男「……いよいよメラが使える様になるとか末期だな俺は」

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679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/26(土) 19:02:44.74 ID:S9xtus70O


────────── ッ・・・!


< チュィンッッ


三佐(……ッ!!)バッ

三佐(弾かれた…!! 野郎、ずっとあの中から見ていやがったな……ッ)

三佐「総員戦闘開始ッ、黒い渦に攻撃せよ!!」

< ガガッ『『了解!!』』


三佐「くっ……!」ガシャッ

──────── パラララララッッ!!!





< ギギギギィンッッ ガキィンッ!! チュィンッッ

< バッ!!


地獄の騎士【カタカタカタカタッッ】ジャキキィッ


< バッ!!

< バッ!!


ラゴンヌ【グルルルッ……!!】ズシッ…

トロル【タァダイマァァアアア!!】ズシンッ

トロルB【ブォォォオオオオッッ!!】ズシンッ




三佐(『じごくのきし』か『ソードイド』か……それに続いて、『ラゴンヌ』と『トロル』……!!)パララララッッ

三佐(まだ出てきてやがるぞ……!?)ガシャッ

680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 22:30:18.74 ID:rx8L8qrSO
(アカン)
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/27(日) 11:35:42.34 ID:Vb3SwfwCO
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/28(月) 05:22:42.18 ID:4r9a9F6no

< ガガッ『公園東、B班です! 本部から支援不可の連絡が……』

三佐「!?」

三佐(ここ以外にも同じ事が起きているのか……? 何にせよヤバいって事か)

三佐「こちら三佐、公園中央に近い班はスクルトをかけ合いながら退避せよ!」

三佐「黒い球体周辺に設置したC4爆薬を起爆する!!」

< 『『了解』』ガガッ


キメラ【ギャァァアッ!!】バサバサァッ


三佐「チィッ」パララララッッ!!

< ポワァ……ンッ


地獄の騎士【カタカタカタカタッッ】ビュバッ!


    キィンッ!
三佐「『ピオリム』……ッ」ヒュッ

< ガゥンッ! ガゥンッ!
          ガィンッ!! ヂュィンッ!!

地獄の騎士【「馬鹿め、銃なんて分かりやすいモンに当たるかよォッ!」】ジャキキィッ

三佐(至近距離で45口径を弾くか……っ、今までとは別格だぞコイツら!!)ガシャコンッ!

地獄の騎士【「死ね!!」】シャキンッ



    ズドンッッ……!!

地獄の騎士【 】ゴキャァッ……

< ドサァッ……ポワァ……ンッ



< ガガッ『アンチマテリアル、効いてます……狙撃に弱いという情報は確かな様です』

三佐「助かった狙撃班、このまま頼む! 他の班も恐らく苦戦してる筈だ」

三佐(今のうちに……起爆する、退避が済んでない班もいるかもしれないがこのままでは街に流れるかもしれねぇ)カチッ

683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/28(月) 06:00:56.63 ID:4r9a9F6no




       【『マヒャド』】





────────── ドォウッッ!!!
       ギィィンッ…!! バキバキバキパキキキィィインッッ!!! ───────





三佐「…………な……」

< ガガッ『ぅ、うわぁああああっ!!?』

< ガガッ『助けて隊長!! 隊長ぉお!!』

< ガガッ『ひぎぃぃいいいっ!!』

< ガガッ『こ、氷が……ッ! 氷が体を…………』


三佐(爆薬が起爆したのと同時に……何が起きた……)

三佐(爆発を覆うように巨大な氷山がまるごと落ちてきた……そんな風に見えた……)ガクッ

三佐「……全員、動けるか…?」ガガッ

< ガガッ『こちらA班! 三佐殿、こちらへ来てください! 貴方の居る位置は敵の出現域に近すぎる!』パララッ!! パララララッッ

< ガガッ『こちらB班……仲間が三名やられました』

< ガガッ『こちらC班、一名負傷! 後退しながら狙撃班と協力して敵を撃退しています……!』タッタッタッ…


三佐「全員、この地区から撤退……爆薬は不発、幾つかの班は恐らくあの氷山に潰されている」

三佐「周囲のモンスターも多少は巻き込まれている、逃げるならば今だ……」

< ガガッ『隊長…?』

三佐「無意味に死ぬ必要はない……撤退だ」



三佐(……クソッ!!)


684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/28(月) 06:14:38.41 ID:4r9a9F6no
────────── ・・・


男「主任! 今戻った!」ガチャッ


セイバー「男、行きましょう」

男「店員……!」

主任「お帰りなさい……でも男さん、このまま様子を見ているわけにいかなくなりました」

男「なんだ、どうしたんだ?」

セイバー「例の公園で怪魔達が一斉に現れました、待機していた機動隊も撤退した事から恐らく太刀打ち出来なかったのでしょう」

男「……モンスターは強いのか?」

セイバー「現時点では男や主任でも苦戦は免れません、しかしこのまま放っておく事はもっと出来ない」

主任「行きましょう、男さん」

男「……」


男「先頭は頼んだぜセイバー」


セイバー「ええ」

主任「頼りにはしていますから、お願いしますね」

685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/29(火) 01:20:28.82 ID:YCgoeG06O
激烈乙
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/29(火) 02:05:27.38 ID:eidosOcSO

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこのチキンを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450628050/


>>1を守りたい信者君が取った行動
障害者は構って欲しいそうです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451265659/
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/29(火) 07:43:47.06 ID:gTxPW636O

熱い展開好き
688 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/08(金) 08:49:15.91 ID:hD4wMziAO
まだかな?
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/22(金) 19:36:10.63 ID:S0NpJ8mbO
マダー?
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/28(木) 13:16:50.20 ID:W5gMUDNH0
保守
691 : ◆3Jh764FmrU [saga]:2016/02/01(月) 15:43:19.35 ID:Msg+xyzno
あけましておめでとうございます
相も変わらぬ遅筆でありますが、今年中に完結させる事を目標とさせて頂きます
>>1ですが、今週末辺りに再開します

最近はFGOでヒロインXを呼符一枚で手に入れて無課金なりに漸く星5がお迎え出来て嬉しさの余りにブレイクダンスを踊っていました
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 15:45:26.33 ID:S0wwO2XFo
白アサシン→ああ、またけーかちゃんか……→変化エフェクト→金色アサシン→
!?→ジャックちゃんだと思った?ヒロインXでした!

アレはビビるね
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/01(月) 15:46:28.61 ID:MlP0nQmcO
>>691
期待してる
おめでとう
自分も無課金で沖田無双してるよ
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 19:06:39.46 ID:JjiDcKnqo
C←最近支援って意味だと知ったよ…

という訳で置いておくわ つC
695 : ◆3Jh764FmrU [saga]:2016/02/08(月) 12:03:39.55 ID:LRqJVUaTO
申し訳ありません……聖処女様が降臨されたので少し延期します
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/08(月) 12:40:06.40 ID:fxJweRcRo
裏山
取り敢えず何とコラボするか楽しみだわ
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/08(月) 16:40:35.14 ID:8jM1xky40
おのれジャンヌゥ……
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/08(月) 18:54:12.05 ID:72jRI2IYO
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/20(土) 20:51:38.35 ID:bcgHFL1Ko



──────── ゴッッッ!!!


