´ω`)ノ こんぬづわ11
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233:野獣死すべし[sage]
2019/11/20(水) 20:56:56.49 ID:nK2GXkHk0
C■~*  漂泊者の歌---萩原朔太郎

日は断崖の上に登り
憂ひは陸橋の下を低く歩めり。
無限に遠き空の彼方
続ける鉄路の柵の背後〔うしろ〕に
一つの寂しき影は漂ふ。

ああ汝〔なんぢ〕 漂泊者!
過去より来りて未来を過ぎ
久遠〔くをん〕の郷愁を追ひ行くもの。
いかなれば蹌爾〔さうじ〕として
時計の如くに憂ひ歩むぞ。
石もて蛇を[ピーーー]ごとく
一つの輪廻を断絶して
意志なき寂寥〔せきれう〕を蹈み切れかし。

ああ 悪魔よりも孤独にして
汝は氷霜の冬に耐えたるかな!
かつて何物をも信ずることなく
汝の信ずるところに憤怒を知れり。
かつて欲情の否定を知らず
汝の欲情するものを弾劾せり。
いかなればまた愁〔うれ〕ひ疲れて
やさしく抱かれ接吻〔きす〕する者の家に帰らん。
かつて何物をも汝は愛せず
何物もまたかつて汝を愛せざるべし。

ああ汝 寂寥の人
悲しき落日の坂を登りて
意志なき断崖を漂泊〔さまよ〕ひ行けど
いづこに家郷はあらざるべし。
汝の家郷は有らざるべし!


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