92:名無しのパー速民[sage saga]
2019/04/21(日) 00:31:40.14 ID:Nzsdb6a90
>>91
くふふっ……そっかそっか。
ヒトがやれることにはどうしたって限界がある。たとえ目的が達せられなかったとしても……。
キミがその子に手を差し伸べてやったことだけは、悔いることじゃあないさ。
【ポールの答えに、イストはなぜか嬉しそうに吹き出した。励まそうとかけた言葉もどこか弾んでいて】
【「今度街で見かけることがあったら、説教しておいてあげるよ」などと軽口まで飛ばしてみせる】
【イストがポールを見る目は、まるで小さな子供でも見るかのように、妙に優しいものだった】
いやぁ、あいにくと大真面目だよ。
あちこち旅して回って、いろんな"怪異譚"を蒐集するのがわたしの趣味なんだ。
ほら、この湖のこともめちゃくちゃ真剣に調べたんだよ?
【そこまで言うと先ほど回収した冊子をめくって、イストはあるページをポールへ開陳するだろう】
【さも論文でも仕立てるかのごとく、湖に棲むバケモノの目撃情報やスケッチなどが詳細に書き込まれている――】
【しかも途中の一説に「人間を好んで捕食するらしい」などという眉唾ものの情報もあって】
【どうやらさっきの入水は、およそ信じがたいことに、自分をエサにして怪物を釣るつもりだったようである】
【とにかく、ふざけているわけではない。この女はきわめて大真面目に、湖の怪異を探しているらしかった】
わたしが蒐めるのは"怪異譚"だからね。無為に殺したりはしないさ。
だから見つけた後は……そうだな。もし知性があったら友達になってみたいところだね。
背中に乗っけてもらって海に繰り出すとかさ。ほら、ロマンがあるでしょ?
【生粋の趣味人――とポールはイストを評したが、それはきわめて正鵠を射ているようである】
【好奇心に駆られる少年のように、あるいは夢見る少女のように。イストは荒唐無稽な夢物語を語るのだ】
【まあ、これがいい歳をした女として正しいのかどうかはともかく。――彼女の世界が輝いているのだけは、たぶん間違いない】
1002Res/2899.93 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20