50:ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6
2019/04/05(金) 20:24:45.62 ID:zF/yok9K0
【表通りから、そう遠くない路地裏。】
【差し込んだ月光とまばらに点いた建物の明かりだけが、】
【ひび割れたコンクリートに囲まれた無機質な世界を映し出す。】
【そこに荒い息を吐く複数の影があった。】
【影は大きく二つに分かれていた。】
【壁を背にし、両手を頭の上に挙げた一人の男。】
【そしてそれを囲む、多様な男たちの影。】
【囲む者たちの手には一様に木製のバットが握られている。】
【月光が照らす顔は、いずれも普通の市民の出で立ち、】
【しかし、その瞳には黒々とした憎悪の炎が揺れていた。】
お…おいちょっと待てよ、俺は助けようと…。
【囲まれている方はというと無精ひげの伸びた憂鬱とした顔、】
【鼻を横断する傷跡に、使い古された衣類。】
【光を失った瞳は暗く、濁りきった溝川の黒いヘドロの如く淀んでいた。】
【その相貌から老けて見えるが、声からして歳は三十代くらいか。】
一体全体、なんだよ!敵味方の区別もつかねぇのか!
「うるせぇ!糞能力者が!」
「黙りやがれ悪魔め!」
【男が何やら説明しようとするも市民達に遮られ、バットの一撃を肩に食らう。】
【痛みに唸る男は地面に倒れ伏し、自身を囲む者達を睨みつける。】
【一瞬、市民たちはたじろぐも直に憎悪を顔に浮かべ男に迫ってくる。】
OKだ。OK。好きに殴れ。
正し一分間だけ待――。
【鼻を横断する古傷をなでながら立ち上がった男。】
【その背中を木製バットの一撃が打ち抜く。】
【男は何とか前屈みで踏ん張る。】
【しかし腹部に強烈なひざ蹴りを食らい、また地面に倒れてしまう。】
ああ…ついてねぇな俺。
【男の瞳には止めとばかりにバットを振り上げる市民達の姿が映っていた。】
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