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忍「隠し事、しちゃってましたね……」 アリス「……シノ」
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486 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/07(土) 01:34:59.70 ID:gNfI8Qit0
カレン「それじゃアリス、浴槽に入りマショウ!」
アリス「わっ、カレン!?」
忍「お、お二人とも、気をつけ――」
チャプン
忍「――て」
カレン「ふぅ、温かいデス……」
アリス「もう、カレンったら……でも、気持ちいいね」
忍「」
忍(隣に、二人の水着姿の金髪少女……)
忍(どうしましょう、頭の中がグルグルして、何もまとまりません……)
カレン「……何ダカ」
カレン「シ、シノと一緒にオフロに入ってるってコトガ……」カァァ
アリス「う、うん。凄く恥ずかしい、よね……」カァァ
忍「わ、私は……その」
忍「……やっぱり、とても恥ずかしいです」
カレン「ヤッパリ……」
アリス「そうだよね、シノだってそうなるに決まってるよね……」
忍「――でも」
忍「こうして、お二人と一緒に、お、お風呂に入るなんて思ってもみなかったので」
忍「一緒にいられることが、とても嬉しいです……」
忍「――」ダキッ
カレン「ワッ!?」ビクッ
アリス「シ、シノ……!?」アセアセ
忍「――ごめんなさい」
忍「なんだか、とても抱きつきたくなってしまいまして……」
アリス「わ、私は、大丈夫だけど……」
アリス(シノの肌が、ちょ、直接当たってるよぉ……!)カァァ
カレン「シノ……嬉しいデス」
カレン(シノのSkinが私に触れて……や、柔らかすぎマス!)カァァ
忍「……ねぇ、お二人とも?」
アリス「な、なにかな、シノ?」
忍「どうして、『一緒にお風呂に入ろう』と?」
カレン「……それハ」
カレン「私が考えマシタ。シノとDirectに、もっと繋がりたいって思ったからデス」
アリス「……私も、カレンと同じだったよ」
忍「そう、だったんですか……」
487 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/07(土) 01:36:57.44 ID:gNfI8Qit0
忍「――ふふっ、こうして抱きついていると」
忍「お二人の温かさが、よく分かります」
アリス「それは……お風呂が熱いから」
忍「いいえ、体温じゃありません」
忍「……凄く、落ち着きます」
カレン「シノ……」
忍「……」
忍(意外と)
忍(さっき、カレンとアリスの親御さんに会った後から、落ち着いています……)
忍(――覚悟、のようなものができたんでしょうか?)
カレン「シノ? ちょっと、こっちを見てくれマスカ?」
忍「はい?」
カレン「えっと、デスネ……」モジモジ
カレン「シノ、モンモンとしマスカ?」カァァ
忍「」
カレン「――私の、水着姿を見テ」
アリス「ちょ、ちょっとカレン!?」
カレン「? アリス、シノを見てモンモンとしマセンカ?」
アリス「……そ、それは」
忍「え、えっと……?」アセアセ
アリス「あ、あのね、シノ?」
アリス「その――私を見て、悶々と? する?」
忍「……そ、それは、ですね、ええと」
カレン「シノ?」
アリス「シノ?」
忍「……」
忍(――理性が壊れる瞬間というのを、皆さんは体験したことはあるでしょうか?)
488 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/07(土) 01:37:28.72 ID:gNfI8Qit0
ーー
アリス「わっ、シノが……」
カレン「シ、シノ! 大丈夫、デスカ?」
アリス「体中、真っ赤だよぉ……」
カレン「シノ……」
忍(――ごめんなさい、アリスのお母さん、カレンのお父さん)
忍(『これからいろいろ大変』なんて、軽々しく言ってしまって……!)カァァ
489 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/07(土) 01:39:53.39 ID:gNfI8Qit0
ここまでです。
とりあえず、これにて後編は終了です。
「忍とアリスとカレンの三人でお風呂に入る」という漠然と考えていたアイデアを書き起こしました。
あれこれと大筋を考えても、展開を創りだすのは難しかったです。
出来る限り頑張リましたが……楽しんで頂けるかどうか。
それでは。
次回以降、何をどう書くかは未定です……どうしようかな。
490 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/07(土) 02:12:56.03 ID:+bq/O+GeO
乙
491 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/07(土) 09:54:55.19 ID:vFo2V4HFO
乙
高1の男女が一緒に風呂入ってるとか冷静に考えなくてもなんかヤバい
492 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/09(月) 08:38:05.79 ID:W2K6qPNAO
下世話な話だが将来子供とか欲しくなったりしないだろうか
493 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:18:27.54 ID:uXxto72B0
――あの時、身体に電流が走ったのを確かに感じた。
そもそも、偶然もいい所だった。
別の高校に行った友達が、学園祭に誘ってきたから。
そんな理由で「それじゃ行くか」と、どこまでも軽い気持ちでやって来た。
一緒に行くはずだった男友達は、「急用が入った」とかでドタキャンしてしまった。
でも彼にも、誘った友達にも、「急用」が何なのかは分かっていた。
だから何も文句は言わず、後で思いきり彼をからかうことで帳消しにした。
……最近付き合い始めたらしい彼女の相手を務めるのは、なかなか大変そうだなぁ、と思った。
からかいながら、じんわりと思った。
「ああ、羨ましい」と。
そんな風に感じたのは、初めてのことだった。
そして今。
彼は、公道を歩いていた。
肩にはズッシリとした重みがある。
今日の練習はキツかったな、と強く思った。
「……」
何度目になるかも分からないくらいに、開けては閉めてを繰り返したケータイ。
再び、受信メールを見直した。
送信日時は、昨日の午後9時。
『こんにちは。こちらの宛先でよろしいでしょうか……?
先日は、色々とバタバタしてしまい、本当にごめんなさい。
よろしければ明日――』
「――ここ、だよな」
待ち合わせ場所に指定されていた公園に到着する。
柄にもなく、15分前行動なんてものをしてしまった。
予定時刻まで、まだ余裕がある。
予想通り、相手は来ていない。
「……」
肩にかけていた練習用具が詰まっていた鞄を、足元に投げ出した。
そしてベンチに座り、空を見上げてみた。
さっきから、太陽が雲に覆われたり、また出てきたりと忙しい。
まるで、今の俺の気持ちみたいだな――
そんなことを思い、苦笑してしまう。
今は太陽が出ており、文字通り晴れやかな空気が満ちていた。
(――隠れないでくれ)
なぜだか強く、そんなことを思った。
ずっと晴れていてほしかった。
空がそのままでいてくれたら、もしかして……。
494 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:18:55.32 ID:uXxto72B0
「こんにちは」
「……あ」
その声に、弛緩していた身体が跳ね上がった。
忘れもしない、この甘い声は――
いつの間にか自分の目の前に、相手がやって来ていた。
当然、あの時のようなメイド服ではなく、私服姿だった。
「私服姿も可愛いな」と、ごく自然に彼は思った。
何の前触れもなくやってきた「彼女」に、少し驚いたものの、すぐさま嬉しさが全身を支配した。
ああ、また会えたんだ――
「……こちらに座っても、よろしいですか?」
「もちろん」
流れるような動きで、彼の隣に「彼女」が座る。
凝視しなくても分かる。
その相手は、本当に――
「えっと、その……改めまして。大宮忍といいます」
――可愛かった。
495 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:20:13.85 ID:uXxto72B0
『告白のお礼』
496 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:21:22.24 ID:uXxto72B0
――公園
忍「……今日は、ありがとうございます」ペコリ
男子「いや、こっちこそありがとう」
忍(お互いに、自己紹介をし合ったところ)
忍(どうやら、私と同い年の方ということが分かりました)
男子「……むしろ、会ってくれるなんて思わなかったから、すげえ嬉しい」モジモジ
忍「あ、会わないなんて……そんな失礼な」
男子「いや、だってさ……」
男子「あ、あんなことされたら、困るだろ?」
忍「……そ、そんなことは」アセアセ
男子「ホント、ごめん」ペコリ
忍「謝らないでください」
忍「――」チラッ
忍(足元にはスポーツ用の鞄)
忍(刈り上げたヘアスタイル……)
忍「――もしかして」
男子「?」キョトン
忍「野球部の方ですか?」
男子「うん、そうだよ」コクリ
忍「……凄いですね」
男子「いやいや、フツーだって」
男子「……ただ昔から、野球好きでさ」
男子「バットにボールが当たった時のあの感触も」
男子「グローブにしっかりとボールをキャッチした時の気持ちよさも……」
男子「全部、好きなだけだよ」ニコッ
忍「……」
497 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:23:04.35 ID:uXxto72B0
忍(野球について話す、その姿は)
忍(とてもキラキラしていて、笑顔もきまっていました)
忍(……きっと)
男子「いやー、今日もさ。部長の打ったボール、キャッチできて、すげえ嬉しくて……」
忍(――他の「女の子」にも、好かれるでしょう)
男子「――あ」ハッ
男子「ごめん。ちょっと熱くなりすぎた」カァァ
忍「いえ、お気になさらず」
忍「……むしろ、凄く楽しそうで、私も楽しくなりました」
男子「マジ!?」
忍「ええ、ホントです」ニコッ
男子「……」
男子(そう言って笑ってくれた)
男子(そういえば、さっきからずっと太陽が出ている)
男子(……もし、かして)
男子「あ、あの――」アセアセ
忍「はい」
男子「……本題」
忍「!」ピクッ
男子「入っても、いいかな、って」
忍「……」
忍「はい」コクリ
男子「……えっと」
男子(落ち着け、俺……太陽も味方してくれてるぞ)
男子「俺は、その……お、大宮さんが好きだ」
忍「……」
男子「そ、それで」アセアセ
男子「できれば――付き合いたい、って今でも思ってる」
忍「……」
男子「嘘じゃなくて、ホントに心からそう思う」
男子「……好きだ」
忍「……」
498 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:24:34.96 ID:uXxto72B0
――彼が話している間、太陽は姿を現し続けていた。
緊張して噛みそうになりながらも、彼は素直にその気持ちを口に出していた。
たしかに、太陽が味方してくれていたのだろう。
その、すぐ後で――。
雲が、太陽を覆った。
ほんの少しだけ、辺りが暗くなった。
彼がそれに対し、少しだけピクッとした瞬間――
「ごめんなさい」
ペコリと頭を下げる「彼女」が、そこにいた。
忍「……あの」
忍「実は……私には、もう」
忍「お相手が、います」カァァ
男子「……あ」
忍「ま、まだ一緒になったばかり、なのですが」
忍「私は、その子た――いえ、その子が大好きで」モジモジ
男子「……」
忍「で、ですから」
忍「私は、お付き合いできません……」
男子「――そっか」
忍「わざわざ来て頂いて、こんな返事で」
忍「本当に、ごめんなさい……」
男子「いや、気にしないでくれ」
忍「で、ですが……」
男子「――あー、なんだか」
男子「うん、突っ走りすぎてたんだな、俺」
忍「……」
男子「実はさ、誰かを『好き』になるのって初めてで」
男子「今まで彼女持ちの友達とかと話してても、何だかピンと来なかったんだよ」
男子「『何か違うな』って、思ってきた」
忍「――」
499 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:25:27.94 ID:uXxto72B0
男子「でも」
男子「今日、こうしてきっちりと気持ちを伝えられて」
男子「ホントに何となくだけど――」
男子「好きな相手と一緒にいる、っていうのがどんなに大事かってのがよく分かった」
忍「!」
男子「――ような、気がしたよ」
忍「……あの」
男子「ありがとな、えっと……大宮忍さん」ペコリ
忍「あっ……」
男子「上手く言えないんだけどさ……何だか」
男子「凄く、サッパリしたんだ」
忍「……そん、な」
男子「それじゃ俺、そろそろ行くよ」
忍「……」
男子「大宮さん」
忍「は、はい」
男子「――その、相手の『男』と」
忍「……」
男子「幸せになってくれよ?」
男子「そうなってくれなきゃ……俺が困る」
忍「――ええ」
忍「絶対に、幸せになります」コクリ
男子「……ありがと」
男子「それじゃ、いきますか」
男子「うわ、太陽消えてから寒くなったな……」ブルッ
男子「――じゃあ、また」
忍「……」
500 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:26:27.98 ID:uXxto72B0
――咳が、漏れ出る。
身体を震わせながら公園の出口へと向かう途中で、ふと気づく。
考えてみれば、太陽が出ている時だって寒かった。
当然だ。もう秋は通りすぎて、冬がその出番を今か今かと待っている時期なのだから。
(どんだけ緊張して……)
くしゃみしながら、思う。
(どんだけ嬉しかったんだよ、俺は……)
身体は冷えながら、まだ頭と心は熱かった。
とはいえ、さっきから急に熱くなったり、急に冷え込んだりする。
そのジェットコースターぶりに、油断してしまいそうになる――
(……油断、しちゃ)
ダメだ、と彼は強く思う。
せめて、公園から出るまでは、嬉しさでいっぱいのままであってほしい。
そうだ。彼女持ちの、あのドタキャン野郎の気持ちが分かったんだ。
それでいいじゃないか――
501 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:29:37.32 ID:uXxto72B0
「……ありがとう、ございましたっ!」
ビクッとした。
コーチや監督に怒号を飛ばされた時のように、身体が震えた。
その声は、そういった人の野太いものに比べて、ずっと甘かったのに――
ゆっくりと、振り向く。
そこにはベンチから立ち上がり真剣な表情をしている、大好き「だった」相手の姿があった。
