【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】
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58:名無しのパー速民[sage saga]
2019/04/06(土) 21:08:45.35 ID:riRCloU30
【街中――コインランドリー】
【夜遅い時刻だった、ゆえに一層目立つ室内の明るさに、けれど我先にと寄り付く虫は未だ出ぬ時期なら、虫取りのランプも今は沈黙を貫き通して】
【がうんがうんといくつかの洗濯機やら乾燥機が稼働している音以外はごく静かであるのだろう、――――――嘘。室内に設置された"時間つぶしエリア"のベンチ、誰かいて】
【傍らの机に伏せておかれたスマートフォンから流された音楽がコインランドリーの中、それでもうるさくはなく響いていた。音楽ゲームにもいくつか曲を出しているような同人メインのボーカリストの曲】

【――けれども、誰かが入ってくるならば、彼女は容易く音楽など消してしまうのだろう。つまんなげに膝に広げられているのはだいぶ古い雑誌だった。窓だらけの店内は昼間には快いかと思いきや、本には過酷であるらしく】
【表紙なんかはだいぶ色あせてしまっているから、表紙を飾る有名なアイドルもきっと浮かばれない。死んでないけど。――ふうとため息を吐いたなら雑誌を閉じる、百円ショップのちゃちな雑誌ラックに戻してしまって】
【こちらは単純に古びて色あせたらしいベンチに背中を預けたならあんまり心地よくない音で軋んだ、――そうだとしても、夜のコインランドリーはいやに静かで、なんだか別の世界にきてしまったみたいだけれど】

――――、――――――。

【――ごく黒に近い紺色の髪はけだるげに一つにまとめられていた。同色の瞳もけだるく瞬きを繰り返すなら、"こんな場所"に来るのに化粧なんてするはずもなく、ましてや肌には消えきらぬ日焼けが目立つなら】
【もともと化粧なんてものはあんまりしないのかもしれないなんて余談なのだとして。――部屋着にするにはまだ"生きて"るのだとして、外着にするにはちょっと"死んでる"ようなTシャツ、それからかざりっけのないジーンズと】
【足元はごくやる気のないスニーカーだった。それでもまだ何か許されるように見えるのはきっと彼女が百七十も超えるような背をしているからで。――――雑誌の代わりに眺める携帯電話、着信のバイブが響いたら】

…………――あ? 今どこ? あんたが溜め込んだ服と冬の毛布、洗いに来てんですけど。………………あ? ――小学生の留守番じゃないんだから掛けてこないでくれる……。
あんた大人でしょうよ。………………………………あん? コンビニなんか寄んないわ。コーヒーゼリー? コインランドリー代を誰が出してると思ってんの? やよ。
大人は自分で好きなもの買いなさいな。あたしは自分の分のコーヒーでも買っていこうかしら。じゃ。

【ごくうんざりした仕草だった、なれば漏れる声もまたごくうんざりとしたもので。――ぽつりぽつりと漏れ聞こえてくる声、もし誰か聞いているなら、それでもいくらか親し気な色を帯びるから、家族、なのかもしれなくて】
【そうだとしてげんなりする瞬間はどこまでも心底まで面倒くさがっているようだったから面白かった、――――やがて終わる、というよりか、いくらも"終わらせた"電話、終わるのなら、】

――――――、

【誰かいるのなら、謝罪と呼ぶには簡単に済ませすぎる目くばせが向くのだろう。目礼にも物足りない瞬き一つ。彼女はまた携帯電話、眺めだすから】
【――室内に休憩用のいすはそこしかなかった。同じベンチに腰掛けるのだとして、彼女は端っこにいたし、まして誰か来るならもういくらか端に寄るだろうか、――なんて】
【どうあれ彼女の用はまだ終わらないらしかった。そうして確かなのは、退屈げにソファのひじ掛けについた頬杖、とげとげと他人を拒むような気配は、きっとしていなくって、】


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