271:名無しのパー速民[sage saga]
2019/05/25(土) 09:43:15.29 ID:vqWS8lP7O
【水の国】
【太陽が元気な今日この頃ーー無風な本日は何をするにも絶好な……否、少し暑すぎる気候かもしれない】
【あちらこちらから「暑い」とか「喉が渇いた」と夏の始まりを感じさせる言葉が飛び交っている】
【繁華街は今日も忙しない。老若男女問わずとはまさにこのことで誰もが限りある時間を有効に使おうと早足で過ぎ去っていく】
【ーーそこは繁華街から少し離れた場所にあった】
【人が多く行き交う賑やかな場所から少し逸れた道。あまり詳しくない人には少し「そっちに何かあるの?」なんて不安になる道なのかもしれない】
【そんな道を進んでいけば気づくだろうかーー柔らかな花の香りが風がなくとも漂う一角に】
【そこは広すぎる庭付きの、豪奢な煉瓦造りの家が聳え立っていた】
【家にしがみつく様に絡んだ蔦までも手入れが行き届き、いささか広すぎる庭には季節の花が太陽を浴びて生き生きと咲き誇っている】
【花の香りはここからだったか、なんて気づけば貴方《貴女》は誘われる様に入って行くのかもしれない】
【花に詳しい人ならばここに並ぶ子たちの名前もひとつひとつわかるのかもしれないがーー踊る様な花々と可憐な香りを楽しんでくれたのなら】
【奥に現れるは『LIORO』と書かれた看板。あぁ、お店だったのかなんて気づいて重めの扉を開けたのであればーー】
【今度はまた違った香りがお客様を歓迎するだろう。木漏れ日の差す店内はたくさんのハーブ用品が綺麗に並んでいる】
【大瓶に入った茶葉、香水、石鹸……そんな商品がお客様を迎えてくれるだろう】
【キィッと扉が閉まる音と同時にひとりの少女が現れた。蜂蜜色のつやつやな髪の毛を二つにまとめ、深い海みたいな二つの瞳が優しげに細められて。細い体は膝までの白を基調としたセーラーワンピを身にまとっている。この子が店員であることは間違いなさそうだ】
【お店の奥の扉から出てきた少女は目の前の木のカウンターと一緒に置かれた椅子に手を付きながら、今日はじめてのお客様に笑顔を向けてーー】
いらっしゃいませ、何かあればお声がけくださいねっ
【なんて今日の太陽にも負けないくらいの笑顔で語りかけるのだろう】
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