それに、不確定要素が多すぎる。呉と横須賀が深海棲艦の残党とぶつかる……これはまあ避けられないだろう。
深海棲艦を残したまま地上を去るわけにはいかんしな。情報を漏らしてあるのを逆手に取って立ち回れば倒すこと自体は出来ると思うが……奴らが大本営の言うことなんか聞くだろうか?
今にも反旗を翻しかねないぐらいの不穏っぷりだしな……宇宙船に連れ出すのも含めてどうやって説得するかが悩みどころだな」

提督「そのままこちらの意図を伝えたところで絶対信用されないだろうしな……上手い事丸め込められる口実が欲しいところだ」 珈琲を口に運ぶ提督

磯風「司令よ。言われた通り旧佐世保鎮守府の者たちには電報を送っておいたぞ。他の旧鎮守府・泊地在籍だった艦娘への伝達はもう少しかかりそうだ」

雪風(磯風さんは司令のことを“君”や“哀”ではなく“司令”と呼ぶようになりました。
数日前のあの後にどんな会話を交わしたのかは分かりませんが、司令のことを心から信じているようです)

提督「ご苦労。さて、どれだけ集まるか……そしてどれだけの者が話をまともに聞いてくれるかだな。期待は出来ないが……やらないよりはマシか。
一段落着いたら呉や横須賀に出向く準備もせにゃならんな……ハァ、憂鬱だ」

雪風(司令も大変そうです。ちゃんと寝てるのかなあ)

・・・・

提督「『アリバトロース』型の設計を基盤にするとはいえ、開発コストや安全面に難があるしな……時間さえあれば解決する問題なんだが……。
それに、一人しか搭乗しない設計だったものを大人数収容用に変えるとなるとそれだけで厄介だというに、方々に散り散りになった艦娘をどうやって集める?
磯風の話ではもう一ヶ月ほどの猶予しか残されていないそうだが……実に難局だ」

独り言を呟きながら、コポコポとポットの珈琲をカップに注いでいる。

雪風「しれぇ……また徹夜ですか。っていうか、晩御飯食べました?」

提督「ン、夜か。もう夜になっていたか……どうやら完全に昼夜の感覚を失ってしまったらしい。飯ならさっき食べたし、今日はもう寝るよ。
さすがにこの物量相手じゃ適度に寝ないと身が持たん」

雪風「寝ないとって言いながらコーヒー飲むんですね……」

提督「ン? ああ、これはカフェ・ロワイヤルだよ。ブランデーを染み込ませた角砂糖をスプーンの上に乗せ……」

パチリと電気を消し、角砂糖に火を灯す提督。

雪風「わああっ! 何やってんですかしれえ!?」 驚き仰け反る雪風。

提督「火の熱で溶けたカラメルをコーヒーに混ぜて飲む……。どうだ、洒落てるだろう?」

雪風「ほぇぇ……そういえば司令はお酒飲むとすぐ眠くなっちゃうんでしたっけ。昔、一度だけ司令が鎮守府の宴会に参加した時もすぐに酔い潰れちゃって、響に介抱されてましたよね」

提督「うむ、これは寝酒だ。かえって熟睡を損ねるらしいが……たまにやるくらい問題ないだろう」

ゆらめく炎を眺めている提督と雪風。ふと目が合うと、にこりと微笑む雪風。

雪風「しれえは、本当は優しい人なんですね。それに、本当はとても情熱的な人なんですよね?」

提督「お前まで兄さんみたいなこと言うなよ……気色悪い。前も言った通りだ、俺は俺の為に生きているだけだ。(それと、情熱的とは一体……? こいつは何を見てそう判断したんだか)」

雪風「でも、結局こうしてあたしや他の艦娘のために動いてるじゃないですか」

提督「結果的には、な。実のところ俺にもよく分からん。だが、『お前たちのため』だと思って行動しているわけじゃないさ。そんな感情は微塵もない。お前たちになど興味もないさ」

提督「ただ……似てるんだ、俺と。この世界に必要とされなくなった者がどうするのか、どうなるのか……どういう結末を辿るべきなのか。そこが少し気になっただけだ」

雪風「それでも。雪風は嬉しいですよ。司令と一緒に居れること、すっごく嬉しいです」

雪風がそう言い終えた直後にパチッと電気を点ける提督。まだわずかに火は残っていたが、構わずコーヒーの海の中に沈めて掻き混ぜる。

提督「さてと、明日も早い。お前もそろそろ寝るといい。俺もこれを飲み干したら寝るしな」

雪風(照れ隠し……?)

提督「? どうした雪風。半笑いでこっちを見るのをやめてくれないか、不気味だ。そしてそこの柱の陰に隠れている磯風は何がしたいんだ」

磯風「チッ、ばれてしまっては仕方ないな……」

提督(ま、あるいは……こういうのも悪くないのかもしれんな……)
548 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/21(火) 22:34:08.43 ID:C4qVFItR0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~70/100)
・雪風の経験値+10(現在値20)

・足柄の現在経験値:25
・金剛の現在経験値:21
・翔鶴の現在経験値:15
・響の現在経験値:13
・皐月の現在経験値:11
----------------------------------------------------------------------

投稿が遅れてしまったことを改めてお詫び申し上げます。
うーん、ここまで大幅に伸びるとは思いませんでした。

----------------------------------------------------------------------
『Phase A』【-75/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5


よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらい眺めてなんとなくわかった気になってください。
(または>>495->>496あたりを見てわかった気になってください)
----------------------------------------------------------------------



////ノートから千切った1ページ的なやつ////
連休中に起こったしょうもない出来事について書くか、作品に関する小ネタを書くかで迷いましたが後者で。
……今回は遅刻しちゃったので多少マジメに行こうかなと。

遅れた理由は単にサボっていたというわけではなくですね……。
まあリアルが忙しかったのもありますが、それよりも四回ぐらい書き直ししたせいですね。
提督がアレだとか艦娘がソレだとかほにゃららがほにゃららだとかは予め決めてた内容ではあったんですけど、なんか珍しく難産でしたねー。



例によって思わせぶりなわりにそれっぽいだけで特に関係ない系の単語が出てきますが、ちょっと今回は解説入れます。
『デザインチャイルド』の元ネタは蒼き鋼のアルペジオですね。DNA操作で生み出された存在で、驚異的な思考能力を持ち……って感じなんでわりとそのまんまです。
もちろん、都合よく引っ張ってきてるだけなので似たようなものであっても完全なイコールではないです。アルペジオの二次創作というわけではないんで……。
アルペジオの漫画を読む前から似たような設定は考えてましたが、結構ピンと来たのでそのまま連れてきました。

ええと……提督がホムンクルス的・ニュータイプ的存在だったという設定は実は最初からあったのですが、ぶっちゃけそんなん語らんでも良いかなーとか思ってたので意図的に伏せてました。
ただ、そろそろ言及しないと彼の目的や今後の動きが見えないかなーとか思って明かしてしまいました。
なんかこう、提督にいっぱい設定とか過去の経緯とかがくっついてると、胃痙攣を起こしそうになるというか、「ぼくのかんがえたさいきょうのなにがし」みたいな感じでアレというか……。
メアリー・スーなんじゃねーかと思ってちょっと避けてた節はありますねー。そんなものよりも艦娘の方を魅力的に描けって話ですからねぇ。

さりとて何の説得力もなくただなんとなく艦娘から好意を向けられまくっておモテになられる提督もエロ同人ならともかくわざわざSSで読みたいかっつーと……。
提督と艦娘との絡みもまた艦これ系の二次創作の魅力(だと個人的に思っている)ので、
提督について詳しく書くことで提督と艦娘とのやり取りに繋がるなら書いても良いんじゃないかなーとか思ったり。
どうなんでしょうねー、正直自分でもこうやれば正しいのではっていうのが見つけられてないんでアレですが。
オリキャラありきの文化って珍しいですよねー。もちろん必ずしも提督は必要ってわけじゃありませんけど……。

それから、見覚えのある黒塗りはアレですね。分かる人には分かると思いますがSCPネタですね。
アレもアレで厳しい戒律(?)の上に成り立ってる文化なので、例によって名前だけ取ってきただけです(そもそもこの作品とは世界観が違いすぎる)。
あれはあれで独自のユニークな世界観があるものなので、それを侵害する意図はありませんと明記しておきます。

ああ、ええと、あとあれですね。ネタの引用も難しいですね。リスペクトやオマージュのつもりでもそうでないと解釈されてしまったらそれまでですし。
節操なくネタ引っ張ってきてもカッチリとその作品の色に合致してないとサムいですしね。
神話ネタは基本的にオッケーかなと思ってちょくちょく混ぜたりしてるんですけど、あれもどうなんかなーとか悩んだり悩まなかったり。



作者目線での悩みに近いことを書いたので、だいぶ取り留めのない感じになってしまいました。
そもそもこういうことを考えてるわりに作品に活かせてるの? って訊かれたら微妙ですナ……。
でもでも、出来る限り良いモノを提供したいじゃないですか。自分で書いててつまらないと感じるものをお出しするわけにはいくまい。
またSOSOUをやらかしたら別の切り口でちょっと真面目な話をやるか没ネタに触れるかその他もろもろについて書くかします。

あ、あと全く関係ないですけど、六月作戦ランカー入りできてました。
労力に見合ってない報酬と言われればその通りですけど、やっぱり嬉しいもんですね。
また余力が出来たら挑戦してみたいですね! 俗に言う修羅の国サーバーなので次回も辛い戦いになりそうですが。
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/21(火) 22:35:18.41 ID:IHVnrHK2o
乙 足柄
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/21(火) 22:35:40.14 ID:u3smVTv8O
雪風
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/21(火) 22:37:50.74 ID:JDopkgoAO
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/21(火) 22:39:19.39 ID:Qcx5hgVAO
皐月
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/21(火) 22:39:21.75 ID:zGF8vPIAO
雪風
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/21(火) 22:39:24.40 ID:dxHd6qPcO
足柄
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/21(火) 23:02:37.85 ID:JDopkgoAO
乙 ランカー入りおめでとうさん
まあ遺伝子操作でウンヌンカンヌンは言い出せば半世紀位前からの話だ気にするな
556 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/07/21(火) 23:21:24.08 ID:C4qVFItR0
>>549-553より
・足柄1レス/雪風2レス/響1レス/皐月1レス
で『Phase A』が進行していきます。
(合計値:243 なので『Phase C』は発生しません)

レス早いですね……。ちょっとイニシエダンジョンやってたらもう埋まっててビビりました。
リアルの方が落ち着いてきたので、またぼちぼち書いていきます。
遅くとも二週間以内には投稿できるかなーって見通しですです。
557 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/08/06(木) 21:01:01.49 ID:AzRC1Z2s0
『遅くとも二週間以内には投稿できるかなーって見通しです』……はい、その、あれですね。スミマセン。
いやもうほんとアレですね。書きたいのはやまやまなんですけどね。できることなら一日中書いてたいところではあるのですがね。
霞を食べて生きていくわけにもいかんので……もちろん霞というのは霞であって霞ではありませんよ。

ふざけたこと言ってないで投下予告です。~8/9までにはなんとかお出しできると思います。
なる早で頑張りますが日曜の午後とかの投下になるかもしれません。とりあえず間に合うようにはします。



////チラシの裏移設計画////
最近投下が伸び伸びになっているんで自戒の意味を込めて作者監視用のTwitterアカウントを作成しました。
Twitterって何? って人は……まあそのなんだ。あんまり気にしないでください。
https://twitter.com/sagyooh
(@sagyooh)
 ・基本的にこのスレと艦これに関するトピックのみ言及します
 ・人と仲良くするためのアカウントではありません(議論したり顔見知りのお友達とよろしくやったりするアカウントじゃないです)
 ・私的な日記のためのアカウントでもありません(晩ご飯の画像をアップロードしたりするようなアカウントじゃないです)
 ・SSを書くまでの準備運動的な位置付けで使用することがあります(補足1)
 ・特に理由が無い限りフォロー非推奨です。フォローされたらされたでフォローバックはしますが、ツイート内容を遡られて趣味嗜好を分析される覚悟はしてください。
 ・このスレの続きを楽しみに待ってくれている人のために運用するつもりです(と言えば聞こえは良いですが要は時間稼ぎって感じですね……)

*補足1
スポーツ選手が試合前に準備運動をするように、(他の物書きがそうであるかどうかは置いておいて、)
自分の場合もある程度なんかしらの雑然とした文章を打ち込んでから本題のSSを書き始めるとわりと調子がよくなるので、そういう用途で使うかもしれません。

このアカウントに関する説明の前に、ちょっとした随筆的なものを。
先に書いておきますがこれはほとんど「自分的にそう思う!」「私の中ではそういうもんなんです」って話です。あくまで私的主観。
自分の場合前時代的インターネットコミュニティ感を大事にしてるところがあってこのように匿名掲示板でSSを書いているのですよ。
(まあ発端は「こんなスレあったら面白いんでね?」ぐらいのもっと軽い気持ちで立てたってのは置いといて)
匿名であるがゆえの空気感、不特定多数の人間から来る安価で決まる混沌とした感じこそが面白いなと思っているわけで。
これをたとえばここじゃなくPixivなりなろうなりで書いてたとして、で、ツイッター上の自分のフォロワーから来たリプライで今後の展開を決める……ってえのは全然面白くねえなと。
本質的には安価を募集して次の展開を決める〜みたいな形式も上の例と同じように自分の作品を好いてくれている(あるいは興味を持っている)人間の意向で決まるって意味では近いんですけど。

ただ自分の中ではやっぱり明確に違うんですね。やっぱり、自分が匿名の存在であり相手も匿名の存在であると認識してると付き合い方は変わってくるでしょう。
ぶっちゃけて言えば誰だか分からないどうでもいい存在じゃないですか匿名ですし。でも、それでいいと思うんです。むしろ、だがそれがいいのです。
あくまで作者が創る『作品』に価値があるのであって、作者そのものには価値は無いんです。(アーティストやアイドルとしても活動してるならまた話は変わってきますが)
私個人に関する情報なんか提示する必要ないんです。匿名でいいんです。私も自分の作品に対する反応や反響だけを求めて書いてるわけですしね。

では本題に戻ってアカウントの説明。ええと、上の箇条書きは別に卑屈になっているわけではないんですね。
ただ、敢えて匿名性を保っていたいなあというポリシーがあって、そしてそのポリシーはTwitterというコミュニティの中では文化色が違うので一応説明書きしておいたと。そういう感じデス。
人に説明するだけでこんなにめんどくさいならわざわざアカウントなんてこしらえる必要ではないのでは? というのはご尤もなんですが。
いや全くその通りなんですよ! 一週間に一度ぐらいのペースで投下出来りゃあこんなもん作る必要は無かったんですよ。ただ現実問題それは実現不可能っぽいので……。
(やや自意識過剰気味ですが)次の話を心待ちにしてる人を何週間も待たせるのは心苦しいので、待ってる間も少しは楽しませることが出来たらなーという意図がありますハイ。

もちろんTwitterアカウントなんぞ所詮オプションに過ぎないので、見なくても全く問題はないです。
あんまり大事な内容は書くつもりはありませんし、仮に書いたとしてもその時はこっちにも載せますんでご安心を。
あくまで作品を書くことが主であって、その他全てはおまけです。本末の線引きはきちんとしたいと思ってます。



そんなわけで、残り最短だと25レス。長いようで短いようなどうなんだか分からないぐらいの期間になりそうですが頑張っていきたいと思います。
完結までもうしばしお付き合い願います。
558 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/08/06(木) 21:02:20.42 ID:AzRC1Z2s0
(25じゃなくて30レスですね……何はともあれよろしくお願いします)
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/06(木) 21:02:50.74 ID:RIEGCwVpo
乙 待ってる
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/06(木) 21:05:19.37 ID:tRLRVehMO
すっげえ構ってちゃんだなあ…
561 :【71/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/08/09(日) 23:27:51.68 ID:l5g351Z90
提督「敬礼などよせ。俺はもうお前の上官ではないのだからな」

提督と雪風は、赤城に呼び出され彼女の道場を訪れていた。

赤城「いいえ、貴方はいつまでも私にとっての提督ですから。突然呼び出してしまって申し訳ありません」

提督「(……それでは困るのだがな)『俺に会う必要がある』と判断したんだろう? なら構わんさ、約束した通り応じよう」

赤城(提督のお顔……初めて見る……。凛々しくて素敵ですね……見惚れてしまう……)

提督「? あぁ、仮面でないのが気になるか? その話も後でしよう。何にせよ屋内に入れてくれないか。日暮れとはいえ西日が差して暑い」

・・・・

赤城「驚きました……提督は宇宙飛行士になりたかったんですね? 子供の頃の夢? とかですかっ!?」

目をキラキラさせながら食いつく赤城をあしらう提督。

提督「(こいつ、こんなにテンション高いやつだったか……?)別段そういうわけではないし、勝手にお前の脳内で俺の過去を妄想するのはやめろ。というか、話の腰を折るな」

提督「仮面で素顔を隠していたのは、そういう理由だ。退役後の動向を知られたら困る……のだったが。そこから先はさっきの話の通りだ。顔を隠す必要もなくなった」

赤城「なるほど、艦娘同士での対立……ですか。でも、それと提督が宇宙を目指していることと何の関係が?」

提督「艦娘の行動原理が“人のため”であるならば、対象となる“人”のいない世界では制約なく振舞える……と考えた。
お前が俺を呼び出した理由である元艦娘の召集の件も、元艦娘を集めて艤装ごと別の星に隔離する計画のためだ」

赤城「……! ですが、艦娘たちがそれに応じるでしょうか? それに、その計画が本当にうまくいくという確証はあるのですか……?」

提督「実のところ、うまくいくかどうかは関係ない。ひょっとしたら移住した先でも艦娘同士での戦いが起こるかもしれん。が、問題ないのだよ」

赤城「?」

提督「轟沈していなければ……人としての肉体さえ失われなければ艦娘は蘇ることが出来る。要は前と全く同じ艤装を用意してやればいいだけのこと。前例がある。
応じなかった艦娘ら同士で争いを始めようと、最終的に艤装を失った抜け殻を回収してこっちに連れてきてやればいい」

