過去ログ - 【叫ぶような声も】能力者スレ【無痛になっていく】
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243:名無しのパー速民[sage saga]
2018/08/14(火) 18:18:05.22 ID:GIOxFe6U0
>>241

【――枕元には唯一の私物があった。ホテルに備え付けのタオルにくるまれていた。大事なものだから、誰にも見つからないように、隠すみたいに】
【ならばめいっぱいにムリフェンであろうとしたのかもしれなかった。だのに彼はずうっと居てはくれなくて、だけれど、この場から出ていくことも出来ず】
【ずるずるに剥けた心を押して帰ろうとも誰も居ない場所で一人で眠っていた、だからきっとよりいっそう冥い冥い、淀んだ目をして】

………………――、

【だから安堵すら浮かべなかった。ただただ無感動な色合いが彼を見上げるんだろう、――ならば怒っているのかもしれなかった、それとも、悲しんでいるのやもしれず】
【それでいてきっと真実は疲れ果ててしまっているだけなんだろう、とも、思わせた。ぱちりと瞬きをする、認識したはずの彼を、けれど遅れて理解をするのなら】
【――そこでようやく、わずかに表情が緩むのだろう。頬に触れられて視線を誘導されたなら、愛玩される人形のように、ほんのわずかに笑んですらいて】

――げんき、です、げんき、……。

【ゆえに仕草は秒速で色合いを取り戻す。厳冬に頑なだった花の蕾が一時の暖かさにうっかり綻ぼうとするみたいに、甘やかな声、縋るように言葉を紡ぐのだろう】
【じっと見据えられる視線に相対するのなら。それでもやはり憔悴/衰弱したような色合いが目立つんだろうか、ひどく――――、――】
【――――彼がベッドより離れるなら、彼女も遅れて、ゆらりと身体を起こすんだろう。どこかでけだるげだった、背中を丸めたなら、いっとう豊かな胸元が枝垂れて】

変わった、ことは………………。

【そうして、わずかに息を詰まらす。視線がかすかに枕元で丸められたタオルに向いたのは錯覚のような現実、けれどそれを彼女は口にしないなら】

――――、マルフィクさんに、会いました、……。……ううん、会って、いました、ずっと、前に……。あの、病院で。
……夜更けに。カノッサのナンバーズが来て……――、"それで"。夢を……見て……。…………。――、それで。……。"あの日"あったことと。
それから。それから……。彼の禁術と……。――。……。私、は。"彼ら"の分まで――、

【――やがて伝えるのは、けれど、厳密には彼の留守の最中にあったことではない。あるいは、それを"思い出す"ということが変わったことなら、これ以上なく定義通りに】
【伝える言葉はふらふらといくらか不明瞭でもあった、おそらくは彼女の中でも消化しきれていなくて――けれど、今の彼女は、あの日あった出来事を知識として得て】
【なによりその司祭の彼が賜った力さえも引き継いで。あの日に死したもの、潰えたもの、その全部を引き継いでいくと、――行かねばならないと、小さな声が】

………………。ごめんなさい。そんなこと、……大事なこと、"忘れて"いた、なんて、……。

【――――何よりひどく自己嫌悪の色合いで染められて。忘れていたというのは不適切だった、その記憶そのものと、それをそうした記憶までもを"阻害"していた】
【無理やりに引きずり出すように紡がれる言葉はひどく辛苦の色合いをしているんだろう、――ぎゅうと指先が真っ新なシーツを握りしめた、放射線を描き出して】


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