……何度も打ち鳴らされる轟音に耳が慣れてきた頃、俺より少し前を走っていた主任に追いついた。

主任と俺はセイバー……つまり店員を先頭にして家を飛び出したものの、セイバーとは少し距離が出来ていた。

追い付けないのだ。

主任のピオリムで加速しているにも関わらず俺と主任よりも早く走り……その上、先程から視界に入ったモンスターを全て一撃で倒している。

まさに無双、もうあいつ一人で良いんじゃないかな? と言いたくなる程に。

ただ……


男「とは言え……なんか、焦ってないかあの子」

主任「やっぱりそう見えますか」タンッ

男「ああ、上手く言えないけど……こう」


前日の彼女を見ていた俺は、荒々しく走りながらモンスター達を片手間に粉砕する姿に違和感があった。

表情は分からない、俺も店員も相当速い速度を出して走っているから見えないのだ。


しかも追い付けない。



男(……上手く言えないけど、なんか……俺みたいだ)



700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/20(土) 20:52:23.47 ID:bcgHFL1Ko

セイバー「男、主任、二人ともついて来れてますか?」

男「何とかなッ……少しは振り向いて聞いたらどうだ!」

主任「本当にね……!」


降り落ちる雨に濡れながら、俺達は森林公園に向かう。

屋根を、建物を、途中で現れるモンスターを退けながら飛び越えて行く。

目的の地区までそれほど時間はかからない、実際には交通機関を駆使しても一時間半はかかった筈だが。


そうして、俺達は異変に気づいた。


    ……ォォン…ッ

男「!」

主任「男さん、今の!」

男「『銃声』……撤退した機動隊なのかもしかして」ズザァァッ

男「セイバー!」


咄嗟に足を止めると、俺は前方を走っているセイバーを呼び止める。

現状、もしも機動隊がまだ近くにいるなら多少のリスクは覚悟して公園の事を聞いておかなければならない。

しかし。





……俺の声に応じたセイバーが戻ってくる事は無かった。





701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/20(土) 20:52:52.54 ID:bcgHFL1Ko

刹那に、俺は半ばその前兆の様な物を見ていた。

視界の端で何かに気付いた主任が取り乱した様子で俺の呼び掛けに重ねて、声を挙げようとしていた。

その姿に俺も何らかの反応をしようとした。

だが、俺の声にセイバーが応じなかったのと同じだ。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
そ れ ら 全 て を 塗 り 潰 し て 、白銀の閃光が降り注いだのだから。




────────── ッッ!!!




誰かが叫んだ。

それは悲鳴かもしれないし、俺が出した主任と店員……セイバーを呼ぶ声だったかもしれない。

或いは断末魔となる全身から絞り出された俺の、死への恐怖そのものが吐き出されたのかもしれない。

どれにしても、叫んだ事は分かっても聴こえない。

強い耳鳴りが頭を揺さぶる中、俺は眼前に誰かが居ることに漸く意識が行き着いた。


男「……ッ…………」

店員「……?」


チカチカと目の中で閃光の残滓が弾け、俺は店員が口に出した言葉を聞きそびれてしまった。

しかしニュアンスは分かる。

『怪我はないか』と彼女は訊ねたのだ。


702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/20(土) 21:24:20.66 ID:bcgHFL1Ko

男「……セイバー…っ!」

店員「良かった、二人とも無事みたいですね」


そう言った彼女は静かに赤い両手剣を、視線と共に一点に向けた。

その先に視線を巡らせるより先に、近くから聞き慣れた声が微かに聞こえた。

見れば俺の傍に同じく何が起きたのか把握出来ずにいる主任が座り込んでいる。


男(……今の一瞬で何が起きたんだ)

主任「…………」

主任「ヒャド系の、呪文……」

男「え?」

主任「周りを見て……!」


驚愕する主任に言われ、俺は周囲の惨状に気付く。

電柱か何かだと思っていた白い柱が、何本も俺達三人を囲む様に突き立っていたのだ。

それは巨大な氷の杭。

一本一本に籠められた破壊力と、それが撃ち出された速度は全く俺が認識出来なかった事から想像はつく。

かつてない強敵、しかし俺にはそのヒャド系の呪文を撃った者が誰なのか分かっていた。

主任の話を聞いてから幾度となくその存在はチラついていた。

ただ、『向こうは此方に興味を持っていなかった』だけで一度も遭遇……或いは接触が無かったに過ぎない。


男「……まさか……」


主任「『エビルマージ』!!」


八魔将の一人、エビルマージ。

緑衣の魔導師がその姿を現していた。


703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/20(土) 21:24:49.31 ID:bcgHFL1Ko


店員の向けていた視線の先。

濃密な異物感……或いは、それが気配という物だろうか。

日常的に見える住宅街の向こう、繁華街に通じている大通り沿いにある一本のビル上に奴は居た。

距離にして約500m。


主任の言葉通り、そこには緑衣の人型が立っていた。

ただの人形やモンスターではないと確信出来る程の存在感。


男(間違いない、アイツが……!)


主任の住んでいたマンションを襲い、各地域でその存在を何度も見せていた。

まさに黒幕、あの怪物こそが主任にとっての仇敵に他ならない。


エビルマージの動きが無い事を確認して、俺はギターケースから鋼の剣を取り出した。


男「主任、セイバー、相手は八魔将の一人だ」

主任「……」コクンッ

男「エビルマージは三人でやれば勝てない相手じゃない筈だ、行くぞ……!」


店員「お二人は先に行ってください」


男「……!?」


真っ直ぐに緑衣の姿を捉えたままで告げる店員の背中を、俺は背後から見た。

声音だけではない。

キャラクターになりきるのとは別に、彼女は全身で俺と主任がいる事に落ち着きを取り戻せずにいたのだ。


男(そういう事か)


つまり、彼女は今日これだけの事態になってから余裕が無かったのは俺達の存在があったから。

『守らなければいけない』という概念は、俺よりも年下で日本人である以上欠けている、実戦における多大な緊張を与えるに違いない。

1ヶ月前に俺が負傷した主任を守るために、死神と一騎討ちした際にそれは痛感した。

一人で戦っていた時間が長ければ長いほど、誰かと共に戦う事が不安に思えてしまう。


そして今。

店員は感じ取っているのだ、今までとは別格の相手を前にして俺達の存在が足枷になりかねない事を。


704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/20(土) 21:28:38.96 ID:bcgHFL1Ko

理解できてしまう。

力量としては俺よりも遥かに店員の方が格上、だけど彼女が感じている焦りは理解できた。

なら。

なら俺はどうすればいいのか。

ここで彼女を置いて行って良いのか。


男「…………」

店員「私は大丈夫です、それに」


どうすべきか迷う俺に、初めて店員が僅かに緊張を解いて振り返る。

その表情は笑っていた。


店員「別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?」


男「……おう」

主任「男さん?」

男「行こう主任、森林公園で何が起きてるのか確認してから戻ってくればいい」ザッ

主任「でも、相手はあのエビルマージですよ……!」

男「セイバーの……店員の強さはもしかしたらアイツよりも強いかもしれない、だったら俺達は居ても邪魔なだけだ」


男「それに……多分、大丈夫だよ」


俺は逡巡する主任の手を引き起こすと、その場から直ぐに立ち去った。

一瞬、店員の表情を見ようと振り返ったがその笑顔に変わりはなかった。


さっきの台詞はFateという作品を知らなくても分かる。


あれはきっと、彼女なりの絶対に勝てる時に言う台詞に違いないと悟ったからだ。

だから信じた。

少なくとも彼女なら死ぬまで戦う様な事はしない。


男(どうせなら本当に倒してくれよ、店員……!)