提督「とはいえ……出来ることなら穏便に済ませてやろうという腹積もりだがな。これは上官としての命令ではなく、俺個人としての依頼だが……赤城。
お前には俺のために動いてもらいたい。召集の前段階から打てる手を打っておきたいんでな。協力してくれるか」

赤城「もちろんです。この赤城……提督のために尽力します」

・・・・

赤城「よし、二航戦や五航戦の子たちには連絡しておきました。加賀さんも明日は休みそうだからその時に伝えればよし。これで今日やれることは済ませたわね……」

提督と雪風の寝室の襖をピシャーッと開ける赤城。

赤城「提督♪ お酒を用意したので晩酌でもいかがでしょうか? ……って、あれ?」

雪風「んぁ。しれぇならついさっき走り込みに行ったので、しばらく帰って来ないと思いますよ。昼間は暑くてそれどころじゃなかったから、夜やるそうで」

パジャマ姿の雪風。眠たそうな目でノートパソコンをいじっている。

赤城「あら、それは残念。……」 まじまじと雪風を見る赤城

雪風「?」

赤城「ひょっとして、提督ってそういう趣味なのかしら、と……」

雪風「あの……怒られますよ? それに、私だって見た目がこんなんなだけであってですね……」

赤城「フフッ、失礼しました。……でも、提督に相当買われてるんですね。雪風さんは提督のことをどう思ってるんですか?」

雪風「んーと、それはどういう意図で言ってますか? 質問に質問で返すようで悪いですけども」

赤城「私は、提督をお慕いしているので。貴方もそうなのかと気になるのです。
提督と心から一つになりたいと、思いませんか? 運命を共にしたいとは思いませんか?」

雪風(おぉ……。そういえば、響も司令にベタ惚れでしたね。『私は彼のことを愛している』とかなんとか)

雪風「いやぁ……そりゃあしれぇの事は好きですけど……。多分、そういう対象ではないですね……釣り合わないっていうか、なんていうか。
しれぇと一緒に居られる日常は楽しいし、いつまでも続いていて欲しいと思いますけど……そこから一線を超えるのは、なんか違うかなって思うんです」

雪風「司令が雪風の才能を認めてくれて。雪風もそれに応えたいと思うだけで。
しれぇに不要だと思われたら、そん時ゃそん時ですかねぇ。まあ、仕方ないと思ってます。そうならないように頑張るつもりですけどね!」

赤城「そう、でしたか。……でも、提督が雪風さんを傍に置いている理由が分かった気がします。考え方が結構提督に似てますよね」

雪風「えぇ……。しれぇに影響されたのかなぁ……」

・・・・

提督「……ィクシッ! 夜風は存外冷えるもんだな」 
562 :【72/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/08/09(日) 23:49:03.02 ID:l5g351Z90
赤城に呼び出された翌日にその足で手取提督は呉鎮守府を訪れた。井須提督とは既に話を済ませた後のようで、今は鎮守府内の客室で響と面会している。

提督「久しぶりだな。……こちらも余裕が無いので、あまり長い時間は居られんが。折角なので少し話をしに来た」

響「随分と待ったような気がするよ。もっとも、これ以上待たされるようであればこちらから引きずり出すつもりで居たが」

提督「さて本題だ。お前たち呉と横須賀の艦娘のほとんどは次回の大規模作戦に出撃する」

響「……ああ、それか。実を言うと、これから君が話そうとしている内容は比叡から既に聞いている。
赤城から話を聞いた金剛の比叡の話だから、又聞きの又聞きになるのかな? 多少歪曲しているかもしれないが」

赤城は自分の同僚である加賀や、後輩であった二航戦・五航戦、そして以前自分の下を訪れた金剛に召集に関する補足の情報を伝えた。
内容は、召集には手取提督も応じるということ、やがて艦娘同士での争いが始まるようになるということ、手取提督はそうなる前に手を打つつもりだということの三点である。
赤城からの話を聞いた金剛は、まず比叡に連絡を入れた。現役の艦娘である比叡は元艦娘の召集があるということさえ知らなかったようなので、最初にそのことから話した。

響「元艦娘の召集があり、それが行われるのは私たちが次の大規模作戦時なんだろう」

金剛は、艦娘同士の戦争が起こると比叡に伝えた。だが、比叡はそれを信じる気にはなれなかった。
所属は違えど今まで幾多の戦場を共にした者同士で争いを始めることなどあるだろうか?
たとえ実の姉の言葉であっても、何かの間違いに違いないという確信が彼女の中であった。
そう考えたからこそ、自分の抱いた疑念ごと響にそのまま伝えることにしたのだった。

響「私も比叡の意見に賛成だ。その一点だけは俄かに信じがたくてね。直接そういう事象が起こるのを目の当たりにしない限りは信用出来ない」

響「というのもだ。私は君の智慧と才気に関しては全幅の信頼を置いているが。君の立ち位置に関してはいまいち信用することが出来ないでいる。
結局のところ君は大本営の使い走りだろう? 君が動かざるを得ないのっぴきならない事情があるのではと勘繰っている」

響「そもそもだ。今の君の行動は、本当に君の意志によるものか? 純粋に君の目指しているものがそこにあるのか?
艦娘同士の争いを防ぐ術というのが具体的にどういうものかまでは分からないが、仮にそれがあったとして、君は本当にそれを成したいと思っているのか?」

響「君にとって艦娘とは何だ? 私とは何だ? 利用価値のある駒か? 守りたい存在か? 仮に私たちが争いを始めたところで、それが君の利害にどう作用する?」

提督「質問攻めだな……要点を絞ってくれ。何が聞きたい」

響「いや、回答を期待したものではない。少し興奮してしまってね。気にしないで欲しい」

響「ただ……かつての君では考えられない動きだったから、そこが少し気になった。君の行動原理が知りたいだけなんだ」

提督「そうだな。では答えよう。別に艦娘を救う救世主を気取っているわけではないし、実のところ艦娘のために動いたところで特に俺の目的とは関係ない」

提督は響に対して召集の目的は艦娘を宇宙船で別の星に移住させる計画をしていること、仮説通りならそれで艦娘同士の衝突を避けられるのかもしれないという話した。

響「そうか。君はこの地球を去ろうというのだな……その行為自体は君の望みか? それとも、それも艦娘のためなのか?」

提督「いいや。それは俺の目的だ。自分とは何者なのか? この宇宙とは何者が創ったのか? この世に生命が生まれ出づるその意味とは?
俺は自分の知識欲を満たしたい。だが、この地球は俺の欲望の容積を満たすには狭すぎる。だからここから離れて、俺が万物を理解するための『真理の箱庭』を創り出す」

響「ハッハッハッ、狂ってる……ハハッ、ァハッ! フ、フフ……。ハァ……これは驚いた。いや、見事だ。痺れたよ。流石というべきだね」

響(どうにも毒気が抜けた印象があったが……やはりこの人はナチュラルに狂っているんだな。背筋がゾクゾクする。それでこそ、だな)

提督「艦娘に関しては、正直のところついで程度にしか思っていない。
この地球に場所が用意されていないのなら、俺が用意してやろうという程度だな。強いて言うなら親切心といったところか」

響「ふふふっ、司令官からまさかそんな言葉が出てくるとは思わなんだ。ただ、そうだな。君らしい、実に君らしいな」

提督「そういうわけだ。……さて、もうじきここを離れなくてはならん」 腕時計を一瞥する提督

響「そうか。名残惜しいが仕方ない。……わざわざ私一人にこうして時間を割いたということは、力を借りに来たという解釈で合っているかな」

提督「もちろん。では解答を聞こうか」

響「さっきも言った通り、私は艦娘として比叡の意見を信じていたい。けれど……それとは関係なく、君の野望に興味を持った。協力させてもらうよ」

・・・・

呉鎮守府 艦隊会合室

比叡「手取司令と会ってきたんですねー」

響「その通り。顔に出ていたかな?」

比叡「顔には出てませんけど……その上機嫌っぷりを見れば分かりますって」

響「まあ、ね。やっぱり彼は素晴らしいよ。話していて心が躍ったんだ、長らく忘れていた感覚だよ」

比叡「はぁ……そうですか。で、これからどうするんですか?」

響「彼のあの目は、もうゴールを見据えている目だ。私が協力してやるまでもないだろう。きっと自分の思った通りのことを成し遂げるさ。
だが……私は彼の役に立ちたいと思う性を抑えることが出来ないんだよ」 キラキラ

比叡「ゾッコンですねぇ。……ん?」

比叡(今、響の艤装がなにやら黄色いオーラを纏っていたような……? 気のせい??)
563 :【73/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/08/09(日) 23:56:11.98 ID:l5g351Z90
清霜「どうって言われても……行くしかないでしょ。このままバックれるわけにも行かなくない、ねぇ?」

足柄「大淀は本当にそれでいいの? わざわざこんな立派な事務所まで立てたのに」

書類を整理しながら召集の件について話し合っている清霜・足柄。大淀は事務所に届いた大きなダンボールを慎重に運びながら足柄の問いかけに返事する。

大淀「? 別に構いませんよ。軍に呼ばれているのなら行くべきでしょう。私たちはまだ艤装を解体されていない以上、厳密には艦娘ですし」 ヨッコイショ

足柄「いやあ、でもわざわざ召集するぐらいだから軍に戻れぐらいのことは言ってくる可能性が高いんじゃない? そうなった時のこと考えてるわけ?」

大淀「もちろん考えてますよ。というか、そうなることを予期しています。軍に戻れと命じられることは無いと思いますが、それクラスの話はされるでしょうね」

足柄「大淀。あなた例の事件の弁護が終わった後もちょくちょく大本営に行ってるみたいね。ちょっと情報共有しなさいよ、事の全容が見えてこないわ」

大淀「あの事件のおかげで大本営には恩を売れましたからね。私なりに色々と気になることを調べて回っていたのですよ。で、知ったことは、これです!」

清霜「おかげってさあ……。ところで、なあにこれ? 『月面移住計画』……?」

大淀がテーブルの上に置いたのは、ロケットの図面が描かれた資料だった。

足柄(まさか……?)

大淀「運用コストの観点から、現在の艦娘を養っていくのは困難なようです。
今まではそれでも深海棲艦を倒さなければなりませんでしたから、無理に無理を重ねて燃料等を捻出していましたが……いよいよ限界だ、とのことです」

清霜「うん。そういう理由もあって例の軍縮があったんだよね。それでもダメだってこと?」

大淀「はい。これは大本営の地下施設で撮った解体待ちの艤装の写真です。幾つか、赤い光を帯びている艤装が見えますよね?」

清霜「これは……なんか、深海棲艦の纏ってるオーラと似てない? 赤いやつ……elite種だっけ?」

大淀「そうなんです、まさにその通り。この状態はまだ第一段階ですが、黄色、青色と変色していくようです。ちょうどMI作戦の後から確認されるようになった症状らしいです。
状態が遷移するごとに艤装の持ち主である私たちの精神や肉体もよろしくない方向に変調していくようです」

足柄「青色になるとどうなるの? 深海棲艦にでもなるのかしら」

大淀「近いですが……完全にそうはなりません。深海棲艦と違って人に危害は加えませんから。攻撃の対象は艦娘です。
MI作戦終了後に、既にいくつかの鎮守府ではそういう事件が起こっていたようで……。鎮守府を横須賀と呉の二つに集約したのは、混乱が各地に散らばるのを防ぐためだったようです。
幸い二鎮守府でそういうケースはまだ起こっていないようですが……。赤や黄色の光を纏った艤装を装備している艦娘が発見されてはいるそうです」

大淀「で。本題はここからです」

ダンボールの封を開けると、中に入っていたのは赤色の光を放つ艤装。

大淀「これが私たちの艤装です」

絶句する足柄と清霜。

大淀「残された時間はそんなに残っていないようです。この事務所は畳んで、手取提督の指示に従います」 スチャッと眼鏡をかけ直し、艤装を身に着ける大淀

足柄(手取提督? どうしてそこであの人の名前が……?)

大淀「そりゃ、名残惜しいですけど……そうも言ってられませんからね」

足柄「この赤いのをどうにかする方法は無いのかしら?」

大淀「地球外の環境を再現した部屋では艤装の変質が緩やかになるという実験結果が出ているそうです」

足柄「……! 道理でね。なるほど合点がいったわ」

大淀「提督が開発していたロケットで艦娘たちを月まで連れていく……という算段だそうで」

清霜「なるほど! だから明日艦娘をひとまとめに集めようとしているわけね。でも、この艤装は何のために?」

大淀「私たちヴェアヴォルフに与えられたラスト・オペレーション、といった所でしょうかね」

・・・・

足柄(海を走るこの感覚も随分久しぶりに感じるわね。半年も経ってないはずなんだけど)

東京にある大本営で艦娘の召集が行われた後、他の艦娘たちは旧佐世保鎮守府へと集められたようだ。
一方足柄ら三名は海路を突き進みステビア海方面へ向かっている。

清霜「『黄色い艤装の艦娘』が要注意なんだよね」 無意味に双眼鏡を覗いている清霜

大淀「はい。『青色』になって即座に味方を襲うようになるというわけではないみたいですが、注視が必要ですね」

足柄(ステビア海に結集した深海棲艦を倒しに横須賀・呉の連合艦隊が交戦しているらしく、その戦いの様子を監視して提督に報告するというのが今回のミッション。
この作戦が終わった直後に、戦闘から帰還した艦娘たちも連れてロケットで宇宙へ向かう。って……イメージ湧かないわねえ)

足柄「ま……これで最後みたいだし、派手に暴れさせてもらおうかしらね!」

大淀(今回は暴れてもいいとは言われてないんですけど……まあいいか)
564 :【74/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/08/10(月) 00:02:51.00 ID:Mkhw/ZdS0
猛烈な勢いで軽トラックを疾走させる提督。助手席には皐月が座っている。

皐月「あと二軒だよ! 頑張れ司令官」

陽炎「ちょっと! 軽トラックでドリフトって何考えてんのよー!」

皐月「それだけ急いでるんだってば。文句言うなー!
それに、書類上は解体扱いなのに艤装を残したままだなんてめんどくさいことしてる方が悪い!」

提督(うちも龍田らの例がある以上、人のことは言えんのだがな……)

・・・・

話は一日前に遡る。大本営に集まった艦娘たちに説明を済ませ、提督もまた艦娘たちと共に佐世保へ戻った後のことだ。

提督「さて。なんとか佐世保に戻って来れたな。呉の方には話を通した。
あとは明日横須賀のを説得して、ステビア海攻略作戦完了を待って、ようやく終わりか……前者が厳しいな」

皐月「司令官、大事な話があるんだ。聞いて欲しい」

提督「ああ、皐月か。すまんな……卒業させてやれなかった。事情が事情なだけに仕方ないんだ。許してくれ」

皐月「うん。クラスの皆にさよならも言えないままお別れなのは寂しいけど……それより、もっと大事なことを話さなきゃいけないんだ」

皐月「ボクの通ってた学校に陽炎っていうのが居てさ。陽炎は艦娘なんだ。艤装は“書類上”解体されたことになってるけど、実際は横須賀に残ったままなんだ。
だから召集の知らせが届いてなくってさ……。陽炎も連れて行って欲しいんだ! クラスは違うし、腐れ縁だけど……ボクの友達だから」

提督「…………なぜそれを東京に居た時に言わなかった」

皐月「ごめん、突然すぎて頭から抜けてた……今になって思い出した」

提督「なるほど、それで横須賀の提督が事情を説明してなお動きたがらなかった理由か。お前のおかげで全て解決しそうだ」

提督「だが……お前のせいで俺はこれからとてつもない重労働を果たさねばならなくなった。貸し1だ」

・・・・

提督(これで『解体されたフリ』の艦娘もなんとか全員揃った。そのことを説明したらようやく横須賀の提督も佐世保に向かってくれたようだ)

提督(足柄の報告によると明日の昼にはステビア海の攻略に向かってた連中が戻ってくるらしいが……それまでにはなんとか帰れそうだな)

既に日は沈んで空には星が輝いている。高速道路を走っているにも関わらず、後ろの荷台にいる陽炎たちはグースカと眠っている。
艦娘の適応力や恐るべし。なお検問は荷物にカモフラージュして抜けてきた模様。

皐月「しれーかん。学校に行かせてくれてありがとう。ボクのわがままを聞いてくれて。卒業出来なくても、ボクにとっては良い経験になったよ」

皐月「皆、くだらない遊びに真剣になるようなバカばっかりでさ。でも、だからこそ楽しかった。あんな風に気ままに生きられたら楽しいだろうなって」

皐月「……これから先も、楽しく生きていきたいな」

提督「……」

皐月「ふぁあ、なんだか眠いみたい。考えてることがすぐ口に出ちゃうんだ。って……司令官の方がもっと眠いのか。ゴメンゴメン、気にしないで」

提督「寝てていいぞ。どうせまだかかる」

皐月「喋ってないと寝れない性質なんだ……もうちょっと付き合って」

提督(文月のやつも案外苦労しているんだな……)

提督「楽しく生きていたい、というのは気の持ちようじゃないか? どんな状況の中でも、楽しみを見出すことが出来れば充足感は得られる……と俺は考えている」

皐月「じゃあ、司令官は今楽しい?」

提督「……恐らくは」 ニヤリと小さく微笑む」

皐月「ふふふ……なるほど……。ボクも、司令官と一緒にいれば楽しいかもしれない……むにゃ」

提督「……」

・・・・

提督「着いたぞ……! どうにか、こうにか、というわけだ……」

磯風「ロケットの方はいつでも飛ばせるぞ。隕石か急降下爆撃でも振って来ない限りは問題ないだろう」

赤城「横須賀・呉に残っていた艦娘も揃っているようです。あとは、海域攻略部隊の帰投を待つのみです」

提督「よし! もう準備を始めて良い頃合だろう。動いてくれ」

皐月「んぁ……おはよう司令官」

提督「暢気なやつだなおまえは……」
565 :【74/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/08/10(月) 00:26:20.36 ID:Mkhw/ZdS0
猛烈な勢いで軽トラックを疾走させる提督。助手席には皐月が座っている。

