【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】
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155:名無しのパー速民[sage saga]
2019/05/04(土) 20:40:33.34 ID:f+x56qfE0

【深夜――】

【不気味な靄が微かに烟っていて見通しは利かない。気まぐれな風が木々を揺らす喧騒だけが、唯一確かなものだ】
【その"怪異"は森の奥深く、獣道を掻き分けて進んだ先でようやく見つかった。月よ陰れとばかりに天へと伸びる古塔の廃墟である】
【そこら中に崩れた煉瓦が散乱し、雨でも降ればすぐに倒れてしまいそうなほど頼りなく――それでいて、それは小動もせずそこに在った】

【春の陽気も消え去って、冷たく張り付くような空気が漂うその場所に、ひとりの人間がいる】


 ………。さて。
 どうするかな、ここから。
 

【それはすらりと背の高い、二十代半ばぐらいの女である】
【白いジャケットに深紫色のインナー、黒いレギンスに赤褐色のブーツ。腰には大小多くのポーチが付いたベルトと、活動的な服装】
【桜花の柄の腰布とハーフアップに編み込んだ髪を留める二本の簪、左腰に佩いた緑鞘の刀が、桜の国特有の風情を醸し出している】
【淡く月の光と同じ色を差す長髪は、毛先へと流れるにつれ鮮やかな新緑の色へと彩りを変えており――】
【深紫の瞳は優しく抱く宵闇のようでもあって、しかし丑三つ時の澱んだ闇よりまだ深く、見通しきれない何かを秘めていた】

【女は塔の入り口らしき部分の脇にしゃがみ込んで、ごそごそと何かをやっているようである】
【――その足元にあるのはヒトの死骸だ。恐怖にまみれた表情のまま命を失くした肉塊。飛び散った血は、未だ新鮮なままだった】





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