自分も寒いだろうに、その姿からは全くそういった気配を感じさせない。
「わ、私もっ! 『好き』っていうことが、よく分かっていませんでした!」
「……!」
「でもっ! いざ私がこ、告白されて……それでやっと分かりました!」
真剣な佇まいでありながら、緊張は全く隠せていない。
さっきから相手の口から出てくる言葉は、何だかまとまりのないものに感じられた。
でも彼の心に、ビシビシと響いてくる力は、たしかにあった。
コホンと、「彼女」は一息ついて、ゆっくりと言う。
「私は、えっと……そ、そちらとはお付き合いできません。ですが……」
そこで、相手としっかりと視線を合わせ、
「そちらが気づかせてくれなかったら、私は……きっと、幸せにはなれませんでした。本当に、そう思います」
「……」
最後まで、相手の話を聴いた。
もし、彼が複雑な心境になっても無理はないだろう。
「自分が告白されなかったら、相手を『好き』だとは分からなかった」と言われても、どう反応すればいいのか。
「――参ったな」
クルッと、相手に背を向けた。
後ろで、ピクッと反応する「彼女」の姿が目に見えるようだった。
「大宮さん。そういうこと、言われちゃうと」
大丈夫だ、まだ口調に変化はない――
しっかりと、最後まで伝えなくては。
502 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:30:03.53 ID:uXxto72B0
「嬉しくなったり悲しくなったり、どうすればいいか分からなくなるって」
「……ごめんなさい。それでも、絶対にお伝えしたかったんです」
彼の背に、「彼女」の言葉が被さってくる。
それを聞きながら、思った。
きっと「大宮忍さん」も、どう伝えればいいかで悩んだんだろう、と。
ただ断れば済む所を、しかしそう割り切ることは出来なかったんだろう、と――。
「……あのさ、大宮さん」
「はい」
再び、彼は相手と視線を合わせる。
彼の表情を見て、「彼女」は少しだけピクッとした、ように見えた。
正確には、彼の目元を見て――
「もう一度、言うけど……」
気づけば、辺りは少しだけ明るくなっていた。
太陽は雲に挟まったり、その外に出たりしていた。
折しも今、太陽は完全に雲から離れていた――
「絶対に、幸せに、なってくれ」
言葉を区切りながら言って、笑顔を見せる。
目元を少しだけ潤ませながら、しっかりと。
「……はい。お約束、します」
相手――大宮忍も、笑った。
それだけで、彼にとっては十分だった。
「じゃあな」と二度目の別れの挨拶をして、彼は公園を出て行った。
その背中は、最後までしっかりと伸びていた。
503 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:33:15.01 ID:uXxto72B0
――公園
忍「……」
勇「お疲れ、シノ」
忍「――お姉ちゃん」
勇「大丈夫だった、みたいね」
忍「……はい」
勇「――さっき、相手の子とすれ違ったわ」
忍「……」
勇「声は出してなかったけど……泣いてたわ」
忍「そう、ですか……」
勇「――でもね」
勇「何だか……清々しい感じでもあったの」
忍「――!」
勇「いい子、だったのね……」
勇「それを見て、『あーあ。シノ、もったいなかったかもなぁ』って」
勇「ちょっと、思っちゃった」クスッ
忍「――もう、お姉ちゃんったら」ニコッ
忍「私は、あの方とお約束したんですよ?」
勇「え、なになに?」
忍「それはですね……」
――
男子「あっ、もしもし?」
男子「前に話した子なんだけど……振られちまったよ」
男子「いやー、イケるとちょっと思ったんだけど……そんな上手くいかねえよなぁ」
男子「え、慰め会? いやいやいいって、そんな気を遣わなくて――」
男子「……そんなに言うなら、後でサイゼ行くか。うん、それでいいよな」
男子「ありがとな……ああ、後さ」
男子「――ありがとな、学園祭に誘ってくれて」
男子「おかげで、あの子を好きになれた。ホント、ありがとう」
男子「……え?」
男子「『あーあ、あたしも彼氏ほしいなぁ』って……」
男子「『どう思う?』なんて言われてもなぁ……うーん」
男子「……っていうかお前、いつもそればっかだな」クスッ
504 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:34:15.39 ID:uXxto72B0
――
忍(……絶対に)
忍(絶対に、幸せになります。だから……)
忍(いつか、そちらも――)
忍(幸せに、なってください……)
505 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/14(土) 00:42:39.60 ID:uXxto72B0
以上、『告白のお礼』でした。
今回、カレンとアリスはお留守番です。期待された方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。
帰宅したシノにハグしている彼女たちの姿を想像して頂ければ幸いです。
次回は、思い切り動いてもらう予定です……「予定」ですね。
ただでさえオリキャラを投入してしまっているので、本来ならこのパートはもう少し短くしてサッパリと終わらせるつもりでした。
でも書いてみたら、思った以上に感情移入してしまい、長くなってしまいました。
いつか彼もシノが言っているように「幸せになる」でしょう、きっと。
……最後まで、彼はシノの「正体」は分からないままです。
「相手の女子から教えてもらってるんじゃ?」という疑問を持たれた方、どうかお見逃しを……。
長文になってしまいました。それでは、この辺で。
二期まで一ヶ月を切りましたね……楽しみです。
506 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/19(木) 01:30:04.59 ID:LFw5pSPt0
――私たち、一緒にいることになりました。
シノからそんな知らせが私たちのもとに届いたのは、文化祭から間もない時のことだった。
後で聞いたら、どうやら私だけでなく陽子もちょっと困ったらしい。
「どうして困ったの?」なんて聞くつもりもなかった。
きっと、私と彼女の「困った理由」は、ほとんど同じものだろうから。
というわけで、私たちは――
『幼なじみ 再考』
――高校
カレン「シノ!」
忍「なんですか、カレン?」
カレン「……」チラッ
カレン「あっちの席で、Coupleが『アーン』っていうのをしてマス」
忍「……ああ、お二人はお付き合いしてるみたいですから」
カレン「というわけで、シノ」
カレン「私にも――」ジッ
忍「あっ……」
忍「カ、カレン……」モジモジ
アリス「カ、カレン!」
アリス「シノが困ってるからダメだよ!」
カレン「Hnn……そうデスカ」
カレン「――アリスがさっきから、あっちの方をチラチラ見てるカラ」
カレン「私も、乗っからせてもらったのデスガ……」
アリス「き、気になるのはホントだけどっ!」アセアセ
アリス「――もう、お家でずっと、甘えてるでしょ?」
カレン「……アリスは優しいデス」ニコッ
カレン「それじゃ、シノ。『アーン』はまた今度、というコトデ」
忍「」
アリス「あ、固まってる……」
507 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/19(木) 01:30:34.75 ID:LFw5pSPt0
陽子「……」
綾「……」
陽子(ああ、そうだった)
陽子(私たちは、いつも通り一緒にお昼ご飯を食べている)
綾(……でも)
綾(何だか――)
忍「――あ」ハッ
忍「だ、大丈夫です」
忍「私はずっと、お二人と一緒に『幸せになる』と決めたのですから……」ニコッ
カレン「……嬉しいデス」
忍「ええ、カレン」
カレン「そういうことなら、えっと……」
カレン「――や、やっぱり、『アーン』って」
忍「……」カァァ
アリス「カレン!」
カレン「……アリスは、おカタイデス」
カレン「もしかして――アリスも恥ずかしいのデスカ?」
アリス「……そ、それはっ」カァァ
忍「お、お二人とも」
忍「……そ、そういうのはお家の中で、ということではいけませんか?」
カレン「――シノ」
忍「た、たしかに」
忍「私は、あの日に『彼』とお会いしてから、お二人に対する覚悟を決めました」
忍「……で、でも。やっぱりまだ、恥ずかしいです」
アリス「……シノがそうしたいなら、それで大丈夫だよ」
忍「アリス……」
アリス「――だって」
アリス「シノは、私『たち』の大切な……」
アリス「お相手……だから」カァァ
カレン「Yes! シノは私たちのPartnerデスッ!」
忍「――あ、ありがとうございます……」モジモジ
綾(――三人だけの世界が作られてるような……)
陽子(いやまぁ……私も綾も、『相手』はいたことないから分からないけど)
綾(お話で見た時も、こういう感覚はあったみたいね……)
陽子(きっと綾と今の私は、同じような気持ちなんだろうなぁ……)
508 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/19(木) 01:31:08.90 ID:LFw5pSPt0
カレン「……あっ、そうデシタ」ポンッ
カレン「シノ、アリス? 今日の放課後は、空いてマスカ?」
アリス「……え?」キョトン
忍「放課後、ですか……ええ、空いてます」
カレン「――じ、実ハ」
カレン「パ、パパが……アリスとシノに会いたいみたい、デス」
忍「――あ」
アリス「――そっか」
カレン「ハイ。良かったら今日の放課後……お願いできマスカ?」
アリス「うん、勿論!」
忍「ええ、大丈夫です」
カレン「All right! 安心しマシタッ!」ニコッ
忍「……ということはもしかしたら」
忍(アリスの、お母さんも……)
陽子「……」
綾「……」
陽子(――シノとアリスと、カレンのお父さんが)
綾(……『娘さんを、ぼくに下さい』?)
綾(い、いや! 発想が飛躍しすぎでしょ、私っ!)ブンブン
カレン「シノ、大丈夫デス。前みたいに、パパにケツイを示す必要はありマセン)
忍「そ、そう、ですか……」
綾(――って、もう実行済み!?)ビクッ
陽子(うひゃあ……何だかシノが遠くに行っちゃったような気がする)
カレン「――それでは、シノ!」
カレン「また後でお会いしまショウ!」
忍「……は、はい」
アリス「ねえ、カレン……もしかして」
カレン「アリス? そこから先はSecretでお願いシマス!」
アリス「――そっか、わかったよ」
カレン「それじゃ、マタ――oops!」
陽子「?」
綾「?」
509 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/19(木) 01:31:48.10 ID:LFw5pSPt0
カレン「Sorry、お二人トモ……」
カレン「今日、シノやアリスとばかりお話ししてしまいマシタ……」
カレン「――ゴメンナサイ」ペコリ
陽子「いやいや、いいってカレン」
綾「ええ、そうよ」
綾「その――シノと、『一緒にいる』ことを決めたんでしょう?」モジモジ
綾「それだったら、会話が多くなるのも無理ないわ」
カレン「……Thanks、お二人とも」ニコッ
カレン「それではマタッ!」
忍「……行っちゃいましたね」
アリス「うん……」
陽子「……ってことは」
陽子「シノ。今日は、私たちと一緒には帰れない、のかな?」
忍「あっ、陽子ちゃん……ごめんなさい、そういうことになるかと」
忍「――あちらのお父さまに呼ばれたら、お断り出来ませんし」アセアセ
綾「たしかに、それもそうよね……」
忍「綾ちゃんも、ごめんなさい」
綾「ううん、気にしないでシノ」
綾「――ちょ、ちょっと遠くに行った気がしただけだし」カァァ
陽子(それは綾にとって「ちょっと」なのかな……?)
アリス「ヨウコ、アヤ……」
アリス「ごめんね」
陽子「え、アリスまでどうかした?」
アリス「――いや」
アリス「だ、だって」
アリス「『幼なじみ』のシノを、私とカレンがその……と、取っちゃったから」
陽子「……」
綾「……アリス」
アリス「ご、ごめんね。おかしなこと言っちゃって」
陽子「――いや、大丈夫だよアリス」
綾「わ、私たちは……シノやあなたたちが」
綾「幸せになってくれれば、それで――本当に嬉しいんだから」ニコッ
陽子(……綾)
510 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/19(木) 01:32:20.11 ID:LFw5pSPt0
アリス「……あ、そっか」
アリス「きっと――私は今日、向こうにお泊りすることになるかも」
忍「ええ……きっと、そうなるでしょうね」
アリス「シノ、どうする?」
忍「――私、は」
忍「そうですね、少し考えたいと思います」
アリス「うん、それでいいと思うよ」
忍「ええ」コクリ
綾「……」
陽子「……」
綾(シノが、ご挨拶を……)
陽子(もうすでに、一度済ませているらしいとはいえ……)
綾(……本格的に)
陽子(シノが――『女の子』と、付きあおうとしてるんだな……)
――それから、放課後を迎えた。
カラスちゃんの話を聞いてから、私たちはいつも通り下校した。
その間に、シノたちはカレンのマンションへと向かっていった。
で、私と綾は、互いの家に帰った。
実のところ、かなりモヤモヤした感覚は残っていたけど……
(ま、あの三人なら大丈夫か)
と、自分で納得することにした。
きっと、綾もそんな風だったんだろう。
少ししてから、メールが来た。
差出人は、私たちの大切な友達。
宛先を見るに、どうやら私だけじゃないらしい。
メールを開くと、そこには――
『陽子ちゃん、綾ちゃん。
出来たらでいいのですが……今夜、お会いできませんか?』
511 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/19(木) 01:33:11.05 ID:LFw5pSPt0
一旦、ここまで。
次回でおしまいになるか、もしかしたらもう少しかかるかもしれません……
それでは。
512 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/19(木) 19:15:39.72 ID:GT0n4EZxO
乙!
二期て来期だっけ?はよ!
513 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/21(土) 09:52:42.45 ID:YcRjbObNo
今夜会う(意味深)
514 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/27(金) 00:39:56.91 ID:YIgeImhp0
――ボクは、男です。
生まれて初めて、世界が反転するような感覚を味わった。
頭が地面に、足が空に、そして身体が浮遊して……。
私は頭をクラクラとさせながら、目の前で恥ずかしそうにしているおかっぱ頭の『女の子』を見る。
女の子――大宮忍、さんは少し照れくさそうな笑みを零していた。
ほんのりと赤く染まった頬。
柔らかい立ち居振る舞い。
髪こそ短いものの、どこからどう見ても「女の子」そのものだった。
――その……男子、苦手だって言ってたよね?