皐月「あと二軒だよ! 頑張れ司令官」

陽炎「ちょっと! 軽トラックでドリフトって何考えてんのよー!」

皐月「それだけ急いでるんだってば。文句言うなー!
それに、書類上は解体扱いなのに艤装を残したままだなんてめんどくさいことしてる方が悪い!」

提督(うちも龍田らの例がある以上、人のことは言えんのだがな……)

・・・・

話は一日前に遡る。大本営に集まった艦娘たちに説明を済ませ、提督もまた艦娘たちと共に佐世保へ戻った後のことだ。

提督「さて。なんとか佐世保に戻って来れたな。呉の方には話を通した。
あとは明日横須賀のを説得して、ステビア海攻略作戦完了を待って、ようやく終わりか……前者が厳しいな」

皐月「司令官、大事な話があるんだ。聞いて欲しい」

提督「ああ、皐月か。すまんな……卒業させてやれなかった。事情が事情なだけに仕方ないんだ。許してくれ」

皐月「うん。クラスの皆にさよならも言えないままお別れなのは寂しいけど……それより、もっと大事なことを話さなきゃいけないんだ」

皐月「ボクの通ってた学校に陽炎っていうのが居てさ。陽炎は艦娘なんだ。艤装は“書類上”解体されたことになってるけど、実際は横須賀に残ったままなんだ。
だから召集の知らせが届いてなくってさ……。陽炎も連れて行って欲しいんだ! クラスは違うし、腐れ縁だけど……ボクの友達だから」

提督「…………なぜそれを東京に居た時に言わなかった」

皐月「ごめん、突然すぎて頭から抜けてた……今になって思い出した」

提督「なるほど、それで横須賀の提督が事情を説明してなお動きたがらなかった理由か。お前のおかげで全て解決しそうだ」

提督「だが……お前のせいで俺はこれからとてつもない重労働を果たさねばならなくなった。貸し1だ」

・・・・

提督(これで『解体されたフリ』の艦娘もなんとか全員揃った。そのことを説明したらようやく横須賀の提督も佐世保に向かってくれたようだ)

提督(足柄の報告によると明日の昼にはステビア海の攻略に向かってた連中が戻ってくるらしいが……それまでにはなんとか帰れそうだな)

既に日は沈んで空には星が輝いている。高速道路を走っているにも関わらず、後ろの荷台にいる陽炎たちはグースカと眠っている。
艦娘の適応力や恐るべし。なお検問は荷物にカモフラージュして抜けてきた模様。

皐月「しれーかん。学校に行かせてくれてありがとう。ボクのわがままを聞いてくれて。卒業出来なくても、ボクにとっては良い経験になったよ」

皐月「皆、くだらない遊びに真剣になるようなバカばっかりでさ。でも、だからこそ楽しかった。あんな風に気ままに生きられたら楽しいだろうなって」

皐月「……これから先も、楽しく生きていきたいな」

提督「……」

皐月「ふぁあ、なんだか眠いみたい。考えてることがすぐ口に出ちゃうんだ。って……司令官の方がもっと眠いのか。ゴメンゴメン、気にしないで」

提督「寝てていいぞ。どうせまだかかる」

皐月「喋ってないと寝れない性質なんだ……もうちょっと付き合って」

提督(文月のやつも案外苦労しているんだな……)

提督「楽しく生きていたい、というのは気の持ちようじゃないか? どんな状況の中でも、楽しみを見出すことが出来れば充足感は得られる……と俺は考えている」

皐月「じゃあ、司令官は今楽しい?」

提督「……恐らくは」 ニヤリと小さく微笑む」

皐月「ふふふ……なるほど……。ボクも、司令官と一緒にいれば楽しいかもしれない……むにゃ」

提督「……」

・・・・

提督「着いたぞ……! どうにか、こうにか、というわけだ……」

磯風「ロケットの方はいつでも飛ばせるぞ。隕石か急降下爆撃でも振って来ない限りは問題ないだろう」

赤城「横須賀・呉に残っていた艦娘も揃っているようです。あとは、海域攻略部隊の帰投を待つのみです」

提督「よし! もう準備を始めて良い頃合だろう。動いてくれ」

皐月「んぁ……おはよう司令官」

提督「暢気なやつだなおまえは……」
566 :【75/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/08/10(月) 00:28:10.67 ID:Mkhw/ZdS0
佐世保宇宙開発研究所、所長室(旧:執務室)。

足柄「こちら足柄! 敵深海棲艦はこの私が殲滅したわ! 艤装が青白くなってる艦娘も居ないわね」

提督「(交戦しろとは命じてないんだが……)ご苦労。ではそのままこっちに向かってくれ」

提督「フゥ……」

深い溜息をつく提督。

雪風「しれえ! いよいよ、ですね……!」

提督「ああ。なんとかなるもんだな……。全ての準備は整った。奴らが帰ってくるあと数時間で全てが終わる……」

隣にいる雪風を見る提督。

提督(いや、始まりと言うべきか。注力すべきはここから先であり、まだスタートラインにすぎない)

提督(時間で換算すればさほど長い期間では無かったはずなのだが……。随分と長い道のりだったな)

ソファに深く腰掛け目を閉じる提督。それが達成感によるものなのか、疲労感によるものなのかは分からない。

雪風「しれえ? ……寝てます?」

提督「いや……向こうに着くまでは寝るわけにはいかんよ。ただ……これまでを振り返って、長かったと思ってな。少し感慨が湧いただけだ」

雪風「そうですか。……あたしはあっという間だったなって思いました。
色んなことがあっという間に駆け抜けていって……ほとんどわけもわからないまま目まぐるしい移り変わりを体験して。
でも……司令の傍で過ごした日々はいつも楽しかったし、幸せだったなって思うんですよ」

提督「なるほど、雪風にはそういう風に感じるんだな。お前に限らず、俺の周りの人間は俺に振り回されてばかりだからな……」

雪風「あー、確かに……。でも、あたしは、司令に振り回されるの好きですよ。あたしだけじゃなくて、他のみんなも」

雪風「だって、しれえはなんでもやってのけてしまうじゃないですか。どんなに無茶苦茶なことが押し寄せても動じないっていうか。
しれぇのそういうところ、あたし好きですよ」

提督「……」

雪風(しれぇはこういう時はいつも黙っちゃうんですよね……どんなこと考えてるんだろ)

提督「お前は俺の傍に居て楽しいと思うのか。だが……それは本当に正しいことなのだろうか」

雪風「正しい、というのは?」

提督「俺は分からんのだよ。俺がお前たち艦娘やそれに関わる人間の人生を左右してしまうことが正しいことなのか」

提督「無論、自分の利益のためなら俺はお前たちを躊躇いなく利用してやる。
だが、これは俺の為にやっていることなのかお前たちの為にやっているのか分からんのだよ。
後者であるならば、本当にそれはお前たちの為になることなのか……? とな」

雪風「ためになるとか、ためにならないとか、そういうもんじゃないと思いますよ。
しれぇが皆のために尽くしたいと思うのなら、それは素晴らしいことじゃないですか。立派なことですよ」

提督「立派かどうかは問題ではない。利をもたらせるか……だ」

提督「いや、こんなことを考えること自体が俺らしくないのか?」

雪風「司令は変わったんですよ、きっと。今はまだ変化に気づいてないだけで。司令は、人の幸せを喜べる人になったんですよ」

雪風「自分が悲しくなくても、自分の周りで人が悲しんでたら悲しいんですよ。自分の周りで人が喜んでたら、嬉しいんですよ。
きっと、人と人とが分かり合うってそういうことだと思うんですよ」

提督(『人と人とは分かり合うことができる』……か。金剛もそんなことを言っていたか)

提督「あるいは……そうなのかもしれないな。そう、ありたいと思う」

・・・・

提督(いざ……)

雪風「艦娘の収容も済んでます!」

磯風「繋の最終調整も済んだそうだ。さ、行こう」

提督「ああ。この景色ともお別れか」

雪風「……少し、寂しくなりますね」

雪風「でも、寂しくならないように、向こうでもたくさん思い出を作りましょう」

提督「……そうだな」

提督と雪風は地球から見える空と海の景色を瞳の奥に残し、ロケットへと乗り込んだ。
567 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/08/10(月) 00:36:33.92 ID:Mkhw/ZdS0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~75/100)
・足柄の経験値+1(現在値26)
・雪風の経験値+2(現在値22)
・皐月の経験値+1(現在値12)
・響の経験値+1(現在値14)

・金剛の現在経験値:21
・翔鶴の現在経験値:15
----------------------------------------------------------------------

----------------------------------------------------------------------
『Phase B』【76-80/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
01〜12:雪風
13〜32:翔鶴
33〜50:金剛
51〜69:響
70〜79:足柄
80〜99:皐月
>>+1-5

よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらい眺めてなんとなくわかった気になってください。
(または>>495->>496あたりを見てわかった気になってください)
----------------------------------------------------------------------
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/10(月) 00:36:48.45 ID:/6I5xuDgO
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/10(月) 00:36:55.66 ID:e66UuDToO
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/10(月) 00:37:01.64 ID:6OfQZNYRO
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/10(月) 00:37:13.58 ID:CriKJgR9O
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/10(月) 00:37:22.62 ID:PHUKyXJJO
573 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/08/10(月) 01:10:14.89 ID:Mkhw/ZdS0
>>568-572より
・金剛1レス/響4レス(1レス)
で『Phase B』が進行していきます。
(合計値:295 なので『Phase C』は発生しません。>>569よりエクストライベントが発生します)

////チ////
夏イベは今日から……? E7まであるそうなんでなかなか厳しい戦いになりそうですね。
とりあえずピザ食べながら攻略頑張ろうと思います。
574 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/09/02(水) 22:03:41.91 ID:Miiu9cf90
次回の投下は9/4(金)を予定しております。
まただいぶ間が空いてしまいました。イベントがあったので仕方ないってことで許し……ダメ?


////今回のイベントの話////
ごく個人的な話をします。
ちょっと前ですがE7甲突破したんですけど……今回はその話題です。

いやあ今回は……壮絶な難易度でしたね。
13年夏頃から始めてて今ではランキングで一桁台を取ってるような知人が居るんですけど、その人でも甲は投げてたぐらいですからねぇ。
私の場合は運良くなんとか……と言っても運を時間でねじ伏せたと言った方が正しいですかね。

前日に3重キラ付け部隊を作りまくっておいてー、そこからローテーション用の予備戦力もキラ付けしておいてー、
0時ちょうどに起きれるように仮眠取っていざ決戦! って感じでした。
攻略にかかった時間は実質17,8時間ぐらいでしたかねー。
南逸れの絶望感と0時リミットによるプレッシャーののシナジー効果が半端なかったです。

倒した時はもう舞い上がっちゃって、友人にSkypeで通話かけて鬱陶しがられるほど狂喜乱舞してました。
ついに防空棲姫を大破まで追い詰めた状態で夜戦に突入するもカットイン要員が三人潰されて絶望的、資源も尽きたので再挑戦も困難、
残るは重巡一隻って状況からクリティカル連撃をキメられたらそりゃあもう有頂天にもなるってもんですよ。
あそこで倒せてなかったら最悪今もE7甲を攻略することになってたかもしれませんね……恐ろしい。

今は全難易度を甲で攻略したことをめっちゃ後悔してますね(掘りが辛い)。
いやね、E3でS勝利取れないんですわ本当に! ダブルクウボーバがいい感じに第二艦隊を苛めてきてですね……。
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/03(木) 10:24:30.90 ID:3jEDyiLSo
乙です
毎度思うけど執筆とイベ攻略とリアルを同時進行できる>>1には頭が上がらない
いつでも待ってます
576 :【76/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/04(金) 23:20:01.92 ID:AuTFT3KD0
『バビロン』。それがこの宇宙船に託した名だ。ああそうだ、説明するまでもない。由来はあの塔だ。
かつて人類が目指した神の国、その扉を叩くための塔――“バベルの塔”。もっとも、そこまで大それた目的ではないが……。
“バベル”の結末は知っている。だが、俺の計画を阻むような狭量な神であるならば。

……チェーンソーでバラバラにでもしてやろうか。

・・・・

『バビロン』、雪風に聞いたところ、メソポタミア地方の古代都市の名前らしい。
……メソポタミアと言われても、それがどこにあるのかは皆目検討つかないが。
司令官のことだから“バベルの塔”とでも掛けたのだろうか。そう考えるとなるほど合点がいく。

もしこのまま私たちが地球に残っていては艦娘同士の争いが起こるという。
私は未だにその話を信じてはいないが、このように艦娘の全てを一斉に集められては従うほかない。
まったく道理を無理で貫き通すのが得意な御仁だ。いや、彼の前では無理も無理でないのだろうか。

“バベルの塔”か。そうか……フフッ。
いや、実に彼らしいな。失敗が許されないここ一番でそんな名前を引っ張りだしてくるのか。
敢えて……にしても不遜だし、不吉だな。
だからこそか。だからこそ、なのかもしれない。

彼の目指す『真理の箱庭』というものが具体的にどんなものかは分からない。
だが、もしこの世に神が居るのなら。彼はその神に限りなく近づこうとしているのだろう。
彼の歩むその道は、希望なのか破滅なのか……。

・・・・

ここがどこだか分からない。何も見えない。感触もない。自分の体が棒立ちしているのか、横たわっているのかも分からない。ただ音だけは聞こえる。誰かが俺に話しかけている。

繋「結論から言うとね」

繋「計画は失敗した。設計は完璧だった、事故も起こらなかった。全てうまく行っていたよ」

繋「でもね、君の身体ではこの地球を離れることが出来ない。仮に宇宙アレルギーとでも名付けるべきかな。
地球から離れれば離れるほどに全身の細胞が癌化していってしまうようだ」

繋「君の肉体は君も知っての通り、艦娘たちが使うような高速修復剤によって保たれている。身体の全てが修復剤で出来ていると言うべきかな。
だから艤装をつけた状態の艦娘同様に心臓を貫かれたところで致命傷にはならず、肉体を再生不能になるレベルまで細切れにされるか、脳の大部分を破壊されない限り蘇生する」

繋「結果として何が起こったかというと……。君はバビロンで地球を離脱している間、幾度となく死に続けた。修復剤で完治した部分から癌で壊死していき、壊死した部分をまた修復剤が直す。
しかし、君の体内に血液のように流れている修復剤にも限りはある。あのまま月を目指していたら君の肉体も消滅していただろうね」

繋「だからバビロンは地球に戻った。そして今君は病室のベッドの上だ。君の“肉体”は」

提督「……どういうことだ?」

繋「君の肉体は半不老不死と言ってもいい、体内の修復剤の尽きない限りはね。だけど君の精神、いや君の魂はあの肉体から剥がれ落ちてしまった」

提督「幽体離脱、というところか。なら、肉体へ戻らねばならんな。俺はこれからどうすればいい」

繋「無いんだ。君はもう死んでしまった、だからもう……戻れない。かつて君であった肉体には別の魂が宿ることだろう。そうして手取哀として生きていく」

提督「なんだと……なら、俺はどうなるんだ?」

繋「数日で消滅する……少なくともこの次元ではないどこかに行ってしまうだろう」

・・・・

『バビロン』を降りた後、艦娘たちはひとまず数ヶ所の施設に収容されたらしい。しかし私、Верныйは脱走し、司令官と直接会える機を伺っていた。

『バビロン』は一瞬だけ地球を脱すると、Uターンして再び地上に戻ってきた。
特に問題なく発てていたようだしあのまま月を目指すことは容易だっただろう、一体何があったのか。
他の艦娘は、突然の計画中止に不満を述べていたり、これから起こるであろう事態を不安がったりしていたが、私は忘れ物を取りに戻った子供のようで愉快だと思った。
何にせよ無事地球に戻ってくることが出来て一安心だ。……と、こんなふうに楽観視していられる状況ではないのだが。

響(地球の青さと、この光の青さはすこし似ているな……)

私の艤装からゆらゆらと立ち上る蒼い光。

響(司令官が言うには、このように艤装が青い光を纏うようになるとじょじょに自我を失っていくらしい。司令官はこれを仮に“半深海化”と呼んでいた)

本当だろうか? 私はこんなにも私だというのに。

響(とはいえ、こんな状況で他の連中に深海化の進行が最終段階であることを悟られてしまってはより混乱が深まるだろう。隠し通すわけにも行かないが……)

こうなってしまったら最後。他の艦娘か、あるいは同じように半深海化した者に艤装を破壊されるまで戦い続けなければなくなる……。
だが、なってしまったものは仕方がない。一度、司令官に会ってみよう。たとえ異形に身を落とす結末だったとしても、最後に彼を一言交わすぐらいは許されるだろう。

響(もっとも、そんな結末で迎え入れるつもりはないがね)

拳を握りしめて、天を仰ぐ。……特にこの行動に意味はない。
ロケットに乗車した時は青空が広がっていたのだが、台風が近づいているのか暗雲が覆い尽くしている。
間もなく土砂降りの雨が降るのだろう。
577 :【77/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/04(金) 23:33:14.02 ID:AuTFT3KD0
ここに居ても仕方がない。そう思った。だから兄さんに別れを告げて、俺は土砂降りの雨の中を歩いていた。
霊体といってもせいぜい扉や窓をすり抜けることが限界なようで、人に取り憑いたり空を飛んだりすることは出来ないらしい。
しかし雨に打たれても濡れたり風邪を引いたりする心配が要らないというのは少し便利だと思った。幽霊というのも案外悪くないのかもな。

俺の魂というのは俺の肉体が滅びるたびに入れ替わるらしい。ハードが代わればソフトも代わる、ということらしく。
故に、手取哀の肉体には俺ではない別の精神が宿り……そいつが手取哀として生きていく。肉体に宿った新たな精神は生前の俺をもとに形成されているようだが。

