365:名無しのパー速民[saga]
2019/10/20(日) 01:02:46.10 ID:mlSa+L8u0
>>364
「――――――――それは、そうなんだけど」「まあ、もう引っ越したから、関係もないし……」「今度、観光にでも行ってみようかな」
「暮らしているときは行かないようなお店に行って」「ちょっとだけいいお宿に泊まって――――」「そういうふうにしたら、きっと楽しいと思うの」
「……氷の国はどう? ……、ああ、あんまり、覚えてないんだっけ。……。……今は、どの辺に住んでるの?」「まあ、……、別にいいけど」「私は水の国」
位置的に仕方ない。――確かに仕方がなかった。なので彼女も諦めていたし、だからこそ引っ越せば、まったく別の環境に行けたのならば。
今度は観光で行ってみようか、なんて呟き。暮らしているときにはいかない少し小奇麗なお店とか、洒落たホテルとか、――そういうのもいいかもしれないねって、
――ほんとはそういう旅行みたいなのあんまりやったことがないからやってみたいだけだったりもするのだけど。良く知ったあたりなら、不安もないような気がするし――。
「にじゅうろくさい」
――――――だからにこと笑う顔はなんてうそつきなのかと思わせるに違いなかった。どこからどう見ても同い年ぐらい、――、というのもひいき目かもしれない。
なれば彼女は十六と呼ばわって何一つ問題ないような見た目をしていた。十八だと名乗ったなら、少しあどけない顔をしているなと思うぐらいなんだ。だから、
ましてや二十六などと自称し始めたとあっては――、――うそつきというか若作りというか逆鯖読んでいるというか、ああ、そうか、これぐらいのころだと年上に憧れるものかしら?
(だとして実際の十六歳は二十六歳になんてあこがれやしないんだ)(そんなのうんと遠い未来のお話だと思って)(そんなうそつきするのなんにも"かっこよく"ないから)
「…………神様が」「もう、しばらく……、」「春のころから、ずっとかな」「事情聴取はこれからするつもり、」
取り下げられるというなら、彼女にとってのこだわりでも特にないのだろう。神様が家出してたんだってつぶやき、――、そんなのなんだかたまらない気がするけど、
ペットの猫が半年ぶりにやっと帰ってきてくれたって言うような安堵を間違いなく含んでいた。――そのうえで何かもっと複雑なものを裏側に隠してもいたけれど、それをあけっぴろげにするほど二人親しくはないのなら。
「――それぐらいだよ、なんにも面白くないね」「へびさまだって、いい大人なんだし」
――――そもそも彼女は神様との距離が近すぎるんだ。そのくせやっぱり、天使なんて呼ぶほど何か煌めいているわけでもないし、善人ぶって見えもしなかったから。
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