ついつい見とれていると、すぐ近くから声がした。
綺麗な赤髪の子――猪熊陽子、さんだった。
いつものハキハキとしたトーンが、少し落ちていた。
――シノは男子だけど、私の大切な……ホントに大切な友達なんだよ
そう言いながら、猪熊さんは大宮さんを見つめる。
その視線に、大宮さんも応えた。
「優しさ」という言葉は、今のこの二人に完璧に一致するといっても間違いないだろう。
見てる私まで、少しドキッとした。
――で、なんだけど。シノも一緒にいて大丈夫かな、って
その時の猪熊さんの表情を、私は今でもよく覚えている。
口元は綻ばせたまま、普段強気な目元を少し垂らし、視線は私一直線。
羨ましい、と思った。
何が? と聞かれると困るけど、本当に何となく。
この二人が……とても羨ましく感じた。
コホン。
私は一息つくと、二人の「女の子」に向けて――
「……う、嬉しい、です」
515 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/27(金) 00:41:12.16 ID:YIgeImhp0
『幼なじみ 再考 後編』
――大宮家・忍の部屋
忍「えっと……今日は、わざわざありがとうございます」ペコリ
陽子「堅苦しいって、シノ」
綾「そうよ。私たちがあなたの相談事を断れるわけないじゃない」
忍「お二人とも、本当に……」
陽子(結局)
陽子(明日は学校が休み、ということもあって)
綾(話し合った結果、シノの部屋が集合場所になった)
綾(もし、相当遅くにまでなったら、泊めてもらうようにお願いした)
陽子「――それで?」
綾「何か、あったの?」
忍「……じ、実は、ですね」
忍「そ、その――」
忍「私、もしかしたら……日本から離れちゃうのかも、って」
陽子「……あ」
綾「そう、なのね……」
忍「……あまり驚いてませんか?」
陽子「うん……まあ」
綾「あの二人と一緒にいる、のなら」
綾「……もしかしたら、シノがイギリスに行くことも有り得るのかなー、って」
綾「そんなことは、思ってたの」
陽子「私も……それだったらシノ、カラスちゃんに特別授業申し込まないとなーとか」
陽子「考えたりしてた」クスッ
忍「うう、陽子ちゃん……耳に痛いです」ウルッ
忍「――それで、ですね」
忍「えっと……色々とこんがらかっちゃうんですけど」アセアセ
陽子「大丈夫大丈夫、夜は長いから」
綾「陽子……あなた、また夜更かしを」ジトッ
陽子「もう、綾は優等生すぎるって」
綾「そ、そんなことは……」アセアセ
忍(――ああ、落ち着きます)
忍(このお二人といると……凄く)
忍(……ああ、私は本当に)
516 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/27(金) 00:41:43.03 ID:YIgeImhp0
忍「……カレンのお父さんと、アリスのお母さん」
忍「お二人に、まず『イギリスに来る気は?』といったことを尋ねられました」
陽子「なるほど……」
綾「シノは、なんて?」
忍「――すぐには、応えられませんでした」
忍「イギリスは、お二人もご存知の通り私にとって大切な場所です」
忍「でも、すぐにはお返事が……」モジモジ
陽子「うーん……そうだよねえ」
綾「無理もないわよね」
忍「――『ずっと、一緒にいる』」
陽子「……あ」
綾「シノ……」
忍「『そう、言っていたね。それは』――」
忍「『結婚、を意味しているのかな?』」
陽子「!」
綾「!」
忍「……と、カレンのお父さんが尋ねました」
忍「恥ずかしながら、私はそこで固まってしまって」
忍「一分が何十分くらいに感じてしまいました」カァァ
陽子「……け、結婚」
綾「シ、シノが……?」
綾「い、いや! 落ち着きましょうっ」ブンブン
陽子「……あ、綾が一番落ち着いてないって」
綾「あ、あなただって、声が裏返ってるじゃないの」
陽子「う……」アセアセ
忍「綾ちゃん……」
綾「そ、それで」
陽子「な、なんて応えたんだ?」
忍「……固まってしまった後」
忍「――『本当に有り難いのですが』」
忍「『私はまだ、あのお二人と結婚するという決意は出来ていません』」
忍「『今は、こうしてお二人のことを前よりも、もっと深く知っていきたいし、そういう時期と私は思っています』」
忍「……といった感じでした」
陽子「す、凄いな……」
綾「な、何だか、一足跳びにシノが遠くへ行っちゃったような気さえするわ……」
忍「い、いえ! 実際は噛み噛みで、とてもとても……」アセアセ
陽子「もし、そうだとしても」
綾「……凄いわ。シノ」
忍「うう……」カァァ
517 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/27(金) 00:42:09.43 ID:YIgeImhp0
綾「……」ジッ
――この学校のこと、分かりますか? それならボクが教えて――
綾(……誰よりも早く、私に声を掛けてくれたのはシノだった)
綾(あの時はシノには失礼なことに、結局、成り行きで陽子に頼りきりになっちゃったけど……)
綾(当時から、シノの積極性とか気配りは凄いと思ってたのよ……)
綾(この前の文化祭の時だって……あなたがあんなことを言ってくれなかったら……)
忍「? 綾ちゃん?」キョトン
綾「……シノ、ちょっといい?」コホン
綾(だから――)
綾「――私も、よく知らないことだけど」
綾(今度は私が……助ける番、よね?)
綾「イギリスって、その……『一夫多妻制』じゃないわよね?」
忍「いっぷたさい……」
陽子「えっと……『一人の男の人相手に、女の人は何人でも結婚できる』みたいな感じじゃないかな」
忍「なるほど……一つ、勉強に」
忍「あ」ハッ
綾「気付いた、シノ?」
陽子「――ってことは」
忍「私……あのお二人と結婚できないじゃないですか」モジモジ
陽子「そうなるよなぁ……」
綾「――いえ、でも」
綾「そのことをイギリスに住んでいるお父さん方が知らないわけない、わよね」
陽子「あ、そっか……」
忍「そ、それでは、どうして……?」
陽子「――ね? 名探偵綾?」
綾「そ、その呼び方やめてってば」アセアセ
陽子「文化祭で見せたキレを、もう一度お願い」
忍「……文化祭で見せた?」キョトン
綾「シ、シノ、なんでもないのよ」カァァ
綾「……えっと」
綾「実際は結婚できないにも関わらず、シノが結婚できるか聞いてきた」
綾「それをシノに聞く理由――」
綾「……そういえば、シノ。あなたがお話ししている間、アリスたちは?」
忍「あっ、お二人はお風呂に入ってました」
陽子「……つまり、シノだけを相手にしていたんだ」
忍「はい」コクリ
綾「――そういうことなら」
518 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/27(金) 00:42:36.53 ID:YIgeImhp0
綾「もしかしたら」
忍「はい」
綾「……あの二人が、シノの近くにいたら」
綾「そんな質問をされてシノが困ったら、すぐに突っ込みを入れて」
綾「あやふやなまま、なし崩し的にお話が終わっちゃうだろうから……」
綾「シノが――あなたが、心からどう思っているのかを相手は聞きたかったんじゃないかしら」
忍「私、が……」
綾「アリスとカレン」
綾「……その二人をどう思っているのかって、きっと相手の親御さんは凄く気にすると思う」
綾「きっと、何度確認しても足りないくらい……」
陽子「そっか、だから――」
綾「辻褄の合わない質問をしてでも、何度も確認したいんだと思うの」
忍「……わぁ」
忍「綾ちゃん、凄いです」
忍「私――頭の中がボーっとしてしまって、何も思いつきませんでした」
綾「……ありがとう、シノ」
綾「でも私は、シノに『お返し』ができてないから」モジモジ
忍「?」
綾「いつも私を励ましてくれる、あなたに」
綾「……少しは『借り』を返せているのかしら?」ニコッ
忍「――綾ちゃん」ニコッ
陽子「……」
陽子「はぁ……」タメイキ
勇『みんなー? お風呂、湧いたわよ』コンコン
忍「あっ、お姉ちゃん!」
勇『開けるわよ』ガチャッ
勇「やっほー、陽子ちゃんに綾ちゃん」
陽子「イサ姉……」
綾「こ、こんばんは」
忍「……」
勇「お風呂、誰が一番先に入る?」
忍「――あ」
忍「そ、それなら、私でもいいでしょうか?」
陽子「うん、いいよ」
綾「どうぞ」
忍「ありがとうございます」
忍「それでは」ペコリ
519 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/27(金) 00:43:12.99 ID:YIgeImhp0
陽子「……」
綾「……」
勇「――何だか、シリアス?」クスッ
綾「ええ、少し……」
綾「その――勇さんも、今の話を?」
勇「そうね。あなたたちが来てくれる前に、私と私たちのお母さんには話してたわ」
勇「――『結婚』なんて言葉が出てきたら、さすがに保護者には、ね」
綾「そう、ですよね……」
陽子「……」タメイキ
勇「どうかした、陽子ちゃん?」
綾「さっきから溜息が多いわね」
陽子「――いや、なんだか」
陽子「最近、自信をなくしそうになるからさー」
勇「自信?」
陽子「だって……」
陽子「この前」
陽子「シノが、アリスとカレンと一緒にいることで、すっごく悩んでた時」
陽子「……私、シノに何も言えなかったんだよ」
勇「……へぇ」
陽子「結局、偶然会ったヤツらに背中押されて、アリスたちとこういう関係になってシノの悩みは消えたみたいだし」
陽子「文化祭の時だって今だって、私はシノのこと……支えられてるのかなって」
陽子「最近じゃ、綾の方がずっと凄いしさー」
綾「……陽子」
勇「陽子ちゃん」
陽子「イサ姉……」
勇「……可愛いわね」クスクス
陽子「……へ?」キョトン
綾「い、勇さん?」ピクッ
勇「いやー、たしかに陽子ちゃんはシノといた時間なら、私たち家族の次くらいに長いし」
勇「きっと、『シノのことなら何でも知ってるはず』って思ったりしてるでしょ?」
陽子「そ、そんなことは……」アセアセ
陽子「ちょびっとある、のかも……」カァァ
綾「……そう、なのね」
勇「何だか、そうやって自信持っちゃってると」
勇「きっと、どこかで空回りしちゃうと思うの」
陽子「――う」
520 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/27(金) 00:43:48.11 ID:YIgeImhp0
勇「……私だって、そうよ」
陽子「イサ姉が?」
勇「だって」
勇「……陽子ちゃんと一緒で、私だってあの時」
勇「シノたち三人が一緒にいるように、背中を押しきれなかったから」
綾「そ、そこは、陽子も勇さんも……シノは、その、『男子』ですし」
綾「その時、話していた相手も男子、ということは聞いています」
綾「そういう面でちょっと不利? でも……仕方ないと思います、けど……」
勇「ありがとね、綾ちゃん。でも――」
陽子「うん。やっぱり……何だか悔しい、ような」モヤモヤ
勇「そう、悔しいのよね」クスッ
綾「そ、そういうものなんですか……」
綾「――ただ」
綾「その……」チラッ
陽子「綾?」キョトン
綾「よ、陽子がいなかったら、色々と大変だったと思います」
綾「私とシノを引き合わせてくれたのは……陽子、あなたよ」
陽子「……それ、は」
綾「自信、持って」
綾「文化祭の時、『本調子でいてくれないと困る』と言ったでしょ?」
綾「私だけじゃ、色々と限界だし、それに――」
陽子「??」
綾「あ、あなたが元気でいてくれなかったら、落ち着かないのっ!」カァァ
勇「……あらあら」
陽子「綾……」
綾「――ああ」
綾「もう、恥ずかしい……」カァァ
勇(綾ちゃんったら……)
勇(シノのことも陽子ちゃんのことも、大好きなのね……)
陽子「綾、ありがとな」ナデナデ
綾「!?」ビクッ
綾「な、何を……?」
陽子「いやぁ」
陽子「――何だか、文化祭が終わってから」クスッ
陽子「かっこよく見えることが増えちゃって……つい」ナデナデ
綾「あ、あなたねぇ……!」カァァ
勇(――大好き、か)
521 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/27(金) 00:44:20.86 ID:YIgeImhp0
――大宮家・浴室
忍「……」チャプン
忍(――相変わらず、平らな身体です)ペタペタ
忍(陽子ちゃんのように、出る所が出ているような体つき)
忍(昔も、それに今も憧れています……でも)
忍「私は、これで……」
忍(いいんですよね、アリス、カレン?)チャプン
――その頃・九条家
アリス「……」タメイキ
カレン「アリス、溜息つきすぎデス」
アリス「だ、だって……」
忍『……あ』
アリス『シノッ! お話、終わった?』
カレン『お風呂から出マシタッ! シノも――』
忍『ご、ごめんなさい、お二人とも……』
忍『す、少し――考えたいことが、ありまして』
カレン『?』
忍『で、ですからっ!』
忍『ま、またのちほどっ!』ダッ
アリス『――シノ!?』
アリス「――結局」
アリス「あれからしばらく経つのに、メールも来ないし」
アリス「私、ちょっと怒ってるんだよ?」プンスカ
カレン「What?」
アリス「だって――」
アリス「悩みがあるのなら」
アリス「私たちに相談してくれればいいのに……もう」
アリス「私たちとシノは『パートナー』なのに……」
カレン「――アリスはCuteデス」クスッ
アリス「……カレン? バカにしてない?」ジトッ
カレン「NoNo」
カレン「『おませさん』でも多分いいんじゃないでショウカ……」ニヤニヤ
アリス「カレン!」プンスカ
522 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/27(金) 00:45:04.70 ID:YIgeImhp0
カレン「……Maybe」
カレン「シノにはきっと、事情があったと思いマス」
アリス「事情?」
カレン「私のパパやアリスのママ」
カレン「二人と話したことは――もしかしたら、私たちには話し辛いことだったのかもしれマセン」
カレン「アリス? そういう時、アリスは無理してシノから聞き出したいデスカ?」
アリス「……うう、それは」モジモジ
カレン「私は、シノのこと信じてマス」
カレン「もしもホントに困って、私たちの手も借りたいということになったナラ……」
カレン「その時、アリスも一緒にHelpしまショウ?」
アリス「……」
アリス「うん、そうだね」
アリス「……何だかカレン、かっこいいよ」ニコッ
カレン「アリスは時々、Calmじゃなくなりマス」
アリス「れ、冷静じゃない……?」アセアセ
カレン「Yes」
カレン「ちょっと頭がカッとなってしまうと、なかなかやり直しがきかなくなるみたいデス」
カレン「……シノのことにナッタラ」
アリス「そ、それは――」カァァ
カレン「But」
カレン「アリスとは違っても、私にだって似たような所ありマス」
カレン「そういう時、アリスは昔から何度も助けてくれマシタ」
カレン「――今でも、『お姉ちゃん』って思うことある、って言ったら信じてくれマスカ?」
アリス「カ、カレン……」
カレン「……いいデスカ、アリス?」
カレン「私たち三人は――『チーム』デス」
アリス「……!」
カレン「私はシノが困った時、アリスが困った時に助けマス」
カレン「だからアリスは――私が困った時、シノが困った時に助けてくだサイ」
カレン「シノは私たちから言わなくても、私やアリスが困っている時、絶対に放っておきマセン」
カレン「いいデスカ?」
アリス「……」
アリス「お安いご用だよ、カレン!」ニコッ
カレン「それでこそ『お姉ちゃん』デス、アリス!」ニコッ
523 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/27(金) 00:52:06.55 ID:YIgeImhp0
ちょっと長くなった感がありますが、ここまでです。
綾のどこが探偵なんだ、と書いていて何度も突っ込みを入れたくなりましたが、とりあえず混乱してるシノの考えを
整理してあげている感じでした。
今回は三人が一緒にいることを決めた後で、幼なじみ二人+姉一人がどう感じているのかを書きたいと思っていました。
特に陽子の描写を考えていたので、今回書けて良かったと思います。
アリスとカレンについては、いつも通りなやりとりを繰り返して、少しずついろんなことを積み重ねているようなイメージでした。
それでは。
今回が比較的堅かったと思いますが、次回は柔らかい話になる予定です。
524 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/27(金) 11:47:24.23 ID:Pj5k60CyO
乙
525 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/30(月) 02:26:52.44 ID:bNuxkmvs0
――書店前
忍「……」
カレン父『そうか……結婚、するつもりはないか』
忍『……い、今は、まだ難しいかもしれません』モジモジ
アリス母『今は、ってことは……いずれ?』
忍『……』
忍『――結婚』カァァ
アリス母『あら、真っ赤になっちゃった……』
カレン父『無理もないか……』
カレン父『――ところで、忍ちゃん?』
忍『はい……?』ピクッ
カレン父『結婚、するつもりがないなら、それはまあともかく』
カレン父『――あの二人と、どうなりたいのか』
忍『……』ハッ
アリス母『うん、そうね。アリスとカレンちゃん』
アリス母『……二人と、これからどうしていくのかは考えておいた方が……』
アリス母『というよりは、考えてほしいかな』クスッ
カレン父『――親として、ね』
忍『――は、はい』
忍『がんばり、ます……』ペコリ
忍(あの日……お二人と話したこと)
忍(結婚、という言葉が先走ってしまって、陽子ちゃんたちにも話せてませんでしたけど)
忍(……考えてみれば)
忍(アリスやカレンの親御さんが気にするのも、当たり前なんですよね……)
忍「……そうと決まれば」
忍(あの話をしてから、すぐに12月がやってきました)
忍(12月といえば、陽子ちゃんと綾ちゃんと昔からイベントを開いてきました)
忍(もちろん、12月の終わりの方の……)
忍「クリスマス……」
忍(クリスマスといえば、私にとっては陽子ちゃん、綾ちゃんと一緒に過ごす日でした)
忍(もちろん、お姉ちゃんやお母さんたちもですけど……)
忍(――とはいえ、今年は)
忍「――クリスマス・デート」ボソッ
忍「……」カァァ
526 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/30(月) 02:27:24.40 ID:bNuxkmvs0
――書店内
忍「……」
忍(思った通り、クリスマス特集コーナーがありました)
忍(いわゆるデートのことが書かれた雑誌類が揃っています)
忍(『たまには県外! オススメの場所』『たまには贅沢? 美味しくてお洒落なお店』……)
忍(……こ、これは、大人の人向けでしょうね)アセアセ
忍(やっぱり、お財布は少し厳しいですし……)
忍「……あ」ピタッ
忍(『学生向け! 地域オススメデートスポット』)
忍(……他の雑誌に比べると、かさばっていません)
忍(それにお値段も……あと、何よりも)
忍(『お財布が厳しいあなたに!』)
忍(……これ、でしょうか)スッ
――忍の部屋
忍「……」ペラッ
忍(――なるほど、この場所ですか)
忍(たしかにここは、カップルの方が多く集まっていますね……)
忍(……あ、こちらの施設も)ペラッ
忍「うーん……」
忍(どこが一番いいのか、なかなかわかりません)
忍(ああ、困りました……)アセアセ
忍(たしかに、あまりお金がかからなそうな所を紹介してくれてるとは思いますけど……)
アリス「シノー、お風呂上がったよー」ガチャッ
忍「ひゃあっ!?」ビクッ
アリス「わっ!? ど、どうかした?」ビクッ
忍「い、いえ……その」
アリス「……あ」
アリス「シノ、何か読んでたの?」
忍「……え、ええ、まあ」
アリス「どんな本?」ニコッ
忍「……」
忍「ひ、秘密、です」
アリス「……!」ハッ
忍「――わ、私も!」ガタッ
忍「お風呂に、入ってきますね」
アリス「シ、シノ?」
忍「……アリス」ピタッ
忍「絶対に見たらダメですよ、絶対ですからね」アセアセ
527 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/30(月) 02:28:09.01 ID:bNuxkmvs0
アリス(――って、そんな何かのフリみたいなことを言いながら)
アリス(シノはお風呂に入りに行った……)
アリス「……秘密」チラッ
アリス(シノが秘密にするもの)
アリス(それって一体、なんなんだろう……)
アリス(――シノは、『男の子』)
アリス(男の子が、秘密にするもの……)
アリス「――!!」ピクッ
アリス(ま、まさか……!)