俺をもとにして生成された、より手取哀に相応しい人格……か。

仮にそうだったとして、そうであるならば。
半ばで途絶えた俺の人生は、手取哀としての資格を失った俺としての人生は何の意味があったのだろうか。
『真理の箱庭』は未だ遠く、艦娘らを呪縛から解き放ってやることすら出来ず。ただただ理不尽に幕を下ろされてしまった。
結局のところ、始めから何もかも間違っていたのかもしれない。

……何のアテもなく嵐吹く夜道を彷徨っているわけではない。
この雨雲では、月の光も星の光も届かないはずだ。にも関わらず空から落ちていく、仄かな光。
今にも消えてしまいそうな小さな光だったが、今の俺はそんな小さな光にさえも意味を見出さずにはいられなかった。

・・・・

海風が吹き荒れる薄墨色の世界に似つかわしくない、色白の女性。ひどく負傷し疲弊しているようで、このまま死んでしまいそうだ。

??「ァ……」

兄さん――いや、死んでしまったのならもう俺の兄とは呼べないのか? 繋と名付けられたスーパーコンピュータは、その内部機構に更に量子コンピュータを内臓している。
スーパーコンピュータによって観測した情報を量子コンピュータ内で処理し、処理内容を再びスーパーコンピュータ部分で処理するというものだ。
霊体の俺を観測出来たのも、『目に見える観測結果から目に見えない情報を暴き出せる』量子コンピュータの性能の賜物なのだろう。
それはそれとして……どういうわけか目の前のこいつも俺を認識できているらしい。見るからに俺に向けて助けを求めているようだ。

??「助ケテ……」

提督「(助けようにも、触れたものがすり抜けてしまうんじゃどうしようもないな……)この近くに雨風を凌げる洞窟がある。そこまで案内してやるから自力で歩け」

鎮守府近海に発生する渦潮に関する研究をしていた時に利用していた洞窟だ。それっきりもう使っていない場所だが、まさかこんな形で役に立つとはな。

……洞窟に入って一つ気づいたことがある。俺が案内したこいつは泊地水鬼という種類の深海棲艦だ。
こいつが洞窟内を照らすために使っているのは通称“たこ焼き”と呼ばれる強力な深海製艦爆で、艦娘たちからは忌み嫌われる恐ろしい武装だ。
間違いなくこんなところに連れてきてはいけない危険な存在だったのだ。もし俺が生きていたのなら艦娘を呼んでただちに始末させていただろう。

深海棲艦には二種類あって、我々の領海に攻め入ってくる攻略部隊と、自分たちの本拠地を守る守衛部隊だ。泊地水鬼はその守衛部隊のボス……なのだが、どうしてそんな奴がこんな所に?
“鬼”や“姫”クラスが護衛もなくこんな近海までやって来るなど聞いたこともない。いかに強い固体といえど、単騎でノコノコやって来れば返り討ちに遭うのは目に見えているからだ。
そんな愚を犯すほど深海棲艦はバカではないだろう、“水鬼”と呼ばれる最上位種ならなおさらだ。
それに、そもそも“泊地”の名を冠する深海棲艦は持ち場から離れることは決して無いはずなのだが……疑問は尽きない。

提督「俺が見えているということは、多分今のお前は生と死の狭間に居ると推測できる。だが、まだ肉体を自らの意志で操作できるという時点で生の側に傾いている。
だから俺は生きているお前に質問をしたい。気になることは色々あるが……そうだな。どうしてお前はこんなところに一人でやって来た?」

泊地水鬼「空ヲ……コノ空ヲ、自由ニ飛ビタカッタノ」

・・・・

なんとか研究所に潜り込み情報を集めたところ、司令官は『バビロン』船内で何らかの理由で重傷を負ったということが分かった。
どうにか生き残ったらしいがまだ意識は回復していないらしい(「肉体欠損率」とか「ゲル状」とか不穏当なワードが聞こえたのは気にしないことにする)。

逆に言うと、それ以外のことは分からなかった。聞き込みさえ出来ればもっと楽なのだろうが……。
半深海化が進行しているこの姿では見つかればただじゃ済まないだろう。既に艤装だけでなく、私の肉体の感覚も侵されはじめている。
手足は寒さを感じるのに、身体の内側は燃えるように熱い。風邪を引いて熱に浮かされているようだ。

響(野宿でもすればいいと思っていたが……こうも雨風が酷いとどこに居ても濡れてしまうな)

ぼんやりと輝いている艤装の蒼い光はまるで鬼火のようだ。どうあれこの光があればこの暗雲の中でも周囲を照らすことができる。

響「……ッ!」 見つめていた艤装の光よりも遥かに眩しい明かりに照らされて思わず目を覆う

暁「響! 響なのね!? 勝手に抜け出して行方不明だって聞いてからずっと捜してたのよ!? さ、戻るわよ」

人捜しのためにわざわざ探照灯を使うのか……。にしてもやけに雨合羽とビニール靴の姿が似合うな。

響「暁?(例の一件で解体されたはずでは……?)」

暁「月に行くとか、行かないとか、色々と唐突な話だったけど……。また響に会えて嬉しいわ。響はひょっとしたらそうは思っていないのかもしれないけど……。
とにかく、こんな所出歩いてたら風邪引いちゃうわよ。話はあと! 一緒に戻りましょ」

響「悪いが……それが出来たらしているんだ。ほら、探照灯を消して私の艤装を見てみなよ。……つまりそういうことだ。
このまま真っ直ぐ引き返してくれ。連れ戻されたところでこの姿じゃ何をされるか分からない。それに、私自身も何をするか分からない。
少しずつ身体に異変を感じているんだ。このままだと君さえも傷つけてしまうかもしれない」

暁「だったら。私も響と一緒にいることにするわ! このまま響を一人にしておくなんて、レディの流儀に反するもの!」

響「おいおい、君は何を言ってるのか分かってるのか? 危険だよ、私が本気を出したら君なんて一撃でやられてしまうだろ?」

暁「曲がったことが嫌いな響が、何も悪いことをしていない私に対してそんなことするはずないじゃない。平気平気」

暁「……それに、話したいこともたくさんあるから」
578 :【78/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/04(金) 23:49:20.85 ID:AuTFT3KD0
提督「呆れたやつだな、台風に乗って空を飛ぼうとして案の定死にかけるとはな……。危うくダーウィン賞深海部門の候補入りするところだったな」

泊地水鬼の話を聞いて溜息をつく提督。呼吸する必要のない彼がわざわざ息を吐き出す素振りを見せたのは、失望と嘲笑の表現なのだろう。

提督「それで、飛べたのか? 空は」

泊地水鬼「一瞬ダケダケド……。トテモ気持チ良カッタ」

提督「……そうか、良かったな」

泊地水鬼「哀シイノ……? ドウシテ……?」

提督「少し思うところがあっただけさ。それはそうと、深海棲艦のくせに人間の顔色を覗ったりなんて出来るんだな。
そもそもお前たちに感情なんてものがあるなんて聞いたことがないんだが」

泊地水鬼「ニンゲンニ話シテモ、伝ワルカドウカ分カラナイケド……、助ケテクレタカラ……」

・・・・

泊地水鬼曰く。

かつて艦娘と深海棲艦は同一のものであった。人間を見守り、救い、導く存在……まさしく『天使』そのものだ。
人間を神に近い高位の存在へと押し上げることを目的とした天からの使者、そして神の忠実なるしもべである。

ある時、神に背く天使が現れ始めた。人に肩入れしすぎた天使は、禁じられた天上の叡智“火”の力の一部を授けた。『プロメテウスの火』……古代の神話にも似たような逸話がある。
神にとってそれは看過できない事態であった。なぜか? 話は人間という生命体の誕生にまで遡る。

地球を支配する神と呼ばれる知的生命体は、もともとは火星で暮らしていた生物であった。
遥か昔の火星は地球と同様に海が広がり緑が栄える惑星だったのだ。しかしある時“旧支配者”と呼ばれる、外宇宙から飛来した生命体の襲撃を受ける。
対する“旧神”(火星の知的生命体のことを指す)はこれを退けるも、火星に存在するありとあらゆる資源を使い果たしてしまった。
そこで旧神は地球に根を下ろして住みよい環境を創造していった。また、自らの種の保存のために旧神は地球固有の生物に自分たちの遺伝子を交配させて繁殖させた。
これがこの地球における生命の始まりであり、そしてこの神と獣の末裔こそが人間である。

人間はじょじょに“感情”という強力な武器を身につけていった。そう、地球上の生き物の中でもとりわけ人間という種類は“感情”の力を多く持っていた。
これはかつて自分たちを追い詰めた旧支配者も持っていた特長であるため、人間が力をつけ過ぎないように旧神は“天使”を生み出した。
だが……冒頭で述べた通り、大半の天使は人間の側に寝返ることになってしまう。人の持つ感情の力に魅了されたからである。人の持つ感情の動きに憧れたからである。

そうして天使は自らの根源である“火”の力を授けたのである。“火”とはすなわち物事を動かす力である。
“火”とはなにも力学的エネルギーや物質的な豊かさだけとは限らない。より善くあろう、高みを目指そう、何かを成し遂げようという向上心や意志もまた“火”の一部なのだ。
“火”の力と天使の協力を得た人間は神に反旗を翻し……艱難辛苦を乗り越えて勝利を収めた。

しかし、だからと言って人間側が手放しで喜べるような結果では終わらない。まず第一に、人間と違って完全に神の被創造物である天使は呪いをかけられてしまう。
これこそが深海棲艦化である。肉体が変質し、人間や他の天使(=艦娘)に害を成すようになる。そして感情を失う。
感情を失ってしまうからかつての同胞や愛していた人と対峙しても容赦なく攻撃できる。これが深海棲艦の原則。

提督「原則、ということはお前は例外らしいな。にしても、羽も無いのにどうして空を飛びたいと思ったんだ?」

泊地水鬼「アノ戦艦ヲ貫イタ翼……トテモ速ク飛ンデイタ。空ヲ泳グ魚ノヨウダッタ……。ワタシハアレヲ見テ……“憧レ”トイウ感情ヲ得タ。羨マシイト思ッタ」

提督(まさか、皐月や文月らと乗っていた『イカロス』じゃないよな。“艦載機でもないのに空を飛んで戦艦を貫いた”って、そうと言えばそうであるが……。
あれは飛行というよりは滑空だし、墜落した位置にたまたま戦艦棲姫が居ただけなんだよな……)

どうにも、こいつのような人型を保っているような上位の深海棲艦は完全に感情を失ったというわけではない、ということらしい。
『感情を失う』という呪いに対抗するために、無意識下に“火”――意志の力で感情を持ち続けようとしているようだ。
もっとも、こいつの場合は例外的に憧れや希望を手に入れただけで、他の連中は憎悪や絶望という感情で自身を塗り固めているそうだが。
しかし、これならあるいは……?

提督「なぁ、泊地水鬼。俺と取引をしよう。もし俺の提案を飲むのであれば、こんな暗い夜の空じゃない、青空の雲の上に連れて行ってやるさ。約束する」

泊地水鬼「トリ、ヒキ……?」

・・・・

暁「私ね」

暁「響に嫉妬してたの。でもね、それは間違ってるって自分でも分かってた。
響はずっと積み重ねてきてて、その間私は何もして来なかったから。楽して良い思いをしたいなんて、キリギリスと一緒よね」

響「私はアリか。ふふっ」

暁「でもね。あれから時間が経って……私も響に憧れるようになって。だから手取司令官にお願いして、横須賀の鎮守府に回してもらったの。
響が私の手の届かない所に居るのは分かってたけど、それでもいつか一緒に並んで立てるようにって……」

響「分かるさ。努力してるんだろう? 君の持ってる装備を見れば分かる。それだけ上等な武装が与えられるぐらいには積み重ねてきたってことだろう」

暁「ううん、まだまだ足りないわ。前に進めば前に進むほどに、積み重ねれば積み重ねるほどに溝の果てしなさを感じるの。
昔の私だったら、その差を見て自分は絶対響には敵わないって思ってただろうし、ひょっとしたらそれは本当のことで、この先響に追いつけることなんて無いのかもしれないけど……でも。
それでも響のことが羨ましくて仕方ないの。戦艦や空母の人が相手でもふてぶてしい態度を取れるハートの強さと、その言動に相応しい実力と。
響が凄いのは分かってるけど、私だってそれぐらい強くなりたいわ。戦闘だけじゃなく、本当の意味で強くなりたいって思うの」

暁「だから……嫉妬したり差を嘆いたりするんじゃなくて、前に進もうって思うの、前に進みたいの。たとえ私が一歩進んだときに響が更に先に進んでいたとしても。
私が今よりもっともっと速いスピードで進めば、距離は縮まるはずだから!」

響(またいつか……四人で笑える日が来るのかな。私は、やり直せるのかな……)
579 :【78Ex/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/05(土) 00:07:11.93 ID:cwZfD60x0
響「私の話もしようか」

響「暁も知っての通り、MIで戦いを終えてから私は呉に移ったよ。外様にしてはそこそこ上等な扱いを受けているかな。私からすれば予定調和に過ぎないけれど」

響「ただ……満たされないね。やはり私にとっては彼しか居ないんだよ。彼のもとでなければ、どれだけ上に昇っても意味がないんだ」

響「別に、呉の提督が悪いと言っているわけじゃない。才知や力量差の問題じゃなく、気質の問題なんだよ。
呉のは彼ほど才覚があるわけではないが能力的には十分力のある人物だし、彼よりも遥かに人格者だ」

響「けれど、彼は……手取司令官は果てしなく大きな欲望を抱えている。彼はまるでブラックホールのようだ。
時間が経てば経つほどに望みは広がっていき、やがては周りにいる私たちさえもその欲望の渦に巻き込まれてしまう」

響「彼の傍に居ると、どうにもおかしくなってしまうんだ。私もそうだし、彼の近くに居た他の艦娘もそうだ。
彼の狂おしいほどの熱量が伝播してしまうんだ。他の人からしたら考えるまでもなく諦めてしまうような状況を前にしても、彼は苛烈な熱狂を以って突破してしまうんだ。
何がなんでも自分の思い通りにするという圧倒的に強い意志。そして最終的には本当に何もかもを自分の思い通りにしてしまうだけの才覚。
彼のあの狂気じみた執念と覚悟が傍で感じられたからこそ、私も快感を得ることが出来たんだ」

響「だから私は。たとえ異類に身を落としてもなお、彼の傍にあり続けたいと思う」

暁(昔の私だったら、響のことを心配していたのかしら。狂気に身を落としていくさまを諌めたのかしら。でも、今は)

暁「私も……響の傍に居たい。きっとそれは、響が司令官の近くに居たい気持ちと同じなんだと思う」

暁「期待に胸が高鳴るの。私の横に響が居て、もしかしたら雷や電も居たりして。
響と一緒に居たら、これからものすごく危ない目に遭うかもしれないって頭では分かってるのに、怖さよりも興奮の方が勝るの」

響「Хорошо!」

暁の発言に、歓迎するかのように手を差し出す響。固く握手する二人。深海化が進んでいるのか、響の片方の目は紫色に変化しているようだった。
それでも暁は全くたじろがなかった。むしろ、響のどこか満足げなニヤケ笑いを見て、つられて微笑んだ。

暁「は、はらしょ?」

響「いや、ちょっと感極まってしまってね。嬉しいんだ」

響(結局のところ、私は、ただ自分の熱意に見合った友人が欲しかっただけなのかもしれないな。
だからこそ以前は信念のない暁たちがとてもつまらない存在に思えたし、司令官が魅力的に思えたのかもしれない)

響(私は、自分と同じ場所で遊んでくれる遊び相手が欲しかっただけなのかもしれない)

響(司令官……彼の存在は、私には少し遠すぎる。追いかけても追いかけてもどこかへ行ってしまおうとする蜃気楼のようだ。呉に来てからというもの、ずっとそんなことを考えていた。
彼には彼の使命があるのだろう。彼は自分の理想と他者との二つであれば天秤にかけるまでもなく前者を選ぶ男だ。詮無きことと分かってはいたが、彼の居ない日々は心底退屈だった)

響(しかし、ようやく今。私にとって最高の遊び相手が出来たのだろうということを強く予感している。暁の真剣な眼差しが、私にそう予感させている。
彼女は間違いなく私の熱意に応えてくれるのだろうという予感だ。昔のように、もう二度と遠巻きから冷めた目で私を見ることはないのだろう。
なぜなら彼女ももはや“こちら”側……私と同じ、司令官と同じ狂者への道を決意したからだ。してしまったからだ)

響「奇妙なものだな……。こうして振り出しに戻るのか。だが、悪くない」

・・・・

提督「泊地水鬼の傷はどうだ? ステビア海海戦でボコボコにやられた後に空を飛べると思って嵐の中を飛び立つ程度にはバカなので、死んでいないか心配なのだが」

繋「(ひどい言い様だ……)大丈夫、回復傾向にあるよ。それにしてもとんでもないゲストを連れてきたよね……死してなお、君らしいというか」

提督「ハッハッハッ。そうだろう? タダでは死なんさ、俺はな」

繋「でも、だいぶ落ち着いているんだね。なんだか安心したよ。……もう、すぐなんだろう?」

提督「隠しとくつもりだったんだがな、バレてるのであれば仕方ない。そう、もう間もなくタイムリミットだ」

繋「何か、新しい君に伝えておくべきことはあるかい? メッセージとか、アドバイスとかさ」

提督「ない。泊地水鬼が生きてるなら、後は取引の通り動いてくれるだろうからな」

繋「驚いた……! 本当にまったく未練がないんだね。悟り済ました、穏やかな感情が伝わってくるよ」

提督「こうして途中で死んでしまった俺も、その前に死んでしまった俺も、その前の前に死んでいった俺たちも……無駄死じゃないと分かったからな。
死んでしまった俺と、今の手取哀とはよく似た別人なのかもしれないがそれは些細な問題なんだ」

