191:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank)[sage saga]
2019/05/05(日) 22:46:02.84 ID:dzeJx68X0
>>190
【気丈に──というか、もともと肝が据わっているのだろうが──振る舞うイストの姿に、これならば今暫くは問題なかろうと踏んで】
【朔夜は無言のまま、彼女に小さく頷き返してみせた。ひとかどの剣士に命を預けるとまで言われたのであれば、同じ剣士として、その信には報いねばなるまい】
どうした、埃まみれのお貴族様。お前の家が武門だか内政屋だかは知らないが、青い血筋のお家柄としては、この程度の武芸は嗜みのうちじゃないか?
──ああ。それともお前、召使いか何かなのかな。それだったら得心が行く。へえへえ、申し訳ありませんお嬢様。あっしは単なる一介の従僕でやして、荒事にはとんと縁がなく……って感じか?
…………おっと、これは危ない。
【挑発が功を奏したとみるや、まあ言うわ言うわ。戦いの最中によくぞここまで舌が回るものかと思うほどの罵詈雑言をもってして、亡霊の晒した無様をあげつらう】
【悪意たっぷりの罵倒の最中にも、崩壊する瓦礫の奔流を刀と異能と暗器を交え、切り裂き、射落とし、打ち砕き、その立ち回りには一切の隙が見当たらない──が、しかし】
ぐ、う……ッ!
【朔夜当人よりも先に、右手の得物が根を上げた。根本から刃がへし折れ、弾け飛んだ刀身がプロテクターの隙間を抜けて『偶然にも』左肩を裂いてゆく】
【痛みに歯を食いしばるその数瞬の隙を突き、雪崩を打って飛来する瓦礫の雨霰。咄嗟に頭部をはじめとした急所を庇いながらも殺意満点の乱打を浴び、朔夜は踵で土を削って後ずさる】
【駄目押しとばかりに繰り出された一際大きい瓦礫が、彼女の姿を覆い隠し──直後、盛大な土煙が巻き上がる。万事休す、か】
【そう思われた、その時だった】
……中々、に……面白い。血に狂い己の責務を忘れた俄か貴族の残り滓風情が、この私に、こいつを────
【「抜かせたな」】
【土煙を貫いて、青く、蒼く、光が舞う。ほんの刹那の間隙を縫って、狂ったように乱舞する】
【土煙の中から現れたのは、体の至る所に打ち傷を負いながらも、その手に携えた大太刀をもって、大岩をもはや原型を留めぬほどに刻み尽くした人斬りの姿】
【青く、蒼く。異能力、生体魔素、生命力──鞘の内より解き放たれるが早いか、柄を通じて朔夜の精神と肉体の精髄を吸い上げながら】
【月明かりを弾き返すばかりでなく、自ずから鈍い輝きを放ち始めた乱れ刃の大太刀は、常人でさえそれと判る『異常』を帯びていた】
【見るものが見れば、相当に格の高い妖刀、魔剣の類であると容易に知れるだろう。この世ならざる存在であれば──イストの内に巣食うものならば──尚の事】
この『邂逅』を抜いたからには、有形無形の区別なく──もはや私に断てぬものは、この世に一つとないと知れ。亡霊。
【相手が元人間である以上、そこには必ず意志が生ずる。怨念に狂い、生前よりも劣化した知性であろうとも、付け入り、揺さぶり、心を挫く隙がある】
【まして、今や相手は人ならざる、魂と意志のみで彼岸に生きるものなれば。──この場の誰より強く、その唸り声を聞くだろう】
【己を十全以上に振るう使い手と一つとなり、妖気を纏って荒れ狂う、その刀の声。そして己の向かう先にあるもの全てを斬断せんとする意志を秘めた、必滅の刃の声を】
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