アリス(えっちな本……!?)カァァ
アリス「……」(←本に手を伸ばす)
アリス「――!」(←すんでのところで押し留まる)
アリス(ダ、ダメだよ、私!)カァァ
アリス(シ、シノが嫌がることをするなんて、絶対ダメ!)
アリス(……で、でも)
アリス(シノ……どんな子が好みなんだろ)
アリス(そ、そうじゃなくてっ!)ブンブン
アリス(わ、私とカレンをおいて……浮気?)
アリス(そ、そうでもなくてっ!)ブンブン
アリス「……ああ」
アリス(どうしようどうしよう……)アセアセ
アリス(こんなに寒い時期なのに、暑いよぉ……)カァァ
――少し経って
忍「ふう、いいお湯でした……」ガチャッ
アリス「……」ズーン
忍「ア、アリス?」
アリス「――ねぇ、シノ?」
忍「な、なんですか?」ビクッ
アリス「……そ、その」
アリス「シノが『秘密に』したいなら、答えなくてもいいんだけど……」
アリス「あ、あの本って……えっと」モジモジ
アリス「……えっちな、本?」カァァ
忍「」ビクッ
アリス「シノ……?」モジモジ
忍「――!」ハッ
528 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/30(月) 02:28:39.93 ID:bNuxkmvs0
忍「い、いいえ! 決してそうではありません!」
アリス「――でも、男の子が秘密にするのって」
忍「そ、そうとも限りません! 多分!」
アリス「……そ、そうなんだ」
忍「……」
忍(やっぱり、言ったほうがいいのでしょうか?)
忍(隠したのも、何となく秘密にしておいた方がいいと思っただけですし……)
忍(――でも、雑誌の中に『相手には秘密にしておいた方が効果てきめん!』なんて書いてありましたし)
忍(……やっぱり、今は)
忍「ごめんなさい、アリス」
アリス「ううん、怒ってないよ」フルフル
アリス「……えっちな本を読んでても、私はシノのこと嫌いになんてならないから」
忍(うっ、そう言いながら何だかとても悲しそうな顔に……)
――翌日・校内の廊下
忍(はぁ……)タメイキ
忍(結局、休み時間になるたびに)
忍(こうして隠れて、本を読み込んでしまってます……)ペラッ
忍(でも、注意深く読んでも、結局どうしたらいいのかわからないままです……)
忍(誰か、教えて頂けないでしょうか……でも、陽子ちゃんや綾ちゃん、それに二人の金髪少女も)
忍(きっと、こういった本は読んだことがないと思ってしまいますし……)
――えっちな本を読んでても、私は――
忍(……アリス)
忍(アリスは、やっぱり今日も複雑そうでした)
忍(健気に笑ってはくれるものの……不安そうで)
忍「……どうしましょう」テクテク
男子A「うわっ!?」ドンッ
忍「ひゃっ!?」ドンッ
バサッ
男子B「だ、大丈夫か!?」
男子A「あ、ああ……って」
男子A「大宮さん……」
忍「ご、ごめんなさい」アセアセ
忍「本を読んでて気づけなくて……」
男子A「い、いや、大丈夫だよ」
忍「うう……」シュン
529 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/30(月) 02:29:05.44 ID:bNuxkmvs0
男子B「――あれ?」
男子B「本がめくれてる……」
忍「あっ!」
男子B「――これは」
男子A「ま、まさか……」
忍「――え?」
男子B「あ、ごめん。見ちゃって」
忍「い、いえ……」モジモジ
男子A「……何だか、懐かしいな」
男子B「ああ――中学時代の思い出が」
男子A「トラウマじゃないのか」
男子B「うっせ」
忍「もしかして、読んだことが?」
男子A「ん、ああ、まあ……」
男子B「俺も、まあ、一応……」
忍「――」
忍「あ、あの」モジモジ
男子A「ど、どうかした?」
忍「――もし、なんですけど」
忍「よろしければ、お昼休み……お時間を頂けませんか?」
――昼休み
陽子「弁当だー!」
綾「あなた、ほとんど食べ終わってるでしょ……」
陽子「甘いね、綾。この時間のために、少しは残してるんだよ」
綾「……まあ、陽子らしいわね」
綾「でも、授業中に食べるのは――」
陽子「た、食べないと、集中できないんだよ!」カァァ
綾「陽子は変わらないわね……」タメイキ
カレン「お邪魔しマース!」ガラッ
アリス「あっ、カレン」
忍「お疲れ様です」
カレン「シノッ!」ダキッ
忍「カレン」ダキッ
アリス「――あ」ハッ
アリス(わ、私……二人の間に入って、大丈夫なのかな?)
アリス(昨日、シノを疑っちゃったし……それで朝も、何だかぎこちなくなっちゃったし)
アリス(うう……)
530 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/30(月) 02:29:53.36 ID:bNuxkmvs0
忍「アリス」
アリス「!」ピクッ
忍「どうぞ」ニコッ
カレン「ココ、空いてマス」
アリス「――あ」
ダキッ
忍「あ、こんな隙間にすっぽり入っちゃいました」
カレン「アリスは可愛いデス」
アリス「……カレン」ジトッ
カレン「素直に受け取ってくだサイ」
アリス「むぅ……」
忍「――こうして、三人で寄り添い合ってると、落ち着きますね」クスッ
カレン「温かいデス……」エヘヘ
アリス「うん……」ニコッ
陽子「――別世界、いってんなー」
綾「あの子たちが幸せそうにしてると、何だかこっちまで嬉しくなるわね」
陽子「うん、それはそうだけど……何か寂しくない?」
綾「否定はしないわ……でも」
綾「陽子だって、嬉しさの方が寂しさを上回ってるでしょ?」
陽子「……そうだなぁ」
カレン「それじゃ、ランチタイムデス!」
アリス「うん!」
忍「――皆さん」
忍「私、少し用事があるので、外に出ますね」
四人「!」
忍「ご、ごめんなさい……」
忍「約束が、あるので」
陽子「――あ、ああ」
陽子「昼休み中には帰ってくるよね?」
忍「はい」
綾「それなら、ここで四人で待ってるわ」
綾「行ってらっしゃい」
忍「……ありがとうございます!」
忍「それではっ」
アリス「……ああ、シノが」
カレン「Hnn……何かあるんでショウカ?」
陽子「ほら、二人とも私たちと一緒に食べよう?」
綾「お昼ごはんは楽しく食べるものよ?」
アリス「陽子、綾……」
カレン「Yes! それじゃ、たべマショウ!」
アリス「……うんっ!」
531 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/03/30(月) 02:30:57.12 ID:bNuxkmvs0
一旦、ここまで。
次回が終わったら準備段階終了、本番に移る予定です。
……正直、アリスの立場を思うと、気が気ではないかもしれませんね。
それでは。
532 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/03/30(月) 19:37:20.01 ID:354syVY0o
乙!
アリスだけ悩んでてかわいそうだなww
533 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/02(木) 21:40:40.66 ID:wnjAQmt10
――図書室
男子A「……あ、来た」
男子B「おっす」
忍「ど、どうも……」モジモジ
忍「わざわざ、ありがとうございます」ペコリ
男子A「いやいや、大丈夫」
男子B「……だってさ」
男子B「一応、友達、だよな?」
忍「……!」ハッ
男子A「まあ、『友達』の初デートだし」
男子B「協力するよ」
忍「――あ、ありがとうございます」カァァ
男子A(うわ、照れまくってる……)
男子B(正直、外見だけだと男子を困らせるのには十分すぎるな……)
忍「と、ところで」
忍「ホントに図書室でいいんでしょうか?」アセアセ
男子A「ああ、大丈夫」
男子B「昼休み始まったばかりで、ほとんど人もいないから」
男子A「ちょっと声抑えてればいいって。この時期、外は大宮さんだってキツイだろ?」
忍「……それもそうですね」
忍「それでは、本題に……」
男子A「……懐かしい」ボソッ
男子B「というかこれ、ほとんど変わってねえな」
忍「?」キョトン
男子A「あ、ごめん。こっちの話」
男子B「まあ、それはともかく……始めるか」
忍「は、はい」
忍「お願いしますっ!」スッ
男子A(おっ、小さめのノート……?)
男子B(それにボールペン……これは)
忍「頑張ります……」ゴゴゴゴ
男子AB(本気だっ……!)
