【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】
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45:名無しのパー速民[sage saga]
2019/03/29(金) 01:49:19.49 ID:J2G3IGXO0
【街中――川沿いの土手】
【太陽の傾く時刻だった、うすぼんやりと霞んだような春の空の向こう側、少しずつ夕暮れに染まって、カラスがどこかへ帰っていく空を】
【ゆったりと雲が横切っていく。だからきっと雲だってどこか家に帰るのに違いなかった。なれば夕方のチャイムの残響も遠く消えて、子供たちの嬌声、駆け抜けていく】

――――、そしたら、

【――新芽の吹き出した土手に並んで腰かける人影が二つあった。片方はまだあどけなさを残す少女だった。ならば学校帰りの女子高生に似て、】
【それでいて落ち着いた春らしい装いをしていた。投げ出した風に斜面を捉える爪先まで女の子だった。――浮かべる表情の幼さは幾らも子供ぽいのだとして、きっと個性であれば】
【けれどその傍らに腰を落ち着ける人影はきっと"それ"ではありえない。――ごく豪奢な狐の面を付けていた。そうして服装は櫻の着物であった、なら】
【端的に述べるのならば違和感の塊であるのだろう。少なくとも土手にいきなり座っている格好はしていなかった。そうなのだとして、二人、なにか仲良さげに話していた】

それでね、――――――――――――――、だから――――、うん……――――――――。

【そうして二人きっと真っ黒い髪と真っ白い肌が共通していた。そのうえで少女の眼差しは左右で色合いが異なっていた。黒色と赤色。瞬きのたびに色の変わる夕焼けを映し込んで】
【ふわりとした裾のロングワンピースに淑やかなボレロを重ねていた。これもお上品な踵の高さのサンダル、それでも剥き出しの素足の爪先、枯草の欠片が纏わりつくから】
【本当ははしゃぐ方法を十分に知っている子なのだと思わせた。――思いついたように膝を抱えた、その膝に甘えるよう、そうして見上げるようにとなりへ目を向けるなら】
【また何かを話す。きっと返事が返って。――そうしてきゃらきゃらと笑う声が鈴の音に似ていたなら、夕暮れの土手の景色、きっとりんと響くのだろうか】

ほんと? ――、――――すごい、――――――――――そうなんだ――、――――――――――――――――――……。

【――――――そうしてさらにいくらかの話題をやり取りしたのだろう時間の後、先に立ち上がるのは、きっと、櫻の装いをした方。うんとうんと長い毛先をそろと揺らして】
【口元に添えた指先が何か思いだして語る言葉を証明していた。――――、少しだけの間の後に、ふわと上体を折ったなら、未だ座ったままの少女の耳元、塞ぎ、】

「――――――やっぱり、あんた、世界なんて滅ぼしておくべきだったわ。馬鹿みたいね、"あたしたち"」

【それだけで音を防げるはずはなかった。櫻装の指先になにか魔術が煌めいていた。そうして事実指先を離された少女はきょとんと瞬いていた。何も聞こえなかったみたいに、なら、】

「――じゃね、あんまり心配かけさせちゃ駄目よ、"おかあさん"に。――――親孝行したいときには親は居ないっていうのが、世界のルールみたいだから」

――、うん! ばいばぁい、またね――。

【ひらり翻して櫻装は歩き出すのだろうし、取り残された少女は"はてな"を浮かべながらも、それでもまだもう少しだけ、その場に留まるつもりのようだった】
【誰かが居合わせるなら、どちらを観測することも十全に叶えられた。――少なくとも意味深に立ち去った狐面は思いのほか緩やかな足取りをしていた。少女は夕暮れを見ていた】
【そのうえで強いて何か述べることがあるとすれば、――やがて少女に見えぬ角度で土手から街並みへ降りた人影はその時点で指先に狐面を携えていた、ならばその顔すら夕暮れ色】
【赤色と黒色の色違いの眼差しが特徴的だった、少女と呼ばわるにはいくらか大人びていた。――なにか感情を抑え込むように深く細く吐く息の意味合い、春には似つかわしくない】


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