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【安価とコンマで】艦これ100レス劇場【艦これ劇場】
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362 :
【3/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/01/17(土) 00:45:39.14 ID:w9SzSr740
一週間後、響は再び執務室を訪れた。
提督「ヴェールヌイ。人を連れて来いと言った覚えはないが」
響「連れてくるなと言われた覚えも無いからね」
提督「まあいい。お前が連れてきた人材なら、ひとまずは安心出来るだろう」
響(司令官は本当に私のことを信頼しているんだな)
提督「おい、何を固まっている」
雪風「ア……イエ……か、陽炎型駆逐艦8番艦、雪風です! どうぞ、宜しくお願い致しますっ!」
緊張しているのか声が上擦っている。
提督「そんなに大声で言わずとも分かっている。どうしたんだ」 少し不機嫌そうな声色
響「司令官、怖がらせないであげてくれないか。彼女はあがり症なんだ」
提督「やれやれ、妙なのを連れ込んできてくれたな……。心配するな、取って食いはせん」
雪風「アッ、ハイ……いえすみません。すごく怖い方だと聞いていたものでして……」
提督「せっかくなのでその噂、話してみてくれ。なに興味本位だ」
雪風「え、えぇー……。執務室に艦娘を監禁して暴力を振るうのが趣味だって言われていたり、実は深海棲艦と通じているスパイだって言われてたり……」
響「ふふふ。そうそう、全然執務室から出て来ないから実はロボットか何かじゃないかとも言われてるね」
渋い顔をする提督。
提督「まぁ、そんなことはどうでもいい。報告を」
雪風「あっ、はい! んしょっと……」 鞄から小型のノートパソコンを取り出し、映像を再生する
提督(なぜWacBookにMindows OSを導入しているのか気になる所だが黙っておこう)
雪風「あの……これ、です」 鎮守府の地図を取り出す
提督「ふむ。鎮守府敷地内の地下通路に、なぜか地図上に存在しない部屋がある……ということか」
雪風「はい。そっ、その! これだけならしれえに報告するほどでは無いのかもしれませんがッ! なんだか妙な予感がしたので……」
提督「……確かに気になるな。ヴェールヌイ、部屋の前に小型の監視カメラを設置してきてもらえるか。部屋の中が覗える位置が望ましい」
響「そう言われるだろうと思って既にやっておいたんだ。雪風、例のファイルを」
雪風「はい。部屋に入っていく艦娘を捉えた映像です」
・・・・
動画の内容は、地下通路内の一室に艦隊所属の軽巡洋艦龍田が部屋に入り、再び部屋の外に出る……というだけのシンプルなものだった。だが……
提督「部屋の中に緑色のものが大量にあったのが一瞬見えたな……。植物のようだが」
提督「人目につかない場所の、厳重に鍵がかけられた密室で育てる植物といえば……まぁ、そうなるな」
響「彼女を尋問するかい? 看過するわけにはいかないだろう」
提督「いや、共犯が居て何らかの方法でバレたことを伝達。共犯者は部屋の大麻を全て処分し別の植物に入れ替えておく……なんてことをする場合も考えられる」
提督「そして逆に提督に対し不当な拘束を受けたと証拠つきで言いふらして回り最終的に失脚まで追い込む。私が同じ立場ならそれくらいのことをする」
雪風(ひねくれ過ぎなのでは……)
雪風「もう少し裏を取ってから……ということでしょうか」
提督「関係者を全て洗い出してからだな、表向きに対処するのは」
提督「まずは、この龍田という艦娘の身辺調査を依頼したい」
提督(麻薬取引か……厄介なことになってきたな)
363 :
【4/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/01/17(土) 00:51:31.57 ID:w9SzSr740
鎮守府内のとある会議室にて。
霞「ではヴェアヴォルフ第48回定例会……やるわよ」
――“ヴェアヴォルフ”。
この鎮守府では、第一艦隊から第四艦隊までが正式な艦隊ということになっているが、それ以外にもユニット(小隊)が組まれていて、時には主力艦隊を差し置いて出撃命令を受けることがある。
“ヴェアヴォルフ”もそのユニットの一つ。深海棲艦の支配海域へ少数で侵攻しゲリラ戦法的な電撃戦を行うのが主たる活動内容で、足柄・大淀・霞・清霜の4名で構成されている。
霞「いつまでヘコたれてんのよ! 」
大淀「ううっ……だってぇ〜……やっぱりショックですよぉ……。そりゃあ私にも責任の一端はありますけど……」
足柄「あの提督が悪いのよ! そうに決まってる!」
霞「過ぎたことを! グダグダと!」 両手で大淀と足柄にチョップをする
霞「いい? その件については前の会議で言った通りよ。確かに大淀の件は残念だけど、あの提督は実際に秘書艦が居なくても何も問題なく執務をこなせてる」
霞「指揮といい先見性といい、人間性以外に非の打ち所がないぐらい完璧だわ」
清霜「あの霞にここまで言わしめるなんて凄いねぇ。……かえって心配になるかも」
霞「アンタ人のことをなんだと思ってるのよ」
足柄「鬼教官」
大淀「というか鬼そのものなのでは……」
霞、両名に無言でチョップを放つ。
霞「……とにかく、この件に関してはこれ以上蒸し返さない。それより考えなきゃならないのは今後のことよ」
霞「ヴェアヴォルフの地位は以前と比べてかなり低下しているわ。これまでのように主力艦隊と同等の扱いを受けることはまず無いでしょうね」
大淀「そういえば最近、利根さんや熊野さんに避けられているような気がします……」
足柄「チッ、ドラム缶運びが偉そうに……!」
大規模な組織の中には、多かれ少なかれ階級や序列が存在する。それはこの鎮守府の中でも例外ではない。
武勲艦や主要作戦に参加した艦はその分手厚く補助を受け、鎮守府内での影響力も強めていく。
艦娘の世界は成果主義だ。古株だろうと結果を出せなくなれば容赦なく冷遇を受けるが、新参であっても作戦に貢献出来れば厚遇される。
霞「大淀が秘書艦を降ろされたことにより他の艦隊やユニットからの評価は低下。おまけにどこぞの馬鹿が提督に噛みついたせいで重要任務からも尽く解任」
足柄「馬鹿ってなによ! ……ただ、厳しい状況なのは否定出来ないわね」
清霜「全然任務が来ないのが致命的だよねぇー……暇だなー」
艦娘たちは提督から与えられた出撃命令などの任務を達成することで利益を得ている。
ヴェアヴォルフへの任務が激減したのは、大淀の失脚や足柄の行動だけが原因ではない。
ヴェアヴォルフは、『数撃てば当たる』を地で行く集団だった。
どれだけ面倒な作戦だろうが危険な作戦だろうが片っ端から出撃していき、失敗してもそれを取り返すほどの出撃を繰り返して地位を得てきた組織だった。
ところで、他の艦隊から任務を受託することは各鎮守府では日常的に行われていることである。これを任務ロンダリングと言う。
ヴェアヴォルフは他のユニットから、時には主力艦隊からも任務ロンダリングを受けて多くの利益を得ていた。
だが、この任務ロンダリングによって艦娘が艦娘を雇うという状態を危険視していた提督は、着任して早々に対策を打った。
個々の艦娘の能力および各ユニットや主力艦隊の実力を十分に把握し、その上で過不足ない任務を配分するようにしたのである。
この改革により各組織への負担が大幅に減ったため多くの艦娘たちは歓喜した。
その一方で、過剰に出される任務を肩代わりすることでより多くの利益を得る、ヴェアヴォルフのような者たちは割を食ったということである。
何気なく発した清霜の一言は、その事実を他の三名に気づかせるのに十分であった。
霞「……これまでのようなやり方だと、やっていけそうにないわね」
大淀「地道に任務をこなして、提督の信頼を得るところから……でしょうか。ハァ……」
清霜「幸い時間だけはたくさんあるし、今後についてじっくり考えてみたらどう? 司令官に認めてもらう方法をさ」
足柄「…………。私は反対よ! そんなちまっこいことやってられないわ!」 衝動的に立ち上がる
霞「じゃあどうするってのよ!? 何か案でもあるの?」
足柄「…………あ、あるわよ! あるわ! 次の会議までに良い報告を持ってきてあげるんだから! 期待して待ってるのね!!」
・・・・
足柄(あの提督の犬になるだなんて、絶対にゴメンだわ!)
足柄(霞がああ言うぐらいだから、頭の勝負で勝てる相手じゃなさそうだけど……)
足柄(でも……納得行かないわ。絶対出し抜いてやるんだから! ギャフンと言わせてやる!)
364 :
【5/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/01/17(土) 00:54:43.94 ID:w9SzSr740
金剛と比叡が自室で何やら話し合っている。二人は主力第一艦隊所属の艦娘で、この鎮守府の中ではいわゆるエースだ。
金剛「ひええええええええええ」
比叡「何ですかお姉さま」 少し怪訝そうに
金剛「あの提督冷たすぎデース! 栄えある第一艦隊旗艦に対してあの態度はなんなんですカー!」
比叡「うーん、文字通りの鉄仮面ですからねぇ……。何かあったんですか?」
・・・・
金剛「ヘーイ! 提督ゥ! お話に来たネー!」
提督「執務室への不要な立ち入りは禁止したはずだ。処罰されたいのか?」
金剛「Oh……これは手厳しいネー! でも、そんなに根を詰めていてはダメですヨ? ワタシと一緒にTea Timeなんて」 座っている提督の隣に立ち、顔を近づける金剛
提督「よほど第一艦隊から異動されたいように見える」 隣の金剛に目もくれず淡々と書類仕事を処理していく提督
金剛「こっ、これはっ! スミマセン! 失礼しまシタ!」
提督「それから言っておく。俺はお前のように媚び諂う人間が大嫌いだ」 そそくさと部屋を出る金剛に追い打ちを言い浴びせる提督
・・・・
金剛「ということがあったんデース。取り付く島もないデース……」
比叡「まぁ〜あの提督ネクラそうですからねぇ。あんな提督は忘れて、たまには姉妹でティータイムなんてどうでしょうか。何なら榛名や霧島も呼んで……」
金剛「比叡? 人から愛されるにはまず自分からデース! 提督のことをそんな風に言ってはいけまセン」
金剛「それに! 榛名や霧島は信用ならないデース! 腹の中ではワタシの座を狙ってるに違いないデース!」
比叡(お姉さま……提督への愛はあれど、私たち姉妹への愛は欠片もないということですね……)
比叡(いや、お姉さまは提督に対しても愛情など抱いていない。ただ提督を利用して自分が良い思いをしたいというだけ……)
比叡(私はお姉さまの向上心や前向きさに惹かれていたのに、どうしてこうなってしまったのだろう。今や利害で動いているだけだ……己の野心のままに)
金剛「比叡? 比叡? 何ボーッとしてるデース」
金剛「紅茶が冷めますよ? 今の私には、比叡だけが信頼出来る友人なんですから……しっかりしてクダサーイ」
金剛「話し相手が居ないのは退屈ですからネー。ちゃんとResponseしてよネ?」
比叡「あっ、ハイ! すみません、お姉さま……」
・・・・
金剛「どうやったらあの提督のハートを射止められますかネー。このままだと榛名や霧島、他の艦娘に旗艦の地位を取られてしまいそうデース……」
比叡「お姉さま。寵を得ようとするよりも、まずは練度を上げられてはいかがかと。あの提督は実利主義です。戦果を上げれば評価してもらえるかと」
金剛「そんなまだるっこしいことやってもCost Performanceが悪すぎデース! そもそも練度を上げれば敵に勝てるなんて事自体幻想デース。今ドキの考え方じゃないデース」
金剛「もちろん最低限の練度は必要デスけど、ある一定のラインに達したら後はドングリの背比べデース! 戦果を上げるのに重要なのは第一にCondition。次に装備デース!」
金剛「詰まる所Quality of Lifeの向上が戦果へと繋がるのデース! 装備の強化も、モチベーションの維持にも、おカネは必要ですからね」
金剛「あとは場の空気を読んで上手くMVPを掻っ攫うSenseと敵から攻撃を受けない運デース」
金剛「比叡は戦い方がちょっと愚直すぎマース! 無傷の敵と殴り合うよりも、空母連中が傷めつけた相手や敵の親玉を叩く方がスマートデース」
比叡「すみません、お姉さま……」
金剛「戦果なんて上げて当然デース♪ でも、それだけじゃ足りないのデース……」
金剛「戦いでの報酬は安定していまセン。盤石な地位によって得られる不動の恩恵こそワタシの心に安寧をもたらすのデース」
金剛「そのためのBurning Loveデース! 提督のハートを掴むのは! このワタシデース! 必ずゲットデース! 絶対ゲットデース!」
比叡「でも……」
金剛「デモもシカシもカカシも無いデース! 良いですか比叡? 比叡は提督にツッケンドンすぎデース」
金剛「提督に愛想を尽かされたら事実上の失脚デース! 提督に愛されるのも、艦娘の戦略のうち、ですヨ?」
比叡「…………」
365 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/01/17(土) 00:59:35.23 ID:w9SzSr740
----------------------------------------------------------------------
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~5/100)
・足柄の経験値+2(現在値2)
・響の経験値+1(現在値1)
・雪風の経験値+1(現在値1)
・金剛の経験値+1(現在値1)
----------------------------------------------------------------------
////チラシの裏////
んなわけでここまでデース! 初っ端からやり過ぎた感が否めまセーン!
大丈夫なのかこの鎮守府。もうどこから突っ込んでいいのやら。
前回がピュアボーイミーツピュアガールな感じだった反動もあるけどこれはダーティすぎるな……。
でもシリアスにやるつもりでは書いてなくて、どちらかといえばドタバタコメディみたいな感じを考えてます。
というか、もう現時点でそこはかとなくネタ臭が漂い始めてませんかね。リアル系の皮を被ったスーパー系みたいな。
いやまぁしっとりした感じの……たとえば情死とかもやりたいなぁとか考えてたけどただでさえ少ない読み手が更に減りそうなので……。
今回は前回と違ってあんまりイチャイチャさせることを考えていないので、登場キャラが皆それなりにロックな感じです。いやパンク? ハードコア?
わりと
>>1
が書きたいように書いてる感じなので結構楽しいです、独り善がりにならないように気をつけたいところですが。
ただ、金剛はやり過ぎたかなと自分でも思います。
キャラ崩壊……かなぁ。だよねぇ……。こういう解釈も面白いかなーと思って書いてるけどひょっとしたら俗に言う作者はウケると思ったシリーズ的アレかも。
まあまだ始まったばかりですし、そこいら辺も含めて(?)今後に期待ということで。
366 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/01/17(土) 01:00:37.81 ID:w9SzSr740
さて次のフェイズへ移行いたします。
よくわからない方は
>>351
参照。
コンマ値で決定するだけなんで、ほげとかぴよとかそんな感じの適当なレスをするだけという簡単なお仕事です。
なんだったら適当にキーボードを叩きまくってストレス解消の場として使ってもらっても構いません。
http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/hikky/1285389039/
あるいは何かシチュエーションを書いておくと実現したりしなかったりします(
>>351
参照)。
『Phase B』【6-10/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00:
>>1
が独断で決定
01〜16:雪風
17〜33:翔鶴
34〜50:金剛
51〜65:響
66〜82:足柄
83〜99:皐月
>>+1-5
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/17(土) 05:21:23.82 ID:dEamqbUDO
うん?
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/17(土) 08:33:18.69 ID:K2xtmhOco
デース!
369 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/17(土) 18:40:08.25 ID:g/7kJiZIo
うらー
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/17(土) 18:42:10.37 ID:lU2VOjepO
ぽい?
371 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/17(土) 21:28:46.01 ID:qorlXQGuO
でちー!
372 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/01/17(土) 23:47:52.55 ID:w9SzSr740
というわけで
・皐月1レス/足柄1レス/翔鶴1レス/金剛1レス/雪風1レス
で『Phase B』が進行していきます。Phase Bでは経験値+2上昇なのです。
投下はいつ頃になるか分かりませんがそんなに早いペースではやっていけないかなーという見通しです。
まあゆるいペースでやっていきます。
373 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/23(金) 23:12:18.61 ID:lWG8D5CAO
この金剛は新しいなwwww
374 :
【6/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/01/27(火) 21:51:52.17 ID:Yq22Kgnx0
豪勢な食事を前に感動する皐月と文月。
ここは第四艦隊の会合室。部屋の中には新たに配属された皐月と文月の他に、暁・雷・電、そして旗艦の龍田が居る。
第四艦隊は第三から第一艦隊とは異なり、常設されている艦隊の中で唯一深海棲艦との交戦を主としない、特殊な立ち位置の艦隊だ。
第四艦隊の任務は専ら遠征である。他鎮守府への補助、離島や各防衛拠点への物資輸送のために方々へ繰り出される。
皐月「いやあ〜! 訓練生時代とは訳が違うなぁ! これが第四艦隊の食事かぁ!」
第一から第四艦隊のいずれにも配属されず、ユニットにも所属することが出来ない低練度な艦娘は、この鎮守府内では“訓練生”と呼ばれている。
この“訓練生”は実戦に参加することが許されておらず、鎮守府内での清掃などの雑務をこなしながら、修行の日々を送っている。
才覚さえあればすぐに訓練生を脱出することも出来るが、現実はそう甘くはない。
駆逐艦どころか重巡洋艦の訓練生すらいるこの鎮守府では、皐月や文月のように訓練生を脱していきなり常設の艦隊に配属されるということは稀有な出来事であった。
電「訓練生の頃はどんな感じだったのです?」
皐月「ボクも文月も成績で言えば普通ぐらいで、なんでここに配属されたかよく分からないんだよね」
文月「普通っていうか、皐月はわりと落ちこぼれだったよね〜」
皐月「言うなよお!」
暁「あら? 実戦登用の試験では二人ともトップの成績だったって聞いてるけど……意外なのね」
文月「実習の成績だけは良かったからねぇ〜皐月は〜」
皐月「文月もだろ! ボクを貶めようとしてない?」
龍田「二人とも仲がいいのね〜」
・・・・
談笑する一同。
皐月「配属された時は不安だったけど……居心地の良い艦隊みたいで良かったよ」
龍田「ふふっ、良かったわ〜。私たち仲良くやっていけそうね」
皐月「そういえば、第四艦隊は遠征任務をこなすっていうのは知ってるけど……なんで他の艦隊やユニットは遠征を滅多にやらないんだろう」
龍田「遠征では物資の受け渡しが主なミッションとなるんだけど〜、その主な受け渡し先は他の鎮守府や泊地なのよ〜?」
龍田「向こうの足りない資源を施して、逆にこっちの足りない資源を貰って補うの〜。貿易みたいなものと言えば分かりやすいかしら〜」
龍田「でもぉ、私たちは営利組織じゃないから〜……あんまり遠征にばかり艦は割けないのよね。よほど資源が欠乏している鎮守府以外は遠征に出せる艦娘の数が制限されているの」
皐月「縁の下の力持ちってわけだね!」
龍田「そうよ〜。それなのに他の艦隊の人は私たちのことを水上スケート隊だなんて揶揄するのよ? 酷いわよね〜」
鎮守府に常設されている艦隊所属の艦娘は破格の厚遇を受けている。それは第四艦隊とて例外ではない。
第四艦隊が手厚く補助されている理由は、多忙な遠征任務の対価とされている。
だが、命の危険に晒されることのほぼ無い安全海域を行き来しているだけの者たちをそこまで遇する必要は無いのでは、という声がこの鎮守府内では大きい。
雷「他の艦隊にどう思われようと、関係ないわよ! 私たちがこの鎮守府を支えているのよ?」
龍田「そうね〜。でも……皐月ちゃん文月ちゃん? 第二艦隊には警戒した方が良いわ。何か酷いことされそうになったら、すぐに言ってね?」 皐月と文月の方に顔を近づける
・・・・
皐月「いやあ、一人一つの部屋なんて考えられる? 相部屋じゃないんだよ!?」 自分専用の部屋に興奮する皐月
文月「皐月ー……浮かれすぎだよー……。あのさ、ヘンだと思わない?」
文月「ただの一遠征部隊にしては装備が高性能すぎるし、なんか妙に羽振りが良さすぎない?」
皐月「そりゃあ常設の艦隊だよ? 第一から第三艦隊に比べれば劣るだろうけど、それでも他の有象無象の小隊と比べたら一線を画す扱いされてもおかしくないんじゃない?」
文月「そうだけど……それにしてもちょっと変だなぁって思ったよー。それに、あの龍田さんもなんか怪しいよぉ」
皐月「そうかなぁ? 文月の場合、龍田さんと喋り方が似てるからって対抗意識みたいなのあるんじゃないの」
文月「無いよぉ失礼だなぁ……」
皐月「ま、龍田さんの言ってた第二艦隊ってのは気になるよね。第二艦隊旗艦の響ってのは暁さんたちの姉妹艦らしいけど……そこら辺はわりとセンシティブな話なのかも」
皐月「あんまり触れない方が良さそうだ。君子危うきに近寄らず、ってね」 キメ顔である
文月「うぅーん……?」
皐月「なんだよその微妙な反応は」
375 :
【7/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/01/27(火) 21:52:22.44 ID:Yq22Kgnx0
執務室前廊下。
足柄(……偉そうなことを言ったわりに、前回の会議から全く進展が無いわ)
足柄(提督の動向さえ掴めればやりようはあると思ってたけど、噂通り執務室から全く出てくる気配が無いわね……)
足柄(もう3日も張り付いてるってのに全く出てこないだなんて思わなかったわ。……何か引きこもる為の備えがあると見ていいようね)
足柄(部屋に入れればいいけどその為の口実も無いし……。困ったわ、これじゃあ何も情報が得られない)
・・・・
それから数日後、足柄は響と雪風が執務室に出入りするのを確認した。
足柄「あの二人の後をつけてみれば、何か掴めるかもしれないわね……」
足柄(丸一週間もこんな刑事ドラマみたいなことをやってられるほど暇なのが悲しいわ……)
・・・・
足柄(とりあえず響の後を追ってみたけど……一体どこに向かっているのかしら?)
響「そこまでだ足柄。一体何の用かな? 何が目的で私の後をつけている?」
足柄「げえっ(背後を取られた! 全くそんな気配を感じなかったのに……)」
足柄「い、いやぁ〜……どこに行こうとしてるのかなーって気になって。こっちは第二艦隊の施設とは逆の方角じゃない?」
響と雪風は、共に第二艦隊所属の艦娘である。響はその旗艦を担っている。
響「私は司令官から命を受けている。しかし君にその内容を教えることは出来ない」
響「ここ一週間君が執務室前で不必要にうろうろしているという話を司令官から聞いているからね。少し警戒している」
響「そういうわけで話は以上だし、これ以上私の後をつけるようならしかるべき処分が待っているだろう。暇なのは分かるが持ち場に戻ってくれ」
足柄(たかが駆逐艦の分際で……! とはいえ、言い返せないわね。ここは引き返しましょう)
・・・・
足柄(いいわ、ここで腹を立ててもしょうがない。それに、私にはまだ手がある! まだよ!)
第二艦隊会合室前の廊下で、柱の影に隠れながら雪風の様子を伺う足柄。
雪風「足柄さん。何してるんですかぁ?」
足柄(バレたー!?)ガビーン
足柄「い、いや。貴方が今何をしようとしているのか気になってね〜(私、こういうの向いてないわね……)」
雪風「そうですか。今はしれえの歓迎会の準備をしている所です! 第二艦隊の皆でやろうってことになって」
足柄(???? あの提督の? あの提督が?)
足柄「というか……歓迎会って、あの提督はもう着任して一月ぐらい経ってるじゃない? 今更歓迎会なんて変じゃないかしら」
雪風「私もあんまり詳しいことは知らないですけど、翔鶴さんの提案でして」
足柄(あの提督の思惑が何か絡んでるわけでは無いようね)
雪風「それに、しれえはいつも一人で頑張っているので、少しでも労ってあげないと!」
足柄「なるほどー偉いわねぇ。提督頑張ってるもんねー」 無感情な棒読み
雪風「司令官が来てくれるのか不安だなぁ……あと榛名さんと霧島さんも」
足柄「?」
雪風「あっ、いえ! 何でもないです!」
・・・・
足柄「それにしても……一ヶ月も経った後に歓迎会だなんてやっぱり変よね。第二艦隊側に何か提督を利用しようという思惑があると考えた方が自然だわ」
足柄「全く話の流れが読めないけど、とにかくあの引きこもり仮面が執務室から出てくる可能性があるってのは情報を得るチャンスだわ!」
足柄「一体どんな話がされるのかしら!? 楽しみだわ!」
足柄(しかし……あの部屋に仕掛けておいた盗聴器は雪風にバレてないわよね?)
376 :
【8/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/01/27(火) 21:53:59.11 ID:Yq22Kgnx0
執務室を訪ねる翔鶴。
翔鶴「失礼します、翔鶴です。提督にお話があって来ました」
翔鶴を意に介さず執務に集中している提督。
翔鶴「あの……いつも、ずっと執務室に一人で籠っておられるのですか?」
翔鶴「ほら、窓の外から雪が見えますよ? 提督も、たまにはお休みになられたら……」
提督「早く本題に入れ」 少し苛立っている様子の声色
翔鶴「すみません。余計なお世話でしたね……。第二艦隊の皆で提督の歓迎会を是非やりたいと思っているのです」
提督(なぜ旗艦のヴェールヌイでなく、こいつが話を持ちかけているんだ……?)
必ずしも艦隊での責任者イコール旗艦というわけではない。
しかし、この鎮守府では一般的に旗艦を務める艦娘がその艦隊を取りまとめていることがほとんどであった。
第二艦隊は、響を旗艦とし、その他に雪風・翔鶴・瑞鶴・榛名・霧島で構成されている艦隊である。
翔鶴「私たちの艦隊……それから他の艦隊でも、提督の歓迎祝いが出来ませんでしたから。これからお世話になる提督の為に、やらなくちゃって」
翔鶴「本当は提督が着任される前に準備しておくべきだったんでしょうけど、前任の提督が亡くなられてから鎮守府全体が慌ただしかったから……」
提督はこの申し出を敢えて快諾した。
心の内では翔鶴のことを訝しんでいたし、ひょっとすると自分を殺そうとしているのではないかと疑ってはいた。
しかし、自らの手を汚す方法で白昼堂々と自分に危害を加えるとは思えず、また、翔鶴が何かを企んでいようがそれを上回って逆に追い詰めてやるぐらいの腹積もりでいたのであったためである。
……もちろんこれは単なる提督の疑心暗鬼であり、翔鶴はただ純粋に善意で提督を誘っただけである。
響でなく翔鶴が執務室を訪れた理由も、響は提督から受けた第四艦隊への調査任務を遂行中であったためその代理として、という極めて単純な理由である。
・・・・
数日後。提督の歓迎会が行われ、一連のプログラムが終わったようだ。
提督はその間終始仏頂面をしていた(しかし口元以外が仮面に覆われているため誰からもそのことは悟られなかった)。
響「用心深い司令官が本当に来るとは思わなかったよ。少し嬉しいけどね」
提督(……ヴェールヌイや雪風が居るなら命の心配は要らなさそうだな。となると、何が目的だろうか?)