男子A「――それで」
男子A「俺が見た限り、このルートが一番良さげだった」
男子A「ほら、オシャレな店もたくさんあるし……」
忍「たしかに……」カキカキ
534 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/02(木) 21:41:20.09 ID:wnjAQmt10
男子B「おい、ちょっと待った」
男子B「ここ、いいけど……想定金額見てみろって」
男子A「……う、まさかの」
忍「……5桁、ですね」タメイキ
男子B「これ、安さを売りにしてるのは確かだけど、それでも幅あるんだって」
男子B「……なるべく、安いほうがいいんだよな?」
忍「で、できれば……」コクッ
男子B「――それなら、こっちの」
忍「ああ、そこは私も聞いたことが……」カキカキ
男子A「ああ、ちょっとめくらせてくれ。これもアリかも」
男子B「あっ、そういやここもあったか……」
男子A「かなりいいだろ?」
男子B「……いや、もう少し」
忍「なるほどなるほど……」カキカキ
忍「……」カキカキ
忍「ありがとうございました」
男子A「いやいや、いいって」
男子B「途中からグダってた気がするけど、大丈夫だったか?」
忍「ええ、本当にありがとうございました」
忍「……凄く、嬉しいです」ニコッ
男子A(……ああ)
男子B(今更だけど……ホントに『男』なんだよな?)アセアセ
忍「――ところで」
男子A「?」キョトン
忍「お二人とも、その……」
忍「どなたかとお付き合いされたことが?」
男子A「」
男子B「」
男子A「……中学時代」
忍「は、はい」ピクッ
男子A「実は、好きなヤツがいて」
男子A「告白しようと思ってたら……えっと」モジモジ
忍「……?」
男子B「ああ、相手にはもう彼氏がいたってオチ」
忍「そ、それは……」
男子A「お、おい。最後まで言わせてくれって」
男子B「いや、辛そうだったし」
男子B「俺も似たようなもんだったしな。見ててキツい」
忍「……そちらも?」
535 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/02(木) 21:42:19.89 ID:wnjAQmt10
男子B「まあコイツとはちょっと違うけど、似てるよ」
男子B「――相手に告白出来なかったってトコは、同じだし」
忍「……!」
――あ、あの……凄く可愛いです――
忍「……」
忍(告白も出来なかった……というのは)
忍(きっと――相当、辛いのでしょうね)
男子A「そうそう。それで、同じ本……今、大宮さんが持ってるヤツ」
男子B「それ使って、一緒にすり合わせて考えたんだよな」
男子B「――後で、全部ムダになるなんて知らずに」
忍「そ、そんなことは!」
忍「お二人にも、いつか……お相手が出来るはずです」
忍「――こうして、親切に教えてくださるんですから」
忍「その時は、この本のことだって、きっと使えるはずです」
男子A「……そ、そうかな」
男子B「だったら、いいけどなぁ……」
忍「はい! 絶対です!」
男子A「――ありがとね」
男子B「何というか……高校に入ってから、相手の見込みすらないんだけどな」
男子A「俺もだなぁ」
忍「そ、そうだったんですか……」
男子A(――思えば)
男子B(中学時代、俺やコイツが好きだった女子のタイプって……)
忍「で、でも! お二人なら、いつかきっと……大丈夫だと思います!」カァァ
男子AB(今、目の前にいる子みたいな……)
男子A(まあ、もう相手いるし……)タメイキ
男子B(そもそも大宮さん、男だしなぁ……ああ)タメイキ
忍「??」キョトン
男子A「それじゃ、そろそろ戻るか」
男子B「そうだな。飯食う時間、なくなっちまうし」
忍「そうしましょうか」
――廊下
男子A「――あれ?」
男子A「お前、ほとんど休み時間中に食っただろ」
男子B「……そっちは授業中にな」
忍「お二人とも、陽子ちゃんに似てますね」クスッ
536 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/02(木) 21:42:52.05 ID:wnjAQmt10
――教室
カレン「……シノ、ちょっと遅いデス」
アリス「な、長引いちゃってるのかな?」
綾「大丈夫よ、二人とも。そう心配しないの」
陽子「そうだよ、二人とも」
陽子「すぐ帰ってくるって、シノのこと信じてあげなよ」
カレン「わ、私は最初から信じてマス……アリスは心配性ですケド」
アリス「カ、カレン!」
綾「あ、帰ってきたみたいね」
陽子「……あれ?」
男子A「それじゃ、そのルートでいい?」
忍「ええ、ありがとうございました」
男子B「……まあ」
男子B「大丈夫だろ。あの二人なら、大宮さんと一緒にいるだけで幸せだろうし」
男子A「……恥ずかしそうだな」
男子B「うっせ」
忍「本当に、ありがとうございました」ペコリ
忍「それでは」
男子A「うん」
男子B「おう」
忍「お待たせしましたっ」
綾「お、お疲れ様」
アリス「ちょっと心配したよ」
カレン「『ちょっと』じゃなかったデス、アリス」ニヤニヤ
アリス「……カレンだって不安がってたくせに」
カレン「アリスほどじゃありマセン」
アリス「……もう」プイッ
陽子「……」ジッ
男子A「?」
男子B「なんだ、猪熊?」
陽子「――いや」
陽子「二人と一緒にいるとは、思ってなかったからさ」
男子A「いや、まあ……」
男子B「ちょっと、他人事とは思えなかったし」
陽子「……そっか」タメイキ
537 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/02(木) 21:43:21.75 ID:wnjAQmt10
男子A「お、落ち込むなって」
男子B「そうだよ、偶然分かることだったってだけだし」
陽子「べ、別に、そういうわけじゃ……」アセアセ
男子A「それじゃ、俺たち飯食うから」
男子B「沈むなよー」
陽子「だ、だから……」
綾「……何を話してたの?」
陽子「い、いや……何でも」
忍「……私は、陽子ちゃんのこと頼りにしてますよ」
陽子「!」ピクッ
忍「ホントです」
陽子「……聞こえてた?」
忍「ちょっとだけ」
陽子「――照れるなぁ」カァァ
忍「可愛いですよ」クスッ
陽子「シ、シノ……」アセアセ
アリス「……はぁ」
アリス(昨日のえっちな――い、いや!)ブンブン
アリス(シノの内緒にしてる本のことも……色々と不安だけど)
アリス(昨日に比べたら気が晴れたみたいだし、良かった、かな?)カァァ
カレン「……アリス、Hな気分デスカ?」
アリス「う、うん、ちょっとだけ――」
アリス「カ、カレン……!?」ビクッ
カレン「アリスが何を考えてるノカ」
カレン「表情を見てれば、分かりマス」ニヤニヤ
アリス「わ、私は、別にHじゃ……」
カレン「Really?」
アリス「……め、Maybe」
カレン「やっぱりデスカ」クスッ
アリス「……もう」カァァ
忍「……」
忍(――やっぱり)
忍(私、アリスを変な気分にさせてしまってたみたいです……)
忍(何だか、悪いですね……でも)
538 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/02(木) 21:43:55.36 ID:wnjAQmt10
アリス「そ、それじゃカレンも、え、えっちな……?」アセアセ
カレン「アリス? 声が裏返りすぎてて何を言ってるのかわかりマセン」
アリス「き、聞こえてるくせに……」
忍(――あれ?)
忍(なんでしょうか、こう……)
アリス「カレンのバカぁ……」カァァ
忍(今のアリスを見てると……ゾクッとする感覚が)
忍(い、いえ! 私は何を考えてるんですか!)ブンブン
綾「……今、一瞬だけシノの顔が変わったような」
陽子「気のせいじゃないんだろうね、きっと……」
陽子「――シノ、時々ああいう風になるからなぁ」ヤレヤレ
539 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/02(木) 21:47:07.78 ID:wnjAQmt10
準備編、これにて終わりです。
ずいぶん長引いてしまいましたね……二期始まる前に、クリスマス編は一段落させたいのですが、どうなることやら。
最後にシノが鬼畜の片鱗みたいなものを見せましたが、おそらくこのSSのシノは基本的にどこかポンコツなままだと思います。
陽子はこれからどうなっていくのか……。
そもそも、以前書いたようにラッキースケベ的な描写は本当に書けるのか……。
色々と不安要素はありますが、書いていきたいですね。
それでは。
このSSでの、久世橋先生の出番も近い……?
540 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/02(木) 22:44:14.67 ID:PBtjOlFdo
乙デスヨ
鬼畜こけしネタくるのか……来ないのか
541 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/07(火) 01:14:06.00 ID:UjFu69qd0
――下校後・大宮家
忍「……」
アリス「シノ、今日は私が先にお風呂でもいいかな?」
忍「あっ、大丈夫ですよ」
アリス「……」
アリス「あ」ピクッ
忍「? どうかしましたか?」
アリス「……い、いや」
アリス「な、なんでも、ない、よ……うん」モジモジ
忍(明らかに何かありそうです……)
アリス「そ、それじゃ、お先にっ!」
忍「は、はい……」
忍「――どうかしたのでしょうか?」
――廊下
アリス「……ああ」トコトコ
アリス(シノが、えっちな……ううん)
アリス(私に内緒にするような本を読んでる、ってことを思い出したら……)
アリス(もしかして……シノ)
アリス(こうふん、したいのかなって……)カァァ
アリス(――前に、日本についての本で読んだことがあったっけ)
アリス(女の人が男の人より先に入ったら……あ、後で)
アリス「私のお湯、を……シノ、が」ボソッ
アリス「……」カァァ
アリス(そ、そんなことない、よね……うん)
勇「――アリス?」
アリス「わぁっ!?」ビクッ
勇「どうかした? 凄く顔、赤いわよ」
アリス「イ、イサミ……だ、大丈夫、だよ。うん」コクコク
勇「――ははぁ」ジーッ
アリス「な、なにかな?」ピクッ
勇「わかったわ」
勇「……シノに注意しないとね」
アリス「ち、違うよ、イサミ! こ、これは……私が」
勇「いいのいいの。少し、お話ししておきたいし」
勇「それじゃ、ごゆっくりー」ニコッ
アリス「……ああ」
アリス「ごめんね、シノ……」カァァ
542 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/07(火) 01:14:32.05 ID:UjFu69qd0
――忍の部屋
勇「で? アリスに何かしたの?」
忍「な、何もしてません」アセアセ
勇「……ふーん」
勇「ところで、シノ?」
忍「な、何でしょうか、お姉ちゃん?」
勇「……そのカバー掛かってる本、買ったの?」
忍「!」ピクッ
忍(あっ、慌ててたせいで、隠しそこねました……)アセアセ
勇「ね、見せてくれる?」
忍「……そ、その」モジモジ
勇「もしかして……Hな本?」
忍「そ、そんなことは――!」
勇「それで信じられると思う?」
忍「……あ」ハッ
勇「――いい、シノ?」
勇「『男の子』が、そうやって強く否定する時は」
勇「……女の子は、何か勘ぐっちゃうものよ」
勇「特に、それが……そういう本絡みの時は」
忍「――アリス」キュッ
勇「どれどれ……ああ、この本」
忍「し、知ってるんですか?」
勇「ううん。クラスの子たちが読んでたなぁ、って思いだして」
忍「……お姉ちゃんは、読んだことは?」
勇「――私には、相手はいないしねぇ」クスッ
勇「というわけで、私じゃ参考にならないでしょうね」
忍「な、何だか、お姉ちゃんは、こういうこと絡みだと強そうですけど……」
勇「……シノの中での私のイメージは、どうなってるのかしら」タメイキ
勇「まあ、とにかく」
勇「いい? あまりアリスを困らせちゃダメよ?」
忍「……そ、それは思いますけど」
勇「付き合い始めの時、一番怖いのは」
勇「お互い、まだ感情のコントロールに慣れてなくて……それで少しギクシャクしたりして」
勇「それで、色々とダメになっちゃうことなんだから」
忍「――お姉ちゃん、本当に未経験なんですか?」キョトン
勇「もう、シノったら。仕事柄、そういうお話を聞くことが多いだけよ」
543 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/07(火) 01:14:59.83 ID:UjFu69qd0
勇「それじゃね」
忍「……は、はい」
勇「――まあ、ちょっと怖いことも言っちゃったけど」
勇「アリスとカレンちゃんなら、シノから離れることなんてないと思ってるのよ」
忍「……お姉ちゃん」
勇「まあ、だからこそ……二人の気持ちも、きちんと考えてあげてね」ガチャッ
パタン・・・
忍「……」
忍(お姉ちゃんは、本当に頼りになります……)
忍(――この本)
忍(もう、12月も1週目が過ぎました……)
忍「……」
――少し経って
アリス「……た、ただいま。シノ」
忍「……アリス」
アリス「え、えっと」
アリス「は、入ってきても、大丈夫、だよ」アセアセ
忍(ああ、声が上ずって……)
アリス(――い、言えっこないよ!)
アリス(お、お湯のこと、なんて……!)カァァ
忍「――ちょっといいですか、アリス」
アリス「……シノ?」
忍「私、迷ってました」
忍「……アリスたちに内緒で進めて、当日にビックリさせたいなって」
アリス「――え?」
忍「こちらの本、なのですが……」
アリス「――あ」
忍「中身は……」ペラッ
アリス「……!」
アリス(え、えっちじゃない……これは)
アリス「……デ、デート?」アセアセ
忍「そうです」
アリス「……クリ、スマス」モジモジ
忍「ええ」
アリス「……」カァァ
544 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/07(火) 01:15:27.02 ID:UjFu69qd0
忍「ごめんなさい、アリス」
忍「そ、その……やっぱり私も、一応『男子』ですから」
忍「――心配、かけてしまいましたよね」タメイキ
アリス「シノ!」
ダキッ!
忍「――アリス?」
アリス「い、今は、私の顔見ないで」
アリス「……きっと、すごく恥ずかしいことになってるから」カァァ
忍「そ、そうですか……」カァァ
アリス「もう、シノったら……」
アリス「シノがもったいぶったせいで、わ、私……」
アリス「――変な気分に、なっちゃってたんだよ」
忍「変な、気分……」
忍(――って! わ、私は、何を想像してるんですか!)ハッ
忍(す、少しだけ、興奮してしまいました……)アセアセ
アリス「シノ?」キョトン
忍「……ごめんなさい、アリス。ちょっと動揺してしまいました」コホン
アリス「――ね、シノ?」
忍「アリス?」
アリス「シノのプラン作り、手伝おうか?」
忍「……」
アリス「――もし、一人でやりたいなら大丈夫だよ」
忍「――アリス」
アリス「あっ、気にしないで……それはね」
アリス「私もカレンも……」モジモジ
アリス「シノが一生懸命考えてくれた計画なら、嬉しくなるに決まってるから」カァァ
545 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/07(火) 01:19:18.78 ID:UjFu69qd0
――さて。
どこまでも愛しくてたまらない「天使」を思い出しながら、私は今日を迎えました。
期末試験というのものがあったような気がしますが、きっと何かの間違いでしょう……。
仮に赤点だとしても、後悔はしません。
というよりは、きっと全く後悔なんて出来ないと思います。
なぜなら――
「シノ! 待ってマシタ!」
「わっ!」
待ち合わせ場所に着いた瞬間、私の身体に心地よい重みがかかりました。
確認するまでもありません。この金髪を見れば、それだけで十分です。
そして、すぐ後に、とても芳しい香りが漂いました。
ああ、今日もこの子は可愛らしい――
「カ、カレン! 抱きつきすぎ」
「もう、アリス? スキンシップは大事デス」
「そ、それはそうだけど……」
いつものようにやり取りして、いつものように笑ったり照れたりするお二人を見ながら、私は胸がいっぱいになる気がしました。
そう。このお二人と、初めての――
そんなビッグイベントを前に、勉強なんて出来るわけがないのでした。
……ごめんなさい、烏丸先生。
いいえ、今日は勉強や試験のことは忘れましょう。
この大好きなお二人と一緒にいられる嬉しさを噛み締めましょう。
「……それではお二人とも、いきましょうか」
そう言って、階段に向かいながら二人を振り返ります。
「初めてのデート……クリスマスデートです」
546 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/07(火) 01:22:38.06 ID:UjFu69qd0
ここまでです。
二期が始まりましたね。書いている間に放映されていたようで、今から楽しみです。
とはいえ、まさか二期が始まってからも続くことになるとは……
今更ですが、このSSでシノたちの1年次の担任は烏丸先生という設定です。
2年次から、どうなっていくのは未定です。
それでは。
次回は、クリスマスデート本番の予定です。
547 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/07(火) 23:47:59.14 ID:9j4c8KxBo
乙であります
楽しみに砂糖吐く準備をしておこう
548 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/15(水) 01:09:38.90 ID:08HsLqgo0
『12月24日 クリスマス・イブ』
――駅構内
カレン「Uh、楽しみデス!」ニコニコ
アリス「うん、そうだね、カレンッ!」ニコニコ
忍「ふふっ――お二人とも、はしゃいじゃって……」ペラッ
アリス「あ」
カレン「シノ? その小さなノートハ?」
忍「えっと……これは、魔法のノートです」モジモジ
アリス「魔法、の……」
カレン「Magical Notebook!」ビシッ
忍「わっ、さすが綺麗な英語……」
アリス「わ、私だって、出来るもん!」アセアセ
カレン「アリス? こういうのは、最初にやった人の勝ちデス!」ニッコリ
アリス「……むー」ジーッ
忍(――本当に)
忍(愛しくて、たまりません……)カァァ
忍(さて……)
忍(あのお二人と話した通りの目的地は――)
忍「お二人とも、次の特急に乗りましょう」
カレン「特急……」
アリス「Special Expressのこと、だよ。カレン」
カレン「Oh、ちょっと忘れちゃってマシタ」
アリス「ふふっ、今度は私の勝ち」エヘン
アリス「ね、シノ?」
忍「――ええ」
忍「アリスの英語も、とても可愛らしいですね」
アリス「ありがと、シノー……って」
アリス「か、可愛らしい……?」
忍「あっ、もうすぐ電車が来ますよ」
アリス「……シノ」ズーン
カレン「――アリス」
アリス「カレン……」
カレン「やっぱり、アリスは――可愛い、デス!」ナデナデ
アリス「カレン!」
カレン「え? どうして怒るんデスカ?」
アリス「わ、私だってシノに――綺麗、って」カァァ
アリス「も、もういいっ!」プイッ
カレン「……アリスはアリスデス」クスッ
アリス「もう……」
549 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/15(水) 01:10:06.72 ID:08HsLqgo0
忍「ごめんなさい、アリス」
アリス「……シノ?」
忍「アリスの英語も綺麗ですよ」
アリス「……あ」
忍「――でも」
カレン「アリスの姿は可愛い、と、そう言いたいんデスカ?」ニコッ
忍「さすがカレンです」ニコッ
カレン「ふふっ、私はアリスのことはなんでも――」
アリス「ふ、二人ともっ!」プンスカ
――『自然公園前』駅・改札
アリス「……あ」
カレン「綺麗、デス……」
アリス(駅前には大きなクリスマスツリーが飾られていて)
アリス(駅前の商店街の屋根には、カラフルなイルミネーションが施されている……)
アリス(すっごく、オシャレだった――)
忍「ええ」
忍「えっと……この駅前商店街がイルミネーションを始めたのは今から10年程前。
それから若いお客さんがたくさん来るようになって、活気が――」ペラペラ
カレン「ワッ!? シノがガイドさんみたいニ……」ビクッ
アリス「さすが、魔法のノート……」
忍「……と、いうことみたいですね」パタン
忍「若いお客さん、というのはつまり――」
カレン「ツマリ?」
アリス「つまり?」
忍「――えっと」アセアセ
忍「わ、私たちみたいな、カップル――」カァァ
忍「そ、それでは参りましょう!」
カレン「わ、やっぱり私タチ……」アセアセ
アリス「カップル、なんだよね……」アセアセ
――商店街
アリス「わぁ……」
カレン「実際、中にはいってみるト――」
忍「迫力、ありますねぇ……」
忍「あ。このお店とか、どうでしょうか?」
アリス「あっ、可愛いビーズ!」
カレン「キラキラデス!」パァァ
550 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/15(水) 01:10:58.58 ID:08HsLqgo0
忍「ふふっ」
忍「……前に、お二人がこういうお品物が好きと話してましたから」
アリス「……もしかして、シノ?」
カレン「事前に……リサーチしてくれたのデスカ?」
忍「勿論です」クスッ
忍(図書室での打ち合わせが、本当に助かりました……)
カレン「――シノ」
アリス「大好き!」ダキッ
忍「わぁっ!?」
忍(だ、抱きつかれて――!?)