705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/20(土) 21:31:49.00 ID:bcgHFL1Ko


━━━━━━━━ 【八魔将エビルマージ】



エビルマージ「…………ほぉ」



緑衣の魔導師、八魔将エビルマージは静かに感嘆の声を漏らした。


数秒前、エビルマージの視界に入った人影に撃った『ヒャダルコ』。

その精度は同じ呪文を使える主任や各モンスターとは比較にならない程に正確であり、破壊力もまた魔力の上位操作によって段違いな物だった。

そう、本来ならば如何に優れた身体能力を有していようと『世界の異変の修正を受けていない人間』だろうと、レベルが低い時点で必殺の一撃だったのだ。

しかしエビルマージの呪文は誰一人として仕留める事はなかった。

外したのではない。

確かに無数の氷の杭は三人を射抜く軌道だった。

防がれたのとも違った。


エビルマージは異世界に来て初めて目の当たりにする、一定のレベルを遥かに越えた存在へ意識を傾けた。


金髪のカツラを被っていた、女騎士らしき人物へ。



エビルマージ「面白い」

仲間を瞬時に背後に隠し、氷の杭全てを『逸らした』。

神業とも言える技にエビルマージは一つの評価を出した。

即ち……敵として認識したのだ。


エビルマージ「次はこれでどうかね?」

仲間を何処かへ向かわせたのを見て、エビルマージはそっと指先をそちらへ向ける。

詠唱は無い。

そっと闇へ誘う様に、緑衣の魔導師は死の呪文を紡いだ。





       【『マヒャド』】





706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/21(日) 00:51:56.51 ID:pTCbkzKBO
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/21(日) 09:20:56.93 ID:XB2t/Qi4O

────────── ギィィンッ!!


距離に左右される事の無い、絶対の氷牙。

その莫大な魔力の奔流は真っ直ぐにエビルマージの指先に示された位置に流れ込み、敵を凍らせ或いは引き裂く。

その絶大な発動速度と範囲の広さ故に回避は不可。

伝説の『ロトの盾』や『メタルキングの盾』でも無い限り、防御すら意味を為さない最凶の呪文である。


だが、しかし。

エビルマージは瞠目する。



    パキィンッ!


店員「 ────── 『ブレードガード』 」


エビルマージ「何だと……ッ」




刹那、何かが女騎士の周囲を舞った直後に『マヒャド』の発動そのものが消滅した。

呪文の発動を無効化する事が出来るなど、エビルマージでさえ聞いたことが無い。

動揺を表すかのように緑衣が揺れ動く。

その隙を、遠距離にも関わらず女騎士は見逃さなかった。



お返しと言わんばかりにエビルマージの立っていたビルは謎の砲撃によって倒壊した。


708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/21(日) 09:49:48.42 ID:XB2t/Qi4O


< ドォォオンッッ……!!


男(……!)

男(大丈夫、大丈夫だ……今は他の事に意識を向けろ……!)

主任「男さん!」

男「任せろ!!」


そう遠くない場所から鳴り響く轟音に最悪の想像を駆り立てられてしまう。

だとしても止まるわけには行かない。

森林公園は近い、現に俺達はこれまでとは明らかに違うモンスターと戦っていた。


地獄の騎士C【ヌゥ、さっきの人間共とは違うな……ッ】シャキキィ

< ビュカカカッ!!

男「づッ……ァアアア!!」ギギギィンッ


六本の腕から繰り出される五月雨斬り、攻守完璧な単騎としての戦闘力は高い。

『じごくのきし』、俺の記憶の中では印象に無いモンスターだがその強さは計り知れない速度と強靭さを持っていた。

一人ならば決して勝てない。

だが二人ならば……!


主任「今です!」

男「……!」バッ


主任の声に合わせて跳躍し、後退する。

直後、じごくのきしの頭上に現れたサッカーボール大の結晶を起点に無数の氷の刃が辺りを貫き立った。




━━━━━━━ キィンッ!! バキバキバキバキィィッッッ!!! ━━━━━━━




709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/21(日) 15:54:27.84 ID:5VDzlc72O
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/21(日) 17:34:54.07 ID:ThdKOjR+O

マホトーンって相手が呪文撃つ瞬間に先に唱えたら打ち消せるんじゃね?DQ1からあるけど……
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/21(日) 20:59:05.11 ID:wHX2HO5MO
すげえかっこいい
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/21(日) 23:22:59.70 ID:sh6qCUR5o


>>710
いろんなDQ設定のマンガを見る限り、マホトーンは「相手の呪文の発動(もしくは詠唱)を阻害する呪文」なので、すでに完成している呪文は防げないっぽい。
そういうのができるのは「マホカンタ」「マホステ」かも。
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 02:27:22.56 ID:/6oIunbf0
多分だけど>>710は「同じターンでもマホトーンを先に唱えて封じることができれば呪文を阻害できる」って言いたいんじゃないかな。見当違いだったら済まんけど
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/10(木) 10:30:20.26 ID:ao92uL5xO
まだかなー
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/20(日) 22:27:04.04 ID:7EORCLhcO
ここまでイッキ読みしてしまった
期待
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage-saga]:2016/03/23(水) 11:35:24.32 ID:boj4YWrco


< パキッ……ミシッ

地獄の騎士C【ク……カッ…………】

< ポワァ……ンッ


僅かに黒い煙と光の残滓を散らして、骸骨の騎士は消えていく。

後に残る強烈な氷の剣山は音を立てて冷気を漂わせていた。


男「……前よりも威力上がってないすか」


戦いの最中に切り落とされてしまったギターケースを拾い上げながら主任に声をかける。

肩で息をしている姿から、不安を覚えたからだ。

今の短時間で連続して『ヒャダルコ』を撃った主任の疲労はエビルマージに遭遇した影響か、著しい物があった。

……ギターケースは半ばから切断されてしまっていて使い物にならなさそうだ。


主任「何度も呪文を使っていると、何となく分かってくるんです」ザッ

主任「呪文は唱えれば発動出来ます、威力も多分……唱える時に感情を昂らせて……というか」


ゆっくりと、主任は顔を上げて俺を見た。

額から流れる汗に長い髪の毛がへばりついているのも意に介さない。


主任「……殺意、みたいなものを籠めると…少しだけ、少しだけ……呪文の通りが良くなる感じがするんです」

男「…………」ぞくっ

717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage-saga]:2016/03/23(水) 11:36:08.76 ID:boj4YWrco

何か言おうとするも、言葉が出てこない。

この状況で余計な事に時間を使うわけにも行かない、そんな焦りが更にどうしたらいいのか分からなくさせた。

しかしいつの間にか……主任は俺の前に進み出ていた。


主任「……あれは、何が起きてるんでしょうね」

男「!」

男(光の柱……!? いや、あれって……ッ!!)


俺達は店員にエビルマージを頼み、森林公園に到着した。

居たのは二体の『じごくのきし』、主任と連携して戦闘をしていたが……


他のモンスター達とは違い、まるで見張りか門番の様に奴等は立っていた。

いや、間違いなくあれはゲームにおける見張り役のモンスターだろう。

つまり何者かを通さずに『何か』を成そうとしていたのだ。

それが今、俺と主任の眼前で空に向かって伸びている巨大な光の柱に違いない。


より正確には。


男(モンスター達が次々と消えて……その残滓が集合している……?)