翔鶴「提督、これからもよろしくお願いしますね」
提督「……ああ」
提督(おかしい。おかしすぎる。何も起こらないなんておかしい)
提督(何かの意図があるはずだ。私を動かそうとするその意図が……考えろ。考えろ)
提督「翔鶴……お前何か私に隠し事をしていないか?」
翔鶴「? 何のことでしょうか?」
提督(知らぬ存ぜぬとでも言いたげなとぼけ顔だな。まさかこいつ本当に歓迎会をやるためだけに俺を呼んだのではあるまいな……)
霧島「司令? 珈琲をお持ちしました。……おわっ」 前のめり転倒する霧島。
霧島「っ痛ぁ……司令にかからなくて良かった……」 と言った後に、キッと榛名の方を睨む。
榛名「ごめんなさい。転ばせようとしたつもりは無かったのですけど」 謝意はあれど、どこか釈然としない様子の榛名
霧島「すみません司令。珈琲、入れ直して来ますね」 榛名の詫びを無視し立ち上がる霧島。すれ違いざまに榛名の耳元で「卑怯者」と囁く。
他の者は誰も気づいていないようだったが、提督だけは見ていた。確かに霧島の足元を遮るように榛名の足が伸びていたのを。
だがそれは意識的に霧島を転ばせようとしているわけではない。霧島が前に進もうとした瞬間に邪魔にならないように足を引こうとしたからである。
また、霧島も榛名の足が自分の進路を遮っていることに転ぶ直前で気づき、進路を変えようと歩幅を変調しようとしたのを見逃さなかった。
何の事はない。たまたま二人が足を動かそうとしたタイミングで接触し、転んでしまっただけのことである。
提督「…………」
だが、提督は榛名の弁護をしなかった。二人の間に生じている溝を感じ取り、対立の様子を見ようとしたからである。
また、その様子を観察することによって確執の原因は何なのかを探ろうとしたからである。
提督(なるほど……翔鶴は遠回しに人事異動を促したかったというわけか? 俺の前で二人が対立している様子を見せ、どちらか一方を残しどちらか一方を外せと。そういうことか)
提督(確かに第二艦隊の戦果記録を辿ってみると、片一方が活躍している時はもう片方の戦果が揮わないことが多いな)
提督「見極めを委ねる……というわけか翔鶴(随分回りくどいやり方をするな……何か裏があるのかもしれない)」
翔鶴「え? え?(なにか、ややこしいことになっている気が……)」
377 :
【9/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/01/27(火) 21:55:14.75 ID:Yq22Kgnx0
歓迎会が終わり執務室に戻った提督。ようやく一人きりになれた、と安堵の溜息をつく。
しかしその安息は一瞬にして破壊される。侵略者がやってきたのだ。
金剛「ヘーイ提督ゥ! 第一艦隊でも提督の歓迎会をしようと思うネー!」
ドンドンと執務室のドアを叩く金剛。しかし旗艦を外されるのは怖いらしく、執務室の中に入ってこようとはしない。
提督「最悪だ……」
第二艦隊は、榛名と霧島の水面下での確執はあれど組織力は高く、また、信頼を寄せている響や雪風が在籍しているため、提督にとっては最も扱い易い部類の艦隊であった。
一方で第一艦隊は、戦力こそ鎮守府内最強だが、各々がなまじ単騎でも敵を倒せてしまう力があるせいで連携が薄い艦隊だった。当然組織としてのまとまりなど無い。
提督は自らの日記の中で、第一艦隊について「カレーとラーメンとハンバーグとケーキとをミキサーでかき混ぜたような艦隊」と評している。
金剛「第一艦隊でも提督との親睦を深めたいと思いマース! 早く開けて欲しいデース! 皆待ってるデース!」
提督(第二艦隊で歓迎会を行ったという話を聞いて、強引に第一艦隊の連中を呼び出したのか? 緊急作戦会議などという名目で招集したのかもしれんな)
提督(何にせよ、奴が旗艦に居るのは前任の提督の人選ミスと言わざるを得ない。戦力だけは評価出来るが……奴に旗艦は任せられないな)
提督(とはいえ、これまでに一定の結果を出してきた実績ある集団だ。そこの頭をすげ替えるとなると大義名分が欲しくなるところだな……)
第一艦隊は、旗艦金剛と、比叡・Bismarck・飛龍・赤城・加賀で編成されている機動部隊だ。
個々の練度は極めて高く、また、戦況分析能力や判断力にも優れていて、名実ともに鎮守府最強の集団である(一切の連携がなく各々の個人プレーであることに目を瞑れば)。
・・・・
翌朝、提督宛に一通の手紙が届く。
拝啓 提督
金剛です。初春とはいえまだまだ寒い日が続きますね。
昨日は突然無茶なお誘いをしてしまってごめんなさい。
迷惑でしたよね。でも、私、提督に喜んでもらいたかったんです。
提督を想う気持ちが先行してしまって、軽率な行動を取ってしまいました。
今後は提督のご迷惑にならないように心がけますから、ばかな奴だと見放さないで下さいね。
私は提督の為なら、どんなに辛いことでも乗り越えていく所存ですから。
……前に私が執務室を訪れた時に、私のことを嫌いだと仰られましたね。
あれはとても悲しかったです。今でも思い出すと胸が苦しくなります。
提督は、私のように口煩い女性はお嫌いなのかもしれません。
ですが、私も本当はあのような振る舞いなどしたくはなく、周囲からそういうキャラクターであると認識されてしまっているからそれを演じているだけなのです。
まるでピエロみたいですよね……自分でも滑稽だとは思っているのですが。
もし、提督と二人っきりでご一緒できる機会があれば、本当の私のことを見て欲しいと思っています。
ありのままの私を知ってもらうかわりに、提督にも仮面の内の素顔を明かして欲しいな……なんて。
ごめんなさい、私ったら。こんなことを書いたらまたはしたない女だなんて思われちゃいますね。
でも、私が提督のことを強く想っているのは事実です。
以下も延々と文章が続く。
・・・・
長い時間が経過している。ようやく文章が途絶えた。
提督は、先程まで読み続けてきたびっちりと文字の詰まった20枚ほどの便箋を畳み、元の封筒の中にしまいこんだ。
そして、彼女を旗艦から外す以前に精神鑑定を受けさせねばならぬと心に決めた。
・・・・
金剛「ピンチはチャンス!」
比叡「なんですかお姉さま唐突に」
金剛「昨日は提督に怒られてしまいましたが、ここでワタシは一計案じまシタ!」
比叡(懲りないなぁ……)
金剛「ギャップ萌えデース! 提督にワタシのルァーブをしたためたLetterを送ったのデース! 男の人はヤマトナデシコが好きらしいですからネ!」
金剛「これであの提督もイチコロネー! Yeah!」
比叡「はぁ……ところでお姉さま。カレー冷めますよ?」
金剛「Oh! そういえば最近は比叡も料理の腕を上げましたネ! これなら人間が辛うじて食べられるレベルの味ですヨ! 一体隠し味に何を使ったんデスカー?」
比叡「まぁ〜、ちょっとは慣れましたからねー。隠し味はお姉さまへの愛です!」
金剛「これならあと100年ぐらい鍛えれば美味しいカレーが作れるようになりそうデース!」
比叡「手厳しいなぁ……」
赤城(不味い不味いと貶しながらもいつも食べているのは、彼女なりの姉妹愛なのでしょうか?) 二人の居る部屋の前を通りがかった赤城
378 :
【10/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/01/27(火) 21:56:26.02 ID:Yq22Kgnx0
執務室の前に立ち、扉を叩く雪風。中に居る提督に呼びかけるも、返事はない。
雪風(無用な立ち入りは厳禁と言われても……これは司令にとっても大事な用件。それに、これだけ呼んでるのに返事が無いのはおかしいです! 鍵もかかっていないようだし……)
雪風「し・れ・え……?」 おずおずとドアを開ける
普段提督が座っているはずの席。だが今は空席になってしまっている。どうやら部屋の中に提督は居ないようだ。
雪風「司令はどこへ……? 執務室から外へ出て行ったなら誰かしらの目につくハズ……」
部屋の本棚の本の並びが普段と異なっていることに気づく。常人であれば気づかないような些細な違いだったが、この本棚のことは雪風の記憶の中で強く印象づけられていた。
本のラインナップが、『有人宇宙飛行の歴史』『アトランティスの謎』など明らかに趣味全開のものであったためである。
雪風「おかしいです……本の並びが違うし、ここに一冊あったはずの本が無い……」
雪風は“なんとなくそうした方が良いような気がする”という直感のもと、本を元の並びへ戻した。カチッという奇妙な機会音が鳴る。
雪風「こ、これは……!? 本棚が突然動き出しました!」
本棚と本棚の間に隙間が出来ている。その隙間の先には、明かりの灯っていない小部屋があるようだ。
鞄の中の懐中電灯を取り出し、明かりで室内を照らす。空洞で何も物が置かれていない。
雪風(足元に鉄の板のようなものが……? 見てくれはマンホールみたいですね)
鉄板を持ち上げると、螺旋階段が現れる。地底深くまで繋がっているようだ。
雪風(司令は一体何者なんでしょうか……。なんだってこんな仕掛けを作ったのでしょうか……とにかく行ってみましょう)
・・・・
螺旋階段を下ること数分。
大小様々なモニターがズラズラと並んでいる奇妙な部屋に辿り着く。
モニターは鎮守府内の監視カメラや鎮守府近海の映像を映しているようだった。
雪風(さすがに私室やトイレ、お風呂までは監視されてないみたいですね……)ホッ
提督「……あぁ。……………………そうか。悪い、一旦切るぞ」
雪風(物陰から司令の声がする……誰と話しているんでしょうか? あっ、こっちに気づいた!?)
提督「そこで何をしている!? 何者だ!」
敵意をむき出しにした荒々しい声に、思わず雪風は体をビクつかせる。
雪風「あっあっ……あの! 雪風です! 雪風ですッ!」
素っ頓狂な声で自分の名前を連呼する雪風。その間抜けた様子に脱力したのか警戒を解き雪風に近づいてくる提督。
提督「落ち着け。この部屋に入ってきたのがお前ならばまだ問題はない。だが、一体どうやってここに入ってきた?」
雪風「あっ! 執務室の扉の鍵が開いていて、本棚を調べてたら奥に部屋があって! あっ、そうだ! 司令に報告が」
提督(扉の鍵は閉めたはずだがな……。あの口うるさい似非外人が叩きまくったせいで建て付けが悪くなったのだろう。しかし本棚はどうやって?)
提督(平時の本の並びから気づいたわけか。しかし本棚内に設置されているテンキーへの暗証番号入力など、それだけじゃ開かないようになってるはずなんだが……そこまで知っている様子ではなさそうだ)
提督(適切な暗証番号が入力されたのか? あるいは誤作動か? 信じられないが……ここにこいつがいる以上そうとしか考えられない)
雪風の身には、こうした奇妙な偶然が重ねて起こることがある。なぜなら雪風だからである。
雪風「そう! しれえに報告があって! 大変なんです! これです! 盗聴器です!」
雪風「司令の歓迎会の後に部屋を掃除していたら見つけちゃって! あの部屋で歓迎会をやる前は無かったんです!!」
提督「……なるほど。ところでお前、なぜこの盗聴器を使用不可能な状態にせずそのままここに持ってきた? まだこれ動いてるし現在進行形で盗聴されてるんだが?」
雪風「あっ」
提督「…………」
提督「とりあえず、この盗聴器の指紋を取るか」
提督「盗聴している者に告ぐ。近日中にお前を執務室に呼び出し尋問する。厳罰を覚悟せよ。また、この盗聴の内容を何者かに伝えた場合、お前の関係者も皆処罰対象にする」
ベキ、と盗聴器を握り潰す提督。青い顔の雪風。
提督「雪風。お前に悪意がないのは分かるが……以後気をつけたまえ」
提督(本当は軽く罰したいレベルのやらかしなんだが、ただでさえ少ない確実な味方を減らすと今後の危険が増すしな……。しかしこれは予想外だった……)
379 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/01/27(火) 21:58:42.04 ID:Yq22Kgnx0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~10/100)
・皐月の経験値+2(現在値2)
・足柄の経験値+2(現在値4)
・翔鶴の経験値+2(現在値2)
・金剛の経験値+2(現在値3)
・雪風の経験値+2(現在値3)
----------------------------------------------------------------------
告知もなくいきなり本編を投下してみましたが特に深い意味はありません。
(強いて言うなら昨日あたりに告知しようと思ってたんだけど忘れて寝ちゃったとかそんな理由です)
投下してみると分かるこのワチャワチャ感! そういえばわちゃわちゃって関西弁なんですね。知らなかった。
『Phase B』では経験値の増加が+2なのが大きいですね。
コンマのご機嫌次第で登場キャラが決まるので偏るかなと思ってましたがいい具合に仕事してくれました。
各キャラのコンマ範囲の比率はわりと適当に決めてます。
>>366
では各キャラ15〜17%でしたが次回以降もそんな感じで行く予定。
と、ここでまた次回に『Phase A』がやってくるという流れです。
登場させる艦娘をレス安価で決定するというわけですハイ。
----------------------------------------------------------------------
『Phase A』【11-15/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5
よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか
>>351
付近を参照下さい。
----------------------------------------------------------------------
380 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/28(水) 18:24:23.86 ID:Y2SuwXwwo
足柄
381 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/28(水) 18:27:41.18 ID:Yc1ALLFA0
雪風
382 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/28(水) 18:39:32.27 ID:4M3u5wz00
翔鶴
383 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/28(水) 18:40:44.12 ID:UNm6pramo
響
384 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/28(水) 18:41:36.91 ID:Xsgo7Ak/o
皐月
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/28(水) 18:41:48.74 ID:EScD90oAO
足柄
386 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/01/28(水) 19:43:58.82 ID:+nB57div0
>>380
-
>>384
より
・足柄1レス/雪風1レス/翔鶴1レス/響1レス/皐月1レス
で『Phase A』が進行していきます。
来週頭ぐらいには投下出来たらいいなと思ってますけど微妙。
////悖らず、恥じず、チラシず////
イベント2月かー……もうすぐじゃん。うーん厳しいねえ(資源的に)。
一応年明けあたりから大型艦建造を封印して備蓄初めてるけど未だにボーキが25kぐらいしかないので辛い。
最近はあんまり時間取れなくてあ号すら消化できないという体たらく……(→だいたいClicker Heroesのせい)。
空母戦艦マシマシの連合艦隊決戦ゲーだったらわりとしんどいなぁ……。
改二駆逐揃ってきたし、水雷戦隊ベースのバケツ&練度ゲーならまだなんとかいけそう(やりたいとは言ってない)。
とりあえずイベント突入前に燃料70k/弾薬50k/ボーキ40kぐらい欲しいところ。
レアドロ堀りを考えるともっと欲しいけれど贅沢言ってられませんわね。
387 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/02/11(水) 14:19:56.36 ID:yuNPKC540
>来週頭ぐらいには投下出来たらいいなと思ってますけど
なーにが来週頭ぐらいにはじゃ。
すでにそう言い出してから二週間経過しておりますがリアルがリアルだったのでお許しを。
まぁイベントもあるわけだしね?
今週の金曜ぐらいには投下できるような気がしますと予告しておきます。
////チラシの裏////
甲→甲→乙→乙でE4突破。現在E5甲ゲージ削り中ですがいずれかの資源が20000切るかバケツが400切ったら乙にシフトします。
地力的には最初から乙に挑むのが賢い選択なんでしょうけど、どうせならどれだけ自分の艦隊と相手との間に絶望的な差があるかを味わってから退きたい所存。
今回イベントキツくないっすか!? いやトップランカーがひいひい言いながら突破してたE5甲はおいといて、そこに至るまでも結構エグい気がするっす。
エグいと言っても先人の方が歩んでこられた理不尽無理ゲー的エグさでなくて、常時14年夏E1のような感じ。やってやれないことはないがしんどいぐらいのエグさ。
資源が20万ぐらいあればキラ付けしなくてもゴリ押し突破出来るのでまた話は違ってくるんでしょうけどうーむ。
目ぼしいドロップと言えばE4の伊401、E5の磯風、朝霜ぐらいっすかね。いやでも今回掘り多分無理ぽ……。
乙とはいえもう一回空母棲鬼を殴りに行く体力ないですマジで。絶妙に硬くて腹立ちますねチクショウ。
MUSASHIを使えば倒せる(っていうかゲージ破壊ラストは武蔵使った)けど資源消費が怖いし……。
388 :
【11/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/02/14(土) 09:07:47.14 ID:kmkYAStE0
鎮守府のとある会議室。ヴェアヴォルフの面々が座って話し合っている。
霞「足柄、会議に遅れるなんて関心しないわね。それで? 良い報告ってのを聞かせてもらうわよ」
清霜「顔面蒼白じゃない? 何かあったの?」 よろよろと会議室に入ってくる足柄を見て心配する清霜
足柄「終わった……もうダメだわ……。やっぱりああいうの向いてないんだわ……何があったかは言えないけど……明日で皆とはお別れよ……」
大淀「今更隠し事なんて! これまで辛いことも苦しいことも、一緒に乗り越えてきたじゃないですか」
霞「ハァ? 今までどんだけアンタが迷惑かけてきたと思ってんのよ!? 今になって何ふざけたこと抜かしてるわけ?」
霞「大方あのクズ提督に釘を刺されてるとかそんなだと思うけど、だったら話せる範囲だけ話せば良いじゃない。それに、アンタが処分されたらどうせ私たちだって後を辿るわ」
足柄「……言われてみればそれもそうね。じゃあ話すわ」
大淀(あっさり立ち直ったー!?)
・・・・
霞「盗聴って、アンタ馬鹿じゃないの!? しかもそれがバレたって……」
足柄「チャンスかなーと思ったのよ。だって、考えてみてよ? あの提督、ここに着任してから執務室から出た事なかったのよ? その謎が明らかになるかもしれないじゃない」
大淀「結局、その第二艦隊の歓迎会で提督について何か分かったんですか? ……ストレートに話すとまずいならある程度ぼかした表現で構いませんが」
足柄「いや、それが歓迎会“では”提督については何も分からなかったわ。第二艦隊の面々に何か聞かれても『黙秘させてもらう』とかそんなんばっかり」 提督の声をやや誇張気味に真似する足柄
清霜「盗聴器がバレちゃったのは、歓迎会中の出来事?」
足柄「いや、その後よ。歓迎会後に盗聴器をそのまま提督のところへ持ってかれちゃったのよ」
足柄「その時に提督が執務室からなぜ出て来ないかがなんとなく分かったわ。分かったのは良いけれど……盗聴器についていた私の指紋を採取されて呼び出し食らってるってのが現状ね」
霞「盗聴器ねぇ……歓迎会を終わった直後に回収出来なかったの?」
足柄「にゃ!? あ? あぁ、うん。歓迎会が終わった後すぐに清掃が始まって、取りに行く余裕が無かったのよ(……そういやあん時回収すること忘れてたわ)」
霞「何突然変な声出してるのよ。でも、清掃中に取りに行くことだって出来たじゃない? ちょっとその辺はっきりしないわね」
大淀「(あっこれ足柄さん回収忘れてたんじゃ……)そんなことより、提督に盗聴器がバレて呼び出されてるんですよね!? これからどうするか考えなきゃ!」
足柄「(大淀ナイスフォロー!)そ、そうよね。どうしたらいいかしら……」
清霜「処罰が下るのは避けられないと思うけど……直接会える機会がある以上、弁解のしようはあるかも?」
霞「なるほど……一つ思いついたわ。会議が終わった後、私の部屋に来なさい足柄。稽古をつけてあげる」
足柄が霞から受けた“稽古”とは、翌日に迫った提督から受けるであろう尋問のシミュレーションするというもので、その内容は過酷かつ熾烈を極めた。
後に足柄は、『あの後三日ほど霞の顔を直視出来なかった。正直PTSDになっていてもおかしくなかったと思う』と語っている。
・・・・
翌日の執務室にて。部屋の中には提督と雪風、そして足柄がいる。
足柄「まず、盗聴していたことをお詫び申し上げます。今回の騒動は私の一存で起こしたものであり、他の艦娘との関与はありません」
足柄「いかなる処分も甘んじてお受けする覚悟です。ですが……非礼は承知の上です。どうか私の言い分を聞いて頂きたく存じ上げます」
提督(盗聴するような奴が反省するとも思えないが……しかし見事な演技だ。かなり苦しい立場で弁解せざるを得ない状況のくせに少しの迷いも見られない)
足柄「私は、提督に不信感を抱いていました。いえ、今も抱いています。その主たる理由は、常に仮面を被っていて素顔を見せない、執務室から一切出ることがなく私たち艦娘への指示も全て書類で行っている、という点です」
足柄「この鎮守府で事件があったことは事実です。ですが、そこまで露出を避けるのには、危険から身を守るため以外にも何か理由があるはずと推測しています」
足柄「貴方の私たち艦娘に対する接し方を見て、私は疑念を抱かざるを得ませんでした。今回盗聴を行ったのも、貴方の真意を探るためです」
足柄「地下の施設に引きこもって、一体何をしておられるのでしょうか。貴方は何を目的に動いているのですか?」 丁寧な口調ではあるが、次第に語気が鋭くなっていく
提督「俺の目的は……深海棲艦を殲滅し、この馬鹿げた戦いに幕を下ろすことだ。それ以外に何があるという?」
足柄「お言葉ですが提督。私の目には貴方がそれ以外に別の思惑で動いているように見て取れます。きっと他の艦娘も同じように思っているはずです!」
足柄「……私は! そんな回りくどい話が聞きたいのではありません! 貴方が腹の中で何を考えているか! それを聞かなければ納得出来ません!」
提督「答える必要はないし、お前に納得してもらう必要もない。あくまで俺は規則に基いてお前を処罰するだけだ。……話はここで終わりだ。工廠へ向かい、その場の妖精の指示を仰げ」
提督(……このまま処分するには惜しい人材なのかもしれんのだがな。追い詰められている状況にも関わらず逆にこの俺を追求するとは大した奴だ)
提督(だが、俺の目的を話すと余計面倒が起こりそうだしな。それに、立場上ここで折れてやるわけにもいかん。残念だが……)
389 :
【12/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/02/14(土) 09:09:02.74 ID:kmkYAStE0
雪風「ま、ま、ま、待って下さい! かっ、解体はあんまりだと! 思います、がっ!」 緊張のあまりイントネーションが愉快なことになっている雪風
一連の話を聞いていた雪風は思った。足柄の言っていることはもっともだ、艦娘たちがこの提督に対して疑念を抱いてもおかしなことではないと。
また、これまで第二艦隊は戦いの中でヴェアヴォルフに助けられたことがあり、それゆえに雪風は足柄の有用性も理解していた。
ここで彼女が鎮守府を去るのは提督にとっても自分たちにとってもマイナスである、と判断し、なけなしの勇気を振り絞って提督に異を唱えたのである!
提督「罪は罪だからな……。こいつに関連する者も全員処分しようと思っていたがそれは取りやめとする。……これが俺なりの最大限の譲歩であり情状酌量だ」
雪風「情状酌量ってこ、とは! ししし司令も、艦娘から疑念を持たれてる状況は、り、理解しているはずです! わ! 私も! しれえの真意が知りたいです!」
雪風「……あ、足柄さんの話を聞いて。私も、司令のことが気になりました。あ、あの、ここで足柄さんを解体したら、私も、提督のことが疑わしくなっちゃうかな、って……」
提督(……そうきたか。ここで突っぱねることは簡単だが、この先雪風が使えなくなると今後相当やり辛くなるんだよな……)
提督(今ようやく第二艦隊の面々をまともに扱えるようになるところまで漕ぎ着けたわけだ。言い方は悪いが、信用して使える駒が増えつつある状況というわけであり……)
提督(雪風に不信を抱かれたら他の第二艦隊の連中にも伝播してしまうだろう。そしたらまた響以外に頼る術を失う。ようやく鎮守府の内情が見え始めたこの状況で最初に出戻りはかなり痛い)
提督(ふむ、ならば……だ。少し試してみるか)
提督「良いだろう、雪風。ここでお前に見限られるのはこちらとしても辛い。……賭けをしようか」
提督「俺がこの先何をするつもりかを言い当てることが出来たなら足柄を不問にしてやる」
提督「ただし! チャンスは一度きり。惜しかろうがなんだろうが少しでも間違っていたならそれで終い。また、言い当てることが出来た場合はお前にも足柄にも俺の真の目的の為の協力をしてもらう」
雪風「の、望むところです! や、やりますっ! やりますとも!(考えなきゃ。考えろ……)」
しれえの真の目的は何か? 多分、“深海棲艦を滅ぼした後”のことをしれえは考えているのでは?
そうだ! ……ヒントは本棚にあるかも。
提督(ふむ、やはりそこを見て考えるよな。さて気づけるか……? 案外難しくないと思うが) 雪風の視線の先を追う提督
ええと、本棚にある本のタイトルは、と……。上段から順に……なになに?