カレン「……ハァ」ウットリ
アリス「カレンも私も……一緒にハグしたくて、たまらなかったんだよ」
忍「そ、そうです、か……あはは」
「あらあら、仲良しねぇ」「最近は、友達同士でクリスマスを過ごすのかしら?」
「かわいー」
忍「――と、とにかく」
忍「中に、入りましょう、お二人とも!」
カレン「えー、もう少しクライ……」
アリス「は、離れちゃうの?」
忍「あ、後で、いくらでも……」モジモジ
カレン「Oh、それは素晴らしいデス!」ニコッ
アリス「シノ……嬉しい」ニコッ
忍(――いけません)
忍(愛しさと恥ずかしさで、頭が爆発しそうです……)カァァ
――店内
店員「いらっしゃいませー」
忍(入った先は、個人経営の小物屋さん)
忍(オススメ度:星5つ……デートスポットには最高の場所、とか)
カレン「あっ、これ可愛いデス!」
アリス「こっちのお人形さんもかわいー……」
忍「お二人とも、楽しんでますね」
忍「――あ。これとかアリスに」
アリス「わっ……この花柄、凄く好き」
忍「これは、カレンですね」
カレン「こ、これは……」
カレン「ユニオンジャックの、マフラー……」ジーッ
忍「お好きではないですか?」
551 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/15(水) 01:12:11.35 ID:08HsLqgo0
カレン「た、たしかに、好きデス。大好きデス」コクコク
カレン「――でも」
カレン「これ、ちょっとPriceが……」
忍「あっ、たしかに――」
忍(5000円超え、ですか……)
忍(うーん――これから色々と節約することを決めて、今日は、お二人にプレゼントしようと思っていたのですが)
店員「ああ、それなら、まけてあげてもいいよ」
忍「わっ!? ほ、ホントですか?」ハッ
店員「うんうん」ニコニコ
店員「せっかく、お友達同士で来てくれたんだし」
忍「おともだ、ち……」
カレン「? 私たち、やっぱりFriendsなんデスカ?」キョトン
アリス「ま、まあまあ、カレン」アセアセ
店員「?」キョトン
忍「――それでは、カレン」
忍「買いましょう、それ」
店員(おっ、踏み込むねぇ、この子は……)ニヤッ
カレン「――いいんデスカ、シノ?」
店員(結局、この子が買ってくれれば、それはそれで……あれ?)
店員(「いいんですか」……?)キョトン
忍「ええ」
忍「――私が、買って差し上げます」ニコッ
アリス「わっ。シノの顔が……」ビクッ
カレン「な、何だか――かっこいい、デス」カァァ
店員(え? え?)アセアセ
忍「それでは、店員さん」クルッ
店員「わっ!? は、はい」ビクッ
忍「こちらの花柄のお人形と、こちらのマフラーをお願いします」
店員「ど、どうもー」
カレン「――シノ、男らしいデス」ニコニコ
アリス「う、うん……嬉しいなぁ」ウットリ
店員「!?」ピッピッ
店員(お、おと、こ……?)
忍「? どうかしましたか?」キョトン
店員「い、いえいえ……」
店員(き、聞き間違いよね? そうに決まってるわよね?)アセアセ
552 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/15(水) 01:12:59.07 ID:08HsLqgo0
店員「――お、お買い上げ、ありがとうございましたー」
忍「はい、どうもありがとうございました」
カレン「シノ! プレゼント、ありがとうございマス」
アリス「……好きな人からの、クリスマスプレゼントだぁ」パァァ
店員(す、好きな人……)
店員(い、いえ! これはつまり――そう! バレンタインの「友チョコ」みたいなもの、よね?)ブンブン
忍「……ふふっ、どういたしまして」ニコッ
店員(こ、こんな笑い方する子が――おと)
店員(い、いや! もうやめましょう……)タメイキ
――店外
カレン「……何だか、あの店員さん、様子が変わってマシタ」
アリス「うん。何かおかしなことしちゃったかな?」モジモジ
忍「それはないと思いますけど……」
忍「――まあ、ともあれ」コホン
忍「お二人とも、お腹は空いていませんか?」ニコッ
553 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/15(水) 01:15:38.54 ID:08HsLqgo0
ここまでです。
気がつけば、もう2期も2話まで終わっていました。
久世橋先生が可愛くて、本当にたまりませんね……。
勿論、メインキャラもその他のキャラもみんな可愛くて、観ていて本当に安心できます。
さて、このSSでは、まだ1期ですが……。
久世橋先生の登場も、このデート回が終わったら近いと思います。
もうしばらくはデートの話で、「砂糖を吐く」ようなシチュエーションは、これからどんどん増えていくでしょう。
それでは。
554 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/15(水) 01:43:51.19 ID:H5LMo2z7o
今でも良い雰囲気なのにこれ以上の砂糖? どんと来い!
555 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/15(水) 12:35:47.45 ID:xSn/8qxUo
乙
砂糖を砂糖で塗り潰す凶悪ssと化してきたな
556 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/16(木) 00:26:48.77 ID:CnMvRXsYO
アニメ堪りませんな〜乙です!!
店員さんの心の声がかわいいww
557 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/19(日) 02:37:11.68 ID:2VTl2wCy0
――街中
忍「――うーん、おかしいですね」
アリス「どうしたの?」
忍「この辺りに……クレープ屋さんのスタンドがあるはずなのですが」
カレン「クレープ!? 大好きデス!」キラキラ
忍「ですが――ちょっと見当たりませんね」
アリス「そうなんだ……」
カレン「Uh……ちょっと残念デス」
忍「ごめんなさい」ペコリ
アリス「ううん。シノが謝る必要は、全然ないよ」
カレン「ハイ! 私たちはシノと一緒にいるダケデ――」ニコニコ
アリス「ホントに嬉しい……」ニコニコ
忍「……あ、ありがとうございます、お二人とも」カァァ
カレン「何だか、街中がオシャレデス」テクテク
アリス「クリスマスだね……」トコトコ
忍「そうですねぇ……」テクテク
カレン「あっ――あの人たち、腕を組んでマス」
アリス「わっ、大胆……」カァァ
忍「ふ、二人とも。あまり見ちゃダメですよ?」アセアセ
カレン「シノ、顔赤いデス」
アリス「……照れちゃった?」
忍「そ、そんなことはっ……」プイッ
忍(……一緒にいるのは当然、楽しいですけど)
忍(体温が上がりきって風邪でもひかないかどうかは……心配ですね)タメイキ
カレン「――シノ? ちょっと、シツレイしマス」ズイッ
忍「は、はい?」ピクッ
忍(カレンが私に近づいてきました)
忍(隣では、アリスがキョトンとした表情を――そして)
カレン「ソレッ!」バッ
忍(私の腕が、宙に浮かぶような感覚に――)
忍(一瞬の後、私の腕には艶やかで細い腕と一緒に――って!?)
忍「カ、カレン……?」アセアセ
カレン「ごめんなさい、シノ。ちょっとやってみたくなったデス」
アリス「わ、わ……カレン」
カレン「シノがイヤなら、すぐにやめマス」ジッ
忍「――!」
カレン「……周りを見てたら」
カレン「少し、浮足立ってしまったみたいデス……」モジモジ
558 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/19(日) 02:37:42.28 ID:2VTl2wCy0
忍「――い、嫌というわけでは、全然」
忍「ちょっと……ビックリしてしまいました」
カレン「それじゃ、このママ?」
忍「――は、はい。大丈夫です、よ」カァァ
アリス(言いながら、シノの顔は真っ赤になる)
アリス(イルミネーションの光に照らされて、その姿が私の目にはしっかりと映っちゃうから――)
アリス(シノを心配に思うより先に――)
アリス「……」ズイッ
忍「わっ!?」
アリス「カレンが右、なら」アセアセ
アリス「わ、私……左もらっても、いい、かな?」カァァ
忍「――アリス」
カレン「Oh、アリスが意外と大胆デス……」
アリス「カ、カレンがそんなことするから当てられちゃったの!」モジモジ
カレン「アリス? ツンデレって、きっとそういうものじゃないと思いマス」
アリス「べ、別に、私――ツンデレ? じゃ……」カァァ
忍「金髪のツンデレ少女――」
忍「意外と、というより……鉄板の組み合わせかもしれませんね」
アリス「え、シノ? なにか?」キョトン
忍「あっ……い、いえ」アセアセ
忍(――なんて、そんなトリップしている場合ではありません)
カレン「シノの右腕、気持ちいいデス……」
アリス「ひ、左腕だって――凄くいいもん」
忍(右からはウットリとした声が、左からは何とも可愛らしい声が――)
忍(両方の耳から私の頭に響いて、おかしくなってしまいそうです……)アセアセ
アリス「……でもさ、ちょっと思ったけど」
カレン「?」
アリス「カレン――やっぱり変わったよね?」
忍「!」ハッ
カレン「私、デスカ?」
アリス「うん」
アリス「――今までなら、シノがこういうことをして」
アリス「それでカレンが、照れちゃって……」
忍「……」
559 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/19(日) 02:38:08.18 ID:2VTl2wCy0
カレン「――たしかに、そうデシタ」
カレン「デモ……私、もう分かっちゃいマシタ」
カレン「シノが、大好きだって、コト」カァァ
忍「――!」
アリス「そっか、だから……」
カレン「Yes! もう、ハグでもキスでも、何でもできマス」エヘン
アリス「カ、カレン……ちょっと声、おっきいよ」
カレン「――あっ」ハッ
カレン「キ、キスはまだ……ちょっと照れマスネ」カァァ
アリス「もう……」カァァ
忍「」
アリス「わっ、シノが固まってる……」
カレン「Hnn……何だか、ヤッパリ私とシノが入れ替わりになってしまったのでショウカ?」
忍「い、いえ……えっと」アセアセ
アリス「そういえば、前にカレンがシノのお家に泊まった時からだよね?」
カレン「何だか、ちゃんと聞いたことはなかった気がしマス……」
アリス「何かあったの?」
忍「――う」ピクッ
忍「じ、実は、ですね……その」
忍「お姉ちゃんの言った通り――アリスやカレンが、ただ『好き』だったって、それだけだったので」
アリス「……シノ」
忍「で、ですけど」
忍「文化祭とか色々あって……アリスやカレンが、何だか心配になることが増えて」
カレン「ママみたいデスネ……」クスッ
忍「……だ、だから」
忍「私――ボク、が」
二人「!」ハッ
忍「ふ、二人を守らないと、って――そう、思って」
忍「『守りたい』って思ってたら、な、何だか……とても、恥ずかしくなってしまって」アセアセ
忍「だ、だって……お二人の親御さんに、け、結婚なんて、たとえ冗談としても……」モジモジ
アリス「シ、シノ、ありがとう。もうわかったよ」
カレン「これ以上は体調悪くしそうデス……」
忍「あ、ありがとうございます……」カァァ
560 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/19(日) 02:38:47.40 ID:2VTl2wCy0
アリス「――そっかぁ」
カレン「やっぱり、さっきのお店でも思いマシタガ……」
カレン「シノ……何だか、『男』らしくなってマス」
忍「――わ、私は、やっぱり」
忍「『女の子』で、いたかったんですけど……」タメイキ
アリス「うん。シノは女の子だよ」
カレン「そして、男の子デス」
忍「――な、何だかそれはそれで、照れちゃいますね」カァァ
カレン「まあ、何にシテモ――」ダキッ
忍(み、右腕にカレンの細い腕が……強く)
アリス「私たちは、ずっとシノと――」 ダキッ
忍(左腕にアリスの、カレンより細い腕が――)
カレン「Be with Us! デス!」ニコッ
アリス「一緒にいてね、シノ?」モジモジ
忍(左右から、大好きな金髪少女が軽く頬を染めながら)
忍(カレンは笑顔のまま、アリスは少し照れくさそうに――)
忍(――上目遣い、とは何て卑怯なものなのでしょうか)
「わっ、あの子たちかわいー」「最近の子はダイタンね……」
「友達かな?」
忍「」
忍「お、お二人とも……そろそろ、向かいましょうか?」
忍「お腹が空いている所、申し訳ないのですが――」
忍(ケータイの時刻表示は――6時ちょっと過ぎ)カチカチ
忍(今からなら……『予定』通りに見れますね)
アリス「シノ? これからどこに行くの?」キョトン
カレン「Where do we go?」キョトン
忍「――それは、ですね」
――このルートなら、きっとこれがハイライトかな――
――お金もかからない割には評判メチャクチャいいみたい――
忍(そのアイデア……今、使わせてもらいますね、お二人とも)グッ
忍「駅の名前にもあった場所――名所・自然公園です」
561 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/19(日) 02:41:48.63 ID:2VTl2wCy0
ここまでです。
胸やけされた方には申し訳ありません。
それは自分も同じですので……。
砂糖に砂糖をまぶすような展開が続きます。
次回はおそらく、そこにハチミツでもかかるんじゃないでしょうか? 漠然と思い浮かべてる段階ですが、もはや……。
クリスマスはカップルを狂わせるものですね、多分。
それでは。
久世橋先生を見ていたら、このSSでも早く出したくなってしまいますね。
562 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/19(日) 04:09:03.88 ID:ECYhqwQ0O
乙
羨ましい
563 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/19(日) 09:28:02.64 ID:FfsDbHfso
おっつー やっぱり外から見たら女3人でイチャついてるようにしか見えないわな
あと、カレンが既にシノとイチャついてるから、クゼハシ先生とイチャつかせづらそう
564 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/20(月) 00:27:08.12 ID:KKTULAjW0
――商店街を抜けて
カレン「……ちょっと暗くなりマシタ」
アリス「ライトがなくなっちゃったね……」
忍「あの辺りは賑やかでしたから」