提督「未来に“火”を託したんだよ」

提督「意志の炎は、勇気や覚悟などの強力な力と引き換えに身を焦がしていく。その火に魅せられて、道半ばで完全に燃え尽きてしまったのが俺なのだろう。
だが。途中で燃え尽きてしまったとしても。自分の抱いていた願望や意志、信念を誰かに託すことが出来たなら、“火”は消えない。
多くの者に託すことが出来たのなら、今の俺が一人で抱いていたものよりも“火”は肥大化するだろう」

提督「俺の想いは、次の俺と兄さん。二人に託すんだ。だから次はもっと上手くやれるだろう。俺はそう信じている」

提督「おっと、話せるのはどうやらここまでみたいだな……それじゃあ。そうそう、最後に。兄さん、俺はあなたの弟で良かったよ。
あなたのおかげで多くの我侭を貫くことが出来た。それから、艦娘の連中にも感謝しなければ。今になって思えば、あいつらと過ごした日々も悪くはなかった。
本当に、幸せな人生だった。何も悔いはない……」

――僕の弟が最期に見せた表情は、笑顔だった。他の皆は“この手取哀”のことを覚えていないかもしれないけど。
僕だけは君のことを忘れない。僕は君の想いを無駄にはしない。
580 :【79/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/05(土) 00:23:54.05 ID:cwZfD60x0
繋(僕の弟は、数日前に僕が観測できないどこかに旅立ってしまったようで。世の中にこんなショッキングな出来事があるんだろうか。
彼は満足して逝ったようだが……やはり僕はまだ立ち直れないでいた。僕は所詮は人工知能で、この感情も実際の人間の真似事にすぎないのだが……)

といっても、このことを知っているのはこの世に僕一人だけだ。
泊地水鬼も最初に会った時の霊魂の哀君と、今手取哀の肉体に存在している魂との区別がついていない様子みたいだし。
雪風ちゃんや磯風さんにもこの話だけはやめた方がいいんだろうなぁ。

繋(前の前の手取哀……つまり、ついこの間別れた哀よりもさらに前に死んだ哀もいるんだよね……。ややこしい話になるけど)

繋(僕は、これまでの哀の死を観測することが出来なかった。だが、今回はそれが出来ていた。霊体になっていても彼を識別することが出来た。
恐らく、哀君が生前に僕を何度も何度も改修してくれていたからだと思うけど……)

繋(それが無かったら、僕も他の艦娘たちのように、死んだ彼と今の彼とを識別出来なかったのだろうか)

提督『弟の話を無視するとは今日は随分冷たいな』

“今の”手取哀からメッセージが届いていることに気づく。とりあえず適当に返事してみる。

繋「人工知能も時には哲学するんだよ」

提督『出鱈目な受け答えするな いいから人の話を聞け』

・・・・

研究所の所長室にて。

提督「……兄さん。すまん、その、なんだ」 ノートパソコン越しに頭を下げる提督

繋『あれだけ引っ張っておいて、“霊体としての記憶も引き継がれる”ってのはずるいと思うよ』

提督「いや。一応、精神は別物……だと思うんだが。正直断言は出来ない。ひょっとしたら同じかもしれん」

繋『えぇ……』

提督「と」

ドガァッ! とドアが蹴破られる。

金剛「提督ゥ!? ご無事デスカァーッ!?」

榛名「金剛お姉様、ここはもう危険です。提督を連れて逃げた方が良いでしょう」

霧島「しんがりはこの霧島が勤めます!」

提督「な、なな、何が起こってr」

激しい地響き。理解が追いつかない。

磯風「司令! どうにも深海化した艦娘との交戦がこの近くで行われてるらしい」

雪風「研究員の皆さんは避難してもらいました。私たちも逃げましょう」

・・・・

研究所付近の森。

提督「騒動は治まったらしいな……なんだったんだ全く」

金剛「ここまで来れば一安心デスネ……」

響「そうだね」

金剛「!? この艤装は……!」 臨戦態勢に移る金剛

提督「深海化の最終段階だな。だが、どうにも様子がおかしい。攻撃は控えろ」

響「研究所の近くで騒動が起こってたから、便乗して様子を見に来たら案の定アタリだね」

提督「響。一つ質問だ。お前は今何を思って行動している? 何の意図を持ってここに来た?」

響「君に会いに来た」

提督「金剛。武装を解いて良い。ここで戦えば俺は巻き込まれてしまうが、“半深海化”は人間を攻撃することは出来ない。
それに、こいつには“感情”がある。感情があるうちは、深海棲艦のように完全に制御が外れて暴れたりすることはないさ」

暁「研究所付近での騒動はその『完全に制御が外れた者』が出たせいで起こったみたいだけど」

提督「そうか……。もう猶予はないな。磯風、大本営の最後の力を使って全ての艦娘を召集かけることは可能か?」

磯風「ああ、今回の『バビロン』計画は表向きには大本営主導のものだからやれば間違いなく荒れるだろうが……一回きりならば」

提督「それで十分だ。後は、とりあえず資源でも武器でもなんでも、とにかく要る全部かき集めておいてくれ。無茶振りですまないが、今すぐにだ」

響(あぁ、このドタバタ感……。やっぱりここが私の居るべき場所だな)
581 :【80/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/05(土) 00:47:08.79 ID:cwZfD60x0
全艦娘らが集う中、提督は堂々たる態度で演説を始める。例の仮面を付け、今までで一番高慢な様子で、さも権威を振り撒くかのような様子で語る。

提督「『バビロン』出発前の集会で説明した通り。ここに居る艦娘らはやがてお互いでお互いを傷つけあうようになる。この地球に居ては深海化を完全に止める術はない」

だったらなぜ地球に引き返した、という旨の野次が次々と飛んでくる。心ない野次さえも鼻で笑う提督。

提督「……知りたいか? 本当に知りたいか? この俺が、直々に、説明してやらなければまだ分からないのか」 提督の放つ異常なオーラを前に野次が即座に静まる

提督「大本営もッ! 横須賀も、呉も! 揃いも揃って見事に無能だな。
お前たちは全員、全員俺の手のひらの上で踊らされていたのだからな。まったく愉快な連中だ、まったく取るに足らない連中だ!」

提督「この俺が慈善事業で艦娘を救おうなどと、『救世主』だの『神眼』だの……そんな聖者に見えたのか? 茶番はもはやこれまでだ。俺は俺の目的を果たさせてもらう!」

衝撃波が会場を襲う。泊地棲姫が空から舞い降りる。

響「では諸君、ご機嫌よう」 壇上に上がって煙幕を撒く響

・・・・

提督「さて、地の果てまで逃げるぞ」

響「良い演技だったね。ちょっと芝居がかりすぎなところはあったけど、背筋がゾクゾクしたよ」

提督「そうだろう? 俺もやってて少し楽しかった」

磯風「バカ言ってる場合か。今頃国中のお尋ね者だぞ。アテはあるのか」

提督「コイツと違って、無計画でこんなことをやらかすほど無謀ではない」

コイツとは、今猛烈なスピードで空を飛んでいる泊地水鬼である。彼女の身体にロケットのジェットエンジンを無理矢理搭載しているのだ。
かなり非人道的な行為に思えなくもないが、泊地水鬼曰く望み通りなのだから問題ない(はずである)。

提督「しかし……突貫で作ったシェルターだとなかなか厳しいものがあるな。防音性に難がある」 イタイ、イタイワウフフ

雪風「一応、泊地水鬼と私たちが乗ってるこのシェルターとの鉄線はかなり丈夫なんで、千切れることはないと思いますよ」

金剛(こいつら鬼デース……)

・・・・

フライト(?)から一時間後。南の島の無人島に到着する。

繋『今、地理的にはこの辺になるね』

提督「ふむふむ。なかなか悪くないな」

提督「ひとまず今日はこの島で過ごすことになりそうだな」 モウ……トベナイノヨ……ワカル、ネェ?

霧島「まさかの無人島サバイバル生活……この人数だと食糧も現地調達するしかなさそうですね……」

・・・・

金剛「人には食糧集めさせといて自分はサボりですカ」

提督「……」 夕日を眺めている

金剛「かもめのジョナサンって知ってますカ?」

提督「知らないな……」

金剛「ジョナサンっていう一匹狼ならぬ一匹カモメが居るんですヨ。ジョナサンは、餌を取るためだけに空を飛ぶ他の群れのカモメたちと違って、飛ぶことそのものに意味を見出すんですヨ」

提督「ふむ。飛び続けて、ジョナサンはどうなったんだ」

金剛「骨と羽根だけになって、群れを追い出されマス」

提督「そうか……カモメなのに犬死だな」

金剛「デモ。骨と羽根だけになってもジョナサンはずっと飛び続けたんデス。それで、光輝くカモメに導かれて高次の世界へと旅立つんデス」

提督「? 何が言いたい」

金剛「イヤ、テートクやハクチーを見てて思っただけデス。ビッキーもそういうとこあるカモ」

金剛「私たちは、群れからはぐれたカモメの集まりなのかもしれないって思ったんデス。だからワタシたちの艦隊名を考えたんですよ」

提督「一応聞こう」

金剛「カモメジョナサンズ」

提督「却下」
582 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/09/05(土) 00:54:23.72 ID:cwZfD60x0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~80/100)
・金剛の経験値+2(現在値23)
・響の経験値+9(現在値23)

・足柄の現在経験値:26
・雪風の現在経験値:22
・翔鶴の現在経験値:15
・皐月の現在経験値:12
----------------------------------------------------------------------

あーダメですねー文章から徹夜明けの疲れみたいなものが滲み出てますね〜。
無茶せず土日までにしとけばよかったかも……でも書いてて楽しかったっちゃ楽しかったです。
どう頑張っても鬱展開にしかならなくて3回ぐらい書き直したり書き直してなかったりしてます。
あんまり重い話にしてもアレなので(と言いつつも結構今回は色々考えてたりしますが)。

----------------------------------------------------------------------
『Phase A』【-85/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5


よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらい眺めてなんとなくわかった気になってください。
(または>>495->>496あたりを見てわかった気になってください)
----------------------------------------------------------------------
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/05(土) 00:55:16.34 ID:3P+EbgxVo
雪風
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/05(土) 00:57:31.64 ID:byB0+KMiO
雪風
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/05(土) 01:32:14.19 ID:oynZwfh+0
皐月
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/05(土) 01:35:30.97 ID:briVM6uRo
雪風
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/05(土) 01:36:55.25 ID:Uk7tCrE1o
雪風
588 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/09/05(土) 09:14:52.33 ID:cwZfD60x0
>>583-587より
・皐月1レス/雪風4レス
で『Phase A』が進行していきます。
(合計値:239 なので『Phase C』が発生します)

あ。次の投下でまとめて10レスにするか、次の次の投下で『Phase C』の5レスを投下することになるかは分かりませんが、
皐月や翔鶴あたりがメインのPhaseが発動します。これでだいぶ各キャラの数値的な偏りは解消されそう?

今回はアンケートで決定とかも特にせず、このまま100レス到達時点で一番値の高かった艦娘とのEDで〆ようとか考えてます。
ある程度ランダム要素が強い方が誰になるか分からなくて面白いかなと思いまして。
一方でそれはそれでどうなんだって自分でも悩んだりはしてますが……。
一応、誰とエンディングを迎えても大丈夫なように持っていくつもりではいます。



////攻略メモ////
瑞穂掘りから解放されました。
風雲はE7甲Yマスで掘ろうと考えてるんですけど、連合艦隊で1%未満のドロップ率を狙うとか瑞穂掘りとは別ベクトルで鬼ですね。
E6MZマスコースでも良いんですが、道中4戦してボスでS勝利とか支援出さないとまず無理そうだなあと。妖怪24隻キラ付けマンになるのはさすがに・・・。
589 :【81/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/23(水) 21:53:29.42 ID:Nwym7Ov90
パチパチと焚き火の炎が頬を染める、夜。

金剛「ほらァーもっと呑むデース! フフン♪」

口に酒瓶を突っ込まれる提督。 ※危険ですので絶対に真似しないでください

提督「がばばばボッ……オフッ、おフェッ……殺す気か貴様」

磯風「こんな時に飲んでいる場合なのか……?」

響「こんな時だからこそ、さ。大きな戦いの前にやるべきことと言ったらこれしかないだろう」 グビグビ

霧島「たしかに……もうこうなってしまった以上、私たちは好むと好まざるに関わらず一蓮托生。なら、お互いのことを信頼したいですね」

榛名「……成り行きで着いてきたとはいえ、奇妙な縁ですねぇ。でも、なんだか楽しいです! 榛名、今夜は飲みます!」

暁「そうね。……今はこの偶然に感謝したいわ」

チューチューとオレンジジュースを飲んでいる暁。

提督(なぜこいつはジュースで俺は酒瓶を口に投げ込まれるんだ……)

提督「あの佐世保の鎮守府で提督としてやり残したことは無いと思っていたが、一つだけ失念していたようだ。
この組織ぐるみでのアルハラ体質をどうにかしておくべきだったな……むぐぅ……zZZ」

金剛「寝るの早くナイッ!?」

響「そう、司令官はお酒に弱いからね。この間に好き放題飲み食いできるってわけさ」

磯風(大丈夫かこいつら……)

・・・・

提督(洞窟の入口で雑魚寝って……こいつらは原始人か。酒の臭気が蔓延しているな。
必要なものをありったけかき集めてこいとは言ったが、もっと明確に指示しておくべきだったな……)

雪風「あ! しれぇ。ご覧の通りみんな寝ちゃってまして……。雪風は昼夜逆転しちゃってて、寝れてません……」

提督「……ちょうど良かった。話がある、いいか?」

雪風「はい。なんでしょう?」

提督に連れられて暮夜の海辺を歩く。散歩とのことだ。
雲に覆われた空の中で差し込む半月の明かり。月明かりを反射した海面はゆらゆらとクラゲのように揺らめいている。

提督「何か違和感はないか? 俺は変じゃないか? 何かが違っていないか?」

雪風「? どういうことですかね……しれぇはしれぇ以外の何者でもないと思うんですけど」

提督「そうか……すまない、変な質問をした。個人的な相談なんだが。いや、相談でもないか」

提督「『兄さん』に生まれて初めて嘘をついた」

提督「たとえば、だ。昨日までの俺と今こうしてお前と対話している俺で違う存在だったとして、それをどうやって証明できるか?」

雪風「そんなこと、出来なくないですか? 見た目が変わってたり、言動が明らかに変わってたりすれば別ですけど……」

提督「その通り」

・・・・

提督「つまりだ。今の手取哀と、かつての手取哀で別の人格に摩り替わっている、ということだ。兄さんの前でこそ記憶を継承しているように振舞っていたが……嘘だ。
霊体のまま兄さんとした会話も、泊地水鬼と何かを約束した覚えなど無い。俺にあるのはあの宇宙船でただひたすらに死に続けた、地獄のような記憶だけだ」

雪風「じゃあ、どうやって知ったんですか? その……自分の幽霊? のことを」

提督「まず。再び意識を取り戻してからの兄さんの態度に妙な違和感を覚えた。それから兄さんの様子を探っていた過程で泊地水鬼に出会った。
……で、奴から“取引”の内容を聞いた。奴に空を連れて行く代わりに、俺らの駒として動くとな。また、深海棲艦であっても感情を持つことの出来る者もいるのだと知った」

提督「深海棲艦と交渉しようなど常識では考えられない愚行だ。奴らは感情を持たず、意志もなく、僅かな知性だけを頼りにただ人間に害を成す。
プログラミングされた機械のように、本能だけで空を飛ぶ虫のようにだ。だが……深海棲艦となっても泊地水鬼は空を飛びたいという憧憬の感情を持っていた。
感情は意志を生む。その意志に付け込んで取引した、だから手懐けることができた……」

提督「と後付で考えられなくもないが……こんなことをやってのけるのは俺以外に考えられない。
もう一人の俺がいるという前提のもと推測していって、あとは兄さんの前でハッタリをかましつつ情報を引き出した。これで答え合わせが出来た……という経緯になる」

提督「あの兄さんが俺の『全てを思い出したフリ』を疑いもせずすんなり信じ込んだのは……死んでしまった俺と今の俺が同一であることを信じたかったんだろうな。
まあそれに……“今までの”俺は兄さんに嘘をついた事なんて無かったからな。そこんとこも幸いしたのかもな」

不思議そうな目で提督の目を覗き込む雪風。

提督「お前なら、分かってくれそうな気がしただけだ。分かってくれなくてもいい。……そういうものだと受け止めてくれそうだと、そう思っただけだ。
たとえ魂が代わったとしても、俺は俺の役目を果たし続ける。俺は俺であり続ける。それが俺の意志だからだ」
590 :【82/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/23(水) 21:57:19.10 ID:Nwym7Ov90
朝日が昇ると同時に眠っていた艦娘は目覚めだし、その場で作戦会議が始まった。

提督「そう、今回のように泊地水鬼を使って叛乱を起こす前に説明した通り、感情があるということが肝だ。完全に自我を失ってしまう深海棲艦と、人型の深海棲艦との差はそこにある」

提督「完全に感情を放棄してしまうとあのように機械的で無機質な形状に変容してしまう一方で、強い感情を持ったままの深海棲艦は知性や意志もわずかに残っている。
これから半深海棲艦化していく艦娘らには敵意を植え付けることで、“感情”を与える。こうすれば、半深海化した状態でもヴェールヌイのようにうまく扱えるかもしれない」

響「じゃ……大本営が当初予定していたような、艦娘を片っ端から処分するようなことはせずに済むということかな?」

提督「いいや、それは希望的観測に過ぎない。半深海化した艦娘がどのような変貌を遂げるかは分からない。
ヴェールヌイ。お前が自我を保っているのは、まだ『お前の中にあるお前』の割合が強いからそうなっているだけだ。
感情の力で自我性を保っているだけで、それが何かの契機で途切れたりしてしまったら……どうなるかは予測不能だ」

響「こと私に関して言えば、その心配は無いと思うがね。ただ、確かに身体への影響は顕著に現れているね。
食事を摂らなくても全く空腹感がないし、水を飲まなくても喉が乾かない。……ウォッカなら別だがね」