『長生きするメダカの飼い方』『Artificial Intelligence "ELIZA"』『“どこでも”出来る! 簡単お料理教室』『有人宇宙飛行の歴史』一見普通に見えてヤバそうな本と普通にヤバそうな本がごちゃ混ぜですね……。
中段は……『禅の極意』『グラディヴィウス 攻略本』『恐るべきオーディオオカルトの世界』『まちづくりシミュレーション』『長生きの秘訣・呼吸健康法』『LISPプログラミング入門』『おいしいベトナムコーヒー』余計に意味が分からない……。
下段『アトランティスの謎』『深海生物図鑑』『地球の中心に関する考察』『「海の民」とは何者か?』『ヴォイニッチ手稿』『架空兵器は実現するか』うん……。
雪風(無理だこれー!?)ガビーン
れれれ、冷静になりましょう。前回本の配置が異なっていた時、欠けていた本を探しましょう。それが答えかも……『折り紙の折り方 基本から発展まで』絶対関係なさそう! というか、中段はわりと中身がバラバラで何の推測もつかないですね……。
でも、司令はきっと本棚の中の本を何のカテゴリ分けもせず無秩序に置いたりはしないですよね……性格的に。一番目につきやすい中段はミスリードを誘うためのフェイクかも。
下段は……かなりこじつけな推理ですけど、ひょっとしてひょっとすると深海棲艦に関連する本で分類しているのかもしれません。
なんとなく上段が怪しいような。人工知能、メダカ、料理、宇宙……ダメださっぱり分からない。
……もし私が言い当てることが出来たら、その司令の目的に協力してもらうってことは。一人の力では出来ないようなことですよね。かつ、深海棲艦を滅ぼした後に考えるようなこと……。
そういえば、遠い昔に宇宙でメダカの産卵に成功したことがあるとか、本で読んだ記憶があります。これって隣にある有人宇宙飛行に結びつくかも?
Artificial Intelligenceは……よく分からないですけどAIってやつですよね多分。これも宇宙開発が進んでいた時代は研究されてたとか……。料理の本も、“どこでも”なんて強調されてるのが妙に気になりますね……。となると……?
雪風「しれえの目的は……!」
宇宙に行くこと……? いや待て。しれえは宇宙に行っただけで満足するような人でしょうか? 違う。宇宙に行って何か……?
となると、中段の本とも話が繋がってくるのかも。衣服・音楽・ゲーム・インテリア……果ては折り紙まで、ありとあらゆる文化や生活に関する本で合致している。これが正解……かな!?
雪風「しれえは……! 宇宙に行って、どこかの星に移住するつもりなのではないでしょうか!?」
足柄「ちょっバカ何言って」 この世の終わりを目の当たりにしたかのような顔をする足柄
提督「正解だ、雪風。よく分かったな(“どこかの星”でぼかしたのは……見逃すか)」 雪風の方に手を伸ばし、かたく握手をする
足柄「!?!?!?!?!?!?」 目を白黒させて混乱している
提督「なぜ俺が今までこのことを話さなかったか理解頂けただろうか、足柄。お前たちには話す必要がないし、話した所で何の意味もない」
足柄「え? え? ……正気? 本気でそんなこと言ってるの?」
提督「当ッ然ッだ! 俺にとっては深海棲艦の殲滅など前哨戦に過ぎないッ!」
提督「……賭けは賭けだからな。お前の罪は不問としよう。知ってしまったからには協力してもらうぞ」
足柄にも手を差し出す提督。戸惑いながらも手を握る足柄。
足柄「ワケわかんないわ……」 放心状態で呟く
足柄(ワケわかんないけど……とにかく、良し? とした方がいいのかしらねこれは)
提督「足柄、雪風。今はまだその時では無いが……お前たち二人には、後にミッションを課す、俺の目的のため動いてもらうぞ」
雪風「はいッ! しれえッ!」 ビシッと敬礼
390 :
【13/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/02/14(土) 09:09:49.29 ID:kmkYAStE0
第四艦隊の会合室。暁・雷・電がくつろいでいる。
響「やれやれ……やっと捕まったね。久しぶりに話でもしようと思っていたというのに、まるで私を避けているみたいに居なくなるもんだから苦労したよ」
雷「もう、そんなわけないじゃない。姉妹なんだから」
響「姉妹“艦”だろう? 私たちは本当の姉妹じゃない」
暁「そんな言い方しなくてもいいじゃない!」
電「そ、そんなことより……!」 険悪な雰囲気を遮るように電が声を発する
電「この鎮守府に戻ってきてから、すごいですよね……第二艦隊の旗艦だなんて。訓練生の頃は私たちと一緒だったのに……もう手が届かない存在になっちゃったのです」
その言葉を聞いた刹那顔をしかめ険しい表情をする響。しかしすぐに普段の無表情に戻る。
響「いいか? 私は君たちと世間話するために来たわけじゃない」
響「私は提督の命により、第四艦隊について調査している。つまり君たちに尋問する権利があるというわけだ」
響「単刀直入に聞こう。どこまで龍田と関わっている? 遠征で物資や燃料以外に“何を”運んでいる?」
雷「な、何を急に……私たちは普通に遠征しているだけよ」
響「そういう話を聞いているんじゃないんだよ。第四艦隊が秘密裏に麻薬の取引をしているなんて噂が流れているのを知らないのか?」
暁「しっ、知らないわよ! そんなこと! そんなこと、してないし……」
響「そうか。鎮守府内では結構な噂になっているんだけどね」
誰も口を開こうとしない。響の発する静かな怒気が少しずつ増していく。
響「物分かりが悪くて困るな。今話せば見逃してやると言っているんだ」
なおも沈黙。
響「……そう。ならそれもいい。私と龍田と、天秤にかけてそうなるようであればもう十分だ」
響「……覚悟しておくように。一切情はかけないよ」
部屋を出ようとする響に対し、暁が言葉を放つ。
暁「ッ……! 私たちを置いて……一人でどこかに行っていたくせにッ! 今更なんなの!? 偉そうに!」
暁「良いわよね響は! 練度も高くなって第二艦隊の旗艦も任されて! 提督にも気に入られて!」
暁「自慢しにでも来たの? 私はこんなに力があるんだぞって、えばりに来ただけじゃない!」
響「чёрт побери……!」
暁を突き飛ばし、殴りかかろうとする響。慌てて止めに入ろうとする雷と電。
雷「! 今のあんたが殴ったら、暁が死んじゃうじゃない!」
電「姉妹同士でこんなこと、やめて欲しいのです!」
声に気づき、静止する響。暁の襟首を放して、何も言わずに部屋を去っていく。
・・・・
バン! と腹いせに壁を殴る響。
瑞鶴「どうしたの? 随分荒れてるじゃない。珍しいわね」
響「そういうこともある」
瑞鶴「提督さんから直接指示を受けてるんでしょ? 大丈夫なの?」
響「ああ。いや、勘違いしないで欲しいのだが、司令官に対して腹を立てたわけではない」
響「ま……これで形振り構わなくて良くなった。かえって幸運と考えるべきか」
瑞鶴「……よく分かんないけど、あまり根を詰めすぎないでね」
391 :
【14/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/02/14(土) 09:13:22.32 ID:kmkYAStE0
響と暁たちとのやり取りを別室から聞いていた皐月と文月。
皐月「文月……凄いことになってたね」
文月「修羅場ってやつだねぇ……って皐月? どこ行くの?」 部屋を出てどこかに行こうとする皐月を静止する文月
皐月「遠征用の物資が保管されている資材庫に行って、荷物の中身を確認しにいく」
皐月「自分が麻薬を運んでるのかもしれないだなんて疑念を持ちながら艦隊の他の皆と一緒に過ごせる自信、ある?」
文月(皐月はヘンなところ真面目よね〜……)
文月「う〜ん……ヤな予感がするけどなぁ……」
・・・・
皐月「いやーこれだけ箱やドラム缶があると壮観だね」 資材庫に積まれている木箱の中身を物色する皐月
文月「……小包とかは封を開けちゃダメだよぉ? クビになっちゃうから」
皐月「分かってるって。元通りの状態に出来るものしか調べないよ」
皐月「……?(ネジやクズ鉄が大量に……、こんなもの何に使うんだろう。弾薬や燃料の他にも、食糧、本、嗜好品……なんでもあるんだな)」
・・・・
文月「何も見つからなかったねぇー。……もう帰ろうよぉー」
皐月「こっちも特に何も無かったなぁ。ただの噂だったのかもしれないね」
龍田「あ〜ら二人とも。何か探し物?」 ドラム缶を背負って入ってきた龍田
皐月「いっ、いえっ! ちょっと遠征用の物資の確認をしようかな〜……って」
龍田「そうなの〜殊勝なのね。でも、それは私がすることだから貴方たちは気にしなくていいのよ?」
皐月「すみません、入って日が浅いもんで……へへへ」
龍田「謝ることは無いわ〜。それより二人とも、今日は二人に見せたいものがあるの〜……。この後ちょっと良いかしら?」
文月「え、えっとぉー……(断らなきゃ……!)」
皐月「はい、分かりました」
文月(皐月!? これ絶対やばいやつだと思うよぉ〜!?)ヒソヒソ
皐月(文月は心配性だなぁ。さっき調べて何もやましいところは無いって分かっただろ?)ヒソヒソ
文月(……嫌な予感しかしないよぉ〜)
・・・・
二人が案内されたのは地下通路の一室だった。
皐月たちの目に映ったのは、コンクリートの壁にもたれかかり、床に足と腕を伸ばしている女性の姿だった。
紺色の髪をしていて、眼帯をつけている。背中には艤装を背負っているようだ。
部屋の中を見渡すと、他にも二人の艦娘と思しき女性が、うつ伏せに倒れている。
二人の顔から血の気が失せていく。
文月「なんですか……これ……」
龍田「轟沈した艦娘よ。……正確には、轟沈するはずだった艦娘」
龍田「着底しかけていた艦娘を、陸まで曳航したの。でも、助からなかった。入渠させて傷は治ったけれど、再び動き出すことは無かったの」
龍田「私は、ね……それでも諦めていないの。だって、死んだ人間なら、身体が腐って朽ちていくはずでしょう?」
龍田「でも、ここに居る子たちは自ずから動かないという点を除けば轟沈する直前と何ら変わっていない。生きているのよ」
龍田「私は、この子たちが再び動き出せるようになって欲しいの……」
皐月「……どうして、ボクたちをここに連れてきたんですか?」
龍田「私は……他の誰に何と思われていようと、第四艦隊のことを家族と思っているから。貴方たちのことも、勿論そう」
龍田「だから、私のことも知っておいて欲しいし……出来ることなら私の理想に協力して欲しいわね〜」
龍田「それだけ。貴方達が私に不信感を抱いているというのであればそれでも構わないけれど、ちょっと悲しいわ〜。泣いちゃうかも〜」
皐月と文月には、龍田が善なのか悪なのか、本心ではどう考えているかが分からなかった。
いずれにせよ、とんでもない食わせ者には違いないのだろう、ということだけは認識していた。
392 :
【15/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/02/14(土) 09:14:42.22 ID:kmkYAStE0
レストランで食事をしている提督・翔鶴・瑞鶴。
鎮守府内にはこのような艦娘専用(厳密には鎮守府内で働く職員らも含まれる)の娯楽施設や商業施設が設置されている。
提督(……前回の歓迎会が、無目的で行われたものだったとはな……。人事異動を暗に勧めているとか少しでも考えた俺が馬鹿だったようだ)
提督(利害以外の理由で動く人間の思考ルーチンはわからん……。ま、いくつか気になることはある。せっかくだから話を聞いてみるか)
瑞鶴「提督さん、悩み事? 歓迎会の話をしたあたりから、急に黙っちゃって」
提督「……いや、最近響の様子が妙でな。何か気づいたことはないか?」
瑞鶴「あー、なんか第四艦隊の人達とやり合ってたみたい。詳しくは知らないけど……第四艦隊の面子の中には響の姉妹艦も居るみたいだし」
提督「暁、雷、電の三名だな(彼女たちもクロ……なのだろうか。だとしたら響には酷な依頼をしてしまったかもしれん。雪風あたりに尋問させるべきだったか……いや、アイツじゃ無理か)」
提督「戦場での様子はどうだ? ……疲労を訴えていたり、不調だったりしてはいないか?」
翔鶴「戦場では普段通りですね。別段問題ないように思えますが……」
提督「そうか。ならば問題ない。精神的な不調が影響して沈まれては困る(……とはいえ、ヴェールヌイのことは心配だな。後で話をしてみるか)」
瑞鶴「てーとくさん、意外とメンタル的な部分気にかけてるんだね。そういう感情的な部分は全部切り捨ててる人かと思ったけど」
提督「精神面での不調も馬鹿にできたものではないぞ。現に第二艦隊の榛名と霧島は個人的な対立によって双方の戦果に悪影響を及ぼしているではないか」
翔鶴「確かにそうですねぇ……。あの二人はちょっと心配です。二人とも悪い人ではないのですけれど……」
瑞鶴「提督さんの歓迎会の時も、なんか水面下で揉めてたっぽいしねぇ……。っていうか、前はあんなに仲悪くなかったよね。どうしてああなっちゃったんだろ」
提督(……子供の喧嘩じゃあるまいし、仕事なのだから割り切って欲しいものなのだが。とはいえ、何かしら事情はあるんだろうな)
加賀「あら五航戦と……提督? 珍しいですね」
提督「あぁ、加賀か。もし良かったら相席どうだ?」
加賀「そうね。赤城さんも今は居ないし……そうするわ」
・・・・
提督「第一艦隊の様子はどうだ? ま、報告書から粗方の想像はつくが」
加賀「連携を意識した途端、皆総崩れになるわね。それぞれが単騎で敵と当たることが多かった経験が邪魔して、一丸になって敵を倒すというイメージが難しいみたい」
加賀「私や赤城さん、飛龍と、空母の方は比較的足並みが揃うようになってきたけれど……戦艦の人たちとは反りが合わないわね」
瑞鶴「そんなことでは後輩に抜かれるのも時間の問題ですねぇ〜」
加賀「五航戦は口先に見合った実力さえあれば文句ないのだけれど。問題はそんな事を言える資格が無いぐらいに練度がお粗末なことね」
提督「やめんか。……第一艦隊の戦艦と反りが合わないと言っていたな、加賀。原因は金剛だろう?」
加賀「ええ。……ハッキリ言ってあの人とはうまくやっていけないわ。他の人もそう思っているんじゃないかしら」
提督「個で最強であっても、全体の足を引っ張るようであれば集団戦では使えんな。……奴曰く『“精神的不調”で上手くいっていない』ようだが」
提督「……近いうちに、第一・第二艦隊の大規模な再編を行うつもりだ。これまでのような出来合いの艦隊編成ではなく“来るべき深海棲艦との最後決戦”を想定した編成だ」
提督「いかに第一艦隊のお前たちが個での戦いに絶対の自信があろうと、深海棲艦の力はそれさえも上回る。練度も経験も上回るほどの圧倒的な性能でお前たちの前に立ち塞がるだろう」
提督「そうした脅威を打ち払うためには高度な連携が不可欠となる。それを肝に銘じておくように」
加賀「ええ……承知しました」
提督「不確定な情報が多いため今話せることは僅かだが……正規空母であるお前たちの活躍には期待している。修練を怠らぬように」
・・・・
空母用の訓練場。矢を射る翔鶴と、その様子を見ている加賀。
加賀「翔鶴。……迷いが見えるわ。一射絶命よ、忘れたの? 放った一本の矢に全てを懸ける気概でなくては、正規空母は務まらないわ」
翔鶴「どうしても、最後の戦い、というもののイメージが沸かなくて……」 構えを解く翔鶴
加賀「そうね、私も同じだわ。でも、あの提督は冗談であんなことを言うような方ではないはずよ。……覚悟と勝算を持って、本気で言っているのでしょう」
翔鶴「戦いが終わったら、私たちはどうなるんでしょうか。どうすればいいんでしょうか」
加賀「……一射絶命。私が今の貴方に言えるのはそれだけね。全ての迷いを捨て去り、己自らが真善美を体現する存在となった時、究極の一射は完成する……」
加賀「その境地に辿り着いた時、全てが分かると思うわ。私も、赤城さんでさえも、未だその片鱗しか見えていないけれど……ね」
393 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/02/14(土) 09:36:51.63 ID:kmkYAStE0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~15/100)
・足柄の経験値+1(現在値5)
・雪風の経験値+1(現在値4)
・響の経験値+1(現在値2)
・皐月の経験値+1(現在値3)
・翔鶴の経験値+1(現在値3)
----------------------------------------------------------------------
投下めっちゃ遅れてしまいました。楽しみに待ってくれてた方が居たら申し訳ありませんと謝っておきます(居るの?)。
原則としてレス順番の通りに進めるけどそんなに拘りないからPhase Aで「次はこのキャラの出番があると作者的にやりやすいんだろうなー」「上のレスでこうだからー……」とか気を遣わなくて大丈夫です。
ということを示すべくちょっとレスの順番から変えてみたり。
っていうかまーたエターナりそうな展開運びしやがって……相変わらず味付けが濃すぎて人によっては拒否反応を起こしそうな感じですが今更すぎますね。
最近リアルがアレすぎるのでわりとマジでエターナ率が上昇してるかもです。
まあ失踪したらしたでしょうがないよねということで……。
----------------------------------------------------------------------
『Phase B』【16-20/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00〜16:雪風
17〜33:翔鶴
34〜50:金剛
51〜67:響
68〜83:足柄
84〜99:皐月
>>+1-5
よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか
>>351
付近を参照下さい。
----------------------------------------------------------------------
394 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/14(土) 10:23:24.58 ID:WNRXkQUAO
足柄さん来い
395 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/14(土) 22:39:54.30 ID:Rft0d+POo
ぽい
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/17(火) 21:38:46.73 ID:MfwNGZJbo
ん
397 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/18(水) 10:59:07.29 ID:S/9IDHevo
ぽぽい
398 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/02/18(水) 21:12:59.49 ID:U2kJ1KBEo
おう
399 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/02/18(水) 21:58:27.38 ID:TZcYd6us0
>>394
-
>>399
より
・響1レス/翔鶴2レス/足柄1レス/金剛1レス
で『Phase B』が進行していきます。
////チラシ裏////
朝の光眩しくて……ウェイッカァァァァァ!
E5甲突破しました。まあE3E4は乙なのでモグリみたいなもんですけど。
弾薬20000切ったしこれでダメだったら乙あるいは丙にシフトするかーと思っていた矢先に夜戦カットインの嵐が起こってなんとか抜けれました。
ラストダンス試行回数は数えてないけど20回ぐらいなんで、比較的運は良い方らしいです。
ただ、連合艦隊+支援二艦隊の計24隻三重キラキラ維持状態で10回ぐらいボス仕留められなかったを考慮すると資源消費がマシだっただけで時間的コストはかなり費やしてます(あと体力と精神力)。
途中から心折れたのでF12キーでcond値確認しながらキラ付けしてました。いやホント戦艦水鬼は帰ってくれ……。
今回のイベントのMVPはビスマルクですねー。実戦投入は初めてだったんですけど強いっすねこの子。
旗艦に据えるとコンスタントにカットインぶっ放してくれるのでなかなか有用です。
とりあえずたくさん褒めておきます。
今後の堀りのターゲットは舞風・能代・伊401ですが間に合うか微妙ですね(朝霜はついさっき出た)。
特に伊401はここで手に入れておきたい所なんですけれども。
磯風? いやね、すまんな浜風。道中ならまだしも最終形態のあの布陣で磯風ドロップまでS勝利を取り続けるっていうのはね、うちの艦隊の地力だと宝くじの2等に当選するぐらいの豪運が必要なんだよ……。
本土強襲されて守れなかったってわりともうその時点でゲームオーバーな気はしなくもない。※
※磯風の初登場は14夏E6報酬。14夏E6はAL/MI作戦進行中に敵艦隊が本土に迫ってきたので迎撃せよという旨の作戦である。E
400 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/02/18(水) 22:12:21.36 ID:TZcYd6us0
あ、
>>394
-
>>398
でしたね。あと謎のEは気にしてはいけないのである。
来週のどこかで投下するつもりです〜と大変アバウトな告知をしておきます。
401 :
【16/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/01(日) 23:26:15.46 ID:6xb+D3Qx0
自室で瑞鶴と雑談している翔鶴。
瑞鶴「しょーかくねぇ聞いてー、こないだの戦果を加賀さんに自慢したら『それくらいで調子に乗らないように』って言われてさー」
瑞鶴「戦場が違うとはいえ、その時の加賀さんよりも戦果を上げてたのに『調子に乗らないように』って偉そうじゃない!?」
翔鶴「加賀さんは私たちの指導役なのだから、そんな風に言ってはいけませんよ瑞鶴。私たちの今の強さも加賀さんから教わったものを受け継いだからです」
瑞鶴「それはそうだけどさぁー……いいじゃんたまには愚痴っても。ところで、翔鶴姉も最近調子良いよね? 敵艦を一度に二隻に沈めたりさぁ」
翔鶴「私は未熟者だから、その場その場で最善手を尽くそうとしているだけよ。でも、それが良いのかもしれないわね」
赤城「正射必中……正しき射は自分を裏切らない。殊勝な心がけね、翔鶴」 部屋の外から声かける赤城
翔鶴「赤城さん。どうされたんですか?」 扉を開け赤城を招き入れる翔鶴
赤城「二航戦の子たちに稽古をつけてあげていたら、小腹が空いてしまって……これからどこかに食べに行こうかなと。もし良かったらお二人もどうですか? 奢りますよ」 ニコリと微笑む赤城
瑞鶴「おおっ、行きます行きます! やっぱりケチな加賀さんとは違うなー、自分から呼び出しておいていつも割り勘だもん」
・・・・
鎮守府内のラーメン屋。赤城の丼には山盛りのモヤシが盛られている。
瑞鶴「ええっ……これで小腹……?」
赤城「見た目は多いように見えますけど、麺の量をだいぶ減らしてもらっているのでさほど胃への負担は少ないんですよ」
赤城「加賀さんは洒落たお店じゃないと行きたがらないし、二航戦の子たちにも飽きたと言われてしまったのでお二人を誘ったんですよ」
翔鶴「第一艦隊の他の方とは行かないんですか?」
赤城「うーん、皆高級レストランやお寿司屋さんの方が好きみたいなので、誘い辛いですね。私はこういうお店の方が通いやすくて好きなのですけれど」
赤城「そういえば、加賀さんの指導はどう?」
瑞鶴「なんだかなんだ教え方も分かりやすいし、実力“は”尊敬していますねー」
翔鶴「あら、瑞鶴が加賀さんを褒めるなんて雪でも降るんじゃないかしら」
赤城「うふふ。二人がメキメキと力をつけているから、最近は何を課題に与えていいのか悩むって言ってたわよ。吸収が早いって」
瑞鶴「えぇ……口を開けば小言とイチャモンしか言わないあの人が?」
加賀「尊敬する赤城さんの前でこの私を侮辱しましたね。頭に来ました」
瑞鶴「げげっ! うわわわっ! 翔鶴ねえ助けて!」 突如現れた加賀に後ろから襟首を掴まれて引きづられていく瑞鶴
加賀「教育的指導が必要ですね……長幼の序をその身に叩き込んであげますから覚悟しなさい」
瑞鶴「死ぬーっ! 焼き鳥屋に殺されるーっ!」 ズルズル……
赤城(何をしに来たんでしょうか……)
・・・・
赤城「……第一艦隊と第二艦隊の再編があるそうね」
翔鶴「先輩も気になりますか?」
赤城「ええ。長らく変動の無かった第一・第二艦隊の大規模な人事異動、それも空母機動部隊を主軸とした決戦用の艦隊…………」
赤城「いよいよ、と言うべきか、ようやく、と言うべきか……」
翔鶴「先輩は前代の提督の時から空母部隊の重要性を主張しておられましたよね?」
赤城「ええ。これまでこの鎮守府では、激戦区でも問題なく戦える空母が私と加賀さんだけでした。でも、今は二航戦の飛龍・蒼龍、それに貴方たちが居るわ」
翔鶴「先輩に認めて頂けるなんて……恐縮です」
赤城「貴方たち二人もここ数年で十分な力をつけたと思うわ。でも、それにかまけていてはダメよ」
赤城「二航戦の二人の練度は、今や私と加賀さんに匹敵……いや、ひょっとするとそれ以上かもしれないわ。貴方も上を目指して精進することね」
翔鶴「ええ。当然です」 毅然とした態度で言い放つ翔鶴
赤城(おっとりした子だと思っていたけれど……意外にも精神的な『餓え』を秘めた眼をしているわね。私や加賀さんのことさえも通過点としか見なしていないような、そんな眼……)
赤城(彼女ならあるいは……)
402 :
【17/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/01(日) 23:39:13.07 ID:6xb+D3Qx0
執務室。提督に第四艦隊に関する調査結果を報告する響。
提督「……早かったな」
響「いや、これでも時間がかかってしまった方だ。少し手間取った」
自分の作った資料を提督に手渡す響。
響「見てもらえば分かると思うけど、その資料には例の一件に関与している者のリスト及びその根拠を書き記している。一部は写真に収めることが出来たものもある」
響「関与した人間の全てを洗い出すことは出来なかったけど、これで粗方一網打尽に出来るとは思う」
自信ありげな口ぶりの響。
提督「ご苦労だった。いよいよ打って出る時が来たようだな」
提督「……話は変わるがヴェールヌイ。調子はどうだ?」
響「いいや、特に変わりないよ。問題ない」
提督「そうか。いや、最近妙に上の空だったので心配していたのだ」
響「……」
提督「姉妹のことが気になるか?」
響「気にならないと言えば、嘘になる。だが……その資料にも書いてある通り、処断しないわけにはいかない」
響「今となってはもはや他人さ」
提督「そうか。……今のお前の居場所はどこにある? 誰の為に生きている? 何の為に生きている?」
響「? どうしたんだい司令官。禅問答でもする気かい」
提督「いや、お前はかつての姉妹と今の地位とを天秤にかけた上でこちら側に傾いたわけだろう。その理由が気になるだけだ」
響「まるで私が第四艦隊の側に着くと思っていたような言い方は少し気に障るな」
提督「そうではない。むしろ、お前のことは信頼している。信じていなければこんな依頼などするものか」
提督「だが……。いや、よそう。妙な事を聞いたな。すまなかった」
提督「俺にも兄弟が居るんでな。お前を見て少し感傷的になっただけだ。気にするな」
響「私は、自分を信じてくれる者の為に応えたい。司令官が私を信じてくれるというのであれば、私もその期待を裏切るわけにはいかない」
響「……少し、個人的な話をすると。私は姉妹たちのことを軽蔑している」
響「私は自分の力でこの高みまで昇り詰めてきた。貴方に全幅の信頼を寄せられるほどの“私”になることが出来た」
響「私は自分の理想を貫き通したからだ。試練を乗り越えてきたからだ。あの姉妹たちと一緒に居た頃に思い描いてきた理想を現実に変えるまで戦ったからだ」
響「勿論、まだ完全に実現出来たわけじゃない。けれど、私は決して自分自身を裏切らなかった」
響「だからこそ欺瞞が許せない。口で理想を語りながらもそれを実現しようともしない弱さが許せない」
響「……それがかつて各々の望みを語り、それを果たそうと誓い合った仲だったとしても。いや、だからこそ、だ。ましてや私利で悪事に走るなど失望甚だしいさ」
提督(苛烈だな……だが、なかなかどうして芯の強い奴じゃないか。気に入った)
響「すまない。熱くなりすぎたようだ。少し頭を冷やしてくる」
・・・・
数日後。響の提出した資料を元に、麻薬取引に関与した者の一斉取締を行った提督。
提督「さて……一連の関係者を一層、被疑者及び関係者の拘束も済んだ。残るは龍田ら第四艦隊の面々のみ。もはや袋の鼠だな」
響「司令官自ら出向くとはどういう風の吹き回しだい?」
提督「俺が直接方をつけた……というポーズが必要だ。政治的にな」
提督「人が人の上に立つには、下々の者を自分の思惑通りに動かそうという意志・その野望を成し遂げるに十分な器量……そして部下の支持が必要だ」
提督「支持を得るには、財や権利などの何かしらの利益を提供する、人間的な魅力やカリスマ性で心酔させる……いくつかの方法がある」
提督「俺は自分自身を勇と知は満たすが仁は備わっていない、と客観視している。また、ここに居る艦娘全てを従わせるだけの財や幸福を用意することは出来ない」
提督「だがこんな所で二の足を踏んでいるわけにもいかない。とまで言えばもう分かるな? 清廉潔白である様を示せば、今出回っている俺に対するよからぬ噂も払拭出来るだろう。行くぞ!」
403 :
【18/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/01(日) 23:39:50.34 ID:6xb+D3Qx0
鎮守府の地下道。堅牢な鉄扉の鍵を打ち壊し、大麻が栽培されている部屋に突入する提督と響。
提督「命数尽きたな。観念しろ!」
暁「龍田さん! ここは私たちが食い止めるから……逃げてっ!」
加古「あーあーあーあー……面倒なことになっちゃったねーこりゃあ」
提督(この鎮守府に不在籍の艦娘……他所からの侵入者か……!)