忍「――移動の間は、少し暗いままかもしれませんね」
カレン「シノ……ちょっと怖いデス」ギュッ
アリス「わ、私も……」ギュッ
忍「も、もう……二人とも」
忍(私も、ある意味怖いです……)
忍(両腕の感触が熱すぎて、私の脳がショートしないか、とか……)アセアセ
カレン「――ところで、シノ?」
忍「な、なんですか、カレン?」
カレン「自然公園、って言ってましたケド……」
アリス「そ、そこって何かあるのかな、って……」
忍「――」
忍「それは……ヒミツです」
カレン「Secret、デスカ?」
忍「はい」コクッ
アリス「ねぇ、シノ……教えてくれない?」
忍「アリスの頼みでもダメです」
忍(た、たとえ、上目遣いでも……)
カレン「――私にも、デスカ?」
忍「カレンの頼みでも……」
カレン「教えてくれたら――私」ウワメヅカイ
忍「!?」ビクッ
カレン「シノに……」
忍「……」
アリス「……カレン?」
カレン「――やっぱり、何でもないデス」
忍「――もう、カレン? 私をからかって……」
カレン「アレ?」
カレン「シノ、何だと思ったんデスカ?」ニヤニヤ
忍「……そ、それは」
カレン「?」キョトン
忍「い、いやらしい、こと、とか……」カァァ
カレン「……あ」
カレン「――シ、シノはHデス」プイッ
忍「カ、カレンこそ……」
565 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/20(月) 00:28:06.52 ID:KKTULAjW0
アリス(いや、どうしてからかったカレンが照れちゃうの……)
アリス(――私だって、ちょっと焦っちゃったけど)
カレン「アリスもHデス……」
アリス「うん、ちょっとビックリしちゃったし――って」ハッ
アリス「カ、カレン!」カァァ
カレン「顔、真っ赤デス」カァァ
アリス「そ、そっちだって……!」
忍「……ああ」
忍(ここに至って、ようやく私にも分かりました)
忍(落ち着かないのでしょう)
忍(だから、カレンは照れ隠しで人をからかうし、アリスも明らかに落ち着いてませんし……)
忍「……お二人とも」
カレン「シノ?」
アリス「どうかした?」
忍「――絶対に」
忍「離しません、から」
カレン「……あ」
アリス「シノ……」
忍「で、ですから――」
忍「き、緊張したらダメですからね?」モジモジ
カレン「……」
アリス「――もう」
アリス「シノ、声震えちゃってるよ?」
忍「そ、それは……」アセアセ
カレン「デモ」
カレン「シノの……大切なお相手の頼みなら仕方ありマセン」
アリス「期待してるよ?」
忍「……もう」
忍「お二人は――本当に」
忍(……可愛すぎます)タメイキ
――自然公園・入り口
忍「……着きました」
カレン「ここ、デスカ?」
アリス「静かだね……」
忍「ええ、自然公園ですし」
忍「……それでは、中に行きましょうか」
アリス「う、うん」
566 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/20(月) 00:28:40.48 ID:KKTULAjW0
カレン「――シノ? 何だか腕、熱くないデスカ?」
忍「そ、そんなことは……」アセアセ
カレン「照れてマス?」クスッ
忍「――カレンはイジワルです」
アリス「もう、カレン? あまりシノをいじめたら……」
カレン「? 大好きな人のことを心配するのは当たり前デス?」
アリス「そ、それは……そうだけど」
カレン「アリスも、もっと素直になりマショウ?」ニコッ
アリス「――カレンは素直すぎっ!」プイッ
忍(右腕にはカレンの肌が、左腕にはアリスの――)
忍(あれ? わ、私……ちゃんと目的地に辿りつけますよね?)カァァ
――中心地・噴水前
カレン「……あ」
アリス「ちょっと明るくなったね」
忍「はい」
カレン「綺麗、デス……」
アリス「噴水も、何だか……少し色合いが」
カレン「あっ……噴水から前に進んだ所ニ」
アリス「おっきなクリスマスツリー……ここにもあるんだ」
カレン「なんだか……街灯? みたいなものも、たくさん並んでマス……」
忍「――今日だけ特別の演出みたいですよ?」
アリス「……あ、やっぱり」
カレン「それも――その『魔法のノート』デスカ?」
忍「ええ……」コクッ
忍「お二人を幸せにする魔法が、たくさん載ってるノートです」
アリス「……わぁ」
カレン「シ、シノ――そういうコトハ」
忍「……ごめんなさい、実は私も、ちょっと恥ずかしいです」カァァ
忍「でも――」
忍「ずっとお二人に抱きつかれていると、感覚も……」
アリス「シ、シノったら……」
カレン「シノは照れ屋さんデス」
アリス「……今のカレンは、それを言っちゃいけないと思うよ」
カレン「そ、ソレハ……」アセアセ
567 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/20(月) 00:29:15.57 ID:KKTULAjW0
忍「――それでは、座りましょうか」
アリス(そう言うと、シノは噴水の縁に腰を下ろした)
アリス(それにつられて、私たちもすぐ隣に座る――)
忍「……7時まで、後10分」 チラッ
カレン「シノ?」
忍「お二人とも、お手洗いは大丈夫ですか?」
アリス「だ、大丈夫だよ?」ピクッ
カレン「シノ、何かあるデスカ?」ピクッ
忍「――言ったでしょう?」
忍「お二人に魔法をかける、と」ニコッ
アリス(そんなことを言うシノの顔は赤かったけど……)
カレン(なぜだか凄く頼りがいのある笑顔で――私たちを安心させてクレル……)
「あ、先客がいるね」「マジか……というか、三人?」
「友達かな? それじゃ、ちょっと遠くに――」
忍「……あ、あはは」アセアセ
アリス(い、一気に笑顔が崩れて……)
カレン(ある意味、いつも通りのシノに戻りマシタ……)
忍「や、やっぱり――ここに来る人も、いますね」
アリス「……ねぇ、シノ? その魔法って」
カレン「有名、なんデスカ?」
忍「……」
――というかこれ、こんなコラム的な書き方でいいのかな……――
――気づいた人勝ちだな、これ――
忍「――魔法ですからね」
忍「誰にでも知られているのは、らしくないでしょう?」
アリス「……そっか」
カレン「シノがそこまで言うのナラ……」
カレン「私たちは、それを楽しみにするだけ、デス」
アリス「う、うん……そうだね」
忍「あ、で、でも……そうかしこまらないでください」
忍(さっきから、いちいち格好つけようとするだけで照れてしまいそうなんですから……)カァァ
――7:00
忍「……時計が」
アリス「わっ、音楽……」
カレン「――クリスマス・ソング、デス」
忍「……わっ」
アリス「シノ……あっ」
カレン「――!」
568 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/20(月) 00:29:47.27 ID:KKTULAjW0
――私たちの目の前で、クリスマスツリーがまず点灯しました。
そこから伸びるような形で、街灯の灯りが一気に点きます。
私たちから少し距離を置いた所まで、その光は届きました……。
一口に光といっても、ただ黄色いものだけではありません。
赤、青……その他、色々な色合いで、私たちの前方を彩ります。
「すごーい」という声は、私たちの後ろにいるカップルの方のものでしょう。
……私のお相手たちは、というと。
「……キレイ」
「音楽も、いい味出してマス」
その光に照らされる二人の金髪は、本当にキレイでした。
いや――私は、この子たちが「金髪」というだけで、好きになったわけではありません。
「――あっ、色が変わったよ」
左隣のアリスは、どこか恥ずかしそうな、けれど本当に楽しんでくれていそうでした。
顔に手を当てて「嬉しい」という素振りを見せつける彼女を見ていると、私は愛しさでいっぱいになります。
「グレートデス! 気持ちいいデス!」
右隣からはカレンの、本当に明るく、私たちをいつも楽しませてくれる声がします。
その満面の笑顔は、油断すると照れそうになってしまう私を「楽しい」という気持ちに、一気に引き込んでくれるものでした。
(……キレイ、です)
目の前の景色も。
左隣の、何とも可愛らしい金髪少女も。
右隣の、明るくて気持ちのいい金髪少女も。
――こんなに幸せで、いいんでしょうか?
「キレイだねー……」
「もう少し、近く寄ってみるか」
「賛成!」
と、私が恍惚としていると、後ろから声がしました。
私たちと一緒に、その光景を見ているカップルの声――
その後で、私たちの前を二人の影が過ぎて行きました。
アリス「……行っちゃった」
カレン「これで――今、ここにいるノハ」チラッ
アリス「私たち、だけ……」チラッ
忍「二人とも……?」
忍(わ、私たちだけ……?)
569 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/20(月) 00:30:14.03 ID:KKTULAjW0
アリス「……ねぇ、シノ?」ズイッ
忍「は、はい」
カレン「今、私たち……トテモ」ズイッ
カレン「――そ、その」
カレン「コウフンを、デスネ……」カァァ
忍「」
アリス「カ、カレン……もう」
アリス「――私だって同じなんだから、落ち着いてよぉ」カァァ
忍「……あ、あの?」
カレン「し、仕方ないデス」
カレン「――こんな所を見せられたら……もう、それダケデ」
アリス「た、たしかに……仕方ないよね」
忍「え、え?」
カレン「――最初に謝ります、シノ。ゴメンナサイ」ペコリ
忍「カ、カレン……?」
アリス「……いいんだね、カレン?」
カレン「アリスも謝っておきマショウ!」
アリス「ご、ごめんね、シノ」ペコリ
忍「ア、アリスも……?」
アリス「――いっせーの」
カレン「セっ!」ピトッ
――瞬間、両頬に甘い感触が広がりました。
とても柔らかく、気温の低さにも関わらず……何とも温かい感覚。
頬が一気に赤らみ、私の表情が音を立てるようにして崩れそうになります。
以前にも感じた感触は――そういえば今日まで感じませんでしたね、なんて考えながら。
そうやって冷静さを保とうとしながらも、私の頭に色々な感情が広がっていきます――
忍「……」
カレン「シノのほっぺた、冷たかったケド」
アリス「温かかったね……」
カレン「私の口唇、真っ赤デス」クスッ
アリス「もう、カレン。それは元から――なんて、そうじゃないよね」クスッ
カレン「アリスの口唇も、真っ赤――」
忍「……えいっ!」ダキッ
カレン「ワッ!?」ビクッ
アリス「わぁっ!?」ビクッ
570 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/20(月) 00:30:40.97 ID:KKTULAjW0
カレン(――シ、シノが)
アリス(だ、抱きしめ、て……?)
忍「……まったく、お二人は」
忍「そうやって――私を困らせるんですから」カァァ
カレン「だ、だから、さっき……謝ッテ」
忍「謝ってもダメです!」ビシッ
アリス「……シノ」
忍「――ですから」アセアセ
忍「こ、これは……お仕置きです。バツです」ギュッ
アリス「バツ……」
カレン「おしお、き……」
忍「そうです――」
忍「ハ、ハグの刑、です……」カァァ
カレン(――今度、照れるノハ)
アリス(私たちの番、みたいだった)
カレン(シノの息遣い、肌の感触が私の中いっぱいに広がって……)
アリス(照れくさくなりそうになりながらも、何だか――愛しさでいっぱいで)
忍「――今度やったら、もっと凄い刑になりますからねっ!」
カレン(……モット)
アリス(凄い、刑――)
忍「だ、抱きつくだけじゃなくて……えっと、えっと――)アセアセ
二人(シノは、ちょっと可愛すぎ(デス)……)カァァ
571 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/04/20(月) 00:33:02.90 ID:KKTULAjW0
ここまでです。
「誰かどうにかしてくれ」と助けを求めながら、つらつらと書いていました。
しかし、これでも周りからは友人同士のスキンシップとすら思われそうな辺りが……。
久世橋先生を早く出したい、と書きながら、次回辺りじゃないとクリスマス回は、きっちり終われなさそうですね。
……ということは次回も砂糖が。
それでは。
572 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/04/20(月) 01:17:33.00 ID:nRjsyNKLO
オエー!(角砂糖)
573 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/05/08(金) 02:45:03.05 ID:lgwqkXIc0
――ファミリーレストラン
男子A「このチキン、美味いな……」パクパク
男子B「そうだな――美味い」パクパク
陽子「それじゃ私たち、このサラダ食べるよ」
綾「……い、いい、ですか?」モジモジ
男子A「あ、ああ。いいよ、全然」
男子B「いやー、二人のお陰で……ケーキが半額に」
陽子「――何だか、妙に引っかかるけどなぁ」
綾「よ、陽子。ほら、私たちも半額だし」
陽子「ん、そっか……このチーズケーキも、か」
綾「そ、そうよ。私のショートだって」
男子A「……まさか、猪熊たちが来るとは思わなかった」
陽子「こっちだって、まさか二人がいるなんて思ってなかったよ」タメイキ
男子B「いやいや、猪熊たちには感謝してるって」
陽子「――財布がピンチだった、とかだろ?」ジトッ
男子A「いや、それだけじゃなくて」
陽子「否定はしないんだな……」タメイキ
男子B「事実だからなぁ」
男子A「おかげで、男女割引セールに潜り込めたわけだし」
陽子「なんだかなー……」
綾「――あ、あの」
綾「ふ、二人は……ど、どうして、ここに?」
男子A「そりゃ――寂しいクリスマスを、せめて誰かと、って」
男子B「……やっぱり今年も、お前に相手は見つからなかったんだな」
男子A「そっちだってそうだろ」
陽子「そっかぁ……『そういう』仲だったんだなぁ」ニヤッ
男子A「おい、猪熊が明らかにからかってる」
男子B「気にすんな。きっと大宮さんたちがアレだから寂しくなって、ってことだろうから」
男子A「だよなぁ」
陽子「……!」プルプル
綾「よ、陽子。落ち着いて……」アセアセ
陽子「ああ、そうだよ」
陽子「シノたちがいないから、綾と一緒に……」
綾「わ、私は楽しいわよ?」チラッ
陽子「私だって楽しいよ」マガオ
綾「……も、もう、陽子ったら!」
574 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/05/08(金) 02:45:55.73 ID:lgwqkXIc0
陽子(そうさ、綾と二人だけっていうのも……そりゃ楽しいよ、勿論)
綾(――まったく、陽子ったら)
綾(前までの私ならとにかく……今の私が、あなたの微妙な違いに気づかないと思ったの?)