提督「それに……俺の反逆が奴らにどれほどの感情的影響をもたらせているのかは疑問符だ。ゆえに! これから俺はより奴らに対しての脅威にならなければならない。
それだけの感情を湧き起こす……絶望を与える恐ろしい敵になる必要がある」

提督「俺と泊地水鬼、響・雪風はかつてヲ級Nightmareのいた棲地MIへ向かう。泊地水鬼曰く奴は死んでいないそうだ。
これを手中に収めることが出来れば今後の展開は大きく変わるだろう。また、泊地水鬼同様に自律意志を持った深海棲艦が生き残りが僅かではあるが居るそうだ」

提督「他の者……金剛・榛名・霧島。および暁・磯風には、横須賀鎮守府へ向かってもらう。旗艦は金剛、お前に任せる。適当に暴れたらMIで合流だ」

金剛「Why? どうして横須賀……?」

提督「横須賀鎮守府を襲撃するのだ。くだんの騒動からまだ一夜しか経っていない。今お前たちが向かえば、陸路を通って大人数で移動する横須賀在籍の連中よりも先回りできる」

提督「敵の拠点、という言い方は良くないが……とにかくこちらへの攻撃拠点となる施設を叩ける好機だ。今なら警護の艦娘も誰一人残っていない。
相手の戦力を呉一本に絞ることが出来れば、二方向からの挟撃を食らうことは避けられるだろう」

金剛「ワーォ、この期に及んで本気で勝つ気でいるんですネ……。ま、そうじゃなきゃついて来たりしてませんケド」

提督「襲撃と言っても、徹底的に破壊する必要はない。それほど時間はないだろうしな。入渠ドッグと工廠を機能不全にして備蓄されている物資を出来るだけ略奪するだけで十分だ」

霧島(戦略的には正しいんですけど、控えめに言ってド畜生な発言ですね……。ここまで来るといっそ清々しいものを感じます)

提督「また、鎮守府に艦娘が不在といえど、工員や事務員は居ることだろう。事故であってもこれらを傷つけるのは避けてくれ。
それは我々の目的とするところではないからな。お前たち艦娘にとっては顔も憶えていないような取るに足らない存在かもしれないが、奴らには奴らなりの人生がある」

磯風「本気なんだな……全ての艦娘を敵に回すことになるぞ。それだけじゃない、一切の支援も受けられなくなるんだ。正気の沙汰ではないぞ?」

提督「そうだな。分が悪いと思う者は、横須賀でそのまま他の艦娘らと合流し投降すると良いだろう。俺のエゴイズムに無理強いはさせんよ。
だいいち、お前らはもう俺の部下ではない。今の俺は何の権威もない反逆者だ」

磯風「ここまで来て今更そんな野暮を言うつもりはない、ただの確認さ……だが、不安なんだ。正直のところ、私は今でも艦娘は滅びるべき存在なんじゃないかと思っている。
役目を終えた今でもまだこの世に残っていても良いのだろうかと、そんな風に考えてしまうんだ」

磯風「だが、君はあろうことか敵である深海棲艦でさえも味方に引き入れてしまった。私たち艦娘は深海棲艦を滅ぼすためにいるのにも関わらず、な。
……そう、君には宿命だとか因縁だとか、そういう呪縛めいたものが一切通用しないらしい。だから……君といれば、恐れるべきものは何もない。
貴方は私の提督だ。それは今になっても変わらない」

提督「……ま、勝算のないことはやらんさ。厳しい戦いになることは間違いないがな」

・・・・

響「雪風。出発の前に雑談なんだが」

雪風「なんですか」

響「昨夜の話、聞いていたよ。いや、盗み聞きするつもりはなかったんだがね。
なぜバビロンの打ち上げが中止されたのか疑問に思ってたが……司令官の身にそんなことが起こっていたとは」

響「再生不可能なレベルまで細切れにされるか、体内の修復剤の残量が尽きるかでもしない限り不老不死……。
だが、その体質ゆえに彼は自らの望みを果たせない。彼はこの地球から離れることができない」

響「皮肉な話だな。それはそうと……君は彼のことをどう思っている? 相当気に入られているみたいじゃないか」

雪風「いや、そんな……」

響「司令官がなぜMIへ向かうのに私と君を選んだと思う? 半深海棲艦化している私を横須賀に行かせてはまずいと判断したのは想像に難くないだろう。
ただ、司令官の傍に私だけという状況も良くないだろう。私の制御が効かなくなる可能性・泊地水鬼が反逆する可能性、どちらもゼロではない」

雪風「もう一人必要、というのは分かりますが……どうして雪風なんでしょうか?」

響「だから言ったろう、気に入られてるんだよ。傍に置くなら君がいいと、司令官がそう言っていたんだよ。で、私は再度問いたい。『彼のことをどう思っているか』」

雪風「……響が司令のことを想っているのは前に話してくれたじゃないですか。雪風の出る幕なんてないでしょうに?
それに、雪風じゃあ釣り合いませんよ。これでも、身の程は弁えてるつもりですとも!」 フンス

響「そうか、なら……。こっちは純粋に興味本位な質問。なぜまだ彼の傍に居ようとする?
成り行き上司令官と同行しているのはこれまでの経緯を見るに自然なこととも言えなくはないが……」

響「だが。さっき彼が言っていたように、これからおっ始めようとしてるのは戦争だ。彼のためにかつての同胞を傷つけられるのか、という覚悟の程を問うてみたい」
591 :【83/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/23(水) 21:59:48.68 ID:Nwym7Ov90
響「あるのかい? 彼のための剣となり、彼のための銃となるその覚悟が」

雪風「ないですよ。味方を傷つけるための戦いなら、雪風は従えません。そんな覚悟はするつもりはありません。……それに、しれぇの目的はそこじゃないでしょう」

響「もちろんそうだ。だが、他の連中には大なり小なりそういう覚悟がある。金剛もそうだし、暁もそうだ。恐らくあの磯風とかいう駆逐艦だってそうだろう。
イザという時に彼女らは引鉄を引くぞ。それが果たすべき事だと判断したなら……たとえかつての味方であってもだ」

響「尤もそれが正しいあり方だとは言わないさ。むしろ平時においては君のような振る舞いの方が社会的には正しいのだろう。
だが、君も私も今は盤上の駒だ。頓死の一手を踏まぬよう気をつけてくれ、と言っておきたい」

雪風「分かっていますが……それでも」

響「誘導尋問はやめようか。今の質問の真意はこうだ。君は彼の理想のために全てを捧げる気はない、だが君は彼の傍にあり続けようとしている……なぜなのか。この答えが知りたい」

響「実のところ、私も彼の考えの全てを理解しているわけではない。彼が何を思って行動しているのかも分からない。だが私は彼を愛している。
彼が好きだとも、ああそうだ! もはや私にとって、彼のいない世界などあり得ないんだ」

ギラついた太陽の光が照りつける。目の前にいる響との距離は一メートルもないはずなのに、雪風の目には彼女が蜃気楼の中で揺らいでいるように見えた。

響「そう、君以外の連中は。理由が分かるんだよ。磯風は恐らく私と同じく“彼と共にある以外の選択肢”しか考えられない部類だろう。恋慕の念があるかどうかはさておき。
一方で金剛や暁は、彼の傍に居ることで何かを見出そうとしているタイプだ。彼の理想を目指す情熱の炎の中で、自分もまた何某かを得ようとしている連中だ」

響「君はそのどちらにも属していないだろう。最も彼の近くに居たはずの君が他の誰よりも冷めている、その理由が気になって仕方がない。
批難しているつもりはない、純粋な興味なんだ。知りたい、なぜ彼の近くに居てそうまで冷静で居られるのか。君から見える彼がどうだったのかが知りたい」

雪風「こういうことを言うと、司令に対しての侮蔑になってしまいそうで、あまり言いたくないんですけど……。あたしは、司令のことがかわいそうだと思うんです」

雪風「司令は、立派な人です。口ではああ言っているけど、本当は誰も傷つけたくなくて、不器用なだけで優しい人なんだって、雪風は知ってます。
でも、だからこそ……あの人が幸せになる未来が見えなくて」

雪風「バビロンが地球を脱してからも、司令はずっと冷静でした。痛みに悶えながらも『あまりに見るに耐えないグロテスクな姿だから、見ないでくれ』とか、
『修復剤の原液は癌細胞化を促す物質に変質していないか調べてみてくれ』とか、そんなことを言っていました」

雪風「私たちに心配かけないように、うめき声を押し殺しているようでした。
私と磯風さんで地球に戻ろうと判断した頃には激痛のあまり自制が効かなくなっていたようで、わざと舌を噛み千切って声を少しでも抑えようとしていたみたいです」

雪風「地球に着いた頃には、癌化は収まっていたようですが、肉体の修復力も弱まっていて苦しんだり叫んだりする力も残っていないようでした。
雪風は急いで司令を背負って、病院に向かいました。その時、背中でコンコンと、艤装を叩く音がしたんです。しれぇが指で叩いていたんです」

雪風が、コツンコツンと自分の艤装を叩く。−−−− ・−・− −−・−・ ・−・−− ・・・− −−−

響(『ころしてくれ』か……)

雪風「後で、身体が治った後に、病院で聞いても、しれぇは『身体を動かす余力どころか意識もなかったあの状況でそんなことができるものか。映画の見すぎだろう』って。
笑い飛ばしてくれました。けど、けど……」

雪風「雪風は、雪風には……あれが司令の心の叫びに聞こえて、聞こえ、ううっ……」

響の視界が揺らぐ。雪風の姿が、蜃気楼に乗って揺らめいているように見えた。暑さによる幻覚なのか、体質の変化による失調なのかは分からない。
距離を確かめるように慎重に歩み寄り、自分より少し背の低い雪風の頭を撫でる。

響「泣くなよ……大丈夫さ、心配しないで。私たちの司令官がそんなに脆い人に見えたかい。折れるならもっと早くに折れているさ」

雪風「あっ、しれぇ、ごめん、なさい……」

提督「呼んでも来ないと思ったら……探したぞ二人とも。ん?」 肩を震わせる雪風を見、説明を求めるジェスチャーを送る提督(クイクイと交互に二人を指さす)

響「少しいじわるなやり取りをしていたら泣かせてしまったよ。……いやなに、雪風は不安なんだと。君の心が壊れてしまわないかがね」

提督「(? 昨夜の話か……? 珍しく取り留めの無い話をしたから不安にさせてしまったのかもしれん)何を心配しているのか知らんが、俺を見くびってもらっては困る」

歩み寄り、二人の頭を撫でる提督。その動作は少しぎこちなく、頭を撫でているというよりは頭を掴んでいるといった方が適切かもしれない。

提督「……とはいえ、心配させたならすまなかった。だが問題ない。全てうまくいくさ、お前たちが居ればな。全て……果たしてみせるさ」

提督(しかし、『君の心が壊れてしまわないか』か。……ひょっとしたら、もうとっくに壊れているのかもしれないな)

一瞬、険しい顔を浮かべるも、響と雪風の視線に気づきすぐに無表情に戻す。

雪風「しれえ……痛いです……ごわごわって……」

提督「あ、いや。スマン、こういうのは慣れないもんでな……悪い」 すぐに撫でていた手を引っ込める

雪風「でも、司令のおかげで、なんだか元気になれました。雪風、まだまだ頑張ります!」

響(たとえそれが憐憫の情であったとしても、想いの純度は本物か……雪風)

響「なあ雪風。君はさっき『釣り合わない』だとか言っていたが……。今一番近いのは多分、君だぞ。資格は十分あるんじゃないか」

提督「一体何の話だ?」

響「〜♪」 口笛を吹きごまかす響

響(やれやれ、どうして私は恋敵を増やすような真似ばかりしているのか)
592 :【84/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/23(水) 22:03:22.10 ID:Nwym7Ov90
提督「さて……海域的にはこの辺りなんだが……(過去、この海での指揮を執っていたが……まさか俺自ら訪れることになるとはな。奇妙なものだ)」

泊地水鬼「アッ……オハヨ」

軽巡棲姫「オハヨ! 誰、ソイツラ」

提督(軽巡棲姫、という種類の深海棲艦。艦種上は軽巡だが、そのスペックは一般的な深海軽巡のそれを遥かに凌ぐ上位種か。しかし随分と気さくだな……)

泊地水鬼「トモダチ……」

提督(いつお前と友達になったんだ)

軽巡棲姫「ソッカ。ヨロシク」

提督「なぜこいつは微塵も俺たちを疑わずに握手を交わしてくるのだ……? ここミッドウェーやアリューシャン、ステビア海で散っていた深海棲艦は草葉の陰で泣いてるぞ」 ヒソヒソ

響「まあいいじゃないか。味方の駒は多い方がいい」

雪風「せっかくだから仲良くやりましょう!」

提督「ひょっとして、いや、ひょっとしなくても。こいつらは深海棲艦としては落ちこぼれなんじゃないか。泊地水鬼と出会った時の違和感が確信に変わったぞ……。
深海棲艦としての使命より自らの感情を優先させる奴らだしな、なるほどなるほど……不安だ」

提督「感情の要素を持っている分、知性が欠落している可能性も……」 ペシッ

泊地水鬼に帽子をひったくられる。へそを曲げたようだ。

響「白(ハク)。この軽巡の子はなんて呼べばいい?」

泊地水鬼「Α※@Σ↑]Ω」

響「すまない、私たちにも分かる言語で頼む……」

雪風「? 私たちがつけて良いんですか。じゃあ、ケーちゃんなんてどうでしょう?」

軽巡棲姫「ケーチャン! ヤッター! カワイイ!」

提督「スゥー……ハァ(余計なことにリソースを割くな。今は自分のすべきことに集中しろ。そうだ、全ては瑣末なこと。気にすべき事象ではない)」

雪風「あらら。しれぇが自分の世界に入っちゃいました」

・・・・

MI諸島の島々を結ぶ中間点には、地図には載っていないはずの小島が出来ていた。島の表面は岩に覆われていて、樹木や野草はおろか苔の一つさえ生えていない。

雪風「地下へと続く洞窟への入口……なんだかRPGみたいですねぇ」

響「結構俗っぽい例えをするんだね。とはいえ、確かにその通りだ。これはちょっとした冒険だな」

提督「泊地水鬼。お前はヲ級Nightmareの居場所を知っていると言っていたが。この鍾乳洞の中に居るのか? お前、さっきから同じ場所をぐるぐる回っていやしないか。あと帽子を返せ」

雪風「白、って名前で呼んでくれないと嫌だそうです。どうして私のことを雪風、響のことをヴぇ、ヴぇ……」

提督&響「Верный」

雪風「って呼ぶのに、どうして自分のことは名前で呼んでくれないんだって不満みたいです」

提督「名前なんてつけた憶えないが」

響「昨日の宴会で司令官が早々にノックダウンしてしまったのが悪いんだよ」

提督「(悪いのは俺なのか……?)納得いかないが……。白、と書いてハク。か。シンプルすぎるような気もするが……良い名前だな」

奪っていた帽子をぐにゅっと提督の頭に押し込む。目深に被らされたため前が見えなくなっている提督。

泊地水鬼「方向ヲ間違エテイタ。ココジャナクテ、モット下……」

泊地水鬼がそう言うと、バァンと地面に衝撃が走る。泊地水鬼が地面を殴ったらしく、岩盤が崩落しているらしい。

提督「おい、これどうなって……」

泊地水鬼「〜♪ ネエ、私、飛ンデルワ……飛ンデイルノ!」

提督「どう見ても落ちているではないか!」

泊地水鬼の腕に抱きかかえられながら垂直落下していく提督たち。

軽巡棲姫「白チャンヤッタネ!」 ヤッテネエヨオォォォ

・・・・

提督(落下時間があと三秒長かったら、“一機減る”ところだったな……)

眼前に広がるのは、古代ローマ時代に建築された宮殿や城を彷彿とさせるような精巧かつ壮麗な大広間だった。
593 :【85/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/09/23(水) 22:17:41.35 ID:Nwym7Ov90
呉鎮守府講堂。方々の艦娘を一極集中させたため各々を収容するための部屋などあるはずもなく、ひとまず外部から来た艦娘らは昨夜に引き続きこの講堂で一夜を過ごすことになった。
最終的には艦娘の半数を横須賀に移す計画が進められているのだが、急ピッチで進めてももう数日は要するであろう見通しだった。

皐月(なぜ? あのロケットも、ああしてボクの頼みに応じてくれたのも、軽トラックで駆け回ったのも、全部嘘だったの? ボクの寝ぼけ顔を見て、暢気だなって笑ってたじゃないか。
納得がいかないよ。司令官はどうしてあんなことをしたのか。司令官は何がしたかったの? 何をしようとしているの?)