加古「っと、そう怖い顔しないで欲しいね。こっちも仕事なんで、なっ! と」 砲撃を壁に放ち、逃走する加古と龍田。
雷「響……悪いけど、ここから先には行かせないわよ!」
響「クッ……逃してたまるか! お前たちに構っている暇はない、蹴散らしてやる」
提督「ヴェールヌイよ。心配要らん、これも予測の範囲内だ。お前はここで交戦し、この者たちの身柄を確保しろ。……殺すなよ」
身を翻し部屋を出て行く提督。パチンと指を鳴らし、高らかに叫ぶ。
提督「さて生中継をご覧の諸君! かの艦娘、龍田はあろうことか違法薬物の取引をし、不当な利益を得ていたこの鎮守府の大敵である!」
提督「特例だ! 奴を捕捉し、俺の前に連れてきた者には褒美を遣わすッ!」
・・・・
足柄(突然『すぐに出撃出来る準備をしておけ』だなんて訳の分からない命令が来たと思ったら……こういうことね!)
足柄「待ちなさァーい! その首、置いてけぇぇ〜ッ!!」 全速力で駆け寄る足柄
加古「ええっ!? もう追手が来てんじゃん! これマジに逃げないとヤバいって!?」
龍田「今手が離せないのよ〜……ちょっと時間を稼いで頂戴〜?」 穏やかな口調とは裏腹に激しい剣幕でスマートフォンを操作する龍田
加古「ちょっと! 本気で言ってんのそれ!?」
足柄「久しぶりの出撃だからね! たっくさん暴れさせてもらうわよッッッ!」 龍田たちの方向へ容赦なく砲撃する足柄
加古「(うげげ……力の差がありすぎるよこりゃ……)本当にちょっとの時間しか稼げないかんねっ!? 知らないよッ!?」 足柄に気圧されつつも反撃する加古
・・・・
足柄「さあ観念するのね! ここで私に大人しく捕まるか! 海に沈んで深海棲艦のお仲間になるか! 私はどっちでも構わないわよ!」
加古「ぃてててて……ちょっとこりゃ洒落にならないよマジで……(これ以上損傷すると逃げながら戦うのは不可能……遠くからも追手が来ているみたいだし、ここで撤収しないともうどうにもならんね……)」
龍田「うふふ、ありがとね〜。加古ちゃんはもう帰っていいわよ〜?」 加古の後方へ下がり、槍を構え足柄と対峙する龍田
龍田「……こんな所で私と心中したくはないでしょう? 行きなさいッ!」
加古「スマン龍田。達者でねっ!」
足柄「あっ、ちょっと待ちなさいよッ!」 足柄が逃げる加古を追おうとするや否や、自分が今まで逃げてきた鎮守府の方向に逆走する龍田
龍田「鬼さんこちら〜♪」
足柄「ちィッ! ……手負いのあの重巡を大破まで追い込んで鎮守府まで運ぶのは簡単……でも、それは目の前のアイツを倒してから!」
全速力で龍田を猛追する足柄。砲の嵐をうまく避けながら逃走を続ける。
龍田(ここまで来れば安心かしら) 突然ピタリと立ち止まる龍田
足柄「突然航行をやめた……? 一体何を」
龍田「もはやここまでねぇ〜……降参です〜」 ポケットから白旗を取り出し、わざとらしくそれを振ってみせる
足柄「は?」
龍田「もうこれ以上逃げ回っても私に勝ち目はないわ。鎮守府まで連れてってもらえるかしら?」
足柄(……なるほど。最初からこうするつもりだったというわけね。ここからだともうあの重巡を追うのは恐らく困難。……してやられたわッ!)
・・・・
提督「ご苦労だったな足柄。大儀である」
足柄「芝居がかった口調はやめてください。それに、もう一隻の方は取り逃してしまったし……はっきり言って、試合に勝って勝負に負けた気分だわ」
提督「いや、迅速な対応、見事であったぞ。約束通り褒美を遣わそう(……まだ映像中継で撮られているからあまりぶっちゃけた話は出来んのだ。この場はお前を立ててやるから素直に応じておけ)」 小声で足柄に囁く
404 :
【19/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/01(日) 23:40:21.55 ID:6xb+D3Qx0
提督「……これにて決着というわけか。撮影ご苦労雪風。足柄よ、後ほど話があるが……今は一先ず休んでもらって構わない」
提督「さて……俺は奴の尋問へ向かうとするか」
鎮守府内の軍事刑務所取調室。龍田に問いかける提督。
提督「ご機嫌いかがかな。色々と聞かねばならぬことは多いが。目的は何だ?」
龍田「あらぁ〜そんな凄まれても答えると思」
提督「獄卒よ、拷問用の道具は不要だ。こいつから差し押さえた薬物を持って来い。自白剤代わりに使わせてもらうとしよう」
龍田「ヒッ! ……じょ、冗談よ〜」 あからさまに脅えた表情を見せる龍田
提督「こっちは冗談で言ったつもりは無いんだがな。いやな、俺はお前のことを心底軽蔑をしてはいるが、能力に関しては大したものだと思っているぞ。今まで誰にも気づかれず麻薬の元締めをしていたとはな」
提督「疑問なのは、なぜこの鎮守府内で“仲介者”が存在しなかったのか、だ。この鎮守府内の薬物所持者は皆、『お前から買った』と言っている。
大麻を栽培し、薬物を取引していたようなお前が、なぜ直接買い主とやり取りしていたのか……そこが気になる。
管理と監視の厳しい艦娘相手に売っていなかったのは賢明だろうが、それでも自分の働く職員や整備員相手に自分の顔を晒して売っていたというのが不自然だ」
龍田「仲介が居た方が危険だと思ったからよ〜? それに、この鎮守府内での稼ぎはオマケのようなもの。大事にならない程度のどうしようもない相手にしか売ってないわ」
提督(ふむ、さしてこいつの味方はいないらしいな……)
提督「なるほど。これは俺の推測だが、主な取引先は大陸の連中だな?」
龍田「そうよ〜? 既に深海棲艦に荒らし尽くされ国としての体も成していない、無法地帯でなら何をしても問題無いでしょう?」
提督「やはり、か。今まで発覚しなかったのもそのせいだな。ところで……」
トゥルルルルル ピッ
提督「むむ、すまない今は取り込み中なんだが……何? 分かった。……いや、俺が行った方が良いだろう」 電話に応じる提督
提督「やってくれたな。……獄卒、俺が戻ってくるまでコイツを決して逃がすな。良いな?」 憎憎しげに龍田を睨んだ後、部屋から出て行く
・・・・
響「司令官、緊急事態だ」 執務室前の廊下で提督を待っていた響
提督「分かっている。……にしても、今の時代に海賊とはな。時代錯誤も甚だしい」
提督「大方龍田の仕業なのは分かってはいるが……、よりにもよってこの国で最強の兵器である艦娘が在籍している場である鎮守府を狙うというのは一体どういう腹積もりなんだろうな」
提督「ヴェールヌイ、雪風を連れ不審船の船員を取り締まれ。相手は人間だ、お前達が本気を出したらミンチになりかねないので加減はしろ」
提督「上陸した賊は……翔鶴! 良いところに来たな。こいつに何とかしてもらう」
翔鶴「え? え?」
翔鶴「鎮守府内で索敵なんて……初めてなんですけど」
提督「プロは仕事を選ばんものだ。何とかして見せろ」
翔鶴「え? えぇ〜……? やってみますけど」 んな無茶な、とでも言いたげな表情をする翔鶴
・・・・
翔鶴「武装した人間が……100名超! その多くが資材庫に向かっています!」
提督「資材庫……アレが狙いか。騒ぎのあった今ならば……とでも思っているのだろうが! バカどもに引導を渡してやろう! 行くぞ翔鶴ッ!」
翔鶴「提督自ら行くんですか!? 危険です!」
提督「そう思うならお前が俺を守ればよかろう。なに心配するな、賊にくれてやるほどこの命、安くはない」
翔鶴「?!」
翔鶴(というか、命を狙われる危険があるかもしれないからという理由で今まで執務室から出てこなかったのでは……?)
・・・・
資材庫に押し寄せ、略奪を行っている海賊の群れに向かって一喝する提督。
提督「愚か者どもめがッ!!!!」
海賊A「なんだァてめぇは? ……あァ? ゲゲッ、艦娘が居るじゃねえか!?」
海賊B「ヒィッ!? もう艦娘が来ちまったのか!? 撤収だ、撤収」
405 :
【20/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/01(日) 23:40:48.94 ID:6xb+D3Qx0
提督「我こそはこの佐世保鎮守府の全権を担う提督であるッ! 狼藉者どもめに鉄槌を与えに来たッ!」 堂々たる様子で海賊たちに言い放つ提督。
提督以外のその場に居た人間の頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。
海賊C「か、艦娘が居ようがコイツをとっちめちまえば関係ねえだろ! やっちまえ!」
海賊D「そっ、そうだそうだ、人質にすればこいつらも手を出せねえ! やっちまえ!」
提督「翔鶴! 後は任せたぞ!」 翔鶴の方を向いて親指を突きたてる提督。既に海賊に囲まれつつある
・・・・
比叡「金剛お姉さま? 何を見ておられるのですか?」
無言で海賊の群れを指す金剛。
比叡「あれは……! 一体何の騒ぎですか!? お姉様!」
金剛「分かりませんが、パイレーツがこの鎮守府にアターックを仕掛けてきたみたいデース」
金剛「恐らくはさっき放送のあった龍田の一件と関係してるんでしょうガ……。なんでテートクがあの群れの中に飛び込んで行くデース!? 理解不能すぎマース!!」
比叡「お姉様!? 冷静に分析してないで私たちも助けに行った方が良いのではないでしょうか?」
金剛「Oh! それもそうデスネ! ファイヤー!!」
窓をぶち破って資材庫前に群がる人ごみ目掛けて砲を放つ金剛。
提督「加減しろ! 莫迦が!」 取り押えられて簀巻き状態になっている提督
翔鶴「て、提督……そんなこと言ってる場合じゃないと思います!」 弓を奪われ同じく簀巻き状態にされている翔鶴
金剛「威嚇射撃だから問題ありまセーン! サァ、金剛型一番艦! 金剛がお相手シマース!」
海賊A「戦艦だと!? まずい! ずらかるぞ」
金剛「もう遅いデース!」 ダブルラリアットで海賊の群れを猛進し次々に伸していく金剛
比叡「この比叡! 悪党を逃がしはしません!」 逃げようととした海賊に鉄拳制裁を加えていく比叡
提督「もしもし? 了解。では、後は他の者に任せておけ。ヴェールヌイは例の地下の部屋へ、雪風は龍田の部屋へ向かってくれ。いや念のためだ、それから、雪風は……」 騒ぎに紛れて平然と響たちと連絡を取る提督
翔鶴(なんかいつの間に縄ほどいてる!?)
・・・・
提督「やれやれ……加減しろと言ったのに。これから尋問しなければならんのに声も出せなくなるほどのトラウマを植えつけてどうするんだ」
金剛「Sorryテートクゥー! でも、決めるところはビシッと決めないとダメデース!」
提督「まぁ確かにそうではあるが……。ところで金剛よ、お前、きちんと精神鑑定は受けたんだろうな?」
金剛「ダァカァラァー! ワタシはいたって心身ともに健全って言ってるデース!?」
提督「ふむ、それは残念だ。……それはそうと、ここから先は真面目な話。例の“不調”はまだ続くのか?」
金剛「ハイ。でも、やっぱりワタシ、人と合わせて動くのが苦手みたいデス……」
提督「そうか。では次回の編成では第一艦隊を外れてもらう」
金剛「!? ちょ、ちょっと待って欲しいデース! もう少しだけ猶予を! 頑張るから見捨てないで欲しいデース!?」
提督「……金剛。今のお前が第一艦隊の旗艦であり続けることに何の意味がある? 結果を出せない者が高い地位に居座り続けていることを正しいと思うか?」
金剛「そ、それは……。でも、今までとはやり方が違うから……」
提督「そうだな。従来の戦い方であればお前は一番活躍していた。だが、それは今の俺のやり方とは異なる。そして今の俺のやり方の方が総合的に見て被害を抑え結果を出すことが出来ている。
どちらに順応すべきかは自ずと答えが出ることよな?」
返事は無いが、奥歯を噛み締めながら屈辱に満ちた顔をしている金剛。
提督「金剛……お前が第一艦隊の旗艦であることに拘泥する理由はなんだ? 地位か? 羨望か? 実利か?」
金剛「ワタシは……ナンバーワンであり続けたいデース……。そうでなければ……そうでなければ、幸せになれないデース」
提督「……お前にどんな過去があったかは知らんし興味もないが、とにかく第一艦隊からは外れてもらう。が“ナンバーワン”とやらにはなれるかもしれん。お前の働き次第では、な」
提督「お前の力は、集団の中では発揮されないのかもしれないが、俺はお前の能力を買っている。だからお前にはこれまでとは全く異なる任を与える」
提督「もう俺にくだらん媚を売るのはよせ。ただ結果のみで応えろ。お前の働きに俺は応じるだけだ」
406 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/01(日) 23:50:34.59 ID:6xb+D3Qx0
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~20/100)
・響の経験値+2(現在値4)
・翔鶴の経験値+4(現在値7)
・足柄の経験値+2(現在値7)
・金剛の経験値+2(現在値5)
----------------------------------------------------------------------
今週中とか言ってどうせまた遅れるんでしょムードが漂ってましたが……滑り込みました。極道入稿ならぬ極道投下。
いやまあモチベとか体力とかリアルとか色々あるし仕方ないわよね。
仕方ないけど仕方ないとか言ってたらいつまで経っても仕方ないままなのが人生の仕方ないところだ。
次回……は、投下できそうになったらまた告知するです。つまり未定。
////チラシの裏////
大鳳!!!!!!!!!出たの!!!!!!!大鳳!!!!!!!タウイタウイの!!!!!!!大鳳!!!!!!!!
残るは大和だけです。大型卒業すれば精神的に楽になるし、イベントでも資源消費を恐れずキラ付け無しの突貫プレイが出来るようになるので、なんとか揃えたいところだが……そう甘くないのが大型建造。
あと菱餅出ねえ! 全然出ねえ! 間に合う気しねえ! でも3-3粘着してたら舞風出たのはラッキー! だがもう資源がねえ!
----------------------------------------------------------------------
『Phase A』【21-25/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5
よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか
>>351
付近を参照下さい。
----------------------------------------------------------------------
407 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/02(月) 00:45:32.31 ID:CrCeGd7po
乙です
皐月
408 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/03(火) 00:02:03.71 ID:2tgd7hPVo
乙 足柄
409 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/03(火) 00:28:30.46 ID:G+s580BAo
響
410 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/04(水) 01:21:54.72 ID:27bA1YNY0
乙 響
411 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/04(水) 04:39:09.98 ID:v+aqEA1so
雪風
412 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/03/04(水) 12:21:31.56 ID:5+QqwhszO
>>407
-
>>411
より
・皐月1レス/足柄1レス/響2レス/雪風1レス
で『Phase A』が進行していきます。
そういえばPhase Aではまだゾロ目出てませんね。
若干エクストライベントの存在を自分で忘れかけてました。
何かシチュエーションを書いておくと〜みたいなことを前に書いておきましたが、アレはアレです。
ネタを出してもらうことを期待しているわけではなく、作者さえも抗えないデウス・エクス・マキナが起こりうる“余地がある”、ということに意味があるんです。
実際その機械仕掛けご都合ゴッドが動くかどうかは問題ではなく、『作者の意図していないことが発生するという可能性もある』ってしておいた方が面白そう! ってだけです。
……さすがにそこまでスケールのデカい何かが飛んでくることは無いと思ってますし、「ここちょっと塩味欲しいな」とかそんな感覚で書いてもらって構いません。
そもそも書いた所でゾロ目出さなきゃいけないとかそんなんなんで実現性薄いですしね。
えらく大袈裟に書いたけど思惑はだいたいそんな感じなのです。
////チラシっぽい////
最近艦これで初めて元帥になりました。600位とか初めてでビビりました。
月末には大将〜中将になってるでしょうが。翌日には1000位になってましたしね。
だいたい菱餅のせい。あと3個……。
これ、5月になったら柏餅が特定海域でドロップしますとか無いよね? ね? いやマジで。
しかしそうなってしまうと一番可哀想な思いをするのはほっぽちゃんなのである。
クリスマスでは三式弾をプレゼントされ、雛祭りでは健やかな成長を祈って三式弾を供えられ、……なんとも不憫である(でも倒す)。
413 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/03/12(木) 22:42:32.68 ID:YHgi9Mtj0
また日が開いてしまいました。ノってる時はちゃちゃっと書けるんですけどねー。常にそうってわけじゃないし人生色々あるから仕方ないよねーと自己弁護。
次回の投下は明日を予定しております。普段通りなら多分21時頃になるでしょう。
////Chillaxing////
菱餅狩りも終わり何気なく大型艦建造してたら伊401が出てきました。冬イベで結局ゲット出来なかったので思わぬ僥倖。
残るは能代・大和・磯風ですね。いよいよこれくしょん作業もラストスパートといった感じです。
縁が無いのかやたら能代は出てきませんね。磯風は次以降のイベントに期待するとして……うちの鎮守府的にはラスボスは大和ですかね。
お前さえ倒せば俺はこの世の苦しみ(大型艦建造)から解放されるのだっ……!
お前いつもゲームの話ばかりだなと言われそうですが実際艦これしかやってないような人生なのでしょうがない。いやそんなことはないです。
艦これに限らずゲームは好きなんですが、ただなんかこう昔好きだったゲームとかもわざわざ引っ張り出してやったり新しいハード買って遊んだりするのもなー……とか。
妙ちくりんなジャンルの音楽聴いたり漫画も結構読んだりしてたんですけど最近はそうでもない感じですね。
ヤバイぞ! この手の話はだんだん暗い気分になっていく罠だ。やめやめ。
無趣味な人間になりつつあると自嘲してられるうちはまだマシだけど本当にそうなってしまったら鬱の二歩手前ぐらいでわりとアレなんですよね。あるいは悟りの境地か。
いっそマニ車を回しまくって徳を積んで解脱するのもいいかもしれない。よくねえよ!?
