90:名無しのパー速民[sage saga]
2019/04/20(土) 23:39:52.43 ID:t6lvAVAb0
>>89
【傷口に染み入る痛みも顔には出さず、淡々と話し続けるその仕草を、果たして女は見抜いていたかどうか】
【それはわからないが、女はさも「かわいいものを見た」とでも言いたげにくすりと笑って】
いかにも。わたしは探検家であり、冒険家であり――"蒐集家"だよ。
わたしはイスト。よろしくね。
【男の名乗りに、こちらもまた名乗り返す。女――イストは、どこか誇らしげにいくつかの肩書を並べ立てるだろう】
【ポールの話を聞きながら、女は近くの茂みに歩み寄ると腰をかがめて、入水前に置いておいたいくつかの荷物を抱え上げた】
【水筒や缶詰、火起こし用のライターなど、野宿用の道具らしきものがいくつか。さらに手帳サイズの冊子のようなもの】
【――そして最後に、深い緑に金細工が施された鞘を持つ、一本の刀】
【それらを回収すると適当に周囲を見渡し、近くに転がっていた大きめの石の上に腰掛ける】
【「まあ、座って話そうじゃないか」と笑い、紙コップに水筒の中身を注いでそちらに手渡すだろうか】
【ちなみに中身は酒だとかの小洒落たものではなく、ただのお茶。まあ刺激物ではないので、口の中の傷に染みることも無さそうだ】
ふぅむ。それはまた、波乱万丈な夜だったね……。
それでキミは――その子を逃したことを後悔してるの?
そうでないのなら、わたしはキミが間抜けだとは思わないよ。
【一通り聞き終えると、芝居がかった挙措で神妙そうに唸ってみせる】
【話題の重さの割にイストの言葉は飄々としていたけれど、放たれたその問いだけは、妙に真剣であるだろうか】
いま、キミに世界がどう見えているかはわからないけれどね。
少なくともわたしには、この世界が輝いて見えている。
自分の足で歩き回って探してみれば、楽しいことはあちこちに転がっているものさ。
たとえばそう――。
実はわたしは今日、この湖にネッシーを探しに来たんだって言ったら、キミは笑ってくれるかな?
【そうしてにまりと笑い、イストは自らがここに来た目的を告げる。……どう聞いてもふざけているとしか思えない話だ】
【しかし彼女の瞳は、彼が見上げる闇の只中にぽつぽつと光る星々よりも、爛々として真っ直ぐに輝いている】
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