男子A「……何か、ヤブ蛇だったかな?」ヒソヒソ
男子B「ま、まぁ……何か楽しそうだし、いいんじゃないか?」ヒソヒソ
陽子「まったく……」
陽子「元々、二人とも――シノに、何を話したの?」
男子A「それは……ん?」
男子B「あ、こっちも……」
男子A「悪い、猪熊。ちょっと――」カチカチ
男子B「……そっか」カチカチ
陽子「――な、何かあったのか?」キョトン
男子A「いやいや」
男子B「……よかったな、ホント」
男子A「俺たちのダメージは、どんどんデカくなってる気もするけどな……」
陽子「??」
綾「――もし、かして」
綾「シ、シノ絡み、です、か?」モジモジ
男子A「小路さん……ま、まぁ」
男子B「ちょっと、いい知らせが――」
――少し遡って・喫茶店
カレン「……このケーキ、美味しいデス!」パクパク
アリス「うん。本当に……美味しいよ、シノ」パァァ
忍「そうですか。それは良かったです」
忍「――ちょっと、ビックリするような隠し味のお店も思いついたのですが」
アリス「わ、私は、そういうお店より……こういう方が」アセアセ
カレン「――か、辛子入りのケーキは、チョット」アセアセ
忍「……私、どういう風に見られてるんでしょうか」ズーン
忍「――ともあれ」
忍「喜んでもらえたようで何よりです」ニコッ
忍「……大好きなお二人に、できるだけ楽しいクリスマスを過ごせるように、と思ってましたから」
アリス「……も、もう、シノったら」カァァ
カレン「ホ、ホントに……ピンポイントで私たちを困らせマスね……」カァァ
忍「え? そう、でしょうか……」
忍「ただ――お二人が大好きってだけ、で」
アリス「……そ、そういう所がっ!」
カレン「シノ……あ、あまり人目がある所では、そういうコトは、デスね……」アセアセ
忍「ええ……?」
575 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/05/08(金) 02:46:33.40 ID:lgwqkXIc0
店員1「あ、あの、先輩……あそこのテーブル席の方たちって」
店員2「――可愛いわね。きっと、女子高生だと思うわ」
店員1「女子高生、かぁ……それじゃ、私より、ちょっと年下なのかな」
店員2「女子大生からしたら、もう『若い子』っていう感じね」アハハ
店員1「せ、先輩……目が笑ってません」ビクッ
店員1「それはともかく――」
店員1「あの三人って……ホントに女子高生、なんですよね?」
店員2「それはそうでしょう。最近の若い子は仲良しだから、ああいうことくらい――」
カレン「シノッ! アーン、デス!」
アリス「……わ、私も。ア、アーン?」
忍「……あ、あはは」
忍「まったく、モテちゃって困りますね……」カァァ
店員2「――あ、ああいうこと、くらい」ワナワナ
店員1「も、もしかして……あれは」
忍「……えいっ!」パクッ
アリス「わ、一緒に食べちゃった」
カレン「私とアリスの出したフォークが……一緒ニッ!」
忍「えへへ……」
店員2(――ちょ、ちょっとだけ、混ざっても)サッ
店員2「お、お客様? お飲み物のお代わりは、いかが――」
忍「――お二人のお気持ちは、一緒に頂かないと、ですから」
忍「それこそ……い、一応、婚約者、ですし」モジモジ
アリス「」
カレン「」
店員2「」
店員1「……え? な、なんて?」
店員2「な、なんでもなかった。うん!」
店員1「そ、そうですか……それにしても、あのテーブル席、凄い雰囲気が……」
店員2(そう、なんでもなかった、何も聞こえなかった……)ブツブツ
店員1(せ、先輩……?)ビクッ
アリス「……も、もう、シノったら」カァァ
カレン「さ、さすがに――私たちも、おかしくなりそうデス」カァァ
忍「え、そう、なんですか……?」
忍「私、お二人の親御さんが仰ったから――ほんの少し、覚悟を」
アリス「シノは極端すぎっ!」ビシッ
カレン「さっきまであんなに照れてたのに……張り切るときは張り切りすぎデスッ!」
忍「……うーん、自信なくしちゃいますねー」
576 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/05/08(金) 02:47:13.10 ID:lgwqkXIc0
アリス「大好きだよ、シノ」キュッ
カレン「愛してマス、シノ」キュッ
忍「――あ」
忍(お、お二人の腕が……私の腕に、絡まって……)カァァ
アリス(あ、やっぱり照れちゃった……)
カレン(良かったデス――何だか危なくなってきましたケド……しばらくは私とアリスがリードできそうデス)
店員2「――私、何だか色々と投げ出したくなってきちゃった」ズーン
店員1「せ、先輩……。私も同じだから言わないでくださいって」
店員2「さすがに……あれは見ててキツい」
店員1「ええ。私も、店長から頂けると言われていたケーキのおすそ分けを断っちゃいそうです」
店員2「――それくらいには」
忍「……う、上目遣いは、禁止です」
アリス「あっ……そっか。シノの弱点は、まだ」
カレン「アリス? シノより小さくて良かったデスね?」
アリス「カ、カレンだって――シノより5センチくらいは低いでしょ?」ジトッ
カレン「アリスは15センチ以上低いデス。だから……上目遣いも、凄い効果が」
アリス「カレン……もぉ」プイッ
忍「お、お二人ともやめて下さい……」カァァ
店員2「――私、ケーキいらないわ」ハァ
店員1「私もです、先輩。今、気持ちが固まりました……」ハァ
――それから
カレン「……何だか、店員さんたちの様子がおかしかった気がしマス」
アリス「もう、カレン? お店の人たちを悪く言うのは駄目なんだよ?」
カレン「アリス、わかってマス……でも、そうじゃナクテ」
忍「……」
忍(何となく、分かっちゃうこともあります)
忍(最初の雑貨屋の時は漠然としてましたが……結局、『そういうこと』なのだと)
忍(私たちが揃ってると、やっぱり……女子高生3人組、として映ってしまうんじゃないか、と)
忍「……」チラッ
カレン「何だか……おかしいのかな、とか気にナッテ」
カレン「って、イヤ! な、何でもないデス、シノ!」アセアセ
アリス「もう、カレンったら――わ、私も、ちょっと」
アリス「い、いや! そうじゃないよ、シノ!」アセアセ
忍(おもむろに私に顔を近づけてくる、二人の金髪少女……)
忍(やっぱり――何かしら、思う所があったのかもしれません)
忍(――ここは)
577 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/05/08(金) 02:48:24.17 ID:lgwqkXIc0
忍「……あ、あのっ!」
OL「は、はい?」ビクッ
忍「……こ、この、ケータイで」
忍「――私たちを、撮って頂けないでしょうか?」
アリス「シ、シノ!?」
カレン「……シノ」
OL「――ええ、いいわよ」
忍「二人とも? 私の両側に……いいですか?」
アリス「い、いいけど……シノ? 大丈夫なの?」
カレン「さっきまで、すっごく恥ずかしそうデシタ……」
忍「――いいんです、私の恥ずかしさなんて問題ないです」
忍「……それより」ジッ
忍「お二人が寂しい顔をしていることの方が、ずっとイヤです」
アリス「……あ」
カレン「……シノ」
OL「それじゃ、三人とも? いい?」
忍「あっ、よろしくお願いします、お姉さん」
OL「お、お姉さん……嬉しいわね、まったく」ニコニコ
OL「それじゃ――」
アリス(……さっきの、シノの顔)
カレン(普段からずっと思ってる可愛さと……そ、ソレと)
アリス(――カッコ良かった)カァァ
カレン(……これがシノ、デシタね)カァァ
忍「お願いします」ペコリ
アリス(――ああ、何だか)
カレン(自然と……頬が緩ンデ……)
アリス(隣にいるシノの、あまりの愛しさに)
カレン(隣にいるシノが、本当に頼りになって)
OL「――ピース!」
アリス(このまま……)
カレン(この時間が、終わらなければ……いい、ノニ)
578 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/05/08(金) 02:49:30.52 ID:lgwqkXIc0
――ファミリーレストラン
男子A「……三人とも、いい顔してるよな」
男子B「そうだな……あと、何というか」カァァ
男子A「――二人の顔が、凄く、その」カァァ
陽子「さっきから二人で何話してんの?」
綾「ちょ、よ、陽子!」
男子A「ああ、それは……その」
男子B「――ほら。これが三人の」
陽子「へぇ……ああ。シノとアリスとカレン、の……」ピクッ
綾「よ、陽子? 私も、ちょっと――い、い」ピクッ
男子A(言葉が途切れた……)
男子B(画面を凝視してるな……)
男子A(あ、顔が赤くなってきた、二人とも)
男子B(――きっと、俺たちもそう、なんだろうな)
陽子「――な」
陽子「何というか、えっと……」
綾「アレよね、そう……アレ」
陽子「ア、アレってなんだよ、綾?」
綾「そ、それは――」
綾「――もう」カァァ
陽子「普通の、カ、カップル、みたい、な……」カァァ
二人「……」モジモジ
男子A(――どうしよう。二人のおかげで)
男子B(むしろ、俺たちの方が……反応に困る感じに、なってきたぞ)
――その頃・電車内
忍「……」
アリス「……」
カレン「……」
忍(両手に花、ならぬ、両肩に金髪少女)
忍(お疲れなのか、座席に腰を下ろすとすぐに寝入ってしまいました)
忍(……すぐ近くに、お二人の顔があります)
忍(気のせいではないでしょうが、とてもいい香りがします――)
アリス「……シノ」
カレン「ん……シノ」
579 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/05/08(金) 02:50:15.14 ID:lgwqkXIc0
忍(――何故でしょう?)
忍(前までなら絶対に赤面したシチュエーションなのに、今はどこか冷静です)
忍(さっきの撮影の時に感じた……守らないと、という感覚)
忍(――まったく、この二人と一緒にいると、楽しさと愛しさでいっぱいになって困ってしまいますね)
――そうか……結婚、するつもりはないか――
忍「」
アリス「シノー……」
カレン「シノー……」
忍「あ、あわわ……」カァァ
忍(カ、カレンのお父さん! なんてタイミングで……!)
忍(ああ、いけません――油断してました)
忍(け、け、結婚……この、お二人と……ああ)モジモジ
忍「やっぱり私、まだまだですね……」タメイキ
580 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/05/08(金) 02:53:10.25 ID:lgwqkXIc0
ここまでです。
これにてクリスマス・イブの話は終了の予定です。
次回は、もしかしたら年明けになるかもしれませんし、それを飛ばして始業式辺りになるかもしれません。
油断大敵というお話でした。
ちょっと油断すると、すぐに赤面材料がやってくるというもので……結局、この三人で誰がリード出来るかというのもないのかもしれません。
それでは。
砂糖成分は次回で薄まるか、はたまた……
581 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/05/08(金) 07:51:50.36 ID:wJq4GmXG0
男子が普通に馴染んでる
582 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/05/08(金) 07:52:04.33 ID:1vhMhEfS0
男子が普通に馴染んでる
583 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/05/08(金) 09:53:12.37 ID:UYFyoVNOO
おつ!
584 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/05/08(金) 10:51:30.63 ID:23rI+CPpO
乙
4人組もイブを楽しめてるようで何よりだぜ
585 :
◆jOsNS7W.Ovhu
[saga]:2015/05/16(土) 23:32:44.94 ID:UuPrnmza0
――年明け・神社
綾「……遅いわね」
陽子「おっす、綾」
綾「……まったく、いつも通り遅刻ね」タメイキ
陽子「ほ、他の三人の方が……」アセアセ
綾「――それは、そうだけど」
綾「ほら。あの三人は、ちょっと……」
陽子「――そりゃまぁ、そうだけどさ」
陽子「はぁ……まさか、シノがハーレムとは」
綾「そ、そういう誤解を招きそうなこと言わないのっ」アセアセ
綾「……というか」チラッ
陽子「ん? どうかした?」キョトン
綾「まさか――晴れ着とは思わなかったわ」
陽子「あ、綾……私、そこまでオシャレに縁がないと思ってたのか?」
綾「いや……ちょっと意外で」
綾「見とれちゃった」
陽子「え?」キョトン
綾「――あ」ハッ
綾(な、何を言ってるの、私……!)アセアセ
綾(今までなら、こんなこと絶対に言わなかったのに……)カァァ
綾(去年一年で色々と変わったとは思ったけど……まさか、こんな所まで)
陽子「綾も似合ってるよ」ニコッ
綾「……!」
陽子「綾らしい晴れ着だなぁ、って」
綾「あ、ありがとう」カァァ
綾「……それを言うなら、陽子も陽子らしくて、いいと思うわよ」
陽子「――やっぱり、変わったね。綾は」クスッ
綾「そ、そんなことは!」
陽子「うん、よかった」
陽子「……私一人じゃ、きっとシノたちを支えてあげられないからさ」
綾「……あ」
綾「そう、よね……」
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