718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage-saga]:2016/03/23(水) 11:37:39.38 ID:boj4YWrco

恐らくは森林公園の中央、その上空に巨大な光の柱が突き立っていた。

或いは空に向かって伸びているのか。

俺と主任の目前で木々の隙間から見える異常な光景は、それまで見てきた魔法やモンスターによる異能現象とは違うことがそれだけで分かった。

チリチリと肌を撫でる、静電気の様な性質の風が吹く度に辺りを濃密な何かが漂っている事に気付く。

恐らくは……魔力か何かだ。


男(モンスターが次々と空へ浮き上がって……そのまま死んでるのか?)

男「主任……」

主任「行きましょう男さん」

男「!……エビルマージがいた、つまりあれの根元には俺達じゃどうにも出来ない奴等がいるかもしれない!」ガシッ

主任「っ、だから何ですか急に」

男「死ぬかも知れないんだぞ! なんでそんな簡単に行こうとしてるんだよアンタ!」

主任「落ち着いて下さい!!」バッ


俺の手を払い、主任の掌が眼前に翳された。

その手の向こうに見える眼には、少なからず籠った殺意が見えてしまう。

咄嗟に俺は飛び退いた。


男「……!!」

主任「…………」


719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/23(水) 19:37:24.64 ID:SrP+UU+Q0
来たか
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/23(水) 23:15:34.05 ID:uYwPbMJMO
おつ!
きたか!
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/23(水) 23:43:59.68 ID:YrP1sNSho

殺意か
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/29(火) 01:13:09.05 ID:EtpjZzZDo
保守
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/06(水) 04:22:26.97 ID:ueebhPaho
保守
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/16(土) 17:10:59.21 ID:XNzNXPO0o
保守
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/04/25(月) 00:12:24.17 ID:DknTvVx+0
あと一カ月か
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/04(水) 00:15:36.42 ID:G3390bIao
ほし
727 :ID加速中 ◆V9LlgfWZs2 :2016/05/07(土) 17:48:08.68 ID:2Rhxxw+y0
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/17(火) 20:07:45.01 ID:IInPq3rbO
おいおいおいおい
いよいよ危ないじゃないか
早く来いよ
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/18(水) 23:53:49.47 ID:74YvOmpBo

主任「……私はモンスターを、あいつらを許せない」

主任「一匹残らず消し去ってやりたい、私はそんな思いで戦ってるんです! 生きるために見逃すなんて私は嫌だ!!」

男「何言って……」

主任「私はあのマンションに住んでいた人達を、いつも見ていた!」


飛び退いた俺に近付き、主任は俺の胸元を掴む。


主任「映画や漫画の中みたいに、都合良く殺されて良い人なんかいなかった! そんな人達じゃなかったんですよ!!」

< ガシィッ…!!

男「く……ッ」

男(主任の眼、本気だ……このままだとヤバいんじゃ……)


掴んで来た手を掴み返すも、俺の腕力でもまるでびくともしない。

我を見失った様に怒る主任の眼をもう一度覗く。

俺はその中に未だ揺るがない殺意を再確認した。


主任「貴方には分からない! あのコスプレした女にも分かりっこない!!」

主任「人が死ぬって事が、人がこの世界から消えるって事がどれだけ辛くて悲しくて取り返しのつかないことか! 貴方達には分からないんだ!!」


< ガバッ!

男「っ!」ドサッ


主任「……はぁ…ッ、はぁ…ッ」

主任「…………」

主任「男さんはここに残ってて下さい、私があの光の根元へ行きます」


730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/18(水) 23:59:10.90 ID:74YvOmpBo

男「何言ってるんだよ……主任こそ落ち着けよ! アンタ一人なんて……」

主任「一人でも、誰かが行かなくちゃいけないんです」

主任「止められるかもしれないのに、ただ隠れて震えてるのはもう……嫌ッ!」

男「主任!!」


────────── シュタンッ・・・!

俺が止める間も無く、主任は跳躍し森林公園の中へと姿を消してしまう。


恐らく『ピオリム』を唱えたのだろう、たった一度の跳躍で凄まじい速度を出して行ったのだ。

対する俺は…………

俺は?


男「……どうしろっていうんだよ」


主任の様子は普通じゃない。

先程までの冷静さが消えていた。

魔力切れか、或いはそれほどの琴線に触れたのか。

いずれにせよ放っておけば彼女は間違いなく殺される。


最初の威勢は何処へ消えたのか、自分でも呆れ返る。

俺はあの空へ伸びる巨大な光の下へ向かうことを何より恐れていた。

怖いのだ。

恐ろしいのだ。


男「畜生…………」


彼女の速さなら直ぐにあそこへ辿り着くだろう。

残された時間は無いのは分かっている、分かっているんだ。


…………それでも、俺は暫くの間何も出来ずにその場に立ち尽くし迷っていた。


731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/19(木) 00:02:29.97 ID:aw0yPgO8o

━━━━━━━━ 【数分前……店員達】



< ボヒュッッ…!!

エビルマージ「『ヒャダイン』ッ!」
          キィィンッ


『マヒャド』を弾いて無効化し、返す刃でエビルマージに向けて放った一撃はビルごと破壊した。

そう店員は認識していた。

しかし粉塵から飛び出た緑衣の魔導師を見た瞬間、それは早計だったことを知る。


店員(魔術師タイプのモンスターなら或いは……と思ったけど、駄目か)ズザァッ

ブラッドソード「動きが速いわねアイツ」

< 「来てるぞ」


    ガシャァアンッ!!


店員の仲間が反応するが先か後か、大気を切り裂いて殺到してきた氷柱の一本が粉砕される。

横薙ぎの一閃。

金髪のウィッグが背後で衝撃波に吹き飛ばされて何処かへ行ってしまうのを、店員は半ば舌打ちしながら傍目に見ていた。


店員「八魔将ってお金落としてくれますかね」

< 「急になんだ」

店員「あのウィッグ高いんですよ、アホ毛再現してる特注品なんで」

< 「……」



────────── ドッッ・・・ドドドドドドドォォッ!!



732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/19(木) 00:03:44.38 ID:aw0yPgO8o

一瞬の間を空けて鳴り続ける轟音。

殺到してくる氷柱が店員の居た位置を正確に、逃げ場の無いように、アスファルトを貫き土砂を巻き上げている。

しかし巻き上がったのは礫と雨に濡れた土砂のみ。


エビルマージ「……!!」


緑衣の魔導師は見た。

レベルの高い、優れた戦士や盗賊の類である者達でさえ成し得ない身軽さと瞬発力。

それを爆発させ、女騎士らしき姿の店員が飛来した氷柱を次々とかわしながら虚空へと身を躍らせた……その一部始終を。


幾度か身を捻り回転しながら店員は数十メートル離れた一軒家の屋根に降り立った。


    ガシャッ!


店員「……ふぅ」

店員「避けるのが精一杯とは言え、『負ける相手』ではなさそうですね」

ブラッドソード「油断は禁物よセイバー」

店員「分かってますよ」


土砂で微かに汚れた頬を籠手で拭いながら、店員はブラッドソードを構える。

そして、まるで唱える様に彼女は呟いた。


店員「……あれが主任さんの怨敵ですし、ね」


733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/19(木) 00:05:30.71 ID:aw0yPgO8o

< ビリビリッ……!!


直後、店員の握る剣が僅かに瞬く。

真紅の刃が蒼白に染まったかのように、ほんの僅かなその一瞬だけ発光したのだ。

一瞬だけ見せたその現象はまさしく『雷光』 ────────


店員「二割減るけど、後は任せたよ『リリィ』、『オルタ』、『クラーク』」

店員「これで仕留めます」キィンッ


< バチバチバチィイッッ!!