文月「ね、皐月ぃ。昨日からずーっと考え事ばかり、ヘンだよぉ。そりゃ、あんな事があった後だから、分かるけどさ……」

皐月「あー……文月、上からの指示は何か来ているのかい?」

文月「まだ何も。どうにもゴタゴタしてるみたいだよ〜。とにかく緊急事態だって皆必要以上に慌ててるところはあるけれど……まだ一夜明けたばっかりだから仕方ないか」

文月「今問題になってるのは、半深海化がほぼ末期まで進行した艦娘をどう扱うかみたい。昨日、泊地水鬼が現れる前に半深海化した艦娘が暴走した例があったでしょ?
でも、一方で半深海化が最終段階まで進んでいてもまだ自我を保っている艦娘も居るみたいで……」

皐月(暴走した半深海化した艦娘と、自我を保ったままの半深海化した艦娘と、何かが違う? 何が? でも、司令官はきっと何かを知っているはず……)

文月「半深海化していようが自我を保っているなら戦場に繰り出すべきだ、って意見と、いつ暴走するか分からないから収監しておくべきだって意見があるみたい。
それはさておき深海棲艦はあたしたちの敵だからね。手取司令官を討つ算段だけはスムーズに進んでいるみたい。どのみち、あたしたちは後方支援に回ることになるんじゃないかなぁ」

皐月「司令官の居場所はまだ分かってないのかい?」

文月「うん。もう偵察部隊を出す決定はしてるみたい。内陸に逃げたとしたら陸軍がいい具合にやってくれるだろうから楽なんだけど……国外だろうねぇ。
大陸……旧中国か旧露西亜領かなー。でも、いずれも深海棲艦にやられて壊滅状態、内陸部も退廃してるみたいだし、そんな場所で燃料や弾薬を調達出来るのかな……。
深海棲艦といえど弾薬やボーキサイトが必要なのはこっちと同じみたいだしねぇ」

文月「それに、退廃していたり、すでに壊滅状態だったりとはいえ……他国の、その土地に住む無関係の人を巻き込んで戦うのは司令官のやり方じゃないと思わない?」

皐月(違うな……はずれだよ、文月。亡命や外国へ逃げ延びたって線は無いよ。深海棲艦を受け入れようとする場所なんて地上のどこにもありやしない。
奴らは破壊者だからだ、司令官はそんなこと分かってる。分かった上で奴らの側に付いたんだ)

皐月「さあね……」 気の無い返事。話を聞いていないわけではないのだが、途中から話が頭に入っていないような様子だ

文月「……ねぇ皐月。まさか、司令官の後を追うつもり? 追ってどうするの? だって私たち……」

皐月(ヘンなところで察しが良いんだから、困るよなあ……)

文月「私も、司令官の行動の意図は気になるよ。でも……私たちの出る幕はない、そうでしょ?
今は、司令官の真意が分からないけど……意味のないことはしない人なはずだから。答えが分かる時まで、待つしかないよ」

皐月「……待てないよ。分からない、分からないんだ。学校に行きたいだなんてボクの我侭も聞いてくれたんだよ?
学校を卒業させてやれなくてすまないって、ボクを見るたび申し訳なさそうに言っていたのに。なのに、どうして……?」

皐月「司令官の目からしたら、ボクはきっと取るに足らない存在だったのかもしれない。たまたまそこにいただけの、居ても居なくても同じのモブ艦娘だったかもしれない。
でも。ボクにとっては、すごく嬉しかったんだよ。嬉しかったんだよ……」

文月「でも……」

皐月「分かってるさ。分かってるよ。言うなよ! 何も出来ないことぐらい、分かってるよ……!」

俯き、顔を見せないように服の袖で目元を隠しながら駆け出していく。

・・・・

一人になれる場所を探していた。どこに行っても他の艦娘がいて鬱陶しい。
あまりにも突然に、かつ理不尽に状況が一変して、何がなんだか分からない。何が真実で、何が嘘なのか。それを知る術さえ自分には与えられていない。

皐月「なんで……っ。なんでだよ……、っ……!」

どうしても一人になりたくて。でも、そんな場所はトイレの個室ぐらいしかなかった。なおさら気持ちは沈んだ。

ボクは子供だ。肉体がどうこうじゃなく、精神が。司令官に裏切られたというショックだけで、全てがおかしくなってしまっている。
文月のように、司令官の真意が分かるその時が来るのを待とうという、ごく普通の冷静ささえどこかに失くしてしまったようだ。

混乱を前に無意味に焦燥して、力を空費している実感がある。だが、そうせずにはいられなかった。分からなくて、ショックで、悲しかった。
裏切られた、悲しい。悲しいって感情を自覚したら、その気持ちだけが膨れ上がって、ますます悲しくなる一方で。

司令官は、何を考えてるか分からない変人だ。でも、ボクたちを意味もなく傷つけるようなことなんてしない。
仮に深海棲艦の力を得たとして、どうしてあんな風に皆に恨まれるようなことを最後にやったんだろう。どうしてあんな結末を望むんだろう。

皐月「せめて、知りたいよ……。それぐらい、許してよ……」 うなだれ、頭を抱える

リュックサックから、トランプのカードケースと小さな腕時計のようなものが落ちる。これは、ボクたちがMI作戦の裏で“アノーニュムス”として動いていた時に司令官から支給されたものだ。
作戦終了後は回収されるはずだったけど、司令官に記念に貰っていいか聞いたら渋い顔で承諾してくれたんだった。
そして……この小さなガジェットには、無線機能の他にも、お互いの居場所を指し示す発信機としての機能が備わっている。

皐月(反応が一つだけある……どうして? 場所は、ミッドウェー方面か……? 発信者は……)

司令官だ……! なぜかは分からないが、司令官は自らの居場所を教えている。それも、ボクだけに対して。なんでだ? 分からない、けど、けどこれは……。

皐月(チャンスだ……!)

知ってしまった、ボクは知ってしまったという興奮が背筋をゾクゾクと刺激する。心臓の鼓動がどんどん早くなっていくのを感じる。
これは紛れもなく司令官がボクに宛てた何らかのメッセージなんだと確信し、脳内物質が駆け巡るような感覚を味わっていた。
594 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/09/23(水) 22:25:54.55 ID:Nwym7Ov90
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~85/100)
・雪風の経験値+4(現在値26)
・皐月の経験値+1(現在値13)

・足柄の現在経験値:26
・金剛の現在経験値:23
・翔鶴の現在経験値:15
・響の現在経験値:23
----------------------------------------------------------------------

無予告でしたが連休中になんとか5レス分書けたので投下しておきます。
次回は『Phase C』が進行します。内訳的には皐月3レス・翔鶴2レスとなっております。

次回投下はワンチャン近日中……?
もしかしたらまた普段通り一ニ週間かかるかもしれませんので過度の期待はせずお待ちくだされ。
595 : ◆Fy7e1QFAIM [saga sage]:2015/10/05(月) 00:02:05.69 ID:XDOjsqWI0
軽巡棲姫とかいう(現時点では)実在しない架空の存在を生み出してしまっていることに後から気づきました。
次回以降は軽巡棲鬼と表記します。意図的に姫と書いたわけではなく、ただのミスなのでした。すみません。
読み返すと結構誤字とか脱字とか多いんすよね……なるべく減らすように心がけたい。心がけてはいるのですが〜……。



次回の投下は10/7(水)を予定しています。
進捗具合によっては週末あたりにずれるかもしれませんが……。
リアル世界ではワンパン大破どころかワンパン轟沈的サムシングがあるので油断なりませんな、まったく!(何
セルフキラ付けして頑張りますハイ。
596 : ◆Fy7e1QFAIM [sage]:2015/10/07(水) 23:54:54.37 ID:Bs/Nk/GZ0
ごめんなさいー! 予告したけど間に合いませんでした。
書き上がったタイミングでなるべく早く投下するつもりです……恐らくは金曜日頃になるかなと(遅くとも日曜日までには投下します)。



////チラシの裏////
翔鶴改二甲、なかなか面白い性能ですね。燃費的に普段使いはちょっとキツイですが……。
今月はなんとなくランカー入りを目指してまして、5-4毎日ぐーるぐるってな具合です。
そして……ついに蒼龍牧場や大北牧場に手を出してしまいました。
艦これプレイヤーとしていよいよ来るところまで来てしまったなぁ……という心境です。
もっと上の方はケッコンカンスト艦で3ページぐらいまで埋まってたりするんですけどね! おっかねえや!
597 :【85C-1/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 20:56:12.11 ID:dfa6f4ou0
皐月「落ち着け……大事なのはこれからどうするかってことだ。ボクに何が出来るのか……」

皐月(そもそも、今の司令官を信じていいのか? 司令官がボクの存在を忘れていなかったということに舞い上がってしまったが、司令官は今や国家の敵であり人類の敵。
普通に考えれば、居場所を上の人間に知らせるべきなんだよな……。司令官は深海棲艦を従えているんだぞ……?)

だが……あの司令官のことだ。ボクが他の誰かに居場所を伝えようが伝えまいが、結局のところ全て手のひらの上なんじゃないか……?
貰ったボク自身が覚えていなかった発信機機能すらも覚えていて、かつ自らの居場所をあえて晒してみせているぐらいだ。
そもそもこれすら罠なんじゃないか……? 経過した時間の短さから考えて、とにかく追手から逃げるために辿り着いた場所とは考えにくい。
まるで最初からMIを目指していたかのような……。

うーん、疑うとキリがないな。そもそも策謀において彼を上回る者はいないというか……知恵比べでボクが敵うはずもないけれど……。
司令官が本気で悪事を成そうと思ったらもっと悪辣な手を打ってくるような気がするんだよなぁ。本気でボクたち艦娘とやり合う……にしては手ぬるいような気がするんだ。
何かこう裏の意図があるというか、この反逆さえも全部布石なんじゃないかとは思う。というか、そう思いたいよなぁ……希望論だけど。

皐月(仮にここで司令官の企みを止めたとして、艦娘の半深海化は食い止められず結局のところ艦娘同士で争いが起こる。
今は司令官を討つべく団結しているけど、その先のことは何が起こるか分からない……)

皐月(自らスケープゴートとなった可能性……あるかもしれないな。だったらやはりボクは司令官のために動くべき、なのかな……)

全ては希望論にすぎないけれど。でも、疑い出したら何もかもが怪しく思えてしまうんだよな。それこそボクが司令官に最初に呼び出された時の理由だって謎だ。
そもそも、司令官が居なければボクはずっと訓練生のままで、下手すると一度も出撃したりすることも無かったわけで……。
実技の成績が良かったとはいえ、総合の成績でならボクよりも良かった子は結構いたわけだし……。ボクの何を見てたのかな、それともなんとなくだったりするのかな。
司令官はボクの何を気に入ったんだろう。いや、気に入ってはないか。ただ、目に映っただけか。でも……。

皐月(いやいやいやいや、何を考えてるんだボクは!? 思考が脱線しすぎてるってば! 冷静にならなきゃ。冷静に……)

・・・・

呉鎮守府内の食堂。左手で頬杖をつき、右手で缶コーヒー(微糖)を握りながら、思案する皐月。

文月「麺が伸びちゃうよー」

皐月「ああ、ごめん。いただきます(司令官の居場所が分かったって話をしたら、きっと文月を巻き込むことになるよな……)」

カレーうどんを啜る皐月。食べながらも思索にふけっているせいか、胸元に飛んだカレーの汁に気づいていない。

皐月(ボクの出した答え、は……司令官を信じる。これしかないよ。だって、どんな形にせよ、司令官はボクを信じてくれているわけで。
ボクのことを疑ったり、邪険に扱ったりしたことは一度だってないんだ。やっぱりボクは……司令官のために動きたい)

文月「皐月、分かり易すぎるよ〜。その顔。何か分かったことがあるんでしょ? さっき別れた時と顔つきが全然違うもん」

クリームソーススパゲッティを食べ進めていた手を止め、皐月の方に紙ナプキンをスッと差し出す。

文月「隠し事とか……良くないよね〜?」

皐月「あはは……お見通しかぁ。で、この紙ナプキンは?」

文月「いや、口の周りカレーだらけなのに真面目な顔してたから笑っちゃいそうで。考え事してて全然気づいてなかったでしょ」

恥ずかしそうに顔を赤らめ、紙ナプキンで口元をふき取る皐月。

・・・・

食事を食べ終わると、机の上にノートを広げる皐月。凸の字を書き並べていく。

文月「(司令官はMIへ向かった……!? へ、へ〜……? なんで?)えっと、まず。どうして場所が分かったのかな?」

無言で腕につけている小型無線機兼発信機を見せる皐月。

文月「(なるほど、皐月がこれを持っていることを見越して司令官が……?)そういえば皐月それ気に入ってたもんね」

皐月「(……のに、今まで発信機としての機能があることを忘れていたのは黙っておこう)通信は出来ないけど、場所だけはこれで伝えてくれたんだよ」

文月「現状行方不明者リストに挙がっている人たちもここに居る可能性が……?」

ノート上に凸の字を六つ書き足す文月。行方不明者として手配されている金剛・榛名・霧島・暁・雪風・磯風のことを指しているのだと思われる。

皐月「うーん……。そうだね。分からないけど、多分そうだと思う。全員かどうかは分からないけど、それぞれの関係性から考えて半数以上はそうだと思う」

文月「で、皐月は?」 手取提督を意味する凸から離れた場所に、黒塗りの凸を書く。皐月のことを意味しているらしい

皐月「……こっちだよ。もう覚悟は決めてある」

黒塗りの凸から矢印を伸ばし、MI方面へと繋げる。すると文月が、もう一つ黒塗りの凸印を書き足して、同じ方向へ矢印を伸ばす。

文月「じゃあ私も、こっちだね。後方支援じゃタイクツしちゃうからねえ」

皐月「文月……」

文月「ここまで来て仲間外れはなし、でしょ? それに、あたしだって皐月ほど好き好きってわけじゃないけど……ほら。一緒に居て面白いしね。クリオネみたいで」

皐月(どういう意味だそれ……)
598 :【85C-2/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 20:57:16.45 ID:dfa6f4ou0
皐月「ねえ文月……ホントにやるのかい……?」

文月「覚悟してるんでしょ? 違うの?」

皐月「そうだけどさ……(腹括りすぎでしょ……)」

ボクたちは、司令官に会うにあたっての土産ということで資材庫から燃料や弾薬を頂戴することにした。……要するに略奪である。
ボクはあまり乗り気ではなかったが、『私たち駆逐艦二隻が来たところで司令官が喜ぶと思う? せっかく司令官の位置が分かってるなら、期待に沿える動きをするべきでしょ』と文月は言う。

皐月(言われてみるとその通りなんだよなぁ……。司令官の立場からしたらこう動いた方が一番ありがたいはず)

皐月「ただ……このシチュエーション妙にデジャブな気が……うわわっ!?」

龍田「あら〜。こんばんは」

文月(皐月!? なんで早速見つかっちゃうかなぁ……って聞き覚えのあるこの声は)

・・・・

天龍「見つかったのがオレらで良かったな。もっとも、読み通りではあったが」

龍田「手取提督に内通してる艦娘が居るのであればここを狙うと思っていたわ。私たちはそれを見越して倉庫番役を買って出たのよ〜」

皐月(火をつければこの資材庫の燃料や弾薬は削れるかな……それをやったらボクもただじゃすまないが。
せっかく司令官の場所が分かったんだ。ここはなんとか切り抜けたいところ……! 脱出経路を計算して爆発を起こせばなんとか逃げれるか……?)

無言で砲を構える皐月とその様子に慌てる天龍と龍田。

天龍「お、おい!? バカな真似はやめろ!」

龍田「そうよ!? どちらかと言えば私たち貴方の味方よ!? ここで待っていたのも、あわよくば手取提督の側に着けたらという目的なんであって〜……」

皐月「え、ちょっとまって。それどういうこと?」

天龍「ここで手取提督と争ったところで、半深海棲艦化は食い止められねーだろうが。なんで提督があんなことしたのかは謎だが……どうせなら訳知りっぽさそうな方に味方した方が得策だろ?
だいいち、オレは別に大本営にも軍にも義理はねえ。無茶な作戦で沈められて、生き返ったと思ったらよく分からん横須賀の鎮守府に飛ばされて、今度は呉に召集。で、今はただの警備員と」

天龍「それに、救国の英雄が一転して悪の頭領に……なんてカッコよすぎるだろ! こりゃあ見届けるしかねえってな! オレの電探がそう言ってるんだ」

龍田「ぇ〜と、天龍ちゃんは置いといて……。行方不明者の中に、暁って駆逐艦が居るでしょう? 私たちは書類上の解体処分を受けた後、貴方も知っての通り手取提督の雑用をしていて。
佐世保鎮守府が解体されてからは経歴を伏せた状態で横須賀に送られたの。清掃員ぐらいしか仕事は無かったけどね……」

龍田「それでも暁ちゃんや雷ちゃん、電ちゃん。皆頑張っていたわ。響に憧れていたようで、与えられる仕事は無くてもずっと訓練を続けていたわ。
暁ちゃんは幸い上からのお声がかかってそれなりに出撃任務が与えられるようになったんだけど……」

天龍「そうそう。暁は特に骨のあるやつだったぜ。響に並びたいってな。……んで、その響は提督と共に深海棲艦へ寝返った。暁は今だ姿が見つからねえ」

天龍「あの提督に可能性を見出している一方で、ひょっとすると暁の身に危険が及んだかもしれねー、とも思ってるわけだ。もしそうだとしたら作戦は変更。
オレ達は手のひらを返してここの連中に手取提督の居場所を晒すつもりでいる。……なんとなくそんなことはねー気がするがな。オレの電探もそう言っている」

龍田「あの提督……ちょっとロリコンのケがあると思わない?」

天龍「ま、ロリコンかどうかは置いといてだな。響や提督が本当に深海の連中と同じぐらい落ちぶれてんなら、危険を察知して逃げ延びるぐらい出来るはずだ。
オレ様の見通しでは、アイツはそれぐらいに実力をつけてる。だからそんなに心配はしてねぇ、だが万が一……って話だ。これはな」

・・・・

皐月に突然呼び出された数分前の出来事を思い出す陽炎。

皐月「陽炎。今からボクは手取司令官のもとへ行く。……これは君への裏切りになると思う」

陽炎「え? ちょっと、何言ってるの? 突然どうしたっていうのよ」

皐月「許してくれとは言わないけれど……さよならは言っておきたかった。経緯はどうあれ、友達だから」

皐月「ボクにとって、司令官はやっぱり大事な人で。今でも信じてるんだ。だから、会いに行きたい」

陽炎「……分かったわ。いや、ぜんっぜん分からないけど。でも……いいわよ。行きなさい。どこへでも行くといいわよ!
……でもまっ、勘違いしないことね。皐月がどこへ行っても、私の友達であることは変わりないわ」

ありがとう、と言い残して足早に皐月はどこかへ走っていった。

どうして皐月を見逃してしまったのか。皐月を見逃すこともまた、裏切りへの加担だと言うのに。己の提督への背任ではないのか。陽炎は自問する。

ふと昔のことを思い出す。軍縮による解体を免れるため、市井の人間に紛れる。
今でこそ皐月のような友人とも出会えて、良い思い出だったように感じられるが、当初は不安だらけだったし、嫌だった。陽炎は自分の提督のことを思慕していたからである。
だが……その想いは長い時間の中で、少しずつ思い出へと変わってしまった。抱いた愛情も思い描いた幸せな未来も、全ては薄まり、やがて穏やかな好意に収束してしまった。
自分の提督と二度と会えなくなるわけではない、再会したらまた想いは蘇るのかもしれない、けれど今この瞬間においては、自覚できるほどに情熱が冷めてしまっている。