414 :
【21/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/13(金) 21:41:37.63 ID:lrMYVIKO0
深夜の軍事刑務所……龍田らと同様に収容されて牢屋の中に居る皐月に話しかける提督。
提督「直接会うのは二度目になるな。訓練生の頃の面接試験以来か」
皐月「はっ、はいっ! 司令官」
牢の中ではすることもないので不貞寝していた皐月であったが、提督が来たことに気づくや否や姿勢を正し敬礼をする皐月。
提督「こんな牢の中に閉じ込めてすまなかったな。文月ともども明日の朝には釈放してやる」
提督「第四艦隊に入って日の浅いお前たちがこの一件に噛んでるとは思えん。そもそも第四艦隊の動きが怪しいということはハナから分かっていた上でお前たちを配属させたのだしな」
皐月「? ……でもボク、あ! いえ、私、何も司令官の役に立って居ませんが」
提督「前に会った時も言ったが、無理に一人称を直さんでもいい。不自然に畏まった態度を取られるぐらいなら敬語も必要ない。尋問しているわけではないのだから、あまり俺を恐れるな」
提督「お前たち二人を第四艦隊に回したのは、龍田の信頼をそれなりに得られる見込みが高く、かつ、懐柔され奴の手駒にならなそうだったからだ。つまり、毒にも薬にもならないというわけだな」
皐月(否定出来ないけど失礼だ……)
提督「龍田について何か分かったことは無いか? 奴の真の目的が知りたい」
提督「常設の艦隊に所属しているのであれば、まず金には困らないはず。だのになぜ奴は例の取引に手を出したのか……そこには私利私欲を超えた何かの理由があるはずだ、と睨んでいる」
提督「……何か知っている顔だな。やはりお前たちを選んで正解だったようだ」
・・・・
皐月「あの人は……どうやってそれを実現するつもりかは分からないけど、轟沈するはずだった艦娘を蘇らせようとしているみたいだ。その為にお金も必要だったんだと思う」
かつて龍田・文月と訪れた一室で見た出来事を話す皐月。
提督「なるほど、力尽きた艦娘は修復剤を使っても傷が治るだけなのか……知らなんだ。艦として死んだから意識が戻る事はなく、人として生きているから身体が腐ることもない、というわけか」
皐月「……うん。あの時の様子からして、機能を停止した艦娘の復活……それがあの人の本心なんだと思う」
提督「どんな手を使ってでも、というわけか。……なるほどなるほど。フフフ、フフ、ハハハハ」
提督「良いだろう。全容は見えた、そしてそのゴールもだ」
皐月「?(突然高笑いしだした……一体どうしたんだ)」
提督「ご苦労だったな皐月。お前は十分に役に立った」
高笑いしながら部屋を出る提督。
皐月(一体なんだったんだ……)
・・・・
数日後。再び取調室で顔を会わせる提督と龍田。
提督「海賊をけしかけるなんて考えたな。“菱餅”で煽ったか?」
提督「その顔、図星のようだな。港町や島を襲って生計を立てている荒くれどもといえど所詮生身の人間。数百人集まったところで駆逐艦一隻にも勝てやしない」
提督「大本営、政府、その他研究機関……その中でもごく限られた人間にしかその真価は分からない。いや、ひょっとすると連中でさえ分かっていないのかもしれないな。
見た目はちゃちいが『オーパーツ』『聖遺物』『神器』……そんな風に呼ばれてる代物だ。当然裏のルートで捌けば莫大な金になる」
提督がポケットから“菱餅”を取り出す。
底面が菱形の四角柱、桃色・白色・緑色と三層に色の分かれているその姿はまさに実物の菱餅と見紛わんばかりである。しかしこれは当然単なる菱餅であるはずがない。
現代の科学ではその謎が完全には解明されていないため、ロストテクノロジー、あるいは、深海棲艦が独自に発明した物質と噂されている。
その実態は謎に包まれているが、この“菱餅”や“菱餅”と同様の性質を持つ、“プレゼント”(立方体の箱のような形状をしている)・“チョコレート”(柱体で面の形がハートに似ている、茶褐色の物質)は深海棲艦が極稀に所持している。
これらの稀少なアイテムを原料に、艦娘の装備をより強力にする為に必要な消耗品である“ネジ”(『改修資材』と呼ばれている)などが生成される。
その為、深海棲艦を倒し“菱餅”などを得た提督は報酬と引き換えにそれらを大本営に渡すことが暗黙のルールとなっている。
大本営は提督から得た“菱餅”などをもとに、軍備を強化する為の“ネジ”や“指輪”を作り、提督も大本営からその恩恵を授かる……いわゆるwin-winの関係である。
提督「だからあの海賊共はリスクを犯してでも“これ”を盗みに来た。迷いなく資材庫に向かったんで実に分かりやすかった、混乱に乗じようが大した相手ではなかったな」
提督「残念だったな龍田。“この前お前が確認しに来た時は”あったのにな。……どうやら監視カメラの台数が増えていたのには気づけなかったようだな」
龍田「でも〜海賊さんの財布が潤っても……それが私に何か影響があるんでしょうかぁ〜?」
提督「では今回見事な働きをしてくれた雪風に引導を渡してもらうとしよう。雪風、例の資料を!」
部屋に入ってきた雪風。龍田の部屋にある、彼女の自前のパソコン画面を撮影した紙を机の上に並べる。垂れてきた冷や汗をハンカチで拭いだす龍田。
提督「お前の部屋に、海賊の頭領と思しき人物が訪れていた。お前の代わりに送金しようとしているところを捕えておいたよ。お前の同士に今まで稼いだ金を送るつもりだったんだろ」
415 :
【22/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/13(金) 21:46:32.36 ID:lrMYVIKO0
提督「雪風が気を利かせてキーボードの手元まで撮影していたからな。人力キーロギングさせてもらった」
提督「お前が薬物の取引をしているならば、それによって得た金がどこかにあるはずだ。だが、この鎮守府内には保管されていないようだった。ならばどこかに預金しているに違いないと睨んだのだ」
提督「Googolなどといった検索エンジンが辿り着けないインターネット上のウェブサイト郡を“深海Web”と言う。が、検索エンジンが辿り着けまいが、WWW上に存在していて公開されているページであるのならば、辿り着けないことはない。
俺は違法性のある“深海Web”上のサイトを片っ端から漁り、色々と趣向を凝らしてみて何とかうちの鎮守府に関係ありそうな記述のあったページおよび掲示板のスレッドを発見した。が、ここで暗礁に乗り上げた」
提督「その理由はお前もご存知の“Toroia”だ。ウェブのどこかしらにアクセスすればIPアドレス……すなわち足跡が残る。ウェブ上で金や薬のやり取りをしていたなら(手間ではあるが)サーバに問い合わせれば解決するのだが……。
無数のプロキシサーバを経由……つまり、中継となる代理サーバを経由してやり取りをすれば発信元の特定は困難になる。調べたところで代理サーバのそのまた代理の代理の代理の代理のIPアドレスしか出てこないわけだからな。
たとえこの鎮守府に関係のある人物が違法性のあるやり取りをしているのを察知しようが、その書き込み主は誰なのかを特定することが難しい、というわけなのだ」
提督「が、お前がまんまとこの鎮守府に海賊を呼び寄せたことによって、お前のパソコンにログインすることが出来た。おかげでお前の“DMMマネー”も全額差し押さえることが出来た。お前に関連してた連中を洗い出すことも出来る」
“DMMマネー”――“Digital Mass Mate Money”の略称である。現代においては最も普及している仮想通貨のことである。P2P方式を利用していることなどが特徴に挙げられる。
提督「お前のパソコンにログインしてからの工程は雪風が上手くやってくれたさ。聞きたいか?」
龍田「……もう結構よ。いいわ、私の負け、なのねぇ……。せめて足掻こうと思ったけれど、それすらもうまく行かないのねぇ〜……」
龍田「またしても、“死神”に邪魔されてしまったのねぇ〜……」 憎々しげに雪風を睨みつける龍田。途端に震え出し、扉の近くまで下がる雪風
龍田「ふふっ、“死神”のくせに私が怖いのかしらぁ〜……? 面白いわね〜……」
雪風「死神じゃ……ありません……!」 震え声での抗議
龍田「ふふっ、あの時はお互い別の鎮守府だったけどぉ〜……前線で戦った事もない天龍ちゃんたちを囮にして逃げ帰ったのを今でも覚えてるわぁ〜」
雪風「あっ、あれは撤退命令が出たから……! それに、あの場で私にはどうすることも……」
龍田「そんなことは承知の上よ? 承知の上で言ってるの。そうであっても、どうあっても私にとって貴方たちは仇。許しはしないわ。
天龍ちゃんや私たちを使い捨てにした大湊の提督も、それを見殺しにした単冠湾の提督……ひいてはその命令で動いていた貴方や響も。全員許しはしない。私は貴方たちを許さない」
提督(過去に何やら悶着があったようだが……どうも色々と事情があったらしいな) 雪風の方に手を向け、こちらへ来るようクイクイッとジェスチャーする
提督「横から失礼。ほほう、こいつが“死神”か。そうかそうか。そうかそうか。いや……なるほどなるほど」
いやらしい笑みを浮かべる提督。龍田に気圧されて震えている雪風を胸元に引き寄せ、ワシャワシャと乱暴に頭を撫でる。
提督「こいつが“死神”に見えるならその考えは改めた方が良いだろう。ナリはちんちくりんだが……こいつは“幸運の女神”そのものだ。それもお前にとっての、な」
提督「獄卒! 隣室で待機している“奴”を連れてこい」
獄卒が扉を開けると、かつての龍田の同胞であった天龍が現れる。
龍田「嘘……天龍、ちゃん? 皆……!」
天龍「へへっ、随分遅くなっちまったが。お前に会いに、あの世から舞い戻ってきたぜ……っと、そんなカッコいいこと言えるような最期じゃなかったけどな」
抱き合う龍田と天龍。天龍の胸の中で涙を零す龍田。肩を叩きなだめる天龍。
天龍「アンタが何者なのかは分からないし、どうやって海に沈んだはずの俺をここに連れてきたのかも分からない。……が、とにかく礼を言うぜ」
提督「詳しい話は後でしてやる。これにて終幕だ。雪風が居なければこうはいかなかっただろう。感謝するんだな」
・・・・
軍事刑務所近くにある公園。ベンチに座り、フゥ、と溜息をつく提督。隣には雪風が座っている。
提督「……にしても今回は幸運だった。
まず、何かが起こる前にお前が鎮守府内で麻薬が取引されていることを察知してくれたこと。龍田に察される前に関係者の絞込みと諸々の対策が出来たこと。
追い詰められた龍田が何かしらの騒動を起こしたのは想定済みだったが、それをかえってプラスの方向に利用出来たこと……特に龍田の真の狙いを皐月から聞き出せたことが大きいな。
それから、俺とお前で“兄さん”を呼び寄せることが出来たこと。“兄さん”が万事上手くやってくれたこと……挙げればキリがないな」
提督「連日徹夜に付き合わせてすまなかった。俺一人ではどうしても時間がかかり過ぎたからな……」 ングッ……ゴクッ
べコン、とコーンポタージュ缶の飲み口下部を凹ませる提督。雪風はその様子を不思議そうに見つめている。
提督「凹ませたのが気になるか? こうやると中のコーンが出て来やすいのだよ」
雪風「いえ。しれえはコーヒーが好きじゃなかったでしたっけ?」
提督「缶コーヒーは好かん。……そうだ、雪風。お前の分もあるぞ。ま、自販機で当たりが出ただけなのだがな」
提督がポケットから紙パックのジュースを取り出す。『どろり濃厚 ピーチ味』と書かれている。
提督「駄賃というには安すぎるが……ひとまず乾杯だ」
雪風「ゴクッ、ンヴッ!? うーん……おいしくない……」 渋い表情でジュースを見つめる
提督「……そうか」
416 :
【23/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/13(金) 22:02:00.78 ID:lrMYVIKO0
執務室を訪れる響。
提督「響か。何用だ?」
響「いや、用は無いんだが……ダメかい?」
提督「……そうか」
提督はそれ以上何も言わず、部屋に備えつけの冷蔵庫の中身を物色し始める。
響「司令官、珍しく機嫌が良いね?」
提督「なぜそう思った? ……事実、吉事があったのは確かだが」
響「用もなく部屋に入ってきた私を拒もうとしないし、声色が普段よりも優しかったからね。顔が見えない分、そういう所で司令官の内心を探っているわけだ」
提督「やれやれ……。ま、お前相手なら拒む理由が無いからな」 ポットから二人分のカップに珈琲を注いでいる
提督「飲むか?」
響「ありがとう。いただくよ……ンンン゛ン゛ッ!?」 顔をしかめる響
響「司令官……これは本当にコーヒーかい? 何が入っているんだ?」
提督「カップの1/4から3/1程度のコンデンスミルクを混ぜた珈琲……いわゆるベトナムコーヒーというものだな。前にブラックよりは砂糖とミルクを加えた方が好きと言っていたので淹れてみたのだが」
響「コーヒーにこんな過剰な甘さは求めてないよ司令官……」
提督「ふむ。俺はこれはこれで好きなのだがな。俺のブラックと替えるか?」
響「あぁ。頼む……これはちょっと……」
・・・・
提督「……」ズゾゾゾ
響(普通に飲んでる……)
響「そういえば、吉事があったと言っていたけど。何があったんだい?」
提督「うむ。……久しぶりに兄と会ってな」
響「どんなお兄さんなんだい?」
提督「俺がこの世で唯一尊敬している存在だ。恐らく、知で彼に並び立つ者は居ないだろう。俺の師であり、理想であり、生きる理由だ」
響「司令官にそこまで言わしめるとはね……興味が湧いてきたな。この鎮守府の近くに居るのかい? 私も会ってみたいものだな」
提督「近くというか……ここに居るぞ。今は寝てるがね」
・・・・
響「おっと……長話しすぎたかな。そろそろおいとましなきゃだね。それじゃ」
提督「待て」
響「?」
提督「姉妹が気になるのだろう。だから訊きに来た。違うのか?」
響「気にならないと言えば嘘になるが……」
響「私とて罪人に情を抱くほど愚かではないさ」
提督「そうか。……俺は今から奴らに会いに行こうと思う。お前はどうする? ついて来るか?」
言葉を発しないの響。提督は椅子から立ち上がり、彼女に手を差し伸べる。
提督「今生の別れになるかもしれないぞ」
力なく腕を延ばす響の手を握る。
提督「……行くぞ、ヴェールヌイ」
417 :
【24/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/13(金) 22:16:28.45 ID:lrMYVIKO0
軍事刑務所内、牢屋前。
提督「俺の話は後で良い。また後で来る」 その場を立ち去る提督
響「……分かった」
・・・・
響が目の前に現れると、少し怯えた様子を見せる暁たち。なるべく刺激しないよう穏やかな口調で話しかける響。
響「やぁ。……なに、この間のように叩きのめしに来たわけじゃないから安心して欲しい。最後に顔でも見ておこうと思っただけだ」
響「一つだけ気になっていたことがあってね。どうしてあの時に龍田を逃がす為に私の前に立ち塞がったんだい?」
響「私が本気を出せば、たとえ三人がかりであっても君たちを仕留めるのなんて造作も無い……そのぐらい分かっていただろう。それとも、裏切ったら龍田に殺されると言われていたのか?」
暁「違うわ。私は自らの意志で貴方の足止めをした」
響「たかが時間稼ぎの為に自分を犠牲にする覚悟があったと? あまり合理的とは思えないんだが……」
暁「響から見たらそうかもしれないわね。……でも、ここで龍田さんに死んで欲しくないって、そう思ったの。それだけよ」
どこか釈然とした様子で話す暁。
雷「響は知らないでしょうけど……龍田さん、本当は良い人なのよ? そりゃあ、やり方は間違っていたかもしれないけど……あの人は自分の為にお金を使ったことが無いのよ?」
雷「いつだって誰かの為に動いてた……自分を捨ててまで、私たちを守ってくれていた……。私はあの人を尊敬しているわ」
響「“良い人”というのは君たちの主観だろう。麻薬を売り捌き利益を得ていた時点でそれは許されない行為だ。得た金の目的や使い方がどうあれ関係ないだろう」
電「そうですね……。ひょっとすると最初から間違っていたのかもしれないのです」
暁「でもね響。あの人は……弱くて、貧しくて、誰にも相手にされなかった私たちに手を差し伸べてくれた」
暁「才能が認められて途中で別の鎮守府に行った響は、知らないかもしれないけど。訓練生を卒業したあの後、私たちは、色んな酷い経験をしたの」
暁「当然よね。だって、私たちは所詮役に立たない子供だもの。生きるか死ぬかの戦場で、引鉄も退けず右往左往することしか出来ないんだもの……邪険に扱われて当然よ」
電「艦娘を辞めたいと思ったこともあったのです。でも、当時の司令官に話しても相手にしてもらえなくて……」
雷「昔、四人で、将来の夢を話したわよね。艦娘になりたてで、まだ訓練生だった頃に。皆それぞれ内容は違ったけど……本質的には『誰かに必要とされる人間になる』って事だったと思うの」
雷「艦娘だもの、当たり前よね。皆に頼られるぐらい、皆を救えるぐらい、皆を導けるぐらいに強くなりたい……そうよね」
暁「響。誇りに思いなさい。私たちでは成し得なかったことを、貴方はやり遂げたのだから。この鎮守府で貴方の名を聞けば、その実力と才覚を疑う艦娘は居ないはず」
暁「私たちは……そうね。強くないから、龍田さんに弱みにつけ込まれたのかもしれないわね。あの時はどん底で、本当に辛かったから」
暁「本当は、第四艦隊のメンバーに選ばれるほどの実力なんて無かったの。龍田さんのおかげで、毎日楽しく、子供のように遊んで暮らせていたから、忘れていたけれど」
暁「私たちは、結局のところ龍田さんが居なければ何も出来ないわけで……。情けない話だけど、艦娘失格なのかもしれないわ」
暁「でも、響。貴方は違うから。貴方なら、私たちが不甲斐なかった分まで活躍してくれるはず」
雷「こうなってしまった以上、もう私たちはこれまでだからね。私たちの分まで、頑張ってよね! 応援してるわ!」
・・・・
牢室前で待機していた提督に話が済んだことを伝えに来た響。
提督「もう良いのか?」
響「ああ」
提督「顔色が悪いぞ。大丈夫か?」
響「……吐き気がする。それだけだ」
響「ただ、吐き気がする」
そう言い残して、響はどこかへ歩いて行ってしまった。
提督(ひどく思い詰めた表情をしていたな……)
提督は、暁たちの居る牢へ向かった。
418 :
【25/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/13(金) 22:18:43.98 ID:lrMYVIKO0
大講堂。ここを提督が訪れるのは初めてであり、提督が全艦娘の前にその姿を現したのも初めての出来事である。
登壇すると何の挨拶もせず唐突に本題を話し始める提督。
提督「時間は15分。それ以上取らせはせん」
提督「諸氏らの活躍により、現在確認されている深海棲艦の出現拠点は残すところあと二つとなった」
提督「しかし、敵の攻勢は未だ精強であり、状況は予断を許さない。理由としては、他の海域から落ち延びた深海棲艦が残る二地点に集結しているためだ。
また、純粋にその二点の深海棲艦の勢力が質・量ともに最大規模である、ということも挙げられる」
提督「裏を返せば、この二大拠点を滅ぼすことによってこの国の制海権・制空権の全てを奪還することが出来るということ」
提督「よってここに、AL/MI作戦を発令する」
それまで静寂に包まれていた講堂内が、一気にどよめき始める。
"MI"の名を聞いて震え上がる者、勇み奮い立つ者、晴れ舞台を前に浮足立つ者……様々であった。
それぞれの胸中は異なっていたが、皆一様に提督の一言一句に集中していた。
提督「我々は呉鎮守府・ショートランド泊地・トラック泊地……その他泊地や基地所属の者たちと共に、MI島海域に巣食う百鬼夜行を叩く」
提督「なお、大湊警備府や単冠湾泊地、幌筵泊地、それから横須賀鎮守府の一部の戦力は北方AL海域へ進み敵の拠点を破壊。余力があれば陽動に回ってもらい、我々本隊の支援艦隊として働いてもらう予定だ」
提督「ではこれより第一艦隊から第四艦隊までの人事を発表する」
提督「第一艦隊旗艦、赤城! ビスマルク! 榛名! 加賀! 飛龍! 蒼龍!」
提督「第二艦隊旗艦、響! 雪風! 大淀! ……」
・・・・
提督「以上だ。質問のある者と人事に不満のある者は昼過ぎに執務室に来い。また、足柄はここに残れ。話がある」
比叡(お姉様……どの艦隊にも選ばれなかったせいか茫然自失に!? この世の終わりのような生気の抜けた顔でぶつぶつと何やら呟いている!)
比叡(あ、あれは……私には英語が分からないからその意味を理解することは出来ないが、恐らく呪詛めいた何かに違いない! 英語知らなくて良かった!)
・・・・
提督「来たか。お前を新たな艦隊に配属しようと思っている」
足柄「何を言ってるんですか? さっき第一艦隊から第四艦隊までの発表をしていたじゃないですか。一体どうしたんですか?」
提督「第零艦隊“アノーニュムス”だ。お前には俺の切り札として動いてもらう」
足柄「第零艦隊って……? 詳しい説明をしてもらえますよね」
提督「今回の作戦に乗じてちょっとしたジョーカーを切ろうと思ってな。だが、他の鎮守府の連中にこれを知られるわけにはいかない。あくまで秘密裡にやる必要がある。それゆえに“無名艦隊”ということだ」
提督「お前と、それから金剛・比叡・皐月・文月。暫定だが面子はこんな感じだ。と言っても、全員お互い話したこともないような奴らだとは思うが……」
足柄「あっ、あの!? 話が全く読めないんですけど!? 大体、今まで私が所属していたヴェアヴォルフはどうなるんですか!?」
提督「ヴェアヴォルフは解散だ。その為に大淀を第二、霞と清霜を第三艦隊に配属したのだ。
……実際、認めたくは無いがヴェアヴォルフの連中は使える。ヴェアヴォルフ以外にアコギなやり方をしていたユニットは全て解散しているのだよ。
俺が潰した例もあれば、自然に解散した例、他のユニットに統合された例……様々ではあるが」
提督「制度の変更。他艦隊やユニットからの冷遇。取り巻く環境が日に日に悪化していく中で組織としての体裁を保ち続けていたということを評価したい。個々の戦闘能力も高いしな。
あそこの連中ほど窮地に強い連中もそうおるまい。常設の艦隊に配属しても問題ないだろう」
提督「以前艦娘全員が見ているあの場面で龍田を追わせたのは、お前とお前の属していたヴェアヴォルフの地位を向上させてやるためだ。お前の活躍以後はそれなりに艦隊内での風当たりも和らいだだろう」
足柄「もう既に外堀から埋められていたと……。それは分かりましたけど、具体的には何を企んでいるんです?」
提督「ワープ」
足柄「えっ」
・・・・
提督「……ということだ。今はまだ出来ないが。今度実演してみせよう。それで信じてもらえるだろうしな。少し準備に時間がかかる」
足柄「本気で言ってるのかしら」
提督「この先お前の力を頼ることが多くなるだろう、よろしく頼むぞ」
足柄(常々思うけど、この人ワケわからなすぎるわ……。でも、これまでと違って近づく口実は出来たし、少し分析してみようかしら)
足柄(あと、ヴェアヴォルフの他の皆をお祝いしなきゃね。私はともかく、他の皆のことはなんだかんだ上手く取り計らってくれたみたいだし……)
419 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/03/13(金) 22:32:19.71 ID:lrMYVIKO0
本日 is ここまで。ホワイトデーボイスを聞いて魂を浄化する作業をしていたら若干投下が遅れた。足柄と白露は犠牲になったのだ……。
右に左にブレまくってしかも中途半端なところで途切れた感もありますがまあそれは次ということで。
今回わりとフリーダムすぎたな感が半端ないけど誰かに頼まれて書いてるわけでもお金貰ってるわけでもないしまあいっか。いいよね。
回によって過激さに差はあれど終始こんな感じでぶっこみ続けていく予定。あまりやり過ぎても胃もたれ起こすのでそこら辺の按配は気をつけたいところですが。
420 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/03/13(金) 22:49:06.07 ID:lrMYVIKO0
あっ忘れてた。例によって例の。
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~25/100)
・皐月の経験値+1(現在値4)
・足柄の経験値+1(現在値8)
・響の経験値+2(現在値6)
・雪風の経験値+1(現在値5)
他二人
・翔鶴の現在経験値:7
・金剛の現在経験値:5
----------------------------------------------------------------------
----------------------------------------------------------------------
『Phase B』【25-30/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00〜16:雪風
16〜32:翔鶴
33〜51:金剛
52〜66:響
67〜82:足柄
82〜99:皐月
>>+1-5
よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか
>>351
付近を参照下さい。
----------------------------------------------------------------------
421 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/14(土) 14:52:28.71 ID:lUln3ejyo
乙です、元ネタがわかるとニヤニヤしながら読んでた
422 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/14(土) 18:23:47.71 ID:AZBHoO/yo
さて
423 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/15(日) 00:12:42.23 ID:fCNwmc0Io
ぽい
424 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/16(月) 00:42:37.80 ID:6IW/3++vo
ん
425 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/16(月) 03:38:00.79 ID:Lpf6Iov5o
いやん
426 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/03/16(月) 08:11:43.29 ID:QRRI8Ufn0
>>421
-
>>425
より
・足柄4レス/翔鶴1レス
で『Phase B』が進行していきます。
突然の足柄フィーバー。なんだこれ!? こういうことを平然とやってきやがるのがコンマの恐ろしいところだ。
ま、まあこういうのも覚悟の上でしたし、ねぇ〜。それに、むしろこっちの方がカオスで面白かろう。
かつてない濃厚な足柄インナップにご期待くださ……いやマジどう進めようかわりと悩むところですがなんとかします。
427 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/16(月) 08:25:18.69 ID:6IW/3++vo
すげえww足柄さん大勝利だな
428 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/03/21(土) 19:14:26.10 ID:ysJ3qV530
次回の投下は明日21時頃と予告しておきます。
でもダメだったら1日ずれるかもと予防線も張っておきます。
////チラスは、パキスタン、北方地域に位置し、小規模な町である。////
大和きましたああああフゥゥゥゥーーーーーーー!
遂に大型艦建造の呪縛から解放されたのだ……!