───────── 稲妻を纏うかの如く、蒼白の電光を放出しながら剣を逆手に持ち替える。

店員の足が屋根瓦を踏み砕き、瞬時に雨空へと身を躍らせた。

    ドゥッッ・・・!!




エビルマージ「ヌゥ……!?」

緑衣の奥でエビルマージが声を漏らす。

そこへ、


店員「 ───────ッッ 」ブンッ!!


一気に距離を詰めた店員が大きく振り被って雷光を迸らせる!


エビルマージはその光を見て即座に技の正体に見当をつける。

エビルマージ「『稲妻斬り』……異世界の人間如きが魔法剣を振るえるか」


距離を詰めた所で、未だ両者には十数メートルの間がある。

それを無視して店員は振り被り、そしてエビルマージは距離を詰められるより先に呪文を発動させる!

734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/19(木) 00:08:43.40 ID:aw0yPgO8o


    ギュィインッ!!


大気を渦巻く力は、果たして『どちら』の物だったのかは分からない。



都市を覆い尽くせる災害を一点に集束したかのように、その場所に破壊がもたらされたのだから。


エビルマージ【『マヒャド』ッ!】キィンッッ


無駄な口を開く事はしない。

如何に力量差のある相手だろうと、その愚かな行為が、一瞬の隙が強者をも殺す事をエビルマージは理解していたからだ。

棒立ちで魔法を撃つ事もしない。

緑衣から伸びる手から魔力を放出して後方へ跳躍し、店員から距離を取りながらの『マヒャド』だ。




────────── 地面から突き立つ一本の氷の塔は店員の視界を塞ぎ。


────────── 上空から降り注ぐ氷塊は高層ビルの崩落よりも凶悪に、店員を捉える。


────────── 貫き穿つ為の氷柱とは違い、触れただけで凍てつく冷気を纏った質量攻撃である。




一瞬で繰り出される氷結系最上位の呪文は、最強の魔導師によって更に攻撃魔法として磨かれ殺到する……!


735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/19(木) 00:10:27.48 ID:aw0yPgO8o

    ガシャァアアンッッ!!
  ドドドドッッ……!!


轟音を周囲に響かせて、店員を狙った氷塊が次々と住宅街を破壊し凍り付かせていく。

雨によって湿った空気が一気に冷えた中、緑衣の魔導師は冷気漂う氷山を見る。

今ので仕留められるほど弱く無い相手故に、追撃の呪文を密かに唱えながら。



─────── ボヒュッ・・・!



< ズドォォッ!!

エビルマージ「……?」


   ブシュァアッ!!
エビルマージ「ッ……な、んだと………!!」


エビルマージの目には捉えられなかった。

一瞬、氷山の一部が弾けて閃光が走った事しか認識できずにいたのだ。

…………爆撃を受けた様に巻き上がる粉塵の中から投擲された『剣』によって左腕を落とされ、血飛沫を上げるまでは。


736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 00:32:18.56 ID:qTChlXyho
復活してた!
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/19(木) 02:47:26.77 ID:aw0yPgO8o

──────── ヒュォオオオ・・・

< パキパキパキッ……カシャンッ……


店員「外れちゃった、か」

< 「セイバー、傷は……」

店員「油断はしていなかったんですけどね、肩の感覚が鈍いです」パキッ…

< 「凍っている様だ、傷は私がどうにかしよう」

店員「……」コクン


氷山が建物の瓦礫ごと凍らせている横で、店員は膝を着き息を切らせていた。

表情こそ平然としてはいるものの、初撃の呪文がどういったものか見る前に無効化した事が災いしてしまった。

店員とて未だ見たことの無かった最上位系の呪文。

圧倒的質量を生み出す事も出来れば、特異的に触れた箇所を凍らす効果も付与出来る。

それを知らずにカウンターを狙った結果、思わぬ魔法を撃たれてしまった。


だが、それでも店員は即座にマヒャドから逃れての一撃を加える事に成功しているのは間違いなかった。


店員「エクスカリバーが何処まで『時間を稼ぐ』かは分からないし、このまま追撃します」バッ!


氷山が目の前に次々と突き立つ最中に、店員は氷の層が脆い位置を見極め、手に持つブラッドソードを投擲したのだ。

『他の剣』を使って、同じく稲妻を纏いそれで電磁加速させて撃ち放ったのである。


738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 07:43:11.58 ID:hLBy9sPNO
来てた!
かっこいいね
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/19(木) 18:52:00.43 ID:aw0yPgO8o

    ギュルルルッ!!

深紅の両手剣が激しく回転しながら、突き刺さっていたビルの壁面から離れる。

ブラッドソードはそのままの勢いで不意打ちに怯んでいたエビルマージに向かい、一直線に飛び出していく……!


エビルマージ「チィ……! 魔剣の類を持ち合わせていたか!」キィンッ

背後から高速で回転し向かって来るブラッドソードに気付いたエビルマージが、右手に魔力を集中させて迎え撃つ。


────────── ヒュィンッッ!


ブラッドソード「お生憎様、魔剣は魔剣でも『魔物剣』なのよねぇ!」

エビルマージ「ッ、貴様……『ブラッドソード』か」


魔力を集中させて撃った光弾を難なく回避し、ブラッドソードはエビルマージと交差する。

吹き飛ばされた左腕は傷口が既に凍らされ止血されていた。


ブラッドソード(一瞬よ、一瞬だけコイツを足止め出来れば……!)

ブラッドソード「行くわよ!!」


───────── ギュオオ ッ!!

風を切り裂くかの如く、縦横無尽に剣閃を走らせ乱舞を繰り出す。

ブラッドソードは、彼女は軌道を読ませる事を許さない。

魔剣の姿をした魔物である以上、その弱点は剣筋を読まれてしまう事にあるからだ。

今、エビルマージに対して繰り出された乱舞は正しく彼女の全力の攻撃だった。

その一瞬で行使された凄まじい剣舞は、仮に相手がトロル系の巨人だったとしても打ち倒しただろう。


       パキパキパキッ……ガガガッッ!! ─────────

エビルマージ「『ヒャド』、『ヒャダルコ』、『ヒャド』」


< ビキビキッ! ギシィッ・・・!!

それを。

上位の呪文すら使わずに、緑衣の魔導師は止めた。


740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/05/19(木) 19:15:33.69 ID:aw0yPgO8o

ブラッドソード「がッ……ぐぅぅっ……!!」ビキィッ

ブラッドソード(こ、これ程だなんて……なんて魔力の強さ……!)


刀身を上下から氷塊に挟み込まれ、動きを止めた所に次々と叩き込まれる重く冷たい一撃。

片腕を落とされ、窮地に立たされているとは思えない冷静な動作だったのだ。

加えて初歩的な呪文に籠められた恐るべき魔力は、鉄をバターの様に切る事の出来るブラッドソードさえヒビが入る程に強力な物だった。


ブラッドソードは全身を打たれて意識が遠退いていく。

ブラッドソード(……でも、これで……)

遠ざかる意識の向こうで、彼女は異世界で出会った友人を思い出す。

知る中で間違いなく最強の人間。


店員「ブラッドソード!!」

< ガシィッ!


