【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】
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266:名無しのパー速民[sage saga]
2019/05/21(火) 08:18:21.63 ID:CULgOVkf0
【生まれたての風が通りを吹き抜けた、ならば目覚めたばかりの黄金色した朝焼けを一番飾る冷たさ、時刻はうんと朝早くの頃合い】
【風の国、通りには小鳥たちの遊ぶ約束、今日はどこ行こうって話し合いに似て賑やかな声、開け放たれた酒場のドアから差し込む朝日は道筋に似て】
【――ずいぶんと久しぶりの光景のようにも思えた、少なくともここしばらくはあまり見ることのない光景だった、開け放たれたドアよりなびく不可視の一条】
【コーヒーと、炙られたパンと、それから蕩けるバターの香り。――――ならば誰かが朝食をこさえているのは明白だった、ならば?】

――――――――――、………………。

【――――椅子を背負った机の群れの中、椅子をおろしたテーブルが誇らしげに朝食を並べていた、備え付けのテレビが一番よく見えるところ】
【やはりコーヒーやトーストを並べて、それから、サラダに、目玉焼きに。或いはヨーグルトやフルーツすらも並ぶのなら、】
【誰かひとりが自分のために用意したと云うにはいくらも豪勢が過ぎた。――それでも間違いなく一人分の量ではあった。貴族の朝餉と呼ばわるには物悲しすぎたから】

……、

【――だからきっとごく曖昧な音律で椅子が軋んだ、朝日の差し込む店内の静けさを壁掛けの銃器が飾るのだとして、それでもなお寂しげなシルエットの人影一つ、】
【ごく黒い毛先を肩まで伸ばした少女だった。透き通るよに白い肌。あどけなさを残すかんばせはそれでも少女と呼ぶにはいくらか無垢さをなくしたように見え】
【光の加減によって黒と赤のはざまで明度と彩度をころり返るまなざしはしゃんと伸ばした背筋からテーブルの上のものを見下ろす、――ゆると手を合わす仕草のさなかに】
【ごく小さく紡がれる声は鈴の音のものなのだろう。そろそろ暑くなるというのに袖のたっぷり膨らんだ赤のワンピース、フリルとレースを詰め込んで膨らませたスカートの丸みと】
【その膨らみに誤魔化されるように願ったに違いない華奢な足元は爪先の丸いストラップシューズ、かかとの高いものであるなら、立てばその背丈を割合に大きく見せて】
【十六歳ほどの少女だった。だとして酒場の雰囲気など手に取るように分かっているような顔をしていた。――まして酒のにおいも煙草のにおいも店の中からは飛んでいた、なら、】

【――――ごく何かの意味を孕んでいた。山中に置かれたとってもおいしいおやつみたい。何かを誘い込むための仕草に似ていた、だなんて考えすぎかしら】
【どちらにせよふわり漂うコーヒーの香りに少しだけ差異が生まれていた、――、華奢な指先にて思いッきり練乳を絞りだされたなら、なるほど確かに、甘ったるさが混入して】

【(それとも或いは何か下らぬ感傷にも似ているのかもしれない。どちらにせよ、――分かる人間が見るのなら、彼女が誰かというのか、考えるまでもないのだから、)】

【点灯してなお見る気のあまりないらしいテレビが、それでも必死に何かを語っていた。曰く、今日はどこまでも天気のいい一日になるらしい、なら、】
【きっとどこまでも晴れやかな朝日の光景に、それでも夏の香りが混じり始めているのだろう。アイスキャンディー屋が大きく伸びをして準備体操するような、暑くなる、予感】

/次のお返事はきっと夜になってしまうのですが、のんびりとお待ちしております……


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