しかし何故か未だ出ぬ能代……。
とはいえそろそろ備蓄始めた方が良さそうだし、最低値で回すのは次イベント後にしときます。
ボーキサイトが20しか無いのはさすがにやばいのヨ……。
429 :
【26/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/03/23(月) 20:58:56.91 ID:gUE3VSVL0
霞「ヴェアヴォルフ第52回定例会。始めるわよ」
清霜「明日で解散なのにやる必要あるのかしら?」
霞「うるさい、やるったらやるの!」
足柄「さ、お酒たくさん買ってきちゃったから皆で飲みましょ?」
大淀「おつまみもバッチリです!」 メガネクイッ
霞「会議室で宴会おっ始めようとしてんじゃないわよバカ共ッ!」
足柄「明日でお別れってんならやることは一つ、でしょ?」
霞「ハァ……まったく、うちの連中はなんで無駄な方向にばっかり準備が良いのかしら……」
清霜「類は友を呼ぶってやつじゃない?」
霞「お黙り!」 ペシッ
・・・・
足柄「にしても、良かったわね大淀。ようやく認められたみたいで。第二艦隊に配属だなんて大したものだわ」
大淀「秘書艦だった頃も事務仕事ばっかりで常設の艦隊には入れなかったので……光栄ですね」
大淀「提督に秘書艦を外された時はショックでしたけど……。私は“今まで秘書艦だった”という慣習によって評価されていた所がありましたから。こうして純粋な実力を認められたことは、素直に嬉しいです」
霞「まっ、あれだけ鍛えれば当然よね」
清霜「とにかく暇だったからねー」
足柄「アンタ達、何してたのよ……」
大淀「霞さんにひたすら稽古をつけて貰っていました」
清霜「そうそう。本当に酷い時期は他の艦娘に白い目で見られるせいで演習場にも行けなくて、仕方がないから海に出て野試合してたのよね」
足柄「野試合て……。まあ、霞と殴り合いしてればそりゃ強くもなるわね……」
大淀「それにしても、どうして提督は足柄さんを常設の艦隊に入れなかったんでしょうか。例の、麻薬の一件であれだけ足柄さんのことを評価していたのに」
霞「というか、わざとらしく讃えてたわよね。まるで他の艦隊にも足柄や他のヴェアヴォルフの面々を評価させるかのような言い回しで」
足柄「提督曰く、私たちのことを結構評価してたみたいよ。当初は潰すつもりだったけど、なかなかしぶといんで逆に利用しようと思ったんだってさ」
霞「ふーん。頭は良いかもしれないけど、演技は下手ねあの提督。露骨すぎて見る人が見れば何か裏があるって勘繰るわ」
霞「というか、訳知り顔でそんな話をするってことはアンタもやっぱり何かしら重要なポスト任されてるみたいね。少し安心したわ」
清霜「メンバーの中で唯一の行き遅れだって二人で心配してたんだよねー」
足柄「あら、この私に向かって“行き遅れ”だなんて聞き捨てならないわ。そんなんだから戦艦になれないのよ」
清霜「なれるモン!」
足柄「なれないも〜ん」
一発は足柄へ、一発は清霜へ拳骨が投下された。
・・・・
清霜「色々あったけど……皆と過ごせて楽しかったわ」
霞「ロクな思い出が無かったけどね! 何度死にかけたことか……でも、悪くはなかったわ」
大淀「明日になったら皆、別々の艦隊なんですね。少し、寂しく思います」
足柄「なぁに、生きてさえいればまた会えるわよ! 悲しむだけ損ってもんだわ。それよりも、皆の新しい門出を祝いましょう」 隣に居る清霜・大淀の肩を組む
清霜「これで終わりじゃなく、ここからが私たちヴェアヴォルフのスタート……でしょ?」
大淀「そうですね。また、いつかどこかで会えるといいですね」
三人の、さぁ早く加われと言わんばかりの目線を察し、嫌がりながらも円陣に加わる霞。
霞「会えたらいいじゃなくて、また会うのよ」
霞「いいわね! また、こうして、誰一人欠けることなく、バカみたいな集まりがやれる、その日まで、生き抜くのよッ!」
430 :
【27/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/23(月) 21:05:39.82 ID:gUE3VSVL0
足柄(……最近は戦場に出てなかったから忘れていたけれど。そうよね、私たち、命を懸けて戦ってるのよね)
足柄(霞は過去のことを話したがらないけど、きっと多くの死別を経験してきたのよね……だから昨日の最後にあんな事を言ったんでしょう)
足柄(これからどれだけ先になるか分からないけど。また、皆と会えるその日まで……! 負けられないわッ)
提督「足柄よ、何ボーッとしてる。ついて来い」
執務室地下のモニタールームを案内する提督。
足柄「は、はい。……ところで、鎮守府にこんなものを建てて平気なのかしら?」
部屋に置いてある無数のモニターを不思議そうに眺める足柄。
提督「襲撃があった際の備え……という名分で使われていなかった地下室をより軍事的価値のあるものに改造しただけなので問題ない」
足柄「ハァ……ソウデスカ」
足柄「そういえば……前言っていたワープがどうとかだけど……。本当にそんなこと出来るの?」
提督「疑り深い奴だな。……これを持て」 四角錐状の物体を手渡す
足柄「このピラミッド形の鉄は……?」
提督「鉄ではない。いわゆる“ネジ”などから生成したちょいとワケありの物質だ」
リモコンを取り出し、部屋の最奥にあるシャッターを開ける提督。
提督「案内しよう。実験室だ」
足柄(妙な装置がずらずらと……。机の上には資料が並んでるみたいだけど、どれもパッと見ではチンプンカンプンね)
提督「ええと……この机の右端に置いたのが始点で左端に置いたのが終点だ。この装置の上にお前が手に持っているそれを置いてくれ」
机の上に顕微鏡に似た謎の装置を置く提督。
足柄「ええ。分かったわ……!?」
提督がスイッチを押すと、物体を置いた台座が高速で回転し始める。
しばらくすると物体が台座の中にめり込んでいく。
足柄「一体何が起きてるの?」
提督「詳しい原理は長くなるので省くが、正三角錐や正四角錐の物体を螺旋状に回転させるとワープする」
と言い終えた直後、始点にあったはずの物体は終点に移動していた。
足柄「た、確かにワープしたけれど……。脳の理解が追いついてないわ……」
提督「まあそこに座れ。ピラミッドパワーというのを知っているか?」
足柄を椅子に座らせ、パチンと指を鳴らす提督。天井からホワイトボードが降りてくる。
足柄「え? えぇ。なんか、ピラミッドの中に物を置いておくと腐りにくいとかいう……」
提督「残念それはレナード効果と言って真のピラミッドパワーとは関係ないのだ」
提督「最も、老化を防いだり逆に加速させたりする方法もあるのだがな。
自然界に存在する黄金長方形。この黄金長方形のエネルギーを利用して真円の球体を射出することにより時間への干渉……果ては次元さえも超越することが可能らしい。
今となっては眉唾もののロストテクノロジーだがな」ブツブツ
提督「……と、それは今回の話にはあまり関係ないのだ。
ピラミッドの石材の石質によって生じるレナード効果なんて些細なものではない。
ピラミッドパワーにはもっと大きな秘密があるのだ。そもそもピラミッドとは古代エジプトの……」
ホワイトボード上に水性ペンでひたすらに自説を書き進めていく提督。足柄は彼の言葉を理解することを諦め、瞼をゆっくりと閉じ、このうららかな昼下がりを優雅にシエスタして過ごそうと決意した。
・・・・
提督「起きたまえ!」 ピシャリとペンを足柄の額に投げつける。
足柄「ふぇっ!?」
提督「いいか。ワープというのはすなわち……」
足柄「あの! 私が聞きたいのはそういうことではなく! なぜ貴方が突然ワープだなんて突拍子もないことを言い出したのかが気になるのですが!」
提督「ふむ……そうか」
提督「では、原理や論拠まで述べていると時間が掛かり過ぎるので、概要だけ説明しよう」
431 :
【28/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/23(月) 21:10:20.89 ID:gUE3VSVL0
ホワイトボードにあったピラミッドに関する説明を全て消し、何やら過剰書きを始めた提督。
地球や艦娘のイラスト付きで書き並べていく。
提督「こういうことになるな」
・地球の内部には空間がある(◇内部世界)
−地球の空洞内部には我々が過ごす世界とは異なる世界が広がっている
−内部世界は“上の世界”と“下の世界”の2つが存在
◇“上の世界”:『シャンバラ』『アガルタ』『高天原』
◇“下の世界”:『ニヴルヘイム』『ドゥアト』『根の国』 …などと呼ばれる
−この地球表面上に暮らす生き物は下記の例外を除いて決して内部世界に行く事は出来ない(逆も然り)
・2000年周期で内部世界への出入口が開かれる
−その影響で地上に現れたのが深海棲艦
−2000年前も深海棲艦が地上を襲ったが、当時の艦娘がこれを撃退
・深海棲艦を滅ぼすには、“下”の内部世界の出入口である『タルタロスの門』を封印しなければならない
→封印を達成すれば以後2000数年間新たな深海棲艦は出現しなくなる
・『タルタロスの門』は南極の果ての島『メガラニカ』に存在
足柄「!? ? ? ……つまり?」
提督「まずな。深海棲艦と艦娘の戦いは今から2000年前、それと4000年前、6000年前……と2000年周期で起こっている。
地球の内側は異世界に繋がっているのだ。周期が近づくとこの内部世界への出入口が俺たちが住む地表世界に出現する」
提督「北極の島『ウルティマ・トゥーレ』には“上の世界”への出入口である『エーリュシオン』が存在している。そして、“下の世界”への出入口『タルタロスの門』がある南極の最果ての島『メガラニカ』……ここから深海棲艦はやってくる」
提督「“下の世界”への通路である『タルタロスの門』を封じれば地上に新たな深海棲艦が生まれることはなくなる」
提督「だから『タルタロスの門』がある『メガラニカ』へ俺たちが到達しなければならない。
が、常識的に考えて北極まで航海出来るはずがないのでワープして向かうというわけだ」
足柄(この人にとっての常識ってなんなのよ……)
足柄「ええと……つまり? とにかく、深海棲艦の根城を叩くってことよね。ワープして」
提督「そうだ。もっとも、タルタロスの門から深海棲艦の艦魂が湧いてくるだけであって、そこに深海棲艦が居るわけではないのだがな」
足柄「へぇ……。……その、“内部世界”っていうの? の、入り口が2つあるんでしょ? で、深海棲艦は“下の世界”から出てくると。
だったら、“上”はどうなってるの?」
提督「良い質問だ。“上の世界”からはその時代における最初の艦娘がやって来る。あとは妖精だな」
提督「“上”からやってきた最初の艦娘らが深海棲艦に抗う術を人間たちに伝えにやって来るのだよ」
提督「今となっては既に神話の世界の話になってしまうが、『アストライア』や『ノア』も人類に戦う術を教えた、それぞれの時代の“最初の艦娘”さ」
足柄「“ノア”って……あの『ノアの方舟』の!? 嘘でしょ!?」
提督「ああ。口伝のせいでいつの間にか人間だったということにされてしまったが、“ノア”というのは艦娘の名で、それを導いた人物……つまり当時の提督だな。そいつが今の時代に“ノア”と認識されている男だ」
提督「尤も、深海棲艦や艦娘、提督だなんてものは今の時代における呼ばれ方であって、当時は別の名称だったがな」
提督「深海棲艦の目的は、この地上の全てを支配し“上の世界”を侵攻する。それが目的だ。
一方“上の世界”は人類に艦娘を与えてこれを食い止めさせる……これが俺たちの生きる世界の摂理だ」
足柄「それ、いっそのこと深海側に着いた方が良くないかしら?」
提督「……お前は海の中で生きていけるか? という話だ。
それに、こっちが歩み寄った所で奴らにその意志はない。
深海棲艦と共存しようとして失敗した例が『アトランティス』や『ムー』だな」
提督「“上の世界”の連中が直接動けば深海棲艦を滅ぼすことは出来るのかもしれないが……そうなると戦場は俺たちがいるこの地上。
戦いのとばっちりで人類は絶滅してしまう……それゆえ“上”は動けない、ということらしい」
足柄「スケールが大きすぎてまるでイメージ沸かないわね」
提督「俺だって沸かんよ。……ま、今日の授業はここまでだな。勉強になったろう」
足柄「こんなこと私に話して平気なの?」
提督「お前のようにやたらめったら詮索してくる相手には話せる範囲で手札を明かした方が手っ取り早いと判断したから、少しだけ時間を割いてやっただけだ。それに、こんな話は他人に出来ないだろう」
・・・・
足柄(そりゃ、あんな話、誰かに話したところで正気を疑われるだろうけど……)
足柄(どこで提督はあのことを知ったの? 一体、何者なの?)
足柄(知れば知るほどに分からなくなっていく……)
432 :
【29/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/23(月) 21:12:54.64 ID:gUE3VSVL0
安全第一と書かれたヘルメットを被り、削岩機で岩盤を砕いている皐月。
皐月「ふー……ちょっと休憩」 額から流れ落ちた汗を拭う皐月
文月「皐月ぃ。その姿、結構サマになってるねぇ〜」
皐月「なってないよ! にしても……『第零艦隊』『極秘部隊』『アノーニュムス』だなんて、大層な名前のわりにやることは地味だよねー」
文月「初めての任務が土木工事だもんねぇ……潮力発電所なんて作ってどうするんだろう」
皐月「座標を算出するために大量の電力が要るって言ってたけど……いったい何のことだかさっぱりだよね」
足柄「そこ、私語は慎みなさいな! ちゃっちゃっとやる!」
黙々と作業を進める足柄。着ているオーバーオールは既に泥まみれである。
皐月「足柄さん、タフすぎますよぉ〜」
足柄「軟弱ねー。遠征部隊上がりは鍛えが足りないんじゃないかしら?」
ムッとした様子で再び地面を掘り進める皐月。
足柄「あら、なんだまだやれるじゃない」
足柄「……にしても、確かに妙よね。こういうガテン系の仕事は体力バカの戦艦二人がやるべきだと思うんだけど。
金剛と比叡はどういうわけか執務室に呼び出し食らってるのよね。何か別の仕事でも与えられてるのかしら」
足柄「ま、どうでもいい事ね。こっちはこっちでガンガン行きましょう」
・・・・
足柄「完ッ成ッ! さ、後は妖精さんに任せて……早くお風呂に入ってご飯よ!」
文月「もう動けないよぉ……」
皐月「うぅ……」
力尽きて倒れている二人をヒョイとつまみ上げて風呂に駆け込む足柄。
・・・・
文月(ふみゅぅ……お風呂に入ったらだいぶ回復したけど、……強烈な人だなぁ)
足柄「あら二人とも。ずいぶんと長風呂だったわね。夕飯作っておいたわよ! さ、食べましょ食べましょ?」
机の上に盛られているおびただしい数のカツ。キャベツ。そしてカツ。
足柄「ご飯とキャベツはおかわり自由よ? たくさん食べてね?」
・・・・
皐月「なんだかんだお腹が空いてたから案外いけるもんだけど……普段じゃこれは食べられないなぁ」
足柄「あら? ヴェアヴォルフだったらこのぐらいの量は少ない方なんだけど」
皐月「えぇ……」
足柄「食べ過ぎて体調悪くなられても困るから、無理しないでね?(いざとなったら私が食べるし)」
皐月「いやまぁ、まだ平気ですけど……」
足柄「にしても奇妙なものねぇ。二人も龍田の一件に関わってたんでしょ?」
皐月「いや、ボクたちは何もやってませんよ」
足柄「そんなことは分かってるわ。そうだとしたらここに居るのはおかしいもの。
表立っての存在を公言しているわけじゃないから地位は与えないけれど、“アノーニュムス”は第一艦隊と同等の扱いをするって提督が言ってたし……。
あなたたちがどうして提督に認められたか気になるなって思ったのよ」
皐月「って言っても……ボクらも分かんないよねぇ」 文月と顔を見合わせる
皐月「本当に、なんでか分かんないんですよねー。結果的にはちょっと司令官の役に立てたみたいだけど、ボクらが特別何かしたわけでもなく……しいて言うなら運が良かったのかなぁ?」
足柄「ふーん。やっぱ何考えてるんだか分かんないわねーあの人。あなたたちもそう思わない?」
皐月「あー、それちょっと同意ですねー。なんか企んでそうっていうか……悪い人じゃないとは思うだけどなー」
足柄「いやいや、ひょっとすると世を欺く大悪党かもしれないわよ? 私たちであの人の謎を暴いてみない?!」
文月(この艦隊、大丈夫かなぁ……。不安だよぅ)
433 :
【30/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/23(月) 21:21:09.31 ID:gUE3VSVL0
鎮守府内の休憩室。この鎮守府内にはいくつかの休憩所が設置されていて、艦娘たちは自由に利用することが出来る。
加賀との訓練を済ませた翔鶴は、一息つこうと休憩室を訪れた。
翔鶴(あら? 先客かしら)
引き戸を開けると、艦娘だろうか、長髪の女性が正座をしているようだった。
翔鶴は、そこはかとなく一人で過ごしたい気分ではあったのだが、見ず知らずの他人が傍に居てもあまり気にしない性分だったので、部屋にいた女性には構わず給湯器に手を伸ばした。
部屋に備え付けの急須に、給湯器から出る熱湯を注ぐ。
別段良質な茶葉というわけではないのだが、この休憩室で茶を飲むことが翔鶴にとってはささやかな癒やしであった。
カコン
この和室は、所詮暇を持て余した妖精が趣味で作ったものでしかない。
そもそも獣が出るような山奥でも無いのにししおどしが置いてあるあたり、あくまで“それっぽさ”を追求しただけの模倣の庭園に過ぎない。
しかし翔鶴は畳から香る藺草の匂い、部屋の外から見える枯山水の石庭、カランと鳴るししおどしの音……、その全てに風情を感じていた。
カーン
・・・・
加賀「これからは私も第一艦隊の皆さんと、決戦に向けて備えなければならないから。こうして稽古をつけることも出来なくなります。
それに、あなたたち二人はどこに出しても恥ずかしくないほど立派に成長しましたから。……私から伝えるべきことは、もうありません」
翔鶴「そんな! まだまだ先輩に教えてもらいたいことがたくさんあるのに……」
加賀「次の作戦であなた達は支援部隊だけれど。私はあなたたちの師として、手本となる道を示したいと思っています。
あなた達は私や赤城さんが前線で戦う姿から、自分にとって必要なものが何であるかを見出し、学び取ってください」
加賀「……今の私の基となる、正規空母加賀は当時敵対していた国の将兵を数多く殺しました。私だけでなく、それはあなたたちにも言えることです。
当時の価値観における正義を貫いただけのこと。私たちは人を殺し国を滅ぼすために生まれてきた兵器だったのだから」
加賀「実艦であった頃の、遥か昔の記憶があるわけじゃないけれど。私は“加賀”の名を背負って生きている。
けれど、私が今生きている理由は命を奪うためじゃない。赤城さんを、あなた達を、皆が居るこの鎮守府を守るため」
加賀「次の作戦はかつての“加賀”であった艦にとって最期の戦い。でも、私はそうはならないわ。
今の私は、人を殺すための兵器でなく、人を守るための兵器。
……私は、かつての“加賀”を超える。運命を、変えてみせる」
加賀「その為に、今の段階から最善手を打っておきたいの。どんなことが起こっても対応出来るように、自分を高めておきたいのだわ」
瑞鶴「……分かりました。あの、これっ」 加賀の手のひらの上に、黒い兎の編みぐるみを乗せる瑞鶴
加賀「何かしらこれは? 七面鳥のストラップ?」
瑞鶴「違います! そりゃ、不格好で、ちょっとブサイクだけど……」
加賀「冗談よ。兎でしょう。……これを私に?」
瑞鶴「ええ。一航戦の先輩なら、深海棲艦の敵なんて鎧袖一触! なんでしょうけど……一応、お守りです」
加賀「……良い後輩を持ったわ。ありがとう」 ポンポンと二人の頭を撫でる加賀
加賀「……そろそろ第一艦隊の会議の時間に行かなければいけないわ。二人とも鍛錬を欠かさないことね。では、次は戦場で会いましょう」
・・・・
翔鶴は、先刻の訓練後の会話を思い出していた。
あの時の加賀は、今まで自分たちに見せたことの無いような本気の表情だった。
苦悩と葛藤を乗り越えた先にあるかのような、決意に満ちた真剣な眼差しだった。
去っていく背中から感じたのは、明確な闘志だった。
自分が兵器であるという自覚はあった。敵である深海棲艦を打ち倒すことが使命であることは認識していた。
だが、加賀のように、自分は『誰かを守るための兵器』だなんて考えたことは無かった。
どうすれば先輩のようになれるだろうか。この戦いが終わったら、戦うことしか能がない自分はどうなるのだろうか。
そんなことばかり考えていた。それゆえ加賀の言葉は衝撃だった。
今の自分の居場所に居続けるためでなく、艦娘として戦果を挙げるためでもない。
大切なものを守るため……その一念で彼女は今の高みまで昇り詰めてきたのだと思った。
『大切なものを守りたい』……戦いに身を置く者なら、ほとんどの人が抱く感情だから、殊更おかしなことではない。
だが、その想いだけであそこまで強くなれるというのは並大抵のことでは無い。
出世したいだとか、強くなりたいだとか、誰かに認められたいだとか、そういった欲望の方が人間の根源的な欲望に直結しているからである。
欲望の強い者ほど高いレベルを求めるし、高いレベルに辿り着ける。
そういう意味では自分も他の艦娘に負けないぐらい貪欲だと思っていたが、先程の加賀と今の自分を比べた時、決定的な実力差を痛感したのだった。
想いの強さという点で、負けている、と。
翔鶴(いつか、一航戦の皆さんに負けないぐらい強くなる、なんて思っていましたが……。私は、あんな風になれる自信がありません)
翔鶴(でも、弱気になっていても仕方ないわ。先輩の言っていたように、この戦いで、私の進むべき道を見つけましょう……!)
434 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/03/23(月) 21:30:21.25 ID:gUE3VSVL0
本日はここまで。
日曜は友人の来訪があったので本日にずれこみました。
次回の投下を今週中に出来たら嬉しいな! 多分無理なので予告ではなく努力目標。
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~30/100)
・足柄の経験値+8(現在値16)
・翔鶴の経験値+2(現在値9)
・雪風の現在経験値:5
・金剛の現在経験値:5
・響の現在経験値:6
・皐月の現在経験値:4
----------------------------------------------------------------------
////雷巡チ級////
今回はわりと箸休め的な感じなので少し自重……出来てませんね!
突然ワープとか言い出すようなお話で申し訳ございません。
既に「これ艦これでやる必要なくね?」級のハチャメチャが押し寄せてきてますが、次元を超越したり時間を遡行したり因果律を捻じ曲げたりするレベルのことはやらないつもりなんで許してくだち。
ここまで来るとむしろ艦これを題材にこんなことをやる奴他に居ねーよって感じはしなくもないですけどね。
いやぁ〜でも血気盛んなティーンエイジャーが書けばこのぐらいは余裕でぶっ飛ばせるぐらいの超設定が……(ry
今回(=第二部)は特にイチャイチャさせる気があんまりなかったので足柄さんの出番が多いわりに特にデレ的サービス要素はなしです。
でも最終的には経験値で誰とくっつくか決まるし今回は投票とかせずそのまま数値で決めるつもりなので今んとこ足柄さんルート寄りっぽい。
先の話なんでまだ分からないとこではありますが90/100ぐらい行ったらどのルートになるかが決定かなぁって感じです。
というか……提督偏屈すぎて超めんどくさい人って感じですね。こんなん誰ともくっつかなくても良いんじゃない?(オイ
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『Phase A』【31-35/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5
よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか
>>351
付近を参照下さい
----------------------------------------------------------------------
435 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/23(月) 21:32:01.29 ID:dKTgRLUto
皐月
436 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/24(火) 12:16:11.39 ID:TJVB/29q0
響
437 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/28(土) 11:42:19.25 ID:S/Ztwk5/o
金剛
438 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/29(日) 14:19:23.24 ID:IU+c7JMM0
皐月
439 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/29(日) 14:57:18.14 ID:SLOJBDwUo
雪風
440 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/03/29(日) 23:52:03.27 ID:XRsWDmWZ0
>>435
-
>>439
より
・皐月2レス/響1レス/金剛1レス/雪風1レス
で『Phase A』が進行していきます。
////チラシ装填、再突入!////
次回の投下を今週中〜とか言ってたけどレスがつかなきゃ書けないのでしょうがない。
先読み・逆張りしてストック書いとけって? 残念ながらそこまで自由に使える時間があるわけじゃないのでー……。
なんだかんだ毎日このSSのことを考えてますけどね。これからどうやって展開させていこうか、このキャラは何を考えてどういう振る舞いをするだろうか……とか。
習慣になると案外楽しいもんで。毎日考えてたところでそれが作品として活きるか・作品のクオリティアップに繋がるか・投下スピードが上がるかは別問題ですけど。
レスの食いつきが悪い時は案外不安になりますねー。
『やっぱりちょっと突飛すぎたかーorやっぱりちょっと無難すぎたかー』だったり、『あぁーここのここはこうした方が後の展開が読んでる側も想像しやすいなー』とか、『ここの展開とかここの感情描写安っぽすぎるというか薄ら寒かったかなーノれると思ったけど痛いかー』、とかとかとかとか!
でもね、私は知っている! その不安のほとんどが杞憂であることを!
自分を中心に世界が回っているわけじゃないんで他者の動きに波があるのは当然なわけで。
そもそも見てて辛いなーと思われたら目に見えて勢いが衰えていくし、それに伴って自然と自分のモチベも下がっていくもんですよ案外。
滅ぶものは滅ぶべくして滅ぶのであってそれは自然の摂理であって逆説的に言うと今も存在しているということは存在意義があるから存在しているということであってー。
何を言っているかわからねーが的な感じのお話になってますが、そう! 滅ぶべきものは滅ぶべくして滅ぶ!
たとえそれが私が毎日楽しくプレイしている艦隊これくしょんというゲーム、ひいてはその艦これに類するコンテンツであっても。
艦これは2013年4月23日にサービスを開始したそうですね。今年の4月23日で2周年を迎え、3年目に突入すると。
世の中には『3』にまつわるジンクスが色々ありまして。まあジンクスですけど。ジンクスですけれども!
さりとて艦これというコンテンツにとってはここ一年は勝負どころでしょうね。アニメ(川内と那珂ちゃんは良かった)然りアーケード然り携帯機然り。
これまでのような快進撃とはいかんでしょう。
ぶっちゃけ私にとっては商業的部分なんてどうでもいいんですけれども。
ゲームは好きだしキャラも好きだし、二次創作とかも結構好きだけど、悪いけどそれ以外の部分に関しては知ったこっちゃないです。所詮1ユーザーだし。
と不遜な発言をしたところでフォローしておくと、艦これ及びその胴元である角川やDMMに対しては感謝していますけどね。そりゃあもちろん。
えと、何の話をしてたんだか。そうそう自然淘汰ってのはあるもんで。生まれたからには滅びがあるわけでしてハイ。
まあでもどうせいずれどこかでお別れしなきゃならないなら良い感じでありたいよね何事も的な微妙に締まらない締めくくりをして私はチラシをゴミ箱に捨てた。
441 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/04/07(火) 20:49:52.40 ID:0bMyPPYe0
次回の投下は明日……は無理そうなので明後日午後21時頃です。
年度末のしんどいシーズンは抜けたので、もうちょっとペース上げられそうなんですけどうーむ。
まあマイペースにやっていこうと思います。
変化のある環境じゃないので四月病は患わないで済んでますが、一足先に五月病にかかりそうです。びえー
あとあんまり余計なことは言うべきじゃないですね。後悔するならハナから言わんでおれという話なんですがまあ人間なんで……と言い訳しつつも反省。
442 :
【31/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/09(木) 21:53:23.80 ID:NczNGcm00
皐月(司令官に案内されて来たけど……執務室の下にこんな場所が建てられていたなんて……)
皐月が今立っている場所は鎮守府の地下深くに存在する洞窟である。この洞窟は海と繋がっていて、満潮時には洞窟一帯は水没してしまう。
執務室の地下施設の更に下層にあるこの場所は、金剛・比叡らの手によって大規模な実験場として改造されたのであった。
龍田「あらぁ〜? 久しぶりねぇ」
皐月「え゛? なんで龍田さんが……?」
天龍「表向きには処分された……ってことになってるんだっけか。おっと、オレの名は天龍。よろしくな」 皐月の肩をポンと叩く
雷「準備出来たわー」 遠くから声がする
龍田「じゃ、ついてきてもらえるかしら〜?」
龍田に言われるがままついていく皐月。青白く光る奇妙な装置の台座の上に立たされると、装置から拘束具が出現し、皐月の身体を固定したまま台座は高速で滑走、そのまま皐月を海上へと吹き飛ばしてしまう。
皐月「!? え、ちょ……おわッ!」 ガシャコン!