エビルマージ「く、無傷だと……!?」


好きなキャラクターのコスプレを愛する変人ではあるが、その才能は底が知れない。

ブラッドソードに不安は無い、どれだけ強大な相手であろうと必ず店員ならば勝利すると分かっていたのだから。

店員の持つ才能は、剣術や身のこなしではない。




彼女は、自分に再現が可能ならばそれを見ただけで物にする事が出来る。




店員「……お返しですッ」キィィン…ッ


       【『マヒャド』】


エビルマージ「〜〜!!?」


741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 20:23:14.51 ID:vbG5ZGDKo
どーゆーシステムなんだろ
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 23:57:07.88 ID:lpgkbj2ro
来てた
待ってました
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/25(水) 23:41:12.94 ID:2aerLLsVO
こい
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/31(火) 17:09:08.88 ID:N5cyTFBso
こい
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/06(月) 21:57:07.88 ID:2UQGjTRRo
7
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/12(日) 03:11:04.23 ID:XrFee9/wo
メガロ!
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 18:28:23.82 ID:oMkxNZD9o
メがラブ!
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/12(火) 01:45:37.50 ID:AMoFUj9t0
カカロン!バルバルー!クシャラミ!ドメディ!
何故だ!何故召喚できんのだ!
時間がないぞ!!!
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/07/17(日) 13:23:01.93 ID:ealKhtGPo



────────── ドォォオオンッッ!!



広域に撒き散らされる破壊の音。

それは巨大な氷山を上空から高速で同じ質量をもって砕いた音。

店員が半ば強引に唱えて振り下ろした魔法は、周囲に強烈な冷気と共に衝撃波を発生させた。

その中心部に居たのは店員ではなく、緑衣の魔導師である。


エビルマージ「馬……鹿な、何故……異世界の人間がマヒャドを…………」


その姿は凄惨なものとなっていた。

下半身は凍り付き…ローブごと砕け散っており、何らかの魔法で防いだらしくも未だに凍結の侵食は止められずにいた。

驚愕の表情は文字通り凍り付いている。


店員「……確か、エビルマージ……でしたか」ガシャッ

エビルマージ「……ヌゥ…ッ!!」


眼前に降り立つ店員を、凍り付くエビルマージは見上げた。


店員「貴方達の目的は何ですか、今、世界で何を起こそうとしてるんです?」

店員「答えなければ……」


冷気の籠った瞳で、店員はエビルマージに掌を向ける。

それが意味するのは生か死か。

生かす気が有るかどうかを問う余裕も無ければ、力も残っていなかったエビルマージは沈黙するしか無かった。


750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 16:11:30.86 ID:Zyb4Toh2O
まってた
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 16:16:34.03 ID:9SWjr4C7o
おつおつ
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 17:08:33.50 ID:OrbhuiK3o
復活しててうれしい
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/18(月) 00:22:50.70 ID:SHpFA4hTo
復活乙

巨大な氷塊を落下させる魔法、どこかで見たな……と思ったらネギまか。
確か質量攻撃だけじゃなく、砕けた氷の潜熱を利用して大規模な冷却範囲を作るんだったか。
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/29(金) 08:09:40.69 ID:WOGyWRdtO
ほし
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/08(月) 23:35:51.51 ID:8rR6XZtLo
ほし
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 07:48:42.94 ID:sIlHeufWo
まだか
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/26(金) 17:48:51.64 ID:mGaPwQ/+o

エビルマージ「…………」


店員「……?」


数瞬の沈黙。

ふと、店員はエビルマージが緑衣の中で何かを呟いた事に気付いた。


エビルマージ「……それで勝ったつもりか」

エビルマージ「意識が抜けていないのだな……く、く……」


店員「……」

店員「意識、とは?」


瀕死の筈なのに、突如笑い始めたエビルマージに店員は問い掛けた。

何が余裕を生ませているのか。

それとも、決定的に何かエビルマージは店員達とは別の視点を持っているのか。

そう考えた瞬間、店員は次のエビルマージが放った言葉に硬直する事になる。








エビルマージ「””これはゲームで遊んでいるのではないぞ?””」






758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/26(金) 18:35:18.42 ID:mGaPwQ/+o

店員「……」

< 「……セイバー?」


周囲から聴こえてくる仲間の声が、上手く店員の耳に入ってこなかった。

彼女は恐ろしい程の目眩を覚えていた。

決して有り得ないとすら思っていた事が目の前で起きている。

現実に存在する筈のない幻想が侵食してくる感覚。

今、店員という人間は初めて不確かで曖昧な気配に狼狽えていた。


店員「それは……どういう意味ですか」ザッ…

エビルマージ「この『ニホン』以外の国にも何人もいた……くく、我々を『ゲーム』から出てきたキャラクターだとな」

店員「まさか本当に……!?」

エビルマージ「くく……くははッ……そんなわけがないだろうに、お前達異世界の人間はそうして根本的に間違えてきた……」

エビルマージ「認めよう! ハハハハッ!! あれは、あの『ドラゴンクエスト』は我々の世界の全てを見事に描いている! これ以上ないほどの奇跡だとな!!」


エビルマージ「だがゲームのつもりで戦っている貴様らでは我々に勝てるわけがないだろう!! 嘗めるなよ人間、これは『命』と『未来』を奪い合う闘争……戦争なのだッ!!」

< キィィィインッッ!!


エビルマージが鮮血の混ざる冷気を散らして吼えた瞬間、店員の全身が魔法の気配を察知する……!


< 「これは……!」

店員「ッ、しまっ ─────── 」


何らかの魔法が襲ってくる事に気付くも、間に合わないと悟った彼女は衝撃に備えて構える事しか出来なかった。


759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 00:23:37.47 ID:usO9YgGAO
うおお乙
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/27(土) 01:44:32.95 ID:uGE1Alt4o

それは、店員が身構えた刹那に動いた者の思考。


(『ブレードガード』で防ぐには数が多い、更にブラッドソードがほぼ戦闘不能)

(ここがセイバーの限界だな)


一定のレベルを越えた者の思考速度は凄まじい回転と反応を見せる。

同時に、店員を中心に二重の渦が冷気を巻き上げた。


    パガァンッッ!!

────── 片や、身構える店員を八方向から挟むように突き上がる氷の刃。


    ドゥッ・・・ンッ!!

────── 片や、白銀の軌跡のみを残して店員を抱えて跳躍する者。


それらは、エビルマージを押し潰していた氷山に亀裂が入る程の衝撃波であった。

ただ質量を生み出し弾く、叩きつける、突き上げるのみならず。

店員を襲った氷の刃は……その特性から如何に自在に形を変えて凶悪な武器となるのかを物語る。

そう、数十メートルの距離を取ってから、自身の立っていた位置を切り裂いた氷の刃を見て理解した。


店員の視線が魔法を撃った者を捉えて。



< スタッ……

店員「……これは、どういう事ですか…………何故、他に……!?」
       シュルルルルッッ……

ここに来て初めて危機感に満ちた声をあげた店員を補足するように、彼女の『身に纏っていた白のドレス』が宙に飛翔した。

今まで消されていた気配と、変えていた姿形が露となる。



シルバーマント「『八魔将』を名乗るからには、ただの魔導師ではなかったという事だろう」

シルバーマント「そうだろう? エビルマージ」



エビルマージB「…………」

エビルマージC「…………」


761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/27(土) 07:26:30.46 ID:/gbQVfsAO

ヤバい状況だね。
ザオリク使える奴が大量に出るとは…
マホトーンかマホカンタ使えないとキツいな。
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/27(土) 10:23:46.77 ID:uGE1Alt4o

