【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】
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208:名無しのパー速民[sage saga]
2019/05/14(火) 22:19:53.61 ID:lHlXGZ4e0
>>207

【漏れる言ノ葉の音律に、蛇の一匹がぴくりと顔を上げた。――そうしたらすぐ傍らで同じくすりすりと這っているやつに何か話しかけるみたいに、ずりずりって近づいて行って、疎ましがられている】
【ずいぶんと仲のいい蛇たちの様子、だけれども、蛇ってそんなに仲良くやっていくたぐいの生き物だったかしら。――きっと違うのなら、これは、何か夢まほろばにも似て奇妙な現象、生物学者が喚いても観測したい光景】
【それだけで何か神様の思し召しなのかもしれないなんて言いすぎるのかもしれないけれど、――やがてあなたは薄霧の向こう側に、林立する木々とも、地面を這う蛇とも、まったく異なったシルエットを見つけるのだろう。――人の形をして見えたから】

………………――――、あ? 何? お客さん……? 迷子じゃないの? こんな奥じゃなくって、町のほうに降ろしてやりなさいよ。……私は忙しいから。
あんたたちの神様をこさえてやってんじゃない。…………あー、もう、――――――。

【だからきっと声だってした。誰よりも早く彼女を先導していた蛇が、ぐんとスピードを上げたなら、誰よりも誰よりも真っ先に、薄霧の向こう側まで行ってしまって、その向こう側から、微かな声音が】
【誰かがいるとは思っていないのだろう。だからきっと"彼女"は蛇にのみ話しかけていた。誘われた誰かは、単なる哀れな迷子だと思っているらしかった。何か少しうんざりしたような声は、それでも、涼やかに鈴の音を宿していて】
【薄霧の世界の中で聞くのなら、それこそ何か神聖なように聞こえることもあり得るのだろうか。――だとしても、彼女はずいぶんとくだらない理由で以って"いなく"なってしまったはずだった。だからきっと間違いなく気のせいに違いない】
【――それでも蛇たちは貴女をそちらへと誘導しようとした。それは人語を介する何かに処遇を任せようとしているようにも見えたし、二人を引き合わせたいようにも見えたし、それとも或いは、何か壮大な計画があるようにも見えたし、】

【つまるところ蛇の表情は大多数の人間にはよくわからないということなのだけれど、】

【――――――"それ"は少女の形をしていた、腰の長さまで何の乱れもなくすとんっと落ちた毛先は、お空の上で一番上等な雲を紡いで、それから宇宙の染料で染めたみたいに、何一つ穢れない黒の色合い】
【そうして負けじと白い肌は頬にうっすらと血の気を透かして、そのかんばせの造形のあどけなさを際立たせるのだろう。どこか優しく呆れるように蛇を見つめる瞳は光の角度によって赤く透き通る黒色であるなら、何か少しだけ違うけれど】
【深い赤色のワンピースに魅せるためだけのコルセットを締めていた、袖から裾から溢れんばかりのフリルはその華奢さをこれ以上なく協調して、その傍らから覗く指先の白色が、地面より救い上げた蛇を腕まで躊躇いなく絡ませて、口吸いの距離感で語らい】
【足元を隠しこむソックスの色合いに、それから足元はやはり到底山に似合わぬ靴を履いていた。――かかとの分厚く高いストラップシューズ。そこだけ見れば二人、限りなく同類であるのかもしれない、なんて、思えちゃいそうな】

……ああ。もう。ごめんなさいね、うちの蛇が……。大変だったでしょ。獣道だから。――――まあ、ここ、獣なんて来ないけど。蛇道だわ。蛇の道は蛇――ということで、ほら、さっさと道案内。元居た場所に返してきなさい。

【薄霧の向こう側であるなら、互いに視界は悪いのだろう。そうだとして、その人影の姿を見るにあまり不足はなかった。――なればそいつはそちらに背中を向け続けていた、腕に絡めた蛇にケチをつけてから、足元に解き放ち】
【指先でわりにぞんざいに急かす、――それでも何か蛇がたじろぐのを見てから、ようやく振り返るのなら、それまでに相手のほうが動いたって良かった。それだけの時間は十分にあったし、――言葉を発するだけなら、瞬き一つの間に事足りる】
【どちらにせよ彼女は全部の始まりをあなたに譲るのだろう、――そうあれかしと神様すら望むみたいに。だって、こんな山奥で起こる出来事は、神様か何かそれに準ずるものが手引きをしたに、違いないんだから】


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