洞窟の方から飛んできた艤装を装着し、海上を滑る皐月。
皐月「????? ……なんなんだこれ? 前にアニメで見たや……うおおお!?」
足元の渦潮に足を取られてしまい、必死で抜けだそうとする皐月。
皐月「クッ……なんだってこんな所に渦潮があるんだよぉ!」
逃げようにも完全に渦潮に嵌ってしまっているため苦戦を強いられている皐月。
皐月「え? 何これ? ……向こうにも渦潮が? あっちにも……って、全部こっちに迫ってきてるぞぉぉ!?」
複数の渦潮が重なり合い、非常に大きな一つの渦となる。瞬く間に皐月はその中心に呑まれていった。
・・・・
医務室。皐月の横たわるベッドの上に座る提督。何かの設計図のようなものが描かれた厚紙を眺めながらうんうんと唸っている提督。
提督「……やはり渦潮を利用したワープは可能なのだな。だが、生身では安全性に難がある……か。どうにも猫並みの三半規管が無いとゲロ酔いしてしまうようだ」ブツブツ
皐月「し、司令官? 一体何がどうなってるの……?」
提督「目が覚めたか。すまないな、どうにも今回の『エーギル計画』は失敗だったようだ。天龍、やはり『プロビデンス』が必要なようだ。素材の調達を急いでくれ」
黄緑色の縁に、明るい水色の内装。彼には似つかわしくないポップな色合いの携帯電話で天龍と連絡を取る提督(使う人が使えばオシャレなのかもしれないが、この提督が持っていては奇抜以外の言葉は出てこないと皐月は思った)。
提督「おや、奴らから説明を受けてなかったか? 地下で会っただろう」
皐月「何にも説明されてないって! そもそも何でたつ……」
龍田、と言いかけた皐月の頭と顎を両手で挟み、強引に口を塞ぐ。
提督「一応その名前は執務室の地下以外で口にしてはならない。……そうだな、説明すると長くなるが、“あれ”が俺なりの処分だ」
提督「任は解いたし、立場上は一般人と変わらんよ。……が、それは立場上の話。言い方は悪いが、私兵という表現が最適になるか」
皐月(つまり……表向きには龍田さん達を処分したけれど、実際は地下施設内で自分の管理下においている……ということか)
皐月(確かに、天龍さん達を蘇らせるのが龍田さんの目的であって、提督はそれを達成してみせた……。龍田さん達が地下で提督の為に働いているのも、経緯から考えればおかしくはないことなのかもしれないな)
提督「今回お前に協力してもらったのは、“アノーニュムス”の、最初にして最後の作戦遂行の為の実験だ。実験の目的は既に足柄や金剛には話してあるが……念のためここで話すのはよしておこう」
提督「……この作戦が終われば、恐らく、人と艦娘の在り方さえも変えてしまうことになるだろう。それは果たして正しいことなのだろうか……。
皐月。もし深海棲艦がこの世から居なくなったら、これからお前はどうしたい? 勿論、そうなれば最終的には解体されて艦娘の頃の記憶は無くなるだろうが……」
皐月「うーん。突然そんなこと言われても困る、っていうか……。ボクは、とりあえず文月と居れればいいかな。後は……もっと色んな人の話を聞きたいかな。
ほら、ボク、ずっと訓練生だったから。まだまだ艦娘がどういうもんか分かってない所あるし……他の活躍してる艦娘たちが、どうやって過ごしてきたか興味あるんだよね」
皐月「戦いが終わったら今第一線で活躍してる人らも皆ヒマになるだろうなーって」
提督「……だろうな。……戦いが終わらない方が、殆どの艦娘にとっては喜ばしいことなのかもしれん」
皐月「ボクはボクでわりと気にしないけど……否定は出来ないね」
皐月「ただ、やっぱり、誰かが終わらせなきゃいけないものなんじゃない? 艦娘だってこの戦いを終わらせるために生まれたわけだし」
皐月「司令官がそれを出来る、というのであれば、やるべきだと思うよ。……何より、ボクがこの戦いを終えることに直接貢献出来た、なんて誇らしいからね!」
提督「……そうか。ま、そうだろうな。そうすべき、か」
提督(ああ、そうすべきだ。だが、不確定要素ばかりで先が見えないのがどうも気がかりだ……)
443 :
【32/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/09(木) 21:54:57.19 ID:NczNGcm00
鹿屋基地鎮守府内の執務室前(鹿屋基地は厳密には“基地”なので鎮守府ではないが、艦娘が在籍していて艦隊司令部のある大規模施設のことを“鎮守府”と呼ぶ通例がある)。
提督と金剛、比叡らは鹿屋基地の鎮守府を取り仕切る不破提督のもとを訪れていた。
提督「さて、話が着いて一段落だな。比叡の戻りを待つぞ。……どうした金剛?」
かつて鹿屋基地に在籍していた比叡は、提督の指示により、MI作戦の暗号が既に敵深海棲艦に流出していることを旧知の艦娘たちに伝えに行っていた。
その間に提督らは不破提督と会談し、今後自陣営に有利な展開になるように事を進めていたのであった。
金剛「あの提督……本当にワタシ達の言うとおりに動いてくれますかネー? これ、裏切られたらワタシ達がかなり不利になる気がしマース」
提督「そうだな。本来であればここ鹿屋基地の艦隊も含まれる呉鎮守府を中心とする第一次攻略大隊として出撃する手筈であり……。
しかる後に我々第二次攻略大隊が、第一次大隊が切り開いた道を進み敵本拠へ向かう。しかし、さっきも話したように、それは絶対に回避せねばならんのだ」
提督「第二大隊によって制空権を確保した状態で、第一大隊の戦艦部隊が敵を討つ。これが本作戦の概要だが……。
MI作戦の情報が全て深海棲艦に筒抜けなのは自明……どいつもこいつも聞く耳を持たないなら、いっそこちらはこちらで好きに動くしかあるまい」
金剛「敵の立場になって考えてみれば、制空権喪失または互角の状態で戦艦と真っ向から殴りあうのは避けたいハズ……。
となれば優先的に潰したいのは空母部隊に特化したワタシたち佐世保鎮守府の第二次MI攻略大隊になるでしょうネー」
提督「ああ、間違いなく敵は俺たちを先に潰そうとするだろう。だが俺たちはその上を行く」
提督「第一次大隊が出撃した後、敵深海棲艦はガラ空きの呉の本陣を強襲するだろう。
そうすれば第一大隊はUターンせざるを得なくなる。本丸を落とされてはどうにもならんからな」
提督「……作戦通りの流れであれば、先鋒隊と合流を果たせなかった我々第二大隊は棲地MIにて海の藻屑となるだろう」
金剛「それを逆手に取って佐世保第二大隊と鹿屋小隊は呉鎮守府付近で待機。敵の奇襲部隊を討ち果たしてからMIへ向かう……。
空母部隊だけでは火力に欠けますし、やっぱり鹿屋小隊には何としても動いてもらわないと、と思うのデスガ。
敵奇襲部隊を叩こうとしたつもりが、味方空母が中破以上の被害を受けて返り討ちにあった、なんて事になったらブラックジョークにもならないデース」
提督「(意外と冷静な分析力があるな。ただうるさいだけの奴と思っていたが……)いや、ここの連中は俺の言う通りに動くさ。間違いなく」
金剛「でも、なんだか上官相手とは思えない訝しげな態度でしたヨネー……?」
提督「人に信用されないのは慣れている。慣れているからこそ、信用していようがいまいが人を動かす方法も知っているということだ」
金剛「(ネクラだからこその交渉術、感心デース! ……って言おうとしたけどこれ以上心象悪くしたくないからやめときマス)」
・・・・
提督「なあ金剛。俺を恨んでいるか? 第一艦隊から外した事を」
金剛「ハイ」
提督「即答か……。ま、恨まれたところで気にはしないがな」
金剛「嘘デスネ。人に嫌われて平気な人なんて居まセーン。ワタシ、今はテートクのこと嫌いデスけど……。
今でもテートクに嫌いと言われたことは忘れられませんし、精神科に連行されたことは今でも根に持ってマース」
提督「事実嫌いなのだから仕方なかろう。俺は媚を売るような奴は嫌いだ。
それと、前にお前が俺に送りつけてきた手紙を読んで精神に異常を来たしていると判断したから精神科に連れて行ったのだ。根に持たれようが知ったことか」
提督「と、そんな話はどうでもいい。俺は、お前が第一艦隊から外された際もっと荒れると思っていたのだが……。
意外にも動じなかった事に驚いている。お前は誰がどう見ても野心家だし、強欲だし、自分が中心でなければ気が済まない性質の人間だろう」
金剛「言うに事欠いてとんでもない事を本人の前で直接言って来ますネ……。本音で言ってるだけに余計にムカつきますガ……。
鉄面皮のテートクのために論理的かつ理性的に接してあげマショウ」
金剛「ワタシは確かに、ナンバーワンが好きデス。自分が一番で居られるということは人間にとって最も幸せな事だと思いマス。
結果を出せば評価される。自分の為だけに行動して、自分だけが利益を得る。頑張れば頑張れるほど報われる。かつてのここの鎮守府のSystemはワタシの肌に合っていました」
金剛「デスガ……今は貴方がテートクになってそのSystemは瓦解しました。自分の為に動いても全体で利益を出さなければなりまセン。
それはもちろん集団のあり方としては当然デス……。でも、ワタシは“ワタシが”No.1でありたいのであって、他の事には興味無いデース」
金剛「そりゃあ、旗艦を外されたどころか第一艦隊まで外され、常設の艦隊にさえ入れてもらえないとは思ってマセンでしたけど……。
どうせLevelの低い艦隊に配属された所でMotivationが上がらなかったでしょうし。だったらこうしてテートクの懐刀として動いていた方が楽しいデース」
と言い終えた後、提督そのものは嫌いですけど、と付け足す金剛。
提督「ふむ……楽しいとはどういうことだ?」
金剛「これからどんなChaosな展開が訪れるか……結構興味ありマスよ。フフフ」
金剛「深海棲艦を滅ぼす……。でも、それは結果的には艦娘を滅ぼすことにも繋がりますよネ? ……テートクがどんな最期を迎えるか今から楽しみデース。
おっと、ワタシはテートクが独りぼっちになるまでは見届けてあげるつもりデスから、疑ったりしないで下サイネ?」
提督「お前、人格は最低だが、味方としては一番心強い部類の人間かもしれんな」
金剛「テートクには言われたく無いネー♪」
提督「やれやれ……」
444 :
【33/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/09(木) 21:55:26.46 ID:NczNGcm00
執務室に置かれた円卓を囲む提督と二名の艦娘。
赤城「あの、会議なら会議室で行った方が良いかと思うのですが……」
提督「確かに、会議の場としては狭いが……。議論というより、俺が一方的に話すだけになるのでこのような形を取らせてもらった(ここなら盗聴も難しいしな)」
響「内容は例の作戦について、なのかな? 第一艦隊旗艦の赤城と、私。第三艦隊旗艦の霧島が見えないは気になるが……」
提督「霧島には別に話をするつもりなんでな。ひとまず……各艦隊の状況を訊きたい。円滑に事が運びそうな人選をしたつもりではあるが……隊としての練度の程度を知っておきたい」
響「第二艦隊は概ね問題ない。完全に纏まるまでもう少しかかりそうだが、作戦決行の日までには滞りなく動けるようになるだろう」
赤城「第一艦隊も問題ありません。今この瞬間に作戦を開始しても、提督の期待に沿えるように動けるでしょう」
提督(新第一艦隊の訓練の量は、これまでの第一艦隊の倍以上だというのは知っている。だが、短期間でここまで仕立て上げるのは並大抵のことではあるまい)
提督「そうか。それはご苦労。そうそう、暗号の件も上手くやれてるか?」
赤城「ええ……でも、どうして従来の暗号とは別の暗号を使うようにしたのでしょうか?」
提督「結論から言うと、既に我々のMI作戦攻略の暗号は全て深海棲艦に筒抜けになってしまっている。ALの動きも、MI第一大隊・第二大隊の動きも、全てが敵に予測されている。
その裏を掻く為に俺達は新しい暗号を使う必要がある。お分かりか?」
赤城「暗号……? そう、ですか……」
提督「赤城、顔が青いぞ。それに、心なしか震えているように見えるが……」
赤城「いえ、この程度……問題ありません!」
提督「……やれやれ。お前、毎晩悪夢にうなされているのだろう。加賀から聞いているぞ」
赤城「加賀さんが……? そうですか……やはり、隠せていませんでしたか」
提督「練度が上がれば上がるほど、精神が本来の実艦であった頃に近づいていくというのはどうにも本当らしいな」
提督「加賀から聞いているのはそれだけじゃない。悪夢による極度の不眠。それによる体調不良を補う為の過度の食事。
そして不安とプレッシャーからくる嘔吐……。恐怖を押し殺し、身を削っててまで強がるな」
赤城「はい。ですが……乗り越えなくては……」
赤城「遥か昔……先の戦いでの私は、私たちは、敵を侮っていました。慢心していたのです。私がもっとしっかりしていれば……皆を救えたのに……」
ゴホン、と咳払いして赤城の言葉を強引に遮る提督。
提督「……安っぽいヒロイズムは捨てろ。お前一人で抱え込もうとするな。
戦場で誰かが沈もうとそれはお前の責任じゃなく、自分の力量を見誤った当人と、そいつに指示を出しちまった大元の奴の責任だ」
提督「なあ赤城よ。俺が信じられないか? 俺は人間的な部分での魅力はともかく、戦略と智謀には絶対の自信がある。それはこれまでの戦いでも十二分に示してきたつもりだ。
お前は俺の言うとおりに動いていれば勝つ。それだけだ、何の心配も要らん。俺が信じられないのであれば、連合艦隊の連中を信じてみろ」
提督「いいか? 不退転の覚悟で命を賭けて戦うことを美徳と思っているなら、そんな考えは改めろ。
あるのは完全なる勝利のみ。お前は少し臆病になり過ぎている。思う通りに動いてみせろ」
赤城「慢心……」
ぽつりと、震え声で呟く。普段の毅然とした態度の赤城とは打って変わって、まるで涙をこらえている子供の姿のようだった。
提督「慢心? 上等だろう。お前のその慢心の責任は全て俺が負ってみせるとも」
・・・・
作戦会議が終わり、部屋を出て行く赤城と、なおも居残る響。そして提督。
提督「どうした? 戻らないのか?」
響「あぁ。……いやなに、司令官が甘いのは、私や雪風相手だけだと思っていたのだが。意外だったよ」
提督「(人をロリコンみたいに言うな……)俺は有能な人間に対しては寛容でいるつもりだが。有能で、かつ味方であればなおよい」
響「駒は多い方が良いからね。司令官のそういうドライな思考は少し憧れるところがあるよ」
響(……もっとも、誰もが誰もそういう風に考えられるわけじゃない)
提督「その通り。有能な人間の真の才能を引き出すことは上官として至高の愉悦だ。こればかりは役得だな」
響(司令官の他人に対する考え方は実にシンプルだが……他人も同じであるとは限らない)
響(人は……精神的に最も追い詰められている時に他者からの優しさに触れると、抗いようもない想いを募らせてしまうものだ。
土砂降りの雨の日に傘を貸してくれる人が居たら、その人の事を聖人だと錯覚しても無理のないことだと思う)
響(だがそれは所詮錯覚……。錯覚ではあるのだが……)
響(赤城……彼女はいずれ、私の敵になるかもしれないな)
445 :
【34/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/09(木) 21:57:31.40 ID:NczNGcm00
執務室地下施設内のとある部屋。雪風と二人で食事を摂る提督。
二人が座る机に隣接する壁、その壁に開いた小さな穴を眺めている。
この穴は食堂と繋がっていて、時間になると妖精たちが食事を運んできてくれる。
サラダボウルから、コーンをフォークで突き刺して食べている雪風。さっきからコーンしか食べていない。
妖精たちが机の上にデミグラスソースオムライスの乗った皿を置く。
雪風「しれえ! そういえば、司令のお兄さんとお話して知ったんですけど……」
提督(龍田の一件で、天龍らを復活させるためには、俺の兄の力を借りる必要があった。雪風の力が無ければあの時点で兄さんと再会することは困難だったろう)
提督(俺の兄はコンピュータ上に存在する人工知能であり、彼を起動するためには様々な工程が立ち塞がっていた。俺のハード部分での技術に、雪風のソフト面での知識が加わり作業効率が上がったのだ)
提督(しかし雪風があそこまで使えるとは思わなんだ。一体どこで学んだのかは知らんが、いわゆるオタク気質なのかもしれんな……)
雪風「司令のお兄さんって、23番目に開発された人工知能だから“ニーサン”なんですね! 知りませんでした! 確かに人工知能と兄弟だなんてヘンだと思いましたけど……」
提督「それ嘘な」
雪風「ええっ!? 最初の人工知能は数百年前に『フリーメイソンリー』という秘密結社の研究機関が発明したって聞きましたよ。それから、ひいお爺ちゃんが『エシュロン』だって話も……」
提督「兄さんはお前のように真剣に話を聞いてくれる奴に出鱈目吹き込むのが好きなんだ。俺もガキの頃はよくやられた」
雪風「それじゃあ、2000年前に当時の深海棲艦と戦った人の遺伝子情報を基に生まれた人工知能ってのも嘘……?」
提督「いや、それは本当だ。人格の母体となっているのはそれだが、知識データベースには数千人分の知恵や情報が詰まっている。そうでなければ天龍らを蘇らせる方法や、深海棲艦が何故生まれるかなど知りようがない。話の中の嘘と真実が半々なのが特徴なのだ」
雪風(気まぐれだ……)
雪風「じゃあ、司令とお兄さんが兄弟なのは、どうしてなんですか?」
提督「むぅ……話すと長くなるからな。やめておこう。ただ、俺にとっては実の兄のようなものだ。尊敬しているし羨ましい」
雪風「羨ましい?」
提督「俺の知らないことを知っているのがな。俺が兄さんに教えてもらったことはあっても、俺が兄さんに何かを教えたことは無いからな」
雪風「ほぇ〜……でも、司令にも司令しか知らないことがたくさんあるんじゃないですか? 私たちや艦隊のことはほとんど知らなかったみたいですし」
提督「ん、まぁ、それに関しては兄さんに話すような話題でもないからな。というか、俺だってお前らのことはほとんど知らんぞ」
提督「俺が知っているのはお前らが有能かそうでないか、何が秀でていて何が劣っているか……。つまるところ俺にとって得であるか否かという点のみだ。それ以外に関しては知ったところで意味が無いしな」
・・・・
雪風「お兄さんよりしれえの方が人工知能に近い気がします」
提督「フッ、一理ある。俺はどうにもまどろっこしいのが嫌いな性分でな。要求がシンプルな奴は扱いやすくて助かる」
雪風「あーそれちょっと分かりますね。私、初対面の人と話すと緊張しちゃって……相手のことが分かると平気なんですけど」
提督「そういえば、あがり症だとかヴェールヌイが言ってたか。今の様子をみるに、さほど重度でもないようだが……」
雪風「最初はしれえの事怖い人かなと思ってたんですけど、意外とそんなこと無いんだなって分かってからは、緊張しなくなりましたね」
提督「他人からどう見えるかが気になるのか?」
雪風「はい。相手の前で良いカッコしたいとかいうわけじゃないんですけど……嫌われたらどうしようって。しれえは人から嫌われても平気なんですか?」
提督「そりゃそうだ。そんなこといちいち気にしてられんだろう。人に嫌われたら嫌い返してやればいいだろうが」
雪風「うーん……それは分かんないですね〜」 デザートのさくらんぼを口に含む
雪風「ひほ(人)に迷惑をかけるのは嫌ですし、かけられるのも嫌です」
ぷいとさくらんぼの種と茎を皿の上に吐き出す雪風。
提督(舌でさくらんぼの茎を結んだのか……? 器用だな)
提督「見かけによらず気にしいな奴だな。迷惑を誰にもかけず生きることなんて出来やしないのだ」
雪風「んぅー」 納得していないような呻き声を上げる
提督「そんなに気になるのであれば、かけた迷惑の分だけ恩で報いれば何も問題ないだろう」
雪風「なるほど……それはそうかもしれません」
雪風「ちょっとだけ司令のことが分かった気がします!」
提督「ちょっとだけか」
雪風「ちょっとだけです」
446 :
【35/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/09(木) 21:58:07.58 ID:NczNGcm00
ボクは皐月。ボクたちアノーニュムスは、提督から与えられた極秘任務を達成すべく、『プロビデンス』という名前の船に乗って海上を進んでいる。進んでいるんだけど……。
提督「ビッド。チップは5枚」
皐月「む、いきなり上限とは攻めるねぇ……じゃなくて! なんでボクらはポーカーなんてやってるんだよ!」
提督「ヒマだからだろうが。それに、不安だと言ってたのはお前の方だろう。お前の恐怖心を紛らわすためでもある」
『プロビデンス』は船体がピラミッドを逆さにしたような形状で、底面以外は海中に沈んでいる。
船窓から見える景色は魚の泳いでいる姿だけだし、こんな状態じゃ不安にならない方がおかしいんだよ!
敵深海棲艦に見つかったら、一体どうするつもりなんだ!? 一応、見張りとして文月が船の上に立っているけれど……。
比叡「気合!! 入れて!! 漕ぎます!!」
金剛「ファアアアアアアアアアアアアアアック!!!!!!!」
下の階からは叫び声が聞こえるし……。なんでも、この船にはまともな推進力がないらしく、金剛さんや比叡さん、足柄さんが発電機のペダルを漕ぐことで進むんだとか……。
提督「何を長考している? コール(継続)か? レイズ(上乗せ)か? それともドロップ(棄権)か? 答えを聞こう」
皐月「(A4枚のフォーカード!? これは勝てるな)レイズ、5枚」
提督「ふむ。なかなか自信があるようだな……」
っていうか、どうして司令官までこの船に乗り込んでいるんだ?
いや、なんとなく予想は着くけれど、ボクたちが出発している間にMI作戦は開始してしまうわけで、そうなったら誰が艦隊の指揮を執るんだ?
司令官のことだから、何の考えもなしにやっているわけじゃないのは分かるけど……。
提督「悩み事か?」
皐月「司令官は、一体何を考えているの?」
提督「説明したろうに。全ては策の通りだ」
皐月「でも……この時期に鎮守府を離れるなんて正気の沙汰じゃないよ。何も今こんなことしなくても……艦隊の指揮を取れるのは司令官だけなんだよ!?」
提督「……分かった。では、このゲームに勝ったら教えてやろう……さて、俺の捨てるカードは五枚。さ、カードをよこせ。ドローだ」
皐月「全部!? 全部取り替えるってこと!?」
提督「そうだが」 皐月から五枚のカードを受け取る提督
皐月「(どういうことだ……?)ボクは、ドローはしない」
提督「そうか。じゃあビッド五枚。さらに上乗せだ!」
皐月(互いのコインの枚数は30枚。……ここで負けたら15枚のコインを失うんだぞ!? なのに司令官はなぜカードをめくろうともしない!? もういい、レイズ5枚だ! 勝ちに行くぞ)
皐月「レ……(いや、イカサマか……? この自信、何かあるはずだ……)」
皐月(表情や仕草からは何も伝わって来ない……。仮面の裏で一体何を考えてるんだ……? だが……ここでは退けない……! この手札で負けるハズが無いんだッ! そうだ、ボクが配ったカードだぞ? 何か仕組めるはずがない!)
皐月「レイズ五枚。ボクはハッタリには乗らない!」
提督「よかろう。では、互いの手の内を明かそうか」
皐月 ♥A ♣A ♦A ♠A ♥J / 提督 ♣4 ♣5 ♣6 ♣7 ♣8
提督「Aのフォーカードと♣の4から始まるストレート・フラッシュ……。ストレート・フラッシュ!? そ、そうか……俺の勝ちか」
提督「さ、さて、こちらのコインが50枚。お前のコインは10枚。だが、お互いのコインが無くなるまでゲームは終わらない……次のラウンドに移行しようか」
・・・・
その後も3ラウンド続いたが、結果は散々なもので、ボクは一度も勝つことが出来なかった。
司令官が何かイカサマをしているのかとも疑ったのだけど、全く分からないままジリ貧で負かされてしまった。
提督「……いやな、わざと負けるつもりだったのだ。お前の度胸を試そうと、イカサマをしていると疑わせるようなことをして煽ってみたのだが……運だけで勝ってしまったのだ」
提督「断じてイカサマではない。お前の勝負強さを確認したかったのだ。ストレート・フラッシュは計算外だったのだ」
提督「……なぁ、頼むからその卑怯者を見るような目はやめてくれ、心外だ」
ボクが喋らなくなると、司令官は珍しく少し困っている。ちょっと面白い。
でもやっぱり負けたのは腑に落ちない。
提督「分かった、これからの策の全貌を明らかにしてやろう。本来は勝ったら話してやる約束だったが……話してやると言うのだ。これで良いだろう?」
負けたけど、なんか勝った気になれたので、許してあげることにした。
447 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/09(木) 22:08:20.44 ID:NczNGcm00
本日はここまでです。
----------------------------------------------------------------------
獲得経験値(~35/100)
・皐月の経験値+2(現在値6)
・響の経験値+1(現在値7)
・金剛の経験値+1(現在値5)
・雪風の経験値+1(現在値6)
・翔鶴の現在経験値:9
・足柄の現在経験値:16
----------------------------------------------------------------------
皐月視点になったのに特に深い意味はないです。
一応、なんだかんだ今回は一レス完結を意識して書いてるのでこういうこともあるってことで。
ただ今回の投下分はそれぞれの話にまとまり無さ過ぎてちょいとカオス気味ですね。
わざと聞いたことがあるような無いような妙な固有名詞を出してみたりするのはいわゆる演出みたいなものなので、あまり重大な意味は持ってません。
----------------------------------------------------------------------
『Phase B』【36-40/100】
レスのコンマ値で登場する艦娘を決定します。
00〜17:雪風
18〜33:翔鶴
34〜51:金剛
52〜68:響
69〜80:足柄
81〜99:皐月
>>+1-5
よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか
>>351
付近を参照下さい。
----------------------------------------------------------------------
448 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/09(木) 23:33:21.47 ID:MgwS61700
乙です
449 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/11(土) 04:22:04.57 ID:W8bGrCGjo
乙
450 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/11(土) 17:40:45.40 ID:u8Ga5PPTo
乙、敬意を表したい
451 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/15(水) 11:09:00.27 ID:st7kBPUUO
ぽにゅ
452 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/15(水) 17:50:32.37 ID:75/l4ty0o
ぬぽっ
453 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/04/15(水) 23:58:30.21 ID:fryfm7gn0
>>448
-
>>452
より
・金剛3レス/響1レス/翔鶴1レス
で『Phase B』が進行していきます。
////チラシ////
4月の末にイベントがあるようで。私が艦これ始めたのもちょうど去年の今頃なんですよね。
当時の春イベはまだ2-4突破したてぐらいの状態で、E-2までしか攻略出来なかったんですよ。
天津風が欲しかったのになぁ……とちょっと悔しい思いをしたのも今となっては良い思い出。
(しかし、E2を突破し烈風改を得ていたことが後に大きなアドバンテージなるのであった)
今回はアニメからの新規参入者を意識した感じの難易度なんでしょうかね?
ま、どんな強敵が相手でもやってやんぜ……! という気概だけは持っておこうと思います。気概だけは〜。
454 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/04/21(火) 23:43:21.46 ID:y2ldvYJh0
次回の投下は〜今週水曜日または木曜日〜つまり明日or明後日を予定しております〜。
ひょっとしたら予告よりも遅れちゃうかもしれませんが、一応告知ですです。
////独り言////
アアアアアアアアアァァァァァァ〜〜〜こんなもん書いて良いのか〜!? 許されるのか〜〜〜〜〜〜!?!?!? と絶賛葛藤中です。誰も絶賛してませんが。
葛藤に負けてまともな路線にシフトしたら一週間ぐらい投下が遅れるかもしれません。
(私の理性や常識的人間性が狂気に勝利を収めることが出来たら投下が遅れます、とも言い換えることが出来るかもしれません)
あ、関係ないけど最近新編二航戦の任務クリアしました。羅針盤大暴れで結局バケツが40個ぐらい飛びました。
これで難関任務もようやく全部片付いた……と言いたいところですが最近追加された『新編「三川艦隊」ソロモン方面へ!』は激ヤバ度高いですね。
うーん、まずはレベリングからかなぁ(汗
455 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga sage]:2015/04/23(木) 20:29:37.70 ID:/mfA6lmu0
先に予告。ごめんなさい投下遅れます。いや大体もう書けてる感じなんですけど。
オンメンテが……追加ボイスが……! フゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!(もはや言葉は不要)
これはもうSSどころじゃないっす。少しだけ私に艦これを満喫する時間をください。
遅くとも明日の夜までにはなんとかするので、ご理解ください。
456 :
【36/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/24(金) 19:35:24.58 ID:x76Zqb8c0
腕を組みながら海上を進む響。
響「君な……今更緊張していてもしょうがないだろう」
雪風「大きな戦いの前はどうしても……心臓がバクバクします!」
響「昨日はグッスリ寝ていたじゃないか」
雪風「昨日は昨日、今日は今日です。……」 双眼鏡で遠方を眺めている雪風
響(私たち第二艦隊は先行して鹿屋小隊と合流。のち第一艦隊とも合流し、呉鎮守府周辺を警戒……果たして敵は司令官の読み通りに出てくるのだろうか)
大淀「呉鎮守府正面海域に敵艦隊が接近!」
艦隊に緊張が奔る。
響「ふむ、来たか……。敵の規模が分からない以上私たちだけで進むのは危険だな。後援の味方を待とう。利根・筑摩・大淀は周囲の索敵に専念してくれ。木曾・雪風、念のため戦闘準備を」
・・・・
響(無事鹿屋の小隊と合流出来たな。ひとまず安心か)
伊勢「鹿屋基地第一艦隊、参上致しました!」
響「ご苦労。ん? ……お前は、あの時の!」
加古「あっあ! あぁ、いやぁ、お久しぶりですー! どうもー!」
加古(例の件に関わってたのはあたしだけだ。ここの艦隊の連中は何も関係ない。何でもあんたの言う通りにするから、ここは黙っていてくれないか。頼む) 小声で響に耳打ちする
響「(こいつが信用出来るかどうかともかくは置いておいて、今はそれどころではないな……)分かった、下がれ。現状の説明をしよう」
響「……呉鎮守府に敵の艦隊が接近しつつある。本土への強襲を目論んでいるらしい。私たちで連携して敵部隊を討つ、いいね」
日向「こちらの暗号が深海棲艦に漏れていたというのは本当だったのか……。私たちまでMI方面へ向かっていたらここがどうなっていたのかを考えると、ゾッとするな」
日向(にしても、想定外の奇襲だというのに動きがスムーズすぎる……まるで本土決戦が敵の狙いだと予め分かっていたような落ち着きようだ。向こうの提督はこれを見越していたのか……?)