多少の余裕はあったとはいえ、それでもブラッドソードが戦闘不能になる必要があった程の相手。

その実力に狂いはなく、店員が聞かされていた『八魔将』の名に値する脅威だった。


しかし。


エビルマージは『一人ではなかった』。


エビルマージD「まさか儀式場を邪魔されない為に配置した『私』が敗北するとは、些かこちら側の人間を嘗めていたか」ザッ…

エビルマージB「それだけではない、幾つかの報告にあった未知のモンスター……先の『ヒャダイン』を回避したのを見るに相当の熟練者だ」


緑衣から放たれる重圧感と耳に残る低い声。


エビルマージC「エレメント系か……いや、純粋なエレメント系とは違い性質は亡霊に属する者に近い」

エビルマージC「呪文も扱えるとして、さて……『私達』を相手にどこまで堪えられるかな?」


嘲笑するかに見えて、その実、決して警戒を怠らずに能力を考察する。

店員が見ている新たな緑衣の魔導師は、確かに一人一人が先程まで戦っていたエビルマージと同一の存在だった。

仕草から、その視線の動きに至るまでが同じ。

僅かに後退りする店員を引き止めたのは白銀のマントのみで浮遊する、仲間のモンスターだった。


シルバーマント「あれの戦い方がいまいち支援型に見えていたが、なるほどこういったタイプのモンスターか」

店員「リリィ……ここは撤退しよう」

シルバーマント「駄目だ」

店員「……何故?」


リリィと呼ばれたモンスターは、虚空から同じく白銀の剣を取り出す。


シルバーマント「男と主任、あの二人ではエビルマージ一人にすら勝てないだろうな」チャキッ

シルバーマント「であれば私とセイバーがやるべきことは見えている」

店員「…………」

シルバーマント「私の力を全く借りずに、あくまでも自身の限界と向き合って戦ってきたお前なら分かるはずだ」

シルバーマント「ここで、お前はエビルマージと戦うべきなのだ」

シルバーマント「ブラッドソードの奴がお前を買っているのも、セイバー……いや、店員、お前が特別だからだ」


シルバーマント「見せつけてみろ、私に、そしてお前が憎んできた『出来ないこと』に」

シルバーマント「逃げずに戦い続けてきたお前の強さを奴等の脳髄に切り込んでやれ」


店員「…………」

763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/27(土) 11:46:20.63 ID:uGE1Alt4o



────────── ッ・・・ォォン



男「……っ!」

遠くから聴こえてきた轟音に、それまで雨の音を聞いていた体が反応する。


俺は、主任を追いかける事が出来ずに何をしているのだろう。


男「ぁぁぁ……あああああっ!!!」

男「どうしろってんだよ!! どうすりゃいいんだよ!!」


分かっている、分かっているのに、ここに来て俺は壊れてしまった。

思えば最初から俺は英雄願望や主任のような復讐の為に戦っていたのではない。

俺は、全てをゲームとして見てきていた。

だってその筈だ、これはドラゴンクエストだ。

スライムと戦った。

ドラキーと戦った。

さまようよろいとも、ホイミスライムとも戦った。

どのモンスターも、化け物だったし、どの戦いも痛かったし苦しかった、何度も心臓が止まるかと思った。


死ぬ事が怖くて、死なないように慎重にレベル上げをしていた。

改めて旧作から新作に至るまでのドラゴンクエストシリーズを調べた。

改めてゲームをプレイした。


俺は、『ずっと自分ではない者として生きていた』。


男「お、俺は……っ、俺はぁ!!」


俺は、『ずっと一人で戦っていた』。


男「糞ォ……くそぉ……ッ!!」ガクッ


なのに、どうしたらいいのだろうか。

いつの間にか独りで居た部屋から、見知らぬ部屋に連れ込まれた。

そんな中で俺は何を為せば良いのだろう?

何がしたかったのだろう。



男「もう……俺は……」



764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/27(土) 21:04:01.88 ID:uGE1Alt4o

━━━━━━━━ 【同時刻……主任】


< キィン……キィン……

主任「…………」


主任(……あれは何をしてるの?)

主任(見たことの無いモンスターばかり……それも凄い数、彼等があの光の柱に入って消えていく)

主任(阻止すべきなのかしら……)スッ


< パキッ

主任(っ! しまった……)チラッ





ラゴンヌ【グゥルルルル……ッ】ピクンッ

< 「どうした」

ラゴンヌ【…………】





主任「……!! ……!!」バッ

主任(息を、止めないと……今ここで戦闘になったら……!)


765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/27(土) 21:19:38.04 ID:uGE1Alt4o

< 「何をしているのだ、早くしろ」

< 「まさか……我が王の命に背く気か」


ラゴンヌ【ッ……クゥン……】フルフルッ


< 「それでいい、お前達は此度の戦いにて最大の要となるのだ」

< 「私では意味がないのでな」




主任(……?)スッ

主任(…………アイツ、は……!)




エビルマージ「ラゴンヌを始めとして、残りの『指揮官』は全員入水しろ」

エビルマージ「既に此方側の国々で計画は始動している、この『ニホン』も今日をもって陥落するのだ」

エビルマージ「さぁ、今こそ儀式の時、行け戦士達よ!!」


< 【【「【 グルゥオオオオオオオオオオオオッ!!!! 】」】】




主任(儀式? 計画? ……日本が、これで終わる?)

主任(それに、なんであそこにエビルマージが……!? 店員さん、彼女は……!)

主任(彼女までアイツに殺られたの? 待って、男さんは……私が置いて来てしまった彼は……)


主任「…………ッ」ギリッ


766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 02:31:18.18 ID:eRud64qJo
おつおつ きててうれしい
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/28(日) 18:38:35.91 ID:4IAMM1UTo

エビルマージ「……ほう、確かに此処へ汚いネズミが入らぬよう配置していた『私』が敗れたのは知っていたが」

────────── ヒュンッ
         パシッ!!

エビルマージ「毒の塗り方も知らぬようなこちら側の人間に突破を許すとはな、『私』も少々驕りが過ぎていたかな?」


エビルマージは多くのモンスター達が光の柱へ入っていく中、木々の隙間から飛来した小刀を振り返りもせず、素手で掴み取る。

そして間髪入れずに小刀を放り投げると、上下から氷塊が生み出されて粉々にそれを砕いてしまう。

緑衣の中から視線を背後の森林に向け、その先の木陰にいた人間の女を見た。

長い黒髪は乱れ、前に垂れて表情は見えないが、女の全身から伝わる気配は認識出来ていた。

そこにあるのは殺意。


エビルマージ「仲間も無しによくもここへ姿を現せたものだ」

エビルマージ「それでどうするのだ? ナイフを投擲して終わりか?」


    パキパキパキッ……!!


エビルマージ「儀式を続けろ、あの人間は私が『観客』に仕上げてやる」


周囲のモンスター達がエビルマージの様子に一瞬気をとられるも、その言葉で光に包まれては消えていく。

その光景に、左右に氷塊を生み出したエビルマージを主任は睨み付けた。


主任「…………」ザッ…ザッ…

主任「『ピオリム』、『スカラ』」キィンッ

全身を光の膜で包み主任はついに森林を抜けてエビルマージに向かっていく。


その手にはベルトから引き抜いた新たなナイフが握られていた。


768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/28(日) 21:00:05.53 ID:4IAMM1UTo


エビルマージ(あれで『私』を倒したとは考え難い、他の地区から集まった他の『私』が敵を消している頃の筈)

エビルマージ「……まぁ良い、あの女にはこの儀式による絶望を直に味わえばいい」

エビルマージ「それこそが我が王の意思なのだから」


補助呪文を唱えて近付いてくる主任を捉えて、エビルマージの左右に浮いていた氷塊が動き出す。


主任「『ヒャダルコ』ォォッ!!」
    ザザァッ……!!