だから。たとえそれが一時的な狂奔だとしても。“仕方がないことだ”なんて諦めず、定められた運命に抗ってみればいい。
陽炎の目には皐月の行動は半ば暴走気味なように映ったが、だからこそ羨ましく思えたのだった。

陽炎(私もああだったら……とは思わないし、今の自分に後悔があるわけじゃないけど。でも……あれが若さ、ってやつなのかしらね)
599 :【85C-3/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 20:58:12.09 ID:dfa6f4ou0
呉鎮守府内の主力級の艦娘は臨時会議室に集められた。
会議というよりは通達を目的に集められたようで、この集まりの中には赤城や翔鶴も含まれていた。

井州「緊急に呼び出してしまってすまない。今後の方針転換の発表を行いたいのだが、その前に今日起こった重大な事件について説明しておきたい」

井州「横須賀鎮守府が襲撃された。ドックや工廠などをピンポイントで破壊され、軍事拠点としての機能はしばらく果たせそうにない。
横須賀に行くはずだった艦娘たちはこれから踵を返して呉に押し寄せるということになる」

「おいおいおいおい、今だって定員オーバーなんだぞ」「外泊許可取って宿にでも泊まった方が良さそう……」 どよめきが起こる。

井州「その通り。この呉鎮守府は今ですら満員の状態であり、各艦娘のストレスも高まっており不満が頻出している。
また、こうしている間にも半深海化の症状が現れている艦娘は増え続けている」

井州「そこで。我々の総力を以って反乱軍を討つことに決定した。まずは小隊を各海域に展開して哨戒を行い、反乱軍の居場所を炙り出す。
深海棲艦を支配しているとはいえ向こうの資源は乏しく兵力も少ない。長期に渡る漸減作戦でジリ貧にしていくのが当初の計画だったが……。
こうなっては仕方がない。やはり策謀に関しては相手の方が上手であると認めざるを得ない」

呉ではこの頃から手取提督率いる深海棲艦や彼に従う艦娘らの勢力を総称して、反乱軍と呼ぶようになっていた。

井州「だが。ここには君たちが居る。敵がいかに神算鬼謀であろうと、歴戦の猛者である君たちはこの国の守護神だ。
どんな海をも超えてきた圧倒的な練度を誇る艦娘であれば、いかな相手でも打ち破ることが出来る……と私は信じている」

井州「詳しい作戦内容は追って連絡する。MI・トラック攻略以来の大規模作戦にして恐らく最後の決戦になるだろうが……みな、今一度力を貸して欲しい」

・・・・

仮設された空母機動部隊控室。普段通りの加賀と対照的に、赤城は憔悴しきっていた。
悲痛な面持ちで両手を額の前で組むその姿は、何かに祈りを捧げているかのようだった。

赤城「加賀はどう思いますか」

加賀「果たすべきを果たす。これまで私たちがやってきたことを貫くだけ……そう考えていますが。これはあくまで私個人の解答。それとも……」

加賀「迷いがありますか? 私の意見一つで揺らいでしまうほどに、心細いですか?」

赤城の耳元に顔を近づけ、煽るようにわざとらしく囁く。

赤城「私は一航戦赤城。私がこの国の空母機動部隊の象徴であり中心である、他に私の代わりを務まる者は居ない……」

加賀「そうね。その通りだわ」

赤城「私は、生まれてからずっとこの海軍で育ち、深海棲艦を討ち、国を護ってきました。今もその決意は揺るぎません」

加賀「国家の反逆者である手取提督に従っていたのに? 赤城さん、貴方は彼が唱えた『バビロン計画』にだってまるで疑いを持っていなかったわ。
彼の為に自分の身を尽くしたいとも言っていたわね」

赤城「ッ……加賀」

加賀「赤城さん。私はずっと貴方の背中を追いかけて来ました。気づいていましたか? 私は貴方に嫉妬していたのですよ。ですが……もう今の貴方は嫉妬するに値しない。
今の貴方は脆く、弱い。本当は手取提督と共にありたいのでしょう? 自らの心に嘘をついて引いた弓の無力さは、貴方が一番よく知っているはずですが」

赤城「加賀……貴方は何を考えて」

ダァンと部屋の扉を蹴破る瑞鶴。

瑞鶴「先輩! 報告です! 第六・第七資材庫で収奪があったようです!」

翔鶴「燃料・弾薬・鋼材・ボーキサイト、他高速修復材などが奪われたようです。どうにも、この鎮守府の中に反乱軍との内通者が居たそうで……。
今、蒼龍先輩と飛龍先輩が現場に向かっていますが……日も沈みつつあるこの状況での索敵は困難かもしれません」

翔鶴「収奪された資源や資材の量はさほど多いものではありませんが……この手際の良さ、油断なりませんね。これだけのことをやるからには向こうも本気、ということでしょうか」

瑞鶴「井州提督からの指示はまだですが、形跡から大方のルートは絞れたようです。反乱軍の拠点を探すために全方位に艦娘を繰り出す必要は無くなりました。
正式な決定が決まり次第中部海域に、全勢力を以って進攻することになるかと!」

翔鶴「いよいよ決戦、ですね。……随分と期間が狭まってしまい艦隊全体での連携には多少不安がありますが、井州提督も仰っていたようにここまで戦い抜いた艦娘であれば問題はないでしょう。
瑞鶴も私も、コンディションは完璧です! 一航戦二航戦の先輩方と私たちがいれば。きっと乗り越えることが出来るはずです」

加賀「私に遅れを取らないことね五航戦」

ファサと髪をかき上げる翔鶴。

翔鶴「ええ、もちろん。MIでの戦いを超える活躍を期待して下さい。もう先輩方の後ろで戦う私たちじゃありませんから」

加賀「フッ……貴方から勇ましい言葉が聞けるのは珍しいわね。雄弁に恥じぬ働き、期待しているわ」

ポンポンと翔鶴の肩を叩き、部屋を後にする加賀。

加賀が部屋を出てから追うようにして瑞鶴はトレーニングに向かい、部屋に残された翔鶴は武装の手入れを、赤城は何をするわけでもなく椅子に座り続けていた。

翔鶴(いつもより心なしか覇気がないように思えます。どうしたんでしょうか)

翔鶴が声をかけようかかけまいか悩んでいると、赤城の方から話を切り出した。
600 :【85C-4/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 20:58:44.60 ID:dfa6f4ou0
赤城「手取提督の話は前にしましたよね」

翔鶴「……なるほど。そういうこと、ですか。私の目には少しも迷いが無いように見えていたので、割り切っていたのかと思いました」

赤城「残念ながら、そうまで強い人間ではないのですよ……私は。これまでは抑えていられたんですけどね。覚悟はしていたつもり、なんですけどね……。
いざ“その時”となると、気持ちの整理が着かないものですね。我ながら不甲斐ない」

赤城「それでも……私は戦いますよ。これが私に課せられた宿命であるなら、受け入れましょう。私の個人的な感情は、大義の前ではエゴイズムに過ぎません。
これは悲劇でもなんでもない。私は己の未熟さを超え、更なる成長を遂げましょう」

翔鶴「自らの想いを捨て去ってでも、ですか」

赤城「ええ。これが一航戦赤城に課せられた最後の試練。私が貫くべきは正義であり、自我ではありません……!」

翔鶴「自らの心に嘘をついてもですか。それは欺瞞ではないのですか」

赤城「戦場に立つ時、正しい心であればいい。今は迷いの中であっても、克服してしまえば大したものではありません。恐れも悔いも、私はそうやって乗り越えてきた」

翔鶴「強くあることと、自分の心を理論武装で塗り固めることは違うでしょう。彼のことを想っていたのでしょう、なぜその気持ちさえも捨て去ろうとしてしまうのですか!」

赤城「そうあらなければ私は強くなれないからです。戦場に情は不要。曇りない信念がなければ敵を沈めることは出来ない、敵がかつての味方であったならなおのこと……」

翔鶴「貴方はプライドのために生きているのですか。一航戦というのはそんなに大事な肩書きなのですか?」

その台詞が癪に障ったのか椅子から立ち上がり、じっと翔鶴を見据える赤城。

赤城「師弟揃って言いたい放題ですね……。そうですよ、私はこの空母機動部隊の礎を築くために何年も時間を費やしてきた」

赤城「制空権を取り返す力もなく、深海棲艦になされるがままの状況を変えてきたのは私です。その為に艦載機隊の熟練度の向上も、人材の育成も、この身一つで積み重ねてきた。
佐世保が解体になってからは、次の世代であるあなた達に任せておいても問題ないと考えていましたが。こうなってしまっては話は別」

赤城「私は再び戦場に降り立ちましょう、今度こそ全てを終わらせるために。かつて愛した人が相手であるならば、最後の敵には相応しい」

パァンと、乾いた音が部屋に鳴り響く。翔鶴が赤城の頬を叩いたのだ。

翔鶴「今、私は貴方が間違っていると思ったから叩きました。怒っているわけではありませんが、言葉で言っても無駄でしょうから」

赤城「そう。それで、貴方の気は済んだかしら」

全くダメージを受けていないような、涼しい顔の赤城。

翔鶴「間違っていたならば、正せばいい。なぜそれが分からないのですか」

翔鶴「私は! 貴方が手取提督について話している時の生き生きした表情を見て、この人は本当に提督のことが好きなのだなと。そう思いました。
自分の背負っている責任のようなしみったれた話をしている時と比べて、何十倍も輝いていました」

翔鶴「貴方が彼への想いを失った時、貴方は本当にただの兵器になる。ただ生きるためだけに生きる人形になり下がってしまう!
この戦いに勝利したとして、貴方はこれから先どうやって生きるんですか。半深海化や今後の情勢といったものを抜きにして、貴方はこれから何をしていたいんですか。
私が貴方の道場に相談に行った時もそうだった。自らの本当の望みも果たせず、果たす術も知らずに貴方は燻り続けてきた」

翔鶴「『私にはこうするしかない』と、都合の良い場面でだけ自分の弱さを盾にするのはやめてください。貴方にはそれを乗り越えるだけの強さがあるはずです」

ぽろりと、赤城の目から雫がこぼれる。頬を伝って地面に落ちていく。最初の一滴に続いて、また一滴。
力なく跪いて顔を抑える赤城。やがて堰を切ったように止めどなく流れ落ちていく、涙。

赤城「私は……どうすればいい……。何を信じれば……」

翔鶴に問うているわけではなく、自問しているようだ。

赤城「私は、彼のことがたまらなく、愛しくて……でも。今彼のやっていることを、支持できない。
本当は、自分の愛情にすら自信が持てないのかもしれません。だから彼のことを疑ってしまうし、信じきることが出来ないのかもしれません」

翔鶴「人は間違いを起こします。先輩がご存知のように、私だって間違えてばかりです。
間違いを起こさない人間はいません、手取提督のような聡明な方でも、過ちを犯すことはあるでしょう。
私も彼のやり方には疑問があります……真意が読めませんから」

翔鶴「だから……妄信する必要なんてないんです。間違っているなら、正してあげればいい。彼の傍で戦い続けるだけが愛情の形ではないのだと、私はそう思います」

赤城「そう……なのかしら、ね。でも……今は貴方の言っていることを信じたいわ」

翔鶴「自分の心を雁字搦めに縛らないでください。先輩が、どんな風に戦ってきたかは知りませんが……今は私がいて、瑞鶴がいます。
二航戦の先輩方や、加賀先輩がいます。一人じゃないんです。だから、もう一人ぼっちで背負わなくていいんです」

赤城「貴方に、気づかされることになるとは思いませんでした。そうですね……そう。私、バカみたいですね。そうですよね……。ありがとう、翔鶴。頼りになるわね……」

・・・・

翔鶴「それはそうと……赤城先輩は今回の空母部隊の人事権があるんですよね」

赤城「ええ。それがどうかしましたか?」

翔鶴「ごにょごにょごにょ……」 耳打ちする

赤城「えっ、それはさすがに……。一応、考えておきますが……えぇ〜」 困惑した表情の赤城
601 :【85C-5/100】 ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 20:59:40.90 ID:dfa6f4ou0
夜の海を疾走する皐月たち。

雷「追手はまだ来てないみたいね。でも、日が昇ったら見つかっちゃうかもしれないから油断は出来ないわ」

天龍「昔と違って深海棲艦や渦潮の足止めがあるわけじゃねえんだ。追手に見つかる前には着くだろ。それはそうと、おいなんだアレ……? 空を見てみろ」

欠けた月の近くに浮かぶ風船のような物体の群れ。その内複数体がこちらに向かってくる。

皐月「ああ、皆は生で見た事がないんだっけ。深海棲艦の浮遊要塞だよ」 やや得意げに説明する皐月

皐月「アレが出て来るってことは……司令官は本当に深海棲艦を手中にしてしまったんだね」

浮遊要塞が皐月たちの頭上に急接近し、光を照射する。光に照らされた皐月たちの身体はしばらくすると宙に浮き、浮遊要塞の中に吸い込まれていく。

電「えっ、これ、大丈夫なんですか!?」

皐月「司令官もボクたちの位置を把握してるはずだから、迎えに来たってことだと思う。敵意があるなら先制攻撃してくるだろうし」 浮きながら説明を続ける皐月

文月「キャトルミューティレーション……」

・・・・

大理石のような材質の床に、透明なガラスのように外の景色を映している壁。宮殿にあるホールのようにだだっ広い空間が広がっていた。

皐月「なんだこれ……中はこんなになってたのか」

龍田「海の上を移動するよりもラクでいいわね〜」

天龍「というより、海を渡って行ったんじゃかなり厳しいな。海面に幾つも渦潮が発生してやがる」

MIの島々に並び立つ岸壁の要塞。一見すると天然の要害のように見えるが、これらは提督たちがこの島を訪れた後に形成されたものだ。
そして要塞の中央に聳え立つ城。あそこに司令官は居るのだと、皐月はそう直感した。

・・・・

提督(皐月らとの合流が果たせたようだな。金剛も間もなくこちらに戻ってくるだろう)

提督「あちらもそろそろ動き出す頃合か。備えは済んだが……後はどれだけ時間を稼げるか、か」

響「司令官がお望みとあらば、百年でも戦えるさ」

提督「なに、百時間も必要ない。こいつが目覚めるその時まで耐えてくれれば十分だ」

“こいつ”……玉座の上で眠る空母ヲ級Nightmareを指差して言う。

響「これはそんなに役に立つものなのかい?」

提督「……さあな。目覚めてみないと詳しいことは分からん。だが、意識がなくとも一瞬にしてこの城を生み出してしまう程度には力を持っている。
泊地水鬼曰く、かつての深海棲艦の本拠地であった場所を海底から地上に顕現させたものらしい。多神教圏でなら神と称される程度に力はあるんだろうな」

響「司令官は神ってやつを信じるのかい」

提督「『神』をどう定義するかによって変わってくるが……。絶対神、絶対善、全知全能……そういったものは存在しないのだと思う」

響「ほう、そう答えるとは意外だな。詳しく聞きたい」

提督「詳細に回答できるほど物を知っているわけではないが……。この世界というのはどうやら何某かのシステムによって立脚しているようだ。
ある者はそれを宿命と呼び、ある者はそれを神意と呼ぶ。しかし、そのシステムのルールは絶対的な一存による決定で定められるものではないのだと思う」

提督「世の真理は真理にあって未だ真理にあらず。真理を超越した先の真理を見出したいと、俺はそう望むのだ」

響「久々に言っている意味が分からない台詞を聞けて安心したよ。やはり君はそうでなくてはな」

・・・・

雪風らに玉座へ案内されると、皐月は提督のもとへ駆け寄っていく。

皐月「司令官!」

提督「ご苦労だったな……正直のところ予想外の動きだが。発信機の存在に気づいたなら、呉の連中に知らせると踏んでいた」

皐月「司令官は、ボクが司令官を裏切ると思ってたの……? ボクを信じていなかった?」

提督「逆だ。軍を裏切ってまで、俺に従う道を選ぶとは思わなかった。信じる信じない以前に、合理的な選択じゃないからな。
俺にとってはもっともありがたい働きではあるのだが……今は資源がとにかく欲しい」

皐月「司令官は、ずっとボクのことを信じていてくれたから。大事に思ってくれていたから。ボクは司令官のために、ここに来たんだよ」

少し悲しそうな顔を浮かべると、歯を食いしばる提督。しかしすぐに普段の表情に戻る。

提督「そうか。すまないな……助かる」

提督「役者は揃った。日も間もなく昇る頃だろう。各員、戦闘配置! 開戦だ……!」
602 : ◆Fy7e1QFAIM [saga]:2015/10/11(日) 21:05:52.42 ID:dfa6f4ou0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~85 Phase C/100)
・皐月の経験値+6(現在値19)
・翔鶴の経験値+4(現在値19)

・足柄の現在経験値:26
・雪風の現在経験値:26
・金剛の現在経験値:23
・響の現在経験値:23
----------------------------------------------------------------------

相変わらずややこしいことになってきましたね(定例)
次はPhase Bですが、そろそろ終わりに近づきつつあるんで確率の偏りをフラットに戻しました。

----------------------------------------------------------------------
『Phase B』【86-90/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00〜15:雪風
16〜32:翔鶴
33〜49:金剛
50〜65:響
66〜81:足柄
82〜99:皐月
>>+1-5

よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらい眺めてなんとなくわかった気になってください。
(または>>495->>496あたりを見てわかった気になってください)
----------------------------------------------------------------------
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 21:07:02.25 ID:ZIS1ulRGO
てーい
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 21:07:12.20 ID:+5thFE8nO
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/11(日) 21:07:21.99 ID:i+QX2QkfO
1766.36 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)