・・・・
響「随分早い到着だな。予定ではもっとかかるはずだったと思うが……」
鹿屋小隊の到着から間もなくやって来た第一艦隊。
赤城「えぇ。提督から、今回の作戦は私の裁量に委ねるとのことなので。少し急いでこちらに向かいました」
響「……状況を説明しよう。提督の予想通り、ガラ空きの呉鎮守府に敵奇襲部隊が迫っているようだ。大淀、敵の規模は?」
大淀「戦艦タ級flagship1隻、軽巡ヘ級flagship1隻、軽母ヌ級flagship2隻、駆逐ロ級後期型2隻で編成された艦隊が接近しています。背後からは潜水艦の気配もあります……。現状確認出来るのはここまでですね」
赤城「敵の規模から考えて、これが本隊ではないでしょう。主力部隊と合流されると厄介です! 早急に叩きましょう」
加賀「こちらが制空権を確保している以上、戦力差からいって相手に勝機はないでしょう。ですが、油断は禁物」
飛龍「ふふっ、慢心はダメゼッタイ、ですよね? 心得ていますよ」
響「私たちも行くよ。利根、筑摩、水上爆撃機を。木曾も雷撃の用意だ」
利根「我輩のカタパルトの出番じゃな! 任せておけ、不備は無い!」
木曾「自信満々に言われるとかえって心配だな……。ま、いいか。こっちも行くぜ!
赤城(全幅の信頼を寄せてくれている提督の為にも……)
響(完璧な勝利を期待している司令官の為にも……)
赤城&響(こんな所で立ち止まっている暇はないッ!)
・・・・
龍田「呉の方に動きがあったみたいね」 モニターを食い入るように見つめる天龍に話しかける
天龍「あァ〜……! 提督からの通信はまだ来ないのかよォ〜! なんだってオレが司令官代理なんてやらなきゃならねえんだ〜」 頭を抱えている
天龍「オレのせいで誰か沈んだらヤじゃんかよォ〜……こんなん向いてないっつうの」
暁「第三艦隊も第一次MI攻略大隊と合流出来たみたい。第一大隊が敵の本隊とぶつかる前にうちの機動部隊が合流出来るかが勝負ね」
天龍「昼に被害が出ることは無いだろうが……夜戦となったら話は別だ。こっちもただじゃ済まないかもしれない。日が経てば経つほど不利になるだろうな」
天龍(三日……。三日でどうにか出来なければ、この作戦は失敗だ……)
龍田「弱音を吐いていても仕方ないわ天龍ちゃん。責任を感じているのは分かるけど……あまり悲観的にならないで。今のところ全て順調よ?」
天龍「わあってるけどよぉ……やっぱ向いてねーって!」
457 :
【37100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/24(金) 19:45:06.62 ID:x76Zqb8c0
霧島「佐世保第二次MI攻略大隊先鋒隊、霧島艦隊です!」
長門「おお、来たか! 私は第一大隊旗艦の長門だ」
扶桑「……? 第二大隊は空母機動部隊が主と聞いていましたけど……思いの外少ないですね」
霧島「ええ。私たちはあくまで先鋒隊です。攻勢に出るのは、後続の主力が来てからになるでしょう」
大和「空母の数が少なくとも、道中の雑兵相手に負ける私たちではありません。邁進します!」
武蔵「ふふ、そうだとも! 私に続け! 大手柄を立てやろうじゃないか!」
瑞鶴「随分と意気盛んだねぇ、翔鶴ねえ?」
翔鶴「ええ。大和型に装甲空母の投入……まさに総力戦というに相応しいでしょう。士気が高くなるのも当然のこと」
霞(問題は……深く攻め入り過ぎて敵の主力空母に反撃を食らう恐れがあること……。味方の増援が間に合えば万事解決なんだけど)
霧島「私たちは戦力を温存しつつ前線部隊の支援に回りましょう。翔鶴さん・瑞鶴さん。お二人は攻撃機とは別に、偵察機を放ち、敵増援の警戒もお願いします」
霧島(司令が何故私を第三艦隊に、榛名を第一艦隊に配置したかは分からない。私は榛名よりも戦える。そして司令もそう評価している……)
霧島(ならばなぜ私を第一艦隊にしなかったのでしょう。そして、なぜ第三艦隊の旗艦に? 周囲をまとめるなら、榛名の方が上手くやれそうな気がしますが……)
霧島(鶏口となるも牛後となるなかれ……か。司令が私をどうしたいのかは分かりませんが、旗艦としての最善を果たしてみせましょう!)
・・・・
武蔵「フッ、余裕だな」
轟音とともに主砲を打ち放し、敵駆逐艦を跡形もなく消し飛ばしていく武蔵。
清霜「すごい! さすが戦艦ね!! 私も早くなりたいなぁ……」
秋月「対空射撃! 撃ちます!!」
敵艦隊の後方から迫り来る敵艦載機を次々と撃ち落としていく、秋月を始めとする呉連合艦隊所属の駆逐艦たち。
大鳳「この際、徹底的に撃滅しましょう!」
大鳳の放つ高性能な艦載機が、敵戦艦を大破にまで追い込む。
瑞鶴「翔鶴ねぇ……私たち、要らないんじゃないかな」
翔鶴「そうね……。でも、そうも言ってはいられないわ。後衛としての任を果たしましょう!」
瑞鶴「もっちろん! 折角の勝ち戦なら、楽しませてもらわなきゃねッ!」
・・・・
清霜「昼の快進撃で、敵艦隊は鳴りを潜めてるみたいね。今夜は無事に過ごせそう?」
長門「……これ以上の深追いは無用だろう。敵本陣への道半ばで負傷するわけにはいかんからな」
川内「えー……夜戦はおあずけかぁ……」
長門「ところで、霧島よ。第二主力大隊……佐世保からの増援はなぜ来ない? 遅くとも今日の暮れには合流出来る手筈だったろうに」
霧島「さ、さぁ……どうしたんでしょうか……(呉鎮守府の奇襲に備えて待機している、なんて言ったら混乱は避けられないでしょう。合図が出るまでは誤魔化し続けるしかないわね)」
扶桑「まさか、何か不幸なことがあったんじゃないかしら……敵別働隊に妨害を受けているとか……ひょっとしたら、鎮守府が敵に強襲されているとか……!」
武蔵「フッ。大規模改装されて欠陥戦艦とは言わせないと息巻いていたのになぁ。もう臆病風に吹かれたか? 何を臆することがある! 前ッ進ッあるのみだ」
大和「今の私たちの戦力なら、制空権を捨ててでも前に進むのも選択肢の一つだと思います。それに、早期に決着を着けなければ、こちらが不利になるでしょう。それは提督も仰っていたことです」
霞(……敵にこちらの策がバレていなければ、そうかもしれないんだけど)
長門「大和型という切り札中の切り札を切って臨むほどの決戦だからな……。維持出来ている補給物資から考えると、持ってせいぜいあと二日だろうが……。どう思う吹雪?」
吹雪「ええ、私もそれは同意見です。……ですが、やはり味方の増援が来ないのは不安です。扶桑さんの言う通り、敵別働隊に妨害を受けている可能性があります。そうだったとして、ここから状況を確認する術はありませんが……」
霧島「今攻めるのは尚早です。私は第二大隊を待つべきだと主張します。制空権を失った状態では、不必要な痛手を追う恐れがあります。佐世保第一・第二連合艦隊の到着までは堅実に、周辺海域の敵艦を掃討していった方が……」
・・・・
霧島「なんとか、進撃を引き止めることが出来ました……。戦艦や重巡から来る侮蔑の視線が痛かったです……胃が……」
霧島「私、戦況を分析したりするのは得意ですけど……こういう交渉を通すのは苦手ですね……」
翔鶴「いいえ、よくやっていますよ。きっと提督も褒めてくれるはずです」
翔鶴(……霧島さんは、自分の使命を全う出来ている。私たち佐世保第三艦隊以外は皆、敗北の可能性を考慮していない状況の中で警鐘を鳴らして、その主張を押し通した)
翔鶴「いいえ、よくやっていますよ。きっと提督も褒めてくれるはずです(私も頑張らなくっちゃ。自分なりにやれることを探しましょう)」
458 :
【38/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/24(金) 19:52:50.78 ID:x76Zqb8c0
提督?「提督・金剛の」
金剛?「ドキドキ♡これまでのあらすじ♡」
提督?「我々の乗っていた船『プロビデンス』は、『ドラゴントライアングル』を経由してワープしたのであった!
説明しよう! ドラゴントライアングルとは、房総半島の野島崎・小笠原諸島・グアム島の三点を結んだ地点のことだ。
渦潮の頻発するこれらの三地点の中でも、その中央は特に大きな渦潮が発生しやすいのだった」
金剛?「ここで補足デェース! 深海棲艦が海上に出没するようになってから地球の環境は一変しまシタ。
渦潮とは本来、流れの早い海流と緩やかな流れの海流との境界付近で発生する現象デス。かつては鳴門海峡のような狭い海峡内で限定的に見られるものデシタ。
But、深海棲艦が現れて数十年経った現在ではァー、海流の接触がない広く穏やかな海域でさえも大規模な渦潮が多発するような状態に変貌してしまったのデェース!」
提督?「ドラゴントライアングルに発生する渦潮の潮力をワープの動力として利用し、我々は南極へ辿り着いたのであった!」
金剛?「降り立ったのは一面銀世界! テートク曰く、南極の永久凍土の下にメガラニカはあるんダッ! ……ってことだったんデスガ」
提督?「エセ外人があろうことかこの俺に雪球をぶつけて来たことによって、事態は思わぬ展望を迎える!」
金剛?「仁義無き雪合戦の結果、ワタクシプリティー金剛は、アングリー鉄面皮の陰湿な策謀によって落とし穴に叩き落とされてしまうのデース」
提督?「いえいえ陰謀なんかじゃございません。前方180度が攻撃範囲の妖怪紅茶飲みと真正面から当たっては反撃を受けてしまう。
そこでデースガールと他の艦娘との対立を煽り、注意が逸れたタイミングで足払いをお見舞い!
尻餅をつきながらツルツルと氷の上を滑っていくマヌケ。やりました。
これだけでも面白い光景だが、そこですかさず追撃! しかけていた小型地雷を起動し、落とし穴を生成!」
金剛「外道! 卑劣! 男のやることじゃないデース!」
提督?「おっとぉ、誤解をされないように言っておくと、この落とし穴はアホを叩き落すためだけにぶち開けたんじゃあないぜ。
落とし穴の先は氷洞になっていて、先へ進めばメガラニカへ辿り着ける、というものだったのダー」
金剛?「氷洞を進んでいたワタシ達。二又の道に差し掛かったタイミングで突然のAvalanche! 雪崩がワタシ達を吞み込んだのデース!」
提督?「さてここで訂正が入った。突然などと事故のような口振りをしているが!
その真実は紅茶ばかが雪合戦の時に俺に撃とうとした鉄甲弾が数キロ先の氷塊にぶつかって、それが原因で迫ってきた雪崩である可能性が高」
金剛?「違いマース! そんな可能性はありまセーン! 事故デース! ネクストフロンティアへの冒険に犠牲はつきものデース!」
提督?「まぁ、そんなわけで……俺と金剛の二人は他の連中とはぐれてしまい、行き着いた場所は洞窟の行き詰まりという有様だ」
金剛?「道を引き返そうにも洞窟全体を覆う雪の壁。おまけに顔以外は全身雪に覆われていて身動きさえ取れないという始末……。Oh,Gosh!」
金剛?「ベタすぎる展開デスガ、友達未満恋人論外な二人はどうやってこの状況を切り抜けるのでショウカ!?」
・・・・
提督「うう、寒さで頭がやられてきた……幻覚が見える……。妖精が頭の上で何やらぴいちくぱあちくと揉め合っている……」
金剛(いい気味だと思ってしばらく放置してましたケド……さすがにヤバそうなことを口走り始めましたネ……)
提督「なぁ金剛……艤装の排熱で雪は溶かせないのか?」
金剛「とっくにやってマース! ワタシの周囲半径1mほど溶かすことができましたガ……まだまだそっちの雪を溶かすには時間がかかりそうデース。こんな狭い所で砲撃したら洞窟ごと潰れかねないし……」
提督「そうか……俺がここで死んでしまったら、お前たちは帰る術を失ってここに取り残されてしまうというのにな。残念だ。実に残念なことだ……しかし、この氷が溶けないのならば、それも運命か……」
金剛「分かりまシタ。仕方ないですネ〜♪」 水筒を取り出し、マイカップに紅茶を注ぐ金剛。そこにミルクと砂糖を加えて即席ミルクティーの完成である
提督「おい、暗になんとかしろと言っているのだ。艤装が自動で温度調節してくれるお前らと違って、人間は存外すぐに死ぬものなのだ」
金剛「ガミガミ言わないで下サーイ……今パワーを溜めてマース……」 ズゾゾゾ……
紅茶を飲み終えると、金剛は拳に力を込め、高らかに叫びだす。
金剛「ワタシのこの手が光って唸る! 氷を溶かせと輝き叫ぶ!」
提督「待て、猛烈に嫌な予感がするのだが」
金剛「必殺! シャイニングゥ・ラァァァヴッ・フィンガァァァー!」
ドゴオオオオオオオォォォォォォォン……。
周囲を覆っていた氷は、一瞬にして白煙に変わった。
提督(死を覚悟した)
金剛「ザッとこんなもんデース」
提督「ご苦労、助かった。さて、脱出を図るか……ん?」
氷の壁が溶けたことによって、洞窟の行き止まりとなっていた場所に道が出来ていることに気づく二人。
金剛「どうにもこっちに進むのが正解? ですかね」
提督「怪我の功名……かどうかは分からんが、ひたすら雪を溶かしながら来た道を戻るよりはマシだろう。行くぞ」
459 :
【39/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/24(金) 19:55:35.29 ID:x76Zqb8c0
提督「ここが氷洞の出口か」
目の前には海原が、頭上には満点の星空が広がっている。
金剛「オーゥ。Beautifulなbeachデスネー」
提督「今は昼のはずだろう。なんなんだここは……」
ゴゴゴゴゴゴゴ……。天空を覆っていた夜空が、地の果てまで覆っていた海が、空間ごとねじ曲げられていく。
提督「空が……まるでノートのページを捲ったかのように変形していく……!」
突如現れた空でもなく海でもない空間に、巨大な門が垣間見える。
提督「これが“タルタロスの門”なのか……? 俺たちは目的地に辿り着いたようだ。俺たちが辿って来た氷洞が“門”のあるメガラニカの中央部に繋がっていたらしい」
提督「“門”のある座標に辿り着くまでは肉体が必要だ。だが、“門”そのものはこの世には無くイデア界……平たく言うと精神世界上に存在するのだ。
ここは俺とお前が無意識的に創り出した、仮想の世界。その仮想世界に干渉して現れたのがあの“門”。俺たちが探していたものだ」
突然海上から無数もの水柱が立ち上る。激しい地響きが起こる。
提督「おいでなすった……! 門番だッ!」
海の中から現れたのは、鋼鉄のように鈍く光る鱗、鬼灯のように赤い眼、八つの頭に八つの尾……そして、身の毛もよだつほどの殺気。
提督「トネリコの大樹を貪る害獣であり、異界から湧き出る化物どもにとっての神であり、俺達が脳内で生み出した恐怖の具現化だ」
金剛「まるでヒュドラデース! って、こんなんワタシ一人で倒せるんデスカ!?」
提督「心配するな。ここは現実じゃない。恐怖に打ち勝つという意志を具現化すれば……!」 提督の周囲の空間から眩い光を放つ剣が生成されていく
提督「このようにイッ!!」
大きく跳躍し龍の頭部に斬りかかる提督。
金剛「オッケー! 要するに、何でもアリって事デスネ!」
金剛「燃料弾薬気にせず撃ちまくれるんだったら、これほどEasyなGameはありまセーン! 全砲門斉射ッ! 徹底的に撃ちますッ!」 ダンダンダンダンッ!
龍めがけて容赦なく砲を打ち出していく金剛。弾幕が敵を覆う。
・・・・
金剛「一体いつになったら沈むんですカ……コイツ! 首を切り落としても、胴体に風穴開けても、すぐに再生しマスッ!」 バァン!バァン!
提督「ハァ……ハァ……。分からん、ダメージは入っているはずなんだ。それが、65535分の1程度の威力だとしても……」
龍の頭が提督めがけて突進してくる。避けようと身を逸らすもかわしきれず吹き飛ばされる。数メートル先の岩にめり込む。
提督「グッ…………!」 仮面にヒビが入る
提督(いくら精神世界で死ぬことがないとはいえ、普通に痛みはあるんだな……。しかし、そんなことはどうでもいい)
提督(金剛の言う通り、どれだけ攻撃してもすぐに元通りになってしまう。ゲームのように弱点があるわけでもない……どこを攻撃しても、一度に全体を攻撃しても同じだ)
・・・・
それから俺たちは、何日も、何十日も、戦っていたような気がする。
ずっと、ただひたすらに目の前の化物を倒すことだけを考えていた。
金剛「提督……本当は、倒すことなんて出来ないんじゃないですか?」
ついに俺に対して疑念の目を向けてきた金剛。
ああ、倒せないのかもしれない……。口に出かかったが、声に出すわけにはいかなかった。
俺は、こんなところで終わるわけにはいかないからだ……。
・・・・
提督「金剛。もう、休んでいていいぞ。ここで隠れていろ……俺一人で奴を倒す」
何かを悟ってしまったような声色でそう言うと、私に背を向けた提督。
バラバラに砕けた仮面の裂け目から彼の虚ろな眼が見える。
休んでいたい、という気持ちはあった。けれど、私は立ち上がって彼について行った。
私は、一人で居るのが嫌だったから……。
・・・・
延々と戦い続けているうちに会話する余裕が出てきたのか、金剛に話しかける提督。
提督「なあ金剛。お前、俺が来る前はずっと第一艦隊の旗艦だったろう。どうして一番であり続けることに拘泥していたんだ? 並大抵のことでは無かったと思うのだが。
地位を望むにしても、常時艦隊の中で一番上であり続ける必要性は無いだろう。それに、訓練も演習も嫌いなはずのお前が、なぜこの鎮守府の中で最も高い練度を保ち続けているのかに興味がある」
提督「お前、どう考えてもストイックに努力出来るタイプじゃないだろう」
ぴょんぴょんと宙を跳ねながら攻撃をかわしつつ、提督は金剛に質問を投げかける。
460 :
【40/100】
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/24(金) 20:00:33.43 ID:x76Zqb8c0
金剛「ワタシは誰もが認めるような、ナンバーワンであり続けたいデス」
金剛「人は……自分にとって価値がないと思った相手に対して、とてもとても冷たいデス……。昔、嫌というほど思い知りまシタ。艦娘も含めて人という生き物は薄情デス。
それでも……やっぱりワタシは、本気で人の事を嫌いにはなれないんだと思いマス。それ私の性格なのか、ワタシが艦娘だからなのかは分かりまセンが……」
金剛「人に嫌われるのは辛いデス。ワタシは……愛されていたいデス。認められていたいデス。それが、ワタシが一番であり続けた理由デス!」
金剛「提督こそ、どうして深海棲艦を滅ぼすためにそこまでやれるんですかネ。使命感や義務感、忠義が欠片も感じられないんですガ……。
宇宙に行きたい? とか言ってましたっけ。どうしてそんな夢物語みたいな目的の為に、こんな化物と戦っているのか理解に苦しみマスネ……」
次から次へと迫り来る龍の頭に、砲の嵐で順序良く吹き飛ばしていく金剛。
提督「俺はな、この世界に自分の居場所は無いと考えている。まるで良い思い出が無いしな」
提督「俺は知略に関しては誰にも負けない自信があるが、頭さえ良けりゃあどうにでもなるわけじゃないんだ。人間とはありとあらゆる限界が付き纏うもの……。
それでも俺は、俺のエゴを通したい。『人は一人では生きていけない』……そんなことは分かっている。承知の上だ。それでも俺は、誰にも邪魔されることのない、俺だけの理想郷を追い求めていたい」
金剛「?? テートクは、どうして人を拒むんですカ?」
提督「拒んではいない……分かり合えないだけだ。俺の世界は俺一人だけで完結する、他に何も必要はない」
金剛(そのわりには、結構人に甘い気が……)
金剛「そうデスネ……確かに、少なくとも今の私と今の提督とでは分かり合えない気がしマス。でも……きっとワタシは、人と人とは分かり合えると思いマス」
提督「なぜそう思う」
金剛「私がずっとそう信じて生きてきたからデース! ……人と人とが分かり合えないなんて、信じたくありまセン」
提督「と、綺麗事を言うわりに、お前は誰にも受け入れられてない気がするがな。日頃の行いが悪いせいじゃないか?」
金剛「」
提督「俺はお前のように一人で生きていく強さのない人間を軽蔑している。人に依存しきったその甘えた姿勢が気に食わない」
金剛「」 プルプル
提督「……それを踏まえた上で言うが。承認欲求だけで艦隊の誰よりも高みに登り詰めたという事実を俺は高く評価している。その意志の力たるや尋常なものではない。
こうして隣で戦っていて、お前が戦闘の天才であることがよく分かった。旧第一艦隊での連携が噛み合わなかったのは、お前が突出していて他の連中が追随出来なかったのだな、というのも今理解した」
提督「お前がここまで強くなれたの理由が、ただ単に誰かから愛されていたいなんて甘ったれた感情だけだったとは俺には思えない。仮にそうだったとしても、その渇望をこれほどまでに昇華させること出来たというのであればもはや見事としか言いようがない。
お前がこれまで試練に打ち勝ってきた経験に裏打ちされた強さ、立場を失った今でもなお精神的に一番であり続けようとしている気高さ……。それは認めたい」
金剛「貶してるのか褒めてるのかハッキリして下サイ……」
提督「褒めているわけでも貶しているわけでもない。ただ思っていることを言ったまで。ま、お前に対しての認識が変わった……それだけのことだ」
・・・・
金剛「なんか、喋ってたらあっという間に片付いたネー。ヤマタノナニガシも大したことないネー!」
提督「あぁ……存外拍子抜けだな。だが、何にせよ……これで一段落だ」 フゥと息をつく提督
金剛「こうして話しながら戦う前って、なんかもっと絶望的に強かった感じがしてたんですけどネー……。テートクとワタシの心の距離が縮まったお陰ですかネ」
門が閉じられていく。破れた世界は修復され、荒れていた海は鎮まり、雲に覆われていた星空は元の輝きを取り戻し始めた。
・・・・
精神世界から現実世界に戻った二人は、船に戻って他のメンバーの帰りを待つ。
提督「さっき無線が入った。あっちもうまくやってくれたようだ。……皆が戻ったら、急いで帰るぞ。全ての門が閉ざされた今、ここに用はない」
金剛「ですネ……」
沈んでいく夕日を物悲しそうに眺める金剛。
提督「どうした? 何か気になることでも?」
金剛「いえ。何十日もテートクと一緒に居た気がするのに、ほんの数時間の経っていなかったというのが不思議デ……」
提督「そうだな。俺もそう思う。奇妙なものだな……。現実ではたった一日しか経っていないというに。まるでおとぎ話のようだ」
金剛「……テートク、なんか優しくなりまシタ?」
提督「いや、そういうつもりは無いのだが……お前を嫌いにならない努力をしてみようかと思い立っただけだ。人から嫌われるのは嫌なのだろう?」
金剛「テートクゥ!」 ガシッ
提督の両腕を強く握り締め、号泣し始める金剛。
提督「おいおい、ブッサイクな顔で泣くんじゃあないぜ……。このハンカチをくれてやる。まず鼻をかめっての」
金剛「ビエェェェェ……でーどぐぅ……」
461 :
◆Fy7e1QFAIM
[saga]:2015/04/24(金) 20:09:52.82 ID:x76Zqb8c0
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獲得経験値(~40/100)
・金剛の経験値+6(現在値6)
・響の経験値+2(現在値7)
・翔鶴の経験値+2(現在値5)
・雪風の現在経験値:6
・足柄の現在経験値:16
・皐月の現在経験値:6
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2周年記念ボイス、『大切な日』とか『特別な日』とか結婚記念日みたいなノリで言ってくれるのがヤバいですね。
ここのスレに居る人なら皐月のは既に聴いてるとは思いますが、まだの人は是非……!
武勲艦じゃなくてもガンガン改二にしていく流れになってきてますねー。
どっちかっていうとこれからはサービス開始時から居た艦娘を改二にしていく流れなんでしょうかね。
何にせよ如月来たのは嬉しい誤算です。あとにゃしいちゃんも可愛くていいですね。
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『Phase A』【41-45/100】
レス安価で登場する艦娘を決定します。
登場させたい艦娘の名前を1人分記名して下さい。
(雪風・翔鶴・金剛・響・足柄・皐月の中から一人)
>>+1-5
よくわからない方は前後数十レスを6秒ぐらいで流し読みするか
>>351
付近を参照下さい
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////チラ裏////
今回は冒険しました。いや、内容も冒険してますけど。
まあそのなんていうか。まず第一に金剛とバトらせたいなってのがあって。
あとはそっから練っていったっていうか。
ファンタジーやメルヘンは好きなのですが、さすがに十レスも二十レスも使うわけにはいかないので超省略。
っていうか艦これの二次創作だしなこれ! 3レスも割いてる時点で相当狂ってるよ!
ああいうの出すと何でもアリになっちゃうからね。あくまでこれはネタです。
ある種のネタとしてこういう展開にしてみただけで、本流はこっちじゃないです。違います。艦これです。
40レスだしちょっと遊んでもいいかなと思ったけど色々ぶっ込んでみたけどこれはやりすぎたのじゃ……。
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