攻撃に移ろうとする事を予感した主任が、即座に咆哮した。


─────── キィンッ!!


エビルマージ「ほう、『ヒャダルコ』を唱えられるとは我等の知識を扱える者か」

天を仰ぎ見たエビルマージは静かに感心を示す。

エビルマージ「だが所詮は使うだけが限界の凡人よな……?」



空気中の水分が微かに震え、エビルマージの頭上にサッカーボール大の氷結晶が生み出される。

直後に襲うのは無数の氷の刃が爆発的に辺りを満たすのみ。






それを、エビルマージは  ” 知っていた ”  





769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 03:31:05.47 ID:+QtCciIvO
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/29(月) 06:10:03.78 ID:UQ6UXNVuo


< バキィッ……
     ガシャァアッ!!


エビルマージ「『ヒャド』」ズザァッ


主任の『ヒャダルコ』による魔法を緑衣の魔導師は涼しげに一蹴する。

その際に使った呪文は氷結系最下位の『ヒャド』。

左右に浮いていた氷塊がエビルマージの居た位置を細い氷柱を無数に広げる事で、『ヒャダルコ』による刃を全て防いだのだ。


< ダッ!!

主任「『バギ』ィッ!!」

防がれる事を予想していた主任の手がタクトを振るように薙がれる。


エビルマージ「『ヒャド』」


指先の軌跡に合わせて発生する風の刃が突風を撒き散らしてエビルマージを捉えた。

しかし、そこに割り込む形でエビルマージの前に氷の壁が地中から突き出た。


───────── ガシャンッ!!


相殺である。

主任の放った『バギ』では傷一つ付けられず、エビルマージに氷壁の破片を散らす事しかできない。

だが粉砕された氷壁の向こうから飛び出したのは。


エビルマージ「……!」

主任「うぁぁぁぁッ!!」バッ……!

    ビュッッ!!


771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/29(月) 06:34:11.69 ID:UQ6UXNVuo

主任は一つ、エビルマージを誤解していた。


それまでの彼女にとって、エビルマージというモンスターは自分よりも遥かに呪文に長けていて、恐るべき強さだと認識していた。

その上に油断もしない。

主任の使える魔法の悉くを撃ち落とし、余裕を持って撃破しようとするだろう。

そこまでは彼女の認識で間違いなかったのだ。

その先である。


    「遅い」


主任「っ!?」

< ガシィッ


既に疲弊し、魔力が尽きかけた彼女は全力で魔法を撃つことでエビルマージの視界を奪う。

その隙に彼女は接近戦を挑もうとしていたのだ。

ステータスは調べていた、エビルマージの近接戦となった場合の能力は恐らくレベル10程度の戦士のパラメーターらしいと。

故に主任はエビルマージを捉えてそこへ一撃を加えた。


それこそが間違い。


主任(は、離れない……引き剥がせない!?)

< ミシミシミシ……ッ


魔法使いのイメージと、ネット上にある『あくまで解析されただけのデータ』。

そんな物で八魔将の一人を量った事が、そもそもの間違いだったのだ。



エビルマージは『弱くない』。

    ドゴッ!!


主任「げ……ッぁ、うぁ……ッ……」グラッ……!


772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/29(月) 06:57:15.33 ID:UQ6UXNVuo

ドサァッ!


エビルマージ「ふむ、私を相手に接近戦で挑む発想は買ってやろう」ザッ…ザッ…

エビルマージ「だが貴様では力不足だったな?」


呪文すら使わずに魔力を溜めて至近距離で撃っただけ、その光弾だけで主任の意識が途絶えようとしていた。


主任「ぐぅ……ッ、げほっ! ガフッ! ……え、エビルマージ!」

< チャキッ


それでも、主任はナイフを手放す事なくその切っ先を向けた。


エビルマージ「ふ……なら」

緑衣の中から伝わる嘲笑。


エビルマージ「『メラミ』」

直後。

主任の眼前で 太陽が弾けた 。


    ギュボォッ・・・!!


主任「ぇ    ッ ッ




────────── ドッッ…… ゴォォオッ!!




自身の出した悲鳴が耳に届かない程の爆発と、全身を殴られたような激痛、そして浮遊感。

津波に飲まれたかのように投げ出され転がっていく彼女が止まった時、既にその意識は切れていた。


773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 11:28:05.01 ID:M14w85d3o
己の力を過信しすぎたな
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 13:54:41.55 ID:hkcruBCFo
更新きてた
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/29(月) 23:07:13.89 ID:xyYEVhRmO
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/30(火) 01:18:09.08 ID:6JFLvN2lo

━━━━━━━━ 【其処に居た者】



男「もう……俺は…………」


   「大丈夫だよ」


男「……俺は、大丈夫……?」


   「大丈夫」

   「ほら、ゆっくり……深く息を吸って……」


男「…………すー……」


   「ゆっくり吐いて……」

   「そうだ、雨降ってるんだから空を見上げて深呼吸したほうが良いよ」

   「君は ”いつも” 追い詰められた時、自分が〜とか、それに対して理由が〜とか、考え過ぎだよ」


男「…………」


   「ね、人を助ける時に頭で考えながら助けようとしてない?」

   「男くんは何でも頭で考えてから行動しようとする」

   「一ヶ月以上前、ホテルで女の人を助けたよね? あの時は何も考えずに動けてたじゃない」

   「あれで良いんだよ」


男「……だけど、俺は主任のような戦う理由なんて……」


   「ほら、直ぐ理由を探しちゃう」


男「……!」


   「確かに君は最初の一ヶ月は色々な人を見殺しにしたかもしれないね」

   「きっと一人くらいは君が手を引けば助かったかもしれない」

   「でもね、きっとその結末は酷い事になってたの」

   「だから私が君の心に干渉した」


   「全部私のせいなんだよ、男くん」



男「…………」スッ

男「君は……誰だ…………」



──────────・・・



男(……誰も、いない……)


男「…………」


777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/30(火) 03:16:05.38 ID:6JFLvN2lo



───── 体が、冷たい…… ─────

───── 手足の感覚が無い……? ─────




主任「…………ぅ……ぁ、ああぁ……!!」ビクッ

主任「やだ……何これ、体が氷の中に……や、やだ……動かない……!?」ググッ……


< 「動かぬ方が身のためだぞ? 人間の女よ」


主任「……っ、エビルマー…ジ!」

エビルマージ「貴様には特別席を作ってやったのだ、そこでこの儀式を見届けるがいい」

主任「殺してやる!! 絶対に、皆の仇を……ッ! あぁあぁあああ!! 体が、動かない、なんでなんでなんで……!!」グググ……

エビルマージ「威勢が良いな、そして何より貴様のような怒りと憎しみに満ちた人間は実に我が王の好みでもある」

エビルマージ「くく……さぁいよいよだ、『門』はこれで最後の鍵が解かれる事になる」


エビルマージ「今日この日によって、世界は我が王の物となるのだ! さぁ、今こそ此処に!」バッ!


──────── カッッ!!



主任(エビルマージが、自分から光の中に……!?)


778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/30(火) 03:20:55.07 ID:2KPq6CygO
まだ続いてたんだなこのスレ…
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